(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-07-17
(54)【発明の名称】固結防止組成物及び吸湿性スズ塩の流動特性を改善する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20250710BHJP
A61K 8/26 20060101ALI20250710BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20250710BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/26
A61Q11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024574582
(86)(22)【出願日】2023-07-06
(85)【翻訳文提出日】2024-12-18
(86)【国際出願番号】 US2023027008
(87)【国際公開番号】W WO2024015247
(87)【国際公開日】2024-01-18
(32)【優先日】2022-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2023-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ、ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】デーンデル、ハイケ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB221
4C083AB281
4C083AB331
4C083AB361
4C083AB471
4C083AC241
4C083BB60
4C083CC41
4C083DD08
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD41
4C083EE03
(57)【要約】
本開示は、全般的には、第一スズの微粒子源、アルミナ、及び乾燥助剤を含む微粒子組成物に関する。本開示は、アルミナ及び乾燥助剤を微粒子状第一スズと混合し、それによって塩化第一スズに改善された流動特性を与えることによって、微粒子状第一スズの流動性を改善するための方法に更に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)第一スズ塩の微粒子源と、
b)アルミナと、
c)乾燥助剤と、を含む、組成物。
【請求項2】
前記第一スズ塩は、塩化第一スズ、フッ化第一スズ及び/又はピロリン酸第一スズから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第一スズ塩は、塩化第一スズ二水和物、塩化第一スズ無水物、及びこれらの組み合わせから選択される塩化第一スズである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記アルミナは、噴霧乾燥アルミナ、回転焼成アルミナ、ヒュームドアルミナ、パール化アルミナ又はこれらの組み合わせから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記微粒子源は、約0.4マイクロメートル(μm)~約100μm、又は約1μm~約90μm、又は約2μm~約80μm、又は約2μm~約30μmの平均粒径を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
アルミナに対する微粒子状第一スズ塩の比は、約9:1~199:1、又は約19:1~199:1であり得る、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
アルミナに対する乾燥助剤の比は、約10:1~2:1、又は約3:1~5:1であり得る、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記乾燥助剤は、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
フッ化物イオン源、歯科用研磨剤、香料、保湿剤、キレート剤、又はこれらの組み合わせから選択される1つ以上の口腔ケア剤を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
微粒子状第一スズ塩の流動性を改善する方法であって、前記方法は、
第一スズ塩の微粒子源にアルミナ及び乾燥助剤を添加することを含む、方法。
【請求項11】
