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特表2025-534113ベンゼンスルホンアミドチアゾール化合物を含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-10-09
(54)【発明の名称】ベンゼンスルホンアミドチアゾール化合物を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/426 20060101AFI20251002BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20251002BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20251002BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20251002BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20251002BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20251002BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20251002BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
A61K31/426
A61K47/10
A61K47/20
A61K47/18
A61P35/00
A61P35/02
A61K9/08
A61K9/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2025522916
(86)(22)【出願日】2023-10-20
(85)【翻訳文提出日】2025-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2023079371
(87)【国際公開番号】W WO2024084086
(87)【国際公開日】2024-04-25
(31)【優先権主張番号】22306586.3
(32)【優先日】2022-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】525148328
【氏名又は名称】バイパー セラピューティクス エスアーエス
(71)【出願人】
【識別番号】524167832
【氏名又は名称】インサーム(インスティテュート ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル)
(71)【出願人】
【識別番号】521296052
【氏名又は名称】ユニバーシティ コート ダジュール
(71)【出願人】
【識別番号】518369442
【氏名又は名称】センター ナショナル デ ラ リシェルシェ サイエンティフィック(シーエヌアールエス)
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100227329
【弁理士】
【氏名又は名称】延原 愛
(72)【発明者】
【氏名】ロンコ,シリル
(72)【発明者】
【氏名】ベンヒダ,ラシッド
(72)【発明者】
【氏名】ロッキ,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】チェルビ,メディ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA22
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB14
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC27
4C076DD37
4C076DD52
4C076DD55
4C076EE23
4C076FF02
4C076FF05
4C076FF06
4C076FF07
4C076FF09
4C076FF12
4C076FF13
4C076FF14
4C076FF15
4C076FF16
4C076FF17
4C076FF34
4C076FF35
4C076FF36
4C076FF39
4C076FF51
4C076FF52
4C076FF61
4C076FF63
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA10
4C086BC82
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA16
4C086MA52
4C086MA56
4C086MA66
4C086NA11
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
本発明は、ベンゼンスルホンアミドチアゾール化合物を含む医薬組成物、薬剤としてのそれらの使用及び癌の予防及び/又は処置におけるそれらの使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 式(I)の化合物又は薬学的に許容可能な塩、溶媒和物又はそれらの混合物
(式(I)は次の通り:
【化1】

である)と、
- 5%v/v~30%v/v、好ましくは10%v/v~25%v/v、より好ましくは15%v/v~25%v/v、更により好ましくは約25%v/vの、置換されたポリ(エチレングリコール)、置換されないポリ(エチレングリコール)及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)(前記パーセンテージは本医薬組成物の総体積に対して表される)と、
- 2%v/v~10%v/v、好ましくは3%v/v~7%v/v、より好ましくは4%v/v~6%v/v、更により好ましくは約5%v/vの、エタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの溶媒(前記パーセンテージは本医薬組成物の総体積に対して表される)と、
- 水、
を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)が、置換されたポリ(エチレングリコール)及び置換されないポリ(エチレングリコール)の混合物であり;好ましくは、前記少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)が、ポリ(エチレングリコール)(15)-ヒドロキシステアラート及びポリ(エチレングリコール)400の混合物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記置換されないポリ(エチレングリコール)が、前記医薬組成物の総体積に対して、5%v/v~15%v/v、好ましくは7%v/v~13%v/v、より好ましくは8%v/v~12%v/v、更により好ましくは約10%v/vに相当する、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記置換されたポリ(エチレングリコール)が、前記医薬組成物の総体積に対して、10%v/v~20%v/v、好ましくは12%v/v~18%v/v、より好ましくは14%v/v~16%v/v、更により好ましくは約15%v/vに相当する、請求項2又は3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
60%v/v~93%v/v、好ましくは68%v/v~87%v/v、より好ましくは69%v/v~81%v/v、更により好ましくは約70%v/vの水を含む、請求項1~4の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
