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特表2025-532080環境にやさしいMOF、特に柔軟なMOFを合成する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-09-29
(54)【発明の名称】環境にやさしいMOF、特に柔軟なMOFを合成する方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/06 20060101AFI20250919BHJP
   C07F 15/02 20060101ALI20250919BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20250919BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20250919BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20250919BHJP
【FI】
C07F5/06 D
C07F15/02
B01J20/30
B01J20/22 A
B01J20/26 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2025517005
(86)(22)【出願日】2023-09-21
(85)【翻訳文提出日】2025-05-16
(86)【国際出願番号】 FR2023051447
(87)【国際公開番号】W WO2024062200
(87)【国際公開日】2024-03-28
(31)【優先権主張番号】2209594
(32)【優先日】2022-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501089863
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ サイアンティフィク
(71)【出願人】
【識別番号】512073725
【氏名又は名称】エコール ノルマル シュペリウール
(71)【出願人】
【識別番号】518364366
【氏名又は名称】エコール シュペリュール ドゥ フィシック エ ドゥ シミー アンダストリエル ドゥ ラ ビル ドゥ パリ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ジョルジュ ムシャハム
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン セーレ
(72)【発明者】
【氏名】ファリド ヌール
(72)【発明者】
【氏名】シャマパダ ナンディ
【テーマコード(参考)】
4G066
4H048
4H050
【Fターム(参考)】
4G066AB05B
4G066AB06B
4G066AB07B
4G066AB09B
4G066AB13B
4G066AB15B
4G066AB21B
4G066AB24B
4G066AC11B
4G066CA01
4G066CA29
4G066CA35
4G066CA51
4G066DA01
4G066FA03
4G066FA11
4G066FA21
4G066FA34
4H048AA02
4H048AB40
4H048AB78
4H048AB80
4H048AC47
4H048AD15
4H048AD17
4H048BB31
4H048BC10
4H048BC11
4H048BC19
4H048BD60
4H048BE63
4H048VA12
4H048VA20
4H048VA30
4H048VA80
4H048VB10
4H050AA02
4H050AA03
4H050AB40
4H050AB78
4H050AB80
4H050AD15
4H050AD17
4H050BB31
4H050BC10
4H050BC11
4H050BC19
4H050BD60
4H050BE62
(57)【要約】
本発明は、MOFの製造方法に関し、ここで、MOFは、複数の金属中心に結合した多座キレートリガンドによって接続された無機物からなる2又は3次元の多孔質ネットワークを含む構造化金属有機化合物であり、前記多座キレートリガンドは、特に、少なくとも1つのカルボン酸官能基、好ましくは、ベンジルもしくはナフチルジ-、トリ-もしくはテトラカルボキシレートを含むC-C24複素芳香族リガンド及び芳香族リガンド、並びに-NH、-OH、-CH、-OCH、-NO、-CF、-COOH、-SOH、-SHから選ばれた基を少なくとも1つの芳香族環上に任意選択的に有する前記芳香族又は複素芳香族リガンドを含む群から選ばれる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MOFの製造方法であって、MOFが、複数の金属中心に結合した多座キレートリガンドによって接続された無機物からなる2又は3次元の多孔質ネットワークを含む構造化金属有機化合物であり、前記多座キレートリガンドが、
- 不飽和のない直鎖アルキル鎖を含むリガンド及び少なくとも1つの不飽和を含む炭素鎖を含むリガンドから選ばれた少なくとも1つのカルボン酸官能基を含むC-C24脂肪族リガンド;
- 少なくとも1つのカルボン酸官能基、好ましくは、ベンジルもしくはナフチルジ-、トリ-もしくはテトラカルボキシレートを含むC-C24複素芳香族リガンド及び芳香族リガンド、並びに-NH、-OH、-CH、-OCH、-NO、-CF、-COOH、-SOH、-SHから選ばれた基を少なくとも1つの芳香族環上に任意選択的に有する前記芳香族又は複素芳香族リガンド;
を含む群から選択され、
前記方法は、以下の工程:
a)多座キレートリガンドの分子、及び少なくとも1種の金属塩、好ましくは金属硫酸塩及び金属塩素酸塩から選ばれた少なくとも1種の金属塩、好ましくは硫酸アルミニウム塩を水中に分散させる工程;
b)任意選択的に、a)で得られた分散体を周囲圧力で加熱し、分散体を50~150℃の温度で10分間~96時間の時間維持する工程;
c)周囲温度に戻し、濾過し、得られた固体を水で洗浄する工程;
d)c)で得られた固体を乾燥させる工程;
e)150℃以下の温度で、DMSOを含む溶液中に、d)で得られた固体を30分間~15時間の時間をかけて撹拌下で分散させる工程;
を含む、MOFの製造方法。
【請求項2】
前記金属中心が、Cu、Zn、Ca、Mg、Ti、Zr、In、Ga、V、Cr、Mn、Fe及びAlから選ばれた少なくとも1種の金属を含み、好ましくは、前記金属は、Fe、Al、Cr及びVの少なくとも1種の金属イオンから選ばれた金属イオンである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
本発明の方法に従って製造されるMOFが、MIL-53、MIL-68、MIL-69、MIL-101、MIP-206及びDUT-7から選ばれる、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記MOFが、Cr、Al、Fe、V、Ga及びInから選ばれた金属の酸化状態+3の金属イオンを含むMIL-53の部類から選ばれ、前記芳香族リガンドがベンゼン-1,4-ジカルボン酸又はその誘導体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ベンゼン-1,4-ジカルボン酸誘導体が、-NH、-OH及び-NOから選ばれた少なくとも1つの基が芳香族環に置換したベンゼン-1,4-ジカルボン酸である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
工程a)において使用される前記金属硫酸塩がAl(SO・16HOであり、工程a)において、好ましくは尿素が分散体に加えられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
工程a)において使用される前記金属塩素酸塩がFeCl・6HOである、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
工程b)が8時間及び48時間維持され、工程e)において、機械的撹拌下で前記分散体が130℃以下の温度に1~4時間加熱される、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
DMFを使用せず、か焼工程を必要とせずに、請求項1~8のいずれか一項に記載のとおりの方法に従って製造された、MIL-53(Al)、MIL-53(Al)-NH、MIL-53(Al)-NO、MIL-53(Al)-OH、MIL-53(Fe)及びMIL-53(Cr)から選ばれたMIL-53の部類に属するMOF。
【請求項10】
請求項9に記載のMOFの使用であって、分離;COの捕捉;芳香族物質、脂肪族物質の分離;有機揮発性化合物の捕捉;水-アルコール精製;脱塩;電池用材料;アルコールの脱水素化などの触媒作用;小分子の吸着及び変換のため;例えば吸着補償による廃熱の管理;検出;並びに、圧力、電流、マイクロ波照射及び磁場などの刺激による分離又は制御された貯蔵/放出のための、MOFの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配位ポリマーの合成の分野に属し、より詳細には、これまでに開発されていない合成経路にしたがって、構造化金属有機骨格又はMOFとも呼ばれている、環境に優しい結晶化金属有機構造体の調製に関する。化合物は、自然環境へのその放出が許容可能である場合に環境に優しいと言われる。環境に優しいMOF化合物は、予測可能なもしくは識別可能な機能障害、又はその生態学的均衡の著しい変動を引き起こさず、その調製、使用及び使用済み廃棄物処理が、その物品に準じて環境に優しいMOFに対応する:“MOFs industrialization: a complete assessment of production costs, Maria Ines Severino, Effrosyni Gkaniatsou, Farid Nouar, Moises L. Pinto, Christian Serre, Faraday Discuss., 2021, 231, 326”.
