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特表2025-532969エクソンスキッピングのためのアンチセンスオリゴヌクレオチド、組成物および医薬製剤
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  • 特表-エクソンスキッピングのためのアンチセンスオリゴヌクレオチド、組成物および医薬製剤 図1
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  • 特表-エクソンスキッピングのためのアンチセンスオリゴヌクレオチド、組成物および医薬製剤 図14
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-10-03
(54)【発明の名称】エクソンスキッピングのためのアンチセンスオリゴヌクレオチド、組成物および医薬製剤
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20250926BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20250926BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20250926BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250926BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250926BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250926BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20250926BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20250926BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250926BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
A61K31/7088
A61K48/00
A61P25/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P25/28
A61P21/00
C12N15/63 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2025518584
(86)(22)【出願日】2023-10-09
(85)【翻訳文提出日】2025-05-23
(86)【国際出願番号】 CN2023123640
(87)【国際公開番号】W WO2024067885
(87)【国際公開日】2024-04-04
(31)【優先権主張番号】63/377,946
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522319815
【氏名又は名称】アソキュラ・ファーマシューティカルズ・スージョウ・カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ASOCURA PHARMACEUTICALS SUZHOU CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】H56,3RD Floor,North Building,A1,No.218,Xinghu Street,SuZhou Industrial Park,SuZhou,Jiangsu Province 215123,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】フワー、イーミン
(72)【発明者】
【氏名】フェン、ペンチャオ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA161
4C084ZA162
4C084ZA941
4C084ZA942
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA16
4C086ZA94
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
本技術は、プレmRNAスプライシング中にエクソンスキッピングを生成または促進する新規アンチセンスオリゴヌクレオチド(「ASO」)、そのようなASOを含有する医薬組成物、およびそれらの使用を提供する。ASO(例えば、二分性ASO)は、標的配列と、標的配列の5′末端および/または3′末端に動作可能に連結された5′スプライス部位デコイ配列とを含む。デコイ配列は、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個のヌクレオチドの長さを有し、その一部がU1 snRNAの一本鎖5′末端と相補的であり得る。標的配列は、対象領域、例えば目的のエクソン、目的のエクソンの上流または下流の隣接イントロン配列、または目的のエクソンの上流または下流のイントロン-エクソンジャンクションなどにハイブリダイズする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的配列と、前記標的配列の5′末端および/または3′末端に動作可能に連結された5′スプライス部位デコイ配列とを含むか、またはそれらからなるオリゴヌクレオチドであって、
前記デコイ配列が、U1 snRNAの一本鎖5′末端に相補的な5、6、7、8、9、10、または11個のヌクレオチドのヌクレオチド配列を含み、
前記標的配列が、目的のエクソン、前記目的のエクソンの上流の隣接イントロン配列、前記目的のエクソンの下流の隣接イントロン配列、前記目的のエクソンの上流のイントロン-エクソンジャンクション、および前記目的のエクソンの下流のイントロン-エクソンジャンクションからなる群から選択される配列とハイブリダイズし、
前記標的配列の5′末端に動作可能に連結された前記デコイ配列と、前記標的配列の3′末端に動作可能に連結された前記デコイ配列が、同一であるかまたは異なる、オリゴヌクレオチド。
【請求項2】
前記デコイ配列が、配列番号1~23および347~353のヌクレオチド配列からなる群から独立して選択される1つ以上のヌクレオチド配列を含むか、またはそれらからなる、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
前記目的のエクソンが、内因性SMN1およびSMN2遺伝子のエクソン7、内因性DMD遺伝子のエクソン45、51、および52、内因性APP遺伝子のエクソン17、内因性CEP290遺伝子のエクソン41、内因性HER2遺伝子のエクソン19、SCA3遺伝子のエクソン10、内因性PKM遺伝子のエクソン10、および内因性MDM4遺伝子のエクソン6からなる群から選択される、請求項1または2に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
前記標的配列が、配列番号25、29、33、37、41、45、49、75、92、124、156、188、220、252、284、および316のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる、請求項1~3のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
前記標的配列が、前記デコイ配列に直接連結される、請求項1~4のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
前記標的配列が、1、2、3、4、または5つのヌクレオチドを有するリンカーを介して前記デコイ配列に連結される、請求項1~4のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
デコイ配列が前記標的配列の5′末端および3′末端に動作可能に連結された場合、前記標的配列と前記標的配列の5′末端にある前記デコイ配列との間の前記リンカーと、前記標的配列と前記標的配列の3′末端にある前記デコイ配列との間の前記リンカーとが、同一でも異なってもよい、請求項1~6のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
配列番号26~27、30~31、34~35、38~39、42~43、46~47、50~73、76~90、93~122、125~154、157~186、189~218、221~250、253~282、285~314、317~346、および354~356のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
配列番号26、30、31、34、38、42、46、50、51、60、64、65、68、70、78、83、85、86、87、88、89、103、109、110、114、115、116、127、132、144、164、189、205、213、216、228、260、276、292、294、297、298、312、320、324、327、328、332、および354のヌクレオチド配列からなる群から選択される、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
例えば、限定されないが、ホスホジエステルまたはホスホロチオエート骨格を有する2′-O-メトキシエチル修飾オリゴヌクレオチド、およびホスホロダミデートモルホリノオリゴマーからなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド類似体を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドと、薬学的に許容可能な担体とを含む組成物。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドをコードするベクター。
【請求項13】
プレmRNAスプライシング中に目的のエクソンのエクソンスキッピングを生成または促進する方法であって、細胞または被験者内のプレmRNAを、請求項1~10のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、請求項11に記載の組成物、および/または請求項12に記載のベクターと接触させて、読み枠を復元するか、または新しいスプライシングアイソフォームを生成することを含む、方法。
【請求項14】
ASO媒介のエクソンスキッピングが、目的の遺伝子のエクソン、イントロンまたは特定のスプライス部位のスプライシングを阻害することによって、目的の遺伝子の発現を操作し、それにより欠陥のある目的の遺伝子の読み枠を復元し、目的の遺伝子の異なるアイソフォーム(例えば、ドミナントネガティブアイソフォーム)を生成し、前記遺伝子の毒性部分をスキッピングし、前記遺伝子をサイレンシングし、および/または遺伝子の構造および機能を変更することにつながる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
細胞または被験者内の目的のエクソン、前記目的のエクソンの上流の隣接イントロン配列、前記目的のエクソンの下流の隣接イントロン配列、前記目的のエクソンの上流のイントロン-エクソンジャンクション、および前記目的のエクソンの下流のイントロン-エクソンジャンクションからなる群から選択される配列にハイブリダイズ可能な標的配列のエクソンスキッピングの有効性および/または効率を向上させる方法であって、
請求項1~10のいずれか一項に記載の標的配列およびデコイ配列を含む1つ以上のオリゴヌクレオチドを得ることを含む、方法。
【請求項16】
前記1つ以上のオリゴヌクレオチドを、そのエクソンスキッピングの有効性および/または前記目的のエクソンの効率に従ってスクリーニングすることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記目的の遺伝子が、SMN1、SMN2、DMD、APP、CEP290、HER2、SCA3、PKM、およびMDM4遺伝子からなる群から選択される、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記目的の遺伝子の前記エクソンが、前記内因性SMN1およびSMN2遺伝子のエクソン7、前記内因性DMD遺伝子のエクソン45、51、および52、前記内因性APP遺伝子のエクソン17、前記内因性CEP290遺伝子のエクソン41、前記内因性HER2遺伝子のエクソン19、前記SCA3遺伝子のエクソン10、前記内因性PKM遺伝子のエクソン10、および前記内因性MDM4遺伝子のエクソン6からなる群から選択される、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1~10のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、請求項11に記載の組成物、および/または請求項12に記載のベクターを前記細胞に送達するか、または前記被験者に投与することをさらに含む、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
被験者における疾患および/またはその合併症を治療する方法であって、請求項1~10のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、請求項11に記載の組成物、および/または請求項12に記載のベクターを前記被験者に投与することを含み、前記オリゴヌクレオチドが目的のエクソンのエクソンスキッピングを生成または促進する、方法。
【請求項21】
前記オリゴヌクレオチドが、目的の遺伝子のエクソン、イントロンまたは特定のスプライス部位のスプライシングを阻害することによって、欠陥のある目的の遺伝子の読み枠を復元し、目的の遺伝子の異なるアイソフォーム(例えば、ドミナントネガティブアイソフォーム)を生成し、前記遺伝子の毒性部分をスキッピングし、前記遺伝子をサイレンシングし、および/または遺伝子の構造および機能を変更する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記疾患および/またはその合併症が、SMN1、SMN2、DMD、APP、CEP290、HER2、SCA3、PKM、およびMDM4遺伝子からなる群から選択される1つ以上の遺伝子に対するエクソンスキッピングから利益を受け得る疾患および/またはその合併症からなる群から選択される、請求項20または請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記疾患および/またはその合併症が、前記内因性SMN1およびSMN2遺伝子のエクソン7、前記内因性DMD遺伝子のエクソン45、51、および52、前記内因性APP遺伝子のエクソン17、前記内因性CEP290遺伝子のエクソン41、前記内因性HER2遺伝子のエクソン19、前記SCA3遺伝子のエクソン10、前記内因性PKM遺伝子のエクソン10、および前記内因性MDM4遺伝子のエクソン6からなる群から選択される1つ以上のエクソンのエクソンスキッピングから利益を受け得る疾患および/またはその合併症からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記疾患および/その合併症が、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、アルツハイマー病、ジュベール症候群、脊髄小脳失調症3(SCA3)、乳癌、HER2陽性胆道癌、大腸癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、前立腺癌、肺癌、子宮頸癌、腎臓癌、甲状腺乳頭癌、結腸癌、大腸癌、神経膠腫、卵巣癌、胃癌、肝芽腫、線維層状癌、肝細胞癌、軟部組織肉腫、骨肉腫、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、マントル細胞リンパ腫、小児バーキットリンパ腫、唾液腺癌、肝臓癌、または黒色腫からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1~10のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、請求項11に記載の組成物、および/または請求項12に記載のベクターが治療有効量で投与される、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
請求項13~25のいずれか一項に記載の方法に使用するための、請求項1~10のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、請求項11に記載の組成物、および/または請求項12に記載のベクターを含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2022年9月30日に出願された米国仮特許出願第63/377,946号の利益を主張し、図面を含むその全文が参照により組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
エクソンスキッピングのための主なツールはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)である。ASOは、スプライス部位またはスプライシング調節エレメントに結合することで、エクソンスキッピングを生成または強化することができる。スプライシングプロセスは、スプライス部位の選択に影響を与えるさまざまなシス作用エレメントとトランス作用因子によって調節できる。ASOは、RNA結合タンパク質(RBP)またはsnRNAの特定の部位への結合を妨げるか、または二次RNA構造を破壊するため、標的とする配列に応じてプレmRNAスプライシングを促進または阻害する。(Matlin A, et al. Understanding alternative splicing: towards a cellular code. 2005 May. Nat. Rev. Mol. Cell Bio. 6:386-398. doi: 10.1038/nrm1645. Aartsma-Rus A, et al. Exonic sequences provide better targets for antisense oligonucleotides than splice site sequences in the modulation of Duchenne muscular dystrophy splicing. Oligonucleotides. 2010 Apr; 20(2):69-77. doi: 10.1089/oli.2009.0215)
【0003】
読み枠を破壊する変異に関連するヒトの遺伝性疾患の一例としては、進行性の筋ジストロフィーの一種で、骨格筋および心筋の進行性の衰弱および喪失(萎縮)を引き起こすデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)がある。筋力低下は加齢とともに悪化し、腕、脚および体幹にまで進行する。DMDを患う子供のほとんどは、13歳までに常時車椅子を使用する。心臓と呼吸筋の問題は10代に始まり、重篤で生命を脅かす合併症を引き起こす。
【0004】
DMDは、DMD遺伝子の変異によって引き起こされる。DMD遺伝子は、タンパク質ジストロフィンに対してコードする。ジストロフィンは主に骨格筋細胞と心筋細胞で生成されるが、脳の特定の部分におけるニューロンでも少量生成される。DMDは、X染色体連鎖の劣性遺伝パターンで遺伝する。ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)も、DMD遺伝子の変異によって引き起こされる。BMDの患者は、DMDの患者よりも症状が軽い。
【発明の概要】
【0005】
本技術のある態様は、一般的に、新規アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、プレmRNAスプライシング中に目的のエクソンのスキッピングを生成または促進するためにそのようなASOを使用する方法、そのようなASOを含む組成物(例えば、医薬組成物)、およびそのような組成物を使用して疾患および/またはその合併症を治療する方法に関する。ASO媒介のエクソンスキッピングは、目的の遺伝子の発現を操作するためのアプローチであってもよい。目的の遺伝子の発現は、エクソンスキッピングを誘発するためにASOによって操作され、それによりフレームシフト変異によって引き起こされた読み枠の修正、遺伝子の毒性部分のスキッピング、遺伝子のサイレンシング、ドミナントネガティブアイソフォームの作成、または遺伝子の構造と機能の変更など(ただし、これらに限定されない)につながる場合がある。目的の遺伝子のエクソンスキッピングは、当該目的の遺伝子が疾患の原因である場合もそうでない場合もあるが、疾患および/またはその合併症の治療に有益であり得る。疾患は、本明細書に開示されるように、遺伝性疾患または非遺伝性疾患(例えば、一部の非遺伝性癌、代謝性疾患、または感染性疾患)である場合がある。遺伝性疾患は、スプライシング欠損と関連している場合もそうでない場合もある。
【0006】
いくつかの態様では、本技術は、標的配列(「ASO標的配列」とも呼ばれる)と、標的配列の5′末端および/または3′末端に動作可能に連結された5′スプライス部位デコイ配列(「ASOデコイ」、「ASOデコイ配列」、「デコイ配列」または「デコイ」とも呼ばれる)とを含むかまたはそれらからなる、二分性ASOとも呼ばれるオリゴヌクレオチドを提供する。デコイ配列は、U1 snRNAの一本鎖5′末端の一部または全部に相補的な5、6、7、8、9、10、または11個のヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む場合がある。標的配列は、目的のエクソン、目的のエクソンの上流の隣接イントロン配列、目的のエクソンの下流の隣接イントロン配列、目的のエクソンの上流のイントロン-エクソンジャンクション、および目的のエクソンの下流のイントロン-エクソンジャンクションからなる群から選択される配列とハイブリダイズする。デコイ配列は、最適な5′スプライス部位に似ている場合がある。
【0007】
同じ標的配列を含むASOのある実施形態では、デコイ配列を含むASOは、標的配列からなるASOよりも高いエクソンスキッピング効果および/または効率を有してもよい。エクソンスキッピング効果および/または効率は、各遺伝子の全転写産物における目的のエクソンの排除率(%excl、エクソンスキッピング率とも呼ばれる)によって定量化さてもよい。ある実施形態では、排除率の増加によって定量化された改善は、約14倍以上、約15倍以上、約16倍以上、または約17倍以上となることがある。
【0008】
いくつかの実施形態では、ASOデコイ配列は、配列番号1~23および347~353からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。
【0009】
目的のエクソンの例としては、限定されないが、内因性SMN1およびSMN2遺伝子のエクソン7、内因性DMD遺伝子のエクソン45、51および53、内因性APP遺伝子のエクソン17、内因性CEP290遺伝子のエクソン41、内因性HER2遺伝子のエクソン19、SCA3遺伝子のエクソン10、内因性PKM遺伝子のエクソン10、および内因性MDM4遺伝子のエクソン6が挙げられる。
【0010】
いくつかの実施形態では、ASO標的配列は、配列番号25、29、33、37、41、45、49、75、92、124、156、188、220、252、284、および316のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。
【0011】
標的配列は、デコイ配列に直接、または(例えば、限定されないが1、2、3、4、または5つのヌクレオチドの長さを有する)リンカーを介して連結されてもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、ASO(例えば、二分性ASO)は、配列番号26~27、30~31、34~35、38~39、42~43、46~47、50~73、76~90、93~122、125~154、157~186、189~218、221~250、253~282、285~314、317~346、および354~356からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。
【0013】
いくつかの実施形態では、ASO(例えば、二分性ASO)は、少なくとも1つのヌクレオチド類似体を含む。ヌクレオチド類似体の例としては、ホスホジエステルまたはホスホロチオエート骨格を有する2′-O-メトキシエチル(MOE)修飾オリゴヌクレオチド、およびホスホロダミデートモルホリノオリゴマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
いくつかの態様では、本技術は、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)および薬学的に許容可能な担体を含む組成物を提供する。ある実施形態では、組成物は、医薬製剤または組成物である。
【0015】
いくつかの態様では、本技術は、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)をコードするベクターを提供する。
【0016】
いくつかの態様では、本技術は、細胞または被験者内のプレmRNAを、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)を含む組成物(例えば、医薬組成物)、および/または本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)をコードするベクターと接触させることを含む、プレmRNAのスプライシング中に目的のエクソンのエクソンスキッピングを生成または促進する方法を提供する。いくつかの実施形態では、この方法は、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)を細胞に送達するか、または被験者に投与することをさらに含む。ASO媒介のエクソンスキッピングは、目的の遺伝子の発現を操作するためのアプローチであってもよい。目的の遺伝子の発現は、目的の遺伝子のエクソン、イントロン、または特定のスプライス部位のスプライシングを阻害するためにASOによって操作され、それにより例えば、限定されないが、目的の遺伝子の欠陥の読み枠の復元、目的の遺伝子の異なるアイソフォーム(例えば、ドミナントネガティブアイソフォーム)の生成、遺伝子の毒性部分のスキッピング、遺伝子のサイレンシング、および/または遺伝子の構造および機能の変更につながる場合がある。
【0017】
いくつかの態様では、本技術は、標的配列のエクソンスキッピングの有効性および/または効率を改善する方法を提供し、この方法は、標的配列と、標的配列の5′末端および/または3′末端に動作可能に連結されたデコイ配列とを含む1つ以上のASO(例えば、二分性ASO)を取得することを含み、上記のデコイ配列は、U1 snRNAの一本鎖5′末端の一部または全部に相補的な5、6、7、8、9、10、または11個のヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む。デコイ配列は、最適な5′スプライス部位に似ている場合がある。ある実施形態では、この方法は、1つ以上のASO(例えば、二分性ASO)を、その目的のエクソンのエクソンスキッピングの有効性および/または効率に従ってスクリーニングすることをさらに含む。エクソンスキッピングの効果および/または効率は、各遺伝子の全転写産物における目的のエクソンの排除率(%excl)によって定量化されてもよい。標的配列は、細胞または被験者内の目的のエクソン、目的のエクソンの上流の隣接イントロン配列、目的のエクソンの下流の隣接イントロン配列、目的のエクソンの上流のイントロン-エクソンジャンクション、および目的のエクソンの下流のイントロン-エクソンジャンクションからなる群から選択される配列とハイブリダイズできる場合がある。
【0018】
いくつかの態様では、本技術は、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)を含む組成物(例えば、医薬組成物)、および/または本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)をコードするベクターを被験者に投与することを含む、被験者における疾患および/またはその合併症を治療する方法を提供する。ASO(例えば、二分性ASO)は、プレmRNAスプライシング中に目的のエクソンのスキッピングを生成または促進する場合がある。ASO媒介のエクソンスキッピングは、目的の遺伝子の発現を操作するためのアプローチであってもよい。目的の遺伝子の発現は、目的の遺伝子のエクソン、イントロン、または特定のスプライス部位のスプライシングを阻害するためにASOによって操作され、それにより例えば、限定されないが、目的の遺伝子の欠陥の読み枠の復元、目的の遺伝子の異なるアイソフォーム(例えば、ドミナントネガティブアイソフォーム)の生成、遺伝子の毒性部分のスキッピング、遺伝子のサイレンシング、および/または遺伝子の構造および機能の変更につながる場合がある。ASOによる目的の遺伝子の表現の操作は、当該目的の遺伝子が疾患の原因である場合もそうでない場合もあるが、疾患および/またはその合併症の治療に有益であり得る。疾患は、本明細書に開示されるように、遺伝性疾患または非遺伝性疾患(例えば、一部の非遺伝性癌、代謝性疾患、または感染性疾患)である場合がある。遺伝性疾患は、スプライシング欠損に関する変異と関連している場合もそうでない場合もある。
【0019】
疾患および/またはその合併症の例としては、限定されないが、SMN1、SMN2、DMD、APP、CEP290、HER2、SCA3、PKM、およびMDM4遺伝子からなる群から選択される1つ以上の遺伝子のエクソンスキッピングから利益を受け得る疾患および/またはその合併症が挙げられる。例えば、限定されないが、疾患および/またはその合併症は、内因性SMN1およびSMN2遺伝子のエクソン7、内因性DMD遺伝子のエクソン45、51および53、内因性APP遺伝子のエクソン17、内因性CEP290遺伝子のエクソン41、内因性HER2遺伝子のエクソン19、SCA3遺伝子のエクソン10、内因性PKM遺伝子のエクソン10、および内因性MDM4遺伝子のエクソン6からなる群から選択される1つ以上のエクソンのエクソンスキッピングによって治療されることがある。疾患の例としては、限定されないが、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、アルツハイマー病、ジュベール症候群、脊髄小脳失調症3(SCA3)、および癌(限定されないが、例えば乳癌、HER2陽性胆道癌、大腸癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、前立腺癌、肺癌、子宮頸癌、腎臓癌、甲状腺乳頭癌、結腸癌、大腸癌、神経膠腫、卵巣癌、胃癌、肝芽腫、線維層状癌、肝細胞癌、軟部組織肉腫、骨肉腫、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、マントル細胞リンパ腫、小児バーキットリンパ腫、唾液腺癌、肝臓癌、および黒色腫)が挙げられる。ある実施形態では、ASO(例えば、二分性ASO)、ASO(例えば、二分性ASO)を含む組成物(例えば、医薬組成物)、および/またはASO(例えば、二分性ASO)をコードするベクターが治療有効量で投与される。
【0020】
いくつかの態様では、本技術は、目的のエクソンのエクソンスキッピングを生成または促進するための、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)を含む組成物(例えば、医薬組成物)、および/または本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)をコードするベクターの使用を提供する。ASO媒介のエクソンスキッピングは、目的の遺伝子の発現を操作するためのアプローチであってもよい。目的の遺伝子の発現は、目的の遺伝子のエクソン、イントロン、または特定のスプライス部位のスプライシングを阻害するためにASOによって操作され、それにより例えば、限定されないが、目的の遺伝子の欠陥の読み枠の復元、目的の遺伝子の異なるアイソフォーム(例えば、ドミナントネガティブアイソフォーム)の生成、遺伝子の毒性部分のスキッピング、遺伝子のサイレンシング、および/または遺伝子の構造および機能の変更につながる場合がある。目的のエクソンおよび目的の遺伝子の例としては、限定されないが、本明細書に開示されるものが挙げられる。
【0021】
いくつかの態様では、本技術は、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)を含む組成物(例えば、医薬組成物)、および/または本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)をコードするベクターの、疾患および/またはその合併症の治療への使用を提供する。疾患の例としては、本明細書に開示されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
いくつかの態様では、本技術は、目的のエクソンのエクソンスキッピングの生成または促進に使用するための、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)を含む組成物(例えば、医薬組成物)、および/または本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)をコードするベクターを提供する。ASO媒介のエクソンスキッピングは、目的の遺伝子の発現を操作するためのアプローチであってもよい。目的の遺伝子の発現は、目的の遺伝子のエクソン、イントロン、または特定のスプライス部位のスプライシングを阻害するためにASOによって操作され、それにより例えば、限定されないが、目的の遺伝子の欠陥の読み枠の復元、目的の遺伝子の異なるアイソフォーム(例えば、ドミナントネガティブアイソフォーム)の生成、遺伝子の毒性部分のスキッピング、遺伝子のサイレンシング、および/または遺伝子の構造および機能の変更につながる場合がある。目的のエクソンおよび目的の遺伝子としては、限定されないが、本明細書に開示されるものが挙げられる。
【0023】
いくつかの態様では、本技術は、疾患および/またはその合併症の治療への使用のための、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)を含む組成物(例えば、医薬組成物)、および/または本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)をコードするベクターを提供する。疾患および/またはその合併症の例としては、本明細書に開示されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
いくつかの態様では、本技術は、目的のエクソンのエクソンスキッピングの生成または促進に使用するための、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)を含む組成物(例えば、医薬組成物)、および/または本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)をコードするベクターを含むキットを提供する。ASO媒介のエクソンスキッピングは、目的の遺伝子の発現を操作するためのアプローチであってもよい。目的の遺伝子の発現は、目的の遺伝子のエクソン、イントロン、または特定のスプライス部位のスプライシングを阻害するためにASOによって操作され、それにより例えば、限定されないが、目的の遺伝子の欠陥の読み枠の復元、目的の遺伝子の異なるアイソフォーム(例えば、ドミナントネガティブアイソフォーム)の生成、遺伝子の毒性部分のスキッピング、遺伝子のサイレンシング、および/または遺伝子の構造および機能の変更につながる場合がある。目的のエクソンおよび目的の遺伝子の例としては、限定されないが、本明細書に開示されるものが挙げられる。
【0025】
いくつかの態様では、本技術は、疾患および/またはその合併症の治療への使用のための、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)を含む組成物(例えば、医薬組成物)、および/または本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)をコードするベクターを含むキットを提供する。疾患および/またはその合併症としては、本明細書に開示されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1A~1Bは、1)標的核酸(例えば、プレmRNA)内の対象領域と完全にまたは実質的に相補的な「標的」配列、および2)標的配列のすぐ隣に位置する「デコイ」配列(すなわち、デコイ配列は標的配列の隣接領域にある)を含む、本技術のASO(例えば、二分性ASO)のいくつかの概略図を示す。図1Aは、デコイ配列が標的配列の5′末端のすぐ上流(左)および標的配列の3′末端のすぐ下流(右)にそれぞれ位置する二分性ASOの2つの概略図を示す。図1Bは、いかなる特定の理論にも拘束されることなく、図1Aの二分性ASOが、デコイ配列が標的配列の5′末端のすぐ上流に位置する目的のエクソンのスキッピングをどのように生成または促進するかについての1つの可能なメカニズムを示す。デコイ配列は、最適な5′スプライス部位に似ており、U1 snRNAの5′末端の自由一本鎖配列の一部または全部と相補的であり得るため、U1 snRNAによる近くの真正の5′スプライス部位の認識を妨害することができる。
図2図2A~2Dは、3つの標的配列(2203、1938、および0120)のうちの1つを含むASOを使用した、HEK293細胞内のSMN1およびSMN2遺伝子におけるエクソン7スキッピングに対するデコイ配列11(配列番号21)の存在および/または位置の影響を示す。図2Aは、SMN1およびSMN2遺伝子の3つの試験された標的配列(2203、1938、および0120)のおおよその結合位置の概略図を示す。図2Bは、SMN1およびSMN2遺伝子における標的配列2203を含むASOのエクソン7スキッピング効果を示す。図2Bの左図は、標的配列2203のみ(2203)、5′末端にデコイ配列11が付着した標的配列2203(2203-L11)、および3′末端にデコイ配列11が付着した標的配列2203(2203-R11)をそれぞれ有するASO(12.5nM、25nM、または50nM)でトランスフェクトされたHEK293細胞におけるSMN1およびSMN2の代表的な半定量的蛍光RT-PCRイメージング分析を示す。図2Bの中央の図は、平均±標準偏差(n=3、2203と比較して**P<0.01)として表される、同じASOを用いたSMN1におけるエクソン7スキッピング(%excl)の定量化を示し、各濃度の3つの列の左側に2203のデータ、中央に2203-L11のデータ、右側に2203-R11のデータが示される。図2Bの右図は、平均±標準偏差(n=3、2203と比較して**P<0.01)として表される、同じASOを用いたSMN2におけるエクソン7スキッピング(%excl)の定量化を示し、各濃度の3つの列の左側に2203のデータ、中央に2203-L11のデータ、右側に2203-R11のデータが示される。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。図2Cは、SMN1およびSMN2における標的配列1938を含むASOのエクソン7スキッピング効果を示す。図2Cの左図は、標的配列1938のみ(1938)、5′末端にデコイ配列11が付着した標的配列1938(1938-L11)、および3′末端にデコイ配列11が付着した標的配列1938(1938-R11)をそれぞれ有するASO(12.5nM、25nM、または50nM)でトランスフェクトされたHEK293細胞におけるSMN1およびSMN2の代表的な半定量的蛍光RT-PCRイメージング分析を示す。図2Cの中央の図は、平均±標準偏差(n=3、*P<0.05、1938と比較して**P<0.01)として表される、同じASOを用いたSMN1におけるエクソン7スキッピング(%excl)の定量化を示し、各濃度の3つの列の左側に1938のデータ、中央に1938-L11のデータ、右側に1938-R11のデータが示される。図2Cの右図は、平均±標準偏差(n=3、*P<0.05、1938と比較して**P<0.01)として表される、同じASOを用いたSMN2におけるエクソン7スキッピング(%excl)の定量化を示し、各濃度の3つの列の左側に1938のデータ、中央に1938-L11のデータ、右側に1938-R11のデータが示される。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。図2Dは、SMN1およびSMN2における標的配列0120を含むASOのエクソン7スキッピング効果を示す。図2Dの左図は、標的配列0120のみ(0120)、5′末端にデコイ配列11が付着した標的配列0120(0120-L11)、および3′末端にデコイ配列11が付着した標的配列0120(0120-R11)をそれぞれ有するASO(12.5nM、25nM、または50nM)でトランスフェクトされたHEK293細胞におけるSMN1およびSMN2の代表的な半定量的蛍光RT-PCRイメージング分析を示す。図2Dの中央の図は、平均±標準偏差(n=3、0120と比較して**P<0.01)として表される、同じASOを用いたSMN1のエクソン7スキッピング(%excl)の定量化を示し、各濃度の3つの列の左側に0120のデータ、中央に0120-L11、右側に0120-R11が示される。図2Dの右図は、平均±標準偏差(n=3、0120と比較して**P<0.01)として表される、同じASOを用いたSMN2におけるエクソン7スキッピング(%excl)の定量化を示し、各濃度の3つの列の左側に0120のデータ、中央に0120-L11のデータ、右側に0120-R11のデータが示される。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。
図3図3A~3Bは、4つの標的配列(148、155、165、およびエテプリルセン(Etep))のうちの1つを含むASOを用いた横紋筋肉腫(RD)細胞内のDMD遺伝子におけるエクソン51スキッピングに対するデコイ配列11の存在および/または位置の影響を示す。図3Aは、DMD遺伝子内の3つの標的配列(148、155、および165)のうちの1つを含むASOのエクソン51スキッピング効果を示す。図3Aの左図は、デコイ配列のない3つの標的配列(148、155、および165)、5′末端にデコイ配列11が付着した標的配列(148-L11、155-L11、および165-L11)、または3′末端にデコイ配列11が付着した標的配列(148-R11、155-R11、および165-R11)の1つを有するASO(50nM)でトランスフェクトされたRD細胞を用いた代表的な半定量的蛍光RT-PCRイメージング分析を示す。図3Aの右図は、デコイ配列のない3つの標的配列(148、155、および165)、5′末端にデコイ配列11が付着した標的配列(148-L11、155-L11、および165-L11)、または3′末端にデコイ配列11が付着した標的配列(148-R11、155-R11、および165-R11)の1つを有するASO(50nM)でトランスフェクトされたRD細胞内のDMDにおける、平均±標準偏差(n=4、*P<0.05(148-L11対148)、**P<0.01(155-L11対155、165-L11対165))として表されるエクソン51スキッピング(%excl)の定量化を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。図3Bは、DMD遺伝子内の標的配列Etepを含むASOのエクソン51スキッピング効果を示す。図3Bの左図は、デコイ配列のない標的配列Etep(Etep)、5′末端にデコイ配列11が付着した標的配列(Etep-L11)、または3′末端にデコイ配列11が付着した標的配列(Etep-R11)を有するASO(12.5nM、25nM、または50nM)でトランスフェクトされたRD細胞を用いた代表的な半定量的蛍光RT-PCRイメージング分析を示す。図3Bの右図は、デコイ配列のない標的配列(Etep、各濃度の3つの列のうち左側)、5′末端にデコイ配列11が付着した標的配列(Etep-L11、各濃度の3つの列のうち中央)、または3′末端にデコイ配列11が付着した標的配列(Etep-R11、各濃度の3つの列のうち右側)を有するASO(12.5nM、25nM、または50nM)でトランスフェクトされたRD細胞内のDMDにおける、平均±標準偏差(**P<0.01(Etep-L11対Etep))として表されるエクソン51スキッピング(%excl)の定量を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。
図4図4は、RD細胞内のDMD遺伝子におけるエクソン51スキッピングに対する、標的配列Etepの5′末端に付着した様々なデコイ配列(6a~6f、7a~7e、8a~8d、9a~9c、10a~10b、11、12、および13)の存在、長さ、および/または配列の影響を示す。図4の上図は、デコイ配列のない標的配列Etep(Etep)、または5′末端に異なる長さ(L6a~L6f、L7a~L7e、L8a~L8d、L9a~L9c、L10a~L10b、L11、L12、およびL13)のデコイ配列が付着した標的配列Etepを有するASO(25nM)でトランスフェクトされたRD細胞内のDMD遺伝子の代表的な半定量的蛍光RT-PCR分析を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。図4の下図は、図4の上図で試験された(Etep、Etep-L6a~Etep-L6f、Etep-L7a~Etep-L7e、Etep-L8a~Etep-L8d、Etep-L9a~Etep-L9c、Etep-L10a~Etep-L10b、Etep-L11、Etep-L12、およびEtep-L13)を有する同じASO(25nM)でトランスフェクトされたRD細胞内のDMDにおける、平均±標準偏差(n=3、#P<0.05(全部対Etep)、*P<0.05、**P<0.01(全部対Etep-L11))として表されるエクソン51スキッピング(%excl)の定量化を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。
