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2025-523002陰圧閉鎖療法による点滴注入に関する最適な点滴注入体積決定のための閉ループシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-07-17
(54)【発明の名称】陰圧閉鎖療法による点滴注入に関する最適な点滴注入体積決定のための閉ループシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20250710BHJP
【FI】
A61M1/00 140
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2025501312
(86)(22)【出願日】2023-07-12
(85)【翻訳文提出日】2025-01-31
(86)【国際出願番号】 IB2023057169
(87)【国際公開番号】W WO2024013685
(87)【国際公開日】2024-01-18
(31)【優先権主張番号】63/388,867
(32)【優先日】2022-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524062087
【氏名又は名称】ソルベンタム インテレクチュアル プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ムーア,ブレット エル.
(72)【発明者】
【氏名】トリンブル,エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】トラクラー,ジョーダン
(72)【発明者】
【氏名】イングラム,シャノン シー.
(72)【発明者】
【氏名】リー,エドワード
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA30
4C077CC02
4C077DD11
4C077DD16
4C077EE02
4C077EE04
4C077JJ04
4C077MM07
(57)【要約】
組織部位を治療するための、システム及び方法が説明される。本システムは、組織部位に点滴注入溶液を提供するように構成されている、点滴注入源と、組織部位に陰圧を発生させるために、組織部位から流体を引き込むように構成されている、陰圧源とを含む。本システムはまた、点滴注入源及び陰圧源に通信可能に結合されている、コントローラも含む。コントローラは、点滴注入源を作動させ、陰圧源を作動させるように構成されている。本システムはまた、コントローラに通信可能に結合され、かつ点滴注入源及び陰圧源に動作可能に結合されている、センサも含む。センサは、組織部位に送達された流体の量と、組織部位から回収された流体の量とを示す、信号を生成するように構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織部位を治療するためのシステムであって、
前記組織部位に点滴注入溶液を提供するように構成されている、点滴注入源と、
前記組織部位に陰圧を発生させるために、前記組織部位から流体を引き込むように構成されている、陰圧源と、
前記点滴注入源及び前記陰圧源に通信可能に結合されている、コントローラであって、
前記点滴注入源を作動させ、
前記陰圧源を作動させるように構成されている、コントローラと、
前記コントローラに通信可能に結合され、かつ前記点滴注入源及び前記陰圧源に動作可能に結合されている、センサであって、前記組織部位に送達された流体の量と、前記組織部位から回収された流体の量とを示す、信号を生成するように構成されている、センサと、を備える、システム。
【請求項2】
前記コントローラが、前記組織部位を飽和させるために、前記点滴注入源を作動させるように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
飽和が、前記点滴注入源によって送達された体積と同じ体積の流体を、前記組織部位から引き込むことを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラが、前記組織部位の飽和を決定するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記コントローラが、均一な点滴注入プロファイルを作動させる、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記均一な点滴注入プロファイルが、
前記コントローラが、注入体積(IV)を提供するように前記点滴注入源を動作させることと、
前記コントローラが、回収体積(RV)を回収するように前記陰圧源を動作させることと、
前記回収体積(RV)が前記注入体積(IV)よりも大きい場合には、前記コントローラがアラーム信号を生成することと、
前記回収体積(RV)が前記注入体積(IV)にほぼ等しい場合には、前記コントローラが、飽和が達成されていると決定して、点滴注入療法及び陰圧療法を提供するために、前記点滴注入源及び前記陰圧源を作動させることと、
前記回収体積(RV)が約前記注入体積(IV)よりも少ない場合には、前記コントローラが、飽和が達成されていないと決定して、前記コントローラが、前記注入体積(IV)を提供するように前記点滴注入源を動作させることと、を含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラが、段階的増大点滴注入プロファイルを使用して、前記点滴注入源を動作させる、請求項4に記載のシステム。
【請求項8】
前記段階的増大点滴注入プロファイルが、
前記コントローラが、注入体積(IV)を提供するように前記点滴注入源を動作させることと、
前記コントローラが、回収体積(RV)を回収するように前記陰圧源を動作させることと、
前記回収体積(RV)が前記注入体積(IV)よりも大きい場合には、前記コントローラがアラーム信号を生成することと、
前記回収体積(RV)が前記注入体積(IV)にほぼ等しい場合には、前記コントローラが、飽和が達成されていると決定して、点滴注入療法及び陰圧療法を提供するために、前記点滴注入源及び前記陰圧源を作動させることと、
前記回収体積(RV)が約前記注入体積(IV)よりも少ない場合には、前記コントローラが、飽和が達成されていないと決定して、前記注入体積(IV)を増大させることと、を含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラが、ボーラス先行点滴注入プロファイルを使用して、前記点滴注入源を動作させる、請求項4に記載のシステム。
【請求項10】
前記ボーラス先行点滴注入プロファイルが、
前記コントローラが、注入体積(IV)を提供するように前記点滴注入源を動作させることと、
前記コントローラが、回収体積(RV)を回収するように前記陰圧源を動作させることと、
前記回収体積(RV)が前記注入体積(IV)よりも大きい場合には、前記コントローラがアラーム信号を生成することと、
前記回収体積(RV)が前記注入体積(IV)にほぼ等しい場合には、前記コントローラが、飽和が達成されていると決定して、点滴注入療法及び陰圧療法を提供するために、前記点滴注入源及び前記陰圧源を作動させることと、
前記回収体積(RV)が約前記注入体積(IV)よりも少ない場合には、前記コントローラが、飽和が達成されていないと決定して、前記注入体積(IV)を減少させることと、を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記センサが、注入された流体の体積と回収された流体の体積とを決定するように構成されている、複数のセンサを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記複数のセンサが、歪みゲージを含み、前記コントローラが、前記注入された流体の体積の重量と、前記回収された流体の体積の重量とを決定する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記複数のセンサが、ホール効果センサを含み、前記コントローラが、前記注入された流体の体積の高さと、前記回収された流体の体積の高さとを決定する、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記複数のセンサが、光センサを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
組織部位の飽和を決定するための方法であって、
コントローラを用いて、注入体積(IV)を示す信号を受信することと、
前記コントローラを用いて、回収体積(RV)を示す信号を受信することと、
前記コントローラを用いて、前記注入体積(IV)を前記回収体積(RV)と比較することと、
前記注入体積(IV)を前記回収体積(RV)と比較することに応答して、前記組織部位の飽和状態を決定することと、を含む、方法。
【請求項16】
前記組織部位の飽和状態を決定することが、
前記回収体積(RV)が前記注入体積(IV)よりも大きい場合には、前記コントローラがアラーム信号を生成することと、
前記回収体積(RV)が前記注入体積(IV)にほぼ等しい場合には、前記コントローラが、飽和が達成されていると決定することと、
前記回収体積(RV)が約前記注入体積(IV)よりも少ない場合には、前記コントローラが、飽和が達成されていないと決定することと、を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記組織部位の飽和状態を決定することが、
前記回収体積(RV)が前記注入体積(IV)よりも大きい場合には、前記コントローラがアラーム信号を生成することと、
前記回収体積(RV)が前記注入体積(IV)にほぼ等しい場合には、前記コントローラが、飽和が達成されていると決定することと、
前記回収体積(RV)が約前記注入体積(IV)よりも少ない場合には、前記コントローラが、飽和が達成されていないと決定して、前記注入体積(IV)を増大させることと、を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記組織部位の飽和状態を決定することが、
前記回収体積(RV)が前記注入体積(IV)よりも大きい場合には、前記コントローラがアラーム信号を生成することと、
前記回収体積(RV)が前記注入体積(IV)にほぼ等しい場合には、前記コントローラが、飽和が達成されていると決定することと、
前記回収体積(RV)が約前記注入体積(IV)よりも少ない場合には、前記コントローラが、飽和が達成されていないと決定して、前記注入体積(IV)を減少させることと、を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
組織部位を治療するためのシステムであって、
点滴注入源及び陰圧源に通信可能に結合されている、コントローラであって、
点滴注入療法を提供するために前記点滴注入源を作動させ、
陰圧療法を提供するために前記陰圧源を作動させるように構成されている、コントローラと、
前記コントローラに通信可能に結合されて、注入体積(IV)を示す信号を生成するように構成されている、点滴注入センサと、
前記コントローラに通信可能に結合されて、回収体積(RV)を示す信号を生成するように構成されている、回収体積(RV)センサと、を備える、システム。
【請求項20】
前記コントローラが、均一な点滴注入プロファイルを作動させる、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記均一な点滴注入プロファイルが、
前記コントローラが、前記注入体積(IV)を提供するように前記点滴注入源を動作させることと、
前記コントローラが、前記回収体積(RV)を回収するように前記陰圧源を動作させることと、
前記回収体積(RV)が前記注入体積(IV)よりも大きい場合には、前記コントローラがアラーム信号を生成することと、
前記回収体積(RV)が前記注入体積(IV)にほぼ等しい場合には、前記コントローラが、飽和が達成されていると決定して、点滴注入療法及び陰圧療法を提供するために、前記点滴注入源及び前記陰圧源を作動させることと、
