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特表2025-531719鎌状赤血球症の治療のための融合ポリペプチドの投薬及び投与
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  • 特表-鎌状赤血球症の治療のための融合ポリペプチドの投薬及び投与 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-09-25
(54)【発明の名称】鎌状赤血球症の治療のための融合ポリペプチドの投薬及び投与
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20250917BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20250917BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20250917BHJP
   A61K 31/17 20060101ALI20250917BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250917BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20250917BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20250917BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20250917BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20250917BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20250917BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20250917BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20250917BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P7/00 ZNA
A61P7/06
A61K31/17
A61P43/00 121
A61K47/64
C07K16/18
C07K16/46
C07K7/08
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2025512722
(86)(22)【出願日】2023-08-31
(85)【翻訳文提出日】2025-04-18
(86)【国際出願番号】 US2023031615
(87)【国際公開番号】W WO2024049951
(87)【国際公開日】2024-03-07
(31)【優先権主張番号】63/374,154
(32)【優先日】2022-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/529,928
(32)【優先日】2023-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503102674
【氏名又は名称】アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ダイ, ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ナジャフィアン, ネーダー
(72)【発明者】
【氏名】ガスタイガー, クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】シェン, トン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB16
4C076CC14
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG04
4C206AA01
4C206HA26
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA37
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZA51
4C206ZA55
4C206ZC51
4C206ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、鎌状赤血球症を有するヒト患者を治療する方法を提供する。これらの方法は、プロペルジン結合抗体又はその抗原結合断片を患者に投与することを含む。第1の態様では、本開示は、鎌状赤血球症を有するヒト患者を治療する方法であって、プロペルジン結合抗体又はその抗原結合断片を患者に投与することを含み、プロペルジン結合抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号2、3及び4に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鎌状赤血球症を有するヒト患者を治療する方法であって、プロペルジン結合抗体又はその抗原結合断片を前記患者に投与することを含み、前記プロペルジン結合抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号2、3及び4に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、方法。
【請求項2】
前記抗体又はその抗原結合断片は、ヒト血清アルブミン結合配列を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒト血清アルブミン結合配列は、前記プロペルジン結合抗体又はその抗原結合断片のC末端に融合される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒト血清アルブミン結合配列は、前記プロペルジン結合抗体又はその抗原結合断片のC末端にリンカーによって融合される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記リンカーは、配列番号10のアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒト血清アルブミン結合配列は、配列番号5、6及び7に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1の配列又はその修飾を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記修飾は、配列番号1の配列のN末端グルタミンのピログルタミン酸への変換を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体又は前記その抗原結合断片は、前記患者に300mgの用量で投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体又は前記その抗原結合断片は、前記患者に毎週投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体又は前記その抗原結合断片は、前記患者に最大で12週間にわたって投与される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体又は前記その抗原結合断片は、前記患者に2週間毎に1回投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体又は前記その抗原結合断片は、最大で4回投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体又は前記その抗原結合断片は、前記患者に600mgの用量で投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体又は前記その抗原結合断片は、前記患者に4週間毎に投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体又は前記その抗原結合断片は、前記患者に最大で4回投与される、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
鎌状赤血球症を有するヒト患者を治療する方法であって、プロペルジン結合抗体又はその抗原結合断片を前記患者に投与することを含み、前記プロペルジン結合抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1の配列又はその修飾を含み、前記抗体又は前記その抗原結合断片は、前記患者に毎週300mgの用量で最大で12週間にわたって投与される、方法。
【請求項18】
鎌状赤血球症を有するヒト患者を治療する方法であって、プロペルジン結合抗体又はその抗原結合断片を前記患者に投与することを含み、前記プロペルジン結合抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1の配列又はその修飾を含み、前記抗体又は前記その抗原結合断片は、前記患者に2週間毎に300mgの用量で最大で4回投与される、方法。
【請求項19】
鎌状赤血球症を有するヒト患者を治療する方法であって、プロペルジン結合抗体又はその抗原結合断片を前記患者に投与することを含み、前記プロペルジン結合抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1の配列又はその修飾を含み、前記抗体又は前記その抗原結合断片は、前記患者に4週間毎に600mgの用量で最大で4回投与される、方法。
【請求項20】
前記修飾は、配列番号1の配列のN末端グルタミンのピログルタミン酸への変換を含む、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記患者は、鎌状赤血球症を有すると臨床的に診断されている、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記鎌状赤血球症は、HbSS又はHbSβ-サラセミアである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記患者は、ヒドロキシ尿素を更に投与される、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記患者は、前記抗体又は前記その抗原結合断片の投与前の少なくとも3ヶ月間にわたり、安定用量のヒドロキシ尿素を受けている、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記患者は、前記抗体又は前記その抗原結合断片の投与前の少なくとも30日間にわたり、ヒドロキシ尿素を投与されていない、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記患者は、治療の12週間後に治療下で発現した有害事象を経験しない、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記患者は、治療の12週間後に重篤な有害事象を経験しない、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記患者は、治療の12週間後に有害事象を経験しない、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
治療開始後の最大で30週間にわたり、前記抗体又はその抗原結合断片の血清濃度の変化を測定することを更に含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
治療開始後の最大で30週間にわたり、抗薬物抗体の血中濃度の変化を測定することを更に含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記患者は、治療の最大で30週間後、総プロペルジン及び遊離プロペルジンの血清濃度におけるベースラインからの変化を経験する、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記患者は、治療の12週間後、補体成分Ba(Ba)、補体成分C3a(C3a)又は可溶性補体成分C5B-9(sC5B9)の血清濃度におけるベースラインからの変化を経験する、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記患者は、治療の12週間後、ヘモペキシン、一酸化窒素、炎症マーカー又は細胞接着マーカーの血中濃度又は血清濃度におけるベースラインからの変化を経験する、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記炎症マーカーは、インターロイキン-1を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞接着マーカーは、可溶性P-セレクチンを含む、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
前記患者は、治療の12週間後、ヘモグロビンレベルにおけるベースラインからの変化を経験する、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記患者は、12週間後、血清LDHレベル、間接ビリルビン、ハプトグロビン又はヘモペキシンにおけるベースラインからの変化を経験する、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記患者は、12週間後、網状赤血球レベルにおけるベースラインからの変化を経験する、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記患者は、治療の12週間後、ベースラインと比較して血管閉塞性発症の速度の低下を経験する、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記患者は、治療の12週間後、ベースラインと比較して最初の血管閉塞性発症までの時間の増加を経験する、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記抗体又はその抗原結合断片は、皮下投与のために製剤化される、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記抗体又はその抗原結合断片は、20nMの酢酸ナトリウム、250mMのスクロース及び0.05%のポリソルベート-80を含む水溶液中に150mg/mLの濃度で5.4のpHにおいて製剤化される、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記ヒト患者は、18~65歳の年齢である、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記ヒト患者は、≧40kgの体重を有する、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
配列表
本願は、XML形式で電子的に提出されており、且つその全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含む。2023年8月25日に作成された前記XMLコピーは、51196-032WO3_Sequence_Listing_8_25_23という名称であり、サイズが50,329バイトである。
【0002】
鎌状赤血球症(SCD)は、世界中で最も一般的な単一遺伝子疾患である。いくつかの形態では、疾患は、βグロビン遺伝子における変異、例えばβグロビン遺伝子における単一ヌクレオチド変異によって引き起こされ、6位でバリンによるグルタミン酸置換をもたらし、この遺伝子は、ベータサラセミア(BT)を引き起こす原因でもある。疾患の根底にある原因が広範に認識されているにもかかわらず、SCD症状を制御するために利用可能な治療選択肢はほとんどない。SCDの2つの主な症状である貧血及び血管閉塞性発症(VOC)は、SCD患者の死亡率、罹患率及び生活の質に影響を及ぼす。SCD患者には、ヒドロキシ尿素及びL-グルタミンという2つの承認された治療選択肢があるが、それらは、一般に、疾患症状を減弱させるのに最適ではないと考えられている。したがって、新規な治療が当技術分野で必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
第1の態様では、本開示は、鎌状赤血球症を有するヒト患者を治療する方法であって、プロペルジン結合抗体又はその抗原結合断片を患者に投与することを含み、プロペルジン結合抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号2、3及び4に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、ヒト血清アルブミン結合配列を更に含む。いくつかの実施形態では、ヒト血清アルブミン結合配列は、プロペルジン結合抗体又はその抗原結合断片のC末端に融合される。いくつかの実施形態では、ヒト血清アルブミン結合配列は、プロペルジン結合抗体又はその抗原結合断片のC末端にリンカーによって融合される。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号10のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒト血清アルブミン結合配列は、配列番号5、6及び7に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1の配列又はその修飾を含む。いくつかの実施形態では、修飾は、配列番号1の配列のN末端グルタミンのピログルタミン酸への変換を含む。
【0004】
いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、患者に300mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、患者に毎週投与される。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、患者に最大で13週間(例えば、12週間)にわたって投与される。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、患者に2週間毎に1回投与される。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、最大で4回投与される。
【0005】
いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、患者に600mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、患者に4週間毎に投与される。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、患者に最大で4回投与される。
【0006】
いくつかの実施形態では、患者は、鎌状赤血球症と臨床的に診断されている。いくつかの実施形態では、鎌状赤血球症は、HbSS又はHbSβサラセミアである。いくつかの実施形態では、患者は、ヒドロキシ尿素を更に投与される。いくつかの実施形態では、患者は、抗体又はその抗原結合断片の投与前の少なくとも3ヶ月間にわたり、安定用量のヒドロキシ尿素を受けている。いくつかの実施形態では、患者は、抗体又はその抗原結合断片の投与前の少なくとも30日間にわたり、ヒドロキシ尿素を投与されていない。
