(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-10-01
(54)【発明の名称】ソルチリンモジュレーター
(51)【国際特許分類】
C07C 229/14 20060101AFI20250924BHJP
C07D 311/76 20060101ALI20250924BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20250924BHJP
C07D 491/052 20060101ALI20250924BHJP
A61K 31/436 20060101ALI20250924BHJP
C07D 215/12 20060101ALI20250924BHJP
A61K 31/435 20060101ALI20250924BHJP
A61K 31/47 20060101ALI20250924BHJP
C07D 217/14 20060101ALI20250924BHJP
A61K 31/472 20060101ALI20250924BHJP
C07D 265/36 20060101ALI20250924BHJP
A61K 31/538 20060101ALI20250924BHJP
C07D 263/58 20060101ALI20250924BHJP
A61K 31/423 20060101ALI20250924BHJP
C07D 249/08 20060101ALI20250924BHJP
A61K 31/4196 20060101ALI20250924BHJP
A61K 31/44 20060101ALI20250924BHJP
C07D 317/58 20060101ALI20250924BHJP
A61K 31/36 20060101ALI20250924BHJP
A61K 31/375 20060101ALI20250924BHJP
C07D 295/135 20060101ALI20250924BHJP
A61K 31/40 20060101ALI20250924BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20250924BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20250924BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250924BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250924BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20250924BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20250924BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20250924BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20250924BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20250924BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20250924BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20250924BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20250924BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20250924BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20250924BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20250924BHJP
C07D 221/04 20060101ALI20250924BHJP
C07D 213/643 20060101ALI20250924BHJP
C07D 319/18 20060101ALI20250924BHJP
【FI】
C07C229/14
C07D311/76 CSP
A61K31/352 ZNA
C07D491/052
A61K31/436
C07D215/12
A61K31/435
A61K31/47
C07D217/14
A61K31/472
C07D265/36
A61K31/538
C07D263/58
A61K31/423
C07D249/08
A61K31/4196
A61K31/44
C07D317/58
A61K31/36
A61K31/375
C07D295/135
A61K31/40
A61K31/198
A61P25/00
A61P29/00
A61P35/00
A61P25/04
A61P3/10
A61P27/02
A61P27/06
A61P9/00
A61P17/06
A61P13/12
A61P27/16
A61P25/16
A61P25/28
A61P25/24
C07D221/04
C07D213/643
C07D319/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2025513266
(86)(22)【出願日】2023-09-01
(85)【翻訳文提出日】2025-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2023074028
(87)【国際公開番号】W WO2024047227
(87)【国際公開日】2024-03-07
(32)【優先日】2022-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522369739
【氏名又は名称】ベスパー バイオ アーペーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リトル,ポウル ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】カセス-トーマス,マヌエル ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】キョルビー,マス フールサング
(72)【発明者】
【氏名】ニュケーア,アナス
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BA05
4C086BA08
4C086BA13
4C086BC07
4C086BC17
4C086BC27
4C086BC28
4C086BC30
4C086BC60
4C086BC70
4C086BC74
4C086CB22
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA08
4C086ZA12
4C086ZA16
4C086ZA33
4C086ZA34
4C086ZA36
4C086ZA45
4C086ZA81
4C086ZA94
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZC35
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206FA53
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA02
4C206ZA08
4C206ZA12
4C206ZA16
4C206ZA33
4C206ZA34
4C206ZA36
4C206ZA45
4C206ZA81
4C206ZA94
4C206ZB11
4C206ZB26
4C206ZC35
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB20
(57)【要約】
本発明は、式(I)および(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、および/もしくはプロドラッグに関する。本発明はまた、本発明の化合物を含む医薬組成物、および、ソルチリンの調節が有益である医学的状態の治療または予防におけるそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、および/もしくはプロドラッグであって、
式中、
R
1が
【化2】
であり;
XがCR
3またはNであり、ここで、R
3がH、ハロ、およびC
1~C
3アルキルからなる群から選択され;
各Yが独立してCHR
4、NR
5、CR
6R
6、C(O)、またはOであり、ここで、R
4が独立してH、ハロ、およびC
1~C
4アルキルからなる群から選択され;R
5が独立してH、ハロ、C
1~C
4アルキル、C
2~C
4ヒドロキシアルキル、-(C
2~C
4アルキル)-O-(C
1~C
4アルキル)、-C(O)-(C
1~C
4アルキル)、および-C(O)O-(C
1~C
4アルキル)からなる群から選択され;ならびに、R
6が独立してハロおよびC
1~C
4アルキルからなる群から選択され;
R
2がH、C
1~C
4アルキル、C
2~C
4ヒドロキシアルキル、およびC
1~C
3ハロアルキルからなる群から選択され;
前記化合物が以下の化合物:
【化3】
の1つではない;
化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、および/もしくはプロドラッグ。
【請求項2】
R
2がH、CH
3、CH
2F、CHF
2、およびCF
3からなる群から選択され、好ましくは、R
2がH、CH
3、CHF
2、およびCF
3からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
各Yが独立してCHR
4、NR
5、C(O)、もしくはOであり;および/または、
R
3がHもしくはC
1~C
3アルキル、好ましくはHもしくはメチルであり;および/または、
各R
4がHであり;および/または、
各R
5が独立してH、C
1~C
3アルキル、もしくは-C(O)O-(C
1~C
4アルキル)、好ましくはH、メチル、もしくは-C(O)O-(tert-ブチル)、より好ましくはHもしくはメチルである;
請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
R
1が以下の基:
【化4】
の1つから選択され、式中、好ましくは、1つまたは2つ以下のYがNR
5またはOであり、残りのYが独立してC(O)またはCHR
4である、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
R
1が以下の基:
【化5】
の1つから選択され、式中、各Yが独立してNR
5またはOであり;各R
7が独立してH、ハロ、およびC
1~C
4アルキルからなる群から選択されるか、または前記R
7が、それが結合している炭素原子と一緒になってオキソ基を形成し;好ましくは、各R
7がHであるか、または前記R
7が、それが結合している炭素原子と一緒になってオキソ基を形成し;より好ましくは、1個のR
7がHであるか、または前記R
7が、それが結合している炭素原子と一緒になってオキソ基を形成し、かつ他のR
7基がすべてHである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
R
1が以下の基:
【化6】
の1つから選択される、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
R
1が以下の基:
【化7】
の1つから選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
R
1が以下の基:
【化8】
の1つから選択される、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
(2S)-2-{[(1S)-2,2-ジフルオロ-1-(5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1S)-1-(3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-7-イル)-2,2-ジフルオロエチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1R)-1-(5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)エチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-[({1-[(tert-ブトキシ)カルボニル]-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル}メチル)アミノ]-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-7-イル)メチル
]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-(5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-3-イル)エチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-3-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-(5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)エチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1R)-1-(3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-7-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1R)-1-(1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)エチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1S)-1-(2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-イル)-2,2,2-トリフルオロエチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1R)-1-(2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1S)-1-(3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-6-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-[({5H,6H,7H-シクロペンタ[b]ピリジン-3-イル}メチル)アミノ]-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(4-メチル-3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-1,4-ベンゾキサジン-6-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(3,4-ジヒドロ-1H-2-ベンゾピラン-6-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1-メチル-2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-[({5H,7H,8H-ピラノ[4,3-b]ピリジン-3-イル}メチル)アミノ]ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(3,4-ジヒドロ-1H-2-ベンゾピラン-7-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1R)-1-(2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキシン-6-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1S)-1-(2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1R)-1-(3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-6-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-[({2H,3H,4H-ピラノ[2,3-b]ピリジン-6-イル}メチル)アミノ]ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1R)-1-(2H-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(5-メチル-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-7-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1R)-1-(3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-7-イル)-2,2-ジフルオロエチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1S)-1-(3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-7
-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1S)-1-(5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)エチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1R)-1-(1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)エチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1S)-1-(3,4-ジヒドロ-1H-2-ベンゾピラン-6-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-[({2H,3H-[1,4]ジオキシノ[2,3-b]ピリジン-7-イル}メチル)アミノ]-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1S)-1-(2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキシン-6-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(4-メチル-3,4-ジヒドロ-2H-1,4-ベンゾキサジン-6-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(2-メチル-1-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(7-メチル-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(3,4-ジヒドロ-1H-2-ベンゾピラン-5-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1R)-1-(3,4-ジヒドロ-1H-2-ベンゾピラン-7-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-4-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-5-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(3,4-ジヒドロ-1H-2-ベンゾピラン-8-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(2H-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(3-メチル-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1,3-ベンゾキサゾール-6-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1S)-1-(3,4-ジヒドロ-1H-2-ベンゾピラン-7-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(2-メチル-1-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1S)-1-(2H-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-6-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1R)-2,2-ジフルオロ-1-(5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-5-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロ
イソキノリン-6-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1S)-1-(2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキシン-5-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(4-メチル-3,4-ジヒドロ-2H-1,4-ベンゾキサジン-7-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(2,3-ジヒドロ-1H-インデン-4-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1R)-1-(2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキシン-5-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1-メチル-2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-6-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-6-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(4-メチル-3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-1,4-ベンゾキサジン-7-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、および/もしくはプロドラッグである、請求項1~8のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
式(II)
【化9】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、および/もしくはプロドラッグであって、
式中、
R
8がH、C
1~C
3アルキル、およびC
1~C
3ハロアルキルからなる群から、好ましくはH、CH
3、CHF
2、およびCF
3からなる群から、好ましくはHおよびCH
3からなる群から選択され;R
9がフェニルまたはピリジンであり、ここで、フェニルおよびピリジンが独立して5員ヘテロシクロアルキル、トリアゾリル、-O-フェニル、および-NR
10R
11からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、R
10およびR
11が独立してHまたはC
1~C
3アルキル、好ましくはHまたはCH
3、より好ましくはCH
3から選択され;あるいは、
R
8がC
1~C
3ヒドロキシアルキル、好ましくは-(C
2H
4)-OHであり;R
9が任意にC
1~C
3アルコキシで置換されたフェニルであり、好ましくはフェニルが任意に-O-CH
3で置換されている、
化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、および/もしくはプロドラッグ。
【請求項11】
R
8がH、C
1~C
3アルキル、およびC
1~C
3ハロアルキルからなる群から選択さ
れ、R
9がピロリジニル、トリアゾリル、-O-フェニル、もしくは-NR
10R
11で置換されたフェニルであり、またはR
9が-O-フェニルで置換されたピリジンであり;あるいは、
R
8がC
1~C
3ヒドロキシアルキルであり、R
9が任意にC
1~C
3アルコキシで置換されたフェニルである;
請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(2-フェノキシピリジン-4-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(6-フェノキシピリジン-3-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-({[3-(ピロリジン-1-イル)フェニル]メチル}アミノ)ヘキサン酸;
2-{[(1S)-3-ヒドロキシ-1-フェニルプロピル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1R)-1-(6-フェノキシピリジン-3-イル)エチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1S)-1-(6-フェノキシピリジン-3-イル)エチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(4-フェノキシフェニル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-({[3-(ジメチルアミノ)フェニル]メチル}アミノ)-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1R)-3-ヒドロキシ-1-(3-メトキシフェニル)プロピル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(3-フェノキシフェニル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1S)-3-ヒドロキシ-1-(3-メトキシフェニル)プロピル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1R)-3-ヒドロキシ-1-フェニルプロピル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-({[3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)フェニル]メチル}アミノ)ヘキサン酸;
またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、および/もしくはプロドラッグである、請求項10または11に記載の化合物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物と、薬学的に許容される担体、賦形剤、および/または希釈剤とを含む医薬組成物。
【請求項14】
治療における使用のための、請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物、または請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
神経変性疾患、精神疾患、炎症性疾患、がん、疼痛、糖尿病、糖尿病性網膜症、緑内障、ブドウ膜炎、心血管疾患、腎臓疾患、乾癬、遺伝性眼疾患、難聴、またはミスフォールドしたタウを特徴とする疾患の治療または予防における使用のための、請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物、または請求項13に記載の医薬組成物であって;
前記神経変性疾患が、好ましくは運動ニューロン疾患、前頭側頭葉変性症(FTLD)、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)などのプリオン病、急性脳損傷、脊髄損傷、および脳卒中から選択され、好ましくは、前記運動ニューロン疾患が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、
原発性側索硬化症、および進行性筋萎縮症から選択され;
前記神経変性疾患が、好ましくはミスフォールドしたTAR DNA結合タンパク質43を特徴とする神経変性疾患、例えば筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症、または前頭側頭型認知症であり;
前記精神疾患が、好ましくは双極性障害、大うつ病、心的外傷後ストレス障害、および不安障害から選択され;
前記炎症性疾患が、好ましくは炎症疾患および神経炎症から選択され;
前記がんが、好ましくは乳がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、甲状腺がん、膵臓がん、神経膠芽腫、および大腸がんから選択され;
前記心血管疾患が、好ましくはアテローム性動脈硬化症、心筋症、心臓発作、不整脈、心不全、および虚血性心疾患から選択され;ならびに、
前記難聴が、好ましくは騒音誘発性難聴、聴器毒性誘発性難聴、加齢誘発性難聴、特発性難聴、耳鳴、および突発性難聴から選択される;
化合物または医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、驚くべきことにソルチリン(sortilin)の活性を調節することが明らかになった、式(I)または(II)の化合物に関する。本発明はまた、これらの化合物を含む医薬組成物、および、ソルチリンの活性の調節が有益である医学的状態の治療または予防におけるそれらの使用に関する。特に、本発明の化合物は血液脳関門を通過する可能性があるため、中枢神経系の疾患の治療においてとりわけ有用な可能性がある。
【背景技術】
【0002】
ソルチリンはいくつかのリガンドの受容体として作用する、I型膜貫通タンパク質である(Petersen et al., 1997)。ソルチリンは、神経系のニューロンおよびミクログリア、内耳、ならびに、代謝制御に関わるいくつかの末梢組織において、豊富に発現している(Tauris et al., 2020; Goettsch
et al., 2017; Willnow et al., 2011; Kjolby et al., 2010)。ソルチリンは、シグナル伝達に関わる受容体として働くだけでなく、細胞表面のトランスゴルジ網とエンドソーム経路との間で、選択されたカーゴのソーティングを仲介する(Nykjaer & Willnow, 2012; Willnow, Petersen, & Nykjaer, 2008)。ソルチリンは、VPS10と呼ばれる大型の細胞外ドメインを有しており、これによって、ソルチリンまたはVS10pドメイン受容体と名付けられた受容体のファミリーが定義される。ソルチリン中のVPS10Pドメインは、酵母VPS10Pと相同であり、10翼のベータ-プロペラ構造およびシステインリッチ10CCモジュールによって構成されている(Nykjaer & Willnow, 2012; Zheng, Brady,
Meng, Mao, & Hu, 2011)。
【0003】
ソルチリンは、プロ神経増殖因子(プロNGF)、プロBDNF、プロニューロトロフィン-3、ニューロテンシン、およびApoBを含む、複数のリガンドに結合する(Chen et al., 2005; Kjolby et al., 2010; Mazella et al., 1998; Nykjaer et al., 2004; Quistgaard et al., 2009; Yano, Torkin,
Martin, Chao, & Teng, 2009)。さらに、ソルチリンは、リソソームプロセスの確保、抗炎症反応、および神経栄養刺激などの多くの細胞機能に関与する分泌タンパク質である、プログラニュリン(PGRN)に結合する(Galimberti, Fenoglio, & Scarpini, 2018)。ソルチリンは、PGRNを標的として迅速なエンドサイトーシスおよび分解をもたらす。現在では、ソルチリンがPGRNの最も重要なクリアランス受容体であることが確立されている(Hu
et al., 2010)。このように、ソルチリンは脳だけでなく末梢においてもPGRNの細胞外濃度を負に制御している。実際、この受容体の欠如または遮断によって、マウスおよびヒトの両者において血漿PGRN濃度が上昇する(Carrasquillo et al., 2010; Gass, Prudencio, Stetler, & Petrucelli, 2012; Hu et al., 2010; Lee et al., 2014; Miyakawa et al., 2020;
Pottier et al., 2018)。
【0004】
前頭側頭型認知症は高度に遺伝性の認知症であり、PGRN遺伝子のハプロ不全が全症例の25%までを占める(Gijselinck, Van Broeckhoven,
& Cruts, 2008)。PGRNにおけるヘテロ接合性機能喪失変異を有する患者は、そのタンパク質の細胞外濃度が50%超減少しており、必ずFTDを発症するた
め、PGRNは本疾患の原因遺伝子となっている(Baker et al., 2006; Carecchio et al., 2011; Cruts & Van Broeckhoven, 2008; Galimberti et al., 2010)。また、PGRN変異アレルがアルツハイマー病(AD)患者において同定されており(Brouwers et al., 2008; Sheng, Su, Xu, & Chen, 2014)、高濃度の細胞外PGRNはALS、パーキンソン病、脳卒中、関節炎、およびアテローム性動脈硬化症のモデルにおいて保護的である(Egashira et al., 2013; Laird et al., 2010; Martens et al., 2012; Tang et al., 2011; Tao, Ji, Wang, Liu, & Zhu, 2012; Van Kampen, Baranowski, & Kay, 2014)。
【0005】
しかし、ソルチリンはPGRNがその機能を発揮するのには必要とされない。したがって、ソルチリンの発現を欠くニューロンも、PGRN誘導性の神経細胞成長に対して等しく反応する(De Muynck et al., 2013; Gass, Lee,
et al., 2012)。さらに、ソルチリン欠損細胞においてPGRNが神経細胞リソソームにうまく送達されることから、別の輸送経路が存在することが示唆されている。実際、PGRNはリソソームタンパク質であるプロサポシン(PSAP)と結合することができる。PSAPが、その同族受容体であるカチオン非依存性マンノース-6-リン酸受容体およびLRP1に結合すると、PGRNがリソソームに運ばれる(Zhou et al., 2015)。そして、モノクローナル抗ソルチリン抗体を用いた第II相臨床試験では、リソソームの完全性に関するマーカーは正常であった(NCT03987295)。
【0006】
機能的なPGRN受容体はまだ同定されていない。しかし、PGRNは神経細胞の生存を促し、炎症を抑制し、ミクログリアによるAβエンドサイトーシスを増加させることが研究により示唆されている(Martens et al., 2012; Pickford et al., 2011; Yin et al., 2010)。
【0007】
PGRNのソルチリンへの結合にはPGRNのC末端の3つのアミノ酸(ヒトではQLL、マウスではPLL)が必要であり、PGRNの最後の24アミノ酸に由来するペプチドは、全長タンパク質と同様の親和性で結合する(Zheng et al., 2011)。この結合の様式は、ニューロテンシンの結合、すなわちソルチリンのNTIS1結合部位での結合に構造的に類似していると提唱されている(Zheng et al.,
2011)。オーフス大学との共同研究で小分子のスクリーニングが行われ、ニューロテンシンのソルチリンへの結合の遮断薬が首尾よく同定されている(Andersen et al., 2014; Schroder et al., 2014)。
【0008】
ソルチリンは、全長の、選別能を有する受容体として存在するが、多量体のシグナル伝達受容体-リガンドを形成することもできる。ソルチリンの一部はまた、原形質膜から遊離してリガンド(疼痛におけるNT)をスカベンジし、リガンドの活性を制御することもできる。例えば、ソルチリンは、プロBDNFからBDNFへの変換速度を制御することによって、シナプス可塑性に関与している。これは、他のプロニューロトロフィンにも当てはまり得る。
【0009】
そして、この受容体のリガンドであり、スパジン(spadin)とも名付けられた、ソルチリンのプロペプチドは、各種疾患の中でも大うつ病の標的である、膜トランスポーターTREK-1の活性を制御することが実証されている。構造的には、ソルチリンは、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有し、シグナルペプチド、プロペプチド、Vps10pドメイン、10ccドメイン(10CCa+10CCb)、膜貫通ドメイン、および細
胞質尾部を含む。ソルチリンの内腔ドメインは6個の潜在的なN結合型グリコシル化部位を有し、一方、細胞質尾部は様々なアダプタータンパク質の動員を可能にする。
【0010】
ソルチリンは膨大な数のリガンドおよび膜受容体に結合し、その結果、細胞のシグナル伝達および選別に重要であることが知られている機能に関与する。例えば、ソルチリンは、プロニューロトロフィンである、神経成長因子のプロフォーム(pro-NGF)、脳由来神経栄養因子のプロフォーム(pro-BDNF)、およびニューロトロフィン-3のプロフォーム(proNT3)によるシグナル伝達に関与している。タンパク質p75NTR(p75ニューロトロフィン受容体)との複合体において、ソルチリンは、細胞モデルおよび動物モデルにおける変性および細胞死を引き起こす、プロニューロトロフィン媒介性アポトーシス作用の受容体を形成することが報告されている(Jansen et
al., 2007; Tenk et al., 2005; Nykjaer et al., 2004)。
【0011】
これまでの研究では、糖尿病および肥満などの疾患に関連した細胞選別およびシグナル伝達に対する、ソルチリンの役割が示唆されている(Huang et al., 2013)。ソルチリンはGLUT4の原形質膜への移動を促進し、それをリソソームにおける分解からレスキューする(Pan et al., 2017)。ソルチリンの濃度は、これらの疾患に関連する炎症のレベルによって調節されることが示されている。炎症性サイトカインTNFαは、マウスおよびヒト培養脂肪細胞において、ならびにマウスに注射された場合にin vivoにおいて、ソルチリンのmRNA濃度とタンパク質濃度を共に減少させる(Kaddai et al., 2009)。ソルチリンはサイトカイン分泌にも影響を与え得る。免疫細胞内のソルチリンを標的とすることで、炎症を抑制し、アテローム性動脈硬化症の病状悪化を抑制することが提案されている(Mortensen et al., 2014)。さらに、米国特許出願公開第2016/0331746号明細書には、ソルチリンの活性部位に結合可能な小分子の様々な足場が記載されている。ソルチリンはグルコース取り込みの制御(Shi & Kandror. 2005)および脂質異常症(lipid disorder diseases)の発症に関与している(Gao et al., 2017)。
【0012】
さらに、血漿ソルチリン濃度は、冠動脈性心疾患または糖尿病の患者を同定するための潜在的なバイオマーカーであることが報告されている(Oh et al., 2017; Moller et al., 2021)。血漿中のソルチリン濃度の上昇を示し、従って上記状態に罹患していることが同定可能であった患者は、グルコース濃度の上昇も示しており、ソルチリンがこれらの状態を治療するための治療標的となることが示唆された。可溶性ソルチリンはII型糖尿病の治療薬としても提案されている(国際公開第2021116290号, 2021)。
【0013】
TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)は、様々な神経変性疾患に関与している。例えば、TDP-43封入体が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭葉変性症(FTLD)、およびアルツハイマー病(AD)の症例で見つかっている(Meneses et al., 2021)。
【0014】
TDP-43は、ソルチリンを含むいくつかの遺伝子産物のスプライシングを制御している。ヒトの場合、スプライシングは、隠れエクソン(cryptic exon)17b(エクソン17と18の間)を含めることを伴い、これによってストーク内に終止コドンが導入されて、非膜結合性断片が生成される可能性がある(Prudencio et
al., 2012)。さらに、PGRNは、不溶性TDP-43の濃度を低下させ、軸索変性を遅延させることが可能であると示されている(Beel et al., 2018)。ソルチリンの阻害によってPGRN濃度が上昇することから、ソルチリン阻害
は、TDP-43が関与する神経変性疾患の治療に有益である。
【0015】
ソルチリンは、中枢神経系(CNS)に影響を及ぼす様々な状態と関連づけられている。いくつかの研究では、うつ病などの精神疾患を有する患者における循環ソルチリンの役割が示唆されており、循環ソルチリンは神経栄養因子の活性変化に関係している可能性がある(Buttenshon et al., 2015)。また、ソルチリンが脳の老化、アルツハイマー病、および前頭側頭型認知症において役割を担っていることも報告されている(Xu et al., 2019)。しかし、血液脳関門を通過できる治療薬をCNSに送達することが大きな課題となる。
【0016】
血液脳関門は、内皮細胞による高度に選択的な半透性の境界であり、循環血液中の溶質が、神経細胞が存在するCNSの細胞外液に非選択的に侵入することを防いでいる。したがって、血液脳関門を越える治療薬の浸透が制限されるため、神経疾患の治療には限界がある。
【0017】
そのため、CNS疾患の治療薬は血液脳関門を通過する能力を有している必要がある。これに加え、治療薬は脳内で十分な非結合薬物濃度を有する必要がある。遊離薬物仮説(free drug hypothesis)によれば、非結合化合物のみが相互作用して薬理学的効果を引き出すことができるためである。
【0018】
試験化合物の非結合割合(Fub)を決定するために、タンデム質量分析を用いた液体クロマトグラフィー(LC-MS/MS)などの方法で上清試料を分析してもよい。その後、各マトリックスについて得られたピーク面積比から、以下の式に従って非結合割合を算出してもよい:
Fub=CPBS/Cplasma
式中、CPBSおよびCplasmaは、それぞれPBS(レシーバー)および血漿(ドナー)中の分析物濃度である。
【0019】
回収試料は、各条件で、しかし透析を行わずに調製してもよく、以下の式を用いて、透析実験からの回収率の評価に使用してもよい:
回収率%=100×(VPBS×CPBS+Vplasma×Cplasma)/Vplasma×Crecovery
式中、VPBSは透析装置のレシーバー側(PBS)の体積、Vplasmaは透析装置のドナー側(血漿)の体積である。Crecoveryは回収試料から測定された分析物濃度である。プロプラノロールまたはフルオキセチン等の化合物を、対照として実験に含めてもよい。
【0020】
脳内の非結合割合(Fub,brain)を、脳ホモジネートの調製に用いた希釈倍率を考慮して、脳ホモジネートの測定値(Fub,meas)から算出してもよい:
【0021】
【0022】
脳/血漿非結合分配係数(Kpuu)を、血漿中および脳内の遊離化合物濃度の比として決定してもよい:
【0023】
【数2】
式中、C
u,brain=脳内非結合濃度(C×F
ub,brain);であり、ここで、
C=定常状態における濃度;であり、
C
ub,plasma=血漿中の非結合濃度(C×F
ub);である。
【0024】
あるいは、AUCの比を用いてKpuuを決定することもできる。目的化合物を、経口または静脈内投与により、公知の濃度で、関連する目的の種に投与する。血漿中および脳脊髄液(CSF)中の化合物の濃度のタイムコースを測定する。血漿中濃度を補正し、化合物の非結合割合を求める。CSF濃度曲線および血漿中遊離画分濃度曲線における曲線下面積を公知の方法で計算し、その比を決定して以下を得る:
Kpuu=AUC0-infcsf/(AUC0-infplasma×(%Fuplasma/100))
【0025】
CNS疾患の治療には、Kpuuが0を越え、可能な限り高い値を有することが望ましい。値が1前後である場合、遊離画分化合物が血液脳関門を自由に透過することを示し;値が1を上回る場合、血液脳関門における能動的流入輸送機構の関与を示唆し;そして、値が1未満である場合、遊離画分化合物が透過性に乏しいものであるか、または、能動的流出機構によって認識されることでCNSにおける曝露が低減され、血液脳関門を通って血漿もしくはCSFへと戻されていることを示す。Kpuuの値が0であるか、または0に近い場合、それは、化合物の透過性が乏しいということか、または高活性の流出機構があることを示しており、いずれにせよ、CNSにおいて所望の活性種が有意義な曝露に到達する可能性は極めて低いと考えられる。
【発明の概要】
【0026】
以上の観点から、ソルチリンの調節が有益である医学的状態の治療および予防に使用し得る化合物に対する、満たされていない需要が存在する。特に、血液脳関門を通過することができ、したがって中枢神経系の疾患の治療に有用な、ソルチリンモジュレーターに対する満たされていない需要が存在する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、化合物を経口投与した後の、成体オスSprague Dawleyラットの海馬からの微小透析試料中の、実施例3の濃度を示すグラフであり、69.8%のプローブ回収率で補正を行ったものである。
【
図2】
図2は、化合物を経口投与した後の、成体オスSprague Dawleyラットの血漿中の実施例3の濃度を示すグラフである。
【
図3】
図3は、ビヒクルまたは実施例3を経口投与した後の、成体オスSprague Dawleyラットの海馬微小透析物における、PGRNの相対的な薬力学的反応を示すグラフである。
【
図4】
図4は、実施例3を経口投与した後の、成体オスSprague Dawleyラットの血漿中のPGRNの濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の開示
驚くべきことに、式(I)および(II)の化合物はソルチリンの活性を調節し、した
がってソルチリンの調節が有益である状態の治療または予防に有用であることが見出された。さらに、それら化合物は血液脳関門を通過する可能性があるため、中枢神経系の疾患の治療においてとりわけ有用な可能性がある。
【0029】
本発明の第1の態様において、式(I):
【化1】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、および/もしくはプロドラッグであって、
式中、
R
1が
【0030】
【0031】
XがCR3またはNであり、ここで、R3がH、ハロ、およびC1~C3アルキルからなる群から選択され;
各Yが独立してCHR4、NR5、CR6R6、C(O)、またはOであり、ここで、R4が独立してH、ハロ、およびC1~C4アルキルからなる群から選択され;R5が独立してH、ハロ、C1~C4アルキル、C2~C4ヒドロキシアルキル、-(C2~C4アルキル)-O-(C1~C4アルキル)、-C(O)-(C1~C4アルキル)、および-C(O)O-(C1~C4アルキル)からなる群から選択され;ならびに、R6が独立してハロおよびC1~C4アルキルからなる群から選択され;
R2がH、C1~C4アルキル、C2~C4ヒドロキシアルキル、およびC1~C3ハロアルキルからなる群から選択され;
前記化合物が以下の化合物:
【0032】
【0033】
の1つではない;
化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、および/もしくはプロドラッグが提供される。
【0034】
好ましくは、式(I)の化合物は以下の化合物:
【化4】
の1つではない。
【0035】
R2は、好ましくはH、CH3、CH2F、CHF2、およびCF3からなる群から選択され、より好ましくは、R2は、H、CH3、CHF2、およびCF3からなる群から選択される。
【0036】
R3は、好ましくはHまたはC1~C3アルキルであり、より好ましくはHまたはメチルである。
【0037】
各R4は、好ましくはHである。
【0038】
各R5は、好ましくは、独立してH、C1~C3アルキル、または-C(O)O-(C1~C4アルキル)であり、より好ましくはH、メチル、または-C(O)O-(tert-ブチル)であり、より好ましくはHまたはメチルであり、最も好ましくはHである。
【0039】
上記で定義したように、各Yは、独立してCHR4、NR5、CR6R6、C(O)、またはOである。本発明の一態様において、各Yは、独立してCHR4、NR5、CR6R6、またはOであってよい。
【0040】
上記で定義したように、R1は部分飽和縮合二環系である。環系は、芳香環上の任意の適切な位置で分子の残部に結合していてもよい。しかし、本発明の特に好ましい態様において、R1は以下の基の1つから選択される:
【0041】
【0042】
R1基の部分飽和環は、1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。しかし、部分飽和環の2個以下の原子がヘテロ原子であることが好ましい。したがって、1つまたは2つ以下のYは、好ましくはNR5またはOであり、残りのYは、好ましくはC(O)、CHR4、またはCR6R6である。
【0043】
R1基の部分飽和環の炭素原子は、上記で定義した1つまたは2つの置換基で置換されていてもよい。しかし、部分飽和環の任意の炭素原子が1個以下の置換基で置換されていることが好ましい。したがって、部分飽和環の環原子が炭素の場合、それは好ましくはC(O)またはCHR4である。
【0044】
したがって、本発明の特に好ましい態様では、2つ以下のYはNR5またはOであり、残りのYは独立してC(O)またはCHR4である。
【0045】
R
1基の好ましい例として、以下が挙げられる:
【化6】
【0046】
上記の好ましいR1基において、各Yは独立してNR5またはOである。しかし、部分飽和環が2個のY原子を含む場合、一方のYはOであり、他方のYはOまたはNであるこ
とが好ましい。
【0047】
各R7は、独立して、H、ハロ、およびC1~C4アルキルからなる群から選択されるか、または、前記R7は、それが結合している炭素原子と一緒になってオキソ基を形成する。
【0048】
また、部分飽和環の炭素原子の1つだけが置換基で置換されていることも好ましい。したがって、1個のR7基は、好ましくは、H、ハロ、およびC1~C4アルキルからなる群から選択されるか、または、前記R7は、それが結合している炭素原子と一緒になってオキソ基を形成し、他のR7基はいずれもすべてHである。より好ましくは、1個のR7基はHであるか、または、前記R7は、それが結合している炭素原子と一緒になってオキソ基を形成し、他のR7基はいずれもすべてHである。
【0049】
式(I)の化合物において、R1基が飽和環に対してオルトの位置で分子の残部に結合している場合、XはCHであってもよく、YはOであってもよい。
【0050】
本発明のより好ましい態様において、R
1は以下の基の1つから選択される:
【化7】
【0051】
より好ましくは、R
1は以下の基の1つから選択される:
【化8】
【0052】
最も好ましくは、R
1は以下の基の1つから選択される:
【化9】
【0053】
本発明の他の好ましい態様において、R
1は以下の基の1つから選択される:
【化10】
【0054】
本発明の他の好ましい態様において、R
1は以下の基の1つから選択される:
【化11】
【0055】
本発明の他の好ましい態様において、R
1は以下の基の1つから選択される:
【化12】
【0056】
本発明の他の好ましい態様において、R
1は以下の基の1つから選択される:
【化13】
【0057】
本発明の第1の態様の具体的な化合物を以下に列挙する。
・(2S)-2-{[(1S)-2,2-ジフルオロ-1-(5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化14】
【0058】
