(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-10-06
(54)【発明の名称】媒質の1つまたは複数の光学パラメータの測定のためのアセンブリおよびアセンブリを使用する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20250929BHJP
G01N 21/03 20060101ALI20250929BHJP
【FI】
G01N21/27 A
G01N21/03 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2025518540
(86)(22)【出願日】2023-09-28
(85)【翻訳文提出日】2025-05-19
(86)【国際出願番号】 SE2023050960
(87)【国際公開番号】W WO2024072303
(87)【国際公開日】2024-04-04
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521389837
【氏名又は名称】スペック-イメージング アー・ベー
【氏名又は名称原語表記】Spec-Imaging AB
【住所又は居所原語表記】Scheelevaegen 15 Ideon Alfa 3, 223 63 Lund, Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100182545
【氏名又は名称】神谷 雪恵
(74)【代理人】
【識別番号】100210099
【氏名又は名称】遠藤 太介
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ルネ セルジュ チャセ
【テーマコード(参考)】
2G057
2G059
【Fターム(参考)】
2G057AA01
2G057AB06
2G057AC01
2G057BA01
2G057DA05
2G057DA11
2G057DB10
2G057HA01
2G059BB04
2G059DD13
2G059EE01
2G059EE12
2G059GG07
2G059JJ05
2G059JJ06
2G059JJ24
2G059KK04
2G059MM04
2G059MM14
2G059NN01
(57)【要約】
本開示は、媒質の1つまたは複数の光学パラメータの測定のためのアセンブリであって、第1の空間次元(101)に延在する光シート(192)を提供するように構成された光シート生成器(110)であって、光シート(192)が第2の空間次元(102)に伝播経路を有し、光シート生成器(110)が、多色光を発する多色光源と、多色光源からの光を光シート(192)に再形成するための光シート生成光学系とを備える、光シート生成器と、第1の空間次元(101)で周期パターンまたは実質的な周期パターン(11、12、13)を有する強度変調を光シート(192)に対して適用することによって強度変調された光シート(193)を提供するように構成された光強度変調器(130)と、強度変調された光シート(193)が試料を照明することを可能にするように構成された、媒質の試料(140)のためのホルダ(145)と、試料を透過された光を受けるように配置され、各スペクトル成分がそれ自体の分離された光シートを形成するように光シートをそのスペクトル成分に分割するように配置された分散素子(3)と、分離された光シート(195)を二次元で記録するように構成された光学センサと、を備えるアセンブリに関する。本開示は、アセンブリを使用する方法にさらに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒質の1つまたは複数の光学パラメータの測定のためのアセンブリであって、
第1の空間次元(101)に延在する光シート(192)を提供するように構成された光シート生成器(110)であって、前記光シート(192)が第2の空間次元(102)に伝播経路を有し、前記光シート生成器(110)が、多色光を発する多色光源と、前記多色光源からの前記光を前記光シート(192)に再形成するための光シート生成光学系とを備える、光シート生成器と、
前記第1の空間次元(101)で周期パターンまたは実質的な周期パターン(11、12、13)を有する強度変調を前記光シート(192)に対して適用することによって強度変調された光シート(193)を提供するように構成された光強度変調器(130)と、
前記強度変調された光シート(193)が試料(140)を照明することを可能にするように構成された、前記媒質の前記試料のためのホルダ(145)と、
前記試料を透過された前記光を受けるように配置され、各スペクトル成分がそれ自体の分離された光シートを形成するように前記光シートをそのスペクトル成分に分割するように配置された分散素子(3)と、
前記分離された光シート(195)を二次元で記録するように構成された光学センサと
を備える、アセンブリ。
【請求項2】
