(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-10-15
(54)【発明の名称】エステトロール成分を含む局所用組成物及び創傷治癒のための当該組成物の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/565 20060101AFI20251007BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20251007BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20251007BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20251007BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20251007BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20251007BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20251007BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20251007BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20251007BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20251007BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20251007BHJP
A61L 15/44 20060101ALI20251007BHJP
【FI】
A61K31/565
A61P17/02
A61K9/06
A61K9/107
A61K9/08
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/38
A61K47/32
A61K9/70 401
A61L15/44 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2025519951
(86)(22)【出願日】2023-10-06
(85)【翻訳文提出日】2025-05-23
(86)【国際出願番号】 EP2023077760
(87)【国際公開番号】W WO2024074700
(87)【国際公開日】2024-04-11
(32)【優先日】2022-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】525127068
【氏名又は名称】ネウラリス エスアー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガイド シェヴロネ エロイーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジェラール セリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ロンソーニ ザンカン ラリ
(72)【発明者】
【氏名】ハードマン マシュー ジェイムズ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA17
4C076AA22
4C076AA72
4C076BB31
4C076CC19
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD39
4C076DD41
4C076DD44
4C076EE09
4C076EE23
4C076EE49
4C076EE52
4C076EE55
4C076FF11
4C076FF17
4C076FF34
4C081AA12
4C081BB06
4C081CA082
4C081CA182
4C081CC02
4C081CD022
4C081CE02
4C081DA05
4C081DA12
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA09
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA28
4C086MA32
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
(57)【要約】
本発明は、エステトロール成分を含む局所用組成物、及び有効量のエステトロール成分を皮膚に送達するための、特に創傷治癒のための当該組成物の使用に関する。任意に、エステトロール成分は、創傷治癒に好ましい成分を更に含む組成物中に含まれていてよい。本発明は、特に、エステトロールを含むゲル、特にハイドロゲル、クリーム、及び軟膏等の組成物に関する。本発明の組成物は、創傷治癒過程及び患者の回復に対して有益な効果を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.01%~約5%、好ましくは0.02%~1.5%(重量/重量)のエステトロール成分、又は約0.02%~約1%(重量/重量)のエステトロール成分、又は約0.05%~約1.2%(重量/重量)のエステトロール成分、より好ましくは約0.09%~約1.1%(重量/重量)、更により好ましくは0.1%~1%(重量/重量)のエステトロール成分、最も好ましくは0.3%~0.7%(重量/重量)のエステトロール成分を含む、局所適用用組成物。
【請求項2】
被験体の皮膚の角質層を通じた浸透を可能にする浸透促進剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の組成物を含むハイドロゲル製剤。
【請求項4】
局所創傷治癒において使用される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物又はハイドロゲル。
【請求項5】
エマルジョン、懸濁液、軟膏、ペースト、ローション、ゲル、フォーム、ムース、及びクリームからなる群から選択される製剤である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物、使用される組成物、ハイドロゲル、又は使用されるハイドロゲル。
【請求項6】
浸透促進剤を0.05%~60%(重量/重量)の量で、好ましくは0.1%~5%(重量/重量)の量で含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物、使用される組成物、ハイドロゲル、又は使用されるハイドロゲル。
【請求項7】
前記浸透促進剤は、角質層を通じた浸透を可能にする物質又は分子と溶媒とを含み、好ましくは、前記浸透促進分子は、エタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Transcutol(商標))等のエーテル、ベンジルアルコール、脂肪酸及びそれらのエステル、若しくはそれらのあらゆる組合せからなる群から選択され、又は、
前記浸透促進剤は、1種以上のポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール(PG)、若しくはそれらの組合せを含む溶媒を含む、請求項6に記載の組成物、使用される組成物、ハイドロゲル、又は使用されるハイドロゲル。
【請求項8】
前記PEGは、PEG200、PEG300、PEG400、PEG500、PEG600、又はそれらのあらゆる組合せからなる群から選択されるPEG等の約200g/molから約600g/molの間の分子量を有するPEGである、請求項7に記載の組成物、使用される組成物、ハイドロゲル、又は使用されるハイドロゲル。
【請求項9】
更にベンジルアルコールを、好ましくは1%~3%の量で含み、及び/又は更に増粘剤を0.3%~20%(重量/重量)の量で含み、好ましくは増粘剤を0.5%~3%(重量/重量)の量で含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物、使用される組成物、ハイドロゲル、又は使用されるハイドロゲル。
【請求項10】
前記増粘剤は、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、高分子量架橋アクリル系ポリマー、非イオン性トリブロックコポリマー、若しくはそれらのあらゆる組合せからなる群から選択され、好ましくは、前記高分子量架橋アクリル系ポリマーは、Carbopol(商標)であり、又は前記HECは、HEC250 HHXであり、又は前記非イオン性トリブロックコポリマーは、約1800から約4000の間のおおよその分子量及び約70%~約80%のポリオキシエチレン含有量を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物、使用される組成物、ハイドロゲル、又は使用されるハイドロゲル。
【請求項11】
更に保存剤を1%~10%(重量/重量)、好ましくは1%~3%(重量/重量)の量で含み、好ましくは、前記保存剤は、リゾチーム、ナイシン、第四級アンモニウム保存剤、パラベン、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、天然保存剤、及びそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物、使用される組成物、ハイドロゲル、又は使用されるハイドロゲル。
【請求項12】
更にエモリエントを2.5%~30%(重量/重量)、好ましくは8%~12%(重量/重量)の量で含み、好ましくは、前記エモリエントは、グリセロール、アセチルアルコール、ステアリルアルコール、ステアリン酸、パルミチン酸イソプロピル、スクアレン、ラノリン、グリセリン、ワセリン、鉱油、及びそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物、使用される組成物、ハイドロゲル、又は使用されるハイドロゲル。
【請求項13】
前記組成物又は前記製剤は、水等の水溶液により100%(重量/重量)まで補充される、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物、使用される組成物、ハイドロゲル、又は使用されるハイドロゲル。
【請求項14】
約0.1~約5%(重量/重量)の浸透促進剤、好ましくは約1%~約2.5%(重量/重量)の浸透促進剤を含み、より好ましくは、前記浸透促進剤は浸透促進剤分子と溶媒又は溶媒系とを含み、
約0.3%~約3%(重量/重量)の増粘剤を含み、
任意に、保存剤及び/又はエモリエントを含み、
水を100%(重量/重量)まで含むか、又は、
約38%~約45%(重量/重量)のPEG400を含み、
約0.1%~約1%(重量/重量)のCarbopol(商標)を含み、かつ、
約0.8%~約3%(重量/重量)のTranscutol(商標)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物、使用される組成物、ハイドロゲル、又は使用されるハイドロゲル。
【請求項15】
急性創傷、手術創傷、急性外傷によって引き起こされる創傷、慢性創傷、糖尿病性疾患によって引き起こされる及び/又は維持される創傷、皮膚創傷治癒遅延障害又は創傷治癒の細菌による遅延を含む創傷治癒障害を伴う被験体の創傷、創縁の移動の減少を特徴とする創傷治癒、感染創傷部位、戦闘創傷、熱傷、及び慢性下肢潰瘍の処置において使用される、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物、使用される組成物、ハイドロゲル、又は使用されるハイドロゲル。
【請求項16】
創傷被覆材、包帯、バンドエイド、パッチ、又はプラスター中に含まれている、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物、使用される組成物、ハイドロゲル、又は使用されるハイドロゲル。
【請求項17】
請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物 ハイドロゲルの1つ以上の投薬単位を含む包装物であって、好ましくは、前記包装単位は、箱、ディスプレイユニット、アンプル、ボトル、バイアル、チューブ、注射器、カートリッジ、バッグ、サシェ、パウチ、フィルム、ラミネート、ホイル、缶、シリンダー、又は加圧容器である、包装物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、有効量のエステトロール成分によって皮膚の創傷を処置することに関する。さらに、本発明は、皮膚の創傷を処置するのに適したエステトロール成分を含む医薬組成物に関する。本発明の主題である医薬組成物及び関連方法は、創傷、創傷治癒過程、そして最終的には患者の回復に好ましい効果を及ぼす。
【背景技術】
【0002】
生涯を通じて、どの個体も、外傷、外科手術、熱傷、並びに皮膚及び任意にその下の組織の病理学的に誘発された創傷等の皮膚創傷を引き起こす有害な刺激又は事象に何度もさらされる。多くの場合、これらの創傷は、消毒及び/又は創傷部位の一時的な被覆等の行為を含む日常的な適切なケアの後に被験体への大きな負担なく治癒する。しかしながら、個体が創傷治癒障害を伴う場合、創傷部位に過度の炎症若しくは感染が見られる場合、又は創傷部位が個体のかなりの範囲を覆っている場合には、合併症が生ずる可能性がある。
【0003】
創傷治癒は、皮膚組織の「基本的な」機能として認識されることが多いが、様々な複雑な分子機序の集大成である。正常な皮膚組織(すなわち、創傷のない皮膚組織)においては、表皮(皮膚の最外層)及び真皮(dermis)(真皮(corium))によって外部刺激に対する保護層が形成されている(非特許文献1)。当該保護層に損傷が加わると、その損傷を修復することを目的とした修復過程が開始される。この修復過程は、当該技術分野において詳細に説明されており、止血(血液凝固)、炎症、増殖(新たな組織の成長)、及び成熟(組織リモデリング)といった後続段階を含む。
【0004】
より詳細に調べたところ、上記の修復過程は、当該技術分野(例えば、非特許文献2)においても研究対象となっている幾つかの分子機序を特徴としている。簡潔に言えば、凝固期(一般的には炎症期の一部と見なされる)の間に、フィブリンクロットが生成されて更なる失血が妨げられる。炎症期は、初期の血管収縮及びそれに続く血管拡張、そして好中球、単球、及びマクロファージ等の細胞の動員を特徴とする。増殖期は、血管新生、線維芽細胞分化、及び肉芽組織の形成を特徴とする。肉芽組織の形成により、遊走して創傷部位を覆う上皮細胞(ケラチノサイト)による再上皮化が可能となる。さらに、増殖期の後半部には線維芽細胞を介した創傷の収縮がもたらされる。最終的な創傷治癒期、すなわち成熟期は、創傷部位に形成されたコラーゲン線維が再配置して架橋することを特徴とし、それにより創傷の引張強度が増加し、かつ瘢痕組織の形成が誘発される。創傷治癒障害を伴う個体においては、上記期又はそれらの部分過程の1つ以上が妨害されているか、又はそれらを本質的に欠如している(非特許文献3)。
【0005】
特に糖尿病、癌、及び自己免疫疾患等の慢性疾患の有病率の増加の結果として今後数十年間で慢性創傷の有病率の増加が予想されるため、適切な創傷ケアの重要性は誇張しすぎることはない。疫学的研究では、既にこの医療負担の急増が警告されている。195箇所を超える国及び地域からの世界、地域、及び国のデータに基づくと、2005年の4億9288万3000人と比較して2015年の6億503万6000人へと10年間で有病率の顕著な増加が報告されている(非特許文献4によって報告されている)。世界的な見積もりでは、毎年少なくとも700万人が手術後の合併症に苦しんでいることが示唆されており、そこには少なくとも100万人の死亡が含まれている。急性創傷治癒の遅延により、術後の罹患率及び死亡率のリスクが高まる。良い例は手術部位感染症であり、これは院内感染の2番目の主な原因である。急性創傷における主な合併症は、加齢による治癒不全及びホルモン欠乏に関連付けられている。ここで、65歳以上の人口(現在、全体の15%~28%)が世界的に増加している。
【0006】
現在、数多くの創傷ケア戦略(機械的及び薬学的の両方)が存在するものの、有効な創傷ケア戦略及び当該創傷ケアを助ける医薬組成物に対する未だ満たされていない需要が依然として存在する。このような組成物は、理想的には、高齢被験体及び、例えば運動能力の低下及び/又は基礎病理により引き起こされる慢性創傷を患っている被験体等の創傷治癒障害を伴う被験体の創傷治癒を助けるはずである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kolarsick et al., JDNA, 2011
【非特許文献2】Rodrigues et al., Physiol Rev, 2019
【非特許文献3】Avishai et al., EPMA J, 2017
【非特許文献4】Global Burden of Disease (GBD) 2015 Disease and Injury Incidence and Prevalence Collaborators, Lancet, 2016
【発明の概要】
【0008】
本明細書に含まれる実施例によって詳細に証明されているように、本発明者らは、驚くべきことに、エステトロールが、創傷治癒障害を特徴とする被験体における創傷治癒を含む創傷治癒において使用するのに特に適していることを見出した。広範囲にわたる実験により、創傷治癒を助けることを目的とする医薬組成物中にエステトロール成分を安全に含めることができることが判明した。当該組成物は、女性被験体におけるエストロゲンの局所的使用により、不注意の全身曝露によって起こり得る子宮重量の増加に対する効果は全くないか、又は限定的である。より詳細には、本発明者らは、創傷治癒を助けることを目的とする医薬組成物中に特定量のエステトロール成分を含めることにより、有効性と子宮重量の増加等の有害作用との間で前例のない妥協点が得られることを見出した。子宮重量増加が見られないことは、エステトロール成分を含む医薬組成物の全身効果が限定的であるどころか、或る特定の投薬量では、浸透促進剤を含んでいても、ほぼ間違いなく全身効果が見られないことを示している。
【0009】
in vitro及びin vivoでの創傷治癒実験から、エステトロールは、例えば創傷閉鎖、再上皮化、及び抗炎症に対して、少なくともエストラジオールと同様の効果を発揮するという結果になる。エストラジオール及びエステトロールの処置により線維芽細胞のER発現が増加する一方で、エステトロールはフィブロネクチン発現も促進し、かつMMP活性を阻害する。エステトロールはまた、スクラッチアッセイにおいて真皮線維芽細胞の遊走を促進し、エストラジオールよりも高い程度で表皮ケラチノサイトの遊走を促進するようである。さらに、エステトロールは、エストラジオールよりもわずかに高い規模の効果で創傷関連表皮遺伝子発現を調整して、エストラジオールよりも効率的に創傷閉鎖を促進することが示されている。創傷治癒に対するこれらの改善と(例えば、子宮重量増加に対する)全身効果の低下とを兼ね備えることで、エステトロール組成物は、創傷治癒に使用されるエストラジオール組成物及びその他のエストロゲンベースの組成物にとっての魅力的な代替物となる。
【0010】
最後に、幾つかの実施の形態において、上記組成物は追加的に、創傷治癒の状況における更なる利点である段階的な放出プロファイルを特徴とする。したがって、本発明は、新しい革新的な創傷ケア戦略に大きく寄与する。
【0011】
したがって、第1の態様において、本発明は、0.02%~1.5%(重量/重量)のエステトロール成分を含み、好ましくは0.05%~1.2%(重量/重量)のエステトロール成分、約0.02%~約1%(重量/重量)のエステトロール成分、約0.03%~約1%(重量/重量)のエステトロール成分、好ましくは約0.04%~約1%(重量/重量)のエステトロール成分、より好ましくは約0.05%~約1%(重量/重量)のエステトロール成分、最も好ましくは約0.06%~約0.5%(重量/重量)のエステトロール成分、より好ましくは約0.09%~約1.1%(重量/重量)、更に一層0.1%~1%(重量/重量)のエステトロール成分、最も好ましくは0.3%~0.7%(重量/重量)のエステトロール成分を含む、医薬組成物に関する。好ましくは、当該組成物は、局所用途用、又は局所適用用、例えば皮膚への局所適用用である。
【0012】
好ましくは、当該組成物は、局所適用時又は局所適用後に被験体に重大な全身効果を引き起こさない。
【0013】
特定の実施の形態において、医薬組成物は、約0.03%~約0.12%(重量/重量)のエステトロール成分、好ましくは約0.04%~約0.08%(重量/重量)のエステトロール成分、より好ましくは約0.05%~約0.07%(重量/重量)のエステトロール成分、最も好ましくは約0.06%(重量/重量)のエステトロール成分を含む。
【0014】
特定の実施の形態において、医薬組成物は、角質層を通じた浸透及び/又は創傷痂皮を通じた浸透を可能にする浸透促進剤を更に含む。
【0015】
特定の実施の形態において、医薬組成物は局所創傷治癒において使用される組成物である。
【0016】
別の態様において、本発明は、局所創傷治癒において使用されるエステトロール成分を含む(医薬)組成物であって、任意に、角質層を通じた浸透を可能にする浸透促進剤を更に含む、組成物に関する。
【0017】
特定の実施の形態において、(医薬)組成物は、約0.01%~約5%(重量/重量)のエステトロール成分、好ましくは約0.02%~約1%(重量/重量)のエステトロール成分、より好ましくは約0.03%~約0.75%(重量/重量)のエステトロール成分、なおもより好ましくは約0.04%~約0.5%(重量/重量)のエステトロール成分、最も好ましくは約0.06%(重量/重量)のエステトロール成分を含む。
【0018】
なおも別の態様において、本発明は、約0.02%~約1.5%(重量/重量)のエステトロール成分、より詳細には約0.05%~1.2%(重量/重量)、更により詳細には約0.09%~約1.1%(重量/重量)、又は約0.1%~約1%(重量/重量)のエステトロール成分を含む、ハイドロゲル製剤に関する。
【0019】
特定の実施の形態において、ハイドロゲルは、約0.05%~約1.3%(重量/重量)、より詳細には約0.08%~約1.2%(重量/重量)、更により詳細には約0.09%~約1.1%(重量/重量)、又は約0.1%~約1%(重量/重量)のエステトロール成分を含む。代替的な実施の形態において、ハイドロゲルは、約0.03%~約0.75%(重量/重量)のエステトロール成分、好ましくは0.04%~約0.5%(重量/重量)のエステトロール成分、より好ましくは約0.05%~約0.25%(重量/重量)のエステトロール成分、最も好ましくは約0.06%(重量/重量)のエステトロール成分を含む。
【0020】
実施例のセクションから導き出すことができるように、0.06%(重量/重量)のエステトロール成分は、試験されたマウスにおいて子宮重量増加に対する効果を有しないことが明らかとなった。これは、0.06%のエストラジオールを含む市販のEstrogel(商標)を適用することによる子宮重量増加に対する効果とは大きく異なっている。
【0021】
さらに、0.22%及び0.5%(重量/重量)のより高濃度のエステトロールでもなお、マウスにおいて、子宮重量増加に対する効果がEstrogel(商標)と比較して大幅に低かった。これは、エステトロールを含む組成物の局所適用が被験体において全身効果が生じる傾向がより低いことを示しており、これは女性被験体において特に重要である。特定の実施の形態において、ハイドロゲルは、角質層を通じた浸透を可能にする浸透促進剤を更に含む。
【0022】
特定の実施の形態において、ハイドロゲルは局所創傷治癒において使用される。
【0023】
任意に、本明細書に記載されるいずれかの態様及び実施の形態の(医薬)組成物は、エマルジョン、懸濁液、軟膏、ペースト、ローション、ゲル(ハイドロゲルを含む)、フォーム、ムース、及びクリームからなる群から選択される製剤の形態である。
【0024】
(医薬)組成物がハイドロゲルである実施の形態において、当該ハイドロゲルは、好ましい放出プロファイルを特徴とし、例えば、限定されるものではないが、クリーム剤等の他の製剤と比較してより好ましい放出プロファイルを特徴とする。
【0025】
好ましい実施の形態において、本明細書に記載されるハイドロゲルは、40:30:30(容量/容量/容量)のエタノール:PEG400:水のレセプター溶液中でアイソポアメンブレンを越えて1時間の平方根以内に少なくとも約2.5μg/cm2、少なくとも約5μg/cm2、少なくとも約7μg/cm2、少なくとも約10μg/cm2、少なくとも約15μg/cm2、少なくとも約20μg/cm2、少なくとも約25μg/cm2、好ましくは少なくとも約50μg/cm2、より好ましくは少なくとも100μg/cm2、より好ましくは少なくとも約150μg/cm2、より好ましくは少なくとも約200μg/cm2の放出されるエステトロール成分の平均累積量を特徴とする。創傷の表面に応じて、多量すぎるエステトロールの累積投与をもたらさないよう、エステトロール成分の濃度を下げる必要がある場合がある。この濃度は医師又は薬剤師によって容易に計算され得る。
【0026】
好ましい実施の形態において、本明細書に記載されるハイドロゲルは、40:30:30(容量/容量/容量)のエタノール:PEG400:水のレセプター溶液中でアイソポアメンブレンを越えて8時間以内に少なくとも約50μg/cm2、少なくとも約100μg/cm2、少なくとも約150μg/cm2、少なくとも約200μg/cm2、少なくとも約250μg/cm2、少なくとも約300μg/cm2、少なくとも約350μg/cm2、少なくとも約400μg/cm2、少なくとも約450μg/cm2の放出されるエステトロール成分の平均累積量を特徴とする。より好ましくは、本明細書に記載されるハイドロゲルは、少なくとも約80μg/cm2の放出されるエステトロール成分の平均累積量を特徴とする。
【0027】
好ましくは、本明細書に記載されるハイドロゲルは、1時間後に少なくとも約15%、好ましくは少なくとも約20%という40:30:30(容量/容量/容量)のエタノール:PEG400:水のレセプター溶液へのエステトロール成分の適用用量の平均%、及び/又は8時間後に少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは8時間後に少なくとも90%という40:30:30(容量/容量/容量)のエタノール:PEG400:水のレセプター溶液へのエステトロール成分の適用用量の平均%を特徴とする。
【0028】
上記のいずれの態様においても、(医薬)組成物、使用される(医薬)組成物、又はハイドロゲルは、浸透促進剤を約0.5%~約60%(重量/重量)、又は好ましくは約0.05%~約5%(重量/重量)の量で含んでいてよい。好ましくは、浸透促進剤は、角質層を通じた浸透を可能にする物質又は分子(すなわち、浸透促進分子)と溶媒とを含む。好ましくは、浸透促進分子は、エタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Transcutol(商標))等のエーテル、ベンジルアルコール、脂肪酸及びそのエステル、又はそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される。好ましくは、浸透促進剤は、1種以上のポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール(PG)、又はそれらの組合せを含む溶媒を含む。好ましくは、PEGは、PEG200、PEG300、PEG400、PEG500、PEG600、又はそれらのあらゆる組合せからなる群から選択されるPEG等の約200g/molから約600g/molの間の分子量を有するPEGである。より好ましくは、浸透促進剤は、PEG400等の約400g/molの分子量を有するPEGを含む溶媒を含む。幾つかの態様において、浸透促進剤は、最大50%のPEG400(重量/重量)、及び/又は約15%~45%のPEG400(重量/重量)、及び/又は約20%~40%のPEG400(重量/重量)、及び/又は約30%~35%のPEG400(重量/重量)を含む。最も好ましくは、浸透促進剤は、約14%~約21%のPEG400(重量/重量)、及び/又は約10%~約25%のPEG(重量/重量)を含む。代替的な好ましい実施の形態において、浸透促進剤は、約0.5%~約10%の、例えばPEG400等の浸透促進剤を含む。更なる代替的な好ましい実施の形態において、浸透促進剤は、約0.5%~約5%の、例えばPEG400等の浸透促進剤を含む。
