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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-10-09
(54)【発明の名称】艶消しコーティングを形成する方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/06 20060101AFI20251002BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20251002BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20251002BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20251002BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20251002BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
B05D3/06 Z
B05D3/06 101Z
B05D7/24 301T
B05D7/24 303E
C09D4/00
C09D7/65
C09D7/63
C09D5/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2025520890
(86)(22)【出願日】2023-10-12
(85)【翻訳文提出日】2025-06-04
(86)【国際出願番号】 FR2023051590
(87)【国際公開番号】W WO2024079427
(87)【国際公開日】2024-04-18
(31)【優先権主張番号】2210460
(32)【優先日】2022-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ローズ, ジャン-イヴ
(72)【発明者】
【氏名】ドルジョン, グザヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ラポルテ, ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】バセット, モード
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075BB42Z
4D075BB43Z
4D075BB46Z
4D075BB47Z
4D075BB53Z
4D075BB54Z
4D075BB92Z
4D075BB94Z
4D075CA34
4D075CB02
4D075CB21
4D075DA04
4D075DB48
4D075EA21
4D075EB23
4D075EB39
4D075EB57
4D075EC07
4D075EC37
4J038FA111
4J038FA112
4J038FA251
4J038FA252
4J038KA04
4J038MA02
4J038MA14
4J038NA01
4J038NA04
4J038NA05
4J038NA11
4J038PA17
4J038PB02
4J038PB05
4J038PC06
4J038PC08
4J038PC09
(57)【要約】
本発明は、表面をコーティングする方法であって、以下の工程:硬化性組成物の層を前記表面に塗布する工程;硬化性組成物に100~280nmの波長を有する第1の放射線を照射して、部分的に硬化した組成物を得る工程;並びに、部分的に硬化した組成物に、第1の放射線の波長よりも長い少なくとも1つの波長を含む第2の放射線、及び/又は電子ビームを照射して、硬化した組成物を得る工程を含み、該硬化性組成物が、化学線により硬化可能な少なくとも1つの化合物と、少なくとも1つのポリアミドの粒子とを含む方法に関する。本発明はまた、このような方法によって得られるコーティング層、及びこのようなコーティング層で覆われた表面を含む物体に関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面をコーティングする方法であって、以下の工程:
- 硬化性組成物の層を前記表面に塗布する工程;
- 硬化性組成物に100~280nmの波長を有する第1の放射線を照射して、部分的に硬化した組成物を得る工程;並びに
- 部分的に硬化した組成物に、第1の放射線の波長よりも長い少なくとも1つの波長を含む第2の放射線、及び/又は電子ビームを照射して、硬化した組成物を得る工程
を含み;
ここで、硬化性組成物は、化学線により硬化可能な少なくとも1つの化合物と、少なくとも1つのポリアミドの粒子とを含む
方法。
【請求項2】
硬化性組成物が、組成物の総重量に対して、0.01重量%~2重量%の少なくとも1つのポリアミドの粒子、好ましくは0.01重量%~1.5重量%の少なくとも1つのポリアミドの粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのポリアミドの粒子が、20μm以下、好ましくは1~20μmの体積中位径Dv50を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ポリアミドが、ポリアミド12、ポリアミド11、ポリアミド10、ポリアミド6、ポリアミド6.10、ポリアミド6.12、ポリアミド6.6、ポリアミド10.10、ポリアミド10.12、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
化学線により硬化可能な少なくとも1つの化合物が、エチレン性不飽和化合物であり、好ましくはアクリレート、メタクリレート、シアノアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、マレイン酸、フマル酸、イタコネート、アリル、プロペニル、ビニル、メチリデンマロネート、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの基を含む化合物であり、より好ましくはアクリレート、メタクリレート、及びビニルから選択される少なくとも1つの官能基を含む化合物であり、さらにより好ましくはアクリレート及びメタクリレートから選択される少なくとも1つの官能基を含む化合物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
硬化性組成物が、好ましくは、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、アセトフェノン、ベンジル、ベンジルケタール、アントラキノン、ホスフィンオキシド、α-ヒドロキシケトン、フェニルグリオキシレート、α-アミノケトン、ベンゾフェノン、チオキサントン、キサントン、アクリジン誘導体、フェナゼン誘導体、キノキサリン誘導体、トリアジン誘導体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの光開始剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第1の放射線が、150~250nm、好ましくは150~200nm、より好ましくは168~180nm、より優先的には172~175nmの波長を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
硬化性組成物に第1の放射線を照射することが、エキシマランプを使用して行われる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第2の放射線が、100~900nmの範囲、好ましくは180~500nmの範囲の波長スペクトルを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第2の放射線が、285~900nmの範囲、好ましくは300~500nmの範囲の少なくとも1つの波長を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
第2の放射線が、ドープされていない水銀灯、ドープされた水銀灯、又はLEDランプによって、好ましくは350~405nmの範囲の波長で放射される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
表面に塗布される硬化性組成物の層が、100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下の厚さを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法によって得られるコーティング層。
【請求項14】
請求項13に記載のコーティング層で覆われた表面を含む物体。
【請求項15】
化学線により硬化可能な少なくとも1つの化合物と、組成物の総重量に対して、0.01重量%~2重量%の少なくとも1つのポリアミドの粒子、好ましくは0.01重量%~1.5重量%の少なくとも1つのポリアミドの粒子とを含む組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の組成物に基づくコーティング層。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の組成物を少なくとも部分的に硬化させるためのエキシマランプの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、艶消しの外観をもたらす硬化性組成物に基づいて表面をコーティングする方法、及びそのような方法により得られるコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
化学線により硬化可能又は架橋可能な組成物は、表面上にコーティングを形成するために一般的に使用される。それらは特に溶媒の使用を不必要にし、迅速な架橋を可能にする。
【0003】
特定の用途では、艶消しコーティングが望ましい。「艶消しコーティング」とは、85°で15GU未満の鏡面光沢度を有するコーティングを指す。
【0004】
このような艶消しコーティングを得るための1つの既知の選択肢は、コーティングの表面に艶消し剤の一部が現れるのに十分な量の艶消し剤を硬化性組成物に添加し、それによって該表面上に粗さを作り出すことである。あるいは、艶消し剤を使用せずに、コーティング組成物に異なる波長の連続的な放射線を照射して、コーティング層のその表面で非常に低い厚さだけを最初に架橋させてしわ(fold)を作り出し、次に第2段階で層の残りの部分を架橋させることによって、艶消しを得ることもできる。
【0005】
しかしながら、この後者の技術は、しわの多い領域としわの少ない領域が交互に現れるか、しわが扇形に配向したりするため、一般的に不均一な表面粗さをもたらす。結果として得られるコーティングは、艶消し領域と光沢のある領域を含む不均一な外観を示し、コーティングの外観を歪める。さらに、これらの不均一なコーティングは、扇形のしわを有する領域がほこりや汚れを保持するため、低い耐汚染性を示す。
【0006】
米国特許出願公開第2014/0371384号は、基材に塗布されたコーティング剤を架橋するための3つの照射工程を含む、表面を艶消しするための方法に関する文書である。
【0007】
米国特許出願公開第2016/0145449号は、架橋性成分、充填剤、UV安定剤、光開始剤、並びに非膨潤性充填剤及び膨潤性又は可溶性ポリマーから選択される成分を含む光架橋性組成物を記載する文書である。
【0008】
米国特許出願公開第2020/0024439号は、アクリル組成物に3つの照射工程を施すことによって製造される架橋生成物に関する文書である。
【0009】
均一で、改善された耐汚染性を特徴とし、多種多様な架橋性成分とともに使用できる艶消しコーティングを得ることができる方法を提供することが真に必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、第1に、表面をコーティングする方法であって、以下の工程:
