(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-12-23
(54)【発明の名称】同期仮想アンテナアレイを備えるFMCWレーダシステム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/87 20060101AFI20251216BHJP
G01S 13/34 20060101ALI20251216BHJP
G01S 7/02 20060101ALI20251216BHJP
G01S 13/58 20060101ALI20251216BHJP
【FI】
G01S13/87
G01S13/34
G01S7/02 210
G01S13/58 200
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2025531912
(86)(22)【出願日】2023-11-17
(85)【翻訳文提出日】2025-07-31
(86)【国際出願番号】 US2023080190
(87)【国際公開番号】W WO2024118353
(87)【国際公開日】2024-06-06
(31)【優先権主張番号】202241069325
(32)【優先日】2022-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(32)【優先日】2023-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】サンディープ ラオ
(72)【発明者】
【氏名】カーティック スブライ
(72)【発明者】
【氏名】カーティック ラマスブラマニアン
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB18
5J070AC01
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC11
5J070AD05
5J070AD08
5J070AF03
5J070BA01
(57)【要約】
説明される例では、周波数変調連続波(FMCW)レーダシステムが、第1のプロセッサを含む第1のFMCWデバイスと、第2のプロセッサを含む第2のFMCWデバイスとを含む。第1及び第2のプロセッサはそれぞれ、視野(FOV)に対応するFMCW信号の第1及び第2のセットを受信し、互いに独立して、FMCW信号の第1及び第2のセットを処理して、それぞれ、仮想アンテナアレイ信号の第1及び第2のセットを生成する。第2のFMCWデバイスは、仮想アンテナアレイ信号の第2のセットを第1のFMCWデバイスに送信する。第1のプロセッサは、仮想アンテナアレイ信号の第1及び第2のセットに応答してFOV内の一つ又は複数のオブジェクトに対する到来角度情報を判定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数変調連続波(FMCW)レーダシステムであって、
第1のFMCWデバイスであって、視野(FOV)に対応するFMCW信号の第1のセットを受信し、FMCW信号の前記第1のセットを処理して、レンジドップラースペクトル情報の第1のセットを生成するように構成されるプロセッサを含む前記第1のFMCWデバイスと、
第2のFMCWデバイスであって、前記FOVに対応するFMCW信号の第2のセットを受け取り、FMCW信号の前記第2のセットを処理して、レンジドップラースペクトル情報の第2のセットを生成するように構成されるプロセッサを含む前記第2のFMCWデバイスと、
を含み、
前記第2のFMCWデバイスが、レンジドップラースペクトル情報の前記第2のセットを前記第1のFMCWデバイスに送信するように構成され、
前記第1のFMCWデバイスの前記プロセッサが、前記レンジドップラースペクトル情報の第1及び第2のセットに応答して、前記FOV内の一つ又は複数のオブジェクトに対する到来角度情報を判定するように構成される、
FMCWレーダシステム。
【請求項2】
請求項1のFMCWレーダシステムであって、レンジドップラースペクトル情報の前記第1及び第2のセットが、高速フーリエ変換(FFT)、バーレットビームフォーマー、又は最小分散無歪応答(MVDR)ビームフォーマーを用いて生成される、FMCWレーダシステム。
【請求項3】
請求項1のFMCWレーダシステムであって、前記第2のFMCWデバイスの前記プロセッサが、レンジドップラースペクトル情報の前記第1のセットに対応するFMCWチャープとレンジドップラースペクトル情報の前記第2のセットに対応するFMCWチャープとの間の送信時間に意図的に含まれる差に関してドップラー補償を実施するように構成される、
FMCWレーダシステム。
【請求項4】
周波数変調連続波(FMCW)レーダシステムであって、
第1のFMCWデバイスを含み、
前記第1のFMCWデバイスが、
第1のFMCWチャープを生成するように構成される第1のFMCWシンセサイザと、
前記第1のFMCWチャープを視野(FOV)に送信するように構成される複数トランスミッタと、
前記FOVから信号を受信して第1の受信信号を生成するように構成される複数レシーバと、
第2のFMCWデバイスとは独立して、前記第1の受信信号を処理して、仮想アンテナアレイ信号の第1のセットを生成するように構成されるプロセッサと、
前記第1のFMCWデバイスに結合されるように構成される前記第2のFMCWデバイスと、
を含み、
前記第2のFMCWデバイスが、
第2のFMCWチャープを生成するように構成される第2のFMCWシンセサイザと、
前記第2のFMCWチャープを前記FOV内に送信するように構成される複数トランスミッタと、
前記FOVからの信号を受信して第2の受信信号を生成するように構成される複数レシーバと、
前記第1のFMCWデバイスとは独立して、前記第2の受信信号を処理して、仮想アンテナアレイ信号の第2のセットを生成するように構成されるプロセッサと、
を含み、
前記第2のFMCWデバイスが、仮想アンテナアレイ信号の前記第2のセットを前記第1のFMCWデバイスに送信するように構成され、
前記第1のFMCWデバイスが、仮想アンテナアレイ信号の前記第1及び第2のセットを用いて、前記FOV内の一つ又は複数のオブジェクトに対する到来角度情報を判定するように構成される、
FMCWレーダシステム。
【請求項5】
請求項4のFMCWレーダシステムであって、
前記第1のFMCWデバイス及び前記第2のFMCWデバイスに結合するように構成される共有基準クロック回路を更に含み、
前記共有基準クロック回路が、基準クロック信号を生成し、前記基準クロック信号を前記第1及び第2のFMCWデバイスに提供するように構成され、
前記第1のFMCWデバイス及び前記第2のFMCWデバイスが、両方共、前記基準クロック信号を用いて、それぞれのFMCWチャープの開始周波数、それぞれのFMCWチャープのチャープ勾配、アナログデジタル変換器(ADC)の開始時間、又はそれぞれのチャープ間時間、のうちの1つ又は複数を判定するように構成される、
FMCWレーダシステム。
【請求項6】
請求項4のFMCWレーダシステムであって、
前記第1のFMCWシンセサイザが、第1の基準クロック信号を生成するように構成される基準信号生成器を含み、前記第1のFMCWシンセサイザが、前記第1の基準クロック信号に応答して前記第1のFMCWチャープを生成するように構成され、
前記第2のFMCWデバイスが、第2の基準クロック信号を生成するように構成される基準信号生成器を含み、前記第2のFMCWシンセサイザが、前記第2の基準クロック信号に応答して、前記第2のFMCWチャープを生成するように構成される、
FMCWレーダシステム。
【請求項7】
請求項6のFMCWレーダシステムであって、
前記第1のFMCWデバイスが、開始時間と終了時間を前記第2のFMCWデバイスに送信するように構成され、
前記第2のFMCWデバイスが、前記開始時間と前記終了時間との間のクロックサイクルの数に応答して、それぞれのFMCWチャープの開始周波数、それぞれのFMCWチャープのチャープ勾配、それぞれのアナログデジタル変換器(ADC)の開始時間、又はそれぞれのチャープ間時間、のうちの1つ又は複数を判定するように構成される、
FMCWレーダシステム。
【請求項8】
請求項7のFMCWレーダシステムであって、前記開始時間と前記終了時間がイーサネット-PTPタイムスタンプに対応する、FMCWレーダシステム。
【請求項9】
請求項4のFMCWレーダシステムであって、
前記第1のFMCWデバイスが、同期パルスを前記第2のFMCWデバイスに提供するように構成され、
前記第2のFMCWデバイスが、前記同期パルスに応答して、データフレームの開始時間を判定するように構成される、
FMCWレーダシステム。
【請求項10】
オブジェクトを検出する方法であって、前記方法が、
第1の周波数変調連続波(FMCW)デバイスを用いて、第2のFMCWデバイスとは独立して生成される第1の基準クロックに応答して、FMCWチャープの第1のセットを生成することと、
前記第1のFMCWデバイスを用いて、前記第1の基準クロックに応答して、前記第1のFMCWチャープを視野(FOV)内に送信することと、
前記第1のFMCWデバイスを用いて、前記FOVからの信号を受信して第1の受信信号を生成することと、
前記第1の基準クロックに応答して、仮想アンテナアレイ信号の第1のセットを生成するため前記第1の受信信号を処理することと、
前記第2のFMCWデバイスを用いて、前記第1のFMCWレーダデバイスとは独立して生成される第2の基準クロックに応答して、FMCWチャープの第2のセットを生成することと、
前記第2のFMCWデバイスを用いて、前記第2の基準クロックに応答して、前記第2のFMCWチャープを前記視野(FOV)内に送信することと、
前記第2のFMCWデバイスを用いて、第2の受信信号を生成するため前記FOVからの信号を受信することと、