【0007】
いくつかの実施形態では、患者は、治療の12週間後に治療下で発現した有害事象を経験しない。いくつかの実施形態では、患者は、治療の12週間後に重篤な有害事象を経験しない。いくつかの実施形態では、患者は、治療の12週間後に有害事象を経験しない。
【0008】
いくつかの実施形態では、方法は、治療開始後の最大で30週間にわたり、抗体又はその抗原結合断片の血清濃度の変化を更に測定することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、治療開始後の最大で30週間にわたり、抗薬物抗体の血中濃度の変化を測定することを更に含む。いくつかの実施形態では、患者は、治療の最大で30週間後、総プロペルジン及び遊離プロペルジンの血清濃度におけるベースラインからの変化を経験する。
【0009】
いくつかの実施形態では、患者は、治療の12週間後、補体成分Ba(Ba)、補体成分C3a(C3a)又は可溶性補体成分C5B-9(sC5B9)の血清濃度におけるベースラインからの変化を経験する。いくつかの実施形態では、患者は、治療の12週間後、ヘモペキシン、一酸化窒素、炎症マーカー又は細胞接着マーカーの血中濃度又は血清濃度におけるベースラインからの変化を経験する。いくつかの実施形態では、炎症マーカーは、インターロイキン-1を含む。いくつかの実施形態では、細胞接着マーカーは、可溶性P-セレクチンを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、患者は、治療の12週間後、ヘモグロビンレベルにおけるベースラインからの変化を経験する。いくつかの実施形態では、患者は、12週間後、血清LDHレベル、間接ビリルビン、ハプトグロビン又はヘモペキシンにおけるベースラインからの変化を経験する。いくつかの実施形態では、患者は、12週間後、網状赤血球レベルにおけるベースラインから変化を経験する。
【0011】
いくつかの実施形態では、患者は、治療の12週間後、ベースラインと比較して血管閉塞性発症の速度の低下を経験する。いくつかの実施形態では、患者は、治療の12週間後、ベースラインと比較して最初の血管閉塞性発症までの時間の増加を経験する。
【0012】
いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、皮下投与のために製剤化される。
【0013】
いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、20nMの酢酸ナトリウム、250mMのスクロース及び0.05%のポリソルベート-80を含む水溶液中に150mg/mLの濃度で5.4のpHにおいて製剤化される。いくつかの実施形態では、ヒト患者は、18歳~65歳の年齢である。いくつかの実施形態では、ヒト患者は、≧40kgの体重を有する。
【0014】
別の態様では、本開示は、鎌状赤血球症を有するヒト患者を治療する際に使用するための抗体又はその抗原結合断片を提供し、その使用は、プロペルジン結合抗体又はその抗原結合断片を患者に投与することを含み、プロペルジン結合抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号2、3及び4に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む。いくつかの実施形態では、鎌状赤血球症を有するヒト患者を治療する際に使用するための抗体又はその抗原結合断片は、ヒト血清アルブミン結合配列を更に含む。いくつかの実施形態では、ヒト血清アルブミン結合配列は、プロペルジン結合抗体又はその抗原結合断片のC末端に融合される。いくつかの実施形態では、ヒト血清アルブミン結合配列は、プロペルジン結合抗体又はその抗原結合断片のC末端にリンカーによって融合される。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号10のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒト血清アルブミン結合配列において、配列番号5、6及び7に記載されるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む。いくつかの実施形態では、鎌状赤血球症を有するヒト患者を治療する際に使用するための抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1の配列又はその修飾を含む。いくつかの実施形態では、修飾は、配列番号1の配列のN末端グルタミンのピログルタミン酸への変換を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、鎌状赤血球症を有するヒト患者を治療する際に使用するための抗体又はその抗原結合断片は、患者に300mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、鎌状赤血球症を有するヒト患者を治療する際に使用するための抗体又はその抗原結合断片は、患者に毎週投与される。いくつかの実施形態では、鎌状赤血球症を有するヒト患者を治療する際に使用するための抗体又はその抗原結合断片は、患者に最大で13週間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、鎌状赤血球症を有するヒト患者を治療する際に使用するための抗体又はその抗原結合断片は、患者に2週間毎に1回投与される。いくつかの実施形態では、鎌状赤血球症を有するヒト患者を治療する際に使用するための抗体又はその抗原結合断片は、最大で4回投与される。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、患者に600mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、鎌状赤血球症を有するヒト患者を治療する際に使用するための抗体又はその抗原結合断片は、患者に4週間毎に投与される。いくつかの実施形態では、鎌状赤血球症を有するヒト患者を治療する際に使用するための抗体又はその抗原結合断片は、患者に最大で4回投与される。いくつかの実施形態では、患者は、鎌状赤血球症と臨床的に診断されている。いくつかの実施形態では、鎌状赤血球症は、HbSS又はHbSβサラセミアである。いくつかの実施形態では、患者は、ヒドロキシ尿素を更に投与される。いくつかの実施形態では、患者は、抗体又はその抗原結合断片の投与前の少なくとも3ヶ月間にわたり、安定用量のヒドロキシ尿素を受けている。いくつかの実施形態では、患者は、抗体又はその抗原結合断片の投与前の少なくとも30日間にわたり、ヒドロキシ尿素を投与されていない。いくつかの実施形態では、患者は、治療の12週間後に治療下で発現した有害事象を経験しない。いくつかの実施形態では、患者は、治療の12週間後に重篤な有害事象を経験しない。いくつかの実施形態では、患者は、治療の12週間後に有害事象を経験しない。いくつかの実施形態では、方法は、治療開始後の最大で30週間にわたり、抗体又はその抗原結合断片の血清濃度の変化を測定することを更に含む。いくつかの実施形態では、方法は、治療開始後の最大で30週間にわたり、抗薬物抗体の血中濃度の変化を測定することを更に含む。いくつかの実施形態では、患者は、治療の最大で30週間後、総プロペルジン及び遊離プロペルジンの血清濃度におけるベースラインからの変化を経験する。いくつかの実施形態では、患者は、治療の12週間後、補体成分Ba(Ba)、補体成分C3a(C3a)又は可溶性補体成分C5B-9(sC5B9)の血清濃度におけるベースラインからの変化を経験する。いくつかの実施形態では、患者は、治療の12週間後、ヘモペキシン、一酸化窒素、炎症マーカー又は細胞接着マーカーの血中濃度又は血清濃度におけるベースラインからの変化を経験する。いくつかの実施形態では、炎症マーカーは、インターロイキン-1を含む。いくつかの実施形態では、細胞接着マーカーは、可溶性P-セレクチンを含む。いくつかの実施形態では、患者は、治療の12週間後、ヘモグロビンレベルにおけるベースラインからの変化を経験する。いくつかの実施形態では、患者は、12週間後、血清LDHレベル、間接ビリルビン、ハプトグロビン又はヘモペキシンにおけるベースラインからの変化を経験する。いくつかの実施形態では、患者は、12週間後、網状赤血球レベルにおけるベースラインからの変化を経験する。いくつかの実施形態では、患者は、治療の12週間後、ベースラインと比較して血管閉塞性発症の速度の低下を経験する。いくつかの実施形態では、患者は、治療の12週間後、ベースラインと比較して最初の血管閉塞性発症までの時間の増加を経験する。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、皮下投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、20nMの酢酸ナトリウム、250mMのスクロース及び0.05%のポリソルベート-80を含む水溶液中に150mg/mLの濃度で5.4のpHにおいて製剤化される。いくつかの実施形態では、ヒト患者は、18歳~65歳の年齢である。いくつかの実施形態では、ヒト患者は、≧40kgの体重を有する。
【0016】
文脈上明らかにそうでないことが示唆されない限り、あらゆる実施形態を組み合わせることができる。文脈上明らかにそうでないことが示唆されない限り、あらゆる実施形態を本発明のあらゆる態様に適用することができる。
【0017】
以下の特定の実施形態の更に詳細な説明及び特許請求の範囲から、本発明の具体的な好ましい実施形態が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1に提示される試験の概略図である。
図2】実施例2に提示される試験の概略図である。
図3】実施例2に記載の各コホートについての平均血清補体活性経路を経時的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
本開示の理解を促進するために、複数の用語が下記に定義される。本明細書で定義される用語は、本開示に関連する分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」などの用語は、単数の実体のみを指すことを意図するものではなく、具体的な例が例示のために使用され得る一般的な分類を含む。本明細書における専門用語は、具体的な実施形態を説明するために使用されるが、特許請求の範囲に概説される場合を除き、それらの使用は、本開示を限定するものではない。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、記載される値の10%を上回るか又は下回る範囲内の値を指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、ある範囲の値で提供される任意の値は、上限及び下限の両方並びに上限及び下限内に含まれる任意の値を含む。
【0022】
本明細書で言及される用語「抗体」は、全抗体及び任意の抗原結合断片(すなわち「抗原結合部分」)又はその一本鎖形態を含む。「抗体」は、好ましい一実施形態では、ジスルフィド結合によって相互連結する、少なくとも2本の重鎖(H)と2本の軽鎖(L)とを含む糖タンパク質又はその抗原結合部分を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVと略記される)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、CH1、CH2及びCH3の3つのドメインから構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVと略記される)及び軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、CLの1つのドメインから構成される。V及びV領域は、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域に更に細分化することができ、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存された領域がその中に散在する。各V及びVは、3つのCDR及び4つのFRから構成され、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端に配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1の成分(Clq)を含む宿主の組織又は因子への、免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0023】
本明細書で使用される場合、「有効な治療」は、有益な効果、例えば疾患又は障害の少なくとも1つの症状の改善をもたらす治療を指す。有益な効果は、ベースラインを超える改善、すなわち本方法による治療の開始前に行われた測定又は観察を超える改善の形態をとることができる。有効な治療は、鎌状赤血球症の少なくとも1つの症状の緩和を指し得る。
【0024】
本明細書で使用される用語「~に融合される」は、2つ(以上)のコード配列が転写され、単一の連続ポリペプチドに翻訳されるように、典型的には2つ以上の配列、例えばコード配列を1つ以上の第2のコード配列とインフレームで発現ベクターにクローニングすることにより、2つ以上の配列を組み合わせることによって作製されるポリペプチドを指す。組換え技術によって作製されることに加えて、ポリペプチドの一部は、化学反応又はカスタムポリペプチドを作製するための当技術分野で公知の他の手段により、互いに「融合」され得る。
【0025】
「重鎖抗体」は、2つの重鎖からなり、従来の抗体に見られる2つの軽鎖を欠く抗体を指す。ラクダ類(ラクダ科(Camelidae)の生物学的ファミリーのメンバーであり、ラクダ亜目(suborder Tylopoda)中で現在生きている唯一のファミリーであり;現存するラクダ類には、ヒトコブラクダ、フタコブラクダ、野生若しくは野生化したラクダ、ラマ、アルパカ、ビクーニャ及びグアナコが含まれる)は、一本鎖VHH抗体を有する唯一の哺乳動物である。ラクダ類では、抗体の約50%は、重鎖抗体であり、他の50%は、通常の又は従来の哺乳動物重鎖/軽鎖抗体型である。
【0026】
「VHHドメイン」は、天然に存在する重鎖抗体に存在する可変ドメインを指して、従来の4本鎖抗体に存在する重鎖可変ドメイン(本明細書では「VHドメイン」と称する)と、従来の4本鎖抗体に存在する軽鎖可変ドメイン(本明細書では「VLドメイン」と称する)と区別する。
【0027】
VHHドメインは、単離されたVHHドメイン(並びにVHHドメインに基づいており、これらの構造特性及び機能特性を天然のVHHドメインと共有するsdAb)及び機能的抗原結合ドメイン又はタンパク質としての使用に非常に有利なVHHドメインを含有するタンパク質を作製するいくつかの固有の構造特性及び機能特性を有する。例えば、VLの存在なしに抗原に結合するVHHドメイン及びsdAbは、単一の比較的小さい機能的抗原結合構造単位、ドメイン又はタンパク質として機能し得る。これらの分子の小さいサイズは、VHHドメインを従来の4本鎖抗体のVH及びVLドメインと区別する。単一の抗原結合タンパク質又は抗原結合ドメイン(例えば、より大きいタンパク質若しくはポリペプチドの一部)としてVHHドメイン及びsdAbを使用すると、従来のVH及びVLドメイン並びにscFv又は従来の抗体断片(Fab又はF(ab’)断片など)の使用を上回る多くの重要な利点がもたらされる。例えば、高親和性及び高選択性で抗原に結合するために単一ドメインのみが必要であり、その結果、2つの別々のドメインが存在する必要もなく、これらの2つのドメインが特定の空間的立体構造及び立体配置で存在する(例えば、scFvと同様に特異的リンカーの使用を介して)ことを保証する必要もない。VHHドメイン及びsdAbは、単一遺伝子からも発現され得、翻訳後フォールディング又は修飾を必要としない。VHHドメイン及びsdAbは、多価及び多重特異性フォーマットに容易に操作することができる。VHHドメイン及びsdAbは、高度に可溶性でもあり、凝集する傾向がなく(Ward,E.et al.,Nature,341:544-6,1989)、それらは、加熱、pH、プロテアーゼ及び他の変性剤又は条件に対して高度に安定である(Ewert,S.et al.,Biochemistry,41:3628-36,2002)。VHHドメイン及びsdAbは、製造に必要な規模でも調製が比較的容易且つ安価である。例えば、VHHドメイン、sdAb及びVHHドメイン又はsdAbを含有するポリペプチドは、当技術分野で公知の方法を使用する微生物発酵を使用して産生することができ、例えば従来の抗体断片のように哺乳動物発現系の使用を必要としない。VHHドメイン及びsdAbは、従来の4本鎖抗体及びその抗原結合断片と比べて比較的小さく(約15kDa又は従来のIgGの10倍小さい)、したがって従来の4本鎖抗体及びその抗原結合断片よりも組織(固形腫瘍及び他の高密度組織が挙げられるが、これらに限定されない)へのより高い浸透性を示す。VHHドメイン及びsdAbは、いわゆる「空洞結合」特性を示すことができ(例えば、その伸長されたCDR3ループに起因して)、従来の4本鎖抗体及びその抗原結合断片にはアクセス可能ではない標的及びエピトープに接近することができる。例えば、VHHドメイン及びsdAbが、酵素を阻害し得ることが示されている(国際公開第97/49805号パンフレット;Transue,T.et al.,Proteins,32:515-22,1998;Lauwereys,M.et al.,EMBO J.,17:3512-20,1998)。
【0028】
用語「単一ドメイン抗体」又は「sdAb」は、本明細書で使用される場合、単一の単量体可変抗体ドメインからなる抗体又はその断片である。これは、特定の生物学的供給源又は特定の調製方法に限定されない。sdAbは、例えば、(1)天然に存在する重鎖抗体のVHHドメインを単離すること;(2)天然に存在するVHHドメインをコードするヌクレオチド配列を発現させること;(3)天然に存在するVHHドメインの「ヒト化」又はそのようなヒト化VHHドメインをコードする核酸の発現;(4)任意の動物種、特にヒトなどの哺乳動物由来の天然型VHドメインの「ラクダ化」又はそのようなラクダ化VHドメインをコードする核酸の発現;(5)「ドメイン抗体」(「Dab」)の「ラクダ化」又はそのようなラクダ化VHドメインをコードする核酸の発現;(6)操作されたポリペプチド又は融合タンパク質を調製するための合成又は半合成技術を使用すること;(7)核酸合成の技術を用いてsdAbをコードする核酸を調製し、続いてこのようにして得られた核酸の発現;及び/又は(8)上記の任意の組み合わせによって得ることができる。
【0029】
本明細書に記載される融合ポリペプチド又は融合タンパク質は、例えば、天然に存在するVHH配列のアミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸残基を、ヒト由来のVHドメイン中の対応する位置に存在するアミノ酸残基の1つ以上で置換することにより、「ヒト化」された天然に存在するVHHドメインのアミノ酸配列を含み得る。
【0030】
