(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-07-07
(54)【発明の名称】実質的にニトロソアミンを含まず、実質的に過酸化物を含まず、実質的に無色のアミンオキシドを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
C07C 201/00 20060101AFI20250630BHJP
C07C 207/02 20060101ALI20250630BHJP
C07D 295/24 20060101ALI20250630BHJP
【FI】
C07C201/00
C07C207/02
C07D295/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024572362
(86)(22)【出願日】2023-06-09
(85)【翻訳文提出日】2025-01-20
(86)【国際出願番号】 EP2023065472
(87)【国際公開番号】W WO2023237729
(87)【国際公開日】2023-12-14
(32)【優先日】2022-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エクスレ,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】クンスト,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】テレス,ホアキン エンリケ
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB80
4H006AB81
4H006AC51
4H006AD11
4H006BB31
4H006BB61
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC18
4H006BC31
4H006BC52
4H006BD33
4H006BD52
4H006BE32
4H006BE41
(57)【要約】
実質的にニトロソアミンを含まず、実質的に過酸化物を含まず、実質的に無色のアミンオキシド溶液を製造する方法は、絶対0.75bar未満の二酸化炭素分圧p(CO2)を有する蒸気空間を水性媒体に課しながら、アミンオキシドを形成することができる第三級アミンを水性媒体中で化学量論量未満の水性過酸化水素と反応させることを含む。本方法は、実質的にニトロソアミンを含まず、実質的に過酸化物を含まず、且つ実質的に無色であるアミンオキシドを得ることを可能にする。望ましい特徴のこの独特な組み合わせは、酸化及び蒸留を含むにすぎない方法においてこれまで達成されていなかった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的にニトロソアミンを含まず、実質的に過酸化物を含まず、実質的に無色のアミンオキシド溶液を製造する方法であって、前記方法が、絶対0.75bar未満の二酸化炭素分圧p(CO
2)を有する蒸気空間を水性媒体に課しながら、アミンオキシドを形成することができる第三級アミンを水性媒体中で化学量論量未満の水性過酸化水素と反応させることを含む、方法。
【請求項2】
希釈ガスの掃引は、前記水性媒体の上方の前記蒸気空間内に維持され、二酸化炭素は、前記水性媒体を通してバブリングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記希釈ガスは不活性ガスである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記水性媒体中の第三級アミンの濃度は、40~95体積%の範囲にある、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、10~70重量%の水性過酸化水素を前記水性媒体に添加することを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記水性過酸化水素は、前記第三級アミンの水溶液中へ計量供給され、前記過酸化水素投与率r(H
2O
2)は、第三級アミン1mol及び1時間当たり0.035~1mol未満の範囲にある、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
絶対bar単位の前記二酸化炭素分圧p(CO
2)は、
p(CO
2)=r(H
2O
2)/z
(式中、zは、1~4h
-1bar
-1の範囲にある)
によって与えられる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
使用される過酸化水素の総量は、第三級アミンの1mol当たり50~99mol%である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
20~90℃の温度で行われる、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第三級アミンは、絶対0.01~5barの範囲の圧力で水と最小沸点共沸混合物を形成する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第三級アミンはN-メチルモルホリンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第三級アミンオキシド溶液を蒸留に供して、水及び/又は未反応の第三級アミンの水-共沸混合物を除去することを含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記蒸留は、50
