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特表2025-532472二酸化炭素を隔離し、及び天然水体の酸性化を中和するためのシステム及び方法
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  • 特表-二酸化炭素を隔離し、及び天然水体の酸性化を中和するためのシステム及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-10-01
(54)【発明の名称】二酸化炭素を隔離し、及び天然水体の酸性化を中和するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20250924BHJP
   A61L 2/232 20060101ALI20250924BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20250924BHJP
【FI】
B01D53/14
A61L2/232
C01B32/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2025511421
(86)(22)【出願日】2023-08-29
(85)【翻訳文提出日】2025-04-18
(86)【国際出願番号】 US2023073052
(87)【国際公開番号】W WO2024050337
(87)【国際公開日】2024-03-07
(31)【優先権主張番号】63/401,959
(32)【優先日】2022-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】525019350
【氏名又は名称】クヌーセン ホールディングス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】オドリン,マシュー ジョーダン
(72)【発明者】
【氏名】リーズ,ジャスティン ベイカー
(72)【発明者】
【氏名】チャルフィン,マックス
【テーマコード(参考)】
4C058
4D020
4G146
【Fターム(参考)】
4C058AA01
4D020AA03
4D020BA01
4D020BA02
4D020BA08
4D020BA09
4D020BA22
4D020BA23
4D020BB01
4D020BB03
4D020CA07
4D020CB40
4D020CC21
4D020DA02
4D020DA03
4D020DB20
4G146JA02
4G146JB10
4G146JC05
4G146JC40
(57)【要約】
方法は、ペイロードが第1の構成である間に水体中の第1の位置にペイロードを配備することを含む。ペイロードは、天然水流を介して水体中の第2の位置に移動し、及び第1の位置から第2の位置への移動中に第1の構成から第2の構成に遷移して、大気中炭素の隔離を促進し得る。本方法は、第1の構成から第2の構成に遷移するペイロードに関連付けられた大気中炭素の隔離量を定量化することを含む。いくつかの実装形態では、ペイロードは、目的産物が播種され得る基材であり得る。いくつかの実装形態では、かかる基材は、アルカリ性液体を含み得る、天然に存在する材料で形成され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水体中の第1の位置に二酸化炭素除去(CDR)ペイロードを配備することであって、前記CDRペイロードは、第1の構成である、配備することと、
前記CDRペイロードが天然水流を介して前記水体中の第2の位置に移動することを可能にすることであって、前記CDRペイロードは、前記第1の位置から前記第2の位置への移動中、第1の構成から第2の構成に遷移して、二酸化炭素隔離を促進する、可能にすることと、
前記第1の構成から前記第2の構成に遷移する前記CDRペイロードに関連付けられた前記二酸化炭素隔離の量を定量化することと
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の構成から前記第2の構成に遷移する前記CDRペイロードに関連付けられた前記二酸化炭素隔離の前記量に少なくとも部分的に基づいて、カーボンクレジットを規定することと、
炭素市場で前記カーボンクレジットを販売することと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記CDRペイロードは、基材を含み、前記方法は、
前記第1の構成における前記基材の浮力が閾値浮力よりも大きく、及び前記第2の構成における前記基材の浮力が前記閾値浮力よりも小さくなるように、天然に存在する材料又は産業生産される材料の少なくとも1つから前記基材を形成すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基材は、目的産物を含み、前記閾値浮力は、前記基材が前記第1の位置から前記第2の構成に運搬されるにつれて成長し、及びバイオマスを蓄積した後の前記目的産物の負浮力に少なくとも部分的に基づく、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記CDRペイロードに関連付けられた前記二酸化炭素隔離の量は、前記基材が前記第1の構成から前記第2の構成に遷移した結果として隔離された二酸化炭素の量と、前記目的産物が成長し、及びバイオマスを蓄積した結果として隔離された二酸化炭素の量との和である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
アルカリ性材料を含むコーティングで前記基材の少なくとも一部を被覆することであって、前記コーティングは、前記基材が前記水体中に配備されるときに溶解して、前記基材が前記第1の構成から前記第2の構成に遷移することを引き起こすように構成される、被覆すること
をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記基材は、前記CDRペイロードの第1の部分であり、及び前記コーティングは、前記CDRペイロードの第2の部分であり、前記CDRペイロードの前記第2の部分は、前記基材が前記天然水流を介して前記第1の位置から前記第2の位置に運搬されるにつれて、前記水体中に放出されるように構成された化学的CDRペイロード又は生物学的CDRペイロードの少なくとも1つを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記CDRペイロードに関連付けられた前記二酸化炭素隔離の前記量は、前記CDRペイロードの前記第1の部分の結果として隔離された二酸化炭素の量と、前記CDRペイロードの前記第2の部分の結果として隔離された二酸化炭素の量との和である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記CDRペイロードは、アルカリ性材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記CDRペイロードを前記配備することは、前記アルカリ性材料が液体形態である間に前記CDRペイロードを前記水体中の前記第1の位置に配備することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アルカリ性材料は、アルカリ性液体であり、前記方法は、
前記CDRペイロードが前記第1の位置から前記第2の位置に運搬されるにつれて、前記アルカリ性液体を前記水体中に放出することであって、前記アルカリ性液体の前記放出は、前記水体の酸性化を少なくとも部分的に中和するか、又はCDRペイロードから放出された酸性分を少なくとも部分的に中和するように動作可能である、放出すること
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
天然に存在する材料源から、天然に存在する材料を受け取ることと、
前記天然に存在する材料を二酸化炭素除去(CDR)ペイロードの少なくとも一部へと形成することと、
前記CDRペイロードを水体中の第1の位置に配備することと、
前記CDRペイロードが天然水流によって前記水体中の前記第1の位置から前記水体中の第2の位置に運搬されるにつれて、前記CDRペイロードが第1の構成から第2の構成に遷移することを可能にすることと、
前記CDRペイロードが前記第1の構成から前記第2の構成に遷移した結果として、前記CDRペイロードを介して二酸化炭素を捕捉することと、
前記CDRペイロードによって隔離された前記二酸化炭素の量を定量化することと
を含む方法。
【請求項13】
前記CDRペイロードが前記第1の構成から前記第2の構成に遷移した前記結果として捕捉された前記二酸化炭素の前記量に少なくとも部分的に基いて、カーボンクレジットを規定することと、
炭素市場で前記カーボンクレジットを販売することと
をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記CDRペイロードは、基材であり、前記方法は、
前記第1の構成における前記基材の浮力が閾値浮力よりも大きく、及び前記第2の構成における前記基材の浮力が前記閾値浮力よりも小さくなるように、天然に存在する材料又は産業生産される材料の少なくとも1つから前記基材を形成すること
をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記基材は、目的産物を含み、前記閾値浮力は、前記基材が前記第1の位置から前記第2の構成に運搬されるにつれて成長し、及びバイオマスを蓄積した後の前記目的産物の負浮力に少なくとも部分的に基づく、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
炭素質材料又はアルカリ性材料の少なくとも1つを含むコーティングで前記基材の少なくとも一部を被覆することであって、前記コーティングは、前記基材が前記第1の位置から前記第2の位置に運搬されるにつれて溶解して、前記基材が前記第1の構成から前記第2の構成に遷移することを引き起こすように構成される、被覆すること
をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記CDRペイロードは、アルカリ性材料を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記アルカリ性材料は、アルカリ性液体であり、前記方法は、
前記CDRペイロードが前記第1の位置から前記第2の位置に運搬されるにつれて、前記アルカリ性液体を前記水体中に放出することであって、前記アルカリ性液体の前記放出は、前記水体の酸性化を少なくとも部分的に中和するか、又はCDRペイロードから放出された酸性分を少なくとも部分的に中和するように動作可能である、放出すること
をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
天然に存在する材料源から、天然に存在する材料を受け取ることと、
前記天然に存在する材料を二酸化炭素除去(CDR)ペイロードへと形成することと、
前記CDRペイロードに少なくとも部分的に基づいて、水体中の目的位置を決定することと、
前記CDRペイロード及び前記目的位置に少なくとも部分的に基づいて、少なくとも1つの機械学習モデルを実行して、前記水体中に前記CDRペイロードを配備するための配備位置を決定することであって、前記CDRペイロードは、天然水流によって前記配備位置から前記目的位置に運搬されるように構成され、前記CDRペイロードは、前記CDRペイロードが前記配備位置から前記目的位置に運搬されるにつれて、二酸化炭素を捕捉するようにさらに構成される、決定することと
を含む方法。
【請求項20】
前記CDRペイロードによって捕捉された前記二酸化炭素の量を定量化することと、
前記CDRペイロードが前記配備位置から前記目的位置に運搬されるにつれて捕捉された前記二酸化炭素の前記量に少なくとも部分的に基いて、カーボンクレジットを規定することと、
炭素市場で前記カーボンクレジットを販売することと
をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記目的位置は、前記CDRペイロードが前記配備位置から前記目的位置に運搬されるときの、前記水体を通した前記CDRペイロードの推定移動時間及び予測軌跡に少なくとも部分的に基づいて決定される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記配備位置は、(i)前記CDRペイロードが前記配備位置から前記目的位置に運搬されるときの、前記水体を通した前記CDRペイロードの推定移動時間及び予測軌跡と、(ii)環境条件、前記水体の化学的性質、魚若しくは海洋哺乳動物の回遊領域又は前記予測軌跡に沿った船舶交通の少なくとも1つとに少なくとも部分的に基づいて決定される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記CDRペイロードは、アルカリ性液体を含み、前記方法は、
前記CDRペイロードが前記配備位置から前記目的位置に運搬されるにつれて、前記アルカリ性液体を前記水体中に放出することであって、前記アルカリ性液体の前記放出は、前記水体の酸性化を少なくとも部分的に中和するか、又は前記CDRペイロードから放出された酸性分を少なくとも部分的に中和するように動作可能である、放出すること
をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記CDRペイロードは、前記CDRペイロードが前記配備位置から前記目的位置に運搬されるにつれて、第1の構成から第2の構成に遷移するように構成された基材を含み、前記方法は、
前記基材が前記第2の構成に遷移する前の前記CDRペイロードの浮力が閾値浮力よりも大きく、及び前記基材が前記第2の構成であるときの前記CDRペイロードの前記浮力が前記閾値浮力よりも小さくなるように前記基材を形成することと、
前記基材が前記第2の構成であるとき、前記目的位置で前記水体中の所定の深さに沈下して、前記CDRペイロードによって捕捉された前記二酸化炭素を隔離するように前記CDRペイロードを構成することと
をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記基材を前記形成することは、地上バイオマスから前記基材を形成することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記CDRペイロードは、前記基材に付着した目的産物を含み、前記閾値浮力は、前記CDRペイロードが前記配備位置から前記目的位置に運搬されるにつれて成長し、及びバイオマスを蓄積した後の前記目的産物の負浮力に少なくとも部分的に基づく、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記CDRペイロードが前記水体中の前記所定の深さに沈下した結果として隔離された前記二酸化炭素の量は、前記基材が前記第1の構成から前記第2の構成に遷移した結果として捕捉された二酸化炭素の量と、前記目的産物が成長し、及びバイオマスを蓄積した結果として捕捉された二酸化炭素の量との和である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも炭素質材料又はアルカリ性材料を含むコーティングで前記基材の少なくとも一部を被覆することと、
前記CDRペイロードが前記配備位置から前記目的位置に運搬されるにつれて溶解するように前記コーティングを構成することと
をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記コーティングは、前記コーティングが溶解するのに応じて放出されて、前記目的産物が成長し、及びバイオマスを蓄積することを支援するように構成された栄養素、肥料又は添加剤の少なくとも1つをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記コーティングは、前記アルカリ性材料を含み、前記方法は、
前記コーティングに応じて前記基材の少なくとも一部を滅菌すること
をさらに含む、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本願は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、「Ocean Based Carbon Removal Systems and Methods of Using the Same」という名称の2022年8月29日に出願された米国仮特許出願第63/401,959号に対する優先権及びその利益を主張する。
【0002】
背景
[0002] 本開示は、概して、大気中二酸化炭素を低減し、及びそれから生じる影響を軽減するためのシステム及び方法に関し、より具体的には、二酸化炭素を天然水体の速い炭素サイクルから遅い炭素サイクルに移送し、及びかかる水体の酸性化を中和するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 人間の活動により、大気中二酸化炭素(CO)は、化石燃料の燃焼、土地利用の変化及び他の産業プロセスに起因して、過去200~300年間にわたっておよそ50%(約280ppmから約420ppmに)増加した。大気中COのこうした人為的な増加は、地球の温暖化、林野火災の増加、干魃の増加、暴風の厳しさ及び頻度の増加、海面上昇、氷河の融解並びに海洋の酸性化を含めて、様々な環境及び社会問題の原因になっている。
【0004】
[0004] 世界的な炭素サイクルは、地球の主な炭素リザーバー、すなわち海洋及び地上生物圏、大気、海洋並びに沈降物/岩石間の様々な応答及びフィードバック機構を介して作用する。地球の炭素サイクルは、2つの識別可能な、しかし重複する構成要素:速い炭素サイクル及び遅い炭素サイクルに分類され得る。速い炭素サイクルは、光合成及び呼吸を介した炭素の移動並びに生物圏、大気及び海洋間のCOの連続的な交換を包含する。速い炭素サイクルは、動的で変動しやすく、生態系を介した炭素フローとして最もよく理解され得る。対照的に、遅い炭素サイクルは、重力、圧力、化学的風化、海洋流などを介した炭素の移動からなる。これらのプロセスは、生物及び生態系から、沈降物、鉱物堆積物(例えば、油、ガス、石炭)、深水などの地質学的深水深リザーバーに炭素を移動させる。遅い炭素サイクルリザーバーは、非常にゆっくりと進展する。
【0005】
[0005] 人間の介入なしでは、炭素は、石灰岩並びに油及びガス含有岩石の沈み込み及び融解によって駆動される火山活動を介して何百万年にもわたり、及び海洋湧昇を介して中間時間スケールにわたり、遅いサイクルから速いサイクルに移動する。相対的に急速な人口増加以前には、大気、海洋、生物圏及び地質学的リザーバー間の炭素サイクルは、速い及び遅い炭素サイクルの両方で安定した気候、海洋化学及び生態系を促進するように一般にバランスが保たれていた。炭素が豊富な資源などの抽出及び燃焼などの活動に基づき、人間は、毎年、遅いサイクルから速いサイクルに300億トン超の炭素を事実上移動させている。
【0006】
[0006] 結果として、21世紀に人類が直面する最大の課題の1つは、大気及び天然水体の上層からCO(例えば、速い炭素サイクルのCO)を除去するスケーラブルな方法と、例えば深水(例えば、深海)、海洋沈降物及び/又は地質学的堆積物などに(例えば、遅い炭素サイクルにおける又はそれによる)COを永続的に隔離する方法とを開発することである。大気中COの安定化及び低減並びに天然水体の酸性化の中和のかかる取り組みは、したがって、大気中COの増加に関連付けられる環境及び人道的被害を制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0007] したがって、大気中のCOの分圧を低減し、海水のpHを増加させ、及び地球に有益な影響を及ぼすために、速い炭素サイクルから遅い炭素サイクルに炭素を移動させ、及び水体の酸性化を中和するための改善されたシステム及び方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
概要
