(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-10-15
(54)【発明の名称】単一分子多分子トレース法およびシステム
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20251007BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20251007BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20251007BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z ZNA
C12N15/09 Z
C12M1/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2025519164
(86)(22)【出願日】2023-09-29
(85)【翻訳文提出日】2025-05-23
(86)【国際出願番号】 EP2023077003
(87)【国際公開番号】W WO2024074412
(87)【国際公開日】2024-04-11
(32)【優先日】2022-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196243
【氏名又は名称】運 敬太
(72)【発明者】
【氏名】バラル,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ハラダ,タケシ
(72)【発明者】
【氏名】コマディナ,ジェイソン・デビッド
(72)【発明者】
【氏名】マニオン,ジョン・ティー
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA27
4B029BB20
4B029CC01
4B029DG10
4B029FA15
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR66
4B063QS39
4B063QX02
4B063QX04
(57)【要約】
拡張による配列決定方法およびナノポア中の代理ポリマーの配列決定に対する関連する改善が記載される。代理ポリマーは、鋳型核酸分子から形成される。代理ポリマーは、複数のユニットを含む。各ユニットは、レポーターコード部分を含む。レポーターコードは、異なるヌクレオチドに対応する。代理ポリマーは、ナノポアに固着し得る。本明細書に記載の実施形態は、これらの固着した代理ポリマーに対処する。代理ポリマーに対する複数のリードを可能にするために、プロセッシブコンセンサスの技術を適用することができる。代理ポリマーは、同じレポーターコードのいくつかが再び識別されるように、数単位前方に移動させられ、次いでより少ない単位後方に移動させられ得る。この方法は、同じレポーターコードの複数のリードを可能にする。代理ポリマーは、最終的に順方向にナノポアを通過する。定期的に、ナノポアに固着した代理ポリマーを取り除くために、より高い除去電圧が印加され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的核酸分子を配列決定するための方法であって、
ナノポアにわたって第1のレベルの第1の数の電圧パルスを印加して、前記標的核酸分子から生成された化合物を、前記ナノポアを通って第1の方向に第1の距離だけ変位させるステップであって、
前記化合物は複数のユニットを含み、
前記複数のユニットの各ユニットは、複数の種類のレポーター要素のうちの1種類のレポーター要素を含み、
各種類のレポーター要素は、前記標的核酸分子内のヌクレオチドの同一性に対応し、
前記第1の数の電圧パルスを印加すると、前記複数のユニットの第1のサブセットが前記ナノポアを通過する、ステップと;
前記ナノポアにおいて、前記第1のサブセット中のレポーター要素の種類を検出するステップと;
前記ナノポアにわたって第2のレベルの第2の数の電圧パルスを印加して、前記化合物を、前記ナノポアを通って第2の方向に第2の距離だけ変位させるステップであって、
前記第1の方向は前記第2の方向と反対であり、
前記第1の数の電圧パルスの前記電圧パルスは、前記第2の数の電圧パルスの前記電圧パルスと反対の極性を有し、
前記第2の距離は前記第1の距離未満であり、
前記第2の数は前記第1の数未満である、ステップと;
前記ナノポアにわたって第3のレベルの第3の数の電圧パルスを印加して、前記化合物を、前記ナノポアを通って前記第1の方向に第3の距離だけ変位させるステップであって、
前記第3の数の電圧パルスを印加すると、前記複数のユニットの第2のサブセットが前記ナノポアを通過し、
前記第2のサブセットおよび前記第1のサブセットは、同じユニットの一部を含み、
前記第2のサブセットは、前記第1のサブセットにないユニットを含み、
前記第3の距離は前記第2の距離よりも大きい、ステップと;
前記ナノポアにおいて、前記第2のサブセット中のレポーター要素の種類を検出するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記ナノポアにわたって第4のレベルの除去電圧を印加して、前記化合物を前記ナノポアから完全に排出するステップであって、前記第4のレベルが、前記第1のレベル、前記第2のレベル、および前記第3のレベルよりも大きい、ステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物が、複数の化合物のうちの第1の化合物であり、
前記複数の化合物が、複数の標的核酸分子から生成され、
前記ナノポアが、複数のナノポアのうちの第1のナノポアであり、
前記複数の化合物の各化合物が、前記複数のナノポアのうちの1つのナノポア内にある請求項1または2に記載の方法であって、
前記第1のレベルの前記第1の数の電圧パルス、前記第2のレベルの前記第2の数の電圧パルス、および前記第3のレベルの前記第3の数の電圧パルスを前記複数のナノポアに印加するステップ
をさらに含む、方法。
【請求項4】
前記複数の標的核酸分子の複数の配列を決定するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の配列のサイズ分布が、300ntより大きいモードを有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のレベルの前記第1の数の電圧パルス、前記第2のレベルの前記第2の数の電圧パルス、および前記第3のレベルの前記第3の数の電圧パルスを前記複数のナノポアに印加するステップと;
前記複数の化合物の第1の部分が、前記複数のナノポアの第1の部分において、前記第1の数の電圧パルス、前記第2の数の電圧パルス、または前記第3の数の電圧パルスによって変位されていることを決定するステップと、
前記複数のナノポアの第2の部分の各ナノポアにわたって第4のレベルの除去電圧を印加して、前記複数の化合物の第2の部分を前記複数のナノポアのそれぞれのナノポアから完全に排出するステップであって、
前記第4のレベルが、前記第1のレベル、前記第2のレベル、および前記第3のレベルよりも大きく、
前記複数のナノポアの前記第2の部分が、前記複数のナノポアの前記第1の部分のナノポアを含まない、ステップと
をさらに含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項7】
前記標的核酸分子の配列を決定するステップをさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記標的核酸分子の前記配列を決定するステップが、前記第1のサブセットおよび前記第2のサブセットの両方における1つまたは複数のユニットについて、同じ種類のレポーター要素を検出することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記化合物を前記ナノポアから完全に排出するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物を前記ナノポアから完全に排出するステップが、前記第3の数の電圧パルスの前記印加中に行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記複数のユニットの各ユニットが移動制御要素を含み、
前記第1の数の電圧パルスを印加すると、第1の数の移動制御要素が前記ナノポアを通過し、
前記第1の数の電圧パルスが、前記第1の数の移動制御要素に等しい、
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ナノポアにわたって第4のレベルの電圧を印加して、前記化合物を、前記第1の数の電圧パルスの電圧パルスの間に前記ナノポアを通って前記第1の方向に第4の距離だけ変位させるステップであって、
前記第4のレベルの前記電圧が、前記第1の数の電圧パルスの前記電圧パルスと同じ極性であり、
前記第4のレベルが前記第1のレベル未満であり、
前記第4の距離だけ変位した後の前記化合物が、前記ナノポア内に移動制御要素を有する、ステップ
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2のレベルが前記第1のレベルよりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記複数のユニットの前記第1のサブセット中のレポーター要素がナノポア内にある場合に前記ナノポアにわたって印加される電圧を有する前記ナノポアについての信号値を測定するステップと;
前記信号値を使用して、前記第1のサブセット中のレポーター要素の種類を決定し、それによって前記標的核酸分子中のヌクレオチドの同一性を決定するステップと
をさらに含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記複数のユニットの前記第1のサブセットが30個以上のユニットを含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第3のレベルが前記第1のレベルに等しい、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記標的核酸分子が200ntよりも長い、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の数の電圧パルスが30以上である、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の数の電圧パルスが、前記第2の数の電圧パルスを5以上上回ることがある、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
実行されるとコンピュータシステムを制御して請求項1から19のいずれか一項に記載の方法を実施する複数の命令を記憶している非一時的コンピュータ可読媒体を備える、コンピュータ製品。
【請求項21】
請求項20に記載のコンピュータ製品と、
前記コンピュータ可読媒体上に記憶された命令を実行するための1つまたは複数のプロセッサと
を備える、システム。
【請求項22】
請求項1から19のいずれか一項に記載の方法を実施するための手段を備えるシステム。
【請求項23】
請求項1から19のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成された1つまたは複数のプロセッサを備えるシステム。
【請求項24】
請求項1から19のいずれか一項に記載の方法の前記ステップをそれぞれ実施するモジュールを備えるシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本特許出願は、あらゆる目的のために参照により組み込まれる、2022年10月3日に出願された米国仮特許出願第63/412,774号の優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本明細書に記載の実施形態は、ナノポアベースの配列決定法およびシステムに関する。特に、方法およびシステムは、Sequencing By eXpansion(SBX(商標))を使用してコンセンサスリードを生成する方法を含む。
