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特表2025-534448ポリアミド粉末を製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-10-15
(54)【発明の名称】ポリアミド粉末を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/14 20060101AFI20251007BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20251007BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20251007BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20251007BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20251007BHJP
【FI】
C08J3/14 CFG
B29C64/153
B33Y10/00
B33Y70/00
B33Y80/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2025519710
(86)(22)【出願日】2023-10-05
(85)【翻訳文提出日】2025-05-28
(86)【国際出願番号】 FR2023051554
(87)【国際公開番号】W WO2024074793
(87)【国際公開日】2024-04-11
(31)【優先権主張番号】2210208
(32)【優先日】2022-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カマージュ, ジョフロワ
(72)【発明者】
【氏名】ブルゾン, バフタ
(72)【発明者】
【氏名】ル, ギヨーム
【テーマコード(参考)】
4F070
4F213
【Fターム(参考)】
4F070AA54
4F070AC36
4F070AE28
4F070DA22
4F070DC07
4F070DC14
4F213AA29
4F213AC04
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL23
(57)【要約】
本発明は、単峰性の溶融吸熱及び単一の溶融温度(Tf1 max)を有するポリアミド粉末を製造するための方法であって、
i)ポリアミドを溶媒と接触させて混合物を得る工程;
ii)混合物を加熱してポリアミドを溶媒に溶解する工程;
iii)前記溶媒中で混合物をポリアミドの沈殿温度(T)まで冷却し、それにより、非単峰性の溶融吸熱と、(Tf1 max)が最高溶融温度である、複数の溶融温度とによって特徴づけられる粉末を得る工程;
iv)沈殿したポリアミド粉末が単峰性の溶融吸熱及び溶融温度(Tf1 max)によって特徴づけられるまで、混合物の温度を最大でもTに等しい温度、特にT-0.1℃~T-15℃の範囲の温度に維持する工程;並びに
に)得られたポリアミド粉末を回収する工程
を含む方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単峰性の溶融吸熱及び単一の溶融温度(Tf1 max)を有するポリアミド粉末を製造するための方法であって、
i)ポリアミドを溶媒と接触させて混合物を得る工程;
ii)混合物を加熱してポリアミドを溶媒に溶解する工程;
iii)前記溶媒中で混合物をポリアミドの沈殿温度(T)まで冷却し、それにより、非単峰性の溶融吸熱と、(Tf1 max)が最高溶融温度である、複数の溶融温度とによって特徴づけられる粉末を得る工程;
iv)沈殿したポリアミド粉末が単峰性の溶融吸熱及び溶融温度(Tf1 max)によって特徴づけられるまで、混合物の温度を最大でもTに等しい温度、特にT-0.1℃~T-15℃の範囲の温度に維持する工程;並びに
v)得られたポリアミド粉末を回収する工程
を含む方法。
【請求項2】
ポリアミドと接触させる溶媒がアルコール、特にC~C脂肪族アルコール、好ましくはエタノールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリアミドが、ポリアミド11、ポリアミド6、又はポリアミド10.10、又はポリアミド10.12、又はポリアミド6.10である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程iv)において、混合物が、ポリアミドの沈殿の終了時から始まって少なくとも2時間、特に3~12時間の間の期間にわたって、最大でもTに等しい温度に維持される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の方法によって得ることができる単峰性の溶融吸熱及び単一の溶融温度(Tf1 max)を有するポリアミド粉末。
【請求項6】
10μm~200μmの間、特に20μm~100μmの間、好ましくは30μm~90μmの間の中位径Dv50を有することを特徴とする、請求項5に記載のポリアミド粉末。
【請求項7】
0.1~1.5の間、好ましくは0.1~1.0の間、より好ましくは0.5~1.0の間のスパン係数を有することを特徴とする、請求項5又は6のいずれか一項に記載のポリアミド粉末。
【請求項8】
ポリアミドがポリアミド11である、請求項5から7のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項9】
195℃~205℃の間の溶融温度(Tf1 max)を有することを特徴とする、請求項8に記載の粉末。
【請求項10】
溶融温度(Tf1 max)と結晶化温度(T)との間の差が35℃~45℃の間である、請求項8又は9に記載の粉末。
【請求項11】
単峰性の溶融吸熱及び195℃~205℃の間の単一の溶融温度(Tf1 max)を有し、さらに以下の特性:
- 10μm~200μmの間、特に20μm~100μmの間、好ましくは40μm~80μmの間の体積平均直径;
- 5μmを超える、特に10μm~70μmの間、好ましくは20μm~60μmの間の直径Dv10;
- 10μm~200μmの間、特に20μm~100μmの間、好ましくは30μm~90μmの間の体積中位径Dv50;
- 350μm未満、特に30μm~200μmの間、好ましくは50μm~150μmの間の直径Dv90;
- 0.1~1.5の間、好ましくは0.1~1の間、より好ましくは0.5~1.0の間のスパン係数;
- 100J/gを超える、好ましくは110J/g~160J/gの間の融解エンタルピー;及び/又は
- 0.8~1.8の間、好ましくは1.0~1.5の間の固有粘度
のうちの少なくとも1つを有する、ポリアミド11粉末。
【請求項12】
特にレーザー焼結による3D印刷のための粉末形態の組成物であって、
- 請求項5から11のいずれか一項に記載のポリアミド粉末;及び
- 少なくとも1つの充填剤又は添加剤
を含む組成物。
【請求項13】
請求項5から12のいずれか一項に記載される粉末を、電磁放射線を使用した溶融により粉末凝集させることによる、ポリアミド物品を製造するための方法。
【請求項14】
請求項5から11のいずれか一項に記載の粉末、又は請求項12に記載の組成物を電磁放射線を利用して溶融することにより得られた製造物品。
【請求項15】
ポリアミドの溶融温度(Tf min)と結晶化温度(T)との間の差(Tf min-T)を増加させるための、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド粉末の溶融温度と結晶化温度との間の差(Tf1-T)を増加させるポリアミド粉末を製造するための方法に関する。
【0002】
