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特表2025-533034白ユリの花リリウム・カンディダムLのアルコール抽出物、それを得るための方法、及びそれを含有する化粧品組成物
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  • 特表-白ユリの花リリウム・カンディダムLのアルコール抽出物、それを得るための方法、及びそれを含有する化粧品組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-10-03
(54)【発明の名称】白ユリの花リリウム・カンディダムLのアルコール抽出物、それを得るための方法、及びそれを含有する化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9794 20170101AFI20250926BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20250926BHJP
【FI】
A61K8/9794
A61Q19/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2025518872
(86)(22)【出願日】2023-10-05
(85)【翻訳文提出日】2025-03-31
(86)【国際出願番号】 EP2023077617
(87)【国際公開番号】W WO2024074633
(87)【国際公開日】2024-04-11
(31)【優先権主張番号】22306491.6
(32)【優先日】2022-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521440585
【氏名又は名称】シャネル・パルファム・ボーテ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィド・ルガンニュー
(72)【発明者】
【氏名】マエヴァ・ジレ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA032
4C083AA072
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AC022
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC422
4C083AC612
4C083AC622
4C083AC662
4C083AC712
4C083AC852
4C083AD092
4C083AD132
4C083AD202
4C083AD332
4C083AD352
4C083AD412
4C083AD572
4C083AD642
4C083AD662
4C083CC02
4C083CC05
4C083DD33
4C083DD41
4C083EE11
4C083FF01
(57)【要約】
本発明は、白ユリの花リリウム・カンディダム L(Lilium candidum L)の抽出物、それを得るための方法、それを含有する化粧品組成物、及び様々な化粧品的使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともリリジン配糖体及びホパンテン酸を含む、白ユリ〔リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)〕の花のアルコール抽出物。
【請求項2】

- 40~70重量%、好ましくは50~60重量%の糖類、
- 1~5重量%、好ましくは2.5~3.2重量%のジ-O-及びトリ-O-グリコシル化ケンペロールから誘導された化合物、
- 8~15重量%、好ましくは10~13重量%のリリジン配糖体、並びに
- 1~5重量%、好ましくは2~3重量%のホパンテン酸
を含み、
前記百分率は、前記白ユリの花のアルコール抽出物の総重量を基準として重量%で表される、請求項1に記載の白ユリの花のアルコール抽出物。
【請求項3】
前記糖類が、グルコース、フルクトース及び/又はスクロースを含み、好ましくは20~25重量%のフルクトース、17~21重量%のグルコース及び5~11重量%のスクロースを含む、請求項1又は2に記載の白ユリの花のアルコール抽出物。
【請求項4】
白ユリ〔リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)〕の花を抽出するための方法であって、
a)白ユリ〔リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)〕の花を粉砕する工程;
b)粉砕した花をアルコール溶媒の存在下で少なくとも1回、好ましくは少なくとも2回抽出し、各抽出の後に濾過する工程;
c)工程b)の抽出からの濾過液を混合し、得られた混合物を少なくとも6時間、好ましくは少なくとも10時間静置する工程;
d)c)で得られた混合物を濾過する工程;
e)d)で得られた混合物からモノアルコール溶媒を除去し、次いで、別のアルコール溶媒で最終希釈する工程
を含む方法。
【請求項5】
