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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-07-11
(54)【発明の名称】多孔性炭素材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/168 20170101AFI20250704BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20250704BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20250704BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20250704BHJP
【FI】
C01B32/168
H01M4/136
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024576844
(86)(22)【出願日】2023-09-08
(85)【翻訳文提出日】2024-12-26
(86)【国際出願番号】 KR2023013529
(87)【国際公開番号】W WO2024111828
(87)【国際公開日】2024-05-30
(31)【優先権主張番号】10-2022-0159965
(32)【優先日】2022-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0183586
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0183771
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0185613
(32)【優先日】2022-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0063394
(32)【優先日】2023-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0070299
(32)【優先日】2023-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0073163
(32)【優先日】2023-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0075765
(32)【優先日】2023-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0119937
(32)【優先日】2023-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ダ-ヨン・カン
(72)【発明者】
【氏名】ミン-ス・キム
(72)【発明者】
【氏名】ボン-ス・キム
(72)【発明者】
【氏名】スン-ボ・ヤン
【テーマコード(参考)】
4G146
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA11
4G146AB06
4G146AC02A
4G146AC02B
4G146AD23
4G146AD25
4G146CB09
4G146DA07
4G146DA47
5H050AA02
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA11
5H050DA02
5H050EA08
5H050FA13
(57)【要約】
本発明は、多孔性炭素材を、遠心粉砕機を用いて粉砕し、それを目的とする多孔性炭素材の粒径D50の2.8~4倍の目開きサイズのふるいで篩う段階を含み、粒径が制御された多孔性炭素材を製造する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)多孔性炭素材を、遠心粉砕機を用いて粉砕する段階と、
(2)前記段階(1)で得られた、粉砕された多孔性炭素材をふるいにかけて粒径が制御された多孔性炭素材を得る段階と、を含み、
前記ふるいの目開きは、前記粒径が制御された多孔性炭素材の粒径D50の2.8~4倍である、多孔性炭素材の製造方法。
【請求項2】
前記段階(1)は、前記遠心粉砕機を用いて30~125Rad/sの角速度で行われる、請求項1に記載の多孔性炭素材の製造方法。
【請求項3】
前記段階(2)は、前記粉砕された多孔性炭素材に遠心力が加えられた状態で行われる、請求項1に記載の多孔性炭素材の製造方法。
【請求項4】
前記段階(2)の後に、(3)前記ふるいを通過した多孔性炭素材を収集する段階をさらに含む、請求項1に記載の多孔性炭素材の製造方法。
【請求項5】
前記遠心粉砕機が、複数のロータ歯を含む、請求項1に記載の多孔性炭素材の製造方法。
【請求項6】
前記複数のロータ歯は、各々三角柱の形状を有し、前記遠心粉砕機の回転軸に向かうように配列されている、請求項5に記載の多孔性炭素材の製造方法。
【請求項7】
前記遠心粉砕機が、前記複数のロータ歯を囲むように配置された円筒状のふるいを含む、請求項5に記載の多孔性炭素材の製造方法。
【請求項8】
前記複数のロータ歯と前記ふるいとの最短距離が0.5~2mmである、請求項7に記載の多孔性炭素材の製造方法。
【請求項9】
前記多孔性炭素材は、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、炭素ナノ繊維、グラフェン、黒鉛及び活性炭からなる群より選択される一種以上を含む、請求項1に記載の多孔性炭素材の製造方法。
【請求項10】
前記粒径が制御された多孔性炭素材は、下記式1によるBF(Broadness Factor)値が7以下である、請求項1に記載の多孔性炭素材の製造方法:
<式1>
BF=(粒径が制御された多孔性炭素材の粒径D90/粒径が制御された多孔性炭素材の粒径D10)。
【請求項11】
前記粒径が制御された多孔性炭素材の粒径D10~D50の標準偏差が、1.5μm以下である、請求項1から10のいずれか一項に記載の多孔性炭素材の製造方法。
【請求項12】
前記粒径が制御された多孔性炭素材の粒径D50が、100μm以下である、請求項1に記載の多孔性炭素材の製造方法。
【請求項13】
前記段階(1)で粉砕を行う前の多孔性炭素材のタップ密度が、前記段階(2)で得られた粒径の制御された多孔性炭素材のタップ密度と同一であるか、または大きい、請求項1に記載の多孔性炭素材の製造方法。
【請求項14】
前記段階(1)と段階(2)とが同時に行われる、請求項1に記載の多孔性炭素材の製造方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の製造方法によって製造され、角張った粒子形状である、多孔性炭素材。