前記第一スズ塩は、塩化第一スズ、フッ化第一スズ及び/又はピロリン酸第一スズから選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第一スズ塩は、塩化第一スズ二水和物、塩化第一スズ無水物、又はこれらの組み合わせから選択される塩化第一スズである、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記微粒子源は、約0.4マイクロメートル(μm)~約100μm、又は約1μm~約90μm、又は約2μm~約80μm、又は約2μm~約30μmの平均粒径を有する、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
a)第一スズ塩の微粒子源と、
b)アルミナと、
c)乾燥助剤と、を含み、
前記第一スズ塩は、塩化第一スズ、フッ化第一スズ及び/又はピロリン酸第一スズから選択され、前記アルミナは、噴霧乾燥アルミナ、回転焼成アルミナ、ヒュームドアルミナ、パール化アルミナ又はこれらの組み合わせから選択され、前記乾燥助剤は、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛及びこれらの組み合わせから選択される、口腔ケア組成物。
【請求項15】
口腔ケア製剤は、練り歯磨き若しくはゲル、洗口液、口内スプレー、漂白剤、薬用キャンディ、又はチューインガムである、請求項14に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年7月11日に出願された米国仮特許出願第63/368,067号の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本開示は、第一スズの微粒子源、アルミナ、及び乾燥助剤を含む微粒子組成物に関する。本技術は、アルミナ及び乾燥助剤を微粒子状第一スズと混合し、それによって塩化第一スズに改善された流動特性を与えることによって、微粒子状第一スズの流動性を改善する方法に更に関する。
【背景技術】
【0003】
塩化第一スズ及び/又は他の第一スズ塩によって口腔用組成物中に提供されるスズ(II)(第一スズ)イオンは、抗菌効果、口臭の制御、歯垢の成長及び代謝の制御、歯肉炎の低減、歯周病への進行の低減、象牙質知覚過敏の低減、並びに歯冠及び歯根の虫歯及び侵食の低減を含む、それらがもたらすことができる複数の利益のために長く評価されてきた。
【0004】
原料としての第一スズ塩の使用は、問題を引き起こす場合がある。例えば、塩化スズ(II)の二水和物形態及び無水物形態の両方とも、吸湿性材料であり、したがって、吸収及び吸着の両方によって空気から水蒸気を引き付ける。これは、粉末化合物を粘着性にする。粒子は一緒に結合することができるが、凝集体が輸送及び貯蔵中に形成する場合があり、それ故に、加工中の流動性に困難をきたす。吸湿性材料はまた、多量の水分を含有する空気に曝露されると、経時的に湿って柔らかくなる傾向を有する。したがって、これらの吸湿性塩によって保持される水分レベルは、通常、湿度のレベルに比例する。
【0005】
スズ(II)イオン塩を輸送し、貯蔵し、取り扱うことは、上述の取り扱い上の問題のために、当該技術分野において問題であった。貯蔵容器からの第一スズイオン塩の流動を得ることは困難であることが証明されている。理想的な流動のための設計は、塊の流動を促進するのに十分に急な勾配の壁角度を有する簡易な貯蔵容器であると考えられる。しかしながら、塩化第一スズは非常に容易に凝固するので、単純な塊の流動の設計では功を奏しない。
【0006】
これらの問題のために、乾燥助剤が使用される。一般的な乾燥剤は、全般的には、湿った空気又は湿潤性溶液(wet solution)に曝露されたときに水和水(waters of hydration)を獲得する無水無機塩である。硫酸ナトリウム又は硫酸マグネシウムなどの最も一般的な乾燥剤では、結晶は、水を吸収すると、より大きな塊を形成する。有機実験室技術において、有機溶媒は無水塩を使用することによって乾燥される。他の乾燥助剤としては、CaCl2、CaO、ゼオライト、及びシリカゲルが挙げられる。
【0007】
第一スズ塩の吸湿性に関連する問題に対処する他の方法は、固結防止剤の使用であり、固結防止剤は、流動を改善し、圧密化を低減させ、したがって加工中の流動の制限を低減させることができる。固結防止剤は、過剰な水分を吸着することによって、又は粒子をコーティングして粒子が水を吸着しにくくすることによって機能する。他の化合物、例えば硝酸カリウムは、塩化第一スズと同様の問題を経験することが知られている。
【0008】
他の目的は、デンタルケア製剤において使用される吸湿性フッ素塩のための防湿剤又は乾燥助剤と適合性である組成物を見出すことを含む。これらの防湿剤は、非毒性であり、高純度であり、食品グレード又は医薬品グレードで入手可能である必要がある。更に、防湿剤は、第一スズ塩に対して良好な乾燥特性及び/又は流動性を有する必要がある。
【発明の概要】
【0009】
