(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-10-03
(54)【発明の名称】歯科用インプラント構造体
(51)【国際特許分類】
A61C 8/00 20060101AFI20250926BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2025521941
(86)(22)【出願日】2023-06-30
(85)【翻訳文提出日】2025-04-14
(86)【国際出願番号】 KR2023009200
(87)【国際公開番号】W WO2024096241
(87)【国際公開日】2024-05-10
(31)【優先権主張番号】10-2022-0142317
(32)【優先日】2022-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524352058
【氏名又は名称】イノデン カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】INNODEN CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】2F,10,Bongujae-ro Siheung-si Gyeonggi-do 15057,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン チョンソク
【テーマコード(参考)】
4C159
【Fターム(参考)】
4C159AA44
(57)【要約】
本発明は、アバットメントがアバットメントスクリューを介して歯槽骨に植埋されたフィクスチャーに締結固定されるアバットメントスクリュー分離型歯科用インプラント構造体に関するものであって、より詳しくは、アバットメントスクリューのヘッド部がアバットメントに収容されず、アバットメントのポストの上方に突出形成されることによって、アバットメントの内側空間の直径(内径)を小さくすることができ、これにより、アバットメントのポストの直径と厚みを所望の大きさに自在に形成することができるように供する歯科用インプラント構造体に関するものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アバットメントがアバットメントスクリューを介して歯槽骨に植埋されたフィクスチャーに締結固定されるアバットメントスクリュー分離型歯科用インプラント構造体において、
前記アバットメントスクリューは、
前記アバットメントの内側の空間を通じて前記フィクスチャーに結合されるネジ部と、
前記ネジ部の上部に形成され、前記アバットメントと下側方向に係止される連結部と、および
前記連結部の上部に形成され、前記アバットメントの上部に突出形成されたヘッド部と、を含み、
前記ヘッド部と前記アバットメントのポストを被せるように設けられたクラウンをさらに含み、
前記クラウンには、前記ヘッド部と前記アバットメントのポストが収容される収容溝部が形成されており、
前記ヘッド部に結合され、前記収容溝部に収容されるアバットメントキャップをさらに含む、
歯科用インプラント構造体。
【請求項2】
前記ヘッド部は、下部から上部へ行くほど直径が小さくなる、請求項1に記載の歯科用インプラント構造体。
【請求項3】
前記ヘッド部には、ドライバーホールが形成された、請求項1に記載の歯科用インプラント構造体。
【請求項4】
前記ヘッド部の側面には、垂直切断面が形成された、請求項1に記載の歯科用インプラント構造体。
【請求項5】
前記ヘッド部の周囲には、弾性リングが結合される結合溝が形成された、請求項1に記載の歯科用インプラント構造体。
【請求項6】
前記結合溝には、C-リングまたはO-リング形態の弾性リングが結合される、請求項5に記載の歯科用インプラント構造体。
【請求項7】
前記連結部は、前記アバットメントの内側空間に収容される、請求項1に記載の歯科用インプラント構造体。
【請求項8】
前記ネジ部と前記連結部の境界には、前記アバットメントの内側空間に形成された内側顎部に下側方向に係止される係止顎部が形成された、請求項1に記載の歯科用インプラント構造体。
【請求項9】
前記連結部は、上部に行くほど直径が増加するテーパ構造に形成された、請求項1に記載の歯科用インプラント構造体。
【請求項10】
前記収容溝部と、前記収容溝部の内部に収容される前記ヘッド部と、前記アバットメントのポストを含むクラウン収容部との間には、弾性体が設けられた、請求項1に記載の歯科用インプラント構造体。
【請求項11】
前記アバットメントキャップは、
前記アバットメントスクリューのヘッド部に螺合される前記アバットメントキャップのネジ部と、および
前記アバットメントキャップのネジ部の上部に形成され、前記収容溝部の内壁を前記アバットメント側に加圧する前記アバットメントキャップのヘッド部と、