【請求項16】
請求項1から14のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された多孔性炭素材と、
前記多孔性炭素材の表面の少なくとも一部に担持された硫黄系材料と、を含む、硫黄-炭素複合体。
【請求項17】
請求項16に記載の硫黄-炭素複合体を含む正極、負極、前記正極と負極との間に介在された分離膜及び電解質を含む、リチウム-硫黄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔性炭素材を製造する方法に関する。具体的には、粒径が制御された多孔性炭素材を製造する方法に関する。より詳しくは、本発明は、前記多孔性炭素材を含む硫黄-炭素複合体及びそれを含むリチウム-硫黄電池に関する。
【0002】
本出願は、2022年11月25日出願の韓国特許出願第10-2022-0159965号、2022年12月23日出願の韓国特許出願第10-2022-0183586号及び第10-2022-0183771号、2022年12月27日出願の韓国特許出願第10-2022-0185613号、2023年05月16日出願の韓国特許出願第10-2023-0063394号、2023年05月31日出願の韓国特許出願第10-2023-0070299号、2023年06月07日出願の韓国特許出願第10-2023-0073163号及び2023年06月13日出願の韓国特許出願第10-2023-0075765号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
近年、エネルギー貯蔵技術に対する関心が高まりつつある。携帯電話、カムコーダ及びノートブックPC、ひいては電気自動車のエネルギーにまで適用分野が広かるにつれ、電気化学素子の研究と開発が盛んに進んでいる。
【0004】
電気化学素子は、このような面で最も注目を浴びている分野であって、その中でも充放電の可能な二次電池の開発は関心の焦点になっている。最近には、このような電池を開発することにおいて容量密度及び比エネルギーを向上させるために、新しい電極と電池の設計に関わる研究開発に繋がっている。
【0005】
現在、適用されている二次電池のうち、1990年代初めに開発されたリチウム二次電池は、水溶性電解液を使用するNi-MH、Ni-Cd、硫酸-鉛電池などの在来式電池に比べ、作動電圧が高く、エネルギー密度が遥かに高いという長所から脚光を浴びている。
【0006】
特に、リチウム硫黄電池は、S-S結合(sulfur-sulfur bond)を有する硫黄系物質を正極活物質として使用し、リチウム金属を負極活物質として使用する二次電池である。前記正極活物質の主材料である硫黄は、資源が豊かであり、毒性がなく、かつ低い原子当たり重さを有しているという長所がある。また、リチウム-硫黄電池の理論放電容量は、1675mAh/g-sulfurであり、理論エネルギー密度が2,600Wh/kgであって、現在研究中の他の電池システムの理論エネルギー密度(Ni-MH電池:450Wh/kg、Li-FeS電池:480Wh/kg、Li-MnO電池:1,000Wh/kg、Na-S電池:800Wh/kg)に比べて非常に高いため、現在まで開発されてきた電池の中で最も有望な電池といえる。
【0007】
リチウム-硫黄電池の放電反応中において、負極(Negative electrode)ではリチウムの酸化反応が発生し、正極(Positive electrode)では硫黄の還元反応が発生する。放電前の硫黄は、環状のS構造を有しており、還元反応(放電)時にS-S結合が切れながらSの酸化数が減少し、酸化反応(充電)時にS-S結合がさらに形成されながらSの酸化数が増加する酸化-還元反応を用いて電気エネルギーを貯蔵及び生成する。このような反応中に、硫黄は還元反応によって環状のSから線状構造のリチウムポリスルフィド(Lithium polysulfide、Li、1≦x≦8)に変換され、このようなリチウムポリスルフィドが完全に還元されると、最終的にリチウムスルフィド(Lithium sulfide、LiS)が生成される。各々のリチウムポリスルフィドに還元される過程によってリチウム-硫黄電池の放電挙動はリチウムイオン電池とは異なり、段階的に放電電圧を示すことが特徴である。
【0008】
前記リチウム-硫黄電池を商用化可能な水準のエネルギー密度と寿命特性を有するために、正極活物質である硫黄-炭素複合体の電気化学的反応性及び安全性を改善するための多様な技術が提案された。
【0009】
このようなリチウム-硫黄電池の性能を向上させるためには、正極活物質の反応性を最大化する必要がある。リチウム-硫黄電池の正極活物質に使用される硫黄は導電性がないため、反応性を最大にするために担持体として炭素材を使用し、前記炭素材と硫黄が混合された硫黄-炭素複合体が主に使用されている。
【0010】
しかし、このように硫黄の担持体として高比表面積及び高気孔度を有する炭素材を使用する場合、前記炭素材の粒径は、リチウム-硫黄電池の放電容量及びエネルギー密度に大きい影響を及ぼすため、炭素材の粒径調節は必須であり、狭い粒径分布を有する必要がある。
【0011】
従来には、炭素材の粒径調節のために炭素材を粉砕する工程を行っており、前記粉砕によって小さい粒径と大きい粒径が共存して粒径分布が広いという問題がある。
【0012】
そこで、狭い粒径分布を有する多孔性炭素材の粒径制御方法に関する研究が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、連続工程を行うことによって、生産率が高く、粒径分布が狭く、目的とする粒径D50を製造可能な多孔性炭素材の粒径制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を達成するために、
本発明の一面によれば、下記具現例の粒径が制御された多孔性炭素材の製造方法が提供される。
【0015】
第1具現例による粒径の制御された多孔性炭素材の製造方法は、
(1)多孔性炭素材を、遠心粉砕機を用いて粉砕する段階と、
(2)前記段階(1)で得られた粉砕された多孔性炭素材をふるいにかけて粒径が制御された多孔性炭素材を得る段階と、を含み、
前記ふるいの目開きは、前記粒径が制御された多孔性炭素材の粒径D50の2.8~4倍にする。
【0016】
第2具現例によれば、第1具現例において、
前記段階(1)は、前記遠心粉砕機を用いて30~125Rad/sの角速度(angular velocity)で行われ得る。
【0017】
第3具現例によれば、第1具現例または第2具現例において、
前記段階(2)は、前記粉砕された多孔性炭素材に遠心力(centrifugal force)が加えられた状態で行われ得る。
【0018】
第4具現例によれば、第1具現例から第3具現例のいずれか一具現例において、
前記段階(2)の後に、(3)前記ふるいを通過した多孔性炭素材を収集する段階をさらに含み得る。