- 硬化性組成物の層を前記表面に塗布する工程;
- 硬化性組成物に100~280nmの波長を有する第1の放射線を照射して、部分的に硬化した組成物を得る工程;並びに
- 部分的に硬化した組成物に、第1の放射線の波長よりも長い少なくとも1つの波長を含む第2の放射線、及び/又は電子ビームを照射して、硬化した組成物を得る工程
を含み;
ここで、硬化性組成物は、化学線により硬化可能な少なくとも1つの化合物と、少なくとも1つのポリアミドの粒子とを含む
方法に関する。
【0011】
いくつかの実施態様では、硬化性組成物は、組成物の総重量に対して、0.01重量%~2重量%の少なくとも1つのポリアミドの粒子、好ましくは0.01重量%~1.5重量%の少なくとも1つのポリアミドの粒子を含む。
【0012】
いくつかの実施態様では、少なくとも1つのポリアミドの粒子は、20μm以下、好ましくは1~20μmの体積中位径Dv50を有する。
【0013】
いくつかの実施態様では、ポリアミドは、ポリアミド12、ポリアミド11、ポリアミド10、ポリアミド6、ポリアミド6.10、ポリアミド6.12、ポリアミド6.6、ポリアミド10.10、ポリアミド10.12、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0014】
いくつかの実施態様では、化学線により硬化可能な少なくとも1つの化合物は、エチレン性不飽和化合物であり、好ましくはアクリレート、メタクリレート、シアノアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、マレイン酸、フマル酸、イタコネート、アリル、プロペニル、ビニル、メチリデンマロネート、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの基を含む化合物であり、より好ましくはアクリレート、メタクリレート、及びビニルから選択される少なくとも1つの官能基を含む化合物であり、さらにより好ましくはアクリレート及びメタクリレートから選択される少なくとも1つの官能基を含む化合物である。
【0015】
いくつかの実施態様では、硬化性組成物は、好ましくは、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、アセトフェノン、ベンジル、ベンジルケタール、アントラキノン、ホスフィンオキシド、α-ヒドロキシケトン、フェニルグリオキシレート、α-アミノケトン、ベンゾフェノン、チオキサントン、キサントン、アクリジン誘導体、フェナゼン誘導体、キノキサリン誘導体、トリアジン誘導体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの光開始剤を含む。
【0016】
いくつかの実施態様では、第1の放射線は、150~250nm、好ましくは150~200nm、より好ましくは168~180nm、より優先的には172~175nmの波長を有する。
【0017】
いくつかの実施態様では、硬化性組成物に第1の放射線を照射することは、エキシマランプを使用して行われる。
【0018】
いくつかの実施態様では、第2の放射線は、100~900nmの範囲、好ましくは180~500nmの範囲の波長スペクトルを有する。
【0019】
いくつかの実施態様では、第2の放射線は、285~900nmの範囲、好ましくは300~500nmの範囲の少なくとも1つの波長を含む。
【0020】
いくつかの実施態様では、第2の放射線は、ドープされていない水銀灯、ドープされた水銀灯、又はLEDランプによって、好ましくは350~405nmの範囲の波長で放射される。
【0021】
いくつかの実施態様では、表面に塗布される硬化性組成物の層は、100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下の厚さを有する。
【0022】
本発明はまた、上記のような方法によって得られるコーティング層に関する。
【0023】
本発明はまた、上記のようなコーティング層で覆われた表面を含む物体に関する。
【0024】
本発明はまた、化学線により硬化可能な少なくとも1つの化合物と、組成物の総重量に対して、0.01重量%~2重量%の少なくとも1つのポリアミドの粒子、好ましくは0.01重量%~1.5重量%の少なくとも1つのポリアミドの粒子とを含む組成物に関する。
【0025】
本発明はまた、上記の組成物に基づくコーティング層に関する。
【0026】
本発明はまた、化学線により硬化可能な少なくとも1つの化合物と、少なくとも1つのポリアミドの粒子とを含む硬化性組成物を少なくとも部分的に硬化させるためのエキシマランプの使用に関する。
【0027】
本発明は、上で述べた必要性を満たすために役立つ。より具体的には、本発明は、均一且つ強化された艶消し性を特徴とし、改善された外観、特に均一な外観を有し、増加した耐汚染性、増加した耐摩耗性、及び増加した耐薬品性を示すコーティングが形成されることを可能にする、表面をコーティングする方法を提供する。さらに、本発明による方法により、これらの有利な特性を多種多様な硬化性化合物に対して得ることが可能である。
【0028】
これは、ポリアミド粒子を硬化性組成物に組み込むことによって、及び、組成物を部分的に硬化させるための第1の照射工程と、次いで組成物の架橋を継続するための第2の照射工程とを含む、前記組成物を硬化するための方法を使用することによって達成される。理論に束縛されることを望まないが、本発明者らは、硬化性組成物中に分散されたポリアミド粒子が、硬化性組成物の層の表面でしわの開始点と終了点を作り出し、これらの点は第1の照射工程中に作られるため、しわに対するより効果的な制御が可能になり、結果として表面のしわのより良好な均一性、ひいてはコーティングの光沢のより良好な均一性が可能になると考えている。
【0029】
さらに、上記の利点は、ポリアミド粒子の量が非常に少量であっても達成することができる。したがって、有利な実施態様では、ポリアミド粒子は、硬化性組成物中に非常に少量で、より具体的には艶消し剤に対して従来採用されている量よりも少ない量で使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】以下の実施例に記載される硬化性組成物Aから得られたコーティングの走査型電子顕微鏡(SEM)によって得られた顕微鏡写真を表す。
図2】以下の実施例に記載される硬化性組成物3から得られたコーティングの走査型電子顕微鏡によって得られた顕微鏡写真を表す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
詳細な説明
本発明は、以下の説明において、より詳細に、且つ非限定的に説明される。
【0032】
特に断りのない限り、量に関する百分率は全て質量百分率である。
【0033】
本明細書において、所与の種について示された量は、より限定された定義も含め、(本明細書で言及されている)その全ての定義に従って、その種に適用され得る。
【0034】
本発明の文脈では、「硬化」及び「架橋」という用語は同じ意味を有する。
【0035】
硬化性組成物
本発明で使用される硬化性組成物は、好ましくは25℃で液体である。硬化性組成物は、代替的に、25℃ではゲル形態であり得るが、より高い温度(例えば、120℃)では液体形態であり得る。
【0036】
本発明で使用される硬化性組成物は、化学線により硬化可能な少なくとも1つの化合物と、少なくとも1つのポリアミドの粒子とを含む。「化学線」とは、従来、この放射線に曝露された物質において化学反応を誘発することができる任意の電磁放射線及び/又は電離放射線を指し、より具体的には、紫外線(UV)、可視光線及び電子ビームを含む放射線を指す。
【0037】
硬化性組成物は、有利には均一分散体である。「均一分散体」とは、硬化性化合物を含む液体マトリックス中のポリアミド粒子の分散体を指す。したがって、分散体の均一性は、巨視的均一性(肉眼で観察した場合、分散体が外観上均一であることを意味する)であり、分散体が粒状又は相分離した外観を有しないことを特徴とする。
【0038】
硬化性組成物は、27スピンドルを採用したブルックフィールドDV-II粘度計を使用して測定して(スピンドル速度は、粘度に応じて、典型的には20~200rpmの間で変化する)、25℃で100000mPa.s以下、好ましくは50000mPa.s以下、より好ましくは25000mPa.s以下、より好ましくは10000mPa.s以下、さらに好ましくは5000mPa.s以下の粘度を有し得る。
【0039】
化学線により硬化可能な化合物
本発明による硬化性組成物は、化学線により硬化可能な1つ以上の化合物を含む。本発明による硬化性組成物に導入される化学線により硬化可能な化合物は、化学線により硬化可能な成分と総称される。
【0040】
化学線により硬化可能な化合物は、特にラジカル重合反応により重合されることが特に意図されている。
【0041】
化学線により硬化可能な化合物は、特にエチレン性不飽和化合物であり得る。本発明の意味において、「エチレン性不飽和化合物」は、重合可能な炭素-炭素二重結合を含む化合物を意味する。重合可能な炭素-炭素二重結合は、重合反応において別の炭素-炭素二重結合と反応することができる炭素-炭素二重結合である。フェニル環内の炭素-炭素二重結合は、重合可能な炭素-炭素二重結合とはみなされない。
【0042】
エチレン性不飽和化合物は、特に、アクリレート、メタクリレート、シアノアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、マレイン酸、フマル酸、イタコネート、アリル、プロペニル、ビニル、メチリデンマロネート、及び対応する組み合わせから選択される少なくとも1つの基を含む化合物であり得、より好ましくは、アクリレート、メタクリレート、ビニル、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの官能基を含む化合物であり得、さらにより好ましくは、アクリレート、メタクリレート、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの官能基を含む化合物であり得る。
【0043】
化学線により硬化可能な成分は、特に、(メタ)アクリレート官能化化合物を含み得るか、又は(メタ)アクリレート官能化化合物であり得る。化学線により硬化可能な成分は、(メタ)アクリレート官能化化合物の混合物を含み得る(又は(メタ)アクリレート官能化化合物の混合物であり得る)。
【0044】
本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリレート官能化化合物」という用語は、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基、より具体的にはアクリロイルオキシ基を含む化合物を意味する。「(メタ)アクリロイルオキシ基」という用語は、アクリロイルオキシ基(-O-CO-CH=CH)及びメタクリロイルオキシ基(-O-CO-C(CH)=CH)を包含する。
【0045】
化学線により硬化可能な成分中の(メタ)アクリレート官能化化合物の総量は、化学線により硬化可能な成分の総重量を基準として、20重量%~100重量%、特に30重量%~100重量%、好ましくは40重量%~100重量%、好ましくは50重量%~100重量%、好ましくは60重量%~100重量%、好ましくは70重量%~100重量%、好ましくは80重量%~100重量%、より好ましくは90重量%~100重量%であり得る。いくつかの実施態様によれば、化学線により硬化可能な成分は、(メタ)アクリレート官能化化合物以外の重合可能な化合物を含まない。
【0046】
