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特表2025-532902心臓刺激のための穿刺を改善するためのリード装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-10-03
(54)【発明の名称】心臓刺激のための穿刺を改善するためのリード装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/05 20060101AFI20250926BHJP
   A61N 1/362 20060101ALI20250926BHJP
【FI】
A61N1/05
A61N1/362
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2025518254
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2025-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2022077362
(87)【国際公開番号】W WO2024068000
(87)【国際公開日】2024-04-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510166157
【氏名又は名称】ソーリン シーアールエム エス ア エス
【氏名又は名称原語表記】SORIN CRM S.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ,ジャン-フランソワ
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053CC02
4C053JJ11
4C053JJ23
(57)【要約】
本発明は、改善された穿刺能力及び信頼性を持つリード装置に関する。リード装置先端部の提案された構造、形状及び寸法は、高い信頼性と長寿命で、標的領域において中隔又は他の組織を貫通する制御された滑らかな穿刺プロセスを可能とするように構成されている。取り扱いを容易にするために固定された螺旋体が設けられ、ねじ込みドライバ機能を持つ更なるねじ込みスタイレットが、穿刺プロセスのより良い制御のためにリード装置先端部へのトルク伝達を改善するように設けられ得る。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リード本体(54)と、
第1電極としての固定遠位螺旋体(51)及び前記螺旋体(51)と近位第2電極(57)との間の電極間部分を有するリード先端部と、を備え、
前記螺旋体(51)の第1外径と前記電極間部分の遠位端の第2外径との比は0.8から1の間に設定され、前記第1外径は1から1.8mmの間に設定され、前記リード先端部の長さは8から15mmの間に設定され、前記螺旋体(51)の長さは1.5から5mmの間に設定されることを特徴とするリード装置。
【請求項2】
前記電極間部分は、円錐形状を有することを特徴とする請求項1に記載のリード装置。
【請求項3】
前記リード本体(54)は、同心構造を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のリード装置。
【請求項4】
前記電極間部分は、該電極間部分の外表面に成形又はその他の方法で形成された若しくは取り付けられたねじ込み構造(120)を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のリード装置。
【請求項5】
前記近位第2電極(57)の第3外径は、1.25mmから1.94mmの間に設定されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のリード装置。
【請求項6】
前記リード先端部は、挿入可能なねじ込みスタイレット(55)の結合端部(56)に結合可能に適合された一体化ドライバ(52)を更に有し、前記螺旋体(51)は、前記ドライバ(52)を介して前記ねじ込みスタイレット(55)によりトルクを受けるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のリード装置。
【請求項7】
前記ドライバ(52)は、挿入可能な前記ねじ込みスタイレット(55)の結合端部(56)に結合可能に適合された嵌合部を持つアダプタ(53)を有することを特徴とする請求項6に記載のリード装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載のリード装置と、前記螺旋体(51)にトルクを伝達するために前記リード装置に挿入可能で前記結合端部(56)を介して前記ドライバ(52)に結合可能に構成された前記ねじ込みスタイレット(55)と、を備えたことを特徴とするリードシステム。
【請求項9】
前記ねじ込みスタイレット(55)は、可撓性を高めて最大伝達可能トルクを所定値に制限するために、前記結合端部(56)に円錐形部分及び/又は縮径部分を更に有することを特徴とする請求項8に記載のリードシステム。
【請求項10】
前記リード装置は、前記ドライバ(52)への前記結合端部(56)の係合を支持する圧縮力を発生させるために、前記リード本体(54)の弾性伸長を許容するように構成されていることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載のリードシステム。
【請求項11】
前記ねじ込みスタイレット(55)は、ニチノールにより形成されていることを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれか一項に記載のリードシステム。
【請求項12】
前記ねじ込みスタイレット(55)は、前記結合端部(56)の反対側の端部に固定されたドライバハンドル(83)を更に有することを特徴とする請求項8乃至請求項11のいずれか一項に記載のリードシステム。
【請求項13】
前記ドライバハンドル(83)は、前記ねじ込みスタイレット(55)を取り囲み前記リード装置のコネクタ(82)の端部(81)を収容するように構成された環状開口部を有することを特徴とする請求項12に記載のリードシステム。
