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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-07-10
(54)【発明の名称】脂肪酸化合物
(51)【国際特許分類】
   C07C 233/49 20060101AFI20250703BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250703BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20250703BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20250703BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250703BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20250703BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20250703BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20250703BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20250703BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20250703BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20250703BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20250703BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20250703BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250703BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20250703BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20250703BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20250703BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20250703BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20250703BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250703BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250703BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20250703BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20250703BHJP
   A61K 35/60 20060101ALI20250703BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20250703BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20250703BHJP
   A61K 31/202 20060101ALI20250703BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20250703BHJP
   A61K 31/341 20060101ALI20250703BHJP
   A61K 31/20 20060101ALI20250703BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20250703BHJP
   C07D 307/54 20060101ALI20250703BHJP
   C07C 233/47 20060101ALI20250703BHJP
【FI】
C07C233/49
A61P43/00 121
A61P3/06
A61P3/10
A61P29/00
A61P9/12
A61P9/00
A61P9/10 101
A61P9/10
A61P17/00
A61P17/10
A61P19/02
A61P1/04
A61P17/06
A61P29/00 101
A61P35/00
A61P37/02
A61P11/06
A61P11/00
A61P13/12
A61P15/00
A61P35/02
A61P25/00
A61P1/16
A61P1/18
A61K35/60
A61P21/00
A61P25/02
A61P43/00 111
A61K31/202
A61P3/04
A61K31/341
A61K31/20
A61K31/198
C07D307/54 CSP
C07C233/47
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024574709
(86)(22)【出願日】2023-06-23
(85)【翻訳文提出日】2025-02-18
(86)【国際出願番号】 US2023068990
(87)【国際公開番号】W WO2023250486
(87)【国際公開日】2023-12-28
(31)【優先権主張番号】63/355,290
(32)【優先日】2022-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504279968
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ピッツバーグ - オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケイション
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(71)【出願人】
【識別番号】520061826
【氏名又は名称】ザ ボード オブ スーパーバイザーズ オブ ルイジアナ ステート ユニバーシティ アンド アグリカルチュラル アンド メカニカル カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ロワート, パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ショップファー, フランシスコ ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】サルバトーレ, ソニア アール.
(72)【発明者】
【氏名】チャン, フェイ
(72)【発明者】
【氏名】ロム, オレン
【テーマコード(参考)】
4C086
4C087
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BA03
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA22
4C086ZA36
4C086ZA42
4C086ZA45
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA68
4C086ZA70
4C086ZA75
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4C086ZA89
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4C087ZA02
4C087ZA22
4C087ZA36
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4C087ZA45
4C087ZA59
4C087ZA66
4C087ZA68
4C087ZA70
4C087ZA75
4C087ZA81
4C087ZA89
4C087ZA94
4C087ZA96
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4C087ZB11
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4C087ZC35
4C087ZC41
4C087ZC75
4C206AA01
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4C206GA37
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
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4C206NA14
4C206ZA01
4C206ZA02
4C206ZA22
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4C206ZA59
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4C206ZA81
4C206ZA89
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4C206ZA96
4C206ZB05
4C206ZB11
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4C206ZB26
4C206ZB27
4C206ZC33
4C206ZC35
4C206ZC41
4C206ZC75
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB20
4H006BS10
4H006BV22
(57)【要約】
フラン脂肪酸合成化合物およびフラン脂肪酸-アミノ酸コンジュゲートが、本明細書で開示される。被験体において非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を処置するための方法であって、本明細書で開示される任意の化合物の治療有効量を被験体に投与するステップを含む、方法が、本明細書でさらに開示される。被験体においてTG誘導性膵炎および単一遺伝子脂質異常症を処置するための方法であって、本明細書で開示される任意の化合物の治療有効量を被験体に投与するステップを含む、方法が、本明細書でさらに開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
の構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルであって、
ここで、各Rは独立して、水素、C~Cアルキル、C~Cハロアルキルまたはハロゲンであり、ただし、少なくとも1つのRは、C~Cアルキル、C~Cハロアルキルまたはハロゲンであり;Xは、O、SまたはNHであり;‘Rは、C~Cアルキルであり;Zは、C~Cアルキル、C~Cハロアルキルまたはハロゲンであり;R”は、水素またはアルキルであり;R’’’は、天然のL-アミノ酸の側鎖であり;nは、1~10であり;mは、0~10である、化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【請求項2】
【化42】
【化43】
の構造を有する、請求項1に記載の化合物であって、
ここで、各Rは独立して、水素、C~Cアルキル、C~Cハロアルキルまたはハロゲンであり、ただし、少なくとも1つのRは、C~Cアルキル、C~Cハロアルキルまたはハロゲンであり;Xは、O、SまたはNHであり;‘Rは、C~Cアルキルであり;Zは、C~Cアルキル、C~Cハロアルキルまたはハロゲンであり;R”は、水素またはアルキルであり;nは、1~10である、化合物。
【請求項3】
両方のR基が水素ではない、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
両方のR基が同じである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項5】
各R基が独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、フッ素または塩素である、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
各R基がメチルである、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
R’’’が、水素またはイソブチルである、請求項1、3、4、5または6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
【化44】
【化45】
【化46】
の構造を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項10】
被験体においてメタボリックシンドロームを処置するための方法であって、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物の治療有効量を前記被験体に投与するステップを含む、方法。
【請求項11】
被験体において脂質異常、インスリン抵抗性、炎症、心臓疾患、心血管疾患(例えば、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)、脳卒中)、2型糖尿病(T2D)、脂質異常症、高トリグリセリド血症、免疫細胞および炎症性細胞における酸化的リン酸化から解糖への代謝切り換えを要求する免疫性状態および炎症性状態、皮膚関連脂質疾患、ざ瘡、化膿性汗腺炎、変形性関節症、クローン病、乾癬、関節リウマチ、肥満関連がん、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、喘息、慢性閉塞性肺疾患、慢性腎臓疾患、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、ウイルソン病、白血病、神経膠芽腫、乳房がん、膵がん、非小細胞肺がん、リンパ腫、肝臓がん、肺がん、結腸直腸がん、黒色腫、腎臓がん、骨肉腫、神経膠芽腫、多発性硬化症、パーキンソン病、または筋萎縮性側索硬化症を処置するための方法であって、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物の治療有効量を前記被験体に投与するステップを含む、方法。
【請求項12】
被験体において非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)を処置するための方法であって、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物の治療有効量を前記被験体に投与するステップを含む、方法。
【請求項13】
被験体において非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を処置するための方法であって、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物の治療有効量を前記被験体に投与するステップを含む、方法。
【請求項14】
被験体においてTG誘導性膵炎および単一遺伝子脂質異常症を処置するための方法であって、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物の治療有効量を前記被験体に投与するステップを含む、方法。
【請求項15】
請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物と、魚油およびオメガ-3のうちの少なくとも1つとを、被験体に共投与するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年6月24日出願の米国仮特許出願第63/355,290号の利益を主張し、この米国仮特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府支援の確認
本発明は、National Institutes of Healthによって授与された助成金番号AT009806;DK112854およびGM125944の下で、政府の支援によってなされた。政府は、本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
肥満は、世界の人口の35%超が罹患する多因子疾患であることが公知であり、世界中で蔓延といえる割合に達している。西洋諸国における過体重のヒトの有病率は、代謝疾患の非常に大きなリスクならびに大きなヘルスケアコストをもたらしている。肥満関連状態には、心臓疾患、脳卒中、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎、2型糖尿病(T2D)(type2 diabetes(T2D)mellitus)およびある特定の型のがんが含まれる。
【0004】
NAFLDは、成人における、慢性の、ますます一般的になった、明確に定義された肝臓障害である。NAFLDには、最終的に、肝臓脂肪症、高トリグリセリド血症および高血糖症をもたらす、異なる別個の病態生理学的変化、例えば、de novo脂肪生成(DNL)および超低密度リポタンパク質(VLDL)の産生における増加、肝脂肪酸(FA)酸化の減少、ならびに肝グルコース産生の損なわれたインスリン媒介性抑制が付随する。これらの因子は全て、メタボリックシンドローム(MetS)のクラスターであることが公知である。
【0005】
メタボリックシンドロームは、インスリン抵抗性、肥満、低グレートの炎症および脂質異常症に関連する代謝欠損のクラスターを示す。アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)は、メタボリックシンドロームを有する患者についての死亡率の主要な原因である。脂質異常症を有する糖尿病患者は、リポタンパク質異常を有さない糖尿病患者よりも有意に高いASCVDリスクにさらされる。多剤併用アプローチ(即ち、各調節不全の生理学的リスク因子を正常化するための特定の処置を使用する)が、一般に、糖尿病患者のこのサブセットを処置するために採用される。具体的には、患者は、それらの脂質異常症について、既に処方された血糖降下薬物適用の上位にある、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)低減剤(例えば、スタチン、エゼチミブおよび/またはPCSK9阻害剤)で主に処置されている。糖尿病患者(主に2型糖尿病(Type2 Diabetes))を用いた臨床試験は、LDL-Cの低減が、主要な有害な心事象のより低い発生率と正に相関することを示している。しかし、スタチンの利益は、筋肉痛のより高いリスクによって相殺され、さらには、患者における糖尿病の時折の開始を生じ得、より低い最大耐投薬量またはさらには中止、および処置への低い順守をもたらす。より重要なことに、患者がASCVD処置のためのスタチンに忍容性を示す場合でさえ、著しい残留心血管リスクが、特に、糖尿病を有する患者において、持続する。
【0006】
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は、アルコールをほとんど~全く飲まない人が罹患するある範囲の肝臓状態をカバーしている。NAFLDを有する被験体では、過剰な量の脂肪が肝臓細胞中に貯蔵される。NAFLDは、世界中、特に西洋諸国において有病率が増加しており、肥満と密接に関連している。米国では、これは、最も一般的な形態の慢性肝臓疾患であり、推定で8000万~1億人が罹患している。NAFLDは、肥満および2型糖尿病が含まれる他の併存疾患を有し、心臓疾患の高いリスクがある被験体において、40~60歳の年齢群において特に有病率が高い。アルコール性肝臓疾患を有する患者は、AFLD(アルコール性脂肪肝疾患)をもたらすアルコール摂取から起こる脂肪蓄積から生じる類似のセットの健康問題を共有する。
【0007】
NAFLD被験体は、疾患の身体症状を示していてもいなくてもよい。症状には、肥大した肝臓、疲労、および右上腹部における疼痛が含まれる。身体症状がない場合、NAFLDは、生化学的試験、例えば、肝臓酵素および超音波エラストグラフィーを介して診断され得る。NAFLDは、ルー・Y胃バイパス術、スリーブ状胃切除術または胃バンディング術が含まれる肥満手術で処置され得るが、それは、これらが、脂肪症および脂肪性肝炎を改善するからである。
【0008】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、瘢痕および不可逆的な損傷をもたらし得る肝臓炎症が含まれる、潜在的に重篤な形態の疾患である。その最も重症なものでは、NASHは、硬変および肝不全へと進行し得る。NASH症状には、腹部腫脹、皮膚の表面のすぐ下の肥大した血管、男性における肥大した乳房、肥大した脾臓、赤い手のひら、ならびに皮膚および眼の黄変(黄疸)が含まれ得る。NASHは、肥満、脂質異常症、2型糖尿病およびメタボリックシンドロームとも強く関連している。現在、US Food and Drug Administrationによって承認されているNASH特異的治療は存在しない。
【0009】
蓄積していく証拠が、体重減少に対する魚油(FO)の有益な効果を示唆している。FO由来食は、必須オメガ-3(Ω-3)FAを提供し、ヒトおよび動物モデルにおいて、肝臓脂肪症、高トリグリセリド血症、FA合成を予防し、脂肪蓄積を低減させることが示されている。FOおよびΩ-3は、メタボリックシンドローム関連事象を低減させることが示されているエイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸ならびにそれらのそれぞれのエチルエステルと共に、高トリグリセリド血症に対する有効な処置である。Ω-3酸エチルエステル処方であるLovazaTMが、現在、ヒトにおいて高トリグリセリド血症を低減させるために使用されている。LovazaTM処置された患者は、尿および血漿中に、高レベルの、3-カルボキシ-4-メチル-5-プロピル-2-フランプロパン酸(CMPF)と同定された特定の代謝物を示したことが報告されている(Prentice, K. J. et al. CMPF, a Metabolite Formed Upon PrescriptionOmega-3-Acid Ethyl Ester Supplementation, Prevents and Reverses Steatosis.EBioMedicine 27, 200-213 (2018))。
【0010】
ヒトでは、CMPFは、フランFA(FuFA)の代謝によって産生され、したがって、ウロフラン酸(urofuranoic acid)と考えられる。FuFAは、藻類および細菌によって合成される脂質であり、植物由来および魚類由来の産物中で見出される。それにもかかわらず、魚類、ラットおよびヒトは、FuFAをde novoで合成することができないことが証明されている。FuFAは、抗炎症効果(Chang, F., Hsu, et al., Synthesis of anti-inflammatory furan fattyacids from biomass-derived 5-(chloromethyl)furfural. Sustain. Chem. Pharm. 1,14-18 (2015);Lee, E. S. et al. Potent analgesic and anti-inflammatoryactivities of 1-furan-2-yl-3-pyridin-2-yl-propenone with gastric ulcer sparingeffect. Biol Pharm Bull 29, 361-364 (2006);Tenikoff, D. et al, (Lyprinol(stabilised lipid extract of New Zealand green-lipped mussel): a potentialpreventative treatment modality for inflammatory bowel disease J.Gastroenterol. 361-365 (2005) doi:10.1007/s00535-005-1551-x;Whitehouse, M. W.I. et al. Anti-inflammatory activity of a lipid fraction (Lyprinol) from the NZgreen-lipped mussel. Inflammooharmacology 5, 237-246 (1997));Wakimoto, T. etal. Furan fatty acid as an anti-inflammatory component from the green-lippedmussel Perna canaliculus Toshiyuki. Proc Natl Acad Sci U S A 108, 17533-17537(2011) doi: 10.1073/pnas.1110577108.)および抗酸化効果(Xu, L. et al. Furan fatty acids -Beneficial or harmful to health? Prog. Lipid Res. 68, 119-137 (2017);Okada, Y.et al. Antioxidant Effect of Naturally Occurring Furan Fatty Acids on Oxidationof Linoleic Acid in Aqueous Dispersion Youji. J. Am. Oil Chem. Soc. 11, 858-862(1990);Batna, A. & Spiteller, G. Effects of soybean lipoxygenase-1 onphosphatidylcholines containing furan fatty acids. Lipids 29, 397-403 (1994))を発揮することが公知である。
【0011】
脂質代謝の調節不全は、NAFLDおよびメタボリックシンドロームの原因として長く確立されている。より最近、アミノ酸代謝における変更が、心血管疾患(CVD)が含まれる他の代謝障害の間で共有される、NASH進行の重要な構成要素として出現してきた。アミド結合によって縮合した脂肪酸およびアミノ酸から構成されるN-アシルアミノ酸(NAA)(例えば、N-オレオイルロイシンまたはC18:1-Leu)は、脂質およびアミノ酸のシグナル伝達を統合し、NASH患者では、血漿中でのより低いレベルを有する。マウスの腹腔内投与を介したC18:1-Leuの補給は、樹立されたNASHを有するマウスにおいて、血漿レベルおよび代謝恒常性を回復させ、脂肪症を改善し、炎症および線維症を低下させた(PCT/US2021/46357を参照されたい)。肝臓における炎症促進性/線維症経路の下方調節(ccl2、NF-kB抑制)と共に、PPARα活性化を介した脂肪酸β酸化(FAO)経路の著しい上方調節は、NASHにおける改善に寄与した。内因性NAAは、代謝および抗炎症において有望な薬理学的利益を示したが、それらの経口バイオアベイラビリティは、腸内の酵素が化合物を容易に分解したために低く、これが経口投与を妨げている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2022/040222号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Prentice,K. J. et al. CMPF, a Metabolite Formed Upon Prescription Omega-3-Acid EthylEster Supplementation, Prevents and Reverses Steatosis. EBioMedicine 27,200-213 (2018)
【非特許文献2】Chang,F., Hsu, et al., Synthesis of anti-inflammatory furan fatty acids frombiomass-derived 5-(chloromethyl)furfural. Sustain. Chem. Pharm. 1, 14-18 (2015)
【非特許文献3】Lee, E. S. et al. Potent analgesic and anti-inflammatory activitiesof 1-furan-2-yl-3-pyridin-2-yl-propenone with gastric ulcer sparing effect.Biol Pharm Bull 29, 361-364 (2006)
【非特許文献4】Tenikoff,D. et al, Lyprinol (stabilised lipid extract of New Zealand green-lippedmussel): a potential preventative treatment modality for inflammatory boweldisease J. Gastroenterol. 361-365 (2005) doi:10.1007/s00535-005-1551-x
【非特許文献5】Whitehouse, M. W. I. et al. Anti-inflammatory activity of a lipidfraction (Lyprinol) from the NZ green-lipped mussel. Inflammooharmacology 5,237-246 (1997))
【非特許文献6】Wakimoto, T. et al. Furan fatty acid as an anti-inflammatorycomponent from the green-lipped mussel Perna canaliculus Toshiyuki. Proc NatlAcad Sci U S A 108, 17533-17537 (2011) doi: 10.1073/pnas.1110577108.