を含む、請求項1に記載の歯科用インプラント構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アバットメントがアバットメントスクリューを介して歯槽骨に埋植されたフィクスチャーに締結固定されるアバットメントスクリュー分離型歯科用インプラントの構造体に関するものである。より詳しくは、アバットメントスクリューのヘッド部がアバットメントに収容されずに、アバットメントのポストの上方に突出形成されることによって、アバットメントの内側空間の直径(内径)を小さくすることができ、これに伴い、アバットメントのポストの直径と厚みを所望の大きさに自在に形成することができるように供する歯科用インプラント構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯科用インプラント構造体は、基本的には歯槽骨に埋植されるフィクスチャー(fixture)と、フィクスチャーに固定され、咀嚼作用時に加えられる咬合力に対応して側方または水平の圧力を支持するアバットメント(abutment、支台)と、アバットメントの上部を被せて修復して自然歯と同様に美的美しさを回復させるクラウン(人工の歯)を含む。
【0003】
アバットメントは、アバットメントスクリューを介してフィクスチャーに締結固定される。アバットメントスクリューがアバットメントに結合される構造に応じて大きくアバットメントスクリュー一体型アバットメントと、アバットメントスクリュー分離型アバットメントに区分することができる。アバットメントスクリュー一体型アバットメントは、アバットメントスクリューがアバットメントに一体に形成され、アバットメントスクリュー分離型アバットメントは、アバットメントスクリューがアバットメントと分離される。
【0004】
図1は、従来のアバットメントスクリュー分離型アバットメントを概略的に示す断面図である。
【0005】
図1のように、従来のアバットメントスクリュー分離型アバットメント2は、アバットメントスクリュー3を介してフィクスチャー1に締結固定される。アバットメントスクリュー3は、フィクスチャー1に螺合されるネジ部3aと、ネジ部3aの直径よりも大きい直径で形成され、アバットメント2の内側に形成された内側顎部2dに下方に係止されるヘッド部3bを含む。
【0006】
このような従来のアバットメントスクリュー分離型アバットメント2は、アバットメントスクリュー3のヘッド部3bが、アバットメント2の内側に収容される構造からなることで、アバットメント2の直径や厚みを目標値径や厚みに形成することに妨害要素となる。すなわち、アバットメントスクリュー3のヘッド部3bがネジ部3aに比べて、大きな直径に形成されることで、ヘッド部3bが収容されるアバットメント2の内側空間2eの直径(内径)もまたヘッド部3bの直径に対応して、ヘッド部3bの直径よりも大きく形成する必要がある。そのため、アバットメント2のポスト2cを目標値直径や厚みに形成することが困難である。
【0007】
通常、アバットメントスクリュー3のネジ部3aの直径(外径)は、略2.0mm(標準ネジ径)に形成され、ヘッド部3bは、略ネジ部3aの直径よりも略0.3~0.4mm程大きい、2.3~2.4mmほど大きく形成される。これによりアバットメント2の最上部直径(d2)は、少なくともアバットメントスクリュー3のヘッド部3bの直径(d1)よりも略0.5mmほどさらに大きくしなければならない。そのため、アバットメント2のポスト2cの最上部直径(d2)は、
図1のように少なくとも2.8mmでなければならない(アバットメントスクリュー3のヘッド部3bの直径(d1)2.4mmとアバットメント2をなす金属材の厚み(t1)0.4mm(0.2mm×2)を合わせた値)。
【0008】
このようにアバットメントスクリュー3のヘッド部3bが内側に収容されるアバットメントスクリュー分離型アバットメント構造では、アバットメント2のポスト2cの直径(d2)が最低2.8mmでなければならない。このことは、このような構造を有するアバットメントを下顎前歯部への適用が困難にする。下顎前歯部は、歯の直径が相対的に小さい部位であり、下顎歯を自然に見えるようにするためには、アバットメント2のポスト2cの直径(d2)を2.8mm以下にする必要があることが多い。しかし、前述した理由から、従来のアバットメント構造では、これを解決することができない場合が多い。そして、ポスト2cの直径を小さくすると、ポストの外壁角度が90°に近づき、クラウンのパス(path)が難しくなり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2017-0102280号公報(2017.09.08.)
【特許文献2】韓国登録実用新案第20-0467684号公報(2013.06.21.)
