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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-07-10
(54)【発明の名称】環軸人工関節
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/44 20060101AFI20250703BHJP
【FI】
A61F2/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2025500794
(86)(22)【出願日】2023-07-10
(85)【翻訳文提出日】2025-02-18
(86)【国際出願番号】 US2023027299
(87)【国際公開番号】W WO2024010981
(87)【国際公開日】2024-01-11
(31)【優先権主張番号】63/359,340
(32)【優先日】2022-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513182776
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・シンシナティ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100117640
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 達己
(72)【発明者】
【氏名】ジャーン,ボタオ
(72)【発明者】
【氏名】アリアル,マニシュ・ラジ
(72)【発明者】
【氏名】アナンド,スンダララマン
(72)【発明者】
【氏名】ナウマン,エリック・アレン
(72)【発明者】
【氏名】フォーブス,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】マチュア,アビジット
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス,ケイティー
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA10
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC05
4C097DD10
(57)【要約】
本発明は、歯突起切除術手順後にC1椎骨とC2椎骨との間で環軸関節を支持するための人工デバイスを含む。デバイスは、少なくとも2つのスクリューによって前記C2椎骨に固定されることが可能である人工歯突起置換物を含む。デバイスは、C1椎骨の前弓を置換するブラケットも含む。ブラケットは、少なくとも2つのスクリューによってC1椎骨の外側塊に固着される。さらに、ブラケットは、C1椎骨に固着されると、C2椎骨に固着される歯突起置換物に係合可能である。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前弓がないC1椎骨および歯突起がないC2椎骨をもたらす歯突起切除術手順後にC1椎骨とC2椎骨との間で環軸関節を支持するための人工デバイスであって、
a.少なくとも2つのスクリューによって前記C2椎骨に固定されることが可能である人工歯突起置換物と、
b.前記C1椎骨の前記前弓を置換するブラケットであって、少なくとも2つのスクリューによって前記C1椎骨の外側塊に固着されることが可能である、ブラケットとを備え、
前記ブラケットは、前記C1椎骨に固着されると、前記C2椎骨に固着される前記歯突起置換物に係合可能である、人工デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の人工デバイスにおいて、前記人工歯突起置換物は、少なくとも2つの片持ちスクリューによって前記C2椎骨に固定されることが可能である、人工デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の人工デバイスにおいて、前記人工歯突起置換物はチタンを含む、人工デバイス。
【請求項4】
請求項1に記載の人工デバイスにおいて、前記ブラケットはチタンを含む、人工デバイス。
【請求項5】
請求項1に記載の人工デバイスにおいて、前記人工歯突起置換物および前記ブラケットは抗生物質コーティングを含む、人工デバイス。
【請求項6】
C2椎骨内に人工歯突起を埋め込むための方法であって、