【非特許文献7】Xu, L. et al. Furan fatty acids - Beneficial or harmful to health?Prog. Lipid Res. 68, 119-137 (2017)
【非特許文献8】Okada, Y. et al. Antioxidant Effect of Naturally Occurring FuranFatty Acids on Oxidation of Linoleic Acid in Aqueous Dispersion Youji. J. Am.Oil Chem. Soc. 11, 858-862 (1990)
【非特許文献9】Batna, A. & Spiteller, G. Effects of soybean lipoxygenase-1 onphosphatidylcholines containing furan fatty acids. Lipids 29, 397-403 (1994)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
概要
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
の構造を有する、化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルであって、
ここで、各Rは独立して、水素、C~Cアルキル、C~Cハロアルキルまたはハロゲンであり、ただし、少なくとも1つのRは、C~Cアルキル、C~Cハロアルキルまたはハロゲンであり;Xは、O、SまたはNHであり;‘Rは、C~Cアルキルであり;Zは、C~Cアルキル、C~Cハロアルキルまたはハロゲンであり;R”は、水素またはアルキルであり;R’’’は、天然のL-アミノ酸の側鎖であり;nは、1~10であり;mは、0~10である、化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステル。
【0015】
被験体においてメタボリックシンドローム、脂質異常、インスリン抵抗性、炎症、心臓疾患、心血管疾患(例えば、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)、脳卒中、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、脂肪症(例えば、非アルコール性脂肪性肝炎)、2型糖尿病(T2D)、脂質異常症、高トリグリセリド血症、免疫細胞および炎症性細胞における酸化的リン酸化から解糖への代謝切り換えを要求する免疫性状態および炎症性状態、皮膚関連脂質疾患、ざ瘡、化膿性汗腺炎、変形性関節症、クローン病、乾癬、関節リウマチ、または肥満関連がんを処置するための方法であって、本明細書で開示される任意の化合物の治療有効量を被験体に投与するステップを含む、方法もまた、本明細書で開示される。他の疾患には、以下が含まれる:その症候群の臨床所見に寄与する代謝異常、例えば、インスリン抵抗性、耐糖能異常および脂質異常症に関与する、小さい嚢胞を含有する肥大した卵巣によって特徴付けられる、女性が罹患するホルモン障害である多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)。代謝機能障害および臓器損傷をもたらす、肝臓および脳が主に罹患する、銅輸送における変異を有する稀な遺伝性障害であるウイルソン病。マクロファージ、線維芽細胞様滑膜細胞およびT細胞が、炎症プロセスに寄与する、エネルギー産生のための解糖への依存増加を伴う代謝切り換えを受ける、関節炎症によって特徴付けられる慢性自己免疫性疾患である関節リウマチ(RA)。T細胞および樹状細胞が含まれる免疫細胞が、炎症促進性サイトカイン産生および疾患の病理発生を促進する、解糖に向かう代謝シフトを受ける、慢性炎症性皮膚状態である乾癬。炎症した腸内に存在する免疫細胞が、炎症および組織損傷を促進する解糖を好む、胃腸管の慢性炎症によって特徴付けられる、クローン病および潰瘍性大腸炎などの状態を包含する炎症性腸疾患。免疫系の代謝リプログラミングが、免疫細胞活性化および組織損傷に寄与する解糖へ依存増加をもたらす、全身性自己免疫性疾患である全身性エリテマトーデス。活性化された免疫細胞、特にT細胞およびミクログリアにおける、神経炎症および神経変性を支持する解糖に向かう代謝リプログラミングを伴う、中枢神経系の慢性炎症性脱髄性疾患である多発性硬化症。本発明者らの開示した化合物によって予防される、解糖に向かう類似の切り換えは、機構的に重要であり、セプシス(マクロファージおよび好中球)、喘息(好酸球およびT細胞)、変形性関節症(免疫細胞および軟骨細胞)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(好中球およびマクロファージ)が含まれる疾患に寄与し、がんは、乳房がん(上皮細胞)、白血病(血球)、および神経膠芽腫(脳細胞)、非小細胞肺がんを含め、腫瘍の成長、生存および増殖を支持する代謝切り換えに依存し、心筋細胞が脂肪酸酸化から解糖への代謝変更を示す心不全および心筋梗塞、橋本病(解糖に向かうリンパ球およびマクロファージの再配線(rewiring))、慢性腎臓疾患(近位尿細管細胞)、パーキンソン病(脳中のドーパミン作動性ニューロン)は、解糖に向かうシフトが含まれる代謝変化を経験する。この代謝切り換えは、ニューロン機能障害および神経変性に寄与すると考えられる。筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびその運動ニューロンは、解糖に向かってシフトし、ミトコンドリア機能障害、強皮症(線維芽細胞、免疫細胞および内皮細胞の代謝変化)、虚血性脳卒中(ニューロンおよびグリア細胞)、骨肉腫(悪性骨芽細胞)、神経膠芽腫(がん性細胞は解糖を増加させた)、自己免疫性肝炎(リンパ球およびマクロファージ)、結腸直腸がん、原発性胆汁性胆管炎、免疫細胞、例えば、リンパ球は、解糖の増加が含まれる代謝変化を示す。
【0016】
被験体において非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を処置するための方法であって、本明細書で開示される任意の化合物の治療有効量を被験体に投与するステップを含む、方法が、本明細書でさらに開示される。
【0017】
被験体においてTG誘導性膵炎および単一遺伝子脂質異常症を処置するための方法であって、本明細書で開示される任意の化合物の治療有効量を被験体に投与するステップを含む、方法が、本明細書でさらに開示される。
【0018】
本明細書で開示される任意の化合物および魚油を被験体に共投与するステップを含む方法もまた、本明細書で開示される。
【0019】
本明細書で開示される任意の化合物およびオメガ-3を被験体に共投与するステップを含む方法もまた、本明細書で開示される。
【0020】
本明細書で開示される任意の化合物、魚油およびオメガ-3を被験体に共投与するステップを含む方法もまた、本明細書で開示される。
【0021】
上述した事項は、添付の図面を参照して進む、以下の詳細な説明からより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1AB】天然フラン脂肪酸の検出および特徴付け。
図1C】天然フラン脂肪酸の検出および特徴付け。
【0023】
図1A)最も一般的な天然FuFAの化学構造および命名。(図1B)液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MSMS)による検出および定量のためのNEM-誘導体化技法、ならびにLovazaTMおよび魚油中で検出されその中に存在する種々のFuFA。(図1C)魚油、LovazaTMおよびヒト血漿中の検出可能なFuFAおよび代謝物のパーセンテージ。
【0024】
図2A】11U3-2Mの化学的設計は、その安定性を増加させ、その酸化を防止し、脂肪酸中へのその取り込みを低減させる。(図2A)天然および新規FuFAの構造。(図2B)経口および腹腔内投与された11D3および11U3は、迅速にエステル化され、トリグリセリドにエステル化されて全身的に循環する。対照的に、11U3-2Mは、エステル化されず、遊離酸として循環する。
図2B】11U3-2Mの化学的設計は、その安定性を増加させ、その酸化を防止し、脂肪酸中へのその取り込みを低減させる。(図2A)天然および新規FuFAの構造。(図2B)経口および腹腔内投与された11D3および11U3は、迅速にエステル化され、トリグリセリドにエステル化されて全身的に循環する。対照的に、11U3-2Mは、エステル化されず、遊離酸として循環する。
【0025】
図3AB】11U3-2Mは、NAFLDの食餌誘導性マウスモデルにおいて保護的であり、脂肪症を逆転させ、グルコースクリアランスおよびインスリンを改善する。(図3A)処置パラダイム。(図3B)11U3-2Mは、OGTTチャレンジにおいてグルコースハンドリング(glucose handling)を有意に改善する(図3C)。11U3-2Mは、インスリン、C-ペプチド2およびGIP循環レベルを有意に低減させ、これは、改善されたインスリン感受性を示す(図3D)。11U3-2Mは、肝臓形態学および脂肪症を有意に改善し、肝臓酵素(ASTおよびALT)を改善し、炎症(TNFα)を低減させる。
図3C】11U3-2Mは、NAFLDの食餌誘導性マウスモデルにおいて保護的であり、脂肪症を逆転させ、グルコースクリアランスおよびインスリンを改善する。(図3A)処置パラダイム。(図3B)11U3-2Mは、OGTTチャレンジにおいてグルコースハンドリング(glucose handling)を有意に改善する(図3C)。11U3-2Mは、インスリン、C-ペプチド2およびGIP循環レベルを有意に低減させ、これは、改善されたインスリン感受性を示す(図3D)。11U3-2Mは、肝臓形態学および脂肪症を有意に改善し、肝臓酵素(ASTおよびALT)を改善し、炎症(TNFα)を低減させる。
図3D】11U3-2Mは、NAFLDの食餌誘導性マウスモデルにおいて保護的であり、脂肪症を逆転させ、グルコースクリアランスおよびインスリンを改善する。(図3A)処置パラダイム。(図3B)11U3-2Mは、OGTTチャレンジにおいてグルコースハンドリング(glucose handling)を有意に改善する(図3C)。11U3-2Mは、インスリン、C-ペプチド2およびGIP循環レベルを有意に低減させ、これは、改善されたインスリン感受性を示す(図3D)。11U3-2Mは、肝臓形態学および脂肪症を有意に改善し、肝臓酵素(ASTおよびALT)を改善し、炎症(TNFα)を低減させる。
【0026】
図4A】11U3-2Mは、NAFLDの食餌誘導性マウスモデルにおいて、コレステロール-エステルおよびトリグリセリドの血漿レベルを減少させ、動物からの肝臓中のスフィンゴ脂質およびアシルカルニチンに対する主な効果を伴って、代謝変化を増加させる。(図4A)11U3-2Mは、循環コレステロールエステルおよびトリグリセリドを有意に低減させる。(図4B~4C)11U3-2Mは、高脂肪食によって調節不全となったアシルカルニチンコンジュゲートおよびセラミドを正常化する。
図4B】11U3-2Mは、NAFLDの食餌誘導性マウスモデルにおいて、コレステロール-エステルおよびトリグリセリドの血漿レベルを減少させ、動物からの肝臓中のスフィンゴ脂質およびアシルカルニチンに対する主な効果を伴って、代謝変化を増加させる。(図4A)11U3-2Mは、循環コレステロールエステルおよびトリグリセリドを有意に低減させる。(図4B~4C)11U3-2Mは、高脂肪食によって調節不全となったアシルカルニチンコンジュゲートおよびセラミドを正常化する。
図4C】11U3-2Mは、NAFLDの食餌誘導性マウスモデルにおいて、コレステロール-エステルおよびトリグリセリドの血漿レベルを減少させ、動物からの肝臓中のスフィンゴ脂質およびアシルカルニチンに対する主な効果を伴って、代謝変化を増加させる。(図4A)11U3-2Mは、循環コレステロールエステルおよびトリグリセリドを有意に低減させる。(図4B~4C)11U3-2Mは、高脂肪食によって調節不全となったアシルカルニチンコンジュゲートおよびセラミドを正常化する。
【0027】
図5AB】11U3-2Mは、NAFLDのマウスモデルにおいて脂肪酸β酸化、ミトコンドリアおよびPPARαに関与している経路を活性化する。(図5A~5B)11U3-2Mは、RNAseqによって評価した場合、脂肪酸酸化経路における有意な増加を伴って、劇的な肝臓リプログラミングを誘導する。(図5C~5E)長鎖非コードRNA GM 15441における劇的な増加が、11U3-2Mの処置によって誘導された。PCRおよび蛍光in-situハイブリダイゼーションを使用するRNAseqデータ経路確認。
図5CDE】11U3-2Mは、NAFLDのマウスモデルにおいて脂肪酸β酸化、ミトコンドリアおよびPPARαに関与している経路を活性化する。(図5A~5B)11U3-2Mは、RNAseqによって評価した場合、脂肪酸酸化経路における有意な増加を伴って、劇的な肝臓リプログラミングを誘導する。(図5C~5E)長鎖非コードRNA GM 15441における劇的な増加が、11U3-2Mの処置によって誘導された。PCRおよび蛍光in-situハイブリダイゼーションを使用するRNAseqデータ経路確認。
【0028】
図6AB】11U3-2Mは、肝臓において代謝切り換えを誘導して、解糖を減少させ、ミトコンドリア機能および酸化的リン酸化を増加させて、ミトコンドリアの数および複合体活性を増加させる。(図6A)処置スキーム。(図6B)クエン酸シンターゼ活性(CSA)は、ミトコンドリア質量の増加を反映して、11U3-2Mで処置したマウスにおいて増加する。(図6C)11U3-2Mによる処置後の肝臓ミトコンドリアにおける電子フラックスの活性の増加。(図6D)動物は、11U3-2Mによる処置後に、エネルギー消費における変化も呼吸交換比における変化も示さない。
図6C】11U3-2Mは、肝臓において代謝切り換えを誘導して、解糖を減少させ、ミトコンドリア機能および酸化的リン酸化を増加させて、ミトコンドリアの数および複合体活性を増加させる。(図6A)処置スキーム。(図6B)クエン酸シンターゼ活性(CSA)は、ミトコンドリア質量の増加を反映して、11U3-2Mで処置したマウスにおいて増加する。(図6C)11U3-2Mによる処置後の肝臓ミトコンドリアにおける電子フラックスの活性の増加。(図6D)動物は、11U3-2Mによる処置後に、エネルギー消費における変化も呼吸交換比における変化も示さない。
図6D】11U3-2Mは、肝臓において代謝切り換えを誘導して、解糖を減少させ、ミトコンドリア機能および酸化的リン酸化を増加させて、ミトコンドリアの数および複合体活性を増加させる。(図6A)処置スキーム。(図6B)クエン酸シンターゼ活性(CSA)は、ミトコンドリア質量の増加を反映して、11U3-2Mで処置したマウスにおいて増加する。(図6C)11U3-2Mによる処置後の肝臓ミトコンドリアにおける電子フラックスの活性の増加。(図6D)動物は、11U3-2Mによる処置後に、エネルギー消費における変化も呼吸交換比における変化も示さない。
【0029】
図7AB】11U3-2M-CoA付加物の形成、ならびにACCおよびACLYの直接的阻害による脂肪酸β酸化に対するその効果。(図7A)11U3-2Mは、補酵素A(CoA)への有意なコンジュゲート化をもたらし、肝臓(図7A)および初代肝細胞(図7B)中でのコンジュゲートの安定性をもたらす。(図7C~7D)処置した動物からの肝臓中の11U3-2M-CoA付加物の増加は、脂肪酸代謝およびde novo脂肪生成を調節する重要な代謝酵素であるACCおよびACLYの熱安定性を増加させる。
図7CD】11U3-2M-CoA付加物の形成、ならびにACCおよびACLYの直接的阻害による脂肪酸β酸化に対するその効果。(図7A)11U3-2Mは、補酵素A(CoA)への有意なコンジュゲート化をもたらし、肝臓(図7A)および初代肝細胞(図7B)中でのコンジュゲートの安定性をもたらす。(図7C~7D)処置した動物からの肝臓中の11U3-2M-CoA付加物の増加は、脂肪酸代謝およびde novo脂肪生成を調節する重要な代謝酵素であるACCおよびACLYの熱安定性を増加させる。
図8】11U3-2Mのための合成経路。
【0030】
図9】本明細書で開示される化合物のスペクトル。
図10】本明細書で開示される化合物のスペクトル。
図11】本明細書で開示される化合物のスペクトル。
図12】本明細書で開示される化合物のスペクトル。
図13】本明細書で開示される化合物のスペクトル。
図14】本明細書で開示される化合物のスペクトル。
図15】本明細書で開示される化合物のスペクトル。
図16】本明細書で開示される化合物のスペクトル。
図17】本明細書で開示される化合物のスペクトル。
【0031】
図18】11U3-2M-Leu、11U3-LeuおよびC18:1-Leu(各々30mg/kg)によって例示される、分岐鎖 対 直鎖N-アシルアミノ酸(NAA)コンジュゲートのカセットPK研究。ジメチル化に起因する大いに改善された経口バイオアベイラビリティが観察された。(図18A)経口投与の際のFA-AA(NAA)コンジュゲートの血漿レベル。(図18B)経口投与の際のFA-AAコンジュゲートの肝臓レベル。(図18C)IP注射の際のFA-AAコンジュゲートの血漿レベル。(図18D)二次的な生物活性脂肪酸の緩徐な放出を実証する、それらの対応するLeuコンジュゲートの経口およびIP投与の際の、肝臓中の11U3-2Mおよび11U3の濃度。
【0032】
図19】11U3-2M-Leuによって低減された肝臓損傷を、巨視的形態学によって確認した。腹膜腔および肝臓の巨視的外観を示した。NASH食によって誘導された肝腫大もまた、11U3-2M-Leu処置によって減弱され、肝臓重量および肝臓重量対体重比における減少をもたらした。データは、平均±SEMである。データを、シャピロ-ウィルク検定とその後の一元配置ANOVAおよびテューキー事後検定を使用して、正規性について試験した。全ての個々の点およびp値が示される(n=8~12)。0.05未満のp値を有意とみなす。p<0.05、**p<0.01。
【0033】
図20】11U3-2M-Leuで処置した動物は、総コレステロールレベルと共に、有意に低減した循環ASTおよびALTを実証した。データは、平均±SEMである。データを、シャピロ-ウィルク検定とその後の一元配置ANOVAおよびテューキー事後検定を使用して、正規性について試験した。全ての個々の点およびp値が示される。全ての個々の点およびp値が示される(n=8~12)。0.05未満のp値を有意とみなす。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【0034】
図21】脂肪酸酸化に関連する遺伝子は、11U3-2M-Leu処置で上方調節された。データは、平均±SEMである。データを、シャピロ-ウィルク検定とその後の一元配置ANOVAおよびテューキー事後検定を使用して、正規性について試験した。全ての個々の点およびp値が示される。0.05未満のp値を有意とみなす。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【0035】
図22】11U3-2M-Leuの処置による脂肪生成の同時発生的な抑制が、de novo脂肪生成に関連する遺伝子の発現に基づいて発見された。データは、平均±SEMである。データを、シャピロ-ウィルク検定とその後の一元配置ANOVAおよびテューキー事後検定を使用して、正規性について試験した。全ての個々の点およびp値が示される。0.05未満のp値を有意とみなす。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【0036】
図23】11U3-2M-Leu処置は、NASH動物において、抗炎症効果および抗線維症効果の両方を示した。データは、平均±SEMである。データを、シャピロ-ウィルク検定とその後の一元配置ANOVAおよびテューキー事後検定を使用して、正規性について試験した。全ての個々の点およびp値が示される。0.05未満のp値を有意とみなす。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【0037】
図24】本明細書で開示される化合物のスペクトル。
【0038】
図25A】腹腔内投与後の血漿レベル。
図25B】腹腔内投与後の血漿レベル。
【0039】
図26A】経口投与後の血漿レベル。
図26B】経口投与後の血漿レベル。
【0040】
図27A】腹腔内投与後の肝臓組織レベル。
図27B】腹腔内投与後の肝臓組織レベル。
【0041】
図28A】腹腔内投与後の肝臓組織レベル。
図28B】腹腔内投与後の肝臓組織レベル。
【発明を実施するための形態】
【0042】
詳細な説明
専門用語
用語および方法の以下の説明は、本発明の化合物、組成物および方法をより良く記載するため、ならびに本開示の実施において当業者を導くために提供される。本開示において使用される専門用語は、特定の実施形態および実施例を記載することのみを目的としており、限定を意図しないこともまた、理解すべきである。
【0043】
「投与」は、本明細書で使用される場合、別の人物による被験体への投与、または被験体による自己投与を含む。
【0044】