前記回収体積(RV)が約前記注入体積(IV)よりも少ない場合には、前記コントローラが、飽和が達成されていないと決定して、前記コントローラが、前記注入体積(IV)を提供するように前記点滴注入源を動作させることと、を含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記コントローラが、段階的増大点滴注入プロファイルを作動させる、請求項19に記載のシステム。
【請求項23】
前記段階的増大点滴注入プロファイルが、
前記コントローラが、前記注入体積(IV)を提供するように前記点滴注入源を動作させることと、
前記コントローラが、前記回収体積(RV)を回収するように前記陰圧源を動作させることと、
前記回収体積(RV)が前記注入体積(IV)よりも大きい場合には、前記コントローラがアラーム信号を生成することと、
前記回収体積(RV)が前記注入体積(IV)にほぼ等しい場合には、前記コントローラが、飽和が達成されていると決定して、点滴注入療法及び陰圧療法を提供するために、前記点滴注入源及び前記陰圧源を作動させることと、
前記回収体積(RV)が約前記注入体積(IV)よりも少ない場合には、前記コントローラが、飽和が達成されていないと決定して、前記注入体積(IV)を増大させることと、を含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記コントローラが、ボーラス先行点滴注入プロファイルを作動させる、請求項19に記載のシステム。
【請求項25】
前記ボーラス先行点滴注入プロファイルが、
前記コントローラが、前記注入体積(IV)を提供するように前記点滴注入源を動作させることと、
前記コントローラが、前記回収体積(RV)を回収するように前記陰圧源を動作させることと、
前記回収体積(RV)が前記注入体積(IV)よりも大きい場合には、前記コントローラがアラーム信号を生成することと、
前記回収体積(RV)が前記注入体積(IV)にほぼ等しい場合には、前記コントローラが、飽和が達成されていると決定して、点滴注入療法及び陰圧療法を提供するために、前記点滴注入源及び前記陰圧源を作動させることと、
前記回収体積(RV)が約前記注入体積(IV)よりも少ない場合には、前記コントローラが、飽和が達成されていないと決定して、前記注入体積(IV)を減少させることと、を含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
本明細書で説明及び図示されているような、システム、方法、及び装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2022年7月13日に出願された米国特許仮出願第63/388,867号に対する優先権の利益を主張するものであり、本仮出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
添付の特許請求の範囲に記載される本発明は、全般的に、組織治療システムにおけるシステム体積決定に関し、より詳細には、限定するものではないが、組織部位の点滴注入体積を決定することに関する。
【背景技術】
【0003】
臨床研究及び臨床診療は、組織部位付近の圧力を低減することにより、その組織部位における新たな組織の成長を増強及び加速させることができる点を示している。この現象の用途は数多くあるが、創傷を治療するために特に有利であることが証明されている。外傷であれ、手術であれ、又は別の原因であれ、創傷の病因には関わりなく、創傷の適切なケアが、転帰にとって重要である。減圧を用いる創傷又は他の組織の治療は、一般に「陰圧療法」と称される場合があるが、例えば、「陰圧閉鎖療法」、「減圧療法」、「真空療法」、「真空補助閉鎖」、及び「局所陰圧」を含めた、他の名称によっても知られている。陰圧療法は、上皮組織及び皮下組織の移動、血流の改善、並びに、創傷部位における組織の微小変形を含めた、いくつもの利益をもたらし得る。全体として、これらの利益は、肉芽組織の発達を増進させ、治癒時間を短縮することができる。
【0004】
また、組織部位を洗浄することが、新たな組織の成長にとって非常に有益であり得る点も、広く受け入れられている。例えば、創傷又は腔を、治療目的のために液体溶液で洗い流すことができる。これらの臨床診療は一般に、それぞれ、「灌注」及び「洗浄」と称される。「点滴注入」とは、一般に、組織部位に流体を緩徐に導入して、その流体を除去する前に規定の期間にわたって流体を放置するプロセスを指す、別の臨床診療である。例えば、創傷床内の可溶性汚染物質を遊離させ、感染性物質を除去することによって、創傷治癒を更に促進するために、創傷床上への局所治療溶液の点滴注入を、陰圧療法と組み合わせることができる。その結果として、可溶性細菌負荷を減少させ、汚染物質を除去し、創傷を洗浄することができる。
【0005】
陰圧療法及び/又は点滴注入療法の臨床的利益は、広く知られているが、療法システム、構成要素、及びプロセスを改善することにより、ヘルスケア提供者及び患者に利益をもたらすことができる。
【発明の概要】
【0006】
添付の特許請求の範囲には、陰圧環境における最適な点滴注入体積を決定するための、新規かつ有用なシステム、装置、及び方法が記載されている。特許請求される主題を当業者が作製及び使用することを可能にするための、例示的実施形態もまた提供されている。
【0007】
例えば、いくつかの実施形態では、組織部位を治療するためのシステムが説明される。本システムは、組織部位に点滴注入溶液を提供するように構成されている、点滴注入源と、組織部位に陰圧を発生させるために、組織部位から流体を引き込むように構成されている、陰圧源とを含む。本システムはまた、点滴注入源及び陰圧源に通信可能に結合されている、コントローラも含む。コントローラは、点滴注入源を作動させ、陰圧源を作動させるように構成されている。本システムはまた、コントローラに通信可能に結合され、かつ点滴注入源及び陰圧源に動作可能に結合されている、センサも含む。センサは、組織部位に送達された流体の量と、組織部位から回収された流体の量とを示す、信号を生成するように構成されている。
【0008】
より全般的には、組織部位を治療するためのシステムが説明される。本システムは、点滴注入源及び陰圧源に通信可能に結合されている、コントローラを含み得る。コントローラは、点滴注入療法を提供するために点滴注入源を作動させ、陰圧療法を提供するために陰圧源を作動させるように構成することができる。本システムは、コントローラに通信可能に結合されて、注入体積(instill volume;IV)を示す信号を生成するように構成されている、点滴注入センサを含み得る。本システムはまた、コントローラに通信可能に結合されて、回収体積(recovered volume;RV)を示す信号を生成するように構成されている、回収体積(RV)センサも含み得る。
【0009】
組織部位の飽和を決定する方法もまた、本明細書で説明され、いくつかの例示的実施形態は、コントローラを用いて、注入体積(IV)を示す信号を受信することと、コントローラを用いて、回収体積(RV)を示す信号を受信することと、コントローラを用いて、注入体積(IV)を回収体積(RV)と比較することと、注入体積(IV)を回収体積(RV)と比較することに応答して、組織部位の飽和状態を決定することとを提供する。
【0010】
例示的実施形態の以下の詳細な説明と併せて、添付図面を参照することによって、特許請求される主題を作製及び使用する、目的、利点、及び好ましい態様を、最も良く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本明細書による、陰圧治療及び点滴注入治療を提供することが可能な療法システムの、例示的実施形態の機能ブロック図である。
図2図2は、組織部位と共に使用するためのドレッシング材の選択のために、初期システム体積を決定するためのプロセスの、動作ステップを示すフローチャートである。
図3図3は、組織部位の最適な流体点滴注入体積を決定するために図1のシステムによって実行されるプロセスの、動作ステップを示すフローチャートである。
図4図4は、図3の動作ステップによる最適な流体点滴注入体積の決定を示す、棒グラフと折れ線グラフとの組み合わせである。
図5図5は、組織部位の最適な流体点滴注入体積を決定するために図1のシステムによって実行される別のプロセスの、動作ステップを示すフローチャートである。
図6図6は、図5の動作ステップによる最適な流体点滴注入体積の決定を示す、棒グラフと折れ線グラフとの組み合わせである。
図7図7は、組織部位の最適な流体点滴注入体積を決定するために図1のシステムによって実行される別のプロセスの、動作ステップを示すフローチャートである。
図8図8は、図7の動作ステップによる最適な流体点滴注入体積の決定を示す、棒グラフと折れ線グラフとの組み合わせである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
例示的実施形態の以下の説明は、添付の特許請求の範囲に記載されている主題を当業者が作製及び使用することを可能にする、情報を提供するものであるが、当該技術分野において既に周知の特定の詳細は、省略される場合がある。それゆえ、以下の詳細な説明は、限定するものではなく、例示的なものとして解釈されるべきである。
【0013】
例示的実施形態はまた、添付図面に示されている、様々な要素間の空間的な関係、又は様々な要素の空間的な向きを参照して、本明細書で説明される場合もある。一般に、そのような関係又は向きは、治療を受けるための位置にある患者と一致するか又はそのような患者に関連する基準系を想定している。しかしながら、当業者によって認識されるべきであるように、この基準系は、厳密な規定ではなく、単に説明上の手段に過ぎない。
【0014】
この文脈における「組織部位」という用語は、限定するものではないが、表面創傷、骨組織、脂肪組織、筋組織、神経組織、真皮組織、血管組織、結合組織、軟骨、腱、又は靭帯を含めた、組織上若しくは組織内に位置している、創傷、欠損、又は他の治療標的を広範に指す。「組織部位」という用語はまた、必ずしも創傷又は欠損があるとは限らないが、その代わりに、追加的組織の成長を追加又は促進することが望まれ得る領域である、任意の組織の領域を指す場合もある。例えば、採取して移植することが可能な追加的組織を成長させるために、組織部位に陰圧を適用することができる。表面創傷とは、本明細書で使用される場合、表皮、真皮、及び/又は皮下層に対する傷害若しくは損傷などの、身体の外表面に露出している、身体の表面上の創傷である。表面創傷は、例えば、潰瘍又は閉鎖された切開を含み得る。表面創傷は、本明細書で使用される場合、腹腔内の内部の創傷を含まない。創傷としては、例えば、慢性創傷、急性創傷、外傷性創傷、亜急性創傷、及び裂開創傷、中間層熱傷、潰瘍(糖尿病潰瘍、圧力潰瘍、又は静脈不全潰瘍など)、皮弁、及び移植片を挙げることができる。
【0015】
図1は、本明細書による、組織部位への局所治療溶液の点滴注入と共に陰圧療法を提供することが可能な、療法システム100の例示的実施形態の簡略機能ブロック図である。療法システム100は、例えば、陰圧源102などの陰圧源又は陰圧供給部と、ドレッシング材104と、キャニスタ106などの流体容器と、コントローラ108などの調整器又はコントローラとを含み得る。更には、療法システム100は、動作パラメータを測定して、それらの動作パラメータを示すフィードバック信号をコントローラ108に提供するための、センサを含み得る。図1に示されているように、例えば、療法システム100は、コントローラ108に結合されている、圧力センサ110、電気センサ112、又はそれらの双方を含み得る。図1の実施例に示されているように、ドレッシング材104は、いくつかの実施形態では、組織インタフェース114、カバー116、又はそれらの双方を含み得るか、若しくはそれらから本質的に成るものとすることができる。
【0016】
療法システム100はまた、点滴注入溶液源も含み得る。例えば、図1の例示的実施形態に示されているように、流体源118を、ドレッシング材104に流体結合することができる。流体源118は、いくつかの実施形態では、陽圧源120などの陽圧源、陰圧源102などの陰圧源、又はそれらの双方に流体結合することができる。点滴注入調整器122などの調整器もまた、組織部位への点滴注入溶液(例えば、生理食塩水又は滅菌水)の適切な投与を確実にするために、流体源118及びドレッシング材104に流体結合することができる。例えば、点滴注入調整器122は、陰圧間隔中に流体源118から点滴注入溶液を引き込み、通気間隔中にドレッシング材に溶液を注入するように、陰圧源102によって空気圧で作動することが可能な、ピストンを備え得る。更には、又は代替的に、コントローラ108は、組織部位への点滴注入溶液の投与を制御するために、陰圧源102、陽圧源120、又はそれらの双方に結合することができる。いくつかの実施形態では、点滴注入調整器122はまた、図1の実施例に示されているように、ドレッシング材104を介して陰圧源102に流体結合することもできる。
