(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-07-03
(54)【発明の名称】流体から粒子を除去するための方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
G01N 1/28 20060101AFI20250626BHJP
G01N 1/10 20060101ALI20250626BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
G01N1/28 J
G01N1/10 D
G01N37/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024575173
(86)(22)【出願日】2023-06-21
(85)【翻訳文提出日】2025-02-06
(86)【国際出願番号】 IB2023056427
(87)【国際公開番号】W WO2023248159
(87)【国際公開日】2023-12-28
(32)【優先日】2022-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2023-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524062087
【氏名又は名称】ソルベンタム インテレクチュアル プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】カート ジェイ.ハルバーソン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ピー.スワンソン
(72)【発明者】
【氏名】アレクシー ジェイ.ヤング
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドラ エル.クランプトン
(72)【発明者】
【氏名】エミリー エス.サベラ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ジェイ.ゲイツ
(72)【発明者】
【氏名】セムラ コラック アタン
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルド ケー.ラスムッセン
(72)【発明者】
【氏名】イバン ディー.ブルティネル
(72)【発明者】
【氏名】ケイティ エフ.ウラシン
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA30
2G052AB16
2G052AD06
2G052AD29
2G052AD46
2G052DA08
2G052DA09
2G052ED16
2G052GA29
2G052JA01
2G052JA07
(57)【要約】
本開示は、流体から粒子を除去するための方法及びデバイスを提供する。赤血球を除去するための方法は、第1の表面にわたって延びている微細構造を含む微細構造化基材を有するデバイスを得ることを含み、当該微細構造の外面の少なくとも一部は、毛細管作用を可能にするように構成されている。デバイスはまた、微細構造化基材の第1の表面の頂部から選択された距離だけ離れて配置されたカバーと、微細構造化基材の第1の表面の周囲に沿って微細構造化基材の第1の表面にカバーを取り付ける少なくとも1つの側壁部とを含む。本方法は、更に、毛細管作用によって第1のアパーチャを通して、ある体積の血液でデバイスを充填することと、赤血球の少なくとも一部が微細構造の第1の開放容積内に沈降するのに十分な時間待機することと、圧力をデバイスに印加し、それによって、微細構造の第1の開放容積内に赤血球の少なくとも一部が保持された血液の初期体積の一部をデバイスから流出させることと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液から赤血球を分離する方法であって、
a)
1)微細構造化基材の第1の表面にわたって延びている複数の微細構造を備える微細構造化基材であって、前記複数の微細構造の外面の少なくとも一部は、毛細管作用を可能にするように構成されている、微細構造化基材と、
2)前記微細構造化基材の前記第1の表面の頂部から選択された距離だけ離れて配置されたカバーと、
3)前記微細構造化基材の前記第1の表面の周囲に沿って前記微細構造化基材の前記第1の表面に前記カバーを取り付ける少なくとも1つの側壁部と、
4)前記微細構造化基材又は前記カバーのうちの少なくとも1つによって画定された第1のアパーチャと、
5)前記微細構造化基材又は前記カバーのうちの少なくとも1つによって画定された第2のアパーチャと、を備え、
前記微細構造化基材の前記第1の表面は、前記少なくとも1つの側壁部と共に、各微細構造の底部から頂部までの前記複数の微細構造の間に位置した開放空間の合計である第1の開放容積を画定し、前記カバーは、前記微細構造化基材の前記第1の表面の頂部及び少なくとも1つの側壁部と共に、前記第1の開放容積に隣接して位置した第2の開放容積を画定し、前記第1の開放容積と前記第2の開放容積とを合わせた合計を100%開放容積とすると、前記第1の開放容積は、前記100%の開放容積のうち、前記血液中に存在する赤血球の体積パーセントよりも大きなパーセントを有する、デバイスを得ることと、
b)毛細管作用によって前記第1のアパーチャを通して、ある体積の血液で前記デバイスを充填することと、
c)前記赤血球の少なくとも一部が前記複数の微細構造の前記第1の開放容積内に沈降するのに十分な時間待機することと、
d)圧力を前記デバイスに印加し、それによって、前記複数の微細構造の前記第1の開放容積内に前記赤血球の少なくとも一部が保持された血液の初期体積の少なくとも10%を、前記第1のアパーチャ又は前記第2のアパーチャのいずれかを通して前記デバイスから流出させることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの側壁部が、前記微細構造化基材の一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記血液の少なくとも15%、少なくとも20%、又は少なくとも30%が、前記圧力の印加時に前記デバイスから流出する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記時間が、前記赤血球の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は少なくとも90%が、前記複数の微細構造の前記第1の開放容積内に沈降するのに十分である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記微細構造化基材が、微細構造化フィルムである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の微細構造の前記外面の少なくとも一部が、界面活性剤、表面処理剤、親水性ポリマー、凝集剤、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記凝集剤が、親水性かつ非溶血性である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記凝集剤が、ポリエチレンイミン、ポリリジン、ポリアミノアミド、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリジメチルアミン-エピクロロヒドリン-エチレンジアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、カチオン性ポリアクリルアミド(CPAM)、ポリアミノシロキサン、並びにポリアミンジアミン(PAMAM)及びポリプロピレンイミンから形成されるデンドリマーからなる群から選択される修飾又は非修飾アミノポリマーを含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記凝集剤が、修飾又は非修飾ポリエチレンイミンポリマーを含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記凝集剤の少なくとも一部が、前記デバイスを前記体積の血液で充填した後に、前記血液中に溶解、分散、又はこれらの組み合わせを示す、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記凝集剤が、血液1ミリリットル当たり0.01~5000マイクログラムの量で前記体積の血液中に存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記圧力が、陽圧である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記圧力が、陰圧である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のアパーチャが、前記カバーによって画定されている、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2のアパーチャが、前記微細構造化基材及び前記カバーによって画定されている、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記血液が、希釈されていない、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記赤血球が、重力のみによって沈降する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記デバイスが、前記カバーと前記微細構造化基材との間に配置された接着剤層を更に備える、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記微細構造が、前記微細構造化基材の前記第1の表面にわたって延びているチャネルと交互に配置された複数のリブを備え、前記リブの各々は、側壁及び頂面を備え、前記チャネルの各々は、底面を備える、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
各リブの頂面が、側壁上に配置されたキャップの頂部であり、前記キャップは、両側の側壁間の幅よりも大きい幅を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記微細構造が、ピーク構造と、隣接している谷とのアレイを備え、前記谷は、10ミクロン~500ミクロンの範囲の最大幅を有し、前記ピーク構造は、5度超~90度の頂角を有する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記微細構造化基材の第1の表面にわたって延びているピーク構造と、隣接している谷との前記アレイが、前記デバイスの流れ方向に対して0~90度の角度で配向されている、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ピーク構造と、隣接している谷との前記アレイが、隣接しているピーク構造間にギャップを更に備える、請求項11又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記微細構造が、前記微細構造化基材の前記第1の表面にわたって配列された突起の2次元(x軸及びy軸)アレイを備え、前記突起の各々は、基部と、頂部と、前記頂部を前記基部に接続している1つ以上の側部とを備える、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記微細構造化基材が、第1及び第2の主表面を有する微細構造化層を備え、前記微細構造は、前記第1及び第2の主表面の間に延びている複数のキャビティを備え、各キャビティは、第1の開口部と、第2の開口部と、前記第1の開口部と前記第2の開口部との間に延びている少なくとも1つの側壁とを備える、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記微細構造が、ファセットと、前記微細構造のリッジにおいて前記ファセットと交わる側壁とを備え、前記ファセット及び前記側壁は、それらの間に斜角を画定している、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記微細構造が、流体接続されたウェルのアレイを備え、前記ウェルの少なくともいくつかは、少なくとも2つの隣接しているウェルに流体接続され、各々はベントを介して接続されている、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記微細構造が、前記微細構造化基材の前記第1の表面にわたって延びている直立ステムのアレイを備える、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記第1のアパーチャを通して充填される前記血液の体積が、最大100マイクロリットルの前記血液である、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の開放容積対前記第2の開放容積の比が、1:1より大きい、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記血液を、前記デバイスに入る前にフィルターに通すこと、前記複数の微細構造の前記第1の開放容積内に前記赤血球の少なくとも一部が保持された前記血液を、前記デバイスから出た後に通すこと、又はその両方を更に含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記デバイスを、前記体積の血液で充填する前に、前記体積の血液に凝集剤を添加することを更に含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記凝集剤が、添加され、血液1mL当たり0.01~5000マイクログラムの量で存在する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
1)微細構造化基材の第1の表面にわたって延びている複数の微細構造を備える微細構造化基材であって、前記微細構造は、前記微細構造化基材の前記第1の表面の少なくとも90%を覆い、前記複数の微細構造の外面の少なくとも一部は、毛細管作用を可能にするように構成されている、微細構造化基材と、
2)前記微細構造化基材の前記第1の表面の頂部から選択された距離だけ離れて配置されたカバーと、
3)前記微細構造化基材の前記第1の表面の周囲に沿って前記微細構造化基材の前記第1の表面に前記カバーを取り付ける少なくとも1つの側壁部と、
4)前記微細構造化基材又は前記カバーのうちの少なくとも1つによって画定された第1のアパーチャと、
5)前記微細構造化基材又は前記カバーのうちの少なくとも1つによって画定された第2のアパーチャと、を備え、
前記微細構造化基材の前記第1の表面は、前記少なくとも1つの側壁部と共に、各微細構造の底部から頂部までの前記複数の微細構造の間に位置した開放空間の合計である第1の開放容積を画定し、前記カバーは、前記微細構造化基材の前記第1の表面の頂部及び前記少なくとも1つの側壁部と共に、前記第1の開放容積に隣接して位置した第2の開放容積を画定している、デバイス。
【請求項35】
流体から固体粒子を分離する方法であって、
a)
1)微細構造化基材の第1の表面にわたって延びている複数の微細構造を備える微細構造化基材であって、前記複数の微細構造の外面の少なくとも一部は、毛細管作用を可能にするように構成されている、微細構造化基材と、
2)前記微細構造化基材の前記第1の表面の頂部から選択された距離だけ離れて配置されたカバーと、
3)前記微細構造化基材の前記第1の表面の周囲に沿って前記微細構造化基材の前記第1の表面に前記カバーを取り付ける少なくとも1つの側壁部と、
4)前記微細構造化基材又は前記カバーのうちの少なくとも1つによって画定された第1のアパーチャと、
5)前記微細構造化基材又は前記カバーのうちの少なくとも1つによって画定された第2のアパーチャと、を備え、
前記微細構造化基材の前記第1の表面は、前記少なくとも1つの側壁部と共に、各微細構造の底部から頂部までの前記複数の微細構造の間に位置した開放空間の合計である第1の開放容積を画定し、前記カバーは、前記微細構造化基材の前記第1の表面の頂部及び前記少なくとも1つの側壁部と共に、前記第1の開放容積に隣接して位置した第2の開放容積を画定し、前記第1の開放容積と前記第2の開放容積とを合わせた合計を100%開放容積とすると、前記第1の開放容積は、前記100%の開放容積のうち、前記流体中に存在する粒子の体積パーセントよりも大きなパーセントを有する、デバイスを得ることと、
b)毛細管作用によって前記第1のアパーチャを通して、ある体積の前記流体で前記デバイスを充填することと、
c)前記粒子の少なくとも一部が前記複数の微細構造の前記第1の開放容積内に沈降するのに十分な時間待機することと、
d)圧力を前記デバイスに印加し、それによって、前記複数の微細構造の前記第1の開放容積内に前記粒子の少なくとも一部が保持された前記流体の少なくとも10%を、前記第1のアパーチャ又は前記第2のアパーチャのいずれかを通して前記デバイスから流出させることと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
血液中のバイオマーカーの同定及び定量化は、分析前に赤血球の除去を必要とすることが多い。赤血球は、ヘマトクリットレベルとして報告される35~50%の濃度で全血中に存在する。この高濃度は、バイオマーカーアッセイを妨害する可能性がある。妨害のレベルは、生理学的ヘマトクリット範囲にわたって変動し、報告されるバイオマーカーの濃度にばらつきが生じる。光学的検出アッセイ(例えば、ELISA)における妨害は、可視スペクトルにおけるヘモグロビンの光散乱効果及び吸光度によって引き起こされ得る。赤血球はまた、電気化学的検出アッセイ法、例えば、グルコース検査ストリップにおいて一般的に利用される電気化学的検出アッセイ法も妨害し得る。化学種、例えば、赤血球中に存在する酸素は、酸化還元反応を妨害する可能性がある。
【背景技術】
【0002】
集中型病院又は臨床検査室では、赤血球の分離は遠心分離によって行われる。分離プロセスは、試験管に、静脈から採取された大量(例えば、ミリリットル)の血液が必要である。遠心分離中、赤血球は試験管の底部にパックされ、残りの血液(例えば、無細胞血漿)は、更なる分析のために上層にアクセス可能なまま残される。これらの集中化された設定では、次いで、バイオマーカー検出は、典型的には、自動化された液体の取り扱いが可能で、かつ較正によるアッセイ性能の頻繁な検証に関してアクセス可能な大型で複雑な分析器で行われる。
【0003】
中央検査室外で使用されるポイントオブケア血液分析器もまた、分析前に赤血球の除去を必要とする。迅速な結果が必要とされる状況では、静脈内血液量へのアクセス及び卓上遠心分離は、しばしば利用できないか、又は時間がかかりすぎる。指穿刺では、約5マイクロリットルの血液量が採取される。グルコース検査ストリップは、典型的には、1マイクロリットル未満の血液量を受け入れ、上記の妨害を受ける。これらの少量から赤血球を除去することは、依然として難題である。
【発明の概要】
【0004】
