(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-08-01
(54)【発明の名称】合成オリゴヌクレオチドの製造方法及びオリゴヌクレオチド合成に使用される有機洗浄溶媒から不純物を除去するための除去剤
(51)【国際特許分類】
B01D 3/14 20060101AFI20250725BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20250725BHJP
【FI】
B01D3/14 Z
B01D3/14 A
C12N15/11 Z ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2025503061
(86)(22)【出願日】2023-07-26
(85)【翻訳文提出日】2025-02-07
(86)【国際出願番号】 US2023028703
(87)【国際公開番号】W WO2024025951
(87)【国際公開日】2024-02-01
(32)【優先日】2022-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2023-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ、ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ギヒーン、ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ローレンツ、サンドラ
(72)【発明者】
【氏名】シーカンプ、シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナー、クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】オコンネル、ジャレド
【テーマコード(参考)】
4D076
【Fターム(参考)】
4D076AA12
4D076AA22
4D076BB03
4D076BB05
4D076CC03
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4D076GA06
4D076HA03
4D076JA03
(57)【要約】
本発明は、合成オリゴヌクレオチドの製造において有機洗浄溶媒としてアセトニトリルとトルエンの混合組成物を利用する方法を提供し、混合組成物は、純粋なアセトニトリル洗浄溶媒よりも高い合成オリゴヌクレオチド収率を生じさせる。本方法はまた、オリゴヌクレオチド合成プロセスからの廃液流として受け取られるアセトニトリル及びトルエン含有洗浄溶媒から1つ以上の不純物を除去するためのプロセスを提供する。本プロセスは、ヨウ素反応性化合物、硫黄反応性化合物及び/又は酸性反応性化合物のうちの少なくとも1つを廃棄流に添加することと、廃棄流を分留することとを含む。分留により塔頂留分及び塔底留分が生成され、塔頂留分はアセトニトリル及びトルエンを含み、塔底留分は1つ以上の不純物を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄流を処理するための方法であって、
アセトニトリル、トルエン、及び1つ以上のヨウ素含有化合物を含む前記廃棄流を受け取ることと、
前記廃液流にヨウ素反応性化合物を添加することと、
塔頂留分及び塔底留分を生成するために前記廃棄流を分留することであって、前記塔頂留分は、前記廃棄流の前記アセトニトリル及び前記トルエンを含み、前記塔底留分は、前記廃棄流の前記1つ以上のヨウ素含有化合物を含む、分留することと、を含む、廃棄流を処理するための方法。
【請求項2】
前記ヨウ素反応性化合物がチオ硫酸ナトリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヨウ素反応性化合物がチオ硫酸ナトリウム及び硝酸銀を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記頂留分が、ヨウ素を25ppm未満の濃度で更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記廃棄流の分留中に、前記ヨウ素反応性化合物が前記1つ以上のヨウ素含有化合物のヨウ素と反応し、前記1つ以上のヨウ素含有化合物の前記ヨウ素を前記廃棄流から前記塔底留分中に沈殿させる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記塔頂留分を、アセトニトリル及びトルエンから本質的になる精製塔頂留分に精製することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
廃棄流を処理するための方法であって、
アセトニトリル、トルエン、及び1つ以上の硫黄含有化合物を含む前記廃棄流を受け取ることと、
前記廃棄流に硫黄反応性化合物を添加することと、
塔頂留分及び塔底留分を生成するために前記廃棄流を分留することであって、前記塔頂留分は、前記廃棄流の前記アセトニトリル及び前記トルエンを含み、前記塔底留分は、前記廃棄流の前記1つ以上の硫黄含有化合物を含む、分留することと、を含む、廃棄流を処理するための方法。
【請求項8】
前記頂留分が、硫黄を25ppm未満の濃度で更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記硫黄反応性化合物が硝酸銀を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
廃棄流を処理するための方法であって、
アセトニトリル、トルエン、及び塩基性窒素含有化合物を含む前記廃棄流を受け取ることと、
前記廃液流に酸性反応性化合物を添加することと、
塔頂留分及び塔底留分を生成するために前記廃棄流を分留することであって、前記塔頂留分は、前記廃棄流の前記アセトニトリル及び前記トルエンを含み、前記塔底留分は、前記廃棄流の前記塩基性窒素含有化合物を含む、分留することと、を含む、廃棄流を処理するための方法。
【請求項11】
前記頂留分が、1つ以上の窒素含有化合物を100ppm未満の濃度で更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記酸性反応性化合物がギ酸を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
合成オリゴヌクレオチドを生成するための方法であって、
オリゴヌクレオチド合成プロセスの1つ以上の成分を収容している反応容器を、少なくともアセトニトリル及びトルエンを含む混合洗浄溶液であって、前記アセトニトリルは前記混合洗浄溶液の少なくとも70%を構成している、混合洗浄溶液で洗浄することと、
前記合成オリゴヌクレオチドであって、最小オリゴヌクレオチド純度を含む、前記合成オリゴヌクレオチドを回収することと、を含む、合成オリゴヌクレオチドを生成するための方法。
【請求項14】
前記混合洗浄溶液が、アセトニトリルとトルエンの実質的に純粋な混合物を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記混合洗浄溶液が、前記オリゴヌクレオチド合成プロセスからリサイクルされた、精製された廃棄流として受け取られる、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2023年7月21日に出願された米国特許出願第18/225,010号に対する優先権を主張し、かつ2022年7月26日に出願された米国特許仮出願第63/392,441号の利益を主張するものであり、これらは両方とも、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本技術分野は、概して、アセトニトリル及びトルエンを含む廃棄流を精製するための方法及びシステムに関し、より具体的には、アセトニトリル及びトルエンの実質的に精製された混合物の回収及びその後のリサイクルを可能にする、廃棄流への1つ以上の反応性化合物の添加に関する。場合によっては、アセトニトリル及びトルエンの、リサイクルされ精製された混合物は、オリゴヌクレオチド合成プロセスにおいて洗浄溶媒として利用される場合、純粋なアセトニトリルと比較して、より高い純度のオリゴヌクレオチドを生じさせる。
【背景技術】
【0003】
多くの化学プロセスは、溶媒又は洗浄液としてアセトニトリルを利用しており、その結果、低品位アセトニトリル廃棄流が生成される。これらのプロセスが製造規模で行われる場合、生成される低品位アセトニトリル廃棄流の体積は相当なものであり得る。例えば、オリゴヌクレオチド(DNA及びRNA)合成は、一般に、4工程サイクル(脱ブロッキング、活性化/カップリング、キャッピング、及び酸化)によって行われ、これは、所望の配列が得られるまで、付加された各ヌクレオチドについて繰り返される。各工程の間に、支持体に結合したオリゴヌクレオチドを、典型的には、高純度(すなわち、100%)アセトニトリルで洗浄して、前の工程からの残留試薬を減少させる。これは大量のアセトニトリル廃棄流の生成をもたらし、約1メートルトンのオリゴヌクレオチドベースの医薬品有効成分(active pharmaceutical ingredient、API)を製造する場合、約2000メートルトンのアセトニトリルが使用される。
【0004】
合成オリゴヌクレオチド配列は、バイオ製薬産業における治療、診断、及び薬物標的検証用途に有望であり、現在、前臨床又は臨床試験中のオリゴヌクレオチドベースの薬物の数は増え続けている。しかしながら、オリゴヌクレオチドベースのAPI製造業者は、大量の純粋なアセトニトリルの調達、並びに生成される大量のアセトニトリルベースの廃棄流の処分の両方を管理する上での出費及び困難に直面している。したがって、アセトニトリル廃棄流を回収し、精製して、再利用に適したアセトニトリルベースの洗浄溶媒を生成するための方法及びシステムが、当該産業において緊急に必要とされている。更に、他の望ましい特徴及び特性は、後続の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲を併せ読むことで明らかになるであろう。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、オリゴヌクレオチドプロセスによって生成される廃棄流から、ヨウ素含有化合物、硫黄含有化合物、及び/又は塩基性窒素含有化合物を含む1つ以上の不純物を除去するためのプロセス及び方法を提供する。この場合、廃棄流は、アセトニトリル及びトルエンを、アセトニトリルが豊富な組成比で含有するだけでなく、1つ以上の不純物も含有する。ヨウ素反応性化合物、硫黄反応性化合物及び/又は酸性反応性化合物を含む1つ以上の還元剤/捕捉剤が廃棄流に添加され、分留中、塔頂留分はアセトニトリル及びトルエンを共沸組成で含み、塔底留分は1つ以上の不純物を含有する。塔頂留分は、残留不純物があればそれを除去するために更に処理されてもよく、精製されたアセトニトリルとトルエンの混合物は、洗浄溶媒としてオリゴヌクレオチドプロセスにリサイクルされ得る。
【0006】
一実施形態では、本開示は、廃棄流を処理するための方法であって、アセトニトリル、トルエン、及び1つ以上のヨウ素含有化合物を含む廃棄流を受け取ることと、廃棄流にヨウ素反応性化合物を添加することと、塔頂留分及び塔底留分を生成するために廃棄流を分留することとを含む、方法を提供する。この場合、塔頂留分は、廃棄流のアセトニトリル及びトルエンを含み、塔底留分は、廃棄流の1つ以上のヨウ素含有化合物を含む。
【0007】
別の実施形態では、本開示は、廃棄流を処理するための方法であって、アセトニトリル、トルエン、及び1つ以上の硫黄含有化合物を含む廃棄流を受け取ることと、廃棄流に硫黄反応性化合物を添加することと、塔頂留分及び塔底留分を生成するために廃棄流を分留することとを含む、方法を提供する。この場合、塔頂留分は、廃棄流のアセトニトリル及びトルエンを含み、塔底留分は、廃棄流の1つ以上の硫黄含有化合物を含む。
【0008】
更に別の実施形態では、本開示は、廃棄流を処理するための方法であって、アセトニトリル、トルエン、及び塩基性窒素含有化合物を含む廃棄流を受け取ることと、廃棄流に酸性反応性化合物を添加することと、塔頂留分及び塔底留分を生成するために廃棄流を分留することとを含む、方法を提供する。この場合、塔頂留分は、廃棄流のアセトニトリル及びトルエンを含み、塔底留分は、廃棄流の塩基性窒素含有化合物を含む。
【0009】
更なる実施形態では、本開示は、合成オリゴヌクレオチドを生成するための方法であって、オリゴヌクレオチド合成プロセスの1つ以上の成分を収容している反応容器を、少なくともアセトニトリル及びトルエンの混合洗浄溶液であって、アセトニトリルは混合洗浄溶液の少なくとも70%である、混合洗浄溶液で洗浄することと、合成オリゴヌクレオチドを回収することとを含む、方法を提供する。この場合、合成オリゴヌクレオチドは最小オリゴヌクレオチド純度で回収される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】例示的な実施形態による、廃棄流を精製するためのシステム及び方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の「発明を実施するための形態」は、本質的に単なる例示であり、様々な実施形態又はこれらの用途及び使用を限定することを意図するものではない。更に、前述の背景技術又は以下の詳細な説明で提示される、いずれの理論によっても制約されることは意図していない。