【0029】
或る特定の実施の形態において、(医薬)組成物、使用される(医薬)組成物、又はハイドロゲルは、ベンジルアルコールを、好ましくは約1%~約3%の量で含む。
【0030】
上記のいずれの態様においても、(医薬)組成物、使用される(医薬)組成物、又はハイドロゲルは増粘剤を含んでいてよい。特定の実施の形態において、(医薬)組成物、使用される(医薬)組成物、又はハイドロゲルは、増粘剤を約0.3%~約20%(重量/重量)、又は好ましくは約0.3%~約3%(重量/重量)、又はより好ましくは0.5%~3%(重量/重量)の量で含む。好ましくは、(医薬)組成物、使用される(医薬)組成物、又はハイドロゲルは、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、高分子量架橋アクリル系ポリマー、非イオン性トリブロックコポリマー、又はそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される増粘剤を含む。好ましくは、高分子量架橋アクリル系ポリマーはCarbopol(商標)である。
【0031】
好ましくは、HECはHEC250 HHXである。好ましくは、非イオン性トリブロックコポリマーは、約1800から約4000の間のおよその分子質量、及び約70%~約80%のポリオキシエチレン含有量を有する。好ましくは、非イオン性トリブロックコポリマーは、ポロキサマー188、ポロキサマー407等のポロキサマー、又はそれらの組合せから選択される。
【0032】
上記のいずれの態様においても、(医薬)組成物、使用される(医薬)組成物、又はハイドロゲルは保存剤を含んでいてよい。特定の実施の形態において、(医薬)組成物、使用される(医薬)組成物、又はハイドロゲルは、保存剤を約1%~約10%(重量/重量)、好ましくは約1%~約3%(重量/重量)の量で含んでいてよい。好ましくは、保存剤は、リゾチーム、ナイシン、第四級アンモニウム保存剤、パラベン、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、天然保存剤、及びそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される。
【0033】
上記のいずれの態様においても、(医薬)組成物、使用される(医薬)組成物、又はハイドロゲルはエモリエントを含んでいてよい。特定の実施の形態において、(医薬)組成物、使用される(医薬)組成物、又はハイドロゲルは、エモリエントを約2.5%~約30%(重量/重量)、好ましくは約8%~約12%(重量/重量)、最も好ましくは約10%(重量/重量)の量で含んでいてよい。好ましくは、エモリエントは、グリセロール、アセチルアルコール、ステアリルアルコール、ステアリン酸、パルミチン酸イソプロピル、スクアレン、ラノリン、グリセリン、ワセリン、鉱油、及びそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される。
【0034】
したがって、本明細書に記載されるいずれの態様及び実施の形態においても、(医薬)組成物、使用される(医薬)組成物、又はハイドロゲルは、エステトロール成分に加えて、浸透促進剤、増粘剤、及び任意の成分として保存剤及び/又はエモリエントを含んでいてよく、これらはそれぞれ、好ましくは、本明細書に記載される群から選択される。本明細書に記載されるいずれの態様及び実施の形態においても、(医薬)組成物を、水等の水溶液により100%(重量/重量)まで補充することができる。
【0035】
特定の実施の形態において、(医薬)組成物、使用される(医薬)組成物、又はハイドロゲルは、エステトロール成分(重量/重量)に加えて、
約0.1%~約60%(重量/重量)の浸透促進剤(好ましくは、当該浸透促進剤は浸透促進剤分子と溶媒又は溶媒系とを含む)、
約0.3%~約20%(重量/重量)の増粘剤、
任意に、保存剤及び/又はエモリエント、
水(100%(重量/重量)まで)、
を含んでいてよい。
【0036】
更なる実施の形態において、(医薬)組成物、使用される(医薬)組成物、又はハイドロゲルは、0.05%~0.6%(重量/重量)のエステトロールを含むのに加えて、
約0.1%~約5%(重量/重量)の浸透促進剤(好ましくは、当該浸透促進剤は浸透促進剤分子と溶媒又は溶媒系とを含む)、
約0.3%~約3%(重量/重量)の増粘剤、
任意に、保存剤及び/又はエモリエント、
水(100%(重量/重量)まで)、
を含んでいてよい。
【0037】
更なる特定の実施の形態において、(医薬)組成物、使用される(医薬)組成物、又はハイドロゲルは、エステトロール成分(重量/重量)に加えて、
約16%~約20%(重量/重量)のPEG400、
約18%~約22%(重量/重量)のPG、
約8%~約12%(重量/重量)のグリセロール、
約1%~約2%(重量/重量)のHEC、及び、
約1.5%~約2.5%(重量/重量)のベンジルアルコール、
を含んでいてよい。
【0038】
代替的な実施の形態において、(医薬)組成物、使用される(医薬)組成物、又はハイドロゲルは、エステトロール成分に加えて、
約18%~約22%(重量/重量)のPEG400、
約0.1%~約1%(重量/重量)のCarbopol(商標)、及び、
約4%~約6%(重量/重量)のTranscutol(商標)、
を含んでいてよい。
【0039】
なおも代替的な実施の形態において、(医薬)組成物、使用される(医薬)組成物、又はハイドロゲルは、エステトロール成分に加えて、
約25%~約55%(重量/重量)のPEG400、好ましくは約35%~約45%(重量/重量)のPEG400、
約0.1%~約1%(重量/重量)のCarbopol(商標)、好ましくは約0.25%~約0.75%(重量/重量)のCarbopol(商標)、及び、
約0.1%~約5%(重量/重量)のTranscutol(商標)、好ましくは約0.75%~約3%の(重量/重量)のTranscutol(商標)、
を含んでいてよい。
【0040】
なおも代替的な実施の形態において、(医薬)組成物、使用される(医薬)組成物、又はハイドロゲルは、エステトロール成分に加えて、
約38%~約45%(重量/重量)のPEG400、
約0.1%~約1%(重量/重量)のCarbopol(商標)、及び、
約0.8%~約3%(重量/重量)のTranscutol(商標)、
を含んでいてよい。
【0041】
本発明の態様は、本明細書に記載される(医薬)組成物、ハイドロゲル、及び代替物のそれぞれを、医薬として、すなわち治療的及び/又は予防的な文脈において包含する。特定の実施の形態において、上記の態様の(医薬)組成物及びハイドロゲルは創傷治癒において使用される。更なる実施の形態において、創傷治癒における使用は、創傷の処置における局所用製剤としてのそれらの使用に対応する。同様に、本発明の態様は、創傷の局所的処置用の医薬の製造のための本明細書に記載される医薬組成物又はハイドロゲルの使用に関する。上記に関連して、本発明の態様は同様に、局所的創傷の処置方法であって、本明細書に記載される医薬組成物又はハイドロゲルのいずれか1つを被験体の創傷又は創傷部位に投与することを含む、方法を包含する。
【0042】
特定の実施の形態において、上記の態様の(医薬)組成物及びハイドロゲルは急性創傷の処置において使用される。任意に、急性創傷は手術創傷又は急性外傷によって引き起こされる創傷である。創傷は部分層創傷(例えば、植皮の恵皮部)でもあり得る。代替的な実施の形態において、上記の態様の医薬組成物及びハイドロゲルは慢性創傷の処置において使用される。任意に、慢性創傷は糖尿病性疾患によって引き起こされる及び/又は維持される創傷である。慢性創傷の他の主な原因要素は、虚血、放射線、異物、及び長期の外圧である。一般的に慢性創傷は感染創傷又は虚血性創傷に分けられる。
【0043】
特定の実施の形態において、本明細書に記載される医療的使用又は処置により、非処置の創傷と比べて改善された組織学的治癒パラメーターがもたらされる。好ましくは、医療的使用又は処置により、完全創傷閉鎖の発生率の向上、創傷閉鎖の促進、及び/又は手術創傷閉鎖の促進がもたらされる。好ましい実施の形態において、医療的使用又は処置により、美容術とも呼ばれる治癒の質が向上する。特に手術創傷の場合、より少ない瘢痕が認められる。
【0044】
特定の実施の形態において、本明細書に記載される医薬組成物及びハイドロゲルは、炎症を起こした創傷に対して有益な効果を示す。使用することで、炎症自体及び/又は炎症の進行が妨げられる。創傷が再発するのを妨げることもできる。
【0045】
特定の実施の形態において、上記態様の(医薬)組成物及びハイドロゲルは、皮膚創傷治癒遅延障害(impaired delayed cutaneous wound healing)又は創傷治癒の細菌による遅延を含む創傷治癒障害を伴う被験体の創傷の処置において使用される。特定の実施の形態において、創傷治癒障害は、創縁の移動の減少を特徴とする。他の実施の形態において、創傷治癒障害は、創縁の増殖の増加を特徴とする。
【0046】
特定の実施の形態において、上記態様の(医薬)組成物及びハイドロゲルは、感染創傷部位、戦闘創傷、熱傷、及び慢性下肢潰瘍の処置において使用される。幾つかの実施の形態において、上記感染創傷は、再上皮化の減少、増殖の増加、炎症応答の増強、及び創傷マトリックス沈着の乱れと関連付けられる場合がある。これに関して特に研究されている病原体の1つはクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)であり、本明細書に開示されるエステトロール成分を含む組成物は、クレブシエラ・ニューモニエ感染創傷モデルにおいて炎症を軽減することが明らかとなっている。
【0047】
特定の実施の形態において、上記態様の(医薬)組成物及びハイドロゲルは、創傷部位の再上皮化の改善、創傷部位での細胞増殖の増加、創傷部位での/創傷部位における炎症応答の低減、マトリックスリモデリングのようなマトリックス沈着の改善、及び創傷部位での血管新生の改善において使用される。
【0048】
特定の実施の形態において、本明細書に記載される医療的使用又は処置により、美容術とも呼ばれる治癒の質の向上がもたらされる。これは、特に手術創傷治癒の文脈において興味深い側面を形成している。
【0049】
特定の実施の形態において、本明細書に記載される医療的使用又は処置により、非処置の創傷と比べて改善された創傷部位の炎症プロファイルがもたらされる。好ましくは、医療的使用又は処置により、非処置の創傷と比べて軽減された局所創傷炎症を示すマクロファージプロファイル及び好中球プロファイルの改善がもたらされる。
【0050】
任意に、被験体は、50歳以上、又は好ましくは60歳以上の被験体等の高齢の被験体である。任意に、本明細書に記載される(医薬)組成物又はハイドロゲルは、処置又は医療的使用の一環として、少なくとも2回、異なる場面で創傷部位に適用される。任意に、処置は、少なくとも1週間、又はそれどころか1ヶ月以上、例えば12週間の期間に及ぶ場合がある。代替的に、本明細書に記載される(医薬)組成物又はハイドロゲルは、長期間にわたって継続的に創傷部位に適用される。好ましくは、長期間とは、少なくとも1日、少なくとも1週間、又は少なくとも1ヶ月に相当する。特定の実施の形態において、本明細書に記載される(医薬)組成物又はハイドロゲルは、創傷被覆材、包帯、パッチ、又はプラスターに含まれる。各種のスキャフォールド又はマトリックスを使用することが可能である。処置は長期、例えば12週間を要する場合もあり、本明細書に記載される形態は、長時間の投与期間を容易にするのに特に適している。
【0051】
本発明の更なる態様は、本明細書のあらゆる実施の形態に記載されたハイドロゲルの医薬組成物を含む包装単位に関する。包装単位は、好ましくは、本明細書に記載される(医薬)組成物(又は任意にハイドロゲル)の1つ以上の投薬単位を含む。適切な包装単位は、液体を封じ込めて保存することができるあらゆる容器を含む。任意に、包装単位は、箱、ディスプレイユニット、アンプル、ボトル、バイアル、チューブ、注射器、カートリッジ、バッグ、サシェ、パウチ、フィルム、ラミネート、ホイル、缶、シリンダー、又は加圧容器である。
【0052】
本発明の上記の及び更なる態様及び実施形態は、以下の部分及び添付の特許請求の範囲において記載されている。添付の特許請求の範囲の主題はこれにより本明細書に詳細に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】40:30:30(容量/容量/容量)のエタノール:PEG400:水のレセプター溶液中でアイソポアメンブレンを越えて10種の製剤から1時間から8時間の間の実験期間(時間の平方根として表される)で放出されたエステトロール一水和物の単位面積当たりの平均累積量(μg/cm
2)を示す図である。エラーバーは平均の標準偏差を表す(n=6)。
【
図2】40:30:30(容量/容量/容量)のエタノール:PEG400:水のレセプター溶液中でアイソポアメンブレンを越えて7種の水性ゲル製剤から1時間から8時間の間の実験期間(時間の平方根として表される)で放出されたエステトロール一水和物の単位面積当たりの平均累積量(μg/cm
2)を示す図である。エラーバーは平均の標準偏差を表す(n=6)。
【
図3】40:30:30(容量/容量/容量)のエタノール:PEG400:水のレセプター溶液中でアイソポアメンブレンを越えて3種のクリーム製剤から1時間から8時間の間の実験期間(時間の平方根として表される)で放出されたエステトロール一水和物の単位面積当たりの平均累積量(μg/cm
2)を示す図である。エラーバーは平均の標準偏差を表す(n=6)。
【
図4】40:30:30(容量/容量/容量)のエタノール:PEG400:水のレセプター溶液中でアイソポアメンブレンを越えて4種の水性ゲル製剤から1時間から8時間の間の実験期間(時間の平方根として表される)でレセプター溶液中に放出されたエステトロール一水和物の適用用量の平均パーセンテージ(%)を示す図である。エラーバーは平均の標準偏差を表す(n=5~6)。
【
図5】40:30:30(容量/容量/容量)のエタノール:PEG400:水のレセプター溶液中でアイソポアメンブレンを越えて4種の水性ゲル製剤から1時間から8時間の間の実験期間(時間の平方根として表される)で放出されたエステトロール一水和物の単位面積当たりの平均累積量(μg/cm
2)を示す図である。エラーバーは平均の標準偏差を表す(n=5~6)。
【
図6】局所プラセボ(PBO)、EstroGel(商標)(EG)、AG24、AG25、及びAG26の適用が子宮重量及び形態に対して及ぼす効果を示す図である。8週齢の雌マウスに、創傷を受ける24時間前及び2時間前にLPSを皮下注射した(1群当たり6匹のマウス)。EstroGel(商標)、AG24、AG25、AG26、又はプラセボを、創傷を受ける1日前、創傷を受けた時点、並びに創傷を受けた1日後、2日後、3日後、及び4日後に創傷の上部にわたって薄層で適用した。5日間での子宮の形態変化を、子宮重量の測定(A)及び子宮写真の撮影(B)によって評価した。スケールバー=10mm。結果を平均±s.e.m.として表す。プラセボに対する差を、対応のあるt検定を使用して決定した。
*P値≦0.05、
***P値≦0.001。
【
図7】局所的E4処置によりLPS誘発性創傷治癒遅延マウスモデルにおいて再上皮化が促進されることを示す図である。8週齢の雌マウスに、創傷を受ける24時間前及び2時間前にLPSを皮下注射した(1群当たり6匹のマウス)。次いで、EstroGel(商標)、AG24、AG25、AG26、又はプラセボを、創傷を受ける1日前、創傷を受けた時点、並びに創傷を受けた1日後、2日後、3日後、及び4日後に創傷の上部にわたって薄層で適用した。組織学的画像を使用して、5日目の創傷再上皮化のパーセンテージを計算した。組織切片をK14免疫組織化学検査にかけて、新しく形成している表皮を視覚化した。再上皮化の度合いを、新生表皮の長さを創傷縁間の距離で割り、これに100を掛けたものとして求めた。結果を平均±s.e.m.として表す。プラセボに対する差を、対応のあるt検定を使用して決定した。
*P値≦0.05、
***P値≦0.001、1群当たりn=6匹のマウス。平均+SEM。
【
図8】局所的E4処置により創傷好中球数の減少がもたらされることを示す図である。創傷好中球の免疫組織化学検査及び定量化(A)と、各処置群についての代表的な画像(B)。
**p≦0.01、1群当たりn=6匹のマウス。平均+SEM。
【
図9】局所的E4処置により創傷マクロファージ数の減少がもたらされることを示す図である。創傷マクロファージの免疫組織化学検査及び定量化(A)と、各処置群についての代表的な画像(B)。
*p≦0.05、
**p≦0.01、1群当たりn=6匹のマウス。平均+SEM。
【
図10】局所的E4処置により炎症収束創傷の表現型が促進され、M1マーカー発現が減少し、かつM2マーカー発現が増加することを示す図である。創傷組織のRNAを単離し、M1(TNF-α及びIL1-β)マーカー及びM2(Fizz1及びYm1)マーカーの創傷発現を、qPCRを介して定量化した。
*p≦0.05、
**p≦0.01、1群当たりn=6匹のマウス。平均+SEM。
【
図11】実験マウスから分離された腹腔マクロファージのin vitroの分極化は、局所的処置が免疫細胞の表現型に対して全身効果を及ぼすことを示していることを示す図である。腹腔マクロファージを、in vivo研究の完了時に分離した。細胞を培養し、in vitroでM1表現型又はM2表現型に分極化させ、M1(Tnf-α及びiNOS)マーカー及びM2(Arg1及びYm1)マーカーの発現を、qPCRを介して定量化した。
*p≦0.05、n=6匹のマウスからプールされた細胞に対してn=3の反復。平均+SEM。
【
図12】局所プラセボ(PBO)、EstroGel(商標)(EG)、AG26、及びAG28の適用が子宮重量及び形態に対して及ぼす効果を示す図である。8週齢の雌マウスに、創傷を受ける24時間前及び2時間前にLPSを皮下注射した(1群当たり6匹のマウス)。0日目だけに(単回投与)、又は-1日目、0日目、1日目、及び2日目(反復投与)に、EstroGel(商標)、AG26、AG28、又はそれらのプラセボを創傷の上部にわたって薄層で適用した。3日間での子宮の形態変化を子宮重量の測定によって評価した。結果を平均±s.e.m.として表す。プラセボに対する差を、対応のあるt検定を使用して求めた。
*P値≦0.05、及び
***P値≦0.001。
【
図13】A)局所プラセボ(PBO)、EstroGel(商標)(EG)、AG26、及びAG28の適用が再上皮化に対して及ぼす効果を示す図である。8週齢の雌マウスに、創傷を受ける24時間前及び2時間前にLPSを皮下注射した(1群当たり6匹のマウス)。次いで、0日目だけに(単回投与)、又は-1日目、0日目、1日目、及び2日目(反復投与)に、EstroGel(商標)、AG26、AG28、又はそれらのプラセボを創傷の上部にわたって薄層で適用した。組織学的画像を使用して、3日目の創傷再上皮化のパーセンテージを計算した。組織切片をK14免疫組織化学検査にかけて、新しく形成している表皮を視覚化した。再上皮化の度合いを、新生表皮の長さを創傷縁間の距離で割り、これに100を掛けたものとして求めた。結果を平均±s.e.m.として表す。プラセボに対する差を、対応のあるt検定を使用して求めた。
*P値≦0.05、及び
***P値≦0.001。1群当たりn=6匹のマウス。平均+SEM。B)及びC)単回局所的E4投与により、LPS誘発性創傷治癒遅延マウスモデルにおいて創傷好中球数の減少が既にもたらされていることを示す図である。8週齢の雌マウスに、創傷を受ける24時間前及び2時間前にLPSを皮下注射した(1群当たり6匹のマウス)。次いで、0日目だけに(単回投与)、又は-1日目、0日目、1日目、及び2日目(反復投与)に、EstroGel(商標)(EG、0.06%のE2ゲル)、AG24(0.5%のE4ゲル)、AG25(0.22%のE4ゲル)、及びAG26(0.06%のE4ゲル)、又はプラセボ(PBO)を創傷の上部にわたって薄層で適用した。3日目に組織切片上で1cm
2当たりの好中球細胞数を定量化した。
**p≦0.01、1群当たりn=6匹のマウス。B)平均+SEM及びC)個々のデータ点。
【
図14】E2及びE4のどちらもヒト真皮線維芽細胞の遊走を促進することを示す図である。(A)様々な濃度にわたってビヒクル、E2、又はE4で処置した後、36時間後に閉鎖のパーセンテージを計算した。4つの独立した線維芽細胞ドナーからのデータ(n=8)。(B)同じドナーからの代表的な画像。
**p≦0.01、
*p≦0.05。平均+SEM。
【
図15】培地/血清の組成がヒト真皮線維芽細胞の遊走に対するE2及びE4の効果に影響を与えるかどうかの評価を示す図である。細胞を10%の活性炭処理(CS)FBSを含むDMEM中で維持した後、2%のCS-FBS、0%のFBS、又は2%のFBSのいずれかに切り替え、スクラッチを施し、ビヒクル、E2、又はE4で処置した。閉鎖のパーセンテージを24時間後に計算した。単一のドナーからのデータ(A)及び代表的な画像(B)(n=3)。平均+SEM。
【
図16】E2及びE4のどちらも高継代マウス真皮線維芽細胞の遊走を促進することを示す図である。様々な濃度にわたってビヒクル、E2、又はE4で処置した後、24時間後に閉鎖のパーセンテージを計算した。単一のマウスから分離された細胞からのデータ(n=4)。単一のマウスから分離された細胞からの代表的な画像。
**p≦0.001、
*p≦0.05。平均+SEM。
【
図17】マウス真皮線維芽細胞の遊走に対するE4の効果が高継代細胞においてより大きいことを示す図である。ビヒクル、E2、又はE4で処置した後、24時間後に閉鎖のパーセンテージを計算した。低継代細胞からのデータ(a、b)及び高継代細胞からのデータ(c、d)。結果は、3匹の独立したマウスから分離された細胞に関して示されている(n=12)。同じマウスから分離された細胞からの代表的な画像。
**p≦0.001、
*p≦0.05。平均+SEM。
【
図18】E4がマウス真皮線維芽細胞(MDF)におけるERα及びERβの両方の発現を増加させることを示す図である。ERα(Esr1)、ERβ(Esr2)の発現を、10
-7MにてE2、E4、又はERα(PTT)アゴニスト及びERβ(DPN)アゴニストで処置したMDFから単離されたRNAを使用してqPCRによって測定した。n=3匹の独立したマウスから得られた細胞からのデータ。
**p≦0.01、
*p≦0.05。平均+SEM。
【
図19】E2及びE4がヒト真皮線維芽細胞(HDF)からの上清中のMMP2活性を阻害することを示す図である。n=3の独立したドナーからのHDFをE2又はE4で処置した。MMP2及びMMP9についての標準を含めてザイモグラフィーを実施した。n=3の独立したドナー関するn=6の実験からのデータ(A)。代表的なザイモグラム(B)は、単一の実験/ドナーから示されている。
**p≦0.01、
*p≦0.05。平均+SEM。
【
図20】E4処置により糖尿病マウスからの真皮線維芽細胞においてECM成分の発現が増加するが、野生型マウスでは増加しないことを示す図である。Col1a1及びFn1の発現を、糖尿病(db/db)マウス又は野生型マウスから得られ、かつE2、E4で処置されたMDFから単離されたRNAを使用してqPCRによって測定した。n=3匹の独立したマウスから得られた細胞からのデータ。
*p≦0.05。平均+SEM。
【
図21】E2及びE4のどちらも正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK)の遊走を促進することを示す図である。様々な濃度にわたってビヒクル、E2、又はE4で処置した後、24時間後に閉鎖のパーセンテージを計算した。単一の初代NHEKドナー(n=9~15)からのデータ(A:15%のヒトケラチノサイト成長サプリメント(HKGS)、B:30%のHKGS)。単一の実験からの代表的な画像領域(C)。
**p≦0.01、
*p≦0.05。平均+SEM。
【
図22】E4処置された初代マウス表皮ケラチノサイトでは、ERα及びERβの両方の発現が増加し、ケラチノサイト表現型のマーカーが変化する傾向が強く示されることを示す図である。ERα(Esr1)、ERβ(Esr2)、上皮-間葉転換マーカーSnail、及びびケラチノサイト分化マーカーKrt1の発現を、様々な濃度にわたるE2若しくはE4、又はE2/E4+ERアンタゴニストICIで24時間処置したMEKから単離されたRNAを使用してqPCRによって測定した。n=3匹の独立したマウスから得られた細胞からのデータ。
*p≦0.05。平均+SEM。
【
図23】ヒト免疫THP1細胞系統における実験により、E2及びE4の両方の抗炎症活性が明らかになることを示す図である。THP1細胞をPMA処置によってマクロファージ表現型に分化させ、続いてM1表現型又はM2表現型に分極化させた。次いで、M1マーカーTNF-α及びM2マーカーCCL17の発現を、様々な濃度にてE2又はE4で処置した分極化細胞から単離されたRNAを使用してqPCRによって測定した。n=3。平均+SEM。
【
図24】M1刺激されたL929分化マウス骨髄由来マクロファージ(BMDM)において、E2又はE4での処置後に炎症誘発マーカーが減少することを示す図である。MBDMを20%のL929成長培地を使用して分化させ、20ng/mlのIFN-γ、10pg/mlのLPSを6時間又は24時間使用してM1表現型に分極化させた。E2又はE4での併用処置により、処置した細胞から単離されたRNAを使用して、M1マーカーiNOS、Tnf-α、及びIL1-βの発現(qPCRを介して測定)が減少する傾向が強くもたらされた。n=3匹の独立したマウスから得られたプールされた細胞からのデータ。平均+SEM。
【
図25】M1刺激されたMCSF分化マウス骨髄由来マクロファージ(BMDM)において、E2又はE4での処置後に炎症誘発マーカーが減少することを示す図である。BMDMを30ng/mlのMCSFを使用して分化させ、100ng/mlのIFN-γ、10pg/mlのLPSを6時間使用してM1に分極化させた。次いで、細胞を10
-7MのE2又はE4で併用処置した。M1マーカーiNOS、Tnf-α、及びIL1-βの発現を、処置した細胞から単離されたRNAを使用してqPCRによって測定した。n=3匹の独立したマウスから得られたプールされた細胞からのデータ。
*p≦0.05。平均+SEM。
【
図26】M1に分極化したマウス腹腔マクロファージにおいて、E2又はE4での処置後に炎症誘発マーカーが減少することを示す図である。腹腔マクロファージを新たに分離し、直ちに10
-7MのE2又はE4で前処置し、続いて100ng/mlのIFN-γ及び10pg/mlのLPSを6時間使用して炎症誘発性M1表現型に分極化させた。M1マーカーiNOS、Tnf-α、及びIL1-βの発現を、処置した細胞から単離されたRNAを使用してqPCRによって測定した。n=3匹の独立したマウスから得られた細胞からのデータ。
**p≦0.01、
*p≦0.05。平均+SEM。
【
図27】ER特異的アンタゴニストでのHDFの併用処置により、ERα及びERβのどちらもE4で促進された線維芽細胞の遊走に関与していることが示唆されることを示す図である。ビヒクル、E2、E4、又はE2/E4及びERα特異的アンタゴニストMPP又はERβ特異的アンタゴニストPHTPPにより処置した後、24時間後に閉鎖のパーセンテージを計算した。2つの独立した線維芽細胞ドナーからのデータ(n=6)。
*E4に対してp≦0.05。平均+SEM。
【
図28】ER特異的アンタゴニストでのマウス骨髄由来マクロファージ(BMDM)の併用処置により、ERα及びERβのどちらもE4で促進された抗炎症活性に関与していることが示唆されることを示す図である。BMDMを分離し、20%のL929のGMを使用して分化させ、100ng/mlのIFN-γ及び10pg/mlのLPSを使用して6時間にわたって炎症誘発性のM1表現型に分極化させた。E2刺激及びE4刺激(10