【背景技術】
【0002】
以下の本文における書誌参照は、本文中で[]で示されており、参考文献の表に列挙されている。
【0003】
構造化金属有機骨格化合物の調製及び研究は、それ自体配位化学の分野であり、有毒ガスの捕捉[1~5]、ガス貯蔵[6~7]、分離技術[8~12]、小分子の触媒作用及び電気触媒作用[13~15]、熱再配分[16,17]、水の回収[18]、検出[19]、生物学的用途[20]などの明確に識別される用途がある。目標とする産業用途のほとんど、特に、ガス分離、ガス貯蔵、熱再配分及び水の回収において、目標とするMOFは、環境に優しい方法により非常に大規模で、かつ、最小限のエネルギーコストで製造されねばならない。
【0004】
しかしながら、工業的規模で大量に生産することが可能なMOFの数は、今日まで知られているMOF[21]の数と比べて、非常に限られたままである。しかしながら、現在までに確認されているMOFの大半の合成経路は、水熱法またはソルボサーマル法に頼るしかなく、この方法は最終的な製造コストに影響する大量のエネルギーを必要とする。これは、常圧での加熱などの単純な方法と相容れない一方で、水/アルコール混合溶媒などのグリーン溶媒の保存や使用を検討することは可能である[22]。
【0005】
様々な部類の既知のMOFの中で、3価金属カルボキシレートに基づくもの、特にAlを含むものは、それらの高い加水分解安定性に起因して、2価金属カルボキシレートに基づくMOF[23~26]と比べて、産業用途に最も有望であると考えられる。MIL-53(A1)、すなわちAlジカルボキシレートは、柔軟な骨格を有する、非常に安定な、基準のMOFである[27]。
【0006】
その高い構造的柔軟性及び優れた水安定性に関して、このMOFが、例えば、ガス分離[28~30]、ガス貯蔵[31]、触媒[32,33]、検出[34]、機械的エネルギー貯蔵[35]、非線形光学素子[36]などの広範囲の潜在的用途について検討された。このMOFの柔軟性を、機械的圧力などの外部刺激の存在下/不在下でCOの分離(吸着と、その後の再生)に利用できることも示された[37]。
【0007】
関心のある他の柔軟なMOFは、MIL-53構造の固体であるが、MOFの有機スペーサ上に官能基を有する以下のものである:MIL-53(Al)-NH及びMIL-53(Al)-OH[38~41]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの柔軟なMOFは、一般的に、大規模生産にあまり適合していない水熱又はソルボサーマル条件下で調製されなければならない。この欠点を克服するために、本発明の目的の1つは、市販の出発材料や、例えば水、アルコール又はそれらの混合物などのグリーン溶媒を使用して、例えば周囲圧力での加熱など、実施することが容易な技法を実施する革新的な方法を使用して、MOFを製造することにある。
【0009】
MIL-53(Al)の合成は、いくつかのプロトコルによるものが報告されているが、溶媒として水を使用して周囲温度で沈殿(環境に優しい1つの方法[43])させることによるかどうかにかかわらず、金属塩の使用は希釈溶液を必要とし、そのため、時空間収率(STY)が大幅に低下し、また、この方法は工業的な観点から非現実的なものとなっている。さらに、柔軟なアルミニウムベースのMOF、例えばMIL-53(Al)などを設計するために、Al3+源としてのAl(NO・6HOの使用は、著しい化学的リスク(ニトレート)を伴うため、工業的規模でのその製造はあまり明らかでなく、代替合成法を開発する真の必要性であることが示されている。
【0010】
Biswasらは、AlCl・6HOから開始していくつかの官能化MIL-53(Al)構造体を合成する方法を説明[44]したが、この方法は、水熱又はソルボサーマル経路を必要とし、産業上の要件に関する前述の欠点を有する。
【0011】
また、従来技術として、以下の合成を言及することができる:
- 溶媒としてグリーン溶媒、例えば水など、及び洗浄液として水-エタノール混合物を使用するが、高温及び高圧条件(水熱/ソルボサーマル経路)を必要とするMIL-53(Fe)及びMIL-53(Fe)-NHの合成[45,46];
- フッ化水素酸及びN,N-ジメチルホルムアミド(いわゆるDMF)の存在下でのソルボサーマル条件下での、MOF、より正確にはIn(OH)BDC 0.75BDCHの合成、DMFは、それ自体、毒性溶媒として知られている[47];及び
- 水と有機溶媒(DMFであるか、又はDMSOとしても知られているジメチルスルホキシドであってもよい)との混合物を使用し、洗浄液としてもっぱらDMFを使用する、周囲圧力でのマイクロ波加熱によるMIL-53(X)の合成[48]、ここで、Xはアルミニウム又はクロムである。
【0012】
これらの欠点を克服するために、本発明の目的の1つは、実施することが容易な技法、例えば市販の安価な構成要素、及びグリーン溶媒、例えば水、(エチル)アルコール、DMSO、又は高い割合で水を含む混合物などからの、周囲圧力での加熱を実施する技法を実施する革新的な方法を使用して、MOFを製造することを可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、MOFの製造方法に関する。ここで、MOFは、複数の金属中心に結合した多座キレートリガンドによって接続された無機物からなる2又は3次元の多孔質ネットワークを含む構造化金属有機化合物であり、前記多座キレートリガンドは、
- 不飽和のない直鎖アルキル鎖を含むリガンド及び少なくとも1つの不飽和を含む炭素鎖を含むリガンドから選ばれた少なくとも1つのカルボン酸官能基、例えばフマル酸又はムコン酸などを含むC-C24脂肪族リガンド;
- 少なくとも1つのカルボン酸官能基、好ましくは、ベンジルもしくはナフチルジ-、トリ-もしくはテトラカルボキシレートを含むC-C24複素芳香族リガンド及び芳香族リガンド、並びに-NH、-OH、-CH、-OCH、-NO、-CF、-COOH、-SOH、-SHから選ばれた基を少なくとも1つの芳香族環上に任意選択的に有する前記芳香族又は複素芳香族リガンド;