【0012】
オリゴヌクレオチド廃棄流を精製するための方法、システム、及びプロセスが本明細書において提供される。本発明のプロセス、方法、及びシステムは、オリゴヌクレオチド合成から受け取った廃棄流を前処理し、リサイクルする、技術的に簡略化され、経済的に有利な方法を提供する。先に記載したように、オリゴヌクレオチド合成プロセス(例えば、固相合成)は、洗浄溶媒としてかなりの量のアセトニトリルベースの溶媒を利用し、このようなプロセスの間、アセトニトリルベースの溶媒は、多くの不純物によって汚染される。
【0013】
オリゴヌクレオチド合成プロセスは、典型的には、純粋なアセトニトリルによる洗浄溶媒を必要とし、したがって、アセトニトリル含有廃棄流は再利用することができない。したがって、アセトニトリル含有廃棄流を、リサイクルして合成プロセスに戻すのに許容されるレベルまで精製する必要がある。このような合成プロセスは、トルエン(例えば、脱ブロッキング剤によって汚染される)、ヨウ素(例えば、酸化試薬によって汚染される)、チオールなどの硫黄含有化合物(例えば、硫化試薬及び活性化試薬によって汚染される)及びアルキルアミンなどの塩基性窒素含有化合物(例えば、酸化試薬、キャッピング試薬及び活性化試薬によって汚染される)を含む複数の化合物でアセトニトリルを汚染することが見出されている。この場合、アセトニトリルをリサイクル及び/又は回収に必要な純度まで精製するために、そのような化合物を許容可能な程度まで除去することは困難である。
【0014】
重要なことに、オリゴヌクレオチド合成プロセスにおける適切な洗浄溶媒として、純粋なアセトニトリルを使用するのではなく、アセトニトリル及びトルエンの実質的に純粋な混合物を利用することが可能であることが見出された。したがって、他の方法では使用できない汚染されたアセトニトリル廃棄流を合成プロセスにおける洗浄溶媒として再利用するために、廃棄流をアセトニトリル及びトルエンの実質的に純粋な混合物に精製する(すなわち、ヨウ素、チオール、及びアルキルアミンなどの他の不純物を除去する)必要があることが確認されている。更に、驚くべきことに、特定の組成物において、オリゴヌクレオチド合成プロセスにおける洗浄溶媒としてアセトニトリル及びトルエンの精製混合物を使用すると、純粋なアセトニトリルによる洗浄溶媒と比較して、より高純度のオリゴヌクレオチドが得られることも見出された。したがって、精製された廃棄流のリサイクルは、廃棄されるアセトニトリルベースの洗浄溶媒の実質的な減少をもたらすだけでなく(例えば、洗浄溶媒が廃棄されるのではなくオリゴヌクレオチド合成プロセスにリサイクルされるため)、精製された廃棄流の使用はまた、より高純度のオリゴヌクレオチドをもたらす。
【0015】
その開示内容が本明細書に明示的に組み込まれる米国特許第10,336,690号に関連して記載されているように、廃棄流からの汚染物質の除去は、1つ以上の吸収剤/吸着剤との接触と組み合わせた分別蒸留によって達成することができる。この場合、廃棄流を分留/蒸留塔に供給することができ、そこで分留/蒸留中に、塔頂留分(留出物)はアセトニトリル及び低沸点及び/又は揮発性化合物(例えば、トルエン、いくらかの水、並びにヨウ素、チオール、及びアルキルアミンの大部分)を含み、一方、塔底留分は廃棄流の高沸点成分を含む。また、米国特許第10,336,690号に関連して記載されているように、凝縮された塔頂流を一連の吸収器に送ることができ、そこで異なる吸収剤と接触させると、アセトニトリルを含有する精製流を得ることができる。しかしながら、この場合、塔頂留分中の汚染物質の濃度が比較的高いため、不純物の除去はかなりの量の吸収剤を消費する。したがって、吸収器に接触させる前にこれらの汚染物質の1つ以上を除去することが有利であり得ることが確認されている。これは、塔のサイズ及び/又は利用される吸収剤/吸着剤の量の両方を低減することができるので、精製プロセスのコストを低減することができる。
【0016】
本明細書で使用される場合、「精製する」という用語及びその変形は、組成物中の1つ以上の不純物の量の低減を指す。一般概念として、精製は、精製される組成物及び低減される不純物の性質に応じて、当技術分野で公知の任意の数の技術を介して達成され得る。精製は、必ずしも全ての不純物又は任意の特定の不純物が完全に存在しない純粋な生成物をもたらすわけではない。更に、本明細書に記載される方法及びシステムのいくつかは、アセトニトリル含有廃棄流の分留を含む複数の精製工程を利用する。いくつかの実施形態において、分留は、最初の精製工程である。
【0017】
図1を参照すると、例示的な実施形態において、廃棄流102の分留は、蒸留又は分留塔106を含む分留ゾーン103を有するシステム100を使用して行われる。特定の実施形態において、分留/蒸留塔106は、塔を通って流れる蒸気-液体流のための複数の段階的接触のステージを提供することができる、パッキング、トレイ、シーブ、バブルキャップ、又は同様の機械的構成などの内部構造物を含む。ステージの数及び内部構造物のタイプは、アセトニトリル含有廃棄流の特定の組成、入口位置、還流比、所望の塔効率などに応じて変化する。したがって、分留/蒸留塔106の内部プロファイルは、用途ごとに変化し得る。
【0018】
廃棄流102は、様々な供給源によってもたらされる可能性があり、アセトニトリルの沸点より高い沸点を有するいくらかの不純物及びアセトニトリルの沸点より低い沸点を有するいくらかの不純物を含有する可能性がある。この点に関して、いくつかの廃棄流精製方法は、留出物の「ハートカット(heart cut)」を取ることに依存しており、その場合、2つの分留塔を利用して、まずアセトニトリル及び低沸点不純物(第1の塔頂留分中)を高沸点不純物(第1の塔底留分中)から分離し、第2の分留塔を利用して、アセトニトリル及び他の同様に沸騰する種(第2の塔底留分中)を低沸点不純物(第2の塔頂留分中)から分離する。
【0019】
しかしながら、本明細書に記載されるように、2つの塔によるそのような複雑な分画は必要とされない。むしろ、いくつかの実施形態では、分留ゾーン103は、単一塔106を含み、単一塔頂留分108は、単一カットポイント(例えば、標準圧力(1ATM)で約81℃~82℃など、アセトニトリル又はアセトニトリル-トルエン混合物の沸点のすぐ上)まで収集される。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「塔頂」留分は、分留塔の上部から取り出される留分を意味する。塔頂留分は、「塔底」中に見出される成分よりも低い沸点を有する元の混合物の成分(すなわち、分留塔の下部に残る、及び/又はそこから除去される留分)を含む。この塔頂留分108は、アセトニトリル及びより低温で沸騰する不純物を含む。いくつかの実施形態において、塔頂留分108はまた、アセトニトリルとの共沸挙動に起因するトルエンなどのいくつかの高沸点不純物、並びにヨウ素を含み得る。
【0021】
本明細書に記載される方法及びシステムは、塔頂留分108を凝縮し、凝縮された塔頂留分108を1つ以上の吸着剤(例えば、それぞれ塔110、116、及び122内に含まれる吸着剤112、118、及び124)と接触させることによって、塔頂留分108の更なる精製を達成する。その後の精製工程で使用される特定の吸着剤の性質は、塔頂留分108中に残る不純物の同一性及びレベルによって決定され、したがって、廃棄流102の供給源の影響を受ける。
【0022】
上述したように、多くの科学的プロセス及び製造プロセスは、溶媒として又は洗浄溶液としてアセトニトリル流及びトルエン流を利用するので、アセトニトリル廃棄流を生成する。種々のプロセスは、アセトニトリル及びトルエン流の異なる程度の純度を必要とし、かつ/又は1つ若しくは複数の特定の不純物に関して特定の程度の純度を必要とし得る。
【0023】
特に大量のアセトニトリル廃棄物を生成する1つのそのようなプロセスは、合成オリゴヌクレオチド(DNA及びRNA)の製造である。オリゴヌクレオチド合成は、一般に、各サイクル間に純粋なアセトニトリルで洗浄することを伴う4工程サイクル(脱ブロッキング、活性化/カップリング、キャッピング、及び酸化)によって行われる。サイクル中の各工程は異なる試薬を使用するので、各工程後の洗浄から生成されるアセトニトリル廃棄流は、異なるタイプ及びレベルの不純物で汚染されている可能性が高い。
【0024】
例えば、各オリゴヌクレオチド合成サイクルは、典型的には、支持体に共有結合されたブロックされたヌクレオチドから始まる。ブロックされたヌクレオチドは、第1の工程において、典型的には、トルエン又はジクロロメタンの存在下で、3%トリクロロ酢酸(trichloroacetic acid、TCA)又は3%ジクロロ酢酸(dichloroacetic acid、DCA)などの酸性溶液との反応を介して脱ブロックされる。脱ブロック化反応が完了したら、試薬を排出し、脱ブロック化されたオリゴヌクレオチド(支持体に結合している)をアセトニトリルベースの洗浄溶媒で洗浄する。得られたアセトニトリル廃棄流中に見出される不純物は、未反応試薬、残留溶媒、及び/又は脱ブロック化反応の副生成物を含み得る。例えば、脱ブロック化アセトニトリル廃棄流中の不純物は、トルエン、酢酸、トリクロロメタン、及び/又はプロパンニトリルを含み得る。脱ブロック化アセトニトリル廃棄流中の不純物は、典型的には廃棄流102の0.1~30重量%を構成する。例示的な実施形態では、廃棄流102は、オリゴヌクレオチド合成の脱ブロッキング工程後のアセトニトリル洗浄工程中に生成されるアセトニトリル廃棄物を含む。
【0025】
オリゴヌクレオチド合成サイクルの第2の工程は、脱ブロック化されたオリゴヌクレオチドの活性化及びカップリングを含む。活性化は、当技術分野で公知の任意の適切な活性化剤との接触によって行われる。活性化後、支持体に結合した物質を、亜リン酸トリエステルを四配位リン酸トリエステルに酸化する弱塩基(例えば、ピリジン、ルチジン、又はコリジン)の存在下で、ヨウ素及び水で処理する。脱ブロック化されたオリゴヌクレオチドは、ホスホロアミダイトとカップリング(すなわち、反応)されて、ホスファイトオリゴマーを形成する。ホスホロアミダイトは、全ての利用可能なホスホロアミダイトの中から様々に選択され、反応は当技術分野で公知のように進行する。
【0026】
カップリング後、試薬を排出し、アセトニトリルベースの洗浄溶媒によって塔を通して押し出し、固体支持体をアセトニトリルベースの洗浄溶媒によって洗浄する。再び、得られたアセトニトリル廃棄流中に見出される不純物は、未反応試薬、残留溶媒、又は活性化及びカップリング反応の副生成物を含み得る。例えば、活性化/カップリングアセトニトリル廃棄流中の不純物は、活性化剤分子、ホスホロアミダイト、ヨウ素、ピリジン、プロパンニトリル、及び/又はトルエンを含み得る。カップリングアセトニトリル廃棄流中の不純物も同様に、典型的には廃棄流102の0.1~30重量%を構成する。例示的な実施形態では、廃液流102は、オリゴヌクレオチド合成の活性化/カップリング工程後のアセトニトリル洗浄工程中に生成されるアセトニトリル廃棄物を含む。
【0027】
典型的には、カップリング工程の間、脱ブロックされたヌクレオチドの一部のみがホスホロアミダイトと反応し、未反応ヌクレオチドがあればそれらはキャップされなければならない。キャッピングは、未反応のヌクレオチドをある量の無水酢酸及びある量のN-メチルイミダゾールと接触させることによって行われる。カップリング後、試薬は、アセトニトリルベースの洗浄溶媒によって塔を通して排出/押し出され、固体支持体上で成長しているオリゴヌクレオチドは、アセトニトリルベースの洗浄溶媒によって洗浄される。この場合も同様に、得られたアセトニトリル廃棄流中に見出される不純物は、未反応試薬、残留溶媒、又はキャッピング反応の副生成物を含み得る。例えば、キャッピングアセトニトリル廃棄流中の不純物は、N-メチルイミダゾール、酢酸、無水酢酸、ルチジン、ピリジン、テトラヒドロフラン、プロパンニトリル、及び/又はトルエンを含み得る。キャッピングアセトニトリル廃棄流中の不純物も同様に、典型的には廃棄流102の0.1~30重量%を構成する。例示的な実施形態では、廃液流102は、オリゴヌクレオチド合成のキャッピング工程後のアセトニトリル洗浄工程中に生成されるアセトニトリル廃棄物を含む。
【0028】
最後に、活性化/カップリング工程で形成されたホスファイトオリゴマーを酸化又は硫化する。酸化は、水及びピリジンの存在下でヨウ素との(例えば、反応を介して)達成される。硫化は、フェニルアセチルジスルフィド又は同様の化学物質の反応によって達成される。酸化又は硫化の後、試薬は、洗浄アセトニトリル溶液を用いて塔を通して排出される/押し出される。成長しているオリゴヌクレオチドを含有する固体支持体をアセトニトリル洗浄流で再び洗浄する。得られたアセトニトリル廃棄流中に見出される不純物は、未反応試薬、残留溶媒、又は酸化反応の副生成物を含み得る。例えば、酸化アセトニトリル廃棄流中の不純物は、有機及び無機ヨウ素、トルエン、テトラヒドロフラン、ピリジン、プロパンニトリル、及び水を含み得る。例示的な実施形態では、廃棄流102は、オリゴヌクレオチド合成の酸化工程後のアセトニトリル洗浄工程中に生成されるアセトニトリル廃棄物を含む。