【背景技術】
【0003】
内径が1ナノメートルのオーダーの細孔サイズを有するナノポア膜デバイスは、素早いヌクレオチド配列決定において有望であることが示されている。電位が、伝導性流体に浸されたナノポアにわたって印加されると、ナノポアにわたるイオンの伝導に起因する小イオン電流が存在できる。電流のサイズは、細孔サイズ、およびナノポア内の分子のタイプに影響を受けやすい。分子は、特定のヌクレオチドに対応する特定のレポーターコードとなり得、したがって、核酸の特定の位置でのヌクレオチドの検出が可能となる。分子の抵抗を測定する方法として、ナノポアを有する回路内の電圧または他の信号を測定し(例えば、積分コンデンサで)、どの分子がナノポア内にあるかを検出することが可能である。
【0004】
ナノポアベースの配列決定チップは、DNA配列決定に使用され得る。ナノポアベースの配列決定チップは、アレイとして構成された多数のセンサセルを組み込むことができる。例えば、100万個のセルのアレイは、1000行×1000列のセルを含み得る。
【0005】
測定される信号は、製造のばらつきのために、チップごとに、および同じチップのセルごとに異なり得る。したがって、セル内の特定の核酸または他のポリマー中の正しいヌクレオチドであり得るかまたはそれに対応し得る正しい分子を決定することは困難であり得る。さらに、測定された信号における他の時間依存的非理想性が、不正確さをもたらし得る。そして、これらの回路は、例えば脂質二重層、ナノポア等の生化学回路要素を使用するため、電気的特性の変動性は、従来の半導体回路よりもはるかに高くなり得る。さらに、配列決定プロセスは本質的に確率的であり、したがって、ナノポアを使用しない配列決定装置を含む多種多様なシステムにわたって変動が起こり得る。
【0006】
したがって、配列決定プロセスの精度および安定性を改善するために、改善された特性評価技術が望まれる。
【発明の概要】
【0007】
本明細書に記載の実施形態は、ナノポア内の核酸情報でコードされた代理ポリマーの配列決定方法および配列決定の改善を含む。代理ポリマー(本明細書では「Xpandomer」ポリマーとも呼ばれる)は、配列データの個々の要素の線形分離を増加させながら、標的核酸の元の遺伝情報を保存するテンプレート指向合成によって形成される。代理ポリマーは、鋳型核酸分子から形成される。代理ポリマーは、複数のユニットを含む。各ユニットは、1つまたは複数のレポーターコード部分を含む。レポーターコードは、異なるヌクレオチド(例えば、A、T、C、G)に対応する。レポーターコードは、ナノポアにおいて異なる電気信号を生成し、したがってヌクレオチド配列の識別を可能にする。各ユニットは、移動制御要素(TCE)を含む。ナノポアを通過するために、TCEは、ナノポアを通ってユニットの残りを駆動するためのベースライン電圧と比較して、印加されるべきより高い電圧を必要とする。複数のリードを可能にするために、、代理ポリマーを、数回にわたってナノポアを通過して往復させることができる。代理ポリマーは、1つのリーダーセグメントを含み、これは、ナノポアから代理ポリマーを後退させるときにナノポアの片側の膜に固着し得る。本明細書に記載の実施形態は、これらの固着した代理ポリマーに対処する。
【0008】
代理ポリマーに対する複数のリードを可能にするために、プロセッシブコンセンサスの技術を適用することができる。代理ポリマーは、同じレポーターコードのいくつかが再び識別されるように、数単位前方(例えば、30)に移動させられ、次いでより少ない単位後方(例えば、25)に移動させられ得る。この方法は、同じレポーターコードの複数のリードを可能にする。代理ポリマーは、最終的に順方向にナノポアを通過する。定期的に、ナノポアに固着した代理ポリマーを取り除くために、より高い除去電圧が印加され得る。
【0009】
除去電圧は、より頻繁に印加されてもよいが、目標とする方法で印加されてもよい。代理ポリマーがナノポアに固着していると判定されないセル(すなわち、ウェル)は、除去電圧が印加される前に非アクティブ化され得る。技術により、任意の長さの分子を、それらの全長において1より大きい深度で配列決定することができる。
【0010】
上記を考慮して、本開示の一態様は、標的核酸分子を配列決定するための方法であって、ナノポアにわたって第1のレベルの第1の数の電圧パルスを印加して、標的核酸分子から生成された化合物を、ナノポアを通って第1の方向に第1の距離だけ変位させるステップであって、化合物は複数のユニットを含み、複数のユニットの各ユニットは、複数の種類のレポーター要素のうちの1種類のレポーター要素を含み、各種類のレポーター要素は、標的核酸分子中のヌクレオチドの同一性に対応し、第1の数の電圧パルスを印加すると、複数のユニットの第1のサブセットがナノポアを通過する、ステップと;ナノポアにおいて、第1のサブセット中のレポーター要素の種類を検出するステップと;ナノポアにわたって第2のレベルの第2の数の電圧パルスを印加して、化合物を、ナノポアを通って第2の方向に第2の距離だけ変位させるステップであって、第1の方向は第2の方向と反対であり、第1の数の電圧パルスの電圧パルスは、第2の数の電圧パルスの電圧パルスと反対の極性を有し、第2の距離は第1の距離未満であり、第2の数は第1の数未満である、ステップと;ナノポアにわたって第3のレベルの第3の数の電圧パルスを印加して、化合物を、ナノポアを通って第1の方向に第3の距離だけ変位させるステップであって、第3の数の電圧パルスを印加すると、複数のユニットの第2のサブセットがナノポアを通過し、第2のサブセットおよび第1のサブセットは、同じユニットの一部を含み、第2のサブセットは、第1のサブセットにないユニットを含み、第3の距離は第2の距離よりも大きい、ステップと;ナノポアにおいて、第2のサブセット中のレポーター要素の種類を検出するステップとを含む、方法である。
【0011】
いくつかの実施形態において、本方法は、ナノポアにわたって第4のレベルの除去電圧を印加して、化合物をナノポアから完全に排出するステップであって、第4のレベルが、第1のレベル、第2のレベル、および第3のレベルよりも大きい、ステップをさらに含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、化合物は、複数の化合物のうちの第1の化合物であり、複数の化合物は、複数の標的核酸分子から生成され、ナノポアは、複数のナノポアのうちの第1のナノポアであり、複数の化合物の各化合物は、複数のナノポアのうちの1つのナノポア内にあり、本方法は、第1のレベルの第1の数の電圧パルス、第2のレベルの第2の数の電圧パルス、および第3のレベルの第3の数の電圧パルスを複数のナノポアに印加するステップをさらに含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、本方法は、複数の標的核酸分子の複数の配列を決定するステップをさらに含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、複数の配列のサイズ分布は、300ntより大きいモードを有する。
【0015】
いくつかの実施形態において、本方法は、第1のレベルの第1の数の電圧パルス、第2のレベルの第2の数の電圧パルス、および第3のレベルの第3の数の電圧パルスを複数のナノポアに印加するステップと;複数の化合物の第1の部分が、複数のナノポアの第1の部分において、第1の数の電圧パルス、第2の数の電圧パルス、または第3の数の電圧パルスによって変位されていることを決定するステップと、複数のナノポアの第2の部分の各ナノポアにわたって第4のレベルの除去電圧を印加して、複数の化合物の第2の部分を複数のナノポアのそれぞれのナノポアから完全に排出するステップであって、第4のレベルが、第1のレベル、第2のレベル、および第3のレベルよりも大きく、複数のナノポアの第2の部分が、複数のナノポアの第1の部分のナノポアを含まない、ステップとをさらに含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、本方法は、標的核酸分子の配列を決定するステップをさらに含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、標的核酸分子の配列を決定するステップは、第1のサブセットおよび第2のサブセットの両方における1つまたは複数のユニットについて、同じ種類のレポーター要素を検出することを含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、本方法は、化合物をナノポアから完全に排出するステップをさらに含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、化合物をナノポアから完全に排出するステップは、第3の数の電圧パルスの印加中に行われる。
【0020】
いくつかの実施形態において、複数のユニットの各ユニットは移動制御要素を含み、第1の数の電圧パルスを印加すると、第1の数の移動制御要素がナノポアを通過し、第1の数の電圧パルスは、第1の数の移動制御要素に等しい。
【0021】
いくつかの実施形態において、本方法は、ナノポアにわたって第4のレベルの電圧を印加して、化合物を、第1の数の電圧パルスの電圧パルスの間にナノポアを通って第1の方向に第4の距離だけ変位させるステップであって、第4のレベルの電圧が、第1の数の電圧パルスの電圧パルスと同じ極性であり、第4のレベルが第1のレベル未満であり、第4の距離だけ変位した後の化合物が、ナノポア内に移動制御要素を有する、ステップをさらに含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、第2のレベルは第1のレベルよりも大きい。
【0023】
いくつかの実施形態において、本方法は、複数のユニットの第1のサブセット中のレポーター要素がナノポア内にある場合にナノポアにわたって印加される電圧を有するナノポアについての信号値を測定するステップと;信号値を使用して、第1のサブセット中のレポーター要素の種類を決定し、それによって標的核酸分子中のヌクレオチドの同一性を決定するステップとをさらに含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、複数のユニットの第1のサブセットは30個以上のユニットを含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、第3のレベルは第1のレベルに等しい。
【0026】
いくつかの実施形態において、標的核酸分子は200ntよりも長い。
【0027】
いくつかの実施形態において、第1の数の電圧パルスは30以上である。
【0028】
いくつかの実施形態において、第1の数の電圧パルスは、第2の数の電圧パルスを5以上上回ることがある。
【0029】
本開示の別の態様は、実行されるとコンピュータシステムを制御して前述の方法およびその実施形態を実施する複数の命令を記憶している非一時的コンピュータ可読媒体を備える、コンピュータ製品である。
【0030】
本開示の別の態様は、コンピュータ製品と、コンピュータ可読媒体に記憶された命令を実施するための1つまたは複数のプロセッサとを備えるシステムである。
【0031】
本開示のさらなる態様は、上記の方法のいずれかを実施するための手段を備えるシステム、上記の方法のいずれかを実施するように構成された1つまたは複数のプロセッサを備えるシステム、および上記の方法のいずれかのステップをそれぞれ実施するモジュールを備えるシステムである。
【0032】
以下の詳細な説明および添付の図面を参照することによって、本発明の実施形態の性質および利点をよりよく理解できるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施形態による代理ポリマーの構成要素を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態によるXNTP構造の詳細を示す図である。