本明細書に記載の融合ポリペプチド又は融合タンパク質は、例えば、「ラクダ化」された、すなわち天然に存在するVHドメインのアミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸残基を、例えばラクダ類抗体のVHHドメイン中の対応する位置に存在するアミノ酸残基の1つ以上で置換することにより、天然に存在するVHドメインのアミノ酸配列を含み得る。これは、当技術分野で公知の方法で実施され得る。そのようなラクダ化は、VH-VL境界面で、いわゆる「ラクダ科(Camelidae)ホールマーク残基」に存在するアミノ酸位置で優先的に起こり得る(国際公開第94/04678号パンフレット)。ラクダ化配列を生成又は設計するための親配列又は出発物質として使用されるVHドメイン又は配列は、例えば、哺乳動物由来のVH配列及び特定の実施形態ではヒトのVH配列であり得る。しかしながら、そのようなラクダ化配列は、当技術分野で公知の任意の好適な方法で得ることができ、したがって天然に存在する親VHドメインを含むポリペプチドを使用して得られたポリペプチドに厳密に限定されないことに留意されたい。
【0031】
「ヒト化」及び「ラクダ化」の両方は、天然に存在するVHHドメイン又はVドメインをそれぞれコードするヌクレオチド配列を提供し、次いで、当業者に公知の方法で、新規なヌクレオチド配列がそれぞれヒト化配列又はラクダ化配列をコードするようにヌクレオチド配列中の1つ以上のコドンを変化させることによって実施することができる。天然に存在するVHHドメイン又はVHドメインのアミノ酸配列又はヌクレオチド配列に基づいて、所望のヒト化又はラクダ化配列をコードするヌクレオチド配列を、当技術分野で公知の核酸合成技術を使用して新規に設計及び合成することもでき、その後、このようにして得られたヌクレオチド配列を、当技術分野で公知の方法で発現させることができる。
【0032】
用語「抗原」又は「抗原標的」は、本明細書で使用される場合、抗体、1つ以上のIg結合ドメイン又は他の免疫学的結合部分(例えば、本明細書で開示される操作されたポリペプチド又は融合ポリペプチドを含む)によって結合され得る分子又は分子の一部を指す。抗原は、動物において、その抗原のエピトープに結合することができる抗体を生成するために使用され得る。抗原は、1つ以上のエピトープを有し得る。
【0033】
抗体の用語「抗原結合断片」(又は簡単に「抗体断片」)は、本明細書で使用される場合、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の断片又は部分を指す。そのような「断片」は、例えば、約8~約1500アミノ酸長、好適には、約8~745アミノ酸長、好適には約8~約300、例えば約8~約200アミノ酸長又は約10~約50若しくは100アミノ酸長である。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって発揮され得ることが示されている。抗体の用語「抗原結合断片」に包含される結合断片の例としては、(i)Fab断片、V、V、CL及びCH1ドメインからなる一価断片;(ii)F(ab’)断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片;(iii)V及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのV及びVドメインからなるFv断片、(v)VドメインからなるdAb断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546);及び(vi)単離された相補性決定領域(CDR)又は(vii)合成リンカーによって任意選択的に結合され得る2つ以上の単離されたCDRの組み合わせが挙げられる。更に、Fv断片の2つのドメインであるV及びVは、別々の遺伝子によってコードされるが、それらは、組換え法を使用して、単一のタンパク質鎖として作製することを可能にする合成リンカーによって結合することができ、V及びV領域は、対になって、一価分子(一本鎖Fv(sFv)として知られる(例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423-426;及びHuston et al.(1988)ProcNatl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883を参照されたい)を形成する。そのような一本鎖抗体も抗体の「抗原結合断片」という用語に包含されることが意図される。これらの抗体断片は、当業者に知られている従来の技術を使用して得られ、断片は、無傷の抗体と同じ様式で効用について選別される。抗原結合部分は、組換えDNA技術又は無傷の免疫グロブリンの酵素的又は化学的切断によって産生され得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「結合ドメイン」は、抗原と相互作用するアミノ酸残基を含むタンパク質又は抗体の部分を指す。結合ドメインとしては、抗体(例えば、完全長抗体)及びその抗原結合部分が挙げられるが、これらに限定されない。結合ドメインは、抗原に対する特異性及び親和性を結合剤に付与する。この用語は、免疫グロブリン結合ドメインに相同であるか又はそれに主に相同である結合ドメインを有する任意のタンパク質も包含する。
【0035】
用語「エピトープ」又は「抗原決定基」は、免疫グロブリン又は抗体が特異的に結合する抗原上の部位を指す。エピトープは、連続するアミノ酸又はタンパク質の三次フォールディングによって並ぶようになる連続していないアミノ酸の両方から形成することができる。連続するアミノ酸から形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒への暴露時に保持される一方、三次フォールディングによって形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒による処理時に失われる。エピトープは、通常、固有の空間的立体構造中に少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個のアミノ酸を含む。所与の抗体がどのエピトープに結合するかを決定する方法(すなわちエピトープマッピング)は、当技術分野で周知であり、例えば抗原からの重複又は連続ペプチドが所与の工程との反応性について試験される免疫ブロッティング及び免疫沈降アッセイが挙げられる。エピトープの空間的立体構造を決定する方法としては、当技術分野における技法及び本明細書に記載されるもの、例えばX線結晶構造解析及び2次元核磁気共鳴が挙げられる(例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology,Vol.66,G.E.Morris,Ed.(1996))。
【0036】
用語「二重特異性」は、2つの抗原に結合することができる本開示の融合ポリペプチドを指す。
【0037】
用語「有効量」は、所望の生物学的、治療的及び/又は予防的結果を提供する薬剤の量を指す。その結果は、疾患の徴候、症状若しくは原因の1つ以上の低減、改善、緩和、減少、遅延及び/若しくは軽減又は生物系の任意の他の所望の変化であり得る。一例では、「有効量」は、鎌状赤血球症の少なくとも1つの症状を緩和することが臨床的に証明された融合ポリペプチド又はその断片の量である。有効量を1回以上の投与で投与することができる。
【0038】
本明細書で使用される場合、「有効な治療」は、有益な効果、例えば疾患又は障害の少なくとも1つの症状の改善をもたらす治療を指す。有益な効果は、ベースラインを超える改善、すなわち本方法による治療の開始前に行われた測定又は観察を超える改善の形態をとることができる。有効な治療は、鎌状赤血球症の少なくとも1つの症状の緩和を指し得る。
【0039】
本明細書で使用される用語「~に融合される」は、2つ(以上)のコード配列が転写され、単一の連続ポリペプチドに翻訳されるように、典型的には2つ以上の配列、例えばコード配列を1つ以上の第2のコード配列とインフレームで発現ベクターにクローニングすることにより、2つ以上の配列を組み合わせることによって作製されるポリペプチドを指す。組換え技術によって作製されることに加えて、ポリペプチドの一部は、化学反応又はカスタムポリペプチドを作製するための当技術分野で公知の他の手段により、互いに「融合」され得る。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「ペプチドリンカー」は、融合ポリペプチドの操作されたポリペプチド間に挿入又は含まれる1つ以上のアミノ酸残基を指す。ペプチドリンカーは、例えば、配列レベルで融合ポリペプチドの操作されたポリペプチド間の移行部に挿入又は含まれ得る。
【0041】
本明細書で使用される用語「医薬組成物」又は「治療用組成物」は、患者に投与された場合に所望の治療効果を誘導することができる化合物又は組成物を指す。
【0042】
用語「薬学的に許容される担体」又は「生理学的に許容される担体」は、本明細書で使用される場合、本開示の操作されたポリペプチド又は融合ポリペプチドの送達を達成又は増強するのに好適な1つ以上の製剤材料を指す。
【0043】
抗体、免疫グロブリン若しくは免疫学的に機能性の免疫グロブリン断片又は本明細書に開示される操作されたポリペプチド若しくは融合ポリペプチドは、分子がタンパク質及び/又は高分子の複合混合物中でその抗原標的を優先的に認識する場合、抗原に「特異的に」結合すると言われる。用語「特異的に結合する」は、本明細書で使用される場合、抗体、免疫グロブリン若しくは免疫学的に機能性の免疫グロブリン断片又は本開示の操作されたポリペプチド若しくは融合タンパク質の、少なくとも約10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M又はそれを超えるKで抗原含有エピトープに結合するための能力及び/又は非特異的抗原に対するその親和性よりも少なくとも2倍高い親和性でエピトープに結合する能力を指す。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「対象」又は「患者」は、ヒト患者(例えば、鎌状赤血球症を有する患者)である。本明細書で使用される場合、用語「対象」及び「患者」は互換的である。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「治療」又は「治療する」は、治療的処置及び予防的又は防止的措置の両方を指す。処置が必要な者は、障害を有する者並びに障害を有するリスクがある者又は障害を予防すべきである者を含む。
【0046】
本開示は、ヒト血清アルブミンに特異的に結合するポリペプチドに融合した、ヒトプロペルジンに特異的に結合する操作されたポリペプチドを含む融合ポリペプチドを、ペプチドリンカーを介して投与することにより、鎌状赤血球症(SCD)の治療を、それを必要とする対象において行う方法を提供する。
【0047】
アルブミン及びプロペルジンに特異的に結合する融合ポリペプチド
融合タンパク質及びその製剤が、本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、2つの抗原結合ポリペプチドが(例えば、リンカーなどのリンカーによって)連結されている二重特異性抗体である。そのような二重特異性コンストラクトは、リンカーによって第2のポリペプチド(例えば、第2の一価抗体又はVHH可変ドメイン)に連結された抗プロペルジン結合ポリペプチド(例えば、一価VHH抗体又はVHH可変ドメイン)を含み得る。第2のポリペプチドは、例えば、二重特異性コンストラクトのインビボ安定性を増強するか、異なる治療標的を標的化するか、又は2つの抗原を近接して配置することができる(例えば、それにより第1の結合抗原を第2の結合抗原に標的化する)。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチドは、アルブミン結合分子、アルブミン結合ペプチド若しくは抗アルブミン抗体(例えば、一価抗体)又はその修飾形態(例えば、ヒト血清アルブミンに特異的に結合するラマ抗体の可変ドメイン)である。本開示に加えて、アルブミン結合ペプチドは、当技術分野で公知である(国際公開第2007/106120号パンフレット(表1~9を参照されたい);Dennis,M.et al.,J.Biol.Chem.,277:35035-43,2002;(これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0048】
本明細書に記載される抗体は、例えば、C3b、C3Bb及びC3bBbへのプロペルジンの結合を阻害し得る。プロペルジンの阻害は、代替経路補体活性化の低減をもたらし、代替経路が過剰に活性化されている代替経路調節不全の疾患に罹患している患者にとって治療的有用性を示す。
【0049】
本明細書に記載の抗プロペルジン抗体は、完全長プロペルジン、プロペルジンポリペプチドを使用し、且つ/又は抗原性プロペルジンエピトープ担持ポリペプチド、例えばプロペルジンポリペプチドの断片を使用することによって産生され得る。プロペルジンペプチド及びポリペプチドは単離され、天然ポリペプチド、組換え又は合成組換えポリペプチドとして抗体を生成するために使用され得る。抗プロペルジン抗体を産生するために有用な全ての抗原を使用して、一価抗体を生成することができる。好適な一価抗体フォーマット及びそれらを産生する方法は、当技術分野で公知である(国際公開第2007/048037号パンフレット及び国際公開第2007/059782号パンフレット、これらの内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0050】
抗プロペルジン抗体は、モノクローナル抗体であり得るか又はモノクローナル抗体に由来し得る。選択された抗原に好適なモノクローナル抗体は、既知の技法(“Monoclonal Antibodies:A manual of techniques,”Zola(CRC Press,1988);“Monoclonal Hybridoma Antibodies:Techniques and Applications,”Hurrell(CRC Press,1982)、これらの内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる)によって調製され得る。
【0051】
他の実施形態では、抗体は、VHHなどの単一ドメイン抗体であり得る。そのような抗体は、ラクダ科及びサメで天然に存在する(Saerens,D.et al.,Curr.Opin.Pharmacol.,8:600-8,2008)。ラクダ科抗体は、例えば、米国特許第5,759,808号明細書;同第5,800,988号明細書;同第5,840,526号明細書;同第5,874,541号明細書;同第6,005,079号明細書;及び同第6,015,695号明細書に記載されており、これらの各々の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。クローニングされ単離されたVHHドメインは、元の重鎖抗体の完全な抗原結合能を特徴とする安定なポリペプチドである。VHHドメインは、それらの固有の構造的及び機能的特性を有し、従来の抗体の利点(高い標的特異性、高い標的親和性及び低い固有毒性)と小分子薬物の重要な特徴(酵素を阻害し、受容体クレフトに接近する能力)とを組み合わせている。更に、それらは安定であり、注射以外の手段によって投与される可能性を有し、製造がより容易であり、且つヒト化され得る(米国特許第5,840,526号明細書;米国特許第5,874,541号明細書;米国特許第6,005,079号明細書;米国特許第6,765,087号明細書;欧州特許第1589107号明細書;国際公開第97/34103号パンフレット;国際公開第97/49805号パンフレット;米国特許第5,800,988号明細書;米国特許第5,874,541号明細書及び米国特許第6,015,695号明細書(その各々の内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる))。
【0052】
本明細書に記載の二重特異性抗体の抗プロペルジン成分、GRISSIIHMA(配列番号2)と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有するCDR-H1;RVGTTVYADSVKG(配列番号3)と少なくとも90%同一である(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である)アミノ酸配列を有し、且つLQYEKHGGADY(配列番号4)と少なくとも90%同一である(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である)アミノ酸配列を有するCDR-H2を含むCDR配列である。本明細書に記載の二重特異性抗体は、GRISSIIHMA(配列番号2)のアミノ酸配列を有するCDR-H1;RVGTTVYADSVKG(配列番号3)のアミノ酸配列を有するCDR-H2;及びLQYEKHGGADY(配列番号4)のアミノ酸配列を有するCDR-H3を含み得る。
【0053】
更に、本明細書に記載の操作された融合タンパク質は、操作されたタンパク質が血清アルブミン分子に結合されるか又はそうでなければ会合している場合、血清アルブミン分子のFcRnへの結合が、ポリペプチドが結合されていない場合の血清アルブミン分子のFcRnへの結合と比較して著しく低減又は阻害されないように、血清アルブミンに特異的に結合し得る。この実施形態では、「著しく低減又は阻害されない」とは、FcRnに対する血清アルブミンの結合親和性(例えば、SPRなどの好適なアッセイを使用して測定される)が、50%を超えて、又は30%を超えて、又は10%を超えて、又は5%を超えて低減されないか又は全く低減されないことを意味する。この実施形態では、「著しく低減又は阻害されない」は、血清アルブミン分子の半減期が著しく低減されないことも意味する。特に、操作されたポリペプチドは、血清アルブミンのFcRnへの結合に関与しない血清アルブミン上のアミノ酸残基に結合し得る。より詳細には、操作されたポリペプチドは、血清アルブミンのドメインIIIの一部を形成しない血清アルブミンのアミノ酸残基又は配列、例えばドメインI及び/又はドメインIIの一部を形成する血清アルブミンのアミノ酸残基又は配列に結合することができる操作されたポリペプチドに結合することができる。
【0054】
本明細書に記載の二重特異性抗体の抗アルブミン成分は、GRPVSNYA(配列番号5)と少なくとも87%同一であるアミノ酸配列を有するCDR-H1;NWQKTAT(配列番号6)と少なくとも87%同一であるアミノ酸配列を有し、且つAAVFRVVAPKTQYDYDY(配列番号7)と少なくとも90%同一である(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である)アミノ酸配列を有するCDR-H2を含むCDR配列を含み得る。本明細書に記載の二重特異性抗体は、GRPVSNYA(配列番号5)のアミノ酸配列を有するCDR-H1;INWQKTAT(配列番号6)のアミノ酸配列を有するCDR-H2;及びAAVFRVVAPKTQYDYDY(配列番号7)のアミノ酸配列を有するCDR-H3を含み得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、抗プロペルジン結合部分及び抗アルブミン結合部分を含み。抗プロペルジン結合ドメインが露出したN末端を有するいくつかの実施形態では、N末端グルタミンは、環化ピログルタミン酸に変換することができる。そのような修飾は、当技術分野で公知である(例えば、Liu et al.,The Journal of Biological Chemistry 286(13:11211-11217,2011を参照されたい)。抗プロペルジン結合部分をコードする部分は、
