IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アストラゼネカ・アクチエボラーグの特許一覧 ▶ 田辺三菱製薬株式会社の特許一覧

特表2025-523405RXFP1モジュレーターの固体形態
<>
  • 特表-RXFP1モジュレーターの固体形態 図1
  • 特表-RXFP1モジュレーターの固体形態 図2
  • 特表-RXFP1モジュレーターの固体形態 図3
  • 特表-RXFP1モジュレーターの固体形態 図4
  • 特表-RXFP1モジュレーターの固体形態 図5
  • 特表-RXFP1モジュレーターの固体形態 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-07-23
(54)【発明の名称】RXFP1モジュレーターの固体形態
(51)【国際特許分類】
   C07C 237/30 20060101AFI20250715BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20250715BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20250715BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20250715BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20250715BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20250715BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20250715BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20250715BHJP
   C08F 226/10 20060101ALI20250715BHJP
【FI】
C07C237/30 CSP
A61K31/192
A61P9/04
A61P13/12
A61P9/12
A61K47/32
C08K5/09
C08L101/00
C08F226/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024572105
(86)(22)【出願日】2023-06-06
(85)【翻訳文提出日】2025-01-10
(86)【国際出願番号】 EP2023065044
(87)【国際公開番号】W WO2023237510
(87)【国際公開日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】63/365,970
(32)【優先日】2022-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】391008951
【氏名又は名称】アストラゼネカ・アクチエボラーグ
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
(71)【出願人】
【識別番号】000002956
【氏名又は名称】田辺三菱製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】アルビドソン,インゲ・トールビョーン
(72)【発明者】
【氏名】リンダヘン,マリカ・ジェニー・スザンナ
(72)【発明者】
【氏名】プトラ,オッキー・ドゥイチャンドラ
(72)【発明者】
【氏名】アブ・アワド,ホサム・アル-ディーン
(72)【発明者】
【氏名】コーナー,フィリップ・アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】カラリア,ダヴァル・ラシクバイ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
4H006
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC11
4C076CC17
4C076EE16
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206GA12
4C206GA30
4C206KA01
4C206KA16
4C206KA17
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA36
4C206ZA42
4C206ZA81
4H006AA01
4H006AB23
4H006BM30
4H006BM71
4H006BP30
4H006BP50
4H006BS20
4H006BV42
4H006BV73
4J002AA001
4J002BJ001
4J002EF086
4J002FD206
4J002GB01
4J100AG04Q
4J100AQ08P
4J100CA04
4J100JA51
(57)【要約】

本明細書は、一般に、(1S,4s)-4-(2-フルオロ-4-メトキシ-5-((((1S,2R,3S,4R)-3-(((1-メチルシクロブチル)メチル)カルバモイル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)カルバモイル)フェノキシ)-1-メチルシクロヘキサン-1-カルボン酸(化合物(I))の固体形態、例えば、結晶形態及び非晶質形態に関する。特に、化合物(I)の非晶質形態、そのような非晶質形態を含む固体分散体及び医薬組成物、並びに化合物(I)の結晶形態Gに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質の化合物(I)。
【化1】
【請求項2】
非晶質の化合物(I)及び薬学的に許容され得る賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物中の化合物(I)の少なくとも80wt%が非晶質である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
非晶質の化合物(I)を含む固体分散体。
【請求項5】
1つ以上のポリマーをさらに含む、請求項4に記載の固体分散体。
【請求項6】
前記固体分散体中の化合物(I)の少なくとも80wt%が非晶質である、請求項4又は5に記載の固体分散体。
【請求項7】
前記固体分散体中の化合物(I)の20wt%未満が結晶性である、請求項4~6のいずれか一項に記載の固体分散体。
【請求項8】
化合物(I)が5wt%~95wt%の量で存在する、請求項4~7のいずれか一項に記載の固体分散体。
【請求項9】
前記1つ以上のポリマーが5wt%~95wt%の量で存在する、請求項4~8のいずれか一項に記載の固体分散体。
【請求項10】
前記1つ以上のポリマーが水溶性である、請求項4~9のいずれか一項に記載の固体分散体。
【請求項11】
前記1つ以上のポリマーが、ポリ(1-ビニル-2-ピロリドン)、1-ビニル-2-ピロリドンと酢酸ビニルとのコポリマー、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、メタクリル酸-エチルアクリレートコポリマー、ポリアクリル酸、酢酸コハク酸ヒプロメロース、酢酸フタル酸セルロース及び酢酸フタル酸ポリビニルから選択される、請求項4~10のいずれか一項に記載の固体分散体。
【請求項12】
前記1つ以上のポリマーが、1-ビニル-2-ピロリドンと酢酸ビニルとのコポリマー、場合により、1-ビニル-2-ピロリドンと酢酸ビニルとの重量比6:4のコポリマーである、請求項4~10のいずれか一項に記載の固体分散体。
【請求項13】
請求項4~12のいずれか一項に記載の固体分散体を含む医薬組成物。
【請求項14】
錠剤又はカプセル剤の形態である、請求項2、3又は13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
経口投与に適している、請求項2、3、13又は14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
治療に使用するための、請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物、固体分散体又は医薬組成物。
【請求項17】
心不全、駆出率が保持された心不全、中程度の駆出率を有する心不全、駆出率が低下した心不全、肺高血圧症を有する心不全、慢性腎疾患、急性腎障害、高血圧症、及び抵抗性高血圧症から選択される疾患又は状態を有する対象の治療に使用するための、請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物、固体分散体又は医薬組成物。
【請求項18】
約217.5℃で融解開始温度を有する、化合物(I)の結晶形態。
【請求項19】
化合物(I)の結晶形態Aを約43.9℃超、場合により約45℃超、場合により約50℃超、場合により約55℃超、場合により約60℃超、場合により約65℃超の温度に加熱することによって得ることができる、化合物(I)の結晶形態。
【請求項20】
化合物(I)の結晶形態(A)を、約43.9℃超、場合により約45℃超、場合により約50℃超、場合により約55℃超、場合により約60℃超、場合により約65℃超の温度に加熱することを含む、請求項18又は19に記載の結晶形態を調製する方法。
【請求項21】
化合物(I)の形態(A)が、約2θ=7.5、10.7、12.8、14.5及び15.8°に少なくとも5つの特定のピークを有するX線粉末回折パターン(CuKα線)を有する、請求項19に記載の結晶形態又は請求項20に記載の方法。
【請求項22】
化合物(I)の形態Aが、図1に示されるX線粉末回折パターンと実質的に同じX線粉末回折パターン(CuKα線)を有する、請求項19に記載の結晶形態又は請求項20に記載の方法。
【請求項23】
請求項18~22のいずれか一項に記載の結晶形態及び薬学的に許容され得る賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項24】
ヒト患者における心不全、駆出率が保持された心不全、中程度の駆出率を有する心不全、駆出率が低下した心不全、肺高血圧症を有する心不全、慢性腎疾患、急性腎障害、高血圧症及び抵抗性高血圧症から選択される疾患又は状態の治療のための医薬の製造において使用するための請求項18~22のいずれか一項に記載の結晶形態。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、RXFP1モジュレーター(1S,4s)-4-(2-フルオロ-4-メトキシ-5-((((1S,2R,3S,4R)-3-(((1-メチルシクロブチル)メチル)カルバモイル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)カルバモイル)フェノキシ)-1-メチルシクロヘキサン-1-カルボン酸(本明細書では化合物(I)と呼ぶ)の固体形態、例えば結晶及び非晶質形態、その医薬組成物、並びにそのような固体形態を調製するためのプロセスが記載される。
【背景技術】
【0002】
リラキシンは、妊娠中、全身血液動態の適応変化及び腎臓の適応変化を媒介することが知られている多面的ホルモンである。リラキシンはまた、抗線維化の特性を有し、且つ心不全、例えば、急性非代償性心不全(ADHF)において有益な効果を有することも明らかにされている。心不全は、深刻な罹患率及び死亡率を伴う。心不全は、心筋細胞死の増加及び間質性線維症を伴う複雑な組織リモデリングを特徴とする。リラキシンは、虚血再灌流及び心不全といった状況において有益であることが示された多くのシグナル伝達カスケードを活性化する。これらのシグナル伝達経路は、ホスホイノシチド3-キナーゼ経路の活性化及び一酸化窒素シグナル伝達経路の活性化を含む(Bathgate RA et al.(2013)Physiol.Rev.93(1):405-480、Mentz RJ et al.(2013)Am.Heart J.165(2):193-199、Tietjens J et al.(2016)Heart 102:95-99、Wilson SS et al.(2015)Pharmacology 35:315-327)。
【0003】
心不全患者においては、有意な小集団が肺高血圧症も罹患する(HF+PH患者)。駆出率が保持された心不全患者のうち約50%が更に肺高血圧症を患い、これは、駆出率の低下を伴う心不全患者では60%に増加するものと推定されている(Guazzi,(2014)Circ Heart Fail.,7:367-377、Miller et al.,(2013)JACC Heart Fail.,1(4):290-299)。肺高血圧症合併心不全の患者は、肺高血圧症非合併心不全の患者と比較して生存率が低下することが示されている(Barnett and De Marco,(2012)Heart Fail.Clin.8:447-459)。心不全患者においては、推定肺動脈拡張期圧(Estimated Pulmonary Artery Diastolic Pressure、ePAD)の3mmHgの増減(平均肺動脈圧(mPAP)の約4mmHgの増減に相当)は、心血管系死亡率の24%の増加又は19%の減少とそれぞれ関連していた(Zile MR,et al.(2017)Circ Heart Fail.,10:e003594)。mPAPの4mmHgの減少は、心不全及び肺高血圧症を患う患者における呼吸困難の改善にも関連する(Solomonica A,et al.(2013)Circ Heart Fail.,6:53-60)。
【0004】
抵抗性高血圧(rHT)は、その1つが利尿薬である異なるクラスの3つの降圧剤の最適用量の同時使用にもかかわらず、標的目標を超えて上昇したままである高血圧患者の血圧として定義される。高血圧の初期治療のための現在のSoCは、カルシウムチャネル遮断薬(CCB)、レニン-アンジオテンシン系の遮断薬(アンジオテンシン変換酵素[ACE]阻害剤又はアンジオテンシン受容体遮断薬[ARB])、及び利尿薬である。rHT患者の場合、次に何を追加するかについて複数の選択肢があり(例えば、ミネラルコルチコイド受容体アンタゴニスト(MRA)、β遮断薬又はα遮断薬)、ガイドラインは現在、rHTの治療の好ましい選択肢としてMRAを推奨している。rHTには、4種以上の降圧薬を同時に投与した場合に血圧が十分に制御される患者も含まれる(Carey et al.,Hypertension,2018,72,e53-e90)。rHTを有する患者は、典型的には、重度の血圧上昇の長い既往歴を有し、血圧が制御されている治療された高血圧患者よりも高い心血管リスクになりやすい(Acelajado et al.,Circulation Research,2019,124,1061-1070)。リラキシンは高血圧性疾患の治療的潜在性を有し得ることが示唆されている(Lekgabe et al.,Hypertension,2005,46,412-8)。
【0005】
非修飾組換えヒトリラキシン2であるセレラキシンを使用して、臨床試験が実施された。入院患者にセレラキシンを連続的に静脈内投与することで、心臓、腎臓、及び肝臓の障害及び鬱血が改善した(FelkergM et al.(2014)J.Am.Coll.Cardiol.64(15):1591-1598、Metra M et al.(2013)J.Am.Coll.Cardiol.61(2):196-206、Teerlink JR et al.(2013)Lancet 381(9860):29-39)。しかし、セレラキシンは患者の血液循環から速やかに除去されるため、その治療効果は限定的であり、一旦静脈内注射を中止するとプラスの効果は急速に消滅した。更に、患者の約3分の1が、セレラキシンを静脈内投与した後で有意な血圧低下(40mm Hg超)を経験したため、用量を半分又は更にはそれ以上減少させなければならないという結論が得られた。
【0006】
ヒトリラキシンの同族受容体はRXFP1であり、ホルモンリラキシンによる活性化が血行動態、抗線維化及び抗炎症特性に関連する、十分に検証された薬理学的に重要なGPCRファミリー1cメンバーである(HallsmL et al.,(2015),Pharmacol Rev.67(2):389-440)。
【0007】
RXFP1の低分子モジュレーターは、リラキシン模倣物として求められている。例えば、Marugan,J.J.,et al.,国際公開第2013/165606A1号パンフレット;Xiao J et al.(2013)Nat.Commun.4:1953;及びMcBride A et al.(2017)Scientific Reports 7:10806は、RXFP1の低分子モジュレーターを論じている。
【0008】
上記にもかかわらず、RXFP1のモジュレーターであるさらなる化合物(例えば、化合物(I)など)の必要性が存在し続けており、この化合物は、治療薬としての開発のために特に有望であるかもしれない。そのような化合物はまた、他の公知のRXFP1モジュレーターと比較して、RXFP1の改善されたモジュレーションを示し得る。そのような化合物はまた、他の公知のRXFP1モジュレーターと比較して、好ましい薬物動態学的プロファイル(例えば、より低い固有クリアランス)及び/又は有利な物理的特性(例えば、より高い水溶性)を示し得る。したがって、そのような化合物は、RXFP1の調節が有益である疾患状態の治療において特に有用であり得る。そのような化合物の経口投与に有用であり得る低pHでの水溶性などの有利な物理的特性を有するそのような化合物の安定な固体形態も必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書は、以下の構造:
【化1】