図5図5は、RD細胞内のDMD遺伝子におけるエクソン51スキッピングに対する、標的配列000Aの5′末端に付着した様々なデコイ配列(7a~7e、8a~8d、9a~9c、10a~10b、および11)の存在、長さ、および/または配列の影響を示す。図5の上図は、デコイ配列のない標的配列000A(000A)、または5′末端に異なる長さ(L7a~L7e、L8a~L8d、L9a~L9c、L10a~L10b、およびL11)のデコイ配列が付着した標的配列000Aを有するASO(25nM)でトランスフェクトされたRD細胞内のDMD遺伝子の代表的な半定量的蛍光RT-PCR分析を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。図5の下図は、図5の上図で試験された(000A、000A-L7a~000A-L7e、000A-L8a~000A-L8d、000A-L9a~000A-L9c、000A-L10a~000A-L10b、および000A-L11)を有する同じASO(25nM)でトランスフェクトされたRD細胞内のDMDにおける、平均±標準偏差(n=3、*P<0.05、**P<0.01、全部対000A)として表されるエクソン51スキッピング(%excl)の定量化を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。
図6図6は、DMDヒト化マウスの前脛骨筋および腓腹筋におけるDMD遺伝子のエクソン51スキッピングに対する、標的配列Etepまたは000Aの5′末端に付着した様々なデコイ配列(標的配列Etepの場合は7c、8c、9b、10a、標的配列000Aの場合は8c、9a~9c)の存在、長さ、および/または配列の影響を示す。図6の左上の図は、デコイ配列のない標的配列Etep(Etep)、または5′末端に異なる長さ(L7c、L8c、L9b、およびL10a)のデコイ配列が付着した標的配列Etep、または異なる長さ(L8c、およびL9a~L9c)のデコイ配列が付着した標的配列000Aを有するASOを投与されたDMDヒト化マウスの前脛骨筋におけるDMDエクソン51スキッピングの代表的な半定量的蛍光RT-PCR分析を示す。生理食塩水は、ネガティブコントロールとして使用された。図6の右上の図は、デコイ配列のない標的配列Etep(Etep)、または5′末端に異なる長さ(L7c、L8c、L9b、およびL10a)のデコイ配列が付着した標的配列Etep、または異なる長さ(L8c、およびL9a~L9c)のデコイ配列が付着した標的配列000Aを有するASOを投与されたDMDヒト化マウスの腓腹筋におけるDMDエクソン51スキッピングの代表的な半定量的蛍光RT-PCR分析を示す。生理食塩水は、ネガティブコントロールとして使用された。図6の左下の図は、図6の左上の図で試験された(Etep、Etep-L7c、Etep-L8c、Etep-L9b、Etep-L10a、000A-L8c、および000A-L9a~000A-L9c)を有する同じASOを投与されたDMDヒト化マウスの前脛骨筋における、平均±標準偏差(n=3、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001(全部対Etep)として表されるエクソン51スキッピング(%excl)の定量化を示す。生理食塩水は、ネガティブコントロールとして使用された。図6の右下の図は、図6の右上の図で試験された(Etep、Etep-L7c、Etep-L8c、Etep-L9b、Etep-L10a、000A-L8c、および000A-L9a~000A-L9c)を有する同じASOを投与されたDMDヒト化マウスの腓腹筋における、平均±標準偏差(n=3、*P<0.05、**P<0.01(全部対Etep))として表されるエクソン51スキッピング(%excl)の定量化を示す。生理食塩水は、ネガティブコントロールとして使用された。
図7図7は、RD細胞内のDMD遺伝子におけるエクソン53スキッピングに対する、標的配列ビルトラルセン(Vilto)の5′末端または3′末端に付着した様々なデコイ配列(7a~7e、8a~8d、9a~9c、10a~10b、および11)の存在、位置、長さ、および/または配列の影響を示す。図7の左上の図は、標的配列Viltoのみ(Vilto)、または5′末端に異なる長さのデコイ配列が付着した標的配列Vilto(Vilto-L7a~Vilto-L7e、Vilto-L8a~Vilto-L8d、Vilto-L9a~Vilto-L9c、Vilto-L10a~Vilto-L10b、およびVilto-L11)を有するASO(25nM)でトランスフェクトされたRD細胞内のDMD遺伝子におけるエクソン53スキッピングの代表的な半定量的蛍光RT-PCR分析を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。図7の右上の図は、標的配列Viltoのみ(Vilto)、または3′末端に異なる長さのデコイ配列が付着した標的配列Vilto(Vilto-R7a~Vilto-R7e、Vilto-R8a~Vilto-R8d、Vilto-R9a~Vilto-R9c、Vilto-R10a~Vilto-R10b、およびVilto-R11)を有するASO(25nM)でトランスフェクトされたRD細胞内のDMD遺伝子におけるエクソン53スキッピングの代表的な半定量的蛍光RT-PCR分析を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。図7の左下の図は、図7の左上の図で試験された(Vilto、Vilto-L7a~Vilto-L7e、Vilto-L8a~Vilto-L8d、Vilto-L9a~Vilto-L9c、Vilto-L10a~Vilto-L10b、およびVilto-L11)を有する同じASO(25nM)でトランスフェクトされたRD細胞内のDMD遺伝子における、平均±標準偏差(n=3、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、全部対Vilto)として表されるエクソン53スキッピング(%excl)の定量化を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。図7の右下の図は、図7の右上の図で試験された(Vilto、Vilto-R7a~Vilto-R7e、Vilto-R8a~Vilto-R8d、Vilto-R9a~Vilto-R9c、Vilto-R10a~Vilto-R10b、およびVilto-R11)を有する同じASO(25nM)でトランスフェクトされたRD細胞内のDMD遺伝子における、平均±標準偏差(n=3、*P<0.05、**P<0.01、全部対Vilto)として表されるエクソン53スキッピング(%excl)の定量化を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。
図8図8A~8Bは、RD細胞内のDMD遺伝子におけるエクソン45の一部のスキッピングに対する、標的配列002Aの5′末端または3′末端に付着した様々なデコイ配列(7a~7e、8a~8d、9a~9c、10a~10b、および11)の存在、位置、長さ、および/または配列の影響を示す。図8Aは、エクソン45の最後の32ntの損失につながる、試験された標的配列002AによるDMDエクソン45の潜在的な5′スプライス部位の活性化の概略図を示す。ここでエクソン45の部分的なスキッピングと呼ばれる32ntの損失は、一部のDMD患者では176ntのエクソン45全体のスキッピングの場合と同じように読み枠を復元できるが、エクソン45によってコードされたタンパク質配列の損失ははるかに少なくなる。図8Bの左上の図は、標的配列002Aのみ(002A)、または5′末端に異なる長さのデコイ配列が付着した標的配列002A(002A-L7a~002A-L7e、002A-L8a~002A-L8d、002A-L9a~002A-L9c、002A-L10a~002A-L10b、および002A-L11)を有するASO(25nM)でトランスフェクトされたRD細胞内のDMD遺伝子における部分的なエクソン45スキッピングの代表的な半定量的蛍光RT-PCR分析を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。図8Bの右上の図は、標的配列002Aのみ(002A)、または3′末端に異なる長さのデコイ配列が付着した標的配列002A(002A-R7a~002A-R7e、002A-R8a~002A-R8d、002A-R9a~002A-R9c、002A-R10a~002A-R10b、および002A-R11)を有するASO(25nM)でトランスフェクトされたRD細胞内のDMD遺伝子における部分的なエクソン45スキッピングの代表的な半定量的蛍光RT-PCR分析を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。図8Bの左下の図は、図8Bの左上の図で試験された(002A、002A-L7a~002A-L7e、002A-L8a~002A-L8d、002A-L9a~002A-L9c、002A-L10a~002A-L10b、および002A-L11)を有する同じASO(25nM)でトランスフェクトされたRD細胞内のDMD遺伝子における、平均±標準偏差(n=3、*P<0.05、**P<0.01(全部対002A))として表される部分的なエクソン45スキッピング(%excl)の定量化を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。図8Bの右下の図は、図8Bの右上の図で試験された(002A、002A-R7a~002A-R7e、002A-R8a~002A-R8d、002A-R9a~002A-R9c、002A-R10a~002A-R10b、および002A-R11)を有する同じASO(25nM)でトランスフェクトされたRD細胞内のDMDにおける、平均±標準偏差(n=3、*P<0.05、全部対002A)として表される部分的なエクソン45スキッピング(%excl)の定量化を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。
図9図9A~9Bは、HEK293細胞内のAPP遺伝子におけるエクソン17スキッピングに対する、標的配列014Bの5′末端または3′末端に付着した様々なデコイ配列(7a~7e、8a~8d、9a~9c、10a~10b、および11)の存在、位置、長さ、および/または配列の影響を示す。図9Aの左図は、標的配列014Bのみ(014B)、または5′末端に異なる長さのデコイ配列が付着した標的配列014B(014B-L7a~014B-L7e、014B-L8a~014B-L8d、014B-L9a~014B-L9c、014B-L10a~014B-L10b、および014B-L11)を有するASO(50nM)でトランスフェクトされたHEK293細胞内のAPP遺伝子におけるエクソン17スキッピングの代表的な半定量的蛍光RT-PCR分析を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。図9Aの右図は、図9Aの左図で試験された(014B、014B-L7a~014B-L7e、014B-L8a~014B-L8d、014B-L9a~014B-L9c、014B-L10a~014B-L10b、および014B-L11)を有する同じASO(50nM)でトランスフェクトされたHEK293細胞内のAPP遺伝子における、平均±標準偏差(n=3、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001(全部対014B))として表されるエクソン17スキッピング(%excl)の定量化を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。図9Bの左図は、標的配列014Bのみ(014B)、または3′末端に異なる長さのデコイ配列が付着した標的配列014B(014B-R7a~014B-R7e、014B-R8a~014B-R8d、014B-R9a~014B-R9c、014B-R10a~014B-R10b、および014B-R11)を有するASO(50nM)でトランスフェクトされたHEK293細胞内のAPP遺伝子におけるエクソン17スキッピングの半定量的蛍光RT-PCR分析の代表例を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。図9Bの右図は、図9Bの左図で試験された(014B、014B-R7a~014B-R7e、014B-R8a~014B-R8d、014B-R9a~014B-R9c、014B-R10a~014B-R10b、および014B-R11)を有する同じASO(50nM)でトランスフェクトされたHEK293細胞内のAPP遺伝子における、平均±標準偏差(n=3、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001(全部対014B))として表されるエクソン17スキッピング(%excl)の定量化を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。
図10図10A~10Bは、HEK293細胞内CEP290遺伝子におけるエクソン41スキッピングに対する、標的配列017Bの5′末端または3′末端に付着したた様々なデコイ配列(7a~7e、8a~8d、9a~9c、10a~10b、および11)の存在、位置、長さ、および/または配列の影響を示す。図10Aの左図は、標的配列017Bのみ(017B)、または5′末端に異なる長さのデコイ配列が付着した標的配列017B(017B-L7a~017B-L7e、017B-L8a~017B-L8d、017B-L9a~017B-L9c、017B-L10a~017B-L10b、および017B-L11)を有するASO(50nM)でトランスフェクトされたHEK293細胞内のCEP290遺伝子におけるエクソン41スキッピングの半定量的蛍光RT-PCR分析の代表例を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。図10Aの右図は、図10Aの左図で試験された(017B、017B-L7a~017B-L7e、017B-L8a~017B-L8d、017B-L9a~017B-L9c、017B-L10a~017B-L10b、および017B-L11)を有する同じASO(50nM)でトランスフェクトされたHEK293細胞内のCEP290遺伝子における、平均±標準偏差(n=3、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001(全部対017B))として表されるエクソン41スキッピング(%excl)の定量化を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。図10Bの左図は、標的配列017Bのみ(017B)、または3′末端に異なる長さのデコイ配列が付着した標的配列017B(017B-R7a~017B-R7e、017B-R8a~017B-R8d、017B-R9a~017B-R9c、017B-R10a~017B-R10b、および017B-R11)を有するASO(50nM)でトランスフェクトされたHEK293細胞内のCEP290遺伝子におけるエクソン41スキッピングの半定量的蛍光RT-PCR分析の代表例を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。図10Bの右図は、図10Bの左図で試験された(017B、017B-R7a~017B-R7e、017B-R8a~017B-R8d、017B-R9a~017B-R9c、017B-R10a~017B-R10b、および017B-R11)を有する同じASO(50nM)でトランスフェクトされたHEK293細胞内のCEP290遺伝子における、平均±標準偏差(n=3、**P<0.01、***P<0.001(全部対017B))として表されるエクソン41スキッピング(%excl)の定量化を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。
図11図11A~11Bは、HeLa細胞内のHER2遺伝子(ERBB2とも呼ばれる)におけるエクソン19スキッピングに対する、標的配列024Bの5′末端または3′末端に付着した様々なデコイ配列(7a~7e、8a~8d、9a~9c、10a~10b、および11)の存在、位置、長さ、および/または配列の影響を示す。図11Aの左図は、標的配列024Bのみ(024B)、または5′末端に様々な長さのデコイ配列が付着した標的配列024B(024B-L7a~024B-L7e、024B-L8a~024B-L8d、024B-L9a~024B-L9c、024B-L10a~024B-L10b、および024B-L11)を有するASO(50nM)でトランスフェクトされたHeLa細胞内のHER2遺伝子におけるエクソン19スキッピングの半定量的蛍光RT-PCR分析の代表例を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。図11Aの右図は、図11Aの左図で試験された(024B、024B-L7aから024B-L7e、024B-L8aから024B-L8d、024B-L9aから024B-L9c、024B-L10aから024B-L10b、および024B-L11)を有する同じASO(50nM)でトランスフェクトされたHeLa細胞内のHER2遺伝子における、平均±標準偏差(n=3、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001(全部対024B))として表されるエクソン19スキッピング(%excl)の定量化を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。図11Bの左図は、標的配列024Bのみ(024B)、または3′末端に様々な長さのデコイ配列が付着した標的配列024B(024B-R7a~024B-R7e、024B-R8a~024B-R8d、024B-R9a~024B-R9c、024B-R10a~024B-R10b、および024B-R11)を有するASO(50nM)でトランスフェクトされたHeLa細胞内のHER2遺伝子におけるエクソン19スキッピングの半定量的蛍光RT-PCR分析の代表例を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。図11Bの右図は、図11Bの左図で試験された(024B、024B-R7a~024B-R7e、024B-R8a~024B-R8d、024B-R9a~024B-R9c、024B-R10a~024B-R10b、および024B-R11)を有する同じASO(50nM)でトランスフェクトされたHeLa細胞内のHER2遺伝子における、平均±標準偏差(n=3、*P<0.05、**P<0.01(全部対024B))として表されるエクソン19スキッピング(%excl)の定量化を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。
図12図12A~12Bは、A549細胞内のATXN3遺伝子(SCA3とも呼ばれる)におけるエクソン10スキッピングに対する、標的配列015Cの5′末端または3′末端に付着したた様々なデコイ配列(7a~7e、8a~8d、9a~9c、10a~10b、および11)の存在、位置、長さ、および/または配列の影響を示す。図12Aの左図は、標的配列015Cのみ(015C)、または5′末端に異なる長さのデコイ配列が付着した標的配列015C(015C-L7a~015C-L7e、015C-L8a~015C-L8d、015C-L9a~015C-L9c、015C-L10a~015C-L10b、および015C-L11)を有するASO(40nM)でトランスフェクトされたA549細胞内のATXN3遺伝子におけるエクソン10スキッピングの代表的な半定量的蛍光RT-PCR分析を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。図12Aの右図は、図12Aの左図で試験された(015C、015C-L7a~015C-L7e、015C-L8a~015C-L8d、015C-L9a~015C-L9c、015C-L10a~015C-L10b、および015C-L11)を有する同じASO(40nM)でトランスフェクトされたA549細胞内のATXN3遺伝子における、平均±標準偏差(n=3、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001(全部対015C))として表されるエクソン10スキッピング(%excl)の定量化を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。図12Bの左図は、標的配列015Cのみ(015C)、または3′末端に異なる長さのデコイ配列が付着した標的配列015C(015C-R7a~015C-R7e、015C-R8a~015C-R8d、015C-R9a~015C-R9c、015C-R10a~015C-R10b、および015C-R11)を有するASO(40nM)でトランスフェクトされたA549細胞内のATXN3遺伝子におけるエクソン10スキッピングの代表的な半定量的蛍光RT-PCR分析を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。図12Bの右図は、図12Bの左図で試験された(015C、015C-R7a~015C-R7e、015C-R8a~015C-R8d、015C-R9a~015C-R9c、015C-R10a~015C-R10b、および015C-R11)を有する同じASO(40nM)でトランスフェクトされたA549細胞内のATXN3遺伝子における、平均±標準偏差(n=3、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001(全部対015C))として表されるエクソン10スキッピング(%excl)の定量化を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。
図13図13A~13Bは、RD細胞内のPKM遺伝子におけるエクソン10スキッピングに対する、標的配列027Bの5′末端または3′末端に付着した様々なデコイ配列(7a~7e、8a~8d、9a~9c、10a~10b、および11)の存在、位置、長さ、および/または配列の影響を示す。図13Aの左図は、標的配列027Bのみ(027B)、または5′末端に異なる長さのデコイ配列が付着した標的配列027B(027B-L7a~027B-L7e、027B-L8a~027B-L8d、027B-L9a~027B-L9c、027B-L10a~027B-L10b、および027B-L11)を有するASO(50nM)でトランスフェクトされたRD細胞内のPKM遺伝子におけるエクソン10スキッピングの代表的な半定量的蛍光RT-PCR分析を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。図13Aの右図は、図13Aの左図で試験された(027B、027B-L7a~027B-L7e、027B-L8a~027B-L8d、027B-L9a~027B-L9c、027B-L10a~027B-L10b、および027B-L11)を有する同じASO(50nM)でトランスフェクトされたRD細胞内のPKM遺伝子における、平均±標準偏差(n=3、**P<0.01、***P<0.001(全部対027B))として表されるエクソン10スキッピング(%excl)の定量化を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。図13Bの左図は、標的配列027Bのみ(027B)、または3′末端に異なる長さのデコイ配列が付着した標的配列027B(027B-R7a~027B-R7e、027B-R8a~027B-R8d、027B-R9a~027B-R9c、027B-R10a~027B-R10b、および027B-R11)を有するASO(50nM)でトランスフェクトされたRD細胞内のPKM遺伝子におけるエクソン10スキッピングの代表的な半定量的蛍光RT-PCR分析を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。図13Bの右図は、図13Bの左図で試験された(027B、027B-R7a~027B-R7e、027B-R8a~027B-R8d、027B-R9a~027B-R9c、027B-R10a~027B-R10b、および027B-R11)を有する同じASO(50nM)でトランスフェクトされたRD細胞内のPKM遺伝子における、平均±標準偏差(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001(全部対027B))として表されるエクソン10スキッピング(%excl)の定量化を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。
図14図14A~14Bは、HEK293細胞内のMDM4遺伝子におけるエクソン6スキッピングに対する、標的配列029Bの5′末端または3′末端に付着したた様々なデコイ配列(7a~7e、8a~8d、9a~9c、10a~10b、および11)の存在、位置、長さ、および/または配列の影響を示す。図14Aの左図は、標的配列029Bのみ(029B)、または5′末端に異なる長さのデコイ配列が付着した標的配列029B(029B-L7a~029B-L7e、029B-L8a~029B-L8d、029B-L9a~029B-L9c、029B-L10a~029B-L10b、および029B-L11)を有するASO(50nM)でトランスフェクトされたHEK293細胞内のMDM4遺伝子におけるエクソン6スキッピングの代表的な半定量的蛍光RT-PCR分析を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。図14Aの右図は、図14Aの左図で試験された(029B、029B-L7a~029B-L7e、029B-L8a~029B-L8d、029B-L9a~029B-L9c、029B-L10a~029B-L10b、および029B-L11)を有する同じASO(50nM)でトランスフェクトされたHEK293細胞内のMDM4遺伝子における、平均±標準偏差(n=3、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001(全部対029B))として表されるエクソン6スキッピング(%excl)の定量化を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。図14Bの左図は、標的配列029Bのみ(029B)、または3′末端に異なる長さのデコイ配列が付着した標的配列029B(029B-R7a~029B-R7e、029B-R8a~029B-R8d、029B-R9a~029B-R9c、029B-R10a~029B-R10b、および029B-R11)を有するASO(50nM)でトランスフェクトされたHEK293細胞内のMDM4遺伝子におけるエクソン6スキッピングの代表的な半定量的蛍光RT-PCR分析を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。図14Bの右図は、図14Bの左図で試験された(029B、029B-R7aから029B-R7e、029B-R8aから029B-R8d、029B-R9aから029B-R9c、029B-R10aから029B-R10b、および029B-R11)を有する同じASO(50nM)でトランスフェクトされたHEK293細胞内のMDM4遺伝子における、平均±標準偏差(n=3、*P<0.05、**P<0.01(全部対029B))として表されるエクソン6スキッピング(%excl)の定量化を示す。緩衝液は、ネガティブコントロールとして使用された。
【発明を実施するための形態】
【0027】
エクソンスキッピングは、エクソンスキッピングを誘導するためにASOによる目的の遺伝子の発現の操作から利益を受け得る、疾患および/またはその合併症を有する被験者に対する潜在的な治療アプローチである。ASOはエクソンスキッピングを生成または促進するために使用されてもよいが、エクソンスキッピングに望ましい効率および効能を提供するASOをスクリーニングすることは困難な場合がある。目的の遺伝子の発現は、目的の遺伝子のエクソン、イントロン、または特定のスプライス部位のスプライシングを阻害するためにASOによって操作され、それにより例えば、限定されないが、目的の遺伝子の欠陥の読み枠の復元、目的の遺伝子の異なるアイソフォーム(例えば、ドミナントネガティブアイソフォーム)の生成、遺伝子の毒性部分のスキッピング、遺伝子のサイレンシング、および/または遺伝子の構造および機能の変更につながる場合がある。目的の遺伝子の表現の操作は、当該目的の遺伝子が疾患の原因である場合もそうでない場合もあるが、疾患および/またはその合併症の治療に有益であり得る。疾患は、本明細書に開示されるように、遺伝性疾患または非遺伝性疾患(例えば、一部の非遺伝性癌、代謝性疾患、または感染性疾患)であってもよい。遺伝性疾患は、スプライシング欠損と関連している場合もそうでない場合もある。
【0028】
ほとんどのヒト遺伝子はイントロンを含み、初期転写産物中のイントロンは成熟mRNAを生成するために核内でスプライシングされ、その後、リボソームによるタンパク質翻訳のために細胞質に輸送されなければならない。しかしながら、遺伝子はしばしば選択的スプライシングを受け、これは転写産物の多様性の拡大に寄与するだけでなく、遺伝子機能を制御するメカニズムとしても機能する。通常の選択的スプライシング様式の1つはエクソンスキッピングである。エクソンスキッピングは遺伝子発現の過程において頻繁に観察される自然現象であるが、治療目的で遺伝子発現を操作するアプローチとして使用することができる。どのエクソンがスキッピングされるかによって、その結果は劇的に異なる可能性がある。スキッピングされたエクソンが対称的である場合、すなわちエクソンの長さが3で割り切れる場合、内部的に短縮されたタンパク質アイソフォームはエクソンによってコードされるアミノ酸のみを失うことになる。スキッピングされたエクソンにタンパク質局在シグナル、タンパク質安定性に関連するモチーフ、または酵素活性ドメインなどの要部が含まれる場合、短縮されたタンパク質アイソフォームは、その局在性または安定性を変化させ、機能を失ったり、ドミナントネガティブ効果または異なる機能を持つタンパク質になったりすることがある。スキッピングされたエクソンが、自然または変異によって生成されたポイズンエクソンである場合、エクソンスキッピングは遺伝子の機能を回復することである。スキッピングされたエクソンが非対称である場合、すなわちエクソンの長さが3で割り切れない場合、下流のエクソンの読み枠が破壊されるため、次のエクソンにある可能性が高い未成熟終止コドン(PTC)が作成され、ナンセンス変異依存mRNA分解(NMD)が引き起こされることがよくある。読み枠が破壊されているがNMDを回避したmRNA種の場合、C末端短縮タンパク質アイソフォームが生成され、通常は機能喪失につながる。言い換えれば、エクソンスキッピングによって、類似、反対、または異なる機能を持つmRNAアイソフォームまたはタンパク質が生成されたり、機能が失われたりする場合がある。(Aartsma-Rus A, van Ommen GJ. Antisense-mediated exon skipping: a versatile tool with therapeutic and research applications. RNA 2007 Oct; 13(10):1609-24. Doi: 10.1261/rna.653607.)
【0029】
エクソンスキッピングアプローチは、幅広く適用されている。まず、異常遺伝子の毒性部分をスキッピングするために使用できる。毒性エクソンの一例は、エクソン内のCAGリピートの異常な拡大を伴うSCA3患者のATXN3遺伝子のエクソン10である。次に、エクソンスキッピングは、複数の遺伝性疾患で観察されるフレームシフト変異によって破壊された読み枠を復元するために使用できる。このような疾患の1つは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーと呼ばれる。さらに、エクソンスキッピングは、腫瘍性タンパク質、ウイルスタンパク質、または神経変性関連ペプチドなどの有害な遺伝子産物の発現を中断させるために使用できる。最後に、エクソンスキッピングは、有益なタンパク質アイソフォームを生成するために使用できる。例えば、PDCD1エクソン3のスキッピングにより、PDL1/2抗体として作用して癌を治療するポテンシャルのあるPD1アイソフォームが生成される。(Toonen LJA, et al. Antisense Oligonucleotide-Mediated Removal of the Polyglutamine Repeat in Spinocerebellar Ataxia Type 3 Mice. Mol Ther Nucleic Acids. 2017 Sep; 8:232-242. doi: 10.1016/j.omtn.2017.06.019. Lucia Echevarria L, et al. Exon-skipping advances for Duchenne muscular dystrophy. Human Molecular Genetics. 2018 Aug; 27(R2):R163-R172. doi.org/10.1093/hmg/ddy171. Chang JL, et al. Targeting Amyloid-β Precursor Protein, APP, Splicing with Antisense Oligonucleotides Reduces Toxic Amyloid-β Production. Mol Ther. 2018 Jun; 26(6):1539-1551. doi: 10.1016/j.ymthe.2018.02.029. Sun J, et al. Modulation of PDCD1 exon 3 splicing. RNA Biol. 2019 Dec;16(12):1794-1805. Doi: 10.1080/15476286.2019.1659080.)
【0030】
本明細書に開示されるように、いかなる特定の理論にも拘束されることなく、標的配列に付着したデコイ配列(限定されないが、例えば配列番号1~23および347~353のヌクレオチド配列)を含むかまたはそれからなるASOは、本明細書に開示される標的配列を含むがいかなるデコイ配列を含まないASOよりも、エクソンスキッピングを生成または促進するのに効果的および/または効率的であり得ることがわかった。いかなる特定の理論にも拘束されることなく、本明細書に記載のデコイ配列を含むASOは、標的配列によるエクソンスキッピングの効率を驚くほどかつ予想外に改善した。いくつかの実施形態では、デコイ配列を、そうでなければエクソンスキッピングを促進する効率が比較的低い標的配列と組み合わせると、結果として得られたASOはエクソンスキッピングの調節において非常に効率的になる。あるいは、標的配列に付着したデコイ配列(例えば、配列番号1~23および347~353のヌクレオチド配列)を含むかまたはそれからなるASOは、本明細書に開示される標的配列を含むがいかなるデコイ配列を含まないASOよりも低い用量で、エクソンスキッピングを生成または促進するのと同等の有効性および/または効率を達成する場合がある。
【0031】
ある実施形態では、エクソンスキッピング効果および/または効率は、各遺伝子の全転写産物における目的のエクソンの排除率(%excl)によって定量化されてもよい。ある実施形態では、標的配列に付着したデコイ配列を含むASOの排除率は、標的配列からなるASOの排除率の約2.18倍、約2.3倍、約4倍、約10倍以上、約14倍以上、約15倍以上、約16倍以上、または約17倍以上であってもよい。ある実施形態では、標的配列に付着したデコイ配列を含むASOは、標的配列からなるASOの用量の約25%以下、または約50%以下の用量で、標的配列からなるASOと同等の排除率(例えば、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約110%、少なくとも約120%、少なくとも約130%、少なくとも約140%、少なくとも約150%)を達成する場合がある。
【0032】
ある実施形態では、最適なASOは、標的配列の5′末端に付着したデコイ配列(限定されないが、例えば配列番号1~23および347~353のヌクレオチド配列)を含む。ある実施形態では、最適なASOは、標的配列の3′末端に付着したデコイ配列(限定されないが、例えば配列番号1~23および347~353のヌクレオチド配列)を含む。ある実施形態では、ASOは、標的配列の3′末端と5′末端の両方に付着したデコイ配列(限定されないが、例えば配列番号1~23および347~353のヌクレオチド配列)を含む。ある実施形態では、デコイ配列と標的配列はリンカーなしで付着する。
【0033】
したがって、本明細書では、いくつかの実施形態において、細胞または被験者内のプレmRNAを、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)を含む組成物(例えば、医薬組成物)、および/または本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)をコードするベクターと接触させることを含む、プレmRNAのスプライシング中に目的のエクソンのエクソンスキッピングを生成または促進する方法が提供される。ASO媒介のエクソンスキッピングは、目的の遺伝子の発現を操作するためのアプローチであってもよい。目的の遺伝子の発現は、目的の遺伝子のエクソン、イントロン、または特定のスプライス部位のスプライシングを阻害するためにASOによって操作され、それにより例えば、限定されないが、目的の遺伝子の欠陥の読み枠の復元、目的の遺伝子の異なるアイソフォーム(例えば、ドミナントネガティブアイソフォーム)の生成、遺伝子の毒性部分のスキッピング、遺伝子のサイレンシング、および/または遺伝子の構造および機能の変更につながる場合がある。いくつかの実施形態では、この方法は、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)を細胞に送達するか、または被験者に投与することをさらに含む。
【0034】
また、本明細書では、ある実施形態において、標的配列のエクソンスキッピングの有効性および/または効率を向上させる方法が提供され、この方法は、標的配列と、標的配列の5′末端および/または3′末端に動作可能に連結されたデコイ配列(限定されないが、例えば配列番号1~23および347~353のヌクレオチド配列)とを含む1つ以上のASO(例えば、二分性ASO)を得ることを含む。ある実施形態では、この方法は、1つ以上のASO(例えば、二分性ASO)を、その目的のエクソンのエクソンスキッピングの有効性および/または効率に従ってスクリーニングおよび/または最適化することをさらに含む。エクソンスキッピングの効果および/または効率は、各遺伝子の全転写産物における目的のエクソンの排除率(%excl)によって定量化されてもよい。標的配列は、細胞または被験者内の目的のエクソン、目的のエクソンの上流の隣接イントロン配列、目的のエクソンの下流の隣接イントロン配列、目的のエクソンの上流のイントロン-エクソンジャンクション、および目的のエクソンの下流のイントロン-エクソンジャンクションからなる群から選択される配列とハイブリダイズできる場合がある。
【0035】
また、本明細書では、ある実施形態において、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)を含む医薬組成物、および/または本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)をコードするベクターを被験者に投与することを含む、被験者における疾患および/またはその合併症を治療する方法も提供される。
【0036】
また、本明細書では、標的配列に付着したデコイ配列を含む新規なASOも提供される。ある実施形態では、デコイ配列は、配列番号1~23および347~353のヌクレオチド配列からなる群から選択される。ある実施形態では、ASOは、DMD遺伝子(NCBI遺伝子ID:1756)、SMN1遺伝子(NCBI遺伝子ID:6606)、SMN2遺伝子(NCBI遺伝子ID:6607)、APP遺伝子(NCBI遺伝子ID:351)、CEP290遺伝子(NCBI遺伝子ID:80184)、HER2遺伝子(NCBI遺伝子ID:2064)、ATXN3遺伝子(NCBI遺伝子ID:4287)、PKM遺伝子(NCBI遺伝子ID:5315)、MDM4遺伝子(NCBI遺伝子ID:4194)などの遺伝子の1つ以上のエクソンのスキッピングを媒介することができる。このプロセスはエクソンスキッピングと呼ばれる。ある実施形態では、標的配列は、エクソン、イントロン、またはジャンクションを標的としてもよい。ある実施形態では、目的のエクソンは、内因性SMN1およびSMN2遺伝子のエクソン7、内因性DMD遺伝子のエクソン51、内因性DMD遺伝子のエクソン53、内因性DMD遺伝子のエクソン45、内因性APP遺伝子のエクソン17、内因性CEP290遺伝子のエクソン41、内因性HER2遺伝子のエクソン19、ATXN3遺伝子のエクソン10、内因性PKM遺伝子のエクソン10、および内因性MDM4遺伝子のエクソン6からなる群から選択される。ある実施形態では、標的配列は、配列番号25、29、33、37、41、45、49、75、92、124、156、188、220、252、284、および316のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。ある実施形態では、ASOは、配列番号26~27、30~31、34~35、38~39、42~43、46~47、50~73、76~90、93~122、125~154、157~186、189~218、221~250、253~282、285~314、317~346、および354~356のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。ある実施形態では、標的配列は、配列番号24、28、32、36、40、44、48、74、91、123、155、187、219、251、283、および315のヌクレオチド配列からなる群から選択される標的配列を標的とする。
【0037】
いくつかの実施形態では、ASOまたはASOを含む組成物(例えば、医薬組成物)は、DMD遺伝子のエクソン45、51または53のスキッピングによって治療可能な疾患および/またはその合併症の治療に有用である。ASOは、配列番号38~39、42~43、46~47、50~73、76~90、93~122、および125~154のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。ある実施形態では、疾患はデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)である。DMDは、DMD遺伝子のフレームシフト変異によって引き起こされ、本明細書に開示されるASOまたはASOを含む組成物を使用するエクソンスキッピング戦略は、読み枠を復元し、したがってDMDを治療するために採用できる。
【0038】
いくつかの実施形態では、ASOまたはASOを含む組成物(例えば、医薬組成物)は、SMN1/2遺伝子のエクソン7のスキッピングによって治療可能な疾患および/またはその合併症の治療に有用である。ASOは、配列番号26~27、30~31、34~35、および354~356のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれらからなる。
【0039】
いくつかの実施形態では、ASOまたはASOを含む組成物(例えば、医薬組成物)は、APP遺伝子のエクソン17のスキッピングによって治療可能な疾患および/またはその合併症の治療に有用である。ASOは、配列番号157~186のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。
【0040】
いくつかの実施形態では、ASOまたはASOを含む組成物(例えば、医薬組成物)は、CEP290遺伝子のエクソン41のスキッピングによって治療可能な疾患および/またはその合併症の治療に有用である。ASOは、配列番号189~218のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。
【0041】
いくつかの実施形態では、ASOまたはASOを含む組成物(例えば、医薬組成物)は、HER2遺伝子のエクソン19のスキッピングによって治療可能な疾患および/またはその合併症の治療に有用である。ASOは、配列番号221~250のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。
【0042】
いくつかの実施形態では、ASOまたはASOを含む組成物(例えば、医薬組成物)は、ATXN3遺伝子のエクソン10のスキッピングによって治療可能な疾患および/またはその合併症の治療に有用である。ASOは、配列番号253~282のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。
【0043】
いくつかの実施形態では、ASOまたはASOを含む組成物(例えば、医薬組成物)は、PKM遺伝子のエクソン10のスキッピングによって治療可能な疾患および/またはその合併症の治療に有用である。ASOは、配列番号285~314のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。
【0044】