図2に示される分子構造は化学的に正しくない場合がある。
図2は、例示を目的として提供されている。
【
図3】本発明の実施形態による代理ポリマー合成のための固体基板への伸長オリゴマーの結合を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態による伸長オリゴマー、リーダー、および付近の構成要素の構造を示す図である。
図4に示される分子構造は化学的に正しくない場合がある。
図4は、例示を目的として提供されている。
【
図5A】本発明の実施形態による典型的な拡張による配列決定波形を用いる単一分子-多分子トレース事象の一例を示す図である。
【
図5B】本発明の実施形態によるポアを取り除かない分子を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態による同じ順方向電圧および逆方向電圧を伴う代理ポリマーを配列決定するための1つの戦略を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態による異なる順方向電圧および逆方向電圧を伴う代理ポリマーを配列決定するための戦略を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態による短縮された明期間持続時間を伴う代理ポリマーを配列決定するための戦略を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態による配列決定戦略による明期間および暗期間スケジュールを示す図である。
【
図10】本発明の実施形態による逆ナノポアを使用して配列決定するための戦略を示す図である。
【
図11】本発明の実施形態による、プロセッシブマルチパスリード生成のための電圧スケジュールを示す図である。
【
図12】本発明の実施形態による組み立てられた捕捉生リードシリーズを示す図である。
【
図13】本発明の実施形態によるナノポアから代理ポリマーを取り除くためのメタ期間を示す図である。
【
図14】本発明の実施形態による組み立てられた捕捉生リードシリーズを示す図である。
【
図15A】本発明の実施形態によるオープンチャネルADCにおける異なる濃度の酸化還元対の効果を示す図である。
【
図15B】本発明の実施形態によるオープンチャネルADCにおける異なる濃度の酸化還元対の効果を示す図である。
【
図16】本発明の実施形態による標的核酸分子を配列決定するための例示的なプロセスのフローチャートを示す図である。
【
図17】本発明の実施形態による測定システムを示す図である。
【
図18】本発明の実施形態によるシステムおよび方法によって使用可能な例示的なコンピュータシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書に記載の実施形態は、Sequencing By eXpansion(SBX(商標))プロトコルを含む、ナノポア配列決定ためのプロトコルを含む。プロトコルは、順方向には容易にポアに入るが、逆方向にはポアを通過するための高い障壁を有するという特性を有する分子の「リード」部分を含む。さらに、実施形態は、ナノポア内に代理ポリマー(例えば、Xpandomer)分子を電気的に捕捉し、同じ代理ポリマー分子で複数のパスまたはリードを可能にするように制御された方法で分子を配置するように設計された、修正された明期間および暗期間印加電圧パターンを含む。さらに、実施形態は、より高い電圧パルスおよび/またはより長いサイクル時間を周期的な明/暗サイクルに印加して、最終的にポアから分子を取り除くことを含む。いくつかの実施形態は、各グローバルパルス印加期間に特定のポアからのみ分子を取り除くために、より高い電圧パルスの選択的印加を使用することを含む。利点としては、化合物分子トレース事象(すなわち、一連の明期間における同じ分子からのサブリード)の富化が挙げられる。他の利点としては、ポア占有率および生ベースコールスループットの増加が挙げられ得る。さらに、プロトコルは、シングルパスリードと比較して、より高い精度のマルチパスリードをもたらし得る。実施形態は、長い代理ポリマー分子のリードを永久的にカットオフすることなく、はるかに短い明期間で実行することを含み得る。これにより、短い明期間減衰時定数をもたらす実用的な実験条件が可能となり得る。
【0035】
さらに、実施形態は、特定のUMI(分子バーコード)分子ファミリーからの代理ポリマーにより多くの時間を費やし、他のUMI分子ファミリーからの代理ポリマーにより少ない時間を費やすことを動的に選択する能力を含み得る。UMIは、試料調製段階中に試料核酸に添加され得る。特定の試料由来のすべての核酸断片は、同じUMIを有する。異なる試料は異なるUMIを有する。UMIは、各核酸分子の試料を識別しながら、配列決定のために異なる試料を一緒にプールすることを可能にする。配列決定の間に、特定のUMIファミリー(すなわち、試料)由来の配列がさらなる配列決定を必要とし得ることが決定され得る。例えば、ある特定のベースコールの信頼性は、同じ位置に対する異なるベースコールの数が比較的多いために低くなり得る。これらの試料由来の断片は、本明細書に記載の方法を使用して余分に配列決定され得る。
【0036】
I.拡張による配列決定
実施形態は、ナノポアを使用した拡張による配列決定(SBX)に適用され得る。拡張による配列決定は、2020年5月14日に出願された国際公開第2020/236526号パンフレット「Translocation control elements,reporter codes,and further means for translocation control for use in nanopore sequencing」および2008年6月19日に出願された米国特許第7,939,259号明細書「High throughput nucleic acid sequencing by expansion」に記載されており、これらの両方の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
拡張による配列決定プロトコルは、「XNTP」と呼ばれる高度に修飾された非天然ヌクレオチド類似体の重合に基づいている。一般的に、SBXは、生化学的重合を使用して、DNA鋳型の配列を「Xpandomer」と呼ばれる測定可能なポリマー上に転写する。転写された配列は、約10nm離れた高シグナル対ノイズレポーターにおいてXpandomer骨格に沿ってコードされ、高シグナル対ノイズ、高分化応答のために設計される。これらの違いは、天然DNAと比較して、Xpandomerの配列リード効率および精度の著しい性能向上をもたらす。
【0038】
A.代理ポリマー構造
図1は、代理ポリマー(例えば、Xpandomer)の構成要素を示す。Xpandomerは、標的DNA配列の順序に対応する順序付けられたXNTPの配列を含む。
図1は縮尺通りではない。XNTPは、鋳型依存性酵素重合と適合性の拡張可能な5’三リン酸修飾非天然ヌクレオチド類似体である。XNTPは、2つの異なる機能領域、すなわち、5’α-ホスフェートを核酸塩基に結合させる選択的に切断可能なホスホルアミデート結合、およびホスホルアミデート結合の切断による制御された拡張を可能にする位置でヌクレオシドトリホスホルアミデート内に結合される対称的に合成されたレポーターテザー(SSRT)を有する。SSRTは、選択的に切断可能なホスホルアミデート結合によって分離されたリンカーを含む。各リンカーは、レポーターコードの一端に結合する。
【0039】
セクション102は、プライマー指向性Xpandomer合成を示す。XNTP 104は、XNTP基質および鋳型依存性重合の娘鎖産物に特徴的な「拘束された構成」で示されている。重合XNTPの拘束された構成は、Xpandomer産物に見られるように、拡張された構成(XNTP 108)の前駆体である。セクション106は、Xpandomerを拡張するための切断を示す。拘束された構成から拡張された構成への移行は、娘鎖の一次骨格内のホスホルアミデートのP--N結合の切断時に起こる。
【0040】
アセンブリ中、モノマーXNTP基質(XATP、XCTP、XGTP、およびXTTP)は、ガイドとして一本鎖鋳型を使用する鋳型指向性重合のプロセスによって新生娘鎖の伸長可能末端上で重合される。一般的に、このプロセスは、プライマーから開始され、5’から3’方向に進行する。一般的に、DNAポリメラーゼ110または他のポリメラーゼを使用して娘鎖を形成し、鋳型鎖の相補的コピーが得られるように条件を選択する。娘鎖が合成された後、カップリングされたSSRTは、娘鎖をさらに形成する拘束されたXpandomerを形成する。娘鎖中のSSRTは、XNTP基質の「拘束された構成」を有する。SSRTの拘束された構成は、Xpandomer産物に見られるように、拡張された構成の前駆体である。
【0041】
この例では、合成および拡張が完了すると、Xpandomer中の各モノマーXNTP単位112は、それがコードする塩基型に対応するレポーターコード「レベル」を有する2つのレポーターコード116aおよび116bと、移動制御要素(TCE)120とを含む。TCEは、立体障害、電気反発、および/またはナノポアとの優先的相互作用の組み合わせを通して、ナノポアを通るXpandomerの移動速度を制御する。ポア開口部に配置された際のイオン電流の駆動力に対するTCEの抵抗、およびその結果の、停止を克服し移動を再開するために必要な印加電圧(すなわち、電圧パルス)の増加は、TCEの種々の特性(およびいくつかの実施形態において、レポーターコードおよびSSRTの他の要素)、例えば、かさ、長さ、および/または電荷密度を調整することによってカスタマイズすることができる。
【0042】
分枝鎖124は、TCEを終端させ、レポーターコード116aおよび116bに連結する分枝構造である。エンハンサー128aおよび128bは、ポリメラーゼ取り込みを補助し得る。ヌクレオチド132はエンハンサー128bに結合しており、切断可能なリンカー136を含み得る。切断可能なリンカー136は、光切断可能なリンカーであり得る。切断可能なリンカー136は、切断されて、セクション106に示される拡張をもたらし得る。
【0043】
図2は、XNTP 200の構造の詳細を示す。
図2において、XNTPは、2つのレポーターコード204aおよび204b、ならびに移動制御要素(TCE)208を含む。異なるレポーターコードは、異なる測定可能なレベルでナノポアを通るイオン流を遮断するようなサイズである。レポーターコードおよび他の特徴は、特定のホスホラミダイトの配列を選択することによって設計され得る。
【0044】
特定の実施形態において、TCEは、分枝構造(すなわち、「分枝鎖」)で終端する適切なモノマー構成要素を使用してホスホラミダイト法を使用する固相合成によって産生されるポリマーである。分枝ホスホラミダイトには、対称分枝鎖と非対称分枝鎖の両方が含まれる。一実施形態において、TCE分枝鎖210は対称分枝CEDホスホラミダイトであり、分枝鎖の各アームはレポーターコードに連結されている。例示的な対称化学分枝鎖には、1,2,3-O-トリス-(ホスホジエステル)プロパン、1,3-ビス-(5-O-ホスホジエステル-ペンチルアミド)-2-O-ホスホジエステル-プロパン、および1,4,7-O-トリス-(ホスホジエステル)-ヘプタンが含まれる。
【0045】
UV発色団212は、TCE 208の末端に結合され得る。UV発色団212は、可視化または定量化を可能にし得る。スペーサー216aおよび216bは、それぞれレポーターコード204aおよび204bに結合している。スペーサー216aおよび216bは、ポア内を横断する長さを調節し得るポリエチレングリコール(PEG)単位であり得る。エンハンサー220aおよび220bは、スペーサー216aおよび216bに結合され得る。エンハンサー220aおよび220bは、ポリメラーゼ組み込みを促進する正に帯電したスペルミンであり得る。ヌクレオチド224は、エンハンサー220aおよび220bに結合され得る。ヌクレオチド224は、トリホスホルアミデートジエステルを含み得る。XNTP 200の構造要素は、ナノポア内の測定を改善するために調整され得る。
