(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-08-26
(54)【発明の名称】ユーザの呼吸をガイドするためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61M 21/02 20060101AFI20250819BHJP
A63B 23/18 20060101ALI20250819BHJP
【FI】
A61M21/02 J
A63B23/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2025504171
(86)(22)【出願日】2023-08-01
(85)【翻訳文提出日】2025-01-24
(86)【国際出願番号】 EP2023071299
(87)【国際公開番号】W WO2024033159
(87)【国際公開日】2024-02-15
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2022/111682
(32)【優先日】2022-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(32)【優先日】2022-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】ジン シェーン
(72)【発明者】
【氏名】イン ビン
(72)【発明者】
【氏名】シー ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン グアンチュン
(57)【要約】
複数の時間ウィンドウにわたりユーザの呼吸をガイドするためのシステム及び方法が使用される。現在の時間ウィンドウにおいてユーザが目標呼吸速度にどの程度従っているかの追従性の尺度と、現在の時間ウィンドウの間、ユーザの呼吸速度がどの程度安定しているかを表す変動値とに基づいて、次の時間ウィンドウの目標呼吸速度を設定することによって、開始目標呼吸速度から終了目標呼吸速度まで、複数の時間ウィンドウにわたり目標呼吸速度が適応される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の時間ウィンドウにわたりユーザの呼吸をガイドするためのシステムであって、
前記システムは、目標呼吸速度に従うようにユーザにガイダンスを提供するアクチュエータを制御するためのコントローラを有し、前記コントローラは、
前記ユーザの呼吸速度を受信し、
開始目標呼吸速度を設定し、及び
現在の時間ウィンドウにおいて前記ユーザが前記目標呼吸速度にどの程度従っているかの追従性の尺度と、前記現在の時間ウィンドウの間に前記ユーザの呼吸速度がどの程度安定しているかを表す変動値とに基づいて、次の時間ウィンドウの目標呼吸速度を設定することによって、前記開始目標呼吸速度から終了目標呼吸速度まで、前記複数の時間ウィンドウにわたり前記目標呼吸速度を適応させるように構成される、システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記目標呼吸速度に従うことができることを示す、前記追従性の尺度が追従性しきい値を下回るとき、前記次の時間ウィンドウの目標呼吸速度をより低く設定するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記目標呼吸速度に従うことができないことを示す、前記追従性の尺度が追従性しきい値を上回るとき、
前記変動値、及び/又は
前記現在の時間ウィンドウにわたり、前記目標呼吸速度と、前記ユーザの呼吸速度とがどの程度近いかを表す差分値
に基づいて、次の時間ウィンドウの目標呼吸速度を設定するように構成される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記差分値が第1のしきい値を上回らず、前記変動値が第2のしきい値を上回らない場合、前記次の時間ウィンドウの目標呼吸速度を、前記現在の時間ウィンドウにおける目標呼吸速度と同じに設定するように構成される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記差分値が前記第1のしきい値を上回らず、前記変動値が前記第2のしきい値を上回らない場合、前記コントローラは、
前記現在の時間ウィンドウの目標呼吸速度が前の時間ウィンドウの目標呼吸速度と同じではないとき、前記次の時間ウィンドウの目標呼吸速度を、前記現在の時間ウィンドウにおける目標呼吸速度と同じに設定する、及び
前記現在の時間ウィンドウの目標呼吸速度が前記前の時間ウィンドウの目標呼吸速度と同じであるとき、前記次の時間ウィンドウの目標呼吸速度をより高く設定するように構成される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記差分値が第1のしきい値を上回らず、前記変動値が第2のしきい値を上回る場合、前記次の時間ウィンドウの目標呼吸速度をより高く設定するように構成される、請求項3乃至5の何れか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラは、前記追従性の尺度が追従性しきい値を上回り、前記ユーザの呼吸速度が前記現在の時間ウィンドウにおける目標呼吸速度を下回るとき、前記現在の時間ウィンドウにおける前記ユーザの呼吸速度を、前記次の時間ウィンドウの目標呼吸速度として設定するように構成される、請求項1乃至6の何れか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記差分値が第1のしきい値を上回り、前記ユーザの呼吸速度が前記現在の時間ウィンドウにおける目標呼吸速度よりも高い場合、前記次の時間ウィンドウの目標呼吸速度をより高く設定するように構成される、請求項3乃至6の何れか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラは、前記差分値が第1のしきい値を上回り、前記ユーザの呼吸速度が前記現在の時間ウィンドウにおける目標呼吸速度よりも低い場合、前記現在の時間ウィンドウにおける前記ユーザの呼吸速度を、前記次の時間ウィンドウの目標呼吸速度として設定するように構成される、請求項4乃至8の何れか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記コントローラは、前記複数の時間ウィンドウの最初の時間ウィンドウの前の時間期間における前記ユーザの少なくとも1つの初期呼吸速度に基づいて、前記開始目標呼吸速度を設定するように構成される、請求項1乃至9の何れか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記開始目標呼吸速度は、