a.患者の前弓が前記患者のC1椎骨から除去され、前記患者の歯突起が前記患者のC2椎骨から除去される内視鏡下経鼻歯突起切除術手順を実施するステップと、
b.患者の経鼻通路を通して請求項1の前記人工歯突起置換物を留置するステップと、
c.前記歯突起が以前に存在した場所で、前記患者のC2椎骨に前記人工歯突起置換物を位置決めし固定するステップと、
d.請求項1の前記ブラケットを患者の経鼻通路を通して留置するステップと、
e.C1の前記前弓が以前に存在した場所で、前記患者のC1椎骨に前記ブラケットを位置決めし固定するステップと、
f.前記ブラケットを前記人工歯突起置換物に係合させるステップと、
を含む、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、前記歯突起切除術手順は、
a.下U字形鼻咽頭フラップを使用して前記経鼻通路を通して前記患者のO-C1関節を露出させるステップと、
b.前記患者のC1椎骨の前記前弓および前記患者のC2椎骨の前記歯突起を除去するステップと、
を含む、方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法において、前記歯突起置換物は、少なくとも2つの片持ちスクリューによって前記C2椎骨に固定される、方法。
【請求項9】
請求項6に記載の方法において、前記ブラケットは、少なくとも2つの片持ちスクリューによって前記C1椎骨に固定される、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、前記ブラケットは、ニューロナビゲーションガイダンスを使用して前記C1椎骨に固定される、方法。
【請求項11】
請求項6に記載の方法において、前記人工歯突起置換物はチタンを含む、方法。
【請求項12】
請求項6に記載の方法において、前記ブラケットはチタンを含む、方法。
【請求項13】
請求項6に記載の方法において、前記人工歯突起置換物および前記ブラケットは抗生物質コーティングを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2022年7月8日に出願された米国仮出願第63/359,340号に対する優先権を主張し、その出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002]本発明は、後頭頸椎および環軸椎固定を処置するための方法およびデバイスに関する。より具体的には、本発明は、環軸人工関節を埋め込むための内視鏡下経鼻外科アプローチに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]後頭頸椎および環軸椎固定のための外科技法は、歯突起切除術に続く後頭頸椎(O-C1)および環軸椎(C1-2)関節を巻き込む不安定性を処置するために使用される。しかしながら、これは、後方アプローチによる融合および固定を実施するために行われる別個の切開をしばしば必要とし、可動性、特に、頭部の外旋の喪失をもたらす。環軸人工デバイスの埋め込みは、動きを維持し、麻酔下で費やされる時間を低減しながら、腹側脳幹圧迫を軽減するのに役立つ可能性がある。そのようなデバイスを、経鼻通路を通して埋め込むことが有利であることになる。現在まで、しかしながら、そのような方法で環軸人工デバイスを埋め込むための妥当性検証された方法は存在しない。
【発明の概要】
【0004】
[0004]本発明は、環軸人工関節を埋め込むための新規な経鼻方法である。本発明の一実施形態は、後頭頸椎および環軸椎固定のための処置を可能にするシステムである。この新しい方法は、歯突起切除術後に環軸関節の動き維持する外科医の能力における最小侵襲性進歩を提供する。一実施形態において、本発明は、前弓がないC1椎骨および歯突起がないC2椎骨をもたらす歯突起切除術手順後にC1椎骨とC2椎骨との間で環軸関節を支持するための人工デバイスを含む。デバイスは、少なくとも2つのスクリューによってC2椎骨に固定されることが可能である人工歯突起置換物を含む。デバイスは、C1椎骨の前弓を置換するブラケットも含む。ブラケットは、少なくとも2つのスクリューによってC1椎骨の外側塊に固着されることが可能である。さらに、ブラケットは、C1椎骨に固着されると、C2椎骨に固着される歯突起置換物に係合可能である。
【0005】
[0005]一実施形態において、人工歯突起置換物は、少なくとも2つの片持ちスクリューによってC2椎骨に固定されることが可能である。別の実施形態において、人工歯突起置換物はチタンを含む。一実施形態において、ブラケットはチタンを含む。別の実施形態において、人工歯突起置換物およびブラケットは抗生物質コーティングを含む。
