(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-09-29
(54)【発明の名称】微細構造を備える光学デバイスを製造する方法、そのような方法を実行する製造システム、及びそれにより得られる光学デバイス
(51)【国際特許分類】
B29C 64/129 20170101AFI20250919BHJP
B29C 64/286 20170101ALI20250919BHJP
B29D 11/00 20060101ALI20250919BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20250919BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20250919BHJP
【FI】
B29C64/129
B29C64/286
B29D11/00
B33Y10/00
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2025518992
(86)(22)【出願日】2023-10-03
(85)【翻訳文提出日】2025-04-01
(86)【国際出願番号】 EP2023077367
(87)【国際公開番号】W WO2024074518
(87)【国際公開日】2024-04-11
(32)【優先日】2022-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】マキシム・ルコンペール
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・ギヨー
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA44
4F213AG05
4F213AH74
4F213AH75
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL12
4F213WL43
4F213WL75
4F213WL76
(57)【要約】
光学デバイス(1)を製造する方法は、所定の曲率を有する自由面(21)を備える透明基部(2)を得るステップと、自由面(21)の少なくとも一部を第1の硬化性材料(14)に浸漬するステップと、自由面(21)の一部に作製すべき微細構造(3)を表す第1のグレースケール画像(12)を決定するステップと、所定の強度を有するUV光により自由面(21)の一部に第1のグレースケール画像(12)を投影するステップと、透明基部(2)を通してある体積の第1の硬化性材料(14)に照射することにより、自由面(21)の一部を覆う第1の硬化性材料(14)の前記体積を硬化させるステップと、を含む。かかる方法により製造された光学デバイス(1)、及びかかる方法によりかかる光学デバイス(1)を製造するためのシステム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細構造(3)を備える光学デバイス(1)を透明基部(2)から製造する方法であって、
・少なくとも一部に微細構造(3)が作製される自由面(21)を備える前記透明基部(2)を得るステップであって、前記自由面(21)は所定の曲率を有する、得るステップと、
・前記自由面(21)の少なくとも前記一部を第1の硬化性材料(14)に浸漬するステップと、
・前記自由面(21)の前記一部に作製すべき前記微細構造(3)を表す第1のグレースケール画像(12)を決定するステップと、
・所定の強度を有する紫外光により前記透明基部(2)の前記自由面(21)の前記一部に前記第1のグレースケール画像(12)を投影するステップと、
・前記自由面(21)の一部に異なる線量の光を提供する前記紫外光の第1のグレースケール画像(12)を用いて前記透明基部(2)を通してある体積の前記第1の硬化性材料(14)に照射することにより、前記自由面(21)の前記一部を覆う前記第1の硬化性材料(14)の前記体積を硬化させ、これにより、前記透明基部(2)の前記自由面(21)の前記一部に前記微細構造(3)を形成するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1のグレースケール画像を決定する前記ステップは、自由面(21)と比較した各画素における前記微細構造(3)の高さを決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
グレースケール画像投影タイルと比較して前記透明基部(2)を変位させるステップと、前記透明基部の前記変位に従って別の第1のグレースケール画像を生成するステップとを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも前記光学デバイス(1)を回転させることにより、残留する第1の硬化性材料(14)の少なくとも一部を前記光学デバイス(1)から除去するステップを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記微細構造(3)の少なくとも表面を洗浄材料で洗浄するステップと、前記洗浄材料から前記微細構造(3)の前記表面を除去するステップと、前記光学デバイス(1)を回転させるステップとを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記微細構造(3)の少なくとも表面を第2の硬化性材料に浸漬するステップを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記透明基部(2)がブロッカにより維持されている間に前記微細構造(3)の少なくとも1つの表面が浸漬される、前記第1の硬化性材料(14)を含む容器を空にするステップと、前記透明基部(2)が前記ブロッカ上に維持されている間に前記容器内に前記第2の硬化性材料を充填するステップとを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記微細構造(3)の少なくとも前記表面を前記第2の硬化性材料に浸漬するステップの前に、前記微細構造(3)の少なくとも前記表面を前記第2の硬化性材料で洗浄するステップと、前記第2の硬化性材料から前記微細構造(3)の前記表面を除去するステップと、前記光学デバイス(1)を回転させるステップとを含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