ポリアミドベースの粉末のTf1とTとの間の大きな差は、多くの用途において有用であり、特に、レーザービーム(レーザー焼結)、赤外線若しくはUV放射、又は物品を製造するために粉末を溶融することができる任意の電磁放射線源などの放射線によって誘起される溶融又は焼結による粉末凝集の技術において有用である。
【0003】
本発明はまた、この方法に従って得られるポリアミド粉末に関する。
【0004】
最後に、本発明は、この粉末の使用と、該粉末から製造される物品に関する。
【背景技術】
【0005】
レーザービーム下でのポリアミド粉末の凝集技術は、様々な分野において試作品や模型などの三次元物品の製造に使用されている。
【0006】
ポリアミド粉末の薄層は、ポリアミド粉末の結晶化温度Tと溶融温度Tf1との間である温度に加熱されたチャンバー内に保持された水平プレート上に堆積される。レーザーは、例えば、物品の形状をメモリ内に記憶し、この形状をスライスの形態で再現するコンピュータを使用して、物品に対応する幾何形状に従って、粉末層内の異なる点で粉末粒子を凝集させる。レーザーに曝露された粉末領域は、その温度が結晶化温度Tを下回るとすぐに固化する。次いで、水平プレートが粉末層の厚さに対応する距離だけ下げられ、次いで、新しい粉末層が堆積され、レーザーが該物品のこの新しいスライスに対応する幾何形状に従って粉末粒子を凝集させ、以後も同様である。この手順は、物品全体が製造されるまで繰り返される。チャンバー内において、凝集していない粉末によって囲まれた物品が得られる。次いで、アセンブリはゆっくりと冷却される。ひとたび完全に冷却されると、物品は粉末から分離され、この粉末は別の工程で再利用することができる。
【0007】
レーザービームの作用直後、曝露された領域の温度は粉末の結晶化温度(T)よりも高くなる。ただし、例えば新しい冷たい粉末の層を塗布することによって、温度がこの温度を急速に下回ると、印刷されているワークピースに変形(「カール」)を生じさせる。同様に、粉末の温度が粉末の溶融温度(Tf1)に近づきすぎると、印刷品質に影響を与える粉末の塊の形成によって現れる、ワークピースの周囲におけるケーキングを生じさせる。
【0008】
したがって、これらの現象を回避するためには、Tf1からできるだけ離れた温度Tを有する粉末が利用可能であることが重要である。粉末の差Tf1-Tは、放射線誘起溶融によって粉末粒子を凝集させるために使用される装置の作業温度範囲を決定する。この作業範囲は、その上限温度と下限温度によって定義される。作業範囲の上限は、凝集又はケーキングが起こる温度に対応する。作業範囲の下限は、歪み、又は変形、又はカールが生じる温度に対応する。この作業範囲は、3D印刷機内の、一般的に±3℃程度の温度変動よりも大きいことが望ましい。
【0009】
さらに、高い融解エンタルピー(ΔH)は、製造されるワークピースの幾何学的精細度(definition)を最適化するために有利である。具体的には、もしそれが低すぎると、レーザーによって供給されるエネルギーにより、熱伝導によって、構築中のワークピース周囲の粉末粒子を焼結させるリスクがあり、このことは得られるワークピースの幾何学的精度を低下させる。
【0010】
レーザービーム下でのポリアミド粉末の凝集に関してこれまで述べられたことは全て、溶融を引き起こす電磁放射線や、溶融プロセスが選択的であるか非選択的であるかということに関係なく適用されることは明らかである。
【0011】
米国特許第5,932,687号は、狭い粒子分布及び低い多孔度を有する沈殿したポリアミド粉末を調製するための方法を開示している。この方法は、アルコール溶媒に予め溶解したポリアミドを温度T(溶媒中のポリアミドの沈殿温度よりも高い)まで冷却して、ポリアミドの核形成を達成する第1の工程と、続いて、媒体の過飽和を達成し、これにより温度Tでポリアミドの沈殿を達成する第2の冷却工程とを含む。得られた懸濁液は直接冷却され、乾燥されてポリアミド粉末を回収する。
【0012】
米国特許出願公開第2008/0166496号は、特に三次元物品の製造のための粉末凝集方法において使用可能なポリアミド11粉末を開示している。これらの粉末は、エタノールに予め溶解したポリアミドを、ポリアミドが沈殿する温度まで冷却する工程を含む方法に従って調製される。沈殿によって発生した熱により、媒体は25分間この温度に保持され、その後温度がわずかに低下し、35分間の等温保持が行われる。この一定温度段階の終了時に、混合物を冷却して、沈殿したポリアミド粉末を分離する。
【0013】
しかしながら、発明者らは、先行技術の方法では、示差走査熱量測定による分析において、第1の加熱時に、2つの比較的近いが異なる溶融温度に関連する2つの温度ピークの存在が示され、異なる結晶相の存在が明らかになるポリアミド粉末が得られることを観察していた。上記の理由により、粉末の熱的特性におけるこの不均一性は、作業範囲を狭め、したがって、電磁放射線を利用して溶融することによる粉末凝集の方法によって製造される製品の品質、特にその精細度(definition)に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0014】
したがって、これらの欠点を克服することを可能にする、電磁放射線誘起溶融による粉末凝集の技術に有用である、ポリアミド粉末を調製するための方法が真に必要とされている。
【発明の概要】
【0015】
発明者らは、既存のポリアミドの差Tf1-Tを効果的に増加させ、単峰性の溶融吸熱を得る溶解/沈殿の方法を開発した。
【0016】
より具体的には、ポリアミド沈殿段階の終了時に、十分な持続時間の一定温度段階を導入することによって、非単峰性の溶融吸熱と、(Tf1 max)が最高溶融温度である、複数の溶融温度(Tf1)とによって特徴づけられる粉末を、単峰性の溶融吸熱と、(Tf1 max)に等しい単一の溶融温度(Tf1)とによって特徴づけられるポリアミド粉末に変換し、それによって温度差(Tf1-T)を増加させることが可能であることが判明した。発明者らは、特に、この一定温度段階により結晶性の強化が起こり、したがって、単結晶相を得ることが可能になったことを実証することができた。
【0017】
したがって、得られたポリアミド粉末は、特に、作業範囲を広げることができ、したがってこれらの粉末から製造される物品の品質及び/又は精細度(definition)を向上させることができるという点で、電磁放射線を利用して溶融することによる粉末凝集の方法における使用に特に有利である。
【0018】
したがって、第1の態様によれば、本発明の目的は、単峰性の溶融吸熱及び単一の溶融温度(Tf1 max)を有するポリアミド粉末を製造するための方法であって、
i)ポリアミドを溶媒と接触させて混合物を得る工程;
ii)混合物を加熱してポリアミドを溶媒に溶解する工程;
iii)前記溶媒中で混合物をポリアミドの沈殿温度(T)まで冷却し、それにより、非単峰性の溶融吸熱と、(Tf1 max)が最高溶融温度である、複数の溶融温度とによって特徴づけられる粉末を得る工程;
iv)沈殿したポリアミド粉末が単峰性の溶融吸熱及び溶融温度(Tf1 max)によって特徴づけられるまで、混合物の温度を最大でもTに等しい温度、特にT-0.1℃~T-15℃の範囲の温度に維持する工程;並びに
v)得られたポリアミド粉末を回収する工程
を含む、方法を提供することである。
【0019】
この方法は、有利なことに、以下の追加の特徴の1つ以上も有する。
【0020】
したがって、いくつかの実施態様では、本発明による方法は、
- ポリアミドと接触させる溶媒はアルコール、特にC~C脂肪族アルコール、好ましくはエタノールであり;
- 混合物の加熱は100℃~200℃、好ましくは120℃~160℃の温度で行われ;且つ/若しくは混合物の加熱は1~6時間、好ましくは1~3時間の期間にわたって行われ;
- 工程iii)における混合物の冷却は、1時間当たり1℃~100℃、好ましくは1時間当たり10℃~60℃の速度で行われ;
