(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-10-17
(54)【発明の名称】フッ素化アイオノマーを含む廃膜のリサイクル
(51)【国際特許分類】
C08J 11/08 20060101AFI20251009BHJP
B29B 17/02 20060101ALI20251009BHJP
【FI】
C08J11/08 ZAB
B29B17/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2025520755
(86)(22)【出願日】2023-11-16
(85)【翻訳文提出日】2025-04-09
(86)【国際出願番号】 GB2023053009
(87)【国際公開番号】W WO2024115879
(87)【国際公開日】2024-06-06
(32)【優先日】2022-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2023-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コールソン、ベサン ハフ
(72)【発明者】
【氏名】デュシェーヌ、デニス
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン、ロス
(72)【発明者】
【氏名】ハート、ガレス
(72)【発明者】
【氏名】ミストリー、クリシュナ
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA14
4F401AC09
4F401AC20
4F401AD01
4F401AD07
4F401BA13
4F401CA41
4F401CA46
4F401CA55
4F401CA56
4F401DA14
4F401EA46
4F401EA59
4F401EA80
4F401FA07Y
(57)【要約】
フッ素化アイオノマーを含む廃膜をリサイクルする方法であって、廃膜からのフッ素化アイオノマーを溶媒中に分散させることと、フッ素化アイオノマーを溶媒から分離することであって、フッ素化アイオノマーを分離した後、溶媒が、溶媒及び溶媒中のフッ素含有種を含む廃分散媒の形態である、分離することと、廃分散媒を処理して、溶媒中のフッ素含有種の濃度を低減することと、を含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化アイオノマーを含む廃膜をリサイクルする方法であって、
前記廃膜からの前記フッ素化アイオノマーを溶媒中に分散させることと、
前記フッ素化アイオノマーを前記溶媒から分離することであって、前記フッ素化アイオノマーを分離した後、前記溶媒が、前記溶媒及びフッ素含有種を含む廃分散媒の形態である、分離することと、
前記廃分散媒を処理して、前記溶媒中のフッ素含有種の濃度を低減することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記廃分散媒を処理して、前記溶媒中のフッ素含有種の濃度を低減した後、前記溶媒が、更なる廃膜材料を処理するためにリサイクルされ、再使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記廃分散媒中の前記フッ素含有種が、前記溶媒中に溶解された可溶性フッ素含有有機化合物、前記溶媒中に溶解された可溶性イオン性フッ化物種、及び前記溶媒中に分散された不溶性フッ素含有化合物のうちの1つ以上を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記廃分散媒の前記処理が、前記溶媒中のフッ素含有種の濃度を低減するための以下の工程:前記廃分散媒を固体吸着剤と接触させること、前記廃分散媒をイオン交換媒体と接触させること、前記廃分散媒を濾過することのうちの1つ以上を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記廃分散媒の前記処理が、前記廃分散媒を活性炭と接触させることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記廃分散媒の前記処理が、前記廃分散媒をカチオン性イオン交換樹脂と接触させることを含む、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記廃分散媒の前記処理が、前記廃分散媒をアニオン性イオン交換樹脂と接触させることを含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記廃分散媒の前記処理がまた、前記溶媒中の残留金属カチオンの濃度を低減する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記金属カチオンが、鉄、ニッケル、銅、及びクロムのうちの1つ以上を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記廃分散媒が、クロスフロー濾過又は限外濾過に供される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒が、水、アルカリ水溶液、又は水/アルコール混合物から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記廃膜が、燃料電池又は水電解槽成分からのものである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記廃膜が、膜アイオノマーを含む膜と、前記膜の一方の側に配置された第1の触媒層であって、第1の触媒及び第1の触媒層アイオノマーを含む第1の触媒層と、前記膜の反対側に配置された第2の触媒層であって、第2の触媒及び第2の触媒層アイオノマーを含む第2の触媒層と、を含む、廃触媒被覆膜であり、
前記廃分散媒が、前記膜アイオノマー、前記第1の触媒層アイオノマー、及び前記第2の触媒層アイオノマーのうちの少なくとも1つの分散液から生成される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記廃触媒被覆膜を溶媒と接触させて、前記膜を分散させることなく前記膜から前記第1及び第2の触媒層の両方を層間剥離することであって、前記第1及び第2の触媒層が、前記第1の触媒、前記第1の触媒層アイオノマー、前記第2の触媒、及び前記第2の触媒層アイオノマーを含む触媒層スラリーを形成する、接触させることと、
前記膜を前記触媒層スラリーから分離することと、
前記膜を処理して、前記膜アイオノマーを分散させて回収することと、
前記触媒層スラリーを処理して、前記第1及び第2の触媒層アイオノマーを溶媒中で分散させて回収し、前記第1及び第2の触媒又はそれらの成分を分離して回収することと、を含み、
前記膜の処理が、第1の溶媒及び前記第1の溶媒中のフッ素含有種を含む第1の廃分散媒を生成し、前記第1の廃分散媒が、前記第1の溶媒中のフッ素含有種の濃度を低減するように処理され、
前記触媒層スラリーの処理が、第2の溶媒及び前記第2の溶媒中のフッ素含有種を含む第2の廃分散媒を生成し、前記第2の廃分散媒がまた、前記第2の溶媒中のフッ素含有種の濃度を低減するように処理される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1及び第2の廃分散媒が、フッ素含有種の濃度を低減するために処理前に組み合わされる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1及び第2の廃分散媒が、フッ素含有種の濃度を低減するために別々に処理される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、燃料電池及び水素生成水電解槽で使用されるものなどの触媒被覆膜の成分のリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的な水素経済に投資がなされるにつれて、燃料電池及び水素生成水電解槽の生産は急速に成長するように設定されている。触媒被覆膜(Catalyst coated membrane、CCM)は、燃料電池及び電解槽の両方の主要な機能的成分である。このようなCCMは、一般に、触媒含有層によって両側が被覆された導電性ポリマー膜を含む。CCMは、酸化及び還元反応を駆動し、プロトン及び電子輸送を担持するように構成され、これらのプロセスは、燃料電池及び電解槽技術が機能するために必要とされる。