【0006】
[0006]本発明の別の態様において、C2椎骨内に人工歯突起を埋め込むための方法が提供される。方法は、患者の前弓が患者のC1椎骨から除去され、患者の歯突起が患者のC2椎骨から除去される内視鏡下経鼻歯突起切除術手順を実施することを含む。その後、人工歯突起置換物は、患者の経鼻通路を通して留置される。人工歯突起置換物は、歯突起が以前に存在した場所で、患者のC2椎骨に位置決めされ固定される。この後、ブラケットは、患者の経鼻通路を通して留置される。ブラケットは、C1の前弓が以前に存在した場所で、患者のC1椎骨に位置決めされ固定される。最後に、ブラケットは、人工歯突起置換物に係合される。
【0007】
[0007]一実施形態において、歯突起切除術手順は、下U字形鼻咽頭フラップを使用して経鼻通路を通して患者のO-C1関節を最初に露出させることを含む。その後、患者のC1椎骨の前弓は除去され、患者のC2椎骨の歯突起は除去される。
【0008】
[0008]別の実施形態において、歯突起置換物は、少なくとも2つの片持ちスクリューによってC2椎骨に固定される。一実施形態において、ブラケットは、少なくとも2つの片持ちスクリューによってC1椎骨に固定される。別の実施形態において、ブラケットは、ニューロナビゲーションガイダンスを使用してC1椎骨に固定される。一実施形態において、人工歯突起置換物はチタンを含む。別の実施形態において、ブラケットはチタンを含む。一実施形態において、人工歯突起置換物およびブラケットは抗生物質コーティングを含む。
【0009】
[0009]本明細書は、本技術を特に指摘し、明確に請求する特許請求項で完結するが、本技術が、同様の参照数字が同じ要素を特定する添付図面と併せて読まれる特定の実施例の以下の説明からよりよく理解されることになると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】[0010]本発明の前弓ブラケットおよび歯突起置換物の一実施形態の斜視図である。
図1B】[0011]本発明の前弓ブラケットの一実施形態の斜視図である。
図1C】[0012]本発明の歯突起置換物の一実施形態の斜視図である。
図2】[0013]後頭頸椎固定を示す画像である。
図3A】[0014]セグメンテーション前のC1-C2の拡大画像である。
図3B】[0015]セグメンテーション後のC1-C2の拡大画像である。
図4】[0016]C1の前面図を示す画像である。
図5】[0017]C1の上面図を示す画像である。
図6】[0018]C2の斜視図であり、歯状突起(odontoid process)のための寸法線を示す。
図7A】[0019]本発明の前弓ブラケットの第1の実施形態の斜視図である。
図7B】[0020]本発明の前弓ブラケットの第2の実施形態の斜視図である。
図8A】[0021]本発明の歯突起置換物の第1の実施形態の斜視図である。
図8B】[0022]本発明の歯突起置換物の第2の実施形態の斜視図である。
図8C】[0023]本発明の歯突起置換物の第3の実施形態の斜視図である。
図8D】[0024]本発明の歯突起置換物の第4の実施形態の斜視図である。
図9】[0025]C1に取り付けられた本発明によるブラケットの画像である。
図10】[0026]歯突起切除術後にC2に取り付けられた本発明による歯突起置換物の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0027]開示される主題の1つまたは複数の実施形態の詳細は、本明細書で述べられる。本明細書で説明される実施形態および他の実施形態の修正は、本明細書で提供される情報の調査後に当業者に明らかになるであろう。
【0012】
[0028]本開示は、本開示の一部を形成する添付図面の図と併せて読まれる実施形態の以下の詳細な説明を参照してより容易に理解されてもよい。本出願が、本明細書で説明されるおよび/または示される特定のデバイス、方法、条件、またはパラメータに限定されないこと、および、本明細書で使用される用語が、単に実施例として特定の実施形態を説明するためのものであり、制限的であることを意図されないことが理解される。同様に、幾つかの実施形態において、添付特許請求項を含む本明細書で使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、複数を含み、特定の数値に対する参照は、別段に文脈が明確に指示しない限り、少なくともその特定の値を含む。範囲は、「約(about)」または「ほぼ(approximately)」1つの特定の値から、および/または、「約」または「ほぼ」別の特定の値までとして本明細書で表現されてもよい。そのような範囲が表現されるとき、別の実施形態は、1つの特定の値から、および/または、他の特定の値まで含む。同様に、値が、先行する「約」の使用によって近似として表現されるとき、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されるであろう。