- ポリアミドは、ポリアミド11、ポリアミド6、若しくはポリアミド10.10、若しくはポリアミド10.12、若しくはポリアミド6.10であり;
- ポリアミドの沈殿温度Tは、80℃~130℃の間、特に100℃~120℃の間であり;
- 工程iv)において、混合物は、ポリアミドの沈殿の開始から始まって少なくとも2時間、特に3~12時間の間の期間にわたって、最大でもTに等しい温度に維持され;
- 工程v)で回収された、若しくは工程iv)の終了時に得られた沈殿したポリアミド粉末を、特に10℃~150℃の間、より具体的には50℃~100℃の間の温度で乾燥する工程vi)も含み;且つ/又は
- 沈殿したポリアミド粉末の乾燥は、10mbarから大気圧までの範囲の圧力で行われる
方法である。
【0021】
第2の態様によれば、本発明の目的はまた、本発明による方法によって得ることができる単峰性の溶融吸熱及び単一の溶融温度(Tf1 max)を有するポリアミド粉末を提供することである。
【0022】
粉末は、有利なことに、さらに、以下の追加の特性の1つ以上を有する。
【0023】
したがって、いくつかの実施態様では、
- 粉末は、10μm~200μmの間、特に20μm~100μmの間、好ましくは40μm~80μmの間の体積平均直径を有することを特徴とし;
- 粉末は、5μmを超える、特に10μm~70μmの間、好ましくは20μm~60μmの間の直径Dv10を有することを特徴とし;
- 粉末は、350μm未満、特に30μm~200μmの間、好ましくは50μm~150μmの間の直径Dv90を有することを特徴とし;
- 粉末は、10μm~200μmの間、特に20μm~100μmの間、好ましくは30μm~90μmの間の中位径Dv50を有することを特徴とし;
- 粉末は、0.1~1.5の間、好ましくは0.1~1.0の間、より好ましくは0.5~1.0の間のスパン係数を有することを特徴とし;
- ポリアミドはポリアミド11であり;
- 粉末は、195℃~205℃の間の溶融温度(Tf1 max)を有することを特徴とし;且つ/又は
- 溶融温度(Tf1 max)と結晶化温度(T)との間の差が35℃~45℃の間である
粉末である。
【0024】
第3の態様によれば、本発明はまた、単峰性の溶融吸熱及び195℃~205℃の間の単一の溶融温度(Tf1 max)を有し、さらに以下の特性:
- 10μm~200μmの間、特に20μm~100μmの間、好ましくは40μm~80μmの間の体積平均直径;
- 5μmを超える、特に10μm~70μmの間、好ましくは20μm~60μmの間の直径Dv10;
- 10μm~200μmの間、特に20μm~100μmの間、好ましくは30μm~90μmの間の体積中位径Dv50;
- 350μm未満、特に30μm~200μmの間、好ましくは50μm~150μmの間の直径Dv90;
- 0.1~1.5の間、好ましくは0.1~1の間、より好ましくは0.5~1.0の間のスパン係数;
- 100J/gを超える、好ましくは110J/g~160J/gの間の融解エンタルピー;及び/又は
- 0.8~1.8の間、好ましくは1.0~1.5の間の固有粘度
のうちの少なくとも1つを有するポリアミド11粉末に関する。
【0025】
第4の態様によれば、本発明は、特にレーザー焼結による3D印刷のための粉末形態の組成物であって、
- 本発明によるポリアミド粉末;及び
- 少なくとも1つの充填剤又は添加剤
を含む、組成物を提供する。
【0026】
第5の態様によれば、本発明は、本明細書で定義される粉末を、電磁放射線を使用した溶融により粉末凝集させることにより、ポリアミド物品を製造する方法に関する。
【0027】
第6の態様によれば、本発明は、本発明による粉末又は組成物を電磁放射線を利用して溶融することにより得られる製造物品に関する。
【0028】
第7の態様によれば、本発明は、ポリアミドの溶融温度(Tf1)と結晶化温度(T)との間の差(Tf1-T)を増加させるための本発明による方法の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、比較例2のポリアミド11の示差走査熱量測定によって得られた、温度の関数としての熱流Φを示すサーモグラムである。(a)第1の加熱、(b)その後の冷却、(c)第2の加熱、対応する融解エンタルピーΔH
図2図2は、例3のポリアミド11の示差走査熱量測定によって得られた、温度の関数としての熱流Φを示すサーモグラムである。(a)第1の加熱、(b)その後の冷却、(c)第2の加熱、対応する融解エンタルピーΔH
図3図3は、比較例4のポリアミド11の示差走査熱量測定によって得られた、温度の関数としての熱流Φを示すサーモグラムである。(a)第1の加熱、(b)その後の冷却、及び(c)第2の加熱、対応する融解エンタルピーΔH
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
本発明は、以下に続く説明において、より詳細且つ非限定的な方法により説明される。
【0031】
定義
本説明で使用される「…~…(from…to…)」及び「…~…の間(between…and…)」という表現は、言及された両方の制限を含むものとして理解されるべきであることに留意されたい。
【0032】
「粉末」という用語は、概して数百マイクロメートル以下の非常に小さなサイズの粒子の形態で提供される、細かく分割された形態の固体物質を指すものとして理解される。
【0033】
粉末は一般に、以下に従った示差走査熱量測定(DSC)によって得られるサーモグラムによって特徴づけられる。
- 第1の加熱、これにより、ポリアミド粉末の溶融を特徴づけることが可能となる;
- 冷却、これにより、ポリアミド材料の結晶化を特徴づけることが可能となる;
- 第2の加熱、これにより、ポリアミド材料自体の溶融を特徴づけることが可能となる。
【0034】
以下の用語は、熱的特性の文脈において、ISO規格11357-1:2016で定義されているとおりに理解される:
- 「ピーク」とは、示差走査熱量測定(DSC)によって得られたサーモグラムの、ベースラインから離れて極大値又は極小値に達し、その後ベースラインに戻る部分を指す。このようなピークは、一次転移(結晶化発熱又は溶融吸熱)を示し得る;溶融ピークは、本説明の目的において、シグナルがベースラインに戻る前の複数のピーク又はショルダーを特に含み得る。
- 「ベースライン」とは、記録されたサーモグラムの、任意の転移のない部分を指し、この場合、特に溶融型又は結晶化型の一次転移が存在しない部分を指す。転移領域内では、仮想ベースラインを定めることが可能である。これは、転移による熱がゼロであると仮定して、転移領域を通ってプロットされた仮想の線である。仮想ベースラインは、試験試料のベースラインを直線によって補間することによってプロットすることができる。
- 「ピーク面積」とは、ピークと補間された仮想基準線によって囲まれた面積を指す。これは、J/gで表される転移エンタルピーとみなされる。「融解エンタルピー」という用語は、ISO規格11357-3:2018に従って測定される、サーモグラムの溶融ピークの下の面積に対応する、組成物を溶融するために必要な熱を指すものとして理解される。
【0035】
「溶融温度」という用語は、ISO規格11357-3:2018に従って測定される、少なくとも部分的に結晶性のポリアミド粉末又はポリアミド材料が粘稠性液体状態へと移行する溶融現象を表す温度を指すものとして理解される。したがって、本説明の目的において、複数のピーク又はショルダーを含む溶融ピークは、複数の溶融温度、すなわち各ピーク又はショルダーに対して1つの溶融温度と関連づけられることになる。
【0036】