を有し、化学名:(1S,4s)-4-(2-フルオロ-4-メトキシ-5-(((1S,2R,3S,4R)-3-(((1-メチルシクロブチル)メチル)カルバモイル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)カルバモイル)フェノキシ)-1-メチルシクロヘキサン-1-カルボン酸を有する化合物(I)の固体形態に関する。
【0010】
簡潔には、本明細書は、非晶質の化合物(I)を部分的に記載する。
【0011】
本明細書はまた、非晶質化合物(I)及び薬学的に許容され得る賦形剤を含む医薬組成物を部分的に記載する。
【0012】
本明細書はまた、非晶質の化合物(I)を含む固体分散体を部分的に記載する。
【0013】
本明細書はまた、非晶質化合物(I)を含む固体分散体を含む医薬組成物を部分的に記載する。
【0014】
本明細書はまた、治療に使用するための本明細書に記載の非晶質化合物(I)又は固体分散体又は医薬組成物を部分的に記載する。
【0015】
本明細書はまた、心不全、駆出率が保持された心不全、中程度の駆出率を有する心不全、駆出率が低下した心不全、肺高血圧症を有する心不全、慢性腎疾患、急性腎障害、高血圧症、及び抵抗性高血圧症から選択される疾患又は状態を有する対象の治療に使用するための本明細書に記載の非晶質化合物(I)又は固体分散体若しくは医薬組成物を部分的に記載する。
【0016】
本明細書はまた、部分的に、約217.5℃で融解開始温度を有する化合物(I)の結晶形態、及び化合物(I)の結晶形態Aを約43.9℃を超える温度に加熱することを含む、そのような結晶形態を調製する方法を記載する。
【0017】
本明細書はまた、化合物(I)の結晶形態Aを約43.9℃を超える温度に加熱することによって得ることができる化合物(I)の結晶形態、及び化合物(I)の結晶形態Aを約43.9℃を超える温度に加熱することを含むそのような結晶形態を調製する方法を部分的に記載する。
【0018】
本明細書はまた、本明細書に開示される結晶形態を含む医薬組成物を部分的に記載する。
【0019】
本明細書はまた、ヒト患者における心不全、駆出率が保持された心不全、中程度の駆出率を有する心不全、駆出率が低下した心不全、肺高血圧症を有する心不全、慢性腎疾患、急性腎障害、高血圧症、及び抵抗性高血圧症から選択される疾患又は状態を治療するための医薬の製造に使用するための本明細書に開示される結晶形態を部分的に記載する。
【0020】
本開示のさらなる局面は、本明細書を読むことにより当技術分野の当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】化合物(I)の形態AのX線粉末回折パターンである。
図2】非晶質の化合物(I)のX線粉末回折パターンである。
図3】形成後、40℃/75%相対湿度で4週間保存後、及び周囲相対湿度で50℃で4週間保存後の化合物(I)の非晶質固体分散体(20%、30%及び40%負荷の化合物(I))のX線粉末回折パターンである。
図4】形態A/化合物(I)の形態Gの分析からのDSC出力を示す。
図5】形態A/化合物(I)の形態GのTGA分析を示す。
図6】pH1.2の模擬胃液中の非晶質化合物(I)の総濃度の関数としての光散乱強度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
多くの実施形態が、本明細書の全体を通して詳述されており、当技術分野の当業者には明らかであろう。本明細書は、本明細書に記載される任意の特定の実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。
【0023】
本明細書で具体的に定義されていない用語は、本開示及び文脈に照らして当業者によってそれらに与えられるであろう意味を有すると理解されるべきである。
【0024】
「約」は、一般に、測定法の性質又は精度を考慮すれば、測定される数量について許容され得る程度の誤差を意味してもよい。誤差の例示的な程度は、与えられた値又は値の範囲のパーセント(%)以内、典型的には10%以内、より典型的には5%以内である。
【0025】
1つ以上の特徴を「含む」として本明細書において記載される実施形態はまた、そのような特徴「からなる」対応する実施形態の開示と見なし得る。
【0026】
濃度、量、体積、割合及び他の数値は、本明細書においては、範囲形式で示され得る。そのような範囲形式は、単に便宜及び簡潔さのために使用され、範囲の限界として明示的に詳述される数値だけでなく、あたかもそれぞれの数値及び部分範囲が明示的に詳述されるかのように、その範囲内に包含される個々の数値又は部分範囲の全てを含むことが柔軟に解釈されるべきであることもまた、理解されるべきである。
【0027】
本明細書に記載される化合物の化学名は、PerkinElmer(登録商標)のChemDraw(登録商標)Professionalバージョン19.0.0.22を使用して生成された。当業者は、異なる化学命名ソフトウェアが特定の化合物に対して異なる化学名を生成し得ることを理解するであろう。本明細書に記載の化合物が化学名の形で式として示されている場合、矛盾がある場合は式が優先するものとする。
【0028】
本明細書中で説明されている化合物及び塩は、溶媒和形態及び非溶媒和形態で存在し得る。例えば、溶媒和形態は、ヘミ水和物、一水和物、二水和物、三水和物又はその代替的な量など、水和物形態であり得る。本明細書に記載される化合物の全てのそのような溶媒和形態及び非溶媒和形態は、本明細書に包含される。
【0029】
本明細書中で説明されている化合物及び塩の原子は、これらの同位体として存在し得る。原子がその同位体(例えば、1つ以上の炭素原子が11C若しくは13C炭素同位体である、又は1つ以上の水素原子がH若しくはH同位体である、本明細書に記載の化合物)の1つ以上によって置き換えられている本明細書に記載される全ての化合物は、本明細書に包含される。
【0030】
本明細書に記載される化合物は、シス-及びトランス-形態、E-及びZ-形態、並びにR-、S-及びメソ-形態を含むがこれらに限定されない1つ以上の幾何学的、光学的、エナンチオマー及びジアステレオマー形態で存在し得る。特に明記しない限り、特定の化合物についての言及は、ラセミ混合物及びその他の混合物を含むそのような異性体形態を全て含む。適宜、そのような異性体は、既知の方法(例えば、クロマトグラフィー技術及び再結晶技術)の適用又は改作によってそれらの混合物から分離され得る。適宜、そのような異性体は、既知の方法の適用又は改作によって調製され得る。
【0031】
本明細書に記載される化合物は、1つ以上のキラル中心を含み得る。本明細書の構造又は化学名がキラリティーを示さない限り、構造又は名称はその構造又は名称に対応する任意の単一の立体異性体、並びに立体異性体の任意の混合物(例えば、ラセミ体)を包含することが意図される。本明細書における構造が、実線及び破線の楔(すなわち
【化2】