-7M)されたM1分極化細胞をERα特異的アンタゴニストMPP又はERβ特異的アンタゴニストPHTPPで併用処置した。炎症誘発性マーカーIL1-βの発現を、処置した細胞から単離されたRNAを使用してqPCRによって測定した。n=3匹の独立したマウスからの細胞。
**E4に対してp≦0.01。平均+SEM。
【
図29】ER特異的アンタゴニストでのBMDMの併用処置により、ERα及びERβのどちらもE4で促進された抗炎症活性に関与していることが示唆されることを示す図である。BMDMを20%のL929のGMを使用して分化させ、100ng/mlのIFN-γ、10pg/mlのLPSを使用して6にわたってM1に分極化させた。M1に分極化した細胞をE2、E4、Estrogel(商標)(EG)、AG23プラセボ、又はAG23実薬製剤で処置した。qPCRを介してiNOSを測定した。n=5匹~6匹の独立したマウスからの細胞。
*p≦0.05。
**p≦0.01。平均+SEM。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上他に明確な指示のない限り、単数及び複数の両方の指示対象を含む。
【0055】
「含む」("comprising", "comprises")、及び「~で構成される(comprised of)」という用語は、本明細書で使用される場合、「含む」("including", "includes")、又は「含有する」("containing", "contains")と同義であり、これらの用語は、包括的又は非制限的であり、追加の言及されていない構成要員、要素、又は方法工程を排除しない。これらの用語は、「~からなる(consisting of)」及び「本質的に~からなる(consisting essentially of)」も包含し、これらは、特許用語論において十分に確立された意味を享受する。
【0056】
端点による数値範囲の言及は、個々の範囲内に属する全ての数値及び端数、並びに言及される端点を含む。これは、数値範囲が「...から...まで」という表現、又は「...と...との間」という表現、又は別の表現のどれにより導入されているかに関わらず、数値範囲に当てはまる。
【0057】
「約(about)」又は「およそ(approximately)」という用語は、本明細書で使用される場合、パラメーター、量、時間間隔等の測定可能な値にかかる場合、指定される値を基準にしたその値からの変動、例えば、指定される値を基準にしたその値からの±10%以下、好ましくは±5%以下、より好ましくは±1%以下、なおより好ましくは±0.1%以下の変動等を包含することを意味するが、そのような変動が、開示される本発明を実施するのに適切である場合に限る。当然のことながら、「約」又は「およそ」という修飾語がかかる値は、それ自身も具体的にかつ好ましく、開示されている。
【0058】
一方で、「1つ以上」又は「少なくとも1つ」という用語、例えば、構成要員の群のうちの1つ以上の構成要員又は少なくとも1つの構成要員等は、それ自体が明らかであり、更なる例示として、この用語は、とりわけ、上記構成要員のうちのいずれか1つに対する言及、又は上記構成要員のうちのいずれか2つ以上、例えば、上記構成要員のうちのいずれか3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、又は7つ以上等、及び上記構成要員全てに至る言及を包含する。別の例では、「1つ以上」又は「少なくとも1つ」は、1、2、3、4、5、6、7、又はそれ以上を指す場合がある。
【0059】
本明細書中の本発明に対する背景の検討は、本発明の状況を説明するために含まれている。これは、特許請求の範囲のいずれかの優先日の時点で、言及される資料のいずれかが、いずれかの国において公開された、既知であった、又は共通する一般知識であったことを認めるものではない。
【0060】
本開示全体を通じて、様々な刊行物、特許、及び公開特許明細書は、引用元を特定するようにして参照される。本明細書中に引用される全ての文献は、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。特に、本明細書中で具体的に言及されるそのような文献の教示又はセクションが、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0061】
特に定義されない限り、本発明の開示において使用される全ての用語は、技術用語及び科学用語も含めて、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解するとおりの意味を有する。更なる案内として、本発明の教示がより良く理解されるように、用語の定義を含める。特定の用語が、本発明の特定の態様又は本発明の特定の実施形態に関連して定義される場合、そのような関連性又は意味は、本明細書全体を通じて、すなわち、本発明の他の態様又は実施形態の文脈においても、特に定義されない限り、適用されることを意味する。例えば、生成物に関する実施形態は、方法及び使用の相当する特徴にも適用可能である。
【0062】
以下の各節において、本発明の異なる態様又は実施形態が、より詳細に定義される。そのようにして定義される各態様又は実施形態は、相反する記載が明白にない限り、任意の他の態様(複数の場合もある)又は実施形態(複数の場合もある)と組み合わせることが可能である。特に、好適である又は有利であるとして示される特徴はどれでも、好適である又は有利であるとして示される任意の他の単数又は複数の特徴と組み合わせることが可能である。
【0063】
本明細書全体を通じて「1つの実施形態」、「一実施形態」に対する言及は、その実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通じて様々な箇所で見られる「1つの実施形態において」、又は「一実施形態において」という語句の登場は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すとは限らない。そのうえさらに、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態において、本開示から当業者に明らかであると思われるとおりに、任意の適切な様式で組み合わせることが可能である。そのうえさらに、本明細書中に記載される幾つかの実施形態が、幾つかの特徴を含みながらも他の実施形態に含まれる他の特徴を含んでいないとしても、当業者に理解されると思われるとおり、異なる実施形態の特徴の組合せは、本発明の範囲内にあることを意味し、異なる実施形態を形成するものである。例えば、添付の特許請求の範囲において、当業者に理解されると思われるとおり、特許請求される実施形態の代替的な組合せが包含される。
【0064】
局所適用に適した医薬組成物にエストロゲンを含めることは、当該技術分野において記載されている。市販されている局所用製剤の一例は、EstroGel(商標)であり、これはエストラジオールを含むゲルである。EstroGel(商標)は、中等度から重度の血管運動症状、並びに閉経期による外陰及び膣の中等度から重度の萎縮症状の処置において適応がある。EstroGel(商標)は創傷治癒において潜在的な便益を有するものの、この適応症自体に向けて販売されたことはない。さらに、従来のエストロゲン製剤は、個体への直接的な適用には最適以下であり、エストラジオールの使用及び/又は意図しない全身曝露に関連する可能性のある多数の挙げられる有害作用を特徴とすることが知られている。このような有害作用としては、吐き気、嘔吐、胃痙攣、膨満感、腫れ、体重増加、乳房痛、乳房圧痛、頭痛、膣の痒み、膣分泌物、月経調節異常、点状出血、脱毛等を挙げることができる(経皮エストラジオールに関するメイヨークリニックのレポート:エストラジオール(経皮経路)の副作用-メイヨークリニック(Mayo Clinic report on transdermal estradiol: Estradiol (Transdermal Route) Side Effects - Mayo Clinic)を参照)。したがって、既知の医薬組成物は、個体に対してかなりの量の望ましくない全身効果を及ぼす。本開示の概要に記載されるように、当該技術分野において記載されている医薬組成物と少なくとも同様の創傷治癒特性を有するが、全身効果の著しい低下を示すエステトロール成分を含む医薬組成物が提供される。例えば、既知のエストラジオールを含む創傷治癒組成物は、エストラジオールに対する全身応答を示す子宮重量の明らかな増加をもたらすが、エステトロール成分を含む組成物は、より低い程度でしか子宮重量を増加させず、一部の組成物では、創傷治癒において依然として有効でありながら、子宮重量に対する効果を事実上示さないことさえある。この所見は、浸透促進剤を含めた場合にも当てはまる。これにより、比較的低いエストロゲン投薬量を含む医薬組成物の製剤化が可能となる。エステトロールは歴史的にエストラジオール等の他のエストロゲンと比較して弱いエストロゲンであると見なされてきたこと(Gerard et al., J Endocrinol, 2015)を考慮すると、エステトロール成分のこのような低用量の創傷治癒特性はさらに注目に値する。したがって、本明細書に記載される組成物自体及びエステトロール成分の創傷治癒のための医療的使用のどちらも、当該技術分野において知られているものに基づいて予測することも予見することもできない。
【0065】
これを考慮して、本発明の第1の態様は、約0.02%~約0.18%(重量/重量)のエステトロール成分を含む医薬組成物に関する。
【0066】
本明細書全体を通して使用される「エステトロール成分」という用語は、エステトロール、エステトロールのエステルであって、ヒドロキシル基のうちの少なくとも1つの水素原子が1個~25個の炭素原子の炭化水素カルボン酸、スルホン酸、又はスルファミン酸のアシルラジカルによって置換されているエステトロールのエステル、エステトロール水和物、例えばエステトロール一水和物、及びこれらの組合せからなる群から選択される物質を包含する。本明細書の任意の部分全体を通して「エステトロール」が言及されている場合、任意のエステトロール含有成分(すなわち化合物)及び/又はエステトロール誘導体(上に記載のもの等)も想定されていることが理解される。より好ましくは、本開示の文脈において、本明細書中に記載された投与単位又は美容的若しくは医療使用及び処置方法に適した特に好ましいエステトロール成分は、エステトロール(その水和物を含む)である。最も好ましくは、該エステトロール成分はエステトロール一水和物である。
【0067】
「エステトロール」という用語は、本明細書で使用される場合、1,3,5(10)-エストラトリエン-3,15α,16α,17β-テトロール又は15α-ヒドロキシエストリオール、並びにエステトロールの水和物、例えばエステトロール一水和物を指す。「エステトロール」又は略して「E4」は、胎児ヒト肝臓により産生されるエストロゲンステロイド(PubChem CID:27125)である。エステトロールは、15α及び16αの位置が2つの付加的な水酸基で置換された17β-エストラジオールに対応する3-ヒドロキシステロイドとして記載することができる。エステトロールはエストロゲン受容体アゴニストであることが知られている(Coelingh Bennink et al., Estetrol review: profile and potential clinical applications, Climacteric, 2008)。本明細書に記載されるエステトロール成分がエステトロールを示す場合、該エステトロールは内生エステトロールとすることができる。代替で、エステトロールは、化学的に合成されてもよく、(変異体)組換え酵素の使用によって合成されてもよく、又はこれらの任意の組合せにより合成されてもよい。代替的に、エステトロールは、当該技術分野において、その分子式C
18H
24O
4、又は構造式(I):
【化1】
によって表され得る。
【0068】
「(重量/重量)」、又は代替的に当該技術分野全体を通して「重量毎重量」若しくは「重量対重量」等の用語によって示されるものは、その重量(すなわち、質量)によって測定された組成物又は混合物内の特定の分子又は物質の寄与率を指す。
【0069】
特定の実施形態において、組成物は、約0.01%~約0.18%(重量/重量)の、例えばエステトロール等のエステトロール成分を含む。好ましい実施形態において、組成物は、約0.02%~約0.16%(重量/重量)の、例えばエステトロール等のエステトロール成分、好ましくは約0.03%~約0.14%(重量/重量)の、例えばエステトロール等のエステトロール成分、より好ましくは約0.04%~約0.12%(重量/重量)の、例えばエステトロール等のエステトロール成分、なおもより好ましくは約0.05%~約0.10%(重量/重量)の、例えばエステトロール等のエステトロール成分、更により好ましくは約0.05%~約0.08%(重量/重量)の、例えばエステトロール等のエステトロール成分を含む。
【0070】
代替的な特定の実施形態において、組成物は、約0.18%(重量/重量)以下の、例えばエステトロール等のエステトロール成分を含む。好ましい実施形態において、組成物は、約0.16%(重量/重量)以下の、例えばエステトロール等のエステトロール成分、好ましくは約0.14%(重量/重量)以下の、例えばエステトロール等のエステトロール成分、より好ましくは約0.12%(重量/重量)以下の、例えばエステトロール等のエステトロール成分、なおもより好ましくは約0.10%(重量/重量)以下の、例えばエステトロール等のエステトロール成分、更により好ましくは約0.08%(重量/重量)以下の、例えばエステトロール等のエステトロール成分を含む。
【0071】
任意に、組成物は、約0.04%~1%(重量/重量)のエステトロールを含む。或る特定の実施形態において、組成物は、約0.05%~0.5%(重量/重量)のエステトロールを含む。更なる実施形態において、組成物は、約0.06%~0.5%(重量/重量)のエステトロールを含む。
【0072】
好ましい実施形態において、エステトロールは、本明細書において一水和物として存在する又は使用される。したがって、特定の実施形態において、医薬組成物は、約0.01%~約0.18%(重量/重量)のエステトロール一水和物を含む。好ましい実施形態において、組成物は、約0.02%~約0.16%(重量/重量)のエステトロール一水和物、好ましくは約0.03%~約0.14%(重量/重量)のエステトロール一水和物、より好ましくは約0.04%~約0.12%(重量/重量)のエステトロール一水和物、なおもより好ましくは約0.05%~約0.10%(重量/重量)のエステトロール一水和物、更により好ましくは約0.05%~約0.08%(重量/重量)のエステトロール一水和物を含む。
【0073】
代替的な特定の実施形態において、医薬組成物は、約0.18%(重量/重量)以下のエステトロール一水和物を含む。好ましい実施形態において、組成物は、約0.16%(重量/重量)以下のエステトロール一水和物、好ましくは約0.14%(重量/重量)以下のエステトロール一水和物、より好ましくは約0.12%(重量/重量)以下のエステトロール一水和物、なおもより好ましくは約0.10%(重量/重量)以下のエステトロール一水和物、更により好ましくは約0.08%(重量/重量)以下のエステトロール一水和物を含む。
【0074】
上記の実施形態は、医薬組成物中に非エステトロールのエストロゲン成分の存在を除外するものではない。また、単一の組成物内に異なるエステトロール成分があることも想定される。このような実施形態において、組成物は、例示するものであって、限定されるものではないが、エステトロール、又はより詳細には、エステトロール一水和物及びエステトロールのエステルの両方を含んでいてよい。
【0075】
「局所適用」とは、身体上又は身体における特定の場所への適用を意味する。特に、皮膚又は粘膜等の体表面への適用が想定される。局所的に使用される場合、通常、局所的効果、特に皮膚及び粘膜上での局所的効果が求められる。局所適用としては膣への適用も挙げられるが、局所適用は、好ましくは、本文脈内では皮膚への適用として解釈される。
【0076】
特定の実施形態において、医薬組成物は、角質層を通じた浸透を可能にする浸透促進剤を含む。本発明の文脈において、「浸透促進剤」という用語は、限定されるものではないが、「浸透性促進剤」、「浸透性増強剤」、「浸透性誘発剤」、更には「スキンエンハンサー」を含む用語と区別なく使用される。当業者によれば、本開示全体にわたって使用される場合の「浸透促進剤」という用語は、溶媒又は溶媒系の一部としての浸透促進剤分子を示すことが理解される。様々な浸透促進剤は当該技術分野において詳細に記載されており、限定されるものではないが、CPEデータベース(Vasyuchenko et al., Pharmaceutics, 2021)に列挙されるものを含む。例示的かつ非限定的な浸透促進剤を本明細書において更に記載する。
【0077】
皮膚の組成及び様々な細胞構造層は知られている。当業者であれば、ヒトの皮膚が一般に、表皮、真皮、及び皮下組織の3つの異なる層を含むとみなすことができることを理解している。表皮は、主にケラチノサイト、すなわち増殖かつ分化して最終的に角質層(死んだ皮膚細胞の最外層)を生成する上皮細胞を含む皮膚の上層である。表皮は、細菌等の環境病原体に対する障壁を形成し、身体から放出される水の量を制御し、創傷治癒において重要な役割を果たす。2つ目の皮膚層、すなわち真皮(dermis)(代替的に「真皮(corium)」又は「皮膚結合組織」)は、皮下組織と表皮との間に位置し、主に(間葉系)線維芽細胞を含む。真皮は基底膜、すなわちシート状の細胞外マトリックスによって表皮と強固に結びつけられている。真皮はまた表皮よりかなり厚く、真皮内の線維芽細胞が細胞外マトリックス(コラーゲン、ヒアルロン酸を含むグリコサミノグリカン、弾性線維等)を生成する。真皮の主な役割は、皮膚の厚さ及び弾力性の維持、皮膚の保湿の維持(ヒアルロン酸を含むグリコサミノグリカンの保水能力による)、並びに創傷治癒、すなわち損傷を受けた細胞外マトリックスの再形成及び再構築による創傷治癒である。皮膚の最深層は、一般的に「皮下組織(層)」として示され、これは、当該技術分野において「皮下組織(subcutaneous tissue)」及び「皮下組織(hypoderm)」、「皮下組織(subcutis)」、及び「顔面筋膜」等の用語によって区別なく注解される。
【0078】
したがって、当業者であれば、本明細書において言及されている「角質層」が、主にタンパク質性物質ケラチンで作られた、高分化したケラチノサイトの多数の層から構成される表皮の外層を指すことを理解している。角質層の組成、機能、及び詳細は、当該技術分野において(例えば、Matsui and Amagai, Int Immunol, 2015において)かなり詳しく説明されている。一般的に、皮膚全体にわたる薬学的活性作用物質の浸透は角質層によって速度制限されると考えられている。したがって、本発明によって想定される浸透促進剤は、少なくともエステトロール成分が角質層及び/又は創傷痂皮全体にわたって浸透するのを助ける。特に熱傷の創傷において浸透が容易となる。
【0079】
本開示全体を通して「薬学的活性作用物質」と区別なく使用される「薬学的有効成分」という用語は、世界保健機関による用語の定義に従って解釈されるものとする。「完成した医薬品(FPP)において使用される物質であって、薬理活性を示すこと、又はそうでなければ疾患の診断、ケア、緩和、処置、若しくは未然防止において直接的な効果を有すること、又は人間における生理機能の回復、修正、若しくは変更において直接的な効果を有することが意図される物質」。
【0080】
本明細書に記載される組成物は、創傷治癒において使用するのに特に適しており、したがって、いかなる所与の場合においても区別なく「医薬組成物」と呼ばれ得る。好ましくは、本明細書に記載される組成物は局所的創傷治癒に使用される。本明細書において言及される「局所的創傷治癒に使用される」という表現は、被験体の1つ以上の創傷の処置に関し、ここで、創傷の面積は或る特定の表面積によって規定され得る。さらに、この表現は、本明細書に記載される組成物を被験体の皮膚の創傷の処置に使用することを示している。「局所的創傷治癒」という用語は更に、本明細書に記載される組成物を創傷領域に局所的に投与(すなわち、適用)することを示す。局所的投与には、本開示全体を通して更に論じられるように、限定されるものではないが、経皮パッチ等の経皮投与手段の使用も含まれる場合がある。
【0081】
本明細書において使用される「創傷面積」及び「創傷サイズ」という用語は、構造物の法線方向の連続性を分断する物理的な尺度を指す。創傷面積又は創傷サイズは、例えば平方cmで表され得る。創傷サイズ又は創傷面積に応じて、当該創傷に適用される組成物の濃度を、最大許容用量を超えないよう調整する必要がある場合がある。このような場合、組成物は、当該被験体に特化して調製される場合もあれば、又は様々な等級物若しくは濃縮物が事前に調製される場合もある。したがって、創傷が大きいほど、本発明による組成物をより低濃度で使用することが推奨されるが、小さな創傷に適用されるほど、より高い濃度を使用することが可能となる。マウス研究からの結果をヒトでの条件に外挿すると、マウスにおける0.06%(重量/重量)の濃度は、ヒト被験体に適用されるハイドロゲル中の0.1mgのエステトロール成分に相当すると計算することができる。したがって、約0.1mgのエステトロール成分を被験体に局所適用しても、女性被験体における全身効果、例えば子宮肥厚化を有しないと推定することができる。マウスにおける0.5%(重量/重量)というより高い用量は、0.9mg又は約1mgのエステトロールに外挿され得る。これにより、全身効果の重大なリスクなく、又は少なくとも局所適用について規制当局に承認された0.06%のエストラジオールを含む市販のEstrogel(商標)よりも少ない全身効果で局所的投与することが可能となる。
【0082】
「被験体」、「個体」、又は「患者」という用語は、本明細書において区別なく使用される場合があり、これらは、典型的かつ好ましくは、ヒトを指すが、非ヒト動物、好ましくは温血動物、更により好ましくは哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、齧歯類、イヌ科、ネコ科、ウマ科、ヒツジ科、ブタ科等のような哺乳動物についての言及が包含される場合もある。「非ヒト動物」という用語には、全ての脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類(特に高等霊長類)、ヒツジ、イヌ、齧歯類(例えば、マウス又はラット)、モルモット、ヤギ、ブタ、ネコ、ウサギ、ウシ等の哺乳動物、及び鶏、両生類、爬虫類等のような非哺乳動物が含まれる。或る特定の実施形態において、被験体は非ヒト哺乳動物である。好ましい被験体は、その全ての性別及び全ての年齢層を含むヒト被験体である。「被験体」という用語は、成体被験体、新生児被験体、及び胎児のいずれも対象となることが意図される。したがって、成体被験体及び新生児被験体のいずれも対象となることが意図される。被験体の例としては、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、及びマウスが挙げられる。本発明の文脈における好ましい被験体を以下で更に規定する。
【0083】
別のなおも関連する態様において、本発明は、創傷治癒、より詳細には局所化創傷治癒又は局所的創傷治癒において使用されるエステトロール成分に関する。したがって、本発明は、エステトロール成分を被験体の皮膚又は創傷領域に適用することによる創傷治癒において使用するための、有効量のエステトロール成分の使用を想定している。「有効量」という用語は、生理学的効果を得るのに必要な量を指す。生理学的効果は、単回投薬又は反復投薬によって達成される場合がある。或る特定の実施形態において、本発明は、創傷治癒において使用される、角質層を通じた浸透を可能にする浸透促進剤の存在下のエステトロール成分に関する。更なる実施形態において、本発明は、創傷治癒において使用される、有効量のエステトロール成分及び浸透促進剤を含む医薬組成物に関する。好ましくは、創傷治癒において使用されるエステトロール成分は、エステトロール、最も好ましくはエステトロール一水和物である。代替的な実施形態において、本発明は、創傷治癒において使用される、浸透促進剤を含む第2の組成物と組み合わされた有効量のエステトロール成分を含む医薬組成物に関する。このような実施形態において、創傷領域(すなわち、創傷部位)への第1の組成物及び第2の組成物の投与の特定の順序は特に限定されない。したがって、これらの組成物は逐次的又は(ほぼ)同時のいずれかで適用され得る。
【0084】
或る特定の実施形態において、医薬組成物は、創傷治癒において使用され、約0.01%~約5%(重量/重量)、例えば約0.08%~約1.2%(重量/重量)、約0.09%~約1.1%(重量/重量)、又は約0.1%~約1%(重量/重量)のエステトロール成分(エステトロール、好ましくはエステトロール一水和物等)及び浸透促進剤、好ましくは約0.02%~約2.5%(重量/重量)のエステトロール成分及び浸透促進剤、より好ましくは約0.02%~約2%(重量/重量)のエステトロール成分及び浸透促進剤、より好ましくは約0.03%~約1.5%(重量/重量)のエステトロール成分及び浸透促進剤、なおもより好ましくは約0.03%~約1%(重量/重量)のエステトロール成分及び浸透促進剤、なおもより好ましくは約0.03%~約0.75%(重量/重量)のエステトロール成分及び浸透促進剤、なおも更により好ましくは約0.04%~約0.5%(重量/重量)のエステトロール成分及び浸透促進剤、最も好ましくは約0.06%(重量/重量)のエステトロール成分及び浸透促進剤を含む。
【0085】
代替的な実施形態において、医薬組成物は、創傷治癒において使用され、約0.01%~約5%以下(重量/重量)、例えば約0.08%~約1.2%(重量/重量)、約0.09%~約1.1%(重量/重量)、又は約0.1%~約1%(重量/重量)のエステトロール成分(エステトロール、好ましくはエステトロール一水和物等)及び浸透促進剤、好ましくは約2.5%(重量/重量)以下のエステトロール成分及び浸透促進剤、より好ましくは約2%(重量/重量)以下のエステトロール成分及び浸透促進剤、より好ましくは約1.5%(重量/重量)以下のエステトロール成分及び浸透促進剤、なおもより好ましくは約1%(重量/重量)以下のエステトロール成分及び浸透促進剤、なおもより好ましくは約0.75%(重量/重量)以下のエステトロール成分及び浸透促進剤、なおも更により好ましくは約0.5%(重量/重量)以下のエステトロール成分及び浸透促進剤、最も好ましくは約0.1%(重量/重量)以下のエステトロール成分及び浸透促進剤を含む。
【0086】
好ましくは、本明細書において言及される医薬組成物は、ハイドロゲルであるか、又はハイドロゲル中に含まれている。ゲルとは、液体がゲル骨格形成剤によって固化された半固体系である。ハイドロゲルにおいて、ゲルを形成する液体は水又は水溶液である。本明細書において使用される「ハイドロゲル」という用語は、有効成分の水溶液が、主に巨大分子親水性物質で固化されてゲルを形成したものである。巨大分子親水性物質、したがって高分子材料は、水と接触すると膨潤し、濃度に応じて、擬似塑性流動挙動を示す溶液又は必要な水性成分を含む塑性構造物を生ずる。したがって、親水性ゲルは、水又は水溶液が、通常、親水性の巨大分子化合物でゲル化されたものからなる。親水性の巨大分子骨格で構築されたゲルは、一般にチキソトロピー性である。クリームとは対照的に、ゲルは真の単相系と呼ばれる。
【0087】
