(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-07-10
(54)【発明の名称】CRISPR-CASインビボ遺伝子編集を支持するCAS免疫寛容誘導のための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20250703BHJP
A61K 31/203 20060101ALI20250703BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20250703BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20250703BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20250703BHJP
A61K 38/18 20060101ALI20250703BHJP
A61K 9/50 20060101ALI20250703BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20250703BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20250703BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20250703BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20250703BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20250703BHJP
A61K 31/436 20060101ALI20250703BHJP
A61K 31/593 20060101ALI20250703BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250703BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20250703BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20250703BHJP
【FI】
A61K39/00 G
A61K31/203
A61K45/00
A61P37/06
A61K39/00 Z
A61K38/20
A61K38/18
A61K9/50
A61K9/14
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/34
A61K31/436
A61K31/593
A61P43/00 121
C12N15/09 110
C07K19/00 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024575740
(86)(22)【出願日】2023-06-28
(85)【翻訳文提出日】2025-02-20
(86)【国際出願番号】 US2023069282
(87)【国際公開番号】W WO2024006849
(87)【国際公開日】2024-01-04
(32)【優先日】2022-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504279968
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ピッツバーグ - オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケイション
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】バルマート, スティーブン シー.
(72)【発明者】
【氏名】ファロ, ルイス ディー.
(72)【発明者】
【氏名】リトル, スティーブン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ローレット, デイビッド エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】バートン, グレゴリー エム.
(72)【発明者】
【氏名】コルクマズ, エムラー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA61
4C076AA73
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC07
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4C076EE26
4C076EE32
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4C084MA38
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4C085GG05
4C086AA01
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4C086MA03
4C086MA05
4C086MA38
4C086MA41
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB08
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
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4C206KA01
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4C206MA05
4C206MA58
4C206MA61
4C206MA86
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZB08
4C206ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA86
4H045EA20
(57)【要約】
対象においてCRISPR-Casエフェクターポリペプチドに対する寛容原性免疫応答を誘導するために有用な寛容原性組成物が開示される。この寛容原性組成物は、a)1または複数の微粒子、b)各微小粒子内にカプセル化された1または複数の制御性T細胞(Treg)刺激剤、およびc)CRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片、またはCRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片を含む融合ポリペプチドを含み得る。この寛容原性組成物は、a)溶解性マイクロニードルアレイ、b)溶解性マイクロニードルアレイにおける寛容原性DCの分化を促進する1または複数の薬剤、およびc)CRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片、またはCRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片を含む融合ポリペプチドを含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
寛容原性組成物であって、
a1)1または複数の微粒子、
b1)前記1または複数の微粒子内にカプセル化された1または複数の制御性T細胞(Treg)刺激剤、および
c1)CRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片、またはCRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片を含む融合ポリペプチド、あるいは
a2)溶解性マイクロニードルアレイ、
b2)前記溶解性マイクロニードルアレイにおける、寛容原性DCの分化を促進する1または複数の薬剤、および
c2)CRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片、またはCRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片を含む融合ポリペプチド
を含む、寛容原性組成物。
【請求項2】
a1)前記1または複数の微粒子、
b1)前記1または複数の微粒子内にカプセル化された前記1または複数の制御性T細胞(Treg)刺激剤、および
c1)前記CRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片、またはCRISPR-Casエフェクターポリペプチドを含む融合ポリペプチド
を含む、請求項1に記載の寛容原性組成物。
【請求項3】
前記1または複数のTreg刺激剤が、CCL22、レチノイン酸、または血管作用性腸ペプチドを含む、請求項2に記載の寛容原性組成物。
【請求項4】
前記1または複数のTreg刺激剤が、IL-2、TGF-β、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、またはCCR8リガンドを含む、請求項2または請求項3に記載の寛容原性組成物。
【請求項5】
前記1または複数のTreg刺激剤が、TGFβ、IL2およびラパマイシンを含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の寛容原性組成物。
【請求項6】
前記寛容原性組成物が、i)TGFβを含む微粒子、ii)IL-2を含む微粒子、およびiii)ラパマイシンを含む微粒子を含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の寛容原性組成物。
【請求項7】
前記1または複数の微粒子が、少なくとも1つのポリマーを含む、請求項2~6のいずれか一項に記載の寛容原性組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つのポリマーが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(アミノ酸)、ポリラクタート、ポリ乳酸、ポリグルタミン酸、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリ(エチレングリコール-b-(DL-乳酸-co-グリコール酸)-b-エチレングリコール)(PEG-PLGA-PEG)、ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PEG-b-PLGA)、ポリカプロラクトン-PEG(PCL-PEG)、ポリ(フッ化ビニリデン)-PEG(PVDF-PEG)、ポリ(乳酸-co-PEG)(PLA-PEG)、ポリ(メチルメタクリレート)-PEG(PMMA-PEG)、およびそれらの組合せを含む、請求項7に記載の寛容原性組成物。
【請求項9】
前記1または複数の微粒子が、アルギナートを含む、請求項2~6のいずれか一項に記載の寛容原性組成物。
【請求項10】
1または複数の微粒子が、前記1または複数の制御性T細胞(Treg)刺激剤の持続放出のために製剤化されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の寛容原性組成物。
【請求項11】
前記CRISPR-Casエフェクターポリペプチドが、II型CRISPR-Casエフェクターポリペプチド、V型CRISPR-Casエフェクターポリペプチド、またはVI型CRISPR-Casエフェクターポリペプチドである、請求項1~10のいずれか一項に記載の寛容原性組成物。
【請求項12】
前記CRISPR-Casエフェクター融合ポリペプチドが、i)CRISPR-Casエフェクターポリペプチド、およびii)1または複数の異種エフェクターポリペプチドを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の寛容原性組成物。
【請求項13】
前記1または複数の異種エフェクターポリペプチドの少なくとも1つが、一本鎖ヌクレアーゼ、二本鎖ヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、デアミナーゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、塩基編集剤、またはプライム編集剤である、請求項12に記載の寛容原性組成物。
【請求項14】
哺乳動物対象においてCRISPR-Casエフェクターポリペプチドに対する寛容を誘導する方法であって、前記方法が、有効量の請求項2~13のいずれか一項に記載の寛容原性組成物を前記対象に投与するステップを含み、それにより、前記CRISR-Casエフェクターポリペプチドに対する寛容を誘導する、方法。
【請求項15】
前記組成物が、真皮内、真皮下、皮下または筋肉内に投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が、
a2)前記溶解性マイクロニードルアレイ、
b2)前記溶解性マイクロニードルアレイにおける、寛容原性DCの分化を促進する前記1または複数の薬剤、
c2)CRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片、またはCRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくは前記免疫原性断片を含む融合ポリペプチド
を含む、請求項1に記載の寛容原性組成物。
【請求項17】
前記溶解性マイクロニードルアレイが、i)ベース部分を形成する生体適合性材料を含む基材、およびii)前記ベース部分から延在する複数のマイクロニードルを含む、請求項16に記載の寛容原性組成物。
【請求項18】
前記生体適合性材料が、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒアルロン酸(HA)、またはゼラチンを含む、請求項17に記載の寛容原性組成物。
【請求項19】
前記生体適合性材料が、カルボキシメチルセルロースを含む、請求項18に記載の寛容原性組成物。
【請求項20】
寛容原性DCの分化を促進する前記1または複数の薬剤が、ビタミンD3またはビタミンD3類似体を含む、請求項16~18のいずれか一項に記載の寛容原性組成物。
【請求項21】
哺乳動物対象においてCRISPR-Casエフェクターポリペプチドに対する寛容を誘導する方法であって、
有効量の請求項17~20のいずれか一項に記載の寛容原性組成物を前記対象に投与するステップを含み、
それにより、前記CRISR-Casエフェクターポリペプチドに対する寛容を誘導する、方法。
【請求項22】
前記組成物が、真皮内または真皮下に投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記寛容原性組成物が、前記対象に繰り返し投与される、請求項14~15または21~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記寛容原性組成物が、プライム-ブースト戦略で前記対象に投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記有効量の前記寛容原性組成物を投与するステップの後に、前記CRISPR-Casエフェクターポリペプチドを含む遺伝子編集組成物を前記対象に投与するステップを含み、前記寛容原性組成物が、前記遺伝子編集組成物中に存在する前記CRISPR-Casエフェクターポリペプチドに対する寛容を誘導する、請求項14~15または21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記遺伝子編集組成物が、前記寛容原性組成物の投与の約6ヶ月以内に前記対象に投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記寛容原性組成物が、遺伝子編集組成物を以前に投与された対象に投与される、請求項14~15または21~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記対象に遺伝子編集手順を実施するステップをさらに含む、請求項14~15または21~27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記対象が、ヒトである、請求項14~15または21~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記対象が、非ヒト哺乳動物である、請求項14~15または21~28のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2022年6月29日に出願された米国仮出願第63/356,932号に基づく利益を主張する。
【0002】
政府支援の記載
本発明は、国立衛生研究所(NIH)によって授与された助成金番号AR074285、および国防総省高等研究事業局(DARPA)によって授与された助成金番号HR0011-17-2-0043の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本出願は、遺伝子編集の分野に関し、具体的には、CRISPR-Casエフェクターポリペプチドに対する免疫寛容を誘導するための方法に関する。
【0004】
電子配列表の参照
サイズが12,288バイトであり、作成日:2023年6月27日であるSequences.xmlという名前の電子配列表の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0005】
背景
遺伝子編集は、治療状況においてますます使用されている。インビボで細胞内の遺伝子を編集するために、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)-Casエフェクタータンパク質、例えばCas9およびガイドRNAを細胞内の標的核酸と接触させ、CRISPR-CasエフェクターポリペプチドおよびガイドRNAが一緒になって標的核酸またはその発現を修飾する。しかしながら、CRISPR-Casエフェクターポリペプチドは、ヒトなどの哺乳動物宿主に対して外来性であり、免疫応答を誘発し得る。CRISPR-Casエフェクターポリペプチドに特異的な誘導抗体および/またはT細胞は、CRISPR-Casエフェクターポリペプチドを中和してよく、および/またはCRISPR-Casエフェクターポリペプチドを含む細胞を死滅させ得る。そのような免疫応答は、遺伝子編集の効率を低下させ、CRISPR-Casエフェクターポリペプチドを使用した将来の編集を妨げる可能性がある。限定されないが、Cas9などのCRISPR-Casエフェクターポリペプチドに対する免疫寛容を誘発する方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の要旨
