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特表2025-532079電解槽のための流れ構成、電解槽、電解設備、動作方法および製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-09-29
(54)【発明の名称】電解槽のための流れ構成、電解槽、電解設備、動作方法および製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/08 20060101AFI20250919BHJP
   C25B 11/031 20210101ALI20250919BHJP
   C25B 15/02 20210101ALI20250919BHJP
   C25B 15/027 20210101ALI20250919BHJP
   C25B 15/021 20210101ALI20250919BHJP
   C25B 9/05 20210101ALI20250919BHJP
   C25B 1/04 20210101ALN20250919BHJP
   C25B 9/00 20210101ALN20250919BHJP
   C25B 9/15 20210101ALN20250919BHJP
   C25B 9/23 20210101ALN20250919BHJP
   C25B 11/046 20210101ALN20250919BHJP
   C25B 11/061 20210101ALN20250919BHJP
   C25B 11/063 20210101ALN20250919BHJP
   C25B 11/081 20210101ALN20250919BHJP
   C25B 11/089 20210101ALN20250919BHJP
   C25B 11/077 20210101ALN20250919BHJP
   C25B 13/02 20060101ALN20250919BHJP
【FI】
C25B15/08 302
C25B11/031
C25B15/02
C25B15/027
C25B15/021
C25B9/05
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B9/15
C25B9/23
C25B11/046
C25B11/061
C25B11/063
C25B11/081
C25B11/089
C25B11/077
C25B13/02 301
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2025516983
(86)(22)【出願日】2023-09-20
(85)【翻訳文提出日】2025-05-09
(86)【国際出願番号】 EP2023075957
(87)【国際公開番号】W WO2024061976
(87)【国際公開日】2024-03-28
(31)【優先権主張番号】2213749.1
(32)【優先日】2022-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523352653
【氏名又は名称】スーパークリティカル ソリューションズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ラス,ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】タン,ルーク
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン,アレックス
(72)【発明者】
【氏名】グラハム,デレック
(72)【発明者】
【氏名】グーレイ,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】エバンズ,ルーズ
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4K011AA12
4K011AA21
4K011AA22
4K011AA30
4K011AA48
4K011BA06
4K011BA07
4K011BA08
4K011DA01
4K021AA01
4K021BA02
4K021BB04
4K021BC05
4K021CA12
4K021CA13
4K021DB11
4K021DB43
4K021DB53
4K021DC01
4K021DC03
(57)【要約】
電解槽のための流れ構成(100)であって、電解槽の第1の電極および第2の電極に対応する第1の多孔質壁(110)および第2の多孔質壁(120)と、第1の多孔質壁と第2の多孔質壁との間に配置されており、入口を通じて流体を受け入れるように構成されている入口チャンバ(102)と、電解のそれぞれの流体反応生成物を保持するための第1の出口チャンバ(130)および第2の出口チャンバ(140)とを備える、流れ構成が開示される。多孔質壁のうちの一方または各々は、ボディ(116)、および、流体が入口チャンバからそれぞれの出口チャンバへと流れることを可能にするために離散的なロケーションにおいてボディを通じて延在する複数の多孔質領域(117)を備え、各多孔質領域は、ボディを通る流路のそれぞれのネットワークを画定する。電解槽および電解設備、動作方法、および製造方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解槽のための流れ構成であって、
前記電解槽の第1の電極および第2の電極に対応する第1の多孔質壁および第2の多孔質壁と、
前記第1の多孔質壁と前記第2の多孔質壁との間に配置されており、入口を通じて流体を受け入れるように構成されている入口チャンバと、
それぞれ前記第1の多孔質壁および前記第2の多孔質壁によって前記入口チャンバから分離されている、電解のそれぞれの流体反応生成物を保持するための第1の出口チャンバおよび第2の出口チャンバと
を備え、
前記第1の多孔質壁および前記第2の多孔質壁のうちの一方または各々は、不連続多孔質構造を有し、前記不連続多孔質構造を有する前記多孔質壁または各多孔質壁は、
前記入口チャンバに隣接する入口側およびそれぞれの前記出口チャンバに隣接する出口側を有するボディを備え、前記ボディは、長手方向に沿って長尺であり、前記入口側から前記出口側への厚さ方向を有し、
前記流体が前記入口チャンバからそれぞれの前記出口チャンバへと流れることを可能にするために離散的なロケーションにおいて前記ボディを通じて延在する複数の多孔質領域を備え、
各多孔質領域は、前記ボディを通じた流路のそれぞれのネットワークを画定する、流れ構成。
【請求項2】
前記不連続多孔質構造を有する前記多孔質壁または各多孔質壁について、各多孔質領域は、長手方向成分を有する前記ボディを通る経路に沿って長尺である、請求項1に記載の流れ構成。
【請求項3】
前記不連続多孔質構造を有する前記多孔質壁または各多孔質壁について、各多孔質領域は、前記長手方向に対して20°~80°の経路角度を規定する前記ボディを通る経路に沿って長尺である、請求項2に記載の流れ構成。
【請求項4】
前記第1の多孔質壁と前記第2の多孔質壁の両方が前記不連続多孔質構造を有し、前記不連続多孔質構造の少なくとも1つの特性は、それぞれの最小オフセットだけ、前記第1の多孔質壁と前記第2の多孔質壁との間で異なり、前記特性は、
それぞれの前記多孔質壁の多孔度、関連付けられる最小オフセットは0.01、
各多孔質壁について前記多孔質領域がない場合の前記多孔質壁の前記ボディの前記多孔度として定義される、それぞれの前記多孔質壁のマクロ多孔度、関連付けられる最小オフセットは0.01、
各多孔質壁について前記多孔質領域の前記多孔度として定義される、それぞれの前記多孔質壁の微細多孔度、関連付けられる最小オフセットは0.05、
それぞれの前記多孔質領域が離間されるピッチ、前記多孔質壁のそれぞれのピッチの最小値に対する最小オフセットは10%、
それぞれの前記多孔質領域の平均断面積、各断面積は、前記多孔質領域の体積を前記厚さ方向に沿った前記多孔質領域の延在範囲で除算することによって決定され、関連付けられる最小オフセットは10%、
各多孔質領域が、前記多孔質領域がそれに沿って長尺である前記経路に垂直な円形断面を有するときの、それぞれの前記多孔質領域の平均直径、関連付けられる最小オフセットは10%、
前記多孔質領域がそれに沿って長尺である前記経路とそれぞれの前記長手方向との間の角度として決定される、それぞれの前記多孔質領域の経路角度、関連付けられる最小オフセットは5°、および
それぞれの前記厚さ方向に沿った前記多孔質壁の厚さ、最も薄い前記多孔質壁に対する関連付けられる最小オフセットは10%
から成る群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の流れ構成。
【請求項5】
前記不連続多孔質構造を有する前記多孔質壁または各多孔質壁について、
前記多孔質領域は各々、0.2~0.9の多孔度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の流れ構成。
【請求項6】
前記不連続多孔質構造を有する前記多孔質壁または各多孔質壁について、
各多孔質領域は、10,000~250,000μmの断面積を有し、各断面積は、前記多孔質領域の体積を前記厚さ方向に沿った前記多孔質領域の延在範囲で除算した値として決定され、および/または
各多孔質領域が、25~250μmの平均直径を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の流れ構成。
【請求項7】
前記不連続多孔質構造を有する前記多孔質壁または各多孔質壁について、
前記多孔質領域の材料組成は前記ボディの材料組成と異なる、請求項1~6のいずれか一項に記載の流れ構成。
【請求項8】
前記不連続多孔質構造を有する前記多孔質壁または各多孔質壁について、
前記ボディは、前記複数の多孔質領域と一体的に形成され、
各多孔質領域は、前記多孔質領域を包囲し、前記ボディと前記多孔質領域との間の多孔度の変化によって画定されるそれぞれの境界において前記ボディとインターフェースする、請求項1~6のいずれか一項に記載の流れ構成。
【請求項9】
前記不連続多孔質構造を有する前記多孔質壁または各多孔質壁について、
前記ボディの材料組成は、それぞれの前記多孔質領域の前記材料組成と同じである、請求項8に記載の流れ構成。
【請求項10】
電解質液の連続電解を実施するための電解槽であって、入口において電解質液を受け入れるための請求項1~9のいずれか一項に記載の流れ構成を備え、第1の多孔質壁および第2の多孔質壁はそれぞれ前記電解槽の第1の電極および第2の電極を提供する、電解槽。
【請求項11】
前記電解槽は、コントローラをさらに備え、前記コントローラは、流動制御機器を制御し、前記第1の多孔質壁および/または前記第2の多孔質壁における前記電解質液の超臨界条件を維持するように構成されている、請求項10に記載の電解槽。
【請求項12】
前記コントローラは、流動制御機器を制御し、水性電解質液について少なくとも22MPaの圧力および少なくとも374℃の温度の、前記第1の多孔質壁および/または前記第2の多孔質壁における前記電解質液の超臨界圧力および温度条件を維持するように構成されている、請求項11に記載の電解槽。
【請求項13】
前記不連続多孔質構造を有し、前記電解槽の電極を提供する前記多孔質壁または各多孔質壁について、
前記多孔質領域は、電解触媒を含み、以て、電解半反応のためのそれぞれの前記電極の電解触媒領域を画定する、請求項10~12のいずれか一項に記載の電解槽。
【請求項14】
前記不連続多孔質構造を有し、前記電解槽の電極を提供する前記多孔質壁または各多孔質壁について、
それぞれの前記多孔質領域は各々、電解触媒含有微粒子から形成される多孔質媒体を含む、請求項13に記載の電解槽。
【請求項15】
前記不連続多孔質構造を有する前記多孔質壁または各多孔質壁について、
前記多孔質領域の材料組成は前記ボディの材料組成と異なり、
任意選択で、前記ボディは電解を抑制するためのそれぞれの前記電極の受動領域を備える、請求項13~14のいずれか一項に記載の電解槽。
【請求項16】
前記不連続多孔質構造を有する前記多孔質壁または各多孔質壁について、
前記ボディは、前記複数の多孔質領域と一体的に形成され、
各多孔質領域は、前記多孔質領域を包囲し、前記ボディと前記多孔質領域との間の多孔度の変化によって画定されるそれぞれの境界において前記ボディとインターフェースし、
前記多孔質領域は、電解触媒を含み、以て、電解半反応のためのそれぞれの前記電極の電解触媒領域に属し、
前記多孔質領域および前記ボディは、前記電解触媒を含む共通の材料組成を有する、請求項10~14のいずれか一項に記載の電解槽。
【請求項17】
前記不連続多孔質構造を有する前記多孔質壁または各多孔質壁について、
前記ボディの前記入口側が、前記電解触媒領域よりも電解触媒としての活性が低くなるように構成されている受動領域によって画定され、
任意選択で、前記受動領域は、電解を抑制するための前記ボディの前記入口側を画定する不動態化コーティングを含む、請求項13~16のいずれか一項に記載の電解槽。
【請求項18】
電解質液、任意選択で水性電解質液の供給源と、
前記電解質液の連続電解を実施するための、請求項10~17のいずれか一項に記載の電解槽と
を備える、電解設備。
【請求項19】
請求項10~17のいずれか一項に記載の電解槽または請求項18に記載の電解設備を動作させる方法であって、
それぞれの流体反応生成物を生成するために第1の多孔質壁および第2の多孔質壁によって提供される第1の電極および第2の電極において電解半反応を実行するために入口を介して電解質液の入口流を入口チャンバに提供することを含み、
前記電解質液および/または関連付けられるイオンは不連続多孔質構造を有する前記または各電極の多孔質領域内へと流れてそれぞれの前記電極と反応し、
第1の出口チャンバおよび第2の出口持チャンバの各々は、放出のためのそれぞれの前記流体反応生成物を保持し、それぞれの前記電極は、前記流体反応生成物の前記出口チャンバから前記入口チャンバへの返流を抑制する、方法。
【請求項20】
前記第1の多孔質壁および/または前記第2の多孔質壁における前記電解質液の超臨界温度および圧力条件を維持するように熱力学的および/または流速条件を制御することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
電解槽の不連続多孔質構造を有する多孔質壁を製造する方法であって、
前記多孔質壁のボディを提供することであって、前記ボディは、長手方向に沿って長尺であり、第1の側から第2の側への厚さ方向を有する、ボディを提供することと、
複数の開放領域を形成するために前記ボディから材料を除去することであって、前記開放領域は、離散的なロケーションにおいて前記ボディを通じて延在し、各開放領域は、長手方向成分を有する前記ボディを通る経路に沿って長尺である、除去することと、
電解触媒組成物を、前記開放領域内へと流れるように前記ボディに付着させることと、
前記電解触媒組成物の電解触媒成分が前記開放領域の各ロケーションにおいて多孔質領域を形成する熱処理動作を実施するために前記ボディを加熱することであって、各多孔質領域は、流体が前記ボディの前記第1の側から前記ボディの前記第2の側へと流れることを可能にするために、前記ボディを通る流路のそれぞれのネットワークを画定する、加熱することと
を含む、方法。
【請求項22】
前記電解触媒組成物を付着させた後で、前記熱処理動作の前に実行される、前記電解触媒組成物の成分を蒸発させるための乾燥動作をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記熱処理動作は、前記ボディを150~1000℃の目標温度まで加熱することを含む、請求項21~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記電解触媒組成物は、前記ボディに付着されるときに、約1Pa・s~約30Pa・sの粘度を有する、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記電解触媒組成物は、前記ボディに付着されるときに、電解触媒と液体との混合物を含む、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
請求項1~7のいずれか一項に記載の流れ構成、または請求項10~15のいずれか一項に記載の電解槽の不連続多孔質構造を有する多孔質壁を提供するための、請求項21~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
電解槽の不連続多孔質構造を有する多孔質壁を製造する方法であって、
付加製造プロセスによって、多孔質壁を形成することを含み、前記多孔質壁は、
第1の側および第2の側を有するボディであって、長手方向に沿って長尺であり、前記第1の側から前記第2の側への厚さ方向を有する、ボディと、
流体が前記第1の側から前記第2の側へと流れることを可能にするために離散的なロケーションにおいて前記ボディを通じて延在する複数の多孔質領域とを備え、
各多孔質領域は、前記ボディを通じた流路のそれぞれのネットワークを画定し、
各多孔質領域は、長手方向成分を有する前記ボディを通る経路に沿って長尺であり、
前記付加製造プロセスは、前記多孔質領域が前記ボディよりも高い開放多孔度をもって形成されるように、形成中に前記多孔質壁の多孔度を変化させるように制御される、方法。
【請求項28】
前記多孔質領域および前記ボディは、前記電解触媒を含む共通の材料組成を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記多孔質領域を含む前記多孔質壁の電解触媒領域よりも電解触媒としての活性が低くなるように構成されている不動態化コーティングを、前記ボディの前記第1の側に提供することをさらに含む、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
請求項8~9のいずれか一項に記載の流れ構成、または請求項16または17に記載の電解槽の不連続多孔質構造を有する多孔質壁を提供するための、請求項26~29のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解槽のための流れ構成、電解槽、電解設備、そのような電解槽または設備のための動作方法および製造方法に関する。排他的にではないが特に、本開示は、超臨界条件における連続電解、特に、水および水性電解質液の電解を実施するためのそのようなシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解の1つの用途は、エネルギー貯蔵のための水素の生成である。電気を使用して、水から水素と酸素とを分離することができる。貯蔵された水素と酸素とを燃料電池内で再結合して、電気を生成することができる。その間に、水素(および酸素)は貯蔵および輸送され得る。電解および燃料電池技術の効率の改善によって、多くのエネルギー貯蔵問題、特に、再生可能エネルギー源からのエネルギーの貯蔵に対する解決策として、水素エネルギー貯蔵が提案されている。
【0003】
電解の効率は、電解セルの設計に内在する損失に依存する。そのような損失は、電解セルに過電圧を与えると考えることができ、これは、セルが、電解反応を継続するために理論的に熱力学的に必要とされるよりも多くのエネルギーを必要とすることを表す。
【0004】
過電圧は、複数の異なる要因によって生じ得る。たとえば、水の電解の傑出した方法は、イオン輸送を可能にしながら、水素および酸素反応生成物の混合を防止するためにカソードとアノードとを分離するポリマー電解質膜の使用(PEM電解)に依拠する。しかしながら、PEM膜が存在することによって、システムに過電圧が導入される。PEM膜を使用しない電解セル設計が考察されているが、そのような設計は、電界のための効率的なイオン交換を可能にしながら(すなわち、過電圧を最小限に抑えながら)反応生成物を分離し、それらを分離したまま維持すること(たとえば、酸素および水素)における課題に直面する。
【0005】
電極表面上に存在し、これを塞ぐ反応生成物気泡(たとえば、水素および酸素気泡)の形成によって、および、電解質の存在(たとえば、電極の周囲の電解質液中の)によって、さらなる過電圧が導入される。
【0006】
電解と関連付けられる過電圧を減少させることが望ましい。
【0007】
PEM膜の使用を回避するために多孔質壁を備える電解槽を使用することが提案されている。国際公開第2022/106874号は、多孔質壁を使用して、外側の第2のチャネル9および第3のチャネル11から流体を受け入れる中央の第1の流体チャネル7を分割することを提案しており、電極3、5が第2のチャネル9および第3のチャネル11の中に設けられている。多孔質壁は、第1の流体チャネル7をそれぞれ第2のチャネル9および第3のチャネル11と接続する傾斜流路を有することによって多孔質となっており、傾斜流路は、50μm~200μmの開口幅または直径を有する。
【発明の概要】
【0008】
第1の態様によれば、電解槽のための流れ構成であって、
電解槽の第1の電極および第2の電極に対応する第1の多孔質壁および第2の多孔質壁と、
第1の多孔質壁と第2の多孔質壁との間に配置されており、入口を通じて流体を受け入れるように構成されている入口チャンバと、
それぞれ第1の多孔質壁および第2の多孔質壁によって入口チャンバから分離されている、電解のそれぞれの流体反応生成物を保持するための第1の出口チャンバおよび第2の出口チャンバと
を備え、
第1の多孔質壁および第2の多孔質壁のうちの一方または各々は、不連続多孔質構造を有し、不連続多孔質構造を有する当該多孔質壁または各多孔質壁は、
入口チャンバに隣接する入口側およびそれぞれの出口チャンバに隣接する出口側を有するボディを備え、ボディは、長手方向に沿って長尺であり、入口側から出口側への厚さ方向を有し、
流体が入口チャンバからそれぞれの出口チャンバへと流れることを可能にするために離散的なロケーションにおいてボディを通じて延在する複数の多孔質領域を備え、
各多孔質領域は、ボディを通じた流路のそれぞれのネットワークを画定する、流れ構成が開示される。
【0009】
不連続多孔質構造を有する上記多孔質壁または各多孔質壁について、各多孔質領域が、長手方向成分を有するボディを通る経路に沿って長尺であることがあり得る。
【0010】
不連続多孔質構造を有する上記多孔質壁または各多孔質壁について、各多孔質領域が、長手方向に対して20°~80°の経路角度を規定するボディを通る経路に沿って長尺であることがあり得る。
【0011】
経路角度は、25°~75°、たとえば、30°~70°、35°~70°、40°~70°、たとえば、50°~70°であってもよい。
【0012】
「長尺」という表現は、多孔質領域がその幅に対して長く、結果、それに沿って多孔質領域が長尺である方向が経路(長手方向成分を有する)を画定するという特性に関係する。長手方向成分は、ボディの長手方向に対応する(たとえば、平行である)経路の非ゼロ成分である。長尺物体(たとえば、構造、領域、部材)は、単一の長尺経路(双方向経路であってもよい)を有することは諒解されたい。したがって、それに沿って多孔質領域が延在範囲を有するが、それに沿って多孔質領域が長尺である経路に対応しない経路は、上記定義を満たす経路ではない。この経路は、線形または実質的に線形であってもよい。この経路は、湾曲していてもよい。
【0013】
各多孔質領域の長尺性および/またはその向き(たとえば、傾きの角度)に関する定義は、多孔質領域自体、または、そこでそれがボディとインターフェースする多孔質領域の境界に対して相互交換可能に表現されてもよい。特に、上記定義のような各多孔質領域について、長手方向成分を有するボディを通る経路(たとえば、多孔質領域のものと同じ経路)に沿って長尺である、そのような境界が存在する。多孔質領域の経路に関する上記定義の各々は、境界に対して等しく、かつ相互交換可能に適用可能である。各境界は、それぞれの多孔質領域を取り囲んで、ボディの入口側および出口側に対応する開放端を有する閉じた境界を形成し得る。多孔質領域の経路または境界は、(それぞれ)多孔質領域または境界を通る中心線経路を参照することによって画定することができ、これは、厚さ方向に沿った連続する位置において(それぞれ)多孔質領域または境界の複数の断面の重心を通る経路であり得る(また、図心軸として理解または参照され得る)。
【0014】
流れ構成は、連続電解電解槽(すなわち、同時に、電解質液の入口流を受け入れ、それぞれの電解反応によって生成される流体反応生成物の出口流を放出するように構成されている電解槽)のものであってもよい。上記または各多孔質壁のボディは、ボディ内の多孔質領域の配置によって(すなわち、多孔質領域が離散的に配置されること、および、長手方向成分を有する経路に沿って長尺であり、以て、全体としてボディを通じて不均一な流れを提供することによって)提供される異方性多孔質構造を有するものとして定義することができる。多孔質領域自体は、たとえば、多孔質媒体の概して均一な分布によって提供されるような等方性構造を有するものとして定義され得る。多孔質媒体は、多孔質領域の範囲内で概して均一に分布するという点において等方性であり得、多孔質領域の境界のみが多孔質壁に異方性を与える。
【0015】
流れ構成は、不連続多孔質構造を有する上記または各多孔質壁について、それぞれの複数の多孔質領域の各々がそれに沿って長尺である経路が出口チャンバに向かって上向きの成分を有するという点において、設置配向において設置されるように構成され得る。したがって、各多孔質領域は、上向きの成分を有する多孔質領域を通る浮力駆動流が優勢であるときに、それぞれの出口チャンバから入口チャンバへの返流を抑制するように構成することができる。
【0016】
流れ構成は、不連続多孔質構造を有する上記または各多孔質壁が垂直方向上向きであるとき、それぞれの複数の多孔質領域の各々が上向きの成分を有するそれぞれの出口チャンバに向かう経路に沿って長尺であるように構成され得る。
【0017】
厚さ方向は、入口側から出口側への最短距離に対応する方向であり得る。厚さ方向は、それぞれの多孔質壁の長手方向に直交し得る。多孔質壁は各々、共通の長手方向に対して長尺であり得(すなわち、それらは各々、平行な方向に沿って長尺であり得る)、共通の長手方向に直交するそれぞれの厚さ方向を有し得る。
【0018】
上記または各多孔質壁は、その長手方向に関して軸対称であってもよく、結果、長手方向の周りの任意の角度ロケーションにおける厚さ方向は、長手方向を中心とした半径方向に対応する局所的な厚さ方向である。両方の多孔質壁が軸対称であるとき、それらは互いに同軸でもあり得る。長手方向は、上記または各多孔質壁の断面の重心を通過し得る。
【0019】
他の様態で、流れ構成は、横方向と長手方向の両方に沿って線形的に延在する平面多孔質壁などの、1つまたは複数の非軸対称多孔質壁を有して実装され得る。長手方向に沿った多孔質壁の延在範囲は、横方向に沿った延在範囲よりも相対的に大きくてもよく、結果、これは、長手方向に沿って長尺である。
【0020】
第1の多孔質壁と第2の多孔質壁の両方が不連続多孔質構造を有し、以下から成る群から選択される、不連続多孔質構造の少なくとも1つの特性が、それぞれの最小オフセットだけ、第1の多孔質壁と第2の多孔質壁との間で異なることがあり得る。
【0021】
それぞれの多孔質壁の多孔度、関連付けられる最小オフセットは0.01、
各多孔質壁について多孔質領域がない場合の多孔質壁のボディの多孔度として定義される、それぞれの多孔質壁のマクロ多孔度、関連付けられる最小オフセットは0.01、
各多孔質壁について多孔質領域の多孔度として定義される、それぞれの多孔質壁の微細多孔度、関連付けられる最小オフセットは0.05、
それぞれの多孔質領域が離間されるピッチ、多孔質壁のそれぞれのピッチの最小値に対する最小オフセットは10%、
それぞれの多孔質領域の平均断面積、各断面積は、多孔質領域の体積を厚さ方向に沿った多孔質領域の延在範囲で除算することによって決定され、関連付けられる最小オフセットは10%、
各多孔質領域が、多孔質領域がそれに沿って長尺である経路に垂直な円形断面を有するときの、それぞれの多孔質領域の平均直径、関連付けられる最小オフセットは10%、
多孔質領域がそれに沿って長尺である経路とそれぞれの長手方向との間の角度として決定される、それぞれの多孔質領域の経路角度、関連付けられる最小オフセットは5°、および
それぞれの厚さ方向に沿った多孔質壁の厚さ、最も薄い多孔質壁に対する関連付けられる最小オフセットは10%。
【0022】
上記定義のような最小オフセットは、パラメータのそれぞれの値が異なる最小量であり、たとえば、それらは、少なくともこの量だけ異なり得る(したがって、この量を超えて異なり得る)。
【0023】
それぞれの多孔質壁の多孔度と関連付けられる最小オフセットは、少なくとも0.01、たとえば、少なくとも0.02、少なくとも0.05、少なくとも0.1、少なくとも0.2または少なくとも0.3であってもよい。それぞれの多孔質壁の多孔度は、0.01~0.5、たとえば、0.01~0.3、0.02~0.3、0.1~0.3、0.2~0.3のオフセットだけ異なってもよい。
【0024】
それぞれの多孔質壁のマクロ多孔度と関連付けられる最小オフセットは、少なくとも0.01、たとえば、少なくとも0.02、少なくとも0.05、少なくとも0.1、少なくとも0.2または少なくとも0.3であってもよい。それぞれの多孔質壁の多孔度は、0.01~0.5、たとえば、0.01~0.3、0.02~0.3、0.1~0.3、0.2~0.3のオフセットだけ異なってもよい。
【0025】
それぞれの多孔質壁の微細多孔度と関連付けられる最小オフセットは、少なくとも0.05、たとえば、少なくとも0.1、少なくとも0.2、少なくとも0.3または少なくとも0.5であってもよい。それぞれの多孔質壁の多孔度は、0.05~0.8、たとえば、0.1~0.8、0.2~0.8、0.3~0.8、0.5~0.8のオフセットだけ異なってもよい。
【0026】
上記定義のようなマクロ多孔度は、他の様態では、上記または各多孔質壁の一次多孔度として参照される場合もある。上記定義のようなマクロ多孔度は、他の様態では、上記または各多孔質壁の二次多孔度として参照される場合もある。
【0027】
それぞれの多孔質領域の平均断面積と関連付けられる最小オフセットは、少なくとも10%、たとえば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、または少なくとも100%であってもよい。平均断面積は、10%~200%、たとえば、10%~200%、20%~200%、30%~200%、50%~200%または100%~200%のオフセットだけ異なってもよい。平均断面積は、10%~100%、たとえば、10%~100%、20%~100%、30%~100%、または50%~100%のオフセットだけ異なってもよい。
【0028】
それぞれの多孔質領域の平均直径と関連付けられる最小オフセットは、少なくとも10%、たとえば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、または少なくとも100%であってもよい。平均直径は、10%~200%、たとえば、10%~200%、20%~200%、30%~200%、50%~200%または100%~200%のオフセットだけ異なってもよい。平均直径は、10%~100%、たとえば、10%~100%、20%~100%、30%~100%、または50%~100%のオフセットだけ異なってもよい。
【0029】
それぞれの多孔質領域の経路角度と関連付けられる最小オフセットは、5°以上、たとえば、10°以上、15°以上、20°以上であってもよい。経路角度は、5°~60°、たとえば、10°~60°、15°~60°、20°~60°、5°~40°、10°~40°、15°~40°、20°~40°、5°~20°、または10°~20°のオフセットだけ異なってもよい。
【0030】
それぞれの多孔質領域の厚さと関連付けられる最小オフセットは、少なくとも10%、たとえば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、または少なくとも100%であってもよい。厚さは、10%~200%、たとえば、10%~200%、20%~200%、30%~200%、50%~200%または100%~200%のオフセットだけ異なってもよい。平均断面積は、10%~100%、たとえば、10%~100%、20%~100%、30%~100%、または50%~100%のオフセットだけ異なってもよい。
【0031】
上記パラメータが平均に関連する場合、これらは、それぞれの複数の多孔質領域の数で重み付けされた平均として定義され得る。
【0032】
本明細書において定義されるものとしての多孔度は、それぞれの構成要素または構造の開放多孔度である。
【0033】
多孔質壁の多孔度は、多孔質壁の総多孔度である。本明細書の他の箇所に記載のように、多孔度は、多孔質であるように構成されている多孔質壁の長手方向延在範囲にわたって評価されるものとする(たとえば、電気接続のための、非多孔質の近位または遠位ロケーションは除外する)。
【0034】
多孔質壁の微細多孔度は、多孔質壁の多孔質領域の多孔度のみに関係する。したがって、多孔質壁の微細多孔度は、多孔質領域内に位置する多孔質媒体の多孔度に関係し得る。多孔質媒体の微細多孔度(たとえば、多孔質媒体の試料が多孔質壁から隔離されるかまた別個に製造される場合)、したがって多孔質壁の微細多孔度は、AutoPore Vデバイス(米国のMicromeritics Instrument Corporationから入手可能)を使用してASTM規格D4284およびD6761に従って水銀ポロシメトリによって直接的に測定することができる。
【0035】
各多孔質壁のマクロ多孔度は、単独で考慮される多孔質壁のボディの多孔度に関係する(たとえば、多孔質領域の全体が開放である、すなわち、多孔質媒体を包含しないと考えられる)。多孔質壁のマクロ多孔度は、多孔質壁の設計および/または測定寸法(開放領域の寸法を含む)を参照することによって算出することができる。代替的に、開放領域が多孔質媒体で充填されないか、または、まだ充填されていない場合、多孔質壁のマクロ多孔度は、AutoPore Vデバイス(米国のMicromeritics Instrument Corporationから入手可能)を使用してASTM規格D4284およびD6761に従って水銀ポロシメトリによって直接的に測定することができる。
【0036】
多孔質壁の総多孔度は、マクロ多孔度および微細多孔度の積として決定することができる。代替的に、多孔質壁の開放領域がすでに多孔質媒体を包含する場合、多孔質壁の総多孔度を、AutoPore Vデバイス(米国のMicromeritics Instrument Corporationから入手可能)を使用してASTM規格D4284およびD6761に従って水銀ポロシメトリによって直接的に測定することができる。多孔質壁の微細多孔度はまた、多孔質壁の測定総多孔度を、多孔質壁の測定または算出マクロ多孔度によって除算することによって決定することもできる(たとえば、多孔質媒体を多孔質壁から隔離することなく)。
【0037】
ピッチは、均一であり得、または、多孔質領域の不均一な分布において最も近い間隔を参照することによって決定することができる。それぞれの多孔質領域の経路角度は、均一であり得、または、それぞれの多孔質領域の角度の平均として決定することができる。
【0038】
多孔質領域の直径は、それぞれの壁の入口側および出口側の多孔質領域の端部において測定される多孔質領域の平均直径として決定することができる。多孔質領域が長手方向延在範囲を有し得ると考えると、それらは入口側および出口側において実質的に楕円形のプロファイルを提示し得、その場合、直径は、多孔質領域のそれぞれの端部の周方向延在範囲として測定されることになる。
【0039】
多孔質領域がそれに沿って長尺である経路と長手方向との間の経路角度は、多孔質領域の境界がそれに沿って延在する経路と長手方向との間の角度として決定することができ、長手方向および局所的厚さ方向を含む平面(すなわち、それらの方向が中に存在する平面)内で評価され得る。同様に、多孔質領域がそれに沿って長尺である経路とそれぞれの長手方向との間の角度は、多孔質領域の境界がそれに沿って延在する経路と長手方向との間の角度として決定することができ、長手方向およびそれぞれの局所的厚さ方向を含むそれぞれの平面内で評価され得る。局所的厚さ方向は、それぞれの多孔質領域に対して局所的な厚さ方向である。たとえば、環状多孔質壁について、厚さ方向は、多孔質壁の周りで変化し、多孔質壁の半径方向に対応し得る。それぞれの多孔質領域の傾きの角度は、均一であり得、または、多孔質領域のそれぞれの境界の角度の平均として決定することができる。
【0040】
上記使用のような「ピッチ」という表現は、当該技術分野の通常の意味をとり、多孔質領域の中心間の距離に関する。本開示は、第1の多孔質壁および第2の多孔質壁が非平坦(たとえば、環状)であるとき、ピッチは依然として多孔質領域の中心間の絶対距離を参照することによって決定されるが、環状であるとき(たとえば、多孔質領域がそれぞれの多孔質壁の半径方向内側で終端する場合、または、半径方向内側がそれぞれの多孔質領域に対する開口部を有する場合)は、それぞれの多孔質壁の半径方向内側において評価されると想定する。したがって、同心かつ環状の第1の多孔質壁および第2の多孔質壁については、多孔質領域の等しい角度分布が、それにもかかわらず、異なるピッチに対応することになる。
【0041】
不連続多孔質構造を有する上記多孔質壁または各多孔質壁について、多孔質領域が各々、0.2-0.9、たとえば、0.2~0.8、または0.3~0.8、または0.5~0.8、または0.6~0.8、または0.3~0.7の多孔度(たとえば、微細多孔度)を有することがあり得る。多孔質領域の多孔度は、本明細書の他の箇所に記載のように(たとえば、AutoPore Vデバイス(米国のMicromeritics Instrument Corporationから入手可能))を使用してASTM規格D4284およびD6761に従って水銀ポロシメトリによって決定することができる。
【0042】
不連続多孔質構造を有する上記多孔質壁または各多孔質壁が、0.03~0.5、たとえば、0.03~0.3、または0.03~0.2、または0.05~0.15、または0.05~0.1の多孔度(たとえば、総多孔度)を有することがあり得る。多孔質壁の多孔度は、本明細書の他の箇所に記載のように(たとえば、AutoPore Vデバイス(米国のMicromeritics Instrument Corporationから入手可能))を使用してASTM規格D4284およびD6761に従って水銀ポロシメトリによって決定することができる。
【0043】