前記第2の基準クロックに応答して、仮想アンテナアレイ信号の第2のセットを生成するため前記第2の受信信号を処理することと、
前記第2のFMCWデバイスから前記第1のFMCWデバイスに、仮想アンテナアレイ信号の前記第2のセットを送信することと、
前記第1のFMCWデバイスを用いて、仮想アンテナアレイ信号の前記第1及び第2のセットに応答して、前記FOV内の一つ又は複数のオブジェクトに対する到来角度情報を判定することと、
を含む、方法。
【請求項11】
請求項10の方法であって、
仮想アンテナアレイ信号の前記第1のセットが、第1のレンジドップラースペクトル推定を含み、
仮想アンテナアレイ信号の前記第2のセットが、第2のレンジドップラースペクトル推定を含む、
方法。
【請求項12】
請求項10の方法であって、前記第2のFMCWデバイスを用いて、仮想アンテナアレイ信号の前記第1のセットに対応するFMCWチャープと仮想アンテナアレイ信号の前記第2のセットに対応するFMCWチャープとの間の送信時間に意図的に含まれる差に関するドップラー補償を実施することを更に含む、方法。
【請求項13】
請求項10の方法であって、
共有基準クロック信号を前記第1のFMCWデバイス及び前記第2のFMCWデバイスに提供することを更に含み、
前記第1のFMCWデバイス及び前記第2のFMCWデバイスが、両方とも、前記基準クロック信号を用いて、それぞれのFMCWチャープの開始周波数、それぞれのFMCWチャープのチャープ勾配、それぞれのアナログデジタル変換器(ADC)の開始時間、又はそれぞれのチャープ間時間、のうちの1つ又は複数を判定するように構成される、
方法。
【請求項14】
請求項10の方法であって、
前記第1のFMCWデバイスを用いて、第1の基準クロック信号を生成することであって、前記第1のFMCWデバイスが、前記第1の基準クロック信号に応答して前記第1のFMCWチャープを生成することと、
前記第2のFMCWデバイスを用いて、第2の基準クロック信号を生成することであって、前記第2のFMCWデバイスが、前記第2の基準クロック信号に応答して、前記第2のFMCWチャープを生成することと、
を更に含む、方法。
【請求項15】
請求項14の方法であって、
前記第1のFMCWデバイスによって、開始時間及び終了時間を前記第2のFMCWデバイスに提供することを更に含み、
前記第2のFMCWデバイスが、前記開始時間と前記終了時間との間のクロックサイクルの数に応答して、それぞれのFMCWチャープの開始周波数、それぞれのFMCWチャープのチャープ勾配、それぞれのアナログデジタル変換器(ADC)の開始時間、又はそれぞれのチャープ間時間、のうちの1つ又は複数を判定するように構成される、
方法。
【請求項16】
請求項16の方法であって、前記開始時間及び前記終了時間が、イーサネットPTPタイムスタンプに対応する、方法。
【請求項17】
請求項10の方法であって、
前記第1のFMCWデバイスから前記第2のFMCWデバイスに同期パルスを提供することと、
前記第2のFMCWデバイスを用いて、前記同期パルスに応答して、データフレームの開始時間を判定することと、
を含む、方法。
【請求項18】
周波数変調連続波(FMCW)レーダであって、
基準クロック信号を生成するように構成される基準クロックと、
FMCW信号を受信し、前記基準クロック信号に応答して前記FMCW信号をサンプリングして、FMCW信号サンプルを生成するように構成されるアナログデジタル変換器(ADC)と、
プロセッサと、
を含み、
前記プロセッサが、
前記基準クロック信号に応答して開始時間及び終了時間を別のFMCWレーダに提供し、
前記FMCW信号サンプルを受信し、
前記FMCW信号サンプルに応答して、仮想アンテナ信号の第1のセットを判定し、
前記別のFMCWレーダから仮想アンテナ信号の第2のセットを受信し、
仮想アンテナ信号の前記第1及び第2のセットに応答して到来角度を判定する、
ように構成される、
FMCWレーダ。
【請求項19】
請求項18のFMCWレーダであって、仮想アンテナ信号の前記第1のセットが、前記FMCW信号サンプルに対応するレンジドップラースペクトル推定の第1のセットを含み、仮想アンテナ信号の前記第2のセットが前記FMCW信号サンプルに対応しないレンジドップラースペクトル推定の第2のセットを含む、FMCWレーダ。
【請求項20】
請求項19のFMCWレーダであって、レンジドップラースペクトル推定の前記第1及び第2のセットが、高速フーリエ変換(FFT)、バーレットビームフォーマー、又は最小分散無歪応答(MVDR)ビームフォーマー、のうちの1つ又は複数を用いて生成される、FMCWレーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、全般的に、周波数変調連続波(FMCW)レーダに関し、特に、オブジェクトの位置判定の精度を改善するために、FMCWシステムにおいて仮想アンテナアレイを用いることに関する。
【背景技術】
【0002】
FMCWレーダは、時間の経過とともに上下に変化するように変調された既知の周波数を備える電磁放射(EMR)信号を送信する。FMCWレーダは、送信信号に対応する反射信号を受信し、受信信号を用いて、FMCWレーダの検出距離制限内のオブジェクトの存在、距離、到来角度、速さ、及び移動方向を判定する。速さと移動方向が共に検出されるオブジェクトの速度に対応する。
【発明の概要】
【0003】
説明される例において、周波数変調連続波(FMCW)レーダシステムが、第1のプロセッサを含む第1のFMCWデバイスと、第2のプロセッサを含む第2のFMCWデバイスとを含む。第1及び第2のプロセッサは、それぞれ、視野(FOV)に対応するFMCW信号の第1及び第2のセットを受信し、互いに独立して、FMCW信号の第1及び第2のセットを処理して、それぞれ、仮想アンテナアレイ信号の第1及び第2のセットを生成する。第2のFMCWデバイスは、仮想アンテナアレイ信号の第2のセットを第1のFMCWデバイスに送信する。第1のプロセッサは、仮想アンテナアレイ信号の第1及び第2のセットに応答して、FOV内の一つ又は複数のオブジェクトに対する到来角度情報を判定する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1A】FMCWレーダシステムによって送信される例示のFMCW信号のグラフである。
【
図1B】FMCWレーダシステムによって送信されるFMCW信号の例示のデータフレームのグラフである。
【0005】
【
図2A】例示のドップラー分割多重アクセス(DDMA)FMCW送信の図である。
【0006】
【
図2B】
図2AのDDMA FMCW送信に対応する例示の受信した反射FMCW信号のグラフである。
【0007】
【
図3】
図2Aに示されるようにDDMA FMCW送信を送信し、
図2Bに示されるように反射されたFMCWチャープを受信するための、例示のFMCWレーダシステムの機能ブロック図である。
【0008】
【
図4】
図3のFMCWレーダシステムによって送受信されるFMCWチャープを用いてレンジ及び速度を判定するためのプロセスを図示する。
【0009】
【
図5】
図3の第1、第2、第3、及び第4のレシーバによって受信されたDDMA FMCW信号に
図4のプロセスを適用することによって生成される、2次元高速フーリエ変換(FFT)のセットを図示する。
【0010】
【
図6】例示の複数トランシーバFMCWレーダシステム600の図である。
【0011】
【
図7A】共有基準クロックを備える例示の複数トランシーバFMCWレーダシステムを示す機能ブロック図である。
【0012】
【
図7B】第1及び第2のFMCWトランシーバ702及び704が各々、基準クロック信号を生成するそれぞれのローカル基準クロックを有する、例示の複数トランシーバFMCWレーダシステム718を示す機能ブロック図である。
【0013】
【
図8】
図7の複数トランシーバFMCWレーダシステムを用いてオブジェクト検出を実施するための例示のプロセスである。
【0014】
【
図9】
図7の複数トランシーバFMCWレーダシステムによって送信されるFMCWチャープのパラメータ間の例示の差を示すグラフのセットである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書では、トランスミッタ206a、206b、206c、及びレシーバ310a、310b、310c、310d等、別個ではあるが密接に関連している幾つかの構造又は信号は、[数字][文字]形式を用いる参照番号を有する。幾つかの例において、これらの構造又は信号は、トランスミッタ206及びレシーバ310等、概して[文字]なしの[数字]だけを用いて単数形又はグループとして参照される。また、図面では、構造的及び/又は機能的に密接に関連する特徴を示すために、同じ参照番号又は他の参照指示子が用いられる。
【0016】
本明細書において、トランスミッタ及びレシーバは、対応する送信又は受信アンテナを指す。幾つかの例において、アンテナは、それぞれのトランスミッタ関連及びレシーバ関連構造の他の部分を含む集積回路(IC)とは別個に(プリント回路基板(PCB)の異なる部分の上などに)配置され、ICに電気的に接続される。
【0017】
図1Aは、自動車用又は産業用のFMCWレーダシステム等のFMCWレーダシステムによって送信される、例示のFMCW信号100のグラフである。縦軸は周波数に対応し、横軸は時間に対応する。FMCW信号100は変調されてFMCWチャープ102を定義する。FMCWチャープ102の持続時間は、本明細書ではランプ時間104と称される。FMCWチャープ102の間、トランスミッタ周波数は、ベース周波数F
0106から最大周波数F
1108まで、のこぎり波のように上昇し得る。FMCWチャープ102は、勾配S=(F
1-F