対象においてCRISPR-Casエフェクターポリペプチドに対する寛容原性免疫応答を誘導するために有用な寛容原性組成物が開示される。いくつかの実施形態では、寛容原性組成物は、a)微粒子、b)微粒子内にカプセル化された1または複数の制御性T細胞(Treg)刺激剤、およびc)CRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片、またはCRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片を含む融合ポリペプチドを含む。他の実施形態では、寛容原性組成物は、a)溶解性マイクロニードルアレイ、b)溶解性マイクロニードルアレイにおける寛容原性DCの分化を促進する1または複数の薬剤、およびc)CRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片、またはCRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片を含む融合ポリペプチドを含む。
【0007】
本発明の前述および他の特徴および利点は、添付の図面を参照して進められるいくつかの実施形態の以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1A~1C概略図。
図1A 単独またはアジュバントと共に送達された抗原は、先天性炎症を促進することができ、これは炎症誘発性DCの皮膚排出リンパ節(DLN)への移動および炎症性エフェクターT細胞(Teff)の分化を誘発する。
図1B タンパク質抗原(例えば、Cas9)と皮下に同時投与されたTRI MPは、皮膚DLNの微小環境を整え、制御性T細胞の分化を促進する。
図1C MC903(ビタミンD類似体)マイクロニードルアレイ(MNA)条件による抗原(例えば、Cas9)の同時送達は、皮膚微小環境を整え、抗原を取り込み、DLNに移動し、優先的Treg分化を誘導し、および/またはTeffの分化を減少させるDCの寛容原性状況を提供する。
【0009】
【
図2】
図2:Cas9発現細胞による免疫化は、Cas9特異的CD8
+T細胞を誘発する。0日目および14日目に、C57BL/6マウスを腹腔内注射(赤色円)または皮下注射(白四角)によって1×10
7 LPS Cas9-Tg脾細胞で免疫化した。26日目に、免疫化マウスの脾細胞を採取した。細胞を、対照細胞(B6)、またはLPS処理で以前に活性化された(+)もしくは活性化されていない(-)Cas9抗原を発現する細胞(Cas9)とインキュベートした。再刺激に応答してIFNγを産生するCD8
+T細胞の頻度を定量する細胞内サイトカイン染色が示されている(対応のないt検定、*p<0.05、**p<0.01)。
【0010】
【
図3】
図3:アジュバントと共に製剤化されたCas9による免疫化は、Cas9特異的CD4
+T細胞を誘発する。C57BL/6マウスを、0日目および14日目に、100μgのSpCas9またはTITERMAX(登録商標)Goldアジュバントを製剤化したPBS緩衝液で免疫化した。21日目に、PBS(左)またはSpCas9(右)で免疫化したマウスの脾細胞を採取し、Cas9タンパク質で再刺激した。細胞内サイトカイン染色によって評価した場合のIFNγを産生するCD4+T細胞の頻度を示す(2元配置ANOVA、UN=刺激なし)。
【0011】
【
図4AB】
図4A~4C:Cas9を有するTreg誘導微粒子は、脾臓Tregを拡大し、Cas9特異的CD4 T細胞応答を低下させる。C57BL/6マウスは、Cas9を含むまたは含まないPBS緩衝液、ブランク微粒子(MP)またはTreg誘導微粒子(TRI-MP)で-12日目に前処理された。マウスは、TiterMax Goldアジュバントと共に製剤化された100μgのCas9タンパク質の1回(
図4A-4B)または2回(
図4C)の免疫化を受けた。最終免疫化の7日後に、マウスは安楽死され、脾臓T細胞応答は、IFNγ ELISPOT(
図4A)、フローサイトメトリー(
図4B)またはサイトカインビーズアレイ(
図4C)によって評価された。IFNγ応答は、培地(白丸)、OVA(菱形)またはCas9タンパク質(四角)による刺激によって誘発された(
図4A)。テューキーの多重比較検定による2元配置ANOVAとの統計的比較。
図4B:脾臓中の制御性T細胞のパーセンテージ。通常の1元配置ANOVA、**p<0.01、*** p<0.001、**** p<0.0001。
図4C:テューキーの多重比較検定を用いた3日間刺激2元配置ANOVA後の分泌IFNγを定量するサイトカインビーズアレイ。
【0012】
【
図5】
図5:寛容原性マイクロニードルアレイは、Cas9特異的CD4 T細胞応答を低下させる。C57BL/6マウスは、無処置のままにされた(はるか左)か、または0、3および6日目にCas9単独もしくはCas9(50μg)もしくはBSA(50μg)を含有するMNAの皮膚内適用を受けた。13日目に、マウスを、遠位部位にTITERMAX(登録商標)Goldを製剤化したCas9で免疫化した。負荷(抗原投与)の7日後、脾細胞を採取し、培地(白丸)またはCas9タンパク質(黒四角)で刺激した。細胞内サイトカイン染色によるIFNγを分泌するCD4 T細胞の頻度を示す(テューキー多重比較検定による2元配置ANOVA)。
【0013】
【
図6】
図6:SpCas9特異的遅延型過敏症(DTH)アッセイ。マウスは、Cas9(抗原)+ポリ(I:C)(アジュバント)MNAの適用によって、またはCas9発現脾細胞の皮下注射によって、S.pyogenes Cas9(SpCas9)抗原に感作(免疫化)された。7日後、マウスはCas9 MNAを介して右耳に負荷し(Cas9抗原に再曝露し)、耳厚さを次の4日間にわたって毎日測定した。Cas9抗原特異的炎症応答に関連しない耳厚さの増加を対照するために、ブランク(空)MNAを反対側の耳に適用した。Cas9に対する耳介腫脹関連T細胞媒介性DTH応答は、耳厚さの変化(デルタ)として報告された(すなわち、Cas9 MNA処置右耳-ブランクMNA処置左耳)。より大きな耳介腫脹は、より強いCas9特異的T細胞媒介性免疫応答と一致する。
【0014】
【
図7】
図7:Cas9および寛容原性ビタミンD3類似体(MC903)マイクロニードルアレイによる予防的寛容誘導。Cas9+ポリIC MNAによる感作の前に、マウスをCas9+MC903 MNAの3回の連続適用によって処置した(0、3、および6日目)。3日後(9日目)、マウスをCas9+ポリ(I:C)MNAの適用によってCas9抗原に感作した。7日後、マウスをCas9 MNAを介して右耳に負荷し、耳厚さを次の4日間にわたって毎日測定した。Cas9抗原特異的炎症応答に関連しない耳の厚さの増加を対照するために、ブランクMNAを反対側の耳に適用した。Cas9に対するT細胞媒介性DTH応答に関連する耳介腫脹は、耳厚さの変化(デルタ)として報告された(すなわち、Cas9 MNA処置右耳-ブランクMNA処置左耳)。Cas9+MC903 MNAによる前処置(予防的寛容化)は、その後の感作を減少させ、DTH(耳介腫脹)応答を低下させた。
【0015】
【
図8A】
図8A~8C。Cas9およびMC903マイクロニードルアレイによる予防的寛容誘導。耳負荷(
図7と同様に)の4日後、耳皮膚排出リンパ節(DLN)を単離し、T細胞応答をフローサイトメトリーによって評価した。
図8A~8B:耳DLN当たりの総細胞:(1)CD4+FoxP3+制御性T細胞(Treg)、(2)CD4+T-bet+1型ヘルパーT細胞(Th1)、(3)CD8
+T-bet+1型細胞傷害性T細胞(Tc1)、(4)Treg/Th1比、(5)Treg/(Th1+Tc1)またはTreg(エフェクターT細胞、Teff)比。
図8C:耳DLNにおけるFoxP3+Treg、T-bet+Th1およびT-bet+Tc1集団の頻度。群間を1元配置独立ANOVA、続いてテューキーの多重比較検定によって比較した。コンパクト文字表示は、有意差(p<0.05、異なる文字)または非有意差(p>0.05、共通文字)を示す。非限定的な例として、「a」と標識された群は、「b」と標識された群と有意に異なるが、aと標識された別の群または「ab」と標識された群とは異ならない。「ab」と標識された群は、「a」と標識された群または「b」と標識された群と有意に異ならないが、「c」と標識された群と有意に異なる。
【0016】
【
図9A】
図9A~9B:Cas9+Mc903 MNAによる治療的脱感作。寛容を、Cas9+MC903 MNAによる以前に感作されたマウス(すなわち、Cas9に対する既存の免疫を有するマウス)の処置によって誘導した。治療的脱感作モデルでは、マウスが最初にSpCas9発現脾細胞の皮下注射によってSpCas9に感作された。1週間後から、一部のマウスが、Cas9+MC903 MNA(7、10、および13日目)で処置された。Cas9+MC903 MNAによる最後の処置の5日後(18日目)、すべてのマウスに、Cas9発現CFSE
high「標的」細胞と「対照」CFSE
low細胞との混合物の養子移入を行った(すなわち、Cas9を発現しない野生型脾細胞)。翌日、マウスの脾臓を処理し、フローサイトメトリー(
図9A)によって分析して特異的細胞溶解を測定した(すなわち、Cas9特異的エフェクターT細胞、特に細胞傷害性T細胞によるCas9発現標的細胞の特異的殺滅)。特異的溶解パーセントは、{1-[(ナイーブマウスからの平均CFSE
low/CFSE
high比)/(免疫化マウスからのCFSE
low/CFSE
high比)]}×100%として計算される(
図9B)。感作群および脱感作群を独立したt検定によって比較した。
【0017】
【
図10】アルギナートヒドロゲル微粒子からのSpCas9放出。製剤:SpCas9(2.5mg)+1%アルギナート(med粘度、100mgアルギナート)-「b」と標識; SpCas9(2.5mg)+1%アルギナート(低粘度、100mgアルギナート)-「a」と標識。
【0018】
【
図11A】CRISPR-Casエフェクターポリペプチドの配列。配列番号1~4を示す。
【0019】
【
図12】
図12。SpCas9+MC903 MNAによる前処置は、感作およびその後の遅延型過敏症(DTH)応答を減少させる。列挙した各処置について耳厚さの変化を示す折れ線グラフ、ならびに対照およびSpCas9およびMC903 mRNAで処置した動物からの代表的なデジタル画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
いつくかの実施形態の詳細な説明
免疫応答を誘導せずにインビボ編集を容易にするために、Cas9および他の編集者などのCRISPR-Casエフェクターポリペプチドに対する免疫応答を低下させる実験を行った。抗Cas9 T細胞または抗体応答などの免疫応答の減少は、少なくとも2つの用途を有する:i)最初の編集手順の効率の改善であって、多くの場合、同じガイドRNAによる複数回の編集を伴い、その過程で編集者に対する免疫応答が誘導され、編集が行われる細胞に到達する前に編集および/または編集者の中和を受けている細胞の死をもたらし得る、初期編集手順の効率の改善;(ii)異なる遺伝子を編集するための後の手順を受けるための編集手順を以前に受けていた患者の使用可能化。対象においてCRISPR-Casエフェクターポリペプチドに対する寛容原性免疫応答を誘導するために使用される寛容原性組成物が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、寛容原性組成物は、a)微粒子、b)微粒子内にカプセル化された1または複数の制御性T細胞(Treg)刺激剤、およびc)CRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片、またはCRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくは免疫原性断片を含む融合ポリペプチドを含む。他の実施形態では、寛容原性組成物は、a)溶解性マイクロニードルアレイ、b)ビタミンD類似体、例えば限定されないが、MC903、およびc)CRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片、またはCRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片を含む融合ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、CRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片、またはCRISPR-Casエフェクターポリペプチドを含む融合ポリペプチドを、1または複数の追加の薬剤と同時投与する。
【0021】
用語
特に明記しない限り、技術用語は従来の用法に従って使用される。分子生物学における一般的な用語の定義は、Krebsら(Eds.)、Lewin’s Genes XII、Jones&Bartlett Publishersにより出版、2017年;およびMeyersら(Eds.)、The Encyclopedia of Cell Biology and Molecular Medicine、Wiley-VCHにより16巻で出版、2008年;および他の同様の参考文献に掲載されている。
【0022】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、単数および複数の両方を指す。さらに、「または」には「および/または」も含む。したがって、「第1の粒子または第2の粒子」は「第1の粒子および/または第2の粒子」も含み、本明細書の方法で使用される組成物は、単独でまたは組み合わせて使用され得る。本明細書に記載のものと類似または同等の多くの方法および材料が使用され得るが、特定の適切な方法および材料を以下に記載する。「含む(comprises)」という用語は、「含む(includes)」を意味する。「約」という用語は、特に明記しない限り、5パーセント以内を意味する。さらに、核酸またはポリペプチドについて与えられるすべての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、およびすべての分子量または分子質量値は近似値であり、説明のために提供されることを理解されたい。
【0023】
本明細書に記載の方法および材料と類似または同等の方法および材料は、本開示の実施または試験に使用され得るが、適切な方法および材料を以下に記載する。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合には、用語の説明を含む本明細書が優先するであろう。さらに、材料、方法、および例は例示にすぎず、限定することを意図するものではない。
【0024】
本開示の様々な実施形態の検討を容易にするために、特定の用語の以下の説明が提供される。
【0025】
投与:選択された経路による、小分子阻害剤などの組成物の対象への導入。投与は局所的または全身的であり得る。例示的な投与経路は、限定されないが、経口、注射(例えば、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、腫瘍内、静脈内)、舌下、直腸、経皮(例えば、局所)、鼻腔内、膣および吸入経路を含む。
【0026】
薬剤:疾患もしくは障害、またはそれに関連する少なくとも1つの症状の処置、回復、もしくは予防、または制御性免疫応答を含む免疫応答の変化などの変化をもたらすために対象に投与され得る薬物、医薬、医薬、治療剤、栄養補助食品、生物学的分子、または他の化合物。薬剤は、一般に約2000ダルトンまたはそれ未満の分子量を有する「小分子」であり得る。活性薬剤はまた、「生物学的薬剤」であり得る。生物学的薬剤は、タンパク質、抗体、抗体断片、ペプチド、オリゴヌクレオチド、およびそのような材料の様々な誘導体を含む。
【0027】
動物:生きている多細胞脊椎動物生物、例えば哺乳動物および鳥類を含むカテゴリー。哺乳動物という用語は、ヒトおよび非ヒト哺乳動物の両方を含む。同様に、「対象」という用語は、ヒト対象と獣医学的対象の両方を含む。
【0028】
Cas9:DNAをカットすることができるRNAガイドDNAエンドヌクレアーゼ酵素。Cas9は、二重らせんの各鎖に1つずつ、2つの活性カット部位(HNHおよびRuvC)を有する。触媒的に不活性な(非活性化された)Cas9(dCas9)も本開示に包含される。いくつかの例において、dCas9は、以下の点突然変異:D10A、H840AおよびN863Aのうちの1または複数のものを含む。
【0029】
Cas9核酸およびタンパク質配列は、公的に入手可能である。例えば、GenBank(登録商標)受入番号CP012045.1のヌクレオチド796693..800799およびCP014139.1のヌクレオチド1100046..1104152は、Cas9核酸を開示しており、GENBANK(登録商標)受入番号AMA70685.1およびAKP81606.1は、Cas9タンパク質を開示している。いくつかの例では、Cas9は、ヌクレアーゼ欠損(例えば、GENBANK(登録商標)受入番号AKA60242.1およびKR011748.1に示されるもの)であるものなどのCas9の非活性化形態(dCas9)である。特定の例では、Cas9は、そのような配列に対して少なくとも80%の配列同一性、例えば少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有し、DNAをカットする能力を保持する。Cas9ミニタンパク質も含まれる。
【0030】
カスパーゼ:システイン-アスパラギン酸プロテアーゼ、システインアスパルターゼまたはシステイン依存性アスパラギン酸指向プロテアーゼである酵素。カスパーゼは、プログラム細胞死において必須の役割を果たすプロテアーゼ酵素のファミリーである。それらは、その特異的なシステインプロテアーゼ活性のためにカスパーゼと呼ばれ、その活性部位のシステインは、アスパラギン酸残基の後にのみ標的タンパク質を求核的に攻撃し、切断する。
【0031】
保存的変異体:「保存的」アミノ酸置換は、ポリペプチドの活性に実質的に影響を及ぼさない、またはポリペプチドの活性を低下させない置換である。保存的置換の具体的な非限定的な例は、以下の例を含む。