第1の態様では、血液から赤血球を分離する方法が提供される。本方法は、微細構造化基材の第1の表面にわたって延びている複数の微細構造を備える微細構造化基材を含むデバイスを得ることを含む。複数の微細構造の外面の少なくとも一部は、毛細管作用を可能にするように構成される。デバイスはまた、微細構造化基材の第1の表面の頂部から選択された距離だけ離れて配置されたカバーと、微細構造化基材の第1の表面の周囲に沿って微細構造化基材の第1の表面にカバーを取り付ける少なくとも1つの側壁部とを含む。更に、デバイスは、微細構造化基材又はカバーのうちの少なくとも1つによって画定された第1のアパーチャと、微細構造化基材又はカバーのうちの少なくとも1つによって画定された第2のアパーチャとを含む。微細構造化基材の第1の表面は、少なくとも1つの側壁部と共に、各微細構造の底部から頂部までの複数の微細構造の間に位置した開放空間の合計である第1の開放容積を画定し、カバーは、微細構造化基材の第1の表面の頂部及び少なくとも1つの側壁部と共に、第1の開放容積に隣接して位置した第2の開放容積を画定し、第1の開放容積と第2の開放容積とを合わせた合計を100%開放容積とすると、第1の開放容積は、その100%の開放容積のうち、血液中に存在する赤血球の体積パーセントよりも大きなパーセントを有する。当該方法は、毛細管作用によって第1のアパーチャを通して、ある体積の血液でデバイスを充填することと、赤血球の少なくとも一部が複数の微細構造の第1の開放容積内に沈降するのに十分な時間待機することとを更に含む。加えて、当該方法は、圧力をデバイスに印加し、それによって、複数の微細構造の第1の開放容積内に赤血球の少なくとも一部が保持された血液の初期体積の少なくとも10%を、第1のアパーチャ又は第2のアパーチャのいずれかを通してデバイスから流出させることを含む。
【0005】
第2の態様では、デバイスが提供される。当該デバイスは、微細構造化基材の第1の表面にわたって延びている複数の微細構造を備える微細構造化基材を含む。微細構造は、微細構造化基材の第1の表面の少なくとも90%を覆い、複数の微細構造の外面の少なくとも一部は、毛細管作用を可能にするように構成される。デバイスはまた、微細構造化基材の第1の表面の頂部から選択された距離だけ離れて配置されたカバーと、微細構造化基材の第1の表面の周囲に沿って微細構造化基材の第1の表面にカバーを取り付ける少なくとも1つの側壁部とを含む。更に、デバイスは、微細構造化基材又はカバーのうちの少なくとも1つによって画定された第1のアパーチャと、微細構造化基材又はカバーのうちの少なくとも1つによって画定された第2のアパーチャとを含む。微細構造化基材の第1の表面は、少なくとも1つの側壁部と共に、各微細構造の底部から頂部までの複数の微細構造の間に位置した開放空間の合計である第1の開放容積を画定し、カバーは、微細構造化基材の第1の表面の頂部及び少なくとも1つの側壁部と共に、第1の開放容積に隣接して位置した第2の開放容積を画定する。
【0006】
第3の態様では、流体から固体粒子を分離する方法が提供される。当該方法は、微細構造化基材の第1の表面にわたって延びている複数の微細構造を備える微細構造化基材を含むデバイスを得ることを含む。複数の微細構造の外面の少なくとも一部は、毛細管作用を可能にするように構成される。デバイスはまた、微細構造化基材の第1の表面の頂部から選択された距離だけ離れて配置されたカバーと、微細構造化基材の第1の表面の周囲に沿って微細構造化基材の第1の表面にカバーを取り付ける少なくとも1つの側壁部とを含む。更に、デバイスは、微細構造化基材又はカバーのうちの少なくとも1つによって画定された第1のアパーチャと、微細構造化基材又はカバーのうちの少なくとも1つによって画定された第2のアパーチャとを含む。微細構造化基材の第1の表面は、少なくとも1つの側壁部と共に、各微細構造の底部から頂部までの複数の微細構造の間に位置した開放空間の合計である第1の開放容積を画定し、カバーは、微細構造化基材の第1の表面の頂部及び少なくとも1つの側壁部と共に、第1の開放容積に隣接して位置した第2の開放容積を画定する。第1の開放容積と第2の開放容積を合わせた合計を100%開放容積とすると、第1の開放容積は、その100%の開放容積のうち、流体中に存在する粒子の体積パーセントよりも大きなパーセントを有する。当該方法は、毛細管作用によって第1のアパーチャを通して、ある体積の流体でデバイスを充填することと、粒子の少なくとも一部が複数の微細構造の第1の開放容積内に沈降するのに十分な時間待機することとを更に含む。加えて、当該方法は、圧力をデバイスに印加し、それによって、複数の微細構造の第1の開放容積内に粒子の少なくとも一部が保持された流体の少なくとも10%を、第1のアパーチャ又は第2のアパーチャのいずれかを通してデバイスから流出させることを含む。
【0007】
本開示の少なくとも特定の実施形態によるデバイス及び方法は、非常に少ない体積(例えば、マイクロリットル)の流体(例えば、血液)からの固体粒子(例えば、赤血球)の除去を提供できることを発見した。
【0008】
本開示の上記の概要は、本開示で開示された各実施形態又は全ての実施を記載することを意図していない。以下の記載は、例示的な実施形態をより具体的に例示する。本出願全体のいくつかの箇所において、実施例のリストを通してガイダンスが提供され、それらの実施例は、様々な組み合わせで使用することができる。各例において、列挙されたリストは代表的な群としてのみ機能し、排他的なリストとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】例示的な方法の一般化されたフローチャートである。
【
図2A】例示的なデバイスの一般化された概略図の斜視図である。
【
図2B】例示的なデバイスで使用するための微細構造化基材の一般化された概略図の斜視図である。
【
図3A】例示的なデバイスの一部の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、例示的な方法の一部を示すためにマークアップされている。
【
図3B】
図3Aの例示的なデバイスの一部の断面に関するSEM画像であり、例示的な方法の別の部分を示すためにマークアップされている。
【
図4A】チャネルと交互になっている複数のリブを有する微細構造化基材の概略断面図である。
【
図4B】チャネルと交互になっている複数のリブを有する微細構造化基材の概略斜視図であり、リブはそれらの頂面にキャップを含む。
【
図5A】プリズムの線状アレイを有する微細構造化基材の概略断面図である。
【
図5B】実施例8の例示的なデバイスの一部の断面に関するSEM画像である。
【
図5C】特定の配向でピーク構造と、隣接している谷とのアレイを有する微細構造化基材の一部の概略斜視図である。
【
図5D】別の特定の配向で、ピーク構造と、隣接している谷とのアレイを有する微細構造化基材の一部の概略斜視図である。
【
図5E】ファセット構造を有する微細構造化基材の概略断面図である。
【
図6A】突起の2次元アレイを有する微細構造化基材の概略断面図である。
【
図6B】突起の二次元アレイのための4つの代表的な工学的マイクロパターン化領域の頂面図である。
【
図7A】2つの主表面の間に延びている複数のキャビティを有する微細構造化基材の概略断面図である。
【
図7B】2つの主表面の間に延びている複数のキャビティを有する微細構造化基材の一般化された概略分解図である。
【
図8A】実施例1のデバイスの分解され、一般化された概略図である。
【
図8B】実施例1のデバイスの一般化された概略頂面図である。
【
図8C】実施例1のデバイスに固定されたポンプを取り付けるために使用される2つの構成要素の一般化された概略頂面図である。
【
図8D】ポンプに取り付けられるように適合された実施例1のデバイスの一般化された概略斜視図である。
【
図9】別の例示的な方法の一般化されたフローチャートである。
【
図10A】流体的に接続されたウェルのアレイを有する微細構造化基材の一部の概略斜視図である。
【
図10B】円形形状を有する流体的に接続されたウェルのアレイを有する微細構造化基材の一部の概略頂面図である。
【
図11】略直立ステムのアレイを有する微細構造化基材の概略断面図である。
【0010】
上記で特定した図は、本開示のいくつかの実施形態を記載するものであるが、説明で言及しているように、他の実施形態もまた企図される。図面は必ずしも縮尺通りに描かれていない。全ての場合において、本開示は、限定ではなく代表として本発明を提示する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用される場合、「微細複製」という用語は、構造化表面特徴部が製造中に個々の特徴部忠実度を保持するプロセスによる微細構造化表面の生成を意味する。
【0012】
本明細書で使用される場合、「微細構造」という用語は、基材の主表面の上に突出する構造(すなわち、特徴部)と、基材の主表面の下に窪んだ構造との両方を包含する。突出している特徴部と窪んだ特徴部との組み合わせが企図される。微細構造とは更に、構造が、少なくとも2つの直交する方向において約5~約3000マイクロメートルの範囲の寸法を有する所定の成形構造(例えば、基材の第1の主表面上に提供されることが所望される微細構造のネガを備えたツーリング表面に対してポリマー熱可塑性樹脂を成形することによって得られるような成形構造)であることを意味する。これらの直交方向のうちの1つは、多くの場合、基材の平面に対して垂直であってもよく(例えば、z軸に沿う)、したがって、この寸法は、例えば、突起の高さ又は窪みの深さを含むことができる。
【0013】
本明細書で使用される場合、「毛細管作用」という用語は、外力(例えば、圧力、重力、真空など)の補助がない流体の流れを指す。多くの場合、親水性表面と接触する水性流体に対して毛細管作用が生じる。水性流体は、50体積%以上の水を含む。
【0014】
本明細書で使用される場合、「親水性」という用語は、水溶液によって湿潤している表面を指し、材料が水溶液を吸収するか否かを表現していない。「湿潤」とは、表面が水性流体と接触したときに自発的なウィッキングを示すことを意味する。「自発的」とは、外力なしで起こることを意味する。いくつかの実施形態では、親水性表面は、90°未満、好ましくは45°以下の前進(最大)水接触角を示す。
【0015】
本明細書で使用される場合、「疎水性」という用語は、水性流体と接触したときに自発的なウィッキングを欠く表面を指す。いくつかの実施形態では、疎水性表面は、70°以上、好ましくは90°以上の前進水接触角を示す。
【0016】
本明細書で使用される場合、「硬化」は、任意の機構による、例えば、熱、光、放射線、電子ビーム、マイクロ波、化学反応、又はこれらの組み合わせによる、組成物の固化又は部分固化を意味する。本明細書で使用される場合、「固化性」という用語は、例えば、加熱して溶媒を除去すること、加熱して重合を引き起こすこと、化学架橋、放射線誘起重合又は架橋などによって硬化又は固体化することができる材料を指す。本明細書で使用される場合、「硬化した」とは、硬化によって固化又は部分的に固化した(例えば、重合又は架橋された)材料又は組成物を指す。
【0017】
本明細書で使用される場合、ポリマー「フィルム」は、ロールツーロール方式で加工されるのに十分な可撓性及び強度を有する概ね平坦なシートの形態のポリマー材料である。ロールツーロールとは、材料が支持体上に巻き取られ、又は支持体から巻き出され、更に何らかの方法で処理されるプロセスを意味する。更なるプロセスの例としては、コーティング、スリッティング、ブランキング、及び放射線への曝露などが挙げられる。ポリマーフィルムは、一般に約5マイクロメートルから1000マイクロメートルの範囲の様々な厚さで製造することができる。
【0018】
本明細書で使用される場合、「固体」とは、液体でも気体でもない物質の状態を指し、固体は安定な三次元形状を有する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「流体」は、液体(すなわち、固体又は気体ではない物質の状態)を含む組成物を指し、溶液、懸濁液、及びエマルジョンを包含する。
【0020】
本明細書で使用される場合、微細構造に関する「外面」は、微細構造の最外面を指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、「熱可塑性」は、そのガラス転移点よりも十分に高い温度に加熱されると流動し、冷却されると固体になるポリマーを指す。対照的に、「熱硬化性」は、硬化時に永久的に硬化し、その後の加熱時に流動しないポリマーを指す。熱硬化性ポリマーは、典型的には架橋ポリマーである。
【0022】
本明細書で使用される場合、ポリマーの「ガラス転移温度」(Tg)という用語は、ガラス状態からゴム状態へのポリマーの転移を指し、示差走査熱量測定(DSC)を使用して、例えば、窒素流中で1分当たり10℃の加熱速度で測定することができる。モノマーのTgが言及される場合、それはそのモノマーのホモポリマーのTgである。ホモポリマーは、Tgが限界値に達するように十分に高い分子量でなければならず、これは、ホモポリマーのTgが分子量の増加と共に限界値まで増加することが一般に認識されているからである。ホモポリマーはまた、水分、残留モノマー、溶媒、及びTgに影響を及ぼし得る他の汚染物質を実質的に含んでいないことも理解される。好適なDSC法及び分析モードは、Matsumoto,A.et.al.,J.Polym.Sci.A.,Polym.Chem.1993,31,2531-2539に記載されているとおりである。
【0023】
本明細書で使用される場合、「透明」とは、可視光スペクトルの少なくとも400ナノメートル(nm)~700nm部分にわたって、少なくとも50%の透過率、70%の透過率、又は必要に応じて90%を超える透過率を有する材料(例えば、層)を指す。
【0024】
「好ましい」及び「好ましくは」という語は、特定の状況下で特定の利益をもたらし得る本開示の実施形態を指す。しかしながら、同じ状況又は他の状況下では、他の実施形態も好ましい場合がある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用でないことを意味するものではなく、本開示の範囲から他の実施形態を除外することを意図するものでもない。
【0025】
本出願において、「a」、「an」、及び「the」などの用語は、単数の実体のみを指すことを意図するものではなく、例示のために特定の例が使用され得るクラス全般を含む。「a」、「an」、及び「the」という用語は、「少なくとも1つ」という用語と互換的に使用される。リストが続く「のうちの少なくとも1つ」及び「のうちの少なくとも1つを含む」という句は、リスト内の項目のうちのいずれか1つ、及びリスト内の2つ以上の項目の任意の組み合わせを指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、「又は」という用語は、一般に、内容が明確に別段の指示をしない限り、「及び/又は」を含むその通常の意味で使用される。「及び/又は」という用語は、列挙された要素の1つ若しくは全て、又は列挙された要素の任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0027】
また、本明細書において、全ての数は、「約」という用語によって、好ましくは、「正確に」という用語によって、修飾されるものと想定される。測定された量に関連して本明細書で使用される場合、「約」という用語は、測定を行い、測定の目的及び使用される測定装置の精度に見合ったレベルの注意を払う当業者によって予想されるであろう、測定された量の変動を指す。
【0028】
特性又は属性に対する修飾語として本明細書で使用される場合、「概して」という用語は、別段に具体的に定義されない限り、その特性又は属性が当業者によって容易に認識可能であるが、絶対的な精度又は完全な一致を必要としない(例えば、定量化可能な特性では+/-20%以内)ことを意味する。「実質的に」という用語は、別段に具体的に定義されない限り、高度な近似(例えば、定量化可能な特性では+/-10%以内)を意味するが、ここでも絶対的な精度又は完全な一致を必要としない。同じ、等しい、均一な、一定の、厳密に、などの用語は、絶対的な精度又は完全な一致を必要とするのではなく、特定の状況に当てはまる通常の公差又は測定誤差の範囲にあると理解される。
【0029】
ポイントオブケアバイオマーカー分析では、溶血、希釈、デッドスペースへの血液の有意な損失を伴わずに、マイクロリットル量の血液から赤血球を簡単かつ効率的に分離する必要がある。
【0030】
第1の態様では、本開示は、血液から赤血球を分離する方法を提供する。当該方法は、
a)
1)微細構造化基材の第1の表面にわたって延びている複数の微細構造を備える微細構造化基材であって、複数の微細構造の外面の少なくとも一部は、毛細管作用を可能にするように構成されている、微細構造化基材と、
2)当該微細構造化基材の当該第1の表面の頂部から選択された距離だけ離れて配置されたカバーと、
3)当該微細構造化基材の当該第1の表面の周囲に沿って当該微細構造化基材の当該第1の表面に当該カバーを取り付ける少なくとも1つの側壁部と、
4)当該微細構造化基材又は当該カバーのうちの少なくとも1つによって画定された第1のアパーチャと、
5)当該微細構造化基材又は当該カバーのうちの少なくとも1つによって画定された第2のアパーチャと、を備え、
当該微細構造化基材の当該第1の表面は、当該少なくとも1つの側壁部と共に、各微細構造の底部から頂部までの複数の微細構造の間に位置した開放空間の合計である第1の開放容積を画定し、当該カバーは、当該微細構造化基材の当該第1の表面の頂部及び少なくとも1つの側壁部と共に、当該第1の開放容積に隣接して位置した第2の開放容積を画定し、当該第1の開放容積と当該第2の開放容積とを合わせた合計を100%開放容積とすると、当該第1の開放容積は、当該100%の開放容積のうち、血液中に存在する赤血球の体積パーセントよりも大きなパーセントを有する、デバイスを得ることと、
b)毛細管作用によって当該第1のアパーチャを通して、ある体積の血液で当該デバイスを充填することと、
c)当該赤血球の少なくとも一部が当該複数の微細構造の当該第1の開放容積内に沈降するのに十分な時間待機することと、
d)圧力を当該デバイスに印加し、それによって、当該複数の微細構造の当該第1の開放容積内に当該赤血球の少なくとも一部が保持された血液の初期体積の少なくとも10%を、当該第1のアパーチャ又は当該第2のアパーチャのいずれかを通して当該デバイスから流出させることと、を含む。
【0031】
第2の態様では、本開示はデバイスを提供する。当該デバイスは、
1)微細構造化基材の第1の表面にわたって延びている複数の微細構造を備える微細構造化基材であって、当該微細構造は、当該微細構造化基材の当該第1の表面の少なくとも90%を覆い、当該複数の微細構造の外面の少なくとも一部は、毛細管作用を可能にするように構成されている、微細構造化基材と、
2)当該微細構造化基材の当該第1の表面の頂部から選択された距離だけ離れて配置されたカバーと、
3)当該微細構造化基材の当該第1の表面の周囲に沿って当該微細構造化基材の当該第1の表面に当該カバーを取り付ける少なくとも1つの側壁部と、
4)当該微細構造化基材又は当該カバーのうちの少なくとも1つによって画定された第1のアパーチャと、
5)当該微細構造化基材又は当該カバーのうちの少なくとも1つによって画定された第2のアパーチャと、を備え、
当該微細構造化基材の当該第1の表面は、当該少なくとも1つの側壁部と共に、各微細構造の底部から頂部までの複数の微細構造の間に位置した開放空間の合計である第1の開放容積を画定し、当該カバーは、当該微細構造化基材の当該第1の表面の頂部及び当該少なくとも1つの側壁部と共に、当該第1の開放容積に隣接して位置した第2の開放容積を画定している。
【0032】
以下の開示は、第1の態様及び第2の態様の両方に関する。
【0033】
