(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-07-15
(54)【発明の名称】フォトニックネットワーク
(51)【国際特許分類】
G02F 1/295 20060101AFI20250708BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20250708BHJP
G02B 6/125 20060101ALI20250708BHJP
G06N 3/067 20060101ALI20250708BHJP
【FI】
G02F1/295
G02B6/12 361
G02B6/12 371
G02B6/12 301
G02B6/125 311
G06N3/067
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024572063
(86)(22)【出願日】2023-06-12
(85)【翻訳文提出日】2024-12-06
(86)【国際出願番号】 IL2023050600
(87)【国際公開番号】W WO2023242834
(87)【国際公開日】2023-12-21
(32)【優先日】2022-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522101656
【氏名又は名称】コグニファイバー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Cognifiber Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】コーエン,エヤル
(72)【発明者】
【氏名】ザレフスキー,ジィーヴ
(72)【発明者】
【氏名】イヴニン,マヤ
【テーマコード(参考)】
2H147
2K102
【Fターム(参考)】
2H147AB02
2H147AB03
2H147AB11
2H147AC01
2H147BB02
2H147BD01
2H147BD02
2H147BE03
2H147BE12
2H147BE15
2H147CA05
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2H147CD13
2H147EA05A
2H147EA12A
2H147EA13A
2H147EA14A
2H147EA22A
2K102AA20
2K102AA22
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2K102DD10
2K102EA02
2K102EA19
2K102EB16
2K102EB20
2K102EB22
(57)【要約】
第1平面に配置され、第1軸に沿って間隔を空けて実質的に平行な関係で配置されたN個の入力導光ユニットの第1アレイと、第2平面に配置され、第1軸と交差する第2軸に沿って間隔を空けて実質的に平行な関係で配置されたM個の出力導光ユニットの第2アレイとを含み、したがってN×Mのノードのマトリクスを定義するフォトニックメッシュと、各ノードに収容されたN×Mの光カプラのマトリクスとを含むフォトニックシステムが提供される。光カプラは、入力導光ユニットからの入力光信号の一部をそれぞれのノードの出力導光ユニットに結合するように構成され、当該光カプラによって入力導光ユニットから出力導光ユニットに結合される光信号の一部に対応する強度変調をもたらすための重み付け信号として構成された電界または光電界であるチューニング電界の適用によって、様々な動作状態間で制御可能に切り替え可能なチューナブル変調構造として構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトニックシステムであって、
第1平面に配置され、第1軸に沿って離間した実質的に平行な関係で配置されたN個の入力導光ユニットの第1アレイと、第2平面に配置され、前記第1軸と交差する第2軸に沿って離間した実質的に平行な関係で配置されたM個の出力導光ユニットの第2アレイとを含み、したがってN×M個のノードのマトリクスを定義するフォトニックメッシュと、
前記ノードにそれぞれ収容されたN×M個の光カプラのマトリクスとを含み、
前記光カプラはそれぞれ、入力導光ユニットからの入力光信号の一部をそれぞれのノードの出力導光ユニットに結合するように構成され、前記光カプラはそれぞれ、当該光カプラによって入力導光ユニットから出力導光ユニットに結合される光信号の一部に対応する強度変調をもたらすための重み付け信号として構成された電界または光電界であるチューニング電界の適用によって、様々な動作状態間で制御可能に切り替え可能なチューナブル変調構造として構成されていることを特徴とする、フォトニックシステム。