【0013】
[0029]以下の用語は、当業者によってよく理解されると考えられるが、定義は、開示される主題の説明を促進するために述べられる。別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、開示される主題が属する技術分野の専門家によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0014】
[0030]特定の用語は、単に便宜上以下の説明で使用され、制限的でない。ワード「右(right)」、「左(left)」、「下(lower)」、および「上(upper)」は、参照がそれに対して行われる図面内の方向を指定する。ワード「内方に(inwardly)」または「近位に(proximally)」および「外方に(outwardly)」または「遠位に(distally)」は、インプラントの幾何学的中心およびその関連部分に向かう方向およびそれから外方への方向をそれぞれ指す。ワード「前方(anterior)」、「後方(posterior)」、「上位(superior)」、「下位」、および関連ワードおよび/または句は、参照がそれに対して行われる人間身体における好ましい位置および配向を指定するものであり、限定するものではない。用語は、上記で挙げたワード、その派生語、および同様の意味のワードを含む。
【0015】
[0031]同様の参照数字は、本明細書で説明されるインプラントの好ましい実施形態のそれぞれの同様のまたは同じコンポーネントを説明するために出願全体を通して利用されることになり、説明は、特定の実施形態を他の実施形態から区別する個々の実施形態の特定の特徴に的を絞ることになる。
【0016】
[0032]本明細書で使用されるように、用語「約」は、質量、重量、時間、体積、pH、サイズ、濃度、またはパーセンテージの値または量を参照するとき、指定された量から、幾つかの実施形態において±20%、幾つかの実施形態において±10%、幾つかの実施形態において±5%、幾つかの実施形態において±1%、幾つかの実施形態において±0.5%、および幾つかの実施形態において±0.1%の変動を包含することを意味し、したがって、変動は、開示される方法を実施するために適切である。
【0017】
[0033]本明細書全体を通して与えられる全ての最大数値制限が、全ての低い数値制限を、そのような低い数値制限が本明細書で明示的に書かれたかのように含むことが理解されるべきである。本明細書全体を通して与えられる全ての最小数値制限が、全ての高い数値制限を、そのような高い数値制限が本明細書で明示的に書かれたかのように含むことになる。本明細書全体を通して与えられる全ての数値範囲は、そのような幅広い数値範囲内に入る全ての狭い数値範囲を、そのような狭い数値範囲が本明細書で全て明示的に書かれたかのように含むことになる。
【0018】
[0034]添付特許請求項を含む本明細書で使用されるように、疾患または状態を「処置すること(treating)」、または、その「処置(treatment)」は、疾患または状態の兆候または症状を緩和しようとして、患者(人間、標準的なまたはそうでないまたは他の哺乳類)に1つまたは複数の薬物を投与すること、埋め込み可能デバイスを使用すること、および/または、例えば、突出した椎間板(bulge disc)または椎間板ヘルニア(herniated disc)および/または骨棘(bone spur)の部分を除去するために使用される顕微鏡下椎間板摘出術機器などの疾患を処置する機器を使用することを含んでもよい手順を実施することを指す。緩和は、疾患または状態の兆候または症状が現れるのに先立って、ならびに、それらの出現後に起こる可能性がある。そのため、処置することまたは処置は、疾患または望ましくない状態を防止することまたはその防止(例えば、疾患にかかりやすい場合があるが、疾患を有しているとまだ診断されていない患者において疾患が発症することを防止すること)を含む。さらに、処置することまたは処置は、兆候または症状の完全な緩和を必要とせず、治癒を必要とせず、患者に対する限界効果のみを有する手順を特に含む。処置は、疾患を抑制すること、例えば、その発達を停止させること、または、疾患を軽減すること、例えば、疾患の退行をもたらすことを含むことができる。例えば、処置は、手術および/または任意の修復手順における補助物として、急性または慢性炎症を低減すること、疼痛を緩和すること、ならびに、新しい靭帯、骨、および他の組織の再成長を軽減し誘起することを含むことができる。同様に、添付特許請求項を含む本明細書で使用されるように、用語「組織(tissue)」は、別段に特に参照されない限り、軟部組織、筋肉、靭帯、腱、軟骨、および/または骨を含む。