【0019】
第5具現例によれば、第1具現例から第4具現例のいずれか一具現例において、
前記遠心粉砕機は、複数のロータ歯(rotating teeth)を含み得る。
【0020】
第6具現例によれば、第1具現例から第5具現例のいずれか一具現例において、
前記複数のロータ歯は、各々三角柱の形状を有し、前記遠心粉砕機の回転軸に向かうように配列されたものであり得る。
【0021】
第7具現例によれば、第1具現例から第6具現例のいずれか一具現例において、
前記遠心粉砕機は、前記複数のロータ歯を囲むように配置された円筒状のふるいを含み得る。
【0022】
第8具現例によれば、第1具現例から第7具現例のいずれか一具現例において、
前記複数のロータ歯と前記ふるいとの最短距離が0.5~2mmであり得る。
【0023】
第9具現例によれば、第1具現例から第8具現例のいずれか一具現例において、
前記多孔性炭素材は、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、炭素ナノ繊維、グラフェン、黒鉛及び活性炭からなる群より選択される一種以上を含み得る。
【0024】
第10具現例によれば、第1具現例から第9具現例のいずれか一具現例において、
前記粒径が制御された多孔性炭素材は、下記式1によるBF(Broadness Factor)値が7以下であり得る。
【0025】
<式1>
BF=(粒径が制御された多孔性炭素材の粒径D90/粒径が制御された多孔性炭素材の粒径D10)。
【0026】
第11具現例によれば、第1具現例から第10具現例のいずれか一具現例において、
前記粒径が制御された多孔性炭素材の粒径D10~D50の標準偏差は、1.5μm以下であり得る。
【0027】
第12具現例によれば、第1具現例から第11具現例のいずれか一具現例において、
前記粒径が制御された多孔性炭素材の粒径D50は、100μm以下であり得る。
【0028】
第13具現例によれば、第1具現例から第12具現例のいずれか一具現例において、
前記段階(1)で粉砕を行う前の多孔性炭素材のタップ密度は、前記段階(2)で得られた粒径の制御された多孔性炭素材のタップ密度と同一であるか、または大きくてもよい。
【0029】
第14具現例によれば、第1具現例から第13具現例のいずれか一具現例において、
前記段階(1)と段階(2)とは同時に行われ得る。
【0030】
本発明の他面によれば、下記具現例の多孔性炭素材、硫黄-炭素複合体及びリチウム-硫黄電池が提供される。
【0031】
第15具現例による多孔性素材は、
前記第1具現例から第14具現例のいずれか一具現例によって製造され、角張った粒子形状を有する。
【0032】
前記第1具現例から第14具現例のいずれか一具現例によって製造される多孔性炭素材と、前記多孔性炭素材の表面の少なくとも一部に担持された硫黄系材料と、を含む。
【0033】
第17具現例によるリチウム-硫黄電池は、
前記第16具現例による硫黄-炭素複合体を含む正極、負極、前記正極と負極との間に介在された分離膜及び電解質を含む。
【発明の効果】
【0034】
本発明の多孔性炭素材の粒径の制御方法は、多孔性炭素材を目的とする粒径に製造可能であり、狭い粒径分布を有する多孔性炭素材を提供可能であると共に、連続工程で行われることによって持続的に粒径の制御された多孔性炭素材を製造することができ、工程時間が短くて経済的であり、生産性が高いという効果を奏する。
【0035】
また、本発明によって粒径が制御された多孔性炭素材を用いてリチウム-硫黄電池の活物質として硫黄Sを担持すると、硫黄の利用率が高まってリチウム-硫黄電池の電気化学的性能を向上させることができるという長所を有し得るが、本発明の効果がこれに限定されることではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】多孔性炭素材の遠心粉砕を示した模式図である。
図2】多孔性炭素材のボールミルによる粉砕を示した模式図である。
図3】遠心粉砕機の断面の模式図である。
図4】実施例1から5及び比較例3の粒径が制御された多孔性炭素材の粒径分布グラフである。
図5】比較例1の多孔性炭素材の粒径分布グラフ及び比較例2の粒径が制御された多孔性炭素材の粒径分布グラフである。
図6】比較例2の多孔性炭素材の表面が相対的に扁平なことを示すSEMイメージ(左側)と、実施例1の多孔性炭素材の表面が相対的に粗いことを示すSEMイメージ(右側)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0038】
本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的または辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応じた意味及び概念で解釈されねばならない。
【0039】
本明細書で使用される用語「複合体(composite)」とは、二つの以上の材料が組み合わせられて物理的・化学的に相異なる相(phase)を形成し、より有効な機能を発現する物質を意味する。
【0040】
本発明において、「粒径D10」とは、測定対象粒子の体積累積粒径分布10%基準における粒子の大きさを意味し、「粒径D50」とは、測定対象粒子の体積累積粒径分布の50%基準における粒子の大きさを意味し、「粒径D90」とは、測定対象粒子の体積累積粒径分布の90%基準における粒子の大きさを意味する。
【0041】
前記粒径D10、D50及びD90は、各々レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定され得る。例えば、測定対象の粒子粉末を分散媒中に分散させ、市販のレーザー回折粒度測定装置(例えば、Microtrac MT3000)に導入して約28kHzの超音波を出力60Wで照射し、体積累積分布グラフを得た後、体積累積分布の10%、50%及び90%の各々にあたる粒子サイズを求めることで測定され得る。即ち、例えば、平均粒径D50は、粒径分布グラフにおいて中間値または中間直径を示し、累積分布において50%地点における粒子の大きさを示す。粒径は粒子の直径を示し、粒子の直径とは、粒子内で最長の長さを示す。
【0042】
本明細書で使用される用語「気孔度(porosity)」とは、ある構造体において全体積に対して気孔が占める体積の割合を意味し、その単位としては「vol%」を使用し、空隙率、多孔度などの用語と互換して使用し得る。前記気孔度は、当業界における公知のISO 15901:2019の方法によって測定され得る。
【0043】
本発明の一面による多孔性炭素材の製造方法は、
(1)多孔性炭素材を、遠心粉砕機を用いて粉砕する段階と、
(2)前記段階(1)で得られた粉砕された多孔性炭素材をふるいにかけて粒径が制御された多孔性炭素材を得る段階と、を含む。
【0044】