【請求項2】
前記光カプラは、前記ノードに配置された導光エレメントであって、前記入力導光ユニットによって伝搬された前記ノードを通過する光信号の一部を出力導光ユニットに結合し、入力光信号の残りの部分を前記入力導光ユニットを通して次のノードに向かって伝搬させるように構成された導光エレメントを含む、請求項1に記載のフォトニックシステム。
【請求項3】
前記光カプラの前記導光エレメントは、適用されたチューニング電界に応じて前記導光エレメントを通過する光信号の強度変調に異なる影響を与える前記チューナブル変調構造の異なる光学特性によって特徴付けられる異なる動作状態の間で切り替え可能であるように、前記チューニング電界に応答するチューナブル変調構造として構成されている、請求項2に記載のフォトニックシステム。
【請求項4】
前記導光エレメントのコアは、電気吸収材料組成物から構成されている、請求項3に記載のフォトニックシステム。
【請求項5】
前記導光エレメントのコアは、半導体材料組成物から構成されている、請求項3に記載のフォトニックシステム。
【請求項6】
前記導光エレメントのコアは、半導体材料組成物から構成されている、請求項4に記載のフォトニックシステム。
【請求項7】
前記導光エレメントのコアは、Si、Si-Ge、InGaAlAs、InPのうちの少なくとも1つから構成される、請求項5に記載のフォトニックシステム。
【請求項8】
前記導光エレメントのコアは、Si、Si-Ge、InGaAlAs、InPのうちの少なくとも1つから構成される、請求項6に記載のフォトニックシステム。
【請求項9】
前記光カプラがErドープガラスを含む、請求項2に記載のフォトニックシステム。
【請求項10】
前記カプラの前記導光エレメントは、内部にチューナブル変調器を含み、当該チューナブル変調器は、前記電界に応じて前記導光エレメントを通過する光信号の強度変調に異なる影響を与える変調器の異なる光学特性によって特徴付けられる様々な動作状態の間で、前記チューニング電界によって切り替え可能に構成されている、請求項2に記載のフォトニックシステム。
【請求項11】
前記チューナブル変調器は、電気吸収変調器として構成されている、請求項10に記載のフォトニックシステム。
【請求項12】
前記チューナブル変調器は、半導体光増幅器として構成されている、請求項10に記載のフォトニックシステム。
【請求項13】
前記チューナブル変調器は、液晶変調器として構成されている、請求項10に記載のフォトニックシステム。
【請求項14】
前記チューナブル変調器は、マッハツェンダー干渉計として構成され、この干渉計の少なくとも1つのアームがチューナブルユニットを含む領域を含み、これがチューニング電界に適用されると、通過する光成分の位相変化に影響を与え、それによって前記干渉計のアームを通過する光成分間の位相差に影響を与え、その結果、前記干渉計から出力される光の強度変調をもたらす、請求項10に記載のフォトニックシステム。
【請求項15】
前記チューナブルユニットは、LiNbO
3ユニットとして構成される、請求項14に記載のフォトニックシステム。
【請求項16】
前記チューナブルユニットは、半導体光増幅器(SOA)として構成される、請求項14に記載のフォトニックシステム。
【請求項17】
第1平面におけるN個の入力導光ユニットのアレイと、第2平面におけるM個の出力導光ユニットのアレイとによって形成されるフォトニックシステムのノードのN×Mマトリクスのノードで使用するための光カプラであって、前記ノードにおいて、入力導光ユニットからの入力光信号の一部を出力導光ユニットに結合するように構成され、前記光カプラは、前記入力導光ユニットから前記出力導光ユニットに結合される光信号の部分に対応する強度変調をもたらすための重み付け信号として構成された電界または光電界であるチューニング電界の適用によって、様々な動作状態間で制御可能に切り替え可能なチューナブル変調構造として構成されていることを特徴とする、光カプラ。
【請求項18】
前記ノードに配置された導光エレメントであって、前記入力導光ユニットによって伝搬された前記ノードを通過する光信号の一部を出力導光ユニットに結合し、入力光信号の残りの部分を前記入力導光ユニットを通して前記フォトニックシステムの次のノードに向かって伝搬させるように構成された導光エレメントを含む、請求項17に記載の光カプラ。
【請求項19】
前記導光エレメントは、適用されたチューニング電界に応じて前記導光エレメントを通過する光信号の強度変調に異なる影響を与える前記チューナブル変調構造の異なる光学特性によって特徴付けられる異なる動作状態の間で切り替え可能であるように、前記チューニング電界に応答するチューナブル変調構造として構成されている、請求項18に記載の光カプラ。