第一スズ塩の微粒子源と、アルミナ又はアルミナの組み合わせと、防湿剤又は乾燥剤と、を含む組成物が提供される。防湿剤及び乾燥助剤という用語は、本出願全体を通して互換的に使用される。微粒子状第一スズ塩は、塩化第一スズ、フッ化第一スズ及び/又はピロリン酸第一スズから選択することができる。アルミナは、噴霧乾燥アルミナ、回転焼成アルミナ、ヒュームドアルミナ、パール化アルミナ(pearled alumina)、又はこれらの組み合わせから選択することができる。乾燥剤は、当該技術分野において既知の任意の乾燥助剤であり得る。
【0010】
また、塩化第一スズ、フッ化第一スズ及び/又はピロリン酸第一スズなどの微粒子状第一スズ源に、アルミナ、及び乾燥助剤を添加することによって、微粒子状第一スズ塩の流動性を改善する方法も提供される。
【0011】
更に、練り歯磨きなどの口腔ケア製剤に使用することができる組成物が提供される。
【0012】
この概要は、以下の「発明を実施するための形態」で更に詳述される、選定された概念を単純な形態で紹介するために提供される。この概要は、特許請求される主題の主な特徴又は本質的な特徴を識別することを意図するものではない。また、特許請求される主題の範囲の決定を支援するものとして使用されることを意図するものでもない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の「発明を実施するための形態」は、本質的に単なる例示であり、本発明又は本発明の用途及び使用を限定することを意図するものではない。具体的に述べられていない限り、又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される場合、「約」という用語は、当該技術分野における通常の許容範囲内、例えば、平均の2標準偏差内であると理解される。「約」は、記載された値の10%、5%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、又は0.01%以内として理解することができる。あるいは、「約」は、記載された正確な値を意味するものとして理解することができる。文脈から明らかでない限り、本明細書で提供される全ての数値は、「約」という用語によって修飾されている。
【0014】
本組成物のいくつかの態様において、組成物は、第一スズ塩の微粒子源、アルミナ、及び乾燥助剤を含む。第一スズ塩は、塩化第一スズ、フッ化第一スズ、及びピロリン酸第一スズから選択することができる。第一スズ塩は、第一スズ塩のうちの1種以上に由来するか又は塩化第一スズなどの単一塩であってもよい。
【0015】
無水グレードは、様々な形態、すなわち、粉末形態、フレーク形態及びペレット形態で供給することができる。塩化第一スズ二水和物は、様々な供給元から市販されている。物性としては、わずかな特徴的な臭気を有する無色の結晶性物質、乏しい流動性及び比較的短い貯蔵寿命が挙げられる。しかしながら、塩化第一スズを二水和物形態又は無水物形態のいずれか一方で使用することの欠点は、輸送時及び取り扱い時の両方における製造上の制約である。二水和物形態及び様々な無水物形態の両方とも、多かれ少なかれ、吸湿性であり、加工中の流動性を困難にし、材料の貯蔵寿命にわたって活性が乏しい。塩化第一スズはまた、いくつかの金属に対してアグレッシブな還元剤である。この特性は、物質が固結して貯蔵容器内のデッドスポット上に位置するので、不要な化合物の形成をもたらす場合がある。
【0016】
組成物のいくつかの態様において、塩化第一スズは、塩化第一スズ二水和物、塩化第一スズ無水物、及びこれらの組み合わせから選択することができる。
【0017】
組成物のいくつかの態様において、アルミナは、Horiba LA-960を使用するレーザ回折粒径分析器によって測定される際、約0.4マイクロメートル(μm)~約100μm、又は約1μm~約90μm、又は約2μm~約80μm、又は約2μm~約30μmの平均粒径を有することができる。一例としては、Evonik製の、白色のふわふわした外観を有するアルミナ及びアナターゼの結晶性材料である親水性ヒュームドアルミナ顆粒、高純度粉末であるVP AEROPERL(登録商標)Alu 100/30、又は球形粒子を有する回転焼成高純度ガンマアルミナであるAlpha HPA製ULTRA(登録商標)HPPが挙げられる。
【0018】
理論に束縛されるものではないが、金属酸化物の細かさは、第一スズ塩の粒子を包み込むことができると考えられる。金属酸化物、すなわち、アルミナは、個々のスズ粒子間のスペーサ又は担体として作用し、スズ粒子を互いに分離した状態に保ち、最終的に接着力を低下させる。
【0019】
アルミナは正電荷を有するので、ポリマー粉末又は負に帯電した粒子の負電荷を中和する。これは、粉末を電気的に中性にし、したがって、壁、パイプ、及び互いに対する固結防止及び粘着に抵抗する。
【0020】