・(2S)-2-{[(1S)-1-(3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-7-イル)-2,2-ジフルオロエチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化15】
【0059】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1R)-1-(5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)エチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化16】
【0060】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化17】
【0061】
・(2S)-2-[({1-[(tert-ブトキシ)カルボニル]-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル}メチル)アミノ]-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化18】
【0062】
・(2S)-2-{[(3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-7-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化19】
【0063】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-(
5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-3-イル)エチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化20】
【0064】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-3-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化21】
【0065】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-(5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)エチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化22】
【0066】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化23】
【0067】
・(2S)-2-{[(1R)-1-(3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-7-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化24】
【0068】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1R)-1-(1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)エチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化25】
【0069】
・(2S)-2-{[(1S)-1-(2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-イル)-2,2,2-トリフルオロエチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化26】
【0070】
・(2S)-2-{[(1R)-1-(2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化27】
【0071】
・(2S)-2-{[(1S)-1-(3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-6-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化28】
【0072】
・(2S)-2-[({5H,6H,7H-シクロペンタ[b]ピリジン-3-イル}メチル)アミノ]-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化29】
【0073】
・(2S)-2-{[(2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化30】
【0074】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(4-メチル-3-オキソ-3,4-ジヒドロ
-2H-1,4-ベンゾキサジン-6-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化31】
【0075】
・(2S)-2-{[(3,4-ジヒドロ-1H-2-ベンゾピラン-6-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化32】
【0076】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1-メチル-2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化33】
【0077】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-[({5H,7H,8H-ピラノ[4,3-b]ピリジン-3-イル}メチル)アミノ]ヘキサン酸:
【化34】
【0078】
・(2S)-2-{[(3,4-ジヒドロ-1H-2-ベンゾピラン-7-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化35】
【0079】
・(2S)-2-{[(1R)-1-(2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキシン-6-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化36】
【0080】
・(2S)-2-{[(1S)-1-(2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化37】
【0081】
・(2S)-2-{[(1R)-1-(3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-6-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化38】
【0082】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-[({2H,3H,4H-ピラノ[2,3-b]ピリジン-6-イル}メチル)アミノ]ヘキサン酸:
【化39】
【0083】
・(2S)-2-{[(1R)-1-(2H-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化40】
【0084】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(5-メチル-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-7-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化41】
【0085】
・(2S)-2-{[(1R)-1-(3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-7
-イル)-2,2-ジフルオロエチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化42】
【0086】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化43】
【0087】
・(2S)-2-{[(1S)-1-(3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-7-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化44】
【0088】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1S)-1-(5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)エチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化45】
【0089】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1R)-1-(1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)エチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化46】
【0090】
・(2S)-2-{[(1S)-1-(3,4-ジヒドロ-1H-2-ベンゾピラン-6-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化47】
【0091】
・(2S)-2-[({2H,3H-[1,4]ジオキシノ[2,3-b]ピリジン-7-イル}メチル)アミノ]-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化48】
【0092】
・(2S)-2-{[(1S)-1-(2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキシン-6-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化49】
【0093】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(4-メチル-3,4-ジヒドロ-2H-1,4-ベンゾキサジン-6-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化50】
【0094】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(2-メチル-1-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化51】
【0095】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化52】
【0096】
・(2S)-2-{[(2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)メチル]アミ
ノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化53】
【0097】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(7-メチル-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化54】
【0098】
・(2S)-2-{[(3,4-ジヒドロ-1H-2-ベンゾピラン-5-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化55】
【0099】
・(2S)-2-{[(1R)-1-(3,4-ジヒドロ-1H-2-ベンゾピラン-7-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化56】
【0100】
・(2S)-2-{[(1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-4-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化57】
【0101】
・(2S)-2-{[(2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-5-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化58】
【0102】
・(2S)-2-{[(3,4-ジヒドロ-1H-2-ベンゾピラン-8-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化59】
【0103】
・(2S)-2-{[(2H-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化60】
【0104】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(3-メチル-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1,3-ベンゾキサゾール-6-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化61】
【0105】
・(2S)-2-{[(1S)-1-(3,4-ジヒドロ-1H-2-ベンゾピラン-7-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化62】
【0106】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化63】
【0107】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(2-メチル-1-オキソ-1,2,3,4-
テトラヒドロイソキノリン-6-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化64】
【0108】
・(2S)-2-{[(1S)-1-(2H-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化65】
【0109】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-6-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化66】
【0110】
・(2S)-2-{[(1R)-2,2-ジフルオロ-1-(5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化67】
【0111】
・(2S)-2-{[(3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-5-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化68】
【0112】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化69】
【0113】
・(2S)-2-{[(1S)-1-(2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキシン-5-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化70】
【0114】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(4-メチル-3,4-ジヒドロ-2H-1,4-ベンゾキサジン-7-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化71】
【0115】
・(2S)-2-{[(2,3-ジヒドロ-1H-インデン-4-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化72】
【0116】
・(2S)-2-{[(1R)-1-(2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキシン-5-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化73】
【0117】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1-メチル-2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-6-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化74】
【0118】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロ
キノリン-6-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化75】
【0119】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化76】
【0120】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(4-メチル-3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-1,4-ベンゾキサジン-7-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化77】
または、上記化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、および/もしくはプロドラッグ。
【0121】
本発明の第2の態様において、式(II):
【化78】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、および/もしくはプロドラッグが提供される
【0122】
一実施形態において、R8は、H、C1~C3アルキル、およびC1~C3ハロアルキルからなる群から選択され、R9は、フェニルまたはピリジンであり、ここで、フェニルおよびピリジンは、独立して、5員ヘテロシクロアルキル、トリアゾリル、-O-フェニル、および-NR10R11からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されている。
【0123】
R10およびR11は、独立して、HまたはC1~C3アルキル、好ましくはHまたはCH3、より好ましくはCH3から選択される。
【0124】
好ましくは、R8は、H、CH3、CHF2、およびCF3からなる群から、より好ましくはHおよびCH3からなる群から選択される。
【0125】
好ましくは、R9はピロリジニル、トリアゾリル、-O-フェニル、もしくは-NR10R11で置換されたフェニルであり;または、R9は-O-フェニルで置換されたピリジンである。
【0126】
より好ましくは、R
9は以下の基の1つから選択される:
【化79】
ここで、フェニルおよびピリジンは上で定義したように置換されている。
【0127】
最も好ましくは、R
9は以下の基の1つから選択される:
【化80】
【0128】
本発明の第2の態様の他の実施形態において、R8はC1~C3ヒドロキシアルキルであり、R9は任意にC1~C3アルコキシで置換されたフェニルである。
【0129】
好ましくは、R8は-(C2H4)-OHである。
【0130】
好ましくは、R9は任意に-O-CH3で置換されたフェニルである。
【0131】
【0132】
本発明の第2の態様の具体的な化合物を以下に列挙する。
【0133】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(2-フェノキシピリジン-4-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化82】
【0134】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(6-フェノキシピリジン-3-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化83】
【0135】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-({[3-(ピロリジン-1-イル)フェニル]メチル}アミノ)ヘキサン酸:
【化84】
【0136】
・2-{[(1S)-3-ヒドロキシ-1-フェニルプロピル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化85】
【0137】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1R)-1-(6-フェノキシピリジン-3-イル)エチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化86】
【0138】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1S)-1-(6-フェノキシピリジン-3-イル)エチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化87】
【0139】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(4-フェノキシフェニル)メチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化88】
【0140】
・(2S)-2-({[3-(ジメチルアミノ)フェニル]メチル}アミノ)-5,5-
ジメチルヘキサン酸:
【化89】
【0141】
・(2S)-2-{[(1R)-3-ヒドロキシ-1-(3-メトキシフェニル)プロピル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化90】
【0142】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(3-フェノキシフェニル)メチル]アミノ}ヘキサン酸:
【化91】
【0143】
・(2S)-2-{[(1S)-3-ヒドロキシ-1-(3-メトキシフェニル)プロピル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化92】
【0144】
・(2S)-2-{[(1R)-3-ヒドロキシ-1-フェニルプロピル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸:
【化93】
【0145】
・(2S)-5,5-ジメチル-2-({[3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)フェニル]メチル}アミノ)ヘキサン酸:
【化94】
【0146】
または、上記化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、および/もしくはプロドラッグ。
【0147】
本発明の第3の態様により、本発明による化合物と、薬学的に許容される担体、賦形剤、および/または希釈剤とを含む医薬組成物がある。
【0148】
本発明の第4の態様により、治療における使用のための本発明による化合物または医薬組成物が提供される。
【0149】
本発明の第5の態様により、神経変性疾患、精神疾患、炎症性疾患、がん、疼痛、糖尿病、糖尿病性網膜症、緑内障、ブドウ膜炎、心血管疾患、腎臓疾患、乾癬、遺伝性眼疾患、難聴、またはミスフォールドしたタウを特徴とする疾患の治療または予防における使用のための、本発明による化合物または医薬組成物が提供される。
【0150】
好ましくは、神経変性疾患は、運動ニューロン疾患、前頭側頭葉変性症(FTLD)、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)などのプリオン病、急性脳損傷、脊髄損傷、および脳卒中から選択され、好ましくは、運動ニューロン疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、原発性側索硬化症、および進行性筋萎縮症から選択される。
【0151】
神経変性疾患は、好ましくはミスフォールドしたTAR DNA結合タンパク質43(tdp-43)を特徴とする神経変性疾患である。すなわち、この神経変性疾患は短縮型tdp-43および封入体を特徴とする。そのような疾患の例としては、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症、および前頭側頭型認知症が挙げられる。
【0152】
好ましくは、精神疾患は、双極性障害、大うつ病、心的外傷後ストレス障害、および不安障害から選択される。
【0153】
好ましくは、炎症性疾患は、炎症疾患および神経炎症から選択される。
【0154】
好ましくは、がんは、乳がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、甲状腺がん、膵臓がん、神経膠芽腫、および大腸がんから選択される。
【0155】
好ましくは、心血管疾患は、アテローム性動脈硬化症、心筋症、心臓発作、不整脈、心不全、および虚血性心疾患から選択される。
【0156】
好ましくは、難聴は、騒音誘発性難聴、聴器毒性誘発性難聴、加齢誘発性難聴、特発性難聴、耳鳴、および突発性難聴から選択される。
【0157】
本発明の第6の態様により、神経変性疾患、精神疾患、炎症性疾患、がん、疼痛、糖尿病、糖尿病性網膜症、緑内障、ブドウ膜炎、心血管疾患、腎臓疾患、乾癬、遺伝性眼疾患、難聴、またはミスフォールドしたタウを特徴とする疾患の治療または予防のための医薬の製造のための、本発明による化合物が提供される。
【0158】
本発明の第7の態様により、治療的有効量の本発明による化合物または医薬組成物を投与することを含む、ソルチリン調節に反応する疾患または状態の治療または予防のための方法が提供される。
【0159】
本発明の化合物は、同位体標識および/または同位体濃縮された形態の化合物を含んで
もよい。本明細書における本発明の化合物は、そのような化合物を構成する1つ以上の原子において、不自然な割合の原子同位体が含まれていてもよい。開示された化合物に組み込むことができる同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、および塩素の同位体が挙げられ、例えば、2H、3H、11C、13C、14C、13N、15O、17O、32P、35S、18F、および36Clが挙げられる。
【0160】