不連続多孔質構造を有する上記多孔質壁または各多孔質壁が、1%~20%、たとえば、2%~20%、または3%~20%、または4%~20%、または5%~20%、または6%~20%、または7%~20%、または8%~20%、または9%~20%、または10%~20%、または1%~19%、または2%~19%、または3%~19%、または4%~19%、または5%~19%、または6%~19%、または7%~19%、または8%~19%、または9%~19%、または10%~19%、または1%~18%、または2%~18%、または3%~18%、または4%~18%、または5%~18%、または6%~18%、または7%~18%、または8%~18%、または9%~18%、または10%~18%、または1%~17%、または2%~17%、または3%~17%、または4%~17%、または5%~17%、または6%~17%、または7%~17%、または8%~17%、または9%~17%、または10%~17%、または1%~16%、または2%~16%、または3%~16%、または4%~16%、または5%~16%、または6%~16%、または7%~16%、または8%~16%、または9%~16%、または10%~16%、または1%~15%、または2%~15%、または3%~15%、または4%~15%、または5%~15%、または6%~15%、または7%~15%、または8%~15%、または9%~15%、または10%~15%、または1%~14%、または2%~14%、または3%~14%、または4%~14%、または5%~14%、または6%~14%、または7%~14%、または8%~14%、または9%~14%、または10%~14%、または1%~13%、または2%~13%、または3%~13%、または4%~13%、または5%~13%、または6%~13%、または7%~13%、または8%~13%、または9%~13%、または10%~13%、または1%~12%、または2%~12%、または3%~12%、または4%~12%、または5%~12%、または6%~12%、または7%~12%、または8%~12%、または9%~12%、または10%~12%、または1%~11%、または2%~11%、または3%~11%、または4%~11%、または5%~11%、または6%~11%、または7%~11%、または8%~11%、または9%~11%、または10%~11%、または1%~10%、または2%~10%、または3%~10%、または4%~10%、または5%~10%、または6%~10%、または7%~10%、または8%~10%、または9%~10の多孔度(たとえば、総多孔度)を有することがあり得る。多孔質壁の多孔度は、本明細書の他の箇所に記載のように(たとえば、AutoPore Vデバイス(米国のMicromeritics Instrument Corporationから入手可能))を使用してASTM規格D4284およびD6761に従って水銀ポロシメトリによって決定することができる。
【0044】
不連続多孔質構造を有する上記または各多孔質壁について、多孔質領域が各々、本明細書の他の箇所に記載のように(たとえば、AutoPore Vデバイス(米国のMicromeritics Instrument Corporationから入手可能))を使用してASTM規格D4284およびD6761に従って水銀ポロシメトリによって決定されるものとしての、約10~約50μm、たとえば、約20~約40μmのメジアン孔径を有することがあり得る。
【0045】
不連続多孔質構造を有する上記または各多孔質壁が、本明細書の他の箇所に記載のように(たとえば、AutoPore Vデバイス(米国のMicromeritics Instrument Corporationから入手可能))を使用してASTM規格D4284およびD6761に従って水銀ポロシメトリによって決定されるものとしての、約10~約400ミリダーシー、約10~約50ミリダーシー、または約250~約400ミリダーシー、または約100~約200ミリダーシーの透過性を有することがあり得る。
【0046】
不連続多孔質構造を有する上記または各多孔質壁について、多孔質領域が各々、本明細書の他の箇所に記載のように(たとえば、AutoPore Vデバイス(米国のMicromeritics Instrument Corporationから入手可能))を使用してASTM規格D4284およびD6761に従って水銀ポロシメトリによって決定されるものとしての、約5~約60μm、または約5~約20μm、または約40~約60μm、または約20~約50μmの代表長さを有することがあり得る。
【0047】
不連続多孔質構造を有する上記または各多孔質壁が、本明細書の他の箇所に記載のように(たとえば、AutoPore Vデバイス(米国のMicromeritics Instrument Corporationから入手可能))を使用してASTM規格D4284およびD6761に従って水銀ポロシメトリによって決定されるものとしての、約10~約80、または約10~約30、または約30~約50、または約50~80の屈曲度を有することがあり得る。
【0048】
不連続多孔質構造を有する上記または各多孔質壁について、各多孔質領域が、10,000~250,000μmの断面積を有し、各断面積が、多孔質領域の体積を厚さ方向に沿った多孔質領域の延在範囲で除算した値として決定され、および/または、各多孔質領域が、25~250μmの平均直径を有することがあり得る。
【0049】
各多孔質領域が、多孔質領域がそれに沿って長尺である経路に垂直な概して円形の(たとえば、円形)断面を有することがあり得る。
【0050】
各多孔質領域は、25~250μm、たとえば、50~250μm、50~150μm、70~150μm、または約120μmの平均直径を有してもよい。平均直径は、それぞれの多孔質領域の長さに沿った平均断面直径であってもよい。
【0051】
各多孔質領域は、25~250μm、たとえば、25~100μm、25~80μm、または25-50μmの中間点直径を有してもよい。中間点直径は、それぞれの多孔質領域の長さに沿った中間の直径であってもよい。
【0052】
各多孔質領域は、25~250μm、たとえば、50-250μm、50-150μm、70-150μm、または約120μmの入口径を有してもよい。入口径は、それぞれの壁の入口側における多孔質領域の直径であってもよい。
【0053】
各多孔質領域は、25~250μm、たとえば、50-250μm、50-150μm、70-150μm、または約120μmの出口径を有してもよい。出口径は、それぞれの壁の出口側における多孔質領域の直径であってもよい。
【0054】
各多孔質領域が、10,000~250,000μm、たとえば、15,000~250,000μm、15,000~150,000μm、20,000~150,000μm、50,000~150,000μm、または約100,000μmの断面積を有することがあり得る。
【0055】
多孔質領域の体積および延在範囲は両方とも、ボディの入口側と出口側との間の領域を越えて延在しない多孔質領域の境界を参照することによって決定される。したがって、たとえ多孔質領域が多孔質材料のさらなる領域と連続する(たとえば、ボディの出口側を越えて延在する)場合であっても、そのさらなる領域は、ボディを通じて延在する多孔質領域として定義される多孔質領域の体積および延在範囲を評価するときに考慮されることにはならない。多孔質領域は各々は、ボディの入口側と出口側との間で、または、ボディの入口側と出口側との間のゾーン内で、ボディを通じて延在するものとして定義され得る。
【0056】
ボディは、多孔質領域を通る流れを除いて、そこを通る流体流を妨げるように構成することができる。ボディは、実質的に非多孔質であり得、たとえば、離散的な多孔質領域を除いて、ボディを通る流路がないように構成され得る。ボディは、0の多孔度(開放多孔度)を有し得る。
【0057】
第1の出口チャンバおよび第2の出口チャンバのうちの一方が、外側環状チャンバであり、他方が、環状構成を有する入口チャンバによって包囲される内側中央チャンバであることがあり得る。
【0058】
それぞれの第1の出口チャンバおよび第2の出口チャンバを入口チャンバから分離する第1の多孔質壁および第2の多孔質壁は、互いに同軸であってもよい。
【0059】
流れ構成は、第1の出口チャンバおよび第2の出口チャンバの各々がそれぞれの多孔質壁を介して流体流を受け入れるようにのみ構成されるように構成されてもよい。
【0060】
流れ構成は、入口チャンバが入口(たとえば、入口は入口チャンバ内への単一の入口または開口部である)を通じて流れ構成の外側からの流体を受け入れるようにのみ構成されるように構成されてもよい。したがって、出口チャンバに入るすべての流れは、それぞれの多孔質壁の多孔質領域を通過し、したがって、出口チャンバへの流動様式(たとえば、流速)は、流れ構成の設計において、多孔質領域の特性を制御することによって信頼可能に制御することができる。さらに、多孔質壁が電解のための電極を提供するとき、出口チャンバに入るすべての流れは、電極の活性領域を迂回するのではなく(たとえば、電極の電解触媒領域を通じて)電極を通過する。電解触媒領域は、電解触媒活性領域として相互交換可能に参照される場合がある。
【0061】
不連続多孔質構造を有する上記多孔質壁または各多孔質壁について、多孔質領域の材料組成がボディの材料組成と異なることがあり得る。
【0062】
各多孔質領域は、多孔質領域を包囲するそれぞれの境界においてボディとインターフェースし得る。そのような各境界は、ボディの内壁に対応し得る。
【0063】
不連続多孔質構造を有する上記または各多孔質壁について、ボディが、複数の多孔質領域と一体的に形成され、各多孔質領域が、多孔質領域を包囲し、ボディと多孔質領域との間の多孔度の変化によって画定されるそれぞれの境界においてボディとインターフェースすることがあり得る。
【0064】
不連続多孔質構造を有する上記または各多孔質壁について、ボディは、付加製造プロセスによってそれぞれの複数の多孔質領域と一体的に形成されてもよい。
【0065】
不連続多孔質構造を有する上記多孔質壁または各多孔質壁について、ボディの材料組成がそれぞれの多孔質領域の材料組成と同じであることがあり得る。
【0066】
第1の多孔質壁および第2の多孔質壁の入口側が、入口チャンバを区切る対向する表面を提供し得る。上記のように、多孔質壁は、電解槽の電極に対応する(たとえば、流れ構成が電解槽内に実装されるとき、それらは、電極を備えるかまたは画定する)。
【0067】
入口側のうちの1つの表面積の少なくとも50%について、対向する入口側までの実質的に一定の最短分離距離が存在することがあり得る。これらの表面が、実質的に互いに局所的に平行であることがあり得る。
【0068】
対向する電極間の分離距離を最小限に抑えることと、電極の延在範囲に沿って相対的に均一な反応速度を提供するように、分離を実質的に一定にすることの両方が望ましい。入口側が使用時に電解触媒として活性でない場合があっても(たとえば、パッシベーション層を設けられる場合)、多孔質壁の任意の電解触媒領域は、入口側において終端し得るか、または、入口側から(たとえば、多孔質壁の多孔質領域内で)実質的に一定の深さにあり得、したがって、多孔質壁の対向する入口側の間のそのような分離は、イオン交換のためのそれぞれの多孔質壁の領域(たとえば、それぞれの多孔質壁の電解触媒領域)の間の分離を表すと考えられる。
【0069】
「局所的に平行」という表現は、多孔質壁の一方または両方が非平坦である場合に、入口側のうちの一方上の任意の点から他方の入口側までの局所最短分離ベクトルと位置整合された平面が、対向する入口側と交差して実質的に平行な線を規定することを意味するように意図されている。たとえば、対向する入口側は、円筒状または円錐状かつ同心であってもよく、結果、入口側は共通の軸の周りで互いに大域的に平行でなくてもよく、局所最短分離ベクトルに沿って2つの境界に局所的に交差する平面は、互いに平行である2つのそれぞれの線を規定する。
【0070】
第1の多孔質壁および第2の多孔質壁は各々、長手方向(または軸)に平行に直線的に延在してもよく、各々、長手方向に沿って長尺であってもよい。多孔質壁がイオン交換のために同延である多孔質壁の長手方向延在範囲に沿って、流れ構成の断面は、実質的に一定であってもよい。
【0071】
多孔質壁がイオン交換のために同延である一定の断面を有するように流れ構成を構成することによって、流れ構成の構成は、多孔質壁(および/または流れ構成、電解槽)の長尺の長さを容易に増大または低減するように適合可能である。たとえば、これは、電解槽の容量(たとえば、反応速度、所与の反応効率(たとえば、それぞれの反応生成物を生成するために反応される電解質液の割合)に対する流速、またはkW単位で測定される電力入力によって測定され得るものとしての)を変化させるのに適切であり得る。
【0072】
第1の多孔質壁および第2の多孔質壁は、イオン交換のために、各入口側間の平均最短分離距離が存在する同延長手方向延在範囲に沿って、互いに対向してもよい。同延長尺延在範囲と平均最短分離距離との比は、5以上、たとえば、10以上であってもよい。
【0073】
この比は、流れ構成の細長い構成、特に、対向する多孔質壁間の分離間隙の細長い構成に対応する。対向する電極間の分離距離を減少させることが望ましいことが一般的に知られているが、それに沿って上記で考察した構成においてこれが可能である多孔質壁の長尺延在範囲は、(たとえば、イオン交換膜または層流緩衝剤、すなわち、反応生成物が一方の側から他方へと移行するのを防止するための層流条件を維持する電極間の流れによって)それぞれの電極において生成される反応生成物を分離したままにするための手段によって制限され得る。上記で考察した構成において、反応生成物を分離したままにするためのそれらの手段は、イオン交換膜を伴うか、または、任意の相当の長手延在範囲にわたって維持することが困難である傾向にある。本発明は、細長い分離間隙、すなわち、多孔質壁間の分離距離よりもはるかに大きい長尺/長手延在範囲(それに沿って電解質が流れる)を有する分離間隙によって多孔質壁(および、したがって電極)が分離されることを可能にする。理論によって束縛されることを所望することなく、これは、出口チャンバから入口チャンバへの逆の流れに対する抵抗を提供し、入口チャンバから出口チャンバへの高い流れ慣性に依拠することなく逆の流れを防止する、多孔質壁の使用によって可能にされ得ると考えられる。高い流れ慣性は、多孔質壁の表面積を減少させる傾向にある、相対的に小さい流積を提供することによって達成され得る。高い流れ慣性に依拠するのではなく、逆の流れを抑制する多孔質壁を使用することによって、多孔質壁を通る所与の質量流に対する流積を増大させることができる。これによって、多孔質壁の間の分離間隙が本質的に細長くなることが可能であり、以て、電解反応のための多孔質壁の表面積と分離間隙内の流体の体積との間の比が増大する。電解質の速度(たとえば、電解槽を通過するときに反応される電解質液の体積の割合を参照することによって測定され得るものとしての)は、これらの比(すなわち、電極のそれぞれの表面積とそれらの電極の間の分離間隙内の電解質液の体積との比)が増大するにつれて増大する傾向にある。
【0074】
第1の態様による流れ構成は、電解槽の電解セルを備えるか、または、電解セルによって画定されてもよい。
【0075】
第2の態様によれば、電解質液の連続電解を実施するための電解槽であって、入口において電解質液を受け入れるための第1の態様または第7の態様(後述)による流れ構成を備え、第1の多孔質壁および第2の多孔質壁はそれぞれ電解槽の第1の電極および第2の電極を提供する、電解槽が開示される。
【0076】
電解槽が、コントローラを備え、コントローラが、第1の多孔質壁および/または第2の多孔質壁における電解質液の超臨界条件を維持するように構成されていることがあり得る。
【0077】
コントローラは、目標入口圧力および入口における電解質液の目標入口温度を維持するように流動制御機器を制御すること、ならびに/または、第1の電極および第2の電極を通る電流および/もしくは第1の電極と第2の電極との間の印加される電圧を制御することによって、第1の多孔質壁および/または第2の多孔質壁における電解質液の超臨界条件を維持するように構成することができる。
【0078】
たとえば、電解質液の超臨界条件に対応する臨界温度への電解質液の加熱が、電解槽の上記または各それぞれの多孔質壁(電極)において提供されることがあり得る。
【0079】
コントローラは、たとえば、374℃の水性電解質液の臨界温度などの、臨界温度の50℃以内(たとえば、30℃以内または20℃以内)の温度において電解質液が入口に提供されるように、たとえばヒータなどの、流動制御機器を制御するように構成することができる。
【0080】
コントローラは、目標入口圧力を維持するように、たとえば、電解槽と関連付けられる圧縮器および/または1つまたは複数の放出弁などの、流動制御機器を制御するように構成することができる。目標入口圧力は、少なくとも、それぞれの電解質液の臨界圧力であってもよい。たとえば、目標入口圧力は、水性電解質液について少なくとも22MPaであってもよい。
【0081】
コントローラが、入口チャンバ内ならびに第1の出口チャンバおよび第2の出口チャンバ内で電解質液の超臨界条件を維持するように、流動制御機器を制御するように構成されていることがあり得る。
【0082】
コントローラが、電解質液が超臨界条件において入口に提供されるように、流動制御機器を制御するように構成されていることがあり得る。
【0083】
流動制御機器は、入口チャンバの上流の電解質液を加熱するように構成されている加熱器を備えてもよい。加熱器は、電解槽の一部であってもよく、または、電解設備において(またはその中に)電解槽とともに設置されてもよい。
【0084】
流動制御機器は、入口チャンバの上流の電解質液を圧縮するように構成されている圧縮器を備えてもよい。流動制御機器は、電解槽の一部であってもよく、または、電解設備において(またはその中に)電解槽とともに設置されてもよい。
【0085】
電解質液の超臨界条件は、水性電解質液に関する、少なくとも22MPaの圧力および少なくとも374℃の温度の超臨界圧条件および温度条件であってもよい。
【0086】
超臨界条件は、22~27MPaの圧力、および、374℃~550℃の温度、たとえば、374℃~400℃であってもよい。第1の多孔質壁および第2の多孔質壁において超臨界条件を維持することによって、電解反応と関連付けられる損失を、(i)電極の表面上での反応生成物の気泡の形成を抑制すること、および/または、所与の量の電解質の所与の電解質濃度に対する電解質液の伝導率を増大させること(または逆に、相対的により低い濃度の電解質を使用して適切な伝導率を達成すること)によって、減少させることができる。
【0087】
本明細書において論じられているいくつかの実施例は、超臨界条件における動作に関し、貼付の特許請求の範囲は、コントローラが超臨界条件を維持するように構成されている電解槽または電解槽設備を参照するが、本開示は、本明細書に記載されているような(たとえば、本開示において想定されている特徴の任意の組合せによる)、電解質液の超臨界条件を維持するためのそのようなコントローラまたは制御部が存在しない電解槽および電解槽設備ならびに動作方法を想定する。
【0088】
電解槽が、少なくとも320℃、たとえば少なくとも350℃の入口温度において入口チャンバに電解質液を提供するように流動制御機器を制御するように構成されているコントローラを備えることがあり得る。入口温度は、たとえば、水性電解質液の374℃の臨界温度などの、それぞれの電解質液の臨界温度を下回ってもよい。入口温度は、電解質液の臨界温度の50℃以内(たとえば、30℃以内または20℃以内)であってもよい。入口温度は、たとえば、350℃~370℃または350℃~360℃など、320°以上374℃未満であってもよい。コントローラが、それぞれの電解質液の臨界圧力(たとえば、水性電解質液の22MPaの臨界温度)未満のまたはそれより大きい圧力において入口チャンバに電解質液を提供するように流動制御機器を制御するように構成されていることがあり得る。コントローラが、少なくとも22MPaの圧力において入口チャンバに電解質液を提供するように流動機器を制御するように構成されていることがあり得る。
【0089】
入口温度および入口圧力は、入口チャンバおよび出口チャンバ全体を通じて亜臨界条件が維持されるように制御される(たとえば、流動制御機器を制御することによって)ことがあり得る。
【0090】
流動制御機器は、下記に定義するような第1の放出弁および第2の放出弁を備えてもよい。そのような弁は、電解槽の一部であってもよく、または、電解設備において(またはその中に)電解槽とともに設置されてもよい。第1の放出弁および/または第2の放出弁は、可変制御弁であってもよい。
【0091】
電解槽は、第1の電極において生成される流体反応生成物を放出するための、第1の出口チャンバと関連付けられる第1の出口と、第2の電極において生成される流体反応生成物を放出するための、第2の出口チャンバと関連付けられる第2の出口とを有してもよい。流動制御機器は、それぞれ第1の出口および第2の出口と流体連通する第1の放出弁および第2の放出弁を含んでもよい。
【0092】
第1の放出弁は、弁の上流において第1の目標圧力を維持するように構成されてもよく、第2の放出弁は、弁の上流において第2の目標圧力を維持するように構成されてもよい。
【0093】
第1の放出弁および第2の放出弁が、入口チャンバからそれぞれの多孔質壁を通じてそれぞれの出口チャンバに入るように駆動される電解質液のそれぞれの分岐流を制御するために、それぞれの多孔質壁の各々をまたいだ圧力降下を引き起こすために、異なる目標圧力を維持するように構成されることがあり得る。コントローラは、第1の放出弁および/または第2の放出弁を、それぞれの目標圧力を維持するように制御するように構成されてもよい。
【0094】
コントローラは、コントローラによって受信される流速データ、上流圧力データおよび/もしくは組成データに基づいて、第1の出口および第2の出口のうちの一方または各々からの目標流速もしくは目標組成を維持し、ならびに/または、コントローラによって受信される流速データ、上流圧力データおよび/もしくは組成データに基づいて、第1の出口から出る流れと第2の出口から出る流れとの間の目標流速比を維持するように、第1の放出弁および/または第2の放出弁を制御するように構成されてもよい。目標流速比は、第1の出口を出る総流速と第2の出口を出る総流速との比、または、第1の出口を出る第1の流体反応生成物の流速と第2の出口を出る第2の流体反応生成物の流速との比に対応してもよい。
【0095】
コントローラは、それぞれの放出流についてコントローラによって受信される流速データおよび/もしくは組成データに基づいて、第1の出口および第2の出口の各々からの流れのそれぞれの目標流速またはそれぞれの目標組成を維持するように、第1の放出弁および/または第2の放出弁を制御するように構成されてもよい。
【0096】
上記で参照されているものとしての目標流速は、それぞれの出口からの総流速であってもよく、または、それぞれの出口から流れる混合物の特定の成分流体の流速、たとえば、酸素および電解質液を含む混合物中の酸素の流速、もしくは、酸素および電解質液を含む混合物中の水素の流速であってもよい。目標流速は、質量流速であってもよい。
【0097】
流速データは、電解槽のセンサ、または、電解槽が設置されている設備のセンサによって決定されてもよい。たとえば、各それぞれの放出弁の下流に流量計が存在してもよい。電解槽が設置されている設備内の別個の装置の下流に1つまたは複数の流量計が存在してもよい。たとえば、分離装置は、各出口を通じて放出される流れを、それぞれの反応生成物の流れと、電解質液(または水)の流れとに分離してもよく、流量計は、各成分(すなわち、反応生成物および電解質液)の流速を監視するために分離手段上にまたはその各出口に設置されてもよい。放出弁、それぞれの弁を通じた流速を監視するための流量計、および、流量計からの信号に基づいて放出弁を制御するコントローラの組合せは、質量流コントローラを提供することができ、このコントローラは、目標流速を維持するために流量計からの信号に基づいて放出弁を制御する。
【0098】
上流圧力データが、弁の上流の電解質液の圧力を監視するために、電解槽の1つもしくは複数の圧力センサ、または、電解槽が設置されている設備の1つもしくは複数の圧力センサによって決定されてもよい。たとえば、圧力センサは、それぞれの反応生成物を保持する出口チャンバのうちの1つまたは各々の中へと延在してもよく、それぞれの圧力信号をコントローラに送るように構成されてもよく、または、差圧センサ(差圧トランスデューサであってもよい)が、チャンバ間の圧力差に応答し、差圧信号をコントローラに送るように構成されてもよい。たとえば、コントローラは、目標動作条件(たとえば、例として、出口を通じた1つまたは各それぞれの反応生成物の目標流速)を維持するために、それぞれの目標範囲内のそのもしくは各それぞれの圧力を維持するか、または、目標範囲内の差圧を維持するように較正されてもよい。
【0099】
目標組成は、それぞれの出口を通じて放出される流れの中の流体反応生成物の目標割合であってもよい。組成は、質量分率であってもよい。組成データは、それぞれの出口を通じて放出される流れの各成分(すなわち、それぞれの反応生成物および電解質液)の流速の監視に基づいて得ることができる。
【0100】
コントローラは、流速または成分質量分率の数値を得ることができる流速データまたは組成データを受信しなくてもよく、コントローラを適切に較正することによって、目標流速、組成または流速比を維持することができるように、そのまたは各放出弁を制御するために使用することができる流れの流速または組成に関係するデータを受信することができる。
【0101】
コントローラは、それぞれの出口流についてコントローラにおいて受信される組成データに基づいて、第1の出口を通る出口流中に過量の第2の流体反応生成物が存在するか否かを判定するように構成されてもよく、および/または、第2の出口を通る出口流中に過量の第1の流体反応生成物が存在するか否かを判定するように構成されてもよい。コントローラは、第1の放出弁および/または第2の放出弁を、上記判定に基づいて電解槽の多孔質壁を通じた流速を変化させるように制御するように構成されてもよい。
【0102】
たとえば、コントローラは、第1の放出弁および/または第2の放出弁を、入口チャンバからそれぞれの出口までの圧力降下を増大させてそれぞれの出口を通じた流速を増大させるように制御されてもよい。たとえば、出口が多孔質壁の下流にあるとき、その多孔質壁を通じた流速を増大させることによって、(たとえば、多孔質壁を通る流れの慣性によって)その多孔質壁を通る反応生成物の返流が抑制されてもよい。
【0103】
コントローラは、(たとえば、電解質液の決定された熱力学的条件に合わせて電解槽を通じた流速を制御することによって)4000以下、たとえば2300以下である入口チャンバ内のレイノルズ数に対応する、電解槽を通る電解質液の熱力学的条件および/または流速条件を維持するように構成されてもよい。上記レイノルズ数基準を満たすように電解質液の条件を制御することによって、そうでなければ電極間の分離間隙を越える電極間での反応生成物の移行を促進するおそれがある、入口チャンバ内の乱流および/または遷移混合を防止することができる。
【0104】
不連続多孔質構造を有し、電解槽の電極を提供する上記多孔質壁または各多孔質壁について、多孔質領域が、電解触媒を含み、それによって、電解半反応のためのそれぞれの電極の電解触媒領域を画定することがあり得る。
【0105】
本明細書において使用されるものとしての「電解触媒」という表現は、電解質液の電解の半反応に触媒作用を及ぼすのに適した電解触媒(たとえば、電解触媒活性材料)を指す。そのような電解触媒のプロビジョンは、電解触媒として活性である(すなわち、電解のそれぞれの半反応のための)多孔質壁の関連付けられる電解触媒領域を提供すると考えられる。電解反応は、水または水溶性(水性)電解質液の電解であってもよい。したがって、電解触媒は、水の電解の半反応に触媒作用を及ぼすのに適した電解触媒であってもよい。
【0106】
電解触媒は、貴金属(すなわち、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Ag、Re)、dブロック遷移金属(すなわち、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、R、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Rf、Db、S、Rh、Hs、Mt、Ds、Rg、Cn)、fブロックランタニド(すなわち、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)、希土類金属(すなわち、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)、白金族金属(すなわち、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)、P、S、Cおよび/またはそれらの組合せから選択される1つまたは複数の元素を含んでもよい(たとえば、本質的にそれらから成ってもよく、それらから成ってもよく、またはそれらであってもよい)。上記1つまたは複数の元素は、元素形態(たとえば、(実質的に)純金属として)、混合物中(たとえば、合金)、化合物中(たとえば、酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物、リン化物、炭酸塩、および/または、金属有機構造体などの有機化合物)に存在してもよく、ならびに/または、ナノ粒子、ナノチューブ(たとえば、カーボンナノチューブ)、ナノケージ(たとえば、フラーレン)および/もしくはナノシート(たとえば、グラフェン)などのナノ材料に組み込まれてもよい。
【0107】
電解触媒は、Co、Fe、Ir、Li、Ni、P、S、Ti、Znおよび/またはそれらの組合せを含んでもよい(たとえば、本質的にそれらから成ってもよく、それらから成ってもよく、またはそれらであってもよい)。
【0108】
電解触媒は、Ce、Co、Fe、Ho、Ir、Mo、Ni、Pd、Pt、Ru、Sm、Wおよび/またはそれらの組合せを含んでもよい(たとえば、本質的にそれらから成ってもよく、それらから成ってもよく、またはそれらであってもよい)。
【0109】
電解触媒は、Ni、Fe、Co、P、Sおよび/またはそれらの組合せを含んでもよい(たとえば、本質的にそれらから成ってもよく、それらから成ってもよく、またはそれらであってもよい)。
【0110】
電解触媒は、Pt、Ir、Pd、Ni、Moおよび/またはそれらの組合せを含んでもよい(たとえば、本質的にそれらから成ってもよく、それらから成ってもよく、またはそれらであってもよい)。
【0111】
いくつかの例において、電解触媒は、Ni(たとえば、元素Ni)またはPt(たとえば、元素Pt)を含む(たとえば、本質的にそれらから成り、それらから成り、またはそれらである)。
【0112】
いくつかの例において、電解触媒は、Ni(たとえば、元素Ni)を含む(たとえば、本質的にそれから成り、それから成り、またはそれである)。
【0113】
いくつかの例において、電解触媒は、Pt(たとえば、元素Pt)を含む(たとえば、本質的にそれから成り、それから成り、またはそれである)。
【0114】
電解触媒は、電解触媒含有微粒子の形態で提供されてもよく、またはそれから形成されてもよい。電解触媒含有微粒子の粒子は電解触媒を含んでもよい(たとえば、本質的にそれから成ってもよく、またはそれから成ってもよい)。電解触媒含有微粒子は、電解触媒の粒子を含んでもよい(たとえば、本質的にそれから成ってもよく、またはそれから成ってもよい)。
【0115】
たとえば、電解触媒含有微粒子は、貴金属(すなわち、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Ag、Re)、dブロック遷移金属(すなわち、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、R、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Rf、Db、S、Rh、Hs、Mt、Ds、Rg、Cn)、fブロックランタニド(すなわち、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)、希土類金属(すなわち、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)、白金族金属(すなわち、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)、P、S、Cおよび/またはそれらの組合せから選択される1つまたは複数の元素を含んでもよい(たとえば、本質的にそれらから成ってもよく、またはそれらから成ってもよい)。上記1つまたは複数の元素は、元素形態(たとえば、(実質的に)純金属として)、混合物中(たとえば、合金)、化合物中(たとえば、酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物、リン化物、炭酸塩、および/または、金属有機構造体などの有機化合物)に存在してもよく、ならびに/または、ナノ粒子、ナノチューブ(たとえば、カーボンナノチューブ)、ナノケージ(たとえば、フラーレン)および/もしくはナノシート(たとえば、グラフェン)などのナノ材料に組み込まれてもよい。
【0116】
電解触媒含有微粒子は、Co、Fe、Ir、Li、Ni、P、S、Ti、Znおよび/またはそれらの組合せを含む(たとえば、本質的にそれらから成り、またはそれらから成る)粒子を含んでもよい(たとえば、本質的にそれらから成ってもよく、またはそれらから成ってもよい)。
【0117】
電解触媒含有微粒子は、Ce、Co、Fe、Ho、Ir、Mo、Ni、Pd、Pt、Ru、Sm、Wおよび/またはそれらの組合せを含む(たとえば、本質的にそれらから成り、またはそれらから成る)粒子を含んでもよい(たとえば、本質的にそれらから成ってもよく、またはそれらから成ってもよい)。
【0118】
電解触媒含有微粒子は、Ni、Fe、Co、P、Sおよび/またはそれらの組合せを含む(たとえば、本質的にそれらから成り、またはそれらから成る)粒子を含んでもよい(たとえば、本質的にそれらから成ってもよく、またはそれらから成ってもよい)。
【0119】
電解触媒含有微粒子は、Pt、Ir、Pd、Ni、Moおよび/またはそれらの組合せを含む(たとえば、本質的にそれらから成り、またはそれらから成る)粒子を含んでもよい(たとえば、本質的にそれらから成ってもよく、またはそれらから成ってもよい)。
【0120】
いくつかの例において、電解触媒含有微粒子は、Ni(たとえば、元素Ni)またはPt(たとえば、元素Pt)を含む(たとえば、本質的にそれらから成り、またはそれらから成る)粒子を含む(たとえば、本質的にそれらから成り、またはそれらから成る)。
【0121】
いくつかの例において、電解触媒含有微粒子は、Ni(たとえば、元素Ni)を含む(たとえば、本質的にそれらから成り、またはそれらから成る)粒子を含む(たとえば、本質的にそれらから成り、またはそれらから成る)。
【0122】
いくつかの例において、電解触媒含有微粒子は、Pt(たとえば、元素Pt)を含む(たとえば、本質的にそれらから成り、またはそれらから成る)粒子を含む(たとえば、本質的にそれらから成り、またはそれらから成る)。
【0123】
いくつかの例において、電解触媒含有微粒子は、Ni含有微粒子である。Ni含有微粒子は、Ni(たとえば、元素Ni)またはNi系合金の粒子を含んでもよい(たとえば、本質的にそれらから成ってもよく、またはそれらから成ってもよい)。
【0124】
いくつかの例において、電解触媒含有微粒子は、本質的にNiの粒子から成るNi微粒子である。
【0125】
不連続多孔質構造を有し、電解槽の電極を提供する上記多孔質壁または各多孔質壁について、それぞれの多孔質領域が各々、電解触媒含有微粒子から形成される電解触媒を含むことがあり得る。
【0126】
多孔質媒体は、電解触媒含有微粒子を凝集させることによって形成されてもよい。言い換えれば、それぞれの多孔質領域は各々、凝集された多孔質媒体の形態で提供される電解触媒を含んでもよい。
【0127】
本明細書において使用される「凝集」という用語は、電解触媒含有微粒子の粒子を互いに物理的および/または科学的に接着して多孔質媒体を形成するプロセスを指す。電解触媒含有微粒子の凝集は、電解触媒含有微粒子を焼結すること、電解触媒含有微粒子を溶融すること、ならびに/または、結合剤および/もしくは化学反応によって電解触媒含有微粒子の粒子を互いに結合することを含んでもよい。
【0128】
たとえば、多孔質媒体は、電解触媒含有微粒子を焼結することによって形成されてもよい。焼結は、微粒子を液化点まで融解させることなく熱および/または圧力を加えることによって、微粒子から材料の固体塊を形成するプロセスであることが諒解されよう。焼結中、微粒子の粒子は、材料の融点を下回る温度において近接する粒子の間に原子および/または分子が拡散することによって互いに結合し得る。粒子の塑性変形も発生し得る。
【0129】
したがって、それぞれの多孔質領域は各々、焼結した多孔質媒体の形態で提供される電解触媒を含んでもよい。
【0130】
多孔質媒体は、電解触媒含有微粒子を溶融することによって形成されてもよい。溶融は、固体材料の液体への融解を伴うプロセスであることが諒解されよう。多孔質媒体は、微粒子の全体的な液化は回避しながら隣接する粒子の結合をもたらす局所融解(たとえば、粒子表面における融解)が発生する温度まで微粒子を加熱することによって、微粒子から形成され得る。
【0131】
したがって、それぞれの多孔質領域は各々、溶融した多孔質媒体の形態で提供される電解触媒を含んでもよい。
【0132】
多孔質媒体は、結合剤を使用して電解触媒含有微粒子の粒子を互いに結合することによって形成されてもよい。結合剤は、熱可塑性結合剤または熱硬化性結合剤(たとえば、樹脂)などのポリマー結合剤であってもよい。熱可塑性結合剤は、上昇した温度において融解するかまたは柔軟になり、冷却されると固化するポリマー結合剤である。熱硬化性結合剤(たとえば、樹脂)は、加熱、放射線への暴露および/または適切な触媒への暴露によって不可逆的に硬くなる(すなわち、硬化する)ポリマー結合剤である。
【0133】
多孔質媒体は、化学反応によって電解触媒含有微粒子の粒子を互いに結合することによって形成されてもよい。たとえば、隣接する粒子を互いに結合する反応生成物を形成する化学的反応が行われてもよい。化学反応は、酸化反応、たとえば、粒子の表面における酸化層の成長であってもよく、酸化層は、隣接する粒子を互いに結合する。化学反応は、たとえば、適切な(たとえば、酸化)雰囲気に暴露して上昇した温度において行われてもよい。
【0134】
したがって、それぞれの多孔質領域は各々、結合した多孔質媒体の形態で提供される電解触媒を含んでもよい。
【0135】
(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、貴金属(すなわち、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Ag、Re)、dブロック遷移金属(すなわち、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、R、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Rf、Db、S、Rh、Hs、Mt、Ds、Rg、Cn)、fブロックランタニド(すなわち、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)、希土類金属(すなわち、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)、白金族金属(すなわち、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)、P、S、Cおよび/またはそれらの組合せから選択される1つまたは複数の元素を含んでもよい(たとえば、本質的にそれらから成ってもよく、またはそれらから成ってもよい)。上記1つまたは複数の元素は、元素形態(たとえば、(実質的に)純金属として)、混合物中(たとえば、合金)、化合物中(たとえば、酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物、リン化物、炭酸塩、および/または、金属有機構造体などの有機化合物)に存在してもよく、ならびに/または、ナノ粒子、ナノチューブ(たとえば、カーボンナノチューブ)、ナノケージ(たとえば、フラーレン)および/もしくはナノシート(たとえば、グラフェン)などのナノ材料に組み込まれてもよい。