「第1及び第2の加熱における溶融温度」は、ISO規格11357-3:2018に従ってDSCによって測定され、両方とも20℃/分の温度勾配で行われた、第1の加熱及び第2の加熱における溶融ピークの最大シグナル強度にそれぞれ対応する、第1の加熱についてはTf1、第2の加熱についてはTf2とそれぞれ記される溶融温度を意味すると理解される。したがって、本説明の目的において、第1の加熱において複数の溶融温度(Tf1)が検出された場合、差(Tf1-T)を計算するために使用されるのは、最も低い溶融温度に対応するTf1温度、すなわちTf1 minである。Tf1 maxは、最高溶融温度(Tf1)を指し、工程iv)の終了時に得られる唯一の溶融温度(Tf1)に対応する。
【0037】
以下Tと呼ばれる「結晶化温度」は、ISO規格11357-3:2018に従って、-20℃/分の温度勾配で測定した、少なくとも部分的に結晶性の化合物が粘稠性液体状態から半結晶化状態に移行する温度を意味すると理解される。結晶化温度は、より具体的には、化合物の第1の溶融(第1の加熱)後、第2の溶融(第2の加熱)前の冷却中に測定される温度に対応し、第1の溶融により、化合物の熱履歴を消去することができる。特に明記されていない限り、これはDSCシグナルの最大強度に対応する結晶化ピークの温度である。したがって、本説明の目的において、冷却時に複数の結晶化温度が検出された場合、Tは最も高い結晶化温度に対応し、差(Tf1-T)を計算するために使用しなければならないのはこの値である。
【0038】
ポリアミド粉末の「単峰性の溶融吸熱」は、示差走査熱量測定(DSC)によって得られたサーモグラムの、ポリアミド粉末の第1の溶融に対応する部分を意味し、単一の溶融温度Tf1によって特徴づけられるものと理解される。言い換えると、第1の加熱に対応する溶融ピークは単一のピークのみを含む。対照的に、多峰性の溶融吸熱は、複数のピーク、すなわち複数の溶融ピーク温度を有する第1の加熱における溶融ピークによって特徴づけられる。同様に、第1の加熱において溶融ピークがショルダーを有する溶融吸熱は、本説明の目的においては単峰性吸熱とはみなされないであろう。
【0039】
以下Tと呼ばれる「沈殿温度」は、方法において使用されるポリアミドと溶媒によって形成される混合物が均質状態から不均質状態に移行する温度を意味すると理解される。沈殿温度は、動的温度調節システム(例えば、Huberによって販売される「プチフルール(petite fleur)」システム)に接続された温度センサー(PT100タイプ)によって検出される。沈殿の瞬間、温度調節システムは発熱を瞬時に補償することができない。沈殿温度も、検出時間の関数としての反応媒体の温度の導関数の摂動として正確に検出される。導関数の摂動の開始に対応する温度は、沈殿温度(T)とみなされる。
【0040】
「Dv50」という用語は、体積加重累積粒径分布関数が50%に等しい粉末粒子の体積中位径の値を意味する。同様に、「Dv10」及び「Dv90」は、それぞれ、体積加重累積粒径関数がそれぞれ10%及び90%に等しい、対応する直径である。これらの値は、例えば、Coulter Counter Multisizer 3粒径分析機器を使用して、ISO規格13319-1:2021に従って測定される。粒径分布の結果の表現に関する規則は、ISO規格9276のパート1~6によって規定されている。
【0041】
「スパン」係数は、スパン=(Dv90-Dv10)/Dv50として定義される、粒経分布の幅を特徴づける係数を意味すると理解され、ここで、直径「Dv10」、「Dv50」、及び「Dv90」は上記で定義された通りである。
【0042】
「平均直径」という用語は、粒径の体積加重算術平均に対応する粒子の体積平均直径の値を意味する。この値は、例えば、Coulter Counter Multisizer 3粒径分析機器を使用して、ISO規格13319-1:2021に従って測定される。
【0043】
「粘度」という用語は、溶媒としてm-クレゾールを使用し、温度が20℃であることを除いて、ISO規格307:2019に従って、ウベローデ型粘度計で測定される固有粘度を指すものと理解される。固有粘度は濃度の逆数の次元を有しており、相対粘度の自然対数を溶媒中に溶解したポリマーの濃度で除した値に等しい。
【0044】
「3D印刷」という用語は、レーザーや赤外線などの電磁放射線によって粉末を選択的に溶融させる付加製造によってワークピースを製造する技術を指すものとして理解される。
【0045】
ポリアミド粉末を製造するための方法
したがって、第1の態様によれば、本発明の目的は、単峰性の溶融吸熱及び単一の溶融温度(Tf1 max)を有するポリアミド粉末を製造するための方法であって、
i)ポリアミドを溶媒と接触させて混合物を得る工程;
ii)混合物を加熱してポリアミドを溶媒に溶解する工程;
iii)前記溶媒中で混合物を沈殿温度(T)まで冷却し、それにより、非単峰性の溶融吸熱と、(Tf1 max)が最高溶融温度である、複数の溶融温度とによって特徴づけられる粉末を得る工程;
iv)沈殿したポリアミド粉末が単峰性の溶融吸熱及び単一の溶融温度(Tf1 max)によって特徴づけられるまで、混合物の温度を最大でもTに等しい温度、特にT~T-15℃の範囲の温度に維持する工程;並びに
v)得られたポリアミド粉末を回収する工程
を含む、方法を提供することである。
【0046】
以下の説明において、「モノマー」という用語は「繰り返し単位」を意味するものとして理解されるべきである。特別な場合として、繰り返し単位がジアミンと二酸の組み合わせからなる場合がある。ここでは、モノマーに対応するのは、ジアミンと二酸の組み合わせ、すなわちジアミン-二酸対であると考えられる。これは、ジアミンと二酸が単独ではアミド官能基を形成できないためである。
【0047】
本発明の目的において、「ポリアミド」は、ラクタム、アミノ酸、又はジアミン-二酸対の縮合生成物を意味すると理解される。それは、ホモポリマー、すなわち同じ繰り返し単位、すなわち同じモノマーの縮合によって得られるポリマーであってよく、あるいは、少なくとも2つの繰り返し単位、すなわち「コモノマー」と呼ばれる2つの異なるモノマー、すなわち少なくとも1つのモノマーと少なくとも1つのコモノマー(第1のモノマーとは異なるモノマー)の縮合によって、以下に定義されるコポリアミド(略してCoPAと略す)などのコポリマーを形成することによって得られるコポリマーであってもよい。
【0048】
「コポリアミド」(CoPAと略す)は、以下から選択される少なくとも2つの異なるモノマーの重合生成物を意味すると理解される:
- アミノ酸又はアミノカルボン酸タイプのモノマー、好ましくはα,ω-アミノカルボン酸;
- ラクタムタイプのモノマー;
- ジアミンとジカルボン酸との反応から生じる「ジアミン-二酸」タイプのモノマー対;及び
- アミノ酸タイプのモノマーとラクタムタイプのモノマーの混合物の場合、異なる炭素原子数を有するモノマーとのそれらの混合物。
【0049】
これらのモノマーは、必要に応じて、直鎖状、分岐状、又は置換型であり得る。
【0050】
いくつかの実施態様によれば、ポリアミドはホモポリマーである。
【0051】
第1のタイプによれば、ポリアミドは、特に4~36個の炭素原子、好ましくは6~18個の炭素原子を含む脂肪族、脂環式又は芳香族ジカルボン酸と、特に2~20個の炭素原子、好ましくは6~14個の炭素原子を含む脂肪族、脂環式又は芳香族ジアミンとの縮合から得られる。
【0052】
ジカルボン酸の例には、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ブタン二酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、テレフタル酸、及びイソフタル酸が含まれるが、二量化脂肪酸も含まれる。
【0053】
ジアミンの例には、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)、2,2-ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン(BMACP)の異性体、パラアミノジシクロヘキシルメタン(PACM)、イソホロンジアミン(IPDA)、2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)、及びピペラジン(Pip)が含まれる。