本発明の化合物は、そのままで、または適宜その薬理学的に許容される塩(酸または塩基付加塩)として、使用してもよい。以下に述べる薬理学的に許容される付加塩は、化合物が形成しうる治療的に活性のある無毒性の酸および塩基付加塩の形態を含むことを意図する。塩基性の特性を有する化合物は、その塩基形態を適切な酸で処理することにより、薬学的に許容される酸付加塩に変換することができる。酸の例としては、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、およびリン酸などの無機酸;ならびに、ギ酸、酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、ピルビン酸、グリコール酸、マレイン酸、マロン酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸、p-アミノサリチル酸、パモ酸、安息香酸、およびアスコルビン酸などの有機酸;などが挙げられる。酸性の特性を有する化合物は、その酸形態を適切な塩基で処理することにより、薬学的に許容される塩基性付加塩に変換することができる。塩基付加塩の形態の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、およびカルシウム塩や、例えばアンモニア、アルキルアミン、ベンザチン、ならびに例えばアルギニンおよびリジン等のアミノ酸などの薬学的に許容されるアミンとの塩が挙げられる。本明細書で使用する付加塩という用語は、化合物およびその塩が形成することができる溶媒和物、例えば水和物およびアルコラートなども含む。
【0161】
本開示の全体にわたり、所与の化学式または化学名は、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、N-オキシド、および/またはプロドラッグの形態もすべて包含するものとする。本発明の化合物は、化合物の式の任意のおよびすべての水和物および/または溶媒和物を含むと理解されるべきである。ある特定の官能基、例えばヒドロキシ、アミノ、および同様の基は、化合物の様々な物理的形態において、水および/または様々な溶媒と複合体および/または配位化合物を形成することが理解される。よって、上記の式は、それらの様々な水和物および/または溶媒和物を包含し、また表すものであると理解されるべきである。
【0162】
本発明の化合物はまた、互変異性体形態も含む。互変異性体は、単結合と、それに隣接する二重結合とが入れ替わり、それとともにプロトンが移動することによって生じる。互変異性体形態は、同じ実験式および全体電荷を有する異性体プロトン化状態であるプロトトロピック互変異性体を含む。プロトトロピック互変異性体の例としては、ケトン-エノールペア、アミド-イミド酸ペア、ラクタム-ラクチムペア、アミド-イミド酸ペア、エナミン-イミンペア、ならびに、プロトンが複素環系の2個以上の位置を占有し得る環状形態、例えば、1H-および3H-イミダゾール、1H、2H-、および4H-1,2,4-トリアゾール、1H-および2H-イソインドール、ならびに1H-および2H-ピラゾールが挙げられる。互変異性体形態は、平衡状態にあるか、または適切な置換によって1つの形態に立体的に固定されたものであり得る。
【0163】
本明細書に記載の化合物は、不斉性であり得る(例えば、1つ以上の立体異性中心を有してもよい)。特に断りのない限り、例えばエナンチオマーおよびジアステレオマーなど、すべての立体異性体が意図される。不斉置換された炭素原子を含有する本発明の化合物は、光学的に活性な形態またはラセミ体として単離することができる。光学的に活性な出発物質から光学的に活性な形態を調製する方法は当技術分野で公知であり、例としてラセミ混合物の分割または立体選択的合成などが挙げられる。オレフィンの多くの幾何異性体およびC=N二重結合なども本明細書に記載の化合物中に存在することができ、そのよう
な安定異性体はすべて本発明で企図されるものである。本発明の化合物のシスおよびトランス幾何異性体が記載されており、それらは異性体の混合物として、または分離した異性体として単離されてもよい。
【0164】
不斉炭素原子を含む化合物の場合、本発明は、D型、L型、およびD,L混合物に関し、また、1個より多い不斉炭素原子が存在する場合はジアステレオマー形態にも関する。不斉炭素原子を含有し、概してラセミ体として生じる本発明の化合物は、例えば光学的に活性な酸を使用して、公知の方法で光学活性異性体に分離することができる。しかし、光学的に活性な出発物質を最初から使用し、その後、光学的に活性な、またはジアステレオマーの、対応する化合物を最終生成物として得ることも可能である。
【0165】
好ましくは、式(I)および(II)の化合物は、それぞれ式(Ia)および(IIa)の化合物である:
【化95】
【0166】
「プロドラッグ」という用語は、生理学的条件下での変換または加溶媒分解による変換によって、本発明の生物活性化合物に変換され得る化合物のことを指す。プロドラッグは、それを必要とする対象に投与したときには不活性であっても、in vivoで本発明の活性化合物に変換される。プロドラッグは、典型的には、血中での加水分解などによってin vivoで速やかに変換され、本発明の親化合物が生成する。プロドラッグ化合物は通常、哺乳動物において溶解性、組織適合性、または遅延放出という利点を提供する(Silverman, R. B., The Organic Chemistry
of Drug Design and Drug Action, 2nd Ed., Elsevier Academic Press(2004)、ページ498~549を参照)。本発明の化合物のプロドラッグの調製においては、本発明の化合物中に存在するヒドロキシ基、アミノ基、またはメルカプト基などの官能基を修飾し、その修飾がルーチン操作またはin vivoのいずれかにおいて切断され、本発明の親化合物が生成するようにしてもよい。プロドラッグの例として、ヒドロキシ官能基の酢酸塩、ギ酸塩、およびコハク酸塩誘導体、またはアミノ官能基のフェニルカルバメート誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0167】
本発明の化合物は、ソルチリンの阻害剤、結合剤、モジュレーター、またはアンタゴニストであってもよい。本明細書において使用される「ソルチリンアンタゴニスト」、「ソルチリン阻害剤」、「ソルチリン結合剤」、または「ソルチリンモジュレーター」という用語(互換的に使用される)は、プログラニュリン、またはニューロテンシンもしくは他の細胞外リガンド、またはプロ-ニューロトロフィン(例えば、プロNGF、プロNT3、プロBDNF)へのソルチリンタンパク質の結合に干渉するか、それを遮断するか、さもなければその効果を減弱するか、あるいは、ソルチリン、p75NTR、およびプロニューロトロフィンの間の三量体複合体の形成を妨げる、物質のことを指す。「ソルチリンアンタゴニスト」という用語には、高親和性三量体複合体の形成に干渉する物質または薬剤も含まれる。後者のシナリオでは、ソルチリンがp75NTR(しかしプロNGFでは
ない)に結合することができ、およびp75NTRがプロNGFのNGFドメインに同時に結合することができるという点において、三量体複合体が形成され得ると認識される。しかし、結果として生じる三量体複合体は、その受容体に対する親和性が低い可能性があり、その結果、上記の機構を介してアポトーシスを刺激する能力が著しく低下している可能性がある。Skeldal et al.(2012)は、ソルチリンの細胞内ドメインが欠損すると、三量体複合体のアポトーシス機能が消失することを示した。「ソルチリンアンタゴニスト」という用語には、p75NTRとのソルチリンタンパク質の相互作用に干渉するか、それを遮断するか、さもなければその効果を減弱する、物質または薬剤も含まれる。この相互作用は完全に阻害されることがあり、その場合は三量体複合体の形成が阻害される。あるいは部分的にしか阻害されないこともあり、その場合には、三量体複合体は形成される可能性があるが、その生物学的有効性は低下する場合がある。Skeldal et al.は、ソルチリンとp75NTRとの間の複合体形成が、受容体の細胞外ドメイン内の接触点に依存すること、および、相互作用がp75NTRの細胞外の膜近傍の23アミノ酸の配列に決定的に依存することを示した。したがって、ソルチリンアンタゴニストは、この23アミノ酸の配列、または分子内の近傍配列に干渉する可能性がある。「ソルチリンアンタゴニスト」は、リガンドの細胞取込み阻害剤として作用してもよく、リガンドは、プログラニュリン、ニューロテンシン、BDNFなどであってよい。
【0168】
本発明の化合物は血液脳関門を通過する可能性があるため、中枢神経系の疾患の治療または予防において特に有用である可能性がある。中枢神経系の疾患として、運動ニューロン疾患、前頭側頭葉変性症(FTLD)、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)などのプリオン病、急性脳損傷、脊髄損傷、および脳卒中から選択される神経変性疾患;双極性障害、大うつ病、心的外傷後ストレス障害、および不安障害から選択される精神疾患;騒音誘発性難聴、聴器毒性誘発性難聴、加齢誘発性難聴、特発性難聴、耳鳴、および突発性難聴から選択される難聴;脳腫瘍、網膜症、緑内障、神経炎症、慢性疼痛、およびミスフォールドしたタウを特徴とする疾患、が挙げられる。
【0169】
本発明の化合物は、0.1を越えるKpuu、例えば、0.1~10、0.1~5、0.1~3、0.1~2、0.1~1、0.1~0.8、0.1~0.6、0.1~0.5、0.1~0.4、0.1~0.3、または0.1~0.2のKpuuを有してもよい。
【0170】
本明細書で使用される「治療」という用語には、指定された障害もしくは状態の予防、または障害が確立されてからの改善もしくは除去が含まれる。「予防」という用語は、指定された障害または状態の予防のことを指す。
【0171】
本明細書で規定される方法には、対象が特定の定まった治療を必要としていると同定される方法が含まれる。このような治療が必要な対象の同定は、対象または医療専門家の判断による同定であることができ、また、主観的(例えば意見)または客観的(例えば検査もしくは診断方法によって測定可能)な同定であることができる。
【0172】
他の態様においては、本明細書の方法として、治療投与に対する対象の反応をモニタリングすることをさらに含む方法が挙げられる。このようなモニタリングは、治療レジメンのマーカーまたは指標として、対象の組織、体液、検体、細胞、タンパク質、化学マーカー、遺伝物質などを、定期的に撮像またはサンプリングすることを含み得る。他の方法においては、そのような治療への適合性を示す関連マーカーまたは指標を評価することによって対象が事前にスクリーニングされるか、またはそのような治療が必要であると同定される。
【0173】
本発明は、治療経過をモニタリングする方法を提供する。本方法は、本明細書で規定さ
れる疾患またはその症状に罹患しているまたは罹患しやすい対象において、診断マーカー(Marker)(例えば、本明細書の化合物によって調節される、本明細書に規定された任意の標的または細胞型)の濃度または診断測定値(例えば、スクリーニング、アッセイ)を決定する工程を含み、この対象は、その疾患または症状を治療するのに十分な治療量の本明細書の化合物を投与された対象である。本方法で決定されたマーカーの濃度を、健常対照者または他の罹患患者におけるマーカーの既知の濃度と比較し、対象の疾患状態を確定することができる。好ましい実施形態では、対象におけるマーカーの第2の濃度を、第1の濃度の決定より後の時点で決定し、これら2個の濃度を比較して、疾患の経過または治療の有効性をモニタリングする。ある好ましい実施形態においては、本発明による治療開始前に、対象におけるマーカーの治療前濃度を決定し、次いで、このマーカーの治療前濃度を、治療開始後の対象におけるマーカーの濃度と比較して、治療の有効性を決定することができる。
【0174】
対象におけるマーカーまたはマーカー活性のレベルを、少なくとも1回決定してよい。マーカーレベルを、例えば、同じ患者、別の患者、または正常な対象から以前または以後に得られたマーカーレベルの別の測定値と比較することは、本発明による治療が所望の効果を有しているかどうかを決定し、それによって投与量を適切に調節するのに有用であると考えられる。マーカーレベルの測定は、当該技術分野で公知の、または本明細書に記載されている、任意の適切なサンプリング/発現アッセイ法を用いて実施してよい。好ましくは、まず対象から組織または体液試料を採取する。適切な試料の例としては、血液、尿、組織、口または頬の細胞、および毛根を含む毛髪試料などがある。他の適切な試料が当業者に公知であろう。試料中のタンパク質濃度および/またはmRNA濃度(例えば、マーカー濃度)の測定は、酵素免疫測定法、ELISA、放射標識/アッセイ技術、ブロッティング/化学発光法、およびリアルタイムPCRなどを含むがこれらに限定されない、当該技術分野で公知の任意の適切な技術を用いて実施することができる。
【0175】
臨床使用のため、本明細書に開示された化合物は、様々な投与様式のための医薬組成物(または製剤)に製剤化される。本発明の化合物は、生理学的に許容される担体、賦形剤、および/または希釈剤(すなわち、これらの1つ、2つ、または3つすべて)とともに投与されてもよいと理解されよう。本明細書に開示される医薬組成物は任意の適切な経路で投与してもよく、好ましくは、経口投与、直腸投与、経鼻投与、局所投与(点眼投与、口腔投与、および舌下投与など)、舌下投与、経皮投与、髄腔内投与、経粘膜投与、または非経口投与(皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、および皮内投与など)で投与される。その他の製剤は、好都合には、例えば錠剤、徐放性カプセル剤、およびリポソーム剤などの単位剤形で提供してよく、それらを薬学の技術分野で周知の任意の方法によって調製してよい。医薬製剤は通常、活性物質またはその薬学的に許容される塩を、従来の薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と混合することによって調製される。賦形剤の例としては、水、ゼラチン、アラビアゴム、ラクトース、微結晶セルロース、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、リン酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルカム、およびコロイド状二酸化ケイ素などが挙げられる。このような製剤は、他の薬理学的に活性な薬剤、ならびに、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、香料、および緩衝剤などを含んでもよい。通常、活性化合物の量は、製剤の0.1~95重量%、非経口用製剤では好ましくは0.2~20重量%、経口投与用製剤ではより好ましくは1~50重量%である。製剤はさらに、造粒、圧縮、マイクロカプセル化、およびスプレーコーティングなどの公知の方法で調製することができる。製剤は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉末剤、シロップ剤、懸濁剤、坐剤、または注射剤などの剤形で常法により調製してよい。液体製剤を、活性物質を水または他の適切なビヒクルに溶解または懸濁することにより調製してもよい。錠剤および顆粒剤は、従来の方法でコーティングしてもよい。治療的に有効な血漿中濃度を長期間維持するために、本明細書に開示した化合物を徐放性製剤へと組み込んでもよい。
【0176】
具体的な化合物の投与量および投与頻度は、用いられる具体的な化合物の効力、その化合物の代謝安定性および作用の長さ、患者の年齢、体重、全般的健康状態、性別、食事、投与の様式および時間、排泄速度、薬物の組み合わせ、治療する状態の重症度、ならびに治療中の患者など、様々な要因によって異なり得る。1日の投与量は、例えば、体重1kgあたり約0.001mg~約100mgの範囲であってよく、これを単回または複数回に分けて、例えば約0.01mg~約25mgずつ投与してよい。通常、このような用量は経口投与されるが、非経口投与も選択してよい。
【0177】
定義
本明細書中で使用される「ソルチリン」という用語は、シグナルペプチド、プロペプチド、Vps10pドメイン、10CCドメイン、膜貫通ドメイン、および大型の細胞質尾部を含み、配列番号1または配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する全長ソルチリン(未成熟ソルチリンとも称される)のことを指す場合がある。あるいは、この用語は、Vps10pドメイン、10CCドメイン、膜貫通ドメイン、および大型の細胞質尾部を含み、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有する成熟ソルチリン、またはその天然の断片、ホモログ、もしくはバリアントを指す場合がある。「ソルチリン」または「ソルチリン分子」という用語は、本明細書において互換的に使用される。ソルチリンはプロニューロトロフィン分子と相互作用して、ソルチリン/プロニューロトロフィン複合体を形成できると理解される。このソルチリン/プロニューロトロフィン複合体は、p75NTR分子と相互作用して、ソルチリン、プロニューロトロフィン、およびp75NTRを含む三量体複合体を形成可能な場合もあるし、可能でない場合もある。この三量体複合体は、網膜細胞および神経節細胞のアポトーシスを刺激したり、突出する軸索(projecting axons)の成長円錐の後退を制御したりするなど、有害な生物学的反応の原因である可能性があると理解されている(Jansen et al., 2007; Nykjaer et al., 2004; Santos et al., 2012; Skeldal et al., 2012)。
【0178】
本明細書中で使用される「プロニューロトロフィン」という用語は、ニューロトロフィンの、より大きな前駆体のことを指し、この前駆体はタンパク質分解切断を受けてニューロトロフィンの成熟型を生成する。ニューロトロフィンは、ニューロンの生存、発達、および機能を誘導するタンパク質のファミリーであり、一般に成長因子と呼ばれている。プロニューロトロフィンは生物学的に活性であり、アポトーシスの誘導など、ニューロトロフィンにおけるそのカウンターパートとは異なる役割を持つ。プロニューロトロフィンの例としては、プロNGF、プロBDNF、プロNT3、およびプロNT4が挙げられる。プロニューロトロフィンはシナプス可塑性も制御している可能性がある。成熟したニューロトロフィンがシナプス強度を誘導するのに対し、そのプロ形態はシナプスを弱める可能性がある。
【0179】
「任意の」または「任意に」とは、その後に記載される事象または状況が起こってもよいが、必ずしもその必要はないこと、そして、この記載が、その事象または状況が起こる事例とそれが起こらない事例とを含むことを意味する。
【0180】
「ヘテロ原子」という用語は、O、N、またはSを意味する。
【0181】
「(C1~Cn)アルキル」という用語は、1~n個の炭素原子、すなわち1個、2個、3個...またはn個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖、環状、または部分的に環状のアルキル基のことを示す。「(C1~Cn)アルキル」基が環状部分を含むためには、それが少なくとも3個の炭素原子で形成される必要がある。「(C1~Cn)アルキル」の部分範囲については、そのすべてのサブグループが企図される。例えば、(C1~C6)
アルキルの範囲において、(C1~C5)アルキル、(C1~C4)アルキル、(C1~C3)アルキル、(C1~C2)アルキル、(C1)アルキル、(C2~C6)アルキル、(C2~C5)アルキル、(C2~C4)アルキル、(C2~C3)アルキル、(C2)アルキル、(C3~C6)アルキル、(C3~C5)アルキル、(C3~C4)アルキル、(C3)アルキル、(C4~C6)アルキル、(C4~C5)アルキル、(C4)アルキル、(C5~C6)アルキル、および(C6)アルキルなどのすべてのサブグループが企図される。「C1~C6アルキル」の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、シクロブチル、シクロプロピルメチル、分岐鎖または環状または部分的に環状のペンチルおよびヘキシル等が挙げられる。
【0182】
「(C1~Cn)ハロアルキル」という用語は、少なくとも1つのハロゲン原子で置換された上述のC1~Cnアルキルのことを示し、ハロゲン原子は、好ましくはF、Cl、Br、およびIであり、より好ましくはFおよびClであり、最も好ましくはFである。
【0183】
「(C1~Cn)ヒドロキシアルキル」という用語は、少なくとも1つの-OH基で置換された上記のC1~Cnアルキルのことを示す。
【0184】
「(C1~Cn)アルコキシ」という用語は、-O-((C1~Cn)アルキル)であって、式中、(C1~Cn)アルキル基が上記で定義したとおりであり、酸素原子を介して化合物の残部に結合しているもののことを示す。
【0185】
(C1~C6)アルキルの定義における「1~6個の炭素原子」など、用語が範囲を示す場合は、それぞれの整数、すなわち1、2、3、4、5および6が開示されていると考える。
【0186】
「ハロ」という用語はハロゲン原子のことを意味し、好ましくはF、Cl、Br、およびIであり、より好ましくはFおよびClであり、最も好ましくはFである。
【0187】
「5員ヘテロシクロアルキル」という用語は、5個の環原子を有し、少なくとも1個の環原子がヘテロ原子である、非芳香環のことを示す。好ましくは、各ヘテロ原子は独立して、N、S、またはOから選択され、より好ましくはNである。好ましくは、2個以下の環原子がヘテロ原子である。より好ましくは、1個の環原子のみがヘテロ原子である。
【0188】
「有効量」とは、治療対象に治療効果を与える本発明の化合物の量のことを指す。治療効果は、客観的な効果(すなわち、何らかの検査またはマーカーによって測定可能なもの)であっても、主観的な効果(すなわち、対象が効果の徴候を示す、または効果を感じるもの)であってもよい。
【0189】
本明細書において、「投与」または「投与すること」という用語は、本明細書に開示される化合物のための投与経路のことを意味する。投与経路の限定されない例としては、経口、眼内、静脈内、腹腔内、動脈内、および筋肉内が挙げられる。好ましい投与経路は、本明細書に開示された化合物を含む医薬組成物の成分、潜在的なまたは実際の疾患の部位、および疾患の重症度など、様々な要因によって異なり得る。
【0190】
本明細書において、「対象」および「患者」という用語は互換的に使用される。これらは、ある病気または障害に罹患し得る、または罹患しやすいが、しかし、その病気または障害に罹患していてもしていなくともよい、ヒトまたは他の哺乳動物(マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、もしくは霊長類など)のことを指す。対象はヒトであることが好ましい。
【0191】
本発明の化合物は、名称または化学構造によって開示される場合がある。化合物の名称とそれに関連する化学構造に矛盾がある場合は、化学構造が優先される。
【0192】
次に、本発明を以下の非限定的な実施例によってさらに説明する。以下の具体例は、単なる例示として解釈されるべきものであり、本開示の残りの部分を何ら限定するものではない。さらなる詳述がなくとも、当業者であれば、本明細書の記載に基づいて、本発明を最大限に利用できると考えられる。本明細書で引用したすべての文献および刊行物は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0193】
本発明の化合物の調製
本発明の化合物は、以下の一般的合成手順スキームに従って、当技術分野で周知のよく理解されている方法で調製することができる。好適な反応条件が当技術分野において周知であり、溶媒および補助試薬を適切に置き換えることが当業者の技術常識内にある。同様に、必要に応じて、または所望により、合成中間体を様々な周知の技術によって単離および/または精製し得ること、そして、各種中間体を、ほとんどまたは全く精製することなく、後続の合成工程で直接使用できる場合が多いことを、当業者は理解するであろう。さらに、当業者は、一部の状況において、各部分が導入される順序は重要ではないことを理解するであろう。式(I)または(II)の化合物を製造するのに必要な工程の具体的な順序は、当業者によく理解されるように、合成される具体的な化合物、出発化合物、および置換部分の相対的なライアビィティ(liability)に依存する。特に断りのない限り、すべての置換基は先に定義したとおりであり、すべての試薬は当技術分野で周知のよく理解されているものである。
【0194】
単一のエナンチオマーとして、またはラセミ混合物として光学活性を有する適切な出発物質、および一般式AA-1の保護されたアミノ酸は、市販されており、または様々な方法で調製してもよい。例えば、一般的合成手順のスキーム1において示されるように、一般式AA-1の適切に置換されたアミノ酸のカルボン酸官能基は、遊離酸(PG=H)として使用することができ、またはメチルエステルなどの好適な誘導体として保護することができる。AA-1中に存在する第一級アミン上の置換基の挿入は様々な方法によって行うことができ、例を挙げると、酢酸およびジクロロメタンのような適切な溶媒混合物中で、適切に置換されたカルボニル化合物Int-1、アルデヒド、またはケトンと、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムなどであるが限定されない還元試薬とを用いる還元的アミノ化工程によって行うことができる。AA-1に存在する第一級アミンに置換基を導入するための別の方法は、一般的合成手順に示すように、適切な保護されたAA-1とInt-2型の試薬との間のアルキル化工程を使用する。後者において、LGは臭素原子などの反応性脱離基を表し、これを、アセトニトリルのような適切な溶媒中で、例えば炭酸カリウムのような適切な塩基の存在下、AA-1中の遊離アミンによって選択的に置換することができる。あるいは、スキーム2は、Int-3型またはInt-4型の中間体が立体障害である場合などに有利な可能性がある、補完的な一般合成戦略の例を示す。有利には、AA-2型またはAA-3型の中間体は、当業者に公知の手順によってAA-1型の中間体から得ることができ、市販の供給源から購入することができ、または合成することができる。
【0195】
【0196】
【0197】
一般式(I)または(II)の化合物は、様々な手順で調製することができる。そのいくつかを以下に記載する。各工程の生成物はその後、抽出、蒸発、沈殿、クロマトグラフィー、濾過、トリチュレーション、および結晶化などを含む従来の方法で回収することができる。
【0198】
一般式(I)または(II)の化合物は、1つ以上の立体中心を含んでもよい。これらは、利用可能な単一エナンチオマーや、光学活性を有するAA-1型の出発物質から導入することができる。存在する立体中心の完全性は、例えばキラル支持高圧クロマトグラフィーのような当業者に周知の分析技術により確認することができる。あるいは、ラセミ出発物質を使用する場合、所望により、分取キラル支持高圧クロマトグラフィーのような公知の技術により、単一エナンチオマーとして、または単一ジアステレオマーとして、単一異性体生成物を得ることができることが理解されよう。