[0008] 本明細書に記載の実施形態は、炭素を隔離して、その炭素を速い炭素サイクルから遅い炭素サイクルに速やかにかつ効率的に移送し、及び天然水体の酸性化を中和するための方法及びシステムに関する。特に、本明細書に記載の方法及びシステムは、炭素隔離のための、及び/又は正味カーボンニュートラル若しくはカーボンネガティブプロセスで炭素隔離をさらに促進するように天然水体の酸性化を低減するための、天然に存在する材料及び/又はアルカリ性材料(例えば、アルカリ性鉱物及び/又は液体)から形成される浮遊基材などのペイロードの使用に関する。例えば、いくつかの事例では、かかるペイロードは、水体の所定の位置に配備し、(例えば、受動的に)天然水流によって輸送されるようにすることができ、そこで、ペイロードは、隔離炭素を遅い炭素サイクルに移送するように深水に沈下し、及び/又はさもなければ分解、溶解、分散及び/又は遷移し得る。本明細書に記載のペイロードは、炭素隔離の目的(若しくは他の独立した目的)で独立した構成要素として使用され得、炭素隔離の目的で使用される海洋目的産物の栽培に関連して使用され得、及び/又はそれらの組合せ若しくは任意の他の好適な目的で使用され得る。いくつかの実装形態では、ペイロード又はその一部は、ペイロードの浮力、栄養素の放出、目的産物の付着及び/又は成長の促進(又はさもなければバイオマスの蓄積)、大気中及び/又は海洋中炭素の隔離、太陽放射線の反射を増加させ、及び水体の加温を低減する表面海水のアルベド、及び/又は水体のアルカリ度(alkalinity)を増加させることによる(例えば、海洋及び/又は他の水体の)二酸化炭素によって引き起こされる酸性化の影響の軽減などの選択的な制御及び/又は増強を可能にし得る。
【0009】
[0009] いくつかの実装形態では、方法は、ペイロードが第1の構成である間に水体中の第1の位置にペイロードを配備することを含む。ペイロードは、天然水流を介して水体中の第2の位置に移動し、及び第1の位置から第2の位置への移動中に第1の構成から第2の構成に遷移して、大気中炭素の隔離を促進することを可能にされる。本方法は、第1の構成から第2の構成に遷移するペイロードに関連付けられた大気中炭素の隔離量を定量化することを含む。いくつかの実装形態では、ペイロードは、目的産物が播種され得る基材であり得る。いくつかの実装形態では、かかる基材は、アルカリ性材料(例えば、アルカリ性鉱物及び/又はアルカリ性液体)を含み得る、天然に存在する材料で形成され得る。いくつかの実装形態では、ペイロードは、水体の少なくとも一部のアルカリ度を増強するように構成され得、それにより水体での大気中二酸化炭素の隔離及び/又は酸性化の中和を促進する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
[0010] 本開示の上記及び他の特徴は、添付図面と併せて以下の説明及び添付の特許請求の範囲からより詳細に明らかになるであろう。これらの図面は、本開示に従って単にいくつかの実装形態を描くものにすぎないため、その範囲の限定とみなされるべきではないことを理解したうえで、添付図面の使用を通してさらに具体的及び詳細に本開示を記載する。
【0011】
図1】[0011]一実施形態に係る、天然に存在する基材を用いて、速い炭素サイクルを介して炭素を隔離し、隔離炭素を遅い炭素サイクルに移送する方法のフローチャートである。
図2】[0012]一実施形態に係る、天然に存在する材料を用いて基材を形成し、速い炭素サイクルを介して炭素を隔離し、及び水体中の第1の位置から第2の位置に基材を受動的に輸送して、隔離炭素を遅い炭素サイクルに移送するためのシステムの概略ブロック図である。
図3A】[0013]一実施形態に係る、第1の構成の栽培機器の概略図である。
図3B】[0013]一実施形態に係る、第2の構成の栽培機器の概略図である。
図4】[0014]一実施形態に係る、アルカリ性材料から形成されたコーティングを含む栽培機器の概略図である。
図5】[0015]一実施形態に係る、機器の基材の第1の側に第1のコーティング及び第2の側に第2のコーティングを含む栽培機器の概略図である。
図6】[0016]一実施形態に係る、アルカリ性材料から形成された栽培機器の概略図である。
図7】[0017]一実施形態に係る栽培機器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0018] 以下の詳細な説明全体を通して、添付図面が参照される。図面では、同様の記号は、特に文脈上規定されない限り、典型的には同様の構成要素を指す。詳細な説明、図面及び特許請求の範囲に記載の例示的な実装形態は、限定することを意味しない。ここで提示される主題の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他の実装形態が利用され得、及び他の変更形態がなされ得る。本明細書に一般的に記載され、及び図に例示される本開示の態様は、多様な異なる構成で配置、置換、組合せ及び設計することができ、それらのすべてが明示的に企図され、本開示の一部をなすことが容易に理解されるであろう。
【0013】
詳細な説明
[0019] 本明細書に記載の実施形態及び方法は、大気中の温室効果ガス(例えば、二酸化炭素)の蓄積を低減し、及び/又はかかる大気中の温室効果ガスを捕捉及び隔離する自然系の能力を増強することに関する。例えば、本明細書に記載の二酸化炭素除去(「CDR」)は、大気、上部海洋及び生物圏(例えば、速い炭素サイクル)中の二酸化炭素の迅速に循環するリザーバーから、遅い炭素サイクルリザーバー内での貯蔵に炭素を移動させる任意の活動である。炭素除去は、相加的であり、永続的であり、物質移送の直接及び/又は間接測定を介して定量化され得る。速いサイクルの炭素吸収を促進する生態系の再構築及び保存と組み合わせたとき、復元的な炭素除去は、速い炭素サイクルの生産性を増強すること、及び速い炭素サイクルから遅い炭素サイクルに炭素を移動させることの両方が可能である。しかしながら、大気的に有意なものにするために、マルチギガトン規模で炭素を移送する能力のある炭素隔離技術が一般に望ましい。
【0014】
[0020] 海洋などの水体は、潜在的に強力な天然ベースのCDR機構を提示する。例えば、表面海洋は、大気との二酸化炭素の交換を継続的に行っており、空気-水界面にわたって年間約100ギガトン(「Gt」)のCOを溶かす。透光ゾーン(すなわち光合成を可能にするのに十分な太陽光を受け取る水体の領域)では、それは、純一次生産で約40GtのCOも固定する。この炭素のほとんどは、速い炭素サイクルに残留するが、一時的とはいえ大気から二酸化炭素を捕捉及び濃縮する海洋の能力は、天然ベース(例えば、水ベース)のCDRのための手段を提供し得る。さらに、深海は、大規模な炭素吸収源であり、何百年~何千年にもわたって約37,000GtのCOを大気混合から切り離して(溶解形態で)永続的に保持する。しかしながら、表面海洋大気フラックスから深海貯蔵への天然炭素の移送機構は、相対的に限定され、年間約10GtのCO隔離をもたらす。このため、本明細書に記載の「水CDR」又は「水ベースのCDR」(例えば、「海洋CDR」又は「海洋ベースのCDR」)は、(例えば、海洋などの水体の表面での)速い炭素サイクルから(例えば、深海などの深水中又は深水での)遅い炭素サイクルへのこの炭素移送を増幅する一群のシステム、方法及び/又は工学的介入を表す。
【0015】
[0021] 本明細書に記載の実施形態及び方法は、一般的に、撹乱が海洋中への大気中炭素の溶解及び/又は速い炭素サイクルから遅い炭素サイクルへの炭素の海洋移送の増幅をもたらすように、表面海洋(又は任意の他の水体の表面層)の化学及び/又は化学的性質を撹乱するように構成されたペイロードの配備を含む。例えば、ペイロードは、表面海洋での光合成バイオマスの収率を増加させ、したがってそれにより水からの溶解無機炭素(DIC)の取込み及び除去を介して化学的撹乱を生じさせるように構成され得る。他のかかる一例は、溶解されるか又は溶解するアルカリ性材料の水への直接的な追加をもたらすペイロードを配備して、そのpHを増加させることである。かかる撹乱は、両方とも表面海洋の目的領域に適用されたときに商用品質の炭素隔離をもたらし得る。
【0016】
[0022] 海洋ベースのCDRの例としては、限定されないが、海洋及び/又は地上バイオマスの栽培、蓄積及び隔離、アルカリ性鉱物及び/又は流体の化学的風化、及び/又は水のアルカリ度を増強する、水体(海洋、海、河川、湖などを含む)中へのアルカリ性鉱物及び/又は流体の放出などが挙げられ得る。より具体的には、海洋種、例えばマクロ藻、マイクロ藻、草本、植物、マングローブ樹、バイオフィルム、真菌、甲殻動物、プランクトン及び/又はフィルターフィーダーなど(「目的産物」、「海洋バイオマス」又は「海洋マス」ともいわれる)は、海底への天然に存在する炭素隔離に野生成長が寄与するため、現在、炭素隔離技術として有望視されている。いくつかの実装形態では、海洋バイオマスの栽培及び蓄積を増加させ、及び/又は改善することにより、追加の利益を提供することができる。加えて、海洋種の栽培は、陸上での植物の栽培と比較して多くの利点を有し得る。例えば、海洋バイオマスの栽培は、典型的には、より高い生産性をもたらし、乏しい資源、例えば農地、淡水及び/又は追加の栄養素の有意な使用を必要としない。かかる目的産物の栽培は、天然に存在する種から生じるものと比べて、栽培生産性の増加、有機炭素保存の増加、及び/又は有機及び無機炭素吸収源の滞留時間の増加に起因して、隔離量及び/又は速度を有意に改善する潜在的な能力を有する。
【0017】
[0023] いくつかの実装形態では、配備前に目的産物が播種されるか、又は配備後に野生の目的産物が付着し得るCDRペイロードは、基材又は構造体であり得る。基材は、外洋などの水体中に配備され、特定の閾値に達するまでバイオマスが蓄積されるように構成される。所望量又は閾値量のバイオマスを蓄積した後、目的産物は、海洋底に沈下することを可能にされ(又は沈下させられ)、それにより目的産物によって捕捉された量の二酸化炭素を効果的に隔離する。沈下は、基材を含めて又は含めずに(部分的に又は全体としてのいずれかで)行われ得る。かかる目的産物の栽培及び隔離、及び/又はかかる目的産物を支持するか若しくは少なくとも部分的に浮遊させる基材若しくは他の構造体に関連付けられた各種の実施形態及び/又は方法としては、限定されないが、例えば「Systems and Methods for Cultivation for Target Product」という名称で2021年6月8日に出願された米国特許第11,382,315号(「’315特許」)(その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のいずれかのものが挙げられ得る。
【0018】
[0024] 目的産物によって捕捉された炭素を隔離することに加えて、目的産物が播種されるか、又はさもなければ天然に存在する材料(若しくは他のプロセスから生じる副産物)が結合される基材を、生産に関連付けられた炭素排出を制限するように調達、形成及び/又は生産することが望ましいであろう。加えて又は代わりに、いくつかの実装形態では、天然に存在する材料は、結合表面水-大気系で基材が水体の表面、大気及び/又は速い炭素サイクルの一部から除去される場合/とき、基材の生産、基材の変換及び/又は遷移、基材の溶解時(例えば、海洋のアルカリ性化を介して)、及び/又は基材の輸送、堆積及び/又は埋没時にCOを直接隔離することができる。いくつかの実装形態では、かかる天然基材が目的産物と共に沈下するようにし、それにより使用基材の回収プロセスに関連付けられ得る炭素排出を低減することが望ましいであろう。いくつかの事例では、さらに詳細に本明細書に記載されるように、海洋目的産物の栽培に使用される天然基材の浮遊特性などを制御することができ、それにより基材が第1の位置に配備されるようにし、例えば第2の位置に受動的に輸送されるようにする。かかる受動的基材及び/又は天然に存在する材料から形成される基材の使用に関連付けられた各種の実施形態及び/又は方法としては、例えば、「Floating Substrates for Offshore Cultivation of Target Products and Methods of Making and Using the Same」という名称で2023年3月24日に出願された国際特許出願PCT/US2023/064917号(「’917 PCT」)(その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のいずれかのものが挙げられ得る。
【0019】
[0025] いくつかの実装形態では、天然に存在するもの及び産業生産されるものの両方の炭素質及び/又はアルカリ性材料(例えば、鉱物及び/又は液体)は、炭素隔離を促進及び/又は増強し、及び/又はさもなければ天然水体の酸性化を中和するために使用され得る。例えば、本明細書に記載のいくつかの実施形態及び/又は方法は、深海(又は他の水体)に炭素を隔離し、及び/又は海洋若しくは他の水体のアルカリ度を増強するために、炭素質及び/又はアルカリ性材料から及び/又はそれらで、及び/又はアルカリ性鉱物及び/又は液体などの天然に存在する材料を含むものから、及び/又はそれらで基材の少なくとも一部を形成及び/又は被覆することを含み得、それにより炭素を隔離するその能力を改善し得る。いくつかの実装形態では、基材及び/又は基材の少なくとも一部の周りのコーティングは、基材が水体中に配備されたときに分解及び/又は溶解するように構成され得、したがってそれにより炭素を独立して捕捉及び/又は隔離するか、水中アルカリ度を増強するか、炭素を隔離するその能力を改善するか、又はさもなければ酸性化を中和し、及び/又は正の浮力を有する第1の構成から、負の浮力を有する第2の構成に基材を遷移させることができる。いくつかの実装形態では、第2の構成への基材の遷移は、炭素隔離の独立モードとして、又は基材が第1の構成である間に蓄積したか又はさもなければ第1の構成に含まれる目的産物量の沈下に関連付けられた炭素隔離に加えて、基材の沈下を引き起こす。炭素質又はアルカリ性鉱物又は材料で被覆された基材の使用に関連付けられた各種の実施形態及び/又は方法としては、例えば、「Floating Substrates Including Carbonaceous Coatings for Offshore Cultivation of Target Products and Methods of Making and Using the Same」という名称で2023年3月24日に出願された国際特許出願PCT/US2023/064919号(「’919 PCT」)(その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のいずれかのものが挙げられ得る。
【0020】
[0026] いくつかの実装形態では、ペイロードは、アルカリ性液体などを含み得、及び/又は少なくとも部分的にそれにより形成され得る。例えば、本明細書に記載の基材は、アルカリ性液体を含み得るか、或いはそれから及び/又はそれを用いて形成され得る。これに関連して、アルカリ性流体(液体又は気体)を用いたいくつかの従来のCO隔離方法としては、天然に存在するアルカリ性岩盤中へのアルカリ性流体の直接注入が挙げられる。しかしながら、かかる従来の方法は、環境上、地質学上及び/又は公衆衛生上の危険をもたらし得、及び/又は産業的風化プロセスで有意量のエネルギーを使用し得るため、かかる方法は、大規模な炭素隔離で非実用的なものになる。
【0021】
[0027] 本開示のいくつかの実装形態では、世界的に豊富であり、天然に存在し、及び/又は産業生産されるアルカリ性流体、例えば表面流体及び地下流体として見出されるもの、熱水ブライン、盆地ブライン、油田ブライン、海底下流体、蒸発岩ブライン、廃水ブライン、脱塩ブライン、アルカリ性流体の中でも特に、アルカリ性鉱物堆積物、例えば金属ケイ酸塩(例えば、苦鉄質/超苦鉄質火成岩)、石灰岩、苦灰岩及び蒸発岩堆積物内に生じるものを用いて、地球の速い炭素サイクル(上部海洋及び大気)からその遅い炭素サイクル(深海、海洋沈降物、岩石及び他の上部地下リザーバー)にCOを隔離するために、低エネルギーの方法が利用され得る。かかるアルカリ性流体は、天然でpH、アルカリ度及び2価カチオン濃度が高いものであり得るため、海洋アルカリ度の増強、風化の増強、河川への石灰散布及び/又はさもなければ天然水体の酸性化の中和を介した大規模なCO隔離に理想的に適合する。
【0022】
[0028] かかる天然アルカリ性流体は、抽出箇所で高温を有する可能性もあるため、例えばセメント系ヒドロゲル及び/又は多糖ヒドロゲルで凝集された基材の生産に使用する場合、これらのバインダーを活性化及び硬化するのに必要とされる熱入力を低減することから有利であり得る。かかるアルカリ性流体の特徴的に高い濃度の2価カチオン及びアルカリ度は、CO隔離のために工学処理された基材の生産に使用されるセメント系バインダー及び/又はヒドロゲルバインダーの活性化及び/又は硬化プロセスの速度を上げることもできる。基材の形成とは独立し、及び/又は1つ以上の基材の形成プロセスでのアルカリ性流体の使用に関連付けられた各種の実施形態及び/又は方法としては、例えば、「Systems and Methods for Sequestering Carbon Dioxide Using Alkaline Fluids」という名称で2023年7月31日に出願された国際特許出願PCT/US2023/071339号(「’339 PCT」)及び/又は「Systems and Methods for Producing, Loading, Storing, Transporting, and Deploying Alkaline Materials Via Vessels for Sequestering Carbon Dioxide and Mitigating Acidification of Natural Waters」という名称で2023年7月6日に出願された米国仮特許出願第63/525,326号(「’326仮」)(それらの開示全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のいずれかのものが挙げられ得る。
【0023】
[0029] いくつかの実施形態では、CDRペイロードは、CDRペイロードに関連付けられた1つ以上の追加の又は他のプロセスを通して、水体中に放出された酸又は酸性材料を中和するために使用され得るアルカリ性流体を含み得る。例えば、バイオマス(例えば、マクロ藻及び/又は任意の他のバイオマス)の栽培及び沈下は、いくつかの場合、例えば微粒子状有機炭素の微生物的再石灰化、有機酸の浸出及び/又は溶解有機炭素の生成を介して少量の有機酸を水体及び/又は大気中に放出し得る。いくつかの実装形態では、CDRペイロードに含まれるアルカリ性流体は、酸性分の放出を中和しつつ、CDRペイロードに関連付けられた1つ以上の追加の又は他のプロセスを介して、放出されたCOを捕捉し、及び/又は溶液中に永続的に保有するために使用され得る。
【0024】
[0030] さらに、本明細書に記載のペイロード(例えば、それに播種されるか又はさもなければそれにより支持される目的産物を含めて又は含めずに、天然に存在するセルロース系材料、炭素質若しくは他のアルカリ性材料及び/又はアルカリ性流体を用いて形成された基材)のいずれも、深海に受動的に輸送しつつ、大気中炭素を隔離し、及び/又は水体のアルカリ度を増加させるように水体中の戦略的位置に配備され得る。ペイロードは、継続して深海中への炭素の隔離及び/又は海洋の酸性分の低減を行い得、最終的に隔離炭素を遅い炭素サイクルに移送するように海洋底に沈下し得る。(例えば、天然鉱物源又は任意の他の源からの)抽出から、製造、組立、輸送及び/又は水体中への配備、炭素の隔離及び遅いサイクルへの炭素の移送まで、記載されたペイロードのいずれでも、その全ライフサイクルは、正味で負のカーボンフットプリントで行われ、こうして全体的なカーボンフットプリントの減少をもたらす。
【0025】