【0017】
療法システム100のいくつかの構成要素は、療法を更に容易にする、センサ、処理ユニット、アラームインジケータ、メモリ、データベース、ソフトウェア、ディスプレイデバイス、又はユーザインタフェースなどの、他の構成要素内に収容するか、又はそのような構成要素と併せて使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、陰圧源102は、流体源118、コントローラ108、及び他の構成要素と共に、療法ユニット124へと組み合わせることができる。
【0018】
一般に、療法システム100の構成要素は、直接又は間接的に結合することができる。例えば、陰圧源102は、キャニスタ106に直接結合することができ、キャニスタ106を介してドレッシング材104に間接的に結合することができる。結合とは、いくつかの文脈では、流体結合、機械的結合、熱的結合、電気的結合、又は化学的結合(化学結合など)、あるいは、結合の何らかの組み合わせを含み得る。例えば、陰圧源102は、コントローラ108に電気的に結合することができ、組織部位への流体経路を提供するための、1つ以上の分配構成要素に流体結合することができる。いくつかの実施形態では、構成要素はまた、物理的に近接させること、単一の構造体に統合すること、又は同じ材料片から形成することによっても、結合することができる。例えば、組織インタフェース114とカバー116とは、互いに隣接して配置されている別個の層とすることができ、いくつかの実施形態では、一体に接合することもできる。
【0019】
分配構成要素は、好ましくは取り外し可能であり、使い捨て可能、再利用可能、又はリサイクル可能とすることができる。ドレッシング材104及びキャニスタ106は、分配構成要素を例示している。流体伝導体は、分配構成要素の別の例示的実施例である。この文脈における「流体伝導体」とは、2つの端部間で流体を搬送するように適合されている、1つ以上の管腔若しくは開放経路を有する、チューブ、パイプ、ホース、導管、又は他の構造体を広範に含む。典型的には、チューブは、ある程度の可撓性を有する、細長い円筒状の構造体であるが、幾何学的形状及び剛性は、様々であり得る。更には、いくつかの流体伝導体を、他の構成要素内に成型するか、又は他の方式で、他の構成要素と一体化させて組み合わせることもできる。分配構成要素はまた、他の構成要素を結合及び結合解除することを容易にするための、インタフェース若しくは流体ポートを含み得るか、又はそのようなインタフェース若しくは流体ポートを構成し得る。いくつかの実施形態では、例えば、ドレッシング材インタフェースが、流体伝導体をドレッシング材104に結合することを容易にし得る。
【0020】
陰圧源102などの陰圧供給部は、例えば、陰圧の空気のリザーバとすることができ、あるいは、真空ポンプ、吸引ポンプ、多くのヘルスケア施設で利用可能な壁面吸引ポート、又はマイクロポンプなどの、手動若しくは電動のデバイスとすることもできる。「陰圧」とは、一般に、シールされた治療環境の外部の局所的環境における周囲圧力などの、局所的周囲圧力よりも、低い圧力を指す。多くの場合、局所的周囲圧力はまた、組織部位が位置している大気圧でもあり得る。あるいは、この圧力は、組織部位における、組織に関連付けられている静水圧よりも低いものであり得る。別段の指示がない限り、本明細書で記述されている圧力の値は、ゲージ圧である。陰圧の増大への言及は、典型的には、絶対圧力の減少を指し、その一方で、陰圧の減少は、典型的には、絶対圧力の増大を指す。組織部位に適用される陰圧の量及び性質は、治療要件に従って様々であり得るが、その圧力は一般に、-5mmHg(-667Pa)~-500mmHg(-66.7kPa)の、一般に粗真空とも称される、低真空である。一般的な治療範囲は、-50mmHg(-6.7kPa)~-300mmHg(-39.9kPa)である。
【0021】
キャニスタ106は、組織部位から引き出された滲出液及び他の流体を管理するために使用することが可能な、容器、キャニスタ、パウチ、又は他の貯蔵構成要素を表している。多くの環境では、流体を収集、貯蔵、及び廃棄するために、剛性の容器が好まれるか、若しくは必要とされる場合がある。他の環境では、流体は、剛性の容器に貯蔵することなく適切に廃棄することができ、再利用可能な容器により、陰圧療法に関連付けられる廃棄物及びコストを削減することが可能である。
【0022】
コントローラ108などのコントローラは、陰圧源102などの、療法システム100の1つ以上の構成要素を動作させるようにプログラムされている、マイクロプロセッサ又はコンピュータとすることができる。いくつかの実施形態では、例えば、コントローラ108は、マイクロコントローラとすることができ、このマイクロコントローラは、一般に、療法システム100の1つ以上の動作パラメータを直接又は間接的に制御するようにプログラムされている、プロセッサコアとメモリとを含む集積回路を備える。動作パラメータとしては、例えば、陰圧源102に適用される電力、陰圧源102によって生成される圧力、又は組織インタフェース114に分配される圧力を挙げることができる。コントローラ108はまた、好ましくは、フィードバック信号などの1つ以上の入力信号を受信するように構成されており、それらの入力信号に基づいて、1つ以上の動作パラメータを修正するようにプログラムされている。
【0023】
圧力センサ110又は電気センサ112などのセンサは、物理的現象又は物理的特性を検出若しくは測定するように動作可能な任意の装置として、当該技術分野において公知であり、一般に、検出若しくは測定された現象又は特性を示す信号を提供する。例えば、圧力センサ110及び電気センサ112は、療法システム100の1つ以上の動作パラメータを測定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、圧力センサ110は、空気圧経路内の圧力を測定して、その測定値を、測定された圧力を示す信号に変換するように構成されている、トランスデューサとすることができる。いくつかの実施形態では、圧力センサ110は、ピエゾ抵抗歪みゲージとすることができる。電気センサ112は、いくつかの実施形態では、電圧又は電流などの、陰圧源102の動作パラメータを任意選択的に測定することができる。好ましくは、圧力センサ110及び電気センサ112からの信号は、コントローラ108への入力信号として好適であるが、何らかの信号調整が適切な場合もある。例えば、信号は、コントローラ108によって処理することが可能となる前に、フィルタリング又は増幅することが必要とされる場合がある。典型的には、信号は電気信号であるが、光信号などの他の形態で表すこともできる。
【0024】
組織インタフェース114は、一般に、組織部位に部分的又は完全に接触するように適合させることができる。組織インタフェース114は、多くの形態を取ることができ、実施されている治療のタイプ、あるいは組織部位の性質及びサイズなどの、様々な要因に応じて、多くのサイズ、形状、又は厚さを有し得る。例えば、組織インタフェース114のサイズ及び形状は、深く不規則な形状の組織部位の外形に適合させることができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、組織インタフェース114は、マニホールドを含み得るか、又はマニホールドから本質的に成るものとすることができる。この文脈におけるマニホールドとは、圧力下で組織インタフェース114全体にわたって流体を収集又は分配するための手段を含み得るか、又はそのような手段から本質的に成るものとすることができる。例えば、マニホールドは、供給源から陰圧を受け取り、組織インタフェース114全体にわたって複数の開口を介して陰圧を分配するように適合させることができ、このことは、組織部位全体にわたって流体を収集し、その流体を供給源に向けて引き込む効果を有し得る。いくつかの実施形態では、流体経路を逆転させることもでき、又は、点滴注入溶液源からの流体などの流体を、組織部位全体にわたって送達することを容易にするために、二次流体経路を設けることもできる。
【0026】
いくつかの例示的実施形態では、マニホールドは、流体の分配又は収集を改善するために相互接続することが可能な、複数の経路を備え得る。いくつかの例示的実施形態では、マニホールドは、相互接続された流体経路を有する、多孔質材料を含み得るか、又はそのような多孔質材料から本質的に成るものとすることができる。相互接続された流体経路(例えば、チャネル)を形成するように適合させることが可能な、好適な多孔質材料の例としては、網状発泡体などの連続気泡発泡体を含めた、気泡質発泡体、多孔質組織の集合体、並びに、一般に細孔、縁部、及び/又は壁部を含む、ガーゼ若しくはフェルト状マットなどの、他の多孔質材料を挙げることができる。液体、ゲル、及び他の発泡体もまた、開口及び流体経路を含み得るか、又はそれらを含むように硬化させることができる。いくつかの実施形態では、マニホールドは、追加的又は代替的に、相互接続された流体経路を形成する、突起を備え得る。例えば、マニホールドは、相互接続された流体経路を画定する、表面突起を設けるように成型することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、組織インタフェース114は、規定される療法の必要性に従って変化し得る孔径及び空隙率を有する、網状発泡体を含み得るか、又はそのような網状発泡体から本質的に成るものとすることができる。例えば、少なくとも90%の空隙率を有する網状発泡体は、多くの療法用途に関して好適な可能性があり、400~600ミクロンの範囲の平均孔径(1インチ当たり40~50個の細孔)を有する発泡体は、いくつかのタイプの療法に関して特に好適な可能性がある。組織インタフェース114の引張強度もまた、規定される療法の必要性に従って変化し得る。例えば、発泡体の引張強度は、局所治療溶液の点滴注入のために増大させることができる。組織インタフェース114の25%圧縮荷重撓みは、少なくとも0.35ポンド毎平方インチとすることができ、65%圧縮荷重撓みは、少なくとも0.43ポンド毎平方インチとすることができる。いくつかの実施形態では、組織インタフェース114の引張強度は、少なくとも10ポンド毎平方インチとすることができる。組織インタフェース114は、少なくとも2.5ポンド毎インチの引裂強度を有し得る。いくつかの実施形態では、組織インタフェースは、ポリエステル又はポリエーテルなどのポリオールと、トルエンジイソシアネートなどのイソシアネートと、アミン及びスズの化合物などの重合調整剤とで構成されている、発泡体とすることができる。いくつかの実施例では、組織インタフェース114は、双方ともKinetic Concepts,Inc(San Antonio,Texas)より入手可能な、GRANUFOAM(商標)ドレッシング材又はV.A.C.VERAFLO(商標)ドレッシング材において見出されるものなどの、網状ポリウレタン発泡体とすることができる。
【0028】
組織インタフェース114の厚さもまた、規定される療法の必要性に従って変化し得る。例えば、周辺組織に対する張力を軽減するために、組織インタフェースの厚さを減少させることができる。組織インタフェース114の厚さはまた、組織インタフェース114の適合性にも影響を及ぼし得る。いくつかの実施形態では、約5ミリメートル~10ミリメートルの範囲の厚さが、好適であり得る。
【0029】
組織インタフェース114は、疎水性又は親水性のいずれかとすることができる。組織インタフェース114が親水性であり得る一実施例では、組織インタフェース114はまた、組織部位に陰圧を分配し続けながら、組織部位から流体を吸い上げて逃すこともできる。組織インタフェース114の吸い上げ特性は、毛細管流動又は他の吸い上げ機構によって、組織部位から逃すように流体を引き込むことができる。好適であり得る親水性材料の一例は、Kinetic Concepts,Inc.(San Antonio,Texas)より入手可能なV.A.C.WHITEFOAM(商標)ドレッシング材などの、ポリビニルアルコールの連続気泡発泡体である。他の親水性発泡体としては、ポリエーテルから作製されているものを挙げることができる。親水性特性を呈し得る他の発泡体としては、親水性を提供するように処理又はコーティングされている、疎水性発泡体が挙げられる。