1mg/mL~320mg/mLの式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物又はそれらの混合物、好ましくは3mg/mL~20mg/mLの式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物又はそれらの混合物、より好ましくは約15mg/mLの式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物又はそれらの混合物を含む、請求項1~5の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの溶媒が、エタノールである、請求項1~6の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
溶媒、希釈剤 担体、充填剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、ポリマー、滑沢剤、流動促進剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤又は乳化剤、安定化剤、吸収促進剤、香味剤、テーストマスク剤(taste masker)、保存剤、抗酸化剤、緩衝剤、ゲル化剤、可溶化剤及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのさらなる賦形剤を更に含む、請求項1~7の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
薬剤としての使用のための、請求項1~8の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
それを必要とする対象における癌の処置又は予防における使用のための、請求項1~8の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記癌が、固形癌、好ましくは食道癌、胃腸癌、胃癌、腸癌、結直腸癌、結腸癌、直腸癌、膵臓癌、胆道癌、肝臓癌、腎臓癌、肺癌、胸膜癌、尿路癌、前立腺癌、子宮内膜癌、卵巣癌、乳癌、自律神経節癌、唾液腺癌、甲状腺癌、中枢神経系癌、骨癌、軟組織癌、リンパ腫、皮膚癌、癌腫及びメラノーマからなる群から選択される固形癌、より好ましくは食道癌、胃癌、腸癌、結直腸癌、結腸癌、直腸癌及び膵臓癌からなる群から選択される固形癌、更により好ましくは結直腸癌、結腸癌及び直腸癌からなる群から選択される固形癌である、請求項10に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項12】
前記癌が、液性癌、好ましくはリンパ腫、白血病及び造血器の癌からなる群から選択される液性癌である、請求項10に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項13】
経口経路、腹腔内経路、脊髄内経路、動脈内経路、静脈内経路、筋肉内経路及び皮下経路からなる群から選択される投与経路により投与され、好ましくは経口経路により投与される、請求項9~12の何れか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項14】
1日1回、1日2回、1日3回又は1日4回投与される、請求項9~13の何れか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項15】
前記対象への1回の投与において投与される、式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物又はそれらの混合物の用量が、5mg~250mg/キログラム対象体重、好ましくは5mg~150mg/キログラム対象体重、より好ましくは5mg~50mg/キログラム対象体重、更により好ましくは15mg~35mg/キログラム対象体重の範囲である、請求項9~14の何れか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N-(4-(6-((5-(ジメチルアミノ)ナフタレン)-1-スルホンアミド)ピリジン-2-イル)チアゾール-2-イル)アセトアミドを含む医薬組成物、薬剤としてのそれらの使用及び癌の予防及び/又は処置でのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
式(I)の化合物:
【化1】
は、その抗癌活性について記載されている(Cerezo et al.,Compounds Triggering ER Stress Exert Anti-Melanoma Effects and Overcome BRAF Inhibitor Resistance,Cancer Cell,2016,29,1-15)。
【0003】
しかし、上記式(I)の化合物を含む先行技術による組成物の経口経路による投与後の上記式(I)の化合物のバイオアベイラビリティは、非常に低く、3%未満である。従って、経口経路による投与に対する上記式(I)の化合物のバイオアベイラビリティを増強することが必要とされている。
【0004】
本発明の発明者らは驚くべきことに、式(I)の化合物を含むある特定の組成は、経口経路による投与後に、より良好なバイオアベイラビリティ、特に60%を超えるバイオアベイラビリティを得ることを可能にすることを発見した。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、
-式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物又はそれらの混合物
(式(I)は、次の通り:
【化2】
である)と、
-5%v/v~30%v/v、好ましくは10%v/v~25%v/v、より好ましくは15%v/v~25%v/v、更により好ましくは約25%v/vの、置換ポリ(エチレングリコール)、非置換ポリ(エチレングリコール)及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)(パーセンテージは本医薬組成物の総体積に対して表される)と、
-2%v/v~10%v/v、好ましくは3%v/v~7%v/v、より好ましくは4%v/v~6%v/v、更により好ましくは約5%v/vの、エタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの溶媒(パーセンテージは本医薬組成物の総体積に対して表される)と、
-水、
を含む医薬組成物に関する。
【0006】
有利には、少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)は、少なくとも1つの置換ポリ(エチレングリコール)及び少なくとも1つの非置換ポリ(エチレングリコール)の混合物である。好ましくは、少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)は、ポリ(エチレングリコール)(15)-ヒドロキシステアラート及びポリ(エチレングリコール)400の混合物である。
【0007】
より有利には、非置換ポリ(エチレングリコール)は、本医薬組成物の総体積に対して、5%v/v~15%v/v、好ましくは7%v/v~13%v/v、より好ましくは8%v/v~12%v/v、更により好ましくは約10%v/vに相当する。
【0008】
より有利には、置換ポリ(エチレングリコール)は、本医薬組成物の総体積に対して、10%v/v~20%v/v、好ましくは12%v/v~18%v/v、より好ましくは14%v/v~16%v/v、更により好ましくは約15%v/vに相当する。
【0009】
有利には、上記医薬組成物は、60%v/v~93%v/v、好ましくは68%v/v~87%v/v、より好ましくは69%v/v~81%v/v、更により好ましくは約70%v/vの水を含む。
【0010】
有利には、上記医薬組成物は、60%v/v~93%v/v、好ましくは68%v/v~87%v/v、より好ましくは69%v/v~71%v/v、更により好ましくは約70%v/vの水を含む。
【0011】
有利には、上記医薬組成物は、1mg/mL~320mg/mLの式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物又はそれらの混合物を含む。