【0199】
当業者はまた、式(I)または(II)の化合物中のすべての置換基が、その化合物の合成に用いられる特定の反応条件を許容するわけではないことを理解するであろう。これらの部分は合成における好都合な時点で導入してもよく、または、必要に応じて、あるいは所望により、当技術分野で周知のように、保護およびその後の脱保護を行ってもよい。当業者は、保護基を、本発明の化合物の合成における任意の好都合な時点で除去してよいことを理解するであろう。本発明で使用される保護基を導入または除去する方法は、当技
術分野で周知である。例えば、Greene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 4th Ed., John Wiley and Sons, New York(2006)を参照のこと。
【実施例】
【0200】
略語
approx:約;aq:水性;br:ブロード;ca.:約;CDI:1,1’-カルボニルジイミダゾール;d:ダブレット;DCM:ジクロロメタン;DIC:N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド;ジオキサン:1,4-ジオキサン;DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン;DMF:ジメチルホルムアミド;eq.:当量;Et3N:トリエチルアミン;EtOAc:酢酸エチル;EtOH:エタノール;Fmoc:フルオレニルメトキシカルボニル;Boc:tert-ブトキシカルボニル;h:時間(hours);min:分;HATU:2-(3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-b]ピリジン-3-イル)-1,1,3,3-テトラメチルイソウロニウムヘキサフルオロホスフェート(V);HPLC:高速液体クロマトグラフィー;IPA、イソプロパノール;LC:液体クロマトグラフィー;m:マルチプレット;M:モル濃度、分子イオン;MeCN:アセトニトリル;MeOH:メタノール;MS:質量分析;NMR:核磁気共鳴;PDA:フォトダイオードアレイ;q:カルテット;rt:室温(約20℃);RT:保持時間;s:シングレット、固体;SPPS:固相ペプチド合成。t:トリプレット;TBAF:テトラブチルアンモニウムフルオリド;TBME:tert-ブチルメチルエーテル;TFA:トリフルオロ酢酸;THF:テトラヒドロフラン;UPLC:超高速液体クロマトグラフィー;UV:紫外線。
【0201】
他の略語は、それらの一般に受け入れられている意味を有することが意図される。
【0202】
一般的実験条件
すべての出発物質および溶媒は、商業的供給源から入手したか、または引用文献に従い調製した。反応混合物は磁気撹拌し、特に断りのない限り室温(約20℃)で反応を行った。
【0203】
カラムクロマトグラフィーは、特に断りのない限り、CombiFlash Rfシステムなどの自動フラッシュクロマトグラフィーシステムで、プレパックドシリカ(40μm)カートリッジを使用して行った。
【0204】
1H-NMRスペクトルは、Bruker Avance AV-I-400またはBruker Avance AV-II-400装置を用いて、400MHzで記録した。化学シフト値は、特に断りのない限り、テトラメチルシランに対するppm値で表される。以下の略語またはそれらの組合せをNMRシグナルの多重度に関して使用する:br=ブロード、d=ダブレット、m=マルチプレット、q=カルテット、quint=クインテット、s=シングレット、およびt=トリプレット。
【0205】
分析方法
1H-NMRスペクトルは、Bruker Avance AV-I-400装置またはBruker Avance AV-II-400装置を用いて、400MHzで記録した。化学シフト値は、特に断りのない限り、テトラメチルシランに対するppm値で表される。以下の略語またはそれらの組合せをNMRシグナルの多重度に関して使用する:br=ブロード、d=ダブレット、m=マルチプレット、q=カルテット、quint=クインテット、s=シングレット、およびt=トリプレット。
【0206】
方法1:UPLC_AN_BASE、装置:Waters IClass;バイナリポンプ:UPIBSM、SM:SOを用いたUPISMFTN;UPCMA、PDA:UPPDATC、210~320nm、SQD:ACQ-SQD2 ESI;ELSD:ガス圧力40psi、ドリフトチューブ温度:50℃;カラム:Waters XSelect CSH C18、50×2.1mm、2.5μm、温度:25℃、フロー:0.6mL/分、勾配:t0=5% B、t2.0分=98% B、t2.7分=98% B、ポストタイム:0.3分、溶離液A:水中の10mM重炭酸アンモニウム(pH=9.5)、溶離液B:アセトニトリル。
【0207】
方法2:PREP_ACID-AS4A、装置:Agilent Technologies G6130B Quadrupole;HPLC装置タイプ:Agilent Technologies 1290 preparative LC;カラム:Waters XSelect CSH(C18、100×30mm、10μ);フロー:55mL/分;カラム温度:室温;溶離液A:水中の0.1%ギ酸(formid acid);溶離液B:100%アセトニトリル、直線勾配:t=0分 20% B、t=2分 20% B、t=8.5分 60% B、t=10分 100% B、t=13分 100% B;検出:DAD(220~320nm);検出:MSD(ESI pos/neg) 質量範囲:100~1000;MSおよびDADに基づく画分収集。
【0208】
方法3:UPLC_AN_ACID、装置:Waters IClass;バイナリポンプ:UPIBSM、SM:SOを用いたUPISMFTN;UPCMA、PDA:UPPDATC、210~320nm、SQD:ACQ-SQD2 ESI;ELSD:ガス圧力40psi、ドリフトチューブ温度:50℃;カラム:Waters XSelect CSH C18、50×2.1mm、2.5μm、温度:40℃、フロー:0.6mL/分、勾配:t0=5% B、t2.0分=98% B、t2.7分=98% B、ポストタイム:0.3分、溶離液A:水中の0.1%ギ酸、溶離液B:アセトニトリル中の0.1%ギ酸。
【0209】
方法4:装置:Agilent Technologies G6130B Quadrupole;HPLC装置タイプ:Agilent Technologies 1290 preparative LC;カラム:Waters XSelect CSH(C18、100×30mm、10μ);フロー:55mL/分;カラム温度:室温;溶離液A:水中の0.1%ギ酸(formid acid);溶離液B:100%アセトニトリル;検出:DAD(220~320nm);検出:MSD(ESI pos/neg) 質量範囲:100~1000;MSおよびDADに基づく画分収集。
【0210】
方法5:装置:ACQ-SQD2;HPLC装置タイプ:Waters Modular Preparative HPLC System;カラム:Waters XSelect(C18、100×30mm、10μm);フロー:55mL/分 prep pump;カラム温度:室温;溶離液A:水中の10mM重炭酸アンモニウム pH=9.5;溶離液B:100%アセトニトリル;検出:DAD(220~320nm);検出:MSD(ESI pos/neg) 質量範囲:100~800;MSおよびDADに基づく画分収集。
【0211】
方法6:装置:Waters IClass;バイナリポンプ:UPIBSM、SM:SOを用いたUPISMFTN;UPCMA、PDA:UPPDATC、210~320nm、SQD:MS:QDA ESI、pos/neg 100~800;カラム:Waters XSelect CSH C18、50×2.1mm、2.5μm、温度:25℃、フロー:0.6mL/分、勾配:t0=5% B、t1.3分=98% B、t1.7分=98% B、ポストタイム:0.3分、溶離液A:水中の10mM重炭酸アンモ
ニウム(pH=9.5)、溶離液B:アセトニトリル。MSパラメーター:ソース:ESI;キャピラリー:2500V;コーン:20V;エクストラクター:3.0V;RF:2.5V;ソース温度:150℃;脱溶媒温度:600℃;コーンガスフロー:80L/時間;脱溶媒ガスフロー:1000L/時間;フルMSスキャン:MS範囲100~800(ポジティブおよびネガティブモード);スキャン:0.4秒。
【0212】
方法7:UPLC_AN_BASE、装置:Waters I-Class UPLC、Binary Solvent Manager(BSM)、Sample Manager-FTN(SM-FTN)およびSample Organizer(SO)、Column Manager(CM-A)、PDA 210~320nm、QDa ESI 100~800(pos) 100~800(neg)、カラム:XSelect CSH C18 XP(50×2.1mm 2.5μm) フロー:0.6mL/分;カラム温度:25℃、溶離液A:水中の10mM重炭酸アンモニウム(pH 9.5)、溶離液B:アセトニトリル、勾配:t=0分 5% B、t=2分 98% B、t=2.7分 98% B、ポストラン:0.3分。
【0213】
方法8:MS装置タイプ:Agilent Technologies G6120AA Quadrupole;HPLC装置タイプ:Agilent Technologies 1200 preparative LC;カラム:Atlantis T3(C18、150×19mm、10μ);フロー:25mL/分;カラム温度:室温;溶離液A:水中の0.1%ギ酸;溶離液B:100%アセトニトリル;コピーlin.勾配法情報からの勾配はここ(copy lin. Gradient from gradient method info here);検出:DAD(220~320nm);検出:MSD(ESI pos/neg) 質量範囲:100~1000;MSおよびDADに基づく画分収集。
【0214】
方法#acid3min - UPLC酸性法
装置:Waters HClass;Binary Solvent Pump、SM-FTN、CMA、PDA、QDa
カラム:Waters ACQUITY UPLC(登録商標) CSH C18、1.7μm、2.1×30mm、40℃
検出:特に断りのない限り210~400nmのUV、エレクトロスプレーイオン化によるMS
溶媒:A:水中の0.1%ギ酸、B:MeCN
勾配:
【0215】
【0216】
方法#basic3min - UPLC塩基性法
装置:Waters HClass;Binary Solvent Pump、SM-FTN、CMA、PDA、QDa
カラム:Waters ACQUITY UPLC(登録商標) BEH C18、1.7μm、2.1×30mm、40℃
検出:特に断りのない限り210~400nmのUV、エレクトロスプレーイオン化によるMS
溶媒:A:水中の0.2%アンモニア、B:MeCN
勾配:
【0217】
【0218】
方法#acid3minb
装置:Agilent 1260;Quaternery Pump、HiP Sampler、Column Compartment、DAD:G6150 MSD
カラム:Waters Cortecs C18、30×2.1mm、2.7μm、40℃
検出:特に断りのない限り260nm±90nmのUV、エレクトロスプレーイオン化によるMS
溶媒:A:水中の0.1%ギ酸、B:MeCN
勾配:
【0219】
【0220】
方法#basic3minb
装置:Agilent 1260;Quaternery Pump、HiP Sampler、Column Compartment、DAD:G6150 MSD
カラム:Phenomenex Evo C18、30×2.1mm、2.6μm、40℃
検出:特に断りのない限り260nm±90nmのUV、エレクトロスプレーイオン化によるMS
溶媒A:水中の0.2%アンモニア、B:MeCN
勾配:
【0221】
【0222】
【0223】
2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-カルバルデヒドの合成
DMF(5mL)中の7-ブロモ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン(250mg、1当量、1.11mmol)、PdCl2(dppf).CH2Cl2(80mg、0.089当量、98μmol)、Et3N(336mg、0.46mL、3当量、3.32mmol)、およびトリエチルシラン(386mg、0.53mL、3当量、3.32mmol)の溶液を、N2気流下で5分間脱気してから密閉した。その後、これをN2(×3)でパージした後、CO(1.5bar)をチャージし、次いで、反応混合物を90℃に2.5時間加熱した。反応混合物をEtOAc(40mL)中に取り、次いで飽和NH4Cl水溶液(40mL)、水:食塩水(2×1:1、40mL)、および食塩水(40mL)で洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、シリカ(約1g)上で濃縮した。粗生成物をシリカゲルを用いたクロマトグラフィー(12gカートリッジ、0~5%(1% Et3N/MeOH)/DCM)で精製し、2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-カルバルデヒド(219mg、1.0mmol、90%、純度80%)を褐色油として得た。LCMS(方法#basic3minb,1.25分;M+H=176.2.1H NMR(500MHz,DMSO)δ9.93(s,1H),7.66(dd,J=7.9,1.7Hz,1H),7.60(d,J=1.8Hz,1H),7.34(d,J=7.8Hz,1H),3.58(s,2H),2.91(t,J=5.9Hz,2H),2.63(t,J=5.9Hz,2H),2.37(s,3H).
【0224】
以下の中間体を、対応する臭化アリールから出発して、中間体1と類似の方法で調製した。
【表5】
【0225】
【0226】
【0227】
(S)-2-((イソクロマン-6-イルメチル)アミノ)-5,5-ジメチルヘキサン酸塩酸塩の合成
ジクロロメタン(2mL)中のイソクロマン-6-カルバルデヒド(102mg、0.628mmol;1.0当量)、(S)-2-アミノ-5,5-ジメチルヘキサン酸(100mg、0.63mmol)、および酢酸ナトリウム(77mg、0.942mmol;1.5当量)の懸濁液を、室温で2時間撹拌した後、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(266mg、1.26mmol、2当量)を加えた。残りの懸濁液を室温で16時間撹拌した。反応混合物を真空中で濃縮し、酸性分取HPLCで精製した(方法2)。生成物を含む画分を濃縮し、1MのHCl水溶液を用いて再構成し、濃縮して、(S)-2-((イソクロマン-6-イルメチル)アミノ)-5,5-ジメチルヘキサン酸塩酸塩(123.7mg、0.362mmol、収率57.6%)を白色固体として得た。
LCMS(方法1,0.906分;M+H=306.5;計算値306.2)。1H-NMR(400MHz,DMSO)δ14.02(br,1H),9.37(s,2H),7.31-7.27(m,2H),7.10(d,J=7.9Hz,1H),4.69(s,2H),4.10(s,2H),3.98-3.78(m,3H),2.79(t,J=5.7Hz,2H),1.99-1.70(m,2H),1.33(td,J=13.1,4.8Hz,1H),1.11(td,J=12.9,4.4Hz,1H),0.86(s,9H)。
【0228】
以下の実施例を、対応するアルデヒドから出発して、実施例1と類似の方法で調製した。
【0229】
【0230】
【0231】
(S)-2-((イソクロマン-7-イルメチル)アミノ)-5,5-ジメチルヘキサン酸メシル酸塩の合成
イソクロマン-7-カルバルデヒド イソクロマン-7-カルバルデヒド(2.26g、13.93mmol;1.0当量)を、メタノール(20mL)中の(S)-2-アミノ-5,5-ジメチルヘキサン酸(2.219g、13.93mmol)と酢酸ナトリウム 酢酸ナトリウム(1.715g、20.90mmol;1.5当量)の混合物に加えた。混合物を室温で2時間撹拌した後、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(6.61g、31.2mmol;2.0当量)を加えた。混合物を室温で16時間撹拌した。沈殿した生成物を濾過によって回収した。残渣をメタノール(5mL)で洗浄し、(S)-2-((イソクロマン-7-イルメチル)アミノ)-5,5-ジメチルヘキサン酸(1.42g、4.65mmol、収率33%)を得た。母液を真空中で濃縮した。残渣をEtOAc中に取り、水(2×)および食塩水で洗浄した。砕けて有機層外に出た生成物を濾過によって回収した。残渣を少量のEtOAcで洗浄し、真空中で乾燥して、(S)-2-((イソクロマン-7-イルメチル)アミノ)-5,5-ジメチルヘキサン酸(1.04g、3.41mmol、収率24%)を得た。(S)-2-((イソクロマン-7-イルメチル)アミノ)-5,5-ジメチルヘキサン酸(1.37g、4.48mmol)をメタンスルホン酸(0.1M、MeCN中)(44.8mL、4.48mmol;1当量)中に取った。水50mLを加え、生成物が完全に溶解するまで混合物を40℃で撹拌した。この溶液を凍結乾燥し、(S)-2-((イソクロマン-7-イルメチル)アミノ)-5,5-ジメチルヘキサン酸化合物7をメタンスルホン酸とともに得た(1.638g、4.08mmol、収率29%)。
LCMS(方法1,0.902分;M+H=306.1;計算値306.2)。1H-NMR(400MHz,DMSO)δ10.03(br,2h),7.25(d,J=7.8Hz,1H),7.19(d,J=7.8Hz,1H),7.13(s,1H),4.68(s,2H),4.11-3.99(m,2H),3.88(t,J=5.7Hz,2H),3.75-3.67(m,1H),2.79(t,J=5.8Hz,2H),2.30(s,3H),1.86-1.67(m,2H),1.30(td,J=12.9,4.9Hz,1H),1.13(td,J=12.7,4.7Hz,1H),0.85(s,9H)。
【0232】
以下の実施例を、対応するアルデヒドから出発して、実施例3と類似の方法で調製した。
【表8】
【0233】
【0234】
(S)-5,5-ジメチル-2-(((5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-3-イル)メチル)アミノ)ヘキサン酸-メタンスルホン酸の合成
トリエチルアミン(148μL、1.061mmol、3.25当量)を含む、ジクロロメタン(0.9mL)中の(5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-3-イル)メタンアミン二塩酸塩(77mg、0.326mmol、1.0当量)の溶液に、DCM(0.9mL)中のメチル(R)-5,5-ジメチル-2-(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)ヘキサノエート(100mg、0.326mmol、1.0当量)の溶
液を加えた。反応混合物を室温で3時間撹拌した。溶媒を窒素ブロー乾燥により蒸発させた。粗生成物をアセトニトリル:水(2mL、1:1)に再溶解した。水酸化リチウム(68.5mg、1.632mmol、5.0当量)を加え、混合物を16時間撹拌した。混合物を酸性分取T3 HPLC(方法8)で精製し、(S)-5,5-ジメチル-2-(((R)-1-(5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)エチル)アミノ)ヘキサン酸を得た(12.4mg、0.039mmol、収率17%)。生成物をアセトニトリル(1.1mL)に溶解し、メタンスルホン酸(1.0当量)を加えた。混合物を凍結乾燥し、(S)-5,5-ジメチル-2-(((5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-3-イル)メチル)アミノ)ヘキサン酸化合物をメタンスルホン酸とともに得た(13.1mg、0.033mmol、収率10.02%)。LCMS(方法7,0.900分;M+H-MsO-=305.2;計算値305.2)。1H-NMR(400MHz,DMSO)δ8.35(s,1H),7.58(s,1H),4.10(s,2H),2.86-2.72(m,4H),2.29(s,3H),1.88-1.71(m,6H),1.37-1.24(m,1H),1.18-1.09(m,1H),0.86(s,9H)。
【0235】
以下の実施例を、対応するアミンから出発して、実施例7と類似の方法で調製することができる。
【表9】
【0236】
【0237】
(S)-5,5-ジメチル-2-(((2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-イル)メチル)アミノ)ヘキサン酸、メシル酸の合成
DMF(3.5mL)中の6-ブロモ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン(129mg、1当量、570μmol)、トリエチルアミン(173mg、239μL、3当量、1.71mmol)、トリエチルシラン(199mg、273μL、3当量、1.71mmol)、およびPdCl2(dppf)-CH2Cl2(30mg、0.064当量、37μmol)の溶液を、N2気流下で5分間脱気してから密閉した。その後、これをN2(×3)でパージした後、CO(1.5bar)をチャージし、次いで、反応混合物を90℃に6時間加熱した。反応混合物をEtOAc(30mL)中に取り、次いで飽和NH4Cl水溶液(20mL)、水:食塩水(2×1:1、20mL)、および食塩水(20mL)で洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、シリカ(約1g)上で濃縮した。粗生成物をシリカゲルを用いたクロマトグラフィー(12gカートリッジ、0~5%(MeOH中の1% Et3N)/DCM)で精製し、2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルバルデヒド(54mg、0.30mmol、52%、純度96%)を褐色ゴムとして得た。
【0238】
MeOH(5.0mL)中の(S)-2-アミノ-5,5-ジメチルヘキサン酸(49mg、1当量、0.31mmol)および2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-カルバルデヒド(54mg、1当量、0.31mmol)およびトリエチルアミン(31mg、43μL、1当量、0.31mmol)の懸濁液を40℃で2時間撹拌し、溶液を得た。混合物を0℃に冷却してから水素化ホウ素ナトリウム(12mg、1当量、0.31mmol)を加え、室温で1時間撹拌を続けた。AcOH(0.1mL)を加え、反応混合物をセライト(約1g)上で濃縮した。粗生成物を、RP Flash C18(12gカートリッジ、10~50%(MeCN中の0.1%ギ酸)/(水中の0.1%ギ酸))を用いたクロマトグラフィーにより精製した。単離した画分を2M
NaOH(0.5mL)中に取り、粗生成物をRP Flash C18(12gカートリッジ、15~50% MeCN/10mM 重炭酸アンモニウム)を用いたクロマトグラフィーによって再精製し、遊離塩基を得た。遊離塩基をMeOH(1mL)で処理し、MeCN中の0.1M MsOH(1当量)を加えてから濃縮乾固して、(S)-5,5-ジメチル-2-(((2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-イル)メチル)アミノ)ヘキサン酸、メシル酸(19mg、39μmol、13%、純度85%)を無色固体として得た。
UPLC(方法#basic3min,0.72分;M+H=319.3.1H NM
R(500MHz,DMSO)δ7.03-6.98(m,2H),6.92(d,J=7.6Hz,1H),3.61-3.55(m,1H),3.44-3.36(m,3H),3.19-3.13(m,1H),2.77(t,J=6.0Hz,2H),2.59-2.52(m,2H),2.31(s,3H),2.29(s,3H),1.46-1.11(m,4H),0.81(s,9H),3×交換可能なHが観察されず。
【0239】
【0240】
(R)-2-ヒドロキシ-5,5-ジメチルヘキサン酸の合成
水(220mL)中の(R)-2-アミノ-5,5-ジメチルヘキサン酸(12g、75mmol、1.0当量)に1Mの硫酸水溶液(226mL、226mmol、3.0当量)を加えた。混合物を-5℃に冷却し、水(220mL)中の亜硝酸ナトリウム(31.2g、452mmol、6.0当量)の溶液を、温度を0℃未満に保ちながら滴下した。添加後、混合物を室温に戻し、16時間撹拌した。
【0241】
混合物をEt2O(4×200mL)で抽出し、有機層を合わせて食塩水(300mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濾過し、真空中で濃縮して、(R)-2-ヒドロキシ-5,5-ジメチルヘキサン酸(8.98g、56.1mmol、収率74.4%)を黄色固体として得た。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ4.28(dd,J=7.2,4.2Hz,1H),1.92-1.80(m,1H),1.75-1.62(m,1H),1.41-1.27(m,2H),0.90(s,9H)。
【0242】
(R)-2-ヒドロキシ-5,5-ジメチルヘキサノエートの合成
メタノール(120mL)中の(R)-2-ヒドロキシ-5,5-ジメチルヘキサン酸(8.98g、56.1mmol、1当量)にSOCl2(12mL、164mmol、2.93当量)を0℃で加えた。添加後、混合物を室温に戻し、16時間撹拌した。混合物を飽和NaHCO3水溶液の添加によりpH9へとアルカリ化し、Et2O(2×400mL)で抽出した。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、(R)-2-ヒドロキシ-5,5-ジメチルヘキサン酸メチル(10.01g、55.0mmol、収率98%)を黄色油として得た。4.2%(w/w)のMeOHを含む。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ4.18(dd,J=7.2,4.2Hz,1H),3.80(s,3H),1.84-1.72(m,1H),1.67-1.52(m,1H),1.37-1.21(m,2H),0.89(s,9H).