前記時間期間における前記少なくとも1つの初期呼吸速度の変動が第3のしきい値を下回る場合、前記時間期間における前記少なくとも1つの初期呼吸速度の平均を前記開始目標呼吸速度として設定する、又は
前記時間期間における前記少なくとも1つの初期呼吸速度の変動が第3のしきい値を下回る場合、前記時間期間における最後の初期呼吸速度を前記開始目標呼吸速度として設定する
ことによって設定される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記コントローラは、所定の期間内に前記開始目標呼吸速度から前記終了目標呼吸速度まで前記複数の時間ウィンドウにわたり前記目標呼吸速度を適応させるように構成され、前記目標呼吸速度は、前記所定の期間の最初の部分の間、前記終了目標呼吸速度に適応し、前記所定の期間の残りの部分の間は前記終了目標呼吸速度で一定である、請求項1乃至11の何れか一項に記載のシステム。
【請求項13】
現在の目標呼吸速度での呼吸パターンに従うようにユーザにガイダンスを提供するアクチュエータと、
呼吸速度センサと、
請求項1乃至12の何れか一項に記載のシステムと
を有する、スローペース呼吸システム。
【請求項14】
ユーザの呼吸をガイドするためのコンピュータ実装方法であって、
前記ユーザの呼吸速度を受信するステップと、
開始目標呼吸速度を設定するステップと、
現在の時間ウィンドウにおいて前記ユーザが前記目標呼吸速度にどの程度従っているかの追従性の尺度と、前記現在の時間ウィンドウの間、前記ユーザの呼吸速度がどの程度安定しているかを示す変動値とに基づいて、次の時間ウィンドウの目標呼吸速度を設定することによって、前記開始目標呼吸速度から終了目標呼吸速度まで、複数の時間ウィンドウにわり目標呼吸速度を適応させるステップと
を有する、コンピュータ実装方法。
【請求項15】
コンピュータ上で実行されるとき、請求項14に記載の方法を実施するように適応するコンピュータプログラムコード手段を有するコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スローペース呼吸システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゆっくりで、規則的な呼吸活動は、リラックスさせるのに有益であると考えられる。ペース呼吸(paces breathing)は、ゆっくりとした深い横隔膜呼吸であり、身体を落ち着かせ、心配事から気をそらすために使用される技術である。ペース呼吸は、睡眠の準備をするときに観察されるものと同様である人間の生理学的変化を生じさせることが知られている。したがって、スローペース呼吸(SPB)は、ストレスを減らし、多くの身体パラメタの自制心を高めるのに有効であることが証明されており、幾つかの研究は、睡眠を改善するために、ペース呼吸によって、人間の自律神経機能が調節されることも報告している。
【0003】
触覚、振動、又は他の対話的方法を使用するある特定のペース呼吸製品が市場で入手可能であり、この製品により生成されるある特定のペース呼吸のパターンに従うようにユーザをガイドする。通常、一定のペース呼吸のパターンが製品に組み込まれ、これは、プログラムが、ある特定の期間内に、例えば12bpm(breath per minute)のような一定の呼吸速度から、例えば8bpmのような別の一定の呼吸速度まで移行するか、そうでなければ、プログラムが、一定の呼吸速度を維持することを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ユーザが出力される呼吸速度に従うことができない場合があるので、不快に感じ、訓練をあきらめることさえある。
【0005】
例えば、ユーザの呼吸速度を測定し、それに応じて前記出力される呼吸速度を調整する適応した呼吸速度制御方法が提案されている。しかしながら、この調整が依然としてユーザに適切ではない場合があり、新しく調整された呼吸速度に従うことができる前に、安定した呼吸速度を持つのにより長い時間を必要とする場合がある。
【0006】
したがって、よりインテリジェントなペース呼吸の手法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、請求項により定義される。
【0008】
本発明の一態様に従う例によれば、複数の時間ウィンドウにわたりユーザの呼吸をガイドするためのシステムが提供され、このシステムは、目標呼吸速度に従うようにユーザにガイダンスを提供するアクチュエータを制御するためのコントローラを有し、前記コントローラは、
ユーザの呼吸速度を受信し、
開始目標呼吸速度を設定し、
現在の時間ウィンドウにおいてユーザが目標呼吸速度にどの程度従っているかの追従性の尺度と、現在の時間ウィンドウの間にユーザの呼吸速度がどの程度安定しているかを表す変動値とに基づいて、次の時間ウィンドウの目標呼吸速度を設定することによって、開始目標呼吸速度から終了目標呼吸速度まで、複数の時間ウィンドウにわたり目標呼吸速度を適応させる
ように構成される。
【0009】
このシステムは、ユーザが呼吸パターンに従うことを支援するため、特に、スローペース呼吸を行うために使用される。ペース呼吸プログラムを開始する前に、開始呼吸速度が設定される。その速度は固定でよいし、又はユーザの呼吸速度を使用して、生成されるペース呼吸プログラムの開始目標呼吸速度を設定してもよい。
【0010】
目標呼吸速度は、ユーザの呼吸速度が測定され、ユーザがガイダンスにどの程度従っているかの決定を、特に、ユーザが前記目標にどの程度従うことができるかを示す追従性(followability)の尺度と、ユーザの呼吸の安定性を示す変動値とに基づいて行うという点で適応的である。
【0011】
この適応は、各時間ウィンドウの終わりに、故にリアルタイムで決定される。したがって、各時間ウィンドウの終わりに新たな目標が設定されるので、プログラムは完全に適応可能である。時間ウィンドウは、例えば、30秒~2分の範囲の持続時間、例えば1分を有する。これは、安定性の値が評価される時間であり、目標呼吸速度の連続的な変化間の最短の持続時間である。
【0012】
前記適応は、各時間ウィンドウにおいて目標呼吸速度を下げさせる、現在の目標呼吸速度を維持する、又は目標呼吸速度を増加させることさえも可能である。この適応的な方法は、ユーザが快適に従うことができないある特定の呼吸速度にユーザが従うことを強制するのを避けるように、ユーザ経験を向上させる。
【0013】
目標呼吸速度の終了値は、例えば、最良実施例(ベストプラクティス)に従って、例えば、人口調査に基づいて設定される。或いは、ユーザの健康状態及びニーズに応じて設定されることができる。目標呼吸速度が適応される期間は、例えば、5~15分の範囲である。次いで、ステップサイズは、利用可能なステップ数で開始目標呼吸速度から終了目標呼吸速度に到達するのに必要とされるサイズである。例えば、ステップサイズは、(目標呼吸速度の開始値-目標呼吸速度の終了値)/利用可能なステップ数である。一実施形態において、目標呼吸速度の開始値が目標呼吸速度の終了値よりも低い場合(すなわち、ユーザは既にゆっくりした呼吸ペースで呼吸をしている場合)、システムは、システムの実行時間の間、ユーザの開始呼吸速度を常に出力するようにシステムを定義することができる。このような場合、呼吸速度を目標呼吸速度のより高い終了値まで増加させることは望ましくない。