ハイドロゲルは、保湿と過剰な体液の吸収とのバランスをとることによって、創傷床に対する水分バランスを改善するか又は回復させる。本明細書において想定されるハイドロゲルは、限定されるものではないが、親水性ポリマー、アクリル酸、アクリルアミド、及び2-ヒドロキシエチルメタクリレート等のあらゆる適切なポリマー又はポリマーの組合せを含んでいてよい。ハイドロゲルは、保湿と過剰な体液の吸収とのバランスをとることによって、創傷床に対する水分バランスを与えるそれらの能力を考慮すると、本明細書に開示される組成物の特に好ましい形態である。ハイドロゲルの例としては、限定されるものではないが、合成ハイドロゲル、刺激感受性ハイドロゲル、(ポリ)ペプチドベースのハイドロゲル、ハイブリッドハイドロゲル、及びDNAベースのハイドロゲルが挙げられる。これらのハイドロゲルのカテゴリーのそれぞれについての生産方法は、当該技術分野において記載されており、したがって、当業者には既知である。
【0088】
例示するものであって、限定されるものではないが、合成ハイドロゲルの例としては、二重ネットワークハイドロゲルが挙げられる。例としては、ナノ複合ハイドロゲルも挙げられる。刺激感受性ハイドロゲルは、外部刺激(例えば、pH、温度、イオン強度、溶媒の種類、電界、磁界、光、及びキレート種)によって媒介され得る膨潤の変化を起こすそれらの能力を特徴とする。刺激感受性ハイドロゲルの例としては、限定されるものではないが、エラスチンペプチドブロック、シルクペプチドブロック、シルク様ペプチドブロック、及びエラスチン様ペプチドブロック等の天然構造タンパク質のブロックコポリペプチド組換えセグメントと、1つ以上のポリペプチド配列の組換えトリブロックコポリマーとから形成されたハイドロゲルが挙げられる。
【0089】
本明細書において、「ハイブリッドハイドロゲル」という用語は、共有結合又は非共有結合のいずれかで相互接続された、例えば合成ポリマー及び生物学的巨大分子等の少なくとも2種の異なる部類の分子からの成分を含むハイドロゲルを示すのに使用される。
【0090】
本明細書に記載されるゲル製剤において、プロピレングリコール、グリセロール、Transcutol(商標)、ベンジルアルコール、及びPEG400等の幾つかの添加剤の存在により、エステトロールの可溶性を高めることができる。ゲル製剤においてこれらの添加剤を使用することにより、エステトロールを可溶性にすることが可能となり、膜を通じて、又は同様に角質層及び/又は創傷痂皮を通じて及び/又は熱傷の創傷中に浸透するのに完全に利用可能となる。これは、フィックの拡散の法則によって予測されるように、膜を越える、又は同様に角質層及び/又は創傷痂皮を通じた、及び/又は熱傷の創傷中への拡散速度の増加に寄与する。それというのも、膜の両側の間のエステトロールの可溶性が増加することによって、より高いエステトロールの濃度勾配が生ずるからである。
【0091】
クリーム拡散プロファイルでは、ゲル製剤と比較した場合、同じ時間内でエステトロールの放出がより遅いことが示された。クリーム製剤において、エステトロール成分はエマルジョンの内相内に位置する可能性が高く、エマルジョンの外部相に向かって拡散した後に、障壁膜を通じて又は同様に角質層及び/又は創傷痂皮を通じて、及び/又は熱傷の創傷中に拡散し得る必要がある。しかしながら、クリームの基剤の高い分配係数により、エステトロールがその濃度勾配に沿って急速に拡散するのが妨げられる。全体のプロセスはより遅く、エステトロールの放出速度は劇的に低下する。
【0092】
「組成物」及び「医薬組成物」についてのあらゆる言及は、本明細書に記載されるあらゆるハイドロゲルを包含し、逆もまた同様であることが理解される。
【0093】
好ましくは、本明細書において想定されるハイドロゲルは、角質層を通じた浸透を可能にする浸透促進剤を含む。より好ましくは、本明細書において言及されるハイドロゲルは、約0.02%~約10%(重量/重量)のエステトロール、好ましくはエステトロール一水和物等のエステトロール成分を含むハイドロゲルである。好ましくは、本明細書において言及されるハイドロゲルは、約0.02%~約5%(重量/重量)のエステトロール成分を含むハイドロゲルであり、より好ましくは、本明細書において言及されるハイドロゲルは、約0.02%~約2.5%(重量/重量)のエステトロール成分を含むハイドロゲルであり、より好ましくは、ハイドロゲルは、約0.03%~約0.75%(重量/重量)のエステトロール成分、好ましくは約0.04%~約0.5%(重量/重量)のエステトロール成分、より好ましくは約0.05%~約0.25%(重量/重量)のエステトロール成分、例えば約0.08%~約1.2%(重量/重量)、約0.09%~約1.1%(重量/重量)、又は約0.1%~約1%(重量/重量)のエステトロール成分を含み、最も好ましくは、ハイドロゲルは、約0.06%(重量/重量)のエステトロール成分を含む。
【0094】
代替的には、本明細書において言及されるハイドロゲルは、約10%(重量/重量)以下のエステトロール成分を含むハイドロゲルである。好ましくは、本明細書において言及されるハイドロゲルは、約5%(重量/重量)以下のエステトロール成分を含むハイドロゲルであり、より好ましくは、本明細書において言及されるハイドロゲルは、約2.5%(重量/重量)以下のエステトロール成分を含むハイドロゲルであり、より好ましくは、ハイドロゲルは、約0.75%(重量/重量)以下のエステトロール成分、好ましくは約0.5%(重量/重量)以下のエステトロール成分、より好ましくは約0.25%(重量/重量)以下のエステトロール成分、より好ましくは約0.1%(重量/重量)以下のエステトロール成分、最も好ましくは約0.08%(重量/重量)以下のエステトロール成分を含む。
【0095】
(医薬)組成物がハイドロゲルである特定の実施形態において、当該ハイドロゲルは、例えば、限定されるものではないが、クリーム剤等の他の製剤と比較して好ましい放出プロファイルを特徴とする。好ましい実施形態において、本明細書に記載されるハイドロゲルは、40:30:30(容量/容量/容量)のエタノール:PEG400:水のレセプター溶液中でアイソポアメンブレンを越えて1時間以内に少なくとも約2.5μg/cm2、少なくとも約5μg/cm2、少なくとも約7μg/cm2、少なくとも約10μg/cm2、少なくとも約15μg/cm2、少なくとも約20μg/cm2、少なくとも約25μg/cm2、好ましくは少なくとも約50μg/cm2、より好ましくは少なくとも約100μg/cm2、より好ましくは少なくとも約150μg/cm2、より好ましくは少なくとも約200μg/cm2の放出されるエステトロール成分の平均累積量を特徴とする。代替的な実施形態において、本明細書に記載されるハイドロゲルは、40:30:30(容量/容量/容量)のエタノール:PEG400:水のレセプター溶液中でアイソポアメンブレンを越えて1時間以内に約25μg/cm2~約200μg/cm2の放出されるエステトロール成分の平均累積量を特徴とする。創傷の表面に応じて、多量すぎるエステトロールの累積投与をもたらさないよう、エステトロール成分の濃度を下げる必要がある場合がある。これは医師又は薬剤師によって容易に計算され得る。好ましい代替的な実施形態において、本明細書に記載されるハイドロゲルは、40:30:30(容量/容量/容量)のエタノール:PEG400:水のレセプター溶液中でアイソポアメンブレンを越えて1時間以内に約25μg/cm2~約100μg/cm2の放出されるエステトロール成分の平均累積量を特徴とする。更なる好ましい代替的な実施形態において、本明細書に記載されるハイドロゲルは、40:30:30(容量/容量/容量)のエタノール:PEG400:水のレセプター溶液中でアイソポアメンブレンを越えて1時間以内に約25μg/cm2~約50μg/cm2の放出されるエステトロール成分の平均累積量を特徴とする。
【0096】
好ましくは、本明細書に記載されるハイドロゲルは、40:30:30(容量/容量/容量)のエタノール:PEG400:水のレセプター溶液中でアイソポアメンブレンを越えて8時間以内に少なくとも約350μg/cm2、好ましくは少なくとも約400μg/cm2、より好ましくは少なくとも約450μg/cm2の放出されるエステトロール成分の平均累積量を特徴とする。
【0097】
好ましくは、本明細書に記載されるハイドロゲルは、1時間後に少なくとも約15%、好ましくは少なくとも約20%の40:30:30(容量/容量/容量)のエタノール:PEG400:水のレセプター溶液へのエステトロール成分の適用用量の平均%、及び/又は8時間後に少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも80%の40:30:30(容量/容量/容量)のエタノール:PEG400:水のレセプター溶液へのエステトロール成分の適用用量の平均%を特徴とする。代替的な実施形態において、本明細書に記載されるハイドロゲルは、1時間後に約15%~約30%の40:30:30(容量/容量/容量)のエタノール:PEG400:水のレセプター溶液へのエステトロール成分の適用用量の平均%、及び/又は8時間後に約45%~約90%の40:30:30(容量/容量/容量)のエタノール:PEG400:水のレセプター溶液へのエステトロール成分の適用用量の平均%を特徴とする。
【0098】
高度に好ましい実施形態において、本明細書に記載されるハイドロゲルは、40:30:30(容量/容量/容量)のエタノール:PEG400:水のレセプター溶液中でアイソポアメンブレンを越えて約2.5μg/cm2/√時、少なくとも約5μg/cm2/√時、少なくとも約7μg/cm2/√時、少なくとも約10μg/cm2/√時、少なくとも約15μg/cm2/√時、少なくとも約20μg/cm2/√時、少なくとも約25μg/cm2/√時~約50μg/cm2/√時のエステトロール成分放出速度(すなわち、傾き)及び8時間後に約50μg/cm2~約100μg/cm2の放出されるエステトロール成分の平均累積量、及び任意に約75%~約95%の放出されるエステトロール量のパーセンテージを特徴とする。なおもより好ましくは、本明細書に記載されるハイドロゲルは、40:30:30(容量/容量/容量)のエタノール:PEG400:水のレセプター溶液中でアイソポアメンブレンを越えて約30μg/cm2/√時~約35μg/cm2/√時のエステトロール成分放出速度(すなわち、傾き)及び8時間後に約75μg/cm2~約90μg/cm2の放出されるエステトロール成分の平均累積量、及び任意に約85%~約90%の放出されるエステトロール量のパーセンテージを特徴とする。最も好ましくは、本明細書に記載されるハイドロゲルは、40:30:30(容量/容量/容量)のエタノール:PEG400:水のレセプター溶液中でアイソポアメンブレンを越えて約33μg/cm2/√時~約34μg/cm2/√時のエステトロール成分放出速度(すなわち、傾き)及び8時間後に約82μg/cm2~約83μg/cm2の放出されるエステトロール成分の平均累積量、及び任意に約86%~約88%の放出されるエステトロール量のパーセンテージを特徴とする。
【0099】
組成物がクリームである実施形態において、当該クリームは、40:30:30(容量/容量/容量)のエタノール:PEG400:水のレセプター溶液中でアイソポアメンブレンを越えて約2.5μg/cm2/√時、少なくとも約5μg/cm2/√時、少なくとも約7μg/cm2/√時、少なくとも約10μg/cm2/√時、少なくとも約15μg/cm2/√時、少なくとも約20μg/cm2/√時、又は15μg/cm2/√時~約75μg/cm2/√時のエステトロール成分放出速度(すなわち、傾き)を特徴とし得る。好ましくは、当該クリームは、40:30:30(容量/容量/容量)のエタノール:PEG400:水のレセプター溶液中でアイソポアメンブレンを越えて約25μg/cm2/√時~約55μg/cm2/√時のエステトロール成分放出速度(すなわち、傾き)を特徴とし得る。
【0100】
クリームは更に、40:30:30(容量/容量/容量)のエタノール:PEG400:水のレセプター溶液中でアイソポアメンブレンを越えて1時間後に約1μg/cm2~約100μg/cm2の放出されるエステトロール成分の平均累積量を特徴とし得る。好ましくは、クリームは、40:30:30(容量/容量/容量)のエタノール:PEG400:水のレセプター溶液中でアイソポアメンブレンを越えて1時間後に約5μg/cm2~約80μg/cm2の放出されるエステトロール成分の平均累積量を特徴とし得る。クリームは更に、40:30:30(容量/容量/容量)のエタノール:PEG400:水のレセプター溶液中でアイソポアメンブレンを越えて8時間後に約25μg/cm2~約150μg/cm2の放出されるエステトロール成分の平均累積量を特徴とし得る。好ましくは、クリームは、40:30:30(容量/容量/容量)のエタノール:PEG400:水のレセプター溶液中でアイソポアメンブレンを越えて8時間後に約50μg/cm2~約120μg/cm2の放出されるエステトロール成分の平均累積量を特徴とし得る。
【0101】
当業者には明らかなように、本開示は、創傷治癒における使用について本明細書に開示される医薬組成物の特定の形態のそれぞれの使用を包含する。したがって、本発明はまた、創傷治癒における使用について本明細書に開示されるハイドロゲルに関する。
【0102】
ハイドロゲルは、本開示全体を通して開示される医薬組成物の好ましい形態であるが、これは、当該技術分野において知られている他の局所用製剤を除外するものではない。したがって、適切な製剤としては、限定されるものではないが、エマルジョン、懸濁液、軟膏、ペースト、ローション、ゲル(ハイドロゲルを含む)、フォーム、ムース、スプレー、及びクリームが挙げられる。これらの用語はいずれも、それらの一般的に受け入れられている意味に対応することが意図される。同様に、これらの局所用製剤は、そのまま皮膚に直接的に適用するか、又は被覆材、パッチ、包帯、バンドエイド、タンポン、プラスターの内側等と組み合わせて適用して、製剤が皮膚から剥がれるのを防ぎ、幾つかの実施形態においては、汚れ及び微生物等の外部の影響から創傷を遮蔽することもできる。
【0103】
「エマルジョン」とは、混合不可能(すなわち、不混和性、ブレンド不可能)である少なくとも2種の液体のあらゆる混合物であって、したがって、第1の液体が第2の液体(分散媒)全体にわたって小さな液滴(分散相)で分配されている混合物を指す。したがって、或る特定の実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、水中油型エマルジョン又は油中水型エマルジョンである。エマルジョンは、スキンケア製剤において広く使用されており、クリーム及びローションとして分類され得る。これに関連して、「懸濁液」とは、液相中に分散された固体を含み、これらが溶解されておらず、かつ沈降が可能であるほど十分に大きなサイズを有する不均質の混合物を広く指す。
【0104】
「クリーム」は一般に、水相が油相中に分散された油中水型エマルジョンを指すが、同様に、油が水性基剤内に分散された水中油型エマルジョンであってよい。クリームとエマルジョンとは、エマルジョンが、エマルジョンの別の流体部分と不混和性の流体の小さな不混和性の液滴の安定した懸濁液である代わりに、クリームが、より粘性が高く、通常、より親油性の成分及び/又は界面活性剤成分を含むエマルジョンの特定の部分集合を指すという点で異なることが一般的に認められている。
【0105】
「ローション」は低粘度ないし中粘度の液体組成物である。一般的に、ローションはクリームより低い粘度であるが、場合によっては両方の粘度は同様である場合がある。ローションは、懸濁剤及び分散剤の使用により、分散媒中に不溶性の微粉末物質を含む場合がある。代替的に、ローションは、分散相として、ビヒクルと不混和性である液体物質を有する場合があり、通常は乳化剤又は他の適切な安定化剤によって分散される。一実施形態において、ローションは、100センチストークスから1000センチストークスの間の粘度を有するエマルジョンの形態である。ローションの流動性により、広い表面領域にわたる素早くかつ一様な適用が可能となる。ローションは典型的には、皮膚の表面上にそれらの薬効成分の薄い被覆を残して皮膚上で乾燥させることが意図される。
【0106】
「軟膏」とは、一般的に、より粘性の高い水中油型クリーム、すなわち、軟膏基剤と、任意に1種以上の薬学的有効成分(本発明の文脈においては、エステトロール成分)とを含む半固体物質を指す。適切な軟膏基剤の例としては、炭化水素基剤、吸収基剤、水除去性基剤、及び水溶性基剤が挙げられる。「ペースト」は一般に、軟膏がより高いパーセンテージの固形分を含むという点で異なる。全体的に、ペーストは、同一の成分/添加剤一式を基礎とする軟膏と比較すると、より吸収性が高く、脂っこさが少ない。
【0107】
本明細書において使用される「フォーム」とは、液体媒体中の気体粒子の分散体を指す。フォーム中の液体媒体の例としては、水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョン、エタノール、水、溶媒、液体油、プロピレングリコール、及びグリセリンを列挙することができる。当業者によれば、気体状物質(複数の場合もある)中に混ざっている液体の表面張力を低下させて気泡形成を引き起こすことによってフォームを生成し得ることが理解される。フォームが受け入れられているのは、皮膚の広い範囲に適用するのが容易であり、油様膜又は脂様膜を残さず、皮膚内に素早く吸収されるからである。「ムース」とは、フォームによく似た物質を指すが、一般的には水分がより少ない物質を表すのに使用される。「スプレー」とは、薬物含有溶液を噴霧するのに適したデバイスに薬物含有溶液が充填され、圧力の助力により霧状に放出されることを意味する。
【0108】
上述のように、限定されるものではないが、本明細書に開示されるハイドロゲル等の医薬組成物はいずれも浸透促進剤を含んでいてよい。好ましくは、浸透促進剤は、角質層を通じた浸透を可能にする分子(すなわち、浸透促進分子)と、溶媒又は溶媒系とを含む。任意に、浸透促進剤は、限定されるものではないが、本明細書に開示されるハイドロゲル等の組成物中に、約0.5%~約60%(重量/重量)の量で、好ましくは約1%~約50%(重量/重量)の量で、より好ましくは約2.5%~約45%(重量/重量)の量で、より好ましくは約5%~約40%(重量/重量)の量で、より好ましくは10%~約30%(重量/重量)の量で、又は代替的には、約0.1%~約5%(重量/重量)の量で存在する。任意に、浸透促進剤分子は、限定されるものではないが、本明細書に開示されるハイドロゲル等の組成物中に、約0.1%~約25%(重量/重量)の量で、好ましくは約0.5%~約15%(重量/重量)の量で、より好ましくは約1%~約10%(重量/重量)の量で、より好ましくは約2.5%~約7.5%(重量/重量)の量で、より好ましくは3.5%~約5%(重量/重量)の量で存在する。任意に、溶媒(系)は、限定されるものではないが、本明細書に開示されるハイドロゲル等の組成物中に、約1%~約60%(重量/重量)の量で、好ましくは約5%~約50%(重量/重量)の量で、より好ましくは約10%~約40%(重量/重量)の量で、より好ましくは約15%~約30%(重量/重量)の量で、より好ましくは18%~約25%(重量/重量)の量で存在する。
【0109】
本発明では、本明細書に記載される浸透促進剤は特に限定されず、したがって、スベリン、リグニン、クチンからなる群から選択される分子を含んでいても、又はそれらからなっていてもよく、ジメチルスルホキシド、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、プロピルエチレングリコール、尿素、ジメチルアセトアミド、ラウリル硫酸ナトリウム、ポロキサマー、span、tween、レシチン、テルペン、及びそれらの組合せを含む。本発明の文脈における好ましい浸透促進分子としては、エタノール、エーテル、ベンジルアルコール、脂肪酸及びそれらのエステル、又はそれらのあらゆる組合せが挙げられる。本発明の文脈における特に好ましい浸透促進剤分子としては、Transcutol(商標)、ベンジルアルコール、及びそれらのあらゆる組合せが挙げられる。ベンジルアルコール(C6H5CH2OH)は、当該技術分野において「フェニルメタノール」、「フェニルカルビノール」、及び「ベンゼンメタノール」として区別なく呼称され得る。Transcutol(商標)は、2-(2-エトキシエトキシ)エタノールについて一般に認められた商標名であり、当該技術分野においてジエチレングリコールモノエチルエーテル(C6H14O3)としても区別なく表記されている。任意に、本明細書に記載される医薬組成物は、浸透促進剤として、約1%~約20%(重量/重量)のTranscutol(商標)、好ましくは約2%~約10%(重量/重量)のTranscutol(商標)、より好ましくは約3%~約8%(重量/重量)のTranscutol(商標)、最も好ましくは約4%~約6%(重量/重量)のTranscutol(商標)を含む。
【0110】
本発明の浸透促進剤は、浸透促進剤分子と、溶媒又は溶媒系とを含む。浸透促進剤の好ましい溶媒としては、限定されるものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール(PG)、及びそれらの組合せが挙げられる。「ポリエチレングリコール」は、限定されるものではないが、ポリエチレンオキシド又はポリ(オキシエチレン)、ポリ(エチレンオキシド)、及びポリオキシエチレン等の用語によって区別なく示される場合があり、これらは、当該技術分野において詳細に説明されており、したがって、ポリエチレングリコールが、化学式H-(O-CH2-CH2)n-OH(式中、nは整数である)によって特徴付けられることを理解している当業者に知られている。ポリエチレングリコールは石油由来のポリエーテル化合物である。好ましいPEGは、約150g/molから約5000g/molの間、より好ましくは約200g/molから約2500g/molの間、なおもより好ましくは約250g/molから約1000g/molの間、最も好ましくは約300g/molから約600g/molの間の分子量を特徴とするPEGである。したがって、本明細書において言及されるPEGは、PEG200、PEG300、PEG400、PEG500、PEG600、及びそれらのあらゆる組合せからなる群から選択され得る。最も好ましくは、浸透促進剤は、溶媒又は溶媒の一部として、限定されるものではないが、PEG400等の約400g/molの分子量を有するPEGを含む。プロピレングリコールは、当該技術分野において一般にプロパン-1,2-ジオール、α-プロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,2-ジヒドロキシプロパンとして表記される。プロピレングリコールは化学式CH3CH(OH)CH2OHを特徴とする。
【0111】
好ましくは、浸透促進剤は、約5%~約50%(重量/重量)、好ましくは約5%~約35%(重量/重量)又は約10%~約45%(重量/重量)のPEG、好ましくはPEG400、及び/又は約10%~約35%(重量/重量)のPGを含む。より好ましくは、浸透促進剤は、約10%~約30%(重量/重量)のPEG、好ましくはPEG400、及び/又は約12%~約30%(重量/重量)のPGを含む。より好ましくは、浸透促進剤は、約12%~約25%(重量/重量)のPEG、好ましくはPEG400、及び/又は約15%~約25%(重量/重量)のPGを含む。より好ましくは、浸透促進剤は、約14%~約23%(重量/重量)のPEG、好ましくはPEG400、及び/又は約16%~約23%(重量/重量)のPGを含む。より好ましくは、浸透促進剤は、約16%~約22%(重量/重量)のPEG、好ましくはPEG400、例えば約18%~約22%(重量/重量)のPEG又は約16%~約20%(重量/重量)のPEG、及び/又は約18%~約22%(重量/重量)のPGを含む。
【0112】
任意に、医薬組成物(任意にハイドロゲルである)はベンジルアルコールを含む。「ベンジルアルコール」という用語は、当該技術分野におけるその一般的な解釈に従って解釈されるべきであり、したがって、化学式C6H5CH2OHを特徴とする芳香族アルコールを示す。存在する場合、組成物中のベンジルアルコールの量は特に限定されない。しかしながら、好ましくは、ベンジルアルコールの量は、約0.1%~約10%(重量/重量)、より好ましくは約0.5%~約5%(重量/重量)、より好ましくは約1%~約3%(重量/重量)、なおもより好ましくは約1.5%~約2.5%(重量/重量)である。
【0113】
任意に、医薬組成物(ハイドロゲルであり得る)は増粘剤を含む。「増粘剤」は、限定されるものではないが、「増粘化剤」及び「粘性剤」等の用語によって代替的に示され得る。本発明の文脈において使用される「増粘剤」は、液体又は半固体の組成物に加えると、当該組成物の粘度及び/又はテクスチャを高めるあらゆる物質又は分子を示す。したがって、存在する場合、増粘剤は、カルボン酸ポリマー、架橋ポリアクリレートポリマー、ポリアクリルアミドポリマー、多糖類、ジブロックポリマー、トリブロックポリマー、ガム、及びそれらのあらゆる組合せからなる群から選択され得る。増粘剤が多糖類であるか、又は多糖類を含む実施形態において、当該多糖類は、セルロース、セルロース誘導体、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートカルボキシレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシアルキル化セルロース、リグニン、クチン、スベリン、微結晶性セルロース、セルロース硫酸ナトリウム、スクレログルカン、及びそれらのあらゆる組合せからなる群から選択され得る。増粘剤として機能し得る適切なガムとしては、アカシア、寒天、アルギン、アルギン酸、セチルアルコール、アルギン酸アンモニウム、アミロペクチン、アルギン酸カルシウム、カラギーナンカルシウム、カルニチン、カラギーナン、デキストリン、ゼラチン、ジェランガム、グアーガム、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、ヘクトライト、ヒアルロン酸、水和シリカ、ヒドロキシプロピルキトサン、ヒドロキシプロピルグアー、カラヤガム、ケルプ、ローカストビーンガム、ナットウガム、アルギン酸カリウム、カラギーナンカリウム、アルギン酸プロピレングリコール、スクレロチウムガム、カルボキシメチルデキストランナトリウム、カラギーナンナトリウム、トラガカントガム、キサンタンガム、及びそれらのあらゆる組合せが挙げられる。
【0114】
或る特定の実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物(任意にハイドロゲルである)は、本明細書に記載される増粘剤を、約0.1%~約25%(重量/重量)の量で、好ましくは約0.3%~約20%(重量/重量)の量で、より好ましくは約0.4%~約15%(重量/重量)の量で、より好ましくは約0.5%~約10%(重量/重量)の量で、より好ましくは約0.75%~約5%(重量/重量)の量で、又は約0.3%~約3%(重量/重量)の量で含む。本発明の文脈における好ましい増粘剤としては、限定されるものではないが、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、高分子量架橋アクリル系ポリマー、非イオン性トリブロックコポリマー、又はそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される増粘剤が挙げられる。本発明の文脈におけるより好ましい増粘剤としては、限定されるものではないが、ヒドロキシエチルセルロース、高分子量架橋アクリル系ポリマー、非イオン性トリブロックコポリマー、及びそれらのあらゆる組合せが挙げられる。好ましい高分子量架橋アクリル系ポリマーは、当該技術分野全体を通して商標名Carbopol(商標)によって区別なく示されるカルボマーである。Carbopol(商標)ホモポリマー(すなわち、アリルスクロース又はアリルペンタエリスリトールで架橋されたアクリル酸)、Carbopol(商標)コポリマー(アリルペンタエリスリトールで架橋されたアクリル酸及びC10~C30アルキルアクリレート)、Carbopol(商標)インターポリマー(ポリエチレングリコール及び長鎖アルキル酸エステルのブロックコポリマーを含むカルボマーホモポリマー又はコポリマー)のいずれも想定される。本発明の文脈における特に好ましいCarbopol(商標)は、Carbopol(商標)980であり、これは、代替的には、当該技術分野全体を通して「カルボマーホモポリマータイプC USP NF」として示され、これは、40000cP~60000cPの粘度を有するシクロヘキサン及び酢酸エチルの共溶媒中でアリルスクロース又はアリルペンタエリスリトールで架橋されたアクリル酸のホモポリマーである。好ましいヒドロキシエチルセルロースはHEC250 HHXである。好ましい非イオン性トリブロックコポリマーは、約1800g/molから約4000g/molの分子量、及び約70%~約80%のポリオキシエチレン含有量を有する非イオン性トリブロックコポリマーである。非常に好ましい非イオン性トリブロックコポリマーとしては、ポロキサマー188、ポロキサマー407、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0115】