いくつかの実施形態では、ASOまたはASOを含む組成物(例えば、医薬組成物)は、MDM4遺伝子のエクソン6のスキッピングによって治療可能な疾患および/またはその合併症の治療に有用である。ASOは、配列番号317~346のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。
【0045】
以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本技術、その用途、またはその使用を制限することを意図するものではない。図面全体にわたって、対応する参照番号は、同様のまたは対応する部品および特徴を示すことを理解されたい。本技術の様々な実施形態で示される特定の例の説明は、例示のみを目的としており、本明細書に開示される本技術の範囲を制限することを意図するものではない。さらに、記述された特徴を有する複数の実施形態の列挙は、追加の特徴を有する他の実施形態、または記述された特徴の異なる組み合わせを組み込んだ他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0046】
さらに、本明細書における様々な実施形態の詳細な説明は、様々な実施形態を例示として示す添付の図面を参照する。実施形態は、当業者が本技術を実施できるように十分に詳細に説明されているが、他の実施形態も実現可能であり、本技術の精神および範囲から逸脱することなく論理的および機械的な変更を行ってもよいことを理解されたい。したがって、本明細書の詳細な説明は、例示のみを目的として提示されており、限定するものではない。例えば、本明細書に記載されているステップまたは機能、任意の方法、システム、またはプロセスは、任意の順序で実行されてもよく、提示された順序に限定されない。さらに、そのステップまたは機能のいずれかが、一人以上の第三者にアウトソーシングされるか、または第三者によって実行されてもよい。
【0047】
さらに、単数形での言及には複数の実施形態が含まれ、複数の構成要素への言及には単数形の実施形態が含まれる場合がある。
定義
【0048】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本技術が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本技術の目的のために、以下の用語は以下のように定義される。
【0049】
本明細書で使用される冠詞「1つ」は、冠詞の文法上の対象の1つまたは1つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指す。例としては、「1つの要素」は、1つの要素または1つ以上の要素を意味する。
【0050】
「約」という用語は、当該技術分野で許容可能な程度によって変化する量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量、重量、または長さを意味する。いくつかの実施形態では、このような変化は、基準量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量、重量または長さに対して30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1%にもなってもよい。用語「約」が数値範囲と併用される場合、その範囲は、定められた数値の上限および下限を拡大することによって変更される。
【0051】
「投与」という用語は、局所投与または全身投与のいずれかによって、本技術のASOを含む治療剤を被験者に送達することを含む。投与は、局所(眼科や膣と直腸を含む粘膜送達)、肺(例えば、噴霧器によるものを含む散剤またはエアロゾルの吸入または吹送による)、気管内、鼻腔内、表皮および経皮、経口または非経口で行われてもよい。非経口投与には、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内または筋肉内注射または注入、または頭蓋内(例えば、くも膜下腔内または脳室内)投与が含まれる。
【0052】
「単離された」という用語は、その天然状態で通常伴う成分が実質的にまたは本質的にない物質を指す。例えば、本明細書で使用される「単離されたオリゴヌクレオチド」または「単離されたオリゴマー」は、天然に存在する状態で隣接する配列から精製または除去されたオリゴマー、例えば、ゲノム内の断片に隣接する配列から除去されたDNA断片を指す場合がある。
【0053】
細胞に関する用語「単離」は、ソース被験者(例えば、オリゴヌクレオチドリピート病を患う被験者)からの細胞(例えば、線維芽細胞、リンパ芽球)の精製を指す場合がある。mRNAまたはタンパク質の文脈において、「単離」は、ソース(例えば、細胞)からのmRNAまたはタンパク質の回収を指す場合がある。
【0054】
タンパク質に関する用語「機能性」には、対応する野生型タンパク質だけでなく、1つ以上のエクソンが欠落しているが、疾患および/またはその合併症を患う被験者に存在する欠陥タンパク質の悪影響を軽減するのに十分な生物学的活性を有することにより、短縮形態の転写産物に対応する配列を含むmRNA転写産物から由来する短縮形態の野生型タンパク質も含まれる。機能性タンパク質は、当該技術分野の通常の技術に従って測定されるように、対応する野生型タンパク質のインビトロまたはインビボでの生物活性の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%(その間のすべての整数を含む)を有してもよい。野生型タンパク質の完全な生物活性よりも低い生物活性を有する短縮タンパク質は、「半機能性」タンパク質と呼ばれることがある。動物モデルは、疾患の病因を研究するための貴重なリソースでもあり、疾患関連活性を試験する手段を提供し、ある例では、100%未満の生物活性が疾患を治療するのに十分であってもよい。
【0055】
ジストロフィンタンパク質に関する用語「機能性」には、ジストロフィン遺伝子のエクソン1から79のすべてに対応する配列を含むmRNA転写産物から由来するこれらのタンパク質(野生型タンパク質とも呼ばれる)が含まれる。また、現在の技術のASOの一部によって生成された形態など、短縮形態の転写産物に対応する配列を含むmRNA転写産物、例えば、ジストロフィン遺伝子のエクソン1から79のすべてよりも少ないエクソンを有するジストロフィンmRNA転写産物から由来する短縮形態のジストロフィンも含まれる。言い換えれば、短縮形態のジストロフィンmRNAは、対応するジストロフィン遺伝子の1つ以上のエクソンを除外する場合がある。短縮形態のジストロフィンmRNAは、短縮形態のジストロフィンタンパク質(マイクロジストロフィンタンパク質とも呼ばれる)を発現する場合がある。機能性ジストロフィンタンパク質とは、一般的に、DMDまたは関連疾患を患う一部の被験者に存在するジストロフィンタンパク質の改変された、または「欠陥のある」形態に比べて、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの特徴である筋組織の進行性劣化を軽減するのに十分な生物活性を有するジストロフィンタンパク質を指す。機能性ジストロフィンタンパク質は、当該技術分野の通常の技術に従って測定されるように、野生型ジストロフィンのインビトロまたはインビボ生物活性の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%(その間のすべての整数を含む)を有してもよい。野生型ジストロフィンの完全な生物活性よりも低いジストロフィンタンパク質は、「半機能性」ジストロフィンタンパク質と呼ばれることがある。一例としては、インビトロでの筋肉培養におけるジストロフィン関連活性は、筋管のサイズ、筋原線維の組織化(または崩壊)、収縮活性、およびアセチルコリン受容体の自発的なクラスタリングによって測定できる(例えば、Susan C. Brown, et al. Dystrophic phenotype induced in vitro by antibody blockade of muscle α-dystroglycan-laminin interaction. 1999 Jan. Journal of Cell Science. 112:209-216. doi: 10.1242/jcs.112.2.209参照)。動物モデルは、疾患の病因を研究するための貴重なリソースでもあり、ジストロフィン関連活性を試験する手段を提供する。DMD研究に広く使用されている動物モデルには、mdxマウスとゴールデンレトリバー筋ジストロフィー(GRMD)犬があり、どちらもジストロフィン陰性である(例えば、C. A. Collins and J.E. Morgan. Duchenne's muscular dystrophy: animal models used to investigate pathogenesis and develop therapeutic strategies. 2003 Aug. Int J Exp Pathol. 84:165-172. doi: 10.1046/j.1365-2613.2003.00354.x参照)。これらおよび他の動物モデルは、様々なジストロフィンタンパク質の機能活性を測定するために使用できる。
【0056】
ここでの「DMD遺伝子」および「ジストロフィン遺伝子」という用語は、ここでは互換的に使用され、ジストロフィンをコードする遺伝子を指す。同様に、ここでの「DMDタンパク質」、「ジストロフィンタンパク質」および「ジストロフィン」という用語は、ここでは互換的に使用され、DMD遺伝子の翻訳されたタンパク質産物を指す。
【0057】
「エクソンスキッピング」とは、一般に、エクソン全体またはその一部が所与のプレRNAから除去され、それによりタンパク質に翻訳される成熟mRNAなどの成熟RNAに存在することが排除されるプロセスを指す。したがって、スキッピングされたエクソンによってコードされたタンパク質の部分は、タンパク質の発現形態には存在しないため、通常、タンパク質の改変された形態(ただし、依然として機能的な形態)が生成される。いくつかの実施形態では、スキッピングされたエクソンはヒトジストロフィン遺伝子の変型エクソンであり、その配列には、変型スプライシングを引き起こす変異またはその他の改変が含まれてもよい。「プレmRNA」および「前駆体mRNA」という用語は互換的に使用され、転写によって細胞核内のDNAテンプレートから合成される、処理されていない、または部分的に処理された前駆体mRNAを指す。
【0058】
本技術の文脈において、本明細書で示されるエクソンのスキッピングの誘導および/または促進(またはエクソンスキッピングの誘導または促進)は、患者の1つ以上の細胞中のmRNAの少なくとも1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%に前記エクソンが含まれないことを意味する。エクソンスキッピングのレベルは、実施例に記載のようにPCRによって評価できる。
【0059】
「相補的」および「相補性」という用語は、一般的に、1つの二本鎖分子を形成するためにハイブリダイズする2つのヌクレオチド配列の相互作用を指す。いくつかの実施形態では、「相補的」および「相補性」という用語は、塩基対合ルールによって関連付けられたポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)を指す。例えば、配列「T-G-A-C(5′-3′)」は、配列「G-T-C-A(5′-3′)」と相補的である。相補性は「部分的」であってもよく、この場合、核酸の塩基の一部のみが、塩基対合ルールに従って、対象領域などの参照または対象配列に対して一致する。あるいは、核酸間には「完全な」、「厳密な」、「全体的な」または「十分な」相補性があり、これは「十分に相補的」または「完全に相補的」と同じ意味を持ち、この場合、示された核酸の塩基のすべてが塩基対合ルールに従って一致する。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率と強度に対して顕著な効果を奏する。完全な相補性が望まれることが多いが、いくつかの実施形態では、対象領域に対して1つ以上の不一致が含まれ得る。オリゴマー内の任意の位置の変化が含まれる。
【0060】
「実質的に相補的」という用語は、少なくとも70%の部分的な相補性を持つポリヌクレオチドを指し、すなわち、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の核酸の塩基が塩基対合ルールに従って一致する。不一致は、1つ以上の塩基置換(変異)、1つ以上の塩基欠失、または1つ以上の塩基挿入であってもよい。
【0061】
「アンチセンスオリゴヌクレオチド」、「アンチセンスオリゴマー」、「アンチセンス化合物」、および「ASO」という用語は互換的に使用され、対象領域など、核酸(RNAまたはDNAのいずれか、通常はRNA)内の対象配列に相補的にハイブリダイズできる標的オリゴヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドを指す。いくつかの実施形態では、ASOはデコイ配列と標的配列を含む。いくつかの実施形態では、ASOの標的配列は、対象領域と完全にまたは実質的に相補的である。いくつかの実施形態では、対象領域は、標的配列と完全にまたは部分的に相補的なプレRNAの配列である。対象領域は、目的のエクソン、目的のエクソンの上流の隣接イントロン配列、目的のエクソンの下流の隣接イントロン配列、目的のエクソンの上流のイントロン-エクソンジャンクション、および目的のエクソンの下流のイントロン-エクソンジャンクションに位置し得る。いくつかの実施形態では、デコイ配列は最適な5′スプライス部位をシミュレートするため、U1 snRNAによる隣接する真正の5′スプライス部位の認識を妨害する5′スプライス部位デコイとして機能する。いくつかの実施形態では、ASOは、1つ以上のDNAヌクレオチド、1つ以上のRNAヌクレオチド、およびそれらの混合物を含む。したがって、本明細書に開示される配列はDNA形態で表されるが、前記配列には対応するRNA形態も含まれる。ある実施形態では、1つ以上のDNAヌクレオチドおよび/またはRNAヌクレオチドの1つ以上は、修飾ヌクレオチドであってもよい。いくつかの実施形態では、ASOは、1つ以上の追加の化学的部分をさらに含む。いくつかの実施形態では、追加の化学的部分は、デコイ標的配列部分の5′末端および/または3′末端に共有結合する。いくつかの実施形態では、追加の化学的部分は、細胞透過性ペプチドである。
【0062】
「修飾ヌクレオチド」という用語には、天然ヌクレオチドとは構造的に異なるが、天然ヌクレオチドの少なくとも1つの機能を果たすことができる任意の化学的部分が含まれる。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、糖、塩基、および/またはヌクレオチド間結合における修飾を含む。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、修飾糖、修飾核酸塩基、および/または修飾ヌクレオチド間結合を含む。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、ヌクレオチドの少なくとも1つの機能、例えば、少なくとも相補的な塩基配列を含む核酸と塩基対合することができるポリマー中にサブユニットの形成を果たすことができる。
【0063】
「部分」という用語は、分子の特定のセグメントまたは官能基を指す。化学的部分は、分子に埋め込まれるかまたは付加された化学物質として認識されることが多い。いくつかの実施形態では、化合物の部分とは、化合物から1つ以上の-Hおよび/またはその同等物を除去することによって化合物から形成される一価、二価、または多価の基である。いくつかの実施形態では、その文脈に応じて、「部分」は、その部分が由来する化合物または物質を指すこともある。
【0064】
「エクソン」とは、タンパク質をコードする核酸の定義されたセクション、または前処理された(または前駆体)RNAのいずれかの部分がスプライシングによって除去された後の成熟形態のRNA分子において表される核酸配列を指す。成熟RNA分子は、メッセンジャーRNA(mRNA)またはrRNAやtRNAなどの機能形態の非コードRNAであり得る。ヒトジストロフィン遺伝子には約79個のエクソンがある。
【0065】
「イントロン」とは、タンパク質に翻訳されていない核酸領域(遺伝子内)を指す。イントロンは、前駆体RNA(プレRNA)に転写され、その後、成熟RNAの形成中にスプライシングによって除去される非コードセクションである。
【0066】
「インビトロ」という用語は、生物(例えば、動物、植物、および/または微生物)内ではなく、人工環境(例えば、試験管または反応容器、細胞培養液)内で発生するイベントを指す。
【0067】
「インビボ」という用語は、生物(例えば、動物、植物、または微生物)内で発生するイベントを指す。
【0068】
「遺伝子」という用語は、ゲノム遺伝子を意味することを意図しており、cDNA、mRNA前駆体(すなわち、プレmRNA)およびmRNAも含む。
【0069】
「薬学的に許容可能な塩」という用語は、無機酸および塩基、ならびに有機酸および塩基を含む、薬学的に許容される非毒性の酸または塩基から調製される塩を指す。例えば、塩基性窒素を含有する化合物の場合、塩は、無機酸および有機酸を含む薬学的に許容可能な非毒性の酸から調製されてもよい。本技術の化合物に適切な薬学的に許容可能な酸付加塩としては、酢酸、ベンゼンスルホン酸(ベシル酸)、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エテンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸などが挙げられる。化合物が酸性側鎖を含有する場合、本技術の化合物に適切な薬学的に許容可能な塩基付加塩としては、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛からなる金属塩、またはリジン、N,N′-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)、およびプロカインからなる有機塩が挙げられる。
【0070】
「医薬組成物」という用語は、本明細書に記載の化合物と、投与方法および剤形の性質に応じて、保存剤、充填剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味剤、香味剤、芳香剤、抗菌剤、抗真菌剤、潤滑剤、分注剤などの薬学的に許容可能な担体、希釈剤、補助剤、賦形剤、またはビヒクルを含む少なくとも1つの成分とを含む組成物を意味する。
【0071】
「薬学的に許容可能な担体」という用語は、本明細書に記載されるように、無毒でヒトの使用に安全な任意の担体、希釈剤、補助剤、賦形剤、またはビヒクルを意味するために使用される。懸濁剤の例としては、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタ水酸化物、ベントナイト、寒天およびトラガカント、またはこれらの物質の混合物が挙げられる。微生物の作用の防止は、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの様々な抗菌剤および抗真菌剤によって確保できる。また、等張剤、例えば糖、塩化ナトリウムなどを含めることが望ましい場合もある。注射可能な剤形の吸収の延長は、吸収を遅らせる薬剤、例えばアルミニウムモノステアレートおよびゼラチンを使用することによって実現できる。適切な担体、希釈剤、溶媒、またはビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール、それらの適切な混合物、植物油(オリーブ油など)、オレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。賦形剤の例としては、ラクトース、乳糖、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、およびリン酸二カルシウムが挙げられる。崩壊剤の例としては、デンプン、アルギン酸、およびいくつかの複合ケイ酸塩が挙げられる。潤滑剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、および高分子量ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0072】
「薬学的に許容可能」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、炎症、アレルギー反応などを起こさずにヒトおよび下等動物の細胞と接触して使用するのに適しており、妥当な利益/リスク比に見合っていることを意味する。
【0073】
上流または下流の配列に関して使用される「すぐ」という用語は、2つのグループ間の直接共有結合を指し、介在ヌクレオチドはない。
【0074】
「隣接」という用語は、介在ヌクレオチドがなく、互いに直接付着しているヌクレオチド配列を指すために使用される。例えば、ペンタヌクレオチド5′-AAAAAA-3′は、5′-AAAAATTT-3′または5′-TTTAAAAA-3′のように2つが連結されている場合はトリヌクレオチド5′-TTT-3′に隣接しているが、5′-AAAAACTTT-3′のように2つが連結されている場合は隣接していないということである。後者の場合、Cヌクレオチドはペンタヌクレオチドとトリヌクレオチドの間に「介在」していると言える。
【0075】
本明細書で使用される「治療有効量」および「有効量」という用語は互換可能であり、特定の疾患および/またはそれに関連する症状の重症度および/または持続期間を軽減および/または改善するのに十分な治療法(例えば、本明細書で提供されるASOまたはその医薬組成物)の量を指す。この用語には、特定の疾患の発達または進行の軽減または改善、特定の疾患の再発、発展または発症の軽減または改善、および/または別の治療法(例えば、本明細書で提供されるASO以外の治療法)の予防効果または治療効果の改善または増強に必要な量も含まれる。
【0076】
「デコイ」、「デコイ配列」、「ASOデコイ」、「ASOデコイ配列」、および「5′スプライス部位デコイ」という用語は、U1 snRNAの一本鎖5′末端に完全にまたは部分的に相補的なヌクレオチド配列を指すために本明細書では互換的に使用される。いくつかの実施形態では、デコイ配列は最適な5′スプライス部位をシミュレートするため、U1 snRNAによる隣接する真正の5′スプライス部位の認識を妨害する5′スプライス部位デコイとして機能する。
概要
【0077】
本明細書には、様々な実施形態において、目的の遺伝子(例えば、限定されないが、SMN1、SMN2、DMD、APP、CEP290、HER2、SCA3、PKM、およびMDM4)におけるエクソンスキッピングによって治療できる疾患および/またはその合併症を治療するためのASOが開示される。ある実施形態では、ASO(例えば、二分性ASO)は、1)目的の遺伝子における対象領域と完全にまたは実質的に相補的な「標的」配列、および2)標的配列の5′末端のすぐ上流および/または3′末端のすぐ下流に位置する「デコイ」配列という2つの構成要素を含む。いくつかの実施形態では、デコイ配列は、標的配列の5′末端のすぐ上流に位置する。ある実施形態では、デコイ配列は、標的配列の3′末端のすぐ下流に位置する。いくつかの実施形態では、デコイ配列は、標的核酸(例えば、mRNA)における対象領域の5′末端または3′末端に直接隣接する対応する隣接配列に対して、約80%未満などの低い配列相補性を有する。
【0078】
いくつかの実施形態では、ASO(例えば、二分性ASO)は、デコイ配列と標的配列との間にリンカーをさらに含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、本技術のASO(例えば、二分性ASO)は、目的の遺伝子(例えば、SMN1、SMN2、DMD、APP、CEP290、HER2、SCA3、PKM、およびMDM4)の転写産物(例えば、プレmRNA)に結合し、1つ以上のエクソンのスキッピングを誘導することによって転写産物のスプライシングパターンを変更することができる。いくつかの実施形態では、本技術のASO(例えば、二分性ASO)は、mRNA内の1つ以上のエクソンのスキッピングを引き起こし、そのエクソンスキッピング率(%excl)は、約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、および約90%以上増加する。エクソンスキッピング率は、当該技術分野で既知の技術を使用して測定でき、本願全体にわたって、例えば以下の「アッセイ」セクションに記載されている。
【0080】
二分性ASOにデコイ配列が存在することにより、標的配列によるエクソンスキッピング率が増加する場合がある。いくつかの実施形態では、二分性ASOにデコイ配列が存在することにより、標的配列のエクソンスキッピング率が、同一の標的配列を持つがデコイ配列を持たないASOに比べて少なくとも約2倍増加する場合がある。いくつかの実施形態では、二分性ASOにデコイ配列が存在することにより、標的配列のエクソンスキッピング率が、同一の標的配列を持つがデコイ配列を持たないASOに比べて約2倍以上、約2.18倍以上、約2.3倍以上、約3倍以上、約4倍以上、約5倍以上、約6倍以上、約7倍以上、約8倍以上、約9倍以上、約10倍以上、約11倍以上、約12倍以上、約13倍以上、約14倍以上、約15倍以上、約16倍以上、約17倍以上、約18倍以上、約19倍以上、約20倍以上、約25倍以上、約30倍以上、約40倍以上、約50倍以上、約60倍以上、約70倍以上、約100倍以上、約80倍以上、約90倍以上、約100倍以上、またはそれ以上(これらの値の間のすべての値および範囲を含む)増加する。ある実施形態では、標的配列に付着したデコイ配列(例えば、配列番号1~23および347~353のヌクレオチド配列)を含むかまたはそれからなるASOは、本明細書に開示される標的配列を含むがいかなるデコイ配列を含まないASOよりも低い用量で、エクソンスキッピングを生成または促進するのと同等の有効性および/または効率を達成する場合がある。
【0081】
本明細書では、ある実施形態において、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)と薬学的に許容可能な担体とを含む組成物が提供される。ある実施形態では、組成物は、医薬製剤または組成物である。
【0082】
本明細書では、ある実施形態において、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)をコードするベクターが提供される。
【0083】
本明細書では、いくつかの実施形態において、細胞または被験者内のプレmRNAを、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)を含む組成物(例えば、医薬組成物)、および/または本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)をコードするベクターと接触させることを含む、プレmRNAのスプライシング中に目的のエクソンのエクソンスキッピングを生成または促進する方法が提供される。ASO媒介のエクソンスキッピングは、目的の遺伝子の発現を操作するためのアプローチであってもよい。目的の遺伝子の発現は、目的の遺伝子のエクソン、イントロン、または特定のスプライス部位のスプライシングを阻害するためにASOによって操作され、それにより例えば、限定されないが、目的の遺伝子の欠陥の読み枠の復元、目的の遺伝子の異なるアイソフォーム(例えば、ドミナントネガティブアイソフォーム)の生成、遺伝子の毒性部分のスキッピング、遺伝子のサイレンシング、および/または遺伝子の構造および機能の変更につながる場合がある。
【0084】
本明細書では、ある実施形態において、標的配列のエクソンスキッピングの有効性および/または効率を向上させる方法が提供され、この方法は、標的配列と、標的配列の5′末端および/または3′末端に動作可能に連結された本明細書に開示されるデコイ配列とを含む1つ以上のASO(例えば、二分性ASO)を得ることを含む。ある実施形態において、複数のASO(例えば、二分性ASO)がスクリーニングおよび最適化のために提供され、例えば、限定されないが、1つ以上のASO(例えば、二分性ASO)を、そのエクソンスキッピングの有効性および/または目的のエクソンの効率に従ってスクリーニングおよび/または最適化することをさらに含む方法によって向上したエクソンスキッピング率を有する1つ以上のASO(例えば、二分性ASO)を提供してもよい。
【0085】
また、本明細書では、ある実施形態において、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)を含む組成物(例えば、医薬組成物)、および/または本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)をコードするベクターを被験者に投与することを含む、被験者における疾患および/またはその合併症を治療する方法も提供される。ASO(例えば、二分性ASO)は、プレmRNAスプライシング中に目的のエクソンのエクソンスキッピングを生成または促進する場合がある。ASO媒介のエクソンスキッピングは、目的の遺伝子の発現を操作するためのアプローチであってもよい。目的の遺伝子の発現は、目的の遺伝子のエクソン、イントロン、または特定のスプライス部位のスプライシングを阻害するためにASOによって操作され、それにより例えば、限定されないが、目的の遺伝子の欠陥の読み枠の復元、目的の遺伝子の異なるアイソフォーム(例えば、ドミナントネガティブアイソフォーム)の生成、遺伝子の毒性部分のスキッピング、遺伝子のサイレンシング、および/または遺伝子の構造および機能の変更につながる場合がある。目的の遺伝子の表現の操作は、当該目的の遺伝子が疾患の原因である場合もそうでない場合もあるが、疾患および/またはその合併症の治療に有益であり得る。疾患は、本明細書に開示されるように、遺伝性疾患または非遺伝性疾患(例えば、一部の非遺伝性癌、代謝性疾患、または感染性疾患)であってもよい。遺伝性疾患は、スプライシング欠損に関する変異と関連している場合もそうでない場合もある。
【0086】
また、本明細書では、ある実施形態において、目的のエクソンのエクソンスキッピングの生成または促進に使用するための、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)を含む組成物(例えば、医薬組成物)、および/または本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)をコードするベクターを含むキットも提供する。ASO媒介のエクソンスキッピングは、目的の遺伝子の発現を操作するためのアプローチであってもよい。目的の遺伝子の発現は、目的の遺伝子のエクソン、イントロン、または特定のスプライス部位のスプライシングを阻害するためにASOによって操作され、それにより例えば、限定されないが、目的の遺伝子の欠陥の読み枠の復元、目的の遺伝子の異なるアイソフォーム(例えば、ドミナントネガティブアイソフォーム)の生成、遺伝子の毒性部分のスキッピング、遺伝子のサイレンシング、および/または遺伝子の構造および機能の変更につながる場合がある。
目的の遺伝子およびエクソンスキッピングで治療できる可能性のある疾患の例
ジストロフィンとデュシェンヌ型筋ジストロフィー
【0087】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、ジストロフィンタンパク質の産生を消失させるDMD遺伝子内の変異によって引き起こされるX染色体連鎖の進行性筋萎縮疾患である。ジストロフィンは棒状の細胞質タンパク質であり、細胞膜を介して筋線維の細胞骨格を周囲の細胞外基質に連結するタンパク質複合体の重要な部分である。ジストロフィンには複数の機能ドメインが含まれる。例えば、ジストロフィンには、アミノ酸14~240位にアクチン結合ドメイン、アミノ酸253~3040位に中央棒状ドメインが含まれる。この大きな中央ドメインは、α-アクチニンおよびスペクトリンと相同性のある、約109アミノ酸の24個のスペクトリン様三重らせん要素によって形成される。リピートは通常、ヒンジ領域とも呼ばれる4つのプロリンリッチの非リピートセグメントによって中断される。リピート15、16は、ジストロフィンのタンパク質分解性切断の主要部位を提供するように現れる18アミノ酸のストレッチによって分離される。ほとんどのリピート間の配列同一性は10~25%の範囲にある。1つのリピートには、3つのアルファヘリックス(1、2、3)が含まれる。アルファヘリックス1、3はそれぞれ7つのヘリックスターンで形成され、おそらく疎水性界面を介してコイルドコイルとして相互作用する。アルファヘリックス2はより複雑な構造であり、グリシンまたはプロリン残基によって分離された4つや3つのヘリックスターンのセグメントで形成される。各リピートは2つのエクソンによってコードされ、通常はアルファヘリックス2の最初の部分におけるアミノ酸47と48の間にあるイントロンによって中断される。もう1つのイントロンはリピートの別の位置に見つけられ、通常はヘリックス3に散在する。ジストロフィンには、アミノ酸3080~3360付近にシステインリッチドメインも含まれており、このドメインには粘菌(細胞性粘菌)のアルファアクチニンのC末端ドメインと相同性を示すシステインリッチセグメント(すなわち、280個のアミノ酸中の15個のシステイン)が含まれる。カルボキシ末端ドメインは、アミノ酸3361~3685付近にある。ジストロフィンのアミノ末端はFアクチンに結合し、そのカルボキシ末端は筋細胞膜でジストロフィン関連タンパク質複合体(DAPC)に結合する。DAPCには、ジストログリカン、サルコグリカン、インテグリン、カベオリンが含まれており、これらの成分のいずれかに変異があると、常染色体遺伝性の筋ジストロフィーの原因となる。ジストロフィンが欠如するとDAPCが不安定になるため、メンバータンパク質のレベルが低下し、進行性の線維損傷と膜漏出につながる。デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)やベッカー型筋ジストロフィー(BMD)などの様々な形態の筋ジストロフィーでは、主に誤ったスプライシングにつながる遺伝子配列内の変異により、筋細胞は改変された機能的に欠陥のあるジストロフィンを産生するか、またはまったくジストロフィンを産生しない。欠陥のあるジストロフィンタンパク質の優位な発現、またはジストロフィンまたはジストロフィン様タンパク質の完全な欠如は、上記のように、筋変性の急速な進行につながる。この点において、「欠陥のある」ジストロフィンタンパク質は、当該技術分野で知られているように、DMDまたはBMDを患う一部の被験者で産生したジストロフィンの形態によって特徴付けられるか、または検出可能なジストロフィンが存在しないことによって特徴付けられる場合がある。
【0088】
DMD患者には、7,000種類を超える異なる変異が報告されている。患者のほとんど(約65%)は1つ以上のエクソンが関与する大きな欠失を抱えているが、大きな重複(約12%)や小さな変異(20%)も頻繁に報告されている。これらの変異の共通点は、いずれも非機能性ジストロフィンをもたらすことである。例えば、エクソン45の欠失はDMD患者に見られる最も一般的な欠失の1つであるが、エクソン44、45の欠失は一般的にBMDと関連している。したがって、これらのDMD患者のプレメッセンジャーRNA(mRNA)転写産物においてエクソン44をバイパスできれば、読み枠が復元され、部分的に機能するBMD様ジストロフィンの産生が可能になる。実際、エクソン44を境界とする欠失を持つ多くの患者は、非常に低いレベルではあるが、エクソン44を自発的にスキッピングしているようである。この結果、他の欠失を抱えるDMD患者と比較すると、ジストロフィンのレベルがわずかに増加し、他の欠失を持つDMD患者に比べてその原因がこれらの患者において観察される病気の進行がより軽度である可能性が最も高い。
DMD治療のためのエクソンスキッピング
【0089】
アンチセンス媒介のエクソンスキッピングは、1つ以上の対象エクソンのスキッピングを誘導し、欠陥のある読み枠を復元するために使用できる。ジストロフィン遺伝子における変異は、治療的エクソンスキッピングの影響を受けやすい。例えば、エクソン(例えば、45~50、47~50、48~50、49~50、50、52、52~63)における変異は、エクソン51スキッピングの影響を受けやすい(ライデンデュシェンヌ型筋ジストロフィー変異データベース、ライデン大学メディカルセンター、オランダ)。患者がエクソンスキッピングの影響を受けやすいDMD遺伝子の変異を有するかどうかを判定することは可能である(例えば、Aartsma-Rus, et al. Theoretic applicability of antisense‐mediated exon skipping for Duchenne muscular dystrophy mutations. 2009 Feb 24. Hum Mut. 30:293-299. doi: 10.1002/humu.20918; Stephen Abbs, et al. Best Practice Guidelines on molecular diagnostics in Duchenne/Becker muscular dystrophies. 2010 Jun. Neuromusc Disorders. 20:422-427. doi: 10.1016/j.nmd.2010.04.005参照、それぞれの開示内容は、その全文が参照により本明細書に組み込まれる)。DMD遺伝子に特定の欠陥がある患者に対するエクソンスキッピングアプローチを開発するには、遺伝子の追加のエクソンを標的とする標的配列を有するASOを開発する必要がある。例えば、DMD患者の13%~14%に欠陥があるエクソン51をスキッピングするASOを開発できる。
【0090】
この技術(インビボまたはインビトロ)に含まれる治療に対する関連生理学的または細胞的反応は、当業者には明らかであり、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)および関連疾患、例えばベッカー型筋ジストロフィー(BMD)、肢帯型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、筋強直性筋ジストロフィー、眼咽頭型筋ジストロフィー、遠位型筋ジストロフィー、エメリードレイファス型筋ジストロフィー、筋萎縮状態または障害、例えばエイズ、癌または化学療法関連筋萎縮、および線維症または線維症関連障害(例えば、骨格筋線維症)の症状または病状の軽減を含む場合がある。反応の「増加」は、ASO化合物および/または治療剤を投与せずにそれを必要とする被験者によって生成される反応に比べて(例えば、特定の被験者またはコホートの「ネイティブ」または「自然な」発現率に比べる場合)、または対照化合物に比べる場合、「統計的に顕著」であってもよい。
【0091】
いくつかの実施形態では、DMD患者において、DMDアレルはエクソンにおける変異を含み、この障害はDMD遺伝子転写産物の1つ以上のエクソンをスキッピングすることによって治療できる。いくつかの実施形態では、DMD患者において、DMDアレルまたはDMD転写産物はエクソンにおける変異を有し、この変異はミスセンスまたはナンセンス変異、欠失、挿入、逆位、または転座または重複である。いくつかの実施形態では、筋ジストロフィーの治療において、DMD転写産物内の1つ以上のエクソンがスキッピングされ、このエクソンは、DMDタンパク質機能に必須ではないアミノ酸の列をコードし、またはそのスキッピングにより完全にまたは少なくとも部分的に機能するDMDタンパク質が得られる。ここで、DMDタンパク質はジストロフィンを指す。いくつかの実施形態では、筋ジストロフィーの治療において、ASOは、DMDエクソン51または53のスキッピングを媒介することによって、少なくとも部分的に改善されるか、または完全に回復された生物活性(例えば、機能性DMDタンパク質変異体)を提供する、人工的に内部短縮されたDMDタンパク質変異体に翻訳できるmRNAを作成することができる。いくつかの実施形態では、1つ以上のエクソンがスキッピングされたジストロフィンDMD転写産物から産生した内部短縮DMDタンパク質変異体は、例えば枠外欠失のあるジストロフィンDMD転写産物から産生した末端短縮DMDタンパク質よりも機能性が高い。いくつかの実施形態では、1つ以上のエクソンがスキッピングされたジストロフィンDMD転写産物から産生した内部短縮DMDタンパク質変異体は、例えば枠外欠失のあるジストロフィンDMD転写産物から産生した末端短縮DMDタンパク質を分解できるナンセンス異変依存分解に対してより高い耐性を有する。いくつかの実施形態では、読み枠を復元することで、枠外変異を枠内変異に変換でき、いくつかの実施形態では、ヒトにおいて、このような変化により、重度のデュシェンヌ型筋ジストロフィーがより軽度のベッカー型筋ジストロフィーに変化する可能性がある。
【0092】
本技術の方法は、患者の筋原細胞または筋肉細胞の1つ以上の特徴を軽減するか、または欠失を有するDMD患者全体の68%に発生する、限定されないが、DMD遺伝子内のエクソン44、44~46、44~47、44~48、44~49、44~51、44~53(エクソン43スキッピングによって修正可能)、19~45、21~45、43~45、45、47~54、47~56(エクソン46スキッピングによって修正可能)、51、51~53、51~55、51~57(エクソン50スキッピングによって修正可能)、13~50、19~50、29~50、43~50、45~50、47~50、48~50、49~50、50、52(エクソン51スキッピングによって修正可能)、エクソン8~51、51、53、53~55、53~57、53~59、53~60(エクソン52スキッピングによって修正可能)、およびエクソン10~52、42~52、43~52、45~52、47~52、48~52、49~52、50~52、52(エクソン53スキッピングによって修正可能)を含む欠失を有するDMD患者の1つ以上の症状を軽減する場合がある(Aartsma-Rus, et al. Theoretic applicability of antisense‐mediated exon skipping for Duchenne muscular dystrophy mutations. 2009 Feb 24. Hum Mut. 30:293-299. Doi: 10.1002/humu.20918)。米国特許第9,499,818号を参照し、その全文は参照により本明細書に組み込まれる。
SMN遺伝子と脊髄性筋萎縮症
【0093】
SMN1遺伝子とSMN2遺伝子は、脊髄性筋萎縮症(SMA)と呼ばれる疾患に関連している。両方の遺伝子は、同一のタンパク質(運動ニューロンまたはSMNの残存物)をコードする。2つの遺伝子の1つの違いは、SMN2がエクソン7におけるCからTへの遷移によって異なり、この遷移はSMN2が低レベルの機能性タンパク質しか発現しないようにこのエクソンの実質的なスキッピングを引き起こす。
追加の目的の遺伝子とエクソンスキッピングによって治療できる可能性のある関連疾患
【0094】
追加の目的の遺伝子の例としては、APP遺伝子、CEP290遺伝子、HER2遺伝子、PKM遺伝子、およびMDM4遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。APP遺伝子はアルツハイマー病と関連しており、CEP290遺伝子はジュベール症候群と関連している。HER2遺伝子のエクソン19、PKM遺伝子のエクソン10、またはMDM4遺伝子のエクソン6を促進するASOには、乳癌、HER2陽性胆道癌、大腸癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、前立腺癌、肺癌、子宮頸癌、腎臓癌、甲状腺乳頭癌、結腸癌、大腸癌、神経膠腫、卵巣癌、胃癌、肝芽腫、線維層状癌、肝細胞癌、軟部肉腫、骨肉腫、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、マントル細胞リンパ腫、小児バーキットリンパ腫、唾液腺癌、肝臓癌、および黒色腫を含む様々な種類の癌を治療するポテンシャルがある。(例えば、Do-Youn Oh and Yung-Jue Bang. HER2-targeted therapies - a role beyond breast cancer. 2019 Sep 23. Nat. Rev. Clin. Oncol. 17:33-48. Doi: 10.1038/s41571-019-0268-3; K. Zahra, et al. Pyruvate kinase M2 and cancer: the role of PKM2 in promoting tumorigenesis. 2020 Mar 2. Front. Oncol. 10:159. Doi: 10.3389/fonc.2020.00159; and D. Yu, et al. Targeting MDMX for cancer therapy: rationale, strategies, and challenges. 2020 Aug 5. Front. Oncol. 10:1389. Doi: 10.3389/fonc.2020.01389参照)
エクソンスキッピングによるプレmRNAスプライシング調節のための二分性ASO
【0095】
いくつかの態様では、本技術は、細胞または被験者内のプレmRNAを、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)を含む組成物(例えば、医薬組成物)、および/または本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)をコードするベクターと接触させることを含む、プレmRNAスプライシング中に目的のエクソンのエクソンスキッピングを生成または促進する方法を提供する。いくつかの実施形態では、この方法は、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)を細胞に送達するか、または被験者に投与することをさらに含む。ASO媒介のエクソンスキッピングは、目的の遺伝子の発現を操作するためのアプローチであってもよい。目的の遺伝子の発現は、目的の遺伝子のエクソン、イントロン、または特定のスプライス部位のスプライシングを阻害するためにASOによって操作され、それにより例えば、限定されないが、目的の遺伝子の欠陥の読み枠の復元、目的の遺伝子の異なるアイソフォーム(例えば、ドミナントネガティブアイソフォーム)の生成、遺伝子の毒性部分のスキッピング、遺伝子のサイレンシング、および/または遺伝子の構造および機能の変更につながる場合がある。