・前記微細構造(3)の前記表面と、前記微細構造(3)の少なくとも一部を封入するために作成すべき封入層(4)の設計とに従って、第2のグレースケール画像を決定するステップと、
・UV光を用いて前記微細構造(3)の前記表面の少なくとも前記一部に前記第2のグレースケール画像を投影するステップと、
・第2のグレースケールUV光画像を用いて前記透明基部及び前記微細構造(3)を通してある体積の前記第2の硬化性材料に照射することにより、前記微細構造(3)の前記表面の前記一部を覆う前記体積を硬化させ、これにより、前記微細構造(3)の少なくとも前記一部を封入するステップと
を含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
透明基部(2)の少なくとも表面に形成された微細構造(3)を備えることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法により製造された光学デバイス(1)。
【請求項11】
封入層(4)を備え、前記微細構造(3)は、前記封入層(4)の下に封入される、請求項10に記載の光学デバイス(1)。
【請求項12】
前記微細構造(3)は、レンズレット、拡散要素、回折要素、及び/又はπフレネルレンズレットのうちの少なくとも1つを備える、請求項10又は11に記載の光学デバイス(1)。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか一項に記載の光学デバイス(1)を製造するためのシステムであって、前記システムは、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成され、前記システムは、
・ある体積の硬化性材料(14)を収容するための容器(13)と、
・所定の強度でUV光を放出するように構成されたUV光源と、前記UV光を用いて前記容器の内側に向けて投影タイルに少なくとも1つのグレースケール画像を投影するように構成されたデジタルマイクロミラーデバイスとを備えるDLPプロジェクタ(10)と
を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、微細構造を備える光学デバイスを製造する方法と、かかる方法を実行するように構成された製造システムとに関する。本開示はまた、それにより得られた光学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
文献である(特許文献1)は、ある体積の硬化性組成物から光学デバイスを作製する方法であって、前記体積の外面及び任意選択的に予め重合された上部に光照射で照射することにより、前記体積の部分が重合される、方法を開示している。そのような方法では、前記光照射は、空間光変調器の使用により前記外面上で変化する(すなわち、表面上の光強度を局所的に変える)光強度をもたらし、経時的にも変化し得る。したがって、重合は、硬化性組成物の部分毎に連続的に行われる。
【0003】
一方、眼用レンズのような光学デバイスでは、微細構造を含む特定の表面モフォロジーは、特定の効果をもたらすために及び/又は様々な視力障害を制御するために有用である可能性がある。
【0004】
例えば、マイクロレンズは、特に子供の近視進行を抑制する目的で眼用レンズにおいて有用である可能性がある。
【0005】
それゆえ、ダイヤモンド旋削又はリソグラフィ、射出成形又は鋳造プロセスのような、他の技術と比較して柔軟に使用でき、特にレンズレット又は他の形状を柔軟に形成でき、そのような微細構造を表面に作製し、最終的に光学デバイス、例えばレンズの内部に封入することを可能にする、微細構造のような特定の表面モフォロジーを含む、光学デバイスを製造する方法を提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2019002905号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様によれば、微細構造を備える光学デバイスを透明基部から製造する方法であって、
・少なくとも一部に微細構造が作製される自由面を備える透明基部を得るステップであって、自由面は所定の曲率を有する、ステップと、
・自由面の少なくとも一部を第1の硬化性材料に浸漬するステップと、
・自由面の一部に作製すべき微細構造を表す第1のグレースケール画像を決定するステップと、
・所定の強度を有する紫外光により透明基部の自由面の一部に第1のグレースケール画像を投影するステップと、
・表面の一部に異なる線量の光を提供する紫外光の第1のグレースケール画像を用いて透明基部を通してある体積の第1の硬化性材料に照射することにより、自由面の一部を覆う第1の硬化性材料の前記体積を硬化させ、これにより、透明基部の自由面の一部に微細構造を形成するステップと
を含む、方法が提供される。
【0008】
ここでは、透明基部は、例えば、基材及びフィルムを包含する。
【0009】
「透明」とは、ここでは、所与の波長、特にここでは少なくともUV光において、少なくとも1%又は好ましくは少なくとも80%の光を基部が通過させることを意味する。例えば、1000mw/cm2の1%では、10mw/cm2が得られ、これは既に一部の化学物質に適している。速度は、UV下での化学反応性に強く依存する可能性がある。
【0010】
例えば、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)によって投影された第1のグレースケール画像は、投影パターンのように機能する。
【0011】
それゆえ、第1のグレースケール画像は、所定の曝露時間にわたり且つ所定の強度での光ビームによる自由面の少なくとも一部の照射を可能にする。画像内の1つの点(画素)におけるグレーレベルに応じて、特定の対応する光線量が表面の対応する点に提供され、表面のその点において硬化させた第1の硬化性材料から作られた微細構造の対応する高さがもたらされる。
【0012】
ここでは、グレーレベル又はグレースケールがUV領域の光におけるパターンを意味することは注目に値する。
【0013】
そして、投影デバイスによるグレーレベル変調を経時的に回避することができる。
【0014】
したがって、かかる方法は、層を作る必要なしに、体積積層造形により、微細構造を含む改質面を透明基部の少なくとも一部に単一のステップで形成することを可能にする。
【0015】
透明基部の自由面と比較して、異なる高さの微細構造を、第1のグレースケール画像により、同じステップ中に同時に作製することができる。