【請求項14】
前記ドライバハンドル(83)は、前記環状開口部内において前記リード装置のコネクタ(82)の端部(81)を前記ねじ込みスタイレット(55)に固定するためのロック要素(85)を有することを特徴とする請求項13に記載のリードシステム。
【請求項15】
前記ロック要素(85)は、前記結合端部(56)から信号分析器(86)への信号伝送のために、ケーブル(84)を介して前記信号分析器(86)に接続可能に構成されていることを特徴とする請求項14に記載のリードシステム。
【請求項16】
前記ねじ込みスタイレット(55)は、前記ドライバハンドル(83)から突出した端部を有し、該端部には、前記結合端部(56)から信号分析器(86)への信号伝送のためにケーブル(84)を介して前記信号分析器(86)が回転可能に接続されることを特徴とする請求項12に記載のリードシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、限定される訳ではないが、左束枝ペーシング(LBBP)システムのような心臓ペーシングシステムのためのリード装置(例えば、電極カテーテル)の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
本開示では、以下の用語及びその略語が使用され得る:心電図(ECG)、左心室(LV)、右心室(RV)、左心房(LA)、右心房(RA)、右心室心尖部(RVA)、ヒス束ペーシング(HBP)、左前斜視(LAO)、右前斜視(RAO)、左束枝(LBB)、右束枝(RBB)、左束枝ペーシング(LBBP)、左束枝ブロック(LBBB)、左心室活性化時間(LVAT)、右束枝ブロック(RBBB)、心室中隔(VS)、洞房結節(SAN)、房室結節(AVN)、心室内中隔(IVS)、右心室流出路(RVOT)ペーシング、直接ヒス束ペーシング(DHBP)、パラヒシアンペーシング(PHP)。
【0003】
心臓ペーシングでの異なる電気的活性化シーケンスは、刺激された心臓において異なる機械的ポンプ効率を引き起こし得る。ポンプ効率を最適化するのに必要なことは、心室の高速且つ均一な収縮である。
【0004】
RVAのような従来のペーシング部位は、低い変位率の安定したリード位置を与えるものの、LV収縮(心臓マスの約80%を占める)の最適化にはあまり有効ではない。長期にわたる右心室心尖部ペーシングは、左心室血行動態に強い影響を持ち得る異所性左束枝ブロックを誘発することで、左心室機能に悪影響を及ぼす虞がある。この観察は、悪影響を回避してより生理的な心室活性化パターンを得るために、従来のアプローチの再評価及び別のペーシング部位の探索を促し、RVOTペーシング、DHBP、PHP及び二点(RVA+RVOT)ペーシングが試された。
【0005】
LBBPは、特に節下房室ブロック及び/又はLBBBを持つ患者において、LVの電気的同期を達成する生理学的ペーシングを行うための代替方法として登場した。近位LBBは、LV中隔を通って扇状に広がっているので、ヒス束に比べてペーシングのためにより広いターゲットを形成する。LBBPのための技術は、心室経中隔アプローチ(すなわち、RVからLVをペーシングする)を用いて開発された。LBBPは、低いペーシング閾値及び大きなR波を与えることが報告され、遠位伝導系が標的とされるので遠位伝導ブロックの発生に対して低い理論的リスクを有する。
【0006】
しかしながら、中隔を介したペーシング装置の影響(例えば、動脈の永久的な損傷)の最小化、中隔における穿刺プロセスの小型化及び制御並びに中隔収縮の制約に曝されるペーシング装置の長期信頼性の確保については課題が未だ残っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、LBBP又は他のペーシングアプローチに関連して直面する上記課題に対処するための電極カテーテルシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1に記載のリード装置及び請求項8に記載のリードシステムにより達成される。
【0009】
第1態様によれば、リード装置は、
リード本体と、
第1電極としての固定遠位螺旋体及び前記螺旋体と近位第2電極との間の電極間部分を有するリード先端部と、を備え、
前記螺旋体の第1外径と前記電極間部分の遠位端の第2外径との比は0.8から1の間に設定され、前記第1外径は1から1.8mmの間に設定され、前記リード先端部の長さは8から15mmの間に設定され、前記螺旋体の長さは1.5から5mmの間に設定される。
【0010】
第2態様によれば、リードシステムは、第1態様のリード装置と、前記螺旋体にトルクを伝達するために前記リード装置に挿入可能で結合端部を介して前記リード装置のリード先端部の一体化ドライバに結合可能に構成されたねじ込みスタイレットと、を備える。
【0011】
これにより、改善された穿刺能力及び信頼性を持つリード装置が与えられ得る。リード装置先端部の提案された寸法は、標的領域における組織への電極間部分の挿入を容易にし、高い信頼性で中隔又は他の組織を貫通する制御された滑らかな穿刺プロセスを可能とする。固定された螺旋体は、取り扱いを容易にし、リード装置を配置するための穿刺プロセスにおける制御を改善する。
【0012】
第1又は第2態様の第1オプションによれば、電極間部分は円錐形状を有し得る。提案された電極間部分の円錐形状は、標的領域における組織への電極間部分の挿入を更に容易にする。第1オプションと組み合わせることができる第1又は第2態様の第2オプションによれば、リード本体は同心構造を有し得る。これにより、2本又は4本の平行な相互絶縁された導線を含む単一コイルがリード装置の長さ方向に延び(ねじ込みスタイレットの挿入を可能とする中央ルーメンを有する)、嵩張らず剛性の高いリード構造が得られる。
【0013】
第1又は第2オプションと組み合わせることができる第1又は第2態様の第3オプションによれば、電極間部分は、電極間部分の外表面に成形又はその他の方法で形成された若しくは取り付けられたねじ込み構造を有する。このねじ込み構造は、電極間部分が標的領域において組織に挿入する際の穿刺プロセスを容易にする。
【0014】