を含む群から選択され、
前記方法は、以下の工程を含む:
a)多座キレートリガンドの分子、及び少なくとも1種の金属前駆体(すなわち、少なくとも1種の金属塩)、好ましくは金属硫酸塩及び金属塩素酸塩から選ばれた少なくとも1種の金属前駆体、好ましくは硫酸アルミニウム塩を水中に分散させる工程;
b)任意選択的に、a)で得られた分散体を周囲圧力で加熱し、分散体を50~150℃の温度で10分間~96時間の時間維持する工程;
c)周囲温度に戻し、濾過し、得られた固体を水で洗浄する工程;
d)c)で得られた固体を乾燥させる工程;
e)150℃以下の温度で、DMSOを含むか又はDMSOからなる溶液中に、d)で得られた固体を30分間~15時間の時間をかけて撹拌下で分散させる工程。
【0014】
発明者らは、未変換試薬の除去を可能にするDMSOによる洗浄の後工程のおかげで、MOFの合成を水中で行うことが可能であることを実証した。従来の合成方法は、不純物が洗浄溶媒とともに除去され、MOFの細孔中に閉じ込められたまま残らないように、合成(又は少なくとも洗浄工程)を、例えばDMFなどの毒性溶媒中で実施するとともに、溶液中の固体を150℃に数日間加熱することを通常必要とする。
【0015】
上記及び以下では、用語「洗浄」及び「活性化」は同じように理解され、したがって、完全に互換性であることができると明示される。
【0016】
また、本発明者らは、洗浄工程の間のDMSOの使用が、この工程の時間を、DMFを用いて実施したかかる洗浄工程と比べて短縮できることも実証した。その上、DMFと比べて、DMSOの比較的高い極性及び特定のリガンドの良好な溶解性のおかげで、未変換の試薬がより迅速に除去される。
【0017】
本発明の範囲内で、用語「芳香族基」は、安定な、置換又は非置換の不飽和単環式又は多環式の炭化水素に基づくフラグメントであって、好ましくは3~14個の炭素原子を有し、芳香族性に関するヒュッケル則を満たす少なくとも1つの環を含むものを指す。
【0018】
用語「複素芳香族基」は、本発明の範囲内で使用される場合、安定な、置換又は非置換のモノ複素環式又はポリ複素環式フラグメントであって、好ましくは3~14個の炭素原子を有し、芳香族性に関するヒュッケル則を満たす少なくとも1つの環を含むものを指す。複素芳香族エンティティの例としては、フラニル、ピリジニル(ピリジン基)、インドリニル(インドール基)、イミダゾリニル(イミダゾール基)、ピロリニル(ピロール基)、キノリニル、ジヒドロキノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、ジヒドロキナゾリル、及びテトラヒドロキナゾリル基が挙げられるが、これらに限定されない。かかる基を有するリガンドの中で、2,5 FDCA、2,5-フランジカルボン酸を言及することができる。
【0019】
好ましくは、多座キレートリガンドは、2座リガンド、3座リガンド及び4座リガンドから選ばれた少なくとも1つのタイプから選ばれ、有利には、カルボン酸、ホスホン酸、アミン、アルコール、ケトン及びアゾール官能基から選ばれた少なくとも1つの官能基を含むC6-C24芳香族化合物を含み、好ましくは、多座キレートリガンドは、以下のリガンドのうちの少なくとも1つから選ばれる:ベンゼン-1,4-ジカルボン酸又はテレフタル酸(C、CAS:100-21-0、略語1,4-BDC、BDC、H-BDC又はBDCHで知られている)、ニトロ-テレフタル酸(CNO、CAS:610-29-7、略語NO-1,4-BDCで知られている)、2-アミノ-テレフタル酸(CNO、CAS:10312-55-7、略語NH-1,4-BDCで知られている)、2-クロロテレフタル酸(CClO、CAS:1967-31-3、略語Cl-1,4-BDCで知られている)、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸(C(COH)、CAS:554-95-0)、3,3’,5,5’-アゾベンゼンテトラカルボン酸(C1610、CAS:365549-33-3)、3,5-ピラゾールジカルボン酸(C、CAS:303180-11-2)、2,5-ビス(トリフルオロメチル)-1,4-ベンゼンジカルボン酸(C10、CAS:366008-67-5)、2-(トリフルオロメチル)-1,4-ベンゼンジカルボン酸(C、CAS:1483-47-2)、1,2,4-トリアゾール(C、CAS:288-88-0)、2-メチルイミダゾール(C、CAS:693-98-1)、N,N’-ピペラジン(メチレンホスホン酸)(C16、CAS:89280-71-7)、L-アスパラギン酸(CNO、CAS:56-84-8)、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸(C、CAS:610-92-4)及び3,4-ジヒドロキシ-3-シクロブテン-1,2-ジオン(C、CAS:2892-51-5)。
【0020】
有利には、DMSOは、工程e)の後、エタノールによる処理の工程f)において、すすぐことによって除去される。
【0021】
好ましくは、本発明によるMOFの製造方法の金属中心は、Cu、Zn、Ca、Mg、Ti、Zr、In、Ga、V、Cr、Mn、Fe及びAlから選ばれた少なくとも1種の金属を含み、好ましくは、金属は、Fe、Al、Cr及びZrの少なくとも1種の金属イオンから選ばれた、さらにより好ましくは、Fe、Al、Cr及びVの少なくとも1種の金属イオンから選ばれた金属イオンである。
【0022】
好ましくは、本発明の方法に従って製造されるMOFは、MIL-53、MIL-68、MIL-69、MIL-101、MIP-206、及びDUT-7から選ばれる。特に好ましい方法では、本発明の方法に従って製造されるMOFは、MIL-53(Al)、MIL-53(Fe)、MIL-53(Cr)、MIL-68(Al)、MIL-68(Fe)、MIL-68(Cr)及びMIP-206(Zr)から選ばれたMOFである。