0)/ランプ時間を有する。FMCW信号100の勾配は、時間単位あたりの周波数の変化、例えば、ΔHz/sに対応する。FMCWチャープ102の間はアイドル時間110である。アイドル時間110は、FMCW信号100を送信するトランスミッタがオフにされている期間である。
【0018】
同じトランスミッタの1つのFMCWチャープ102の開始から次のFMCWチャープ102の開始までの時間は、FMCW信号100のパルス繰り返し間隔(PRI)112と称され、トランスミッタのランプ時間104とアイドル時間110とを足したものに等しい。同様に、同様のランプ時間104及びアイドル時間110を有する異なるトランスミッタからのチャープ102をインターリーブする場合、PRI 112は、FMCWレーダシステム内のトランスミッタの数に、1つのFMCWチャープ102に対するランプ時間104と、FMCWレーダシステムの別のトランスミッタによるFMCWチャープ102の終了から後続の次のFMCWチャープ102の開始までの時間との合計(ランプ時間104とチャープ間時間を足したもの)を乗じたものに等しい。幾つかの例において、PRI 112の持続時間は、最大識別可能ドップラーレンジを定義する。PRI 112の逆数は、FMCW信号100のパルス繰り返し周波数(PRF)である。
【0019】
ファストタイム(fast time)とは、単一のFMCWチャープ102の間にPRI 112を構成する異なる時間スロットを指し、受信信号がサンプリングされるレートに依存し得る。スロータイムとは、各PRI 112の後に更新され、複数のFMCWチャープ102の経過にわたる時間を指す。
【0020】
図1Bは、FMCWレーダシステムによって送信されるFMCW信号100の例示のデータフレーム116のグラフ114である。データフレーム116は、取得期間118とフレーム間期間120とを含む。取得期間は、種々のトランスミッタ206からの一連のFMCWチャープ102を含む(
図2Aを参照)。フレーム間期間120の間、トランスミッタ206は信号を送信しない。幾つかの例において、フレーム間期間120は、電力を節約するため、又は、取得期間118の間に送信されるFMCWチャープ102に対応する受信反射信号の分析を完了する時間を提供するために用いられる。
【0021】
図2Aは、例示のドップラー分割多重アクセス(DDMA)FMCW送信200の図である。本明細書において、DDMAが例示のトランシーバプロトコルとして用いられるが、時分割多重アクセス(TDMA)又はバイナリ位相変調等の他のトランシーバプロトコルを本明細書において説明される方法及びシステムとともに用いることもできる。FMCWシンセサイザ202(
図3参照、FMCW信号生成器とも称される)はFMCW信号100を生成する。FMCWシンセサイザ202は、第1の位相シフタ(位相シフタ1)204a、第2の位相シフタ(位相シフタ2)204b、及び第3の位相シフタ(位相シフタ3)204cにFMCW信号100を出力する。第1の位相シフタ204aは、位相シフトされたFMCW信号100を第1のトランスミッタ206aに出力する。第2の位相シフタ204bは、位相シフトされたFMCW信号100を第2のトランスミッタ206bに出力する。第3の位相シフタ204cは、位相シフトされたFMCW信号100を第3のトランスミッタ206cを出力する。
【0022】
例示のFMCWチャープ102は、第1のトランスミッタ206a、第2のトランスミッタ206b、及び第3のトランスミッタ206cの各々に対応して示されている。FMCWシンセサイザ202と第1の位相シフタ204aが一緒になって、チャープ208aの第1のセットを生成する。FMCWシンセサイザ202と第2の位相シフタ204bが一緒になって、チャープ208bの第2のセットを生成する。FMCWシンセサイザ202と第3の位相シフタ204cが一緒になって、チャープ208cの第3のセットを生成する。
【0023】
DDMA FMCW送信を実施するために、
図1のFMCW信号100等のFMCW信号が、異なるトランスミッタに対してスロータイム(例えば、チャープのセット間)において差別化される位相シフト符号化を用いて位相シフトされる。一例において、位相シフト符号化は、0から63までの64のコード設定が可能である。個々のコードの増分はπ/64ラジアンを表すため、位相シフトのレンジは、0ラジアンから2π×63/64
thsラジアンになる。例示の位相シフトコードベクトルは、[0 16 32 48 0 16 32 48 0]及び[0 24 48 8 32 56 16 40 0]を含む。第1の位相シフトコードベクトルは16ずつ増分し、第2の符号化ベクトルは24ずつ増分する。位相シフトコードベクトルのコード増分に対応するシフト増分は、本明細書において、基本位相シフトと称される。8個のFMCWチャープ102の後、2つの位相シフトコードベクトルは、同じゼロ値の位相オフセットに戻り、その結果、それらはファストタイムにおいて周期的に同じ値を有する。しかしながら、2つのベクトルは、スロータイムにわたって差別化される。
【0024】
一例において、第1、第2、及び第3の位相シフタ206a、206b、及び206cの基本位相シフトは、それぞれ、φl=0、φ2=υ、及びφ3=2υであり、ここで、υは整数コード値に対応する位相シフトである。トランスミッタ206a、206b、及び206cは、それぞれの基本位相シフトの連続的に増加する倍数を用いて位相シフトされたFMCWチャープを送信する。これらの増加する位相シフトは、それぞれの位相シフトコードベクトルを介して循環する。
【0025】
DDMA FMCWレーダシステムが、複数入力複数出力(MIMO)レーダシステムを実装するために用いられ得る。N個のトランスミッタ及びM個のレシーバを備えるMIMOレーダシステムにおいて、トランスミッタによって送信されるN個の信号は予測可能であり、異なるトランスミッタ間で異なる。幾つかの例において、DDMAでは、送信されるFMCWチャープ102のそれぞれのセットに、トランスミッタごとに一意のドップラーシフトシーケンスを適用することによって、送信される信号が差別化される。TDMAでは、各トランスミッタに他のトランスミッタに対して一意の時間スロット内で信号を送信させることにより、送信される信号が差別化される。バイナリ位相変調では、各トランスミッタは、0°又は180°の連続した位相シフトに対応して、スロータイムにわたって一意の位相シーケンスを有し、これによりレシーバにおける信号回復が可能になる。
【0026】
説明されるようなMIMOレーダシステムが、トランスミッタ間で差別化された信号を用いて、M個のレシーバによって受信される信号の各々からN個の異なる信号を抽出することができ、その結果、MIMOレーダシステムがN×M個の異なるレシーバを有しているかのように、N×M個の異なる受信信号が生成される。これにより、レーダシステムの空間的分解能が改善する。ドップラー差別化は、スロータイムにおいて互いに差別化される位相シフトベクトルを用いて、N個の送信信号を予測可能で一意にするために用いられ得る。N×M個の異なる受信信号を抽出可能であるという特性のため、説明されるようなMIMOレーダシステムは、N×M要素の仮想アンテナアレイを有すると称される。
【0027】
図2Bは、
図2AのDDMA FMCW送信200に対応する受信した反射FMCWチャープ210の例示のドップラーシフトのグラフである。横軸がドップラーシフト周波数に対応し、縦軸が振幅に対応する。ドップラーシフトとは、FMCWレーダシステム(
図3のFMCWレーダシステム300等)によって受信される信号の周波数が、FMCWレーダシステムによって送信される対応するFMCWチャープ102に対して変化することを指す。ドップラーシフトは、受信信号が反射されたオブジェクトに対するFMCWレーダシステムの相対的な動きによって生じる。互いに位相シフトされたコピー(同じベース周波数F
0106、同じランプ時間104、及び同じ最大周波数F
1108)として同じ時間に送信されるFMCWチャープ102が、異なるドップラーシフトをもたらす。幾つかの例において、基本位相シフトがゼロである場合、受信した反射信号におけるドップラー周波数は、反射するオブジェクトの速度のみに依存する。DDMA位相シフトにより、トランスミッタごとに一意の周波数となり、速度のみに依存する固有のドップラー周波数シフトに付加される。
【0028】
第1の受信信号(信号Tx1a)212aのドップラーシフトが、第1のトランスミッタ206aによって送信されるチャープ208aの第1のセットのFMCWチャープ102に対応する。第2の受信信号(信号Tx2a)214aのドップラーシフトが、第2のトランスミッタ206bによって送信されるチャープ208bの第2のセットのFMCWチャープ102に対応する。第3の受信信号(信号Tx3a)216aのドップラーシフトが、第3のトランスミッタ206cによって送信されるチャープ208cの第3のセットに対応する。信号Tx1a 212a、信号Tx2a 214a、及び信号Tx3a 216aは、チャープ208aの第1のセット、チャープ208bの第2のセット、及びチャープ208cの第3のセットの位相における分離に対応する比較的小さい増加だけ周波数において分離され、一緒にグループ化されて示されている。従って、信号Tx1a 212a、信号Tx2a 214a、及び信号Tx3a 216aは、第1の検出されたオブジェクトに対応する。
【0029】