)を含む場合、実線及び破線の楔はキラル中心の絶対配置を示すことが意図されている。
【0032】
そのような光学活性形態をどのように分離することができるかは当技術分野で周知である。例えば、単一の立体異性体は、例えば、キラルクロマトグラフィー分離を用いて、異性体の混合物(例えば、ラセミ体)から単離することによって得ることができる。他の実施形態では、単一の立体異性体は、例えば、キラル出発物質からの直接的な合成により得られる。
【0033】
一実施形態によれば、本明細書中に記載される化合物は、95%以上、98%以上又は99%以上の鏡像体過剰率(%ee)である単一の鏡像体として提供される。簡便には、単一の鏡像体は、99%以上のエナンチオマー過剰率で存在する。
【0034】
一実施形態によれば、本明細書に記載の化合物は、95~100%の範囲の鏡像体過剰率(%ee)である単一の鏡像体として提供される。
【0035】
本明細書中に記載される化合物は、1つ以上の互変異性型(ケト型及びエノール型が含まれるが、これらに限定されない)で存在し得る。特定の化合物への言及は、それらの混合物を含む全ての互変異性形態を含む。したがって、1つの互変異性体として本明細書に示される構造は、他の互変異性体も含むことが意図されている。
【0036】
本明細書中に記載される医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容され得る賦形剤を含み得る。特定の組成物中への包含のために選択される賦形剤は、投与の様式及び提供される組成物の形態などの要因に依存することになる。好適な薬学的に許容され得る賦形剤は、当業者によく知られており、例えば、Rowe,Ray C;Sheskey,Paul J;Quinn,Marianによって編集されたHandbookof Pharmaceutical Excipients,Sixth edition,Pharmaceutical Pressに記載されている。薬学的に許容され得る賦形剤は、例えば、アジュバント、希釈剤、担体、安定剤、香味料、着色料、充填剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、滑剤、増粘剤及びコーティング剤として機能し得る。当技術分野の当業者が認識するとおり、ある特定の薬学的に許容され得る賦形剤は、組成物中に存在する賦形剤の量及び他のどの賦形剤が組成物中に存在するかに応じて、2以上の機能を果たす場合があり、また代替の機能を果たす場合がある。
【0037】
医薬組成物は、経口使用(例えば、錠剤、ロゼンジ剤、硬質若しくは軟質カプセル剤、水性若しくは油性懸濁剤、又は分散性散剤若しくは顆粒剤として)、局所使用(例えば、クリーム、軟膏、又は水性若しくは油性懸濁剤として)、吸入による投与(例えば、微粉末として)、吹送による投与(例えば、微粉末として)、又は直腸投与用の坐剤として適した形態であり得る。この組成物を、当技術分野で公知の通常の手順により得ることができる。経口使用として意図されている組成物は、追加的成分を含み得、例えば、1つ以上の着色剤、甘味料、香味料、及び/又は保存剤を含み得る。
【0038】
非晶質の化合物(I)
一実施形態において、非晶質の化合物(I)が提供される。一実施形態において、非晶質の化合物(I)は、図2に示されるX線粉末回折パターンと実質的に同じX線粉末回折パターン(CuKα線)を有する。一実施形態において、非晶質の化合物(I)は、3から40°の2θ(CuKα線)の範囲において反射を示さない。
【0039】
非晶質の化合物(I)を含む医薬組成物
一実施形態において、非晶質の化合物(I)及び薬学的に許容され得る賦形剤を含む医薬組成物が提供される。一実施形態において、医薬組成物中の化合物(I)の少なくとも80wt%は非晶質である。一実施形態において、医薬組成物中の化合物(I)の少なくとも90wt%は非晶質である。一実施形態において、医薬組成物中の化合物(I)の少なくとも95wt%は非晶質である。一実施形態において、医薬組成物中の化合物(I)の少なくとも99wt%は非晶質である。一実施形態において、医薬組成物中の化合物(I)は実質的に全てが非晶質である。一実施形態において、医薬組成物中の化合物(I)の全てが非晶質である。
【0040】
一実施形態において、医薬組成物中の化合物(I)の20wt%未満は結晶性である。一実施形態において、医薬組成物中の化合物(I)の10wt%未満は結晶性である。一実施形態において、医薬組成物中の化合物(I)の5wt%未満は結晶性である。一実施形態において、医薬組成物中の化合物(I)の1wt%未満は結晶性である。一実施形態では、医薬組成物中の化合物(I)は実質的にいずれも結晶性ではない。一実施形態では、医薬組成物中の化合物(I)はいずれも結晶性ではない。
【0041】
非晶質の化合物(I)を含む固体分散体
別の実施形態において、非晶質の化合物(I)を含む固体分散体が提供される。固体分散体は、典型的には、1つの1つ以上のポリマーなどの適切な担体媒体中に分散した化合物を含む。一実施形態では、固体分散体は、1つ以上のポリマーをさらに含む。一実施形態では、1つ以上のポリマーは水溶性である。水溶性ポリマーは、水又は胃液などの水性媒体に溶解することができることは理解されよう。
【0042】
一実施形態において、固体分散体中の化合物(I)の少なくとも90wt%は、非晶質である。一実施形態において、固体分散体中の化合物(I)の少なくとも95wt%は、非晶質である。一実施形態において、固体分散体中の化合物(I)の少なくとも99wt%は、非晶質である。一実施形態において、固体分散体中の化合物(I)は実質的に全てが非晶質である。一実施形態において、固体分散体中の化合物(I)は全てが非晶質である。
【0043】
一実施形態において、固体分散体中の化合物(I)の20wt未満%は、結晶性である。一実施形態において、固体分散体中の化合物(I)の10wt未満%は、結晶性である。一実施形態において、固体分散体中の化合物(I)の5wt未満%は、結晶性である。一実施形態において、固体分散体中の化合物(I)の1wt未満%は、結晶性である。一実施形態において、固体分散体中の化合物(I)は実質的にいずれも結晶性ではない。一実施形態において、固体分散体中の化合物(I)はいずれも結晶性ではない。
【0044】
一実施形態において、化合物(I)は、固体分散体中に5wt%~95wt%の量で存在する。一実施形態において、化合物(I)は、固体分散体中に5wt%~80wt%の量で存在する。一実施形態において、化合物(I)は、固体分散体中に5wt%~60wt%の量で存在する。一実施形態において、化合物(I)は、固体分散体中に10wt%~40wt%の量で存在する。一実施形態において、化合物(I)は、固体分散体中に20wt%~40wt%の量で存在する。
【0045】
一実施形態において、1つ以上のポリマーは、ポリ(1-ビニル-2-ピロリドン)、1-ビニル-2-ピロリドンと酢酸ビニルとのコポリマー、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、メタクリル酸-エチルアクリレートコポリマー、ポリアクリル酸、酢酸コハク酸ヒプロメロース、酢酸フタル酸セルロース及び酢酸フタル酸ポリビニルから選択される。
【0046】
一実施形態において、1つ以上のポリマーは、Kollidon(登録商標)30、Kollidon(登録商標)VA 64、Soluplus(登録商標)、Eudragit(登録商標)L100-55S、ポリアクリル酸、AQOAT(登録商標)HPMC AS-LF、AQOAT(登録商標)HPMC AS-HF、酢酸フタル酸セルロース及び酢酸フタル酸ポリビニルから選択される。
【0047】
一実施形態において、1つ以上のポリマーは、1-ビニル-2-ピロリドンと酢酸ビニルとのコポリマーである。一実施形態において、1つ以上のポリマーは、1-ビニル-2-ピロリドンと酢酸ビニルとの重量比6:4のコポリマーである。一実施形態において、1つ以上のポリマーはKollidon(登録商標)VA 64である。
【0048】
一実施形態において、1つ以上のポリマーは、固体分散体中に5wt%~95wt%の量で存在する。一実施形態において、1つ以上のポリマーは、固体分散体中に20wt%~90wt%の量で存在する。一実施形態において、1つ以上のポリマーは、固体分散体中に40wt%~90wt%の量で存在する。一実施形態において、1つ以上のポリマーは、固体分散体中に50wt%~90wt%の量で存在する。一実施形態において、1つ以上のポリマーは、固体分散体中に60wt%~80wt%の量で存在する。
【0049】
非晶質の化合物(I)を含む固体分散体を含む医薬組成物
一実施形態において、本明細書中に記載されるような非晶質の化合物(I)を含む固体分散体を含む医薬組成物が提供される。
【0050】
化合物(I)の結晶形態G
化合物(I)の結晶形態Aの示差走査熱量測定(DSC)分析は、約43.9℃観察される開始を伴う吸熱転移を示す。この吸熱ピークは、固体-固体相転移に割り当てられ、約43.9℃で観察される吸熱ピークの完了を超える温度で得られる相は、形態Gと称される。この新たな無水相形態Gは、217.5℃での融解開始に対応するDSCにおける最後の吸熱ピークまで存在する。
【0051】
したがって、一実施形態において、約217.5℃に融解開始温度を有する、化合物(I)の結晶形態(形態G)が提供される。一実施形態において、融解開始温度は217.5±5℃である。一実施形態において、融解開始温度は217.5±4°Cである。一実施形態において、融解開始温度は217.5±3℃である。一実施形態において、融解開始温度は217.5±2℃である。一実施形態において、融解開始温度は217.5±1℃である。
【0052】
一実施形態において、化合物(I)の結晶形態(形態G)は、化合物(I)の結晶形態Aを約43.9℃を超える温度に加熱することによって得ることができる。一実施形態において、結晶形態は、化合物(I)の結晶形態Aを約45℃を超える温度に加熱することによって得ることができる。一実施形態において、結晶形態は、化合物(I)の結晶形態Aを約50℃を超える温度に加熱することによって得ることができる。一実施形態において、結晶形態は、化合物(I)の結晶形態Aを約55℃を超える温度に加熱することによって得ることができる。一実施形態において、結晶形態は、化合物(I)の結晶形態Aを約60℃を超える温度に加熱することによって得ることができる。一実施形態において、結晶形態は、化合物(I)の結晶形態Aを約65℃を超える温度に加熱することによって得ることができる。
【0053】
一実施形態において、結晶化合物(I)の形態Aを約43.9°Cを超える温度に加熱することを含む、結晶形態(形態G)の化合物(I)を調製する方法が提供される。一実施形態において、結晶化合物(I)の形態Aは、約45℃を超える温度に加熱される。一実施形態において、結晶化合物(I)の形態Aは、約50℃を超える温度に加熱される。一実施形態において、結晶化合物(I)の形態Aは、約55℃を超える温度に加熱される。一実施形態において、結晶化合物(I)の形態Aは、約60℃を超える温度に加熱される。一実施形態において、結晶化合物(I)の形態Aは、約65℃を超える温度に加熱される。
【0054】
化合物(I)の形態Aについての10個の最も顕著なX線粉末回折ピーク[角度2θ(2θ)、強度]は以下の通りである:7.5(s),10.3(m),10.7(s),12.8(s),14.5(vs),15.3(s),15.8(s),17.5(m),19.6(s)及び21.3(s).一実施形態において、化合物(I)の形態Aは、約2θ=7.5、10.7、12.8、14.5及び15.8°に少なくとも5つの特定のピークを有するX線粉末回折パターン(CuKα線)を有する。一実施形態において、形態A形の化合物(I)は、約2-θ=7.5、10.3、10.7、12.8、14.5、15.3、15.8、17.5、19.6及び21.3°に特定のピークを有するX線粉末回折パターンを有する。一実施形態において、化合物(I)の形態Aは、2θ=7.5、10.7、12.8、14.5及び15.8°に少なくとも5つの特定のピークを有するX線粉末回折パターンを有し、ここで、前記値は、±0.2° 2θであり得る。一実施形態において、化合物(I)の形態Aは、2θ=7.5、10.3、10.7、12.8、14.5、15.3、15.8、17.5、19.6及び21.3°に特定のピークを有するX線粉末回折パターンを有し、ここで、前記値は、±0.2° 2θであり得る。一実施形態において、化合物(I)の形態Aは、図1に示されるX線粉末回折パターンと実質的に同じX線粉末回折パターンを有する。
【0055】
本明細書に記載の規定の固体形態は、図面に示されるX線粉末回折パターンと実質的に同一のX線粉末回折パターンを提供し、本明細書に記載される種々の2-θ値を有する。X線粉末回折パターンの2-θ値は、機械ごと又は試料ごとにわずかに変動し、したがって、引用値は、絶対値と解釈すべきでないことが理解される。
【0056】
測定条件(例えば、使用される装置又は機械)に依存して、1つ以上の測定誤差を有するX線粉末回折パターンが得られる場合があることが知られている。特に、X線粉末回折パターンにおける強度は、測定条件に依存して変動する場合があることが一般に知られている。したがって、本明細書に記載の固体形態は、図面に示されるX線粉末回折パターンと同一であるX線粉末回折パターンを提供する結晶に限定されず、図面に示されるものと実質的に同一のX線粉末回折パターンを提供する任意の結晶が本明細書に記載の実施形態の範囲内に収まることは理解するべきである。X線粉末回折の技術分野の当業者は、X線粉末回折パターンの実質的な同一性を判断することができる。
【0057】
X線粉末回折の技術分野の当業者は、ピークの相対的強度が、例えば、30μmサイズ超の粒子及び試料の分析に影響を与え得る非ユニタリーアスペクト比により影響を受け得ることを理解する。当業者はまた、反射の位置が、試料が回折計内に位置する正確な高さ及び回折計のゼロ較正によって影響を受け得ることも認識するであろう。試料の表面の平面性もわずかな影響をもつ場合がある。したがって、提示した回折パターンデータは、絶対的な値とみなされるべきではない(Jenkins,R & Snyder,R.L.‘Introduction to X-Ray Powder Diffractometry’John Wiley & Sons 1996;Bunn,C.W.(1948),Chemical Crystallography,Clarendon Press,London;Klug,H.P.& Alexander,L.E.(1974),X-Ray Diffraction Procedures)。ピーク強度は、本明細書ではvs(非常に強い)、s(強い)、m(中程度)及びw(弱い)として記載され、それぞれ25~100%、10~25%、3~10%及び1~3%の%相対強度(最も強いピークに基づく)に対応する。相対強度は、固定スリットで測定したディフラクトグラムに由来する。
【0058】
一般に、X線粉末回折図における回折角の測定誤差は、約5%以下、特に±0.5° 2θであり、そのような程度の測定誤差は、本明細書に記載のデータを読み取る際に、本明細書の図面のX線粉末回折パターンを考慮するときに考慮されるべきである。さらに、当然のことながら、強度は、実験条件及び試料調製(好ましい配向)に依存して変動し得る。
【0059】
化合物(I)の形態Gを含む医薬組成物
一実施形態において、本明細書中に記載の化合物(I)の形態Gと、薬学的に許容され得る賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。
【0060】
治療における固体形態の使用
RXFP1の調節の結果として、化合物(I)は治療に有用であると予想される。
【0061】
「治療(therapy)」という用語は、その症状の1つ、いくつか、又は全てを完全に又は部分的に軽減するために、又は根底にある病理を修正又は補償するために、疾患又は状態を扱うその通常の意味を有することを意図している。「治療(therapy)」という用語はまた、その反対の具体的な指示がない限り、「予防」を含む。「治療的な」及び「治療的に」という用語は、対応する様式で解釈されるべきである。
【0062】