前記分散素子(3)は回折格子である、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記分散素子(3)はプリズムである、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記光シート生成器(110)は、締結され、前記光強度変調器(130)に当接して配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記光強度変調器(130)は、前記試料ホルダ(145)に締結され、当接して配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記光強度変調器は、前記試料ホルダ(145)または容器上のインプリントである、請求項1から5のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記光学センサ(150)は、2D CCDカメラである、請求項1から6のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項8】
光強度変調器(130)は、
格子用の光学ホルダ(180)であって、電子的に制御され、第3の空間次元(103)で移動可能な、光学ホルダと、
複数の周期パターン(11、12、13)を備える格子(4)と
を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項9】
光強度変調器(130)は、
格子用の光学ホルダ(180)であって、電子的に制御され、前記第1の空間次元(101)で移動可能な、光学ホルダと、
周期パターン(11)を備える格子(2)と
を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項10】
媒質の1つまたは複数の光学パラメータを測定するための請求項1から9のいずれか一項に記載のアセンブリを使用する方法であって、
前記ホルダ(145)に前記媒質の試料(140)を提供すること(410)と、
前記アセンブリの前記光シート生成器(110)および前記光強度変調器(130)によって提供された前記強度変調された光シート(193)によって前記試料を照明すること(420)と、
前記アセンブリの前記光学センサ(150)によって、複数の分離された光シート(195)を記録すること(430)と、
前記記録された複数の分離された光シート(195)に基づいて前記1つまたは複数の光学パラメータを決定すること(460)と
を含む、方法。
【請求項11】
前記方法は、
前記アセンブリ内を伝播する光が前記格子の次の後続の第1の周期パターン(11、12、13)または、存在する場合、第2の周期パターン(14、15、16)に当たるように、前記第3の空間次元で前記光強度変調器(130)の前記光学ホルダを移動させること(415)と、
照明する前記ステップ(420)から前記方法を反復することと
をさらに含む、請求項8に記載のアセンブリを使用する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、
前記アセンブリ内を伝播する光が位相の所定の部分だけ位相シフトされるように、前記光強度変調器(130)の前記光学ホルダを前記第1の空間次元で前記周期パターン(11)の位相の所定の部分だけ移動させること(416)と、
照明する前記ステップ(420)から前記方法を反復することと
をさらに含む、請求項8に記載のアセンブリを使用する請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、媒質の1つまたは複数の光学パラメータの測定のためのアセンブリおよびアセンブリを使用する方法に関する。より具体的には、本開示は、独立請求項の導入部に定義された、媒質の1つまたは複数の光学パラメータの測定のためのアセンブリ、およびアセンブリを使用する方法に関する。
【0002】
背景技術
分光光度測定のいくつかの従来の手法では、検査中の媒質を照明するために(たとえば、多色光源から選択された)単色光が使用され、試料を通過した後の残りの光強度を記録するために、媒質の照明側に対して反対側に光検出器が配置される。試料の通過の前と後の光強度の比を計算することによって、単色光の波長に対する媒質の吸収係数または減衰係数が決定され得る。
【0003】
分光光度測定のより複雑な手法も知られている。たとえば、単色光を当てる、媒質の光学特性を測定するためのシステムが、国際公開第2012/015344号に記載されている。さらなる例の、混濁試料の分光光度測定のためのアセンブリが、国際公開第2020/180233号に開示されている。そこでは、空間的に変調された照明を使用して入射照明がマークされ、望ましくない多重散乱光を抑制することを可能にする。
【0004】
分光光度測定に対する先行技術の解決策の問題は、測定を行う際の効率および保存結果の精度である。
【0005】