工程a)で使用される白ユリの花が、生花又はドライフラワーであることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程a)において、白ユリの花が2cm未満の細かさになるように粉砕されることを特徴とする、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
工程b)のアルコール溶媒が、1~4個の炭素原子を含むモノアルコールであり、好ましくはエタノールであることを特徴とする、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程b)の抽出が、40℃~60℃、好ましくは45℃~55℃の温度で、1時間~6時間の間行われることを特徴とする、請求項4~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程b)の各抽出の後に、50μmのスクリーンで濾過することを特徴とする、請求項4~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程d)で行われる濾過が、4μmの濾過スクリーン又は濾過膜で行われることを特徴とする、請求項4~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程d)と工程e)の間に、d)で得られた濾液を、好ましくは活性炭に吸着させることによって脱色する工程、続いて、得られた脱色された濾液を、好ましくは1μmのスクリーンで濾過する工程を追加することを特徴とする、請求項4~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程e)の除去が蒸発によって行われ、次いで最終希釈が1,3-プロパンジオール中で行われることを特徴とする、請求項4~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項4~12のいずれか一項に記載の方法によって得ることができることを特徴とする、白ユリ〔リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)〕の花のアルコール抽出物。
【請求項14】
抗酸化剤として、並びに/又は老化による有害な肌変化を防止及び/若しくは低減するため、並びに/又はNRF2媒介酸化ストレス応答を活性化させるための剤として、並びに/又は表皮肥厚を促進する剤としての、請求項1~3のいずれか一項に記載の白ユリ〔リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)〕の花のアルコール抽出物の化粧品的使用。
【請求項15】
化粧品として許容される担体中に、請求項1~3のいずれか一項に記載の白ユリ〔リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)〕の花のアルコール抽出物を含む、化粧品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白ユリ〔リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)〕の花の抽出物、それを得るための方法、それを含有する化粧品組成物、また、様々な化粧品的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、主に3つの層、すなわち最表層を起点として、表皮、真皮及び皮下組織からなる。
表皮は、皮膚を保護し、それらが正しく機能するのを維持するために大きく貢献している。
皮膚の老化及び光老化、並びにそれに関連する有害な変化は、様々な方法においてそれ自体で現れる可能性があり、以下のものが挙げられる:
- 表皮及び/若しくは真皮の組織喪失によるハリ及び弾力性の喪失;
- 微小循環が低下し、表皮の細胞再生が遅くなることによる輝きの喪失;
- 色素斑の出現;並びに/又は
- 角質層のバリア機能が低下し、表皮の生まれ変わりが遅くなることから生じる皮膚の乾燥。
【0003】
従って、老化による有害な肌変化の一連の原因及び/又は老化に関連する生理学的機序の変化に作用することができる多機能な活性剤を提供する必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
実際のところ、ここで、本出願人は、特定の方法によって得られる白ユリ、リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)の花のアルコール抽出物が、生理学的機序を刺激又は阻害することによって、特に、抗酸化能の付与による酸化ストレスに対する保護特性によって、皮膚の老化に関して有利な活性を示すことを見出した。実際に、実施例で実証されるように、本発明による白ユリ、リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)の花のアルコール抽出物は、「NRF2媒介酸化ストレス応答」の生物学的経路を活性化することができるという有利な化粧品特性を有している。加えて、真皮の老化は、特に、乳頭線維芽細胞が細網線維芽細胞に進行的に分化し、真皮の硬化が生じることによって特徴づけられる。しかしながら、本発明による白ユリ、リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)の花のアルコール抽出物は、細網線維芽細胞においてCCRL1、NTN及びPDPNの乳頭マーカーの発現を増加させ、またCDH2、CNN及びMGPの細網マーカーの発現を減少させることができる。