【特許文献3】韓国登録特許第10-1210671号公報(2012.12.04.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、アバットメントの中央には、アバットメントスクリュー3のヘッド部3bを収容するための内側空間2eが設けられる必要がある。よって、アバットメント2のポスト2cの厚み(外面から内面までの厚み)をより薄く形成せざるを得ない。また、歯の幅の小さい患者に適用するアバットメント2の場合、カフ2bは、比較的小さな径で形成され、カフ2bの上端面に接するポスト2cの下端部もまた小さいカフ2bの直径に対応して、小さく形成せざるを得ない。さらに韓国登録特許第10-2323728号などでのように、咬合力を吸収するため、ポストの外面に弾性リングが結合された構造では、弾性リングの厚みを考慮し、ポストの直径を一層小さくならざるを得ない。
【0011】
そのため、アバットメントのポスト2cの外面周囲に弾性リングを結合する結合溝を形成することを一層難しくする。例えば、アバットメントのポスト2cの外面周囲に沿って結合溝を形成する際、ホスト2cの側部に不要な穴(ポストの外部と内側空間2eが連通する穴)が形成されたり、または、結合溝部位において厚みが薄くなることで、構造的に脆くなって、弾性リングをアバットメントに適用することが難しいことがある。
【0012】
したがって、本発明は、従来の諸般的な問題点を解決すべく提案されたものであり、解決しようとする課題(目的)は、アバットメントスクリュー分離型アバットメント構造において、アバットメントの内側空間の直径を小さくし、アバットメントのポストの直径や厚みの制限のような構造的な限界を克服することができる歯科用インプラント構造体を供することである。
【0013】
また、本発明の他の解決課題として、アバットメントのポストの直径や厚みに影響を及ぼすことなく、繰り返しの咀嚼作用時に加えられる咬合力をクラウンとアバットメントとの間で緩衝する一方、クラウンとアバットメントとの間の結合のための弾性リングが結合される結合溝を安定的に形成することができる歯科用インプラント構造体を供することである。
【0014】
また、本発明は、前述した目的に制限されず、これ以外にも、後述する実施例および請求の範囲を通じて記載された技術により多様な目的がさらに提供することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するための一実施例による本発明は、アバットメントがアバットメントスクリューを介して歯槽骨に埋植されたフィクスチャーに締結固定されるアバットメントスクリュー分離型歯科用インプラント構造体において、前記アバットメントスクリューは、前記アバットメントの内側空間を通じて前記フィクスチャーに結合されるネジ部と、該ネジ部の上部に形成され、前記アバットメントと下方向に係止される連結部と、及び、前記連結部の上部に形成され、前記アバットメントと下側方向に係止めされる連結部と、及び前記連結部の上部に形成され、前記アバットメントの上部に突出形成されたヘッド部を含む歯科用インプラント構造体を供する。
【0016】
また、前記ヘッド部は、下部から上部に行くほど径が小さくなることがある。
【0017】
また、前記ヘッド部には、ドライバーホールが形成されることができる。
【0018】
また、前記ヘッド部の側面には垂直切断面が形成されることができる。
【0019】
また、前記ヘッド部の周縁には、弾性リングが結合される結合溝が形成されることができる。
【0020】
また、前記結合溝にはC-リングまたはO-リング形態の弾性リングが結合されることができる。
【0021】
また、前記連結部は、前記アバットメントの内側空間に収容されることができる。
【0022】
また、前記ネジ部と前記連結部との境界には、前記アバットメントの内側空間に形成された内側顎部に下側方向に係止される係止顎部が形成されることができる。
【0023】
また、前記連結部は、上部に行くほど直径が増加するテーパ構造に形成されることができる。
【0024】
また、前記ヘッド部と前記アバットメントのポストを被せるように設けられたクラウンをさらに含み、前記クラウンには、前記ヘッド部と前記アバットメントのポストが収容される収容溝部が形成されることができる。
【0025】
また、前記収容溝部と、前記収容溝部の内部に収容される前記ヘッド部と前記アバットメントのポストを含むクラウン収容部との間に弾性体を設けることができる。
【0026】
また、前記ヘッド部に結合され、前記収容溝部に収容されるアバットメントキャップをさらに含むことができる。
【0027】