図1を参照すると、当該方法は、デバイス(デバイスは上記したとおりである)を得ること、110と;毛細管作用によって第1のアパーチャを通して、ある体積の血液で当該デバイスを充填すること、120と;赤血球の少なくとも一部が複数の微細構造の第1の開放容積内に沈降するのに十分な時間待機することと、130と;圧力を当該デバイスに印加し、それによって、複数の微細構造の第1の開放容積内に赤血球の少なくとも一部が保持された血液の初期体積の少なくとも10%を、第1のアパーチャ又は第2のアパーチャのいずれかを通して当該デバイスから流出させること、140と、を含む。場合によっては、待機時間は、赤血球の少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は更には少なくとも95%が、複数の微細構造の第1の開放容積内に沈降するのに十分な時間である。
【0034】
図2及び
図3Aを参照すると、例示的なデバイス200が示されている。デバイス200は、微細構造化基材210の第1の表面202にわたって延びている複数の微細構造230を備える微細構造化基材210を備えている。複数の微細構造230の外面232の少なくとも一部は、毛細管作用を可能にするように構成されている。デバイス200はまた、微細構造化基材210の第1の表面221の頂部から選択された距離Dだけ離れて配置されたカバー220と、微細構造化基材210の第1の表面の周囲Pに沿って微細構造化基材210の第1の表面202にカバー220を取り付けている少なくとも1つの側壁部240とを含む。周囲Pは、特定のデバイスの各辺Pa、Pb、Pc、Pd、...Pnから集合的に構成されている。
図2Aに示したデバイス200は、4つの辺Pa、Pb、Pc、及びPdを有し、したがって、周囲Pは、これらの4つの辺の各々を含む。4つ以外の数の側面を有するデバイスの他の形状が企図される。
【0035】
必要に応じて、少なくとも1つの側壁部240は、カバー220と微細構造化基材210との間に配置された(例えば、カバーを基材に取り付ける)接着剤層、例えば、以下の実施例1で使用される両面テープを含み得る。これは、微細構造化基材が微細構造化フィルムである場合に特に有用であり得る。接着剤層に好適な材料としては、例えば、感圧接着剤が挙げられる。接着剤層は、接着性ポリマーを含有する接着剤のフィルムをコーティングすることによって作製することができる。好ましくは、接着剤は接着性ポリマー及び架橋剤を含む。本明細書で使用される「接着性ポリマー」という用語は、周囲温度(例えば、20~25℃)で接着性を示すポリマーを指す。接着性ポリマーは、例えば、アクリルポリマー、ポリウレタン、ポリオレフィン、又はポリエステルであり得る。選択された実施形態では、接着剤層は、両面コーティングされた接着剤フィルムを含む。いくつかの好適な市販の両面コーティング接着剤フィルムは、3M Company(St.Paul,MN)から、3M Medical Silicone Tape 2477P、並びに3M Medical Tape 1509、1510、1513、1522、9874、及び9877の各商品名で販売されている。
【0036】
更に、デバイスは、微細構造化基材210又はカバー220のうちの少なくとも1つによって画定された第1のアパーチャ250と、微細構造化基材210又はカバー220のうちの少なくとも1つによって画定された第2のアパーチャ260とを含む。
図2Aに示したデバイスは、カバー220によって画定された第1のアパーチャ250と、微細構造化基材210及びカバー220の両方によって画定された第2のアパーチャ260とを含む。
【0037】
選択された実施形態では、側壁部、微細構造化基材、及びカバーは、それらの接触点(例えば、継ぎ目)で互いに気密封止され、これは、3つの間の任意の継ぎ目からの流体試料の漏出を最小限にする(例えば、流体は、第1のアパーチャ及び/又は第2のアパーチャを主として通って又はそれだけを通って出入りし得る)。場合によっては、微細構造化基材自体は、少なくとも1つの側壁部が微細構造化基材の一部であるように、その構造内に側壁部を含む。
【0038】
カバーとして使用するのに好適な材料としては、例えば、ポリオレフィン(例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、又は低密度ポリエチレン(LDPE))、ポリエステル、ポリアミド、ポリ(塩化ビニル)、ポリエーテルエステル、ポリイミド、ポリエステルアミド、ポリアクリレート、ポリビニルアセテート、又はポリビニルアセテートの加水分解誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、ポリオレフィンは、それらの優れた物理的特性、加工の容易さ、及び典型的には低コストのために好ましい。また、ポリオレフィンは、一般に強靭で、耐久性があり、それらの形状を良好に保持するので、物品形成後の取り扱いが容易である。選択された実施形態では、フィルム層は、ポリエステルのポリエチレンテレフタレート(PET)を含む。1つの好適な市販のPETは、Tekra(New Berlin,WI)から商品名「MELINEX 454」で販売されている厚さ5ミル(127マイクロメートル)のPETシートである。好適な市販のLDPEは、The Dow Chemical Company(Midland,MI)から商品名「DOW 955I LDPE」で市販されている。更に、種々の添加剤、例えば、表面エネルギー調節剤(例えば、界面活性剤及び親水性ポリマー)、可塑剤、酸化防止剤、顔料、剥離剤、帯電防止剤などがカバー層に含まれ得る。
【0039】
微細構造化基材210の第1の表面202は、少なくとも1つの側壁部240と共に、各微細構造230の底部236から頂部221までの複数の微細構造230間に位置した開放空間の合計である第1の開放容積270を画定する。(簡略化のために、270の矢印は、2つの隣接する微細構造230の間の第1の開放容積の一部を指すだけである)。カバー220は、微細構造化基材210の第1の表面202の頂部221及び少なくとも1つの側壁部240と共に、第1の開放容積270に隣接して位置した第2の開放容積280を画定し、第1の開放容積と第2の開放容積を合わせた合計を100%開放容積とすると、第1の開放容積は、その100%開放容積のうち、血液中に存在する赤血球の体積パーセントよりも大きなパーセントを有する。特定の体積パーセントの赤血球などの(例えば、固体)粒子を含有する血液にデバイスを調整するために、第1の開放容積と第2の開放容積を合わせた合計を100%開放容積であることを考慮すると、第1の開放容積は、その100%開放容積のうち、流体中に存在する粒子の体積パーセントよりも大きなパーセントを有する必要があると結論することができる。例えば、粒子の体積パーセントが、流体の総体積の20%である場合、第1の開放容積対第2の開放容積の好適な比は、1:4よりも大きい(例えば、1.1:4)。粒子の体積パーセントが流体の総体積の75%である場合、第1の開放容積対第2の開放容積の好適な比は、3:1よりも大きい(例えば、3.1:1)。
【0040】
場合によっては、第1の開放容積270対第2の開放容積280の比は、1:1以上、1.1:1、1.2:1、1.3:1、又は1.4:1以上であり、かつ最大2.0:1、1.9:1、1.8:1、1.7:1、1.6:1、又は1.5:1である。角型括弧272は、第1の開放容積270の高さを示し、角型括弧282は、第2の開放容積280の高さを示し、かつ、このデバイス220において、デバイス220がz軸及びy軸によって示されるように配向されるときに、第2の容積280が第1の開放容積270の上に直接積み重ねられていることを示している。
図3A及び
図3Bのデバイス200は、第1の開放容積270対第2の開放容積280の比が1:1以上である場合の縮尺にはなっておらず、本明細書で提供されるデバイス及び方法の記載を助けるために示されていることに留意されたい。
【0041】
必要に応じて、複数の微細構造の平均高さと、複数の微細構造の各々の間のピッチの平均幅との間の特定の関係(例えば、比)を選択することも有用であり得る。好ましくは、第1の開放容積は、全ての赤血球が沈降した場合に、微細構造の頂部より上に突出する赤血球が存在しないように十分に大きい。
【0042】
上記したように、複数の微細構造の外面の少なくとも一部は、毛細管作用を可能にするように構成されている。毛細管作用は、典型的には親水性表面と接触している水性流体(50体積%以上の水を有する)について、外力の補助がない流体の流れを指すことが当技術分野において周知である。したがって、血液がデバイスの第1のアパーチャに導入されると、血液は微細構造の外面に沿って自発的に輸送され、それによって微細構造の領域内に広がる。流体を自発的に輸送する微細構造の能力に影響を及ぼす2つの一般的な因子は、(i)表面の構造又はトポグラフィー(例えば、毛細管状、キャビティの形状)、及び(ii)表面の性質(例えば、表面エネルギー)である。所望の量の流体輸送能力を達成するために、設計者は、基材層の構造又はトポグラフィーを調整してもよく、かつ/又は毛細管微細構造化表面の表面エネルギーを調整してもよい。ウィッキングを達成するために、毛細管微細構造の表面は、輸送される液体(例えば、液体状態の物質)によって「湿潤」されることが可能でなければならない。必要に応じて、固体表面の液体による湿潤しやすさは、液体が、水平に配置された表面上に堆積され、その上で安定化された後に、固体表面となす接触角によって特徴付けられる。この角度は、「静的平衡接触角」と呼ばれることもあり、本明細書では単に「前進接触角」と呼ばれることもある。場合によっては、材料は、90度未満の前進接触角を有する場合に親水性であると考えられ、一方、親水性表面は、90°未満、好ましくは45°以下の前進(最大)水接触角を示す。
【0043】
流体が第1のアパーチャを介して導入されると、微細構造化基材が毛細管作用を起こして流体(例えば血液)をデバイス全体に輸送することができるように、微細構造の外面のうちの十分な部分が親水性である必要があり、それにより、固体粒子が、微細構造間の開放容積にアクセスして流体の大部分から沈降することができる。場合によっては、微細構造の外面の面積の50%以上が毛細管作用を起こすことができ、微細構造の外面の60%、70%、80%、90%、又は95%以上が毛細管作用を起こすことができる。選択された実施形態では、微細構造化基材230に面するカバー220の主面223の少なくとも一部は、デバイス200内部の流体の毛細管作用を助けるために親水性である。微細構造の外面及び/又はカバーの主面の親水性は、本明細書に記載の任意のデバイスによれば、材料選択、材料に含まれる添加剤、又は表面処理のうちの1つ以上によって達成することができる。いくつかの実施形態では、微細構造は、界面活性剤、表面処理剤、親水性ポリマー、凝集剤、又はこれらの任意の組み合わせを含む外面を有する。好適な界面活性剤としては、例えば、C8~C18アルカンスルホネートC8~C18第二級アルカンスルホネート;アルキルベンゼンスルホネート;C8~C18アルキルスルフェート;アルキルエーテルスルフェート;ラウレス4硫酸ナトリウム;ラウレス8硫酸ナトリウム;ジオクチルスルホスクシネート、ナトリウム塩;ラウロイルラシレート;ステアロイルラクチレート;又はこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。1つ以上の界面活性剤は、従来の方法によって、例えば、微細構造の表面上に界面活性剤のコーティングを塗り広げ、そのコーティングを乾燥させることによって、適用することができる。好適な表面処理としては、プラズマ堆積ケイ素/酸素材料及び/又はダイヤモンド様ガラス(diamond-like glass、DLG)材料を含む親水性コーティングが挙げられる。ケイ素/酸素材料及びDLG材料の各プラズマ堆積は、例えば、PCT国際公開第2007/075665号(Somasiriら)に記載されている。更に、好適なDLG材料の例は、米国特許第6,696,157号(Davidら)、同第6,881,538号(Haddadら)、及び同第8,664,323号(Iyerら)に開示されている。好適な親水性ポリマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(ビニルピロリドン)、ゴムエラストマー、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
細胞及び/又は細胞破片の凝集のために、並びにタンパク質の沈殿のために、特定のイオン性ポリマー、特にカチオン性ポリマーを使用することが知られている。凝集剤が使用される場合、凝集剤が使用されない場合よりも大きい微細構造(例えば、高さ及び/又は深さ、隣接する微細構造間のピッチなど)を有するデバイスが使用され得る。これは、粒子が集塊をなす傾向があり、凝集したときにより大きなサイズを有するため、微細構造内に粒子を保持するためにより大きな空間が必要とされ得るためである。対照的に、大きな微細構造を有するデバイスは、凝集されていない流体(例えば、血液)から分離された粒子(例えば、赤血球)を保持するのにあまり有効でない可能性がある。したがって、デバイスの微細構造化表面は、粒子又は凝集粒子の予想サイズを考慮して部分的に選択してもよい。
【0045】
凝集剤として使用されるポリマーは、非修飾(例えば、ポリエチレンイミン)又は修飾(例えば、グアニル化ポリエチレンイミン)であり得る。いくつかの実施形態では、好適な凝集剤は、親水性かつ非溶血性である(すなわち、赤血球を溶解しない)。いくつかの好適な凝集剤は、米国特許第8,435,776号(Rasmussenら)及び同第10,005,814号(Rasmussenら)に詳細に記載されており、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。特定の場合では、凝集剤は、非修飾又は修飾(例えば、官能化)アミノポリマーを含む。好適なアミノポリマーは、例えば、ポリエチレンイミン、ポリリジン、ポリアミノアミド、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリジメチルアミン-エピクロロヒドリン-エチレンジアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、カチオン性ポリアクリルアミド(CPAM)、ポリアミノシロキサン、並びにポリアミンドアミン(polyamindoamine、PAMAM)及びポリプロピレンイミンから形成されるデンドリマーからなる群から選択され得る。好適な修飾アミノポリマーは、ポリエチレンイミン、ポリリジン、ポリアミノアミド、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリジメチルアミン-エピクロロヒドリン-エチレンジアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、CPAM、ポリアミノシロキサン、並びにPAMAM及びポリプロピレンイミンから形成されるデンドリマーからなる群から選択される1つ以上のアミノポリマーを官能化することによって、調製することができる。例えば、官能化は、アミノポリマーをアルキル化剤、アシル化剤、又はグアニル化剤と反応させることを含み得る。選択された実施形態では、凝集剤は、修飾又は非修飾ポリエチレンイミンポリマーを含む。
【0046】
1つ以上の凝集剤は、従来の方法によって、例えば、微細構造の表面上に凝集剤のコーティングを適用し、そのコーティングを乾燥させることによって、適用することができる。
【0047】
場合によっては、凝集剤は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定すると、1モル当たり5,000グラム(g/mol)以上、10,000g/mol、20,000g/mol、30,000g/mol、40,000g/mol、50,000g/mol、60,000g/mol、70,000g/mol、80,000g/mol、90,000g/mol、100,000g/mol、110,000g/mol、120,000g/mol、130,000g/mol、140,000g/mol、又は150,000g/mol以上、かつ500,000g/mol以下の重量平均分子量(Mw)を有する。時に、高分子量、例えば、50,000g/mol以上は、粒子(例えば、赤血球)を凝集させるのに役立つことがある。
【0048】
有利には、凝集剤の少なくとも一部は、ある体積の流体でデバイスが充填された後に、流体(例えば、血液)中に溶解、分散、又はこれらの組み合わせを示す傾向がある。場合によっては、用いられる凝集剤の量は、流体1ミリリットル当たり0.01マイクログラム(μg/mL)以上、0.1μg/mL、0.25μg/mL、0.5μg/mL、1μg/mL、5μg/mL、10μg/mL、25μg/mL、50μg/mL、75μg/mL、100μg/mL、150μg/mL、250μg/mL、500μg/mL、750μg/mL、1000μg/mL、又は1500μg/mL以上、かつ5000μg/mL以下、4000μg/mL、3000μg/mL、2000μg/mL、1000μg/mL、500μg/mL、200μg/mL、100μg/mL、50μg/mL、10μg/mL、又は2μg/mL以下の量の、ある体積の流体試料(例えば、血液)中の凝集剤濃度となるように設計される。別の言い方をすれば、いくつかの実施形態では、凝集剤は、ある体積の流体(例えば、血液)中に0.01μg/mL~5000μg/mLの量で存在する。デバイスの表面上の乾燥コーティングの形態である場合の凝集剤の量は、特定の凝集剤の分子量(Mw)に基づいて変化する。
【0049】
図3A及び
図3Bにはまた、デバイス200が典型的にどのように使用されるかに関する概念を示すために、デバイスのSEM画像上にイラストによる描写も組み込まれている。例えば、毛細管作用を利用して、血液295がデバイス200に充填された後、赤血球290は、微細構造230の間で、第1の開放容積270に沈降し始める。
図3Aでは、3つの赤血球290のみが、第1の開放容積270内に位置するものとして描かれている。
図3Bを参照すると、赤血球290の全てが、複数の微細構造230の第1の開放容積270内に沈降するのに十分な時間待機した後のデバイス200が描かれている。多くの場合、赤血球は重力のみによって沈降する。赤血球が除去されたある体積の血液295が、第2の開放容積280に存在する。使用時に、圧力をデバイスに印加すると、複数の微細構造230の第1の開放容積270内に赤血球の少なくとも一部が保持された血液の初期体積の少なくともいくらかの量は、第1のアパーチャ250又は第2のアパーチャ260のいずれかを通ってデバイスから流出する。場合によっては、血液295が第2のアパーチャ260から出ることが好ましい。
【0050】
必要に応じて、当該方法は、流体(例えば、血液)を、デバイスに入る前に、デバイスから出た後に、又はその両方で、フィルターに通すことを更に含む。例えば、流体を濾過することは、流体から少なくとも1つの望ましくない成分を除去するために有用であり得る。好適なフィルターとしては、例えば、不織布フィルター、織布フィルター、膜フィルター、紙フィルター、及びスポンジフィルターが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な好適なフィルターとしては、例えば、ガラス繊維フィルター、及び非対称ポリスルホン/ポリエーテルスルホンフィルター(例えば、Pall Corporation(Port Washington,NY)から市販されているVIVID Plasma Separation membranes、又は両方ともChina Filtration Equipment Co.,Ltd.(Hangzhou,China)から市販されているCobetter OneStep Plasma Separation Membrane若しくはCobetter RBシリーズ)が挙げられる。
【0051】