【0243】
(R)-5,5-ジメチル-2-(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)ヘキサン酸メチルの合成
トリフルオロメタンスルホン酸無水物(4.65mL、27.5mmol、1.10当量)を、0℃で、ジクロロメタン(100mL)中の(R)-2-ヒドロキシ-5,5-ジメチルヘキサン酸メチル(4.36g、25.02mmol、1.0当量)およびトリエチルアミン(4.19mL、30.0mmol、1.2当量)の溶液に滴下した。添加後、混合物を室温に戻し、16時間撹拌した。水(100mL)を加え、混合物をEtOAc(2×250mL)で抽出した。有機層を合わせて食塩水(250mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、(R)-5,5-ジメチル-2-(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)ヘキサン酸メチル(7.14g、23
.31mmol、補正収率49%)を暗褐色油として得た。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ5.12(dd,J=6.9,5.0Hz,1H),3.85(s,3H),2.05-1.90(m,2H),1.36-1.24(m,2H),0.90(s,9H).
【0244】
(S)-5,5-ジメチル-2-(((R)-1-(5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)エチル)アミノ)ヘキサン酸メタンスルホン酸の合成
ジクロロメタン(1mL)中の(R)-5,5-ジメチル-2-(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)ヘキサン酸メチル(70mg、0.229mmol、1.0当量)を、ジクロロメタン(1mL)中の(R)-1-(5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)エタン-1-アミン(40.1mg、0.229mmol、1.0当量)の溶液に滴下した。ジクロロメタンを除去し、残渣をアセトニトリル:水(2mL、1:1)中に取った。水酸化リチウム(27.4mg、1.143mmol、5.0当量)を加え、混合物を16時間撹拌した。混合物に対して酸性分取HPLC(方法2)を行い、(S)-5,5-ジメチル-2-(((R)-1-(5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)エチル)アミノ)ヘキサン酸(12.4mg、0.039mmol、収率17%)を得た。生成物をアセトニトリル(1.1mL)に溶解し、メタンスルホン酸(0.1M、アセトニトリル中)(390μL、0.039mmol、0.171当量)を加えた。混合物を凍結乾燥し、(S)-5,5-ジメチル-2-(((R)-1-(5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)エチル)アミノ)ヘキサン酸-メタンスルホン酸(20.5mg、0.050mmol、収率21.7%)を得た。
LCMS(方法1,1.239分;M+H-MsO-=318.5;計算値318.4)。1H-NMR(400MHz,DMSO)δ7.18(d,J=7.8Hz,2H),7.10(d,J=7.7Hz,1H),4.26(d,J=6.9Hz,1H),3.54-3.40(m,2H),2.71(d,J=5.7Hz,4H),2.30(s,3H),1.74(h,J=3.8Hz,4H),1.52(d,J=6.7Hz,3H),1.27(td,J=13.0,4.7Hz,1H),1.03(td,J=12.8,3.9Hz,1H),0.85(s,9H)。
【0245】
以下の実施例を、対応するエナンチオマー第二級アミンから出発して、実施例11と類似の方法で調製することができる。
【表10】
【0246】
【0247】
(S)-2-((3,4-ジメチルベンジル)アミノ)-5,5-ジメチルヘキサン酸、メシル酸の合成
MeOH(3mL)中の(S)-2-アミノ-5,5-ジメチルヘキサン酸(61mg、1.0当量、0.38mmol)、tert-ブチル 6-ホルミル-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-カルボキシレート(100mg、1当量、383μmol)、およびEt3N(40mg、55μL、1.0当量、0.39mmol)の懸濁液を40℃で2時間加熱した後、氷浴で冷却し、NaBH4(15mg、1.0当量、0.40mmol)で処理した。混合物を室温に戻した後、濃縮乾固し、水(5mL)中に懸濁した。酢酸(42mg、40μL、1.8当量、0.70mmol)を加えて濾過した。この材料を水(10mL)およびアセトン(2mL)に懸濁した後、60℃で30分間加熱した。室温に冷却後、Boc保護遊離塩基(112mg、0.28mmol、収率74
%)を濾過により回収した。
【0248】
遊離塩基の試料(61mg、0.15mmol)をDCM(3mL)中に取り、TFA(0.5mL)を加えた。混合物を室温で1時間撹拌した後、MeOH(4mL)で希釈し、SCX(約1g)にロードした。これをMeOHで洗浄し、必要な材料をMeOH中の7M NH3(カラム容積の5倍量)で溶出して濃縮した。次いで、これをMeOH(2mL)に溶解し、MeCN(1当量)中の0.1M MsOHを加えた後、材料を濃縮乾固して、(S)-5,5-ジメチル-2-(((1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-イル)メチル)アミノ)ヘキサン酸、メシル酸(67mg、0.16mmol、43%、純度98%)を無色固体として得た。
LCMS(方法#acid3minb,0.13分;M+H=305.2.1H NMR(500MHz,DMSO)δ9.01(s,2H),7.32-7.18(m,2H),4.27(s,2H),3.95-3.89(m,1H),3.87-3.81(m,1H),3.73-3.65(m,1H),3.42-3.36(m,2H),3.02-2.96(m,2H),2.80-2.72(m,1H),2.30(s,3H),1.70-1.59(m,2H),1.29-1.12(m,2H),0.85(s,9H),1×交換可能なHが観察されず。
【0249】
以下の実施例を、対応するアルデヒドから出発して、実施例15と類似の方法で調製した。
【表11】
【0250】
【0251】
(S)-5,5-ジメチル-2-(((4-メチル-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-7-イル)メチル)アミノ)ヘキサン酸、メシレートの合成
MeOH(5.00mL)中の(S)-2-アミノ-5,5-ジメチルヘキサン酸(112mg、1当量、705μmol)、4-メチル-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-7-カルバルデヒド(125mg、1当量、705μmol)、およびEt3N(71.9mg、99.0μL、1.01当量、710μmol)の懸濁液を40℃で2.5時間加熱した後、氷浴で冷却し、NaBH4(27.0mg、1.01当量、714μmol)で処理した。その後、混合物を室温に戻し、2.5時間撹拌した後、反応混合物を濾過した。真空中で濾液から溶媒を除去した。固体を水(3mL)でトリチュレートした後で濾過し、MeCN(5mL)で洗浄して白色固体を得た。この材料を、RP Flash C18(4gカートリッジ、5~40%(MeCN中の0.1%ギ酸)/(水中の0.1%ギ酸))を用いたクロマトグラフィーで精製し、(S)-5,5-ジメチル-2-(((4-メチル-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-7-イル)メチル)アミノ)ヘキサン酸(29.0mg、86μmol、12%、純度95%)をクリーム色固体として得た。
LCMS(方法#acid3minb,1.34分;M+H=320.2.1H NMR(500MHz,MeOD)δ0.92(s,9H),1.28-1.43(m,2H),1.73-1.88(m,2H),2.92(s,3H),3.28-3.31(m,3H),3.44(t,J=6.0Hz,1H),3.95(d,J=13.0Hz,1H),4.08(d,J=12.9Hz,1H),4.26-4.31(m,2H),6.74(d,J=8.2Hz,1H),6.85(d,J=2.1Hz,1H),6.91(dd,J=2.1,8.2Hz,1H)。
【0252】
(S)-5,5-ジメチル-2-(((4-メチル-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-7-イル)メチル)アミノ)ヘキサン酸(29.0mg、95重量%、1当量、86.0μmol)をMeOH(2.50mL)中で撹拌し、その後、メタンスルホン酸(0.1M、MeCN中)(8.26mg、860μL、0.10モル、1当量、86.0μmol)を加えた。得られた溶液を25℃で30分間撹拌した後、真空中で濃縮して生成物を得て、これを25℃で15時間、真空デシケーター内にて乾燥させた。(S)-5,5-ジメチル-2-(((4-メチル-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-7-イル)メチル)アミノ)ヘキサン酸、メシレート(27.0mg、64μmol、75%、純度99%)を緑色/黄色固体として得た。
LCMS(方法#acid3minb,0.97分;M+H=320.5.1H NMR(500MHz,DMSO)δ14.00(bs,1H),9.07(bs,1H),8.99(bs,1H),6.85(dd,J=8.2,2.1Hz,1H),6.81(d,J=2.0Hz,1H),6.71(d,J=8.3Hz,1H),4.25-4.20(m,2H),4.00-3.97(m,2H),3.81(bs,1H),3.28-3.22(m,2H),2.84(s,3H),2.29(s,3H),1.89-1.79(m,1H),1.78-1.69(m,1H),1.30(td,J=13.1,4.7Hz,1H),1.09(td,J=13.0,4.3Hz,1H),0.85(s,9H)。
【0253】
以下の実施例を、対応するアルデヒドから出発して、実施例19と類似の方法で調製することができる。
【0254】
【0255】
【0256】
【0257】
以下の実施例を、対応するケトン、アルデヒド、またはエステルから出発して、他の実
施例と類似の方法で調製した。
【表15】
【0258】
【0259】
【0260】
以下の実施例を、他の実施例と類似の方法で合成した。
【表18】
【0261】
【0262】
【0263】
【0264】
【0265】
【0266】
【0267】
【0268】
【0269】
生物学的データ
ニューロテンシンシンチレーション近接アッセイ
本発明の例示化合物をニューロテンシン(NTS)シンチレーション近接アッセイ(SPA)において試験した。IC50データを下表に示す。13アミノ酸の神経ペプチドであるNTSは、ソルチリンのリガンドである。IC50は、NTSのソルチリンへの結合を50%阻害するのに必要な化合物の量の指標である。当業者であれば、IC50値が低いほど、所望の効果を得るために必要な化合物の量が少なく、その結果、望ましくないオフターゲット効果の可能性が減少するということを認識するであろう。
【0270】
SPAフォーマットにおいてh-ソルチリンへの[3H]-ニューロテンシン結合の置換を測定することにより、化合物親和性を決定した。100mM NaCl、2.0mM
CaCl2、0.1% BSA、および0.1% Tween-20を含む50mMのHEPES pH7.4のアッセイバッファー中で総体積を40μLとした。化合物を、150nMの6his-ソルチリンと共に室温で30分間プレインキュベートし、その後、5nM [3H]-ニューロテンシンおよびNiキレートイメージングビーズ(Perkin Elmer)を添加し、6時間後、プレートを360秒の曝露時間でViewLux上で読み取った。化合物の用量反応評価を、8種の薬物濃度で行った(3桁をカバー)。IC50値を、CDD Vaultソフトウェアを用いたシグモイド濃度反応(可変傾き)を用いて非線形回帰により算出した。報告されるすべての値は、少なくとも2回の決定の平均である。
【0271】
下表のデータは、本発明の化合物がソルチリン阻害剤であることを示している。
【表27】
【0272】
【0273】
Creoptix(GCI)法 - 配列番号4(マウスソルチリン)の使用
GCIアッセイは、タンパク質への小さな実体の結合を検出するために特に増強された
、周知の表面プラズモン共鳴方法論に基づく。表面に結合させたタンパク質を潜在的なリガンドを含んだ溶液中に浸した際に生ずる結合動態から、KonおよびKoff速度、ならびにKdを生成する。この方法論は、追加のトレーサーを使用する必要がなく、公知のリガンドとの競合の要素の有無を問わず使用できる。
【0274】
【0275】
記載されたすべての緩衝液は、使用前に0.2μmフィルター(製品番号:10300461、Nalgene)を用いて濾過し、15分間脱気した。
【0276】
25℃のフローセル温度を実験の全体を通じて使用した。
【0277】
チップのコンディショニングおよび固定化
4PCHチップのコンディショニングを、すべてのフローセルにわたって行った。コンディショニングでは、0.2×濃度のランニングバッファー(ランニングバッファー組成:1×HBS-N、pH7.4、3.4mM EDTA、1% DMSO)を用いて、あらかじめ設定されたコンディショニングウィザード(WAVEコントロールソフトウェア)を使用し、0.1Mホウ酸塩、1M NaCl(pH 9)の注入後、0.2×ランニングバッファーの3回のスタートアップ注入を行った。
【0278】
緩衝液交換を行い、1×ランニングバッファー(1×HBS-N、pH 7.4、3.4mM EDTA、1% DMSO)を固定化手順の間に使用した:
EDC/NHS(1:1の比で混合)の最初の注入を全4フローセルにわたり行って、
リガンドのアミンカップリングのために表面を活性化させた。
【0279】
組換えソルチリンのアリコートを手で素早く解凍し、13,300rpmで10分間遠心分離した。その後、10μg/mLのタンパク質溶液をpH5.0のアセテート中に調製し、ヒト、ヒト(フローセル2&3)、およびマウスソルチリンのための、フローセル2、3および4のそれぞれで、20分間、1回注入し、続いて解離時間を60秒とした。
【0280】
最後に、すべてのフローセルで、50mM Trisの7分間の不動態化注入を行った。
【0281】
すべてのコンディショニングおよび固定化サイクルにおいて、10μL/分の流速を使用した。
【0282】
迅速動態:中間的バインダー(intermediate binders)
化合物のスクリーニングを、組み込みの「中間的バインダー(intermediate binders)」設定を用いて1μMで行った:100μL/分、ベースライン45秒間、会合25秒間、解離300秒間、5試料ごとのブランク、およびDMSO補正(実験の開始および終了時、ならびに20サイクルごとに1.5% DMSO)。10Hzの取得レートを実験の全体を通じて使用した。
【0283】
化合物を1μMの最終アッセイ濃度でスクリーニングし、最終DMSO濃度は1%であった。これを達成するために、化合物をDMSO中で10mMストックから100μM(100×最終アッセイ濃度)に希釈し、次に、DMSOを含有しないランニングバッファー中に1:100で希釈して、化合物の最終アッセイ濃度を1μMに、および最終DMSO濃度を1%[DMSO]にした。
【0284】
Bioshake装置を使用し、1000rpmで60秒間プレート振盪を行うことにより、化合物およびDMSOを混合した。
【0285】
実験全体を通して100μL/分の流速を使用した。
【0286】
データ評価:
標準的な1:1動態BioModelを用いてフィッティングされたデータを使用し、GCI WAVE_controlソフトウェア中のRAPID動態解析ツールを利用してデータを評価した。
【0287】
本発明の化合物に対する結果を下表に示す。
【表30】
【0288】
【0289】
本発明の化合物は、1.00E-4よりも低いKdを有することが有利である。生成されたKdデータは、本発明の実施例がソルチリンタンパク質に直接結合し、ヒトおよびマウス両者のソルチリンタンパク質に、概して類似した様式で結合し、したがって薬物動態
および疾患の非ヒトモデルの開発に有利であることを示すものである。
【0290】
血液脳関門透過性
本発明の化合物が血液脳関門を通過できるかどうかを決定するために、実施例3、および本発明によらないソルチリンモジュレーターであって以下の構造:
【化106】
を有する比較例1に対してK
puuを計算した。
【0291】
迅速平衡透析による、マウス、イヌ、およびラットにおける研究化合物の血漿タンパク質結合および脳ホモジネート結合
マウスに比較例1の化合物を、ラットおよびイヌに実施例3の化合物を投与し、特定の時点で血漿および脳を取り出して化合物濃度を分析した。これとは別に、血漿タンパク質または脳ホモジネートに結合した化合物の割合を測定し、遊離割合を評価できるようにした。
【0292】
遊離薬物仮説が示すところによれば、非結合化合物だけが生体膜を透過し、相互作用して薬理学的効果を引き起こすことができる。したがって、化合物は高い遊離脳内濃度を有することが望ましい。しかしながら、遊離非結合薬物部分のみがクリアランス機構の対象となる。
【0293】
実際に、in vitroでの迅速平衡透析を使用して血漿および脳組織における非結合割合を評価した。これとは別にin vivoで薬物動態試験を行い、T=0時間に対象化合物を投与し、その後の時点(例えば0.5時間、1時間、および4時間)で、血漿、およびそれとは別に脳試料の対象化合物の総濃度を分析した。その後、これら総濃度を非結合割合を用いて調整することで、血漿および脳における非結合濃度を得ることができた。その後、非結合分配係数(Kpuu)を対象のコンパートメントの、すなわちここでは脳/CNSおよび血漿間の、遊離化合物濃度の比として決定した。
【0294】
迅速平衡透析
試験化合物を、関連する種由来の血漿および脳ホモジネート中で、インサートを備えたRED装置(8K MWCO、Thermo scientific)を用いて37℃で4時間、5μMにて、3重でインキュベートした。350μLの150mMリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)をレシーバー側溶液として使用した。試料を4時間の平衡化時間後に両側から採取し、ブランクPBSを使用してドナー側試料を希釈することにより、およびブランク血漿/リン酸緩衝生理食塩水を使用してレシーバー側試料を希釈することにより、それらのマトリックスを同様のものにした。インキュベーション後に、ドナー側マトリックスのアリコートを同量のブランクレシーバー側マトリックスで希釈し、レシーバー側マトリックスのアリコートを同量のブランクドナー側マトリックスで希釈した。すべての試料について、内部標準として100nMのレパグリニドを含有する2倍量のアセトニトリルを添加することで、タンパク質を沈殿させた。13,200rpmでの10分間の遠心分離後に、試料上清をLC-MS/MSで分析し、試験化合物の非結合割合(Fub)を得た。各マトリックスで得られたピーク面積比から非結合割合を算出した
:
Fub=CPBS/Cplasma;
式中、CPBSとCplasmaはそれぞれPBS(レシーバー)と血漿(ドナー)中の分析物濃度である。
【0295】
回収試料を各条件において、しかし透析せずに調製し、それらを用いて以下の式により透析実験からの回収率を評価した:
回収率%=100×(VPBS×CPBS+Vplasma×Cplasma)/Vplasma×Crecovery
式中、VPBSは透析装置のレシーバー側(PBS)における体積であり、Vplasmaはドナー側(血漿)における体積である。Crecoveryは回収試料から測定された分析物濃度である。
【0296】
対照化合物として、プロプラノロール(1μM)およびフルオキセチン(5μM)を実験に含めた。
【0297】
脳内の非結合割合(F
ub,brain)を、脳ホモジネートの調製に用いた希釈倍率を考慮して、脳ホモジネートの測定値(F
ub,meas)から算出した:
【数3】
式中、D=希釈倍率(ここでは、5)。
【0298】
分析方法
装置:Waters Acquity UPLC + Waters Xevo TQ-XS トリプル四重極MS
カラム:プレカラムフィルターを備えたWaters Acquity HSS T3(2.1×50mm、1.8μm)カラム
勾配溶出;A=0.1%ギ酸、B=アセトニトリル
【0299】
【0300】
温度:40℃
注入体積:1.5μL
イオン源:ESI+
キャピラリー電圧:2400V
供給源温度:150℃
脱溶媒温度:650℃
コーンガスフロー:240L/時間
脱溶媒ガスフロー:1200L/時間
ネブライザーガスフロー:7Bar
コリジョンガスフロー:0.15mL/分
ソフトウェア:MassLynx 4.2
【0301】
【0302】
平衡透析の結果
マウス血漿、マウス脳、ラット脳、およびイヌ血漿について、血漿および脳ホモジネート中の実施例3および比較例1化合物の非結合割合を下表に示す。
【表34】
【0303】
IV投与後のマウスにおける研究化合物の血液脳関門透過性
化合物を、T=0時間において、好適なビヒクル中で動物に投与する。投与0.5時間後、血漿、およびそれとは別に脳を取り出して調製を行い、総化合物濃度を分析する。
【0304】
一般的な試料処理手順(血漿):
96ウェルプレートを用いたタンパク質沈殿(PPT)
1) 5μLの未知試料のアリコート、キャリブレーション標準、品質対照および希釈品質対照(ある場合)、シングルブランク、ならびにダブルブランク試料を、それぞれ96ウェルプレートに加えた;
2) 各試料(ダブルブランクを除く)を200μLのIS1(MeOH中の6-in-1内部標準(ラベタロール&トルブタミド&ベラパミル&デキサメタゾン&グリブリド&セレコキシブ、各100ng/mL))でそれぞれクエンチし(ダブルブランク試料は200μLのMeOHでクエンチした)、その後、混合物を800rpmで10分間ボルテックス混合し、3220×g、4℃で15分間遠心分離した;
3) 60μLの上清のアリコートを別の清浄な96ウェルプレートに移し、3220×g、4℃で5分間遠心分離した後、上清をLC-MS/MS分析のために直接注入した。
【0305】
希釈手順の説明:
1) 希釈倍率を10とした場合:2μLの未知試料のアリコートを18μLのブラン
クマトリックスに添加した;