【表1】
保存的変異という用語は、ポリペプチドが非置換(親)ポリペプチドと同じ親和性で結合するという条件で、非置換の親アミノ酸の代わりに置換アミノ酸を使用することも含む。非保存的置換は、ポリペプチドの活性を変化させる置換である。
【0032】
同時投与:同じ一般的な期間内の少なくとも1つの他の治療剤または診断薬との本明細書に開示される薬剤の投与であり、同じ正確な時点での投与を必要としない(同時投与は同じ正確な時点での投与を含むが)。したがって、同時投与は、同時または指定された時間枠内であり得る。特定の実施形態では、複数の治療剤および/または診断薬は、薬剤を微粒子内にカプセル化することによって、または本明細書に開示されるマイクロニードルを使用することによって同時投与され得る。
【0033】
対照:参照標準。いくつかの実施形態では、対照は、健康な患者、または担体、非標的核酸配列、スクランブル核酸/アミノ酸配列もしくは健康な患者由来の未処理細胞で治療された対象から得られた陰性対照試料である。他の実施形態では、対照は、活性薬剤で処置された患者から得られた陽性対照試料である。さらに他の実施形態では、対照は、過去の対照または標準基準値または値の範囲(例えば、以前に試験された対照試料、例えば、既知の予後もしくは転帰を有する患者の群、またはベースライン値もしくは正常値を表す試料の群)である。
【0034】
免疫応答のための差、または試験試料および対照に対して行われるアッセイ(例えば、ELISA、RNA発現プロファイルなど)の差は、増加または逆に減少であり得る。差は、定性的差または定量的差、例えば統計的有意差であり得る。いくつかの例では、差は、対照と比較して、少なくとも約5%、例えば少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約500%、または500%超の増加または減少である。
【0035】
CRISPR(Clustered Regularly InterSpaced Short Palindromic Repeats)/Cas(CRISPR-associated protein)編集系:ゲノム操作に使用される細菌系に基づく操作されたヌクレアーゼ系。これは、多くの細菌および古細菌の適応免疫応答に部分的に基づく。そのような方法を使用して、遺伝物質を特定の位置、例えば標的DNAまたはRNA配列に追加、除去、または変更することができる。したがって、CRISPR/Cas系は、例えば、標的DNAまたはRNAを検出するため、任意の所望の位置で標的DNAまたはRNAを修飾するため、または任意の所望の位置で標的DNAまたはRNAをカットするために、核酸ターゲティング(DNAまたはRNAなど)に使用され得る。したがって、そのような方法は、例えば、遺伝子をノックアウトするなど、シレン発現に突然変異を導入することによって、タンパク質の発現を修飾するために使用され得る。
【0036】
一例では、本方法は、ゲノムなどのDNAを編集し、「CRISPR-Casエフェクターポリペプチド」を使用する。CRISPR-Casエフェクターポリペプチドは、この系において核酸を切断する酵素である。CRISPR-Casエフェクターポリペプチドは、限定されないが、Cas9を含む。CRISPR/Cas系は、細胞のゲノム内の所望の標的でDNAの断裂を生じさせ、細胞の内因性機構を利用して、誘導された断裂を相同誘導修復(HDR)または非相同末端結合(NHEJ)によって修復するように操作することができる。別の例では、CRISPR-Casエフェクターポリペプチドは、Cas13dヌクレアーゼなどのRNAを断裂する(例えば、国際公開第2019/040664号を参照のこと)。CRISPR-Casエフェクターポリペプチドは、II型、V型、またはIV型CRISPR-Casエフェクターポリペプチドであり得る。CRISPR-Casエフェクターポリペプチドの非限定的な例は、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1およびCsx12としても知られる)、Cas12、Cas10、Cas13d、Cpf1、C2c3、C2c2 and C2c1Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Cpf1、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、Cas Lambda、CasX、CasYおよびCas phi、ならびにそれらの相同体を含む。
【0037】
樹状細胞(DC):寛容原性DCは、一般に、抗原取り込み能力の増加に加えて、低レベルまたは中レベルのMHC II、共刺激分子CD80、CD86およびCD40、ならびにケモカイン受容体CCR7を含めることによって定義される。寛容原性DCは、Ig様転写物(ILT)分子(ILT3/ILT4)および/またはPD-L分子(PD-L1、PD-L2)などの高レベルの阻害性分子を発現することができる。さらに、寛容原性DCは、少量の炎症促進性サイトカイン(IL-12p70)および大量の抗炎症性サイトカイン、例えばIL-10を分泌し得る。寛容原性DCは、ナイーブT細胞のTregへの変換、免疫抑制性サイトカインの放出、および機能性インドールアミン-2,3ジオキシゲナーゼ(IDO)の発現を含むいくつかの機序によって、T細胞アネルギー、T細胞抑制、および制御性T細胞の生成を誘導するように機能する。
【0038】
有効量:対象において寛容原性免疫応答などの所望の応答を誘発するのに十分な、免疫原などの薬剤の量。目的の抗原に対する寛容原性免疫応答を得るために使用される手順は、開示される組成物の複数回投与を必要とし得ることが理解される。したがって、有効量の開示される組成物は、対象においてプライム免疫応答を誘発するのに十分な免疫原の量であり得、免疫原は、その後、同じまたは異なる組成物で寛容原性免疫応答を誘発するためにブーストされ得る。
【0039】
エピトープ:抗原決定基。これらは、抗原性である分子上の特定の化学基またはペプチド配列であり、特定の免疫応答を誘発し、例えば、エピトープは、B細胞および/またはT細胞が応答する抗原の領域である。エピトープは、タンパク質の三次折り畳みによって並置された連続アミノ酸または非連続アミノ酸の両方から形成され得る。
【0040】
フォークヘッドボックスP3(Foxp3):Tregの分化および機能に関与する分子過程を調節および調整する転写因子(ZhengおよびRudensky、Nat.Immunol.8:457-462,2007)。Treg細胞は、過剰反応性免疫応答(Josefowiczら、Annu.Rev.Immunol.30,531-564,2012)を抑制することによって免疫系の恒常性を維持するのに重要な役割を果たすT細胞の一種である。Treg細胞の欠陥は、自己免疫障害および免疫病理学をもたらし得る。逆に、特定の腫瘍は、抗腫瘍免疫応答を抑制するTreg細胞で濃縮されている(TanakaおよびSakaguchi、Cell Res.27、109-118、2017)。Foxp3活性の増加はTregサプレッサー機能を増強するが、Foxp3活性の減少はTregサプレッサー機能を抑制する(Looら、Immunity、53、143~157、2020)。
【0041】
免疫応答:刺激に対するB細胞、T細胞、または単球などの免疫系の細胞の応答。一実施形態では、応答は特定の抗原に特異的である(「抗原特異的応答」)。一実施形態では、免疫応答は、CD4+応答またはCD8+応答などのT細胞応答である。別の実施形態では、応答はB細胞応答であり、特異的抗体の産生をもたらす。免疫応答は、「寛容原性」免疫応答であってよく、したがって、特定の抗原に対する寛容を誘導し得る。寛容原性免疫応答は、制御性T細胞(Treg)および/または寛容原性樹状細胞を誘導および/または刺激することを含み得る。寛容原性樹状細胞は、いくつかの機構を介して寛容を誘導する。刺激されると、寛容原性樹状細胞は、排出リンパ節に移動し、樹状細胞上のMHCクラスII-抗原複合体とT細胞上のT細胞受容体との相互作用を介して抗原をT細胞に提示する。これは、T細胞クローン欠失、T細胞アネルギーまたはTregの増殖を誘導することができる。集合的に、これらの機構は、特定の抗原に対する寛容をもたらす。したがって、「免疫寛容」とは、そうでなければ所与の生物において免疫応答を誘発する能力を有するであろう物質、タンパク質、エピトープ、または細胞に対する免疫系の不応答性の状態を指す。
【0042】
単離された:「単離された」生物学的構成要素(例えば、核酸、タンパク質または細胞)は、その構成要素が存在する環境(細胞または組織など)内の他の生物学的構成要素、例えば、他の染色体および染色体外のDNAおよびRNA、タンパク質および細胞から実質的に分離または精製されている。「単離された」核酸およびタンパク質は、標準的な精製方法によって精製された核酸およびタンパク質を含む。この用語はまた、宿主細胞における組換え発現によって調製された核酸およびタンパク質ならびに化学的に合成された核酸を包含する。
【0043】
哺乳動物:この用語は、ヒトおよび非ヒト哺乳動物の両方を含む。同様に、「対象」という用語は、ヒト対象と獣医学的対象の両方を含む。
【0044】
マイクロニードル:治療剤の経皮もしくは皮内送達または皮膚を通る流体のサンプリングを容易にするために角質層を貫通することができる、「マイクロアレイ」とも呼ばれるアレイに関連する顕微鏡構造。「アレイ」は、治療剤の経皮送達を容易にするために角質層を突き刺すことができる1または複数の構造の順序付けられたパターンを含む本明細書に記載の医療機器を指す。
【0045】
微粒子:微粒子は、一般に、リポソーム、ナノ粒子、ミクロスフェア、ナノスフェア、マイクロカプセル、ナノロッドおよびナノカプセルを含む一般的なカテゴリーを指す。微粒子は複合構造であってもよく、必ずしも純粋な物質ではなく;球形であっても、他の任意の形状であってもよい。
【0046】
場合により、微粒子は、1または複数の生分解性ポリマーを含む。本明細書で使用される「生分解性」という用語は、浸食、溶解、腐食、分解、加水分解、摩耗、およびそれらの組み合わせなどの通常の化学的、生化学的および/または物理的プロセスによって材料が分解される能力を指す。微粒子は、直径が約0.1μm~約1000μmの範囲、またはそれらの間の任意の範囲であり得る。さらなる情報を以下に提供する。
【0047】
調整する:統計的に有意な様式で変化させる。調整は、増加または減少であり得る。当業者は、パラメータの統計学的に有意な増加または減少を決定するための適切なアッセイを特定することができる。これらは、限定されないが、スチューデントt検定または対応比t検定を含む。例示的な方法は、実施例のセクションに提供されている。
【0048】
薬学的に許容され得る担体:薬学的投与に適合する任意のおよびすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,The University of the Sciences in Philadelphia,Editor,Lippincott,Williams,&Wilkins,Philadelphia,PA,21st Edition,2005を参照のこと)。そのような担体または希釈剤の例は、限定されないが、水、生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、平衡塩類溶液、および5%ヒト血清アルブミンを含む。リポソームおよび固定油などの非水性ビヒクルも使用され得る。補助活性化合物も組成物に組み込まれ得る。投与可能な組成物を調製するための実際の方法は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,The University of the Sciences in Philadelphia,Editor,Lippincott,Williams,&Wilkins,Philadelphia,PA,21st Edition(2005)に提供されているものを含む。
【0049】
ポリペプチド:長さまたは翻訳後修飾(例えば、グリコシル化またはリン酸化)にかかわらず、アミノ酸の任意の鎖。ポリペプチドおよびタンパク質に関して、「約」という用語は整数量を示す。したがって、一例では、「約」29アミノ酸長のポリペプチドは、28~30アミノ酸長である。したがって、特定の数の残基「約」のポリペプチドは、特定の数よりも1つ短いアミノ酸または1つ長いアミノ酸であり得る。融合ポリペプチドは、第1のポリペプチドと第2の異なるポリペプチド(例えば、異種ポリペプチド)のアミノ酸配列を含み、単一のアミノ酸配列として合成することができる。組換えポリペプチドは、天然に存在しないか、またはアミノ酸配列の2つの他の方法で分離されたセグメントによって作製されるアミノ酸配列を有する。
【0050】
組換え:天然に生じない配列を有するか、そうでなければ分離された2つの配列セグメント(例えば、「キメラ」配列)の人工的な組合わせによって作製された配列を有する核酸またはタンパク質。この人工的な組合わせは、化学合成によって、または例えば遺伝子工学技術による核酸の単離されたセグメントの人工的な操作によって達成することができる。
【0051】
配列同一性:アミノ酸配列間の類似性は、配列間の類似性に関して表され、そうでなければ配列同一性と呼ばれる。配列同一性は、同一性パーセント(または類似性もしくは相同性)に関して頻繁に測定される。パーセンテージが高いほど、2つの配列はより類似している。ポリペプチドの相同体または変異体は、標準的な方法を用いて整列させた場合、比較的高度の配列同一性を有する。
【0052】
比較のための配列のアラインメント方法は公知である。様々なプログラムおよびアライメントアルゴリズムは、SmithおよびWaterman、Adv.Appl.Math.2:482、1981;NeedlemanおよびWunsch、1970、J Mol Biol 48、443-453;HigginsおよびSharp、1988、Gene 73、237-244;HigginsおよびSharp、1989、CABIOS 5、151-153;Corpetら、1988、Nucleic Acids Research 16、10881-10890;PearsonおよびLipman、1988、Proc Natl Acad Sci USA 85、2444-2448に記載されている。Altschulら、1994、Nature Genet 6、119-129は、配列アラインメント方法および相同性計算の詳細な考察を提示している。
【0053】
NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschulら、1990、J Mol Biol、215、403-410)は、配列分析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxに関連して使用するために、国立生物工学情報センター(NCBI、Bethesda、メリーランド州)およびインターネットを含むいくつかの情報源から入手可能である。このプログラムを使用して配列同一性を決定する方法の説明は、インターネット上のNCBIウェブサイトで入手可能である。
【0054】
ポリペプチドの相同体および変異体は、典型的には、デフォルトパラメータに設定されたNCBI Blast 2.0、gapped blastpを使用して、ポリペプチドのアミノ酸配列との全長アラインメントにわたってカウントされた少なくとも75%、例えば少なくとも80%の配列同一性を有することを特徴とする。約30アミノ酸を超えるアミノ酸配列の比較のために、デフォルトパラメータ(11のギャップ存在コスト、1の残基ギャップあたりのコスト)に設定されたデフォルトBLOSUM62マトリックスを使用して、Blast 2配列関数が使用される。短いペプチド(約30アミノ酸未満)をアライメントする場合、アライメントは、デフォルトパラメータ(開放ギャップ9、延長ギャップ1のペナルティ)に設定されたPAM30マトリックスを使用して、Blast 2配列関数を使用して実行されるべきである。参照配列に対してさらに大きな類似性を有するタンパク質は、この方法によって評価した場合、例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性など、同一性パーセンテージの増加を示す。配列全体よりも少ない配列が配列同一性について比較される場合、相同体および変異体は、典型的には、10~20アミノ酸の短いウィンドウにわたって少なくとも80%の配列同一性を有し、参照配列に対するそれらの類似性に応じて少なくとも85%または少なくとも90%または95%の配列同一性を有することができる。このような短いウィンドウで配列同一性を決定するための方法は、インターネット上のNCBIウェブサイトで利用可能である。当業者は、これらの配列同一性範囲が案内のためにのみ提供されることを理解するであろう。提供された範囲外にある非常に有意な相同体が得られ得ることは完全に可能である。
【0055】
したがって、いくつかの例では、ポリペプチドまたは核酸配列の変異体は、典型的には、目的のアミノ酸またはヌクレオチド配列との全長アラインメントにわたって数えて少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有することを特徴とする。参照配列とのさらに大きな類似性を有する配列は、この方法によって評価した場合、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性などの同一性パーセンテージの増加を示す。配列全体よりも少ない配列が配列同一性について比較される場合、相同体および変異体は、典型的には、10~20アミノ酸(または30~60ヌクレオチド)の短いウィンドウにわたって少なくとも80%の配列同一性を有し、参照配列とのそれらの類似性に応じて、少なくとも85%または少なくとも90%または95%の配列同一性を有し得る。このような短いウィンドウで配列同一性を決定するための方法は、インターネット上のNCBIウェブサイトで利用可能である。
【0056】
本明細書で使用される場合、「少なくとも90%の同一性」(または同様の言葉)への言及は、特定の参照配列「少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはさらには100%の同一性」を指す。
【0057】