~300mbarの範囲の圧力で実施される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記除去された未反応の第三級アミンの水-共沸混合物は、過酸化水素との反応にリサイクルされる、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記アミンオキシドは、アミンオキシドの重量に対して、50ppb未満のニトロソアミン含有量を有する、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記アミンオキシドの50重量%水溶液は、450nmで2%/cm未満の吸光度を有する、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記アミンオキシドの50重量%水溶液は、100未満のAPHA色数を有する、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的にニトロソアミンを含まず、実質的に過酸化物を含まず、実質的に無色のアミンオキシドを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミンオキシドは、酸化剤、溶媒として、又はシャンプー、コンディショナー、洗剤、及び硬質表面クリーナーなどの消費者製品に一般的に使用されている。工業的に重要なアミンオキシドの代表例は、N-メチルモルホリンN-オキシドである。N-メチルモルホリンN-オキシドの水溶液は、リヨセル繊維製造において可溶化剤として技術的に使用されており、ここで、パルプは、N-メチルモルホリンN-オキシド及び水に溶解させられ、それらの溶液から紡糸される。
【0003】
一般に、アミンオキシドは、第三級アミンの酸化によって、例えば過酸化水素を酸化剤として使用することによって生み出される。当技術分野から公知の方法は、過剰な酸化剤、例えば過酸化水素を一般的に使用し、したがって、未反応の酸化剤、例えば過酸化水素でのアミンオキシド生成物の汚染などの欠点を伴うことが多い。
【0004】
ニトロソアミンは、水性過酸化水素を使用するアミンオキシドの調製において微量な副生成物として形成される。ニトロソアミンの量は非常に少ないが、この少量は、アミンオキシドを、ヒトとの接触を伴う多くの用途で不適切なものにする。これは、ニトロソアミンが発癌性である及び/又は変異原性であると報告されているためである。
【0005】
B.Balagam et al.,Inorg.Chem.2008,47,1173-1178は、アミンの過酸化水素N-酸化に関しており、丸底フラスコ中でCO2及びH2O2を使用するN-メチルモルホリンの酸化を記載している。
【0006】
T.Baumeister et al.,React.Chem.Eng.2019,4,1270-1276は、第三級アミンの酸化によるアミンオキシドの連続流合成に関しており、微細構造化反応器中で流動条件下にH2O2を使用するN-メチルモルホリンの酸化を記載している。
【0007】
欧州特許第0 307 184号明細書は、第三級アミンを過酸化水素で酸化して第三級アミンオキシドを形成する方法を記載している。この目的のために、第三級アミンは、二酸化炭素を反応混合物に添加することによって形成される促進剤の存在下で、水性過酸化水素と接触させられる。反応は約45℃未満の温度で行われ、それにより、第三級アミンオキシド生成物のニトロソアミン含有量は、より高い温度で同じ方法によって生み出される第三級アミンオキシドのニトロソアミン含有量と比較して実質的に減少する。
【0008】
米国特許第5,693,796号明細書は、N-メチルモルホリンN-オキシドのニトロソアミン含有量を減らす方法を記載している。ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸及び安息香酸から選択される触媒量のカルボン酸又はそのカルボン酸塩がN-メチルモルホリンの水溶液に添加され、酸化は、過酸化水素を使用して実施される。
【0009】
欧州特許第0 320 694号明細書は、実質的にニトロソアミンを含まないアミンオキシドを製造する方法であって、アスコルビン酸と、二酸化炭素を反応混合物に添加することによって形成される促進剤との相乗的組み合わせの存在下で、アミンオキシドを形成することができる第三級アミンを水性過酸化水素と反応させることを含む、方法を記載している。過剰量の過酸化水素が好ましく;反応後に残っているそのような過剰なH2O2は、還元剤又は二酸化マンガンなどの過酸化物分解触媒の添加によって破壊されなければならない。
【0010】
米国特許第5,216,154号明細書は、本質的に二酸化炭素からなる雰囲気中でN-メチルモルホリンをモル過剰の過酸化水素と接触させることによるN-メチルモルホリンN-オキシドの調製を記載している。この方法は、二酸化炭素を促進剤として使用して、非常に少量のニトロソアミンを含有するN-メチルモルホリンN-オキシドを形成する。
【0011】
米国特許第6,166,255号明細書は、二酸化炭素を触媒として使用して、約15~25℃の水性反応媒体中で過酸化水素水溶液での第三級アミンの酸化を記載している。反応混合物を撹拌しながら、温度は、約50から100℃まで断熱的に上昇させられる。このようにして、金属及び/又はリン含有成分の添加なしに、たとえあったとしても、非常に低レベルの、例えば30ppb未満のニトロソアミン不純物を有する第三級アミンオキシドを生み出すことが可能である。