【0023】
好ましくは、MOFは、Cr、Al、Fe、V、Ga及びInから選ばれた金属の酸化状態+3の金属イオンを含むMIL-53の部類から選ばれ、芳香族リガンドはベンゼン-1,4-ジカルボン酸又は誘導体である。
【0024】
好ましくは、ベンゼン-1,4-ジカルボン酸誘導体は、-NH、-OH、-CH、-NO、-CF、-COOH、-SOH-SH、-OCHから、好ましくは基-NH、-OH及び-NOから選ばれた少なくとも1つの基が芳香族環に置換したベンゼン-1,4-ジカルボン酸である。
【0025】
かかるリガンドは、例えば、NO-1,4-BDC、NH-1,4-BDC、又はCl-1,4-BDCであることができる。
【0026】
本発明によれば、工程a)の間に、塩基、例えば、水酸化ナトリウム、ピペラジン又は尿素などを加えることができる。
【0027】
好ましくは、工程a)において使用される金属硫酸塩はAl(SO・16HOであり、工程a)において、好ましくは尿素が分散体に加えられる。
【0028】
好ましくは、工程a)において使用される金属塩素酸塩はFeCl・6HOである。
【0029】
好ましくは、工程b)は、8時間及び48時間維持され、工程e)において、激しい機械的撹拌をしながら分散体を130℃以下の温度に1~4時間加熱する。
【0030】
本発明の別の目的は、DMFを使用せず、か焼工程を必要とせずに、上記のとおりの方法に従って製造された、MIL-53(Al)、MIL-53(Al)-NH、MIL-53(Al)-NO、MIL-53(Al)-OH、MIL-53(Fe)及びMIL-53(Cr)から選ばれたMIL-53の部類に属するMOFに関する。
【0031】
粒子サイズは、イメージングによって、好ましくはSEM顕微鏡によって評価される。
【0032】
本発明は、また、分離(ガス、蒸気など);特に、COの捕捉(燃焼後、燃焼前、又はバイオガス);芳香族物質(キシレン類)、脂肪族物質(分岐アルカン)の分離;有機揮発性化合物の捕捉;水-アルコール精製;脱塩;電池用材料;触媒作用、例えばアルコールの脱水素化など、あるいは、MOFが共触媒と組み合わされるか又はMOFに共触媒がドープされる場合に、小分子(CO、CH、NHなど)の吸着及び変換のため;例えば吸着柔軟性補償による廃熱の管理;及び検出;例えば圧力、電流、マイクロ波照射及び磁場などの刺激による分離又は制御された貯蔵/放出のための、本発明の範囲内での、記載されるとおりのMOFの使用に関する。
【0033】
本発明の範囲内で、BET比表面積だけでなく細孔の体積も、特にMicromeritics(登録商標)TriStar装置を使用して、-196℃(77K)でのN吸脱着等温線に基づいて、N吸着法により決定した。
【0034】
有利には、吸着等温線測定の前に、サンプルの調製のために、脱気工程(すなわち、真空下での加熱)を実施することができる。この工程は、後述する工程f)の後に続いてもよい。
【0035】
本発明は、以下の詳細にも記載されており、実験パートは、単なる例示として提供されており、かつ、限定的と見なされるべきではない例を使用して、いくつかの実施形態を詳細に説明しており、以下のパートで図面を簡単に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、遊離リガンドと比較した、MIL-53(Al)(SO塩を使用して合成)及びその活性化形態のFTIRスペクトルを示す。
【0037】
図2図2は、遊離リガンドと比較した、MIL-53(Al)-NO(SO塩を使用して合成)及びその活性化形態のFTIRスペクトルを示す。
【0038】
図3図3は、遊離リガンドと比較した、MIL-53(Al)-NH(SO塩を使用して合成)及びその活性化形態のFTIRスペクトルを示す。
【0039】
図4図4は、SO塩から合成されたMIL-53-(Al)の比較用粉末X線回折図(PXRDプロット)を示す。DMSOで洗浄され、次いで100℃で乾燥されたサンプルは、大きな細孔(lp)の構成とは対照的に、主に狭い細孔(np)の構成で存在する。
【0040】
図5図5は、SO塩から合成されたMIL-53-(Al)の比較用FTIRプロットを示す。DMSOによる洗浄の後、100℃で乾燥させることで、細孔内にリガンドを含まないMIL-53サンプルを生じた。
【0041】
図6図6は、塩化物塩から合成された、未活性化形態と活性化形態の間のMIL-53-(Al)の比較用PXRDプロットを示す。
【0042】
図7図7は、塩化物塩から合成された、未活性化形態と活性化形態MIL-53-(Al)-NOの比較用PXRDプロットを示す。
【0043】
図8図8は、塩化物塩から合成された、未活性化形態と活性化形態MIL-53-(Al)-NHの比較用PXRDプロットを示す。
【0044】
図9図9は、MIL-53(Al)及びその活性化形態(塩化物塩から合成)の、そのリガンドと比較した、FTIRスペクトルを示す。
【0045】
図10図10は、MIL-53(Al)-NO及びその活性化形態(塩化物塩から合成)の、そのリガンドと比較した、FTIRスペクトルを示す。
【0046】
図11図11は、MIL-53(Al)-NH及びその活性化形態(塩化物塩から合成)の、リガンドと比較した、FTIRスペクトルを示す。
【0047】
図12図12は、MIL-53(Al)(SO塩を使用して合成)の熱重量分析曲線(ATG)であって、活性化前後の構造体の熱安定性を示している熱重量分析曲線(ATG)を示す。
【0048】
図13図13は、活性化前後のMIL-53(Al)-NO(SO塩を使用して合成)の熱重量分析曲線(ATG)を示す。
【0049】
図14図14は、活性化前後のMIL-53(Al)-NH(SO塩を使用して合成)の熱重量分析曲線(ATG)を示す。
【0050】