或る特定の実施形態において、増粘剤はHECであるか、又はHECを含み、医薬組成物中に約0.1%~約10%(重量/重量)の量で、好ましくは0.2%~約7.5%(重量/重量)の量で、より好ましくは約0.5%~約5%(重量/重量)の量で、より好ましくは約0.75%~約2.5%(重量/重量)の量で、最も好ましくは約1%~約2%(重量/重量)の量で存在する。或る特定の実施形態において、増粘剤はCarbopol(商標)であるか、又はCarbopol(商標)を含み、組成物中に約0.1%~約10%(重量/重量)の量で、好ましくは0.2%~約7.5%(重量/重量)の量で、より好ましくは約0.5%~約5%(重量/重量)の量で、より好ましくは約0.75%~約2.5%(重量/重量)の量で、最も好ましくは約0.75%~約1.5%(重量/重量)の量で存在する。代替的な実施形態において、Carbopol(商標)は、組成物中に約0.1%~約1%(重量/重量)の量で存在する。或る特定の実施形態において、増粘剤はポロキサマー188であるか、又はポロキサマー188を含み、組成物中に約0.1%~約30%(重量/重量)の量で、好ましくは約1%~約15%(重量/重量)の量で、より好ましくは約2.5%~約10%(重量/重量)の量で存在する。或る特定の実施形態において、増粘剤はポロキサマー407であるか、又はポロキサマー407を含み、組成物中に約0.1%~約30%(重量/重量)の量で、好ましくは約5%~約25%(重量/重量)の量で、より好ましくは約10%~約20%(重量/重量)の量で存在する。
【0116】
或る特定の実施形態において、増粘剤はCMCであるか、又はCMCを含み、医薬組成物中に約0.1%~約10%(重量/重量)の量で、好ましくは0.2%~約7.5%(重量/重量)の量で、より好ましくは約0.5%~約5%(重量/重量)の量で、より好ましくは約0.75%~約2.5%(重量/重量)の量で、最も好ましくは約1%~約2%(重量/重量)又は約1.5%(重量/重量)の量で存在する。
【0117】
任意に、医薬組成物(任意にハイドロゲルである)は保存剤を含む。特定の実施形態において、組成物は、0.5%~20%(重量/重量)の量で、好ましくは1%~約10%(重量/重量)の量で、より好ましくは約1%~約3%(重量/重量)の量で保存剤を含む。本発明では、具体的な保存剤は特に限定されず、したがって、リゾチーム、ナイシン、第四級アンモニウム保存剤、パラベン、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、天然保存剤、及びそれらのあらゆる組合せからなる群から選択され得る。本発明の文脈における好ましい保存剤はベンジルアルコールである。
【0118】
任意に、医薬組成物(ハイドロゲルであり得る)はエモリエントを含む。本開示全体を通して使用される「エモリエント」とは、皮膚の乾燥を防ぐ及び/又は処置するだけでなく、皮膚の格別な保護を与えるのにも有用な物質を指す。本発明では、特定のエモリエントは特に限定されず、したがって、グリセロール、アセチルアルコール、ステアリルアルコール、ステアリン酸、パルミチン酸イソプロピル、スクアレン、ラノリン、グリセリン、ワセリン、鉱油、及びそれらのあらゆる組合せからなる群から選択され得る。本発明の文脈における特に好ましいエモリエントはグリセロールである。エモリエントは、組成物中に約2.5%~約30%(重量/重量)の量で、好ましくは約5%~約25%(重量/重量)の量で、より好ましくは7.5%~約20%(重量/重量)の量で、より好ましくは約8%~約12%(重量/重量)の量で存在し得る。更なる実施形態において、エモリエントはグリセロールであってよく、これは、組成物中に約2.5%~約30%(重量/重量)の量で、好ましくは約5%~約25%(重量/重量)の量で、より好ましくは7.5%~約20%(重量/重量)の量で、より好ましくは約8%~約12%(重量/重量)の量で、最も好ましくは約10%(重量/重量)の量で存在する。
【0119】
本開示全体を通して詳細に記載されているように、本明細書に記載される医薬組成物はいずれも、エステトロール成分に加えて、或る特定の量の成分(すなわち、薬学的活性作用物質及び/又は添加剤)を含んでいてよい。本発明の実施形態のいずれにおいても、当該成分が或る特定の濃度に達するように溶媒を添加することができる。更なる実施形態において、組成物を補充するのに水溶液が使用される。「水溶液」という用語は、水を含むあらゆる溶液、又は溶媒が水であるあらゆる溶液を指す。さらに、「水溶液」は、外観、匂い、色、味、粘度、pH、吸光度、又は特定の温度下での物理的状態等の特性に限定されず、水又は水状溶液との共通点を示す溶液を説明するのに使用される。このような実施形態において、水溶液は水であってよい。代替的な更なる実施形態において、組成物を補充するのに非水性溶液が使用される。なおも代替的な実施形態において、組成物を補充するのに非水性溶液及び水溶液の混合物が使用される。
【0120】
本明細書において規定されるように、組成物、溶液、又は製剤のpHは、当業者に知られる様々な方法を使用して測定され得る。H+イオンの吸収又は放出によって変色するpH指示薬が使用される場合があり、ここで、それらの結果として生ずる色が或る特定のpH値の指標となる。代替的には、pH電極と参照電極との間の電位差を測定するpHメーターが使用される場合がある。電位差は溶液の酸性度又はpHに関係する。
【0121】
上記を考慮すると、本発明による例示的な医薬組成物は、本明細書に列挙される濃度のいずれか1つでのエステトロール成分に加えて、
約0.1%~約60%(重量/重量)の浸透促進剤、
約0.3%~約20%(重量/重量)の増粘剤、
任意に、保存剤及び/又はエモリエント、
水(100%(重量/重量)まで)、
を含む。
【0122】
或る特定の実施形態において、医薬組成物は、(エステトロール成分に加えて)浸透促進剤、増粘剤、保存剤、及びエモリエントから本質的になるか、又はこれらからなる。好ましい実施形態において、本発明による組成物は、エステトロール成分に加えて、
約0.1%~約10%(重量/重量)の浸透促進剤分子、好ましくは約0.25%~約8%(重量/重量)の浸透促進剤分子、
約10%~約60%(重量/重量)の浸透促進剤溶媒、
約0.3%~約20%(重量/重量)の増粘剤、好ましくは約0.3%~約10%(重量/重量)の増粘剤、より好ましくは約0.3%~約5%(重量/重量)の増粘剤、最も好ましくは約0.3%~約3%(重量/重量)の増粘剤、
任意に、保存剤及び/又はエモリエント、
水(100%(重量/重量)まで)、
を含む。
【0123】
なおも更なる好ましい実施形態において、本発明による例示的な医薬組成物は、本明細書に列挙される濃度のいずれか1つでのエステトロール成分に加えて、
約1%~約7.5%(重量/重量)の浸透促進剤分子、好ましくは約0.5%~約5%(重量/重量)の浸透促進剤分子、
約15%~約45%(重量/重量)の浸透促進剤溶媒、
約0.3%~約20%(重量/重量)の増粘剤、好ましくは約0.3%~約10%(重量/重量)の増粘剤、より好ましくは約0.3%~約5%(重量/重量)の増粘剤、最も好ましくは約0.3%~約3%(重量/重量)の増粘剤、
任意に、保存剤及び/又はエモリエント、
水(100%(重量/重量)まで)、
を含む。
【0124】
特定の実施形態において、医薬組成物(任意にハイドロゲル)は、本明細書に列挙される濃度のいずれか1つでのエステトロール成分に加えて、
約8%~約40%、好ましくは約16%~約20%、最も好ましくは約18%(重量/重量)のPEG400、
約9%~約44%、好ましくは約18%~約22%、最も好ましくは約20%(重量/重量)のPG、
約4%~約24%、好ましくは約8%~約12%、最も好ましくは約10%(重量/重量)のグリセロール、
約0.5%~約4%、好ましくは約1%~約2%、最も好ましくは約1.5%(重量/重量)のHEC、及び、
約0.75%~約1.25%、好ましくは約1.5%~約2.5%、最も好ましくは約2%(重量/重量)のベンジルアルコール、
を含むか、これらから本質的になるか、又はこれらからなる。
【0125】
特定の実施形態において、医薬組成物(任意にハイドロゲル)は、本明細書に列挙される濃度のいずれか1つでのエステトロール成分に加えて、
約9%~約44%、好ましくは約18%~約22%、最も好ましくは約20%(重量/重量)のPEG400、
約0.01%~約2%、好ましくは約0.1%~約1%、最も好ましくは約0.5%(重量/重量)のCarbopol(商標)、及び、
約0.1%~約15%、2%~約12%、好ましくは約4%~約6%、最も好ましくは約5%(重量/重量)のTranscutol(商標)、
を含むか、これらから本質的になるか、又はこれらからなる。
【0126】
特定の実施形態において、医薬組成物(任意にハイドロゲル)は、本明細書に列挙される濃度のいずれか1つでのエステトロール成分に加えて、
約10%~約55%、好ましくは約30%~約50%、最も好ましくは約40%~45%(重量/重量)のPEG400、
約0.01%~約2%、好ましくは約0.1%~約1%、最も好ましくは約0.5%(重量/重量)のCarbopol(商標)、及び、
約0.1%~約15%、0.2%~約10%、好ましくは約0.5%~約5%、最も好ましくは約1%~約2.5%(重量/重量)のTranscutol(商標)、
を含むか、これらから本質的になるか、又はこれらからなる。
【0127】
限定されるものではないが、本明細書に記載されるハイドロゲル等の本明細書に記載される医薬組成物は、治療及び予防の両方の文脈における医薬として使用することが想定される。より詳細には、限定されるものではないが、本明細書に記載されるハイドロゲル等の本明細書に記載される組成物は、創傷治癒を医療的に使用することが想定される。言い換えれば、本発明は、創傷治癒、好ましくは局所創傷治癒用の医薬の製造のための、本明細書に記載されるハイドロゲル等の組成物の使用に関する。更に言い換えれば、本発明は、創傷の処置方法、好ましくは、局所的創傷処置方法であって、本明細書に記載される組成物又はハイドロゲルのいずれか1つを被験体の創傷(部位)に投与することを含む、方法に関する。本発明の文脈において、本明細書に記載されるハイドロゲル等の組成物は、局所用製剤、すなわち創傷部位に適用される創傷用の局所的処置手段として使用される。
【0128】
本開示全体を通して使用される場合、「治療」又は「処置」という用語は、病状、本発明の文脈においては1つ以上の創傷の1つ以上の症状又は測定可能なマーカーの軽減又は測定可能な低減を指す。これらの用語には、既に発生した創傷(すなわち、確立した創傷)の治療的処置と、被験体、すなわち、被験体の皮膚における創傷の発生及び/又は再発、発達、及び進行を防ぐことが処置の目標である予防的措置又は未然防止的措置との両方が包含される。例示するものであって、限定されるものではないが、本明細書に記載される医薬組成物の未然防止的使用は、高齢被験体において脆弱と思われる皮膚部位に投与して褥瘡を未然防止することであり得る。代替的な例は、近い将来に外科手術による挿入部位を形成する予定の被験体の皮膚部位への適用であり得る。測定可能な低減としては、測定可能な炎症マーカー、創傷面積、及び/又は創傷の深さ及び/又は創傷の幅におけるあらゆる統計的に有意な低下が挙げられる。本明細書において使用される統計的有意性とは、0.05未満のp値を指し、これは、当業者に理解されるように、統計分析において一般的に受け入れられているカットオフスコアである。創傷治癒部位のより詳細な適応症を以下で更に詳細に説明する。医療的使用(すなわち、処置)の有益な又は望ましい臨床結果としては、限定されるものではないが、痛み及び/又は不快感の軽減、1つ以上の生物学的マーカーの改善、創傷範囲の縮小、創傷状態の安定化(すなわち、悪化させない)、創傷治癒の進行の加速、患者の生活の質の改善等を挙げることができる。
【0129】
当業者であれば、有効な治療的処置を達成するには、治療的有効用量を上記被験体に投与する必要があることを認識している。したがって、本開示の文脈において、「有効量」は、生理学的効果を得るのに必要な量を指す。生理学的効果は、単回投薬又は多回投薬によって達成される場合がある。「治療的有効量」又は「治療的有効用量」は、投与した場合に、1つ以上の創傷に苦しむ被験体の処置に関して臨床的にプラスの奏効をもたらすエステトロール成分の量を示す。同様に、「予防的有効量」又は「予防的有効用量」は、創傷の発生又は創傷の進行を抑える又は遅らせるエステトロール成分の量を指す。当業者であれば、「分量」、「量」、及び「レベル」等の用語は同義であり、当該技術分野において明確に定義された意味を有することを認識しており、これらが、本出願の文脈において、限定されるものではないが、ハイドロゲル等の医薬組成物のエステトロール成分部分の相対的な定量化を指すか、又は示されている場合には、被験体の皮膚に適用した場合に本明細書に記載される用途に有効な量と見なされるエステトロール成分の絶対的な定量化を指すことを理解している。
【0130】
任意に、本明細書に記載される医薬組成物及びハイドロゲルは急性創傷の処置において使用される。本発明では、急性創傷の原因は特に限定されず、したがって、外傷によって引き起こされる創傷及び外科手術によって誘発される創傷の両方が含まれる。本発明では、外傷の原因は限定されず、したがって、偶発的な外傷及び悪意による外傷(すなわち、戦闘創傷)の両方を包含する。急性創傷の非限定的な例としては、擦過傷(すなわち、皮膚が削り取られた又は擦り取られたもの)、切開傷(すなわち、きれいに切られた創傷)、裂傷(すなわち、引き裂かれた及び/又はぼろぼろの創傷)、穿刺傷(すなわち、比較的先細りの物体によって生じた比較的小さな創傷開口部を有する創傷)、及び剥離傷(引っ張られた又は引き裂かれた皮膚創傷)が挙げられる。
【0131】
任意に、本明細書に記載される医薬組成物及びハイドロゲルは熱傷の創傷の処置において使用される。当業者であれば、「熱傷の創傷」が熱、炎、化学物質、電気、又は放射線との接触によって引き起こされる特定の種類の組織外傷を指すことを理解している。第1度熱傷は主に赤みを特徴とし、第2度熱傷は1つ以上の水疱斑の存在(つまり、水疱形成)を特徴とし、第3度熱傷は壊死の存在を特徴とする。当該技術分野において、第1度熱傷及び第2度熱傷は、一般的に部分層熱傷(すなわち、表皮から真皮まで達するが真皮を貫通しない組織の破壊)について言及されるのに対し、第3度熱傷は、一般的に全層熱傷(すなわち、真皮の完全な貫通を特徴とする破壊)について言及される。
【0132】
任意に、本明細書に記載される医薬組成物及びハイドロゲルは慢性創傷の処置において使用される。本明細書において言及される「慢性創傷」とは、標準的な創傷治癒過程を経ることに至っていない又は至らなかったあらゆる創傷を指す。したがって、創傷は、それらの治癒の期間に基づいて、臨床的に急性又は慢性として分類され得る。特に、手術創傷は慢性創傷になる可能性があり、二次治癒によって治癒することができない手術創傷として言及される。「慢性創傷」という用語は、限定されるものではないが、「治癒しづらい創傷」、「治癒困難な創傷」、「非治癒性創傷」、及び「複雑な創傷」等の同義語と区別なく使用され得る。慢性創傷は、当該技術分野(例えば、Vanwijck, Bull Mem Acad R Med Belg, 2001)において詳細に特徴付けられている。慢性創傷の治癒過程は、創傷治癒期を1段階以上長引かせる多くの要因によって調節不全になる可能性がある。非限定的な例としては、限定されるものではないが、感染症、組織低酸素症、壊死、滲出液、及び炎症性サイトカインの過剰レベルが挙げられる。慢性創傷によく見られる特徴としては、長期にわたる又は制御不能な炎症期、持続的な感染、薬剤耐性微生物バイオフィルムの形成、及び真皮細胞及び/又は表皮細胞が修復刺激に応答することができないことが挙げられる。
【0133】
本明細書において使用される「炎症」とは、血管組織が外傷に対して応答する生理学的過程を広く指す。同様に、「炎症過程」という用語は、可溶性の炎症メディエーターが細胞成分と協働して、苦痛を引き起こすあらゆる要因を閉じ込めて取り除く過程を指す。「炎症メディエーター」という用語は、炎症過程のあらゆる分子メディエーターを広く指す。炎症メディエーターは、組織の損傷及び/又は感染の部位で局所的に作用することも、より離れた部位で作用することもできる。或る特定の炎症メディエーターは、炎症過程によって活性化され、一方で、他の炎症メディエーターは、他の炎症メディエーターによる炎症への応答時又は活性化時に細胞源から産生及び/又は放出される。炎症応答の炎症メディエーターの例としては、限定されるものではないが、血漿プロテアーゼ、補体、キニン、凝固タンパク質、線維素溶解タンパク質、脂質メディエーター、プロスタグランジン、ロイコトリエン、血小板活性化因子、ペプチド、アミン、及び炎症誘発性サイトカインが挙げられる。
【0134】
本明細書において使用される「皮膚の炎症」又は「皮膚炎症」等の用語は、従来技術において一般的に受け入れられている意味に従って解釈されるべきであり、したがって、皮膚のあらゆる局所的な免疫応答を示している。皮膚炎症の原因は、一般的には創傷等の外傷の発生である。したがって、皮膚炎症は、被験体の皮膚における細胞相互作用の結果であると見なされる場合があり、ここで、免疫細胞は依然として最も重要な細胞型である。本明細書において言及される皮膚炎症は、創傷において観察される「標準的な」炎症を示すが、同様に、炎症の通常の限界を超える過度の炎症も示し、創傷部位における細菌感染若しくは真菌感染、又は欠陥のある宿主応答(例えば、糖尿病の場合)の結果である可能性がある。創傷の感染に関与する可能性のある細菌の非限定的な例としては、限定されるものではないが、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(Coagulase-negative staphylococci)、コリネバクテリア属(Corynebacteria)、シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、プロテウス・ミラビリス(proteus mirabilis)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumanii)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、ステノトロフォナス・マルトフィリア(Stenotrophonas maltophilia)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、エンテロコッカス属(Enterococci)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、モルガネラ・モルガニイ(Morganella morganii)、プロビデンシア・スチュアリイ(Providencia stuarii)、アルカリゲネス・フェカリス(Alcaligenes faecalis)、シトロバクター・アマロナティカス(Citrobacter amalonaticus)、シトロバクター・コセリ(Citrobacter koseri)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、コクリア・クリスティナエ(Kocuria kristinae)、及びシュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)が挙げられる。創傷の感染に関与する可能性のある真菌の非限定的な例としては、限定されるものではないが、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)、及びアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)が挙げられる。
【0135】
本発明の文脈において特に興味深い細菌は、クレブシエラ・ニューモニエであり、これは、限定されるものではないが、急性創傷(手術創傷、外傷、及び戦闘創傷を含む)、熱傷、及び慢性下肢潰瘍等の感染創傷部位において創傷病原体として作用することが知られている(Crompton et al., Lab Invest, 2016)。クレブシエラ・ニューモニエは、当該技術分野において、再上皮化の減少、増殖の増加、炎症応答の増強、及び創傷マトリックス沈着の乱れと関連付けられている。本発明者らは、本明細書に記載される局所用組成物が、クレブシエラ・ニューモニエに感染した創傷、及びクレブシエラ・ニューモニエによる感染症を発症するリスクがあると見なされる創傷における炎症の低減において使用するのに特に適していることを見出した。
【0136】
慢性創傷の非限定的な例としては、血管性潰瘍、褥瘡、及び糖尿病性潰瘍が挙げられる。血管性潰瘍には動脈性潰瘍及び静脈性潰瘍が包含される。したがって、或る特定の実施形態において、慢性創傷は、動脈性潰瘍、静脈性潰瘍、褥瘡、糖尿病性潰瘍、及びそれらの組合せからなる群から選択される創傷である。本明細書において使用される「静脈性潰瘍」は、静脈弁不全によって引き起こされる静脈圧の上昇によって引き起こされる。圧力に誘発されて血管壁の透過性が変化すると、結果的にフィブリン及びその他の血漿成分が血管周囲の場所に漏れ出し、当該フィブリンの蓄積が創傷治癒に対して悪影響を及ぼす。コラーゲン合成はフィブリンによって下方制御されることから、毛細血管周囲にフィブリンカフの形成がもたらされ、これにより、正常な血管機能に対する障壁が生じ、血液由来の成長因子が閉じ込められる。「動脈潰瘍」という用語は、動脈内腔の狭窄及び虚血につながり、軽度の外傷の適時の治癒を妨げるアテローム性動脈硬化症又は塞栓症によって引き起こされる可能性がある動脈不全の結果である慢性創傷を示している。「褥瘡」は、皮膚及びその下の筋肉組織に圧力及び剪断力が長期間変化なく加わることで、酸素分圧の減少、虚血再灌流傷害、及び組織壊死が引き起こされる結果として発生する。最後に、「糖尿病性潰瘍」は加齢及び糖尿病の結果として起こる。さらに、糖尿病は血管病理を悪化させる可能性があり、これが結果的に、動脈不全、静脈不全、及び/又は褥瘡を悪化させる可能性がある。糖尿病患者における糖尿病性潰瘍の発症につながる更なる異常としては、神経障害(多くの場合、血管障害に関連する)、筋肉代謝不全、及び高血糖症によって引き起こされる或る特定の微小血管病理が挙げられる。慢性創傷、特に糖尿病性創傷において見られる巨視的病理としては、一般に、限定されるものではないが、低い細胞分裂促進能、低い細胞運動促進能、及び環境要因に対する応答不能等の細胞表現型の異常が挙げられる。
【0137】
特定の実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物(ハイドロゲルであり得る)は、創傷治癒障害を特徴とする被験体の創傷治癒において使用される。創傷治癒障害は、本開示全体を通して記載されるような根本的な病理及び/又は創傷の感染症により起こる可能性がある。感染症は創傷治癒の遅延の一般的な原因である。生きた細菌(及びその後に産生される細菌毒素)は、過剰な炎症応答及び組織損傷を引き起こす。創傷の細菌感染症の考えられる帰結としては、膿瘍、蜂窩織炎、骨髄炎、及び四肢喪失(例えば、糖尿病患者の場合)の発生が挙げられる。さらに、感染により創傷部位に動員された炎症細胞は、創傷部位に存在する細胞外マトリックス及び成長因子を分解することができるプロテアーゼを産生する。創傷に定着している細菌のかなりの部分はバイオフィルムを形成することができることから、結果的に、細菌生存率の増加及び病原性因子の産生の増加につながる。したがって、或る特定の実施形態において、被験体はバイオフィルムを含む創傷を特徴とする被験体である。
【0138】
或る特定の実施形態において、医薬組成物は、慢性創傷を発症するリスクがあると見なされる被験体の創傷、又は以前の時点で少なくとも1つの慢性創傷を発症したことがある被験体の創傷を処置するのに使用される。
【0139】
被験体が創傷治癒障害を特徴とする被験体である実施形態において、当該創傷治癒障害は、創傷治癒障害を伴うと見なされない又はそれが疑われていない被験体(すなわち、健康又は概ね健康であると見なされる被験体)における創傷治癒と比較して、少なくとも約10%遅く、好ましくは少なくとも約20%遅く、好ましくは少なくとも約30%遅く、好ましくは少なくとも約40%遅く、好ましくは少なくとも50%遅く、好ましくは少なくとも60%遅く、好ましくは少なくとも70%遅く、好ましくは少なくとも80%遅く、好ましくは少なくとも90%遅く起こる。
【0140】
本発明では、創傷治癒障害の特定の症状発現及びその原因は特に限定されない。したがって、或る特定の実施形態において、創傷治癒期が、止血(血液凝固)、炎症、増殖(新たな組織の成長)、及び成熟(組織リモデリング)、又はそれらの任意の組合せからなる創傷治癒期の群から選択される被験体において障害がある場合がある。さらに、創傷治癒障害過程は、感染症、低酸素症、壊死組織、滲出液(創傷から細胞及び体液が染み出る)、炎症性サイトカインの過剰レベル、及びそれらのあらゆる組合せの発生を特徴とする場合がある。
【0141】
任意に、被験体は、血液凝固の不足又は欠如による創傷治癒障害を特徴とする。健康な被験体における外傷の直後に、損傷を受けた血管に血小板が付着し、放出反応を開始し、止血反応を開始する。この結果、血液凝固カスケードが起こり、これにより過度の出血が抑えられ、創傷領域の一時的な保護がもたらされる。血小板は、数多くの成長因子、サイトカイン、及びその他の生存因子又はアポトーシス誘導因子を放出することが記載されている。血小板放出反応の重要な成分としては、血小板由来成長因子(PDGF)並びにトランスフォーミング成長因子A1及びトランスフォーミング成長因子2(TGF-A1及びTGF-2)が挙げられ、これらは炎症細胞(例えば、白血球、好中球、及びマクロファージ)を引き寄せることになる。
【0142】
任意に、被験体は、炎症性創傷治癒期の欠陥による創傷治癒障害を特徴とする。健康な被験体においては、毛細血管の損傷に応答して炎症期が開始され、これにより、数ある他の成分の中でもフィブリン及びフィブロネクチンを含む一時的な凝血塊マトリックスの形成が引き起こされる。当該仮設マトリックスが創傷領域を満たし、エフェクター細胞の流入を惹起する。凝塊内に存在する血小板は、炎症細胞(例えば、中でも、好中球、単球、及びマクロファージ)、線維芽細胞、及び内皮細胞を動員する多数のサイトカインを放出する。
【0143】
任意に、被験体は、増殖期の欠陥による創傷治癒障害を特徴とする。健康な被験体においては、増殖期は活発な血管新生を特徴とし、これにより新しい毛細血管が生成され、これが創傷部位への栄養供給を可能にし、線維芽細胞の増殖を支える。これらの線維芽細胞は、細胞外マトリックス(ECM)成分を合成して沈着させ、これにより仮設マトリックスが置き換えられる。当該線維芽細胞は更に、マイクロフィラメント束又はストレスファイバー内で組織化された平滑筋アクチンによって媒介される収縮特性を特徴とする。
【0144】
任意に、被験体は、リモデリング期の不足による創傷治癒障害を特徴とする。健康な被験体においては、最終治癒期には、肉芽組織の段階的なリモデリング及び再上皮化が含まれる。マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)等のタンパク質分解酵素及びそれらの阻害剤(TIMP、メタロプロテイナーゼの組織阻害剤)は、リモデリング期において重要な役割を果たす。再上皮化の間に、肉芽組織(すなわち、新しい間質組織)の主成分であるフィブロネクチン及びIII型コラーゲンが徐々にI型コラーゲンに置き換えられ、エラスチンが補充される。エラスチンは皮膚の弾力性に寄与し、肉芽組織には当初は存在しない。最終的に、血管細胞及び線維芽細胞のアポトーシスにより、創傷内の細胞密度が正常化する。