第1乃至第3オプションのいずれかと組み合わせることができる第1又は第2態様の第4オプションによれば、近位第2電極の第3外径は、1.25mmから1.94mmの間に設定され得る。この近位第2電極(例えば、陽極)の外径寸法範囲は、穿刺プロセスを容易にするために先端部におけるリード装置の形状を更に最適化する。
【0015】
第1乃至第4オプションのいずれかと組み合わせることができる第1又は第2態様の第5オプションによれば、リード先端部は、挿入可能なねじ込みスタイレットの結合端部に結合可能に適合された一体化ドライバを更に有し、螺旋体は、ドライバを介してねじ込みスタイレットによりトルクを受けるように構成されている。ねじ込みドライバ機能を持つ更なるねじ込みスタイレットにより、穿刺プロセスのより良い制御のためにリード装置先端部へのトルク伝達を改善することができる。
【0016】
第1乃至第5オプションのいずれかと組み合わせることができる第1又は第2態様の第6オプションによれば、ドライバは、ねじ込みスタイレットの結合端部に結合可能に適合された嵌合部を持つアダプタを有する。この方法は、リード装置が異なるタイプのねじ込みスタイレットにアダプタを介して適合可能で、また、その逆も可能であるという利点を与える。
【0017】
第1乃至第6オプションのいずれかと組み合わせることができる第1又は第2態様の第7オプションによれば、ねじ込みスタイレットは、可撓性を高めるために結合端部に円錐形部分及び/又は縮径部分を更に有し得る。これにより、挿入されたリード装置へのねじ込みスタイレットの挿入が、曲線部分において容易となる。
【0018】
第1乃至第7オプションのいずれかと組み合わせることができる第1又は第2態様の第8オプションによれば、リード装置は、ドライバへの結合端部の係合を支持する圧縮力を発生させるために、リード本体の弾性伸長を許容するように構成され得る。これにより、ねじ込みスタイレットとドライバとの間で、強固で信頼性の高い結合が達成され得る。
【0019】
第1乃至第8オプションのいずれかと組み合わせることができる第1又は第2態様の第9オプションによれば、ねじ込みスタイレットはニチノールにより形成され得る。ニチノールは、トルク制限を維持して使用中の破損リスクを回避するのにより効率的で堅牢な高弾性材料である。
【0020】
第1乃至第9オプションのいずれかと組み合わせることができる第1又は第2態様の第10オプションによれば、ねじ込みスタイレットは、結合端部の反対側の端部に固定されたドライバハンドルを更に有し得る。これにより、挿入されたねじ込みスタイレットの回転が、ドライバハンドルを介して容易化され得る。
【0021】
第1乃至第10オプションのいずれかと組み合わせることができる第1又は第2態様の第11オプションによれば、ねじ込みスタイレットのドライバハンドルは、ねじ込みスタイレットを取り囲みリード装置のコネクタの端部を収容するように構成された環状開口部を更に有し得る。これにより、リード装置のコネクタの端部がドライバハンドルに挿入されるまで挿入プロセスを単に継続するだけで、一体化ドライバハンドルを有するねじ込みスタイレットはリード装置に容易に固定され得る。
【0022】
第1乃至第11オプションのいずれかと組み合わせることができる第1又は第2態様の第12オプションによれば、ねじ込みスタイレットのドライバハンドルは、ねじ込みスタイレットに対する環状開口部内においてリード装置のコネクタの端部を固定するためのロック要素を更に有し得る。これにより、迅速且つ容易なロック機構が得られ、リード装置のコネクタの端部がドライバハンドルに挿入されると、ロック要素はロックのために単純に作動される。当然ながら、ドライバハンドル及び端部上にボルトと穴又はねじ部を介した別のロック機構が与えられてもよい。
【0023】
第1乃至第12オプションのいずれかと組み合わせることができる第1又は第2態様の第13オプションによれば、ねじ込みスタイレットのドライバハンドルのロック要素は、結合端部から信号分析器への信号伝送のために、ケーブルを介して信号分析器に接続可能に構成され得る。これにより、医師は、ねじ込みスタイレットが挿入されたリード装置を信号分析器に容易に接続して、配置プロセスを支援することができる。
【0024】
第1乃至第13オプションのいずれかと組み合わせることができる第1又は第2態様の第14オプションによれば、ねじ込みスタイレットは、ドライバハンドルから突出した端部を更に有し、この端部には、結合端部から信号分析器への信号伝送のためにケーブルを介して信号分析器が回転可能に接続され得る。これにより、トルク伝達のための回転操作を容易にするために、例えば、ワニ口クランプを介したスタイレット本体周りの回転/スライド式電気的接続を有するコスト削減「インライン」接続が実現され得る。
【0025】
請求項1のリード装置及び請求項8のリードシステムは、特に従属請求項で定義されるように、類似及び/又は同一の好ましい実施形態を持ち得ることを理解されたい。
【0026】
また、本発明の好ましい実施形態は、個々の独立請求項と従属請求項又は上記実施形態との任意の組み合わせであり得ることを更に理解されたい。
【0027】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に説明する実施形態を参照することで明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】種々の実施形態に係るLBBPリード装置の配置手順を概略的に示すフロー図。
図2】RVAペーシングのためのリード装置が配置された心臓を模式的に示す図。
図3】LBBペーシング部位が示された心臓を模式的に示す図。
図4】心室経中隔LBBペーシングのためのリード装置が配置された心臓を模式的に示す図。
図5】実施形態に係るリード装置を概略的に示す図。
図6】寸法パラメータが示された実施形態に係るリード装置を概略的に示す図。
図7】実施形態に係るリード装置の分解及び組立部分を概略的に示す図。
図8】改良された信号タップを備えた実施形態に係るリード装置の分解及び組立部分を概略的に示す図。
図9】実施形態に係るリード装置におけるねじ込みドライバスタイレットのドライバハンドルを概略的に示す側面図及び断面図。