【0016】
それゆえ、本方法は、異なる線量(例えば、ミリジュール(mJ)で測定される)を局所的に提供し、異なる強度(例えば、ミリワット×平方センチメートル(mW/cm2)で測定される)は局所的に提供しない。強度は、同じであり、変化しないか又はほとんど変化しないが、光は、グレーレベルのおかげで、及び例示的な実施形態によれば、DMDのマイクロミラーの関連する振動のおかげで、表面の一部にわたって時間的に異なるように分布する。
【0017】
ここでは、換言すれば、算出された1つの画像パターン及び算出された1回の照射時間を用いて、作成すべき設計が得られる。これら両方は、密接に結び付いている。すなわち、作成すべき設計を変更するためには、両方を変更しなければならない。
【0018】
したがって、かかる方法は、レンズのような、個人化又はカスタマイズされた光学デバイスを作製することを可能にする。
【0019】
一実施形態によれば、第1のグレースケール画像を決定するステップは、自由面と比較した画素毎の微細構造の高さを決定するステップを含む。
【0020】
一実施形態によれば、本方法は、グレースケール画像投影タイルと比較して透明基部を変位させるステップと、透明基部の変位に従って別の第1のグレースケール画像を生成するステップとを含む。
【0021】
一実施形態によれば、本方法は、少なくとも光学デバイスを回転させることにより、残留する第1の硬化性材料の少なくとも一部を光学デバイスから除去するステップを含む。
【0022】
一実施形態によれば、本方法は、微細構造の少なくとも表面を洗浄材料で洗浄するステップと、洗浄材料から微細構造の表面を除去するステップと、光学デバイスを回転させるステップとを含む。
【0023】
例えば、かかるステップは、以下に述べるように、微細構造の少なくとも表面を第2の硬化性材料に浸漬するステップの前に行われる。
【0024】
一実施形態によれば、本方法は、微細構造の少なくとも表面を第2の硬化性材料に浸漬するステップを含む。
【0025】
一実施形態によれば、本方法は、透明基部がブロッカにより維持されている間に微細構造の少なくとも1つの表面が浸漬される、第1の硬化性材料を含む容器を空にするステップと、透明基部がブロッカ上に維持されている間に容器内に第2の硬化性材料を充填するステップとを含む。
【0026】
一実施形態によれば、本方法は、微細構造(3)の少なくとも表面を第2の硬化性材料に浸漬するステップの前に、微細構造(3)の少なくとも表面を第2の硬化性材料で洗浄するステップと、第2の硬化性材料から微細構造(3)の表面を除去するステップと、光学デバイス(1)を回転させるステップとを含む。
【0027】
一実施形態によれば、本方法は、
・微細構造(3)の表面と、微細構造(3)の少なくとも一部を封入するために作成すべき封入層(4)の設計とに従って、第2のグレースケール画像を決定するステップと、
・UV光を用いて微細構造(3)の表面の少なくとも一部に第2のグレースケール画像を投影するステップと、
・第2のグレースケールUV光画像を用いて透明基部及び微細構造(3)を通してある体積の第2の硬化性材料に照射することにより、微細構造(3)の表面の一部を覆う体積を硬化させ、これにより、微細構造(3)の少なくとも一部を封入するステップと
を含む。
【0028】
第2の態様によれば、上で説明した方法により製造された光学デバイスが提供される。
【0029】
DMD内のマイクロミラーは完全に接合されているわけではないので、対応する不連続部分が材料中に見つかる可能性があり、この不連続部分は、最終的には非常に強力な機械を用いて検出することができる。
【0030】
更に、いくつかの設計は、任意の他の方法で得ることが非常に困難であるか又はほぼ不可能であり、例えば、表面上の回折レンズレット又は封入レンズレットは、金型を用いて製造することが非常に困難である。
【0031】
上で説明した本方法は、成形/対向成形して同じ製品を得るためのいくつかのステップを必要とするものを一度に作製することを可能にする。
【0032】
例えば、πフレネルレンズは、他の場合には達成するのが非常に困難な設計になるであろう。
【0033】
例えば、光学デバイスは、透明基部の少なくとも表面に形成された微細構造を備える。
【0034】
例えば、光学デバイスは、封入層を備え、微細構造は封入層の下に封入される。
【0035】
例えば、微細構造は、レンズレット、拡散要素、回折要素、及び/又はπフレネルレンズレットのうちの少なくとも1つを備える。
【0036】
第3の態様によれば、上で説明した光学デバイスを製造するためのシステムが提供される。
【0037】
例えば、システムは、上で説明した方法を実施するように構成される。
【0038】
例えば、システムは、主に、
・ある体積の硬化性材料を収容するための容器と、
・所定の強度でUV光を放出するように構成されたUV光源を備えるDLPプロジェクタと、
・UV光を用いて容器の内側に向けて投影タイルに少なくとも1つのグレースケール画像を投影するように構成されたデジタルマイクロミラーデバイスと
を備える。
【0039】
提案する方法に関連して上で提示した任意選択の特徴は、かかるシステムにも適用され得る。
【0040】
本開示は、光学レンズ又は眼科要素若しくはデバイスなどの、任意の種類の光学デバイス用に使用することができる。
【0041】
眼科要素の非限定的な例は、セグメント化されていてもよく又はされていなくてもよい単一ビジョン又は複数ビジョンレンズを含む補正及び非補正レンズのみならず、限定を伴うことなしに、眼鏡、グラス、ゴーグル、及びヘルメットにおいて見出されるものなどの拡大レンズ及び保護レンズ又はバイザーを含む視力を補正する、保護する、又は改善するために使用されているその他の要素を含む。
【0042】
それゆえ、上で説明した実施形態は、以下の利点を有し得る。
・平坦な透明基部又は湾曲した透明基部上に任意のタイプの微細構造(レンズレット:屈折、回折、拡散)を作る、
・微細構造を任意の透明基部(レンズ又は他の要素、例えば金型(ガラス若しくはプラスチック)、インサート(ガラス若しくは金属)、ウェハ、フィルムなど)上に直接作る、
・(例えば封入のために)透明基部の屈折率と異なる屈折率を有する微細構造を作る、
・微細構造の封入のために屈折率の異なる少なくとも2つの部分で光学デバイスを作る、
・着用者に応じて(例えば、コントラスト低減に対する着用者の感度、着用者の活動、着用者の網膜形状、着用者の近視(又は他の視力疾患若しくは屈折異常)進行速度などに応じて)個人化された微細構造(屈折力、密度、アレイのタイプ、レンズ上の領域)を作る、