【0136】
(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、Co、Fe、Ir、Li、Ni、P、S、Ti、Znおよび/またはそれらの組合せを含む(たとえば、本質的にそれらから成り、またはそれらから成る)粒子を含んでもよい(たとえば、本質的にそれらから成ってもよく、またはそれらから成ってもよい)。
【0137】
(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、Ce、Co、Fe、Ho、Ir、Mo、Ni、Pd、Pt、Ru、Sm、Wおよび/またはそれらの組合せを含む(たとえば、本質的にそれらから成り、またはそれらから成る)粒子を含んでもよい(たとえば、本質的にそれらから成ってもよく、またはそれらから成ってもよい)。
【0138】
(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、Ni、Fe、Co、P、Sおよび/またはそれらの組合せを含んでもよい(たとえば、本質的にそれらから成ってもよく、またはそれらから成ってもよい)。
【0139】
(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、Pt、Ir、Pd、Ni、Moおよび/またはそれらの組合せを含んでもよい(たとえば、本質的にそれらから成ってもよく、またはそれらから成ってもよい)。
【0140】
(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、Ni(たとえば、元素Ni)またはPt(たとえば、元素Pt)を含んでもよい(たとえば、本質的にそれらから成ってもよく、またはそれらから成ってもよい)。
【0141】
(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、Ni(たとえば、元素Ni)を含んでもよい(たとえば、本質的にそれらから成ってもよく、またはそれらから成ってもよい)。
【0142】
(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、Pt(たとえば、元素Pt)を含んでもよい(たとえば、本質的にそれらから成ってもよく、またはそれらから成ってもよい)。
【0143】
(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、約50重量%以上、たとえば、約60重量%以上、または約70重量%以上、または約80重量%以上、または約90重量%以上、または約95重量%以上、または99重量%以上の電解触媒を含んでもよい。(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、約100重量%以下、たとえば、約99重量%以下、または約95重量%以下、または約90重量%以下の電解触媒を含んでもよい。(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、約50重量%~約100重量%、たとえば、約60重量%~約100重量%、または約70重量%~約100重量%、または約80重量%~約100重量%、または約90重量%~約100重量%、または約95重量%~約100重量%、または約99重量%~約100重量%の電解触媒を含んでもよい。
【0144】
(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、約50重量%、たとえば、60重量%以上、または約70重量%以上、または約80重量%以上、または約90重量%以上、または約95重量%以上、または約99重量%以上の貴金属(すなわち、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Ag、Re)、dブロック遷移金属(すなわち、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、R、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Rf、Db、S、Rh、Hs、Mt、Ds、Rg、Cn)、fブロックランタニド(すなわち、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)、希土類金属(すなわち、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)、白金族金属(すなわち、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)、P、S、Cおよび/またはそれらの組合せを含んでもよい。(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、約100重量%以下、たとえば、約99重量%以下、または約95重量%以下、または約90重量%以下の貴金属(すなわち、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Ag、Re)、dブロック遷移金属(すなわち、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、R、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Rf、Db、S、Rh、Hs、Mt、Ds、Rg、Cn)、fブロックランタニド(すなわち、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)、希土類金属(すなわち、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)、白金族金属(すなわち、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)、P、S、Cおよび/またはそれらの組合せを含んでもよい。(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、約50重量%~約100重量%、たとえば、約60重量%~約100重量%、または約70重量%~約100重量%、または約80重量%~約100重量%、または約90重量%~約100重量%、または約95重量%~約100重量%、または約99重量%~約100重量%の貴金属(すなわち、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Ag、Re)、dブロック遷移金属(すなわち、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、R、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Rf、Db、S、Rh、Hs、Mt、Ds、Rg、Cn)、fブロックランタニド(すなわち、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)、希土類金属(すなわち、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)、白金族金属(すなわち、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)、P、S、Cおよび/またはそれらの組合せを含んでもよい。
【0145】
(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、約50重量%以上、たとえば、約60重量%以上、または約70重量%以上、または約80重量%以上、または約90重量%以上、または約95重量%以上、または99重量%以上のCo、Fe、Ir、Li、Ni、P、S、Ti、Znおよび/またはそれらの組合せを含んでもよい。(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、約100重量%以下、たとえば、約99重量%以下、または約95重量%以下、または約90重量%以下のCo、Fe、Ir、Li、Ni、P、S、Ti、Znおよび/またはそれらの組合せを含んでもよい。(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、約50重量%~約100重量%、たとえば、約60重量%~約100重量%、または約70重量%~約100重量%、または約80重量%~約100重量%、または約90重量%~約100重量%、または約95重量%~約100重量%、または約99重量%~約100重量%のCo、Fe、Ir、Li、Ni、P、S、Ti、Znおよび/またはそれらの組合せを含んでもよい。
【0146】
(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、約50重量%以上、たとえば、約60重量%以上、または約70重量%以上、または約80重量%以上、または約90重量%以上、または約95重量%以上、または99重量%以上のCe、Co、Fe、Ho、Ir、Mo、Ni、Pd、Pt、Ru、Sm、Wおよび/またはそれらの組合せを含んでもよい。(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、約100重量%以下、たとえば、約99重量%以下、または約95重量%以下、または約90重量%以下のCe、Co、Fe、Ho、Ir、Mo、Ni、Pd、Pt、Ru、Sm、Wおよび/またはそれらの組合せを含んでもよい。(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、約50重量%~約100重量%、たとえば、約60重量%~約100重量%、または約70重量%~約100重量%、または約80重量%~約100重量%、または約90重量%~約100重量%、または約95重量%~約100重量%、または約99重量%~約100重量%のCe、Co、Fe、Ho、Ir、Mo、Ni、Pd、Pt、Ru、Sm、Wおよび/またはそれらの組合せを含んでもよい。
【0147】
(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、約50重量%以上、たとえば、約60重量%以上、または約70重量%以上、または約80重量%以上、または約90重量%以上、または約95重量%以上、または99重量%以上のNi、Fe、Co、P、Sおよび/またはそれらの組合せを含んでもよい。(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、約100重量%以下、たとえば、約99重量%以下、または約95重量%以下、または約90重量%以下のNi、Fe、Co、P、Sおよび/またはそれらの組合せを含んでもよい。(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、約50重量%~約100重量%、たとえば、約60重量%~約100重量%、または約70重量%~約100重量%、または約80重量%~約100重量%、または約90重量%~約100重量%、または約95重量%~約100重量%、または約99重量%~約100重量%のNi、Fe、Co、P、Sおよび/またはそれらの組合せを含んでもよい。
【0148】
(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、約50重量%以上、たとえば、約60重量%以上、または約70重量%以上、または約80重量%以上、または約90重量%以上、または約95重量%以上、または99重量%以上のPt、Ir、Pd、Ni、Moおよび/またはそれらの組合せを含んでもよい。(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、約100重量%以下、たとえば、約99重量%以下、または約95重量%以下、または約90重量%以下のPt、Ir、Pd、Ni、Moおよび/またはそれらの組合せを含んでもよい。(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、約50重量%~約100重量%、たとえば、約60重量%~約100重量%、または約70重量%~約100重量%、または約80重量%~約100重量%、または約90重量%~約100重量%、または約95重量%~約100重量%、または約99重量%~約100重量%のPt、Ir、Pd、Ni、Moおよび/またはそれらの組合せを含んでもよい。
【0149】
(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、約50重量%以上、たとえば、約60重量%以上、または約70重量%以上、または約80重量%以上、または約90重量%以上、または約95重量%以上、または99重量%以上のNiおよび/またはPtを含んでもよい。(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、約100重量%以下、たとえば、約99重量%以下、または約95重量%以下、または約90重量%以下のNiおよび/またはPtを含んでもよい。(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、約50重量%~約100重量%、たとえば、約60重量%~約100重量%、または約70重量%~約100重量%、または約80重量%~約100重量%、または約90重量%~約100重量%、または約95重量%~約100重量%、または約99重量%~約100重量%のNiおよび/またはPtを含んでもよい。
【0150】
(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、約50重量%以上、たとえば、約60重量%以上、または約70重量%以上、または約80重量%以上、または約90重量%以上、または約95重量%以上、または99重量%以上のNiを含んでもよい。(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、約100重量%以下、たとえば、約99重量%以下、または約95重量%以下、または約90重量%以下のNiを含んでもよい。(たとえば、凝集、焼結、溶融および/または結合された)多孔質媒体は、約50重量%~約100重量%、たとえば、約60重量%~約100重量%、または約70重量%~約100重量%、または約80重量%~約100重量%、または約90重量%~約100重量%、または約95重量%~約100重量%、または約99重量%~約100重量%のNiを含んでもよい。
【0151】
不連続多孔質構造を有する上記多孔質壁または各多孔質壁について、多孔質領域の材料組成がボディの材料組成と異なることがあり得る。ボディが電解を抑制するためのそれぞれの電極の受動領域を備えることがあり得る。
【0152】
不連続多孔質構造を有する上記または各多孔質壁について、ボディが、複数の多孔質領域と一体的に形成され、各多孔質領域が、多孔質領域を包囲し、ボディと多孔質領域との間の多孔度の変化によって画定されるそれぞれの境界においてボディとインターフェースし、多孔質領域が電解触媒を含み、以て、電解半反応のためのそれぞれの電極の電解触媒領域に属し、多孔質領域およびボディが電解触媒を含む共通の材料組成を有することがあり得る。
【0153】
それぞれの多孔質領域の材料組成と共通するボディの材料組成は、多孔質領域を包囲し、多孔質領域の各々に隣接するボディのコア部分の材料組成であってもよい。それぞれの多孔質領域の材料組成と共通するボディの材料組成は、ボディの非コーティング材料組成(すなわち、任意のコーティングを除外するボディの材料コーティング)であってもよい。たとえば、ボディは、ボディの入口側を画定するコーティング(たとえば、不動態化コーティング)を含んでもよく、不動態化コーティングは、ボディのコア部分とは異なる組成を有する。
【0154】
不連続な構造を有する上記多孔質壁または各多孔質壁について、多孔質壁が、付加的に多孔質壁の出口側における電解反応のために構成されることがあり得る。たとえば、多孔質壁の出口側は、電解触媒を含んでもよく、電解質液と反応するように構成されてもよい。
【0155】
多孔質壁が、一体的に形成されたボディおよび多孔質領域を提供するために付加製造プロセスによって形成されることがあり得る。
【0156】
不連続多孔質構造を有する上記または各多孔質壁について、ボディの入口側が、電解触媒領域よりも電解触媒としての活性が低くなるように構成されている受動領域によって画定されることがあり得る。受動領域が、電解を抑制するためのボディの入口側を画定する不動態化コーティングを含むことがあり得る。
【0157】
上記の記述のいずれかに関して定義したような受動領域は、電解のそれぞれの半反応を抑制するように構成されてもよい。受動領域(たとえば、全体としてボディによって、ボディのコア部分もしくは非コーティング部分によって、または、ボディの入口側において、たとえば不動態化コーティングによって提供されるものとしての)を提供することによって、電解のそれぞれの半反応は、多孔質壁の入口側で発生することが抑制または防止され得、結果、反応は、電解質液(および/またはそれぞれのイオン)が多孔質領域のうちの1つに入ったこと(および/または、多孔質領域を通過して、多孔質壁の出口側を画定する電解触媒領域に達したこと)を受けてのみ行われてもよく、または、主にこれを受けて行われてもよい。
【0158】
上記受動領域(および本明細書に記載されているような任意の受動領域)は、(電解質液の電解のそれぞれの半反応のために)電解触媒領域よりも電解触媒としての活性が低くなることによって、電解を抑制するように構成されてもよい。(全体としての)受動領域内のそれぞれの半反応の速度は、(全体としての)電解触媒領域内のそれぞれの半反応の速度よりも低くなり得、これによって、受動領域は、電解触媒領域よりも電解触媒としての活性がより低くなり得る。それぞれの半反応の速度は、それぞれの領域内のそれぞれの流体反応生成物(たとえば、電極に応じて水素または酸素)の生成速度、たとえば、単位時間当たりに生成される流体反応生成物の質量(たとえば、水素のg/s)、または、それぞれの領域の電解質界面にわたって積分される電流密度(たとえば、A単位)であってもよく、電解質界面は、電解質液に接触するように構成されているそれぞれの領域の表面である。本明細書において使用されるものとしてのそれぞれの領域の速度は、単位体積、厚さ、質量、または表面積(たとえば、多孔質壁の、または、多孔質壁のそれぞれの領域の電解質界面の)など当たりの特定の速度ではなく、それぞれの領域の総計速度である。受動領域および電解触媒領域は、(全体としての)受動領域内のそれぞれの半反応の速度が、(全体としての)電解触媒領域内のそれぞれの半反応の速度よりも低くなり得るように構成されてもよい。たとえば、受動領域内の速度は、電解触媒領域内の速度の50%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または1%以下であってもよい。受動領域内の速度は、実質的にゼロであってもよい。
【0159】
受動領域は、電解触媒領域よりも少ない電解触媒(電解質液の電解のそれぞれの半反応に電解触媒作用を及ぼすための)、たとえば、電解触媒領域のより少ない同じ電解触媒を含み、および/または、受動領域の任意の電解触媒は、電解触媒領域の電解触媒よりも、それぞれの半反応に対する電解触媒としての活性が低くてもよい。
【0160】
受動領域は、受動領域の電解質液との電解質界面において(すなわち、使用中に電解質液に接触する受動領域の表面領域内)、電解触媒領域の電解質界面に(すなわち、電解触媒領域の表面領域内に)存在するよりも少ない、電解触媒領域の電解触媒を含んでもよい。言い換えれば、受動領域の電解質界面における(すなわち、表面領域内の)受動領域の材料組成は、それぞれの電解質界面における電解触媒領域の材料組成よりも少ない電解触媒を含んでもよい。たとえば、これは、5重量%よりも少ない電解触媒、1重量%よりも少ない電解触媒、0.1重量%よりも少ない電解触媒を含んでもよい。電解質界面における受動領域の組成は、たとえば、1μmの厚さを有する、使用中に電解質液に隣接する受動領域の表面領域を参照することによって評価されてもよい。
【0161】
本明細書において参照される電解触媒領域は、第1の組成を有してもよい。本明細書において参照される受動領域は、第2の組成を有してもよい。公称セル内の電解質液の電解のそれぞれの半反応を実行するための公称電極は、公称電極の電解質界面において電解質液に隣接する表面領域を有してもよい。表面領域は、電解質界面から1μmの厚さを有してもよい。
【0162】
第1の組成および第2の組成は、公称電極の表面領域が第1の組成を有するときに、公称セル内の公称電極において10mAcm-2の電流密度に達するのに必要とされる過電圧が、たとえば、22.5MPaおよび375℃の公称圧力および温度において、公称電極の表面領域が第2の組成を有するときの、公称セル内の公称電極において10mAcm-2の電流密度に達するのに必要とされる過電圧の半分以下、3分の1以下、または5分の1以下であるように、選択されてもよい。
【0163】
それぞれの半反応は、本明細書の他の箇所において論じられるように受動領域がパッシベーション層またはコーティングとして提供されることによって抑制され得る。
【0164】
電解触媒領域、受動領域、および電解触媒として活性である領域または電解触媒としての活性がより低い領域としてのそれらの領域の特性に関係する上記の陳述は、上記および下記に提供されており、詳細な説明において下記に論じられているような態様および陳述のいずれかに適用され得る。
【0165】
受動領域が多孔質壁の入口側を画定する不動態化コーティングを含むとき、不動態化コーティングは、たとえば、シリカ(SiO)、酸化亜鉛(ZnO)、またはジルコニア(ZrO)などの酸化物コーティング(たとえば、無機金属酸化物コーティング)などの、誘電体コーティングであってもよい。本明細書における、不動態化または不動態化コーティングの提供に対するすべての参照は、先行する文において記載されている例示的な材料のコーティングなどの、誘電体コーティングを被着させることを含み得る。不動態化コーティングは、たとえば、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)またはチタニア(TiO)などの不動態化物質のCVD(化学気相成長)によって提供されてもよい。
【0166】
多孔質壁の入口側を不動態化することによって、電極において生成されるそれぞれの流体反応生成物は、入口チャンバを区切る入口側ではなく、入口チャンバから下流にあるロケーション(たとえば、多孔質壁の多孔質領域内または多孔質壁の出口側の)においてのみ生成され得る。これによって、それぞれの流体反応生成物が入口チャンバ内で生成されるかまたは入口チャンバに移行することが抑制され得る。
【0167】
受動領域の提供に関係なく、(たとえば、複合多孔質電極の出口側にあるかまたは出口側を画定する電解触媒領域との反応によって)出口チャンバ内で生成されるかまたは出口チャンバに提供される任意の流体反応生成物が、多孔質壁を通じて流れ戻ることが抑制されることがあり得、これは、より低密度の流体反応生成物が、浮力に抗して多孔質領域を通じて下向きに流れる必要があるためである(この流れはまた、多孔質壁にわたる圧力勾配にも抗し得る)。多孔質領域内の浮力が入口チャンバへの上流の流れではなく、出口チャンバへの下流の流れを促進するため、これは、下流にバイアスされた浮力効果による返流の抑制として参照され得る。
【0168】
第3の態様によれば、
電解質液(たとえば、水性電解質液)の供給源と、
電解質液の連続電解を実施するための、第2の態様による電解槽と
を備える、電解設備が開示される。
【0169】
電解設備は、本発明の第1の態様による複数の電解槽を備えてもよい。電解設備は、本明細書において定義されているような流動制御機器を備えてもよい。
【0170】
第4の態様によれば、第2の態様による電解槽または第3の態様による電解槽を動作させる方法であって、
それぞれの流体反応生成物を生成するために第1の多孔質壁および第2の多孔質壁によって提供される第1の電極および第2の電極において電解半反応を実行するために入口を介して電解質液の入口流を入口チャンバに提供することを含み、
電解質液および/または関連付けられるイオンは不連続多孔質構造を有する上記または各多孔質壁の多孔質領域内へと流れてそれぞれの電極と反応し、
第1の出口チャンバおよび第2の出口チャンバの各々は、放出のためのそれぞれの流体反応生成物を保持し、それぞれの電極は、流体反応生成物の出口チャンバから入口チャンバへの返流を抑制する、方法が開示される。
【0171】
不連続多孔質構造を有し、受動領域および電解触媒領域を有する上記または各多孔質壁(電極)について、それぞれの電解触媒領域における電解のそれぞれの半反応の速度が、それぞれの受動領域における電解の半反応の速度よりも大きいことがあり得る。
【0172】
本方法は、入口チャンバからそれぞれの出口チャンバまで各多孔質壁をまたいだ圧力降下が存在するように、電解槽の入口および/または出口条件を制御することを含んでもよい。
【0173】
電解質液は、それぞれの多孔質壁のみを通じて各出口チャンバに受け入れられてもよい。
【0174】
本方法は、第1の多孔質壁および/または第2の多孔質壁における電解質液の超臨界温度および圧力条件を維持するように電解槽の動作を制御することをさらに含んでもよい。
【0175】
電解槽の動作を制御することは、電解質液の熱力学および/または流速を制御することを含んでもよい。
【0176】
熱力学および/または流速条件を制御することは、目標入口圧力および入口における電解質液の目標入口温度を維持するように流動制御機器を制御すること、ならびに/または、第1の電極および第2の電極を通る電流および/もしくは第1の電極と第2の電極との間の印加される電圧を制御することを含んでもよい。
【0177】
たとえば、電解質液の超臨界条件に対応する臨界温度へと電解質液が加熱され、電解槽の上記または各それぞれの多孔質壁(電極)において提供されることがあり得る。
【0178】
熱力学および/または流速条件を制御することは、たとえば、374℃の水性電解質液の臨界温度などの、臨界温度の50℃以内(たとえば、30℃以内または20℃以内)の温度において電解質液が入口に提供されるように、たとえばヒータなどの、流動制御機器を制御することを含んでもよい。
【0179】
熱力学および/または流速条件を制御することは、目標入口圧力を維持するように、たとえば、電解槽と関連付けられる圧縮器および/または1つまたは複数の放出弁などの、流動制御機器を制御することを含んでもよい。目標入口圧力は、少なくとも、それぞれの電解質液の臨界圧力であってもよい。たとえば、目標入口圧力は、水性電解質液について少なくとも22MPaであってもよい。
【0180】
入口チャンバ内ならびに第1の出口チャンバおよび第2の出口チャンバ内で電解質液の超臨界温度および圧力条件が維持されることがあり得る。電解質液が超臨界条件において入口に提供されるように、熱力学および/または流速条件が制御されることがあり得る。
【0181】
超臨界温度および圧力条件が、水性電解質液に関する、少なくとも22MPaの圧力および少なくとも374℃の温度であることがあり得る。超臨界条件は、22~27MPaの圧力、および、374℃~550℃の温度、たとえば、374℃~400℃であってもよい。
【0182】
電解槽は、上記で定義したような第1の放出弁および第2の放出弁を備えてもよい。第1の放出弁は、弁の上流において第1の目標圧力を維持してもよく、第2の放出弁は、弁の上流において第2の目標圧力を維持してもよい。入口チャンバから多孔質壁を通じて出口チャンバに入る電解質液の分岐流を駆動する、多孔質壁をまたいだ圧力降下が存在するように、第1の目標圧力と第2の目標圧力とは異なってもよい。
【0183】
コントローラは、コントローラによって受信される流速データ、上流圧力データおよび/または組成データに基づいて、第1の出口および第2の出口のうちの一方または各々からの目標流速または目標組成を維持するように、第1の放出弁および/または第2の放出弁を制御してもよい。コントローラは、コントローラによって受信される流速データおよび/または組成データに基づいて、第1の出口から出る流れと第2の出口から出る流れとの間の目標流速比を維持するように、第1の放出弁および/または第2の放出弁を制御してもよい。目標流速比は、第1の出口を出る総流速と第2の出口を出る総流速との比、または、第1の出口を出る第1の流体反応生成物の流速と第2の出口を出る第2の流体反応生成物の流速との比に対応してもよい。
【0184】
コントローラは、たとえば、それぞれの出口流についてコントローラにおいて受信される組成データに基づいて、第1の出口を通る出口流中に過量の第2の流体反応生成物が存在するか否かを判定してもよく、または、第2の出口を通る出口流中に過量の第1の流体反応生成物が存在するか否かを判定してもよい。コントローラは、第1の放出弁および/または第2の放出弁を、上記判定に基づいて電解槽の多孔質壁を通じた流速を変化させるように制御してもよい。
【0185】
電解槽は、入口チャンバ内のレイノルズ数が4000以下、たとえば2300以下であるように、熱力学的条件および/または流速条件を維持するように動作させられてもよい。
【0186】
第5の態様によれば、電解槽の不連続多孔質構造を有する多孔質壁を製造する方法であって、
多孔質壁のボディを提供することであって、ボディは、長手方向に沿って長尺であり、第1の側から第2の側への厚さ方向を有する、ボディを提供することと、
複数の開放領域を形成するためにボディから材料を除去することであって、開放領域は、離散的なロケーションにおいてボディを通じて延在し、各開放領域は、長手方向成分を有するボディを通る経路に沿って長尺である、除去することと、
電解触媒組成物を、開放領域内へと流れるようにボディに付着させることと、
電解触媒組成物の電解触媒成分が開放領域の各ロケーションにおいて多孔質領域を形成する熱処理動作を実施するためにボディを加熱することであって、各多孔質領域は、流体がボディの第1の側からボディの第2の側へと流れることを可能にするために、ボディを通る流路のそれぞれのネットワークを画定する、加熱することと
を含む、方法が開示される。
【0187】
多孔質壁は、第1の態様および第2の態様の多孔質壁に関して上記で開示した特徴の任意の組み合わせを有してもよい。
【0188】
本方法は、電解触媒組成物を付着させた後で、熱処理動作の前に実行される、電解触媒組成物の成分を蒸発させるための乾燥動作をさらに含んでもよい。
【0189】
乾燥動作は、ボディ上に保持される電解触媒組成物の質量を5~60%、たとえば、10~60%、20~60%、30~60%、または30~50%だけ低減するように実行されてもよい。乾燥動作は、付着されるものとしての電解触媒組成物中の1つまたは複数の溶媒の質量に対応する電解触媒組成物の質量を低減するように実行されてもよい。乾燥動作は、100℃~300℃、たとえば、150℃~250℃、たとえば、約200℃の温度において実行されてもよい。乾燥動作は、オーブン内で実行されてもよい。乾燥動作は、1~4時間、たとえば1~3時間、たとえば約2時間にわたって実行されてもよい。
【0190】
熱処理動作が、ボディを150~1000℃の目標温度まで加熱することを含むことがあり得る。
【0191】
目標温度は、150~1000℃、たとえば250~800℃、300~600℃、300~450℃、たとえば、約350℃であってもよい。
【0192】
代替的に、目標温度は、150~1500℃、たとえば150~1000℃、または600~1000℃、または800~1000℃、または900~1000℃、たとえば、約930℃であってもよい。
【0193】
熱処理動作は、電解触媒組成物の電解触媒成分が焼結されて開放領域の各ロケーションに多孔質領域(たとえば、焼結多孔質領域)が形成される焼結動作であってもよい。
【0194】
熱処理動作は、電解触媒組成物の電解触媒成分が溶融されて開放領域の各ロケーションに多孔質領域(たとえば、溶融多孔質領域)が形成される溶融動作であってもよい。
【0195】
熱処理動作は、電解触媒組成物の電解触媒含有微粒子(たとえば、電解触媒粒子)が互いに結合されて開放領域の各ロケーションに多孔質領域(たとえば、結合多孔質領域)が形成される結合動作であってもよい。粒子を結合することは、結合剤(たとえば、ポリマー結合剤)によって粒子を結合することを含んでもよい。粒子を結合することは、結合剤(たとえば、ポリマー結合剤)を融解および/または硬化させることを含んでもよい。
【0196】
熱処理動作は、電解触媒組成物の電解触媒含有微粒子(たとえば、電解触媒粒子)が化学反応によって互いに結合されて開放領域の各ロケーションに多孔質領域(たとえば、結合多孔質領域)が形成される化学反応動作であってもよい。たとえば、化学反応動作は、化学反応によって反応生成物(たとえば、酸化物)を形成することを含んでもよく、反応生成物は、電解触媒含有微粒子(たとえば、電解触媒粒子)を互いに結合する。
【0197】
熱処理動作は、温度が目標温度まで徐々に上昇する昇温段階を含んでもよい。昇温段階において、昇温速度は、0.5~5℃毎分、たとえば、0.5℃~2℃毎分、たとえば約1℃毎分であってもよい。熱処理動作は、温度が目標温度に維持される保持段階を含んでもよい。保持段階は、30~300分、たとえば30~90分、たとえば約60分であってもよい。
【0198】
熱処理動作は、ボディを150~500℃の第1の目標温度まで加熱することと、その後、500~1000℃の第2の目標温度まで加熱することとを含む2段階熱処理動作を含んでもよい。第1の目標温度は、200~500℃、たとえば250~450℃、または300~500℃、たとえば約300C℃または約350℃であってもよい。第2の目標物温度は、600~1000℃、たとえば700~1000℃、または800~1000℃、または900~1000℃、または900~950℃、たとえば約930℃であってもよい。熱処理動作の第1の段階は、ボディを2~10時間、たとえば4~8時間、たとえば約6時間にわたって第1の目標温度に保持することを含んでもよい。熱処理動作の第2の段階は、ボディを30~300分、たとえば30~90分、たとえば約60分にわたって第2の目標温度に保持することを含んでもよい。
【0199】
第1の段階は、電解触媒組成物の結合剤成分などの、電解触媒組成物の非電解触媒成分を熱分解または焼却するために実行されてもよい。したがって、第1の段階は、酸化雰囲気中で実行されてもよい。したがって、熱処理動作の第1の段階は、熱分解動作であると考えることができる。
【0200】
第2の段階は、電解触媒含有微粒子(たとえば電解触媒粒子)を互いに凝集させる(たとえば、焼結する)ために実行されてもよい。したがって、第2の段階は、アルゴン雰囲気または窒素/水素雰囲気などの不活性(または還元)雰囲気中で実行されてもよい。したがって、熱処理動作の第2の凝集(たとえば、焼結)動作であると考えることができる。
【0201】
熱処理動作の第2の段階は、溶接後熱処理動作(たとえば、応力緩和熱処理動作)などの、別の熱処理動作と同時に実行されてもよく、別の熱処理動作を含んでもよく、または別の熱処理動作であってもよい。
【0202】
本方法は、第2の態様による電解槽の多孔質壁を製造する方法であってもよい。
【0203】
電解触媒組成物は、ボディに付着されるときに、約1Pa・s~約30Pa・sの粘度を有する。
【0204】
電解触媒組成物は、約1Pa・s以上、たとえば約2Pa・s以上、または約4Pa・s以上、または約5Pa・s以上、または約6Pa・s以上、または約8Pa・s以上、または約10Pa・s以上、または約12Pa・s以上、または約14Pa・s以上、または約16Pa・s以上、または約18Pa・s以上、または約20Pa・s以上、または約21Pa・s以上、または約22Pa・s以上、または約23Pa・s以上、または約24Pa・s以上、または約25Pa・s以上の(すなわち、動的)粘度を有してもよい。電解触媒組成物は、約30Pa・s以下、たとえば約28Pa・s以下、または約26Pa・s以下、または約25Pa・s以下、または約24Pa・s以下、または約23Pa・s以下、または約22Pa・s以下、または約21Pa・s以下、または約20Pa・s以下、または約19Pa・s以下、または約18Pa・s以下、または約17Pa・s以下、または約16Pa・s以下、または約14Pa・s以下、または約12Pa・s以下、または約10Pa・s以下、または約8Pa・s以下の(すなわち、動的)粘度を有してもよい。電解触媒組成物は、約1Pa・s~約30Pa・s、たとえば約1Pa・s~約28Pa・s、または約1Pa・s~約26Pa・s、または約1Pa・s~約25Pa・s、または約1Pa・s~約24Pa・s、または約1Pa・s~約23Pa・s、または約1Pa・s~約22Pa・s、または約1Pa・s~約21Pa・s、または約1Pa・s~約20Pa・s、または約1Pa・s~約18Pa・s、または約1Pa・s~約16Pa・s、または約1Pa・s~約14Pa・s、または約1Pa・s~約12Pa・s、または約1Pa・s~約10Pa・s、または約1Pa・s~約8Pa・s、または約2Pa・s~約30Pa・s、たとえば約2Pa・s~約28Pa・s、または約2Pa・s~約26Pa・s、または約2Pa・s~約25Pa・s、または約2Pa・s~約24Pa・s、または約2Pa・s~約23Pa・s、または約2Pa・s~約22Pa・s、または約2Pa・s~約21Pa・s、または約2Pa・s~約20Pa・s、または約2Pa・s~約18Pa・s、または約2Pa・s~約16Pa・s、または約2Pa・s~約14Pa・s、または約2Pa・s~約12Pa・s、または約2Pa・s~約10Pa・s、または約2Pa・s~約8Pa・s、または約4Pa・s~約30Pa・s、たとえば約4Pa・s~約28Pa・s、または約4Pa・s~約26Pa・s、または約4Pa・s~約25Pa・s、または約4Pa・s~約24Pa・s、または約4Pa・s~約23Pa・s、または約4Pa・s~約22Pa・s、または約4Pa・s~約21Pa・s、または約4Pa・s~約20Pa・s、または約4Pa・s~約18Pa・s、または約4Pa・s~約16Pa・s、または約4Pa・s~約14Pa・s、または約4Pa・s~約12Pa・s、または約4Pa・s~約10Pa・s、または約4Pa・s~約8Pa・s、または約5Pa・s~約30Pa・s、たとえば約5Pa・s~約28Pa・s、または約5Pa・s~約26Pa・s、または約5Pa・s~約25Pa・s、または約5Pa・s~約24Pa・s、または約5Pa・s~約23Pa・s、または約5Pa・s~約22Pa・s、または約5Pa・s~約21Pa・s、または約5Pa・s~約20Pa・s、または約5Pa・s~約18Pa・s、または約5Pa・s~約16Pa・s、または約5Pa・s~約14Pa・s、または約5Pa・s~約12Pa・s、または約5Pa・s~約10Pa・s、または約5Pa・s~約8Pa・s、または約6Pa・s~約30Pa・s、たとえば約6Pa・s~約28Pa・s、または約6Pa・s~約26Pa・s、または約6Pa・s~約25Pa・s、または約6Pa・s~約24Pa・s、または約6Pa・s~約23Pa・s、または約6Pa・s~約22Pa・s、または約6Pa・s~約21Pa・s、または約6Pa・s~約20Pa・s、または約6Pa・s~約18Pa・s、または約6Pa・s~約16Pa・s、または約6Pa・s~約14Pa・s、または約6Pa・s~約12Pa・s、または約6Pa・s~約10Pa・s、または約6Pa・s~約8Pa・s、または約8Pa・s~約30Pa・s、たとえば約8Pa・s~約28Pa・s、または約8Pa・s~約26Pa・s、または約8Pa・s~約25Pa・s、または約8Pa・s~約24Pa・s、または約8Pa・s~約23Pa・s、または約8Pa・s~約22Pa・s、または約8Pa・s~約21Pa・s、または約8Pa・s~約20Pa・s、または約8Pa・s~約18Pa・s、または約8Pa・s~約16Pa・s、または約8Pa・s~約14Pa・s、または約8Pa・s~約12Pa・s、または約8Pa・s~約10Pa・s、または約8Pa・s~約8Pa・s、または約10Pa・s~約30Pa・s、または約10Pa・s~約28Pa・s、または約20Pa・s~約26Pa・s、または約10Pa・s~約25Pa・s、または約10Pa・s~約24Pa・s、または約10Pa・s~約23Pa・s、または約10Pa・s~約22Pa・s、または約10Pa・s~約21Pa・s、または約10Pa・s~約20Pa・s、または約10Pa・s~約18Pa・s、または約10Pa・s~約16Pa・s、または約10Pa・s~約14Pa・s、または約10Pa・s~約12Pa・s、または約12Pa・s~約30Pa・s、または約14Pa・s~約30Pa・s、または約16Pa・s~約30Pa・s、または約18Pa・s~約30Pa・s、または約20Pa・s~約30Pa・s、または約21Pa・s~約30Pa・s、または約22Pa・s~約30Pa・s、または約23Pa・s~約30Pa・s、または約24Pa・s~約30Pa・s、または約25Pa・s~約30Pa・s、または約16Pa・s~約25Pa・s、または約18Pa・s~約25Pa・s、または約20Pa・s~約25Pa・s、または約16Pa・s~約23Pa・s、または約18Pa・s~約23Pa・s、または約20Pa・s~約23Pa・s、または約16Pa・s~約20Pa・s、または約18Pa・s~約20Pa・sの(すなわち、動的)粘度を有してもよい。電解触媒組成物の(すなわち、動的)粘度は、たとえばISO3104:2020に従って25℃において測定されてもよい。