場合によっては、当該方法は、ある体積の流体(例えば、血液)でデバイスを充填する前に、ある体積の流体(例えば、血液)に凝集剤を添加することを更に含む。凝集剤は、ある体積の流体中に存在する濃度(例えば、流体1mL当たり0.01~5000マイクログラムの量)を含めて、上記で詳細に述べたとおりであり得る。
【0052】
赤血球は、全血の総体積の35~50%を構成する傾向がある。第1の開放容積対第2の開放容積の比が1:1以上であることにより、第1の開放容積内の微細構造の間に、未希釈全血試料の最大で全ての赤血球が保持されるのに十分な空間が提供される一方で、第2の開放容積は、赤血球をほとんど含まない(から全く含まないまでの)血液のために空けられたままである。したがって、沈降後にデバイスに圧力が印加されると、赤血球が除去された血液(場合によっては血漿)は、アパーチャのより近くに位置するので、デバイスから優先的に出る。対照的に、沈降した赤血球は、第1の開放容積内の微細構造の間に保持される傾向があり、圧力の印加によってデバイスから除去される可能性は低い傾向がある。場合によっては、第1の開放容積対第2の開放容積の比は、分析のためにデバイスから流出することができる血液(赤血球が除去されている)の体積を最大化するために、赤血球と共に第1の開放容積に沈降する可能性のある血液の体積を最小化するように選択される。1:1以上の第1の開放容積対第2の開放容積の比を選択することによって、血液からの赤血球の効果的な分離のために全血を希釈することは、典型的には必要なく、そのため、血液が希釈されていない形態で使用され得る。しかしながら、希釈血液では、0.9:1以下、0.8:1、0.7:1、0.6:1、又は更には0.5:1以下など、より小さい比を使用することが可能である。
【0053】
有利なことに、本開示の少なくとも特定の実施形態によるデバイスは、デバイス内の分析可能な血液の滞留を最小限に抑えながら、赤血球(の少なくとも一部)を、少量の血液から効果的に分離する。これは、フローストリームを用いるデバイス、又はデッドボリューム損失をもたらすデバイスとは対照的である。流動血液を必要とする赤血球分離デバイスの例としては、米国特許出願公開第2008/0135502号(Pyoら)、米国特許第11,262,347号(Yunら)、米国特許第10,518,196号(Puleoら)、韓国特許出願公開第2010/0048507号(Chunら)、及びTW I338134号(Chouら)が挙げられる。
【0054】
好ましくは、赤血球が除去された血液の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、又は更に少なくとも40%が、圧力の印加時にデバイスから流出する。パーセンテージが大きいほど、本開示によるデバイスを使用する分離方法の効率が高くなり、デバイスで失われる分析可能な試料体積は少なくなる。
【0055】
本開示の少なくとも特定の実施形態によるデバイスは、試料体積が、120マイクロリットル以下、110マイクロリットル、100マイクロリットル、90マイクロリットル、80マイクロリットル、70マイクロリットル、60マイクロリットル、50マイクロリットル、40マイクロリットル、30マイクロリットル、20マイクロリットル、10マイクロリットル、又は更に5マイクロリットル以下、かつ1マイクロリットル以上、2マイクロリットル、3マイクロリットル、4マイクロリットル、5マイクロリットル、6マイクロリットル、7マイクロリットル、8マイクロリットル、9マイクロリットル、10マイクロリットル、12マイクロリットル、15マイクロリットル、25マイクロリットル、35マイクロリットル、又は45マイクロリットル以上である場合に、流体(例えば血液)から固体粒子(例えば赤血球)を除去するための使用に好適である。例えば、デバイスの第1の開放容積と第2の開放容積との合計は、5マイクロリットル~120マイクロリットルであり得る。
【0056】
場合によっては、第1のアパーチャは、デバイスのカバーによって画定され、ある体積の流体(例えば、血液)を、重力及び/又はアパーチャへのウィッキングを利用してデバイスに導入することができる。他の場合では、第1のアパーチャは、微細構造化基材によって画定される。例えば、
図2Bを参照すると、第1のアパーチャ250は、少なくとも特定の最小体積の流体を保持するように構成されたリザーバとして設けられ得る。リザーバは、微細構造230の一端237に隣接する微細構造化基材210の一部によって画定され得る。同様に、第2のアパーチャ260は、流体が微細構造化基材210の微細構造化表面202から出る際に流体を保持するように構成されたリザーバであり得る。多くの場合、第2のアパーチャは、流体が第1のアパーチャを介してデバイスに堆積される際にデバイスからの置換ガス(典型的には空気)を容易に排出できるように、第1のアパーチャから離れた距離に位置することが有利である。必要に応じて、陽圧をポンプによって提供して、ある体積の血液を第1のアパーチャに堆積させることができ、次いで、赤血球の少なくとも一部が第1の開放容積に沈降した後、ポンプを再び作動させて、血液を、第2の開放容積から第2のアパーチャの外に押し出すことができる。必要に応じて、ある体積の血液は、第1のアパーチャを通してデバイスにウィッキングされてよく、次いで、使用者の指によって提供される陽圧又は真空源によって提供される陰圧のいずれかを使用して、血液を、第2の開放容積から、第1のアパーチャ又は第2のアパーチャのいずれかの外に押し出すことができる。したがって、血液(いくらかの赤血球が除去されている)をもたらす圧力は、陽圧又は陰圧であり得る。
【0057】
ルーバー構造
再び
図3A及び3Bを参照すると、特定の実施形態のデバイスの微細構造230は、チャネルによって分離されたリブを備える「ルーバー構造」を含む。この形状はまた、
図4Aにも示されており、微細構造230は、微細構造化基材210の第1の表面202にわたって延びているチャネル201と交互に配置された複数のリブ230を備え、リブ230の各々は、側壁233及び234並びに頂面221を備え、チャネル201の各々は、底面205を備える。
【0058】
より具体的には、描かれた微細構造化基材210は、ベース層213上に複数のチャネル201a~201dを備える。
図4Aに示したように、連続ランド層(continuous land layer)「L」が、チャネルの底部205とベース層213の頂面202との間に存在していてよい。あるいは、チャネル201は、微細構造化基材210全体にわたって延びていてもよい。場合によっては(
図4Bに示したように)、溝の底面205は、ベース層213の頂面202と一致していてもよい。典型的な実施形態では、ベース層213は、リブ230とは異なる有機ポリマー材料を含む予備成形フィルムである。
【0059】
リブ(例えば、突起)230の高さ及び幅は、隣接するチャネル(例えば、201a及び201b)によって画定される。リブ230は、頂面221と、底面231と、頂面221を底面231に接合する側壁233及び234とによって画定することができる。側壁233及び234は、互いに平行であってよい。より典型的には、側壁は、壁角度を有する。
【0060】
リブ230は、幅「W」によって画定することができる。多くの場合、リブ230は、微細構造化基材の第1の表面に平行な幅と、微細構造化基材の第1の表面に直交する高さとを有する。ランド領域「L」を除いて、リブ230は、典型的には、チャネル201と名目上同じ高さを有する。典型的な実施形態では、チャネル201及び/又はリブ230の高さ「H」は、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100マイクロメートルである。いくつかの実施形態では、高さは、500、475、450、425、400、375、350、325、300、275、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100マイクロメートル以下である。いくつかの実施形態では、チャネル201及び/又はリブ230の高さは、50~500マイクロメートルの範囲である。微細構造化基材は、典型的には、名目上同じ高さ及び幅を有する複数のリブ230を備える。いくつかの実施形態では、リブ230は、高さ「H」、その最も広い部分における最大幅「W」、及び少なくとも1.5のアスペクト比H/Wを有する。いくつかの実施形態では、H/Wは、少なくとも1.75、2.0、2.25、2.5、2.75、3.0、3.5、4.0、4.5又は5.0である。他の実施形態では、リブのアスペクト比は、少なくとも6、7、8、9、又は10である。他の実施形態では、リブのアスペクト比は、少なくとも15、20、25、30、35、40、45、又は50である。
【0061】
チャネル201は、底面205と頂面221との間の距離によって画定される高さ「H」を有し、そのような頂面及び底面は、典型的には、ベース層213の頂面202に平行である。チャネル201は、最大幅「W」を有し、微細構造化表面202に沿ってピッチ「P」だけ離隔している。基部(すなわち、底面205に隣接している)におけるチャネルの幅「W」は、典型的には、頂面221に隣接しているチャネルの幅と名目上同じである。しかしながら、基部におけるチャネルの幅が、頂面に隣接している幅と異なる場合、幅は最大幅によって定義される。複数のチャネルの最大幅は、第1の開放容積を計算するための領域などの対象領域において平均することができる。微細構造化基材は、名目上同じ高さ及び幅を有する複数のチャネルを備え得る。典型的な実施形態では、チャネルは一般に、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1マイクロメートル以下の幅を有する。いくつかの実施形態では、チャネルは、一般に、900、800、700、600、又は500マイクロメートル以下の幅を有する。いくつかの実施形態では、チャネルは、少なくとも50、60、70、80、90、又は100マイクロメートルの幅を有する。
【0062】
いくつかの実施形態では、壁角度θは、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100度より大きい。いくつかの実施形態では、壁角度は、110、109、108、107、106、105、104、103、102、101、100、99、98、97、96、又は95度以下である。いくつかの実施形態では、壁角度は90度に近づく。壁角度が90度である場合、チャネル201と頂面221との間の角度も90度である。壁角度に応じて、リブは、長方形又は台形の断面を有することができる。いくつかの実施形態では、側壁は、第1及び第2の側壁を含むものとして記載することができ、第1の側壁は、微細構造化基材の底面に対して0度~+10度又は0度~-10度の微細構造化基材の第1の表面に平行な線との壁角度を有する。
【0063】
いくつかの実施形態では、リブ230は、少なくとも10マイクロメートルのピッチ「P」を有する。ピッチは、
図4Aに描かれているように、第1のリブの始まりと第2のリブの始まりとの間の距離である。ピッチは、少なくとも15、20、25、30、35、40、45、又は50、60、又は70マイクロメートルであり得る。ピッチは、一般に1mm以下である。ピッチは、典型的には、900、800、700、600、又は500マイクロメートル以下である。いくつかの実施形態では、ピッチは、典型的には、550、500、450、400、350、300、250、又は200マイクロメートル以下である。いくつかの実施形態では、ピッチは、175、150、100マイクロメートル以下である。典型的な実施形態では、リブは、均一に離隔され、単一ピッチを有する。代替的に、リブは、隣接するリブ間のピッチが同じでないように離隔され得る。この後者の実施形態では、少なくとも一部、典型的には大部分(全リブの少なくとも50、60、70、80、90%、又はそれ以上)が、上記のピッチを有する。チャネルのピッチは、リブについて記載したのと同じ範囲内である。必要に応じて、チャネルは、10~200マイクロメートルの平均ピッチを有する。リブのピッチ及び高さは、コーティングによるリブのコーティングを容易にするために重要であり得る。リブの間隔が近すぎると、側壁を均一にコーティングすることが難しくなる可能性がある。リブの間隔が離れすぎていると、コーティングは、その意図された機能を提供するのに効果的ではない可能性がある。
【0064】
図4Aのルーバー構造の変形例が
図4Bに描かれており、場合によっては、各リブ230の頂面221は、側壁233、234上に配置されたキャップ235の頂部であり、キャップ235は、両側の側壁233と234との間の幅(「WW」)よりも大きい幅(「CW」)を有する。理論に束縛されることを望むものではないが、リブ上のキャップの存在(例えば、アンダーカット特徴部(undercut features))は、粒子がデバイスに沈降すると、チャネルに粒子を保持することを支援し得ると考えられる。
【0065】
ルーバー構造は、任意の好適な方法によって調製することができる。一実施形態では、構造、例えば、
図4Aに示した微細構造化基材210は、(a)重合性組成物を調製する工程と、(b)マスターのネガ微細構造化成形面(例えば、ツール)上に、マスターのキャビティを充填するのにかろうじて十分な量で、重合性組成物を堆積させる工程と、(c)少なくとも一方が可撓性である、(例えば、予備成形されたフィルム)ベース層とマスターとの間に重合性組成物のビーズを移動させることによってキャビティを充填する工程と、(d)当該組成物を硬化させる工程と、を含む方法によって調製することができる。堆積温度は、周囲温度~約180°F(82℃)の範囲であってよい。マスターは、ニッケル、クロム-若しくはニッケル-メッキされた銅又は黄銅などの金属であってよく、又は重合条件下で安定であり、かつ重合した材料をマスターからきれいに除去することができる表面エネルギーを有する熱可塑性材料であってもよい。ベース層が、予備成形されたフィルムである場合、フィルムの表面のうちの1つ以上は、微細構造の有機材料との接着を促進するために、必要に応じてプライマー処理されてよく、又は他の方法で処理されてもよい。
【0066】
一実施形態では、構造、例えば、リブ上にキャップを有する
図4Bに示した微細構造化基材210は、アンダーカット特徴部を作製するための既知の方法によって(例えば、多数の部品で作製された金型を成形後に部分的に分解することによって、キャビティの各々を開き、その特徴部を容易に除去可能とすること、又は、最初にアンダーカットのない直線状リブを成形し、次いで、離型後の別個の造形工程においてそれらのステムにキャップを形成することによって)調製することができる。あるいは、このような微細構造化基材は、PCT国際公開第2015/041844号(Ruleら)の開示に従って作製してもよく、この場合、ポリオレフィン樹脂を金型キャビティに堆積させて、一体型バッキング上にあってかつ一体型バッキングから延びている複数のアンダーカット特徴部を含む第1の層を形成し、少なくとも1分当たり150ミリメートルの速度(mm/分)で金型キャビティから第1の層を離型させる。
【0067】
重合性樹脂は、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートオリゴマー、及びこれらの混合物から選択される第1及び第2の重合性成分の組み合わせを含むことができる。本明細書で使用される場合、「モノマー」又は「オリゴマー」は、ポリマーに変換できる任意の物質である。「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート及びメタクリレートの両化合物を指す。場合によっては、重合性組成物は、(メタ)アクリル化ウレタンオリゴマー、(メタ)アクリル化エポキシオリゴマー、(メタ)アクリル化ポリエステルオリゴマー、(メタ)アクリル化フェノールオリゴマー、(メタ)アクリル化アクリルオリゴマー、及びこれらの混合物を含むことができる。
【0068】
重合性樹脂は、UV硬化性樹脂などの放射線硬化性ポリマー樹脂であってよい。場合によっては、本開示の微細構造化基材に有用な重合性樹脂組成物としては、米国特許第8,012,567号(Gaidesら)に記載されているような重合性樹脂組成物を挙げることができる。
【0069】
ベース層の化学組成及び厚さは、微細構造化基材の最終用途に依存し得る。典型的な実施形態では、ベース層の厚さは、少なくとも約0.025ミリメートル(mm)であってよく、約0.05mm~約0.25mmであってもよい。有用なベース層材料としては、例えば、スチレン-アクリロニトリル、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンナフタレート、ナフタレンジカルボン酸に基づくコポリマー又はブレンド、ポリオレフィン系材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリシクロオレフィンのキャストフィルム又は延伸フィルム、ポリイミド、並びにガラスが挙げられる。必要に応じて、ベース層は、これらの材料の混合物又は組み合わせを含有することができる。いくつかの実施形態では、ベース層は、多層であってもよく、又は連続相中に懸濁若しくは分散された分散成分を含有してもよい。
【0070】
ベース層材料の例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリカーボネート(PC)が挙げられる。有用なPETフィルムの例としては、DuPont Films(Wilmington,Del.)から商品名「Melinex 618」で入手可能なフォトグレードポリエチレンテレフタレートが挙げられる。光学グレードのポリカーボネートフィルムの例としては、GE Polymershapes(Seattle,WA)から入手可能なLEXANポリカーボネートフィルム8010、及びTeijin Kasei(Alpharetta,GA)から入手可能なPanlite 1151が挙げられる。
【0071】
あるいは、微細構造化基材210は、溶融押出、すなわち、マスターネガ微細構造化成形面(例えば、ツール)上に流体樹脂組成物をキャスティングし、組成物を固化させることによって、調製することができる。この実施形態では、リブ230は、ベース層213に連続層で相互接続される。個々のリブ及びそれらの間の接続部は、一般に、同じ熱可塑性材料を含む。ランド層の厚さ(すなわち、複製された微細構造から生じる部分を除いた厚さ)は、典型的には0.001~0.100インチ、好ましくは0.003~0.010インチである。溶融押出に好適な樹脂組成物は、寸法安定性、耐久性、耐候性があり、所望の形状に容易に成形可能な透明材料である。好適な材料の例としては、アクリル、例えば、Rohm and Haas Company(Philadelphia,PA)によって製造されているPlexiglasブランドの樹脂;ポリカーボネート;反応性材料、例えば、熱硬化性アクリレート及びエポキシアクリレート;ポリエチレン系イオノマー、例えば、Dow Chemical(Midland,MI)E.I.Dupont de Nemours and Co.,Inc.によってSURLYNのブランド名で販売されているもの;(ポリ)エチレン-co-アクリル酸;ポリエステル;ポリウレタン;及び酢酸酪酸セルロースが挙げられる。
【0072】
更に別の実施形態では、マスターネガ微細構造化成形面(例えば、ツール)は、米国特許第4,601,861号(Pricone)に記載されているエンボス加工ツールとして用いることができる。
【0073】
そのようなルーバー構造を有する微細構造化基材及びそれらを形成する方法に関する更なる詳細は、国際公開第2019/118685号(Schmidtら)及び国際公開第2020/026139号(Schmidtら)に記載されており、各々参照により本明細書に組み込まれる。