【化1】
のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%)の同一性を有し得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質の抗プロペルジン結合部分は、配列番号55を含む。
【0057】
抗アルブミン結合部分をコードする部分は、
【化2】
のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%)の同一性を有し得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質の抗プロペルジン結合部分は、配列番号56を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、
【化3】
の核酸配列と少なくとも80%(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)の同一性を有する核酸配列によってコードされる。
【0060】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号57の核酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)の同一性を有する核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号57の核酸配列によってコードされる。
【0061】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、アミノ酸配列:
【化4】
と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0062】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号1と少なくとも95%(例えば、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)の同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を有する。
【0063】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質のプロペルジン結合ドメインのC末端残基は、ヒト血清アルブミン結合ドメインのN末端残基に直接又はリンカーを介してのいずれかで融合され得る。他の実施形態では、融合タンパク質の補体成分ヒト血清アルブミン結合ドメインのC末端残基は、プロペルジン結合ドメインのN末端残基に直接又はペプチドを介してのいずれかで融合され得る。本明細書に記載の融合タンパク質は、1つ以上の修飾アミノ酸残基を含み得る。例えば、配列番号1のアミノ酸配列は、1つ以上のアミノ酸修飾を含み得る。本明細書に記載のアミノ酸修飾は、当技術分野で公知の全てのアミノ酸修飾を含む(例えば、Liu et al.,The Journal of Biological Chemistry 286(13:11211-11217,2011及びManning et al.,Pharmaceutical Research 27(4):544-575,2010を参照されたい)。あらゆる文脈において、例えば、融合ポリペプチドの処理又は精製中の特定のアミノ酸の既知の変換、例えば露出されたN末端グルタミンからピログルタミン酸への変換が含まれるべきである。
【0064】
リンカー
本明細書に記載されるように、リンカーは、ポリペプチド若しくはタンパク質ドメイン及び/又は関連する非タンパク質部分間の結合又は連結を記述するために使用される。いくつかの実施形態では、リンカーは、例えば、2つのポリペプチドコンストラクトが互いにタンデム系列で連結される(例えば、第2のポリペプチド又は一価の抗体に連結された一価の抗体)ような、少なくとも2つのポリペプチドコンストラクト間の結合若しくは連結である。リンカーは、1つの抗体コンストラクトのN末端又はC末端を第2のポリペプチドコンストラクトのN末端又はC末端に取り付けることができる。
【0065】
アルブミン及びプロペルジンに特異的に結合する操作されたタンパク質を含む融合タンパク質が本明細書に記載され、この操作されたタンパク質は、直接融合されているか、又は1つ以上の好適なリンカー若しくはスペーサーを介して連結されている。ペプチドリンカーは、例えば、配列レベルで融合タンパク質の操作されたタンパク質間の移行部に挿入又は含まれ得る。リンカー内のアミノ酸残基の同一性及び配列は、所望の第2の構造に応じて変化し得る。
【0066】
リンカーは、単純な共有結合、例えばペプチド結合、合成ポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)ポリマー又は化学反応、例えば化学的コンジュゲーションから形成される任意の種類の結合であり得る。リンカーがペプチド結合である場合、1つのタンパク質ドメインのC末端でのカルボン酸基は、縮合反応で別のタンパク質ドメインのN末端でのアミノ基と反応して、ペプチド結合を形成することができる。具体的には、ペプチド結合は、当技術分野で周知の従来の有機化学反応を介した合成手段から又は宿主細胞からの自然産生によって形成され得、両方のタンパク質、例えばタンデム系列での2つの抗体コンストラクトのDNA配列をコードするポリヌクレオチド配列は、宿主細胞で必要な分子機構、例えばDNAポリメラーゼ及びリボソームによって両方のタンパク質をコードする連続したポリペプチドに直接転写され、翻訳され得る。
【0067】
リンカーが合成ポリマー、例えばPEGポリマーである場合、ポリマーは、各末端において反応性化学官能基で官能化されて、2つのタンパク質の接続末端で末端アミノ酸と反応することができる。
【0068】
リンカーが化学反応から作製される場合(上述のペプチド結合を除く)、化学官能基、例えばアミン、カルボン酸、エステル、アジド又は当技術分野で一般的に使用される他の官能基は、それぞれ1つのタンパク質のC末端及び別のタンパク質のN末端に合成的に取り付けられ得る。次いで、2つの官能基は、合成化学手段を介して反応して化学結合を形成し、これにより2つのタンパク質を一緒に連結することができる。そのような化学的コンジュゲーション手順は、当業者にとって定型的である。
【0069】
本明細書に記載されるように、2つのペプチドコンストラクト間のリンカーは、1~200個(例えば、1~4、1~10、1~20、1~30、1~40、2~10、2~12、2~16、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200個)のアミノ酸を含むアミノ酸リンカーであり得る。好適なペプチドリンカーは、当技術分野で公知であり、例えばグリシン及びセリンなどのフレキシブルなアミノ酸残基を含有するペプチドリンカーが挙げられる)。
【0070】
グリシン、セリン及びアラニンは、最大フレキシビリティを有するリンカーにとって有用である。あらゆるアミノ酸残基が、必要に応じて、所望の性質に応じてより大きいペプチドリンカーを構築するための1つ以上の他のアミノ酸残基と組み合わせてリンカーとみなされ得、これは、第1のアミノ酸残基と同じであるか又は異なり得る。他の実施形態では、リンカーは、GGGGEGGGGEGGGGE(配列番号10)である。他の実施形態では、リンカーは、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号11)である。本明細書に記載の融合タンパク質を作製するのに好適な追加のペプチドリンカーとしては、例えば、GS(配列番号12)、(GS)(配列番号13)、(GS)(配列番号14)、(GS)(配列番号15)、(GS)(配列番号16)、(GS)(配列番号17)、(EAAAK)(配列番号18)、PAPAP(配列番号19)、GSPAPAP(配列番号20)、PAPAPGS(配列番号21)、(GGGDS)(配列番号22)、(GGGES)(配列番号23)、GGGDSGGGGS(配列番号24)、GGGASGGGGS(配列番号25)、GGGESGGGGS(配列番号26)、ASTKGP(配列番号27)、ASTKGPSVFPLAP(配列番号28)、GP(配列番号29)、GP(配列番号30)、PAPNLLGGP(配列番号31)、G(配列番号32)、G12(配列番号33)、APELPGGP(配列番号34)、SEPQPQPG(配列番号35)、(G(配列番号36)、GGGGGGGGGSGGGS(配列番号37)、GGGGSGGGGGGGGGS(配列番号38)、(GGSSS)(配列番号39)、(GS(配列番号40)、GA(GS)(配列番号41)、GSGAGS(配列番号42)、GAS(GS)(配列番号43)、GSGASGS(配列番号44)、GSAGSGS(配列番号45)、(GS)AGS(配列番号46)、GSAGSAGS(配列番号47)、GD(GS)(配列番号48)、GSGDGS(配列番号49)、(GD)S(配列番号50)、GE(GS)(配列番号51)、GSGEGS(配列番号52)、(GE)S(配列番号53)及びGGGGAGGGGAGGGGS(配列番号54)が挙げられる。当業者は、例えば、翻訳後修飾、例えばグリコシル化、例えばキシロシル化を低減又は排除するためにリンカーを選択することができる。特定の実施形態では、融合タンパク質は、少なくとも2つのsdAb、Dab、VHH抗体、VHH抗体断片又はそれらの組み合わせを含み、sdAb、Dab、VHH抗体又はVHH抗体断片の少なくとも1つは、アルブミンに対して指向され、sdAb、Dab、VHH抗体又はVHH抗体断片の1つは、プロペルジンに対して指向され、その結果、得られる融合タンパク質は、多価又は多重特異性である。結合ドメイン又は部分は、例えば、HSA、カニクイザル血清アルブミン、ヒトプロペルジン及び/又はカニクイザルプロペルジンに対して指向され得る。
【0071】
鎌状赤血球症を治療する方法
ヒト患者における鎌状赤血球症(SCD)を治療する方法であって、特定の臨床投薬レジメンに従って(すなわち特定の投与量において且つ特定のスケジュールに従って)、ペプチドリンカーを介してヒト血清アルブミンに特異的に結合するポリペプチドに融合された、ヒトプロペルジンに特異的に結合する操作されたポリペプチドを含む融合ポリペプチドを患者に投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【0072】
一実施形態では、融合ポリペプチドは、患者に300mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、毎週投与される。融合ポリペプチドは、患者に1~13週間(例えば、1週間~12週間、1週間~10週間、1週間~8週間、1週間~6週間、1週間~4週間、4週間~13週間、6週間~13週間、8週間~13週間、10週間~13週間又は12週間~13週間)にわたって投与され得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、1週間に1回、1週間に2回、1週間に3回、1週間に4回、1週間に5回、1週間に6回又は毎日投与される。別の実施形態では、融合ポリペプチドは、1日2回投与される。別の実施形態では、融合ポリペプチドは、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、5週間毎に1回、6週間毎に1回、7週間毎に1回、8週間毎に1回、9週間毎に1回、10週間毎に1回、11週間毎に1回又は12週間毎に1回投与される。
【0074】
別の実施形態では、融合ポリペプチドは、患者に2週間毎に(例えば、2週間に1回)投与される。融合ポリペプチドは、最大で12週間にわたって投与され得る。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、最大で6回(例えば、1回、2回、3回、4回、5回又は6回)投与される。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、最大で4回(例えば、1回、2回、3回又は4回)投与される。
【0075】
別の実施形態では、融合ポリペプチドは、患者に600mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、患者に4週間毎に投与される。融合ポリペプチドは、患者に最大で4回(例えば、1回、2回、3回又は4回)投与され得る。
【0076】
融合ポリペプチドを投与される患者は、臨床医によって鎌状赤血球症と臨床診断されていてもよい。鎌状赤血球症としては、HbSS又はHbSβ-サラセミアが挙げられ得る。ヒト患者は、18歳~65歳の年齢であり得る。いくつかの実施形態では、ヒト患者は、≧40kgの体重を有する。いくつかの実施形態では、患者は、ヒドロキシ尿素を更に投与される。いくつかの実施形態では、患者は、抗体又はその抗原結合断片の投与前の少なくとも3ヶ月間にわたり、安定用量のヒドロキシ尿素を受けている。別の実施形態では、患者は、抗体又はその抗原結合断片の投与前の少なくとも30日間にわたり、ヒドロキシ尿素を投与されていない。
【0077】
いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、皮下投与のために製剤化される。例えば、融合ポリペプチドは、20nMの酢酸ナトリウム、250mMのスクロース及び0.05%のポリソルベート-80を含む水溶液中に150mg/mLの濃度で5.4のpHにおいて製剤化され得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、プレフィルドシリンジを使用して投与される。他の実施形態では、融合ポリペプチドは、オートインジェクターデバイスを使用して投与される。例えば、オートインジェクターデバイスは、溶液送達のためのペン型インジェクターデバイスなどの単一のバイアルシステムを含み得る。そのようなデバイスは、BD Pens、BD Autojector(登録商標)、Humaject(登録商標)、NovoPen(登録商標)、B-D(登録商標)Pen、AutoPen(登録商標)及びOptiPen(登録商標)、GenotropinPen(登録商標)、Genotronorm Pen(登録商標)、Humatro Pen(登録商標)、Reco-Pen(登録商標)、Roferon Pen(登録商標)、Biojector(登録商標)、Iject(登録商標)、J-tip Needle-Free Injector(登録商標)、DosePro(登録商標)、Medi-Ject(登録商標)など、例えばBecton Dickinson(Franklin Lakes,NJ)、Ypsomed(Burgdorf,Switzerland、www.ypsomed.com;Bioject,Portland,OR.;National Medical Products,Weston Medical(Peterborough,UK)、Medi-Ject Corp(Minneapolis,MN)及びZogenix,Inc,Emeryville,CAによって作製又は開発されたものなど、製造業者から市販されている。二重バイアルシステムを含む認識されているデバイスとしては、HumatroPen(登録商標)などの再構成溶液を送達するために、カートリッジ内で凍結乾燥薬物を再構成するためのペン型インジェクターシステムが挙げられる。一実施形態では、オートインジェクターは、YpsoMate 2.25又はYpsoMate 2.25 Pro(Ypsomed)使い捨て注射デバイスである。
【0079】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って治療される患者は、試験薬の開始前又は開始時の3年以内に髄膜炎菌感染症に対してワクチン摂取されている。一実施形態では、髄膜炎菌ワクチン接種後2週間未満に治療を開始した患者は、ワクチン接種後2週間まで、適切な予防的抗生物質による治療を受ける。別の実施形態では、本明細書に記載の方法に従って治療される患者は、髄膜炎菌性血清型A、C、Y、W135及び/又はBに対してワクチン接種される。
【0080】
評価項目
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合ポリペプチドのいずれか1つの投与は、患者が治療の12週間後に治療下で発現した有害事象を経験しない結果となり得る。いくつかの実施形態では、患者は、治療の12週間後に重篤な有害事象を経験しない。いくつかの実施形態では、患者は、治療の12週間後に有害事象を経験しない。
【0081】
いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドの血清濃度の変化は、治療開始後の最大で30週間にわたって測定され得る。例えば、融合ポリペプチドの血清濃度の変化は、治療開始後の最大で12週間にわたって測定され得る。いくつかの実施形態では、抗薬物抗体の血中濃度の変化は、治療開始後の最大で30週間にわたって測定され得る。例えば、抗薬物抗体の血中濃度の変化は、治療開始後の最大で12週間にわたって測定され得る。いくつかの実施形態では、総プロペルジン及び遊離プロペルジンの血清濃度におけるベースラインからの変化は、治療の最大で30週間後に測定され得る。例えば、総プロペルジン及び遊離プロペルジンの血清濃度におけるベースラインからの変化は、治療の最大で30週間後に測定され得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、患者は、治療の12週間後、補体成分Ba(Ba)、補体成分C3a(C3a)又は可溶性補体成分C5B-9(sC5B9)の血清濃度におけるベースラインからの変化を経験する。別の実施形態では、患者は、治療の12週間後、ヘモペキシン、一酸化窒素、炎症マーカー又は細胞接着マーカーの血中又は血清濃度におけるベースラインからの変化を経験し得る。炎症マーカーは、インターロイキン-1であり得る。細胞接着マーカーは、可溶性P-セレクチンであり得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、治療の12週間後、患者は、治療の12週間後、ヘモグロビンレベルにおけるベースラインからの変化を経験し得る。別の実施形態では、患者は、12週間後、血清LDHレベル、間接ビリルビン、ハプトグロビン又はヘモペキシンにおけるベースラインからの変化を経験し得る。別の実施形態では、患者は、12週間後に網状赤血球レベルの変化を経験し得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、患者は、治療の12週間後、ベースラインと比較して血管閉塞性発症の速度の低下を経験し得る。いくつかの実施形態では、患者は、治療の12週間後、ベースラインと比較して最初の血管閉塞性発症までの時間の増加を経験する。血管閉塞性発症は、赤血球が血流を遮断して、組織が酸素を奪われるまで血流を遮断する場合に起こり得、身体が問題を修正しようとするときに炎症反応をもたらし得、痛みを含む症状をもたらし得、身体の任意の部分に影響を及ぼし得るが、最も一般的には背中、胸部又は四肢に起こる。
【0085】
キット及び単位剤形