【0145】
創縁の増殖は創傷再上皮化過程の一環であり、これは新しい上皮で覆う(すなわち、表面再生する、提供する)過程を示している。皮膚の創傷において、周辺の創傷縁(すなわち、創縁)から創傷の中心に向かって再上皮化が進行することが文書に記録されている。再上皮化は増殖期の一環であり、一般的には、外傷の約16時間後~約24時間後に、上記で詳述したように創傷部位への好中球、単球、及びマクロファージの動員によるケラチノサイトの活性化によって開始する。活性化されたケラチノサイトは、細胞の細胞骨格及び細胞表面受容体における変化を特徴とする。さらに、活性化されたケラチノサイトは過剰増殖性であり、真皮-表皮接合部の成分を産生する。例えば、活性化されたケラチノサイトはマトリックスメタロプロテアーゼ9(MMP-9)を産生し、これが真皮-表皮接合部の分解を引き起こし、ケラチノサイトが創傷にわたって遊走するのを可能にする。ケラチノサイトの遊走は創傷再上皮化における早期の事象である。創傷における活性化されたケラチノサイトの更なる研究により、創傷の縁部にある移動する粘着性上皮細胞シートが創傷の中心に向かって遊走するという観察につながった。創傷床にわたるケラチノサイト遊走の過程については、様々な機序が提案されており、いずれも本発明の文脈において想定され、認識されている。
【0146】
任意に、創傷の創縁の移動の減少を通じて創傷治癒障害が観察され、及び/又は明らかになる場合がある。本明細書において使用される「創縁」とは、創傷領域の外周、すなわち、被験体の皮膚の外傷を受けていない組織領域に隣接する創傷領域の部分を指す。当業者であれば、創傷領域、ひいては創縁を観察及び/又は測定することができる。このような観察及び/又は測定を多数の時点で行って、被験体の創傷が「正常な」速度(すなわち、健康な被験体において一般的であると見なされる範囲内の速度)で治癒しているかどうか、又は創傷治癒の何らかの開始の遅延若しくは速度低下が起こっているかどうかを判定することができる。任意に、いかなる処置もない場合、創傷治癒障害のある被験体における創傷治癒障害は、健康な被験体と比較して、少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、又は最も好ましくは少なくとも100%の創縁の移動の減少によって表される。
【0147】
特定の実施形態において、上記の態様の組成物及びハイドロゲルは創傷部位の再上皮化の改善において使用される。本文脈において、再上皮化の改善とは、全体的な再上皮化過程について言及するものである場合があるが、同様に、その特定の態様における或る特定の改善を指す場合もある。したがって、或る特定の実施形態において、本明細書に記載される組成物による処置の場合の創傷治癒の改善は、創傷部位の再上皮化の改善、創傷部位での細胞の増殖の増加、創傷部位での又は創傷部位における炎症応答の低減、創傷部位でのマトリックス沈着の改善、毛包に媒介される再上皮化、部分層創傷における下から上への再上皮化、及びそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される過程を改善することができる。
【0148】
再上皮化の改善は、仮設マトリックスの生成の増加及び/又は促進を特徴とする場合がある。このような実施形態において、本明細書に記載される組成物(任意にハイドロゲル)で処置されていない被験体と比較して、生成される仮設マトリックスの量が、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約25%、好ましくは少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約100%増加する場合があり、及び/又は当該仮設マトリックスの生成が、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約25%、好ましくは少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約100%促進される場合がある。
【0149】
仮設マトリックスの生成の増加及び/又は促進の代わりに又はそれに加えて、再上皮化の改善は、ケラチノサイトの活性化(すなわち増殖)及び/又は遊走の増加及び/又は促進を特徴とする場合がある。このような実施形態において、本明細書に記載される組成物(任意にハイドロゲル)で処置されていない被験体と比較して、活性化されたケラチノサイトの量が、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約25%、好ましくは少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約100%増加する場合があり、及び/又はケラチノサイトの遊走が、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約25%、好ましくは少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約100%増加する場合がある。
【0150】
特定の実施形態において、上記の態様の組成物及びハイドロゲルは、被験体の創傷部位での細胞の増殖の増加において使用される。細胞の増殖としては、限定されるものではないが、内皮細胞、線維芽細胞、及び/又はケラチノサイトの増殖が挙げられる。或る特定の実施形態において、内皮細胞、線維芽細胞、ケラチノサイト、及びそれらのあらゆる組合せからなる細胞の群から選択される細胞の増殖は、本明細書に記載される組成物で処置されていない被験体の創傷部位での細胞増殖と比較して、少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、更により好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも100%増加する。
【0151】
特定の実施形態において、本明細書に記載される組成物は、被験体の創傷部位における炎症応答の低減に使用される。このような実施形態において、本明細書に記載される組成物は、被験体の創傷部位での1種以上の炎症誘発性分子の量を低減し、及び/又は1種以上の抗炎症性分子の量を増加させるのに使用される。本明細書において想定される炎症誘発性分子の非限定的な例としては、限定されるものではないが、インターロイキン-1β(IL-1β)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン8(IL-8)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターフェロンγ(IF-γ)、インターロイキン12(IL-12)、ヒスタミン、セロトニン、神経ペプチド、血漿プロテアーゼ、補体、キニン、凝固タンパク質、線維素溶解タンパク質、脂質メディエーター、プロスタグランジン、ロイコトリエン、及び血小板活性化因子(PAF)が挙げられる。或る特定の実施形態において、本明細書に記載される組成物(任意にハイドロゲル)は、創傷部位で産生されるインターロイキン-1β(IL1-β)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン8(IL-8)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターフェロンγ(IF-γ)、インターロイキン12(IL-12)、ヒスタミン、セロトニン、神経ペプチド、血漿プロテアーゼ、補体、キニン、凝固タンパク質、線維素溶解タンパク質、脂質メディエーター、プロスタグランジン、ロイコトリエン、及び血小板活性化因子(PAF)からなる群から選択される1種以上の炎症誘発性分子の量を、本明細書に記載される組成物で処置されていない被験体の創傷部位に存在する当該1種以上の炎症誘発性分子のレベルと比較して、少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、なおもより好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは約100%低減させるのに使用される。好ましくは、医療的使用又は処置により、非処置の創傷と比べて軽減された局所創傷炎症を示すマクロファージプロファイル及び好中球プロファイルの改善がもたらされる。特定の実施形態において、本発明による処置により、限定されるものではないが、創傷内のマクロファージ及び好中球等の炎症細胞の数が減少する。したがって、特定の実施形態において、本発明による組成物の局所的投与により炎症収束創傷の表現型が促進され、ここで、M1マーカー発現が減少し、かつM2マーカー発現が増加する。幾つかの実施形態において、本発明の組成物を投与すると、自然免疫細胞及び獲得免疫細胞の両方の数が減少する。典型的には、更なる実施形態において、本明細書に記載される組成物を投与すると、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、及び肥満細胞のような他の免疫細胞の機能に対する有益な効果が観察され得る。
【0152】
好ましい実施形態において、エステトロール成分を含む組成物(例えば、ハイドロゲル)の使用により、どの創傷治癒組成物でも処置されていない創傷と比較して、組織学的治癒パラメーターの改善がもたらされる。より好ましくは、エステトロール成分を含む組成物の使用により、エステトロール成分を含まない創傷治癒組成物で処置されていない創傷と比較して、組織学的治癒パラメーターの改善がもたらされる。任意に、組織学的治癒パラメーターは、表皮閉鎖、表皮分化、表皮遊走、肉芽組織形成及び表皮過形成、肉芽組織及びマトリックス形成、炎症、並びに後期マトリックスリモデリングからなる群から選択される組織学的皮膚パラメーターであり、これらは、新しく形成された表皮の存在、有棘及び/又は顆粒表皮分化マーカー、遊走細胞、増殖細胞、コラーゲン線維沈着、免疫細胞マーカー、創傷プロテアーゼレベル、及びマトリックス組成の存在によってそれぞれ組織学的に評価され得る。これらのパラメーターのいずれも、当該技術分野(例えば、Gupta and Kumar, Plast Aesthet Res, 2015)において詳細に記載されている。1つ以上の観察から得ることができる代替的な組織学的パラメーターとしては、限定されるものではないが、再上皮化区域の長さ、創傷境界間の距離、創傷の深さ、創傷の幅、結合組織の厚さ、及び創縁の自然真皮の厚さ、真皮マトリックスの配向、創傷細胞充実性、創傷血管新生が挙げられる。
【0153】
好ましい実施形態において、本明細書に記載される組成物は、任意に創傷治癒障害を特徴とする被験体である被験体における完全な創傷閉鎖の発生率を改善するのに使用され得る。完全な創傷閉鎖とは、皮膚の表面が完全に閉鎖していること、すなわち新しい上皮で完全に表面再生されていることを示している。このような実施形態において、エステトロール成分を含む組成物を使用することによる完全な創傷閉鎖の発生率は、組成物で処置されていない創傷と比較して、又は被験体の創傷治癒履歴に基づいて、少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも100%増加する。
【0154】
好ましい実施形態において、本明細書に記載される組成物は、任意に創傷治癒障害を特徴とする被験体である被験体における創傷の創傷閉鎖を達成する時間を加速させるのに使用され得る。このような実施形態において、被験体における創傷の創傷閉鎖を達成する時間は、組成物で処置されていない創傷と比較して、又は被験体の創傷治癒履歴に基づいて、少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは80%超短縮される。当業者であれば、本開示全体を通して詳細に記載された或る特定のパラメーター、例えば、限定されるものではないが、完全な創傷閉鎖を達成するのに必要とされる或る特定の時間が、とりわけ創傷のサイズに依存することを理解する。
【0155】
好ましい実施形態において、本明細書に記載される組成物は、任意に創傷治癒障害を特徴とする被験体である被験体における手術創傷閉鎖を促進するのに使用され得る。このような実施形態において、本明細書に記載される組成物は、手術創傷閉鎖の速度を増大させ、及び/又はエステトロール成分を含む組成物を使用せずに被験体により治癒され得る創傷の面積及び/又は深さを超える面積及び/又は深さを有する創傷の創傷閉鎖を被験体が達成する見込みを増大させることができる。幾つかの実施形態において、特に感染創傷において治癒の質が改善される。
【0156】
「製剤」又は「組成物」という用語は、本明細書において区別なく使用され得る。本明細書に記載される組成物に関するいずれの実施形態においても、当該組成物が、本開示全体を通して詳細に記載されていない1種以上の薬学的又は化粧品的に許容可能な担体(すなわち、添加剤)を含んでいてよいことは明らかである。本明細書において使用される「薬学的に許容可能な」という用語は、当該技術分野と一致しており、医薬組成物又は化粧品組成物の他の成分と適合し、その受容者にとって有害ではないことを意味する。本発明の特に好ましい実施形態において、本発明による(医薬)組成物は、毎日の投与用に設計されており、すなわち、これは毎日の投薬単位に相当する。医薬組成物において使用され得る添加剤は特に限定されず、したがって、有効医薬成分の添加剤、結合剤の添加剤、担体の添加剤、同時処理される添加剤、コーティング系の添加剤、制御放出の添加剤、希釈剤の添加剤、崩壊剤の添加剤、乾燥粉末吸入の添加剤、発泡系の添加剤、乳化剤の添加剤、脂質の添加剤、滑沢剤の添加剤、調節放出の添加剤、透過促進剤の添加剤、浸透促進剤の添加剤、pH調整剤の添加剤、可塑剤の添加剤、保存剤の添加剤、保存剤の添加剤、可溶化剤の添加剤、溶媒の添加剤、持続放出の添加剤、甘味料の添加剤、味覚生成(taste making)の添加剤、増粘剤の添加剤、粘度調整剤の添加剤、充填剤の添加剤、圧密化の添加剤、乾式造粒の添加剤、ホットメルト押出の添加剤、湿式造粒の添加剤、速放剤の添加剤、バイオアベイラビリティ向上の添加剤、分散の添加剤、溶解性向上の添加剤、安定剤の添加剤、カプセル充填の添加剤、又はそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される1種以上の添加剤であってよい。当業者であれば、薬学的活性物質のためのこのような媒体及び作用物質の使用が一般的な慣行であり、したがって、これらの添加剤を含むことが当該技術分野においてよく知られていることを認識している。使用される成分は全て、最終的な医薬組成物中に含まれる濃度において無毒であるべきであり、かつエステトロール成分の活性にマイナスに干渉すべきではないことは明らかであり、ここで、当該エステトロール成分は、好ましくは、医薬組成物中に主要な薬学的有効成分として存在する。或る特定の実施形態において、当業者であれば同じ添加剤の群に属すると分類するであろう2種以上の添加剤が医薬組成物に添加される。更なる実施形態において、異なる添加剤が異なる群に属する2種以上の添加剤が医薬組成物に添加される。或る特定の実施形態において、添加剤は、2つ以上の機能を満たす場合があり、及び/又は当業者によって、添加剤の異なる群又は部類に属するものとして分類される場合がある。
【0157】
上述のように、本発明の文脈において、創傷に見舞われる被験体に関する詳細は特に限定されない。好ましい被験体は高齢被験体である。「高齢被験体」とは、高齢の被験体、すなわち被験体の平均余命に近づいているか、又はそれを超えている年齢の被験体を指す。高齢被験体は、少なくとも60歳、好ましくは少なくとも70歳、少なくとも75歳、少なくとも80歳、少なくとも85歳、最も好ましくは少なくとも85歳の年齢によって規定される。代替的な実施形態において、被験体は、幼児(すなわち、若年被験体)、青年被験体、及び成人被験体からなる群から選択される。本明細書に記載される或る特定の実施形態において、被験体は緩和的であると診断されるか、又は緩和的であると見なされる。
【0158】
任意に、本発明により想定される医薬組成物(任意にハイドロゲルであり得る)は、スキンケアの便益をもたらすことができる更なる皮膚活性成分を含んでいてよい。スキンケアの便益としては、限定されるものではないが、皮膚の美容的外観に関連する便益を挙げることができる。更なる皮膚活性成分は、即時かつ短期的な(すなわち、急性の)便益、及び/又は長期かつ持続的な(すなわち、慢性の)便益をもたらす場合がある。
【0159】
任意に、本発明により想定される医薬組成物(任意にハイドロゲルであり得る)は、エステトロール成分に加えて、少なくとも1種の更なる薬学的有効成分を含んでいてよい。特定の実施形態において、少なくとも1種の更なる薬学的有効成分は、抗炎症剤、鎮痛剤、及び抗感染剤からなる群から選択される。抗炎症成分は、ステロイド系抗炎症成分、非ステロイド系抗炎症成分、又はそれらの組合せであってよい。鎮痛成分(すなわち、痛みの緩和を誘発することができる成分)は、非オピオイド鎮痛薬又はオピオイド鎮痛薬であってよい。適切な抗感染剤としては、限定されるものではないが、抗生物質が挙げられる。
【0160】
特定の実施形態において、本発明により想定される医薬組成物(任意にハイドロゲルであり得る)は、植皮の状況における創傷治癒に使用される。このような実施形態において、本明細書に記載される組成物を、皮膚移植技術、例えば、限定されるものではないが、幹細胞療法、バイオエンジニアリング皮膚、皮膚同等物、皮膚代替物、合成皮膚、又はそれらの組合せに頼る皮膚移植技術と組み合わせることができる。特定の実施形態において、本明細書において使用される組成物は、被験体の皮膚のかなりの領域への広範囲の外傷のために必要であると見なされる皮膚移植、例えば、限定されるものではないが、熱傷の創傷の状況における皮膚移植後の創傷治癒において使用される。本明細書においては、植皮ドナー部位からの創傷の治癒も想定されている。
【0161】
本明細書に記載される医薬組成物(任意にハイドロゲルである)は、創傷部位に投与(すなわち適用)される。組成物は、注ぐこと、滴下すること、噴霧すること、擦り付けること、又はその他のあらゆる適切な手段によって適用され得る。任意に、組成物は創傷部位に1回投与される。代替的には、組成物は、創傷部位に多数の時点で、好ましくは実質的に規則的に飛び飛びの時点で投与される。或る特定の実施形態において、組成物は創傷部位に毎日投与される。任意に、組成物は、創傷部位に投与され、少なくとも30分、好ましくは少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも2時間、より好ましくは少なくとも4時間、より好ましくは少なくとも8時間、より好ましくは少なくとも1日、より好ましくは少なくとも1週間、より好ましくは少なくとも1ヶ月に相当する長期間にわたって創傷部位に維持される(すなわち、創傷部位から取り除かれない)。このような実施形態において、創傷は、示された時間量にわたって組成物に継続的に曝露されることが理解される。
【0162】
本明細書において使用される「継続的な」/「継続的に」という用語は、成分が(治療上)重大な中断なく、比較的規則的な間隔で投与されることを意味する。当然、本方法の全体的な効力に影響を与えない軽微な中断を行う可能性はあり、実際、そのような逸脱も本発明によって包含される。
【0163】
本明細書に記載される医薬組成物(任意にハイドロゲルである)は、被験体の皮膚及び/又は創傷部位に、好ましくは創傷部位上又はその近傍に適用して、薬学的有効成分を皮膚(及び/又は創傷部位)に送達するのに適したあらゆる手段の一部であってよく、すなわちその手段に含まれていてよい。代替的には、本明細書に記載される組成物を、当該被験体、別の被験体、又は熟練した医療従事者によって被験体の皮膚及び/又は創傷部位に適用した後に、被験体の皮膚又は創傷部位に組成物を適用するのに適したあらゆる手段に適用することができる(すなわち、組成物は皮膚に適用する手段と組み合わせて使用される)。
【0164】
好ましくは、医薬組成物は、被覆材によって被験体の皮膚に適用される。当該技術分野においては、多数の種類の被覆材が記載されており、被覆材としては、限定されるものではないが、ガーゼ被覆材、チュール被覆材、アルギン酸塩被覆材、ポリウレタン被覆材、フィルム被覆材、多糖類ペースト被覆材、顆粒被覆材、フォーム被覆材、シリコーン被覆材、合成ポリマースキャフォールド被覆材、親水コロイド被覆材、閉塞性被覆材、又はそれらの組合せが挙げられる。被覆材は粘着性であっても、又は非粘着性であってもよい。本明細書において使用される「閉塞性被覆材」という用語は、空気及び/又は細菌との接触を防ぎ、水分、熱、体液、及び薬剤のうちの1種以上を保持する被覆材を指す。当業者であれば、特定の創傷に使用するのに適した創傷治癒用被覆材を選択することができ、当該選択を、限定されるものではないが、創傷の種類、創傷のサイズ、及び創傷の治癒の進展等のパラメーターに応じて行うことができる。
【0165】
任意に、被覆材はハイドロゲル被覆材である。ハイドロゲル被覆材は、ポリマーゲルの完全性を維持する繊維のネットワーク内の大部分が水から構成されている。当該被覆材から水が放出されて、創傷の適切な水分レベルが保持される。ハイドロゲル被覆材の例としては、限定されるものではないが、Tegagel(商標)及びIntrasite(商標)が挙げられる。
【0166】
上記の被覆材のいずれかを生産する方法及びプロトコルは、当該技術分野において記載されている。エステトロール成分を、当該被覆材を製造する際に被覆材内/被覆材上に含めてよいが、同様に予め製造された被覆材に適用してもよい。例示するものであって、限定されるものではないが、予め製造された被覆材又はその一部にエステトロール成分が含浸されていてよい。代替的に、予め製造された被覆材又はその一部にエステトロール成分がコーティングされていてもよい。
【0167】
特定の実施形態において、医薬組成物(任意にハイドロゲルである)は、皮膚置換物(すなわち、皮膚代替物又は真皮代替物)中に含まれている。皮膚代替物は、開放皮膚創傷を一時的又は永続的のいずれかで覆うことができる皮膚真皮層の機能を満たす3次元バイオマトリックスを提供する。当該皮膚代替物の材料は特に限定されず、したがって、生物学的材料、合成材料、又はそれらの組合せを含んでいてよい。生物学的材料の非限定的な例としては、限定されるものではないが、ヒト又はブタの皮膚、及びヒト又はブタの腸粘膜下層が挙げられる。生物学的皮膚代替物は、限定されるものではないが、コラーゲン、グリコサミノグリカン、フィブロネクチン、ヒアルロン酸、エラスチン、及びそれらのあらゆる組合せを含む様々な構成要素を含んでいてよい。
【0168】
代替的には、医薬組成物は、被験体の皮膚組織に適用するのに適したあらゆる他の手段に含まれていてよく、したがって、限定されるものではないが、包帯、バンドエイド、パッチ、及びプラスター等の手段に含まれていてよい。
【0169】
本発明についてその詳細な実施形態と併せて記載したが、上記の記載から、多くの代替形態、変更形態及び変形形態が当業者には明らかであろうことは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広い範囲内にある全てのかかる代替形態、変更形態及び、変形形態を包含することが意図される。本明細書に開示された本発明の態様及び実施形態は、以下の非限定的な実施例によって更に裏付けられる。
【実施例】
【0170】
実施例1.製造プロセス
水性ゲル製剤
バッチAG23、バッチAG24、バッチAG25、バッチAG26
i.水(1回目の添加)をDuran(容器1)へと量り入れた。
ii.工程(i)からの試料を800rpmのホットプレートスターラー上に置き、渦を形成した。
iii.計量ボートを介してポリマー(Carbopol(商標))を計量し、渦を維持しながら工程(ii)の内容物中に分散させた。試料を少なくとも1時間撹拌したままにして、ポリマーを分散させた。
iv.工程(iii)におけるポリマー分散液の重量を記録した。
v.工程(iv)からの試料を標準的な条件(121℃±2℃、2×105Pa、15分)でオートクレーブ処理した。
vi.オートクレーブ処理した試料が冷えたら、工程(v)からの試料を再計量し、追加の水を加えて、蒸発による揮発物の損失を補った。
vii.溶媒(PEG 400、Transcutol(商標)P(ジエチレングリコールモノエチルエーテル))を別個の容器へと量り入れた。
viii.エステトロール一水和物を工程(vii)の内容物へと量り入れ、500rpmで2.5時間撹拌(研究室の室温でのホットプレートマグネティックスターラー)して、薬物を溶解した。
ix.バイオセーフティ層流フードにおいて、工程(viii)の内容物を、多数のSpartan(再生セルロース)(0.2μm)滅菌フィルターを通して多数の20mLのオートクレーブ処理したバイアルへと濾過した。これは、フィルターが破損してもバルクの汚染を避けるためであった。
x.工程(ix)の内容物を合わせ、予めオートクレーブ処理したDuran容器へと量り入れた。
xi.工程(x)の内容物を工程(vi)の内容物へと注ぎ入れ、オーバーヘッドスターラー及びスパチュラを用いて混合した。混合速度及び混合時間を研究室専用のノートに記録した。
xii.水(総量の約4%)を使用して、工程(x)からの容器をすすぎ、容器1へと注ぎ入れた。
xiii.製剤を少なくとも一晩放置した。
xiv.水酸化ナトリウム溶液を用いて試料のpHを目標pHの6から6.5の間に調整し、水とともに重さを量った。
xv.製造工程(ix)~製造工程(xiv)を層流フードにおいて無菌条件下で行ったことに留意されたい。
【0171】
バッチAG30、バッチAG22(Carbopol(商標)980)
i.水(1回目の添加)を150mLのDuran(容器1)へと量り入れた。
ii.工程(i)からの試料を800rpmのホットプレートスターラー上に置き、渦を形成した。
iii.計量ボートを介してポリマー(Carbopol(商標)980)を計量し、渦を維持しながら工程(ii)の内容物中に分散させた。試料を少なくとも1時間撹拌したままにして、ポリマーを分散させた。
iv.工程(iii)におけるポリマー分散液の重量を記録した。
v.PEG 400及びグリセロールを計量し、工程(iv)の内容物に加えた。
vi.工程(v)からの試料を標準的な条件(121℃±2℃、2×105Pa、15分)でオートクレーブ処理した。
vii.オートクレーブ処理した試料が冷えたら、工程(v)からの試料を再計量し、追加の水を加えて、蒸発による揮発物の損失を補った。
viii.溶媒(プロピレングリコール(PG)、Transcutol(商標)P)を100mLのDuranへと量り入れた。
ix.エステトロール一水和物を工程(viii)の内容物へと量り入れ、500rpmで撹拌(実験室の室温でのホットプレートマグネティックスターラー)した。
x.バイオセーフティ層流フードにおいて、工程(ix)の内容物を、フィルターが破損してもバルクの汚染を避けるために、多数のSpartan(0.2μm)滅菌フィルターを通して多数の20mLのオートクレーブ処理したバイアルへと濾過した。
xi.工程(x)の内容物を合わせ、予めオートクレーブ処理した100mLのDuranへと量り入れた。
xii.水酸化ナトリウム(18%)(0.2μmの滅菌Spartanフィルターを通して事前に濾過した)を工程(xi)の内容物へと注ぎ入れ、混合した。
xiii.工程(xii)の内容物を工程(vii)の内容物へと素早く注ぎ入れ、スパチュラを用いて混合した。
xiv.水(総量の約4%)を使用して、工程(x)からの容器をすすぎ、容器1へと注ぎ入れた。
xv.増粘した試料を少なくとも一晩放置した。
xvi.試料のpHを測定し、残りの滅菌水とともに、必要に応じて水酸化ナトリウム溶液(これも0.2μmのSpartanフィルターを通して事前に滅菌した)を加えて、pH7~7.5に調整した。
製造工程(x)~製造工程(xvi)を層流フードにおいて無菌条件下で行ったことに留意されたい。
【0172】
バッチAG27(ポロキサマー)
i.水(1回目の添加)を150mLのDuranへと量り入れ、2℃~8℃で維持された冷蔵庫において20分間冷却した。
ii.工程(i)からの試料をホットプレートスターラー上に置き、ポロキサマー(P407に続いてP188)を計量し、800rpmでボルテックス処理しながら加えた。