【0014】
適応プロセスは、所定の時間が満了したとき、又はユーザによって手動でオフにされたときに、自動的に終了することができる。所定の時間は、システムの実行時間の一部である、又は前記実行時間と等しいようにすることができる。
【0015】
感知された呼吸速度は、例えば、現在の時間ウィンドウの終わりのような、現在の時間ウィンドウ内の任意の特定の時点における呼吸速度でもよい(しかし、それは同様に、現在の時間ウィンドウにわたる平均の呼吸速度でもよい)。
【0016】
コントローラは、例えば、目標呼吸速度に従うことができることを示す、追従性の尺度が追従性しきい値を下回るとき、次の時間ウィンドウの目標呼吸速度をより低く設定するように構成される。
【0017】
この例において、追従性の尺度の高い値は、上手く従えていない(例えば、大きな分散)ことを示しているが、もちろん、この追従性の尺度は、代わりに、上手く従えることに高い値を有してもよい。
【0018】
例えば、現在の時間ウィンドウの目標呼吸速度を一定量だけ減少させることによって、より低い目標呼吸速度が得られる。これは、簡単に実施できるプロセスを提供する。しかしながら、一定量は、開始目標呼吸速度と終了目標呼吸速度との差に基づいて最初に選択されてもよい。この一定量は、上述したステップサイズに基づいて選択されることができる。
【0019】
コントローラは、例えば、目標呼吸速度に従うことができないことを示す、追従性の尺度が追従性しきい値を上回るとき、
前記変動値、及び/又は
現在の時間ウィンドウにわたる目標呼吸速度とユーザの呼吸速度とがどの程度近いかを表す差分値
に基づいて、次の時間ウィンドウの目標呼吸速度を設定するように構成される。
【0020】
したがって、ユーザが目標呼吸速度に全く従うことができず、ユーザの呼吸速度が依然として減らされる必要がある場合、目標はインテリジェントな方法で適応される。ユーザが目標に従うことができる場合、目標は、上述したように、ある時間ウィンドウから次の時間ウィンドウまでに減らされる。
【0021】
時間ウィンドウにわたる目標呼吸速度とユーザの呼吸速度とがどの程度近いかを表す差分値は、例えば、前記時間ウィンドウにおけるユーザの呼吸速度の最終値と、前記時間ウィンドウにおける目標呼吸速度の値との差分に基づいてもよい。幾つかの実施形態において、この差分値は、目標呼吸速度とユーザの呼吸速度とのどちらがより大きいか又はより小さいかを示すこともできる。
【0022】
コントローラは、例えば、前記差分値が第1のしきい値を上回らず、前記変動値が第2のしきい値を上回らない場合、次の時間ウィンドウの目標呼吸速度を、現在の時間ウィンドウにおける目標呼吸速度と同じに設定するように構成される。
【0023】
したがって、ユーザが目標に正しく従うことができない場合であっても、変動性が低く、差分が小さいため、同じ目標呼吸速度が使用される。したがって、ユーザは、次の時間ウィンドウにおいて目標に従うことができると期待される。
【0024】
コントローラは、現在の時間ウィンドウの目標呼吸速度が前の時間ウィンドウの目標呼吸速度と同じでなかった場合にのみ、次の時間ウィンドウの目標呼吸速度を、このように前記目標呼吸速度と同じに設定するようにさらに構成される。
【0025】
したがって、現在のペース呼吸速度が追加のステップの間続くかどうかに関して追加の決定が行われる。ユーザが現在のステップにおいてペース呼吸速度に従うことができないが、前記差分値が小さく、前記変動性が低い場合(上述したように、ユーザが目標に従うことができていないが、あと少しで従うことができることを意味する)、ユーザは、従うべき別のステップを与えられてもよい。次のステップの間、依然として、ユーザは目標に従うことができないが、前記差分値が小さく、前記変動性が低い(したがって、同じ目標が2回連続している)場合、目標が増加されて、ユーザが従うことをより容易にさせる。
【0026】
したがって、コントローラは、この特定の状況において、
現在の時間ウィンドウの目標呼吸速度が、前の時間ウィンドウの目標呼吸速度と同じではないとき、次の時間ウィンドウの目標呼吸速度を、現在の時間ウィンドウの目標呼吸速度と同じに設定し、及び
現在の時間ウィンドウの目標呼吸速度が、前の時間ウィンドウの目標呼吸速度と同じであるとき、次の時間ウィンドウの目標呼吸速度をより高く設定する
ようにさらに構成される。
【0027】
コントローラは、例えば、前記差分値が第1のしきい値を上回らず、前記変動値が第2のしきい値を上回る場合、次の時間ウィンドウの目標呼吸速度をより高く設定するように構成される。
【0028】
したがって、ユーザが現在の目標呼吸速度を満たすのに近づいているが、低い変動性でこれを達成することができない場合、より高い目標呼吸速度が設定される。
【0029】
コントローラは、前記差分値が第1のしきい値を上回り、ユーザの呼吸速度が現在の時間ウィンドウにおける目標呼吸速度よりも高い場合、次の時間ウィンドウの目標呼吸速度をより高く設定するように構成されてもよい。
【0030】
したがって、ユーザが目標呼吸速度を満たすのには程遠く、呼吸が速すぎて目標を満たせない場合、より高い呼吸速度が設定される。
【0031】
前記より高い目標呼吸速度は、例えば、目標呼吸速度を一定量だけ増加させることによって取得される。これは、目標呼吸速度への簡単な適応を提供する。この一定量は、上述したステップサイズに基づいて選択することができる。
【0032】
コントローラは、追従性の尺度が追従性しきい値を上回り、ユーザの呼吸速度が現在の時間ウィンドウにおける目標呼吸速度を下回るとき、現在のウィンドウにおけるユーザの呼吸速度を、次の時間ウィンドウの目標呼吸速度として設定するように構成される。例えば、現在の時間ウィンドウにおけるユーザの呼吸速度の終了値が、現在のウィンドウにおける上述したユーザの呼吸速度を表すように選択される。したがって、ユーザが目標呼吸速度に従うことができないが、既に目標よりも低い速度で呼吸をしている場合、次の時間ウィンドウの目標は、ユーザの呼吸速度として設定される。これにより、所望の安定したゆっくりした呼吸速度に達するまでの時間が短縮される。これは、既に目標呼吸速度を下回っているユーザの呼吸速度を取り扱う第1の手法である。
【0033】
既に目標呼吸速度を下回っているユーザの呼吸速度を取り扱う第2の手法によれば、コントローラは、前記差分値が第1のしきい値を上回り、ユーザの呼吸速度が現在の時間ウィンドウにおける目標呼吸速度よりも低い場合、現在の時間ウィンドウにおけるユーザの呼吸速度を次の時間ウィンドウの目標呼吸速度として設定するように構成される。例えば、現在の時間ウィンドウにおけるユーザの呼吸速度の終了値が、現在のウィンドウにおける上述したユーザの呼吸速度を表すように選択される。