また、本発明による抽出物は、細網線維芽細胞で再構築された老化した皮膚のモデルにおいて、特に表皮の肥厚を促進することによって表皮の形態を改善することが可能となるため、皮膚の老化防止効果を有する。
【0005】
従って、第1の態様によれば、本発明は、少なくともリリジン配糖体及びホパンテン酸を含む、白ユリ、リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)の花のアルコール抽出物に関する。
【0006】
第2の態様によれば、本発明はまた、少なくとも以下の工程を含む、白ユリ、リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)の花を抽出するための方法に関する:
a)白ユリ、リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)の花を粉砕する工程;
b)前記粉砕した花をアルコール溶媒の存在下で少なくとも1回、好ましくは少なくとも2回抽出し、各抽出の後に濾過する工程;
c)工程b)の抽出からの濾過液を混合し、得られた混合物を少なくとも6時間、好ましくは少なくとも10時間静置する工程;
d)c)で得られた混合物を濾過する工程;
e)d)で得られた混合物からモノアルコール溶媒を除去し、別のアルコール溶媒で最終希釈する工程。
【0007】
本発明はまた、そのような方法によって得ることができる、白ユリ、リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)の花のアルコール抽出物に関する。
【0008】
加えて、本発明はまた、化粧品として許容される担体中に、本発明による白ユリ、リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)の花のアルコール抽出物を含む化粧品組成物に関する。「化粧品として許容される担体」という用語は、皮膚、粘膜、及び表在性身体成長物に適合する媒体を意味するものと理解される。好ましくは、本発明による化粧品組成物は、局所塗布に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】0.25%のユリ抽出物で96時間処置した細網線維芽細胞(ret)における乳頭マーカー(CCRL1、NTN、PDPN)及び細網マーカー(CDH2、CNN、MGP)の(未処置条件と対比した)相対発現を図示する(n=3 ドナーD1~D3)。
図2】n=3のドナー(D1~D3)における、未処置(対照、左側及び中央)の、又は0.25%のユリ抽出物で処置された(右側)、乳頭線維芽細胞(左側)又は細網線維芽細胞(中央及び右側)で再構築された皮膚の全体的な形態を図示する。白色の角括弧は、観察された生きた表皮の厚みの差を図示している。
図3】未処置の乳頭線維芽細胞(対照)、及び対照溶媒(プロパンジオール)又は0.25%のユリ抽出物で処置された乳頭線維芽細胞を含む、再構築された皮膚におけるKi67増殖マーカーを発現する細胞の百分率を示す(n=3 ドナーD1~D3)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
使用される出発物質は、白ユリ、リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)の生花又はドライフラワーからなる。
リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)は、ユリ科の草本植物であり、白ユリ又はマドンナリリーと呼ばれている。
マドンナリリーは、ユリ科の肉厚の芽鱗を有する球根状の多年草であり、最大で1.8mの高さになることもある。
鱗茎に根出葉が生じて、ロゼットが形成される。
丈夫な茎に乗る葉は光沢があり、先がとがっていて、互生であり、大きさは小さい。
見ごたえのある開花期には、6つの大きな花被片、長い雌しべ、及び6つの長い雄しべで構成される、長さ15cmの5~10個のラッパ状の純白の花をもたらす。開花期は6月に生じる。
マドンナリリーは、フランスで栽培されている。
【0011】
本発明の主題であるリリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)の乾燥抽出物は、目的の一次代謝産物及び二次代謝産物のいくつかのファミリーで構成されている。
本発明の主題である白ユリ、リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)の花のアルコール抽出物は、特に、少なくともリリジン配糖体及びホパンテン酸を含む。
特に、本発明のリリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)のアルコール抽出物は、
- 40~70重量%、好ましくは50~60重量%の糖類、
- 1~5重量%、好ましくは2.5~3.2重量%のジ-O-及びトリ-O-グリコシル化ケンペロールから誘導された化合物、
- 8~15重量%、好ましくは10~13重量%のリリジン配糖体、並びに
- 1~5重量%、好ましくは2~3重量%のホパンテン酸
を含み、
百分率は、抽出物の総重量を基準として重量%で表される。