組成物のいくつかの態様において、アルミナは、約0.5~10%の範囲内で第一スズ塩と混合され、約0.5~5重量%のアルミナが混合され得る。
【0021】
組成物のいくつかの態様において、アルミナに対する微粒子状第一スズ塩の比は、約9:1~199:1であってもよく、約19:1~199:1であってもよい。
【0022】
組成物の更に他の態様では、アルミナに対する乾燥助剤の比は、約10:1~2:1、又は約3:1~5:1であり得る。
【0023】
組成物のいくつかの態様では、乾燥助剤は、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、及びこれらの組み合わせから選択することができる。
【0024】
組成物の更に他の態様では、組成物は、フッ化物イオン源、歯科用研磨剤、香料、保湿剤、キレート剤、及びこれらの組み合わせから選択される1つ以上の口腔ケア剤を更に含む。
【0025】
いくつかの態様において、本技術は、微粒子状第一スズ塩の流動性を改善する方法を含む。本方法は、第一スズ塩の微粒子源にアルミナ及び乾燥助剤を添加することを含む。
【0026】
本方法のいくつかの態様では、塩化第一スズ、フッ化第一スズ及び/又はピロリン酸第一スズから選択される第一スズ塩が提供される。第一スズ塩は、塩化第一スズ二水和物、塩化第一スズ無水物、及びこれらの組み合わせなどの塩化第一スズであり得る。
【0027】
本方法のいくつかの態様において、第一スズ塩に添加されるアルミナは、噴霧乾燥アルミナ、回転焼成アルミナ、ヒュームドアルミナ、パール化アルミナ又はこれらの組み合わせから選択することができる。
【0028】
本方法のいくつかの態様において、微粒子状第一スズ塩が提供される。アルミナは、約0.4マイクロメートル(μm)~約100μm、又は約1μm~約90μm、又は約2μm~約80μm、又は約2μm~約30μmの平均粒径を有することができる。
【0029】
本方法のいくつかの態様において、アルミナに対する微粒子状第一スズ塩の比は、約9:1~199:1であってもよく、約19:1~199:1であってもよく、乾燥助剤のアルミナに対する比は、約10:1~2:1、又は約3:1~5:1であってもよい。
【0030】
本方法の更に他の態様では、微粒子状第一スズ塩に添加される乾燥助剤は、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、及びこれらの組み合わせから選択することができる。
【0031】
本方法の更に他の態様では、1つ以上の口腔ケア剤、例えば、フッ化物イオン源、歯科用研磨剤、香料、保湿剤、キレート剤、及びこれらの組み合わせを組成物に添加することができる。
【0032】
他の態様では、組成物は、口腔ケア製剤、例えば、練り歯磨きにおいて使用することができる。
【実施例】
【0033】
以下の実施例は、湿潤雰囲気においてフッ化第一スズ(SnF2)及び塩化第一スズ(SnCl2)と共に既知の乾燥助剤を使用し、水分吸収を測定することによって達成された。本試験では、異なる防湿剤又は乾燥助剤の存在下でのSnF2及びSnCl2の吸水が観察された。
【0034】
実施例1-吸水率試験
3.5グラム(g)の塩化第一スズ(SnCl2)を0.15gの防湿剤(Ca3(PO4)2又はCaSO4)と混合した試料を調製し、表1において以下に示すように、塩化第一スズ及び防湿剤に0.15gの流動助剤(ヒュームドアルミナ(flumed alumina))を添加した試料と混合した試料を調製した。塩混合物を規定の時間、すなわち、24時間、温度120℃でオーブンにおいて乾燥させ、次いで乾燥機に入れて室温まで冷却し、直ちに秤量した。次いで、塩混合物を23℃で93%の一定湿度で6日間貯蔵するか、又は平衡に到達させ、重量増加を経時的に記録した。吸水率は、存在する重量の増加として表される。すなわち、吸水率(%)=[(湿重量-乾燥重量)/乾燥重量]×100である。結果を以下の表1に見ることができる。
【0035】
【0036】
結果は、流動助剤を含む組成物が、最初の24時間において、2成分系よりも塩化第一スズの吸水率を減少させることができ、2成分系が防湿剤としてCa3(PO4)2のみを含む場合の組成物よりも吸水率を有意に減少させることを示している。
【0037】
実施例2-吸水率試験
実施例1と同様に、一定湿度雰囲気下での吸水率を6日間にわたって測定した。塩化第一スズを、以下の表2に示すような種々の乾燥助剤及び酸化アルミニウムと混合した。
【0038】
【0039】
結果は、乾燥助剤Zeodent(登録商標)(シリカ)、硫酸カルシウム、Aeroperl(登録商標)Aeroxid(登録商標)(酸化アルミニウム)と乾燥助剤との組み合わせ、及びAerosil(登録商標)(シリカ)は、純粋な塩化第一スズと比較して吸水を低減することができることを示している。塩化第一スズによって増加した重量は、アルミナが乾燥助剤と組み合わされた場合、場合によってはより良好であり、他の例ではより悪化したが、フッ化第一スズをアルミナとブレンドした場合、物性は安定であり、有意に改善され、ブレンドを乾燥状態に維持した。