したがって、分光光度測定の代替手法が必要とされている。この必要性は、混濁媒質での測定において特に顕著であり得る。
【0006】
発明の概要
透過構造化レーザー照明平面イメージング(Structured Laser Illumination Planar Imaging:SLIPI)は、側方散乱が測定される2Dイメージング直交SLIPよりもはるかに強い信号を生成する。SLIP測定をスペクトル分解させるために、使用される光シートは、平面の伝播方向に垂直な平面方向に前もってスペクトル分解されている。これは、特に構造化照明の位相シフトなしで単相構成を使用する場合、測定信号およびスペクトル分解能を制限する。
【0007】
本開示の目的は、上記で特定された先行技術の欠点および不都合点のうちの1つまたは複数を軽減、緩和または排除し、少なくとも上述の問題を解決することである。第1の態様によれば、媒質の1つまたは複数の光学パラメータの測定のためのアセンブリであって、第1の空間次元に延在する光シートを提供するように構成された光シート生成器であって、光シートが第2の空間次元に伝播経路を有し、光シート生成器が、多色光を発する多色光源と、多色光源からの光を光シートに再形成するための光シート生成光学系とを備える、光シート生成器と、第1の空間次元に周期パターンまたは実質的な周期パターンを有する強度変調を光シートに対して適用することによって強度変調された光シートを提供するように構成された光強度変調器と、強度変調された光シートが試料を照明することを可能にするように構成された、媒質の試料のためのホルダと、試料を透過された光を受けるように配置され、各スペクトル成分がそれ自体の分離された光シートを形成するように光シートをそのスペクトル成分に分割するように配置された分散素子と、分離された光シートを二次元で記録するように構成された光学センサと、を備えるアセンブリが提供される。媒質の1つまたは複数の光学パラメータの測定のためのアセンブリは、透過構造化レーザー照明平面イメージング測定をスペクトル分解することができる。シートは、試料に入る前にはスペクトル的に多様化されていないが、代わりに試料後にスペクトル分解されるため、多くの情報が得られ、信号強度も大幅に向上する。回折方向は変調方向に垂直であるため、変調周波数がもはやスペクトル分解能に影響を及ぼさず、したがって、より高いスペクトル分解能に達することができる。加えて、光ビームは、シートに成形され、強度が変調される前に回折される必要がないため、変調された光シートの生成が単純化される。
【0008】
光シート生成光学系は、シートを形成するためのレンズの任意の組合せであり、たとえば、円筒形凹レンズの後に円形凸レンズが続くものや、シートをさらに成形するための任意選択のスリットを含む、レンズを形成するために使用される任意の他の装置である。
【0009】
いくつかの実施形態によれば、分散素子は回折格子であり、回折格子は軽量の分散部品であるため有利である。
【0010】
いくつかの実施形態によれば、分散素子はプリズムであり、プリズムは非常に高精度で光を分散させるので有利である。
【0011】
いくつかの実施形態によれば、光シート生成器は、光強度変調器に締結され、当接して配置される。この実施形態の利点は、アセンブリをよりコンパクトにすることができることである。
【0012】
いくつかの実施形態によれば、光強度変調器は、試料ホルダに締結され、当接して配置される。この実施形態の利点は、アセンブリをよりコンパクトにすることができることである。
【0013】
いくつかの実施形態によれば、光強度変調器は、試料ホルダまたは容器上のインプリントである。この実施形態の利点は、アセンブリをよりコンパクトにすることができることである。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、光学センサは、2D CCDカメラであり、正確な2D記録を可能にする。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、光強度変調器は、格子用の光学ホルダであって、電子的に制御され、第3の空間次元で移動可能な、光学ホルダと、複数の周期パターンを備える格子と、を備える。この実施形態の利点は、以前の記録と組み合わせて、強度変調された光シートの暗部で測定の信号強度および分解能を得る部分を得るように、強度変調された光シートの位相を迅速に変更することができることである。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、光強度変調器は、格子用の光学ホルダであって、電子的に制御され、第1の空間次元で移動可能な、光学ホルダと、周期パターンを備える格子と、を備える。この実施形態の利点は、以前の記録と組み合わせて、強度変調された光シートの暗部で測定の信号強度および分解能を得る部分を得るように、強度変調された光シートの位相を迅速に変更することができることである。
【0017】