【0003】
CCM成分の材料及び構成には、最終用途における機能的性能要件に従って変動が存在するが、それらは、一般に、1つ以上の白金族金属(platinum group metal、PGM)触媒及び1つ以上のプロトン伝導性ポリマーを含むいくつかの有用な成分を含有する。
【0004】
典型的には、膜は、ペルフルオロスルホン酸(perfluorosulfonic-acid、PFSA)アイオノマーなどの1つ以上のアイオノマーから形成される。アイオノマーはまた、触媒層の一方又は両方に提供されてもよい。触媒層中のアイオノマーは、主膜成分及び/又は他の触媒層中のアイオノマーと同じであっても異なっていてもよい。
【0005】
CCMは、2つの異なる触媒を含むことができ、1つは、CCMの一方の側で酸化反応を駆動するためのものであり、1つは、CCMの他方の側で還元反応を駆動するためのものである。CCMはまた、水素と酸素の再結合を触媒して水を形成し、膜を通過する水素の量を減少させ、酸素と混合して潜在的に爆発性の混合物を形成するために提供される再結合触媒を含んでもよい。CCMはまた、過酸化物スカベンジャー、例えば、CeO2などの金属酸化物として、塩又は酸化物(担持若しくは非担持)として送達される多価カチオンを含んでもよい。
【0006】
CCM触媒は、白金、ルテニウム、イリジウム、パラジウム、又はそれらの混合物などの白金族金属に基づくことができる。白金族金属は、元素(金属)形態、化合物形態(例えば、酸化イリジウム触媒などの酸化物)、又はPGM系金属合金(例えば、PtCo)として提供されてもよい。更に、PGM触媒材料は、炭素質基質材料(例えば、白金が配置された炭素若しくはPtCo担持炭素の粒子を含む白金担持炭素触媒などの炭素、又は有機材料、例えば、米国特許第2020/102659号及び国際公開第2006/089180号に記載されているナノ構造化薄膜触媒(nanostructured thin film catalyst、NTFC)技術)などの基質材料上に担持されていてもよい。
【0007】
触媒被覆膜(CCM)を追加の機能層と組み合わせて提供して、多層膜電極アセンブリ(membrane electrode assembly、MEA)を形成することもできる。そのようなMEAは、例えば、3、5、又は7層を有してもよい。
【0008】
燃料電池及び電解槽のためのCCM製造の増加に伴い、CCM製造中に生成される大量のスクラップ材料(例えば、品質管理における不具合による)を含むCCM廃棄材料の関連する増加、及び寿命末期(end-of-life、EoL)CCMの増加も存在する。CCMは、白金族金属(特にPt、Pd、Ir及びRu)及びアイオノマー(膜及び触媒層の両方において)を含む、希少及び/又は貴重ないくつかの成分を含有するので、廃CCM材料からそのような成分をリサイクルする方法に対する需要が増大している。
【0009】
生産スクラップ及び寿命末期のCCM材料からPGMを回収するための1つの現在の方法は、焼却を含む。焼却プロセスは、従来のPGM精製経路を介して処理されるPGMリッチ(典型的にはPt及びIr)灰を産出する。しかしながら、焼却プロセスは、膜の一部であるポリマーからCO2及びHFなどの有害かつ有毒なガスを放出する。これらのガスは両方とも、大気を汚染し、温室効果を増大させ、及び/又は人体に有害な影響を及ぼすため、悪影響を及ぼす。したがって、これらのガスの放出を低減又は排除する、より清浄なプロセスが必要とされている。
【0010】
上記に加えて、焼却方法は、同様に重要な価値を有するアイオノマー成分を破壊する。したがって、PGM及びアイオノマー成分の両方を回収することができるプロセスを提供すること、並びにより清浄で、より安全で、より環境に優しいプロセスを提供することも望ましい。ペルフルオロスルホン酸アイオノマーを回収するプロセスは公知である。例えば、国際公開第2016/156815号及び米国特許第7255798号を参照されたい。更に、個々のPGM触媒成分を回収するプロセスが知られている。例えば、米国特許第7709135号を参照されたい。CCMの成分をリサイクルする方法を開示するいくつかの他の先行技術文献を以下で議論する。
【0011】
欧州特許第3275036号は、ジオール溶媒中にCCMを浸漬することと、加熱して、溶媒、1つ以上のアイオノマー、及び1つ以上の触媒成分を含む分散液を得ることと、分散液を濾過して、溶媒及び1つ以上のアイオノマーを1つ以上の触媒成分から分離することと、を含む、方法を開示する。
【0012】
「PEM water electrolysis:Innovative approaches towards catalyst separation,recovery and recycling」(International Journal of Hydrogen Energy 44(2019)3450-3455)と題された論文は、膜アイオノマー、酸化イリジウム触媒、及びPt/C触媒を回収するためにCCMをリサイクルする方法を開示する。これは、2つの別個のチャンバー(1つはCCMの酸化イリジウム側にあり、1つはCCMのPt/C側にある)を画定するように反応器にわたってCCMを取り付けることによって達成される。次いで、CCMの両側は、脱イオン水及びアルコールからなる溶液の循環に別々に供される。膜からの触媒層の完全な層間剥離が10~30分後に起こることが記載されている。層間剥離後、膜は乾燥され、再使用され、又は再処理される。触媒残留物を含む2つの別個の分散液は遠心分離され、固体は回収され、オーブン中で乾燥させて、リサイクルされた酸化イリジウム触媒粉末及びリサイクルされたPt/C触媒粉末を得る。リサイクルされた触媒粉末は、新しいCCMを製造するために使用される。リサイクルされた触媒を乾燥させるときに使用される温度は、触媒粉末中のアイオノマーを燃焼させるほど十分に高くないことが開示されており、新しいインク配合物中で触媒粉末を再使用するときに存在するアイオノマーは、リサイクルされた触媒材料を使用して製造されたCCMにおけるセル電圧の増加(性能の低減)の原因であり得ることが示されている。
【0013】
中国特許第106898790号はまた、触媒層がアルコール-水混合物を使用して膜から層間剥離され、次いで固体膜が触媒層分散液から分離される方法を開示する。次いで、触媒層分散液及び固体膜は、別々に処理され、リサイクルされる。以前に議論された論文とは対照的に、触媒層分散液は、触媒層アイオノマーを燃焼させるのに十分な温度まで加熱することによって処理され、次いで、より高い温度下で更に加熱されて、炭素を除去し、貴金属触媒を回収することが記載されている。
【0014】
燃料電池及び電解槽がより持続可能な技術になることを可能にするために、生産スクラップ及び寿命末期材料を含む廃CCM材料からPGM及びアイオノマー成分の両方を回収、分離、及びリサイクルするための商業的に実行可能で環境に優しい経路が依然として必要とされている。本明細書の目的は、この問題に対処することである。
【発明の概要】
【0015】
本明細書によれば、フッ素化アイオノマーを含む廃膜をリサイクルする方法が提供され、方法は、
廃膜からのフッ素化アイオノマーを溶媒(水、アルカリ水溶液、又は水/アルコール混合物から選択され得る)中に分散させることと、
フッ素化アイオノマーを溶媒から分離することであって、フッ素化アイオノマーを分離した後、溶媒が、溶媒及び溶媒中のフッ素含有種(例えば、溶媒中に溶解された可溶性フッ素含有有機化合物、溶媒中に溶解された可溶性イオン性フッ化物種、及び/又は不溶性金属フッ化物塩などの溶媒中に分散された不溶性フッ素含有化合物)を含む廃分散媒の形態である、分離することと、
廃分散媒を処理して、溶媒中のフッ素含有種の濃度を低減することと、を含む。
【0016】