【0012】
有利には、少なくとも1つの溶媒は、エタノールである。
【0013】
有利には、上記医薬組成物は更に、溶媒、希釈剤 担体、充填剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、ポリマー、滑沢剤、流動促進剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤又は乳化剤、安定化剤、吸収促進剤、香味剤、テーストマスク剤(taste masker)、保存剤、抗酸化剤、緩衝剤、ゲル化剤、可溶化剤及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのさらなる賦形剤を含む。
【0014】
本発明はまた、薬剤としての使用のための、本発明による医薬組成物にも関する。
【0015】
本発明はまた、それを必要とする対象における癌の処置又は予防における使用のための、本発明による医薬組成物にも関する。
【0016】
有利には、上記癌は、食道癌、胃癌、腸癌、結直腸癌、膵臓癌及びメラノーマからなる群から選択される。
【0017】
有利には、上記癌は、固形癌である。好ましくは、固形癌は、食道癌、胃腸癌、胃癌、腸癌、結直腸癌、結腸癌、直腸癌、膵臓癌、胆道癌、肝臓癌、腎臓癌、肺癌、胸膜癌、尿路癌、前立腺癌、子宮内膜癌、卵巣癌、乳癌、自律神経節癌、唾液腺癌、甲状腺癌、中枢神経系癌、骨癌、軟組織癌、リンパ腫、皮膚癌、癌腫及びメラノーマからなる群から選択される。より好ましくは、固形癌は、食道癌、胃癌、腸癌、結直腸癌、結腸癌、直腸癌、皮膚癌及び膵臓癌からなる群から選択される。より好ましくは、固形癌は、食道癌、胃癌、腸癌、結直腸癌、結腸癌、直腸癌及び膵臓癌からなる群から選択される。更により好ましくは、固形癌は、結直腸癌、結腸癌及び直腸癌からなる群から選択される。更に望ましくは、固形癌は、結直腸癌である。
【0018】
或いは、上記癌は、液性癌である。好ましくは、液性癌は、リンパ腫、白血病及び造血器の癌からなる群から選択される。より好ましくは、液性癌は、白血病である。更により好ましくは、液性癌は、慢性骨髄性白血病である。
【0019】
有利には、上記医薬組成物は、経口経路、腹腔内経路、脊髄内経路、動脈内経路、静脈内経路、筋肉内経路及び皮下経路からなる群から選択される投与経路により投与される。好ましくは、上記医薬組成物は、経口経路により投与される。
【0020】
有利には、上記医薬組成物は、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回又は2日おきに、3日おきに又は週に5回、投与される。
【0021】
より有利には、上記医薬組成物は、1日1回、1日2回、1日3回又は1日4回、投与される。
【0022】
より有利には、上記医薬組成物は、2日おきに、3日おきに又は週に5回、投与される。
【0023】
有利には、対象に1回の投与で投与される式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物又はそれらの混合物の投与量は、5mg~350mg/キログラム対象体重、好ましくは15mg~35mg/キログラム対象体重の範囲である。
【0024】
定義
本発明において、次の用語は次の意味を有する:
【0025】
数値又は数の前の「約」は、その数値又は数のそのものの値(face value)のプラス又はマイナス10%を指す。一実施形態では、数値又は数の前の「約」は、その数値又は数のそのものの値(face value)のプラス又はマイナス5%を指す。
【0026】
「活性剤」は、治療効果を有する薬剤を指す。薬剤は、化学物質又は生体物質であり得る。好ましくは、活性剤は、化学物質である。治療効果は、病態と関連する少なくとも1つの症状の予防、遅延、重症度及び/又は頻度の軽減若しくは抑制、又は病態の基礎的原因の予防、緩徐化若しくは抑制、又は損傷の改善若しくは修復であり得る。
【0027】
「バイオアベイラビリティ」は、上記薬物の投与後に変化されずに全身循環を達成する薬物の割合を指す。有利には、バイオアベイラビリティFは、次の式:F(%)=[AUCinf(PO)用量(IV)100]/[AUCinf(IV)用量(PO)]を使用して測定され得、AUCinf(PO)及び用量(PO)は、用量の経口投与(PO)(PO=per os(経口))後に得られるAUCinfであり、AUCinf(IV)及び用量(IV)は、用量の静脈内投与(IV)(IV=intravenous(静脈内))後に得られるAUCinfである。
【0028】
「緩衝液」は、少量の強酸又は強塩基がそれに添加されたときに医薬組成物のpHを一定に維持することを可能にする、弱酸及びその共役塩基の混合物又は弱塩基及びその共役酸の混合物に関する。「緩衝剤」は、緩衝液において酸性及び塩基性形態の両方で存在する特異的な化学物質を指し、医薬組成物のpHが一定に維持されることを可能にする。
【0029】
「癌」は、異常になるか又は過剰に増殖する細胞の形質転換により引き起こされるあらゆる疾患を指す。「固形癌」は、異常な及び増殖している細胞が、乳房又は前立腺などの固形臓器に位置する癌を指す。有利には、固形癌は、食道癌、胃腸癌、胃癌、腸癌、結直腸癌、結腸癌、直腸癌、膵臓癌、胆道癌、肝臓癌、腎臓癌、肺癌、胸膜癌、尿路癌、前立腺癌、子宮内膜癌、卵巣癌、乳癌、自律神経節癌、唾液腺癌、甲状腺癌、中枢神経系癌、骨癌、軟組織癌、リンパ腫、皮膚癌、癌腫及びメラノーマからなる群から選択され得る。より有利には、固形癌は、胃癌、食道癌及び皮膚癌からなる群から選択され得る。皮膚癌は、メラノーマ及び癌腫からなる群から選択され得る。より有利には、固形癌は、結直腸癌、結腸癌及び直腸癌からなる群から選択され得る。「液性癌」は、異常な及び増殖している細胞が、液性の体液中、例えば血液中(即ち白血病)又はリンパに位置する癌を指す。有利には、液性癌は、リンパ腫、白血病及び造血器の癌からなる群から選択され得る。好ましくは、液性癌は、白血病であり得る。より好ましくは、液性癌は、慢性骨髄性白血病であり得る。
【0030】
「コロイド性の」は、媒体中に分散される分子又はポリ分子粒子が少なくとも一方向でおよそ1nm~1μmの寸法を有すること、又は系において不連続性がそのオーダーの距離で見られることを意味する、微細化状態を指す。
【0031】
「含むこと(Comprising)」又は「含む(comprise)」は、開かれた包括的意味で解釈されるものであり、限定するものではない。
【0032】
「からなること(consisting of)」又は「からなる(consist)」は、閉じた非包括的な意味で解釈され、この用語に従う特性に限定される。
【0033】
「用量」は、1回で投与される活性剤の量を指す。一実施形態では、2回の経口用量が、6時間~1週間あけて、好ましくは8時間~48時間あけて、より好ましくは12時間~24時間あけて、更により好ましくは約24時間あけて1名の対象に投与される。有利なことに、用量は、ヒト用量である。ヒト用量は、体重70kgのヒトに対する標準的なヒト用量である。
【0034】
「エマルション」は、液滴が液体中に分散されている流体コロイド系を指す。液滴はしばしば、サイズにおいてコロイドに対する通常の限界を超える。「単純エマルション」は、連続相が水溶液(=水相)である場合O/Wという記号により(又は水中油という用語により)示され、連続相が有機液体(「油」)である場合W/Oにより(又は油中水という用語により)示される。「二重エマルション」は、W/O/W(水中油中水二重エマルションとも名付けられる、即ち連続水相中で分散される油性油滴内に含有される水性液滴)などの、より複雑なエマルションである。W(1)/O/W(2)二重エマルションにおいて、内部エマルションは、油相O中の最も内側の水相W(1)のエマルションを指し;外側のエマルションは、外側の水相W(2)中の油相Oのエマルションを指す。
【0035】