【0046】
図3は、Xpandomer合成を準備するための固体基板308への伸長オリゴマー304の結合を示す。固体基板308は、マレイミドに架橋され得る。段階312は、固体基板308に結合していない伸長オリゴマー304を示す。段階316でのクリックケミストリーの後、伸長オリゴマー304は固体基板308に結合している。伸長オリゴマー304は、リーダー部分320に結合され得る。リーダー部分320は、光切断可能なリンカー324に結合され得る。
【0047】
図4は、伸長オリゴ404、「リーダー」(L)、およびその付近の構成要素の構造400を示す。伸長オリゴは、2’O-メチル伸長オリゴであり得る。伸長オリゴ404に隣接しているのはポリ-C12スペーサー(Z)408であり、これにポリ-C2スペーサー(L)412が続く。光切断は、Xpandomer合成の直後および任意のxpandomerをシーケンサーにローディングする前に起こるので、光切断可能なスペーサー(PC)416および上のセグメント(すなわち、アジド(R)420およびスペーサー(D)424)は、本明細書に記載の配列決定プロトコルのXpandomerの一部ではない。アジドR 420は5’-アジドであり得る。スペーサーD 424は、ポリPEG6スペーサーであり得る。構造400の短縮配列は、R(D)
10(PC)(L)
25(Z)
6(TCATAAGACGAACGGA)であり得、末端の配列は伸長オリゴ404を表す。膜の上の流体チャネルへのxpandomer分子の流れの後のいくつかのXpandomer配列決定操作の間、疎水性ポリC12スペーサーは膜相に分配され、膜の表面に沿った準2D拡散/移動を開始し得る。3D拡散/移動および流体流はまた、ポアに向かうXpandomerの大量輸送において役割を果たし得る。Xpandomer捕捉は、膜にわたる「正」の印加バイアスの印加中に、高度に負に帯電したポリC2スペーサーセグメント(L)がナノポアのバレル内に静電的に引き込まれるときに起こると考えられる。なお、逆ポアの場合、ポアのバレルの底部は、シス側の二重層膜からわずかに突出していることに留意されたい。
【0048】
B.操作
「明期間」の間、Xpandomer分子は、ベースラインとTCE印加電圧パルスの両方の組み合わせにより、ナノポアを捕捉し、ナノポアを通り抜け始める。ベースライン電圧は、各XNTP位置でタグコードを読み取るのに十分であり、短い高電圧TCEパルスは、TCEに関連するエネルギー障壁を克服するように設計される。理想的には、各TCEパルスは、単一のTCE障壁を超えて移動し、したがってXpandomerを1つの「塩基」位置の量だけ順方向にポア内をさらに移動させる。
【0049】
典型的な操作中、印加される電圧パターンは、各明期間中に一定数のTCEパルスが存在するように設計され、これにより、Xpandomerは、TCEパルスの数に対応するいくつかの塩基だけ、またはXpandomerが完全に移動し、膜の下の流体「トランス」チャンバに放出されるまで、「順」方向に移動させられる。
【0050】
典型的な操作中、Xpandomer分子は、単一明期間の終了前に完全に移動しない場合がある。これは、明期間の後期に捕捉され、明期間に残っているTCEパルスが存在するよりも多くの塩基位置を有するXpandomer長を有する分子に起因して起こり得る。分子は、様々な理由で順方向に移動しようと試みている間に固着する可能性がある。分子がその点を通過することを不可能にする、または非常に困難にする欠陥(例えば、切断事象の失敗)を有する塩基位置が存在し得る。そのような状況では、および他の理由で、Xpandomerは、明期間のTCEパルス数にかかわらず、明期間中に完全に移動することができない場合がある。そのような状況では、欠陥位置に達するまで、リードの開始におけるいくつかの塩基位置が配列決定され、予想信号レベルを生成することが観察され得る。その場合、欠陥の直前に位置する最後のタグコードレベルは、明期間の残りの期間にわたって観察され得る。ポアが永久的に詰まったままにならないように、固着した分子を逆方向に強く駆動することによってそれらを排出するために、大きな負電圧が暗期間のしばらくの間にわたって印加され得る。
【0051】
図5Aは、典型的な拡張による配列決定波形を用いる単一分子-多分子トレース(SM3T)事象の一例を示す。グラフは、x軸上に秒単位の時間を示す。グラフは、y軸上に電圧読み取り値を示す。電圧の代わりに、電圧等価物(例えば、ADCカウント)または電流を含む他の電気的測定値が使用され得る。暗期間504および508は、ポアが空である、通常の暗期間である。明期間512は、それぞれ分子1および分子2の信号516aおよび516bを示す。
【0052】
信号520は、明期間の間の分子3を示す。この事象は、分子3がポアに固着し、数サイクルにわたって消失しないことを示す(暗期間524、528、532ならびに明期間における信号536、540、および544)。最終的に、信号548aから信号548bへの変化(分子3が消失するとき)によって示されるように、分子は暗サイクルで消失する。この事象は、Xpandomerのリーダーセグメントの特性に起因する可能性があり、リーダーが逆方向に移動することが困難になる。
【0053】
図5Bは、
図5Aのトレースの背後にある可能な機序を示す。
図552は明期間を示す。移動方向は下向きである。非切断位置556は、次のパルス後にポアに当たる。通常のタグコードレベルが予想される。
図558は暗期間を示す。移動方向は、ここでは上向きである。リーダー560はポアを逆方向(上向き)に移動することが困難である。最終的に、リーダー560はポアを通過する。
【0054】
Xpandomer分子は、リーダーに順方向および逆方向で異なる挙動をさせるXpandomerのリーダー部分の特性で設計され得る。明期間(順方向)の間、リーダーは、適度に印加された電圧下で比較的高い捕捉率でシス側からポア内に捕捉されることを可能にする特性を有し得る。捕捉後、但し依然として同じ明期間中に、TCEパルスは分子をポアに通して着実に処理させるので、リーダーはポアの下側(膜のトランス側)から突出し得る。
【0055】
暗期間(逆方向)の間、暗期間が始まる際に分子がまだポア内にある場合、分子は負の印加電圧下で逆方向に移動し始めるはずである。Xpandomer分子がその位置をほぼ完全に逆にすると(すなわち、ほぼ完全に後退している)、リーダーはバレルのトランス側に留まり得る。この点で、リーダーの所望の特性は、リーダーがトランス側からバレル内に入るための高いエネルギー障壁を有し、したがって、バレルを通ってトランスからシス方向(順方向)に移動することに対する高い抵抗を有することである。
【0056】
II.配列決定のための戦略
非対称リーダー挙動(ポアを通る方向に関する)を活用するための戦略を本明細書で説明する。これらの戦略は、ポアに固着するXpandomerの数を減らすことによって精度を高め得る。
【0057】
A.同じ電圧での完全な順方向および完全な逆方向
図6は、同じ順方向電圧および逆方向電圧を伴うXpandomerを配列決定するための1つの戦略を示す。
図6は、ナノポアの下に膜を有するナノポアを示す。Xpandomerは、一端にブロッカー604(例えばストレプトアビジン)を有し、他端にリーダー608を有する。リーダーは、ポアを縫うように(図の下向き方向に)進む。Xpandomerは下向きに移動し、明期間(例えば、
図612)の間、分子の終わりおよび/または明期間の終わりまで配列決定される。Xpandomerを下向きに移動させるために電圧が印加される。電圧は、レポーター要素を読み取ることができるようにXpandomerを下向きに移動させるためのベースライン電圧を含む。XpandomerをTCE要素に通過させるために、より高い電圧が印加される。ブロッカー604は、Xpandomerがポアから出るのを防ぐ。
【0058】
暗期間(例えば、
図616)の間、印加電圧は逆にされ、Xpandomerは上向きに移動する。暗期間には明期間と同じ電圧が印加されるが、電圧は逆極性を有する。リーダー608は、反対方向に膜および/またはポアを通過することが困難であり得る。
【0059】
SM3T持続時間の分布は指数関数的であり得る。この分布は、Xpandomerがナノポアに固着することを反映して、多くのより短い長さを示し得る。持続時間のモードは1に等しくなければならない。
【0060】
B.増加した逆電圧での完全な順方向および完全な逆方向
図7は、異なる順方向電圧および逆方向電圧を伴うXpandomerを配列決定するための戦略を示す。ナノポアおよびXpandomerは、
図6と同様に構成される。Xpandomerは、一端にブロッカー704を有し、他端にリーダー708を有する。
図712の明期間は、
図612の明期間と同じであり得る。暗期間の間、リーダーは固着し、ナノポアを通過できない場合がある。この状況に対処するために、いくつかの周期的な暗サイクル(例えば、
図716の暗期間)の間、逆電圧が増加される。例えば、10サイクルごとに1回または20サイクルごとに1回は、固着したリーダーを除去するために増加した逆電圧を含み得る。この増加した電圧は、「除去電圧」と呼ばれ得る。
【0061】
SM3T持続時間の分布の形状は、
図6の分布から変更され得る。より少ないXpandomerがナノポアに固着するので、分布はより長い長さを示す。モードは1に等しくなくてもよい。
【0062】
C.限られた明期間持続時間
図8は、短縮された明期間持続時間を伴うXpandomerを配列決定するための戦略を示す。
図8は、ナノポアの下に膜を有するナノポアを示す。Xpandomerは、一端にリーダー804を有し、他端にブロッカーを有さない。リーダー804は、ポアを縫うように(図の下向き方向に)進む。Xpandomerは下向きに移動し、明期間(例えば、
図808)の間に配列決定される。明期間は、ある特定のサイズのXpandomerがナノポアを順方向に通って出て行くのを防ぐ目的で短縮される。より短いXpandomerは、完全に通り抜けて脱出し得る。各明期間は、一定の所定数のTCE電圧パルスを含み得る。一定数の明期間が適用され得る。次いで、Xpandomerの方向を逆にするために暗期間(例えば、
図812)が適用される。
図812の暗期間は、
図616の暗期間と同じであり得る。
【0063】
SM3T持続時間の分布の形状は、
図6の分布から変更され得る。モードは1に等しくなくてもよい。この分布は、+/-数塩基のモードでほとんどのリードに対するリード長分布を崩壊させ得る。
【0064】
図9は、配列決定戦略による明期間および暗期間スケジュールを示す。上のグラフは、ナノポアにわたって印加される電圧の極性を示す。明期間の間、極性は1として示される。暗期間の間、極性は-1として示される。上のグラフは電圧の大きさを示しておらず、極性のみを示している。下のグラフは、ポア内の分子の位置を示している。1の位置は、リーダーに最も近いXpandomerのユニットに対応する。高い位置番号(例えば、200)は、リーダーから遠く離れており、この例では、Xpandomerの反対端により近いXpandomerのユニットに対応する。
【0065】
図9に示されるように、明期間904は、Xpandomer 908の通常の配列決定を含み得る。配列決定は、明期間持続時間または完全な移動および脱出によって制限され得る。Xpandomer 908および
図9のすべてのXpandomerは、分子の末端にブロッカーを有さない。
【0066】
Xpandomer 912は、明期間916の後期にナノポアに入り得る。明期間が終了した後、さらに多くの塩基(例えば、レポーター要素)が残存していてもよい。暗期間では、Xpandomer 912はナノポアから完全に出る。
【0067】