【0074】
プリズム構造
図5Aは、規則的なプリズム320の線状アレイを備える代替の微細構造化基材309を示している。各プリズムは、第1のファセット321及び第2のファセット322を有する。プリズムは、典型的には、プリズムが形成される第1の平面331と、実質的に平坦又は平面であり、第1の表面の反対側にある第2の表面332とを有する、(例えば、予備成形ポリマーフィルム)ベース部材310上に形成されている。いくつかの実施形態では、プリズムは直角柱である。直角柱とは、頂角θ、340が、典型的には約90°であることを意味する。しかしながら、この角度は5°から90°の範囲であってよく、20°から80°の範囲であってもよい。選択された実施形態では、微細構造は、90度以下の頂角を有する線状プリズムを備える。いくつかの実施形態では、特にピーク構造のファセットがピーク構造間の谷で相互接続される場合、ピーク構造の頂角は、典型的には壁角度の2倍である。したがって、頂角は、典型的には、5度より大きく、より典型的には、少なくとも25、30、35、40、45、50、55、又は60度である。ピーク構造の頂角は、典型的には、90度未満であり、より典型的には、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、又は35度未満である。必要に応じて、隣接するピーク構造320の間に、例えば、第1の平面331においてギャップがある、又はそれに平行にギャップがある。
【0075】
これらの頂上部分(apex)は、(図示したように)尖っていても、丸みを帯びていても、又は先端が切り取られた形状であってもよい。場合によっては、頂上部分が尖っていたり又は丸みを帯びている形状の方が、頂上部分が切り取られた(例えば、平坦な)形状よりも、形状の上に粒子が沈降する可能性が低いため、尖っていたり又は丸みを帯びている頂上部分を使用することが有利である。好ましくは、プリズム先端の半径は、粒子(例えば、赤血球)の半径よりも小さい。(例えば、プリズム)ピーク間の間隔は、ピッチ(「P」)として特徴付けられ得る。この実施形態では、ピッチはまた、谷の最大幅にも等しい。したがって、ピッチは、上記したように、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10ミクロンより大きく、最大500ミクロンの範囲である。プリズム微細構造の長さ(「L」)は、典型的には最大寸法であり、微細構造化された表面、フィルム、又は物品の寸法全体にわたることができる。プリズムファセットは同一である必要はなく、プリズムは互いに対して傾斜していてもよい。隣接しているピーク構造のファセットは、典型的には、谷の底部で、すなわち、平面ベース層に近接して接続される。ピーク構造のファセットは、同じ方向に連続面を形成する。例えば、
図5Aでは、プリズムピーク構造のファセット321及び322は、微細構造の長さ(L)の方向、すなわちy方向に連続している。
【0076】
必要に応じて、連続ランド層360は、チャネル又は谷の底部と(例えば、平坦な)ベース部材310の頂面331との間に存在することができる。いくつかの実施形態では、例えば、微細構造化表面が、重合性樹脂組成物のキャスティング及び硬化から調製される場合、ランド層の厚さは、典型的には、少なくとも0.5、1、2、3、4、又は5マイクロメートルから最大50マイクロメートルの範囲である。いくつかの実施形態では、ランド層の厚さは、45、40、35、30、25、20、15、又は10ミクロン以下である。
【0077】
図5Bを参照すると、プリズム微細構造を有する実施例8の例示的なデバイスの一部に関する断面のSEM画像が提供されている。微細構造化基材325の第1の表面302は、少なくとも1つの側壁部340と共に、各微細構造320の底部336から頂部327までの複数の微細構造320の間に位置した開放空間の合計である第1の開放容積370を画定する。(簡略化のために、370の矢印は、2つの隣接する微細構造320の間の第1の開放容積の一部を指すだけである)。カバー352は、微細構造化基材325の第1の表面302の頂部327及び少なくとも1つの側壁部340と共に、第1の開放容積370に隣接して位置した第2の開放容積380を画定し、第1の開放容積と第2の開放容積とを合わせた合計を100%開放容積とすると、第1の開放容積は、その100%開放容積のうち、血液中に存在する赤血球の体積パーセントよりも大きなパーセントを有する。
【0078】
選択された実施形態では、微細構造は、ピーク構造と、隣接している谷とのアレイを備え、谷は、10ミクロン~500ミクロンの範囲の最大幅を有し、ピーク構造は、5度超~最大90度の頂角を有する。
【0079】
微細構造化基材の第1の表面にわたって延びている、ピーク構造と、隣接している谷との線状アレイの配向は、特に限定されず、それらは、デバイスの流れ方向に対して0~90度の角度で配向され得る。より具体的には、ピーク構造と、隣接している谷とは、0度以上、5度、10度、15度、20度、25度、30度、35度、40度、45度、50度、55度、60度、65度、70度、又は75度以上、かつ90度、85度、80度、75度、70度、65度、60度、55度、50度、45度、40度、35度、30度、25度、20度、又は15度以下の角度で配向され得る。例えば、
図5Bのデバイス300では、ピーク構造320及び谷301は、デバイス300の流れ方向(例えば、流れと同じ方向)に対して0度の角度で配向されている。
図5Cの微細構造化基材325上では、ピーク構造322及び谷301は、微細構造化基材325を含むデバイスの流れ方向(「F」)に対して90度の角度(例えば、直角)で配向されている。
図5Dの微細構造化基材325上では、ピーク構造320及び谷301は、微細構造化基材325を含むデバイスの流れ方向(「F」)に対して45度の角度で配向されている。0度より大きい(及び、例えば、最大90度の)配向を選択することによって、粒子は、デバイスへの流体の流れの方向において2つ以上の微細構造と接触する機会がより多くなり、潜在的に微細構造内に捕捉される可能性がより高くなる。
【0080】
そのようなピーク構造アレイを有する微細構造化基材及びそれらを形成する方法に関する更なる詳細は、米国特許出願公開第2021/0187819号(Connellら)に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0081】
ファセット構造
プリズム構造と同様に、
図5Eは、ファセット構造を有する代替の微細構造化基材700を示している。より具体的には、
図5Eは、底面705と、頂面720と、第1の側壁732と、ファセット733とを画定している微細構造化基材700を示している。別の言い方をすれば、微細構造は、ファセット733と、微細構造のリッジ720においてファセット733と交わる側壁732とを備える。ファセット733及び側壁732は、典型的には、それらの間に斜角を画定する。
【0082】
選択された実施形態では、微細構造は、ファセットと、微細構造のリッジにおいてファセットと交わる側壁とを備え、ファセット及び側壁は、それらの間に斜角を画定する。
【0083】
そのようなファセット構造を有する微細構造化基材及びそれらを形成する方法に関する更なる詳細は、国際公開第2020/250180号(Kenneyら)に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0084】
突起アレイ構造
図6Aは、突起アレイ構造を有する別の代替の微細構造化基材400を示している。より具体的には、
図6Aは、第1の表面420にわたって配列された突起410の2次元(x軸及びy軸)アレイを有する微細構造化基材400の概略側面図である。突起410の各々は、基部412と、頂部414と、頂部を基部に接続する1つ以上の側部416、418とを備える。必要に応じて、突起410の各々は、離隔されたポストである。例えば、
図6Bは、右下の画像を除く全てに存在する離隔されたポスト410を含む、突起の2次元アレイのための4つの代表的な工学的マイクロパターン化領域の頂面図である。いくつかの微細構造化表面は、一定の高さ及び可変幅を有する突起のアレイなど、ある範囲のアスペクト比値を有する突起を備え得る。このような場合、表面は、通常は、最大アスペクト比値によって特徴付けられる。
【0085】
選択された実施形態では、微細構造は、微細構造化基材の第1の表面にわたって配列された突起の2次元(x軸及びy軸)アレイを備え、突起の各々は、基部、頂部、及び頂部を基部に接続する1つ以上の側部を備える。
【0086】
そのような突起アレイを有する微細構造化基材及びそれらを形成する方法に関する更なる詳細は、国際公開第2020/097319号(Wolkら)に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0087】
キャビティアレイ構造
図7Aは、キャビティアレイ構造を有する更なる代替の微細構造化基材500aを示している。「キャビティアレイ」は、少なくとも約100/cm
2、好ましくは少なくとも約10/mm
2の離散キャビティの密度を有するキャビティのアレイである。キャビティは、例えば、約5~250マイクロメートルの範囲の直径、及び約2~250マイクロメートルの範囲の深さを有する開口部などの寸法を有する三次元構造を有する。アレイは最密充填アレイ又は矩形アレイなどの任意の規則的なアレイであってよく、又はキャビティはランダムに分布していてもよい。より具体的には、
図7Aは、第1の主表面514と第2の主表面516との間に延びている複数のキャビティ522を有する微細構造化基材500aの概略断面図である。微細構造化基材500aは、第1の主表面514及び第2の主表面516を有する微細構造化層510を備え、当該微細構造は、第1の主表面514と第2の主表面516との間に延びている複数のキャビティ522を備える。各キャビティは、第1の開口部524と、第2の開口部528と、第1の開口部524と第2の開口部528との間に延びている少なくとも1つの側壁526とを備える。側壁(複数可)526の各々は、微細構造化層510の第1の主表面514に直角な線515と側壁角度θを形成する。キャビティ522の各々は、第1のアパーチャ524と第2のアパーチャ528との間の垂直距離である深さ「D」を更に含む。必要に応じて、微細構造化基材500aは、接着剤層540、第1の基材530、又は第2の基材層550のいずれかを更に含む。
【0088】
図7Bは、2つの主表面の間に延びている複数のキャビティ522を有する微細構造化基材500bの一般化された概略頂面分解斜視図(schematic top perspective exploded view)である。微細構造化基材500bは、第1の主表面514と、反対側の第2の主表面516とを有する微細構造化層510を含む。第1の主表面514は、離散キャビティ522のアレイを含む。特定の一実施形態では、キャビティ522の各々は、円形、楕円形、又は多角形であり得る第1の主表面514に平行な断面を含む。断面は、必要に応じて、第1の主表面514から第2の主表面516の方向にサイズが減少する。微細構造化基材500bのこの実施形態は、微細構造化層510の第2の主表面516に結合された(例えば、可撓性)基材530を更に含む。
【0089】
選択された実施形態では、微細構造化基材は、第1及び第2の主表面を有する微細構造化層を備え、当該微細構造は、第1及び第2の主表面間に延びている複数のキャビティを備え、各キャビティは、第1の開口部、第2の開口部、及び第1の開口部と第2の開口部との間に延びている少なくとも1つの側壁を備える。
【0090】
そのようなキャビティアレイを有する微細構造化基材及びそれらを形成する方法に関する更なる詳細は、米国特許第9,329,311号(Halversonら)に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0091】
接続されたウェル構造
図10A~
図10Bは、なお更なる代替の微細構造化基材1025を示しており、当該微細構造は、流体接続されたウェルのアレイを備え、ウェルの少なくともいくつかは、少なくとも2つの隣接しているウェルに流体接続され、各々はベントを介して接続されている。例えば、
図10Aは、ベント1087によって互いに接続された流体接続ウェル1077のアレイを有する微細構造化基材1025の一部の概略斜視図である。
【0092】
図10Bは、ベント1087によって、隣接しているウェル1077に接続された円形形状を有する流体接続されたウェル1077のアレイを有する、
図10Aの微細構造化基材1025の一部の概略頂面図である。
図10A~
図10Bに示した特定の構造では、微細構造化基材1025の中心のウェル1077(例えば、それと、微細構造化基材の周囲との間に位置する少なくとも1つの他のウェルを有する)は、各々、4つの他のウェル1077に接続されており、各接続はベント1087を介している。周囲1095に隣接して位置するウェル1077も存在し、これらは、ベント1087を介して1つ又は2つの隣接しているウェル1077に接続されている。例えば、
図10Aを参照すると、ウェル1077cは、アレイの角にあり、ベント1087aを介して1つの他のウェル1077dだけに取り付けられている。同様に、ウェルは、ベントを介して3つの他の隣接しているウェルに、ベントを介して他の4、5、6、7、8、9、10、11、又は12の他の隣接しているウェルに取り付けることもできる。
【0093】
ウェルの形状としては、特に限定されず、曲線形状、多角形形状、不規則形状、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。いくつかの実施形態では、ウェルは、円形、三角形、四辺形、楕円形、又はこれらの組み合わせである。ウェルが角を有する形状を含む場合、ベントは、必要に応じて、(例えば、角に気泡を捕捉する可能性を減少させるために)角に位置する。
【0094】
典型的には、各ウェルは、少なくとも1つの沈降粒子(例えば、赤血球)を保持するのに十分に大きい開放容積、例えば、100フェムトリットル以上、250フェムトリットル、500フェムトリットル、750フェムトリットル、1ピコリットル、100ピコリットル、250ピコリットル、500ピコリットル、750ピコリットル、1ナノリットル、100ナノリットル、200ナノリットル、300ナノリットル、400ナノリットル、500ナノリットル、600ナノリットル、700ナノリットル、800ナノリットル、又は900ナノリットル以上、かつ1マイクロリットル以下、900ナノリットル、800ナノリットル、700ナノリットル、600ナノリットル、500ナノリットル、400ナノリットル、300ナノリットル、200ナノリットル、100ナノリットル、1ナノリットル、750ピコリットル、500ピコリットル、250ピコリットル、1ピコリットル、750フェムトリットル、又は500フェムトリットル以下の開放容積を有する。別の言い方をすると、場合によっては、各ウェルは、100フェムトリットル~1マイクロリットル又は500フェムトリットル~0.1マイクロリットルの範囲の開放容積を有する。
【0095】
各ウェルのいくつかの典型的な寸法としては、50マイクロリットル以上、75マイクロリットル、100マイクロリットル、125マイクロリットル、150マイクロリットル、175マイクロリットル、200マイクロリットル、225マイクロリットル、250マイクロリットル、275マイクロリットル、300マイクロリットル、325マイクロリットル、又は350マイクロリットル以上、かつ500マイクロリットル以下、475マイクロリットル、450マイクロリットル、425マイクロリットル、400マイクロリットル、375マイクロリットル、350マイクロリットル、325マイクロリットル、300マイクロリットル、275マイクロリットル、250マイクロリットル、225マイクロリットル、200マイクロリットル、175マイクロリットル、又は150マイクロリットル以下の深さ(すなわち、
図10Aに示したように、微細構造化基材2025の頂面1027とウェルの底面1029との間の距離)が挙げられる。この同じ範囲の距離は、ウェルの直径にも適用可能である。直径は、形状の中心点を通過する最長線である。
【0096】
好ましくは、ウェル間のベントの少なくともいくつかは、隣接しているウェルの底面と同じ深さに位置する。これにより、気泡がウェルの底部付近に捕捉されることなく、ウェルから出ることを促すのに役立つ。いくつかの実施形態では、ベントは、隣接しているウェルの全深さに等しい全深さを有するが、これは必須ではない。微細構造化基材がツールを使用して形成される場合、隣接しているウェルと同じ深さを有するベントを作製することは、2つのウェルの下部のみを接続するベントを作製することよりも実用的な傾向がある。
【0097】
再び
図10Aを参照すると、いくつかの実施形態では、微細構造化基材1025は、微細構造化基材1025の第1の表面1027の周囲1095に沿って配置された少なくとも1つの側壁部1097を更に含む。1つ以上の側壁部1087は、複数の微細構造の頂面を50~250マイクロメートルだけ超えて延びている高さ(「H」)を有する。
【0098】
接続されたウェル構造は、パターン化されたツールを作り出すために、米国特許第8,605,256号(DeVoeら)に記載されているような多光子露光システムを使用して作製することができる。次いで、そのような構造化ポリマーツールは、典型的には、ニッケルでめっきされて、金属化ツールが作り出される。次に、ニッケルめっきツールを使用して、Carver Press(Carver,Wabash,IN)などのプレス及び樹脂(例えば、ポリプロピレン樹脂を使用して、印象成形試料を作製する。プレスプラテンを加熱し(例えば、170℃まで)、次いで、ツール及び樹脂を、数分間(例えば、5~10分間)、高力(例えば、1000ポンドフォース(force pound))で一緒にプレスする。冷却後(例えば、プラテン温度が80℃に達するまで)、圧力を解放し、成形された試料を取り出すことができる。そのような方法を用いることにより、微細構造化フィルムの形態で微細構造化基材を提供することができる。
【0099】
そのような接続されたウェルを有する微細構造化基材及びそれらを形成する方法に関する更なる詳細は、共同所有の特許出願第63/425,473号(整理番号PA100766US01)に記載されている。
【0100】
ステムウェブ構造
図11は、ステムウェブ構造を有する更なる代替の微細構造化基材1120を示している。そのような実施形態では、微細構造1126は、微細構造化基材1120の第1の表面1124にわたって延びている直立ステム1126のアレイを備える。微細構造1126は、様々な形状の略直立ステムである。「略直立」とは、ステムが、第1の表面1124から(例えば、平面方向に)突出していることを意味している。ステム1126は、略法線角度で表面1124から上向きに突出していてもよく、又はステム1126は、表面1124から離れる角度で突出していてもよい。ステムはまた、いずれか1つの均一な角度で突出しないように不規則な形状であってもよい。
【0101】
微細構造化基材1120は、略直立ステム1126のアレイを含む第1の表面1124を有するバッキング層1121を含む。ステム1126は、規則的又は不規則なアレイで配列してもよい。六角形、対角線(diagonal)、正弦波などの様々なパターンのステムが使用され得る。ステム1126は、少なくとも部分的にエラストマー材料で構成され得る。場合によっては、ステム1126の外面全体は、エラストマー材料である。