【0034】
この場合、ユーザは、既に前記目標を大幅に満たし(及び超え)ている。この場合、前記目標は、そのときのユーザの呼吸速度となる。
【0035】
コントローラは、例えば、複数の時間ウィンドウの最初の時間ウィンドウの前の時間期間におけるユーザの少なくとも1つの初期呼吸速度に基づいて、開始目標呼吸速度を設定するように構成される。
【0036】
したがって、開始目標呼吸速度は、ユーザの初期呼吸速度を考慮する。(例えば、12bpmの開始呼吸速度から6bpmの終了呼吸速度までの)一定の段階的に遅くなるプログラムと比較して、これは、ユーザが円滑にペース呼吸プログラムに入るように、より良好に個人化されたユーザ体験を提供する。
【0037】
開始目標呼吸速度は、例えば、
前記時間期間における少なくとも1つの初期呼吸速度の変動が第3のしきい値を下回る場合、前記時間期間における少なくとも1つの初期呼吸速度の平均を開始目標呼吸速度として設定する、又は
前記時間期間における少なくとも1つの初期呼吸速度の変動が第3のしきい値を下回る場合、前記時間期間における最後の初期呼吸速度を開始目標呼吸速度として設定する
ことによって設定される。
【0038】
最初に感知された呼吸速度は、(十分に低い変動性であった)前記時間期間にわたる平均又は前記時間期間の最後の呼吸速度でもよい。
【0039】
コントローラは、例えば、所定の期間内に開始目標呼吸速度から終了目標呼吸速度まで、複数の時間ウィンドウにわたり目標呼吸速度を適応させるように構成され、この目標呼吸速度は、所定の期間の最初の部分中は終了目標呼吸速度に適応し、所定の期間の残りの部分間は終了目標呼吸速度で一定である。
【0040】
例として、前記所定の期間(すなわち、実行時間)は、約10分(例えば、5~20分の範囲)である。呼吸速度の適応は、6分間(最初の部分)にわたり行われてもよく、最後の4分間(残りの部分)は、終了目標呼吸速度でガイドされる呼吸を提供する。
【0041】
或いは、前記所定の期間全体の間、目標呼吸速度が適応される。
【0042】
追従性の尺度は、
ユーザの呼吸速度と目標呼吸速度との平均絶対パーセント差、
平均誤差、
二乗平均平方根誤差、
標準偏差、
平均絶対偏差、
マンハッタン距離、
ユークリッド距離、
相関係数、又は
コサイン類似度
の何れか1つを有することができる。
【0043】
1つの例は、平均絶対パーセント差(MAPD)である。これは、分母でスケーリングすることによって相対的な差を計算する、無単位量である。これは、より速い呼吸とより遅い呼吸との呼吸速度の差が上手くバランスが取られるという利点を有する。
【0044】
本発明は、スローペース呼吸システムを提供し、このシステムは、
現在の目標呼吸速度で呼吸パターンに従うようにユーザにガイダンスを提供するためのアクチュエータと、
呼吸速度センサと、
上に定義されたようなシステムと
を有する。
【0045】
本発明は、ユーザの呼吸をガイドするためのコンピュータ実装方法も提供し、この方法は、
ユーザの呼吸速度を受信するステップと、
開始目標呼吸速度を設定するステップと、
ユーザが現在の時間ウィンドウにおける目標呼吸速度にどの程度従っているかの追従性の尺度に基づいて、次の時間ウィンドウの目標呼吸速度を設定することによって、開始目標呼吸速度から終了目標呼吸速度まで、複数の時間ウィンドウにわたり目標呼吸速度を適応させるステップと
を有する。
【0046】
本発明は、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるとき、上に定義された方法を実施するように適応するコンピュータプログラムコード手段を有するコンピュータプログラムも提供する。
【0047】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかになり、これらを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
本発明をより良く理解するため、及び本発明がどのように実施されるかをより明確に示すために、単なる例として、添付の図面が参照される。
【
図2】
図2は、ある時間ウィンドウにおける目標呼吸速度を制御する方法の第1の例を説明するためのフローチャートである。
【
図3】
図3は、6つの時間ウィンドウを有する一定のペース呼吸プログラムを示す。
【
図4】
図4は、制御アルゴリズムがどのように機能するかの第1の例をグラフで示す。
【
図5】
図5は、制御アルゴリズムがどのように機能するかの第2の例をグラフで示す。
【
図6】
図6は、ある時間ウィンドウにおける目標呼吸速度を制御する方法の第2の例を説明するための、
図2のフローチャートに対する変更例である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明は、図面を参照して説明される。
【0050】
詳細な説明及び特定の例は、装置、システム及び方法の例示的な実施形態を示しているが、これらは、単に例示を目的としたものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではないことを理解されたい。本発明の装置、システム及び方法のこれら及び他の特徴、態様、並びに利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面からより理解されるであろう。図面は単に概略的なものであり、一定の縮尺で描かれていないことを理解されたい。同じ参照番号は、同じ又は類似の部分を示すために、図面全体にわたって使用されることも理解されたい。
【0051】
本発明は、複数の時間ウィンドウにわたりユーザの呼吸をガイドするために使用されるシステム及び方法を提供する。目標呼吸速度は、(i)ユーザが現在の時間ウィンドウにおいて目標呼吸速度にどの程度従っているかの追従性の尺度、及び(ii)現在の時間ウィンドウの間にユーザの呼吸速度がどの程度安定しているかを表す変動値に(少なくとも)基づいて、次の時間ウィンドウの目標呼吸速度を設定することによって、開始目標呼吸速度から終了目標呼吸速度まで、複数の時間ウィンドウにわたり適応される。
【0052】
図1は、現在の目標呼吸速度pbrで呼吸パターンに従うようにユーザにガイダンスを提供するためのアクチュエータ12を有するスローペース呼吸システム10を示す。呼吸速度センサ14は、ユーザの呼吸速度情報ubrを提供する。コントローラ16は、ユーザの呼吸速度情報ubrを受信して、目標呼吸速度pbrで呼吸をするようにユーザをガイドするための刺激を送達するようにアクチュエータ12を制御する。
【0053】