図9において、Xpandomer 912は、明期間のパルス数よりも多くのユニット(例えば、TCE)を有する。暗期間920の間、リーダーがポアに到達することを確実にするために高電圧が印加される。その後、より低い電圧が印加される。特定のXpandomerは、ナノポアを完全には通り抜けない。明期間の持続時間は、Xpandomerのより多くがナノポアを通過するように増加され得る。しかしながら、明期間が長すぎると、Xpandomerが一方向にのみナノポアを通り抜け得る。さらに、異なるサイズのXpandomerが試料中に存在し得る。ある特定の明期間持続時間は、一方向にのみナノポアを通り抜けるより短いXpandomerをもたらし得るが、より長いXpandomerにおいてすべてのXNTPを配列決定するのに十分ではない。
【0068】
Xpandomer 924は、明期間928の早期にポアに到達し得る。分子は、明期間にパルスが残っているよりも多くの塩基を有し得る。したがって、Xpandomer 924は完全には通り抜けない。明期間にパルスが存在するのとほぼ正確に同数の塩基が読み取られる。
【0069】
D.逆ナノポア
図10は、逆ナノポアを使用して配列決定するための戦略を示す。HTPでSBTに対して歴史的に行われてきたように、シス側からポアが挿入される。Xpandomerは、一端にリーダーを含み、他端にブロッカー(例えば、ブロッカー1004)を含む。リーダーは、ナノポアの前に膜に入る。Xpandomerをナノポアから逆転させながら、Xpandomerを配列決定する。
【0070】
ステップ1008において、Xpandomerが捕捉される。高電圧(例えば、TCE電圧)がより長い期間(例えば、8μsの代わりに0.1~10ミリ秒)印加される。ブロッカーを有する捕捉された分子1012は、ブロッカーによってさらなる移動が停止されるように端部まで移動する。また、ステップ1008には、捕捉された、ブロッカーを有さない分子1016も示されている。分子1016は、断片化された分子を含み得る。ブロッカーを有さない分子は、ナノポアを迅速に通過し得る。
【0071】
ステップ1020において、Xpandomer 1012は逆方向に移動させられ、Xpandomer 1012はナノポアから後退する。TCE電圧は逆方向に印加される。配列決定情報は、分子が後退しているときに得られる。捕捉されたすべての分子は、分子の末端(または非切断位置)に配置されると予想される。分子が逆方向にパルスされ、分子が後退しているときにデータが取得される。明期間は、試料中の最も長い予想分子と同じ長さであり得る。例えば、ctDNAアッセイの場合、最も長い予想分子は350bpであり得、350パルスまたは1msのパルス間持続時間の350msに対応する。
【0072】
ステップ1030において、次の捕捉ステップの前に任意の再充電が実行され得る。暗期間が適用されてもよい。ステップ1および2からの累積電圧が平衡していない場合、暗電圧が電極を再充電するのに役立ち得る。この期間中、データは取得されない。フェーズドアレイモードが実行されている場合、この暗期間はステップ1008および1020の持続時間であり、チップ(位相)の他の半分がそれらの2つのステップを完了することを可能にする。
【0073】
リーダーは、玄関(すなわち、膜)側から始めて、ポアを通過するときに容易に移動しないように修飾され得る。Xpandomerは、玄関側から入るときに適度によく捕捉される必要があり得る。高電圧は、Xpandomerを捕捉するのに役立ち得る。膜は、他の戦略(例えば、8μsのパルス持続時間)よりも長い時間、高電圧に対して打たれ強くあり得る。ブロックはXpandomerの末端に付加されてもよい。
【0074】
この戦略の利点は、断片化された分子の一部をフィルタにかけて除くことを含み得る。さらに、リード開始は同期されてもよい。さらに、ポア挿入はシス側からであってもよい。例えば、ウェルにナノポア溶液が充填され得る。次いで、ウェルを膜で覆うことができ、ナノポアがシス側から挿入され得る。
【0075】
III.プロセッシブコンセンサス戦略
戦略は、ナノポア内で同じXNTPを複数回読み取ること、および固着したXpandomerを取り除くために電圧を印加することを含み得る。これらの戦略は、ポアに固着するXpandomerの数を減少させることによっておよび/またはナノポアを通したXNTPの読み取りを繰り返すことによって精度を高め得る。
【0076】
A.すべてのセルに印加されるクリア/再充電電圧
分子を配列決定するための戦略は、各パスの開始から終了までずっと分子を読み取ることを伴わなくてもよい。分子全体が完全な読み取りのためにナノポアを通過するのではなく、分子の一部がサブリードのためにナノポアを通過し得る。さらに、分子は、多くの短い重複パスおよび前進的な方法を行うために、前方、次いで後方に移動し得る。明期間および暗期間の持続時間は、他の戦略と比較して短縮され得る。高電圧TCEパルス数は、XpandomerのTCE数未満であり得る。明期間におけるTCEパルス数は、暗期間における逆TCEパルス数よりも多くなるだろう。
【0077】
一例として、Xpandomerの長さ分布は、350bp付近にピークを有し得る。明期間は、30個のTCEパルスの持続時間を含み得る。暗期間持続時間は、合計時間が明期間持続時間に等しくてもよいが、逆方向に25個のTCEパルスを含む印加電圧パターンを有する。明期間および暗期間の持続時間を等しくすることにより、電極上の電荷のバランスをとり、電極を再生および/またはリセットすることが可能になる。プロトコルは、時折固着したXpandomerを定期的に除去するための「除去電圧」を含む追加の期間を含み得る。
【0078】
図11は、プロセッシブマルチパスリード生成のための電圧スケジュールを示す。グラフは、上部電極および下部電極の電圧パルスを示す。破線は、各それぞれの電極の0極性の電圧を示す。破線より上の電圧は、正極性を有する。破線より下の電圧は、負極性を有する。明期間の間、上部電極は正極性のパルスを有し、下部電極は負極性のパルスを有する。明期間1104、1108、および1112が示されている。暗期間の間、上部電極は負極性のパルスを有し、下部電極は正極性のパルスを有する。暗期間1116および1120が示されている。暗期間は、明期間よりも5個少ないパルスを有するものとして示されている。
【0079】
明期間の間、Xpandomerは、図示のように下向き方向に移動する。Xpandomerは、明期間の間に配列決定される。各パルスはリードに対応するはずである。Xpandomerの捕捉は、明期間の間にいつでも起こり得る。暗期間の間、Xpandomerは逆(上向き)方向に移動する。逆方向の間は、配列決定は実行されない。リーダーが玄関に戻ると、Xpandomerが固着し得る。除去電圧を含むメタ期間は、Xpandomerを除去し得る。メタ期間は、
図11には示されていない。
【0080】
十分なサイクル数の後、分子(例えば、Xpandomer 1124)が順方向にポアを出る。
【0081】
図12は、
図11で使用されたものと同様のプロトコルから得られた組み立てられた捕捉生リードシリーズの図である。Xpandomerの長さは、長さが116bpである標的核酸分子に対応する。Xpandomerを30パルスの順方向サイクルおよび25パルスの逆方向サイクルで移動させた。合計で20サイクルを使用して、Xpandomerの全長をカバーした。各サイクルのリードをセクション1204に示す。各サイクルは重複するリードを含むため、個々のヌクレオチドは数回配列決定される。捕捉されたコンセンサスリードは、リード1208において示される。捕捉されたコンセンサスリードの下に、ヌクレオチドが配列決定された回数が示されている。例えば、AAGCTの最初のサブシーケンスは、2回配列決定される。TCTGGTで始まる中央部分は、6回配列決定される。明期間の順方向パルスの数が暗期間の逆方向パルスの数よりも多いサイクルへの変更の前に、初期の順方向および逆方向サイクルが同じ数のパルスを有するように設定されるならば、Xpandomerの始まりを複数回配列決定することができる。Xpandomerがナノポアを完全に出るまで順方向および逆方向パルスを継続することによって、Xpandomerの末端を複数回配列決定することができる。
【0082】
一例として、各半サイクルは、1msのパルス間隔で30msであり得る。全サイクルは60msかかり得る。分子に費やされる総時間は1200msであり得る。合計577個の生塩基が、合計1.2秒の総時間または0.6秒の明時間で読み取られ得る。両端の20塩基を除いて、116bp分子は6倍のカバレッジ深度で配列決定される。
【0083】
図13は、ナノポアからXpandomerを取り除くためのメタ期間を示す。メタ期間自体は、いくつかのAC期間ならびに明および暗のクリアサイクルを含み得る。AC期間は、1秒または2秒よりも短いことを除いて、配列決定で典型的に使用されるものと同様であり得る。セグメント1304および1308によって示されるパルスは、明および暗のクリアサイクルである。他のパルスは、明期間および暗期間の間、通常の電圧(すなわち、非メタ期間の間のTCE電圧パルスと同じ)を有する。明のパルス数は、リーダーが固着していなければ、Xpandomerを取り除く数に設定され得る。例えば、明期間におけるパルス数は、Xpandomerの長さ分布におけるTCEユニットの中央数に等しくてもよい。暗期間は、Xpandomerを逆位置に戻すのに十分であり得る。
【0084】
特別な明期間および暗期間は、各メタ期間に1回、2回、またはそれ以上実施され得る。特別な明期間および暗期間は、より高い印加電圧を有してもよく、および/またはより長い持続時間であってもよい。
図13において、特別な期間は、1つの明期間と1つの暗期間の通常のサイクルの3倍の持続時間である。メタ期間全体は、10AC期間長である。メタ期間は、10、15、または20AC期間ごとに適用され得る。
図13では、特別な期間は3倍であり、メタ期間は10AC期間長である。
【0085】
通常の明期間(例えば、明期間1312aおよび1312b)は、1秒または2秒よりもはるかに短いAC修正期間を有し得る。明期間のパルス数は、入力されたxmer断片長分布の中央値に等しくてもよい。通常の暗期間(例えば、期間1316aおよび期間1316b)は、分子を迅速に逆転させてリーダー位置に戻すための期間に最初に高電圧を有し得る。
【0086】
B.特定のセルに印加されるクリア/再充電電圧
図11~
図13で説明されたプロセッシブコンセンサスのプロトコルは修正され得る。メタ期間およびクリア/再充電電圧は、固着したXpandomerを有するセルにのみ印加され得る。期間は、10または20AC期間ごとではなく、1、2、3、4、または5AC期間ごとに適用され得る。
【0087】
各メタ期間(すなわち、クリア期間)の前の暗期間の終わりまでに、アレイ内のすべてのアクティブセルについて、クリア期間が各セルによって経験されるべきかどうか、またはグローバルクリア期間のアサート中にセルが一時的に非アクティブ化されるべきかどうかの決定が行われる。クリア期間に備えて、非アクティブ化マスクが更新され得る。
【0088】
明および暗のクリア期間の間、非アクティブ化マスクが適用され、高い正および負の電圧がグローバルチップラインに印加される。多くのまたはほとんどのセルは、明もしくは暗のクリア期間のいずれか、またはその両方において除去電圧を経験しないように、一時的に非アクティブ化され、したがって電気的に絶縁され得る。
【0089】
一実施形態において、ナノポアシーケンサーチップ上のすべてのセルの非アクティブ化マスクを更新するために約1msが経過し得る。マスク更新時間の後に、明および/または暗のクリア期間が続き得る。クリア期間自体は、1ミリ秒~数十ミリ秒のどこかで継続し得る。クリア期間後、第2の非アクティブ化マスク更新でセルを再アクティブ化するために、さらに約1msの持続時間が割り当てられ得る。
【0090】
C.プロセッシブコンセンサスの利点
すべてのセルに適用されるプロセッシブコンセンサスと特定のセルに適用されるプロセッシブコンセンサスの両方が、標的分子の全長を横断するために必要とされるものよりもはるかに短い個々の明期間を含み得る。さらに、連続した明期間において生成されたサブリードは、末端において重複し得る。これにより、任意の長さの分子を、それらの全長において1より大きい深度で配列決定することができるプロトコルがもたらされる。この方法は、明期間の長さを特定の入力DNA断片長分布に合わせて調整する必要がある、