「予防」という用語は、その標準的な意味を有することが意図されており、疾患又は状態の発生を予防するための一次予防、及び疾患又は状態が既に発生しており、疾患又は状態の増悪若しくは悪化、又は疾患又は状態に関連する新たな症状の発生に対して一時的又は持続的に患者を保護する二次予防を含む。
【0063】
「治療(treatment)」という用語は、「治療(therapy)」と同義的に用いられる。同様に、「治療する(treat)」という用語は、「治療(therapy)を適用する」(ここで、「治療(therapy)」は、本明細書で定義されるとおりである)こととみなすことができる。
【0064】
「治療有効量」という用語は、対象において「治療」を提供するため、又は対象において疾患若しくは状態を「治療」するために有効な化合物の量を指す。治療有効量は、上記の「治療(therapy)」、「治療(treatment)」及び「予防」の定義に記載されるように、対象において観察可能又は測定可能な変化のいずれかを引き起こし得る。当技術分野の当業者によって認識されるように、有効量は、投与経路、賦形剤の使用、及び他の薬剤との併用に依存して変化し得る。例えば、併用療法が使用される場合、薬学的活性剤の量及び他の薬学的活性剤の量は、組み合わせた場合、対象の標的障害又は状態を治療するために一緒に有効である。これに関連して、上記のようにRXFP1の調節及び/又はアゴニズムに応答する疾患又は状態の症状を軽減させるのに十分である場合、合わせた量は「治療有効量」である。典型的には、そのような量は当技術分野の当業者によって決定され得る。
【0065】
本明細書で使用する場合、「対象」及び「患者」という用語は、互換的に用いられる。「対象」には、例えば、哺乳動物、例えばヒトが含まれる。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
【0066】
したがって、本明細書中に記載される非晶質の化合物(I)、化合物(I)の形態G、非晶質の化合物(I)を含む固体分散体、又は化合物(I)を含む医薬組成物は、治療において、例えば、疾患又は障害を治療するために使用し得る。治療有効量の非晶質の化合物(I)、化合物(I)の形態G、非晶質の化合物(I)を含む固体分散体、又は本明細書に記載の化合物(I)を含む医薬組成物を、それを必要とする対象又は患者に投与することを含む、疾患又は障害を治療する方法も提供される。
【0067】
本明細書中に記載される非晶質の化合物(I)、化合物(I)の形態G、非晶質の化合物(I)を含む固体分散体、又は化合物(I)を含む医薬組成物は、心血管疾患の治療において、例えば、心不全及び高血圧症の治療のために使用し得ることは理解されるであろう。
【0068】
本明細書において使用されるように、「心不全」という用語は、急性心不全、慢性心不全(CHF)、及び急性非代償性心不全(ADHF)を含む。「心不全」という用語はまた、駆出率が保持された心不全(HFpEF)、中程度の駆出率の心不全(HFmrEF;駆出率が軽度に低下した心不全とも呼ばれる)、又は駆出率が低下した心不全(HFrEF)などのより具体的な診断も含み得る。
【0069】
本明細書で使用される場合、「抵抗性高血圧症」という用語は、その1つが利尿薬である異なるクラスの3つの降圧剤の最適化された用量の同時使用にもかかわらず目標を上回って上昇したままである高血圧患者、又は4つ以上の降圧薬を同時投与された場合に血圧が十分に制御される患者の血圧として定義される(Carey et al.,Hypertension,2018,72,e53-e90)。高血圧の初期治療は、カルシウムチャネル遮断薬(CCB)、レニン-アンジオテンシン系の遮断薬(アンジオテンシン変換酵素[ACE]阻害剤又はアンジオテンシン受容体遮断薬[ARB])、及び利尿薬であり得る。rHT患者の場合、さらなる治療には、ミネラルコルチコイド受容体アンタゴニスト(MRA)、β遮断薬及び/又はα遮断薬が含まれ得る。抵抗性高血圧症を有する対象は、典型的には被験体が安静時に、収縮期血圧140mmHg以上及び/又は拡張期血圧90mmHg以上を有し得る。或いは、抵抗性高血圧症を有する対象は、典型的には被験体が安静時に、収縮期血圧130mmHg以上及び/又は拡張期血圧80mmHg以上を有し得る。或いは、抵抗性高血圧症を有する対象は、典型的には被験体が安静時に、収縮期血圧150mmHg以上及び/又は拡張期血圧90mmHg以上を有し得る。場合によっては、抵抗性高血圧症は抵抗性本態性高血圧症であり得る。本態性高血圧症は、原発性高血圧症としても知られており、同定された公知の二次的原因のない高血圧症の一形態である。
【0070】
非晶質の化合物(I)、化合物(I)の形態G、非晶質化合物(I)を含む固体分散体、又は本明細書に記載の化合物(I)を含む医薬組成物はまた、腎疾患(慢性腎疾患を含む)、急性腎障害、肺疾患及び線維性障害、例えば腎臓、心臓、肺及び肝臓の線維性障害、創傷治癒(Sherwood OD(2004)Endocrine Reviews 25(2):205-234)、糖尿病患者におけるインスリン抵抗性の逆転(Bonner JS et al.(2013)Diabetes 62(9):3251-3260)、様々な形態の肺高血圧症、動脈硬化の結果又は原因である障害、動脈弾性の低下、動脈コンプライアンス及び拡張性の低下(すなわち、脳卒中及び認知症)、糖尿病、終末器官損傷をもたらす微小血管疾患、冠動脈疾患及び心不全、並びに子癇前症の治療に使用することができる。
【0071】
一実施形態において、治療に使用するための非晶質の化合物(I)が提供される。
【0072】
一実施形態において、心不全、駆出率が保持された心不全、中程度の駆出率を有する心不全、駆出率が低下した心不全、肺高血圧症を有する心不全、慢性腎疾患、急性腎障害、高血圧症及び抵抗性高血圧症から選択される疾患又は状態の治療において使用するための非晶質の化合物(I)が提供される。一実施形態では、疾患又は状態は心不全である。一実施形態では、疾患又は状態は抵抗性高血圧である。
【0073】
一実施形態において、ヒト患者における心不全、駆出率が保持された心不全、中程度の駆出率を有する心不全、駆出率が低下した心不全、肺高血圧症を有する心不全、慢性腎疾患、急性腎障害、高血圧症及び抵抗性高血圧症から選択される疾患又は状態の治療のための医薬の製造において使用するための非晶質の化合物(I)が提供される。一実施形態では、疾患又は状態は心不全である。一実施形態では、疾患又は状態は抵抗性高血圧である。
【0074】
一実施形態において、心不全、駆出率が保持された心不全、中程度の駆出率を有する心不全、駆出率が低下した心不全、肺高血圧症を有する心不全、慢性腎疾患、急性腎障害、高血圧症及び抵抗性高血圧症から選択される疾患又は状態を、そのような治療を必要とするヒト患者において治療する方法であって、治療有効量の非晶質の化合物(I)をヒト患者に投与することを含む方法が提供される。一実施形態では、疾患又は状態は心不全である。一実施形態では、疾患又は状態は抵抗性高血圧である。
【0075】
一実施形態において、心不全、駆出率が保持された心不全、中程度の駆出率を有する心不全、駆出率が低下した心不全、肺高血圧症を有する心不全、慢性腎疾患、急性腎障害、高血圧症及び抵抗性高血圧症から選択される疾患又は状態の治療において使用するための化合物(I)の形態Gが提供される。一実施形態では、疾患又は状態は心不全である。一実施形態では、疾患又は状態は抵抗性高血圧である。
【0076】
一実施形態において、ヒト患者における心不全、駆出率が保持された心不全、中程度の駆出率を有する心不全、駆出率が低下した心不全、肺高血圧症を有する心不全、慢性腎疾患、急性腎障害、高血圧症及び抵抗性高血圧症から選択される疾患又は状態の治療のための医薬の製造において使用するための化合物(I)の形態Gが提供される。一実施形態では、疾患又は状態は心不全である。一実施形態では、疾患又は状態は抵抗性高血圧である。
【0077】
一実施形態において、心不全、駆出率が保持された心不全、中程度の駆出率を有する心不全、駆出率が低下した心不全、肺高血圧症を有する心不全、慢性腎疾患、急性腎障害、高血圧症及び抵抗性高血圧症から選択される疾患又は状態を、そのような治療を必要とするヒト患者において治療する方法であって、治療有効量の化合物(I)の形態Gをヒト患者に投与することを含む方法が提供される。一実施形態では、疾患又は状態は心不全である。一実施形態では、疾患又は状態は抵抗性高血圧である。
【0078】
一実施形態において、心不全、駆出率が保持された心不全、中程度の駆出率を有する心不全、駆出率が低下した心不全、肺高血圧症を有する心不全、慢性腎疾患、急性腎障害、高血圧症及び抵抗性高血圧症から選択される疾患又は状態の治療において使用するための本明細書に記載の非晶質の化合物(I)を含む固体分散体が提供される。一実施形態では、疾患又は状態は心不全である。一実施形態では、疾患又は状態は抵抗性高血圧である。
【0079】
一実施形態において、ヒト患者における心不全、駆出率が保持された心不全、中程度の駆出率を有する心不全、駆出率が低下した心不全、肺高血圧症を有する心不全、慢性腎疾患、急性腎障害、高血圧症及び抵抗性高血圧症から選択される疾患又は状態の治療のための医薬の製造において使用するための本明細書に記載の非晶質の化合物(I)を含む固体分散体が提供される。一実施形態では、疾患又は状態は心不全である。一実施形態では、疾患又は状態は抵抗性高血圧である。
【0080】
一実施形態において、心不全、駆出率が保持された心不全、中程度の駆出率を有する心不全、駆出率が低下した心不全、肺高血圧症を有する心不全、慢性腎疾患、急性腎障害、高血圧症及び抵抗性高血圧症から選択される疾患又は状態を、そのような治療を必要とするヒト患者において治療する方法であって、治療有効量の本明細書中に記載されるような非晶質の化合物(I)を含む固体分散体をヒト患者に投与することを含む方法が提供される。一実施形態では、疾患又は状態は心不全である。一実施形態では、疾患又は状態は抵抗性高血圧である。
【0081】
一実施形態において、心不全、駆出率が保持された心不全、中程度の駆出率を有する心不全、駆出率が低下した心不全、肺高血圧症を有する心不全、慢性腎疾患、急性腎障害、高血圧症及び抵抗性高血圧症から選択される疾患又は状態の治療において使用するための本明細書に記載の化合物(I)を含む医薬組成物が提供される。一実施形態では、疾患又は状態は心不全である。一実施形態では、疾患又は状態は抵抗性高血圧である。
【0082】
一実施形態において、ヒト患者における心不全、駆出率が保持された心不全、中程度の駆出率を有する心不全、駆出率が低下した心不全、肺高血圧症を有する心不全、慢性腎疾患、急性腎障害、高血圧症及び抵抗性高血圧症から選択される疾患又は状態の治療のための医薬の製造において使用するための本明細書に記載の化合物(I)を含む医薬組成物が提供される。一実施形態では、疾患又は状態は心不全である。一実施形態では、疾患又は状態は抵抗性高血圧である。
【0083】
一実施形態において、心不全、駆出率が保持された心不全、中程度の駆出率を有する心不全、駆出率が低下した心不全、肺高血圧症を有する心不全、慢性腎疾患、急性腎障害、高血圧症及び抵抗性高血圧症から選択される疾患又は状態を、そのような治療を必要とするヒト患者において治療する方法であって、治療有効量の本明細書中に記載されるような化合物(I)を含む医薬組成物をヒト患者に投与することを含む方法が提供される。一実施形態では、疾患又は状態は心不全である。一実施形態では、疾患又は状態は抵抗性高血圧である。
【実施例
【0084】
概して、使用した溶媒の全ては、市販されている分析用のものとした。無水溶媒は、反応用に常用されているものとした。実施例で使用した相分離器は、ISOLUTE(登録商標)Phase Separatorカラムである。以下に記載される化合物は、PerkinElmerのChemDraw Professionalバージョン19.0.0.22を使用して命名した。
【0085】
熱重量分析(TGA)及び示差走査熱量測定(DSC)測定を、それぞれTG Discovery 550(TA instruments,Germany)及びDSC Discovery 2500(TA instruments,Germany)を使用して行った。TGAについては5.152mg及びDSCについては2.474mgの試料をアルミニウムパンに秤量した。次いで、100mL/分の窒素パージ下で10℃/分の加熱速度で、TGAについては室温から350℃まで、DSCについては0℃から230℃まで試料を加熱した。空のアルミニウムパンを、DSCの参照として使用した。
【0086】
X線粉末回折分析は、例えば、Kitaigorodsky,A.I.(1973),Molecular Crystals and Molecules,Academic Press,New York;Bunn,C.W.(1948),Chemical Crystallography,Clarendon Press,London;又はKlug,H.P.& Alexander,L.E.(1974),X-ray Diffraction Procedures,John Wiley & Sons,New Yorkに見出すことができる標準方法に従って実行した。
【0087】
XRPD方法A
X線粉末回折(本明細書においてXRPDと呼ばれる)パターンは、ゼロバックグラウンドのホルダーであるシリコン単結晶に試料を載せ、試料を薄い層へと広げることによって決定した。
【0088】
粉末X線回折は、シータ-2シータ走査軸を用いて、D/Tex検出器を備えたリガクMiniflex 600(X線の波長1.5418Å、ニッケルフィルターを通したCu Kα照射、40kV、15mA)を用いる一次元走査において記録した。自動可変発散及び散乱防止スリットを使用し、試料を測定中に毎分80回転で回転させた。試料を、それぞれ0.01°及び1°/分のステップ幅及び走査速度を用いて走査した。
【0089】
XRPD方法B
試料をシリコンウェハマウントに取り付け、Bruker D4 Endeavour回折計(Cuアノード、λ=1.5418Å)を使用して分析した。試料を、0.02°増分当たり0.12秒の露光(連続走査モード)で、走査範囲2°~40°2θにわたってθ-2θ構成の反射ジオメトリで測定した。X線は、40kV及び40mAで操作される銅製のロングファインフォーカスチューブによって生成された。
【0090】
以下の略語を使用した
Aq 水性
Pin 4,4,5,5-テトラメチル-2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1,3,2-ジオキサボロラン
Calcd 計算
DCM ジクロロメタン
DIA ジイソプロピルアミン
DIAD ジイソプロピル(E)-ジアゼン-1,2-ジカルボキシレート
DIPEA N-エチル-N-イソプロピル-プロパン-2-アミン
DMA N,N-ジメチルアセトアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
DPPA ジフェニルホスホリルアジド
DTBBPY 4,4’-ジ-tert-ブチル-2,2’-ジピリジル
ESI エレクトロスプレーイオン化
Et エチル
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
h/hr 時間
HRMS 高分解能質量分析法
IPA イソプロピルアルコール
IPAC 酢酸イソプロピル
[Ir(COD)OMe] ビス(1,5-シクロオクタジエン)-ジ-μ-メトキシジイリジウム(I)
L リットル
Me メチル
MeCN アセトニトリル
mL ミリリットル
MeOH メタノール
2-Me-THF 2-メチルテトラヒドロフラン
Min 分
MS 質量分析法
MTBE メチルtert-ブチルエーテル
NMR 核磁気共鳴
PE 石油エーテル
Rt 室温
Sat 飽和
TEA トリエチルアミン
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
UHPLC 超高速液体クロマトグラフィー
【0091】
化合物(I)の調製
中間体1:エチル8-メチル-1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカン-8-カルボキシレート
【化3】