前記ふるいの目開きは、前記粒径が制御された多孔性炭素材の粒径D50の2.8~4倍である。
【0045】
本発明の一具現例において、前記ふるいの目開きは、目的とする粒径D50の2.8倍~4倍のものであり得る。
【0046】
前記段階(1)は、多孔性炭素材を、遠心粉砕機を用いて粉砕する段階である。本明細書において、遠心粉砕機を用いて粉砕することを「遠心粉砕」とも呼び得る。
【0047】
前記多孔性炭素材は、粒子の内部(閉気孔)及び/または粒子の表面(開気孔)に一定でない気孔を含む。この際、前記気孔の平均直径は、例えば1~200nm範囲であり、気孔度は多孔性炭素材の全体積の10~90vol%であり得る。前記気孔の平均直径は、例えば、ガス吸着を用いたBET測定方式または水銀圧入法などの公知の方法によって測定し得る。
【0048】
前記多孔性炭素材の形態は、各々球状、棒状、針状、板状、管状またはバルク形など、特に制限されない。
【0049】
前記多孔性炭素材は、多孔性構造であるか、または比表面積の高いものであれば、その種類は特に限定されない。例えば、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、炭素ナノ繊維、グラフェン、黒鉛及び活性炭からなる群より選択される一種以上を含み、望ましくは、カーボンナノチューブを含み得る。本発明の一面による方法によって製造される多孔性炭素材は、出発物質の多孔性炭素材の粒子サイズ及び/または粒子サイズの分布の均一性を制御するものであり、製造過程中に多孔性炭素材の種類を変更することではない。
【0050】
前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブからなる群より選択される一種以上を含み得るが、これに限定されない。本発明の一面による方法による製造方法は、粉砕過程及び/またはふるいにかける過程中に多孔性炭素材の化学的変形を誘発しない。具体的には、前記製造方法は、出発物質として多層カーボンナノチューブを用いる場合、多孔性カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブなどへ化学的に変形されない。
【0051】
前記カーボンブラックは、デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック及びサーマルブラックからなる群より選択される一種以上を含み得るが、これらに限定されない。
【0052】
前記炭素ナノ繊維は、グラファイトナノファイバー、カーボンナノファイバー及び活性炭繊維からなる群より選択される一種以上を含み得るが、これに限定されない。
【0053】
前記黒鉛は、天然黒鉛、人造黒鉛及び膨脹黒鉛からなる群より選択される一種以上を含み得るが、これに限定されない。
【0054】
従来には多孔性炭素材の粒径調節のためにボールミル(ball mill) またはブレード(blade)などを用いて多孔性炭素材を粉砕した。しかし、前記従来の粉砕方法は、多孔性炭素材がボールまたはブレードとランダムに接触して粒径の大きい多孔性炭素と粒径の小さい多孔性炭素材が共存することによって、粒径分布が広いという問題があった。
【0055】
また、図1及び図2を参照すると、本発明のように遠心粉砕後、粉砕された粒子をふるいにかけて粒径を制御した多孔性炭素材は、粒径が制御されると、ふるいにかけられるため、粒子表面のさらなる摩耗、または粒子サイズのさらなる粉砕が防止される効果がある。一方、ボールミルなどによって粉砕した後、ふるいにかけないと、ボールミルなどに投入された粒子が粉砕され続けるか、または表面が摩耗して微粉発生量が大きく、タップ密度が高くなるという問題が発生し得る。
【0056】
本発明は、前記多孔性炭素材を、遠心粉砕機を用いて粉砕した後、後述する段階(2)である、前記遠心粉砕された多孔性炭素材をふるいにかける段階を行い得る。したがって、遠心粉砕された多孔性炭素材がふるいを通過するには、遠心粉砕機に投入されたほとんどの多孔性炭素材が遠心粉砕機のロータ歯(rotating tooth)と接触して粉砕される必要があり、遠心粉砕によってふるいを通過可能なほどに粒径が小さくなると、もう以上粉砕されることなく通過するので、前記遠心粉砕機のロータ歯と多孔性炭素材とは最小限の回数で接触し、それによって、微粉生成率が非常に低くなり、狭い粒径分布を有し得る。本発明において前記微粉は、粒径が7μm以下であることを意味し得る。この際、微粉の粒径は、粒径D10を意味し得る。
【0057】
また、前記遠心粉砕は、多孔性炭素材を引き裂くように粉砕するため、遠心粉砕された多孔性炭素材の形状は球状ではなく、前記多孔性炭素材は、角張った粒子形状であり得る。例えば、前記多孔性炭素材は、角錐台の球形度(prismoidal sphericity)を有する粒子形状であり得る。
【0058】
図6を参照すると、ジェットミルなどによって粉砕された多孔性炭素材の表面(左側)は相対的に扁平である一方、遠心粉砕機によって粉砕された多孔性炭素材の表面(右側)は相対的に粗いことが確認される。前記右側の多孔性炭素材は、粗い表面特性によって角張った粒子形状であることが確認される。
【0059】
本発明の一具現例において、前記段階(1)は遠心粉砕機を用いて30~125Rad/sの角速度(angular velocity)で回転して粉砕を行うものであり得る。具体的には、30~95Rad/sの角速度で回転して粉砕され得る。前記段階(1)で遠心粉砕の速度が前述した速度であるとき、多孔性炭素材の粒径を小さく粉砕しながらも均一に制御し、タップ密度を上昇させない効果を奏するという面で有利になる。
【0060】
本発明の一具現例において、前記遠心粉砕機は、複数のロータ歯を備え、ロータ歯が回転しながら多孔性炭素材を粉砕するものであり得る。具体的には、前記遠心粉砕機は、例えば、2個~20個、4個~18個、6個~16個、8個~14個、10個~14個、または10個~12個のロータ歯を含むものであり得る。
【0061】
また、本発明の一具現例において、前記複数のロータ歯は、各々三角柱の形状を有するものであってもよく、前記複数のロータ歯は、前記遠心粉砕機の回転軸に向かうように配列され得る。具体的には、前記遠心粉砕機の回転軸に沿って、上面視で、三角柱の垂直断面どうしが遠心粉砕機の中央で接するように配列されたものであり得る。
【0062】
本発明の一具現例において、前記複数のロータ歯は、例えば、ステンレススチール、チタン、または保護コーティングが備えられたステンレススチール材質であり得るが、これに限定されることではない。
【0063】
本発明の一具現例において、前記段階(1)で前記遠心粉砕機としてロータ歯を備えるものを用いてもよく、例えば、Retsch社のZM200装置を用い得る。
【0064】