・非層状化プロセスを提供する。
【0043】
封入の場合、以下の追加の利点がもたらされ得る。
・微細構造が封入層により保護される、
・微細構造に使用される化学物質は、適切な微細構造の内部に埋め込まれるため、眼科用途に適した通常の熱機械的特性(HDT約80℃、E>2GPaなど)を必ずしも有することはできない。これにより、典型的には高屈折率の化学物質を設計するために、より高い自由度が可能になる、
封入層が平滑な上面を提供し得るので、微細構造の設計に起因するハードコート堆積の問題がない、
・非常に高い屈折率は、必ずしも眼科用途の要件に適合しない材料を有する微細構造に使用することができる。
【0044】
添付の図面を参照して有利な実施形態を非限定的な例として以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】透明な基部の表面に微細構造が形成された光学デバイスの例示的な実施形態を示す。
【
図2】光学デバイスの内側に微細構造が形成された光学デバイスの例示的な実施形態を示す。
【
図3】非球面レンズレットが同心リング状に配置されたレンズレットを備える光学デバイスの例示的な一実施形態を概略的に示す。
【
図7】
図1又は
図2に示すような光学デバイスを製造するためのシステムの例示的な実施形態を提示する。
【
図8】例示的な一実施形態による製造システムを示す。
【
図9】例示的な一実施形態による、透明基部の表面に形成するレンズレットの輪郭を概略的に示す。
【
図10】別の例示的な実施形態による、透明基部の表面に形成するレンズレットの輪郭を概略的に示す。
【
図11】Jacob方程式(Ec及びDp)のパラメータを特定するための実験を図式化したものである。
【
図12】近視用の屈折球面レンズレット(10μmの画素サイズ)を形成するためのグレースケール画像を示す。
【
図13】近視用の回折πフレネルレンズレット(5μmの画素サイズ)を形成するためのグレースケール画像を示す。
【
図14】投影タイルが透明基部よりも小さい場合の、透明基部と比較したグレースケール画像投影タイルの相対変位を示す。
【
図15】屈折球面レンズレット(10μmの画素サイズ、4kプロジェクタ)の算出された画像を示す。
【
図16】35μmの画素サイズと4kの解像度を有するDLPを用いて、基部曲率半径CX=500mm、レンズ直径=70mmを作り出すための算出された画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下の開示では、例えば子供の近視進行を抑制するために、眼用レンズを製造するための積層造形技術に言及する。
【0047】
例えば、ここでは、体積積層造形の特定の技法によるレンズレット製造について説明する。
【0048】
開示の方法は、任意の表面形状を有する光学デバイス、特にレンズレットを用いた近視抑制用の眼用レンズを提供することを可能にする。しかしながら、これは、例えば作製すべき微細構造に応じて、近視抑制以外の他の主題に広げることができる。
【0049】
眼用レンズは、眼鏡レンズ用の任意の眼用デバイス、又は着用者に適合され且つ眼科用特性を有する他のデバイスであり得ることに留意されたい。
【0050】
積層造形方法は、既存の任意の適切な技術、例えば参照文献ISO/ASTM52900:2021により与えられる定義に含まれる技術、又は対応する参照文献に従って実行され得ることにも留意されたい。
【0051】
光学レンズの構造的な態様については、後に説明する。光学レンズは、光学レンズの主面の凸状前側(物体側とも呼ばれる)に、又は凹状後側(眼球側とも呼ばれる)に、又は両方の主面上に配置され得る微細構造を備える。
【0052】
微細構造は、少なくとも1つのレンズレットを備える。
【0053】
レンズレットは、その屈折力かその位相のいずれかを修正することにより、出力光を生成するための入力光のパワーを修正する
【0054】
レンズレットは、それらが配置される主面にバンプ及び/又は窪みを形成し得る。レンズレットの外形は、丸形又は多角形、例えば六角形であり得る。
【0055】
レンズレットは球面、トーリックであり得、又は非球面形状を有し得、回転対称である場合もない場合もある。レンズレットは、単一焦点、又は円柱強度、又は非合焦点を有し得る。好ましい実施形態では、レンズレットは、近視又は遠視の進行を阻止するために使用することができる。その場合、ベースレンズ基材は、近視又は遠視を矯正する屈折力を提供するベースレンズを含み、レンズレットはそれぞれ、着用者が近視を有する場合、ベースレンズの屈折力よりも大きい屈折力を提供し得るか、又は着用者が遠視を有する場合、ベースレンズの屈折力よりも小さい屈折力を有し得る。
【0056】
レンズレットはまた、フレネル構造、各々がフレネル構造を定めるレンズレットなどの回折構造、永続的な技術的バンプ、又は位相シフト要素であり得る。レンズレットはまた、マイクロプリズムなどの屈折光学要素、及び小さな突起若しくはキャビティなどの光分散光学要素、又は基材上に凹凸を生み出す任意のタイプの要素とすることができる。
【0057】
レンズレットはまた、米国特許第2021109379号明細書で説明されているπ-フレネルレンズレット、すなわち、その位相跳躍が2πの複数値である単焦点フレネルレンズとは対照的に、その位相関数が公称波長でπ位相跳躍を有するフレネルレンズレットとすることができる。そのようなレンズレットは、不連続形状を有する構造を含む。換言すれば、そのような構造の形状は、レンズレットが属する光学レンズの主面の基部レベルからの距離の観点での標高関数により説明でき、その関数は不連続を呈するか、又はその導関数が不連続を呈する。
【0058】
本発明のレンズレットは、0.5マイクロメートル(μm)以上且つ2.5ミリメートル(mm)以下の直径を有する円に内接可能な輪郭形状を有し得る。
【0059】
本発明のレンズレットは、それらが配置されている主面に直交する方向に測定される、0.1μm以上且つ50μm以下である最大高さを有する。前記主面は、表面と定義することができ、平面、球面、円筒、又は更には複雑な表面とすることができ、全ての微細構造の中心位置を含む。この主面は、レンズ内に微細構造が埋め込まれているときは、仮想面であり得る、又は、微細構造が埋め込まれないときは、眼用レンズの物理的な外面に近い又は同一であり得る。そのとき、微細構造の高さは、この主面への局所的な垂直軸を使用し、微細構造の各点について、この軸に沿った、主面に対する最大の正の偏差と最小の負の偏差との差を計算することにより決定することができる。