【0029】
理解されるように、上記工程の各々からの洗浄流中に見出される不純物のタイプ及び量は、異なり得る。本明細書に記載される方法及びシステムは、任意の特定の工程の後の洗浄工程からの廃棄流102を精製するために使用されてもよく、又は前述のような脱ブロッキング、カップリング、キャッピング、及び/又は酸化に関連して記載されるような洗浄工程から収集及びプールされた(例えば、収集タンク104内に)廃棄流102を精製するために使用されてもよい。
【0030】
塔頂留分108中の不純物の同一性及び量は、廃棄流102の供給源に応じて変化してもよく、適切な吸着剤は、これらの組成物並びに所望のアセトニトリル/トルエン最終生成物の最終グレード(すなわち、全体純度)に関して選択されてもよい。
【0031】
例えば、オリゴヌクレオチド合成から生じる収集された廃棄物の蒸留によって得られる塔頂留分は、水及びトルエンなどの種、並びに様々な他の不純物を、廃棄流の30重量パーセントまでの濃度で含有し得る。そのような不純物は、有機及び/又は無機ヨウ素含有化合物、チオール(例えば、エチルチオテトラゾール(ethylthiotetrazole、ETT)、フェニルアセチルジスルフィド(phenyl acetyl disulfide、PADS))などの硫黄含有化合物、塩基性窒素含有化合物(例えば、ピリジン、ルチジン、ピコリン、1-メチルイミダゾール)、様々なアルコール(例えば、メタノール)、エステル(例えば、酢酸、ジクロロ酢酸)、ニトリル(例えば、プロパンニトリル)、及び/又はハロゲン化炭化水素(例えば、トリクロロメタン/ジクロロメタン)であってもよい。
【0032】
図1は、オリゴヌクレオチド合成プロセスから受け取った廃棄流102をリサイクルに許容される純度に精製するために使用されるシステム100の例示的な実施形態を示す。この場合、精製は、収集タンク104及び分留/蒸留塔106を含む分留ゾーン103、並びに第1の吸収塔110、第2の吸収塔116、及び第3の吸収塔122を含む吸着剤ゾーン130を含むシステム100を介して行われる。
【0033】
図1に示すように、分留ゾーン103は、収集タンク104及び分留/蒸留塔106を含む。この場合、廃棄流102は分留ゾーン103に入り、収集タンク104に収集される。収集タンク104は、廃棄流102をプール内にまとめるために使用されてもよく、その結果、様々な形態の廃液流102(例えば、脱ブロッキング、カップリング、キャッピング、及び/又は酸化工程の異なる組成物に関連して上述したように)は、収集タンク104内の共通の容積内に保持される。
【0034】
廃棄流102が収集タンク104に入ると、1つ以上の反応性化合物(すなわち、還元化合物、捕捉剤など)と接触し得るが、廃棄流102内の不純物の一部は、廃棄流102と反応し、その後、廃棄流102から沈殿する。
【0035】
例えば、第1の反応性化合物151を収集タンク104に添加し、廃棄流102の成分の一部と反応させることができる。この場合、第1の反応性化合物151は、廃液流102内の1つ以上のヨウ素含有化合物と反応する(例えば、還元する)ヨウ素反応性化合物であってもよい。例えば、ヨウ素反応性化合物はチオ硫酸ナトリウムであってもよく、一方、チオ硫酸ナトリウムアニオンはヨウ素含有化合物のヨウ素と反応し、したがって、下記の代表的な反応に示すように、ヨウ素を還元し、続いて廃液流102からヨウ素を沈殿させる。
I2+2Na2S2O3→2NaI+Na2S4O6
【0036】
第2の実施例では、第2の反応性化合物152を収集タンク104に添加し、廃棄流102の成分の一部と反応させることができる。この場合、第2の反応性化合物152は、廃棄流102内のチオールなどの1つ以上の硫黄含有化合物(例えば、ETT、PADS)と反応する(例えば、還元する)硫黄反応性化合物であってもよい。例えば、硫黄反応性化合物は、下記の代表的な反応に示されるように、硫黄含有化合物と反応し、したがって硫黄含有化合物を還元し、続いて硫黄含有化合物を廃棄流102から沈殿させる硝酸銀であってもよい。
2RS-SR+2H2O+AgNO3→3RS-Ag+RSO2H+2HNO3
【0037】
第3の実施例では、第3の反応性化合物153を収集タンク104に添加し、廃棄流102の成分の一部と反応させることができる。この場合、第3の反応性化合物153は、廃棄流102内のアルキルアミン(例えば、ピリジン、ルチジン、ピコリン、1-メチルイミダゾール)などの1つ以上の塩基性窒素含有化合物と反応する(例えば、還元する)酸性反応性化合物であってもよい。この場合、酸性反応性化合物は、下記の代表的な反応に示すように、塩基性窒素含有化合物と反応し(例えば、還元し)、続いて塩基性窒素含有化合物を廃棄流102から沈殿させるカルボン酸(例えば、ギ酸)であってもよい。
R1,R2-N-H+HCOOH→R1-R2-N-COH+H2O
【0038】
場合によっては、反応性化合物151、152、及び/又は153のうちの2つ以上は、同時に、又は次々に収集タンク104内の廃棄流102に添加されてもよく、反応性化合物151、152、及び/又は153のそれぞれは、廃棄流102内の化合物と組み合わせて反応してもよい。
【0039】
例えば、ヨウ素反応性化合物151は、硫黄反応性化合物152と同時に、その前に、又はその後に添加されてもよく、ヨウ素反応性化合物151及び硫黄反応性化合物152の両方が、それぞれ廃棄流102内のヨウ素含有化合物及び硫黄含有化合物と反応する。この場合、硫黄反応性化合物152は、還元されたヨウ素含有化合物と更に反応して、廃液流102からヨウ素を更に沈殿させることができる。例えば、ヨウ素反応性化合物151がチオ硫酸ナトリウムであり、硫黄反応性化合物152が硝酸銀である場合、硝酸銀は、チオ硫酸ナトリウムと揮発性ヨウ素との反応によって生成されるヨウ化物を更に還元させ、廃液流102からのヨウ素の回収(例えば、沈殿)を向上させることができる。ただし、ヨウ化物を還元及び沈殿させるために硝酸銀を添加する必要はなく、硝酸銀を用いなくても十分にヨウ素を還元及び沈殿させることが可能である。
【0040】
別の実施例では、ヨウ素反応性化合物151は、酸性反応性化合物153と同時に、その前に、又はその後に添加することができ、ヨウ素反応性化合物151及び酸性反応性化合物153の両方が、それぞれ廃液流102内のヨウ素含有化合物及び塩基性窒素含有化合物と反応する。この場合、ヨウ素反応性化合物151と酸性反応性化合物153との間の化学的相互作用、並びにヨウ素含有化合物及び塩基性窒素含有化合物を還元するときに形成される中間体は、一緒に作用して、廃棄流102の硫黄含有化合物を還元することができる。例えば、ヨウ素反応性化合物151がチオ硫酸ナトリウムであり、酸性反応性化合物153がギ酸である場合、チオ硫酸ナトリウム及びギ酸と、ヨウ素含有化合物及び塩基性窒素含有化合物のそれぞれとの相互作用は、マトリックス効果を生み出すことができるが、これらの反応によって形成される中間体は、廃棄流102中の硫黄含有化合物(例えば、チオール)と反応する(例えば、硫黄含有化合物を還元する)。この点に関して、ヨウ素反応性化合物151及び酸性反応性化合物153を使用して、3つ全ての不純物(例えば、ヨウ素含有化合物、硫黄含有化合物、及び塩基性窒素含有化合物)の所望の還元を達成することが可能であり得る(例えば、硫黄反応性化合物152を使用せずに硫黄含有化合物を還元する)。
【0041】
更に別の実施例では、反応性化合物151、152、及び/又は153の3つ全てを収集タンク104内の廃棄流102に添加することができ、反応性化合物151、152、及び/又は153のそれぞれを同時に及び/又は組み合わせて反応させて、廃棄流102内のヨウ素含有化合物、硫黄含有化合物、及び塩基性窒素含有化合物のそれぞれを還元することができる。この場合、ヨウ素含有化合物、硫黄含有化合物、及び塩基性窒素含有化合物のそれぞれは、反応性化合物151、152、及び/又は153、並びにそのような反応によって生成される中間体との反応によって、廃棄流102から沈殿され得る。
【0042】
図1は、反応性化合物151、152、及び/又は153の各々を収集タンク104に別々に(すなわち、異なる供給ラインによって)添加されるものとして示しているが、2つ以上の反応性化合物を組み合わせて添加することが可能である。例えば、反応性化合物151及び152は、
図1に示すように、別々の供給ラインではなく、同じ供給ラインによって収集タンク104に添加されることができる。前述のことはまた、反応性化合物151、152、及び153の任意の組み合わせにも当てはまり、成分の各々は、個々に添加されてもよく、又は任意の組み合わせで添加されてもよく、例えば、3つ全ての反応性化合物151、152、及び153が同じ供給ラインによって収集タンク104に添加されてもよい。あるいは、いくつかの実施形態では、反応性化合物151、152及び/又は153のうちのいずれか1つが、収集タンク104ではなく供給流105に添加される可能性もある。この場合、収集タンク104をシステム100から取り外し、反応性化合物151、152、及び/又は153のそれぞれを廃棄流102に投入することが可能であり得る(例えば、分留ゾーン103から収集タンク104を除去すると、反応性化合物151、152、及び/又は153のそれぞれが廃棄流102に直結されて投入され、廃棄流102に反応性化合物が添加された時点で、廃棄流102は供給流105に移行する)。
【0043】
廃棄流102並びに反応性化合物151、152、及び/又は153の各々は、収集タンク104内に収集され、供給流105として分留/蒸留塔106に供給される。分留/蒸留塔106は、供給流105の成分を塔頂留分108と塔底留分107とに分離/分留するために使用される。
【0044】
塔頂留分108は、廃棄流102中に元々存在していたアセトニトリルの少なくとも大部分を含有する。例えば、塔頂留分108は、廃棄流102中に元々含有されていたアセトニトリルの75%以上、例えば85%以上、例えば95%以上を含有することができる。すなわち、塔頂留分108は、廃棄流102中に元々含有されていたアセトニトリルの約75%~約100%、例えば約85%~約100%、例えば約95%~約100%を含有することができる。
【0045】
アセトニトリルに加えて、塔頂留分108はまた、水、トルエン、及び他の低沸点不純物を含有し得る。例えば、約1重量パーセント(例えば、10,000ppm)の水が廃棄流102中に存在する場合、塔頂留分108は10,000ppm程度の水を含有し得るが、より好ましくは100ppm、より好ましくは50ppm、より好ましくは30ppmの水を含有し得る。この場合、水は、アセトニトリルと形成される共沸混合物など、塔頂留分108のより多くの成分のうちの1つと共沸混合物を形成することができる。この場合、本明細書で更に説明するように、乾燥剤との接触を含む様々な方法によって、塔頂留分108から水を除去することができる。
【0046】
「共沸性(azeotrope)」(又は「共沸性(azeotropic)」)組成物は、2つ以上の成分の特有の組み合わせである。共沸は、均一(1つの液相を有する)又は不均一(2つの液相を有する)のいずれかであり得る。共沸性組成物は、様々な方法で特徴付けることができる。例えば、所与の圧力では、共沸性組成物は、沸点が高い方の成分よりも高い一定の特性温度で沸騰する(極大沸点の共沸混合物)か、又は沸点が低い方の成分よりも低い一定の特性温度で沸騰する(極小沸点の共沸混合物)かのいずれかである。しかしながら、不均一共沸混合物の場合、共沸混合物の沸点は常に沸点の低い方の成分の沸点未満である。不均一共沸混合物の場合、この特徴的な温度では、2つの液相及び気相の各々の組成物は、沸騰時に一定のままである。共沸性組成物は、沸騰又は蒸発時に分留しない。したがって、共沸性組成物の成分を相変化において分離することはできない。
【0047】
共沸性組成物はまた、特性共沸温度で、液相の気泡点圧力(bubble point pressure)が気相の露点圧力と同一であることも特徴とする。
【0048】
共沸性組成物の挙動は、沸騰又は蒸発中に液体組成物がかなりの程度で変化する非共沸性組成物の挙動とは対照的である。
【0049】
本開示の目的の場合、共沸性組成物は、2つ以上の成分の沸点よりも低い一定の特性温度で沸騰し(極小沸点の共沸混合物)、それによって気相及び液相の両方において同じ組成を有する組成物として特徴付けられている。
【0050】
しかしながら、当業者であれば、異なる圧力では、共沸性組成物の組成及び沸点の両方がある程度変化すると理解するであろう。したがって、温度及び/又は圧力に応じて、共沸性組成物は、変化し得る組成を有し得る。したがって、当業者であれば、固定された組成ではなく組成範囲を使用して共沸性組成物を定義することができると理解するであろう。更に、共沸混合物は、特定の圧力での固定された沸点によって特徴付けられる組成物の各成分の正確な重量パーセンテージの観点から定義することもできる。
【0051】
共沸性又は共沸様組成物は、多数の異なる方法を使用して同定することができる。
【0052】
本開示の目的の場合、共沸性又は共沸様組成物は、エブリオメータを使用して実験的に同定される(Walas,Phase Equilibria in Chemical Engineering,Butterworth-Heinemann,1985,533-544)。エブリオメータは、気液平衡温度を測定することによって液体の沸点の極めて正確な測定値を提供するように設計されている。