【請求項20】
前記導光エレメントのコアは、電気吸収材料組成物から構成されている、請求項19に記載の光カプラ。
【請求項21】
前記導光エレメントのコアは、半導体材料組成物から構成されている、請求項19に記載の光カプラ。
【請求項22】
前記導光エレメントのコアは、半導体材料組成物から構成されている、請求項20に記載の光カプラ。
【請求項23】
前記導光エレメントのコアは、Si、Si-Ge、InGaAlAs、InPのうちの少なくとも1つから構成される、請求項21に記載の光カプラ。
【請求項24】
前記導光エレメントのコアは、Si、Si-Ge、InGaAlAs、InPのうちの少なくとも1つから構成される、請求項6に記載のフォトニックシステム。
【請求項25】
Erドープガラスを含む、請求項18に記載の光カプラ。
【請求項26】
前記導光エレメントは、内部にチューナブル変調器を含み、当該チューナブル変調器は、前記電界に応じて前記導光エレメントを通過する光信号の強度変調に異なる影響を与える変調器の異なる光学特性によって特徴付けられる様々な動作状態の間で、前記チューニング電界によって切り替え可能に構成されている、請求項18に記載の光カプラ。
【請求項27】
前記チューナブル変調器は、電気吸収変調器として構成されている、請求項26に記載の光カプラ。
【請求項28】
前記チューナブル変調器は、半導体光増幅器として構成されている、請求項26に記載の光カプラ。
【請求項29】
前記チューナブル変調器は、液晶変調器として構成されている、請求項26に記載の光カプラ。
【請求項30】
前記チューナブル変調器は、マッハツェンダー干渉計として構成され、この干渉計の少なくとも1つのアームがチューナブルユニットを含む領域を含み、これがチューニング電界に適用されると、通過する光成分の位相変化に影響を与え、それによって前記干渉計のアームを通過する光成分間の位相差に影響を与え、その結果、前記干渉計から出力される光の強度変調をもたらす、請求項26に記載の光カプラ。
【請求項31】
前記チューナブルユニットは、LiNbO
3ユニットとして構成される、請求項30に記載の光カプラ。
【請求項32】
前記チューナブルユニットは、半導体光増幅器(SOA)として構成される、請求項30に記載の光カプラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術はフォトニックネットワークに関し、フォトニック人工知能ニューラルネットワークアプリケーションにおいて特に有用である。
【0002】
計算の柔軟性が高い汎用プロセッサでは、行列演算は1つずつシリアルに行われるため、キャッシュメモリへの継続的なアクセスが必要となり、いわゆる「フォン・ノイマンのボトルネック」が発生する。グラフィックプロセスユニット(GPU)やテンソルプロセスユニット(TPU)など、ニューラルネットワーク(NN)の様々なアーキテクチャは、フォン・ノイマンのボトルネックの影響を軽減して最先端の機械学習モデルを実現するように設計されている。これらのアーキテクチャのパラダイムは、CPUとは異なり、例えばシストリックアルゴリズムを介して並列展開で畳み込みや行列ベクトル乗算(MVM)演算の実行に最適化されるなど、ドメイン固有性(domain-specificity)を提供することである。
【0003】
近年、機械学習(ML)、特にニューラルネットワーク(NN)の革命的な影響により、自由空間回折光学系からナノフォトニックプロセッサまで、ML/NNによって実行される特定のタスクの計算効率を向上させることを目的とした様々な新興フォトニック技術の開発が促進された。これは、フォトニックチップが位相シフタなどの光と物質の相互作用を利用して本質的にドット積を実行し、電磁コヒーレント干渉または検出器を介したインコヒーレント蓄積のいずれかによって信号の蓄積(加算)を可能にし、さらに波長分割多重化や偏光分割多重化などの多重化スキームを使用して並列処理戦略と高いスループットを可能にするためである。
【0004】
例えば、論文“Parallel convolutional processing using an integrated photonic tensor core”,J.Feldmann et al.,Nature,vol.589,2021年1月7日には、計算に特化した集積フォトニックハードウェアアクセラレータ(テンソルコア)について述べられている。テンソルコアは、特定用途向け集積回路(ASIC)の光アナログと考えることができる。相変化材料メモリアレイとフォトニックチップベースの光周波数コム(ソリトンマイクロコーム)を用いて、並列フォトニックインメモリコンピューティングを提供する。
【発明の概要】