「賦形剤」は、適切な剤型での活性剤の処方のために必要とされる、あらゆる不活性成分を指す。一実施形態では、「賦形剤」は、ありとあらゆる溶媒、希釈剤 担体、充填剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、ポリマー、滑沢剤、流動促進剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤又は乳化剤、安定化剤、吸収促進剤、香味剤、テーストマスク剤(taste masker)、保存剤、抗酸化剤、緩衝剤、ゲル化剤、可溶化剤又はそれらのあらゆる組み合わせを指す。
【0036】
「X~Y」は、XとYの間の値の範囲を指し、X及びYを上記範囲に含まれるように限定する。
【0037】
「油相」は、水相と混和性でない相を指し、これは、油相中で溶解され得る水相の重量による量が、油相の総重量に基づき、5%以下、好ましくは1%未満、より好ましくは0.5%未満、更に好ましくは0%であること、および水相中で溶解され得る油相の量(重量による)が、水相の総重量に基づき、5%以下、好ましくは1%未満、より好ましくは0.5%未満、更に好ましくは0%であることを意味する。油相は、必ずしも油を含有しない。油相は一般的に、水の粘度よりも高い粘度を有する。
【0038】
「医薬組成物」は、少なくとも1つの活性剤と少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤の組み合わせを指す。
【0039】
「薬学的に許容可能な」は一般に、安全で、無毒性であり、生物学的にも生理学的にも、又は他の面でも、哺乳動物、特にヒト、イヌ、ネコ及び非ヒト霊長類動物に対し望ましくないものではないことを指す。
【0040】
「薬物動態パラメータ」:薬物動態パラメータの間で、「Cmax」は、最大の観察される血漿濃度を指し、「Tmax」は、最大の観察されるCmax血漿濃度に到達するために必要とされる時間を指し、「T1/2」は、半減期、即ち、そこでCmax血漿濃度が半分になる時間(排出相中)を指し、「Cl/F」は、腎臓クリアランスを指し、「Vz/F」は、分布容積(排出相)を指し、「AUC inf PO」は、曲線下面積を指す(試験される化合物への対象の曝露に対応する)。
【0041】
「ポリ(エチレングリコール)(15)-ヒドロキシステアラート」は、そのCAS番号が70142-34-6であり、かつ次の式:
【化3】
を有する分子を指す。例えば、ポリ(エチレングリコール)(15)-ヒドロキシステアラートは、Kolliphor(登録商標)HS15の商品名で市販される製品であり得る。
【0042】
「化合物の塩」は、上記化合物の酸又は塩基付加塩を指す。酸付加塩は、薬学的に許容可能な有機酸又は無機酸とともに形成され;塩基付加塩は、化合物中に存在する酸プロトンが金属イオンにより置き換えられるか又は薬学的に許容可能な有機塩基又は無機塩基と配位されるかの何れかの場合に形成される。一実施形態では、酸付加塩は、酢酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、サイクラミン酸塩、エジシル酸塩、エシレート、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸/臭化物、ヨウ化水素酸/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2-ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロト酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、ピログルタミン酸塩、サッカラート、ステアリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシラート、トリフルオロ酢酸塩及びキシナホ酸塩からなる群から選択される。一実施形態では、塩基付加塩は、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、2-(ジエチルアミノ)エタノール、ジオラミン、エタノールアミン、グリシン、4-(2-ヒドロキシエチル)-モルホリン、リジン、マグネシウム、メグルミン、モルホリン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミン及び亜鉛塩からなる群から選択される。
【0043】
「化合物の溶媒和物」は、上記化合物及び1つ以上の薬学的に許容可能な溶媒分子を含む分子複合体を指す。「化合物の水和物」は、化合物及び1つ以上の薬学的に許容可能な溶媒分子を含む分子複合体を指し、このとき溶媒は水である。
【0044】
「対象」又は「患者」は、哺乳動物を指し、ここで「哺乳動物」は、ヒト又は非ヒト哺乳動物を指す。一実施形態では、「対象」は、ヒト(男性又は女性)を指す。一実施形態では、「対象」は、非ヒト哺乳動物、好ましくは、ネコ、イヌ、ウマ及び、サルなどの非ヒト霊長類からなる群から選択される非ヒト哺乳動物を指す。
【0045】
「界面活性剤」は、それが溶解される媒体の表面張力、及び/又は他の相との界面張力を低下させ、従って、液体/蒸気、液体/液体で、及び/又は他の界面で正に吸着される物質を指す。
【0046】
「懸濁液」は、その中で固体粒子が分散される液体を指す。
【0047】
活性剤の又は組成物の「治療有効量」又は「有効量」は、所望の治療効果をもたらすための、上記活性剤又は組成物の無毒性であるが十分な量を指す。
【0048】
「処置すること(Treating)」又は「処置(treatment)」は、病態と関連する少なくとも1つの症状を、予防する、遅延させる、その重症度及び/又は頻度を低下させる、若しくは抑制すること、又は病態の基礎的原因を、予防する、遅延させる、若しくは抑制すること、又は損傷の改善若しくは治療を可能にする、あらゆる行動を指す。一実施形態では、「処置」は、治癒的な処置を指す。別の実施形態では、「処置」は、予防的処置を指す。別の実施形態では、「処置」は、予防的及び/又は治癒的処置を指す。
【0049】
「超純水」は、並外れて厳しい仕様へと精製されており、有機及び無機化合物、溶解された及び粒状化合物、揮発物及び非揮発化合物、反応性及び不活性化合物、親水性及び疎水性化合物及び溶解された気体化合物を含む、全ての混入物タイプについて最大純度レベルまで処理されている、水を指す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
医薬組成物
本発明は、
- 式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物又はそれらの混合物
(式(I)は次の通り:
【化4】
である)と、
- 5%v/v~30%v/v、好ましくは10%v/v~25%v/v、より好ましくは15%v/v~25%v/v、更により好ましくは約25%v/vの、置換ポリ(エチレングリコール)、非置換ポリ(エチレングリコール)及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)(パーセンテージは本医薬組成物の総体積に対して表される)と、
- 2%v/v~10%v/v、好ましくは3%v/v~7%v/v、より好ましくは4%v/v~6%v/v、更により好ましくは約5%v/vの、エタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの溶媒(パーセンテージは本医薬組成物の総体積に対して表される)と、
- 水、
を含む医薬組成物に関する。
【0051】
有利には、少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)は、置換ポリ(エチレングリコール)及びそれらの混合物からなる群から選択される。より有利には、少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)は、脂肪酸由来のポリ(エチレングリコール)及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)は、ポリ(エチレングリコール)(15)-ヒドロキシステアラートである。好ましくは、少なくとも1つの置換ポリ(エチレングリコール)、特にポリ(エチレングリコール)(15)-ヒドロキシステアラートは、本医薬組成物の総体積に対して、10%v/v~20%v/v、より好ましくは12%v/v~18%v/v、更により好ましくは14%v/v~16%v/v、より望ましくは約15%v/vに相当する。