本明細書では、配列番号1のアミノ酸配列を有する融合ポリペプチドなどの本明細書に記載の融合ポリペプチドと、薬学的に許容される担体とを含有する医薬組成物を、前述の方法での使用に適合された治療有効量で含むキットも提供される。キットは、任意選択的に、施術者(例えば、医師、看護士又は患者)が、その中に含まれる組成物を投与して、組成物を、MGを有する患者に投与することを可能にする、例えば投与スケジュールを含む指示書も含み得る。キットは、シリンジも含み得る。
【0086】
キットは、任意選択的に、上記に提供される方法に従う単回投与のための有効量の融合ポリペプチドをそれぞれ含有する単回用量医薬組成物の複数のパッケージを含み得る。医薬組成物を投与するのに必要な機器又はデバイスもキットに含まれ得る。キットは、ある量の融合ポリペプチドを含有する1つ以上のプレフィルドシリンジを提供し得る。キットは、ある量の融合ポリペプチドを含有する1つ以上のオートインジェクターを含み得る。
【0087】
以下の実施例は、単なる例示であり、多くの変形形態及び均等物が本開示を読む際に当業者に明らかになるため、決して本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本願全体を通して引用される全ての参考文献、Genbankエントリー、特許及び公開特許出願の内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【実施例
【0088】
以下の実施例は、本開示の具体的な実施形態及びその様々な使用について例示する。これらは、説明の目的でのみ記載されており、これらは、決して本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0089】
実施例1:鎌状赤血球症を有する成人患者における皮下抗プロペルジン/抗血清アルブミン二重特異性単一可変ドメイン抗体の複数の投与レジメンを評価するための第2a相、無作為化、非盲検試験
1.1 試験実施根拠
本明細書に記載の融合ポリペプチド(重鎖[VHH]抗体上の抗プロペルジン/抗血清アルブミン二重特異性単一可変ドメイン)は、調節不全補体活性を伴う疾患の治療のために開発されている新規プロペルジン遮断剤である。本明細書に記載の融合ポリペプチド分子は二重特異性であり、血清アルブミンに結合するVHHドメインにリンカーを介して連結されたプロペルジンに結合してこれを遮断するVHH抗体ドメインを含み、それにより分子に長い循環半減期を付与する。本明細書に記載の融合ポリペプチド製剤は、皮下(SC)投与のために設計される。本試験の目的は、鎌状赤血球症(SCD)を有する患者において、本明細書に記載の融合ポリペプチドの安全性、忍容性、有効性、薬物動態(PK)、薬力学(PD)及び複数回用量及び投与レジメンの免疫原性を評価することである。
【0090】
試験には、最大で3つのコホートが含まれる。この試験から得られたデータは、SCD及び他の補体媒介性疾患を有する患者における将来の試験の設計に役立つことが期待される。
【0091】
目的及び評価項目
【0092】
【表1】
【0093】
1.2 試験の全体的デザイン
これは、SCD(HbSS及びHbSβ-サラセミア)を有する成人患者を対象とした、本明細書に記載の非盲検融合ポリペプチドSCの最大で3つの複数回投与コホートを用いる第2a相試験である。
【0094】
本試験は、本明細書に記載の非盲検融合ポリペプチドの複数のSC投与を受けるために、最大で3つの非盲検コホート(コホート1、2及び3[任意選択])に登録された最大で30人のSCDを有する成人患者で実施される。本明細書に記載の融合ポリペプチドは、表2に記載されるように投与される。
【0095】
【表2】
【0096】
コホート1及び2についての用量及び投与間隔は、累積安全性データ、本明細書に記載される試験に登録された参加者からの中間PK/PD解析及びサルにおける6ヶ月間の優良試験所基準(GLP)毒性試験からのデータを使用して決定された。任意選択のコホート3は、コホート1及び2からの安全性及びPK/PDデータの評価後、試験を評価する者の裁量で開始される。
【0097】
コホート1及びコホート2を並行して実施し、適格性の決定に際して、患者をコホートのいずれかに1:1で無作為化する。任意選択のコホート3を開始するという決定は、試験を実施する者の判断でなされ、コホート1及び2からの少なくとも8人の患者(各コホートから4人)が登録された後のPK/PD及び安全性の解析に基づく。更に、任意選択のコホート3の登録は、コホート1及び2が完全に登録された後に開始する。各コホートは、安定用量のヒドロキシ尿素で治療されているSCDを有する患者及び現在ヒドロキシ尿素で治療されていないSCDを有する患者が含まれることを確実にするために層別化される。治療期間は、コホート1及び2について12週間であり、コホート3について6週間である。以前にヒドロキシ尿素で治療されたが、現在ヒドロキシ尿素を使用していない患者については、インフォームドコンセントを提供する少なくとも30日前に治療を中止していなければならない。
【0098】
治験責任医師の裁量により、データモニタリング委員会(DMC)と協議した後、参加者が薬物関連有害事象(AE)以外の理由で投与期間中に中断した場合、追加のSCDを有する参加者を補充参加者として登録することができる。
【0099】
開示ステートメント
これは、最大で3つの治療群による非盲検、並行群介入試験である。
【0100】
参加者数:
最大で30人のSCD(HbSS及びHbSβ-サラセミア)を有する成人患者が最大で3つのコホートに登録され、本明細書に記載の融合ポリペプチドの複数の非盲検SC投与を受ける。コホートには、安定用量のヒドロキシ尿素で治療されているSCD患者と、現在ヒドロキシ尿素で治療されていないSCD患者との両方が登録される。以前にヒドロキシ尿素で治療されたが、現在治療されていない患者については、インフォームドコンセントを提供する少なくとも30日前に治療を中止していなければならない。
【0101】
介入群及び期間:
予定された試験期間は、コホート1及び2について約38週間である:スクリーニングに最大で56日間(8週間)、治療期間に84日間(12週間)及びフォローアップ期間に126日間(18週間)である。患者は、治療及びフォローアップ期間中に外来来院に参加し、入院施設に滞在する選択肢がある。個々の患者の各々についての試験終了(EOS)は、211日目(210日)又は補体活性が正常範囲若しくは211日目以降である場合、ベースラインの80%に戻った時点であると予想される。
【0102】
予定された試験期間は、任意選択のコホート3について約32週間である:スクリーニングに最大で56日間(8週間)、治療期間に42日間(6週間)及びフォローアップ期間に126日間(18週間)である。患者は、治療及びフォローアップ期間中に外来来院に参加し、入院施設に滞在する選択肢がある。各個々の患者のEOSは、169日目(168日)又は補体活性が正常範囲若しくは169日目以降である場合、ベースラインの80%に戻った時点であると予想される。試験の概略図を図1に提示する。
【0103】
データモニタリング委員会:この試験は、安全性を監視し、試験の予定された中間解析を実施するために独立したDMCを使用する。
【0104】
統計解析-全てのコホート:
解析のための集団
解析の目的のために、以下の集団を定義する。
【0105】
【表15】
【0106】
安全性解析
全ての安全性解析は、安全性集団に対して実施され、各コホート及び治療群によって報告される。
【0107】
安全性解析は、全ての治療下で発現した有害事象(TEAE)、心電図(ECG)、臨床検査データ、身体検査及び記述統計学を使用したバイタルサイン測定の解析を含む。この試験の安全性パラメーターについて、推測統計解析は、予定されていない。AE及び重篤な有害事象(SAE)の有病率は、各コホート及び治療群について、器官別大分類(SOC)及び基本語によって且つ全体的に各治療群内で治験薬との関係によって要約される。AEは、コホートによって且つ全体的に重症度によって要約される。試験からの撤退をもたらすSAE及びAEが列挙される。カテゴリー(例えば、全体的な、SOC、基本語)内に複数のAEを有する参加者は、そのカテゴリーで1回カウントされる。重症度の表について、カテゴリー内の参加者の最も重症度の高い事象がカウントされる。
【0108】
併用薬は、全て世界保健機構医薬品辞書を使用してコード化され、併用薬の頻度及び割合が要約されている。
【0109】
有効性解析
補体バイオマーカー、ヘモグロビン及び溶血マーカーにおけるベースラインからの絶対的変化及び変化率をコホート1及びコホート2の治療期間(12週間)の終了時に評価する。ヘモグロビン応答までの時間(ベースラインからの>1g/dLのヘモグロビンレベルにおける増加として定義される)は、治療期間(12週間)の終了時に、コホート1及びコホート2について評価される。
【0110】
薬物動態解析
実際のサンプリング日時と共に、本明細書に記載の融合ポリペプチドのSC投与を受けた参加者からの個々の血清濃度データを使用して、集団PK解析手法によってPKを特性化する。
【0111】
薬力学解析
投与される本明細書に記載の融合ポリペプチドの全てのSC投与のPD効果は、Wieslab代替経路(AP)アッセイを使用して、血清総プロペルジン濃度及び遊離プロペルジン濃度並びに補体代替経路(CAP)活性の変化を査定することによって評価される。加えて、補体古典的経路活性及び経時的なプロペルジン活性の他の尺度は、適切であるとみなされ得る(セクション8.6)。
【0112】
免疫原性解析
本明細書に記載の融合ポリペプチドに対する抗薬物抗体(ADA)の発生率によって測定される免疫原性がまとめられる。
【0113】
探索的解析
バイオマーカーアッセイ及び臨床的有効性評価項目に関する更なる探索的解析が実施され得る。これらの解析の詳細は、統計解析計画書(SAP)に示されている。
【0114】
中間解析
中間解析は、コホート1及び2からの少なくとも12人の患者(各コホートから6人)が登録され、治療期間(12週間)を完了した後に実施され得る。これらの解析の詳細は、SAPに提示されている。
【0115】
1.3 試験スケジュール(SoA)
85日目までのスクリーニングのための複数回投与コホート1についての週1回(QW)投与についてのSoAを、表3に提示する。
【0116】
85日目までのスクリーニングのための複数回投与コホート2についての4週間毎に1回(Q4W)の投与についてのSoAを、表4に提示する。
【0117】
表5は、コホート1及び2における参加者のサブセットについての集中的PK/PDサンプリングのためのSoAを提示する。表6は、99日目からフォローアップ期間の終了時までのコホート1及び2についてのSoAを提示する。
【0118】
43日目までのスクリーニングのための任意選択の複数回投与コホート3の2週間毎に1回(Q2W)の投与についてのSoAを、表7に提示する。表8は、57日目からフォローアップ期間の終了時までのコホート3についてのSoAを提示する。
【0119】
【表3-1】
【0120】
【表3-2】
【0121】
【表3-3】
【0122】
【表3-4】
【0123】
【表4-1】
【0124】
【表4-2】
【0125】
【表4-3】
【0126】
【表5】
【0127】
【表6-1】
【0128】
【表6-2】
【0129】
【表7-1】
【0130】
【表7-2】
【0131】
【表7-3】
【0132】
【表8-1】
【0133】
【表8-2】
【0134】
2.序論
2.1 試験実施根拠
本明細書に記載の融合ポリペプチド(抗プロペルジン/抗血清アルブミン二重特異性VHH抗体)は、調節不全CAP活性に関与する疾患の治療のために開発されている新規のプロペルジン遮断剤である。本明細書に記載の融合ポリペプチドの分子は二重特異性であり、血清アルブミンに結合するVHHドメインにリンカーを介して連結されたプロペルジンに結合してこれを遮断し、それにより分子に延長した循環半減期を付与するVHH抗体ドメインを含む。
【0135】
本明細書に記載の融合ポリペプチドは、高い親和性でプロペルジンに結合して、CAP補体成分C3(C3)及び補体成分C5(C5)の安定化を防止し、これは、C3及びC5をそれらの活性化産物に切断する。プロペルジンの定量的遮断は、プロペルジン結合抗体を用いた経験に基づいて、ヒトで安全であることが示されている(セクション4.3を参照されたい)。本明細書に記載の融合ポリペプチドは、現在、健康な成人参加者における進行中の第1相試験で評価中であり、この試験における参加者の用量及び投与レジメンは、進行中の第1相試験に登録された参加者からの累積安全性データ及び中間PK/PD解析並びにサルにおける6ヶ月のGLP毒性試験からのデータを用いて決定した。
【0136】
SCDを有する患者におけるこの試験の目的は、皮下投与される本明細書に記載の融合ポリペプチドの安全性、忍容性、有効性、PK、PD並びに複数回投与及び投与レジメンの免疫原性を評価することである。
【0137】
試験は、SCDを有する成人患者における、本明細書に記載の非盲検の融合ポリペプチドの複数のSC投与及び投与レジメンを伴う最大で3つのコホートを含む。この試験から得られたデータは、SCD及び他の補体媒介性疾患を有する患者における将来の試験の設計に役立つことが期待される。
【0138】
2.2 背景
本明細書に記載の融合ポリペプチドについて利用可能な化学、薬理学及び毒性データの詳細な説明は、治験薬概要書(IB)に提供される。
【0139】
2.2.1 化学
本明細書に記載される融合ポリペプチドは、ヒトプロペルジン及び血清アルブミンに結合する組換え、ヒト化VHH二重特異性抗体である。抗体は、15個のアミノ酸のリンカーを介してC末端の抗プロペルジンドメインに融合されたN末端での抗アルブミンドメインから構成される、256個のアミノ酸の一本鎖ポリペプチドからなる。血清アルブミン及びプロペルジン結合部位を形成する可変領域ドメインは、ヒト生殖系列フレームワークにグラフトされたラマ相補性決定領域からなる。フレームワーク領域内では、11位でのラマ残基を変化させずに残して、抗原結合、水溶性及び全体的な安定性を維持した。2つの鎖内ジスルフィド結合、各VHHドメインに局在化する1つのジスルフィド結合が存在する。抗体の理論的平均分子量は27,350.2Daである。pH7.4では、本明細書に記載の融合ポリペプチドは、ヒトプロペルジンに対して323pMの結合解離定数(K)及びヒト血清アルブミンに対して439pMのKを示した。本明細書に記載の融合ポリペプチド(20%v/vの最終血清)によるヒトCAP溶血の遮断についてのIC50は、29nMであった。本明細書に記載の融合ポリペプチドは、およそ20nM(C3)、15nM(プロペルジン)及び19nM(C9)のIC50値で、ヒト血清(20%v/v)によるミエロペルオキシダーゼ基質上へのC3断片、プロペルジン及び補体成分C9(C9)の沈着を遮断した。
【0140】
2.2.2 非臨床薬理学
様々な種の範囲にわたる血清を使用した、本明細書に記載の融合ポリペプチドによるインビトロCAP溶血の遮断の効力の試験では、有意な種交差反応性は、カニクイザル及びアカゲザル由来の血清を使用した場合にのみ観察された。マウス、ラット、モルモット、ミニブタ、ビーグル犬及びウサギの血清中のCAP溶血活性は、試験した本明細書に記載の融合ポリペプチドの最高濃度(>100μg/mL)によって阻害されなかった。本明細書に記載の融合ポリペプチド(20%v/vの最終血清)によるカニクイザルのCAP溶血の遮断についてのIC50は、47nMであった。本明細書に記載の融合ポリペプチドは、カニクイザルプロペルジンに対して2.9nMの結合K及びカニクイザル血清アルブミンに対して2.1nMの結合Kを示した。本明細書に記載の融合ポリペプチドは、およそ11nM(C3)、9nM(プロペルジン)及び17nM(C9)のIC50値で、カニクイザル血清(20%v/v)によるミエロペルオキシダーゼ基質上へのC3断片、プロペルジン及びC9の沈着を遮断した。上記の霊長類を超える種交差反応性の欠如により、調節不全の補体活性に関与する疾患の従来の齧歯類モデルにおいて、本明細書に記載の融合ポリペプチドの生物学的活性を試験することが妨げられた。したがって、まとめると、本明細書に記載の融合ポリペプチドの薬理学的特性、PK、PD特性及び毒性的特性を評価するための非臨床インビトロ及びインビボ試験は、カニクイザルで実施されている。
【0141】
2.2.3 毒性
本明細書に記載の融合ポリペプチドの非臨床的安全性プロファイルは、カニクイザルにおけるインビトロGLP組織交差反応性(TCR)試験並びに非GLP及びGLPの両方のインビボ試験で評価されている。GLP毒性試験では、本明細書に記載の融合ポリペプチドを静脈内(IV)投与(最大で100mg/kgの単回用量)及びSC投与(最大で300mg/kg/週の26週間用量)によって投与した。本明細書に記載の融合ポリペプチドは、TCR試験でヒト組織へのいかなる非特異的結合も実証しなかった。カニクイザルでいかなる有害な全身毒性又は局所毒性も存在しないことに基づき、300mg/kg/週は、SC投与の場合に最大無毒性量(NOAEL)とみなされ、100mg/kgは、本明細書に記載の融合ポリペプチドのIV投与の場合にNOAELとみなされた。SC群のNOAELでの最終投与後、全身曝露(それぞれ8,570μg/mL及び1,160,000μg・hr/mLの最大観測血清濃度[Cmax]及び時間0~168時間の濃度-時間曲線下面積[AUC0~168])は、300mg QWの予想ヒト用量での予測される曝露に対して約30倍の曝露倍数を得た。抗薬物抗体は、非常に少数のサルで観察された場合、全身曝露又は毒性プロファイルに対していかなる影響も有さなかった。
【0142】
2.3 有益性/リスク評価
SCDを有する患者にとって潜在的な有益性があり得る(セクション2.3.2を参照されたい)。特定されたリスク及び潜在的なリスクを以下に記載する。本明細書に記載の融合ポリペプチドの既知の予想される有益性及びリスク並びに合理的に予想されるAEについてのより詳細な情報は、IBに見出すことができる。潜在的リスク軽減戦略を表9に記載する。
【0143】
2.3.1 リスク評価
健康な参加者におけるヒト初回投与(FIH)の第1相試験に加えて、本試験は、本明細書に記載の融合ポリペプチドへの二度目のヒト曝露及びSCDを有する患者への初回の曝露である。これまでの臨床経験が限られているため、潜在的なリスクは、分子の部類及びその作用機序に基づく。最大で300mg/kg/週の26週間のSC投与後又は最大で100mg/kgの単回IV投与後、本明細書に記載の融合ポリペプチドを用いたカニクイザルにおける反復投与毒性試験から潜在的なリスクが特定されず、最大で150mgの5週間のSC後又は1200mgの単回SC投与後、2022年3月11日の時点で健康な参加者における安全性の懸念が特定されなかった。
【0144】
2.3.1.1 髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)感染症
髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)感染症による感染に対する感受性の増加は、プロペルジン欠損症に関連する既知のリスクであり、プロペルジン欠損患者について十分に説明されている(Figueroa,1991)。プロペルジン欠損症と同様に、本明細書に記載の融合ポリペプチド(プロペルジン阻害剤)の使用に関連する主なリスクは、髄膜炎菌感染症のリスクであると予想される。このリスクに対処するために、具体的なリスク軽減策が実施されている。
【0145】
臨床的には、髄膜炎菌(N.meningitidis)のリスクは、投与前に、髄膜炎菌(N.meningitidis)に対して、四価髄膜炎菌コンジュゲートワクチン(MCV4)及び血清群Bワクチンで全ての患者にワクチン接種することにより、プロペルジン欠損患者で軽減される。