【0005】
この技術分野では、単一の物理処理ユニットで高い計算スループットと低レイテンシを可能にする光データレートで並列化された計算タスク/演算(例えば、行列ベクトル乗算(MVM))を実行できる新規なフォトニック処理デバイスが求められている。フォトニック処理デバイスが実行できる計算タスクの例としては、畳み込み、行列乗算、フーリエ変換などがある。
【0006】
上述のJ.Feldmannらの技術を考慮すると、相変化材料(PCM)によって実施される信号変調の速度は、材料の温度変化に応じた材料の遷移相と関連しており、したがって十分に高くないことに留意する必要がある。その結果、フォトニックプロセッサに実装した場合(例えば、光の減衰のために)、これらのPCMはプロセッサの全体的な計算時間を著しく遅らせる可能性がある。
【0007】
本開示は、完全接続された導光ユニット(例えば、導波路または光ファイバ)のネットワーク(例えば、メッシュ)を含む新規なフォトニックプロセッサデバイスを提供するものであり、導光ユニット間の各光交差点(ノード)に制御可能な光カプラを統合することにより完全かつ柔軟な接続が実現される。制御可能な光カプラは、一方の導光ユニットから他方の交差する導光ユニットに光の一部を光学的に結合するための導光エレメントを含み、電気的または光学的にチューニング可能なチューナブル変調構造として構成される。
【0008】
制御可能光カプラはそれぞれ、制御電界(電圧)または光電界(光)の適用によって独立して制御可能であり、カプラの動作状態を受動状態から能動状態へ、および様々な能動状態の間で変化させ、ここでカプラはそのいずれの動作状態においても通過する光に強度変調を適用する。これに関連して、カプラの動作状態の変化は、アナログ電圧値を使用して連続的であり得ることを理解すべきである。
【0009】
上述したように、本開示の技術にしたがって構成された制御可能な光カプラは、本明細書において、以下「カプラ」、「光カプラ」、「コントローラ」または「制御ユニット」とも呼ばれ得る。
【0010】
上記の電気的または光学的にチューナブルな変調機能を光カプラに統合するには、カプラの導光エレメントを電気的または光学的にチューナブルな変調構造として構成するか、カプラの導光エレメント内に電気的または光学的にチューナブルな変調器を統合する。
【0011】
カプラ(電気的または光学的にチューナブルな変調構造)は、適用される電界または光電界に応答して光学特性が変化するように構成されている。すなわち、カプラは、吸収/透過特性および/または屈折率および/または増幅特性などの光学特性の変化により、適用される電界に応答して、通過する光の強度に直接影響を与えたり、通過する光の成分の位相変化を介して影響を与えたりする。
【0012】
印加される電界または光電界に応じた光学特性のこのような変化は、比較的高速に実施することができ、カプラを通過する光信号の変調を提供する。したがって、光信号の時変変調の適用(カプラの様々な異なる変調/動作状態間の切り替えを介して)は、十分に高速で実行することができる。
【0013】
本開示のフォトニックメッシュは、第1軸に沿って間隔を空けて実質的に平行な関係で第1平面に配置された入力導光ユニットの第1アレイと、第1軸と交差する第2軸(例えば、第2軸は第1軸に対して実質的に垂直である)に沿って間隔を空けて実質的に平行な関係で第2平面に配置された出力導光ユニットの第2アレイとを含む。この構成により、ネットワークノードを表す入力導光ユニットと出力導光ユニットの整列領域のマトリクスが形成される。
【0014】
ノードにおける導光ユニット間の適切な結合が含まれる限り、第1平面と第2平面は実質的に一致していてもよいし、互いに離間していてもよいことを理解されたい。
【0015】
また、フォトニックメッシュには、ネットワークノードにそれぞれ収容された光カプラのマトリクスも提供され、各光カプラは、各ノードで入力導光ユニットから出力導光ユニットへの光の光結合を提供するように(すなわち、入力導光ユニットと出力導光ユニットの整列領域で、これらのユニット間の「交差」をもたらすように)構成され動作可能である。また、各光カプラは、電気的または光学的にチューナブルな変調構造として構成される。
【0016】
したがって、各入力導光ユニットは、それぞれのカプラを介して、ネットワークノードの領域にある各出力導光ユニットに光学的に結合することができ、カプラは、入力導光ユニット内を伝搬する入力光信号の一部(結合度に依存する)を、交差する出力導光ユニットにリダイレクト(「ドロップ」)する一方、入力光信号の残りの部分は、入力導光ユニット内を次のノードに向かって伝搬し続け、そこで各カプラがそれぞれの出力導光ユニットにこのようなリダイレクトを実行する。