用語「アルキル」は、1~24個の炭素原子の分岐鎖または非分岐鎖の飽和炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなどを指す。「低級アルキル」基は、1~6個の炭素原子を有する分岐鎖または非分岐鎖の飽和炭化水素である。好ましいアルキル基は、1~4個の炭素原子を有する。アルキル基は、1つまたは複数の水素原子が置換基、例えば、ハロゲン、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシル、アリール、アルケニルまたはカルボキシルで置換された、「置換アルキル」であり得る。例えば、低級アルキルまたは(C~C)アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、ペンチル、3-ペンチルまたはヘキシルであり得る;(C~C)シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルであり得る;(C~C)シクロアルキル(C~C)アルキルは、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2-シクロプロピルエチル、2-シクロブチルエチル、2-シクロペンチルエチルまたは2-シクロヘキシルエチルであり得る;(C~C)アルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソ-ブトキシ、sec-ブトキシ、ペントキシ、3-ペントキシまたはヘキシルオキシであり得る;(C~C)アルケニルは、ビニル、アリル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニルまたは5-ヘキセニルであり得る;(C~C)アルキニルは、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニルまたは5-ヘキシニルであり得る;(C~C)アルカノイルは、アセチル、プロパノイルまたはブタノイルであり得る;ハロ(C~C)アルキルは、ヨードメチル、ブロモメチル、クロロメチル、フルオロメチル、トリフルオロメチル、2-クロロエチル、2-フルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチルまたはペンタフルオロエチルであり得る;ヒドロキシ(C~C)アルキルは、ヒドロキシメチル、1-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシエチル、1-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシプロピル、1-ヒドロキシブチル、4-ヒドロキシブチル、1-ヒドロキシペンチル、5-ヒドロキシペンチル、1-ヒドロキシヘキシルまたは6-ヒドロキシヘキシルであり得る;(C~C)アルコキシカルボニルは、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニルまたはヘキシルオキシカルボニルであり得る;(C~C)アルキルチオは、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、ペンチルチオまたはヘキシルチオであり得る;(C~C)アルカノイルオキシは、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ、イソブタノイルオキシ、ペンタノイルオキシまたはヘキサノイルオキシであり得る。
【0045】
「アナログ」は、親化合物とは化学構造が異なる分子、例えば、ホモログ(化学構造または質量における増加、例えば、アルキル鎖の長さにおける差異、または1つもしくは複数の同位体を含むことによって異なる)、分子断片、1つもしくは複数の官能基が異なる構造、またはイオン化における変化である。アナログは、必ずしも親化合物から合成されるわけではない。誘導体は、基礎構造に由来する分子である。
【0046】
「動物」は、例えば、哺乳動物および鳥類が含まれるカテゴリーである、生きた多細胞脊椎動物生物を指す。哺乳動物という用語には、ヒトおよび非ヒト哺乳動物の両方が含まれる。同様に、用語「被験体」には、ヒト、ならびに鳥類および非ヒト哺乳動物が含まれる非ヒト被験体の両方が含まれる。事例的な非ヒト哺乳動物には、動物モデル(例えば、マウス)、非ヒト霊長類、コンパニオン動物(例えば、イヌおよびネコ)、家畜(例えば、ブタ、ヒツジ、ウシ)ならびに非家畜化動物、例えば、大型猫科動物が含まれる。被験体という用語は、生物の生活環におけるステージにかかわらず適用される。したがって、被験体という用語は、生物(即ち、生物が、哺乳動物であるか、鳥類、例えば、家畜化されたまたは野生状態の家禽であるか)に依存して、子宮内または卵内の生物に適用される。
【0047】
用語「共投与」または「共投与する」は、同じ一般的な期間内での、本明細書で開示される化合物と少なくとも1つの他の治療剤または治療との投与を指し、時間的に正確に同じ瞬間での投与は要求しない(共投与は、時間的に正確に同じ瞬間での投与も含むが)。したがって、共投与は、同じ日もしくは異なる日において、または同じ週もしくは異なる週においてであり得る。一部の実施形態では、2つまたはそれよりも多くの薬剤または治療の共投与は、同時発生的である。他の実施形態では、第1の薬剤/治療は、第2の薬剤/治療の前に投与される。当業者は、使用される種々の薬剤または治療の製剤および/または投与経路が変わり得ることを理解している。共投与のための適切な投薬量は、当業者によって容易に決定され得る。一部の実施形態では、薬剤または治療が共投与される場合、それぞれの薬剤または治療は、それらの単独での投与に対して適切な投薬量よりも低い投薬量で投与される。したがって、共投与は、薬剤または治療の共投与が、潜在的に有害な(例えば、毒性の)薬剤の必要な投薬量を低下させ、かつ/または潜在的に有害な(例えば、毒性の)薬剤を投与する頻度を低下させる実施形態において、特に望ましい。「共投与」または「共投与する」は、活性薬剤および/またはそれらの代謝物の両方が被験体中に同じ時点で存在するような、被験体への2つまたはそれよりも多くの活性薬剤の投与を包含する。共投与には、別々の組成物での同時投与、別々の組成物での異なる時点での投与、または2つもしくはそれよりも多くの活性薬剤が内に存在する組成物での投与が含まれる。
【0048】
環式:炭化水素、閉鎖環化合物、またはそのラジカルを実質的に示す。環式化合物または置換基はまた、1つまたは複数の不飽和部位を含み得るが、芳香族化合物を含まない。かかる環式化合物の一例は、シクロペンタジエノンである。
【0049】
用語「シクロアルキル」は、少なくとも3個の炭素原子から構成される非芳香族の炭素ベースの環を指す。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが含まれるがこれらに限定されない。用語「ヘテロシクロアルキル基」は、環の炭素原子のうちの少なくとも1つが、ヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、硫黄またはリンであるがこれらに限定されない)で置換された、上で定義されたシクロアルキル基である。
【0050】
用語「エステル」は、例えば、C1~6アルキル基(「カルボキシルC1~6アルキル」または「アルキルエステル」)、アリールまたはアラルキル基(「アリールエステル」または「アラルキルエステル」)などで水素が置き換えられている、カルボキシル基含有部分を指す。CO1~3アルキル基、例えば、メチルエステル(COMe)、エチルエステル(COEt)およびプロピルエステル(COPr)などが好ましく、CO1~3アルキル基には、それらの逆エステル(reverse ester)(例えば、-OCOMe、-OCOEtおよび-OCOPr)が含まれる。
【0051】
「ハロ」または「ハロゲン」は、本明細書で使用される場合、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを指す。
【0052】
用語「ハロゲン化アルキル」または「ハロアルキル基」は、それらの基上に存在する1つまたは複数の水素原子がハロゲン(F、Cl、Br、I)で置き換えられたアルキル基を指す。
【0053】
用語「複素環式」は、環構造中の少なくとも1つの原子が、炭素以外であり、典型的には、酸素、硫黄および/または窒素である、別の基、特に他の有機基に結合した置換基としての、閉鎖環化合物またはそのラジカルを指す。
【0054】
N-アシルアミノ酸(NAA)という用語は、アシル基がアミノ酸分子に結合した化合物のクラスを指す。これらの化合物では、アシル基は、アミノ酸のアミノ基(-NH2)に連結されて、アミド結合を形成する。
【0055】
「阻害する」は、疾患または状態の完全な発症を阻害することを指す。「阻害する」はまた、対照と比較した、生物学的活性または結合における任意の量的または質的低減を指す。
【0056】
用語「被験体」には、ヒト、ならびに鳥類および非ヒト哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、コンパニオン動物(例えば、イヌおよびネコ)、家畜(例えば、ブタ、ヒツジ、ウシ)ならびに非家畜化動物、例えば、大型猫科動物が含まれる、非ヒト被験体の両方が含まれる。被験体という用語は、生物の生活環におけるステージにかかわらず適用される。したがって、被験体という用語は、生物(即ち、生物が、哺乳動物であるか、鳥類、例えば、家畜化されたまたは野生状態の家禽であるか)に依存して、子宮内または卵内の生物に適用される。
【0057】
「置換された」または「置換」は、1つまたは複数の追加のR基による、分子またはR基の水素原子の置き換えを指す。他に定義されない限り、用語「必要に応じて置換された」または「必要に応じた置換基」は、本明細書で使用される場合、1つ、2つ、3つ、4つまたはそれよりも多くの基、好ましくは、1つ、2つまたは3つの基、より好ましくは、1つまたは2つの基でさらに置換されていてもいなくてもよい基を指す。置換基は、例えば、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~8シクロアルキル、ヒドロキシル、オキソ、C1~6アルコキシ、アリールオキシ、C1~6アルコキシアリール、ハロ、C1~6アルキルハロ(例えば、CFおよびCHF)、C1~6アルコキシハロ(例えば、OCFおよびOCHF)、カルボキシル、エステル、シアノ、ニトロ、アミノ、置換アミノ、二置換アミノ、アシル、ケトン、アミド、アミノアシル、置換アミド、二置換アミド、チオール、アルキルチオ、チオキソ、サルフェート、スルホネート、スルフィニル、置換スルフィニル、スルホニル、置換スルホニル、スルホニルアミド、置換スルホンアミド、二置換スルホンアミド、アリール、アルC1~6アルキル(arC1-6alkyl)、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールから選択され得、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロシクリルならびにそれらを含有する基は、必要に応じてさらに置換され得る。N-複素環の場合、必要に応じた置換基には、C1~6アルキル、即ち、N-C1~3アルキル、より好ましくは、メチル、特に、N-メチルもまた含まれ得るがこれらに限定されない。
【0058】
「治療有効量」は、その薬剤で処置されている被験体において所望の効果を達成するのに十分な、特定された薬剤の量を指す。理想的には、薬剤の治療有効量は、被験体に対して実質的な細胞毒性効果を引き起こさずに、疾患または状態を阻害または処置するのに十分な量である。薬剤の治療有効量は、処置されている被験体、苦痛の重症度、および治療的組成物の投与手法に依存する。
【0059】
「処置」は、疾患または病理学的状態が発症し始めた後に疾患または病理学的状態の徴候または症状を寛解させる治療介入を指す。本明細書で使用される場合、疾患または病理学的状態に言及して、用語「寛解させる」は、処置の任意の観察可能な有益な効果を指す。有益な効果は、例えば、感受性被験体における疾患の臨床症状の開始の遅延、疾患の一部のもしくは全ての臨床症状の重症度における低減、疾患のより緩徐な進行、被験体の健康全般もしくは幸福における改善によって、または特定の疾患に特異的であることが当該分野で周知の他のパラメーターによって、証明され得る。語句「疾患を処置する」は、例えば、疾患のリスクがある被験体において、疾患の完全な発症を阻害することを指す。「予防的」処置は、病理もしくは状態を発症するリスクを低減させること、または病理もしくは状態の重症度を弱めることを目的とした、疾患の徴候を示していない、または初期の徴候のみを示している被験体に投与される処置である。
【0060】
「医薬組成物」は、担体、希釈剤および/またはアジュバントが含まれる1つまたは複数の非毒性の薬学的に許容される添加剤、ならびに必要に応じて他の生物学的に活性な成分と一緒に、開示された化合物のうちの1つまたは複数のある量(例えば、単位投薬量)を含む、組成物である。かかる医薬組成物は、標準的な医薬品製剤化技法、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PA(19th Edition)に開示されるものによって調製され得る。
【0061】
用語「薬学的に許容される塩またはエステル」は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、リンゴ酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、マレイン酸、サリチル酸、安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸などが含まれるがこれらに限定されない無機酸および有機酸の塩が含まれる、従来の手段によって調製される塩またはエステルを指す。本明細書で開示される化合物の「薬学的に許容される塩」には、カチオン、例えば、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛から形成されたもの、ならびに塩基、例えば、アンモニア、エチレンジアミン、N-メチル-グルタミン、リシン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N-ベンジルフェネチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンおよび水酸化テトラメチルアンモニウムから形成されたものもまた含まれる。これらの塩は、例えば、遊離酸を適切な有機塩基または無機塩基と反応させることによる、標準的な手順によって調製され得る。本明細書に列挙される任意の化学的化合物は、その薬学的に許容される塩として代替的に投与され得る。「薬学的に許容される塩」には、遊離酸、塩基および双性イオン形態もまた含まれる。適切な薬学的に許容される塩の記載は、Handbook of Pharmaceutical Salts, Properties, Selection and Use,Wiley VCH (2002)中に見出され得る。本明細書で開示される化合物が、酸性官能基、例えば、カルボキシ基を含む場合、カルボキシ基に適切な薬学的に許容されるカチオン対は、当業者に周知であり、それには、アルカリ、アルカリ土類、アンモニウム、第四級アンモニウムカチオンなどが含まれる。かかる塩は、当業者に公知である。「薬理学的に許容される塩」の追加の例については、Bergeet al., J. Pharm. Sci. 66:1 (1977)を参照されたい。
【0062】
「薬学的に許容されるエステル」には、カルボキシル基を含むように改変された本明細書に記載される化合物に由来するエステルが含まれる。in vivo加水分解可能なエステルは、ヒトまたは動物の身体中で加水分解されて、親酸またはアルコールを生成する、エステルである。したがって、代表的なエステルには、アミノ酸エステル(例えば、L-グリシル(L-glycil)、L-ロイシルもしくはL-イソロイシル、または他の天然アミノ酸のうちのいずれか)、エステル基のカルボン酸部分の非カルボニル部分が直鎖または分岐鎖アルキル(例えば、メチル、n-プロピル、t-ブチルまたはn-ブチル)、シクロアルキル、アルコキシアルキル(例えば、メトキシメチル)、アラルキル(例えば、ベンジル)、アリールオキシアルキル(例えば、フェノキシメチル)、アリール(例としては、例えばハロゲン、C1~4アルキルまたはC1~4アルコキシによって、必要に応じて置換されたフェニル)またはアミノ)から選択される、カルボン酸エステル;スルホン酸エステル、例えば、アルキルスルホニルまたはアラルキルスルホニル(例えば、メタンスルホニル)が含まれる。「薬学的に許容されるエステル」には、無機エステル、例えば、一リン酸、二リン酸または三リン酸エステルもまた含まれる。かかるエステルでは、他に特定されない限り、存在する任意のアルキル部分は、有利には、1~18個の炭素原子、特に、1~6個の炭素原子、より特に、1~4個の炭素原子を含有する。かかるエステル中に存在する任意のシクロアルキル部分は、有利には、3~6個の炭素原子を含有する。かかるエステル中に存在する任意のアリール部分は、有利には、上記カルボシクリル(carbocycylyl)の定義中に示されるような、必要に応じて置換されたフェニル基を含む。したがって、薬学的に許容されるエステルには、C~C22脂肪酸エステル、例えば、アセチル、t-ブチルまたは長鎖の直鎖もしくは分岐鎖の不飽和もしくはオメガ-6モノ不飽和脂肪酸、例えば、パルモイル(palmoyl)、ステアロイルなどが含まれる。代替的なアリールまたはヘテロアリールエステルには、ベンゾイル、ピリジルメチロイルなどが含まれ、それらのいずれもが、上記カルボシクリルに定義されるように、置換され得る。追加の薬学的に許容されるエステルには、脂肪族L-アミノ酸エステル、例えば、ロイシル、イソロイシルおよび特にバリルが含まれる。
【0063】
治療的使用のために、化合物の塩は、対イオンが薬学的に許容される塩である。しかし、薬学的に許容されない酸および塩基の塩もまた、例えば、薬学的に許容される化合物の調製または精製において、利用され得る。
【0064】
本明細書で上述した薬学的に許容される酸および塩基付加塩は、化合物が形成することができる治療的に活性な非毒性の酸および塩基付加塩形態を含むことを意味する。薬学的に許容される酸付加塩は、塩基形態をかかる適切な酸で処理することによって、簡便に得ることができる。適切な酸は、例えば、無機酸、例えば、ハロゲン化水素酸、例えば、塩酸もしくは臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの酸;または有機酸、例えば、酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸(即ち、エタン二酸)、マロン酸、コハク酸(即ち、ブタン二酸)、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸(即ち、ヒドロキシブタン二酸)、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シクラミン酸、サリチル酸、p-アミノサリチル酸、パモン酸などの酸を含む。逆に、当該塩形態は、適切な塩基による処理によって、遊離塩基形態へと変換され得る。
【0065】
酸性プロトンを含有する化合物もまた、適切な有機塩基および無機塩基による処理によって、それらの非毒性の金属またはアミン付加塩形態へと変換され得る。適切な塩基塩形態は、例えば、アンモニウム塩、アルカリおよびアルカリ土類金属塩、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム塩など、有機塩基との塩、例えば、ベンザチン、N-メチル-D-グルカミン、ヒドラバミン(hydrabamine)塩、ならびに例えば、アルギニン、リシンなどのアミノ酸との塩を含む。
【0066】
用語「付加塩」は、本明細書で、上で使用される場合、本明細書に記載される化合物が形成することができる溶媒和物もまた含む。かかる溶媒和物は、例えば、水和物、アルコール和物などである。
【0067】
用語「第四級アミン」は、本明細書で、前に使用される場合、化合物が、化合物の塩基性窒素と、適切な四級化剤、例えば、必要に応じて置換されたアルキルハライド、アリールハライドまたはアリールアルキルハライド、例えば、メチルヨージドまたはベンジルヨージドなどとの間での反応によって形成することができる、第四級アンモニウム塩を定義する。良好な脱離基を有する他の反応物、例えば、アルキルトリフルオロメタンスルホネート、アルキルメタンスルホネートおよびアルキルp-トルエンスルホネートもまた使用され得る。第四級アミンは、正に荷電した窒素を有する。薬学的に許容される対イオンには、クロロ、ブロモ、ヨード、トリフルオロアセテートおよびアセテートが含まれる。選択された対イオンは、イオン交換樹脂を使用して導入され得る。
【0068】
開示された化合物のプロドラッグもまた、本明細書で企図される。プロドラッグは、被験体へのプロドラッグの投与後に、in vivoの生理学的作用、例えば、加水分解、代謝、コンジュゲート化などを介して、活性化合物へと化学的に改変される、活性または不活性な化合物である。用語「プロドラッグ」は、本明細書の全体にわたって使用される場合、誘導体の結果として生じるin vivo生体内変換生成物が、本明細書に記載される化合物において定義されたような活性薬物であるような、薬理学的に許容される誘導体、例えば、エステル、アミドおよびホスフェートを意味する。プロドラッグは、好ましくは、優れた水溶解度、増加したバイオアベイラビリティを有し、活性な阻害剤へとin vivoで容易に代謝またはコンジュゲート化される。本明細書に記載される化合物のプロドラッグは、慣用的な操作またはin vivoのいずれかによって改変が切断されて親化合物になるような方法で、化合物中に存在する官能基を改変することによって調製され得、これらの改変は、細胞性有機分子(例えば、例を提供するために、補酵素A、カルニチンおよびグリセロール)へのコンジュゲート化によって組織および細胞の内側で活性化合物を形成するために使用される。プロドラッグの作製および使用に関与する適切さおよび技法は、当業者に周知である。エステルが関与するプロドラッグの一般的な議論については、Svensson and Tunek, Drug Metabolism Reviews 165 (1988)およびBundgaard,Design of Prodrugs, Elsevier (1985)を参照されたい。
【0069】
用語「プロドラッグ」はまた、プロドラッグが被験体に投与された場合に本発明の活性な親薬物をin vivoで放出する、任意の共有結合的に結合した担体を含むことが意図されている。プロドラッグは、活性薬剤医薬品と比較して、増強された特性、例えば、溶解度およびバイオアベイラビリティを有する場合が多いので、本明細書で開示される化合物は、プロドラッグ形態で送達され得る。したがって、本明細書で開示される化合物のプロドラッグ、プロドラッグを送達する方法、およびかかるプロドラッグを含有する組成物もまた企図される。開示された化合物のプロドラッグは、典型的には、慣用的な操作またはin vivoのいずれかで改変が切断されて親化合物を生じるような方法で、化合物中に存在する1つまたは複数の官能基を改変することによって調製される。プロドラッグには、in vivoで切断されてそれぞれ対応するアミノ、ヒドロキシ、チオおよび/またはホスホネート基を生じる任意の基で官能化されたホスホネート、ヒドロキシ、チオおよび/またはアミノ基を有する化合物が含まれ得る。プロドラッグの例には、限定なしに、アシル化されたアミノ基および/またはホスホン酸エステルもしくはホスホネートアミド基を有する化合物が含まれ得る。
【0070】