溶媒中のフッ素含有種の濃度を低減するための廃分散媒の処理後、溶媒は、安全に廃棄するか、又は更なる廃膜材料を処理する際に再使用するためにリサイクルすることができる。この廃分散媒処理方法の利点には、生産スクラップ及び/又は寿命末期の燃料電池及び/又は水電解槽CCM成分からのアイオノマーのリサイクルから生じる排出物の低減が含まれる。水消費量の減少も有利である。
【0017】
廃分散媒の処理は、溶媒中のフッ素含有種の濃度を低減するための以下の工程のうちの1つ以上を含んでもよい:廃分散媒を固体吸着剤と接触させること、廃分散媒を1つ以上のイオン交換媒体と接触させることと、廃分散媒を濾過すること。例えば、廃分散媒は、活性炭、カチオン性イオン交換樹脂、アニオン性イオン交換樹脂、又は当該媒体の組み合わせなどの、吸着剤と接触させてもよい。廃分散媒の処理はまた、鉄、ニッケル、銅、及びクロムのうちの1つ以上などの、溶媒中の残留金属カチオンの濃度を低減し得る。
【0018】
有利には、廃分散媒はまた、例えば、廃分散媒を吸着剤及び/又はイオン交換媒体と接触させる前に、クロスフロー濾過又は限外濾過に供することができる。これは、これらの不純物の捕捉及び廃棄の前にフッ素含有不純物を濃縮するのを補助することができる。
【0019】
廃膜は、燃料電池又は水電解槽成分(製造スクラップ又は寿命末期材料のいずれか)からのものであってもよい。例えば、廃膜は、膜アイオノマーを含む膜と、膜の一方の側に配置された第1の触媒層であって、第1の触媒及び第1の触媒層アイオノマーを含む第1の触媒層と、膜の反対側に配置された第2の触媒層であって、第2の触媒及び第2の触媒層アイオノマーを含む第2の触媒層と、を含む、廃触媒被覆膜であり得る。この場合、廃分散媒は、膜アイオノマー、第1の触媒層アイオノマー、及び第2の触媒層アイオノマーのうちの少なくとも1つの分散液から生成される。
【0020】
特定の例によると、廃触媒被覆膜を溶媒と接触させて、膜を分散させることなく膜から第1及び第2の触媒層の両方を層間剥離することを含み、第1及び第2の触媒層は、第1の触媒、第1の触媒層アイオノマー、第2の触媒、及び第2の触媒層アイオノマーを含む触媒層スラリーを形成する。膜は、触媒層スラリーから分離され、膜アイオノマーを分散させて回収するために処理され得る。触媒層スラリーは、第1及び第2の触媒層アイオノマーを分散させて回収し、第1及び第2の触媒又はそれらの成分を分離して回収するために処理され得る。この方法論では、膜の処理は、第1の溶媒及び第1の溶媒中のフッ素含有種を含む第1の廃分散媒を生成し、第1の廃分散媒は、第1の溶媒中のフッ素含有種の濃度を低減するように処理される。更に、触媒層スラリーの処理は、第2の溶媒及び第2の溶媒中のフッ素含有種を含む第2の廃分散媒を生成し、第2の廃分散媒はまた、第2の溶媒中のフッ素含有種の濃度を低減するように処理される。第1及び第2の廃分散媒は、フッ素含有種の濃度を低減するために(例えば、第1及び第2の溶媒が同じである場合)、処理の前に組み合わせることができる。あるいは、第1及び第2の廃分散媒は、フッ素含有種の濃度を低減するために(例えば、第1及び第2の溶媒が異なる場合)、別々に処理することができる。後者の場合、2つの異なる溶媒は、別々にリサイクルされ、プロセスにおいて再使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明のより良い理解のために、及び本発明がどのように実施され得るかを示すために、本発明の特定の実施形態が、添付の図面を参照して例としてのみ説明される。
【
図1】触媒層がまずバルクポリマー膜から分離される、廃CCMリサイクルプロセスを示す(廃CCMの処理前にガス拡散層及びシールを除去することができることに留意されたい)。
【
図4】(a)サイズ低減(切断)及びアルコール:水混合物中での浸漬に供された触媒被覆膜(左側画像)、(b)触媒層がアルコール:水混合物中に分散された超音波処理後(中央画像)、並びに(c)アルコール:水混合物から回収された層間剥離された清浄で透明な膜(右側画像)を示す。
【
図5】ある範囲の異なるアルコール:水混合物中の触媒被覆膜の処理後の分散液及び回収された膜の画像を示し、メタノールが膜から触媒層を層間剥離するのに有効ではなく(画像a)、一方で触媒層の層間剥離及び清浄で透明な膜の回収を達成する際の他のアルコールの有効性の順序が、以下の通り:n-ブタノール>n-プロパノール>i-プロパノール>エタノールである(画像b)ことを示す。
【
図6】CCMリサイクルプロセスにおける廃分散媒の処理のためのプロセスフローの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
概要セクションに記載されるように、本明細書は、燃料電池又は水電解槽廃膜材料(例えば、触媒被覆膜-CCM)からフッ素含有アイオノマーをリサイクルする方法を提供することに関する。方法は、リサイクルプロセス中に生成された廃分散媒を処理して有害なフッ素含有種を除去することを可能にするので、それらは安全に廃棄されるか、又は有利には、プロセスで使用された溶媒をリサイクルしてプロセスで再使用することができるという点で有利である。
【0023】
CCMは、触媒層の一方又は両方、並びに触媒層が配置されるバルクアイオノマー膜にアイオノマーを含有してもよい。CCMの性能パラメータを最適化するために、異なるアイオノマーを触媒層及びバルクアイオノマー膜に使用することができる。本明細書は、触媒層アイオノマーを膜アイオノマーから分離することができ、PGM含有触媒材料に加えて膜及び触媒層アイオノマーの両方が回収されるように、触媒層アイオノマーが膜アイオノマーから分離されて処理される、方法を含む。この方法は、膜アイオノマー及び触媒層アイオノマーの両方の処理から廃分散媒を生成することができる。有利な、廃分散媒のこれらの供給源の両方は、プロセスにおいて使用された溶媒を、リサイクルしてプロセスにおいて再使用することができるように、有害なフッ素含有種を除去するために処理される。
【0024】
1つのアプローチによれば、廃触媒被覆膜をリサイクルする方法が提供され、廃触媒被覆膜は、膜アイオノマーを含む膜と、膜の一方の側に配置された第1の触媒層であって、第1の触媒及び第1の触媒層アイオノマーを含む第1の触媒層と、膜の反対側に配置された第2の触媒層であって、第2の触媒及び第2の触媒層アイオノマーを含む第2の触媒層と、を含み、方法は、
廃触媒被覆膜を溶媒と接触させて、膜を分散させることなく膜から第1及び第2の触媒層の両方を層間剥離することであって、第1及び第2の触媒層が、第1の触媒、第1の触媒層アイオノマー、第2の触媒、及び第2の触媒層アイオノマーを含む触媒層スラリーを形成する、接触させることと、
膜を触媒層スラリーから分離することと、
膜を処理して、膜アイオノマーを回収することと、
触媒層スラリーを処理して、第1及び第2の触媒層アイオノマーを溶媒中で分散させて回収し、第1及び第2の触媒又はそれらの成分を分離して回収することと、を含む。
【0025】
触媒層スラリーの処理は、
触媒層スラリーを加熱して、第1及び第2の触媒層アイオノマーを分散させ、固体の第1及び第2の触媒材料が配置されたアイオノマー分散液を形成することと、
(例えば、濾過などの固液分離技法を使用して)固体の第1及び第2の触媒材料をアイオノマー分散液から分離することと、
アイオノマー分散液を処理して、第1及び第2の触媒層アイオノマーを回収することと、
固体の第1及び第2の触媒材料を処理して、第1及び第2の触媒材料又はそれらの成分を分離して回収することと、を含み得る。
【0026】
触媒層スラリーを加熱して第1及び第2の触媒層アイオノマーを分散させる工程は、第1及び第2の触媒層を膜から層間剥離するために使用されるのと同じ溶媒中で行うことができる。あるいは、触媒スラリーは、溶媒組成を調整し、層間剥離プロセスで使用された溶媒を除去するように処理することができ、次いで材料はよって、触媒層アイオノマーを分散させ、分離するように異なる溶媒中で再スラリー化することができる。触媒層成分のうちの1つ以上は、材料が再スラリー化されて触媒層アイオノマー材料を分散させる前及び/又は後のいずれかに浸出され得る。
【0027】