iii.工程(ii)からの試料を、2℃~8℃で維持された水浴においてオーバーヘッドスターラーを用いて200rpmにて6時間撹拌して、ポロキサマーを溶解した。
iv.別個の容器において、PEG 400、ベンジルアルコール(BA)、及びPGを一緒に計量した。
v.エステトロール一水和物を計量し、工程(iv)の内容物に加え、ホットプレートスターラーにおいて500rpmで一晩撹拌したままにした。
vi.薬物が溶解したら、工程(v)の溶液の所要量を、ポロキサマー溶液が入っている最初の容器に量り取った。試料をマグネティックスターラー上で300rpmにて一晩放置した。
vii.工程(vi)からの試料のpHを7~7.5に調整した。
【0173】
バッチAG28(ヒドロキシエチルセルロース(HEC))、AG29(カルボキシメチルセルロース(CMC))
i.製剤用の溶媒系を、全ての溶媒(実薬系用だけは水/緩衝液を除く)を量り取ることによって調製した。
ii.薬物を実薬製剤用の溶媒系に加え、500rpmで一晩撹拌した。
iii.薬物の溶解後、Duranを撹拌しながら、水/pH7.0の緩衝溶液を溶媒系に加えた。
iv.適量のプレミックスを別個の150mLのDuranへと量り入れた。
v.ポリマーを800rpmで撹拌して渦を形成しながら分散させ、製剤を500rpmで一晩撹拌したままにした。
vi.AG28の場合、pHをpH7~7.5に調整した。AG29の場合、これにはリン酸-リン酸緩衝液(pH7.0)が含まれているため、pH調整は必要とされなかった。
【0174】
バッチAG15(ポロキサマー)
i.水(1回目の添加)を150mLのDuranへと量り入れ、2℃~8℃で維持された冷蔵庫において20分間冷却した。
ii.工程(i)からの試料をホットプレートスターラー上に置き、ポロキサマー(P407に続いてP188)を計量し、800rpmでボルテックス処理しながら加えた。
iii.工程(ii)からの試料を、2℃~8℃で維持された水浴においてオーバーヘッドスターラーを用いて200rpmにて6時間撹拌して、ポロキサマーを溶解した。
iv.別個の容器において、PEG400、BA、及びPGを一緒に計量した。
v.エステトロールを計量し、工程(iv)の内容物に加え、ホットプレートスターラーにおいて500rpmで一晩撹拌したままにした。プラセボを製造する場合はこの工程を省略した。
vi.薬物が溶解したら、工程(v)の溶液の所要量を、ポロキサマー溶液が入っている最初の容器に量り取った。試料をマグネティックスターラー上で300rpmにて一晩放置した。
vii.工程(vi)からの試料のpHを7~7.5に調整した。
【0175】
バッチAG17
i.水(1回目の添加)を150mLのDuran(容器1)へと量り入れた。
ii.工程(i)からの試料を800rpmのホットプレートスターラー上に置き、渦を形成した。
iii.計量ボートを介してポリマー(Carbopol(商標))を計量し、渦を維持しながら工程(ii)の内容物中に分散させた。試料を少なくとも1時間撹拌したままにして、ポリマーを分散させた。
iv.工程(iii)におけるポリマー分散液の重量を記録した。
v.工程(iv)からの試料を標準的な条件(121℃±2℃、2×105Pa、15分)でオートクレーブ処理した。
vi.オートクレーブ処理した試料が冷えたら、工程(v)からの試料を再計量し、追加の水を加えて、蒸発による揮発物の損失を補った。
vii.ベンジルアルコール、PEG 400、及びPGを別個の100mLのDuranへと量り入れた。
viii.エステトロール一水和物を工程(vii)の内容物へと量り入れ、500rpmで一晩撹拌(実験室の室温でのホットプレートマグネティックスターラー)して、薬物を溶解した。プラセボ製剤の場合はこの工程を省略した。
ix.水酸化ナトリウム(18%)(1.38g)を工程(vi)の内容物へと注ぎ入れ、混合した。
x.工程(ix)の内容物を工程(vi)の内容物へと素早く注ぎ入れ、スパチュラを用いて混合した。
xi.水(4.5g)を使用して、工程(ix)からの容器をすすぎ、容器1へと注ぎ入れた。
xii.増粘した試料を少なくとも一晩放置した。
xiii.試料のpHを測定し、pHを測定し続けながら残りの水を徐々に加えた。
【0176】
バッチAG18(HEC)、バッチAG19(CMC)
i.プラセボ用及び実薬製剤用の溶媒系を、全ての溶媒(実薬系用だけは水/緩衝液を除く)を量り取ることによって調製した。
ii.薬物を実薬製剤用の溶媒系に加え、500rpmで一晩撹拌した。
iii.薬物の溶解後、Duranを撹拌しながら、水/pH7.0の緩衝溶液を溶媒系に加えた。
iv.適量のプレミックスを別個の150mLのDuranへと量り入れた。
ポリマーを800rpmで撹拌して渦を形成しながら分散させ、製剤を500rpmで一晩撹拌したままにした。
v.AG18の場合、pHをpH7~7.5に調整した。AG19の場合、これにはリン酸-リン酸緩衝液(pH7.0)が含まれているため、pH調整は必要とされなかった。
【0177】
バッチAG20、バッチAG23
i.AG17からの工程(i)~工程(vi)に従った。
ii.溶媒(PEG 400、Transcutol(商標)P)を別個の容器(100mL)へと量り入れた。
iii.エステトロール一水和物を工程(ii)の内容物へと量り入れ、500rpmで2.5時間撹拌(実験室の室温でのホットプレートマグネティックスターラー)して、薬物を溶解した。プラセボ製剤の場合はこの工程を省略した。
iv.バイオセーフティ層流フードにおいて、工程(iii)の内容物を、多数のSpartan(再生セルロース)(0.2μm)滅菌フィルターを通して多数の20mLのオートクレーブ処理したバイアルへと濾過した。これは、フィルターが破損してもバルクの汚染を避けるためであった。当初、真空ポンプを用いてNalgeneボトルシステムフィルター(PES)を通じて試料を濾過する予定であったが、フィルターが壊れたため、Spartanシリンジフィルターを使用した。
v.工程(iv)の内容物を合わせ、予めオートクレーブ処理した100mLのDuranへと量り入れた。
vi.工程(v)の内容物を工程(i)の内容物へと注ぎ入れ、スパチュラを用いて混合した。
vii.水(4.5g)を使用して、工程(v)からの容器をすすぎ、容器1へと注ぎ入れた。
viii.製剤が増粘しなかったため、これを少なくとも一晩放置した。
ix.水酸化ナトリウム溶液を用いて試料のpHを6から6.5の間に調整し、水とともに重さを量った。最初に水酸化ナトリウム(18%)を用いたプロセスを実施したが、Carbopol(商標)が凝集した、すなわち水和することができなかったことに留意されたい。さらに、当初の目標pHは7~7.5であったが、pH6.5を上回るとポリマーの沈殿が観察され、この問題を避けるのに試料を繰り返し、pH6から6.5の間で置いた。
製造工程(iv)~製造工程(ix)を層流フードにおいて無菌条件下で行ったことに留意されたい。
【0178】
バッチAG21、バッチAG22
i.AG17からの工程(i)~工程(vi)に従った。
ii.溶媒(PEG 400、PG、Trans P)を100mLのDuranへと量り入れた。
iii.エステトロール一水和物を工程(i)の内容物へと量り入れ、500rpmで撹拌(実験室の室温でのホットプレートマグネティックスターラー)した。AG22の場合は撹拌の2.5時間以内に、AG21の場合は一晩で薬物が溶解した。プラセボ製剤の場合はこの工程を省略した。
iv.バイオセーフティ層流フードにおいて、工程(viii)の内容物を、フィルターが破損してもバルクの汚染を避けるために、多数のSpartan(0.2μm)滅菌フィルターを通して多数の20mLのオートクレーブ処理したバイアルへと濾過した。
v.工程(ix)の内容物を合わせ、予めオートクレーブ処理した100mLのDuranへと量り入れた。
vi.水酸化ナトリウム(18%)(1.38g)(0.2μmの滅菌Spartanフィルターを通して事前に濾過した)を工程(x)の内容物へと注ぎ入れ、混合した。
vii.工程(xi)の内容物を工程(vi)の内容物へと素早く注ぎ入れ、スパチュラを用いて混合した。
viii.水(4.5g)を使用して、工程(x)からの容器をすすぎ、容器1へと注ぎ入れた。
ix.試料は増粘し、試料を少なくとも一晩放置した。
x.試料のpHを測定し、残りの滅菌水とともに、必要に応じて水酸化ナトリウム溶液(これも0.2μmのSpartanフィルターを通して事前に滅菌した)を加えて、pH7~7.5に調整した。
製造工程(ix)~製造工程(xv)を層流フードにおいて無菌条件下で行ったことに留意されたい。
【0179】
【0180】
クリーム
バッチCR01、バッチCR05、バッチCR12
i.プラセボ及び実薬の溶媒系を、全ての溶媒(実薬系用だけは水/緩衝液を除く)を量り取ることによって調製した。
ii.薬物を実薬クリーム用の溶媒系に加え、500rpmで一晩撹拌した。
iii.薬物が完全に溶解した後、容器(Duran)を撹拌しながら、水/pH7.0の緩衝溶液を溶媒系に加えた。
iv.次いで、油相を調製した。CR01の場合、油相を75℃の水浴中に入れて、これを溶融した。
v.CR05及びCR12の場合、油相を160℃で2時間にわたりオーブンに入れた(滅菌プロセスを模倣した)。油相が室温まで冷えて再固化したら、油相を水浴(75℃)に入れて、これを再び溶融させた。
vi.実薬クリーム及びプラセボクリームを処理する前に、所要量の溶媒系のプレミックスを別個のDuranへと量り入れた。
vii.プレミックスが入ったDuranを、ホモジナイザーヘッドとともに水浴中に5分間入れた。
viii.CR01及びCR12の場合、クリームを、25G分散ヘッドを備えたUltra-turraxを介して10000rpmにて2分間処理した。
ix.CR05の場合、均質化中に、クリームを代わりに5000rpmで5分間均質化して、溢れるのを避けた。
x.処理後、クリームが室温に達するまで、クリームを金属製のスパチュラを用いて手で撹拌した。
xi.これらを一晩放置して硬化させた。
xii.製剤のpHをpH7~7.5に調整した。
【0181】
バッチCR10、バッチCR13、バッチCR14、バッチCR15、バッチCR16
i.プラセボ及び実薬の溶媒系を、全ての溶媒(実薬系用だけは水/緩衝液を除く)を量り取ることによって調製した。
ii.薬物を実薬クリーム用の溶媒系に加え、500rpmで一晩撹拌した。
iii.薬物が完全に溶解した後、Duranを撹拌しながら、水/pH7.0の緩衝溶液を溶媒系に加えた。
CR13、CR14、及びCR15の油相を160℃で2時間にわたりオーブンに入れて(滅菌して)、室温で再固化させた。
v.水相を、滅菌PESシリンジフィルター(0.2μm)を使用して濾過により滅菌した。
vi.所要量の水相を、オートクレーブ処理により予め滅菌した250mLのDuranへと量り入れた。
vii.油相を75℃の水浴中に入れて溶融させた。
viii.水相をホモジナイザーヘッドとともに水浴中に入れて、5分間平衡化させた。
ix.各クリームについて、油相をそれぞれの水相に加え、25G分散ヘッドを備えたUltra-turraxを使用して10000rpmで2分間均質化した。
x.処理後、クリームが室温に達するまで、クリームを金属製のスパチュラを用いて手で撹拌した。
xi.これらを一晩放置して硬化させた。
xii.製剤のpHをpH7~7.5に調整した。
製造工程(v)~製造工程(xii)を層流フードにおいて無菌条件下で行い、滅菌層流フードにおいてのみ滅菌容器を開いたことに留意されたい。
【0182】
【0183】
実施例2.in vitro放出実験1
方法の開発及び小規模の予備的なin vitro放出試験(IVRT)の実験に続いて、実施例1に記載される10種類の試験製剤を使用して、実規模のIVRT実験を実施した。利用した実験条件を表3に示す。
【0184】
【0185】
方法の開発及び実行可能性実験の間に明らかになった実験条件を使用して、実規模のin vitro放出実験を実施した。試験した全てのゲル製剤及びクリーム製剤の結果は
図1に示されており、表形式の結果は表4に示されている。
【0186】
水性ゲル製剤
水性ゲル製剤の放出速度を
図2及び表4に示す。AG18製剤、AG19製剤、及びAG23製剤は、最高の放出速度(161μg/cm
2/√時~221μg/cm
2/√時)を示し、続いてAG21(51μg/cm
2/√時)であり、AG22(滅菌)、AG22(オートクレーブ)、及びAG15が最低の放出速度(3μg/cm
2/√時~10μg/cm
2/√時)となった。一般的な傾向として、観察された放出速度はAPIの濃度と相関しており、ここで、最高の放出速度を有する製剤(AG18、AG19、及びAG23)はまた、最高の濃度のエステトロール一水和物(0.50%(重量/重量))を含んでいる。
【0187】
最低の放出速度を有する水性ゲル(AG21、AG22(滅菌)、AG22(オートクレーブ)、及びAG15)は、投薬されたAPIを大量にレセプター溶液中に直ちに放出(t=0.5時間で約50%以上の放出)することが判明した。APIの大量の放出の結果として、多くの製剤では線形の定常薬物放出は達成されなかった(r2<0.9)。したがって、水性ゲル製剤を使用して推断及び統計的比較を行わなかった。
【0188】
クリーム製剤
クリーム製剤の放出速度を
図3に示し、表4により補足する。CR16(0.50%(重量/重量))は最高の放出速度となり、続いてCR14(0.35%(重量/重量))、そして最後にCR01(0.24%(重量/重量))であり、ここで、平均放出速度は32μg/cm
2/√時~53μg/cm
2/√時の範囲であった。水性ゲルと同じ傾向に従い、放出速度は製剤中に存在するAPIの濃度と相関しており、ここで、最高の放出速度は、最高の薬物負荷を有する製剤(CR16、0.50%のAPIを含み、52.20μg/cm
2/√時の放出速度となる)において観察された。クリーム製剤の平均薬物放出(μg/cm
2/√時)の一元配置統計分析を、テューキー・クレーマー法を使用して実施した(n=6)。CR14とCR16との放出速度の間には統計的な差はなかった(p>0.05)が、CR01の放出速度は有意により低い放出速度を有することが観察された(p<0.05)。
【0189】
【0190】
実施例3.in vitro放出実験2
1回目のin vitro放出実験(実施例2)の結果に続いて、表5において概説される4種の製剤及び実験パラメーターを使用して2回目のIVRT実験を実施した。
【0191】
【0192】
2回目の実規模のin vitro放出実験を、表5に詳述されている実験パラメーター及び4種の水性ゲル製剤を使用して実施した。試験した全ての製剤の結果は
図4及び
図5に示されており、表形式の結果は表6及び表7に示されている。
【0193】
研究のこの部分の目的は、最適化されていない製剤(AG23 0.5%(重量/重量)のAPI)と、様々な濃度の最適化された製剤(AG24 0.5%(重量/重量)、AG25 0.22%(重量/重量)、及びAG26 0.06%(重量/重量)のAPI)とを比較することにより、製剤からのエステトロール一水和物の放出速度に対する熱力学的活性の効果を判定することであった。
【0194】
これら4種の製剤をAPIの適用用量の放出のパーセンテージに関して考慮すると(表17)、8時間後にAG26製剤(0.06%(重量/重量)のAPI)から87.95±10.88%のAPIが放出された。これは、互いに統計的に差がない(p>0.05)他の3種の製剤(AG25 61.51±4.91%(0.22%(重量/重量)のAPI)、AG24 60.67±4.86%(0.5%(重量/重量)のAPI)、及びAG23 56.88±5.90%(0.5%(重量/重量)のAPI))よりも有意に高かった(p、0.05)。
【0195】
時間の経過に伴う適用用量の放出速度のパーセンテージ(傾き)を考慮すると、製剤AG26と、他の3種の製剤(AG23、AG24、及びAG25)との間に有意差があった(p<0.05)。AG23と、AG24と、AG25との間には統計的有意差は見られなかった。統計分析をテューキー・クレーマー検定により実施した(n=5~6)。
【0196】
本研究に際して、製剤AG23は、1回目のIVRTの実規模の実験における195±20μg/cm2/時と比較して、約167±13μg/cm2/時の放出速度を示した。本研究において、製剤AG24が最高の放出速度(約182±8μg/cm2/時)を有し、続いてAG23、AG25(約81±5μg/cm2/時)であり、最後にAG26(約34±3μg/cm2/時)であった。各製剤の放出速度は隣の製剤と有意差がある(p<0.05)。これは、0.5%(重量/重量)のエステトロール一水和物をどちらも含むAG23及びAG24の場合、AG23の投薬で直面した問題、又は前回の実験において使用されたAG23のバッチ(AG24についてここで見られる放出速度に非常に近い放出速度を有した)と比較したバッチ間の変動性、又は単にAG23とAG24との製剤化の違いによるものである可能性がある。他の2種の製剤については、これらの製剤におけるより低いAPI含有量のため、放出速度の差は予想通りである(AG23及びAG24は0.5%(重量/重量)、AG25は0.22%(重量/重量)、かつAG26は0.06%(重量/重量)であった)。
【0197】
上記で報告された水性ゲル製剤間の差を評価するのに、テューキー・クレーマー法を使用して一元配置統計分析を実施した(n=5~6)。
【0198】
【0199】
【0200】
実施例4.in vivoのLPS処置プロトコル(創傷治癒遅延モデル)
in vivoでのLPS誘発性の創傷治癒遅延モデルを、以前に記載されたように再現した(Crompton R, Williams H, Ansell D, Campbell L, Holden K, Cruickshank S, Hardman MJ Oestrogen promotes healing in a bacterial LPS model of delayed cutaneous wound repair. Lab Invest. 2016 Apr;96(4):439-49.)。
【0201】
雌の野生型(C57BL/6J)8週齢マウスを6つの群(実験群当たり6匹の動物)に分けた:
二重プラセボコントロール(LPSなし、プラセボ処置)、
LPSコントロール(LPS、プラセボ処置)、
LPSと局所用EstroGel(エストラジオールゲル、含水アルコールゲル中に半水和物として0.06%の17β-エストラジオールを含む)、
LPSと局所用AG24(0.5%のE4)、
LPSと局所用AG25(0.22%のE4)、
LPSと局所用AG26(0.06%のE4)。
【0202】
創傷を受ける前日(-1日目)、全ての動物を計量し、酸素及びイソフルラン(臨床症状に応じて2%~2.5%のイソフルランで流量1.25L~2L)を使用して麻酔をかけた。動物の毛を剃り、背側領域を準備した。各動物の背部に創傷位置(2つの創傷)をマークした。DPBSのみを投与した二重プラセボ群は除いて、動物に、DPBS中で希釈した2μgのK.ニューモニエ由来LPS(1つの創傷当たり1μg、Sigma Aldrich、英国:L4268)の1回目の皮下注射を創傷部位に行った。次いで、EstroGel、AG24、AG25、AG26、又はプラセボの合計60μlと測定された薄層を各動物の背部に適用した(1つの創傷当たり30μl)。動物を加温キャビネット内で回復させた後、アルファパッド、RO水、食餌、マッシュ、及びハウスを収容している新しいケージにおいて単独で飼育した。0日目(最初の麻酔から24時間後)に、マウスに再度麻酔をかけ、背部の皮膚をクロルヘキシジンワイプできれいにした。6mmの背側切除部を2つ作成した。DPBSを注射した二重プラセボマウスは除いて、2μgのLPS(1つの創傷当たり1μg)を上記のように創傷部位に皮下注射した。次いで、EstroGel、AG24、AG25、AG26、又はプラセボとしてのAG23を創傷の上部にわたって薄層で適用した(合計60μl、1つの創傷当たり30μl)。このとき、「LPS水疱」を傷つけないように注意した。鎮痛薬であるブプレノルフィン(0.1mg/Kg)を術後に首筋に皮下注射を介して投与し、各動物を撮像した。マウスを加温キャビネット内で回復させ、単独飼育に戻した。術後に観察を行った。
【0203】
処置群について、1日目、2日目、3日目、及び4日目に、観察中に創傷の上部にわたって局所用のEstroGel、AG24、AG25、AG26、又はプラセボを薄層で再適用した(合計60μl、1つの創傷当たり30μl)。
【0204】
5日目に、CO2濃度の上昇及び頸椎脱臼を介してマウスを人道的に殺処分した。
【0205】
子宮を摘出して計量した。
【0206】
処置部位からの非創傷皮膚(NS)を、創傷を受けた時点(0日目)で採取し、組織学的分析用に処理し、急速凍結した。創傷組織を、創傷を受けた5日後(5日目)に採取した。創傷を二等分にし、それぞれの創傷の下半分を組織学的分析用に固定し、上半分を急速凍結した。
【0207】
免疫組織化学検査(IHC)及び組織学的分析を実施するのに、組織試料を10%の緩衝ホルマリン中で固定し、パラフィンワックス中に包埋して切片を作製した。組織切片をキシレン中でワックス除去し、エタノール勾配を通じて再水和した後、ヘマトキシリン及びエオシン染色、並びに免疫細胞についてのIHCを行った。
【0208】
マウス腹腔マクロファージの分離及び培養を行うのに、安楽死させたマウスの腹腔を、3%のFBS及び1%の抗生物質-抗真菌剤を補充した5mlの氷冷PBSで満たした。細胞を含む液を針及び注射器を使用して取り出し、10%のFBS及び1%のペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMI成長培地において1ml当たり1×106個の細胞で12ウェルプレートに細胞を播種した。細胞を一晩放置してマクロファージを接着させた後、2回洗浄して非接着細胞を全て除去した。細胞を更に24時間培養した後、M1状態又はM2状態に分極化させた。M1マクロファージを100ng/mlのIFN-γ及び1μg/mlのLPSを使用して誘導した。M2マクロファージについては、20μg/mlの抗IFN-γ及び10ng/mlのIL4を使用した。
【0209】
RNAの単離及び定量的リアルタイムPCRを行うのに、マウスマクロファージをTrizol中で収集し、Trizol plus RNA単離キット(Invitrogen、Thermo Fisher)を使用して製造業者の使用説明書に従ってRNAを単離した。RNAを、GoScript逆転写酵素(Promega)を使用してcDNAに逆転写した。定量的リアルタイムPCRを、2×Takyon SYBR Greenマスターミックス及びCFX Connectサーモサイクラーを使用して実施した。異なる処置群からの腹腔マクロファージのM1及びM2の分極化の程度を評価するのに、マウス遺伝子Il-1β、Tnf-α、iNos、Arg1、Fizz1、及びYm1用のプライマーを使用した。GAPDH用のプライマーを使用してデータを正規化した。特段の指定がない限り、相対的な遺伝子発現はM0 PBS+PBOコントロール群に対して定めた。
【0210】
統計的有意性を、適宜、一元配置ANOVAとともにテューキー事後分析又は対応のあるt検定を使用して評価した。
【0211】
図6から、EstroGel(商標)の適用により子宮の重量増加及び肥厚性変化が促進されたことが明らかである。E4の局所適用は用量依存的に子宮重量に影響を及ぼし、ここで、AG26は効果を示さず、AG24は子宮重量増加を引き起こす。データにより、EstroGel(商標)(E2)及び高レベルE4製剤(AG24、AG25)とは対照的に、低濃度E4製剤(AG26)を開放創に6日間局所適用しても全身的な副作用は生じなかったことが確認される。これらは子宮重量増加として表れる。次に、組織学的試料から創傷閉鎖を評価した。組織切片をK14免疫組織化学検査にかけて、新しく形成している表皮を視覚化した。再上皮化の度合いを、新生表皮の長さを創傷縁間の距離で割り、これに100を掛けたものとして求めた。予想通り、LPS及びプラセボで処置された創傷では、LPS非処置創傷に比べて、創傷再上皮化の30%を超える遅延が示された(
図7)。4種の実薬処置(EstroGel(商標)、AG24、AG25、及びAG26)の全てで再上皮化が促進された。興味深いことに、EstroGel(商標)又はAG26のどちらで処置された創傷でも、より高い促進規模及び統計的有意性が観察され、ここで、再上皮化はLPS非処置コントロール群において観察されたものに近づいた。AG25処置群では、LPS/PBO群に対して統計的有意性を全く達成することができなかった。
【0212】
図6及び
図7に示されているデータに基づいて、局所的に適用されたAG26製剤は、子宮重量増加等の全身効果を及ぼさずに、創傷治癒を特に十分に改善することができると結論付けられる。これは、全身効果が完全に回避されることになれば、好ましい投薬量範囲の指標となる。しかしながら、場合によっては、目先の被験体に好ましいリスク/便益に基づいて、より高い投薬量が想定される場合もある。
【0213】
免疫組織化学検査を実施して、実薬処置(EstroGel(商標)、AG24、AG25、及びAG26)が局所創傷免疫細胞数に対して及ぼす効果を評価した。LPS/PBO処置された創傷においては、LPS/PBO非処置創傷と比べて創傷好中球レベルが有意に増加した(
図8)。AG24及びAG26での処置により、創傷好中球数はEstroGel(商標)と同程度で有意に減少した。AG25では創傷炎症の低減における有効性が僅かに劣るものの、依然として高度に有意であった。創傷マクロファージ数に関してE2及びE4を含むゲルの非常に類似した効果が観察された(
図9)。改めて、AG25では有効性が僅かに劣っていた。興味深いことに、EstroGel(商標)及びAG26ではマクロファージに対するLPSの効果は完全に逆転し、創傷マクロファージのレベルは非LPS/PBO群と同等に回復した(
図9)。
【0214】
免疫組織化学分析を更に補足するのに、創傷組織RNAを単離し、qPCRを実施して、M1及びM2の分極化表現型の特異的なマーカーを評価した(
図10)。全ての処置により、LPS/PBOコントロールと比べてM1マーカーの発現が減少する傾向がもたらされた。興味深いことに、効果の規模はEstrogel(商標)群及びAG26群において最も大きく現れた(IL1-β処置及びAG26処置については統計的有意性に達した)。対照的に、M2マーカーのFizz1及びYm1は全ての処置群により増加したが、この場合、AG26の効果は試験された3種のAG製剤の中で最もはっきりしなかった。このデータは、E4が炎症を抑え、かつM2(治癒促進)創傷環境を促進することを示している。
【0215】
最後に、局所的なE2処置又はE4処置の潜在的な全身効果を更に調査するのに、研究完了時に各実験マウス群から分離された腹腔マクロファージの表現型を評価した。具体的には、各群からのマクロファージを腹腔洗浄によって別々に分離し、培養し、M1表現型又はM2表現型のいずれかに分極化させた(実施例7を参照)。RNAを単離し、qPCRを実施して、Tnf-α及びiNOS(M1マーカー)、並びにArg1及びYm1(M2マーカー、
図11)の相対レベルを定量化した。
【0216】
LPS/PBO群から分離されたマクロファージでは、in vitroでM1表現型又はM2表現型に分極化した場合に、M1マーカー発現の増加が示されることが判明した。対照的に、LPS/PBO群では、in vitroでM2刺激に応答するM2マーカー誘導の減少が示された。注目すべきことに、M0 LPS/PBO群では、コントロールと比べてM1マーカー又はM2マーカーの発現の変化は示されなかった。結論として、局所LPSは腹膜マクロファージを過大な炎症誘発応答へと導く。
【0217】
EstroGel(商標)又はE4製剤(AG24、AG25、AG26)で局所的に処置されたLPS処置マウスにおいては、これらの効果は逆転した(
図11)。例えば、E4製剤の処置により、M1及びM2のin vitro分極化細胞の両方において、LPSに導かれたTnf-αの発現上昇は完全に逆転した。AG24、AG25、及びAG26での処置後、統計的に有意な発現の減少が観察された。この抗炎症効果は、特にiNOS発現と併せて考慮される場合、AG24(最高のE4濃度を有する製剤)により僅かに大きくなった(