【0012】
上記の参考文献に記載されるように二酸化炭素を促進剤として使用することによって、望ましくない含有量のニトロソアミンに関する問題は、排除されているか、又はそれらを許容可能なレベルまで少なくとも軽減されている。しかしながら、ニトロソアミン汚染の他に、低濃度でさえも、製品品質に悪影響を及ぼす反応副生成物として着色種が形成されるという問題がある。このようにして得られたアミンオキシドの深黄褐色溶液は、更なる精製ステップが着手されない限り、全ての用途にとって好適であるわけではない。
【0013】
米国特許第5,502,188号明細書は、50%重量のN-メチルモルホリンN-オキシド含有量に基づいて、200未満のAPHA数を有するN-メチルモルホリンN-オキシドの水溶液を製造する方法を記載している。この目的のために、少なくとも35%重量の含水量を有するN-メチルモルホリン水溶液が過酸化水素で酸化される。反応後に、N-メチルモルホリンN-オキシド水溶液の濃度は、残留N-メチルモルホリン及び水を留去することによって調整される。しかしながら、着色種の更なる低減が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
それ故に、本発明の目的は、実質的にニトロソアミンを含まず、実質的に過酸化物を含まず、且つ実質的に無色のアミンオキシドを生じさせる、アミンオキシドを調製する改善された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、実質的にニトロソアミンを含まず、実質的に過酸化物を含まず、実質的に無色のアミンオキシド溶液を製造するための方法によって解決された。前記方法は、絶対0.75bar未満、好ましくは絶対0.20bar未満の二酸化炭素分圧p(CO2)を有する蒸気空間を水性媒体に課しながら、アミンオキシドを形成することができる第三級アミンを水性媒体中で化学量論量未満の水性過酸化水素と反応させることを含む。
【発明を実施するための形態】
【0016】
二酸化炭素は、第三級アミンからそのアミンオキシドへの変換のために有効な促進剤であるが、促進量を超える量の遊離二酸化炭素が望ましくない変色をもたらし得ることを出願人らは見出した。本発明の方法によって、水性媒体中の二酸化炭素の量は、それが存在する形態にかかわらず、二酸化炭素の促進量よりも高くないことが可能である。理論に拘束されることを望むことなく、促進量の二酸化炭素は、ペルオキシカーボネート又は過酸化水素とカーボネートとの他の付加体として存在すると考えられる。「遊離」二酸化炭素種、すなわち利用可能な過酸化水素によってペルオキシカーボネートに変換されない過剰な二酸化炭素種は、上述の変色問題の原因であるか、又は変色問題に少なくとも寄与していると考えられる。
【0017】
本発明の方法は、アミンオキシドを形成することができる第三級アミンを水性媒体中で水性過酸化水素と反応させることを含む。一般に、第三級アミンの水溶液が反応容器に入れられ、水性過酸化水素が可変の時間間隔にわたって計量供給される。
【0018】
本発明の方法は、アミンオキシドを形成することができる任意の第三級アミンに適用可能である。これらは、当業者によく知られている。それらには、アミン窒素原子に結合した水素原子を有さないアミンが含まれる。そのようなアミンには、トリアルキルアミン;トリアリールアミン;トリアリールアルキルアミン;混合アルキル-アリール、アルキル-アリールアルキル、アリール-アリールアルキル又はアルキル-アリール-アリールアルキルアミン;トリシクロアルキルアミン;アルキル-シクロアルキルアミン;アリール-シクロアルキルアミン;環状アミン;例えば:ブチルジメチルアミン、ヘキシルジメチルアミン、イソブチルジメチルアミン、2-エチルヘキシルジメチルアミン、オクチルジメチルアミン、デシルジメチルアミン、ドデシルジメチルアミン、テトラデシルジメチルアミン、ヘキサデシルジメチルアミン、エイコシルジメチルアミン、ドコシルジメチルアミン、トリアコンチルジメチルアミン、トリブチルアミン、ブチルジエチルアミン、イソブチルジエチルアミン、デシルブチルエチルアミン、ヘキサデシルヘキシルメチルアミン、エイコシルジブチルアミン、トリオクチルアミン、トリドデシルアミン、ジエイコシルエチルアミン、ジトリアクチルメチルアミン、N、N、-ジメチルアニリン、N-メチル-N-ドデシルアニリン、シクロペンチルジメチルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、シクロドデシルジメチルアミン、ジフェニルブチルアミン、p-トリルジエチルアミン、α-ナフチルブチルメチルアミン、ベンジルブチルメチルアミン、α-メチルベンジルブチルメチルアミン、4-ブチルベンジルオクチルメチルアミン、ジベンジルブチルアミン、4-ペンチル-ベンジルジブチルアミン、N-ブチルモルホリン、N-メチルモルホリン、N-メチルピペリジン、N-ドデシルピペリジン、N-オクタデシルピペリジン、N-トリアコンチルピペリジン、N-メチルピペラジン、N-ブチルピペラジン、N-オクチルピペラジン、N-フェニルピペリジン、N-ベンジルピペリジン、N-シクロヘキシルピペリジン、ピリジン等が含まれる。N-メチルモルホリンN-オキシドの高い工業需要を考慮して、本発明の重要な態様は、第三級アミンがN-メチルモルホリンである実施形態である。
