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特表2025-533908多能性幹細胞由来の巨核球及び血小板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-10-09
(54)【発明の名称】多能性幹細胞由来の巨核球及び血小板
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/078 20100101AFI20251002BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20251002BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20251002BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20251002BHJP
   A61K 35/19 20150101ALI20251002BHJP
【FI】
C12N5/078 ZNA
C12N5/10
A61P7/04
A61P7/00
A61K35/19
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2025520027
(86)(22)【出願日】2023-10-05
(85)【翻訳文提出日】2025-05-07
(86)【国際出願番号】 US2023076102
(87)【国際公開番号】W WO2024077153
(87)【国際公開日】2024-04-11
(31)【優先権主張番号】63/413,337
(32)【優先日】2022-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】525128397
【氏名又は名称】ガルーダ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シャー, ドゥヴァニット
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065BA30
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB38
4C087NA14
4C087ZA53
(57)【要約】
本開示は、ヒト人工多能性幹細胞(iPSC)から巨核球及び/又は血小板を生成するための効率的なエクスビボプロセスを提供する。様々な実施形態において本開示に従って生成される細胞及び血小板は、機能的であり、かつ/又は末梢血、骨髄、若しくは他の組織から単離された対応する系統により密接に類似している。いくつかの態様における本発明は、本明細書に開示される方法によって産生される単離された細胞/血小板及び組成物、並びに治療のための方法を提供する。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巨核球を含む細胞集団を調製するための方法であって、
分化した多能性幹細胞(PSC)の集団からCD34+細胞を濃縮して、CD34+濃縮集団を調製することと、
前記CD34+濃縮集団の内皮・造血転換(EHT)を誘導して、造血幹細胞(HSC)及び/又は造血幹前駆細胞(HSPC)を含む集団を調製し、任意選択的に、内皮・造血転換を受ける細胞を採取することと、
前記HSC集団を巨核球に分化させ、任意選択的に、血小板を形成することと、を含む、方法。
【請求項2】
EHTが、少なくとも2日かつ12日以下にわたって誘導される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記HSC及び/又はHSPCを含む集団が、非接着細胞を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記PSC集団が、リンパ球、臍帯血細胞、末梢血単核細胞、CD34+細胞、又はヒト一次組織に由来するヒトiPSC集団である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記iPSC集団が、末梢血から単離されたCD34+濃縮細胞に由来する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記iPSCが、1つ以上のHLAクラスI及び/又はHLAクラスIIの遺伝子についてホモ接合性である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記iPSCが、HLA-DRB1についてホモ接合性である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記iPSCが、HLA-B及びHLA-Cの両方についてホモ接合性である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記iPSCが、1つ以上のHLAクラスI遺伝子を欠失し、1つ以上のクラスII遺伝子を欠失し、かつ/又はHLA若しくはMHCの発現能力若しくは提示能力を支配する1つ以上の遺伝子を欠失するように遺伝子編集されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記iPSCが、HLA-Aの欠失を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記iPSCが、HLA-DPB1及び/又はHLA-DQB1の欠失を含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記iPSCが、HLA-Aneg、HLA-B及びHLA-Cの両方についてホモ接合性、HLA-DPB1neg、並びにHLA-DQB1negであり、任意選択的に、HLA-DRB1についてホモ接合性である、請求項2~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記HLA又はMHCの発現能力又は提示能力を支配する1つ以上の遺伝子が、β2-ミクログロブリン及び/又はCIITAである、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
CD34+濃縮及び内皮・造血転換が、iPSC分化の8日目~15日目に誘導される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記内皮・造血転換が、長期造血幹細胞(LT-HSC)、短期造血幹細胞、及び造血幹前駆細胞のうちの1つ以上を含む、HSC集団を生成する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
CD34+細胞が、CD34+の浮遊細胞及び/又は接着細胞の採取を含む、内皮・造血転換を受ける培養物から採取される、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記HSC及び/又はHSPCを含む集団が、長期造血幹細胞(LT-HSC)を含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項18】
前記内皮・造血転換の誘導が、dnmt3bの発現又は活性を増加させることを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記内皮・造血転換の誘導が、前記CD34濃縮細胞に周期的伸張を適用することを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記周期的伸張が、2D、3D、又は4D周期的伸張である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記内皮・造血転換の誘導が、Piezo1活性化を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記Piezo1活性化が、前記CD34+濃縮細胞又はその画分を、Yoda1、Jedi1、Jedi2、又はそれらの類似体若しくは誘導体、あるいは一本鎖RNAアゴニストから任意選択的に選択される1つ以上のPiezo1アゴニストと接触させることによるものである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記Piezo1アゴニストの有効量が、0.1~500μMの範囲内、又は0.1~100μMの範囲内である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記内皮・造血転換の誘導が、Trpv4活性化を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記Trpv4活性化が、前記CD34+濃縮細胞を、GSK1016790A、4α-PDD、又はそれらの類似体若しくは誘導体から任意選択的に選択される1つ以上のTrpv4アゴニストと接触させることによるものである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記HSC及び/又はHSPCを含む集団を巨核球に分化させるステップが、トロンボポエチン(TPO)と培養することを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記HSC及び/又はHSPCを含む集団を巨核球に分化させる前記ステップが、IL-1、IL-3、IL-6、IL-9、IL-11、SCF、SDF-1、及びPDGF-BBから選択される1つ以上の追加のサイトカイン又は成長因子と培養することを更に含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記巨核球を増殖させるステップを更に含み、任意選択的に、トロンボポエチン(TPO)、任意選択的に、幹細胞因子(SCF)、FMS様チロシンキナーゼ3リガンド(Flt3L)、IL-6、IL-9、及びエリスロポエチン(EPO)から選択される1つ以上の追加のサイトカイン又は成長因子と培養することである、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
任意選択的に、幹細胞因子(SCF)、IL-6、及びIL-9のうちの1つ以上と培養することによって、前記巨核球の成熟を促進するステップを更に含む、請求項26~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記巨核球の成熟を促進する前記ステップが、エリスロポエチン(EPO)及び/又はIL-8の存在下で培養することを含まない、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前血小板及び血小板が、線維芽細胞成長因子4(FGF4)及び間質細胞由来因子1(SDF-1)の存在下での培養によって前記巨核球から形成される、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
巨核球又は前血小板が、前記細胞に流体力学的せん断応力を受けさせるバイオリアクター内で培養される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記血小板が、トロンビンによって活性化可能である、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
請求項1~33のいずれか一項に記載の方法によって調製される血小板と、担体と、を含む、組成物。
【請求項35】
50mLの体積当たり少なくとも約10個の血小板、又は少なくとも約1010個の血小板、又は少なくとも約1011個の血小板、又は少なくとも約1012個の血小板を含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項36】
血小板輸血を必要とする対象を治療する方法であって、請求項34又は35に記載の血小板組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項37】
前記対象が、血小板減少症を有する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記対象が、橈尺骨癒合症を伴う無巨核球性血小板減少症、ANKRD26関連血小板減少症、常染色体優性血小板減少症、先天性無巨核球性血小板減少症、CYCS関連血小板減少症、FYB関連血小板減少症、特発性血小板減少性紫斑病、又はX連鎖性血小板減少症を有する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記対象が、出血を経験している、請求項36~38のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容が参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、2022年10月5日に出願された米国仮特許出願第63/413,337号の利益及び優先権を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、EFS-Webを介してXML形式で提出されており、参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、配列表を含む。2023年9月26日に作成された当該XMLコピーは、GRU-013PC_Sequence_Listing.xmlという名称であり、サイズが30,048バイトである。
【背景技術】
【0003】
生理学的止血、血栓形成、及び創傷治癒において主要な役割を果たすだけでなく、血小板は、宿主の炎症並びに感染及び傷害に対する免疫応答にも大きく寄与することができる。造血疾患を有するか、又は積極的な化学療法を受けている多くの患者は、献血/血小板献血を通して得られる血小板濃縮物を使用する血小板輸血を必要とする。しかしながら、例えば、血液製剤、特に血小板の需要が頻繁に供給を上回るにつれて、献血産業が継続的な危機に直面しているため、ボランティア献血者から得られる輸血用の血小板は、限られた資源である。したがって、造血幹細胞(HSC)由来のものなどの大規模な市販の巨核球及び/又は血小板の開発は、再生医療における魅力的なツールである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、様々な態様及び実施形態では、巨核球・赤血球前駆細胞(MEP)、CFU-Me(多能性造血幹細胞又は血球芽細胞)、巨核芽球、前巨核球、及び巨核球などの巨核球系統、並びにそれらに由来する前血小板、前駆血小板、又は血小板を含む、細胞療法のための造血系統を生成するための方法を提供する。様々な実施形態では、本発明は、遺伝子編集されたiPSCを含む、ヒト人工多能性幹細胞(iPSC)から巨核球及び/又は血小板を開発するための効率的なエクスビボプロセスを提供する。様々な実施形態において本開示に従って生成される巨核球及び/又は前血小板、前駆血小板、若しくは血小板は、機能的であり、かつ/あるいは骨髄若しくは血液から単離された対応する天然系統、又は血液から単離された対応する天然血小板により密接に類似している。本発明はまた、本明細書に開示される方法によって産生される単離された細胞及び組成物、並びに治療のための方法を提供する。