【0306】
一般的な試料処理手順(脳ホモジネート):
96ウェルプレートを用いたタンパク質沈殿(PPT)
1) 20μLの未知試料のアリコート、キャリブレーション標準、品質対照および希釈品質対照(ある場合)、シングルブランク、ならびにダブルブランク試料を、それぞれ96ウェルプレートに加えた;
2) 各試料(ダブルブランクを除く)を800μLのIS1でそれぞれクエンチし(ダブルブランク試料は800μLのMeOHでクエンチした)、その後、混合物を800rpmで10分間ボルテックス混合し、3220×g、4℃で15分間遠心分離した;3) 60μLの上清のアリコートを別の清浄な96ウェルプレートに移し、3220×g、4℃で5分間遠心分離した後、上清をLC-MS/MS分析のために直接注入した。
【0307】
分析方法
装置:LC-MS/MS-CB_Triple Quad 6500 plus カラム:Waters ACQUITY UPLC HSS T3 1.8μm 2.1×50mm
勾配溶出;A=水中の0.1%ギ酸、B=アセトニトリル中の0.1%ギ酸
【表35】
温度:45℃
注入量:脳では1.5μL、血漿では4μL
イオン源:ESI+、SRM検出
【0308】
【0309】
結果
実施例3および比較例1を、10% DMSO、5% Tween80、40% PG、45%生理食塩水 pH=約7(pHストリップ)、清澄溶液中に1.50mg/mLで配合し、3mg/kgでオスCD1(ICR)飼育マウスに静脈内投与した。
【0310】
結果を下表に示す。実施例3では、投与0.5時間後に血漿中濃度は292ng/mL、脳内濃度は61.2ng/gであった。すなわち、観察された脳内濃度は血漿中濃度の21%であった。一方、比較例1では、0.5時間後の血漿中濃度は3087ng/mL、脳内濃度は5ng/gであった。これは、血漿中濃度に対する脳内濃度の比率が1%未満であることを意味する。
【0311】
CNS疾患の治療には、脳/血漿比の値が1%超、好ましくは10%および20%を超えることが有利である。したがって、実施例3はCNS疾患の治療に特に有用である。
【0312】
【0313】
非結合分配係数(K
puu)を、血漿中および脳内の遊離化合物濃度の比として決定した:
【数4】
式中、C
u,brain=脳内非結合濃度(C×F
ub,brain)であり;ここで、
C=定常状態における濃度;であり、
C
ub,plasma=血漿中の非結合濃度(C×F
ub);である。
【0314】
したがって、比較例1のKpuuは0.1未満であると計算される。このことは、比較例1が血液脳関門を効果的に透過しないことを示している。
【0315】
イヌにおけるKpuuの決定
実施例3を、固形物バッチ番号C2210502として腸溶性カプセル(0#)に充填した。試験化合物投与の約30分前に、絶食オスビーグル犬にペンタガストリン(0.25mg/mL、0.024mL/kg)を6μg/kgで筋肉内(IM)注射により投与した。実施例3を20mg/kg含有するカプセルを経口投与し、投与前と、投与の0.5、1、2、4、8、12、および24時間後に血漿およびCSF試料を採取し、上記の研究と同様の様式で実施例3の濃度を分析した。
【0316】
【0317】
【0318】
非結合分配係数(Kpuu)を、血漿中およびCSF中の遊離化合物濃度で補正した曲線下面積間の比として決定した。
【0319】
Kpuu=AUC0-infcsf/(AUC0-infplasma×(%Fuplasma/100))
【0320】
Kpuu=6414/(23816×(55,5/100))=6414/13218=0.49
【0321】
したがって、実施例3のKpuuは0.1よりも大きく、これは血漿中の非結合化合物の一部が血液脳関門を透過することを示している。よって、この化合物はCNS疾患の治療に特に有用である。
【0322】
比較例2のラットK
puu
比較例2は、本発明によらないソルチリンモジュレーターであって以下の構造を有する:
【化107】
【0323】
ラットにおける比較例2のKpuuを、以下のように決定した。
【0324】
比較例2の化合物を、経口投与または静脈内投与として動物に単回投与した。動物から、所定の時点で伏在静脈(sv)または大静脈(vc)を介して血液試料を採取した。最終試料はイソフルラン麻酔下で採取した。各動物で、1本または2本の血液試料を採取した。
【0325】
試料採取後30分以内に、血漿分離のために血液試料を遠心分離した(10分間、2700G、RT)。あらかじめラベルを付したプラスチックチューブに試料を移し、凍結させ、分析まで-80℃で保管した。
【0326】
比較例2の化合物を投与しなかった動物から、イソフルラン麻酔下の心臓穿刺により、ブランク血液をK2EDTAシリンジに採取した。血漿分離のために血液を遠心分離した(2700G、10分間、室温)。ブランク血漿を凍結し、分析まで-80℃で保存した
。
【0327】
選択された動物から、所定の時点で脳を採取した。動物を最終麻酔下で開腹し、大静脈から最終血液試料を採取した。灌流のために心臓を露出させ、右心房につながる主要な静脈を切断した。その後、鈍針を心臓の左心室に挿入し、約30~50mLの冷却生理食塩水を注入することで残留血液をすべて除去した。その後、組織試料を直ちに採取し、液体窒素内で凍結させ、分析まで-80℃で保存した。比較例2の化合物を投与しなかった動物から、同様にブランク脳材料を採取した。
【0328】
ラットの脳試料を、組織1部に対して4倍量の150mMリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)(例えば、100mgの脳組織+400μLのPBS)を用いて、Omni Bead Ruptor 24でホモジナイズした。
【0329】
試料(ラット血漿または脳ホモジネート)1部を、内部標準カクテルを含むアセトニトリル中の1%ギ酸3部と混合(例えば、30μLの血漿を90μLの溶液と混合)することによってタンパク質沈殿を行い、試料を調製した。試料を卓上シェーカーで3分間混合し、その後、2272×gで20分間遠心分離した。上清を分析プレートに移し、超純水で1:1に希釈し、分析に供した。
【0330】
標準試料の調製では、0.1ng/mL~20,000ng/mLの分析物濃度になるようにブランクラット血漿および脳ホモジネートをスパイクした(5μLの標準+45μLのブランク血漿)。
【0331】
品質対照(QC)試料の調製は3重で行い、0.3、3、30、300、および3000ng/mLの分析物濃度になるようにブランクラット血漿および脳ホモジネートをスパイクした(5μLのQC+45μLのブランクマトリックス)。
【0332】
標準および品質対照を、試料と同じ方法で分析用に調製した。
【0333】
脳および血漿試料を、質量分析(MS)を併用した超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)で分析し、比較例2の化合物の濃度を測定した。その後、Kpuuを計算した。
【0334】
化合物の静脈内投与および経口投与、両者の結果を以下の表に示す。表中のデータは、2~3個体の動物から採取した試料の平均の結果である。
【0335】
このデータは、比較例2のKpuuが0.1未満であり、したがってこの化合物は血液脳関門を効果的に透過しないことを示す。
【0336】
【0337】
【0338】
微小透析研究
実施例3の化合物をメシル酸塩として用いて、以下の実験を行った。
【0339】
材料と方法
In vitro実験
実施例3の化合物の回収率を測定するために、4mmの露出したエチレンビニルアルコール(EC20)膜を備えたMetaQuant微小透析プローブ(CRL Groningen、オランダ)を用いてin vitro実験を行った。この目的のため、人工CSF(aCSF:超純水中に147mM NaCl、3.0mM KCl、1.2mM CaCl2、1.2mM MgCl2を含む)中に10nMの実施例3の化合物を含むビーカーに、プローブを入れた。ビーカーの内容物を連続的に攪拌し、37℃の一定温度に保った。プローブを、0.12μL/分の流速のaCSFのスローフローと、0.8μL/分の流速の超純水のキャリアフローとで灌流した。2時間の予備安定化後、微小透析の試料を30分間隔で続けて5回採取した。ビーカー内容物の試料を、微小透析実験の開始時および終了時に採取した。すべての試料を0.5mL LoBind Eppendorfチューブ(Eppendorf社、ドイツ;0030108035)に採取し、分析まで-80℃で保存した。
【0340】
In vivo実験
13個体の成体オスSprague Dawleyラットを実験に用いた。ガイド、および4mmの露出したポリエーテルスルホン(PES200)膜を備えたプッシュプル微小透析プローブ(CRL Groningen、オランダ)を、ラットの左海馬に配置した。試験化合物投与の動物は、ガイド、および4mmの露出したエチレンビニルアルコー
ル(EC20)膜を備えたMetaQuant微小透析プローブ(CRL Groningen、オランダ)を、右海馬に配置した。プローブ先端の座標は以下の通り:AP=-5.3mm(ブレグマに対して)、側方±4.8mm(正中線に対して)、腹方向-8.0mm(硬膜に対して)。切歯バー(incisor bar)は-3.3mmとした。すべての座標はPaxinos and Watson (2009)の「The rat brain in stereotaxic coordinates」に基づくものである。プローブは、ステンレス製のネジと歯科用セメントで頭蓋骨に取り付けた。
【0341】
試験化合物投与の動物は、頸静脈に留置カニューレ(35~42mm)を配置し、頭蓋骨上部の切開を通じて体外に出して血液試料を採取できるようにした。各カニューレの末端は歯科用セメントで定位置に固定し、ステンレス製のネジで頭蓋骨に取り付けた。
【0342】
実施例3の化合物を、脱イオン水中の20%スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン(SBE-β-CD)中に20mg/mLの濃度で配合し、5mL/kgの容量で100mg/kgを経口胃管栄養で与えた。
【0343】
実験は、プローブ移植の1日後に開始した。プッシュプルおよびMetaQuant微小透析プローブを、フレキシブルなPEEKチューブ(Western Analytical Products社、米国;PK005-020)を用いて微小灌流ポンプ(Harvard Apparatus、米国)に接続した。プローブの灌流を、人工CSF(aCSF:147mM NaCl、3.0mM KCl、1.2mM CaCl2、および1.2mM MgCl2を含む)を0.5μL/分の流速で用いて(プッシュプルプローブ)、または、aCSFのスローフローを0.12μL/分の流速で、および超純水のキャリアフローを0.8μL/分の流速で用いて(MetaQuantプローブ)行った。2時間の予備安定化後、微小透析試料を60分間隔で採取した。3つの基底(basal)試料を採取した。t=-120分において飼料を取り除き、その後、t=0分において化合物を投与し、t=180分および360分に再び化合物を投与した。飼料は3回目の投与後に戻した。微小透析物試料を、最初の化合物投与から720分後に採取した。試料は0.5mL LoBind Eppendorfチューブに採取した。すべての試料を分析まで-80℃で保存した。
【0344】
実験中、血液試料を頸静脈カテーテルを通して採取した。血液試料をK2-EDTA採取バイアル中に採取し、遠心分離後、得られた血漿試料を、低結合ピペットチップを用いて2個のアリコートに分割し、0.5mL LoBind Eppendorfチューブに入れた。すべての試料を分析まで-80℃で保存した。
【0345】
実験終了後に動物を屠殺し、プローブ位置の検証のために最終脳組織を採取した。
【0346】
実施例3の化合物の濃度を、タンデム質量分析(MS/MS)検出を用いたHPLCによって測定した。微小透析試料を、アセトニトリル、ギ酸、超純水、および内部標準(ラベタロール)と混合した。血漿試料を、アセトニトリル、ギ酸、および内部標準と混合し、その後遠心分離した。得られた上清を、超純水中のアセトニトリルおよびギ酸と混合し、その後、HPLC-MS分析に使用した。各分析試料のアリコートを、自動試料注入装置(島津製作所、日本)でHPLCカラムに注入した。クロマトグラフィー分離を、35℃の温度に設定したKinetex XB-C18カラム(50×2.1mm、2.6μm)を用いて行った。移動相は、A:超純水中の0.1%ギ酸、および、B:アセトニトリル中の0.1%ギ酸、からなるものであった。化合物の溶出は、A相とB相の直線勾配を用い、合計流速0.4mL/分で行った。
【0347】
MS分析は、API 4000 MS/MS検出器およびTurbo Ion Spr
ayインターフェース(いずれもApplied Biosystems社、オランダ)からなるAPI 4000 MS/MSシステムを用いて行った。分析物に最適化された設定を用い、ポジティブイオン化モードで取得を行った。装置は多重反応モニタリング(MRM)モードで操作した。
【0348】
加重(1/x)回帰を用いて適切なインラン(in-run)検量線をフィッティングし、これらの検量線を用いて試料濃度を決定した。一連の試料を終えるごとに、精度を品質対照試料によって検証した。データは、Analyst(商標)データシステム(Applied Biosystems)を用いて較正および定量化した。分析物のMRMトランジションを下表に示す。
【0349】
【0350】
加重(1/x)回帰を用いて適切なインラン検量線をフィッティングし、これらの検量線を用いて試料濃度を決定した。一連の試料を終えるごとに、精度を品質対照試料によって検証した。データは、Analyst(登録商標)データシステム(Applied Biosystems)を用いて較正および定量化した。
【0351】
研究試料中のラットPGRNの定量には、市販のELISAキット(AG-45A-0043YEK-KI01、AdipoGen、スイス)を用いた。研究試料を、以前の研究キー(study key)2819に基づいた希釈でプレートに添加した。血漿試料は2重で分析を行った。検出限界から外れた試料は、より適切な希釈を行い、別のプレート上で再分析した。さらに、2重分析の%CVが30%を超えた試料も別のプレート上で再分析した。450nmの吸光度を、Multiskan FC(ThermoFischer Scientific、USA)を用いて測定した。
【0352】
データをMicrosoft Excelで処理し、Prism 9 for Windows(登録商標)、バージョン9.3.1(GraphPad Software社、1992~2021)にプロットした。
【0353】
薬力学的微小透析データの評価では、3個の投与前試料の平均を100%とした。相対基底試料濃度が50%未満または150%超であった場合、それらは外れ値であるとみなし、ベースライン算出には使用しなかった。投与後試料はすべて、同一対象内の基底値に対するパーセンテージで表した。統計解析を行う前に、外れ値解析を行った:同一投与群内の一時点における相対平均値から2標準偏差を超えて逸脱した値は、1回のイテレーション(iteration)によって除外した。
【0354】
SigmaPlot 12.5(Systat Software社、2011)を用いて相対データの統計解析を行った。処理効果および時間効果を、反復測定値に対する二元配置分散分析とその後のボンフェローニ事後検定を用いて処理群間で比較した。処理および時間を主因子とした。主効果は、2つの主因子間に統計的に有意な相互作用がなかった場合のみ評価した。2つの主因子間に有意な相互作用があった場合、主効果は考慮しなかった。この場合、相互作用効果を以下のように評価した:
・各投与量について、経時変化をt=0分の時点の濃度と比較して評価した;
・それぞれの個別の時点における、異なる処理後の濃度の違いを比較した。
【0355】
統計的有意性の水準は先験的にp<0.05と定義した。
【0356】
報告された微小透析物濃度を、希釈に対して補正する。プローブ回収率に対する補正を、該当する場合には本文中に記載する。
【0357】
結果
実施例3のin vitro回収率
aCSFを灌流液として使用し、4mmの露出したEC20膜を備えたMetaQuant微小透析プローブでは、実施例3の相対in vitro回収率は平均69.8±3.40%であった。
【0358】
aCSFで灌流し、4mmの露出したPES200膜を備えたプッシュプル微小透析プローブを用いたPGRNのin vitro回収率は、これまでに、研究キー2819Bにおいて26.9±0.86%であった。
【0359】
組織学的検証
脳の目視評価により、すべてのプローブが正しい位置にあることが示された。
【0360】
薬物動態学
図1は、100mg/kgの実施例3を経口投与(t=0分、180分、および360分;矢印で示す)した後の、成体オスSprague Dawleyラットの海馬由来の微小透析試料中における、実施例3の濃度を示す。t=-120分、-60分、および0分では、実施例3の濃度は、微小透析物内の定量下限値(LLOQ)である7.31ng/mL未満であった。データは平均値+SEMで表す(n=7)。データはin vitroで測定したプローブ回収率69.8%を考慮して補正されている。
【0361】
図2は、100mg/kgの実施例3を経口投与(t=0分、180分、および360分において;矢印で示す)した後の、成体オスSprague Dawleyラットの血漿中における実施例3の濃度を示す。t=-120分では、実施例3の濃度は、血漿中のLLOQである50.0ng/mL未満であった。データは平均値+SEMで表す(n=7)。
【0362】
下表は、海馬由来の微小透析物中および血漿中の、PGRNの基底濃度を示す。
【表43】
【0363】
図3は、ビヒクルまたは100mg/kgの実施例3を経口投与(t=0分、180分、および360分において;矢印で示す)した後の、成体オスSprague Dawleyラットの海馬微小透析物におけるPGRNの相対的な薬力学的反応を示す。データは平均値+SEMで表す(n=5~6/群)。
【0364】
薬力学
実施例3で処理した動物の海馬からの相対PGRNデータを、反復測定値に対する二元配置分散分析によって統計的に評価したところ、処理と時間との間に有意な相互作用が見
いだされた(p<0.001)。事後評価では、実施例3で処理した動物のPGRN濃度は、t=0分と比較した場合に、t=540~720分で上昇した。処理に着目すると、t=540~720分の時間内において、実施例3で処理した動物のPGRN濃度は、ビヒクル群におけるよりも有意に高かった。統計解析の詳細を下表に示す。
【0365】
【0366】
図4は、100mg/kgの実施例3を経口投与(t=0分、180分、および360分において;矢印で示す)した後の、成体オスSprague Dawleyラットの血漿中におけるPGRNの濃度を示す。データは平均値+SEMで表す(n=7)。
【0367】
結論
上記データは、本発明の化合物(実施例3)が、経口送達後に血液脳関門を通過できることを示す。この驚くべき発見は、本発明の化合物が中枢神経系の障害の治療に有用である可能性を示している。データはまた、実施例3の化合物がラットの脳内のPGRN濃度を増加させたことを示している。このさらなる驚くべき発見は、本発明の化合物が、脳内のPGRNを増加させることが有用な可能性がある状態を治療する能力を有し得ることを示唆している。例えば、本発明の化合物は、PGRN濃度の減少を特徴とする前頭側頭型認知症の治療に有用な可能性がある。脳内PGRN濃度が減少している患者は、前頭側頭型認知症を発症する可能性が統計学的に非常に高く、したがって、本明細書に示したデータは、本発明の化合物が、前頭側頭型認知症および関連する状態の、予防および治療に有用である可能性を示唆している。
【0368】
発明の実施形態
実施形態1. 式(I):
【化108】
【0369】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、および/もしくはプロドラッグであって、
式中、
R1が
【0370】
【0371】
XがCR3またはNであり、ここで、R3がH、ハロ、およびC1~C3アルキルからなる群から選択され;
各Yが独立してCHR4、NR5、CR6R6、またはOであり、ここで、R4が独立してH、ハロ、オキソ、およびC1~C4アルキルからなる群から選択され;R5が独立してH、ハロ、C1~C4アルキル、C2~C4ヒドロキシアルキル、-(C2~C4アルキル)-O-(C1~C4アルキル)、-C(O)-(C1~C4アルキル)、および-C(O)O-(C1~C4アルキル)からなる群から選択され;ならびにR6が独立してハロおよびC1~C4アルキルからなる群から選択され;
R2がH、C1~C4アルキル、C2~C4ヒドロキシアルキル、およびC1~C3ハロアルキルからなる群から選択され;
前記化合物が以下の化合物:
【0372】
【化110】
の1つではない;
化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、および/もしくはプロドラッグ。
【0373】
実施形態2. R2がH、CH3、CH2F、CHF2、およびCF3からなる群から選択され、好ましくは、R2がH、CH3、CHF2、およびCF3からなる群から選択される、実施形態1に記載の化合物。
【0374】
実施形態3. 各Yが独立してCHR4、NR5、もしくはOであり;および/または、
R3がHもしくはC1~C3アルキル、好ましくはHもしくはメチルであり;および/または、
各R4が独立してHもしくはオキソであり;および/または、
各R5が独立してH、C1~C3アルキル、もしくは-C(O)O-(C1~C4アルキル)、好ましくはH、メチル、もしくは-C(O)O-(tert-ブチル)、より好ましくはHもしくはメチルである;
実施形態1または2に記載の化合物。
【0375】
実施形態4. R
1が以下の基:
【化111】
の1つから選択され、式中、好ましくは、1つまたは2つ以下のYがNR
5またはOであり、残りのYがCHR
4である、実施形態1~3のいずれかに記載の化合物。
【0376】
実施形態5. R
1が以下の基:
【化112】
の1つから選択され、式中、各Yが独立してNR
5またはOであり、好ましくは、1つのR
4基がHまたはオキソであり、他のR
4基がすべてHである、実施形態4に記載の化合物。
【0377】
実施形態6. R
1が以下の基:
【化113】
の1つから選択される、実施形態5に記載の化合物。
【0378】
実施形態7. R
1が以下の基:
【化114】
の1つから選択される、実施形態6に記載の化合物。
【0379】
実施形態8. R
1が以下の基:
【化115】
の1つから選択される、実施形態7に記載の化合物。
【0380】
実施形態9.