図9で説明した戦略に対する改善である。ある特定の長さ以上の分子は、明期間と暗期間のサイクルの後に分子がなくならないので、複数回の通過を受けるであろう。したがって、分子上の最大リード長は、明期間におけるTCEパルス数に等しくてもよい。したがって、その臨界長よりも長い分子の末端は配列決定されないであろう。
【0091】
D.重複の低減
いくつかの実施形態において、配列が読み取られる回数を減らすことが望まれ得る。例えば、分子は、単一深度カバレッジでまたはそれよりわずかに大きく(例えば、1~2の間の平均深度)読み取られ得る。これを達成するために、順方向の明期間のTCEパルスと比較して逆方向のTCEパルスがほとんどないように暗期間を設定することができる。
【0092】
図14は、逆TCEパルスの数を減らした場合の捕捉された生リードの例示的な分子1404および例示的な分子1408を示す。リード1412およびリード1416は、一連の捕捉された生リードを示す。リード1420およびリード1424は、「単一パス限界」で読み取られた捕捉されたコンセンサスを示す。
図14に示されるいずれの例においても、逆TCEパルスの数は5である。例示的な分子1404では、順方向TCEパルス数は60である。例示的な分子1408では、順方向TCEパルス数は65である。ほとんどのヌクレオチドはシングルパスで読み取られ、「シングルパス限界」を達成する。逆方向パルスに対応するヌクレオチドは、2つのパスで読み取られるものである。順方向TCEパルス数を増加させること、および/または逆方向TCEパルス数を減少させることにより、単一深度のみで読み取られるヌクレオチドの割合が増加する。
【0093】
プロッシブコンセンサス電圧パターンに基づいて1よりわずかに大きい深度カバレッジを目標とすることにより、単一明期間において分子全体を単純に配列決定するよりも短い明期間持続時間が得られる。
【0094】
E.より短い明期間
短いAC変調期間(すなわち、明期間)は、電気化学的利点および回路関連の利点をもたらす。例えば、ウエットアナログ回路を用いて配列決定が実行される方法のために、膜/ポアにわたる電圧は明期間の間に減衰する。暗期間は、ウェルの体積中の電気化学電池とウェルの底部の静電作用電極コンデンサの両方を「再充電」するために使用される。この明期間の減衰率は、作用電極コンデンサのサイズによって部分的に支配され、また、ウェル内の電気化学的に活性な酸化還元種の濃度および体積によっても部分的に支配される。配列決定中に使用される電気化学的に活性な酸化還元種の濃度を低下させることにはいくつかの実用的な利点があるが、そうすることにより、明期間減衰時定数が短くなる。より短い明期間減衰時定数に対処する1つの方法は、単に明期間自体の持続時間を短縮することである。プロセッシブコンセンサスは、明期間におけるTCEパルス数よりも長い長さを有するXpandomer分子のリードを永久的にカットオフすることなく、明期間持続時間を実質的に短縮することを可能にする。
【0095】
図15Aおよび
図15Bは、オープンチャネルADCにおける異なる濃度の酸化還元対の効果を示す。グラフは、x軸上に秒単位の時間、ならびに明期間の開始時および終了時におけるオープンチャネルADCを示す。
図15Aは、酸化還元剤の濃度が高い。
図15Bは、
図15Aよりも8倍低い酸化還元剤の濃度を有する。
図15Aの場合、開始時と終了時のオープンチャネルADCの差は10.8%である。
図15Bの場合、開始時と終了時のオープンチャネルADCの間の差は60.2%である。
図15Aおよび
図15Bは、濃度が低いほど、明期間減衰時定数が短くなることを示す。
【0096】
F.例示的な方法
図16は、標的核酸分子を配列決定するための例示的なプロセス1600のフローチャートである。いくつかの実装においては、
図16の1つまたは複数のプロセスブロックは、検出器1702および論理システム1703を含むシステム1700によって実行され得る。標的核酸分子は、100~150nt、150~200nt、200~300nt、300~400nt、または500nt超の長さであり得る。
【0097】
ブロック1610において、第1のレベルの第1の数の電圧パルスがナノポアにわたって印加されて、化合物を、ナノポアを通って第1の方向に第1の距離だけ変位させ得る。化合物は、標的核酸分子から生成され得る。化合物は、本明細書ならびにその両方の全内容があらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2020/236526号パンフレットおよび米国特許第7,939,259号明細書に記載されるように、代理ポリマーまたはXpandomerであり得る。第1の数の電圧パルスを印加する前に、第1の化合物はナノポアによって捕捉され得る。化合物は複数のユニットを含み得る。ユニットは、
図1に示されるユニットと同様であり得る。複数のユニットの各ユニットは、複数の種類のレポーター要素(レポーターコードとも呼ばれる)のうちの1種類のレポーター要素を含み得る。各種類のレポーター要素は、標的核酸分子内のヌクレオチドの同一性に対応し得る。
【0098】
第1の方向は、化合物が最初に捕捉されたときに化合物がナノポアを通過したのと同じ方向であり得る。例えば、化合物は、リーダー部分を有し得る。リーダー部分は、ナノポア内に捕捉され得る。第1の方向は、リーダーがナノポアからさらに遠ざかる方向であり得る。
【0099】
第1の数の電圧パルスを印加すると、複数のユニットの第1のサブセットがナノポアを通過し得る。第1の数の電圧パルスは、明期間における電圧パルスであり得る。電圧パルスの数は、ナノポアを通過する複数のユニット内のユニットの数に対応し得る。複数のユニットの各ユニットは移動制御要素を含み得る。第1の数の電圧パルスを印加すると、第1の数の移動制御要素がナノポアを通過し得る。第1の数の電圧パルスは、第1の数の移動制御要素に等しくてもよい。
【0100】
複数のユニットの第1のサブセットは、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~70、70~80、80~90、90~100、または100個超のユニットを含み得る。第1の数の電圧パルスは、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~70、70~80、80~90、90~100、または100個超のパルスを含み得る。
【0101】
ナノポアにわたるベースラインレベルの電圧が印加されて、第1の数の電圧パルスのパルスの間に配列決定のためにナノポアを通ってユニットが移動し得る。このより低レベルの電圧は、ナノポアを通ってユニットを移動させ得るが、ナノポアを通って移動制御要素を移動させるのに十分ではない場合がある。ベースラインレベルの電圧がナノポアにわたって印加されて、ナノポアを通って第1の方向にある距離だけ化合物を変位させ得る。ベースラインレベルの電圧は、第1の数の電圧パルスの電圧パルスと同じ極性であり得る。ベースラインレベルは、第1のレベル未満であり得る。距離を変位した後の化合物は、ナノポア内に移動制御要素を有し得る。
【0102】
したがって、一例では、ブロック1610において、以下の動作が行われ得る:ナノポアにわたって第1のレベルの第1の数の電圧パルスを印加して、化合物を、ナノポアを通って第1の方向に第1の距離だけ変位させ、化合物は複数のユニットを含み、複数のユニットの各ユニットは複数の種類のレポーター要素のうちの1種類のレポーター要素を含み、第1の数の電圧パルスを印加すると、複数のユニットの第1のサブセットがナノポアを通過する。
【0103】
ブロック1620において、第1のサブセット中のレポーター要素の種類が検出され得る。複数のユニットの第1のサブセット中のレポーター要素がナノポア内にある場合にナノポアにわたって印加される電圧を有するナノポアについての信号値が測定され得る。第1のサブセット中のレポーター要素の種類は、信号値を使用して決定される。レポーター要素の種類とヌクレオチドの対応の結果として、標的核酸分子内のヌクレオチドの同一性も決定される。
【0104】
したがって、一例では、ブロック1620において、以下の動作が行われ得る:ナノポアにおいて、第1のサブセット中のレポーター要素の種類を検出する。
【0105】
ブロック1630において、第2のレベルの第2の数の電圧パルスがナノポアにわたって印加されて、化合物を、ナノポアを通って第2の方向に第2の距離だけ変位させ得る。第2の数の電圧パルスは、暗期間における電圧パルスであり得る。第1の方向は、第2の方向と反対である。第1の数の電圧パルスの電圧パルスは、第2の数の電圧パルスの電圧パルスと反対の極性を有する。第2の距離は第1の距離未満であり得る。第2の数は第1の数未満であり得る。
【0106】
第1の数の電圧パルスは、第2の数の電圧パルスを1、2、3、4、5、6、7、8、9、10~15、15~20、20~25、25~30、30~40、40~50、または50超だけ上回ることがある。いくつかの実施形態において、第1の数の電圧パルスは、第2の数の電圧パルスに等しくてもよい。その後のパルスサイクルは等しくなくてもよいため、パルスは最終的にナノポアを通して化合物を前進させる。
【0107】
したがって、一例では、ブロック1630において、以下の動作が行われ得る:ナノポアにわたって第2のレベルの第2の数の電圧パルスを印加して、化合物を、ナノポアを通って第2の方向に第2の距離だけ変位させる。
【0108】
ブロック1640において、第3のレベルの第3の数の電圧パルスがナノポアにわたって印加されて、化合物を、ナノポアを通って第1の方向に第3の距離だけ変位させ得る。第3の数の電圧パルスは、別の明期間における電圧パルスであり得る。第3の数の電圧パルスを印加すると、複数のユニットの第2のサブセットがナノポアを通過する。第2のサブセットおよび第1のサブセットは、同じユニットの一部を含み得る。第2のサブセットは、第1のサブセットにないユニットを含み得る。第3の距離は第2の距離よりも大きくなり得る。第3のレベルは、第1のレベルに等しくてもよい。第3の数の電圧パルスは、第1の数の電圧パルスと同じであっても異なっていてもよい。
【0109】
したがって、一例では、ブロック1640において、以下の動作が行われ得る:ナノポアにわたって第3のレベルの第3の数の電圧パルスを印加して、化合物を、ナノポアを通って第1の方向に第3の距離だけ変位させ、第3の数の電圧パルスを印加すると、複数のユニットの第2のサブセットがナノポアを通過する。
【0110】
ブロック1650において、第2のサブセット中のレポーター要素の種類が検出され得る。標的核酸分子の配列が決定され得る。配列は、検出されたレポーター要素の種類の順序から決定され得る。第1のサブセットおよび第2のサブセットの両方における1つまたは複数のユニットについて、同じ種類のレポーター要素が検出され得る。例えば、同じレポーター要素が、プロセッシブコンセンサスを伴う技術において記載されるように検出され得る。いくつかの実施形態において、ある特定のユニット中のレポーター要素は、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、またはそれを超えて検出され得る。ユニットにおけるレポーター要素の種類は、最も頻繁に検出される種類であると決定され得る。
【0111】
したがって、一例では、ブロック1650において、以下の動作が行われ得る:ナノポアにおいて、第2のサブセット中のレポーター要素の種類を検出する。
【0112】
実施形態において、プロセス1600は、化合物をナノポアから完全に排出するステップをさらに含み得る。化合物は、第1の数の電圧パルスの電圧パルスと同じ極性を有するいくつかの電圧パルスの間にナノポアから出て行き得る。例えば、化合物は、明期間の間にナノポアから出て行き得る。化合物は、第3の数の電圧パルスの印加中にナノポアから完全に出て行き得る。
【0113】