図11の実施形態では、バッキング層1121は、ステム1126と一体的に形成される。バッキング層1121とステム1126との組み合わせは、ステムウェブと呼ばれることもある。図示された実施形態は、ステム1126を略円筒形として示しているが、ステム1126の側面は、典型的には、金型からの取り外しを容易にするためにわずかなテーパ1135を有する。示したように、テーパ1135は、ステム1126の基部1102から先端1104に向かって内向きである。ステムは、ステムの基部から先端まで外向きのテーパを有するように構成してもよいことが明確に企図される。円錐台又は角錐台、長方形、半球、正方形、六角形、八角形、ガムドロップなどの様々な非円筒形状も利用することができる。
【0102】
ステム1126が直接延びているバッキング層1121は、典型的には、約0.05ミリメートル~約0.5ミリメートル(0.002インチ~0.02インチ)の厚さである。したがって、追加のバッキング層(複数可)1122を、必要に応じて第2の表面1125に適用して、バッキング層1121を補強し、多層ベース又はバッキング構造を形成させる。本明細書で使用される場合、「バッキング」又は「ベース」層は、集合的なバッキング又はベース構造を指すために使用される。そのような構造は、略直立ステム1126を支持する1つ以上の層を有する単層又は多層(
図1に示した)であってもよいが、典型的には、これらの層1121のうちの多くても1つがステム1126と一体的に形成される。
【0103】
ステムは、典型的には、約0.2mm~約3mm、好ましくは約0.2mm~約1.5mmの範囲の高さ1128を有する。隣接しているステム1126間の分離又はギャップ1130は、概して、約0.25mm~約2.5mmの範囲であり、より典型的には、約0.4mm~約1.0mmの範囲である。この分離ギャップは、ステムによって占有されていないステムウェブ内の容積である自由容積のパーセントを作り出す。自由容積のパーセントは、典型的にはステムウェブの60~98%であり、より典型的には85~95%である。ステム1126は、約0.076mm~約0.76mmの最大断面寸法1129を有する。ステム1126は、1平方センチメートル当たり少なくとも15.5(1平方インチ当たり100)の密度、より典型的には、1平方センチメートル当たり少なくとも50の密度でバッキング上に配列される。ステム密度は、概して、多くとも約1500/平方センチメートル、より典型的には多くとも約500/平方センチメートルである。ステムは、少なくとも1.25、好ましくは少なくとも1.5、最も好ましくは少なくとも2.0のアスペクト比を有する。アスペクト比は、ステムの高さと最大断面寸法との比を指す。円形断面を有するステムの場合、最大断面寸法は、ステムの直径である。
【0104】
好適なエラストマーステム材料としては、エラストマーのクラス、例えば、アニオン性トリブロックコポリマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ハロゲン含有ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、動的加硫エラストマー-熱可塑性ブレンド系熱可塑性エラストマー、熱可塑性ポリエーテルエステル又はポリエステル系エラストマー、ポリアミド又はポリイミド系熱可塑性エラストマー、アイオノマー熱可塑性エラストマー、熱可塑性エラストマー相互貫入ポリマーネットワーク中の水素化ブロックコポリマー、カルボカチオン重合による熱可塑性エラストマー、スチレン/水素化ブタジエンブロックコポリマーを含有するポリマーブレンド、及びポリアクリレート系熱可塑性エラストマーが挙げられる。エラストマーのいくつかの具体例は、天然ゴム、ブチルゴム、EPDMゴム、シリコーンゴム、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリウレタン、エチレン/プロピレン/ジエンターポリマーエラストマー、クロロプレンゴム、スチレン-ブタジエンコポリマー(ランダム又はブロック)、スチレン-イソプレンコポリマー(ランダム又はブロック)、アクリロニトリル-ブタジエンコポリマー、これらの混合物及びこれらのコポリマーである。ブロックコポリマーは、線状、放射状又は星形の構成であってもよく、ジブロック(AB)若しくはトリブロック(ABA)コポリマー又はこれらの混合物であってもよい。これらのエラストマーの互いのブレンド又は修飾非エラストマーとのブレンドも企図される。市販のエラストマーとしては、テキサス州ヒューストンにあるKRATON Polymers CompanyからKRATON(商標)の名称で入手可能なブロックポリマー(例えば、エラストマーセグメントを含むポリスチレン材料)が挙げられる。
【0105】
上記したエラストマー樹脂材料には、例えば、可塑剤、粘着付与剤、充填剤、酸化防止剤、UV吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、染料又は顔料、不透明化剤などを含む多くの慣用の添加剤のいずれかもまた添加してもよい。
【0106】
好適なバッキング層材料としては、熱可塑性ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリスチレン、ナイロン、アセタール、ブロックポリマー(例えば、テキサス州ヒューストンにあるKRATON Polymers CompanyからKRATON(商標)の名称で入手可能なエラストマーセグメントを含むポリスチレン材料、ポリカーボネート、熱可塑性エラストマー(例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、又はナイロンタイプ)、並びにこれらのコポリマー及びブレンドが挙げられる。場合によっては、ステムウェブ全体が、1つ以上の熱可塑性材料、例えば、上に列挙したものから形成される。熱可塑性材料はまた、充填剤、繊維、帯電防止剤、潤滑剤、湿潤剤、発泡剤、界面活性剤、顔料、染料、カップリング剤、可塑剤、懸濁化剤、親水性/疎水性添加剤、接着剤などを含むがこれらに限定されない添加剤も含有し得る。
【0107】
そのようなステムウェブを有する微細構造化基材及びこれらを形成する方法に関する更なる詳細は、国際公開第2009/020811号(Tumanら)に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0108】
第3の態様では、本開示は、流体から固体粒子を分離する方法を提供する。当該方法は、
a)
1)微細構造化基材の第1の表面にわたって延びている複数の微細構造を備える微細構造化基材であって、複数の微細構造の外面の少なくとも一部は、毛細管作用を可能にするように構成されている、微細構造化基材と、
2)当該微細構造化基材の当該第1の表面の頂部から選択された距離だけ離れて配置されたカバーと、
3)当該微細構造化基材の当該第1の表面の周囲に沿って当該微細構造化基材の当該第1の表面に当該カバーを取り付ける少なくとも1つの側壁部と、
4)当該微細構造化基材又は当該カバーのうちの少なくとも1つによって画定された第1のアパーチャと、
5)当該微細構造化基材又は当該カバーのうちの少なくとも1つによって画定された第2のアパーチャと、を備え、
当該微細構造化基材の当該第1の表面は、当該少なくとも1つの側壁部と共に、各微細構造の底部から頂部までの複数の微細構造の間に位置した開放空間の合計である第1の開放容積を画定し、当該カバーは、当該微細構造化基材の当該第1の表面の頂部及び当該少なくとも1つの側壁部と共に、当該第1の開放容積に隣接して位置した第2の開放容積を画定し、当該第1の開放容積と当該第2の開放容積とを合わせた合計を100%開放容積とすると、当該第1の開放容積は、当該100%の開放容積のうち、流体中に存在する粒子の体積パーセントよりも大きなパーセントを有する、デバイスを得ることと、
b)毛細管作用によって当該第1のアパーチャを通して、ある体積の流体で当該デバイスを充填することと、
c)当該粒子の少なくとも一部が当該複数の微細構造の当該第1の開放容積内に沈降するのに十分な時間待機することと、
d)圧力を当該デバイスに印加し、それによって、当該複数の微細構造の当該第1の開放容積内に当該粒子の少なくとも一部が保持された流体の少なくとも10%を、当該第1のアパーチャ又は当該第2のアパーチャのいずれかを通して当該デバイスから流出させることと、を含む。
【0109】
図9を参照すると、当該方法は、デバイス(デバイスは、上記で述べたとおりである)を得ること、910と、毛細管作用によって第1のアパーチャを通して、ある体積の流体で当該デバイスを充填すること、920と、粒子の少なくとも一部が複数の微細構造の第1の開放容積内に沈降するのに十分な時間待機すること、930と、圧力を当該デバイスに印加し、それによって、複数の微細構造の第1の開放容積内に粒子の少なくとも一部が保持された流体の初期体積の少なくとも10%を、第1のアパーチャ又は第2のアパーチャのいずれかを通して当該デバイスから流出させること、940と、を含む。第3の態様の方法のためのデバイスの特徴、材料、構造などは、第1及び第2の態様に関して上記で詳細に述べたデバイスの任意の実施形態によるものであり得る。同様に、第3の態様の方法は、上記で詳細に述べた第1の態様の方法の実施形態のいずれかによるものであり得る。
【0110】
例示的な実施形態
第1の実施形態では、本開示は、血液から赤血球を分離する方法を提供する。当該方法は、微細構造化基材の第1の表面にわたって延びている複数の微細構造を備える微細構造化基材であって、複数の微細構造の外面の少なくとも一部は、毛細管作用を可能にするように構成されている、微細構造化基材と、当該微細構造化基材の当該第1の表面の頂部から選択された距離だけ離れて配置されたカバーと、当該微細構造化基材の当該第1の表面の周囲に沿って当該微細構造化基材の当該第1の表面に当該カバーを取り付ける少なくとも1つの側壁部と、当該微細構造化基材又はカバーのうちの少なくとも1つによって画定された第1のアパーチャと、当該微細構造化基材又は当該カバーのうちの少なくとも1つによって画定された第2のアパーチャとを含むデバイスを得ることを含む。微細構造化基材の第1の表面は、少なくとも1つの側壁部と共に、各微細構造の底部から頂部までの複数の微細構造の間に位置した開放空間の合計である第1の開放容積を画定し、カバーは、微細構造化基材の第1の表面の頂部及び少なくとも1つの側壁部と共に、第1の開放容積に隣接して位置した第2の開放容積を画定し、第1の開放容積と第2の開放容積とを合わせた合計を100%開放容積とすると、第1の開放容積は、その100%の開放容積のうち、血液中に存在する赤血球の体積パーセントよりも大きなパーセントを有する。当該方法は、毛細管作用によって第1のアパーチャを通して、ある体積の血液でデバイスを充填することと、赤血球の少なくとも一部が複数の微細構造の第1の開放容積内に沈降するのに十分な時間待機することとを更に含む。加えて、当該方法は、圧力をデバイスに印加し、それによって、複数の微細構造の第1の開放容積内に赤血球の少なくとも一部が保持された血液の初期体積の少なくとも10%を、第1のアパーチャ又は第2のアパーチャのいずれかを通してデバイスから流出させることを含む。
【0111】
第2の実施形態では、本開示は、第1の実施形態による方法を提供し、少なくとも1つの側壁部は、微細構造化基材の一部である。
【0112】
第3の実施形態では、本開示は、第1の実施形態又は第2の実施形態による方法を提供し、血液の少なくとも15%、少なくとも20%、又は少なくとも30%が、圧力の印加時にデバイスから流出する。
【0113】
第4の実施形態では、本開示は、第1~第3の実施形態のいずれかによる方法を提供し、時間は、赤血球の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は少なくとも90%が複数の微細構造の第1の開放容積内に沈降するのに十分である。
【0114】
第5の実施形態では、本開示は、第1~第4の実施形態のいずれかによる方法を提供し、微細構造化基材は、微細構造化フィルムである。
【0115】
第6の実施形態では、本開示は、第1~第5の実施形態のいずれかによる方法を提供し、複数の微細構造の外面の少なくとも一部は、界面活性剤、表面処理剤、親水性ポリマー、凝集剤、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0116】
第7の実施形態では、本開示は、第1~第6の実施形態のいずれかによる方法を提供し、凝集剤は、親水性かつ非溶血性である。
【0117】
第8の実施形態では、本開示は、第6の実施形態又は第7の実施形態による方法を提供し、凝集剤は、ポリエチレンイミン、ポリリジン、ポリアミノアミド、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリジメチルアミン-エピクロロヒドリン-エチレンジアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、カチオン性ポリアクリルアミド(CPAM)、ポリアミノシロキサン、並びにポリアミンドアミン(PAMAM)及びポリプロピレンイミンから形成されるデンドリマーからなる群から選択される修飾又は非修飾アミノポリマーを含む。
【0118】
第9の実施形態では、本開示は、第6~第8の実施形態のいずれかによる方法を提供し、凝集剤は、修飾又は非修飾ポリエチレンイミンポリマーを含む。
【0119】
第10の実施形態では、本開示は、第6~第9の実施形態のいずれかによる方法を提供し、凝集剤の少なくとも一部は、ある体積の血液でデバイスを充填した後に、血液中に溶解、分散、又はこれらの組み合わせを示す。
【0120】
第11の実施形態では、本開示は、第10の実施形態による方法を提供し、凝集剤は、血液1ミリリットル当たり0.01~5000マイクログラムの量である体積の血液中に存在する。
【0121】
第12の実施形態では、本開示は、第1~第11の実施形態のいずれかによる方法を提供し、圧力は、陽圧である。
【0122】
第13の実施形態では、本開示は、第1~第12の実施形態のいずれかによる方法を提供し、圧力は、陰圧である。
【0123】
第14の実施形態では、本開示は、第1~第13の実施形態のいずれかによる方法を提供し、第1のアパーチャは、カバーによって画定されている。
【0124】
第15の実施形態では、本開示は、第1~第14の実施形態のいずれかによる方法を提供し、第2のアパーチャは、微細構造化基材又はカバーによって画定されている。
【0125】
第16の実施形態では、本開示は、第1~第15の実施形態のいずれかによる方法を提供し、血液は、希釈されていない。
【0126】
第17の実施形態では、本開示は、第1~第16の実施形態のいずれかによる方法を提供し、赤血球は、重力のみによって沈降する。
【0127】
第18の実施形態では、本開示は、第1~第17の実施形態のいずれかによる方法を提供し、デバイスは、カバーと微細構造化基材との間に配置された接着剤層を更に備える。
【0128】
第19の実施形態では、本開示は、第1~第18の実施形態のいずれかによる方法を提供し、微細構造は、微細構造化基材の第1の表面にわたって延びているチャネルと交互に配置された複数のリブを備え、当該リブの各々は、側壁及び頂面を備え、当該チャネルの各々は、底面を備える。
【0129】
第20の実施形態では、本開示は、第19の実施形態による方法を提供し、各リブの頂面は、側壁上に配置されたキャップの頂部であり、当該キャップは、両側の側壁間の幅よりも大きい幅を有する。
【0130】
第21の実施形態では、本開示は、第1~第18の実施形態のいずれかによる方法を提供し、微細構造は、ピーク構造と、隣接している谷とのアレイを備え、当該谷は、10マイクロメートル~500マイクロメートルの範囲の最大幅を有し、ピーク構造は、5度超~最大90度の頂角を有する。
【0131】
第22の実施形態では、本開示は、第21の実施形態による方法を提供し、微細構造化基材の第1の表面にわたって延びているピーク構造と、隣接している谷とのアレイは、デバイスの流れ方向に対して0~90度の角度で配向されている。
【0132】
第23の実施形態では、本開示は、第21の実施形態又は第22の実施形態による方法を提供し、隣接しているピーク構造の間にギャップを更に備える。
【0133】
第24の実施形態では、本開示は、第1~第18の実施形態のいずれかによる方法を提供し、微細構造は、微細構造化基材の第1の表面にわたって配列された突起の2次元(x軸及びy軸)アレイを備え、当該突起の各々は、基部と、頂部と、当該頂部を当該基部に接続している1つ以上の側部とを備える。
【0134】
第25の実施形態では、本開示は、第1~第18の実施形態のいずれかによる方法を提供し、微細構造化基材は、第1及び第2の主表面を有する微細構造化層を備え、微細構造は、第1及び第2の主表面の間に延びている複数のキャビティを備え、各キャビティは、第1の開口部と、第2の開口部と、当該第1の開口部と当該第2の開口部との間に延びている少なくとも1つの側壁とを備える。
【0135】
第26の実施形態では、本開示は、第1~第13の実施形態のいずれかによる方法を提供し、微細構造は、ファセットと、微細構造のリッジにおいてファセットと交わる側壁とを備え、当該ファセット及び当該側壁は、それらの間に斜角を画定している。
【0136】
第27の実施形態では、本開示は、第1~第18の実施形態のいずれかによる方法を提供し、微細構造は、流体接続されたウェルのアレイを備え、当該ウェルのうちの少なくともいくつかは、少なくとも2つの隣接しているウェルに流体接続され、各々は、ベントを介して接続されている。
【0137】
第28の実施形態では、本開示は、第1~第18の実施形態のいずれかによる方法を提供し、微細構造は、微細構造化基材の第1の表面にわたって延びている直立ステムのアレイを備える。
【0138】
第29の実施形態では、本開示は、第1~第28の実施形態のいずれかによる方法を提供し、第1のアパーチャを通して充填される血液の体積は、最大100マイクロリットルの血液である。
【0139】
第30の実施形態では、本開示は、第1~第29の実施形態のいずれかによる方法を提供し、第1の開放容積対第2の開放容積の比は、1:1より大きい。
【0140】
第31の実施形態では、本開示は、第1~第30の実施形態のいずれかによる方法を提供し、血液を、デバイスに入る前にフィルターに通すこと、複数の微細構造の第1の開放容積内に赤血球の少なくとも一部が保持された血液を、デバイスから出た後に通すこと、又はその両方を更に含む。
【0141】
第32の実施形態では、本開示は、第1~第31の実施形態のいずれかによる方法を提供し、デバイスを、ある体積の血液で充填する前に、ある体積の血液に凝集剤を添加することを更に含む。
【0142】
第33の実施形態では、本開示は、第32の実施形態による方法を提供し、凝集剤が、添加され、血液1mL当たり0.01~5000マイクログラムの量で存在する。
【0143】
第34の実施形態では、本開示は、デバイスを提供する。当該デバイスは、微細構造化基材の第1の表面にわたって延びている複数の微細構造を備える微細構造化基材を含む。微細構造は、微細構造化基材の第1の表面の少なくとも90%を覆い、複数の微細構造の外面の少なくとも一部は、毛細管作用を可能にするように構成される。デバイスはまた、微細構造化基材の第1の表面の頂部から選択された距離だけ離れて配置されたカバーと、微細構造化基材の第1の表面の周囲に沿って微細構造化基材の第1の表面にカバーを取り付ける少なくとも1つの側壁部とを含む。更に、デバイスは、微細構造化基材又はカバーのうちの少なくとも1つによって画定された第1のアパーチャと、微細構造化基材又はカバーのうちの少なくとも1つによって画定された第2のアパーチャとを含む。微細構造化基材の第1の表面は、少なくとも1つの側壁部と共に、各微細構造の底部から頂部までの複数の微細構造の間に位置した開放空間の合計である第1の開放容積を画定し、カバーは、微細構造化基材の第1の表面の頂部及び少なくとも1つの側壁部と共に、第1の開放容積に隣接して位置した第2の開放容積を画定する。