【0019】
[0035]以下の議論は、人工デバイスの説明および本開示の原理に従って人工デバイスを使用する関連方法を含む。代替の実施形態も開示される。添付図に示される本開示の例示的な実施形態に対して参照が詳細に行われる。図1~10を参照すると、例えば、図1Aに示されるシステムなどの人工デバイスのコンポーネントが示される。
【0020】
[0036]後頭頸椎および環軸椎固定のための外科技法は、歯突起切除術に続く後頭頸椎(O-C1)および環軸椎(C1-2)関節を巻き込む不安定性を処置するために使用される。しかしながら、これは、後方アプローチによる融合および固定を実施するために行われる別個の切開をしばしば必要とし、可動性、特に、頭部の外旋の喪失をもたらす。環軸人工デバイスの埋め込みは、動きを維持し、麻酔下で費やされる時間を低減しながら、腹側脳幹圧迫を軽減するのに役立つ可能性がある。図1A~1Cを参照すると、本発明は、スクリュー穴50を通して挿入される2つの片持ちスクリュー(示さず)によってC2の本体に固定される人工歯突起置換物30を備える人工デバイス10を含む。人工デバイス10は、ブラケットスクリュー穴40を通して挿入される2つのスクリュー(示さず)によってC1の外側塊に固着されるC1の前弓を置換するブラケット20も備える。これらのコンポーネントは、内視鏡下経鼻歯突起切除術に続いて経鼻通路を通して留置される。両方のコンポーネントは、経鼻通路を通過するのに十分に小さいプロファイルを有する。留置されると、デバイスは、歯突起切除術中に除去された骨要素を置換することによって、環軸関節を再構築することになる。
【0021】
[0037]本発明のデバイスは、歯突起切除術を必要とする患者内の頭蓋頸椎関節の可動性を保持しながら、腹側脳幹圧迫を可能にする手段を提供する。最小侵襲性通路を通るこの人工装具の留置は、疼痛、瘢痕化、入院日数、および術後障害を最小にするのを手伝うことが期待される。環軸関節の動きを維持する能力は、生活の質の観点から患者にとって有益だと分かる場合もある(運転しながら、ブラインドスポットを見ることによって、レーンを安全に変更することができる)。本発明は、歯突起切除術が必要になる患者において使用され得る。この集団において、インストゥルメンテーションは、患者が、後方固定のために2次手順を必要とする代わりに、シングルステージアプローチによって処置されることを可能にする。まとめて、これらの進歩は、疼痛、障害、および、必要な手術時間を減少させることになり、患者可動性および維持される生活の質における、予想される付随する減少を伴う。
【0022】
使用方法
[0038]一実施形態において、本発明の外科システムは、以下のように埋め込まれる。O-C1関節は、下U字形鼻咽頭フラップを使用して経鼻通路を通して最初に露出される。C1の前弓および歯突起は、その後除去される。次に、歯突起置換物は、2つの片持ちスクリューを用いてC2の本体に位置決めされ固定される。これに続いて、ブラケットは、C1の前弓が以前に存在した場所に位置決めされ、ニューロナビゲーションガイダンス下で留置された2つのC1外側塊スクリューを用いて所定の位置に固定される。
【0023】
[0039]一実施形態において、歯突起置換物およびC1ブラケットは、チタンまたは同様な生体適合性材料から成っている。さらに、歯突起置換物およびC1ブラケットは、準清潔(clean-contaminated)通路に起因する感染のリスクを低減するために抗生物質コーティングを有する場合もある。さらに、歯突起置換物は、経鼻通路を通して留置されるのに十分に小さいフットプリントを保持しながら、歯突起の形状および大きさを真似るように設計される。静的および疲労荷重解析は、ブラケットおよび歯突起設計を頑健にし、患者の一生涯続くために実施されてもよい。前弓ブラケットは、C1の前弓を再構築するように同様に設計される。再構成することによって、歯突起切除術中に除去された骨要素を再構築することによって、関節自体が再構築されることになる(図1Bおよび9参照)。