単一ガイドRNA(sgRNA):標的DNA配列を認識し、Casヌクレアーゼを標的に誘導するために使用される合成ガイドRNA。いくつかの例では、sgRNAは、lentiCRISPRv2-Brie(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Doenchら、Nat Biotechnol 34:184-191、2016)などの最適化されたマウスゲノム全体のレンチウイルスCRISPR sgRNAライブラリーのサブクローニングから生成される。いくつかの例では、sgRNA発現カセットは、U6プロモーターおよび/またはガイドRNAスキャフォールドをさらに含む。
【0058】
対象:生きている多細胞脊椎動物生物、ヒトおよび非ヒト哺乳動物を含むカテゴリー、例えば、非ヒト霊長類、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウマ、ウシおよびブタ。一例では、対象はヒトである。さらなる例では、破骨細胞融合の調整を必要とする対象が選択される。例えば、対象は、破骨細胞融合の増加または減少を必要とし得るか、または骨吸収の増加または減少を必要とし得る。
【0059】
T細胞:免疫応答の重要なメディエーターである白血球(リンパ球)。T細胞は、限定されないが、分化クラスター(CD)4+T細胞およびCD8+T細胞を含む。ヘルパーT細胞としても知られる成熟CD4+細胞は、抗体応答ならびにキラーT細胞応答を含む免疫応答を統合するのに役立つ。成熟CD8+T細胞は、細胞傷害性T細胞であり得る。活性化T細胞は、細胞増殖および/または1もしくはそれを超えるサイトカイン(例えば、IL-2、IL-4、IL-6、IFN-γまたはTNFα)の発現もしくは分泌の増加によって検出することができる。CD8+T細胞の活性化は、抗原に応答した細胞溶解活性の増加によっても検出することができる。
【0060】
「制御性T(Treg)細胞」は、過剰反応性免疫応答(Josefowiczら、Annu.Rev.Immunol.30、531-564、2012)を抑制することによって免疫系の恒常性を維持する役割を有するT細胞の一種である。Tregは、CD4+CD25+FoxP3+T細胞であり得る。Treg細胞の欠損は、自己免疫障害および免疫病理学をもたらすが、ある種の腫瘍は、抗腫瘍免疫応答を抑制するTreg細胞で濃縮されている(TanakaおよびSakaguchi、Cell Res.27、109-118、2017)。Tregはまた、サイトカイン、例えばトランスフォーミング成長因子(TGF)-β、インターロイキン(IL)-35およびIL-10を産生し得る。Tregの他のタイプは、Tr1細胞を含み、これは、CD4+FoxP3-IL10+TGFβ1+細胞である(GregoriおよびRoncarolo、Front.Immunol.、doi.org/10.3389/fimmu.2018.00233、2月15日、2018、参照により本明細書に組み込まれる。ビタミンD3は、Treg細胞およびTr1細胞の両方の分化を誘導する(van der Aarら、J.Allerg.Clin.Immunol.127(6):1532-1540.e7、2011を参照のこと)。
【0061】
概要
いくつかの実施形態では、開示されるのは、a1)1または複数の微粒子、b1)各微小粒子内にカプセル化された1または複数の制御性T細胞(Treg)刺激剤、およびc1)CRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片、またはCRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくは免疫原性断片を含む融合ポリペプチドを含む、寛容原性組成物である。
【0062】
いくつかの実施形態では、1または複数のTreg刺激剤は、CCL22、レチノイン酸、または血管作用性腸ペプチドを含む。さらなる実施形態では、1または複数のTreg刺激剤は、IL-2、TGF-β、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、またはCCR8リガンドを含む。さらに他の実施形態では、1または複数のTreg刺激因子は、TGFβ、IL2、およびラパマイシンを含む。さらなる実施形態では、寛容原性組成物は、i)TGFβを含む微粒子、ii)IL-2を含む微粒子、およびiii)ラパマイシンを含む微粒子を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、微粒子は少なくとも1つのポリマーを含む。さらなる非限定的な例では、少なくとも1つのポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(アミノ酸)、ポリラクタート(polylactate)、ポリ乳酸(polylactic acid)、ポリグルタミン酸、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリ(エチレングリコール-b-(DL-乳酸-co-グリコール酸)-b-エチレングリコール)(PEG-PLGA-PEG)、ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PEG-b-PLGA)、ポリカプロラクトン-PEG(PCL-PEG)、ポリ(フッ化ビニリデン)-PEG(PVDF-PEG)、ポリ(乳酸-co-PEG)(PLA-PEG)、ポリ(メチルメタクリレート)-PEG(PMMA-PEG)、およびそれらの組合せを含む。
【0064】
他の実施形態では、微粒子は、アルギナートを含む。
【0065】
さらに他の実施形態では、微粒子は、直径が約0.5~5μmであり、TGF-β1、ラパマイシン、および/またはIL-2の持続放出を提供する。特定の非限定的な例では、微粒子は約1週間放出する。
【0066】
いくつかの実施形態では、CRISPR-Casエフェクターポリペプチドは、II型CRISPR-Casエフェクターポリペプチド、V型CRISPR-Casエフェクターポリペプチド、またはVI型CRISPR-Casエフェクターポリペプチドである。他の実施形態では、CRISPR-Casエフェクター融合ポリペプチドは、i)CRISPR-Casエフェクターポリペプチド、およびii)1または複数の異種エフェクターポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、1または複数の異種エフェクターポリペプチドのうちの少なくとも1つは、一本鎖ヌクレアーゼ、二本鎖ヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、デアミナーゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、塩基編集剤、またはプライム編集剤である。
【0067】
さらなる実施形態では、哺乳動物対象においてCRISPR-Casエフェクターポリペプチドに対する寛容を誘導する方法が開示され、この方法は、有効量の本明細書に開示される寛容原性組成物を対象に投与し、それによりCRISR-Casエフェクターポリペプチドに対する寛容を誘導することを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、真皮内、真皮下、皮下、または筋肉内に投与される。
【0068】
他の実施形態では、寛容原性組成物は、a2)溶解性マイクロニードルアレイ、b2)寛容原性DCの分化を促進する1または複数の薬剤、およびc2)CRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片、またはCRISPR-Casエフェクターポリペプチドを含む融合ポリペプチドを含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、溶解性マイクロニードルアレイは、i)ベース部分を形成する生体適合性材料を含む基材、およびii)ベース部分から延在する複数のマイクロニードルを含む。さらなる実施形態では、生体適合性材料は、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒアルロン酸(HA)、またはゼラチンを含む。特定の非限定的な例では、生体適合性材料はカルボキシメチルセルロースを含む。
【0070】
さらなる実施形態では、寛容原性樹状細胞の分化を促進する1または複数の薬剤は、ビタミンD3またはビタミンD3類似体などのビタミンまたはその類似体を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、マイクロニードルアレイを含む有効量の寛容原性組成物を対象に投与することを含む、哺乳動物対象においてCRISPR-Casエフェクターポリペプチドに対する寛容を誘導する方法が開示される。さらなる実施形態では、組成物は、局所的に、例えば真皮内または皮内に投与される。
【0072】
さらに他の実施形態では、寛容原性組成物は、対象に繰り返し投与される。非限定的な例では、寛容原性組成物は、プライム-ブースト戦略で対象に投与される。
【0073】
さらなる実施形態では、開示される方法は、有効量の寛容原性組成物を投与した後に、CRISPR-Casエフェクターポリペプチドを含む遺伝子編集組成物を、対象に投与することを含み、寛容原性組成物が、遺伝子編集組成物中に存在するCRISPR-Casエフェクターポリペプチドに対する寛容を誘導する。いくつかの実施形態では、遺伝子編集組成物は、寛容原性組成物の投与の約6ヶ月以内に対象に投与される。対象はヒトであり得る。対象は、非ヒト哺乳動物であり得る。
【0074】
CRISPR-Casエフェクターポリペプチド
開示される方法は、1または複数のCRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片、またはCRISPR-Casエフェクターポリペプチドを含む1または複数の融合ポリペプチドを含む寛容原性組成物を使用する。使用に適したCRISPR-Casエフェクターポリペプチドは、本明細書ではクラス2 CRISPR-Casエフェクターポリペプチドとも呼ばれるクラス2 CRISPRエフェクターポリペプチドである。例えば、いくつかの場合、CRISPR-Casエフェクターポリペプチドは、II型CRISPR-Casエフェクターポリペプチドである。いくつかの場合、II型CRISPR-CasエフェクターポリペプチドはCas9ポリペプチドである。いくつかの場合、CRISPR-Casエフェクターポリペプチドは、V型CRISPR-Casエフェクターポリペプチド、例えばCas12a、Cas12b、Cas12c、Cas12dまたはCas12eポリペプチドである。いくつかの場合、CRISPR-Casエフェクターポリペプチドは、VI型CRISPR-Casエフェクターポリペプチド、例えばCas13aポリペプチド、Cas13bポリペプチド、Cas13cポリペプチドまたはCas13dポリペプチドである。いくつかの場合、CRISPR-CasエフェクターポリペプチドはCas14ポリペプチドである。いくつかの場合、CRISPR-Casエフェクターポリペプチドは、Cas14aポリペプチド、Cas14bポリペプチドまたはCas14cポリペプチドである。使用に適したCRISPR-Casエフェクターポリペプチドは、CRISPRiポリペプチドを含む。例えば、Qiら(2013)、Cell、152:1173;およびJensenら(2021)Genome Research doi:10.1101/gr.275607.121を参照のこと。使用に適したCRISPR-Casエフェクターポリペプチドは、CRISPRaポリペプチドを含む。例えば、Jensenら(2021)Genome Research doi:10.1101/gr.275607.121;およびBreinigら(2019)Nature Methods 16:51を参照のこと。使用に適したCRISPR-Casエフェクターポリペプチドは、CRISPRoffポリペプチドを含む。例えば、Nunezら(2021)、Cell、184:2503を参照のこと。使用に適したCRISPR-Casエフェクターポリペプチドは、ニッカーゼを含む。使用に適したCRISPR-Casエフェクターポリペプチドは、標的核酸への結合(ガイドRNAと複合体化した場合)を保持する触媒的に不活性なCRISPR-Casエフェクターポリペプチドを含む。使用に適したCRISPR-Casエフェクターポリペプチドは、i)CRISPR-Casエフェクターポリペプチド、およびii)1または複数の異種融合パートナー(「異種ポリペプチド」とも呼ばれる)を含む、融合ポリペプチドを含む。Casヌクレアーゼの非限定的な例は、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1およびCsx12としても知られる)、Cas10、Cas13d、Cpf1、C2c3、C2c2 and C2c1Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Cpf1、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、Cas lambda、Cas phi、Cas X、およびCas Y、ならびにそれらの相同体を含む。これらのCRISPR-Casエフェクターポリペプチドの免疫原性断片も、開示される組成物に含まれ得る。
【0075】
いくつかの場合、本開示の組成物に含めるのに適したCRISPR-Casエフェクターポリペプチドは、Cas9ポリペプチドである。いくつかの場合、Cas9ポリペプチドは、
図11Aに示されるStreptococcus pyogenes Cas9アミノ酸配列(配列番号1)と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または99%超のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0076】
いくつかの場合、Cas9ポリペプチドは、Staphylococcus aureus Cas9(saCas9)ポリペプチドである。いくつかの場合、saCas9ポリペプチドは、任意の既知のsaCas9アミノ酸配列、例えば
図11Bに示されるsaCas9アミノ酸配列(配列番号2)と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0077】
いくつかの場合、適切なCas9ポリペプチドは、高忠実度(HF)Cas9ポリペプチドである。Kleinstiverら(2016)Nature 529:490。例えば、
図1Aに示されるアミノ酸配列のアミノ酸N497、R661、Q695およびQ926は、例えばアラニンで置換される。例えば、HF Cas9ポリペプチドは、
図1Aに示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことができ、アミノ酸N497、R661、Q695およびQ926は、例えばアラニンで置換されている。いくつかの場合において、好適なCas9ポリペプチドは、変化したPAM特異性を示す。例えば、Kleinstiverら(2015)Nature 523:481を参照のこと。
【0078】
いくつかの場合、適切なCas9ポリペプチドは、R691A置換を含む。例えば、いくつかの場合、適切なCas9ポリペプチドは、
図11Aに示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、アミノ酸691はAlaである。
【0079】
いくつかの場合、適切なCas9ポリペプチドは、D1135V、R1335QおよびT1337R置換を含む。例えば、いくつかの場合、適切なCas9ポリペプチドは、
図1Aに示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、アミノ酸1135はValであり、アミノ酸1335はGlnであり、アミノ酸1337はArgであり、Cas9ポリペプチドは緩和されたPAM要件を示す。
【0080】
いくつかの場合、適切なCas9ポリペプチドは、SpRY変異体である。例えば、ZhangおよびZhang(2020)Trends Genetics 36:546;およびWaltonら(2020)、Science、368:290;および米国特許出願公開第2021/0284978号を参照のこと。SpRYはS.pyogenes Cas9の変異体であり、この変形例ではPAM要件が低減されている。例えば、いくつかの場合、適切なCas9ポリペプチドは、D1135L、S1136W、G1218K、E1219Q、R1335QおよびT1337R置換を含む。例えば、いくつかの場合、適切なCas9ポリペプチドは、
図11Aに示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、アミノ酸1135はLeuであり、アミノ酸1136はTrpであり、アミノ酸1218はLysであり、アミノ酸1219はGlnであり、アミノ酸1335はGlnであり、アミノ酸1337はArgである。いくつかの場合、適切なCas9ポリペプチドは、
図11Aに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。以下の位置の1、2、3、4、5、または6つすべてにアミノ酸置換を含む:E1219(例えば、E1219Q、E1219H、E1219SまたはE1219V置換);S1136(例えば、S1136W、S1136F、S1136A、またはS1136V置換);D1135(例えば、D1135L、D1135A、D1135WまたはD1135F置換);G1218(例えば、G1218R、G1218KまたはG1218S置換);R1335(例えば、R1335Q置換);およびT1337(例えば、T1337RまたはT1337K置換)。
【0081】
いくつかの場合、適切なCas9ポリペプチドは、Cas9ポリペプチドまたはCas9-NGポリペプチドである。例えば、Zhongら(2019)Molec.プラント12:1027;Huら(2018)、Nature、556:57;Nishimasuら(2018)Science 361:1259を参照のこと。Cas9核酸およびタンパク質配列は、公的に入手可能である。例えば、GENBANK(登録商標)受入番号CP012045.1のヌクレオチド796693..800799およびCP014139.1のヌクレオチド1100046..1104152は、Cas9核酸を開示しており、GENBANK(登録商標)受入番号AMA70685.1およびAKP81606.1は、Cas9タンパク質を開示している。いくつかの例では、Cas9は、ヌクレアーゼ欠損(例えば、GENBANK(登録商標)受入番号AKA60242.1およびKR011748.1に示されるもの)であるものなどのCas9の非活性化形態(dCas9)である。特定の例では、Cas9は、そのような配列に対して少なくとも80%の配列同一性、例えば少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有し、DNAをカットする能力を保持する。