同様に、第4の受信信号(信号Tx1b)212bのドップラーシフトが、第1のトランスミッタ206aによって送信されるチャープ208aの第1のセットのFMCWチャープ102に対応する。第5の受信信号(信号Tx2b)214bのドップラーシフトが、第2のトランスミッタ206bによって送信されるチャープ208bの第2のセットのFMCWチャープ102に対応する。第6の受信信号(信号Tx3b)216bのドップラーシフトが、第3のトランスミッタ206cによって送信されるチャープ208cの第3のセットに対応する。信号Tx1b 212b、信号Tx2b 214b、及び信号Tx3b 216bは、チャープ208aの第1のセット、チャープ208bの第2のセット、及びチャープ208cの第3のセットの位相における分離に対応する比較的小さい増加だけ、周波数において分離され、一緒にグループ化されて示される。従って、信号Tx1b 212b、信号Tx2b 214b、及び信号Tx3b 216bは、第2の検出されたオブジェクトに対応する。
【0030】
図3は、
図2Aに示されるようにDDMA FMCW送信200を送信し、
図2Bに示されるように反射FMCWチャープ210を受信するための、例示のFMCWレーダシステム300の機能ブロック図である。幾つかの例において、DDMA FMCWレーダシステム、又は、別のタイプのトランシーバプロトコル(TDMA又はバイナリ位相変調等)を用いるFMCWレーダシステムが、異なる機能ブロックを用いる。幾つかの例において、FMCWレーダシステム300は、ミリメートル波感知、又はサブテラヘルツ(サブTHz)感知を用いるように構成される。幾つかの例において、ミリメートル波感知を用いるFMCWレーダシステム300は、FMCWチャープ102を60ギガヘルツ又は77ギガヘルツの帯域で送信する。幾つかの例において、サブTHz感知を用いるFMCWレーダシステム300が、FMCWチャープ102を、140ギガヘルツ(GHz)又はそれ以上の帯域で送信する。
【0031】
FMCWレーダシステム300は、FMCWシンセサイザ202、デジタル信号プロセッサ(DSP)302、トランスミッタ側304、レシーバ側306、温度センサ319、及びメモリ320を含む。FMCWレーダシステム300のトランスミッタ側304は、第1の位相シフタ(位相シフタ1)204a、第2の位相シフタ(位相シフタ2)204b、及び第3の位相シフタ(位相シフタ3)204cと、第1の電力増幅器(PA1)308a、第2の電力増幅器(PA2)308b、及び第3の電力増幅器(PA3)308cと、第1のトランスミッタ(TX1)206a、第2のトランスミッタ(TX2)206b、及び第3のトランスミッタ(TX3)206cとを含む。
【0032】
FMCWレーダシステム300のレシーバ側306は、第1のレシーバ(RX1)310a、第2のレシーバ(RX2)310b、第3のレシーバ(RX3)310c、及び第4のレシーバ(RX4)310dと、第1の低雑音増幅器(LNA1)312a、第2の低雑音増幅器(LNA2)312b、第3の低雑音増幅器(LNA3)312c、及び第4の低雑音増幅器(LNA4)312dと、第1のミキサ314a、第2のミキサ314b、第3のミキサ314c、及び第4のミキサ314dと、第1のバンドパスフィルタ(BPF)及び可変利得増幅器(VGA)回路(BPF/VGA1)316a、第2のBPF及びVGA回路(BPF/VGA2)316b、第3のBPF及びVGA回路(BPF/VGA3)316c、及び第4のBPF及びVGA回路(BPF/VGA4)316dと、第1のアナログデジタル変換器(ADC)回路(ADC1)318a、第2のADC回路(ADC2)318b、第3のADC回路(ADC3)318c、及び第4のADC回路(ADC4)318dとを含む。
【0033】
FMCWシンセサイザ202は、オブジェクトの検出や、レンジ、角度、及び速度の判定等のために送信されるFMCWチャープ102を生成する。FMCWシンセサイザ202は、FMCWチャープ102を第1、第2、及び第3の位相シフタ204a、204b、及び204cに出力し、また、第1、第2、第3、及び第4のミキサ314a、314b、314c、及び314dのそれぞれの第1の入力にも出力する。第1、第2、及び第3の位相シフタ204a、204b、及び204cは、
図2Aに関して説明されたように、それぞれの位相シフトコードベクトルを用いて、FMCWチャープ102を位相シフトする。
【0034】
第1、第2、及び第3の位相シフタ204a、204b、及び204cは、FMCWチャープ102を、それぞれ、第1、第2、及び第3の電力増幅器PAI 308a、PA2 308b、及びPA3 308cに出力する。第1、第2、及び第3の電力増幅器PA1 308a、PA2 308b、及びPA3 308cは、それぞれの位相シフトされたFMCWチャープ信号を増幅し、増幅された信号を、それぞれ、第1、第2、及び第3のトランスミッタ206a、206b、及び206cに出力する。第1、第2、及び第3のトランスミッタ206a、206b、及び206cは、増幅され位相シフトされたFMCWチャープを送信する。幾つかの例において、送信された信号は、FMCWレーダシステム300の検出、レンジ、角度、及び速度判定レンジ内にあるオブジェクト322(レンジ内のオブジェクト322)によって反射される。
【0035】
反射された信号は、第1、第2、第3、及び第4のレシーバ310a、310b、310c、及び310dによって受信される。第1、第2、第3、及び第4のレシーバ310a、310b、310c、及び310dは受信した信号を、それぞれ、第1、第2、第3、及び第4の低雑音増幅器LNA1 312a、LNA2 312b、LNA3 312c、及びLNA4 312dに出力し、これらは、受信した信号を増幅する。第1、第2、第3、及び第4の低雑音増幅器LNA1 312a、LNA2 312b、LNA3 312c、及びLNA4 312dは、増幅した信号を、それぞれ、第1、第2、第3、及び第4のミキサ314a、314b、314c、及び314dの第2の入力に出力する。第1、第2、第3、及び第4のミキサ314a、314b、314c、及び314dは、混合された信号を、それぞれ、第1、第2、第3、及び第4のBPF/VGA回路316a、316b、316c、及び316dに出力し、これらは、混合された信号をフィルタリング及び増幅する。第1、第2、第3、及び第4のBPF/VGA回路316a、316b、316c、及び316dは、結果のクリーンな信号を、それぞれ、第1、第2、第3、及び第4のADC回路318a、318b、318c、及び318dに出力し、それらは、クリーンな混合信号をサンプリングして、デジタルサンプルからなるそれぞれのデータセットを生成する。第1、第2、第3、及び第4のADC回路318a、318b、318c、及び318dは、分析のためにデジタルサンプルをDSP302に出力する。
【0036】
DSP302は、デジタルサンプルを用いてレンジ322内のオブジェクトの存在、レンジ、角度、及び速度を判定する。本明細書において、レンジ内のオブジェクトとは、FMCWトランスミッタ206と対応するFMCWレシーバ310との共有視野(FOV)内にあり、且つ、対応するFMCWレーダシステム(
図3のFMCWレーダシステム300等)が受信した反射されたFMCW信号を用いてオブジェクトを検出できる設計レンジ内にあるオブジェクトを指す。
【0037】
例えば、オブジェクトの存在は、閾値より大きい信号振幅に基づいて判定され得る。レンジは、信号の往復遅延にFMCWチャープ102の勾配を乗じたものに対応する一意のレンジ周波数によって判定され得る。速度は、一意のドップラー周波数として現れる、複数のチャープ間の一意のレンジ周波数の位相変化によって判定され得る。角度は、異なるレシーバ間の飛行時間における差によって生じる、異なるレシーバ間の特定の受信したチャープに対する位相変化によって判定され得る。これらの判定は、
図4及び
図5に関して更に説明される。
【0038】
図4は、
図3のFMCWレーダシステム300によって送受信されるFMCWチャープ102を用いてレンジ及び速度を判定するためのプロセス400を図示する。工程402では、横軸は時間を示し、縦軸は周波数を示す。工程404では、横軸は時間を示し、縦軸は振幅を示す。IF信号は、受信信号と送信信号を混合した結果である。工程402において、FMCW信号100が送信され、受信FMCW信号406が受信される。個々のFMCWチャープ102がファストタイムで送受信される。FMCW信号100が送信され、受信されたFMCW信号406がスロータイム(slow time)で受信される。
【0039】
送信された信号が、レンジ322内のオブジェクトに到達するまでの時間量はdに等しい。反射された信号が、レンジ322内のオブジェクトから戻り、第1、第2、第3、及び第4のレシーバ310a、310b、310c、及び310dによって受信されるまでの時間もdに等しい。従って、レンジ322内のオブジェクトによって反射されるFMCWチャープ102の飛行時間は2dである。幾つかの例において、dの値は、トランスミッタ306のうちの異なるトランスミッタ306の別個の位置及び/又はレシーバ410の別個の位置に応答して変化する。このdの変化する値は、異なるレシーバ410によって受信される信号において、角度推定を実施するために用いられる位相変化として現れる。また、
図2Bに関して説明されたように、受け取ったFMCWチャープ102は、受け取ったFMCWチャープ102が反射されるレンジ322内のオブジェクトに対するMCWレーダシステム300の動き、及び第1、第2、又は第3の位相シフタ204a、204b、又は204cの対応する1つによって適用される位相シフトに依存して、対応する送信されたFMCWチャープ102に対してドップラーシフトされる。
【0040】
工程404において、第1、第2、第3、及び第4のミキサ314a、314b、314c、及び314dは、それぞれの受信信号を、FMCWシンセサイザ202によって生成されるFMCW信号100と混合(例えば、乗算)して、中間周波数(IF)信号408を生成する。IF信号の周波数は、対応するFMCWチャープ102の飛行時間2dに線形に比例している。