【0096】
いくつかの態様では、本技術は、目的のエクソンのエクソンスキッピングを生成または促進するための、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)を含む組成物(例えば、医薬組成物)、および/または本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)をコードするベクターの使用を提供する。ASO媒介のエクソンスキッピングは、目的の遺伝子の発現を操作するためのアプローチであってもよい。目的の遺伝子の発現は、目的の遺伝子のエクソン、イントロン、または特定のスプライス部位のスプライシングを阻害するためにASOによって操作され、それにより例えば、限定されないが、目的の遺伝子の欠陥の読み枠の復元、目的の遺伝子の異なるアイソフォーム(例えば、ドミナントネガティブアイソフォーム)の生成、遺伝子の毒性部分のスキッピング、遺伝子のサイレンシング、および/または遺伝子の構造および機能の変更につながる場合がある。
【0097】
いくつかの態様では、本技術は、目的のエクソンのエクソンスキッピングの生成または促進に使用するための、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)を含む組成物(例えば、医薬組成物)、および/または本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)をコードするベクターを提供する。ASO媒介のエクソンスキッピングは、目的の遺伝子の発現を操作するためのアプローチであってもよい。目的の遺伝子の発現は、目的の遺伝子のエクソン、イントロン、または特定のスプライス部位のスプライシングを阻害するためにASOによって操作され、それにより例えば、限定されないが、目的の遺伝子の欠陥の読み枠の復元、目的の遺伝子の異なるアイソフォーム(例えば、ドミナントネガティブアイソフォーム)の生成、遺伝子の毒性部分のスキッピング、遺伝子のサイレンシング、および/または遺伝子の構造および機能の変更につながる場合がある。
【0098】
ASOは、目的のスプライシング配列に特異的で、かつ実質的に相補的な一本鎖オリゴヌクレオチドである標的配列を含み、したがって、その配列に水素結合することができる。当業者は、その多くが当該技術分野でよく知られている適切な対象領域に特異的となるようにASOの標的配列を容易に設計することができる。例えば、当業者は、適切なスプライシング配列を含むプレmRNA配列を、出版物または注釈付きの公開データベース(NCBIが運営するGenBankデータベースなど)から入手できる。エクソンスキッピングを強化するためのASOの設計には、多数の標的配列が組み込まれており、現在、前臨床または臨床試験の段階にあるものもある。これらの標的配列はいずれも、本技術の方法で使用するのに適している。
【0099】
ASOは、スプライシング機構からエクソンを包含するために必須なプレmRNA内の特定の配列モチーフ(ここでは「スプライシング配列」と呼ばれることもある)をブロック(隠蔽)することによって、エクソンスキッピングを調節するために使用できる。異常なスプライス部位をブロックするASOは、正常なスプライシングを回復できる。あるいは、一部のスプライシング配列を標的とするASOは、スプライシングパターンを有害なアイソフォームから有益なアイソフォームに切り替えるか、または非機能性mRNAを少なくとも部分的に機能するmRNAに変換することができる。後者のアプローチとしては、破壊された読み枠を復元することによって、非機能性タンパク質の代わりに半機能性タンパク質を生成することが挙げられる。
【0100】
本技術のASO(例えば、二分性ASO)は、直接または間接に、目的の部位のスプライシング配列と特異的に相互作用する(例えば、結合する)ことによって、その部位でのスプライシングをブロックするために使用できる。「スプライシング配列」とは、特定のイントロンのスプライシングアウトおよび/または特定のエクソンの保持を調節する、および/またはそれに必要な配列を意味する。スプライシング配列は、例えば、スプライスドナー部位(5′スプライス部位)、スプライスアクセプター部位(3′スプライス部位)、分岐部位、イントロンスプライシングエンハンサー(ISE)、エクソンスプライシングエンハンサー(ESE)、イントロンスプライシングサイレンサー(ISS)、またはエクソンスプライシングサイレンサー(ESS)であり得る。
【0101】
本技術の方法で使用されるASO(例えば、二分性ASO)は、目的の対象スプライシング配列である対象領域に直接かつ特異的に結合できる。「特異的結合」とは、特異的結合が望まれる条件下では、ASOが対象領域に優先的に結合するが、非対象配列には結合しないことを意味する。その条件は、例えば、インビボアッセイまたは治療的処置の場合は生理学的条件であり得、インビトロアッセイの場合はアッセイが行われる条件であり得る。本技術の小分子化合物がスプライシングをブロックする(例えば、エクソンスキッピングを強化する)メカニズムは、すべての化合物については明らかになっていないため、化合物がスプライス部位に直接結合するか、それとも(例えば、スプライソソームの別のRNAまたはタンパク質要素に結合することによって)間接作用するかは不明である。メカニズムに関係なく、目的のスプライシングイベントを「特異的に」阻害する本技術の化合物は、特異的な阻害が望まれる条件下で、特定のスプライシングイベントを優先的にブロックするが、非対象スプライシングイベントを阻害しない化合物である。
【0102】
本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)は、モルフォリノホスホロジアミデート(PMO)、2′-O-メチル、2′-O-メトキシエチル(MOE)、ホスホロチオエート(PS)、2′-フルオロリボース(2′-F)、4′-チオリボシルリボース、ロックド核酸オリゴ(LNA)、および/または拘束エチルオリゴ(cEt)、またはペプチド核酸など、様々な異なる骨格化学修飾を有するため、ASOの安定性を向上させる場合がある。例えば、DNA、RNA、PNA、LNA、またはそれらのキメラ混合物、誘導体、または修飾されたものであり得る。核酸は、従来の手順および修飾を用いて、塩基部分、糖部分、またはリン酸骨格で修飾できる。塩基の修飾には、例えば、プリンまたはピリミジンのメチル化されたものが含まれる。修飾には、熟練工にとって明らかな他の付加基が含まれてもよい。オリゴヌクレオチド修飾の例は、本願全体にわたって、例えば以下の「オリゴヌクレオチド修飾」セクションに記載されている。
【0103】
本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)は、当該技術分野で既知の化学合成手順を用いて構築できる。ASOは、分子の生物学的安定性を高めるか、またはアンチセンス核酸とセンス核酸との間に形成される二重鎖の物理的安定性を高めるために設計された、天然に存在するヌクレオチドまたは様々な修飾ヌクレオチドを用いて化学的に合成でき、例えば、ホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドを使用できる。
【0104】
あるいは、ASOは、アンチセンスの向き(すなわち、挿入された核酸から転写された核酸は、対象領域に対してアンチセンスの向きになる)に核酸がサブクローニングされた発現ベクターを用いて生物学的に生成できる。アンチセンスの向きにクローニングされた核酸に動作可能に連結された発現制御配列(例えば、調節配列)を選択して、目的の細胞におけるアンチセンスRNA分子の発現を導くことができる。例えば、ASOの構成的、組織特異的、または誘導性の発現を導くプロモーターおよび/またはエンハンサーまたはその他の調節配列を選択できる。例えば、誘導性真核生物調節システムによって調節されるアンチセンスRNAの誘導性発現を使用できる。アンチセンス発現ベクターは、例えば、組み換えプラスミド、ファージミド、または弱毒ウイルスの形態をとることができる。適切なウイルスベクターには、例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)またはレンチウイルスベクターが含まれる。アンチセンス発現ベクターは、当技術分野で周知の標準的な技術を用いて細胞に導入できる。
【0105】
ASO内の標的配列の長さは、プレmRNA分子内の意図されたスプライシング配列に選択的に結合できる限り、変化してもよい。熟練工であれば、満足できる長さを容易に決定できる。一般的に、ASOの標的配列の長さは約10ntから約80ntである。エンドポイントを含むこの範囲内の任意の長さのヌクレオチドを、本技術の方法において使用できる。
【0106】
本技術のいくつかの実施形態では、ASOの標的配列は、阻害のために設計されたスプライシング配列と完全に(100%)相補的な鎖を含む。すなわち、標的配列内の連続するすべてのヌクレオチドは、対象遺伝子内のスプライシング配列におけるすべてのヌクレオチドとハイブリダイズすることになる。ただし、標的配列と対象領域の間に100%の配列同一性は必要ない。したがって、本技術には、遺伝子変異、株多型、または進化分岐により予想され得る、自然に生じる配列変異を許容できるという利点がある。あるいは、変異体は人工的に生成されてもよい。対象領域に比べて、例えば小さな挿入、欠失、および単一点変異を有する核酸配列は、阻害に効果的であり得る。配列同一性の程度は、例えば、90%、95%、98%、99%、または100%であり得る。このような変異体ASOは、当然のことながら、それが由来するASOの関連活性(例えば、目的の部位でのスプライシングを抑制する能力)を保持しなければならない。このような変異体は、本明細書では「活性変異体」と呼ばれることがある。
【0107】
スプライシングに関与するプレmRNAの領域に相補的である適切なアンチセンス分子を設計する(それによりスプライシングをブロックする)ためのさらなるガイダンス、およびそのような分子を作製して細胞または被験者に送達する方法については、例えば、US2008/0200409または米国特許第7,973,015号、7,960,541号、7,902,160号、7,888,012号、7,879,992号、または7,737,110号を参照のこと。
ジストロフィン遺伝子スプライシング調節のためのオリゴヌクレオチドの例
【0108】
2016年9月、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、変異DMDからエクソン51を除外するために開発された最初のDMDアンチセンス薬であるエテプリルセン(Exondys 51)を条件付きで承認した。エテプリルセンは、ホスホロジアミデートモルフォリノオリゴマー(モルフォリノまたはPMO)で修飾されたオリゴヌクレオチドである。しかしながら、エテプリルセンは、ジストロフィンタンパク質を治療上有益なレベルに回復させる点と臨床結果を改善する点の両方において、その有効性を裏付ける証拠が弱いため、依然として物議を醸している。FDAは以前、DMDエクソン51スキッピングの別の薬物候補である2′-O-メチルホスホロチオエート系のオリゴヌクレオチド「Drisapersen」を却下している。治療ではリスクを最小限に抑えて最大限の可能な利益を確保しなければならないが、Drisapersenによる治療では筋機能の顕著な改善は示されず、その使用は安全性に関する懸念が生じた。
二分性アンチセンスオリゴヌクレオチド(二分性ASO)
【0109】
いくつかの態様では、本技術は、1)標的核酸(例えば、目的の遺伝子のプレmRNA)内の対象領域と完全にまたは実質的に相補的な「標的」配列と、2)標的配列の5′末端および/または3′末端に動作可能に連結されて位置する「デコイ」配列とを含む二分性ASOを提供する。デコイ配列は、最適な5′スプライス部位をシミュレートするため、U1 snRNAによる隣接する真正の5′スプライス部位の認識を妨害する5′スプライス部位デコイとして機能する場合がある。本明細書で論じたように、デコイ配列の存在は、標的配列による対象領域でのスプライシング調節の効率を高める場合がある。
【0110】
様々な実施形態では、本技術の二分性ASOは、1)標的核酸(例えば、目的の遺伝子のプレmRNA)内の対象領域と完全にまたは実質的に相補的な「標的」配列と、2)標的配列の5′末端のすぐ上流および/または3′末端のすぐ下流に位置する「デコイ」配列(すなわち、デコイ配列は標的配列の隣接領域にある)とを含む。いくつかの実施形態では、デコイ配列は、デコイ配列と標的配列との間に中間ヌクレオチドを介さずに、標的配列に直接連結される。いくつかの実施形態では、デコイ配列は、標的配列の5′末端のすぐ上流に位置する(図1A参照)。別の実施形態では、デコイ配列は、標的配列の3′末端のすぐ下流に位置する。
【0111】
標的配列の5′末端および3′末端の両方がデコイ配列で連結された場合、各末端に連結されたデコイ配列は同じであっても異なってもよく、連結方式も同じであっても異なってもよい。例えば、両方のデコイ配列がリンカーなしで標的配列に連結されてもよく、または一方のデコイ配列がリンカーなしで連結され、もう一方のデコイ配列がリンカーで連結される。または、両方のデコイ配列がリンカーで標的配列に連結されるが、リンカーは同じであっても異なってもよい。ある実施形態では、リンカーは1、2、3、4、または5つのヌクレオチドを有してもよい。
【0112】
いくつかの実施形態では、同じ標的配列を含むASOは、デコイ配列の存在(例えば、デコイ配列の有無)、デコイ配列の長さ、デコイ配列の順序、および/またはデコイ配列の位置(例えば、標的配列の5′末端および/または3′末端)により、異なるエクソンスキッピング効果および/または効率を有してもよい。ある実施形態では、エクソンスキッピング効果および/または効率は、各遺伝子の全転写産物における目的のエクソンの排除率(%excl)によって定量化されてもよい。ある実施形態では、排除率の増加によって定量化された改善は、標的配列からなるASOの改善の少なくとも約2倍、少なくとも約2.18倍、少なくとも約2.3倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、少なくとも約15倍、少なくとも約16倍、少なくとも約17倍、少なくとも約18倍、少なくとも約19倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100倍(これらの値の間のすべての値と範囲を含む)であってもよい。
【0113】
ある実施形態では、標的配列に付着したデコイ配列(例えば、限定されないが、配列番号1~23および347~353のヌクレオチド配列)を含むかまたはそれらからなる二分性ASOは、標的配列からなるASOよりも低い用量でエクソンスキッピングを生成または促進するのと同等の有効性および/または効率を達成する場合がある。ある実施形態では、標的配列に付着したデコイ配列を含むASOは、標的配列からなるASOの用量の約10%以下、約25%以下、約40%以下、または約50%以下の用量で、標的配列からなるASOと同等の排除率(例えば、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約110%、少なくとも約120%、少なくとも約130%、少なくとも約140%、少なくとも約150%)を達成する場合がある。
【0114】
同じ標的配列およびデコイ配列を含む二分性ASOのある実施形態では、標的配列の5′末端にデコイ配列を有する二分性ASOは、標的配列の3′末端にデコイ配列を有する二分性ASOよりも高いエクソンスキッピング効果および/または効率を有してもよい。ある例では、デコイ配列を含む両方の二分性ASOは、同じ標的配列からなるASOよりも高いエクソンスキッピング効果および/または効率を有する。
【0115】
同じ標的配列およびデコイ配列を含む二分性ASOのある実施形態では、標的配列の5′末端にデコイ配列を有する二分性ASOは、標的配列の3′末端にデコイ配列を有する二分性ASOよりも低いエクソンスキッピング効果および/または効率を有してもよい。ある例では、デコイ配列を含む両方の二分性ASOは、同じ標的配列からなるASOよりも高いエクソンスキッピング効果および/または効率を有する。
【0116】
同じ標的配列およびデコイ配列を含むASOのある実施形態では、標的配列の5′末端にデコイ配列を有するASOと、標的配列の3′末端にデコイ配列を有するASOは同等である。
【0117】
いくつかの実施形態では、二分性ASOは、配列番号26~27、30~31、34~35、38~39、42~43、46~47、50~73、76~90、93~122、125~154、157~186、189~218、221~250、253~282、285~314、317~346、および354~356のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、二分性ASOは、配列番号26、30、31、34、38、42、46、50、51、60、64、65、68、70、78、83、85、86、87、88、89、103、109、110、114、115、116、127、132、144、164、189、205、213、216、228、260、276、292、294、297、298、312、320、324、327、328、332、および354のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。
【0118】
いくつかの実施形態では、目的の遺伝子はSMN1および/またはSMN2遺伝子であり、ASOは、配列番号26~27、30~31、34~35、および354~356のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。ある実施形態では、ASOは、配列番号26、30、31、34、および354のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。ある実施形態では、目的のエクソンは、SMN1および/またはSMN2遺伝子のエクソン7である。
【0119】
いくつかの実施形態では、目的の遺伝子はDMD遺伝子であり、ASOは、配列番号38~39、42~43、46~47、50~73、76~90、93~122、および125~154のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。ある実施形態では、最適なASOは、配列番号38、42、46、50、51、60、64、65、68、70、78、83、85、86、87、88、89、103、109、110、114、115、116、127、132、および144のヌクレオチド配列かならる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。
【0120】
ある実施形態では、目的のエクソンはDMD遺伝子のエクソン51であり、ASOは、配列番号38~39、42~43、46~47、50~73、および76~90のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。ある実施形態では、最適なASOは、配列番号38、42、46、50、51、60、64、65、68、70、78、83、85、86、87、88、および89のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。
【0121】
ある実施形態では、目的のエクソンはDMD遺伝子のエクソン53であり、ASOは配列番号93~122のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。ある実施形態では、最適なASOは、配列番号103、109、110、114、115、および116のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。
【0122】
ある実施形態では、目的のエクソンはDMD遺伝子のエクソン45であり、ASOは、配列番号125~154のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。ある実施形態では、最適なASOは、配列番号127、132、および144のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。
【0123】
いくつかの実施形態では、目的の遺伝子はAPP遺伝子であり、ASOは、配列番号157~186のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。ある実施形態では、最適なASOは、配列番号164のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。ある実施形態では、目的のエクソンは、APP遺伝子のエクソン17である。
【0124】
いくつかの実施形態では、目的の遺伝子はCEP290遺伝子であり、ASOは、配列番号189~218のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。ある実施形態では、最適なASOは、配列番号189、205、213、および216のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。ある実施形態では、目的のエクソンは、CEP290遺伝子のエクソン41である。
【0125】
いくつかの実施形態では、目的の遺伝子はHER2遺伝子であり、ASOは、配列番号221~250のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。ある実施形態では、最適なASOは、配列番号228のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。ある実施形態では、目的のエクソンは、HER2遺伝子のエクソン19である。
【0126】
いくつかの実施形態では、目的の遺伝子はATXN3遺伝子であり、ASOは、配列番号253~282のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。ある実施形態では、最適なASOは、配列番号260および276のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。ある実施形態では、目的のエクソンは、ATXN3遺伝子のエクソン10である。
【0127】
いくつかの実施形態では、目的の遺伝子はPKM遺伝子であり、ASOは、配列番号285~314のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。ある実施形態では、最適なASOは、配列番号292、294、297、298、および312のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。ある実施形態では、目的のエクソンは、PKM遺伝子のエクソン10である。
【0128】
いくつかの実施形態では、目的の遺伝子はMDM4遺伝子であり、ASOは、配列番号317~346のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。ある実施形態では、最適なASOは、配列番号320、324、327、328、および332のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。ある実施形態では、目的のエクソンは、MDM4遺伝子のエクソン6である。
デコイ配列
【0129】
いくつかの実施形態では、デコイ配列は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、347、348、349、350、351、352、および353のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、デコイ配列の長さは5~13ヌクレオチド(nt)である。いくつかの実施形態では、デコイ配列の長さは5、6、7、8、9、10、11、12、または13ntである。
【0130】
いくつかの実施形態では、デコイ配列は最適な5′スプライス部位に似ており、U1 snRNAの一本鎖5′末端と完全にまたは部分的に相補的である。いくつかの実施形態では、デコイ配列はU1 snRNAの一本鎖5′末端の一部と100%相補的である。いくつかの実施形態では、デコイ配列の7~11ntはU1 snRNAの5′末端と相補的である。
【0131】
いくつかの実施形態では、デコイ配列は、標的核酸(例えば、mRNA)における対象領域の5′末端または3′末端に直接隣接する対応する隣接配列に対して、約80%未満などの低い配列相補性を有する。いくつかの実施形態では、デコイ配列は、標的配列の5′末端のすぐ上流に位置し、対象領域の3′末端のすぐ下流の対応する隣接領域に対して低い配列相補性を有する(図1A参照)。いくつかの実施形態では、デコイ配列は、標的配列の3′末端のすぐ下流に位置し、標的核酸(例えば、プレRNA、図1A参照)内の対象領域の5′末端のすぐ上流の対応する隣接領域に対して低い配列相補性を有する。いくつかの実施形態では、デコイ配列は、標的核酸の対応する領域に対して約80%未満の配列相補性を有する。いくつかの実施形態では、デコイ配列は、標的核酸の対応する領域に対して約70%未満の配列相補性を有する。いくつかの実施形態では、デコイ配列は、標的核酸の対応する領域に対して約60%未満の配列相補性を有する。いくつかの実施形態では、デコイ配列は、標的核酸の対応する領域に対して約50%未満の配列相補性を有する。いくつかの実施形態では、前記配列相補性は、標的核酸内の対応する領域に対して約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、または0%である。
【0132】
様々な実施形態では、標的配列の5′末端または3′末端に直接隣接するデコイ配列の最初のヌクレオチドは、標的核酸内の対象領域に隣接する対応するヌクレオチドと相補的ではない。いくつかの実施形態では、デコイ配列はASO内の標的配列の5′末端の上流に位置し、そのような実施形態では、デコイ配列の3′末端の最初のヌクレオチドは、標的核酸内の対象領域の3′末端のすぐ下流に位置する対応する隣接ヌクレオチドと相補的ではない(図1A参照)。いくつかの実施形態では、デコイ配列はASO内の標的配列の3′末端の下流に位置し、そのような実施形態では、デコイ配列の5′末端の最初のヌクレオチドは、標的核酸内の対象領域の5′末端のすぐ上流に位置する対応する隣接ヌクレオチドと相補的ではない(図1A参照)。
標的配列
【0133】
本技術の様々な実施形態では、ASOの標的配列は、核酸(例えば、プレmRNA)内の対象領域と完全にまたは実質的に相補的である。いくつかの実施形態では、ASOの標的配列は、阻害のために設計された核酸内の対象領域と厳密に(100%)相補的な鎖を含む。すなわち、標的配列内のすべての連続ヌクレオチドは、対象領域内のすべての対応するヌクレオチドとハイブリダイズする。ただし、標的配列と対象スプライシング配列との間の100%の配列同一性は、本技術を実施するために必要ではない場合がある。別の実施形態では、標的配列は対象領域と実質的に相補的である。すなわち、標的配列は、阻害のために設計された核酸内の対象領域と70%以上、75%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上、または99%以上相補的である。ASOの標的配列内の非相補的位置は、対象領域に比べて1つ以上の挿入、欠失、および/または点変異であってもよい。
【0134】
いくつかの実施形態では、対象領域はエクソンである(例えば、図1B参照)。いくつかの実施形態では、対象領域はエクソンの上流のイントロン領域である(図1B参照)。いくつかの実施形態では、対象領域はエクソンの下流のイントロン領域である(図1B参照)。いくつかの実施形態では、標的配列は、目的のエクソン、目的のエクソンの上流の隣接イントロン配列、目的のエクソンの下流の隣接イントロン配列、目的のエクソンの上流のイントロン-エクソンジャンクション、または目的のエクソンの下流のイントロン-エクソンジャンクションである対象領域に結合する。いくつかの実施形態では、目的のエクソンは、SMN1遺伝子またはSMN2遺伝子のエクソン7である。いくつかの実施形態では、目的のエクソンは、SMN1遺伝子のエクソン7である。いくつかの実施形態では、目的のエクソンは、SMN2遺伝子のエクソン7である。いくつかの実施形態では、目的のエクソンは、DMD遺伝子のエクソン51である。いくつかの実施形態では、目的のエクソンは、DMD遺伝子のエクソン53である。いくつかの実施形態では、目的のエクソンは、DMD遺伝子のエクソン45である。いくつかの実施形態では、目的のエクソンは、APP遺伝子のエクソン17である。いくつかの実施形態では、目的のエクソンは、CEP290遺伝子のエクソン41である。いくつかの実施形態では、目的のエクソンは、HER2遺伝子のエクソン19である。いくつかの実施形態では、目的のエクソンは、ATXN3遺伝子のエクソン10である。いくつかの実施形態では、目的のエクソンは、PKM遺伝子のエクソン10である。いくつかの実施形態では、目的のエクソンは、MDM4遺伝子のエクソン6である。
【0135】
様々な実施形態では、ASOの標的配列の長さは、約10ntの長さから約80ntの長さである。いくつかの実施形態では、ASOの標的配列の長さは約10~60ntの長さである。いくつかの実施形態では、ASOの標的配列の長さは約10~50ntの長さである。いくつかの実施形態では、ASOの標的配列の長さは約10~40ntの長さである。いくつかの実施形態では、ASOの標的配列の長さは約12~35ntの長さである。いくつかの実施形態では、ASOの標的配列の長さは約14~30ntの長さである。いくつかの実施形態では、ASOの標的配列の長さは約15~25ntの長さである。いくつかの実施形態では、ASOの標的配列の長さは約18~23ntの長さである。いくつかの実施形態では、ASOの標的配列の長さは約20ntの長さである。いくつかの実施形態では、ASOの標的配列は、配列番号25、29、33、37、41、45、49、75、92、124、156、188、220、252、284、および316のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。
【0136】
いくつかの実施形態では、SMN1および/またはSMN2遺伝子にハイブリダイズする標的配列は、配列番号25、29、および33のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。ある実施形態では、標的配列は、SMN1および/またはSMN2遺伝子のエクソン7のエクソンスキッピングのためのものである。
【0137】
いくつかの実施形態では、DMD遺伝子にハイブリダイズする標的配列は、配列番号37、41、45、49、75、92、および124のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。
【0138】
ある実施形態では、標的配列は、DMD遺伝子のエクソン51のエクソンスキッピングのためのものであり、DMD遺伝子にハイブリダイズする標的配列は、配列番号37、41、45、49、および75のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。
【0139】
ある実施形態では、標的配列は、DMD遺伝子のエクソン53のエクソンスキッピングのためのものであり、DMD遺伝子にハイブリダイズする標的配列は、配列番号92のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。
【0140】
ある実施形態では、標的配列は、DMD遺伝子のエクソン45のエクソンスキッピングのためのものであり、DMD遺伝子にハイブリダイズする標的配列は、配列番号124のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。
【0141】
いくつかの実施形態では、APP遺伝子にハイブリダイズする標的配列は、配列番号156のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。ある実施形態では、標的配列は、APP遺伝子のエクソン17のエクソンスキッピングのためのものである。
【0142】
いくつかの実施形態では、CEP290遺伝子にハイブリダイズする標的配列は、配列番号188のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。ある実施形態では、標的配列は、CEP290遺伝子のエクソン41のエクソンスキッピングのためのものである。
【0143】
いくつかの実施形態では、HER2遺伝子にハイブリダイズする標的配列は、配列番号220のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。ある実施形態では、標的配列は、HER2遺伝子のエクソン19のエクソンスキッピングのためのものである。
【0144】
いくつかの実施形態では、ATXN3遺伝子にハイブリダイズする標的配列は、配列番号259のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。ある実施形態では、標的配列は、ATXN3遺伝子のエクソン10のエクソンスキッピングのためのものである。
【0145】
いくつかの実施形態では、PKM遺伝子にハイブリダイズする標的配列は、配列番号284のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。ある実施形態では、標的配列は、PKM遺伝子のエクソン10のエクソンスキッピングのためのものである。
【0146】
いくつかの実施形態では、MDM4遺伝子にハイブリダイズする標的配列は、配列番号316のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。ある実施形態では、標的配列は、MDM4遺伝子のエクソン6のエクソンスキッピングのためのものである。
変形例
【0147】
いくつかの実施形態では、デコイ配列および標的配列を含むオリゴヌクレオチドの一方または両方の末端に、追加の隣接ヌクレオチド配列が存在してもよい。
【0148】
いくつかの実施形態では、ASOは、1つ以上のヌクレオチド修飾をさらに含む。いくつかの実施形態では、ASOの少なくとも1つのサブユニットは、(i)修飾ヌクレオシド間結合、(ii)修飾糖部分、(iii)修飾塩基、または(iv)前述の組み合わせを有する非天然ヌクレオチド類似体である。
【0149】
いくつかの実施形態では、ASOは、修飾されたヌクレオシド間結合として1つ以上のホスホロチオエート結合を含む。いくつかの実施形態では、ASOの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30個以上のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合である。いくつかの実施形態では、ASOのヌクレオシド間結合はすべてホスホロチオエート結合である。
【0150】
いくつかの実施形態では、ASOは、修飾糖部分として1つ以上の2′-O-メトキシエチル糖部分を含む。いくつかの実施形態では、ASOの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30個以上の糖部分は、2′-O-メトキシエチル糖部分である。いくつかの実施形態では、ASOのすべての糖部分は、2′-O-メトキシエチル糖部分である。
【0151】
いくつかの実施形態では、ASOは、修飾塩基としてシトシンの代わりに1つ以上の5-メチルシトシンを含む。いくつかの実施形態では、ASOの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30個以上のシトシン塩基が5-メチルシトシンとして修飾される。いくつかの実施形態では、ASOのすべてのシトシン塩基が5-メチルシトシンとして修飾される。
【0152】
いくつかの実施形態では、ASOは、1つ以上の追加の化学的部分をさらに含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の化学部分は、核酸配列の1つ以上の末端に共有結合する。いくつかの実施形態では、追加の化学的部分は、細胞透過性ペプチドである。
【0153】
いくつかの実施形態では、本技術のASOは、化合物の細胞への輸送を増強するために細胞透過性ペプチド(CPP)部分にコンジュゲートされた核酸部分を含んでもよい。いくつかの実施形態では、CPP部分は、オリゴヌクレオチドの末端に付着する。いくつかの実施形態では、ペプチドは、所与の細胞培養集団の細胞の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%(その間のすべての整数を含む)を透過する能力を有し、投与時にインビボで複数の組織内で高分子の転位を可能にする。いくつかの実施形態では、細胞透過性ペプチドは、アルギニンリッチのペプチドトランスポーターであってもよい。いくつかの実施形態では、細胞透過性ペプチドは、ペネトラチンまたはTatペプチドであってもよい。これらのペプチドは、当該技術分野で周知であり、例えば、米国公開番号2010-0016215A1に開示されており、その全文が参照により組み込まれている。ペプチドをASOにコンジュゲートするための例示的なアプローチは、PCT公開番号WO2012/150960に見出すことができ、その全文が参照により組み込まれている。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドとCPP部分はリンカーを介してコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、CPPとオリゴヌクレオチド部分との間のリンカーとしてアミノ酸グリシンが使用される。
【0154】
上述の輸送部分は、付着した輸送部分のないオリゴマーの取り込みと比較して、付着したオリゴマーの細胞移入を大幅に増強することが示される。いくつかの実施形態では、CPPはアルギニンリッチの細胞透過性ペプチドの1つである。いくつかのペプチドトランスポーターは、筋細胞を含む一次細胞へのアンチセンス配列を有する化合物の送達に非常に有効であることが示される(N. B. Marshall, et al. Arginine-rich cell-penetrating peptides facilitate delivery of antisense oligomers into murine leukocytes and alter pre-mRNA splicing. 2007 Aug 31. Journal of Immunological Methods. 325:114-126. doi: 10.1016/j.jim.2007.06.009; N. Jearawiriyapaisarn, et al. Sustained dystrophin expression induced by peptide-conjugated morpholino oligomers in the muscles of mdx mice. 2008 Sep. Mol Ther. 16:1624-1629. doi: 10.1038/mt.2008.120; Wu B, et al. Effective rescue of dystrophin improves cardiac function in dystrophin-deficient mice by a modified morpholino oligomer. 2008 Sep 30. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 105:14814-14819. doi: 10.1073/pnas.0805676105)。
エクソンスキッピング効果の二分性ASOを同定するアッセイ
【0155】
ASOが目的の遺伝子の転写産物内の1つ以上のエクソンのスキッピングを誘導するかどうかを判定する非限定的な例としては、(例えば、人工ミニ遺伝子含有プラスミドを細胞株に導入することによって)試験対象のASOを、適切な細胞株(例えば、SMN1、SMN2、CEP290、およびMDM4遺伝子の場合はHEK293細胞、HER2遺伝子の場合はHeLa細胞、ATXN3遺伝子の場合はA549細胞、DMDおよびPKM遺伝子の場合はヒト横紋筋肉腫細胞などのジストロフィン発現細胞)、または目的の領域のエクソン/イントロン編成を模倣する遺伝子構築物を発現する細胞株に導入し、RT-PCRによって細胞株の全RNAから転写産物内の目的のエクソンを含む領域を増幅し、PCR増幅産物に対してネストPCRまたは配列分析を実施することが挙げられ得る。
【0156】
スキッピング効率は、次のようにして決定できる。ジストロフィン遺伝子のmRNAを試験細胞から収集し、RT-PCRによって増幅する。「A」を、1つ以上の目的のエクソンがスキッピングされた対象mRNAの増幅ポリヌクレオチドのレベルとし、さらに「B」を、目的のエクソンがスキッピングされていない対象mRNAの増幅ポリヌクレオチドのレベルとする場合、これらの「A」と「B」の測定値を用いて、次の式で効率を計算する。
エクソンスキッピング率/効率(%excl)=A/(A+B)×100
エクソン包含率(%incl)=B/(A+B)×100
【0157】
いくつかの実施形態では、本技術の二分性ASOは、DMD mRNAの1つ以上のエクソンのスキッピングを引き起こし、エクソンスキッピング率(%excl)は、同じ標的配列を持つがデコイを持たないASOに比べて、約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約2倍以上、約2.18倍以上、約2.3倍以上、約3倍以上、約4倍以上、約5倍以上、約6倍以上、約7倍以上、約8倍以上、約9倍以上、約10倍以上、約11倍以上、約12倍以上、約13倍以上、約14倍以上、約15倍以上、約16倍以上、約17倍以上、約18倍以上、約19倍以上、約20倍以上、約25倍以上、約30倍以上、約40倍以上、約50倍以上、約60倍以上、約70倍以上、約80倍以上、約90倍以上、約100倍以上(これらの値の間のすべての値および範囲を含む)増加する。
オリゴヌクレオチド修飾
【0158】
未修飾オリゴヌクレオチドは、一部の用途では最適とは言えない場合があり、例えば、未修飾オリゴヌクレオチドは、細胞ヌクレアーゼなどによって分解されやすい可能性がある。ヌクレアーゼは、核酸ホスホジエステル結合を加水分解することができる。しかしながら、オリゴヌクレオチドの化学修飾により、改善された特性を与え、例えば、ヌクレアーゼに対するオリゴヌクレオチドの安定性を高めることができる。
【0159】
オリゴヌクレオチドはサブユニットまたはモノマーのポリマーであるため、例えば、塩基、糖、リン酸部分、またはリン酸部分の非架橋酸素の修飾などの修飾の多くは、オリゴヌクレオチド内で繰り返される位置で発生する。所与のオリゴヌクレオチドにおけるすべての位置が均一に修飾される必要はなく、実際には、前述の修飾の1つ以上が単一のオリゴヌクレオチドに組み込まれる場合や、オリゴヌクレオチド内の単一のヌクレオシドにおいても組み込まれる場合もある。
【0160】
いくつかの実施形態では、修飾はオリゴヌクレオチドにおける対象位置のすべてで起こるが、多くの実施形態ではそうではない。例としては、修飾は、3′または5′末端位置でのみ起こる場合、内部領域でのみ起こる場合、または末端領域(例えば、末端ヌクレオチド上の位置、またはオリゴヌクレオチドの最後の2、3、4、5、または10個のヌクレオチド)でのみ起こる場合がある。修飾は、二本鎖領域、一本鎖領域、またはその両方で起こる場合がある。修飾は、二本鎖オリゴヌクレオチドの二本鎖領域でのみ起こる場合や、二本鎖オリゴヌクレオチドの一本鎖領域でのみ起こる場合がある。例えば、非架橋酸素位置でのホスホロチオエート修飾は、片方または両方の末端でのみ起こる場合、末端領域(例えば、末端ヌクレオチド上の位置、または鎖の最後の2、3、4、5、または10個のヌクレオチド)でのみ起こる場合、または二本鎖と一本鎖領域(特に末端)で起こる場合がある。5′末端または両末端はリン酸化され得る。
【0161】
本明細書に記載の修飾は、単独の修飾である場合や、複数のヌクレオチドに含まれる単独タイプの修飾である場合があり、または修飾は本明細書に記載の1つ以上の他の修飾と組み合わせることができる。本明細書に記載の修飾は、オリゴヌクレオチドと組み合わせることもでき、例えば、オリゴヌクレオチドの異なるヌクレオチドは、本明細書に記載の異なる修飾を有する。
【0162】
いくつかの実施形態では、例えば、安定性を高めること、特定の核酸塩基をオーバーハングに含めること、または、一本鎖オーバーハング、例えば5′または3′オーバーハング、またはその両方に修飾ヌクレオチドまたはヌクレオチド代替物を含めることが望ましい場合がある。例えば、オーバーハングにプリンヌクレオチドを含めることが望ましい可能性がある。いくつかの実施形態では、3′または5′オーバーハングにおける塩基のすべてまたは一部が、例えば本明細書に記載の修飾により修飾される。修飾には、例えば、リボース糖の2′OH基における修飾の使用、例えば、リボヌクレオチドの代わりにデオキシリボヌクレオチド(例えば、デオキシチミジン)の使用、およびリン酸基における修飾(例えば、ホスホチオエート修飾)が含まれ得る。オーバーハングは、対象領域と相同である必要はない。
【0163】
具体的な修飾については、以下でさらに詳しく論じられる。
リン酸基
【0164】
リン酸基は負に帯電した種である。電荷は、2つの非架橋酸素原子に均等に分布している。しかしながら、リン酸基は、酸素の1つを別の置換基に置き換えることによって修飾できる。RNAリン酸骨格に対するこの修飾の1つの結果は、オリゴリボヌクレオチドの核酸崩壊に対する耐性が増大することであり得る。したがって、理論に拘束されることは望まないが、いくつかの実施形態では、非荷電リンカーまたは非対称の電荷分布を有する荷電リンカーのいずれかをもたらす改変を導入することが望ましい場合がある。