【0052】
有利には、少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)は、非置換ポリ(エチレングリコール)及びそれらの混合物からなる群から選択される。より有利には、少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)は、ポリ(エチレングリコール)200、ポリ(エチレングリコール)400、ポリ(エチレングリコール)600、ポリ(エチレングリコール)800、ポリ(エチレングリコール)1000、ポリ(エチレングリコール)4000及びそれらの混合物からなる群から選択される。更により有利には、少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)は、ポリ(エチレングリコール)200、ポリ(エチレングリコール)400、ポリ(エチレングリコール)600及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)は、ポリ(エチレングリコール)400である。好ましくは、少なくとも1つの非置換ポリ(エチレングリコール)、特にポリ(エチレングリコール)400は、本医薬組成物の総体積に対して、5%v/v~15%v/v、より好ましくは7%v/v~13%v/v、更により好ましくは8%v/v~12%v/v、より望ましくは約10%v/vに相当する。
【0053】
有利には、少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)は、脂肪酸由来のポリ(エチレングリコール)、非置換ポリ(エチレングリコール)及びそれらの混合物からなる群から選択される。より有利には、少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)は、脂肪酸由来のポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)200、ポリ(エチレングリコール)400、ポリ(エチレングリコール)600、ポリ(エチレングリコール)800、ポリ(エチレングリコール)1000、ポリ(エチレングリコール)4000、ポリ(エチレングリコール)6000及びそれらの混合物からなる群から選択される。より有利には、少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)は、脂肪酸由来のポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)200、ポリ(エチレングリコール)400、ポリ(エチレングリコール)600、ポリ(エチレングリコール)800、ポリ(エチレングリコール)1000、ポリ(エチレングリコール)4000及びそれらの混合物からなる群から選択される。より有利には、少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)は、脂肪酸由来のポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)200、ポリ(エチレングリコール)400、ポリ(エチレングリコール)600及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0054】
より有利には、少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)は、ポリ(エチレングリコール)(15)-ヒドロキシステアラート、ポリ(エチレングリコール)(15)-ヒドロキシステアラート以外の脂肪酸由来のポリ(エチレングリコール)、非置換ポリ(エチレングリコール)及びそれらの混合物からなる群から選択される。より有利には、少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)は、ポリ(エチレングリコール)(15)-ヒドロキシステアラート、ポリ(エチレングリコール)(15)-ヒドロキシステアラート以外の脂肪酸由来のポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)200、ポリ(エチレングリコール)400、ポリ(エチレングリコール)600、ポリ(エチレングリコール)800、ポリ(エチレングリコール)1000、ポリ(エチレングリコール)4000及びそれらの混合物からなる群から選択される。より有利には、少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)は、ポリ(エチレングリコール)(15)-ヒドロキシステアラート、ポリ(エチレングリコール)(15)-ヒドロキシステアラート以外の脂肪酸由来のポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)200、ポリ(エチレングリコール)400、ポリ(エチレングリコール)600及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0055】
より有利には、少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)は、ポリ(エチレングリコール)(15)-ヒドロキシステアラート、ポリ(エチレングリコール)200、ポリ(エチレングリコール)400、ポリ(エチレングリコール)600、ポリ(エチレングリコール)800、ポリ(エチレングリコール)1000、ポリ(エチレングリコール)4000及びそれらの混合物からなる群から選択される。より有利には、少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)は、ポリ(エチレングリコール)(15)-ヒドロキシステアラート、ポリ(エチレングリコール)200、ポリ(エチレングリコール)400、ポリ(エチレングリコール)600及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0056】
有利には、少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)は、少なくとも1つの置換ポリ(エチレングリコール)及び少なくとも1つの非置換ポリ(エチレングリコール)の混合物である。より有利には、少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)は、ポリ(エチレングリコール)(15)-ヒドロキシステアラートとポリ(エチレングリコール)400との混合物である。好ましくは、
- 置換ポリ(エチレングリコール)、特にポリ(エチレングリコール)(15)-ヒドロキシステアラートは、本医薬組成物の総体積に対して、10%v/v~20%v/v、より好ましくは12%v/v~18%v/v、更により好ましくは14%v/v~16%v/v、より望ましくは約15%v/vに相当し;
- 非置換ポリ(エチレングリコール)、特にポリ(エチレングリコール)400は、本医薬組成物の総体積に対して、5%v/v~15%v/v、より好ましくは7%v/v~13%v/v、更により好ましくは8%v/v~12%v/v、より望ましくは約10%v/vに相当する。
【0057】
有利には、少なくとも1つの溶媒は、ジメチルスルホキシドである。好ましくは、本医薬組成物は、2%v/v~10%v/v、より好ましくは3%v/v~7%v/v、更により好ましくは4%v/v~6%v/v、より望ましくは約5%v/vのジメチルスルホキシドを含む。
【0058】