【0005】
他の態様及び実施形態では、本開示は、集団のかなりの部分と免疫適合性であるように遺伝子編集されているiPSCに由来するHSCを提供する。これらのHSC集団は、より効率的なエクスビボ血小板産生のために使用することができるか、あるいは他の態様では、定期的輸血の必要性を低減又は排除する必要がある患者に、HSC、又は巨核球、血小板、若しくはそれらの前駆細胞を送達するために使用することができる。
【0006】
一態様では、本開示は、巨核球を含む細胞集団を調製するための方法を提供する。本開示の巨核球は、機能的な血小板を更に生成することが可能である。本開示の方法は、胚様体に分化した人工多能性幹細胞(iPSC)集団などの多能性幹細胞(PSC)集団を調製することと、CD34+細胞を濃縮して、それによって、CD34+濃縮集団を調製することと、を含む。内皮・造血転換(EHT)が、CD34+濃縮集団において誘導され、それによって、造血幹細胞(HSC)及び/又は造血幹前駆細胞(HSPC)を含む集団を調製する。結果として得られる細胞集団(又はその画分)を巨核球に分化させ、任意選択的に血小板を産生するために使用することができる。
【0007】
様々な実施形態では、iPSCは、体細胞を再プログラミングすることによって調製される。いくつかの実施形態では、iPSCは、末梢血から単離されたCD34+細胞に由来する。様々な実施形態では、iPSCは、レシピエント(本明細書に記載される治療を必要とする対象)に対して自家又は同種異系である(例えば、1つ以上の遺伝子座においてHLA適合である)。様々な実施形態では、iPSCは、HLA適合を支援するように遺伝子編集することができる。例えば、iPSCは、HLA-A、HLA-B、及びHLA-Cのうちの1つ以上を欠失し、かつHLA-DP、HLA-DQ、及びHLA-DRのうちの1つ以上を欠失するように遺伝子編集することができる。ある特定の実施形態では、iPSCは、少なくとも1つのHLAクラスI及び少なくとも1つのHLAクラスIIの複合体の発現を保持する。ある特定の実施形態では、iPSCは、少なくとも1つの保持されたクラスI及びクラスIIの遺伝子座についてホモ接合性である。いくつかの実施形態では、iPSCは、HLA-Aneg、HLA-B及びHLA-Cの両方についてホモ接合性、並びにHLA-DPB1neg及びHLA-DQB1negであるように遺伝子編集される。いくつかの実施形態では、iPSCは、HLA-DRB1について更にホモ接合性である。
【0008】
様々な実施形態では、iPSCが調製され、培養系を使用して増殖される。増殖したiPSCは、培養物から回収し、胚様体(EB)を生成するために使用することができる。iPSCの分化によって生成されるEBは、iPSCの三次元凝集体であり、分化方法(複数可)に基づいて3つ(又は代替的に2つ若しくは1つ)の胚性生殖細胞層を含む。いくつかの実施形態では、各態様によるプロセスは、多能性幹細胞(例えば、EB)からCD34+細胞を生成し、内皮・造血転換を誘導することを含むことができる。HSCは、機械的、生化学的、代謝的、及び/又は局所的刺激、並びに細胞外基質、ニッチ因子、細胞外因性因子などの因子、細胞内因性特性の誘導を含み、かつ薬理学的及び/又は遺伝的手段を含む、様々な刺激又は因子を使用して、細胞集団から生成することができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、iPSC分化は、細胞が少なくとも約20%のCD34+又は少なくとも約30%のCD34+になるまで進行する。いくつかの実施形態では、CD34濃縮及びEHTは、iPSC分化の7日目~14日目に誘導され得る。iPSCの分化は、公知の技術によるものであり得る。いくつかの実施形態では、iPSC分化は、bFGF、Y27632、BMP4、VEGF、SCF、EPO、TPO、IL-6、IL-11、及び/又はIGF-1の組み合わせなどであるがこれらに限定されない、因子を伴う。
【0010】
EHTの誘導は、任意の公知のプロセスを用いたものであり得る。いくつかの実施形態では、EHTの誘導は、LT-HSCを含む造血幹細胞(HSC)集団を生成する。いくつかの実施形態では、EHTは、機械的、生化学的、薬理学的及び/又は遺伝的手段を使用して(例えば、刺激、阻害、及び/又は遺伝子組換えを介して)、内皮又は造血内皮細胞(HEC)前駆体を通してHSCを生成する。いくつかの実施形態では、EHTは、長期造血幹細胞(LT-HSC)、短期造血幹細胞(ST-HSC)、及び造血幹前駆細胞のうちの1つ以上を含む、幹細胞集団を生成する。いくつかの実施形態では、EHTは、培養物中で約5日~約7日間誘導される。実施形態では、EHTは、TPO、SCF、Flt3L、IL3、IL-6、IL7、IL-11、IGF、bFGF、及びIL15から選択される1つ以上の成長因子及びサイトカインを含む培地を使用して行われる。培地は、任意選択的に、VEGF、bFGF、BMP活性化剤、Wnt経路活性化剤、又はROCK阻害剤(例えば、チアゾビビン若しくはY27632)のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、HSC及び/若しくはHSPC集団又はその画分は、Yoda1などの機械感受性受容体又は機械感受性チャネルのアゴニストの使用とは無関係に分化される。いくつかの実施形態では、機械感受性受容体又は機械感受性チャネルのアゴニスト(例えば、Yoda1)の使用は、任意選択的である。
【0011】
様々な実施形態では、薬理学的Piezo1活性化が、CD34+細胞(すなわち、CD34+濃縮細胞)に適用される。ある特定の実施形態では、薬理学的Piezo1活性化は、iPSC、胚様体、EC、造血内皮細胞(HEC)、HSC、造血前駆細胞、並びに血小板の生成に関与する巨核球系統を含む造血系統(複数可)に更に適用され得る。ある特定の実施形態では、Piezo1活性化は、少なくとも、iPSCから生成されるEB及び/又はEBから単離されるCD34+細胞に適用され、これは、様々な実施形態によれば、EHTを誘導するための他の方法と比較して、巨核球の優れた生成を可能にする。
【0012】
様々な実施形態では、CD34+細胞(例えば、浮遊細胞及び/又は接着細胞)が、12日目~17日目などのiPSC分化の10日目~20日目に内皮・造血転換を受ける培養物から採取される。いくつかの実施形態では、CD34+細胞は、非接着細胞を含む。様々な実施形態では、HSC又はCD34+濃縮細胞は、更に増殖される。
【0013】
巨核球及び/又は血小板を生じるHSC及び/又はHSPCは、CD34の発現マーカー及び系統特異的マーカー(Lin-と称される)の非存在に基づいて同定することができる。いくつかの実施形態では、造血系統への分化のための幹細胞集団は、少なくとも約80%のCD34、又は少なくとも約90%のCD34、又は少なくとも約95%のCD34である。
【0014】
様々な実施形態では、HSC及び/若しくはHSPC集団又はその画分は、エクスビボで巨核球に分化され、それから血小板を生成することができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、HSC及び/又はHSPCを含む集団を巨核球に分化させるステップは、トロンボポエチン(TPO)と培養することを含む。培養物は、IL-1、IL-3、IL-6、IL-9、IL-11、SCF、SDF-1、及びPDGF-BBから選択されるものなどの1つ以上の追加のサイトカイン又は成長因子を更に含み得る。TPOを含むサイトカイン及び成長因子を選択して、巨核球を更に増殖させることができる。いくつかの実施形態では、巨核球を増殖させるためのそのような追加のサイトカイン又は成長因子は、幹細胞因子(SCF)、FMS様チロシンキナーゼ3リガンド(Flt3L)、IL-6、IL-9、及びエリスロポエチン(EPO)から選択され得る。
【0016】
成熟巨核球は、線維芽細胞成長因子4(FGF4)及び間質細胞由来因子1(SDF1)の存在下での培養などによって、当該技術分野で公知であるように前血小板及び血小板を形成することができる。いくつかの実施形態では、巨核球又は前血小板は、細胞に流体力学的せん断応力を受けさせるバイオリアクター内で培養される。例えば、血小板は、静的2D、無血清、サイトカイン依存性条件で産生することができる。代替的に、血小板は、三次元(3D)微小環境で産生することができる。様々な実施形態では、血小板は、CD41+CD42b+である表現型を有するであろう。回収された血小板は、トロンビンによって活性化可能である。血小板は、回収し、輸血療法の前にガンマ線照射を受けることができる。
【0017】
本開示の組成物(例えば、本開示に従って調製される血小板を含む)は、薬学的に許容される担体を更に含み得る。そのような担体溶液はまた、緩衝液、希釈剤、及び他の好適な添加剤を含有することができる。細胞又は血小板組成物は、埋込型デバイス(例えば、足場)内、又はバッグ内、又はバイアル、チューブ、若しくは容器内に適切な体積で提供され、使用まで凍結保存され得る。様々な実施形態では、本組成物は、50又は100mLの体積当たり少なくとも約10個の血小板、又は少なくとも約1010個の血小板、又は少なくとも約1011個の血小板、又は少なくとも約1012個の血小板を含む。
【0018】
他の態様では、本発明は、血小板(本明細書に記載されるように調製される)又はその薬学的に許容される組成物を、それを必要とするヒト対象に投与することを含む、血小板療法のための方法を提供する。様々な実施形態では、本明細書に記載される方法は、ACTN1関連血小板減少症、橈尺骨癒合症を伴う無巨核球性血小板減少症、ANKRD26関連血小板減少症、常染色体優性血小板減少症、先天性無巨核球性血小板減少症、CYCS関連血小板減少症、FYB関連血小板減少症、特発性血小板減少性紫斑病、又はX連鎖性血小板減少症などの血小板減少症を有する対象を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、血小板は、出血を経験している対象に投与される。
【0019】
本開示の他の態様及び実施形態が、以下の詳細な開示及び実施例から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ETV2過剰発現(OE)が多能性に影響を及ぼさないことを示す。図1は、ETV2及びGFP配列を過剰発現するためのアデノウイルスベクターを用いたiPSCの形質導入効率を表すFACSプロットを示す。ETV2過剰発現は、TRA-1-60幹細胞性マーカーの発現によって示されるように、iPSC幹細胞性に影響を及ぼさない。
図2】ETV2過剰発現(OE)が造血内皮細胞の収率を増加させることを示す。造血内皮細胞(CD235a-CD34+CD31+として記載される)の代表的なフローサイトメトリー分析及び相対定量化は、ETV2-OEが造血内皮細胞の形成を増強することを実証する。
図3】ETV2過剰発現(OE)がiPSC分化中にCD34+細胞形成を増強することを示す。CD34+細胞の代表的なフローサイトメトリー分析及び相対定量化は、ETV2-OEがCD34+細胞形成を増強することを実証する。
図4】巨核球系統へのHSCの関与を示す、巨核球分化のFACS分析を示す。
図5】iPSC由来のHSCに由来する巨核球細胞がエクスビボで増殖が可能であることを示す。
図6】導出された巨核球がBM CD34+由来の巨核球に表現型的に類似し、血小板を放出することができることを示す、iPSC由来のHSCの血小板分化の免疫蛍光分析を示す。
図7】iPSC由来のHSCから産生される血小板が、活性化されると凝固し、血栓形成を促進することができることを示す、これらの血小板による血栓形成を示す。
図8A】FACS及び免疫蛍光によって実施されるHLA編集(例えば、トリプルノックアウト)細胞の表現型分析を示す。HLA編集細胞が野生型細胞と同様の程度に全体的なHLAクラスI発現について陽性である、細胞表面上のHLAクラスI分子(HLA-A、HLA-B、及びHLA-C)の全体的な発現を示す。
図8B】FACS及び免疫蛍光によって実施されるHLA編集(例えば、トリプルノックアウト)細胞の表現型分析を示す。HLA-AがHLA編集クローンにおいて発現されない、免疫蛍光を介したHLA-Aの細胞発現を示す。
図9】外胚葉分化がNESTIN-488及びPAX6-594染色によって示され、中胚葉分化がGATA-488染色によって示され、内胚葉分化がCXCR4-488及びFOX2A-594染色によって示される、免疫蛍光によって例証されるように、HLA編集クローンがその多能性を保持する(3系統分化を維持する)ことを示す。
図10】HLA編集HSCの免疫適合性を示す。HLA編集HSC及び対照HSC(WT、B2M KO、及びHLAクラスIIヌル)を、HLA-B及びHLA-Cに適合するが不適合HLA-Aを有する末梢血単核細胞(PBMC)と共培養し、PBMC媒介性細胞傷害性をアネキシンV染色アッセイによって測定した。
図11】HLA編集HSCのインビボ生着能を示す。等しい割合のmCherry HLA編集HSC及び野生型HSC(gHSC)をマウスへの競合的移植のために混合し、骨髄(BM)及び末梢血試料をFACSによって評価して、試料中に存在する各細胞型の相対量を比較した。
図12】HLA編集HSCが巨核球(MK)に分化することができ、これらが血小板に更に分化することができることを示す。左側の画像は、1000倍の倍率での光学顕微鏡検査によるHSC中の血小板の割合の増加を示す。右側のグラフは、分化したiPSC(例えば、EB)から単離された骨髄(BM)CD34+細胞及びCD34+細胞集団から分化したものと比較して、HLA編集HSCから分化した血小板の割合の統計的に有意な増加を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
「gHSC」という用語は、本開示のiPSC由来の造血幹細胞を指すために本明細書で使用される。
【0022】
「野生型」(WT)、「未編集」、「非HLA編集」という用語は、本開示の非遺伝子編集細胞を指すために本明細書で同義的に使用される。