第2の態様によれば、媒質の1つまたは複数の光学パラメータを測定するための第1の態様によるアセンブリを使用する方法であって、ホルダに媒質の試料を提供することと、アセンブリの光シート生成器および光強度変調器によって提供された強度変調された光シートによって試料を照明することと、アセンブリの光学センサによって、複数の分離された光シートを記録することと、記録された複数の分離された光シートに基づいて1つまたは複数の光学パラメータを決定することと、を含む、方法が提供される。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、方法は、アセンブリ内を伝播する光が格子の次の後続の第1の周期パターンまたは、存在する場合、第2の周期パターンに当たるように、第3の空間次元で光強度変調器の光学ホルダを移動させることと、照明するステップから方法を反復することと、をさらに含む。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、方法は、アセンブリ内を伝播する光が位相の所定の部分だけ位相シフトされるように、光強度変調器の光学ホルダを第1の空間次元で周期パターンの位相の所定の部分だけ移動させることと、照明するステップから方法を反復することと、をさらに含む。
【0020】
第2の態様の効果および特徴は、第1の態様に関連して上述したものと大体において類似している。第1の態様に関連して述べた実施形態は、第2の態様と大部分互換性がある。
【0021】
本開示は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。詳細な説明および具体例は、本開示の好ましい実施形態を例示としてのみ開示している。当業者は、詳細な説明の助言を読めば、本開示の範囲内で変更および修正が行われ得ることを理解する。
【0022】
ゆえに、本明細書に開示した開示は、記載の装置の特定の構成部品または記載の方法のステップに限定されず、そのような装置および方法は変更され得ることを理解されたい。本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないことも理解されたい。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、冠詞「a」、「an」、「the」、および「said」は、文脈がそうでないことを明示的に示すのでない限り、要素のうちの1つまたは複数があることを意味することを意図していることに留意されたい。よって、たとえば、「1つの(a)ユニット」または「その(the)ユニット」への言及は、いくつかの装置などを含む場合がある。さらに、「備える(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」、および同様の表現は、他の要素またはステップを排除するものではない。
【0023】
本開示の上記の目的、ならびに追加の目的、特徴および利点は、本開示の例示的な実施形態の以下の例示的かつ非限定的な詳細な説明を添付の図面と併せて参照することによってより十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1a】第3の空間方向に見たいくつかの実施形態による例示的なアセンブリを示す概略ブロック図である。
【
図1b】第1の空間方向に見た、
図1aに示す例示的なアセンブリを示す概略ブロック図である。
【
図2】
図1aおよび
図1bに開示されたアセンブリの部品の斜視図である。
【
図3】周期パターンを有する本開示による格子の一例を示す図である。
【
図4】複数の周期パターン間の位相シフトを有する本開示による格子の一例を示す図である。
【
図5】いくつかの実施形態による例示的な方法ステップを示すフローチャートである。
【0025】
発明を実施するための形態
次に、本開示を、本開示の好ましい例示的な実施形態が示されている添付の図面を参照して説明する。しかしながら、本開示は、他の形態で具体化されてもよく、本明細書に開示した実施形態に限定されると解釈されるべきではない。開示の実施形態は、本開示の範囲を当業者に十分に伝えるために提供されている。
【0026】
上述のように、分光光度測定の多くの従来の手法は、連続して当てられる単色ビームを使用して、検査中の媒質の試料を照明する。2つ以上の波長についての情報を取得するためには、関心対象のすべての波長による走査が行われる必要がある。そのような手法は、測定を行うには非効率的であり得る。
【0027】
分光光度測定の別の手法は、「Quantitative measurements of turbid liquids via structured laser illumination planar imaging where absorption spectrophotometry fails」、Regnimaら、Applied Optics、第56巻、第13号、2017年5月、3929~3938ページに記載されており、この手法では、450nmの波長と638nmの波長とをそれぞれ有する2つのレーザーが使用され、一度に1つのレーザーを測定のために励起する。