ジ-O-及びトリ-O-グリコシル化ケンペロール誘導体は、以下の構造I(ケンペロールトリ-O-グリコピラノシドに相当する)又はII(ケンペロールジ-O-グリコピラノシドに相当する)の化合物:
【化1】
であり、
リリジン配糖体は、以下の式IIIに相当する化合物:
【化2】
であり、
ホパンテン酸は、その一部に関して、以下の構造IVに相当する:
【化3】
【0012】
本発明によるユリの抽出物中に存在する糖類は、グルコース、フルクトース及び/又はスクロースを含むことが好ましく、特に、20~25重量%のフルクトース、17~21重量%のグルコース及び5~11重量%のスクロースを含むことが好ましい。
特にリリジン配糖体、ホパンテン酸、並びに優先的にジ-O-及びトリ-O-グリコシル化ケンペロールの誘導体を含むユリの抽出物を調製することに成功し、それによってその特殊性を得たことは、本出願人に依るものであることが認められよう。
本発明のリリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)のアルコール抽出物は、特に、以下の工程を含む、白ユリ、リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)の花を抽出するための方法によって得ることができる:
a)白ユリ、リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)の花を粉砕する工程;
b)前記粉砕した花をアルコール溶媒の存在下で少なくとも1回、好ましくは少なくとも2回抽出し、各抽出の後に濾過する工程;
c)工程b)の抽出からの濾過液を混合し、得られた混合物を少なくとも6時間、好ましくは少なくとも10時間静置する工程;
d)c)で得られた混合物を濾過する工程;
e)d)で得られた混合物からモノアルコール溶媒を除去し、別のアルコール溶媒で最終希釈する工程。
【0013】
好ましくは、工程a)で使用される白ユリの花は、生花又はドライフラワーである。
白ユリの花は、特に、当業者に公知の任意の手段により、例えば2cm未満の細かさになるように粉砕されるか又は細片にされる。
工程b)では、粉砕した白ユリの花は、例えば、以下から選択される1つ以上のアルコール溶媒によって、少なくとも1回、好ましくは少なくとも2回の抽出に供される。
- 例えば、メタノール、エタノール又はイソプロパノールなどのC~Cモノアルコール;及び
- 例えば、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール又はジプロピレングリコールなどのジオール。
好ましくは、アルコール溶媒は2~4個の炭素原子を含むモノアルコールであり、より優先的にはエタノールである。
好ましくは、アルコール溶媒は、少なくとも90%の水との混合物として、好ましくは少なくとも95%の水との混合物として使用される。好ましくは、アルコール溶媒は、90%~99%の水との混合物として、好ましくは95%~99%の水との混合物として使用される。
好ましくは、エタノールは、少なくとも90%の水との混合物として、好ましくは少なくとも95%の水との混合物として使用される。好ましくは、エタノールは、90%~99%の水との混合物として、好ましくは95%~99%の水との混合物として使用される。
特に、エタノールは、96%の水との混合物として使用される。
【0014】
抽出は一般に、40℃~60℃、好ましくは45℃~55℃の温度で、1時間~6時間の期間、上記に言及された溶媒のうちの1つ以上に白ユリの花を浸漬し、穏やかに撹拌することによって行われる。
抽出工程b)の後に、例えば50μmのスクリーンで濾過し、植物の残渣を除去する。
好ましい実施形態によれば、工程b)は、少なくとも2回の抽出を実行する。この場合、各抽出の後に濾過工程が続く。
抽出工程b)の最後に、濾過液を回収して混合する。次いで、濾液混合物を少なくとも6時間、好ましくは少なくとも10時間放置する。
【0015】
工程c)の最後に得られた濾液又は濾液混合物を、次いで不溶性物質を除去するために再度濾過する。この工程が工程d)である。好ましくは、c)で得られた抽出物の濾過は、4μmの濾過スクリーン又は濾過膜で行う。こうして濾過液が得られる。
【0016】
最後に、濾過液中に存在する溶媒を除去し、この濾液の残りを別のアルコール溶媒で希釈する(工程e))。
溶媒を除去する工程と、濾液を別の溶媒で希釈する工程との順序は入れ替え可能である。特に、濾過液中に存在する溶媒を除去し、次いでこの濾液の残りを別のアルコール溶媒で希釈してもよい。代替的に、濾過液を最初に別のアルコール溶媒で希釈し、次いで溶媒を除去する。この場合も代替的に、濾液の希釈と溶媒の除去が同時であってもよい。工程e)で使用されるアルコール溶媒は、工程a)で使用されるアルコール溶媒とは異なるため、「他のアルコール溶媒」として理解される。この制限を考慮に入れると、アルコール溶媒は、典型的には工程a)のアルコール溶媒と同じグループ、すなわちC~Cモノアルコール及びジオールから選択される。
好ましくは、最終希釈はジオール、好ましくは1,3-プロパンジオール中で行う。好ましくは、工程e)における溶媒の除去は、蒸発、特に真空蒸発によって行われる。
【0017】