【0023】
EB34+細胞は、胚体由来のCD34+細胞を指す。これらは、造血内皮細胞を含む。
【0024】
本開示は、様々な態様及び実施形態では、巨核球・赤血球前駆細胞(MEP)、CFU-Me(多能性造血幹細胞又は血球芽細胞)、巨核芽球、前巨核球、及び巨核球などの巨核球系統、並びにそれらに由来する前血小板、前駆血小板、又は血小板を含む、細胞療法のための造血系統を生成するための方法を提供する。様々な実施形態では、本発明は、遺伝子編集されたiPSCを含む、ヒト人工多能性幹細胞(iPSC)から巨核球及び/又は血小板を開発するための効率的なエクスビボプロセスを提供する。様々な実施形態において本開示に従って生成される巨核球及び/又は前血小板、前駆血小板、若しくは血小板は、機能的であり、かつ/あるいは骨髄若しくは血液から単離された対応する天然系統、又は血液から単離された対応する天然血小板により密接に類似している。本発明はまた、本明細書に開示される方法によって産生される単離された細胞及び組成物、並びに治療のための方法を提供する。
【0025】
他の態様及び実施形態では、本開示は、集団のかなりの部分と免疫適合性であるように遺伝子編集されているiPSCに由来するHSCを提供する。これらのHSC集団は、より効率的なエクスビボ血小板産生のために使用することができるか、あるいは他の態様では、定期的輸血の必要性を低減又は排除する必要がある患者に、HSC、又は巨核球、血小板、若しくはそれらの前駆細胞を送達するために使用することができる。
【0026】
本開示の態様及び実施形態によれば、本質的に無制限の多能性幹細胞(PSC)を産生するヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)の能力は、順に前血小板及び血小板を放出する巨核球を生じる治療用系統を含むがこれらに限定されない、造血細胞の無限の供給を生成するために活用される。ボランティア献血者が限られた資源であるため、治療における血小板の使用は制限されている。ドナー由来の血小板を室温で貯蔵しなければならないため、それらの保存可能期間は約5日に制限され、それらは、貯蔵中に細菌の増殖を起こしやすく、ドナー由来のバッチ間の一貫性に欠ける。更に、血小板輸血は、しばしば、アレルギー反応及び発熱性非溶血反応を含むレシピエントへのいくつかのリスクに関連する。例えば、Kaufman,Richard M.,et al.”Platelet transfusion:a clinical practice guideline from the AABB.”Annals of Internal Medicine 162,no.3(2015):205-213を参照されたい。更に、一次細胞と比較して、hiPSCは、インビトロでより容易に遺伝子組換えを受け、それによって、細胞/血小板数を改善する機会を提供するとともに、例えば、HLA適合問題を回避することができる。加えて、完全に操作されたhiPSCクローンは、一次細胞と比較して、安定かつ安全な供給源として機能することができる。更に、hiPSCは、ヒト胚性幹細胞(hESC)とは異なり、非胚性起源であるため、倫理的懸念もなく、品質が一貫している。したがって、本開示によるhiPSCの使用は、巨核球及び血小板(その前駆細胞を含む)を含む巨核球系統などの治療用造血系統を生成するために、一次細胞と比べていくつかの利点をもたらす。
【0027】
一態様では、本開示は、巨核球を含む細胞集団を調製するための方法を提供する。本開示の巨核球は、機能的な血小板を更に生成することが可能である。本開示の方法は、胚様体に分化した人工多能性幹細胞(iPSC)集団などの多能性幹細胞(PSC)集団を調製することと、CD34+細胞を濃縮して、それによって、CD34+濃縮集団を調製することと、を含む。内皮・造血転換(EHT)が、CD34+濃縮集団において誘導され、それによって、造血幹細胞(HSC)及び/又は造血幹前駆細胞(HSPC)を含む集団を調製する。いくつかの実施形態では、CD34+細胞は、HSC及び/又はHSPCを含む集団から濃縮される。様々な実施形態では、EHTは、少なくとも2日間かつ最大12日間誘導される。結果として得られる細胞集団(又はその画分)は、巨核球に分化させ、任意選択的に血小板を産生するために使用することができる。
【0028】
従来、造血系統は、8日目までiPSCを胚様体に分化させて、CD34+細胞を採取することによって調製される。CD34は、造血内皮細胞、造血幹細胞、及び造血前駆細胞のマーカーとして一般的に使用される。本開示の態様及び実施形態によれば、iPSC胚様体に由来し得るCD34+細胞集団の内皮・造血転換(EHT)を誘導することは、機能的な血小板を生成することが更に可能である、巨核球系統などの優れた造血幹細胞及び造血系統のエクスビボ生成に使用することができることが発見されている。
【0029】
いくつかの実施形態では、CD34+細胞(すなわち、EB解離から回収される)は、Dnmt3bの活性又は発現を増加させる機械感受性受容体又は機械感受性チャネルの有効量のアゴニストと接触される。いくつかの実施形態では、機械感受性受容体は、Piezolである。例示的なPiezolアゴニストとしては、Yoda1、Jedi1、及びJedi2、又はそれらの類似体が挙げられる。いくつかの実施形態では、機械感受性受容体は、Trpv4である。例示的なTrpv4アゴニストは、GSK1016790Aである。EHTを誘導するための他の様式を(代替的に、又は加えて)使用することができ、本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、EHTを誘導した後、細胞(HSC及び/又はHSPCを含む集団)は、巨核球系統、例えば、血小板を生成又は分泌することが可能である巨核球を含む細胞集団に分化される。
【0030】
様々な実施形態では、iPSCは、体細胞を再プログラミングすることによって調製される。「人工多能性幹細胞」又は「iPSC」という用語は、胚様多能性状態に戻って再プログラミングされている皮膚又は血液細胞などの体細胞に由来する細胞を指す。いくつかの実施形態では、iPSCは、(限定されないが)線維芽細胞又はPBMC(若しくはそれから単離された細胞)などの体細胞から生成される。いくつかの実施形態では、iPSCは、リンパ球、顆粒球/マクロファージ系統制限前駆細胞(GMP)、臍帯血細胞、PBMC、CD34+細胞、又は他のヒト一次組織に由来する。いくつかの実施形態では、iPSCは、末梢血から単離されたCD34+細胞に由来する。様々な実施形態では、iPSCは、レシピエント(本明細書に記載される治療を必要とする対象)に対して自家又は同種異系である(例えば、1つ以上の遺伝子座においてHLA適合である)。様々な実施形態では、iPSCは、HLA適合を支援するように遺伝子編集すること(β-2-ミクログロブリン(B2M)、CIITAなどを含むがこれらに限定されない、1つ以上のHLAクラスI及び/若しくはHLAクラスIIの対立遺伝子又はそれらのマスター調節因子の欠失など)、又は他の機能を欠失若しくは発現するように遺伝子編集することができる。例えば、iPSCは、HLA-A、HLA-B、及びHLA-Cのうちの1つ以上を欠失し、かつHLA-DP、HLA-DQ、及びHLA-DRのうちの1つ以上を欠失するように遺伝子編集することができる。ある特定の実施形態では、iPSCは、少なくとも1つのHLAクラスI及び少なくとも1つのHLAクラスIIの複合体の発現を保持する。ある特定の実施形態では、iPSCは、少なくとも1つの保持されたクラスI及びクラスIIの遺伝子座についてホモ接合性である。
【0031】
様々な実施形態では、HSC及び巨核球系統細胞は、(i)HLA-A-B+C+DP-DR+DQ+、(ii)HLA-A-B+C+DP+DR+DQ-、(iii)HLA-A-B+C+DP-DR+DQ-、(iv)HLA-A-B-C+DP-DR+DQ+、(v)HLA-A-B-C+DP+DR+DQ-、(vi)HLA-A-B-C+DP-DR+DQ-のうちの1つであるように遺伝子編集されているiPSCに由来する。保持されたHLA(例えば、HLA-B、HLA-C、及びHLA-DR)については、細胞は、ホモ接合性であり得るか、又は遺伝子の単一コピーのみを保持することができる。例えば、修飾細胞は、少なくとも(a)HLA-C+及びHLA-DR+として同定され、任意選択的に、(b)HLA-B-、(c)HLA-DP-、及び(d)HLA-DQ-のうちの1つ以上として同定される。例示的な実施形態では、修飾細胞は、HLA-B+、HLA-DP-、及びHLA-DQ-である。
【0032】
いくつかの実施形態では、iPSCは、HLA-Aneg、HLA-B及びHLA-Cの両方についてホモ接合性、並びにHLA-DPB1neg及びHLA-DQB1negであるように遺伝子編集される。いくつかの実施形態では、iPSCは、HLA-DRB1について更にホモ接合性である。
【0033】
本明細書で使用される場合、特定のHLAクラスI又はHLAクラスIIの分子に関する「neg」、(-)、又は「陰性」という用語は、遺伝子の両方のコピーが細胞株又は集団で破壊されており、したがって、細胞株又は集団が遺伝子の著しい機能的発現を示さないことを示す。そのような細胞は、完全若しくは部分的な遺伝子欠失若しくは破壊によって、又は代替的にsiRNAなどの他の技術によって生成することができる。本明細書で使用される場合、標的遺伝子の遺伝子組換え(すなわち、遺伝子編集)の文脈での「欠失」という用語は、対応する遺伝子産物(すなわち、対応するポリペプチド)の機能的発現の解消を指す。そのような遺伝子編集としては、コード配列の完全若しくは部分的な遺伝子欠失若しくは破壊、又は重要なシス作用性発現制御配列の欠失が挙げられる。
【0034】
いくつかの実施形態では、iPSCは、長さが16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、又はそれ以上のヌクレオチドであるgRNAを使用して遺伝子編集される。いくつかの実施形態では、gRNAは、5’末端若しくはその付近における(例えば、5’末端の1~10個、1~5個、若しくは1~2個のヌクレオチド内の)修飾、及び/又は3’末端若しくはその付近における(例えば、3’末端の1~10個、1~5個、若しくは1~2個のヌクレオチド内の)修飾を含む。いくつかの実施形態では、修飾gRNAは、ヌクレアーゼに対する耐性の増加を示す。いくつかの実施形態では、gRNAは、2つの別個のRNA分子を含む(すなわち、「二重gRNA」)。二重gRNAは、「crispr RNA」(又は「crRNA」)及び「tracr RNA」という2つの別個のRNA分子を含み、当業者に周知である。
【0035】
一般的に、本開示の様々な実施形態に従って適用することができる、様々な遺伝子編集技術が公知である。遺伝子編集技術としては、ジンクフィンガー(ZF)、転写活性化因子様エフェクター(TALE)などが挙げられるが、これらに限定されない。これらのDNA結合ドメインのうちの1つ以上及びFoklエンドヌクレアーゼの切断ドメインを含む融合タンパク質を使用して、細胞内のDNAの所望の領域に二本鎖切断を生成することができる(例えば、全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2012/0064620号、米国特許出願公開第2011/0239315号、米国特許第8,470,973号、米国特許出願公開第2013/0217119号、米国特許第8,420,782号、米国特許出願公開第2011/0301073号、米国特許出願公開第2011/0145940号、米国特許第8,450,471号、米国特許第8,440,431号、米国特許第8,440,432号、及び米国特許出願公開第2013/0122581号を参照されたい)。いくつかの実施形態では、遺伝子編集は、当該技術分野で公知のCRISPR関連Cas系(例えば、CRISPR-Cas9)を使用して行われる。例えば、各々が参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、US8,697,359、US8,906,616、及びUS8,999,641を参照されたい。様々な実施形態では、遺伝子編集は、II型Casエンドヌクレアーゼ(Cas9など)を採用するか、又はV型Casエンドヌクレアーゼ(Cas12aなど)を採用する。II型及びV型Casエンドヌクレアーゼは、ガイドRNA依存性である。(標的外編集を制限又は回避しながら)所望の遺伝子編集を導くためのgRNAの設計が、当該技術分野で公知である。例えば、Mohr SE,et al.,CRISPR guide RNA design for research applications,FEBSJ.2016 Sep;283(17):3232-3238を参照されたい。なおも他の実施形態では、S.pyogenes Cas9又はPrevotella及びFrancisella1(Cpf1若しくはCas12a)に対する(低い一次配列相同性であるが)相同性を有する非正準II型又はV型Casエンドヌクレアーゼを採用することができる。多数のそのような非正準Casエンドヌクレアーゼが、当該技術分野で公知である。Nidhi S,et al.Novel CRISPR-Cas Systems:An Updated Review of the Current Achievements,Applications,and Future Research Perspectives,Int J Mol Sci.2021 Apr;22(7):3327.なおも他の実施形態では、遺伝子編集は、二本鎖切断を起こすことなく変異を組み込むために、塩基編集又はプライム編集を採用する。例えば、Antoniou P,et al.,Base and Prime Editing Technologies for Blood Disorders,Front.Genome Ed.,28 January 2021、Matsuokas IG,Prime Editing:Genome Editing for Rare Genetic Diseases Without Double-Strand Breaks or Donor DNA,Front.Genet.,09 June 2020を参照されたい。デッドCas(dCas)をガイドRNA依存性系として使用して、DNA修飾酵素を所望の標的に標的化するためのdCas系(例えば、Cas融合タンパク質)の使用を含む、様々な他の遺伝子編集プロセスが公知である。Brezgin S,Dead Cas Systems:Types,Principles,and Applications,Int J Mol Sci.2019 Dec;20(23):6041.