【0019】
一実施形態では、水性媒体中の第三級アミンの初期濃度、すなわち過酸化水素の添加前の第三級アミンの濃度は、40~95体積%、好ましくは60~85体積%の範囲にある。
【0020】
任意の水性過酸化水素を使用することができる。実用上の考慮事項を考慮して、水性媒体に添加される水性過酸化水素中の過酸化水素の濃度は、10~70重量%、好ましくは29~51重量%の範囲にある。
【0021】
本発明によれば、絶対0.75bar未満の二酸化炭素分圧p(CO2)が水性媒体に課される。「二酸化炭素分圧p(CO2)を水性媒体に課す」は、水性媒体の上方の蒸気空間において且つ水性媒体と直接接触して、規定の二酸化炭素分圧が維持されることを意味することを意図する。
【0022】
本発明者らの知る限り、先行技術は、絶対1barの二酸化炭素分圧での方法を専ら開示している。本発明の絶対0.75bar未満の二酸化炭素分圧p(CO2)によって、水性媒体中に溶解する二酸化炭素の量は制御され得る。溶存二酸化炭素と気相中の二酸化炭素との間に平衡が存在する。高い二酸化炭素分圧は、多量の二酸化炭素が水性媒体中に溶解する結果となり、一方、低い二酸化炭素分圧は、少量の二酸化炭素が水性媒体中に溶解する結果となる。
【0023】
本発明によれば、二酸化炭素分圧p(CO2)は、絶対0.75bar未満であり、希釈ガスが全圧の残りを構成する。
【0024】
一実施形態では、希釈ガスの掃引は、水性媒体の上方の蒸気空間内に維持され、二酸化炭素は、水性媒体を通してバブリングされる。希釈ガスは、蒸気空間内に選択された二酸化炭素分圧p(CO2)を維持するために、水性媒体を通過することなく反応容器のヘッド空間内へ通される。二酸化炭素並びに希釈ガスを意図的に使用して、水性媒体がその下に保持される雰囲気を形成することも可能である。
【0025】
二酸化炭素は、例えば、反応容器の底部に設けられたノズル又はガスランスによって、水性媒体に通してバブリングされる。過剰な二酸化炭素は、溶存二酸化炭素と気相中の二酸化炭素との間の平衡を確立するように水性媒体から出る。
【0026】
より速い平衡化及び二酸化炭素溶解のために、水性媒体を通して二酸化炭素をバブリングすることが好ましい。あまり好ましくないが、水性媒体を通して二酸化炭素と希釈ガスとの混合物を意図的にバブリングすることも可能である。
【0027】
一実施形態では、希釈ガスは、不活性ガス、好ましくは窒素又はアルゴンである。
【0028】
過酸化水素を使用してアミンオキシドをもたらす第三級アミンの酸化反応は、発熱性である。例えば、過酸化水素でのN-メチルモルホリンの酸化反応の発熱性は、酸化されるN-メチルモルホリンの1mol当たり約-160kJである。前記発熱特性は、反応温度を所望の範囲内に制御し、そして安全なプロセス条件を確保するために、例えば、反応が行われる容器上の冷却ジャケットの使用によって、強制的に除去される必要がある反応熱の形成をもたらす。熱除去の問題を軽減するために、水性過酸化水素は、一般に、全てを単一の添加の代わりに、ある期間にわたって添加される。したがって、投与時間は、とりわけ、バッチサイズにより大きく影響を受ける、熱除去の有効性によって支配される。特に大きなバッチサイズが試みられる場合、精密な且つ正確な温度範囲内での反応の実施は、約2~24時間のかなり長い投与時間を必要とする。
【0029】
投与時間は、過酸化水素投与率r(H2O2)と相互に相関する。過酸化水素投与率r(H2O2)は、(最初に存在する第三級アミンの化学量論量に基づいて)第三級アミンの1mol及び1時間当たり投与される過酸化水素のモル数として表すことができる。一実施形態では、過酸化水素投与率r(H2O2)は、第三級アミン1mol及び1時間当たり0.0351mol未満の範囲にある。
【0030】
本発明の更なる態様では、驚くべきことに、最適な結果を得るために、二酸化炭素分圧p(CO2)と過酸化水素投与率r(H2O2)とは好ましくは連係させられることが見出された。これ故に、一実施形態では、絶対bar単位の二酸化炭素分圧p(CO2)は、
p(CO2)=r(H2O2)/z
(式中、zは、1~4h-1bar-1、好ましくは1.5~3h-1bar-1の範囲の変数である)
によって与えられる。
【0031】
過酸化水素投与率r(H2O2)は、水性媒体内で利用可能な未反応過酸化水素の濃度を支配すると考えられ、高い投与率は、それが反応で消費される前により高い過酸化水素濃度をもたらす。式によって定義される限界内で、高い割合の二酸化炭素、好ましくは本質的に全ての二酸化炭素が過酸化水素と反応してペルオキシカーボネートを形成することができることが保証される。結果として、水性媒体中の「遊離」二酸化炭素は、回避されるか、又は少なくとも実質的に低減される。
【0032】
好都合には、過酸化水素は、実質的に一定の投与率で計量供給される。代わりに、過酸化水素投与率は、上記の式の限界内で変えられ得る。
【0033】
好ましくは、過酸化水素投与率は、第三級アミンの1mol及び1時間当たり0.035~0.5mol、より好ましくは第三級アミンの1mol及び1時間当たり0.035~0.15molの範囲にある。
【0034】
例えば、
(i)過酸化水素投与率が第三級アミンの1mol及び1時間当たり0.5~0.25molの範囲にある場合、二酸化炭素分圧は、絶対0.06~0.5barの範囲にあり、