【0082】
いくつかの場合、適切なCRISPR-Casエフェクターポリペプチドは、V型CRISPR-Casエフェクターポリペプチドである。いくつかの場合、V型CRISPR-CasエフェクターポリペプチドはCas12aタンパク質である。いくつかの場合、Cas12aタンパク質は、任意の公知のCas12aタンパク質と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも90%または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列、例えば、
図11Cまたは
図11Dに示されるCas12aアミノ酸配列を含む。
【0083】
場合により、CRISPR-Casエフェクターポリペプチドは、a)CRISPR-Casエフェクターポリペプチドまたはその免疫原性断片、およびb)1または複数の異種ポリペプチド(融合パートナーとも呼ばれる)を含むCRISPR-Casエフェクター融合ポリペプチドである。いくつかの場合、1または複数の異種ポリペプチドは、一本鎖ヌクレアーゼ、二本鎖ヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、デアミナーゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、塩基編集剤、またはプライム編集剤を含む。いくつかの場合、1または複数の異種ポリペプチドは、核局在化シグナルを含む。いくつかの場合、融合パートナー(異種ポリペプチド)は逆転写酵素である。いくつかの場合、融合パートナーは、塩基編集剤である。いくつかの場合、融合パートナー(異種ポリペプチド)は、デアミナーゼである。融合ポリペプチドはまた、適切な担体を含むことができる。
【0084】
CRISPR-Casエフェクターポリペプチドは、当技術分野で公知であり、親CRISPR-Casエフェクターポリペプチドと比較して免疫原性が低下している(参照により組み込まれるPCT公開番号WO 2017/081288A1を参照のこと)。これらの組換えCRISPR-Casエフェクターポリペプチドは、野生型CRISPR-Casエフェクターポリペプチドの1または複数のMHCクラスIおよび/またはMHCクラスII結合部位に対応する1または複数の残基に1または複数のアミノ酸置換を含み、組換えCRISPR-Casエフェクターポリペプチドは、野生型CRISPR-Casエフェクターポリペプチドと比較して免疫原性が低下している。
【0085】
CRISPR-Casエフェクターポリペプチドの免疫原性断片、例えばMHCクラスIおよび/またはクラスII結合部位に対応する免疫原性断片もまた有用である。免疫原性断片は、9(9量体)または10(10量体)のアミノ酸を含み得る。免疫原性断片は、寛容原性免疫応答を誘導することができる。さらなる実施形態では、断片は、8、9、10、11または12アミノ酸長さである。免疫原性断片の混合物も有用である。混合物は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10個の異なる断片を含むことができる。これらの免疫原性断片は、寛容原性免疫応答を誘導するために使用され得る。
【0086】
対象の処置のために、1または複数のCRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片、または1または複数の融合ポリペプチドの活性、患者の投与様式、年齢および体重に応じて、異なる用量が必要な場合がある。特定の状況下では、より高い用量またはより低い用量が適切であり得る。用量の投与は、個々の用量単位またはいくつかのより小さい用量単位の形態での単回投与、および特定の間隔での細分された用量の複数回投与の両方によって行うことができる。熟練した臨床医は、寛容を誘導するための有効用量を容易に決定することができる。
【0087】
対象への投与のために、有効量の1または複数のCRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片、またはCRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片を含む1または複数の融合ポリペプチドを、薬学的に許容され得る担体に含めることができる。これらの医薬組成物は、用量単位で調製および投与することができる。液体製剤は、一般に有用である。固体用量単位は、錠剤、カプセル剤、単回注射剤およびさらには坐剤である。適切な投与フォーマットは、各対象に対して個別に医師によって最もよく決定され得る。様々な薬学的に許容され得る担体およびそれらの製剤は、標準的な製剤専門書、例えばE.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。Wang、Y.J.およびHanson、M.A.、Journal of Parenteral Science and Technology、Technical Report No.10、Supp.42:2S、1988も参照のこと。医薬組成物の剤形は、選択された投与様式によって決定される。一般に、医薬組成物は、有効量のCRISPR-Casエフェクターポリペプチド、免疫原性断片および融合ポリペプチドを含む。
【0088】
適切な固体または液体医薬製剤形態は、例えば、顆粒、散剤、錠剤、コーティング錠、(マイクロ)カプセル、坐剤、シロップ、エマルジョン、懸濁液、クリーム、エアロゾル、滴剤またはアンプル形態の注射液、ならびに1または複数のCRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片、またはCRISPR-Casエフェクターポリペプチドを含む1または複数の融合ポリペプチドの持続放出を有する製剤であり、その製剤賦形剤および添加剤ならびに/または補助剤、例えば崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、潤滑剤、香味料、可溶化剤またはスキャフォールドが慣用的に使用される。医薬組成物は、様々な薬物送達系における使用に適している。薬物送達のための本方法の簡単な総説については、Langer、Science 249:1527-1533、1990を参照のこと。
【0089】
本開示は、CRISPR-Casエフェクターポリペプチド、免疫原性断片、および融合ポリペプチドに限定されない。本開示の組成物および方法は、とりわけ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)および転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)などの他の系と共に使用される。
【0090】
微粒子
1または複数の微粒子、1または複数の微粒子内にカプセル化された1または複数のTreg刺激剤、およびCRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片、またはCRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片を含む融合ポリペプチドを含む寛容原性組成物が提供される。例示的なTreg刺激剤は、C-Cケモカインモチーフ(CCL22)、インターロイキン2(IL-2)、ラパマイシン、トランスフォーミング成長因子ベータ(TGF-β)、レチノイン酸、および血管作用性腸ペプチド(VIP)を含む。
【0091】
特定の実施形態では、Treg刺激剤は、Tregを漸加するのに非常に有効である。特に、CCL22、レチノイン酸およびVIPは、Tregを漸加する。特定の実施形態では、治療剤担持微粒子は、Tregを漸加するのに非常に有効である。微粒子は、内因性Treg細胞を局所部位に漸加するのに有効である。
【0092】
特定の実施形態では、Treg刺激剤は、Tregを誘導するのに非常に有効である。特に、IL-2、ラパマイシンおよびTGF-βは、Tregを誘導するのに有効である。特定の実施形態では、治療剤担持微粒子は、Tregを刺激するのに非常に有効である。溶解性ミクロスフェアは、局所部位で内因性Treg細胞を刺激するのに有効である。
【0093】
特定の実施形態では、理論に束縛されるものではないが、寛容は、ナイーブCD4+T細胞からの対象自身のTregの誘導によって誘導される。このアプローチは、寛容原性樹状細胞(tDC)として公知の抗原提示細胞のサブセットを介して末梢ナイーブCD4+T細胞をTregに分化させるために身体自体の天然の機構を利用する。具体的には、tDCは、IL-2およびTGF-βサイトカインの分泌を介してTregの分化を誘導することができる。しかしながら、Tregの維持は、幾分より複雑であり、Tregの分化に有利であるだけでなく、他のエフェクターT細胞への分化にも不利である局所微小環境に依存する。細胞が病原性エフェクターT細胞に分化しないことを確実にする1つの方法は、小分子ラパマイシンによるものである。ラパマイシン(Rapa)は、エフェクターT細胞の生成および増殖を抑制することができるmTOR阻害剤である。ラパマイシン誘導体も有用であり、当技術分野で公知である。
【0094】
特定の実施形態では、身体自身の内因性Tregは、TGF-β1、RapaおよびIL-2をカプセル化する微粒子であるTRIミクロスフェア(TGF-β1、ラパマイシン(Rapa)またはその誘導体、およびIL-2)を通してTreg誘導剤の組み合わせを送達することによって濃縮される。いくつかの実施形態において、TGF-β1、RapaおよびIL-2は、別々の微粒子に含まれ、混合物が投与される。したがって、いくつかの実施形態では、寛容原性組成物は、i)TGFβを含む微粒子、ii)IL-2を含む微粒子、およびiii)ラパマイシン(またはその誘導体)を含む微粒子を含む。理論に束縛されるものではないが、この系はTregの有病率を増加させ、ひいては寛容を誘導することができる。
【0095】
1または複数の微粒子は、皮下注射または筋肉内注射によって送達され得る。微粒子は、ゲルなどの粘膜表面に送達することができる。1または複数の微粒子は、局所注射または局所保持系によって送達され得る。1または複数の微粒子は、インビボ遺伝子編集の部位またはその近傍に投与される。1または複数の微粒子は、CRISPR-Casエフェクターポリペプチド、その免疫原性断片、または融合ポリペプチドと同じ位置/部位で欠失させることができる。
【0096】
特定の実施形態では、1または複数の微粒子に担持される1または複数のTreg刺激剤の量は、微粒子1mg当たり約1ng~約1mg、より具体的には約1ng~約100μgの薬剤の範囲であり得る。特定の具体的な実施形態では、1または複数の微粒子に担持された1または複数のTreg刺激剤の量は、微粒子1mg当たり約25ng~7.5μgの薬剤である。Treg刺激剤は、IL-2またはTGF-β1であり得る。Treg刺激剤は、別個の微粒子に含めることができ、または複数のTreg刺激剤を含む1つの微粒子に含めることができる。本明細書で使用される場合、「微粒子」の投与は、Treg刺激剤を含む1または複数の微粒子の投与を対象とする。
【0097】
適切な用量は、限定されないが、約200mgのポリマーあたり約5μg~約100μgのIL-2を含む。適切な用量は、限定されないが、約200mgのポリマーあたり約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190または200μgのIL-2を含む。適切な用量は、限定されないが、約200mgのポリマーあたり約5μg~約100μgのTGF-β1を含む。適切な用量は、限定されないが、約200mgのポリマーあたり約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190または200μgのTGF-β1を含む。適切な用量は、限定されないが、約200mgのポリマーあたり約1.5mg~約2mgのラパマイシンを含む。適切な用量は、限定されないが、約200mgのポリマーあたり約7.5μg~約2mgのラパマイシンも含む。適切な用量は、限定されないが、ポリマー1mg当たり約10μgのラパマイシンも含む。
【0098】
さらに他の実施形態では、微粒子は、直径が約0.5~5μmであり、TGF-β1、ラパマイシン、および/またはIL-2の持続放出を提供する。特定の例では、微粒子は約1週間放出する。
【0099】
微粒子は、少なくとも1つのポリマーを含む。微粒子のためのポリマーは、生体適合性である限り、生体内分解性ポリマーであり得る。生体内分解性ポリマーは、ポリ乳酸およびそのコポリマーなどのポリヒドロキシ酸を含む。例示的なポリマーは、ポリグリコリド、ポリ乳酸(PLA)、およびポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)を含む。別のクラスの承認された生分解性ポリマーは、ポリヒドロキシアルカノエートである。他の適切なポリマーは、限定されないが、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハライド、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびそれらのコポリマー、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリル酸およびメタクリル酸エステルのポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシエチルセルロース、三酢酸セルロース、硫酸セルロースナトリウム塩、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリエチレン、ポリプロピレンポリエチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ塩化ビニルポリスチレン、ポリビニルピロリドン、アルギナート、ポリ(カプロラクトン)、デキストランおよびキトサンを含む。いくつかの非限定的な例では、微粒子はアルギナートを含むことができる。他の非限定的な例では、ポリマーはエステル末端PLGAである。
【0100】
さらなる実施形態において、ポリマーは、ポリエチレングリコール-ポリ(乳酸-co-グリコール酸)コポリマーである。さらなる実施形態では、少なくとも1つのポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(アミノ酸)、ポリ乳酸(polylactate)、ポリ乳酸(polylactic acid)、ポリグルタミン酸、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリ(エチレングリコール-b-(DL-乳酸-co-グリコール酸)-b-エチレングリコール)(PEG-PLGA-PEG)、ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PEG-b-PLGA)、ポリカプロラクトン-PEG(PCL-PEG)、ポリ(フッ化ビニリデン)-PEG(PVDF-PEG)、ポリ(乳酸-co-PEG)(PLA-PEG)、ポリ(メチルメタクリレート)-PEG(PMMA-PEG)、およびそれらの組合せを含む。
【0101】
担持パーセントは、カプセル化される薬剤に対するポリマーの親水性または疎水性によって「マッチング」によって増加され得る。PLGAなどのいくつかの場合、これは、コポリマーが親水性薬物に対してより親水性であるか、または疎水性薬物に対してより親水性でないようにモノマー比を選択することによって達成することができる。あるいは、ポリマーは、例えば、ポリマー上にカルボキシル基を導入することによって、より親水性にすることができる。非限定的な例では、親水性薬物と疎水性薬物との組み合わせは、より親水性のPLGAとPLAなどの疎水性ポリマーとのブレンドから調製された微粒子にカプセル化することができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、PLGAコポリマーまたはPLGAとPLAとのブレンドである。PLGAの分子量は、約10kD~約80kD、より好ましくは約10kD~約35kDである。PLAの分子量範囲は、約20~約30kDaである。ラクチドとグリコリドとの比は、約75:25~約50:50である。一実施形態では、比率は50:50である。例示的なポリマーは、限定されないが、ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA、乳酸対グリコール酸比50:50、Mn=10kDa、酸末端、502Hと呼ばれる);ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA、乳酸対グリコール酸比50:50、Mn=25kDa、酸末端、503Hと呼ばれる);ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA、乳酸対グリコール酸比50:50、Mn=30kDa、酸末端、504Hと呼ばれる);ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA、乳酸対グリコール酸比50:50、Mn=35kDa、エステル末端、504と呼ばれる);およびポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA、75:25乳酸対グリコール酸比、Mn=10kDa、752と呼ばれる)を含む。
【0103】
微粒子は、直径が約0.1μm~約1000μmの範囲、またはそれらの間の任意の範囲、例えば0.1μm~0.5μm、0.5μm~1.0μm、約1.0μm~約5.0μm、約5.0μm~約10.0μm、約10.0μm~約20.0μm、約20.0μm~約35.0μm、約35.0μm~約50.0μm、約50.0μm~約75.0μm、約75.0μm~約100.0μm、約100.0μm~約250.0μm、約250.0μm~約500.0μm、約500.0μm~約750μm、または約750.0μm~約1000.0μmであり得る。一実施形態では、微粒子は、直径が約0.1μm~1μm、例えば約0.2μm~約1μm、約0.3μm~約1μm、約0.4μm~約1μm、または約0.5μm~約1μmの範囲である。別の実施形態では、微粒子は、直径が約0.1μm~5μm、例えば約0.2μm~約5μm、約0.3μm~約5μm、約0.4μm~約5μm、または約0.5μm~約5μmの範囲である。特定の実施形態では、担持微粒子は、200nm~30μm、より具体的には1~10μmの体積平均直径を有し得る。特定の実施形態では、薬剤担持微粒子は、10μmまたはそれを超える体積平均直径を有さない。微粒子は、例えば、直径約15μm~30μm、例えば直径約15、20、25、または30μmであり得る。微粒子は、例えば、直径約0.5μm~5μm、例えば直径約0.5、1、2、3、4、または5μmであり得る。微粒子は、例えば、直径約2μmであり得る。薬剤担持微粒子は、細孔が少ないか、または典型的には合成プロセス中にNaClを添加することによって、制御される様々なサイズの様々な量の細孔を含有し得る。