【0036】
二本鎖DNA切断を生成することなく正確なゲノム改変を導入することができる塩基エディタもまた、細胞(例えば、iPSC)における遺伝子編集(例えば、遺伝子療法ベクターの設計)に使用することができる。塩基エディタは、本質的に、DSBを作製することができず、核酸塩基デアミナーゼ酵素、場合によっては、DNAグリコシラーゼ阻害剤に融合される、Cas9ニッカーゼ(nCas9)などの触媒不活性化ヌクレアーゼを含む。現在、C>T及びA>G転換を触媒する、シチジン塩基エディタ(CBE)及びアデニン塩基エディタ(ABE)という塩基エディタの2つの主要なカテゴリがある。塩基エディタは、例えば、HDAd5/35++ベクターを介して送達され、プロモーター及びエンハンサーを効率的に編集して、遺伝子を活性化又は不活性化することができる。例示的な方法は、米国特許第9,840,699号、同第10,167,457号、同第10,113,163号、同第11,306,324号、同第11,268,082号、同第11,319,532号、及び同第11,155,803号に記載されている。また、WO2020/191153に記載されているように、Casエンドヌクレアーゼにコンジュゲートされた(例えば、それと融合された)逆転写酵素、及びガイドRNAにコンジュゲートされた(例えば、それと融合された)DNA合成テンプレートとして有用なポリヌクレオチドを含む、プライムエディタも企図される。
【0037】
ゲノム編集用途に使用することができる例示的なベクターとしては、プラスミド、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター(例えば、Ad5/35、Ad5、Ad26、Ad34、Ad35、Ad48、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、コロナウイルス、オルトミキソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病及び水疱性口内炎ウイルス)、パラミキソウイルス(例えば、麻疹及びセンダイ)などの陰性鎖RNAウイルス、ピコルナウイルス及びアルファウイルスなどの陽性鎖RNAウイルス、並びにヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1型及び2型、エプスタインバーウイルス、サイトメガロウイルス)、及びポックスウイルス(例えば、カナリア痘、ワクシニア、又は改変ワクシニアウイルスを含む、二本鎖DNAウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。目的の核酸分子を含むベクターは、形質導入、トランスフェクション、感染、及びエレクトロポレーションを含むがこれらに限定されない、当該技術分野で公知である任意の方法を介して、細胞(例えば、iPS細胞、内皮細胞、造血内皮細胞、HSC(ST-HSC又はLT-HSC)に送達され得る。これらのベクターのうちのいずれかは、転位性要素(ピギーバックトランスポゾン又はスリーピングビューティトランスポゾンなど)を含み得る。トランスポゾンは、DNAの特異的配列を脊椎動物のゲノムに挿入する。目的の遺伝子は、細胞の核ゲノム内に存在する類似の切除部位のトランスポザーゼ触媒切断によって、哺乳動物細胞のゲノムに組み込むことができる。
【0038】
増加した効率のために、いくつかの実施形態では、Cas及びgRNAを細胞内に送達される前に組み合わせることができる。Cas-gRNA複合体は、リボ核タンパク質(RNP)として知られている。いくつかの方法が、細胞へのRNPの直接送達のために開発されている。例えば、RNPは、リポフェクション又はエレクトロポレーションによって培養中の細胞に送達することができる。ヌクレオフェクションプロトコルを使用するエレクトロポレーションを採用することができ、この手順は、RNPが迅速に細胞の核に進入することを可能にするため、即時にゲノムを切断し始めることができる。例えば、参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、Zhang S,Shen J,Li D,Cheng Y.Strategies in the delivery of Cas9 ribonucleoprotein for CRISPR/Cas9 genome editing.Theranostics.2021 Jan 1;11(2):614-648を参照されたい。いくつかの実施形態では、Cas9及びgRNAは、RNPとしてドナーiPSC及び/又はHSCにエレクトロポレーションされる。
【0039】
一般的に、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)が、Casヌクレアーゼが切断するために必要とされ、一般的に、切断部位の下流に3~4個のヌクレオチドが見出される。PAMは、CRISPR-Cas9などのCRISPR系による切断のために標的化されるDNA領域に続く、短いDNA配列(通常、長さが2~6塩基対)である。いくつかの実施形態では、HLA遺伝子座のハプロタイプ又は多形体を標的化するPAM配列、sgRNA、又は塩基編集ツールは、4つのG、4つのC、GC反復、又はそれらの組み合わせを含まない。
【0040】
いくつかの実施形態では、独自のHLAハプロタイプに特異的なCRISPR/Cas9系は、本明細書に記載されるgRNAを使用して、ドナー特異的HLA-A、HLA-DPB1、及びHLA-DQB1遺伝子(例えば)の各々を標的化する単一gRNAを設計することによって開発することができる。遺伝子ノックアウトを実施するために、gRNAは、Cas9タンパク質を、編集するための適切な部位に標的化する。次に、Cas9タンパク質は、二本鎖切断(DSB)を実施することができ、DNAは、フレームシフト変異をもたらすインデルを生成し、結果として生じるタンパク質の機能を終了させる非相同末端結合(NHEJ)機構を通して修復する。しかしながら、標的外遺伝子組換えが起こり、そうでなければインタクトな遺伝子の機能を改変し得る。例えば、Cas9エンドヌクレアーゼは、ある程度の不適合の存在下でさえも、望ましくない標的外位置にDSBを生成し得る。この標的外活性は、点変異及びゲノム構造変動などのゲノム不安定性事象を生じ得る。様々な実施形態では、HLA-Aを標的化するsgRNAは、29942532-29942626として定義される染色体6の領域を標的化することができる。様々な実施形態では、HLA-DQB1を標的化するsgRNAは、32665067-32664798として定義される染色体6の領域を標的化することができる。様々な実施形態では、HLA-DPB1を標的化するsgRNAは、33080672-33080935として定義される染色体6の領域を標的化することができる。
【0041】
gRNAを使用して、クローンiPSCを開発することができる。そのようなiPSC株は、例えば、本明細書に記載される配列決定を使用して、(i)標的上編集、(ii)標的外編集、及び(iii)転座編集について評価することができる。具体的には、そのようなアッセイは、目的の領域を標的化及び濃縮するように設計されたプライマーを用いたマルチプレックスPCR、続いて、次世代配列決定(例えば、Amplicon配列決定、AMP-seq)によって実施することができる。標的上パネル及び転座パネルは、意図された編集領域を増幅し、意図されていないDSB切断部位融合から生じる染色体転座を含まない、予期される編集を有するiPSCクローンの選択を可能にすることができる。標的外パネルは、配列決定を介して同定される任意の潜在的標的外領域を濃縮することができ、無視できる標的外変異を有するiPSCクローンの選択を可能にする。一緒に、これらのアッセイは、潜在的なCRISPR/Cas9関連ゲノム完全性の問題を除外しながら、所望の編集を有するクローンを選択するためのiPSCクローンのスクリーニングを可能にする。
【0042】
いくつかの実施形態では、再プログラミング及び編集されたiPSCのゲノムの安定性及び完全性を更に確実にするために、遺伝子及びゲノムアッセイを実施して、例えば、転座及び変異事象を受けず、エピソームベクターを組み込まなかったクローンを選択することができる。例えば、全ゲノム配列決定(WGS)が、再プログラミング後にCD34+細胞及びiPSCクローンで実施され、ゲノムが、編集から生じる差異について比較される。これらの分析は、どのiPSCクローンゲノムがCD34+出発物質と異なるかという評価を提供し、再プログラミング中に変異を生じなかったiPSCクローンの情報に基づく選択を可能にする。
【0043】
いくつかの実施形態では、KARYOSTATアッセイなどの系を使用する核型分析が、例えば、参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、Ramme AP,et al,“Supporting dataset of two integration-free induced pluripotent stem cell lines from related human donors,”Data Brief.2021 May 15;37:107140に記載されているように、再プログラミング中にインデル及び転座を生じなかったiPSCクローンを選択するために使用される。KARYOSTATアッセイは、Gバンディング核型分析と同様の分解能で染色体異常の可視化を可能にする。検出することができる構造異常のサイズは、染色体獲得については>2Mb、染色体損失については>1Mbである。KARYOSTATアレイは、低解像度DNAコピー数分析による均衡の保たれた全ゲノムカバレッジのために機能化され、アレイは、14,000個のOMIM標的を含む36,000個全てのRefSeq遺伝子をカバーする。アッセイは、異数性、超微視的異常、及びモザイク事象の検出を可能にする。
【0044】
いくつかの実施形態では、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション(aCGH)分析が、例えば、参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、Wiesner et al.“Molecular Techniques,”Editor(s):KlausJ.Busam,Pedram Gerami,Richard A.Scolyer,“Pathology of Melanocytic Tumors,”Elsevier,2019,pp.364-373,ISBN 9780323374576、及びHussein SM,et al.“Copy number variation and selection during reprogramming to pluripotency,”Nature.2011 Mar 3;471(7336):58-62に記載されているように、再プログラミング中にコピー数異常(CNA)を生じなかったiPSCクローンを選択するために使用される。aCGHは、試料DNAを参照DNAと比較することによってCNAについてゲノム全体を分析する技術である。
【0045】
いくつかの実施形態では、標的ヘム悪性腫瘍NGSパネル分析が、再プログラミング中に血液学的悪性変異を生じなかったiPSCクローンを選択するために使用される。例えば、標的ヘム悪性腫瘍NGSパネルは、骨髄性白血病、リンパ腫、及び/又は他の血液悪性腫瘍関連遺伝子に焦点を当て、より広範な方法よりも小さく管理可能なデータセットを生成することができる。標的ヘム悪性腫瘍NGSパネル分析は、血液悪性腫瘍に関連する領域を増幅するための高度に多重化されたPCRの使用、続いて、次世代配列決定を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、液滴デジタルPCR(ddPCR)が、エピソームベクターを組み込まず、エピソームベクタークリアランスのために十分に継代したiPSCクローンを選択するために使用される。本明細書で考察されるように、CD34+細胞のiPSC再プログラミングは、再プログラミング因子をコードするエピソームベクターを送達することによって達成することができる。しかしながら、エピソームベクターは、稀ではあるが、発達過程、恒常性などを破壊し得る細胞ゲノムに無作為に組み込むことができる。したがって、ddPCR法を使用して、iPSC培養物中の残留エピソームベクターを検出し、エピソームベクターを組み込まなかったiPSCクローンの選択を可能にすることができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、選択されたクローンが編集に関連するゲノム異常を含まないことを評価した後、クローンを増殖中に生じ得る自発的変異について追加的に検査することができる。例えば、事前編集された再プログラミングされたクローンについて記載されるように、例えば、血液悪性腫瘍遺伝子、インデル、転座、数の異常に影響を及ぼす変異である。自発的変異の分析としては、全ゲノム配列決定(WGS)、KARYOSTAT分析、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション(aCGH)分析、標的ヘム悪性腫瘍NGSパネルAMP-Seq分析、及び/又は液滴デジタルPCR(ddPCR)が挙げられ得る。
【0048】