図15図15は、MIL-53(Al)(塩化物塩を使用して合成)の熱重量分析曲線(ATG)を示す。
【0051】
図16図16は、MIL-53(Al)-NO(塩化物塩を使用して合成)の熱重量分析曲線(ATG)を示す。
【0052】
図17図17は、MIL-53(Al)-NH(塩化物塩を使用して合成)の熱重量分析曲線(ATG)を示す。
【0053】
図18図18は、塩化物塩を用いて合成したMIL-53(Al)の77K N等温線を示す。か焼による活性化は、DMSO洗浄による活性化よりもわずかに小さい表面を有するサンプルを生成した。
【0054】
図19図19は、MIL-53(Fe)-Clの比較用粉末X線回折図(PXRDプロット)を示す。
【0055】
図20図20は、遊離リガンドと比較した、MIL-53(Fe)-Cl及びその活性化形態のFTIRスペクトルを示す。
【0056】
図21図21は、MIL-53(Fe)-Clの熱重量分析曲線(TGA)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
実験パート
材料及び方法
使用した試薬は、Alfa Aesar(登録商標)によって市場に出されているものであり、さらなる精製なしに使用した。
【0058】
機器
PXRD:粉末X線回折(PXRD)データは、透過モードで動作し、集束ゲーベルミラーを備えたBruker(登録商標) D8アドバンス高スループット回折計を使用して収集した。X線源は、Cu-Kα放射線(λ=1.5418Å)であった。
【0059】
吸着測定
77Kにおいて、すべての窒素ポロシメトリデータをMicromeritics(登録商標) TriStar機器で収集した。298KでN及びCOの等温線をMicromeritics(登録商標) Triflex機器で記録した。すべての場合において、超高純度ガス(グレード≧4.8)を使用して測定値を記録した。吸着測定の前に、すべてのサンプルをある温度(180~200℃)で8時間脱気した。脱気は、Micromeritics(登録商標) SmartVacPrep脱気ユニットを使用して単一工程で実施した:脱気ポートで180~200℃で真空引きし(P=10-6mbar)、脱気速度は、<2μbar/minであった。
【0060】
TGA:TGAデータは、酸素流の下で5℃/分の加熱速度で、Mettler Toledo(登録商標) TGA/DSC 2,STARシステムで収集した。
【0061】
FTIR:赤外スペクトルをThermoFisher(商標)Nicolet iS5 FTIR分光計を用いて測定した。
【0062】
サンプルの表面トポグラフィの観察は、FEI Magellan 400(商標)を使用して、走査電子顕微鏡法(SEM)によって実施した。
【0063】
粒径分布はSEMで行い、粒径測定は、ImageJ(商標)ソフトウェアを使用して実施した。
【0064】
本発明の範囲内で、%w/wで表される質量百分率は、調製に使用され、混合物、材料(複合材料など)、膜などの検討した物体の総質量に対して考慮した成分の質量百分率を規定する。
【実施例
【0065】
パート1:合成
MIL-53(Al)とその誘導体の合成は、様々な塩基(NaOH、尿素)の存在下で、AlCl・6HO、Al(SO・16~18HO、Al(OH)(CHCOO)・xHO、Al(OH)及びNaAlOなどの様々な金属塩を使用して最適化した。硫酸塩及び塩化物塩は、MIL-53(Al)のMOFを得るための選択試薬である。これらの硫酸塩を使用したMIL-53 MOFの合成方法(例1~3)、及び塩化物を使用したMIL-53 MOFの合成方法(例4~6)を以下に説明する。
【0066】
例1:
【0067】
MIL-53(Al)の調製
【0068】
還流法を使用してMIL-53(Al)を合成した。100mmol(66.6g)のAl(SO・16HO、100mmol(16.6g)の1,4-BDC(CAS:100-21-0)及び100mmol(6.0g)の尿素を、500mlフラスコ内の200mlの水中に分散させた。混合物を120℃に加熱して還流させ、還流状態に12時間維持した。反応混合物を周囲温度に冷却後、無色粉末を濾過し、80mlの水で洗浄した。次いで、サンプルを空気中で一晩乾燥させた。合成したままの生成物は、遊離1,4-BDCを含んでいた。ジメチルスルホキシド(DMSO)で洗浄することにより、遊離1,4-BDCをサンプルから除去した。
【0069】
MIL-53(Al)の活性化
【0070】
合成したMIL-53(Al)粉末(22.5g)を、500mlフラスコ内の250mlのDMSO中に懸濁させた。次いで、混合物を連続的撹拌下で120℃に加熱し、これらの条件下で約2時間維持した。50℃に冷却後、懸濁液を遠心分離し、エタノール(70ml)で洗浄し、次いで水(100ml)で洗浄した。次いで、生成物をオーブン内で100℃で乾燥させた。単離された生成物の質量は18.5gである。
【0071】
代わりに、活性化は、空気中、330℃で、36時間かけてMIL-53(Al)をか焼することによって行うこともできる。高温でのか焼による活性化のこれらの反応条件は、工業的規模の実施とあまり適合性がない。
【0072】
例2:(本発明の範囲外)
【0073】
MIL-53(Al)-NOの調製
【0074】
還流法を使用して合成を行った。100mmol(66.6g)のAl(SO・16HO、100mmol(21.1g)のニトロ-テレフタル酸(NO-1,4-BDC、CAS:610-29-7)及び100mmol(6.0g)の尿素を、500mlフラスコ内の200mlの水中に分散させた。次いで、混合物を120℃で還流させて、還流状態に12時間維持した。反応混合物を周囲温度に冷却後、無色粉末を濾過し、80mlの水で洗浄した。次いで、サンプルを空気中で乾燥させた(一晩)。合成したままの生成物は、遊離ニトロ-テレフタル酸を含んでいた。エタノール(EtOH)で洗浄することによって、それをサンプルから除去した。