(ii)過酸化水素投与率が第三級アミンの1mol及び1時間当たり0.25未満~0.1molの範囲にある場合、二酸化炭素分圧は、絶対0.025~0.25barの範囲にあり、及び
(iii)過酸化水素投与率が第三級アミンの1mol及び1時間当たり0.1未満~0.035molの範囲にある場合、二酸化炭素分圧は、絶対0.009~0.1barの範囲にある。
【0035】
本発明によれば、過酸化水素の総量は、化学量論量未満である。好ましくは、使用される過酸化水素の総量は、第三級アミンの1mol当たり50mol%~99mol%、より好ましくは80mol%~90mol%未満、特に85mol%~90mol%未満の範囲にある。これは、反応に導入された過酸化水素の実質的に完全な消費を確実にする。結果として、アミンオキシドは、アミンオキシドの重量に対して、50ppm未満の過酸化水素を含有する。好ましくは、アミンオキシドは、10ppm未満のH2O2を含有する。残留過酸化水素の濃度は、酸性溶液中の水性硫酸セリウム(IV)での電位差滴定によって測定することができる。
【0036】
一実施形態では、第三級アミンは、絶対0.01~5barの範囲の圧力で水と最小沸点共沸混合物を形成する。前記共沸混合物が、言及された範囲の1つの圧力で形成されれば十分である。これらの状況下で、未反応のアミンは、水との共沸混合物として除去され得る。例えば、好適な第三級アミンは、N-メチルモルホリンである。
【0037】
一実施形態では、反応混合物のワーク-アップは、第三級アミンオキシド溶液を蒸留に供して、水及び/又は未反応の第三級アミンの水-共沸混合物を除去することを含む。この目的のために、未反応のアミンと水との共沸混合物は、共沸混合物の沸点よりも低い沸点を有する化合物と一緒に、粗反応混合物から直接、好ましくは蒸留塔において留去される。
【0038】
好ましくは、蒸留は、連続蒸留として実施される。共沸混合物の沸点よりも低い沸点を有する化合物は、蒸留塔の最上部で取り出され、一方、共沸混合物は、蒸留塔の第1のサイドドローによって取り出される。一実施形態では、蒸留は、50~300mbarの範囲の圧力で実施される。
【0039】
未反応の第三級アミンの除去された水-共沸混合物は、好適には、過酸化水素との反応にリサイクルされる。蒸留によって得られるような未反応の第三級アミンの水-共沸混合物が40~95体積%の範囲外の第三級アミンの濃度を有する場合、第三級アミンの濃度は調整され得る。これは、第三級アミンの濃度が高すぎる場合に水が添加されるか、又は第三級アミンの濃度が低すぎる場合に第三級アミンが添加されかのいずれかを意味する。
【0040】
一般に、本方法の出発原料、すなわち第三級アミンは、避けられない不純物を含有し得る。例えば、N-メチルモルホリンは、ほぼ常に微量のモルホリンを含有する。モルホリンは、副反応で酸化されて、着色副生成物としてモルホリンオキシドをもたらし得る。そのような着色副生成物は、アミンオキシド製品の色にとって決定的に重要であり、それ故回避されるべきである。これらの不純物の蓄積を回避するために、不純物は、連続蒸留塔の追加のサイドドローによって適切にパージされ得る。追加のサイドドローの位置は、不純物の性質、特に沸点に依存する。ほとんどの場合、前記追加のサイドドローは、蒸留塔の第1のサイドドローの下に位置する。
【0041】
未反応のアミンの実質的に全てを留去した後、残りの残留物は、アミンオキシド及び水から本質的になる。アミンオキシドは、水溶液として一般的に貯蔵される及び/又は分配される。有利には及び好ましくは、アミンオキシド及び水から本質的になる得られた残留物は、いかなる追加の精製又は処理ステップも必要としない、すぐに使用できる市販の製品である。しかしながら、必要に応じて、例えば未反応のアミンの全て除去するために非常に多量の水が留去される必要がある場合、消費者ニーズ及び/又は貯蔵安定性を考慮して水性アミンオキシドの濃度を調節するために、追加の水が蒸留底に添加されてもよい。
【0042】
反応は、広い温度範囲にわたって行うことができる。温度は、反応を妥当な速度で進行させるのに十分に高いが、反応物又は生成物の分解をもたらすほどには高くないものであるべきである。一実施形態では、本方法は、20~90℃、好ましくは20~65℃の温度で行われる。
【0043】
本発明の方法は、実質的にニトロソアミンを含まないアミンオキシドをもたらす。ニトロソアミンの含有量に関連して、用語「実質的に含まない」は、ニトロソアミンが、アミンオキシドの重量に対して50ppb未満の微量で汚染物質としてアミンオキシド中に存在することを意味する。
【0044】
本発明の方法は、実質的に無色のアミンオキシドをもたらす。アミンオキシドの変色に関連して、用語「実質的に無色」は、450nmで2%/cm未満の吸光度を有するアミンオキシドの50重量%水溶液を指す。吸光度は、20℃の温度でUV/VIS分光計デバイス(例えば、Perkin Elmerから入手可能な)を使用して測定される。
【0045】
代わりに、アミンオキシドの変色は、APHA色数によって特徴付けられ得る。好ましくは、アミンオキシドは、100未満のAPHA色数を有する。APHA色数は、試料と、既知濃度のクロロ白金酸コバルトの溶液との視覚的比較に基づく標準方法である。色の単位は、クロロ白金酸イオンの形態での1mg白金/Lによって生み出されるものである。
【0046】