有利には、少なくとも1つの溶媒は、ジメチルアセトアミドである。好ましくは、本医薬組成物は、2%v/v~10%v/v、より好ましくは3%v/v~7%v/v、更により好ましくは4%v/v~6%v/v、より望ましくは約5%v/vのジメチルアセトアミドを含む。
【0059】
より有利には、少なくとも1つの溶媒は、エタノールである。好ましくは、本医薬組成物は、2%v/v~10%v/v、より好ましくは3%v/v~7%v/v、更により好ましくは4%v/v~6%v/v、より望ましくは約5%v/vのエタノールを含む。
【0060】
エタノールは、どんなアルコール度数(=ABV)ででも使用され得る。有利には、エタノールは、少なくとも50%ABVのエタノール溶液、好ましくは少なくとも70%ABVのエタノール溶液、より好ましくは少なくとも90%ABVのエタノール溶液、更により好ましくは少なくとも96%ABVのエタノール溶液(テクニカルグレード(technical grade)のエタノールとも呼ばれる)、より望ましくは少なくとも99%ABVのエタノール溶液(アブソリュートグレード(absolute grade)のエタノールとも呼ばれる)であり得る。一実施形態では、エタノールは、96%ABVのエタノール溶液であり得る。
【0061】
有利には、水は、超純水である。
【0062】
有利には、上記医薬組成物は、本医薬組成物の100%v/vにするために必要な量で水を含む。好ましくは、上記医薬組成物は、60%v/v~93%v/v、好ましくは68%v/v~87%v/v、より好ましくは69%v/v~81%v/v、更により好ましくは約70%v/vの水を含む。
【0063】
有利には、上記医薬組成物は、1mg/mL~500mg/mL、好ましくは1mg/mL~350mg/mL、より好ましくは1mg/mL~320mg/mL、更により好ましくは50mg/mL~320mg/mL、より望ましくは約150mg/mLの式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物又はそれらの混合物を含む。明確にするために、「1mg/mLの式(I)の化合物」は、1ミリリットルの医薬組成物あたり1ミリグラムの式(I)の化合物を指す。
【0064】
有利には、上記医薬組成物は、約150mg/mLの式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物又はそれらの混合物を含む。
【0065】
一実施形態では、本医薬組成物は、
- 上記の通りである式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物又はそれらの混合物と、
- 10%v/v~20%v/v、より好ましくは12%v/v~18%v/v、更により好ましくは14%v/v~16%v/v、より望ましくは約15%v/vのポリ(エチレングリコール)(15)-ヒドロキシステアラート(パーセンテージは、本医薬組成物の総体積に対して表される)と、
- 5%v/v~15%v/v、より好ましくは7%v/v~13%v/v、更により好ましくは8%v/v~12%v/v、より望ましくは約10%v/vのポリ(エチレングリコール)400(パーセンテージは本医薬組成物の総体積に対して表される)と、
- 2%v/v~10%v/v、好ましくは3%v/v~7%v/v、より好ましくは4%v/v~6%v/v、更により好ましくは約5%v/vのエタノール(パーセンテージは本医薬組成物の総体積に対して表される)と、
- 水、
を含む。
【0066】
好ましい実施形態では、本医薬組成物は、
- 1mg/mL~320mg/mLの、上記の通りである式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物又はそれらの混合物と、
- 本医薬組成物の総体積に対して約15%v/vのポリ(エチレングリコール)(15)-ヒドロキシステアラートと、
- 本医薬組成物の総体積に対して約10%v/vのポリ(エチレングリコール)400と、
- 本医薬組成物の総体積に対して約5%v/vのエタノールと、
- 100%v/vにするために必要な量の水、
を含む。
【0067】
より好ましい実施形態では、本医薬組成物は、
- 1mg/mL~320mg/mLの、上記の通りである式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物又はそれらの混合物と、
- 本医薬組成物の総体積に対して約15%v/vのポリ(エチレングリコール)(15)-ヒドロキシステアラートと、
- 本医薬組成物の総体積に対して約10%v/vのポリ(エチレングリコール)400と、
- 本医薬組成物の総体積に対して約5%v/vのエタノールと、
- 本医薬組成物の総体積に対して約70%v/vの水、
からなる。
【0068】
有利には、本医薬組成物は、エマルションである。エマルションは、単純エマルション及び二重エマルションからなる群から選択され得る。より有利には、本医薬組成物は、単純エマルションである。
【0069】
有利には、本医薬組成物は、懸濁液である。
【0070】
有利には、本医薬組成物は、溶液、好ましくは透明な溶液である。
【0071】
有利には、上記医薬組成物は、経口投与用である。言い換えると、有利には、上記医薬組成物は、経口医薬組成物である。
【0072】
有利には、上記医薬組成物は更に、溶媒、希釈剤 担体、充填剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、ポリマー、滑沢剤、流動促進剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤又は乳化剤、安定化剤、吸収促進剤、香味剤、テーストマスク剤(taste masker)、保存剤、抗酸化剤、緩衝剤、ゲル化剤、可溶化剤及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのさらなる賦形剤を含む。より有利には、上記医薬組成物は更に、少なくとも1つの香味剤及び/又はテーストマスク剤(taste masker)を含む。好ましくは、さらなる賦形剤が本発明による医薬組成物中に存在する場合、上記さらなる賦形剤は、本医薬組成物の総重量に対してそれぞれ0.001重量%~5重量%、好ましくは0.001重量%~1重量%の量で一般に存在する。言うまでもないが、当業者は、本発明の医薬組成物と本質的に関連する有利な特性が、想定される賦形剤により悪影響を及ぼされないように、又は実質的に悪影響を及ぼされないように、これらの任意選択的な賦形剤を注意深く選択する。
【0073】
薬剤としての使用のための医薬組成物
本発明はまた、それを必要とする対象における薬剤としての使用のための上に記載される通りの本発明による医薬組成物に関する。
【0074】
本発明はまた、上に記載される通りの本発明による医薬組成物の有効量をそれを必要とする対象に投与することにより疾患を処置する及び/又は予防する方法に関する。
【0075】
本発明はまた、薬剤の製造のための上に記載される通りの本発明による医薬組成物の使用に関する。
【0076】
本発明はまた、それを必要とする対象における疾患の処置及び/又は予防のための上に記載される通りの本発明による医薬組成物の使用に関する。
【0077】
本願において、薬剤は、ヒト薬剤又は獣医学用の薬剤であり得る。
【0078】
疾患の処置又は予防における使用のための医薬組成物
本発明はまた、それを必要とする対象における癌の処置及び/又は予防における使用のための上に記載される通りの本発明による医薬組成物に関する。
【0079】
本発明はまた、上に記載される通りの本発明による医薬組成物の有効量をそれを必要とする対象に投与することにより癌を処置する及び/又は予防する方法に関する。
【0080】
本発明はまた、それを必要とする対象における癌の処置及び/又は予防のための薬剤の製造のための上に記載される通りの本発明による医薬組成物の使用に関する。
【0081】
本発明はまた、それを必要とする対象における癌の処置及び/又は予防のための上に記載される通りの本発明による医薬組成物の使用に関する。
【0082】
有利には、癌は、固形癌である。