追加の数の交互の極性の電圧パルスが印加されてもよい。例えば、第4の数の電圧パルスは、化合物を第2の方向に変位させ得る。次いで、第5の数の電圧パルスが、化合物を第1の方向に変位させ得る。電圧パルスのこれらのサイクルは、化合物がナノポアから出て行くまで継続し得る。
【0114】
いくつかの実施形態において、第4のレベルの除去電圧がナノポアにわたって印加されて、化合物をナノポアから完全に追い出し得る。第4のレベルは、第1のレベル、第2のレベル、および第3のレベルよりも大きくてもよい。いくつかの実施形態において、除去電圧は、第1の数、第2の数、および第3の数のパルスの持続時間よりも長い持続時間にわたって印加され得る。
【0115】
いくつかの実施形態において、いくつかのナノポア(例えば、アレイで)が使用されて、いくつかの核酸分子を配列決定し得る。化合物は、複数の化合物のうちの第1の化合物であり得る。複数の化合物は、複数の標的核酸分子から生成され得る。ナノポアは、複数のナノポアのうちの第1のナノポアであり得る。複数の化合物の各化合物は、複数のナノポアのうちの1つのナノポア内にあり得る。第1のレベルの第1の数の電圧パルス、第2のレベルの第2の数の電圧パルス、および第3のレベルの第3の数の電圧パルスが複数のナノポアに印加され得る。パルスは、第1の化合物と同じ順序で印加され得る。複数の化合物の各化合物中のレポーター要素が検出され得る。複数の核酸分子の複数の配列が決定され得る。複数の配列のサイズ分布は、300ntより大きいモードを有し得る。モードは、200~300nt、300~400nt、400~500nt、または500nt超であり得る。
【0116】
いくつかの実施形態において、セクションIII.Bに記載のプロセスと同様に、除去電圧はある特定のナノポアに印加され得、他のナノポアに印加され得ない。第1の数の電圧パルス、第2のレベルの第2の数の電圧パルス、および第3のレベルの第3の数の電圧パルスが複数のナノポアに印加され得る。複数の化合物の第1の部分が、複数のナノポアの第1の部分において、第1の数の電圧パルス、第2の数の電圧パルス、または第3の数の電圧パルスによって変位されていることが決定され得る。複数の化合物の第1の部分は、ナノポアに固着していなくてもよい。第4のレベルの除去電圧が、複数のナノポアの第2の部分の各ナノポアにわたって印加され得る。印加された除去電圧は、複数の化合物の第2の部分を複数のナノポアのそれぞれのナノポアから完全に追い出し得る。第4のレベルは、第1のレベル、第2のレベル、および第3のレベルよりも大きくてもよい。いくつかの実施形態において、除去電圧は、電圧パルスのいずれかの持続時間よりも長い持続時間にわたって印加され得る。複数のナノポアの第2の部分は、複数のナノポアの第1の部分のナノポアを含まなくてもよい。
【0117】
いくつかの実施形態において、複数の化合物の第1の部分は、複数のナノポアの第1の部分において、第1の数の電圧パルス、第2の数の電圧パルス、または第3の数の電圧パルスによって変位されていないことが決定され得る。複数の化合物の第1の部分は、ナノポアに固着していてもよい。第4のレベルの除去電圧が、複数のナノポアの第1の部分の各ナノポアにわたって印加され得る。
【0118】
あるレポーター要素から次のレポーター要素に移動するときに測定された電気信号に特徴的な変化がない場合、化合物が固着していると決定され得る。あるレポーター要素から次のレポーター要素に移動するとき、測定された電気信号に特徴的な変化がある。特定のレポーター要素において固着すると、移動電圧パルスを印加した後に予想される電気信号の変化はない。固着した化合物と、移動しているが連続した種類のレポーター要素を有する化合物とを区別するために、十分に高いサンプリングレートが使用される。
【0119】
プロセス1600は、本明細書においておよび/または本明細書の他の箇所に記載された1つまたは複数の他のプロセスに関連して記載された任意の単一の実装または実装の任意の組み合わせなどの追加の実装を含んでもよい。
【0120】
図16は、プロセス1600の例示的なブロックを示しているが、いくつかの実装では、プロセス1600は、
図16に示されたものよりも追加のブロック、より少ないブロック、異なるブロック、または異なる配置のブロックを含んでもよい。追加的または代替的に、プロセス1600のブロックのうちの2つ以上が並列に実行されてもよい。
【0121】
IV.例示的なシステム
図17は、本発明の実施形態による測定システム1700を示している。図示のシステムは、試料ホルダ1701内のXpandomerなどの試料1705を含み、試料1705をアッセイ1708と接触させて、物理的特性1715の信号を提供することができる。アッセイ1708は、ナノポアによる拡張による配列決定を含み得る。試料ホルダの例は、Xpandomerを含むウェルプレートとすることができる。試料からの物理的特性1715(例えば、電圧、電流、または他の電気的特性)は、検出器1702によって検出される。検出器1702は、データ信号を構成するデータ点を取得するために、間隔(例えば、周期的な間隔)を置いて測定を行うことができる。一実施形態において、アナログ-デジタル変換器は、検出器からのアナログ信号を複数回デジタル形式に変換する。検出器1702は、電圧または電流測定装置であり得る。試料ホルダ1701および検出器1702は、アッセイ装置を形成することができる。データ信号1725は、検出器1702から論理システム1703に送信される。データ信号1725は、ローカルメモリ1735、外部メモリ1704、または記憶装置1745に記憶され得る。
【0122】
論理システム1703は、コンピュータシステム、ASIC、マイクロプロセッサ等であってもよく、またはそれらを含んでもよい。それはまた、ディスプレイ(例えば、モニタ、LEDディスプレイ等)およびユーザ入力装置(例えば、マウス、キーボード、ボタン等)を含んでもよく、またはそれらと結合されてもよい。論理システム1703および他の構成要素は、スタンドアロンまたはネットワーク接続されたコンピュータシステムの一部であってもよく、または検出器1702および/または試料ホルダ1701を含む装置(例えば、配列決定装置)に直接取り付けられるかまたは組み込まれてもよい。論理システム1703はまた、プロセッサ1720内で実施するソフトウェアを含み得る。論理システム1703は、本明細書に記載の方法のいずれかを実施するようにシステム1700を制御するための命令を記憶するコンピュータ可読媒体を含み得る。例えば、論理システム1703は、配列決定または他の物理的操作が実行されるように、試料ホルダ1701を含むシステムにコマンドを提供することができる。そのような物理的操作は、例えば試薬が特定の順序で添加および除去されて、特定の順序で実行され得る。そのような物理的操作は、試料を取得してアッセイを実施するために使用され得るように、例えばロボットアームを含むロボットシステムによって実施され得る。
【0123】
本明細書で言及されるコンピュータシステムのいずれも、任意の適切な数のサブシステムを利用し得る。そのようなサブシステムの例は、
図18においてコンピュータシステム10内に示されている。いくつかの実施形態において、コンピュータシステムは、単一のコンピュータ装置を含み、サブシステムはコンピュータ装置の構成要素であってよい。他の実施形態において、コンピュータシステムは、各々が内部コンポーネントを有するサブシステムである複数のコンピュータ装置を含むことができる。コンピュータシステムは、デスクトップおよびラップトップコンピュータ、タブレット、携帯電話機、他のモバイルデバイス、ならびにクラウドベースのシステムを含むことができる。
【0124】
図18に示されるサブシステムは、システムバス75を介して相互接続される。プリンタ74、キーボード78、記憶装置79、ディスプレイアダプタ82に結合されたモニタ76(例えば、LEDなどのディスプレイスクリーン)などの追加のサブシステムが示されている。I/Oコントローラ71に結合する周辺機器および入力/出力(I/O)装置は、入力/出力(I/O)ポート77(例えば、USB、Thunderbolt、Lightning)などの当該技術分野において知られている任意の数の手段によって、コンピュータシステムに接続され得る。例えば、I/Oポート77または外部インターフェース81(例えば、イーサネット、Wi-Fi、など)を、コンピュータシステム10をインターネットなどのワイドエリアネットワーク、マウス入力装置、またはスキャナに接続するために使用することができる。システムバス75を介した相互接続は、サブシステム間の情報交換を可能にするだけでなく、中央プロセッサ73が各々のサブシステムと通信し、システムメモリ72または記憶デバイス79(例えば、ハードドライブなどの固定ディスクまたは光ディスク)からの複数の命令の実施を制御することを可能にする。システムメモリ72および/または記憶装置79は、コンピュータ可読媒体を具現化し得る。別のサブシステムは、カメラ、マイクロフォン、加速度計などのデータ収集装置85である。本明細書において言及されたあらゆるデータを、ある構成要素から別の構成要素へと出力すること、およびユーザへと出力することが可能である。
【0125】
コンピュータシステムは、例えば、外部インターフェース81により、内部インターフェースにより、または、ある構成要素から別の構成要素に接続および取り外され得る、リムーバブル記憶装置を介して、ともに接続された、複数の同じ構成要素またはサブシステムを含むことができる。いくつかの実施形態において、コンピュータシステム、サブシステム、または装置は、ネットワークを介して通信することができる。そのような場合、あるコンピュータをクライアントと見なし、別のコンピュータをサーバと見なすことができ、各々が同じコンピュータシステムの一部であってよい。クライアントおよびサーバは、それぞれ、複数のシステム、サブシステム、または構成要素を含むことができる。
【0126】
実施形態の態様は、ハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路またはフィールドプログラマブルゲートアレイ)を使用して、および/またはモジュラまたは統合された様式の一般にプログラム可能なプロセッサを伴う、コンピュータソフトウェアを使用して、制御ロジックの形態で実装され得る。本明細書で使用される場合、プロセッサは、シングルコアプロセッサ、同じ集積チップ上のマルチコアプロセッサ、または単一の回路基板上に位置し、もしくはネットワーク化された複数の処理ユニット、および専用のハードウェアを含むことができる。本明細書で提供される開示および教示に基づいて、当業者は、ハードウェアおよびハードウェアとソフトウェアとの組み合わせを使用して本発明の実施形態を実施するための他の様式および/または方法を知り、理解するであろう。
【0127】
本出願で説明されるソフトウェアの構成要素または関数はいずれも、例えばJava、C、C++、C#、Objective-C、Swiftなどの任意の好適なコンピュータ言語、または例えば、従来のもしくはオブジェクト指向の技術を使用するPerlもしくはPythonなどのスクリプト言語を使用して、プロセッサによって実施されるソフトウェアコードとして実装され得る。ソフトウェアコードは、一連の命令またはコマンドとして、記憶および/または送信のためにコンピュータ可読媒体上に記憶され得る。好適な非一時的コンピュータ可読媒体は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、ハ-ドドライブもしくはフロッピ-ディスクなどの磁気的媒体、または、コンパクトディスク(CD)もしくはDVD(デジタルバ-サタイルディスク)またはブルーレイディスク等の光学的媒体、フラッシュメモリなどを含むことができる。コンピュータ可読媒体は、そのような記憶装置または送信装置の任意の組み合わせであり得る。
【0128】