【0060】
レンズレットは、周期的な又は擬似周期的なレイアウトを有し得るが、ランダムな位置も有し得る。レンズレットの典型的なレイアウトは、一定のグリッドステップを有する、ハニカムレイアウトの、複数の同心円状のリングの、連続した、例えば微細構造間にスペースがないグリッドであり得る。
【0061】
これらの構造は、強度、曲率、又は光の偏向における光波面の修正を行うことができ、ここで波面の強度は、構造が吸光的であり得るとともに0%~100%の範囲の波面の強度を局所的に吸収し得るように構成され、曲率は、構造が±20ジオプタの範囲で波面の曲率を局所的に修正し得るように構成され、光の偏向は、構造が±1°~±30°の範囲の角度で光を局所的に散乱させ得るように構成される。
【0062】
構造間の距離は、構造(別個の微細構造)の0(隣接)~3倍の範囲であり得る。
【0063】
本例では、まず、光学デバイスとしてのいくつかのタイプのレンズレット設計及びレンズを、
図1~
図6に関連して説明する。
【0064】
現在は、近視の進行を遅らせることができる、眼用レンズ又はコンタクトレンズのような光学デバイスの様々な設計解決策が存在する。これらの例は、網膜の前方で焦点ぼけ又は非集束光の信号を生成する光学レンズレットのような微細構造の使用に基づく。そのようなレンズレットは、眼の伸長過程、又は「近視」過程とも呼ばれる、を遅らせる。
【0065】
このような微細構造は、例えば体積積層造形により、
図1に示すように、光学デバイス1の透明基部2の表面に、又は
図2に示すように、光学デバイス1の内側に形成される。
【0066】
より具体的にはここでは、
図2は、透明基部2と微細構造3とを備える光学デバイス1を示しており、微細構造3は、第1のステップでは透明基部2の表面上の材料Aにより形成し、次に、別の材料、材料B中に封入することさえでき、その後、第2のステップでは、材料Aで作られた微細構造をもたらし、最終的に光学デバイス1の内側に形成され、その後、光学デバイス1は、透明基部2と、微細構造3と、微細構造3を覆う封入部4とを含む。
【0067】
例示的な一実施形態によれば、微細構造の要素は、同心リング状に配置することができ、網膜の前方に複数の体積の非集束光を生成する非球面レンズレットを備え得る。
【0068】
【0069】
ここに示されていない別の例示的な実施形態によれば、レンズレットは、六角形アレイでの球面レンズレットのパターンで、且つ網膜の前方に複数の焦点ぼけを生成する「独立した島状」に配置される。
【0070】
拡散/散乱レンズレットの他の研究も、近視抑制の有効性に対する良好な結果を証明している。
【0071】
微細構造の他の形状も、異なる視力障害抑制のために興味深いように思われる。
【0072】
それゆえ、場合に応じて、要素の表面又は要素自体の内側のいずれかにも微細構造を有する光学デバイスを製造できることは、興味深いように思われた。
【0073】
また、非常に異なる形状の微細構造を有する光学デバイス、例えば拡散レンズレット、散乱レンズレット、拡散又は散乱ドット、屈折レンズレット(例えば、
図4に示すような単焦点レンズレット、又は
図5に示すような二焦点レンズレット、又はトーリックレンズレット)、回折レンズレット(例えば、
図6に示すようなπフレネルレンズレット)などであって、任意選択的に、球面若しくは非球面又は他の形状であり得る近視抑制のための第2の光学機能を有する光学デバイスを製造できることも興味深いように思われた。
【0074】
例えば、1つの光学デバイスのレンズレットは、レンズレットの光学機能の変化を意味する「勾配法則」(例えば、非球面レンズレットの表面屈折力は、例えばレンズ偏心に応じて、レンズ上のレンズレットの位置と共に変化する)を有することができ、又は異なる形態のレンズレットのうちの少なくとも2つの混合を有することができる。
【0075】
文献である国際公開第2022112531号パンフレット、国際公開第2022112533号パンフレット、又は国際公開第2022112534号パンフレットは、屈折、回折、拡散レンズレットを開示している。
【0076】
しかしながら、これらの形状は全て、通常の光学デバイス製造方法及び対応するシステムを用いて光学デバイスに形成することが非常に困難である。
【0077】
そのような光学デバイスを製造する方法及び対応するシステムの例示的な実施形態を
図7~
図16に関連して説明する。
【0078】
説明した実施形態では、所定の表面に微細構造を製造するために体積積層造形方法が使用される。
【0079】
この方法は、投影タイル11にUV光グレースケール画像12を投影するDLPプロジェクタ10を使用して、ある体積の材料14、例えば樹脂を特定の/所定の箇所で硬化させる。換言すれば、グレースケール画像12は、所定の領域における材料14の硬化を選択的に活性化することができる。したがって、1つの点に提供される光線量が高いほど、硬化性材料14のボクセルは厚くなる(以下に詳述するように、Jacobs方程式で説明する)。
【0080】
例えば、画像パターンは、(.tiff、.jpg、.png文書ファイルのような)画像・文書ファイルを形成するために生成(算出)される。これは、LEDとDMDとで構成されたDLPにロードされるグレースケール画像である。DMDは、LEDから到来する光を「構造化」できる「グリッド」のようなものである。換言すれば、DMDは、光の流れを「ピクセル化する」又は「整形する」。DMDの各マイクロミラーは個別に制御することができる。グレーレベルが256(白色)の場合、マイクロミラー(又は画素)は「開いた」(光の流れが通過している)ままである。グレーレベル「0」の場合、マイクロミラー(又は画素)は「閉じた」ままである(光束は停止する)。グレーレベル128の場合、マイクロミラーは、「開」状態と「閉」状態とを交互に繰り返し、グレーレベル256と比較して半分の光線量を提供する。
【0081】
図7は、かかる方法を実行するシステムの例示的な実施形態を示している。
【0082】
例えば、光学デバイスを製造するためのシステムは、かかるDLPプロジェクタ10を備える。
【0083】
DLPプロジェクタ10は、所定の強度で、且つ規定の波長領域で、例えばUV(紫外線)領域、例えば190nm~550nmの、より詳細には300nm~420nmの波長で光を放出するように構成された光源を備える。
【0084】