【0028】
分光光度測定のさらなる手法は、国際公開第2012/015344号および国際公開第2020/180233号に記載されている。
【0029】
以下では、効率的で正確な測定を可能にするための実施形態について説明する。さらに、いくつかの実施形態は、検査中の媒質の光学特性を測定する際の柔軟性を高める。それにより、広範囲のさまざまな光学特性を有する媒質に対して同じアセンブリによって正確な測定を実行することができる。
【0030】
一般に、「測定」という用語は、たとえば、分光光度測定を指し得る。
【0031】
また、一般に、「光学パラメータ」という用語は、光学特性を記述する任意の適切な光学パラメータ、たとえば、吸収係数、減衰係数(別称、吸光係数)、散乱係数、蛍光量子収率(QY)、リン光量子収率(QY)などを指し得る。吸光係数は、吸収係数と散乱係数の和に等しい。光学特性の他の例には、濃度、平均断面積、および粒径(媒質中に粒子が存在する場合)のうちの1つまたは複数に関連する特性が含まれる。よって、これらのパラメータも導出され得る。ゆえに、光学パラメータを測定することは、(対応する)光学特性を測定することとして定義され得る。
【0032】
また、一般に、「媒質」という用語は、たとえば、液体、ゲル、固体媒質、または気体を指し得る。いくつかの一般的な用途は、液体媒質を含む。いくつかの実施形態は、混濁媒質および/または発光媒質に関する測定に特に適する場合があり、混濁は散乱および吸収を含み、発光はフォトルミネッセンス(たとえば、蛍光および/またはリン光)を含む。
【0033】
また、一般に、散乱による例示は、フォトルミネッセンス媒質の発光にも関連することを意味し、その逆も同様である。
【0034】
また、一般に、「光」という用語は、特定の範囲内の波長を有する電磁放射を指す。この範囲は、一般に可視光と呼ばれるもの(すなわち、電磁放射スペクトルの人間の目に見える部分)を含み得る。代替的または追加的に、この範囲は、一般に非可視光と呼ばれるもの(すなわち、電磁放射スペクトルの人間の目には見えない部分)、たとえば赤外(IR)光および/または紫外(UV)光を含んでもよい。「照明」という用語は、上で定義したような光による照射を指す。
【0035】
また、一般に、「多色」という用語は、電磁放射スペクトルの2つ以上の(可視または非可視の)波長を含むものを表す。
【0036】
また、一般に、(単一の)光学センサという用語は、構成光学センサのアレイ/マトリックス(各画素が対応する構成光学センサ、光検出器を有するデジタルカメラなど)、または記録領域を掃引するように構成された単一の光学センサ素子(単一の光学検出器)を指し得る。
【0037】
図1aおよび
図1bは、媒質の1つまたは複数の光学パラメータの測定のための、いくつかの実施形態による例示的なアセンブリを概略的に示している。
図1aは、アセンブリの1つの変形例の側面図を示しており、
図1bは、アセンブリの上面図を示している。
【0038】
このアセンブリは、光シート生成器(light sheet generator:LSG)110と、光強度変調器(light intensity modulator:LIM)130と、媒質の試料(sample:SAMP)140のためのホルダ(holder:HOLD)145と、回折格子3と、光学センサ(sensor:SENS)150とを備える。
【0039】
光シート生成器110は、第2の空間次元102の伝播経路を有する多色光シート192を提供するように構成される。
【0040】
第2の空間次元は、(たとえば、ユークリッド座標で)第1の空間次元に対して非平行である(典型的には直交する)。第1および第2の空間次元は、(第1の空間次元と第2の空間次元とに対して非平行であり、典型的には直交する)第3の空間次元103とともに、三次元空間に及ぶ。「空間次元」および「次元」という用語を、本明細書では区別なく使用する。
【0041】
光シートは、たとえば、(たとえば、ユークリッド座標で)単一の平面内の2つ以上の経路に沿って伝播する光として定義され得る。
【0042】
光スペクトルが第1の空間次元に延在することは、第1の空間次元の経路に沿った各座標が多くても1つの光の波長を受けるという特性を有する光波長変動として理解され得る。
【0043】
光強度変調器(LIM)130は、光シート192を変調するための格子2、4を保持する光学ホルダ180を備える。光強度変調器130は、第1の空間次元で周期パターンまたは実質的な周期パターンを有する強度変調を(多色光シートに)適用することによって強度変調された多色光シート193を提供するように構成される。
【0044】
周期パターンの例には、ロンキールーリングによって定義されるパターン、すなわち、
図2に示すような一定間隔のバーと空間方形波(たとえば、
【数1】
の場合には