図3に関して説明されるように、第1、第2、第3、及び第4のADC318a、318b、318c、及び318dは、これらのIF信号をクリーンアップし、増幅した後にサンプリングして、結果として生じたデジタルサンプルを分析のためにDSP302に提供する。工程410において、DSP302は、ファストタイムで、デジタルサンプルのセットに対して高速フーリエ変換(FFT)を実施する。これは、FFTは、IF信号(送信信号と混合された受信信号)のサンプルのセットに対して判定され、その結果、サンプルのセットがそれぞれのPRI 112に整合されることを意味する。これにより、時間的に連続する一連の一次元レンジFFT412が生成される。
【0041】
レンジFFT412は、周波数ビン414に分割される。各周波数ビン414は、個別のドップラーシフト周波数レンジを網羅し、オブジェクトまでのレンジを示すインデックス、及びそれぞれのレンジに関連付けられた返信信号強度を示す値を有する。それぞれのレンジFFT412における周波数ビン414の数は、FMCWレーダシステム300の周波数分解能に対応する。FMCWレーダシステム300の周波数分解能は、FMCWレーダシステム300のレンジ及び速度分解能に対応する。
【0042】
図示された例において、各レンジFFT412に8個の周波数ビン414が存在する。幾つかの例において、レンジFFT412は、数百の周波数ビンを含む。レンジ322内にオブジェクトが存在し、時間の経過とともに、送信されたFMCWチャープ102を反射する場合、振幅スパイク416が生じる。振幅スパイク416は、
図4のレンジFFT412の周波数ビン414内の網掛けのボックスとして示される。振幅スパイク416は、分析対象のFMCW信号100を受信したレシーバ(第1、第2、第3、又は第4のレシーバ310a、310b、310c、又は310d)からレンジ332内のオブジェクトまでの距離に対応する。この振幅スパイク416を備えるレンジFFT412は、レンジ322内のオブジェクトの存在を示す中間周波数に対応する。
【0043】
工程418において、DSP302は、一次元レンジのFFTに対して、スロータイムにおいてFFTを実施する。従って、DSP302は、一次元レンジのFFT412の時間的に連続したセットに対してFFTを実施して、二次元レンジドップラーFFT420を生成する。レンジドップラーFFT420は、各々が(1)レンジと速度の組み合わせを表すインデックスと、(2)それぞれのレンジと速度に関連付けられたリターン信号強度を示す値とを有する、ビンのセットを含む。レンジドップラーFFT420は、設計された速度分解能に応答して判定された複数のPRI 112を網羅する。幾つかの例において、これは1つのデータフレーム116に対応する。ファストタイム(トランスミッタ206のうちの対応する1つに関する個々のPRI 112)に対応する、レンジドップラーFFT420の垂直方向の寸法が、レンジを示す周波数ビン414に分割される。レンジドップラーFFT420の垂直方向の寸法はまた、レンジドップラーFFT420のレンジドメインとも称される。スロータイム(選択された数のPRI 112にわたる)に対応するレンジドップラーFFT420の水平方向の寸法が、ドップラーシフトを示す周波数ビン414に分割される。レンジドップラーFFT420の水平方向の寸法は、レンジドップラーFFT420のドップラードメインとも称される。幾つかの例において、PRI 112の選択された数は、数十ミリ秒を網羅する。
【0044】
レンジドップラーFFT420における振幅スパイク422(暗いボックス)は、レンジ322内のオブジェクトの存在を示す。振幅スパイク422が位置する特定の周波数ビン414の垂直座標が、FMCWレーダシステム300からのレンジ322内のオブジェクトのレンジを示す。振幅スパイク422が位置する特定の周波数ビン414の水平座標が、ドップラーシフト情報を提供する。レンジドップラーFFT420における振幅スパイク422によって表されるドップラーシフト情報は、FMCWレーダシステム300に対するレンジ322内のオブジェクトの速さを判定するために用いられ得る。一例において、判定される速さは、レンジドップラーFFT420を生成するために用いられるPRI 112の選択された数にわたる平均速さである。
【0045】
図5は、
図3の第1、第2、第3、又は第4のレシーバ310a、310b、310c、及び310dによって受信されるDDMA FMCW信号に
図4のプロセス400を適用することによって生成される、レンジドップラーFFT420のセット500を図示する。上述のように、第1、第2、及び第3の位相シフタ204a、204b、及び204cに、スロータイムにおいて適用される差別化された位相シフトベクトルを用いることにより、N個のトランスミッタによって送信され、M個のレシーバによって受信されるFMCW信号100を、N×M個の個別の受信信号として扱うことが可能になる。M個のレシーバの各々に対して、レンジ322内のオブジェクトが、レンジFFT412におけるN個の異なるピークとして現れる。これにより、FMCWレーダシステム300の空間分解能が増大する。
【0046】
FMCWレーダシステム300は、3個のトランスミッタと4個のレシーバとを有する。従って、プロセス400をFMCWレーダシステム300に適用すると、12個の受信信号が生成され、それらはまた、解像されるべき12個のオブジェクトとしてみなされ得る。トランスミッタ復号化とも称される明確化工程が実施されて12個のオブジェクトを区別し、その後、対応するレンジFFT412が処理されて12個のレンジドップラーFFT420を生成する。区別されたオブジェクトの異なるそれぞれが、第1、第2、又は第3のトランスミッタ206a、206b、又は206cと、第1、第2、第3、又は第4のレシーバ310a、310b、310c、又は310dの異なる組み合わせに対応し、そのため、レンジドップラーFFT420の異なるそれぞれが、トランスミッタとレシーバとの異なる組み合わせに対応する。レンジドップラーFFT420は、それらが対応するトランスミッタ及びレシーバに従って識別される。例えば、第1のトランスミッタ(TX1)206a及び第3のレシーバ(RX3)310cに対応するレンジドップラーFFT420がTX1-RX3として識別され、第3のトランスミッタ(TX3)206c及び第2のレシーバ(RX2)310bに対応するレンジドップラーFFT420がTX3-RX2として識別される。
【0047】
上述されたように、複数の異なるレシーバに対応するレンジドップラーFFT420を用いることによって、FMCWレーダシステム300の方位に対するレンジ322内のオブジェクトの角度(到来角度)を判定することができる。幾つかの例において、これは、レンジドップラーFFT420にわたって、角度FFTと称されるFFTを実施することによってなされる。例えば、2つのレシーバが用いられて、単一平面内の角度を判定し、それがレンジと組み合わされてレンジ322内のオブジェクトの2次元位置を生成し得る。例えば、2つのレシーバが用いられ、レンジ322内のオブジェクトのレンジ及び方位角を判定し得る。同様に、3個のレシーバが用いられ、複数の平面における角度を判定し、それがレンジと組み合わされてレンジ322内のオブジェクトの3次元位置を判定し得る。例えば、3個のレシーバが用いられ、レンジ322内のオブジェクトのレンジ、方位角、及び仰角を判定し得る。
【0048】
レンジ322内のオブジェクトの角度情報が判定される精度は、反射された信号を受信するために用いられるアンテナの数によって制限される。MIMOレーダシステムにおいて、この制限は仮想アンテナアレイにおける仮想アンテナの数に対応する。
【0049】
図6は、例示の複数トランシーバFMCWレーダシステム600の図である。複数トランシーバFMCWレーダシステム600は、通信インタフェース606によって接続される、第1のFMCWトランシーバ602と第2のFMCWトランシーバ604とを含む。本明細書において、「FMCWトランシーバ」又は「FMCWデバイス」は、FMCWチャープの生成及び送信、FMCW信号の受信、及びFMCW信号の処理のための構造(回路要素等)を含むデバイスを指すために用いられる。幾つかの例において、第1のFMCWトランシーバ602は、第2のFMCWトランシーバ604から物理的に分離されている。
図7に関して更に説明されるように、第1及び第2のFMCWトランシーバ602及び604は、MIMOレーダシステムである。
図3のFMCWレーダシステム300は、第1のFMCWトランシーバ602及び/又は第2のFMCWトランシーバ604を実装するために用いられ得る、例示のFMCWデバイスを提供する。
【0050】
第1のFMCWトランシーバ602は第1のFOV608を有し、第2のFMCWトランシーバ604は第2のFOV610を有する。第1及び第2のFOV608及び610は重なっている。第1及び第2のFMCWトランシーバ602及び604は、通信インタフェース606を用いて、FMCWチャープ送信を同期し、受信信号に関する情報を共有して、第1及び第2のFOV608及び610の重なった領域内に位置するオブジェクトに対する角度判定を改善する。重なった領域は、本明細書において第1及び第2のFMCWトランシーバ602及び604の共有FOVと称される。
【0051】
図7Aは、共有基準クロック712を備える例示の複数トランシーバFMCWレーダシステム700を示す機能ブロック図である。複数トランシーバFMCWレーダシステム700はまた、データ通信ライン又はバス706によって接続される、第1のFMCWトランシーバ702と第2のFMCWトランシーバ704とを含む。第1のFMCWトランシーバ702は第1の局部発振器714を含み、第2のFMCWトランシーバ704は第2の局部発振器716を含む。第1及び第2の局部発振器714及び716は、それぞれ、20GHz信号等の比較的高い周波数基準信号を生成する。これらの高い周波数基準信号が用いられて、それぞれのFMCWチャープ102を生成する。共有基準クロック712は、40MHz信号等の比較的低い周波数基準信号を生成する。同期パルスもまた共有基準クロック712から、又は第1のFMCWトランシーバ702から第2のFMCWトランシーバ704に送信される。共有基準クロック信号及び同期パルスが用いられて、開始周波数、FMCWチャープ勾配、ADC開始時間、及びチャープ間時間等のFMCWチャープパラメータの第1及び第2のFMCWトランシーバ702及び704にわたる自動同期を可能にする。