DIA(576mL、413g、4.08mol)のTHF(3.50L)中の溶液を-50~-40℃に冷却し、温度を-50~-40℃に維持しながら、n-BuLi(ヘキサン中2.5 M、1.09kg、3.92mol)の溶液を3時間にわたって添加した。溶液を-50~-40℃で3時間撹拌した後、温度を-50~-40℃に維持しながら、エチル1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカン-8-カルボキシレート(THF中700g、3.27mol、2.34M)の溶液を2時間にわたって添加した。反応混合物を-50~-40℃で4時間撹拌した後、ヨウ化メチル(THF中603g、4.25mol、3.04 M)を3時間にわたって添加し、温度を-50~-30℃に維持した。反応混合物を-50~-30℃で2時間さらに撹拌した後、温度を0℃未満に維持しながらNHCl水溶液(3.50L、HO中20% w/w)を1時間にわたって添加した。溶液を15~25℃に加温し、0.5時間保持し、次いで、層を分離し、有機層をNHCl水溶液(2×3.50L、HO中20% w/w)で洗浄した。温度を45℃未満に維持しながら、減圧下で有機反応溶媒をTHFからEtOHに交換すると、表題化合物がEtOH中27% w/w溶液(2.51kg、2.91mol、89%)として得られた。精製化合物のHnm R(400 MHz CDCl)δ 1.18(3H,s),1.27-1.22(3H,m),1.47-1.35(2H,m),1.70-1.56(4H,m),2.13(2H,d),3.92(4H,s),4.14(2H,q),MS(ESI):m/z[M+H] 229.2.
【0092】
中間体2:8-メチル-1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカン-8-カルボン酸
【化4】

中間体1(EtOH中1.13kg、1.31mol、27% w/w)の溶液に、EtOH(900mL)を添加し、その後、温度を15℃~30℃に維持しながた、NaOH水溶液(2.63L、5.26mol、HO中2M)を添加した。溶液を50℃~60℃に加熱し、次いで、6時間保持した後、15℃~30℃に冷却し、溶液を減圧下で1.8L~2.4Lに濃縮した。ヘキサン(1.50L)を添加し、層を分離した。水層を回収し、温度を20℃未満に維持しながらHCl水溶液(1.30L、5.2mol、HO中4M)を添加することによってpHを3~4に調整した。この水溶液をDCM(2×1.50L)で抽出し、合わせた有機相を減圧下で濃縮し、温度を30℃未満に維持しながら、表題化合物をDCM中17% w/w溶液(1.43kg、1.24mol、94%)として得た。精製化合物のHnm R(500 MHz CDCl)δ 1.25(3H,s),1.53(2H,dt),1.62-1.72(4H,m),2.05-2.19(2H,m),3.93(4H,s).MS(ESI):m/z[M+Na] 223.1.
【0093】
中間体3:1-メチル-4-オキソシクロヘキサン-1-カルボン酸
方法A
【化5】

中間体2(DCM中367g、250mmol、14% w/w)の溶液に、TFA(95.3mL、142g、1.25mol)を添加した。反応温度を25~35℃に20時間維持した後、0~10℃に冷却した。HO(250mL)を反応溶液に添加し、NaOH水溶液(440mL、1.76mol、HO中4M)を添加することにより、水相のpHを9~10に調整した。層を分離し、水層を保持し、0~10℃に冷却した。HCl水溶液(73.5mL、294mmol、HO中4M)の添加によりpHを2~3に調整し、次いで、DCM(3×250mL)で抽出し、合わせたDCM溶液を減圧下で150~200mLに濃縮した。温度を40℃未満に維持しながら、減圧下で有機反応溶媒をDCMからMeCNに交換すると、表題化合物がMeCN中30% w/w溶液(119g、227mmol、91%)として得られた。精製化合物のHnm R(400 MHz CDCl3)δ 1.39(3H,s),1.73(2H,td),2.43(6H,m).MS(ESI):m/z[M+H] 157.1.
【0094】
方法B
中間体2(DCM中6.17kg、3.83mol、12.4%)の溶液に、TFA(1.42L、2.18kg、19.13mol)を添加した。反応温度を25℃~35℃に20時間維持した後、0℃~10℃に冷却した。NaOH水溶液(7.66L HO中に溶解、918g、22.96mol)を反応溶液に添加し、水相のpHを9~11に調整した。層を分離し、水層を保持し、0~10℃に冷却した。DCM(3.83L)を添加した後、HCl水溶液(1.52L、6.08mol、HO中4M)を添加すると、pHが3~4に調整される。有機層を保持し、水層をDCM(2×3.83L)で抽出し、合わせた有機相をブライン(2.3L、15% w/w NaCl)で洗浄した。有機相を減圧下で2.3から3.1Lまで濃縮した。有機反応溶媒を減圧下でDCMからMeCNに交換し、温度を45℃未満に維持し、表題化合物をMeCN中18%溶液(2.85kg、3.32mol、87%)として得た。精製化合物のHnm R(400 MHz CDCl3)δ 1.39(3H,s),1.73(2H,td),2.43(6H,m).MS(ESI):m/z[M+H] 157.1.
【0095】
中間体4:ナフタレン-1-イルメチル1-メチル-4-オキソシクロヘキサン-1-カルボキシレート
方法A
【化6】