【0017】
上記のように、光カプラは電気的または光学的にチューナブルな変調構造として構成され、各々独立に、チューニング電界(電界(電圧)または光場)を印加することによって様々な動作状態間で制御可能に切り替え可能である。カプラは、アクティブ状態のときに、出力導光ユニットにドロップ(結合)される光部分の強度変調に影響を与える。出力導光ユニットに結合/ドロップされる光部分に適用される所定の重み付けに従って、適用されるチューニング電界が選択(制御)される。したがって、すべてのカプラは、重み付け信号コントローラを含む制御システムに接続される。
【0018】
入力光信号の光学特性により、これらの間に実質的な非干渉性が得られることに留意すべきである。これは、実質的に非コヒーレントな光信号または異なる波長の光信号を使用することで実現される。このため、入力導光ユニットの入力ポートに関連付けられた光入力デバイスには、波長分割マルチプレクサを含み得る。
【0019】
導光ユニットは、特に3Dフェムトレーザースクライビング、3Dプリンティング、シリコンフォトニクス技術を含む様々な技術を用いて製造することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、カプラのチューナブル変調構造は、カプラの導光エレメント内にチューナブル変調器を組み込むことで実現できる。このようなチューナブル変調器は電気吸収変調器(EAM)、半導体光増幅器(SOA)、または液晶変調器であり得る。チューナブル変調器は、カプラの導光エレメント内の、カプラによって入力導光ユニットからドロップされ、各出力導光ユニットに向かって伝搬する光部分の光路に収容される。
【0021】
上記のように、他のいくつかの実施形態では、カプラのチューナブル変調構造は、カプラの導光エレメントをチューナブル変調器として構成することで実装される。これは例えば、カプラの導光エレメントのコアを電気吸収材料(典型的には、半導体材料組成)、例えば、SiまたはGe-Si、InGaAlAsまたはInPから作成することによって実装できる。このような実施形態では、導光ユニットとカプラ(導光エレメント)は、同様のCMOS互換技術を用いて作製することができる。
【0022】
さらなる実施形態では、カプラの導光エレメントは、LiNbO3製のものなどの位相シフトユニットを組み込んだマッハツェンダー干渉計などの電気光学変調器として構成されるか、またはそれを含む。
【0023】
したがって、本発明の広範な態様によれば、フォトニックシステムであって、
第1平面に配置され、第1軸に沿って間隔を空けて実質的に平行な関係で配置されたN個の入力導光ユニットの第1アレイと、第2平面に配置され、前記第1軸と交差する第2軸に沿って間隔を空けて実質的に平行な関係で配置されたM個の出力導光ユニットの第2アレイとを含み、したがってN×Mのノードのマトリクスを定義するフォトニックメッシュと、
前記ノードにそれぞれ収容されたN×Mの光カプラのマトリクスとを含み、
前記光カプラはそれぞれ、入力導光ユニットからの光信号の一部をそれぞれのノードの出力導光ユニットに光学的に結合するように構成され、前記光カプラはそれぞれ、当該光カプラによって入力導光ユニットから出力導光ユニットに結合される光信号の一部に対応する強度変調をもたらすための重み付け信号として構成された電界または光電界であるチューニング電界の印加によって、様々な動作状態間で制御可能に切り替え可能なチューナブル変調構造として構成される、フォトニックシステムが提供される。
【0024】
前記入力導光ユニットの数Nは、前記出力導光ユニットの数Mと同じでも異なってもよい。
【0025】
前記光カプラは、前記ノードに配置された導光エレメントであって、前記入力導光ユニットによって伝搬された光信号の部分を前記ノードを通過する出力導光ユニットに結合し、入力光信号の残りの部分を前記入力導光ユニットを通って次のノードの方へ伝搬させるように構成された導光エレメントを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記光カプラは、電気的にチューナブルな変調器/変調構造として構成された導光エレメントで構成され、当該導光エレメントの光学特性の変化による励起/チューニング電界に応答し、これにより、励起電界に対応して前記カプラを通る光信号の強度変調が引き起こされる。
【0027】
例えば、チューナブル変調構造/変調器として構成されたこのような導光エレメントは、電気的に制御されたポンプ光を受光する強度が変化するErドープガラスを含み得る。
【0028】
いくつかの例では、導光エレメントのコアは、電気吸収材料組成物、典型的には半導体材料組成物、例えばSi、Si-Ge、InGaAlAsまたはInPから構成される。