本発明の方法は、実質的にニトロソアミンを含まず、実質的に過酸化物を含まず、且つ実質的に無色であるアミンオキシドを得ることを可能にする。望ましい特徴のこの独特な組み合わせは、酸化及び蒸留を含むにすぎない方法においてこれまで達成されていなかった。それ故に、本発明は、更に、N-メチルモルホリンN-オキシドの重量に対して、50ppb未満のニトロソアミン含有量及び20ppm未満の過酸化物含有量、並びにN-メチルモルホリンN-オキシドの50重量%水溶液として450nmで2%/cm未満の吸光度を有するN-メチルモルホリンN-オキシドに関する。
【実施例】
【0047】
本発明は、以下の実施例に基づいて更に説明する及び例示することができる。
【0048】
実施例1
N-メチルモルホリンの水溶液(NMM、63重量%;1.01kg、1.0eq.)を1.6Lの二重壁ガラス反応器に入れた。前記反応器に、クロスバー撹拌機、還流冷却器、温度計、CO2(3.0)ラインに接続されたフリット取り付けガラス管、N2(技術)ラインに接続されたガス入口(管なし)及びH2O2投与ライン(ダイヤフラム計量供給ポンプに接続されたテフロン管)を備え付けた。H2O2は、ガラスリザーバーから供給した。反応は、絶対1.0barで実施した。
【0049】
水溶液を、一定の窒素流(1.5L/h)下で50℃の温度に加熱した。50℃の温度に達した後、CO2の投与を0.15L/hの流れで開始した。流れと全圧との比から、91mbarのCO2分圧を計算することができる。
【0050】
60分後に、H2O2の投与を、0.93mL/分(すなわち0.15mol/(mol・h);z=1.65h-1bar-1)のH2O2の流れで開始した(50重量%の水性H2O2、395g、0.9eq.)。H2O2の投与中、温度を50℃に維持し、CO2及びN2の投与を継続した。
【0051】
H2O2の投与が終了した後、反応混合物中のH2O2の濃度をセリウム滴定によって測定した。50℃での撹拌並びにCO2及びN2の投与を、反応混合物中の残留H2O2の濃度が50ppm未満になるまで維持した(約1h)。
【0052】
その後、CO2の投与を停止し、反応混合物を室温まで冷却させた。還流冷却器を蒸留装置(凝縮器及び真空ポンプ)で交換し、水及びNMMを50℃のサンプ温度で留去した(2留分、第1の留分、約150mbarで収集:133g、第2の留分、約80mbarで収集:188g)。
【0053】
水(308g)を蒸留残留物に添加し、22のAPHA色数、1.2%の450nmでの吸光度、及び20ppb未満のN-ニトロソモルホリン含有量を有する1328gのN-メチルモルホリンN-オキシド(NMMO)の49.6重量%水溶液を得た。
【0054】
実施例2
N-メチルモルホリンの水溶液(NMM、63重量%;1.01kg、1.0eq.)を1.6Lの二重壁ガラス反応器に入れた。前記反応器に、クロスバー撹拌機、還流冷却器、温度計、CO2(3.0)ラインに接続されたフリット取り付けガラス管、N2(技術)ラインに接続されたガス入口(管なし)及びH2O2投与ライン(ダイヤフラム計量供給ポンプに接続されたテフロン管)を備え付けた。H2O2は、ガラスリザーバーから供給した。反応は、絶対1.0barで実施した。
【0055】
水溶液を、一定の窒素流(1.5L/h)下で50℃の温度に加熱した。50℃の温度に達した後、CO2の投与を0.50L/hの流れで開始した。流れと全圧との比から、250mbarのCO2分圧を計算することができる。
【0056】
60分後に、H2O2の投与を、0.93mL/分(すなわち0.15mol/(mol・h);z=0.6h-1bar-1)のH2O2の流れで開始した(50重量%水性H2O2、395g、0.9eq.)。H2O2の投与中、温度を50℃に維持し、CO2及びN2の投与を継続した。
【0057】
H2O2の投与が終了した後、反応混合物中のH2O2の濃度をセリウム滴定によって測定した。50℃での撹拌並びにCO2及びN2の投与を、反応混合物中の残留H2O2の濃度が50ppm未満になるまで維持した(約30分)。
【0058】
その後、CO2の投与を停止し、反応混合物を室温まで冷却させた。還流冷却器を蒸留装置(凝縮器及び真空ポンプ)で交換し、水及びNMMを50℃のサンプ温度で留去した(2留分、第1の留分、約150mbarで収集:145g、第2の留分、約80mbarで収集:162g)。
【0059】
水(312g)を蒸留残留物に添加し、296のAPHA色数、4.3%の450nmでの吸光度、及び20ppb未満のN-ニトロソモルホリン含有量を有する1318gのN-メチルモルホリンN-オキシド(NMMO)の50.1重量%水溶液を得た。
【0060】
実施例3
N-メチルモルホリンの水溶液(NMM、63重量%;1.01kg、1.0eq.)を1.6Lの二重壁ガラス反応器に入れた。前記反応器に、クロスバー撹拌機、還流冷却器、温度計、CO2(3.0)ラインに接続されたフリット取り付けガラス管、N2(技術)ラインに接続されたガス入口(管なし)及びH2O2投与ライン(ダイヤフラム計量供給ポンプに接続されたテフロン管)を備え付けた。H2O2は、ガラスリザーバーから供給した。反応は、絶対1.0barで実施した。
【0061】
水溶液を、一定の窒素流(1.5L/h)下で50℃の温度に加熱した。50℃の温度に達した後、CO2の投与を0.05L/hの流れで開始した。流れと全圧との比から、32mbarのCO2分圧を計算することができる。
【0062】
60分後に、H2O2の投与を、0.93mL/分(すなわち、0.15mol/(mol・h)、z=4.69h-1bar-1)のH2O2の流れで開始した(50重量%水性H2O2、395g、0.9eq.)。H2O2の投与中、温度を50℃に維持し、CO2及びN2の投与を継続した。