コントローラ16は、ペース呼吸パターンがアクチュエータ12によって生成され、ユーザに出力されるように、ユーザの呼吸速度ubrを処理し、目標呼吸速度pbrをリアルタイムで計算する適応ペース呼吸制御アルゴリズムを実行する。
【0054】
ユーザの呼吸速度を決定するために、このシステムは、ユーザの呼吸信号を測定する。この測定は、例えば、心弾動図に基づくような任意のセンサを使用して、胸部ベルトに組み込まれた圧電式圧力センサを使用して、又は流量検知を使用して行うことができる。呼吸を測定するための任意の適切なセンサを使用することができる。コントローラは、呼吸センサの生センサ信号からユーザの呼吸速度を計算する。
【0055】
アクチュエータは、例えば、エアバッグを有することができる。このエアバッグの表面は、(上下に)うねって呼吸パターンをシミュレートし、ユーザは、その表面に触れてガイダンスに従うことができる。表面が上下に動く量は、アクチュエータ信号の振幅である。別のアクチュエータの例は、目標呼吸速度に従って薄暗い光から明るい光にゆっくりと明滅する光であり、この場合、光強度はアクチュエータ信号の振幅である。別の例は、呼吸パターンを表示するディスプレイ上に示す可視の波形であり、ユーザは、そのガイダンスを観察し、従うことができる。振幅は、異なる目標呼吸速度に対し一定でもよいし、又は振幅は、目標呼吸速度と共に変化してもよい。
【0056】
一例において、システムの目標呼吸速度が低い場合、振幅は比較的高く、周波数は低い。システムの目標呼吸速度が高い場合、振幅は比較的低く、周波数は高い。
【0057】
図2は、ある時間ウィンドウにおける目標呼吸速度を制御する方法を説明するためのフローチャートである。
【0058】
ユーザに出力される目標呼吸速度は、段階的な方法で制御される。したがって、前記システム及び方法は、複数の時間ウィンドウにわたりユーザの呼吸をガイドするためのものであり、各時間ウィンドウは、制御方法における1つのステップを形成する。ある時間ウィンドウの間の呼吸速度の分析は、次の時間ウィンドウの目標呼吸速度を決定するために使用される。時間ウィンドウは、設定可能な期間、例えば60秒を有する。ステップベースの機構は、呼吸速度の測定、及び以下に説明される呼吸速度の分析が安定していることを確認することができる。時間ウィンドウの持続時間にわたり取得される複数の測定値を使用して代表的な情報が得られる。時間ウィンドウは、ユーザがペースガイドされる呼吸の新しい目標呼吸速度に適応するのに十分な時間を有することを可能にする。
【0059】
制御機構ロジックは、ある特定のパラメタに基づいて、段階的に目標呼吸速度を生成する方法を定義する。
【0060】
目標呼吸速度がどのように適応されるかに影響を及ぼすために使用される第1の尺度は、“追従性”の尺度である。この尺度は、ユーザが現在の時間ウィンドウにおける目標呼吸速度にどの程度従うことができるかを示す。
【0061】
追従性の尺度は、特に、目標呼吸速度に従おうと試みる際のユーザの安定性の程度を定量化する。この安定性の程度は、ユーザの呼吸速度のシーケンスとペース呼吸速度のシーケンスとの間の距離として数学的に定義される。
【0062】
原則として、(同じ長さの)2つのベクトルに対して演算し、実数を返すことができる場合、どのような関数も追従性を評価するために使用することができる。一般的に使用される関数は、平均絶対誤差、平均誤差、二乗平均平方根誤差、標準偏差、平均絶対偏差、マンハッタン距離、ユークリッド距離、相関係数又はコサイン類似度の計算を含むことができる。
【0063】
一例は、平均絶対パーセント差(MAPD)である。より具体的には、MAPDは、
【数1】
と計算されることができる。
【0064】
上述したように、pbrは、ペース呼吸法によって設定された現在のウィンドウにおける目標呼吸速度(すなわち、ペース呼吸速度)であるのに対し、ubrは、測定された現在のユーザ呼吸速度である。nは、現在の時間ウィンドウ内で計算されたユーザの呼吸速度の数である。例えば、時間ウィンドウが60秒であり、ユーザの呼吸速度が10秒ごとに計算される場合、nは6である。
【0065】
MAPDは、分母でスケーリングすることによって相対的な差を計算する無単位量である。これは、これは、より速い呼吸とより遅い呼吸との呼吸速度の差が上手くバランスが取られるという利点を有する。
【0066】
MAPDは、現在の時間ウィンドウにわたる目標呼吸速度とユーザの呼吸速度との差分のみを考慮しているが、追従性の尺度の他の実施形態は、現在の時間ウィンドウの間にユーザの呼吸速度がどの程度安定しているか、及び現在の時間ウィンドウにわたる目標呼吸速度との差を考慮することができる。この例において、呼吸速度の差は、時間ウィンドウにわたり合計され、平均化される。
【0067】
追従性の尺度は、新たに測定された呼吸速度が利用可能になるたびに、又は幾つかの新しい値が集められたときのバッチ処理に基づいて更新することができる。一例として、追従性の尺度は、各時間ウィンドウの最後のタイムスタンプの時点で更新することができる。
【0068】
追従性の尺度を決定するために、時間ウィンドウ内の全ての呼吸速度が取得される。追従性(followability)<th0である場合、ユーザはペース呼吸に従うことができると定義されることができ、ここで、th0は、特定の値を有するしきい値であり、事前に定義されることができる。例として、上に定義したようなMAPDを使用する場合、0.2の値を持つth0が選択されることができる。
【0069】
したがって、この定義は、目標呼吸速度に上手く従うことができることに対しては低い値を有し、目標呼吸速度に上手く従うことができないことに対しては高い値を有する。したがって、これは、目標呼吸速度からの偏差の尺度である。もちろん、追従性の尺度は、反対に定義することができ、目標呼吸速度との相関の尺度を有することができる。
【0070】
(目標呼吸速度と比較して、差分abs(pbr-ubr)を導出する)ユーザの現在の呼吸速度ubrは、例えば、平均のような他の尺度が使用されることができたとしても、例えば、現在の時間ウィンドウの終わりに測定される呼吸速度として定義される。平均を使用すると、起こり得るubrの高周波変動に対する感度が低下する。別の例において、現在の呼吸速度ubrは、現在の時間ウィンドウの最後のセグメントのみの呼吸速度の平均、例えば、60秒の時間ウィンドウの最後の10秒にわたる平均である。
【0071】
全体的な追従性の尺度に加えて、現在の時間ウィンドウの間にユーザの呼吸速度がどの程度安定しているかを表す変動値(例えば、標準偏差std(ubr))の別個の決定、及び現在の時間ウィンドウにわたり目標呼吸速度とユーザの呼吸速度とがどの程度近いかを表す差分値(abs(pbr-ubr))の決定がある。加えて、前記差分値は、目標呼吸速度とユーザの呼吸速度とのどちらかがより大きいか又はより小さいかを表すこともできる。
【0072】
前記変動値は、現在の時間ウィンドウの間に測定されたユーザの複数の呼吸速度に基づいている。