[0031] 炭素を隔離して、その炭素を速い炭素サイクルから遅い炭素サイクルに移送するための本明細書に記載の各種の実施形態及び/又は方法は、例えば、(1)所定の時間後に基材などのペイロードの浮遊又は沈下を制御するように既知の速度で溶解すること、(2)溶解されたときに酸を放出し、こうして二酸化炭素を放出する有機コーティングとは対照的に、水体中にアルカリ性イオンを放出し、こうして水体の酸性分を有益に低減すること、(3)天然に存在する材料からペイロードの一部上又はその周りにコーティングを形成し、こうして天然水体(例えば、海洋、海、河川、湖、池など)中への合成材料の導入を低減すること、(4)高い自由エネルギー(例えば、高い結合能力)及びカチオン結合への高い親和性を有する表面を維持し、こうして鉱物結合又はカチオン結合を介して目的産物などの生物学的材料の付着を促進すること、(5)水体を通した沈下及び/又は埋没前に二酸化炭素として有機材料又は基材の一部を再石灰化し得る生物学的分解を抑止すること、(6)生物学的分解(例えば、微生物分解、従属栄養分解など)を介して重炭酸イオン及び/又は炭酸イオンとして放出された二酸化炭素を化学的に緩衝すること、(7)例えば、迅速沈下が望まれるとき、ペイロードの沈下を加速するのに十分な(例えば、1g/ccよりも大きい又は海水密度よりも大きい)密度を有すること、(8)結晶性マトリックス内への栄養素の閉じ込めを可能にし、例えばコーティングの溶解などを介して、バイオマス成長及び/又は蓄積を支持する他の補足材料の栄養素の制御放出を有益に提供すること、(9)水体(例えば、海水)の表面のアルベドを増加させ、こうして太陽放射線の反射を促進して、温室効果を介した水体の二酸化炭素によって引き起こされる加温の影響を軽減すること、(10)水体中にCa2+及びCO 2-イオンを放出することにより、海洋石灰化生物に対する、二酸化炭素によって引き起こされる酸性化の影響を軽減すること、(11)乾燥(例えば、陸地ベース)石灰化を介して大気から二酸化炭素を直接捕捉することにより、大気中炭素の隔離を促進すること、及び/又は(12)コーティング、基材及び/又は他のペイロードを形成するために市販の材料を使用し、こうして製造の複雑性、サプライチェーンの課題及びコストを減少させることなどを含む1つ以上の利益を提供し得る。
【0026】
[0032] さらに、本明細書に記載の実施形態及び/又は方法は、水体(例えば、海洋)中の第1の位置への基材の配備及び第2の位置(例えば、深海)への受動的な輸送が行われるようにするため、配備プロセスのコスト及びカーボンフットプリントを有利に低減する。例えば、海洋の地理的に大きい遠隔領域にわたってペイロードを広範に分配するコストは高い。例えば、一般的に、回収用船舶は、外洋条件に耐えるように工学処理され、帰航に十分な燃料を運搬する必要があり、有人船舶は、食品及び安全材料を運搬し、傷害又は死亡のリスクを負い、こうした領域への一方向輸送が意図されるドローンは、コストがかかり、所望の配備位置に到達する前に故障するおそれがある。いくつかの実装形態では、本明細書に記載の実施形態及び/又は方法のいずれも、少なくとも部分的に水体の天然流に依拠することにより、かかるコスト及びリスクを回避し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のペイロードは、生産、貯蔵、輸送及び/又は他の形態で既知のルートに沿って水体にわたって移動している船舶(例えば、輸送船)を介して配備され得る。かかる船舶及び/又はCDRペイロードを配備するためのかかる船舶の使用方法の例としては、限定されないが、’326仮に記載のものが挙げられ得る。
【0027】
[0033] 上記の利益及び/又は利点に加えて、いくつかの実装形態では、本明細書の実施形態及び/又は方法を介して(直接的又は間接的に)隔離された炭素は、定量、計算及び/又は査定され得、カーボンオフセットクレジットの販売などが行われるようにする。例えば、温室効果ガス排出の軽減を試みる際、政府及び/又は規制当局は、温室効果ガス排出上限を確立し、コンプライアンスが実行不可能である場合、カーボンクレジット及び/又はオフセットを購入することにより、排出上限が組織によって遵守されるようにしている。そのため、本明細書に記載の水ベースのCDRを用いて隔離された炭素は、定量、計算及び/又は査定され得、隔離された炭素の計算量に結び付けられ、及び/又はさもなければ関連付けられたクレジットは、カーボンクレジット市場(又は任意の他の好適な市場)で販売され得る。
【0028】
[0034] いくつかの実装形態では、方法は、ペイロードが第1の構成である間に水体中の第1の位置にペイロードを配備することを含む。ペイロードは、天然水流を介して水体中の第2の位置に移動し、及び第1の位置から第2の位置への移動中に第1の構成から第2の構成に遷移して、大気中炭素の隔離を促進するように運搬され、及び/又はそれを可能にされる。本方法は、第1の構成から第2の構成に遷移するペイロードに関連付けられた大気中炭素の隔離量を定量化することを含む。いくつかの実装形態では、ペイロードは、目的産物が播種され得る基材であり得る。いくつかの実装形態では、かかる基材は、アルカリ性液体を含み得る、天然に存在する材料で形成され得る。
【0029】
[0035] 本明細書で用いられる場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、特に文脈上明確に規定されない限り、複数の参照対象を含む。このため、例えば、「部材」という用語は、単一の部材又は部材の組合せを意味することが意図され、「材料」は、1つ以上の材料又はそれらの組合せを意味することが意図される。
【0030】
[0036] 本明細書で用いられる場合、「約」及び「およそ」という用語は、一般に、明記された値の±10%を意味する。例えば、約0.5は、0.45及び0.55を含むことになり、約10は、9~11を含むことになり、約1000は、900~1100を含むことになる。
【0031】
[0037] 本明細書で用いられる場合、「目的産物」という用語は、一般に、1つ以上の対象水生種及び/又は海洋種を意味する。例えば、「目的産物」としては、限定されないが、水生種及び/又は海洋種、例えば甲殻動物、プランクトン、古細菌、フィルターフィーダー(例えば、カキ、ハマグリなど)、海洋細菌、バイオフィルム、真菌及び/又は藻(例えば、マイクロ藻、マクロ藻など)のような不等毛生物などが挙げられ得る。しかしながら、他の実装形態では、目的産物は、栽培により(例えば、バイオレメディエーション、及び/又は炭素捕捉及び隔離のためなどの収穫産物として)所望の結果をもたらす任意の好適な種を意味し得る。いくつかの実装形態では、本明細書に記載の目的産物は、バイオレメディエーション、最終的な栽培/収穫を目的として及び/又は二酸化炭素の隔離のために培養及び/又は使用され得る。目的産物は、一般に、負、中性及び/又は正浮力種(例えば、成長するにつれて水中で沈下するか、懸濁されたままであるか又は浮遊する種)を含み得る。かかる目的産物は、水体中で迅速に成長して、光合成を介して大気中炭素を隔離することができる配偶体及び/又は胞子体を生じることによって繁殖又は再生し得る。
【0032】
[0038] 本明細書に記載の目的産物は、天然及び/又は所望の生息地が水体である、選択された海洋種であり得る。水体が参照されるとき、水体は、所望の結果(例えば、直接若しくは間接炭素捕捉/隔離及び/又は光合成を介して二酸化炭素を捕捉する目的産物の栽培の促進など)をもたらす特性に基づいて選択され得ることを理解されたい。そのため、具体的な水体(例えば、海洋又は海)が本明細書で参照され得るが、そのように記載される実施形態、実施例及び/又は実装形態は、特に文脈上明確に述べられない限り、かかる環境での使用に限定されないことを理解されたい。さらに、本明細書で用いられる「海水」及び/又は「塩水」という用語は、成分が特定の濃度の塩を含む任意の水体を意味することが意図される。対照的に、「淡水」は、成分が塩を含まないか、又は限定された濃度の塩を含む任意の水体を意味し得る。塩水は、例えば、海洋、海、小湾、大湾などを形成する水を意味し得る。淡水は、例えば、河川、湖、天水、地下水、地中リザーバーなどを形成する水を意味し得る。さらに、本明細書に記載の水体は、淡水及び海水の特定の混合物(一般に「汽水」として知られている)、例えば河口に見出される河川水及び海水の混合物なども含み得る。例えば、「海洋ベースのCDR」という用語は、具体的には、海洋を意味するが、海洋ベースのCDRに使用されるとして本明細書に記載される実施形態、技術、プロセス、方法などのいずれも、他の水体(例えば、塩水体、淡水体及び/又は汽水体)又は他の流体で利用可能である。
【0033】
[0039] 各種の実施形態を説明するために本明細書で用いられる「実施例」という用語は、かかる実施形態が、可能な実施形態の可能な実施例、代表的な例及び/又は例示的な例であることを示唆することが意図される(及びかかる用語は、かかる実施形態が必然的に優れた又は最高の実施例であることを内包及び/又は伝達することを意図されない)ことに留意されたい。同様に、特定の実施例及び/又はその構成要素若しくは態様が参照されるとき、明示的に述べられない限り、かかる実施例及び/又はその構成要素若しくは態様は、本質的又は必要なものであることを暗示又は伝達することを意図しないことを理解されたい。
【0034】
[0040] 本明細書で用いられる「結合」などの用語は、2つの部材が互いに直接接合又は間接接合されることを意味する。かかる接合は、定常的(例えば、永久的)又は移動可能(例えば、除去可能若しくは放出可能)である。かかる接合は、2つの部材又は2つの部材及び任意の追加の中間部材で達成され得、互いに単一体として一体的に形成されるか、又は2つの部材若しくは2つの部材及び任意の追加の中間部材が互いに付着される。
【0035】
[0041] ここで、図面を参照すると、図1は、一実施形態に係る、大気中炭素を隔離する海洋ベースの二酸化炭素除去(CDR)方法10のフローチャートである。本方法は、12において、水体中の第1の位置にペイロードを配備することを含む。ペイロードは、海洋ベースのCDRのために構成され、及び/又はさもなければ海洋ベースのCDRのためのシステムに関連付けられた任意の好適なデバイス、材料、鉱物、流体、構造体などであり得る。例えば、ペイロードは、海洋ベースのCDRを促進するために、それが配備された水体の一部と相互作用するように構成された材料、構造体、流体などを含み得る。いくつかの実装形態では、かかる相互作用は、第1の構成から第2の構成へのペイロードの遷移をもたらし、及び/又はさもなければ引き起こすことができ、したがってそれにより速い炭素サイクルから遅い炭素サイクルへの炭素の移送プロセスで1つ以上のステップに寄与し、及び/又はそれを形成し得る。いくつかの実装形態では、かかる相互作用は、ペイロードにより、それが配備された水体の1つ以上の特性の改変をもたし、及び/又はさもなければ引き起こし得、したがってそれにより速い炭素サイクルから遅い炭素サイクルに炭素を移送する水の天然の能力を増強することができる。いくつかの実装形態では、かかる相互作用は、任意の好適な所定及び/又は所望の結果又はそれらの任意の好適な組合せを有し、及び/又はもたらすことができ、その結果、海洋ベースのCDRを増強及び/又は促進し得る。
【0036】
[0042] いくつかの実装形態では、ペイロードは、例えば、少なくとも一時的に浮遊し得る基材などであり得る。例えば、いくつかの実装形態では、本方法10は、14において、天然に存在する材料から基材を形成することを任意選択的に含む。いくつかの実施形態では、基材は、任意の好適な形状、例えば正方形、矩形、卵形、多角形、非対称、不規則形及び/又は任意の他の形状を有する固形構造体を含み得る。いくつかの実施形態では、基材は、固形ブロックであり得る。例えば、構成材料のストランド、繊維、シート、マット及び/又はチャンクは、(例えば、機械若しくは液圧プレス、成形型及び/又は任意の他の好適なプロセスを介して)固形ブロックに圧縮して基材を形成し得る。いくつかの実施形態では、圧縮は、ストランド、繊維、シート、マット及び/又はチャンク間に所望の空間を存在させて、所望の多孔性などを有する基材をもたらするように行われ得る。いくつかの実施形態では、基材は、中空であり得るか、又は中空ブロックに形成され得る。例えば、基材は、(例えば、空気を捕捉又は保持し、それにより基材の浮力を増加させるように)1つ以上の内部体積、空洞、レセプタクル及び/又はボイドを画定し得るか、又はケージ若しくはネットの形状に形成され得る。基材は、正浮力であり得、少なくとも特定の期間にわたって又は特定の環境条件下で水体、例えば海洋、海、河川、湖、池などの上に基材が浮遊するようにし得る。いくつかの実施形態では、基材は、本明細書に記載のように、中性浮力又は負浮力であり得るか又はそのようになり得る。
【0037】
[0043] いくつかの実施形態では、天然に存在する材料は、一般に、自然環境で簡単に入手できるか、又は耕作若しくは他の栽培/収穫操作の主要な産物若しくは副産物として天然に生成される有機材料を含み得る。例えば、天然に存在する材料は、農業廃棄物若しくは残留物又は森林廃棄物若しくは残留物を含み得る。各種の実施形態では、天然に存在する材料としては、限定されないが、地上バイオマス(例えば、木質バイオマス)、例えば草本(例えば、スイッチグラス、野草、遺伝子組換え草本など)、木材チップ(例えば、倒木若しくは木材再生事業から得られるもの)、木毛繊維、藁繊維、破砕燃料、トウモロコシ穂軸、ココナッツ殻、ココナッツ繊維、アサ、ジュート、コンポスト(compost)、キサンタンガム、寒天、アルギネート、カードボード、ナノセルロース繊維、紙などが挙げられ得る。各種の実施形態では、天然に存在する材料は、水生(例えば、海洋)バイオマスを含み得る。各種の実施形態では、天然に存在する材料は、地上バイオマスの任意の好適な組合せ、水生バイオマスの任意の好適な組合せ又は地上及び水生バイオマスの任意の好適な組合せを含み得る。
【0038】
[0044] いくつかの実施形態では、天然に存在する材料は、天然材料、例えば糖、油、糖蜜、ココナッツ油、パーム油、キチン、菌糸体などから生産されるバイオベース材料又は生分解性ポリマー(例えば、PHA又はPHBなどのポリヒドロキシアルカノエート系脂肪族ポリエステル)であり得る。天然に存在する材料(例えば、バイオマス、バイオベース材料、生分解性ポリマーなど)は、例えば、加水分解及び/又は酵素的消化を介して水(例えば、淡水、塩水、汽水など)中において天然で生分解するように配合され得、及び/又は他に経時的に浮力を失うように配合され得る。
【0039】
[0045] 有機材料又は天然に存在する材料は、任意の好適なプロセスを用いて基材に形成され得る。いくつかの実施形態では、基材は、天然に存在する材料を配置し、及び/又はそれを1つ以上のチューブ、チューブ状構造体、メッシュ、ソックス、バッグ類(例えば、バッグ、ポーチ、ベイラー又は内部体積を画定する任意の他の容器)、オーバーブレイド、スパイラルラップ、ワットル、スリットソックス及び/又はロープ(例えば、陸地侵食を防止するために使用されるもの又は洪水バリアに類似したもの)などに形成することによって形成され得る。いくつかの実施形態では、基材は、例えば、天然に存在するバイオベース材料、例えばココナッツ繊維、木毛繊維、藁繊維、天然のより糸、コンポスト、バイオベースの生分解性プラスチック穿孔生地及び/又はチューブ状構造体に形成されたメッシュなどから形成される任意の数の層を有して(1つ以上のベース層を用いて又は用いずに)形成され得る。いくつかの実施形態では、天然に存在する有機材料は、基材(例えば、平坦なシート又はマット)を形成するために2つ以上のシート(例えば、スクリム生地、穿孔シート、メッシュ、ロービングなど)間のステッチング、ウィービング、貼り合わせ又はさもなければ圧縮により、平面状基材に形成され得る。
【0040】
[0046] いくつかの実施形態では、天然に存在する材料は、ブロックに形成する前に接着剤若しくはバインダーと混合され得るか、又は接着剤若しくはバインダーは、ブロックに形成された後、基材にその形状を保持させるために基材上に注加又はさもなければ適用され得る。かかる実施形態では、接着剤又はバインダーは、限定されないが、ビーズワックス、ゼラチン、糖蜜、樹木樹液、タンパク質ベースポリマー、任意の好適な生分解性ポリマー又はそれらの組合せを含めて、生体適合性又はさもなければ生分解性の接着剤又はバインダーを含み得る。いくつかの実施形態では、接着剤又はバインダーは、その中での目的産物の成長を促進するために、栄養素、肥料若しくは他の添加剤及び/又は補足材料を含み得るか又はそれらを添加され得る。
【0041】
[0047] いくつかの実装形態では、1つ以上の天然に存在する材料からの固形構造体に形成、作製又は組み立てられた基材は、1つ以上の目的産物が播種され得る。例えば、本方法10は、16において、基材に目的産物を播種することを任意選択的に含み得る。いくつかの実装形態では、基材は、配備される前に目的産物が播種され得る(例えば、事前播種され得る)。例えば、基材は、目的産物の成長が実質的に水体内で行われるように、水体中への配備の直前に播種され得る。他の実装形態では、播種された目的産物は、水体中への配備前のある期間にわたって成長又は発芽するようにされ得、播種された目的産物のその後の成長は、水体中で行われる。播種された目的産物が配備前の期間にわたって成長することは、基材が水体中に配備されるとき、播種された目的産物の基材からの解離が阻害されるように、目的産物が基材内に有利に一体化されることを可能にし得る。このため、播種された目的産物のすべて又は有意な部分は、配備後に基材に付着されるか又は基材内に組み込まれたままであり得る。
【0042】
[0048] 目的産物(例えば、海洋藻の配偶体若しくは胞子体又は本明細書に記載の任意の他の目的産物或いはそれらの生物学的構成要素)は、基材及び/又はそのコーティング若しくは層中に直接又は間接的に播種され得る。播種は、基材の形成前、基材の形成時、基材の形成後、コーティングによる基材の被覆前後及び/又は任意の他の好適な時期に目的産物を材料(例えば、基材を形成するために使用される天然に存在する材料)中又はその上に配設することによって実施され得る。いくつかの実装形態では、播種は、例えば、ある体積の液体(例えば、海水、塩水又は培養媒体)中に基材を浸漬することによって実施され得、その中で目的産物が成長又は貯蔵され、その体積の液体に含まれる目的産物の一部が基材及び/又はコーティングの細孔中に捕捉されるようにし、それにより播種基材を形成する。目的産物は、基材内、例えば基材又はそのコーティング/層中に存在し得る細孔内に機械的に捕捉され得る。
【0043】
[0049] いくつかの実施形態では、基材及び/又はその層/コーティングは、基材への目的産物の接着を促進するためにバインダー又は他の材料を含み得る。例えば、カチオン性バインダー、ヒドロゲル、接着剤、ポリマー又は他の種子バインダーは、強い接着又は付着が目的産物と基材との間に形成されるまで、目的産物(例えば、胞子体又は配偶体)を基材の方向に引き寄せて、目的産物を基材に近接した状態に保つために基材中に含まれ得る。基材への目的産物の接着を増強するために使用され得る他の物質としては、限定されないが、レオロジー調整剤、凝着剤及び他の添加剤、例えばグリセロール、糖蜜、高分子量多糖類及び他のポリマー材料、例えばポリエチレンオキシドが挙げられ得る。
【0044】
[0050] いくつかの実施形態では、基材及び/又はその層/コーティングは、その中での目的産物の成長を促進するために、栄養素、肥料若しくは他の添加剤及び/又は補足材料を含み得る(例えば、それらを添加又は注入され得る)。例えば、目的産物種の成長を加速するために配合された肥料を基材の1つ以上の部分に噴霧し得る。いくつかの実施形態では、基材は、目的産物の汚染を抑制するために配合された添加剤を含み得る。例えば、基材は、成長基材材料、例えば富化海水媒体、パスツール殺菌海水、濾過海水、緩衝剤溶液、例えば、限定されないが、硝酸ナトリウム(NaNO)溶液、リン酸二水素カリウム(KHPO)溶液及び/又は二酸化ゲルマニウム(GeO)などを含む溶液と混合された海水を含むか、それで飽和されるか又はそれを含浸され得る。いくつかの実施形態では、目的産物に鉄(Fe)栄養源を提供するために、基材に鉄粒子を注入するか、或いは鉄又は鉄含有スレッド、フィラメント若しくはストリングで共巻き、コイル化及び/又は絡合いを行い得る。
【0045】
[0051] いくつかの実施形態では、基材の1つ以上の部分は、空気からの分子状窒素(N)をアンモニア(NH)に変換する(例えば、窒素を固定する)能力がある、単細胞古細菌生物、細菌、例えばシアノバクテリア、アゾトバクター、リゾビウム、フランキア属(Frankia)及び/又は類似物(例えば、微生物叢)を含む1つ以上のジアゾトロフ微生物を接種され得る。先に記載のように、基材は、多孔性であり得、したがってそれによりその内部に注入された肥料、添加剤、成長促進剤又は他の物質の経時的な受動放出を促進して、播種された目的産物へのかかる物質の連続投入を提供し得、及び/又は目的産物に密に近接してかかる物質を保有し得る。目的産物及び目的産物を含む基材の各種の実施形態は、’315特許及び/又は’917 PCTに記載の目的産物及び/又は基材のいずれかを含み得、及び/又はそれと類似若しくは実質的に同じであり得る。