本発明の一具現例において、前記遠心粉砕は6,000~23,000rpmで行われ、前記範囲で多孔性炭素材の粒径を調節し得る。具体的には、前記遠心粉砕は、Retsch社のZM200装置を用いて6,000~23,000rpm、具体的には6,000~18,000rpmの速度で行われ得る。
【0065】
本発明の一具現例において、前記遠心粉砕機の大きさによって同じrpmであっても加えられる力の大きさが変わり得るため、遠心粉砕機の大きさを考慮して、下記式によって30~125Rad/sの角速度で粉砕するようにrpmを調節し得る。
【0066】
角速度=(RPM×円周)/60秒
前記式において、「円周(circumference)」とは、一つのロータ歯が一回り回転する間に移動する距離を示す。
【0067】
前記段階(2)は、前記段階(1)で遠心粉砕された多孔性炭素材をふるいにかける段階である。
【0068】
本発明の一具現例において、前記ふるい(sieve)は遠心粉砕機に備えており、遠心粉砕機の外周に備えられたものあり得る。具体的には、前記ふるいは、遠心粉砕機内の複数のロータ歯を囲むように備えられたものであり得る。
【0069】
本発明の一具現例において、前記ふるいは、円筒状であり、前記複数のロータ歯を囲むように配置され得る。例えば、遠心粉砕機の上面視で、前記複数のロータ歯及び前記ふるいとの最短距離は、0.1~5mm、0.5~2mmまたは0.7mm~1.2mm、例えば1mmであり得る。前記ふるいは、台形及び/または円形の穴を有するメッシュを含み得る。
【0070】
本発明の一具現例において、前記ロータ歯が回転することによって前記多孔性炭素材が粉砕され、目的とする大きさに粒子サイズが制御された多孔性炭素材は、遠心力を受けた状態で一連のロータ歯が配列された周縁部の外側に位置するふるいを即時に通過することで、粒子サイズがより小さくなり、及び/または表面が損傷する問題を解決することができる。本発明の一面によれば、前記段階(1)と段階(2)とが同時に行われることで目的とする大きさに粒径が制御され、狭い分布の粒子サイズを有する多孔性炭素材を得ることができる。
【0071】
このように、本発明の一具現例において、前記段階(2)は、前記粉砕された多孔性炭素材に遠心力が加えられた状態で行われることが望ましい。
【0072】
前記段階(2)は、段階(1)で遠心粉砕された多孔性炭素材がふるいへ移動してかけられ、前記段階(1)と段階(2)は同時に行われる連続工程であり得る。即ち、前記段階(2)は、前記段階(1)で遠心粉砕された多孔性炭素材を別に収集してふるいに投入することではないことが望ましい。具体的には、多孔性炭素材が遠心粉砕され、前記遠心粉砕された多孔性炭素材がふるいを通過するほどの粒径を有するようになれば、ふるいを通過して選別され、前記段階(1)の遠心粉砕と段階(2)のふるい分け工程とは同時に行われるものであり得る。前記(1)と段階(2)は同時に行われるため、工程時間が非常に短くなり、工程効率が優秀になる。
【0073】
前記段階(2)で使用されるふるいは、目開きを調節することで多孔性炭素材の粒径を制御し得る。前記ふるいの目開きは、目的とする多孔性炭素材の粒径D50(ターゲットD50)に対して2.8~4倍(2.8≦目開き/ターゲットD50≦4)であってもよく、前記のようにふるいの目開きの範囲を限定することで目的とする多孔性炭素材の粒径D50を得ることができ、粒径分布の狭い多孔性炭素材を得ることができる。
【0074】
本発明の一具現例において、前記目的とする多孔性炭素材の粒径D50は、例えば、本発明の一面によって製造される多孔性炭素材の粒径D50であり、例えば、10μm~100μm、具体的には20μm~80μm、20μm~70μm、または20μm~66μmであり得る。
【0075】
一般的に、遠心粉砕を実施せず、多孔性炭素材をふるいにかける段階のみを行う場合、かけられた多孔性炭素材の粒径D50はふるいの目開きの約1/2となり、ふるいの目開きの1/2未満である多孔性炭素材の粒径D50は具現が不可能である。即ち、目的とする多孔性炭素材の粒径D50を得るためには、ふるいの目開きは目的とする多孔性炭素材の粒径D50の約2倍以上とならなければならず、2倍未満である場合には、目的とする多孔性炭素材の粒径D50が得られない。
【0076】
本発明は、前記段階(1)で多孔性炭素材を遠心粉砕して多孔性炭素材の全体的な粒径が小さくなるため、ふるいの最小目開きは、目的とする多孔性炭素材の粒径D50の2.8倍となり、2.8倍未満は具現が不可能である。また、4倍を超過すると、多孔性炭素材の粒径制御効果が得られない。また、前記ふるいの目開きは、60~700μm、望ましくは70~500μm、より望ましくは70~200μmであり得る。
【0077】
前記段階(2)で、ふるいにかけられた多孔性炭素材は、下記式1によるD10粒径に対するD90の粒径分布の比(Broadness Factor;BF)が、7以下であり得る。例えば、前記ふるいにかけられた多孔性炭素材の粒径D90は、多孔性炭素材のD10粒径に対して1~7であってもよく、具体的には1~6、または1超過6倍以下(1<D90/D10≦6)であり得る。具体的には、BF値が1~7、1~6、2~5、3~5.5、3.5~5.4または3.78~5.36であり得る。
【0078】
<式1>
BF=(粒径が制御された多孔性炭素材の粒径D90/粒径が制御された多孔性炭素材の粒径D10
【0079】
これは、最終的に製造された多孔性炭素材が非常に狭い粒径分布を有することを意味し得る。もし、ふるいにかけられた多孔性炭素材の粒径D90が多孔性炭素材のD10粒径に対して1倍未満、具体的には1以下であれば、粒径の小さい微粉が過度に多量製造されたことを意味し、6倍を超過すると、粒径の大きい粗粉が過度に製造されたことを意味し、粒径分布が非常に広いことを意味し得る。
【0080】
また、前記段階(2)でふるいにかけられた多孔性炭素材のD10~D50の粒径の標準偏差は1.5μm以下であり得る。即ち、本発明の多孔性炭素材の粒径の制御方法によれば、多孔性炭素材を目的の粒径D50として得ることができるだけでなく、非常に狭い粒径分布を有するものであり得る。
【0081】
本明細書において、前記D10~D50の粒径標準偏差は、D10、D20、D30、D40及び粒径D50に対する標準偏差を示し得る。
【0082】
本発明の一具現例によれば、前記ふるいにかけられた多孔性炭素材の粒径D50は、100μm以下、90μm以下、80μm以下、または70μm以下であり得る。本発明の一具現例において、前記ふるいにかけられた多孔性炭素材の粒径D50は、例えば、10μm以下、15μm以下、18μm以下または20μm以下であり得る。
【0083】
また、前記段階(1)で遠心粉砕を行う前の多孔性炭素材のタップ密度ρ1は、前記段階(2)でふるいにかけられた多孔性炭素材のタップ密度ρ2と同一であるか、またはより大きい値、具体的には1倍以上(ρ1/ρ2≧1)であり得る。即ち、前記(1)及び段階(2)で多孔性炭素材のタップ密度は増加せず、これから、本発明の多孔性炭素材の粒径の制御方法が、多孔性炭素材に圧力を加えることなく粒径を制御することであることが分かる。