【0073】
第1のしきい値th1は、前記差分値と比較するために使用され、第2のしきい値th2は、前記変動値と比較するために使用される。例として、th1を1.5として選択することができ、th2を1.0として選択することができる。
【0074】
この方法はステップ20で開始する。この方法は、各時間ウィンドウ、すなわち、段階的プロセスの各ステップの終わりの瞬間に実行される。この瞬間に、アルゴリズムは、ステップ22において、追従性の尺度が追従性しきい値th0よりも小さいかどうかをチェックする。
【0075】
小さい場合、故に、ユーザは、現在の時間ウィンドウにおける目標呼吸速度に従うことができ、次いで、ステップ23において、次の時間ウィンドウのペース呼吸速度を、pbr_stepだけ減少する。小さくない場合、故に、ユーザは、現在の時間ウィンドウにおける目標呼吸速度に従うことができず、目標呼吸速度の適応は、目標呼吸速度pbr及びユーザの呼吸速度ubrに、特に、変動値std(ubr)及び差分値abs(pbr-ubr)に依存し、上に説明される前記しきい値を利用する。
【0076】
ステップ22において、ユーザが、決定された現在の目標呼吸速度に従うことができないとき、ステップ24において、目標呼吸速度がユーザの呼吸速度を下回るかどうかが決定される。下回る場合、目標呼吸速度にまだ到達しておらず、前記方法はステップ26に進む。
【0077】
ステップ26において、差分値abs(pbr-ubr)が、第1のしきい値th1を上回るかどうかが決定される。この実施形態において、目標呼吸速度とユーザの呼吸速度との差の絶対値が使用される。さらに、目標呼吸速度及びユーザの呼吸速度は、各時間ウィンドウの終わりの時点で収集される。差分値abs(pbr-ubr)が、第1のしきい値th1を上回る場合、ユーザは、目標呼吸速度に従うことができるのには程遠いので、ステップ28において、(従うことをより容易にするために)次の時間ウィンドウの目標呼吸速度が増加される。ステップ28において、次のウィンドウの目標呼吸速度は、pbr_stepだけ増加される。
【0078】
次いで、前記方法は、その時間ウィンドウに対しては終了する。
【0079】
ステップ26において、差分値abs(pbr-ubr)が第1のしきい値th1を上回らないと決定される場合、ユーザは目標呼吸速度に近い。次いで、ステップ30において、変動値std(ubr)が第2のしきい値th2を下回るかどうかが決定される。
【0080】
前記変動値が第2のしきい値th2を下回らない場合、それは、ユーザの呼吸速度が安定していないことを意味するので、ステップ28において、目標呼吸速度が増加される。
【0081】
ステップ30において、前記変動値が第2のしきい値th2を下回ると決定される場合、それは、ユーザの呼吸速度が安定していることを意味する。
【0082】
図2において、ユーザが現在の時間ウィンドウにおいてペース呼吸速度に従うことができず、差分値abs(pbr-ubr)が第1のしきい値th1よりも小さく(ステップ26及びステップ40)、変動値std(ubr)が第2のしきい値th2よりも小さいとき(ステップ30及びステップ43)、追加の変数“extra_mark”を使用して、現在のペース呼吸速度が追加のステップの間続けられるかどうかを決定する。これは、ユーザが目標に従うことはできないが、従うことができる状態にかなり近いことを意味する。次いで、この方法は、同じ目標呼吸速度に従うための別の時間ウィンドウをユーザに与える。
【0083】
この特徴を実装するために、最初にシステムがオンになるとき、extra_markの値は1である。以下に明らかなように、本方法の幾つかのステップにおいて、前記値は1にリセットされることもある。
【0084】
ステップ32において、マーカーが1に設定されているかどうかがチェックされる。1に設定されている場合、ステップ34においてマーカーは0にリセットされ、次に、ステップ36において、次の時間ウィンドウの目標呼吸速度は、現在の時間ウィンドウにおける値と同じ値に維持される。パラメタextra_markを0にリセットすることによって、次の時間ウィンドウにおいて、前記プロセスが再びステップ32に到達する(したがって、現在の時間ウィンドウと同じシナリオの下で、ユーザは依然として目標呼吸速度に従うことができない)場合、方法は、ステップ38において、次の時間ウィンドウの目標呼吸速度pbrをpbr_stepだけ増加させて、目標呼吸速度に従いやすくする。そして、ステップ38において、extra_markは1にリセットされる。
【0085】
他の全ての状況において、(ステップ23、28、及び42において)extra_markの値は1にリセットされる。したがって、方法がステップ32に到達せず、前の時間ウィンドウにおける目標呼吸速度と比較して、現在の時間ウィンドウの目標呼吸速度が変更されないままであると決定されなかった場合、現在の時間ウィンドウにおいて、前記方法がステップ32に到達する(ユーザは、目標呼吸速度に従うことができないが、前記差分値及び前記変動値の両方に関して、従うことができる状態にかなり近い)たびに、ユーザは、現在の時間ウィンドウにおいて、前記目標呼吸速度に対する追従性の尺度を達成するための第2の機会が与えられる。そうではなく、方法がステップ32に到達し、前の時間ウィンドウにおける目標呼吸速度と比較して、現在の時間ウィンドウの目標呼吸速度は変更されていないと決定した場合、現在の時間ウィンドウにおいて、前記方法がステップ32に到達する(ユーザは、目標呼吸速度に従うことができないが、前記差分値及び前記変動値の両方に関して、従うことができる状態にかなり近い)たびに、ユーザは、現在の時間ウィンドウにおいて、目標呼吸速度に対する追従性の尺度を達成するためのさらなる機会を与えられない。代わりに、次の時間ウィンドウに対する目標呼吸速度pbrは、pbr_stepだけ増加され、ユーザが目標に従いやすくなる。
【0086】
ユーザが、(ステップ36において)pbrの1回目の繰り返しの後に追従性の尺度を満たす場合、次のステップにおいて、前記方法はステップ23への経路を辿り、パラメタextra_markを値1にリセットする。
【0087】
ユーザの呼吸速度は、既に目標より低い可能性がある。ステップ24において、目標呼吸速度がユーザの呼吸速度よりも低くない場合、方法はステップ40に進む。
【0088】
ステップ40において、差分値が第1のしきい値th1と比較される。この差分値が第1のしきい値th1よりも大きい場合、これは、ユーザが目標呼吸速度に従うことができず、さらに、ユーザの呼吸速度は目標呼吸速度よりもかなり低いことを意味する。この場合、ステップ42において、次の時間ウィンドウの目標呼吸速度が、実際のユーザの呼吸速度に等しく設定される。例えば、現在の時間ウィンドウにおけるユーザの呼吸速度の最終値が、現在のウィンドウにおける上述した実際のユーザの呼吸速度を表すように選択される。