図10】実施形態に係るリード装置で達成されるリードターン数に対するリードトルクを従来のリード装置と比較した図。
図11】実施形態に係る成形ねじ込み構造を備えたリード装置を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の様々な実施形態が、リード装置(例えば、電極カテーテル)及び挿入可能なねじ込みスタイレットを備えた改良リードシステム構造に基づいて説明される。本発明は、LBBPのような経中隔ペーシングで特に有利であるが、これに限定されず、リード装置の配置を必要とする他の用途において他のペーシングタイプ及び/又は部位に関連して使用され得る。
【0030】
本開示を通じて、提案されるリードシステム構造及び配置操作に関連するブロック、構成要素及び/又は装置のみが添付図面に示されていることに留意されたい。他のブロックは、簡潔さの理由から省略されている。更に、同じ参照符号又は番号で指定された構成要素は、同じ機能又は少なくとも同様の機能を有することを意図しており、そのため、その機能については後で改めて説明しない。
【0031】
LBBPは、通常、低出力(例えば、<1.0V/0.4ms)での中隔心筋キャプチャを伴うLBB(すなわち、左束幹又はその近位繊維束)のキャプチャとして定義される。
【0032】
図1は、LBBPのためのリード装置の配置又は埋め込みにおける例示的手順のフローチャートを示す。
【0033】
第1のステップS101(「VST?」)では、心室中隔の厚さがエコー及び/又はスカー測定により評価される。IVSは、LVとRVとを分離し、両心室の機能に重要な役割を持つ。一例として、心エコー測定は、例えば、同時に記録されるECGのR波ピークにより決定され得る拡張末期での左右心内膜表面を含む最も明瞭なエコーから中隔厚さを測定するのに使用され得る。
【0034】
ECG測定から得られる心臓の固有調律に基づいて、LBBBの存在又は不在がステップS102a(「LBBB」)又はステップS102b(「N-LBBB」)でそれぞれ決定される。LBBBは、ECGにおいてLV及びQRS群の電気的活性化を完全に変更する。生理的状態では左側に偏った中隔の活性化は、右側で始まる。電気インパルスは、その後、下方に、左方に、そして僅かに前方に伝播する。これは、LVの不均一で遅延した脱分極を引き起こす。
【0035】
LBBBに対する心電図基準は、120ms以上のQRS持続時間、リードI、V5及びV6でのQ波欠如、リードI、V5及びV6での単形R波並びにQRS群の主要偏位とは反対のST及びT波変位のうち少なくとも1つを含み得る。
【0036】
ECGで拡大したQRS群(>120ms)を持つLBBBを診断する簡単な方法は、リードV1を見ることであろう。QRS群がリードV1において拡大して下方に偏位していれば、LBBBが存在する。QRS群がリードV1において拡大して上方に偏位していれば、RBBBが存在する。
【0037】
LBBBがステップS102aで決定されると、更なる心室バックアップペーシングがステップS103で追加される(「V-BUP」)。
【0038】
LBBBの有無にかかわらず、静脈アクセスがステップS104においてリード装置を介して左側から実行される(「VACC(LS)」)。
【0039】
その後、心室中隔の右表面(例えば、RAO30°)において、LBBP位置の初期部位がステップS105で決定される(「VS(RAO30°)LBBP」)。これは、HBP部位からRVAに向かって略1-1.5cmの位置にカテーテルを配置する及び/又はペーシング形態を使用することで達成され、ペーシング形態ではリードVIにおいて底(QRS信号の最深点)に近いノッチを有する「W」パターンが理想的な位置を示し得る。そして、ペーシングリード(例えば、螺旋体電極)が、LV中隔に対して垂直にねじ込まれる(LAO30-45°)。
【0040】
固定の失敗によりステップS105でエラー(「ERR」)が判定されると、再評価がステップS106で開始される(「RASS」)。
【0041】
そして、ステップS107(「DET LD」)で、心室中隔へのLBBPリード深さが決定される。これは、VIリードでのノッチ変化の観察、シース血管造影、フルクラムサイン及びインピーダンスモニタリングのうち少なくとも1つにより達成され得る。
【0042】
ペーシングリードは、中隔の穿孔を避けながら約6-8mmの深さまで及び/又はRBBBペーシング形態に基づいてゆっくりと進められる。
【0043】
最後に、ステップS108(「CONF LBBP CPT」)において、LBBキャプチャが許容可能なペーシングパラメータに基づいて確認される。この確認は、RBBBパターンのペーシングされた形態、LBB電位の記録、出力の増加を伴って急激に短縮する又は低出力及び高出力において短く一定のままのLVATの刺激ピーク、選択的LBBP及び非選択的LBBP並びにペーシング中の逆行性ヒス電位又は順行性LBB電位の記録のうちの少なくとも1つに基づく。
【0044】
要約すると、埋め込み又は配置プロセスの共通する特徴は、経静脈アクセス、LBB領域におけるLV中隔心内膜下へのペーシングリードの経中隔配置及びLBBキャプチャの確認を含む。
【0045】
RBBBの場合、LVがRVよりも早く活性化されるので、ペーシングリードがLBB領域においてRV中隔からLV中隔心内膜下に経中隔的に配置されると、心電図のペーシングQRS形態は、LBBBから右束枝ブロック(RBBB)パターンに変化する。しかし、ペーシング形態は、LBBのペーシング部位、既存の束疾患若しくは選択的又は非選択的LBBキャプチャに影響され得る。
【0046】
図2は、RVAペーシングのためのリード装置が配置された心臓を模式的に示している。
【0047】
通常の心機能において心拍は、RAの頂部に見られ心臓が収縮する速度を設定するSANにより心臓自体で始まる。SANは、両心房の筋壁を通して伝えられる電気インパルスを送出する。これらのインパルスは、心房収縮を引き起こす。その後、インパルスは、心臓内のもう一つの結節であるAVNに送られる。この結節は、RAの下部にある。SANからのインパルスがAVNに到達すると、インパルスは、心臓の中心壁を下方に走行する伝導線維に送られる。その後、インパルスは、分離してLV及びRVを上昇し、LV及びRVを同時に収縮させる(心室収縮)。