化学線により硬化可能な成分は、特に、(メタ)アクリレート官能化モノマー、(メタ)アクリレート官能化オリゴマー、及びそれらの混合物から選択される(メタ)アクリレート官能化化合物を含み得るか、又は該(メタ)アクリレート官能化化合物であり得る。より具体的には、化学線により硬化可能な成分は、少なくとも1つの(メタ)アクリレート官能化モノマー及び/又は少なくとも1つの(メタ)アクリレート官能化オリゴマーを含み得るか、又はそれらであり得る。特に有利には、化学線により硬化可能な成分は、少なくとも1つの(メタ)アクリレート官能化モノマー及び少なくとも1つの(メタ)アクリレート官能化オリゴマーを含む。
【0047】
化学線により硬化可能な成分は、特に、少なくとも1つの(メタ)アクリレート官能化モノマーを含み得るか、又は少なくとも1つの(メタ)アクリレート官能化モノマーであり得る。化学線により硬化可能な成分は、(メタ)アクリレート官能化モノマーの混合物を含み得る(又は(メタ)アクリレート官能化モノマーの混合物であり得る)。
【0048】
(メタ)アクリレート官能化モノマーは、600g/mol未満、特に70g/mol~550g/mol未満、より具体的には80g/mol~450g/mol、より具体的には90g/mol~350g/molの分子量を有し得る。
【0049】
(メタ)アクリレート官能化モノマーは、1~6個の(メタ)アクリロイルオキシ基、特に1~4個の(メタ)アクリロイルオキシ基を含有し得る。
【0050】
(メタ)アクリレート官能化モノマーは、異なる官能性を有する(メタ)アクリレート官能化モノマーの混合物を含み得る。例えば、(メタ)アクリレート官能化モノマーは、1分子当たり単一のアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を含む、1つの(又は少なくとも1つの)(メタ)アクリレート官能化モノマー(ここでは、「モノ(メタ)アクリレート官能化モノマー」という)と、1分子当たり2個以上、好ましくは2~6個のアクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基を含む、1つの(又は少なくとも1つの)(メタ)アクリレート官能化モノマー(ここでは、「ポリ(メタ)アクリレート官能化モノマー」という)との混合物を含み得るか、又は該混合物であり得る。
【0051】
化学線によって硬化可能な成分は、特に、少なくとも1つのモノ(メタ)アクリレート官能化モノマーを含み得るか、又は少なくとも1つのモノ(メタ)アクリレート官能化モノマーであり得る。化学線により硬化可能な成分は、特に、モノ(メタ)アクリレート官能化モノマーの混合物を含み得るか、又はモノ(メタ)アクリレート官能化モノマーの混合物であり得る。モノ(メタ)アクリレート官能化モノマーは、反応性希釈剤として有利に機能することができ、本発明による硬化性組成物の粘度を低下させることができる。
【0052】
適切なモノ(メタ)アクリレート官能化モノマーの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(メタ)アクリル酸、脂肪族アルコールのモノ(メタ)アクリレートエステル(脂肪族アルコールは直鎖又は分岐状であってもよく、モノアルコール、ジアルコール又はポリアルコールであってもよいが、1つのヒドロキシル基のみが(メタ)アクリル酸によってエステル化されていることを条件とする);脂環式アルコール又は複素環式アルコールのモノ(メタ)アクリレートエステル;芳香族アルコール(アルキル化フェノールを含むフェノールなど)のモノ(メタ)アクリレートエステル;アルキルアリールアルコール(ベンジルアルコールなど)のモノ(メタ)アクリレートエステル;オリゴマー及びポリマーグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールなど)のモノ(メタ)アクリレートエステル;グリコール及びオリゴグリコールのモノアルキルエーテルのモノ(メタ)アクリレートエステル;カプロラクトンモノ(メタ)アクリレート;及びそれらのアルコキシル化(例えば、エトキシル化及び/又はプロポキシル化)誘導体;並びにそれらの混合物。
【0053】
化学線により硬化可能な成分は、特に、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート;エチル(メタ)アクリレート;n-プロピル(メタ)アクリレート;イソプロピル(メタ)アクリレート;n-ブチル(メタ)アクリレート;イソブチル(メタ)アクリレート;n-ペンチル(メタ)アクリレート;n-ヘキシル(メタ)アクリレート;2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート;n-オクチル(メタ)アクリレート;イソオクチル(メタ)アクリレート;n-デシル(メタ)アクリレート;イソデシル(メタ)アクリレート;n-ドデシル(メタ)アクリレート;トリデシル(メタ)アクリレート;テトラデシル(メタ)アクリレート;ヘキサデシル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート;2-エトキシエチル(メタ)アクリレート;2-エトキシプロピル(メタ)アクリレート;3-エトキシプロピル(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート;2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート;フェノール(メタ)アクリレート;ノニルフェノール(メタ)アクリレート;環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート;トリシクロデカンメタノール(メタ)アクリレート;tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート;トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート;トリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチルブチルウレタン(メタ)アクリレート;3-(2-ヒドロキシアルキル)オキサゾリジノン(メタ)アクリレート;(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート;(2-エチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート;1,3-ジオキサン-5-イル(メタ)アクリレート;(1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート;グリセロールカーボネート(メタ)アクリレート;及びそれらのアルコキシル化(例えば、エトキシル化及び/又はプロポキシル化)誘導体、並びにそれらの混合物から選択されるモノ(メタ)アクリレート官能化モノマーを含み得る。
【0054】
化学線により硬化可能な成分は、好ましくは、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノールアクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、イソボルニルアクリレート、トリシクロデカンメタノールアクリレート、tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート、トリメチルシクロヘキシルアクリレート、及びそれらの混合物から選択されるモノ(メタ)アクリレート官能化モノマーを含むか、又は該モノ(メタ)アクリレート官能化モノマーである。
【0055】
化学線によって硬化可能な成分は、特に、少なくとも1つのポリ(メタ)アクリレート官能化モノマーを含み得るか、又は少なくとも1つのポリ(メタ)アクリレート官能化モノマーであり得る。
【0056】
ポリ(メタ)アクリレート官能化モノマーの例としては、ポリオール(1分子当たり2個以上のヒドロキシル基;例えば分子当たり2~6個のヒドロキシル基を含む有機化合物)のアクリレート及びメタクリレートエステルが挙げられる。適切なポリオールの例は次のとおりである:エチレングリコール、1,2-又は1,3-プロピレングリコール、1,2-、1,3-又は1,4-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ノルボルネンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメタノール、ビスフェノールA、B、F又はS、水素化ビスフェノールA、B、F又はS、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジ(トリメチロールプロパン)、トリエチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジ(ペンタエリスリトール)、グリセロール、ジ-、トリ-又はテトラグリセロール、ポリグリセロール、ジ-、トリ-又はテトラエチレングリコール、ジ-、トリ-又はテトラプロピレングリコール、ジ-、トリ-又はテトラブチレングリコール、1つ以上のポリエチレングリコール、1つ以上のポリプロピレングリコール、1つ以上のポリテトラメチレングリコール、1つ以上のポリ(エチレングリコール-コ-プロピレングリコール)、1つ以上のアルジトール(より具体的には、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール又はイジトール)、1つ以上のジアンヒドロヘキシトール(より具体的には、イソソルビド、イソマンニド又はイソイジド)、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1つ以上のポリブタジエンポリオール、及びそれらのアルコキシル化(例えば、エトキシル化及び/又はプロポキシル化)誘導体、上述のポリオールの1つで開始されるラクトン(例えば、ε-カプロラクトン)の開環重合によって得られる誘導体、及びそれらの混合物。このようなポリオールは、1分子当たり少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ官能基を含むことを条件として、((メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリロイルクロリドなどによって)完全に又は部分的にエステル化されていてもよい。
【0057】