【0205】
電解触媒組成物が、ボディに付着されるときに、電解触媒と液体殿混合物を含むことがあり得る。
【0206】
電解触媒組成物は、電解のそれぞれの半反応の電解触媒を含む(たとえば、本質的にそれから成り、それから成り、またはそれである)組成物である。たとえば、電解触媒組成物は、電解のそれぞれの半反応の電解触媒と液体との混合物を含んでもよい(たとえば、本質的にそれから成ってもよく、またはそれから成ってもよい)。
【0207】
電解触媒組成物は、電解のそれぞれの半反応の電解触媒および液体を含むスラリを含んでもよい(たとえば、それであってもよく、本質的にそれから成ってもよく、またはそれから成ってもよい)。
【0208】
電解触媒組成物は、液体中の電解のそれぞれの半反応の電解触媒の懸濁液を含んでもよい(たとえば、それであってもよく、本質的にそれから成ってもよく、またはそれから成ってもよい)。
【0209】
電解触媒は、微粒子の形態で混合物中に提供されてもよい。
【0210】
電解触媒組成物は、(たとえば、液体中の微粒子の)コロイド懸濁液を含んでもよい(たとえば、それであってもよく、本質的にそれから成ってもよく、またはそれから成ってもよい)。たとえば、電解触媒組成物は、電解のそれぞれの半反応の電解触媒を含むゾル(すなわち、固液コロイド懸濁液)、導電性インク(すなわち、液体中の導電性電解触媒粒子の懸濁液)、またはペースト(すなわち、懸濁液が低い応力が加わるのに応答して固定として挙動するのに十分に高い個体含有量を有する固液懸濁液)を含んでもよい(たとえば、それであってもよく、本質的にそれから成ってもよく、またはそれから成ってもよい)。
【0211】
電解触媒は、本明細書に記載されている任意の適切な電解触媒であってもよい。
【0212】
電解触媒微粒子の粒径特性は、レーザ散乱技法によって周知の様式で測定することができる(たとえば、規格ISO13320-1)。この技法において、粉末、懸濁液およびエマルション中の粒子のサイズは、ミー理論の適用に基づいて、レーザビームの回折を使用して測定される。たとえばMicrotrac MRBから入手可能な機械が、当該技術分野において「等価球径(e.s.d)」として参照されるサイズが所与のe.s.d値未満である粒子の体積による累積割合の測定およびプロットを提供する。平均粒径d50は、粒子の体積の50%がそのd50値未満の等価球径を有する、この様式で求められる粒子e.s.dの値である。d99値は、粒子の体積の99%がそのd99値未満の等価球径を有する、同じ様式で求められる粒子e.s.dの値である。
【0213】
電解触媒微粒子は、約100nm以上、たとえば約500nm以上、または約1μm以上、または約4μm以上、または約5μm以上、または約8μm以上、または約10μm以上のd50を有してもよい。電解触媒微粒子は、約100μm以下、たとえば約75μm以下、または約50μm以下、または約25μm以下、または約20μm以下のd50を有してもよい。電解触媒微粒子は、約100nm~約100μm、たとえば約500nm~約100μm、または約750nm~約100μm、または約1μm~約100μm、または約10μm~約100μm、または約500nm~約100μm、または約500nm~約50μm、または約750nm~約50μm、または約1μm~約50μm、または約10μm~約50μm、または約500nm~約20μm、または約750nm~約20μm、または約1μm~約20μm、または約10μm~約20μm、または約500nm~約50μm、または約750nm~約50μm、または約1μm~約50μm、または約10μm~約50μm、または約500nm~約25μm、または約750nm~約25μm、または約1μm~約25μm、または約10μm~約25μm、または約500nm~約20μm、または約750nm~約20μm、または約1μm~約20μm、または約10μm~約20μm、または約500nm~約15μm、または約750nm~約15μm、または約1μm~約15μm、または約10μm~約15μmのd50を有してもよい。
【0214】
電解触媒微粒子は、約1μm以上、たとえば約10μm以上、または約20μm以上、または約30μm以上、または約35μm以上のd99を有してもよい。電解触媒微粒子は、約150μm以下、たとえば約100μm以下、または約75μm以下、または約50μm以下、または約45μm以下、または約40μm以下のd99を有してもよい。電解触媒微粒子は、約1μm~150μm、たとえば約1μm~約75μm、または約1μm~約50μm、または約1μm~約45μm、または約1μm~約50μm、または約10μm~約150μm、または約10μm~約100μm、または約10μm~約75μm、または約10μm~約50μm、または約10μm~約45μm、または約10μm~約40μm、または約20μm~約150μm、または約20μm~約100μm、または約20μm~約75μm、または約20μm~約50μm、または約20μm~約45μm、または約20μm~約40μm、または約30μm~約150μm、または約30μm~約100μm、または約30μm~約75μm、または約30μm~約50μm、または約30μm~約45μm、または約30μm~約40μmのd99を有してもよい。
【0215】
50および/またはd99のより低い値によって実証されるように、粒径が小さいほど、電解触媒組成物が開放領域により良好に浸透することが促進され得る。
【0216】
たとえば、電解触媒微粒子は、貴金属(すなわち、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Ag、Re)、dブロック遷移金属(すなわち、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、R、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Rf、Db、S、Rh、Hs、Mt、Ds、Rg、Cn)、fブロックランタニド(すなわち、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)、希土類金属(すなわち、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)、白金族金属(すなわち、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)、P、S、Cおよび/またはそれらの組合せから選択される1つまたは複数の元素を含んでもよく(たとえば、本質的にそれらから成ってもよく、またはそれらから成ってもよく)、電解触媒微粒子は、約100nm~約100μm、たとえば、約500nm~約100μm、または約500nm~約50μm、または約1μm~約50μm、または約1μm~約25μmのd50、および約1μm~約150μm、たとえば、約1μm~約75μm、または約1μm~約50μm、または約10μm~約75μm、または約10μm~約75μm、または約20μm~約75μm、または約20μm~約50μm、または約30μm~約75μm、または約30μm~約45μm、または約30μm~約40μmのd99を有する。
【0217】
電解触媒微粒子は、Co、Fe、Ir、Li、Ni、P、S、Ti、Znおよび/またはそれらの組合せを含む(たとえば、本質的にそれらから成り、またはそれらから成る)粒子を含んでもよく(たとえば、本質的にそれらから成ってもよく、またはそれらから成ってもよく)、電解触媒微粒子は、約100nm~約100μm、たとえば、約500nm~約100μm、または約500nm~約50μm、または約1μm~約50μm、または約1μm~約25μm、または約8μm~約16μmのd50、および約1μm~約150μm、たとえば、約1μm~約75μm、または約1μm~約50μm、または約10μm~約75μm、または約10μm~約75μm、または約20μm~約75μm、または約20μm~約50μm、または約30μm~約75μm、または約30μm~約45μm、または約30μm~約40μmのd99を有する。
【0218】
電解触媒微粒子は、Ce、Co、Fe、Ho、Ir、Mo、Ni、Pd、Pt、Ru、Sm、Wおよび/またはそれらの組合せを含む(たとえば、本質的にそれらから成り、またはそれらから成る)粒子を含んでもよく(たとえば、本質的にそれらから成ってもよく、またはそれらから成ってもよく)、電解触媒微粒子は、約100nm~約100μm、たとえば、約500nm~約100μm、または約500nm~約50μm、または約1μm~約50μm、または約1μm~約25μmのd50、および約1μm~約150μm、たとえば、約1μm~約75μm、または約1μm~約50μm、または約10μm~約75μm、または約10μm~約75μm、または約20μm~約75μm、または約20μm~約50μm、または約30μm~約75μm、または約30μm~約45μm、または約30μm~約40μmのd99を有する。
【0219】
電解触媒微粒子は、Ni、Fe、Co、P、Sおよび/またはそれらの組合せを含む(たとえば、本質的にそれらから成り、またはそれらから成る)粒子を含んでもよく(たとえば、本質的にそれらから成ってもよく、またはそれらから成ってもよく)、電解触媒微粒子は、約100nm~約100μm、たとえば、約500nm~約100μm、または約500nm~約50μm、または約1μm~約50μm、または約1μm~約25μm、または約4μm~約10μmのd50、および約1μm~約150μm、たとえば、約1μm~約75μm、または約1μm~約50μm、または約10μm~約75μm、または約10μm~約75μm、または約20μm~約75μm、または約20μm~約50μm、または約30μm~約75μm、または約30μm~約45μm、または約30μm~約40μmのd99を有する。
【0220】
電解触媒微粒子は、Pt、Ir、Pd、Ni、Moおよび/またはそれらの組合せを含む(たとえば、本質的にそれらから成り、またはそれらから成る)粒子を含んでもよく(たとえば、本質的にそれらから成ってもよく、またはそれらから成ってもよく)、電解触媒微粒子は、約100nm~約100μm、たとえば、約500nm~約100μm、または約500nm~約50μm、または約1μm~約50μm、または約1μm~約25μmのd50、および約1μm~約150μm、たとえば、約1μm~約75μm、または約1μm~約50μm、または約10μm~約75μm、または約10μm~約75μm、または約20μm~約75μm、または約20μm~約50μm、または約30μm~約75μm、または約30μm~約45μm、または約30μm~約40μmのd99を有する。
【0221】
いくつかの例において、電解触媒微粒子は、Ni(たとえば、元素Ni)またはPt(たとえば、元素Pt)を含む(たとえば、本質的にそれらから成り、またはそれらから成る)粒子を含み(たとえば、本質的にそれらから成り、またはそれらから成り)、電解触媒微粒子は、約100nm~約100μm、たとえば、約500nm~約100μm、または約500nm~約50μm、または約1μm~約50μm、または約1μm~約25μmのd50、および約1μm~約150μm、たとえば、約1μm~約75μm、または約1μm~約50μm、または約10μm~約75μm、または約10μm~約75μm、または約20μm~約75μm、または約20μm~約50μm、または約30μm~約75μm、または約30μm~約45μm、または約30μm~約40μmのd99を有する。
【0222】
いくつかの例において、電解触媒微粒子は、Ni(たとえば、元素Ni)を含む(たとえば、本質的にそれらから成り、またはそれらから成る)粒子を含み(たとえば、本質的にそれらから成り、またはそれらから成り)、電解触媒微粒子は、約100nm~約100μm、たとえば、約500nm~約100μm、または約500nm~約50μm、または約1μm~約50μm、または約1μm~約25μmのd50、および約1μm~約150μm、たとえば、約1μm~約75μm、または約1μm~約50μm、または約10μm~約75μm、または約10μm~約75μm、または約20μm~約75μm、または約20μm~約50μm、または約30μm~約75μm、または約30μm~約45μm、または約30μm~約40μmのd99を有する。
【0223】
いくつかの例において、電解触媒微粒子は、Pt(たとえば、元素Pt)を含む(たとえば、本質的にそれらから成り、またはそれらから成る)粒子を含み(たとえば、本質的にそれらから成り、またはそれらから成り)、電解触媒微粒子は、約100nm~約100μm、たとえば、約500nm~約100μm、または約500nm~約50μm、または約1μm~約50μm、または約1μm~約25μmのd50、および約1μm~約150μm、たとえば、約1μm~約75μm、または約1μm~約50μm、または約10μm~約75μm、または約10μm~約75μm、または約20μm~約75μm、または約20μm~約50μm、または約30μm~約75μm、または約30μm~約45μm、または約30μm~約40μmのd99を有する。
【0224】
いくつかの例において、電解触媒微粒子は、Ni含有微粒子であり、電解触媒微粒子は、約100nm~約100μm、たとえば、約500nm~約100μm、または約500nm~約50μm、または約1μm~約50μm、または約1μm~約25μmのd50、および約1μm~約150μm、たとえば、約1μm~約75μm、または約1μm~約50μm、または約10μm~約75μm、または約10μm~約75μm、または約20μm~約75μm、または約20μm~約50μm、または約30μm~約75μm、または約30μm~約45μm、または約30μm~約40μmのd99を有する。Ni含有微粒子は、Ni(たとえば、元素Ni)またはNi系合金の粒子を含んでもよい(たとえば、本質的にそれらから成ってもよく、またはそれらから成ってもよい)。
【0225】
いくつかの例において、電解触媒含有微粒子は、本質的にNiの粒子から成るNi微粒子であり、電解触媒微粒子は、約100nm~約100μm、たとえば、約500nm~約100μm、または約500nm~約50μm、または約1μm~約50μm、または約1μm~約25μmのd50、および約1μm~約150μm、たとえば、約1μm~約75μm、または約1μm~約50μm、または約10μm~約75μm、または約10μm~約75μm、または約20μm~約75μm、または約20μm~約50μm、または約30μm~約75μm、または約30μm~約45μm、または約30μm~約40μmのd99を有する。
【0226】
電解触媒含有微粒子は、球状、回転楕円体、針状または針様、繊維状、板状、フレーク様などのような、(たとえば、実質的に)任意の適切な粒子形状(すなわち、形態)を有してもよい。いくつかの例において、電解触媒含有微粒子は、フレーク様粒子形状を有する。いくつかの例において、電解触媒含有微粒子は、たとえば、金属または金属合金のフレーク(NiまたはNi合金のフレークなど)などの、電解触媒のフレークを含む(たとえば、本質的にそれらから成り、またはそれらから成る)。
【0227】
適切な液体が、電解触媒微粒子の性質、開放領域の寸法、および/または加熱温度などの製造上の制約に基づいて選択されてもよい。
【0228】
液体は、極性であってもよく、または非極性であってもよい。
【0229】
液体は、水性(たとえば、水系)であってもよい。すなわち、液体は、水を含んでもよい(たとえば、本質的にそれから成ってもよく、それから成ってもよく、またはそれであってもよい)。
【0230】
液体は、有機物であってもよい。液体は、たとえば、炭化水素などの、1つまたは複数の有機種を含んでもよい(たとえば、本質的にそれらから成ってもよく、それらから成ってもよく、またはそれらであってもよい)。
【0231】
液体は、1つまたは複数のアルコール、エステル、アセテート、アセテートエステル、エーテルアセテートおよび/または酸を含んでもよい(たとえば、本質的にそれらから成ってもよく、それらから成ってもよく、またはそれらであってもよい)。
【0232】
液体は、たとえば、1つまたは複数の溶媒、たとえば、1つまたは複数の極性溶媒または1つまたは複数の非極性溶媒、たとえば、1つまたは複数の有機溶媒を含んでもよい(たとえば、本質的にそれらから成ってもよく、それらから成ってもよく、またはそれらであってもよい)。
【0233】
いくつかの例において、液体は、非極性エステル(たとえば、非極性エステル溶媒)を含む(たとえば、本質的にそれから成り、それから成り、またはそれである)。
【0234】
いくつかの例において、液体は、カルボン酸およびアルコールの反応生成物を含み(たとえば、本質的にそれから成り、それから成り、またはそれであり)、たとえば、アルコールはアルコキシアルコールを含む。いくつかの例において、液体は、アセテートエステルまたはエーテルアセテートを含む(たとえば、本質的にそれらから成り、それらから成り、またはそれらである)。いくつかの例において、液体は、2-ブトキシエチルアセテートを含む(たとえば、本質的にそれから成り、それから成り、またはそれである)。
【0235】
電解触媒組成物は、結合剤、たとえば、ポリマー結合剤を含んでもよい。ポリマー結合剤は、熱可塑性結合剤または熱硬化性結合剤(たとえば、樹脂)であってもよい。熱可塑性結合剤は、上昇した温度において融解するかまたは柔軟になり、冷却されると固化するポリマー結合剤である。熱硬化性結合剤(たとえば、樹脂)は、加熱、放射線への暴露および/または適切な触媒への暴露によって不可逆的に硬くなる(すなわち、硬化する)ポリマー結合剤である。結合剤は、液体中に分散または溶解されてもよい。
【0236】
電解触媒組成物は、粘度またはレオロジー調整剤、粘着付与剤、可塑剤、色素などのような、1つまたは複数の添加剤を含んでもよい。たとえば、電解触媒組成物は、カーボンブラックを含んでもよい。
【0237】
適切な電解触媒組成物は、Creative Materials Inc(米国マサチューセッツ州所在)から入手可能な導電性インク116-25であってもよい。導電性インク116-25の粘度は、同じくCreative Materials Inc(米国マサチューセッツ州所在)から入手可能な溶媒112-19、溶媒102-03、または溶媒113-12を用いた希釈によって、必要に応じて調整することができる。
【0238】
第5の態様による方法は、第1の態様による流れ構成、または第2の態様による電解槽の不連続多孔質構造を有する多孔質壁を提供するためのものであってもよい。
【0239】
第6の態様によれば、電解槽の不連続多孔質構造を有する多孔質壁を製造する方法であって、
付加製造プロセスによって、多孔質壁を形成することを含み、多孔質壁は、
第1の側および第2の側を有するボディであって、長手方向に沿って長尺であり、第1の側から第2の側への厚さ方向を有する、ボディと、
流体が第1の側から第2の側へと流れることを可能にするために離散的なロケーションにおいてボディを通じて延在する複数の多孔質領域とを備え、
各多孔質領域は、ボディを通じた流路のそれぞれのネットワークを画定し、
各多孔質領域は、長手方向成分を有するボディを通る経路に沿って長尺であり、
付加製造プロセスは、多孔質領域がボディよりも高い開放多孔度をもって形成されるように、形成中に多孔質壁の多孔度を変化させるように制御される、方法が開示される。
【0240】
したがって、各多孔質領域は、多孔質領域を包囲し、ボディと多孔質領域との間の多孔度の変化によって画定されるそれぞれの境界においてボディとインターフェースすることができる。
【0241】
多孔質領域およびボディが、共通の材料組成を有することがあり得る。
【0242】
材料組成が、電解触媒を含み、以て、多孔質壁が、少なくとも多孔質領域を含む電解触媒領域を含むことがあり得る。電解触媒は、第5の態様に関して上述したような特性のいずれかであってもよく、またはそれを有してもよい。多孔質領域から外方のボディの領域も電解触媒を含むが、それらは、使用時に電解質液と接触するように構成されない場合がある(たとえば、流体流に暴露されない壁の埋め込み部分)。
【0243】
本方法は、多孔質領域を含む多孔質壁の電解触媒領域よりも電解触媒としての活性が低くなるように構成されている不動態化コーティングを、ボディの第1の側に提供することをさらに含むことができる。
【0244】
第6の態様による方法は、第1の態様による流れ構成、または第2の態様による電解槽の不連続多孔質構造を有する多孔質壁を提供するためのものであってもよい。
【0245】
第7の態様によれば、電解槽のための流れ構成であって、電解槽の第1の電極および第2の電極に対応する第1の多孔質壁および第2の多孔質壁と、第1の多孔質壁と第2の多孔質壁との間に配置されており、入口を通じて電解質液を受け入れるように構成されている入口チャンバと、それぞれ第1の多孔質壁および第2の多孔質壁によって入口チャンバから分離されている、電解のそれぞれの流体反応生成物を保持するための第1の出口チャンバおよび第2の出口チャンバとを備える、流れ構成が開示される。
【0246】
上記または各多孔質壁は、入口チャンバに隣接する入口側およびそれぞれの出口チャンバに隣接する出口側を有するボディを備えることができ、ボディは、長手方向に沿って長尺であり、入口側から出口側への厚さ方向を有する。
【0247】
第7の態様による流れ構成において、多孔質壁は、本明細書の他の箇所に記載のような不連続多孔質構造を有しなくてもよい。
【0248】
たとえば、上記または各多孔質壁は、ボディを通じて延在する複数のチャネルを備えてもよい。
【0249】
各チャネルが、長手方向成分を有するボディを通る経路に沿って長尺であることがあり得る。各チャネルが、長手方向に対して20°~80°の経路角度を規定するボディを通る経路に沿って長尺であることがあり得る。
【0250】
経路角度は、25°~75°、たとえば、30°~70°、35°~70°、40°~70°、たとえば、50°~70°であってもよい。
【0251】
各チャネルは、25~250μm、たとえば、50~250μm、50~150μm、70~150μm、または約120μmの平均経路直径を有してもよい。平均直径は、チャネルの長さに沿った平均断面直径であってもよい。
【0252】
各チャネルは、25~250μm、たとえば、25~100μm、25~80μm、または25-50μmの中間点直径を有してもよい。中間点直径は、チャネルの長さに沿った中間の直径であってもよい。
【0253】
各チャネルは、25~250μm、たとえば、50-250μm、50-150μm、70-150μm、または約120μmの入口径を有してもよい。入口径は、それぞれの壁の入口側におけるチャネルの直径であってもよい。
【0254】
各チャネルは、25~250μm、たとえば、50-250μm、50-150μm、70-150μm、または約120μmの出口径を有してもよい。出口径は、それぞれの壁の出口側におけるチャネルの直径であってもよい。
【0255】
各多孔質領域が、10,000~250,000μm、たとえば、15,000~250,000μm、15,000~150,000μm、20,000~150,000μm、50,000~150,000μm、または約100,000μmの断面積を有することがあり得る。各断面積は、チャネルの体積を、厚さ方向に沿ったチャネルの延在範囲によって除算したものとして決定することができる。
【0256】
上記または各多孔質壁のボディは、多孔質媒体を含んでもよく、または、多孔質媒体によって画定されてもよい。たとえば、多孔質媒体は、多孔質壁が、入口チャンバとそれぞれの出口チャンバとの間の流体流のために、それにわたって多孔質であるボディの連続長手方向延在範囲にわたってボディの入口側および出口側を画定することができる。
【0257】
第7の態様による流れ構成は、第1の態様に関しておよび/または第2の態様~第6の態様に関して上述したような特徴の任意の組み合わせを有してもよい。ただし、そのような特徴が相互に排他的である場合を除く。
【0258】
本明細書に記載されているコントローラは、プロセッサを含んでもよい。コントローラおよび/またはプロセッサは、本明細書に記載されており、図面に示されているような方法を実施させる任意の適切な回路を含んでもよい。コントローラまたはプロセッサは、本方法、および/または、コントローラもしくはプロセッサがそれ向けに構成されている、記載されている機能を実施するための、少なくとも1つの特定用途向け集積回路(ASIC)、および/または、少なくとも1つのフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、および/または、シングルもしくはマルチプロセッサアーキテクチャ、および/または、シーケンシャル(フォン・ノイマン)/並列アーキテクチャ、および/または、少なくとも1つのプログラマブル論理コントローラ(PLC)、および/または、少なくとも1つのマイクロプロセッサ、および/または、少なくとも1つのマイクロコントローラ、および/または、中央処理装置(CPU)を含んでもよい。
【0259】
コントローラは、本明細書に記載されているデータを記憶し、ならびに/または、本明細書に記載されているプロセスおよび機能(たとえば、パラメータの決定および制御ルーチンの実行)を実施するための機械可読命令(たとえば、ソフトウェア)を記憶する1つまたは複数のメモリを含んでもよく、または、プロセッサが、当該メモリを含んでもよく、もしくは、メモリと通信してもよい。
【0260】
メモリは、任意の適切な非一時的コンピュータ可読記憶媒体、1つまたは複数のデータ記憶デバイスであってもよく、ハードディスクおよび/またはソリッドステートメモリ(フラッシュメモリなど)を含んでもよい。いくつかの例において、コンピュータ可読命令は、ワイヤレス信号を介してまたは有線信号を介してメモリに転送されてもよい。メモリは、永続的取り外し不能メモリであってもよく、または、取り外し可能メモリ(ユニバーサルシリアルバス(USB)フラッシュドライブなど)であってもよい。メモリは、プロセッサまたはコントローラによって読み出されると、本明細書に記載されており、および/または、図面に示されているような方法を実施させるコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラムを記憶してもよい。コンピュータプログラムは、ソフトウェアもしくはファームウェアであってもよく、または、ソフトウェアとファームウェアとの組合せであってもよい。
【0261】
相互に排他的である場合を除いて、上記の態様のいずれか1つに関連して記載されている特徴は、変更すべきところは変更して任意の他の態様に適用されてもよい。さらに、相互に排他的である場合を除いて、本明細書に記載されている任意の特徴は、任意の態様に適用されてもよく、および/または、本明細書に記載されている任意の他の特徴と組み合わされてもよい。
【0262】
例示のみを目的として、添付の図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0263】
図1a】電解槽の例示的な流れ構成の断面図である。
図1b】流れ構成の多孔質壁の例示的な構成の断面図である。
図1c】流れ構成の多孔質壁の例示的な構成の断面図である。
図1d】流れ構成の多孔質壁の例示的な構成の断面図である。
図2a】受動領域を含む、多孔質壁のさらなる例示的な構成の断面図である。
図2b】受動領域を含む、多孔質壁のさらなる例示的な構成の断面図である。
図2c】受動領域を含む、多孔質壁のさらなる例示的な構成の断面図である。
図3a】多孔質壁を製造する方法の流れ図である。
図3b】電解触媒組成物のアプリケータの概略図である。
図4a】様々な製造レベルにおける多孔質壁の1つの側のSEM(走査型電子顕微鏡)画像を示す図である。
図4b】様々な製造レベルにおける多孔質壁の1つの側のSEM(走査型電子顕微鏡)画像を示す図である。
図4c】様々な製造レベルにおける多孔質壁の1つの側のSEM(走査型電子顕微鏡)画像を示す図である。
図4d】様々な製造レベルにおける多孔質壁の1つの側のSEM(走査型電子顕微鏡)画像を示す図である。
図5】多孔質壁を製造する方法の流れ図である。
図6図5の方法によって製造されるものとしての例示的な多孔質壁の断面の画像を示す図である。
図7】軸対称流動シミュレーションモデルの幾何学的配置の概略図である。
図8a】流動シミュレーションにおける流体反応生成物および電解質液の濃度の等高線プロットを示す図である。
図8b】流動シミュレーションにおける流体反応生成物および電解質液の濃度の等高線プロットを示す図である。
図8c】流動シミュレーションにおける流体反応生成物および電解質液の濃度の等高線プロットを示す図である。
図8d】選択された流速における、図8a~図8cに対応する流動シミュレーションの質量流および種のクロスオーバの結果を示す図である。
図8e】選択された流速における、図8a~図8cに対応する流動シミュレーションの質量流および種のクロスオーバの結果を示す図である。
図9a】選択されたパラメータ研究からの質量流および種のクロスオーバの結果を示す図である。
図9b】選択されたパラメータ研究からの質量流および種のクロスオーバの結果を示す図である。
図9c】選択されたパラメータ研究からの質量流および種のクロスオーバの結果を示す図である。
図9d】選択されたパラメータ研究からの質量流および種のクロスオーバの結果を示す図である。
図9e】選択されたパラメータ研究からの質量流および種のクロスオーバの結果を示す図である。
図9f】選択されたパラメータ研究からの質量流および種のクロスオーバの結果を示す図である。
図10a】多孔度および細孔角の独立変数のパラメータ研究からの流動シミュレーション結果のマトリックスを示す図である。
図10b】多孔度および細孔角の独立変数のパラメータ研究からの流動シミュレーション結果のマトリックスを示す図である。
図10c】多孔度および細孔角の独立変数のパラメータ研究からの流動シミュレーション結果のマトリックスを示す図である。
図10d】多孔度および細孔角の独立変数のパラメータ研究からの流動シミュレーション結果のマトリックスを示す図である。
図11図1aによる電解槽を備える電解設備の例の概略図である。
図12】電解槽を制御する方法の流れ図である。
図13】アルミナをコーティングされたインコネル(登録商標)合金625チューブの壁の中へとチャネルをレーザ穿孔することによって形成される多孔質電極の表面の光学顕微鏡写真(倍率377.5倍)の図である。
図14】X線コンピュータ断層撮影(XCT)によって得られる、図12に示す多孔質電極の断面の画像を示す図である。
図15(a)】図13に示す画像の一部分の拡大図である。
図15(b)】アルミナをコーティングされたインコネル(登録商標)合金625チューブの壁の中へとチャネルをレーザ穿孔することによって形成される多孔質電極の表面の光学顕微鏡写真(倍率377.5倍)の図である。
図16(a)】(左から右に向かって)水素、酸素および窒素内容物に関連する3つのピークを特徴付ける、本発明による電解槽から得られるカソードガスの代表的なガスクロマトグラムの図である。
図16(b)】(左から右に向かって)水素、酸素および窒素内容物に関連する3つのピークを特徴付ける、本発明による電解槽から得られるアノードガスの代表的なガスクロマトグラムの図である。
図17(a)】酸素較正ガスの代表的なガスクロマトグラムの図である。
図17(b)】水素および窒素較正ガスの代表的なガスクロマトグラムの図である。
図18(a)】3つのサンプル多孔質電極に関する水銀ポロシメトリによって得られる累積侵入量対細孔径のプロットを示す図である。
図18(b)】3つのサンプル多孔質電極に関する水銀ポロシメトリによって得られる累積体積対細孔径のプロットを示す図である。
図18(c)】3つのサンプル多孔質電極に関する水銀ポロシメトリによって得られるlog微分侵入量対細孔径のプロットを示す図である。
図18(d)】5つのサンプル多孔質電極に関する水銀ポロシメトリによって得られる累積侵入量対細孔径のプロットを示す図である。
図18(e)】5つのサンプル多孔質電極に関する水銀ポロシメトリによって得られる累積体積対細孔径のプロットを示す図である。
図18(f)】5つのサンプル多孔質電極に関する水銀ポロシメトリによって得られるlog微分侵入量対細孔径のプロットを示す図である。
図19】1000倍の倍率において得られる焼結電解触媒材料の異なる領域の3つのSEM画像(a)、(b)および(c)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0264】
図1aは、第1の多孔質壁および第2の多孔質壁を有する電解槽の例示的な流れ構成100を概略的に示す。図1b~図1dは、多孔質壁の例示的な構成を示す。
【0265】
流れ構成100は、この例では中央長手方向Aを有する環状チャンバ102であり、長手方向Aに沿って長尺である入口チャンバ102を備える。入口チャンバ102は、環状入口101において環状入口流を受け入れるように構成されている。この例において、様々な構造は、流れ構成の長手方向Aとして参照され得る長手方向Aに関して軸対称である。
【0266】
流れ構成100は、それぞれ第1の多孔質壁110および第2の多孔質壁120によって入口チャンバから分離されている第1の出口チャンバ130および第2の出口チャンバ140をさらに備える。この例において、第1の出口チャンバ130は、半径方向において入口チャンバ102内にあり、入口チャンバ102によって包囲される内側中央チャンバであり、第2の出口チャンバ140は、半径方向において入口チャンバ102の外側にあり、入口チャンバ102を包囲する外側環状チャンバである。第1の出口チャンバおよび第2の出口チャンバの各々は、長手方向Aと同心であり、長手方向Aに沿って長尺である。
【0267】
流れ構成は、概して長尺であり、流体流を受け入れる入口101に対応する近位端と、流れを放出するための出口に対応する遠位端(後述)とを有する。流れ構成の(および、電解槽などの関連する装置の)様々な構成要素は、同じ基準系に従ってそれらの近位端および遠位端を参照して説明され得る。
【0268】
入口チャンバ102は、入口101においてその近位端において開いており、その遠位端104において閉じている。したがって、流れ構成10は、入口チャンバ102への唯一の入口が入口101であり、入口チャンバ102から流出するための唯一のルートが多孔質壁110、120のうちの一方または両方を介したものであるように構成されている。
【0269】
第1の出口チャンバ130は、近位端において閉じており、その遠位端において、または、その遠位端に向かって第1の出口132を画定する。第1の出口チャンバ130は、図1の延長線によって概略的に示すように、第1の多孔質壁110の長手方向延在範囲を越えて(または、第1の出口チャンバに流れを提供するように構成されている第1の多孔質壁110の長手方向延在範囲を越えて)延在し得る。第1の出口チャンバ130は、第1の多孔質壁110を介してのみ流れを受け入れ、第1の出口132を通じてのみ流れを放出するように構成されている。
【0270】
第1の出口チャンバ130は、この例では円筒形として示されているが、任意の他の適切な構成を有してもよく、たとえば、下記にさらに説明するように、環状もしくは円錐形、または非軸対称であってもよい。
【0271】
第2の出口チャンバ140は、近位端において閉じており、その遠位端において、または、その遠位端に向かって第2の出口142を画定する。第2の出口チャンバ140は、図1の延長線によって概略的に示すように第2の多孔質壁120の長手方向延在範囲を越えて(または、第2の出口チャンバに流れを提供するように構成されている第2の多孔質壁の長手方向延在範囲を越えて)延在し得る。
【0272】
第2の出口チャンバ140は、この例では環状として示されているが、任意の他の適切な構成を有してもよく、たとえば、下記にさらに説明するように、非円筒形の半径方向外側の壁または非軸対称構成を有してもよい。
【0273】
例示的な流れ構成10は、環状流体流を入口チャンバ102の環状入口101に提供するように構成されている入口フローディストリビュータ150をさらに備える。この例において、フローディストリビュータ150は、分流器152の周りに流体を誘導するように構成されている発散円錐状プロファイルを有する。フローディストリビュータは、流体源に結合するためのポート154を有する。変形例において、フローディストリビュータ150は、任意の適切な形状または構成をとってもよく、たとえば、円筒外壁を有してもよく、環状入口101に向かって流れを誘導するための円錐状分流器がフローディストリビュータ内に存在してもよい。
【0274】
第1の多孔質壁110および第2の多孔質壁120は各々、この例では流れ構成100の長手方向Aであるそれぞれの長手方向に沿って長尺である。第1の多孔質壁110および第2の多孔質壁120は各々、入口チャンバ102に隣接する入口側およびそれぞれの出口チャンバ130、140に隣接する出口側からの厚さ方向を有する。
【0275】
ここで、流れ構成を通る流れの一例を説明する。流体(たとえば、電解質液)が、ポート154において流体源(たとえば、電解質液の供給源)から受け入れられ、フローディストリビュータ150を通じて入口チャンバ102への入口101へと流れる。入口チャンバ102は、多孔質壁110、120を通る以外の流出口を有しない。使用時、入口チャンバ102からそれぞれの出口チャンバ130、140への分岐流が確立され、各分岐流は、それぞれの多孔質壁110、120を通過する。各出口チャンバ130、140は、それぞれの多孔質壁110、120の形態の単一の入口のみを有し、出口132、142(たとえば、単一の出口)を有する。したがって、各出口チャンバ内で、流れは、それぞれの多孔質壁110、120から概して長手方向において出口チャンバに沿って通過し、出口において放出される。
【0276】
多孔質壁を通じた(すなわち、出口チャンバ130、140から入口チャンバ102への)逆流を抑制するためのメカニズムに関するさらなる特徴については、後述する。電解槽における流れ構成の例示的な仕様については、電解反応に関係する論述に続いて、後述する。