【0046】
[0052] いくつかの実施形態では、基材は、追加的又は代替的に、天然に存在するアルカリ性塩及び/又は流体などを少なくとも部分的に含み得るか又はそれらで形成され得る。例えば、アルカリ性鉱物、化合物、塩などとしては、限定されないが、石灰岩(炭酸カルシウム(CaCO))、ドロマイト若しくは苦灰岩(炭酸カルシウムマグネシウム(CaMg(CO))、菱苦土石(炭酸マグネシウム(MgCO))、石灰(酸化カルシウム(CaO))、消石灰若しくは水和石灰(水酸化カルシウム(Ca(OH)))、ブルース石(水酸化マグネシウム(Mg(OH)))、酸化マグネシウム(MgO)、各種の形態のアルカリ液(KOH、NaOH)、軽石(浮力用)、アルカリ性苦鉄質/超苦鉄質金属ケイ酸塩鉱物及び/又は岩石(海洋のアルカリ性化を介してCOを隔離するため及び/又は浮力用)、天然に存在する炭酸塩及び他の塩、空気若しくは他の圧縮ガス(多孔性、透過性及び/又は浮力用)、任意の他の好適な有機及び/又は無機産物、廃棄物及び/又はそれらの任意の組合せが挙げられ得る。
【0047】
[0053] いくつかの実施形態では、各種の形態のアルカリ液(KOH、NaOH)などのアルカリ性コーティングは、ブイを形成するか又はブイに含まれるバイオマス又は他の材料を滅菌する役割を果たし得る抗微生物性、抗細菌性及び/又は抗真菌性を付与して、バイオマスが輸送、処理及び/又は配備される領域に有害生物又は他の汚染物質を導入するバイオマス又は他のかかる材料の可能性を防止又は制限し得、いくつかの場合、それにより輸入国及び/又は輸出国或いは他の管理又は規制団体の輸入/輸出規制を満たし得る。
【0048】
[0054] いくつかの実施形態では、アルカリ性材料は、例えば、基材の溶解を促進し、アルカリ性化を介して二酸化炭素(CO)隔離を提供し、及び/又は基材用バラストを提供するために使用され得る炭酸塩画分(本明細書では「凝集物」ともいわれる)などの炭素質及び/又は他のアルカリ性材料を含み得る。いくつかの実施形態では、炭素質材料は、CaCO(例えば、破砕石灰岩)、CaMg(CO(例えば、破砕苦灰岩)及び/又はMgCO(例えば、菱苦土石)を含み得る。いくつかの実施形態では、基材又は少なくともその層/コーティングを形成する天然に存在する材料は、基材の少なくとも一部の浮力を増強するために、ケイ酸塩画分、例えば軽石及び/又は他の低密度小胞岩石(例えば、苦鉄質岩石、超苦鉄質岩石及び/又は鉱物)も含み得る。いくつかの実施形態では、基材又はその層/コーティングの少なくとも一部を形成する、天然に存在するか又は産業生産される材料は、空気が混入した最終材料を作り出すために界面活性剤フォームとも混合され得る。
【0049】
[0055] いくつかの実施形態では、天然に存在するアルカリ性材料は、例えば、酸化鉄(Fe)及び/又は他の鉄(Fe)若しくはマンガン(Mn)含有酸化物などの金属酸化物画分を含み得る(例えば、浮力調整用、バラスト用及び/又は基材の片側に含まれるときに基材の向き制御用として)。いくつかの実施形態では、天然に存在する材料は、例えば、材料を一緒に保持し、及び/又はそれを基材に接着するために1つ以上の有機又は無機バインダーを含み得る。好適なバインダーとしては、限定されないが、炭酸塩バインダー(例えば、CaO、Ca(OH)など)、MgO、Mg(OH)及び/又は他のセメント系バインダー若しくは有機バインダー、例えば有機樹脂、多糖ゲル、タンパク質性バインダー、接着剤、任意の他の好適な有機バインダー或いはそれらの組合せが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、天然に存在する材料は、アルカリ性材料の水和及び/又は石灰化の速度を増加又は減少させるための促進剤を含み得る。
【0050】
[0056] いくつかの実施形態では、本方法10は、18において、基材の少なくとも一部を炭素質及び/又は他のアルカリ性コーティングで被覆することを任意選択的に含み得る。例えば、上記のアルカリ性及び/又は炭素質材料、鉱物、塩などのいずれも、基材の一部を形成するために使用され得るか、又は基材全体にわたって適用されるコーティングとして使用され得、これらは、天然に存在する材料、合成材料及び/又はそれらの組合せから形成され得る。いくつかの実施形態では、コーティングは、1つ以上の添加剤及び/又は補足材料、例えば栄養素、例えば目的海洋産物の光合成及び栄養成長を支援する窒素(N)、リン(P)、鉄(Fe)及び/又は多量/少量/微量元素をある割合で含み得る。いくつかの実施形態では、コーティングは、触媒、例えば淡水、海水、地中ブライン又は表面ブラインを含み得る。いくつかの実施形態では、触媒は、コーティングに含まれなくてもよく、代わりに水体(例えば、海水)によって提供され得る。
【0051】
[0057] いくつかの実施形態では、コーティングの元素比は、それらが放出されるときにその環境に存在する潜在的にデリケートな元素比を擾乱することを回避するために、環境(例えば、配備位置、目的位置など、又はその周り)のものに適合するように構成及び/又は選択され得る。例えば、コーティングは、生物的及び非生物的の両方で沈殿するCaCOの多形及びMg含有率を制御することが知られている海水中のMg:Caのモル比に実質的に一致するように、5:1のモル比でMgCO及びCaCO又はMg(OH)及びCa(OH)を含み得、及び/又はそれらと配合され得る(例えば、Mg:Ca<2の海水モル比は、CaCOの低Mg方解石多形の沈殿に有利であり得るが、Mg:Ca>2の海水モル比は、CaCOのアラゴナイト及び高Mg方解石多形の沈殿に有利であり得る)。
【0052】
[0058] コーティングは、任意の好適な方法を用いて基材上に適用され得る。例えば、凝集物、バインダー及び添加剤は、水、海水及び/又はブラインと混合され得、海洋及び天然水体に配備される浮遊及び/又は沈下基材を被覆するために使用され得る。いくつかの実施形態では、コーティングは、循環用ケーブル(例えば、スキーチェアリフトケーブル)から垂下され、及びコーティング材料の混合物(例えば、スラリー、懸濁液など)を収容する容器を通過するか又はそれに浸漬されるケージ中に基材を配設することにより、基材上に配設され得る。いくつかの実施形態では、ケージは、例えば、約200トン/時~約600トン/時(両端値を含む)の範囲内の生産目標を提供するために、容器を介して約40ケージ/時~約60ケージ/時(両端値を含む)の速度で移動し得るポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(例えば、TEFLON(商標)又はTEFLON(商標)被覆)ケージを含み得る。いくつかの実施形態では、ケージは、コーティングを硬化するためにコーティング適用間で炉(例えば、炉トンネル)を介して輸送され得る。いくつかの実施形態では、基材は、コンベアシステム(例えば、壁付きコンベアシステム)上に配設され得、コーティングの容器を通して移動し得るか、又はコーティングは、コンベアが移動するにつれて基材上に噴霧され得るか若しくはさもなければ堆積され得る。いくつかの実施形態では、コンベアは、本明細書に記載のように、コーティングを硬化するために炉を通しても移動し得る。いくつかの実施形態では、コンベアは、約6メートルの幅及び約0.5メートルの深さ(端値を含む)を有し得、例えば200トン/時~約600トン/時(両端値を含む)のスループットを提供するために、約10cm/秒~約20cm/秒(両端値を含む)の速度で移動するように構成され得る。そのため、本明細書に記載の基材のいずれも、’919 PCTに記載の材料及び/又はコーティングのいずれかを含めて、アルカリ性塩及び/又は炭素質材料から形成され得るか、それらを含み得るか又はそれらで被覆され得る。
【0053】
[0059] 被覆又は非被覆基材は、播種されるように(例えば、配備前又は配備時、能動的、直接的、間接的又はさもなければ事前播種されるように)上記で記載されているが、他の実装形態では、被覆又は非被覆基材は、播種されることなく水体中に配備され得る。かかる実装形態では、被覆基材は、天然に存在する目的産物(又はその生物学的構成要素)を水体中に引き寄せて保有するように構成され得る。さらに、いくつかのかかる実装形態では、被覆基材は、物質、バインダー、栄養素、肥料、添加剤、成長促進剤などのいずれかを含み、及び/又はそれらを放出するように構成され得、したがってそれにより基材が配備される水体中に、天然に存在する目的産物(又はその生物学的構成要素)を引き寄せ、及び/又は保有することができ、それにより基材の天然又は受動的な播種が行われるようにし得る。いくつかの実装形態では、被覆基材は、事前播種され得、基材が配備される水体中に、天然に存在する目的産物(又はその生物学的構成要素)を引き寄せ、及び/又は保有するように構成され得る。
【0054】
[0060] いくつかの実施形態では、ペイロードは、アルカリ性流体であり得、及び/又はそれを含み得る。かかるアルカリ性流体は、炭素を隔離するために水(例えば、海洋水)中に溶解された炭素及び/又は大気中COと反応し得る。いくつかの実装形態では、ペイロードは、アルカリ性流体を少なくとも一時的に貯蔵する容器又はリザーバーであり得、経時的にアルカリ性流体を選択的に放出するように構成される。いくつかの実装形態では、ペイロードは、固形形態に凍結されるアルカリ性流体であり得る。いくつかの実装形態では、ペイロードは、少なくとも部分的にアルカリ性流体を用いて形成される基材又はコーティングであり得る。
【0055】
[0061] 本明細書に記載のペイロード、基材、コーティング、バインダーなどとして使用されるアルカリ性流体のいずれかは、水とアルカリ性鉱物(例えば、金属ケイ酸塩、炭酸塩、蒸発岩)との天然の又は産業的な反応に由来し得、このアルカリ性鉱物は、世界的に豊富であり、地球の大陸地殻の45%(地球の表面の30%をカバーする)及び地中(すなわち上部沈降層の下方の)海洋地殻の100%近く(地球の表面の70%をカバーする)を形成する。
【0056】
[0062] いくつかの実施形態では、アルカリ性流体は、金属ケイ酸塩溶液を含み得る。金属ケイ酸塩は、珪長質(例えば、花崗岩、流紋岩など)、中性(例えば、閃緑岩、安山岩など)、苦鉄質(例えば、斑れい岩、玄武岩など)及び超苦鉄質(例えば、かんらん岩、コマチアイトなど)岩石として分類されるものを含む火成岩を含む。金属ケイ酸塩は、一般に、水及び海水と反応してアルカリ度及び2価カチオン(例えば、Ca2+、Mg2+、Fe2+など)を発生させ、これらは、水性重炭酸イオン(HCO )及び炭酸イオン(CO 2-)並びに固形炭酸塩鉱物(CaCO、MgCO、CaMgCO、FeCOなど)の形態でCOを隔離し得る。例えば、金属ケイ酸塩との反応に関与するアルカリ性水の生産に関与する1つの鉱物は、化学式(Mg2+、Fe2+SiOを有するケイ酸マグネシウム鉄のかんらん石である。かんらん石含有率、したがって金属ケイ酸塩及びそれが含まれる火成岩のCO隔離能力は、火成分類スペクトルの超苦鉄質端に向かって増加する(すなわち、かんらん石含有率及びCO隔離能力は、以下の順序:珪長質、中性、苦鉄質、超苦鉄質で増加する)。
【0057】
[0063] いくつかの実施形態では、アルカリ性流体は、ケイ酸塩ベースのアルカリ性溶液、炭酸塩ベースのアルカリ性溶液又は蒸発岩ベースのアルカリ性溶液を含み得る。CO隔離及び/又は水体の酸性化の中和に好適なケイ酸塩ベースのアルカリ性溶液又は流体(例えば、水)を生じる理想的な金属ケイ酸塩炭酸化反応のいくつかの例は、限定されないが、以下を含み得る。
MgSiO+2CO+2HO→2MgCO+HSiO(ケイ酸マグネシウム)
CaSiO+CO+2HO→CaCO+HSiO(ケイ酸カルシウム)
FeSiO+2CO+2HO→2FeCO+HSiO(ケイ酸鉄)
MgSi(OH)+3CO+2HO→3MgCO+2HSiO(水和ケイ酸マグネシウム)
Na(Ca,Mg,Fe)SiAlO+(x+2y+3)H+(4+y)HO+yCO→xNa+y(Ca,Mg,Fe)CO+3HSiO+2y(H)(斜長石族ケイ酸塩)
【0058】
[0064] CO隔離に好適なアルカリ性流体(例えば、水)を生じる炭酸塩鉱物溶解反応のいくつかの例は、以下の通りである。
CaCO→Ca2++CO 2-(石灰岩)
MgCa(CO→Mg2++Ca2++2CO 2-(苦灰岩)
MgCO→Mg2++CO 2-(菱苦土石)
NaCO→Na2++CO 2-(ソーダ灰)
【0059】
[0065] これらの炭酸塩溶解反応から遊離されたCO 2-イオンは、以下の反応を介してフリーH(プロトン)を取り込む。
CO 2-+H→HCO
【0060】
[0066] CO隔離に好適なアルカリ性流体(例えば、水)を生じる金属酸化物鉱物溶解反応のいくつかの例は、以下の通りである。
MgO+HO→Mg2++2OH(マグネシア)
CaO+HO→Ca2++2OH(消石灰)
【0061】
[0067] CO隔離に好適なアルカリ性流体(例えば、水)を生じる金属水酸化物鉱物溶解反応のいくつかの例は、以下の通りである。
Mg(OH)→Mg2++2OH(ブルース石)
Ca(OH)→Ca2++2OH(消石灰)
【0062】
[0068] CO隔離に好適なアルカリ性流体(例えば、水)を生じるアルカリ液鉱物溶解反応のいくつかの例は、以下の通りである。
NaOH→Na+OH(苛性ソーダ)
KOH→K+OH(苛性カリ)
【0063】
[0069] この反応から遊離されたOHイオンは、以下の反応を介してフリーH(プロトン)を取り込み得る。
OH+H→H
【0064】
[0070] このため、これらの溶解反応は、フリーH+を減少させ(pHを増加させ、及び酸性化を逆転するように作用し)、表面水のアルカリ度を増加させることにより(例えば、海洋のアルカリ性化又はアルカリ度増強により)、以下の炭酸塩平衡を右にシフトさせ、結果的にヘンリーの法則によって大気中COから水中COへの正味移動で炭酸塩平衡を再確立する。
CO2(ガス)→HO+CO2(aq)→↓H+HCO →↓2H+CO 2-
【0065】
[0071] 水中HCO 及びCO 2-イオンは、湖、池、河川、海、海洋などの天然水性系で安定であり得、何百年~何千年にもわたって安定したままであり得る。
【0066】
[0072] いくつかの実施形態では、本明細書に記載の基材に含まれるアルカリ性流体は、天然源又は自然系、例えば表面水、浅部地中水、熱水ブライン、深部地中水、油田ブライン、海底下ブライン、蒸発岩ブラインなどから得るか、それらから調達するか又はそれらから抽出することができる。表面水は、アルカリ性湖、河川、冷泉、温泉及び相対的低密度に起因して海洋の表面上に浮遊するアルカリ性淡水レンズを含めて、陸地又は海洋の表面上に見出される任意のアルカリ性水を含む。浅部地中水は、大陸地殻の上部に見出される地下水を含む。熱水ブラインは、水、海水又はブラインと、アルカリ性熱岩石及び/又はマグマとの反応を介して形成されたブラインを含む。深部地中水は、現在、陸地に囲まれている古代盆地(地向斜)に捕捉され、潜在的に沈降物及び岩石の下に深く埋め込まれたブラインである盆地ブラインを含む。油田ブラインは、いくつかの場合、地中の掘削並びに地中からの油及びガスの抽出を介して抽出及び単離された、油及びガス堆積物と共存するブラインを含む。海底下ブラインは、海洋地殻に浸透した海水との反応に由来し、海洋地殻の上層のアルカリ性玄武岩及び海洋地殻のより深い層の高アルカリ性超苦鉄質堆積物と反応したブラインを含む。蒸発岩ブラインは、陸地に囲まれた又は周縁の海洋盆地での天水、海水又は他の天然水の部分蒸発及び得られるイオン性濃縮物から生成されるブラインを含む。
【0067】
[0073] アルカリ性流体を得るか又は調達するための上述の言及は、単に例示目的にすぎず、他の天然源から得られるアルカリ性流体は、海洋ベースのCDRのために、及び/又は本明細書に記載の基材及び/又はコーティングの形成時にペイロードの少なくとも一部として使用され得ることを認識されたい。かかる実装形態のすべてが企図され、本開示の範囲内にあることを理解されたい。
【0068】
[0074] アルカリ性地下水及びブラインを受け入れるアルカリ性鉱物堆積物の例は、金属ケイ酸塩(例えば、苦鉄質/超苦鉄質火成岩)、炭酸塩(例えば、石灰岩、苦灰岩、菱苦土石)及び蒸発岩堆積物(例えば、ブルース石)を含む。アルカリ性溶液は、従来の坑井掘削、再循環及び/又は表面捕集方法を介してこれらの各種の自然系から抽出することもできる。
【0069】
[0075] いくつかの実施形態では、14において上記の基材を形成することは、基材の少なくとも一部として液体形態のアルカリ性流体を用いて基材を形成することを含み得る。いくつかの実施形態では、アルカリ性流体は、固形基材に含まれ得るか、それに組み込まれ得るか又はそれへと形成され得る。例えば、アルカリ性流体は、上記及び/又は例えば’315特許、’917 PCT及び/又は’919 PCTに記載のような浮遊性固形基材(被覆又は非被覆)を含む基材内に配設され得る。
【0070】
[0076] いくつかの実施形態では、アルカリ性流体は、浮遊性固形基材自体の構築で使用され得る。例えば、アルカリ性流体は、基材(例えば、ブイ)を形成するために使用される材料に組み込まれ得、吸収され得、及び/又は含浸され得る。かかる実施形態では、海洋又は他の水体中でのブイの漸進的な分解又は溶解により、アルカリ性流体に関連付けられたアルカリ度を、そうしたアルカリ性流体がブイの構築プロセスを介してアルカリ性鉱物として沈殿したとしても放出することができる。いくつかの実施形態では、ブイは、(例えば、多くの海洋ブイの構築に類似して)部分的にセメント系の材料に結合し、及び/又はそれから部分的に構築することによって形成され得、アルカリ性流体は、ブイを一緒に結合するセメント系反応の活性化に使用され得る。このため、アルカリ性流体は、バインダーが、アルカリ性流体に含まれるアルカリ性塩のリザーバーの役割を果たすようにセメント系バインダーに組み込まれ得る。次いで、セメント系バインダーに貯蔵されたアルカリ度は、かかる基材が溶解するにつれて放出され得るため、アルカリ性化を介したCO隔離の目的で天然アルカリ性水から海洋又は他の水性環境に効果的にアルカリ度が輸送される。
【0071】
[0077] いくつかの実施形態では、固形基材を形成することは、天然に存在する有機材料(例えば、オオバコ又は籾殻)からの基材の構築に使用される多糖バインダーの水和源としてアルカリ性流体を使用することを含み、これによりヒドロゲル及び/又は石灰化ヒドロゲルをもたらし得る。かかる条件下では、ヒドロゲルの形成は、ヒドロゲルバインダーがCO隔離の目的でアルカリ度の放出の目的位置で溶解又は分解するまで、アルカリ性流体を本質的に安定化及び不動化し得る。かかる天然アルカリ性流体は、抽出箇所で高温を有する可能性もあるため、例えばセメント系ヒドロゲル及び/又は多糖ヒドロゲルで凝集された基材の生産に使用する場合、これらのバインダーを活性化及び/又は硬化するのに必要とされる熱入力を低減することから有利であり得る。それらの特徴的に高い濃度の2価カチオン及びアルカリ度は、機械的及び化学的バインダーの中でも特に、CO隔離のために工学処理された基材の生産に使用されるセメント系バインダー及び/又はヒドロゲルバインダーの活性化及び/又は硬化プロセスの速度を上げることもできる。
【0072】
[0078] いくつかの実施形態では、基材を形成することは、固形又は半固形構造体の少なくとも1つにアルカリ性液体を組み込むことを含み得る。例えば、アルカリ性流体は、固形ブロック又はさもなければ固形構造体中にアルカリ性流体を凍結させることにより、固形基材を形成するために使用され得る。いくつかの実施形態では、かかる凍結固形構造体は、単に固形基材中に1つ以上のアルカリ性流体を凍結させることによって形成され得る。いくつかの実施形態では、天然に存在する有機材料(例えば、穀皮、アサ、木材チップ、藁又は本明細書に記載の任意の他の有機若しくはバイオベースの天然に存在する材料)は、アルカリ性流体中に懸濁され得るか又はさもなければそれと混合され得、混合物、懸濁液又はスラリーは、続いて、凍結されて、アルカリ性流体及びその中に懸濁された天然に存在する有機材料を含む固形基材を形成し得る。
【0073】