【0053】
成分のそれぞれの単独の沸点は、一定の圧力で測定される。当業者によって理解されるように、二成分の共沸性又は共沸様組成物については、組成物の成分のうちの1つの沸点が最初に測定される。次いで、組成物の第2の成分が様々な量で添加され、当該一定の圧力でエブリオメータを使用して、得られた組成物のそれぞれの沸点が測定される。三元共沸混合物の場合、初期組成物は二成分ブレンドから構成され、第3の成分が様々な量で添加される。得られた三元組成物の各々の沸点は、当該一定の圧力でエブリオメータを用いて測定される。
【0054】
測定された沸点は、試験された組成物の組成に対して、例えば二元共沸混合物の場合、組成物に添加された第2の成分の量に対してプロットされる(重量%又はモル%のいずれか一方で表される)。共沸性組成物の存在は、単独のいずれかの成分の沸点よりも高い極大沸騰温度又は低い極小沸騰温度を観察することによって特定することができる。
【0055】
当業者によって理解されるように、共沸性又は共沸様組成物の同定は、第2の成分を第1の成分に添加した際の組成物の沸点の変化を第1の成分の沸点と比較することによって行われる。したがって、沸点の変化を測定するために、特定の成分の報告された沸点に系を較正する必要はない。
【0056】
塔頂留分108がトルエンを含有する場合、塔頂留分108中に存在するトルエンの量は、アセトニトリルとトルエンとの間の共沸相互作用、又は供給流105中に存在するトルエンの組成のいずれかに基づくことができる。例えば、アセトニトリルとトルエンとの間の共沸相互作用の場合、塔頂留分108のアセトニトリルとトルエンとの相対重量百分率は、分留/蒸留塔106の動作温度及び圧力に依存し得る。例えば、分留/蒸留塔106が80℃~86℃の温度及び1ATMの圧力で動作している場合、共沸組成物は、約76重量パーセントのアセトニトリル及び24重量パーセントのトルエンを含む。第2の実施例では、供給流105中のトルエンの相対重量パーセントは、アセトニトリル及びトルエン共沸混合物のトルエンの相対重量パーセント未満であってもよい(例えば、供給流105のトルエンの相対重量パーセントは24重量パーセント未満である)。この場合、塔頂留分108は、供給流105の実質的に同じ相対重量パーセントのアセトニトリル及びトルエンを含有してもよい。例えば、供給流105が約80相対重量パーセントのアセトニトリル及び20相対重量パーセントのトルエンを含有する場合、塔頂留分108もまた、80相対重量パーセントのアセトニトリル及び20相対重量パーセントのトルエンも含有する(例えば、トルエンの相対重量パーセントは、24相対重量パーセントのトルエンの共沸組成まで増加しない)。したがって、塔頂留分108中のトルエンの相対重量パーセントは、最大で、分留/蒸留塔106の動作温度及び圧力におけるアセトニトリルとトルエンとの間の共沸相互作用に基づくことができ、又は供給流105が共沸組成物よりも低い相対重量パーセントのトルエンを含有する場合には、共沸組成物よりも低くてもよい。別の言い方をすれば、トルエンに対するアセトニトリルの相対重量パーセントは、最低でも、アセトニトリル及びトルエンの共沸組成物に基づいてもよく、又は供給流105が共沸組成物よりも少ないトルエンを含有する場合、共沸組成物よりも高い相対重量パーセントであってもよい。
【0057】
しかしながら、アセトニトリルの所望の回収率を達成するために様々な温度及び圧力で分留/蒸留塔106を動作させることも可能であるが、アセトニトリル及びトルエンの相対組成は変化し得る。更に、単一の蒸留塔106として示されているが、圧力スイング蒸留の場合には、2つ以上の塔106が使用されてもよい(例えば、異なる温度及び圧力で動作する直列の2つの塔106)。したがって、この点に関して、76重量パーセントのアセトニトリル及び24重量パーセントのトルエンの共沸組成物に関して記載されているが、アセトニトリル及びトルエンの他の共沸組成物も可能であり得る。
【0058】
アセトニトリル及びトルエンに加えて、塔頂留分108は、ヨウ素、チオール(例えば、エチルチオテトラゾール(ETT)、BMT、フェニルアセチルジスルフィド(PADS))などの硫黄含有化合物、塩基性窒素含有化合物(例えば、ピリジン、ルチジン、ピコリン、N-メチルイミダゾール)、及びエステル(例えば、酢酸、ジクロロ酢酸)などの1つ以上の不純物を含有する可能性があり、これらの各々は、化合物の沸点(例えば、分留/蒸留塔106の動作温度よりも低い沸点)に起因して、及び/又は廃棄流102内の化合物の化学的相互作用(すなわち、ヨウ素及び水の場合のように)に起因して、塔頂留分108に組み込まれる場合がある。しかしながら、前述したように、1つ以上の反応性化合物151、152、及び/又は153を廃棄流102に添加してもよく、それにより、そのような反応性化合物を含有する供給流105が分留されるときに、塔頂留分108が実質的により少ないこれらの不純物を含むようにすることができる。
【0059】
例えば、反応性化合物151が収集タンク104内の廃棄流102に添加され、第1の反応性化合物151がヨウ素反応性化合物(例えばチオ硫酸ナトリウム)である場合、チオ硫酸ナトリウムを介した廃棄流102のヨウ素含有化合物の反応(例えば還元)は、塔頂留分108中に存在するヨウ素の量を実質的に減少させる。この場合、揮発性状態のままのヨウ素(例えば、蒸留された場合に、普通であれば塔頂留分108中に存在するであろうヨウ素)ではなく、ヨウ素は蒸留塔106内で供給流105から沈殿し、塔頂留分108は比較的少量のヨウ素を含有する。例えば、5ppmのヨウ素が供給流105中に存在する場合、第1の反応性化合物151は、塔頂留分108中のヨウ素の量を2ppm未満、場合によっては1ppm未満、より好ましくは0.5ppm未満、場合によっては微量(例えば、実質的にヨウ素を含まない)まで低減させることができる。これらの実施例では、塔頂留分108中に存在するヨウ素の量は、第1の反応性化合物151が分留/蒸留の前に廃棄流102に添加されなかった場合よりも実質的に少ない。
【0060】
第2の実施例では、第2の反応性化合物152は、収集タンク104内の廃棄流102に添加される硫黄反応性化合物(例えば、硝酸銀)である。この実施例では、チオ硫酸ナトリウムを介した廃棄流102の硫黄含有化合物(例えば、チオール)の反応(例えば、還元)は、塔頂留分108中に存在するチオールの量を実質的に減少させる。この場合、揮発性状態で残留するチオール(例えば、蒸留された場合、普通であれば塔頂留分108中に存在するであろうチオール)ではなく、チオールは蒸留塔106内で供給流105から沈殿し、塔頂留分108は比較的少量の硫黄含有成分を含有する。例えば、200ppmのチオール化合物が廃棄流102中に存在する場合、第2の反応性化合物152は、塔頂留分中のチオール化合物の量を10ppm未満、場合によっては5ppm未満、より好ましくは1ppm未満、場合によっては0.5ppm未満、更に別の場合には微量(例えば、実質的にチオールを含まない)まで減少させることができる。これらの実施例では、塔頂留分108中に存在するチオールの量は、第2の反応性化合物152が分留/蒸留の前に廃棄流102に添加されなかった場合よりも実質的に少ない。
【0061】
第3の実施例では、第3の反応性化合物153は、収集タンク104内の廃棄流102に添加される酸性反応性化合物(例えば、ギ酸)である。この実施例では、ギ酸を介した廃棄流102の塩基性窒素含有化合物(例えば、アルキルアミン)の反応(例えば、還元)は、塔頂留分108中に存在するアルキルアミンの量を実質的に減少させる。この場合、アルキルアミンが揮発性状態で残留する(例えば、蒸留された場合、普通であれば塔頂留分108中に存在する)のではなく、アルキルアミンは蒸留塔106内で供給流105から沈殿し、塔頂留分108は比較的少量の塩基性窒素含有化合物を含有する。例えば、廃棄流102中に最大5重量パーセント(例えば、50000ppm)のアルキルアミン化合物が存在する場合、第3の反応性化合物152は、塔頂留分中の塩基性窒素含有化合物の量を500ppm未満、場合によっては200ppm未満、より好ましくは100ppm未満に減少させることができる。他の実施例では、アルキルアミン化合物の濃度は、廃棄流102中で実質的により低く、例えば約100ppmであり得る。この場合、第3の反応性化合物152は、塔頂留分中のアルキルアミン化合物の量を、10ppm未満、場合によっては5ppm未満、より好ましくは1ppm未満、場合によっては0.5ppm未満、更に追加的な場合には微量(例えば、アルキルアミンを実質的に含まない)まで減少させることができる。これらの実施例において、塔頂留分108中に存在するアルキルアミン化合物の量は、第3の反応性化合物153が分留/蒸留の前に廃棄流102に添加されなかった場合よりも実質的に少ない。
【0062】
上記の各場合において、塔底留分107は、低沸点化合物(例えば、水)、並びにヨウ素、硫黄含有化合物、及び/又は塩基性窒素含有化合物などの沈殿化合物のいずれかを含む。この場合、塔底留分107を回収し、更に処理して塔底留分107に含まれる化合物の一部を除去することができる。例えば、硝酸銀が硫黄含有化合物及び/又はヨウ素のための還元剤として使用される場合、銀は、塔底留分107の更なる処理を介して回収され得る。
【0063】
例示的な実施形態では、凝縮された塔頂留分108は、分留ゾーン103を出て、吸着剤ゾーン130に送られる。吸着剤ゾーン130において、凝縮された塔頂留分108は、第1の吸着剤112を含むように構成された第1の吸着塔110に入る。第1の塔頂留分108は、第1の吸着剤112と接触させることによって精製されて、精製されたアセトニトリル及びトルエン流114を生成する。
【0064】
前述したように、塔頂留分108中に存在するヨウ素含有種の量は、第1の反応性化合物151によって実質的に低減されるが、いくらかのヨウ素含有成分が塔頂留分108中に依然として存在し得る。この場合、塔頂留分108を、これらの有機及び/又は無機ヨウ素含有種の量を減少させるように選択された吸着剤112と接触させることができ、その結果、精製されたアセトニトリル及びトルエン流114が得られる。好適な吸着剤としては、銀(Ag)交換ゼオライトが挙げられる。いくつかの実施形態では、Ag交換ゼオライトは、Ag交換フォージャサイトゼオライトであり、特に、ケイ素:アルミニウム(Si:Al)モル比が少なくとも約1.2、例えば、Si:Alのモル比が少なくとも約2.0であるフォージャサイトゼオライトである。Ag交換フォージャサイトゼオライトを利用するいくつかの実施形態では、Agは、最低約3重量%、例えば少なくとも約15重量%などで存在する。いくつかの特定の実施形態では、Agは部分的にイオン交換され、ゼオライト上に部分的に沈殿し、イオン交換されるAgの割合は、Si:Alのモル比及び重量%Agに依存する。しかしながら、典型的には、少なくとも約10重量%のAgがゼオライト上でイオン交換される。これは、ヨウ素還元吸着剤がフォージャサイトゼオライトに限定されるということではない。むしろ、任意の他の適切なゼオライトを使用することができる。
【0065】
凝縮塔頂留分中に存在する有機及び/又は無機ヨウ素含有種及び硫黄含有種を減少させるために1つ以上のAg交換フォージャサイトゼオライトを利用する実施形態では、吸着剤は、凝縮塔頂留分108を吸着剤と少なくとも約1:100,000の吸着剤:凝縮塔頂留分108の重量比で接触させることによって使用することができる。いくつかの実施形態では、吸着剤:凝縮塔頂留分108の重量比は、少なくとも約1:10,000、1:1000、又は1:100である。接触は、適切な装置、温度、圧力、及び流量を用いて、バッチプロセスによって、又は連続プロセスによって行うことができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、有機及び/又は無機ヨウ素含有化合物を含む廃棄流102を精製するために使用されるが、得られた精製されたアセトニトリル及びトルエン流114は、約25ppm以下のヨウ素、例えば約10ppm以下のヨウ素、例えば約5ppm以下のヨウ素、例えば約1ppm以下のヨウ素、例えば約0.5ppm以下のヨウ素を含み、場合によってはヨウ素を実質的に含まない。場合によっては、いくつかの態様では、得られた精製されたアセトニトリル及びトルエン流114は、約0.1ppm~約25ppmのヨウ素、例えば、約0.1ppm~約10ppmのヨウ素、例えば、約0.1ppm~約5ppmのヨウ素、例えば、約0.1ppm~約1ppmのヨウ素、例えば、約0.1ppm~約0.5ppmのヨウ素を含む。
【0067】
くつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、有機及び/又は無機硫黄含有化合物を不純物として含む廃棄流102を精製するために使用される。前述のように、塔頂留分108中に存在する硫黄含有化合物の量は、第2の反応性化合物152によって実質的に低減されるが、いくらかの硫黄含有成分が塔頂留分108中に依然として存在し得る。この場合、塔頂留分108を、これらの硫黄含有化合物の量を減少させるように選択された吸着剤112と接触させて、精製されたアセトニトリル及びトルエン流114を得ることができる。いくつかの実施形態では、得られた精製されたアセトニトリル及びトルエン流114は、約10ppm以下の硫黄、例えば約6ppm以下の硫黄、例えば約5ppm以下の硫黄、例えば約4ppm以下の硫黄を含む。いくつかの実施形態では、得られた精製されたアセトニトリル及びトルエン流114は、約0.5ppm~約10ppmの硫黄、例えば約0.5ppm~約6ppmの硫黄、例えば約0.5ppm~約5ppmの硫黄、例えば約0.5ppm~約4ppmの硫黄を含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、ピリジン、ピリジン、ルチジン、ピコリン、N-メチルイミダゾールなどの塩基性窒素含有化合物を含む廃棄流102を精製するために使用される。前述のように、塔頂留分108中に存在する塩基性窒素含有化合物の量は、第3の反応性化合物152によって実質的に低減されるが、塩基性窒素含有成分の一部は塔頂留分108中に依然として存在し得る。この場合、精製されたアセトニトリル及びトルエン流114は、塩基性N還元吸着剤118を含有するように構成された第2の吸着塔116に通される。この場合も同様に、塩基性N還元吸着剤は、使用される唯一の吸着剤であってもよい。あるいは、塩基性N還元吸着剤は、使用される複数の吸着剤のうちの1つであってもよい。複数の吸着剤が使用される場合、吸着剤は順次使用されてもよい。このような実施形態では、塩基性N還元吸着剤を配列中の任意の位置で使用することができる。
【0069】
図1の特定の例示的な実施形態では、精製されたアセトニトリル及びトルエン流114を塩基性N還元吸着剤118と接触させて、廃棄流102と比較して減少した量の塩基性N含有化合物不純物を含む精製されたアセトニトリル及びトルエン流120を得る。精製されたアセトニトリル及びトルエン流120は、使用のために収集されてもよく、又は所望により更なる精製に供されてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、塩基性N吸着剤は、酸性カチオン交換樹脂を含み得る。かかる実施形態では、精製されるアセトニトリル及びトルエン流(例えば、凝縮された塔頂留分108又は精製されたアセトニトリル及びトルエン流114)の体積当たりに使用される吸着剤の相対比率は、特定の吸着剤、アセトニトリル及びトルエン流中に含有される塩基性N含有不純物の量、及び得られる精製されたアセトニトリル及びトルエン流中の塩基性N含有不純物の所望のレベルに応じて変動し得る。いくつかの実施形態では、Amberlyst(商標)-15などの酸性カチオン交換樹脂は、アセトニトリル及びトルエン流中の塩基性N含有不純物を低減するために、10Lのアセトニトリル及びトルエン流に対して少なくとも約1gの吸着剤の比、例えば、0.1Lのアセトニトリル及びトルエン流に対して少なくとも約1gの吸着剤の比で使用される。
【0071】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、1つ以上の塩基性N含有化合物を不純物として含む廃棄流102を精製するために使用される。いくつかの実施形態では、精製されたアセトニトリル及びトルエン流は、得られる精製されたアセトニトリル及びトルエン流が、約100ppm以下の塩基性N含有化合物、例えば約50ppm以下の塩基性N含有化合物、例えば約25ppm以下の塩基性N含有化合物、例えば約10ppm以下の塩基性N含有化合物を含むように、アセトニトリル及びトルエン流からそのような不純物を除去することによって生成される。いくつかの実施形態では、精製されたアセトニトリル及びトルエン流120は、得られる精製されたアセトニトリル及びトルエン流が、約1ppm~約100ppmの塩基性N含有化合物、例えば約1ppm~約50ppmの塩基性N含有化合物、例えば約1ppm~約25ppmの塩基性N含有化合物、例えば約1ppm~約10ppmの塩基性N含有化合物を含むように、アセトニトリル及びトルエン流からそのような不純物を除去することによって生成される。
【0072】
いくつかの実施形態では、酸交換樹脂はまた、精製されたアセトニトリル及びトルエン流114中に存在するカチオンの量を減少させ得る。例えば、カチオン性Fe、Mg、Cr、Ni、Ag、及びI2などの不純物は、カチオン交換樹脂と接触させることによって還元させることができる。いくつかの実施形態では、カチオンの還元は、上記の酸性カチオン交換樹脂を含む塩基性N還元吸着剤との接触によって、塩基性N還元と同時に起こる。いくつかの実施形態では、精製されたアセトニトリル及びトルエン流120は、不純物として、約5ppm未満、例えば約0.1ppm~約5ppmのカチオン性Feを含む。いくつかの実施形態では、精製されたアセトニトリル及びトルエン流120は、不純物として、約5ppm未満、例えば約0.1ppm~約5ppmのカチオン性Mgを含む。いくつかの実施形態では、精製されたアセトニトリル及びトルエン流120は、不純物として、約5ppm未満、例えば約0.1ppm~約5ppmのカチオン性Crを含む。いくつかの実施形態では、精製されたアセトニトリル及びトルエン流120は、不純物として、約5ppm未満、例えば約0.1ppm~約5ppmのカチオン性Niを含む。いくつかの実施形態では、精製されたアセトニトリル及びトルエン流120は、不純物として、約5ppm未満、例えば約0.1ppm~約5ppmのカチオン性Agを含む。いくつかの態様においては、精製されたアセトニトリル及びトルエン流120は、不純物として約5ppm未満、例えば約0.1ppm~約5ppmのヨウ素/ヨウ化物を含む。
【0073】
凝縮された精製アセトニトリル及びトルエン流120中に存在する水の量を減少させることが望ましい場合がある。
図1に示される実施例を含むいくつかの実施形態では、精製されたアセトニトリル及びトルエン流120は、第3の吸着塔122に進む。これらの実施形態では、第3の吸着塔122は、減水吸着剤(water-reducing adsorbent)(すなわち、乾燥剤)124を収容するように構成される。精製されたアセトニトリル及びトルエン流120は、減水吸着剤124と接触して、精製されたアセトニトリルとトルエンの混合物126を生成し、これは吸着ゾーン130を出る。
【0074】
いくつかの実施形態では、無機結合剤で結合されたカリウム(K)交換リンデタイプA(Linde Type A、LTA)タイプモレキュラーシーブを水除去吸着剤124として使用することができる。驚くべきことに、多孔質乾燥剤は、それらの細孔構造を部分的に閉鎖するように処理された場合、アセトニトリル廃棄流中の水の低減に関して向上した性能(すなわち、より高い水吸着能)を示すことが見出された。したがって、いくつかの実施形態では、1つ以上の多孔質乾燥剤(無機結合剤と結合した1つ以上のK交換LTA型モレキュラーシーブを含む)は、使用前に乾燥剤の細孔を部分的に閉鎖するために、当技術分野で公知の任意の好適なプロセスによって処理されてもよい。しかしながら、細孔を過度に閉鎖して水吸着能を制限しないように注意しなければならない。細孔閉鎖の程度は、1気圧の分圧に曝露されたときに分子の1重量%を超えて吸着しない最小分子(プラグゲージ分子(plug-gauge molecule)としても知られる)を決定することによって測定され得る。いくつかの実施形態では、エチレン、ジフルオロメタン、又はその両方を吸着する制限された能力を乾燥剤が有する点まで乾燥剤の細孔構造を部分的に閉鎖するように流れで処理されたLTA型吸着剤である。
【0075】
廃棄流102からの精製されたアセトニトリル及びトルエン流120中の水を減少させるために1つ以上のLTA型吸着剤を利用する実施形態において、吸着剤は、精製されるアセトニトリル1グラム当たり少なくとも5~10mgの乾燥剤の重量比で使用されてもよい。いくつかの実施形態において、10重量%の最小水吸着能を有する1つ以上のLTA型吸着剤が使用される。精製されたアセトニトリル及びトルエン流120中の水を減少させるために1つ以上のLTA型吸着剤を利用する実施形態において、吸着剤は、精製されるアセトニトリル1グラム当たり少なくとも5~10mgの乾燥剤の重量比で使用されてもよい。いくつかの実施形態では、10重量%の最小水吸能を有する1つ以上のLTA型吸着剤が使用される。接触は、適切な装置、温度、圧力、及び流量を用いて、バッチプロセス又は連続プロセスによって行うことができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、凝縮された精製されたアセトニトリル及びトルエン流120中に存在する水の量を減少させることは、液相プロセスによって行われる。これらの実施形態では、精製されたアセトニトリル及びトルエン流120は、減水性吸着剤124と接触するときに液相である。
【0077】
代替的又は追加的に、精製アセトニトリル中に存在する水の量を低減することは、気相圧力スイング吸着法(pressure-swing adsorption、PSA)などの気相プロセスによって行われてもよい。例示的な実施形態では、分留塔を出る精製されたアセトニトリル及びトルエン流は、塔頂留分の凝縮を低減又は排除するように処理され得る。むしろ、分留塔を出る精製されたアセトニトリル及びトルエンの流れは、更に加熱され、例えば、分留温度より約25℃高い温度で過熱され、加熱された蒸気は、減少吸着剤を含む塔に供給される。いくつかの実施形態では、減水性吸着剤は、上述のように、無機結合剤で結合されたカリウム(K)交換リンデタイプA(LTA)-タイプ20モレキュラーシーブであり、これは部分的に閉じた細孔を有していても有していなくてもよい。水分減少吸着剤と接触した後、蒸気は熱交換器に送られ、そこで凝縮されて液相の精製アセトニトリルとトルエンになる。この液相の精製されたアセトニトリルとトルエンの混合物は、必要に応じて、本明細書に記載される他の吸着材との接触を介することを含む更なる精製に供されてもよい。当業者であれば、本明細書に記載の方法において、第1の塔内の吸着剤が飽和した後、乾燥されるアセトニトリルとトルエンの混合蒸気が第2の塔に送られ、第1の塔内の吸着剤が再生されるように、減水吸着剤を含む複数の塔を並行して利用することができることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、再生条件は、圧力を低下させることによって吸着剤から水を揮散させ、放出された物質を液体廃棄流として凝縮することを含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、液体廃棄流の少なくとも一部は、更なる処理のために分留塔に戻るように方向転換されてもよい。いくつかの実施形態では、平均した水のデルタ負荷(すなわち、吸着工程の開始から終了までの吸着剤の平均含水量の変化)は、吸着剤100kg当たり約1~約3kgの水である。これらの実施形態では、圧力、供給速度、及び流量などの吸着条件は、45吸着工程が約5~約10分かかり得るようなものであってもよい。
【0079】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、不純物として水を含む廃棄流102を精製するために使用される。いくつかの関連する実施形態において、廃棄流102は分留され、塔頂留分は、部分的に閉鎖された細孔構造を有する乾燥剤と接触させられる。いくつかの実施形態では、乾燥剤との接触によって精製された、精製されたアセトニトリルとトルエンの混合物126は、約2000ppm以下の水、例えば約1000ppm以下の水、例えば約500ppm以下の水、例えば約150ppm以下の水、100ppm以下の水、例えば約50ppm以下の水、例えば約25ppm以下の水を含む。
【0080】
上記の様々な実施形態は、分留塔から、次いでヨウ素還元吸着剤、塩基性N含有化合物還元吸着剤、及び減水吸着剤を順次通過する廃棄流について記載しているが、本明細書の範囲はそのように限定されないことが理解されるであろう。むしろ、吸着剤のうちの1つ又は2つのみが、分留塔に加えて使用され得ること、及び/又は吸着剤が、限定されることなく異なる順序で使用され得ることが理解されるであろう。例えば、分留及び凝縮後、凝縮された塔頂留分108を塩基性N含有化合物還元吸着剤と接触させ、得られたアセトニトリル及びトルエン流を減水吸着剤と接触させることができ、又は凝縮された塔頂留分108を減水吸着剤と接触させ、得られた流れをヨウ素還元吸着剤と接触させることができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、オリゴヌクレオチド合成からの廃棄流102を精製して、様々な工業プロセス又は製造プロセスにおける再利用に適した精製されたアセトニトリルとトルエンの混合物126を生成するために使用される。いくつかの実施形態では、精製されたアセトニトリルとトルエンの混合物126は、工程間アセトニトリル洗浄を用いて行われるオリゴヌクレオチド合成における工程間洗浄溶液として再利用するのに適している。いくつかの実施形態では、精製されたアセトニトリルとトルエンの混合物126は、ガスクロマトグラフィーによって決定されるとき、約85%超の純度、例えば、約95%以上の純度である。
【0082】