好ましくは、工程d)とe)の間に、d)で得られた濾液を脱色する工程が追加される。脱色は、濾液中に存在する色素を活性炭に吸着させることによって行うことができる。この脱色工程の後に、得られた脱色された濾液を、特に1μmに濾過する工程が続いてもよい。
【0018】
優先的に、本発明による白ユリ、リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)の花のアルコール抽出物は、以下の工程を含む方法によって得ることができる:
a)白ユリ、リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)の花を粉砕する工程;
b)前記粉砕した花をアルコール溶媒の存在下で少なくとも1回、好ましくは少なくとも2回抽出し、各抽出の後に濾過する工程;
c)工程b)の2回の抽出からの少なくとも2つの濾過液を混合し、得られた混合物を少なくとも6時間、好ましくは少なくとも10時間静置する工程;
d)c)で得られた混合物を、濾液が得られるように濾過する工程;
- d)で得られた濾液を活性炭に吸着させることによって脱色する工程;次いで、
- 脱色された濾液を1μmの膜で濾過する工程;及び
e)得られた濾液からエタノールを蒸発により除去し、次いで1,3-プロパンジオールで最終希釈する工程。
【0019】
有利なことに、本発明に従って使用される抽出物は、淡色である。
また、抽出物は、エマルション形態の化粧品組成物又は皮膚科学的組成物中で活性を得るために必要となる濃度において通常直面する製剤上の問題を引き起こすことなく、且つそれらが濃縮された形態である場合に、通常の方法で得られる植物抽出物とは異なり、暗色を呈することなく使用することが可能となるように、十分に濃縮された形態である。
特に、エタノールを蒸発させた後、白ユリ、リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)の花の抽出物は、15~25重量%のユリの乾燥抽出物及び75~85重量%の1,3-プロパンジオールを含み、好ましくは約20重量%のユリの乾燥抽出物及び80重量%の1,3-プロパンジオールを含む。
その結果として、本発明による抽出物は、化粧品組成物を調製するために直接使用することができる。
【0020】
別の態様によると、本発明は、抗酸化剤及び/又は抗老化剤としての、本発明による白ユリ、リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)の花のアルコール抽出物の化粧品的使用に関する。
更に別の様態によれば、本発明は、老化による有害な肌変化を防止及び/又は低減するための、本発明による白ユリ、リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)の花のアルコール抽出物の化粧品的使用に関する。更に、前記抽出物は、特に、NRF2媒介酸化ストレス応答を活性化する薬剤及び/又は表皮肥厚を促進する薬剤として使用される。
【0021】
有利なことに、本発明による白ユリ、リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)の花のアルコール抽出物は、特に老化による有害な肌変化に関連する予防的又は修復的な生理学的機序に関して、目的のいくつかの活性を有することが実際に見出されている。
【0022】
有利なことに、本発明による白ユリ、リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)の花のアルコール抽出物は、細網線維芽細胞においてCCRL1、NTN及びPDPNの乳頭マーカーの発現を増加させ、またCDH2、CNN及びMGPの細網マーカーの発現を減少させることが可能であることが特に見出されている。
また、本発明による抽出物は、細網線維芽細胞で再構築された老化した皮膚のモデルにおいて、特に表皮の肥厚を促進することによって表皮の形態を改善することができる。
【0023】
更に別の様態によれば、本発明はまた、化粧品として許容される担体中に、本発明による白ユリ、リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)の花のアルコール抽出物を含む、化粧品組成物に関する。好ましくは、前記抽出物は、組成物の総重量に対して、0.001~10重量%の割合で、特に0.01~10重量%、好ましくは0.1~10重量%の割合で、化粧品組成物又は皮膚科学的組成物中に存在する。前記化粧品組成物は、特に、局所塗布に好適であり得る。
【0024】
有利なことに、前記化粧品組成物は、粉末、エマルション、マイクロエマルション、ナノエマルション、懸濁液、ローション、クリーム、ゲルの溶液(水性であっても水性-アルコール性であってもよい)、フォーム、セラム、エアロゾル溶液若しくは分散液、又は脂質小胞の分散液の形態であってよい。
エマルションの場合は、油中水型エマルションであっても、水中油型エマルションであってもよい。
本発明による化粧品組成物はまた、様々な成分及び投与形態に従って選択される溶媒を含み得る。
例として、水(好ましくは脱塩水若しくはフローラルウォーター)、又はエタノールなどのアルコールを挙げることができる。