【0029】
他のいくつかの実施形態では、前記光カプラは、内部にチューナブル変調器を有する導光エレメントを含む。このようなチューナブル変調器は、励起/チューニング電界(電界または光電界)によって、変調器の様々な光学特性によって特徴付けられる様々な動作状態間で切り替え可能に構成されており、光信号が変調器と相互作用することにより、励起電界に対応して光信号の強度変調がもたらされる。
【0030】
カプラの導光エレメント内のチューナブル変調器は、電気吸収変調器、半導体光増幅器、液晶変調器、マッハツェンダー干渉計のいずれかを含んで構成され得る。後者の場合、干渉計の少なくとも1つのアームはチューナブル変調器(例えば、LiNbO3ユニット)を含む領域を有し、これが励起/チューニング電界に適用されると、そこを通過する光成分の位相変化に影響を与え、干渉計のアームを通過する光成分間の位相差に影響を与え、干渉計から出力される光の強度変調をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本明細書で開示される主題をよりよく理解し、実際にどのように実施され得るかを例示するために、添付の図面を参照しながら、非限定的な例としてのみ実施形態を説明する。
【
図1】
図1は、本開示の完全に接続されたフォトニックメッシュの概略図である。
【
図2】
図2Aおよび
図2Bは、それぞれ、
図1の完全接続フォトニックメッシュで使用するのに適したカプラの2つの構成を例示する。
図2Cは、マッハツェンダー型変調器として実装されるかこれを含む電気吸収カプラを例示する。
【
図3】
図3A~3Cは、それぞれ離間した平面内に配置された入出力導光ユニットのアレイを利用したフォトニックメッシュ構成の一例を模式的に示す図であり、
図3Aおよび3Bはそれぞれフォトニックメッシュの斜視図および側面図であり、
図3Cはこの構成のメッシュのノードで使用されるカプラを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1を参照すると、本開示のフォトニックシステム10を模式的に示す。フォトニックシステム10は、制御システム16に関連付けられ完全に接続されたフォトニックメッシュ/ネットワーク12を含む。フォトニックメッシュ12は、光入力デバイス14と光出力デバイス(光検出システム)20の間に相互接続されている。
【0033】
フォトニックメッシュ10は、第1軸A1に沿って延びるN個(N≧2)の間隔をあけて配置された実質的に平行な入力導光ユニットIW1…IWn(導波路または光ファイバ)の入力アレイILと、当該入力導光ユニットと交差する第2軸A2に沿って延びるM個(M≧2)の間隔をあけて配置された実質的に平行な出力導光ユニットOW1…OWmの出力アレイOLとを含む。出力導光ユニットOW1…OWmの数Mは、入力導光ユニットIW1…IWnの数Nと等しくても等しくなくてもよい。例えば、入力導光ユニットは、出力導光ユニットに対して実質的に直交してもよい。入力ポートIP1…IPnによる入力導光ユニットIW1…IWnは入力デバイス14に接続され、出力ポートOP1…OPmによる出力導光ユニットOW1…OWmは光検出デバイス20に接続されている。
【0034】
図に示す例示的なシステム10では、3つの入力導光ユニットIW1、IW2、IW3と、3つの出力導光ユニットOW1、OW2、OW3が示されている。入力導光ユニットIW1、IW2、IW3は入力ポートIP1、IP2、IP3によって入力デバイス14に接続され、出力導光ユニットOW1、OW2、OW3は出力ポートOP1、OP2、OP3によって光検出デバイス20に接続されている。
【0035】
入力導光ユニットと出力導光ユニットは、実質的に一致するか互いに間隔をあけた第1と第2平面に配置され、それにより、入力導光ユニットと出力導光ユニットの間の交差領域(第1と第2平面が実質的に一致する場合)、または入力導光ユニットの領域と出力導光ユニットの領域(第1と第2平面が間隔をあけて配置されている場合)がメッシュ/ネットワークのノード/接合部Jn,mのN×Mアレイを形成する。図では、ノードJ11、J12、J13、J21、J22、J23、J31、J32、J33が示されている。
【0036】
各ij番目のノードは、それぞれの光カプラCij(カプラC11、C12、C13、C21、C22、C23、C31、C32およびC33)に関連付けられ、それぞれのノードJ11、J12、J13、J21、J22、J23、J31、J32およびJ33に関連付けられて図示されている。したがって、N個の入力導光ユニットからの各i番目の入力導光ユニットIWiは、ノードにおいてそれぞれの光カプラCi1...Cimを介してM個の出力導光ユニットOW1...OWmのそれぞれと光学的に結合される。