【0030】
いくつかの実施形態では、組織インタフェース114は、生体吸収性材料から構築することができる。好適な生体吸収性材料としては、限定するものではないが、ポリ乳酸(polylactic acid;PLA)とポリグリコール酸(polyglycolic acid;PGA)とのポリマーブレンドを挙げることができる。このポリマーブレンドはまた、限定するものではないが、ポリカーボネート、ポリフマレート、及びカプロラクトンも含み得る。組織インタフェース114は更に、新たな細胞成長のための足場としての役割を果たし得るものであり、又は、足場材料を組織インタフェース114と併せて使用することにより、細胞成長を促進することもできる。足場とは、一般に、細胞成長のためのテンプレートを提供する三次元多孔質構造体などの、細胞の成長又は組織の形成を強化若しくは促進するために使用される、物質又は構造体である。足場材料の例示的な例としては、リン酸カルシウム、コラーゲン、PLA/PGA、コーラルヒドロキシアパタイト、カーボネート、又は、処理済みの同種移植片材料が挙げられる。
【0031】
いくつかの実施形態では、カバー116は、細菌バリア、及び、物理的外傷からの保護を提供し得る。カバー116はまた、蒸発損失を低減し、かつ2つの構成要素間、又は、治療環境と局所的外部環境との間などの2つの環境間に、流体シールを提供することが可能な、材料から構築することもできる。カバー116は、例えば、所与の陰圧源に対して、組織部位における陰圧を維持するために、十分なシールを提供することが可能な、弾性のフィルム又は膜とすることができる。カバー116は、いくつかの用途では、高い水蒸気透過率(moisture-vapor transmission rate;MVTR)を有し得る。例えば、MVTRは、いくつかの実施形態では、24時間当たり少なくとも約300g/mとすることができる。いくつかの例示的実施形態では、カバー116は、水蒸気に対して透過性であるが、液体に対して不透過性である、ポリウレタンフィルムなどのポリマードレープとすることができる。そのようなドレープは、典型的には、約25ミクロン~約50ミクロンの範囲の厚さを有する。透過性材料に関しては、その透過性は一般に、所望の陰圧を維持することが可能な、十分に低いものとするべきである。
【0032】
カバー116は、例えば、親水性ポリウレタン;セルロース系材料;親水性ポリアミド;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;親水性アクリル;親水性シリコーンエラストマー;例えば、約14400g/m/24時間のMVTR(倒立カップ技術)及び約30ミクロンの厚さを有する、Coveris Advanced Coatings(Wrexham,United Kingdom)製のINSPIRE 2301材料;コーティングされていない薄いポリマードレープ;天然ゴム;ポリイソプレン;スチレンブタジエンゴム;クロロプレンゴム;ポリブタジエン;ニトリルゴム;ブチルゴム;エチレンプロピレンゴム;エチレンプロピレンジエンモノマー;クロロスルホン化ポリエチレン;多硫化ゴム;ポリウレタン(polyurethane;PU);EVAフィルム;コポリエステル;シリコーン;シリコーンドレープ;3M Tegaderm(登録商標)ドレープ;Avery Dennison Corporation(Glendale,California)より入手可能なものなどの、ポリウレタン(PU)ドレープ;例えばArkema(France)製の、ポリエーテルブロックポリアミドコポリマー(PEBAX);INSPIRE 2327;又は他の適切な材料のうちの、1種以上の材料を含み得る。
【0033】
無損傷の表皮、ガスケット、又は別のカバーなどの取り付け表面に、カバー116を取り付けるために、取り付けデバイスを使用することができる。取り付けデバイスは、多くの形態を取り得る。例えば、取り付けデバイスは、組織部位の周囲の表皮にカバー116を接合するように構成されている、医学的に許容可能な感圧性接着剤とすることができる。いくつかの実施形態では、例えば、カバー116の一部又は全ては、約25グラム毎平方メートル(gram per square meter;g.s.m.)~約65g.s.m.のコーティング重量を有し得る、アクリル接着剤などの接着剤でコーティングすることができる。いくつかの実施形態では、シールを改善して漏出を低減するために、より厚い接着剤、又は接着剤の組み合わせを適用することができる。取り付けデバイスの他の例示的実施形態としては、両面テープ、ペースト、ヒドロコロイド、ヒドロゲル、シリコーンゲル、又はオルガノゲルを挙げることができる。
【0034】
流体源118はまた、点滴注入療法のための溶液を提供することが可能な、容器、キャニスタ、パウチ、バッグ、又は他の貯蔵構成要素も表し得る。溶液の組成は、規定される療法に従って変化し得るが、いくつかの処方に関して好適であり得る溶液の例としては、次亜塩素酸塩ベースの溶液、硝酸銀(0.5%)、イオウベースの溶液、ビグアニド、カチオン性溶液、及び等張溶液が挙げられる。
【0035】
シールされた治療環境内などの、別の構成要素又は場所において、圧力を低減するために陰圧源を使用する流体力学は、数学的に複雑なものとなり得る。しかしながら、陰圧療法及び点滴注入に適用可能な流体力学の基本的原理は、一般に当業者には周知であり、圧力を低減するプロセスは、本明細書では、例えば、陰圧を「送達すること」、「分配すること」、又は「生成すること」として例示的に説明することができる。
【0036】
一般に、滲出液及び他の流体は、流体経路に沿って、より低い圧力に向けて流れる。それゆえ、「下流」という用語は、典型的には、陰圧源に相対的により近いか、又は陽圧源からより遠く離れている、流体経路内の位置を意味する。反対に、「上流」という用語は、陰圧源から相対的により遠く離れているか、又は陽圧源により近い位置を意味する。同様に、そのような基準系において、流体の「入口」又は「出口」の観点から、特定の特徴を説明することが好都合であり得る。この向きは、全般的に、本明細書における様々な特徴及び構成要素を説明する目的のために想定されている。しかしながら、流体経路はまた、いくつかの用途では(陰圧源を陽圧源に置き換えることなどによって)逆転させることもでき、この説明上の慣例は、限定的な慣例として解釈されるべきではない。
【0037】
シールされた治療環境において、組織インタフェース114を介して組織部位全体にわたって適用される陰圧は、その組織部位におけるマクロ歪み及びマイクロ歪みを誘発し得る。陰圧はまた、組織部位から滲出液及び他の流体を除去することもでき、これらの滲出液及び他の流体は、キャニスタ106内に収集することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、コントローラ108は、圧力センサ110及び電気センサ112などの1つ以上のセンサから、データを受信して処理することができる。コントローラ108はまた、組織インタフェース114に送達される圧力を管理するために、療法システム100の1つ以上の構成要素の動作を制御することもできる。いくつかの実施形態では、コントローラ108は、所望の標的圧力を受信するための入力を含み得るものであり、組織インタフェース114に適用されることになる、その標的圧力の設定及び入力に関連するデータを処理するようにプログラムすることができる。いくつかの例示的実施形態では、標的圧力は、組織部位における療法に関して所望される標的陰圧として、オペレータによって設定されてから、コントローラ108への入力として提供される、固定圧力値とすることができる。標的圧力は、組織部位を形成している組織のタイプ、傷害若しくは創傷(存在する場合)のタイプ、患者の医学的状態、及び担当医の選好に基づいて、組織部位によって異なり得る。所望の標的圧力を選択した後に、コントローラ108は、その標的圧力に基づいて、1つ以上の制御モードにおいて陰圧源102を動作させることができ、組織インタフェース114における標的圧力を維持するために、1つ以上のセンサからフィードバックを受信することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、コントローラ108は、連続圧力モードを有し得るものであり、この連続圧力モードにおいて、陰圧源102は、治療の持続時間にわたって、又は手動で作動停止されるまで、一定の標的陰圧を提供するように動作される。更には、又は代替的に、コントローラは、間欠圧力モードを有し得る。コントローラ108は、陰圧源102を、標的圧力と大気圧との間で循環するように動作させることができる。例えば、標的圧力を、指定された期間(例えば、5分)にわたって135mmHgの値に設定し、その後、指定された期間(例えば、2分間)作動停止させることができる。陰圧源102を作動させることによって、このサイクルを繰り返すことができ、このことにより、標的圧力と大気圧との間での、方形波パターンを形成することができる。
【0040】
いくつかの例示的実施形態では、周囲圧力から標的圧力への陰圧の増大は、瞬間的ではない場合がある。例えば、陰圧源102及びドレッシング材104は、初期立ち上り時間を有し得る。初期立ち上り時間は、使用されているドレッシング材及び治療機器のタイプに応じて変化し得る。例えば、或る1つの療法システムに関する初期立ち上り時間は、約20~30mmHg/秒の範囲とすることができ、別の療法システムに関しては、約5~10mmHg/秒の範囲とすることができる。療法システム100が間欠モードで動作している場合には、繰り返しとなる立ち上り時間は、初期立ち上り時間に実質的に等しい値とすることができる。
【0041】
標的圧力は、動的圧力モードにおいて、時間と共に変化し得る。例えば、標的圧力は、+25mmHg/分の速度に設定された立ち上り時間と、-25mmHg/分の速度に設定された立ち下がり時間とを有する、50~135mmHgの陰圧の間で変化する、三角波形の形態で変化し得る。療法システム100の他の実施形態では、三角波形は、+30mmHg/分の速度に設定された立ち上り時間と、-30mmHg/分に設定された立ち下がり時間とを有する、25~135mmHgの陰圧の間で変化し得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、コントローラ108は、動的圧力モードにおいて、可変標的圧力を制御又は決定することができ、可変標的圧力は、所望の陰圧の範囲として、オペレータによって規定される入力として設定することが可能な、最大圧力値と最小圧力値との間で変化し得る。可変標的圧力はまた、コントローラ108によって処理及び制御することもでき、コントローラ108は、三角波形、正弦波形、又は鋸歯波形などの所定の波形に従って、標的圧力を変化させることができる。いくつかの実施形態では、波形は、治療に関して所望される所定の陰圧又は時変陰圧として、オペレータによって設定することができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、コントローラ108は、組織インタフェース114に提供される点滴注入溶液に関連するデータなどの、データを受信して処理することができる。そのようなデータは、臨床医によって処方される点滴注入溶液のタイプ、組織部位に注入されることになる流体若しくは溶液の体積(「充填体積」)、及び、組織部位に陰圧を適用する前に、その組織部位に溶液を放置するように規定される時間の量(「滞留時間」)を含み得る。充填体積は、例えば、10~500mLとすることができ、滞留時間は、1秒~30分とすることができる。コントローラ108はまた、溶液を注入するための、療法システム100の1つ以上の構成要素の動作も、制御することができる。例えば、コントローラ108は、溶液源118から組織インタフェース114に分配される流体を管理することができる。いくつかの実施形態では、組織部位における圧力を低減して、組織インタフェース114内に溶液を引き込むために、陰圧源102からの陰圧を適用することによって、組織部位に流体を注入することができる。いくつかの実施形態では、溶液源118から組織インタフェース114に溶液を移動させるために、陽圧源120からの陽圧を適用することによって、組織部位に溶液を注入することができる。更には、又は代替的に、重力により組織インタフェース114内に溶液を移動させることが可能となるように、十分な高さまで溶液源118を上昇させることもできる。