開示された化合物の保護された誘導体もまた企図される。開示された化合物との使用のための種々の適切な保護基は、Greene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis; 3rd Ed.;John Wiley & Sons, New York, 1999に開示されている。
【0071】
一般に、保護基は、分子の残りの部分に影響しない条件下で除去される。これらの方法は、当該分野で周知であり、それには、酸加水分解、水素化分解などが含まれる。1つの好ましい方法は、エステルの除去、例えば、遊離ホスホネートを得るためのTMS-Br媒介性エステル切断と同様の、Lewis酸性条件を使用したホスホン酸エステルの切断を含む。第2の好ましい方法は、保護基の除去、例えば、アルコール、酢酸などまたはそれらの混合物などの適切な溶媒系中でパラジウム炭素を利用する水素化分解によるベンジル基の除去を含む。t-ブトキシカルボニル保護基が含まれる、t-ブトキシベースの基は、適切な溶媒系、例えば、水、ジオキサンおよび/または塩化メチレン中で、無機酸または有機酸、例えば、HClまたはトリフルオロ酢酸を利用して除去され得る。アミノおよびヒドロキシ官能基アミノを保護するために適切な別の例示的な保護基は、トリチルである。他の従来の保護基は公知であり、適切な保護基は、Greene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis; 3rd Ed.;John Wiley & Sons, New York, 1999を参照して、当業者によって選択され得る。アミンが脱保護されると、得られた塩は、容易に中和されて、遊離アミンを生じ得る。同様に、酸部分、例えば、ホスホン酸部分が露出される場合、化合物は、酸化合物としてまたはその塩として単離され得る。
【0072】
本明細書で開示される化合物の特定の例は、1つまたは複数の不斉中心を含み得る;したがって、記載される化合物は、異なる立体異性体形態で存在し得る。したがって、化合物および組成物は、個々の純粋な鏡像体として、または立体異性体混合物(ラセミ混合物を含む)として、提供され得る。ある特定の実施形態では、本明細書で開示される化合物は、実質的にエナンチオピュアな形態で、例えば、90%の鏡像体過剰率、95%の鏡像体過剰率、97%の鏡像体過剰率で、もしくはさらには、99%よりも高い鏡像体過剰率で、例えば、エナンチオピュアな形態で合成され得、またはそうなるように精製され得る。
【0073】
本明細書で開示される化合物は、少なくとも1つの不斉中心または幾何中心(geometric center)、シス-トランス中心(C=C、C=N)を有し得る。構造の全てのキラル、ジアステレオマー(diasteromeric)、ラセミ、メソ、回転および幾何異性体が、他に特定されない限り意図される。化合物は、単一の異性体として、または異性体の混合物として単離され得る。化合物の全ての互変異性体もまた、本開示の一部と考えられる。本明細書で開示される化合物は、重水素、三重水素、15N、13Cなどが含まれ得るがこれらに限定されない、化合物中に存在する原子の全ての同位体もまた含む。
【0074】
化合物
非天然の合成脂肪酸およびそれらのN-アミノ酸コンジュゲートが、本明細書で開示される。ある特定の実施形態では、化合物は、天然生成物よりも改善された物理的/化学的特性を有する。ある特定の実施形態では、化合物は、改善されたADMEプロファイルを有する。ある特定の実施形態では、化合物は、改善された生物学的活性および薬理学的作用を有する。
【0075】
ある特定の実施形態では、ある特定の部分(例えば、ハロゲン(例えば、フルオロ)基(複数可)、環式脂肪族基(複数可)、ヘテロ原子(複数可)、ヒドロキシ(複数可)、オキソ基(複数可)、アミド基(複数可)、アルキル基(複数可))が、化合物のベータ酸化を阻害するために、脂肪酸鎖中に、または脂肪酸鎖に沿って挿入されて、より長い半減期を可能にする。これらの化合物の増加した透過性、および門脈を介した吸収は、天然脂肪酸のリンパ機構とは対照的に、より高い肝臓沈着もまた可能にし、より強い臓器特異的有効性を提供する。ある特定の実施形態では、天然生成物中のフラン環の3,4-位のメチル基は、それらが代謝後にカルボン酸官能基を提供しないように、部分(例えば、水素(複数可)、フッ素(複数可)、ニトロ、ニトロソ、ハロゲン化アルキル(複数可)、アルキル(複数可))で置き換えられ、それによって、膵毒性を示すCMPF様代謝物の形成を防止する。ある特定の実施形態では、ヘテロ原子(例えば、O、NまたはS)が、化合物のベータ酸化を妨げるために、カルボキシアルキル鎖中に挿入される。
【0076】
ある特定の実施形態では、化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはエステル(アミノ酸エステルを含む)は、
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
の構造を有し、
ここで、各Rは独立して、水素、C~Cアルキル、C~Cハロアルキルまたはハロゲンであり、ただし、少なくとも1つのRは、C~Cアルキル、C~Cハロアルキルまたはハロゲンであり;Xは、O、SまたはNHであり;‘Rは、C~Cアルキルであり;Zは、C~Cアルキル、C~Cハロアルキルまたはハロゲンであり;R”は、水素またはアルキルであり;R’’’は、天然のアミノ酸の側鎖であり;nは、1~10であり;mは、0~10である。
【0077】
ある特定の実施形態では、両方のR基が、水素ではない。
【0078】
ある特定の実施形態では、両方のR基は、同じである。
【0079】
ある特定の実施形態では、R基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、フッ素または塩素である。
【0080】
ある特定の実施形態では、nは1である。
【0081】
ある特定の実施形態では、R’’’は、水素またはイソブチル基であり、それぞれ、グリシンおよびロイシンを示す。
【0082】
他の事例的な化合物には、脂肪酸-アミノコンジュゲート、例えば、
【化9】
が含まれる。
【0083】
追加の事例的な化合物には、
【化10】
ジメチルパルミチン酸、
【化11】
ジメチルステアリン酸(またはエステル)、
【化12】
11U3-Glyコンジュゲート、
【化13】
11U3-Leuコンジュゲート、
【化14】
11U3-2M-Glyコンジュゲート、
【化15】
11U3-2M-Leuコンジュゲート、
【化16】
ステアリン酸-Glyコンジュゲート、
【化17】
ステアリン酸-Leuコンジュゲート、
【化18】
ステアリン酸-Glyコンジュゲート、
【化19】
ステアリン酸-Leuコンジュゲート、
【化20】
DiMe-ステアリン酸-Glyコンジュゲート、
【化21】
DiMe-ステアリン酸-Leuコンジュゲート(18:0-2M-Leu)、
【化22】
ステアリン酸-Leuエステル(18:0-2M-Leuエステル)、
【化23】
オレイン酸-Glyコンジュゲート、
【化24】
オレイン酸-Leuコンジュゲート、
【化25】
C18:1-2M-Leu、
【化26】
C18:1-2M-Gly、
【化27】
C18:0-2M-Glyおよび
【化28】
C18:0-2M-Leu
が含まれる。
【0084】
事例的な合成手順は、以下に示される:
【化29】
【0085】
医薬組成物および処置の方法
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される化合物は、メタボリックシンドロームを処置するために使用され得る。本明細書で開示される化合物は、被験体に、全体的な代謝リプログラミングを使用する新規処置選択肢を提供する。例えば、本明細書で開示される化合物は、解糖から脂肪酸酸化への代謝リプログラミングを誘導する。
【0086】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される化合物は、脂質異常、インスリン抵抗性、炎症、心臓疾患、心血管疾患(例えば、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)、脳卒中、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、脂肪症(例えば、非アルコール性脂肪性肝炎)、2型糖尿病(T2D)、脂質異常症、高トリグリセリド血症、およびある特定の型の肥満関連がんを処置するために使用され得る。
【0087】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される化合物は、被験体において非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)を処置するために使用され得る。
【0088】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される化合物は、被験体において脂肪肝疾患を処置するために使用され得る。
【0089】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される化合物は、被験体において非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を処置するために使用され得る。
【0090】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される化合物は、心血管疾患、特に、他の同時発生的な根底にある代謝機能障害(例えば、糖尿病、肥満およびメタボリックシンドローム)を伴う心血管疾患を処置するために使用され得る。
【0091】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される化合物は、虚血性脳卒中、心不全および心筋梗塞を含めたものを処置するために使用され得る。
【0092】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される化合物は、TG誘導性膵炎および単一遺伝子脂質異常症、例えば、家族性カイロミクロン血症を処置するために使用され得る。
【0093】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される化合物は、免疫性障害または免疫代謝障害を処置するために使用され得る。
【0094】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される化合物は、原発性胆汁性胆管炎を処置するために使用される。
ある特定の実施形態では、上記化合物は、心血管疾患の複数の代謝リスク因子(即ち、上昇したTGおよびコレステロール、インスリン抵抗性、ならびに炎症)を同時に管理することによって、アテローム性動脈硬化症を低減させる。
【0095】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される化合物は、脂肪酸酸化を活性化し、循環TGおよびコレステロールを低減させ、空腹時グルコースレベルを正常化し、ならびに/または血漿炎症促進性バイオマーカー(例えば、TNFα)を低減させる。
【0096】
ある特定の実施形態では、酸化的リン酸化から解糖への代謝切り換えによって特徴付けられる免疫性状態および炎症性状態を処置するための、本明細書で開示される化合物。
【0097】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される化合物は、炎症性および免疫性皮膚疾患、特に、ざ瘡、化膿性汗腺炎、乾癬、変形性関節症を処置するために使用される。
【0098】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される化合物は、変形性関節症、クローン病、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、喘息、慢性閉塞性肺疾患および慢性腎臓疾患が含まれる炎症性および自己免疫性疾患を処置するために使用される。
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される化合物は、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、ウイルソン病が含まれる根底にある代謝異常を伴う炎症性状態を処置するために使用される。
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される化合物は、白血病、神経膠芽腫、乳房がん、膵がん、非小細胞肺がん、リンパ腫、肝臓がん、肺がん、結腸直腸がん、黒色腫、腎臓がん、骨肉腫および神経膠芽腫が含まれるがんを処置するために使用される。
【0099】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される化合物は、多発性硬化症、パーキンソン病および筋萎縮性側索硬化症が含まれる神経学的障害を処置するために使用される。
【0100】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される化合物は、FDAにより承認された脂質低下処置である現行のオメガ-3に対する代替的な処置であり得る。
【0101】
ある特定の実施形態では、上記化合物は、アセチルCoAカルボキシラーゼを阻害して、抗脂肪症効果を担う代謝シフトを発揮する。
【0102】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される化合物は、アセチル-CoAカルボキシラーゼ阻害を介して抗炎症効果を発揮する。
【0103】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される化合物は、AMPK活性化を介して抗炎症効果を発揮する。
【0104】
ある特定の化合物では、本明細書で開示される化合物は、ATPクエン酸リアーゼ阻害を介して抗炎症効果を発揮する。
【0105】
ある特定の実施形態では、上記化合物は、FGF21の機能およびレベルを調節する。
【0106】
ある特定の実施形態では、上記化合物は、腫瘍細胞を死滅させるためにがんにおいて代謝をリプログラムするために使用される。
【0107】
ある特定の実施形態では、上記化合物は、抗炎症性であり、免疫細胞応答、細胞活性化およびサイトカイン産生をモジュレートする。
【0108】
ある特定の実施形態では、被験体は、上昇したTG、コレステロールおよび/またはインスリン抵抗性に対する処置を必要としている、または必要としていると認識されている。
【0109】
ある特定の実施形態では、CoAコンジュゲートは、酵素乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を阻害することができる。解糖代謝は、がん細胞成長を支持するために重要であり、LDHは、この経路において重要な役割を果たす。LDHの阻害は、がん治療薬を処置するための薬物を開発するための重要な標的である。
【0110】
本明細書で開示される化合物は、それらの効果を強化するために、魚油および/またはオメガ-3と共に共投与され得る。
【0111】
ある特定の実施形態では、化合物は、抗肥満薬物(二重グルコース依存性インスリン分泌性ポリペプチド(GIP)およびGLP-1受容体アゴニスト[例えば、チルゼパチド(tirzepatide)および)、抗糖尿病薬物(GLP-1アゴニスト[例えば、セマグルチド]、SGLT-2阻害剤、メトホルミン、チアゾリジンジオン、DPP-4阻害剤など);コレステロール低下薬物(例えば、スタチン、PCSK-9阻害剤、エゼチミブ);フィブラート;ナイアシン;または降圧薬物(例えば、ace阻害剤、アンジオテンシン2受容体阻害剤など)と共に共投与され得る。
【0112】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法には、医薬組成物、例えば、薬学的に許容される担体と本明細書で開示される化合物のうちの1つまたは複数の治療有効量とを含む組成物を、処置を必要とする被験体に投与することを含む。前記化合物は、経口、非経口(皮下注射(SCまたはデポ-SC)、静脈内(IV)、筋肉内(IMまたはデポ-IM)、胸骨内(intrasternal)注射または注入技法が含まれる)、舌下、鼻腔内(吸入)、くも膜下腔内、外用、眼科または直腸投与され得る。前記医薬組成物は、従来の非毒性の薬学的に許容される担体、アジュバントおよび/またはビヒクルを含有する投薬単位製剤で投与され得る。前記化合物は、好ましくは、適切な医薬調製物、例えば、経口投与のための錠剤、カプセルもしくはエリキシル剤へと、または非経口投与のための無菌溶液もしくは懸濁物に製剤化される。典型的には、上記化合物は、当該分野で周知の技法および手順を使用して、医薬組成物へと製剤化される。
【0113】
一部の実施形態では、開示された化合物(検出可能な標識またはカーゴ部分に連結された化合物が含まれる)のうちの1つまたは複数は、医薬組成物を調製するために、適切な薬学的に許容される担体と混合され、または組み合わされる。本明細書で提供される化合物の投与に適切な医薬担体またはビヒクルには、特定の投与様式に適切であることが公知の任意のかかる担体が含まれる。Remington: The Science and Practice of Pharmacy, The University ofthe Sciences in Philadelphia, Editor, Lippincott, Williams, & Wilkins,Philadelphia, PA, 21st Edition (2005)は、本明細書で開示される化合物の医薬送達に適切な例示的な組成物および製剤を記載している。さらに、上記化合物は、組成物中の唯一の薬学的に活性な成分として製剤化され得、または他の活性な成分と組み合わされ得る。
【0114】
化合物(複数可)の、薬学的に許容される担体への混合または添加の際に、得られた混合物は、溶液、懸濁物、エマルジョンなどであり得る。リポソーム懸濁物もまた、薬学的に許容される担体として適切であり得る。これらは、当業者に公知の方法に従って調製され得る。得られた混合物の形態は、意図した投与様式、および選択された担体またはビヒクル中での化合物の溶解度が含まれるいくつかの因子に依存する。上記化合物が不十分な溶解度を示す場合、可溶化のための方法が使用され得る。かかる方法は公知であり、これには、共溶媒、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)の使用、界面活性剤、例えば、Tween(登録商標)の使用、および水性重炭酸ナトリウム中での溶解が含まれるがこれらに限定されない。化合物の誘導体、例えば、塩またはプロドラッグもまた、有効な医薬組成物を製剤化する際に使用され得る。開示された化合物はまた、身体からの迅速な排出に対してそれらを保護する担体、例えば、時限放出(time-release)製剤またはコーティングを用いて調製され得る。かかる担体には、例えば、マイクロカプセル化送達系であるがこれに限定されない、制御放出(controlled release)製剤が含まれる。
【0115】
開示された化合物は、シクロデキストリン包接錯体として製剤化され得る。
【0116】
開示された化合物および/または組成物は、複数または単一用量コンテナ中に封入され得る。前記化合物および/または組成物は、例えば、使用のためにアセンブルされ得る構成要素部分を含むキット中にも提供され得る。例えば、開示された化合物のうちの1つまたは複数は、凍結乾燥形態で提供され得、適切な希釈剤が、使用の前の組合せのための別々の構成要素として提供され得る。一部の例では、キットは、開示された化合物および共投与のための第2の治療剤を含み得る。前記化合物および第2の治療剤は、別々の構成要素部分として提供され得る。キットは、複数のコンテナを含み得、各コンテナは、前記化合物の1つまたは複数の単位用量を保持する。前記コンテナは、好ましくは、経口投与のための錠剤、ゲルカプセル、徐放性カプセルなど;非経口投与のためのデポー製品、事前充填シリンジ、アンプル、バイアルなど;および外用投与のためのパッチ、メディパッド(medipad)、クリームなどが含まれるがこれらに限定されない所望の投与様式のために適応させられる。
【0117】
活性化合物は、処置される被験体に対する望ましくない副作用の存在なしに治療的に有用な効果を発揮するのに十分な量で、薬学的に許容される担体中に含まれる。治療有効濃度は、処置される障害についての公知のin vitroおよびin vivoモデル系において前記化合物を試験することによって、実験的に決定され得る。一部の例では、前記化合物の治療有効量は、前記化合物が投与される障害の少なくとも1つの症状を低めるまたは寛解させる量である。典型的には、前記組成物は、単一投薬量投与のために製剤化される。薬物組成物中の活性化合物の濃度は、活性化合物の吸収、不活性化および排泄速度、投薬スケジュール、ならびに投与される量、ならびに当業者に公知の他の因子に依存する。
【0118】
一部の例では、約1mg~4000mgの開示された化合物、かかる化合物の混合物、またはその生理学的に許容される塩もしくはエステルは、単位投薬形態中で、生理学的に許容されるビヒクル、担体、賦形剤、バインダー、防腐剤、安定剤、香味剤などと配合される。組成物または調製物中の活性物質の量は、示された範囲内の適切な投薬量が得られるような量である。用語「単位投薬形態」は、ヒト被験体および他の哺乳動物のための単一投薬量として適切な物理的に個別の単位を指し、各単位は、適切な医薬賦形剤と関連して、所望の治療効果を生じるように計算された活性材料の所定の量を含有する。一部の例では、前記組成物は、単位投薬形態で製剤化され、各投薬量は、約5mg~約4000mg(例えば、約1000mg~約4000mg、約100mg~1000mg、約10mg~100mgまたは約25mg~75mg)の1つまたは複数の化合物を含有する。他の例では、単位投薬形態は、約0.1mg、約1mg、約5mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約2000mg、約3000mg、約4000mgまたはそれよりも多くの、開示された化合物(複数可)を含む。
【0119】