【0048】
心臓伝導系の重要な要素は、中隔(IVS)24内に見られる。ヒス束は、心内膜下を走行し、LBBとRBBとに分離する前に中隔24の右側を略1cm下る。RBBは中隔24の右側を下方に進み続け、一方、LBBは左側へと横切って前部及び後部に分かれる。
【0049】
通常の状態では、SANからの励起は心臓のリズムを制御する。洞調律の異常は、心臓電気パルスの速度、リズム、発生部位及び伝導の異常を示す不整脈を引き起こす。障害が特定の心室内伝導線維で起こると、再分極波は、心室に到達するために遅い筋-筋伝導を通じて伝わる必要がある。異なる伝導束枝が関わった状態に関連する古典的な障害は、LBBB及びRBBBを含む。ECGは、心臓の電気活動を測定及び記録するのに使用され、心臓機能に関する重要な情報を与え得る。ECGは、不整脈を解析するための標準的な診断ツールとして使用されている。
【0050】
ペーシングリード20を含むリード装置200を介したRVAペーシング26は、異常な収縮パターンを引き起こし、その結果、LV自由壁及び中隔24の同期不全は、心筋潅流欠損、組織病理学的変化、左心室拡張並びに収縮期及び拡張期左心室機能不全の両方を引き起こし得る。これらの長期的な変化はすべて、心房ペーシングと比較して、慢性RVAペーシング26の患者では高い罹患率及び死亡率が見られることを説明し得る。
【0051】
心臓を通る2つの異なる電気的活性化速度が観察され得る。これらは、図2において小さな矢印で示した筋細胞(すなわち筋肉細胞)を介した第1活性化速度(低速伝導/収縮)と、プルキンエ線維22(すなわち心内膜下枝)を介した第2活性化速度(高速伝導)であり、第2速度は第1速度よりも略10倍速い。従って、プルキンエ線維22は、一種の刺激「高速道路」として見られ得る。
【0052】
図3は、LBBペーシング部位28を示した心臓を模式的に示している。
【0053】
LBBペーシング部位28は、LVのプルキンエ線維22に位置することでLV自由壁と中隔24との同期を与え、より生理的な収縮を活性化する。
【0054】
図4は、リード装置200が挿入された心臓を模式的に示しており、ペーシングリード20は、心室経中隔LBBPのために配置されている。ペーシングリード20の配置は、図1に関連して上記で説明した手順に基づいて実行され得る。
【0055】
これによりLVは、カテーテル送達のためのガイドとして心室経中隔アプローチによりRVからペーシングされる。
【0056】
提案されるリードシステムの以下の実施形態は、穿刺領域を小さくすることで中隔24を介したリード装置挿入の影響を最小化し(例えば、動脈の永久的損傷を防止)、挿入可能なねじ込みスタイレットを備えた改善トルク伝達機構により穿刺プロセスに対して強化された制御を与え、そして、小型で堅牢な構造及び/又は連続的な柔軟性を与えることで中隔24の収縮抑圧に曝されるリード装置の長期信頼性を確保するように構成されている。
【0057】
リード装置の本体は、標的領域にリード装置を(例えば、血管を通して)ガイドするのに用いられるガイドカテーテルとの接触滑り性を改善するように構成され得る。これは、限定的な力でガイドカテーテルを通ったリード本体及び中隔24を通ったリード先端部の前進を可能とするために、例えば、直径の小さいポリウレタン(PU)材料を使用することで達成され得る。
【0058】
リード装置の好適な設計は、スタイレット通過用の中央ルーメンが設けられている限り、頻脈リード又は徐脈リードとしてマルチルーメン、同軸及び同心構造を有することができる。同軸リードは、埋め込み時にスタイレットの通過を許容するために、中央ルーメンと共にコイル形状に配置された先端電極(陰極)までリード長に沿って延びた内側導体を有する。このコイルは、円筒長の内側絶縁体により覆われ、内側絶縁体は、リング電極(陽極)までリードを導く別のコイル導体により覆われ得る。第2の外側絶縁体及びリード被覆が外側環境からリング導体を保護することで設計が完了する。同心の二極リードは、単一コイルがリード長に沿って延び(この場合もスタイレット挿入を可能とする中央ルーメンを有する)2本又は4本の平行な相互絶縁導線から成り、それらのうち1本又は2本が陰極に接続して他の1本又は2本が陽極に接続するという新しい導体及び絶縁技術を与えることで、4層設計の嵩高さ及び剛性に関する同軸リードのいくつかの懸念に対処する。各々の導線は、絡み合っていても各々の導線を他の導線から絶縁する、例えば、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)フルオロポリマー絶縁体の結合層により個別に被覆され得る。単一の2要素コイルは、単一の外側絶縁被覆により覆われてもよい。
【0059】
マルチルーメン又は同軸又は同心リードは、サイズを最小化するために固定された非格納式の螺旋体を任意に有していてもよい。しかしながら、格納式の螺旋体も、説明した実施形態に関連して同様に使用され得る。
【0060】
更に、提案されるリードシステムは、改善されたトルク能力、すなわち、螺旋体に安全にトルクを伝達する能力(例えば、フルリード本体トルク)及び取り扱い(例えば、プッシュ伝達)を容易にするためのスタイレット駆動互換性を与えるように構成されてもよい。一例として、後述するように、適合するねじ込みスタイレット(ねじ込みドライバスタイレット)を備えた同心リードが与えられ得る。
【0061】
リード装置の遠位端(ディスタリティ)の設計については、螺旋体の外径とハウジングの外径との間の比は80%より大きいべきで、イソプロフィルディスタリティが前停止面を避けるために設けられてもよい。
【0062】
更に、剛性の高い螺旋体が、ねじ込み時の螺旋体の変形を避けるためにを設けられてもよく(例えば、30M螺旋体設計)、一方、固定された螺旋体(すなわち、螺旋体とリード本体との間のロック)は、取り扱いを簡単にし得る(すなわち、パラサイトツールが格納式システムに必要とされない)。
【0063】
更に、設計柔軟性が、厚さの異なる中隔24への両側ペーシングのために電極間距離を適応することで与えられ得る。
【0064】