より具体的には、化学線により硬化可能な成分は、特に、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート;水素化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート;テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート;ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート;ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート;1,2-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート;2,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート;1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート;1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート;1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート;1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート;1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート;1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート;1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート;1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート;3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート;2-メチル-2,4-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート;ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート;シクロヘキサン-1,4-ジメタノールジ(メタ)アクリレート;トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート;グリセロールジ(メタ)アクリレート;グリセロールトリ(メタ)アクリレート;トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート;ジ(トリメチロールプロパン)ジ(メタ)アクリレート;ジ(トリメチロールプロパン)トリ(メタ)アクリレート;ジ(トリメチロールプロパン)テトラ(メタ)アクリレート;ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート;ジ(ペンタエリスリトール)テトラ(メタ)アクリレート;ジ(ペンタエリスリトール)ペンタ(メタ)アクリレート;ジ(ペンタエリスリトール)ヘキサ(メタ)アクリレート;トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート;及びこれらのアルコキシル化(例えば、エトキシル化及び/又はプロポキシル化)誘導体;並びにこれらの混合物から選択されるポリ(メタ)アクリレート官能化モノマーを含み得るか、又は該ポリ(メタ)アクリレート官能化モノマーであり得る。
【0058】
化学線により硬化可能な成分は、好ましくは、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールアクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジ(ペンタエリスリトール)ペンタアクリレート、及びそれらの混合物から選択されるポリ(メタ)アクリレート官能化モノマーを含むか、又は該ポリ(メタ)アクリレート官能化モノマーである。
【0059】
化学線により硬化可能な成分は、化学線により硬化可能な成分の重量に基づいて、0重量%~100重量%、特に5重量%~100重量%、より具体的には10重量%~100重量%、より具体的には15重量%~100重量%、より具体的には20重量%~95重量%、より具体的には25重量%~95重量%、より具体的には30重量%~95重量%、より具体的には35重量%~90重量%、より具体的には40重量%~90重量%、より具体的には50重量%~90重量%の(メタ)アクリレート官能化モノマーを含み得る。したがって、化学線により硬化可能な成分は、化学線により硬化可能な成分の重量に基づいて、0重量%~60重量%、好ましくは5重量%~60重量%、好ましくは10重量%~60重量%、好ましくは15重量%~60重量%、好ましくは20重量%~60重量%、好ましくは25重量%~60重量%、好ましくは30重量%~60重量%、好ましくは35重量%~60重量%、好ましくは40重量%~60重量%、より好ましくは45重量%~60重量%の(メタ)アクリレート官能化モノマーを含み得る。変形例として、化学線により硬化可能な成分は、化学線により硬化可能な成分の重量に基づいて、60重量%~100重量%、好ましくは65重量%~100重量%、好ましくは70重量%~100重量%、好ましくは75重量%~100重量%、好ましくは80重量%~100重量%、好ましくは85重量%~100重量%、好ましくは90重量%~100重量%、より好ましくは95重量%~100重量%の(メタ)アクリレート官能化モノマーを含み得る。
【0060】
化学線により硬化可能な成分は、特に、少なくとも1つの(メタ)アクリレート官能化オリゴマーを含み得るか、又は少なくとも1つの(メタ)アクリレート官能化オリゴマーであり得る。化学線により硬化可能な成分は、(メタ)アクリレート官能化オリゴマーの混合物を含み得るか、又は該混合物であり得る。
【0061】
(メタ)アクリレート官能化オリゴマーは、本発明による硬化性組成物を重合することによって得られる生成物の特性の中で特に、柔軟性、強度及び/又は弾性率を高めるために選択され得る。
【0062】
(メタ)アクリレート官能化オリゴマーは、1~18個の(メタ)アクリロイルオキシ基、特に2~6個の(メタ)アクリロイルオキシ基、より具体的には2~6個のアクリロイルオキシ基を有し得る。
【0063】
(メタ)アクリレート官能化オリゴマーは、600g/mol以上、特に800~15000g/mol、より具体的には1000~5000g/molの数平均分子量を有し得る。(メタ)アクリレート官能化オリゴマーの数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
【0064】
特に、化学線により硬化可能な成分は、(メタ)アクリレート官能化ウレタンオリゴマー、(メタ)アクリレート官能化エポキシオリゴマー、(メタ)アクリレート官能化ポリエーテルオリゴマー、(メタ)アクリレート官能化ポリエステルオリゴマー、(メタ)アクリレート官能化(メタ)アクリルオリゴマー、(メタ)アクリレート官能化ポリジエンオリゴマー、(メタ)アクリレート官能化ポリカーボネートオリゴマー、(メタ)アクリレート官能化ポリアミドオリゴマー、及びそれらの混合物から選択される(メタ)アクリレート官能化オリゴマーを含み得るか、又は該(メタ)アクリレート官能化オリゴマーであり得る。
【0065】
本発明の硬化性組成物における使用に適した(メタ)アクリレート官能化ウレタンオリゴマーとしては、少なくとも1つのポリオール、少なくとも1つのポリイソシアネート、並びに少なくとも1つのヒドロキシル官能化及び(メタ)アクリレート官能化化合物(ヒドロキシル官能化(メタ)アクリレートとも呼ばれる)に基づくウレタンが挙げられる。(メタ)アクリレート官能化ウレタンオリゴマーは、ポリイソシアネート(例えば、脂肪族、脂環式、複素環式又は芳香族ジイソシアネート又はトリイソシアネート)とポリオール(特にポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリオルガノシロキサンポリオール、ポリブタジエンポリオールなどのポリジエンポリオール、又は対応する組み合わせ)を反応させてイソシアネート基末端オリゴマーを形成し、次いでこれをヒドロキシル官能化(メタ)アクリレート(ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなど)と反応させて末端(メタ)アクリレート基を得ることによって調製され得る。例えば、(メタ)アクリレート官能化ウレタンオリゴマーは、1分子当たり2個、3個、4個又はそれ以上の(メタ)アクリレート官能基を含み得る。他の添加順序もまた、(メタ)アクリレート官能化ウレタンオリゴマーを調製するために使用され得る。例えば、ヒドロキシル官能化(メタ)アクリレートを最初にポリイソシアネートと反応させてイソシアネート官能化(メタ)アクリレートを得て、次いでこれをポリオールと反応させることができる。変形例として、全ての成分を組み合わせて同時に反応させてもよい。
【0066】
適切な(メタ)アクリレート官能化エポキシオリゴマーの例としては、(メタ)アクリル酸(又は酸塩化物、アルキルエステル若しくは無水物などの対応する合成等価物)と、少なくとも1つのエポキシド基(特に、グリシジルエーテル、グリシジルエステル、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの基)を含むエポキシ樹脂との反応生成物が挙げられる。エポキシ樹脂は、特に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-1,4-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキシド、4-ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル-3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキシド、エチレングリコールビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びグリセロールなどの脂肪族多価アルコールへの1つ以上のアルキレンオキシドの付加によって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、長鎖脂肪族二塩基酸のジグリシジルエステル、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール、又はポリエーテルアルコールの、これらの化合物へのアルキレンオキシドの付加によって得られるモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシブチルステアリン酸、エポキシオクチルステアリン酸、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化ポリブタジエンなどから選択され得る。
【0067】
適切な(メタ)アクリレート官能化ポリエーテルオリゴマーとしては、(メタ)アクリル酸(又は酸塩化物、アルキルエステル、若しくは無水物などの対応する合成等価物)と、ポリエーテルポリオール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、又はそれらのコポリマーなど)に対応する少なくとも1つのポリエーテルオールとの反応生成物が挙げられるが、これらに限定されない。適切なポリエーテルオールは、エーテル結合及び末端ヒドロキシル基を含む直鎖状又は分岐状の物質であり得る。ポリエーテルオールは、テトラヒドロフラン又はアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド)などの環状エーテルと出発分子との開環重合によって調製され得る。適切な出発分子としては、水、ポリヒドロキシ官能化材料、ポリエステルポリオール及びアミンが挙げられる。
【0068】
例として挙げられた(メタ)アクリレート官能化ポリエステルオリゴマーとしては、(メタ)アクリル酸(又は酸塩化物、アルキルエステル若しくは無水物などの対応する合成等価物)とヒドロキシル基末端ポリエステルポリオールとの反応生成物が挙げられる。反応プロセスは、特にポリエステルポリオールが二官能性である場合に、ポリエステルポリオールのヒドロキシル基の全て又は本質的に全てが(メタ)アクリル化されるように行うことができる。ポリエステルポリオールは、ポリヒドロキシ官能化成分(特に、ジオール)とポリ(カルボン酸)官能化化合物(特に、ジカルボン酸及び無水物)との重縮合反応によって調製され得る。ポリヒドロキシル官能化成分及びポリ(カルボン酸)官能化成分はそれぞれ、直鎖状、分岐状、脂環式又は芳香族構造を有し得、個別に又は混合物として使用され得る。
【0069】