【0052】
第1のFMCWトランシーバ702は、
図2Aに関して説明されるように、P個の仮想アンテナ708を含む。第2のFMCWトランシーバ704はR個の仮想アンテナ710を含む。幾つかの例において、第1のFMCWトランシーバ702は、複数トランシーバFMCWレーダシステム700のリーダー回路としてモデル化され、第2のFMCWトランシーバ704は、複数トランシーバFMCWレーダシステム700のフォロワー回路としてモデル化され得る。
図7A及び
図7Bに従って説明される例に関して、本明細書において説明されるように仮想アンテナアレイの同期は、第1及び第2のFMCWトランシーバ702及び704を用いることを可能にし、P+R個の仮想アンテナを備える仮想アンテナアレイに対応する精度を備える角度情報を判定する。仮想アンテナアレイの同期は、FMCWチャープパラメータ同期を用いて実施される。
【0053】
図7Bは、第1及び第2のFMCWトランシーバ702及び704が各々、基準クロック信号を生成するそれぞれのローカル基準クロックを有する例示の複数トランシーバFMCWレーダシステム718を示す機能ブロック図である。第1のFMCWトランシーバ702は第1の基準クロック720を含み、第2のFMCWトランシーバ704は第2の基準クロック722を含む。第1のFMCWトランシーバ702は、イーサネットPTPタイムスタンプ及びフレーム同期パルスを第2のFMCWトランシーバ704に送り、
図7Bの例示のFMCWレーダシステム714に従った仮想アンテナ同期を可能にする。
図7A及び
図7Bの例示のFMCWレーダシステム700及び714に従った仮想アンテナアレイ同期を、以下に更に説明する。
【0054】
第1及び第2のFMCWトランシーバ702及び704は、互いに独立してFMCWチャープ信号を送受信する。第1のFMCWトランシーバ702は、それ自体の送信に対応するそれぞれの受信FMCWチャープ信号を処理して、第2のFMCWトランシーバ704とは独立して仮想アンテナアレイ信号を生成する。同様に、第2のFMCWトランシーバ704は、それ自体の送信に対応するそれぞれの受信FMCWチャープ信号を処理して、第1のFMCWトランシーバ702とは独立して仮想アンテナアレイ信号を生成する。幾つかの例において、FMCWチャープ信号を処理して仮想アレイ信号を生成することは、工程410及び418(上記に説明)に対応するレンジ及びドップラーFFTを実施することを含む。
【0055】
各デバイスがそれ自体の仮想アンテナに対応する信号を生成すると、第2のFMCWトランシーバ704は、データフレーム116に対するそれぞれのレンジドップラーFFT420等の仮想アンテナ情報を第1のFMCWトランシーバ702に送る。(幾つかの例において、レンジFFT412も提供される。)第1のFMCWトランシーバは、複数トランシーバFMCWレーダシステム700のトランシーバの組み合わされた仮想アンテナを用いて、角度推定を実施する。これは、第1及び第2のFMCWトランシーバ702及び704を同期すること、及び第1のFMCWトランシーバ702と第2のFMCWトランシーバ704との間の干渉を回避することによって可能になる。このプロセスは、
図8及び
図9に関して更に説明される。
【0056】
第1及び第2のFMCWトランシーバ702及び704は各々、共有基準クロック712から、又はそれぞれの第1又は第2の基準クロック720又は722からの基準クロック信号を用いて、クロッキング及びFMCW信号生成のためのルートタイミングを提供する。異なる機能(又は機能グループ)のための異なる周波数クロックは、位相ロックループ(PLL)、周波数逓倍器及び分周器、及びその他の周波数変更回路要素を用いて、基準クロック信号から生成される。従って、幾つかの例において、それぞれの比較的高い周波数局部発振器714及び716は、それぞれのFMCWトランシーバ702又は704内の基準クロック信号から(共有基準クロック、又はトランシーバ固有の基準クロックから)導出される。幾つかの例において、共有基準クロック信号又は個別の基準クロック信号は、FMCWチャープ102開始周波数、フレーム間及びチャープ間タイミング、及びアナログデジタル変換器(ADC)開始タイミング等の機能を制御及び同期するためのクロック信号を生成するために用いられる。
【0057】
幾つかの例では、第1のFMCWトランシーバ702と第2のFMCWトランシーバ704との間で局部発信器信号を送信する必要はない。幾つかの例(
図7Aの例示のFMCWレーダシステム700等)において、共有基準クロック712からの、又は第1のFMCWトランシーバ702の基準クロック720から等の、より低い周波数の基準クロック信号が、局部発信器信号の代わりに送信される。上述のように、フレーム同期パルスもまた、第1のFMCWトランシーバ702から第2のFMCWトランシーバ704に送信される。フレーム同期パルスは、第2のFMCWトランシーバ704におけるデータフレーム116の開始を第1のFMCWトランシーバ702における対応するデータフレーム116の開始と同期させるために用いられる。幾つかの例において、データフレーム116の開始を同期させることは、一方が他方に対して固定のオフセットで開始するようにそれらを整合させることを意味する。この固定オフセットは、以下で更に説明するように、第1のFMCWトランシーバ702のFMCW信号と第2のFMCWトランシーバ704のFMCW信号との間の時間差別化を可能にするために用いられる。
【0058】
比較的低い周波数の基準クロック信号が用いられ、第1及び第2のFMCWトランシーバ702及び704によるFMCWチャープ102の送信と処理を同期させ、位相オフセットエラーを回避し得る。これは、第1及び第2のFMCWトランシーバ702及び704の各々が、送信したFMCWチャープ102に対応する受信信号を独立して処理して、それ自体のそれぞれの仮想アンテナアレイ信号を生成するためである。低い周波数の基準クロック信号から高い周波数の局部発振器にアップコンバージョンすると、位相ノイズが発生し得る。第1のFMCWトランシーバ702によって送信されるFMCWチャープ102と第2のFMCWトランシーバ704によって送信されるFMCWチャープ102との間の位相オフセットも位相ノイズを発生し得る。それぞれのトランシーバ702及び704のミキサによって送信信号と受信信号とを混合することで上述の位相ノイズを相殺する。これは、トランシーバ702及び704の各々が(レンジFFT412及びレンジドップラーFFT420、即ち、仮想アンテナアレイ信号を生成するために)それぞれのトランシーバ702又は704によって送信されるFMCWチャープ102に対応する受信反射信号のみを処理するためである。
【0059】
言い換えると、第1のFMCWトランシーバ702は、信号を送信し、それ自体が送信した信号に対応する信号を受信し、それらの対応する信号を、受信し得る他の信号とは独立して処理して、IF信号及び仮想アンテナアレイ信号を生成する。第1のFMCWトランシーバ702は、第1のFMCWトランシーバ702の局部発振器を用いて送信されるFMCWチャープ102を生成する。第2のFMCWトランシーバ704も同様に、独立して、それ自体の局部発振器を用いて、それ自体のIF信号及び仮想アンテナアレイ信号を生成する。この独立したアクティビティにより、同期タイミング要件の緩和が可能になる。
【0060】
第1のFMCWトランシーバ702の送信信号を第2のFMCWトランシーバ704の送信信号と差別化することにより、第1及び第2のFMCWトランシーバ702及び704の独立した処理が維持され得る。差別化により、信号の異なるセット間の干渉を防止し、それにより、トランシーバが、それぞれの送信信号に対応する受信(反射)信号を、他のトランシーバによる送信に対応する受信信号から分離することが可能になる。送信される信号のセット間の差別化は、例えば、第1のFMCWトランシーバ702の送信と第2のFMCWトランシーバ704の送信とを時間的にずらして、中間周波数(IF)ドメインでの重なりを防止することによって、実施され得る(工程404参照)。幾つかの例において、この時間差別化は、ドップラーベースの位相補償(本明細書においてドップラー補償とも称される)を用いて後処理で調整され得る。
【0061】
幾つかの例において、数マイクロ秒の時間分離が、差別化を実現するのに充分である。幾つかの例において、ドップラー分割多重化又は別の信号差別化技法を用いて差別化が実施され得る。
【0062】
幾つかの例において、ドップラー補償は、以下のように時間差別化を調整するために用いられる。ここで、Cは、特定の仮想アンテナ(例えば、レンジドップラーセル412のレンジビン414)に対応する複素数を表す。Cに、
を乗じることによってドップラー補償が実施される。ここで、λは、FMCWチャープ102信号の中心周波数に対応する波長であり、T
I-Fは、第1のトランシーバ702のデータフレーム116の開始時間と、第2のトランシーバ704のデータフレーム116の開始時間との間の差であり、νは、レンジドップラーセル422に対応するターゲットの相対速度である。幾つかの例において、ドップラー補償は、第2のFMCWトランシーバ710の仮想アンテナ710に対してのみ実施される。ドップラー補償は、第1及び第2のFMCWトランシーバ702及び704のデータフレーム116のそれぞれの開始時間の間の時間ギャップの間に、レンジ322内のオブジェクトの動きによって引き起こされる第2のFMCWトランシーバ704の仮想アンテナ710における位相シフトを調整するために用いられる。