また、前記アバットメントキャップは、前記アバットメントスクリューのヘッド部に螺合される前記アバットメントキャップのネジ部と、及び、前記アバットメントキャップのネジ部の上部に形成され、前記収容溝部の内壁を前記アバットメント側へ加圧する前記アバットメントキャップのヘッド部を含むことができる。
【発明の効果】
【0028】
以上にて説明したように、本発明による歯科用インプラント構造体によれば、アバットメントスクリューのヘッド部がアバットメントに収容されず、アバットメントのポストの上部に突出形成された新たな構造の歯科用インプラント構造体を供することによって、アバットメントの内側空間の直径(内径)を効果的に小さくすることができ、これによって、アバットメントのポストの直径と厚みに制限なく、所望の大きさに自在に形成することができる。
【0029】
また、本発明による歯科用インプラント構造体によれば、アバットメントのポスト上方に突出されたアバットメントスクリューのヘッド部に結合溝を形成し、これに弾性リングが結合された新たな構造の歯科用インプラント構造体を供することによって、アバットメントのポストの直径と厚みに全く影響を及ぼさないと同時に、接着剤を使用しなくてもクラウンとアバットメントを安定的に結合することができる。さらには、前記弾性リングを通じてクラウンの脱着が円滑かつ安定的に行われるようにし、繰り返し加えられる咬合力を吸収し、アバットメントおよび/またはフィクスチャーなどが破折することを防止することができる。
【0030】
また、本発明による歯科用インプラント構造体によれば、クラウンに形成された収容溝部とクラウンの収容溝部の内部に収容されるクラウン収容部(アバットメントスクリューのヘッド部とアバットメントポストを含む部位)との間に弾性体を形成し、クラウンがクラウン収容部に当接することを遮断することによって、クラウンとクラウン収容部との間で弾性リングの収縮と膨張が円滑になされることができる余裕空間を確保し、弾性リングと共に弾性力を用いて繰り返しクラウンに加えられる咬合力を吸収し、繰り返し咬合力によるクラウン、アバットメントおよび/またはフィクスチャーなどが破折されることを防止し、クラウンとアバットメントとの間に異物が入り込みことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】従来のアバットメントスクリュー分離型アバットメントを示す断面図である。
【
図2】本発明の実施例1による歯科用インプラント構造体を示す組立断面図である。
【
図3】
図2に示す歯科用インプラント構造体におけるアバットメントスクリューが分離された状態の断面図である。
【
図4】本発明の実施例1と比較例1とを比較するために示す断面図である。
【
図5】本発明の実施例2による歯科用インプラント構造体を示す組立断面図である。
【
図6】
図5に示す歯科用インプラント構造体におけるアバットメントスクリューが分離された状態の断面図である。
【
図7】本発明の実施例3による歯科用インプラント構造体を示す組立断面図である。
【
図8】本発明の実施例3と比較例2とを比較するために示す断面図である。
【
図9】本発明の実施例4による歯科用インプラント構造体を示す組立断面図である。
【
図10】
図9におけるクラウンが結合された状態を示す断面図である。
【
図11】本発明の実施例5による歯科用インプラント構造体を示す断面図。
【
図12】本発明の実施例6による歯科用インプラント構造体を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の利点及び特徴、それらを達成する方法は、添付される図面と共に詳細に後述する実施例を参照すれば明確になるであろう。また、本明細書全体に亘って同一の参照符号は、同一の構成要素を指すものである。また、各図面に示された各構成要素は、大きさ及び形状が過度に図示されることもあるが、これは説明の便宜を図るためのものであって、制限を意図するものではない。また、「Aおよび/またはB」と記載された場合、AとBの両方を意味する、またはAまたはBのいずれかを意味することができる。
【0033】
本発明は、前述した解決課題(目的)を達成するために、アバットメントスクリューのヘッド部がアバットメント内部に収容されずに、アバットメントのポストの上方に突出形成された新しい構造の歯科用インプラント構造体を供する。すなわち、本発明による歯科用インプラント構造体は、アバットメントスクリューのヘッド部がアバットメントのポストの上部に突出形成され、アバットメントの内側空間の直径(内径)を小さくすることができるようにし、これにより、アバットメントのポストの直径と厚みを所望の大きさで自在に形成することができる。
【0034】
以下、本発明の実施例を添付された図面を参照して具体的に説明する。