この目的を達成するために、光源は、例えば、所望の波長範囲の光を放出するためのLEDを備える。
【0085】
例えば、DLPプロジェクタ10は、ここでは、UVビデオプロジェクタを備える。
【0086】
DLPプロジェクタ10はまた、投影タイル11に表示される所望のグレースケール光パターン(画像)12を提供するように構成される。
【0087】
この目的を達成するために、DLPプロジェクタ10は、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)を備える。
【0088】
DMDは、アレイ状に配置された数百又は更には数千の微視的ミラーを備える。1つのマイクロミラーは、投影された画像における1画素に対応する。マイクロミラーは、「オン」位置又は「オフ」位置のいずれかに位置決めされるように個別に回転させることができる。「オン」位置では、光源からの光がレンズに反射されて画像の画素が明るく見える一方、「オフ」位置では、光が他の場所に向けられ、すなわち、投影タイル11内には向けられず、画素が暗く見える。グレースケールを作成するために、所定の周波数でマイクロミラーのオンとオフが切り替えられ、「オン」時間と「オフ」時間との比率により、生成される色調が決定される(「バイナリパルス幅変調」とも呼ばれる)。
【0089】
それゆえ、グレースケールにより、光エネルギーの中間値を提供することができる。
【0090】
したがって、光強度は単に同一のままであるが、光線量は画素毎に変化する。
【0091】
例えば、DLP(デジタルライトプロセッサ)のようなスクリーンプロジェクタは、2D計画で異なるレベルのグレーを提供することができる。DLP内に埋め込まれたDMDのマイクロミラーは、最大256又は更には1024の異なる周波数で振動し、それゆえ、単一の投影タイル(すなわち、1つの画像)にわたって最大256又は更には1024の異なる光エネルギー、したがって、「暗色」から「白色」までの256又は更には1024のグレーレベル、及び254(又は1022)の中間グレーレベルを生成することができる。
【0092】
例えば、微細構造を生成するために1つの表面に投影しなければならないグレースケール画像12は、光の下で硬化させる厚さの経時変化及びグレーレベルを考慮に入れるデジタル材料(樹脂)モデルに関して算出される。
【0093】
デジタル材料モデルの例として、修正されたJacobs方程式を使用して、所定の時間にわたって重合されるボクセルの高さに関して提供されるグレースケールを予測することができる。
【0094】
よって、DLPプロジェクタ10はまた、ある体積の硬化性材料14を収容するための容器13を備える。
【0095】
透明基部2の表面21に微細構造3を成長させるために、表面21は、投影タイル12に対して位置決めされる。
【0096】
光源により放出された光は、透明基部2を通過して硬化性材料14に到達し、表面21に微細構造を成長させる。
【0097】
興味深い実施形態によれば、システムはまた、光学デバイス1の少なくとも透明基部を所定の位置に維持するように構成されたブロッカを備える。
【0098】
図8は、設計された光学デバイスを作製するための方法ステップのフローチャートを示している。
【0099】
図8のチャートに従って作製された隣接するレンズレットの2つの例示的な実施形態、屈折球面レンズレット及び回折πフレネルについて説明する。
【0100】
例えば、透明基部は、例えば、MR7、MR8、ORMAなどで作られた光学素子とすることができる。
【0101】
ここではその例について、二平面ORMA(屈折率RI=1.498)が透明基部として選択される。
【0102】
透明基部の表面に微細構造を形成する材料(樹脂)を硬化させることができるように、透明基部が発光光源の最小限の光エネルギーを伝達しなければならないことは注目に値する。この点に関して、製造すべき光学デバイスに応じて、透明基部及び/又は光源を適合させることができる。
【0103】
ステップS1:作成すべき設計
第1の設計
ステップS1では、作成すべき設計は、透明基部上で硬化されなければならない形状である。
【0104】
第1の設計によれば、屈折球面レンズレットを上述の透明基部上に形成することが望ましい。
【0105】
かかる微細構造3の断面は
図9に概略的に表されている。
【0106】
この図では、横座標は、微細構造3の長さ(特にレンズレットの直径)を表し、縦座標は、微細構造3の高さ(レンズレットの高さ)を表す。
【0107】
したがって、この図では、9つのレンズレットと両側の2つの半部が表されている。
【0108】
全てのレンズレットは、ここでは、同一であり、同じ高さ及び同じ直径を有する。
【0109】
第2の設計
第2の設計によれば、回折πフレネルレンズレットを上述の透明基部上に形成することが望ましい。
【0110】
【0111】
図9と同様に、
図10の横座標は微細構造3の長さを表し、縦座標は微細構造3の高さを表す。
【0112】
したがって、
図10には、3つの回折πフレネルレンズレットが表されている。
【0113】
これらの全てのレンズレットは、ここでは、同一であり、同じ高さ及び同じ直径を有する。
【0114】
ステップS2a:ハードウェア仕様
ここで利用されるプロジェクタは、
図7に関連して説明したシステムでは、以下の仕様を有する。
・解像度:3840×2160画素(4k)、
・画素サイズ:35μm又は10μm又は5μm(画素サイズは(デ)フォーカスシステムで所要の精度に応じて設定される)、
・投影タイル11:134.4×75.6mm、又は38.4mm×21.6mm、又は19.2×1.08mm、
・光源のLEDの発光波長:365nm、
・LEDの光強度:10mW/cm
2
【0115】
ステップS2b:デジタル材料モデル
本例では、Jacobs方程式は、
図11に関連して説明したように、対応する実験とよく適合するため、デジタル材料モデルとして使用される。
【0116】
しかしながら、デジタル材料モデルが必ずしもJacobs方程式に従わないことは注目に値する。これは、露光下での「物質応答」に強く依存する。したがって、Jacob方程式の代わりに別の方程式モデルを使用することができる。
【0117】
したがって、ここでは、本説明の例示的な実施形態に使用される樹脂に適合するデジタル材料モデルは、以下のようなJacobs方程式に基づく:
E(z)=Ec*exp[z/Dp]
ここで、
・Zは、重合させる材料の厚さ(μm単位)であり、透明基部の表面と比較した高さに相当し、