前記化粧品組成物はまた、本発明による抽出物に加えて、例えば、皮膚軟化剤又は保湿剤、ゲル化剤及び/又は増粘剤、界面活性剤、油、活性剤、染料、防腐剤、抗酸化剤、活性剤、有機若しくは無機粉末、日焼け止め剤及び香料から選択される少なくとも1つの化合物などの当分野で慣用的な少なくとも1つの添加剤を含んでもよい;
- ポリオール(グリセロール、ジグリセロール、プロピレングリコール、プロパンジオール、カプリリルグリコール、ペンチレングリコール、ヘキサンジオール)、糖、ヒアルロン酸などのグリコサミノグリカン並びにその塩及びエステル;並びにLipidure PMBなどのポリクオタニウムなどの、1つ以上の保湿剤。
前記保湿剤は、組成物の総重量により、組成物中に約0.1%~30%、好ましくは0.005%~10%の含有量で存在する;
- 例えば、ホホバエステル、脂肪アルコールの脂肪酸エステル(ミリスチン酸オクチルドデシル、トリエチルヘキサノイン、炭酸ジカプリリル、イソステアリン酸イソステアリル、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)などのエステル、シアバターなどのバター(ブチロスパーマム・パーキー(Butyrospermum parkii)バター抽出物、Lipex Sheasoft、Lipex Shea-U、Lipex Shea、Lipex Shealight、Lipex Shea Trisの名称で販売されているシアバターエチルエステル)、又はモリンガバター(モリンガ油/水添モリンガ油エステル)、ワックス(アカシア・デクレンス(Acacia decurrens)花ワックス及びヘリアンサス・アナス(Helianthus annuus)ロウ種子ワックス、C10~18トリグリセリド)、植物油、フィトスクワラン、アルカン(ウンデカン、トリデカン)から選択され得る、1つ以上の皮膚軟化剤。
前記皮膚軟化剤は、組成物の総重量により、組成物中に約0.1%~30%、好ましくは0.5%~10%の含有量で存在する;
- 例えば、セルロース誘導体、植物由来のガム(グアー、イナゴマメ、アルギネート、カラギーナン、ペクチン)、微生物由来のガム(キサンタン)、粘土(ラポナイト)、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸(amps)及び/又はアクリルアミド及び/又はアクリル酸及び/又はアクリル酸の塩若しくはエステルの親水性又は両親媒性の架橋又は非架橋ホモポリマー及びコポリマー(Aristoflex AVC、Aristoflex AVS、Aristoflex HMB、Simulgel NS、Simulgel EG、Simulgel 600、Simulgel 800、Pemulen、carbopol、Sepiplus 400、Seppimax zen、Sepiplus S、Cosmedia SPの名称で販売されている)から選択される、水相のための1つ以上のゲル化剤及び/又は増粘剤。
前記ゲル化剤及び/又は増粘剤は、組成物の総重量により、組成物中に約0.1%~10%の含有量で存在する;
- 1つ以上の界面活性剤、特に、
* イセチオネート、タウレート、サルコシネート、グリシネート、グルタメート、ホスフェート(Sensanov WRの名称で販売されているC20~22アルキルホスフェート)などのアニオン性界面活性剤、
* ベタイン誘導体、アンフォアセテートなどの両性界面活性剤、
* ポリグリセリン誘導体、糖誘導体(Montanov 68、Montanov 202、Montanov 82、Montanov L、Easynovの名称で販売されているグルコシド又はキシロシド誘導体)、レシチンなどの非イオン性界面活性剤。
前記界面活性剤は、組成物の総重量に対して、約0.1重量%~15%、好ましくは0.5%~10重量%の含有量で存在する;
- 例えば、ビタミンC及びその誘導体(アスコルビン酸グルコシド、3-o-エチルアスコルビン酸、テトライソパルミチン酸アスコルビル)、ビタミンA及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、ビタミンB3又はナイアシンアミド、パンテノールなどのビタミン、微量元素、アラントイン、アデノシン、ペプチド(NP Rigin、Matrixyl 3000、Idealift、Eyeserylの名称で販売されているパルミトイルテトラペプチド-7、パルミトイルトリペプチド-1、パルミトイルペンタペプチド-4、アセチルジペプチド-1セチルエステル、アセチルテトラペプチド-5)、植物抽出物(カンゾウ(Glycyrrhiza glabra)抽出物、ツボクサ(Centella asiatica)葉抽出物、ライムギ種子抽出物)、酵母抽出物、グリコール酸又は乳酸などのα-ヒドロキシ酸、トラネキサム酸及びセチルトラネキサムエステルなどのその誘導体などから選択される、生物学的活性を有し、生物学的部位によって皮膚に有効性のある天然由来、バイオテクノロジー由来又は合成由来の、1つ以上の活性剤。
前記活性剤は、組成物の総重量により、組成物中に約0.1%~10%の含有量で存在する。
化粧品に慣用的に使用される他の添加剤もまた、本発明による組成物中に存在してもよく、特に、当技術分野では、防腐剤、抗酸化剤又は香料がよく知られている。
当業者は、これらの可能な添加剤の全てから、組成物に添加されるそれらの性質及び量の両方を、組成物がその特性の全てを保持するように選択することができる。
【実施例
【0025】