【0165】
修飾リン酸基の例としては、ホスホロチオエート、ホスホロセレネート、ボラノリン酸、ボラノリン酸エステル、水素ホスホネート、ホスホロアミデート、アルキルまたはアリールホスホネート、およびホスホトリエステルが挙げられる。いくつかの実施形態では、リン酸骨格部分内の非架橋リン酸酸素原子の1つは、S、Se、BR3(Rは水素、アルキル、アリール)、C(すなわち、アルキル基、アリール基など)、H、NR2(Rは水素、アルキル、アリール)、または(Rはアルキルまたはアリール)のいずれかで置換できる。非修飾リン酸基中のリン原子はアキラルである。しかし、非架橋酸素の1つを上記の原子または原子群の1つで置換すると、リン原子はキラルになる。言い換えれば、このように修飾されたリン酸基中のリン原子は、立体中心である。立体リン原子は、「R」構成(ここではRp)または「S」構成(ここではSp)のいずれかを有する可能性がある。
【0166】
ホスホロジチオエートは、硫黄で置き換えられた両方の非架橋酸素を有する。ホスホロジチオエートにおけるリン中心は、オリゴリボヌクレオチドジアステレオマーの形成を妨げるアキラルである。したがって、理論に拘束されることを望まないが、キラル中心を排除する両方の非架橋酸素の修飾、例えばホスホロジチオエートの形成は、ジアステレオマー混合物を産生することができないという点で望ましい場合がある。したがって、非架橋酸素は、独立して、S、Se、B、C、H、N、またはR(Rはアルキルまたはアリール)のいずれかであり得る。
【0167】
リン酸リンカーは、架橋酸素(すなわち、リン酸をヌクレオシドに結合させる酸素)を窒素(架橋ホスホロアミデート)、硫黄(架橋ホスホロチオエート)および炭素(架橋メチレンホスホネート)に置き換えることによっても修飾され得る。置き換えは、一方の結合酸素または両方ので起こり得る。架橋酸素がヌクレオシドの3′-酸素である場合、炭素による置換が好まれる。架橋酸素がヌクレオシドの5′-酸素である場合、窒素による置換が好まれる。
リン酸基の置き換え
【0168】
リン酸基は、リン未含有コネクタで置き換えることができる。理論に拘束されることは望まないが、荷電ホスホジエステル基は核酸分解における反応中心であるため、中性構造模倣体で置き換えられることによって、ヌクレアーゼ安定性を向上させる可能性があると考えられる。また、理論に拘束されることは望まないが、いくつかの実施形態では、荷電リン酸基を中性部分に置き換える改変を導入することが望ましい場合がある。
【0169】
リン酸基を置き換えることができる部分の例としては、メチルホスホネート、ヒドロキシルアミノ、シロキサン、カーボネート、カルボキシメチル、カルバメート、アミド、チオエーテル、エチレンオキシドリンカー、スルホネート、スルホンアミド、チオホルムアセタール、ホルムアセタール、オキシム、メチレンイミノ、メチレンメチルイミノ、メチレンヒドラゾ、メチレンジメチルヒドラゾ、およびメチレンオキシメチルイミノが挙げられる。好ましい置き換えには、メチレンカルボニルアミノ基およびメチレンメチルイミノ基が含まれる。
【0170】
リン酸に結合した酸素の少なくとも1つが置き換えられているか、またはリン酸基が非リン基に置き換えられている修飾リン酸結合は、「非ホスホジエステル骨格結合」とも呼ばれる。
リボリン酸骨格の置き換え
【0171】
リン酸リンカーおよびリボース糖をヌクレアーゼ耐性ヌクレオシドまたはヌクレオチド代替物に置き換えたオリゴヌクレオチド模倣スキャフォールドも構築できる。理論に拘束されることは望まないが、繰り返し荷電した骨格がないと、ポリアニオン(例えばヌクレアーゼ)を認識するタンパク質への結合を減らすと考えられる。また、理論に拘束されることは望まないが、いくつかの実施形態では、塩基が中性代替骨格によって係留された改変を導入することが望ましい可能性がある。例としては、モルホリノ、シクロブチル、ピロリジン、およびペプチド核酸(PNA)ヌクレオシド代替物が挙げられる。その他の例としては、モルホリン環に連結された核酸塩基(例えば、アデニン、シトシン、グアニン、およびチミン)を有するモルホリノ、およびホスホロジアミデート結合によって連結されたモルホリン環の骨格上に構築されたDNA類似体であるホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)が挙げられる。
糖修飾
【0172】
修飾RNAは、リボ核酸の糖基のすべてまたは一部の修飾を含み得、例えば、2′ヒドロキシル基(OH)は、複数の異なる「オキシ」または「デオキシ」置換基で修飾または置換され得る。理論に拘束されることはないが、2′-アルコキシドイオンを形成するためにヒドロキシルが脱プロトン化されることはできなくなるため、安定性が向上することが予想される。2′-アルコキシドは、リンカーリン原子に対する分子内求核攻撃によって分解を触媒できる。また、理論に拘束されることはないが、いくつかの実施形態では、2′位でのアルコキシド形成が不可能な改変を導入することが望ましい可能性がある。
【0173】
「オキシ」-2′ヒドロキシル基修飾の例としては、アルコキシまたはアリールオキシ(OR、例えば、R=H、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたは糖)、ポリエチレングリコール(PEG)、O(CHCHO)nCHCHOR、2′ヒドロキシルが、例えばメチレン架橋によって同じリボース糖の4′炭素に連結された「ロックド」核酸(LNA)、O-アミン(アミン=NH、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、またはジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノ)およびアミノアルコキシ、O(CHアミン(例えば、アミン=NH2、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、またはジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノ)が挙げられる。注目すべきは、メトキシエチル基(MOE)、(OCHCHOCH、PEG誘導体)、または2′-O-メトキシエチルのみを含有するオリゴヌクレオチドが、強力なホスホロチオエート修飾で修飾されたものと同等のヌクレアーゼ安定性を示すことである。
【0174】
「デオキシ」修飾には、水素(すなわち、部分的なdsRNAのオーバーハング部分に特に関連するデオキシリボース糖)、ハロ(例えば、フルオロ)、アミノ(例えば、N3/4、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、またはアミノ酸)、NH(CHCHNH)nCHCH-アミン(アミン=NH、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、またはジヘテロアリールアミノ)、-NHC(O)R(R=アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたは糖)、シアノ、メルカプト、アルキルチオアルキル、チオアルコキシ、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル、およびアルキニルが含まれ、これらは、例えばアミノ官能基で任意に置換されてもよい。好ましい置換基は、2′-メトキシエチル、2′-OCH、2′-O-アリル、2′-C-アリル、および2′-フルオロである。
【0175】
糖基はまた、リボース中の対応する炭素とは反対の立体化学構成を有する1つ以上の炭素も含み得る。したがって、オリゴヌクレオチドは、糖として、例えばアラビノースを含有するヌクレオチドを含み得る。モノマーは、糖における位置にアルファ結合(例えば、アルファヌクレオシド)を有し得る。オリゴヌクレオチドはまた、C-に核酸塩基を欠く「脱塩基」糖も含み得る。これらの脱塩基糖は、構成糖原子の1つ以上に修飾をさらに含み得る。オリゴヌクレオチドはまた、L体の1つ以上の糖、例えばL-ヌクレオシドも含み得る。
末端修飾
【0176】
オリゴヌクレオチドの3′末端および5′末端は修飾可能である。このような修飾は、分子の3′末端、5′末端、またはその両端で行うことができる。その修飾には、末端リン酸全体またはリン酸基の1つ以上の原子の修飾または置き換えが含まれ得る。例えば、オリゴヌクレオチドの3′末端および5′末端は、標識部分、例えば蛍光体(例えば、ピレン、TAMRA、フルオレセイン、Cy3またはCy5染料)または保護基(例えば、硫黄、ケイ素、ホウ素またはエステルに基づく)などの他の機能分子実体にコンジュゲートされ得る。機能分子実体は、リン酸基および/またはリンカーを介して糖に付着することができる。リンカーの末端原子は、リン酸基の結合原子または糖のC-3′またはC-5′O、N、SまたはC基に連結され得るか、またはそれを置き換えることができる。あるいは、リンカーはヌクレオチド代替物(例えば、PNA)の末端原子に連結され得るか、または末端原子を置き換えることができる。リンカー/リン酸官能性分子実体-リンカー/リン酸アレイがdsRNAの2つの鎖の間に介在している場合、このアレイはヘアピン型RNA剤のヘアピンRNAループの代わりに使用できる。
【0177】
活性を調節するために有用な末端修飾には、リン酸またはリン酸類似体による5′末端の修飾が含まれる。例えば、好ましい実施形態では、dsRNAのアンチセンス鎖は5′リン酸化されるか、または5′プライム末端にホスホリル類似体を含む。5′-リン酸修飾には、RISC媒介遺伝子サイレンシングと互換できるものが含まれる。適切な修飾には、5′-一リン酸((HO)(O)P-O-5′)、5′-二リン酸((HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5′)、5′-三リン酸((HO)(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5′)、5′-グアノシンキャップ(7-メチル化または非メチル化)(7m-G-O-5′-(HO)(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5′)、5′-アデノシンキャップ(Appp)、任意の修飾または未修飾のヌクレオチドキャップ構造(N-O-5′-(HO)(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5′)、5′-モノチオリン酸(ホスホロチオエート)、(HO)(S)P-O-5′)、5′-モノジチオホスフェート(ホスホロジチオエート、(HO)(HS)(S)P-O-5′)、5′-ホスホロチオレート((HO)(O)P-S-5′)、および酸素/硫黄で置き換えられた一リン酸、二リン酸、および三リン酸(例えば5′-アルファ-チオ三リン酸、5′-ガンマ-チオ三リン酸など)、5′-ホスホルアミデート((ΗΟ)(O)P-ΝΗ-5′、(ΗΟ)(ΝΗ)(O)P-O-5′)、5′-アルキルホスホネート(R=アルキル=メチル、エチル、イソプロピル、プロピルなど、例えば、RP(OH)(O)-O-5′-、(OH)(O)P-5′-CH2-)、5′-アルキルエーテルホスホネート(R=アルキルエーテル=メトキシメチル(MeOCH-)、エトキシメチル、例えばRP(OH)(O)-O-5′-など)が含まれる。
【0178】
末端修飾は、分布をモニタリングするのにも有用であり得、そのような実施形態では、添加される好ましい基としては、蛍光体、例えばフルオレセインまたはAlexa染料、例えばAlexa 488が挙げられる。末端修飾は、取り込みを増強するのにも有用であり得、これに有用な修飾としてはコレステロールが挙げられる。末端修飾は、RNA剤を別の部分に架橋するのにも有用であり得、これに有用な修飾としてはマイトマイシンCが挙げられる。
核酸塩基
【0179】
アデニン、グアニン、シトシン、およびウラシルは、RNAに見られる最も一般的な塩基である。これらの塩基は、改善された特性を有するRNAを提供するために修飾または置換され得る。例えば、ヌクレアーゼ耐性オリゴリボヌクレオチドは、これらの塩基、または合成および天然の核酸塩基(例えば、イノシン、チミン、キサンチン、ヒポキサンチン、ヌブラリン、イソグアニシン、またはツベルシジン)と上記の修飾のいずれかを用いて調製できる。あるいは、本明細書に記載の「異常塩基」、「修飾塩基」、「非天然塩基」、「ユニバーサル塩基」など、上記の塩基のいずれかの置換または修飾類似体を使用することができる。例としては、2-アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6-メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよび他のアルキル誘導体、5-ハロウラシルおよびシトシン、5-プロピニルウラシルおよびシトシン、6-アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5-ウラシル(擬ウラシル)、4-チオウラシル、5-ハロウラシル、5-(2-アミノプロピル)ウラシル、5-アミノアリルウラシル、8-ハロ、アミノ、チオール、チオアルキル、ヒドロキシルおよび他の8-置換アデニンおよびグアニン、5-トリフルオロメチルおよび他の5-置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニン、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジンおよびN-2、N-6およびO-6置換プリン(2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシル、および5-プロピニルシトシンを含む)、ジヒドロウラシル、3-デアザ-5-アザシトシン、2-アミノプリン、5-アルキルウラシル、7-アルキルグアニン、5-アルキルシトシン-デアザアデニン、N6,N6-ジメチルアデニン、2,6-ジアミノプリン、5-アミノ-アリル-ウラシル、N3-メチルウラシル、置換1,2,4-トリアゾール、2-ピリジノン、5-ニトロインドール、3-ニトロピロール、5-メトキシウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸、5-メトキシカルボニルメチルウラシル、5-メチル-2-チオウラシル、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウラシル、5-メチルアミノメチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウラシル、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N4-アセチルシトシン、2-チオシトシン、N6-メチルアデニン、N6-イソペンチルアデニン、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、N-メチルグアニン、またはO-アルキル化塩基などが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、プリンおよびピリミジンとしては、米国特許第3,687,808号に開示されるもの、Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering(pp.858-859,roschwitz,J.I.,ed.JohnWiley&Sons,1990)に開示されるもの、およびUwe Englischら(Chemically Modified Oligonucleotides as Probes and Inhibitors. 1991 Jun. Angewandte Chemie, International Edition. 30:613-629. doi: 10.1002/anie.199106133)によって開示されるものが挙げられる。
カチオン基
【0180】
オリゴヌクレオチドの修飾には、糖、塩基、および/またはリン酸または修飾リン酸骨格部分のリン原子への1つ以上のカチオン基の付着も含まれ得る。カチオン基は、天然、異常またはユニバーサル塩基上の置換が可能な任意の原子に付着できる。好ましい位置は、ハイブリダイゼーションを妨げない位置、すなわち、塩基対合に必要な水素結合相互作用を妨げない位置である。カチオン基は、例えば、糖のC2′位置、または環状または非環状糖代替物における類似の位置にわたって付着できる。
【0181】
カチオン基には、例えば、O-アミン(アミン=N3/4、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、またはジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノ)、アミノアルコキシ、例えばO(CH)nAMINE(例えば、AMINE=NH、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、またはジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノ)、アミノ(例えば、NH、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、またはアミノ酸)、またはNH(CHCHNH)nCHCH-AMINE(AMINE=NH、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、またはジヘテロアリールアミノ)から由来するプロトン化アミノ基が含まれる。
オリゴヌクレオチド内の置き換え
【0182】
オリゴヌクレオチドの特定の位置(例えば、鎖の内部位置)、またはオリゴヌクレオチドの5′末端または3′末端に、いくつかの修飾が含まれることが好ましい。オリゴヌクレオチド上の好ましい修飾位置は、薬剤に好ましい特性を与える場合がある。例えば、特定の好ましい修飾位置は、最適な遺伝子サイレンシング特性、またはエンドヌクレアーゼもしくはエキソヌクレアーゼ活性に対する耐性の増加を与える場合がある。
【0183】
オリゴヌクレオチドの1つ以上のヌクレオチドは、2′-5′結合を有してもよい。オリゴヌクレオチドの1つ以上のヌクレオチドは、逆結合(例えば、3′-3′、5′-5′、2′-2′、または2′-3′結合)を有してもよい。
【0184】
二本鎖オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの5′-ウリジン-アデニン-3′(5′-UA-3′)ジヌクレオチド(ここで、ウリジンは2′-修飾ヌクレオチド)、または末端5′-ウリジン-グアニン-3′(5′-UG-3′)ジヌクレオチド(ここで、5′-ウリジンは2′-修飾ヌクレオチド)、または末端5′-シチジン-アデニン-3′(5′-CA-3′)ジヌクレオチド(ここで、5′-シチジンは2′-修飾ヌクレオチド)、または末端5′-ウリジン-ウリジン-3′(5′-UU-3′)ジヌクレオチド(ここで、5′-ウリジンは2′-修飾ヌクレオチド)、または末端5′-シチジン-シチジン-3′(5′-CC-3′)ジヌクレオチド(ここで、5′-シチジンは2′-修飾ヌクレオチド)、または末端5′-シチジン-ウリジン-3′(5′-CU-3′)ジヌクレオチド(ここで、5′-シチジンは2′-修飾ヌクレオチド)、または末端5′-ウリジン-シチジン-3′(5′-UC-3′)ジヌクレオチド(ここで、5′-ウリジンは2′-修飾ヌクレオチド)を含んでもよい。これらの修飾を含む二本鎖オリゴヌクレオチドは、エンドヌクレアーゼ活性に対して特に安定化される。
参考文献の概要
【0185】
本技術に従って使用されるオリゴリボヌクレオチドおよびオリゴリボヌクレオシドは、固相合成によって合成してもよい(例えば、“Oligonucleotide synthesis, a practical approach”, Ed. M. J. Gait, IRL Press, 1984; “Oligonucleotides and Analogues, A Practical Approach”, Ed. F. Eckstein, IRL Press, 1991(特に、Chapter 1, Modern machine-aided methods of oligodeoxyribonucleotide synthesis, Chapter 2, Oligoribonucleotide synthesis, Chapter 3, 2′-0~Methyloligoribonucleotide- s: synthesis and applications, Chapter 4, Phosphorothioate oligonucleotides, Chapter 5, Synthesis of oligonucleotide phosphorodithioates, Chapter 6, Synthesis of oligo-2′-deoxyribonucleoside methylphosphonates, and. Chapter 7, Oligodeoxynucleotides containing modified bases)参照)。その他の特に有用な合成手順、試薬、ブロッキング基および反応条件は、P. Martin. Ein neuer Zugang zu 2′-O-Alkylribonucleosiden und Eigenschaften deren Oligonucleotide. 1995 March 22. Helv. Chim. Acta. 78: 486-504. doi: 10.1002/hlca.19950780219; S. L. Beaucage and R. P. Iyer. Advances in the Synthesis of Oligonucleotides by the Phosphoramidite Approach. 1992 March 20. Tetrahedron. 48:2223-2311. doi: 10.1016/S0040-4020(01)88752-4; S. L. Beaucage and R. P. Iyer. The synthesis of modified oligonucleotides by the phosphoramidite approach and their applications. 1993 Jul 9. Tetrahedron. 49:6123-6194. doi: 10.1016/S0040-4020(01)87958-8、またはそこに言及された参考文献に記載される。WO00/44895、WO01/75164、またはWO02/44321に記載される修飾は、本明細書に使用できる。本明細書に挙げられたすべての刊行物、特許、公開された特許出願の開示は、参照により組み込まれる。
【0186】
ホスフィネートオリゴリボヌクレオチドの調製は、米国特許第5,508,270号に記載されている。アルキルホスホネートオリゴリボヌクレオチドの調製は、米国特許第4,469,863号に記載されている。ホスホラミダイトオリゴリボヌクレオチドの調製は、米国特許第5,256,775号または米国特許第5,366,878号に記載されている。ホスホトリエステルオリゴリボヌクレオチドの調製は、米国特許第5,023,243号に記載されている。ボラノリン酸オリゴリボヌクレオチドの調製は、米国特許第5,130,302号および米国特許第5,177,198号に記載されている。3′-デオキシ-3′-アミノホスホラミデートオリゴリボヌクレオチドの調製は、米国特許第5,476,925号に記載されている。3′-デオキシ-3′-メチレンホスホネートオリゴリボヌクレオチドは、Haoyun An, et al. Synthesis of novel 3′-C-methylene thymidine and 5-methyluridine/cytidine H-phosphonates and phosphonamidites for new backbone modification of oligonucleotides. 2001 March 16. The Journal of Organic Chemistry. 66(8), pp.2789-2801. doi: 10.1021/jo001699uに記載されている。硫黄架橋ヌクレオチドの調製は、Brian S. Sproat, et al. Synthesis of Modified Building Blocks Containing Amino or Thiol Moieties: Application of Modified Oligodeoxyribonucleotides. 2006 Dec 06. Nucleosides Nucleotides. 7:651-653. doi: 10.1080/07328318808056302 and Crosstick et al. Tetrahedron Lett. 1989, 30, 4693に記載されている。
【0187】
2′糖基の修飾については、S. Verma, et al. MODIFIED OLIGONUCLEOTIDES: Synthesis and Strategy for Users. 1998 Jul. Annu. Rev. Biochem. 67:99-134. doi: 10.1146/annurev.biochem.67.1.99およびその中のすべての参考文献に見出すことができる。リボースに対する具体的な修飾については、2′-fluoro (Kawasaki, et. al. Uniformly modified 2′-deoxy-2′-fluoro-phosphorothioate oligonucleotides as nuclease-resistant antisense compounds with high affinity and specificity for RNA targets. 1993 Apr 1. J. Med. Chem. 36:831-841. doi: 10.1021/jm00059a007), 2′-MOE (P. Martin. Stereoselektive Synthese von 2′-O-(2-Methoxyethyl)ribonucleosiden: Nachbargruppenbeteiligung der Methoxyethoxy-Gruppe bei der Ribosylierung von Heterocyclen. 1996 Oct 30. Helv. Chim. Acta. 79:1930-1938. doi: 10.1002/hlca.19960790716), “LNA” (J. Wengel. Synthesis of 3′-C- and 4′-C-Branched Oligodeoxynucleotides and the Development of Locked Nucleic Acid (LNA). 1998 Dec 4. Acc. Chem. Res. 32:301-310. doi: 10.1021/ar980051p)に見出すことができる。
【0188】
メチレンメチルイミノ結合オリゴリボヌクレオシド(本明細書ではMMI結合オリゴリボヌクレオシドとしても同定)、メチレンジメチルヒドラゾ結合オリゴリボヌクレオシド(本明細書ではMDH結合オリゴリボヌクレオシドとしても同定)、およびメチレンカルボニルアミノ結合オリゴヌクレオシド(本明細書ではアミド-3結合オリゴリボヌクレオシドとしても同定)、およびメチレンアミノカルボニル結合オリゴヌクレオシド(本明細書ではアミド-4結合オリゴリボヌクレオシドとしても同定)、ならびに例えば、交互に並んでいるMMIおよびPOまたはPS結合を有する混合骨格化合物は、米国特許第5,378,825号、第5,386,023号、第5,489,677号、および公開されたPCT出願PCT/US92/04294およびPCT/US92/04305(それぞれWO92/20822WOおよび92/20823として公開)に記載されているように調製できる。ホルムアセタールおよびチオホルムアセタール結合オリゴリボヌクレオシドは、米国特許第5,264,562号および第5,264,564号に記載されているように調製できる。エチレンオキシド結合オリゴリボヌクレオシドは、米国特許第5,223,618号に記載されているように調製できる。シロキサンの置き換えは、James F. Cormier, et al. Synthesis of hexanucleotide analogues containing diisopropylsilyl internucleotide linkages. 1988 May 25. Nucleic Acids Res. 16:4583-4594. doi: 10.1093/nar/16.10.4583に記載されている。炭酸塩の置き換えは、J. R. Tittensor. The preparation of nucleoside carbonates. 1971 Jan. Chem. Soc. C. 2656-2662. doi: 10.1039/J39710002656に記載されている。カルボキシメチルの置き換えは、M. D. Edge, et al. Synthetic analogues of polynucleotides. Part VIII. Analogues of oligonucleotides containing carboxymethylthymidine. 1991. J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1. 1972. doi: 10.1039/P19720001991に記載されている。カルバメートの置き換えは、E. P. Stirchak, et al. Uncharged stereoregular nucleic acid analogs: 2. Morpholino nucleoside oligomers with carbamate internucleoside linkages. 1989 Aug 11. Nucleic Acids Res. 17, 6129. doi: 10.1093/nar/17.15.6129に記載されている。
【0189】
シクロブチル糖代替化合物は、米国特許第5,359,044号に記載されているように調製できる。ピロリジン糖代替物は、米国特許第5,519,134号に記載されているように調製できる。モルホリノ糖代替物は、米国特許第5,142,047号および第5,235,033号、ならびに他の関連特許開示に記載されているように調製できる。ペプチド核酸(PNA)はそれ自体既知であり、Peptide Nucleic Acids (PNA): Synthesis, Properties and Potential Applications, Bioorganic & Medicinal Chemistry, 1996, 4, 5-23に言及された様々な手順のいずれかに従って調製できる。これらは、米国特許第5,539,083号に従って調製されてもよい。
【0190】
末端修飾は、M. Manoharan, et al. Oligonucleotide Conjugates as Potential Antisense Drugs with Improved Uptake, Biodistribution, Targeted Delivery, and Mechanism of Action. 2004 Jul 8. Antisense and Nucleic Acid Drug Development. 12, 103-128. doi: 10.1089/108729002760070849およびその中の参考文献に記載されている。核酸塩基についての参考文献
N-2置換プリンヌクレオシドアミダイトは、米国特許第5,459,255号に記載されているように調製できる。3-デアザプリンヌクレオシドアミダイトは、米国特許第5,457,191号に記載されているように調製できる。5,6-置換ピリミジンヌクレオシドアミダイトは、米国特許第5,614,617号に記載されているように調製できる。5-プロピニルピリミジンヌクレオシドアミダイトは、米国特許第5,484,908号に記載されているように調製できる。
ASOの製造
【0191】
本技術に従って使用されるASO(例えば、二分性ASO)は、周知の固相合成技術によって簡便かつ日常的に製造されることがある。このような合成のための設備は、例えばApplied Biosystems(カリフォルニア州フォスターシティ)を含むいくつかの販売業者によって販売されている。修飾された固体支持体上でオリゴヌクレオチドを合成する1つの方法は、米国特許第4,458,066号に記載されている。
【0192】
当該技術分野で知られているそのような合成のための他の手段を追加的にまたは代替的に使用してもよい。ホスホロチオエートおよびアルキル化誘導体などのオリゴヌクレオチドを調製するために同様の技術を使用することはよく知られている。そのような自動化された実施形態の1つでは、ジエチルホスホラミダイトは出発物質として使用され、S. L. Beaucage, et al. Deoxynucleoside phosphoramidites-A new class of key intermediates for deoxypolynucleotide synthesis. 2001 March 9. Tetrahedron Letters. 22:1859-1862. doi: 10.1016/S0040-4039(01)90461-7に記載されているように合成されてもよい。
【0193】
本技術のASOは、インビトロで合成されてもよく、生物由来のASO、またはASOのインビボ合成を導くように設計された遺伝子ベクター構築物は含まれない。本技術の分子は、取り込み、分布、および/または吸収を助けるために、例えばリポソーム、受容体標的分子、経口、直腸、局所またはその他の製剤などの他の分子、分子構造または化合物の混合物と混合、コンジュゲート、関連付け、またはそれらが封入されることもある。
標的配列を含むかまたはそれからなるASOのエクソンスキッピングの有効性および/または効率を向上させる方法
【0194】
いくつかの態様では、本技術は、標的配列を含むかまたはそれからなるASOのエクソンスキッピングの有効性および/または効率を向上させる方法を提供し、その方法は、本明細書に開示される標的配列および5′スプライス部位デコイ配列を含む1つ以上の二分性ASOを提供することを含む。ある実施形態では、1つ以上の二分性ASOの各デコイ配列は、配列番号1~23および347~353のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる。ある実施形態では、1つ以上の二分性ASOの少なくとも一部は、標的配列の5′末端に動作可能に連結されたデコイ配列を有する。ある実施形態では、1つ以上の二分性ASOの少なくとも一部は、標的配列の3′末端に動作可能に連結されたデコイ配列を有する。ある実施形態では、1つ以上の二分性ASOの少なくとも一部は、標的配列の5′末端および3′末端の両方に動作可能に連結されたデコイ配列を有する。ある実施形態では、1つ以上の二分性ASOのうちの少なくとも一部は、標的配列の5′末端および3′末端の一方のみに動作可能に連結されたデコイ配列を有する。
【0195】
ある実施形態では、この方法は、1つ以上の二分性ASOを、そのエクソンスキッピングの有効性および/または効率に従ってスクリーニングおよび/または最適化することをさらに含む。ある実施形態では、二分性ASOは、標的配列のエクソンスキッピングの効率を、同一の標的配列を持つがデコイ配列を持たないASOに比べて約2倍以上、約3倍以上、約4倍以上、約5倍以上、約6倍以上、約7倍以上、約8倍以上、約9倍以上、約10倍以上、約11倍以上、約12倍以上、約13倍以上、約14倍以上、約15倍以上、約16倍以上、約17倍以上、約18倍以上、約19倍以上、約20倍以上、約25倍以上、約30倍以上、約40倍以上、約50倍以上、約60倍以上、約70倍以上、約100倍以上、約80倍以上、約90倍以上、約100倍以上、またはそれ以上(これらの値の間のすべての値および範囲を含む)増加させる。
【0196】
ある実施形態では、標的配列は、細胞または被験者内の目的のエクソン、目的のエクソンの上流の隣接イントロン配列、目的のエクソンの下流の隣接イントロン配列、目的のエクソンの上流のイントロン-エクソンジャンクション、および目的のエクソンの下流のイントロン-エクソンジャンクションからなる群から選択される配列とハイブリダイズできる。
二分性ASOの組成
【0197】
いくつかの態様では、本技術は、本明細書に開示される二分性ASOおよび薬学的に許容可能な担体を含む組成物を提供する。ある実施形態では、組成物は、医薬製剤または組成物である。
二分性ASOをエンコードするベクトル
【0198】
いくつかの態様では、本技術は、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)をコードするベクターを提供する。
疾患治療のための二分性ASOの使用
【0199】
いくつかの態様では、本技術は、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)を含む組成物(医薬組成物)、および/または本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)をコードするベクターを被験者に投与することを含む、被験者における疾患および/またはその合併症を治療する方法を提供する。ASO(例えば、二分性ASO)は、プレmRNAスプライシング中に目的のエクソンのエクソンスキッピングを生成または促進する場合がある。ASO媒介のエクソンスキッピングは、目的の遺伝子の発現を操作するためのアプローチであってもよい。目的の遺伝子の発現は、目的の遺伝子のエクソン、イントロン、または特定のスプライス部位のスプライシングを阻害するためにASOによって操作され、それにより例えば、限定されないが、目的の遺伝子の欠陥の読み枠の復元、目的の遺伝子の異なるアイソフォーム(例えば、ドミナントネガティブアイソフォーム)の生成、遺伝子の毒性部分のスキッピング、遺伝子のサイレンシング、および/または遺伝子の構造および機能の変更につながる場合がある。
【0200】
いくつかの態様では、本技術は、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)を含む組成物(例えば、医薬組成物)、および/または本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)をコードするベクターの、疾患および/またはその合併症の治療への使用を提供する。疾患の例としては、本明細書に開示されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0201】
いくつかの態様では、本技術は、疾患および/またはその合併症の治療への使用のための、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)を含む組成物(例えば、医薬組成物)、および/または本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)をコードするベクターを提供する。疾患の例としては、本明細書に開示されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0202】
疾患および/またはその合併症の例としては、限定されないが、1つ以上の目的の遺伝子のエクソンスキッピングから利益を受け得る疾患および/またはその合併症が挙げられる。ある実施形態では、目的の遺伝子は、SMN1、SMN2、DMD、APP、CEP290、HER2、SCA3、PKM、およびMDM4遺伝子からなる群から選択される。
【0203】
疾患および/またはその合併症の例としては、限定されないが、目的のエクソンのエクソンスキッピングによって治療できるものが挙げられる。ある実施形態では、目的のエクソンは、内因性SMN1およびSMN2遺伝子のエクソン7、内因性DMD遺伝子のエクソン45、51、および53、内因性APP遺伝子のエクソン17、内因性CEP290遺伝子のエクソン41、内因性HER2遺伝子のエクソン19、SCA3遺伝子のエクソン10、内因性PKM遺伝子のエクソン10、および内因性MDM4遺伝子のエクソン6からなる群から選択される。
【0204】
疾患および/またはその合併症の例としては、限定されないが、目的の遺伝子のエクソン、イントロンまたは特定のスプライス部位のスプライシングを阻害することによって治療できるものが挙げられる。
【0205】
疾患および/またはその合併症の例としては、限定されないが、欠陥のある目的の遺伝子の読み枠を復元することによって治療できるものが含まれる。
【0206】
疾患および/またはその合併症の例としては、限定されないが、目的の遺伝子の異なるアイソフォーム(例えば、ドミナントネガティブアイソフォーム)を生成することによって治療できるものが挙げられる。
【0207】
疾患および/またはその合併症の例としては、限定されないが、遺伝子の毒性部分をスキッピングすることによって治療できるものが挙げられる。
【0208】
疾患および/またはその合併症の例としては、限定されないが、遺伝子をサイレンシングすることによって治療できるものが挙げられる。
【0209】
疾患および/またはその合併症の例としては、限定されないが、遺伝子の構造および機能を変化させて有益なまたは望ましいアイソフォームを得ることによって治療できるものが挙げられる。
【0210】
疾患および/またはその合併症の例としては、限定されないが、目的の遺伝子の異なるアイソフォームによってコードされた機能性タンパク質の産生によって治療できるものが挙げられる。
【0211】
疾患および/その合併症の例としては、限定されないが、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、アルツハイマー病、ジュベール症候群、脊髄小脳失調症3(SCA3)、および癌(限定されないが、例えば乳癌、HER2陽性胆道癌、大腸癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、前立腺癌、肺癌、子宮頸癌、腎臓癌、甲状腺乳頭癌、結腸癌、大腸癌、神経膠腫、卵巣癌、胃癌、肝芽腫、線維層状癌、肝細胞癌、軟部組織肉腫、骨肉腫、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、マントル細胞リンパ腫、小児バーキットリンパ腫、唾液腺癌、肝臓癌、および黒色腫)が挙げられる。
【0212】
ある実施形態では、ASO(例えば、二分性ASO)、ASO(例えば、二分性ASO)を含む組成物(例えば、医薬組成物)、および/またはASO(例えば、二分性ASO)をコードするベクターが治療有効量で投与される。
【0213】
被験者の例としては、限定されないが、ヒトなどの哺乳類が挙げられる。
【0214】
いくつかの実施形態では、本技術の1つ以上の方法を用いて設計された1つ以上のASOは、エクソンスキッピングで治療可能な疾患の治療のために使用できる。例えば、脊髄小脳失調症3型(SCA3)は、ATXN3遺伝子のエクソン10におけるCAGトリプレットの拡大によって引き起こされた神経変性疾患である。ASOは、エクソン9、エクソン10、またはその両方のスキッピングを促進して、潜在的に機能する、部分的に機能する、または無毒なATXN3変異体を引き立てるために使用されてもよい。
【0215】
個体(例えば、ヒトなどの哺乳類)または細胞の「治療」は、個体または細胞の自然経過を改変するために用いられるあらゆるタイプの介入である。治療は、限定されないが、医薬組成物の投与または併用療法を含み、予防的に、または病理学的事象の開始または病因物質との接触後に実施されてもよい。治療には、一部の筋ジストロフィーの場合のように、ジストロフィンタンパク質に関連する疾患または状態の症状または病理に対する望ましい効果が含まれ、また、治療対象の疾患または状態の1つ以上の測定可能なマーカーの最小限の変化または改善が含まれる場合がある。また、治療対象の疾患または状態の進行速度を低下させたり、その疾患または状態の発症を遅らせたり、発症の重症度を軽減したりすることに導くことができる「予防的」治療も含まれる。「治療」または「予防」は、必ずしも疾患または状態、またはそれに関連する症状の完全な根絶、治癒、または予防を意味するものではない。
【0216】
いくつかの実施形態では、本技術の1つ以上のASO、または本技術の1つ以上のASOと1つ以上の追加の治療剤との組み合わせ(併用療法)による治療は、目的の遺伝子(例えば、DMDにおけるジストロフィン)によってコードされた機能性タンパク質の新規産生を誘導または増加させ、疾患の進行を遅らせ、疾患の症状を遅らせまたは軽減し(例えば、DMDの場合、歩行能力の喪失のとき、筋肉炎症の軽減、筋肉損傷の軽減、筋肉機能の改善、肺機能の喪失の軽減、および/または筋肉再生の強化)、または治療を行わない場合に予想されるそれらの任意の組み合わせを軽減する。いくつかの実施形態では、治療は疾患の進行を維持または遅らせる。
【0217】
いくつかの実施形態では、疾患がDMDである場合、治療は歩行能力を維持するか、または歩行の喪失を軽減する。いくつかの実施形態では、治療は肺機能を維持するか、または肺機能の喪失を軽減する。いくつかの実施形態では、治療は、例えば6分間歩行試験(6MWT)によって測定されるような患者の安定した歩行距離を維持または増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、10メートルを歩く/走る時間(すなわち、10メートル歩行/走行試験)を維持、改善、または短縮する。いくつかの実施形態では、治療は、仰向けから立ち上がる時間(すなわち、立ち上がる時間試験)を維持、改善、または短縮する。いくつかの実施形態では、治療は、4つの標準的な階段を登る時間(すなわち、4段階段登り試験)を維持、改善、または短縮する。いくつかの実施形態では、治療は、例えばMRI(例えば、脚筋肉のMRI)によって測定されるような患者の筋肉炎症を維持、改善、または軽減する。いくつかの実施形態では、MRIは下肢の筋肉の変化を測定する。いくつかの実施形態では、MRIはT2および/または脂肪分率を測定して筋変性を同定する。MRIは、炎症、浮腫、筋肉損傷、および脂肪浸潤によって引き起こされた筋肉の構造と組成の変化を同定できる。いくつかの実施形態では、筋力はノーススター歩行能力評価によって測定される。いくつかの実施形態では、筋力は小児科転帰データ収集装置(PODCI)によって測定される。