【0063】
H2O2の投与が終了した6時間後に、CO2の投与を停止し、反応混合物を室温まで冷却させた。還流冷却を蒸留装置(凝縮器及び真空ポンプ)で交換し、水及びNMMを50℃のサンプ温度で留去した(2留分、第1の留分、約150mbarで収集:143g、第2の留分、約80mbarで収集:170g)。
【0064】
水(322g)を蒸留残留物に添加し、10のAPHA色数、0.5%の450nmでの吸光度、1200ppmのH2O2含有量及び180ppbのN-ニトロソモルホリン含有量を有する1329gのN-メチルモルホリンN-オキシド(NMMO)の49.6重量%水溶液を得た。
【0065】
比較例1
N-メチルモルホリン(NMM、101.1g、1.0eq.)及び水(37.5mL;73重量%のNMMと27重量%の水との混合物をもたらす)を250mLの二重壁ガラス反応器に入れた。前記反応器に、クロスバー撹拌機、還流冷却器、温度計、CO2(3.0)ラインに接続されたフリット取り付けガラス管及びH2O2投与ライン(ダイヤフラム計量供給ポンプに接続されたテフロン管)を備え付けた。反応器(冷却器を含む)内の水相の上方のヘッドスペースは、約500mLであった H2O2は、ガラスリザーバーから供給した。反応は、絶対1.0barで実施した。
【0066】
水溶液を、撹拌せずに2時間、CO2の一定流(1.0L/h)下で50℃の温度に加熱した。合計で、その時間の間に2LのCO2を供給し、それは反応器のヘッドスペース体積の約4倍に相当し、したがって前の雰囲気を純粋なCO2で本質的に置き換えるのに十分であった。
【0067】
次いで、H2O2の投与を、0.21mL/分(すなわち、0.225mol/(mol・h);z=0.23h-1bar-1)のH2O2流れで開始した(50重量%の水性H2O2、61.2g、0.9eq.)。H2O2の投与中、温度を50℃に維持し、CO2の投与を0.1L/hの流れで継続した。
【0068】
H2O2の投与が終了した後、反応混合物中のH2O2の濃度をセリウム滴定によって測定した。50℃での撹拌及びCO2の投与を、H2O2の濃度が50ppm未満になるまで維持した(約10分)。
【0069】
その後、CO2の投与を停止し、反応混合物を室温まで冷却させた。還流冷却器を蒸留装置(凝縮器及び真空ポンプ)で交換し、水及びNMMを50℃のサンプ温度で留去した(2留分、第1の留分、約150mbarで収集:21.9g、第2の留分、約80mbarで収集:25.7g)。
【0070】
水(59.2g)を蒸留残留物に添加し、297のAPHA色数、4.9%の450nmでの吸光度、及び20ppb未満のN-ニトロソモルホリン含有量を有する208.4gのN-メチルモルホリンN-オキシド(NMMO)の50.1重量%水溶液を得た。
【0071】
比較例2
n-メチルモルホリン(NMM、101.1g、1.0eq.)及び水(37.5mL;73重量%のNMMと27重量%の水との混合物をもたらす)を250mLの二重壁ガラス反応器に入れた。前記反応器に、クロスバー撹拌機、還流冷却器、温度計、CO2(3.0)ラインに接続されたフリット取り付けガラス管及びH2O2投与ライン(ダイヤフラム計量供給ポンプに接続されたテフロン管)を備え付けた。H2O2は、ガラスリザーバーから供給した。反応は、絶対1.0barで実施した。
【0072】
水溶液を、撹拌しながら2時間、CO2(0.082L/h)及び窒素(0.353L/h)の一定流下で50℃の温度に加熱した。流れと全圧との比から、188mbarのCO2分圧を計算することができる。
【0073】
次いで、H2O2の投与を、0.34mL/分(すなわち、0.362mol/(mol・h);z=1.92h-1bar-1)のH2O2流れで開始した(50重量%水性H2O2、71.4g、1.05eq.)。H2O2の投与中、温度を50℃に維持し、CO2及びN2の投与を継続した。
【0074】
H2O2の投与が終了した後、50℃での撹拌並びにCO2及びN2の投与を16時間維持した。その後、CO2の投与を停止し、反応混合物を室温まで冷却させた。
【0075】
24.0gの水を添加して、33のAPHA色数、0.6%/cmの450nmでの吸光度、及び20ppb未満のN-ニトロソモルホリン含有量を有する233.3gのN-メチルモルホリンN-オキシド(NMMO)の50.1重量%水溶液を得た。混合物は、0.716重量%の過酸化水素を含有した。
【0076】
この混合物のアリコート(約100g)に二酸化マンガン(0.5g)を添加し、それは、激しいガス形成をもたらした。ガス形成が終わったとき、混合物は本質的に過酸化水素を含まなかった(セリウム滴定により測定されるように)が、APHA色数は236であった。室温で4日間放置すると、APHA色数は更に増加し、最終的にスケール(1000超)を超え、吸光度は6.9%/cmであった。この混合物の別のアリコート(約100g)に、炭上の白金(2.0g、57重量%の水、Pt含有量:5.0重量%の固形分)を添加し、それは、激しいガス形成をもたらした。ガス形成が終わったとき、混合物は、本質的に過酸化水素を含まず(セリウム滴定によって測定されるように)、APHA色数は78であった。室温で4日間放置すると、APHA色数は527に増加し、吸光度は3.9%/cmであった。
【0077】
実施例4