先に記載したように、オリゴヌクレオチド合成プロセスの場合、トルエンとアセトニトリルの混合溶液を洗浄溶媒として使用することは、許容可能である(例えば、純粋なアセトニトリル洗浄溶媒と比較して同様の純度の生成オリゴヌクレオチドが生じる)ことが見出されただけでなく、場合によっては、驚くべきことに、純粋なアセトニトリル洗浄溶媒と比較して、生成されたオリゴヌクレオチドの純度を増加させることが見出されたことが判明している。
【0083】
例えば、第1の一連のケースでは、異なるアセトニトリル及びトルエン純度を含む種々の洗浄溶媒が試験され、得られたオリゴヌクレオチド純度は、第1のタイプの支持体樹脂及び第1のタイプのオリゴヌクレオチド試験配列(例えば、試験-20;20量体など)に基づいて得られ、驚くべきことに、洗浄溶媒としてのトルエンとアセトニトリルの混合溶液は、純粋なアセトニトリル洗浄溶媒と比較して、第1のオリゴヌクレオチド純度の純度を高めることが見出された。
【0084】
例えば純粋なアセトニトリルが、第1のタイプの支持体樹脂及び第1のオリゴヌクレオチド試験配列(試験-20)を利用するオリゴヌクレオチド合成プロセスにおいて洗浄溶媒として使用される場合、液体クロマトグラフィーによって決定される、得られた合成オリゴヌクレオチドの純度は、70%~73%の範囲、例えば、70.2%~72.2%の範囲であり得る。
【0085】
しかしながら、95重量%アセトニトリル及び5重量%トルエンの実質的に純粋な混合物が、第1のタイプの支持体樹脂及び試験-20オリゴヌクレオチド配列を用いるオリゴヌクレオチド合成プロセスにおいて洗浄溶媒として使用される場合、驚くべきことに、得られる合成オリゴヌクレオチドは、純粋なアセトニトリルを洗浄溶媒として使用して生成される合成オリゴヌクレオチドよりもわずかに純粋であることが見出された。例えば、95重量%アセトニトリル/5重量%トルエンブレンドを使用するオリゴヌクレオチド合成プロセスから得られるオリゴヌクレオチド純度は、70%~74%純度範囲、より詳細には70.7%~73.8%純度範囲の純度を有し得る。したがって、純粋なアセトニトリルと比較して、95重量%アセトニトリル/5重量%トルエンのブレンドをオリゴヌクレオチド合成プロセスにおける洗浄溶媒として利用することが有利であり得る。
【0086】
別の実施例において、85重量%アセトニトリル及び15重量%トルエンの実質的に純粋な混合物が、同じ第1の支持体樹脂及び試験-20オリゴヌクレオチド配列を用いるオリゴヌクレオチド合成プロセスにおいて洗浄溶媒として使用される。この場合、驚くべきことに、得られた合成オリゴヌクレオチドは、純粋なアセトニトリルを洗浄溶媒として使用して生成された合成オリゴヌクレオチドよりもわずかに純粋であることが見出された。例えば、85重量%アセトニトリル/15重量%トルエンブレンドを使用するオリゴヌクレオチド合成プロセスから得られるオリゴヌクレオチド純度は、72%~76%純度範囲、より詳細には72.5%~76.4%純度範囲の純度を有し得る。したがって、純粋なアセトニトリルと比較して、85重量%アセトニトリル/15重量%トルエンのブレンドをオリゴヌクレオチド合成プロセスにおける洗浄溶媒として利用することが有利であり得る。
【0087】
更に別の実施例として、76重量%アセトニトリル及び24重量%トルエンの共沸組成物の実質的に純粋な混合物が、第1の固体支持体樹脂及び試験-20オリゴヌクレオチド配列を用いるオリゴヌクレオチド合成プロセスにおいて洗浄溶媒として使用される場合、驚くべきことに、得られる合成オリゴヌクレオチドは、純粋なアセトニトリルを洗浄溶媒として使用して生成される合成オリゴヌクレオチドよりもわずかに純粋であることが見出された。例えば、76重量%アセトニトリル/24重量%トルエンブレンドを使用するオリゴヌクレオチド合成プロセスから得られるオリゴヌクレオチド純度は、71%~73%純度範囲、より詳細には71.3%~72.2%純度範囲の純度を有し得る。したがって、純粋なアセトニトリルと比較して、76重量%アセトニトリル/24重量%トルエンのブレンドをオリゴヌクレオチド合成プロセスにおける洗浄溶媒として利用することが有利であり得る。
【0088】
第2の一連のケースにおいて、異なるアセトニトリル及びトルエン純度を含む種々の洗浄溶媒が試験され、得られたオリゴヌクレオチド純度は、第2のタイプの支持体樹脂及び第2のタイプのオリゴヌクレオチド試験配列(例えば、試験-18;18量体など)に基づいて得られ、驚くべきことに、洗浄溶媒としてのトルエンとアセトニトリルの混合溶液もまた、純粋なアセトニトリル洗浄溶媒と比較して、第2のオリゴヌクレオチド純度の純度を高めることが見出された。
【0089】
例えば、第2の支持体樹脂及び第2のオリゴヌクレオチド試験配列(試験-18)が使用される場合、及び純粋なアセトニトリルがオリゴヌクレオチド合成プロセスにおいて洗浄溶媒として使用される場合、液体クロマトグラフィーによって決定される、得られた合成オリゴヌクレオチドの純度は、91%~93%の範囲、例えば、91.2%~93.1%の範囲であり得る。
【0090】
しかしながら、同じ第2の支持体樹脂(第2の樹脂)及び試験オリゴヌクレオチド試験配列(試験18)を用いて、90重量%アセトニトリル及び10重量%トルエンの実質的に純粋な混合物をオリゴヌクレオチド合成プロセスにおいて洗浄溶媒として使用する場合、驚くべきことに、得られる合成オリゴヌクレオチドは、純粋なアセトニトリルを洗浄溶媒として使用して生成された合成オリゴヌクレオチドよりもわずかに純粋であることが見出された。例えば、90重量%アセトニトリル/10重量%トルエンブレンドを使用するこのオリゴヌクレオチド合成プロセスから得られるオリゴヌクレオチド純度は、92%~100%純度範囲、より詳細には、92.6%~99.8%純度範囲の純度を有し得る。したがって、純粋なアセトニトリルと比較して、90重量%アセトニトリル/10重量%トルエンのブレンドをオリゴヌクレオチド合成プロセスにおける洗浄溶媒として利用することが有利であり得る。
【0091】
第2の実施例において、この同じ第2の支持体樹脂及び第2の試験配列(試験18)を用いて、85重量%アセトニトリル及び15重量%トルエンの実質的に純粋な混合物を、オリゴヌクレオチド合成プロセスにおける洗浄溶媒として使用する。この場合、驚くべきことに、得られた合成オリゴヌクレオチドは、純粋なアセトニトリルを洗浄溶媒として使用して生成された合成オリゴヌクレオチドよりもわずかに純粋であることが見出された。例えば、85重量%アセトニトリル/15重量%トルエンブレンドを使用するオリゴヌクレオチド合成プロセスから得られるオリゴヌクレオチド純度は、92%~96%純度範囲、より詳細には92.6%~95.7%純度範囲の純度を有し得る。したがって、純粋なアセトニトリルと比較して、85重量%アセトニトリル/15重量%トルエンのブレンドをオリゴヌクレオチド合成プロセスにおける洗浄溶媒として利用することが有利であり得る。
【0092】
別の実施例では、この同じ第2の支持体樹脂)及び第2のオリゴヌクレオチド試験配列(試験18)を用いて、80重量%アセトニトリル及び20重量%トルエンの実質的に純粋な混合物を、オリゴヌクレオチド合成プロセスにおける洗浄溶媒として使用する。この場合、驚くべきことに、得られた合成オリゴヌクレオチドは、純粋なアセトニトリルを洗浄溶媒として使用して生成された合成オリゴヌクレオチドよりもわずかに純粋であることが見出された。例えば、80重量%アセトニトリル/20重量%トルエンブレンドを使用するオリゴヌクレオチド合成プロセスから得られるオリゴヌクレオチド純度は、93%~97%純度範囲、より詳細には93.9%~96.9%純度範囲の純度を有し得る。したがって、純粋なアセトニトリルと比較して、80重量%アセトニトリル/20重量%トルエンのブレンドをオリゴヌクレオチド合成プロセスにおける洗浄溶媒として利用することが有利であり得る。
【0093】
更に別の実施例において、76重量%アセトニトリル及び24重量%トルエンの共沸組成物の実質的に純粋な混合物が、第2の支持体樹脂及び第2のオリゴヌクレオチド試験配列(T-18)を使用するオリゴヌクレオチド合成プロセスにおいて洗浄溶媒として使用される場合、驚くべきことに、得られる合成オリゴヌクレオチドは、純粋なアセトニトリルを洗浄溶媒として使用して生成された合成オリゴヌクレオチドよりも高い純度を有することが見出された。例えば、第2の樹脂及びT18配列を用いて、76重量%アセトニトリル/24重量%トルエンブレンドを使用するオリゴヌクレオチド合成プロセスから得られるオリゴヌクレオチドの純度は、95%~97%の範囲であり得、より詳細には、95.3%~96.8%の範囲の純度を有する。したがって、純粋なアセトニトリルと比較して、76重量%アセトニトリル/24重量%トルエンのブレンドをオリゴヌクレオチド合成プロセスにおける洗浄溶媒として利用することが有利であり得る。
【0094】
したがって、前述の例示において実証されるように、5~24重量パーセントのトルエンと、対応する95~76重量パーセントのアセトニトリルとの混合洗浄溶媒組成物は、純粋なアセトニトリル洗浄溶媒よりも高い純度のオリゴヌクレオチドではないとしても、オリゴヌクレオチド合成プロセスによって生成される得られるオリゴヌクレオチドの純度レベルが少なくとも同じとなることが見出された。別の言い方をすれば、前述の例示は、オリゴヌクレオチド合成プロセスにおいて、少なくて5重量%程度のトルエン及び多くて24重量%程度のトルエン、並びに少なくて76重量%程度のアセトニトリル及び多くて95重量%程度のアセトニトリル(又は前述の値の任意の2つによって定義される任意の範囲)を含む混合洗浄溶媒の使用が、より純粋ではないとしても、少なくとも純粋なアセトニトリル洗浄溶媒と同程度に純粋なオリゴヌクレオチド純度をもたらすことを実証する。
【0095】
前述のように、生成された精製されたアセトニトリルとトルエンの混合物126は、アセトニトリルとトルエンの実質的に純粋な(例えば、80%以上、より好ましくは95%以上純粋な)混合物に精製されてもよく、これは、アセトニトリル及びトルエンの共沸組成物の状態であってもよく、又は共沸混合物よりも多くのアセトニトリルを含有するアセトニトリル対トルエン比の状態であってもよい。例えば、生成された精製されたアセトニトリルとトルエンの混合物126は、約76重量%アセトニトリル及び24重量%トルエンの実質的に純粋な共沸組成物に精製されてもよい。この場合、オリゴヌクレオチド合成プロセスにおける洗浄溶媒としてのこの混合組成物を再利用することにより、純粋なアセトニトリルと少なくとも同様のオリゴヌクレオチド純度が生じ得る(例えば、共沸組成物の再利用は、純粋なアセトニトリルと比較して好ましくないとしても、少なくとも許容可能である)ことが見出されているが、上記のように、より有利な組成の洗浄溶媒を目標にするために、混合物中のアセトニトリルの相対重量パーセントを増加させることが有利であり得る。例えば、先に記載したようなより有利なアセトニトリルとトルエンのブレンドを達成するために、アセトニトリルの重量%を、76重量%の共沸組成物から80重量%に、より好ましくは85重量%に、場合によっては90重量%に、一部の例では95重量%に増加させることが可能であり得る。
【0096】
アセトニトリルの全重量パーセントの増加は、リサイクルされ精製されたアセトニトリルとトルエンの混合物126をオリゴヌクレオチド合成プロセスにおいて洗浄溶媒として使用する前に、プロセス中のある時点で、生成された精製されたアセトニトリルとトルエンの混合物126にアセトニトリルを添加することによって達成することができる。例えば、オリゴヌクレオチド合成プロセスにおいて洗浄溶媒ブレンドとして精製されたアセトニトリルとトルエンの混合物126を使用する前に、補充アセトニトリル154を精製されたアセトニトリルとトルエンの混合物126に添加してもよい(例えば、インラインで、又は任意の他の好適な混合装置によって)。この場合、精製されたアセトニトリルとトルエンの混合物126に添加される補充アセトニトリル154の量は、アセトニトリルとトルエンのブレンドの目標組成を達成するのに必要な補充アセトニトリル154の量に基づくことができる。例えば、精製されたアセトニトリルとトルエンの混合物126に添加される補充アセトニトリル154の量は、共沸組成物からのアセトニトリルの重量パーセント(例えば、76重量%)を80重量パーセント、より好ましくは85重量パーセント、場合によっては90重量パーセント、一部の例では95重量パーセントアセトニトリルに増加させるのに必要な量であってもよい。あるいは、アセトニトリルのトルエンに対する相対重量パーセントが共沸組成物よりも大きい場合、精製されたアセトニトリルとトルエンの混合物126に添加される補充アセトニトリル154の量は、アセトニトリルの相対重量パーセントを80重量パーセント、より好ましくは85重量パーセント、場合によっては90重量パーセント、一部の例では95重量パーセントアセトニトリルに増加させるのに必要な量であってもよい。更に、補充アセトニトリル154は、精製されたアセトニトリルとトルエンの混合物126に添加されるものとして示されているが、補充アセトニトリル154は、アセトニトリルとトルエンの混合物126の組成が上記の重量パーセントのアセトニトリルのいずれかを含むように、収集タンク104、供給流105、塔頂留分108、精製されたアセトニトリル及びトルエン流114、及び/又は精製されたアセトニトリル及びトルエン流120のうちのいずれか1つ又はこれらの組み合わせに添加されてもよい。これらの場合のいずれにおいても、洗浄溶媒としてオリゴヌクレオチド合成プロセスにリサイクルされる、得られた精製されたアセトニトリルとトルエンの混合物126の使用は、純粋なアセトニトリルが洗浄溶媒として使用された場合と比較して、オリゴヌクレオチド合成プロセスの全体的な純度を増加させ得る。