【0040】
実施例3-吸水率試験
塩化第一スズの代わりにフッ化第一スズを用いた以外は、上記実施例1及び2と同じ手順に従った。表3に列挙した乾燥助剤をフッ化第一スズと混合し、一定湿度雰囲気において6日後の試料の重量増加によって測定した際の吸水率を測定した。
【0041】
【0042】
結果は、流動助剤Zeodent(登録商標)及びリン酸三カルシウムが、フッ化第一スズ単独を超える知覚可能な重量増加を伴わない唯一の乾燥助剤であることを示した。しかしながら、フッ化第一スズをアルミナ又はアルミナ及び硫酸カルシウムとブレンドした場合、組成物は、微細で、乾燥し、粉末状であるというその物性を維持することができた。
【0043】
実施例4-流動性試験
以下において、試験は、欧州薬局方2.9.16-1に詳述される仕様に従ってCopely Flowability Tester Model BEPを使用して行った。この試験では、100gの塩化第一スズを1.5~5.0%の防湿剤及び0.5%~5.0%の流動助剤とブレンドした。この製剤を、6~15マイクロメートル(μm)の粒径を有する1%のZeodent(登録商標)119とブレンドした塩化第一スズの試料と比較した。塩化第一スズを乾燥助剤及び流動助剤とタンブルミキサーにおいて10分間ブレンドした。次いで、100gのブレンドを漏斗に移し、シャッターを取り外し、フロースルー時間をストップウォッチで記録した。結果は表4において見ることができる。
【0044】
【表4】
*乾燥助剤レベルは、全組成物に基づいて5.0重量%であった。
【0045】
結果は、Zeodent(登録商標)、Aerosil(登録商標)及びAeroxid(登録商標)が、SnCl2の流動性を刺激し、一方、乾燥助剤と組み合わせたAeroxid(登録商標)2.5%のブレンドは、SnCl2の流動性を改善することを示した。
【0046】
実施例5-酸化アルミニウムの添加
以下の試験は、CaSO4及びステアリン酸亜鉛が混合された塩としての塩化第一スズ100gの試料を用いて行われた。Aeroperl(登録商標)を製剤に添加し、Aeroperl(登録商標)を含まない製剤と比較した。製剤の流動時間及び物性を決定した。結果を表5に示す。
【0047】
【0048】
結果は、硫酸カルシウム単独の5%の濃度では流動特性を刺激しないが、Aeroperl(登録商標)は少なくとも5%の濃度から刺激していることを示している。一方、2.5%の乾燥助剤が最初にSnCl2と混合され、次いでAeroperlが徐々に添加される場合、2.1%のAeroperlは、粉末混合物が流動するように刺激するのに既に十分である。塩化スズが最初に乾燥助剤であるステアリン酸亜鉛と混合される場合、混合物は、1.5%のAeroperl(登録商標)で既に流動し始める。
【0049】
実施例6-一定湿度における水吸収
この実施例では、実施例1の手順に従った、すなわち、(表6に示されるような)乾燥助剤及びアルミナ(Aeroperl(登録商標))の混合物を塩化第一スズと混合した。塩混合物を23℃で93%の一定湿度で6日間保管し、重量増加を経時的に記録した。結果を表6に示す。
【0050】
【0051】
結果は、アルミナを乾燥助剤と組み合わせて使用すると、塩化第一スズの吸水が減少することを示している。特に、アルミナを単独で塩化第一スズと混合するか、又はCaSO4、ステアリン酸亜鉛などの乾燥助剤と混合すると、有利な結果が得られた。
【0052】
実施例7-第一スズイオン安定性試験
以下の試験を行って、本製剤の固体微粒子組成物における第一スズイオンの安定性を決定した。この試験では、原料の安定性アッセイを実施し、10%のシリカ(Zeodent(登録商標)119)と混合したフッ化第一スズを、23℃及び相対湿度60%並びに80℃及び相対湿度75%で比較した。可溶性のスズのレベルを錯滴定によって測定した。
【0053】
250mLのビーカーにおいて、36gのSnF2及び4gの各乾燥助剤を添加し(表7参照)、混合し、乾燥オーブンにおいて80℃で24時間保存した。この後、60gのH2Oを添加し、分散させ、分散液を更に12時間撹拌した。溶液が沈降した後、上清溶液をシリンジで除去し、0.25μmのプレフィルタを用いて滴定テンプレートに移し、電位差滴定により測定した。
【0054】
第一スズ塩が高温、例えば、80℃で保管される場合、乾燥助剤の一部はスズと反応し、それによって結合されることが予測される。第一スズ塩、例えば、SnCl2、SnF2又はSn2P2O7が次いで水に溶解される場合、遊離スズの濃度はここで減少する。スズ(II)塩の一部もまた空気中で酸化されてスズ(VI)になる。この部分は滴定では検出されない。最終的に、スズ(IV)イオンは病理学的に無効であり、それ故に、意図された適用については除外される。