体細胞は、Sox2、Oct3/4、c-Myc、Nanog、Lin28、及びklf4から選択される再プログラミング因子の発現によって再プログラミングされ得る。いくつかの実施形態では、再プログラミング因子は、Sox2、Oct3/4、c-Myc、Nanog、Lin28、及びklf4である。いくつかの実施形態では、再プログラミング因子は、Sox2、Oct3/4、c-Myc、及びklf4である。iPSCを調製するための方法は、例えば、参照によりそれらの全体で本明細書に組み込まれる、米国特許第10,676,165号、米国特許第9,580,689号、及び米国特許第9,376,664号に記載されている。様々な実施形態では、再プログラミング因子は、レンチウイルス、センダイ、又は麻疹ウイルス系などの周知のウイルスベクター系を使用して発現される。代替的に、再プログラミング因子は、再プログラミング因子をコードするmRNA(複数可)を体細胞に導入することによって発現させることができる。なおも更に、iPSCは、再プログラミング因子を発現する非統合性エピソームプラスミドを導入することによって、すなわち、無導入遺伝子及び無ウイルスiPSCの生成のために、生成され得る。限られた複製能力を有し、したがって、いくつかの細胞世代にわたって失われる、公知のエピソームプラスミドを採用することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、ヒト多能性幹細胞(例えば、iPSC)は、遺伝子編集される。遺伝子編集としては、HLA遺伝子の修飾(例えば、1つ以上のHLAクラスI及び/又はHLAクラスIIの遺伝子の欠失)、β2ミクログロブリン(β2M)の欠失、CIITAの欠失、受容体遺伝子の欠失又は付加が挙げられ得るが、これらに限定されない。代替的に、1つ以上のHLAノックアウト及びTCRノックアウトを有する操作されたiPSCを、GMPグレード条件下で無フィーダー及び無血清分化のためにバイオリアクター内に配置して、完全に機能的な巨核球及び結果として得られる血小板を生成することができる。
【0050】
様々な実施形態では、iPSCが調製され、培養系を使用して増殖される。増殖したiPSCは、胚様体(EB)を生成するための培養物から回収することができる。iPSCの分化によって生成されるEBは、iPSCの三次元凝集体であり、分化方法(複数可)に基づいて3つ(又は代替的に2つ若しくは1つ)の胚性生殖細胞層を含む。EBの調製は、例えば、参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、US2019/0177695に記載されている。いくつかの実施形態では、iPSCの分化によって調製されるEBは、例えば、Abecasis B.et al.,Expansion of 3D human induced pluripotent stem cell aggregates in bioreactors:Bioprocess intensification and scaling-up approaches.J.of Biotechnol.246(2017)81-93に記載されているように、バイオリアクター内で増殖される。EBを使用して、任意の所望の細胞型を生成することができる。EBの増殖又は分化のための3D懸濁液培養を含む他の方法が、参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、WO2020/086889に記載されている。
【0051】
いくつかの実施形態では、各態様によるプロセスは、多能性幹細胞(例えば、EB)からCD34+細胞を生成し、内皮・造血転換を誘導することを含むことができる。LT-HSCの比較的高い頻度を含むHSCは、機械的、生化学的、代謝的、及び/又は局所的刺激、並びに細胞外基質、ニッチ因子、細胞外因性因子などの因子、細胞内因性特性の誘導を含み、かつ薬理学的及び/又は遺伝的手段を含む、様々な刺激又は因子を使用して、細胞集団から生成することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、本方法は、EHTの誘導の前に、多能性幹細胞から造血能を有する内皮細胞を調製することを含む。いくつかの実施形態では、GATA2/ETV2、GATA2/TAL1、又はER71/GATA2/SCLの複合過剰発現は、PSC源からの造血能を有する内皮細胞の形成につながり得る。いくつかの実施形態では、本方法は、iPSCにおけるE26形質転換特異的バリアント2(ETV2)転写因子の過剰発現を含む。ETV2は、ETV2の構成的又は誘導性発現のために、及び無導入遺伝子造血性ECの産生のために、コード化非統合性エピソームプラスミドの導入によって発現させることができる。いくつかの実施形態では、ETV2は、iPSCに導入されたmRNAから発現される。mRNAは、エレクトロポレーション又はリポフェクションを含む任意の利用可能な方法を使用して導入することができる。ETV2を発現する細胞の分化は、VEGF-Aの付加を含むことができる。Wang K,et al.,Robust differentiation of human pluripotent stem cells into endothelial cells via temporal modulation of ETV2 with mRNA.Sci.Adv.Vol.6(2020)を参照されたい。このようにして生成された細胞は、本開示の実施形態に従って、CD34+細胞を産生し、EHTを誘導するために使用され得る。
【0053】
CD34+濃縮後、次いで、HSC及び/又はHSPCが、機械的、生化学的、薬理学的、及び/若しくは遺伝的刺激又は修飾を使用して内皮細胞から生成される。
【0054】
いくつかの実施形態では、iPSC分化は、細胞が少なくとも約10%のCD34+、又は少なくとも約20%のCD34+、又は少なくとも約25%のCD34+、又は少なくとも約30%のCD34+になるまで進行する。いくつかの実施形態では、CD34濃縮及びEHTは、例えば、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、13日目、又は14日目などのiPSC分化の7日目~14日目に誘導され得る。iPSCの分化は、公知の技術によるものであり得る。いくつかの実施形態では、iPSC分化は、bFGF、Y27632、BMP4、VEGF、SCF、EPO、TPO、IL-6、IL-11、及び/又はIGF-1の組み合わせなどであるがこれらに限定されない、因子を伴う。いくつかの実施形態では、hPSCは、無フィーダー、無血清、及び/又はGMP適合性材料を使用して分化される。無血清培養物は、一般的に、サイトカイン/成長因子/小分子のカクテルを含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、hPSCは、血清含有培地中で、STOマウス線維芽細胞又は血液由来の末梢血単核細胞(PBMC)又は臍帯血由来の間葉系幹細胞又はリンパ球由来のがん細胞株細胞のフィーダー層である、OP9などのマウス骨髄由来のフィーダー細胞と共培養される。培養物は、成長因子及びサイトカインを含有して、胚様体又は単層系の分化を支援することができる。フィーダー細胞共培養系を使用して、単球又はマクロファージ、樹状細胞、好中球、NK細胞、Tリンパ球、Bリンパ球、巨核球、及び赤血球を含む、いくつかの造血系統に更に分化させることができる多能性HSPCを生成することができる。Netsrithong R.et al.,Multilineage differentiation potential of hematoendothelial progenitors derived from human induced pluripotent stem cells,Stem Cell Research & Therapy Vol.11 Art.481(2020)を参照されたい。代替的に、特異的なシグナルとともに定義された条件を使用する段階的プロセスを使用することができる。例えば、ヒトPSCにおけるHOXA9、ERG、RORA、SOX4、及びMYBの発現は、多分化能を有するCD34+/CD45+前駆細胞への直接分化に有利に働く。更に、HOXB4、CDX4、SCL/TAL1、又はRUNX1aなどの因子の発現は、ヒトPSCにおける造血プログラムを支援する。Doulatov S.et al.,Induction of multipotential hematopoietic progenitors from human pluripotent stem cells via re-specification of lineage-restricted precursors,Cell Stem Cell.2013 Oct 3;13(4)を参照されたい。
【0056】
iPSCの(例えば、EBへの)分化は、CHIR99021などのWNTアゴニストを採用し得る。WNTアゴニストは、WNTシグナル伝達を模倣するか、又は増加させる分子である。WNTアゴニストの非限定的な例としては、小分子CHIR-99021(CAS 252917-06-9)、2-アミノ-4,6-二置換ピリミジン、例えば、BML 284(CAS 853220-52-7)、SKL 2001(CAS 909089-13-0)、WAY 262611(CAS 1123231-07-1)、WAY 316606(CAS 915759-45-4)、SB 216763(CAS 280744-09-4)、IQ 1(CAS 331001-62-8)、QS 11(CAS 944328-88-5)、デオキシコール酸(CAS 83-44-3)、BIO(CAS 667463-62-9)、ケンパウロン(CAS 142273-20-9)、又は(ヘテロ)アリールピリミジンが挙げられる。いくつかの実施形態では、WNTアゴニストは、アゴニスト抗体若しくはその機能的断片、又は抗体様ポリペプチドである。
【0057】
iPSCの(例えば、EBへの)分化は、ROCK阻害剤を採用し得る。iPSCの確立及び分化に使用される例示的なROCK阻害剤としては、チアゾビビン、Y27632、ファスジル、AR122-86、RevitaCell(商標)サプリメント、H-1152、Y-30141、Wf-536、HA-1077、ヒドロキシル-HA-1077、GSK269962A、SB-772077-B、N-(4-ピリジル)-N’-(2,4,6-トリクロロフェニル)ウレア、3-(4-ピリジル)-1H-インドール、及び(R)-(+)-トランス-N-(4-ピリジル)-4-(1-アミノエチル)-シクロヘキサンカルボキサミド、H-100、並びに参照によりその全体で本明細書に組み込まれる米国特許第8,044,201号に開示されているROCK阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
EHTの誘導は、任意の公知のプロセスを用いたものであり得る。いくつかの実施形態では、EHTの誘導は、LT-HSCを含む造血幹細胞(HSC)集団を生成する。いくつかの実施形態では、EHTは、機械的、生化学的、薬理学的及び/又は遺伝的手段を使用して(例えば、刺激、阻害、及び/又は遺伝子組換えを介して)、内皮又は造血内皮細胞(HEC)前駆体を通してHSCを生成する。いくつかの実施形態では、EHTは、長期造血幹細胞(LT-HSC)、短期造血幹細胞(ST-HSC)、及び造血幹前駆細胞のうちの1つ以上を含む、幹細胞集団を生成する。様々な実施形態では、EHTは、培養物中で、約4日間~約8日間(例えば、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、又は約8日間)など、2日間~12日間誘導することができる。いくつかの実施形態では、EHTは、培養物中で約5日~約7日間誘導される。実施形態では、EHTは、TPO、SCF、Flt3L、IL3、IL-6、IL7、IL-11、IGF、bFGF、及びIL15から選択される1つ以上の成長因子及びサイトカインを含む培地を使用して行われる。培地は、任意選択的に、VEGF、bFGF、BMP活性化剤、Wnt経路活性化剤、又はROCK阻害剤(例えば、チアゾビビン若しくはY27632)のうちの1つ以上を含み得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、HSC及び/若しくはHSPC集団又はその画分は、Yoda1などの機械感受性受容体又は機械感受性チャネルのアゴニストの使用とは無関係に分化される。いくつかの実施形態では、機械感受性受容体又は機械感受性チャネルのアゴニスト(例えば、Yoda1)の使用は、任意選択的である。したがって、いくつかの実施形態では、CD34+細胞が、CD34+濃縮集団を調製するために、分化した多能性幹細胞集団から濃縮される。yoda1、jedi1、jedi2、又はssRNA40などの機械感受性受容体又は機械感受性チャネルのアゴニストの使用が任意選択的である、CD34+濃縮細胞集団の内皮・造血転換が、少なくとも2日であるが12日以下にわたって誘導される。いくつかの実施形態では、CD34+濃縮細胞集団の内皮・造血転換は、少なくとも2日間、更に約4時間、又は約8時間、又は約12時間、又は約16時間、又は約20時間、又は約24時間、又は約2日間、又は約3日間、又は約4日間、又は約5日間、又は約6日間、又は約7日間、又は約8日間、又は約9日間、又は約10日間誘導される。全EHT分化は、12日以下にわたって進行する。
【0060】
いくつかの実施形態では、本方法は、機械的、遺伝的、生化学的、又は薬理学的手段によるものであり得る、PSC、胚様体、CD34+濃縮細胞、EC、HEC、又はHSCにおけるdnmt3bの発現又は活性を増加させることを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、細胞におけるDNA(シトシン-5-)-メチルトランスフェラーゼ3β(Dnmt3b)及び/又はGTPase IMAPファミリーメンバー6(Gimap6)の活性又は発現を増加させることを含む。参照によりそれらの全体で本明細書に組み込まれる、WO2019/236943及びWO2021/119061を参照されたい。いくつかの実施形態では、EHTの誘導は、dnmt3bの発現又は活性を増加させることを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、細胞は、Dnmt3bの活性又は発現を増加させる機械感受性受容体又は機械感受性チャネルの有効量のアゴニストと接触される。いくつかの実施形態では、機械感受性受容体は、Piezolである。例示的なPiezolアゴニストは、yoda1である。いくつかの実施形態では、機械感受性受容体は、Trpv4である。例示的なTrpv4アゴニストは、GSK1016790Aである。Yoda1(2-[5-[[(2,6-ジクロロフェニル)メチル]チオ]-l,3,4-チアジアゾール-2-イル]-ピラジン)は、機械感受性イオンチャネルPiezolのために開発された小分子アゴニストである。Syeda R,Chemical activation of the mechanotransduction channel Piezol.eLife(2015).