典型的には、触媒層スラリーを加熱して、第1及び第2の触媒層アイオノマーを分散させる工程は、廃触媒被覆膜を溶媒と接触させて、膜を分散させることなく膜から第1及び第2の触媒層の両方を層間剥離する工程よりも高い温度で行われる。これは、分散が行われる溶媒が、膜から触媒層を層間剥離するために使用される溶媒と同じである場合に特に当てはまる。層間剥離プロセスにおいて、温度は、膜アイオノマーが分散しないが、触媒層が層間剥離してスラリーを形成するのに十分に低く保たれる。次いで、膜をスラリーから分離した後、スラリーの温度を上昇させて、触媒層アイオノマーを分散させ、固体触媒材料から分離することができる。触媒層スラリーを加熱して、第1及び第2の触媒層アイオノマーを溶媒中に分散させる工程は、オートクレーブにおいて高圧で行うこともできる。
【0028】
触媒層スラリーの処理は、第1及び第2の触媒層アイオノマーを塩形態に変換することを更に含んでもよい。塩形成(例えば、塩基での処理による)は、回収プロセス中にアイオノマーのスルホン酸基を保護し、その後、第1及び第2の触媒層アイオノマーの塩形態は、プロトン交換によって酸形態に変換し戻すことができる。触媒層アイオノマー分散液はまた、金属汚染物質を除去するためにイオン交換に供されることが有利である。
【0029】
第1及び第2の触媒層アイオノマーは、第1及び第2の触媒層アイオノマーのブレンドとしてアイオノマー分散液から回収することができ、又はあるいはアイオノマー分散液は、第1及び第2の触媒層アイオノマーを分離するように処理することができる。
【0030】
バルクアイオノマー膜と比較して触媒層中に異なるアイオノマーを有する触媒被覆膜では、触媒層を層間剥離するプロセスは、異なるタイプのアイオノマーを別々に処理することができるように、膜及び触媒層中の異なるタイプのアイオノマーを分離するために使用することができる。これに関して、触媒層アイオノマー及びバルク膜アイオノマーの両方を分散させることを含む従来技術の方法では、触媒層中のアイオノマーがバルク膜中のアイオノマーと異なる場合、特に膜からの多量のアイオノマーが存在するので、混合アイオノマー分散液を分離することが困難であり得ることに留意されたい。触媒層がまず層間剥離され、バルク膜から分離される本方法論では、触媒層アイオノマー分散液は、膜中に残るCCMアイオノマーの大部分とは別々に処理される。異なるタイプのアイオノマーは、より容易に分離することができ、触媒層だけからのより小さい体積のアイオノマーは、例えば、金属汚染を除去及び/又は異なるタイプのアイオノマーを分離するために、処理することがより容易である。
【0031】
第1及び第2の触媒層の両方を膜から層間剥離するために使用される溶媒は、アルコール及び水の混合物であり得、アルコール及び水の混合物中のアルコールは、n-ブタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、又はエタノールから選択される。メタノール及び水は、アイオノマー膜から触媒層を層間剥離するのに効果的ではないが、n-ブタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、又はエタノールと水との混合物は、触媒層を効果的に層間剥離し、バルクアイオノマー膜を分散させることなく、触媒層アイオノマーを分散させることができることが見出された。触媒層の層間剥離及び清浄で透明な膜の回収を達成する際のこれらのアルコールの有効性の順序は、以下の通り:n-ブタノール>n-プロパノール>i-プロパノール>エタノールである。したがって、アルコールは、好ましくはn-ブタノール、n-プロパノール、又はi-プロパノール、より好ましくはn-ブタノール又はn-プロパノール、最も好ましくはn-ブタノールから選択される。選択は、適切なハンセン溶解度パラメータ範囲に基づくことができる。
【0032】
アルコール及び水の混合物は、0~1のアルコール:水の体積比を有してもよく、これは有利には、少なくとも50:50、60:40、若しくは70:30;95:5、90:10、若しくは85:15以下、又は、前述の下限値と上限値の任意の組み合わせによって定義される範囲内の重量パーセントで分散中に提供され得る。比は、リサイクルのためのプロセス条件及びCCM供給材料の所与のセットについてバルクアイオノマー膜を分散させることなく触媒層スラリーを形成するために、触媒層の効果的な層間剥離を可能にするように最適化することができる。
【0033】
溶媒(例えば、アルコール及び水の混合物)は、触媒層の層間剥離を補助するために、例えば、超音波処理によって撹拌することができる。超音波処理は、本方法における使用に有効であることが見出されている。更に、触媒層を層間剥離するために膜を溶媒と接触させる工程の間、溶媒は、150℃、100℃、80℃、60℃、又は40℃未満、任意選択で5℃、10℃、又は15℃超、任意選択で前述の上限値及び下限値のいずれかによって定義される範囲内の温度で維持することができる。温度は、固体の非分散形態のままであるフッ素化ポリマー膜を分散させることなく、触媒層が層間剥離するように、十分に低くすることができる。
【0034】
触媒層を層間剥離するための廃触媒被覆膜と溶媒との接触は、少なくとも10分、20分、30分、若しくは1時間;5時間、3時間、若しくは2時間以下、又は、前述の下限値と上限値の任意の組み合わせによって定義される範囲内の重量パーセントで分散中に提供され得る。層間剥離工程の具体的な時間は、プロセス条件(例えば、アルコールのタイプ/濃度、温度、圧力、撹拌など)及びリサイクルのためのCCM供給材料のタイプの所与のセットに依存する。
【0035】
有利には、廃触媒被覆膜は、触媒層を層間剥離するために溶媒と接触させる前に、複数の片に処理される(例えば、切断によって)。これは、バルクアイオノマー膜からの触媒層の清浄な層間剥離を補助することができ、かつ大きな面積の廃触媒被覆膜材料(例えば、元の膜の5%~100%の範囲の量)の取り扱い及び処理をより容易にすることができる。
【0036】
典型的には、第1の触媒は、白金、パラジウム、及び/又はルテニウムを(任意選択で炭素担持材料などの担持材料上に)含み得、第2の触媒は、イリジウム(例えば、酸化イリジウム材料)を含み得る。方法論は、膜アイオノマーが第1及び第2の触媒層アイオノマーの一方又は両方と異なる触媒被覆膜をリサイクルするのに特に適している。触媒層アイオノマーは、互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0037】
触媒層を層間剥離して触媒層スラリー中の固体バルクアイオノマー膜をもたらした後、固体バルクアイオノマー膜は、分注及び/又は濾過などの固液分離技法を使用してスラリーから分離することができる。次いで、固体バルクアイオノマー膜は、触媒層アイオノマーからの干渉なしに膜アイオノマーを回収するために、更に処理することができる。バルクアイオノマー膜の更なる処理は、膜アイオノマーを溶媒中に分散させることと、分散された膜アイオノマーを、補強ポリマーなどのバルクアイオノマー膜の他の成分から分離することと、を含み得る。次いで、回収された膜アイオノマーは、新しい膜材料を製造するために再使用することができる。
【0038】
触媒層スラリーは、第1及び第2の触媒層アイオノマー並びに第1及び第2の触媒材料を回収するために別々に処理することができる。例えば、第1及び第2の触媒は、触媒層アイオノマーの分散液から濾過し、次いで、個々の白金族金属を回収するために選択的溶解及び精製工程に供することができる。触媒層スラリーの処理はまた、個々の白金族金属を回収するための選択的溶解及び精製工程の前に、触媒層材料の粉砕を含んでもよい。残りの触媒層アイオノマー分散液は、新しい触媒層インクを製造するためにリサイクルすることができる。
【0039】
プロセスフローの一例を
図1に示す。このプロセスの第1の段階は、膜から触媒層を分離することを含む。CCM材料は、アルコール-水混合物中に浸漬し、触媒層が分離して溶媒中に分散する時間にわたって超音波処理又はそうでなければ撹拌することができる。膜及び触媒層が清浄に分離されたら、膜は、膜アイオノマー成分を回収するために更に処理することができる。触媒層中のPGM及びアイオノマーを回収するために、
図2及び