【0075】
MIL-53(Al)-NOの活性化
【0076】
合成した粉末(26.5g)を、500mlフラスコ内の250mlのEtOH中に懸濁させた。次いで、混合物を連続撹拌下で100℃に加熱し、これらの条件下で約4時間維持した。50℃に冷却後、懸濁液を濾過し、次いでエタノール(60ml)ですすいだ。次いで、生成物をオーブン内で100℃で乾燥させた。単離された生成物の質量は22.5gである。
【0077】
例3:
【0078】
MIL-53(Al)-NHの調製
【0079】
還流法を使用して合成を行った。100mmol(66.6g)のAl(SO・16HO、100mmol(18.1g)の2-アミノ-テレフタル酸(NH-1,4-BDC、CAS:10312-55-7)及び100mmol(6.0g)の尿素を、500mlフラスコ内の200mlの水中に分散させた。次いで、混合物を120℃で還流させて、還流状態に12時間維持した。反応混合物を室温に冷却後、無色粉末を濾過し、80mlの水で洗浄した。次いで、サンプルを空気中で乾燥させた(一晩)。合成したままの生成物は、遊離2-アミノ-テレフタル酸1,4-BDCを含んでいた。ジメチルスルホキシド(DMSO)で洗浄することによって、遊離2-アミノ-テレフタル酸をサンプルから除去した。
【0080】
MIL-53(Al)-NHの活性化
【0081】
合成した粉末(25.5g)を、500mlフラスコ内の250mlのDMSO中に懸濁させた。次いで、混合物を連続撹拌下で120℃に加熱し、これらの条件下で約2時間維持した。50℃に冷却後、懸濁液を遠心分離し、次いで、エタノール(70ml)により洗浄、次いで、水(100ml)による洗浄を行った。次いで、生成物をオーブン内で100℃で乾燥させた。単離された生成物の質量は19.0gである。
【0082】
例4:
【0083】
MIL-53(Al)の調製
【0084】
還流法を使用してMIL-53(Al)を合成した。150mmol(36.15g)のAlCl・6HOを500mlフラスコ内の260mlの水に溶解させ、溶液を100℃に加熱した。次いで、このフラスコに、65mlの2M NaOHに溶解された125mmol(20.75g)の1,4-BDCを撹拌下で加えた。次いで、混合物を120℃で12時間還流させた。その後、無色のゲルを濾過し、200mlの水で洗浄した。次いで、サンプルを空気中で乾燥(一晩)させた。単離された生成物の質量は23.0gである。合成したままの生成物は遊離1,4-BDCを含んでいた。ジメチルスルホキシド(DMSO)で洗浄することによって、遊離1,4-BDCをサンプルから除去した。
【0085】
MIL-53(Al)の活性化
【0086】
合成した粉末(23.0g)を、500mlフラスコ内の250mlのDMSO中に懸濁させた。次いで、混合物を連続撹拌下で120℃に加熱し、これらの条件下で約2時間維持した。50℃に冷却後、懸濁液を遠心分離し、次いで、エタノール(70ml)による洗浄、次いで、水(100ml)による洗浄を行った。生成物をオーブン内で100℃で乾燥させた。次いで、生成物をオーブン内で100℃で乾燥させた。単離された生成物の質量は17.5gである。
【0087】
代わりに、活性化は、か焼によって行われてもよい。合成したMIL-53(Al)粉末を微粉砕し、時計皿上によく広げた。次いで、時計皿を、プログラム可能なオーブン内に配置した。サンプルを330℃に加熱(2時間)し、330℃で36時間維持した。周囲温度まで冷却後、粉末を収集し、PXRD、TGA及びIRにより特性評価した。
【0088】
例5:(本発明の範囲外)
【0089】
MIL-53(Al)-NOの調製
【0090】
還流法を使用して合成を行った。100mmol(66.6g)のAlCl・6HOを、500mlフラスコ内の250mlの水に溶解させ、溶液を100℃に加熱した。次いで、このフラスコに、(ビーカー内の)65mlの2M NaOHに溶解された125mmol(26.39g)のニトロ-テレフタル酸を撹拌下で加えた。ビーカーをすすぐために、さらなる20mlの水を加えた。次いで、混合物を120℃で12時間還流させた。その後、無色固体を濾過し、150mlの水で洗浄し、50mlのエタノールですすいだ。次いで、サンプルを空気中で乾燥(一晩)させた。単離された生成物の質量は26.0gである。合成したままの生成物は、遊離ニトロ-テレフタル酸を含んでいた。エタノール(EtOH)で洗浄することによって、それをサンプルから除去した。
【0091】
MIL-53(Al)-NOの活性化
【0092】
合成した粉末を微粉砕し、500mlフラスコに入れた。250mlのエタノールを加えた。生成物を100℃で10時間還流させ、熱濾過(約60℃)し、40mlの温エタノールで洗浄した。単離された生成物の質量は24.25gである。
【0093】
注記:場合によっては、サンプルは、第1回目の洗浄後に微量の遊離リガンドを含む場合がある。この場合、150mlのエタノールでもう一回洗浄(100℃、5時間)する必要がある。
【0094】
例6:
【0095】
MIL-53(Al)-NHの調製
【0096】
還流法を使用して合成を行った。150mmol(36.15g)のAlCl・6HOを、500mlフラスコ内の200mlの水に溶解させ、溶液を100℃に加熱した。次いで、このフラスコに、(ビーカー内の)120mlの2M NaOHに溶解された125mmol(22.64g)の2-アミノ-テレフタル酸(NH-1,4-BDC、CAS:10312-55-7)を撹拌下で加えた。30mlの水を加えてビーカーをすすいだ。次いで、混合物を120℃で12時間還流させた。その後、黄色がかった固体を濾過し、200mlの水で洗浄し、30mlのエタノールですすいだ。次いで、サンプルを空気中で乾燥(一晩)させた。単離された生成物の質量は19.0gである。合成したままの生成物は、2-アミノ-テレフタル酸NH-1,4-BDCを含んでいた。遊離2-アミノ-テレフタル酸は、ジメチルスルホキシド(DMSO)で洗浄することによってサンプルから除去した。