【0084】
前記タップ密度(tap density)とは、粉末を充電するときに一定の条件で容器を振動して得られる粉末の見掛け密度を意味する。本発明の一具現例において、前記タップ密度は、多孔性炭素材を含む容器を1,000回タップした後に測定され得る。
【0085】
本発明の一具現例において、前記段階(2)の後に、(3)前記ふるいを通過した多孔性炭素材を収集する段階をさらに含み得る。
【0086】
したがって、本発明の多孔性炭素材の粒径の制御方法は、ふるいの目開きを目的とする多孔性炭素材の粒径D50の2.8~4倍に調節することで、目的とする多孔性炭素材の粒径D50を得ることができ、粒径分布が非常に狭い多孔性炭素材を得ることができる。また、連続工程であることから、製造時間が非常に短くなることによって工程効率が優秀であり、生産性が優秀であるという効果を奏する。
【0087】
本発明の他面によれば、前記方法によって粒度が制御された多孔性炭素材を提供することができる。
【0088】
前記方法によって製造された多孔性炭素材は、前述したように粒径が制御されるだけであり、化学的変形を誘発することではないため、表面及び/または内部に不規則な複数の気孔を含み、表面及び/または内部の複数の気孔に硫黄系材料を担持することができる。
【0089】
本発明の一具現例において、前記方法によって製造された多孔性炭素材は、角張った粒子形状を有する。
【0090】
本発明の他面によれば、前記得られた多孔性炭素材と、前記多孔性炭素材の表面の少なくとも一部に担持された硫黄系材料と、を含む硫黄-炭素複合体を提供し得る。
【0091】
本発明の一具現例において、前記硫黄系材料は、前記多孔性炭素材の気孔の内部及び外部の表面の全部または少なくとも一部に担持され得る。
【0092】
本発明の一具現例において、前記硫黄系材料は、リチウム-硫黄電池の活物質として硫黄(S)を提供できる物質であれば、特に制限なく使用可能である。例えば、前記硫黄系材料は、硫黄(S)及び硫黄化合物のうち一種以上を含む。
【0093】
本発明の一具現例において、前記硫黄系材料は、無機硫黄(S)、Li(n≧1)、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール(2,5-dimercapto-1,3,4-thiadiazole)及び1,3,5-トリチオシアヌル酸 (1,3,5-trithiocyanuic acid)のうち一種以上を含むジスルフィド化合物;有機硫黄化合物;及び炭素-硫黄ポリマー((C、x=2.5~50、n≧2);からなる群より選択される一種以上を含むものであり得る。
【0094】
本発明の一具現例において、前記硫黄-炭素複合体中で、前記硫黄系材料は多孔性炭素材との物理的吸着、または硫黄元素Sと多孔性炭素材中の炭素との共有結合、ファンデルワールス結合などの化学的結合によって含まれ得る。
【0095】
本発明の一実施様態において、前記硫黄-炭素複合体は、硫黄-炭素複合体100wt%に対して前記硫黄系材料の含量が60wt%以上または70wt%以上であることが望ましい。例えば、前記硫黄-炭素複合体は、硫黄-炭素複合体100wt%に対して前記硫黄系材料の含量が60wt%~99wt%、70wt%~99wt%、75wt%~90wt%、70wt%~85wt%、70wt%~80wt%または70wt%~75wt%であることが望ましい。
【0096】
本発明による硫黄-炭素複合体において、前記硫黄系材料は、前記炭素材料の気孔の内部及び外部の表面における少なくともある一表面に位置し、この際、前記炭素材料の内部及び外部の全表面の100%未満、望ましくは1~95%、より望ましくは60~90%の領域に存在し得る。前記硫黄が炭素材料の表面に前記範囲内にあるとき、電子伝達面積及び電解液の濡れ性の面で最大の効果を奏し得る。具体的には、前記範囲領域で硫黄が炭素材の表面に薄くて均一に含浸されるため、充放電過程で電子伝達接触面積を増加させることができる。もし、前記硫黄が炭素材料の全表面の100%領域に位置する場合、前記炭素材が完全に硫黄で覆われて電解液の濡れ性が低下し、電極中の含まれる導電材との接触性が低下して電子が伝達されにくく、反応に参与できなくなる。
【0097】
前記硫黄-炭素複合体は、前記硫黄と炭素材が単に混合されて複合化するか、またはコアシェル構造のコーティング形態あるいは担持形態を有し得る。前記コアシェル構造のコーティング形態は、硫黄材料または炭素材料のいずれか一つが他の物質をコーティングしたものであって、一例で炭素材料の表面を硫黄で囲むか、またはその反対になり得る。また、担持形態は、炭素材料の内部、特に、内部気孔に硫黄系材料が充填された形態であり得る。前記硫黄-炭素複合体の形態は、前記提示した硫黄と炭素材料の含量比を満たすものであれば、如何なる形態でも使用可能であり、本発明で限定されない。
【0098】
本発明の一具現例において、前記硫黄-炭素複合体は、リチウム-硫黄電池の正極活物質及び/または正極添加剤として使用され得るが、本発明の用途がこれに限定されることではない。
【0099】
本発明の他面によれば、前述した硫黄-炭素複合体を含む正極、負極、前記正極と負極との間に介在された分離膜及び電解質を含むリチウム-硫黄電池が提供され得る。
【0100】
この際、前記正極、負極、分離膜及び電解質の構成は、リチウム-硫黄電池に使用されるものであれば、特に制限なく使用可能であり、本発明で特に制限されない。
【0101】
本発明の一具現例によれば、前記正極は前述した硫黄-炭素複合体を含むことで、硫黄の担持率が高く、これによって電気化学的性能を向上させる長所を示し得るが、本発明の効果がこれに限定されることではない。
【0102】
以下、本発明の理解を助けるために望ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するだけであり、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変形及び修正が可能であることは当業者にとって明白であり、このような変形及び修正が添付された特許請求範囲に含まれることは勿論である。
【0103】
<多孔性炭素材の製造>
比較例1
遠心粉砕していないカーボンナノチューブ(MWCNT)を使用し、粒径制御過程を実施しなかった。
【0104】
比較例2
前記比較例1で準備したカーボンナノチューブ(MWCNT)をジェットミル(jet mill)によって粉砕した。
【0105】
実施例1~5及び比較例3
カーボンナノチューブ(MWCNT)をふるい(sieve)が備えられた遠心粉砕機(Retsch社、ZM200)に投入し、カーボンナノチューブが粉砕されながら遠心力が加えられた状態で粉砕されたカーボンナノチューブがふるいにかけられるように粒径を制御した。カーボンナノチューブの目的とするD50の粒径(ターゲットD50)を得るためにふるいの目開き(mesh size)、rpm及び角速度(angular veolocity)を調節し、その条件を下記の表1に示した。