【0146】
患者は、初回投与前の3年以内に依然としてワクチン接種されていない場合(又は国/地域のガイドラインに従って)、投与の少なくとも14日前にMCV4及び血清群B髄膜炎菌ワクチン接種される。髄膜炎菌ワクチン接種後14日未満に試験介入治療を開始した参加者は、ワクチン接種後少なくとも2週間、適切な予防的抗生物質による治療を受けなければならない。無作為化の少なくとも14日前に一連の髄膜炎菌ワクチン接種を開始するためにあらゆる努力を払うべきである。
【0147】
更に、参加者は、治験責任医師の裁量において予防的抗生物質で治療され得る。
【0148】
2.3.1.2 免疫原性及び過敏症
本明細書に記載の融合ポリペプチドは、免疫原性である可能性を有し、過敏性反応に関連し得る。一部の健康な参加者は、VHH抗体に対する既存の抗体を有することも知られている。本明細書に記載の融合ポリペプチドに対する抗体は、インビトロスクリーニングアッセイで試験された100人の健康な参加者の血清試料のうちの14人で観察された。
【0149】
本明細書に記載の融合ポリペプチドについての免疫原性のモニタリングを、SoA(セクション1.3)に明記されるように、この試験のために実施される。
【0150】
【表9】
【0151】
2.3.1.3 コロナウイルス感染症2019
SARS-COV-2疾患(コロナウイルス感染症2019[COVID-19])の世界的な大流行は、このプロトコル改正時に多くの国で活発である。こうした特有の状況を踏まえ、COVID-19に関連し得るため、本試験のリスク及び有益性並びにパンデミックの結果として存在する世界的及び地域的な変化に具体的に配慮している。
【0152】
2.3.2.有益性の評価
SCDに対する本明細書に記載の融合ポリペプチドの治療の潜在的な有益性は、貧血及び溶血の評価によって測定されている。ベースラインからの≧1g/dLのヘモグロビンの増加は、臨床的に意味があるとみなされる。加えて、溶血のマーカー(すなわち乳酸デヒドロゲナーゼ[LDH]、間接ビリルビン及びハプトグロビン)の血清レベルにおける改善を含む、溶血の減少によっても肯定的な治療効果が示されるであろう。他の探索的評価項目(血管閉塞性発症[VOC]など)が評価され得る。
【0153】
2.3.2 全体的な有益性:リスクに関する結論
本明細書に記載の融合ポリペプチドは、進行中の第1相試験で評価されており、現在評価中である。本明細書に記載の試験は、本明細書に記載の融合ポリペプチドへの二度目のヒト曝露である。
【0154】
本試験は、SCDを有する患者で実施され、投与は、第1相試験からの安全性、忍容性及びPK/PDデータの審査に基づいて開始される。本試験で投与される用量は、以前の試験で試験された最も高い曝露量よりも低い曝露量をもたらすと予想され、患者における予想される曝露量は、6週及び6ヶ月のGLPサル毒性試験で確立されたNOAEL曝露量よりも低い。厳格な組み入れ/除外基準と、堅牢な安全性モニタリング及びリスク軽減計画が整っている。DMCは、参加者の安全性のために予め指定された時点で利用可能な試験データを評価し、用量変更又は試験の終了について推奨を行う。選択された用量は、プロペルジンの完全な阻害を送達して、SCDを有する患者に本明細書に記載の融合ポリペプチドの潜在的有益性をプラスの有益性/リスク比で提供することが意図される。
【0155】
本試験から得られたデータは、SCDを有する患者における将来的な臨床試験に役立つことが期待される。
【0156】
3.目的及び評価項目
試験の目的及び対応する評価項目を表10に提示する。
【0157】
【表10】
【0158】
4.試験デザイン
4.1 試験の全体的デザイン
これは、SCD(HbSS及びHbSβ-サラセミア)を有する成人患者における、本明細書に記載の融合ポリペプチドの非盲検SCの最大で3つの複数回投与コホートを用いる第2a相試験である。
【0159】
本試験は、本明細書に記載の非盲検融合ポリペプチドの複数のSC投与を受けるために、最大で3つの非盲検コホート(コホート1、2及び3[任意選択的])に登録された最大で30人のSCDを有する成人患者で実施される。本明細書に記載の融合ポリペプチドは、表11に記載されるように投与される。
【0160】
【表11】
【0161】
コホート1及び2についての用量及び投与間隔は、累積安全性データ、第1相試験に登録した参加者からの中間PK/PD解析及びサルにおける6ヶ月のGLP毒性試験からのデータを使用して決定した。任意選択のコホート3は、コホート1及び2からの安全性並びにPK/PDデータの評価後に開始される。
【0162】
コホート1及びコホート2を並行して実施し、適格性の決定に際して、患者をコホートのいずれかに1:1で無作為化する。任意選択のコホート3を開始するという決定は、治験責任医師の裁量でなされ、コホート1及び2からの少なくとも8人の患者(各コホートから4人)が登録した後のPK/PD及び安全性の解析に基づく。更に、任意選択のコホート3の登録は、コホート1及び2が完全に登録された後に開始する。各コホートは、安定用量のヒドロキシ尿素で治療されているSCDを有する患者及び現在ヒドロキシ尿素で治療されていないSCDを有する患者が含まれることを確実にするために層別化される。以前にヒドロキシ尿素で治療されたが、現在ヒドロキシ尿素を使用していない患者については、インフォームドコンセントを提供する少なくとも30日前に治療を中止しなければならない。
【0163】
この試験は、安全性を監視し、試験の予定された中間解析を実施するために独立したDMCを使用する。治験責任医師の裁量によって且つDMCとの協議後、参加者が薬物関連AE以外の理由で投与期間中に中断した場合、追加のSCDを有する参加者を補充参加者として登録することができる。
【0164】
4.2 試験デザインのための科学的理論的根拠
本明細書に記載の融合ポリペプチドについての最初の適応症はSCDである。SCDは、世界中で2000万人~2500万人が罹患し(Aliyu,2008)、米国ではおよそ100,000人が罹患している(Hassell,2010)。EUにおける新生児のSCDの有病率及びSCDキャリアは、それぞれ10,000人に1人~5人及び150人に1人である(Engert,2016)。米国又はEUにおけるSCD患者の利用可能な平均余命の推定値のいくつかは、45歳から65歳まで大きく変動し、一般集団よりもおよそ20歳低い(Gardner,2016;Lubeck,2019;Payne,2020;Platt,1994)。
【0165】
SCDは、遺伝性障害の一群である。β-ヘモグロビン遺伝子における突然変異は、鎌状赤血球ヘモグロビン(HbS)の合成に関与している。SCDにおける最も一般的な遺伝子型は、HbSS、HbSC及びHbSβサラセミアである。SCDの最も一般的な臨床症状は、慢性溶血及びVOCである(Kato,2018;Pecker,2021)。
【0166】
HbSは、異常な物理化学的性質を有し、低酸素濃度下で重合しやすく、特徴的な鎌状を有する赤血球(RBC)の変形を引き起こす。鎌状化は、RBC及び複数の臓器に多くの有害な結果をもたらす。鎌状RBCは、溶血のために寿命が限られている。溶血は、主に血管外貪食(約2/3)及び血管内溶血(約1/3)を介して起こり、貧血につながると考えられている。鎌状RBCの血管内溶血は、遊離ヘモグロビンの放出をもたらし、それが次にCAPを活性化し(遊離ヘムを介して)、一酸化窒素を枯渇させ、内皮損傷の一因となる。RBCの溶血及び鎌状化は、接着分子発現の増加並びに好中球、単球及び血小板の活性化を伴う内皮細胞活性化をもたらす(Kato,2018)。これらのプロセスの結果としてのVOCは、腎臓、肝臓、肺及び心臓などの重要な臓器への血流の遮断をもたらし、虚血、急性疼痛のエピソード及び壊死を促進する。続いて起こる虚血/再灌流傷害は、活性酸素種の生成につながる。これは、次に、慢性炎症状態につながる(Kato,2018;Piel,2017)。患者は、機能的又は実際の無脾症の結果として、特に被包性細菌からの感染症に対する脆弱性も増加している。全体として、これらの機序は、鎌状赤血球腎症、肺高血圧症、無血管性骨壊死、慢性肺疾患及び余命の短縮を含む慢性臓器損傷の発症に寄与する(Kato,2018)。
【0167】
米国では、罹患率及び死亡率を低減するために、SCDを有する乳児の早期診断及び治療を可能にするために、全新生児に対するスクリーニングが確立されている。HbSS及びHbSβ-サラセミアを有する全ての乳児は、侵襲性肺炎球菌疾患を予防するために、ペニシリン予防法及び23価肺炎球菌多糖類ワクチンを受けることが推奨される(Kato,2018;Pecker,2021)。
【0168】
ヒドロキシ尿素、RBC輸血及びオピオイドは、SCDの症状を管理するために一般的に使用される治療法である。近年、鎌状赤血球の合併症の治療のためのいくつかの承認された新規薬物がある:L-グルタミン(Endari(登録商標))、ボクセロトール(Oxbryta(登録商標))及びクリザンリズマブ(Adakveo(登録商標))。しかしながら、これらの治療薬のいずれも、貧血(溶血)及びVOCの両方に対処するものではない。SCDの唯一の治癒的治療選択肢は、造血幹細胞移植である。しかしながら、これは、生命を脅かす合併症のリスクのために重度の患者に留保される(Pecker,2021)。
【0169】
近年、SCDにおける自然免疫系の役割、特にSCDの病態生理学における補体活性化の役割が多く注目されている(Tampaki,2021;Varelas,2021)。研究者主導研究において、エクリズマブは、遅延溶血性輸血反応、VOC及び薬物誘発免疫性溶血性貧血を有するSCD患者における臨床降下を実証している(Chonat,2020)。C5阻害剤と比較して、CAP阻害剤は、SCDの治療で潜在的な利点を有する。ますます多くの刊行物が、鎌状RBCが細胞表面上のC3オプソニン化並びに補体媒介性RBC溶血を引き起こすCAP活性化の焦点であるという仮説を支持している。血管内溶血は、貧血の主な原因の1つであり、RBCからの遊離ヘムを放出することにより、CAP活性化の更なる増幅にも寄与する。鎌状RBCのC3オプソニン化は、細網内皮系を介した血管外溶血を介して貧血も促進する。更に、C3オプソニン化は、VOCに対する重要な貢献要素であることが示されている。C3オプソニン化は、鎌状RBC上のホスファチジルセリンの曝露によって沈殿され得、P-セレクチン及び活性化内皮細胞上の補体受容体3などの接着分子とのその相互作用を増強することによってVOCに寄与することも実証された(Lombardi,2019)。したがって、SCDの非臨床的文献は、全体として、SCD病態生理におけるCAP活性化の役割を強調している。
【0170】
本明細書に記載の融合ポリペプチドは、CAPの構成成分であるヒトプロペルジンに高い親和性で結合し、C3及びC5を切断してそれらの活性化産物にするCAP C3及びC5変換酵素が安定化するのを防止する。プロペルジンに結合することにより、本明細書に記載の融合ポリペプチドは、代替補体系の活性化を妨げ、それによりSCDを治療する潜在力を有する。これを裏付けるために、SCDのマウスモデルで実施された研究は、マウス抗プロペルジン抗体で動物を前処置すると、SCDの2つの主要な臨床的特徴である溶血及び血管閉塞の徴候が著しく改善されることを実証した。
【0171】
現在の非臨床的データ及びヒト初回投与試験からのデータは、SCDを有する患者の治療の可能性として、本明細書に記載の融合ポリペプチドの更なる調査を裏付ける。この試験は、SCD疾患関連バイオマーカーの変化の予備的評価を可能にし、SCDを有する患者における更なる臨床試験のデザインをガイドするように設計される。
【0172】
4.3 用量設定根拠
用量及び投与頻度は、第1相試験における進行中のコホートからの全体的な安全性、忍容性、PK/PDモデリング;SCDマウスモデルにおけるPK、PD及び有効性を含む利用可能な非臨床データ並びにカニクイザルにおけるGLPの6週間及び6ヶ月試験からの毒性データを含む全ての利用可能なデータに基づく。
【0173】
予備的なPK/PDモデルは、健康な参加者における第1相試験からのデータに基づいて確立されている。この半機構的モデルは、3つの結合部位を有する三量体プロペルジンに結合する本明細書に記載の一価の融合ポリペプチドを想定した。遊離プロペルジンとCAP活性との関係は、シグモイドEmaxモデルによって特徴付けられた。このモデルは、モデル診断法によって判断される観察データ(本明細書に記載の融合ポリペプチド、総プロペルジン及び遊離プロペルジン並びにCAP活性)に良好な適合をもたらした。SCD患者における治療用量を推定するために、以下の仮定がなされている。
・マウスSCDモデルからのデータに基づく臨床的有効性には、CAP活性の完全な抑制(ベースライン活性の<1%)が必要である(本明細書IBに詳細に記載される融合ポリペプチド)
・ベースラインプロペルジン濃度は、鎌状赤血球症患者で健康な対象よりも約20%高い(Strauss,1977)
【0174】
加えて、鎌状赤血球症患者における本明細書に記載の融合ポリペプチドのクリアランスを、健康な参加者のそれと類似又は40%高い(SCDに対する他の抗体治療で見られる(Crizanlizumab,2019))ように設定して、曝露及びCAP阻害に対するクリアランス増加の影響を評価した。これらの仮定及び解析に基づいて、300mg QWの用量は、CAP活性をベースライン値の<1%(90%予測間隔の上限)まで阻害し、治療期間中にこの効果を維持し得ると予測される。600mg Q4W又は300mg Q2Wの用量は、投与間隔の大部分中にCAP活性を<1%阻害することも示された。CAP活性は、本明細書に記載の融合ポリペプチドの投与を終了した後、ゆっくりと回復し、ベースラインに戻る。300mg QWでの安全域は、6ヶ月(又は26週間)サル毒性試験で確立されたNOAEL曝露に基づいて約30倍である。600mg Q4W又は300mg Q2Wでの安全域は、NOAEL曝露に基づいて約60倍である。
【0175】
4.4 試験終了の定義
参加者は、SoAに示される最後に予定された処置(セクション1.3)を含む試験の全ての段階を完了した場合、試験を完了したとみなされる。
【0176】
試験終了(EOS)は、SoAに示されるように(セクション1.3)、最後の参加者が最後の来院を完了した日として定義される。
【0177】
5.試験対象集団
プロトコルの放棄又は免除としても知られる、補充及び登録基準に対するプロトコルからの逸脱の将来的な承認は許可されない。
【0178】
5.1 採用基準
年齢
1.参加者は、インフォームドコンセント署名時に18歳~65歳でなければならない。
参加者のタイプ及び疾患特徴
2.SCD(HbSS又はHbSβ-サラセミア)との診断を確定していること。
体重
3.スクリーニング時の体重が≧40kg(両端を含む)。
性別
4.男性又は女性による避妊薬又は避妊具の使用は、臨床試験に参加する人々の避妊方法に関する現地の規制と一致している必要がある。妊娠可能な女性参加者及び妊娠可能な女性パートナーを有する男性参加者は、治療中及び治験薬の最終投与後少なくとも6ヶ月間、治験実施計画書に指定された避妊ガイダンスに従う意思がなければならない。
他の組み入れ基準
5.スクリーニング時にヘモグロビンが5.5~10g/dLであること。
6.過去12ヶ月間に1~10回のVOCを有していたこと。
7.ヒドロキシ尿素を受ける患者は、インフォームドコンセントを提供する前に≧3ヶ月間安定した用量を受けていなければならず、試験中の用量調節の必要性は予想されない。以前にヒドロキシ尿素を使用したが、現在ヒドロキシ尿素治療を受けていない患者(非応答性、不耐性又はヒドロキシ尿素の接種意欲がないため)について、ヒドロキシ尿素治療は、インフォームドコンセントを提供する少なくとも30日前に中断されなければならない。
8.患者は、初回投与前の3年以内に依然としてワクチン接種されていない場合(又は国/地域のガイドラインに従って)、投与の少なくとも14日前にMCV4及び血清群B髄膜炎菌ワクチン接種される。髄膜炎菌ワクチン接種後14日未満に試験介入治療を開始した参加者は、ワクチン接種後少なくとも2週間、適切な予防的抗生物質による治療を受けなければならない。
9.ヘモフィルスインフルエンザ菌b型(Hib)及び肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)のワクチン接種は、SCD患者に対する現在の国/地域のワクチン接種ガイドラインに従って最新のものである。
10.全ての試験要件及び制限事項を遵守する意思がなければならない。
インフォームドコンセント
11.署名されたインフォームドコンセントを与えることができ(又は該当する場合に同意することができ)、これには、ICF及びこのプロトコルに記載されている要件及び制限への準拠が含まれる。
【0179】
5.2 除外基準
以下の基準のいずれかに該当する場合、参加者は、試験から除外される:
1.試験中のヒドロキシ尿素の予定された開始、終了又は用量変更がある場合。
2.インフォームドコンセントを提供してから60日以内にボクセロトール(OXBRYTA)又はクリザンリズマブ(ADAKVEO)を受けている場合。
3.組換えヒトエリスロポエチン(例えば、エポエチンアルファ)による治療を受けている場合。
4.初回投与前6ヶ月以内に補体阻害剤で治療された場合。
5.輸血を長期間受けているか又は初回投与の60日以内に輸血を受けている患者。
6.治験責任医師の見解で参加者を危険にさらす可能性のある何らかの重大な疾患又は障害があること。
7.補体欠損症の病歴があること。
8.髄膜炎菌(N meningitidis)、肺炎レンサ球菌(S pneumoniae)又はHインフルエンザ菌感染症の病歴。
9.悪性腫瘍の病歴、但し、5年以内に再発の証拠がなく治療された非黒色腫皮膚癌又は子宮頸部上皮内癌を除く。
10.スクリーニング時に、B型肝炎(肝炎表面抗原[HBsAg]陽性又は表面抗体陰性[抗HBs]を伴うコア抗体(抗HBc)陽性)又はC型肝炎ウイルス感染(C型肝炎ウイルス[HCV]抗体陽性、ただし、治療の成功が証明され、持続的なウイルス学的反応が証明された患者を除く)の証拠。
11.投与前14日以内の活動性全身性細菌、ウイルス又は真菌感染。
以前の/同時の臨床試験の経験
12.1日目の投与開始前の治験薬の90日以内又は5半減期(いずれか長い方)の臨床試験への参加(すなわち最後のプロトコルに必要な治験来院)がある場合。
13.スクリーニング前のmAbの6ヶ月又は5半減期(いずれか長い方)以内のモノクローナル抗体(mAb)の1回を超える臨床試験への参加(すなわち最後のプロトコルで必要とされる試験来院)又はmAbの臨床試験への参加(すなわち最後のプロトコルで必要とされる試験来院)(その間、参加者が実治験薬に曝露された)がある場合。
診断的評価
14.重度の腎機能障害(推定糸球体濾過量[eGFR]<30mL/分/1.73m)又は長期透析中であること。
他の除外項目
15.妊娠中又は授乳中の女性参加者。
16.本明細書に記載の融合ポリペプチドの賦形剤(例えば、ポリソルベート80)に対するアレルギー又は過敏症の病歴。
【0180】
5.3 生活習慣の配慮
該当せず、本明細書に記載される本試験は、特定の生活習慣の配慮を含まない。
【0181】
5.4 スクリーニング不適格
スクリーニング不適格は、臨床試験への参加に同意したが、適格基準を満たさなかったために治験薬に割り当てられない参加者として定義される。スクリーニング不適格参加者の透明な報告を保証し、臨床試験報告に関する統合基準の公表要件を満たし、規制当局からの問い合わせに回答するために、最小限のスクリーニング不適格情報が必要とされる。最小限の情報には、人口統計、スクリーニング不適格の詳細(例えば、満たされなかった適格基準)及びスクリーニング期間中に発生する任意のSAE及び任意の関連する併用薬を含む任意のAEが含まれる。