リード装置の遠位設計は、更に、螺旋体(陰極)がLVチャンバに突出せずLVチャンバで所望位置、すなわち、中隔24を完全に穿孔することなくLBBの近くに達するまで、リード先端部の中隔24内への円滑且つ予測可能な前進を許容するように構成され得る。
【0065】
更に、リード装置の設計は、中隔24の穿刺を行うのに必要なエネルギーを最小化するように構成され得る。これは、例えば、電極間部分(遠位螺旋体末端と近位陽極末端との間)に、円錐形状を有して特化した遠位テーパ先端部を設けることにより達成され得る。
【0066】
以下では、リード装置及び別個の挿入可能なねじ込みスタイレットを備えたリードシステムに関する種々の実施形態が、図5乃至図9及び図11を参照して説明される。
【0067】
図5は、例えば、LBBPに必要な所望深さに応じて中隔24に部分的に導入される、実施形態に係る部分分解リードシステム(ねじ込みスタイレット55は、まだ完全に挿入されていない)を概略的に示している。
【0068】
提案されたリードシステムは、周囲内側コイル58又は他の非平坦な規則的又は不規則的表面構造を持ち得るドライバ52に取り付けられた(例えば、溶接された)螺旋体51を有し、電極間部分においてリード本体54の周囲材料とドライバ52との良好な接着を保証して、長期信頼性の向上のために部材点数の少ないリード先端部の単純で高剛性な耐久構造を得ている。ドライバ52は、リード本体54に固定支持され、ドライバ52を介して螺旋体51の回転駆動を可能とするためのねじ込みドライバ機能を有する別体のねじ込みスタイレット55の結合端部(係合部)56の挿入に適合されたねじ込みスタイレットアダプタ53と機械的及び電気的に接続される。標的領域において螺旋体51で感知された電気信号は、螺旋体51とねじ込みスタイレット55との間の電気的接続により、ねじ込みスタイレット55を介して信号分析器に送られ、例えば、ワニ口クランプの接続を解除することなくねじ込み操作の間に螺旋体51の正しい配置を監視するために使用され、単一ステップ操作(ねじ込み、クランプ接続、電気測定、クランプ接続解除、追加のねじ込み、クランプ接続等の更なるシーケンスが不要)を可能とする。
【0069】
ねじ込みスタイレット55の典型的な寸法は、0.30mmから0.50mmの範囲の公称直径、柔軟性を高めるために遠位部分では0.10mmから0.25mmの間の縮径、そして、0mmから200mmの間の縮径部分長さである。ねじ込みスタイレットは、ステンレス鋼(例えば、標準バージョンでは昔ながらのイノックス304又は306)又はトルク制限を維持して使用中の破損リスクを回避するのにより効率的で堅牢なニチノールのような高弾性材料により形成され得る。
【0070】
図5では、ねじ込みスタイレット55が、ドライバ52のアダプタ53に完全に挿入及び係合していない。
【0071】
アダプタ53は、ドライバ52と一体部材であってもよいし、結合端部56の形状又は寸法の異なる様々なタイプのねじ込みスタイレット55に適合できるようにドライバ52に対して取り外し可能又は取り外し不能に固定され得る。
【0072】
本実施形態では、ねじ込みスタイレットの結合端部56は、(ねじ込みドライバに類似した)平坦な形状から成る。アダプタ53は、ねじ込みスタイレット55の結合端部56を収容するための嵌合部(例えば、適合スロット又は凹部)を有する。
【0073】
より一般的には、ねじ込みスタイレット55の結合端部56は、ドライバ52の嵌合部にトルクが課されるように複数の空洞又は突起の1つから成る。例として、スロット型駆動タイプ、十字型駆動タイプ、四角型駆動タイプ、マルチ四角型駆動タイプ、内部六角型駆動タイプ、五角星型駆動タイプ、六角星型(トルクス(登録商標))駆動タイプ、組み合わせ(プラスマイナス)駆動タイプ、外部駆動タイプ又は異物混入防止駆動タイプが挙げられる。
【0074】
ドライバ52、オプションのアダプタ53及びねじ込みスタイレット55を備えたリードシステムの提案された構成は、医師の手から螺旋体51へのトルク伝達を最適化し、配置中にガイドカテーテル内でのリード本体54の摩擦を最小化する。
【0075】
更に、リード本体54は、陽極57と、螺旋体51(陰極)と陽極57との間のオプションの円錐形状電極間部分と、を有する。螺旋体51及び陽極57への電気信号(例えば、ペーシング信号)は、それぞれの被覆配線59によりリード装置に沿って伝達される。図5に示した例では、2本の絶縁された配線が各々の電極(すなわち、陽極57と螺旋体51の陰極)に使用されている。
【0076】
図5に示したリード装置の同心構造は、小さなサイズ(例えば、4.8F)のリード本体54とPU絶縁体との組み合わせを可能にする。更に、剛性勾配及び溶接部及び/又は接着部又は他の弱い接合点の数を最小化するために、最小限の部材点数で単純且つ堅牢な構造が提供され得る。剛性の高いドライバ52を取り囲む絶縁プラスチック材料は、高いレベルの中隔圧縮に曝されるこれら2つの部材間に残留ギャップが残らないように、ドライバ52上にリフローされ得る。これにより、局所的な屈曲応力及びその結果生じる経時的なプラスチック亀裂のリスクが防止され得る。
【0077】
図6は、螺旋体51におけるリードハウジングの遠位端の外径Dl、螺旋体51の外径Dh、近位溶接陽極57の外径Da、螺旋体51の長さLh、遠位螺旋体51及び螺旋体51と近位陽極57との間でドライバ52を囲むリード本体54のテーパ形状又は円錐形状部分を含むリード先端部の全長Ltを示し、完全に挿入されたねじ込みスタイレット55を備えた図5のリードシステムを概略的に示す。
【0078】
比Dh/Dlは0.8から1の間に設定される一方、Dhは1から1.8mm(好ましくは1.40mm)、Daは1.25mmから1.94mm(好ましくは1.66mm)、Ltは8から15mm、そしてLhは1.5から5mmの間に設定され得る。
【0079】
上述した寸法範囲を持つ提案の特定円錐形状は、螺旋体51を有するリード先端部が制御された滑らかな様式で標的領域において組織を穿刺するのに使用され得ることを保証する。
【0080】
図7は、実施形態に係る一体化操作ハンドル(ねじ込みドライバハンドル)83を有するねじ込みスタイレット55を備えた分解及び組み立てられたリードシステムを概略的に示す。
【0081】