【数2】
に等しく、
【数3】
の場合には
【数4】
に等しい)、および正弦関数によって定義されるパターンが含まれる。実質的な周期パターンの例には、その平均値を下回る値とその平均値を上回る値との間で
【数5】
を超える一定の周期性で変化する任意のパターンが含まれるが、その平均値を下回る値および/またはその平均値を上回る値は、周期によって異なり得る。実質的な周期パターンの別の例は、
【数6】
に沿ったわずかな周期性シフトを有するパターンである。したがって、さらなる周期パターンは、三角形マスク、または任意の周期パターンマスクであってもよい。
【0045】
光強度変調器は、たとえば、ロンキー格子であってもよい。ロンキー格子1の一例が
図3および
図4に示されている。
【0046】
図3のロンキー格子は、周期パターン11を備える。格子は、周期パターンを位相シフトさせるように移動可能であることを意図されている。
図1bおよび
図2の例では、格子は、この目的のために第1の次元101で移動可能である。
【0047】
図4のロンキー格子は、互いに隣同士に配置された3つの周期パターン11、12、13を備える。中央の周期パターン12は、右の周期パターン13と左の周期パターン11とに対して120度の位相シフトps1を有する。格子は、適用のために複数の位相シフト周期パターンのうちの1つを選択するように移動可能であることを意図されている。
図1bおよび
図2の例では、格子は、この目的のために第3の次元103で移動可能である。
【0048】
図4の格子は、2つの空間方向101、103に平面内に延在するベースプレート4と、各々が
図4に示すのと同じ間隔周波数の表面18および空間19周期波光学マスクを有する複数n個の周期パターン11、12、13とを備える。周期パターン11、12、13は、隣接する第1の周期パターンのマスク間の位相シフトps1で、ベースプレート4において互いに隣接して配置されている。
図4に開示するように、第1の位相シフトps1は360/n度である。
図4のようにnが3である場合、位相シフトps1は120度である。
【0049】
図1a、
図1bおよび
図2を再度参照すると、本開示の第1の態様は、媒質の1つまたは複数の光学パラメータの測定のためのアセンブリであって、第1の空間次元101に延在する光シート192を提供するように構成された光シート生成器110であって、光シート192が第2の空間次元102に伝播経路を有し、光シート生成器110が、多色光を発する多色光源と、多色光源からの光を光シート192に再形成するための光シート生成光学系とを備える、光シート生成器と、第1の空間次元101に周期パターンまたは実質的な周期パターン11、12、13を有する強度変調を光シート192に対して適用することによって強度変調された光シート193を提供するように構成された光強度変調器130と、強度変調された光シート193が試料を照明することを可能にするように構成された、媒質の試料140のためのホルダ145と、試料を透過された光を受けるように配置され、各スペクトル成分がそれ自体の分離された光シートを形成するように光シートをそのスペクトル成分に分割するように配置された分散素子3と、分離された光シート195を二次元で記録するように構成された光学センサと、を備える、アセンブリを示している。スペクトル分離された光シートは、均一な多色光源の場合、実際には、無限数のシートを有する連続体である。
【0050】
図1a、
図1b、および
図2では、分散素子3は回折格子であるが、他の実施形態では、分散素子3はプリズムであってもよい。光学センサ150は、2D CCDカメラである。
【0051】
変調された光シートが試料に入るまで空間変調を保存するために、光強度変調器を可能な限り試料の近くに配置することが好ましい場合がある。これは、光強度変調器が試料用の容器上のインプリントである手法によって本質的に達成される。
【0052】
よって、光シート生成器110は、光強度変調器130に締結され、当接して配置されてもよく、光強度変調器130は、試料ホルダ145に当接するように、締結されるとともに当接して配置されてもよく、光強度変調器は、試料ホルダ145または容器上のインプリントであってもよい。
【0053】
媒質の試料140のためのホルダ145は、強度変調された多色光シートが試料を照明することを可能にするように構成される。たとえば、ホルダは、試料がホルダに提供されたときに、強度変調された多色光シートが試料を照明するように、光強度変調器および光シート生成器に対して配置されてもよい。
【0054】
典型的には、強度変調された多色光シート全体が試料を照明するが、いくつかの実施形態は、強度変調された多色光シートの一部のみが試料を照明する解決策を適用し得る。
【0055】
ホルダは、たとえば、試料を受けるためのスタンドであってもよい。試料は、(たとえば、媒質が固体、またはゲルである場合)容器なしで提供されてもよい。あるいは、試料は、(たとえば、媒質が液体、または気体である場合)容器に入れて提供されてもよく、その場合、ホルダは、試料が含まれる容器を受けるのに適していてもよい。例示的な容器はキュベット(たとえば、ガラスキュベット)である。