【0063】
幾つかの例において、基準クロック信号に対して生成されるタイムスタンプ又はその他の開始時間及び終了時間信号は、同期パルスとともに、FMCWチャープ102開始周波数、フレーム間及びチャープ間タイミング、及び、ADC開始タイミング等の、第1及び第2のFMCWトランシーバ702及び704の機能を同期させるために用いられる。幾つかの例において、これらの信号は、第1のFMCWトランシーバ702から第2のFMCWトランシーバ704に送信される。幾つかの例において、これらの信号は、外部プロセッサ724(第1又は第2のFMCWトランシーバ702又は704内のプロセッサ以外)から第1及び第2のFMCWトランシーバ702及び704に送信される。外部プロセッサ724を用いる例において、第1及び第2のFMCWトランシーバ702及び704の両方が、
図8及び
図9に関する以下の説明において、第2のFMCWトランシーバ704に関して説明されるように同期を実施する。幾つかの例において、第1及び第2のFMCWトランシーバ702及び704は、角度情報を判定するために、独立して判定される仮想アンテナアレイ信号情報を外部プロセッサ724に送信する。代替の例示の実装に対応する外部プロセッサ724を示すために点線が用いられている。
【0064】
図8は、
図7の複数トランシーバFMCWレーダシステム700を用いてオブジェクト検出を実施するための、例示のプロセス800である。工程802において、第1のMIMO FMCWレーダトランシーバ702は、第2のMIMO FMCWレーダトランシーバ704とは独立して、FMCWチャープの第1のセットを生成する。工程804において、第2のMIMO FMCWレーダトランシーバ704は、第1のMIMO FMCWレーダトランシーバ702とは独立して、FMCWチャープの第2のセットを生成する。工程806において、第1のMIMO FMCWレーダトランシーバ702は、第2のMIMO FMCWレーダトランシーバ704とは独立して、第1のFMCWチャープをFOVに送信する。工程808において、第2のMIMO FMCWレーダトランシーバ704は、第1のMIMO FMCWレーダトランシーバ702とは独立して、FMCWチャープの第2のセットをFOVに送信する。
【0065】
工程810において、第1のMIMO FMCWレーダトランシーバ702は、FOVから信号を受信して、第2のMIMO FMCWレーダトランシーバ704とは独立して第1の受信信号を生成する。工程812において、第2のMIMO FMCWレーダトランシーバ704は、FOVから信号を受信して、第1のMIMO FMCWレーダトランシーバ702とは独立して第2の受信信号を生成する。工程814において、第1のMIMO FMCWレーダトランシーバ702は、第2のMIMO FMCWレーダトランシーバ704とは独立して、第1の受信信号に対してレンジ及びドップラーFFTを実施して、仮想アンテナアレイ信号の第1のセットを生成する。工程816において、第2のMIMO FMCWレーダトランシーバ704は、第1のMIMO FMCWレーダトランシーバ702とは独立して、第2の受信信号に対してレンジ及びドップラーFFTを実施して、仮想アンテナアレイ信号の第2のセットを生成する。
【0066】
工程818において、第2のMIMO FMCWレーダトランシーバ704は、仮想アンテナアレイ信号の第2のセットを第1のMEMO FMCWレーダトランシーバ702に送信する。幾つかの例において、送信される仮想アレイ信号は、第2のMIMO FMCWレーダトランシーバ704のレンジドップラーFFT情報等のレンジドップラースペクトル情報に対応する。幾つかの例において、送信される仮想アレイ信号は、対応するデータフレーム116又はデータフレーム116のグループに対するレンジドップラーFFT420に対応する。工程820において、第1のMIMO FMCWレーダトランシーバ702は、仮想アンテナアレイ信号の第1及び第2のセットに応答して、FOV内の一つ又は複数のオブジェクトに対する到来角度情報を判定する。幾つかの例において、仮想アンテナアレイ信号の第1及び第2のセットに応答して到来角度情報を判定することは、仮想アンテナアレイ信号の両方のセットを用いる角度FFT等の角度スペクトル推定に対応する。従って、到来角度情報を判定することは、第1及び第2のMIMO FMCWレーダトランシーバ702及び704の両方からの、レンジドップラーFFT420、又は他のレンジドップラースペクトル情報を含むことによって、拡大されたデータセットにわたって角度FFTを実施することに対応する。工程822において、第1のMIMO FMCWレーダトランシーバ702は、判定されたレンジ、ドップラー、及び到来角度情報を用いて、オブジェクトを検出し、対応するポイントクラウド(FMCWチャープを反射した位置に対応すると判定された空間内のポイント)を判定する。
【0067】
幾つかの例において、第1のMIMO FMCWレーダトランシーバ702は、共有FOV内にない第1のMIMO FMCWレーダトランシーバ702のレンジ322内のオブジェクトに対する角度を独立して判定する。幾つかの例において、第2のMIMO FMCWレーダトランシーバ704は、共有FOV内にない第2のMIMO FMCWレーダトランシーバ704のレンジ322内のオブジェクトに対する角度を独立して判定する。
【0068】
幾つかの例において、第1及び第2のMIMO FMCWレーダトランシーバ702及び704は、各々、共有基準クロック712によって提供される、基準クロック信号及びフレーム同期信号を用いる。共有基準クロック712を用いることで、工程802から工程816を、第1及び第2のMIMO FMCWレーダトランシーバ702及び704によって互いに独立して実施することが可能になる。
【0069】
幾つかの例において(
図9に関して更に説明されるように)、第1のMIMO FMCWレーダトランシーバ702は、工程804の前に、開始時間、終了時間、及び、フレーム同期信号を、第2のMIMO FMCWレーダトランシーバに送る。これにより、工程802から工程816を、第1及び第2のMIMO FMCWレーダトランシーバ702及び704によって互いに独立して実施することが可能になる。このような例において、第2のMIMO FMCWレーダトランシーバ704による独立した実施は、それぞれのデータフレーム116の開始時における、第1の基準クロック720と第2の基準クロック722との間の周波数オフセットに対する補償に続き、それに応答する。
【0070】
図9は、
図7の複数トランシーバFMCWレーダシステム700によって送信されるFMCWチャープのパラメータ間の例示の差を図示するグラフ900のセットである。グラフ900は、第1のFMCWトランシーバ702によって送信される第1のFMCWチャープ906に対応する第1のグラフ902と、第2のFMCWトランシーバ704によって送信される第2のFMCWチャープ908に対応する第2のグラフ904とを含む。縦軸は周波数を示し、横軸は時間を示す。第1及び第2のFMCWチャープ906及び908には、送信される順序に応じて、1から始まる下付き数字が付されている。例えば、第1のグラフ902は、第1のFMCWチャープ906
1、906
2、及び906
3を示し、第2のグラフ904は、第2のFMCWチャープ908
1、908
2、及び908
3を示す。一例において、第1及び第2のFMCWチャープ906及び908は、77GHzの設計された開始周波数、20マイクロ秒のチャープ持続時間、及び15ミリ秒のデータフレーム持続時間を有する。
【0071】
第1のFMCWチャープ906のデータフレーム910の開始時間と、第2のFMCWチャープ908のデータフレーム912の開始時間との間の差に対応する、フレーム間時間TI-Fがある。第1のFMCWチャープ906は開始周波数foAを有し、第2のFMCWチャープ908は開始周波数foBを有する。第1のFMCWチャープ906は勾配SAを有し、第2のFMCWチャープ908は勾配SBを有する。第1のFMCWチャープ906はTIC-Aのチャープ間時間を有し、第2のFMCWチャープ908はTIC-Bのチャープ間時間を有する。
【0072】
以下に、第1のFMCWトランシーバ702及び第2のFMCWトランシーバ704のFMCWチャープ906及び908のFMCWチャープ間及びデータフレーム910と912との間の差によって導入される位相誤差や、第1及び第2のFMCWトランシーバ702及び704のそれぞれのADC回路318の差をサンプリングすることによって導入される位相誤差を低減する方法を説明する。これらの方法は、TI-Fを低減するための方法、及びfoAとfoBとの間、SAとSBとの間、及びTIC-AとTIC-Bとの間の差を低減するための方法を含む。それぞれのADC回路318のサンプリングパラメータの調整についても説明する。
【0073】
第1及び第2のFMCWトランシーバ702及び704のフレームを整合させるためにトランシーバタイミング同期が用いられる。言い換えると、第2のFMCWトランシーバ704のFMCWチャープ908のセットを、スロータイムで、第1のFMCWトランシーバ702のFMCWチャープ906の対応するセットに対して整合してTI-Fが制御されるように、トランシーバタイミング同期が実施される。トランシーバタイミング同期は、第2のFMCWトランシーバ704のFMCWチャープ908のセットを、第1のFMCWトランシーバ702のFMCWチャープ906の対応するセットと同時に、又は、或る指定された遅延で、開始するように整合する。
【0074】