・E(z)は、ミリジュール×平方センチメートル(mJ/cm2)単位の、zの材料厚さを重合させるために提供されるエネルギー量であり、
・Ecは、ヌルでない厚さを重合させるために提供される最小エネルギー(すなわちエネルギー閾値)であり、ここではEc=10.9mJであり、
・Dpは、光浸透深さ(マイクロメートル)であり、ここではDp=11μmである。
【0118】
光浸透深さ(Dp)は、約35%吸収される前に光が樹脂を横切る距離を表す。
【0119】
臨界エネルギー(Ec)は、材料を液体状態から固体状態にするために提供すべき最小光線量を示す。
【0120】
これは、材料を透明基部上に重合させるために、臨界エネルギー(Ec)を超える光線量(E)が必要であることを意味する。
【0121】
一方、提供されるエネルギー(光線量)はまた、以下のように、光照射のグレーレベル、強度及び時間の関数である:
E=GS*I*t
ここで、
・GSは、0から1に変化するグレーレベルであり、
・iは、ミリワット×平方センチメートル(mW/cm2)単位での放射光の強度であり、
・tは露光時間(秒)である。
【0122】
グレースケール値を含む方程式にエネルギー量を置き換えることにより、次式が得られる:
【数1】
ここで、tc=
【数2】
である。
【0123】
この例では、EC及びDPは、異なる光線量に対する重合厚さを測定することからなるJacobs方程式の線形化により決定される。
【0124】
例えば、
図11に図式化して示すように、ある実験を以下のように行った。
(i)ここではUV光に対して透明なガラス板を含む透明基部2が、
図11Aに示すように、ここでは液体樹脂を含む硬化性材料14上に配置される)。
(ii)正方形のUV光(例えば、この場合は365nmでの)が透明基部2を横切って投射される。
(iii)ステップ(i)及び(ii)は、
図11Bに示すように、異なる照射時間t1、t2、t3及びt4(t1<t2<t3<t4である)に対して繰り返され、
次に、重合厚さがノギスで測定され、
これは、照射時間(光線量)が長いほど、重合構造に厚みがあることを示している。
(iv)最終的に、重合厚さ(mm単位)対ln(E)は、
図11Cに示すようにプロットされており(「標準曲線」)、Ec及びDpに達するようにJacob方程式でフィッティングした。
【0125】
使用材料14の組成
この実施例では、微細構造3を形成するために使用される、重合させるべき材料14は樹脂であり、その特性は、以下のように化合物を配合している間に得られる:
【0126】
【0127】
UV吸収剤が比較的高レベルであるため、特別な混合を適用しなければならない。
【0128】
アクリレートモノマー/オリゴマー樹脂を50℃まで加熱し、次にUV吸収剤を3日間激しく撹拌しながら徐々に添加する。
【0129】
その後、激しい撹拌を50℃で1週間続ける。
【0130】
1週間後、樹脂をゆっくりと23℃まで冷却し、光開始剤を添加し、混合が24時間続く。
【0131】
配合物を1μmフィルタで濾過し、Dpを制御する。
【0132】
硬化後の材料(樹脂)の屈折率は、約1.498であり、以下をもたらす。
・(上で説明した)回折πフレネルレンズレットの-0/+4dpの同時の屈折力(λ=550nm)、
・(上で説明した)屈折球面レンズレットの設計のための+2.75dp、
・レンズレットの曲率及びサグを変更し、製造パラメータを適合させることにより、屈折力、又は550nmでの効率比を変更し、又は屈折率の異なる材料を用いて変更するために、レンズレットの異なる光学系を定義することができ、又は封入解決策もより低い屈折率差(以下に説明する)で想定することができる。
【0133】
ステップS3:画像計算機
画像計算機は、ハードウェア仕様及びデジタル材料モデルを考慮に入れることにより「作成すべき設計」(
図8のステップS1)をグレースケール画像に変換する数値ツール(例えば、スクリプト)である。
【0134】
また、作製すべき設計全体よりも投影タイル11が小さい場合、(例えば
図14に示すように)順次投影するために画像を切断する。
【0135】
ステップS4:DLPにロードされる投影すべきグレースケール画像
説明のために、
図12及び
図13は、
図9及び
図10の輪郭に対応する、近視用のレンズレットを形成するためのグレースケール画像を示している。
【0136】
より具体的には、
図12は、
図9の輪郭に対応する屈折球面レンズレット(10μmの画素サイズ)を形成するためのグレースケール画像を示しており、
図13は、
図10の輪郭に対応する回折πフレネルレンズレット(5μmの画素サイズ)を形成するためのグレースケール画像を示している。
【0137】
ステップS5:画像の投影
生成された少なくとも1つの画像は、硬化性材料14に少なくとも接触する透明基部2の表面21に投影される。
【0138】
このステップは「硬化」とも呼ばれる。
【0139】
画像は、画像計算機により算出された時間に従って投影され、例えば、
・屈折球面レンズレットの場合、-26.75秒(
図12)、
・回折πフレネルレンズレットの場合、-43.25秒(
図13)。
【0140】
微細構造を作製するためにグレースケール画像を使用する場合、特に硬化材料の伝播フロンティア(硬化材料と未硬化材料との間)が重合プロセスに起因して多くの熱エネルギーを放出する場合、このグレースケール画像(すなわち、画像上の光)を複数回活性化させることが適切である可能性がある。
【0141】
高い空間周波数を有する高解像度微細構造、例えばフレネル構造を印刷する場合、Z軸(透明基部の表面と比較した高さ)に沿ったかかる前面の伝播により、回折/散乱が生じ、これにより、微細構造の初期の所望の形状を変化させる。
【0142】
これは、照明パターンを変化させることにより補償することが困難であるか又は更には不可能である、強め合う/弱め合う干渉により生じる、更なるZ方向における望ましくない光分布につながる。
【0143】
同様に、特定の位置における透明基部上に散乱/拡散微細構造を作製する必要がある場合、類似の理由から、伝播前面がこの位置に達しているときにグレースケール画像を活性化させ、伝播前面での望ましくない光分布を制限することが望ましい。
【0144】
例として、1つの表面に微細構造を有するレンズを提供する必要がある場合、第1のグレースケール画像を使用してレンズ屈折力(低い空間周波数)に対応する伝播前面を作製し、次いで、伝播前面が所望の微細構造の位置に近接する場合、微細構造に対応する伝播前面を作製するための第2のグレースケール画像を表示することが望ましい場合がある。