【0056】
光学センサ150は、試料を出て分散素子3によってスペクトル分離された後の光の強度を(光スペクトルにわたって)記録するように構成される。次いで、記録された強度を使用して、1つまたは複数の光学パラメータを決定することができる。
【0057】
典型的には、光学センサは、カメラ(たとえば、電荷結合素子(charge-coupled device:CCD)カメラや科学的相補型金属酸化膜半導体(scientific complementary metal-oxide-semiconductor:sCMOS)カメラ)であり得る。
【0058】
光学センサ150は、照明とは反対に試料を出た後に分散素子3によってスペクトル分離された光(
図1aおよび
図1bに195として示されている、いわゆる透過光)の強度を記録するように構成される。
【0059】
図1aおよび
図1bを参照すると、光強度変調器130は、格子用の光学ホルダ180であって、電子的に制御され、第3の空間次元103で移動可能な、光学ホルダと、アセンブリが複数の周期パターン11、12、13を備える格子4と、を備える。格子4を横方向または第3の空間方向103に移動させることにより、周期パターンの位相を迅速かつ厳密正確に位相シフトさせることができる。しかしながら、代替の実施形態では、光強度変調器130は、格子用の光学ホルダ180であって、電子的に制御され、第1の空間次元101で移動可能な、光学ホルダと、アセンブリが周期パターン11を備える格子2と、を備えてもよい。これは、ただ1つの周期パターンを有する格子をより小さくすることができるため、空間を節約し得る。位相シフトは、第1の空間方向の精密な移動によって達成される。
【0060】
本開示の第2の態様は、媒質の1つまたは複数の光学パラメータを測定するために第1の態様によるアセンブリを使用する方法であって、ホルダ145に媒質の試料140を提供すること410と、アセンブリの光シート生成器110および光強度変調器130によって提供された強度変調された光シート193によって試料を照明すること420と、アセンブリの光学センサ150によって、複数の分離された光シート195を記録すること430と、記録された複数の分離された光シート195に基づいて1つまたは複数の光学パラメータを決定すること460と、を含む、方法を示す。
【0061】
一実施形態によれば、方法は、アセンブリ内を伝播する光が格子の次の後続の第1の周期パターン11、12、13または、存在する場合、第2の周期パターン14、15、16に当たるように、第3の空間次元で光強度変調器130の光学ホルダを移動させること415と、照明するS2ステップから方法を反復することと、を含む。
【0062】
一実施形態によれば、方法は、アセンブリ内を伝播する光が位相の所定の部分だけ位相シフトされるように、光強度変調器130の光学ホルダを第1の空間次元で周期パターン11の位相の所定の部分だけ移動させること416と、照明するS2ステップから方法を反復することと、を含む。
【0063】
格子を有するアセンブリを使用して1つまたは複数の光学パラメータを決定する場合、異なる周期パターンを有するn個の最後に記録された測定値のアレイが保持される。周期パターンを使用して新しい記録が行われると、その記録は、その固有の周期パターンのためのアレイ内のその位置の最後の測定値に取って代わる。第2の周期パターンが格子上に存在する場合、対応するアレイ(または同じであるが拡張されたアレイの一部)が第2の周期パターンのために保持される。このようにして、1つまたは複数の光学パラメータを決定するための新しい更新された計算を、単一の新しい記録ごと行うことができる。その効果は、
図4の格子を使用したときに行われたn個の最後の記録に基づくが、単一の記録ごとに更新されたリアルタイムの結果である。これにより、ライブ測定が達成される。
【0064】
図5は、媒質の1つまたは複数の光学パラメータを測定するためのアセンブリ(たとえば、
図1a~
図4に関連して説明したアセンブリの変形例のいずれか)の例示的な使用方法400を示すフローチャートである。
【0065】
この方法は、任意選択のステップ405で開始してもよく、そこで、アセンブリで生成されるべき多色光シート(たとえば、192)の光スペクトルの範囲が選択される。
【0066】
ステップ410において、媒質の試料が、(たとえば、位置および/または向きによって)アセンブリで提供されるべき強度変調された多色光シートが試料を照明するように、アセンブリのホルダにおいて提供される。
【0067】
ステップ420において、試料は、(たとえば、上記で例示したような光強度変調器によって強度変調されている多色光シートを提供するように構成された光シート生成器の光源をオンにすることによって)強度変調された多色光シートによって照明される。