【0097】
前述の議論は、精製、可能なアセトニトリル補充、及び洗浄溶媒として使用するためのオリゴヌクレオチド合成プロセスからの回収された廃棄流のリサイクルに関するが、このような議論は、本発明を廃棄流リサイクルの状況のみに限定することを意味しないことが理解されるべきである。先に記載したように、洗浄溶媒としてのアセトニトリルとトルエンのブレンドの使用は、純粋なアセトニトリル単独と比較して有利であることが見出された。したがって、廃棄流102の精製及び補充に関する処理工程のいずれも必要ではない可能性があり、むしろ、上記のアセトニトリル及びトルエン組成物のいずれかの新鮮な(例えば、リサイクルされていない)流れを利用するオリゴヌクレオチド合成プロセスは、オリゴヌクレオチド合成プロセスにおける洗浄溶媒として使用するのに、より有利ではないとしても、同等に有利であり得、したがって、本開示によって同様に包含される。
【0098】
材料及び方法
実施例1~8:
以下に記載する実施例1~8に関連して、ヨウ素、チオール、アルキルアミン及び他の不純物を含有するアセトニトリル及びトルエン廃棄物の共沸混合物又は近沸点混合物は、チオ硫酸ナトリウム、硝酸銀、及び/又はギ酸などの還元剤を供給流に添加することによって処理されている。チオ硫酸ナトリウムの場合、還元剤は、全ての溶解した有機及び無機ヨウ素化合物を、揮発性ではなく、追加の装置を必要とせずに側方排出口を介して除去することができるヨウ化物に変換する。
【0099】
別途記載のない限り、全ての濃度は質量によるものであり、すなわち、パーセンテージは重量パーセンテージであり、ppmは重量ppmである。全ての実施例において、精留塔における供給質量は、アセトニトリル76%及びトルエン24%からなる二成分混合物1kgであった。
【0100】
分別蒸留は、液体分割器を備え、頂部に冷却出口を有する400mmの充填ガラス塔で行った。塔自体は、排気された(10-6mbar)銀被覆絶縁ジャケット、サイトストリップ及び外側ベローズ(長さ500mm当たり1つのベローズパッキン)で構成されている。パッキンは、ホウケイ酸ガラスで作られた耐食性ラシヒリングからなる。40cmの充填塔を、RR=0.33の還流比及び徐々に減少する圧力で稼働させた。初期供給物の80%が塔頂生成物として得られるように実験を行った。留出物をそれぞれ200mLの3つの留分に分けた。
【0101】
本明細書で使用される場合、「人工廃棄物」とは、下記の表1に示される組成物を指す。
【0102】
【0103】
上記人工廃棄物は、0.2ppm未満の微量金属を更に含んでもよい。微量金属は、アルミニウム、バリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、クロム、コバルト、銅、鉄、鉛、リチウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、カリウム、銀、ナトリウム、ストロンチウム、スズ、及び亜鉛のうちの1つ以上を含み得る。
【0104】
実施例9:試験-20オリゴヌクレオチド(DNA及びRNA)
オリゴヌクレオチド(DNA及びRNA)合成は、一般に、4工程サイクル(脱ブロッキング、活性化/カップリング、キャッピング及び酸化/硫化)によって行われ、これは、所望の配列が得られるまで、付加された各ヌクレオチドについて繰り返される。各工程の間に、支持体に結合したオリゴヌクレオチドをアセトニトリルベースの洗浄溶媒で洗浄して、前の工程からの残留試薬を減少させる。洗浄溶媒は通常、純粋なアセトニトリルである。
【0105】
純粋なアセトニトリル単独ではなく、アセトニトリルとトルエンのブレンドを洗浄溶媒として使用することができると仮定した。このような仮説を試験するために、アセトニトリル及びトルエンの実質的に純粋な混合物の種々の組成物を、複数のオリゴヌクレオチド合成反応における洗浄溶媒として利用し、これにより結果として生じる種々の純度のオリゴヌクレオチドを得た。
【0106】
この場合、以下のオリゴヌクレオチド合成試験条件を、試験20(例えば、「20量体」)オリゴヌクレオチドについて観察した。
【0107】
【0108】
オリゴヌクレオチド収率を、UV検出を260nmで使用するHPLCによって決定した。更に、主ピークの同一性をLCMSによって確認した。
【0109】
実施例10:試験-18オリゴヌクレオチド(DNA及びRNA)
実施例9と同様に、オリゴヌクレオチド(DNA及びRNA)合成は、一般に、4工程サイクル(脱ブロッキング、活性化/カップリング、キャッピング及び酸化/硫化)によって行われ、これは、所望の配列が得られるまで、付加された各ヌクレオチドについて繰り返される。各工程の間に、支持体に結合したオリゴヌクレオチドをアセトニトリルベースの洗浄溶媒で洗浄して、前の工程からの残留試薬を減少させる。洗浄溶媒は通常、純粋なアセトニトリルである。
【0110】
実施例9と同様に、純粋なアセトニトリル単独ではなく、アセトニトリルとトルエンのブレンドを洗浄溶媒として使用することができると仮定した。このような仮説を試験するために、アセトニトリル及びトルエンの実質的に純粋な混合物の種々の組成物を、複数のオリゴヌクレオチド合成反応における洗浄溶媒として利用し、これにより結果として生じる種々の純度のオリゴヌクレオチドを得た。
【0111】
この場合、以下のオリゴヌクレオチド合成試験条件を、試験18(例えば、「18量体」)オリゴヌクレオチドについて観察した。
【0112】
【0113】
オリゴヌクレオチド収率を、UV検出を260nmで使用するHPLCによって決定した。更に、主ピークの同一性をLCMSによって確認した。
【実施例】
【0114】
実施例1:人工廃棄物の分別蒸留
この実施例では、表01に記載のオリゴヌクレオチド合成からのアセトニトリル、トルエン、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)、及び有機剤を更に含有する1000mLの人工廃棄物を、分別蒸留塔の丸底フラスコに導入した。分別蒸留は、前処理添加剤も添加溶剤もなしで行った。頂部温度及び底部温度をそれぞれ76℃及び85℃に設定した。留出物を冷却器中の塔頂部で再び凝縮させ、2つの留分に集めた。第1の留分(カット1)は最小容量であった。第1の留分は、1~2%の水、並びに下記の表2に示す成分を含有していた。主留分(カット2)も集め、分析した。
【0115】
人工的に配合されたすすぎ溶液の留出物は、単純な分別蒸留によって精製することができる。しかしながら、オリゴヌクレオチド合成に使用される化学物質の様々な成分が持ち越され得る。したがって、水に加えて、使用されたアルキルアミン、酢酸、ジクロロ酢酸、アルキルチオール、及びヨウ素のかなりの割合が両方の留出物中に見出された。人工蒸留廃液の分析結果を、それらの規格値(specification value)(「Spec.」)と共に表2に示す。
【0116】
【0117】
実施例2:ヨウ素を添加したアセトニトリル及びトルエンの分別蒸留
この実施例では、200mgの固体ヨウ素を、361gのアセトニトリル及び114gのトルエンの共沸混合物(下記の表では「共沸混合物」と示す)に添加した。固体ヨウ素が完全に溶解するまで混合物を撹拌し、次いで分別蒸留塔の丸底フラスコに移した。頂部温度及び底部温度をそれぞれ76℃及び80℃に設定した。留出物を冷却器中で凝縮させ、塔頂部で等しい留分に集めた。凝縮物(カット1~3)は依然として着色しており、ヨウ素の匂いを知覚することができたことに留意されたい。
【0118】
カットを分析し、結果を規格値(「Spec.」)と共に下記の表3に示す。
【0119】
【0120】
実施例3:チオ硫酸ナトリウムを用いたアセトニトリル及びトルエンからのヨウ素の沈殿
この実施例では、200mgの固体ヨウ素及び等モル量(259mg)の固体チオ硫酸ナトリウムを、361gのアセトニトリル及び114gのトルエンの共沸混合物に添加した。固体が完全に溶解するまで、溶液をマグネチックスターラで500rpmで撹拌した。次いで、塔頂温度及び塔底温度がそれぞれ81℃及び85℃に設定された状態で蒸留を行った。留出物を冷却器中の塔頂部で凝縮し、2つの等しい留分に集めた。
【0121】
この有利なバージョンでは、凝縮した留出物は無色であった。ヨウ素含量は0.1ppm未満であった。カットの分析結果を規格値(「Spec.」)と共に下記の表4に示す。
【0122】
【0123】
実施例4:チオ硫酸ナトリウムを用いた人工廃棄物からのヨウ素の沈殿
この実施例では、500mLの人工廃棄物に125mgのヨウ素及び160mgのチオ硫酸ナトリウムを添加した。65%アセトニトリル及び25%トルエンを更に含有する混合物を、分別蒸留塔の丸底フラスコに導入した。頂部温度及び底部温度をそれぞれ76℃及び80℃に設定した。留出物を冷却器中の塔頂部で再び凝縮させ、2つの留分に集めた。2つの主留分を分析した。
【0124】
実施例3とは対照的に、カット2の分析時に1.2ppmのヨウ化物が見出された。これは、オリゴヌクレオチド廃棄物中のより高い濃度のヨウ素が、ヨウ素キャリーオーバーを防止するために過剰の還元剤を必要とすることを示す。分析の結果を、規格値(「Spec.」)と共に下記の表5に示す。
【0125】
【0126】
実施例5:硝酸銀を使用したアセトニトリル及びトルエンからのチオールの沈殿
この実施例では、100mgのフェニルアセチルジスルフィド(phenylacetyl disulfide、PAD)及び50mgの5-エチルチオ-1H-テトラゾール(ETT)を、380gのアセトニトリル及び120gのトルエンの共沸混合物(下表では「共沸混合物」と示される)に添加した。最後に、この混合物に51mgの硝酸銀を添加した。次いで、塔頂温度及び塔底温度がそれぞれ76℃及び81℃に設定された状態で蒸留を行った。留出物を冷却器中の塔頂部で凝縮し、2つの等しい留分に集めた。
【0127】
この有利なバージョンでは、凝縮された留出物は無色であり、硫黄化合物の強い臭いはなかった。アルキルチオール含量は、HPLCの検出限界未満に減少した。分析の結果を、規格値(「Spec.」)と共に下記の表6に示す。
【0128】
【0129】
実施例6:ギ酸を用いたアセトニトリル及びトルエンからのアルキルアミンの沈殿
この実施例では、ルイス付加物を形成することによってアルキルアミンを沈殿させるために、還元剤としてのギ酸、及びルイス酸の有効性を調べた。361gのアセトニトリル及び114gのトルエンの共沸混合物に、10gのピリジン、並びにそれぞれ5gのピコリン、2,6-ルチジン及びN-メチルイミダゾール(下記の表では「共沸混合物」と示される)を添加した。最後に、この混合物に13.24gのギ酸を添加した。次いで、蒸留を行い、塔頂温度及び塔底温度をそれぞれ81℃及び85℃に設定した。留出物を冷却器中の塔頂部で凝縮し、3つの等しい留分に集めた。
【0130】
この有利なバージョンでは、凝縮した留出物は無色であった。アルキルアミンのキャリーオーバーは著しく減少しており、このことはギ酸がアルキルアミン塩基と不揮発性塩を形成し、蒸留中にそれらが蒸発するのを防止したことを示唆した。分析の結果を、規格値(「Spec.」)と共に下記の表7に示す。
【0131】
【0132】
実施例7:過剰のチオ硫酸ナトリウムを用いた人工廃棄物からのヨウ素の沈殿
この実施例では、5ppmのヨウ素及び等モル量のチオ硫酸ナトリウムを更に含有する1000mLの人工廃棄物を分別蒸留塔の丸底フラスコに導入した。12mgのチオ硫酸ナトリウムを添加して、廃液中の有機ヨウ素化合物を減少させた。頂部温度及び底部温度をそれぞれ76℃及び81℃に設定した。留出物を冷却器中の塔頂部で再び凝縮させ、2つの留分に集めた。第1の留分は最小容量であった。第1の留分は、1~2%の水、並びに下記の表8に示す成分を含有していた。主留分も収集し、ヨウ素含量について分析した。ヨウ素は、留出物において本方法の検出限界内で検出することができなかった。分析の結果を、規格値(「Spec.」)と共に下記の表8に示す。
【0133】
【0134】
実施例8:人工廃棄物からのヨウ素及びアルキルアミンの沈殿
この実施例では、500mLの人工廃棄物、10mgのチオ硫酸ナトリウム及び過剰のギ酸を混合した。65%アセトニトリル及び25%トルエンを更に含有する混合物を、分別蒸留塔の丸底フラスコに導入した。頂部温度及び底部温度をそれぞれ76℃及び81℃に設定した。留出物を冷却器中の塔頂部で再び凝縮させ、2つの留分に集めた。
【0135】
試験した全てのアルキルアミンの濃度は規格限界未満であり、留出物中のヨウ素の量は0.5ppm(HPLC法の検出限界)未満であった。分析の結果を、規格値(「Spec.」)と共に下記の表9に示す。
【0136】
【0137】
実施例9:試験-20様々な洗浄溶媒組成物の使用によって達成されたオリゴヌクレオチド純度