[0079] いくつかの実施形態では、基材を形成することは、多孔性固形基材にアルカリ性流体を組み込むことを含み得る。例えば、アルカリ性流体は、木質バイオマスによって吸収され得、次いで液体又は後続的に沈殿した固形形態のいずれかで浮遊バイオマスの細孔空間に保有され、木質バイオマスが浮遊すると、浸出及び/又は溶解を介して最終的に水体中に放出され、及び/又は輸送され、及び/又は目的位置に放出される。
【0074】
[0080] いくつかの実施形態では、アルカリ性流体は、沿岸において、本明細書に記載のように凍結されて固形基材を形成し得、次いで目的位置に送達されるように輸送船内の冷凍庫に貯蔵され得る。いくつかの実施形態では、アルカリ性流体は、船内の冷凍庫を用いて輸送船上で凍結され、固形基材を形成し得る。いくつかの実施形態では、アルカリ性流体は、世界の寒冷地域(例えば、北極海、南極海、グリーンランド海、バレンツ海、ボーフォート海、カラ海、ラプテフ海、東シベリア海、ウェッデル海、ロス海、バルト海又は任意の他の冷水体)に送達され得、かかる領域の天然冷環境温度を用いてアルカリ性流体を凍結させ、基材を形成し得る。いくつかの実施形態では、凍結基材を含む基材は、平均気温及び/又は水温が凝固点をわずかに超える冷海洋で浮遊基材として使用され得る。アルカリ性流体は、天然で経時的に融解し得(例えば、天然/炭酸塩ブイの溶解よりも遅いか、それよりも速いか又はそれと同じタイムラインであり得)、それにより海洋中にアルカリ性流体を放出する。
【0075】
[0081] そのため、アルカリ性流体は、’339 PCT及び/又は’326仮に詳細に記載されるように、海洋ベースのCDRのためのペイロード又はペイロードの少なくとも一部として使用され得る。
【0076】
[0082] 続いて、図1を参照すると、いくつかの実施形態では、本方法10は、20において、複数の基材(例えば、複数の固形基材)を基材組立体に組み立てることを任意選択的に含み得る。例えば、固形基材、半固形分基材又はアルカリ性流体が充填されるか若しくはそれを含む固形基材のいずれでも、それらの10、100又はさらに1,000個を一体的に結合、接合又は組み立てて、基板組立体を形成し得る。いくつかの実施形態では、複数の基材は、本明細書に記載のように、(例えば、天然に存在する有機材料、バインダーなどを用いて接合された、基材上に配設されたコーティングを介して)互いに凝集又はさもなければ結合されて、水体中に一体的に配備される基材(例えば、播種及び/又は被覆された基材及び/又はアルカリ性流体を含む基材)の凝集物又はアレイを形成し得る。かかる組立体、凝集物又はアレイは、凝集物を形成するように任意の好適な配置で一体的にコイル化、チェーン連結(例えば、より糸、ロープ若しくはチェーンを介して)、スタック又は結合することによって形成され得る。凝集物は、有利には、個別播種基材よりも高い機械的強度を有し得る。さらに、凝集物を形成することは、有利には、凝集物に含まれる隣接する播種基材を少なくとも部分的に波、流れ及び風の作用から保護し、それにより播種された目的産物、肥料、栄養素、添加剤又はバインダーの播種基材からの除去、侵食及び/又は破断も阻止し得る。いくつかの実施形態では、炭素質コーティングは、被覆基材の凝集物を形成するために使用され得る。例えば、CaCOベースコーティングは、個別の基材を被覆するだけでなく、基材及びコーティングのより大きいコンポジット塊に凝集させるためにも使用され得る。かかる凝集は、例えば、より大きい及び/又はより長寿命の目的産物の成長を支援するために、より大型の、より大きい浮力の及び/又はより長い浮遊基材の役割を果たすように、より大きいサイズのフロートが望まれるときに有用である。かかる連結基材は、表面水体から水体の底(例えば、海底)に迅速に沈下するように、基材及びコーティング材料の大きい高密度凝集物を作り出すためにも使用され得る。
【0077】
[0083] 本方法10は、複数の基材を基材組立体に組み立てることを任意選択的に含むとして上記で記載されているが、かかるプロセスは、いずれの好適な海洋ベースのCDRのためのペイロードでも実施され得、具体的に基材を組み立てることに限定されない。例えば、任意の数のペイロードが任意の好適な構造体などで組み立てられ得、これは、ペイロードを相対的にコンパクトな又は接続された組立体に少なくとも一時的に維持し得る。いくつかの実装形態では、かかる組立体、構造体などは、所望の時間にわたって又は所望の基準を満たすことに応じてペイロードを放出するように構成され得る。かかる基準は、例えば、組立体の1つ以上の部分の溶解及び/又は分解、荒海、波若しくは流れの結果としての組立体の1つ以上の部分の破壊、通過する船、海洋船舶、大きい海洋動物などによる機械的損傷の結果としての組立体の1つ以上の部分の破壊及び/又は太陽光若しくは紫外線への暴露などであり得る。
【0078】
[0084] ステップ12を参照して上記で説明したように、本方法10は、水体(例えば、海洋、海、河川、池、湖、河川又は基材が第2の位置に移動し得る任意の他の水体)中の第1の位置に上記のペイロードを配備することを含む。いくつかの実施形態では、第1の位置は、沿岸、ドック、埠頭、沖合プラットフォーム、沖合位置、有人船舶又は無人船舶の少なくとも1つを含み得る。いくつかの実施形態では、ペイロードを配備することは、水体中に多数のペイロードを独立して配備することを含み得る。いくつかの実施形態では、ペイロードを配備することは、多数のペイロードをペイロード組立体に組み立てること(例えば、少なくとも一時的に一緒に結合された任意の数の固形基材を有する基材組立体)と、水体中の第1の位置にペイロードを配備することとを含み得る。ペイロードは、任意の好適な手段、方法、機構などを用いて第1の位置に配備され得る。いくつかの実施形態では、例えば、基材は、沿岸、ドック、埠頭、沖合プラットフォーム(例えば、石油リグ)、有人船舶(例えば、船、貨物船、汽艇など)又は無人船舶(例えば、ドローン)から配備され得る。無人船舶が使用されるいくつかの実施形態では、かかる船舶は、回収用船舶又は犠牲船であり得る。例えば、かかる無人船が第1の位置にペイロードを送達又は配備すると、無人船舶が最終的に水体の底部に沈下し得、回収される必要がないように、船舶は、生分解性材料から形成され得るか又はそれを含み得る。
【0079】
[0085] 本明細書に記載のペイロードのいずれも、第1の構成で配備されるときの第1の構成であり得る。例えば、ペイロードが基材(例えば、炭素質材料若しくはコーティング及び/又はアルカリ性流体を含む、目的産物が播種された天然に存在する有機材料を含む固形基材)である実施形態では、本明細書に記載のように、第1の構成の基材の浮力は、かかる基材が浮遊するようにする閾値浮力よりも大きいものであり得る。前記他の方法では、第1の構成の基材の密度は、基材が配備される水の平均密度よりも小さくすることができ、それにより基材が水の表面近く、表面位置又は表面上で浮遊するようにし得る。基材が炭素質材料又はアルカリ性流体を含むいくつかの実施形態では、アルカリ性流体に含まれる炭素質材料又はアルカリ性塩は、第1の構成で実質的に未反応であり得る(例えば、水体中に存在するプロトンを依然として中和していない)。例えば、基材は、指定の時間後に溶解、崩壊又は沈下するように構成され得る。
【0080】
[0086] いくつかの実施形態では、基材は、自動リギング又はジャストインタイム組立を用いて第1の位置に配備され得る。いくつかの実施形態では、基材又は基材組立体の貯蔵及び/又は配備は、配備がサードパーティー船(例えば、第1の位置が位置する海洋の領域をすでに横切っている輸送船)から行われるように契約され得るように小型化又は容器化され得る。
【0081】
[0087] いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、大気的に有意量のCOを捕捉及び隔離するのに十分な多数のペイロードを輸送及び/又は組み立てることを含み得る。例えば、本明細書に記載の方法は、炭素捕捉用途にとって大気的に有意及び/又は妥当な量の目的産物バイオマスを栽培及び/又は蓄積するのに十分な多数の基材、及び/又は海洋の酸性分を中和し、及び炭素を隔離するためにアルカリ性流体を含む十分に多量の炭素質被覆基材又は固形基材を輸送及び/又は組み立てることを含み得る。かかる実施形態では、第1の位置に基材を配備するために使用される配備システムは、小さい及び/又は限定されたフットプリント(例えば、占有される小さい領域、体積及び/又は重量)内で多量の基材を貯蔵、輸送及び/又は配備することを可能にする1つ以上の高密度モジュール、構成要素及び/又はスタックを含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、配備システムは、少なくとも約100,000基材、少なくとも約200,000基材、少なくとも約400,000基材、少なくとも約800,000基材、少なくとも約1,000,000基材、少なくとも約1,500,000基材、少なくとも約2,000,000基材、少なくとも約2,500,000基材、少なくとも約3,000,000基材又はそれを超えるもの(それらの間のすべての値及び範囲を含む)を輸送、貯蔵、組立及び/又は配備するように構成され得る。いくつかの実施形態では、海洋ベースのCDRのために使用されるとして本明細書に記載される配備システムは、「Systems, Devices, and Methods for Rapid and Scalable Deployment of Marine-Based Cultivation Apparatus」という名称で2023年2月1日に出願された国際特許出願PCT/US2023/061782号(「’782 PCT」)(その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載の配備システム(その一部又は組合せを含む)のいずれかと類似及び/又は実質的に同じであり得る。
【0082】
[0088] いくつかの実装形態では、本明細書に記載のCDRペイロードは、船舶から配備され得る。船舶は、水体中又は水体上で操作され得る任意の好適な浮揚船、ウォータークラフト、ボート、船、ラフトなどであり得る。いくつかの実装形態では、船舶は、大型貨物船、タンカー及び/又は他の商業規模船舶であり得、有人又は無人であり得る。船舶は、貯蔵構成要素、ロングライン、栽培構成要素及び/又は組立体構成要素を含めて、配備システムの1つ以上の構成要素を収容、収納及び/又は含有し得る。船舶は、本明細書にさらに記載されるように、搭載位置(例えば、システムの構成要素を搭載及び搭降することができる輸送用ドック及び/又はポート)及び基材の配備のための1つ以上の指定位置(例えば、第1の位置)に及びそこからペイロードの1つ以上の構成要素を輸送するように構成され得る。
【0083】
[0089] 船舶は、積荷を搭載及び搭降するための1つ以上の好適な位置、例えば輸送用ドック、ポート、波止場、埠頭、桟橋及び/又はCDRペイロード又はその構成要素若しくは一部の搭載及び/又は搭降が行われる類似の場所の近くに、それに隣接して及び/又はそれに平行に船舶を配置及び/又は位置決めするように(例えば、人間入力を介して、半自立的に又は自立的に)制御され得る。いくつかの実施形態では、船舶は、ペイロード(例えば、目的産物が播種された、炭素質及び/又はアルカリ性材料、及び/又はアルカリ性流体で被覆されるか、又はさもなければそれらを含む基材を含むペイロード)を第1の位置に配備するように構成された1つ以上の領域を含み得る。さらに、船舶は、任意の好適な貯蔵システム、栽培システム、組立システム、配備システム及び/又は基材、及び/又は他のペイロードを貯蔵、調製、組立、播種及び/又は水体中に配備するように構成された任意の他の好適なシステムを含み得る。
【0084】
[0090] いくつかの実施形態では、ペイロードを配備することは、水体中の第1の位置にアルカリ性流体を液体形態で送達することを含む。いくつかの実施形態では、ペイロードを配備することは、水体中の第1の位置にアルカリ性流体を液体形態で送達することを含む。例えば、本明細書に記載のアルカリ性流体のいずれも、任意の好適な手段、方法又は機構、例えばブイ、輸送船、バージ(例えば、フレキシブルバージ)、源泉、パイプライン、水路若しくは水管、任意の他の好適な手段、方法及び/又は機構或いはそれらの任意の好適な組合せを用いて水体中の第1の位置に配備され得る。かかる輸送又は配備のシステム又は方法の例は、上記の参照により組み込まれる’339 PCT及び/又は’326仮に詳細に記載されている。いくつかの実装形態では、アルカリ性流体を使用することは、それを流体状態に維持することにより、固形状態での輸送と比較して、CO隔離のためにアルカリ度を目的の場所に輸送する効率を増加させ得、それによりブイ、輸送船、フレキシブルバージ、源泉、パイプライン、水路又は水管などの効率的な方法による輸送が行われるようにし得る。
【0085】
[0091] 図1に戻って参照すると、本方法10は、22において、大気中炭素の隔離を促進するために第1の位置から第2の位置への移動中に第1の構成から第2の構成にペイロードを遷移させつつ、天然水流によってペイロードが水体中の第2の位置に運搬され、及び/又はさもなければ天然水流を介して移動することを可能にすることも含む。いくつかの実施形態では、第2の位置は、ペイロード(例えば、本明細書に記載の固形基材又はアルカリ性流体のいずれか)が天然水流下で受動的に輸送及び/又は運搬され、隔離炭素が速い炭素サイクルから遅い炭素サイクルに移送される深海であり得る。いくつかの実施形態では、ペイロードの浮力は、本明細書に記載のように、第1の構成から第2の構成に遷移するにつれて調整又は変化することもできる。
【0086】
[0092] いくつかの実施形態では、第1の位置(例えば、沿岸、ドック、埠頭、沖合プラットフォーム、沖合位置、有人船舶、無人船舶又は任意の他の好適な位置)は、ペイロードが天然水流下で第2の位置に受動的に到達するまでの推定移動時間に少なくとも部分的に基づいて選択され得る。例えば、第1の位置は、第1の位置から第2の位置への水体を通したペイロードの推定移動時間及び予測軌跡に少なくとも部分的に基づいて選択され得る。いくつかの実施形態では、第1の位置は、追加的又は代替的に、推定移動時間、予測軌跡及び環境条件、海洋化学、魚若しくは海洋哺乳動物の回遊領域又は予測軌跡に沿った船舶交通の少なくとも1つに少なくとも部分的に基づいて選択され得る。
【0087】
[0093] いくつかの実施形態では、第1の位置は、第1の位置から第2の位置への移動時間及び/又は予測軌跡を推定し、それによりそれに応じて第1の位置を選択するために、地理空間モデリング、数値モデリングを実施するように構成された1つ以上の機械学習モデル及び/又は海洋流、風、潮汐強度の影響下でのペイロードの予測空間的進展若しくは方向のモデルを用いて、並びにいくつかの実装形態では衛星画像を用いて又はペイロードに一体化されたセンサー(例えば、ブイ、基材及び/又は栽培機器に含まれるGPSセンサー、圧力センサー、ウインドフローセンサー、温度センサー、任意の他の好適なセンサー又はそれらの組合せ)を介して測定された海洋循環データをその場で用いて選択され得る。
【0088】
[0094] 例えば、第2の位置は、所定及び/又は所望の一連の特性を有する水体中の目的位置であり得、第1の位置は、CDRペイロードが第1の位置から第2の位置に移動するように(例えば、機械学習モデル及び/又は任意の他のモデル又は計算ツールを用いて)選択され得る。例えば、第2の位置の所定及び/又は所望の特性は、温度上限、湧昇領域/ゾーン、沈降領域/ゾーン及び/又はCOを隔離し、及び/又は水体の酸性化を中和するCDRペイロードの予測効率及び/又は有効性などを含み得る。いくつかの実装形態では、目的位置(例えば、所望の第2の位置)を決定すること、したがって水体に関連付けられた対応する配備位置(例えば、所望の第1の位置)を決定することは、収集及び/又は履歴データ、環境条件、配備方法及び/又は任意の他の好適なデータに基づき得る。いくつかの実装形態では、1つ以上の機械学習モデルなどは、かかるデータを解析し、第1の位置、第2の位置及び/又はそれらの間で移動するCDRペイロードの軌跡に関連付けられた予測出力を提供するようにトレーニング及び実行され得る。例えば、本明細書に記載の実施形態及び/又は方法のいずれも、’339 PCT及び/又は「Systems and Methods for Quantifying and/or Verifying Target Product Accumulation for Greenhouse Gas Sequestration」という名称で2022年9月30日に出願された米国特許出願第17/957,681号(「’681出願」)(それらの開示全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のもの(又はその一部)のいずれかと類似又は実質的に同じモデル及び/又はアルゴリズムを使用及び/又は実行し得る。
【0089】
[0095] いくつかの実施形態では、第1の構成におけるペイロード(例えば、基材)の浮力は、閾値浮力超であり得、第2の構成におけるペイロード(例えば、基材)の浮力は、閾値浮力未満である。例えば、ペイロードは、本明細書に記載のように天然に存在する産物を含み、目的産物を含み得、及び正浮力である、すなわち先に記載のように水中で浮遊する固形基材であり得るか又はそれを含み得る。対照的に、基材上で栽培された目的産物は、天然で負浮力であり得る(すなわち水中に沈下する)か、又は目的産物が成熟するにつれて一層負浮力になり得る。したがって、ペイロードの浮力は、基材の浮力及びそれに組み込まれた目的産物の浮力に基づく。第1の構成では、水中への配備前に部分的に成長していても又はしていなくてもよい目的産物は、基材の第1の大きさの正浮力未満の第1の大きさの負浮力を有する第1のバイオマスを有し得る。このため、第1の構成では、初期に配備されたとき、ペイロード(例えば、基材及び栽培バイオマス)は、基材が水体上に浮遊するように全体として正浮力を有する。
【0090】
[0096] ある期間にわたり、目的産物は、大気中COを捕捉、吸収及び/又は隔離して成長するにつれてバイオマスを蓄積する。バイオマスの蓄積は、したがって、目的産物に関連付けられた負浮力の大きさを増加させる。さらに、水は、多孔性基材内に蓄積して基材の正浮力を低減し得る。閾値バイオマス量の目的産物が蓄積されると、閾値量のバイオマスは、基材の第1の大きさの正浮力よりも大きい第2の大きさの負浮力を有し得るため、基材は、閾値量のバイオマス蓄積に関連付けられた負浮力の大きさの程度に少なくとも部分的に基づいて、閾値浮力よりも小さい浮力を有するようになる。このため、第2の構成では、基材は、表面炭素サイクルの下に(例えば、水体の底に)沈下し得、それにより水体内及び/又は沈降物内に(例えば、表面炭素サイクルの下に)捕捉炭素を捕捉及び/又は隔離する。基材は、天然に存在する材料を含み、目的産物は、天然に存在する生物を含むため、基材が環境(例えば、海洋環境)に及ぼす影響を無視することができ、いくつかの事例では、水体の底又は底部に生息し得る動物及び生物に対して栄養源を提供することによって環境を改善し得る。
【0091】
[0097] いくつかの実施形態では、基材は、基材の少なくとも一部の除去又は分解を介して第1の構成から第2の構成に遷移し得る。例えば、基材の少なくとも一部(又は1つ以上のベース層、それらのバインダー、コーティングなど)に含まれ、及び/又はそれらを形成する天然に存在する産物は、天然で生分解性であり得(例えば、天然で水中に存在し得る生物による加水分解及び/又は酵素的消化を介して)、太陽の紫外(UV)放射線への暴露に起因して分解性であり得、及び/又は水中溶解性であり得る(例えば、水中溶解性の炭酸カルシウム又は他のセメント系産物の取込みを介して)。基材又はその一部の分解は、ある期間にわたって行われ得、基材の正浮力の減少を引き起こす一方、その中に播種された目的産物の負浮力は、基材の浮力が閾値浮力未満に減少するまで成長に伴って増加し、水体中への播種基材の沈下を引き起こし、及び/又はさもなければそれが行われるようにする。
【0092】