【0037】
各光カプラCi,j(i=1,..,N;j=1,…M)は、カプラCijが配置されたそれぞれのノードにおいて、i番目の入力導光ユニットとj番目の出力導光ユニットとの間を光結合し、そこを通過する光に選択的に強度変調を適用できるチューナブル変調構造として構成される。
【0038】
各カプラの動作を、カプラC11に関して図に例示する。図示のようにカプラは、入力導光ユニットIW1内を伝搬する入力光信号IS1の一部(IS1)dを、ノードJ11において出力導光ユニットOW1へドロップ/結合し、信号IS1の残りの部分(IS1)tが、入力導光ユニットIS1を通って次のノードJ12へ向かって伝搬し、次のノードJ12においてカプラC12によって、この信号IS1の一部が次の出力導光ユニットOW2へ連続的に結合され、電気的または光学的にチューナブルな変調機能によって強度変調を受けるようにする(異なる変調機能によって特徴付けられる異なる動作状態間のカプラの制御可能な切り替えによる)。
【0039】
カプラでドロップされる光部分(IS1)dは、当該カプラのチューナブル変調構造によって強度変調を受け得る。ドロップされた光部分(IS1)d(例えば、強度変調を伴う)は、それぞれの出力導光ユニットOW1に沿ってそれぞれの出力ポートOP1に向かって伝搬し続ける。
【0040】
メッシュに入力される光信号は、実質的に干渉しない信号であることに留意されたい。これは、例えば光入力デバイス14で波長分割マルチプレクサ15を使用することにより、または実質的に非コヒーレントな入力光信号を利用することにより、異なる波長の光信号を利用することによって達成することができる。
【0041】
ドロップ/結合部分の光量は、それぞれのノードにおける所定の結合度によって定義される。ノードによって結合度合いが同じであったり、異なっていたりすることに留意されたい。一般に、結合度合いは、主にカプラに使用される材料と、各カプラの導光ユニット(導波路)と導光エレメント間の距離に依存する。
【0042】
チューナブル変調構造(カプラ)は制御システム16に接続されている。後者には、重み付け信号コントローラ18として機能する、制御可能なチューニング電界源(電圧供給システムまたは光源システムなど)が含まれる。カプラは、カプラの光学特性が変化せず、そこを通過する光に影響を与えないパッシブ状態/条件から、カプラの変調構造またはカプラ内の光学特性の変化を引き起こすチューニング電界の適用によって選択的なアクティブ状態/条件に切り替えることができる(上述)。同様に、カプラは、異なる光学特性を特徴とする様々な異なるアクティブ状態間で切り替えることができ、そこを通過する光に異なる影響を与える。カプラは、アクティブな動作状態にある間、適用された電界に対応する重み付け信号に従って、そのようなカプラと相互作用する(そこを通過する)光の強度変調(減衰/利得)に影響を与える。
【0043】
一般に、チューナブル変調構造は、コアがチューナブルな材料組成で作られた導光エレメント(導波路や光ファイバーなど)として実装されるか、内部にチューナブル変調器が配置された導光エレメント(導波路や光ファイバーなど)として実装され得る。
図1の非限定的な例に示すように、各カプラは、一般に22で示されるチューナブル変調器を含む導光エレメントである。
【0044】
チューナブル変調器22は、例えば、適用された電界が、バルク半導体ではフランツ・ケルディッシュ(Franz-Keldysh)効果、または量子井戸では量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)を介して、吸収スペクトルの変化をもたらす電気吸収変調器(EAM)として構成することができる。電気吸収変調器は一般に知られているため特に説明しないが、次の点に注意されたい。フランツ・ケルディッシュ効果では、電界は励起子(電子と正孔)の波動関数の重なりの変化によるバンドギャップエネルギーを変化させ、それによって電気的にチューナブルな変調器20と相互作用する光信号の光吸収/透過に影響を与える(重なりが大きいほど吸収が強くなる)。量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)では、適用された電界がポテンシャル井戸(量子井戸)を歪ませ、これによって正孔と電子のエネルギー準位がシフトし、これらの準位間のギャップが減少し、光吸収が変化する。
【0045】
あるいは、チューナブル変調器20は、適用されるチューニング電界に応じて電子が励起される光増幅器、例えば半導体光増幅器(SOA)であってもよい。光子がアクティブ領域を通過すると、これらの電子は、最初の光子の波長と一致するより多くの光子の形で余分なエネルギーの一部を失う。したがって、アクティブ領域を通過する光信号は増幅される。SOAも一般的に知られているので、特に説明しない。