【0044】
コントローラ108はまた、溶液の連続流又は溶液の間欠流を提供することによって、点滴注入の流体動力学を制御することもできる。溶液の連続流又は間欠流のいずれかを提供するように、陰圧を適用することができる。陰圧の適用は、組織インタフェース114を介した点滴注入溶液の連続流量を達成するための、連続圧力動作モードを提供するように実施することができ、又は、組織インタフェース114を介した点滴注入溶液の流量を変化させるための、動的圧力動作モードを提供するように実施することもできる。あるいは、陰圧の適用は、組織インタフェース114に点滴注入溶液が滞留することを可能にするための、間欠動作モードを提供するように実施することもできる。間欠モードにおいては、例えば、治療されている組織部位のタイプ、及び利用されているドレッシング材のタイプに応じて、特定の充填体積及び滞留時間を提供することができる。溶液の点滴注入後又は点滴注入中に、陰圧治療を適用することができる。コントローラ108は、より多くの溶液を注入することによる別の点滴注入サイクルを開始する前に、陰圧治療の動作モード及び持続時間を選択するために利用することができる。
【0045】
陰圧療法及び点滴注入療法を提供する一部の療法システムは、臨床的に適切な点滴注入体積を決定する際に、困難に遭遇する場合がある。一部の臨床医は、陰圧閉鎖療法による点滴注入の技術的態様に精通していない場合があり、個々の組織部位に関して適切な点滴注入体積を決定することが不可能な場合がある。他の臨床医は、不透明なドレッシング材又は創傷充填材によって、組織部位に対する自身の視界が遮られる場合がある。更に他の臨床医は、陰圧閉鎖療法による点滴注入の適切な投与に対する、他の障害に直面する場合がある。組織部位に関する適切な点滴注入体積を決定することが不可能であることは、組織部位の過剰充填につながる恐れがある。組織部位又はドレッシング材の過剰充填とは、組織部位自体の体積よりも大きい体積の流体の、組織部位への点滴注入を指す場合がある。過剰充填は、組織部位における圧力を上昇させて、ドレッシング材を破損させることにより、ドレッシング材から流体が漏出することを許容する恐れがある。過剰充填によって引き起こされる流体漏出はまた、組織部位を覆うドレッシング材が、陰圧療法間隔中に、もはやシールを維持し得ないため、陰圧療法の失敗を引き起こす恐れもある。
【0046】
適切な体積の点滴注入溶液を提供できないことはまた、組織部位の過少充填にもつながる恐れがある。過少充填とは、組織部位を適切に飽和させるためには不十分な体積の流体を、組織部位に注入することを指す場合がある。点滴注入溶液の過少充填は、点滴注入療法の有効性を低下させることにより、点滴注入療法から患者が享受し得る利益を低減する恐れがある。過剰充填及び過少充填を防止することは、組織部位の体積の適切な推定に依存する。組織部位のサイズ及び体積の適切な推定は、場合によっては、時間を要するプロセスであり得る。残念ながら、患者ケアに関して臨床医に課される時間的要求は、1日の時間数を超過する場合がある。その結果、陰圧閉鎖療法による点滴注入の採用又は使用を臨床医が回避する可能性があるため、過度の時間的要求は、陰圧閉鎖療法による点滴注入の採用の減少につながる恐れがある。陰圧閉鎖療法による点滴注入の採用を回避することは、陰圧閉鎖療法による点滴注入療法の利益を、より多くの人々が享受することを妨げる恐れがある。
【0047】
これらの制限及び他の制限は、個々の組織部位の最適な点滴注入体積を決定するためのシステム及びプロセスを提供することが可能な、療法システム100によって対処することができる。個々の組織部位の最適な点滴注入体積の決定は、点滴注入溶液の送達を療法システム100が最適化することを可能にすることにより、組織部位の過剰充填又は過少充填のリスクが軽減される。システム100の使用を介した最適な点滴注入体積の決定はまた、臨床医の時間的要求も軽減し、点滴注入及び陰圧閉鎖療法を提供するシステムの使用の容易性も改善することにより、患者転帰の改善、及び有益な療法のより広範な採用にもつながり得る。
【0048】
例えば、療法システム100は、点滴注入、溶液滞留、及び、制御された陰圧の間隔を提供することができる。いくつかの実施形態では、療法システム100のコントローラ108には、注入体積決定及び制御論理、並びに、注入された体積を決定する方法を装備することができる。療法システム100は、可変体積の溶液を注入するための装置、陰圧送達システム、及び陰圧収集システムを更に含む。いくつかの実施形態では、陰圧収集システムには、組織部位から収集された流体の体積を決定する方法を装備することができる。いくつかの実施形態では、システム100は、最適な点滴注入体積を決定する。最適な点滴注入体積は、ドレッシング材104の飽和を達成する体積とすることができる。飽和は、点滴注入サイクルが注入した体積と同じ体積の液体を、陰圧サイクルが除去する、点滴注入サイクルと陰圧サイクルとが平衡に達する場合に生じる。平衡はまた、ドレッシング材の保持している点滴注入体積が、最大化される時点として表すこともできる。
【0049】
いくつかの実施形態では、コントローラ108は、キャニスタ106に通信可能に結合することができる。キャニスタ106は、組織部位から受け取られた流体の体積を決定するように構成されている、センサ126又は他のデバイスを含み得る。例えば、コントローラ108及びセンサ126は、回転速度測定、重量の変化、又は他の好適な方法を介して、ドレッシング材104から受け取られた流体の体積を決定することができる。いくつかの実施形態では、センサ126は、歪みゲージとすることができる。流体がキャニスタ106に入ると、キャニスタ106に追加された流体の重量により、センサ126に対する力を増大させることができる。その力に応答してセンサ126によって生成された信号を、コントローラ108によって受信して、流体の重量、及び対応する体積として解釈することができる。いくつかの実施形態では、コントローラ108は、後続の陰圧療法サイクルにおいてキャニスタ106に追加される流体の追加量を決定するために、流体の重量の中間値を記憶することができる。
【0050】
他の実施形態では、センサ126は、ホール効果センサなどの回転速度計とすることができる。例えば、センサ126は、キャニスタ106の流体入口に配置することができる。陰圧療法サイクル中にセンサ126を流れ過ぎる流体により、回転速度を表す信号をセンサ126に生成させることができる。その信号をコントローラ108によって受信して、対応する体積として解釈することができる。更に他の実施形態では、センサ126は、ガラス製レベルゲージ又はフロートとすることができる。センサ126は、ディスプレーサ、バブラ、又は差圧トランスミッタなどの、静水圧デバイスの1つのタイプとすることもできる。センサ126は、ロードセル、磁気レベルゲージ、又は静電容量トランスミッタとすることもできる。更に他の実施形態では、センサ126は、磁歪式レベルトランスミッタ、超音波レベルトランスミッタ、レーザレベルトランスミッタ、又は更にレーダレベルトランスミッタとすることもできる。センサ126はまた、抵抗チェーン、ガンマ線、又はマイクロ波センサなどの、他のタイプのレベルセンサとすることもできる。例示的実施形態では、センサ126は、Strain Measurement Devicesによって製造されているものなどの光学液体レベルセンサ、又はWolf GmbHによって製造されている44.1WS-B/K1若しくは44.2WS-Gなどの光ファイバ水センサとすることができる。他の好適なセンサは、液体レベルトランスミッタ及びインジケータ用に製造されているものなどの、SEMRAD Process Control and Monitoringによって製造されているものとすることができ、Pulsar Measurementによって製造されているdBi HART超音波インテリジェントトランスデューサなどの、廃水レベル監視用に製造されているセンサが、好適なタイプのセンサを表し得る。
【0051】
好ましくは、センサ126がコントローラ108に通信可能に結合されていることにより、コントローラ108は、陰圧療法の各サイクルで受け取られた流体の体積を、キャニスタ106内に従前に収容されていた流体の体積から区別することが可能となり得る。いくつかの実施形態では、センサ126は、各陰圧療法サイクルでキャニスタ106に流れ込む流体の体積を決定するために、キャニスタ106とドレッシング材104との間に流体結合され、かつコントローラ108に通信可能に結合されている、別個の流量計とすることもできる。いくつかの実施形態では、コントローラ108は、センサ126から受信された信号に応答して、陰圧療法を調節するように構成することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、コントローラ108は、流体源118及び/又は調整器122に、通信可能に結合することができる。流体源118及び/又は調整器122は、ドレッシング材104に送達される流体の体積を決定するように構成されている、センサ128又は他のデバイスを含み得る。例えば、コントローラ108及びセンサ128は、回転速度測定、重量の変化、又は他の好適な方法を介して、ドレッシング材104に送達される流体の体積を決定することができる。いくつかの実施形態では、センサ128は、歪みゲージとすることができる。流体が流体源118から出ると、その流体の重量により、センサ128に対する力を減少させることができる。その力に応答してセンサ128によって生成された信号を、コントローラ108によって受信して、流体の重量、及び対応する送達された体積として解釈することができる。いくつかの実施形態では、コントローラ108は、後続の点滴注入サイクルにおいて流体源118から除去される流体の追加量を決定するために、流体の重量の中間値を記憶することができる。
【0053】
他の実施形態では、センサ128は、ホール効果センサなどの回転速度計とすることができる。例えば、センサ128は、調整器122の流体出口に配置することができる。点滴注入療法サイクル中にセンサ128を流れ過ぎる流体により、回転速度を表す信号をセンサ128に生成させることができる。その信号をコントローラ108によって受信して、対応する体積として解釈することができる。
【0054】
好ましくは、センサ128がコントローラ108に通信可能に結合されていることにより、コントローラ108は、点滴注入療法の各サイクルで送達される流体の体積を、調整器122を介して従前に送達された流体の体積から区別することが可能となり得る。いくつかの実施形態では、センサ128は、各点滴注入療法サイクルでドレッシング材104に流れ込む流体の体積を決定するために、調整器122とドレッシング材104との間に流体結合され、かつコントローラ108に通信可能に結合されている、別個の流量計とすることもできる。いくつかの実施形態では、コントローラ108は、センサ128から受信された信号に応答して、点滴注入療法を調節するように構成することができる。
【0055】
図2は、組織部位と共に使用するためのドレッシング材の選択のために、初期組織部位体積を決定するためのプロセス200の、動作ステップを示すフローチャートである。いくつかの実施形態では、臨床医が、プロセス200に関連付けられているステップを実行することができる。他の実施形態では、システム100のコントローラ108が、プロセス200に関連付けられているステップを実行することができる。本プロセスは、組織部位のサイズが推定される、ブロック202から開始する。いくつかの実施形態では、臨床医が、組織部位のサイズを視覚的に推定することができる。例えば、臨床医は、組織部位を視覚的に観察して、その組織部位サイズの初期推定を行うことができる。いくつかの実施形態では、臨床医は、組織部位を、小、中、大、又は特大として、視覚的に推定することができる。いくつかの実施形態では、同様に名付けられている包装済みドレッシング材の存在によって、臨床医を支援することができる。臨床医は、包装済みドレッシング材を組織部位と視覚的に比較することにより、その包装済みドレッシング材が適切なサイズであるか否かを決定することができる。