図11)。
【0218】
4種の全ての製剤では、LPS/PBO処置マウス由来の細胞と比べて、M2分極化細胞においてM2マーカーのArg1及びYm1の発現が増加した(
図11)。この効果は、EstroGel(商標)処置群から分離されたマクロファージにおいて最も顕著であり、ここで、M2分極化細胞におけるM2マーカーレベルは、コントロール(LPS非処置)マウスからのレベルを上回った。興味深いことに、試験された3種のE4製剤のうち、AG26(最低のE4濃度)によりM2マーカー発現の最高の増加が現れたものの、AG25及びAG24も有効であった。
【0219】
実施例5.in vivoでのLPS処置プロトコル(創傷治癒遅延モデル):様々な製剤の比較及び処置期間の変動
実施例4に示されるin vivoでのLPS処置プロトコル(創傷治癒遅延モデル)を、以下の動物群を用いて繰り返した:
二重プラセボ群(非処置コントロール)、
LPSコントロール(LPS、プラセボ処置)、
LPSと局所用EstroGel(エストラジオールゲル、含水アルコールゲル中に半水和物として0.06%の17β-エストラジオールを含む)、4日間の反復投与、
LPSと局所用AG26(0.06%のE4)、単回投与、
LPSと局所用AG26(0.06%のE4)、4日間の反復投与、
LPSと局所用AG28(0.06%のE4)、単回投与、
LPSと局所用AG28(0.06%のE4)、4日間の反復投与。
【0220】
0日目だけに(単回投与)、又は-1日目、0日目、1日目、及び2日目(反復投与)に、局所用のEstroGel(商標)、AG26、AG28、又は対応するプラセボを、観察中に創傷の上部にわたって薄層で適用した(合計60μl、1つの創傷当たり30μl)。
【0221】
3日目に、CO
2濃度の上昇及び頸椎脱臼を介してマウスを人道的に殺処分した。子宮並びに非創傷組織試料及び創傷組織試料を実施例4で説明したように処置した。EstroGelとは対照的に、AG26及びAG28の局所適用は子宮重量に影響を与えなかった(
図12)。
【0222】
次に、組織学的試料から創傷閉鎖を評価した(
図13)。組織切片をK14免疫組織化学検査にかけて、新しく形成している表皮を視覚化した。3つの実薬処置(EstroGel(商標)、AG26、及びAG28)の全てで、4日間反復投与した場合、再上皮化が促進された。AG28では、AG28 PBO群と比較して統計的有意性を全く達成することができなかった。興味深いことに、Estrogel(商標)と比較してAG26のいずれかで処置された創傷では、より高い促進規模及び統計的有意性が観察され、ここで、再上皮化はLPS非処置コントロール群において観察されたものを達成する。
【0223】
AG26及びAG28(4回の適用)の両方で、創傷治癒遅延マウスモデルにおいて、再上皮化の増加によりプラセボと比較して創傷治癒が加速した(
図13)。
【0224】
AG26及びAG28は、全身効果を及ぼすことなく、たった1回の適用後に創傷治癒を改善することができる局所用製剤である。
【0225】
実施例6.db/dbマウスにおける創傷治癒
糖尿病を患う8週齢の雌のdb/dbマウスを計量し、動物を6つの群に分ける(実験群当たり6匹の動物):
局所用プラセボ(コントロール)、
局所用EstroGel(商標)(エストラジオールゲル、含水アルコールゲル中に半水和物として0.06%の17β-エストラジオールを含む)、
局所用AG24(0.5%のE4)、
局所用AG25(0.22%のE4)、
局所用AG26(0.06%のE4)、
局所用AG28(0.06%のE4)。
【0226】
マウスに酸素及びイソフルラン(臨床症状に応じて2%~2.5%のイソフルランで流量1.25L~2L)を使用して麻酔をかけ、毛を剃り、背部の皮膚をクロルヘキシジンワイプできれいにする。6mmの背側切除部を2つ作成する。次いで、EstroGel(商標)、AG24、AG25、AG26、AG28、又はプラセボを創傷の上部にわたって薄層で適用する(合計60μL、創傷ごとに30μL)。ブプレノルフィン(0.1mg/Kg)を術後に首筋に皮下注射を介して投与し、各動物を撮像する。マウスを加温キャビネット内で回復させ、単独飼育に戻す。術後に観察を行う。
【0227】
観察中に毎日、局所用のEstroGel(商標)、AG24、AG25、AG26、AG28、又はプラセボを創傷の上部にわたって薄層で再適用する(合計60μL、創傷ごとに30μL)。1日目、3日目、5日目、7日目、9日目、11日目、13日目、及び14日目に、面積測定分析用に創傷の撮像を行う。
【0228】
14日目に、マウスを屠殺し、創傷組織をそれらの中点で二等分する。ここで、各創傷の下半分をワックス組織学検査用に処置する(固定液の入ったカセットに入れる)。子宮の重量を文書に記録することができるように、子宮を慎重に摘出する。
【0229】
EstroGel(商標)の適用により子宮重量増加及び肥厚性変化が促進されることが予想される。E4の局所適用は用量依存的に子宮重量に影響を及ぼし、ここで、AG26及びAG28は効果を示さず、AG24は子宮重量増加を引き起こすと予想される。
【0230】
EstroGel(商標)、AG24、AG25、AG26、及びAG28は、糖尿病性創傷治癒マウスモデルにおいて、再上皮化の増加によりプラセボと比較して創傷治癒を加速することが予想される。
【0231】
AG26及びAG28は、全身効果を及ぼすことなく創傷治癒を改善することができる局所用製剤であると結論付けることができる。
【0232】
実施例7.創傷関連のin vitroアッセイにおけるエステトロールの効果
in vitroアッセイを実施して、創傷関連の細胞型(線維芽細胞、ケラチノサイト、及び免疫細胞)におけるE4の有効用量を決定した。これは、臨床製剤研究についてのE4用量の選択に情報を与える。次に、創傷関連の細胞機能に対するE4の効果の機構的な理解が確立された。
【0233】
1.0.方法
1.1.ヒト細胞及びマウス細胞
初代ヒト真皮線維芽細胞(HDF)を腹部皮膚又は脚の皮膚から分離した。初代新生児正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK)を購入した(Lonza)。マウス真皮線維芽細胞(MDF)、マウス表皮ケラチノサイト(MEK)、マウス腹腔マクロファージ、及びマウス骨髄を、C57/Bl6(wt)マウス、NDb(Lepr+/-)マウス、又はDb(Lepr-/-)マウスから分離した。
【0234】
1.2.真皮線維芽細胞及び表皮ケラチノサイトの培養
線維芽細胞を分離し、10%の熱不活化FBS、1%のペニシリン/ストレプトマイシン、及び1%のアンホテリシンBを補充したDMEM中で培養した。アッセイを実施する少なくとも4日前に、細胞を5%の活性炭処理FBSを補充したDMEMに切り替えた。
【0235】
新生児HEKを、15%のヒトケラチノサイト成長サプリメント(HKGS)及び1%のペニシリン/ストレプトマイシンを補充したEpiLife中で培養した。MEKを、1%のペニシリン/ストレプトマイシン及び1%のアンホテリシンBを補充したCnT基礎培地中で培養した。
【0236】
1.3.スクラッチ創傷アッセイ
細胞を24ウェルプレートへと播種し、培養してコンフルエントな単層を形成した後、1mlのピペットチップでスクラッチを施した。ウェルを、E2、E4、及び/又は様々なエストロゲン受容体アゴニスト及びエストロゲン受容体アンタゴニストで処置した。E2、E4、及びPHTPPのストック溶液を、成長培地(GM)中のEtOHの最終濃度が0.1%を超えないようにエタノール(EtOH)中に溶解した。ICI、PHPTT、MPP、PPT、及びDPNを、GM中のDMSOの最終濃度が0.05%を超えないようにDMSO中に溶解した。非処置のネガティブコントロールに加えて、同等の濃度のEtOH及び/又はDMSOを含むビヒクルコントロールを含めた。全ての処置物を、2%の活性炭処理FBSを補充した培地中で作業濃度に希釈した。規定のエンドポイントでスクラッチを視覚化するのに、細胞をクリスタルバイオレットで染色し、Nikon E400明視野顕微鏡において撮像した。ウェルごとの多数の独立した測定から、スクラッチの閉鎖を判定した。
【0237】
1.4.THP1細胞の培養
THP1細胞を10%の熱不活化FBS及び1%のペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMI成長培地中で維持した。細胞を1ml当たり2×105個の細胞で12ウェルプレート又は6ウェルプレートへと播種し、ホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)で処置して、マクロファージへの分化を誘導した。PMAを含まない完全成長培地中で細胞を24時間培養し、続いて分極化前に6時間血清飢餓させた。細胞を20ng/mlのIFN-γ及び10pg/mlのLPS(E.コリ(E. coli)由来)を使用して6時間又は24時間にわたってM1マクロファージに分極化させ、RNA単離又はフローサイトメトリー用に収集した。
【0238】
1.5.マウス骨髄由来マクロファージの分離及び培養
1%のペニシリン/ストレプトマイシン及び1%のアンホテリシンBを補充したDMEMで骨を洗った。骨髄細胞を10%のFBS及び10%のL929培養上清を補充したDMEM中で1ml当たり1×106個の細胞で12ウェルプレート又は6ウェルプレートへと播種して、分化を誘導した。7日後~10日後、分化したマクロファージを無血清成長培地中の10-7MのE2又はE4で16時間処置し、100ng/mlのIFN-γ及び1μg/mlのLPSを使用してM1型細胞に分極化させた。6時間又は24時間の分極化の後、細胞をRNA単離又はフローサイトメトリー用に収集した。
【0239】
1.6.マウス腹腔マクロファージの分離及び培養
C57/Bl6マウスからの腹腔マクロファージを腹腔洗浄によって分離した。安楽死させたマウスの腹腔を3%のFBSを補充した5mlの氷冷PBSで満たした。細胞を含む洗浄液を針及び注射器を使用して取り出し、10%の活性炭処理FBS及び1%のペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMI成長培地において1ml当たり1×106個の細胞で12ウェルプレート又は6ウェルプレートに細胞を播種した。無血清成長培地中の10-7MのE2又はE4で16時間処置し、100ng/mlのIFN-γ及び1μg/mlのLPSを使用してM1型細胞に分極化させた。6時間又は24時間の分極化の後、細胞をRNA単離又はフローサイトメトリー用に収集した。
【0240】
1.7.RNAの単離及び定量的リアルタイムPCR
処置後に、ヒトマクロファージ及びマウスマクロファージをTrizol中で収集し、Trizol plus RNA単離キット(Invitrogen、Thermo Fisher)を使用して製造業者の使用説明書に従ってRNAを単離した。RNAを、GoScript逆転写酵素(Promega)を使用してcDNAに逆転写した。定量的リアルタイムPCRを、2×Takyon SYBR Greenマスターミックス及びCFX Connectサーモサイクラーを使用して実施した。ERα及びERβ用のプライマーを使用して、MEK及びMDFをE2及びE4で処置した後のER発現の変化を調査した。E2及びE4がMEK分化及びMDFによるECMタンパク質の発現に対して及ぼす効果を調べるのに、Snai1、ケラチン1及びフィブロネクチン、コラーゲンI、MMP-2及びMMP-9用のプライマーを使用した。iNOS、IL-1β、及びTnf-α、又はCcl17用のプライマーを使用して、M1/M2分極化の状態を評価した。GAPDH用のプライマーを使用してデータを正規化した。特段の指定がない限り、相対的な遺伝子発現を、ビヒクルコントロール、すなわちM0の発現に対して定めた。
【0241】
1.8.統計分析
統計的有意性を、適宜、一元配置ANOVAとともにテューキー事後分析又は対応のあるt検定を使用して評価した。
【0242】
2.0.ケラチノサイト及び線維芽細胞
2.1.E2及びE4はどちらもヒト真皮線維芽細胞(HDF)の遊走を促進する
スクラッチアッセイを実施して、様々な濃度のE2及びE4がHDFの遊走に対して及ぼす効果を定量化した(
図14)。10
-8M及び10
-7MのE2での処置により、ビヒクルコントロールと比較して有意に速いスクラッチの閉鎖がもたらされた(それぞれ157%及び141%)。試験したE2の最高濃度(10
-6M)並びに2つの最低濃度10
-8M及び10
-9MのE2では、閉鎖に違いは観察されなかった。E4処置によっても、10
-8M、10
-7M、及び10
-6Mで、ビヒクルコントロールと比較して有意に速いスクラッチの閉鎖がもたらされた(それぞれ152%、147%、及び142%)。したがって、E2及びE4はどちらも10
-8Mで線維芽細胞のスクラッチ創傷の閉鎖を最適に刺激し、ここで、E2処置後にはより高い規模の刺激が観察された。
【0243】
次に、HDFを使用して追加の実験を行い、a)5つ目のドナーからの線維芽細胞におけるE2及びE4の効果を更に確認し、b)細胞培養培地にCS-FBSを含めることの相対的な効果を調査した。2%のCS-FBS、0%のFBS、又は2%のFBS(CSなし)のいずれかを含むDMEM中で、3つの同一セットのスクラッチアッセイ(ビヒクル処置とE2処置又はE4処置とを10
-7Mで比較する)を実施した。興味深いことに、3つの全ての場合において、E2及びE4のどちらもスクラッチの閉鎖を促進する傾向が観察され、ここで、E4処置後に最大の促進が見られた(
図15)。予想通り、FBS(CSなし)群では全ての処置にわたってより速い閉鎖が示されたが、E2及びE4の相対的な効果はこの群においてはそれほど顕著ではなかった。
【0244】
2.2.E2及びE4はどちらもマウス真皮線維芽細胞(MDF)の遊走を促進する
E4の有益な効果を更に実証し、かつ将来のin vivoでのマウスモデル研究についての投薬の検討を支持するのに、次に、マウス真皮線維芽細胞(MDF)においてin vitroのスクラッチアッセイを実行に移した。エストロゲン化合物の生物学的効果はマウスモデルにおいて広範に実証されており、近交系マウス系統から分離された細胞に切り替えると、ヒトドナーから分離された細胞の使用と比べてモデルの変動性が低下すると予測された。
【0245】
HDFと同様に、MDFをE2又はE4で処置すると、ビヒクルコントロール処置と比較してスクラッチの閉鎖が有意に増加した(
図16及び
図17)。単一マウスからの細胞においては、E4処置の効果の規模はE2処置よりも小さかったが、有効範囲はより広いようであった(E4の場合は3つの濃度で有意であるのに対して、E2の場合は2つの濃度で有意である、
図16)。2匹の追加のマウスからのデータを追加し、かつ低継代細胞及び高継代細胞を比較することにより、E4についての効果がE2よりも僅かに大きな規模であることが明らかになった(
図17)。さらに、E2及びE4の両方の有益な効果は、臨床上の予想と一致して、高継代細胞において最も大きかった。
【0246】
2.3.E2処置及びE4処置により線維芽細胞のER発現が増加する一方で、E4はフィブロネクチン発現を促進し、MMP活性を阻害する
in vitroで培養されたマウス線維芽細胞を10
-7MのE2、E4、DPN、又はPPTのいずれかで処置した。以前に報告されたように、E2処置はERα及びERβのどちらの発現も上方制御したが、ERアゴニストでの処置はこれらのそれぞれの受容体の発現を優先的に増加させた(例えば、PPTはERαの発現を増加させ、DPNはERβの発現を増加させた;
図18)。また、全ての処置で、MMP2及びMMP9の発現が増加する傾向が強く示された(
図18)。次に、E2又はE4のいずれかで処置されたHDFからの細胞上清に対してザイモグラフィーを実施して、E2及びE4が細胞由来のMMP活性に対して及ぼす効果を評価した。3つの独立したドナーからの細胞全体にわたって、E2及びE4の両方でコントロールと比べてMMP2活性が有意に低下した(
図19)。効果の規模(及び統計的有意性)は、E4で処置された細胞の方がより大きかった。いずれの処置群においてもMMP9活性は検出されなかった。最後に、E2及びE4がマウス線維芽細胞における細胞外マトリックス遺伝子、具体的にはコラーゲン1(Cola1)及びフィブロネクチン(Fn1)の発現に対して及ぼす効果を調査した(
図20)。野生型マウス由来の細胞においては、処置後も効果は観察されなかった。しかしながら、糖尿病(db/db)マウス由来の細胞をE2又はE4のどちらで処置しても、Co1a1及びFn1の両方の発現が増加する傾向が観察された(
図20)。この発現の増加は、E4処置されたdb/db由来細胞のみにおいてフィブロネクチン(Fn1)について統計的有意性に達した。
【0247】
2.4.E2及びE4は表皮ケラチノサイトの遊走を促進し、かつ創傷関連表皮遺伝子発現を調整する
E2及びE4がケラチノサイトの遊走に対して及ぼす効果を、初代正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK)を使用して評価した。実験を様々な成長培地(ヒトケラチノサイト成長サプリメント(HKGS)の様々な濃度を有する)において実施した。15%のHKGS及び30%のHKGSの両方を補充して培養した細胞についてのデータを示す(
図21)。どちらの条件においても、10
-7M/10
-8Mの範囲のE2及びE4では、創傷閉鎖が速まる傾向が強く示された。興味深いことに、これは15%のHKGS中の10
-7MのE2及び10
-7MのE4についてのみ統計的有意性に達し、ここで、E4については、僅かにより大規模な効果及びより高い統計的有意性が示された。
【0248】
次に、初代マウス表皮ケラチノサイト(MEK)に切り替えて、E2及びE4がMEK創傷関連遺伝子発現に対して及ぼす効果を調査した。統計的に有意ではないものの、E2及びE2のどちらで(特に10
-7Mで、
図22)処置された細胞においても、ERα及びERβの両方が誘導される傾向が強く観察された。文書に記録されたE2の有益な効果と一致して、10
-7MのE2又はE4のどちらで処置した後にも、EMTマーカーであるSnailの統計的に有意な誘導が観察された。対照的に、分化マーカーであるケラチン1(Krt1)では、E2処置及びE4処置により下方制御される傾向が示された。総合的に、これらのデータは、E2又はE4のいずれかでの処置後に、より分化度の低い治癒促進表現型に切り替わることを示唆している。概して、E2及びE4が遺伝子発現に対して及ぼす観察された効果は、ERアンタゴニストのICIとの併用処置によって逆転した。
【0249】
2.5.E2及びE4はin vitroで抗炎症活性を示す
E2及びE4の両方の相対的な抗炎症効果をin vitroで評価した。最初に、ヒト単球THP1細胞系統を使用して、E2及びE4の幾つかの濃度をスクリーニングした。THP1細胞をPMAでの処置によってマクロファージ表現型に分化させ、続いてM1表現型又はM2表現型に分極化させた(
図23)。M1マーカー(TNF-α)及びM2マーカー(CCL17)の発現をプロファイリングすることによって、分極化の成功を確認した。様々な濃度のE2又はE4との併用処置の効果を評価した。ここで、E2又はE4のいずれかでの処置により、M1分極化細胞においてTnf-αの発現が減少し、かつM2分極化細胞においてCCL17の発現が増加する傾向が強くもたらされた(
図23)。
【0250】
追跡実験では、マウス骨髄由来単球を分離し、分化(L929培地)させ、炎症誘発性M1表現型(IFN-γ及びLPS、6時間又は24時間)に分極化させ、THP1細胞において特定された最適濃度(10
-7、
図24)のE2又はE4のいずれかで併用処置した。E2及びE4のどちらが存在する場合にも、ビヒクルでの処置と比較して、様々なM1マーカー(iNOS、IL1-β、及びTnf-α)の発現が減少する傾向が見られた。6時間又は24時間のどちらで分極化された細胞においても同様の効果が観察された(
図24)。次いで、L929培養上清ではなく、30ng/mlのMCSFを用いてマクロファージに分化させたマウス骨髄由来単球を用いて実験に着手した。MCSF刺激されたマクロファージでは、M1に分極化した場合(M0と比べて)、はるかに高いレベルのM1マーカー発現が示された。改めて、様々なM1マーカー(iNOS、IL1-β、及びTnf-α)により、ビヒクルでの処置と比較して、E2及びE4のどちらが存在しても発現が減少する傾向が強く示された(
図25)。注目すべきは、E2及びE4のどちらでも、MSCFで分化したBMDMにおけるM1マーカーiNOSの統計的に有意な減少がもたらされたことである。一般的に、E4の観察された抗炎症効果はE2よりも僅かに大きかった。
【0251】
最後に、E2及びE4の抗炎症効果を、分離したばかりのマウス腹腔マクロファージにおいて評価した。BMDMプロトコルとは異なり、既に分化した腹腔マクロファージを直ちにE2(10
-7M)又はE4(10
-7M)で前処置し、続いてIFN-γ及びLPSを使用して6時間にわたってM1に分極化させた。腹腔マクロファージにおいても、M1マーカー(iNOS、IL1-β、及びTnf-α)により、ビヒクルでの処置と比較して、E2及びE4のどちらが存在しても発現が減少する傾向が強く示された(
図26)。注目すべきは、これらの細胞においてマーカー発現の全体的なレベルがより高かったことである。E4に媒介されるIL1-βの減少は統計的有意性に達した。観察されたE4の抗炎症効果は、E2について観察されたものとほぼ同様であった。
【0252】
2.6.線維芽細胞及び免疫細胞に対するER特異的効果の予備的評価
E4の相対的なER特異的効果を、ERα(MPP)又はERβ(PHTPP)に対して高度に特異的なアンタゴニストとの併用処置を使用してin vitroで評価した。予備的研究により、HDFの遊走(
図27)及びBMDMの分極化(
図28)のどちらに対するE4の効果もERαによって媒介される可能性があることが示唆される。具体的には、ERαアンタゴニストMPPの併用処置は、E4に誘導されるスクラッチの閉鎖及びE4に媒介されるIL1-βの減少を妨げると思われる一方で、同じERαアンタゴニストはE2の効果に対しては限定的な影響しか及ぼさなかった。比較的大きな変動性があることを踏まえると、観察された効果を確認するには、これらの研究を、反復回数を増やして繰り返すべきである。
【0253】
2.7.in vitroでの製剤の活性の予備的評価
製剤化されたゲルの創傷治癒能力における初期の信頼性を与えるのに、AG23実薬(ACT)及びプラセボ(PBO)のゲル製剤と一緒にEstroGel(商標)(EG、
図29)のin vitro評価を実施した。改めて、E2処置及びE4処置では、E2を含むEstrogel(商標)での処置と同様に、M1細胞の表現型が有意に抑えられた。AG23プラセボは相対的なiNOS発現に対して効果を有しなかったが、AG23 ACT(E4を含む)ではAG23 PBOと比べてiNOS発現が有意に減少した。これらのデータは、ex vivoのヒト創傷におけるE4ゲル製剤の更なる評価を裏付けている。
【0254】
3.0.結果の要約
創傷治癒の規定の細胞的側面に対するE4の相対的な効果を調査するように実験を設計した。一連のin vitro研究を、線維芽細胞、ケラチノサイト、及び免疫細胞を使用して着手した。重要なことは、これらのin vitro研究をヒト細胞及びマウス細胞の両方で実施し、ヒト細胞の臨床的関連性とマウス細胞における種間検証とを組み合わせて、後続のin vivo研究に対応したことである。
【0255】
線維芽細胞.E4は、ヒト(HDF)及びマウス(MDF)のどちらの真皮線維芽細胞の遊走も促進することが明らかとなった。どちらの場合もE4の最適濃度は10-7Mから10-8Mでの間であり、これはE2の最適濃度とほぼ同様であった。注目すべきは、いずれの場合も、E2及びE4の相対的な有効性が同様であったことである。MDSにおいては、慢性創傷環境を模倣する可能性がある高継代細胞において遊走に対する効果がより大きかったと報告される。MDFにおいては、E2又はE4のいずれかでの処置により、ERα及びERβの細胞発現が直接増加した。HDSFにおいては、E4処置により細胞上清におけるMMP2活性が阻害され、E2よりも大きな程度で阻害されるようであった。予備的評価により、ERαは、HDFの遊走に対するE4の効果を媒介する上で重要であることが示唆される。
【0256】
ケラチノサイト.マウス表皮ケラチノサイト(MEK)によっても、E4又はE2のいずれかで処置した場合にスクラッチ創傷がより素早く閉鎖された。改めて、E2及びE4のどちらについての最適濃度も同等(10-7M)であり、その際、観察された効果は細胞成長培地の組成に依存していた。線維芽細胞と同様に、E2処置及びE4処置はどちらもERα及びERβのMEK発現を誘導した(とは言え、効果は統計的有意性には達しなかった)。E2処置及びE4処置は、EMTマーカーのSnailの発現を誘導し、かつ分化マーカーのケラチン1を阻害することが明らかとなった。これらはどちらも細胞治癒促進応答の特徴である。
【0257】
抗炎症作用.E4及びE2は、マウス骨髄由来マクロファージ(BMDM)、マウス腹腔マクロファージ、及びヒトTHP-1細胞に対して治癒促進抗炎症効果を発揮することが明らかとなった。THP-1細胞において、E4はM1分極化細胞においてTNF-α(M1マーカー)の発現を減少させ、かつM2分極化細胞においてCCL17(M2マーカー)の発現を増加させた。マウスBMDM及び腹腔マクロファージのどちらにおいても、E4はM1分極化細胞においてM1マーカーのパネルの発現を一貫して減少させた。この効果は、分極化の6時間後及び24時間後の両方で、かつ3つの独立した分化方法、すなわちL929のGM若しくはMCSF(BMDM)で得られた細胞を使用して、又はin vivo(分離した腹腔マクロファージ)で実証された。いずれの場合も、E4を用いて観察された効果の規模は、E2を使用して観察されたものとほぼ一致していた。予備的評価により、ERαは、BMDMに対するE4の抗炎症性効果を媒介する上で重要であることが示唆される。パイロット研究により、E4製剤AG23での処置後にM1マーカーの発現が減少することが明らかになった。
【0258】
4.0.参考文献
Campbell L、Emmerson E、Davies F, et al. Estrogen promotes cutaneous wound healing via estrogen receptor beta independent of its antiinflammatory activities. J Exp Med. 2010;207(9):1825-1833. doi:10.1084/jem.20100500
Collaborative Group on Hormonal Factors in Breast Cancer. Type and timing of menopausal hormone therapy and breast cancer risk: individual participant meta-analysis of the worldwide epidemiological evidence. Lancet. 2019;394(10204):1159-1168. doi:10.1016/S0140-6736(19)31709-X
Roth GS, Harman SM, Lamberg SI. Altered Ovarian Regulation of Wound Healing during Aging. Proceedings of the Society for Experimental Biology and Medicine. 1981;166(1):17-23. doi:10.3181/00379727-166-41017
Thornton MJ. Estrogens and aging skin. Dermatoendocrinol. 2013;5(2):264-270. doi:10.4161/derm.23872
【0259】
実施例8.安定性研究用の水性ゲル製剤の調製
表8に、安定性研究用に調製されたハイドロゲルを列挙する。調製は実施例1においてAG24について説明したのと同様に行った。
【0260】
【国際調査報告】