図7において上段部分は、一体化操作ハンドル83と、リード装置のコネクタ(例えば、IS1コネクタ)82の中空端部81にねじ込みスタイレット55を固定するためのロック要素(例えば、金属製の側方ロックねじ)85と、を備えたねじ込みスタイレット55を示す。ねじ込みスタイレット55は、その遠位部分に、一定の小さな直径を有する可撓性部分に繋がる縮径した円錐部分及びリード装置のドライバ52に結合される平坦形状の結合端部56を有する。
【0082】
図7の中段部分には、螺旋体51、ねじ込みスタイレット55の結合端部56を挿入するための嵌合部が一体化されたドライバ52、コネクタ82及びその端部81を備えたリード装置が示されている。
【0083】
最後に図7の下段部分には、リード装置及び挿入結合されたねじ込みスタイレット55を備えた組立リードシステムが示されており、螺旋体51は、LBBPのために正しく配置されLBBからQRS信号を受信する。ねじ込みスタイレット55は、カテーテルのコネクタ82の中空端部81を通って挿入されることでドライバ52に結合され、コネクタ82の端部81は、ねじ込みスタイレット55を取り囲んでロック要素85を介して固定された一体化操作ハンドル83の環状開口部に挿入される。
【0084】
図7の実施形態では、信号分析器86が、カテーテルのコネクタ82の端部81を介してねじ込みスタイレット55と電気的に結合されたロック要素85に、ケーブル(例えば、ペーシングシステム分析器(PSA)ケーブル)84を介して接続され得る。
【0085】
これにより、LBBからのQRS信号は、螺旋体51、ドライバ52、ねじ込みスタイレット55、ロック要素85及びPSAケーブル84を介して、穿刺中にリード装置の適切な配置を監視するのに使用される信号分析器86に送られ得る。
【0086】
図7では概略的な機能要素のみ示され、ペーシング信号、リード先端部及び陽極のための配線は、簡潔さの理由から省略されていることに留意されたい。
【0087】
図7に示すように、リード装置のリード本体は、リード本体に加えられる力に応答して弾性伸長L+Δl(例えば、Δl=1-10mm)を許容するように構成され得る。その結果、接続システムの軸方向の弾性は、配置操作の間に穿刺プロセスに関連した多くの制約(牽引、押し付け、トルク、屈曲等)にもかかわらず、ねじ込みスタイレット55の平坦な結合端部56がドライバ52に安定且つ確実に係合するのを保証する圧縮力Fを発生させる。また、それは、ドライバ52とねじ込みスタイレット55との間の一時的な電気的接続を保証し、信号分析器86に転送される電気信号のアーチファクト又は他の干渉を低減する。
【0088】
一体化操作ハンドル83は、ねじ込みスタイレット55及びドライバ52を介して医師の手から螺旋体51への改善されたトルク伝達を達成するために、リード装置操作のための簡単な「ハンズフリー」ロックハンドルを与える。
【0089】
非格納式に固定された螺旋体51は、誤操作の危険がある格納機構のための専用工具が不要となるので、リード装置の取り扱いを容易にする。
【0090】
ねじ込みスタイレット55(リード装置のための別体適応アクセサリとして与えられ得る)は、困難な穿刺プロセスにおいて大きなトルク伝達のためのねじ込みドライバ機能を与える。ねじ込みスタイレット55は、リード先端部でドライバ52と直接係合し、それによって固定された螺旋体51への直接的で効率的なトルク伝達を可能にする。また、この提案された配置は、穿刺の間にリード装置の内部構造(例えば、接着及び/又は溶接部分等)に加えられる応力を最小化する。
【0091】
ねじ込みスタイレット55の材料及び設計は、ねじ込みスタイレット55の挿入中に標的領域から先端部が外れる危険性を回避するために、心臓内においてガイドカテーテルの2つのカーブを容易に通過するように、結合端部56前の最後の10cmで(例えば、円錐形及び/又は縮径部分を介して)高い可撓性を達成するように選択され得る。更に、小さくなった遠位径及び「ハンズフリー」の簡単なロックにも関わらず高いトルク伝達(リード本体より高い)が達成され、操作ハンドル83は、ねじ込み操作のためにドライバ52(又はアダプタ53)において嵌合部(例えば、レセプタクル)にねじ込みスタイレット55の遠位結合端部(例えば、平坦端部)56を係合させるために設けられている。
【0092】
図8は、ロック、トルク及びマップ機能を有するねじ込みスタイレット55により与えられる改善信号タップを備えた実施形態に係るリード装置の分解及び組立部分を概略的に示す。
【0093】
図7と同様に、図8では概略的な機能要素のみ示され、ペーシング信号、リード先端部及び陽極のための配線は、簡潔さの理由から省略されている。
【0094】
ここで、操作ハンドル83は、ねじ込みスタイレット55の端部が操作ハンドル83から突出し、ケーブル84、例えば、PSAケーブルを介して信号分析器86と接続するのに使用され得るように変更されている。
【0095】
そのため、ねじ込みスタイレット55の本体は、例えば、ケーブル84上のワニ口クランプを介したスタイレット本体周囲での回転/スライド式電気的接続をオプションとしたコスト削減「インライン」接続を達成するために、操作ハンドル83を通ってまっすぐに伸びている。
【0096】
図9は、実施形態に係るリード装置におけるねじ込みスタイレット55の操作ハンドル83の斜視図(左側)及び断面図(右側)を概略的に示している。
【0097】
平坦な結合端部56を有するねじ込みスタイレット55のワイヤ又は本体は、操作ハンドル83に(成形等によって)固定され、並進及び回転がロックされる。側方ロック要素85は、リード装置のコネクタ(例えば、IS1コネクタピン)の端部(不図示)に操作ハンドル83を一時的に接続/ロックするのに使用され得る。ねじ込みスタイレット55の突出端部は、信号分析器等にケーブルを接続するための接続端87を有する。
【0098】