適切な(メタ)アクリレート官能化(メタ)アクリルオリゴマー(従来技術では「アクリルオリゴマー」としても知られることがある)は、1つ以上の(メタ)アクリレート基(オリゴマーの末端にあってもよいし、(メタ)アクリル骨格にペンダントしていてもよい)で官能化された(メタ)アクリル骨格を有する物質として説明され得るオリゴマーを含む。(メタ)アクリル骨格は、(メタ)アクリル系モノマーの繰り返し単位からなるホモポリマー、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーであり得る。(メタ)アクリル系モノマーは、C1~C6アルキル(メタ)アクリレートなどの任意のモノマー(メタ)アクリレート、及び/又はヒドロキシル、カルボン酸基及び/又はエポキシ基を有する(メタ)アクリレートなどの官能化(メタ)アクリレートであり得る。(メタ)アクリレート官能化(メタ)アクリルオリゴマーは、例えば、少なくとも一部がヒドロキシル基、カルボン酸基及び/又はエポキシ基で官能化されたモノマー(例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート)をオリゴマー化して官能化オリゴマー中間体を得て、次いで、この中間体を1つ以上の(メタ)アクリレート基含有反応物と反応させて、所望の(メタ)アクリレート官能基を導入するなど、従来技術で知られている任意の手順を用いて調製され得る。
【0070】
例として挙げられた(メタ)アクリレート官能化ポリジエンオリゴマーとしては、(メタ)アクリル酸(又は酸塩化物、アルキルエステル若しくは無水物などの対応する合成等価物)とヒドロキシル基末端ポリジエンポリオール、特にヒドロキシル基末端ポリブタジエンポリオールとの反応生成物が挙げられる。
【0071】
例として挙げられた(メタ)アクリレート官能化ポリカーボネートオリゴマーとしては、(メタ)アクリル酸(又は酸塩化物、アルキルエステル若しくは無水物などの対応する合成等価物)とヒドロキシル基末端ポリカーボネートポリオールとの反応生成物が挙げられる。
【0072】
例として挙げられた(メタ)アクリレート官能化ポリアミドオリゴマーとしては、(メタ)アクリル酸(又は酸塩化物、アルキルエステル若しくは無水物などの対応する合成等価物)とヒドロキシル基末端ポリアミドポリオールとの反応生成物が挙げられる。
【0073】
化学線により硬化可能な成分は、好ましくは、(メタ)アクリレート官能化ウレタンオリゴマー、(メタ)アクリレート官能化エポキシオリゴマー、(メタ)アクリレート官能化ポリエステルオリゴマー、及びそれらの混合物から選択される(メタ)アクリレート官能化オリゴマーを含むか、又は該(メタ)アクリレート官能化オリゴマーである。本発明のために特に好ましい(メタ)アクリレート官能基化オリゴマーには、以下の商品名でSartomerによって販売されているオリゴマーが含まれる:CN9200、CN9210、CN9276CN9301、CN963B80、CN964A85、CN965、CN981、CN991、CN996、CN998B80、CN104、CN203、CN2203EU、CN2295EU、CN2303EU、CN2505、及びそれらの混合物。
【0074】
化学線により硬化可能な成分は、化学線により硬化可能な成分の重量に基づいて、0重量%~100重量%、特に5重量%~100重量%、より具体的には10重量%~100重量%、より具体的には15重量%~100重量%、より具体的には20重量%~95重量%、より具体的には25重量%~95重量%、より具体的には30重量%~95重量%、より具体的には35重量%~90重量%、より具体的には40重量%~90重量%、より具体的には50重量%~90重量%の(メタ)アクリレート官能化オリゴマーを含み得る。特に、化学線により硬化可能な成分は、化学線により硬化可能な成分の重量に基づいて、0重量%~60重量%、好ましくは5重量%~60重量%、好ましくは10重量%~60重量%、好ましくは15重量%~60重量%、好ましくは20重量%~60重量%、好ましくは25重量%~60重量%、好ましくは30重量%~60重量%、好ましくは35重量%~60重量%、好ましくは40重量%~60重量%、より好ましくは45重量%~60重量%の(メタ)アクリレート官能化オリゴマーを含み得る。変形例として、化学線により硬化可能な成分は、化学線により硬化可能な成分の重量に基づいて、60重量%~100重量%、好ましくは65重量%~100重量%、好ましくは70重量%~100重量%、好ましくは75重量%~100重量%、好ましくは80重量%~100重量%、好ましくは85重量%~100重量%、好ましくは90重量%~100重量%、より好ましくは95重量%~100重量%の(メタ)アクリレート官能化オリゴマーを含み得る。
【0075】
化学線により硬化可能な成分は、有利には、
- 10重量%~90重量%、好ましくは20重量%~80重量%、より好ましくは30重量%~70重量%、より優先的には40重量%~60重量%の(メタ)アクリレート官能化モノマー;及び
- 10重量%~90重量%、好ましくは20重量%~80重量%、より好ましくは30重量%~70重量%、より優先的には40重量%~60重量%の(メタ)アクリレート官能化オリゴマー
を含み;
ここで、重量%は、化学線により硬化可能な成分の重量に対して表される。
【0076】
硬化性組成物中の化学線により硬化可能な成分の量は、好ましくは50重量%~99.99重量%、より優先的には80重量%~99.99重量%、優先的には90重量%~99.99重量%、さらにより優先的には95重量%~99.99重量%である。
【0077】
ポリアミド粒子
硬化性組成物は、少なくとも1つのポリアミドの粒子を含む。ポリアミド粒子は、特に、粉末である。
【0078】
一実施態様によれば、粒子は1つ以上のポリアミドからなる。
【0079】
ポリアミドは、ホモポリアミド及び/又はコポリアミドであり得る。それは、ポリアミドのみからなってもよく、又は、例えば、ポリエーテルブロック、ポリエステルブロック、ポリジメチルシロキサン(又はPDMS)ブロックなどのポリシロキサンブロック、ポリオレフィンブロック、ポリカーボネートブロック、及びそれらの混合物から選択される、別のタイプの1つ以上のブロックを含んでもよい。
【0080】
「ポリアミド」という用語は、以下から選択される1つ以上のモノマーのうちの少なくとも1つの重合生成物を含むポリマーを意味することを意図している:
- アミノ酸又はアミノカルボン酸タイプのモノマー、好ましくはα、ω-アミノカルボン酸;
- 主環上に3~18個の炭素原子を含み、置換されていてもよいラクタムタイプのモノマー;
- 2~36個の炭素原子、好ましくは4~18個の炭素原子を含む脂肪族ジアミンと、4~36個の炭素原子、好ましくは4~18個の炭素原子を含むジカルボン酸との間の反応から誘導される「ジアミン・二酸」タイプのモノマー;及び
- アミノ酸タイプのモノマーとラクタムタイプのモノマーの混合物の場合には、異なる炭素数を有するモノマーとのそれらの混合物。
【0081】
本明細書において、「モノマー」という用語は「繰り返し単位」を意味するものとして解釈されるべきである。実際、特殊な事例は、ポリアミド(PA)の繰り返し単位が二酸とジアミンの組み合わせからなる場合である。モノマーに相当するのは、ジアミンと二酸の組み合わせ、すなわちジアミン・二酸ペア(等モル量)であると考えられる。これは、二酸又はジアミンが個々には単なる構造単位であり、それ自体だけでは重合するに十分でないという事実によって説明される。
【0082】
ポリアミドがホモポリアミドである場合、それは上記で定義した単一のモノマーの重合生成物を含む。ポリアミドがコポリアミドである場合、それは上記で定義した少なくとも2つの異なるモノマーの重合生成物を含む。上記の様々なタイプのモノマーから形成されるコポリアミドの例としては、少なくとも2つのα,ω-アミノカルボン酸の、又は2つのラクタムの、又は1つのラクタムと1つのα,ω-アミノカルボン酸の縮合から生じるコポリアミドを挙げることができる。また、少なくとも1つのα,ω-アミノカルボン酸(又はラクタム)、少なくとも1つのジアミン及び少なくとも1つのジカルボン酸の縮合から生じるコポリアミドも挙げることができる。また、脂肪族ジアミンと、脂肪族ジカルボン酸と、前述のもの以外の脂肪族ジアミン及び前述のもの以外の脂肪族二酸から選択される少なくとも1つの他のモノマーとの縮合から生じるコポリアミドも挙げることができる。
【0083】
アミノ酸タイプのモノマー:
α,ω-アミノ酸の例としては、アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸、N-ヘプチル-11-アミノウンデカン酸、及び12-アミノドデカン酸など、4~18個の炭素原子を含むものを挙げることができる。
【0084】
ラクタムタイプのモノマー:
ラクタムの例としては、主環上に3~18個の炭素原子を含み、置換されていてもよいラクタムを挙げることができる。例えば、β,β-ジメチルプロピオラクタム、α,α-ジメチルプロピオラクタム、アミロラクタム、カプロラクタム(ラクタム6としても知られる)、カプリルラクタム(ラクタム8としても知られる)、オエナントラクタム、及びラウリルラクタム(ラクタム12としても知られる)を挙げることができる。
【0085】
「ジアミン・二酸」タイプのモノマー:
ジカルボン酸の例としては、4~36個の炭素原子、好ましくは4~18個の炭素原子を有する酸を挙げることができる。例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、スベリン酸、イソフタル酸、ブタン二酸、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、テレフタル酸、スルホイソフタル酸のナトリウム塩又はリチウム塩、二量体化脂肪酸(これらの二量体化脂肪酸は、少なくとも98重量%の二量体含有量を有し、好ましくは水素化されている)、ドデカン二酸HOOC-(CH10-COOH及びテトラデカン二酸を挙げることができる。
【0086】
「脂肪酸二量体」又は「二量体化脂肪酸」という用語は、より具体的には、脂肪酸(一般に18個の炭素原子を含み、多くの場合、オレイン酸及び/又はリノール酸の混合物)の二量体化反応の生成物を意味すると理解される。それは、好ましくは、0~15重量%のC18一酸、60重量%~99重量%のC36二酸、及び0.2重量%~35重量%のトリ酸又はC54以上のポリ酸を含む混合物である。
【0087】
ジアミンの例には、2~36個の原子、好ましくは4~18個の原子、より好ましくは6~12個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンが挙げられ、これらはアリール及び/又は飽和環状であってもよい。例として挙げられるものには、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン(「Pip」と略記される)、アミノエチレンピペラジン、テトラメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、1,5-ジアミノヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、ジアミンポリオール、イソホロンジアミン(IPD)、メチルペンタメチレンジアミン(MPMD)、ビス(アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)、メタ-キシレンジアミン、及びビス-p-アミノシクロヘキシルメタンが含まれる。
【0088】
「ジアミン・二酸」には、より詳細には、1,6-ヘキサメチレンジアミンと6~36個の炭素原子を有するジカルボン酸との縮合から得られるもの、特に以下のモノマー:6.6、6.10、6.11、6.12、6.14及び6.18、並びに、1,10-デカメチレンジアミンと6~36個の炭素原子を有する二酸との縮合から得られるもの、特に以下のモノマー:10.10、10.12、10.14及び10.18を挙げることができる。従来のように、数字表記X.Yにおいて、Xはジアミン残基に由来する炭素原子の数を表し、Yは二酸残基に由来する炭素原子の数を表す。
【0089】
ポリアミドは、好ましくは、以下のモノマー:4.6、4.T、5.6、5.9、5.10、5.12、5.13、5.14、5.16、5.18、5.36、6、6.6、6.9、6.10、6.12、6.13、6.14、6.16、6.18、6.36、6.T、9、10.6、10.9、10.10、10.12、10.13、10.14、10.16、10.18、10.36、10.T、11、12、12.6、12.9、12.10、12.12、12.13、12.14、12.16、12.18、12.36、12.T、及びそれらの混合物のうちの少なくとも1つを含む。