【0106】
比較例4
カーボンナノチューブ(MWCNT)をふるいにかけて粒径を制御した。目的とするカーボンナノチューブのD50の粒径(ターゲットD50)を得るためにふるいの目開きを調節し、その条件を下記の表1に示した。
【0107】
比較例5
カーボンナノチューブ(MWCNT)をふるいが備えられていない遠心粉砕機(Netzsch社、CSM80)に投入して粒径を制御したことを除外しては、実施例1と同様の方法によってカーボンナノチューブを得た。
【0108】
【表1】
【0109】
実験例1.粒径が制御されたカーボンナノチューブの粒径測定
前記実施例1~5及び比較例3、5の遠心粉砕されたカーボンナノチューブと、比較例1のカーボンナノチューブと、比較例2のジェットミルによって粉砕されたカーボンナノチューブと、比較例4のふるいにかけられたカーボンナノチューブと、の粒径を、乾式粒度測定装置(Microtrac社)を用いて測定し、その結果を下記の表2、表3及び図4に示した。
【0110】
一方、相異なる遠心粉砕機を用いることによって遠心粉砕機の大きさが変わり、加えられる力の大きさが変わるため、同じ水準の力が加えられるように(角速度維持)、遠心粉砕機の大きさが大きいほどrpm数を小さく調節した。
【0111】
【表2】
【0112】
【表3】
【0113】
前記表2及び表3の結果から、ふるいの目開きを、目的とするカーボンナノチューブの粒径D50の2.8~4倍にしたカーボンナノチューブは、目的とするD50の粒径と同一または類似の粒径を得た。また、カーボンナノチューブの粒径D90はD10に対して1超過6倍以下の結果を示し、カーボンナノチューブのD10~D50の標準偏差は1.5μm以下の結果を示した。
【0114】
この結果から、本発明の多孔性炭素材の粒径の制御方法によれば、目的とする多孔性炭素材の粒径D50を得ることができ、非常に狭い粒径分布を有することから、粒径が均一に制御されることが分かる。
【0115】
一方、粉砕を行っていない比較例1のカーボンナノチューブは、粒径D90がD10に対して9.64倍であって非常に高い結果を示し、カーボンナノチューブのD10~D50の標準偏差も10μmであって非常に高い結果を示していることから、カーボンナノチューブの粒径制御がまともに行われておらず、非常に不均一な粒径のカーボンナノチューブが製造されたことを確認することができた。
【0116】
また、比較例2は、遠心粉砕の代わりにジェットミル粉砕を行ったものであって、カーボンナノチューブのD10~D50の標準偏差は0.72μmであって低い結果を示したが、粉砕が均一に行われていないことから、カーボンナノチューブの粒径D90がD10に対して10.37倍であった。即ち、D10~D50は、比較的狭い粒径分布を示したが、D90がD10よりも遥かに多量存在していることから、全体的な粒径分布が広くて、カーボンナノチューブが均一に粉砕されていないことが分かる。
【0117】
一方、比較例3は、カーボンナノチューブを遠心粉砕し、それをふるいにかけてカーボンナノチューブの粒径を制御したものであって、ふるいの目開きが目的とするカーボンナノチューブの粒径D50の6.94倍のものである。それによって、目的とするD50の粒径は得たが、カーボンナノチューブの粒径D90がD10の9.3倍であり、カーボンナノチューブのD10~D50の標準偏差は3.6μmであって、比較例3のカーボンナノチューブは粒径分布が広くて、不均一な粒径を有することが分かる。このことから、ふるいの目開きが目的とするカーボンナノチューブの粒径D50の2.8~4倍であれば、目的とするカーボンナノチューブの粒径D50が得られるだけでなく、非常に狭い粒径分布を有して粒径が均一に制御されることを確認することができる。
【0118】
また、比較例4は、カーボンナノチューブを遠心粉砕せず、ふるいにかける過程のみを行った。一般的に、ふるいにかける過程のみを行う場合、ふるいにかけられたカーボンナノチューブのD50は、ふるいの目開きの約1/2である。比較例4は、ふるいの目開きが目的とするカーボンナノチューブの粒径D50の2.14倍であることから、目的とするカーボンナノチューブの粒径D50を得た。しかし、遠心粉砕を行っていないことによって、粒径D90がD10の6.5倍であり、D10~D50の標準偏差が1.57μmであって、比較例4のカーボンナノチューブは粒径分布が広く、不均一な粒径を有することが分かり、低い収率を示した。
【0119】
また、比較例5は、ふるいにかける過程なしで遠心粉砕のみを行った場合に得られる炭素材料のD10~D50の標準偏差が大きく、D10粒径に対する粒径D90が大きいことから、粒度偏差が大きいことが分かる。
【0120】
したがって、多孔性炭素材に対して遠心粉砕とふるいにかける段階を同時に行い、この際、ふるいの目開きを目的とする多孔性炭素材の粒径D50の2.8~4倍に設定すると、粒径分布の狭い多孔性炭素材が得られることが分かる。
【0121】
実験例2.粒径制御前後のタップ密度の比較評価
複数の多層カーボンナノチューブ(Cnano社、MWCNT、タップ密度0.14g/cm、粒子形状の均一度1.52)が絡み合って形成された凝集体を準備した。その後、前記凝集体を、グラインダー(Retsch社、ZM-200)を用いて18,000rpmで粉砕した後、目開き80μmのふるいにかけて粒子形状が改質された多孔性炭素材を準備した。
【0122】
改質された多孔性炭素材は、1,000回タップしたときに、タップ密度が0.07g/cmとして測定され、粒子形状の均一度は1.07として測定された。この際、タップ密度はASTM B527-06に準じてTAP-2S(LOGAN社)を用いて測定し、粒子形状の均一度は、粒子の内接円の直径に対する外接円の直径の割合を示すものであって、任意に選択した5個粒子の外接円の直径/内接円の直径の割合値の平均値として計算された。
【0123】
このことから、本発明の一具現例による多孔性炭素材の製造方法によって製造される多孔性炭素材は、粒径制御の前後にタップ密度を増加させることなく粒子形状を均一に改質可能であることを確認した。
【0124】
実験例3.粒径制御方法による表面特性の比較評価
前記比較例2で製造した多孔性炭素材と前記実施例1で製造した多孔性炭素材の各々のSEMイメージを図6に示した。
【0125】
左側のSEMイメージは比較例2の多孔性炭素材を示し、右側のSEMイメージは実施例1の多孔性炭素材を示す。
【0126】
図6を参照すると、ジェットミルによって粉砕された多孔性炭素材の表面は相対的に扁平な一方、遠心粉砕機によって粉砕された多孔性炭素材は、表面が相対的に粗く、角張った粒子形状を有することが確認された。
【0127】