【0062】
Yodalの誘導体を、様々な実施形態で採用することができる。例えば、2,6-ジクロロフェニルコアを含む誘導体が、いくつかの実施形態で採用される。例示的なアゴニストが、Evans EL,et al.,Yoda1 analogue(Dooku1) which antagonizes Yoda1-evoked activation of Piezo1 and aortic relaxation,BritishJ.of Pharmacology 175(1744-1759):2018に開示されている。なおも他のPiezo1アゴニストとしては、Jedi1、Jedi2、一本鎖(ss)RNA(例えば、ssRNA40)、並びにそれらの誘導体及び類似体が挙げられる。参照によりそれらの全体で本明細書に組み込まれる、Wang Y.,et al.,A lever-like transduction pathway for long-distance chemical-and mechano-gating of the mechanosensitive Piezo1 channel.Nature Communications(2018)9:1300、Sugisawa,et al.,RNA Sensing by Gut Piezo1 Is Essential for Systemic Serotonin Synthesis,Cell,Volume 182,Issue 3,2020,Pages 609-624を参照されたい。これらのPiezo1アゴニストは、市販されている。様々な実施形態では、Piezo1アゴニスト又は誘導体の有効量は、約1μM~約500μM、若しくは約5μM~約200μM、若しくは約5μM~約100μM、又はいくつかの実施形態では、約25μM~約150μM、若しくは約25μM~約100μM、若しくは約25μM~約50μMの範囲である。代替的に、一本鎖(ss)RNA(例えば、ssRNA40)、並びにそれらの誘導体及び類似体を、Piezo1活性化に使用することができる。
【0063】
様々な実施形態では、薬理学的Piezo1活性化が、CD34+細胞(すなわち、CD34+濃縮細胞)に適用される。ある特定の実施形態では、薬理学的Piezo1活性化は、iPSC、胚様体、EC、造血内皮細胞(HEC)、HSC、造血前駆細胞、並びに血小板の生成に関与する巨核球系統を含む造血系統(複数可)に更に適用され得る。ある特定の実施形態では、Piezo1活性化は、少なくとも、iPSCから生成されるEB及び/又はEBから単離されるCD34+細胞に適用され、これは、様々な実施形態によれば、EHTを誘導するための他の方法と比較して、巨核球の優れた生成を可能にする。
【0064】
代替的に、又は加えて、Dnmt3bの活性又は発現は、細胞において、例えば、CD34+濃縮細胞において直接増加させることができる。例えば、Dnmt3bのmRNA発現は、Dnmt3bをコードする転写産物を細胞に送達することによって、又はDnmt3bをコードする導入遺伝子を導入することによって、又は非統合性エピソームを細胞に導入することに限定されない、無導入遺伝子方法によって増加させることができる。いくつかの実施形態では、遺伝子編集は、限定されるものではないが、プロモーター強度、リボソーム結合、RNA安定性を増加させ、かつ/又はRNAスプライシングに影響を及ぼすためなどに、細胞におけるDnmt3b発現要素に遺伝子組換えを導入するために採用される。
【0065】
いくつかの実施形態では、本方法は、単独で、あるいはDnmt3b及び/又は周期的ひずみ若しくはPiezol活性化時に上方若しくは下方制御される他の遺伝子と組み合わせて、細胞におけるGimap6の活性又は発現を増加させることを含む。Gimap6の活性又は発現を増加させるために、Gimap6をコードするmRNA転写物を細胞に導入することができ、エピソームを細胞に導入することを含むがこれに限定されない、無導入遺伝子アプローチを採用することもできるか、又は代替的にGimap6をコードする導入遺伝子を導入することができる。いくつかの実施形態では、遺伝子編集は、細胞におけるGimap6発現要素に遺伝子組換え(プロモーター強度、リボソーム結合、RNA安定性を増加させるため、又はRNAスプライシングに影響を及ぼすための1つ以上の組換えなど)を導入するために採用される。
【0066】
細胞へのmRNA送達を採用する本開示の実施形態では、公知の化学修飾を使用して、細胞における先天性免疫応答を回避することができる。例えば、正準ヌクレオチドのみを含む合成RNAは、パターン認識受容体に結合することができ、細胞において強力な免疫応答を誘起することができる。この応答は、翻訳阻止、炎症性サイトカインの分泌、及び細胞死をもたらし得る。ある特定の非正準ヌクレオチドを含むRNAは、先天性免疫系による検出を回避することができ、高効率でタンパク質に翻訳することができる。特に先天性免疫応答を回避するためのヌクレオチド修飾に関して、参照により本明細書に組み込まれる、US9,181,319を参照されたい。
【0067】
いくつかの実施形態では、Dnmt3b及び/又はGimap6の発現は、導入遺伝子を細胞に導入することによって増加され、これは、所望のレベルの過剰発現を指示することができる(様々なプロモーター強度又は発現制御エレメントの他の選択を伴う)。当該技術分野で公知である様々なウイルスベクター又はトランスフェクション試薬(脂質ナノ粒子を含む)を使用して、導入遺伝子を導入することができる。いくつかの実施形態では、Dnmt3b及び/又はGimap6の発現は、無導入遺伝子方法(例えば、エピソーム送達)によって増加される。いくつかの実施形態では、Dnmt3b及び/若しくはGimap6又は本明細書に開示される他の遺伝子の発現又は活性は、例えば、プロモーターの強度、リボソーム結合、又はRNAの安定性を増加させるための1つ以上の修飾を導入するために、遺伝子編集技術を使用して増加される。
【0068】
いくつかの実施形態では、本方法は、周期的2D、3D、又は4D伸張を細胞に適用することを含む。様々な実施形態では、周期的2D、3D、又は4D伸張を受けた細胞は、CD34+濃縮細胞、iPSC、EC、及びHECのうちの1つ以上から選択される。例えば、細胞集団が、参照によりその全体で本明細書に組み込まれるWO2017/096215に記載されているように、周期的ひずみ生物力学的伸張を提供するバイオリアクターに導入される。周期的ひずみ生物力学的伸張は、Dnmt3b及び/又はGimap6の活性又は発現を増加させることができる。これらの実施形態では、機械的手段は、細胞に、又はその上で培養された細胞(例えば、EC若しくはHEC)を有する細胞培養表面に伸張力を印加する。例えば、可撓性の生体適合性及び/又は生体模倣表面に取り付けられた伸張力を提供するためのコンピュータ制御真空ポンプシステム又は他の手段(例えば、FlexCell(商標)テンションシステム、サイトストレッチャーシステム)を使用して、定義及び制御された周期的ひずみ条件下で細胞にエクスビボで周期的2D、3D、又は4D伸張を適用することができる。例えば、適用された周期的伸張は、数時間又は数日(例えば、約7日間)で約1%~約20%の周期的ひずみ(例えば、約6%の周期的ひずみ)であり得る。様々な実施形態では、周期的ひずみは、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約6時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、少なくとも約24時間、少なくとも約48時間、少なくとも約72時間、少なくとも約96時間、少なくとも約120時間、少なくとも約144時間、又は少なくとも約168時間適用される。
【0069】
代替的に、又は加えて、EHTは、Trpv4活性化によって刺激される。Trpv4活性化は、細胞(例えば、CD34+濃縮細胞、EC、又はHEC)を、GSK1016790A、4α-PDD、又はそれらの類似体及び/若しくは誘導体から任意選択的に選択される1つ以上のTrpv4アゴニストと接触させることによるものであり得る。
【0070】
細胞集団が、ある特定の表現型を有するものとして本明細書に記載される場合、表現型は、細胞集団の少なくとも25%、少なくとも40%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%などの細胞集団のかなりの部分を表すことが理解される。更に、様々なステップでは、細胞集団が、所望の表現型の少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%を含むように、細胞集団を所望の表現型の細胞について濃縮し、かつ/又は望ましくない表現型の細胞を枯渇させることができる。そのような陽性及び陰性選択方法は、当該技術分野で公知である。例えば、蛍光活性化細胞選別機、又は細胞をある特定の細胞表面抗原と結合する磁気ビーズを使用して、細胞表面抗原(本明細書に記載されるものを含む)に基づいて、細胞を選別することができる。陰性選択カラムを使用して、望ましくない細胞表面マーカーを発現する細胞を除去することができる。いくつかの実施形態では、細胞は、(EHTを受ける前及び/又は後に)CD34+細胞について濃縮される。いくつかの実施形態では、細胞集団は、CD34+細胞の増殖を促進し、それによって、幹細胞の増殖した集団を産生する条件下で培養される。
【0071】
様々な実施形態では、CD34+細胞(例えば、浮遊細胞及び/又は接着細胞)が、12日目~17日目などのiPSC分化の10日目~20日目に内皮・造血転換を受ける培養物から採取される。いくつかの実施形態では、CD34+細胞は、非接着細胞を含む。
【0072】
様々な実施形態では、HSC又はCD34+濃縮細胞は、更に増殖される。例えば、HSC又はCD34+濃縮細胞は、参照によりそれらの全体で本明細書に組み込まれる、US8,168,428、US9,028,811、US10,272,110、及びUS10,278,990に開示されている方法に従って増殖させることができる。いくつかの実施形態では、HSC又はCD34+濃縮細胞のエクスビボ増殖は、プロスタグランジンE(PGE2)又はPGE誘導体を採用する。本開示のいくつかの実施形態では、HSCは、少なくとも約0.01%のLT-HSC、又は少なくとも約0.05%のLT-HSC、又は少なくとも約0.1%のLT-HSC、又は少なくとも約0.5%のLT-HSC、又は少なくとも約1%のLT-HSCを含む。
【0073】
巨核球及び/又は血小板を生じるHSC及び/又はHSPCは、CD34の発現マーカー及び系統特異的マーカー(Lin-と称される)の非存在に基づいて同定することができる。いくつかの実施形態では、HSC及び/又はHSPCを含む幹細胞の集団は、例えば、参照によりその全体で本明細書に組み込まれるUS9,834,754に記載されているように濃縮される。例えば、このプロセスは、CD34、CD90、CD38、及びCD43のうちの1つ以上の発現に基づいて細胞集団を選別することを含むことができる。CD34、CD90、CD38、及びCD43のうちの1つ以上である画分を、更なる分化のために選択することができる。いくつかの実施形態では、造血系統への分化のための幹細胞集団は、少なくとも約80%のCD34、又は少なくとも約90%のCD34、又は少なくとも約95%のCD34である。
【0074】
いくつかの実施形態では、幹細胞集団、又はCD34+濃縮細胞若しくはその画分、あるいは誘導体集団は、参照によりその全体で本明細書に組み込まれるUS2020/0308540に記載されているように増殖される。例えば、細胞は、例えば、SR1又はSR1誘導体を含むアリール炭化水素受容体拮抗剤に細胞を曝露することによって増殖される。また、Wagner et al.,Cell Stem Cell 2016;18(1):144-55、及びBoitano A.,et al.,Aryl Hydrocarbon Receptor Antagonists Promote the Expansion of Human Hematopoietic Stem Cells.Science 2010 Sep 10;329(5997):1345-1348を参照されたい。
【0075】
いくつかの実施形態では、CD34細胞の増殖を促進する化合物は、例えば、UM171又はUM729を含むピリミドインドール誘導体を含む(参照により本明細書に組み込まれる、US2020/0308540を参照されたい)。
【0076】
いくつかの実施形態では、幹細胞集団又はCD34+濃縮細胞は、WO2020/205969(参照によりその全体で本明細書に組み込まれる)に記載されているように、ペリオスチン及び/若しくは血小板由来成長因子受容体α(pdgfra)を発現する細胞について更に濃縮されるか、又はペリオスチン及び/若しくはpdgfraを発現するように修飾される。そのような発現は、コード化転写産物を細胞に送達することによる、又はコード化導入遺伝子を導入することによる、又は非統合性エピソームを細胞に導入することに限定されない、無導入遺伝子方法によるものであり得る。いくつかの実施形態では、遺伝子編集は、プロモーター活性若しくは強度、リボソーム結合、RNA安定性を増加させるか、又はRNAスプライシングに影響を及ぼすためなどに、細胞における発現要素に遺伝子組換えを導入するために採用される。
【0077】
なおも他の実施形態では、幹細胞集団又はCD34+濃縮細胞は、ヒストンメチルトランスフェラーゼEZH1の阻害剤と培養される。代替的に、EZH1は、幹細胞集団において部分的若しくは完全に欠失若しくは不活性化されるか、又は一過性にサイレンシングされる。EZH1の阻害は、骨髄前駆細胞(例えば、CD34+CD45+)をリンパ系統に指向することができる。参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、WO2018/048828を参照されたい。なおも他の実施形態では、EZH1は、幹細胞集団において過剰発現される。
【0078】
様々な実施形態では、HSC及び/若しくはHSPC集団又はその画分は、エクスビボで巨核球に分化され、それから血小板を生成することができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、HSC及び/若しくはHSPC又はそれらの子孫を含む集団は、細胞を分化させるために、エクスビボで、部分的若しくは完全なNotchリガンド、SHH、細胞外基質成分(複数可)、及び/又はそれらの組み合わせと培養することができる。更に、公知のプロセスによれば、異種OP9-DL1、又はSTOマウス線維芽細胞若しくは血液由来の末梢血単核細胞(PBMC)若しくは臍帯血由来の間葉系幹細胞若しくはリンパ球由来のがん細胞株細胞のフィーダー層が、しばしば、造血細胞の分化のために採用される。OP9-DL1共培養系は、Notchリガンドデルタ様-1(DLL1)で形質導入された骨髄間質細胞株(OP9)を使用して、幹細胞源からのT細胞発生を支援する。OP9-DL1系は、臨床用途のための細胞の潜在能力を制限する。臨床用途のためにhiPSCから造血細胞を生成することができる無フィーダー細胞系の必要性があり、いくつかの実施形態では、本発明は、この目的を満たす。非限定的な例では、巨核球を生成するために、iPSC増殖が6日間実施され、その後に約8日かかる胚様体形成が続く。細胞は、約5日間更に培養されて、HSCが由来するCD34+造血内皮細胞の発生を可能にする。次いで、HCSは、巨核球への分化及び/又は更に血小板への分化のために特異的な培地で培養される。