この実施例では、アセトニトリルベースの洗浄溶媒の4つの異なる組成物を使用して、5’ATA CCG ATT AAG CGA AGT TT 3’20量体オリゴヌクレオチドの同じ試験-20配列を、以前に提供された実験条件下で4回の試験実施にわたって合成した。第1の試験は、純粋な(例えば、100重量%)アセトニトリル洗浄溶媒を利用し、第2の試験は、95重量%アセトニトリル及び5重量%トルエンを含む洗浄溶媒を利用し、第3の試験は、85重量%アセトニトリル及び15重量%トルエンを含む洗浄溶媒を利用し、第4の試験は、76重量%アセトニトリル及び24重量%トルエンを含む洗浄溶媒(例えば、アセトニトリル及びトルエンの共沸組成物の代表)を利用した。得られた20量体オリゴヌクレオチドの純度をHPLC収率に基づいて報告し、結果を下記の表10に示した。
【0138】
【0139】
驚くべきことに、純粋ではないアセトニトリル洗浄溶媒を利用する場合、オリゴヌクレオチドの固相化学合成中に形成される試験-20オリゴヌクレオチド生成物の収率がわずかに増加することが見出された。具体的には、85%アセトニトリル及び15%トルエン(w/w)洗浄溶媒を含有するブレンド組成物の使用が、最も高いオリゴヌクレオチド収率をもたらしたことが観察される。しかしながら、前述の場合のそれぞれにおいて、アセトニトリル及びトルエン洗浄溶媒のブレンド組成物は、純粋なアセトニトリル洗浄溶媒のものよりも高いとは言わないまでも、少なくとも同様の試験-20オリゴヌクレオチド収率を示した。したがって、この実験は、オリゴヌクレオチド合成プロセスにおいて、純粋なアセトニトリルではなく混合洗浄溶媒を使用することが可能であるだけでなく(例えば、オリゴヌクレオチド合成は必ずしも純粋なアセトニトリル洗浄溶媒を必要としない)、有利であり得ることを確認した。
【0140】
実施例10:試験-18種々の洗浄溶媒組成物の使用によって達成されたオリゴヌクレオチド純度:
別の実施例において、アセトニトリルベースの洗浄溶媒の5つの異なる組成物を使用して、以前に提供された実験条件下で、5回の試験実施にわたって、試験-18 5’TTT TTT TTT TTT TTT TTT 3’18量体オリゴヌクレオチドの配列を合成した。第1の試験は、純粋な(例えば、100重量%)アセトニトリル洗浄溶媒を利用し、第2の試験は、90重量%アセトニトリル及び10重量%トルエンを含む洗浄溶媒を利用し、第3の試験は、85重量%アセトニトリル及び15重量%トルエンを含む洗浄溶媒を利用し、第4の試験は、80重量%アセトニトリル及び20重量%トルエンを含む洗浄溶媒を利用し、第5の試験は、76重量%アセトニトリル及び24重量%トルエンを含む洗浄溶媒(例えば、アセトニトリル及びトルエンの共沸組成物の代表)を利用した。得られた18量体オリゴヌクレオチドの純度をHPLC収率に基づいて報告し、結果を下記の表11に示した。
【0141】
【0142】
驚くべきことに、純粋ではないアセトニトリル洗浄溶媒を利用する場合、オリゴヌクレオチドの固相化学合成中に形成される試験-18オリゴヌクレオチド生成物の収率がわずかに増加することが見出された。具体的には、80%アセトニトリル及び20%トルエン(w/w)洗浄溶媒を含有するブレンド組成物の使用が、最も高いオリゴヌクレオチド収率をもたらしたことが観察される。しかしながら、前述の場合のそれぞれにおいて、アセトニトリル及びトルエン洗浄溶媒のブレンド組成物は、純粋なアセトニトリル洗浄溶媒のものよりも高いとは言わないまでも、少なくとも同様のT-18オリゴヌクレオチド収率を示した。したがって、この実験は、オリゴヌクレオチド合成プロセスにおいて、純粋なアセトニトリルではなく混合洗浄溶媒を使用することが可能であるだけでなく(例えば、オリゴヌクレオチド合成は必ずしも純粋なアセトニトリル洗浄溶媒を必要としない)、有利であり得ることを確認した。
【0143】
態様:
態様1は、廃棄流を処理するための方法であって、アセトニトリル、トルエン、及び1つ以上のヨウ素含有化合物を含む廃棄流を受け取ることと、廃液流にヨウ素反応性化合物を添加することと、塔頂留分及び塔底留分を生成するために廃棄流を分留することであって、塔頂留分は、廃棄流のアセトニトリル及びトルエンを含み、塔底留分は、廃棄流の1つ以上のヨウ素含有化合物を含む、分留することと、を含む、方法である。
【0144】
態様2は、ヨウ素反応性化合物がチオ硫酸ナトリウムを含む、態様1に記載の方法である。
【0145】
態様3は、ヨウ素反応性化合物がチオ硫酸ナトリウム及び硝酸銀を含む、態様1又は2のいずれかに記載の方法である。
【0146】
態様4は、頂留分が、ヨウ素を25ppm未満の濃度で更に含む、態様1~3のいずれかに記載の方法である。
【0147】
態様5は、頂留分が、ヨウ素を1ppm未満の濃度で更に含む、態様1~4のいずれかに記載の方法である。
【0148】
態様6は、廃棄流の分留中に、ヨウ素反応性化合物が1つ以上のヨウ素含有化合物のヨウ素と反応し、1つ以上のヨウ素含有化合物のヨウ素を廃棄流から塔底留分中に沈殿させる、態様1~5のいずれかに記載の方法である。
【0149】
態様7は、塔頂留分を、アセトニトリル及びトルエンから本質的になる精製塔頂留分に精製することを更に含む、態様1~6いずれかに記載の方法である。
【0150】
態様8は、廃棄流が1つ以上の硫黄含有化合物を更に含み、方法が廃棄流に硫黄反応性化合物を添加することを更に含み、塔底留分が1つ以上の硫黄含有化合物を更に含む、態様1~7いずれかに記載の方法である。
【0151】
態様9は、硫黄反応性化合物が硝酸銀を含む、態様1~8のいずれかに記載の方法である。
【0152】
態様10は、廃棄流が1つ以上の塩基性窒素含有化合物を更に含み、方法が廃棄流に酸性反応性化合物を添加することを更に含み、塔底留分が1つ以上の塩基性窒素含有化合物を更に含む、態様1~9のいずれかに記載の方法である。
【0153】
態様11は、酸性反応性化合物がギ酸を含む、態様1~10のいずれかに記載の方法である。
【0154】
態様12は、廃棄流を処理するための方法であって、アセトニトリル、トルエン、及び1つ以上の硫黄含有化合物を含む廃棄流を受け取ることと、廃液流に硫黄反応性化合物を添加することと、塔頂留分及び塔底留分を生成するために廃棄流を分留することであって、塔頂留分は、廃棄流のアセトニトリル及びトルエンを含み、塔底留分は、廃棄流の1つ以上の硫黄含有化合物を含む、分留することと、を含む、方法である。
【0155】
態様13は、頂留分が、硫黄を25ppm未満の濃度で更に含む、態様1~11又は態様12のいずれかに記載の方法である。
【0156】
態様14は、頂留分が、硫黄を1ppm未満の濃度で更に含む、態様1~11又は態様12~13のいずれかに記載の方法である。
【0157】
態様15は、硫黄反応性化合物が硝酸銀を含む、態様1~11又は態様12~14のいずれかに記載の方法である。
【0158】
態様16は、廃棄流の分留中に、硫黄反応性化合物が、1つ以上の硫黄含有化合物の硫黄と反応し、硫黄を廃棄流から塔底留分中に沈殿させる、態様1~11又は態様12~15のいずれかに記載の方法である。
【0159】
態様17は、廃棄流を処理するための方法であって、アセトニトリル、トルエン、及び塩基性窒素含有化合物を含む廃棄流を受け取ることと、廃液流に酸性反応性化合物を添加することと、塔頂留分及び塔底留分を生成するために廃棄流を分留することであって、塔頂留分は、廃棄流のアセトニトリル及びトルエンを含み、塔底留分は、廃棄流の塩基性窒素含有化合物を含む、分留することと、を含む、方法である。
【0160】
態様18は、頂留分が、1つ以上の窒素含有化合物を100ppm未満の濃度で更に含む、態様1~11、態様12~16、又は態様17のいずれかに記載の方法である。
【0161】
態様19は、酸性反応性化合物がギ酸を含む、態様1~11、態様12~16、又は態様17及び18のいずれかに記載の方法である。
【0162】
態様20は、廃棄流の分留中に、酸性反応性化合物が塩基性窒素含有化合物と反応し、塩基性窒素含有化合物を廃棄流から塔底留分中に沈殿させる、態様1~11、態様12~16、又は態様17~19のいずれかに記載の方法である。
【0163】
態様21は、合成オリゴヌクレオチドを生成するための方法であって、オリゴヌクレオチド合成プロセスの1つ以上の成分を収容している反応容器を、少なくともアセトニトリル及びトルエンを含む混合洗浄溶液であって、アセトニトリルは混合洗浄溶液の少なくとも70%を構成している、混合洗浄溶液で洗浄することと、合成オリゴヌクレオチドであって、最小オリゴヌクレオチド純度を含む、合成オリゴヌクレオチドを回収することと、を含む、方法である。
【0164】
態様22は、混合洗浄溶液が、アセトニトリルとトルエンの実質的に純粋な混合物を含む、態様21に記載の方法である。
【0165】
態様23は、混合洗浄溶液が、オリゴヌクレオチド合成プロセスからリサイクルされた、精製された廃棄流として受け取られる、態様21及び22のいずれかに記載の方法である。
【0166】
態様24は、アセトニトリルとトルエンの実質的に純粋な混合物が、少なくとも80%のアセトニトリルを含む、態様21~23のいずれかに記載の方法である。
【0167】
態様25は、アセトニトリルとトルエンの実質的に純粋な混合物が、少なくとも90%のアセトニトリルを含む、態様21~24のいずれかに記載の方法である。
【0168】
態様26は、アセトニトリルとトルエンの実質的に純粋な混合物が、アセトニトリルとトルエンの共沸混合物を含む、態様21~24のいずれかに記載の方法である。
【0169】
態様27は、アセトニトリルとトルエンの実質的に純粋な混合物が、少なくとも76%のアセトニトリルを含む、態様21~26のいずれかに記載の方法である。
【0170】
態様28は、アセトニトリルとトルエンの実質的に純粋な混合物が、少なくとも5%のトルエンを含む、態様21~27のいずれかに記載の方法である。
【0171】
態様29は、アセトニトリルとトルエンの実質的に純粋な混合物が、少なくとも15%のトルエンを含む、態様21~28のいずれかに記載の方法である。
【0172】
態様30は、最小オリゴヌクレオチド純度が70%以上の純度である、態様21~29のいずれかに記載の方法である。
【0173】
態様31は、最小オリゴヌクレオチド純度が72%超の純度である、態様21~30のいずれかに記載の方法である。
【0174】
態様32は、最小オリゴヌクレオチド純度が75%超の純度である、態様21~31のいずれかに記載の方法である。
【0175】
態様33は、最小オリゴヌクレオチド純度が90%以上の純度である、態様21~32のいずれかに記載の方法である。
【0176】
態様34は、最小オリゴヌクレオチド純度が92%超の純度である、態様21~33のいずれかに記載の方法である。
【0177】
態様35は、最小オリゴヌクレオチド純度が95%超の純度である、態様21~34のいずれかに記載の方法である。
【0178】
態様36は、最小オリゴヌクレオチド純度が、オリゴヌクレオチド合成プロセスの1つ以上の成分を収容している反応容器をアセトニトリルからなる洗浄溶液で洗浄することによって生成されるオリゴヌクレオチド純度より高い、態様21~35のいずれかに記載の方法である。
【0179】
態様37は、態様1~11、態様12~16、又は態様17~20のいずれかの特徴のいずれかを組み込んだ態様21~36のいずれかに記載の方法である。
【0180】
態様38は、態様21~36、態様12~16、又は態様17~20のいずれかの特徴のいずれかを含む、態様1~11のいずれかに記載の方法である。
【0181】
態様39は、態様21~36、態様1~11、又は態様17~20のいずれかの特徴のいずれかを含む、態様12~16のいずれかに記載の方法である。
【0182】
態様40は、態様21~36、態様1~11、又は態様12~16のいずれかの特徴のいずれかを含む、態様17~20のいずれかの方法である。
【手続補正書】
【提出日】2025-04-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄流を処理するための方法であって、
アセトニトリル、トルエン、及び1つ以上のヨウ素含有化合物を含む前記廃棄流を受け取ることと、
前記廃液流にヨウ素反応性化合物を添加することと、
塔頂留分及び塔底留分を生成するために前記廃棄流を分留することであって、前記塔頂留分は、前記廃棄流の前記アセトニトリル及び前記トルエンを含み、前記塔底留分は、前記廃棄流の前記1つ以上のヨウ素含有化合物を含む、分留することと、を含む、廃棄流を処理するための方法。
【請求項2】
廃棄流を処理するための方法であって、
アセトニトリル、トルエン、及び1つ以上の硫黄含有化合物を含む前記廃棄流を受け取ることと、
前記廃棄流に硫黄反応性化合物を添加することと、
塔頂留分及び塔底留分を生成するために前記廃棄流を分留することであって、前記塔頂留分は、前記廃棄流の前記アセトニトリル及び前記トルエンを含み、前記塔底留分は、前記廃棄流の前記1つ以上の硫黄含有化合物を含む、分留することと、を含む、廃棄流を処理するための方法。
【請求項3】
廃棄流を処理するための方法であって、
アセトニトリル、トルエン、及び塩基性窒素含有化合物を含む前記廃棄流を受け取ることと、
前記廃液流に酸性反応性化合物を添加することと、
塔頂留分及び塔底留分を生成するために前記廃棄流を分留することであって、前記塔頂留分は、前記廃棄流の前記アセトニトリル及び前記トルエンを含み、前記塔底留分は、前記廃棄流の前記塩基性窒素含有化合物を含む、分留することと、を含む、廃棄流を処理するための方法。
【国際調査報告】