【0083】
有利には、癌は、食道癌、胃癌、腸癌、結直腸癌、膵臓癌及びメラノーマからなる群から選択される。より有利には、癌は、結直腸癌及びメラノーマからなる群から選択される。更により有利には、癌は、結直腸癌である。
【0084】
有利には、癌は、食道癌、胃腸癌、胃癌、腸癌、結直腸癌、結腸癌、直腸癌、膵臓癌、胆道癌、肝臓癌、腎臓癌、肺癌、胸膜癌、尿路癌、前立腺癌、子宮内膜癌、卵巣癌、乳癌、自律神経節癌、唾液腺癌、甲状腺癌、中枢神経系癌、骨癌、軟組織癌、リンパ腫、皮膚癌、癌腫及びメラノーマからなる群から選択され得る。より有利には、癌は、胃癌、食道癌及び皮膚癌からなる群から選択され得る。皮膚癌は、メラノーマ及び癌腫からなる群から選択され得る。より有利には、癌は、結直腸癌、結腸癌及び直腸癌からなる群から選択され得る。
【0085】
より有利には、癌は、結直腸癌であり得る。
【0086】
より有利には、癌は、結腸癌であり得る。
【0087】
より有利には、癌は、直腸癌であり得る。
【0088】
より有利には、癌は、メラノーマであり得る。
【0089】
有利には、本医薬組成物は、経口経路、腹腔内経路、脊髄内経路、動脈内経路、静脈内経路、筋肉内経路及び皮下経路からなる群から選択される投与経路により投与される。より有利には、上記医薬組成物は、経口経路により投与される。
【0090】
有利には、本医薬組成物は、1日1回、1日2回、1日3回又は1日4回、投与される。より有利には、本医薬組成物は、1日1回、1日2回、1日3回又は1日4回、経口経路により投与される。
【0091】
有利には、本医薬組成物は、毎日、2日おきに、3日おきに又は週に5回、投与される。より有利には、本医薬組成物は、毎日、2日おきに、3日おきに又は週に5回、経口経路により投与される。
【0092】
有利には、本医薬組成物は、特に経口経路により、毎日、2日おきに、3日おきに又は週に5回、投与され、投与の日の間、上記医薬組成物は、1日1回、1日2回、1日3回又は1日4回、投与される。
【0093】
有利には、対象に1回の投与で投与される、式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物又はそれらの混合物の投与量は、5mg~350mg、好ましくは5mg~250mg、より好ましくは約150mg/kg対象体重の範囲である。より有利には、経口経路により対象に1回の投与で投与される、式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物又はそれらの混合物の投与量は、5mg~350mg、好ましくは5mg~250mg、より好ましくは約150mg/キログラム対象体重の範囲である。
【0094】
有利には、対象に1回の投与で投与される、式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物又はそれらの混合物の投与量は、5mg~50mg、好ましくは15mg~35mg/kg対象体重の範囲である。より有利には、経口経路により対象に1回の投与で投与される、式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物又はそれらの混合物の投与量は、5mg~50mg、好ましくは15mg~35mg/kg対象体重の範囲である。
【0095】
有利には、対象は、ヒト、好ましくは18歳を超えるヒト、好ましくは40歳を超える、より好ましくは50歳を超える、更により好ましくは65歳を超えるヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0096】
図1図1は、各マウスの1kgあたり150mgの式(I)の化合物の投与量で3匹のswissアルビノマウスに本発明による医薬組成物を経口投与した後の、時間の関数としての本発明による式(I)の化合物の平均血漿濃度を示すグラフである。
図2図2は、各マウスの1kgあたり150mgの式(I)の化合物の投与量でのCT26(結直腸)腫瘍を有する10匹のBALB/Cマウスへの本発明による医薬組成物、又はCT26腫瘍を有する10匹のBALB/Cマウスへのプラセボ、の何れかの経口投与の後の、時間の関数としての腫瘍体積を示すグラフである。
図3図3は、各マウスの1kgあたり150mgの式(I)の化合物の投与量での3匹のswissアルビノマウスへの本発明による医薬組成物F、又は各マウスの1kgあたり150mgの式(I)の化合物の投与量での3匹のswissアルビノマウスへの先行技術による医薬組成物E、の何れかの経口投与後の、時間の関数としての本発明による式(I)の化合物の平均血漿濃度を示すグラフである。
【0097】
実施例
本発明は、次の実施例により更に例示される。全ての実施例において、バイオアベイラビリティFを、次の式
F(%)=[AUCinf(PO)用量(IV)100]/[AUCinf(IV)用量(PO)]
を使用して測定した。
【0098】
実施例1:本発明による2つの組成物の調製
本発明による組成物A
有機ビヒクルを、次のものを含んで調製した:50%v/vのKolliphor(登録商標)HS15、33.33%v/vのPEG400及び16.67%v/vのエタノール。従って、1.940mLの上記有機ビヒクル中に、0.9700mLのKolliphor(登録商標)HS15、0.6466mLのPEG400及び0.3234mLのエタノールが存在した。
【0099】
96.99mgの本発明による式(I)の化合物を、Wheatonバイアル中へと微量天秤上で計量した。本化合物を、1.9400mLの上記の有機ビヒクル中に溶解し(最終ビヒクル体積の3部に対応する)、投薬溶液を、およそ30分間にわたりマグネチック撹拌子を使用してよく混合した。この後、最終ビヒクル構成成分、4.5266mLの超純水(最終ビヒクル体積の7部に対応する)を、Wheatonバイアルにゆっくりと添加し、転倒撹拌によりよく混合した。最終投薬組成物は、僅かに濁りがある蛍光緑色/黄色の溶液であり、1ミリリットルの溶液あたり15mgの式(I)の化合物を含んだ。
【0100】
本発明による組成物B
有機ビヒクルを、50%v/vのKolliphor(登録商標)HS15、33.33%v/vのPEG400及び16.67%v/vのエタノールを含んで、調製した。従って、1.940mLの上記有機ビヒクル中に、0.9700mLのKolliphor(登録商標)HS15、0.6466mLのPEG400及び0.3234mLのエタノールが存在した。
【0101】
206.93mgの本発明による式(I)の化合物を、Wheatonバイアル中へと微量天秤上で計量した。本化合物を、1.9400mLの上記の有機ビヒクル中に溶解し(最終ビヒクル体積の3部に対応する)、投薬溶液を、およそ30分間にわたりマグネチック撹拌子を使用してよく混合した。この後、最終ビヒクル構成成分、4.5266mLの超純水(最終ビヒクル体積の7部に対応する)を、Wheatonバイアルにゆっくりと添加し、転倒撹拌によりよく混合した。最終投薬組成物は、緑~黄色の微細懸濁液であり、1ミリリットルの懸濁液あたり32mgの式(I)の化合物を含んだ。
【0102】
実施例2:実施例1で調製された本発明による組成物Aの投与後の式(I)の化合物のバイオアベイラビリティの評価
【0103】
材料及び方法
実施例1で調製された本発明による組成物Aを、各マウスに対し150mg/kgの投与量(経口経路による10mL/kgの体積投与量に対応する)で3匹の雄swissアルビノマウスに経口経路により単回用量として投与した。マウスは、胃への経管ニードルを通じて経口で投薬された。
【0104】
更に、組成物IVと名付けられた組成物を、各マウスに対し1mg/kgの投与量(静脈内経路による10mL/kgの体積投与量に対応する)で3匹の他の雄swissアルビノマウスに静脈内経路により単回用量として投与した。組成物IVは、1ミリリットルの上記組成物IVあたり0.1mgの本発明による式(I)の化合物と、10%v/vのKolliphor(登録商標)EL及び90%v/vの生理食塩水溶液(=0.9%w/v NaClを含む水溶液)を含有するビヒクルを含有した。組成物IVを、次のように調製した:Kolliphor(登録商標)EL及び生理食塩水溶液を、適切な割合(1/9、v/v)で予め混合し、次いで本発明による式(I)の化合物を、求められる体積中で溶解して、組成物IVを得た。