【0277】
図1bに示すように、第1の例において、第1の多孔質壁110および第2の多孔質壁120は各々、等方性多孔質構成を有し、流体がそれを通じて入口側から出口側へと流れることを可能にする多孔度を有する等方性多孔質媒体から形成される。本明細書において使用されるものとしての「多孔度」という表現は、成分の開放多孔度(たとえば、それを通る流体流に対して開いている体積分率)を指す。多孔度を決定するための適切なテストまたは手順は、本明細書の他の箇所に記載する。例として、図1bは、入口チャンバ102から第1の多孔質壁110を通じて第1の出口チャンバ130に至る流れの例を示すが、入口チャンバ102から第2の多孔質壁120を通じて第2の出口チャンバ140に至る流れにも等しく適用可能であり、これを代表する。
【0278】
本明細書において使用される場合、「等方性多孔質媒体」という表現は、多孔度が測定方向にしたがって一桁分ほども大きくは変化しない多孔質媒体に関する。多孔度は局所的に変化する場合があり、たとえば、特性寸法の分布を有する融合した粒状または微粒子要素の構造によって定義され得、それらの間には開放空間が画定されているが、それらの配置に関して、媒体中の特定の方向における流れを(たとえば一桁分だけ)著しくバイアスする方向性のある構造は存在しない。
【0279】
分離すると(たとえば、特定の方向に流れをバイアスする場合がある流れ構成内に設けられないとき)、等方性多孔質壁は、それを通じた任意の方向の流れを可能にするように構成されている。したがって、等方性多孔質壁内の任意の点における流れの局所的な方向は、局所的圧力勾配、および、等方性多孔質壁によって画定される流路のネットワークを通じて異なるルートによって供給される相対流れ抵抗によって決定される。
【0280】
例示的な流れ構成100において、入口チャンバ102内の流体とそれぞれの出口チャンバ130、140内の流体との間の圧力差によって、各多孔質壁110、120を越えて(すなわち、それを通じて)流れさせられる。圧力差は、多孔質壁110、120を通る流れを駆動するように作用し、これは、概して厚さ方向112に沿い得る。これは、多孔質媒体を通る任意の特定の経路によって供給される抵抗が、経路の長さの関数であり、厚さ方向112が多孔質壁の入口側と出口側との間の最短距離を提供するためである。しかしながら、等方性多孔質壁に沿った各点において、流路のネットワークを通じてとられる特定の局所的ルートは、多孔度の局所的変動に依存し得、結果、例示的なルート113によって示されるように蛇行する、等方性多孔質壁を通る局所的ルートが存在する。
【0281】
図1cに示すように、第2の例において、第1の多孔質壁110および第2の多孔質壁120は各々、入口側からそれぞれの壁を通じて出口側へと延在する複数の傾斜チャネル114によって提供される異方性多孔質構成を有する。例示を目的として、第1の多孔質壁110のみが示されているが、以下の説明は、両方の多孔質壁110、120に等しく適用される。チャネル114の各々は、長手方向Aとそれぞれの多孔質壁の厚さ方向112の両方に対して傾斜している経路に沿って長尺であり、結果、チャネルに沿った入口チャンバ102からそれぞれの出口チャンバへの流れは、長手方向成分を有する。
【0282】
本明細書において使用される場合、「長手方向成分」という表現は、経路の成分が長手方向Aに沿っている(すなわち、それと平行であり、同じ符号/方向である)ことを指す。本明細書に記載されている例において、長手方向は、流れ構成の近位端から遠位端へと延在し、したがって、それに沿ってある物が長尺である経路が長手方向成分を有するという定義は、経路が近位から遠位への方向において正の長手方向成分を有することを必要とする。図1bに示すように、この例において、長手方向Aは、垂直上向き方向に対応し、多孔質壁110、120の各々は、入口チャンバ102からそれを通じてそれぞれの出口チャンバ130、140へと通過する流れが、上向き成分を有する経路115に沿って流れるように傾斜している。
【0283】
本明細書において使用されるものとしての「チャネル」という表現は、閉塞がなく、チャネルの境界壁によって区切られる、流れのための開放経路に関する。
【0284】
図1dに示すように、第3の例において、第1の多孔質壁110および第2の多孔質壁120は各々、不連続多孔質構造を有し、それによって、各多孔質壁は、ボディ116と、ボディの入口側(入口チャンバに隣接する)からボディを通じてボディの出口側(それぞれの出口チャンバに隣接する)へと延在する複数の多孔質領域118とを備える。例示を目的として、第1の多孔質壁110のみが示されているが、以下の説明は、両方の多孔質壁110、120に等しく適用される。同様に、多孔質壁のうちの1つのみが本明細書に記載されているような不連続多孔質構造を有する流れ構成が実装されてもよい。
【0285】
ボディ116は、長手方向Aに沿って長尺であり、入口側から出口側への厚さ方向112を有する、多孔質壁110、120の全体的なプロファイルを画定する。
【0286】
複数の多孔質領域118は、流体が入口チャンバ102からそれぞれの出口チャンバ130、140へと流れることを可能にするために離散的なロケーションにおいてボディ116を通じて延在する。各多孔質領域118は、ボディを通じた流路のそれぞれのネットワークを画定する(結果、ボディを通じた流路の複数の離散的なネットワークが存在する)。この例において、各多孔質領域118は、長手方向成分を有するボディを通る経路119に沿って長尺である(本明細書においては「傾斜不連続多孔質構造」として参照される場合がある)。しかしながら、多孔質領域が、長手方向成分を有しない(たとえば、長手方向に直行する)ボディを通る経路に沿って延在し得ることも想定される。
【0287】
各多孔質領域118は、多孔質媒体(すなわち、開放多孔度を有する媒体)によって画定される。図1cの例にあるように、特定の多孔質領域118によって提供される流路のネットワークを通る局所的ルートは蛇行し得、局所的多孔度および異なるルートによって供給される流れに対する相対抵抗の変動に依存し得る。例示的な蛇行ルートが、矢印119によって指示される。
【0288】
上述した流れ構成のいずれかが、電解槽における実装に適しており、各多孔質壁は、電解槽のそれぞれの電極に対応する(たとえば、電極を提供する)。本開示は、同じ流れ構成の2つの多孔質壁が、図1b、図1cおよび図1d.に関して上述した3つの構成の任意の組み合わせを有し得ることを想定する。多孔質壁のうちの少なくとも1つが不連続多孔質構造(たとえば、図1dの例による)を有することがあり得る。多孔質壁のうちの少なくとも1つが(たとえば、図1cの例による)複数の傾斜チャネルによって画定される異方性多孔質構造を有することがあり得る。多孔質壁のうちの少なくとも1つが(たとえば、図1bの例による)等方性多孔質壁を有することがあり得る。そのような流れ構成が電解槽内に実装されるとき、水素または酸素などの流体反応生成物が、多孔質壁によって画定されるそれぞれの電極において生成され得る。
【0289】
本明細書において開示されているように入口チャンバ102と出口チャンバ130、140とをそれぞれの多孔質壁110、120によって分離することによって、各多孔質壁は、イオン交換膜に依拠することなく、それぞれの流体反応生成物の、それぞれの多孔質壁を通じて入口チャンバへと向かう返流を抑制する役割を果たす(たとえば、そのように構成される)。そのような返流は、本明細書において逆流として記載される場合もある。多孔質壁は、流体がそれを通じて流れることを可能にし、また、いずれかの方向におけるイオン交換を可能にして、電解のそれぞれの半反応を可能にするように多孔質である。したがって、本明細書において開示されているような流れ構成は、それぞれの電極の間にポリマー電解質膜PEMなどのイオン交換膜を使用することなく、電解槽内に実装することができる。
【0290】
入口チャンバ102と出口チャンバ130、140との間の流体流(たとえば、電解質液の)を可能にすることによって、それぞれの多孔質壁110、120は、入口チャンバとそれぞれの出口チャンバとを互いに流体連通させ、結果、それぞれのチャンバ内の圧力がリンクされる。そのようなチャンバ間の流体連通を妨げる構成と比較して、これは、任意の介在する壁/電極/膜および関連付けられる電解槽の完全性を変形させるかまたは他の様態で損傷するおそれがある過剰な圧力差がそのような壁/電極/膜をまたいで確立されるのを防止することができる。そのような損傷のリスクは、超臨界条件(すなわち、それぞれの流体の超臨界点以上の温度および圧力)における動作のための高圧などの、高圧における動作時により顕著であり得る。したがって、各出口チャンバを入口チャンバから分離するために多孔質壁を提供することによって、特に高圧動作について、電解槽の構造的完全性を保護するか、または、向上させることができる。
【0291】
入口チャンバ102と各出口チャンバ130、140との間に多孔質壁110、120を提供することによって、それを通る流れに対する流量制限が提供され、結果、壁を通る流体流が、多孔質壁をまたいで確立される圧力降下と関連付けられる。圧力降下および構成要素を通じた流体の流速は互いに関連し、また、構成要素の特性(たとえば、一定であると考えられ得るその流動係数K)および流体の特性(たとえば、比重SG)にも依存し得る。多孔質壁をまたぐ圧力降下は、それぞれの流体反応生成物の、多孔質壁を通じて入口チャンバに向かう返流を抑制する。これは、そのような流れが、壁をまたぐ圧力勾配に対向するためである。
【0292】
流れ構成が第2の例および第3の例による1つまたは複数の多孔質壁(それぞれ図1cおよび図1dに関して上述した)を備えるとき、返流を抑制するための追加のメカニズムが提供され得る。
【0293】
特に、そのような構成において、上記または各出口チャンバに向かう優勢な浮力駆動流が存在し得る。浮力駆動流は、流体反応生成物の相対的により低い密度によって上向きに流れるようにバイアスされ得る。したがって、傾斜チャネル114(第2の例)または多孔質領域117(第3の例)が上向き成分を有する経路に沿って長尺であるとき、それを通る返流は、優勢な浮力駆動流の方向に対向し得、したがって、抑制され得る。
【0294】
例として、水性電解質液を伴う電解反応において、流体反応生成物(酸素およびヒドロゲル)は、水(または任意の適切な電解質液)よりも低い密度を有し、結果、それらの流体反応生成物に対する浮力は、それらの流体反応生成物を上向きに駆動する傾向になる。それぞれの反応が傾斜チャネルを有する多孔質壁の傾斜チャネル114内で(図1cの第2の例)もしくは傾斜不連続多孔質構造を有する多孔質壁の多孔質領域117内で(図1dの第3の例)行われるとき、または、反応生成物が他の様態でそのようなロケーションに提供されるとき、それぞれの流体反応生成物のより低い密度によって作用する浮力は、流れを上向きに、それによってそれぞれの傾斜チャネル114または多孔質領域117に沿ってそれぞれの出口チャンバに向けて駆動し得る。
【0295】
図1dに示すような第3の例の多孔質壁において、多孔質壁を通じて傾斜チャネルは存在しない。流体がボディを通じて流れることを可能にするために、各々が長手方向成分を有する経路に沿って延在する複数の離散的な多孔質領域が存在する。
【0296】
流れ構成100に図1dの第3の例による多孔質壁を提供することによって、(i)流速および(ii)逆流に関係する流動効果は、多孔質領域のそれぞれの特性に依存し得る。第1に、上記または各多孔質壁を通じた流速は、多孔質領域がそれに沿って延在する経路の配向以外の、多孔度、断面積または直径、および多孔質領域の長さなどの、多孔質領域117の特性によって少なくとも部分的に決定され得る。そのような特性は、本明細書においては、流速に関係する多孔質領域117の特性として参照される場合がある。
【0297】
第2に、長手方向成分(たとえば、使用時の垂直成分)を有する経路に沿って、したがって、長手方向に対してある角度を以て長尺であるように多孔質領域117を提供することによって、流路の各それぞれのネットワークを通るルートが、長手方向成分を有する経路に沿って(たとえば、長手方向に対してある角度に配向される多孔質領域の境界内に)効果的に制約される。多孔質領域117は、流路のネットワークを通る大部分の、および、任意選択ですべての(あらゆる)ルートが長手方向成分を有するように構成することができる(たとえば、ルートが多孔質領域117を通じて局所的な上向きおよび/または下向き成分を有する蛇行した通路を有するか否かにかかわらず、それぞれの多孔質壁の長手方向に対応する正味の正の長手方向成分を有し得る)。したがって、そのような長手方向成分を提供するように多孔質領域の各流路を特定的に構成する必要なしに、これは、それにもかかわらず、多孔質領域を通る大部分の、または、任意選択ですべての(あらゆる)ルートについて達成することができる。したがって、多孔質領域を通る返流が、優勢な浮力駆動流の方向に対向するため、抑制される。たとえば、各多孔質領域117は、長手方向位置に関して、多孔質領域117の出口側の端部が、多孔質領域117の入口側の端部から長手方向に離間され、両端部の長手方向延在範囲に重複がないように構成されてもよい。
【0298】
浮力効果による逆流を抑制する流動効果は、たとえば、長手方向に対する経路の角度などの、多孔質領域がそれに沿って延在する経路の特性に関係する。
【0299】
したがって、図1dの第3の例による1つまたは複数の多孔質壁を有する流れ構成の設計および構成において、上記流動効果は、多孔質領域117のそれぞれの特性を参照することによって別個に指定および制御することができる。たとえば、流速に関係する多孔質領域117の1つまたは複数の特性(たとえば、多孔質領域の多孔度、断面積もしくは直径、および/または長さ)は、流速に関係する性能特性を標的化するように選択または構成されてもよい。さらに、かつ別個に、多孔質領域117がそれに沿って延在する経路の特性(たとえば、経路の傾斜角度)は、逆流に関係する性能特性を標的化する(たとえば、出口チャンバ間の反応生成物のクロスオーバを制御または抑制する)ように選択または構成されてもよい。多孔質領域の長さは、傾斜角度に依存し得、したがって、流速に関係する流動効果と浮力に関係する流動効果との間には、ある程度の関連性があり得る。
【0300】
一例として、多孔質壁を通じた流速に関係する流動効果は、多孔質壁によって提示される流れに対する抵抗を含み得る。流れに対する抵抗は、他の様態では、流体流を可能にすることにおけるその効率として表現され得る(たとえば、全体としての多孔質壁、全体としての多孔質領域、または個々の多孔質領域のいずれかの流動係数Kに対応する)。流体流に対する抵抗/効率(たとえば、流動係数Kによって表現されるものとしての)は、流速を圧力降下に関係付ける。電解槽の様々な実施態様において、圧力降下が固定であり、流速が可変であること、または、流速が固定(たとえば、総入口流速)であり、圧力降下が可変であることがあり得る。流速に関係する別の例示的な流動効果は、第1の多孔質壁および第2の多孔質壁を通じた流速のバランスである。たとえば、多孔質壁のうちの1つが他の多孔質壁よりも低い流れ抵抗を提供するとき、流れはそれぞれの壁を通じてバイアスされ得る。したがって、本明細書において論じられているように、多孔質壁を通じた流速に関係する特性は、流れバイアスを制御する(たとえば、標的化または軽減する)ように選択することができる。上述したような流れ構成が電解槽の電極に対応する(たとえば、電極を提供する)多孔質壁を用いて電解槽内に実装されるとき、1つの多孔質壁または他の多孔質壁に向かう流れバイアスが、下記にさらに論じるように、電解槽内の拡散および/または種クロスオーバ効果に影響を及ぼす可能性がある。
【0301】
多孔質領域117の多孔質媒体は、多孔質媒体の指向性配向に関する制御なしに形成または提供され得、したがって、多孔質媒体自体が、方向測定に従って一桁ほど大きくは変化しない構造または多孔度を有することがあり得る。各多孔質領域117の境界内で、多孔質媒体は、実質的に等方的に配置されてもよく、または等方性でなくてもよい。いずれにせよ、各多孔質領域117自体の多孔質媒体は指向性バイアス自体を目的として提供されないことが考えられ、代わりに、多孔質領域自体のプロファイルまたは経路が、たとえば、逆流を抑制するための任意の浮力関連効果を提供するために、多孔質壁に異方性を提供することが考えられる。
【0302】
多孔質領域117およびボディ116の流動効果および例示的な特性は、シミュレーション結果に関連して下記にさらに説明する。
【0303】
図1dの第3の例示的な多孔質壁110は、厚さ方向に沿ったボディの全延在範囲を通じて延在する多孔質領域117を有して示されているが、変形実施態様において、多孔質領域117は、ボディの厚さ未満である厚さ方向に沿った延在範囲を有してもよい。
【0304】
上記例のいずれかの変形例において、上述したような流れ構成は、軸対称でなくてもよい。たとえば、流れ構成は、多孔質壁によって隣り合う入口および出口チャンバ(すなわち、中央入口チャンバおよび2つの外側出口チャンバ)に区分化される直線形ダクトを備えてもよい。
【0305】
図1aの例示的な流れ構成は、第1の出口チャンバおよび第2の出口チャンバの遠位端にある第1の出口132および第2の出口142を概略的に示しているが、出口チャンバからの出口は、任意の適切なロケーションに提供されてもよいことが諒解されよう。それにもかかわらず、出口は、概して、それぞれの多孔質壁を通る流れを受け入れる出口チャンバの部分を長手方向に分離され得る。
【0306】
電解槽は、多孔質壁110、120の一方または両方が図1b~図1dを参照して上述したような構成、または、図2a~図2cのいずれかを参照して後述するような構成を有する、図1aを参照して上述したような流れ構成100を備えることができる。そのような電解槽において、多孔質壁110、120の各々は、電解槽のそれぞれの電極、すなわち、アノードまたはカソードを提供することができる。例示的な流れ構成100を備える電解槽の構成は、上述したような流れ構成の構成に実質的に対応し、したがって、図1aは、電解槽100の構成を示すと考えられる。
【0307】
上記の説明は、主に流れ構成における流動効果に関連するが、図1aの電解槽100の以下のさらなる説明は、電極の任意の電解触媒領域および/または受動領域(図2a~2cを参照して説明する)を特に参照して、多孔質壁110、120の電極としての機能および構成に関連して与えられる。
【0308】
電解槽100は、図1aに示すものに加えて、たとえば、多孔質壁によって提供される電極への電気接続(電気フィードスルーとしても知られる)などの、さらなる構成要素を提供されてもよいことが諒解されよう。
【0309】
多孔質壁110、120の各々は、電解のそれぞれの半反応のための電解触媒を含む電解触媒領域を有し得る。使用時、電解反応のそれぞれの流体反応生成物は、電解触媒領域に生成される。たとえば、水素および酸素を生成するための水性電解質液の電解において、水素はカソードの電解触媒領域に生成され、酸素はアノードの電解触媒領域に生成される。多種多様な材料が電解触媒として適しており、電解触媒の特定の選択は、選択された電解質液に依存し得る。例示的な電解触媒および電解質液は、本明細書の他の箇所において論じられる。
【0310】
以下の開示は、それぞれの電解触媒領域および/または受動領域を提供するための上述したような多孔質壁110、120の例示的な構成に関する。以下の開示は、各々が第1の多孔質壁110を示す図1b~図1dおよび図2a~図2cを参照する。しかしながら、以下の開示は、第2の多孔質壁120に等しく適用可能であることが諒解されよう。
【0311】
多孔質壁110(アノードまたはカソードのいずれとしても)が図1bの第1の例による等方性多孔質構成を有するとき、電解触媒領域は、多孔質媒体によって画定され得、実効的に、任意の不動態化コーティング(後述)を除く多孔質壁の全体に対応し得る。たとえば、多孔質媒体は、電解のそれぞれの半反応に適した電解触媒を含む(たとえば、本質的にそれから成り、それから成り、またはそれである)材料組成を有することができる。多孔質媒体は、電解触媒を含む材料から形成され得る。他の様態では、多孔質媒体は、コーティングを有するマトリックスによって画定されてもよく、マトリックスは、第1の材料組成を有し、多孔質壁を通る流路のネットワークを画定し、コーティングは、マトリックス上に提供され、電解のそれぞれの半反応のための電解触媒を含む(たとえば、本質的にそれから成り、それから成り、またはそれである)第2の組成を有する。コーティングは、多孔質媒体を通る流路のネットワークを画定するマトリックスの表面(たとえば、多孔質壁内の内面を含む)の上に提供され得、それを通る流体流を可能にする多孔質壁を通じた多孔度を保持するコーティング厚さで提供され得る(「多孔度」は上述したような開放多孔度を指す)。
【0312】
図2aは、図1bの第1の例に対応する多孔質壁の第4の例示的な構成を示すが、受動領域202が入口チャンバ102に隣接する多孔質壁の入口側に提供される点が異なる。本明細書の他の箇所において論じられるように、受動領域は、電解のそれぞれの半反応を抑制するように構成されている。受動領域は、本明細書の他の箇所に記載のように、電解反応のそれぞれの半反応について電解触媒領域よりも電解触媒としての活性が低いことによって、電解のそれぞれの半反応を抑制することができる。
【0313】
多孔質壁の入口側を画定する(不動態化コーティングによって形成され得る)受動領域を提供することには、電解のそれぞれの半反応が入口チャンバ102内で発生することが抑制されるという効果がある。したがって、電解のそれぞれの半反応は、主に、電解質液が受動領域を通過して電解触媒領域に達したときに発生し得、以て、それぞれの流体反応生成物が、それぞれの多孔質壁を通じた流れの方向に関して受動領域の下流に生成される。上述したように、本明細書において開示されている多孔質壁は、流体反応生成物の逆流を抑制する効果を有し、したがって、流体反応生成物は、入口チャンバ102に戻るように上流に流れることを抑制される。
【0314】
多孔質壁110(アノードまたはカソードのいずれとしても)が図1cの第2の例による異方性多孔質構成を有するとき、電解触媒領域は、多孔質壁自体の材料によって、または、(たとえば)少なくともチャネル114の内壁上の電解触媒コーティングによって画定され得る。たとえば、多孔質壁110は、第1の材料組成を有するボディを提供し、ボディを通じて延在するようにチャネル114を形成することによって形成されてもよい。第1の材料組成が、電解のそれぞれの半反応に適した電解触媒を含むとき、ボディは多孔質壁の電解触媒領域を画定する。
【0315】
代替的に、多孔質壁110は、ボディを提供し、ボディを通じて延在するようにチャネル114を形成し、少なくともチャネル114の内壁を含むボディの表面を、電解のそれぞれの半反応のための電解触媒を含むコーティングを用いてコーティングし、以て、多孔質壁のそれぞれの電解触媒領域を画定することによって形成されてもよい。ボディは、本明細書において論じられているように多孔質壁の受動領域を画定することができ、たとえば、ボディは、(たとえば、例としてニッケルまたは白金を含む電解触媒コーティングを用いてコーティングされる)ステンレス鋼316またはチタンなどのボディなど、電解のそれぞれの半反応について電解触媒として活性でないか、または、電解触媒領域よりも電解触媒としての活性が低い材料を含んでもよい(たとえば、その材料から成ってもよい)。
【0316】
図2bは、図1bの第2の例に対応する多孔質壁の第5の例示的な構成を示すが、受動領域202が入口チャンバ102に隣接する多孔質壁の入口側に提供される点が異なる。
【0317】
たとえば、受動領域は、多孔質壁の入口側上の不動態化コーティングとして提供されてもよい。不動態化コーティングは、ボディが電解触媒を含む第1の材料組成を有する(結果、電解触媒領域がボディの延在範囲に対応する)とき、または、ボディが電解触媒を含むコーティングを提供されるときに、提供され得る。不動態化コーティングは、チャネル114を形成する前または後に提供されてもよい。チャネルの形成前に付着させるか、または、その後に付着させるかは、付着させる様式に応じて選択されてもよい。たとえば、浸漬ベースの技法(たとえば、ディップコーティング)を使用するとき、不動態化コーティングが、不動態化コーティングがチャネルに流入するのを防止するために、チャネル114の形成前に付着されることがあり得る。しかしながら、CVD(化学気相成長)などの他の技法については、不動態化コーティングの堆積と関連付けられる逓減効果が、予め形成されたチャネルの壁への不動態化コーティングが限られた量しか浸透しないようなものであり、結果、チャネルの形成後の付着が選択され得ることがあり得る。
【0318】
多孔質壁110(アノードまたはカソードのいずれとしても)が図1dの第3の例による不連続多孔質構造を有するとき、電解触媒領域は、(i)多孔質領域117(たとえば、それのみ)または(ii)ボディ116および多孔質領域117によって画定され得る。第1の代替形態において、ボディは、第1の材料組成を有してもよく、多孔質壁の受動領域を画定してもよく(たとえば、ステンレス鋼316またはチタンを含んでもよく(たとえば、本質的にそれらから成り、それらから成り、またはそれである))、一方、多孔質領域117は、電解のそれぞれの半反応のための電解触媒を含む第2の材料組成(たとえば、ニッケルまたは白金、さらなる適切な電解触媒は本明細書の他の箇所に記載される)を有し、以て、多孔質壁の電解触媒領域を画定してもよい。異なる材料組成を用いて多孔質領域117を形成するための例示的な方法は、図3aを参照して下記に記載される。
【0319】
第2の代替形態において、上述したように、ボディは、電解のそれぞれの半反応のため電解触媒を含む第1の材料組成を有してもよく、多孔質領域は、ボディと一体的に形成されてもよく、同じ第1の材料組成を有してもよく、または、同じく電解のそれぞれの半反応のための電解触媒を含む第2の材料組成を有してもよい。多孔質領域が、ボディと一体的に形成され、同じ第1の材料組成を有するとき、各多孔質領域117は、多孔質領域117を包囲し、ボディと多孔質領域との間の多孔度の変化によって画定されるそれぞれの境界においてボディとインターフェースする。ボディ116および多孔質領域117を一体的に形成するための例示的な方法は、図5を参照して下記に記載される。
【0320】
図2cは、図1cの第3の例に対応する多孔質壁の第6の例示的な構成を示すが、受動領域202が入口チャンバ102に隣接する多孔質壁の入口側に提供される点が異なる。受動領域202は、本明細書の他の箇所に記載のような不動態化コーティングとして提供されてもよく、上述したように、多孔質領域の形成の前に付着されてもよく、または、その後に付着されてもよい。上記で言及したように、不連続多孔質構造を有する多孔質壁を形成するための例示的な方法は、図3aおよび図5を参照して下記に記載され、そのような方法は、受動領域(不動態化コーティングを含んでもよい)の形成を説明する。
【0321】
図1aの流れ構成および図1b~図2cの第1~第6の例のいずれかによる1つまたは複数の多孔質壁を有する電解槽100内の流路および電解反応のロケーションをさらに例示するために、ここで、使用例を説明する。使用例は、たとえば、22.5MPaの圧力および375℃の入口温度などの、それぞれの電極を通る流れの超臨界条件にある、水系(水性)電解質液(たとえば、電解質溶液)である電解質液による電解を参照して説明される。
【0322】
超臨界条件において、流体は、明確に区別できる液相および気相を有しないように挙動する。超臨界電解質液は、亜臨界電解質液と比較して、電解に使用するのに有利であり得る。特に、超臨界流体は、互いと完全に混和性であり、結果、流体の混合物は、それらの間に界面または表面張力が存在しない単相を形成する。したがって、反応生成物が、それらが生成されるときに気体ではなく超臨界であるとき(たとえば、電解質液よりも低い臨界温度および圧力を有するか、または、温度および圧力が他の様態でそれぞれの臨界点よりも高いことによって)、それらの反応生成物は、電解質液と完全に混和性である。したがって、反応生成物の気泡が電極の表面上に蓄積しない。そのような蓄積は、そうでない場合に、電解質液と電極との間の局所的な相互作用を妨げることによって、反応を抑制する可能性がある。
【0323】
さらに、電解質液の伝導率は、上昇した温度および圧力においてより高くなる傾向にあることが知られている(たとえば、論文「High Pressure Electrolyte Conductivity of the Homogeneous, Fluid Water-Sodium Hydroxide System to 400℃ and 3000bar」、A. EberzおよびE.U. Franck, Ber. Bunsenges. Phys. Chem. 99、1091-1103 (1995) No. 9、特に表2を参照されたい)。理論によって束縛されることを所望することなく、水の解離定数および伝導率は、温度および圧力の上昇とともに増大すると考えられる。さらに、電解質または電解質液(たとえば、電解質溶液)の伝導率は、圧力および温度の関数であり、圧力および温度が臨界点に向かって増大すると、伝導率が増大することが観測される。超臨界範囲内(すなわち、温度が少なくとも流体の臨界温度であり、圧力が少なくとも流体の臨界圧力である圧力および温度の条件の範囲内)で、伝導率は、一定の圧力で温度が上昇することによって低減し得る。しかしながら、伝導率は、圧力が増大されるときに、超臨界範囲内で増大し得る。したがって、電解質溶液中の電解質の濃度は、相対的に高い温度および圧力において動作することによって減少し得る。超臨界範囲は、相対的に高い圧力および温度条件の一例であり、超臨界範囲内での動作は、臨界温度および臨界圧力を大幅に下回る温度および圧力にある亜臨界範囲内での動作と比較して、電解質液の相対的により高い伝導率を提供することができると考えられる。電解質液の伝導率がより高いような条件における動作によって、適切な伝導率を依然として提供しながら、電解質と関連付けられる抵抗損を減少させることができ、または、他の様態で、減少した抵抗損と関連付けられる異なる電解質を使用することができる。
【0324】
例としてのみ、上述した例示的な電解槽100とともに使用するのに適した電解質液は、NaOHを電解質として含む水性電解質溶液である(さらなる適切な電解質液は本明細書の他の箇所に開示される)。上記で述べたように、電解質液の伝導率は、温度および圧力とともに増大する傾向にある。
【0325】
圧力および温度とともに増大する伝導率の上記の傾向を例示するために、上記で参照したEberzおよびFranckの論文を参照することができ、それによれば、0.1MPaおよび25℃において、17重量%の濃度を有するNaOHから構成される電解質が、0.4Scm-1の伝導率を呈し、一方、30MPaおよび400℃において、電解質は、1.3Scm-1の伝導率を呈する。0.5MのNaOH溶液について、22.5MPaおよび375℃における伝導率は約150~200mScm-1になり、一方、0.1MPaおよび25℃において、伝導率は約100mScm-1であり得ると推定される。
【0326】
例示的な電解槽100とともに使用するのに適した電解質液の一例として、電解質液は、0.5M濃度のNaOHを含む水溶液を含んでもよい。
【0327】
この例において、第1の多孔質壁110は、カソード(水素生成のための)として構成され、第2の多孔質壁は、アノード(酸素生成のための)として構成される(電解槽のそれぞれの電気的構成によって)。
【0328】
図1の流れ構成100を通る一般的な流路に関して上述したように、電解質液が入口101を介して入口チャンバ102に提供されるとき、それぞれの多孔質壁(電極)110、120を通じてそれぞれの出口チャンバ130、140への分岐流が確立される。
【0329】
流れが各多孔質壁の電解触媒領域を通過すると、電解のそれぞれの半反応が実行される。特に、電解質液は、この例では超臨界水素である流体反応生成物を生成するために第1の多孔質壁110(カソード)の電解触媒領域を通過するときに還元反応を受け、電解質液は、この例では超臨界酸素である流体反応生成物を生成するために第2の多孔質壁120(アノード)において酸化反応を受ける。イオンが、たとえば起電力によって、アノードとカソードの間で移動される。この特定の例において、水酸化物イオン(OH)が、アノードにおいて流体反応生成物(酸素)を生成するために電解質液を通じてアノードへと移動される(アノードへの電子の移動とともに)。
【0330】
この例において、電解槽の圧力および温度条件は、電解質液とそれぞれの流体反応生成物の両方が多孔質壁において超臨界状態にあるように制御される。したがって、流体反応生成物は、上述したように、それらの間に界面(たとえば、気泡界面)が形成されることなく、多孔質壁内で電解質液と完全に混和すると考えられる。
【0331】
それぞれの多孔質壁の電解触媒領域がそれぞれの多孔質壁の入口側を画定しないとき、電解のそれぞれの半反応は、多孔質壁の入口側において行われる傾向になく、したがって、それぞれの流体反応生成物は、入口チャンバ内で生成される傾向にない。
【0332】
等方性多孔質壁について、図2aの第4の例に関して上述したような受動領域が存在するとき、電解触媒領域は、多孔質壁の入口側を画定し得ない。それぞれ図1cおよび図2bの第2の例および第5の例にあるような傾斜チャネル114を備える異方性多孔質壁について、多孔質壁のボディが(たとえば、電解触媒を含むコーティングによって)チャネル114の壁において画定される電解触媒領域によって多孔質壁の受動領域を画定するとき、電解触媒領域は、多孔質壁の入口側を画定し得ない。他の様態では、異方性多孔質壁は、図2bの第5の例にあるような入口側を画定する受動領域を有し得る。同様に、本明細書において論じられているような不連続多孔質構造を有する多孔質壁について、電解触媒領域は、電解触媒領域が、(図1dの第3の例にあるように)多孔質壁の受動領域を画定する多孔質領域117およびボディ116に限定されることによって、および/または、図2cの第6の例にあるような入口側を画定する受動領域があることによって、多孔質壁の入口側を画定し得ない。
【0333】
したがって、多孔質壁が図1c~図2cの第2~第6の例のいずれかによるものであるとき、電解のそれぞれの半反応は、入口チャンバにおいて発生する傾向になく、代わりに、流れが多孔質壁自体、および、特に、電解触媒領域を通過するときに発生する。したがって、電解のそれぞれの半反応のロケーションは、上述したように、入口チャンバから出口チャンバへの流体の分岐流の方向に関して、入口チャンバの下流にある。
【0334】
本明細書に記載されている多孔質壁の例示的な構成の各々について、多孔質壁内で生成される流体反応生成物の逆流は、壁を通じて作用する圧力勾配に対向することによって抑制される。この効果は、それぞれの多孔質壁にわたって作用する圧力差が増大するにしたがって、より強くなり得る。流体反応生成物は、それぞれの多孔質壁を通る圧力駆動流に実効的に取り込まれ、これによって、逆方向におけるそれぞれの流体反応生成物の移動または拡散が制限または軽減される。
【0335】
多孔質壁が第2、第3、第5および第6の例による異方性構成を有する(すなわち、傾斜チャネル114を有するかまたは多孔質領域117を有する傾斜不連続多孔質構造を有する)とき、多孔質壁を通る流路(たとえば、それらの大部分またはすべて)は、この例では垂直方向上向き成分に対応する長手方向成分を有するように実効的に制約され得る。したがって、浮力が、上述したように流れに影響を及ぼすと考えられる。流体反応生成物は各々、電解質液よりも低い密度を有し、したがって、それぞれの多孔質壁および出口チャンバを通じて浮力駆動流を確立する傾向にあり、それによって、流れは上向きに優先的に流れる。流体反応生成物の逆流は、浮力効果によって抑制される。これは、入口チャンバに向かう逆方向に沿った流れが、流体反応生成物が入口チャンバに向かって下向きに流れるために優勢な浮力駆動流に対向して移動することを必要とするためである。
【0336】
上述した超臨界条件(22.5MPaおよび375℃)で、電解のための熱中性電圧は約1.3Vであり、これは、生成される1kgの水素反応生成物当たり35.62kWHに対応する。これは、水素のより高い加熱値(39.4kWh/kg)の110%であり、水素のより低い加熱値(33.3kWh)の93.5%であり、したがって、効率的な電解を表す。これらの条件において電解反応を維持するためには、電解槽の抵抗損は0.120V以下とすべきである。この例において、電解槽の抵抗損(約150mScm-1の予測伝導率を有する0.5M NaOHの例示的な電解質液を通じたイオン交換と関連付けられる)は、電極間隔が1mmであるときは約0.11Vであり、一方、電極における気泡形成と関連付けられる抵抗損は、超臨界状態における動作によって排除される。電極間隔は、1mm未満、たとえば、0.5mmまたは0.5mm~1mmであってもよい。適切な電解触媒は、当業者によって決定されてもよく、本明細書の他の箇所において論じられているが、一例としてのみ、適切な電解触媒は、アノード(第1の電極であってもよい)におけるニッケルまたはニッケル合金、および、カソード(第2の電極であってもよい)のニッケル、ニッケル合金、または白金を含んでもよい。
【0337】
抵抗損は、電解質伝導率および電極間隔の関数である。たとえば、電極が3mm離間される場合、2000mScm-1などのより高い電解質伝導率が必要とされ得る。
【0338】
例示的な超臨界条件を上述したが、条件は変化し得る。たとえば、電解槽の超臨界動作は、電解質液の圧力が水性電解質液について多孔質壁において22MPa~27MPaであるように、かつ、電解質液の温度が水性電解質液について多孔質壁において少なくとも374℃、たとえば374~550℃または374~400℃であるような動作に対応してもよい。
【0339】
一般的に、多孔質壁において臨界点に向かうより低い温度および圧力を達成するように動作することが望ましい場合があり、これによって、電解質液を加圧および加熱するためのエネルギー資源を最小限に抑えることができる。抵抗損は、より高い温度および圧力においてより低くなり得るが、上昇した温度および圧力の条件において得られることになる効率上の利点は、電解質液を加熱および/または加圧するために必要とされる追加のエネルギーによって、そのような追加のエネルギーが余剰エネルギーとして(たとえば、別の場合には熱回収されることなく放出されることになる加熱ソースからの余剰熱として)利用可能でない限り、相殺され得ると考えられる。
【0340】
上記の論述は、各多孔質壁110、120が、電解質液が電解のそれぞれの半反応のためのそれぞれの多孔質壁を通過するときに電解質液と反応するための電解触媒領域を提供する例に焦点を当てているが、本開示は、電極および/または多孔質壁の電解触媒領域が多孔質壁と関連付けられる出口チャンバ内にのみ提供される、電解槽における流れ構成100の実施態様を想定する。たとえば、電極は、出口チャンバ内に配置され、それぞれの多孔質壁から分離されてもよく、または、電解触媒領域は、電極を形成するためにそれぞれの多孔質壁の出口側のみに配置されてもよい。そのような配置において、電解槽は、電解のそれぞれの半反応が出口チャンバ内で(たとえば、その中でのみ)行われるように構成される。そのような配置は、それぞれの電解反応の流体反応生成物が電解触媒領域において、および/または、それぞれの多孔質壁を通過するときに電解質液と混和しない(たとえば、非混和性である)非超臨界条件における使用に特に適し得る。亜臨界条件が電極において優勢であるとき、電解のそれぞれの半反応が入口側でまたは多孔質壁を通る流路内で行われた場合に、それぞれの流体反応生成物と電解質液との間に気泡界面を有する気泡が形成し得ることがあり得る。気泡は、不利な流動効果をもたらす可能性があり、たとえば、それぞれの気泡は、それぞれの電極(たとえば、多孔質壁)の電解触媒領域の表面の一部分を遮蔽し、以て、継続する反応を抑制する可能性がある。さらに、気泡は、多孔質壁を通る流路を遮蔽し、以て継続する反応と多孔質壁を通る流れの両方を抑制する可能性がある。