【0089】
ユーザの呼吸速度が(ステップ24で決定されたように)低すぎるが、(ステップ40で決定されたように)少量である場合、ステップ43において、変動値が分析される。
【0090】
ステップ43において、変動性が高い(第2のしきい値th2を下回らない)場合、これは、ユーザが目標呼吸速度に従うことができず、不安定な呼吸をしていることを意味する。このような場合、ステップ44において、目標呼吸速度が増加される。
【0091】
ステップ42及び44において、パラメタ“extra_mark”は1にリセットされる。
【0092】
ステップ43において、変動性が低い(第2のしきい値th2を下回る)場合、これは、ユーザが目標呼吸速度に従うことができないが、目標呼吸速度のすぐ下の呼吸速度で安定した呼吸をしていることを意味する。このような場合、方法はステップ32に進む。前記方法がステップ32に到達せず、現在の時間ウィンドウと前の時間ウィンドウとの間で目標呼吸速度を変更されないままであると決定されなかった場合(ユーザが目標呼吸速度に従うことはできないが、目標呼吸速度のすぐ下の呼吸速度で安定した呼吸速度をしている場合)、ステップ36において、次の時間ウィンドウの目標呼吸速度は一定に保たれる。そうでなければ、ステップ38において、次の時間ウィンドウの目標呼吸速度は、pbr_stepだけ増加される。
【0093】
次いで、ステップ26、30、32、34、36及び38に関して上述した説明が適用される。
【0094】
この方法の主な手法は、より高い呼吸速度からより低い呼吸速度に従うようにユーザの呼吸を制御するために前記ユーザを助けることである。ユーザ体験を向上させるために、ユーザが(追従性の尺度による)目標呼吸速度に従うことができない場合、目標呼吸速度が増加される。
【0095】
ユーザの呼吸速度が目標呼吸速度よりも低いという上述したシナリオでは、前記差分値はしきい値よりも小さいが、ユーザが呼吸速度に従っていない場合、ユーザの呼吸速度が目標速度の周り変動している可能性がある。前記方法は、最初に目標呼吸速度を増加させて、ユーザが従うことができることを確認し、次いで、前記方法は、目標呼吸速度を減少させる。これら2つの速度間の差がしきい値よりも大きい場合、このかなり低いユーザの呼吸速度は、ユーザが高い確率でこの速度で呼吸をすることができることを示しているので、解決策は、ユーザの呼吸速度として目標呼吸速度を設定する。
【0096】
別の選択肢は、
図6に示されるように、ユーザの呼吸速度が目標呼吸速度よりも低く、ユーザは現在の時間ウィンドウにおける目標呼吸速度に従うことができない場合、次の時間ウィンドウの目標呼吸速度をユーザの呼吸速度に等しく設定することである。
【0097】
(システムをオンにした後の)最初の時間ウィンドウに対し、前記システムは、ある例において、標準的な開始目標呼吸速度を適用することができる。しかしながら、より好ましくは、ユーザの呼吸速度が安定しているかどうかを決定するために、ユーザの呼吸速度が連続的に測定される。これは、最初の時間期間にわたる変動値を使用して決定することができる。この時間期間にわたり計算された変動値(例えば、分散又は標準偏差)が、所定のしきい値(例えば、th2と同じ又は異なる第3のしきい値th3)よりも小さい場合、呼吸速度がペース呼吸の開始値として記憶される。
【0098】
(最初の呼吸速度を評価するための)最初の時間期間は、時間ウィンドウの持続時間と同じでもよいし、又は異なってもよい。安定した値が得られるまで、複数の時間期間が分析されてもよい。
【0099】
開始目標値は、安定した時間期間におけるユーザの呼吸速度の平均値、又は安定した時間期間の最終値として計算することができる。
【0100】
次いで、システムは、第1のステップにおいて、開始目標呼吸速度でのペース呼吸パターンの出力を開始する。次いで、この方法は、上述したような方法に従う。
【0101】
ペース呼吸速度の上限及び下限は、次の時間ウィンドウのための出力を行う前に設定され、チェックされる。例えば、下限値は、5bpmとすることができ、計算された新しい目標呼吸速度が5bpmより低くなっても、ロジックは5bpmを出力する。
【0102】
システムは、制御ロジックのためのパラメタを設定することを可能にするためのユーザインターフェースを有することができる。これらパラメタは、上記の方法で使用される全てのパラメタを含むことができる、又は特定の実現例における要件に応じて、サブセットのみが設定可能とすることができる。
【0103】
呼吸速度の適応制御は、ユーザによって有効又は無効にされる機能である。例えば、ユーザはパラメタ“適応”を設定することができる。Trueに設定すると、適応制御ロジックが有効になる。Falseに設定すると、アルゴリズムは、開始呼吸速度から終了呼吸速度まで、従来のペース呼吸プログラムを段階的に出力する。
【0104】
ユーザによって設定される他のパラメタは、
実行時間:ペース呼吸プログラムの時間
システムは、この実行時間がこの値に到達すると、目標呼吸速度の適応又は処理を停止する。一実施形態において、目標呼吸速度は、この実行時間の最初の部分の間に適応され、この実行時間の残りの部分の間は終了目標呼吸速度で一定である。或いは、目標呼吸速度が実行時間全体の間に適応される。
時間ウィンドウ、すなわちステップ時間:ある特定の呼吸速度を持つ各ステップの時間
ステップ数:開始目標呼吸速度から終了目標呼吸速度までのステップの数(すなわち、時間ウィンドウ)
である。
【0105】
開始目標呼吸速度の個別化した設定が有効又は無効にされてもよい。例えば、ユーザは、パラメタ“Start follow”を設定することができる。Trueに設定されている場合、プログラムを開始する前に、ユーザの呼吸速度が測定され、開始目標呼吸速度として自動的に設定される。Falseに設定されている場合、開始呼吸速度はデフォルトの開始値に等しくなる。
【0106】
このデフォルトの開始値は、ユーザによって設定されてもよい。
【0107】
終了目標呼吸速度は、ユーザの健康状態及び特定のニーズに従って、ユーザによって設定されてもよい。或いは、終了目標呼吸速度が、人口調査に基づいて、理想的な快適呼吸速度に設定される。
【0108】
ユーザは、パラメタ“Finish follow”を設定することもできる。Trueに設定されている場合、終了目標呼吸速度は、開始目標呼吸速度に終了パーセント値を掛けた値に等しくなる。Falseの場合、終了呼吸速度はデフォルトの終了値に等しくなる。
【0109】
この終了パーセント値及びデフォルトの終了値は、ユーザによって設定されてもよい。
【0110】
ステップサイズ:各時間ウィンドウにおける呼吸速度の振幅調整
ステップサイズ=(開始目標呼吸速度-目標呼吸速度の終了値)/ステップ数
【0111】
Pbr_stepは、