【0056】
本プロセスは、組織部位が小さい組織部位であるか否かをプロセス200が決定する、ブロック204に続く。例えば、臨床医は、小型の包装済みドレッシング材を組織部位と比較することにより、その小型の包装済みドレッシング材が組織部位を充填することができるか否かを決定することができる。組織部位が小さい組織部位である場合には、本プロセスは、その組織部位にプロセス200が小型のドレッシング材を適用する、ブロック206への「はい」の経路を進む。例えば、臨床医は、小さい体積を有するドレッシング材104を、その組織部位に配置することができる。プロセス200は、最適化ルーチンが開始される、ブロック218に続く。例えば、臨床医は、小型のドレッシング材が組織部位に位置決めされたという情報を、ユーザインタフェースの使用を介してコントローラ108に提供することができ、コントローラ108は、最適化ルーチンを開始する。
【0057】
ブロック204において、組織部位が小さい組織部位ではない場合には、本プロセスは、その組織部位が中程度の組織部位であるか否かをプロセス200が決定する、ブロック208への「いいえ」の経路を進む。例えば、臨床医は、中型の包装済みドレッシング材を組織部位と比較することにより、その中型の包装済みドレッシング材が組織部位を充填することができるか否かを決定することができる。組織部位が中程度の組織部位である場合には、本プロセスは、その組織部位と共に中型のドレッシング材をプロセス200が使用する、ブロック210への「はい」の経路を進む。例えば、臨床医は、中程度の体積を有するドレッシング材104を、その組織部位に配置することができる。プロセス200は、最適化ルーチンが開始される、ブロック218に続く。例えば、臨床医は、中型のドレッシング材が組織部位に位置決めされたという情報を、ユーザインタフェースの使用を介してコントローラ108に提供することができ、コントローラ108は、最適化ルーチンを開始する。
【0058】
ブロック208において、組織部位が中程度の組織部位ではない場合には、本プロセスは、その組織部位が大きい組織部位であるか否かをプロセス200が決定する、ブロック212への「いいえ」の経路を進む。例えば、臨床医は、大型の包装済みドレッシング材を組織部位と比較することにより、その大型の包装済みドレッシング材が組織部位を充填することができるか否かを決定することができる。組織部位が大きい組織部位である場合には、本プロセスは、その組織部位と共に大型のドレッシング材をプロセス200が使用する、ブロック214への「はい」の経路を進む。例えば、臨床医は、大きい体積を有するドレッシング材104を、その組織部位に配置することができる。プロセス200は、最適化ルーチンが開始される、ブロック218に続く。例えば、臨床医は、大型のドレッシング材が組織部位に位置決めされたという情報を、ユーザインタフェースの使用を介してコントローラ108に提供することができ、コントローラ108は、最適化ルーチンを開始する。ブロック212において、組織部位が大きい組織部位ではない場合には、本プロセスは、その組織部位と共に特大のドレッシング材をプロセス200が使用する、ブロック216への「いいえ」の経路を進む。例えば、臨床医は、特大の体積を有するドレッシング材104を、その組織部位に配置することができる。プロセス200は、最適化ルーチンが開始される、ブロック218に続く。例えば、臨床医は、特大のドレッシング材が組織部位に位置決めされたという情報を、ユーザインタフェースの使用を介してコントローラ108に提供することができ、コントローラ108は、最適化ルーチンを開始する。
【0059】
図3は、図1のシステム100によって実行される、組織部位の最適な流体点滴注入体積を決定するための最適化ルーチン又はプロセス300の、動作ステップを示すフローチャートである。いくつかの実施形態では、プロセス300は、均一なプロセス、均一な点滴注入プロファイル、又は均一な最適化ルーチンを使用することができる。均一な点滴注入プロファイルとは、各点滴注入サイクルで同じ体積の、周期的な流体の送達を指す場合がある。プロセス300は、システム100が注入体積(IV)を受け取る、ブロック302から開始する。いくつかの実施形態では、コントローラ108は、組織部位サイズの視覚的推定に基づいて初期点滴注入体積を設定するための、図2のプロセス200からの入力を受信することができる。例えば、臨床医は、小型の包装済みドレッシング材が使用されたことを入力することができ、コントローラ108は、注入体積(IV)を、小型のドレッシング材の使用に関連付けられている予想体積に設定することができる。同様に、中型、大型、又は特大の包装済みドレッシング材が使用された場合には、コントローラ108は、注入体積(IV)を、中型、大型、又は特大の包装済みドレッシング材の使用に関連付けられている予想体積に設定することができる。
【0060】
本プロセスは、注入体積(IV)が組織部位に注入される、ブロック304に続く。例えば、コントローラ108は、注入体積(IV)を組織部位に注入するために、陽圧源120及び調整器122を作動させることができる。いくつかの実施形態では、組織部位への注入体積(IV)の点滴注入の後に、滞留動作を実行することができる。滞留動作とは、注入された体積が所定の期間にわたってドレッシング材内に留まることを可能にする動作とすることができる。他の実施形態では、滞留動作は実行されない。本プロセスは、注入体積(IV)に関連付けられている値が記憶される、ブロック306に続く。例えば、調整器122及び/又は流体源118に関連付けられているセンサ128は、組織部位に注入された流体の体積である、注入体積(IV)に関連付けられている値を示す信号を、コントローラ108に提供することができる。コントローラ108は、組織部位に注入された流体の体積、すなわち注入体積(IV)に関連付けられている値を記憶することができる。
【0061】
プロセス300は、陰圧療法サイクルにおいて組織部位から流体が引き込まれ、或る体積の流体が回収される、ブロック308に続く。例えば、コントローラ108は、組織部位からドレッシング材104を介してキャニスタ106内に流体を引き込むために、陰圧源102を動作させることができる。いくつかの実施形態では、この陰圧源102の動作は、陰圧療法の一回のサイクルに関するものとすることができる。本プロセスは、回収された流体の体積である、回収体積(RV)に関連付けられている流体の体積を、プロセス300が測定して記憶する、ブロック310に続く。例えば、センサ126は、組織部位から回収された流体の体積である、回収体積(RV)の値を示す信号を生成することができる。コントローラ108は、センサ126によって生成された信号に関連付けられている値である、回収体積(RV)を受信して記憶することができる。
【0062】
本プロセスは、プロセス300が注入体積(IV)を回収体積(RV)と比較する、ブロック312に続く。例えば、コントローラ108は、注入体積(IV)に関連付けられている値を、回収体積(RV)に関連付けられている値と比較することができる。ブロック314において、プロセス300は、回収体積(RV)が注入体積(IV)よりも大きいか否かを決定する。例えば、コントローラ108は、回収体積(RV)に関連付けられている値を、注入体積(IV)に関連付けられている値と比較する。回収体積(RV)が注入体積(IV)よりも大きい場合には、本プロセスは、プロセス300がエラーを報告する、ブロック316への「はい」の経路を進み、プロセス300は終了する。例えば、コントローラ108は、聴覚アラーム、触覚アラーム、又は視覚アラームなどの、アラームを信号発信することができる。
【0063】
ブロック314において、回収体積(RV)が注入体積(IV)よりも大きくはない場合には、プロセス300は、回収体積(RV)が注入体積(IV)よりも少ないか否かをプロセス300が決定する、決定ブロック318に続く。回収体積(RV)が注入体積(IV)よりも少ない場合には、プロセス300は、プロセス300が繰り返される、ブロック304への「はい」の経路に沿って進む。回収体積(RV)が注入体積(IV)よりも少なくはない場合には、プロセス300は、プロセス300が最適化を報告する、ブロック320への「いいえ」の経路を進み、ブロック322に続く。ブロック322において、プロセス300は、陰圧閉鎖療法による点滴注入を開始する。例えば、コントローラ108は、聴覚インジケータ、触覚インジケータ、又は視覚インジケータなどを用いて、ドレッシング材104が最適な点滴注入体積にあることを報告し、コントローラ108は、陰圧閉鎖療法による点滴注入を開始する。いくつかの実施形態では、コントローラ108は、プロセス300中に、点滴注入の回数及び体積を追跡することができる。コントローラ108が、飽和が達成されていると決定すると、コントローラ108は、陰圧療法による点滴注入のための、最適化された点滴注入体積を提供することができる。最適化された点滴注入体積は、プロセス300中の点滴注入の回数及びサイズ、並びに、プロセス300中に各体積の流体が注入された後に組織部位に放置される、点滴注入流体の推定に部分的に基づき得る。最適化された点滴注入体積は、組織部位のサイズに加えて、陰圧の設定及び陰圧の持続時間によって更に変化し得る。
【0064】
図4は、図3の動作ステップによる流体体積を示す、棒グラフと線グラフとの組み合わせである。図4において、y軸は流体の体積を表し、x軸は時間を表す。プロセス300を通じた各サイクルにおいて、注入体積(IV)は同じであり、すなわち、ドレッシング材104に送達される流体の体積は同じである。例えば、プロセス300のブロック304で実施される各注入サイクルにおいて、システム100は、同じ体積の流体を送達する。棒線402、406、410、414、及び418によって示されているように、プロセス300を通じた各反復は、同じ体積の流体を送達するものであり、すなわち、注入体積(IV)は同じである。同様に、プロセス300のブロック308において実施される各陰圧療法サイクルは、ほぼ同じ長さを有することになる。例えば、プロセス300の各陰圧療法サイクルにおいて、システム100は、ほぼ同じ長さの時間にわたって、陰圧源102を動作させることになる。棒線404、408、412、416、及び420によって示されているように、陰圧療法サイクルは、ほぼ同じ長さである。各陰圧療法サイクルで、本システムは、異なる量の流体を回収することになる。流体が組織部位に注入されると、組織インタフェース114は、ある程度の量の流体を吸収し得る。それゆえ、陰圧療法サイクル中に回収される流体の量は、送達された流体の量から、組織インタフェース114によって吸収された流体の量を差し引いたものとなる。
【0065】
線422は、各陰圧療法サイクルの後に、組織部位、例えば組織インタフェース114によって保持されている、流体の総体積を示す。各陰圧療法サイクルの後に回収されている流体の総体積は、組織インタフェース114及び組織部位が飽和するまで増大することになる。飽和は、陰圧療法サイクルが、注入された流体の体積に等しい体積を回収する場合に生じる。図示の実施形態では、棒線404によって示される陰圧療法サイクルの後に、第1の体積の流体426が回収されている。第1の体積の流体426は、棒線402の注入サイクル中に注入された流体の体積よりも少ない。注入サイクル402中に注入された流体の総体積の残部は、第1の体積の保持流体427によって示されているように、組織インタフェース114によって組織部位に保持されている。棒線408によって示される陰圧療法サイクルの後に、第2の体積の流体428が回収されている。第2の体積の流体428は、第1の体積の流体426よりも多く、かつ棒線406の注入サイクル中に注入された流体の体積よりも少ない。注入サイクル406中に注入された流体の体積の残部は、第2の体積の保持429によって示されているように、組織インタフェース114によって組織部位に保持されている。第2の体積の保持流体429は、第1の体積の保持流体427よりも少ない。棒線412によって示される陰圧療法サイクルの後に、第3の体積の流体430が回収されている。第3の体積の流体430は、第1の体積の流体426及び第2の体積の流体428よりも多く、かつ注入サイクル410中に注入された流体の体積よりも少ない。注入サイクル410中に注入された流体の体積の残部は、第3の体積の保持431によって示されているように、組織インタフェース114によって組織部位に保持されている。第3の体積の保持流体431は、第1の体積の保持流体427及び第2の体積の保持流体431よりも少ない。棒線416によって示される陰圧療法サイクルの後に、第4の体積の流体432が回収されている。第4の体積の流体430は、第1の体積の流体426、第2の体積の流体428、及び第3の体積の流体430よりも多く、かつ棒線414の注入サイクル中に注入された流体の体積に等しい。第4の体積の流体432が、棒線414において注入された流体の量に等しいことは、ドレッシング材104及び組織部位が飽和に達しており、点滴注入体積が最適化されていることを表す。後続の各サイクルにおいて、回収される流体の体積、例えば、陰圧サイクル420中に回収される第5の体積の流体434は、その陰圧サイクルの前に注入された流体の体積、例えば、棒線418において注入された流体の体積に実質的に等しい。