【0080】
本明細書で使用される場合の「Notchリガンド」という用語は、造血幹細胞又は前駆T細胞の膜に存在するNotch受容体ポリペプチドに結合することが可能なリガンドを指す。Notch受容体としては、Notch-1、Notch-2、Notch-3、及びNotch-4が挙げられる。Notchリガンドは、典型的には、アミノ末端に20~22個のアミノ酸を含み、細胞外表面に3~8個のEGF反復を含む、DSLドメイン(D-Delta、S-Serrate、及びL-Lag2)を有する。様々な実施形態では、Notchは、デルタ様-1(DLL1)、デルタ様-4(DLL4)、SFIP3、DeltaMax(参照によりそれらの全体で本明細書に組み込まれる、PCT/US2020/041765及びPCT/US2020/030977に開示される)、Jagged1(JAG1)、Jagged2(JAG2)、デルタ様リガンド3(DLL3)、及びX-デルタ2、又はそれらの機能的部分のうちの少なくとも1つを含む。
【0081】
本明細書で使用される場合の「Notchリガンド」はまた、インタクトな(完全長)、部分的な(切断型)、又は修飾された(保存的変異などの1つ以上の変異を含む)notchリガンド、並びに完全長Notchリガンドの少なくとも1つの活性又は機能を保持する任意の種に由来するNotchリガンド又はその断片を含む。また、notchリガンドを模倣するペプチドも含まれる。Notchリガンドは、「正準notchリガンド」又は「非正準notchリガンド」であり得る。正準notchリガンドは、典型的には、N末端(NT)ドメイン、続いて、Delta/Serrate/LAG-2(DSL)ドメイン、及び複数のタンデム配列された上皮成長因子(EGF)様反復を含む、細胞外ドメインによって特徴付けられる。DSLドメインは、隣接するNTドメイン、並びにデルタ及びOSM-11様タンパク質(DOS)モチーフを含む最初の2つのEGF反復とともに、典型的には、正準リガンドがNotchに結合するために必要とされる。いくつかの正準リガンドの細胞内ドメインは、Notchシグナル伝達とは無関係な役割を果たす、カルボキシ末端PSD-95/Dlg/ZO-1-リガンド(PDZL)モチーフを含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、Notchリガンドは、結合し、Notchシグナル伝達に関与することができる抗Notch(アゴニスト)抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体(ヒト又はヒト化抗体を含む)、一本鎖抗体(scFv)、ナノボディ、又はNotchシグナル伝達経路を活性化することが可能な他の抗体断片若しくは抗原結合分子である。
【0083】
いくつかの実施形態では、Notchリガンドは、デルタファミリーNotchリガンドである。いくつかの実施形態におけるデルタファミリーリガンドは、デルタ-1(Genbank受託番号AF003522、Homo sapiens)、デルタ様1(DLL1、Genbank受託番号NM_005618及びNP_005609、Homo sapiens、Genbank受託番号X80903、148324、M.musculus)、デルタ-4(Genbank受託番号AF273454、BAB18580、Mus musculus、Genbank受託番号AF279305、AAF81912、Homo sapiens)、及び/又はデルタ様4(DLL4、Genbank受託番号Q9NR61、AAF76427、AF253468、NM_019074、Homo sapiens、Genbank受託番号NM 019454、Mus musculus)である。Notchリガンドは、市販されているか、又は例えば、組換えDNA技術によって産生することができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、Notchリガンドは、ヒトDLL1又はDLL4 Notchリガンドと少なくとも約70%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約97%同一(例えば、約100%同一)であるアミノ酸配列を含む。Notchリガンドの機能的誘導体(その断片又は部分を含む)は、Notch受容体に結合し、それを活性化することが可能であろう。Notch受容体への結合は、インビトロ結合アッセイ及び受容体活性化/細胞シグナル伝達アッセイを含む、当該技術分野で公知である様々な方法によって決定され得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、Notchリガンドは、以下のうちの1つ以上(又は全て)などの1つ以上の親和性増強変異を有するDLL4である:hDLL4に関して、G28S、F107L、I143F、H194Y、L206P、N257P、T271L、F280Y、S301R、及びQ305P。Gonzalez-Perez,et al.,Affinity-matured DLL4 ligands as broad-spectrum modulators of Notch signaling,Nature Chemical Biology(2022)を参照されたい。
【0086】
様々な実施形態では、Notchリガンドは、可溶性であり、磁気濃縮又は集中プロセスを可能にするために任意選択的に常磁性である微粒子又はナノ粒子上に任意選択的に固定化される。なおも他の実施形態では、Notchリガンドは、任意選択的にVCAM-1などの他の接着分子を用いて、2D又は3D培養表面上に固定化される。参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、US2020/0399599を参照されたい。他の実施形態では、ビーズ又は粒子は、ポリマー(例えば、ポリスチレン若しくはPLGA)、金、デキストラン鉄であるか、又は脂質及び/若しくはタンパク質から形成される粒子などの生物学的物質で構築される。様々な実施形態では、粒子は、約0.01μm(10nm)~約500μm(例えば、約1μm~約7μm)の直径又は最大寸法を有する。なおも他の実施形態では、参照によりその全体で本明細書に組み込まれるWO2020/131582に記載されているように、共役リガンドを有するポリマー足場を採用することができる。例えば、足場は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、PLGA、アルギン酸塩又はアルギン酸塩誘導体、ゼラチン、コラーゲン、アガロース、ヒアルロン酸、ポリ(リジン)、ポリヒドロキシ酪酸塩、ポリ-イプシロン-カプロラクトン、ポリホスファジン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アリルアミン)、ポリ(アクリレート)、ポリ(4-アミノメチルスチレン)、プルロニック(登録商標)ポリオール、ポリオキサマー、ポリ(ウロン酸)、ポリ(無水物)、ポリ(ビニルピロリドン)、及びそれらの任意の組み合わせから構築することができる。いくつかの実施形態では、足場は、約1pm~100pmの直径を有する細孔を含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、NotchリガンドのC末端は、選択された支持体にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、これは、例えば、ビオチン分子を通して支持体に酵素的にコンジュゲートすることができるNotchリガンドのC末端に配列を付加することを含むことができる。別の実施形態では、支持体にコンジュゲートされているプロテインA又はプロテインGに結合することによって、Fcセグメントを固定化することができるように、Notchリガンド-Fc融合物が調製される。当然ながら、公知のタンパク質コンジュゲーション方法のうちのいずれかを採用することができる。
【0088】
したがって、様々な実施形態では、Notchリガンドは、2D又は3D培養系において固定化し、官能化し、かつ/又は埋め込むことができる。Notchリガンドは、フィブロネクチン、レトロネクチン、及びラミニンから選択される1つ以上などの細胞外基質の成分とともに組み込まれ得る。いくつかの実施形態では、Notchリガンド及び/又は細胞外基質の成分は、3D培養条件を提供する不活性材料に埋め込まれる。例示的な材料としては、セルロース、アルギン酸塩、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Notchリガンド、細胞外基質の成分、又はそれらの組み合わせは、分化及び/又は増殖を助長する局所的パターン及び/又はテクスチャ(例えば、粗度)を細胞に提供する培養条件と接触している。
【0089】
いくつかの実施形態では、HSC及び/又はHSPCを含む集団を巨核球に分化させるステップは、トロンボポエチン(TPO)と培養することを含む。培養物は、IL-1、IL-3、IL-6、IL-9、IL-11、SCF、SDF-1、及びPDGF-BBから選択されるものなどの1つ以上の追加のサイトカイン又は成長因子を更に含み得る。TPOを含むサイトカイン及び成長因子を選択して、巨核球を更に増殖させることができる。いくつかの実施形態では、巨核球を増殖させるためのそのような追加のサイトカイン又は成長因子は、幹細胞因子(SCF)、FMS様チロシンキナーゼ3リガンド(Flt3L)、IL-6、IL-9、及びエリスロポエチン(EPO)から選択され得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、未成熟の巨核球が生成され、これらを、CD34-CD41+CD61+CD42b-として同定することができる。幹細胞因子(SCF)、IL-6、及びIL-9から選択されるサイトカイン及び成長因子のうちの1つ以上と培養することによって、巨核球の成熟を促進することができる。いくつかの実施形態では、エリスロポエチン(EPO)及び/又はIL-8は、除外される。巨核球成熟は、細胞質体積の増加、α及び高密度顆粒の数の増加、高密度管状網の形成、並びに/又は顆粒放出のための開放細管系の形成を伴う。いくつかの実施形態では、成熟巨核球は、顆粒を含有する。いくつかの実施形態では、成熟巨核球は、顆粒を含有しない。
【0091】
巨核球倍数性は、血小板産生と相関することができる。例えば、インビボでは、より高い倍数性の巨核球を有する骨髄が、より大きいとともに、より不均一である血小板を産生する。いくつかの実施形態では、本開示に従って産生される成熟巨核球は、少なくとも8Nの倍数性を含む。いくつかの実施形態では、成熟巨核球は、少なくとも約8N、約16N、約32N、又は約64Nの平均倍数性を含む。
【0092】
成熟巨核球は、線維芽細胞成長因子4(FGF4)及び間質細胞由来因子1(SDF1)の存在下での培養などによって、当該技術分野で公知であるように前血小板及び血小板を形成することができる。いくつかの実施形態では、巨核球又は前血小板は、細胞に流体力学的せん断応力を受けさせるバイオリアクター内で培養される。例えば、血小板は、静的2D、無血清、サイトカイン依存性条件で産生することができる。代替的に、血小板は、三次元(3D)微小環境で産生することができる。様々な実施形態では、血小板は、CD41+CD42b+である表現型を有するであろう。回収された血小板は、トロンビンによって活性化可能である。血小板は、回収し、輸血療法の前にガンマ線照射を受けることができる。
【0093】
本開示の組成物(例えば、本開示に従って調製される血小板を含む)は、薬学的に許容される担体を更に含み得る。そのような担体溶液はまた、緩衝液、希釈剤、及び他の好適な添加剤を含有することができる。緩衝液は、その化学組成がpHの著しい変化を伴わずに酸又は塩基を中和する溶液又は液体を指す。本発明によって想定される緩衝液の例としては、生理/生理的食塩水(0.9%NaCl)、水中の5%デキストロース(D5W)、ダルベッコリン酸緩衝食塩水(PBS)、リンゲル溶液が挙げられるが、これらに限定されない。本組成物は、静脈内注入又は他の投与経路に好適なビヒクルを含み得、本組成物は、好適な抗凍結剤を含み得る。例示的な担体は、DMSO(例えば、約10%DMSO)である。他の担体は、ジメトキシエタン(DME)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、又はジメチルアセトアミドを含み得、それらの混合物又は組み合わせを含む。細胞又は血小板組成物は、埋込型デバイス(例えば、足場)内、又はバッグ内、又はバイアル、チューブ、若しくは容器内に適切な体積で提供され、使用まで凍結保存され得る。
【0094】
様々な実施形態では、本組成物は、50又は100mLの体積当たり少なくとも約10個の血小板、又は少なくとも約1010個の血小板、又は少なくとも約1011個の血小板、又は少なくとも約1012個の血小板を含む。
【0095】
開示された方法で使用するための薬学的組成物はまた、特定の標的障害の治療のための追加の治療剤を含有し得る。例えば、薬学的組成物はまた、サイトカイン及び成長因子(インターロイキン、インターフェロン、FGF、VEGF、PDGF、PIGF、STATなど)を含み得る。そのような追加の因子及び/又は薬剤は、本明細書に開示される治療アプローチの利点を生じる、すなわち、低減した全身毒性を有する改善された治療効果を提供するために、薬学的組成物に含まれ得る。
【0096】
他の態様では、血小板は、多血小板血漿(PRP)治療を必要とする対象からのPRPを濃縮するために使用される。ここで、インタクトな血小板又はそこから抽出された溶解物の組み合わせを使用して、ドナー由来のPRPなどの他の血小板濃縮血漿源を濃縮することができる。任意選択的に、それは、患者におけるPRPベースの治療用途を補完する、成長因子、サイトカイン、又は他の供給源からの他の薬剤を含み得る。
【0097】
他の態様では、本発明は、血小板(本明細書に記載されるように調製される)又はその薬学的に許容される組成物を、それを必要とするヒト対象に投与することを含む、血小板療法のための方法を提供する。様々な実施形態では、本明細書に記載される方法は、ACTN1関連血小板減少症、橈尺骨癒合症を伴う無巨核球性血小板減少症、ANKRD26関連血小板減少症、常染色体優性血小板減少症、先天性無巨核球性血小板減少症、CYCS関連血小板減少症、FYB関連血小板減少症、特発性血小板減少性紫斑病、又はX連鎖性血小板減少症などの血小板減少症を有する対象を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、血小板は、出血を経験している対象に投与される。
【0098】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、関連する数値の±10%を意味する。