【0182】
回復すると予想されるか、又は回復した理由のために本試験への参加基準を満たさない(すなわちスクリーニング不適格)参加者は、治験責任医師とメディカルモニターとの協議及び合意に基づいて再スクリーニングされ得る。スクリーニング時の基準範囲外の任意の異常な検査パラメーターの結果は、適格性を更に決定する目的で、治験責任医師の裁量に従って繰り返され得る。
【0183】
6.試験介入薬
試験介入薬は、試験の治験実施計画書に従って試験参加者に投与することを目的とした任意の臨床試験介入薬、市販の製品、プラセボ又は医療装置として定義される。本明細書に記載される本試験では、試験介入薬は、本明細書に記載される融合ポリペプチドであり、この試験プロトコル全体を通して治験薬とも称される。
【0184】
6.1 投与された試験介入薬
本明細書に記載の融合ポリペプチドの治験薬組成物及びこの試験で投与しようとする用量(非盲検、SC)を表12に示す。
【0185】
【表12】
【0186】
6.2 調製/取扱い/保管/管理
治験薬の調製、取扱い、保管、管理及び投与に関する詳細を以下で論じる。追加の指針は、治験薬管理手順書に提供される。
1.本明細書に記載の融合ポリペプチドは、2~8℃で保管されるべきである。治験責任医師又は被指名者は、投与された全ての治験薬について、輸送中に適切な温度条件が維持されていることを確認しなければならず、いかなる相違も報告され、治験薬の使用前に解決される。
2.試験に登録された参加者のみが治験薬を受けることができ、認可された現場スタッフのみが治験薬を供給又は投与することができる。全ての治験薬は、試験責任医師及び認可された現場スタッフがアクセスできる限り、ラベル付けされた保管条件に従い、安全で環境的に制御され、且つ監視された(手動又は自動で)領域に保管されなければならない。
3.治験責任医師の施設の薬局スタッフは、治験薬の管理、確認及び記録維持(すなわち受領、確認及び最終処分記録)に責任を負う。施設の薬局は、供給品を個別のラベル表示された参加者の投与シリンジに組み立て、組み立てられた製品の有資格者認証を実行する。未使用の試験介入薬の最終処分についての調製、取扱い、保管及び管理に関する更なるガイダンス並びに情報は、治験薬管理手順書に提供される。
【0187】
6.3 バイアスを最小化するための方策:無作為化及び盲検化
コホート1、2及び任意選択のコホート3における全ての組み入れ基準及び除外基準を満たす全ての適格参加者は、本明細書に記載の非盲検融合ポリペプチドを受ける。
【0188】
6.4 試験介入薬の遵守
参加者への試験介入薬の投与は、参加者が試験中の適切な時点で適切な用量を受けることを確実にするために、治験責任医師又はその被指名者の監督下にある。
【0189】
診療所で投与される各用量の日時は、原資料及び症例報告書(CRF)に記録される。
【0190】
試験介入薬の用量及び試験参加者識別は、試験介入薬を投与する人以外の試験現場スタッフのメンバーによって投与時に確認される。
【0191】
試験介入薬の遵守及び管理に関する追加の情報については、治験薬管理手順書を参照されたい。
【0192】
6.5 併用療法
参加者が登録時に受けているか又は試験中に受けるいかなる医薬品(店頭若しくは処方の薬剤、ビタミン及び/又はハーブ系補助剤が挙げられる)、ワクチン又は他の特定の関心分野のものは、以下と共に記録されなければならない。
・使用理由
・開始及び終了の日付が含まれる投与の日付
・用量及び頻度が含まれる投薬量情報
併用療法又は以前の療法に関する質問がある場合、メディカルモニターに連絡する必要がある。
【0193】
6.5.1 許可された薬剤及び療法
マルチビタミン、避妊薬及びパラセタモール(すなわち≦2g/日の用量でのアセトアミノフェン)は、治験責任医師の裁量によって試験中の使用が許可される。局所皮膚製剤は、治験薬投与の24時間前から24時間後まで治験薬注射部位で投与されるべきではない。
【0194】
補体阻害に関連する髄膜炎菌(N.meningitidis)感染のリスクを軽減するための併用薬としての予防的抗生物質による投与及び治療期間の詳細については、セクション8.2.8を参照されたい。
【0195】
他の併用薬は、必要に応じてメディカルモニターと協議して治験責任医師によってケースバイケースで考慮され得る。医学的に必要でない限り、併用処置は許可されない。
【0196】
SCDに対する薬剤及び療法は、セクション6.5.2に提示されているものを除き、許可されている。
【0197】
6.5.2 許可されていない薬剤及び療法
スクリーニング及び治療期間中、患者がヒドロキシ尿素で現在治療されていない場合、ヒドロキシ尿素を開始してはならない。患者がヒドロキシ尿素の安定投与量を受けている場合、ヒドロキシ尿素の投与量を変更又は中止してはならない。ボクセロトール、クリザンリズマブ、エリスロポエチン、他の補体阻害剤及び輸血の使用は、許可されない。上記の薬剤/療法のいずれかが使用される場合、患者はセクション7.1に従って中止される。上記の薬剤/療法は、安全性フォローアップ期間中には許可される。
【0198】
6.6 用量変更
投与量を継続するか又は変更するかの決定は、安全性データの精査後に治験責任医師及び/又はDMCによってなされる。DMCは、安全性の問題、試験実施又は試験中断に関する推奨も行い得る。
【0199】
6.7 試験終了後の介入
フォローアップ介入は、予定されていない。
【0200】
7.試験介入薬の中止及び参加者の中止/離脱
7.1 試験介入薬の中止
稀な場合、参加者が試験介入薬を完全に中止すること(最終的中止)が必要であり得る。試験介入薬が最終的に中止される場合、参加者は、試験に留まり、安全性フォローアップについて評価されるべきである。試験介入薬の中止時及びフォローアップ時に収集されるデータ並びに完了する必要がある更なる評価(セクション1.3)については、SoAを参照されたい。
【0201】
7.2 停止基準
7.2.1 個々の停止ルール
試験中に以下のいずれかが発生した場合、参加者は、介入薬の中止とみなされるべきである:
・重篤な過敏症反応;
・グレード3以上の注射部位反応;
・重篤なコントロール不良な感染症;
・重篤な髄膜炎菌(N meningitidis)、肺炎レンサ球菌(S pneumoniae)又はHインフルエンザ菌感染症;
・セクション6.5.2に定義される許可されない薬剤の使用;
・妊娠若しくは計画妊娠;又は
・治験責任医師の判断で、治験薬投与を継続した患者に実質的な臨床リスクを提示するあらゆるAE、臨床検査値の異常又は併発疾患。
【0202】
7.2.2 試験停止ルール
以下の事項が発生し、治験薬に関連するとみなされる場合、試験は、DMCの推奨で終了され得る:
・2つ以上の髄膜炎菌感染症;
・2つ以上の重篤な(≧グレード3)肺炎球菌感染症;
・2つ以上の重篤な(≧グレード3)Hインフルエンザ菌感染症;
・致命的な結果をもたらす1つの髄膜炎菌感染症、肺炎球菌感染症又はHインフルエンザ菌感染症。
【0203】
7.3 参加者の中止/試験からの離脱
スクリーニング処置を実施する前に、参加者が試験参加に遵守する意思を有することを確実にするためにあらゆる努力を払うべきである。試験スタッフは、全ての試験離脱についてできるだけ早く治験担当医師及びその施設モニターに通知しなければならない。参加者が中止する理由は、原資料及び電子症例報告書(eCRF)に記録する必要がある。
【0204】
参加者は、自身の要求によって任意の時点で試験から離脱し得るか、又は安全性、行動、遵守若しくは管理上の理由のため、治験責任医師の裁量によって任意の時点で離脱し得る。これは、稀であると予想される。
【0205】
試験を中止する際、可能な場合、SoA(セクション1.3)に示されるように、早期中止のための来院を行うべきである。試験中止時及びフォローアップ時に収集されるデータ並びに完了する必要がある更なる評価については、SoAを参照されたい。
【0206】
参加者は、その時点で治験薬及び試験の両方を永久的に中止される。
【0207】
参加者が将来的な情報開示について同意を撤回した場合、治験責任医師は、そのような同意を撤回する前に収集されたあらゆるデータを保持し、継続して使用することができる。
【0208】
参加者が試験から離脱した場合、採取され、試験されなかったあらゆる試料の破壊を要求することができ、治験責任医師はこれを施設試験記録に文書化しなければならない。
【0209】
治験薬関連AE以外の理由でスクリーニング期間又は投与期間中に中止した参加者は、補充され得る。
【0210】
7.4 フォローアップ不能
参加者は、予定された来院を繰り返し行わず、且つ試験施設による連絡が取れない場合、フォローアップ不能とみなされる。参加者が必要とされる試験来院で診療所に戻らない場合、以下の処置を取らなければならない:
・治験施設は、参加者に連絡しようと試み、できるだけ早く行われなかった来院を再度予定し、割り当てられた来院スケジュールを維持することの重要性について参加者に助言し、参加者が試験を継続することを望むか否か及び/又は継続すべきかを確かめなければならない。
・参加者がフォローアップ不能とみなされる前に、治験責任医師又は被指名者は、参加者との連絡を取り戻すためにあらゆる努力を払わなければならない(可能な場合、電子メール、3回の電話連絡、必要に応じて参加者の現住所への証明書の送付又は現地の同等の方法)。これらの連絡の試みは、参加者の医療記録に文書化される必要がある。
・引き続き参加者に連絡が取れない場合、参加者はフォローアップ不能とみなされる。
【0211】
8.試験評価及び手順
試験手順及びそのタイミングは、SoA(セクション1.3)にまとめられている。プロトコルの権利放棄又は免除は、許可されない。
【0212】
参加者が本明細書に記載の融合ポリペプチドを継続するべきか又は中止するべきかを判断するために、発生時又は認識した直後に即座に治験責任医師と直ちに安全性に関する懸念について話し合うべきである。
【0213】
SoAに指定されるものを含む試験デザイン要件に対する遵守は、試験実施に必須且つ必要である。
【0214】
全てのスクリーニング評価を完了し、精査して、可能な限り全ての参加者が適格基準を満たしていることを確認しなければならない。治験責任医師は、スクリーニングされた全ての参加者の詳細を記録し、適格性を確認するか、又は必要に応じてスクリーニング不適格の理由を記録するために、スクリーニングログを維持する。参加者の日常的な臨床管理の一部として実施され、ICFに署名する前に得られた手順は、手順がプロトコルに指定された基準を満たし、施設の標準的な操作手順と一致する場合、SoAに定義された時間枠内に実施された場合、スクリーニング又はベースラインの目的に利用され得る。
【0215】
8.1 有効性評価
コホート1についての評価の収集のタイミングは、セクション1.3、表3及び表6に詳述される。コホート1及びコホート2のPK並びにPD試料の集中的採取のタイミングは、セクション1.3、表5に詳述される。コホート2についての評価の収集のタイミングは、セクション1.3、表4及び表6に詳述される。実施される場合、任意選択のコホート3についての評価の収集のタイミングは、表7及び表8に詳述される。
【0216】
8.1.1 補体バイオマーカーの変化
試験中、以下の補体マーカー(ベースラインからの絶対的変化及び変化率)を測定する。
・補体成分Ba(Ba)
・補体成分C3a(C3a)
・可溶性補体成分C5B-9(sC5B9)
可能な場合、他の補体マーカーを評価し得る。
【0217】
8.1.2 VOCに関連するバイオマーカーの変化
試験中、以下のVOCのマーカー(ベースラインからの絶対的変化及び変化率)を測定し得る。
・ヘモペキシン
・一酸化窒素
・炎症マーカー(例えば、インターロイキン-1)
・細胞接着マーカー(例えば、可溶性P-セレクチン)
可能な場合、他のマーカーを評価し得る。
【0218】
8.1.3 ヘモグロビンの変化
ベースラインからのヘモグロビンの変化を評価するために血液試料を採取する。
【0219】
8.1.4 溶血のマーカー
試験中、以下の溶血のマーカーを測定する。
・血清LDHレベル
・網状赤血球絶対数
・血清間接ビリルビン
・血清ハプトグロビン及びヘモペキシン
【0220】
8.1.5 VOCの評価
鎌状赤血球症関連疼痛発症(VOC)は、SoA(セクション1.3)に詳述されるとおり、試験全体を通して収集される。
【0221】
患者には、インフォームドコンセントに署名した後、VOCの症状を記録するために紙の日記が発行される。日記は、施設を訪問するたびに治験責任医師又は被指名者によって収集され、新しい日記が提供される。
【0222】
8.2 安全性評価
全てのコホートについての全ての安全性評価のための予定された時点は、SoA(セクション1.3)に提供される。
【0223】
8.2.1 身体検査
完全な身体検査は、少なくとも全身の外観;皮膚;頭部、耳、眼、鼻及び咽頭;頸部;リンパ節;胸部;心臓;腹腔;四肢;中枢神経系;及び筋骨格系の評価を含む。
【0224】
簡易的身体検査は、少なくとも皮膚、肺、心血管系並びに腹部(肝臓及び脾臓)の評価を含む。
【0225】
身長、体重及びBMIは、セクション1.3、SoAに従って記録される。
【0226】
治験責任医師は、過去の重篤な病期に関連する臨床徴候に特に注意を払うべきである。
【0227】
8.2.2 バイタルサイン
バイタルサイン測定は、参加者が仰臥位又は半仰臥位で少なくとも5分間休んだ後に行うものであり、体温(鼓膜又は口腔)、呼吸数、仰臥位血圧又は脈拍を含む。理想的には、各参加者に対して同じ腕をBP及び脈拍測定に使用する必要がある。立位(起立性)血圧は、スクリーニング時にのみ測定される。
【0228】
バイタルサインの測定タイミングは、SoA(セクション1.3)に記載されている。
【0229】
範囲外の血圧測定値又は脈拍測定値は、治験責任医師の裁量で測定を繰り返す。確認された臨床的に重要なバイタルサイン測定値をAEとして記録する。
【0230】
8.2.3 心電図
心拍数、PR、QRS及びQT間隔を得るために、SoA(セクション1.3)に記載される時点で3回連続12誘導ECGを記録する。12誘導ECG記録は、参加者が仰臥位で少なくとも10分間休んだ後に行われる。
【0231】
3回連続のECGが必要とされる各時点において、3回の個別のECGトレースを2分以内の間隔で連続して可能な限り近接して取得する必要がある。
【0232】
8.2.3.1 12誘導心電図の安全性審査
記録された全てのECGは、治験責任医師又は医学的資格を有する被指名者によって審査される。参加者が異常なECGを示した場合、追加の安全性記録を行うことができ、異常が追跡され、解消される。
【0233】
8.2.4 臨床検査評価
実施される臨床検査のリストについて表13を、タイミング及び頻度についてSoA(セクション1.3)を参照されたい。臨床検査評価は、別段の指定がない限り、中央検査室によって実施される。
【0234】
治験責任医師は、臨床検査報告書を審査し、この審査を文書化し、試験中に発生した臨床的に関連するあらゆる変化をeCRFのAEセクションに記録しなければならない。臨床検査報告書には原資料を添付して提出する必要がある。臨床的に重要な検査値異常所見は、治験責任医師によって参加者の状態について予想されるよりも重症であると判断されない限り、基礎疾患と関連しないものである。
【0235】
試験への参加中に臨床的に重要な異常とみなされる値を有する全ての臨床検査は、値が正常若しくはベースラインに戻るまで又は治験責任医師若しくはメディカルモニターによって臨床的に重大とみなされなくなるまで繰り返されるべきである。
・そのような値が治験責任医師によって合理的と判断される期間内に正常/ベースラインに戻らない場合、原因を特定し、治験責任医師に通知すべきである。
・全てのプロトコルに要求される臨床検査評価は、検査室マニュアル及びSoAに従って実施されなければならない。
【0236】
施設の現地検査室で実施されたプロトコルではない臨床検査評価からの検査値が、参加者管理の変更を必要とするか、又は治験責任医師によって臨床的に有意であるとみなされる場合(例えば、SAE若しくはAE又は用量変更)、結果は、eCRFに記録されなければならない。
【0237】
8.2.5 臨床安全性の臨床検査評価
8.2.5.1 ウイルス血清学検査
スクリーニング時に採取された血液試料をHIV-1、HIV-2、HbsAg、HBc抗体(IgG陽性の場合、抗HBc IgG+IgM)及びHCV抗体力価について解析する。
【0238】
8.2.6 注入部位の評価
皮下注射部位の評価は、SoA(セクション1.3)に指定された時点で実施される。注射部位反応は、臨床的に重要であるとみなされない限り、AEとして記録される。
【0239】
8.2.7 注射関連反応
注射関連反応は、治験責任医師によって治験薬と関連すると評価された、SC注射開始中又はその24時間以内に発生する、全身性AE(例えば、発熱、悪寒、紅潮、心拍数及び血圧の変化、呼吸困難、吐き気、嘔吐、下痢及び全身性皮膚発疹)として定義される。
【0240】
8.2.8 ワクチン及び予防的抗生物質
補体阻害に関連する髄膜炎菌(N.meningitidis)感染のリスクを軽減するために、参加者に以下を投与する:
1.患者は、初回投与前3年以内に依然としてワクチン接種されていない場合(又は国/地域のガイドラインに従って)、投与の少なくとも14日前に入手可能な場合、MCV4及び血清群B髄膜炎菌ワクチン接種を受ける。
2.患者は、治験責任医師の裁量において予防的抗生物質で治療される。
患者は、現在の国/地域のガイドラインに従い、他の病原体(例えば、ヘモフィルスインフルエンザ菌、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)に対してワクチン接種されなければならない。
【0241】
8.3 有害事象及び重篤な有害事象
全てのAEは、参加者によって(又は適切な場合には介護者、代理人若しくは参加者の法的に権限を与えられた代表者によって)治験責任医師又は医学的資格を有する被指名者に報告される。
【0242】
治験責任医師及び任意の医学的資格を有する被指名者は、AE又はSAEの定義を満たす事象の検出、文書化及び記録に責任を負い、重篤であるか、試験介入薬若しくは試験処置に関連すると考えられるか、又は参加者に試験介入薬を中止させたAEのフォローアップに責任を負う(セクション7を参照されたい)。
【0243】
8.3.1 AE及びSAE情報を収集するための期間並びに頻度
全てのAE及びSAEは、ICFの署名から最後のフォローアップ来院まで収集される。全てのSAEは、記録され、直ちに治験責任医師又は被指名者に報告され、いかなる事情があっても、これが24時間を超えてはならない。治験責任医師は、治験施設が事象を認識した日から24時間以内に、更新されたSAEデータを治験責任医師に提出する。
【0244】
治験責任医師は、試験参加の終了後にAE又はSAEデータを積極的に求める義務を負わない。しかしながら、治験責任医師が、参加者が試験から退院した後の任意の時点で死亡を含む何らかのSAEを知り、且つその事象が試験介入薬又は試験参加に関連していることが妥当であると考える場合、治験責任医師は速やかに試験担当者に通知しなければならない。
【0245】
8.3.2 AE及びSAEを検出する方法
AE及び/又はSAEを検出する際にバイアスが導入されないように注意されたい。参加者に対するオープンエンド且つ非主導的な口頭質問が、AEの発生について尋ねるための好ましい方法である。
【0246】
8.3.3 AE及びSAEのフォローアップ