【0218】
いくつかの実施形態では、治療は、本技術の1つ以上のASO、または本技術の1つ以上のASOと1つ以上の追加の治療剤(併用療法)との組み合わせによって行われる。
【0219】
いくつかの実施形態では、疾患がDMDである場合、このような治療は、筋肉炎症を軽減し、筋肉損傷を軽減し、筋肉機能を改善し、および/または筋肉再生を強化する。例えば、治療は、被験者の炎症を安定化、維持、改善、または軽減する場合がある。治療はまた、例えば、被験者の筋肉損傷を安定化、維持、改善、または軽減する場合もある。治療は、例えば、被験者の筋肉機能を安定化、維持、または改善する場合がある。さらに、例えば、治療は、被験者の筋肉再生を安定化、維持、改善、または強化する場合がある。いくつかの実施形態では、治療は、例えば磁気共鳴画像法(MRI)(例えば、脚筋肉のMRI)によって測定されるように、治療を行わない場合に予想されるような患者の筋肉炎症を維持、改善、または軽減する。いくつかの実施形態では、本技術の1つ以上のASO、または本技術の1つ以上のASOと1つ以上の追加の治療剤(併用療法)との組み合わせによる治療は、新規ジストロフィン産生を増加させ、治療を行わない場合に予想される歩行能力の低下を遅らせるかまたは軽減する。例えば、治療は、被験者の歩行能力(例えば、歩行能力の安定化)を維持、改善、または向上させる場合がある。いくつかの実施形態では、治療は、例えば、Craig M. McDonald, et al. The 6-minute walk test in Duchenne/Becker muscular dystrophy: Longitudinal observations. 2010 Oct 29. Muscle Nerve. 42:966-74. doi: 10.1002/mus.21808(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている6分間歩行試験(6MWT)によって測定されるような患者の安定した歩行距離を維持または増加させる。6分間歩行距離(6MWD)の変化は、絶対値、割合の変化、または割合予測値の変化として表されてもよい。いくつかの実施形態では、治療は、健康な同年代の被験者と比較して被験者において20%不足している6MWTでの安定した歩行距離を維持または改善する。健康な同年代の被験者の一般的なパフォーマンスと比較した6MWTでのDMD患者のパフォーマンスは、割合予測値を計算することで判定できる。例えば、割合予測6MWDは、男性の場合、196.72+(39.81×年齢)-(1.36×年齢2)+(132.28×身長(メートル))を用いて計算されてもよい。女性の場合、割合予測6MWDは、188.61+(51.50×年齢)-(1.86×年齢2)+(86.10×身長(メートル))を用いて計算されてもよい(Henricson et al. PLoS Curr., 2012, version 2、参照により本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態では、治療は、患者の安定した歩行距離をベースラインから3、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、または50メートル(その間のすべての整数を含む)以上に増加させる。DMD患者の筋機能喪失は、正常な小児の成長および発達を背景に発生する場合がある。実際、DMDの低年齢の小児によると、進行性の筋障害にもかかわらず、約1年間にわたって6MWT中に歩行した距離が増加する場合がある。いくつかの実施形態では、DMD患者の6MWDが、通常発達中の対照被験者、および年齢や性別が一致する被験者の既存の標準データと比較される。いくつかの実施形態では、標準データに適合した年齢および身長に基づく方程式を用いて、正常な成長および発達を考慮に入れることができる。このような方程式は、DMDを患う被験者の6MWDを割合予測値(%予測値)に変換するために使用できる。いくつかの実施形態では、割合予測6MWDデータの分析は、正常な成長および発達を考慮する方法を表し、DMDを患う患者の能力が早期(例えば、7歳以下)で向上しているのではなく安定していることを示す場合がある(Henricson et al. PLoS Curr., 2012, version 2、参照により本明細書に組み込まれる)。
医薬製剤(組成)および送達
【0220】
いくつかの実施形態では、本技術は、本明細書に記載のように、ASOの治療的送達に適した製剤または組成物を提供する。したがって、いくつかの実施形態では、本技術は、1つ以上の薬学的に許容可能な担体(添加剤)および/または希釈剤とともに配合された、本明細書に記載のオリゴマーのうちの1つ以上を治療有効量含む薬学的に許容可能な組成物を提供する。本技術のオリゴマーを単独で投与することも可能ではあるが、化合物を医薬製剤(組成物)として投与することが好ましい。
【0221】
核酸分子の送達方法は、例えば、Akhtar, et al. Cellular uptake and intracellular fate of antisense oligonucleotides. 1992 May. Trends in Cell Bio. 2:139-144. doi: 10.1016/0962-8924(92)90100-2; and Delivery Strategies for ASO Therapeutics, ed. Akhtar; Sullivan et al., PCT WO94/02595に記載されている。これらおよび他のプロトコルは、本技術の単離されたオリゴマーを含む、事実上あらゆる核酸分子の送達に利用できる。
【0222】
以下に詳述するように、本技術の医薬組成物は、固体または液体の形態での投与のために特別に配合されてもよい。固体または液体の形態は、(1)経口投与、例えば、水薬(水性または非水性の溶液または懸濁液)、錠剤(例えば、頬側、舌下、および全身吸収を目的としたもの)、ボーラス、散剤、顆粒剤、舌に塗布するためのペーストによる投与;(2)非経口投与、例えば、滅菌溶液または懸濁液、または徐放性製剤などとして、皮下、筋肉内、静脈内または硬膜外注射による投与;(3)局所塗布、例えば、皮膚に塗布されるクリーム、軟膏、または放出制御パッチまたはスプレーによる塗布;(4)膣内または直腸内投与、例えば、ペッサリー、クリームまたは泡による投与;(5)舌下投与;(6)経眼投与;(7)経皮投与;または(8)鼻腔内投与に適応したものを含む。
【0223】
薬学的に許容可能な担体として機能し得る物質の一部の例としては、限定されないが、(1)ラクトース、グルコース、スクロースなどの糖類、(2)コーンスターチやジャガイモデンプンなどのデンプン類、(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、セルロースアセテートなどのセルロースおよびその誘導体、(4)トラガカント散剤、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)カカオバターや坐薬ワックスなどの賦形剤、(9)ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、大豆油などの油類、(10)プロピレングリコールなどのグリコール類、(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコールなどのポリオール類、(12)オレイン酸エチルやラウリン酸エチルなどのエステル、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)発熱物質を含まない水、(17)等張食塩水、(18)リンゲル液、(19)エチルアルコール、(20)pH緩衝液、(21)ポリエステル、ポリカーボネートおよび/またはポリ無水物、および(22)医薬製剤に使用されるその他の非毒性適合性物質が挙げられる。
【0224】
本技術のASOとの配合に適した薬剤の追加の非限定的な例としては、PEGコンジュゲートされた核酸、リン脂質コンジュゲートされた核酸、親油性部分を含有する核酸、ホスホロチオエート、様々な組織への薬剤の進入を増強できるP糖タンパク質阻害剤(Pluronic P85など)、移植後の持続放出送達用のポリ(DL-ラクチド-コグリコリド)マイクロスフェアなどの生分解性ポリマー(D. F. Emerich, et al. Biocompatibility of Poly (DL-Lactide-co-Glycolide) Microspheres Implanted into the Brain. 1999 Jan. Cell Transplant. 8, 47-58. doi:10.1177/096368979900800114,Alkermes, Inc. Cambridge, Mass.)、および血液脳関門を通過して薬剤を送達し、神経細胞の取り込みメカニズムを改変することができるポリブチルシアノアクリレートからなるものなどの充填ナノ粒子(U. Schroeder, et al. Diffusion enhancement of drugs by loaded nanoparticles in vitro. 1999 July 1. Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 23, 941-949. doi: 10.1016/s0278-5846(99)00037-8)が挙げられる。
【0225】
本技術はまた、ポリ(エチレングリコール)脂質(PEG修飾、分岐および非分岐またはそれらの組み合わせ、または長期循環リポソームまたはステルスリポソーム)を含有する表面修飾リポソームを含む組成物の使用を特徴とする。本技術のオリゴマーはまた、様々な分子量の共有付着したPEG分子も含み得る。これらの製剤は、対象組織における薬物の蓄積を増加させるための方法を提供する。このクラスの薬物担体は、単核食作用系(MPSまたはRES)によるオプソニン化および除去に抵抗することによって、封入された薬物のより長い血液循環時間と強化された組織露出を可能にする(Danilo D. Lasic, et al. The “Stealth” Liposome: A Prototypical Biomaterial. 1995 Dec 1. Chem. Rev. 95, 2601-2627. doi: 10.1021/cr00040a001; H. Ishiwata, et al. Physical-Chemistry Characteristics and Biodistribution of Poly(ethylene glycol)-Coated Liposomes Using Poly(oxyethylene) Cholesteryl Ether. 1995 June. Chem. Pharm. Bull. 43, 1005-1011. doi: 10.1248/cpb.43.1005)。このようなリポソームは、おそらく新生血管化された対象組織への溢出と捕捉によって腫瘍に選択的に蓄積することが示されている(Danilo D. Lasic, et al. Liposomes Revisited. 1995 Mar 3. Science. 267, 1275-1276. doi: 10.1126/science.7871422; Naoto Oku, et al. Real-time analysis of liposomal trafficking in tumor-bearing mice by use of positron emission tomography. 1995 Aug 23. Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Biomembranes. 1238, 86-90. doi: 10.1016/0005-2736(95)00106-D)。長期循環リポソームは、特にMPSの組織に蓄積することが知られている従来のカチオン性リポソームに比べて、DNAとRNAの薬動学と薬力学を強化する(Y. Liu, et al. Cationic liposome-mediated intravenous gene delivery. 1995 Oct 20. J. Biol. Chem. 42, 24864-24870. doi: 10.1074/jbc.270.42.24864; Choi et al., International PCT Publication No. WO 96/10391; Ansell et al., International PCT Publication No. WO 96/10390; Holland et al., International PCT Publication No. WO 96/10392)。長期循環リポソームは、肝臓や脾臓などの代謝的に攻撃的なMPS組織への蓄積を回避する能力に基づいて、カチオン性リポソームに比べて、ヌクレアーゼによる分解から薬剤をより強力に保護する傾向もある。
【0226】
いくつかの実施形態では、本技術は、米国特許第6,692,911号、第7,163,695号および第7,070,807号に記載されているように送達のために調製されたオリゴマー組成物を含む。この点に関して、一実施形態では、本技術は、リジンとヒスチジン(HK)のコポリマー(米国特許第7,163,695号、第7,070,807号および第6,692,911号に記載)を単独で、またはPEG(例えば、分岐または非分岐PEG、あるいは両者の混合物)と組み合わせて、PEGおよび標的部分または前述のもののいずれかと架橋剤と組み合わせて含む組成物中に本技術のオリゴマーを提供する。いくつかの実施形態では、本技術は、グルコン酸修飾ポリヒスチジンまたはグルコニル化ポリヒスチジン/トランスフェリンポリリジンを含む組成物中にASOを提供する。当業者は、組成物内でHisおよびLysと同様の特性を持つアミノ酸を置換してもよいことも認識するであろう。
【0227】
本明細書に記載のオリゴマーのいくつかの実施形態は、アミノまたはアルキルアミノなどの塩基性官能基を含んでもよいため、薬学的に許容可能な酸と薬学的に許容可能な塩を形成できる。これらの塩は、投与ビヒクルまたは剤形製造プロセスにおいてその場で調製するか、または本技術の精製された化合物をその遊離塩基形態で適切な有機酸または無機酸と別個に反応させ、その後の精製中にこのように形成された塩を単離することによって調製することができる。代表的な塩には、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリルスルホン酸塩などが含まれる。(例えば、S. M. Berge, et al. Pharmaceutical Salts. 1977 Jan. J. Pharm. Sci. 66:1-19. doi: 10.1002/jps.2600660104参照)
【0228】
対象オリゴマーの薬学的に許容可能な塩には、化合物の従来の非毒性塩または第四級アンモニウム塩(例えば非毒性有機酸または無機酸からの塩)が含まれる。例えば、このような従来の非毒性塩には、塩酸塩、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から由来する塩、および酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イソチオン酸などの有機酸から調製される塩が含まれる。
【0229】
いくつかの実施形態では、本技術のオリゴマーは、1つ以上の酸性官能基を含んでもよいため、薬学的に許容可能な塩基と薬学的に許容可能な塩を形成できる。これらの塩は、同様に、投与ビヒクルまたは剤形製造プロセスにおいてその場で調製するか、または、遊離酸形態の精製化合物を、薬学的に許容可能な金属陽イオンの水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩などの適切な塩基、アンモニア、または薬学的に許容可能な有機第一級、第二級または第三級アミンと別個に反応させることによって調製することができる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類塩には、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム塩などが含まれる。塩基付加塩の形成に有用な代表的な有機アミンには、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどが含まれる。(例えば、S. M. Berge, et al., supra参照)。
【0230】
湿潤剤、乳化剤および潤滑剤(ラウリル硫酸ナトリウムやステアリン酸マグネシウムなど)、ならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味料、香味料および芳香剤、防腐剤および抗酸化剤も組成物中に存在し得る。
【0231】
薬学的に許容可能な抗酸化剤の例としては、(1)水溶性抗酸化剤(アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど)、(2)油溶性抗酸化剤(アスコルビルパルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、プロピル没食子酸、α-トコフェロールなど)、(3)金属キレート剤(クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など)が挙げられる。
【0232】
本技術の製剤には、経口、経鼻、局所(頬側および舌下を含む)、直腸、膣および/または非経口投与に適したものが含まれる。製剤は、単位剤形で提示するのが便利な場合があり、薬学の分野でよく知られている任意の方法によって調製されてもよい。単一の剤形を生成するために担体物質と組み合わせることができる有効成分の量は、治療されている宿主、特定の投与様式に応じて変化する。単一の剤形を生成するために担体物質と組み合わせることができる有効成分の量は、一般に、治療効果を生み出す化合物の量である。一般的に、100パーセントのうち、この量は、有効成分の約0.1パーセントから約99パーセント、または約5パーセントから約70パーセント、または約10パーセントから約30パーセントの範囲にある。
【0233】
いくつかの実施形態では、本技術の製剤は、シクロデキストリン、セルロース、リポソーム、ミセル形成剤(例えば、胆汁酸)、およびポリマー担体(例えば、ポリエステルおよびポリ無水物)から選択される賦形剤、ならびに本技術のオリゴマーを含む。いくつかの実施形態では、前述の製剤は、本技術のオリゴマーを経口的に生体利用可能にする。
【0234】
これらの製剤または組成物を調製する方法は、本技術のオリゴマーを担体や任意に1つ以上の補助成分と組み合わせるステップを含む。一般に、製剤は、本技術の化合物を液体担体、または細かく分割された固体担体、またはその両方と均一かつ密接に組み合わせた後、必要に応じて製品を成形することによって調製される。
【0235】
経口投与に適した本技術の製剤は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、タブレット、ロゼンジ(風味付けされた基剤、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカントを使用)、散剤、顆粒剤、または水性または非水性液体中の溶液または懸濁液、または水中油型または油中水型液体エマルジョン、またはエリキシル剤またはシロップ、またはパステル剤(ゼラチンやグリセリン、またはスクロースやアカシアなどの不活性基剤を使用)および/またはマウスウォッシュなどの形態であってもよく、それぞれが活性成分として所定量の本技術の化合物を含有する。本技術のオリゴマーはまた、ボーラス、舐剤またはペーストとして投与されてもよい。
【0236】
経口投与用の本技術の固形剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤、トローチ剤など)では、有効成分を、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの1つ以上の薬学的に許容可能な担体、および/または(1)充填剤または増量剤(デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸など)、(2)結合剤(カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシアなど)、(3)保湿剤(グリセロールなど)、(4)崩壊剤(寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、一部のケイ酸塩、炭酸ナトリウムなど)、(5)溶解遅延剤(パラフィンなど)(6)吸収促進剤(第四級アンモニウム化合物や界面活性剤、例えばポロキサマーやラウリル硫酸ナトリウムなど)、(7)湿潤剤(例えば、セチルアルコール、グリセロールモノステアレート、非イオン性界面活性剤など)、(8)吸収剤(カオリンやベントナイト粘土など)、(9)滑剤(タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸、およびそれらの混合物など)、(10)着色剤、および(11)放出制御剤(クロスポビドンまたはエチルセルロースなど)のいずれかと混合されてもよい。カプセル剤、錠剤、丸剤の場合、医薬組成物はまた、緩衝剤も含んでもよい。同様の種類の固体組成物はまた、ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどとしての賦形剤を用いて、軟殻および硬殻ゼラチンカプセル剤内の充填剤としても使用されてもよい。
【0237】
錠剤は、任意に1つ以上の補助成分とともに、圧縮または成形によって製造されてもよい。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウムまたは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤または分散剤を用いて調製されてもよい。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた化合物粉末の混合物を適切な機械で成形することによって製造されてもよい。
【0238】
錠剤、および本技術の医薬組成物のその他の固形剤形、例えば糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤は、必要に応じて、腸溶性コーティングおよび医薬製剤技術でよく知られているその他のコーティングなどのコーティングおよびシェルで刻み目を付けられるか、または調製されてもよい。これらはまた、所望の放出プロファイルを提供するために様々な割合でヒドロキシプロピルメチルセルロース、その他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはミクロスフェアなどを用いて、その中の有効成分の徐放性または放出制御性を提供するように配合されてもよい。これらは、例えば凍結乾燥など、急速放出のために配合されてもよい。これらは、例えば、細菌保持フィルターを通した濾過によって、または使用直前に滅菌水または他の滅菌注射媒体に溶解できる滅菌固形組成物の形で滅菌剤を組み込むことによって滅菌されてもよい。これらの組成物は、必要に応じて不透明化剤を含むこともでき、有効成分のみを、または優先的に、必要に応じて遅延して、胃腸管の一部に放出する組成物であってもよい。使用可能な埋め込み組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。有効成分は、適切な場合、上記の賦形剤の1つ以上とともにマイクロカプセル化された形態でもあり得る。
【0239】
本技術の化合物を経口投与するための液体剤形には、薬学的に許容可能な乳剤、マイクロ乳剤、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤が含まれる。液体剤形には、活性成分に加えて、当該技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤、例えば水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ソルビタンのポリエチレングリコールおよび脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物が含有されてもよい。
【0240】
経口組成物には、不活性希釈剤のほかに、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味料、香味料、着色料、芳香剤、防腐剤などの補助剤も含まれ得る。
【0241】
懸濁液には、活性化合物に加えて、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールやソルビタンエステル、微結晶セルロース、アルミニウムメタ水酸化物、ベントナイト、寒天およびトラガカント、およびそれらの混合物などの懸濁剤が含まれてもよい。
【0242】
直腸または膣投与用の製剤は、坐薬として提示されてもよい。坐薬は、本技術の1つ以上の化合物を、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、坐薬ワックスまたはサリチル酸塩を含む1つ以上の適切な非刺激性賦形剤または担体と混合することによって調製されてもよく、室温では固体であるが、体温では液体になるため、直腸または膣腔内で溶解して活性化合物を放出する。
【0243】
本明細書で提供されるようなオリゴマーの局所投与または経皮投与用の製剤または剤形には、散剤、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ、および吸入剤が含まれる。活性オリゴマーは、無菌条件下で、薬学的に許容可能な担体、および必要に応じて防腐剤、緩衝液、または発射剤と混合されてもよい。軟膏、ペースト、クリーム、およびゲルには、本技術の活性化合物に加えて、動物性および植物性の脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、酸化亜鉛などの賦形剤、またはそれらの混合物が含まれてもよい。
【0244】
散剤およびスプレーには、本技術のオリゴマーに加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ポリアミド粉末などの賦形剤、またはこれらの物質の混合物が含まれ得る。スプレーには、クロロフルオロ炭化水素、およびブタンやプロパンなどの揮発性非置換炭化水素などの慣用の噴射剤が追加で含まれ得る。
【0245】
経皮パッチには、本技術のオリゴマーを体内に制御された状態で送達するという追加的な利点がある。このような剤形は、オリゴマーを適切な媒体に溶解または分散させることによって製造できる。吸収促進剤はまた、皮膚を横切る薬剤の流量を増やすためにも使用できる。このような流量の速度は、当該技術分野で知られている他の方法の中でも、速度制御膜を提供するか、薬剤をポリマーマトリックスまたはゲルに分散させることによって制御できる。
【0246】
非経口投与に適した医薬組成物は、本技術の1つ以上のオリゴマーを、糖類、アルコール類、抗酸化剤、緩衝液、殺菌剤、受容者の血液と等張になるように製剤を調整する溶質、懸濁剤、または増粘剤などが含まれる場合がある、無菌の注射用溶液または分散液に使用直前に再構成されてもよい1つ以上の医薬的に許容可能な滅菌等張水性または非水性溶液、分散液、懸濁液または乳剤、または滅菌粉末との組み合わせて含んでもよい。本技術の医薬組成物に使用されてもよい適切な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物、オリーブ油などの植物油、オレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材の使用、分散液の場合に必要な粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用によって維持できる。
【0247】
これらの組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤などの補助剤も含んでもよい。微生物が対象オリゴマーに及ぼす作用の防止は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの様々な抗菌剤および抗真菌剤を含有することによって確保されてもよい。また、糖類、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物に含有することが望ましい場合もある。さらに、アルミニウムモノステアレートやゼラチンなどの吸収を遅らせる薬剤を含有することによって、注射可能な剤形の吸収を遅らせてもよい。
【0248】
いくつかの実施形態では、薬剤の効果を長引かせるために、皮下または筋肉内注射からの薬剤の吸収を遅らせることが望ましい。これは、当技術分野で知られている他の方法の中でも、水への溶解度が低い結晶性または非晶質物質の液体懸濁液を使用することによって達成されてもよい。薬剤の吸収速度は溶解速度に依存し、溶解速度は結晶のサイズと結晶形態に依存する場合がある。あるいは、非経口投与される薬物形態の吸収の遅延は、薬剤を油性ビヒクルに溶解または懸濁させることによって達成できる。
【0249】
注射可能なデポ剤形は、ポリ乳酸-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中に、対象オリゴマーのマイクロカプセルマトリックスを形成することによって製造されてもよい。オリゴマーとポリマーの比率、および使用される特定のポリマーの性質に応じて、オリゴマーの放出速度を制御できる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポ注射可能な製剤は、体組織に適合するリポソームまたはマイクロエマルジョンに薬剤を封入することによっても調製されてもよい。
【0250】
本技術のASOをヒトや動物に医薬品として投与する場合、それらはそれ自体で、または、例えば、0.1~99%(より好ましくは、10~30%)の有効成分を薬学的に許容可能な担体と組み合わせて含む医薬組成物として投与できる。
【0251】
上述のように、本技術の製剤または調製物は、経口、非経口、局所、または直腸投与されてもよい。これらは通常、各投与経路に適した形態で投与される。例えば、錠剤またはカプセル剤の形態で投与されるか、注射、吸入、点眼薬、軟膏、坐薬などの形で投与される。注射、注入または吸入によって投与され、局所投与の場合はローションまたは軟膏で投与され、直腸投与の場合は坐薬で投与される。
【0252】
本明細書で使用されるような「非経口投与」や「非経口的に投与される」という語句は、通常は注射による経腸投与および局所投与以外の投与方法を意味し、その投与方法は、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内および胸骨内の注射および注入を含む。
【0253】
本明細書で使用されるような「全身投与」および「末梢投与」という語句は、患者の体内に入り、代謝やその他の同様のプロセス(例えば皮下投与)を受けることになるように、化合物、薬剤またはその他の物質を中枢神経系に直接投与する以外の方法で投与することを意味する。
【0254】
選択された投与経路に関係なく、適切な水和形態で使用されてもよい本技術のASOおよび/または本技術の医薬組成物は、当業者に知られている従来の方法によって、薬学的に許容可能な剤形に配合されてもよい。本技術の医薬組成物中の有効成分の実際の投与量レベルは、患者に対して許容できないほどの毒性を及ぼすことなく、特定の患者、組成物、および投与方法に対して所望の治療反応を達成するのに有効な有効成分の量が得られるように変更されてもよい。
【0255】
選択される投与量レベルは、使用される本技術の特定のオリゴマーまたはそのエステル、塩、またはアミドの活性、投与経路、投与時間、使用されている特定のオリゴマーの排泄または代謝の速度、吸収の速度および程度、治療期間、使用される特定のオリゴマーと組み合わせて使用される他の薬剤、化合物および/または物質、治療されている患者の年齢、性別、体重、状態、一般的な健康状態および以前の病歴、および医療分野でよく知られている同様の要因を含む様々な要因に依存する。
【0256】
当該技術分野で通常の技能を有する医師または獣医師は、必要な医薬組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師または獣医師は、医薬組成物に使用される本技術の化合物の投与量を、所望の治療効果を達成するために必要な量よりも低いレベルから開始し、所望の効果が得られるまで徐々に投与量を増やすことができる。一般に、本技術の化合物の適切な一日量は、治療効果を生み出すのに有効な最低量の化合物の量である。このような有効量は、一般に上記の要因に依存する。一般に、患者に対する本技術の化合物の経口、静脈内、脳室内および皮下投与量は、指示された効果のために使用される場合、約0.001~約1,000mcg/g/日、約0.01~約500mcg/g/日、約0.1~約200mcg/g/日、約1~約160mcg/g/日、または約10~約150mcg/g/日の範囲にある。
【0257】
必要に応じて、活性化合物の有効な一日量は、一日を通して適切な間隔で別々に投与される2、3、4、5、6回またはそれ以上のサブ用量として、任意に単位剤形で投与されてもよい。状況によっては、投与は1日1回である。いくつかの実施形態では、投与は、機能性ジストロフィンタンパク質の所望の発現を維持するために、必要に応じて、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日ごと、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12週ごと、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月ごとに1回または複数回の投与である。
【0258】
核酸分子は、当業者に熟知されている様々な方法によって細胞に投与することができ、これらの方法には、限定されないが、本明細書に記載され、当業者に知られているように、リポソームへのカプセル化、イオントフォレシス、またはヒドロゲル、シクロデキストリン、生分解性ナノカプセル、生体接着性ミクロスフェアなどの他のビヒクルへの組み込みなどが含まれる。いくつかの実施形態では、マイクロ乳化技術を利用して、親油性(水不溶性)医薬品の生物学的利用能を向上させてもよい。例としては、トリメトリンが挙げられる(S. K. Dordunoo, et al. Preformulation Studies on Solid Dispersions Containing Triamterene or Temazepam in Polyethylene Glycols or Gelucire 44/14 for Liquid Filling of Hard Gelatin Capsules. 2008 Oct. Drug Development and Industrial Pharmacy. 17(12), 1685-1713. doi: 10.3109/03639049109057315 and REV 5901 (P. C. Sheen, et al. Bioavailability of a Poorly Water-Soluble Drug from Tablet and Solid Dispersion in Humans. 1991 July. J. Pharm. Sci. 80(7), 712-714. doi: 10.1002/jps.2600800722)。マイクロ乳化は、他の利点の中でも、吸収を循環系に代わってリンパ系に優先的に導くことで生物学的利用能を高めることによって、肝臓を迂回し、肝胆循環における化合物の破壊を防止する。
【0259】
いくつかの実施形態では、製剤は、本明細書に提供されるようなオリゴマーから形成されたミセルと、少なくとも1つの両親媒性担体とを含み、ミセルの平均直径は約100nm未満である。より好ましい実施形態では、平均直径が約50nm未満のミセルが提供され、さらにより好ましい実施形態では、平均直径が約30nm未満、または約20nm未満であるミセルが提供される。
【0260】
適切な両親媒性担体はすべて考慮されるが、現在好ましい担体は、一般的に、一般に安全とみなされている(GRAS)ステータスを有し、本技術の化合物を可溶化し、溶液が複雑な水相(ヒトの胃腸管に見られるものなど)と接触する後の段階でそれをマイクロ乳化することができる担体である。通常、これらの要件を満たす両親媒性成分は、HLB(親水性と親油性のバランス)値が2~20であり、その構造にはC-6~C-20の範囲の直鎖脂肪族ラジカルが含まれる。例としては、ポリエチレングリコール化脂肪グリセリドおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0261】
両親媒性担体の例としては、飽和および一価不飽和のポリエチレングリコール化脂肪酸グリセリド(完全または部分的に水素化された様々な植物油から得られるものなど)が挙げられる。このような油は、有利には、トリ、ジ、およびモノ脂肪酸グリセリド、および対応する脂肪酸のジおよびモノポリエチレングリコールエステルからなる場合があり、特に好ましい脂肪酸組成は、カプリン酸4~10%、カプリン酸3~9%、ラウリン酸40~50%、ミリスチン酸14~24%、パルミチン酸4~14%、およびステアリン酸5~15%を含む。両親媒性担体のもう1つの有用なクラスには、飽和または一価不飽和脂肪酸(SPANシリーズ)または対応するエトキシル化類似体(TWEENシリーズ)とともに部分的にエステル化されたソルビタンおよび/またはソルビトールが含まれる。
【0262】
市販の両親媒性担体は特に有用な場合があり、これには、Gelucireシリーズ、Labrafil、Labrasol、またはLauroglycol(すべてGattefosse社(サン=プリースト、フランス)が製造や販売)、PEG-モノオレエート、PEG-ジオレエート、PEG-モノラウレートおよびジラウレート、レシチン、ポリソルベート80など(米国および世界中の多数の企業が製造および販売)が含まれる。
【0263】
いくつかの実施形態では、送達は、本技術の組成物を適切な宿主細胞に導入するために、リポソーム、ナノカプセル、マイクロ粒子、マイクロスフィア、脂質粒子、小胞などを使用することによって行われてもよい。特に、本技術の組成物は、脂質粒子、リポソーム、小胞、ナノスフィア、ナノ粒子などに封入されて送達されるように配合されてもよい。このような送達ビヒクルの配合および使用は、既知の従来の技術を用いて行うことができる。
【0264】
本技術での使用に適した親水性ポリマーは、容易に水に溶け、小胞形成脂質に共有付着でき、毒性効果なしに生体内で許容される(すなわち、生体適合性である)ものである。適切なポリマーには、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ乳酸(ポリラクチドとも呼ばれる)、ポリグリコール酸(ポリグリコリドとも呼ばれる)、ポリ乳酸-ポリグリコール酸コポリマー、およびポリビニルアルコールが含まれる。いくつかの実施形態では、ポリマーの分子量は、約100または120ダルトンから約5,000または10,000ダルトンまで、または約300ダルトンから約5,000ダルトンまでである。別の実施形態では、ポリマーの分子量は、分子量が約100から約5,000ダルトンのポリエチレングリコール、または分子量が約300から約5,000ダルトンのポリエチレングリコールである。いくつかの実施形態では、ポリマーは750ダルトンのポリエチレングリコール(PEG(750))である。ポリマーは、その中のモノマーの数によっても定義されてもよい。本技術の好ましい実施形態では、少なくとも約3つのモノマーのポリマー、すなわち3つのモノマー(約150ダルトン)からなるPEGポリマーが利用される。
【0265】
本技術での使用に適する場合のある他の親水性ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ポリメトキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、およびヒドロキシメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースなどの誘導体化セルロースが挙げられる。
【0266】
いくつかの実施形態では、本技術の製剤は、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、アクリル酸およびメタクリル酸エステルのポリマー、ポリビニルポリマー、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびその共重合体、セルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、乳酸およびグリコール酸のポリマー、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン)、多糖類、タンパク質、ポリヒアルロン酸、ポリシアノアクリレート、およびそれらのブレンド、混合物、または共重合体からなる群から選択される生体適合性ポリマーを含む。
【0267】
シクロデキストリンは、6、7、または8個のグルコース単位からなる環状オリゴ糖であり、それぞれギリシャ文字α、β、またはγで示される。グルコース単位は、α-1,4-グルコシド結合によって連結される。糖単位の椅子形配座の結果として、すべての二次ヒドロキシル基(C-2、C-3)は環の片側に位置し、C-6のすべての一次ヒドロキシル基は反対側に位置する。その結果、外面は親水性であるため、シクロデキストリンを水溶性とする。対照的に、シクロデキストリンの空洞は、原子C-3およびC-5の水素やエーテル様酸素で覆われているため、疎水性である。これらのマトリックスは、例えば17α-エストラジオールなどのステロイド化合物を含む、様々な比較的疎水性化合物との複合体形成を可能にする(例えば、Wim van Uden, et al. Cyclodextrins as a useful tool for bioconversions in plant cell biotechnology. 1994 Sep. Plant Cell Tissue and Org. Cult. 38:103-113. doi: 10.1007/BF00033867参照)。複合体形成は、ファンデルワールス相互作用や水素結合の形成によって起こる。シクロデキストリンの化学的性質の一般的な概要については、Wenz, Agnew. Chem. Int. Ed. Engl., 33:803-822 (1994)を参照すること。
【0268】
シクロデキストリン誘導体の物理化学的性質は、その種類および置換度に大きく依存する。例えば、水に対する溶解度は、不溶性(例えば、トリアセチル-β-シクロデキストリン)から147%溶解度(w/v)(G-2-β-シクロデキストリン)までの範囲にある。さらに、それらは多くの有機溶媒に可溶である。シクロデキストリンの性質により、溶解度を増減させることによって、様々な製剤成分の溶解度を制御することができる。
【0269】
多数のシクロデキストリンおよびその調製方法が記載されている。例えば、Parmeter(I)ら(米国特許第3,453,259号)およびGrameraら(米国特許第3,459,731号)には、電気的に中性なシクロデキストリンが記載されている。その他の誘導体としては、カチオン性を有するシクロデキストリン(Parmeter(II)、米国特許第3,453,257号)、不溶性架橋シクロデキストリン(Solms、米国特許第3,420,788号)、およびアニオン性を有するシクロデキストリン(Parmeter(III)、米国特許第3,426,011号)が挙げられる。アニオン性を有するシクロデキストリン誘導体のうち、カルボン酸、亜リン酸、亜ホスフィン酸、ホスホン酸、リン酸、チオホスホン酸、チオスルフィン酸、およびスルホン酸が親シクロデキストリンに付加されている(上記のParmeter(III)参照)。さらに、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン誘導体は、Stellaらによって説明されている(米国特許第5,134,127号)。
【0270】
リポソームは、水性内部区画を囲む少なくとも1つの脂質二重膜からなる。リポソームは、膜の種類やサイズによって特徴付けられてもよい。小型単層小胞(SUV)は単一の膜を有し、通常、直径は0.02~0.05μmの範囲にある。大型単層小胞(LUVS)は通常、0.05μmより大きい。オリゴラメラ大型小胞および多層小胞は、通常同心円状の複数の膜層を有し、通常、0.1μmより大きい。複数の非同心円膜を有するリポソーム、すなわち、複数の小型小胞が大型小胞内に含まれているリポソームは、多胞と呼ばれる。
【0271】
本技術の一態様は、本技術のオリゴマーを含有するリポソームを含む製剤に関するものであり、リポソーム膜は、リポソームの担持能を高めるように配合される。代替的または追加的に、本技術の化合物は、リポソームのリポソーム二重層内に含まれるか、またはその上に吸着されてもよい。本技術のオリゴマーは、脂質界面活性剤と凝集してリポソームの内部空間内に担持されてもよい。これらの実施形態では、リポソーム膜は、活性剤-界面活性剤凝集体の破壊効果に抵抗するように配合される。
【0272】
本技術の一実施形態によれば、リポソームの脂質二重層は、PEG鎖は、脂質二重層の内面からリポソームによって封入された内部空間に延び、脂質二重層の外部から周囲の環境に延びるように、ポリエチレングリコール(PEG)で誘導体化された脂質を含有する。
【0273】
本技術のリポソーム内に含まれる活性剤は可溶化形態である。界面活性剤と活性剤の凝集体(目的の活性剤を含有するエマルジョンまたはミセルなど)は、本技術によるリポソームの内部空間内に閉じ込められてもよい。界面活性剤は、活性剤を分散し可溶化するように作用し、限定されないが様々な鎖長(例えば、約C14から約C20)の生体適合性リゾホスファチジルコリン(LPG)を含む、任意の適切な脂肪族、脂環式または芳香族界面活性剤から選択されてもよい。PEG脂質などのポリマー誘導体化された脂質はまた、ミセル/膜融合を阻害するように作用し、界面活性剤分子にポリマーを添加すると界面活性剤のCMCが低下し、ミセル形成が促進されるため、ミセル形成に利用されてもよい。マイクロモル範囲のCMOを有する界面活性剤が好ましい。CMCのより高い界面活性剤は、本技術のリポソーム内に閉じ込められたミセルを調製するために利用されてもよい。