図2の時間ウィンドウにおける目標呼吸速度の増加/減少量である。これは、ステップサイズとして設定されることができる。
【0112】
他の設定可能なパラメタは、
呼気/吸気比:吸気相に対する呼気相の時間の比
振幅開始値:開始目標呼吸速度で生成された呼吸サイクルの振幅
振幅終了値:終了目標呼吸速度で生成された呼吸サイクルの振幅
吸気ホールド:吸気後の保持時間
呼気ホールド:呼気後の保持時間
Th1値:差分値のしきい値
Th2値:変動値のしきい値
とすることができる。
【0113】
次に、本発明の制御手法と、(一定の開始目標呼吸速度で、追従性の尺度がない)標準的なペース呼吸手法との違いを示す。
【0114】
図3は、12bpmの開始目標呼吸速度及び6bpmの終了目標呼吸速度を用いた6つの時間ウィンドウを有する一定のペース呼吸プログラムを示す。振幅は、12bpmでの0.6から、6bpmでの1に増加する。12bpmは、通常の生活において典型的なユーザの呼吸速度である。6bpmは、ユーザが非常にリラックスしたと感じたときの呼吸速度である。図において、0.6の振幅は、最大振幅の60%が使用されることを意味し、例えば、1は、最大振幅の100%が使用されることを意味する。上の画像は、経時的なアクチュエータ信号を(振幅対時間として)示し、下のグラフは、この経時的なアクチュエータ信号によって符号化された目標呼吸速度を示す。
【0115】
ユーザのシミュレーションモデルを用いて、追従性の尺度、異なる呼吸速度をシミュレーションした。
【0116】
図4は、目標呼吸速度pbr(実線)とユーザの呼吸速度ubr(破線)とを示す。右から左への矢印は、
(i)目標呼吸速度が増加する(ユーザは従うことができなかった)
(ii)同じ目標呼吸速度を持つ追加のステップが適用される(ユーザは従うことができなかったが、差異及び変動性に関しては近かった)。アルゴリズムは、ユーザが従うことを続けさせるために、前のステップと同じ目標呼吸速度の別の1分を与える。
(iii)目標呼吸速度は、(ユーザが目標よりも低い速度で呼吸しているため)ユーザの呼吸速度に設定される。アルゴリズムは、ペース呼吸を容易にするために、ユーザの呼吸速度を使用して、ユーザ体験を向上させる一方、終了呼吸速度に到達するための速度を加速する。
【0117】
これらの検証事例は、制御アルゴリズム実装の精度を示し、これは、ユーザが目標呼吸速度の変化により快適になるのを助ける。
【0118】
図5は、ペース呼吸プログラム中のユーザの呼吸速度ubr及び目標呼吸速度pbrを示す実環境のテストケースに基づいて、制御アルゴリズムがどのように機能するかの別の例を示す。目標呼吸速度は、適応ロジックに従って増加又は減少する。
【0119】
ユーザは、最初に、制御アルゴリズムによって生成された呼吸速度及びパターンに従うことができるので、出力される呼吸速度は、徐々に遅くなる。矢印によって示される第5のステップにおいて、ユーザは、もはや従うことができないので、次のステップのために、制御アルゴリズムは、生成された呼吸パターンの呼吸速度を増加させる。
【0120】
図3~
図5の時間ウィンドウは、60秒の持続時間を有するが、これは、単に一例である。
【0121】
図6は、
図2の方法の代替例を示す。ユーザの呼吸速度が既に目標呼吸速度よりも低い場合に辿るステップが単純化される。特に、
図2のステップ40、42、43、及び44は、単一のステップ60に置き換えられ、それによって、ユーザの呼吸速度が既に目標呼吸速度に等しい、又はそれよりも低い場合、目標呼吸速数は、ユーザの呼吸速度に等しく設定される。例えば、現在の時間ウィンドウにおけるユーザの呼吸速度の終了値は、上述したユーザの呼吸速度を表すように選択される。その他のステップは、
図2と同じである。
【0122】
本発明は、ユーザの呼吸パターンに適応したガイド付き呼吸パターンを出力するペース呼吸システムを可能にする。これは、ペース呼吸運動に対するユーザ体験及びコンプライアンスを向上させ、その結果、入眠効果を改善する。
【0123】
前記手法は個別化される。例えば、ペース呼吸プログラムを開始する前に、ユーザの呼吸速度は、任意選択で測定され、上述したように開始目標呼吸速度を設定するために使用される。これにより、ユーザは、ユーザにとって速すぎる又は遅すぎる呼吸速度にジャンプすることなく、スムーズにペース呼吸プログラムに入ることができる。
【0124】
この手法は、アルゴリズムがユーザの呼吸速度を測定し、ユーザがペース呼吸プログラムによって生成された現在の出力される呼吸速度に従うことができるかどうかを決定するための追従性の尺度を計算するという点で適応的もある。この適応的方法は、ユーザが従うことができないある特定の呼吸速度にユーザが従うよう強制することを回避し、ユーザ体験を向上させる。
【0125】
幾つかの実施形態において、同じ呼吸速度を有する呼吸パターンは、ある期間、例えば60秒間保持され、ユーザに新しい呼吸速度に適応するための時間を与え、ユーザの呼吸速度を取得し、追従性の尺度を計算する時間を与える。
【0126】
開示された実施形態に対する変形例は、図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲の検討から、特許請求された発明を実施する際に当業者によって理解され、実施されることができる。請求項において、“有する”という用語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、複数あることを述べてなくても、それらが複数あることを排除するものではない。
【0127】
プロセッサによって実施される機能は、単一のプロセッサによって、又は“プロセッサ”を構成するとみなされる複数の別個の処理ユニットによって実行されることができる。そのような処理ユニットは、幾つかの場合は、互いに遠隔にあり、有線又は無線方式で互いに通信することができる。
【0128】
特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。
【0129】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に、又はその一部として供給される、例えば光記憶媒体又はソリッドステート媒体のような適切な媒体上に記憶/配布されることができるが、例えばインターネット又は他の有線若しくは無線電気通信システムを介してのような他の形態で配布されることもできる。
【0130】
“に適応する”という用語が請求項又は明細書に用いられる場合、“に適応する”という用語は、“ように構成される”と言う用語と同様であることを意味する。“装置”という用語が特許請求の範囲又は説明に使用される場合、“装置”という用語は、“システム”という用語と等価であることが意図され、逆もまた同様である。
【0131】
請求項における如何なる参照符号も、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【国際調査報告】