【0099】
本開示のある特定の態様及び実施形態が、以下の実施例を参照して更に説明される。
【実施例
【0100】
実施例1-ETV2過剰発現は、iPSC分化中に造血内皮細胞の収率を増加させ、CD34+細胞形成を増強するが、多能性には影響を及ぼさない。
方法
当該技術分野で公知であり、本質的に、Yu,et al.Induced pluripotent stem cell lines derived from human somatic cells,Science 318,1917-1920,(2007)、及びJ.Yu,et al.Human induced pluripotent stem cells free of vector and transgene sequences.Science 324,797-801,(2009)に記載されているエピソーム再プログラミングによって、iPSCをhCD34+細胞から開発した。胚様体及び造血内皮分化を、本質的に、R.Sugimura,et al.,Haematopoietic stem and progenitor cells from human pluripotent stem cells.Nature 545,432-438,(2017)、C.M.Sturgeon,et al,Wnt signaling controls the specification of definitive and primitive hematopoiesis from human pluripotent stem cells.Nat Biotechnol 32,554-561,(2014)、J.Yu,et al.Induced pluripotent stem cell lines derived from human somatic cells.Science 318,1917-1920,(2007)、及びJ.Yu,et al.Human induced pluripotent stem cells free of vector and transgene sequences.Science 324,797-801,(2009)に記載されているように実施した。
【0101】
簡潔に述べると、hiPSCを解離し、L-グルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシン、アスコルビン酸、ヒトホロ-トランスフェリン、モノチオグリセロール、BMP4、及びY-27632を補充した培地中に再懸濁させた。次に、細胞をEB形成のために10cm皿(EZSPHERE又は低付着プレート)に播種した。1日目に、bFGF及びBMP4を培地に添加した。2日目に、培地を、SB431542、CHIR99021、bFGF、及びBMP4を含有する培地に置き換えた。4日目に、細胞培地を、VEGF及びbFGFを補充した培地に置き換えた。6日目に、細胞培地を、bFGF、VEGF、インターロイキン(IL)-6、IGF-1、IL-11、SCF、及びEPOを補充した培地に置き換えた。細胞を、5%CO、5%O、及び95%湿度のインキュベーター内で維持した。CD34+細胞を採取するために、EBを8日目に解離し、70μmストレーナーを通して細胞を濾過し、CD34+細胞をCD34磁性ビーズ染色によって単離した。
【0102】
結果
EF1Aプロモーターの制御下でETV2及びGFP配列の両方を含むアデノウイルスベクターを使用して、人工多能性幹細胞(iPSC)を形質導入した。形質導入後、iPSC培養物の約45%がGFP陽性であることを観察し、ETV2過剰発現(ETV2-OE)を確認した。幹細胞性マーカー発現TRA-1-60によって示されるように、iPSC細胞におけるETV2-OEがiPSCの多能特性を保持することが更に観察された(図1)。図1は、ETV2及びGFP配列を過剰発現するためのアデノウイルスベクターを用いたiPSCの形質導入効率を表すFACSプロットを示す。
【0103】
次に、ETV2-OE-iPSCを(ETV2がないGFP配列を持つベクターで形質導入された対照iPSCとともに)、胚様体に分化させ、その後、造血内皮細胞に分化させた(Strugeon et al.,2014)。結果は、ETV2の過剰発現が、CD235a集団内のCD34及びCD31マーカーの発現によって実証される、造血内皮細胞の形成を増進することを示唆する(図2)。具体的には、図2は、造血内皮細胞(ここではCD235a-CD34+CD31+として定義される)の代表的なフローサイトメトリー分析及び相対定量化が、ETV2-OEが対照と比較して造血内皮細胞の形成を増強することを実証することを示す。
【0104】
更に、結果は、ETV2-OEがCD34細胞の形成を増強することを示唆する(図3)。図3は、CD34+細胞の代表的なフローサイトメトリー分析及び相対定量化が、ETV2-OEがCD34+細胞形成を増強することを実証することを示す。
【0105】
全体的に、これらのデータは、iPSCにおけるETV2過剰発現が、それらの多能特性に影響を及ぼさず、造血内皮及び造血分化を受けるそれらの能力を促進することを示す。
【0106】
実施例2-Piezo1活性化により生成されたiPSC由来のHSCが、骨髄由来のHSCと同様にT細胞分化を受ける。
方法
EHTを分析するために、EB由来のCD34+細胞を、Y-27632、TPO、IL-3、SCF、IL-6、IL-11、IGF-1、VEGF、bFGF、BMP4、及びFLT3を含有する培地中に懸濁させた。(目視検査によって)細胞がウェルの底部に約4~18時間接着した後、いくつかの実験のためにYoda1を培養物に添加した。4~7日後、分析のために細胞を収集した。
【0107】
iPSCを、8日間胚様体に分化させた。8日目に、iPSC由来の胚様体からのCD34+細胞を採取し、更に5~7日間培養して、内皮・造血(EHT)転換(Yoda1の有無にかかわらず)を誘導した。次いで、更なる造血系統分化のために、CD34+細胞を5日目~7日目にEHT培養物から採取した。
【0108】
結果
図4は、巨核球系統への細胞の関与を示す、巨核球分化のFACS分析を示す。iPSC(D8+7 iPSC-CD34+、Yoda1「Y」の有無にかかわらず)から分化したCD34+細胞においてEHTを誘導することによって産生されるHSC集団は、巨核球への分化を支援することの観点から、分化したiPSC(D8 iPSC-CD34+)及び骨髄(BM)CD34+細胞から単離されるCD34+細胞よりも性能が優れている。図5は、D8+7 iPSC-CD34+に由来する巨核球細胞(Yの有無にかかわらず)が、エクスビボでの増殖が可能であり、D8 iPSC-CD34+細胞から分化し、BM CD34+細胞から分化した巨核球に類似する巨核球よりも性能が優れていることを示す。
【0109】
図6は、D8+7 iPSC-CD34+由来の巨核球がBM CD34+由来の巨核球に表現型的に類似し、血小板を放出することができることを示す、D8+7 iPSC-CD34+細胞に由来する巨核球(Yの有無にかかわらず)、及び骨髄からのCD34+細胞の血小板分化の免疫蛍光分析を示す。
【0110】
図7は、D8+7 iPSC-CD34(+Y)由来の血小板が、活性化されると凝固し、血栓形成を促進することができることを示す、これらの血小板からの血栓形成を示す。
【0111】
実施例3-HLAノックアウトHSCにおける標的外編集の評価
不要な編集をチェックし、かつ主要な編集事象、例えば、欠失(複数可)が染色体6の他の領域内で生じないことを確実にするために、トリプルノックアウト(HLA編集)HSCクローンのHLAタイピングを実施した。gRNA標的外活性の程度を評価し、かつ非標的HLA遺伝子に影響を及ぼす低いリスクを表すgRNAを選択するために、配列決定方法及び分析を実施した。
【0112】
完全長P5配列決定アダプターを末端調製DSBにライゲーションすることによって、固定及び透過性細胞でインサイチュ切断標識を使用することによって、配列決定を実施した。ゲノムDNAを抽出し、断片化し、末端調製し、化学的に修飾された半機能的P7アダプターを使用してライゲーションした。結果として得られるDNAライブラリは、機能的DSB標識断片(P5:P7)及び非機能的ゲノムDNA断片(P7:P7)の混合物を含有した。DNAライブラリの後続のDNA配列決定は、全ての無関係な非機能的DNAを排除して、DNA標識断片を濃縮した。ライブラリ調製物がPCRフリーであるため、得られた各配列決定リードは、細胞からの単一の標識DSB末端と同等であった。これは、DNA切断の読み出しを生成し、エラー訂正を必要とすることなく配列決定することによってゲノムDSBの直接検出と定量化を可能にし、標的外変異の明確なリストのマッピングを可能にした。
【0113】
以下の表1は、野生型細胞に対する2つの代表的なクローンにおける編集方略の結果を要約する。
【表1】
【0114】
表2は、示されたHLA遺伝子の発現をノックアウトするために使用することができる実験で使用されるgRNAの非限定的な例を提供する。
【表2】
【0115】
結果は、編集方略が、他のHLA遺伝子に影響を及ぼすことなく、又は他の場所で主要な欠失を導入することなく、HLA-A、DPB1、及びDQB1遺伝子を選択的に標的化することに成功したことを示す。
【0116】
これらの結果は、FACS及び免疫蛍光によるHLA編集クローンの表現型分析によって確認された。図8A及びBに示されるように、HLA編集細胞は、野生型細胞のHLAクラスI分子の全体的な発現と同等である、HLAクラスI分子の全体的な発現について検査で陽性であった。免疫蛍光を介したHLA-Aの特異的発現は、HLA-AがHLA編集細胞において発現されなかったことを確認し、遺伝子編集方略がHLA-A遺伝子のみを欠失することに成功したという所見を裏付けた。具体的には、図8Aは、HLA編集細胞が全て、野生型(WT)(すなわち、非HLA編集)細胞と同程度にHLAのようなクラスIについて陽性であったことを示す。この結果は、HLA-Aの欠失にもかかわらず、HLA-B及びHLA-Cのような他のクラスI分子が発現され、遺伝子編集方略の影響を受けなかったことを示す。
【0117】
HLA-A遺伝子が欠失したことを確認するために、HLA-Aの特異的発現を免疫蛍光で分析した。図8Bで見ることができるように、HLA-Aは、HLA編集クローンにおいて発現されず、遺伝子編集方略がHLA-A遺伝子のみを特異的に欠失することに効率的であったことを示す。HLA-Aの欠失を伴う全体的なクラスI発現のそのような保存は、NK細胞媒介性拒絶反応を回避しながら、患者適合を促進するであろう。
【0118】
実施例4-HLA編集HSCの多能性及び免疫適合性の評価
多能性を保存するHLA編集細胞の能力を評価した。図9に示されるように、HLA編集iPSCクローンの免疫蛍光評価は、それらが3系統分化を維持したことを示し、外胚葉分化がNESTIN-488及びPAX6-594染色によって示され、中胚葉分化がGATA-488染色によって示され、内胚葉分化がCXCR4-488及びFOX2A-594染色によって示される。
【0119】
HLAクラスI分子は、全ての有核細胞の表面上で発現され、HLAクラスI分子がドナーとレシピエントとの間で不適合である場合、細胞が認識され、CD8+T細胞によって殺傷され得る。加えて、HLA不適合は、サイトカイン放出症候群(CRS)及び移植片対宿主病(GVHD)につながり得る。逆に、B2M KOを介したHLA-I分子の完全な欠失は、細胞をNK細胞媒介性細胞傷害性の標的にするであろう。HLA-Aの欠失を伴う全体的なクラスI発現の保存は、NK細胞媒介性拒絶反応を回避しながら、患者適合を促進することができる。したがって、HLA編集HSCの免疫適合性を、末梢血単核細胞(PBMC)との共培養によって試験して、免疫細胞がHLA編集及び野生型HSC(gHSC)の移植片を拒絶するかどうかを評価した。
【0120】
野生型(gHSC)及びHLA編集HSCを、HLA-B及びHLA-Cマーカーに適合するが不適合HLA-Aを有するPBMCと共培養した。HLAクラスI分子の発現を欠くB2M KO HSC及びクラスII分子の発現を欠くCIITA KO HSCを、それぞれ、HLAヌル及び不適合HLAについてPBMC媒介性細胞傷害性の程度を比較するために対照として使用した。図10は、アネキシンV染色によって測定される共培養におけるPBMC媒介性細胞毒性アッセイの結果を示す。結果は、HLA編集HSCにおけるHLA-Aの欠失が、PBMC媒介性細胞傷害性から細胞を保護する一方で、WT、B2M KO、及びCIITA KOが、PBMC媒介性細胞傷害性の影響を受けやすかったことを示す。同じPBMCドナーからの選別されたCD8+T細胞と共培養したHSCは、CD8+T細胞傷害性からHLA編集及びB2M KO HSCを保護した。逆に、選別されたNK細胞と共培養したHSCは、NK細胞媒介性細胞傷害性からWT及びHLA編集細胞のみを保護した。
【0121】
要約すると、免疫適合性結果は、PBMC試料中に存在するCD8+T細胞が不適合HLA分子(WT)及びCIITA KOを有する細胞を殺傷することに関与した一方で、PBMC中に存在するNK細胞がHLAヌル細胞(B2M KO)を殺傷することに関与したことを示す。しかしながら、HLA編集HSCは、CD8+T細胞媒介性細胞傷害性から保護され(不適合HLA-Aがノックアウトされていたため)、NK細胞媒介性細胞傷害性から保護される(HLAクラスI分子発現が大部分は保存されたため)。
【0122】
実施例5-HLA編集HSCのインビボ生着能の評価
HLA編集HSCの生着能を評価するために、インビボで生着する細胞の能力を、WT HSCに対する競合的移植によって評価した。等しい割合のmCherry HLA編集HSC及び野生型HSC(gHSC)を混合し、マウスに移植し、骨髄(BM)及び末梢血試料を回収し、FACSによって評価して、試料中に存在する各細胞型の相対量を比較した。図11に示されるように、HLA編集HSC及びWT HSCの両方が、BM及び末梢血試料におけるほぼ等しい生着に寄与した。これらの結果は、HLA編集HSC(本開示に従って調製される)が、それらの生着及び再構築能においてWT HSCと同等であることを確認する。したがって、WT(未編集、親)HSCの特性は、T細胞系統を生成するために本開示のHLA編集HSCの特性と一致することが予期される。
【0123】
実施例6:前巨核球/前血小板へのHLA編集HSCの分化
HLA編集HSCは、巨核球(MK)に分化し、更に血小板に分化することができることが決定された。分化を骨髄(BM)由来のCD34+細胞及びiPSC-CD34+細胞に対して比較した。図12に示されるように、HLA編集HSCは、BM CD34+及びiPSC-34+細胞集団と比較して、血小板含有量の統計的に有意な増加を示した。したがって、HLA編集HSCは、血小板への分化を更に支援することができる巨核球(MK)に分化することができる。
【0124】
参考文献
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
【配列表】
2025533908000001.xml
【国際調査報告】