【0274】
本技術によるリポソームは、当該技術分野で知られている様々な技術のいずれかによって調製されてもよい。例えば、米国特許第4,235,871号、公開されたPCT出願WO96/14057、New RRC, Liposomes: A practical approach, IRL Press, Oxford (1990), pp. 33-104; Lasic D, Liposomes from physics to applications, Elsevier Science Publishers BV, Amsterdam, 1993を参照すること。例えば、本技術のリポソームは、親水性ポリマーで誘導体化された脂質を、予め形成されたリポソームに拡散させることによって、例えば、脂質グラフトポリマーからなるミセルに、リポソームに望まれる誘導体化された脂質の最終的なモルパーセントに対応する脂質濃度で、予め形成されたリポソームをさらすことによって調製されてもよい。親水性ポリマーを含有するリポソームはまた、当技術分野で知られているように、均質化、脂質場水和、または押出技術によって形成されてもよい。
【0275】
別の例示的な配合手順では、活性剤は、まず、疎水性分子を容易に可溶化するリゾホスファチジルコリンまたは他のCMCの低い界面活性剤(ポリマーグラフト脂質を含む)に超音波処理によって分散される。次に、得られた活性剤のミセル懸濁液を用いて、適切なモルパーセントのポリマーグラフト脂質またはコレステロールを含有する乾燥脂質試料を再水和する。次に、脂質および活性剤の懸濁液を、当技術分野で知られている押出技術を用いてリポソームに形成し、得られたリポソームを標準的なカラム分離によって非カプセル化された溶液から分離する。
【0276】
本技術の1つの態様では、リポソームは、選択されたサイズ範囲で実質的に均一なサイズになるように調製される。1つの有効なサイズ調整方法は、選択された均一な孔サイズを有する一連のポリカーボネート膜を通ってリポソームの水性懸濁液を押し出すことを含む。膜の孔サイズは、その膜を通って押し出すことによって産生されたリポソームの最大サイズとほぼ一致する。例えば、米国特許第4,737,323号(1988年4月12日)を参照すること。いくつかの実施形態では、DharmaFECT(登録商標)やLipofectamine(登録商標)などの試薬を利用して、ポリヌクレオチドまたはタンパク質を細胞に導入する場合がある。
【0277】
本技術の製剤の放出特性は、カプセル化材料、カプセル化された薬剤の濃度、および放出調整剤の存在に依存する。例えば、胃のように低いpHでのみ、または腸のように高いpHでのみ放出するpH感受性コーティングを用いて、放出をpH依存的に操作できる。腸溶性コーティングは、胃を通過した後まで放出が起こらないようにするために使用できる。異なる材料でカプセル化されたシアナミドの複数のコーティングまたは混合物は、胃で最初に放出し、その後腸で放出するために使用できる。放出はまた、塩または細孔形成剤を含めることによっても操作できるため、水の取り込みまたはカプセル剤からの拡散による薬剤の放出を強化できる。薬剤の溶解性を変更する賦形剤はまた、放出速度を制御するためにも使用できる。マトリックスの分解またはマトリックスからの放出を強化する薬剤も組み込むことができる。これらは、化合物に応じて、薬剤に添加することも、別の相として(すなわち、微粒子として)添加することも、またはポリマー相に共溶解させることもできる。ほとんどの実施形態では、量は0.1~30%(w/wポリマー)となるべきである。分解促進剤の種類には、硫酸アンモニウムや塩化アンモニウムなどの無機塩、クエン酸、安息香酸、アスコルビン酸などの有機酸、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、水酸化亜鉛などの無機塩基、硫酸プロタミン、スペルミン、コリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの有機塩基、およびTween(登録商標)やPluronic(登録商標)などの界面活性剤が含まれる。マトリックスに微細構造を追加する細孔形成剤(すなわち、無機塩や糖などの水溶性化合物)は、微粒子として添加される。その範囲は通常、1~30%(w/wポリマー)である。
【0278】
取り込みはまた、腸管における粒子の滞留時間を改変することによっても操作できる。これは、例えば、粒子を粘膜接着性ポリマーでコーティングするか、またはカプセル化材料として粘膜接着性ポリマーを選択することによって達成できる。例としては、キトサン、セルロース、特にポリアクリレートなどの遊離カルボキシル基を有するほとんどのポリマーが挙げられる(本明細書で使用されるように、ポリアクリレートとは、シアノアクリレートやメタクリレートなどのアクリレート基および修飾アクリレート基を含むポリマーを指す)。
【0279】
オリゴマーは、手術装置または医療機器またはインプラント内に収容されるか、またはそれらによる放出に適合されるように配合されてもよい。いくつかの態様では、インプラントはオリゴマーでコーティングされるか、または処理されてもよい。例えば、ハイドロゲル、または生体適合性および/または生分解性のポリマーなどの他のポリマーは、本技術の組成物でインプラントをコーティングするために使用されてもよい(すなわち、組成物は、ハイドロゲルまたは他のポリマーを使用することによって、医療機器で使用するように適合されることがある)。医療機器を薬剤でコーティングするためのポリマーおよびコポリマーは、当該技術分野でよく知られている。インプラントの例としては、限定されないが、ステント、薬剤溶出ステント、縫合糸、人工器官、血管カテーテル、透析カテーテル、血管移植片、人工心臓弁、心臓ペースメーカー、植込み型除細動器、IV針、骨の固定および形成用のピン、ネジ、プレートなどの器具およびその他の器具、ならびに創傷治癒用の人工組織マトリックスなどが挙げられる。
【0280】
本明細書で提供される方法に加えて、本技術によって使用されるオリゴマーは、他の医薬品と同様に、人間医学または獣医学で使用するために任意の便利な方法で投与するために配合されてもよい。ASOおよびそれに対応する製剤は、単独で、または筋ジストロフィーの治療において、筋芽細胞移植、幹細胞療法、アミノグリコシド系抗生物質の投与、プロテアソーム阻害剤、およびアップレギュレーション療法(例えば、ジストロフィンの常染色体パラログであるユートロフィンのアップレギュレーション)などの他の治療戦略と併用して投与されてもよい。
【0281】
記載されている投与経路は、熟練した医師であれば、特定の動物や状態に対して最適な投与経路や投与量を容易に決定できるため、あくまでもガイドとして意図されている。機能的な新規遺伝物質を細胞に導入するための複数のアプローチは、インビトロおよびインビボの両方で試みられてきた(Theodore Friedmann. Progress Toward Human Gene Therapy. 1989. Science. 244:1275-1280. doi: 10.1126/science.266025)。これらのアプローチは、発現対象の遺伝子の修飾レトロウイルスへの組み込み(Theodore Friedmann (1989) supra; Steven A. Rosenberg. Immunotherapy and Gene Therapy of Cancer. 1991 Sep 15. Cancer Research. 51(18), suppl.: 5074S-5079S.)、非レトロウイルスベクター(例えばアデノ随伴ウイルスベクター)への組み込み(M. A. Rosenfeld, et al. In vivo transfer of the human cystic fibrosis transmembrane conductance regulator gene to the airway epithelium. 1992 Jan 10. Cell. 68:143-155. doi: 10.1016/0092-8674(92)90213-V; M. A. Rosenfeld, et al. Adenovirus-Mediated Transfer of a Recombinant α1-Antitrypsin Gene to the Lung Epithelium in Vivo. 1991 April 19. Science. 252:431-434. doi: 10.1126/science.2017680)、またはリポソームを介して異種プロモーター-エンハンサー要素に連結されたトランスジーンの送達(Theodore Friedmann (1989), supra; Kenneth L. Brigham, et al. Rapid Communication: In vivo Transfection of Murine Lungs with a Functioning Prokaryotic Gene using a Liposome Vehicle. 1989 Oct. Am. J. Med. Sci. 298:278-281. doi: 10.1097/00000441-198910000-00013; Elizabeth G. Nabel, et al. Site-Specific Gene Expression in Vivo by Direct Gene Transfer into the Arterial Wall. 1990 Sep. Science. 249:1285-1288. doi: 10.1126/science.211905; Thomas A. Hazinski, et al. Localization and Induced Expression of Fusion Genes in the Rat Lung. 1991 Nov. Am. J. Resp. Cell Molec. Biol. 4:206-209. doi: 10.1165/ajrcmb/4.3.206; and Wang and Huang. pH-sensitive immunoliposomes mediate target-cell-specific delivery and controlled expression of a foreign gene in mouse. 1987 Nov 11. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 84:7851-7855. doi: 10.1073/pnas.84.22.7851)、リガンド特異的な陽イオンベースの輸送系への結合(Wu and Wu. Receptor-mediated gene delivery and expression in vivo. 1988 Oct. J. Biol. Chem. 263:14621-14624. doi: 10.1016/S0021-9258(18)68081-0)、またはネイキッドDNA、発現ベクターの使用(Elizabeth G. Nabel, et al. (1990), supra; Jon A. Wolff, et al. Direct Gene Transfer into Mouse Muscle in Vivo. 1990 March 23. Science. 247:1465-1468. doi: 10.1126/science.1690918)を含む。組織へのトランスジーンの直接注入は局所的な発現のみを産生する(M. A. Rosenfeld (1992) supra; M. A. Rosenfeld, et al. (1991) supra; Kenneth L. Brigham, et al. (1989) supra; Elizabeth G. Nabel (1990) supra; and Thomas A. Hazinski, et al. (1991) supra)。Brighamらのグループ(Rapid Communication: In vivo Transfection of Murine Lungs with a Functioning Prokaryotic Gene using a Liposome Vehicle. 1989 Oct. Am. J. Med. Sci. 298:278-281. doi: 10.1097/00000441-198910000-00013and Clinical Research (1991) 39(要約))は、DNAリポソーム複合体を静脈内または気管内に投与した後、マウスの肺のみにインビボトランスフェクションを行ったと報告した。ヒト遺伝子治療手順のレビュー記事の例としては、W. F. Anderson. Human gene therapy. 1992 May 8. Science. 256:808-813. doi: 10.1126/science.1589762が挙げられる。
併用療法
【0282】
本明細書で使用される「共投与」、「共投与する」、または「併用療法」とは、一般的に、本技術の1つ以上のASO(例えば、二分性ASO)を、ASOが治療する同じ疾患またはその合併症を治療するために使用される当該技術分野で既知の他の治療剤と併用して投与することを指す。
【0283】
ある実施形態では、疾患はDMDであり、筋ジストロフィーまたはその合併症を治療する他の治療薬は、限定されないが、副腎皮質ステロイド(例えば、コルチゾール、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、デフラザコート、トリアムシノロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、アルドステロン、フルドロコルチゾン)、β2アドレナリン作動薬(例えば、アルブテロール、サルブタモール、レボサルブタモール、テルブタリン、ピルブテロール、プロカテロール、クレンブテロール、メタプロテレノール、フェノテロール、ビトルテロールメシル酸塩、リトドリン、イソプレナリン、サルメテロール、フォルモテロール、バンブテロール、インジケロール)、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン)、抗線維化薬(例えば、ペグインターフェロン、IL-10、ピオグリタゾン、ペントキシフィリン、アタネルセプト)、エクソンスキッピング薬(例えば、ASO(例えば、ドリサペルセン、エテプリルセン、ゴロディルセン、PRO044、PRO45、PRO051、PRO053を含む、エクソン51、エクソン45、またはエクソン53を標的とするASO))、終止コドンスキップ薬(例えば、ゲンタマイシンまたはその他のアミノグリコシド系抗生物質およびアタルレン(PTC124))、合成アナボリックステロイド(例えば、オキサンドロロン)、骨粗しょう症治療薬(例えば、ビタミンDおよびカルシウム)、下剤を含む便秘治療薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬(例えば、ベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、ホシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、およびトランドラプリル)、利尿薬、β遮断薬(例えば、ビソプロロールまたはカルベジロール)、抗不整脈薬(例えば、アミオダロン)を含む心筋症治療薬、インスリン様増殖因子(IGF-1)、ミオスタチン阻害剤(例えば、フォリスタチン、ACE-031、MYO-029などの中和抗体)、一酸化窒素レベルおよび/またはnNOSタンパク質レベルまたは活性を高める薬剤(例えば、L-アルギニン、ホスホジエステラーゼ阻害剤(シルデナフィル、タダラフィル、およびペントキシフィリンを含む))、クラスIIヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤、ユートロフィン発現を高める小分子(例えば、SMT C1100)、栄養補助食品(例えば、グルタミン、クレアチン一水和物、共役リノール酸、α-リポ酸、およびβ-ヒドロキシ-β-メチル酪酸)、抗ヒスタミン剤(例えば、フェキソフェナジン、ロラタジン、フェニンダミン、デキスクロルフェニラミン、テルフェナジン、セチリジン)、肥満細胞安定剤(例えば、エアロゾル、吸入剤、点眼剤などの形態であり得るクロモグリク酸ナトリウム、ネドクロミルナトリウム)、コエンザイム Q10(ユビキノンまたはユビデカレノンとしても知られる)、イデベノンまたはユビデカレノンの他の合成誘導体(例えば、RAXONE(登録商標)/CATENA(登録商標))、オメガ3、レスベラトロール、植物ステロール/スタノール、抗凝固剤(例えば、ワルファリン)、抗コリン剤(例えば、抗ムスカリン剤(例えば、アトロピン、ベンズトロピン(COGENTIN(登録商標))、ビペリデン、クロルフェニラミン(CHLOR-TRIMETON)、ジシクロミン(ジシクロベリン)、ジメンヒドリナート(DRAMAMINE(登録商標))、ジフェンヒドラミン(BENADRYL(登録商標)、SOMINEX(登録商標)、ADVIL(登録商標)、PMなど)、ドキシラミン(UNISOM(登録商標))、グリコピロレート(ROBINUL(登録商標))、イプラトロピウム(ATROVENT(登録商標))、オルフェナドリン、オキシトロピウム(OXIVENT(登録商標))、オキシブチニン(DITROPAN(登録商標)、DRIPTANE(登録商標)、LYRINEL(登録商標)XL)、トルテロジン(DETROL(登録商標)、DETRUSITOL)、チオトロピウム(SPIRIVA(登録商標))、トリヘキシフェニジル、スコポラミン、ソリフェナシン、およびトロピカミド)、および吸入剤、ネブライザー溶液、錠剤の形であり得、直腸、経口、経皮、または非経口経路で投与できる抗ニコチン剤(例えば、ブプロピオン(ZYBAN(登録商標)、WELLBUTRIN(登録商標))およびヘキサメトニウムを含む神経節遮断薬、咳止め薬および神経節遮断薬(例えば、デキストロメトルファン)、非脱分極性骨格筋弛緩薬(例えば、ドキサクリウムおよびツボクラリン)、神経節遮断薬および臨時用禁煙補助薬(例えば、メカミラミン))を含む。
本技術の組成物および方法はまた、例えば、他の遺伝子ベースの治療アプローチ(例えば、ミニまたはミクロジストロフィン、ミニユートロフィン、またはトランススプライシング組換えAAVベクターのウイルス送達)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、転写活性化因子様(TAL)タイプIIIエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、またはクラスタを形成し規則正しい間隔を持つ短いパリンドロームリピート(CRISPR)が関与するアプローチを含む遺伝子編集、またはエクスビボで操作された筋肉サイドポピュレーション細胞(未コミット細胞の系統)などの様々な種類の前駆細胞を筋繊維に移植することを含む細胞ベースの治療法とともに使用することもできる。これらの組成物および方法はまた、Pedro Miura, et al. Utrophin upregulation for treating Duchenne or Becker muscular dystrophy: how close are we? 2006 March. Trends. Mol. Med. 12:122-129. doi: 10.1016/j.molmed.2006.01.002; Susan Jarmin, et al. New developments in the use of gene therapy to treat Duchenne muscular dystrophy. 2013 Dec 06. Expert Opin. Biol. Ther. 14:209-230. doi: 10.1517/14712598.2014.866087; M. A. Scully, et al. Review of Phase II and Phase III clinical trials for Duchenne muscular dystrophy. 2012 Dec 17. Expert Opin. Orphan Drugs. 1:33-46. doi: 10.1517/21678707.2013.746939; R. J. Fairclough, et al. Progress in therapy for Duchenne muscular dystrophy. 2011 Jul 29. Exp. Physiol. 96:1101-1113. doi: 10.1113/expphysiol.2010.053025; and Michael J. Blankinship, et al. Gene Therapy Strategies for Duchenne Muscular Dystrophy Utilizing Recombinant Adeno-associated Virus Vectors. 2006 Feb. Mol. Therapy. 13:241-249. doi: 10.1016/j.ymthe.2005.11.001に記載のいずれかの治療法とも併用することもできる。
【0284】
いくつかの実施形態では、本技術の1つ以上のASOは、1つ以上の追加の治療剤と組み合わせて、薬学的に許容可能な剤形で投与される。本明細書に開示される併用療法における各治療剤は、標準的な薬務に従って、単独で、または治療剤、1つ以上の薬学的に許容可能な担体、賦形剤、および希釈剤を含む薬剤(本明細書では医薬組成物とも呼ばれる)に投与されてもよい。各治療剤は、化合物またはその薬学的に許容可能な塩を別々に配合することによって調製されてもよく、その両方は同時にまたは別々に投与されてもよい。さらに、2つの製剤を1つのパッケージに入れて、キット製剤を提供することがある。いくつかの実施形態では、両方の化合物は単一の製剤に含まれてもよい。いくつかの実施形態では、治療剤は、同じ剤形、例えば同じ錠剤または医薬組成物である。いくつかの実施形態では、治療剤は、同じ投与様式にある別々の剤形であり、例えば、ASOおよび薬学的に許容可能な担体を含む、非経口投与に適した第1の医薬組成物と、1つ以上の追加の治療剤を含む、非経口投与に適した第2の医薬組成物とを含むキットである。いくつかの実施形態では、治療剤は、異なる投与様式にある別々の剤形であり、例えば、ASOおよび薬学的に許容可能な担体を含む、非経口投与に適した第1の医薬組成物と、1つまたは複数の追加の治療剤を含む、経口投与に適した第2の医薬組成物と、および必要に応じて1つ以上の他の治療剤を含む、経口投与に適した第3の医薬組成物とを含むキットである。
【0285】
本明細書に開示される併用療法における各治療剤は、同時に(すなわち、同じ薬剤に)、並行して(すなわち、任意の順序で次々に投与される別々の薬剤に)、または任意の順序で順次投与されてもよい。順次投与は、併用療法における治療剤が異なる剤形である場合(例えば、一方の薬剤が錠剤またはカプセル剤であり、他方の薬剤が滅菌液である場合)、および/または異なる投与スケジュールで投与される場合(例えば、錠剤またはカプセル剤は毎日投与のように処方され、組成物は週1回、2週間に1回、または3週間に1回などの非経口投与のように処方される)に有用である。さらに、本技術の利益を考慮すると、当業者は、本明細書に開示される複数の治療剤が投与されている場合、それらの治療剤が同じ投与様式を共有する必要はないことを理解するであろう。投与様式は、例えば、ASOおよび薬学的に許容可能な担体を含む、非経口投与に適した第1の医薬組成物と、本明細書に開示される追加の治療剤および薬学的に許容可能な担体を含む、経口投与に適した第2の医薬組成物とを含むキットである。当業者は、「共投与する」、「共投与」、または「併用療法」の文脈で上記で言及された同時投与は、DMDエクソンスキッピングASOを含む医薬組成物と追加の治療剤を含む医薬組成物が同じスケジュール、すなわち同じ時刻や日に、または異なるスケジュールで、すなわち必ずしも別個のスケジュールではないが、異なるスケジュールで投与できることを意味することを理解するであろう。「共投与する」、「共投与」、または「併用療法」の他の適切な変形は、本技術の利益を考慮すると、当業者には容易に明らかであり、これらの用語の意味の一部である。
【0286】
本技術の組成物および方法はまた、限定されないが身体運動(例えば、理学療法、可動域運動)、移動補助具、支持具、または矯正器具(例えば、足首用副木、膝/足首/足関節装具(KAFO)、脊椎装具、および車椅子)、呼吸補助装置(例えば、人工呼吸器)、および外科的治療(例えば、腱手術、脊柱側弯症手術、ペースメーカーの設置、および心臓移植)を含む他の形態の治療と併用することもできる。特定の治療の選択は様々であってもよく、痛みの重症度、被験者の全般的な健康状態、および担当医師の判断に依存する。
二分性ASOを含むキット
【0287】
いくつかの態様では、本技術は、目的のエクソンのエクソンスキッピングの生成または促進に使用するための、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)を含む組成物(例えば、医薬組成物)、および/または本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)をコードするベクターを含むキットを提供する。ASO媒介のエクソンスキッピングは、目的の遺伝子の発現を操作するためのアプローチであってもよい。目的の遺伝子の発現は、目的の遺伝子のエクソン、イントロン、または特定のスプライス部位のスプライシングを阻害するためにASOによって操作され、それにより例えば、限定されないが、目的の遺伝子の欠陥の読み枠の復元、目的の遺伝子の異なるアイソフォーム(例えば、ドミナントネガティブアイソフォーム)の生成、遺伝子の毒性部分のスキッピング、遺伝子のサイレンシング、および/または遺伝子の構造および機能の変更につながる場合がある。目的のエクソンおよび目的の遺伝子の例としては、限定されないが、本明細書に開示されるものが挙げられる。
【0288】
いくつかの態様では、本技術は、疾患および/またはその合併症の治療への使用のための、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)、本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)を含む組成物(例えば、医薬組成物)、および/または本明細書に開示されるASO(例えば、二分性ASO)をコードするベクターを含むキットを提供する。疾患および/またはその合併症の例としては、本明細書に開示されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
実施例
【0289】
以下の実施例は、本発明の技術を例示の目的でのみ追加的に説明するものであり、本発明の技術の範囲をいかなる形でも制限するものと解釈されるべきではない。
実施例1:二分性ASOの例
【0290】
本技術の実施形態は、標的配列およびデコイ配列を含む二分性ASOを含む(例えば、図1Aおよび1B参照)。標的配列は、目的のエクソンにある配列、目的のエクソンの上流の隣接イントロン配列、目的のエクソンの下流の隣接イントロン配列、目的のエクソンの上流のイントロン-エクソンジャンクション、または目的のエクソンの下流のイントロン-エクソンジャンクションに完全または部分的な相補性をもって結合する。11ntの配列(5′-CAGGTAAGTAT-3′)の全部または一部を構成するデコイ配列は、U1 snRNAの自由5′末端に完全に相補的である。したがって、最適な5′スプライス部位をシミュレートするデコイ配列は、5′スプライス部位デコイとして作用し、U1 snRNAによる目的のエクソンの真正5′スプライス部位の認識を妨害する場合がある。ある実施形態では、デコイ配列は、例えば、実施例5に示すように、12または13ntの長さを有してもよい。いかなる特定の理論にも拘束されることなく、標的配列は、立体的ブロッキングによってそれ自体でエクソンスキッピングをある程度引き起こすだけでなく、デコイ配列を目的のエクソンの5′スプライス部位の近くにもたらしてもよい。デコイ配列は、U1 snRNAと潜在的に直接相互作用することによって、U1 snRNAによる真正5′スプライス部位の認識を妨害する最適な5′スプライス部位に似ており、それをシミュレートしてもよい。ある例では、標的配列とデコイ配列が協調して作用し、強力なエクソンスキッピングを誘導する。二分性ASOの両端は同じまたは異なるデコイ配列を含んでもよいが、実施例2~15で試験された二分性ASOは、二分性ASOの5′末端または3′末端のいずれかに位置するデコイを含む(例えば、図1A参照)。二分性ASOは、ワトソン-クリック塩基対に基づくその標的部分を介して、目的のエクソン、その隣接イントロン配列、またはイントロン-エクソンジャンクションに結合することによって機能を発揮してもよい(例えば、図1B参照)。ある例では、最適なデコイ配列の長さは、6ntから11ntまで変化してもよい。試験されたすべてのデコイの学名と配列については、表1を参照のこと。
【0291】
実施例のセクションでは、特に指定がない限り、デコイ名またはASO名のLは、デコイが二分性ASOの5′末端に位置することを意味し、デコイ名またはASO名のRは、デコイが二分性ASOの3′末端に位置することを意味する。例えば、L6aは、6aデコイ配列が二分性ASOの5′末端に位置することを意味し、R6aは、6aデコイ配列が二分性ASOの3′末端に位置することを意味する。
【0292】
実施例2~15で試験されたすべてのASOは、ホスホロチオエート(PS)骨格で2′-O-メトキシエチル(MOE)修飾され、すべてのシトシンは5-メチルシトシンであった。他の均一な修飾(例えば、限定されないがホスホロジアミデートや拘束エチル(cEt)を含むモルホリノ)または混合修飾を有する同様のASOも機能するはずである。
【0293】
【表1-1】
【0294】
【表1-2】
実施例2:ASOのエクソンスキッピング効率の試験
【0295】
インビトロでのASOのエクソンスキッピング効率を試験するために、HEK293細胞、RD細胞、HeLa細胞、またはA549細胞を表2~12に示されるようなASO(12.5、25、40、または50nM)でトランスフェクトした。Lipofectamine 2000を用いて、各ASOを所望の細胞にトランスフェクトし、緩衝液のみをネガティブコントロールとして使用した。トランスフェクションから2日後に細胞を収集し、半定量的蛍光RT-PCRによるスプライシング分析のために全RNA試料を単離した。
【0296】
ここで示されるいくつかのASO標的配列は、デコイと対応する標的配列を含む二分性ASOが、標的配列のみよりもエクソンスプライシングを阻害する効果がはるかに高いことを実証するために使用された。すべてのASOを、ホスホロチオエート(PS)骨格とすべての5-メチルシトシン(5mC)で2′-O-メトキシエチル(MOE)で修飾した。Etepは、エテプリルセンの略語である。ここで使用したエテプリルセンを、元のモルフォリノ/ホスホロジアミデート修飾ではなく、MOE/PS/5mCで修飾した点に注意されたい。
実施例3:SMN1およびSMN2遺伝子のASO誘導のエクソン7スキッピング
【0297】
11ntのデコイ配列(例えば、5′-CAGGTAAGTAT-3′)は、HEK293細胞における内因性SMN1およびSMN2遺伝子のエクソン7スキッピングに対する3つのASO標的配列(2203、1938、および0120)の効果を、例えば図2A~2Dに示すように統計的に顕著に増強した。図2Aは、SMN1/2遺伝子の目的の領域の模式図を示す。3つのASO標的配列は、それぞれのSMN1/2pre-mRNA対象配列に完全な相補性をもって結合する。ASO標的配列2203は、イントロン6における-22位から-3位までの20ntの配列を標的とし、ASO標的配列1938は、エクソン7における19位から38位までの20ntの配列を標的とし、ASO標的配列0120は、イントロン7における1位から20位までの20ntの配列を標的とする。図2Bに示すように、デコイをASO標的配列2203の5′末端(2203-L11)またはASO標的配列2203の3′末端(2203-R11)に付着した場合、エクソン7スキッピングの促進に対するASO標的配列2203の効果を増強した。12.5、25、または50nMでLipofectamine 2000を用いて各ASOをHEK293細胞にトランスフェクトし、緩衝液のみをネガティブコントロールとして使用した。トランスフェクションから2日後、細胞試料を採取し、半定量的蛍光RT-PCRによるスプライシング分析のために全RNAを精製した(Y. Gao, et al. Systematic characterization of short intronic splicing-regulatory elements in SMN2 pre-mRNA. 2022 Jan 08. Nucleic Acids Research. 50: 731-749. doi: 10.1093/nar/gkab1280)。オリジン(SMN1またはSMN2)を区別するために、PCR産物をDdeIで消化した。各遺伝子の全転写産物におけるエクソン7の排除率(%excl)を算出した。データの定量化(n=3)は、図2Bの中央の図(SMN1)と右図(SMN2)に示される。図2Cに示すように、デコイをASO標的配列1938の5′末端(1938-L11)またはASO標的配列1938の3′末端(1938-R11)に付着した場合、エクソン7スキッピングの促進に対するASO標的配列1938の効果を増強した。標的配列1938を含むASOの効果を評価するための実験手順は、標的配列2203を含むASOの効果を評価するための実験手順と同じであった。図2Dに示すように、ASO0120の5′末端(0120-L11)または3′末端(0120-R11)にデコイを付着した場合、エクソン7スキッピング促進に対するASO標的配列0120の効果を増強した。標的配列0120を含むASOの効果を評価するための実験手順は、標的配列2203を含むASOおよび標的配列0120を含むASOの効果を評価するための実験手順と同じであった。標的配列2203(2203、2203-L11、2203-R11)を含むASO、標的配列1938(1938、1938-L11、1938-R11)を含むASO、および標的配列0120(0120、0120-L11、0120-R11)を含むASOの3つの独立した実験の代表例は、それぞれ図2B~2Dの左図に示される(FL:完全長転写産物、Δ7:エクソン7をスキッピングした転写産物)。標的配列2203、1938、または0120を含むASOのデータ(n=3)の定量化は、図2B~2Dの中央の図(SMN1)と右図(SMN2)にそれぞれ平均±標準偏差として示される。*P<0.05、**P<0.01は、標的配列(例えば、2203、1938、または0120)のみを含む対応するASOと比較したものである。すべてのASOを、ホスホロチオエート骨格とすべての5-メチルシトシンで2′-O-メトキシエチルで修飾する。ASO 2203-L11、1938-L11、1938-R11、および0120-L11は最適なASOである。デコイ配列の配列情報については表1を参照し、実施例3で試験されたASOおよび標的配列の配列情報については表2を参照すること。ASO標的配列2203に相補的なSMN1/2 mRNA内の対象配列(5′から3′)はACUUCCUUUAUUUUCCUUAC(配列番号24)であり、ASO標的配列1938に相補的なSMN1/2 mRNA内の対象配列(5′から3′)はAAAGAAGGAAGGUGCUCACA(配列番号28)であり、ASO標的配列0120に相補的なSMN1/2 mRNA内の対象配列(5′から3′)はGUAAGUCUGCCAGCAUUAUG(配列番号32)である。
【0298】
図2B~2Dに示すように、低濃度でトランスフェクトされた標的配列に付着したデコイ配列11を含むASOは、高濃度でトランスフェクトされた標的配列からなるASOと同等のSMN1/2のエクソン7の排除率(%excl)を達成する場合がある。図2Bの左図に示すように、2203-L11(12.5nM)は、標的配列2203(50nM)と同等のSMN1のエクソン7の排除率を達成し、2203-L11(12.5nM)のSMN1のエクソン7の排除率は、標的配列2203(25nM)の約2.3倍であり、同じ濃度の標的配列2203の4倍であった。2203-R11と2203でも同様の結果が観察された。2203-R11の半分の用量(12.5nM、25nM)では、それぞれ標的配列2203(25nM、50nM)と同等のSMN1のエクソン7の排除率を達成した。2203-R11(12.5nM)は、SMN2遺伝子のエクソン7のスキッピングに対して、標的配列2203(25nM)と同等の性能を示した。図2Cの左図に示すように、同じ濃度12.5nMで、1938-R11のSMN1のエクソン7の排除率は、標的配列1938の約2.18倍であり、標的配列1938(25nM)と同等であった。図2Dは、0120-L11(12.5nM)が標的配列0120(50nM)と同等のSMN1のエクソン7の排除率を達成したことを示す。
【0299】
ASO標的配列1938の両側に付着した3つの5ntのデコイ配列(AGGTAまたは5b、GTAAGまたは5d、およびAGTATまたは5g)をSMN2エクソン7スプライシングに対して試験した。ASO1938-R5b(配列番号354:5′-TGTGAGCACCTTCCTTCTTTAGGTA-3′)は比較的強力であり、1938-R11(図2C)と同等のスキッピング効果を示したが、1938-R5d(配列番号355:5′-TGTGAGCACCTTCCTTCTTTGTAAG-3′)および1938-R5g(配列番号356:5′-TGTGAGCACCTTCCTTCTTTAGTAT-3′)はエクソン7スキッピングの促進において中程度であった。
実施例4:DMD遺伝子のASO誘導のエクソン51スキッピング
【0300】
例えば図3Aおよび3Bに示すように、11ntのデコイ配列(例えば、5′-CAGGTAAGTAT-3′)は、内因性DMD遺伝子のエクソン51スキッピングを促進する複数のASO標的配列の効果を統計的に顕著に改善した。示された濃度で、Lipofectamine 2000を用いてRD細胞に各ASOまたはASO標的配列をトランスフェクトした。トランスフェクションから2日後に細胞を収集し、半定量的蛍光RT-PCRによるスプライシング分析のために全RNA試料を単離した。図3Aに示すように、実施形態では、5′末端にデコイ配列(148-L11、155-L11、および165-L11)を有するASO標的配列は、デコイ配列(148、155、および165)を有しないそれぞれのASOよりもエクソンスキッピング効果が高く、3′末端にデコイ配列(148-R11、155-R11、および165-R11)を有するASOは、デコイ配列を有しないそれぞれのASO標的配列との最小限の差を示した。ASO標的配列148、155、および165は、DMDエクソン51の異なる領域を完全な相補性をもって標的とする。図3Bに示すように、いくつかの実施形態では、ASO標的配列上のデコイ配列は、5′末端(Etep-L11)に配置された場合、MOE型エテプリルセン(Etep)の効果を著しく向上させたが、3′末端(Etep-R11)に配置された場合は効果が見られなかった。標的配列148(148、148-L11、および148-R11)を含むASO、標的配列155(155、155-L11、および155-R11)を含むASO、および標的配列165(165、165-L11、および165-R11)を含むASOに対する4つの独立した実験の1つの代表例は図3Aの左図に示される。標的配列Etep(Etep、Etep-L11、Etep-R11)を含むASOの4つの独立した実験の1つの代表的なゲルは図3Bの左図に示される。FL:全長転写産物、Δ51:エクソン51をスキッピングした転写産物。
【0301】
標的配列148、155、165、またはEtepを含むASOのエクソン51スキッピングデータ(n=4)の定量化は、図3A~3Bの右図に平均±標準偏差として示される。*P<0.05(148-L11対148)、**P<0.01(155-L11対155、165-L11対165、またはEtep-L11対Etep)。ASO 148-L11、155-L11、165-L11、Etep-L11、およびEtep-R11は最適なASOである。デコイ配列の配列情報については表1を参照し、実施例4で試験されたASOおよび標的配列の配列情報については表2を参照すること。ASO標的配列148に相補的なDMD mRNA内の対象配列(5′から3′)はAAUGCCAUCUUCCUUGAUG(配列番号36)であり、ASO標的配列155に相補的なDMD mRNA内の対象配列(5′から3′)はAACUAGAAAUGCCAUCUUC(配列番号40)であり、ASO標的配列165に相補的なDMD mRNA内の対象配列(5′から3′)はGCCAUCUCCAAACUAGAAA(配列番号44)であり、ASO標的配列Etepに相補的なDMD mRNA内の対象配列(5′から3′)はCUAGAAAUGCCAUCUUCCUUGAUGUUGGAG(配列番号48)である。
【0302】
Etep-L11(12.5nM)によるDMDのエクソン51の排除率は標的配列Etep(25nM)と同等であった。
【0303】
【表2-1】
【0304】
【表2-2】
【0305】
【表2-3】
【0306】
実施例5:DMD遺伝子の標的配列エテプリルセンの5′末端(「L」)に異なる長さのデコイ配列が付着したASO誘導のエクソン51スキッピング
【0307】
異なる長さのデコイ配列を有する二分性ASOは、例えば図4に示すように、DMD遺伝子におけるエクソンスキッピングを促進するASOの能力に対して異なる程度の効果を有してもよい。標的配列エテプリルセン(Etep)の文脈において、長さが6から13ntの23個の5′スプライス部位デコイ配列を試験した。試験された12nt(L12)および13nt(L13)の長さのデコイ配列は、それぞれU1 snRNAの5′末端の最初の12ntおよび13ntの配列と相補的であった。デコイ配列は、二分性ASOの5′末端に位置した。試験したすべてのASOを、PS骨格でMOE修飾した。Lipofectamine 2000を用いて25nMの各ASOをRD細胞にトランスフェクトし、緩衝液のみをネガティブコントロールとして使用した。トランスフェクションから2日後に細胞を収集し、半定量的蛍光RT-PCRによるスプライシング分析のために全RNA試料を単離した。試験されたすべての二分性ASOは、単独のエテプリルセンよりも統計的に顕著に、DMD遺伝子のエクソン51スキッピングに対して強い効果を示した。3つの独立した実験の1つの代表例は図4に示される(上図において、FL:完全長転写産物、Δ51:エクソン51をスキッピングした転写産物)。データ(n=3)の定量化は、平均±標準偏差として図4の下図に示される。#P<0.05(全部対Etep)、*P<0.05、**P<0.01(全部対Etep-L11)。ASO Etep-L7c、Etep-L8b、Etep-L8c、Etep-L9b、およびEtep-L10aは最適なASOである(図4)。デコイ配列の配列情報については表1を参照し、実施例5で試験されたASOおよび標的配列の配列情報については表3を参照すること。DMDエクソン51における対象配列(5′から3′)はCUAGAAAUGCCAUCUUCCUUGAUGUUGGAG(配列番号48)である。
【0308】
【表3-1】
【0309】
【表3-2】
【0310】
実施例6:DMD遺伝子の標的配列000Aの5′末端(「L」)に異なる長さのデコイ配列が付着したASO誘導のエクソン51スキッピング
【0311】
異なる長さのデコイ配列を有する二分性ASOは、例えば図5に示すように、DMD遺伝子におけるエクソンスキッピングを促進するASOの能力に対して異なる程度の効果を有してもよい。7~11ntの長さを有する15個のデコイを試験した。デコイ配列は、二分性ASOの5′末端に位置した。標的配列000Aは21nt長であり、DMDエクソン51の50位から70位までを標的とする。試験したすべてのASOをPS骨格でMOE修飾し、すべてのシトシンは5-メチルシトシンであった。Lipofectamine 2000を用いて25nMの各ASOをRD細胞にトランスフェクトした。緩衝液のみをネガティブコントロールとして使用した。トランスフェクションから2日後に細胞を収集し、半定量的蛍光RT-PCRによるスプライシング分析のために全RNA試料を単離した。ASO000Aは、DMDのエクソン51スキッピングをわずかに促進した。5′末端(「L」)にデコイを含む二分性ASOは、000Aのエクソンスキッピング効果を統計的に顕著に向上させた。3つの独立した実験の1つの代表的なゲルは図5に示される(上図において、FL:完全長転写産物、Δ51:エクソン51をスキッピングした転写産物)。データ(n=3)の定量化は、平均±標準偏差として図5の下図に示される。*P<0.05、**P<0.01、全部対000A。000A-L7c、000A-L8c、000A-L9a、000A-L9b、000A-L9c、000A-L10a、および000A-L10bは最適なASOである(図5)。デコイ配列の配列情報については表1を参照し、実施例6で試験されたASOおよび標的配列の配列情報については表4を参照すること。DMDエクソン51における対象配列(5′から3′)はAACUGCCAUCUCCAAACUAGA(配列番号74)である。
【0312】
【表4】
【0313】
実施例7:DMDヒト化マウスの前脛骨筋および腓腹筋におけるDMD遺伝子のASO誘導のエクソン51スキッピング
【0314】