【0024】
[0040]軽減不能脳幹圧迫を処置するための現在の標準は、図2に示される。図は、歯突起切除術後の後頭頸椎固定を示す。そのような手順は、屈曲伸展の40%喪失および軸回旋の60%喪失をもたらす。図3Aは、セグメンテーション前のC1-C2の拡大画像を示す。図3Bは、セグメンテーション後のC1-C2を示す。
【0025】
[0041]図1Bは、本発明の前弓ブラケットの一実施形態を示す。図1Cは、歯突起置換物を示し、図1Aは、留置後のその構成におけるシステムを示す。歯突起置換物は、C2の本体に、それに続いて2つの外側塊スクリューによってC1の外側塊に取り付けられる前弓ブラケットに固定される。この構成は、環軸関節における屈曲、伸展、および外旋を可能にし、それにより、動きを保持する。インプラントの強固な固定は不安定性を防止することになる。
【0026】
[0042]ブラケットおよび歯突起置換物を取り付けるために使用されるスクリューの長さは、個々の患者の解剖学的構造によって予め決定される。
【0027】
[0043]図9は、C1に取り付けられた本発明によるブラケットの画像である。図10は、歯突起切除術後にC2に取り付けられた本発明による歯突起置換物の画像である。
【0028】
実施例
【実施例1】
【0029】
[0044]4つの死体検体が、C1の前弓およびC2の歯突起の平均寸法を決定するために調査された。C1およびC2は、経鼻反転U字形鼻咽頭フラップを使用して評価された。図4および5は、解析のために使用されるC1の寸法を示す。C1測定結果の場合、H1はC1前弓の高さであり、T1はC1前弓の厚さであり、L1は、全リッジにわたる平均距離(シーメンスNXソフトウェアを用いてポリゴンモデリングを使用して決定された)である。L2は、C1前位(anterior presentation)の水平距離である。
【0030】
[0045]表1は、4つの検体から採取した測定結果を示す。
【0031】
【表1】
【0032】
[0046]C2測定結果の場合、H1は、手術前の歯状突起(odontoid)の高さの70%である。最低ポイントは、LMの前の湾曲の最も幅広の部分として決定された。T1は、C2の厚さである。L1は、歯突起切除術を実施するために必要なC1の骨除去の水平距離である。
【0033】
[0047]表2は、4つの検体から採取した測定結果を示す。
【0034】
【表2】
【実施例2】
【0035】
[0048]本発明のブラケットの2つの実施形態が、形成され試験された。実施形態1は図7Aに示される。図は、ブラケットの画像を示す。ブラケットの異なる部分の高度は、隣接するチャートで詳述される値を有するシェーディングで示される。実施形態2は、ブラケットの同様な画像および隣接する値のテーブルを有する図7Bに示される。これらのブラケットは、変形、応力、反応力、疲労寿命、および安全係数を含む種々のパラメータについて試験された。表3に示されるように、ブラケットの実施形態2は、全てのパラメータについてうまく働いた。
【0036】
【表3】
【実施例3】
【0037】
[0049]本発明の人工歯突起置換物の4つの実施形態が形成され試験された。実施形態1は図8Aに示される。図は、歯突起置換物の画像を示す。歯突起置換物の異なる部分の高度は、隣接するチャートで詳述される値を有するシェーディングで示される。実施形態2は、歯突起置換物の同様な画像および隣接する値のテーブルを有する図8Bに示される。実施形態3は図8Cに示され、実施形態4は図8Dに示される。これらの歯突起置換物は、変形、応力、反応力、疲労寿命、および安全係数を含む種々のパラメータについて試験された。表4に示される値に基づいて、実施形態2は、全てのパラメータにわたって最良の平均性能を有する歯突起置換物であると判定された。
【0038】
【表4】
【0039】
[0050]本発明の種々の実施形態を示し説明して、本明細書で説明される方法およびシステムのさらなる適応が、本発明の範囲から逸脱することなく当業者による適切な修正によって達成されてもよい。例えば、実施例、実施形態、幾何学的形状、材料、寸法、および上記で論じた同様なものは例証であり、必須ではない。したがって、本発明の範囲は、添付特許請求項に関して考えられるべきであり、本明細書および図面で示され説明される構造および動作の詳細に限定されないことが理解される。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
【国際調査報告】