【0066】
図5は、図1のシステム100によって実行される、組織部位の最適な流体点滴注入体積を決定するための別の最適化ルーチン又はプロセス500の、動作ステップを示すフローチャートである。いくつかの実施形態では、プロセス500は、ボーラス先行(bolus-lead)減少プロセス又はボーラス先行減少点滴注入プロファイルを使用することができる。プロセス500は、システム100が初期注入体積(IIV)を受け取る、ブロック502から開始する。いくつかの実施形態では、プロセス500は、プロセス200に応答して、初期注入体積(IIV)を受け取る。例えば、コントローラ108は、組織部位サイズの視覚的推定に基づいて初期点滴注入体積(IIV)を設定するための、図2のプロセス200からの入力を受信することができる。いくつかの実施形態では、臨床医は、小型の包装済みドレッシング材が使用されたことを入力することができ、コントローラ108は、初期注入体積(IIV)を、小型のドレッシング材の使用に関連付けられている予想体積に設定することができる。同様に、中型、大型、又は特大の包装済みドレッシング材が使用された場合には、コントローラ108は、初期注入体積(IIV)を、中型、大型、又は特大の包装済みドレッシング材の使用に関連付けられている予想体積に設定することができる。プロセス500は、初期点滴注入体積(IIV)が記憶される、ブロック504に続く。例えば、コントローラ108は、初期注入体積(IIV)に関連付けられている値を記憶することができる。
【0067】
ブロック506において、初期点滴注入体積(IIV)が、組織部位に注入される。例えば、コントローラ108は、初期点滴注入体積(IIV)をドレッシング材104に注入するために、陽圧源120及び調整器122を作動させることができる。いくつかの実施形態では、組織部位への初期注入体積(IIV)の点滴注入の後に、滞留動作を実行することができる。他の実施形態では、滞留動作は実行されない。プロセス500は、組織部位に注入された流体の体積に関連付けられている値が記憶される、ブロック508に続く。例えば、センサ128は、組織部位に注入された流体の体積である、注入体積(IV)に関連付けられている値を示す信号を、コントローラ108に提供することができる。コントローラ108は、組織部位に注入された流体の体積である、注入体積(IV)に関連付けられている値を記憶することができる。
【0068】
プロセス500は、陰圧療法サイクルにおいて組織部位から流体が引き込まれ、或る体積の流体(回収体積(RV))が回収される、ブロック510に続く。例えば、コントローラ108は、組織部位からドレッシング材104を介してキャニスタ106内に流体を引き込むために、陰圧源102を動作させることができる。プロセス500は、回収体積(RV)に関連付けられている流体の体積をプロセス500が測定して記憶する、ブロック512に続く。例えば、センサ126は、組織部位から回収された流体の体積である、回収体積(RV)の値を示す信号を生成することができる。コントローラ108は、センサ126によって生成された信号に関連付けられている値を、受信して記憶することができる。
【0069】
本プロセスは、プロセス500が注入体積(IV)を回収体積(RV)と比較する、ブロック514に続く。例えば、コントローラ108は、注入体積(IV)に関連付けられている値を、回収体積(RV)に関連付けられている値と比較することができる。ブロック516において、プロセス500は、回収体積(RV)が注入体積(IV)よりも大きいか否かを決定する。例えば、コントローラ108は、回収体積(RV)に関連付けられている値を、注入体積(IV)に関連付けられている値と比較する。回収体積(RV)が注入体積(IV)よりも大きい場合には、本プロセスは、プロセス500がエラーを報告する、ブロック518への「はい」の経路を進み、プロセス500は終了する。例えば、コントローラ108は、聴覚アラーム、触覚アラーム、又は視覚アラームなどの、アラームを信号発信することができる。
【0070】
ブロック516において、回収体積(RV)が注入体積(IV)よりも大きくはない場合には、本プロセスは、回収体積(RV)が注入体積(IV)よりも少ないか否かをプロセス500が決定する、決定ブロック520への「いいえ」の経路を進む。回収体積(RV)が注入体積(IV)よりも少ない場合には、プロセス500は、初期注入体積(IIV)を、注入体積(IV)よりも所定の量だけ少なくなるように設定することによって、プロセス500が、流体の体積を注入することを反復する、ブロック522への「はい」の経路に沿って進む。例えば、コントローラ108は、初期注入体積(IIV)を、注入体積(IV)よりも所定の量だけ少なくなるように削減することができる。いくつかの実施形態では、この反復は、注入された流体の体積と回収された流体の体積との関係に応答して選択することができる。例えば、回収された流体の体積が、注入された流体の体積の閾値パーセンテージを上回る場合には、本システムは、流体のボーラスが回収されていると決定することができる。それに応答して、本システムは、後続の点滴注入体積の削減量を増大させることができる。本プロセスは、プロセス500が繰り返される、ブロック506に続く。
【0071】
ブロック520において、回収体積(RV)が注入体積(IV)よりも少なくはない場合には、プロセス500は、プロセス500が最適化を報告する、ブロック524への「いいえ」の経路を進み、陰圧閉鎖療法による点滴注入をプロセス500が開始する、ブロック526に続く。例えば、コントローラ108は、聴覚インジケータ、触覚インジケータ、又は視覚インジケータなどを用いて、ドレッシング材104が最適な点滴注入体積にあることを報告し、コントローラ108は、陰圧閉鎖療法による点滴注入を開始する。
【0072】
図6は、図5の動作ステップによる最適な流体点滴注入体積の決定を示す、棒グラフと折れ線グラフとの組み合わせである。図6において、y軸は流体の体積を表し、x軸は時間を表す。プロセス500を通じた各サイクルにおいて、組織部位には、徐々に減少する体積が注入される。例えば、プロセス500の、後続の各注入サイクルにおいて、システム100は、より少ない体積の流体を送達する。棒線602、606、610、614、及び616によって示されているように、プロセス500を通じた各反復は、より少ない体積の流体を送達するものであり、すなわち、注入体積(IV)は減少する。各陰圧療法サイクルは、ほぼ同じ長さを有することになる。例えば、プロセス500の各陰圧療法サイクルにおいて、システム100は、ほぼ同じ長さの時間にわたって、陰圧源102を動作させることになる。棒線604、608、612、616、及び620によって示されているように、陰圧療法サイクルは、ほぼ同じ長さである。各陰圧療法サイクルで、システム100は、異なる量の流体を回収することになる。流体が組織部位に注入されると、組織インタフェース114は、ある程度の量の流体を吸収し得る。それゆえ、陰圧療法サイクル中に回収される流体の量は、送達された流体の量から、組織インタフェース114によって吸収された流体の量を差し引いたものとなる。
【0073】
線622は、各陰圧療法サイクルの後に、組織部位、例えば組織インタフェース114によって保持されている、流体の総体積を示す。各陰圧療法サイクルの後に保持されている流体の総体積は、組織インタフェース114及び組織部位が飽和するまで増大することになる。飽和は、陰圧療法サイクルが、注入された流体の体積に等しい体積を回収する場合に生じる。図示の実施形態では、棒線604によって示される陰圧療法サイクルの後に、第1の体積の流体626が回収されている。第1の体積の流体626は、棒線602の注入サイクル中に注入された流体の体積よりも少ない。注入サイクル602中に注入された流体の総体積の残部は、第1の体積の保持流体627によって示されているように、組織インタフェース114によって組織部位に保持されている。図6に示されているように、第1の体積の流体626は大きいものと見なすことができ、それに応答して、後続の注入体積を削減することができる。例えば、棒線606の注入サイクル中に注入される流体の体積は、注入サイクル602中に注入された流体の体積よりも少ない。線622は、時点640において、保持されている流体の総体積が、第1の体積の保持流体627に実質的に等しいことを示している。
【0074】
棒線608によって示される陰圧療法サイクルの後に、第2の体積の流体628が回収されている。第2の体積の流体628は、この場合もまた、注入サイクル606中に注入された流体の体積よりも少ないが、しかしながら、第2の体積の流体628は、注入サイクル606中に注入された流体の体積のうちの、より大きい割合を表し得る。注入サイクル606中に注入された流体の総体積の残部は、第2の体積の保持流体629によって示されているように、組織インタフェース114によって組織部位に保持されている。線622は、時点642において、保持されている流体の総体積が、第1の体積の保持流体627及び第2の体積の保持流体629に実質的に等しいことを示している。
【0075】
棒線612によって示される陰圧療法サイクルの後に、第3の体積の流体630が回収されている。第3の体積の流体630は、この場合もまた、注入サイクル610中に注入された流体の体積よりも少ないが、しかしながら、第3の体積の流体630は、注入サイクル610中に注入された流体の体積のうちの、より大きい割合を表し得る。注入サイクル610中に注入された流体の総体積の残部は、第3の体積の保持流体631によって示されているように、組織インタフェース114によって組織部位に保持されている。線622は、時点644において、保持されている流体の総体積が、第1の体積の保持流体627、第2の体積の保持流体629、及び第3の体積の保持流体631に実質的に等しいことを示している。時点644において表されているように、線622が、棒線602において注入された流体の量に等しいことは、ドレッシング材104及び組織部位が飽和に達しており、点滴注入体積が最適化されていることを示す。後続の点滴注入サイクル614及びサイクル618、並びに対応の陰圧サイクル616及びサイクル620は、先行の点滴注入サイクルにおける流体注入の体積に実質的に等しい体積の、流体632及び流体634を回収している。それに応答して、線622は、実質的に水平のままであり、これは、組織部位及びドレッシング材104の飽和に達していることを更に示すものである。
【0076】
図7は、図1のシステム100によって実行される、組織部位の最適な流体点滴注入体積を決定するための最適化ルーチン又はプロセス700の、動作ステップを示すフローチャートである。いくつかの実施形態では、プロセス700は、段階的増大プロセス又は段階的増大点滴注入プロファイルを使用することができる。プロセス700は、プロセス200に応答して、システム100が初期点滴注入体積(IIV)を受け取る、ブロック702から開始する。例えば、コントローラ108は、組織部位サイズの視覚的推定に基づいて初期点滴注入体積(IIV)を設定するための、図2のプロセス200からの入力を受信することができる。いくつかの実施形態では、臨床医は、小型の包装済みドレッシング材が使用されたことを入力することができ、コントローラ108は、初期注入体積(IIV)を、小型のドレッシング材の使用に関連付けられている予想体積に設定することができる。同様に、中型、大型、又は特大の包装済みドレッシング材が使用された場合には、コントローラ108は、初期注入体積(IIV)を、中型、大型、又は特大の包装済みドレッシング材の使用に関連付けられている予想体積に設定することができる。プロセス700は、初期点滴注入体積(IIV)が記憶される、ブロック704に続く。例えば、コントローラ108は、初期点滴注入体積(IIV)に関連付けられている値を記憶することができる。