[0098] いくつかの実施形態では、基材は、中空であり得(例えば、その中にボイド又は内部空洞を含むか又は画定する)、ストッパー、プラグ又はキャップは、外部環境から内部体積/空洞を封止し得る。ストッパー、プラグ又はキャップは、水が内部空洞に入り得るように、例えば加水分解、化学溶解、離散、UV線及び/又はガルバニック腐食を介して経時的に分解するように構成され得、それにより、先に記載のように、閾値浮力未満への基材の浮力の減少を引き起こす。本明細書に記載の基材のいずれも、本方法10に関連して本明細書に記載の遷移機構の任意の組合せを用いて、第1の構成から第2の構成に遷移するように構成され得ることを認識されたい。
【0093】
[0099] いくつかの実施形態では、基材(又は他のペイロード)の少なくとも一部は、本明細書で先に記載のように、炭素質及び/又はアルカリ性材料で被覆され得る。かかる実施形態では、コーティングは、第1の構成から第2の構成への基材(又は他のペイロード)の遷移を引き起こすように構成され得る。さらに、第1の構成のコーティングの第1の体積は、第2の構成のコーティングの第2の体積よりも大きくし得る。コーティングは、水体中に溶解して、第1の構成から第2の構成への基材の遷移を引き起こすにつれて、水体の酸性化を中和し、及び/又は大気若しくは表面水から炭素を隔離するように配合され得る。
【0094】
[0100] 例えば、第1の構成では、コーティングは、基材に正浮力を持たせて基材を浮遊させるのに十分な正浮力を有し得る。第2の構成では、本明細書に記載のように、コーティングの浮力が減少し得、例えば成長するにつれて、目的産物及び/又はコーティングによって捕捉された炭素を隔離するために、基材にも負浮力を持たせて沈下させる。いくつかの実施形態では、コーティングは、第2の構成のコーティングの第2の体積よりも大きい第1の体積を第1の構成で有し得る。例えば、コーティングは、ある期間にわたって水体中に溶解するか又は水体中で崩壊し得、こうして体積を失って基材が水体中に沈下するまで基材の浮力を低減させる。いくつかの実施形態では、コーティングは、第1の構成から第2の構成に遷移するつれて、大気から炭素を隔離するようにも配合され得る。
【0095】
[0101] さらに補足すると、コーティングの組成及び/又はその厚さにより、浮力、したがって基材の浮遊時間を制御し得る(例えば、速やかな沈下から何年間もの浮遊まで及ぶ)。いくつかの実施形態では、コーティングは、例えば、浮揚性基材中への水の取込みを遅延させるようにコーティング及び/又は基材の組成及び/又は厚さを調整することにより、基材の浮遊時間を延長するように配合され得る。コーティングは、徐々に溶解し得、凝集物の浮揚性画分の損失を引き起こし、水が基材中に拡散するようにし、最終的に例えばコーティングが十分に水体中に溶解するか又は水体中で崩壊した後に基材を沈下させる。いくつかの事例では、基材の浮遊時間を増加させることは、基材上での目的産物の沈着及び成長を促進し得、これにより光合成を介してCOが隔離され、コーティングの一部又は全部が溶解したときに水体の底部(例えば、海底、海洋底など)に輸送されるであろう。例えば、一部又は全部が溶解したコーティングは、水が浮遊基材に侵入するようにし得、これにより組合せマス(例えば、基材及び目的産物)の沈下をもたらし得る。
【0096】
[0102] コーティングは、沈下の時点で基材上に残留し得、それにより基材の生物学的分解が阻止され、及び/又は有機炭素として基材中に先に隔離されたCOの放出(例えば、再石灰化を介して)が低減される。いくつかの実施形態では、浮遊時間を短縮して沈下を加速するために、コーティングの組成及び/又は厚さは、被覆基材を負浮力にして、水体(例えば、海洋又は他の天然若しくは人造の水体)中に配備されると基材が沈下するように最適化され得る。
【0097】
[0103] 基材が凍結アルカリ性流体を含むいくつかの実施形態では、先に記載のように、アルカリ性流体は、固形形態で正浮力を有し得、アルカリ性流体は、アルカリ性流体が融解するにつれて水体と混合して、そのアルカリ度を低減する。同様に、アルカリ性流体が液体形態で水体中に配備されたとき、’339 PCT及び/又は’326仮に記載のように、アルカリ性流体は、天然水流によって又は天然水流下で第2の位置に輸送及び/又は運搬されつつ、水と混合し得る。
【0098】
[0104] 基材又は基材組立体が固形基材を含むいくつかの実施形態では、かかる基材又は基材組立体は、基材又はその組立体によってデータの収集及び伝送が行われるようにし得るデータ収集用センサー及び通信装置(例えば、GPSトランスポンダー、トランシーバー、トランスポンダーなど)を含み得る。かかるセンサーは、例えば、経済データ収集(例えば、船舶交通)、環境データ収集又は防衛検知に使用される。いくつかの実施形態では、基材又は基材組立体は、商業化され得る。例えば、基材又は基材組立体は、炭素の隔離及び/又は水体(例えば、海洋)のアルカリ度の増加並びにサービスとして商業化された(例えば、サードパーティーは、基材又は基材組立体を配備する配備者に支払いを行い、カーボンクレジットを販売する)及び/又は契約として商業化された(例えば、サードパーティーは、魚類資源回復のための現地魚類個体群用フィードストックの役割を果たす海洋施肥材料を含む基材又は基材組立体を配備する配備者に支払いを行う)カーボンクレジットの販売により、基材又は基材組立体の配備者によって直接商業化され得る。
【0099】
[0105] いくつかの実装形態では、基材を形成することから、第1の構成から第2の構成に遷移する基材に至るまでの本方法10の操作及び/又はステップは、正味で負のカーボンフットプリントを有し得る。換言すると、基材によって隔離される炭素量は、本方法10のすべてのプロセスのカーボンフットプリントの和がネガティブカーボンフットプリントを有し得るように、基材の形成及び配備中に放出される炭素量を実質的に超え得る。
【0100】
[0106] さらに補足すると、基材に目的産物が播種されるいくつかの実施形態では、基材の形成、基材への播種及び基材の配備は、組み合わされた第1のポジティブカーボンフットプリントを有し、第1の構成から第2の構成への基材の遷移は、第2のネガティブカーボンフットプリントを有し、第1のポジティブカーボンフットプリント及び第2のネガティブカーボンフットプリントの和は、正味で負のカーボンフットプリントである。基材が炭素質コーティングで被覆されるいくつかの実施形態では、基材の形成、基材の被覆及び基材の配備は、組み合わされた第1のポジティブカーボンフットプリントを有し、第1の構成から第2の構成への基材の遷移は、第2のネガティブカーボンフットプリントを有し、第1のポジティブカーボンフットプリント及び第2のネガティブカーボンフットプリントの和は、正味で負のカーボンフットプリントである。
【0101】
[0107] 基材が炭素質コーティングで被覆され、及びそれに目的産物が播種されるいくつかの実施形態では、基材の形成、基材の被覆、基材への播種及び基材の配備は、組み合わされた第1のポジティブカーボンフットプリントを有し、第1の構成から第2の構成への基材の遷移は、第2のネガティブカーボンフットプリントを有し、第1のポジティブカーボンフットプリント及び第2のネガティブカーボンフットプリントの和は、正味で負のカーボンフットプリントを有する。基材がアルカリ性流体を含むいくつかの実施形態では、アルカリ性流体を形成又は抽出し、及びアルカリ性流体を第1の位置に配備するプロセスは、第1のポジティブカーボンフットプリントを有し得、第1の構成から第2の構成へのアルカリ性流体の遷移(例えば、海洋水と混合してアルカリ度を低減し、炭素を隔離すること)は、第2のネガティブカーボンフットプリントを有し得、第1のポジティブカーボンフットプリント及び第2のネガティブカーボンフットプリントの和は、正味で負のカーボンフットプリントである。このため、本明細書に記載の基材のいずれも、正味で負のカーボンフットプリントを有するプロセスにおいて、遅い炭素サイクルから速い炭素サイクルへの炭素の遷移を介して、最終的に全体的なカーボンフットプリントの低減をもたらす正味で負のカーボンフットプリントを有するように本方法10で使用され得る。
【0102】
[0108] 図1に戻って参照すると、本方法10は、24において、大気中炭素の隔離量を定量化することをさらに含む。例えば、大気中炭素の隔離量は、ペイロードの輸送、ペイロードの少なくとも一部の放出、分解及び/又は溶解、第1の構成から第2の構成へのペイロードの遷移及び/又はある量の蓄積バイオマスを用いた又は用いないペイロードの少なくとも一部の沈下などに少なくとも部分的に基づき得る。いくつかの実装形態では、本明細書の海洋ベースのCDR実施形態及び/又は方法を介して隔離された炭素は、定量、計算及び/又は査定され得、隔離された炭素の計算量に結び付けられ、及び/又はさもなければ関連付けられたクレジットにより、カーボンクレジット市場(又は任意の他の好適な市場)でカーボンオフセットクレジットの販売などが行われるようにする。いくつかの実装形態では、バイオマス蓄積量及び/又は(目的産物蓄積を用いた又は用いない)ペイロードによって捕捉された炭素量の定量、検証及び/又は計算は、例えば、’315特許及び/又は’681出願に詳細に記載されているシステム及び/又は方法のいずれかを用いて実施され得る。
【0103】
[0109] 図2は、一実施形態に係る、水ベース(例えば、海洋ベース)CDRのためのシステム100の概略ブロック図である。本システム100は、水体W中に配備され得、ペイロードが水体W中の第1の位置L1から第2の位置L2に受動的に輸送されて、遅い炭素サイクルにそれを移送することによって炭素を隔離するため、速い炭素サイクルから炭素を捕捉するように構成される1つ以上のペイロード110を抽出、生成、製造及び/又はさもなければ提供するように構成される。
【0104】
[0110] 図2に示されるように、本システム100は、天然に存在する材料源102を含み、それから天然に存在する材料を得ることができ、それを用いてペイロード110の少なくとも一部を生成及び/又は形成し得る。いくつかの実装形態では、天然に存在する材料源102は、自然環境で簡単に入手できるか、又は耕作若しくは他の栽培/収穫操作の主要産物若しくは副産物として天然に生成される有機材料源であり得る。かかる実施形態では、天然に存在する材料は、例えば、独立してペイロード110を形成し得るか、又はバイオマスを成長若しくは蓄積させるように栽培され得る目的産物が播種若しくは含浸され得る任意の数の基材を形成するために使用され得る。例えば、天然に存在する材料は、農業廃棄物又は森林廃棄物を含み得る。各種の実施形態では、天然に存在する材料としては、限定されないが、バイオマス(例えば、木質バイオマス)、例えば草本(例えば、スイッチグラス、野草、遺伝子組換え草本など)、木材チップ(例えば、倒木又は木材再生事業から得られるもの)、丸太、樹木樹皮、森林残物(木屑、小枝、針葉、葉、球果、種子、ナッツ)、木毛繊維、藁繊維、破砕燃料、トウモロコシ穂軸、ココナッツ殻、ココナッツ繊維、アサ、ジュート、コンポスト、キサンタンガム、寒天、アルギネート、カードボード又はナノセルロース繊維、紙などが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、天然に存在する材料は、天然材料、例えば糖、油、糖蜜、ココナッツ油、パーム油、キチン、菌糸体などから生産されるバイオベース材料又は生分解性ポリマー(例えば、PHA又はPHBなどのポリヒドロキシアルカノエート系脂肪族ポリエステル)であり得る。天然に存在する材料(例えば、バイオマス、バイオベース材料、生分解性ポリマーなど)は、例えば、加水分解及び/又は酵素的消化を介して水(例えば、淡水、塩水、汽水など)中において天然で生分解するように配合され得、及び/又は他に経時的に浮力を失うように配合され得る。かかる実施形態では、天然に存在する材料源102は、農場、紙リサイクル設備、製材工場、コンポスト若しくは芝生廃棄物収集業、伐採操業、製造プラント又は上述した天然に存在する材料若しくは方法10に関連して記載の天然に存在する材料を得ることができる任意の他の供給源を含み得る。
【0105】
[0111] いくつかの実装形態では、天然に存在する材料源102は、ペイロード110を形成するために基材に含まれ得るか若しくはその上に被覆され得るか、又は上記の基材とは独立したペイロード110を形成し得る炭素質材料源及び/又はアルカリ性材料などであり得る。かかる実装形態では、天然に存在する材料源102としては、限定されないが、CaCO、CaMg(CO、MgCO、CaO、Ca(OH)、Mg(OH)、MgO、KOH、NaOH及び/又はアルカリ性、苦鉄質/超苦鉄質金属ケイ酸塩鉱物及び/又は岩石、有機及び/又は無機産物又は廃棄物或いは任意の他のもの、及び/又は方法10を参照して上記で記載された任意の他の炭素質及び/又はアルカリ性材料の供給源、及び/又はそれらの任意の組合せが挙げられ得る。かかる天然に存在する材料は、海洋アルカリ性化を介してCOを隔離し、海洋の酸性化を中和してCOを隔離する海洋の能力を増強し、及び/又は少なくとも一時的にペイロード110(例えば、基材)に浮力を提供するなどのために構成され得る。いくつかの実装形態では、天然に存在する材料源102は、ケイ質画分、例えば基材コーティング及び/又はペイロード110の浮力を増強する軽石及び/又は他の低密度小胞岩石(例えば、苦鉄質岩石、超苦鉄質岩石及び/又は鉱物)を含む材料源でもあり得る。
【0106】
[0112] いくつかの実施形態では、天然に存在する材料源102は、空気が混入した最終材料を作り出すために界面活性剤フォームと混合され得るアルカリ性材料源であり得る。いくつかの実施形態では、天然に存在するアルカリ性材料は、例えば、酸化鉄(Fe)及び/又は他の鉄(Fe)若しくはマンガン(Mn)含有酸化物などの金属酸化物画分を含み得る(例えば、浮力調整用、バラスト用及び/又は基材の片側に含まれるときの基材の向き制御用として)。いくつかの実施形態では、天然に存在する材料は、例えば、一体的に基材に接着して炭素質材料を保持するために、1つ以上の有機又は無機バインダーを含み得る。好適なバインダーとしては、限定されないが、炭酸塩バインダー(例えば、CaO、Ca(OH)など)、MgO、Mg(OH)及び/又は他のセメント系バインダー若しくは有機バインダー、例えば有機樹脂、多糖ゲル、タンパク質性バインダー、接着剤、任意の他の好適な有機バインダー或いはそれらの組合せが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、天然に存在する材料は、アルカリ性材料の水和及び/又は石灰化の速度を増加又は減少させるための促進剤を含み得る。炭素質及び/又はアルカリ性材料を含む上述した実施形態のいずれでも、天然に存在する材料源102は、鉱山、貝殻、甲殻類、珊瑚、岩石、炭素質塩リサイクル業又は任意の他の炭素質材料源を含み得る。
【0107】
[0113] いくつかの実施形態では、天然に存在する材料源102は、アルカリ性流体源、例えば方解石、クリソライト、ドロマイト、ハイドロマグネサイト、イカ石、菱苦土石、一水方解石、ネスケホン石、炭酸ナトリウム、サーモナトライト、灰長石、透輝石、苦土かんらん石、ジェンニ石、ラーナイト、ランキン石、トベルモライト、珪灰石、ブルース石、石灰、ペリクレース、ポルトランダイト、CAH10、C2AH8、C3AH6、C4AH13、C2FH8、C3FH6、C4FH13、トリカルボアルミネート、灰長石、苦土かんらん石、ゲーレン石、ラーナイト、メルウィナイト、ランキン石、任意の他の好適なアルカリ性鉱物及び/又は流体の水性溶液、又は本方法10に関連して詳細に記載されるそれらの組合せであり得る。かかる実施形態では、天然に存在する材料源102は、表面水、浅部地中水、熱水ブライン、深部地中水、油田ブライン、蒸発岩ブライン又は本方法10に関連して記載の任意の他の供給源を含み得、従来の坑井掘削、再循環、表面捕集、溶解採掘、超臨界CO、CO含有流体若しくは空気を用いた苦鉄質若しくは超苦鉄質岩石の採掘を用いて、又は’339 PCTに記載の任意の他の好適な抽出方法を用いて抽出され得る。
【0108】
[0114] 本システム100は、(例えば、天然に存在する材料源102から得られる天然に存在する材料からの)1つ以上のペイロード110を組み立てるためのペイロード組立サイト105も含む。例えば、いくつかの実施形態では、ペイロード110は、天然に存在する材料(例えば、本明細書に記載の有機材料及び/又は生分解性材料のいずれか)を含み得、及び/又はそれで形成され得る基材であり得る。かかる実施形態では、ペイロード組立サイト105は、任意の好適な形状を有する(例えば、正方形、矩形、丸形、卵形、三角形、多角形、非対称又は任意の他の好適な形状若しくはそれらの組合せを有する)固形又は多孔性ブロックに基材を形成又は製造するための装置又は機械を含み得る。いくつかの実施形態では、固形又は多孔性基材は、チューブ、チューブ状構造体、メッシュ、ソックス、バッグ、ポーチ、ベイラー及び/又は内部体積を画定する任意の他の容器状構造体に形成され得るか又はそれらの中に配設され得る。いくつかの実施形態では、固形又は多孔性基材は、本明細書で先に記載のように、オーバーブレイド、スパイラルラップ、ワットル、スリットソックス、ロープ(例えば、陸地侵食を防止するために使用されるもの又は洪水バリアに類似したもの)、シート(例えば、単層又は多層のもの)、メッシュ及び/又はロービングなど、或いはそれらの組合せを含み、及び/又はそれへと形成され得る。さらに、ペイロード組立サイト105は、限定されないが、コンベアベルト(例えば、天然に存在する材料を輸送するため)、ベイラー、コンプレッサー(例えば、機械式又は油圧式コンプレッサー)、成形型、ニッティング装置、ソーイング装置、ガス圧フィラー(例えば、エアコンプレッサー)、ミキサー(例えば、バインダーと、天然に存在する材料とを混合するため)、ヒーター(例えば、熱可塑性処理のため)、ボイラー及び/又は任意の他の好適な装置又は機械或いは天然に存在する材料を、所望の構造を有する基材に成形するためのそれらの組合せを含み得る。
【0109】
[0115] 基材が炭素質及び/又はアルカリ性材料又はコーティングを含むいくつかの実施形態では、炭素質及び/又はアルカリ性材料は、本明細書に記載のように、基材を形成する固形又は多孔性構造体に組み込まれ得る(例えば、基材の製造プロセス時に天然に存在する材料に閉じ込められ得るか、又は基材に含浸若しくは埋入され得る)か、又は基材の少なくとも一部上に被覆され得る。かかる実施形態では、ペイロード組立サイト105は、限定されないが、コンベア、ミキサー(例えば、バインダーと炭素質材料とを混合するため)、ヒーター、ボイラー、コーティング装置(例えば、スプレーコーター若しくはディップコーター)又はさもなければ固形構造を有する基材を被覆するか、若しくはその中に炭素質材料を組み込むための任意の他の好適な装置を含めて、炭素質及び/又はアルカリ性材料の取扱装置を含み得る。
【0110】
[0116] いくつかの実施形態では、目的産物(例えば、本明細書に記載の目的産物のいずれか)は、基材又はその一部に組み込まれ得、埋め込まれ得、及び/又は直接播種され得る。かかる実施形態では、ペイロード組立サイト105は、追加的又は代替的に、目的産物栽培又は成長装置、例えばハッチェリー、培養プール又は池、照明具、貯蔵庫(例えば、肥料、培養媒体及び/又は栄養素を貯蔵するため)、ヒーター、温度センサー或いは目的産物の培養若しくは栽培及び/又は基材中への目的産物の組込みを促進するための任意の他の装置若しくは機械又はそれらの組合せなどを含む。かかるハッチェリー又は装置の例は、’782 PCT及び/又は「Systems and Methods for the Hatching, Seeding, and/or Cultivating of a Target Product」という名称で2021年10月14日に出願された国際特許出願PCT/US2021/054952号(「’952 PCT」)(それらの開示全体が本明細書に組み込まれる)に詳細に記載されている実施形態又は概念のいずれかと類似又は実質的に同じであり得る。いくつかの実施形態では、かかるハッチェリー及び/又は装置は、’782 PCT、’339 PCT及び/又は’326仮に記載のように、船舶(例えば、輸送船)など及び/又はその一部に含まれ得る。
【0111】