【0035】
実施例1
図2は、本発明の実施例1による歯科用インプラント構造体を概略的に示す組立断面図であり、
図3は
図2に示す歯科用インプラント構造体におけるアバットメントスクリューが分離された状態の断面図である。ここでは、説明の便宜上、クラウンは省略した。
【0036】
図2及び
図3を参照すると、本発明の実施例1による歯科用インプラント構造体10は、アバットメント12の内側空間(中孔)12eを介して貫通結合され、上部がアバットメント12のポスト12cの上部に突出形成されたアバットメントスクリュー13を含む。
【0037】
アバットメントスクリュー13は、
図3のように、歯槽骨に埋植されるフィクスチャー11に螺合されるネジ部13aと、ネジ部13aの上部に形成され、アバットメント12の内側空間12cの内部に収容される連結部13bと、
図2のように、アバットメント12のポスト12cの上部に突出されるように連結部13bの上部に形成されたヘッド部13cを含む。
【0038】
ネジ部13aと連結部13bとの境界部位には、アバットメント12の内側顎部12dに下側方向に係止される係止顎部13dが形成されている。連結部13bは、ネジ部13aと連結される下部の外面が垂直面を有し、ヘッド部13cと連結される上部は、直径が増加するように外面が傾斜面を有するテーパ(taper)構造からなることができる。
【0039】
一方、アバットメント12の内側顎部12dを形成することなく、係止部の機能をテーパされた部分a1で行う場合には、アバットメントスクリュー13の係止顎部13dを省略することができる。このとき、アバットメント12のテーパされた部分a1には、アバットメント12のポスト12cの内側に陥入されるアバットメントスクリュー13のテーパされた面(s1)が接して互いに係止される。
【0040】
ヘッド部13cは、
図2に示すように、アバットメント12のポスト12cの上部に突出形成され、アバットメント12のポスト12cとともにクラウン(図示せず)の内部に収容される部位であって、下部から上部へ行くほど直径が小さくなるように外面が傾斜面を有するテーパ構造からなることによって、前記クラウンに安定的に収容されることができる。また、ヘッド部13cの上端部にはドライバ工具が挿入されるドライバーホール13eが形成されることができる。
【0041】
アバットメント12は、
図3に示すように、フィクスチャー11に結合される結合部12aと、結合部12aの上部に形成され、直径が増加するように外面が傾斜面を有するテーパ構造で形成されたカフ12bと、カフ12bの上部に形成され、直径が減少するように外面が傾斜面を有するテーパ構造で形成され、前記クラウンに収容されるポスト12cを含む。カフ12bとポスト12cとの境界には段差を有する外側顎部12fが形成される。
【0042】
図4は、本発明の実施例1と比較例1とを比較するために概略的に示す断面図である。ここで、比較例1は、
図1に示す従来技術の一例と同じ構造を有する。
【0043】
図4を参照すると、本発明の実施例1では、アバットメント12のポスト12cの高さ(h1)を比較例1によるアバットメント2のポスト2cの高さ(h2)よりも低くして形成する。
【0044】
本発明の実施例1では、アバットメントスクリュー13のヘッド部13cが、アバットメント12のポスト12cの上方に突出形成され、比較例1のような従来のインプラント構造体におけるアバットメント2のポスト2cが行われていた役割(前記クラウンとの結合)を一部代替する。これにより、従来のインプラント構造体において問題となっていたアバットメント2のポスト内側空間2eの直径や厚み(t1)に拘らず、自在に形成することができる。
【0045】
また、比較例1のようなインプラント構造体では、アバットメント2の内部にアバットメントスクリュー3のヘッド部3bを収容する内側空間2eが必然的に形成されるため、内側空間2eの直径分だけアバットメント2のポスト2cの厚み(t1)が減少せざるを得ず、このため、強度が弱くなって破折するリスクが高い。しかし、本発明の実施例1では、アバットメントスクリュー13が中孔のない構造に形成されることで、上端直径d11が比較例1のポスト2cの厚み(t1)よりも厚いため、強度を向上させることができる。
【0046】
実施例2
図5は、本発明の実施例2による歯科用インプラント構造体を概略的に示す組立断面図であり、
図6は、
図5に示す歯科用インプラント構造体におけるアバットメントスクリューが分離された状態の断面図である。ここで、説明の便宜上、クラウンは省略した。
【0047】
図5及び