開示された化合物または組成物は、単一用量として投与され得、またはある時間間隔で投与されるいくつかのより小さい用量へと分割され得る。治療的組成物は、単一用量送達で、延長された期間にわたる連続的送達によって、反復投与プロトコールで(例えば、1日に複数回の(multi-daily)、毎日の、毎週の、または毎月の反復投与プロトコールによって)投与され得る。処置の正確な投薬量、タイミングおよび持続時間は、処置されている疾患の関数であり、公知の試験プロトコールを使用して実験的に、またはin vivoもしくはin vitro試験データからの外挿によって決定され得ることが理解される。濃度および投薬量の値は、軽減される状態の重症度によっても変わり得ることに留意されたい。さらに、特定の被験体について、投薬量レジメンが、個々の要求、および組成物を投与するまたは組成物の投与を監督する人物の専門的判断に従って経時的に調整され得ること、ならびに本明細書に示される濃度範囲が例示に過ぎないことが理解される。
【0120】
懸濁物として経口投与される場合、これらの組成物は、医薬品製剤化の分野で周知の技法に従って調製され、嵩を付与するための微結晶性セルロース、懸濁化剤としてのアルギン酸またはアルギン酸ナトリウム、粘度増強剤としてのメチルセルロース、および甘味料/矯味矯臭剤を含有し得る。即時放出(immediate release)錠剤として、これらの組成物は、微結晶性セルロース、第二リン酸カルシウム、デンプン、ステアリン酸マグネシウムおよびラクトースならびに/または他の賦形剤、バインダー、増量剤、崩壊剤(disintegrant)、希釈剤および滑沢剤を含有し得る。経口投与が所望される場合、化合物は、典型的には、胃の酸性環境からそれを保護する組成物中で提供される。例えば、組成物は、胃においてその完全性を維持し、腸において活性化合物を放出する腸溶性コーティング中で製剤化され得る。組成物はまた、制酸薬または他のかかる成分と組み合わせて製剤化され得る。
【0121】
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤または食用担体を含み、錠剤へと圧縮され得、またはゼラチンカプセル中に封入され得る。経口治療的投与を目的として、活性化合物(単数または複数)は、賦形剤と共に取り込まれ得、錠剤、カプセルまたはトローチの形態で使用され得る。薬学的に適合性の結合剤およびアジュバント材料が、組成物の一部として含まれ得る。錠剤、丸剤、カプセル、トローチなどは、類似の性質の、以下の成分または化合物のうちのいずれかを含有し得る:バインダー(例えば、以下に限定されないが、トラガカントゴム、アカシア、コーンスターチまたはゼラチン);賦形剤(例えば、微結晶性セルロース、デンプンまたはラクトース);崩壊剤(例えば、以下に限定されないが、アルギン酸およびコーンスターチ);滑沢剤(例えば、以下に限定されないが、ステアリン酸マグネシウム);流動促進剤(例えば、以下に限定されないが、コロイド二酸化ケイ素);甘味剤(例えば、スクロースまたはサッカリン);および矯味矯臭剤(例えば、ペパーミント、サリチル酸メチルまたは果実フレーバー)。
【0122】
投薬単位形態がカプセルである場合、これは、上記型の材料に加えて、脂肪油などの液体担体を含有し得る。さらに、投薬単位形態は、投薬単位の物理的形態を改変する種々の他の材料、例えば、糖および他の腸溶性薬剤のコーティングを含有し得る。化合物は、エリキシル剤、懸濁物、シロップ、ウエハース、チューインガムなどの構成要素としても投与され得る。シロップは、活性化合物に加えて、甘味剤としてのスクロース、ならびにある特定の防腐剤、色素および着色料、ならびに香味剤を含有し得る。
【0123】
経口投与される場合、化合物は、経口投与のための通常の投薬形態で投与され得る。これらの投薬形態には、錠剤およびカプセルの通常の固体単位投薬形態、ならびに液体投薬形態、例えば、溶液、懸濁物およびエリキシル剤が含まれる。固体投薬形態が使用される場合、それらは、化合物が1日に1回または2回だけ投与される必要があるような、徐放性型のものであることが好ましい。一部の例では、経口投薬形態は、1日に1回、2回、3回、4回またはそれよりも多い回数で、被験体に投与される。追加の例では、化合物は、単一用量または分割された用量で、1~100mg/kg体重の投薬量範囲で、ヒトに経口投与され得る。1つの事例的な投薬量範囲は、単一用量または分割された用量で、経口で0.1~100mg/kg体重(例えば、経口で0.5~100mg/kg体重)である。経口投与について、組成物は、約1~1000ミリグラムの活性成分、特に、1、5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、750、800、900または1000ミリグラムの活性成分を含有する錠剤の形態で提供され得る。しかし、任意の特定の患者についての特定の用量レベルおよび投薬量の頻度は、変更され得、使用される特定の化合物の活性、その化合物の代謝安定性および作用の長さ、年齢、体重、総体的な健康、性別、食餌、投与様式および投与の時間、排泄の速度、薬物組合せ、特定の状態の重症度、ならびに治療を受けている宿主が含まれる種々の因子に依存することが理解される。
【0124】
注射可能な溶液または懸濁物もまた、適切な非毒性の、非経口的に許容される希釈剤または溶媒、例えば、マンニトール、1,3-ブタンジオール、水、リンゲル溶液または等張塩化ナトリウム溶液、または適切な分散剤もしくは湿潤剤および懸濁化剤、例えば、合成モノグリセリド、ジグリセリドまたはトリグリセリドが含まれる無菌の刺激の少ない(bland)不揮発油、およびオレイン酸が含まれる脂肪酸、ならびにリン脂質を使用して製剤化され得る。非経口、皮内、皮下または外用適用に使用される溶液または懸濁物は、以下の構成要素のうちのいずれかを含み得る:無菌希釈剤、例えば、注射用水、食塩水溶液、不揮発油、天然に存在する植物油、例えば、ゴマ油、ココナツ油、ラッカセイ油、綿実油など、もしくは合成脂肪ビヒクル、例えば、オレイン酸エチルなど、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールおよびメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸および亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA);緩衝剤、例えば、アセテート、シトレートおよびホスフェート;ならびに浸透圧の調整のための薬剤、例えば、塩化ナトリウムおよびデキストロース。非経口調製物は、ガラス、プラスチックまたは他の適切な材料で作製されたアンプル、使い捨てシリンジ、または複数用量バイアル中に封入され得る。緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤などは、必要に応じて取り込まれ得る。
【0125】
静脈内投与される場合、適切な担体には、生理学的食塩水、リン酸緩衝食塩水(PBS)、ならびに増粘剤および可溶化剤(例えば、グルコース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびこれらの混合物)を含有する溶液が含まれる。組織標的化リポソームが含まれるリポソーム懸濁物もまた、薬学的に許容される担体として適切であり得る。
【0126】
化合物は、例えば、IV、IM、デポ-IM、SCまたはデポ-SCによって、非経口投与され得る。非経口投与される場合、約0.1~約500mg/日(例えば、約1mg/日~約100mg/日または約5mg/日~約50mg/日)の治療有効量が送達され得る。デポー製剤が、注射のために1か月に1回または2週間毎に1回使用される場合、用量は、約0.1mg/日~約100mg/日、または約3mg~約3000mgの1月用量であり得る。
【0127】
化合物はまた、舌下投与され得る。舌下で与えられる場合、化合物は、IM投与について上記した量で、1日に1~4回与えられるべきである。
【0128】
化合物はまた、鼻腔内投与され得る。この経路によって与えられる場合、適切な投薬形態は、鼻腔用スプレーまたは乾燥粉末である。鼻腔内投与のための化合物の投薬量は、IM投与について上記した量である。鼻腔用エアロゾルまたは吸入によって投与される場合、これらの組成物は、医薬品製剤化の分野において周知の技法に従って調製され得、ベンジルアルコールまたは他の適切な防腐剤、バイオアベイラビリティを増強するための吸収促進剤、フッ化炭素、および/または他の可溶化剤もしくは分散剤を使用して、食塩水中の溶液として調製され得る。
【0129】
化合物は、くも膜下腔内投与され得る。この経路によって与えられる場合、適切な投薬形態は、非経口投薬形態であり得る。くも膜下腔内投与のための化合物の投薬量は、IM投与について上記した量である。
【0130】
化合物は、外用投与され得る。この経路によって与えられる場合、適切な投薬形態は、クリーム、軟膏またはパッチである。外用投与される場合、事例的な投薬量は、約0.5mg/日~約200mg/日である。パッチによって送達することができる量は限定的であるので、2つまたはそれよりも多くのパッチが使用され得る。
【0131】
化合物は、坐剤によって直腸投与され得る。坐剤によって投与される場合、事例的な治療有効量は、約0.5mg~約500mgの範囲であり得る。坐剤の形態で直腸投与される場合、これらの組成物は、薬物を、常温で固体であるが、直腸腔中で液化および/または溶解して薬物を放出する、適切な非刺激性賦形剤、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコールの合成グリセリドエステルと混合することによって調製され得る。
【0132】
正確な投薬量および投与の頻度が、レトロウイルス感染、疾患および関連の障害の治療に熟練した投与医師または他の臨床医にとって周知のように、投与される特定の化合物、処置されている特定の状態、処置されている状態の重症度、特定の被験体の年齢、体重、全身的な身体状態、および個体が摂取している場合がある他の薬物適用に依存することは、当業者に明らかなはずである。
【実施例
【0133】
化合物合成
【化30】
10-ブロモ-2,2-ジメチルデカン酸エチル
THF(20mL)中の1,8-ジブロモオクタン(2.80g、10.2mmol)およびイソ酪酸エチル(1.00g、8.62mmol)の溶液に、リチウムジイソプロピルアミド(THF中2M、5.1mL)を-78℃で窒素下で滴下添加した。混合物を、rtまで徐々に温め、一晩撹拌し、その後、氷冷NHCl水溶液でクエンチした。混合物を、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を、NaSOで乾燥させ、真空下で蒸発させた。粗製生成物を、SiOカラム(ヘキサン中0~20%の酢酸エチル)によって精製して、所望の10-ブロモ-2,2-ジメチルデカン酸エチル(1.541g、58%)を得た。
【0134】
【化31】
(10-エトキシ-9,9-ジメチル-10-オキソデシル)トリフェニルホスホニウムブロミド
アセトニトリル中の10-ブロモ-2,2-ジメチルデカン酸エチル(575mg、1.87mmol)の溶液に、トリフェニルホスフィン(542mg、2.07mmol)を添加した。混合物を70℃まで加熱し、3日間撹拌した。次いで、反応混合物を、真空下で濃縮し、SiOカラム(ジクロロメタン中0~15%のMeOH)によって精製して、所望の(10-エトキシ-9,9-ジメチル-10-オキソデシル)トリフェニルホスホニウムブロミドを淡黄色油状物(836mg、78%)として得た。
【0135】
【化32】
5-プロピルフラン-2-カルバルデヒド
塩化オキサリル(0.43mL、5.0mmol)を、N,N-ジメチルホルムアミド(0.385mL、5.00mmol)に10℃で滴下添加した。溶液を、rtで15分間撹拌した。この溶液に、ジクロロメタン(10mL)を添加し、その後、ジクロロメタン(5mL)中の2-プロピルフラン(500mg、4.55mmol)を5分間かけて添加した。得られた混合物を、rtで30分間撹拌し、その後、水(20mL)中の酢酸ナトリウム(2g)を添加した。混合物を、さらに30分間撹拌した。混合物を、ジクロロメタンで3回抽出した。合わせた有機層を、NaSOで乾燥させ、真空下で蒸発させた。粗製生成物を、SiOカラム(ヘキサン中0~25%の酢酸エチル)によって精製して、所望の5-プロピルフラン-2-カルバルデヒド(505mg、81%)を得た。
【0136】
【化33】
2,2-ジメチル-11-(5-プロピルフラン-2-イル)ウンデカン酸
THF(10mL)およびDMSO(10mL)中の(10-エトキシ-9,9-ジメチル-10-オキソデシル)トリフェニルホスホニウムブロミド(3.547g、6.234mmol)の溶液に、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(THF中1M、6.5mL)を0℃で添加した。混合物を、同じ温度で30分間撹拌し、その後、THF(10mL)中の5-プロピルフラン-2-カルバルデヒド(860mg、6.23mmol)を添加した。混合物を、rtまでゆっくりと温め、完了まで撹拌した。混合物を、氷冷1N HCl溶液でクエンチし、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を、乾燥させ、蒸発させた。粗製生成物を、SiOカラム(ヘキサン中0~15%の酢酸エチル)によって精製して、続く水素化のための所望のオレフィン(1.356g、62%)を得た。THF(30mL)中の上述のオレフィン(1.208g、3.461mmol)の溶液に、10wt%Pd/C(60mg)を添加した。混合物を、Hバルーン下でrtで1時間撹拌した。次いで、混合物をセライトに通して濾過し、溶媒を真空下で蒸発させた。水素化生成物である2,2-ジメチル-11-(5-プロピルフラン-2-イル)ウンデカン酸エチルを、さらなる精製なしに、続く加水分解において使用した。THF(24mL)、HO(6mL)およびMeOH(6mL)中の粗製2,2-ジメチル-11-(5-プロピルフラン-2-イル)ウンデカン酸エチル(1.131g、)の溶液に、水酸化リチウム(775mg、)を添加した。混合物を、55℃で24時間撹拌した。混合物を、氷冷1N HCl溶液でクエンチし、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を乾燥させ、蒸発させ、SiOカラム(ヘキサン中0~20%の酢酸エチル)によって精製して、2,2-ジメチル-11-(5-プロピルフラン-2-イル)ウンデカン酸(2ステップかけて665mg、64%)を得た。1H NMR (CDCl3):δ 0.95 (t, J=7Hz,3H), 1.19 (s, 6H), 1.27 (br, 12H), 1.63 (m, 6H), 2.55 (m, 4H), 5.84 (s, 2H);13C NMR (CDCl3): δ 13.77, 21.48, 24.85, 24.93, 28.08, 28.14, 29.20, 29.36,29.46, 29.53, 30.11, 40.55, 42.14, 104.80, 104.95, 154.41, 154.65, 184.94.
【0137】
脂肪酸-アミノ酸コンジュゲートの合成のための一般的実験手順
DMF中の遊離脂肪酸(1.0当量)の溶液に、ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(HOBt、1.5当量)および1-エチル-3-(3’-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドHCl(EDC-HCl、1.5当量)をrtで添加した。混合物をrtで1時間撹拌し、その後、アミノ酸のアルキルエステルHCl塩(1.5当量)および炭酸カリウム(3.0当量)を添加した。混合物をrtで16時間撹拌し、その後、水でクエンチした。次いで、混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層を水で2回洗浄した。次いで、有機層を乾燥させ、蒸発させ、SiOカラム(ヘキサン中0~30%の酢酸エチル)によって精製して、脂肪酸-アミノ酸コンジュゲートの精製されたアルキルエステルを得た。THF/MeOH/HO(4:1:1)中の上述のエステルの溶液に、水酸化リチウム(5.0当量)を添加した。混合物をrtで20時間撹拌し、その後、1N HCl溶液でクエンチした。混合物を酢酸エチルで抽出した。次いで、有機層を水で2回洗浄した。有機物を乾燥させ、蒸発させて、対応する脂肪酸-アミノ酸コンジュゲートを得た。この生成物は、必要に応じて、SiOカラム(DCM中0~10%のMeOH)によってさらに精製することができる。
【0138】
脂肪酸-アミノ酸コンジュゲートの合成の具体例
【化34】
(2,2-ジメチル-11-(5-プロピルフラン-2-イル)ウンデカノイル)グリシン
DMF(5mL)中の2,2-ジメチル-11-(5-プロピルフラン-2-イル)ウンデカン酸(90mg、0.28mmol)の溶液に、HOBt(57mg、0.42mmol)およびEDC-HCl(80mg、0.42mmol)を添加した。混合物をrtで1時間撹拌し、その後、メチルグリシンHCl(53mg、0.42mmol)およびKCO(116mg、0.84mmol)を添加した。反応をrtで20時間撹拌し、その後、水でクエンチした。混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層を水で2回洗浄した。有機層をNaSOで乾燥させ、蒸発させた。粗製生成物を、さらなる精製なしに加水分解した。THF(4mL)、MeOH(1mL)およびHO(1mL)中の上述の粗製(2,2-ジメチル-11-(5-プロピルフラン-2-イル)ウンデカノイル)グリシン酸メチルの溶液に、水酸化リチウム(34mg、1.4mmol)を添加した。混合物をrtで20時間撹拌し、その後、1N HClでクエンチした。混合物を酢酸エチルで抽出した。次いで、有機層を水で2回洗浄した。有機物を乾燥させ、蒸発させ、SiOカラム(DCM中0~10%のMeOH)によって精製して、精製された(2,2-ジメチル-11-(5-プロピルフラン-2-イル)ウンデカノイル)グリシン(2ステップかけて54mg、51%)を得た。1H NMR (CDCl3):δ 0.94 (t, J=7Hz, 3H),1.18 (s, 6H), 1.29 (br, 12H), 1.49 (m, 2H), 1.62 (m, 4H), 2.54 (m, 4H), 4.04(d, J=5Hz, 2H), 5.82 (m, 2H), 6.46 (t, J=5Hz, 1H); 13C NMR (CDCl3): δ 13.71, 21.45, 24.67, 25.16,28.05, 28.12, 29.18, 29.32, 29.45, 29.50, 30.08, 41.14, 41.65, 42.15, 104.79,104.96, 154.37, 154.61, 172.92, 179.37.
【0139】
【化35】
(2,2-ジメチルオクタデカノイル)ロイシン
DMF(5mL)中の2,2-ジメチルオクタデカン酸(148mg、0.474mmol)の溶液に、HOBt(96mg、0.71mmol)およびEDC-HCl(136mg、0.71mmol)を添加した。混合物をrtで1時間撹拌し、その後、メチルL-ロイシンHCl(129mg、0.71mmol)およびKCO(196mg、1.42mmol)を添加した。反応をrtで16時間撹拌し、その後、水でクエンチした。混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層を水で2回洗浄した。有機層をNaSOで乾燥させ、蒸発させた。粗製生成物を、SiOカラム(ヘキサン中0~20%の酢酸エチル)によって精製して、(2,2-ジメチルオクタデカノイル)ロイシン酸メチル(134mg、64%)を白色固体として得た。THF(4mL)、MeOH(1mL)およびHO(1mL)中の(2,2-ジメチルオクタデカノイル)ロイシン酸メチル(120mg、0.27mmol)の溶液に、水酸化リチウム(33mg、1.4mmol)を添加した。混合物をrtで20時間撹拌し、その後、1N HClでクエンチした。混合物を酢酸エチルで抽出した。次いで、有機層を水で2回洗浄した。有機物を乾燥させ、蒸発させて、(2,2-ジメチルオクタデカノイル)ロイシン(117mg、99%)を得た。1H NMR (CDCl3):δ 0.88 (t, J=7Hz, 3H),0.96 (m, 6H), 1.18 (d, J=4Hz, 6H), 1.25 (br, 28H), 1.49 (m, 2H), 1.6 (m, 1H),1.72 (m, 2H), 4.58 (m, 1H), 5.97 (d, J=8Hz, 1H); 13C NMR (CDCl3): δ 14.08, 21.87, 22.67, 22.83,24.77, 24.98, 25.25, 25.28, 29.34, 29.54, 29.62, 29.65, 29.66, 29.69, 30.14,31.91, 40.94, 41.30, 42.17, 50.96, 176.66, 178.73.
【0140】
【化36】
2,2-ジメチルオクタデカン酸
THF(20mL)中の1-ブロモヘキサデカン(1.00g、3.28mmol)およびイソ酪酸エチル(0.38g、3.28mmol)の溶液に、リチウムジイソプロピルアミド(THF中2M、2.6mL、5.2mmol)を-78℃で、窒素下で滴下添加した。混合物を、rtまで徐々に温め、一晩撹拌し、その後、氷冷1N HCl水溶液でクエンチした。混合物を、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を、NaSOで乾燥させ、真空下で蒸発させた。粗製生成物を、SiOカラム(ヘキサン中0~10%の酢酸エチル)によって精製して、所望の2,2-ジメチルオクタデカン酸エチル(805mg、72%)を得た。THF(12mL)、HO(3mL)およびMeOH(3mL)中の2,2-ジメチルオクタデカン酸エチル(751mg、2.21mmol)の溶液に、水酸化リチウム(559mg、23.3mmol)を添加した。混合物を55℃で48時間撹拌し、その後、氷冷1N HCl溶液でクエンチした。混合物を、DCMで3回抽出した。合わせた有機層を乾燥させ、蒸発させ、SiOカラム(ヘキサン中0~15%の酢酸エチル)によって精製して、2,2-ジメチルオクタデカン酸(423mg、62%)を白色固体として得た。1H NMR (CDCl3):δ 0.88 (t, J=7Hz, 3H),1.19 (s, 6H), 1.26 (br, 28H), 1.52 (m, 2H); 13C NMR (CDCl3): δ 14.12, 22.70, 24.86, 24.94,29.37, 29.51, 29.64, 29.67, 29.70, 30.12, 31.93, 40.57, 42.12, 184.47.