【0046】
いくつかの実施形態では、カプラCの導光エレメント内のチューナブル変調構造Cまたはチューナブル変調器22は、電気光学変調器、例えば、アームの少なくとも1つが強い電気光学効果を有する材料(LiNbO3、InGaAs、InPなど)で作られているマッハツェンダー変調器(MZM)として実装することができる。MZMの前記少なくとも1つのアームに電界を印加すると、当該アーム内の光路長が変化し、MZMのそれぞれのアームを通過する光成分の位相変調に影響を与え、その結果、2つのアームを伝搬する光成分間に位相差が生じる。このような位相差を持つ光成分を組み合わせることで、強度変調が得られる。
【0047】
また、液晶(LC)変調器など、電気的または光学的にチューナブルな他のタイプの変調器も使用できることに留意されたい。
【0048】
各チューナブル変調構造(例えば、カプラの導光エレメント内のチューナブル変調器22、または変調器として構成された導光エレメント)は、それぞれのカプラを通過する光信号に適用される重み付けにしたがって重み付け信号(電圧または光)を選択的に供給する重み付けコントローラ18に接続されている。
【0049】
光信号(強度変調された光信号を含む)は、それぞれの出力ポートを介してM個の出力ガイドユニットから出力され、光検出器システム20に向けられる。
【0050】
図2Aおよび
図2Bを参照すると、チューナブル変調構造として構成され動作可能なカプラCの例示的な構成を模式的に示す。カプラCは、入力導光ユニットIWとの結合領域を規定する第1結合部24と、交差/整列する出力導光ユニットOWとの結合領域を規定する第2結合部26と、その間の中間セグメント25とを有する導光エレメントLGEを含む。結合領域24および26の寸法および材料組成は、それぞれの導光ユニットとの所望の結合度を提供するように選択される。第1および第2の結合領域24および26は、結合度合が同じでも異なっていてもよい。
【0051】
結合領域は、動作波長に応じて、限定しないがシリカ、シリコン、InGaAs、Geなどのいずれか1以上のような任意の導光材料で形成されるかそれらを含み得ることに留意すべきである。結合係数は材料に依存するのではなく、結合器の構造(導波管からの距離、幅、NAなど)に依存する。
【0052】
上述したように、カプラの導光エレメント全体または中間セグメント25の少なくとも一部が、チューナブル変調機能/特性を有するように構成され、これによりカプラのチューナブル変調構造が形成される。
【0053】
図2Aの例を参照すると、中間セグメント25は、SiO
2やSiNなどの材料で作られ、そこを伝搬する光信号に直交する方向に電界を適用するための電極が当該セグメント25内およびこれに沿って収容されてもよいし、カプラCの導光エレメント全体がSiやGe-Si、InGaAlAs、InPなどの電気的にチューナブルな材料で作られていてもよい。
【0054】
あるいは、
図2Bに例示されているように、中間セグメント25はチューナブル変調器22を含む。前述したように、このようなチューナブル変調器はEAMでもSOAであり得る。
【0055】
上述したように、カプラCの導光エレメントLGEは、マッハツェンダー型変調器として構成されるか、このようなマッハツェンダー型変調器22を含み得る。これが
図2Cに自明な形で例示されている。マッハツェンダー変調器は、一方のアームの一部/セグメント内にニオブ酸リチウム(LiNbO
3)コーティング/フィルムを含み、これが適用されるチューニング電界によって励起されると屈折率の変化を示し、したがって当該セグメントを通過する光信号の位相に影響を与える。例えば、マッハツェンダー型変調器の入力部と出力部は、カプラの入力部24と出力部26を表し得る。
【0056】
図3A~3Cを参照すると、本開示の完全接続フォトニックメッシュ12の3次元構成を模式的に示す。
図3Aおよび
図3Bは、それぞれメッシュ12の斜視図および側面図を示し、
図3Cは、カプラCの導光エレメントを3次元構成で実装した様子を示す。
【0057】
図3Aおよび
図3Bに示すように、入力層IL(入力導光ユニットの位置の平面)と出力層OL(出力導光ユニットの位置の平面)は、離間した平行な層である。図示するように、入力層ILの入力導光ユニットIW
1、IW
2、IW
3は、出力層OLの出力導光ユニットOW
1、IW
2、OW
3の上または下に配置されている。
図3Cは、ある入力導光ユニットIWとある出力導光ユニットOWの間を接続するカプラCの導光エレメントLGEを示す図である。
【国際調査報告】