図3に示されるような2つの選択肢A及びBがある。
【0040】
プロセス選択肢A:触媒層材料をHCl/酸化剤(例えば塩素)処理に供して、白金を浸出させることができる。次いで、この処理からの液は、卑金属から精製され(例えば、カチオン交換樹脂を使用して)、蒸留又は他のプロセスを介してRu除去を受け、次いで、Pt精製流に直接入ることができる。浸出からの残りのIr含有残留物は、アイオノマーを溶解/分散させるためにアルコール溶媒中で材料を加熱/オートクレーブ処理することを含むプロセスを受けることができる。アイオノマー分散液は、濾過又は遠心分離によってIr含有溶液から分離される(別法として、アイオノマー分散の前又は後にIrを浸出させることができる)。次いで、アイオノマー分散液は、更なる処理に進み、リサイクルされて戻され、新しいCCMを製造する。Ir含有残留物は、Ir触媒を直接再使用するために処理することができるか、又は残留物を精製してIr金属を回収することができる。
【0041】
プロセス選択肢B:あるいは、触媒層材料をアルコール溶媒中で高温に加熱し、任意選択でオートクレーブ処理して触媒層成分を分散させることができる。次いで、この得られたスラリーは、濾過又は遠心分離のいずれかによる固体/液体分離を受ける。上清/濾液は、分散されたアイオノマーを含有するが、これは次いで、更に処理されてリサイクルされて戻され、新しいCCMを製造することができる。PGM残留物は、HCl/塩素浸出処理に供される前に有機溶媒の完全な除去を確実にするために乾燥される。次いで、この浸出処理からの液は、卑金属から精製され(例えば、カチオン交換樹脂を使用して)、蒸留プロセスを介してRu除去を受け、次いで、Pt精製流に直接入ることができる。浸出プロセスからの残留物は、依然としてIr触媒を含有しており、このIr触媒は、その安定性のためにほとんど変化していない。これは、Ir触媒を直接再使用するために処理することができるか、又は残留物を精製してIr金属を回収することができる。
【0042】
上述の触媒層リサイクルプロセスの共通の特徴は、白金(及び/又はパラジウム及び/又はルテニウム)材料を抽出するための酸化酸浸出の使用、並びに白金及びアイオノマー分散液の抽出後の還元浸出又は固液分離のいずれかを介したイリジウムの抽出である。Pt浸出は、アイオノマーを分散させる前又は後、及びイリジウムの浸出の前又は後に適用することができる。プロセス順序は、(i)イリジウム浸出、(ii)白金浸出;(iii)残りの触媒層アイオノマーの処理であり得る。あるいは、プロセス順序は、(i)白金浸出、(ii)イリジウム浸出;(iii)残りの触媒層アイオノマーの処理であり得る。あるいは依然として、イリジウム浸出は、アイオノマーからイリジウムを分離するために必要とされない。むしろ、イリジウム含有材料は、アイオノマー材料を分散させ、固体/溶液分離を使用してアイオノマーを除去することによって、触媒層アイオノマー材料から分離される。この場合、固体/液体分離は、不溶性Ir、Pt、Ru、及び/又はRh含有種/合金の分離に使用され得る。白金浸出工程は、
図2のようにアイオノマーを分散させる工程の前に行うことができる。あるいは、アイオノマー分散工程は、
図3のように白金浸出工程の前に行うことができる。いずれの場合も、プロセスは、まずバルクポリマー膜から触媒層を分離し、次いで、別々に処理されるバルクアイオノマー膜を有する触媒層材料に処理工程を適用する。
【0043】
利用される特定の方法は、操作者の要求、成分の需要、及びプロセスによって回収される材料の所望の形態に依存する。例えば、ある成分を、例えばその特定の成分の不足のために、リサイクルプロセスの早期に抽出することが望ましい場合、リサイクルプロセス内で長時間にわたってかなりの量の成分を保持するのではなく、プロセスの早期に所望の成分を得るために適切なプロセスフローを選択することができる。例えば、プロセスの早期にアイオノマーのバルクを回収することが望ましい場合、バルクアイオノマー膜から触媒層を除去する最初の工程が、バルクアイオノマー膜が迅速に回収及び処理され得る一方で、触媒層中のアイオノマー及びPGMが、種々の分離工程を行うための更なる処理に供されることを確実にするので、本明細書のプロセスが選択され得る。
【0044】
アイオノマーを回収するための方法は、米国特許第7255798号及び国際公開第2016/156815号に記載されており、そのような方法は、上記のように本明細書のプロセスフローに組み込むことができる。上記で議論されるように、バルク膜中のアイオノマーと比較して、異なるアイオノマーが触媒層の一方又は両方に使用され得る場合が多い。異なるアイオノマーを選択して、最終用途における性能改善を提供することができる。アイオノマーのブレンドを使用すること、又はバルクポリマー膜内に異なるアイオノマーの層を有することも可能である。そのような場合、本明細書のプロセスフローは、プロセスフローの開始時に触媒層からバルクポリマー膜を分離するのに有用であり得る。バルク膜と比較して異なるアイオノマーが触媒層に使用される場合、そのような分離は、更なる処理の前に異なるアイオノマーを分離するのに有用であり得る。
【0045】
触媒層層間剥離プロセス
廃触媒被覆膜は、膜を分散させることなく膜から第1及び第2の触媒層の両方を層間剥離するために、アルコール及び水の混合物と接触させ、撹拌することができる。第1及び第2の触媒層は、アルコール及び水の混合物中に分散されて、第1の触媒、第1の触媒層アイオノマー、第2の触媒、及び第2の触媒層アイオノマーを含む触媒層分散液を形成する。
【0046】
図4は、(a)サイズ低減(切断)及び80:20のアルコール:水混合物中での浸漬に供された触媒被覆膜(左側画像)、(b)触媒層が溶液中に分散された超音波処理後(中央画像)、並びに(c)アルコール:水混合物から回収された層間剥離された清浄で透明な膜(右側画像)を示す。
【0047】
アルコール及び水の混合物中のアルコールは、n-ブタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、又はエタノールから選択される。メタノール及び水は、アイオノマー膜から触媒層を層間剥離するのに効果的ではないが、n-ブタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、又はエタノールと水との混合物は、触媒層を効果的に層間剥離し、バルクアイオノマー膜を分散させることなく、触媒層アイオノマーを分散させることができることが見出された。触媒層の層間剥離及び清浄で透明な膜の回収を達成する際のこれらのアルコールの有効性の順序は、以下の通り:n-ブタノール>n-プロパノール>i-プロパノール>エタノールである。したがって、アルコールは、好ましくはn-ブタノール、n-プロパノール、又はi-プロパノール、より好ましくはn-ブタノール又はn-プロパノール、最も好ましくはn-ブタノールから選択される。
図5は、ある範囲の異なるアルコール:水混合物中の触媒被覆膜の処理後の分散液及び回収された膜の画像を示し、メタノールが膜から触媒層を層間剥離するのに有効ではなく(画像a)、一方で触媒層の層間剥離及び清浄で透明な膜の回収を達成する際の他のアルコールの有効性の順序が、以下の通り:n-ブタノール>n-プロパノール>i-プロパノール>エタノールであった(画像b)ことを示す。
【0048】
アルコール及び水の混合物は、0~1のアルコール:水の体積比を有してもよく、これは有利には、少なくとも50:50、60:40、若しくは70:30;95:5、90:10、若しくは85:15以下、又は、前述の下限値と上限値の任意の組み合わせによって定義される範囲内の重量パーセントで分散中に提供され得る。比は、リサイクルのためのプロセス条件及びCCM供給材料の所与のセットについてバルクアイオノマー膜を分散させることなく触媒層アイオノマーの効果的な分散を可能にするように最適化することができる。
【0049】