【0341】
しかしながら、電極またはそれぞれの多孔質壁の電解触媒領域が上記で言及したように出口チャンバ内に提供されるとき、気泡と多孔質壁との間の相互作用に関係するそのような効果を回避することができる。そのような実施態様において、電極またはそれぞれの電極の電解触媒領域の間の分離は、上記または各多孔質壁が多孔質壁の厚さの中にそれぞれの電解触媒領域を提供する(たとえば、多孔質壁を通じて流路を画定する)実施態様と比較して、相対的に大きくなり得る。これによって、抵抗損が増大し得る。
【0342】
本発明者らは、たとえば、上述したメカニズムのいずれかによって流体反応生成物の逆流を抑制することによって、電極(たとえば、多孔質壁)を、それらの間の分離間隙を相対的に小さくして(かつ、膜を使用することなく)配置することができ、それによって、電解槽内の抵抗損が減少することを見出した。
【0343】
特に、逆流を抑制することによって、たとえ所与の量の流れについて、多孔質壁の面積が、以前に考察した構成と比較して相対的に大きい場合であっても(すなわち、多孔質壁を通じた単位面積当たりの流速が相対的に低いときであっても)、本明細書に記載されているような多孔質壁を通る流れは実質的に一方向になり得る。以前に考察した構成においては、フロースルー電極が長尺のダクトに及ぶように提供され得、結果、電極の面積が流速に関連して相対的に低くなるか、または、フロースルー電極を通じた単位面積当たりの流速が相対的に高くなる。以前に考察した構成においてフロースルー電極を通じた相対的に高い流速を提供することによって、主に流れの慣性によって逆流を防止することができると考えられる。
【0344】
電解質液の所与の流速について、そのような以前に考察した構成に対して電極の面積が増大されると、そのような慣性効果が減少し得、反応生成物の混合を可能にし得る局所的な流れ反転のリスクがあり得る。しかしながら、本明細書において開示されているような多孔質壁を提供することによって、本明細書に記載されているように多孔質壁に依拠して流れ反転を防止しながら、電極の所与の反応面積について単位面積当たりの流速を相対的に低いままにすることができる(または、逆に、所与の流速について反応面積を相対的に大きくすることができる)。
【0345】
したがって、本発明者らは、多孔質壁が所与の流速について相対的に大きい面積を有する電解槽の構成を提供することができることを見出した。その結果として、電極は、電解槽への電解質液の、および/または、電解槽によって生成される反応生成物の所与の流速について、相対的により大きいフロースルー面積を有することができ、電解反応を実行するための相対的により大きい表面積が可能になり、これによって、電解質液の所与の流速について、より高い反応速度が可能になり得る。これらの利点は、本明細書におけるすべての例示的な構成に等しく適用される。多孔質壁(電極)を参照して本明細書において使用されるものとしての「フロースルー面積」という表現は、電極の多孔質壁のそれぞれの境界(たとえば、多孔質壁の入口側)にわたって延在する実質的に連続的な表面の面積を指すように意図されており、多孔質媒体によって画定される電解質界面(たとえば、多孔質壁の電解触媒領域内の多孔質媒体を通る蛇行した通路を画定する表面)の総表面積ではない。
【0346】
その結果として、電極のサイズを、入口チャンバによって画定される断面積および/または分離間隙と比較して相対的に大きくすることができるため、電極間の分離間隙は、相対的に細長くすることができる。たとえば、第1の多孔質壁および第2の多孔質壁は、イオン交換のために、電極の対向するイオン交換面間の平均最短分離距離が存在する同延長手方向延在範囲に沿って、互いに対向してもよい。同延長手方向延在範囲(すなわち、電極がイオン交換のために互いに対向する長手方向軸Aに沿った距離)と、平均最短分離距離との比は、少なくとも5、たとえば、少なくとも20または少なくとも50(5~200、20~200、50~150など)であってもよい。
【0347】
図1aの電解槽100の特定の例において、電極の同延長尺延在範囲は100mmであり、一方、平均最短分離距離は約0.7mmであり、結果、比は約140になる。
【0348】
図3aは、たとえば、図1dの第3の例による、または、図2cの第6の例による多孔質壁などの、不連続多孔質構造を有する電解槽のための多孔質壁を製造する方法の流れ図である。多孔質壁は、ボディおよび複数の多孔質領域を備える。本方法は、例として、図2cの第6の例の多孔質壁を参照して説明される(図2cと関連付けられる参照符号を使用する)。
【0349】
ブロック302において、多孔質壁のためのボディ116が提供される。この例において、ボディ116は、多孔質壁の電解触媒領域に対応する材料組成を有するが、変形形態例において、ボディは、多孔質壁の受動領域に対応する材料組成を有してもよい。
【0350】
ボディは、製造される多孔質壁の形状に対応する形状およびサイズを有してもよい。ボディは、その形状およびサイズに一致するように機械加工されてもよい。多孔質壁の寸法は、下記の表2に指定されるような内側および外側電極(のいずれか)向けに提供される例示的な寸法に対応してもよい。
【0351】
この例において、ボディは、ニッケルまたはニッケル合金を含む(たとえば、それらから成る)。この特定の例において、ボディは、ニッケル・クロム合金(特に、Inconel(登録商標)合金、Inconel(登録商標)600)から成る。
【0352】
ボディが多孔質壁の受動領域に対応する材料組成を有する変形形態例において、ボディの材料組成は、ボディが本明細書における任意の定義による多孔質領域よりも電解触媒としての活性が低くなるようなものであってもよく、したがって、ボディは、製造されると、多孔質壁の受動領域を形成し得る。たとえば、ボディは、ステンレス鋼316またはチタンを含む(たとえば、本質的にそれから成り、それから成り、またはそれである)材料を有してもよい。
【0353】
任意の事例において、ボディは、電流を伝導するための材料組成を有し、結果、ボディは、(後述するような)多孔質壁の電解触媒領域と電解槽の電気接続部との間に電流を伝導し、以て、電解槽の電極(たとえば、アノードまたはカソード)としての役割を果たすように構成される。
【0354】
任意選択で、ブロック304において、不動態化コーティング(たとえば、誘電体コーティング)が、多孔質壁の受動領域202を画定するために、ボディの一方の側に付着される。この例において、ボディ材料組成は、電解触媒であり、したがって、不動態化コーティングが付着される。ボディが多孔質壁の受動領域に対応する材料組成を有する変形形態例において、ボディに対応する多孔質領域および不動態化コーティングに対応する受動領域は、各々が本明細書における任意の定義による多孔質領域よりも電解触媒としての活性が低い、第1の受動領域および第2の受動領域であると考えられ得る。
【0355】
不動態化コーティングは、任意の適切なプロセス、たとえば、マグネトロンスパッタリングなどのスパッタリングプロセス、化学気相成長(CVD)プロセス、または浸漬プロセスによって付着されてもよい。ボディの一方の側は、不動態化コーティングによるコーティングを妨げるためにマスキングされてもよい(たとえば、ボディの出口側)。任意選択で、不動態化コーティングは、ボディの両側(すなわち、いずれかの側もマスキングされることなく、入口側と出口側の両方)に付着されてもよい。
【0356】
ブロック306において、ボディに異方性多孔質構造を提供するために、ボディを通じて延在する開放領域が離散的なロケーションに形成される。開放領域は、ボディ116内に形成される多孔質領域117に対応する。したがって、開放領域は、多孔質領域117に関して上述したように、長手方向成分を有するボディを通る経路に沿って長尺になるように形成される。開放領域は、たとえば、レーザ穿孔プロセスを使用して、ボディから材料を除去することによって形成される。
【0357】
開放領域は、それらの長さに沿って25~150μm、たとえば、50~250μm、50~150μm、70~150μm、または約120μmの平均断面直径を有して形成されてもよく、それに沿ってそれらが各々、それぞれ長尺である経路に垂直な、概して円形の断面を有してもよい。
【0358】
開放領域は、25~250μm、たとえば、25~100μm、25~80μm、または25~50μmの中間点直径を有するように形成されてもよい。
【0359】
開放領域は、25~250μm、たとえば、50~250μm、50~150μm、70~150μm、または約120μmの入口径を有するように形成されてもよい。
【0360】
開放領域は、25~250μm、たとえば、50~250μm、50~150μm、70~150μm、または約120μmの出口径を有するように形成されてもよい。
【0361】
開放領域は、10,000~250,000μm、たとえば、15,000~250,000μm、15,000~150,000μm、20,000~150,000μm、50,000~150,000μm、または約100,000μmの平均断面積を有するように形成されてもよい。平均断面積は、開放領域の体積を、ボディの厚さ方向に沿った開放領域の延在範囲で除算した値として決定される。
【0362】
適切なレーザ穿孔機器の例は、日本のDMG森精機株式会社から入手可能な「Lasertec 50 Powerdrill」、または、ドイツのAmphos GmbHから入手可能な高出力超短パルスレーザ(たとえば、「Amphos 2302」または「Amphos 3000」シリーズレーザ)である。適切なレーザ穿孔機器のさらなる例は、たとえば、例として100Hz~5kHzの様々なパルス周波数において4ジュール~200ジュールのパルスを生成するために、パルス波モードと連続波モードの両方において動作可能なQCWファイバレーザ(準連続波レーザ)として参照される米国のIPG Photonicsから入手可能なシリーズの機械である。
【0363】
適切なレーザ穿孔プロセスは、超短パルスレーザ穿孔(レーザマイクロマシニングとしても知られる)であってもよく、超短レーザパルスは、10ps、または0.1ps~10psなどの、ピコ秒またはフェムト秒単位である。そのような機械加工プロセスは、https://www.intechopen.com/books/micromachining/pico-and-femtosecond-laser-micromachining-for-surface-texturingにおいても利用可能な引用文献Aizawa TatsuhikoおよびInohara Tadahiko(2019)「Pico- and Femtosecond Laser Micromachining for Surface Texturing」10.5772/intechopen.83741において論じられている。
【0364】
ブロック308において、本方法は、電解触媒組成物を、開放領域内へと流れるようにボディに付着させることを含む。
【0365】
電解触媒組成物は、電解のそれぞれの半反応の電解触媒を含む(たとえば、本質的にそれから成り、それから成り、またはそれである)組成物である。たとえば、電解触媒組成物は、電解のそれぞれの半反応の電解触媒と液体との混合物を含んでもよい(たとえば、本質的にそれから成ってもよく、またはそれから成ってもよい)。電解触媒組成物は、電解のそれぞれの半反応の電解触媒および液体を含むスラリを含んでもよい(たとえば、それであってもよく、本質的にそれから成ってもよく、またはそれから成ってもよい)。電解触媒組成物は、液体中の電解のそれぞれの半反応の電解触媒の懸濁液を含んでもよい(たとえば、それであってもよく、本質的にそれから成ってもよく、またはそれから成ってもよい)。電解触媒は、微粒子の形態で提供されてもよい。懸濁液は、(たとえば、液体中の微粒子の)コロイド懸濁液であってもよい。たとえば、電解触媒組成物は、電解のそれぞれの半反応の電解触媒を含むゾル(すなわち、固液コロイド懸濁液)、導電性インク(すなわち、液体中の導電性電解触媒粒子の懸濁液)、またはペースト(すなわち、懸濁液が低い応力が加わるのに応答して固体として挙動するのに十分に高い固体含有量を有する固液懸濁液)を含んでもよい(たとえば、それであってもよく、本質的にそれから成ってもよく、またはそれから成ってもよい)。たとえば溶媒などの液体は、電解触媒組成物の粘度に影響を及ぼし得る。電解触媒および液体に加えて、電解触媒組成物は、結合剤(たとえば、樹脂結合剤などのポリマー結合剤)および/または1つまたは複数の添加剤を含んでもよい。例示的な電解触媒組成物は、下記および本明細書の他の箇所において論じる。
【0366】
電解触媒組成物は、任意の適切な方法によってボディに付着されてもよい。
【0367】
例として、電解触媒組成物は、ボディの長手方向と平行な付着方向に沿って、ボディの表面上に付着され、その表面上に擦りつけられ(たとえば、引き延ばされ)得る。付着方向(すなわち、長手方向に沿って前方または後方)は、電解触媒組成物の開放領域内への誘導を促進するように選択することができ、これは、電解触媒組成物が付着されるボディの側に応じて異なり得る。たとえば、開放領域が多孔質壁の出口側に対応するボディの側に向かう経路に沿って長尺であり、経路がボディの長手方向に対して70°の角度にあるとき、付着方向は、多孔質壁の入口側に対応するボディの側に電解触媒組成物を付着させる場合は長手方向に沿って前方になり、多孔質壁の出口側に対応する側に電解触媒組成物を付着させる場合は長手方向に沿って後方になる。
【0368】
電解触媒組成物は、ボディのそれぞれの側の形状に対応する形状を有する可撓性アプリケータであってもよいアプリケータによって、表面に擦りつけられ(たとえば、引き延ばされ)得る。ボディが実質的に平坦であるとき、アプリケータは、線形アプリケータリップにおいて終端する実質的に直線状のプロファイルを有し得る。ボディが実質的に環状であるとき、アプリケータは、実質的に円形のリップを有する、対応する環状のプロファイルを有し得る。環状ボディについて、電解触媒組成物は、半径方向外側または半径方向内側の方向から付着されてもよい。半径方向外側付着のためのアプリケータは、リップに向かって内向きにテーパ状であり、長手方向に沿ってボディ上でスライドするように構成されている円錐台形アプリケータを含んでもよい。半径方向内側付着のためのアプリケータは、リップに向かって外向きにテーパ状であり、プランジャ動作において、長手方向に沿ってボディを通じてスライドするように構成されている円錐台形アプリケータを含んでもよい。
【0369】
ボディの一方の側に真空を印加することで、ボディの反対側における開放領域内への電解触媒組成物の浸透を支援することができる。たとえば、電解触媒組成物が半径方向外側方向から環状ボディに付着されるとき、真空をボディの内部に印加して、ボディの外部において電解触媒組成物を開放領域内へと引き込むことができる。代替的に、電解触媒組成物が半径方向内側方向から環状ボディに付着されるとき、真空をボディの外部に印加して、ボディの内部において電解触媒組成物を開放領域内へと引き込むことができる。
【0370】
余分な電解触媒組成物をスクレーパブレードによって除去することができ、スクレーパブレードは、アプリケータと同様の構成を有することができるが、可撓性が相対的に低くなる(たとえば、より高い曲げ剛性を有する)ことによって異なっており、結果、余分な電解触媒を、屈曲して開放領域内へと誘導するのではなく、除去するように構成されている。
【0371】
図3bは、多孔質長手方向延在範囲111を有する円筒多孔質壁110のための例示的なアプリケータを示す。アプリケータは、多孔質壁110の対向する両端にスライド可能かつシール可能に挿入されて、それらの間に電解触媒組成物を圧縮するように構成されている2つの対向するプランジャ309、309’を備え、以て、電解触媒組成物を圧力下で多孔質壁110の開放領域内に、半径方向内側(たとえば、第1の多孔質壁110の場合は出口側)から半径方向外外側(たとえば、第1の多孔質壁110の場合は入口側)へと流れるように駆動する。アプリケータは、いずれかの多孔質壁が、電解触媒が厚さ方向に沿ってボディの延在範囲全体を通じて、開放領域を通って流れ、これを占有することを保証するために使用され得る。アプリケータ309、309’のうちの一方は、取り外されてもよく、他方は、多孔質壁110の長手方向延在範囲を通じて駆動されて、多孔質壁の内部から余分な電解触媒組成物を除去することができる。図3bに示すように、アプリケータ309、309’のうちの少なくとも一方が、対向するアプリケータに嵌合する(たとえば、当接する)ように構成されている円錐形端部を有することがあり得る。所定量の電解触媒組成物が多孔質壁内に投与され、結果、アプリケータ間の嵌合が、多孔質壁110の開放領域の各々を通じて電解触媒組成物を駆動するのに十分な相対運動が適用されることに対応することがあり得る。
【0372】
図3aに戻って参照する、ブロック310において、本方法は、任意選択で、ボディに付着されているような電解触媒組成物が乾燥されて電解触媒組成物の液体成分が(たとえば、部分的に)蒸発する乾燥動作を含む。乾燥動作のパラメータは、ブロック312における熱処理(たとえば、焼結)のための電解触媒組成物の適切な一貫性を達成するように、適切に調整することができる。そのようなパラメータは、周囲および条件(たとえば、湿度)に依存し得る。例として、乾燥動作は、たとえば、120℃において2時間など、1~4時間の期間にわたって80℃~120℃の温度において実行されてもよい。別の例として、乾燥動作は、たとえば、200℃において2時間など、1~4時間の期間にわたって100℃~300℃の温度において実行されてもよい。乾燥動作は、たとえば、ボディを乾燥オーブン内またはホットプレート上に配置することによって実行されてもよい。
【0373】
ブロック312において、熱処理(たとえば、焼結)動作が実行され、ボディおよび付着された電解触媒組成物が熱を受け、以て、電解触媒組成物の液体成分が蒸発し、電解触媒組成物の固体(たとえば、微粒子)成分が、電解のそれぞれの半反応のための電解触媒を含む材料(たとえば、接続された(たとえば、焼結または部分的に溶融された)粒状または微粒子要素)の多孔質領域を形成させられる。以て、多孔質領域は、開放領域を占有し、それぞれ図1dおよび図2cの第3および第6の例に関して上述したようなボディの多孔質領域117を形成する。
【0374】
そのような熱処理の結果として、固体電解触媒成分が、開放領域を占有し、架橋して(すなわち、開放領域にわたって直径方向に延在して)多孔質媒体を形成することが観察されている。
【0375】
多孔質媒体が、ボディの延在範囲よりも小さい、厚さ方向に沿った延在範囲を有することがあり得る。たとえば、これは、電解触媒組成物が、付着中にそれぞれの開放領域を通じて部分的に浸透する結果としてもたらされ得る。
【0376】
熱処理(たとえば、焼結)動作は、ボディに、処理時間にわたって処理温度を受けさせるために、ボディ(付着された電解触媒組成物を有する)を温度制御環境に置くことによって実行されてもよい。温度制御環境は、オーブン、または、マッフル炉(たとえば、Verderグループ(ドイツのVerder International B.V.)の系列会社であるCarbolite Geroから入手可能であるような)などの加熱器の内部チャンバであってもよい。
【0377】
熱処理(たとえば、焼結)動作は、処理時間の昇温段階にわたって処理温度を徐々に上昇させることによって実行されてもよい。たとえば、処理温度は、150℃~1000℃のピーク温度まで徐々に上昇されてもよい。たとえば、ピーク温度は、250℃~800℃、300℃~600℃、300℃~450℃、たとえば約350℃であってもよい。別の例において、ピーク温度は、600~1000℃、たとえば700~1000℃、または800~1000℃、または900~1000℃、または900~950℃、たとえば約930℃であってもよい。
【0378】
処理温度は、たとえば20℃の周囲温度(たとえば、室温)または30℃などの加熱器の開始温度であってもよい開始温度からピーク温度まで徐々に上昇されてもよい。昇温速度は、0.5~2℃毎分、たとえば約1℃毎分であってもよい。熱処理(たとえば、焼結)動作は、たとえば、1~10時間、たとえば、1~8時間、または1~6時間、または1~4時間、または約1時間、または約2時間、または約4時間、または約6時間、または約8時間の保持段階など、処理時間の保持段階にわたって処理温度をピーク温度に維持することを含んでもよい。
【0379】
いくつかの実施形態において、電解触媒組成物の十分な乾燥が、熱処理(たとえば、焼結)動作自体の最中に行われてもよく、結果、別個の乾燥動作(すなわち、ブロック310)が必要なくなることが諒解されよう。そのような実施形態において、ボディは、電解触媒組成物の乾燥と熱処理とを組み合わせた単一の加熱動作を受け得る。
【0380】
熱処理動作中に材料の多孔質領域を形成するためのメカニズムは、電解触媒組成物の性質、処理温度および処理時間に依存し得る。電解触媒の粒子が、たとえば、拡散プロセスによって熱処理動作中に互いに焼結または溶融することがあり得る。電解触媒組成物の成分(たとえば、ポリマー結合剤)が熱処理動作中に融解および/または硬化し、以て、電解触媒の粒子を互いに結合することがあり得る。熱処理動作中に化学反応(たとえば、酸化)が行われ、以て、電解触媒の粒子を互いに結合する反応生成物(たとえば、酸化物)が形成されることがあり得る。
【0381】
微粒子ニッケルを含む電解触媒組成物を使用した本方法の試行において、熱処理が酸化雰囲気中で実行されるとき、400℃を超えるピーク処理温度が、余分な量の酸化ニッケルを生成する電解触媒の不利な酸化をもたらし得ることが見出された。しかしながら、酸化効果は、たとえば、アルゴンもしくは窒素および/または水素(たとえば、95重量%の窒素および5重量%の水素の混合物)を含む(たとえば、それらから成る)雰囲気などの、実質的に酸素のない制御された雰囲気(たとえば、不活性または還元雰囲気)中で熱処理動作を実施することによって回避することができる。所与の電解触媒組成物の酸化のレベルは、処理温度、処理時間および/または雰囲気組成を変化させることによって制御され得ることが諒解されよう。
【0382】
本方法は、ブロック312における一次熱処理(たとえば、焼結)動作に後続して実行される1つまたは複数の二次熱処理動作を含んでもよい。たとえば、ボディに、二次処理時間にわたって二次処理温度を受けさせるために、ボディを温度制御環境に置いてもよい。温度制御環境は、オーブン、または、マッフル炉(たとえば、Verderグループ(ドイツのVerder International B.V.)の系列会社であるCarbolite Geroから入手可能であるような)などの加熱器の内部チャンバであってもよい。
【0383】
二次熱処理動作は、二次処理時間の昇温段階にわたって二次処理温度を徐々に上昇させることによって実行されてもよい。たとえば、二次処理温度は、500℃~1500℃のピーク温度まで徐々に上昇されてもよい。たとえば、ピーク温度は、750℃~1200℃、800℃~1000℃、850℃~950℃、たとえば約930℃であってもよい。
【0384】
二次熱処理動作は、たとえば、アルゴンもしくは窒素および/または水素(たとえば、95重量%の窒素および5重量%の水素の混合物)を含む(たとえば、それらから成る)雰囲気などの、実質的に酸素のない制御された雰囲気(たとえば、不活性または還元雰囲気)中で実行されてもよい。
【0385】
二次熱処理動作は、ボディ内の溶接応力を緩和するように意図されている応力緩和熱処理動作を含んでもよい(たとえば、それであってもよい)。付加的にまたは代替的に、二次熱処理動作は、二次焼結動作であってもよく、その最中に、たとえば粒界拡散によって、多孔質媒体の高密度化が行われる。
【0386】
いくつかの例において、熱処理動作は、第1の段階および第2の段階を含むと考えられる。第1の段階は、電解触媒組成物の結合剤成分などの、電解触媒組成物の非電解触媒成分を熱分解または焼却するために実行されてもよく、したがって、酸化雰囲気中で実行されてもよい。第2の段階は、電解触媒含有粒子を互いに焼結するために実行されてもよく、したがって、アルゴンもしくは窒素および/または水素を含む(たとえば、それらから成る)雰囲気などの不活性(または還元)雰囲気中で実行されてもよい。第1の段階は、150~500℃、たとえば200~500℃、または250~450℃、または300~500℃、たとえば約300℃または約350℃のピーク温度を用いて実行されてもよい。第2の段階は、500~1000℃、たとえば600~1000℃、または700~1000℃、または800~1000℃、または900~1000℃、または900~950℃、たとえば約930℃のピーク温度を用いて実行されてもよい。第1の段階は、2~10時間、たとえば4~8時間、たとえば約6時間にわたって持続してもよい。第2の段階は、30~300分、たとえば30~90分、たとえば約60分にわたって持続してもよい。
例示的な電解触媒組成物
例示的な電解触媒組成物は、製品名116-25のCreative Materials Inc(米国マサチューセッツ州所在)から入手可能な導電性インクと、製品名112-19のCreative Materials Incから入手可能な溶媒との混合物である。
【0387】
導電性インク116-25は、50重量%~70重量%のニッケル微粒子(CAS数値7440-02-0)、30重量%~50重量%の非極性エステル溶媒、5重量%~約10重量%のポリマー樹脂、および2重量%未満のカーボンブラック(CAS番号:1333-86-4)を包含する。導電性インク116-25は、125℃における5分間にわたる硬化後に、約84重量%を超えるニッケルを包含する。導電性インク116-25は、約2.21の比重(水に対して測定)、約25Pa・sの粘度、約196℃を超える沸点および約100℃よりも高い引火点を有する。
【0388】
溶媒112-19は、導電性インク116-25に見られる同じ非極性エステル溶媒である。これは、約196℃よりも高い沸点、約100℃の引火点、約8体積%の上限可燃限界および約0.9体積%の下限可燃限界、20℃において約0.3hPaの蒸気圧、約1.092の比重(水に対して測定)、ならびに370℃の自着火温度を有する。
【0389】
例として、様々な量の溶媒(たとえば、溶媒112-19)がテストされ、開放領域に流入するのに適した粘度を提供することが見出されており、電解触媒組成物の残りの部分は導電性インク(たとえば116-25)から成る。
【0390】
熱重量分析が、5重量%、10重量%および15重量%の溶媒(112-19)を含み、残りの部分が導電性インク(たとえば116-25)から成る3つのそのような電解触媒組成物に対して実施された。導電性インクおよび溶媒は、二軸遠心分離(DAC)によって2000rpmで2分間にわたって混合されて、電解触媒組成物が形成された。サンプルの固体含有量は、約60重量%(5重量%の溶媒)~約40重量%(15重量%の溶媒)に及んだ。それぞれのサンプルの粘度は、約5Pa・s(15重量%の溶媒)~約13Pa・s(5重量%の溶媒)に及んだ。固体含有量および粘度値は、25℃において、間隙500μmの40mm平行平板を使用して、せん断速度1 1/sにおいて実行されたレオメトリー評価方法によって測定された。例示的な電解触媒組成物の固体含有量および粘度に関係する値を、下記の表1に報告する。
【0391】
【表1】
【0392】
溶媒112-19に対する代替例として、溶媒102-03および/または113-12(同じくCreative Materials Incから入手可能)が、導電性インクを希釈するために使用されてもよい。
【0393】
溶媒102-03は、約90重量%から約100重量%の専用希釈剤および約0重量%~約10重量%の2ブトキシエチルアセテートを包含する。溶媒102-03は、約190℃を超える沸点、約90℃よりも高い引火点(クローズドカップ内で)、約1.13の比重(水に対して測定)、400℃よりも高い自着火温度、および25℃において約12Pa・s~約18Pa・sの粘度を有する。
【0394】
溶媒113-12は、約95重量%の2ブトキシエチルアセテートを包含する。これは、約192℃の沸点、約76℃の引火点、約8.54体積%の上限可燃限界および約0.88体積%の下限可燃限界、20℃において約0.29mmHgの蒸気圧、および約0.94の比重(水に対して測定)を有する。
例示的な熱処理結果
熱処理(たとえば、焼結)性能を、図3aを参照して上述した製造方法に従って代表的な多孔質壁を製造することによってテストした。
【0395】
ブロック302において、50mmの長手方向寸法、50mmの横方向寸法、および1mmの厚さ寸法を有するニッケル・クロム合金(特にInconel(登録商標)合金、Inconel(登録商標)600)の方形平面部分を備える、多孔質壁のボディを提供した。
【0396】
ブロック306において、開放領域のパターンを、上述したようなレーザ穿孔プロセスによってボディ内に形成した。開放領域は、500Hzにおいて動作するミリ秒レーザを使用してボディの全厚を貫通して形成した。開放領域は、長手方向に対して70℃の傾斜角度にある(したがって、平面ボディの厚さ方向に対して20℃の角度にある)経路に沿って長尺になるように形成した。開放領域は、横方向および長手方向のピッチが等しい規則的な格子パターンを形成するために、横方向にオフセットされた行を成すように穿孔した。
【0397】
ブロック308において、上述した電解触媒組成物に対応する電解触媒組成物(5重量%の溶媒の変形形態)を、上述したようなアプリケータを使用して付着させた。
【0398】
ブロック310において、ボディ(および付着された電解触媒組成物)が高精度ホットプレート上で2時間にわたって120℃に維持される乾燥動作を実行した。
【0399】
ブロック312において、ボディを通じて延在する多孔質領域を有する多孔質壁を形成するために熱処理動作を実行した。熱処理動作は、マッフル炉を使用して実行され、処理温度を30℃の開始温度から350℃のピーク温度まで上昇させるための1℃毎分の昇温段階から成り、3時間の保持時間にわたってその温度を維持した。
【0400】
図4a~図4dは、様々な製造レベルにおける多孔質壁の1つの側のSEM(走査型電子顕微鏡)画像を示し、100μm(図4a)から下って10μm(図4d)に及ぶスケールが図面上に指示されている。図4aは、ボディの1つの側において終端する4つの多孔質領域の端部を示す。図4b~図4dは、多孔質領域内の多孔質媒体を示し、概して、それらの間に開放空間を画定する、部分的に焼結された(たとえば、溶融された)粒状または微粒子要素(この例では、ニッケルを含む)によって形成される多孔質構造を示す。図4b~図4dから分かるように、粒状または微粒子要素間の間隔は変化しているように見えるが、特定の方向に流れを大きくバイアスし得る上記要素の方向性構成は存在しない。
【0401】
図5は、付加製造によって図1dの第3の例による多孔質壁を製造する方法500の流れ図を示し、その例の多孔質壁の特徴に関連して説明される(その例と関連付けられる参照符号を使用して)。本方法は、多孔質壁を層ごとに(またはスライスごとに)製造するためのものであり、構築材料(たとえば、粉末)が、連続する層内のベッドまたはプラットフォーム上に堆積され、連続する層は、漸進的に選択的に熱処理(たとえば、焼結または溶融)されて、多孔質壁のスライスが形成される。
【0402】
ブロック502において、たとえば、選択的レーザ焼結(SLS)、特にレーザ粉末床融合法(L-PBF)による、多孔質壁の付加製造のためのモデルデータが、付加製造装置を制御するために提供される。モデルデータは、上述したようにボディ116および複数の離散的な多孔質領域117を含む、図1dに関して上述した例示的な多孔質壁110に対応する。たとえば、モデルデータは、ボディ116の幾何形状および多孔質領域の幾何形状を規定してもよく、ボディ116と多孔質領域117との間で可変である多孔度(または多孔度に関係するパラメータ)を規定し得る。たとえば、モデルデータは、パラメータ(たとえば、多孔度または多孔度に関係するパラメータ)がモデルの離散的な領域(たとえば、パラメータ帰属のためのアイデンティティを割り当てられた領域)に割り当てられるように定義されてもよく、または、そのようなパラメータが、パラメータ帰属のためにある領域に特に割り当てられていない、連続する分布に属するモデルの部分領域もしくは点またはそのような部分領域もしくは点のマトリックス(たとえば、モデルのボクセル、または、モデルのスライスのピクセル)に適用されてもよい。パラメータは、多孔度、または、形成される多孔度(すなわち、製造された構成要素において明示される多孔度)との関係を有する関連パラメータ(たとえば、エネルギー密度)として定義されてもよい。
【0403】
ブロック504において、付加製造装置のコントローラが、モデルデータに基づいて多孔質壁を形成するように付加製造装置を制御する。適切なタイプの付加製造装置が、当該技術分野において理解され、図面におけるそのような装置の概略的な描写は、付加製造プロセスの理解を助けるために必要とはされないと考えられる。例としてのみ、本装置は、L PBFプロセスを実行するように構成されてもよい。例示的な市販の製品は、ドイツのEOS GmbHから入手可能なEOS M400-4付加製造マシンである。市販の製品のさらなる例は、英国のRenishaw plcから入手可能なパルスレーザマシンである、Renishaw AM400またはAM500マシンである。たとえば、例としてニッケルまたはニッケル合金構築材料(ニッケル・クロム合金、たとえばInconel(登録商標)600など)などの、本明細書の他の箇所に記載のような任意の適切な電解触媒とともに、いずれのマシンが使用されてもよい。構築材料の適切な粒径分布は、15~45μmであってもよい。
【0404】
モデルデータは、付加製造装置に対する層ごとの命令を提供するように前処理されてもよい。前処理は、付加製造装置のコントローラまたは別個のコントローラによって実施されてもよい。たとえば、層ごとの命令は、多孔質壁を形成するために熱処理される(たとえば、焼結される)構築材料の各層について、(i)多孔質壁のそれぞれのスライスを形成するための層の上のレーザの経路、(ii)レーザの走査速度、(iii)レーザの経路の隣接する(隣り合った)セグメント間の走査間隔(ハッチ距離としても知られる)、(iv)レーザのエネルギーおよび(v)レーザのスポットサイズのうちのいずれかまたはすべてを含む1つまたは複数のレーザ制御パラメータを定義してもよい。レーザ制御パラメータのいずれかまたはすべては、層に適用されるエネルギー密度を変化させ、以て、構築材料の溶融の量を制御するように制御されてもよい。特に、構築材料の粒子が溶融される程度は、適用されるエネルギー密度に依存し、溶融震度は、エネルギー密度に依存してもよい(すなわち、活性層のためのベッドまたはプラットフォーム上に堆積されたときの構築材料の層の高さよりも大きくてもよい、レーザの作用によって溶融を受ける活性層の中および下方の深度)。
【0405】
前処理は、そうでなければ多孔質であるように意図された領域内で過剰な溶融を引き起こすように発生し得るレーザ侵入および/または熱移動を補償するように上記または各レーザ制御パラメータを変化させるために実行されてもよい。たとえば、多孔質壁の多孔質領域117に対応する先行する層の一部分(部分的に溶融されているか、または、溶融されていない場合もある)に重なる多孔質壁のボディ116に対応する中実(たとえば、非多孔質)部分を形成するために活性層内の構築材料を溶融するとき、レーザは、活性層を貫通して侵入する場合があり、および/または、活性層においてレーザによって生成される熱が先行する層に伝導して過剰な溶融を引き起こす場合がある。前処理は、たとえば、層n内のそれぞれの部分が層n-1(「n」、「n-1」などの表記は連続する層を示している)内の部分的に溶融されているか、または、溶融されていない部分(多孔質領域117に対応する)に重なるという判定に基づいて、層n内の中実部分(ボディ116に対応する)を形成するためのエネルギー密度を決定または逓減することによって、そのような過剰溶融効果を補償(たとえば、軽減)するために、層ごとの命令を定義してもよい。前処理は、上位層n+1における中実部分の溶融からのレーザ侵入および/または熱移動が層n内の構築材料の溶融に影響を及ぼして目標程度の溶融を提供するという判定に基づいて、層n内の中実部分を形成するためのエネルギー密度が(たとえば、中実部分を形成するための典型的なまたは標準的なエネルギー密度に対して)低減され得るか否かを判定するために実行されてもよい。たとえば、前処理は、多孔度に関連する異なるパラメータ(たとえば、ボディおよび多孔質領域にそれぞれ対応する異なる目標多孔度)を有する領域間の遷移部に対して局所的に、複数の層にわたってエネルギー密度を段階的に変化させるように実行されてもよい。
【0406】
レーザ侵入および/または熱移動の層ごとの分析に基づく任意の前処理に加えて、または、その代替として、前処理は、多孔質領域に隣接するボディのバッファ領域を決定し、付加製造プロセスの制御のためのパラメータ(たとえば、上述したような多孔度または関連するパラメータ)を適用し、ボディの残りの部分によるエネルギー密度と比較してバッファ領域内に適用されるエネルギー密度を低減するために実行されてもよい。そのようなパラメータは、モデルデータまたは命令内で識別される離散的な領域に、または、上述したようなそれぞれの部分領域(たとえば、ボクセルまたはピクセル)に割り当てられるかまたは帰属してもよい。
【0407】
図5に示すように、ブロック504は、構築材料の層を分配し(ブロック506)、モデルデータに基づいておよび/または層ごとの命令に基づいて構築材料の選択的溶融を制御する(ブロック508)ループを繰り返すことを含む。
【0408】
任意選択で、ブロック510において、本方法は、付加製造プロセスの後に実行される熱処理プロセスを含み、それによって、付加製造プロセスによって形成される多孔質壁が、温度制御環境内で加熱される。加熱は、モデル内の溶融されていないまたは部分的に溶融された構築材料を溶融させるように実行されてもよく、熱処理プロセスの温度および処理時間は、たとえば、当該技術分野および適切な試行において理解されているベストプラクティスに基づいて所望の程度のそのような溶融が行われるように決定されてもよい。そのような熱処理プロセスは、代替的に、当該技術分野において硬化プロセスとして参照または理解される場合がある。
【0409】
任意選択で、ブロック512において、本方法は仕上げプロセスを含む。これは、多孔質壁から余分な構築材料を除去するための機械加工を含んでもよい。仕上げプロセスは、多孔質壁の目標サイズおよび形状を達成するように実行されてもよい。仕上げプロセスは、たとえば、多孔質壁の外面上で材料を選択的に除去するように実行されてもよい。
【0410】
任意の適切な構築材料を、付加製造プロセスに使用することができる。電解のそれぞれの半反応のための電解触媒を含む適切な構築材料は、ニッケル、または、ニッケル基超合金などのニッケル基合金を含む(たとえば、それから成る)。適切な例は、インコネル(登録商標)合金(たとえば、インコネル(登録商標)600)などのニッケル・クロム合金である。そのような材料は、アノードにおいては電解の半反応に触媒作用を及ぼすための、および、カソードにおいては、水性電解質液のための、適切な電解触媒であってもよい。
【0411】