下記の実施例により、本発明を非限定的に説明する。
【0026】
実施例1:本発明による白ユリ、リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)の花のアルコール抽出物の調製
本発明による白ユリ、リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)の花のアルコール抽出物を、以下の工程を含む方法によって調製する。
a)200gの白ユリ、リリウム・カンディダム L.(Lilium candidum L.)の花を粉砕して粉末にする;
b)50℃で2時間撹拌しながら、96゜のエタノール2000g中で粉末を抽出する;
得られた混合物1を50μmでスクリーン濾過する;濾液1を取っておく;
50℃で2時間撹拌しながら、96゜のエタノール2000g中で使用済みグレイン(spent grain)を抽出する;
得られた混合物2を50μmでスクリーン濾過する;使用済みグレイン(spent grain)を捨てる;
c)濾液2を濾液1に加え、この混合物を一晩沈殿させる;
d)上清を4μmで濾過する;
- 110℃で3時間置いた3×5gの抽出物における固形物を測定する;
- 乾燥抽出物に対して20%の活性炭を添加した後、濾液を撹拌しながら周囲温度で3時間脱色する;
- 4μmと1μmで膜濾過する:活性炭を除去する;
e)1,3-プロパンジオール180gを添加して30分間撹拌し、ロータリーエバポレーター内でエタノールを蒸発させる;
4μmで最終的に濾過する。
【0027】
実施例2:酸化ストレスに対する本発明によるユリの抽出物の特性に関する試験
プロトコル:2人の若いドナーに由来する正常なヒト表皮の角化細胞を6ウェルプレートに播種し、KGM2を補充した培地(Lonza)中で37℃、5%COで72時間培養した。次いで、細胞を0.25%の抽出物と24時間インキュベートした、又はインキュベートしなかった(未処置条件)。それぞれの条件を2回繰り返して行った。RNeasy 96 Plate Extraction Kit(Qiagen)を使用して、供給元の推奨事項に従って全RNAを抽出した。Multiskan Go(Thermo Fischer)によってRNAの量及び品質を評価した。相補的DNAを合成し、Affymetrix GeneChip Human Transcriptome Array 2.0でトランスクリプトームを生成した。発現が少なくとも2倍(FC:倍数変化、未処置条件と対比した発現レベル)に調節された遺伝子のバイオインフォマティクス解析を、Ingenuity Pathway Analysisソフトウェア(IPA(登録商標)、Qiagen)によって行った。
【0028】
結果:0.25%の抽出物は、処置して24時間後の正常なヒト角化細胞において、平均して158個の遺伝子の発現を調節することができる(そのうちの59個が阻害され、99個が刺激されていた)。
IPAソフトウェアを使用して、抽出物で処置した後の生物学的活性の変化を評価した。様々な生物学的経路の発現の調節を表すマップを構築した(データは提供しない)。処置して24時間後に得られたトランスクリプトームマップから、0.25%の抽出物によって多くの生物学的機能が調節されていることが明らかになった。特に、マドンナリリーは64個の標準的なシグナル伝達経路を調節することができる。
【0029】
0.25%のユリの抽出物によって著しく活性化された生物学的経路の中に、NRF2(赤血球系転写因子2関連転写因子2)媒介酸化ストレス応答経路があった。NRF2は、一度活性化すると、GCLM、GPX、GST、NQO1、SOD及びTXNRなどの抗酸化酵素の発現を増加させることのできる転写因子である。NRF2はまた、特にFTLサブユニットとFTH1サブユニットからなるフェリチンなどの非酵素的な抗酸化タンパク質の転写を活性化する。0.25%の抽出物で処置して24時間後の正常な角化細胞において、細胞全体の解毒作用のためのこの生物学的経路が刺激されることにより、抗酸化特性と抗老化特性が付与される(酸化ストレスは皮膚の老化に寄与する)。
【0030】
【表1】
【0031】
実施例3:皮膚老化の細胞モデル及び組織モデルにおける本発明によるユリの抽出物の抗老化特性
細胞レベルでは、真皮は、線維芽細胞の2つの亜集団:乳頭のレベルで表皮の下に位置し、より若い表現型を有する乳頭線維芽細胞と、より深く、より分化した、より古い表現型を示す細網線維芽細胞とに分けることができる。これらの2つの亜集団は、乳頭線維芽細胞の場合はCCRL1、NTN及びPDPN、細網線維芽細胞の場合はCDH2、CNN及びMGPという特定のマーカーを発現する。真皮の老化は、特に、乳頭線維芽細胞が細網線維芽細胞に進行的に分化し、真皮の硬化が生じることによって特徴づけられる。この老化は、細胞レベルでは細網線維芽細胞を使用して、組織レベルでは細網線維芽細胞で合成された真皮によって等価な皮膚を再構築することによって、実験室でモデル化することができる。従って、これらのモデルを使用して、真皮の老化を逆転させることができる抗老化特性を有する成分を同定することができる。