DMDヒト化マウスにおいて、DMDエクソン51スキッピングを目的とした複数の二分性ASOを試験した。マウスモデルにおいて、DMDイントロン50の最後の9053nt、233ntのエクソン51から最初の1480ntのイントロン51までの10766ntのマウスゲノム断片を、対応するヒトゲノム断片(800ntのイントロン50、233ntのエクソン51、および800ntのイントロン51)に置き換えた。各ASOを150mg/kg/注射で、約8週齢の雄性ヒト化マウスに1日おきに投与した。注射を合計3回行った。最後の注射から3日後、マウスを安楽死させ、半定量的蛍光RT-PCRによるRT-PCR分析のために筋肉試料を採取した。図6に示すように、すべての二分性ASOは、MOE/PS型の標的配列エテプリルセン(Etep)のみと比較して、統計的に顕著にDMDエクソン51スキッピングを促進した。最も強力な1つであるEtep-L8cは、エクソン51スキッピングを10倍以上増加させた。3つの独立した実験の代表例は図6に示される(左上の図は前脛骨筋を示し、右上の図は腓腹筋を示し、FL:全長転写産物、Δ51:エクソン51をスキッピングした転写産物)。データの定量化(n=3)は、図6の下図(左下の図は前脛骨筋、右下の図は腓腹筋)に平均±標準偏差として示される。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、全部対Etep。デコイ配列の配列情報については表1を参照し、ASOおよび例7で試験された標的配列の配列情報については表3および4を参照すること。
【0315】
デコイを含むあるASOにおいて、同じ標的配列を含むがデコイを含まないASOに比べて、エクソンスキッピング率が平均で14倍以上に増加した。
実施例8:DMD遺伝子の異なる長さのデコイ配列を有するASO誘導のエクソン53スキッピング
【0316】
RD細胞内のMOE/PS型の標的配列ビルトラルセン(Vilto)の文脈において、長さ7~11ntの15個のデコイを試験した。ビルトラルセンは、DMD治療のために用いられるFDA承認の21ntのPMOであり、エクソン内の36位から56位までの領域を標的とすることによって、DMDエクソン53スキッピングを促進する。Lipofectamine 2000を用いて25nMの各ASOをRD細胞にトランスフェクトした。緩衝液のみをネガティブコントロールとして使用した。トランスフェクションから2日後に細胞を収集し、半定量的蛍光RT-PCRによるスプライシング分析のために全RNA試料を単離した。試験された二分性ASOは、標的配列ビルトラルセンの5′(「L」)末端(L7a~L7e、L8a~L8d、L9a~L9c、L10a、L10b、およびL11)または標的配列ビルトラルセンの3′(「R」)末端(R7a~R7e、R8a~R8d、R9a~R9c、R10a、R10b、およびR11)に付着したデコイを含む。図7に示すように、標的配列ビルトラルセン(Vilto)のみは、DMDエクソン53スキッピングをわずかに促進した。一部の二分性ASOは、特にデコイを二分性ASOの3′末端に配置した場合、ビルトラルセンのみのエクソンスキッピング効果を統計的に顕著に向上させた。3つの独立した実験の1つの代表例は図7に示される(左上の図は標的配列ビルトラルセンの5′末端に付着したデコイを含む二分性ASOを示し、右上の図は標的配列ビルトラルセンの3′末端に付着したデコイを含む二分性ASOを示し、FL:全長転写産物、Δ53:エクソン53をスキッピングした転写産物)。データの定量化(n=3)は、図7の下図(左下の図は標的配列ビルトラルセンの5′末端に付着したデコイを含む二分性ASOを示し、右下の図は標的配列ビルトラルセンの3′末端に付着したデコイを含む二分性ASOを示す)に、平均±標準偏差として示される。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、全部対ビルトラルセン。ASO Vilto-L9b、Vilto-R7b、Vilto-R7c、Vilto-R8b、Vilto-R8c、およびVilto-R8dは最適なASOである(図7)。デコイ配列の配列情報については表1を参照し、実施例8で試験されたASOおよび標的配列の配列情報については表5を参照すること。DMDエクソン53における対象配列(5′から3′)はGAACACCUUCAGAACCGGAGG(配列番号91)である。
【0317】
【表5-1】
【0318】
【表5-2】
【0319】
【表5-3】
実施例9:DMD遺伝子の異なる長さのデコイ配列を有するASO誘導の部分的なエクソン45スキッピング
【0320】
標的配列002Aの文脈において、長さ7~11ntの15個のデコイを試験した。ASO002AはDMDエクソン45とイントロン45のジャンクションを標的とし、最後の32ntのエクソン45のスキッピング(以下、部分的なエクソンスキッピングと呼ばれる)を促進することによって、176ntのエクソン45全体をスキッピングした場合と同様に、フレームシフト変異を抱える患者における読み枠を復元できる。図8Aに示すように、ASO002AはDMDエクソン45の潜在的な5′スプライス部位(矢印で図示)を活性化することによって、最後の32ntのエクソンのスキッピングを引き起こす場合がある。DMDエクソン45の32ntの小さな部分は45sと呼ばれる。176ntのエクソン全体ではなく、45sをスキッピングすることによって、患者に利益をもたらすことがある。
【0321】
Lipofectamine 2000を用いて25nMの各ASOをRD細胞にトランスフェクトした。緩衝液のみをネガティブコントロールとして使用した。トランスフェクションから2日後に細胞を収集し、半定量的蛍光RT-PCRによるスプライシング分析のために全RNA試料を単離した。試験された二分性ASOは、標的配列002Aの5′(「L」)末端(L7a~L7e、L8a~L8d、L9a~L9c、L10a、L10b、およびL11(図8B、左列))または標的配列002Aの3′(「R」)末端(R7a~R7e、R8a~R8d、R9a~R9c、R10a、R10b、およびR11(図8B、右列))に付着したデコイを含む。標的配列002Aのみ(002A)は、エクソン45の32ntの部分のスキッピングをわずかに促進した(図8B)。一部の二分性ASOは、特にデコイが二分性ASOの5′末端に配置された場合に、標的配列002Aのみの部分的なエクソンスキッピング効果を統計的に顕著に向上させた。3つの独立した実験の1つの代表例は図8Bに示される(左上の図は標的配列002Aの5′末端に付着したデコイを含む二分性ASOを示し、右上の図は標的配列002Aの3′末端に付着したデコイを含む二分性ASOを示し、FL:完全長転写産物、Δ45s:45秒でスキッピングされた転写産物)。データの定量化(n=3)は、図8Bの下図(左下の図は標的配列002Aの5′末端に付着したデコイを含む二分性ASOを示し、右下の図は標的配列002Aの3′末端に付着したデコイを含む二分性ASOを示す)に、平均±標準偏差として示される。*P<0.05、**P<0.01、全部対002A。ASO002A-L7c、002A-L8c、および002A-R7eは最適なASOである(図8B)。デコイ配列の配列情報については表1を参照し、実施例9で試験されたASOおよび標的配列の配列情報については表6を参照すること。DMDエクソン45とイントロン45のジャンクションにある対象配列(5′から3′)はCAGAAAAAAGAGGUAGGGCGAC(配列番号123)である。
【0322】
【表6-1】
【0323】
【表6-2】
【0324】
【表6-3】
実施例10:APP遺伝子の異なる長さのデコイ配列を有するASO誘導のエクソン17スキッピング
【0325】
標的配列014Bの文脈において、長さ7~11ntの15個のデコイ配列を試験した。ASO014BはAPP遺伝子のエクソン17を標的とし、内因性APP遺伝子におけるエクソンのスキッピングを促進する。Lipofectamine 2000を用いて50nMの各ASOをHEK293T細胞にトランスフェクトし、緩衝液のみをネガティブコントロールとして使用した。トランスフェクションから2日後に細胞を収集し、半定量的蛍光RT-PCRによるスプライシング分析のために全RNA試料を単離した。
【0326】
試験された二分性ASOは、標的配列014Bの5′(「L」)末端(014B-L7a~014B-L7e、014B-L8a~014B-L8d、014B-L9a~014B-L9c、014B-L10a~014B-L10b、および014B-L11(図9A))または標的配列014Bの3′(「R」)末端(014B-R7a~014B-R7e、014B-R8a~014B-R8d、014B-R9a~014B-R9c、014B-R10a、014B-R10b、および014B-R11(図9B))に付着したデコイを含む。
【0327】
ほとんどの二分性ASOは、デコイが二分性ASOの5′末端または3′末端に付着したかどうかにかかわらず、標的配列014Bのみ(014B)のエクソンスキッピング効果を統計的に顕著に向上させ、最も強力な1つは014B-L8cであった。標的配列014Bの5′末端に付着したデコイを含む二分性ASOと、標的配列014Bの3′末端に付着したデコイを含む二分性ASOに対する3つの独立した実験の1つの代表例はそれぞれ図9Aおよび9Bの左図に示される(FL:全長転写産物、Δ17:エクソン17をスキッピングした転写産物)。データの定量化(n=3)は、図9Aおよび9Bの右図(図9Aの右図は標的配列014Bの5′末端に付着したデコイを含む二分性ASOを示し、図9Bの右図は標的配列014Bの3′末端に付着したデコイを含む二分性ASOを示す)に平均±標準偏差として示される。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001(全部対014B)ASO014B-L8cは最適なASOである。デコイの配列情報については表1を参照し、実施例10で試験されたASOおよび標的配列の配列情報については表7を参照すること。APPのイントロン16とエクソン17のジャンクションにある対象配列(5′から3′)は、UCAAGGUGUUCUUUGCAG(配列番号155)である。
【0328】
【表7-1】
【0329】
【表7-2】
実施例11:CEP290遺伝子の異なる長さのデコイ配列を有するASO誘導のエクソン41スキッピング
【0330】
標的配列017Bの文脈において、長さ7~11ntの15個のデコイ配列を試験した。ASO017Bは、CEP290エクソン41の26位から45位までを標的とし、エクソンのスキッピングを促進する。Lipofectamine 2000を用いて50nMの各ASOをHEK293細胞にトランスフェクトし、緩衝液のみをネガティブコントロールとして使用した。トランスフェクションから2日後に細胞を収集し、半定量的蛍光RT-PCRによるスプライシング分析のために全RNA試料を単離した。
【0331】
試験した二分ASOは、標的配列017Bの5′(「L」)末端(017B-L7a~017B-L7e、017B-L8a~017B-L8d、017B-L9a~017B-L9c、017B-L10a、017B-L10b、および017B-L11(図10A))または標的配列017Bの3′(「R」)末端(017B-R7a~017B-R7e、017B-R8a~017B-R8d、017B-R9a~017B-R9c、017B-R10a、017B-R10b、および017B-R11(図10B))に付着したデコイを含む。
【0332】
ほとんどの二分性ASOは、デコイが二分性ASOの5′末端または3′末端に付着したかどうかにかかわらず、標的配列017Bのみ(017B)のエクソンスキッピング効果を統計的に顕著に向上させ、最も強力な1つは017B-R10aであった。標的配列017Bの5′末端に付着したデコイを含む二分性ASOと、標的配列017Bの3′末端に付着したデコイを含む二分性ASOに対する3つの独立した実験の1つの代表例はそれぞれ図10Aおよび10Bの左図に示される(FL:全長転写産物、Δ41:エクソン41をスキッピングした転写産物)。データの定量化(n=3)は、図10Aおよび10Bの右図(図10Aの右図は標的配列017Bの5′末端に付着したデコイを含む二分性ASOを示し、図10Bの右図は標的配列017Bの3′末端に付着したデコイを含む二分性ASOを示す)に平均±標準偏差として示される。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001(全部対017B)ASO017B-L7a、017B-R7b、017B-R9a、および017B-R10aは最適なASOである。デコイの配列情報については表1を参照し、実施例11で試験されたASOおよび標的配列の配列情報については表8を参照すること。CEP290エクソン41における対象配列(5′から3′)はAAAGUCUAAUUGAAGAACUC(配列番号187)である。
【0333】
【表8-1】
【0334】
【表8-2】
【0335】
【表8-3】
実施例12:HER2遺伝子の異なる長さのデコイ配列を有するASO誘導のエクソン19スキッピング
【0336】
標的配列024Bの文脈において、長さ7~11ntの15個のデコイ配列を試験した。ASO024Bは、HER2(ERBB2とも呼ばれる)遺伝子のイントロン18の最後の4ntとエクソン19の最初の11ntをカバーする配列を標的とし、エクソンのスキッピングを中程度に促進する。Lipofectamine 2000を用いて50nMの各ASOをHeLa細胞にトランスフェクトし、緩衝液のみをネガティブコントロールとして使用した。トランスフェクションから2日後に細胞を収集し、半定量的蛍光RT-PCRによるスプライシング分析のために全RNA試料を単離した。
【0337】
試験された二分性ASOは、標的配列024Bの5′(「L」)末端(024B-L7a~024B-L7e、024B-L8a~024B-L8d、024B-L9a~024B-L9c、024B-L10a、024B-L10b、および024B-L11(図11A))または標的配列024Bの3′(「R」)末端(024B-R7a~024B-R7e、024B-R8a~024B-R8d、024B-R9a~024B-R9c、024B-R10a、024B-R10b、および024B-R11(図11B))に付着したデコイを含む。
【0338】
ほとんどの二分性ASOは、デコイが二分性ASOの5′末端または3′末端に付着したかどうかにかかわらず、標的配列024Bのみ(024B)のエクソンスキッピング効果を統計的に顕著に向上させ、最も強力な1つは024B-L8cであった。標的配列024Bの5′末端に付着したデコイを含む二分性ASOと、標的配列024Bの3′末端に付着したデコイを含む二分性ASOに対する3つの独立した実験の1つの代表例はそれぞれ図11Aおよび11Bの左図に示される(FL:全長転写産物、Δ19:エクソン19をスキッピングした転写産物)。データの定量化(n=3)は、図11Aおよび11Bの右図(図11Aの右図は標的配列024Bの5′末端に付着したデコイを含む二分性ASOを示し、図11Bの右図は標的配列024Bの3′末端に付着したデコイを含む二分性ASOを示す)に平均±標準偏差として示される。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001(全部対024B)ASO024B-L8cは最適なASOである。デコイの配列情報については表1を参照し、実施例12で試験されたASOおよび標的配列の配列情報については表9を参照すること。HER2のイントロン18とエクソン19のジャンクションにある対象配列(5′から3′)は、CCAGGGCAUCUGGAU(配列番号219)である。
【0339】
【表9-1】
【0340】
【表9-2】
実施例13:ATXN遺伝子の異なる長さのデコイ配列を有するASO誘導のエクソン10スキッピング
【0341】
標的配列015C(VO659と同じ配列であるが化学修飾が異なる)を標的として、長さ7~11ntの15個のデコイ配列を試験した。ASO015Cは、CTGの7個のコピーを構成し、7つのCAGリピートを標的とするため、ATXN3(SCA3とも呼ばれる)遺伝子のエクソン10におけるCAGリピートを標的とすることができる。ASO015Cは、遺伝子のエクソン10スキッピングを促進する。Lipofectamine 2000を用いて40nMの各ASOをA549細胞にトランスフェクトし、緩衝液のみをネガティブコントロールとして使用した。トランスフェクションから2日後に細胞を収集し、半定量的蛍光RT-PCRによるスプライシング分析のために全RNA試料を単離した。
【0342】
試験された二分性ASOは、標的配列015Cの5′(「L」)末端(015C-L7a~015C-L7e、015C-L8a~015C-L8d、015C-L9a~015C-L9c、015C-L10a、015C-L10b、および015C-L11(図12A))または標的配列015Cの3′(「R」)末端(015C-R7a~015C-R7e、015C-R8a~015C-R8d、015C-R9a~015C-R9c、015C-R10a~015C-R10b、および015C-R11(図12B))に付着したデコイを含む。
【0343】
ほとんどの二分性ASOは、デコイが二分性ASOの5′末端または3′末端に付着したかどうかにかかわらず、標的配列015Cのみ(015C)のエクソンスキッピング効果を統計的に顕著に向上させ、最も強力な1つは015C-R8dであった。標的配列015Cの5′末端に付着したデコイを含む二分性ASOと、標的配列015Cの3′末端に付着したデコイを含む二分性ASOに対する3つの独立した実験の1つの代表例はそれぞれ図12Aおよび12Bの左図に示される(FL:全長転写産物、Δ10:エクソン10をスキッピングした転写産物)。データの定量化(n=3)は、図12Aおよび12Bの右図(図12Aの右図は標的配列015Cの5′末端に付着したデコイを含む二分性ASOを示し、図12Bの右図は標的配列015Cの3′末端に付着したデコイを含む二分性ASOを示す)に平均±標準偏差として示される。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001(全部対015C)ASO015C-L8cおよび015C-R8dは最適なASOである。デコイの配列情報については表1を参照し、実施例13で試験されたASOおよび標的配列の配列情報については表10を参照すること。ATXN3エクソン10における対象配列(5′から3′)はCAGCAGCAGCAGCAGCAGCAG(配列番号251)である。
【0344】
【表10-1】
【0345】
【表10-2】
実施例14:PKM遺伝子の異なる長さのデコイ配列を有するASO誘導のエクソン10スキッピング
【0346】
標的配列027Bの文脈において、長さ7~11ntの15個のデコイ配列を試験した。ASO027Bは、PKMエクソン10の45位から62位までを標的とし、エクソン10スキッピングと内因性PKM遺伝子のエクソン9の挿入を促進する。Lipofectamine 2000を用いて50nMの各ASOをRD細胞にトランスフェクトし、緩衝液のみをネガティブコントロールとして使用した。トランスフェクションから2日後に細胞を収集し、半定量的蛍光RT-PCRによるスプライシング分析のために全RNA試料を単離した。オリジン(PKM1またはPKM2)を区別するために、PCR産物をPstlで消化した。
【0347】
試験された二分性ASOは、標的配列027Bの5′(「L」)末端(027B-L7a~027B-L7e、027B-L8a~027B-L8d、027B-L9a~027B-L9c、027B-L10a、027B-L10b、および027B-L11(図13A))または標的配列027Bの3′(「R」)末端(027B-R7a~027B-R7e、027B-R8a~027B-R8d、027B-R9a~027B-R9c、027B-R10a、027B-R10b、および027B-R11(図13B))に付着したデコイを含む。
【0348】
ほとんどの二分性ASOは、デコイが二分性ASOの5′末端または3′末端に付着したかどうかにかかわらず、標的配列027Bのみ(027B)のエクソン10スキッピング効果を統計的に顕著に向上させた。標的配列027Bの5′末端に付着したデコイを含む二分性ASOと、標的配列027Bの3′末端に付着したデコイを含む二分性ASOに対する3つの独立した実験の代表例はそれぞれ図13Aおよび13Bの左図に示される(PKM1:エクソン10をスキッピングした転写産物、PKM2:エクソン9をスキッピングした転写産物、PKMds:スキッピングされている両方のエクソン)。データの定量化(n=3)は、図13Aおよび13Bの右図(図13Aの右図は標的配列027Bの5′末端に付着したデコイを含む二分性ASOを示し、図13Bの右図は標的配列027Bの3′末端に付着したデコイを含む二分性ASOを示す)に平均±標準偏差として示される。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001(全部対027B)ASO027B-L8c、027B-L9a、027B-L10a、027B-L10b、および027B-R10aは最適なASOである。デコイの配列情報については表1を参照し、実施例14で試験されたASOおよび標的配列の配列情報については表11を参照すること。PKMエクソン10における対象配列(5′から3′)はUGAGGAACUCCGCCGCCU(配列番号283)である。
【0349】
【表11-1】
【0350】
【表11-2】
実施例15:MDM4遺伝子の異なる長さのデコイ配列を有するASO誘導のエクソン6スキッピング
【0351】
標的配列029Bの文脈において、長さ7~11ntの15個のデコイ配列を試験した。ASO029Bは、MDM4遺伝子のエクソン6の最後の9ntとイントロン6の最初の16ntをカバーする領域を標的とする。ASO029Bのみは、内因性MDM4遺伝子のエクソン6スキッピングを中程度に促進する。Lipofectamine 2000を用いて50nMの各ASOをHEK293細胞にトランスフェクトし、緩衝液のみをネガティブコントロールとして使用した。トランスフェクションから2日後に細胞を収集し、半定量的蛍光RT-PCRによるスプライシング分析のために全RNA試料を単離した。
【0352】
試験された二分性ASOは、標的配列029Bの5′(「L」)末端(029B-L7a~029B-L7e、029B-L8a~029B-L8d、029B-L9a~029B-L9c、029B-L10a、029B-L10b、および029B-L11(図14A))または標的配列029Bの3′(「R」)末端(029B-R7a~029B-R7e、029B-R8a~029B-R8d、029B-R9a~029B-R9c、029B-R10a、029B-R10b、および029B-R11(図14B))に付着したデコイを含む。
【0353】
1つを除くすべての二分性ASOは、デコイが二分性ASOの5′末端または3′末端に付着したかどうかにかかわらず、標的配列029Bのみ(029B)のエクソン6スキッピング効果を統計的に顕著に向上させた。標的配列029Bの5′末端に付着したデコイを含む二分性ASOと、標的配列029Bの3′末端に付着したデコイを含む二分性ASOに対する3つの独立した実験の1つの代表例はそれぞれ図14Aおよび14Bの左図に示される(FL:全長転写産物、Δ6:エクソン6をスキッピングした転写産物)。データの定量化(n=3)は、図14Aおよび14Bの右図(図14Aの右図は標的配列029Bの5′末端に付着したデコイを含む二分性ASOを示し、図14Bの右図は標的配列029Bの3′末端に付着したデコイを含む二分性ASOを示す)に平均±標準偏差として示される。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001(全部対029B)ASO029B-L7d、029B-L8c、029B-L9b、029B-L9c、および029B-R7aは最適なASOである。デコイの配列情報については表1を参照し、実施例15で試験されたASOおよび標的配列の配列情報については表12を参照すること。DMD4エクソン6-イントロン6のジャンクションにある対象配列(5′から3′)はCAACUGAAGGUAAAAUCACCACACG(配列番号315)である。
【0354】
【表12-1】
【0355】
【表12-2】
【0356】
【表12-3】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
2025532969000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2025-05-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的配列と、前記標的配列の5′末端および/または3′末端に動作可能に連結された5′スプライス部位デコイ配列とを含むか、またはそれらからなるオリゴヌクレオチドであって、
前記デコイ配列が、U1 snRNAの一本鎖5′末端に相補的な5、6、7、8、9、10、または11個のヌクレオチドのヌクレオチド配列を含み、
前記標的配列が、目的のエクソン、前記目的のエクソンの上流の隣接イントロン配列、前記目的のエクソンの下流の隣接イントロン配列、前記目的のエクソンの上流のイントロン-エクソンジャンクション、および前記目的のエクソンの下流のイントロン-エクソンジャンクションからなる群から選択される配列とハイブリダイズし、
前記標的配列の5′末端に動作可能に連結された前記デコイ配列と、前記標的配列の3′末端に動作可能に連結された前記デコイ配列が、同一であるかまたは異なる、オリゴヌクレオチド。
【請求項2】
前記デコイ配列が、配列番号1~23および347~353のヌクレオチド配列からなる群から独立して選択される1つ以上のヌクレオチド配列を含むか、またはそれらからなる、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
前記目的のエクソンが、内因性SMN1およびSMN2遺伝子のエクソン7、内因性DMD遺伝子のエクソン45、51、および53、内因性APP遺伝子のエクソン17、内因性CEP290遺伝子のエクソン41、内因性HER2遺伝子のエクソン19、SCA3遺伝子のエクソン10、内因性PKM遺伝子のエクソン10、および内因性MDM4遺伝子のエクソン6からなる群から選択される、請求項1または2に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
前記標的配列が、配列番号25、29、33、37、41、45、49、75、92、124、156、188、220、252、284、および316のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる、請求項1~3のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
前記標的配列が、前記デコイ配列に直接連結される、請求項1~4のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
前記標的配列が、1、2、3、4、または5つのヌクレオチドを有するリンカーを介して前記デコイ配列に連結される、請求項1~4のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
デコイ配列が前記標的配列の5′末端および3′末端に動作可能に連結された場合、前記標的配列と前記標的配列の5′末端にある前記デコイ配列との間の前記リンカーと、前記標的配列と前記標的配列の3′末端にある前記デコイ配列との間の前記リンカーとが、同一でも異なってもよい、請求項1~6のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
配列番号26~27、30~31、34~35、38~39、42~43、46~47、50~73、76~90、93~122、125~154、157~186、189~218、221~250、253~282、285~314、317~346、および354~356のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
配列番号26、30、31、34、38、42、46、50、51、60、64、65、68、70、78、83、85、86、87、88、89、103、109、110、114、115、116、127、132、144、164、189、205、213、216、228、260、276、292、294、297、298、312、320、324、327、328、332、および354のヌクレオチド配列からなる群から選択される、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
例えば、限定されないが、ホスホジエステルまたはホスホロチオエート骨格を有する2′-O-メトキシエチル修飾オリゴヌクレオチド、およびホスホロジアミデートモルホリノオリゴマーからなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド類似体を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドと、薬学的に許容可能な担体とを含む組成物。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドをコードするベクター。
【請求項13】
プレmRNAスプライシング中に目的のエクソンのエクソンスキッピングを生成または促進する方法であって、細胞または被験者内のプレmRNAを、請求項1~10のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、請求項11に記載の組成物、および/または請求項12に記載のベクターと接触させて、読み枠を復元するか、または新しいスプライシングアイソフォームを生成することを含む、方法。
【請求項14】
ASO媒介のエクソンスキッピングが、目的の遺伝子のエクソン、イントロンまたは特定のスプライス部位のスプライシングを阻害することによって、目的の遺伝子の発現を操作し、それにより欠陥のある目的の遺伝子の読み枠を復元し、目的の遺伝子の異なるアイソフォーム(例えば、ドミナントネガティブアイソフォーム)を生成し、目的の遺伝子の毒性部分をスキッピングし、目的の遺伝子をサイレンシングし、および/または目的の遺伝子の構造および機能を変更することにつながる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
細胞または被験者内の目的のエクソン、前記目的のエクソンの上流の隣接イントロン配列、前記目的のエクソンの下流の隣接イントロン配列、前記目的のエクソンの上流のイントロン-エクソンジャンクション、および前記目的のエクソンの下流のイントロン-エクソンジャンクションからなる群から選択される配列にハイブリダイズ可能な標的配列のエクソンスキッピングの有効性および/または効率を向上させる方法であって、
請求項1~10のいずれか一項に記載の標的配列およびデコイ配列を含む1つ以上のオリゴヌクレオチドを得ることを含む、方法。
【請求項16】
前記1つ以上のオリゴヌクレオチドを、そのエクソンスキッピングの有効性および/または前記目的のエクソンの効率に従ってスクリーニングすることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記目的の遺伝子が、前記SMN1、SMN2、DMD、APP、CEP290、HER2、SCA3、PKM、およびMDM4遺伝子からなる群から選択される、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記目的の遺伝子の前記エクソンが、前記内因性SMN1およびSMN2遺伝子のエクソン7、前記内因性DMD遺伝子のエクソン45、51、および53、前記内因性APP遺伝子のエクソン17、前記内因性CEP290遺伝子のエクソン41、前記内因性HER2遺伝子のエクソン19、前記SCA3遺伝子のエクソン10、前記内因性PKM遺伝子のエクソン10、および前記内因性MDM4遺伝子のエクソン6からなる群から選択される、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1~10のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、請求項11に記載の組成物、および/または請求項12に記載のベクターを前記細胞に送達するか、または前記被験者に投与することをさらに含む、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
被験者における疾患および/またはその合併症を治療する方法であって、請求項1~10のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、請求項11に記載の組成物、および/または請求項12に記載のベクターを前記被験者に投与することを含み、前記オリゴヌクレオチドが目的のエクソンのエクソンスキッピングを生成または促進する、方法。
【請求項21】
前記オリゴヌクレオチドが、目的の遺伝子のエクソン、イントロンまたは特定のスプライス部位のスプライシングを阻害することによって、欠陥のある目的の遺伝子の読み枠を復元し、目的の遺伝子の異なるアイソフォーム(例えば、ドミナントネガティブアイソフォーム)を生成し、目的の遺伝子の毒性部分をスキッピングし、目的の遺伝子をサイレンシングし、および/または目的の遺伝子の構造および機能を変更する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記疾患および/またはその合併症が、前記SMN1、SMN2、DMD、APP、CEP290、HER2、SCA3、PKM、およびMDM4遺伝子からなる群から選択される1つ以上の遺伝子に対するエクソンスキッピングから利益を受け得る疾患および/またはその合併症からなる群から選択される、請求項20または請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記疾患および/またはその合併症が、前記内因性SMN1およびSMN2遺伝子のエクソン7、前記内因性DMD遺伝子のエクソン45、51、および53、前記内因性APP遺伝子のエクソン17、前記内因性CEP290遺伝子のエクソン41、前記内因性HER2遺伝子のエクソン19、前記SCA3遺伝子のエクソン10、前記内因性PKM遺伝子のエクソン10、および前記内因性MDM4遺伝子のエクソン6からなる群から選択される1つ以上のエクソンのエクソンスキッピングから利益を受け得る疾患および/またはその合併症からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記疾患および/その合併症が、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、アルツハイマー病、ジュベール症候群、脊髄小脳失調症3(SCA3)、乳癌、HER2陽性胆道癌、大腸癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、前立腺癌、肺癌、子宮頸癌、腎臓癌、甲状腺乳頭癌、結腸癌、大腸癌、神経膠腫、卵巣癌、胃癌、肝芽腫、線維層状癌、肝細胞癌、軟部組織肉腫、骨肉腫、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、マントル細胞リンパ腫、小児バーキットリンパ腫、唾液腺癌、肝臓癌、または黒色腫からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1~10のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、請求項11に記載の組成物、および/または請求項12に記載のベクターが治療有効量で投与される、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
請求項13~25のいずれか一項に記載の方法に使用するための、請求項1~10のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、請求項11に記載の組成物、および/または請求項12に記載のベクターを含む、キット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0356
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0356】
【表12-3】
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 標的配列と、前記標的配列の5′末端および/または3′末端に動作可能に連結された5′スプライス部位デコイ配列とを含むか、またはそれらからなるオリゴヌクレオチドであって、
前記デコイ配列が、U1 snRNAの一本鎖5′末端に相補的な5、6、7、8、9、10、または11個のヌクレオチドのヌクレオチド配列を含み、
前記標的配列が、目的のエクソン、前記目的のエクソンの上流の隣接イントロン配列、前記目的のエクソンの下流の隣接イントロン配列、前記目的のエクソンの上流のイントロン-エクソンジャンクション、および前記目的のエクソンの下流のイントロン-エクソンジャンクションからなる群から選択される配列とハイブリダイズし、
前記標的配列の5′末端に動作可能に連結された前記デコイ配列と、前記標的配列の3′末端に動作可能に連結された前記デコイ配列が、同一であるかまたは異なる、オリゴヌクレオチド。
[2] 前記デコイ配列が、配列番号1~23および347~353のヌクレオチド配列からなる群から独立して選択される1つ以上のヌクレオチド配列を含むか、またはそれらからなる、[1]に記載のオリゴヌクレオチド。
[3] 前記目的のエクソンが、内因性SMN1およびSMN2遺伝子のエクソン7、内因性DMD遺伝子のエクソン45、51、および52、内因性APP遺伝子のエクソン17、内因性CEP290遺伝子のエクソン41、内因性HER2遺伝子のエクソン19、SCA3遺伝子のエクソン10、内因性PKM遺伝子のエクソン10、および内因性MDM4遺伝子のエクソン6からなる群から選択される、[1]または[2]に記載のオリゴヌクレオチド。
[4] 前記標的配列が、配列番号25、29、33、37、41、45、49、75、92、124、156、188、220、252、284、および316のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる、[1]~[3]のいずれか一つに記載のオリゴヌクレオチド。
[5] 前記標的配列が、前記デコイ配列に直接連結される、[1]~[4]のいずれか一つに記載のオリゴヌクレオチド。
[6] 前記標的配列が、1、2、3、4、または5つのヌクレオチドを有するリンカーを介して前記デコイ配列に連結される、[1]~[4]のいずれか一つに記載のオリゴヌクレオチド。
[7] デコイ配列が前記標的配列の5′末端および3′末端に動作可能に連結された場合、前記標的配列と前記標的配列の5′末端にある前記デコイ配列との間の前記リンカーと、前記標的配列と前記標的配列の3′末端にある前記デコイ配列との間の前記リンカーとが、同一でも異なってもよい、[1]~[6]のいずれか一つに記載のオリゴヌクレオチド。
[8] 配列番号26~27、30~31、34~35、38~39、42~43、46~47、50~73、76~90、93~122、125~154、157~186、189~218、221~250、253~282、285~314、317~346、および354~356のヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる、[1]に記載のオリゴヌクレオチド。
[9] 配列番号26、30、31、34、38、42、46、50、51、60、64、65、68、70、78、83、85、86、87、88、89、103、109、110、114、115、116、127、132、144、164、189、205、213、216、228、260、276、292、294、297、298、312、320、324、327、328、332、および354のヌクレオチド配列からなる群から選択される、[1]に記載のオリゴヌクレオチド。
[10] 例えば、限定されないが、ホスホジエステルまたはホスホロチオエート骨格を有する2′-O-メトキシエチル修飾オリゴヌクレオチド、およびホスホロダミデートモルホリノオリゴマーからなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド類似体を含む、[1]~[9]のいずれか一つに記載のオリゴヌクレオチド。
[11] [1]~[10]のいずれか一つに記載のオリゴヌクレオチドと、薬学的に許容可能な担体とを含む組成物。
[12] [1]~[10]のいずれか一つに記載のオリゴヌクレオチドをコードするベクター。
[13] プレmRNAスプライシング中に目的のエクソンのエクソンスキッピングを生成または促進する方法であって、細胞または被験者内のプレmRNAを、[1]~[10]のいずれか一つに記載のオリゴヌクレオチド、[11]に記載の組成物、および/または[12]に記載のベクターと接触させて、読み枠を復元するか、または新しいスプライシングアイソフォームを生成することを含む、方法。
[14] ASO媒介のエクソンスキッピングが、目的の遺伝子のエクソン、イントロンまたは特定のスプライス部位のスプライシングを阻害することによって、目的の遺伝子の発現を操作し、それにより欠陥のある目的の遺伝子の読み枠を復元し、目的の遺伝子の異なるアイソフォーム(例えば、ドミナントネガティブアイソフォーム)を生成し、前記遺伝子の毒性部分をスキッピングし、前記遺伝子をサイレンシングし、および/または遺伝子の構造および機能を変更することにつながる、[13]に記載の方法。
[15] 細胞または被験者内の目的のエクソン、前記目的のエクソンの上流の隣接イントロン配列、前記目的のエクソンの下流の隣接イントロン配列、前記目的のエクソンの上流のイントロン-エクソンジャンクション、および前記目的のエクソンの下流のイントロン-エクソンジャンクションからなる群から選択される配列にハイブリダイズ可能な標的配列のエクソンスキッピングの有効性および/または効率を向上させる方法であって、
[1]~[10]のいずれか一つに記載の標的配列およびデコイ配列を含む1つ以上のオリゴヌクレオチドを得ることを含む、方法。
[16] 前記1つ以上のオリゴヌクレオチドを、そのエクソンスキッピングの有効性および/または前記目的のエクソンの効率に従ってスクリーニングすることをさらに含む、[15]に記載の方法。
[17] 前記目的の遺伝子が、SMN1、SMN2、DMD、APP、CEP290、HER2、SCA3、PKM、およびMDM4遺伝子からなる群から選択される、[13]~[16]のいずれか一つに記載の方法。
[18] 前記目的の遺伝子の前記エクソンが、前記内因性SMN1およびSMN2遺伝子のエクソン7、前記内因性DMD遺伝子のエクソン45、51、および52、前記内因性APP遺伝子のエクソン17、前記内因性CEP290遺伝子のエクソン41、前記内因性HER2遺伝子のエクソン19、前記SCA3遺伝子のエクソン10、前記内因性PKM遺伝子のエクソン10、および前記内因性MDM4遺伝子のエクソン6からなる群から選択される、[13]~[17]のいずれか一つに記載の方法。
[19] [1]~[10]のいずれか一つに記載のオリゴヌクレオチド、[11]に記載の組成物、および/または[12]に記載のベクターを前記細胞に送達するか、または前記被験者に投与することをさらに含む、[13]~[18]のいずれか一つに記載の方法。
[20] 被験者における疾患および/またはその合併症を治療する方法であって、[1]~[10]のいずれか一つに記載のオリゴヌクレオチド、[11]に記載の組成物、および/または[12]に記載のベクターを前記被験者に投与することを含み、前記オリゴヌクレオチドが目的のエクソンのエクソンスキッピングを生成または促進する、方法。
[21] 前記オリゴヌクレオチドが、目的の遺伝子のエクソン、イントロンまたは特定のスプライス部位のスプライシングを阻害することによって、欠陥のある目的の遺伝子の読み枠を復元し、目的の遺伝子の異なるアイソフォーム(例えば、ドミナントネガティブアイソフォーム)を生成し、前記遺伝子の毒性部分をスキッピングし、前記遺伝子をサイレンシングし、および/または遺伝子の構造および機能を変更する、[20]に記載の方法。
[22] 前記疾患および/またはその合併症が、SMN1、SMN2、DMD、APP、CEP290、HER2、SCA3、PKM、およびMDM4遺伝子からなる群から選択される1つ以上の遺伝子に対するエクソンスキッピングから利益を受け得る疾患および/またはその合併症からなる群から選択される、[20]または[21]に記載の方法。
[23] 前記疾患および/またはその合併症が、前記内因性SMN1およびSMN2遺伝子のエクソン7、前記内因性DMD遺伝子のエクソン45、51、および52、前記内因性APP遺伝子のエクソン17、前記内因性CEP290遺伝子のエクソン41、前記内因性HER2遺伝子のエクソン19、前記SCA3遺伝子のエクソン10、前記内因性PKM遺伝子のエクソン10、および前記内因性MDM4遺伝子のエクソン6からなる群から選択される1つ以上のエクソンのエクソンスキッピングから利益を受け得る疾患および/またはその合併症からなる群から選択される、[22]に記載の方法。
[24] 前記疾患および/その合併症が、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、アルツハイマー病、ジュベール症候群、脊髄小脳失調症3(SCA3)、乳癌、HER2陽性胆道癌、大腸癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、前立腺癌、肺癌、子宮頸癌、腎臓癌、甲状腺乳頭癌、結腸癌、大腸癌、神経膠腫、卵巣癌、胃癌、肝芽腫、線維層状癌、肝細胞癌、軟部組織肉腫、骨肉腫、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、マントル細胞リンパ腫、小児バーキットリンパ腫、唾液腺癌、肝臓癌、または黒色腫からなる群から選択される、[23]に記載の方法。
[25] [1]~[10]のいずれか一つに記載のオリゴヌクレオチド、[11]に記載の組成物、および/または[12]に記載のベクターが治療有効量で投与される、[20]~[24]のいずれか一つに記載の方法。
[26] [13]~[25]のいずれか一つに記載の方法に使用するための、[1]~[10]のいずれか一つに記載のオリゴヌクレオチド、[11]に記載の組成物、および/または[12]に記載のベクターを含む、キット。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正の内容】
図6
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図8
【補正方法】変更
【補正の内容】
図8
【国際調査報告】