【0090】
有利には、本発明で使用されるポリアミドは、以下のポリアミドである(又はポリアミドブロックを含む);PA 6、PA 10、PA 11、PA 12、PA 5.4、PA 5.9、PA 5.10、PA 5.12、PA 5.13、PA 5.14、PA 5.16、PA 5.18、PA 5.36、PA 6.4、PA 6.9、PA 6.10、PA 6.12、PA 6.13、PA 6.14、PA 6.16、PA 6.18、PA 6.36、PA 10.4、PA 10.9、PA 10.10、PA 10.12、PA 10.13、PA 10.14、PA 10.16、PA 10.18、PA 10.36、PA 10.T、PA 12.4、PA 12.9、PA 12.10、PA 12.12、PA 12.13、PA 12.14、PA 12.16、PA 12.18、PA 12.36、PA 12.T、PA 6.6/6、PA 6.6/6.10/11/12、PA 10.10/11、PA 10.10/12、PA 10.10/14、PA 10.12/11、PA 10.12/12、PA 10.12/14、又はそれらの混合物若しくはコポリマー。PA X表記において、Xはアミノ酸残基又はラクタム残基に由来する炭素原子の数を表す。PA X/Y、PA X/Y/Zなどの表記は、X、Y、Zなどが上記のようなホモポリアミド単位を表すコポリアミドに関する。
【0091】
好ましくは、本発明によるポリアミドは、PA 11、PA 12、PA 6、PA 6.X1、PA 10、PA 10.X、PA 10.X/Y、又はそれらの組み合わせから選択される。好ましくは、上記のリストから、Xは、10、12、14又は18から選択される。好ましくは、上記のリストから、Xは、10、12又は14から選択される。好ましくは、上記のリストから、Xは、10又は12から選択される。好ましくは、上記のリストから、Yは、11、12又は14から選択される。
【0092】
有利には、粉末のポリアミドは1つ(又は複数)のホモポリアミドである。
【0093】
より好ましくは、ポリアミドは、ポリアミド12、ポリアミド11、ポリアミド10、ポリアミド6、ポリアミド6.10、ポリアミド6.12、ポリアミド6.6、ポリアミド10.10、ポリアミド10.12、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。特に好ましくは、ポリアミドはポリアミド12である。
【0094】
あるいは、ポリアミドはコポリアミドであってもよい。これらには、カプロラクタムとラウリルラクタムのコポリマー(PA 6/12)、カプロラクタムとアジピン酸とヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA 6/6.6)、カプロラクタムとラウリルラクタムとアジピン酸とヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA 6/12/6.6)、カプロラクタムとラウリルラクタムと11-アミノウンデカン酸とアゼライン酸とヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA 6/6.9/11/12)、カプロラクタムとラウリルラクタムと11-アミノウンデカン酸とアジピン酸とヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA 6/6.6/11/12)、ラウリルラクタムとアゼライン酸とヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA 6.9/12)、11-アミノウンデカン酸とテレフタル酸と1,10-デカメチレンジアミンのコポリマー(PA 11/10.T)が挙げられる。
【0095】
本発明によるポリアミドは、ポリアミドの混合物、例えば、脂肪族ポリアミドと半芳香族ポリアミドとの混合物、又は脂肪族ポリアミドと脂環式ポリアミドとの混合物であり得る。ポリアミドがポリアミドの混合物である場合、ポリアミド粒子は各ポリアミドの粒子の混合物から構成され得、又は各粒子がポリアミドの混合物を含み得る。
【0096】
有利には、ポリアミド粒子の体積中位径Dv50は、20μm以下、好ましくは1~20μm、より優先的には5~20μmである。より具体的には、ポリアミド粒子の体積中位径Dv50は、1~5μm、又は5~10μm、又は10~15μm、又は15~20μmであり得る。Dv50は、累積粒径分布の50パーセンタイル(体積)での粒径に対応する。これは、ISO規格9276のパート1~6に従って決定することができる。
【0097】
本発明によるポリアミド粉末は、固体の形態、例えばペレットの形態のポリアミドを粉砕することによって調製され得る。ポリアミドは、特にそれが2つ以上のポリアミドの混合物を含む場合、好ましくは、例えば混合機内で溶融され、任意選択的に混合され得る。続いて、固化後に粉砕される。粉砕は、任意の手段によって達成することができ、より具体的には、ハンマー粉砕、ナイフ粉砕、ディスク粉砕、エアジェット粉砕、及び極低温粉砕からなる群から選択することができる。粉末調製プロセスはまた、所望の粒径を有する粉末粒子を選択する工程を含み得る。
【0098】
硬化性組成物は、組成物の総重量に対して、好ましくは0.01重量%~2重量%、より好ましくは0.01重量%~1.5重量%、より優先的には0.05重量%~1.5重量%、さらにより優先的には0.1重量%~1.5重量%の量でポリアミド粒子を含む。特に、ポリアミド粒子は、艶消し効果を得るために一般的に使用される艶消し剤の量よりも少ない量で存在し得る。いくつかの実施態様では、硬化性組成物は、組成物の総重量に対して、0.01重量%~0.05重量%、又は0.05重量%~0.1重量%、又は0.1重量%~0.2重量%、又は0.2重量%~0.3重量%、又は0.3重量%~0.5重量%、又は0.5重量%~0.8重量%、又は0.8重量%~1重量%、又は1重量%~1.2重量%、又は1.2重量%~1.5重量%、又は1.5重量%~1.7重量%、又は1.7重量%~2重量%のポリアミド粒子を含み得る。
【0099】
光開始剤
本発明による硬化性組成物は、少なくとも1つの光開始剤を含み得る。この場合、組成物、より具体的には化学線によって硬化可能な化合物(1つ又は複数)は、好ましくは放射エネルギー(可視光線及び/又は紫外線)によって硬化可能である。光開始剤は、放射線(例えば、化学線)に曝露されると、硬化性組成物中に存在する有機重合物質の反応及び硬化を開始する種を形成する任意のタイプの物質であると考えられ得る。本発明に適した光開始剤には、フリーラジカル光開始剤、カチオン性光開始剤、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0100】
フリーラジカル経路を介して作用する重合開始剤は、照射されるとフリーラジカルを形成する物質である。フリーラジカル光開始剤の使用が好ましい。本発明の硬化性組成物における使用に適したフリーラジカル光開始剤の非限定的な例としては、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、アセトフェノン、ベンジル、ベンジルケタール、アントラキノン、ホスフィンオキシド、α-ヒドロキシケトン、フェニルグリオキシレート、α-アミノケトン、ベンゾフェノン、チオキサントン、キサントン、アクリジン誘導体、フェナゼン誘導体、キノキサリン誘導体、トリアジン誘導体、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0101】
光開始剤が硬化性組成物中に存在する場合、それは、硬化性組成物の総重量に基づいて、好ましくは15重量%までの量で存在し、より具体的には0.05重量%~15重量%の量で存在する。例えば、硬化性組成物は、有利には、硬化性組成物の総重量に基づいて、0.1重量%~10重量%の光開始剤を含み得る。いくつかの実施態様では、硬化性組成物は、組成物の総重量に対して、0.05重量%~0.5重量%、又は0.5重量%~5重量%、又は5重量%~10重量%、又は10重量%~15重量%の光開始剤を含む。
【0102】
非反応性溶媒
硬化性組成物は、好ましくは非反応性溶媒を含まないか、又は本質的に含まない。本明細書で使用される場合、「非反応性溶媒」という用語は、組成物中に存在する化学線により硬化可能な化合物(1つ又は複数)とは対照的に、化学線により硬化できない溶媒を意味する。しかしながら、非反応性溶媒は、他のメカニズムを介して組成物の1つ以上の成分と反応する可能性がある。
【0103】
例えば、硬化性組成物は、組成物の総重量に基づいて、5重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、0.1重量%未満、又は0重量%の非反応性溶媒を含み得る。
【0104】
いくつかの実施態様では、硬化性組成物は、一定量の1つ以上の非反応性溶媒を含み得る。例えば、非反応性溶媒は、組成物の1つ以上の成分を可溶化させるのを助けるため、及び/又は組成物の粘度を低下させるために使用され得る。使用され得る非反応性溶媒の種類は、化学線への曝露によって硬化される組成物の能力を妨げない限り、限定されない。適切な非反応性溶媒は、例えば、ケトン類(例えば、アセトン)、エステル類、エーテル類、アルコール類(フルオロアルコールなどのハロゲン化アルコール、芳香族炭化水素などを含む)、及びそれらの組み合わせを含む。化学線により硬化可能な組成物は、組成物の総重量に基づいて、少なくとも0.5重量%、又は少なくとも1重量%、又は少なくとも2重量%、又は少なくとも5重量%の1つ以上の非反応性溶媒を含み得る。代替的に、又は追加的に、硬化性組成物は、組成物の総重量に基づいて、90重量%まで、又は80重量%まで、又は70重量%まで、又は60重量%まで、又は50重量%まで、又は40重量%まで、又は30重量%まで、又は25重量%まで、又は20重量%までの1つ以上の非反応性溶媒を含み得る。例えば、硬化性組成物は、1重量%~50重量%、又は1重量%~25重量%の非反応性溶媒を含み得る。
【0105】
非反応性溶媒は、揮発性非反応性溶媒であってもよいし、不揮発性非反応性溶媒であってもよい。本明細書で使用される場合、「揮発性溶媒」という用語は、大気圧で100℃以下の沸点を有する溶媒を指し、「不揮発性溶媒」という用語は、大気圧で100℃を超える沸点を有する溶媒を指す。揮発性溶媒と不揮発性溶媒の組み合わせも使用され得る。
【0106】
本発明の文脈では、組成物を配合するときに、特に特定の成分を可溶化させるのを助けるために、1つ以上の非反応性溶媒を使用し、次いで、組成物の成分(1つ以上の非反応性溶媒を含む)が組み合わされた後、非反応性溶媒の少なくとも一部(非反応性溶媒の全部まで)の除去を実行して、本発明による方法における使用のための最終硬化性組成物を提供することも可能である。例えば、組成物の成分を組み合わせ、続いて混合及び/又は加熱に供して、生成物又は均一な溶液を得ることができ、続いて非反応性溶媒の少なくとも一部を真空下での蒸留又はストリッピングなどの適切な手段によって除去することができる。
【0107】
その他の添加剤
本発明による硬化性組成物は、1つ以上の他の添加剤を含み得る。このような添加剤は、例えば、連鎖移動剤、遮光剤(光遮断剤)、湿潤剤(表面張力調整剤)、艶消し剤、着色剤、染料、顔料、接着促進剤、充填剤、レオロジー剤/調整剤、流動制御剤又はレベリング剤、チキソトロピー剤、可塑剤、光吸収剤、光安定剤、分散剤、抗酸化剤、帯電防止剤、潤滑剤、乳白剤、消泡剤、重合防止剤、及びそれらの組み合わせから選択され得る。一般的に言えば、硬化性組成物は、コーティングの分野で従来使用されている任意の添加剤を含み得る。