【0104】
薬剤担持微粒子作製方法は、水への所望のカプセル化剤の溶解度、微粒子の分解速度およびその後の薬物放出動態を制御する微粒子を作製するために使用されるポリマー鎖の分子量(MWは約1000Da~100,000Daの範囲であり得る)に応じて、単一または二重エマルジョンであり得る。
【0105】
本明細書に開示される方法で使用される微粒子は、持続放出を提供し得る。例えば、持続放出は、少なくとも1日、より具体的には少なくとも5日間または少なくとも10日間、最も具体的には少なくとも30日間にわたるものであり得る。薬剤放出は、線形または非線形(単一または複数のバースト放出)であり得る。特定の実施形態では、薬剤はバースト効果なしで放出され得る。例えば、持続放出は、少なくとも1日、より具体的には少なくとも5日間または少なくとも10日間、最も具体的には少なくとも30日間にわたって、インビボでの治療剤の実質的に線形の放出速度を示し得る。実質的に線形の放出速度とは、治療剤が、所望の期間にわたって約20%を超えて、より通常には約10%を超えて変動しない速度で放出されることを意味する。系の寿命にわたって送達系からの薬剤の比較的一定の放出速度を提供することが望ましい場合がある。例えば、系の寿命の間、薬剤が1日当たり0.1~100μg、より具体的には1日当たり1~10μgの量で放出されることが望ましい場合がある。ただし、ポリマー微粒子の製剤化によっては、放出速度が増減する場合がある
【0106】
特定の実施形態では、送達系は、1pg/ml~200μg/ml、例えば1~5μg/mlの範囲の局所濃度を提供するのに有効な量の薬剤を放出し得る。具体的な非限定的な実施形態は、約10ng/mlのIL-2、約5ng/mlのTGF-β1、および約10ng/mlのラパマイシンである(Jhunjhunwalaら、J.Controlled Release 159(1):78-84、2012参照のこと)。特定の実施形態では、放出の初期遅滞期はない。所望の放出速度および標的薬物濃度は、選択される特定の薬剤に応じて変化し得る。
【0107】
本明細書に開示される方法で使用される微粒子は、薬剤の持続放出を提供することができる。本明細書で使用される「持続放出」または「制御放出」という用語は、所定の速度での任意の結合またはカプセル化された薬剤の漏出を指す。例えば、ポリマー粒子(すなわち、例えば、人工抗原提示細胞)の予測可能な生分解から生じる薬剤の持続放出が起こり得る。生分解速度は、ポリマー組成および/または粒子を含む比率を変更することによって予め決定され得る。その結果、持続放出は短期間であり得るか、または制御放出は長期間であり得る。
【0108】
一実施形態では、短期放出は30分~1時間である。一実施形態では、短期放出は1時間~3時間である。一実施形態では、短期放出は3時間~10時間である。一実施形態では、短期放出は10時間~24時間である。
【0109】
一実施形態では、長期放出は24時間~36時間である。一実施形態では、長期放出は3日間~7日間である。一実施形態では、長期放出は7日間~1ヶ月間である。いくつかの実施形態では、微粒子は、少なくとも約1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月間、2ヶ月間または3ヶ月間など、1または複数のTreg刺激剤の持続放出を提供する。いくつかの実施形態では、長期放出は、約1週間、例えば約2日~約1週間、約3日~約1週間、約4日~約1週間、約5日~約1週間、または約6日~約1週間である。長期放出は、約1ヶ月未満であり得る。
【0110】
一実施形態では、長期放出は1ヶ月~6ヶ月である。一実施形態では、長期放出は6カ月~1年である。一実施形態では、長期放出は少なくとも1ヶ月である。
【0111】
本明細書に開示される微粒子を含む寛容原性組成物は、賦形剤成分、例えば有効量の緩衝剤、および滅菌中の電離放射線の影響から保護するための酸化防止剤を含み得る。適切な水溶性緩衝剤は、限定されないが、アルカリおよびアルカリ土類炭酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、コハク酸塩など、例えばリン酸ナトリウム、クエン酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、重炭酸塩、炭酸塩などを含む。これらの薬剤は、有利には、系のpHを約2~約9、より好ましくは約4~約8に維持するのに十分な量で存在する。したがって、緩衝剤は、全系の約5%(重量基準)程度であり得る。適切な水溶性防腐剤は、重亜硫酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸塩、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、パラベン、メチルパラベン、ポリビニルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエタノールなど、およびそれらの混合物を含む。これらの薬剤は、0.001~約5%(重量基準)、好ましくは0.01~約2%(重量基準)の量で存在し得る。
【0112】
特定の実施形態では、本明細書に開示される微粒子は、注射によって投与され得る。注射部位は、限定されないが、皮内、皮下、皮下、または筋肉内投与を含む。いくつかの実施形態では、微粒子を含む寛容原性組成物は、静脈内投与によって送達される。
【0113】
マイクロニードルアレイ
CRISPR-Casエフェクターポリペプチド、その免疫原性断片、または融合ポリペプチドは、溶解性マイクロニードルアレイで投与することができる。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第US-2016-0271381-A1号、および参照により本明細書に組み込まれるPCT公開番号WO2020/232394を参照のこと。いくつかの実施形態では、マイクロニードルアレイは先端担持マイクロアレイであり、これは、マイクロミル粉砕されたマスター鋳型およびスピン鋳型を使用して調製され得る。米国特許出願公開第US-2016-0271381-A1号を参照のこと。PCT公開番号WO2020/232394に開示されているように、アンダーカットまたはアンカー特徴は、塗布中の皮膚保持を改善することができ、また処理工程を妨げることなく達成することができ、それによってMNAを鋳型から直接除去することを可能にする。マイクロニードルデバイスの有用性の例は、例えば、(1)開示されたCRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片、またはCRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片を含む融合ポリペプチドと、必要に応じて寛容原性免疫応答を生成するための他の薬剤との同時送達、および(2)局所皮膚送達を含む。
【0114】
溶解性マイクロニードルアレイは、皮膚および粘膜表面への効率的かつ安全な送達を可能にする。CRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片、またはCRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片を含む融合ポリペプチドの効果的な送達を可能にする完全溶解性マイクロニードルアレイ基材および独自のマイクロニードルジオメトリを利用することができる。この技術はまた、多機能薬物送達のための複数の化学的に異なる薬剤の同時共送達を独自に可能にすることができる。薬剤は、例えば、部分配列抗原曝露に対する低応答性を誘導することによって、またはT細胞がTregに分化するように誘導することによって、寛容原性樹状細胞の分化を促進することができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、薬剤は、ビタミンDもしくはその類似体、例えばビタミンD3、またはビタミンD3類似体である。ビタミンD3は、以下の構造を有する。
【化1】
【0116】
カルシポトリエン(カルシポトリオールまたはMC-903としても公知)は、当技術分野で公知のビタミンD3類似体である。カルシポトリエンは、以下の構造を有する。
【化2】
例えば、Masudaら(1994)J.Biol.Chem.269:479を参照のこと。
【0117】
アルファカルシドールも、利用され得る。アルファカルシドールは、以下の構造を有する。
【化3】
【0118】
タカルシトールも、利用され得る。タカルシトールは、以下の構造を有する。
【化4】
【0119】
寛容原性DCの分化を促進する他の適切な薬剤は、限定されないが、レチノイン酸、デキサメタゾン、IL-10およびTGF-βを含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、Cas9に対する寛容を促進するための、それを必要とする対象における対象への経皮挿入、例えば局所皮膚送達のための溶解性マイクロニードルアレイである。アレイは、ベース部分と、ベース部分から延在し、CRISPR-Casエフェクターポリペプチド、その免疫原性断片または融合ポリペプチドを含有する複数のマイクロニードルと、必要に応じて追加の薬剤とを含む。
【0121】
マイクロニードルは、上部に第1の断面寸法、底部に第2の断面寸法、および中間部に第3の断面寸法を含む形状を有するように予め形成することができ、中間部は上部と底部との間に位置し、第3の断面寸法は第1および第2の断面寸法よりも大きい。
【0122】
さらに他の実施形態では、各マイクロニードルは、不溶性生体適合性材料の複数の層を含む。いくつかの実施形態では、ニードル先端部に組み込まれる様々な活性成分をもたらす製造技術が利用される(参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第US-2016-0271381-A1号を参照)。したがって、このように活性成分を局在化させることにより、マイクロニードルアレイボリュームの残りの部分は、非活性であり、一般に安全と見なされるより安価なマトリックス材料を含む。正味の結果は、(1)マイクロニードルアレイの非ニードル部分に組み込まれた送達不可能な活性成分の廃棄の減少、および(2)皮膚貫通ニードル先端部におけるより高い薬物濃度に基づく薬物送達の効率の大幅な改善である。
【0123】
したがって、いくつかの実施形態では、活性成分は、それぞれのアレイのマイクロニードル先端に濃縮される。したがって、従来のマイクロニードルアレイとは対照的に、支持基部構造には活性成分がほとんどまたは全く存在しないので、活性成分はマイクロニードルアレイ全体にわたって均一な濃度で存在しない。さらに、いくつかの実施形態では(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国公開特許出願第US-2016-0271381-A1号の
図3A、
図3B、
図4A、および
図4Bに示されるように)、支持構造内に活性成分がほとんどまたは全く存在しないだけでなく、活性成分の位置はアレイ内の個々のマイクロニードルの上半分に集中している。いくつかの実施形態では、活性成分は、個々のマイクロニードルの上半分に濃縮された。活性成分は、マイクロニードルの先端に濃縮され、先端は、ベース部分から狭窄および/またはテーパ状に延びるマイクロニードルの領域によって画定される。ベース部分は、アレイの支持構造から延在する。
【0124】
上記のように、いくつかの実施形態では、個々のマイクロニードルは、マイクロニードルの上半分のみに活性成分を含むことができる。他の実施形態では、個々のマイクロニードルは、マイクロニードルの先端または先端付近の狭窄部にのみ活性成分を含むことができる。さらに他の実施形態では、個々のニードルは、支持構造から延びるマイクロニードル部分全体にわたって活性成分を含むことができ、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第US-2016-0271381-A1号を参照のこと。
【0125】
開示された寛容原性組成物は、参照により本明細書に組み込まれるPCT出願番号PCT/US2016/057363に開示されているように送達され得る。このPCT出願は、角質層を貫通してそれらのカーゴ(例えば、生物製剤または生物活性成分)を表皮および/または真皮に送達するように構成され得るマイクロニードルアレイを開示し、一方、神経終末および血管を含み得るより深い層への貫通を防止することによって疼痛および出血を最小限に抑える。ピラミッド状CMCマイクロニードルは、生きているヒト皮膚の角質層、表皮、および真皮を効果的に貫通し、したがって皮膚送達に使用され得る。したがって、いくつかの実施形態では、マイクロニードルアレイは、ピラミッド状CMCマイクロニードルを含む。他の実施形態では、マイクロニードルアレイはオベリスク形状のニードルを含む。
【0126】
マイクロニードルアレイを構築するために、基材を使用して、生物活性成分を有する各マイクロニードルの部分およびそうでない部分を形成することができる。上述のように、各マイクロニードルは、マイクロニードルのみ、またはいくつかの実施形態では、マイクロニードルの上半分のみ、または他の実施形態では、先端付近で先細になるマイクロニードルの一部のみに生物活性成分を含むことができる。したがって、生物活性成分の送達を制御し、マイクロニードルアレイのコストを制御するために、各マイクロニードルは、生物活性成分(免疫原および/またはアジュバント)を含む部分と、生物活性成分を含まない部分とを有することができる。本明細書に記載の実施形態では、生物活性成分を含まない部分は、マイクロニードルアレイの支持構造、およびいくつかの実施形態では、アレイ内の各マイクロニードルのベース部分(例えば、下半分)を含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、溶解性マイクロニードルアレイは、溶解性マイクロニードルアレイが、i)ベース部分を形成する生体適合性材料を含む基材、およびii)ベース部分から延在する複数のマイクロニードルを含むを、含む。マイクロニードルアレイのための基材として、様々な生体適合性材料が使用され得る。
【0128】
CRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその断片、またはCRISPR-Casエフェクターポリペプチドおよび/またはビタミンDもしくはその類似体を含む融合ポリペプチドなどの1つの生物活性成分は、ジスルフィド結合などによって生体適合性材料に共有結合することができる。場合によっては、生体適合性材料はカルボキシメチルセルロースであり得る。結合は、酵素によって、および/またはpH、温度もしくはその両方に応答してインビボで切断可能であり得る。1または複数の生物活性成分は、同じまたは異なる生物活性成分であってもよく、生物活性成分の一方または両方を生体適合性材料にコンジュゲートされ得る。生物活性成分は、限定されないが、寛容原性DC、CRISPR-Casエフェクターポリペプチド、その免疫原性断片、または融合ポリペプチドの分化を促進する薬剤を含み得る。
【0129】
生分解性固体マイクロニードルの構造基材は、最も一般的は、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)またはカルボキシメチルセルロース(CMC)ベースの製剤を含む。しかしながら、他の塩基を使用することもできる。他のポリマー材料は、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒアルロン酸(HA)、ゼラチン、および/またはこれらの2またはそれを超える混合物を含む。他の小分子賦形剤、例えば非還元糖(例えば、トレハロース、スクロースなど)が、含まれ得る。PLGAは水溶性ではない生分解性ポリマーであるが、CMC、PVP、PVA、HAおよびゼラチンは水に溶解可能である。
【0130】
いくつかの実施形態では、生体適合性材料はCMCである。PLGAベースの装置は、製造に必要な比較的高温(例えば、摂氏135度またはそれより高い摂氏度)ならびに真空および/または有機溶媒のために、薬物送達およびタンパク質送達用途を制限する可能性がある。対照的に、CMCベースのマトリックスは、単純なスピンキャスティングおよび乾燥プロセスで、室温で形成することができ、それにより、CMCマイクロニードルアレイが、CRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片、またはCRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片を含む融合ポリペプチドの組み込みにとってより望ましいものになる。
【0131】
CMC-ヒドロゲルは、滅菌dH2O中の活性成分(以下に記載)を含むかまたは含まないCMCの低粘度ナトリウム塩から調製することができる。例示的な実施形態では、CMCを滅菌蒸留水(dH2O)および活性成分と混合して、約25重量%のCMC濃度を達成することができる。得られた混合物を均一になるまで撹拌し、約4℃で24時間平衡化することができる。この期間中、CMCおよび任意の他の成分を水和させることができ、ヒドロゲルを形成することができる。ヒドロゲルを真空中で約一時間脱気し、約20,000gで一時間遠心分離して、CMCマイクロニードルアレイの穿刺/乾燥プロセスを妨害し得る残留マイクロサイズ気泡を除去することができる。ヒドロゲルの乾燥物質含有量は、その一部(10g)を摂氏85度で約72時間乾燥させることによって試験することができる。すぐに使用可能なCMC-ヒドロゲルは、使用するまで約4℃で保存することが望ましい。
【0132】