【0077】
ブロック706において、初期注入体積(IIV)が、組織部位に注入される。例えば、コントローラ108は、初期点滴注入体積(IIV)をドレッシング材104に注入するために、陽圧源120及び調整器122を作動させることができる。いくつかの実施形態では、組織部位への注入体積の点滴注入の後に、滞留動作を実行することができる。他の実施形態では、滞留動作は実行されない。プロセス700は、注入された流体の体積である、注入体積(IV)に関連付けられている値が記憶される、ブロック708に続く。例えば、調整器122又は流体源118は、組織部位に注入された流体の体積である、注入体積(IV)に関連付けられている値を示す信号を、コントローラ108に提供することができる。コントローラ108は、組織部位に注入された流体の体積である、注入体積(IV)に関連付けられている値を記憶することができる。
【0078】
プロセス700は、陰圧療法サイクルにおいて組織部位から流体が引き込まれ、或る体積の流体が回収される、ブロック710に続く。例えば、コントローラ108は、組織部位からドレッシング材104を介してキャニスタ106内に流体を引き込むために、陰圧源102を動作させることができる。プロセス700は、回収された流体の体積である、回収体積(RV)に関連付けられている流体の体積をプロセス700が測定して記憶する、ブロック712に続く。例えば、キャニスタ106は、組織部位から回収された流体の体積である、回収体積(RV)の値を示す信号を生成することができる。コントローラ108は、キャニスタ106によって生成された信号に関連付けられている値を、受信して記憶することができる。
【0079】
本プロセスは、プロセス700が注入体積(IV)を回収体積(RV)と比較する、ブロック714に続く。例えば、コントローラ108は、注入体積(IV)に関連付けられている値を、回収体積(RV)に関連付けられている値と比較することができる。ブロック716において、プロセス700は、回収体積(RV)が注入体積(IV)よりも大きいか否かを決定する。例えば、コントローラ108は、回収体積(RV)に関連付けられている値を、注入体積(IV)に関連付けられている値と比較する。回収体積(RV)が注入体積(IV)よりも大きい場合には、本プロセスは、プロセス700がエラーを報告する、ブロック718への「はい」の経路を進み、プロセス700は終了する。例えば、コントローラ108は、聴覚アラーム、触覚アラーム、又は視覚アラームなどの、アラームを信号発信することができる。
【0080】
ブロック716において、回収体積(RV)が注入体積(IV)よりも大きくはない場合には、本プロセスは、回収体積(RV)が注入体積(IV)よりも少ないか否かをプロセス700が決定する、決定ブロック720に続く。回収体積(RV)が注入体積(IV)よりも少ない場合には、プロセス700は、初期注入体積(IIV)を、注入体積(IV)よりも所定の量だけ多くなるように設定することによって、プロセス700が、流体の体積を注入することを反復する、ブロック722への「はい」の経路に沿って進む。例えば、コントローラ108は、初期注入体積(IIV)を、所定の量だけ増大させることができる。いくつかの実施形態では、この反復は、注入された流体の体積と回収された流体の体積との関係に応答して選択することができる。例えば、回収された流体の体積が、注入された流体の体積の閾値パーセンテージを上回る場合には、本システムは、流体のボーラスが回収されていると決定することができる。それに応答して、本システムは、後続の点滴注入体積の削減量を増大させることができる。別の実施例では、回収された流体の体積が、注入された流体の体積の閾値パーセンテージを下回る場合には、本システムは、注入された流体が不十分であると決定することができる。それに応答して、本システムは、後続の点滴注入体積を増大させることができる。本プロセスは、プロセス700が繰り返される、ブロック706に続く。
【0081】
ブロック720において、回収体積(RV)が注入体積(IV)よりも少なくはない場合には、プロセス700は、プロセス700が最適化を報告する、ブロック720への「いいえ」の経路を進み、陰圧閉鎖療法による点滴注入をプロセス700が開始する、ブロック722に続く。例えば、コントローラ108は、聴覚インジケータ、触覚インジケータ、又は視覚インジケータなどを用いて、ドレッシング材104が最適な点滴注入体積にあることを報告し、コントローラ108は、陰圧閉鎖療法による点滴注入を開始する。
【0082】
図8は、図7の動作ステップによる最適な流体点滴注入体積の決定を示す、棒グラフと折れ線グラフとの組み合わせである。図8において、y軸は流体の体積を表し、x軸は時間を表す。プロセス700を通じた各サイクルにおいて、組織部位には、探索式の体積が注入される。例えば、プロセス700の、後続の各注入サイクルにおいて、システム100は、組織部位及びドレッシング材104が飽和するまで、異なる体積の流体を送達する。各陰圧療法サイクルは、ほぼ同じ長さを有することになる。例えば、プロセス700の各陰圧療法サイクルにおいて、システム100は、ほぼ同じ長さの時間にわたって、陰圧源102を動作させることになる。棒線804、808、812、816、及び820によって示されているように、陰圧療法サイクルは、ほぼ同じ長さである。各陰圧療法サイクルで、システム100は、異なる量の流体を回収することになる。流体が組織部位に注入されると、組織インタフェース114は、ある程度の量の流体を吸収し得る。それゆえ、陰圧療法サイクル中に回収される流体の量は、送達された流体の量から、組織インタフェース114によって吸収された流体の量を差し引いたものとなる。
【0083】
線822は、各陰圧療法サイクルの後に、組織部位、例えば組織インタフェース114によって保持されている、流体の総体積を示す。各陰圧療法サイクルの後に保持されている流体の総体積は、組織インタフェース114及び組織部位が飽和するまで増大することになる。飽和は、陰圧療法サイクルが、注入された流体の体積に等しい体積を回収する場合に生じる。図示の実施形態では、棒線804によって示される陰圧療法サイクルの後に、第1の体積の流体824が回収されている。第1の体積の流体824は、棒線802の注入サイクル中に注入された流体の体積よりも少ない。注入サイクル802中に注入された流体の総体積の残部は、第1の体積の保持流体825によって示されているように、組織インタフェース114によって組織部位に保持されている。図8に示されているように、第1の体積の流体824は、注入された流体の体積に対して小さいものと見なすことができ、それに応答して、後続の注入体積を増大させることができる。例えば、棒線806の注入サイクル中に注入される流体の体積は、注入サイクル802中に注入された流体の体積よりも大きい。線822は、時点834において、保持されている流体の総体積が、第1の体積の保持流体825に実質的に等しいことを示している。
【0084】
棒線808によって示される陰圧療法サイクルの後に、第2の体積の流体826が回収されている。第2の体積の流体826は、この場合もまた、注入サイクル806中に注入された流体の体積よりも少ないが、しかしながら、第2の体積の流体826は、注入サイクル806中に注入された流体の体積のうちの、より大きい割合を表し得る。注入サイクル806中に注入された流体の総体積の残部は、第2の体積の保持流体827によって示されているように、組織インタフェース114によって組織部位に保持されている。線822は、時点836において、保持されている流体の総体積が、第1の体積の保持流体827及び第2の体積の保持流体829に実質的に等しいことを示している。図8に示されているように、第2の体積の流体826は、注入された流体の体積に対して大きいものと見なすことができ、それに応答して、後続の注入体積を減少させることができる。例えば、棒線810の注入サイクル中に注入される流体の体積は、注入サイクル806中に注入された流体の体積よりも少ない。
【0085】
棒線812によって示される陰圧療法サイクルの後に、第3の体積の流体828が回収されている。第3の体積の流体828は、この場合もまた、注入サイクル810中に注入された流体の体積よりも少ないが、しかしながら、第3の体積の流体828は、注入サイクル810中に注入された流体の体積のうちの、より大きい割合を表し得る。注入サイクル810中に注入された流体の総体積の残部は、第3の体積の保持流体829によって示されているように、組織インタフェース114によって組織部位に保持されている。線822は、時点838において、保持されている流体の総体積が、第1の体積の保持流体825、第2の体積の保持流体827、及び第3の体積の保持流体829に実質的に等しいことを示している。時点838において表されているように、線822が、棒線802において注入された流体の量に等しいことは、ドレッシング材104及び組織部位が飽和に達しており、点滴注入体積が最適化されていることを示す。後続の点滴注入サイクル814及びサイクル818、並びに対応の陰圧サイクル816及びサイクル820は、先行の点滴注入サイクルにおける流体注入の体積に実質的に等しい体積の、流体830及び流体832を回収している。それに応答して、線822は、実質的に水平のままであり、これは、組織部位及びドレッシング材104の飽和に達していることを更に示すものである。
【0086】
本明細書で説明されているシステム、装置、及び方法は、多大な利点を提供し得る。例えば、療法システム100は、組織部位の平衡状態を決定するためのプロセスを提供するものである。組織部位の平衡状態を決定することによって、療法システム100は、点滴注入溶液の送達を最適化することができ、組織部位の過剰充填又は過少充填のリスクを軽減することができる。最適化はまた、臨床医の時間的要求も軽減し、点滴注入及び陰圧閉鎖療法を提供するシステムの使用の容易性も改善することにより、患者転帰の改善、及び有益な療法のより広範な採用にもつながり得る。
【0087】
いくつかの例示的実施形態において示されているが、当業者であれば、本明細書で説明されているシステム、装置、及び方法は、添付の特許請求の範囲内に収まる様々な変更及び修正を、受け入れ可能である点が認識されるであろう。更には、「又は」などの用語を使用する様々な代替例の説明は、文脈によって明らかに必要とされない限り、相互排他性を必要とするものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は、文脈によって明らかに必要とされない限り、その対象を単一の事例に限定するものではない。構成要素はまた、販売、製造、組み立て、又は使用の目的のために、様々な構成で組み合わせることも、又は削除することもできる。例えば、いくつかの構成では、ドレッシング材104、容器115、又はその双方を、製造若しくは販売のために、他の構成要素から排除するか又は分離することができる。他の例示的な構成では、コントローラ108もまた、他の構成要素とは独立して製造すること、構成すること、組み立てること、又は販売することができる。
【0088】
添付の特許請求の範囲は、上述の主題の新規かつ発明的な態様を記載するものであるが、特許請求の範囲はまた、特に詳細には記載されていない、追加的な主題も包含し得る。例えば、特定の特徴、要素、又は態様は、新規かつ発明的な特徴を、当業者には既知であるものから区別するために必要ではない場合には、特許請求の範囲から省略することができる。いくつかの実施形態の文脈において説明されている特徴、要素、及び態様はまた、添付の特許請求の範囲によって定義されている本発明の範囲から逸脱することなく、省略するか、組み合わせるか、あるいは、同じ目的、等価の目的、又は同様の目的を果たす代替的な特徴によって置き換えることもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】