【0141】
脂肪酸-補酵素Aコンジュゲートの合成のための一般的手順
DCM中の脂肪酸(1.0当量)の溶液に、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI、2.0当量)をrtで添加した。反応を、遊離酸が完全に消費されるまで(約2時間)rtで撹拌した。次いで、混合物を水で4回洗浄した。有機層を乾燥させ、蒸発させた。THF中の得られた油状物に、0.1M重炭酸ナトリウム溶液(約5mL)中の補酵素Aまたは補酵素A三リチウム塩(0.15当量)を添加した。混合物を、rtで一晩撹拌させ、次いで、1N HCl溶液でpH約1に酸性化した。粗製脂肪酸-CoAコンジュゲートを、酢酸エチルの添加によって沈殿させた。次いで、混合物を濾過し、固体をアセトンおよび酢酸エチルで洗浄して、対応する精製された脂肪酸-coAコンジュゲートを白色固体として得た。
【0142】
脂肪酸-CoAコンジュゲート合成の具体例
【化37】
2,2-ジメチルオクタデカン酸-CoAコンジュゲート
DCM(3mL)中の2,2-ジメチルヘキサデカン酸(100mg、0.352mmol)の溶液に、1,1’-カルボニルジイミダゾール(114mg、0.704mmol)をrtで添加した。反応物をrtで2時間撹拌した。次いで、混合物を水で4回洗浄した。有機層を乾燥させ、蒸発させた。THF(5mL)中の得られた油状物に、0.1M重炭酸ナトリウム溶液(5mL)中の補酵素A(40mg、0.052mmol)を添加した。混合物を、rtで一晩撹拌させ、次いで、1N HCl溶液でpH約1に酸性化した。粗製脂肪酸-CoAコンジュゲートを、酢酸エチル(10mL)の添加によって沈殿させた。次いで、混合物を濾過し、固体を、アセトンで2回、酢酸エチルで2回洗浄して、精製された2,2-ジメチルオクタデカン酸-CoAコンジュゲート(12mg、22%)を白色固体として得た。1H NMR (d6-DMSO): δ 0.74 (s, 3H), 0.85 (t, J=7Hz,3H), 0.95 (s, 3H), 1.13 (s, 6H), 1.23 (br, 24H), 1.48 (m, 2H), 2.25 (t, J=7Hz,2H), 2.85 (t, J=7Hz, 2H), 3.13 (m, 4H), 3.90 (m, 1H), 4.16 (br, 2H), 4.38 (br,1H), 4.70 (m, 1H), 4.80 (m, 1H), 5.98 (d, J=6Hz, 1H), 7.76 (t, J=6Hz, 1H), 8.12(t, J=6Hz, 1H), 8.31 (s, 1H), 8.56 (s, 1H); HRMS: m/z calculated forC39H71N7O17P3S+ [M+H]+: 1034.3840, found 1034.3803.
【0143】
C18:1-2M-Leu(2,2-ジメチルオクタデカ-9-エノイル)ロイシン)の合成
THF(20mL)中の7-ブロモヘプタン酸(2.08g、9.95mmol)の溶液に、ボラン-THF溶液(1M、21mL、21mmol)を0℃で添加した。混合物を、rtまでゆっくりと温めながら、2時間撹拌した。反応混合物を、飽和NaHCO水溶液でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機層を、飽和NaHCO水溶液、飽和NaCl水溶液およびHOで連続して洗浄した。次いで、有機層を乾燥させ、蒸発させて、7-ブロモヘプタン-1-オールを無色油状物として得た。ジクロロメタン(20mL)中のこの粗製生成物に、1-メチルイミダゾール(2.37mL、29.8mmol)、tert-ブチルジメチルシリルクロリド(1.64g、10.9mmol)およびヨウ素(7.58g、29.8mmol)を添加した。反応の完了の際に、これを飽和Na水溶液でクエンチし、ジクロロメタンで3回抽出した。粗製生成物を、シリカゲルカラム(ヘキサン中0~5%の酢酸エチル)によって精製して、精製された((7-ブロモヘプチル)オキシ)(tert-ブチル)ジメチルシラン(1.78g、58%)を得た。
【0144】
THF(10mL)中のイソ酪酸エチル(2.78mL、20.7mmol)の溶液に、リチウムジイソプロピルアミドTHF溶液(2M、17mL、34mmol)を-78℃で添加した。混合物を-78℃で15分間撹拌し、0℃で15分間撹拌した。得られたエノラートを、THF(8mL)中の((7-ブロモヘプチル)オキシ)(tert-ブチル)ジメチルシラン(2.13g、6.89mmol)の溶液中に、-78℃でゆっくりと添加した。混合物を、撹拌しながら3時間かけてrtまで温めた。次いで、反応を飽和NHCl水溶液でクエンチし、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を乾燥させ、真空下で蒸発させた。粗製生成物を、シリカゲルカラム(ヘキサン中0~5%の酢酸エチル)によって精製して、9-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2,2-ジメチルノナン酸エチル(1.84g、77%)を得た。
【0145】
THF(20mL)中の9-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2,2-ジメチルノナノエート(1.84g、5.34mmol)の溶液に、テトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリドTHF溶液(1M、8mL、8mmol)を0℃で添加した。脱シリル化反応を、完了までrtで撹拌した。混合物を飽和NHCl水溶液でクエンチし、酢酸エチルで3回抽出した。粗製生成物を、シリカゲルカラム(ヘキサン中0~20%の酢酸エチル)によって精製して、9-ヒドロキシ-2,2-ジメチルノナン酸エチル(1.07g、87%)を得た。
【0146】
ジクロロメタン(20mL)中の9-ヒドロキシ-2,2-ジメチルノナン酸エチル(1.07g、4.65mmol)の溶液に、デス-マーチンペルヨージナン(2.96g、6.98mmol)をrtで添加した。酸化の完了の際に、飽和Na水溶液を添加し、得られた混合物をジエチルエーテルで3回抽出した。合わせた有機層を、乾燥させ、蒸発させた。粗製生成物を、シリカゲルカラム(ヘキサン中0~5%の酢酸エチル)によって精製して、2,2-ジメチル-9-オキソノナン酸エチル(583mg、55%)を得た。
【0147】
ノニルトリフェニルホスホニウムブロミド(1.43g、3.05mmol)を、DMSO(4mL)およびTHF(4mL)中に溶解させた。この溶液に、KHMDS THF溶液(1M、3mL、3mmol)を0℃でゆっくりと添加し、30分間撹拌した。得られたオレンジ色のイリド溶液を、THF(4mL)中の2,2-ジメチル-9-オキソノナン酸エチル(583mg、2.58mmol)の溶液に-78℃でゆっくりと添加した。混合物を、撹拌しながら0℃まで徐々に温めた。TLCに基づいてアルデヒドが完全に消費されたら、反応混合物を氷冷NHCl水溶液でクエンチし、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を、乾燥させ、蒸発させた。粗製生成物を、シリカゲルカラム(ヘキサン中0~5%の酢酸エチル)によって精製して、所望の2,2-ジメチルオクタデカ-9-エン酸エチル(475mg、55%)を得た。
【0148】
THF(8mL)、MeOH(2mL)およびHO(2mL)中の2,2-ジメチルオクタデカ-9-エン酸エチル(600mg、1.78mmol)の溶液に、水酸化リチウム(426mg、17.8mmoL)を添加した。混合物を55℃で48時間撹拌した。次いで、反応物を、1M HCl水溶液でpH=1に酸性化し、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を、乾燥させ、蒸発させた。粗製生成物を、シリカゲルカラム(ヘキサン中0~20%の酢酸エチル)によって精製して、所望の2,2-ジメチルオクタデカ-9-エン酸またはC18:1-2M(538mg、98%)を無色油状物として得た。
【0149】
DMF(2mL)中のC18:1-2M(82mg、0.26mmol)の溶液に、HOBt(54mg、0.40mmol)およびEDC塩酸塩(76mg、0.40mmol)をrtで添加した。TLCに基づいてC18:1-2Mが消費されるまで、混合物を1時間撹拌した。次いで、この溶液に、L-ロイシンメチルエステル塩酸塩(72mg、0.40mmol)および炭酸カリウム(110mg、0.797mmol)をrtで添加した。反応物を24時間撹拌し、その後、HCl水溶液(pH=1)でクエンチした。得られた混合物を、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を、乾燥させ、蒸発させた。粗製生成物を、シリカゲルカラム(ヘキサン中0~20%の酢酸エチル)によって精製して、(2,2-ジメチルオクタデカ-9-エノイル)ロイシン酸エチル(85mg、75%)を得た。
【0150】
THF(4mL)、HO(1mL)およびMeOH(1mL)中の(2,2-ジメチルオクタデカ-9-エノイル)ロイシン酸エチル(230mg、0.525mmol)の溶液に、LiOH(63mg、2.6mmol)をrtで添加した。反応をrtで2時間撹拌し、次いで、HCl水溶液(pH=1)でクエンチした。混合物を、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を、乾燥させ、蒸発させた。粗製生成物を、シリカゲルカラム(DCM中0~10%のMeOH)によって精製して、(2,2-ジメチルオクタデカ-9-エノイル)ロイシン(210mg、94%)を得た。
【0151】
実験手順
NEM誘導体化によるFuFA検出
生物学的試料中のFuFAの検出、特徴付けおよび定量化を、それらのそれぞれのディールス-アルダー付加物を形成するための37Cで30分間にわたる100mMのN-エチルマレイミド(NEM)(Sigma-Aldrich)によるフラン環の誘導体化の際に実施した。これらの付加物は、具体的には、三連四重極型質量分析計でのCIDの際のイオン化プロセスの間のNEM(m/z:125)の喪失をモニタリングして検出した。
【0152】
11U3-2M化学合成
11U3-2Mを作製するための合成スキームの一例は、図8に示す。
【0153】
動物および実験設計
雄性C57BL/6Jマウスは、Jackson Laboratory(Bar Harbor、ME、USA)から購入した。マウスを1週間順化させ、その後、Research Diets(New Brunswick、NJ、USA)から購入した低脂肪食(LFD)または高脂肪食(HFD)のいずれかを受けるようにランダム化した。肥満を、8週齢の時点で開始して16週間にわたって、HFD(D12492、脂肪に由来する60%の調整済みカロリーを有する)によって誘導した。齢が一致した対照を、LFD(D12492のスクロースレベルと一致するD12450J)で維持した。食餌を維持しつつ、HFD下のマウスを、4つの群(1群当たりn=8)へと分割し、1.5%のオクタン酸(TCI、#O0027)を含有する2:1のポリエチレングリコール(Fisher Scientific、PEG400 #p167-1)および食塩水の溶液中に製剤化した11D3(50mg/kg)、11U3(50mg/kg)または11U3-2M(50mg/kg)100μlによる7週間にわたる経口強制飼養によって、2日毎に処置した。対照群は、100μlのPEG400/食塩水/オクタン酸をビヒクル(Veh)として受けた。LFDマウスを、2つの群(1群当たりn=8)へと分割し、vehまたは11D3(50mg/kg)で処置して、LFD中の天然FuFAの任意の影響を検出した。マウスを、処置を開始する前に同じ体重平均で開始するようにグループ分けした。強制飼養処置の間およびその前に、マウスに、自由裁量で餌を与え、水への自由なアクセスを与えた。食物摂取、水消費量およびマウス体重を毎週モニタリングした。20週間(4週間の処置)の時点で、耐糖能試験(GTT)を、全てのコホートに対して実施した。2週間の回復後(22週)、全身組成を、EchoMRITM-100Hを使用して実施した。23週間の研究の終了時に、マウスを、イソフルランで安楽死させ、その後開腹術を行った。血液を収集し、マウスを、0.9%NaClを使用して灌流した。臓器を回収し、液体窒素ガス中で瞬間凍結し、さらなる分析のために-80℃で貯蔵した。Cellcrusher(Cell Crusher、Schull、Ireland)組織粉砕機を使用して、凍結組織を、ドライアイスを使用して、微細な容易に回収可能な粉末へと破壊した。免疫組織化学のために、全てのマウスについて同じ肝臓葉を、ホルマリン10%(Fisher Chemical、#SF98-4)中で48時間固定し、その後に75%エタノール浴が続き、その後パラフィン包埋した。
【0154】
マウスの第2のコホートを計画して、HFDモデルにおいてであるがLFDモデルにおいてもOroboros分析を使用して、ミトコンドリアおよび脂肪酸(FA)β酸化に対する11U3-2Mの効果を確認した。雄性C57BL/6J食餌誘導性肥満(C57BL/6J DIO、#380050)および雄性C57BL/6J食餌誘導性肥満対照マウス(C57BL/6J DIO Control、#380056)を、15週齢の時点で、Jackson Laboratory(Bar Harbor、ME、USA)から購入した。マウスは、輸送の間および受け取りの際に、HFDまたはLFDのいずれかを連続的に摂食していた。マウスに、処置を開始する前にさらに4週間にわたって餌を与えた。HFD(1群当たりn=8)またはLFD(1群当たりn=8)を継続しつつ、マウスを、11U3-2Mのみ(50mg/kg)またはvehを11週間使用して、第1のコホートと同じ製剤で処置した。マウスを5時間絶食させ、PEG400/食塩水(2:1)および1.5%のオクタン酸溶液中のD31-パルミチン酸(Cambridge Isotope、3μM、#dlm-215-1)50μlの単回腹腔内注射を受けさせ、その2時間後、FA代謝を研究するために屠殺した。血液および組織を回収し、上記のように貯蔵した。
【0155】
in vivo研究
GTTを、5時間絶食させたマウスに対して実施した。マウスに、0.9%NaCl中の濾過滅菌した1.5g/kgグルコースを腹腔内注射した。血中グルコースレベルを、携帯血糖測定器(Accu-Chek Aviva、Roche Diagnostics、Indianapolis、IN、USA)を使用して、0分、20分、40分、60分、90分および120分の時点で測定した。
【0156】
血漿の収集および測定
収集後、赤血球および血漿を、4℃にて7500gで5分間の遠心分離によって分離し、アリコート化し、-80℃で貯蔵した。インスリンレベルを、製造業者の使用説明書に従って、50μlの血漿を使用してELISA(Invitrogen、#EMINS)によって測定した。アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルの両方を、ELISA(Abcam、それぞれ#ab263882および#ab282882)を用いて5μlの血漿を使用して測定した。代謝ホルモンを、Luminex xMAP技術(Milliplexマウス代謝ホルモン拡張パネル#MMHE-44K、Millipore、Burlington、MA、USA)を使用して決定した。多重代謝ホルモンプレートを、製造業者の使用説明書に従って測定した。
【0157】
薬物動態学研究
雄性C57BL/6J(12週齢)マウスを使用して、FuFAの吸収および代謝を測定した。この手順では、11D3(50mg/kg)、11U3(50mg/kg)、11U3-2M(50mg/kg)およびD31-パルミチン酸(10mg/kg)を、単一の動物に同時に投与した(カセット投薬)。結果として、複数の化合物の相対的薬物動態学を、少数の実験動物を用いて迅速に評価することができる。化合物を、腹腔内で(n=5)または強制飼養によって(n=5)注射した。注射の1時間、2時間および4時間後に、尾部静脈に対して小さく切開を行い、ミクロヘマトクリットキャピラリーチューブ(FisherBrand、#22-362566)を使用して、連続血液試料を収集した(収集1回当たり50μl)。6時間の時点で、マウスに麻酔し、血液を、終末部血管からの採血で大静脈から収集した。血液試料を上記のように処理して、血漿を収集した。遊離FuFAおよびD31-パルミチン酸ならびに複合脂質中で見出されるそれらのエステルの薬物動態学(PK)を、10μlの血漿を使用して評価した。簡潔に述べると、20μlの水を10μlの血漿に添加し、2つのガラスチューブ中に分割した。一方のチューブ中の試料を、誘導体化の際にGC-MSを使用してそのまま測定し、他方の試料は、誘導体化および定量化の前に加水分解した。各試料を、500nMのヘプタデカン酸(Sigma、#H3500)および11U3-CD標準でスパイクした。遊離FA画分を得るために、200μlの水を添加し、直ぐにボルテックスし、その後500μlの酢酸エチル(Fisher、#E195-4)を添加した。混合物をボルテックスし、4℃で1500gで5分間スピンした。遊離FAを含有する有機層を収集し、乾燥させた。総FA定量化のために、塩基性加水分解を、MeOH中1MのKOH 500μlを使用して実施し、60℃で1時間インキュベートした。反応を、300μlの1M HClを添加することによってクエンチした。混合物を酢酸エチル(1mL)で抽出し、4℃で1500gで5分間スピンした。次いで、総FAを含有する有機層を収集し、乾燥させた。MS検出のために、ペンタフルオロベンジルブロミド(PFB)誘導体化を、アセトニトリル(ACN、Fisher #A955)中の100μlの1%ジイソプロピルエチルアミンおよび100μlの2%PFBを使用して実施し、その後、室温(RT)で30分間インキュベートした。チューブをボルテックスし、4℃で1500gで5分間遠心分離し、窒素ガス下で乾燥させた。試料を、GCによる分析のために100μlのACN中に再度懸濁させた。
【0158】
免疫組織化学
パラフィン中に包埋した固定された肝臓組織を、4μm切片にカットした。肝臓切片を、脱パラフィン化し、再水和し、肝臓形態学の組織学的評価のために、ヘマトキシリン-エオシン(H&E)で染色した。肝臓脂肪症、バルーニングおよび炎症の定量化およびスコアは、3つのパラメーター - 脂肪症、炎症、肝細胞変性に基づいて、病理学者が盲検で実施した。
【0159】
RNA抽出および定量的リアルアイムPCR
総RNAを、50mgの凍結肝臓粉末を使用して抽出した。粉末を、1mLのTRIzol溶液(Invitrogen、#15-596-026)および200μlのクロロホルム中でホモジナイズし、15秒間激しく振盪し、RTで2~3分間インキュベートした。溶解物を、4℃で12000gで15分間遠心分離した。上部水相を、新たな氷冷チューブ中に移し、500μlの氷冷イソプロピルアルコールで希釈し、RTで10分間インキュベートした。チューブを、4℃で12000gで10分間遠心分離した。RNAペレットを、氷冷75%エタノールを使用して2回洗浄し、4℃で7500gで5分間遠心分離した。RNAペレットを、RNase非含有HO中に溶解させ、濃度を、Nanodrop 2000(Thermo Fisher Scientific)を使用して測定した。全てのRNA試料は、1.95~2の間の、260nm/280nmの吸光度比を有した。RNA試料(1μg)を、iScript cDNA合成キットを用いた逆転写に供した。TaqMan遺伝子発現アッセイ-オンデマンドシステム(Applied Biosystems、Foster City、CA、USA)を、比較Ct法を使用し、ハウスキーピング遺伝子としてGAPDHを使用する定量的PCR(qPCR)による遺伝子発現評価のために使用した。
【0160】
RNA配列決定データに対するバイオインフォマティクスおよび生物統計学分析
トランスクリプトーム配列決定を、1条件につき4つの複製で、各群からのマウス試料に対して実施した。品質制御を、ツールFastQCによって生配列決定データに対して最初に実施した。次いで、低品質読み取りおよびアダプター配列を、ツールTrimmomaticによってトリミングした。事前処理の後に、生き残った読み取りを、STARアライナーによって、マウス参照ゲノムmm10へとアラインした。試料1つ当たりの遺伝子1つ当たりの遺伝子計数を、機能 - STARアライナーによってサポートされるquantMode GeneCountsによって定量化した。遺伝子発現正規化を、RパッケージDEseq2によって実施した。
【0161】