医師は、螺旋体51が標的領域に到達するまで、例えば、ガイドカテーテルを介して血管を通してリード装置をスクリュースタイレット55無しで挿入し、リード装置を標的領域に配置する。そして、医師は、ねじ込みスタイレット55がドライバ52と係合するまでねじ込みスタイレット55を挿入し、リード装置のリード本体54の弾性伸長によってねじ込みスタイレット55の結合端部56とドライバ52との間に接続力を発生させるために、結合端部56とは反対側のコネクタ端部でねじ込みスタイレット55に固定された操作ハンドル83を押し込む。次に、医師は、接続力を維持するために、操作ハンドル83のロック要素85を用いてリード本体54に操作ハンドル83の位置をロックし、その後、標的領域(例えば、中隔)に螺旋体51をねじ込むために操作ハンドル83(又はコネクタ82)を回す。彼/彼女は、更に、ねじ込みスタイレット55を通じた一時的な電気的接続を使用して、螺旋体レベルでの電気的感知(例えば、QRS信号)をキャッチし、いつ螺旋体51がLBB又は別の標的部位に係合したのかを識別する。これは、操作ハンドル83(又はコネクタ82)を介した螺旋体51の簡単な片手(「ハンズフリー」)配置操作を可能とする。
【0099】
このように、提案された2要素リードシステムは、組み立てられたリード装置及びねじ込みスタイレット55の両端を一時的に固定又はロックするように構成され、ねじ込みスタイレット55の遠位平坦端部(結合端部56)は、リード本体54の弾性伸長で決定される所定の力でドライバ52の嵌合部に係合する。これにより、リード装置を配置するのに重要なねじ込み操作の間に、操作快適性の向上と共にトルク伝達の重要な一時的増加が達成され得る。リード装置及びねじ込みスタイレット55の両方は、1つの装置として一時的に操作され、医師の片手を解放し得る。
【0100】
図10は、実施形態に係るリードシステムで達成されるリードターン数に対するリードトルクを従来のリード装置と比較した図を示す。
【0101】
この図は、従来のリード装置及びねじ込みスタイレットのみで達成されるトルク曲線のグループ92と比較して、ねじ込みスタイレット及びドライバハンドルを備えた提案のリードシステムにより達成される改善されたトルク曲線90を示している。
【0102】
より具体的には、改善されたトルク曲線90は、グループ92の最も上側の曲線(ねじ込みスタイレットのみに対応)とリード装置のみの曲線(グループ92の下側の曲線の1つ)との和に対応する。ねじ込みスタイレット単独でも程良いトルク伝達を与えるものの(約10%から20%の増加)、ねじ込みスタイレット及びリード本体両方の合計は、リード装置のみに対して100%のトルク増加に繋がる。その結果、リード装置を配置する際の提案されたリードシステムの両要素(ねじ込みスタイレットとリード装置)の一時的接続は、トルク伝達及び医師にとっての使いやすさを大幅に改善する。2つの要素の一時的接続無しに同じ性能を達成するには、医師が両装置を同時に同じ速度で回転させなければならないが、彼/彼女がこの重要なステップで多くの他のこと(例えば、分析器信号、患者パラメータ等)に注意を払わなければならないことを考慮すると、これはかなり困難である。
【0103】
図10から理解できるように、改善されたトルク曲線90は、ターンの増加に伴ってリードトルクのかなり安定した増加を示しており、これは、中隔又は他の標的領域にリード装置の螺旋体を円滑且つ予測可能に前進させることを容易にする。
【0104】
図11は、螺旋体51と溶接陽極57との間のリード本体54の電極間部分の外表面に成形又はその他の方法で形成された若しくは取り付けられたねじ込み構造120を備えたリード装置を示す。ねじ込み構造120は、プラスチック材料(例えば、PU)により形成され得る。ねじ込み構造の巻ピッチは、LBBPのための標的領域(例えば、中隔)における組織穿刺の際に、螺旋体51に続いて電極間部分のスムーズな挿入を可能とするために、螺旋体51のピッチに実質的に対応している。
【0105】
更に、ねじ込み構造120を備えたリード装置は、他の実施形態に関連して上で説明したねじ込みスタイレットと共に又はねじ込みスタイレット無しで使用され得る。第1のケースでは、図11のリード装置は、ねじ込みスタイレットに結合可能なドライバを含む。
【0106】
図11のリード装置及び図7図8の他のリード装置における先端部の寸法は、図6に示したものに対応し得ることに留意されたい。
【0107】
要約すると、改善された穿刺能力と信頼性を備えたリード装置が記載されている。リード装置先端部の提案された構造、形状及び寸法は、高い信頼性と長寿命で標的領域での中隔又は他の組織を貫通した制御された滑らかな穿刺プロセスを可能とするように構成されている。固定された螺旋体は、取り扱いを容易にするために与えられ、ねじ込みドライバ機能を有する付加的なねじ込みスタイレットは、穿刺プロセスのより良い制御のためにリード装置先端部へのトルク伝達を改善するのに与えられ得る。
【0108】
本発明が図面及び前述の説明により詳細に図示及び説明されたが、そのような図示及び説明は、図示的又は例示的なものであり制限的なものではない。本発明は、開示された実施形態に限定されない。本発明は、様々なタイプのリード装置(例えば、マルチルーメン、同軸又は同心構造を有する徐脈又は頻脈リード装置)及び心臓ペーシング又はセンシングシステム分野における応用に適用可能である。更に、ねじ込みスタイレットは、リード本体から取り外し不可能なリード装置の一体要素として与えられてもよい。
【0109】
開示された実施形態に対する他の変形は、図面、開示及び添付の特許請求の範囲の研究から、請求された発明を実施するに当たって当業者により理解及び実施され得る。特許請求の範囲において、「有する」という語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を排除するものではない。特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用され得ないことを示すものではない。前述の説明は、本発明の特定の実施形態を詳述している。しかしながら、前述の内容が本文中でいかに詳細に記載されているとしても、本発明は多くの方法で実施可能で、その結果、開示された実施形態に限定されないことが理解されよう。本発明の特定の性質又は態様を説明する際の特定の用語の使用は、その用語が関連付けられる本発明の性質又は態様の特定の特徴を含むよう限定するために、その用語がここで再定義されることを意味するものではないことに留意されたい。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】