(2S)-2-{[(1S)-2,2-ジフルオロ-1-(5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1S)-1-(3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-7-イル)-2,2-ジフルオロエチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1R)-1-(5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)エチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-[({1-[(tert-ブトキシ)カルボニル]-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル}メチル)アミノ]-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-7-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-(5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-3-イル)エチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-3-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-(5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)エチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1R)-1-(3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-7-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1R)-1-(1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)エチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1S)-1-(2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-イル)-2,2,2-トリフルオロエチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
【0381】
(2S)-2-{[(1R)-1-(2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1S)-1-(3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-6-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-[({5H,6H,7H-シクロペンタ[b]ピリジン-3-イル}メチル)アミノ]-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(4-メチル-3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-1,4-ベンゾキサジン-6-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(3,4-ジヒドロ-1H-2-ベンゾピラン-6-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1-メチル-2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-[({5H,7H,8H-ピラノ[4,3-b]ピリジン-3-イル}メチル)アミノ]ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(3,4-ジヒドロ-1H-2-ベンゾピラン-7-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1R)-1-(2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキシン-6-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1S)-1-(2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1R)-1-(3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-6-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-[({2H,3H,4H-ピラノ[2,3-b]ピリジン-6-イル}メチル)アミノ]ヘキサン酸;
【0382】
(2S)-2-{[(1R)-1-(2H-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(5-メチル-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-7-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1R)-1-(3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-7-イル)-2,2-ジフルオロエチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1S)-1-(3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-7-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1S)-1-(5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)エチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1R)-1-(1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-7-イル)エチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1S)-1-(3,4-ジヒドロ-1H-2-ベンゾピラン-6-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-[({2H,3H-[1,4]ジオキシノ[2,3-b]ピリジン-7-イル}メチル)アミノ]-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1S)-1-(2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキシン-6-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(4-メチル-3,4-ジヒドロ-2H-1,4-ベンゾキサジン-6-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(2-メチル-1-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
【0383】
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(7-メチル-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(3,4-ジヒドロ-1H-2-ベンゾピラン-5-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1R)-1-(3,4-ジヒドロ-1H-2-ベンゾピラン-7-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-4-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-5-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(3,4-ジヒドロ-1H-2-ベンゾピラン-8-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(2H-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(3-メチル-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1,3-ベンゾキサゾール-6-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1S)-1-(3,4-ジヒドロ-1H-2-ベンゾピラン-7-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(2-メチル-1-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1S)-1-(2H-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-6-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
【0384】
(2S)-2-{[(1R)-2,2-ジフルオロ-1-(5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-5-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1S)-1-(2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキシン-5-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(4-メチル-3,4-ジヒドロ-2H-1,4-ベンゾキサジン-7-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(2,3-ジヒドロ-1H-インデン-4-イル)メチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1R)-1-(2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキシン-5-イル)エチル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1-メチル-2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-6-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-6-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-6-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(4-メチル-3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-1,4-ベンゾキサジン-7-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、および/もしくはプロドラッグである、実施形態1~8のいずれかに記載の化合物。
【0385】
【0386】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、および/もしくはプロドラッグであって、
式中、
R7がH、C1~C3アルキル、およびC1~C3ハロアルキルからなる群から、好ましくはH、CH3、CHF2、およびCF3からなる群から、好ましくはHおよびCH3からなる群から選択され;R8がフェニルまたはピリジンであり、ここで、フェニルおよびピリジンが独立して5員ヘテロシクロアルキル、トリアゾリル、-O-フェニル、および-NR9R10からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、R9およびR10が独立してHまたはC1~C3アルキル、好ましくはHまたはCH3、より好ましくはCH3から選択され;あるいは、
R7がC1~C3ヒドロキシアルキル、好ましくは-(C2H4)-OHであり;R8が任意にC1~C3アルコキシで置換されたフェニルであり、好ましくはフェニルが任意
に-O-CH3で置換されている、
化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、および/もしくはプロドラッグ。
【0387】
実施形態11. R7がH、C1~C3アルキル、およびC1~C3ハロアルキルからなる群から選択され、R8がピロリジニル、トリアゾリル、-O-フェニル、もしくは-NR9R10で置換されたフェニルであり、またはR8が-O-フェニルで置換されたピリジンであり;あるいは、
R7がC1~C3ヒドロキシアルキルであり、R8が任意にC1~C3アルコキシで置換されたフェニルである;
実施形態10に記載の化合物。
【0388】
実施形態12.
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(2-フェノキシピリジン-4-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(6-フェノキシピリジン-3-イル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-({[3-(ピロリジン-1-イル)フェニル]メチル}アミノ)ヘキサン酸;
2-{[(1S)-3-ヒドロキシ-1-フェニルプロピル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1R)-1-(6-フェノキシピリジン-3-イル)エチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(1S)-1-(6-フェノキシピリジン-3-イル)エチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(4-フェノキシフェニル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-({[3-(ジメチルアミノ)フェニル]メチル}アミノ)-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1R)-3-ヒドロキシ-1-(3-メトキシフェニル)プロピル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-{[(3-フェノキシフェニル)メチル]アミノ}ヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1S)-3-ヒドロキシ-1-(3-メトキシフェニル)プロピル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-2-{[(1R)-3-ヒドロキシ-1-フェニルプロピル]アミノ}-5,5-ジメチルヘキサン酸;
(2S)-5,5-ジメチル-2-({[3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)フェニル]メチル}アミノ)ヘキサン酸;
またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、および/もしくはプロドラッグである、実施形態10または11に記載の化合物。
【0389】
実施形態13. 実施形態1~12のいずれかに記載の化合物と、薬学的に許容される担体、賦形剤、および/または希釈剤とを含む医薬組成物。
【0390】
実施形態14. 治療における使用のための、実施形態1~12のいずれか1つに記載の化合物、または実施形態13に記載の医薬組成物。
【0391】
実施形態15. 神経変性疾患、精神疾患、炎症性疾患、がん、疼痛、糖尿病、糖尿病
性網膜症、緑内障、ブドウ膜炎、心血管疾患、腎臓疾患、乾癬、遺伝性眼疾患、難聴、またはミスフォールドしたタウを特徴とする疾患の治療または予防における使用のための、実施形態1~12のいずれか1つに記載の化合物、または実施形態13に記載の医薬組成物であって;
前記神経変性疾患が、好ましくは運動ニューロン疾患、前頭側頭葉変性症(FTLD)、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)などのプリオン病、急性脳損傷、脊髄損傷、および脳卒中から選択され、好ましくは、前記運動ニューロン疾患が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、原発性側索硬化症、および進行性筋萎縮症から選択され;
前記神経変性疾患が、好ましくはミスフォールドしたTAR DNA結合タンパク質43を特徴とする神経変性疾患、例えば筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症、または前頭側頭型認知症であり;
前記精神疾患が、好ましくは双極性障害、大うつ病、心的外傷後ストレス障害、および不安障害から選択され;
前記炎症性疾患が、好ましくは炎症疾患および神経炎症から選択され;
前記がんが、好ましくは乳がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、甲状腺がん、膵臓がん、神経膠芽腫、および大腸がんから選択され;
前記心血管疾患が、好ましくはアテローム性動脈硬化症、心筋症、心臓発作、不整脈、心不全、および虚血性心疾患から選択され;ならびに、
前記難聴が、好ましくは騒音誘発性難聴、聴器毒性誘発性難聴、加齢誘発性難聴、特発性難聴、耳鳴、および突発性難聴から選択される;
化合物または医薬組成物。
【0392】
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【0402】
本明細書全体を通じて参照され、本明細書の一部を構成する配列
配列番号1(全長ソルチリン-アイソフォーム1)
1 MERPWGAADG LSRWPHGLGL LLLLQLLPPS TLSQDRLDAP PPPAAPLPRW
51 SGPIGVSWGL RAAAAGGAFP RGGRWRRSAP GEDEECGRVR DFVAKLANNT
101 HQHVFDDLRG SVSLSWVGDS TGVILVLTTF HVPLVIMTFG QSKLYRSEDY
151 GKNFKDITDL INNTFIRTEF GMAIGPENSG KVVLTAEVSG GSRGGRIFRS
201 SDFAKNFVQT DLPFHPLTQM MYSPQNSDYL LALSTENGLW VSKNFGGKWE
251 EIHKAVCLAK WGSDNTIFFT TYANGSCKAD LGALELWRTS DLGKSFKTIG
301 VKIYSFGLGG RFLFASVMAD KDTTRRIHVS TDQGDTWSMA QLPSVGQEQF
351 YSILAANDDM VFMHVDEPGD TGFGTIFTSD DRGIVYSKSL DRHLYTTTGG
401 ETDFTNVTSL RGVYITSVLS EDNSIQTMIT FDQGGRWTHL RKPENSECDA
451 TAKNKNECSL HIHASYSISQ KLNVPMAPLS EPNAVGIVIA HGSVGDAISV
501 MVPDVYISDD GGYSWTKMLE GPHYYTILDS GGIIVAIEHS SRPINVIKFS
551 TDEGQCWQTY TFTRDPIYFT GLASEPGARS MNISIWGFTE SFLTSQWVSY
601 TIDFKDILER NCEEKDYTIW LAHSTDPEDY EDGCILGYKE QFLRLRKSSM
651 CQNGRDYVVT KQPSICLCSL EDFLCDFGYY RPENDSKCVE QPELKGHDLE
701 FCLYGREEHL TTNGYRKIPG DKCQGGVNPV REVKDLKKKC TSNFLSPEKQ
751 NSKSNSVPII LAIVGLMLVT VVAGVLIVKK YVCGGRFLVH RYSVLQQHAE
801 ANGVDGVDAL DTASHTNKSG YHDDSDEDLL E
【0403】
配列番号2(全長ソルチリン-アイソフォーム2)
1 MERPWGAADG LSRWPHGLGL LLLLQLLPPS TLSQDRLDAP PPPAAPLPRW
51 SGPIGVSWGL RAAAAGGAFP RGGRWRRSAP GEDEECGRVR DFVAKLANNT
101 HQHVFDDLRG SVSLSWVGDS TGVILVLTTF HVPLVIMTFG QSKLYRSEDY
151 GKNFKDITDL INNTFIRTEF GMAIGPENSG KVVLTAEVSG GSRGGRIFRS
201 SDFAKNFVQT DLPFHPLTQM MYSPQNSDYL LALSTENGLW VSKNFGGKWE
251 EIHKAVCLAK WGSDNTIFFT TYANGSCTDL GALELWRTSD LGKSFKTIGV
301 KIYSFGLGGR FLFASVMADK DTTRRIHVST DQGDTWSMAQ LPSVGQEQFY
351 SILAANDDMV FMHVDEPGDT GFGTIFTSDD RGIVYSKSLD RHLYTTTGGE
401 TDFTNVTSLR GVYITSVLSE DNSIQTMITF DQGGRWTHLR KPENSECDAT
451 AKNKNECSLH IHASYSISQK LNVPMAPLSE PNAVGIVIAH GSVGDAISVM
501 VPDVYISDDG GYSWTKMLEG PHYYTILDSG GIIVAIEHSS RPINVIKFST
551 DEGQCWQTYT FTRDPIYFTG LASEPGARSM NISIWGFTES FLTSQWVSYT
601 IDFKDILERN CEEKDYTIWL AHSTDPEDYE DGCILGYKEQ FLRLRKSSVC
651 QNGRDYVVTK QPSICLCSLE DFLCDFGYYR PENDSKCVEQ PELKGHDLEF
701 CLYGREEHLT TNGYRKIPGD KCQGGVNPVR EVKDLKKKCT SNFLSPEKQN
751 SKSNSVPIIL AIVGLMLVTV VAGVLIVKKY VCGGRFLVHR YSVLQQHAEA
801 NGVDGVDALD TASHTNKSGY HDDSDEDLLE
【0404】
配列番号3(成熟ソルチリン)
1 MTFGQSKLYR SEDYGKNFKD ITDLINNTFI RTEFGMAIGP ENSGKVVLTA
51 EVSGGSRGGR IFRSSDFAKN FVQTDLPFHP LTQMMYSPQN SDYLLALSTE
101 NGLWVSKNFG GKWEEIHKAV CLAKWGSDNT IFFTTYANGS CTDLGALELW
151 RTSDLGKSFK TIGVKIYSFG LGGRFLFASV MADKDTTRRI HVSTDQGDTW
201 SMAQLPSVGQ EQFYSILAAN DDMVFMHVDE PGDTGFGTIF TSDDRGIVYS
251 KSLDRHLYTT TGGETDFTNV TSLRGVYITS VLSEDNSIQT MITFDQGGRW
301 THLRKPENSE CDATAKNKNE CSLHIHASYS ISQKLNVPMA PLSEPNAVGI
361 VIAHGSVGDA ISVMVPDVYI SDDGGYSWTK MLEGPHYYTI LDSGGIIVAI
401 EHSSRPINVI KFSTDEGQCW QTYTFTRDPI YFTGLASEPG ARSMNISIWG
451 FTESFLTSQW VSYTIDFKDI LERNCEEKDY TIWLAHSTDP EDYEDGCILG
501 YKEQFLRLRK SSVCQNGRDY VVTKQPSICL CSLEDFLCDF GYYRPENDSK
551 CVEQPELKGH DLEFCLYGRE EHLTTNGYRK IPGDKCQGGV NPVREVKDLK
601 KKCTSNFLSP EKQNSKSNSV PIILAIVGLM LVTVVAGVLI VKKYVCGGRF
651 LVHRYSVLQQ HAEANGVDGV DALDTASHTN KSGYHDDSDE DLLE
【0405】
配列番号4(マウスソルチリン)
>sp|Q6PHU5|SORT_MOUSE Sortilin OS=Mus musculus OX=10090 GN=Sort1 PE=1 SV=1
MERPRGAADGLLRWPLGLLLLLQLLPPAAVGQDRLDAPPPPAPPLLRWAGPVGVSWGLRA
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【配列表】
【国際調査報告】