遺伝子発現プロファイルを考慮して、差次的発現分析を、DEseq2パッケージによって、遺伝子計数に基づいて実施した。5つの一対比較を分析した:LFD+Veh 対 LFD+11D3、HFD+Veh 対 HFD+11D3、HFD+Veh 対 HFD+11U3、HFD+Veh 対 HFD+11U3-2MおよびLFD+Veh 対 HFD+Veh。差次的に発現された遺伝子(DEG)は、FDR=5%、および1.5と等しいまたはそれよりも大きい絶対変化倍数によって定義した。下流の分析のために、Ingenuity Pathways Analysis(IPA)を使用して、DEGに対するパスウェイエンリッチメント分析を実施した。有意な経路は、FDR=5%によって定義した。調節方向は、Z-スコアによって測定し、正のZ-スコアは経路の活性化を示し、負のZ-スコアは阻害を意味するが、一部の経路は、未知の調節方向または調節方向のミックスを示す。
【0162】
蛍光RNA in-situハイブリダイゼーション
蛍光RNA in-situハイブリダイゼーションを、LNA ISH Optimization Kits(Qiagen、#339459)を製造業者の使用説明書に従って使用して、組織切片に対して実施した。簡潔に述べると、切片化スライドを脱パラフィン化し、プロテイナーゼKアプローチによって37℃で15分間消化した。U6、スクランブルRNAおよびGM15441(LCD0173184)プローブを、それぞれ1nM、40nMおよび40nMの最終濃度でハイブリダイズさせ、その後、連続希釈したSSC(Sigma、#S6639-1L)のストリンジェントな洗浄が続いた。30分間のブロッキングの後に、スライドを、製造業者の使用説明書に従って、1:400希釈の抗DIG-POD(Roche、#11207733910)と共にRTで60分間インキュベートした。TSA-plus Cyanine 3(Akoya Bioscience、#NEL744001KT)基質を切片に添加し、2回インキュベートして(1回のインキュベーションにつき5分間)、蛍光シグナルを増幅した。NucBlue Live ReadyProbes Reagentを、最後にスライドに適用して、細胞核染色を容易にした。画像を、Ocular Advanced Scientific Camera Controlソフトウェア(Digital Optics Limited)を使用して、蛍光顕微鏡(Leica、DMi8)で獲得した。
【0163】
ウエスタンブロット
肝臓試料(50mg)をホモジナイズし、ホスファターゼ(Fisher Scientific、#PIA32957)およびプロテアーゼ(Fisher Scientific、#PIA32953)阻害剤カクテルを含有する氷冷RIPA緩衝液中でボルテックスした。タンパク質濃度を、BSAアッセイ(Pierce)を使用して決定した。タンパク質溶解物を、LDS試料緩衝液と混合し(1:4)、95℃で2分間加熱した。次いで、溶解物を、10%Tris-Glycine eXtended(BioRad、Criterion #5671034)上にロードし、電気泳動した。タンパク質を、PVDFメンブラン(BioRad、#1620177)に電気泳動的に移し、その移動を、前記メンブランを0.1%Ponceau S溶液(Sigma-Aldrich、#6226-79-5)で染色することによって確認した。次いで、前記メンブランを、TBS-T(トリス緩衝食塩水+0.1%Tween(登録商標) 20[Thermo Fisher Scientific])中5%の脱脂粉乳(LabScientific)または5%のBSA(MilliporeSigma)で、RTで90分間ブロッキングした。ブロッキングの後、前記メンブランを、以下の一次抗体と共に、4℃で一晩インキュベートした:抗アセチル-CoAカルボキシラーゼ(抗ACC、Cell Signaling、#3662、1/1000)、抗ATPクエン酸リアーゼ(抗ACLY、Cell Signaling、#4332、1/1000)、抗β-アクチン(Cell Signaling、#4970、1/1000)。ブロットを、TBS-Tで15分間にわたって3回リンスし、適切なHRP-コンジュゲート化抗ウサギ(Cell Signaling、#7074、1/10000)と共にRTで90分間インキュベートした。前記メンブランを、TBS-T中で15分間にわたって3回洗浄し、Western Lightning Plus-ECL、Enhanced Chemiluminescence Substrateキット(Perkin Elmer LLC、#50-904-9323)またはSuperSignalTMWest Femto Maximum Sensitivity Substrate(Bio-Rad、#34094)およびChemiDocイメージャー(Bio-Rad)で可視化した。定量的濃度測定分析を、Image Labソフトウェア(Bio-Rad)を使用して実施した。
【0164】
サーマルシフトアッセイ
タンパク質を、ホスファターゼ(Fisher Scientific、#PIA32957)およびプロテアーゼ(Fisher Scientific、#PIA32953)阻害剤を含有するリン酸緩衝食塩水(PBS-Gibco、Paisley、UK)1mLを用いて、肝臓粉末(50mg)から抽出した。懸濁物をボルテックスし、4℃にて16000gで20分間遠心分離し、上清を収集した。40μlのアリコートを、MicroAmp 8-チューブストリップ(Applied Biosystems、#43-582-93)に移し、StepOne PCRシステム(Applied Biosystems)を使用して、異なる温度(37;45;47;49;50.5;52;53.5;55℃)で加熱した。チューブを、4℃にて16000gで20分間遠心分離して、変性したタンパク質を除去した。上清を新たなチューブに移し、上記のようにウエスタンブロットによって分析した。
【0165】
マウス初代肝細胞単離
初代マウス肝細胞を、2ステップコラゲナーゼ灌流を使用して、Jackson Laboratoriesからの8週齢雄性C57BL/6Jマウスから単離した。マウスを、イソフルラン(Piramal Critical Care、Andhra Pradesh、India)を使用して麻酔した。腹部領域の毛皮を、70%アルコールできれいにし、U型切開を行って、内臓を露出させた。門脈に、i.v.カテーテル(24ゲージ×3/4”;Terumo Medical Corporation、Elkton、MD)をカニューレ挿入した。カテーテルを、Ethilonナイロンモノフィラメント7-0(Ethic、Johnson and Johnson、USA)を使用する外科結びによって固定し、維持した。ポンプに接続した注入チュービングを、カテーテル中に挿入し、肝臓を、2%ペニシリン-ストレプトマイシン(Sigma Chemical Company)を補充した予め温めた(40℃)肝臓灌流培地(Gibco、#17701038)50mlで、5ml/分の速度で灌流した。大静脈を、灌流の開始直後にカットして、流出を可能にした。次いで、肝臓を、50mlの予め温めた(40℃)肝臓消化培地(Gibco、#17703034)で、同じ速度で灌流した。灌流プロセス全体の間、大静脈の閉塞を、2分毎に数秒間にわたって実施して、背圧および肝臓腫脹を創出して、良好な肝臓灌流を可能にした。灌流の終了時に、肝臓を取り出し、製造業者の使用説明書に従って、初代肝細胞プレーティングサプリメント(Gibco、#CM3000)を補充したウィリアムE培地(WEM)から構成される冷プレーティング培地20mlを満たした100mmディッシュ中に配置した。消化肝臓を、鉗子で引き裂いて、肝細胞懸濁物を得た。肝細胞を、100umナイロンセルストレーナー(Falcon、Durham、NC)を介して50ml遠心分離チューブ中へと濾過して、未消化のデブリを除去した。濾液を4℃で50×gで3分間遠心分離して、肝細胞をペレット化した。肝細胞を、プレーティング培地で2回洗浄し、遠心分離して、ペレットを得た。肝細胞を、20mlのプレーティング培地中に再度懸濁させ、20mlの40%冷percoll(GE Healthcare、Uppsala、Sweden)と混合し、4℃で150×gで7分間遠心分離した。上清および死細胞を廃棄し、下部相を2回洗浄し、4℃で50×gで3分間遠心分離した。肝細胞を、10mlのプレーティング培地中に再度懸濁させ、血球計数器(Fisher Scientific)を使用して計数した。細胞生存度(>90%)を、トリパンブルー染色(Gibco、Grand Island、NY)を使用して評価した。肝細胞を、コラーゲンコーティングしたプレート(Gibco、Grand Island、NY)中に、2.2×10細胞/6ウェルで播種した。5%COを有する37℃のインキュベーター中での3時間の付着期間の後、未付着の細胞を有する培地を除去し、細胞をPBS(Gibco、Paisley、UK)で洗浄した。製造業者の使用説明書に従って初代肝細胞維持サプリメント(Gibco、#CM4000)を補充したWEMから構成される新鮮な維持培地を、添加した。肝細胞は、それらの大きいサイズに起因して、他の非実質細胞型から容易に識別される。肝細胞を、実験手順の前に、5%COを有する37℃のインキュベーター中でおよそ16時間培養した。
【0166】
コレステロール、コレステロール-エステルおよびトリグリセリドのHPLC-MS分析
コレステロール、総コレステロール-エステル(TCE)およびトリグリセリド(TG)を、血漿試料から抽出した。簡潔に述べると、10μlの血漿を、コレステロール(コレステロール-d7;Avanti Polar Lipids,Inc.#700041)、500nMのTCE(16:0コレステリル-d7エステル;Avanti Polar Lipids,Inc.#700149)、および500pMのTG(トリヘプタデカノイン、Nu-Chek Prep.,Inc.)についての内部標準の存在下での200μlの酢酸エチルを使用する抽出のために使用し、ボルテックスし、4℃で1.500gで5分間スピンした。コレステロールおよびTCEについて、30μlの上清を、70μlのACNと混合し、コレステロールまたはTCEからのFAのインソースニュートラルロス後の特定のMRMトランジション(コレステロールまたはコレステリルエステルおよびd7-コレステロールまたはd7-コレステリルエステルについて、それぞれ369.3/147.3および376.3/147.3)に従って、LC-MSによって実行した。
【0167】
血漿TGを、0.4ml/分の流速ならびにアセトニトリル/水(9:1、v/v)0.1%酢酸アンモニウム(溶媒A)およびイソプロパノール/アセトニトリル0.1%酢酸アンモニウム(7:3、v/v)(溶媒B)の移動相を用いてC8 Lunaカラム(2×150mm、5μm、Phenomenex)を使用するHPLC-HR-MS/MSによって分析した。勾配プログラムは、35%~100%の溶媒B(0.1~10分間)、100%の溶媒B(10~13分間)、その後、初期条件への4分間の再平衡化、であった。Q-Exactiveハイブリッド四重極-orbitrap質量分析計(ThermoFisher)を、以下のパラメーターを用いてポジティブモードで使用した:補助ガスヒーター温度250℃、キャピラリー温度300℃、シースガス流速20、補助ガス流速20、スイープガス流速0、スプレー電圧4kV、S-レンズRFレベル60(%)。連続質量スキャン(full mass scan)分析は、分解能17500で、700~1500m/zの範囲であった。
【0168】
質量分析によるFuFA-CoAの検出および分析
肝臓
肝臓粉末(50mg)を使用し、100μlのmilli-Q精製水を用いてプラスチックEppendorf中で溶解させ、十分にボルテックスした。次いで、400nMのn-ヘプタデカノイル補酵素Aリチウム塩を内部標準(C17-CoA標準、NuCheck)として含有するACN 200μlを添加し、完全にボルテックスし、4℃にて10000gで4分間遠心分離した。タンパク質沈殿のために、上清を新たなチューブに移し、20μlを、CoAの分析のためにきれいな質量分析バイアル中で、180μlのACN/水(4:1の比)で希釈した。
【0169】
初代肝細胞
上記のように、細胞を単離し、6ウェルプレート中に播種した。細胞を、FA非含有ウシ血清アルブミン(Sigma、#A7511)と複合体化した11D3(50μM)、11U3(50μM)または11U3-2M(50μM)で1時間処理した。1時間後、細胞をPBSで3回洗浄し、WEM培地をウェルに添加した。0分間、15分間、45分間および90分間の新たな培地の後、細胞を洗浄し、かき取り、PBSを用いて回収し、4℃にて10000gで4分間遠心分離した。PBSを廃棄し、ペレットを、C17-CoA標準(400nM)を含有する氷冷メタノール(MeOH、LC-MSグレード、Alfa Aesar #UN1230)150μl中に再度懸濁させ、ボルテックスし、4℃にて10000gで4分間遠心分離した。MeOHを、分析のためにきれいな質量分析バイアルに移した。
【0170】
肝臓および初代肝細胞中のFuFA-CoAを、30秒間にわたる5%の溶媒B(ACN、0.1%水酸化アンモニウム)および95%の溶媒A(水+0.1%水酸化アンモニウム)で開始し、その後の6分間かけた溶媒Bの5から65%までの勾配の増加、その後の条件の再平衡化の系溶媒を使用する、0.35ml/分の流速の5%の溶媒B(ACN、0.1%アンモニウム)を用いた150×2mm Luna(登録商標)5μm C8 100 C8 Å LCカラム(00F-4040-B0)を使用するクロマトグラフィー分離の後に、API 5000TM質量分析計を用いて検出した。分析物および内部標準ピーク面積の定量化を、Sciex’s Analyst(登録商標)ソフトウェア中のQuantitation Wizardを使用して決定した。
【0171】
非標的化/標的化されたメタボロミック質量分析
非標的化
肝臓粉末(50mg)を、500μLのH2O中に再度懸濁させ、酢酸エチル(1mL)を使用して抽出した。相を、4℃にて1500gで5分間の遠心分離によって分離し、有機相を収集し、窒素ガス下で乾燥させた。アセトニトリル沈殿のために、200μLの氷冷ACNを、水中でホモジナイズした肝臓組織に添加し、じっくりとボルテックスした。試料を、4℃にて1500gで5分間遠心分離し、全ての相を取り出し、窒素ガス下で乾燥させた。乾燥させた試料を、MeOHで再構成し、分析のためにきれいな質量分析バイアルに移した。
【0172】
質量分析データを、陽イオンモードおよび陰イオンモードでQ Exactive Orbitrap(ThermoFisher Scientific)を使用して収集して、高分解能の正確な質量データを得た。2つの異なるクロマトグラフィーシステムを使用した:ブライおよびダイヤー抽出試料からの有機相を、20分間にわたる0~100%勾配の溶媒B(90:10イソプロピルアルコール、HPLC用のACS試薬(Honeywell #AH323):ACN、0.1%ギ酸、試薬グレード(Sigma #F0507)および溶媒A(70:30水、OptimaTMLC/MSグレード(Fisher #W6500):アセトニトリル、0.1%ギ酸)、その後の6分間にわたる100%の溶媒B、その後、0.650mL/分の流速で4分間にわたる0%の溶媒Bへの戻しを用いた、100×2mm Luna(登録商標)5μm C18(2)カラム(phenomenex、00D-4252-B0)を使用して実施した。ブライおよびダイヤー水相およびアセトニトリル沈殿抽出物についてのクロマトグラフィーを、18分間にわたる10~100%勾配の溶媒D(ACN、0.1%ギ酸)および溶媒C(水、0.1%ギ酸)、その後の6分間にわたる100%の溶媒Dを用い、その後0.650mL/分の流速で6分間にわたり10%の溶媒Dに戻して、同じカラムを使用して実施した。化合物の同定は、Compound Discoverer 3.2 LCMS分析ソフトウェアによって進行していた。
【0173】
標的化されたセラミドおよびカルニチンコンジュゲート評価
セラミドおよびカルニチンコンジュゲートを、酢酸エチルを使用してセラミド標準(18:1/17:0)(N-ヘプタデカノイル-D-エリスロ-スフィンゴシン、Avanti Polar Lipids #860517)の存在下で抽出し、質量分析を使用して定量化した。
【0174】
質量分析データを、API 5000 LC/MS/MSを陽イオンモードで使用して収集した。ブライおよびダイヤー試料抽出物有機相についてのクロマトグラフィーを、30秒間にわたる30%の溶媒B、その後の9分間にわたる溶媒A中30~100%勾配の溶媒B、その後の3分間にわたる100%の溶媒B、その後、0.600mL/分のフローで3分間にわたる0%の溶媒Bへの戻しを用いて、同じLCカラムを使用して実施した。分析物および内部標準ピーク面積の定量化を、Sciex’s Analyst(登録商標)ソフトウェア中のQuantitation Wizardを使用して決定した。
【0175】
統計分析
結果は、平均±SEMとして表される。統計分析を、GraphPad Prismを用いて実施し、データを、ホルム-シダック(Holm-Sidak)多重比較事後比較およびスチューデントt検定と共に、一元配置または二元配置分散分析(ANOVA)によって分析した。データの正規性を、4つの正規性検定(ダゴスティーノ-ピアソン、アンダーソン-ダーリング、シャピロ-ウィルクおよびコルモゴロフ-スミルノフ)を使用して測定した。全ての結果を、p<0.05において有意とみなした。統計的有意性は、以下のように示される:p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【0176】
結果
天然フラン脂肪酸の検出および特徴付け
FuFAは、酸化、還元および代謝を受け得、したがって、複数の構造が植物および魚類において見出され得、種々の命名をもたらす。例えば、天然FuFAの1つ(11D3)は、以下のように命名される:「11」は、カルボキシアルキル鎖上の炭素の数を示し、「D」は、フラン環上のβ位で結合した2つのメチル基を示し(1つのメチルは「M」によって示され、メチルがないことは、「U」で示される)、「3」は、アルキル鎖上の炭素の数を示す(図1A)。
【0177】
NEM-誘導体化を使用することによって、本発明者らは、FO、LovazaTM薬物適用、およびLovazaTMで処置したヒトの血漿中の異なるFuFAを検出することができるようになっていた(図1B)。図1Cは、2つのメチル基を有するFuFAのより高い濃度を示す、FO、LovazaTM薬物適用、およびLovazaTMで処置したヒトの血漿中に存在するFuFA分子のパーセンテージを示す。11D3および11U3は、11U3がフラン環上の2つのメチル基を欠いており、その分解を緩徐化し、CMPFへのその代謝を防止することを除き、2つの密接に類似するFuFAである。
【0178】
ジメチル11U3(11U3-2M)の化学合成は、その安定性を増加させ、脂肪酸中へのその取り込みを低減させる。
【0179】
構造的に操作された11U3-2Mは、カルボン酸基に隣接する炭素上に2つのメチル基を提示するように、化学的に合成されている。この改変は、他の天然FuFA(即ち、11D3)が受けて最終生成物としてのCMPFをもたらす酸化および酵素的代謝を防止する(図2A)。
【0180】
増加した安定性および独特な吸収経路を確認するために、11D3および11U3と比較した、11U3-2Mのカセット薬物動態学的(PK)研究を、マウスにおいて実施した。全ての化合物を、強制飼養(PO)または腹腔内注射(IP)のいずれかによって注射した。D31-パルミチン酸を、参照FAとして使用した。全体として、11D3、11U3およびD31-パルミチン酸は迅速にエステル化された。対照的に、11U3-2Mは、遊離酸として存在し、リン脂質またはトリグリセリド中への取り込みはほとんど~全くなかった。さらに、予想どおり、より長い半減期が観察されたので、11U3-2Mは、天然FuFA(例えば、11D3)と比較して、より高い経口安定性を実証した。長鎖脂肪酸は、リンパ管を介した再エステル化の際にカイロミクロン中に分配され、門脈を介した初期肝通過(initial hepatic transit)を迂回することが公知である。11U3-2MのTGへのエステル化に対する抵抗性、およびカイロミクロン中への取り込みの非存在は、11U3-2Mが、肝門脈を介して吸収され、肝臓標的化治療効果をもたらすことを示している(図2B)。
【0181】
11U3-2Mは、脂肪症を逆転させ;グルコースクリアランスおよびインスリン抵抗性を改善する。
11U3-2Mがより安定であり、注射後により長い効果を有したという特徴付けおよび確認の後で、本発明者らは、これら3つのFuFA(11D3、11U3および11U3-2M)を、NAFLDマウスモデルにおいて試験した(図3A)。
【0182】