[0117] いくつかの実施形態では、ペイロード110(基材なし又はなし)は、水体Wに連通することが意図されるアルカリ性材料(例えば、アルカリ性鉱物又は流体、例えば本明細書に記載のいずれか)を含み得る。例えば、いくつかの実装形態では、基材は、本明細書で先に記載のように、水体W中に放出される液体形態のアルカリ性材料を含み得る。いくつかの実装形態では、アルカリ性材料(例えば、アルカリ性液体)は、基材(必ずというわけではないが、その一体化部分)とは独立して又はそれに関連して水体W中に放出される。かかる実装形態では、ペイロード組立サイト105は、例えば、第1の位置L1へのアルカリ性流体の輸送が行われるように(例えば、有人、無人若しくは自律船舶の貯蔵コンパートメント又はブイにアルカリ性流体が充填されるように)、アルカリ性流体を受け取るか又は輸送するように構成された導管(例えば、パイプ、チューブ、ホースなど)、ミキサー、貯蔵用容器、圧力センサー、温度センサー、コントローラー、ポンプ、バルブ、フィラー、任意の他の好適な装置又はそれらの組合せを含み得る。いくつかの実施形態では、ペイロード組立サイト105は、アルカリ性流体を凍結固形基材に成形するように構成され得る。かかる実施形態では、ペイロード組立サイト105は、追加的又は代替的に、アルカリ性流体を凍結基材(例えば、先に記載のように、固形ブロック凍結アルカリ性流体又は天然に存在する材料と共に凍結形態で組み込まれたもの)に形成するために、冷凍庫、成形型、ミキサー、キャスター若しくは他の好適な装置又はそれらの組合せを含む。
【0112】
[0118] いくつかの実施形態では、ペイロード組立サイト105は、任意の数の個別のペイロード110がペイロード組立体106に組み立てられるようにし得る。例えば、複数のペイロード110(例えば、天然に存在する材料、生分解性材料、炭素質材料、目的産物、アルカリ性鉱物、アルカリ性流体及び/又は凍結アルカリ性流体を含む)などは、第1の位置L1に配備され得るラフト又は他の浮遊組立体(例えば、ペイロード組立体106)を形成するために、一緒に結合、接続、連結及び/又はさもなければ組み立てられ得る。いくつかの実施形態では、ペイロード組立サイト105は、複数のペイロード(例えば、基材)を結合、接続又は連結して、ペイロード組立体106を形成するように構成されたロープ、チェーン、フック、スタッカー、リフト、フォークリフト、ベイラー又は任意の他の好適な装置を含み得る。ペイロード組立体106は、水平アレイ、鉛直アレイ、矩形アレイ、円形アレイ、任意の他の好適な形状若しくはサイズのアレイ又はそれらの組合せで配置されるように一緒に結合され得る。
【0113】
[0119] 図2に示されるように、本システム100は、ペイロード110及び/又は複数のペイロードを含むペイロード組立体106を第1の位置L1に輸送して、ペイロード110又はペイロード組立体106を水体W中に配備する輸送システム160も含み得る。いくつかの実施形態では、輸送システム120は、ペイロード110又はペイロード組立体106を第1の位置L1に輸送して配備するように構成された船舶(例えば、無人又は有人であり得る大型貨物船、タンカー及び/又は他の商業規模船舶)、ドローン、浮揚船、ウォータークラフト、ボート、船、ラフト、航空機など含み得る。かかる船舶は、本方法10に関連して本明細書で先に記載のように、ペイロード110若しくはペイロード組立体106を牽引し得るか、又はペイロード110若しくはペイロード組立体106を保持して第1の位置L1に輸送するための貯蔵コンパートメントを含む。ペイロード110がアルカリ性流体を含むいくつかの実施形態では、輸送システム120は、ブイ、輸送船、バラストタンク、バージ(例えば、フレキシブルバージ)、源泉、パイプライン、水路若しくは水管又はアルカリ性流体を第1の位置L1に輸送するための任意の他の好適な手段、方法若しくは機構或いはそれらの任意の好適な組合せを含み得る。いくつかの実施形態では、ペイロード組立サイト105又は少なくともその一部は、輸送システム120(例えば、輸送船など)中又は上に配設又は実現され得る。
【0114】
[0120] 第1の位置L1は、水体W(例えば、湖、河川、海、海洋など)中に位置し、沿岸、ドック、埠頭、沖合プラットフォーム、沖合位置、有人船舶又は無人船舶の少なくとも1つを含み得る。第1の位置L1は、先に記載のように、天然水流下で受動的に(例えば、天然水流によって運搬されて)水体W中の第2の位置L2に到達するまでのペイロード110又はペイロード組立体106の推定移動時間に少なくとも部分的に基づいて選択される。いくつかの実施形態では、第1の位置L1は、第1の位置から第2の位置への水体を通したペイロード110又はペイロード組立体106の推定移動時間及び予測軌跡に少なくとも部分的に基づいて選択され得る。いくつかの実施形態では、第1の位置L1は、推定移動時間、予測軌跡及び環境条件、海洋化学、魚若しくは海洋哺乳動物の回遊領域又はペイロード110若しくはペイロード組立体106が予測軌跡に沿って遭遇することが予想される船舶交通の少なくとも1つに少なくとも部分的に基づいて選択され得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の機械学習モデル及び/又は他の計算ツールは、上記のように、第1の位置L1及び/又は第2の位置L2を決定及び/又は予測をするために使用され得る。かかる実施形態では、機械学習モデル及び/又は他の計算ツールは、’339 PCT及び/又は’681出願に記載のいずれかのものと類似及び/又は実質的に同じであり得る。
【0115】
[0121] ペイロード110は、第1の位置L1から第2の位置L2への移動中に第1の構成から第2の構成に遷移するように構成される。いくつかの実装形態では、ペイロード110の遷移は、ペイロード110の浮力を調整又は低減し得、大気中COを隔離し得る(例えば、先に記載のように水体のアルカリ度を増加させ、及び/又は大気中炭素を吸収することにより)。このため、ペイロード110は、例えば、水体Wのアルカリ度を増加させるか、又は水体Wの底部の第2の位置L2に沈下させることにより、COを隔離し、速い炭素サイクルから遅い炭素サイクルにCOを移送する。いくつかの実施形態では、第2の位置L2は、ペイロード110(例えば、本明細書に記載の目的産物あり若しくはなしの基材及び/又はアルカリ性流体)が天然水流によって又は天然水流下で受動的に輸送及び/又は運搬され、捕捉炭素が速い炭素サイクルから遅い炭素サイクルに移送される深海であり得る。
【0116】
[0122] 本システム100の正味のカーボンフットプリントは、海洋ベースのCDRプロセス及び/又は方法の一群のステップによって大気中に放出されるよりも多くのCOが本システム100によって隔離されるように負であり得る。例えば、天然に存在する材料源102(天然に存在する材料の発生及びペイロード組立サイト105への輸送を含む)、ペイロード組立サイト105(天然に存在する材料を受け取ること及び材料をペイロード110に製造又は組み立てることを含む)及び輸送システム120(ペイロード110又はペイロード組立体106を貯蔵すること及び第1の位置L1に輸送することを含む)は、第1のカーボンフットプリントを有する。さらに、ペイロード110は、第1の位置L1から第2の位置L2に天然水流下で受動的に変位、分散及び/又は移動するため、ペイロード110は、第2のネガティブカーボンフットプリントを有して第1の構成から第2の構成に遷移し(例えば、COを隔離し、浮力の低減を受けて第2の位置L2又はそれに近接してペイロード110の沈下を引き起こし、及び/又は水体W中に溶解若しくは混合してそのアルカリ度を増加させ、及び/又は酸性化を中和する)、その結果、第1のポジティブカーボンフットプリント及び第2のネガティブカーボンフットプリントの和は、正味で負のカーボンフットプリントになる。
【0117】
[0123] さらに補足すると、天然に存在する材料源102から、天然に存在する材料を得ることには、先に記載のように、第1のポジティブカーボンフットプリントの第1の部分に寄与するCO又は他の温室効果ガスを出力する機械装置及び/又は輸送装置が関与し得る。天然に存在する材料をペイロード110に製造することは、例えば、装置及び/又は材料の輸送、化石燃料の燃焼、送電網で駆動される装置の使用及び/又は廃棄材料若しくはガスの生成などに起因して、CO又は他の温室効果ガスを出力し得るため、全体として第1のポジティブカーボンフットプリントの第2の部分に寄与する。同様に、ペイロード組立サイト105は、第1のポジティブカーボンフットプリントの第3の部分に寄与する。輸送システム120は、例えば、輸送船が化石燃料を燃焼させてペイロード110を第1の位置L1に輸送して配備すること及びペイロード110を輸送船に輸送して搭載することなどに起因して、第1のポジティブカーボンフットプリントの第4の部分に寄与し得る。
【0118】
[0124] このため、第1の部分、第2の部分、第3の部分及び第4の部分の和は、ポジティブカーボンフットプリントを与えるか又はもたらす。しかしながら、第1の構成から第2の構成に遷移し、炭素を捕捉/隔離する際のペイロード110の使用から生じるネガティブカーボンフットプリントは、海洋ベースのCDRプロセスのポジティブカーボンフットプリント部分よりも実質的に大きい規模において正味で負であり(例えば、少なくとも1.5倍、少なくとも2.0倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3.0倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4.0倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5.0倍、少なくとも6.0倍、少なくとも7.0倍、少なくとも8.0倍、少なくとも9.0倍、少なくとも10.0倍(両端値を含む))、その結果、第1のポジティブカーボンフットプリント及び第2のネガティブカーボンフットプリントの和は、正味で負のカーボンフットプリントになる。このように、本システム100は、例えば、速い炭素サイクルから遅い炭素サイクルへの炭素の遷移により、全体的なカーボンフットプリントに正味で負の影響を及ぼし、大気中炭素レベルを低減する。
【0119】
[0125] いくつかの実施形態では、本システム100は、任意の好適なコンピュートデバイス及び/又はシステムなどを介して解析及び/又は処理され得る、ペイロード110(又はペイロード組立体106)に関連付けられたデータを収集するように構成された1つ以上のデバイス、構成要素及び/又はシステムなどを含み得る。いくつかの実施形態では、本システム100は、「Systems and Methods for Monitoring Accumulation of a Target Product」という名称で2022年11月11日に出願された国際特許出願PCT/US2022/079746号(「’746 PCT」)(その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のように、1つ以上のセンサーデバイス又はブイがペイロードと共に配備されるように構成され得る。このため、デバイス及び/又はセンサーブイなどは、ペイロード110の任意の好適な部分及び/又は特性を検知、検出及び/又は監視するように構成されたデバイスを含み、及び/又はそれに結合することができる。例えば、ペイロード110が目的産物を栽培するための基材である実施形態では、かかるデバイス又はセンサーブイは、目的産物の成長、バイオマス発生、バイオマス収率、環境特性若しくはデータ及び/又は1つ以上の基材の配備に関連付けられた任意の他のデータを検知、検出及び/又は監視するように構成され得る。より具体的には、かかるデバイス又はセンサーブイは、限定されないが、1つ以上のセンサー、カメラ(例えば、水中カメラ、フルオロメーター及び/又は他の撮像若しくは光学検知技術)、追跡デバイス(例えば、全地球測位システム(GPS)追跡デバイス及び/又は無線周波数識別(RFID)デバイスなど)、遠隔検知デバイス、テレメトリーデバイス、通信デバイス及び/又は任意の他の好適なデバイスなど、例えば’315特許、’681出願及び/又は「Systems and Methods for Monitoring Accumulation of a Target Product」という名称で2022年11月11日に出願された国際特許出願PCT/US2022/079746号(「’746 PCT」)(それらの開示全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のいずれかものを含み得る。
【0120】
[0126] かかるデバイス、例えば基材と共に配備されるセンサーブイなどを含むいくつかの実装形態では、センサーブイ又は統合、解析、計算、処理などの対象となる任意の数の基材に関連付けられた収集データから、例えば過去若しくは現在の目的産物の成長若しくは成長速度、バイオマス生産、バイオマス収率、沈下速度、配備の位置、配備の分散、配備に対応する領域の環境条件、第2の位置への推定移動距離若しくは推定移動時間、及び/又は基材及び/又は任意の数の基材の配備に関連付けられた任意の他の所望の情報の決定、推定及び/又は予測が行うことができるようにし得る。さらに、いくつかの実装形態では、かかる情報は、’315特許及び/又は’681出願に詳細に記載されるように使用され得、及び/又はさもなければ炭素捕捉及び/又は隔離の速度、量及び/又は能力などに関連付けられた1つ以上の予測及び/又は定量を通知し得る。例えば、いくつかの実装形態では、本システム100は、基材及び基材上において又は基材によって栽培された目的産物によって隔離された炭素の量を予測及び/又は定量化するために使用され得る1つ以上の機械学習モデル、アルゴリズム及び/又はプロセスを実行するように構成され得る。いくつかの実装形態では、本システム100は、複数のソースからのデータの統合及びデータの相関付けを行って、基材及び基材上において又は基材によって栽培された目的産物によって隔離されたCOの量の計算、定量及び/又は予測を提供するために、(例えば、あるモデルの出力が他のモデルへの入力として提供されるように一括して又は逐次的に)使用され得る一連の機械学習モデルを実行することができる。
【0121】
[0127] いくつかの実装形態では、アルカリ度増強を介して除去されたCOの量は、アルカリ度増強前及び後の水体中の溶解無機炭素(DIC)の変化の測定及び/又は予測を介して、及び/又は配備前及び後の水体の総アルカリ度(total alkalinity)の変化によって定量及び/又は検証され得る。いくつかの実装形態では、(例えば、1つ以上の機械学習モデル及び/又は他の計算ツールを介した)かかる測定及び/又は予測は、総アルカリ度の1単位増加当たりの溶解無機炭素の増加を記述し、及び/又はそれに関連付けられた1つ以上の効率係数の使用を含み得る(例えば、効率係数が1を超えないように)。水体のアルカリ性化部分の合計体積が既知である場合、アルカリ度増強を介して除去された合計COは、測定DIC濃度の変化(所与の水サンプルに対して)に水体のアルカリ性化部分の合計体積(又は予測、推定及び/又は計算合計体積)を乗算することによって計算され得る。水体のアルカリ性化部分の体積が未知である(例えば、開放系)が、水体に添加された総アルカリ度の量が既知である場合、CO除去の定量並びに任意の追加の、他の及び/又は補助的なプロセスは、アルカリ性材料内の(又はそれに添加された)任意の既知の元素(例えば、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Li、Zn2+など)及び/又は対応する同位体(例えば、Ca45、Mg24、Sr86、Li、Zn67など)の濃度及び/又は比を含めて、アルカリ性材料内のアルカリ度に対して、及び/又は溶解されると水性炭酸塩系の他の関連成分(例えば、溶液中の総アルカリ度、溶解無機炭素)に対して既知の化学量論的及び/又は経験的関係を呈する元素及び/又は同位体のいずれかの濃度及び/又は比(又はそれらの組合せ)を含めて、保存的化学トレーサーの使用を含み得る。いくつかの実装形態では、トレーサーベースのアプローチは、例えば、プロセスに関与する水の合計体積が分からなくても、アルカリ度増強によるCO除去に関与する妥当な及び/又は関連するプロセスの定量を可能にし得る(例えば、配備されたアルカリ性材料の合計量が分かる限り)。いくつかの実装形態では、水性系のアルカリ度増強によるCO除去に関連付けられた化学的プロセスを定量化するためのかかるトレーサーベースのアプローチは、’339 PCTに記載のものと類似及び/又は実質的に同じであり得る。
【0122】
[0128] 図3A~7は、炭素を隔離するための栽培機器として使用され得、及び第1の構成から第2の構成に遷移するにつれて炭素を隔離する基材の各種の実施形態を示す。例えば、一実施形態に従って、図3Aは、第1の構成で水体W上に配備される栽培機器200の概略図であり、図3Bは、第1の構成と異なる第2の構成の栽培機器200の概略図である。
【0123】
[0129] 栽培機器200は、目的産物230(例えば、本明細書に記載の目的産物のいずれか1つ)が播種された基材210を含む。基材210は、目的産物230が播種された多孔性ブロックに形成された天然に存在する材料(例えば、本明細書に記載の天然に存在する材料のいずれか)を含む。天然に存在する材料は、機械的力若しくは油圧力の適用又は熱可塑性プロセスを介して、天然に存在する材料をブロックにプレスすることによってブロックに形成され得る。基材210は、先に記載のように、肥料、添加剤、成長促進剤又は他の物質をその中に注入して含み得、バインダー又は接着剤を含み得る。
【0124】
[0130] 基材210又は複数の基材210の組立体は、第1の構成で水体中の第1の位置(例えば、位置L1)に配備されるように構成され得る。図3Aに示される第1の構成では、栽培機器200は、基材210及び目的産物230の組合せ浮力に基づく第1の大きさの浮力を有する。先に記載のように、基材210は、正浮力であり得、目的産物230は、負浮力であり得るか、又は目的産物230が成熟するにつれて負浮力になり得る。しかしながら、第1の構成では、目的産物230の相対的に小さいバイオマスは、目的産物230の負浮力の大きさが、基材210の正浮力の大きさよりも小さくなるようなものとする。このため、栽培機器200は、閾値浮力よりも大きい浮力を有するため、第1の構成で水体W上への栽培機器200の浮遊を引き起こす。
【0125】
[0131] 目的産物230が基材210内で成長するにつれて、それは、バイオマスを蓄積しつつ、炭素を吸収、捕捉及び/又は隔離する。閾値量のバイオマスが蓄積されると、栽培機器200は、第2の構成に遷移し、目的産物230の負浮力が基材210の正浮力を克服して、栽培機器200の浮力が閾値浮力よりも小さくなることを引き起こす。これは、図3Bに示されるように、水体Wの表面の下方への栽培機器200の沈下を引き起こし、そうして水体W内に(例えば、表面炭素サイクルの下方に)捕捉することにより、目的産物によって捕捉又は吸収された炭素を大気から隔離し、基材及び/又はそのコーティング、バインダーなどの形成、変換及び/又は溶解を介して隔離されたCOに加えられる。さらに、栽培機器200は、水体中の第1の位置から深海などの第2の位置(例えば、第2の位置L2)に天然水流下で受動的に移動され得るため、隔離炭素は、速い炭素サイクルから遅い炭素サイクルに移送されることになる。
【0126】
[0132] 図4は、一実施形態に係る、目的産物330(例えば、本明細書に記載の目的産物のいずれか)を成長させ、及び炭素を隔離するための水体W中に配備される栽培機器300の概略図である。栽培機器300は、基材310及び基材310上又はその周りに配設された炭素質材料から形成されたコーティング320を含む。いくつかの実施形態では、基材310は、天然に存在する材料、例えば図1に関連して本明細書に記載の天然に存在する材料のいずれかから形成され得る。コーティング320は、基材310の周りに配設される。いくつかの実施形態では、コーティング320は、CaCOを含む。いくつかの実施形態では、コーティング320は、本明細書で先に記載のように、凝集物画分、ケイ質画分、金属画分、バインダー、促進剤、添加剤、触媒及び/又は任意の他の材料を含み得る。目的産物330は、基材310に播種されるとして示されているが、いくつかの実施形態では、目的産物330は、追加的又は代替的に、コーティング320に播種され得る。さらに、コーティング320は、産物に注入し、及び/又は目的産物330を被覆することもできる(例えば、目的産物330の接着を促進し、及び/又は栄養素及び/又は他の補足材料を目的産物330に提供するため)。矩形ブロックであるとして示されているが、他の実施形態では、基材310は、任意の好適な形状、例えば正方形、卵形、円形、多角形、非対称、不規則形などを有し得る。コーティング320は、本明細書で先に記載のように、播種基材の浮力を調整し、及び/又は炭素を隔離するために、第1の構成から第2の構成に遷移するように構成され得る。