中間体3の溶液(MeCN中119g、192mmol、25% w/w)に、1-クロロメチルナフタレン(32.2g、183mmol)、引き続いてDIPEA(70.0mL、49.7g、384mmol)及びNaI(2.88g、19.2mmol)を添加した。溶液を50~60℃に8時間加熱した後、0~10℃まで冷却した。HO(240mL)を添加し、HCl水溶液(55.0mL、220mmol、HO中4M)の添加により反応混合物のpHを3~4に調整した。反応混合物をMTBE(2×150mL)で抽出し、合わせた有機相をNaHCO水溶液(150mL、144mmol、HO中8% w/w)で洗浄した。温度を40℃未満に維持しながら、有機反応溶媒を減圧下でMTBEからIPAに交換した。反応溶液の温度を-10~3℃に低下させ、溶液を2時間撹拌したところ、固体沈殿物が形成された。固体を濾過し、N下で15時間乾燥させて、表題化合物を白色固体として得た(42.8g、144mmol、74%);Hnm R(500 MHz,CDCl)1.30(3H,s),1.65(2H,td),2.16-2.47(6H,m),5.66(2H,s),7.46(1H,dd),7.51-7.63(3H,m),7.78-7.93(2H,m),7.93-8.05(1H,m).MS(ESI):m/z[M+Na] 319.1.
【0096】
方法B
中間体3(2.66kg、3.09mol、MeCN中18.2%)の溶液に、1-クロロメチルナフタレン(535g、2.94mol)、引き続いて炭酸カリウム(513g、3.71mol)及びさらなる部分の新鮮なMeCN(714mL)を添加した。懸濁液を50℃~60℃に17時間加熱した後、25℃~30℃に冷却した。固体をCeliteパッドを通した濾過によって除去し、これをMeCN(2×967mL)で洗浄した。濾液を減圧下で1.45~1.93Lに濃縮する。温度を50℃未満に維持しながら、MeCNを減圧下でイソプロパノールに交換した。混合物の温度を20~25℃に低下させ、その上に固体沈殿物が形成された。混合物をさらに-10~0℃に冷却し、次いで、固体を濾過し、イソプロパノールで洗浄し、N下で乾燥させ、表題化合物が白色固体(752.6g、2.49mol、80.5%)として得られた;Hnm R(500 MHz,CDCl)1.30(3H,s),1.65(2H,td),2.16-2.47(6H,m),5.66(2H,s),7.46(1H,dd),7.51-7.63(3H,m),7.78-7.93(2H,m),7.93-8.05(1H,m).MS(ESI):m/z[M+Na] 319.1.
【0097】
中間体5:メチル5-(1,3,6,2-ジオキサザボロカン-2-イル)-4-フルオロ-2-メトキシベンゾエート
方法A
【化7】

Pin(362g、1.43mol)を、酸素1%未満までNで脱気した2-Me-THF(1.75L)に添加した。溶液を20~30℃に保持し、メチル4-フルオロ-2-メトキシベンゾエートを添加した(250g、1.36mol)。DTBBPY(1.09g、4.10mmol)を添加し、反応容器を排気し、酸素レベルが0.5%未満になるまでNを再充填した。[Ir(COD)OMe]((1.35g、2.04mmol)を添加し、反応容器を排気し、酸素レベルが0.5%未満になるまでNを再充填した。反応混合物を80~85℃に加熱し、その温度でさらに2時間保持した。反応混合物を0~5℃に冷却し、引き続いてジエタノールアミン(428g、4.07mol、IPA中10.9 M)を2.5時間にわたってゆっくり添加し、同時にHガスを発生させた。反応混合物を0~5℃で2.5時間撹拌した後、濾過し、固体を2-Me-THF(3×750mL)で洗浄した。固体をN下で10時間乾燥させて、表題化合物を白色固体として得た(356g、1.20mol、88%);Hnm R(500 MHz,DMSO-d6)δ 2.81-2.89(2H,m),3.14(2H,dq),3.71(2H,ddd),3.74(3H,s),3.78(3H,s),3.84(2H,td),6.77(1H,d),7.10(1H,s),7.83(1H,d).MS(ESI):m/z[M+H] 297.1.
【0098】
方法B
Pin(29.0g、114mmol)及びメチル4-フルオロ-2-メトキシベンゾエート(20.6g、109mmol)を、酸素1%未満までNで脱気した2-Me-THF(140mL)に添加した。溶液を20~30℃に保持し、次いで、DTBBPY(88mg、0.33mmol)及び[Ir(COD)OMe](108mg、0.16mmol)を添加し、反応容器を排気し、酸素レベルが0.5%未満になるまでNを再充填した。反応混合物を80~85℃に加熱し、その温度でさらに3時間保持した。反応混合物を0~10℃に冷却し、続いてイソプロパノール(12.4mL、218mmol)をゆっくり添加し、同時にHガスを発生させた。種晶(中間体5 100mg)を添加し、続いてIPA(20mL)に溶解したジエタノールアミン(22.84g、218mmol)を添加して、移動性スラリーを得た。スラリーを20~30℃に加温し、固体を濾過によって回収した。次いで、これを2-Me-THF(160mL)で洗浄し、固体をN下で10時間乾燥させて、表題化合物を白色固体として得た(29.1g、96mol、88%);Hnm R(500 MHz,DMSO-d6)δ 2.81-2.89(2H,m),3.14(2H,dq),3.71(2H,ddd),3.74(3H,s),3.78(3H,s),3.84(2H,td),6.77(1H,d),7.10(1H,s),7.83(1H,d).MS(ESI):m/z[M+H] 297.1.
【0099】
中間体6:メチル4-フルオロ-5-ヒドロキシ-2-メトキシベンゾエート
方法A
【化8】

中間体5(350g、1.18mol)のHO(1.05L)中の懸濁液にTHF(1.75L)を添加し、反応混合物を透明な溶液が得られるまで撹拌した。(NHCO(136g、1.41mol)を添加し、不均一な混合物を0~10℃に冷却した。NaBO・4HO(217g、1.41mol)を、反応温度を0~30℃に維持しながら2時間かけて10等量ずつ添加した。反応温度を20~30℃に調整し、1時間保持した。NaHSO水溶液(1.96L、942mmol、HO中0.48 M)を3時間にわたって添加し、反応混合物をさらに0.5時間撹拌した。反応混合物を濾過し、固体を酢酸エチル(700mL)及び濾液で洗浄し、洗浄して合わせ、二相性溶液を得た。溶液を分離し、保持した有機相溶媒を減圧下でTHF/酢酸エチルからMeOHに交換し、温度を40℃未満に維持した。HO(3.50L)を4時間にわたって滴加し、反応混合物を0~5℃に冷却し、2時間保持した。反応混合物を濾過し、集めた固体をHO(3×350mL)で洗浄し、40℃未満の熱風下で乾燥させ、表題化合物を白色固体として得た(195g、974mmol、収率83%)。Hnm R(500 MHz,CDCl)δ 3.82(3H,s),3.86(3H,s),6.72(1H,d),7.54(1H,d).MS(ESI):m/z[M+H] 201.0.
【0100】
方法B
中間体5(32.41g、67.3mmol)を、酢酸(12.13g、202mmol)を含む2-Me-THF(100mL)に溶解し、0~10℃に冷却した。過酸化水素溶液(30% w/w、9.16g、80.8mmol)を2時間にわたって添加し、次いで、反応温度を20~30℃に調整し、18時間保持した。Na.5HOの水溶液(20% w/w、50mL)が混合物をクエンチし、相分離をもたらす。水相を廃棄し、有機相をNa.5HOの水溶液(5% w/w、100mL)で2回洗浄する。有機相を減圧下で60mLに濃縮し、続いて2-Me-THF(100mL)でさらに2回真空蒸留して、35~45℃で溶解溶液を得た。種晶(中間体6 100mg)を添加し、続いてn-ヘプタン300mLを5時間にわたってゆっくり添加することによって核形成を制御した。得られたスラリーを20~30℃に調整し、一晩撹拌した後、濾過した。回収した固体をn-ヘプタン(2×60mL)で洗浄し、乾燥させ、表題化合物を白色固体として得た(12.5g、62.5mmol、収率93%);Hnm R(500 MHz,CDCl)δ 3.82(3H,s),3.86(3H,s),6.72(1H,d),7.54(1H,d).MS(ESI):m/z[M+H] 201.0.
【0101】
中間体7:(1R,2R,3S,4S)-3-(メトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2-カルボン酸
【化9】

(3aR,4R,7S,7aS)-3a,4,7,7a-テトラヒドロ-4,7-メタノイソベンゾフラン-1,3-ジオン(387g、2.36モル)のトルエン(4.64L)中の溶液に、キニジン(843g、2.60mol)を添加した後、トルエン(774mL)を添加した。反応混合物を-10~-5℃に冷却し、MeOH(227g、286mL、7.08mol)を1.5時間にわたって滴加した後、-10~-5℃で14時間保持した。反応混合物を-5~5℃に加温し、2時間保持し、次いで、濾過した。固体をトルエン(3×387mL)で洗浄し、濾液と洗液を合わせ、0~10℃に冷却した。他の容器で、HCl(590mL、7.08mol、HO中12 M)の水溶液及びNaCl(1.24kg、21.2mol)をHO(6.39L)に添加し、得られた溶液を主反応容器に滴加し、反応溶液を10℃未満に維持した。反応混合物を10~20℃に加温し、0.5時間保持した後、濾過した。固体をトルエン(1.94L)で洗浄し、濾液と洗液を合わせ、二相性溶液を分離した。有機相をNaCl水溶液(3.87L、HO中20% w/w)で洗浄し、5℃未満で保存して、表題化合物をトルエン中5.9% w/w溶液として得た(6.19kg、1.83mol、78%);精製化合物のHnm R(400 MHz DMSO-d)δ 1.25-1.32(1H,m),1.95(1H,d),2.48-2.50(2H,m),2.93(2H,s),3.51(3H,s),6.15-6.22(2H,m),12.21(1H,s).MS(ESI):m/z[M+Na]+ 219.1.
【0102】
中間体8:メチル(1S,2S,3R,4R)-3-アミノビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2-カルボキシレート塩酸塩
【化10】

中間体7のトルエン中溶液(6.19kg、5.9% w/w、1.85mol)に、-5~5℃でTEA(307mL、223g、2.22mol)、引き続いてDPPA(538g、1.94mol)を添加し、反応溶液を5℃に維持した。反応混合物を-5~5℃で4時間攪拌し、次いで、TEA(767mL、557g、5.55mol)、引き続いてクエン酸(352g、1.85mol)を添加した。反応混合物を-5~5℃で6時間攪拌し、次いで、反応溶液を10℃未満に維持しながらHO(3.6L)を添加した。二相反応溶液を0.5時間攪拌し、相を分離し、有機相をHO(3.6L)及びNaCl水溶液(3.6L、HO中15% w/w)で洗浄し、次いで、2~8℃で保存すると、メチル(1S,2S,3R,4R)-3-(アジドカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2-カルボキシレート(中間体9)がトルエン溶液として得られ、これを次の工程で直接使用した。2℃~8℃のトルエン溶液としての中間体9を、70℃~80℃のトルエン(1.80L)を含有する反応器に2時間かけて添加し、反応温度を80℃未満に維持した。得られた溶液を1時間撹拌した後、20℃~30℃に冷却した。有機反応溶媒をトルエンから1,4-ジオキサンに減圧下で交換し、温度を50℃未満に維持して、メチル(1S,2S,3R,4R)-3-イソシアナトビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2-カルボキシレート(中間体10)を1,4-ジオキサン溶液として得、これを次の工程で直接使用した。10~20℃の中間体10の1,4-ジオキサン中溶液に、HCl(420mL、1.68mol、1,4-ジオキサン中4M)、引き続いてHO(360mL、1.68mol、1,4-ジオキサン中4.67M)を添加した。反応混合物を25~35℃に加温し、16時間保持した。MTBE(1.65L)を滴加し、反応混合物を濾過し、固体をMTBE/1,4-ジオキサン(1:1,660mL)及びMTBE(660mL)で洗浄し、次いで、真空下、30~40℃で乾燥させて、表題化合物を白色固体として得た(258g、1.27mol、99%超 ee、75%);Hnm R(400 MHz,DMSO-d6)δ 1.45(1H,d),2.04(1H,d),2.52-2.67(1H,m),2.94-3.10(2H,m),3.19(1H,d),3.65(3H,s),6.21(1H,m),6.30(1H,m),8.34(3H,s).MS(ESI):m/z[M+H] 168.1.
【0103】
中間体11:ナフタレン-1-イルメチル(1r,4r)-4-ヒドロキシ-1-メチルシクロヘキサン-1-カルボキシレート
【化11】