【0054】
有利には、ポリアミドは、PA 4.6、PA 4.10、PA 4.12、PA 4.14、PA 4.18、PA 6.10、PA 6.12、PA 6.14、PA 6.18、PA 9.12、PA 10.10、PA 10.12、PA 10.14、及びPA 10.18から選択される。PA X.Yという表記では、慣例に従い、Xはジアミン残基に由来する炭素原子の数を表し、Yは二酸残基に由来する炭素原子の数を表す。
【0055】
特定の実施態様では、ポリアミドは、ポリアミド11、ポリアミド6、ポリアミド10.10、ポリアミド10.12、又はポリアミド6.10から選択される。好ましくは、ポリアミドはPA 11である。
【0056】
工程i)及びii)
本発明による方法において「ポリアミド」という用語の前に使用される不定冠詞「a」又は定冠詞「the」は、本明細書の文脈において、それぞれ「少なくとも1つのポリアミド」及び「前記少なくとも1つのポリアミド」を意味する。
【0057】
したがって、第1の工程i)において、「少なくとも1つの」ポリアミドを溶媒と接触させて混合物を得る。
【0058】
好ましくは、この方法において、1つのポリアミドのみが使用される。
【0059】
しかしながら、2つ以上、特に2つのポリアミドの混合物を使用することも可能である。好ましくは、そのような混合物は、主要なポリアミド、特に工程i)で使用されるポリアミドの総重量の80重量%超を占めるポリアミドを含み、ポリアミド混合物の共沈殿が得られるようなものである。
【0060】
特定の実施態様では、ポリアミドと接触させる溶媒は、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、ヘプタノール、ギ酸、酢酸、N-メチルピロリドン、N-ブチルピロリドン、ブチロラクタム、及びカプロラクタムから選択され得る。
【0061】
好ましくは、ポリアミドと接触させる溶媒は、C~C脂肪族アルコールであり、より好ましくはエタノールであり、さらにより好ましくは純度96%の工業グレードエタノール(水を含有し、2-ブタノン及びプロパン-2-オールで変性されたもの)である。
【0062】
ポリアミドは溶媒中で0.01~0.30の重量分率、好ましくは0.1~0.3の重量分率を有し得る。特に、0.01~0.05;0.05~0.1;又は0.1~0.15又は0.15~0.2;又は0.2~0.25;又は0.25~0.3の重量分率を有し得る。
【0063】
次いで、得られた混合物は工程ii)で加熱されて、ポリアミドが溶解され、すなわち均質な混合物が得られるまで加熱される。
【0064】
混合物の加熱は、特に100℃~200℃の間、好ましくは120℃~160℃の間の温度で行われ得る。
【0065】
特定の実施態様では、混合物の加熱は、例えば、100℃~105℃;又は105℃~110℃;又は110℃~115℃;又は115℃~120℃;又は120℃~125℃;又は125℃~130℃;又は130℃~135℃;又は135℃~140℃;又は140℃~145℃;又は145℃~150℃;又は150℃~155℃;又は155℃~160℃;又は160℃~165℃;又は165℃~170℃;又は170℃~175℃;又は175℃~180℃;又は180℃~185℃;又は185℃~190℃;又は190℃~195℃;又は195℃~200℃の温度で行われ得る。
【0066】
特定の実施態様では、混合物の加熱、特に溶解温度での混合物の維持は、1~6時間、好ましくは1~3時間の期間であり得る。したがって、混合物の加熱は、1時間~1時間30分;又は1時間30分~2時間;又は2時間~2時間30分;又は2時間30分~3時間;又は3時間~3時間30分;又は3時間30分~4時間;又は4時間~4時間30分;又は4時間30分~5時間;又は5時間~5時間30分;又は5時間30分~6時間持続し得る。
【0067】
特定の実施態様では、加熱は、100℃~200℃の間、特に120℃~160℃の間の最高温度に到達するように温度を上昇させる少なくとも1つの工程を含む。
【0068】
特定の実施態様では、加熱は、温度が100℃~200℃の間、特に120℃~160℃の間の値で本質的に一定に維持される少なくとも1つの工程を含む。
【0069】
工程iii)
次に、工程iii)において、粉末の形態でポリアミドを沈殿させるために、混合物を冷却する。
【0070】
沈殿温度(T)は、同じポリアミドであっても、溶媒に応じて異なる場合がある。同様に、それは、同じ溶媒であっても、ポリアミドに応じて異なる場合がある。具体的には、ポリアミドの沈殿は熱の放出を伴い、内部温度のわずかな上昇をもたらす。沈殿の終了時に、熱は放出されなくなり、内部温度はその公称温度に戻る。
【0071】
この沈殿温度は、特に溶媒がC~C脂肪族アルコールである場合、80℃~130℃の間、特に100℃~120℃の間であり得る。
【0072】
この冷却は、50℃以上の温度まで低下させるように行われ得る。したがって、冷却は、例えば50℃の温度まで低下させるように行われ得る。したがって、冷却は、例えば、50℃~60℃;又は60℃~70℃;又は70℃~80℃;又は80℃~90℃;又は90℃~100℃;又は100℃~110℃;又は110℃~120℃;又は120℃~130℃の範囲の温度まで低下させるように行われ得る。
【0073】
さらに、この冷却は、1時間当たり1~100℃、好ましくは1時間当たり10~60℃、より好ましくは1時間当たり20~50℃の速度で行われ得る。例えば、冷却は、1時間当たり1~5℃;1時間当たり5~10℃;1時間当たり10~15℃;又は1時間当たり15~20℃;又は1時間当たり20~25℃;又は1時間当たり25~30℃;又は1時間当たり30~35℃;又は1時間当たり35~40℃;又は1時間当たり40~45℃;又は1時間当たり45~50℃;又は1時間当たり50~55℃;又は1時間当たり55~60℃;又は1時間当たり60~65℃;又は1時間当たり65~70℃;又は1時間当たり70~75℃;又は1時間当たり75~80℃;又は1時間当たり80~85℃;又は1時間当たり85~90℃;又は1時間当たり90~95℃;又は1時間当たり95~100℃の速度で行われ得る。
【0074】
特定の実施態様では、沈殿を促進するために、出発物質を装填する工程i)において、一定量のポリアミドを導入することができる。好ましくは、このポリアミドの量は、この工程で使用されるポリアミドの総質量に対して20重量%以下、好ましくは10重量%以下である。ポリアミドは、溶媒に溶解したものと同一であっても異なっていてもよく、好ましくは同一である。ポリアミドは、特に、ポリアミド11、ポリアミド6、ポリアミド10.10、ポリアミド10.12、及びポリアミド6.10から選択され得る。
【0075】
したがって、添加されるポリアミドの量は、この工程で使用されるポリアミドの総質量に対して、0.1重量%~1重量%;又は1重量%~2重量%;又は2重量%~3重量%;又は3重量%~4重量%;又は4重量%~5重量%;又は5重量%~8重量%;又は8重量%~12重量%;又は12重量%~16重量%;又は16重量%~20重量%を占める可能性がある。
【0076】
工程iii)は、有利には撹拌しながら行われる。所定の撹拌システムでは、撹拌速度によって粒子の体積平均直径を制御することができる。一般に、撹拌速度が増加するにつれて、ポリアミド粒子の平均直径は減少する。逆に、撹拌速度が低下するにつれて、ポリアミド粒子の平均直径は増加する。
【0077】
工程iv)
冷却工程の間に、前記溶媒中のポリアミドの沈殿温度に到達すると、次いで沈殿段階が始まる。この沈殿段階の開始は、本発明による方法の工程iv)の開始に対応する。
【0078】