【0108】
硬化性組成物は、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.2重量%以下の艶消し剤を含み、より好ましくは艶消し剤を含まない。本発明の意味において、「艶消し剤」とは、コーティングの表面に粗さを作り出すために使用される任意の粒子、より具体的にはポリマー粒子又は無機粒子であり、例えば、シリカ、石英、無機酸化物、炭酸塩、窒化物、ポリオルガノシロキサン、エラストマー又はシルセスキオキサン又は尿素-メタナール縮合物の粒子などであるが、上記のポリアミドの粒子は除外される(したがって、これらは本発明の文脈においては、「艶消し剤」には含まれない)。
【0109】
本発明の硬化性組成物は、1つ以上の遮光剤(吸収剤とも呼ばれる)を含み得る。1つ以上の遮光剤は、例えば、非反応性顔料及び非反応性染料を含む任意の既知の物質であり得る。遮光剤は、例えば、可視光線を遮光する薬剤又は紫外線を遮光する薬剤であり得る。適切な遮光剤の例としては、二酸化チタン、カーボンブラック、並びに有機紫外線吸収剤、例えば、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、オキサルアニリド、ベンゾフェノン、チオキサントン、ヒドロキシフェニルトリアジン、スダンI、ブロモチモールブルー、2,2’-(2,5-チオフェンジイル)ビス(5-tert-ブチルベンゾオキサゾール)(特にBenetex(登録商標)OB Plusという商標名で販売されている)及びベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤などが挙げられる。硬化性組成物は、硬化性組成物の重量に基づいて、0.001重量%~10重量%の量で遮光剤を含有し得る。
【0110】
硬化性組成物の調製
本発明の硬化性組成物は、任意の適切な方法によって調製され得る。例えば、様々な成分を1つ以上の工程で組み合わせ、混合することができる。成分は、好ましくは混合及び/又は撹拌された後に、特に均一な組成物を得るために、任意選択的に加熱されてもよい。他の均一化方法も採用できる。さらに、上述のように、1つ以上の非反応性溶媒を使用することができる。いくつかの実施態様では、ポリアミド粒子は、混合しながら20℃~90℃の温度で組成物の他の成分に、好ましくはゆっくりと添加される。
【0111】
コーティング方法
上記のような硬化性組成物は、表面上にコーティングを形成するために使用される。
【0112】
本発明によるコーティング方法は、硬化性組成物を層として表面に塗布することを含む。
【0113】
表面は、任意のタイプの表面であってよい。表面は、例えば、金属基材などの高表面エネルギー基材、又はプラスチック基材などの低表面エネルギー基材の表面であり得る。表面を有する基材は、1つ以上の金属、紙、ボール紙、ガラス、1つ以上の熱可塑性ポリマー、例えば、ポリオレフィン、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)ポリマー及びそれらの混合物など、複合材料、木材、皮革、又はそれらの組み合わせを含み得るか、又はそれらから構成され得る。
【0114】
硬化性組成物は、任意の既知の従来の方法で前記表面に塗布され得る。より具体的には、組成物は、例えば、噴霧によって、ナイフコーティングによって、ロールコーティングによって、アプリケーターバーによって、流し塗りによって、ドラムコーティングによって、浸し塗りによって、又はそれらの組み合わせによって塗布され得る。塗布は、室温(すなわち、15~30℃)で行ってもよく、あるいはそれより高い温度、特に30~60℃の温度で行ってもよい。特に、硬化性組成物が室温で液体でないか、又は粘度が高すぎる場合、塗布を容易にするために、塗布前に、液化を可能にするか又は粘度の低下を可能にする温度まで加熱してもよい。より具体的には、組成物は、例えば、組成物が非常に低い粘度を有することを必要とする噴霧用途のために約50℃に加熱され得る。
【0115】
層は、有利には100μm以下(例えば1~100μm)、好ましくは50μm以下(例えば1~50μm)、より好ましくは20μm以下(例えば1~20μm、好ましくは3~20μm、より好ましくは10~20μm)の厚さを有する。特に、硬化性組成物の層は、1~3μm、又は3~5μm、又は5~10μm、又は10~15μm、又は15~20μm、又は20~25μm、又は25~30μm、又は30~40μm、又は40~50μm、又は50~60μm、又は60~70μm、又は70~80μm、又は80~90μm、又は90~100μmの厚さを有し得る。
【0116】
硬化性組成物の層は、第1の放射線による照射の工程に供される。この第1の放射線は、好ましくは単色放射線又は準単色放射線である。この第1の放射線は、非常に有利にはUV放射線であり、VUV(「真空紫外線」)放射線であってもよい。この第1の放射線は、好ましくはUVランプによって照射され、より好ましくはエキシマランプによって照射される。エキシマランプ(又はレーザー)は、単色又は準単色の放射線を放射するガス放電ランプである。一般的に、これらのランプは、キセノン(たとえば、172nmでの放射の場合)又は塩素ドナー付きクリプトン(たとえば、222nmでの放射の場合)が充填された合成石英ランプ本体を有する。
【0117】
照射は、好ましくは不活性ガス下、より好ましくは二窒素及び/又は二酸化炭素下、さらに好ましくは二窒素下で行われる。残留酸素含有量は、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下である。
【0118】
より好ましくは、第1の放射線は、100~280nm、好ましくは150~250nm、より好ましくは150~200nm、より好ましくは168~180nm、より優先的には172~175nm、さらにより優先的には172nmの波長を有する。例えば、第1の放射線は、100~125nm、又は125~150nm、又は150~175nm、又は175~200nm、又は200~225nm、又は225~250nm、又は250~280nmの波長を有し得る。
【0119】
上記の波長は、組成物の層の表面硬化を可能とし、例えば、フリーラジカル重合及び/又はカチオン重合によって、その表面下の薄い厚さにわたって(典型的には約1μm以下の厚さにわたって、特に約0.5μmの厚さにわたって)硬化することを意味する。層の表面のみの硬化によって、層の表面にしわの形成をもたらす。
【0120】
これにより、部分的に硬化した、より具体的には表面が硬化した組成物が生成される。「部分的に硬化した組成物」は、一般に、追加の硬化(より具体的には、硬化性組成物の層のより深い部分の硬化)が可能であることを意味する。
【0121】
この組成物は、第2の放射線による照射の工程に供される。この第2の放射線は、UV放射線又は可視光線、及び/又は電子ビーム放射線であり得る。
【0122】
第1の変形例によれば、第2の放射線はUV放射線又は可視光線である。多色であっても単色であってもよい。第2の放射線は、第1の放射線の波長とは異なる少なくとも1つの波長を含み、より具体的には、第1の放射線の波長よりも長い少なくとも1つの波長を含む。非常に好ましくは、それは100~900nmの範囲の波長スペクトルを有する。さらに好ましくは、第2の放射線は180~500nmの範囲の波長スペクトルを有する。代替的又は追加的に、第2の放射線は、UVA及び/又はUVB及び/又はUVC放射線を含んでもよく、あるいはUVA及び/又はUVB及び/又はUVC放射線であってもよい。
【0123】
第2の放射線は、好ましくは、280nmより長い、好ましくは[280nmより長い]~900nmの範囲、より好ましくは285~900nmの範囲、より優先的には300~500nmの範囲の少なくとも1つの波長を含む(これらの実施態様では、第2の放射線はまた、任意選択で、上述の範囲外の波長を含んでもよい)。特に、第2の放射線は、[280nmより長い]~300nm、又は300~320nm、又は320~350nm、又は350~380nm、又は380~400nm、又は400~420nm、又は420~450nm、又は450~480nm、又は480~500nm、又は500~550nm、又は550~600nm、又は600~700nm、又は700~800nm、又は800~900nmの少なくとも1つの波長を含み得る。
【0124】
この放射線は、水銀灯、より具体的には中圧又は高圧水銀灯(水銀蒸気は、任意選択でガリウム及び/又は鉄などの元素がドープされている)、又はメタルハライドランプ、エレクトロルミネセントダイオード(又は「発光ダイオード」の略称であるLED)、より具体的には紫外線を放射するLED、又はパルスレーザーランプ(フラッシュランプとも呼ばれる)によって照射することができる。第2の放射線は、好ましくは、ドープされていない水銀灯によって、ドープされた水銀灯によって、又はLEDランプによって放射され、後者は好ましくは350nm~405nmの波長を有する。
【0125】
照射中に適用される放射線量は、有利には80~4000mJ/cm、好ましくは80~2000mJ/cm、さらに好ましくは80~600mJ/cm、例えば80~300mJ/cm、又は300~600mJ/cm、又は600~1000mJ/cm、又は1000~2000mJ/cm、又は2000~3000mJ/cm、又は3000~4000mJ/cmである。
【0126】
第2の変形例によれば、第2の放射線は電子ビームである。電子ビームは、好ましくは70~300keV、好ましくは150~300keV、例えば70~150keV、又は150~200keV、又は200~250keV、又は250~300keVのエネルギーを有する。照射線量は、有利には10~100kGy、好ましくは20~50kGy、例えば10~20kGy、又は20~30kGy、又は30~40kGy、又は40~50kGy、又は50~70kGy、又は70~100kGyである。任意の適切な電子ビームエミッタ、特にスキャナ型又はカーテン型エミッタを使用することができる。
【0127】
第2の放射線を照射する工程は、任意選択的に、酸素の非存在下、例えば不活性ガス雰囲気中、又は酸素欠乏雰囲気中で実施され得る。いくつかの実施態様では、照射は、放射線透過性媒体(例えば、プラスチックフィルム)で組成物を覆うことによって実施され得る。特に第2の放射線が電子ビームである場合、好ましくは、不活性ガス下で照射される。
【0128】
照射は、第1の変形例に従って行われるか、及び/又は第2の変形例に従って行われるかどうかにかかわらず、例えば、フリーラジカル重合及び/又はカチオン重合によって、層の硬化を継続することを可能にする。特に、第1の放射線への曝露中に硬化した部分の下に位置する層の部分の硬化を可能にする。この層は、好ましくは、その厚さ全体にわたって硬化される。その後、硬化した組成物が得られる。本発明の意味において、「硬化した組成物」とは、第2の放射線を照射する工程後の組成物の架橋度が、部分的に硬化した組成物の架橋度よりも大きいことを意味する。
【0129】
コーティングは、ひとたび硬化すると、好ましくは100μm以下(例えば1~100μm)、好ましくは50μm以下(例えば1~50μm)、より好ましくは10~20μmの厚さを有する。特に、硬化層は、1~5μm、又は5~10μm、又は10~15μm、又は15~20μm、又は20~25μm、又は25~30μm、又は30~40μm、又は40~50μm、又は50~60μm、又は60~70μm、又は70~80μm、又は80~90μm、又は90~100μmの厚さを有し得る。
【0130】
本発明による方法は、より具体的には化学線の照射によって組成物を硬化させる1つ以上の他の工程を含み得る。これらの補足工程は、方法の任意の時点で行われ得、特に、第1の放射線による照射の前、第1の放射線による照射と第2の放射線による照射との間、及び/又は第2の放射線による照射の後に行われ得る。これらの補足工程の各々において使用される放射線は、独立して任意の既知のタイプの放射線であり得る。