このことから、本発明の一面によって粒径が制御された多孔性炭素材の表面特性によって、低いタップ密度及び優秀な粒子形状均一度の特性を有することが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-12-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)多孔性炭素材を、遠心粉砕機を用いて粉砕する段階と、
(2)前記段階(1)で得られた、粉砕された多孔性炭素材をふるいにかけて粒径が制御された多孔性炭素材を得る段階と、を含み、
前記ふるいの目開きは、前記粒径が制御された多孔性炭素材の粒径D50の2.8~4倍である、多孔性炭素材の製造方法。
【請求項2】
前記段階(1)は、前記遠心粉砕機を用いて30~125m/s線速度で行われる、請求項1に記載の多孔性炭素材の製造方法。
【請求項3】
前記段階(2)は、前記粉砕された多孔性炭素材に遠心力が加えられた状態で行われる、請求項1に記載の多孔性炭素材の製造方法。
【請求項4】
前記段階(2)の後に、(3)前記ふるいを通過した多孔性炭素材を収集する段階をさらに含む、請求項1に記載の多孔性炭素材の製造方法。
【請求項5】
前記遠心粉砕機が、複数のロータ歯を含む、請求項1に記載の多孔性炭素材の製造方法。
【請求項6】
前記複数のロータ歯は、各々三角柱の形状を有し、前記遠心粉砕機の回転軸に向かうように配列されている、請求項5に記載の多孔性炭素材の製造方法。
【請求項7】
前記遠心粉砕機が、前記複数のロータ歯を囲むように配置された円筒状のふるいを含む、請求項5に記載の多孔性炭素材の製造方法。
【請求項8】
前記複数のロータ歯と前記ふるいとの最短距離が0.5~2mmである、請求項7に記載の多孔性炭素材の製造方法。
【請求項9】
前記多孔性炭素材は、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、炭素ナノ繊維、グラフェン、黒鉛及び活性炭からなる群より選択される一種以上を含む、請求項1に記載の多孔性炭素材の製造方法。
【請求項10】
前記粒径が制御された多孔性炭素材は、下記式1によるBF(Broadness Factor)値が7以下である、請求項1に記載の多孔性炭素材の製造方法:
<式1>
BF=(粒径が制御された多孔性炭素材の粒径D90/粒径が制御された多孔性炭素材の粒径D10)。
【請求項11】
前記粒径が制御された多孔性炭素材の粒径D10~D50の標準偏差が、1.5μm以下である、請求項1から10のいずれか一項に記載の多孔性炭素材の製造方法。
【請求項12】
前記粒径が制御された多孔性炭素材の粒径D50が、100μm以下である、請求項1に記載の多孔性炭素材の製造方法。
【請求項13】
前記段階(1)で粉砕を行う前の多孔性炭素材のタップ密度が、前記段階(2)で得られた粒径の制御された多孔性炭素材のタップ密度と同一であるか、または大きい、請求項1に記載の多孔性炭素材の製造方法。
【請求項14】
前記段階(1)と段階(2)とが同時に行われる、請求項1に記載の多孔性炭素材の製造方法。
【請求項15】
張った粒子形状である、多孔性炭素材。
【請求項16】
請求項15に記載の多孔性炭素材と、
前記多孔性炭素材の表面の少なくとも一部に担持された硫黄系材料と、を含む、硫黄-炭素複合体。
【請求項17】
請求項16に記載の硫黄-炭素複合体を含む正極、負極、前記正極と負極との間に介在された分離膜及び電解質を含む、リチウム-硫黄電池。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
第2具現例によれば、第1具現例において、
前記段階(1)は、前記遠心粉砕機を用いて30~125m/s線速度linear velocity)で行われ得る。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0059
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0059】
本発明の一具現例において、前記段階(1)は遠心粉砕機を用いて30~125m/s線速度linear velocity)で回転して粉砕を行うものであり得る。具体的には、30~95m/s線速度で回転して粉砕され得る。前記段階(1)で遠心粉砕の速度が前述した速度であるとき、多孔性炭素材の粒径を小さく粉砕しながらも均一に制御し、タップ密度を上昇させない効果を奏するという面で有利になる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0065
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0065】
本発明の一具現例において、前記遠心粉砕機の大きさによって同じrpmであっても加えられる力の大きさが変わり得るため、遠心粉砕機の大きさを考慮して、下記式によって30~125m/s線速度で粉砕するようにrpmを調節し得る。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0066】
線速度=(RPM×円周)/60秒
前記式において、「円周(circumference)」とは、一つのロータ歯が一回り回転する間に移動する距離を示す。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0105
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0105】
実施例1~5及び比較例3
カーボンナノチューブ(MWCNT)をふるい(sieve)が備えられた遠心粉砕機(Retsch社、ZM200)に投入し、カーボンナノチューブが粉砕されながら遠心力が加えられた状態で粉砕されたカーボンナノチューブがふるいにかけられるように粒径を制御した。カーボンナノチューブの目的とするD50の粒径(ターゲットD50)を得るためにふるいの目開き(mesh size)、rpm及び線速度linear veolocity)を調節し、その条件を下記の表1に示した。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0108
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0108】
【表1】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0110
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0110】
一方、相異なる遠心粉砕機を用いることによって遠心粉砕機の大きさが変わり、加えられる力の大きさが変わるため、同じ水準の力が加えられるように(線速度維持)、遠心粉砕機の大きさが大きいほどrpm数を小さく調節した。
【国際調査報告】