【0127】
[0133] 図5は、一実施形態に係る栽培機器400の概略図である。栽培機器400は、目的産物430(例えば、本明細書に記載の目的産物のいずれか)が播種された基材410を含み、水体W中に懸濁される。栽培機器300と異なり、栽培機器400は、基材410の第1の側上に配設された第1のコーティング420aと、第1の側の反対側であり得る基材410の第2の側上に配設された第2のコーティング420bとを含む。第1のコーティング420a及び第2のコーティング420bは、類似の又は異なる材料、例えば図1に関連して本明細書に記載の材料のいずれかから形成され得る。いくつかの実施形態では、第1のコーティング420aは、第2のコーティング420bの第2の密度よりも大きい第1の密度を有し得る。第1のコーティング420aのより高い密度は、少なくとも栽培機器400が初期に水体中に配備されたとき、第1のコーティング420a(より高い密度)が水体Wの表面の下方にある一方、第2のコーティング420b(より低い密度)が水体の表面Wの上方にあるように、栽培機器400の配向を引き起こし得る。このため、第1のコーティング420a及び第2のコーティング420bは、水体W中で好ましい配向で栽培機器400の配向を引き起こし得る。
【0128】
[0134] 図6は、一実施形態に係る栽培機器500の概略図である。栽培機器500は、目的産物530が埋入され、及び水体W上に浮遊する基材510を含む。しかしながら、基材310及び410と異なり、基材510は、単に炭素質材料から形成されたコーティングを有するのではなく、炭素質材料(例えば、本明細書に記載の炭素質材料のいずれか)から形成される。いくつかの実施形態では、目的産物530は、先に記載のように、成長するにつれて炭素を隔離し得る。いくつかの実施形態では、基材510も、先に記載のように、炭素を隔離するように構成され得る(例えば、目的産物530による炭素隔離に加えて)。いくつかの実施形態では、目的産物530は、炭素隔離及び/又は軽減が基材510によって提供されるように排除され得る(例えば、凍結アルカリ性流体から形成される)。
【0129】
[0135] 図7は、一実施形態に係る栽培機器600の概略図である。いくつかの実装形態では、栽培機器600は、1つ以上の目的産物、例えば1つ以上のマクロ藻種など、又は本明細書に記載の任意の他の目的産物を栽培するために使用され得る。いくつかの実装形態では、栽培機器600又は本明細書に記載の基材若しくは栽培機器(例えば、栽培機器200、300、400、500)のいずれかは、何十、何百、何千、何万、何十万又はそれを超える栽培機器の配備に含まれ得る。かかる配備時の栽培機器600(又は本明細書に記載の任意の他の栽培機器)の各々は、1つ以上の目的産物が播種及び/又は付着され得る。
【0130】
[0136] 本明細書に詳細に記載のように、栽培機器600の配備は、任意の好適な水体上又はその中の任意の好適な地理的位置で行われ得る。図7に示されるように、栽培機器600は、第1の部材610、第2の部材614及び第1の部材610を第2の部材614に可逆的に結合するように構成された中間部材613を含む。栽培機器600及び/又はその第1、第2及び中間部材は、任意の好適な形状、サイズ及び/又は構成であり得る。いくつかの実施形態では、例えば、栽培機器600は、上記の参照により組み込まれる’315特許に詳細に記載の栽培機器(「マイクロファーム」ともいわれる)のいずれかに実質的に類似し得る。しかしながら、栽培機器600は、栽培機器600の少なくとも一部を形成するために使用され得る、本明細書に記載の炭素質材料のいずれかを含む1つ以上のコーティングを含む点で異なり得る。
【0131】
[0137] いくつかの実施形態では、栽培機器600は、第1の部材610、第2の部材614及び/又は中間部材613の1つ以上の部分を機械的に結合して、集合的に栽培機器600を形成することができるモジュラー構成で配置され得る。例えば、いくつかの実装形態では、第2の部材614は、送達及び/又は配備システムにおける1つ以上の目的産物の播種、それへの結合及び/又は付着が可能である(又は目的産物は、第2の部材614に付着され得る)。かかる実装形態では、送達及び/又は配備システムが配備位置に接近し、及び/又はそこに存在し、次いで配備位置又はその近くで水体中に配備する際、栽培機器600の1つ以上の部分は、送達及び/又は配備システム、及び/又はそれらの構成要素に搭載し、送達及び/又は配備システムで配備位置に輸送し、組み立てることができる(例えば、第1の部材610、第2の部材614及び中間部材613は、少なくとも一時的に結合され得る)。いくつかの実施形態では、第2の部材614は、例えば、目的産物630の接着を促進し、及び/又は栄養素及び/又は他の補足材料を目的産物630に提供してバイオマスの成長及び蓄積を支援するために、本明細書に記載のコーティングのいずれかを含み得るか又はそれで被覆され得る。
【0132】
[0138] 栽培機器600の第1の部材610は、任意の好適な形状、サイズ及び/又は構成であり得る。いくつかの実施形態では、第1の部材610は、基材若しくは栽培機器200、300、400、500又は本明細書に記載の任意の他の基材若しくは栽培機器を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、栽培機器600の第1の部材610は、本明細書で先に記載のように、1つ以上のマクロ藻配偶体種及び/又は胞子体種などの目的産物が播種され、及び/又はさもなければ受け取るように構成された成長基材などを含み得、及び/又はそれを形成し得る。いくつかの実施形態では、第1の部材610は、(目的産物が播種された又はされていない)栽培機器600の各種の構成要素に浮力を提供するように構成され得、機器600が少なくとも一時的に表面上において、又は配備される水体Wの所望の深さで浮遊するようにし得る。いくつかの実装形態では、第1の部材610は、所定の時間後及び/又は所望の量の目的産物の成長若しくは蓄積後に取り出され得る。他の実装形態では、第1の部材610は、所定の時間後及び/又は所望の量の目的産物の成長若しくは蓄積後に沈下するように構成され得る。
【0133】
[0139] いくつかの実施形態では、「基材」若しくは「ブイ」又は任意の他の選択的浮揚性部材ともいわれ得る第1の部材610は、天然に存在する材料、例えば本明細書に記載の天然に存在する材料のいずれかから形成され得る。いくつかの実施形態では、第1の部材610の少なくとも一部は、本明細書に記載のように、炭素質材料から形成されたコーティングで被覆され得るか、又は炭素質材料から形成され得る。いくつかの実施形態では、第1の部材610(例えば、中空ブロックの形態)は、所定の時間後(例えば、所望の量の目的産物の成長及び/又は蓄積に関連付けられ、及び/又はそれが行われる時間後)、それに含まれるガスを放出するように構成された機械的、化学的及び/又は生物学的タイマー/バルブを含み得、それにより第1の部材610の浮力を低減する。いくつかの実施形態では、第1の部材610(例えば、栽培機器200、300、400、500のいずれか)又は少なくともその一部は、(例えば、海洋中若しくは海洋上などで)閾値期間の配備後及び/又は海/海洋底部への栽培機器600の沈下に応じて若しくは沈下後、部分的又は完全に分解及び/又は崩壊するように構成され得る。いくつかの実装形態では、第1の部材610は、化学的及び/又は生物学的ペイロード、例えばアルカリ性流体などを表面海洋中に放出し得、それにより単独で若しくは目的産物蓄積との組合せにおいて、又はさもなければ目的産物の蓄積の支援を受けて炭素隔離をもたらし得る。
【0134】
[0140] いくつかの実施形態では、第1の部材610は、環境条件に応じて異なる速度及び/又は可変速度で分解及び/又は崩壊し得る1つ以上の部分を含み得る。いくつかの実施形態では、第1の部材610は、第1の部材610に少なくとも一時的に結合され、及び/又は少なくとも一時的に配設されるシーリング部材を含み得る。いくつかの実装形態では、シーリング部材は、分解可能であり、及び/又は第1の部材610から自動若しくは手動で脱結合可能であり得、それにより、それに含まれる空気及び/又は他のガスが逃散し、及び/又は水が第1の部材610に入る。このため、第1の部材610(したがって栽培機器600)は、本明細書及び’315特許に詳細に記載のように、初期に配備されたときに正浮力であり得、配備後に所定及び/又は閾値の時間にわたって浮遊するようになり、次いで栽培機器600に播種又は付着された目的産物が成長してバイオマスを得るつれて沈下するようになる。
【0135】
[0141] 栽培機器600の第2の部材614は、任意の好適な形状、サイズ及び/又は構成であり得る。第2の部材614は、第1の部材610及び/又は中間部材613に結合され得る(例えば、所望の配備位置において)。いくつかの実施形態では、第2の部材614は、’315特許に記載の栽培機器の第2の部材のいずれかと実質的に類似及び/又は同じであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、第2の部材614は、1つ以上の播種ライン、ロングライン及び/又はロープなであり得る。いくつかの実施形態では、第2の部材614は、基材のいずれかに類似し得、及び/又は本明細書に記載の天然に存在する材料から形成され得る。いくつかの実施形態では、第2の部材614は、第2の部材614の及び/又はそれに関連付けられた負浮力を提供するように、任意の重量、例えば金属リング及び/又は石灰化層などを含み得る(図示せず)。
【0136】
[0142] いくつかの実装形態では、第2の部材614は、1つ以上の目的産物630、例えば1つ以上のマクロ藻配偶体種及び/又は胞子体種、又は本明細書に記載の任意の他の目的産物を受け取るように構成され得る。例えば、第2の部材614の1つ以上の部分及び/又は表面は、上記のように、成長基材で形成され得、それを含み得、及び/又はそれに結合され得る(図示せず)、本明細書に記載の天然に存在する材料のいずれかで形成され得、及び/又は本明細書に記載のコーティングのいずれかが含まれ得、したがってそれにより目的産物630の播種、付着及び/又は成長を促進するように構成された成長基質、栄養素、肥料、バインダー、添加剤、pH調整、イオン、緩衝液などが注入される。
【0137】
[0143] 栽培機器600の中間部材613は、任意の好適な形状、サイズ及び/又は構成であり得る。いくつかの実施形態では、中間部材613は、’315特許に記載の栽培機器の中間部材のいずれかと類似及び/又は実質的に同じであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、中間部材613は、第1の部材610及び/又は第2の部材614に少なくとも部分的に類似し得る。中間部材613は、少なくとも一時的に第1の部材610を第2の部材614に結合するように構成される。例えば、中間部材613の1つ以上の部分は、接着剤、グルー、ペースト、セメントなどの1つ以上の機械的結合、例えばリング、シャックル、スイベル及び/又はジョイントなどの1つ以上のアンカーポイント、例えばタイノット、シンブルキット、及び/又はフック、及び/又は任意の他の好適なカップリングであり得、及び/又はそれらを含み得る。
【0138】
[0144] いくつかの実施形態では、中間部材613は、分解性材料、コンポスト化可能(compostable)コポリエステル、セルロース系材料及び/又は本明細書に記載の天然に存在する材料のいずれかなどで形成され得る。例えば、中間部材613は、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリヒドロキシブチレート、キトサン、ヒアルロン酸、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリヒドロキシアルカノエート、ECOFLEX(登録商標)、ECOVIO(登録商標)及び/又は任意の他の海洋適合性材料、及び/又はそれらの組合せで形成され得、及び/又はそれらを含み得る。いくつかの実施形態では、中間部材613は、例えば、’315特許に記載の材料のいずれか及び/又は材料の組合せで形成され得る。いくつかの実施形態では、中間部材613は、天然に存在する材料(例えば、本明細書に記載の天然に存在する材料のいずれか)から形成され得る。材料の例(例えば、分解性及び/又はコンポスト化可能材料)が列挙されているが、他の材料が可能であり、材料は、これらの本明細書に明記された及び/又は本明細書で参照されたものに限定されることを意図しないことを理解されたい。
【0139】
[0145] 第1の部材610を参照して上記で記載したように、中間部材613は、閾値又は所定の配備時間後に分解するように構成され得る。いくつかの実装形態では、中間部材613の分解は、第2の部材614からの第1の部材612の脱結合が行われるようにし得、及び/又は脱結合をもたらし得る。いくつかの実施形態では、中間部材613は、上記のように、第2の部材614に付着した目的産物630の所望の成長量又は蓄積量後に分解するように構成され得る。いくつかの実施形態では、中間部材613は、限定されないが、温度、圧力、及び/又はUV及び/又は可視光への暴露などを含む所定の環境条件下で分解するように構成され得る。
【0140】
[0146] 上記のように、いくつかの実装形態では、第1の部材610は、正浮力であり得る一方、第2の部材614は、負浮力であり得、及び/又は第2の部材614に付着した目的産物630は、負浮力であり得る。このため、中間部材613が第2の部材614から第1の部材610を脱結合したとき(例えば、分解又は機械的脱結合の結果として)、第1の部材610は、海洋の表面位置又は表面上で浮遊し得る一方、第2の部材614及びそれに付着した目的産物630は、水体の底部又は底(例えば、海底、海洋底など)に沈下し得る。第2の部材614及びそれに付着した目的産物630の沈下は、目的産物630及び/又はコーティングに関連付けられ、及び/又はそれらによって捕捉された量の炭素を効果的に隔離し、本明細書で先に記載のように、水体W中への炭素質コーティングの溶解に起因して海洋の酸性化を軽減し得る。
【0141】
[0147] いくつかの実施形態では、第2の部材614は、天然に存在する材料から形成され得、コーティングを含み得るか、又は本明細書に記載の炭素質材料から形成され得、自然に分解し得る(例えば、沈下後)。いくつかの実施形態では、第1の部材610は、天然に存在する材料及び/又は炭素質材料から形成され、天然で分解性であり得るか、又は水の表面上で分解し、及び/又はさもなければ分解するように構成され得るか、又は分解して水体の底部若しくは底に沈下するように構成され得る。いくつかの実施形態では、第1の部材610は、中間部材613よりも遅い速度で分解し得、中間部材613の分解又はさもなければ崩壊は、第2の部材614、したがって目的産物630の脱付着及び沈下を引き起こす。
【0142】
[0148] いくつかの実施形態では、栽培機器600及び/又は1つ以上のその構成要素(例えば、第1の部材610)は、目的産物630の成長、バイオマス発生、バイオマス収率、環境特性若しくはデータ及び/又は1つ以上の栽培機器の配備に関連付けられた任意の他のデータを検知、検出及び/又は監視するように構成されたデバイスを含み得、及び/又はそれらに結合され得る。例えば、いくつかの実施形態では、栽培機器600は、1つ以上のセンサー、カメラ(例えば、水中カメラ、フルオロメーター及び/又は他の撮像若しくは光学検知技術)、追跡デバイス(例えば、全地球測位システム(GPS)追跡デバイス及び/又は無線周波数識別(RFID)デバイスなど)、遠隔検知デバイス、テレメトリーデバイス、通信デバイス及び/又は任意の他の好適なデバイスなど、例えば’315特許、’681出願及び/又は’746 PCTに記載のいずれかのものを含み得る。
【0143】
[0149] 浮揚性の第1の部材610にそのようなデバイスを含むか又は結合するいくつかの実装形態では、例えば第2の部材614が第1の部材610から脱結合された後、第1の部材610及びデバイスの回収が行われるようにし得る。かかる実装形態では、第1の部材610は、本明細書に記載の天然に存在する材料のいずれかから形成され得、本明細書に記載のコーティングのいずれも含み得るが、分解を遅延、低減及び/又は実質的に防止するように処理及び/又はさもなければ構成され得、それにより第1の部材610の回収が行われるようにする(例えば、第2の部材614から脱結合された後)。このため、栽培機器600に関連付けられ、及び/又はそこで若しくはそれにより収集されたデータは、例えば、過去若しくは現在の目的産物の成長若しくは成長速度、バイオマス生産、バイオマス収率、沈下速度、配備位置、配備分散、配備に対応する領域の環境条件、第2の位置への推定移動距離若しくは推定移動時間、及び/又は栽培機器600及び/又は任意の数の栽培機器の配備に関連付けられた任意の他の所望の情報の決定、推定及び/又は予測が行われるように統合、解析、計算、処理することなどが可能である。さらに、いくつかの実装形態では、かかる情報は、’315特許、’339 PCT及び/又は’681出願に詳細に記載されるように使用され得、及び/又はさもなければ炭素捕捉及び/又は隔離の速度、量及び/又は能力などに関連付けられた1つ以上の予測及び/又は定量を通知し得る。
【0144】
[0150] いくつかの実施形態では、かかるデバイスによって収集されたデータは、例えば、沿岸上又は船上に位置する遠隔データ収集センター、栽培機器600の集合体又はアレイが配備される水体上の位置に近接して浮遊するブイ又はドローンに無線伝送され得る。かかる実施形態では、デバイスは、’746 PCTに記載のように、デバイスが栽培機器と共に水体中に沈下して、最終的に水体中で分解又は崩壊可能であるように生体適合性材料から形成され得る。
【0145】
[0151] 各種の実施形態の構築及び配置は、単なる例示にすぎないことに留意することが重要である。ごく少数の実施形態が本開示で詳細に記載されているにすぎないが、本開示を検討する当業者であれば、本明細書に記載の主題の教示及び/又は利点のいずれからも実質的に逸脱することなく、多くの修正形態が可能であることが容易に分かるであろう(例えば、サイズ、寸法、構造、形状、各種要素の割合、パラメータ値、取付け配置、材料の使用、色、向きなどの変更)。他の置換形態、修飾形態、変化形態及び/又は省略形態も、各種の実施形態の設計、操作条件及び/又は配置において本開示の範囲から逸脱することなくなされ得る。概略図及び/又は上記の実施形態が特定の向き又は位置に配置された特定の構成要素を示唆する場合、構成要素の配置は、修正され得る。
【0146】
[0152] 本明細書は、多くの具体的な実装形態の詳細を含むが、これらは、いずれの実施形態の範囲、実施形態の使用又は特許請求され得るものについても限定として解釈されるべきではなく、特定の実装形態に対する具体的な特徴又は態様の記載として解釈されるべきである。別々の実装形態に関連して本明細書に記載の特定の特徴及び/又は態様は、組合せにおいて単一の実装形態でも実現され得る。反対に、単一の実装形態に関連して記載の各種の特徴及び/又は態様は、複数の実装形態で別々に又は任意の好適な部分的組合せでも実現され得る。さらに、上記では、特徴は、特定の組合せで作用するとして記載され得、さらに初期的にそのように特許請求され得るが、いくつかの場合、組合せからの1つ以上の特徴をその組合せから削除して、部分的組合せ又はその部分的組合せの変形形態を規定及び/又は形成し得る。
【0147】
[0153] したがって、特定の実装形態を記載したが、他の実装形態が本開示及び添付の特許請求の範囲内にある。いくつかの場合、本明細書に記載の行為は、異なる順序で実施され得、それでもなお望ましい結果を達成する。加えて、添付図に描かれるプロセスは、望ましい結果を達成するために、必ずしも示された特定の順序又は逐次的な順序を必要とするとは限らない。特定の実装形態では、マルチタスク動作及び並列処理が有利であり得る。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】