工程iv)において、混合物は、溶媒中のポリアミドの沈殿温度(T)に近い温度、最大でもこの沈殿温度に等しい温度、特にこの沈殿温度の-0.1℃~-15℃の範囲内に維持され、この温度は、単峰性の溶融吸熱と上昇した溶融温度を有する沈殿ポリアミド粉末が得られることを可能にするのに十分な時間維持される。
【0079】
言い換えれば、本方法は、工程iv)において、温度が時間tの間一定に保持される一定温度段階を含む。より具体的には、温度は、ポリアミド沈殿段階の全期間、すなわち時間tの間一定に保持され、その後、沈殿したポリアミドの結晶格子の強化を可能にし、これにより、単峰性の溶融吸熱と上昇した溶融温度を有するポリアミド粉末を得ることができるように、追加の時間tの間一定に保持される。
【0080】
一般に、時間tは時間tよりも著しく短いため、一定温度段階の総時間tは一般にtに非常に近くなる。
【0081】
単峰性の溶融吸熱を得るために必要な追加時間は、ISO規格11357-3に従って示差走査熱量測定(DSC)によって様々な間隔で収集された試料を分析することによって決定することができる。
【0082】
一例として、ポリアミド11の沈殿段階の終了時、すなわち時間tの終了時、発明者らは、DSCにおける第1の加熱において、2つの異なる溶融温度によって特徴づけられる二峰性の溶融吸熱が得られたことを観察した。溶媒中のポリアミドの沈殿温度に近い温度で十分な追加時間tの間、温度を一定に保持することによって、発明者らは、ポリアミド粒子の二峰性の溶融吸熱から単峰性の溶融吸熱への変化を観察することができ、これは、DSCサーモグラムにおいて、最高溶融温度に関連するピークが優先して最低溶融温度に関連するピークが消失することによって示されている。したがって、総時間t+tのこの一定温度段階は、有利なことに、差Tf1-Tを増加させることと、単峰性の溶融吸熱を得ることを同時に可能にする。
【0083】
いくつかの実施態様によれば、工程iv)において、混合物は、ポリアミドの沈殿の終了時から始まって、少なくとも2時間、特に3~12時間の間、好ましくは少なくとも4時間、特に4~12時間の間の時間tにわたって、一定温度に維持される。ポリアミドの沈殿の終了後のこの追加時間は、2~3時間;又は3~4時間;又は4~5時間;又は5~6時間;又は6~7時間;又は7~8時間;又は8~9時間;又は9~10時間;又は10~11時間;又は11~12時間であり得る。
【0084】
特定の実施態様では、工程iv)において、混合物は、ポリアミドの沈殿の開始から始まって、少なくとも2時間、特に3~12時間の間、好ましくは少なくとも4時間、特に4~12時間の間の時間tにわたって、一定温度に維持される。ポリアミドの沈殿の開始からのこの時間は、2~3時間;又は3~4時間;又は4~5時間;又は5~6時間;又は6~7時間;又は7~8時間;又は8~9時間;又は9~10時間;又は10~11時間;又は11~12時間であり得る。
【0085】
工程v)及びvi)
工程iv)において行われる一定温度段階の終了後、沈殿したポリアミド粒子は、工程v)において、従来の固液分離手段によって混合物から粉末形態で回収される。
【0086】
この工程は一般に、得られた混合物を冷却して反応器から液体を排出できるようにし、次いで、得られた沈殿したポリアミド粒子を特に濾過によって溶媒から分離することを含む。
【0087】
ポリアミド粉末を製造するための方法はまた、工程iv)で得られた、又は工程v)で回収されたポリアミド粉末を乾燥する工程vi)を含み得る。乾燥工程は、例えば、撹拌式乾燥機又は回転式乾燥機内で行われ得る。
【0088】
特定の実施態様では、乾燥は、10℃~150℃、特に50℃~100℃、好ましくは25℃~85℃、より好ましくは70℃~80℃の温度で行われ得る。乾燥は、例えば、10℃~20℃;又は20℃~30℃;又は30℃~40℃;又は40℃~50℃;又は50℃~60℃;又は60℃~70℃;又は70℃~80℃;又は80℃~90℃;又は90℃~100℃;又は100℃~110℃;又は110℃~120℃;又は120℃~130℃;又は130℃~140℃;又は140℃~150℃;又は150℃~160℃の温度で行われ得る。
【0089】
特定の実施態様では、乾燥は、100mbar未満、好ましくは50mbar未満の減圧下で行われ得る。したがって、乾燥は、1~10mbar;又は10~20mbar;20~30mbar;30~40mbar;40~50mbar;50~60mbar;60~70mbar;70~80mbar;80~90mbar;90~100mbar;100~150mbar;150~200mbar;200~250mbar;又は250~300mbar;又は300~500mbar;又は500~700mbar;又は700mbar~1bar未満(絶対圧力)の圧力で行われ得る。
【0090】
変形例として、乾燥は大気圧下で行われてもよい。
【0091】
本発明の製造方法によって得ることができるポリアミド粉末
第2の態様によれば、本発明は、上述の方法によって得ることができる単峰性の溶融吸熱及び単一の溶融温度(Tf1 max)を有するポリアミド粉末に関する。
【0092】
特定の実施態様では、ポリアミド粉末は、0.8~1.7、好ましくは1.0~1.5の固有粘度を有する。したがって、粉末は、例えば、0.8~0.9;又は0.9~1.0;又は1.0~1.1;又は1.1~1.2;又は1.2~1.3;又は1.3~1.4;又は1.4~1.5;又は1.5~1.6;又は1.6~1.7の固有粘度を有し得る。上記において、固有粘度は(g/100g)-1で表される。
【0093】
固有粘度は、マイクロウベローデ管を使用して測定される。測定は、m-クレゾール中0.5%(m/m)の濃度の粉末試料75mgに対して20℃で行われる。固有粘度は(g/100g)-1で表され、以下の式に従って計算される。
固有粘度=ln(t/t)x1/C、式中、C=m/px100、tは溶液の流動時間、tは溶媒の流動時間、mは粘度が測定される試料の質量、pは溶媒の質量である。
【0094】
特定の実施態様では、沈殿したポリアミド粉末は、100℃~200℃、好ましくは130℃~180℃の結晶化温度(T)を有し得る。ポリアミド粉末は、特に、100℃~110℃;又は110℃~120℃;又は120℃~130℃;又は130℃~140℃;又は140℃~150℃;又は150℃~160℃;又は160℃~170℃;又は170℃~180℃;又は180℃~190℃;又は190℃~200℃の結晶化温度を有し得る。
【0095】
特定の実施態様では、ポリアミド粉末は、60J/g以上、好ましくは100J/g以上の融解エンタルピーを有する。この融解エンタルピーは、例えば、60~80J/g;又は80~100J/g;又は100~110J/g;又は110~120J/g;又は120~130J/g;又は130~140J/g;又は140~150J/g;又は150~160J/gであり得る。
【0096】
特定の実施態様では、ポリアミド粉末は、130℃~260℃の間、好ましくは160℃~210℃の間の溶融温度Tf1を有し得る。特に、ポリアミド粉末は、130℃~140℃;又は140℃~150℃;又は150℃~160℃;又は160℃~170℃;又は170℃~180℃;又は180℃~190℃;又は190℃~200℃;又は200℃~210℃;又は210℃~220℃;又は220℃~230℃;又は230℃~240℃;又は240℃~250℃;又は250℃~260℃の溶融温度を有し得る。
【0097】
沈殿したポリアミド粉末の溶融温度(Tf1)は、上で説明したように、第1の加熱中に決定される。本発明の方法によれば、工程iv)の終了時の一定温度段階の終了時に、ポリアミドの単一の溶融温度が観察される。
【0098】