アルコールと水の混合物は、超音波処理によって撹拌することができる。超音波処理は、本方法における使用に有効であることが見出されている。触媒層を層間剥離するための廃触媒被覆膜とアルコール及び水の混合物との接触は、少なくとも10分、20分、30分、若しくは1時間;5時間、3時間、若しくは2時間以下、又は、前述の下限値と上限値の任意の組み合わせによって定義される範囲内の重量パーセントで分散中に提供され得る。層間剥離工程の具体的な時間は、プロセス条件(アルコールのタイプ/濃度、温度、圧力、撹拌など)及びリサイクルのためのCCM供給材料のタイプの所与のセットに依存する。
【0050】
有利には、廃触媒被覆膜は、アルコール及び水の混合物と接触させる前に、複数の片に処理される(例えば、切断によって)。これは、バルクアイオノマー膜からの触媒層の清浄な層間剥離を補助することができ、かつ大きな面積の廃触媒被覆膜材料の取り扱い及び処理をより容易にすることができる。
【0051】
上記に関連して、CCMをリサイクルするための特定の従来の方法は、純粋なエチレングリコール及び熱を使用しており、CCMは、バルク膜及び触媒層においてアイオノマーを含む完全な分散液を受けることに留意されたい。特定の従来技術の方法は、触媒材料のリサイクルのために一般的にはアルコール/水混合物の使用にも言及している。ここでの違いは、バルク膜及び触媒層において異なるアイオノマーを選択的に分離及びリサイクルするために、特定のアルコール/水系が使用され、条件が調整されることである。
【0052】
触媒層材料からアイオノマーを回収するための更なる処理
触媒層材料からアイオノマーを回収するための処理工程は、以下を含み得る:
●任意選択でアイオノマーを塩形態に変換する
●アイオノマーを分散させるために加熱する
○分散のために十分な高温、任意選択でオートクレーブ中
○以下を使用するアイオノマー分散液からの触媒及び触媒担体の分離:
■遠心分離、並びに/又は
■濾過、例えば、
●限外濾過
●膜濾過、及び/若しくは
●クロスフロー濾過
●金属汚染物質を除去するためのイオン交換
●任意選択で酸形態に変換し戻す
【0053】
膜からアイオノマーを回収するための更なる処理
バルク膜からアイオノマーを回収するための処理工程は、以下を含み得る:
・任意選択でアイオノマーを塩形態に変換する(例えば、膜アイオノマーを分散させる前に)
・水(オートクレーブを使用する熱水プロセス)、水溶液、アルカリ水溶液、有機溶媒(例えば、アルコール、ジオール、ホスフェート、ケトン、DMSO、DMF、NMP)、又はそれらの混合物に分散させる。
・フィルター粒子
・金属汚染物質を除去するためのイオン交換
・任意選択で酸形態に変換し戻す
・任意選択で廃溶媒をイオン交換によって又は活性炭/木炭などの活性媒体と接触させることによって処理する。
【0054】
アイオノマーの更なる処理
前述のプロセスに従ってバルク膜及び/又は触媒層から回収されたアイオノマーは、限外濾過プロセスに供することによって更に精製し、分離及び/又はブレンドプロセスに供することができる。
【0055】
触媒層材料の処理工程
前述のプロセスを使用してバルクポリマー膜から分離される触媒層材料は、一般に、アイオノマーと、白金、パラジウム、及び/又はルテニウムを含む少なくとも1つの触媒と、イリジウムを含む少なくとも1つの触媒と、を含むであろう。この材料は、以下の一般的な方法を使用してPGM及びアイオノマーを回収するために処理することができる:
(a)材料を酸及び酸化剤を含む加熱溶液で処理することであって、白金、パラジウム、及び/又はルテニウムが材料から溶液に浸出され、溶液が材料の残りの固体成分から分離される、処理すること、
(b)材料を溶媒で処理して、アイオノマーを分散させ、アイオノマーの分散液を回収することであって、アイオノマーの分散が、白金、パラジウム、及び/又はルテニウムの浸出の前又は後に行われる、回収すること、並びに
(c)以下:
(i)白金、パラジウム、ロジウム、及び/又はルテニウムの浸出並びにアイオノマーの分散の後に、アイオノマーの分散液から残りの固体イリジウム含有触媒材料を分離することと、
(ii)酸及び還元剤を含む加熱溶液を使用して、材料からイリジウムを浸出させ、浸出したイリジウムを含む溶液を材料の残りの固体成分から分離することであって、イリジウム浸出が、白金、パラジウム、及び/又はルテニウムの浸出の前又は後に行われる、分離することと、の一方又は両方によって材料を処理してイリジウムを抽出すること。
【0056】
本方法の工程は、Pt、Ir、及びアイオノマーを回収するために任意の順序で行うことができる。つまり、Pt-Ir-アイオノマー、Ir-Pt-アイオノマー、アイオノマー-Pt-Ir、アイオノマー-Ir-Pt、Pt-アイオノマー-Ir、又はIr-アイオノマー-Ptである。
【0057】
以下の説明では、白金触媒とイリジウム系触媒(例えばIrOx)とを含む例を中心に説明する。しかしながら、白金触媒が、パラジウム触媒、ルテニウム触媒、白金、パラジウム、及びルテニウムのうちの少なくとも2つの組み合わせを含む混合PGM触媒、又は少なくとも1つのPGM及び少なくとも1つの非PGM金属(例えば、PtCo)を含む触媒で置き換えられる場合、同じアプローチを使用することができる。
【0058】
イリジウム浸出及び白金浸出の一方又は両方で使用される酸は、任意選択で塩酸である。更に、白金及びイリジウムの浸出に使用される溶液の一方又は両方は、好ましくは、少なくとも50℃、60℃、若しくは70℃;160℃、100℃、若しくは90℃以下、又は前述の下限値と上限値の任意の組み合わせによって定義される範囲内の温度に加熱され、溶液が100℃を超えて加熱される場合、これは加圧容器中で行われる。白金の浸出のための酸化剤は、例えば、塩素酸ナトリウム溶液又は塩素ガス(例えば、その場で電解的に生成される)などの塩素酸塩を含むことができる。酸化剤は、上記の温度まで加熱した後に塩酸溶液に添加することができる。溶液は、例えば約6M HClの濃HClを含むことができる。
【0059】
浸出した白金を含有する溶液の分離は、濾過によって達成することができる。分離された溶液は、更なる処理のために適切なPGM濃度まで溶液を煮沸することによって濃縮されてもよい。あるいは、浸出液を再循環させて、更なる廃触媒被覆膜材料から白金を浸出させることができ、リサイクルは、PGMの目標濃度に達するまで必要に応じて繰り返される。次いで、PGM含有浸出液を更に処理して、公知の技術を使用して酸性溶液から白金を抽出する。廃触媒層材料の残りの固体成分は、別々に処理することができる。
【0060】
方法は、廃触媒層材料からイリジウムを抽出する工程を更に含む。これは、酸(8~12M HClなど)及び還元剤(ヒドラジン、NaBH4、又はシュウ酸アンモニウムなど)を使用する還元溶解プロセスを介して廃触媒層材料からIr種を浸出させて、Ir含有酸性液を得ることによって達成され得る。国際公開第2021/083758号は、還元性HCl環境中でのIrの溶解のためのそのようなプロセスのいくつかの例を記載している。前述の酸化酸性白金浸出は、イリジウムを有意な程度まで浸出しないので、イリジウムのためのこのような還元酸性浸出プロセス工程は、白金のための酸化酸性浸出工程の後に行うことができる。しかしながら、イリジウム浸出を白金浸出の前に行うことができることも想定される。したがって、この例に従って提案された経路は、焼却又は他の破壊的処理を必要とせずに、廃CCMからのIr種及びPt種の選択的浸出を含む2工程プロセスである。工程は以下の通りであり、任意の順序で行うことができる。
1.酸(HCl又は硝酸など)及び還元剤(ヒドラジンなど)を使用する還元溶解プロセスを介したIr種の浸出により、Ir含有酸性液及び未溶解残留物が得られる。
2.酸(HClなど)及び酸化剤(塩素酸塩又はCl2など)を使用する酸化溶解プロセスを介したPt種の浸出により、Pt含有酸性液及び未溶解残留物が得られる。
【0061】
次いで、工程1及び2から生成された液体は、それらのそれぞれの精製プロセスに向けられ得るか(有意な不純物が存在する場合)、又は新しい触媒材料のための前駆体として直接使用され得る。次いで、固体残留物を更に浸出させて残りのPGM種を除去し、次いで得られたアイオノマー残留物をリサイクルすることができる。
【0062】