そのようなプログラムはまた、インターネットを含む様々なプロトコルに準拠する有線、光、および/または無線ネットワークを介した送信に適合されたキャリア信号を使用して符号化および送信され得る。そのため、コンピュータ可読媒体は、そのようなプログラムを用いて符号化されたデータ信号を使用して作成され得る。プログラムコードで符号化されたコンピュータ可読媒体は、互換性のある装置と一緒にパッケージ化されるか、または(例えば、インターネットダウンロードを介して)他の装置とは別に提供され得る。任意のそのようなコンピュータ可読媒体は、個々のコンピュータ製品(例えば、ハードドライブ、CD、または完全なコンピュータシステム)上にまたは内部に位置してもよく、また、システムまたはネットワーク内部の異なるコンピュータ製品上にまたは内部に存在してもよい。コンピュータシステムは、本明細書に記載の結果のいずれかをユーザに提供するためのモニタ、プリンタ、または他の適切なディスプレイを含み得る。
【0129】
本明細書に記載のいずれも方法も、ステップを実施するように構成され得る1つまたは複数のプロセッサを含むコンピュータシステムで完全に、または部分的に実施され得る。したがって、実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法のステップを実施するように構成され、おそらくはそれぞれのステップまたはそれぞれのステップ群を実施する異なる構成要素を備えているコンピュータシステムを対象とすることができる。本明細書における方法のステップは、番号付けされたステップとして提示されているが、同時に、または異なる時に、または異なる順序で実行され得る。さらに、これらのステップの一部は、他の方法からの他のステップの一部とともに使用され得る。また、ステップのすべてまたは一部は、任意であり得る。さらに、これらの方法のいずれかのステップのいずれかは、これらのステップを実行するためのシステムのモジュ-ル、ユニット、回路、または他の手段を用いて実行され得る。
【0130】
特定の実施形態の具体的な詳細は、本発明の実施形態の精神および範囲から逸脱することなく、任意の適切な方法で組み合わせられ得る。しかしながら、本発明の他の実施形態は、各々の個々の態様、またはこれらの個々の態様の特定の組み合わせに関する特定の実施形態を対象とし得る。
【0131】
本開示の例示的な実施形態の上記の説明は、例示および説明を目的として提示されている。これらは、網羅的であることも、本開示を記載された正確な形態に限定することも意図しておらず、上記の教示に照らして多数の変更および変形が可能である。
【0132】
「a」、「an」、または「the」という記載は、そのようでないと具体的に示されない限り、「1つまたは複数」を意味するように意図される。「または」の使用は、そのようでないと具体的に示されない限り、「排他的論理和」でなく、「包含的論理和」を意味するように意図される。「第1の」構成要素への言及は、第2の構成要素が提供されることを必ずしも必要としない。さらに、「第1の」または「第2の」構成要素への言及は、明示的に述べられない限り、言及された構成要素を特定の位置に限定しない。「基づく」という用語は、「少なくとも部分的に基づく」を意味するように意図される。
【0133】
本明細書において言及されたすべての特許、特許出願、刊行物、および説明文は、全体があらゆる目的のために参照により組み込まれる。いずれも先行技術であると認められるものではない。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2025-06-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的核酸分子を配列決定するための方法であって、
ナノポアにわたって第1のレベルの第1の数の電圧パルスを印加して、前記標的核酸分子から生成された化合物を、前記ナノポアを通って第1の方向に第1の距離だけ変位させるステップであって、
前記化合物は複数のユニットを含み、
前記複数のユニットの各ユニットは、複数の種類のレポーター要素のうちの1種類のレポーター要素を含み、
各種類のレポーター要素は、前記標的核酸分子内のヌクレオチドの同一性に対応し、
前記第1の数の電圧パルスを印加すると、前記複数のユニットの第1のサブセットが前記ナノポアを通過する、ステップと;
前記ナノポアにおいて、前記第1のサブセット中のレポーター要素の種類を検出するステップと;
前記ナノポアにわたって第2のレベルの第2の数の電圧パルスを印加して、前記化合物を、前記ナノポアを通って第2の方向に第2の距離だけ変位させるステップであって、
前記第1の方向は前記第2の方向と反対であり、
前記第1の数の電圧パルスの前記電圧パルスは、前記第2の数の電圧パルスの前記電圧パルスと反対の極性を有し、
前記第2の距離は前記第1の距離未満であり、
前記第2の数は前記第1の数未満である、ステップと;
前記ナノポアにわたって第3のレベルの第3の数の電圧パルスを印加して、前記化合物を、前記ナノポアを通って前記第1の方向に第3の距離だけ変位させるステップであって、
前記第3の数の電圧パルスを印加すると、前記複数のユニットの第2のサブセットが前記ナノポアを通過し、
前記第2のサブセットおよび前記第1のサブセットは、同じユニットの一部を含み、
前記第2のサブセットは、前記第1のサブセットにないユニットを含み、
前記第3の距離は前記第2の距離よりも大きい、ステップと;
前記ナノポアにおいて、前記第2のサブセット中のレポーター要素の種類を検出するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記ナノポアにわたって第4のレベルの除去電圧を印加して、前記化合物を前記ナノポアから完全に排出するステップであって、前記第4のレベルが、前記第1のレベル、前記第2のレベル、および前記第3のレベルよりも大きい、ステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物が、複数の化合物のうちの第1の化合物であり、
前記複数の化合物が、複数の標的核酸分子から生成され、
前記ナノポアが、複数のナノポアのうちの第1のナノポアであり、
前記複数の化合物の各化合物が、前記複数のナノポアのうちの1つのナノポア内にある請求項
1に記載の方法であって、
前記第1のレベルの前記第1の数の電圧パルス、前記第2のレベルの前記第2の数の電圧パルス、および前記第3のレベルの前記第3の数の電圧パルスを前記複数のナノポアに印加するステップ
をさらに含む、方法。
【請求項4】
前記複数の標的核酸分子の複数の配列を決定するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の配列のサイズ分布が、300ntより大きいモードを有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のレベルの前記第1の数の電圧パルス、前記第2のレベルの前記第2の数の電圧パルス、および前記第3のレベルの前記第3の数の電圧パルスを前記複数のナノポアに印加するステップと;
前記複数の化合物の第1の部分が、前記複数のナノポアの第1の部分において、前記第1の数の電圧パルス、前記第2の数の電圧パルス、または前記第3の数の電圧パルスによって変位されていることを決定するステップと、
前記複数のナノポアの第2の部分の各ナノポアにわたって第4のレベルの除去電圧を印加して、前記複数の化合物の第2の部分を前記複数のナノポアのそれぞれのナノポアから完全に排出するステップであって、
前記第4のレベルが、前記第1のレベル、前記第2のレベル、および前記第3のレベルよりも大きく、
前記複数のナノポアの前記第2の部分が、前記複数のナノポアの前記第1の部分のナノポアを含まない、ステップと
をさらに含む、請求項
3に記載の方法。
【請求項7】
前記標的核酸分子の配列を決定するステップをさらに含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
前記標的核酸分子の前記配列を決定するステップが、前記第1のサブセットおよび前記第2のサブセットの両方における1つまたは複数のユニットについて、同じ種類のレポーター要素を検出することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記化合物を前記ナノポアから完全に排出するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物を前記ナノポアから完全に排出するステップが、前記第3の数の電圧パルスの前記印加中に行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記複数のユニットの各ユニットが移動制御要素を含み、
前記第1の数の電圧パルスを印加すると、第1の数の移動制御要素が前記ナノポアを通過し、
前記第1の数の電圧パルスが、前記第1の数の移動制御要素に等しい、
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ナノポアにわたって第4のレベルの電圧を印加して、前記化合物を、前記第1の数の電圧パルスの電圧パルスの間に前記ナノポアを通って前記第1の方向に第4の距離だけ変位させるステップであって、
前記第4のレベルの前記電圧が、前記第1の数の電圧パルスの前記電圧パルスと同じ極性であり、
前記第4のレベルが前記第1のレベル未満であり、
前記第4の距離だけ変位した後の前記化合物が、前記ナノポア内に移動制御要素を有する、ステップ
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2のレベルが前記第1のレベルよりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記複数のユニットの前記第1のサブセット中のレポーター要素がナノポア内にある場合に前記ナノポアにわたって印加される電圧を有する前記ナノポアについての信号値を測定するステップと;
前記信号値を使用して、前記第1のサブセット中のレポーター要素の種類を決定し、それによって前記標的核酸分子中のヌクレオチドの同一性を決定するステップと
をさらに含む、請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記複数のユニットの前記第1のサブセットが30個以上のユニットを含む、請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第3のレベルが前記第1のレベルに等しい、請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記標的核酸分子が200ntよりも長い、請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の数の電圧パルスが30以上である、請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の数の電圧パルスが、前記第2の数の電圧パルスを5以上上回ることがある、請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
実行されるとコンピュータシステムを制御して請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法を実施する複数の命令を記憶している非一時的コンピュータ可読媒体を備える、コンピュータ製品。
【請求項21】
請求項20に記載のコンピュータ製品と、
前記コンピュータ可読媒体上に記憶された命令を実行するための1つまたは複数のプロセッサと
を備える、システム。
【請求項22】
請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法を実施するための手段を備えるシステム。
【請求項23】
請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成された1つまたは複数のプロセッサを備えるシステム。
【請求項24】
請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法の前記ステップをそれぞれ実施するモジュールを備えるシステム。
【国際調査報告】