CRISPR-Casエフェクターポリペプチド、その免疫原性断片、またはCRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片を含む融合ポリペプチドなどの活性成分、および必要に応じてビタミンDまたはビタミンD類似体などの別の薬剤は、スピンキャスティングプロセスの前に、比較的高い(20~30%)CMC乾燥生物製剤重量比でCMCのヒドロゲルに組み込まれ得る。アレイは、室温でスピンキャストされ得、プロセスを構造的に広範囲の生物活性成分の機能的安定性と適合させる。マスター鋳型および生産鋳型は、多数の製造サイクルで再利用可能であるため、製造コストが大幅に削減され得る。得られた脱水CMCマイクロニードルアレイは、一般に室温またはわずかに低い温度(約4℃など)で安定であり、組み込まれた生物製剤の活性を維持し、容易で低コストの貯蔵および分配を容易にする。
【0133】
例示的な実施形態では、製造鋳型の表面は、約50μl(直径11mmの鋳型の場合)のCMC-ヒドロゲルで覆され、2,500gで約5分間の遠心分離によってスピンキャストされ得る。最初のCMC-ヒドロゲル層の後、別の50μlのCMC-ヒドロゲルが、鋳型上に積層され、2,500gで約4時間遠心分離され得る。乾燥プロセスの終わりに、CMCマイクロニードルアレイを鋳型から分離し、縁部で過剰な材料からトリミングし、収集し、約4℃で保存することができる。製造鋳型を洗浄し、マイクロニードルアレイのさらなるキャスティングに再使用され得る。
【0134】
いくつかの実施形態では、CMC固体は、活性成分を含有しない層および活性成分を含有する層で形成することができる。参照により本明細書に組み込まれる、PCT出願番号PCT/US2016/057363の
図11A~Dは、異なる形状(PCT出願番号PCT/US2016/057363の
図11Aおよび
図11B)を有し、マイクロミリング後に活性成分を有するマイクロニードルの部分となる上層に埋め込まれた活性カーゴを有するCMC固体を示す。PCT/US2016/057363の
図12Aおよび
図12Bはまた、異なる形状を有するCMC固体を示し、PCT/US2016/057363の
図12Bは正方形を示し、
図12Bは長方形を示す。両方のCMC固体を、本明細書に記載のさらなる処理のための寸法に粉砕することができる。形状は、限定することを意図するものではないことを理解されたい。本明細書に開示される方法では、任意の形状が使用され得る。
【0135】
一般に、マイクロニードルは、皮膚に挿入されている間、数日間までの間、および除去されている間、送達のために無傷のままである機械的強度を有する。マイクロニードルは、直線状またはテーパ状のシャフトを有することができる。1つの実施形態では、マイクロニードルの直径は、マイクロニードルの基端で最大であり、基端から遠位の端の点まで先細になる。マイクロニードルはまた、直線状(非テーパ状)部分とテーパ状部分の両方を含むシャフトを有するように製造することができる。
【0136】
マイクロニードルは、垂直に円形断面を有するシャフトで形成することができ、または断面は非円形であり得る。例えば、マイクロニードルの断面は、多角形(例えば、星形、正方形、三角形)、長方形、または別の形状であり得る。シャフトは、1または複数のボアを有することができる。断面寸法は、典型的には、約10nm~1mm、例えば1μm~200μm、およびより好ましくは10μm~100μmである。外径は典型的には約10μm~約100μmであり、内径は典型的には約3μm~約80μmである。
【0137】
マイクロニードルの長さは、典型的には、約1μm~1mm、例えば約1μm~50μm、約50μm~100μm、約100μm~250μm、約250μm~500μm、約500μm~750μm、約750μm~850μm、または約750μm~1mmである。長さは、挿入部分および非挿入部分の両方を考慮して、特定の用途のために選択される。マイクロニードルのアレイは、例えば、様々な長さ、外径、内径、断面形状、およびマイクロニードル間の間隔を有するマイクロニードルの混合物を含むことができる。
【0138】
マイクロニードルは、マイクロニードルアレイの支持構造に対して垂直またはある角度で配向することができる。好ましくは、マイクロニードルは、支持構造体に対して垂直に配向され、その結果、基材の単位面積当たりのマイクロニードルの密度をより大きくすることができる。マイクロニードルのアレイは、マイクロニードルの配向、高さ、または他のパラメータの混合物を含むことができる。
【0139】
場合によっては、マイクロニードルアレイの支持構造は、典型的には約50mm2~150mm2、例えば約100mm2~150mm2、約75mm2~100mm2、約50mm2~75mm2、約50mm2~65mm2、または約60mm2~65mm2の面積を有する基材である。
【0140】
場合によっては、基材および/またはマイクロニードルならびに他の構成要素は、デバイスが適用される皮膚、血管壁または眼などの生物学的バリアの輪郭にデバイスが適合することを可能にするために可撓性材料から形成される。可撓性装置は、貫通が取り付け面の偏りによって制限され得るので、使用中のより一貫した貫通を容易にすることができる。例えば、皮膚紋理(すなわち、小さなしわ)および毛髪のために、ヒト皮膚の表面は平坦ではない。
【0141】
場合によっては、マイクロニードルアレイを含む寛容原性組成物は真皮内投与される。場合によっては、マイクロニードルアレイを含む寛容原性組成物は真皮下投与される。場合によっては、マイクロニードルアレイを含む寛容原性組成物は皮下投与される。
【0142】
寛容を誘導するための方法
本開示は、哺乳動物対象においてCRISPR-Casエフェクターポリペプチドに対する寛容を誘導する方法であって、有効量の本開示の寛容原性組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、寛容原性組成物は、a)1または複数の微粒子、b)各微粒子内にカプセル化された1または複数の制御性Treg刺激剤、およびc)CRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片、またはCRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片を含む融合ポリペプチドを含む。他の実施形態では、寛容原性組成物は、a)溶解性マイクロニードルアレイ、b)ビタミンD類似体または他の薬剤、およびc)CRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片、またはCRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片を含む融合ポリペプチドを含む。本方法は、一般に、それを必要とする対象に、有効量の本開示の寛容原性組成物を投与することを含む。
【0143】
いくつかの場合、本開示の方法は、対象においてCRISPR-Casポリペプチドに対する免疫寛容を誘導し、それにより、対象へのCRISPR-Casポリペプチドの投与後の反応性免疫応答を低下させる。したがって、本開示は、対象におけるCRISPR-Casポリペプチドに対する免疫応答を低下させる方法であって、有効量の寛容原性組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0144】
本開示の方法による処置に適した対象は、遺伝子治療を必要とする対象、または遺伝子編集組成物を投与される対象、例えば疾患を処置するため、または抗ウイルス、抗病原体、もしくは抗癌治療剤として、または生物学的研究のための対象を含む。対象は、新生児、若年者または成人であり得る。特に興味深いのは、哺乳動物対象である。本発明の方法で処理され得る哺乳動物種は、イヌ科動物およびネコ科動物;ウマ;ウシ;ヒツジ;等および霊長類、特にヒトを含む。動物モデル、特に小型哺乳動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ目(例えば、ウサギ)など)が、実験的調査に使用され得る。いくつかの非限定的な例では、対象はヒトである。他の非限定的な例では、対象は、非ヒト霊長類を含む獣医学的対象である。いくつかの実施形態では、対象は、同じもしくは異なるCRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片、またはCRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片を含む融合ポリペプチドなどによる遺伝子編集手順を以前に有していてもよい。これらの対象は、処置のために選択することができる。
【0145】
いくつかの実施形態では、有効量の寛容原性組成物は、1または複数の用量で、Tregを誘導することまたはTregを漸加することなどによって、対象においてTregを刺激する。場合によっては、有効な寛容原性組成物は、1または複数の用量で、対象におけるTregの数を増加させる。CD4+、FOXP3+およびCD25+Tregならびに/またはCD4+FoxP3-IL-10+Tr1細胞は、反応性T細胞を抑制することができる。有効な寛容原性組成物は、1または複数の用量で、ナイーブT細胞に作用してTregへの分化を含み得る。いくつかの場合、有効量の寛容原性組成物は、それを必要とする対象に1または複数の用量で投与した場合、本明細書に記載のアッセイまたは当業者に公知の他のアッセイを使用して決定される寛容原性組成物による処置前の対象のTregの数と比較して、対象のTregの数を少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍または2.5倍超増加させる量である。
【0146】
場合によっては、1または複数の用量における有効量の寛容原性組成物は、対象における寛容原性DCの数を増加させる。いくつかの場合、有効量の寛容原性組成物は、それを必要とする対象に1または複数の用量で投与した場合、対象における寛容原性DCの数を、寛容原性組成物による処置前の対象における寛容原性DCの数と比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍または2.5倍超増加させる量である。
【0147】
場合によっては、1または複数の用量における有効量の寛容原性組成物は、寛容原性DCの免疫寛容誘導能力を増加させる。寛容原性DCの免疫寛容誘導能は、当業者に公知の技術を用いて評価することができる。当技術分野で公知の様々なアッセイを使用して、本明細書に記載の寛容原性DCが免疫寛容を誘導するかどうかを評価することができる。一態様では、本明細書に記載の寛容原性DCは、サイトカインの抗炎症性分泌の増加(例えばIL-10)および炎症促進性サイトカインの分泌の減弱(例えば、IL-12p70、IL-6、TNFα)を通じて抗炎症環境を作り出すことによって免疫寛容を誘導する。場合によっては、IL-10、IL-12p70、IL-6およびTNFαを分泌する寛容原性DCの能力を、ELISAアッセイまたはLuminex xMAPアッセイを使用して評価する。いくつかの場合、1または複数の用量における有効量の寛容原性組成物は、寛容原性組成物による処置前の対象における寛容原性DCの免疫寛容誘導能力と比較して、対象における寛容原性DCの免疫寛容誘導能力を少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍または2.5倍超増加させる。
【0148】
いくつかの実施形態では、寛容原性組成物は、それを必要とする対象に1または複数の用量で投与された場合、対象のCRISPR-Casエフェクターポリペプチドに対する免疫学的応答に関連する1または複数の効果を改善する。いくつかの例では、寛容原性組成物はCD4+反応性T細胞(すなわち、CRISPR-Casエフェクターポリペプチドと反応性のCD4+T細胞の数)の数を減少させ、それは次にCRISPR-Casエフェクターポリペプチドと反応性のCD8+の減少をもたらす。いくつかの例では、寛容原性組成物はCD4+Tregの数および/または活性を増加させ、それは次にCD4+反応性T細胞および/またはCD8+T反応性T細胞の数および/または活性を減少させる。これらの細胞は、対象からの試料中で測定することができる。
【0149】
CRISPR-Casエフェクターポリペプチドに対する免疫学的応答を決定するための方法は、当技術分野で周知である。いくつかの場合、免疫学的応答は、CRISPR-Casエフェクターポリペプチドによって誘導されるT細胞活性化のレベルを測定することによって決定される。いくつかの実施形態では、T細胞はCD4+および/またはCD8+T細胞を含む。特定の実施形態では、T細胞の活性化レベルは、フローサイトメトリー、細胞内サイトカイン染色(ICS)、脱顆粒マーカーの染色、および免疫組織化学染色を含むがこれらに限定されない、当技術分野で周知の方法を使用して測定される。ある特定の実施形態において、T細胞活性化のためのマーカーは、限定されないが、CD137および/またはCD154および/またはCD107a(脱顆粒マーカー)を含む。特定の実施形態では、活性化T細胞は、IFN-γ、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、およびインターロイキン-2(IL-2)などのサイトカインの産生によって同定することができる。いくつかの場合、免疫学的応答は、ELISAまたは当技術分野で公知の他のアッセイによってCas特異的抗体の存在を検出することによって測定される。免疫学的応答はまた、CD4、CD25および/またはFoxP3の発現を検出するための蛍光活性化細胞選別などによってTreg細胞の数を決定することによって評価することができる。
【0150】
いくつかの実施形態では、本開示の寛容原性組成物は、CRISPR-Casエフェクターポリペプチドを含む遺伝子編集組成物が対象に投与される前に、対象に投与される。寛容原性組成物は、遺伝子編集組成物の約1日~約9ヶ月前、例えば約1日~約1週間、約1週間~約3週間、約3週間~約1ヶ月間、約1ヶ月~約2ヶ月間、約2ヶ月~約4ヶ月間、約4ヶ月~約6ヶ月間、または約6ヶ月~約9ヶ月間投与され得る。一実施形態では、遺伝子編集組成物は、寛容原性組成物の投与の約6ヶ月以内に対象に投与される。
【0151】
いくつかの場合、方法は、本開示の寛容原性組成物を投与する前に、CRISPR-Casエフェクターポリペプチドを含む遺伝子編集組成物を対象に投与することを含む。遺伝子編集組成物は、寛容原性組成物の1日前~9ヶ月前、例えば、寛容原性組成物の1日前~1週間前、1週間前~3週間前、3週間前~1ヶ月前、1ヶ月前~2ヶ月前、2ヶ月前~4ヶ月前、4ヶ月前~6ヶ月前、または6ヶ月前~9ヶ月前に投与され得る。いくつかの場合、遺伝子編集組成物は、寛容原性組成物の投与の6ヶ月以内に対象に投与される。遺伝子編集組成物は、同じCRISPR-Casエフェクターポリペプチド、または異なるが関連するCRISPR-Casエフェクターポリペプチドを含むことができる。いくつかの実施形態では、対象は、寛容原性組成物を投与する前に遺伝子編集組成物を以前に投与されており、次いで、その後、寛容原性組成物の投与後に別の遺伝子編集組成物が投与される。したがって、この実施形態では、対象は、2つ以上の遺伝子編集手順を受ける。
【0152】
いくつかの実施形態では、本方法は、本開示の寛容原性組成物に加えて、CRISPR-Casエフェクターポリペプチドを含む遺伝子編集組成物を対象に投与することを含み、寛容原性組成物は、遺伝子編集組成物中に存在するCRISPR-Casエフェクターポリペプチドに対する寛容を誘導する。投与は、同時であり得る。
【0153】
これらの実施形態では、遺伝子編集組成物は、ガイドRNA(gRNA)およびCRISPR-Casエフェクターポリペプチドを含むことができるが、これらに限定されない。遺伝子編集組成物に適したCRISPR-Casエフェクターポリペプチドは、限定されないが、II型CRISPR-Casポリペプチド、V型CRISPR-Casポリペプチド、VI型CRISPR-Casポリペプチド、CRISPRiポリペプチド、CRISPRaポリペプチド、CRISPRoffポリペプチド、および遺伝子編集組成物に必要に応じて修飾された他のCRISPR-Casポリペプチドを含む。いくつかの場合、遺伝子編集組成物に含めるのに適したCRISPR-Casエフェクターポリペプチドは、標的核酸への結合(ガイドRNAと複合体化した場合)を保持する触媒的に不活性なCRISPR-Casエフェクターポリペプチドを含む。いくつかの場合、遺伝子編集組成物は、gRNAまたはガイドRNAをコードする核酸を含む。いくつかの場合、遺伝子編集組成物は、標的核酸に挿入される配列をコードする核酸を含む。
【0154】
開示された寛容原性組成物の適切な投与量は、様々な臨床的要因に基づいて、主治医または他の資格のある医療従事者によって決定され得る。医学分野で周知のように、任意の1人の患者の投与量は、患者のサイズ、体表面積、年齢、投与される特定のポリペプチドまたは核酸、患者の性別、時間および投与経路、全身の健康状態、ならびに同時に投与される他の薬物を含む多くの要因に依存する。投与の反復速度は、測定された滞留時間および体液または組織中の投与された薬剤の濃度に基づいて決定され得る。処置の成功後、患者に維持療法を受けさせることが望ましい場合があり、この場合、本開示の寛容原性組成物は、その後の遺伝子療法手順のための維持用量で投与される。当業者は、用量レベルが、寛容原性組成物の種類、投与経路、および副作用に対する対象の感受性の関数として変動し得ることを容易に理解するであろう。
【0155】
場合によっては、本開示の寛容原性組成物の複数回用量が投与され、その結果、寛容原性組成物が同じ対象に繰り返し投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも2回の用量がプライムおよびブーストとして投与される。プライムおよびブーストは、同じ用量または異なる用量であり得る。
【0156】
本開示の寛容原性組成物の投与頻度は、種々の因子のいずれか、例えば症状の重症度などに応じて変動し得る。例えば、いくつかの場合、本開示の寛容原性組成物は、1ヶ月に1回、1ヶ月に2回、1ヶ月に3回、1週間おきに(qow)、1週間に1回(qw)、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1週間に2回(biw)、1週間に3回(tiw)、1週間に4回、1週間に5回、1週間に6回、1日おきに(qod)、毎日(qd)、1日に2回(qid)、または1日に3回(tid)投与される。本開示の寛容原性組成物が静脈内投与される場合、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回または4週間に1回または毎月1回の投与が、処置の開始時に一般的に用いられ得る。寛容原性組成物は、寛容原性組成物で投与されることができ、プライム-ブースト戦略で対象に投与され、2回目の(ブースト)投与後に完全寛容が誘導される。