このプロセスは、廃触媒層材料からPGMを選択的に回収し、残りの触媒層アイオノマーのための更なる単純な回収プロセスを可能にする。したがって、本プロセスは、PGM及びアイオノマーの両方の完全な回収及びリサイクル経路を提供する。Pt及びIr浸出を含む2工程プロセスは、Ir及びPtの両方を分離及び回収する単純かつ迅速な経路を可能にし、金属溶液を触媒製造プロセスに直接供給して戻す可能性を有する。2040年までに燃料電池及び電解槽のCCMに対して約800のkOzt Pt及び160のkOzt Irが必要と推定されているので、プロセスのコンパクトな特注の性質は、リードタイムを短縮し、メタル流動性を増加させる。このプロセスは、スクラップCCM材料、PGMだけでなくアイオノマーのためのクローズドループサイクルの生成を可能にする。このプロセスはまた、寿命末期のCCMのオープンループリサイクルを可能にする。
【0063】
上記のようにイリジウムを浸出させる代わりに、アイオノマーを分散させることによって、イリジウム(又は酸化イリジウム)材料を触媒層から分離することができる。この場合、白金は、前述のように廃触媒層材料から浸出させることができ、次いで、固体アイオノマー及びイリジウム種を含む残りの廃触媒層材料をアイオノマー分散液に供して、固体イリジウム種が配置されたアイオノマー分散液を含むスラリーを得ることができる。アイオノマー分散液は、固体/液体分離(例えば、濾過又は遠心分離)を使用して固体イリジウム種から分離して、リサイクルのためのアイオノマー分散液を得ることができる。残りの固体イリジウム材料は、CCM製造プロセスにおいて直接再使用されてもよく、又は再使用の前に精製されてもよい。あるいは、白金浸出の前に触媒層アイオノマーを分散させて、更なる処理のための混合PGM残留物を得ることができる。
【0064】
1つのそのような例において、廃触媒層材料は、廃触媒層材料中に存在する場合、白金、及び任意選択でルテニウムも浸出させるために、HCl/酸化剤(例えば、塩素)処理に供される。次いで、この処理からの液を処理して、ニッケル及びコバルトなどの卑金属を除去し(例えば、カチオン交換樹脂を使用して)、蒸留又は他のプロセスを介してRu除去を行い、次いで、Pt精製プロセス流に直接入れてPtを回収することができる。浸出からの残留廃触媒層材料は、アイオノマーを分散させるために溶媒(例えば、アルコール溶媒)中で材料を加熱/オートクレーブ処理することを含むプロセスを受けることができる。次いで、アイオノマー分散液を、濾過又は遠心分離によってIr含有固体から分離することができる。次いで、アイオノマー分散液は更なる処理に進み、リサイクルされて戻され、純粋な材料又はブレンドされた材料のいずれかとして新しいCCMを製造する。ペルフルオロスルホン酸アイオノマーをリサイクルするプロセスの例は、米国特許第7255798号及び国際公開第2016/156815号に記載されている。Ir触媒は、その固有の安定性のために、更に処理することなく再使用することができ、又はIr固体を精製してIr金属を回収することができる。
【0065】
上記のプロセスにおいて、白金浸出工程は、アイオノマーを分散させる工程の前に廃触媒層材料に対して行われる。しかしながら、別の方法では、アイオノマー分散は白金浸出工程の前に行われる。この場合、廃触媒層材料を溶媒(例えば、アルコール溶媒)中で高温に加熱し、任意選択でオートクレーブ処理してアイオノマーを分散させることができる。得られたスラリーに対して固体/液体分離を行う(例えば、濾過又は遠心分離のいずれかによって)。溶液は、分散されたアイオノマーを含有するが、これは次いで、更に処理されてリサイクルされて戻され、新しいCCMを製造する。PGM残留物は、前述のようにHCl/塩素浸出処理を受ける前に、有機溶媒の完全な除去を確実にするために乾燥されてもよい。浸出からの液を処理して、Ni及び/又はCoなどの卑金属(例えば、カチオン交換樹脂)を除去し、Ru除去(例えば、蒸留プロセスを介して)を行い、次いで残りの白金含有溶液をPt精製プロセス流に供給して、前述のようにPtを回収することができる。浸出プロセスからの残留物は、依然としてIr触媒を含有しており、このIr触媒は、その安定性のためにほとんど変化していない。これは、Ir触媒材料(例えば、IrOx)を直接再使用するために処理することができるか、又は残留物を精製してIrを回収することができる。
【0066】
廃分散媒の処理
膜を処理して膜アイオノマーを回収した後、かつ/又は触媒層スラリーを処理して第1及び第2の触媒層アイオノマーを分散及び回収した後、溶媒並びに可溶性フッ素含有有機化合物などのフッ素含有種、可溶性フッ化物種、及び/又は不溶性金属フッ化物などの不溶性フッ素含有種を含む廃分散媒が生成される。廃分散媒を処理して、溶媒中のフッ素含有種の濃度を低減することができ、その後、溶媒を安全に廃棄するか、又は更なる膜及び/若しくは触媒層スラリー材料を処理する際に再使用するためにリサイクルすることができる。廃分散媒の処理は、廃分散媒を固体吸着剤及び/又はイオン交換媒体と接触させて、溶媒中のフッ素含有種の濃度を低減し、任意選択で溶媒中の残留金属カチオンの濃度も低減することを含んでもよい。廃分散媒はまた、例えば、廃分散媒を活性炭などの吸着剤と接触させる前、かつ/又は1つ以上のイオン交換媒体と接触させる前に、クロスフロー濾過又は限外濾過に供されてもよい。
【0067】
上記に照らして、本明細書はまた、CCM膜成分及び/又は触媒層成分からのアイオノマーのリサイクルにおいて使用される分散媒(例えば、水、アルカリ水溶液、又は水/アルコール混合物)のための処理方法を提供する。使用済み分散媒は、カチオン性イオン交換樹脂及び任意選択でアニオン性イオン交換樹脂並びに/又は活性炭などの捕捉媒体と接触させることができる。得られた処理された使用済み分散媒は、低減されたレベルのフッ素化又は部分フッ素化スルホン酸又はカルボン酸などの低分子量可溶性有機化合物、並びに(任意選択で)低減されたレベルの鉄、ニッケル、銅、及びクロムなどの残留カチオンを有する。処理された分散媒は、その後、クローズドループシステムで再使用するか、又は安全に廃棄することができる。任意選択で、フッ素含有不純物の捕捉及び廃棄の前に不純物を濃縮するために、廃分散媒をまずクロスフロー濾過又は限外濾過工程に供することができる。イオン交換樹脂は再生することができる。廃棄物流は、熱分解(例えば、熱酸化装置を使用する)によって濃縮及び廃棄することができる。活性炭カラムは、寿命末期に熱分解することもできる。
【0068】
図6は、廃分散媒の処理のためのプロセスフローの一例を示す。この廃分散媒処理方法の利点には、生産スクラップ及び/又は寿命末期の燃料電池及び/又は水電解槽CCM成分からのアイオノマーのリサイクルから生じる排出物の低減が含まれる。水消費量の減少も有利である。
【0069】
廃分散媒からフッ素含有種を抽出するために使用することができる固体媒体の例としては、活性炭などの炭素系吸着剤、シリカ系吸着剤、金属系吸着剤、及び/又はFを吸着/Fと反応することができるイオン交換樹脂などの吸着剤が挙げられる。イオン交換樹脂としては、例えば、アミノ-メチルホスホン酸官能基を有するジルコニウム若しくはアルミニウムプリロードキレート樹脂、四級アンモニウム官能基を含有する強塩基性アニオン交換樹脂、金属イオン(例えば、Fe3+、Al3+、Ce3+、及び/若しくはLa3+)をプリロードしたイミノ二酢酸官能化カチオン交換樹脂、又はクリプタンド配位子が挙げられる。吸着剤は、シリカ系吸着剤、例えば、ガラス粉末形態で提供することができるバリウム-シリケートガラス材料などのガラス材料であってもよい。フッ素含有廃分散媒は、フッ素含有種を除去するために、そのような吸着剤の充填カラム又は床を通過させることができる。吸着剤を定期的に交換及び/又は処理してフッ素を除去し、再使用のために吸着剤を再生することができる。
概要
【0070】
本方法論は、バルク膜からの触媒層の層間剥離(及び任意選択で粉砕)を含む、CCMからのアイオノマー及びPGM回収のためのプロセスを形成するための操作を組み合わせて、より濃縮されたアイオノマー含有膜流及びより濃縮されたPGM含有触媒層流を生成し、そこからPGMをより効果的に浸出させることができる一方で、触媒層アイオノマーの回収も可能にする。
【0071】
アルコール/水溶媒系が提供され、条件(アルコールのタイプ/濃度、温度、圧力、時間、撹拌)を調整することによって、CCM(又はMEA)を処理して、1つ又は以下の結果を達成することが可能である:
1.触媒層のみの層間剥離。
2.触媒層アイオノマーに対して選択的なアイオノマーの分散を伴う触媒層の層間剥離。
3.3つの成分(膜、アノード、及びカソード触媒層)全てにおけるアイオノマーの完全分散を伴う触媒層の層間剥離。
【0072】
プロセスは、以下の工程のうちの1つ以上に先行及び/又は後続することができる。
4.触媒層からのPGMの浸出。
5.PGM浸出触媒層からのアイオノマーの分散。
6.膜からのアイオノマーの分散。
【0073】
条件は、所望の結果を達成するように調整することができる。本明細書で特に注目すべき点は、アルコール/水混合物を使用する目的である。以前の研究は、PGMの選択的分離及びリサイクル、例えば、アノードPGMをカソードPGMから分離したままにすることに焦点を当てた。対照的に、ここで、本発明者らは、特定のアルコール/水混合物がアイオノマー/アイオノマー分離のために使用され得ることを確認する。CCMのほとんどのアイオノマーリサイクルプロセスは、CCM中の全てのアイオノマーの完全な分散に注目しており、これは、アイオノマー対アイオノマー分離が別の方法で対処されなければならないことを意味する。将来のCCMは複数のアイオノマーを含有するであろう可能性が高い。触媒層アイオノマーを膜から層間剥離するこの方法は、そのようなマルチアイオノマーCCMを扱うための工業的に実行可能なアプローチを提供し、異なるアイオノマーが触媒層及びバルク膜において使用される場合、スケール化された工業的CCMリサイクルプロセス中にアイオノマーを分離するための潜在的に最良/唯一の方法を表す。
【0074】
PFSAリサイクルの推進力は、一般に以下の通りである:
1.法律-環境中での存続によるPFAの使用に対するより厳しい規制。
2.経済-アイオノマーのコストはPEM製品中の貴金属のコストと同等であり得る。
3.環境持続可能性-PGM回収への現在の経路は、高レベルの毒性かつ腐食性HF並びに関連するCO2フットプリントを放出する焼却を含む。
【0075】
工業的に実行可能なPFSAリサイクルプロセスを確立することは、CCMを使用する水素技術の魅力を強化し、水素技術製品のための循環クローズドループリサイクル経路の機会を提供する。より具体的には、本発明は、スケールアップ課題及び将来のリサイクルされる廃棄材料流に対する柔軟性を有する混合アイオノマーリサイクルのための方法論を提供する。特に、方法は、リサイクルプロセス中に生成された廃分散媒を処理して有害なフッ素含有種を除去することを可能にするので、それらは安全に廃棄されるか、又は有利には、プロセスで使用された溶媒をリサイクルしてプロセスで再使用することができるという点で有利である。
【0076】
本発明を特定の実施例を参照して具体的に示し、説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細における様々な変更を行うことができることが当業者には理解されよう。
【手続補正書】
【提出日】2025-04-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化アイオノマーを含む廃膜をリサイクルする方法であって、
前記廃膜からの前記フッ素化アイオノマーを溶媒中に分散させることと、
前記フッ素化アイオノマーを前記溶媒から分離することであって、前記フッ素化アイオノマーを分離した後、前記溶媒が、前記溶媒及びフッ素含有種を含む廃分散媒の形態である、分離することと、
前記廃分散媒を処理して、前記溶媒中のフッ素含有種の濃度を低減することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記廃分散媒を処理して、前記溶媒中のフッ素含有種の濃度を低減した後、前記溶媒が、更なる廃膜材料を処理するためにリサイクルされ、再使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記廃分散媒中の前記フッ素含有種が、前記溶媒中に溶解された可溶性フッ素含有有機化合物、前記溶媒中に溶解された可溶性イオン性フッ化物種、及び前記溶媒中に分散された不溶性フッ素含有化合物のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記廃分散媒の前記処理が、前記溶媒中のフッ素含有種の濃度を低減するための以下の工程:前記廃分散媒を固体吸着剤と接触させること、前記廃分散媒をイオン交換媒体と接触させること、前記廃分散媒を濾過することのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記廃分散媒の前記処理が、前記廃分散媒を活性炭と接触させることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記廃分散媒の前記処理が、前記廃分散媒をカチオン性イオン交換樹脂と接触させることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記廃分散媒の前記処理が、前記廃分散媒をアニオン性イオン交換樹脂と接触させることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記廃分散媒の前記処理がまた、前記溶媒中の残留金属カチオンの濃度を低減する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記金属カチオンが、鉄、ニッケル、銅、及びクロムのうちの1つ以上を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記廃分散媒が、クロスフロー濾過又は限外濾過に供される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒が、水、アルカリ水溶液、又は水/アルコール混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記廃膜が、膜アイオノマーを含む膜と、前記膜の一方の側に配置された第1の触媒層であって、第1の触媒及び第1の触媒層アイオノマーを含む第1の触媒層と、前記膜の反対側に配置された第2の触媒層であって、第2の触媒及び第2の触媒層アイオノマーを含む第2の触媒層と、を含む、廃触媒被覆膜であり、
前記廃分散媒が、前記膜アイオノマー、前記第1の触媒層アイオノマー、及び前記第2の触媒層アイオノマーのうちの少なくとも1つの分散液から生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記廃触媒被覆膜を溶媒と接触させて、前記膜を分散させることなく前記膜から前記第1及び第2の触媒層の両方を層間剥離することであって、前記第1及び第2の触媒層が、前記第1の触媒、前記第1の触媒層アイオノマー、前記第2の触媒、及び前記第2の触媒層アイオノマーを含む触媒層スラリーを形成する、接触させることと、
前記膜を前記触媒層スラリーから分離することと、
前記膜を処理して、前記膜アイオノマーを分散させて回収することと、
前記触媒層スラリーを処理して、前記第1及び第2の触媒層アイオノマーを溶媒中で分散させて回収し、前記第1及び第2の触媒又はそれらの成分を分離して回収することと、を含み、
前記膜の処理が、第1の溶媒及び前記第1の溶媒中のフッ素含有種を含む第1の廃分散媒を生成し、前記第1の廃分散媒が、前記第1の溶媒中のフッ素含有種の濃度を低減するように処理され、
前記触媒層スラリーの処理が、第2の溶媒及び前記第2の溶媒中のフッ素含有種を含む第2の廃分散媒を生成し、前記第2の廃分散媒がまた、前記第2の溶媒中のフッ素含有種の濃度を低減するように処理される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1及び第2の廃分散媒が、フッ素含有種の濃度を低減するために処理前に組み合わされる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1及び第2の廃分散媒が、フッ素含有種の濃度を低減するために別々に処理される、請求項13に記載の方法。
【国際調査報告】