特定の実施態様では、ポリアミド粉末は、0.1~50m/g、好ましくは1~10m/gの見かけの比表面積を有し得る。したがって、沈殿したポリアミド粉末は、0.1~1m/g;又は1~5m/g;又は5~10m/g;又は10~20m/g;又は20~30m/g;又は30~50m/gの比表面積を有し得る。見かけの比表面積(SSA)は、当業者に知られているBET(ブルナウアー・エメット・テラー)法に従って測定される。これは特に、The Journal of the American Chemical Society、60巻、309ページ、1938年2月に記載されており、ISO国際規格9277:2010に対応している。BET法に従って測定される比表面積は、粉末の表面多孔度に対応し、すなわち、粒子の表面の細孔によって形成される表面積を含む。
【0099】
特定の実施態様によれば、本発明の方法によって得られるポリアミド粉末は、
- 10μm~200μmの間、特に20μm~100μmの間、好ましくは40μm~80μmの間の体積平均直径;
- 5μmを超える、特に10μm~70μmの間、好ましくは20μm~60μmの間の直径Dv10;
- 10μm~200μmの間、特に20μm~100μmの間、好ましくは30μm~90μmの間の体積中位径Dv50;
- 350μm未満、特に30μm~200μmの間、好ましくは50μm~150μmの間の直径Dv90;
- 0.1~1.5の間、好ましくは0.5~1.0の間のスパン係数;
- 60J/gを超える、好ましくは100J/g~160J/gの間の融解エンタルピー;及び/又は
- 0.5~2.0の間、好ましくは1.0~1.5の間の固有粘度
を有することを特徴とする。
【0100】
好ましい実施態様では、本方法によって得ることができる単峰性の溶融吸熱及び単一の溶融温度(Tf1 max)を有するポリアミド粉末は、0.1~1.5の間、好ましくは0.1~1.0の間、より好ましくは0.5~1.0の間のスパン係数を有することを特徴とする。
【0101】
ポリアミド11粉末
別の態様によれば、本発明は、単峰性の溶融吸熱と、195℃~205℃の間、特に約200℃のTf1 maxに等しい、第1の加熱時の単一の溶融温度Tf1、及び/又は150℃~165℃の間、特に約158℃の結晶化温度Tを有することを特徴とするポリアミド11粉末に関する。
【0102】
ポリアミド11粉末は、特に、以下の特性のうちの1つ以上、好ましくは以下の特性の全てによって特徴づけられる粉末である:
- 10μm~200μmの間、特に20μm~100μmの間、好ましくは40μm~80μmの間の体積平均直径;
- 5μmを超える、特に10μm~70μmの間、好ましくは20μm~60μmの間の直径Dv10;
- 10μm~200μmの間、特に20μm~100μmの間、好ましくは30μm~90μmの間の体積中位径Dv50;
- 350μm未満、特に30μm~200μmの間、好ましくは50μm~150μmの間の直径Dv90;
- 0.1~1.5の間、好ましくは0.5~1.0の間のスパン係数;
- 100J/gを超える、好ましくは110J/g~160J/gの間の融解エンタルピー;及び/又は
- 0.8~1.8の間、好ましくは1.0~1.5の間の固有粘度。
【0103】
好ましくは、ポリアミド11粉末は、単峰性の溶融吸熱、195℃~205℃の間のTf1 maxに等しい第1の加熱時の単一の溶融温度Tf1、及び0.1~1.5の間、好ましくは0.1~1の間、より好ましくは0.5~1.0の間のスパン係数を有することを特徴とする。
【0104】
特に選択的レーザー焼結による3D印刷のための粉末形態の組成物
さらに別の態様によれば、本発明は、特に選択的レーザー焼結による3D印刷のための粉末形態の組成物であって、上記で定義したポリアミド粉末を、1つ以上の通常の充填剤又は添加剤(すなわち、3D印刷技術に適したものである)と組み合わせて含む、組成物に関する。
【0105】
この組成物は、有利には、すぐに使用できる組成物である。
【0106】
この組成物は、3D印刷技術による使用のための、粉末の変形特性を改善するのに役立つ添加剤を含み得る。
【0107】
添加剤は一般に、組成物の総重量に対して5重量%未満を占める。好ましくは、添加剤は、組成物の総重量の1重量%未満を占める。添加剤には、流動化剤、安定剤(光安定剤、特にUV安定剤、及び熱安定剤)、蛍光増白剤、染料、顔料、及びエネルギー吸収添加剤(UV吸収剤を含む)が含まれる。
【0108】
流動化剤には、例えば、親水性又は疎水性シリカが挙げられる。流動化剤は、有利には、組成物の総重量に対して0.01重量%~0.5重量%を占める。好ましくは、組成物は、0.1重量%~0.4重量%の流動化剤を含む。
【0109】
組成物はまた、特に、3D印刷によって得られるワークピースの機械的特性(破断応力及び破断伸び率)を改善することを可能にする1つ以上の充填剤を含み得る。
【0110】
充填剤は一般に、最終粉末の総重量に対して50重量%未満、好ましくは40重量%未満を占める。充填剤には、強化充填剤、特に、任意に粉砕されていてもよい、カーボンブラック、タルク、カーボンナノチューブ又は非カーボンナノチューブ、繊維(ガラス、炭素など)などの無機充填剤が挙げられる。
【0111】
添加剤又は充填剤は、ポリアミド粉末製造プロセスの前、ポリアミド粉末製造プロセス中(例えば、工程i)のポリアミドの溶解前、又は工程iv)の沈殿後)、又はポリアミド粉末製造プロセスの後に、ポリアミドと混合され得る。好ましくは、添加剤は、ポリアミド粉末製造プロセスの後に、ポリアミド粉末と前記添加剤を混合することによって導入される。
【0112】
組成物は、ポリアミドを、好ましくは80%以上、又は81%以上、又は82%以上、又は83%以上、又は84%以上、又は85%以上、又は86%以上、又は87%以上、又は88%以上、又は89%以上、又は90%以上、又は91%以上、又は92%以上、又は93%以上、又は94%以上、又は95%以上、又は96%以上、又は97%以上、又は98%以上、又は99%以上、又は99.1%以上、又は99.2%以上、又は99.3%以上、又は99.4%以上、又は99.5%以上、又は99.6%以上、又は99.7%以上、又は99.8%以上、又は99.9%以上、又は99.91%以上、又は99.92%以上、又は99.93%以上、又は99.94%以上、又は99.95%以上、又は99.96%以上、又は99.97%以上、又は99.98%以上、又は99.99%以上の重量割合で含み得る。
【0113】
いくつかの実施態様では、組成物に含まれるポリアミドはポリアミド11である。
【0114】
いくつかの実施態様では、ポリアミド11は、185℃~205℃の間の溶融温度(Tf1)を有する。
【0115】
いくつかの実施態様では、ポリアミド11の溶融温度(Tf1)と結晶化温度(T)との間の差は35℃~45℃の間である。
【0116】
本発明の方法により得られるポリアミド粉末、又はそれを含む粉末形態の組成物の、溶融による粉末凝集の方法における使用
本発明はまた、上記で定義したポリアミド粉末又は粉末形態の組成物を、電磁放射線を使用した溶融により粉末凝集させることにより、ポリアミド物品を製造する方法を提供する。
【0117】
電磁放射線は、赤外線、紫外線、又は可視放射線であり得る。好ましくは、それはレーザー照射である(この場合の製造方法は選択的レーザー焼結として知られる)。
【0118】
この方法によれば、構築温度と呼ばれる温度に加熱されたチャンバー内に維持された水平プレート上に粉末の薄層が堆積される。「構築温度」という用語は、構築中の三次元物品の構成層の粉末の層が、粉末の層ごとの焼結プロセス中に加熱される温度を指す。この温度は、製造プロセスから得られるポリアミド粉末のTf1-Tの差内で選択され、好ましくはTf1-5℃~T+5℃の間、さらに好ましくはTf1-10℃~T+10℃の間で選択される。次いで、電磁放射線は、(例えば、物品の形状をメモリ内に記憶し、この形状をスライスの形態で再現するコンピュータを使用して)物品に対応する幾何形状に従って、粉末層内の異なる点で粉末粒子を焼結するのに必要なエネルギーを供給する。