【0157】
本開示の寛容原性組成物の投与期間、例えば、本開示の寛容原性組成物が投与される期間は、種々の因子のいずれか、例えば、患者の応答などに応じて変動し得る。例えば、本開示の寛容原性組成物は、約1日~約1週間、約2週間~約4週間、約1ヶ月~約2ヶ月、約2ヶ月~約4ヶ月、約4ヶ月~約6ヶ月、約6ヶ月~約8ヶ月、約8ヶ月~約1年、約1年~約2年、もしくは約2年~約4年、またはそれを超える範囲の期間にわたって投与され得る。本開示の寛容原性組成物は、インビボおよびインビトロ方法、ならびに全身および局所投与経路を含む、薬物送達に適した任意の利用可能な方法および経路を使用して対象に投与される。適切な投与方法が、上に列挙される。
【0158】
キット
【0159】
寛容原性組成物を含むキットが本明細書で提供される。寛容原性組成物は、a1)微粒子、b1)微小粒子内にカプセル化された1または複数のTreg刺激剤、およびc1)CRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片、またはCRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片を含む融合ポリペプチドを含むことができる。キットは、各々が異なるTreg刺激剤をカプセル化する複数のタイプの微粒子、または2を超えるTreg刺激剤をカプセル化する1つのタイプの微粒子を含むことができる。
【0160】
寛容原性組成物は、a2)溶解性マイクロニードルアレイ、b2)寛容原性DCの分化を促進する1または複数の薬剤、またはc2)CRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片、またはCRISPR-Casエフェクターポリペプチドもしくはその免疫原性断片を含む融合ポリペプチドを含むことができる。
【0161】
キットはまた、キットが設計される特定の用途を容易にするための追加の構成要素を含む。例えば、キットは、特定の方法を実施するために日常的に使用される緩衝液および他の試薬をさらに含み得る。キットは、CRISPR-Casエフェクターポリペプチドを含む遺伝子編集組成物を含み得る。キットは、寛容原性組成物が遺伝子編集組成物中に存在するCRISPR-Casエフェクターポリペプチドに対する寛容を誘導するという情報を含み得る。遺伝子編集系は、目的の遺伝子に対するgRNAを含み得る。
【0162】
キットは、容器、容器上のまたは容器に関連付けられたラベルまたは添付文書を含むことができる。適切な容器は、例えば、ボトル、バイアル、シリンジなどを含む。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成されてもよい。いくつかの実施形態では、容器は、特定の量の薬剤を引き出すことができるように、アクセスポートを有することができる(例えば、容器は、静脈内溶液バッグまたは皮下注射ニードルによって穿刺可能なストッパを有するバイアルであり得る)。
【0163】
いくつかの実施形態では、ラベルまたは添付文書は、例えば寛容を誘導するための組成物の使用を示す。添付文書は、典型的は、製品の市販パッケージに通常含まれる、そのような製品の使用に関する適応症、投与量、禁忌および/または警告に関する情報を含む指示書を含む。使用説明書は、電子形式(コンピュータディスケットまたはコンパクトディスクなど)で書かれてもよく、または視覚的(ビデオファイルなど)であってもよい。
【0164】
本開示は、以下の非限定的な実施例によって例示される。
【実施例】
【0165】
CRISPR-Cas9系を用いた遺伝子編集は、様々なヒト疾患の処置に大きな可能性を有する。遺伝子を欠失または挿入するために使用されるCas9ヌクレアーゼは、ヒトが一般的に曝露される細菌(例えば、S.pyogenesおよびS.aureus)に由来する。したがって、集団の大部分は、これらのCas9タンパク質に対する既存の体液性および細胞性免疫を有し、これは安全かつ効果的なインビボ遺伝子編集のための潜在的な障壁である(Charlesworthら、Nature Medicine、2019を参照のこと)。特に、Cas9特異的メモリーT細胞は、Cas9が送達された、またはCas9発現が誘導された患者の細胞を攻撃し、死滅させ得る。これは、遺伝子編集の成功を妨げ、組織または器官の毒性を引き起こす可能性がある。
【0166】
マウスにおけるCas9に対するCD4およびCD8 T細胞応答を測定する方法が開発され、免疫原性を低下させるためのアプローチの評価を可能にした。特定のマウス株においてMHC IおよびMHC IIによって提示されたCas9ペプチドを同定した。さらに、方法を使用して、Cas9に対する免疫寛容(非応答性)を誘導した(
図1A~1Cを参照のこと)。免疫系にCas9を許容することを教示し、それによってインビボ遺伝子編集を妨げるCas9に対する有害な免疫応答を潜在的に防止する2つの薬物送達系。第1のアプローチは、天然抑制性Tregの分化を誘導するために、制御性T細胞(Treg)誘導微粒子(TRI MP)、TGF-B1、ラパマイシンおよびIL-2の持続的送達を提供する生分解性ポリマー微粒子と共にCas9タンパク質の注射を使用する。第2のアプローチは、例えば寛容原性ビタミンD3類似体(MC903)とのマイクロニードル中のCas9タンパク質の共送達を使用する。皮膚微小環境への送達は、溶解性マイクロニードルアレイ(MNA)によって達成された。開示されたアプローチは、最終的に、炎症性T細胞比に対する制御性の増大を促進し、それにより、インビボCRISPR遺伝子治療の目的のためにCas9を発現または内在化する細胞に対する有害な免疫応答を防止または低減する。
【0167】
実施例1
マウスにおける関連するCas9応答を測定するためのアッセイ
C57BL/6マウスにおけるSpCas9特異的T細胞免疫を測定するために、2つのロバストな免疫化レジメンおよびエクスビボ再刺激プロトコルを確立した。C57BL/6免疫担当マウスをSpCas9タンパク質およびアジュバントで免疫化してSpCas9特異的CD4 T細胞を誘発するか、またはSpCas9発現細胞を注射してSpCas9特異的CD8 T細胞を誘発した。同様の方法を使用して、他の編集者に対する免疫を研究することができる。
【0168】
SpCas9特異的CD8 T細胞免疫を誘導するために、SpCas9を細胞内で発現する脾細胞を単離し、500ng/mLのリポ多糖(LPS)で一晩活性化した。これらの脾細胞をナイーブC57BL/6マウスに2回注射した(0日目プライム、14日目ブースト)。免疫化マウス由来の脾細胞を、野生型脾細胞またはCas9を発現する細胞で、インビトロで再刺激した。Cas9に対する統計学的に有意なリコール応答が、側腹部において免疫化された動物において観察された(
図2)。
【0169】
SpCas9特異的CD4 T細胞を誘発するために、C57BL/6マウスをTITERMAX(商標)Goldアジュバントで製剤化したSpCas9タンパク質で2回免疫化した(0日目プライム、14日目ブースト)。免疫化マウスからの脾細胞を21日目に採取し、SpCas9タンパク質で、インビトロで再刺激した。SpCas9で免疫化したマウスのみが、再刺激時に抗原特異的リコール応答を示した(
図3)。
【0170】
実施例2
Cas9に対する寛容誘導の2つの異なる方法
寛容原性微粒子による結果。ラパマイシン、TGF-βおよびIL-2(Tri-MP)を含有する微粒子(MP)と同時送達されるCas9をマウスの首のうなじに皮下注射した。微粒子は、特異的Tregの増殖を誘導し、最終的に抗原特異的負荷に対する全身寛容を提供する薬剤の徐放を提供する。
図4Bに示すように、ラパマイシン、TGF-βおよびIL-2を含有する微粒子と混合したCas9(「Tri-MP Cas9」)を投与した後に脾臓において制御性T細胞の増殖が観察されたが、ラパマイシン、TGF-βおよびIL-2が微粒子から除外された場合(「ブランクMP Cas9」)も、Cas9が除外された場合(「Tri-MP」)も観察されなかった。
【0171】
Cas9に対する免疫応答に対する影響を調べるために、マウスはTri-MP Cas9で前処理され、7日後にTITERMAX(登録商標)アジュバントと混合したCas9で免疫化された。7日後、マウス由来の脾細胞は、Cas9で刺激した場合にIFN-gを産生するT細胞の存在についてElispotアッセイによって試験された。Tri-MP Cas9による前処理は、Cas9に対するCD4 T細胞応答をほぼ完全に抑制した(
図4A)。驚くべきことに、Cas9を含まないTri-MPで前処置したマウスにおいても応答低下が観察されたが、これは、1週間後のCas9負荷時に存在する残存免疫抑制因子の存在に起因し得る。したがって、手順を繰り返し、MPを投与してから14日後まで免疫化を遅延させた。1週間後に2回目の免疫化で応答がブーストされ、その1週間後にサイトカインビーズアレイを用いて脾臓細胞が試験されて、培養物中に産生されたIFN-γを定量した(
図4C)。Cas9と混合したTRI-MPによる前処理は、T細胞応答をほぼ完全に無効にした。対照的に、TRI-MP単独またはCas9と混合したブランク-MPによる前処理は、統計学的に有意な効果を及ぼさなかった。これらの結果は、Cas9およびTRI-MPの共送達がTregを拡大し、Cas9エフェクターT細胞応答を排除し得ることを示す。
【0172】
寛容原性マイクロニードルによる結果:寛容誘導の第2の方法は、Cas9または対照タンパク質BSAを含有する寛容原性マイクロニードルアレイ(MNA)を適用することを含む。マウスはMNAの3回の適用を受けた。1週間後、それらは、TITERMAX(登録商標)アジュバントと共に製剤化されたCas9タンパク質で異なる部位の皮下に免疫化された。1週間後、マウスから脾細胞が採取され、Cas9に対するT細胞応答が細胞内サイトカイン染色によって評価された。特にCas9によるMNA適用は、その後の刺激に対する応答を減少させた(
図5)。驚くべきことに、BSA対照MNAは、Cas9 MNAとほぼ同程度に有効であった。予想外ではあるが、結果は、Cas9によるMNA適用が、Cas9に対するその後の免疫応答を低下させる免疫抑制環境を誘発することを示唆している。
【0173】
実施例3
図1A~1Cは、TRI MPおよびMC903 MNAが抗原特異的寛容誘導を促進する提案された機構を示す。特定のCas9適用のために、Cas9抗原は、TRI MP注射部位の近くの皮膚に投与されるのではなく、TRI MPと共に皮下注射され得る。
【0174】
TRI MP+Cas9は、Cas9に対する既存の免疫を低下させるためにCRISPR-Cas9系によるインビボ遺伝子編集の前に1または複数回数投与され得る。あるいは、TRI MPは、投与部位に応じて、CRISPR-Cas9インビボ遺伝子編集系(すなわち、編集時)と共に投与され得る。最後に、TRI MP+Cas9は、1回目の遺伝子編集の後、その後の1回または複数回の遺伝子編集の前に投与され得る。同様に、Cas9+MC903 MNAは、Cas9に対する既存の免疫を低下させるためにCRISPR-Cas9遺伝子編集の前に1または複数回数、および/または遺伝子編集の最初の回の後、後続の回の前に1または複数回数投与され得る。
【0175】
マウスを、Cas9(抗原)+ポリ(I:C)(アジュバント)MNAの適用によって、またはCas9発現細胞(具体的には脾細胞)の皮下注射によって、S.pyogenes Cas9(SpCas9)抗原に感作(免疫化)された。7日後、マウスはCas9 MNAを介して右耳に負荷し(Cas9抗原に再曝露し)、耳厚さを次の4日間にわたって毎日測定した。Cas9抗原特異的炎症応答に関連しない耳厚さの増加を対照するために、ブランク(空)MNAを反対側の耳に適用した。Cas9に対する遅延型過敏症(T細胞媒介性)応答に関連する耳介腫脹は、耳厚さの変化(デルタ)として報告された(すなわち、Cas9 MNA処置右耳-ブランクMNA処置左耳)。より大きな耳介腫脹は、より強いCas9特異的T細胞媒介性免疫応答と一致する(
図6を参照のこと)。
【0176】
Cas9+ポリIC MNAによる感作(免疫化)の前に、マウスは、Cas9+MC903 MNAの3回(0、3、および6日目)の連続適用によって処置された。3日後(9日目)、マウスをCas9+ポリ(I:C)MNAの適用によってCas9抗原に感作(免疫化)した。7日後、マウスはCas9 MNAを介して右耳に負荷し(Cas9抗原に再曝露し)、耳厚さを次の4日間にわたって毎日測定した。Cas9抗原特異的炎症応答に関連しない耳厚さの増加を対照するために、ブランク(空)MNAを反対側の耳に適用した。Cas9に対する遅延型過敏症(T細胞媒介性)応答に関連する耳介腫脹は、耳厚さの変化(デルタ)として報告された(すなわち、Cas9 MNA処置右耳-ブランクMNA処置左耳)。より大きな耳介腫脹は、より強いCas9特異的なT細胞媒介性免疫応答、およびCas9+MC903 MNAによる前処置(予防的寛容化)がその後の感作を予防/減少させ、遅延型過敏症(耳介腫脹)応答をより少なくすることと一致する。未感作マウス(灰色)は、Cas9 MNAによる耳負荷の前にCas9に対する既存の免疫を有していなかった。結果を
図7に示す。
【0177】
耳負荷(
図7参照)の4日後に、耳皮膚排出リンパ節(DLN)を単離し、T細胞応答をフローサイトメトリーによって評価した。このモデルでは、Cas9+ポリIC MNA感作は、主にTh1媒介性炎症促進性エフェクターT細胞応答を誘導するようであり、感作前のCas9+MC903 MNAによる前処置は、Th1集団を有意に減少させ、Treg/Th1およびTreg/Teff比を増加させた(
図8A~8Cを参照のこと)。エフェクターT細胞に対する制御性の比率のこのシフトは、より寛容原性の免疫応答の誘導と一致している。
【0178】
以前の予防的寛容誘導モデルとは異なり、Cas9+MC903 MNAによる以前に感作されたマウス(すなわち、Cas9に対する既存の免疫を有するマウス)の処置によって寛容が誘導された。
図9A~9Bを参照のこと。この治療的脱感作モデルでは、マウスは、最初に、Cas9+ポリ(I:C)MNAの適用またはCas9発現脾細胞の皮下注射のいずれかによってS.pyogenes Cas9(SpCas9)抗原に感作(免疫化)された。1週間後から、一部のマウスが、Cas9+MC903 MNA(7、10、および13日目)で処置された。Cas9+MC903 MNAによる最後の処置の5日後(18日目)、すべてのマウスは、Cas9発現CFSE
high「標的」細胞(脾細胞)および「対照」CFSE
low細胞(すなわち、Cas9を発現しない脾細胞)の混合物の養子移入を受けた。標的細胞はCFSE色素(10uM)で標識され、対照細胞はCFSE(1uM)で標識されたので、それらは、フローサイトメトリーによって特定および識別され得た。翌日、マウスの脾臓を処理し、フローサイトメトリーによって分析して特異的細胞溶解を測定した(すなわち、Cas9特異的エフェクターT細胞、特に細胞傷害性T細胞によるCas9発現標的細胞の特異的殺滅)。特異的溶解パーセントは、{1-[(ナイーブマウスからの平均CFSE
low/CFSE
high比)/(免疫化マウスからのCFSE
low/CFSE
high比)]}×100%として計算される。
【0179】
予想されるように、ナイーブマウスは、Cas9特異的細胞傷害性T細胞の欠如と一致して、Cas9発現標的細胞の特異的溶解を示さない。Cas9+ポリIC MNAで感作したマウスも特異的溶解を示さず、この感作方法が堅牢な細胞傷害性T細胞応答を誘導しなかったことを示唆した。これは、優勢なTh1応答を示す
図8A~8Cの結果と一致しており、外因性(細胞外タンパク質)抗原のCD8+T細胞への交差提示の欠如から生じ得る。対照的に、皮下注射されたCas9発現脾細胞による感作は、Cas9発現標的細胞の特異的溶解をもたらし(
図9A~9Bを参照のこと)、特異的溶解の程度は、感作後のCas9+MC903 MNAによる処理によって幾分低下した(
図9A~9Bを参照のこと)。免疫系によるCas9発現細胞の溶解または死滅の防止が、CRISPR-Cas9によるインビボ編集を可能にする最終目標であるので、このインビボ特異的溶解アッセイは、Cas9特異的T細胞応答の寛容誘導および抑制の関連指標である。
【0180】
SpCas9およびMc903 MNAによる前処理は、感作およびその後の遅延型過敏症応答を減少させた。C57BL/6マウスは、SpCas9+ポリIC MNAで感作される前に(9日目)、MC903 MNA、SpCas9 MNA、またはSpCas9+MC903 MNA(0、3、および6日目)で処置された。対照マウスは感作されたが、寛容化されなかった(前処置)。感作の5日後、右耳へのSpCas9 MNAの適用によってDTH応答が誘発された。ブランクMNAを反対側の耳に適用し、負荷後1~4日の耳介腫脹を、SpCas9 MNA処置耳とブランクMNA処置耳との耳厚さの差として報告した。SpCas9+MC903 MNAによる前処置は、SpCas9負荷に対する耳介腫脹DTH応答を減少させた(
図12を参照のこと)。対照的に、MC903 MNAまたはSpCas9 MNAによる前処理は耳介腫脹応答に最小限の効果しか及ぼさず、MNAを介したSpCas9とMC903の同時送達が耳介腫脹を軽減するために必要であることを示唆した(抗原特異的T細胞媒介性炎症の減少の証明)。
【0181】
図10は、S.pyogenes(SpCas9)タンパク質の持続放出がアルギナートヒドロゲル微粒子(MP)への封入によって達成され得ることを示す。Cas9は、CaCl
2と架橋した低粘度または中粘度のアルギナートMPに担持された。インビトロ放出アッセイは、PBS+1% BSA緩衝液中の既知の質量のCas9 MPを37℃でインキュベートすることによって行われた。様々な時点で、MPの懸濁液を遠心分離し、放出されたCas9を含有する上清をサンプリングし、MPを新鮮な緩衝液に再懸濁した。放出緩衝液中のCas9濃度をELISAによって測定し、累積放出が、MPの質量あたりの放出されたCas9の量に関して計算された。
図10において、左のグラフは、総累積放出(ng Cas9/mg MP)を示し、右は、カプセル化された総Cas9のパーセンテージとしての累積放出を示す。
【0182】
記載された方法または組成物の正確な詳細は、記載された発明の精神から逸脱することなく変更または修正され得ることは明らかであろう。本発明者らは、以下の特許請求の範囲および主旨の範囲内に入るすべてのそのような修正および変形を主張する。
【配列表】
【国際調査報告】