最初のAE/SAE報告後、治験責任医師は、その後の来院/連絡時に各参加者を積極的にフォローアップすることが求められる。全てのSAEは、回復、安定化、事象が別途説明されるまで又は参加者がフォローアップ不能になるまでフォローアップされる(セクション7.4で定義されるように)。
【0247】
8.3.4 SAEの規制報告要件
治験責任医師から治験責任医師へのSAEの迅速な通知は、参加者の安全性及び臨床研究下での試験介入薬の安全性に対する法的義務及び倫理的責任が満たされるように必須である。
【0248】
治験責任医師は、臨床調査下での試験介入薬の安全性について地方の規制当局及び他の規制当局の両方に通知する法的責任を有する。治験責任医師は、規制当局、治験審査会(IRB)/IEC及び治験責任医師への安全性報告に関する国固有の規制要件を遵守する。
【0249】
予想外の重篤な有害反応が疑われる場合、現地の規制要件に従って報告し、必要に応じて治験責任医師に転送しなければならない。
【0250】
治験責任医師からSAE又は他の特定の安全性情報(例えば、SAEの概要又はリスト)を記載する治験責任医師安全性報告書を受け取った治験責任医師は、審査し、次いでそれをIBと共に提出し、現地の要件に従って適切であればIRB/IECに通知する。
【0251】
8.4 過量投与の処置
この試験では、プロトコルで指定された用量を超える試験介入薬のいかなる用量も、過剰投与とみなされる。過剰投与のための特定の処置又は解毒剤はない。
【0252】
過剰投与は、過剰投与に起因する好ましくない医学的事象がない限り、AEとみなされない投薬過誤である。
【0253】
過剰投与又は過剰投与の疑いがある場合、治験責任医師は以下のことを行う必要がある:
1.直ちにメディカルモニターに連絡する。
2.いかなるAE/SAEについても参加者を綿密にモニターする。
3.メディカルモニターから要請された場合、PK/PD解析のための試料を得る(ケースバイケースで決定)。
4.eCRFにおける過剰投与の量並びに期間を文書化する。
【0254】
投与中断又は変更に関する決定は、参加者の臨床評価に基づき、治験責任医師がメディカルモニターと協議して行う。
【0255】
8.5 薬物動態
全血試料は、SoA(セクション1.3)に明記されるように、本明細書に記載される融合ポリペプチドの血清濃度の測定のために採取される。追加の試料は、治験責任医師との合意が保証され、且つ合意が得られる場合、試験中の追加の時点で採取され得る。総血液量が、国/地域のガイドラインによる参加者の容量の制限を超えない。適切なモニタリングを確実にするために、新たに入手可能なデータ(例えば、ピーク血清濃度の時間により近いデータを得るため)に、試験の過程中にサンプリングのタイミングを変更し得る。
・生体試料の採取及び取扱いについての説明は、治験責任医師によって提供される。各試料の実際の日時(24時間制)を記録する。
・試料を使用して、本明細書に記載の融合ポリペプチドのPKを評価する。本明細書に記載の融合ポリペプチドの解析のために採取された試料の血清濃度は、試験中又は試験後に生じる懸念に関連する安全性又は有効性の側面を評価するためにも使用され得る。
・試料は、調節不全の補体活性に関連する方法、アッセイ、予後及び/又はコンパニオン診断を開発するための研究に使用され得る。
【0256】
8.6 薬力学
全血試料は、血清総プロペルジン及び遊離プロパジン濃度、CAP活性並びにSoA(セクション1.3)に指定されるような補体活性化の他の潜在的尺度の測定のために採取される。追加の試料は、治験責任医師との合意が正当であり、且つ試験参加者からの同意を受けた場合、試験中の追加の時点で採取され得る。合計血液量が、国/地域のガイドラインによる参加者の血液量制限値を超えない。適切なモニタリングを確実にするために、新たに利用可能なデータに基づいて(例えば、ピーク血漿濃度の時間により近いデータを取得するために)、試験の過程中にサンプリングのタイミングを変更し得る。
【0257】
生体試料の採取及び取扱いについての説明は、治験責任医師によって提供される。各試料の実際の日時(24時間制)を記録する。
【0258】
試料を使用して、本明細書に記載の融合ポリペプチドのPDを評価する。本明細書に記載の融合ポリペプチドの解析のために採取された試料濃度は、試験中又は試験後に生じる懸念に関連する安全性又は有効性の側面を評価するためにも使用され得る。未使用の試料は、必要に応じて追加の評価を実施するために、最大で25年間保持され得る。
【0259】
8.7 遺伝学
遺伝学は、本試験では評価されない。
【0260】
8.8 バイオマーカー
バイオマーカー研究(例えば、探索的)のための試料の採取もこの試験の一部である。
【0261】
バイオマーカー研究のために以下の試料が必要とされ、SoA(セクション1.3)に指定されるとおり、この試験の全ての参加者から採取される。
・血液
・尿
補体調節不全、炎症及び内皮活性化/損傷のマーカーが挙げられ得るが、これらに限定されない試験のために試料を採取する。
【0262】
8.9 免疫原性の評価
融合ポリペプチド(ADA)に対する抗体は、SoA(セクション1.3)に従い、全ての参加者から採取した全血試料中で評価する。
【0263】
血清試料は、ADAについてスクリーニングされる。スクリーニングが陽性である場合、試料を、確認ADAアッセイを使用して解析し、確認された陽性試料の力価を報告する。本明細書に記載の融合ポリペプチドに対する抗体の検出及び特性評価は、検証済みのアッセイ法を用いて、治験責任医師によるか又は治験責任医師の監督下で実施される。必要であるとみなされる場合、力価及び中和抗体の存在を決定するために(探索的解析として)試料を更に特徴付け得る。
【0264】
各試料の実際の日時(24時間制)を記録する。必要に応じて、追加の安全性評価を実施するために、試料を最大で25年間保管することができる。
【0265】
免疫原性解析のための血清試料を採取、処理、保管及び輸送するための手順に関する詳細な説明は、検査室のマニュアルに提供される。
【0266】
9.統計的考察
9.1 統計的仮説
該当なし。
【0267】
9.2 試料サイズの決定
12人の参加者がコホート1及び2の各々に登録される。安定したSCDを有する患者では、ヘモグロビン値が変化する可能性は低い。試料サイズは、両側95%信頼区間の下限値で、0g/dLを除外するために、目標とするヘモグロビンのベースラインからの変化に基づいて決定される。標準偏差を1g/dLと仮定すると、参加者12人の試料サイズは、0.05の両側有意水準で、1g/dLのベースラインからの変化を検出するための88%の検出力を提供する。任意選択のコホート3では、6人の参加者が登録され、PK/PDモデリング手法を用いてコホート1、コホート2及びコホート3のデータを組み合わせることにより、本明細書に記載の融合ポリペプチドの曝露/応答関係を定義する。コホート3の試料サイズは、検出力の目的で決定されない。
【0268】
9.3 解析のための集団
解析の目的のために、以下の集団を定義する。
【0269】
【表16】
【0270】
9.4 統計解析
一般に、連続変数の記述統計は、欠損していない値の数、算術平均、標準偏差、中央値、最小値及び最大値を含む。PKパラメーターの記述統計は、観察数、算術平均、標準偏差、算術変動係数(%CV)、中央値、最小値、最大値、幾何平均及び幾何%CVを含む。カテゴリー変数は、パーセンテージ及び頻度数を使用して、コホート及び時点ごとに要約される。
【0271】
SAPは、最初のデータカットオフ/データベースロックの前に展開及び確定され、解析に含める参加者集団並びに必要に応じて欠落、未使用及び偽データを考慮に入れるための手順を更に説明する。このセクションは、主要評価項目及び副次的評価項目の予定された統計解析の概要である。
【0272】
9.4.1 有効性解析
9.4.1.1 補体バイオマーカーの変化
補体バイオマーカー(例えば、Ba、C3a及びsC5B9)におけるベースラインからの絶対的変化及び変化率は、コホート1及び2の治療終了時(12週間)に評価される。追加の詳細はSAPに記載されている。
【0273】
9.4.1.2 ヘモグロビンの変化
コホート1及び2について、治療終了時(12週間)、ヘモグロビンのベースラインからの絶対的変化及び変化率を評価する。追加の詳細はSAPに記載されている。
【0274】
9.4.1.3 ヘモグロビン応答への時間
ヘモグロビン応答は、ベースラインから>1g/dLのヘモグロビンレベルの増加として定義される。コホート1及び2について、治療終了時(12週間)にヘモグロビン応答を評価する。追加の詳細はSAPに記載されている。
【0275】
9.4.1.4 溶血のマーカー
コホート1及び2の治療終了時(12週間)、溶血のマーカー(血清LDHレベル、網状赤血球絶対数、血清間接ビリルビン、血清ハプトグロビン及びヘモペキシン)のベースラインからの絶対的変化及び変化率を評価する。追加の詳細はSAPに記載されている。
【0276】
9.4.1.5 VOCに関連するバイオマーカーの変化の探索的解析
VOCに関連するバイオマーカーは、治療終了後(コホート1及び2では12週間)に評価され得る。追加の詳細はSAPに記載されている。
【0277】
9.4.2 VOCの探索的評価
鎌状赤血球症関連疼痛発症(VOC)は、経口若しくは非経口麻薬材又は非経口非ステロイド抗炎症薬による治療及び医療施設訪問をもたらすVOC事象以外の医学的に決定された原因を伴わない疼痛の急性エピソードとして定義される。合併症と伴わないVOCは、VOCエピソード中に他のいかなるSCD合併症も発生しないこととして定義される。合併症を伴うVOCは、VOCエピソード中に他のSCD合併症と診断された場合と定義される。急性胸部症候群、限局性肝壊死、脾臓血球貯蔵及び持続勃起症は、本試験でVOC事象とみなされる。合併症を伴うVOCもAEとして報告されることになる。可能な場合、以下も評価され得る。
・医療機関受診につながるVOCの数
・合併症を伴わないVOC、急性胸部症候群、限局性肝壊死、脾臓血球貯蔵及び持続勃起症の数
・治験薬の初回投与後の最初のVOCまでの時間
【0278】
9.4.3 安全性解析
試験についての主要評価項目は、安全性及び忍容性である。
【0279】
全ての安全性解析は、安全性に関する解析対象集団に対して実施され、コホートごとに報告される。
【0280】
安全性解析は、全てのTEAE、ECG、臨床検査データ、身体検査及びバイタルサイン測定値の記述統計を用いた解析を含む。この試験の安全性パラメーターについて、推測統計解析は、予定されていない。AE及びSAEの有病率は、各コホート及び治療群についてのSOC及び基本語並びに各治療群内で全体的に且つ治験薬との関係によって要約される。AEは、コホート及び治療群ごとに且つ全体的に各治療郡内及び重症度別に要約される。試験からの撤退をもたらすSAE及びAEが列挙される。カテゴリー(例えば、全体的な、SOC、基本語)内に複数のAEを有する参加者は、そのカテゴリーで1回カウントされる。重症度の表について、カテゴリー内の参加者の最も重症度の高い事象がカウントされる。
【0281】
バイタルサイン測定値及び臨床検査評価(例えば、臨床化学、白血球百分率及び尿検査)におけるベースラインからの変化は、各コホート及び全体によって要約される。検査パラメーター値は、有害事象共通用語規準(CTCAE、v5.0、2017年11月27日公開)に従って等級分けされる。これらの検査パラメーターのために、コホート及び治療群ごとのシフト表を作成する。これらの表は、基準範囲と比較した各ベースライングレードでの参加者の数及び試験中に投与後に評価した最も悪い最高グレードへの変化をまとめる。
【0282】
併用薬は、全て世界保健機構医薬品辞書を使用してコード化され、併用薬の頻度及び割合がまとめられる。
【0283】
9.4.3.1 ECG解析
心臓評価は、安全性に関する解析対象集団で実施される。
【0284】
心拍数、PR、RR、QRS、QT及びQTcF間隔を含むECGパラメーターは、指定された時点で測定される。収集された時点での3回連続のECG読み取り値の平均が計算され、治療前ベースライン値からの変化が、各コホート及び治療群ごとに評価される。
【0285】
コホート及び治療群ごとに、各来院時に以下の外れ値基準のいずれかを満たす参加者の絶対数、頻度及び割合を要約する外れ値解析を実施する。
・QT、QTcF間隔>450ミリ秒
・QT、QTcF間隔>480ミリ秒
・QT、QTcF間隔>500ミリ秒
・QT、QTcF間隔は、ベースラインから>30ミリ秒増加する
・QT、QTcF間隔は、ベースラインから>60ミリ秒増加する
血漿PK濃度に対する薬物関連QT/QTc間隔変化の解析は、全ての投与レジメンで実施され得る。この解析の原理は、Garnettら(Garnett,2018)によって記載される統計的方法に従う。
【0286】
詳細な解析は、SAP又は別のECG解析計画で指定されている。
【0287】
9.4.4 他の解析
9.4.1.1 薬物動態解析
全てのPK解析は、PK解析対象集団に対して実施され、コホートごとに報告される。
【0288】
実際のサンプリング日時と共に、本明細書に記載の融合ポリペプチドのSC投与を受けた患者からの個々の血清濃度データを使用して、集団PK解析手法を用いてPKを特性評価する。詳細はSAPに提供されている。
【0289】
9.4.1.2 薬力学的解析
全てのPD解析は、PD解析対象集団に対して実施され、コホートごとに報告される。
【0290】
投与される本明細書に記載の融合ポリペプチドの全てのSC投与のPD効果は、Weislab APアッセイを使用して、血清総プロペルジン及び遊離プロペルジン濃度並びにCAP活性の変化を評価することによって評価される。加えて、経時的なプロペルジン活性の他の尺度の探索的評価が適切であるとみなされ得る。
【0291】
9.4.1.3 免疫原性解析
免疫原性の評価のために、確認された陽性ADAの発生率を要約する。更に、陽性ADAの確認後、試料をADA力価及び中和抗体の存在について評価する(可能な場合)。
【0292】
9.4.1.4 探索的解析
バイオマーカーアッセイ及び臨床有効性評価項目に関する追加の探索的解析が実施され得る。これらの解析の詳細は、SAPに提示されている。
【0293】
9.5 中間解析
中間解析は、コホート1及び2からの少なくとも12人の患者(各コホートから6人)が登録され、治療期間を完了し、その後の段階の試験を通知した後に実施され得る。中間解析は、安全性、有効性、PK/PD及び免疫原性データを含む。これらの解析の詳細は、SAPに提示されている。
【0294】
10.臨床検査
表13に詳述されるプロトコルに要求される臨床検査試験は、別段の指定がない限り、中央検査室によって実施される。
【0295】
【表13-1】
【0296】
【表13-2】
【0297】
略語及びそれらの説明のリストを表14に提供する。
【0298】
【表14-1】
【0299】
【表14-2】
【0300】
実施例2.健康な成人における抗プロペルジン/抗血清アルブミン二重特異性単一可変ドメイン抗体の安全性、忍容性、薬物動態、薬力学及び免疫原性:第1相試験の結果
この無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験は、健康な成人における、配列番号1のアミノ酸配列を有する融合ポリペプチド又はその修飾物の皮下(SC)投与及び静脈内(IV)投与の安全性、忍容性、薬物動態(PK)、薬力学(PD)及び免疫原性を評価した。
【0301】
この第I相ヒト初回投与(FIH)試験では、18~65歳の健康なボランティアを融合ポリペプチド又はプラセボに無作為化した(3:1)。融合ポリペプチドは、単回及び複数回漸増用量でSC投与し、単回用量としてIV投与した。10の投与コホートを計画した(図2)。補体APの予想される完全阻害は、>70日であるため、2つのコホートは登録を開始しなかった。プロペルジン阻害による髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)感染のリスクが潜在的に増大するため、本明細書に記載の融合ポリペプチドを受ける前にワクチン接種が必要であり、参加者は治療期間中に抗生物質の投与を続けた。
【0302】
60人の参加者を無作為化した(融合ポリペプチド、45人;プラセボ、15人)。コホート1、3、4及び5は、融合ポリペプチドで治療された5人の参加者(それぞれ)を有し;コホート2、6及び9は、融合ポリペプチドで治療された6人の参加者を有し;コホート8は、融合ポリペプチドで治療された7人の参加者を有した。人口統計学的特性及びベースライン特性は、融合ポリペプチド及びプラセボ群で類似していた。4人の参加者が試験を中止した:1人は、フォローアップ不能であり、1人は、禁止薬物の使用後であり、2人は、同意を撤回した(1人は、プラセボでの有害事象[AE]後)。融合ポリペプチドに曝露された参加者では、AEに起因する中止はなかった。治療下で発現したAE(TEAE)の大部分は軽度であり、試験治療とは無関係であると評価された。重篤なAE、重篤な感染症事象又は死亡はなかった。TEAE発生率は、コホート間で類似していた。治療関連TEAEは、プラセボ群よりも融合ポリペプチドにおいて高頻度で発生し(11[24.4%]対2[13.3%]);融合ポリペプチドによる最も一般的な治療関連TEAEは、吐き気(n=2)、頭痛(n=2)及び注入部位紅斑(n=2)であった。髄膜炎菌(N.meningitidis)による感染症は報告されなかった。
【0303】
50mg以外の全ての単回投与コホートで用量比例性が観察された。幾何平均蓄積比、RCmax及びRAUCは、複数回投与後にそれぞれ約2.8及び3であった。SC投与された融合ポリペプチドの平均絶対バイオアベイラビリティは、94%であった。補体代替経路(AP)活性は、融合ポリペプチドの投与直後に減少した(図3)。用量が増加するにつれて、完全なAP遮断(ベースラインの<1%)の期間が増加し;コホート4、5及び6では、完全なAP阻害は、>30日間持続した。全ての単回投与コホートでは、平均%AP溶血は、観察期間の終わりまでにベースラインに戻った。複数回投与コホートでは、AP活性の完全な阻害が、70日間及び84日間観察された(それぞれコホート8及び9)。古典的経路(CP)及びレクチン経路(LP)活性に変化はなかった。
【0304】
4名の参加者は、ベースライン時に既存の免疫反応性を有していたが、いずれも治療が引き起こしたものではなかった。治療中に発現した抗薬物抗体(ADA)は、150mgのSC群、450mgのSC群、450mgのIV群及び1200mgのSC群における参加者のそれぞれ20%、40%、100%及び83.3%で発生し;大部分は低力価であり、PKに影響を与えなかった。複数回投与コホート(コホート8及び9)では、それぞれ71.4%及び100%がADAを発生し、その大部分は、低い力価及び一過性反応期間を有した。
【0305】
健康な参加者におけるこのFIH試験では、本明細書に記載の融合ポリペプチドは、予想外の安全性の懸念を示さず、忍容性が良好であった。本明細書に記載の融合ポリペプチドによる補体AP阻害は、迅速且つ完全であり、CP及びLPは、影響を受けなかった。
【0306】
他の実施形態
前述の本発明は、理解の明瞭さのために例証及び実施例として詳細に記載されたが、説明及び実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書に引用される全ての特許文献及び科学文献の開示は、参照によりその全体が明示的に組み込まれる。
図1
図2
図3
【配列表】
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【国際調査報告】