図6は、上述したような付加製造プロセスによって生成されるサンプル多孔質壁の断面の画像を示す。サンプル多孔質壁は、複数の多孔質領域を通る断面を露出させるように切断した。多孔質領域の傾斜性を、ボディ(実質的に多孔性がないことを明示する)内で観察することができる。多孔質領域の多孔度は、断面内の多孔質媒体の分布によって観察することができる。
【0412】
画像は、画像化のための固定用プレスにおいて加えられる圧力から生じる、切断された多孔質壁の湾曲を示す。
【0413】
熱処理(たとえば、焼結)性能を、さらなる例においてテストした。この例においては、ニッケル・クロム合金(特にInconel(登録商標)合金、Inconel(登録商標)600)の方形平面部分を、上述した例示的な電解触媒組成物に対応する電解触媒組成物(5重量%の溶媒の変形形態)を用いてコーティングした。プレート(および付着された電解触媒組成物)が高精度ホットプレート上で2時間にわたって120℃に維持される乾燥動作を実行した。次いで、マッフル炉を使用して、上述したような2段階熱処理動作を実行した。酸化雰囲気中で実行される第1の段階において、プレートを、5℃毎分の速度で室温から300℃のピーク温度まで加熱し、プレートを6時間にわたってピーク温度に保持した。アルゴン雰囲気中で実行される第2の段階において、温度を930℃まで増大し、プレートを15分の保持時間にわたってその温度に保持した。図19は、電解触媒組成物の焼結において形成される多孔質媒体の異なる領域の、1000倍の倍率において得られる3つの後続のSEM(たとえば、走査型電子顕微鏡)画像(a)~(c)を示す。多孔質焼結構造が明白である。
シミュレーション
図7は、図1aの例示的な流れ構成100に関して上述した流れ構成を有する電解槽の流動シミュレーションモデルの軸対称モデル形状700を示す。環状入口チャンバ102および入口101、第1の多孔質壁110および第2の多孔質壁120、内側出口チャンバ130および外側出口チャンバ140のものを含む、図1aに関連して説明したような流れ構成100に対応する参照符号が、図7に示す対応する特徴にも提供される。
【0414】
流動シミュレーションモデルは、その長手方向軸Aが垂直の向きを有し、重力が図面の向きにおいて下向きであるような垂直配向を有する。
【0415】
流動シミュレーションモデルにおいて実装されているような上流の流入マニホールド702および下流の流出730、740の幾何形状は、流動シミュレーションモデルの入口チャンバ102および出口チャンバ130、140を通る流れに悪影響を及ぼすモデル内の入口および出口境界条件に対して局所的な任意の流動効果を低減するために、図1aに示す同等の物理的特徴からわずかに異なる。
【0416】
流入マニホールド702は、入口チャンバ102への環状入口101の上流にあり、長さlinflowだけその下方に延在し、入口流がその上流端において流入境界701から入口流に向かって発展することを可能にするために提供される。流入マニホールド702は、入口チャンバ102の環状入口101に流れを提供するために、長手方向Aに対して30°の角度を有する円錐分流壁を含む。
【0417】
下流流出部730、740は、多孔質壁110、120に横方向/半径方向に隣接する出口チャンバ130、140のそれぞれの長手方向部分の下流にあり、長手方向においてそれを越えて(たとえば、その上方に)延在する。下流流出部730、740は各々、流動シミュレーションモデル内の長さloutflowを有し、それぞれの流出境界732、742において終端する。流出部は、モデルの流出境界732、742を、多孔質壁を含むモデルの部分から分離して、たとえば、モデルのその部分に対する特定の流出部形状の任意の影響を低減するために提供される。
【0418】
流動シミュレーションモデルは、下記の表2に記載される電解槽寸法のセットと一致する。
【0419】
【表2】
【0420】
電解反応によるシミュレーションを含む、流動シミュレーションモデル内の流れのシミュレーションを実行した。流動シミュレーションモデルを使用した条件の様々なセットのシミュレーションは、本明細書においては相互交換可能に「シミュレーション」または「シミュレーション事例」として参照される。シミュレーションは、種(たとえば、電解質液およびそれぞれの反応生成物)の拡散およびクロスオーバに関連する流れパターンを評価するために実行される。
【0421】
スウェーデンのCOMSOL ABによって開発されているCOMSOL Multiphysics(登録商標)5.6によって提供されるシミュレーションソフトウェアを使用してシミュレーションを実行した。
【0422】
流動シミュレーションモデルは、以下の仮定を反映するために定義される。NaOH電解質による水素-酸素-水混合物は、すべての関心条件(たとえば、圧力>22MPa、温度>380℃)において完全に混和性であり、超臨界単相流である。電解槽への最大40g/分の入口流は、動作条件にある電解槽内で層流のままである。
【0423】
流動シミュレーションモデルは、水素-酸素-水混合物の成分の拡散をモデル化する。密度および粘度が、400℃の基準温度についての、局所的組成、および圧力の関数としてモデル化される。流動シミュレーションモデルは、(浮力をモデル化するために)重力を含む、弱圧縮性ナビエ・ストークス方程式を使用して流体流をモデル化するように定義される。流動シミュレーションモデルは、定常状態流動条件を解決するように定義される。シミュレーションは、等温である。
【0424】
流動シミュレーションモデルは、流入境界701を指定の質量流速における完全に発展した(放物状の)層流プロファイルとしてモデル化する。シミュレーション事例の流動シミュレーションモデルは、流出境界732、742を一定の出口圧力境界(23MPaにおける)としてモデル化する。モデルのチャンバの壁には、滑りなし条件が適用される。後述するシミュレーション事例の各々において、入口流は、23MPaの圧力においてモデル化され、すべての種は、その圧力および400℃の温度(134kg/m-3の水密度、27.4μPaの粘度に対応する)に対応する特性を用いてモデル化される。
【0425】
流動シミュレーションモデルは、多孔質壁110を、特定の流動シミュレーション事例の構成(たとえば、それが図1bおよび図2aの例にあるような等方性多孔質壁であるか、図1cおよび図2bの例にあるような開放チャネルを有する異方性多孔質壁であるか、または、任意選択で図1dおよび図2cの例にあるような長手方向成分を有する経路に沿って延在する不連続多孔質構造を有する多孔質壁であるか)を反映するために適用される多孔度パラメータを有する多孔質媒体としてモデル化する。
【0426】
上記または各多孔質壁が傾斜チャネルまたは傾斜不連続多孔質構造を有する流動シミュレーション事例を参照すると、多孔度パラメータは、多孔質媒体の方向性を反映するために適用される。特に、流動シミュレーションモデルは、電極を通る流れをシミュレートするための(可変配向)構造化メッシュを実装し、このメッシュは、それぞれのチャネルまたは多孔質領域の経路角度と位置整合される。各モデルにおいて、多孔質領域は、ブリンクマン力を加える(たとえば、シミュレートする)ことによって均質化多孔質媒体としてシミュレートされる。関連付けられる浸透率テンソルが、それぞれのシミュレーション事例の経路角度に対応するように調整される。特に、関連付けられる浸透率値が、それぞれのチャネルまたは多孔質領域の経路(すなわち、それに沿ってそれぞれのチャネルまたは多孔質領域が長尺である経路)に沿って設定されており、その経路に直交する方向においてヌル(ゼロ)値に設定される。したがって、モデルは、それぞれのチャネルまたは多孔質領域に対応する多孔質流に対する制約を提供する。多孔度パラメータは、開放チャネルを有する構成のシミュレーション事例については1として設定され、多孔質領域(すなわち、不連続多孔質構造)のシミュレーション事例については0と1との間の値(後述のように)を用いて設定される。
【0427】
流動シミュレーションモデルは、それぞれの電解(たとえば、加水分解)半反応が、多孔質壁110、120内で、そのロケーションにおける電解質液の可用性および印加される電流に対応する可変速度で発生するようにシミュレートされるように定義される。したがって、流動シミュレーションモデルは、後述するような電極水枯渇効果に対応する流れパターンおよび種分布をシミュレートすることが可能である。特に、電極水枯渇効果は、多孔質壁の構成が、入口電解質液が多孔質壁の近位部分(すなわち、入口101に相対的により近い多孔質壁の長手方向部分)を通じて流れるようにバイアスされ、結果、相対的により低い割合の電解質液が多孔質壁の遠位部分を通じて流れるようなものであるときに発生し得、これにより、それぞれの半反応の速度、および、それぞれの反応生成物がモデルにおいて生成される速度も、相応に低下する。これは、電解反応のための持続可能な電流を制限する役割を果たし得る。
【0428】
流動シミュレーションモデルは、多孔質壁110、120中のそれぞれの流体反応生成物の供給源およびシンクを使用して反応をシミュレートする。
【0429】
シミュレーション事例は、並列な150個のセルに関する1.42kg.h-1の目標水素生成速度に対応し得る、250Aの動作電流を反映するように定義される。
【0430】
本発明者らは、本明細書において論じられているように、選択された流動現象および効果を評価するために4つのベースライン構成のシミュレーションを実行した。4つのベースライン構成は、本明細書において以下のように参照される。
【0431】
構成A:図1bの例(たとえば、または図2aの例)に対応する等方性多孔質壁。
【0432】
構成B:異方性多孔質構造を提供するための、図1cまたは図2bの例に対応する開放チャネルを有する多孔質壁。チャネルは、多孔質壁の長手方向に垂直に配向されてもよく、または、チャネルは、長手方向に長尺である経路に沿って(すなわち、長手方向成分を有するように)延在してもよい。
【0433】
構成C:図1dの例に対応する不連続多孔質構造を有する多孔質壁。
【0434】
各構成A~Cのシミュレーションの比較検討を可能にするために、様々なパラメータが、下記に記載のようにシミュレーションに対して定義される。その検討の前に、関連するパラメータを検討する。
【0435】
多孔度とは、それを通る流れを可能にする多孔質壁の開放されている部分の割合の測度であり、当該技術分野における表現の標準的な用法に準拠する。
【0436】
流動シミュレーションモデルにおいて、多孔質の長手方向延在範囲全体が、それを通る流れに向けて構成される。他の実施態様において、多孔質壁は、たとえば、(たとえば、電解槽セルのそれぞれの電気端子に結合するための)多孔質壁の近位または遠位端にある、それを通る流れのために意図されていない1つまたは複数の実質的に非多孔質の長手方向部分、および、流動シミュレーションモデルの多孔質壁に対応する長手方向多孔質部分を含み得ることが諒解されよう。したがって、本明細書において使用されるものとしての多孔度という表現、および、「マクロ多孔度」という関連表現は、多孔質壁の長手方向多孔質部分にわたって測定/定義されるそれぞれの特性に対応する。
【0437】
マクロ多孔度は、そこを通るチャネルによって画定される多孔質壁の開放されている部分の割合の測度であり(たとえば、構成B)、また、離散的な多孔質領域を有する多孔質壁のボディの開放されている部分の割合の測度でもある(たとえば、構成C)。構成Cを参照すると、マクロ多孔度は、多孔質領域内の多孔質媒体が除去された場合の多孔度、または、多孔質媒体が対応する開放領域に導入される前の前駆体/中間製品の多孔度である。
【0438】
マクロパターンは、たとえば、列または行に配列されているか、または、横方向/周方向にオフセットされた行を有するチャネル/多孔質領域の規則的なマトリックスであってもよい、多孔質壁内のチャネル/多孔質領域の構成に対応する。たとえば、六角形構成において、行は、各チャネル/多孔質領域について、それぞれの壁の局所平面/表面内に60°の角度で分散された6つの周囲のチャネル/多孔質領域が存在し、各周囲の孔に対する分離/ピッチは実質的に均一である。規則的な格子パターンにおいて、連続する行のチャネル/多孔質領域は、横方向/周方向にオフセットされていない。
【0439】
ピッチは、それぞれの多孔質壁の入口側において評価されるものとしての、チャネル(構成B)および多孔質領域(構成C)の中心間の分離に対応する。異なる方向において不均等な分離を有する多孔度パターンについて(たとえば、列および行を有する規則的な格子においては、対角距離がより長い)、ピッチは最短のそのような分離である。後述するシミュレーションの各々において、周方向ピッチが最短分離であり、概して周方向ピッチ(または周ピッチ)として参照される。これはまた、周当たりの経路の数(「周当たり経路」)を参照することによって定義されてもよい。
【0440】
ピッチ高さは、チャネル(構成B)および多孔質領域(構成C)のそれぞれの行の間の分離に対応する。
【0441】
微細多孔度は、構成C(たとえば、図1dおよび図2c)における多孔質領域117内の多孔度の測度である。全体としての多孔質壁の多孔度は、マクロ多孔度と微細多孔度との積として算出することができる。
【0442】
経路は、チャネル(構成B)または多孔質領域(構成C)が多孔質壁のボディを通じてそれに沿って長尺である経路を指す。
【0443】
経路直径は、それぞれのチャネルまたは多孔質領域の実質的に円形のプロファイルに対応するチャネル(構成B)または多孔質領域(構成C)の経路の直径である。
【0444】
経路数は、多孔質壁のそれぞれのボディを通るチャネル(構成B)または多孔質領域(構成C)の数を定義する。これは、構成Cにおける各多孔質領域内の流路のネットワークには関係なく、対照的に、構成Cにおける各多孔質領域は、単一の経路に対応する。
【0445】
経路角度は、経路が長手方向軸から傾斜している角度である。たとえば、70°の経路角度は、長手方向から70°だけ、および、直交方向(半径方向または厚さ方向)から20°オフセットされた長尺方向に沿って延在する経路に対応する。
【0446】
後述するシミュレーション事例の各々について、内側(第1の)多孔質壁は、カソード(水素生成のための)としての役割を果たし、外側(第2の)多孔質壁は、アノード(酸素生成のための)としての役割を果たす。
【0447】
本発明者らは、シミュレーションモデルがベースライン構成と関連付けられる様々な流動効果、現象およびトレードオフを評価するためのシミュレーション事例を定義しており、これらのおよび関連する用語の冒頭の論述は、シミュレーション結果の解釈を補助する。
【0448】
本発明者らは、軸対称構成(すなわち、同心円状に配置された多孔質壁の)を有する流れ構成において、多孔質壁が同様の構造を有するときに外側チャンバに向かう流れバイアスが存在する傾向にあることを観察しており、「流れバイアス」という表現は、流れが1つの方向にある優先傾向を指す(すなわち、1つの方向において、別の方向よりも相対的に質量流量が大きい)。これは、外側多孔質壁がより大きい半径を有し、したがって、流れが通過するためのより大きい表面積/体積を有し、以て、多孔質特徴が同様に提供された場合に(たとえば、同様のサイズのチャネルの等しい分布)、流れに対するより低い抵抗を呈するためであると考えられる。
【0449】
電解槽の流れ構成の文脈において、2つの電極における電解のそれぞれの半反応の化学量論を考慮して、等しい流れ分布が所望されることがない場合がある。たとえば、相互に持続可能なレートで電解のそれぞれの半反応を実施するために、一方の電極において他方よりも大きい割合の電解質液が必要とされることがあり得る。したがって、質量流量バイアスは、必ずしも望ましくないとは限らないが、流れバイアスは、種のクロスオーバ(すなわち、2つの電極間の分離間隙を越える流体反応生成物の流れ)を促進する効果がある場合、いずれかの方向において過剰であるかまたは望ましくない場合がある。
【0450】
本発明者らは、多孔質壁に、それらの流れ抵抗に影響を及ぼす異なる特性(たとえば、多孔度、断面積または直径、および多孔質媒体を通る経路の直径)を提供することによって、望ましくない流れバイアスを軽減することができることを見出した。たとえば、外壁の多孔度を相対的により低くすることができ(たとえば、多孔度の制御によって、または、経路数、経路直径の低減、もしくは経路角度の増大によって)、または内壁の多孔度を相対的により高くすることができる。
【0451】
本発明者らはまた、流体反応生成物が入口チャンバにわたって拡散する傾向にあり、結果、たとえば、カソードにおいて生成される流体反応生成物がアノードに到達し、それぞれの出口チャンバを通じて放出されることも観察した。流れ構成内の流れバイアスは、種の拡散とともに作用する(たとえば、倍加させる)か、または、それに抗して作用する(たとえば、軽減する)ことができる。
【0452】
流体反応生成物は、異なる拡散率を有し得る。本発明者らは、水素および酸素生成のための水性電解質液の電解について、水素が酸素よりも拡散率が高いことを見出した。内側多孔質壁がカソードとしての役割を果たすとき、水素生成は内側多孔質壁において行われ、したがって、半径方向外側方向における外側多孔質壁に向かう水素の拡散が、軽減されるべきである。
【0453】
特定の方向における種拡散を軽減する1つの方法は、中性流れバイアスに影響を及ぼすかもしくはそれを提供すること、または、反対方向に流れをバイアスさせることである。しかしながら、この結果として、別の流体反応生成物の任意の拡散が助長され得(たとえば、半径方向外側のアノードにおいて生成される酸素の半径方向内側のカソードに向かう拡散が促進される)、反対の電極に、電解のそれぞれの半反応のための電解質液が供給されなくなる場合がある。
【0454】
流れバイアス効果とは別に、本発明者らは、多孔質壁によって提供される流れ抵抗が、入口チャンバおよびそれぞれの多孔質壁を通る電解質液の流れの分配に影響を及ぼし得ることを観察した。本明細書の他の箇所において論じられるように、多孔質壁は、壁にわたる圧力差が、そこを通る流れが存在するために必要とされる(または確立される)ような流れ抵抗を提供する。多孔質壁が相対的に低い流れ抵抗(たとえば、相対的に高い流動係数K)を提供する場合、入口から多孔質壁を通って出口に至る任意の特定の通路に沿った流体の流速は、それ以外の、壁から外方の流路の特性に支配され得る(すなわち、主にそれによって決定され得る)。たとえば、電極間に相対的に小さい分離間隙があるとき、入口チャンバ内の摩擦(たとえば、粘性抵抗)力が、それぞれの出口チャンバ内の摩擦(たとえば、粘性抵抗)力よりも相対的に高いことがあり得る。したがって、電解槽を通じて最も抵抗の低い経路を自然に流れるとき、電解質液は、それぞれの多孔質壁の近位部分(すなわち、入口に相対的により近い部分)を通じて優先的に流れる傾向にあり得、出口チャンバ内のより低い摩擦(たとえば、粘性抵抗)力から受益し得、その結果として、それぞれの多孔質壁の近位部分を通じた質量流量および速度流量がより高くなる。この結果として、それぞれの多孔質壁において電解質液が「枯渇」し得、これは、多孔質壁の遠位部分が、電解のそれぞれの半反応を実行するための電解質液を供給されなくなることに対応する。上記で言及したように、電解質液のそのような不均一な流れは、多孔質壁が相対的に低い流れ抵抗をもたらすときに生じ得る。
【0455】
対照的に、多孔質壁が相対的により高い流れ抵抗をもたらすとき、多孔質壁自体の中の摩擦(たとえば、粘性抵抗)力が、流れ構成/電解槽の入口から出口へと経験されるすべての力に関連してより支配的になり、多孔質壁に沿った流速(および質量流量)の局所的なピークが低減されて、より均一な流れがもたらされる(特に、抵抗力が、速度の2乗に比例する)。
【0456】
流れバイアス効果が相対的に低い流れ抵抗によって助長されることもあり得る。特に、多孔質壁が概して相対的に低い流れ抵抗をもたらすとき、壁の1つによってもたらされる流れ抵抗の相対変化が、流れバイアスの著しい変化をもたらす可能性があると考えられる。したがって、多孔質壁のうちの1つまたは複数が相対的に低い流れ抵抗をもたらすときに所望の流れバイアスを維持するための条件を選択することは相対的により困難であり得ることが考えられる。
【0457】
電解のための効率的な流れ構成を提供することに関して本発明者らは、電解質液に暴露され、電解のそれぞれの半反応のために電解触媒として活性である多孔質壁の表面積を最大化することが望ましい場合があると判定した。本発明者らは、多孔質壁の電解触媒領域間の分離間隙を低減することも望ましいと判定した。
【0458】
本発明者らは、多孔質壁を等方性多孔質媒体として提供する代わりに(すなわち、上記で定義した構成A)、1つまたは複数のチャネルを、多孔質壁を通じて提供して、壁に多孔度を提供することができる(たとえば、構成B)と考えた。チャネルのパラメータ(たとえば、経路直径、経路角度、厚さ)を選択することによって、流れバイアスおよび流れ抵抗に関係する特性を制御することができる。
【0459】
本発明者らはまた、そのようなチャネルを、本明細書に記載されているような傾斜チャネルとして提供することができるとも考えた。特に、電解のそれぞれの半反応の流体反応生成物は電解質液よりも密度が低いため、それぞれのチャネル内でそれらを生成することによって、それぞれの出口チャンバ130、140に向かって上向きに方向付けられる浮力駆動流を確立することができ、結果、チャネル(構成B)内で生成される流体反応生成物の任意の逆流が抑制されると考えられる。これは、そのような流れが、それぞれの多孔質壁を通る優勢な浮力駆動流の方向に対向することになるためである。したがって、傾斜は、種の(いずれかの方向における)クロスオーバを防止すると考えられる。
【0460】
しかしながら、製造可能性、反応表面積、枯渇を防止するための流れ抵抗、および適切な流れバイアスのための流れ抵抗を提供することを含む、様々な要因間にはトレードオフがあり得る。
【0461】
たとえば、構成Bによる開放チャネルが、枯渇効果および流れバイアスに対する感受性を回避するために、多孔度を低減し、相対的に大きい流れ抵抗を提供するために、経路直径を相対的に小さくして形成され得ることが考えられる。しかしながら、経路直径が相対的により大きいチャネルがより実際的であり、安価に形成されるとも考えられる。
【0462】
対照的に、経路直径が相対的により大きいチャネルはより実際的であり得、安価に形成され得るが、それらは相対的により低い流れ抵抗と関連付けられる。多孔質壁の流れ抵抗は、提供されるチャネルを相対的により少なくすることによって改善され得るが、これは、チャネル内の電解反応に利用可能な表面積の低減と関連付けられる。
【0463】
本発明者らは、構成Cの不連続多孔質構造(たとえば、図1dおよび図2cの例による)を提供することによって、上述したトレードオフの要因の各々に関する良好な性能を達成することができると判定した。特に、チャネルを形成するのではなく、多孔質壁を通る流れを可能にする離散的な多孔質領域が形成され、各多孔質領域が、多孔質媒体を通る流路のネットワークを画定する。多孔質領域は、経路直径を相対的に大きくして(たとえば、多孔質媒体を提供する前の、上述したような開放領域の直径に対応する)形成することができるが、多孔質媒体が多孔質媒体を充填されるため、低い流れ抵抗および低い反応表面積などの不利な効果を回避することができる。さらに、多孔質領域を通じて上向きの浮力駆動流を提供するために多孔質領域を傾斜させる(たとえば、長手方向に対して90°未満の経路角度を有するように)ことができ、それによって、流体反応生成物の逆流を抑制することができる。
【0464】
下記の表3は、構成Cの多孔質領域に傾斜角度を提供する影響を評価するための第1のシミュレーションセットのためのシミュレーション設定を定義する。シミュレーションID SxRy-Zの表記は、セットx、実行y-構成Zに対応する。たとえば、この第1のシミュレーションセットの2回目の実行は構成Cを有し、したがって、ID S1R2-Cを有する。表および下記の論述において、区分「/」を使用して内側多孔質壁と外側多孔質壁の両方にいくつかの値が提供され、たとえば、70°/70°は、各多孔質壁の70°の経路角度を示す。
【0465】
【表3】
【0466】
表3において、任意の残留電解質液(たとえば、水)を除外して、結果生じる流体反応生成物の混合物(たとえば、水素および酸素)中のそれぞれの流体反応(たとえば、水素)生成物のモル濃度に対するクロスオーバのモル濃度が報告されている。これは、(下記にさらに説明するように)それぞれの出口において電解質液から分離され得る流体反応生成物の混合物中のモル濃度を反映する。同じことが、本明細書において報告されているものとしてのモル濃度によるクロスオーバの他の値にも当てはまる。対照的に、図面に示すようなモル濃度は、局所的モル濃度(たとえば、水素-酸素電解質液混合物中の)である。
【0467】
S1R1-CおよびS1R2-Cの結果の比較によって表3に示すように、(90°の)直交方向と対照的に、長手方向に対して70°の角度において多孔質領域を提供する効果は、クロスオーバ性能が、外側出口チャンバへの水素(H2)クロスオーバと内側出口チャンバへの酸素(O2)クロスオーバの両方について改善することである。
【0468】
図8a~図8cは、長手方向から70°の経路角度および0.1/0.11の第1の(内側)多孔質壁および第2の(外側)多孔質壁の多孔度値を有する、傾斜不連続多孔質構造を有する両方の多孔質壁に対応する、シミュレーション事例S1R2-Cの水素モル濃度(図8a)、酸素モル濃度(図8b)および水モル濃度(図8c)の等高線図を示す。
【0469】
図8aに示すように、酸素の0.001モル濃度の増分における等高線は、電解のそれぞれの半反応が行われる外側多孔質壁120内の酸素の増大する濃度を示すが、入口チャンバ102および内側多孔質壁110内の酸素の任意の等高線の欠如は、酸素のクロスオーバが非常に低いことを示す。
【0470】
同様に、図8bに示すように、水素の0.005モル濃度の増分における等高線は、電解のそれぞれの半反応が行われる内側多孔質壁110内の水素の増大する濃度を示すが、最も低い等高線のみが、入口チャンバ102および外側多孔質壁120を通じて(上端に向かって)延在しており、以て、水素のクロスオーバが低いことを示している。
【0471】
図8cにおいて、水の0.05モル濃度の増分における等高線は、第1の(内側)多孔質壁110内の単一の等高線を示す。これは、多孔質壁の長手方向延在範囲に沿って電解質液が枯渇していないことを示す。
【0472】
シミュレーション事例S1R2-Cと同じ経路直径、経路角度および多孔度を有する構成Bのシミュレーション事例を実行した。このシミュレーション事例は、各電極内の経路数を低減することによって、全体的な多孔度が一致している。選択されるパラメータの特性の組み合わせについて、枯渇効果が発生し、それによって電解反応が制限される(たとえば、電流が250A目標未満に制限される)と予測された。これは、全体的な多孔度は同様であるにもかかわらず、開放チャネルを有する多孔質壁構成は、本明細書に記載されているような不連続多孔質構造を有する多孔質壁構成よりも低い流れ抵抗効果を提供し得、結果として、望ましくない流れバイアスおよび/または枯渇効果がもたらされ得ることを実証し得る。
【0473】
本発明者らは、1つまたは複数のパラメータ(本明細書においてさらに論じられているような)を変化させることによって流れバイアスを調整することが可能であることを見出しており、枯渇効果を制限し、250Aの目標電流において構成Bによる多孔質壁を有する流れ構成のシミュレーションを可能にするために、これを行った。例としてのみ、第2のシミュレーションセット(「セット2」)において、外壁に向かう流れバイアスを抑制するために、内壁の多孔度を増大させ、外壁の多孔度を低減した。セット2のモデル設定が、構成Bと構成Cの両方におけるシミュレーションについて、表4に示されている。流動結果を添付図面に示す。
【0474】
【表4】
【0475】
図8dは、20~4040g/minの流速範囲にわたる両方のシミュレーションモデルについて、モデルの内側流出部と外側流出部との間の流れ分割を示す。図8eは、同じ流速における水素および酸素のクロスオーバ(モル%)を示す。
【0476】
シミュレーション結果は、内側多孔質壁の多孔度を増大させ、外側多孔質壁の多孔度を低下させることによって、流れバイアスがすべての流速において流動シミュレーションモデルの内側流出部に向かうことを示す(図8d参照)。これは、図8eに示すような著しい酸素クロスオーバおよび低い水素クロスオーバを有する、構成Bのシミュレーションにおいてより顕著である。対照的に、構成Cのシミュレーションは、わずかにより高い水素クロスオーバ、および非常に低い酸素クロスオーバを示す。
【0477】
内側多孔質壁の多孔度は、S2R1-CよりもS2R2-Bにおいてより高く、これは、内側出口チャンバに向かってより大きい流れバイアスを駆動し得るが、構成Bによる多孔質壁は、概して、より低い流れ抵抗をもたらし、結果、流れバイアスの方向におけるクロスオーバ効果が、著しくより顕著になる。したがって、構成Bにあるような開放チャネルを有する流れ構成が、構成Cの不連続多孔質構造を有する流れ構成と比較して、流れバイアスに対してより感受性であることがあり得る。
【0478】
多孔質壁の異なる構成による流動結果および現象の比較に加えて、本発明者らは、不連続多孔質構造を有する多孔質壁の選択パラメータが変化する影響を評価するためのシミュレーションによってパラメータ研究を実行した。
【0479】
これらのパラメータ研究は、以下を含む。
【0480】
i.内側多孔質壁および外側多孔質壁の類似していない多孔度のパラメータ研究。
【0481】
a.類似していない経路角度のさらなる掃引を伴う。
【0482】
ii.経路直径のパラメータ研究。
【0483】
iii.微細多孔度(異なる粒径と等価であると考えることができる)のパラメータ掃引。
【0484】
iv.2つの異なる電極長における結果の比較。
【0485】
上述したように、本明細書に記載されているような角度構成を有する流れ構成について、多孔質壁が各々、同様の構成を有する場合、外側多孔質壁は、より大きい面積を有するため、自然に、より低い流れ抵抗を提供する。本発明者らは、それぞれの壁内の経路数(すなわち、多孔質領域の数)を変化させることによって実施されるような、内側多孔質壁および外側多孔質壁の類似していない多孔度による流動シミュレーションモデルを実行した。特定の実施態様は、多孔質領域の周方向ピッチを変化させることによって経路数を変化させるが、これは、ピッチ高さの変動または均一なピッチを表すと考えられる。
【0486】
流動シミュレーションモデルの幾何形状および構成は、図7に関して上述したようなものであり、多孔質壁は、不連続多孔質構成(構成C)を有し、長手方向に対する経路角度は90°未満である。
【0487】
(i)類似していない多孔度の掃引について、経路直径(120μm)または各多孔質領域と関連付けられる微細多孔度は変化させることなく、それぞれの多孔質壁の経路数を調整することによって、それぞれの壁の多孔度を変化させた。図9a~図9dは、角度のそれぞれの組み合わせにおける掃引結果の4つのマトリックスを示す。経路角度は、長手方向に対するものである。
【0488】
結果は、1、2、3およびXの番号付きカテゴリにおいて提示される。これらのカテゴリは、当該技術分野において爆発下限界(LEL)として知られている、クロスオーバの閾量の順守に関係する。各マトリックスに示す多孔度の各組み合わせについて、20~40g/minのいくつかの異なる入口質量流速において、流動シミュレーションを実行した。
【0489】
カテゴリ1は、流速セット中の少なくとも1つの流速について、50%以下のLELと対応するクロスオーバを有する両方の流出部に対応する。カテゴリは、100%以下のLELに対応するクロスオーバを有する両方の流出部に対応する。カテゴリ3は、シミュレーションは実行したが、カテゴリ1または2の要件を満たさなかったことを示す。カテゴリXは、シミュレーションを実行しなかったことを示す。
【0490】
見てとれるように、この特定の例(すなわち、流動シミュレーションモデルの条件の特定の定義を有する)において、結果は、適切な結果をもたらす流れバイアスを提供するためには、外側多孔質壁の多孔度は内側多孔質壁の多孔度に対して低減されるべきであることを示し、外側多孔質壁の多孔度が増大すると、達成される結果はより不満足なものとなる。内側多孔質壁の角度を70°から50°に低減しても、(図9aおよび図9bのマトリックスを比較することによって)報告されるものとしての結果に影響はなかった。しかしながら、外側多孔質壁の角度を70°から50°に、その後30°に低減する結果として、より多くの事例がカテゴリ1および2に入る傾向にある。
【0491】
長手方向に対する角度低減の任意の浮力関連クロスオーバ低減効果に加えて、角度低減によってそれぞれの電極を通る経路長が増大し、したがって、流れ抵抗が増大し、以て、外側多孔質壁に向かう流れバイアスがさらに制限されるかまたは逆転される。
【0492】
上記の結果は、たとえば、経路数を変化させることによって、および/または、経路角度を変化させることによって、多孔質壁上の流れ抵抗を独立してどれだけ変化させることができるかを示している。結果は、例としてのみ提示されており、パラメータの任意の最適な組み合わせは特定の多孔質壁形状に特有であり得、他の形状には異なる最適な組み合わせが適していることは諒解されたい。たとえば、流れバイアスは、流れ構成内でさらなる異なる様式において影響を受ける場合があり、多孔度および/または経路角度の変動をより大きくまたはより小さくすることによって軽減または制御することができる。この文脈において、流れバイアスに影響を及ぼし得るさらなる要因は、流出部における出口圧力の差、多孔質壁の壁厚の差、出口チャンバの異なる形状などを含み得ることは諒解されたい。
【0493】
図9a~図9dは、不連続多孔質構造を有する多孔質壁の多孔度と経路角度の両方の変動の効果を評価するさらなるパラメータ研究の結果を示す。パラメータ研究は、内側多孔質壁および外側多孔質壁がそれぞれ0.1および0.11の多孔度を有し、多孔質領域が(長手方向に対して)70°の経路角度を有するベースライン構成を含む。このパラメータ研究において、多孔度はそれぞれ0.1および0.05に変化され、外側多孔質壁の経路角度が50°に変化される。下記の表5は、パラメータ研究のシミュレーションの設定を示す。
【0494】
【表5】
【0495】
図10aおよび図10bは、様々な流速における各シミュレーション事例について、流動シミュレーションモデルの内側流出部および外側流出部を通る質量流の間の分割を示す。図示のように、内側流出部と外側流出部との間の流速分割に対する、外側多孔質壁の経路角度を変化させる効果は、流れが(各流速において)内側流出部へとよりバイアスされることである。これは、経路角度を70°から50°に低減することによって、外側多孔質壁における流れ抵抗が増大することを示している。図10aおよび図10bを比較することによって、外側多孔質壁の多孔度を0.11から0.05へと低減することに関して同様の効果が観察される。これらの結果は、そのようなパラメータを変化させることによって流れバイアスをどのように調整することができるかをさらに実証している。
【0496】
図10cおよび図10dは、上記の表5において定義したシミュレーション事例の各々について、20、30および40g/分の流速における種クロスオーバ(水素および酸素、水を除外したモル分率)の傾向を示す。流速が増大するとともにクロスオーバが低減するという、一般的な傾向がある。これは、多孔質壁を通じた流れの慣性の増大からもたらされ得ると考えられ、以て、流体反応生成物の逆流が防止される。図10cは、水素クロスオーバを示す。図10cから、流れを水素生成カソードである内側多孔質壁に向かってバイアスする傾向にある変動が、外側出口チャンバおよび流出部における水素クロスオーバを低減する傾向にあることを観察することができる。特に、水素クロスオーバは、外側多孔質壁における50°の経路角度変化によって低減され、その後、外側多孔質壁の多孔度を低減することによってさらに低減される。
【0497】
図10dは、酸素クロスオーバの対応する結果を示す。外側多孔質壁において経路角度を50°に変化させると、酸素クロスオーバが増大され、これは、上述したような内側多孔質壁に向かう流れバイアスによって引き起こされると考えられる。しかしながら、酸素クロスオーバの増大は水素クロスオーバの低減と比較して小さく、これは、酸素クロスオーバを制限する役割を果たす外側多孔質壁における浮力駆動流に関連し得、50°の経路角度は、多孔質領域の角度を長手方向に近づけることに留意されたい。外側多孔質壁における多孔度の低減もまた、酸素クロスオーバを増大させると考えられる。
【0498】
流れバイアスの適切な変化によって、水素と酸素とのクロスオーバの所望の平衡を提供する多孔質壁の構成を選択することができる。図10a~図10dの例において、水素クロスオーバが一般的により高く、したがって、カソードとしての役割を果たす内側多孔質壁に向けて流れバイアスを駆動する傾向にある変化が望ましいことがあり得る。他の構成において、流れ構成(たとえば、電解槽)の構成、および、いずれの多孔質壁がそれぞれアノードおよびカソードとしての役割を果たすカニ応じて、異なる流れバイアスが確立または所望され得る。
【0499】
流れ構成(たとえば、電解槽)内の流れパターンに対する経路直径の効果のパラメータ研究において、傾斜不連続多孔質構造を有する多孔質壁のシミュレーション事例を定義した。このパラメータ研究において、50μm~500μmの範囲の経路直径を有するシミュレーション事例を実行し、一方、(i)内側多孔質壁と外側多孔質壁の両方における0.25の固定多孔度、(ii)内側多孔質壁と外側多孔質壁の両方の70°の経路角度および(iii)内側多孔質壁と外側多孔質壁の両方の0.5の微細多孔度を含む他のパラメータは維持した。0.5の微細多孔度は約5μmの粒径を表し得ると考えられる。パラメータ研究の結果は、内側電極と外側電極との間の流れバイアスが、クロスオーバ性能と同様に、テストされた各経路直径について実質的に同じであるということであった。
【0500】
多孔質壁の長さ(および、特に、多孔質壁の多孔質部分の長手方向延在範囲)の効果のパラメータ研究において、上記の表5において定義したS3R3-CおよびS3R4-Cに対応するシミュレーション事例を定義し、実行したが、多孔質壁の長さlmainが、100mmの代わりに150mmである点が異なっている。図10eおよび図10fは、水素および酸素クロスオーバの結果を示しており、概して同じ傾向が観察されるが、各事例において種のクロスオーバがわずかにより高いことを示している。
【0501】
微細多孔度の効果のパラメータ研究において、下記の表6に定義されているようなベースライン構成を有するシミュレーションのセットを定義し、実行したが、多孔質領域の微細多孔度が0.3と0.9との間で0.1の増分で変化しており、それぞれの多孔質壁の総多孔度もその結果として変化している。
【0502】
【表6】
【0503】
水素および酸素クロスオーバのプロットが図10gおよび図10hに提供される。これらは、流速とともにクロスオーバが低減する同じ一般的な傾向を示しており、水素と酸素の両方のクロスオーバが、概して多孔度が増大するとともに増大しており、これは、多孔質壁の各々を通じた流れ抵抗が漸進的に低くなることに対応する。このシミュレーション結果のセットの特定の設定によって、酸素クロスオーバが0.8の多孔度を上回って著しく増大し、水素クロスオーバが低減し、これは、内側多孔質壁に向かう流れバイアスを示し得る。
【0504】
図11は、電解槽100を備える例示的な電解設備10を概略的に示す。電解槽は、たとえば、多孔質壁の一方または両方が図1b~図1dに関して上述した第1の例、第2の例および第3の例のいずれかによる構成を有する、図1を参照して上述したような流れ構成を備える。