【0145】
この場合、微細構造は、光源から最も離れた透明基部表面に位置決めされる。
【0146】
ステップS6:洗浄及び後硬化
微細構造3が形成された後、本方法は、このようにして得られた光学デバイス1の表面を洗浄するステップを更に含むことができる。
【0147】
例えば、光学デバイス1の表面から残留材料14を除去するために、微細構造3を備えた透明基部を回転させる。
【0148】
微細構造が形成される表面のサイズよりも投影タイルのサイズが小さい場合
投影タイル11のサイズが、微細構造(レンズレット)が形成される必要のある透明基部2の表面21よりも小さい場合、光学デバイスの製造は、透明基部2と比較した投影タイル11の相対変位により行われる。これは、
図14により示されている。
【0149】
相対運動は、逐次的又は連続的である可能性がある。
【0150】
変位が連続的である場合、「映像フィルム」、すなわち一連の画像を使用する必要がある。
【0151】
そのように、グレースケール画像は、投影タイル11の変位の頻度の関数及び「画素化」による微細構造の理論的形状の離散化の関数として再生される(例えば、グレースケール画像は、投影タイル11と透明基部2との相対運動が約1画素サイズである度に再生される)。
【0152】
第1の変形実施形態
近視を抑制するために、レンズレットの設計がより多様であり得ることが示されている。例えば、拡散要素を使用することができる。
【0153】
そのように、本開示では、半透明材料を使用して近視の光学制御要素を構築することも可能である。
【0154】
半透明材料は、硬化性材料の内部に充填剤を添加することにより容易に配合し、これにより、近視を抑制できる半透明材料を得ることができる。
【0155】
第2の変形実施形態
近視を抑制するために、レンズレットの設計がより多様であり得ることも示されている。例えば、回折要素も使用することができる。
【0156】
回折は、DLPを改変すること、その焦点を合わせること及び焦点をぼやけさせることによって本開示の方法で生じさせることができる。
【0157】
回折は、DMDから生じさせることができる。
【0158】
通常、画素/DMD/DLPにより生じる回折は、従来の光学透明基部の積層造形における光学的欠陥とみなされる。
【0159】
任意選択の実施形態
光学要素(微細構造)を別の光学要素(例えば、上で説明したような透明基部上)に構築することが可能であるので、微細構造(レンズレット)を、ここでは「封入層」4と呼ばれる、追加の微細構造(例えば、ポリマーマトリックス中)に封入することも可能である。
【0160】
これは、前述と同じプロセスにより行うことができるが、光学機能を維持するために、封入層4が異なる屈折率を有するべきである。
【0161】
この目的を達成するために、微細構造3(レンズレットのセット)を構築した後、硬化性材料14が変更され、プロセスが、新たな(第2の)デジタル材料モデル、及び最終的には他のハードウェア仕様で適用される。
【0162】
したがって、第1の硬化性材料14を収容する容器13が空にされる。
【0163】
任意選択的に、方法は、容器を並べるステップを含む。
【0164】
次に、同じ容器13に前記第2の硬化性材料が充填される。
【0165】
このようにして後に得られる光学デバイス1にステップ6を適用することもできる。
【実施例】
【0166】
レンズレットを含む微細構造3に使用される樹脂の組成物(固体状態では屈折率:1.72X):
【0167】
【0168】
その硬化特性もJacobs方程式に従う。
【0169】
その結果、Ec=25.2mJ、及びDp=12μmである。
【0170】
屈折球面レンズレット(マトリックスML2D接合P4D、λ=550nm、dn=0.073、直径=0.6mm、10μmの画素サイズ、4kプロジェクタ)に適用される算出された画像は、
図15に示すようなものである。
【0171】
照射時間が、例えば38.978秒に設定される。
【0172】
次に、残留材料14を除去するために、微細構造3を備えた透明基部を回転させる。
【0173】
この第1の微細構造3が形成された(すなわち、レンズレットの形成)後、樹脂は、以下の実施例で変更される。
【0174】
レンズレットを封入するために使用される樹脂の組成(固体状態での屈折率:1.498):
【0175】
【0176】
その硬化特性も、Jacobs方程式(EC=21mJ、Dp約0.39μm)に従う。
【0177】
適用される算出された画像(Cx=500mm、レンズ直径=70mmの場合)は、屈折球面レンズレット(35μmの画素サイズ、4kプロジェクタ)では
図16に示す通りである。
【0178】
この例示的な実施形態では、照射時間は48.75秒に設定される。
【0179】
そのように、レンズレットは、1.227mmの矢印(封入層の中心の厚さ)を有するCX500mm設計で封入される。
【0180】
材料14の高さ(厚さ)が、予め重合されており、したがって光路が修正されているので、算出された画像では第1の微細構造3が考慮に入れられていることは注目に値する。
【0181】
算出された画像では、場合に応じて、透明基部の設計とその光学系も考慮に入れるべきであることも注目に値する。実際に、透明基部により投影パターンが修正される。
【0182】
封入により、透明基部上の微細構造全体の高さ設計の増加が誘発されることにも留意されたい。これは、微細構造が薄くなるほど重合精度を確保することがより困難になるため、ここで使用されるプロセスに関する利点である。
【0183】
これは、例えば、球面レンズレットの場合である。
【0184】
球面レンズレットでは、ジオプタ1.498/空気(指数差0.498)で先に定義したような、2.75dp及びサイズ0.6mmの封入されていないレンズと比較して、ここでは、RI=1.72及び1.49の2つの透明基部間には0.23の指数差があるため、2倍超小さくなる。
【0185】
したがって、製造すべき封入される球面レンズレットの曲率は、少なくとも2倍小さくする必要があるため、封入後に同じ+2.75dpの屈折力を得るために、球面レンズレットのサグは、少なくとも2倍大きくなる。
【0186】
同じ理由から、レンズレットの屈折力をリバランスさせないが、主要回折次数0と+1の両方の効率比をリバランスさせる(550nmでの屈折力は、πフレネル設計の特定の特性に起因して一定のままである)ことを除いて、屈折率差の影響を補償するためにフレネル曲率を増加させる必要がある場合がある。
【国際調査報告】