【0144】
第35の実施形態では、本開示は、流体から固体粒子を分離する方法を提供する。当該方法は、微細構造化基材の第1の表面にわたって延びている複数の微細構造を備える微細構造化基材を含むデバイスを得ることを含む。複数の微細構造の外面の少なくとも一部は、毛細管作用を可能にするように構成される。デバイスはまた、微細構造化基材の第1の表面の頂部から選択された距離だけ離れて配置されたカバーと、微細構造化基材の第1の表面の周囲に沿って微細構造化基材の第1の表面にカバーを取り付ける少なくとも1つの側壁部とを含む。更に、デバイスは、微細構造化基材又はカバーのうちの少なくとも1つによって画定された第1のアパーチャと、微細構造化基材又はカバーのうちの少なくとも1つによって画定された第2のアパーチャとを含む。微細構造化基材の第1の表面は、少なくとも1つの側壁部と共に、各微細構造の底部から頂部までの複数の微細構造の間に位置した開放空間の合計である第1の開放容積を画定し、カバーは、微細構造化基材の第1の表面の頂部及び少なくとも1つの側壁部と共に、第1の開放容積に隣接して位置した第2の開放容積を画定する。第1の開放容積と第2の開放容積を合わせた合計を100%開放容積とすると、第1の開放容積は、その100%の開放容積のうち、流体中に存在する粒子の体積パーセントよりも大きなパーセントを有する。当該方法は、毛細管作用によって第1のアパーチャを通して、ある体積の流体でデバイスを充填することと、粒子の少なくとも一部が複数の微細構造の第1の開放容積内に沈降するのに十分な時間待機することとを更に含む。加えて、当該方法は、圧力をデバイスに印加し、それによって、複数の微細構造の第1の開放容積内に粒子の少なくとも一部が保持された流体の少なくとも10%を、第1のアパーチャ又は第2のアパーチャのいずれかを通してデバイスから流出させることを含む。
【実施例】
【0145】
本開示の目的及び利点は、以下の実施例によって更に説明されるが、これらの実施例に列挙される特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本開示を過度に限定すると解釈されるべきではない。特に明記しない限り、実施例及び明細書の残りの部分における全ての部、パーセンテージ、比率などは、重量に基づくものである。材料表(下記)には、実施例で使用した材料及びそれらの供給元を列挙している。
【0146】
【0147】
準備実施例1~4。プリズム構造微細構造化フィルムを調製するための手順
UV硬化性樹脂を、PHOTOMER 6210脂肪族ウレタンジアクリレートオリゴマー(75部)、SR238 1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(25部)、及びLUCIRIN TPO光開始剤(0.5%)から調製した。成分を高速ミキサーでブレンドし、オーブンで約70℃で24時間加熱し、次いで室温に冷却した。線状プリズムフィルムを調製するためのテンプレートとして銅ボタンを使用した。ボタン及びコンパウンドした樹脂を両方とも、オーブンで約70℃で15分間加熱した。加温した樹脂を、トランスファーピペットを使用して、加温されたボタンの中心に適用した。MELINEX 618 PET支持フィルム(DuPont Teijin Films(Chester,VA))の切片を、塗付した樹脂の上に置き、続いてガラスプレートを置いた。PETフィルムのプライマー処理された面を、樹脂と接触するように配向させた。樹脂がボタンの表面を完全に覆うまで、ガラスプレートを手の圧力で適所に保持した。ガラスプレートを注意深く取り外した。気泡が入った場合は、ゴム製ハンドローラーを使用して気泡を除去した。
【0148】
試料を、窒素雰囲気下で、15.2メートル/分の速度でUVプロセッサ(RPC Industries(Plainfield,IL)から入手した2つのHgランプを備えたモデルQC 120233AN)に2回通すことによって、試料をUV光で硬化させた。
図5Aに示したアレイパターンを有する硬化した微細構造化フィルムを、90°の角度で穏やかに引き離すことによって銅テンプレートから取り外した。剥離ライナーを裏打ちした接着剤層(8ミル厚、3M Corporationから3M 8188 Optically Clear Adhesiveとして入手した)を、ハンドローラーを使用して微細構造化フィルムの裏面(すなわち、非微細構造化表面)に必要に応じて適用した。調製された線状プリズム微細構造化フィルムの特徴を、準備実施例1~4として表1に報告する。
【0149】
微細構造化フィルムを2.54cm×7.62cmの切片に切断し、各切片をIPEGAL-CO630アニオン性界面活性剤の0.1重量パーセント水溶液に浸漬し、次いで、直ちにそのフィルムを溶液から取り出すことによって、界面活性剤コーティングを適用した。得られた界面活性剤でコーティングされた微細構造化フィルムの切片は、周囲温度及び周囲湿度で空気乾燥させた。
【0150】
【0151】
準備実施例5。ルーバー構造微細構造化フィルムを調製するための手順
ダイヤモンド(深さ220マイクロメートル)を使用して、複数の平行な直線溝を有するツールを切削した。溝は、60マイクロメートルのピッチで離隔させた。樹脂Aは、以下の表2の材料を混合することによって調製した。
【0152】
【0153】
キャストアンドキュア(cast-and-cure)微細複製プロセスを、樹脂A及び上記のツールを用いて行った。ライン条件は、樹脂温度150°F(65.6℃)、ダイ温度150°F(65.6℃)、コーターIR 120°F(48.9℃)縁部/130°F(54.4℃)中心、ツール温度100°F(37.8℃)、及びライン速度70フィート/分(fpm)(1秒当たり0.36メートル(m/s))であった。385nmのピーク波長を有するFusion Dランプ(Fusion UV Systems(Gaithersburg,MD)から入手)を硬化のために使用し、100%出力で作動させた。得られた「ルーバー」微細構造化フィルムは、
図4A(上記で詳述した)に示したように、チャネルによって分離された複数の突起(リブ)を備えていた。微細構造化フィルムは、ツールのトポグラフィー反転であり、微細構造化フィルムの突起はツールの溝のネガ型複製であり、微細構造化フィルムのチャネルは溝間のツールの未切断部分のネガ型複製であった。微細構造化フィルムの突出部(リブ)は、220マイクロメートルの高さ(「H」)、30マイクロメートルの幅(「W」)、60マイクロメートルのピッチ(「P」)、及び91.5度の壁角度θで等間隔に配置されていた[その結果、突起はわずかに先細になっていた(すなわち、底面で広く、頂面で狭くなっていた)]。硬化した樹脂のランド層(「L」)は、8マイクロメートルの厚さを有していた。ベース層は、74.4マイクロメートルの厚さを有するPETフィルム(3M Company(St.Paul,MN))であった。樹脂と接触したPETフィルムの側を、熱硬化性アクリルポリマー(Dow Chemical(Midland,MI)から入手したRHOPLEX 3208ポリマー)でプライマー処理した。
【0154】
微細構造化フィルムを2.54cm×7.62cmの切片に切断し、各切片をIPEGAL-CO630アニオン性界面活性剤の0.1重量パーセント水溶液に浸漬し、次いで、直ちにそのフィルムを溶液から取り出すことによって、界面活性剤コーティングを適用した。得られた界面活性剤でコーティングされた微細構造化フィルムの切片は、周囲温度及び周囲湿度で空気乾燥させた。
【0155】
実施例1。デバイスの調製
デバイス800(
図8A及び8Bに示した)は、3つのフィルム切片の積層体(laminate)を形成することによって調製した。デバイス800のカバーシート構成要素(すなわち、カバー820)は、3M Microfluidic Diagnostic Film 9962(3M Companyから入手した、微細構造化基材830に面したカバー820の主表面822を含む、両側に親水性コーティングを有するポリエステルフィルム(3.9ミル))のシートから長さ72mm×幅20mmの切片をレーザー切断することによって、調製した。円形の孔(直径5mm)を、孔の中心がフィルムの狭い縁部から直角方向に13.5mm、フィルムの長い縁部から直角方向に10mmに位置するように、フィルムにレーザー切断した。円形の孔は、デバイス800の第1のアパーチャ850を形成した。デバイスの第2のフィルム構成要素(すなわち、接着剤層870)は、3M 1522 Double-Sided Medical Tape(3M Companyから入手した、ポリエチレン裏材を有する透明な両面アクリル接着剤)のシートから長さ72mm×幅20mmの切片をレーザー切断することによって、調製した。剥離ライナーが取り外された両面テープの全厚は、デジタルキャリパーを使用して150マイクロメートルであると測定された。長方形開口部880(長さ60mm×幅2.5mm)を第2のフィルム構成要素にレーザー切断し、開口部の狭い縁部はフィルムの狭い縁部から11mmに位置し、開口部の長い縁部はフィルムの長い縁部から8.75mmに位置するように配向させた。
【0156】
デバイスの第3のフィルム構成要素(すなわち、微細構造化基材810)は、準備実施例1の界面活性剤でコーティングされた微細構造化フィルムの長さ72mm×幅20mmのレーザー切断切片であった。フィルムのレーザー切断は全て、Muse Core CO2 Laser Cutter(Full Spectrum Laser(Las Vegas,Nevada))を使用して行った。
【0157】
デバイス800は、フィルムから全ての剥離ライナーを取り外し、次いで、フィルムの縁部を整列させて、カバーシートフィルムと微細構造フィルムとの間に挟まれた第2のフィルムを有するスタックとすることによって、組み立てた。フィルムは、第3のフィルムの微細構造化表面830が第2のフィルム及びカバーの主表面822に面するように配向させた。スタックの接着剤積層は、4ポンド(1.8キログラム)のローラーをスタックに適用し、ローラーを1往復運動させることによって完了した。第2の接着剤フィルムは、矩形開口部及び第1のアパーチャホールの縁部の周囲において、カバーシートと微細構造化フィルムの頂面との間に流体シールを形成した(例えば、側壁部を形成した)。最終工程では、かみそりの刃を使用して、第1のアパーチャから遠位に位置する縁部でスタックをトリミングして(
図8Bの破線862)、得られたデバイスが長さ60mm×幅20mmの全体寸法を有するようにした。これにより第2のフィルムの開口部が切断され、デバイス800の新たに作り出された縁部に2.5mmの長方形の開口部として、デバイスの第2のアパーチャを露出させた。
【0158】
実施例2
3M 1513 Double-Sided Medical Tape(3M Companyから入手した、ポリエステルバッキングを有する透明な両面アクリル接着剤)を使用して、デバイスの第2のフィルム構成要素を調製したことを除いて、実施例1で報告したのと同じ手順に従ってデバイスを調製した。剥離ライナーが取り外された両面テープの全厚は、デジタルキャリパーを使用して75マイクロメートルであると測定された。
【0159】
実施例3
デバイスの第3のフィルム構成要素を、準備実施例2の界面活性剤でコーティングされた微細構造化フィルムを使用して調製したことを除いて、実施例1に報告したのと同じ手順に従ってデバイスを調製した。
【0160】
実施例4
デバイスの第3のフィルム構成要素を、準備実施例3の界面活性剤でコーティングされた微細構造化フィルムを使用して調製したことを除いて、実施例1に報告したのと同じ手順に従ってデバイスを調製した。
【0161】
比較例A
デバイスの第3のフィルム構成要素を、準備実施例4の界面活性剤でコーティングされた微細構造化フィルムを使用して調製したことを除いて、実施例1に報告したのと同じ手順に従ってデバイスを調製した。
【0162】
実施例5
デバイスの第3のフィルム構成要素を、準備実施例5の界面活性剤でコーティングされた微細構造化フィルムを使用して調製したことを除いて、実施例1に報告したのと同じ手順に従ってデバイスを調製した。
【0163】
実施例6
デバイスの第3のフィルム構成要素を、調製実施例5の界面活性剤でコーティングされた微細構造化フィルムを使用して調製し、デバイスの第2のフィルム構成要素を、3M 1513 Double-Sided Medical Tapeを使用して調製したことを除いて、実施例1に報告したのと同じ手順に従ってデバイスを調製した。
【0164】
【0165】
比較例B
デバイスの第3のフィルム構成要素として非微細構造化ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(MELINEX 454フィルム(3ミル)、Dupont Teijin Films)を使用してデバイスの第3のフィルム構成要素を調製したことを除いて、実施例1に報告したのと同じ手順に従ってデバイスを調製した。
【0166】
比較例C
比較例Bの非微細構造化フィルム(MELANEX 454 PETフィルム)を第3のフィルム構成要素として使用してデバイスの第3のフィルム構成要素を調製し、3M 1513 Double-Sided Medical Tapeを使用してデバイスの第2のフィルム構成要素を調製したことを除いて、実施例1に報告したものと同じ手順に従って、デバイスを調製した。
【0167】
実施例7。血液から赤血球を分離する方法
脱線維素ヒツジ血液(Becton Dickinson(Franklin Lakes,NJ)から入手)は、Zip-IQ PCV Centrifuge(LW Scientific Incorporated(Lawrenceville,GA))を使用して40%の未希釈ヘマトクリット濃度を有すると測定された。未希釈血液試料に加えて、1Xのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を使用して、12%、8%、及び4%ヘマトクリットの希釈血液試料を調製した。
【0168】
血液試料をデバイス800に送達するためのモジュールを調製した(
図8C及び
図8Dに示した)。モジュール構成要素には、SYLGARD 184シリコーンエラストマー(Dow Chemical(Midland,MI))から調製されたシリコーンガスケット844(25mm×25mm×3.2mm)であって、当該ガスケットの中心に5mmの孔が切り込まれている、ガスケット844と、PLEXIGLASポリメチルメタクリレート(PMMA)フィルム(Roehm GmbH(Darmstadt,Germany))のシート842(25mm×25mm×3.2mm)であって、当該シートの中心に0.06インチ(1.52mm)直径の孔が穿孔されている、シート842と、が含まれていた。エチルビニルアセテート(EVA)プラスチックチューブ846[内径0.02インチ(0.51mm)及び外径0.06インチ(1.52mm)、McMaster-Carr(Elmhurst,IL)]の一部を、PLEXIGLASフィルムシートの孔に挿入し、HARDMAN DOUBLE/BUBBLEエポキシ(Royal Adhesives(Wilmington,CA))847で適所に固定した。チューブの反対側の端部は、1mLのルアーロックシリンジに取り付けられた22.5ゲージの針に適合させた。
【0169】
デバイス800(実施例1~6及び比較例A~Cのデバイスから選択された)を水平面上に置いた。血液の試料(20~50マイクロリットル)を、デバイスの第1のアパーチャに入れ、血液を毛細管流動によってデバイスの端部にウィッキングした。次に、シリコーンガスケット844をデバイスのカバーシート上に配置し、ガスケットの孔がデバイスの第1のアパーチャの中心にくるように位置合わせした。次に、PLEXIGLASシート842(上記したようにEVAプラスチックチューブ846が接着されている)をガスケットの露出面上に配置し、シートの穴がガスケットの穴の中心にくるように位置合わせして、
図8Dのアセンブリを形成した。EVAプラスチックチューブの他方の端部に取り付けられたシリンジ(図示せず)を、シリンジポンプ(モデルNE-1600、New Era Pump Systems Inc,(Farmingdale,NY))(図示せず)中にセットした。流量を100マイクロリットル/分に設定してポンプを作動させた。第2のアパーチャ860から、デバイスより流出する血液試料を採取した。採取した血液の10マイクロリットルの試料を、90マイクロリットルの1X PBSを使用して希釈した。希釈した試料を、製造元(Incyto(Republic of Korea))の指示に従ってC-CHIP使い捨て血球計(C-CHIP Disposable Hemacytometer)にピペットで移した。比較のために、デバイスに入れた血液の試料も、C-CHIP使い捨て血球計にピペットで移した。計数板を、Zeiss LSM 510 METAモジュールAxioplan 2直立共焦点顕微鏡(Zeiss(Jena,Germany))を使用して分析した。赤血球は、手動で、又はImage J画像処理ソフトウェア(National Institutes of Health(Bethesda,MD))を使用することによって、計数した。記載の方法を使用した血液試料の赤血球(RBC)減少%は、式1に従って、デバイスから採取された血液試料のRBC数を、デバイスに入れた血液試料のRBC数と比較することによって、計算した。各デバイスを、特定の血液試料を用いて三連で試験し(n=3デバイス)、RBC減少%における結果を、平均値として表4に報告する。
【0170】
【0171】
【0172】
実施例8
米国特許第8,605,256号(DeVoeら)及び米国特許第8,455,846号(Gatesら)に記載された多光子露光システムを使用してデバイスの
図2Bの微細構造化基材のための原型を製作するために、CAD設計ファイルを使用した。米国特許第10,133,174号(Leeら)に記載されているようなネガティブコントラストフォトレジストを、シリコンウェハ基材上にフォトパターニングした。走査が完了したら、パターン化構造を有する基材を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(Sigma-Aldrichから入手)の現像溶液に浸漬して、重合していないフォトレジストを除去した。次いで、原型をニッケル又はニッケル合金電鋳して、複製に使用される金属ツールを作出した。ニッケルめっきツールを使用して、ポリプロピレン樹脂(C700-35樹脂、Dow Chemical(Midland,MI))を用いて印象成形試料を作製した。Carverプレス(Carver(Wabash,IN))のプラテンを170℃に加熱し、ツール及び樹脂を、1000ポンドフォース(約4450ニュートン)で7分間一緒にプレスし、続いてプラテンの温度が80℃に達するまで加圧下で冷却した。圧力を解放し、成形された微細構造化基材をツールから取り出した。
【0173】