【0068】
変調された照明は、記録された信号の変調振幅の測定からの単一の光散乱強度の決定を可能にする。(変調を変位させることによる)異なる位相の適用により、対象の波長範囲全体について単一の光散乱の強度を決定することが可能になる。
【0069】
たとえば、異なる位相についての測定の画像から、再構成画像が複数の光散乱強度および望ましくない反射の影響を受けないように、再構成画像が画像の後処理後に作成されてもよい。よって、再構成画像を使用して、複数の光散乱強度を抑制できなかった場合よりも正確に試料の媒質の吸光係数を推定することができる。
【0070】
ステップ430において、
図1aおよび
図1bに関連して上記で例示したように、照明とは反対に試料を出る光の強度の少なくとも1つの画像が、光学センサによって記録される。
【0071】
より多くの位相が測定されるべきである場合(任意選択のステップ435からのY経路)、方法は420に戻り、そこで新しい位相が適用され、ステップ430が新しい位相に対して繰り返される。それ以上の位相が測定されない場合(任意選択のステップ435からのN経路)、方法は任意選択のステップ440に進む。
【0072】
任意選択のステップ440では、記録された画像から変調振幅が抽出される。たとえば、これは、記録された(1つまたは複数の)画像を後処理し、照明とは反対に試料を出る光の両方の強度について記録された変調の振幅を抽出する(送信された信号の検出)ことによって達成され得る。上述したように、変調振幅は、たとえば、一次散乱と高次散乱とを区別するために使用され得る。
【0073】
任意選択のステップ445において、試料への光の透過が、記録された(1つまたは複数の)画像から対象の情報を抽出するのに十分であるかどうかが判定される。たとえば、任意選択のステップ445は、抽出された変調振幅が、試料への光の透過が十分であるかどうかを判定するための閾値よりも高いかどうかを判定することを含んでもよい。
【0074】
試料への光の透過が十分でない場合(任意選択のステップ445からのN経路)、方法は、任意選択のステップ447において、光源の光強度を増加させるか、または光学センサの積分時間を強め、ステップ420に戻って、調整を適用して測定を繰り返すことを含み得る。
【0075】
試料への光の透過が十分である場合(任意選択のステップ445からのY経路)、方法は任意選択のステップ450に進んでもよく、そこで測定値が較正され得る。たとえば、較正は、光スペクトルの空間較正を提供するための、変位可能な(1つもしくは複数の)単色フィルタ(または比較的狭い帯域幅を有するフィルタ)の適用を含み得る。
【0076】
本明細書に提示したさまざまな手法のいくつかの実施形態によれば、強度変調は、背景ノイズ、背景反射、拡散透過光、のうちの1つまたは複数の除去(または少なくとも抑制)を可能にし得る。
【0077】
一般に、本明細書で使用するすべての用語は、異なる意味が明確に与えられ、かつ/または用語が使用される文脈から示唆されるのでない限り、関連する技術分野における用語の通常の意味に従って解釈されるべきである。
【0078】
本明細書では、さまざまな実施形態を参照している。しかしながら、当業者は、依然として特許請求の範囲内に入る、記載の実施形態に対する多数の変形例を認識するであろう。
【0079】
たとえば、本明細書に記載の方法実施形態は、特定の順序で行われるステップによる例示的な方法を開示している。しかしながら、これらの一連のイベントは、特許請求の範囲から逸脱することなく別の順序で行われ得ることが認識される。さらに、いくつかの方法ステップは、順番に行われるものとして説明されていても、並列に行われ得る。よって、本明細書に開示の任意の方法のステップは、ステップが別のステップの後に続くか、もしくは別のステップに先行すると明示的に記載されていない限り、かつ/またはステップが別のステップの後に続くか、もしくは別のステップに先行しなければならないことが暗示される場合を除き、開示の正確な順序で行われる必要はない。
【0080】
同様に、実施形態の説明において、機能ブロックの特定のユニットへの分割は、決して限定を意図するものではないことに留意されたい。反対に、これらの分割は単なる例である。本明細書に1つのユニットとして記載された機能ブロックが、2つ以上のユニットに分割されてもよい。さらに、本明細書に2つ以上のユニットとして実装されるものとして記載された機能ブロックが、より少ない(たとえば、単一の)ユニットに統合されてもよい。
【0081】
本明細書に開示した実施形態のいずれかの任意の特徴は、適切であれば、任意の他の実施形態に適用され得る。同様に、実施形態のいずれかの任意の利点は、任意の他の実施形態に適用されてもよく、その逆も同様である。
【0082】
ゆえに、記載の実施形態の詳細は、例示目的のために提示された単なる例であり、特許請求の範囲内にあるすべての変形例が包含されることが意図されていることを理解されたい。
【国際調査報告】