【0097】
MIL-53(Al)-NHの活性化
【0098】
このように合成した粉末を微粉砕し、500mlフラスコに入れた。250mlのDMSOを加えた。混合物を120℃で2時間還流させた。50℃に冷却後、懸濁液を遠心分離し、その後、エタノール(70ml)で洗浄し、次いで水(100ml)で洗浄した。次いで、生成物をオーブン内で100℃で乾燥させた。単離された生成物の質量は16.2gである。
【0099】
例7:
【0100】
MIL-53(Fe)-Clの調製
【0101】
還流法を使用して合成を行った。15mmol(4.10g)のFeCl・6HO及び15mmol(3.00g)の2-クロロテレフタル酸(Cl-1,4-BDC、CAS:1967-31-3)を、250mlフラスコ内の120mlの水に溶解させた。次いで、混合物を48時間還流させた。その後、得られた無色固体を濾過し、80mlの水で洗浄した。次いで、サンプルを空気中で乾燥(一晩)させた。単離された生成物の質量は3.4gである。合成したままの生成物は、2-アミノ-テレフタル酸1,4-BDCを含んでいた。遊離2-アミノ-テレフタル酸は、ジメチルスルホキシド(DMSO)で洗浄することによってサンプルから除去した。
【0102】
MIL-53(Fe)-Clの活性化
【0103】
このように合成した粉末を微粉砕し、100mlフラスコに入れた。50mlのDMSOを加えた。混合物を120℃で2時間還流させた。50℃に冷却後、懸濁液を遠心分離し、その後、エタノール(20ml)で洗浄し、次いで水(15ml)で洗浄した。次いで、生成物をオーブン内で100℃で乾燥させた。単離された生成物の質量は3.0gである。
【0104】
パート2:分析及び結果
【0105】
図1図11のFTIR及びPXRDスペクトルの比較から、活性化によって、MOFの合成において反応しなかった遊離リガンドの全部を除去可能になることが分かる。
【0106】
図12~17の熱重量分析(TGA)スペクトルの比較からも、活性化によって、MOEの合成において反応しなかった遊離リガンドの全部を除去可能になることが分かる。
【0107】
図18に示されるガス吸収スペクトルから、か焼による活性化によって、DMSOを使用した洗浄による活性化よりもわずかに小さいBET表面を有するMIE-53(Al) MOFが生成することが分かる。
【0108】
参考文献
以下の表は、本文中で上で言及した参考文献を列挙する。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
【表3】
【0112】
【表4】
【0113】
【表5】
【0114】
【表6】
【0115】
【表7】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【手続補正書】
【提出日】2025-06-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0115
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0115】
【表7】
本発明に関連する発明の実施形態の一部を以下に示す。
[実施形態1]
MOFの製造方法であって、MOFが、複数の金属中心に結合した多座キレートリガンドによって接続された無機物からなる2又は3次元の多孔質ネットワークを含む構造化金属有機化合物であり、前記多座キレートリガンドが、
- 不飽和のない直鎖アルキル鎖を含むリガンド及び少なくとも1つの不飽和を含む炭素鎖を含むリガンドから選ばれた少なくとも1つのカルボン酸官能基を含むC -C 24 脂肪族リガンド;
- 少なくとも1つのカルボン酸官能基、好ましくは、ベンジルもしくはナフチルジ-、トリ-もしくはテトラカルボキシレートを含むC -C 24 複素芳香族リガンド及び芳香族リガンド、並びに-NH 、-OH、-CH 、-OCH 、-NO 、-CF 、-COOH、-SO H、-SHから選ばれた基を少なくとも1つの芳香族環上に任意選択的に有する前記芳香族又は複素芳香族リガンド;
を含む群から選択され、
前記方法は、以下の工程:
a)多座キレートリガンドの分子、及び少なくとも1種の金属塩、好ましくは金属硫酸塩及び金属塩素酸塩から選ばれた少なくとも1種の金属塩、好ましくは硫酸アルミニウム塩を水中に分散させる工程;
b)任意選択的に、a)で得られた分散体を周囲圧力で加熱し、分散体を50~150℃の温度で10分間~96時間の時間維持する工程;
c)周囲温度に戻し、濾過し、得られた固体を水で洗浄する工程;
d)c)で得られた固体を乾燥させる工程;
e)150℃以下の温度で、DMSOを含む溶液中に、d)で得られた固体を30分間~15時間の時間をかけて撹拌下で分散させる工程;
を含む、MOFの製造方法。
[実施形態2]
前記金属中心が、Cu、Zn、Ca、Mg、Ti、Zr、In、Ga、V、Cr、Mn、Fe及びAlから選ばれた少なくとも1種の金属を含み、好ましくは、前記金属は、Fe、Al、Cr及びVの少なくとも1種の金属イオンから選ばれた金属イオンである、実施形態1に記載の製造方法。
[実施形態3]
本発明の方法に従って製造されるMOFが、MIL-53、MIL-68、MIL-69、MIL-101、MIP-206及びDUT-7から選ばれる、請求項1又は2に記載の製造方法。
[実施形態4]
前記MOFが、Cr、Al、Fe、V、Ga及びInから選ばれた金属の酸化状態+3の金属イオンを含むMIL-53の部類から選ばれ、前記芳香族リガンドがベンゼン-1,4-ジカルボン酸又はその誘導体である、実施形態1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
[実施形態5]
前記ベンゼン-1,4-ジカルボン酸誘導体が、-NH 、-OH及び-NO から選ばれた少なくとも1つの基が芳香族環に置換したベンゼン-1,4-ジカルボン酸である、実施形態4に記載の製造方法。