経路A
20~30℃のNaHPO.12HO(8.25g、23.0mmol)、NaHPO(0.55g、4.48mmol)及びMgCl(0.11g、1.10mmol)のHO(550mL)中の溶液に、中間体4(50.0g、169mmol)をIPA(450mL)中の溶液として添加した。6 M HClを用いて反応溶液のpHを7.3~7.8に調整し、NAD+(0.66g、1.00mmol)を添加し、続いてADH-230(7.50g、0.15wt%)を添加した。ADH-230は、Johnson Matthey PLC,UK(カタログ番号ADH-230)から入手可能なアルコールデヒドロゲナーゼである。次いで、反応混合物を33℃~37℃で18時間保持した後、温度を45℃未満に維持しながら、減圧下で300mL~400mLに濃縮した。NaCl(150g)、Celite(登録商標)(20.0g、0.4wt%)及びMTBE(500mL)を添加し、反応物を0.5時間保持した。混合物を濾過し、濾過ケーキをMTBE(250mL)で洗浄した。合わせた濾液を分離し、水相をMTBE(500mL)で抽出した。有機相を合わせ、HO(250mL)で洗浄した後、温度を45℃未満に維持しながら、減圧下でTHFに溶媒交換し、THF中の溶液として表題化合物(138g、33% w/w%、>99:1 トランス:シス、0.1%未満のIPA、収率92%)を得、これを次の工程で直接使用した。精製化合物のHnm R(500 MHz,CDCl)δ 1.21(3H,s),1.48-1.58(2H,m),1.62-1.77(4H,m),1.82-1.93(2H,m),3.74-3.77(1H,m),5.57(2H,s),7.41-7.48(1H,m),7.48-7.57(3H,m),7.85(1H,d),7.87-7.91(1H,m),7.98(1H,d).MS(ESI):m/z[M+Na]+ 321.1.
【0104】
経路B
窒素下、-78℃に冷却した中間体4(1.00g、3.37mmol)のTHF(10mL)中攪拌溶液に、リチウムトリ-sec-ブチルボロヒドリド(1.06g、5.6mmol)のTHF(5mL)中の溶液を1分間にわたって滴加した。得られた溶液を-78℃で2時間撹拌した。反応混合物を-78℃で0.1 M HCl(10mL)でクエンチし、次いで、EtOAc(3×50mL)で抽出した。有機層をプールし、NaSO上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣を分取TLC(EtOAc/PE、1:3)によって精製して、表題化合物(0.488g、48.5%)を淡黄色ゴムとして得た。単離された物質は、3:100のシス/トランス比率を有していた。Hnm R(400 MHz,CDCl)δ1.21-1.25(s,3H),1.37-1.49(m,1H),1.49-1.61(m,2H),1.61-1.74(m,4H),1.83-1.95(m,2H),3.74-3.83(dq,1H),5.57-5.61(s,2H),7.43-7.54(dd,1H),7.50-7.61(m,3H),7.84-7.94(m,2H),7.97-8.04(m,1H).).MS(ESI):m/z[M+Na] 321.
【0105】
中間体12:メチル4-フルオロ-2-メトキシ-5-(((1s,4s)-4-メチル-4-((ナフタレン-1-イルメトキシ)カルボニル)シクロヘキシル)オキシ)ベンゾエート
【化12】

中間体11のTHF中溶液(736g、34% w/w、839mmol)に、THF(156mL)、PPh(248g、944mmol)及び中間体6(140g、699mmol)を添加した。溶液を30℃に加熱した後、1時間かけてDIAD(184g、909mmol)を滴加し、反応温度を40℃未満に維持した。溶液を30℃~40℃で1時間保持した後、20℃~30℃に冷却し、続いてNaClの水溶液(700mL、HO中20% w/w)を添加した。層を分離し、表題化合物のTHF中の粗製溶液を次の工程で直接使用した。精製化合物のHnm R(500 MHz,CDCl)δ 1.17(3H,s),1.20-1.30(2H,m),1.58(2H,qd),1.88-1.98(2H,m),2.29(2H,d),3.84(3H,s),3.88(3H,s),4.05(1H,tq),5.61(2H,s),6.72(1H,d),7.43-7.58(5H,m),7.82-7.94(2H,m),8.00(1H,d).MS(ESI):m/z[M+Na]+ 503.2.
【0106】
中間体13:4-フルオロ-2-メトキシ-5-(((1s,4s)-4-メチル-4-((ナフタレン-1-イルメトキシ)カルボニル)シクロヘキシル)オキシ)安息香酸
【化13】

前の工程から直接0~5℃で使用した中間体12の粗製溶液に、反応温度を10℃未満に維持しながら、LiOH.2HO(88.0g、2.10mol、HO 525mL中)の水溶液を1時間にわたって添加した。溶液を15~30℃に加温し、16時間激しく撹拌した。IPAC(1.68L)を添加し、溶液を0℃~10℃に冷却し、引き続いて反応温度を10℃未満に維持しながらHPO(1.26L、2.52M、HO中2 M)を滴加して、4.0~5.0の溶液pHを得た。有機層を分離し、NaCl水溶液(700mL、HO中20% w/w)で洗浄した。温度を50℃未満に維持しながらTHFを減圧下で除去し、IPAC(4.20L)を添加して、IPAC中の表題化合物を得て、これを次の工程で直接使用した。精製化合物のHnm R(500 MHz,CDCl)δ 1.18(3H,s),1.22-1.36(2H,m),1.58(2H,qd),1.95(2H,dt),2.29(2H,d),4.02(3H,s),4.19(1H,td),5.60(2H,s),6.82(1H,d),7.46(1H,dd),7.49-7.62(3H,m),7.78(1H,d),7.82-7.94(2H,m),7.99(1H,d).
【0107】
中間体14:4-フルオロ-2-メトキシ-5-(((1s,4s)-4-メチル-4-((ナフタレン-1-イルメトキシ)カルボニル)シクロヘキシル)オキシ)ベンゾエートシクロヘキサンアミニウム塩
【化14】

前の工程から直接使用した中間体13のIPAC中粗製溶液に、50~55℃で、シクロヘキシルアミン(280mL、699mmol、IPAC中2.5 M)の溶液を3時間にわたって滴加した。不均一なスラリーを50℃~55℃で0.5時間、次いで40℃~45℃でさらに1時間撹拌した。反応混合物を濾過し、固体を40~45℃に予熱したIPAC(3×0.98L)で洗浄し、N流下45℃で16時間乾燥させた。乾燥して回収した固体にMeOH(3.64L)を添加し、混合物を55℃~56℃に加熱した。HO(1.58L)を1時間かけて滴加し、次いで混合物を1時間撹拌した後、3時間かけて0℃~5℃に冷却した。不均一なスラリーをさらに1時間保持し、次いで濾過し、5:3 MeOHで洗浄した:HOを0℃で(2×750mL)、固体をN下、45℃で16時間乾燥させて、表題化合物を白色固体として得た(332g、メチル4-フルオロ-5-ヒドロキシ-2-メトキシベンゾエートから85%)。Hnm R(500 MHz,CDCl)δ 0.96(1H,ddt),1.03-1.36(6H,m),重複1.14(3H,S),1.46-1.7(5H,m),1.91(4H,dt),2.26(2H,d),2.81(1H,t),3.76(3H,s),4.03(1H,tt),5.59(2H,s),6.65(1H,d),7.37-7.49(2H,m),7.49-7.6(3H,m),7.81-7.93(2H,m),7.98(1H,d).MS(ESI):m/z[M+Na]+ 489.2.
【0108】
中間体15:メチル(1S,2S,3R,4R)-3-(4-フルオロ-2-メトキシ-5-(((1s,4S)-4-メチル-4-((ナフタレン-1-イルメトキシ)カルボニル)シクロヘキシル)オキシ)ベンズアミド)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2-カルボキシレート
【化15】

中間体14(149g、264mmol)のDCM(750mL)中溶液に、15~30℃でHO(450mL)を添加し、引き続いてHCl(300mL、HO中1 M)をゆっくり添加した。二相性溶液を0.5時間撹拌し、次いで、分離し、有機相をHCl(HO中750mL、0.2 M)、次いで、HO(3×750mL)で洗浄した。有機溶液を減圧下で濃縮し、温度を30℃未満に維持して、HO 0.1%未満まで乾燥させた。溶液をDCM(450mL)で希釈して総体積を750mLにした後、中間体8(59.3g、291mmol)を添加して不均一なスラリーを得た。この混合物に、DIPEA(137g、1.06mol)、引き続いてT3P(252g、397mmol、EtAOc中50% w/w)を添加し、溶液を1時間撹拌した。溶液を0℃~10℃に冷却し、続いてHO(750mL)を添加し、続いてさらに0.5時間撹拌した。二相溶液を分離し、有機相をHO(2×750mL)で洗浄した後、減圧下でTHFに溶媒交換して、THF中の表題化合物を得て、これを次の工程で直接使用した。精製化合物のHnm R(500 MHz,CDCl)δ1.16(3H,s),1.25(2H,td),1.49-1.69(3H,m),1.92-2.01(2H,m),2.04-2.1(1H,m),2.28(2H,d),2.71(1H,dd),2.83(1H,s),2.92-3.05(1H,m),3.61(3H,s),3.93(3H,s),4.17(1H,td),4.46(1H,td),5.60(2H,s),6.25(2H,ddd),6.72(1H,d),7.46(1H,dd),7.48-7.6(3H,m),7.81-7.95(3H,m),7.99(1H,d),8.60(1H,d).MS(ESI):m/z[M+H] 616.3.
【0109】
中間体16:(1S,2S,3R,4R)-3-(4-フルオロ-2-メトキシ-5-(((1s,4S)-4-メチル-4-((ナフタレン-1-イルメトキシ)カルボニル)シクロヘキシル)オキシ)ベンズアミド)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2-カルボン酸
【化16】

前の工程からの中間体15のTHF(750mL)中の粗製溶液を0~5℃に冷却した。LiOH.2HO(27.7g、661mmol、HO 150mL中)の水溶液を添加し、溶液を36時間保持した。HCl(0.5 M、1.45L、2.90mol)を少しずつゆっくり添加して溶液のpHを2に調整し、0~5℃で1時間保持した。不均一なスラリーを濾過し、固体を1:3 MeOHで洗浄した。HOを0℃で(600mL)、固体をN下、45℃で16時間乾燥させて、粗製表題化合物を白色固体として得た(158g、99%)。粗製生成物(150g)をIPAC(1.13L)中で60~65°Cで0.5時間スラリー化した。不均一な混合物を3時間にわたって0~5℃に冷却し、次いでさらに1時間撹拌した後、濾過した。回収した固体を0~5℃のIPAC(2×300mL)で乾燥させ、次いで、N下、45℃で12時間乾燥させて、表題化合物を白色固体として得た(127g、中間体14から82%);Hnm R(500 MHz,CDCl)δ1.16(3H,s),1.2-1.35(2H,m),1.50-1.69(3H,m),1.89-2.08(3H,m),2.27(2H,ddd),2.72(1H,dd),2.80(1H,s),3.06(1H,s),3.75(3H,s),4.15(1H,tt),4.43-4.54(1H,m),5.59(2H,s),6.24(2H,ddd),6.53(1H,d),7.45(1H,dd),7.47-7.58(3H,m),7.8-7.9(3H,m),7.94-8.05(1H,m),8.59(1H,d).MS(ESI):m/z[M+H] 602.3.
【0110】
中間体17:ナフタレン-1-イルメチル(1S,4s)-4-(2-フルオロ-4-メトキシ-5-((((1R,2R,3S,4S)-3-(((1-メチルシクロブチル)メチル)カルバモイル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2-イル)カルバモイル)フェノキシ)-1-メチルシクロヘキサン-1-カルボキシレート
【化17】

DIPEA(6.45g、49.9mmol)のDCM(300mL)中の溶液に、0~5℃で中間体16(30.6g、49.9mmol)を添加し、引き続いて(1-メチルシクロブチル)メタンアミン塩酸塩(8.63g、62.4mmol)を添加した。温度を0~5℃に維持しながらDIPEA(25.8g、200mmol)を滴加し、続いてT3P(50.8g、79.8mmol、EtAOc中50% w/w)を0.5時間にわたって添加した。溶液を15℃~25℃に加温し、1時間撹拌した後、温度を30℃未満に維持しながらHO(150mL)を滴加した。二相溶液を分離し、有機相をHO(2×150mL)で洗浄し、次いで、溶媒を減圧下でEtOHに交換して、表題化合物をEtOH中の粗製溶液(128g、26% w/w、収率96%)として得て、これを次の工程で直接使用した。精製化合物のHnm R(500 MHz,CDCl)δ 0.98(3H,s),1.16(3H,s),1.21-1.29(2H,m),1.51-1.66(5H,m),1.66-1.76(3H,m),1.76-1.82(1H,m),1.88-2.02(2H,m),2.26(3H,dd),2.40(1H,dd),2.80(1H,s),3.00(1H,s),3.05(1H,dd),3.21(1H,dd),3.93(3H,s),4.06-4.2(1H,m),4.39(1H,td),5.60(2H,s),5.64(1H,t),6.19-6.38(2H,m),6.70(1H,d),7.46(1H,dd),7.49-7.62(3H,m),7.75-7.93(3H,m),8.00(1H,d),8.66(1H,d).MS(ESI):m/z[M+H] 683.3.
【0111】
化合物(I):(1S,4s)-4-(2-フルオロ-4-メトキシ-5-(((1S,2R,3S,4R)-3-(((1-メチルシクロブチル)メチル)カルバモイル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)カルバモイル)フェノキシ)-1-メチルシクロヘキサン-1-カルボン酸
【化18】