図6を参照すると、本発明の実施例2による歯科用インプラント構造体20は、実施例1と同様にフィクスチャー21と、アバットメント22と、アバットメントスクリュー23を含む。ただし、実施例2では、前記クラウンの内部に収容されるアバットメントスクリュー23のヘッド部23cの直径d12が実施例1に比べてより小さく形成される。
【0048】
実施例2では、アバットメントスクリュー23のヘッド部23cにドライバーホールを形成する代わりに、ラチェットなどの工具を用いてアバットメントスクリュー23を締めたり解いたりするために、ヘッド部23cの外面に対して垂直切断面23d(円内参照)を形成する。そこで、本実施例2では、アバットメントスクリュー23のヘッド部23cにドライバーホールの代わりに外面に垂直切断面23dを形成することで、実施例1によるアバットメントスクリュー13のヘッド部13cの直径d11に比べて、アバットメントスクリュー23のヘッド部23c直径d12をより小さく形成することができる。
【0049】
実施例3
図7は、本発明の実施例3による歯科用インプラント構造体を概略的に示す組立断面図であり、
図8は本発明の実施例3と比較例2とを比較するために概略的に示す断面図である。ここでは、説明の便宜上、クラウンは省略した。
【0050】
図7を参照すると、本発明の実施例3による歯科用インプラント構造体30は、実施例1と同様にフィクスチャー31と、アバットメント32と、アバットメントスクリュー33を含む。ただし、実施例3では、アバットメントスクリュー33のヘッド部33cの周囲にリング構造からなる弾性部材、すなわち、弾性リング34(円内参照)が結合される結合溝33dが帯状に形成される。この時、結合溝33dは、1個又は2個以上の複数個を形成することもできる。
【0051】
弾性リング34は、C-リングまたはO-リング構造からなることができ、O-リング構造にする際は、シリコーンゴム材または合成ゴム材や細いニチノールワイヤーを織り込んだリングからなることができる。また、C-リング構造とする際には、ニチノールのような金属膜やプラスチックを用いることができる。このような弾性リング34は、咀嚼作用時に前記クラウンに加えられる咬合力に起因した衝撃を前記クラウンとアバットメントのポスト32c及びアバットメントスクリュー33のヘッド部33cとの間を緩衝する一方、前記クラウンが接着剤を用いなくても、アバットメント32とアバットメントスクリュー33に結合されるようにし、意図しないクラウンの脱落を防ぐ。
【0052】
また、比較例2のようなインプラント構造体では、アバットメント4の内部にアバットメントスクリュー3のヘッド部3bが収容される内側空間4eが形成されているため、内側空間4eの直径だけアバットメント4のポスト4cの厚みが減少し、ここに結合溝4dを追加で形成する場合には、結合溝4dが形成された部位において、アバットメント4のポスト4cの厚みt3はさらに減少し、結合溝4dの形成工程時に穴があいて内側空間4eと連通する問題が発生し得る。しかし、実施例3では、アバットメントスクリュー33のヘッド部33cに中孔が形成されていないため、十分な厚み(t2)が確保され、比較例2のようなインプラント構造体での問題が発生しない。
【0053】
すなわち、
図8に示すように、比較例2では、アバットメント4に内側空間4eが形成されているが、実施例3では、アバットメント32のポスト32c外側に突出形成されたアバットメントスクリュー33のヘッド部33cには空の空間が形成されていない。このことから、アバットメントスクリュー33のヘッド部33cの周囲に結合溝33dを形成してもアバットメントスクリュー33のヘッド部33cの厚みにより構造的な問題が発生しない。
【0054】
クラウンを作製する際、弾性リング34に対応するクラウンの内側周囲に弾性リング34の一部が挿入される周囲溝(図示せず)を形成することもできる。クラウンをアバットメント32のポスト32cに安着する際、弾性リング34は、クラウンの内側に形成された周囲溝とアバットメントスクリュー33のヘッド部33cに形成された結合溝33dに水平状態で結合される。これにより、接着剤を用いなくてもクラウンをアバットメント32に固定することができる。
【0055】
一方、クラウンを安着させる際、アバットメント32のポスト32cとアバットメントスクリュー33のヘッド部33cは、クラウンの内側収容溝部に収容される。以下では、説明の便宜上、前記クラウンの内側に形成された収容溝部の内部に収容されるアバットメント32のポスト32cとアバットメントスクリュー33のヘッド部33cを、通称「クラウン収容部」とする。このクラウン収容部とクラウンの収容溝部との間に弾性を有する弾性体(図示せず)を挿入させて咬合力に対応して流動するクラウンを作製することもできる。この時、前記弾性体は、クラウン収容部の外面にコーティングしたり、接着することもできる。またはクラウンの収容溝部の内側壁にコーティングまたは接着することもできる。または前記弾性体は、独立した製品として薄く形成し、クラウン収容部とクラウン収容溝との間に挿入することもできる。