【0055】
SnF2の試料をZeodent(登録商標)119、Aerosil(登録商標)200、及びリン酸三カルシウムとブレンドし、遊離スズイオンを上記のように決定した。試験の結果を表7a及び表7bに見出すことができる。
【0056】
【0057】
結果は、第一スズ塩がアルミナと混合される場合、遊離第一スズイオンが有意に減少し、特にリン酸三カルシウムによって有意に減少することを示している。
【0058】
【0059】
実施例8-口腔ケア製剤中の可溶性第一スズ
この実施例は、固結防止組成物の存在下での可溶性スズの利用可能性の低下を示す。
【0060】
250mLビーカーにおいて、36重量%のグリセリン、0.6重量%のグルコン酸ナトリウム及び10重量%の異なる固結防止剤の溶液を調製した。各試料の総重量を水で調整し、組成物の総重量に基づいてフッ化ナトリウムと塩化第一スズの混合物(それぞれ0.2543重量%及び0.654重量%)を各試料に添加した。
【0061】
50mLの調製した混合物のそれぞれを150mLビーカーに入れ、マグネチックスターラーを用いて500rpmで24時間撹拌した後、0.45μmのシリンジフィルタが取り付けられた使い捨てシリンジを用いて3mLの試料を採取した。これらの試料を、電位差滴定又は誘導結合プラズマによって遊離スズについて分析した。結果を表8a及び表8bに見ることができる。
【0062】
【0063】
【0064】
結果は、遊離スズイオン濃度が、最大5%のアルミナの添加で約10%だけ減少することを示している。対照的に、10%の固結防止剤は、最大70%の遊離スズイオンの減少をもたらす。乾燥助剤である硫酸カルシウムは、第一スズイオン活性にほとんど又は全く影響を及ぼさない。100倍過剰な乾燥助剤をこの試験に使用したことに留意すべきである。
【0065】
前述の試験は、硫酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、硫酸マグネシウム、熱分解水酸化アルミニウム(Aeroxid(登録商標))及び熱分解二酸化ケイ素(Aerosil(登録商標))をSnCl2のための最も有効な固結防止剤として同定した。
【0066】
加えて、前述の固結防止剤と水酸化アルミニウム(Aeroperl(登録商標)A100/30)との組み合わせは、第一スズ塩の流動特性を更に改善する。
【0067】
最後に、この試験は、硫酸カルシウムによる遊離スズ活性の抑制がシリカベースの乾燥助剤又は防湿剤のものよりも低いことを予想外に明らかにしている。最後に、硫酸カルシウムとAeroperl(登録商標)との組み合わせは、流動特性を改善するだけでなく、塩化第一スズブレンドの配合コストを低下させ、製造における加工性を改善する。
【0068】
前述の本発明の主題の詳細な説明で、少なくとも1つの例示の実施形態が提示されてきたが、膨大な数の変更例が存在することを理解されたい。例示の実施形態又は複数の例示の実施形態は、あくまで例示であり、いかなるようにも本発明の主題の範囲、適用性、又は構成を制限する意図がないこともまた理解されたい。むしろ、前述の詳細な説明は、当業者らに本発明の主題の例示の実施形態を実装するのに簡便なロードマップを提供するだろう。添付の特許請求の範囲に記載される本発明の主題の範囲から逸脱することなく、例示の実施形態に説明された要素の機能及び構成に様々な変更を加えることができるものと理解される。
【手続補正書】
【提出日】2025-01-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)塩化第一スズ、フッ化第一スズ及び/又はピロリン酸第一スズから選択される第一スズ塩の微粒子源と、
b)アルミナと、
c)乾燥助剤と、を含む、組成物。
【請求項2】
微粒子状第一スズ塩の流動性を改善する方法であって、前記方法は、
第一スズ塩の微粒子源にアルミナ及び乾燥助剤を添加することを含み、
アルミナに対する乾燥助剤の比は、約10:1~2:1、又は約3:1~5:1であり得る、方法。
【請求項3】
a)第一スズ塩の微粒子源と、
b)アルミナと、
c)乾燥助剤と、を含み、
前記第一スズ塩は、塩化第一スズ、フッ化第一スズ及び/又はピロリン酸第一スズから選択され、前記アルミナは、噴霧乾燥アルミナ、回転焼成アルミナ、ヒュームドアルミナ、パール化アルミナ又はこれらの組み合わせから選択され、前記乾燥助剤は、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛及びこれらの組み合わせから選択され、
アルミナに対する微粒子状第一スズ塩の比は、約9:1~199:1、又は約19:1~199:1であり得る、口腔ケア組成物。
【国際調査報告】