【0119】
次に、水平プレートを粉末の層の厚さに対応する距離だけ下げて、新しい層を堆積させる。層の厚さは典型的には0.05mm~2mmの間であり、一般的には0.1mm程度である。電磁放射線は、粉末粒子を物品のこの新しいスライスに対応する幾何形状に焼結するのに必要なエネルギーを供給し、以後も同様である。この手順は、物品が製造されるまで繰り返される。
【0120】
粉末は、溶融又は焼結による凝集の方法において使用される。これらの粉末は、10μm~200μmの体積平均直径を有することができ、有利には20μm~100μmの間の体積平均直径を有する。
【0121】
好ましくは、体積平均直径は40μm~80μmの間である。
【0122】
本発明はまた、製造物品、特に、上述の粉末を電磁放射線を用いて焼結することによって得られる、3D印刷によって作成された製造物品に関する。
【0123】
この製品は、特に自動車、船舶、航空、航空宇宙、医療(人工装具、補聴システム、細胞組織など)、繊維、衣類、ファッション、装飾、電子機器のハウジング、電話、ホームオートメーション、IT、及び照明分野における、プロトタイプやモデルから選択され得る。
【0124】
より一般的には、本発明は、ポリアミドの溶融温度(Tf1)と結晶化温度(T)との間の差(Tf1-T)を増加させるための上述の製造方法の使用にも関する。
【実施例
【0125】
以下の実施例は本発明の実施態様を説明するものであるが、本発明を限定するものではない。
【0126】
以下の全ての例において:
- 粉末の粒径は、ISO規格13319-1:2021に従って、Coulter Counter-Multisizer 3装置(Beckmann Coulter)で粒径分布を測定することによって特徴づけられた。これから、体積平均直径、並びに直径Dv10、Dv50、及びDv90を決定した。スパン値はこれらの体積平均直径から計算される。
- 熱的特性の分析は、ISO規格11357-3「プラスチック-示差走査熱量測定(DSC)第3部:溶融及び結晶化の温度とエンタルピーの測定」に従ってDSCによって行われる。ここで特に興味深い温度は、第1の加熱中の溶融温度(Tf1)と結晶化温度(T)である。具体的には、(溶融による粉末凝集による3D物品の製造の分野において)当業者に知られているように、差「T-T」は、Tf1-Tに対応する。
- ポリアミドの固有粘度は、ISO規格307:2019に従って、ウベローデ型粘度計で測定される。ただし、溶媒としてm-クレゾールを使用し、温度は20℃である。
- 酸性度(ポリアミドのCOOH鎖末端の濃度とみなすことができる)及び塩基性度(ポリアミドのNH鎖末端の濃度とみなすことができる)は、電位差測定で測定される。酸性度は次の方法に従って測定される:ポリアミドの試料をベンジルアルコールに0.6重量%の濃度で溶解し、次いでこの試料を0.02Nのテトラブチルアンモニウム水酸化物溶液を使用して電位差測定で測定する。塩基性度は、以下の方法に従って測定される:ポリアミド試料を0.6重量%の濃度でメタクレゾールに溶解し、この試料を0.02Nの過塩素酸溶液を使用して電位差測定で測定する。
【0127】
実施例1 ポリアミド11の調製
ポリアミド11は、触媒として使用される3000ppmのオルトリン酸の存在下で11-アミノウンデカン酸の重縮合によって得られる。このPA11は、55mmol/kgに等しい鎖末端COOH基の濃度及び51mmol/kgに等しい鎖末端NH基の濃度と組み合わせて、1.40の固有粘度を有し、また189℃の溶融温度(ISO規格11357-3:2018に従ったDSCにおける第2の加熱)を有する。
【0128】
実施例2(比較)
反応器(1Lの作業体積)に、実施例1で製造されたPA11 85g及び工業グレードエタノール(純度96%)425gを充填し、インペラー型ターボミキサーを使用して機械的撹拌を行う。撹拌機は、試験全体を通じて、500rpmの速度で動作され、その後、媒体は160℃まで加熱され、続いて1時間の等温保持によってポリアミド11を溶解させる。-60℃/hの速度で20℃まで制御された冷却が行われ、ポリアミドを沈殿させる。沈殿温度は120℃である。次いで反応器は液体を排出され、分散体を大気圧下で75℃のオーブン中で乾燥させる。
【0129】
得られたPA11粉末は以下の特性を有する:固有粘度1.25、体積平均直径66μm、並びに直径Dv10=33μm、Dv50=75μm、及びDv90=108μm、したがってスパン=1.00。このPA11粉末のDSC分析は、第1の加熱時に、137J/gの溶融エンタルピーに関連する、191℃と199℃に2つの明確なピークを伴う二峰性の溶融吸熱を示し(図1)、また結晶化温度T=159℃も示している。差Tf1-Tを計算するために使用されるのは、2つの溶融温度のうち低い方であり、したがってこの差は32℃に等しい。
【0130】
実施例3(比較):
反応器(1Lの作業体積)は、実施例1で製造されたPA11 85g及び工業グレードエタノール(純度96%)425gが反応器中に充填され、インペラー型ターボミキサーを使用して機械的撹拌を行う。撹拌機は、試験全体を通じて、500rpmの速度で動作され、その後、媒体は160℃まで加熱され、続いて1時間の等温保持によってポリアミド11を溶解させる。-60℃/hの速度で115℃まで制御された冷却を行い、ポリアミドを沈殿させ、続いてこの同じ温度で4時間の等温保持によって結晶性を強化する。沈殿温度(T)は120℃である。次いで、制御された冷却をこの同じ-60℃/hの速度で再開して20℃まで下げ、次いで反応器は液体を排出され、分散体を大気圧下で75℃のオーブン中で乾燥させる。
【0131】
得られたPA11粉末は以下の特性を有する:固有粘度1.28、体積平均直径40μm、並びに直径Dv10=27μm、Dv50=42μm、及びDv90=53μm、したがってスパン=0.62。このPA11粉末のDSC分析は、第1の加熱時に、140J/gの溶融エンタルピーに関連する200℃の単峰性の溶融吸熱を示し(図1)、また結晶化温度T=157℃も示している(図2)。差Tf1-Tは43℃に等しい。
【0132】
米国特許出願公開第2008/0166496号による実施例4(比較)
ジアミン末端PA11は、1.25gの4,4’-ジアミノシクロヘキシルメタン(PACM、異性体の混合物)の存在下で250gの11-アミノウンデカン酸を重合することによって調製され、19mmol/kgに等しい鎖末端COOH基の濃度及び67mmol/kgに等しい鎖末端NH基の濃度と組み合わせて、1.42の固有粘度を有する。
【0133】
反応器(1Lの作業体積)に、このジアミン末端PA11 85g及び工業用グレードエタノール(純度96%)425gを充填し、インペラー型ターボミキサーを使用して機械的撹拌を行う。撹拌機は、試験全体を通じて、500rpmの速度で動作される。媒体は152℃まで加熱され、次いでこの温度で1時間等温保持される。次に、媒体は-25℃/hの速度で112℃まで冷却され、次いでこの温度で1時間維持される。沈殿温度(T)は112℃である。次いで、媒体は-25℃/hの速度で周囲温度まで冷却される。次いで反応器は液体を排出され、撹拌乾燥機内で70℃/400mbarでエタノールを留去し、次いで粉末を84℃/20mbarで乾燥させる。
【0134】
得られたPA11粉末は、以下の粒径特性を有する:体積平均直径89μm、並びに直径Dv10=65μm、Dv50=93μm、及びDv90=123μm、したがってスパン=0.62。このPA11粉末のDSC分析は、第1の加熱時に、140J/gの溶融エンタルピーに関連する、193℃にショルダーと202℃にピークを持つ二峰性の溶融吸熱を示し(図1)、また結晶化温度T=162℃も示している(図3)。差Tf1-Tを計算するために使用されるのは、2つの溶融温度のうち低い方であり、したがってこの差は29℃に等しい。
図1
図2
図3
【国際調査報告】