グルコース代謝、インスリン抵抗性および脂肪症に対するFuFA処置の効果を、C57BL/6JマウスにおけるHFDモデルを使用して分析した。図3Bに示されるように、11U3-2Mは、4週間の処置後に、veh処置と比較して、GTTによって測定した血中グルコースクリアランスを有意に改善した。GTTは、11U3-2M 対 veh処置マウスにおいて、それぞれ20分、40分および60分の時点で、18%(p<0.01)、26%(p<0.05)および22%(p<0.01)少ないグルコースを示した。vehと比較して、空腹時血中グルコースは、11U3-2M処置マウスにおいてグルコースの減少傾向を示し、0分から120分までの曲線下面積は、11U3-2M処置においてグルコースの24%減少を示した(p<0.05、図3B)。vehと比較して、11D3および11U3処置において、有意な差異は観察されなかった。
【0183】
グルコース代謝と一致して、11U3-2M処置マウスは、vehと比較して、ELISAによって測定してより低いインスリン血漿レベルを示した(68%、p<0.05、図3C)。マウス代謝ホルモンのmilliplex分析を使用して、インスリンレベル分泌と相関した任意のホルモンを見出した。インスリン分泌において役割を有することが公知の2つのホルモンであるC-ペプチド2および胃抑制ポリペプチド(GIP)は、vehと比較して、11U3-2Mで処置したマウスからの血漿中で、有意に低かった(それぞれ、43%、p<0.01および36%、p<0.05。図3C)。
【0184】
LFDで餌を与えたマウスは、炎症なしのクリアな構造を有する肝細胞を示したが、HFD+veh群中のマウスは、肝細胞のバルーニング変性を伴うより重大な脂肪症を示し(両方についてp<0.0001)、これは、11U3-2Mで処置したマウスでは有意に軽減された(両方についてp<0.0001)。11D3および11U3処置マウスでは、差異は観察されなかった。明らかな炎症が、LFD群と比較してHFD+veh群において検出されたにもかかわらず、3つのFuFA処置群において差異は観察されなかった(図3D)。しかし、マウス代謝ホルモンのmilliplex分析は、11U3-2M処置群において、ASTおよびTNF-αの血漿レベルにおける有意な低減を示した(図3D)。
【0185】
これらの結果は、肝臓の構造および機能の付随する保存を伴った、低減されたグルコース、インスリンおよびインスリン関連ホルモンで、肝臓NAFLDの保護における11U3-2Mの強い効果を示している。
【0186】
11U3-2Mは、コレステロール-エステルおよびトリグリセリドの血漿レベルを減少させ、肝臓におけるスフィンゴ脂質およびアシルカルニチンに対する主な効果を伴って代謝変化を増加させる。
血漿の質量分析的分析は、HFD+veh 対 LFD+vehにおいて、トリグリセリド(TC、p<0.01)、総コレステロール-エステル(TCE、p<0.0001)および総コレステロール(p<0.01)の有意な増加を示した。TCEおよびTGは共に、HFD+veh群と比較した、11U3-2MにおけるTCの低減(図4A)を伴って、HFDでは11U3-2M処置によって低減した(それぞれ、33%、p<0.01および16%、p<0.05)(図4A)。
【0187】
肝臓に対する非標的化メタボロミック分析を実施して、FuFA処置によって調節される代謝物を発見した。留意すべきことに、HFDで有意な増加を示したほとんどの化合物は、11U3-2M処置後に対応する減少を示し、逆もまた同様であり(図4B)、これは、11U3-2M処置が、肝臓をその基底状態に戻し、恒常性を回復させたことを示している。この分析は、高度に非極性の有機抽出中に、スフィンゴ脂質を生じ、より高い極性のACN沈殿抽出中に、アシルカルニチン種を生じた(図4B)。各種のスフィンゴ脂質を、スフィンガニンについては266.4m/zの、セラミド(Cer)モノヘキソースセラミド(monohexCer)、スフィンゴシンおよびスフィンゴシン1リン酸(-1-P)については264.4m/zの、スフィンゴミエリン(SM)については184.0m/zの断片の存在によって確認した。このアプローチを使用して、Cer(18:1/23:0)およびCer(18:1/25:0)の同定を確認したが、これらの化合物についての他の可能な同定は、それぞれ、酸化されたCer(18:1/22:1)およびCer(18:1/24:1)種である。アシルカルニチン種は、85.0m/z断片によって確認した。合わせると、これらの結果は、11U3-2M処置の投与の際の、肝臓における脂肪代謝の変化を示唆している。
【0188】
非標的化メタボロミクスデータにおいて見られたスフィンゴ脂質における変化を確認するために、本発明者らは、Compound Discoverer分析において確認されたスフィンゴ脂質種のレベルを定量化した。セラミド種の定量化(図4C)により、HFD+veh群 対 LFD+vehにおいて、共通するセラミド(例えば、Cer(18:1/16:0)およびCer(18:1/20:0))の有意な増加が確認され、11U3-2M処置によるそれらの有意な低減が確認された。各処置における総セラミドレベルは、これらの結果を反映した(図4C)。興味深いことに、これらの効果は、SM(18:1/16:0)、SM(18:1/20:0)およびSM(18:1/24:0)において類似しており、これは以前には観察されていなかった(図4C)。
【0189】
これらの結果は、11U3-2Mが肝代謝を変化させ、具体的には、FA代謝に影響するという強い証拠を与えている。
【0190】
11U3-2Mは、脂肪酸β酸化およびPPARαに関連する経路を活性化する。
FuFAの効果を理解するために、本発明者らは、肝臓に対するRNA-Sequencing(RNA-Seq)分析に進む。FDRカットオフは、LFD+veh 対 HFD+vehの間で上方調節された1047個の遺伝子および下方調節された506個の遺伝子を示し、これは、肝臓遺伝子発現および生理学に対する食餌の著しい効果を示している。僅か数個の遺伝子が、HFD+vehと比較して、11D3(14および3)および11U3処置(35および70)で上方および下方調節された。しかし、より多い数の遺伝子が、HFD+vehと比較して、11U3-2Mによって変更された(それぞれ296および312)(図5A)。
【0191】
これらの遺伝子に対してIngenuity Pathway Analysis(IPA)を使用することによって、本発明者らは、FA β酸化が、最も活性化された経路であり、次がミトコンドリアL-カルニチンシャトル経路、トリアシルグリセロール分解およびPPARα活性化であったことを観察した。これらの経路は、11U3-2Mによって媒介される、FA酸化における明らかな増加を示す(図5A)。これらのデータと一致して、本発明者らは、11U3-2M+veh群とHFD+veh群との間で、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ4(PDK4)遺伝子における増加(7倍、p=3.93e-22)もまた観察した。PDK4は、PPARα活性化後の、主要なエネルギー燃料としてのグルコースからFAへの影響力のあるシフトへの寄与因子であり、したがって、FA β酸化を増加させることが公知である。RT-qPCR分析により、11U3-2M処置肝臓におけるPDK4の増加が確認された(9.3倍、p<0.0001)(図5C)。
【0192】
さらに、上方調節された最も有意な遺伝子は、長鎖非コードRNA(LncRNA)GM15441であった(137倍増加、p=4.43e-65)。このLncRNAは最近、PPARαアゴニズムおよび空腹に応答して、肝インフラマソーム活性化を減弱させることが報告されている。GM15441をRT-qPCRによって確認したところ、HFD+vehと比較して、11U3-2Mにおいて320倍増加していた(p<0.0001)。これらの遺伝子のいずれも、11D3および11U3処置では有意に上方調節されなかった。11U3-2Mによってモジュレートされたこれら2つの高度に有意な遺伝子は、増加したPPARα依存性FA β酸化に向かう効果を示している(図5C)。肝臓においてこのLncRNAを検出し、位置決定するために、本発明者らは、HFD処置群において、GM15441についてのin-situハイブリダイゼーションを実施した。GM15441についてのシグナルは、11U3-2M処置肝臓からの細胞の核においてのみ検出され(図5D)、これは、GM15441のこの大きな増加およびPPARαによって媒介されるFA β酸化に対するその効果を確認している。
【0193】
興味深いことに、下方調節された最も有意な遺伝子のうちの1つは、LncRNA GM10804であった(5分の1、p=9.46e-4)。GM10804のノックダウンは、最近、NAFLDを伴う糖尿病における肝グルコースおよび脂質代謝の障害の抑制に関与するとされた39。RT-qPCRにより、GM10804が、HFD+vehと比較して、11U3-2M処置HFDマウスにおいて3.3分の1(p<0.05)に減少したことが確認された(図5B~D)。
【0194】
11U3-2Mは、ミトコンドリアの数および複合体活性を増加させる。
11U3-2Mで処置したマウスにおけるより高いFA β酸化速度を確認し、ミトコンドリア機能を調査するために、本発明者らは、第1のコホートと同じ食餌および11U3-2M用量の下にある新たなコホートのマウスを使用した。屠殺の時点で、新鮮な肝臓切片を単離し、Oroboros分析に直接使用して、酸素消費量およびミトコンドリア複合体活性を測定した(図6A)。クエン酸シンターゼ(CSA)の最大活性は、組織のミトコンドリア含量を示す。本発明者らの群におけるCSAの測定により、11U3-2Mで処置したLFD群およびHFD群 対 対応するveh処置のLFD群およびHFD群の両方において、活性における有意な増加が示された(それぞれ27%および29%、図6B)。2つの異なる基質(パルミトイルカルニチンおよびピルベート)を使用するミトコンドリアフラックスのOroboros分析は、11U3-2M処置マウスにおいて有意に高いフラックスを示した(図6C)。この増加は、11U3-2M処置マウスにおけるより大きい数のミトコンドリアによって説明することができる。しかし、CSAレベルに対して正規化されたフラックスは、なおも有意に増加しており(対応するveh群と比較して、LFDでは32.5%、HFDでは38.3%)、これは、11U3-2M処置が、ミトコンドリアの数とは無関係に、フラックスレベルを増加させることを示している。これは、電子伝達系中の複合体Iの基質であるNADHのレベルを増加させる、11U3-2Mによって媒介されるFA β酸化のより高いレベルに起因する。ピルベートを基質として使用した場合には、有意な変化は得られず(傾向は観察されたものの)、これは、11U3-2M処理細胞が解糖よりもFA β酸化を好んだことを示している。これらの観察は、グルタミン酸の添加後には、僅かに低かったが、類似であった(veh処置群と比較して、CSAに対する比で、LFD+11U3-2Mについては23%、HFD+11U3-2Mについては34%)。ミトコンドリアの最大呼吸を示すスクシネートの添加は、各条件間で有意な差異を全く示さず(CSAによって正規化した)、これは、コハク酸デヒドロゲナーゼ複合体の活性が、本発明者らの処置11U3-2Mによって改変されないことを意味している(図6C)。
【0195】
11U3-2M-CoA付加物の形成、ならびにACCおよびACLYの直接的阻害による脂肪酸β酸化に対するその効果
FA β酸化およびPPARα経路に対する有意な効果が、11U3-2M処置で観察されたが、本発明者らは、in vivoでのそのCoA付加物の形成を介して、重要な酵素に対する11U3-2Mの影響を調査した。FuFA-CoAコンジュゲートの定量化を、質量分析を使用して、FuFA処置マウスの肝臓試料に対して実施した。FuFA-CoAの内部標準C17:0-CoAに対する比を計算した。veh処置群は、いずれのFuFA-CoAコンジュゲートの存在も示さなかったが、本発明者らもまた、処置群において、11D3-CoA付加物または11U3-CoA付加物のいずれも見ることはなかった(検出限界未満)。それにもかかわらず、11U3-2M-CoAは有意に上昇した(図7A)。本発明者らはまた、マウス初代肝細胞におけるFuFA-CoAの形成を調査した。新鮮に単離した肝細胞を、FuFAと共に1時間インキュベートし、PBSで洗浄した。次いで、細胞を、0分、15分、45分または90分後に回収した。データは、経時的な11U3-2M-CoAの形成および代謝を示したが、有意な量の11D3-CoAも11U3-CoAも検出されなかった(図7B)。
【0196】
FA合成経路中の重要な酵素に対する11U3-2M-CoAの効果を評価するために、本発明者らは、サーマルシフトアッセイに進んで、11U3-2M-CoA結合の際のACCおよびACLYの熱安定化を解明する。HFD+veh群(#58)およびHFD+11U3-2M群(#69)からの1匹のランダムなマウスを使用して、一般的な安定性を確かめ、最良の温度を決定した。ACCおよびACLYは、veh処置と比較して、52、53.5および55℃において、HFD+11U3-2M処置においてより高い安定性を示した(図7C)。次いで、完全なコホートを、第1のサーマルシフトアッセイにおいて決定された臨界温度(総タンパク質レベルについては45℃、安定性を分析するためには52、53.5および55℃)に曝露させた。HFD+11U3-2M群からのマウスは、より高い温度において、大いに増加したACCおよびACLY安定性を示し、これは、11U3-2M-CoAとタンパク質との間での結合を示している(図7D)。
これらのデータは、11U3-2Mが、その安定なCoAコンジュゲートを介して、FAの生合成および代謝を調節する重要な酵素もまた阻害することを示している。
【表1】
【0197】
脂肪酸は、NAA(脂肪アシルアミノ酸コンジュゲートFA-AAとも呼ばれる、N-アシルアミノ酸)へと酵素的に変換される。ロイシンおよびグリシンコンジュゲートレベルは、代謝疾患において低減され、保護的である。本発明の一部として、増加した半減期を有するFuFAまたはジメチル化された脂肪酸を、選択されたGlyおよびLeuアミノ酸と組み合わせて、追加の保護を達成した。
【0198】
上記表に例示されるように、分岐鎖脂肪酸-アミノ酸(FA-AA)コンジュゲートのライブラリーを合成した。有意に改善された経口バイオアベイラビリティが、ジメチル化されたFA-AAコンジュゲートで観察された。選択された直鎖 対 分岐鎖FA-AAコンジュゲートの吸収を、以下により詳細に記載されるように、カセットPK研究において比較した。全てのFA-AAコンジュゲート(分岐ありまたはなし)の混合物を、付随してマウスに経口投与した(n=4~5、30mg/kgの各化合物)。脂肪酸部分中にジメチル基が導入された全てのアナログは、それらの直鎖対応物よりも、経口投与の際に、20倍超の血漿および肝臓濃度を示した。例えば、11U3-2M-Leuは、それらの血漿濃度が11U3-2M-Leuの直鎖対応物11U3-Leuよりも長い期間にわたって維持されたので、代謝に対するより高い抵抗性を示した(図18A~18D)。脂肪酸の分岐の結果として生じる吸収改善は、アミノ酸の選択とは無関係に、全てのFA-AAコンジュゲートにわたって普遍的であった。対照的に、腹腔内投薬した全ての試験したFA-AAコンジュゲート(n=4~5、30mg/kgの各化合物)は、循環中に有意なレベルに達し、初回通過代謝を迂回した。留意すべきことに、11U3-2M-Leuは、全ての直鎖アナログよりも、有意に高いCmax、AUC0~4、およびより緩徐な代謝をなおも示した。さらに、FA-AAコンジュゲートは、緩徐に加水分解し、二次的な生物活性脂肪酸(例えば、11U3-2M)を肝臓および血漿中に放出して、代謝機能障害に対して保護する二重の作用を達成することが見出された。
【0199】
カセットPK実験
2つのカセットPK実験を実施して、ジメチルアシルアミノ酸(アシル-2M-アミノ酸)の薬物動態学をそれらの天然の非分岐鎖アナログと比較し、本発明(ジメチル(2M)分岐の導入)によって得られた増加した半減期、経口バイオアベイラビリティおよび肝臓濃度を評価した。
【0200】
マウスの群(1群当たり1つの時点につきn=4)を使用した。化合物を、30mg/kgの用量で、経口強制飼養によってまたは腹腔内注射によって、カセット薬物動態学的設計を使用して送達した。群は表1に詳述される。留意すべきことに、C18:0-2M-Glyのメチルエステルは、C18:0-2M-Gly-Meと略記した。血漿および肝臓レベルを、HPLC-質量分析ベースの決定を使用して立証し、相対的な比として図1~4に示す。
【0201】
以下の群を使用し、時点は、腹腔内投与については0時間、1時間、2時間および4時間、経口投与については0時間、2時間および4時間であった。
【表2】
【0202】
血漿データは、アシル-アミノ酸への2M基の付加が、化合物を経口的に生物利用可能なものにすることを示している(図26A~26B)。導入された改変がない場合、これらの化合物は、血漿中で非常に低いレベルにしか達しない(図26A~26B)。
【0203】
腹腔内投与は、2M基を含有する化合物が、血漿中での有意に増加した半減期を有し、有意により高いレベルに達することを示している(図25A~25B)。
【0204】
肝臓組織の分析は、血漿中で観察された効果を反映しており、2M基の付加は、増加した組織レベルおよび半減期をもたらす(図27A~28B)。
【0205】
これらの効果は、群間で一貫しており、11U3-2M-Glyおよび11U3-2M-Leuは、腹腔内投与および経口投与の両方の下で、血漿および肝臓中で最も高いレベルに達した。
【0206】
NASH動物における利益
この研究は、樹立されたNASHマウスモデルにおいて経口投与した場合の、分岐鎖FA-AAコンジュゲートの保護的特性およびロイシン(Leu)にコンジュゲート化された11U3-2Mの増強された効力を定義した。C57BL6マウスに、NASH食で16週間にわたって餌を与え、次いで、NASH食を維持しつつ、ビヒクル(n=10)、C18:1-Leu(n=10)、C18:1-2M-Leu(n=8)および11U3-2M-Leu(n=12)(10mg/kg/日)を6週間にわたって経口投与した。マウスを屠殺し、臓器を、さらなる分析のために収集した。本発明者らは、ビヒクル対照と比較して、11U3-2Me-Leu処置群において、肝臓および肝臓重量/体重比における有意な減少を見出した(図19)。
【0207】
さらに、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)およびアラニントランスアミナーゼ(ALT)が含まれる肝臓傷害に関連する血液バイオマーカーもまた、コレステロールレベルと一緒に、11U3-2M-Leuで処置した動物において有意に減少した。血漿ASTおよびALTは、C18:1-2M-Leuで処置した動物においても有意に減少した(図20)。
【0208】
動物肝臓の遺伝子発現分析により、11U3-2M-Leuによる処置、およびより低い程度までではあるがC18:1-2M-Leuによる処置が、PPARαシグナル伝達経路を介して脂肪酸酸化を調節する重要な遺伝子の発現を有意に誘導し(図21)、脂肪生成を調節する遺伝子の発現を抑制した(図22)ことが実証され、これらは共に、NASHの特徴の1つである肝脂肪症の減弱に寄与した。
【0209】
最後に、単球動員および肝線維症を担うCcl2およびCcl5が含まれる炎症性遺伝子が、肝臓において有意に低減されたことが見出された(図23)。種々の線維症および細胞死遺伝子(例えば、コラーゲンおよびTGF-b)の下方調節と一緒に、11U3-2M-LeuおよびC18:1-2M-Leu処置は、肝脂肪症の軽減を超える抗線維症作用もまた実証した(図24)。注目すべきことに、肝および循環Ccl2の抑制は、動脈硬化性プラークまたは肝臓における単球の動員を防止することによって、NASHおよびアテローム性動脈硬化症の両方にとって利益になる。
【0210】
開示された発明の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮して、示された実施形態は本発明の好ましい例に過ぎず、本発明の範囲を限定すると解釈すべきでないことを認識すべきである。
図1AB
図1C
図2A
図2B
図3AB
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5AB
図5CDE
図6AB
図6C
図6D
図7AB
図7CD
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25A
図25B
図26A
図26B
図27A
図27B
図28A
図28B
【国際調査報告】