【0056】
実施例4
図9は、本発明の実施例4による歯科用インプラント構造体を概略的に示す組立断面図であり、
図10は、
図9におけるクラウンが結合された状態を概略的に示す断面図である。
【0057】
図9及び
図10を参照すると、本発明の実施例4による歯科用インプラント構造体40は、実施例1と同様にフィクスチャー41と、アバットメント42と、アバットメントスクリュー43を含む。そして、ここにクラウン45をより安定的にアバットメント42のポスト42cとアバットメントスクリュー43のヘッド部43cに緊密に密着固定するために、アバットメントスクリュー43の上部に螺合されるアバットメントキャップ44を含む。
【0058】
アバットメントキャップ44は、アバットメントスクリュー43のヘッド部43cに結合されるネジ部44aを含む。ネジ部44aは、外周面に形成されたネジ山141aを介してアバットメントスクリュー43のヘッド部43cのネジ溝部43dに螺合される。また、アバットメントキャップ44は、ネジ部44aの上部に形成されたヘッド部44bを含む。ヘッド部44bの中央上部にはアバットメントキャップ44を、アバットメントスクリュー43のヘッド部43cに組み込む時または分解する時に、ドライバ工具が結合されるためのドライバーホール44cを形成することができる。このとき、ドライバーホール44cは、例えば、ヘキサ(六角形)、星形または十字形などからなることができる。一方、アバットメントキャップ44のヘッド部44bは、
図10のように、クラウン45を緊密に固定するために外面がクラウン45の内側面に対応して、上部に行くほど直径が増加する傾斜面を有するテーパ構造からなることができる。または「T」字状構造からなることもできる。
【0059】
実施例5
図11は、本発明の実施例5による歯科用インプラント構造体を概略的に示す断面図であって、アバットメントスクリューがアバットメントから分離された状態を示す図である。
【0060】
図11を参照すると、本発明の実施例5による歯科用インプラント構造体50は、実施例1と同様に、フィクスチャー51と、アバットメント52と、アバットメントスクリュー53を含む。ただし、実施例1とは異なって、アバットメントスクリュー53のネジ部53aには、ネジ山53bがネジ部53aの上下部全体にわたって形成されておらず、実質的にフィクスチャー51に形成されたネジ山51aに螺合される下部のみに形成されている。
【0061】
実施例6
図12は、本発明の実施例6による歯科用インプラント構造体を概略的に示す断面図であって、アバットメントスクリューがアバットメントから分離された状態を示す図である。
【0062】
図12を参照すると、本発明の実施例6による歯科用インプラント構造体60は、実施例5と同様に、フィクスチャー61と、アバットメント62と、アバットメントスクリュー63を含む。ただし、実施例5とは異なって、アバットメントスクリュー63の連結部63bの外面63dがヘッド部63cに行くほど直径が増加する傾斜面を有するテーパ構造からなる。そして、連結部63bの外面63dが接面するアバットメント62の内面62aもまた連結部63bの傾斜面と同じ傾斜面を有するテーパ構造からなる。
【0063】
一方、本発明の実施例1~6にて提案されたアバットメントスクリュー13、23、33、43、53、63は、ヘッド部13c、23c、33c、43c、53c、63cが下部から上部に行くほど直径が小さくなる構造からなる。すなわち、ヘッド部13c、23c、33c、43c、53c、63cは、アバットメント側から上部に行くほど直径が小さくなるテーパ構造からなる。また、ヘッド部13c、23c、33c、43c、53c、63cは、円筒状構造からなることができる。このような構造によりヘッド部13c、23c、33c、43c、53c、63cは、クラウンに容易に収容されることができる。
【0064】
以上のように、本発明の好ましい実施例を特定の用語を使用して説明及び図示されたが、そのような用語は、単に本発明を明確に説明するためのものに過ぎない。そして、本発明の実施例及び記述された用語は、次の請求の範囲の技術的思想及び範囲から離脱することなく、多様な変形及び変化を加えることができることは自明である。このように変形された実施例らは、本発明の思想及び範囲から個別的に理解されてはならず、本発明の請求の範囲内に属すると言うべきであろう。
【国際調査報告】