[実施形態6]
工程a)において使用される前記金属硫酸塩がAl (SO ・16H Oであり、工程a)において、好ましくは尿素が分散体に加えられる、実施形態1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
[実施形態7]
工程a)において使用される前記金属塩素酸塩がFeCl ・6H Oである、実施形態1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
[実施形態8]
工程b)が8時間及び48時間維持され、工程e)において、機械的撹拌下で前記分散体が130℃以下の温度に1~4時間加熱される、実施形態1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
[実施形態9]
DMFを使用せず、か焼工程を必要とせずに、実施形態1~8のいずれか一項に記載のとおりの方法に従って製造された、MIL-53(Al)、MIL-53(Al)-NH 、MIL-53(Al)-NO 、MIL-53(Al)-OH、MIL-53(Fe)及びMIL-53(Cr)から選ばれたMIL-53の部類に属するMOF。
[実施形態10]
実施形態9に記載のMOFの使用であって、分離;CO の捕捉;芳香族物質、脂肪族物質の分離;有機揮発性化合物の捕捉;水-アルコール精製;脱塩;電池用材料;アルコールの脱水素化などの触媒作用;小分子の吸着及び変換のため;例えば吸着補償による廃熱の管理;検出;並びに、圧力、電流、マイクロ波照射及び磁場などの刺激による分離又は制御された貯蔵/放出のための、MOFの使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MOFの製造方法であって、MOFが、複数の金属中心に結合した多座キレートリガンドによって接続された無機物からなる2又は3次元の多孔質ネットワークを含む構造化金属有機化合物であり、前記多座キレートリガンドが、
- 不飽和のない直鎖アルキル鎖を含むリガンド及び少なくとも1つの不飽和を含む炭素鎖を含むリガンドから選ばれた少なくとも1つのカルボン酸官能基を含むC-C24脂肪族リガンド;
- 少なくとも1つのカルボン酸官能基、好ましくは、ベンジルもしくはナフチルジ-、トリ-もしくはテトラカルボキシレートを含むC-C24複素芳香族リガンド及び芳香族リガンド、並びに-NH、-OH、-CH、-OCH、-NO、-CF、-COOH、-SOH、-SHから選ばれた基を少なくとも1つの芳香族環上に任意選択的に有する前記芳香族又は複素芳香族リガンド;
を含む群から選択され、
前記方法は、以下の工程:
a)多座キレートリガンドの分子、及び少なくとも1種の金属塩、好ましくは金属硫酸塩及び金属塩素酸塩から選ばれた少なくとも1種の金属塩、好ましくは硫酸アルミニウム塩を水中に分散させる工程;
b)任意選択的に、a)で得られた分散体を周囲圧力で加熱し、分散体を50~150℃の温度で10分間~96時間の時間維持する工程;
c)周囲温度に戻し、濾過し、得られた固体を水で洗浄する工程;
d)c)で得られた固体を乾燥させる工程;
e)150℃以下の温度で、DMSOを含む溶液中に、d)で得られた固体を30分間~15時間の時間をかけて撹拌下で分散させる工程;
を含む、MOFの製造方法。
【請求項2】
前記金属中心が、Cu、Zn、Ca、Mg、Ti、Zr、In、Ga、V、Cr、Mn、Fe及びAlから選ばれた少なくとも1種の金属を含み、好ましくは、前記金属は、Fe、Al、Cr及びVの少なくとも1種の金属イオンから選ばれた金属イオンである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
本発明の方法に従って製造されるMOFが、MIL-53、MIL-68、MIL-69、MIL-101、MIP-206及びDUT-7から選ばれる、請求項に記載の製造方法。
【請求項4】
前記MOFが、Cr、Al、Fe、V、Ga及びInから選ばれた金属の酸化状態+3の金属イオンを含むMIL-53の部類から選ばれ、前記芳香族リガンドがベンゼン-1,4-ジカルボン酸又はその誘導体である、請求項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ベンゼン-1,4-ジカルボン酸誘導体が、-NH、-OH及び-NOから選ばれた少なくとも1つの基が芳香族環に置換したベンゼン-1,4-ジカルボン酸である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
工程a)において使用される前記金属硫酸塩がAl(SO・16HOであり、工程a)において、好ましくは尿素が分散体に加えられる、請求項に記載の製造方法。
【請求項7】
工程a)において使用される前記金属塩素酸塩がFeCl・6HOである、請求項に記載の製造方法。
【請求項8】
工程b)が8時間及び48時間維持され、工程e)において、機械的撹拌下で前記分散体が130℃以下の温度に1~4時間加熱される、請求項に記載の製造方法。
【請求項9】
DMFを使用せず、か焼工程を必要とせずに、請求項1~8のいずれか一項に記載のとおりの方法に従って製造された、MIL-53(Al)、MIL-53(Al)-NH、MIL-53(Al)-NO、MIL-53(Al)-OH、MIL-53(Fe)及びMIL-53(Cr)から選ばれたMIL-53の部類に属するMOF。
【請求項10】
請求項9に記載のMOFの使用であって、分離;COの捕捉;芳香族物質、脂肪族物質の分離;有機揮発性化合物の捕捉;水-アルコール精製;脱塩;電池用材料;アルコールの脱水素化などの触媒作用;小分子の吸着及び変換のため;例えば吸着補償による廃熱の管理;検出;並びに、圧力、電流、マイクロ波照射及び磁場などの刺激による分離又は制御された貯蔵/放出のための、MOFの使用。
【国際調査報告】