【0505】
図示されているような順次的な流れの順序において、例示的な電解設備10は、電解質液の供給源12と、電解質液を圧縮(加圧)するための圧縮器14と、電解質液を加熱するための加熱器16と、入口マニホールド20に至る入口導管18と、電解槽100と、第1の放出マニホールド24と、第2の放出マニホールド30とを備える。
【0506】
この例において、電解設備は、たとえば、図1aの電解槽100の動作に関して上述したような、水性電解質溶液を含む電解質液による、電解槽の多孔質壁での超臨界条件における動作のためのものである。この例において、圧縮器14は、電解質液を、少なくとも22MPa、たとえば22MPa~27MPaの圧力まで圧縮するように構成されている。さらに、加熱器16は、電解質液を、電解槽の多孔質壁における超臨界条件の温度(たとえば、少なくとも374℃、たとえば、374℃~550℃または374℃~400℃)まで加熱するように構成されている。加熱はまた、電解槽内で、たとえば、電極を画定する多孔質壁において行われてもよい。加熱器16が、それぞれの電解質液の臨界温度の50℃以内、たとえば、臨界温度の30℃以内または臨界温度の20℃以内の温度まで電解質液を加熱するように構成および/または制御されることがあり得る。電解質液の温度が、圧縮器14による圧縮と、加熱器による加熱の両方の関数であってもよく、圧縮器および加熱器が、電解質液が両方を通過した後に述べられた条件を有するように構成および/または制御されてもよいことが諒解されよう。圧縮器および加熱器は、任意の順序(たとえば、図示されている順序に対して逆順)で提供されてもよい。
【0507】
入口導管18は、加熱および加圧された電解質液を入口マニホールド20に導き、入口マニホールドは、入口マニホールド内の電解質の温度を監視するための温度センサ22を支持し、温度センサは、接続23を介してコントローラ56に結合されている。接続23は、図11において温度センサ22とは別個に示されているが、接続21は、任意の適切な形態の接続、たとえば有線または無線リンクであってもよいことを理解されたい。
【0508】
入口マニホールド20は、電解槽100に結合されて、図1aの例示的な電解槽100の動作に関して上述したような電解反応のために電解槽100内に電解質液を提供する。それぞれ電解槽の第1の出口132および第2の出口142(図1aに最良に示されているような)と結合されている別個の第1の出口通路23および第2の出口通路29が存在する(第1の出口および第2の出口は、それぞれ第1の流体反応生成物および第2の流体反応生成物を放出するように構成されている)。図11は、電解槽100の中心に位置する第1の出口に結合されている第1の出口通路23を概略的に示しており、一方、第2の出口通路29は、電解槽100の半径方向外向きの(たとえば、環状の)第2の出口に結合されている。
【0509】
第1の出口通路23は、第1の放出マニホールド24と流体連通しており、第1の放出マニホールドは、電解槽100の第1の出口から電解質液および第1の反応生成物の流れを受け入れる。第1の放出マニホールド24は、放出ライン25を介して第1の放出弁34に流体結合されている。第1の放出弁34は、それを通る流れに可変制約を提供する制御弁であってもよい。
【0510】
第2の出口通路29は、第2の放出マニホールド30と流体連通している。図11に概略的に示すように、この例において、第1の出口通路23は、機能的には第2の放出マニホールドをバイパスしながら(すなわち、第1の出口通路23内の流れが第2の放出マニホールド30内の流れと混合しないように)、第2の放出マニホールド30を通じて延在するが、他の実施態様においては、別様に構成されてもよい。第1の放出マニホールド24と同様に、第2の放出マニホールド30は、放出ライン31を介して、第1の放出弁34と同様のタイプのものであってもよい第2の放出弁46に流体結合されている。
【0511】
任意選択で、第1の放出マニホールド24および第2の放出マニホールド30の各々には、電解槽のそれぞれの(第1のまたは第2の)出口から放出されるか、または、出口のすぐ上流にあるそれぞれのチャンバ内の流体と連通する圧力センサ素子を有するそれぞれの圧力センサ26、32が提供される。各圧力センサ26、32は、それぞれの圧力信号をコントローラ56に提供するために、それぞれの接続27、33を介してコントローラ56に結合されている(上記のように、図面においては接続27、33はそれぞれの圧力センサ26、32とは別個のものとして示されているにもかかわらず、任意の適切な形態の接続が提供されてもよい)。代替的にまたは付加的に、それぞれの放出マニホールドまたは出口通路と連通し、圧力差信号をコントローラ56に提供するためにコントローラ56に接続されている圧力差センサが提供されてもよい。
【0512】
第1の放出弁34および/または第2の放出弁46は、制御弁であってもよい。たとえば、第1の放出弁34および/または第2の放出弁46は、電解槽100内の目標動作条件(たとえば、それぞれの多孔質壁における、および/または、電解槽の入口および出口チャンバ全体を通じた電解質液の超臨界圧条件)に対応してそれぞれの弁の上流の目標圧力を維持するように構成されている制御可能圧力維持弁であってもよい。第1の放出弁34および/または第2の放出弁46は、流れをより低い圧力、たとえば、それぞれの反応生成物が気体であり、残留電解質液が液体である圧力に拡大することができ、それぞれの反応生成物を電解質液からより容易に分離することができる(たとえば、蓄積タンク内の相分離によって)。残留電解質液は、電解質液の供給源12へと再循環させることができる。
【0513】
任意選択で、電解設備は、それぞれの流体反応生成物を電解質液から分離するための、それぞれの放出弁34、46の下流のセパレータ36、48を備える。各セパレータ36、48は、再使用のために電解質液の供給源へと戻ることができる、セパレータからの放出電解質液の流れのためのそれぞれの戻りライン38、50を有する。各セパレータ36、48は、それぞれの流体反応生成物を放出するための出口ライン40、52をさらに備える。流体反応生成物は、それぞれのセパレータ内で気体形態であってもよく、出口ラインを通じて気体として放出されてもよい。任意選択で、監視装置は、後述するように、各々がそれぞれの信号をコントローラ56に出力する、それぞれの流体反応生成物の流速を監視するための流量計42、54を、それぞれの出口ライン上に備える。
【0514】
図11に示すように、電解槽設備10の動作を制御するために流れ制御装置および監視装置に結合されているコントローラ56が存在する。監視装置は、電解質液の入口温度を監視するための温度センサ22、それぞれ電解槽100の第1の出口および第2の出口内のまたはそこから放出される流体の圧力を監視するための圧力センサ26、32(または圧力差センサ)、ならびに、反応生成物の出口流を監視するための出口ライン40、52上の流量計42、54を備えることができる。流れ制御装置は、監視装置を備えることができる。
【0515】
流れ制御装置は、電解槽内の熱力学的条件および/または流速条件などの、電解槽内の条件を決定する(すなわち、影響を及ぼすかまたは影響を与える)1つまたは複数の構成要素を含む。したがって、流れ制御装置(または機器)は、加熱器16、圧縮器14、第1の放出弁34および第2の放出弁46、ならびに、第1の電極および第2の電極を通る電流および/またはそれらの間に印加される電圧を制御するように構成されているセルコントローラを備えてもよい。コントローラ56は、セルコントローラを含んでもよい。
【0516】
熱力学的条件は、電解槽内の流体の圧力および温度、たとえば、電解槽に提供される電解質液の圧力および温度、または、電解槽内でそれらが保持されているそれぞれのチャンバ内の第1の反応生成物および/または第2の反応生成物と組み合わされた電解質液の圧力および温度に関する。この例において、熱力学的条件は、電解質液が圧縮器14において加圧される圧力、電解質液が加熱器16において加熱される温度、電解槽の多孔質壁における電解質液の任意の加熱(たとえば、セルコントローラによって制御されるような)、ならびに、任意選択で、第1の放出弁34および第2の放出弁46の動作(たとえば、弁が弁の上流で維持するように構成されている目標背圧)の関数である。
【0517】
流速条件は、電解槽に提供される電解質液の流速、および、任意選択で、入口チャンバからそれぞれの多孔質壁を介してそのまたは各出口チャンバへと通過する電解質液の分岐流のそのまたは各流速に関する。
【0518】
定常状態条件において、電解槽への流速は、それぞれの第1の出口および第2の出口から出る第1の流速および第2の流速の合計と等価である。各出口流は、電解槽の入口チャンバと第1の放出弁34および第2の放出弁46のそれぞれとの間の圧力差(たとえば、圧縮器14が電解質液を圧縮する圧力)、ならびに、それぞれの流路(たとえば、主に任意の関連付けられる多孔質壁、ただし、曲げおよび流量制約などの、圧力降下を生じ得る流路の任意の他の特徴も)に沿った任意の流れ抵抗に依存し得る。
【0519】
電解反応を制御する例示的な方法は、例としてのみ、図11の電解設備10を参照して、および、図12の流れ図を参照して、下記に説明される。
【0520】
図12は、それぞれ第1の流体反応生成物と電解質液との混合物、および、第2の流体反応生成物と電解質液との混合物を含む出口流と関連付けられるそのまたは各放出弁34、46を制御する方法の流れ図である。
【0521】
ブロック1202は、コントローラ56において、監視装置の関連付けられるセンサから受信される監視データを表す。
【0522】
ブロック1204において、監視データが、コントローラにおいて、監視装置の関連付けられるセンサから受信される。たとえば、データは、連続的に、定期的に、要求に応じて、またはそれぞれのセンサの主導で(たとえば、センサが所定の条件を検出したときに)受信されてもよい。
【0523】
ブロック1206において、コントローラは、監視データに関係する目標基準を評価する。
【0524】
ブロック1208において、コントローラは、ブロック1206における目標基準の評価に基づいて、電解設備の動作を制御するための、放出弁34、46のうちの1つまたは複数に関する設定を決定する。本方法は、ブロック1204に戻ることによって連続的に繰り返す。
【0525】
方法1200の第1の例において、監視データは、電解槽のそれぞれの第1の出口および第2の出口(すなわち、電解槽のそれぞれのチャンバの出口)から、または、圧力差センサから放出される流体の圧力を監視するように構成されている圧力センサ26、32から受信される上流圧力データである。
【0526】
目標基準の評価は、(たとえば、第1の出口チャンバ130と関連付けられる)第1の出口132を通じて放出される流体の圧力と、(たとえば、第2の出口チャンバ140と関連付けられる)第2の出口142を通じて放出される流体の圧力との間の差を決定すること、または、それぞれの出口から放出される流体の圧力を、流体の圧力の目標範囲と比較することを含んでもよい。
【0527】
ブロック1208において、放出弁のうちの1つまたは複数に関する設定が、目標基準の評価に基づいて決定され得る。たとえば、圧力差の所定の目標範囲が存在してもよく、設定は、圧力差を目標範囲に維持するかまたは戻すように決定されてもよい。出口の間に圧力差がない状態で電解槽が操作されるとき、目標範囲は、ゼロ圧力差を含んでもよい。出口の間に圧力差がある状態で電解槽が操作されるとき、目標範囲は、ゼロ圧力差を含まなくてもよい。目標範囲(または各圧力のそれぞれの目標範囲)は、たとえば、出口間の流速の適切な平衡がとられた、電解設備の満足のいく性能に対応する圧力差を決定するための電解設備の作動に基づいて、予め定められてもよい。したがって、圧力または圧力差をそれぞれの目標範囲内に維持する結果として、第1の出口から出る流れと第2の出口から出る流れとの間の目標流速比が維持され得る。
【0528】
方法1200の第2の例において、監視データは、たとえば、(それぞれの放出ライン25、31に沿ってなど、それぞれの放出弁34、46の上流か、または、それぞれの放出弁の下流かにかかわらず)電解槽のそれぞれの出口132、142から放出される流体反応生成物および電解質液の流れの混合物の流速を監視するように構成されている流量計から受信されるものとしての、流速データであってもよい。流速データは、たとえば、放出弁34、46の下流のセパレータ36、48からそれぞれの流体反応生成物を放出するための出口ライン上に設置されている流量計42、54からの、電解質液から分離されるそれぞれの流体反応生成物の成分流速を監視するように構成されている流量計から受信されてもよい。
【0529】
目標基準は、出口のうちの1つもしくは各々から出る目標流速の維持、または、第1の出口から出る流れと第2の出口から出る流れとの間の目標流速比の維持に対応し得る。目標基準の評価は、関連付けられる流速データを所定の目標と比較すること、または、出口から出るそれぞれの流速の比を決定することを含んでもよい。コントローラは、流速または流速比を目標範囲内の維持するための一方または両方の弁の制御設定を決定することができる。
【0530】
方法1200の第3の例において、監視データは、それぞれの出口から出る流体の混合物の組成に関係する組成データであってもよい。たとえば、組成データは、たとえば、電解槽のそれぞれのチャンバから放出される流体混合物中のそれぞれの流体反応生成物の質量分率またはモル分率を決定するために、セパレータから出る成分流体反応生成物の流速と、それぞれの出口から放出される流体の総流速とを比較することによって決定されてもよい。代替的に、組成データは、電解質液がそれぞれの出口から放出された流速に関係なく、それぞれの流体反応生成物の流速として決定されてもよい。
【0531】
目標基準は、それぞれの出口から出る目標組成、たとえば、電解槽の満足のいく性能に対応すると考えられ得る流体反応生成物の目標質量分率もしくはモル分率、または目標流速の維持に対応してもよい。コントローラは、組成データに基づいてそれぞれの放出弁の設定を決定することができる。たとえば、反応生成物の質量分率またはモル分率が目標範囲を下回ると判定される場合、これは、それぞれのチャンバを通じて流れる電解質液が多すぎることに対応し得る。したがって、コントローラは、放出弁を通る流れをさらに制約し、それによって、それぞれの流体反応生成物の質量分率またはモル分率を上昇させ得るように、放出弁の設定を調整することを決定することができる。
【0532】
代替的に、目標基準は、電解槽のそれぞれの出口から出るそれぞれの流体反応生成物の流速の目標比の維持に対応してもよい。たとえば、例として第1の反応生成物の流速が第2の反応生成物の流速に対する所望の比の目標範囲内にあることによる、電解槽の満足のいく性能に対応する比の目標範囲が存在してもよい。所望の比は、それぞれの電解反応の持続可能な性能(すなわち、それぞれの半反応の平衡がとれている)に対応してもよい。
【0533】
上述したような流速は、質量流速であってもよい。流量計が、流体の体積流速を監視することができ、流量計またはコントローラに、質量流速に対応するパラメータを判定するためのそれぞれの流体の密度に対応する情報が提供され得る。
【0534】
方法の第4の例において、監視データは、反応チャンバのそれぞれの出口から出る流体流中の汚染流体反応生成物の量に関係する組成データであってもよい。たとえば、上述したように、第1の流体反応生成物は、電解槽の第1の出口を通じた放出のために第1の出口チャンバ内に保持されることになり、一方、第2の流体反応生成物は、電解槽の第2の出口を通じた放出のために第2の出口チャンバ内に保持されることになる。第1の出口を通じて第2の流体反応生成物が放出されることは、それぞれの出口流中に汚染流体反応生成物が存在することに対応し、逆も同様である。監視データは、たとえば、(たとえば、上述したようなそれぞれの流量計42、54のロケーションにある)それぞれの流体反応生成物のセパレータの下流の、ガスの組成を監視するように構成されている成分ガスセンサから受信されてもよい。任意の適切なセンサが選択されてもよいが、一例としてのみ、フローストリーム内の温度プローブを目標レベルに維持するために、監視されているエネルギー量(たとえば、電力)に基づいてフローストリームの組成を判定するように構成されている熱伝導センサが使用されてもよい。放出されると期待されているそれぞれの流体反応生成物(たとえば、水素)、および、汚染流体反応生成物(たとえば、酸素)に基づいて較正されるとき、たとえば、流体反応生成物のそれぞれの比熱容量に基づいて、センサ、または、センサが結合されているコントローラは、フローストリームがいつ一定量の汚染流体反応生成物を含むかを判定するように構成されている。たとえば、それは、その量が閾値を上回ることを示すように較正されてもよく、または、それぞれの流体反応生成物(たとえば、水素および酸素)の質量分率を推定もしくは算出するように構成されてもよい。
【0535】
汚染流体反応生成物の存在は、汚染流体反応生成物を含む出口流が放出される、電解槽のそれぞれのチャンバに向かう流れのバイアスを示すことができる。したがって、コントローラは、バイアスを減少させるかまたは制御するように、放出弁のうちの1つまたは複数の設定を調整することを決定することができる。たとえば、第1の放出弁34と関連付けられる出口流中で過剰な量の汚染流体反応生成物が判定された場合、コントローラは、第1の放出弁34を通じた流速を減少させるように(たとえば、弁を部分的に閉じるか、または、より高い背圧が維持されるように設定することによって)第1の放出弁34を制御することができる。
【0536】
上記の例は、電解槽の目標動作パラメータを維持するためのリアクティブ制御方法を論じているが、そのような制御方法は、任意選択であってもよく、電解槽は、電解反応がそのような介入なしに進行するように構成されてもよい。
実施例の電解槽および試験1
電解質液の供給源12、圧縮器14、加熱器16、入口/監視マニホールド20に至る入口導管18、電解槽100、第1の放出マニホールド24、および第2の放出マニホールド30を含む試験電解設備を、図11に概略的に示すように配置構成した。
【0537】
電解槽100を、図1aに概略的に示すように環状電解槽の形態で構築した。第1の(内側)多孔質壁110および第2の(外側)多孔質壁120を各々、第1の(内側)多孔質壁110がカソードとして機能し、第2の(外側)多孔質壁120がアノードとして機能するようにバイアスされた電源に接続した。
【0538】
第1の多孔質壁を、インコネル(登録商標)合金625(鉄、モリブデン、ニオブおよび他の合金化元素も含有するニッケル・クロム合金)から形成される第1のチューブ内へとチャネルをレーザ穿孔することによって作成した。第1のチューブは、0.25インチ(6.35mm)の外径、0.889mmのチューブ壁厚および215mmの長手方向長さを有するものとした。レーザ穿孔の前に、第1のチューブの外面および内面を、化学気相成長(CVD)によってアルミナ(Al)でコーティングすることによって不動態化した。アルミナのコーティングは、重量推定によって判定されるものとして、約1μmの厚さとした。チャネルは、500Hzにおいて動作するミリ秒レーザを使用して(アルミナコーティングを含む)第1のチューブ壁の全厚を貫通して穿孔した。チューブの長手方向軸が垂直方向に位置整合されたときに、チャネルを水平方向に対して20°(すなわち、長手方向軸から70°)傾斜させた。チャネルを複数の行において穿孔して、図13に示すようなパターンを形成した。パターンを、0.2mmのチャネル間オフセット、0.2mmの行間オフセット(結果、1mm当たり5つの行が存在した)、および、チューブの周当たり99個の孔の周方向チャネル数密度によって特徴付けた。各チャネルを、30個のレーザパルスを使用して形成し、0.2Jのエネルギーを必要とした。チャネルの寸法を、X線コンピュータ断層撮影(XCT)および光学顕微鏡法ならびに結果もたらされる画像の分析を使用して評価した。その結果は、図14図15(a)および図15(b)に示す。チャネルは、チャネルの入口および出口(すなわち、チューブの外側および内側の外面)において約60μm~約80μmの直径を有することが分かった。図15(a)は、XCTを使用して約40μmの内部半径を有することが分かったチャネルを示す。図15(b)は、光学顕微鏡法によって約69.6μm、約74.6μmおよび約65.4μmの入口直径を有することが分かったチャネルを示す。
【0539】
第2の多孔質壁120を、インコネル(登録商標)合金625から形成される第2のチューブ内へとチャネルをレーザ穿孔することによって作成した。第2のチューブは、0.375インチ(9.525mm)の外径、0.889mmのチューブ壁厚および142mmの長手方向長さを有するものとした。レーザ穿孔の前に、第2のチューブの外面および内面を、化学気相成長(CVD)によってアルミナ(Al)でコーティングすることによって不動態化した。アルミナのコーティングは、重量推定によって判定されるものとして、約1μmの厚さとした。チャネルは、500Hzにおいて動作するミリ秒レーザを使用して(アルミナコーティングを含む)第2のチューブ壁の全厚を貫通して穿孔した。チューブの長手方向軸が垂直方向に位置整合されたときに、チャネルを水平方向に対して20°(すなわち、長手方向に対して70°)傾斜させた。チャネルを複数の行において穿孔して、図13に示すようなパターンを形成した。パターンを、0.152mmのチャネル間オフセット、0.2mmの行間オフセット(結果、1mm当たり5つの行が存在した)、および、チューブの周当たり196個の孔の周方向チャネル数密度によって特徴付けた。各チャネルを、20個のレーザパルスを使用して形成し、0.18Jのエネルギーを必要とした。チャネルの寸法を、XCTおよび光学顕微鏡法ならびに結果もたらされる画像の分析を使用して評価した。チャネルは、チャネルの入口および出口(すなわち、チューブの内側および外側の外面)において約60μm~約80μmの直径を有することが分かった。
【0540】
第1の多孔質壁110および第2の多孔質壁120を、約0.692mmの分離間隙をおいて図1aに示すように配置した。第1の壁および第2の壁を、19.05mmの直径を有する外側管状ハウジングによって包囲した。第1の内側出口チャンバ130を、第1の多孔質壁110によって包囲された内部空間として画定した。第2の外側出口チャンバ140を、第2の多孔質壁120と外側管状ハウジングとの間の空間として画定した。入口チャンバ102を、第1の多孔質壁110と第2の多孔質壁120との間の空間として画定した。組み立て構成において、放射状流およびイオン移動について入口チャンバに暴露される電極の有効長が等しく、約40mmになるように、第1のチューブおよび第2のチューブを設置した。
【0541】
電解槽を、水中の水酸化リチウム(LiOH)の0.5モル(1.2重量%)溶液から成る電解質を使用して動作させた。電解質は、98%試薬グレード水酸化リチウム(Sigma-Aldrichから入手可能)を脱イオン水を用いて希釈して所望の濃度を得ることによって調製した。
【0542】
加熱器および圧縮器を、システムを230bar(23MPa)の圧力および385℃の温度に保持するように動作させた。
【0543】
電解槽を通じた電解質の流速は、10ml/分になるように制御した。
【0544】
脱イオン水を使用したシステムの初期加圧および加熱の後、動作圧力および温度に達したのを受けて、電解槽を通じて電解質を圧送した。電源上で電圧降下が観測されるまで電解槽セルを監視し、次いで、セルに供給される電流を、1.56Vにおける500mAの動作条件(水素のより低い加熱値の80%に対応する)に達するまで、漸進的に増大させた。次いで、電解質の電解を15分にわたって実行した。
【0545】
電解中に第1の出口チャンバおよび第2の出口チャンバから第1の放出マニホールドおよび第2の放出マニホールド内へと出力されるガスを、脱イオン水で充填した対応するガラス容器内で収集した(生成物ガスは、収集されたときに容器内の水を変位させる)。ガラス容器内に収集されたガスを、担体ガスとしてアルゴンを供給されるShincarbon STカラム(日本の信和化工株式会社から入手可能)を備えたAgilent 6890ガスクロマトグラフ(アメリカのAgilent Technologies, Inc.から入手可能)を使用したガスクロマトグラフィによって分析した。ガスは、Agilent 6890ガスクロマトグラフに内蔵されている熱伝導度検出器を使用して検出した。ガスクロマトグラフィ作動は、35℃において等温的に実施した。100μLのガス試料を、一度にカラムに注入した。様々な量の酸素および水素をガスクロマトグラフ内に注入し、結果を分析することによって、較正プロットも生成した。
【0546】
電解槽の作動から得られたガスの代表的なガスクロマトグラフィ結果を、図16および図17に示す。図16(a)は、(左から右に向かって)水素、酸素および窒素内容物に関係する3つのピークを特徴付ける、カソードから得られるガス(カソードガス)の代表的なクロマトグラムである。図16(b)は、同じく(左から右に向かって)水素、酸素および窒素内容物に関係する3つのピークを特徴付ける、アノードから得られるガス(アノードガス)の代表的なクロマトグラムである。図17(a)は、酸素較正ガスの代表的なクロマトグラムである。図17(b)は、水素および窒素較正ガスの代表的なクロマトグラムである。
【0547】
ガスクロマトグラフィによって得られるものとしての、カソードガスおよびアノードガスの組成を、表7に与える。これらの結果は、3つの異なる注入試料にわたる測定値を平均することによって得た。測定値の対応する標準偏差も与える。
【0548】
【表7】
【0549】
表7の値は、各試料中に存在する窒素の量を定量化し、空気中の窒素と酸素との比に従って当量の酸素を差し引くことによって、ガス貯蔵容器内への空気侵入を計上するように補正されている。たとえば、空気中のN:Oの比が3.7であると仮定すると、空気汚染から生じる試料中の酸素の体積は、試料中の窒素の測定体積を3.7で除算した値として算出することができる。
試験2
使用前に電解槽の第1の(内側)多孔質壁110および第2の(外側)多孔質壁120内のレーザ穿孔チャネルに多孔質Ni系電解触媒材料を充填したことを除き、テスト電解設備をテスト1にあるように構成した。
【0550】
第1の(内側)多孔質壁110の充填は、チューブの内側に真空を引き、ニッケル系導電性インク(製品名116-25でCreative Materials Inc(米国マサチューセッツ州所在)から入手可能)をチューブの外側に付着させ、真空がインクをチャネル内に引き込むことを可能にすることによって達成した。第2の(外側)多孔質壁120の充填は、チューブの外側に真空を引き、ニッケル系導電性インク(製品名116-25でCreative Materials Inc(米国マサチューセッツ州所在)から入手可能)をチューブの内側を通じて押し進め、真空がインクをチャネル内に引き込むことを可能にすることによって達成した。両方の事例において、余分なインクを乾布を使用して除去し、その後、多孔質壁を空気中で10分間にわたって乾燥させ、その後、少量のIPAを用いて洗浄した。その後、チューブを200℃のオーブン内で2時間にわたって完全に乾燥した。その後、結合剤材料を焼成段階中にインクから除去し、以て、材料を300℃において6時間にわたって熱分解し、金属インク粒子のみを残した。最終的に、930℃を目標温度とする高温加熱および冷却サイクルを使用して粒子を部分的にともに焼結した。
【0551】
電解槽を、水中の水酸化リチウムの0.5モル(1.2重量%)溶液から成る電解質を使用して動作させた。電解質は、98%試薬グレード水酸化リチウム(Sigma-Aldrichから入手可能)を脱イオン水を用いて希釈して所望の濃度を得ることによって調製した。
【0552】
電解槽の2回のテスト作動を行った。電解槽の超臨界作動において、加熱器および圧縮器を、入口電解質液を230bar(23MPa)の圧力および385℃の温度に保持し、したがって超臨界条件を達成するように動作させた。電解槽の亜臨界作動において、加熱器および圧縮器を、入口電解質液を228bar(22.8MPa)の圧力および350℃~360℃の温度に保持し、したがって亜臨界条件を達成するように動作させた。
【0553】
電解槽を通じた電解質の流速は、各テスト作動について10ml/分になるように制御した。
【0554】
脱イオン水を使用したシステムの初期加圧および加熱の後、動作圧力および温度に達したのを受けて、電解槽を通じて電解質を圧送した。電源上で電圧降下が観測されるまで電解槽セルを監視し、次いで、セルに供給される電流を、1.31~1.37Vにおける2A(超臨界テスト作動の)または1.6Vにおける3.8A(亜臨界テスト作動の)の動作条件に達するまで、漸進的に増大させた。次いで、電解質の電解を8時間にわたって実行した。
【0555】
第1の出口チャンバおよび第2の出口チャンバから第1の放出マニホールドおよび第2の放出マニホールド内へと出力されるガスを、脱イオン水で充填した対応するガラス容器内で収集した(生成物ガスは、収集されたときに容器内の水を変位させる)。ガラス容器内に収集されたガスを、担体ガスとしてアルゴンを供給されるShincarbon STカラム(日本の信和化工株式会社から入手可能)を備えたAgilent 6890ガスクロマトグラフを使用したガスクロマトグラフィによって分析した。ガスは、Agilent 6890ガスクロマトグラフに内蔵されている熱伝導度検出器を使用して検出した。ガスクロマトグラフィ作動は、35℃において等温的に実施した。100μLのガス試料を、一度にカラムに注入した。様々な量の酸素および水素をガスクロマトグラフ内に注入し、結果を分析することによって、較正プロットも生成した。
【0556】
ガスクロマトグラフィによって得られるものとしての、カソードガスおよびアノードガスの組成を、表8に与える。これらの結果は、3つの異なる注入試料にわたる測定値を平均することによって得た。
【0557】
【表8】
【0558】
表8の値は、各試料中に存在する窒素の量を定量化し、空気中の窒素と酸素との比に従って当量の酸素を差し引くことによって、ガス貯蔵容器内への空気侵入を計上するように補正されている。たとえば、空気中のN:Oの比が3.7であると仮定すると、空気汚染から生じる試料中の酸素の体積は、試料中の窒素の測定体積を3.7で除算した値として算出することができる。
さらなるシミュレーション事例
下記の表9は、表7および図13図17を参照して上述した者を含む、例示的な製造された電解槽およびテストに対応するようにシミュレーション事例のセットのシミュレーション設定および結果を定義する。
【0559】
シミュレーションは、図7および表3を参照して上述した流動シミュレーションモデルを使用して実行され、シミュレーションのすべての幾何形状およびパラメータ設定は、下記に別途指定しない限り、上記の記載に等しい。
【0560】
シミュレーションセットは、2つのシミュレーション事例S5R1-BおよびS5R2-Cを含む。シミュレーション事例S5R1-Bについて、上述したような構成Bに対応する開放傾斜チャネルを有する多孔質壁が定義される(たとえば、上述したような図1cの第2の例または図2bの第5の例に対応する)。シミュレーション事例S5R2-Cについて、上述したような構成Cに対応する傾斜不連続多孔質構造を有するように、多孔質壁が定義される(たとえば、上述したような図1dの第3の例または図2cの第6の例に対応する)。
【0561】
上述したように、シミュレーション事例は各々、23MPaの圧力および400°Cの基準温度の条件をシミュレートするように定義される。
【0562】
シミュレーション事例は各々、1Aの多孔質壁を通る電流をシミュレートするように定義され、これは、上述した実験例に関する全体的な流れバイアスおよびクロスオーバ効果の比較に適すると考えられる。
【0563】
【表9】
【0564】
S5R1-Bの定義は、図12図16を参照して上述したように製造およびテストされた例示的な電解槽に対応し、実験テスト結果が表7に報告されている。
【0565】
シミュレーション事例S5R1-Bの結果は、流動シミュレーションモデルが、実験テストによって観察された流れパターンおよび結果を反映することを実証している。特に、流動シミュレーションモデルは、多孔質壁を通る流れをシミュレートしているように見え、結果、電解反応生成物の結果としてのクロスオーバが比較されるとき、それらは流れバイアスの同じ方向を表す。実験テスト結果は、内側出口への酸素のクロスオーバ(内側流出部事例において1.54%±0.94のモル濃度)と比較して大幅により高い水素のクロスオーバ(外側流出ガス中の57%±0.17のモル濃度)を示す。同じ傾向がシミュレーション事例S5R1-Bにおいて反映され、シミュレーションと実験の両方が、酸素クロスオーバよりも1桁大きい水素クロスオーバ(モル%)を予測している。これは、流動シミュレーションモデルによってモデル化される流れパターンが実験テストにおいて生じるものを表すことを示している。
多孔度
3つのサンプル多孔質壁を、Inconel(登録商標)合金600から形成される3つの中空チューブ内へとチャネルをレーザ穿孔することによって作成した。これらのチューブは各々、0.375インチ(9.525mm)の外径、0.9mmのチューブ壁厚および3cmの長手方向長さを有するものとした。チャネルは、約70μmのチャネル直径を生成するように構成されている、500Hzにおいて動作するミリ秒レーザを使用して各チューブの全厚を貫通して穿孔した。各チューブの長手方向軸が垂直方向に位置整合されたときに、チャネルを水平方向に対して20°(すなわち、長手方向軸から70°)傾斜させた。チャネルは、周当たり150個のチャネルの密度で、各チューブの1cmの長さ区画にわたって穿孔した。
【0566】
3つのサンプルの多孔度は、AutoPore Vデバイス(米国のMicromeritics Instrument Corporationから入手可能)を使用してASTM規格D4284およびD6761に従って水銀ポロシメトリを使用して決定することができる。各サンプルについて水銀ポロシメトリによって得られた測定メジアン孔径、バルク密度、骨格密度、透過率、代表長さおよび屈曲度を表10に示す。
【0567】
【表10】
【0568】
サンプル1および2は、サンプル3よりも大きいメジアン孔径および透過率を呈したが、3つすべてのサンプルの透過率が相対的に高かった。3つすべてのサンプルが、相対的に低い屈曲度および同様の代表長さ値を呈した。
【0569】
各サンプルに対する水銀ポロシメトリによって得られる累積侵入量対細孔径のプロットが図18(a)に示されている。各サンプルに対する水銀ポロシメトリによって得られる累積体積対細孔径のプロットが図18(b)に示されている。各サンプルに対する水銀ポロシメトリによって得られるlog微分侵入量対細孔径のプロットが図18(c)に示されている。
【0570】
3つすべてのサンプルが、約50μmの細孔径においてlog微分侵入量対細孔径のプロット内に大きいピークを示した。しかしながら、サンプル1および2が細孔径の同様の分布を停止、相対的に多数の細孔が100μm~200μmの直径を有した一方、サンプル3は、サンプル1および2よりも小さい細孔(10μm~20μm)を表示し、100μm~200μmの直径を有する細孔は相対的に少数であった。本発明者らは、500μmを上回るデータ内のピークが多孔度ではなく表面粗さを示すと仮定する。
【0571】
2つのさらなるサンプル多孔質壁サンプル4および5を、Inconel(登録商標)合金600から形成される2つの中空チューブ内へとチャネルをレーザ穿孔することによって作成した。これらのチューブは各々、0.375インチ(9.525mm)の外径、0.9mmのチューブ壁厚および5cmの長手方向長さを有するものとした。チャネルは、約70μmのチャネル直径を生成するように構成されている、500Hzにおいて動作するミリ秒レーザを使用して各チューブの全厚を貫通して穿孔した。各チューブの長手方向軸が垂直方向に位置整合されたときに、チャネルを水平方向に対して20°(すなわち、長手方向軸から70°)傾斜させた。チャネルは、周当たり150個のチャネルの密度で、各チューブの1cmの長さ区画にわたって穿孔した。
【0572】
サンプル4および5に、製品名116-25のCreative Materials Inc(米国マサチューセッツ州所在)から入手可能な導電性インクを充填した。サンプル4に、より高いポリマー結合剤含有量を有するバージョンのインクを充填し、サンプル5に、より低いポリマー結合剤含有量を有するバージョンのインクを充填した。
【0573】
各チューブの内側に真空を引き、インク充填物を各チューブの外側に付着させ、真空がインクをチャネル内に引き込むことを可能にすることによって、サンプル4および5にそれぞれのインクを充填した。その後、乾布を使用して余分なインクを除去した。サンプルは、空気中で10分間にわたって乾燥させ、その後、少量のIPAを用いて洗浄した。その後、サンプルを200℃のオーブン内で2時間にわたって完全に乾燥した。その後、結合剤材料を焼成段階中に除去し、以て、材料を300℃において6時間にわたって熱分解し、金属インク粒子のみを残した。最終的に、930℃を目標温度とする高温加熱および冷却サイクルを使用して粒子を部分的にともに焼結した。
【0574】
サンプルの中実(すなわち、非レーザ穿孔)端を切断および研削によって除去した。その後、両方のサンプルをともにAutoPore Vデバイスの内側に配置し、水銀ポロシメトリ結果を、両方のサンプル4および5の合算として得た。
【0575】
サンプル4および5の合算に対する水銀ポロシメトリによって得られる累積侵入量対細孔径のプロットが、サンプル1、2および3と比較して図18(d)に示されている。累積体積対細孔径の対応するプロットが図18(e)に示されている。log微分侵入量対細孔径の対応するプロットが図18(f)に示されている。
【0576】
これらのプロットから、サンプル4および5が5μm~15μm周りおよび100μm周りにグループ化された細孔径の二峰性分布を呈したことが明らかである。100μmにおけるピークは、概してサンプル1、2および3のピークと位置整合しており、それがチャネル「マクロ多孔度」、すなわち、未充填または部分充填チャネルの存在に対応することを示唆している。5μm~15μm周りのピークは、充填済みチャネル「微細多孔度」、すなわち、充填され、焼結されたチャネルからの寄与に対応すると考えられる。
【0577】
サンプル4および5の合算について水銀ポロシメトリによって得られた測定メジアン孔径、バルク密度、骨格密度、透過率、代表長さおよび屈曲度を表11に示しており、5μm~15μmピーク(「微細多孔度」)および100μmピーク(「マクロ多孔度」)に対応する曲線の部分から結果を別個に得て、その後、未充填サンプル1、2および3ならびにまたそれらの平均と比較して、平均化もした。
【0578】
【表11】
【0579】
データから、焼結ニッケル系インクを添加することによって、多数の1~20μm径の細孔がチャネル構造に導入されたことが分かる。これによって、透過率および代表長さが大幅に低減したが、屈曲度は増大した。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図4d
図5
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図8d
図8e
図9a
図9b
図9c
図9d
図10a
図10b
図10c
図10d
図10e
図10f
図10g
図10h
図11
図12
図13
図14
図15(a)】
図15(b)】
図16(a)】
図16(b)】
図17(a)】
図17(b)】
図18(a)】
図18(b)】
図18(c)】
図18(d)】
図18(e)】
図18(f)】
図19
【国際調査報告】