【0105】
6匹のマウスそれぞれについて、血液試料を、異なるエンドポイント(T0での経口又は静脈内投与後、T0+0.5時間、T0+1時間、T0+2時間、T0+4時間及びT0+8時間)で伏在静脈において収集し、遠心分離して血漿を分離した。本発明による式(I)の化合物の血漿濃度を、LC-MS/MSにより測定した。薬物動態パラメータを、Phoenixソフトウェアバージョン8.1を用いる非区画モデルにより平均濃度について計算した。
【0106】
結果
実施例1で調製された本発明による組成物の投与後の時間の関数としての式(I)の化合物の平均血漿濃度を、図1で示す。図1で見られるように、式(I)の化合物の血漿濃度は、8時間ににわたり低下した。
【0107】
薬物動態パラメータは、次の通りであった:
【表1】
【0108】
化合物(I)のバイオアベイラビリティは、96%であった。従って、本発明による組成物Aは、経口経路による1回の投与後の90%を超える化合物(I)のバイオアベイラビリティを可能にする。
【0109】
実施例3:結直腸癌の処置における実施例1で調製された本発明による組成物Aの効果
材料及び方法
腫瘍細胞移植:5×10個のCT26細胞を、20匹の雌BALB/cマウスの側腹部に皮下移植した。腫瘍がおよそ50~100mmに達したら、同様のサイズの腫瘍を持つマウスを、処置群(「試験群」又は「対照群」の何れか)に無作為に割り当てた。処置(試験群に対し実施例1で調製された本発明による組成物、又は対照群に対しプラセボ)を、腫瘍細胞移植の7日後に開始した。全ての投薬溶液の調製を、無菌のバイオセーフティーキャビネットにおいて行った。
【0110】
実施例1で調製された本発明による組成物Aを、13日間、毎日投与した(CT26腫瘍を有する10匹の雌BALB/Cマウスに対し、各マウスに対し150mg/kgの投与量で経口経路により(経口経路による10mL/kgの体積投与量に対応する)で第1日から開始した(「試験群」に対応する)。
【0111】
ビヒクル(50%v/vのKolliphor(登録商標)HS15、33.33%v/vのPEG400及び16.67%v/vのエタノールを含み、パーセンテージはビヒクルの総体積に対して表される)を、プラセボとしてCT26腫瘍を有する10匹の他の雌BALB/Cマウスに、経口経路により、13日間毎日投与した(第1日から開始)(「対照群」に対応する)。
【0112】
全マウスに対するフォローアップは、次のものを含んだ:週2回の体重測定、毎日の臨床観察(全体的な徴候/症状)、週3回の腫瘍体積測定、腫瘍分析、血液分析。
【0113】
腫瘍を、デジタルノギスを使用して測定した。腫瘍の長さ、幅及び奥行を、測定し、腫瘍体積を計算するために使用した。
【0114】
更に、腫瘍を、マウスの体からそれらを取り出した後の第13日目に重量測定した。
【0115】
結果
実施例1で調製された組成物又はプラセボの投与後の時間の関数としてnの腫瘍体積を、図2で示す。図2で見られ得るように、実施例1で調製された本発明による組成物の経口投与は、対照群と比較して、第13日での腫瘍体積を3分の1に縮小させた。
【0116】
更に、第13日の平均腫瘍重量は、対照群について970mgであり、試験群について341mgであった。従って、経口経路による、本発明による組成物の投与は、対照群と比較して、BALB/cマウスにおいてCT26腫瘍を約3分の1に縮小させた。
【0117】
更に、体重測定は、対照群と試験群の間で統計学的有意差を示さず、実施例1で調製された本発明による組成物の経口投与が、良好に許容されることを示す。
【0118】
実施例4:本発明による組成物及び先行技術による組成物の投与後の、式(I)の化合物のバイオアベイラビリティの比較
材料及び方法
経口経路による投与
2つの組成物を調製した:
本発明による組成物F:有機ビヒクルを、50%v/vのKolliphor(登録商標)HS15、33.33%v/vのPEG400及び16.67%v/vのエタノールを含んで、調製した。従って、1.940mLの上記有機ビヒクル中に、0.9700mLのKolliphor(登録商標)HS15、0.6466mLのPEG400及び0.3234mLのエタノールが存在した。本発明による式(I)の化合物を、Wheatonバイアル中へと微量天秤上で計量した。本化合物を、1.9400mLの上記有機ビヒクル中に溶解し、投薬溶液を、およそ30分間にわたりマグネチック撹拌子を使用して25℃にて800rpmでよく撹拌した。この後、最終ビヒクル構成成分、4.5266mLの超純水を、Wheatonバイアルにゆっくりと添加し、転倒撹拌によりよく混合した。組成物Fと名付けられた最終組成物は、1ミリリットルの組成物Fあたり15%v/vのKolliphor(登録商標)HS15、10%v/vのPEG400、5%v/vのエタノール及び70%v/vの超純水及び0.3mgの式(I)の化合物を含有した。
【0119】
先行研究による組成物E:本発明による式(I)の化合物を、1.2%v/vのメチルセルロース、0.1%v/vのTween(登録商標)80(ポリエチレングリコールソルビタンモノオレアート、CAS番号9005-65-6)、qsp100%v/vの脱イオン水を含有する混合物中に添加した。組成物Eと名付けられた得られた懸濁液は、1ミリリットルの組成物Eあたり5mgの式(I)の化合物を含んだ。
【0120】
投与:
本発明による組成物Fを、3匹の健康な雄swissアルビノマウスに、各マウスに対し150mg/キログラムの式(I)の化合物の投与量で経口経路により単回用量として投与した。
【0121】
先行研究による組成物Eを、3匹の健康な雄swissアルビノマウスに、各マウスに対し150mg/キログラムの式(I)の化合物の投与量で経口経路により単回用量として投与した。
【0122】
血液試料採取:各マウスについて、1試料あたりおよそ40μL~50μLの血液試料を、異なるエンドポイント(T0での経口投与後、T0+0.25時間、T0+0.5時間、T0+1時間、T0+2時間、T0+4時間及びT0+8時間)で伏在静脈穿刺により収集し;血液を、抗凝固剤(リチウムヘパリン)入りの収集チューブ中に収集し;チューブを、遠心分離して(2000g、10分間、4℃)、血漿を得た。試料を、LC-MS/MS分析まで<-65℃でプロピレンチューブ中で保管した(n=126)。薬物動態パラメータを、Phoenix WinNonlin 7.0ソフトウェアを用いて、PKプロファイルの非区画分析(NCA)から計算した。
【0123】
結果
経口投与後の薬物動態パラメータは、次の通りであった:
【表2】
【0124】
見られ得るように、本発明による組成物Fの単回経口投与後に、本発明による式(I)の化合物の最大濃度Cmaxは、投与後30分~1時間に得られ;それは、150mg/kgの用量が投与された場合、29.75μMである。先行技術による組成物Eの単回経口投与後に、本発明による式(I)の化合物の最大濃度Cmaxは、投与後30分~2時間に得られ;それは、150mg/kgの用量の場合、4.69μMである。従って、最大濃度Cmaxは、先行技術による組成物Eの経口投与後よりも、本発明による組成物Fの経口投与後により大きい。
【0125】
結果を考慮すると、本発明による組成物Fは、先行技術による組成物Eよりも、式(I)の化合物に対するより速い吸収(Tmax参照)およびより良好な曝露を可能にする(AUC0-inf参照)と結論付けられ得る。
【0126】
更に、経口バイオアベイラビリティは、本発明による組成物Fの単回経口投与後に約62.46%であり、先行技術による組成物Eの単回経口投与後に約2.81%である。
【0127】
従って、本発明による組成物Fは、先行技術による組成物Eよりも、より良好な式(I)の化合物の経口バイオアベイラビリティを可能にする。
図1
図2
図3
【国際調査報告】