中間体17のEtOH(206g、19% w/w、57.9mmol)中の溶液に、EtOH(385mL)を添加し、引き続いて10wt%Pd/C(3.96g、5% w/w)を添加した。容器をNで6回パージし、続いてHによってさらに6回パージした。容器をHで0.4MPaに加圧し、反応溶液を20℃~30℃で20時間攪拌した。H雰囲気をNで完全に置換した後、反応混合物を濾過し、固体をEtOH(3×80mL)で洗浄した。第2の同一のバッチを実施し、回収したEtOH溶液を合わせて単一溶液を得た。温度を45℃未満に維持しながら、溶媒を減圧下でEtOAcに交換した。EtOAc溶液(280mL)を0.5時間で70℃~75℃に加熱し、次いで、40℃~45℃に冷却し、n-ヘプタン(475mL)を0.5時間かけて滴加した。混合物を0.5時間撹拌し、次いで、2時間にわたって20℃~25℃に冷却し、次いで、さらに2時間保持した。不均一なスラリーを濾過し、次いで、固体を1:2 EtOAc/n-ヘプタン(160mL)で2回洗浄した後、45℃未満で20時間乾燥させて、粗製表題化合物を白色固体として得た(55.7g、87%)。
【0112】
パート1:粗製表題化合物(2.50g、4.59mmol)をEtOH(15.0mL)に溶解した。水(7.50mL)を滴加している間、溶液の温度を25.0±2.0℃に維持し、その間に沈殿物が形成された。不均一なスラリーをさらに1.0時間撹拌し、次いで、濾過によって回収した。固体をEtOH/水(2×5.00mL)の(2:3)混合物で洗浄し、回収し、N下で乾燥させて、表題化合物を白色固体として得た(1.80g、72%)。この物質を形態Aとして特徴付け、パート2に記載の方法に従って晶種として使用した。
【0113】
パート2:粗製表題化合物(50.0g、91.8mmol)をEtOH(350mL)に溶解し、次いで、フィルターに通した。EtOH(100mL)を容器に添加し、次いでフィルターに通して、合わせたEtOH溶液を得た。HO(150mL)を0.5時間にわたってゆっくり添加している間、溶液の温度を25.0±2.0℃に維持した。溶液をさらに0.5時間撹拌し、次いで、パート1からの種晶物質(0.005g、0.1% w/w)を添加した。溶液を6時間保持し、次いで、2時間にわたって20.0±0.5℃に冷却し、次いで、さらに6時間保持した。HO(150mL)を6時間にわたってゆっくり添加し、次いで、混合物を濾過前にさらに2時間保持した。EtOH(45mL)及びHO(30mL)を容器に添加し、次いで濾過ケーキを洗浄するために使用した。固体を回収し、N下、45℃未満で12時間乾燥させて、表題化合物形態Aを白色固体として得た(42.2g、85%);Hnm R(500 MHz,CDCl)δ 0.97(3H,s),1.12-1.42(5H,m),重複1.25(3H,S),1.43-1.82(10H,m),1.92-2.1(3H,m),2.25(3H,dd),2.51(2H,dd),2.96(1H,dd),3.18(1H,dd),3.92(3H,s),4.12-4.28(1H,m),4.41(1H,t),5.81(1H,t),6.70(1H,d),7.86(1H,d),8.60(1H,d).C30H42FN2O6の計算HRMS(ESI)m/z[M+H]:545.3022、実測値:545.3019。XRPDパターン(XRPD方法A)を図1に示す。
【0114】
実施例1
非晶質の(1S,4s)-4-(2-フルオロ-4-メトキシ-5-(((1S,2R,3S,4R)-3-(((1-メチルシクロブチル)メチル)カルバモイル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)カルバモイル)フェノキシ)-1-メチルシクロヘキサン-1-カルボン酸
(1S,4s)-4-(2-フルオロ-4-メトキシ-5-(((1S,2R,3S,4R)-3-(((1-メチルシクロブチル)メチル)カルバモイル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)カルバモイル)フェノキシ)-1-メチルシクロヘキサン-1-カルボン酸(3915mg、7.19mmol)の1,4-ジオキサン/水80:20(67mL)中の溶液を液体窒素中で凍結し、凍結乾燥機(Christ Alpha 2-4LD)中で一晩乾燥させて、非晶質の(1S,4s)-4-(2-フルオロ-4-メトキシ-5-(((1S,2R,3S,4R)-3-((1-メチルシクロブチル)メチル)カルバモイル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)カルバモイル)フェノキシ)-1-メチルシクロヘキサン-1-カルボン酸(3915mg、7.19mmol)を白色固体として得た。この非晶質形態のX線粉末回折パターン(XRPD方法A)を図2に示す。
【0115】
実施例2
非晶質の(1S,4s)-4-(2-フルオロ-4-メトキシ-5-(((1S,2R,3S,4R)-3-(((1-メチルシクロブチル)メチル)カルバモイル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)カルバモイル)フェノキシ)-1-メチルシクロヘキサン-1-カルボン酸の固体分散体
化合物(I)と適合するポリマーをスクリーニングして、固体分散体に適したポリマーを選択した。以下のポリマーは、結晶化の兆候なく50℃及び40℃/75%相対湿度(RH)で4週間にわたって安定であることが判明し、10%、20%及び40%の薬物負荷で適切であることが判明した;
・ Kollidon(登録商標)30(ポリ(1-ビニル-2-ピロリドン)、BASF Pharmaから入手可能)
・ Kollidon(登録商標)VA 64(1-ビニル-2-ピロリドンと酢酸ビニルの質量比6:4のコポリマー、BASF Pharmaから入手可能)
・ Soluplus(登録商標)(ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、BASF Pharmaから入手可能)
・ Eudragit(登録商標)L100-55S(メタクリル酸-アクリル酸エチルコポリマー(1:1)、Evonik Industries AGから入手可能)
・ ポリアクリル酸
・ AQOAT(登録商標)HPMC AS-LF(酢酸コハク酸ヒプロメロース、Shin-Etsu Chemical Co.,Ltd.から入手可能)
・ AQOAT(登録商標)HPMC AS-HF(酢酸コハク酸ヒプロメロース、Shin-Etsu Chemical Co.,Ltd.から入手可能)
・ 酢酸フタル酸セルロース
・ 酢酸フタル酸ポリビニル
【0116】
化合物(I)の3つの非晶質の固体分散体を、以下のプロセスに従って20%、30%及び40% w/wの薬物負荷で調製した:
1.化合物(I)をガラス容器に秤量し、次いで、Kollidon(登録商標)VA 64(1-ビニル-2-ピロリドンと酢酸ビニルの質量比6:4のコポリマー、BASF Pharmaから入手可能)を添加した。次いで、粉末をTurbula(登録商標)ブレンダーを用いて32rpmで5分間混合した。
2.混合物を押出する前に、ホットメルト押出機を最初に溶融ビーズで洗浄した。20%薬物負荷固体分散体を200℃で押出し、フィラメントを清浄なガラス容器に回収した。30%薬物負荷固体分散体も200℃で押出し、40%薬物負荷固体分散体を210℃で押出した。
3.次いで、収集したフィラメントを実験室ミルを用いて手動で粉砕した。
【0117】
試料を40℃/75%相対湿度(RH)(開放容器)及び50℃(密閉容器、周囲RH)で4週間安定させ、試料のXRPDを毎週記録した。図3は、形成後、並びに40℃/75%相対湿度(RH)(開放容器)で4週間、及び50℃(密閉容器、周囲RH)で4週間保存した後の各試料のXRPD回折パターン(XRPD方法B)を示す。XRPDパターンは、非晶質の固体分散体を40℃/75%相対湿度(RH)で4週間(開放容器)及び50℃で4週間(密閉容器、周囲RH)保存した際に化合物(I)の結晶化が起こらなかったことを示した。30%薬物負荷固体分散体を用いた溶解実験は、模擬胃液pH 1.8及び空腹状態模擬腸液(FaSSIF)pH 6.5における改善された溶解を、化合物(I)の結晶形態A物質に基づく顆粒物に対して示した。
【0118】
実施例3
(1S,4s)-4-(2-フルオロ-4-メトキシ-5-(((1S,2R,3S,4R)-3-(((1-メチルシクロブチル)メチル)カルバモイル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)カルバモイル)フェノキシ)-1-メチルシクロヘキサン-1-カルボン酸の形態G
(1S,4s)-4-(2-フルオロ-4-メトキシ-5-(((1S,2R,3S,4R)-3-(((1-メチルシクロブチル)メチル)カルバモイル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)カルバモイル)フェノキシ)-1-メチルシクロヘキサン-1-カルボン酸の形態Aを加熱すると、DSCは、約43.9℃に開始する吸熱転移を示す。この新しい吸熱ピークは、固体-固体相転移に割り当てられ、約43.9℃で観察される、吸熱ピークの完了を上回る温度において得られる相を形態Gと称する。この新しい無水相形態Gは、217.5℃での融解開始に対応するDSCにおける最後の吸熱ピークまで存在する。形態A/形態GについてのDSC出力を図4に示す。形態A/形態GのTGA分析を図5に示す。
【0119】
化合物(I)の生物学的及び物理化学的データ
RXFP1 Hu cAMP(試験A)
hRXFP1のモジュレーターをスクリーニングするために、GS-結合hRXFP1受容体を介してcAMP産生を刺激する化合物同定アッセイを使用した。cAMP HiRange HTRFキット(CisBio Bioassays,Franceから入手可能;カタログ番号62AM6PEJ)を、cAMPの検出について製造業者の推奨に従って広範囲で使用した。HTRF法は、細胞によって産生された天然cAMPと色素d2で標識されたcAMPとの間の競合イムノアッセイである。トレーサー結合は、cAMPに対するクリプテート標識抗体で可視化され、したがって、シグナルは、産生されたcAMPの量に反比例する。
【0120】
アッセイ試薬の調製:
アッセイ緩衝液:0.1% BSA(Sigma、A8806)を含有する5mM Hepes(ThermoFisher、15630)pH 7.4を有するHBSS(ThermoFisher、14065)
細胞:ヒトRXFP1で安定にトランスフェクトしたJump-In(商標)T-REx(商標)CHO-K1細胞(ThermoFisher)を使用した。10ng/mlドキシサイクリンで24時間処理することによって、細胞を誘導してヒトRXFP1を発現させた。次いで、細胞を長期保存のために凍結保存した。各実験の開始時に、細胞を融解し、PBSで洗浄し、1.875×10^5細胞/mlまでアッセイ緩衝液に再懸濁した。
cAMP標準:CisBioキットで提供されるストック標準cAMPをアッセイ緩衝液で希釈して、アッセイで2.8μMの最高最終濃度にした。
HTRF検出試薬:CisBioの説明書に従って再構成されたcAMP-d2及び抗cAMPクリプテートを、HTRF-キットと共に提供された溶解緩衝液で1:40に希釈した。
【0121】
アッセイを実行するための段階的手順:
1.DMSOに溶解した40nLの試験化合物を、白色384ウェルプレート(Greiner;784075)に水性的に分注し(Labcyte Echo)、密封し、アッセイするまで室温で保存した。
2.アッセイの日に、エコー音響ディスペンサーを用いて、DMSO中40nLの200nMリラキシン-2(1nMの最終濃度)を100%対照ウェルに添加し、40nLのDMSOを0%ウェルに添加した。
3.ホスホジエステラーゼを遮断するための1mM IBMX(最終濃度0.5mM)を含む4μLのアッセイ緩衝液を、Multidrop Combi(ThermoFisher)を用いて添加した。
4.4μL細胞溶液(1.875×10^5細胞/ml)をMultidrop Combiを用いて添加して、750細胞/ウェルを得た。
5.室温で45分間のインキュベーション。
6.溶解緩衝液中4μLのcAMP-d2をMultidrop Combiを用いて添加した。
7.溶解緩衝液中4μLの抗cAMPクリプテートをMultidrop Combiを用いて添加した。
8.室温での2時間のインキュベーション。
9.均一な時間分解蛍光(HTRF)シグナルを、Envision(PerkinElmer)又はPherastar(BMGLabtech)リーダー(λex=340nm、λem=665及び615nm)で検出した。
【0122】
cAMP標準曲線を使用して、HTRFデータを、濃度応答の計算のために引き続いて使用された試料中に産生されたcAMPの量に変換した。濃度応答データを、4パラメータロジスティックフィットを用いて、ヒルの等式に当てはめた。アッセイの結果をEC50(μM)及びSinf(%)として表1に報告する。
【0123】
EC50は、刺激活性がその最大レベルの50%に達する濃度として定義される。アッセイを同じ化合物について複数回行った場合、幾何平均を報告する。
【0124】
infは、無限濃度の試験化合物における当てはめられた活性レベル、有効性である。有効性データの比較を容易にするために、有効性を、飽和濃度のリラキシン(1nM)によって刺激された応答の効果%に対して正規化した。アッセイを同じ化合物について複数回行った場合、算術平均を報告する。
【0125】
ヒト血漿タンパク質結合(試験B)
アッセイは、Wernevik,J.et al.,「A Fully Integrated Assay Panel for Early Drug Metabolism and Pharmacokinetics Profiling」、Assay and Drug Development Technologies,2020,18(4),157-179の第167頁~第170頁に記載のヒト血漿タンパク質結合アッセイに従って行った。データを、非結合画分(f)(遊離%)として表1に報告する。アッセイを同じ化合物について複数回行った場合、算術平均を報告する。
【0126】
ヒト肝臓ミクロソーム安定性(試験C)
アッセイは、Wernevik,J.et al.,「A Fully Integrated Assay Panel for Early Drug Metabolism and Pharmacokinetics Profiling」、Assay and Drug Development Technologies,2020,18(4),157-179の第170頁~第174頁に記載のヒト肝臓ミクロソーム安定性アッセイに従って行った。データをCLint(μl/分/mgタンパク質)として表1に報告する。アッセイを同じ化合物について複数回行った場合、算術平均を報告する。
【0127】
ヒト肝細胞安定性(試験D)
ヒト肝細胞における化合物の代謝安定性を、以下のプロトコルを使用して評価した:
1.化合物及び対照化合物を適切な溶媒(DMSO)に入れた10mMストック溶液を調製する。インキュベーション培地(L-15培地)を、37℃の水浴に入れ、使用前に少なくとも15分間温めさせる。
2.96ウェルディープウェルプレート(「クエンチプレート」)の各ウェルに、80μLのアセトニトリルを添加する。
3.新しい96ウェルプレートにおいて、198μLのアセトニトリル及び2μLの10mMストック溶液を合わせることによって、10mM試験化合物及び対照化合物を、100μMに希釈する。
4.凍結保存された(-150℃未満)ヒト肝細胞(Bioreclamation IVT(製品番号S01205)から得たLiverPool(商標)10-ドナーヒト肝細胞)のバイアルを保存庫から取り出し、融解プロセスが起こるまでバイアルが極低温に保たれるようにする。バイアルを37℃の水浴に入れて軽く振盪させることによって、可能な限り速やかに、細胞を融解させる。全ての氷晶が溶解し、見えなくなるまで、バイアルを水浴に入れたままにするべきである。融解が完了した後、バイアルに70%エタノールをスプレーし、バイアルをバイオセーフティキャビネットに移す。
5.バイアルを開け、内容物を、融解培地を含有する50mLコニカルチューブに注ぐ。50mLコニカルチューブを、遠心分離機に入れ、100gで10分間回転させる(室温)。回転の完了後、融解培地を吸引し、肝細胞を十分なインキュベーション培地に再懸濁して、約1.5×10細胞/mLをもたらす。
6.Cellometer(登録商標)Visionを使用して細胞を計数し、生存細胞密度を測定する。生存率が不十分(生存率80%未満)である細胞は、使用が容認できない。細胞を、インキュベーション培地で、1.0×10生細胞/mLの研究用細胞密度に希釈する。
7.247.5μLの肝細胞を96ウェル細胞インキュベーションプレートの各ウェルに移す。このプレートを、Eppendorf Thermomixer Comfortプレートシェーカー上に置いて、肝細胞を10分間温めさせる。
8.2.5μLの100μM試験化合物又は対照化合物を、細胞を含むインキュベーションウェルに添加して反応を開始させる。
9.このプレートを、Eppendorf Thermomixer Comfortプレートシェーカー上で、37℃及び900rpmでインキュベートする。0.5、5、15、30、45、60、80、100及び120分で、20μLのインキュベートした混合物を別個の「クエンチプレート」に移し、次いでボルテックスによって試料を2分間混合する。
10.クエンチプレートを、4,000rpmで20分間遠心分離する。各化合物の上清の30μLを96ウェル分析プレートに移した。4化合物を1つのカセットにまとめてプールする。次いで、プールされた試料を、180μlの純水を添加することによって希釈する。全てのインキュベーションは、単回で行われる。
【0128】
全ての計算は、Microsoft Excelを使用して実施した。ピーク面積は、抽出イオンクロマトグラムから決定した。親化合物のインビトロ固有クリアランス(インビトロClint(L/分/10細胞))を、時間曲線に対する親の消失率(%)Lnの回帰分析によって決定した。インビトロ固有クリアランス(インビトロClint、μL/分/10細胞)を表1に報告し、以下の式を使用して勾配値から決定した:
インビトロClint=kV/N
V=インキュベーション体積(0.25mL);
N=ウェルあたりの肝細胞の数(0.25×10細胞)。
アッセイを同じ化合物について複数回行った場合、幾何平均を報告する。
【0129】
ラット肝細胞安定性(試験E)
アッセイは、Wernevik,J.et al.,「A Fully Integrated Assay Panel for Early Drug Metabolism and Pharmacokinetics Profiling」、Assay and Drug Development Technologies,2020,18(4),157-179の第170頁~第174頁に記載のラット肝細胞安定性アッセイに従って行った。データを平均Clint(μl/分/10細胞)として表1に報告する。アッセイを同じ化合物について複数回行った場合、幾何平均を報告する。
【0130】
溶解度(pH 7.4)(試験F)
アッセイは、Wernevik,J.et al.,「A Fully Integrated Assay Panel for Early Drug Metabolism and Pharmacokinetics Profiling」、Assay and Drug Development Technologies,2020,18(4),157-179の第164頁~第167頁に記載の可溶性アッセイに従って行った。データを溶解度(μM)として表1に報告する。アッセイを同じ化合物について複数回行った場合、算術平均を報告する。
【0131】
【表1】
【0132】
ヒトRXFP1 cGMP産生アッセイ(試験G)
cGMP産生に関するRXFP1アゴニスト活性について化合物をプロファイルするために、GreengENIe cGMPアッセイ(Montanamol ecular;カタログ番号D800G)を使用した。このアッセイは、BacMamベクター中の哺乳動物細胞に送達されるmNeonGreen融合タンパク質蛍光バイオセンサに基づく。cGMPがバイオセンサに結合すると、蛍光が減少する。
【0133】
アッセイ試薬の調製:
アッセイ緩衝液:0.1%BSA(Sigma;A8806)を含有するDPBS(Gibco;14040133)
細胞:pIRESneo3中のヒトRXFP1で安定にトランスフェクトしたHEK293s細胞を使用した。細胞を、RXFP1発現を維持するために0.8mg/mLで補完した10% FBSを含むDMEM培地(Gibco;31966)中で培養した。
【0134】
アッセイを実行するための段階的プロトコル:
1日目
1.形質導入の1日前に細胞を分割し、組織培養フラスコ内で抗生物質を含まない10% FBSを含むDMEM培地中63000細胞/cm2に播種した。
2日目
2.PBS洗浄後、アキュターゼ(Gibco;1737341)を用いて細胞を剥離し、培地に再懸濁し、50mLチューブに回収した。
3.細胞をCEDEX(Innovatis)で計数し、培地で267000細胞/mLに希釈した。
4.ウイルス形質導入マスターミックスを、単一ウェルに対して以下の割合で試薬を混合することによって調製した:
6μLgENIe BacMAMベクター
0.2μL 500mM酪酸ナトリウム
13.8μL 10% FBS 含有DMEM培地
総体積20μL
5.細胞及び形質導入マスターミックスを、単一ウェルに対して30μLの細胞及び20μLのマスターミックスの割合で混合した。
6.上記由来の細胞形質導入混合物をウェルあたり50μLで、黒色ポリ-D-リジンコーティングされたμclear384ウェルプレート(Greiner;781946)に分注した。
7.プレートを暗所で37℃、5% CO2で24時間インキュベートした。
3日目
8.Bluewasher(BluCatBio)を使用してプレートから培地を除去した。
9.20μLのアッセイ緩衝液をMultidrop Combi(ThermoFisher)を用いて添加した。
10.プレートをアッセイ前に暗所で室温にて30分間インキュベートした。
11.プレートを、FLIPR Tetra(Molecular Devices)を使用してアッセイした:アッセイ緩衝液で希釈した10μLの化合物をFLIPR Tetraによって各ウェルに添加し、緑色蛍光を最大3時間にわたって経時的に測定した。
【0135】
データを、Screenerソフトウェア(Genedata AG)を使用して処理した。バックグラウンド蛍光を差し引いた後(化合物の添加前)、化合物添加後0~90分の曲線下面積値を応答の計算に使用した。濃度応答データを4パラメータロジスティックフィットで当てはめ、EC50値(nM)を表2に報告する。
【0136】
ヒトRXFP1リン酸化-ERKアッセイ(試験H)
ERKリン酸化に関するRXFP1アゴニスト活性について化合物をプロファイルするために、進行リン酸化ERK(Thr202/Tyr204)細胞キット(CisBio;64AERPEH)を使用した。このアッセイは、2つの抗体を使用する。1つはドナーフルオロフォア(Euクリプテート)で標識されたものであり、2つ目はアクセプター(d2)で標識されたものである。第1の抗体はリン酸化ERKに特異的に結合し、第2の抗体はERKの別のモチーフに結合し、そのリン酸化状態とは無関係である。ERKリン酸化は、2つの抗体が関与する免疫複合体形成を可能にし、それによってFRETシグナルを生成する。その強度は、試料中のリン酸化ERKの濃度に比例する。アッセイは、製造業者の推奨に従って実施した。
【0137】
アッセイ試薬の調製:
細胞:pIRESneo3中のヒトRXFP1で安定にトランスフェクトしたHEK293s細胞を使用した。細胞を、RXFP1発現を維持するために0.8mg/mLで補完した10% FBSを含むDMEM培地(Gibco;31966)中で培養した。連続培養した細胞についてアッセイを行った。
【0138】
試験化合物の希釈:化合物を、フェノールレッドを含まない無血清DMEM(Gibco;31053-038)で所望の濃度に希釈した。DMSO濃度を0.4%に調整した。
【0139】
抗体混合物:Eu及びd2標識抗ERK1/2抗体を、キットに提供される検出緩衝液で20倍に別々に希釈した。実験の直前に、等量の各希釈抗体溶液を抗体混合物に合わせた。
【0140】
アッセイを実行するための段階的プロトコル:
1日目
1.アキュターゼ(GIbco;1737341)を使用して細胞を培養フラスコから剥離し、10% FBSを含有するフェノールレッドを含まないDMEM培地に再懸濁し、50mLチューブに回収した。
2.細胞をCEDEX(Innovatis)で計数し、上記の培地で320 000細胞/mLに希釈した。
3.ウェルあたり100μLの細胞懸濁液を、黒色μclearポリ-D-リジンコーティングμclear 96ウェルプレート(Greiner;655946)に分注した。
4.プレートを37℃、5% CO2で24時間インキュベートした。
2日目
5.血清飢餓:培地を除去し、フェノールレッドを含まない50μLの無血清DMEMと交換した。プレートを37℃、5% CO2で5時間インキュベートした。
6.ウェルあたり50μLの試験化合物溶液を添加した。
7.プレートを室温で5分間インキュベートした。
8.培地を迅速に除去し、ウェルあたり50μLの溶解緩衝液(添加前に最終濃度の1倍に希釈)を添加することによって刺激を停止した。
9.プレートを-80℃に移し、溶解物を凍結した。
3日目
10.プレートを融解し、室温で30分間振盪した。
11.細胞溶解物をピペッティングによってホモジナイズした。
12.ウェルあたり16μLのホモジネートを白色低容量384ウェルプレート(Greiner;784075)に移した。
13.ウェルあたり4μLの抗体混合物を添加した。
14.プレートを室温で暗所で4時間インキュベートした。
15.均一な時間分解蛍光(HTRF)シグナルを、Pherastar(BMGLabtech)リーダー(λex=340nm、λem=665及び615nm )で検出した。
【0141】
HTRF比データを、Screenerソフトウェア(Genedata AG)を使用して処理した。濃度応答データを、表2に報告される4パラメータロジスティックフィット及びEC50値(nM)に当てはめた。
【0142】
【表2】
【0143】
pH 1.2のSGF中の非晶質化合物(I)の溶解度(試験I)
化合物(I)の非晶質のナノ懸濁物の調製
化合物(I)の100mMストック溶液を、超音波処理及び撹拌によってDMA及びミグリオール812(140.2μLのDMA中9.44mg及びミグリオール812中23.6μL)中で調製した。10μLのストック溶液を、0.2% w/w PVPK30及び0.2% w/w Pluronic F127を含む990μLの安定化剤溶液及び0.25mM SDS水溶液に数秒の超音波処理下で迅速に注入して、1mMの非晶質のナノ懸濁物を作製した。この処方物を精製水でさらに0.25mMに希釈する。
【0144】
溶解度実験
非晶質の粒子と平衡状態にあるバルク濃度を、濁度法(Lindfors et.al.,Langmuir,2006,22(3),911-916に記載)によって37℃で決定される。低体積の薬物懸濁液を、2000μLの模擬胃液pH 1.2(SGF)を含有する蛍光キュベットに直接連続的に添加し、次いで混合して所望の濃度を得る。700nmでの光散乱強度を、全薬物濃度の関数として90°の散乱角で記録する。光散乱装置として、Perkin-ElmerLS 55Luminescence Spectrometerを使用し、発光波長と励起波長の両方を700nmに設定する。スリット励起を2.5nmに設定し、スリット発光を5nmに設定する。測定を開始する前に、粒子を少なくとも30秒間溶解させる。次いで、データを1分間収集し、平均光散乱強度を計算する。溶解度試験を、非晶質のナノ懸濁液の形成から45分以内に行った。
【0145】
【表3】
【0146】
光散乱を、化合物(I)の総濃度の関数としてプロットした。低濃度では粒子は溶解するが、溶解度を超える濃度では粒子は懸濁したままであり、総濃度の関数として光散乱強度がほぼ線形に増加する。高濃度データに当てはめた直線をゼロ強度に外挿して、37℃でのpH 1.2のSGFにおける化合物(I)の非晶質溶解度を推定し、これを8μMであると決定した。総濃度の関数としての光散乱強度を図6に示す。
【0147】
pH 1.2のSGF中の化合物(I)の結晶形態Aの溶解度(試験J)
模擬胃液pH 1.2(SGF)中の結晶溶解度を、小型振盪フラスコ法(37℃で24時間撹拌)を使用して測定した。過剰の化合物(I)の形態Aをバイアルに秤量し、1.2mLのpH 1.2のSGFを添加し、試料を45分間超音波処理した。
【0148】
試料を、Eppendorfシェーカー、撹拌速度1000rpmで、37℃で24時間撹拌した。次いで、試料を10000RPMで15分間、37℃で遠心分離した。およそ500μLの上清を自動ピペットで新しいバイアルに取り出し、10000rpm、37℃で再び15分間遠心分離した。次いで、2回目の遠心分離から、試料を自動ピペットで採取して最終希釈した。2回目の遠心分離後の平衡化した残りの試料溶液のpHを測定した。XRPDを使用して、形態変化が生じていないことを確認した。UHPLCを使用して試料中の濃度を定量化し、37℃でのpH 1.2のSGF中の化合物(I)の形態Aの溶解度は0.4μMであることが見出された。
【0149】
当技術分野の当業者は、上記のアッセイが、結果に有意に影響を与えることなく、プロトコルに対する代替の装置及びわずかな変形を使用して実施され得ることを理解するであろう。
【0150】
この説明及びその特定の例は、特定の実施形態を示しているが、これは例示のみを目的としている。したがって、本開示は、本明細書に記載した例示的な実施形態に限定されるものではなく、様々に変形させることができる。加えて、明瞭さを理由として別々の実施形態に関連して説明されている様々な実施形態を組み合わせて、単一の実施形態を形成し得ることも認識されたい。逆に言うと、簡潔さを理由として単一の実施形態に関連して説明されている様々な実施形態を組み合わせて、これらの部分的組み合わせも形成し得る。
【0151】
本明細書内に開示された任意の刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】