【0131】
特に、本発明による方法は、第1の放射線による照射の前に、照射工程(本明細書では「事前架橋工程」と称する)を含むことができ、この事前架橋工程は、より好ましくはUV放射線、より具体的にはUVA放射線を使用して実施される。事前架橋は、有利には200~420nm、より好ましくは280~420nmの波長の放射線を使用して実施される。いくつかの実施態様では、事前架橋放射線の波長は、200~280nm、又は280~320nm、又は320~380nm、又は380~420nmであり得る。照射される放射線量は、好ましくは25~120mJ/cm、より好ましくは30~100mJ/cmである。この放射線は、任意の適切な光源、特に、LEDランプ、低圧、中圧、又は高圧水銀灯(任意選択で、ガリウム又は鉄などの他の元素をドープしたもの)、パルス(又はフラッシュ)ランプ、又はハロゲンランプによって放射され得る。
【0132】
第1及び第2の放射線、並びに場合によっては他の放射線(例えば、事前架橋放射線)のための放射源は、独立して固定式であっても可動式であってもよい。放射源が固定されている場合、表面が照射される組成物で覆われている物体は、好ましくは、例えばコンベアベルトなどの装置によって移送されて、前記照射源の前を通過するように移動される。照射源が可動式である場合、照射される組成物を含む物体は、好ましくは、前記照射源による照射工程の間、固定化されたままとされる。
【0133】
上記の方法は1回以上繰り返され得る。したがって、硬化性組成物の別の層が、硬化した組成物の層に塗布され、次に、より具体的には上記のような方法に従って、化学線の照射による硬化に供することができる。
【0134】
コーティングは、有利には、85°で10GU以下、好ましくは8GU以下の鏡面光沢度を有する。85°における鏡面光沢度は、ISO規格2813:2014に従って測定することができる。
【0135】
別の態様によれば、本発明は、上記のような硬化性組成物から得られる、又は得ることができる、より具体的には、上記のような方法によって得られる、又は得ることができるコーティング層に関する。
【0136】
別の態様によれば、本発明は、上記のような硬化性組成物から得られる、又は得ることができるコーティング層で覆われた表面を含む物体に関する。本発明はまた、上記のような方法によって得られる、又は得ることができるコーティング層で覆われた表面を含む物体に関する。
【0137】
物体としては、例えば、家具用パネル、衣服(特に人工皮革製のもの)、又は床である。
【0138】
別の態様によれば、本発明は、化学線により硬化可能な少なくとも1つの化合物と、少なくとも1つのポリアミドの粒子とを含む硬化性組成物を少なくとも部分的に硬化させる(又は架橋する)ためのエキシマランプの使用に関する。エキシマランプは、有利には、150~250nm、好ましくは150~200nm、より好ましくは168~180nm、より優先的には172~175nmの波長を有する。硬化性組成物は好ましくは層形態である.硬化性組成物、ポリアミド、硬化性組成物の層、及びエキシマランプ、並びにそれらの使用に特に関連する上記の説明は、本発明のこの態様にも同様に適用され得る。
【実施例
【0139】
以下の実施例は、本発明を限定することなく説明するものである。
【0140】
硬化性組成物の調製
以下の表に明記される量(質量百分率で表示)の成分を含む、以下の硬化性組成物を調製した。
【0141】
[表1]
【0142】
組成物Aは比較用の硬化性組成物であり、組成物1、2及び3は本発明による硬化性組成物である。
【0143】
組成物は次のように調製された。
- ポリアミド12粉末のプレ分散体(プレミックスB)の調製
5gのポリアミド12粉末が、47.5gのアクリレート官能化エポキシオリゴマー(Sartomer社製CN2003EU)と47.5gの1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(Sartomer社製SR238)の混合物中に、タービンを備えた分散機を用いて1000回転/分で撹拌しながら導入された。ポリアミド12粉末は、粉末が適切に分散されるように、約15分かけて少量ずつ導入された。導入が終了すると、混合物は撹拌しながらさらに15分間放置された。製品CN2003EU中にPA12粉末のプレミックスを調製することで、最終組成物の調製中にポリアミド12粉末の効果的な分散が可能となる。
-組成物の調製:
- 組成物A(比較):
195.10gのアクリレート官能化エポキシオリゴマー(Sartomer社製CN2003EU)が、同じ分散機を使用して、195.10gの1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(Sartomer社製SR238)中で撹拌しながら希釈された。続いて、以下のものがこの順序で撹拌しながら導入された:2.00gのホスフィンオキシド光開始剤(Lambson社製Speedcure(登録商標)TPO-L)及び7.80gのヒドロキシアセトフェノン光開始剤(Lambson社製Speedcure(登録商標)84)。配合物は撹拌しながらさらに15分間放置された。
- 組成物1:
35.10gのアクリレート官能化エポキシオリゴマー(Sartomer社製CN2003EU)が、同じ分散機を使用して、35.10gの1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(Sartomer社製SR238)中で撹拌しながら希釈された。続いて、以下のものがこの順序で撹拌しながら導入された:28.10gのプレミックスB、次いで0.40gのホスフィンオキシド光開始剤(Lambson社製Speedcure(登録商標)TPO-L)及び1.40gのヒドロキシアセトフェノン光開始剤(Lambson社製Speedcure(登録商標)84)。配合物は撹拌しながらさらに15分間放置された。
- 組成物2:
35.10gのアクリレート官能化エポキシオリゴマー(Sartomer社製CN2003EU)が、同じ分散機を使用して、35.10gの1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(Sartomer社製SR238)中で撹拌しながら希釈された。続いて、以下のものがこの順序で撹拌しながら導入された:14.05gのプレミックスB、次いで0.40gのホスフィンオキシド光開始剤(Lambson社製Speedcure(登録商標)TPO-L)及び1.40gのヒドロキシアセトフェノン光開始剤(Lambson社製Speedcure(登録商標)84)。配合物は撹拌しながらさらに15分間放置された。
- 組成物3:
35.10gのアクリレート官能化エポキシオリゴマー(Sartomer社製CN2003EU)が、同じ分散機を使用して、35.10gの1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(Sartomer社製SR238)中で撹拌しながら希釈された。続いて、以下のものがこの順序で撹拌しながら導入された:7.025gのプレミックスB、次いで0.40gのホスフィンオキシド光開始剤(Lambson社製Speedcure(登録商標)TPO-L)及び1.40gのヒドロキシアセトフェノン光開始剤(Lambson社製Speedcure(登録商標)84)。配合物は撹拌しながらさらに15分間放置された。
【0144】
コーティングの調製
上記の各硬化性組成物から、ポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルム上に12μmの厚さのコーティングが形成された。
【0145】
これを達成するために、硬化性組成物を12μmのアプリケーターバーを使用してPETの剛性支持板に塗布した。これらの組成物は、以下のプロトコールに従って架橋された:硬化性組成物でコーティングされたフィルムをコンベアベルト上に並べ、UV LEDランプ(事前架橋を行うため)、エキシマランプ、最後に別のUVランプの下を順次通過させた。動作パラメータは次のとおりである。
- ベルト速度:10m/s
- 出力5W/cm、波長172nm、出力50%に調整されたXeradex(登録商標)エキシマランプによる架橋。
- 最大出力200W/cm、出力70%(照度750mW/cmに相当)に調整され、UVA、UVB、UVCを放射するISTI-400-U-3-80水銀灯によるUV架橋。
【0146】
実施された試験:
以下の試験が、上記のように得られたコーティングに対して実施された。
- コーティングの外観:コーティングは光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡によって観察された。
- 欠陥の数は、光学顕微鏡により得られた画像上の8cm×8cmの正方形内で数えられた。
- 85°における鏡面光沢度:ISO規格2813:2014に従って光沢計を使用して測定された。
- バフ研磨耐性:バフ研磨耐性は、ISO規格11640:2018に従い、3.5kgの加重が加えられた標準化された白いウールフェルトでコーティングが擦られた後(150回往復動作)、ISO規格2813:2014に従って測定される光沢の増加として推定される。擦られたコーティングの光沢の増加が小さければ小さいほど、バフ研磨耐性は良好である。
- 耐薬品性:耐薬品性は、メチルエチルケトンを染み込ませた綿の塊(1.5cmx1.5cmx0.5cm)で、1kgの加重をかけてコーティングの表面を擦る(往復動作)ことにより評価される。往復動作は、コーティングが破壊されるか、基材から剥離するまで行われ、カウントされる。この現象が起こるまでのサイクル数が多いほど、耐薬品性は良好である。
- 耐汚染性:この特性は、黒色酸化鉄の粉塵に曝された後のコーティングの色の変化(ΔE)によって決定される。コーティングの初期色は、ISO規格18314に従って、Malvern社のInsitec分光光度計で、それらの座標L、a、bによって測定される。33%の黒色酸化鉄の汚染水溶液を柔らかいブラシでコーティングの表面に塗布する。溶液は、23℃で3時間コーティングと接触させて放置し、続いて60℃で1時間放置し、最後に23℃で20時間乾燥させる。余分な汚染溶液を柔らかいブラシで取り除き、次いでコーティングの色をISO規格18314に従ってその座標L、a、bによって測定し、汚染されていないコーティングの色と比較する。色の違いは、式
に従って計算されるΔEで表される。式中、ΔL、Δa、及びΔbはそれぞれ、ISO規格18314規格に従った、汚染されたコーティングと汚染されていないコーティングとの間の座標L、a、bの差である。ΔEが低いほど、コーティングの耐汚染性は良好である。
【0147】
結果
結果は下の表に示されている。
[表2]
【0148】
組成物Aから形成されたコーティング及び組成物3から形成されたコーティングの走査型電子顕微鏡による顕微鏡写真をそれぞれ図1及び図2に示す。
【0149】
ポリアミド粒子を含む硬化性組成物から得られたコーティングは、実質的に任意の欠陥が存在しない均一な外観を有するが、一方組成物A(ポリアミド粒子を含まない)から得られたコーティングは、扇形に配向されたしわである多数の欠陥を示すことが見出された。
【0150】
さらに、本発明による硬化性組成物から得られるコーティングは、比較組成物Aから得られるコーティングに比べて、より艶消しであり(すなわち、より低い光沢を有する)、より優れたバフ研磨耐性、より優れた耐薬品性及びより優れた耐汚染性を示す。
【0151】
2つの比較例(4及び5)は、1.4%のポリアミド12粉末の代わりに1.4%のシリカを添加したことを除いて、組成物1と同じ方法で調製された。
[表3]
【0152】
[表4]
【0153】
シリカ粒子を含む組成物から得られたコーティングは、扇形に配向したしわである多数の欠陥を示し、したがって、付着点(欠陥)の存在により、汚染に対する耐性が低いことが見出された。
図1
図2
【国際調査報告】