トリエチルアミン(101.3g、1.0eq.)及び水(10.0mL;91重量%のNMMと9重量%の水との混合物を与える)を250mLの二重壁ガラス反応器に入れた。前記反応器に、クロスバー撹拌機、還流冷却器、温度計、CO2(3.0)ラインに接続されたフリット取り付けガラス管及びH2O2投与ライン(ダイヤフラム計量供給ポンプに接続されたテフロン管)を備え付けた。H2O2は、ガラスリザーバーから供給した。反応は、絶対1.0barで実施した。
【0078】
水性混合物を、一定の窒素流(0.70L/h)下で50℃の温度に加熱した。50℃の温度に達した後、CO2の投与を0.164L/hの流れで開始した。流れと全圧との比から、190mbarのCO2分圧を計算することができる。
【0079】
60分後に、H2O2の投与を、0.286mL/分(すなわち、0.30mol/(mol・h);z=1.57h-1bar-1)のH2O2の流れで開始した(50重量%の水性H2O2、61.2g、0.9eq.)。H2O2の投与中、温度を50℃に維持し、CO2及びN2の投与を継続した。
【0080】
H2O2の投与が終了した後、反応混合物中のH2O2の濃度をセリウム滴定によって測定した。50℃での撹拌及びCO2の投与を、H2O2の濃度が50ppm未満になるまで維持した(約180分)。
【0081】
その後、CO2の投与を停止し、反応混合物を室温まで冷却させた。還流冷却器を蒸留装置(凝縮器及び真空ポンプ)で交換し、水及びトリエチルアミンを50℃のサンプ温度で留去した(1留分、約100mbarで収集:35.3g)。
【0082】
水(47.6g)を蒸留残留物に添加し、29のAPHA色数、0.8%の450nmでの吸光度、及び20ppb未満のN-ニトロソジエチルアミン含有量を有する210.1gのトリエチルアミンN-オキシドの49.7重量%水溶液を得た。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的にニトロソアミンを含まず、実質的に過酸化物を含まず、実質的に無色のアミンオキシド溶液を製造するための方法であって、前記方法が、絶対0.75bar未満の二酸化炭素分圧p(CO
2)を有する蒸気空間を水性媒体に課しながら、アミンオキシドを形成することができる第三級アミンを前記水性媒体中で化学量論量未満の水性過酸化水素と反応させることを含み、
ここで、
前記水性過酸化水素が、第三級アミンの1mol及び1時間当たり0.035~1mol未満の範囲の過酸化水素投与率r(H
2
O
2
)で前記第三級アミンの水溶液中へ計量供給され、
絶対bar単位の前記二酸化炭素分圧p(CO
2
)は、
p(CO
2
)=r(H
2
O
2
)/z
(式中、zは、1~4h
-1
bar
-1
の範囲の変数である)
で与えられる、方法。
【請求項2】
希釈ガスの掃引は、前記水性媒体の上方の前記蒸気空間内に維持され、二酸化炭素は、前記水性媒体を通してバブリングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記希釈ガスは不活性ガスである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記水性媒体中の第三級アミンの濃度は、40~95体積%の範囲にある、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、10~70重量%の水性過酸化水素を前記水性媒体に添加することを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
使用される過酸化水素の総量は、第三級アミンの1mol当たり50~99mol%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
20~90℃の温度で行われる、
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第三級アミンは、絶対0.01~5barの範囲の圧力で水と最小沸点共沸混合物を形成する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第三級アミンはN-メチルモルホリンである、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第三級アミンオキシド溶液を蒸留に供して、水及び/又は未反応の第三級アミンの水-共沸混合物を除去することを含む、
請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記蒸留は、50~300mbarの範囲の圧力で実施される、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記除去された未反応の第三級アミンの水-共沸混合物は、過酸化水素との反応にリサイクルされる、
請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記アミンオキシドは、アミンオキシドの重量に対して、50ppb未満のニトロソアミン含有量を有する、
請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記アミンオキシドの50重量%水溶液は、450nmで2%/cm未満の吸光度を有する、
請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記アミンオキシドの50重量%水溶液は、100未満のAPHA色数を有する、
請求項14に記載の方法。
【国際調査報告】