成形された微細構造化基材は、25.4mm(幅)、76.2mm(長さ)、1mm(深さ)の全体寸法を有する上面及び下面を有していた。基材の微細構造は、基材の上面の下に凹み、第1及び第2の開放端を有するフローチャネル(幅3mm、長さ60mm)の床に沿って位置している線状プリズム微細構造のアレイであった。ピーク構造と、隣接している谷との線状アレイは、完成したデバイスの液体流動方向に対して0度の角度で配向された。線状プリズム微細構造の特徴を表5に報告する。プリズム特徴部は、フローチャネルの床から上に突き出ていた。フローチャネルの周囲を取り囲む壁は、プリズム構造の先端の100マイクロメートル上方から上面まで延びていた。フローチャネルの第1の開放端は、上面から100マイクロメートルの深さ及び2.88マイクロリットルの容積を有する半円形の第1のキャビティに流体的に取り付けた。第1のキャビティは、デバイスの第1のアパーチャを形成していた。第1のアパーチャは、最終デバイスの液体試料の取り込みリザーバとして機能した。フローチャネルの反対側の第2の開放端は、長方形の第2のキャビティ(幅5mm、長さ6mm、頂面からの深さ250マイクロメートル)に流体的に取り付けた。第2のキャビティは、デバイスの第2のアパーチャを形成した。第2のアパーチャは、フローチャネルを出る液体試料のための受け入れリザーバとして機能した。
【0174】
デバイスのカバー構成要素は、3M Microfluidic Diagnostic Film 9975R(3M Companyから入手)の切片であった。カバーは、フローチャネル及び液体試料取り入れリザーバセクションの上に位置させ、試料取り込みリザーバとフローチャネルセクションとを囲む微細構造化基材の表面に接着剤で取り付けた。適用前に、円形の孔(直径5mm)を、カバー構成要素中にレーザー切断し、微細構造化基材へのカバーの取り付け時に孔の中心が試料取り込みリザーバの中心上に位置するように配向させた。受け入れリザーバは、カバーしなかった。
【0175】
【0176】
実施例9
デバイスは、ピーク構造と、隣接している谷との線状アレイを、完成したデバイスの液体流方向に対して45度の角度で配向させた(
図5Dに示した配向)こと;フローチャネルの寸法は、幅3mm、長さ40mmであったこと;第1のアパーチャキャビティは、300マイクロメートルの深さ及び8.7マイクロリットルの容積を有し、第2のアパーチャキャビティは、5mm(幅)、6mm(長さ)、300マイクロメートル(深さ)の寸法であったことを除いて、実施例8に記載したものと同じ手順に従って調製した。
【0177】
実施例10
デバイスは、ピーク構造と、隣接している谷との線状アレイを、完成したデバイスの液体流方向に対して90度の角度(すなわち、直角)で配向させた(
図5Cに示した配向)ことを除いて、実施例9に記載したものと同じ手順に従って調製した。
【0178】
実施例11
線状プリズム微細構造のアレイを、ベントによって、隣接しているウェルに接続された円形形状を有する流体接続されたウェルのアレイで置き換えたことを除いて、実施例8に記載したものと同じ手順に従ってデバイスを調製した(
図10A~
図10Bに示した)。各ウェルは、200マイクロメートルの直径、150マイクロメートルの深さ、及び5度の抜き勾配を有していた。ベントは、29マイクロメートルの長さ、40マイクロメートルの幅、150マイクロメートルの深さ、及び5度の抜き勾配を有していた。フローチャネルの中心に位置するウェルは、各々、4つの他のウェルに接続されていて、各接続はベントを介しており、ベントの間隔は
図10Bに示したとおりであった。フローチャネルの周囲を取り囲む壁は、ウェルの頂面から100マイクロメートル上方に延びていた。フローチャネルの寸法は、幅3mm、長さ40mmであった。
【0179】
フローチャネルの第1の開放端は、上面から100マイクロメートルの深さ及び2.88マイクロリットルの容積を有する半円形の第1のキャビティに流体的に取り付けた。第1のキャビティは、デバイスの第1のアパーチャを形成していた。フローチャネルの反対側の第2の開放端は、長方形の第2のキャビティ(幅5mm、長さ6mm、頂面からの深さ250マイクロメートル)に流体的に取り付けた。第2のキャビティは、デバイスの第2のアパーチャを形成した。
【0180】
実施例12血液から赤血球を分離する方法
ヒト血を、BD VACUTAINERクエン酸チューブ(Becton,Dickinson and Company(Franklin Lakes,NJ))に採取し、クエン酸全血として、又は1Xリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で1:1に希釈したクエン酸全血として使用した。
【0181】
実施例8~11に記載した微細構造化基材を調製し、血液滴下用のチューブで改変したカバー構成要素を各基材に取り付けた。改変されたカバー構成要素は、3M Microfluidic Diagnostic Film 9975R(3M Companyから入手)の切片であり、カバー構成要素において円形の孔(直径5mm)がレーザーカットされたものである。プラスチックチューブ(0.05インチID、0.09インチOD)を孔に挿入し、エポキシ接着剤(3M SCOTCH-WELD Epoxy Adhesive DP100 Plus Clear、3M Companyから入手)で固定した。カバー構成要素の接着剤表面を越えて延びている任意のチューブを、かみそりの刃で除去した。カバーを、微細構造化基材のフローチャネルセクション及び液体試料取り込みリザーバセクションの上に位置させ、2つのセクションを囲む微細構造化基材の表面に接着剤で取り付けた。カバー構成要素は、カバーの取り付け時に、孔の中心が試料取り込みリザーバの中心の上に位置するように配向させた。受け入れリザーバは、カバーしなかった。チューブは、カバーの外面から長さ約3cm延びていた。
【0182】
得られた各デバイスを水平面上に置いた(デバイスの下面が水平面に面するように配向させた)。マイクロピペットを使用して、血液試料(20~50マイクロリットル)を、チューブを通して試料入口リザーバに加えた。血液試料は、毛細管流動によってデバイスの端部までウィッキングさせるか、又はマイクロピペットからの陽圧を用いて前進させた。十分な量の血液をデバイスに入れて、取り込みリザーバ中に余分な血液を溜めることなく、フローチャネルの開放容積を充填した。マイクロピペット又はKIMWIPEワイパー(Kimberly-Clark Corporation(Irving,TX))、テキサス州アービング)を使用して、受け入れリザーバ中の過剰な血液を当該リザーバから迅速に除去した。血液試料の投与後、各デバイスを水平表面上に5分間静置した。
【0183】
鉱油を充填した1mLのルアーロックシリンジをプラスチックチューブの一部に取り付け、鉱油をチューブに部分的に分注して、チューブの開放端に小さな空隙(チューブの長さ約10cm)を残した。シリンジを、シリンジポンプ(モデルNE-1600,New Era Pump Systems Inc.)にセットした。シリンジアセンブリのチューブの開放端を、デバイスから延びるチューブの開放端に接続した。50マイクロリットル/分に設定された流量でポンプを作動させて、捕捉された空気の体積と共に血液試料をフローチャネルから押し出した。フローチャネルから流出した血液試料を、いくつかの2~4マイクロリットルアリコートとして採取した。アリコート体積が受け入れリザーバに蓄積するとすぐに、各試料を採取した。
【0184】
採取した各試料について、1X PBS中1/10、1/20、1/100、及び1/200の希釈試料を調製した。各希釈試料の2マイクロリットルのアリコートを、マイクロピペットを用いてAgilent Take3マイクロボリュームプレート(Take3-SN,Agilent Technologies(Santa Clara,CA))上にロードした。当該プレートは、製造元の指示に従って希釈に使用された1X PBSブランクとして少なくとも1ウェルを含んでいた。各試料及び1X PBSブランクについて、Agilent Synergy Neo2プレートリーダー(Agilent Technologies)を使用して、406nm、414nm、及び576nmで吸光度測定値を記録した。「試料のインタクトな赤血球含有量を測定するための方法」の項における手順(以下に記載)を使用して、この実施例に記載の手順を使用して、各デバイスに供された血液試料からの赤血球の減少パーセントを計算した。
【0185】
クエン酸処理したヒト全血を用いた結果を表6に示し、1X PBSで1:1に希釈したクエン酸処理したヒト全血を用いた結果を表7に示す。比較例Bのデバイス(すなわち、微細構造化表面を有しないデバイス)も試験した。デバイスの各タイプについて、表6及び7に報告した結果は、3つのデバイスの技術的反復実験(n=3)からのものである。各反復実験デバイスについて計算された赤血球の減少パーセントを、デバイスから採取されたアリコート試料の全体積から平均した。
【0186】
【0187】
【0188】
試料のインタクトな赤血球含有量を測定するための方法
試料のインタクトな赤血球の含有量及び溶解赤血球の含有量を同時に測定するために、希釈系列の較正曲線を、溶解したヒト赤血球及びインタクトなヒト赤血球の既知のインプットを用いて作成した。クエン酸処理したヒト全血を、100%インタクトな赤血球の試料として使用した。0%インタクトな赤血球試料を作製するために、全血のアリコートを、ZR BashingBead溶解チューブ(製品番号S6012-50、Zymo Research(Irvine,CA))を使用して1分間ボルテックスすることによって溶解させた。チューブを10,000xgで1分間遠心分離し、溶解細胞内容物のみを含有する上清を新しい1.5mLエッペンドルフチューブに移した。希釈系列用のインタクトな赤血球対溶解赤血球の標準試料は、100%~0%のインタクトな赤血球の範囲で、既知のインタクト細胞及び溶解細胞を様々な比率で混合することによって調製した。製造元の指示に従って標準C-CHIP Disposable Hemacytometerを使用して、標準試料のインタクトな赤血球濃度を確認した。
【0189】
各標準試料を、1X PBSで希釈し(吸光度がプレートリーダーのダイナミックレンジ内であるように)、Take 3マルチボリュームプレートを備えたAgilent Synergy Neo2プレートリーダーを使用して技術的に三連で分析した(試料体積及びブランクは製造元の指示に従って選択した)。各標準試料について、406nm、414nm及び576nmでの吸光度を測定した)。
【0190】
比率A414nm/A576nmを、インタクトな赤血球%の既知のインプットに対してプロットした。A414nm=414nmでの試料の吸光度であり、A576nm=576nmでの試料の吸光度である。バックグラウンド減算には、ブランク(1X PBS)の減算を使用した。データセットを対数曲線に当てはめて式Aを作成した。式Aを用いて、血液を含有する懸濁液からインタクトな赤血球のパーセンテージを計算した。
【0191】
【0192】
式Aにおいて、「%インタクト」=インタクトであった懸濁液中の赤血球のパーセンテージ、「A414nm」=血液試料の414nm波長の吸光度、「APBS,414nm」=1X PBSの414nm波長の吸光度、「A576nm」=血液試料の576nm波長の吸光度、及び「APBS,576nm」=1X PBSの576nm波長の吸光度である。
【0193】
各試料の406nmでの吸光度シグナルを、細胞パーセントの比によって調整して、式Bを用いてインタクトな赤血球からのシグナルを計算した。
【0194】
【0195】
式Bにおいて、「Ai406nm」=インタクトな赤血球に起因する血液試料の406nm波長の吸光度、「%インタクト」=式Aによって計算されるインタクトである懸濁液中の赤血球のパーセンテージ、「A406nm」=試料の406nm波長の吸光度、及び「APBS,406nm」=1X PBSの406nm波長の吸光度である。
【0196】
406nm波長の吸光度を、式Bにおいてインタクト細胞及び溶解細胞について調整した後、赤血球(RBC)減少パーセントを計算するために、式Cに従って、デバイスに入れた血液試料の吸光度シグナルを、デバイスから採取された対応する血液アリコートの吸光度シグナルと比較した。
【0197】
【0198】
式Cにおいて、「Ai406nm,input」=式Bによって計算された、インタクトな赤血球に起因する、デバイスに入れた血液試料の406nm波長の吸光度、及び「Ai406nm,output」=式Bによって計算された、インタクトな赤血球に起因する、デバイスから採取された血液試料の406nm波長の吸光度である。
【0199】
準備実施例6。直立ステムを有する微細構造化フィルム
角度の付いた側壁を有する離散ステム構造を有する
図11のポリプロピレン(PP)微細構造化フィルムを、米国特許第9,358,714号(Chandrasekaran)の実施例1による成形プロセスによって調製し(但し、ベータ核形成マスターバッチは含まなかった)、次いで、フィルムを、BD-20AC Laboratory Corona Treater(Electro-Technic Products(Chicago,IL))を使用してコロナ処理した。Keyence VK-X3100 3D Surface Profilometer(Keyence Corporation(Itasca,IL))を使用して、微細構造化フィルムの3次元顕微鏡写真を撮影し、付属のVK-X 3000 MultiFileAnalyzerソフトウェアパッケージを使用して測定を行った。微細構造化フィルムは、約345マイクロメートルの総厚を有し、1平方インチ当たり2000個のステム特徴部の千鳥状アレイを有していた。ステム特徴部は、頂上部分において略平坦面を有していた(すなわち、円錐台形状)。バッキング層の厚さは、83.5マイクロメートルであった。表8及び9には、ステム高さ、ダウンウェブ方向における基部でのステムの直径、クロスウェブ方向における基部でのステムの直径、ダウンウェブ方向における頂上部分でのステムの直径、クロスウェブ方向における頂上部分でのステムの直径、ダウンウェブ方向におけるステム間の中心間距離(ピッチ)、及びクロスウェブ方向におけるステム間の中心間距離(ピッチ)の寸法を報告している。
【0200】
【0201】
【0202】
実施例13。直立ステムを有する微細構造化フィルムを含有するデバイスの調製
実施例1に記載の手順に以下の変更を加えた。第一に、準備実施例1の微細構造化フィルムを、デバイスの第3のフィルム構成要素として準備実施例6の微細構造化フィルムで置き換えた。第二に、エポキシを使用して、デバイスの2つの長い縁部と、第1のアパーチャに近接している狭い縁部とを封止した。第2のアパーチャを形成した狭い縁部は、封止しなかった。
【0203】
実施例14。直立ステムと、微細構造化アレイの凝集剤コーティングとを有する微細構造化フィルムを含有するデバイスの調製
ポリエチレンイミン(PEI)(分岐、70,000Daの分子量、30重量/体積%の水溶液、カタログ番号00618、Polysciences,Inc.(Warrington,PA)から入手した)の凝集剤溶液を、1:10(重量:体積)脱イオン水、続いて1:10体積:体積の脱イオン水で、2工程で更に希釈した。希釈した凝集剤溶液(30~100マイクロリットル)を、ピペットで実施例13のデバイスの長方形開口部880に入れた。適用したPEI凝集剤溶液を、周囲条件で一晩空気乾燥させて、凝集剤でコーティングされた微細構造化アレイを提供した。
【0204】
実施例15。直立ステムと、微細構造化アレイの凝集剤コーティングとを有する微細構造化フィルムを含有するデバイスの調製
グアニル化ポリエチレンイミン(G-PEI)の凝集剤水溶液を、ブタンジオールジグリシジルエーテルを添加しなかったことを除いて、米国特許第10,087,405号(Swansonら)の実施例1に記載されているように調製した。凝集剤溶液(30~100マイクロリットル)を、ピペットで実施例13のデバイスの長方形開口部880に入れた。適用したG-PEI凝集剤溶液を周囲条件で一晩空気乾燥させて、凝集剤でコーティングされた微細構造化アレイを提供した。
【0205】
実施例16。血液から赤血球を分離する方法
EDTAチューブに採取したヒト全血液は、Oklahoma Blood Institute(Oklahoma City,OK)から入手した。ヒト血液試料の初期ヘマトクリットを、Zip-IQ PCV Centrifuge(LW Scientific Incorporated(Lawrenceville,GA)を使用して測定した。
【0206】
この方法では、実施例7に記載した血液試料を送達するためのシリンジポンプを有するモジュールを使用した。実施例13~15から選択したデバイスを水平面上に置いた。ヒト全血液の試料(50~100マイクロリットル)を、デバイスの第1のアパーチャ850に入れた。血液は毛細管流動によってデバイスの端部にウィッキングされ、デバイスを10分間静置して赤血球を微細構造アレイセクションに沈降させた。次に、流量を100マイクロリットル/分に設定してポンプを作動させた。第2のアパーチャ860から、デバイスより流出する血液試料を、一連の5マイクロリットルアリコートとして採取した。
【0207】
標準較正曲線を、RBC数を406nmでの吸光度と相関させるために、水中の全血の希釈系列から、作成した。試験する各血液試料を、(細胞を溶解し、吸光度がプレートリーダーのダイナミックレンジに収まるように)水で希釈し、Take 3マルチボリュームプレートを備えたAgilent Synergy Neo2プレートリーダーを使用して技術的に二連で分析した(試料体積及びブランクは製造元の指示に従って選択した)。SYNERGY UV Water Purification System(MilliporeSigma(Burlington,MA))から調製された18メガオーム-cmを超える抵抗率を有する脱イオン水を使用して、全ての希釈物を調製した。406nmでの吸光度を、各試料について測定した。血液試料の赤血球(RBC)減少パーセントは、式Dに従って、デバイスから採取された血液のアリコートの吸光度を、デバイスに入れた全血試料の吸光度と比較することによって、計算した。
【0208】
【0209】
式Dにおいて、「吸光度406nm,output」=デバイスから採取された血液試料の406nm波長の吸光度である。「吸光度406nm,input」=デバイスに入れた血液試料の406nm波長の吸光度である。デバイスの各タイプについて、その結果を表10に報告する。各タイプの単一のデバイスを試験した。赤血球の計算された減少パーセントは、デバイスから採取されたアリコート試料の全てを平均した。約10個のアリコート試料を、各デバイスから採取した。
【0210】
【0211】
実施例17。血液から赤血球を分離する方法
実施例13の単一デバイス(n=1)及びPEI凝集剤を含む血液試料を使用して、実施例16の方法に従った。血液試料については、ポリエチレンイミン(PEI)(分岐、70,000DaのMW、30%重量/体積水溶液、カタログ番号00618、Polysciences,Inc.から入手)の凝集剤溶液を、PBS中で1/10希釈を行うことによって調製した(例えば、1mL凝集剤+9mLの1X PBS)。ヒト全血液の90マイクロリットルのアリコートを、チューブ中で10マイクロリットルの凝集剤溶液と混合した。得られた血液試料は、ピペットを使用して混合し(3~5回)、次いで室温で10分間インキュベートした。インキュベートした血液試料をピペットで混合し(3~5回)、次いで約100マイクロリットルの試料をデバイスの第1のアパーチャに入れた。合計7つのアリコートをデバイスから採取した。計算されたRBC減少パーセントは64.4%であった。赤血球の計算された減少パーセントは、デバイスから採取したアリコート試料の全てを平均した。
【0212】
上記の特許及び特許出願の全ては、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。上記した実施形態は本発明の例示であり、他の構成も可能である。したがって、本発明は、上記で詳細に記載され、添付の図面に示した実施形態に限定されるとみなすべきではなく、代わりに、後に続く特許請求の公正な範囲及びそれらの均等物によってのみ限定されるとみなされるべきである。
【国際調査報告】