細胞モデルのプロトコル:3人のドナーに由来する正常なヒト真皮の細網線維芽細胞を6ウェルプレートに播種し、5%の血清を補充したDMEM培地中で37℃、5%COで72時間培養した。次いで、細胞を2.5%の血清を補充したDMEM培地中で0.25%の抽出物と96時間インキュベートした、又はインキュベートしなかった(未処置条件)。RNeasy 96 Plate Extraction Kit(Qiagen)を使用して、供給元の推奨事項に従って全RNAを抽出した。Experion(Biorad)によってRNAの量及び品質を評価した。相補的DNAを合成し(iScript kit、Biorad)、次いで、このプログラムに従ってSYBR Green法(Biorad)によってqPCR反応を実行した:95℃で5分、次いで95℃で20秒、60℃で20秒、72℃で20秒の35回のサイクルの後に、融解曲線を生成する。発現解析は、安定的に発現する参照遺伝子を用いたΔΔCt法を使用して、iQ5ソフトウェア(Biorad)によって行った。このようにして、乳頭線維芽細胞に特異的なバイオマーカー(CCRL1、NTN及びPDPN)と細網線維芽細胞に特異的なバイオマーカー(CDH2、CNN及びMGP)の発現を試料中で評価した。
結果:図1に示すように、0.25%の抽出物は、処理して96時間後の細網線維芽細胞において、乳頭マーカーであるCCRL1、NTN及びPDPNの発現を増加させることができ、また細網マーカーであるCDH2、CNN及びMGPの発現を低減させることができる。従って、ユリの抽出物には、細網線維芽細胞の老化した表現型を、乳頭線維芽細胞のものに近い、より若い表現型に逆転させる能力がある。
【0032】
組織モデルのプロトコル:3人のドナーに由来する正常なヒト真皮の乳頭線維芽細胞又は細網線維芽細胞を、5%の血清を補充したDMEM培地(HyClone)中に播種し、37℃、5%COで5日間培養した。次いで、細胞を0.25%の抽出物又は0.25%のプロパンジオール溶媒(希釈剤のみの条件)と4日間インキュベートした、又はインキュベートしなかった(未処置条件)。処置細胞又は対照細胞で真皮等価物を生成し、次いで、5%の血清及び1%のペニシリン-ストレプトマイシン(Invitrogen)を補充したDMEM培地中で0.25%のユリ抽出物又はプロパンジオールと37℃、5%COで7日間再度インキュベートした、又はインキュベートしなかった。次いで、正常なヒト表皮角化細胞を真皮等価物に播種し、この培養物を、5%の血清、1.1μMのヒドロコルチゾン、1μMのイソプロテレノール、0.1μMのインスリン(Sigma-Aldrich)及び1%のペニシリン-ストレプトマイシン(Invitrogen)を補充したDMEM/Ham’s F12(3:1)培地中で2日間維持した。乳頭線維芽細胞(Pap)又は細網線維芽細胞(Ret)で再構築した皮膚を気体/液体界面に置き、この場合も上記に記載された条件に従って14日間処置したか、又は処置しなかった後に、固定化して脱水し、次いでパラフィンに包埋した。次いで、組織切片を切断し、これをヘマトキシリン・エオジン・サフラン(HES)染色又はKi67免疫標識のために使用した。
ヘマトキシリン・エオジン・サフラン(HES)染色を、それらの全体的な形態、特に老化した細網皮膚(「若い」乳頭皮膚と対比した)のモデルで表皮の厚さがより薄くなるのを観察するために行った。乳頭線維芽細胞で再構築された皮膚の陽性細胞を計数するために、細胞増殖マーカーであるKi67の免疫標識も行った。pH6のクエン酸緩衝液中で抗原のアンマスキングを行ってから、ブロッキング溶液中でインキュベートし、抗体の非特異的な結合を防止した。次いで、この切片を、Ki67を特異的に標的化する一次抗体(MIB-1、Dako)と4℃で一晩インキュベートし、次いで、供給元(GE Healthcare)の推奨事項に従ってアビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼ系とインキュベートした。AEC(3-アミノ-9-エチルカルバゾール)を添加することによって標識を可視化し、切片をヘマトキシリンで対比染色した。
【0033】
結果:図2に示すように、本発明による0.25%のユリの抽出物は、未処置条件(中央)と比較して、細網線維芽細胞で再構築された老化した皮膚のモデルにおいて、特に表皮の肥厚を促進することによって表皮の形態を改善することができる(右側)。従って、この抽出物で処置した皮膚は、未処置の乳頭線維芽細胞で再構築した皮膚(左側)で得られたものに近い、より若々しい形態を取り戻した。
【0034】
図3に示すように、0.25%の抽出物はまた、乳頭線維芽細胞で再構築した皮膚の基底層において、Ki67増殖マーカーを発現する細胞の数を増加させることもできる。従って、この抽出物は、細胞再生を促進する。
【0035】
従って、0.25%のユリの抽出物は、細胞モデルと組織モデルにおいて、細網表現型を若い乳頭表現型に改変することによって、真皮の老化速度を遅らせることができる。従って、この抽出物は、強力な抗老化特性を有する。
【0036】
実施例4:化粧品組成物
下記の組成物は、当業者にとって従来の方法で調製することができる。以下に示す量は、重量パーセントで表される。大文字の成分は、INCI名に従って同定される。
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
これらの組成物は、毎日、朝及び/又は夕方に皮膚に塗布することができる。
図1
図2
図3
【国際調査報告】