幾つかの例において、第1及び第2のFMCWトランシーバ702及び704からの送信信号が互いに干渉することを防止するために、非ゼロのTI-F(例えば、数マイクロ秒のTI-F)が指定される。データフレームのタイミング同期により、第1及び第2のFMCWトランシーバ702及び704の両方の仮想アンテナ708及び710を用いて、仮想アンテナの累積数に応答する精度を備える角度推定を実施することが可能になる。データフレームタイミング同期は、フレーム同期パルスを用いて実施される。
【0075】
幾つかの例において、トランシーバのタイミング同期を実施するため、プログラムされた非ゼロ値のTI-Fの影響は、ドップラーベースの位相補償を用いて補正される。ドップラーベースの位相補償は、それぞれの信号のドップラーに基づいて、第1のFMCWトランシーバ702の仮想アンテナ708に対する第2のFMCWトランシーバ704のそれぞれの仮想アンテナ710によって受信された信号の位相を補正する。TI-Fにおける補償されていないデータフレーム開始タイミング誤差が、(例えば)フレーム同期パルスの遅延におけるフレーム間の変動によって発生し得、これは、本明細書においてδsynchと称される。
【0076】
この補償されていないフレーム開始タイミング誤差δsynchは、φerr=4πνδsynch/λによって与えられる信号仮想アンテナの位相において誤差φerrを生じ得る。ここで、νはターゲット速度(レンジドップラーFFT420における振幅スパイク422に対応する速度)であり、λはFMCWチャープ102の平均波長である(例えば、F0=77GHz及びF1=78GHzであるFMCWチャープ102の場合は77.5GHz)。従って、幾つかの例において、本明細書において説明されるような同期は、数百ナノ秒(ns)のフレーム開始タイミング誤差δsynchを許容し得る。例えば、レンジ322内のオブジェクトの最大速度が時速100キロメートルであり、δsynchからの見込み誤差寄与が1°未満であるとすると、デバイスにわたるδsynchは約200ns又はそれ以下である。(幾つかの例において、本明細書において説明される角度誤差寄与は、振幅スパイク422を含む対応するレンジドップラーFFT420の周波数ビンにおける位相誤差に対応する。)
【0077】
上述のように、複数FMCWトランシーバを同期させてオブジェクト検出を実施する例示の方法では、40MHzクロック等の共有基準信号が用いられる。第1のFMCWトランシーバ702及び第2のFMCWトランシーバ704は、各々、共有基準信号を用いて、チャープ信号、ADCタイミング信号、及びチャープ間タイミング信号を内部的に生成する。共有基準信号を用いることにより、開始周波数、チャープ勾配、ADC開始時間、及びチャープ間時間等、特定のパラメータの自動同期が可能になる。
【0078】
タイミング同期に対する代替のアプローチが、幾つかのイーサネット実装においてサポートされる高精度時刻同期プロトコル(PTP)を用いる。幾つかの例において、このアプローチは、共有基準信号が利用可能ではない場合、又は、イーサネット接続が利用可能ではない場合に用いられる。幾つかの例において、同様に、高精度なタイムスタンプを可能にするか、又はその他の方式で、特定された数のクロックサイクルが基準クロックによって生成される開始時間と終了時間の高精度な時刻同期の判定を可能にする、別の通信プロトコルが用いられる。幾つかの例において、イーサネット-PTP(又は同様のもの)を使用することにより、共有基準クロックの使用を回避することが可能になる。幾つかの例において、同期のためにイーサネット-PTPを用いることにより、トランシーバが配列されていない場合(例えば、大きいベースラインアレイ等)や、データ転送にイーサネットを用いている場合(例えば、衛星レーダアーキテクチャ等)の同期が可能になる。イーサネット-PTP(又は同様のもの)を用いる同期は、以下のように実施され得る。
【0079】
タイミング同期のためにイーサネット-PTPが用いられる例において、第1及び第2のFMCWトランシーバ702及び704は各々、40MHzクロック等の独立した基準クロックを用いる。幾つかの例において、これらの独立した基準クロックは、同じ公称周波数で動作しているにもかかわらず、周波数において、異なる瞬間的なドリフトを有する。第1のFMCWトランシーバ702の基準クロックと第2のFMCWトランシーバ704の基準クロックとの間のドリフトが以下のように判定される。このドリフトは、第1のFMCWトランシーバ702の基準クロック720に対する第2のFMCWトランシーバ704の基準クロック722のα(アルファと読む)と称される。幾つかの例において、基準クロック周波数ドリフトαは、圧力、電圧、又は温度の変動によって生じる。
【0080】
幾つかの例において、イーサネットPTPは、100ns又はそれ以下の精度のタイムスタンプを提供し得る。幾つかの例において、タイムスタンプの送信の許容可能な最大レイテンシが、到来角度判定のために用いられるレンジドップラー情報の許容可能な最小精度に応じる。T秒間隔で分離された2つのイーサネットPTPタイムスタンプが、第1のFMCWトランシーバ702によって第2のFMCWトランシーバ704に提供される。第2のFMCWトランシーバ704は、第1のタイムスタンプの受信と第2のタイムスタンプの受信との間に経過する、基準クロックのサイクル数を測定する。これにより、第2のFMCWトランシーバ704は、第1のFMCWトランシーバ702の基準クロック720に対する第2のFMCWトランシーバ704の基準クロック722の周波数ドリフトαを(2×Acc)/T以内で判定することが可能になる。ここで、Accはタイムスタンプの精度である。例えば、Tが4秒に等しく、第2のFMCWトランシーバ704によって受信されるタイムスタンプが各々100ns(Acc=100ns)以内の精度である場合、第1のFMCWトランシーバ702の基準クロック720に対する第2のFMCWトランシーバ704の基準クロック722のドリフトαは、(2×100ns)/4=0.05パーツパーミリオン(ppm)の精度で判定され得る。幾つかの例において、基準クロック周波数ドリフトαは、式1に示されるように判定される。
α=(Nb-Na)/Na 式1
【0081】
式1において、Naは、第1のタイムスタンプと第2のタイムスタンプとの間に通過する第1のFMCWトランシーバ702の基準クロック720のクロックサイクルの数である。Nbは、第1のタイムスタンプと第2のタイムスタンプとの間に通過する第2のFMCWトランシーバ704の基準クロック722のクロックサイクルの数である。
【0082】
幾つかの例において、第2のFMCWトランシーバ704は、この周波数ドリフトαを補償するために、以下で更に説明するように、変更(例えば、プログラム)される。即ち、開始周波数(f0B)が、第1のFMCWトランシーバ702の開始周波数(f0A)と等しくなるように変更される。(開始周波数とは、それぞれのトランスミッタによって送信される信号のベース周波数F0106を指す。)ADCサンプリング周波数が変更される。第2のFMCWトランシーバ704の対応するFMCWチャープ102(ADC開始時間)に続くADC回路318によるIF信号のサンプリングのための開始時間が補償又は補正される。TIC-B(チャープ間時間)が、データフレーム116の初期の第2のFMCWチャープ9081の後に、データフレーム116における各第2のFMCWチャープ908に対して、対応する第1のFMCWチャープ906のTIC-Aに(幾つかの例において、可能な限り近づけて)整合するように改変される。第2のFMCWトランシーバ704のフレーム間期間120は、第1のFMCWトランシーバ702のフレーム間期間120に整合されるように調整される。
【0083】
仮想アンテナにおける信号の位相は、送信デバイス間の開始周波数(F0106)の差に敏感である。(FFT処理の後、仮想アンテナにおける信号は、対応する周波数ビン内で、複素数として表される。信号の位相は、その複素数の位相を指す。)従って、幾つかの例において、f0Bはf0Aに対して以下のように補正され得る。α(アルファと読む)は、(例えば)イーサネットPTP信号を用いて判定されるように、トランシーバ702の基準クロックに対するトランシーバ704の基準クロックのドリフトを表す。従って、第2のFMCWトランシーバ704は、式2において示されるようにf0Bをプログラムすることによってαf0Aの付加的な周波数オフセットを組み込む。
f0B_programmed=f0A+αf0A 式2
【0084】
式2において、f0Aは、所望の開始周波数であり、f0B_programmedは、特定のトランスミッタ206のプログラムされた開始周波数である。上述のように、第2のFMCWトランシーバ704は、第1のFMCWトランシーバ702に対してαの基準クロックドリフトを有する。これにより、第2のFMCWトランシーバ704の開始周波数は、-αf0Aだけドリフトする。従って、f0B_programmedのプログラムされた値により、第2のFMCWトランシーバ704の送信されたFMCWチャープ908の実際の開始周波数が、第1のFMCWトランシーバ702の送信されたFMCWチャープ906の開始周波数f0Aに一致することが可能になる。これは周波数ドリフトと、プログラムされたオフセットとが、互いに打ち消すためである。
【0085】
幾つかの例において、基準周波数ドリフトαの推定と、式2に従った補正とにより、αres(ppmで測定される)の補正されていない残留基準クロックドリフトが残り得る。この残留基準クロックドリフトにより、式3により与えられる残留位相誤差θerr-resが生じる。
θerr-res=4πf0Aαresd/c 式3
【0086】
式3において、f0Aは、第1のFMCWトランスミッタ702によって送信されるFMCWチャープ906の開始周波数であり、Hzで表され、dは、レンジ322内のオブジェクトまでの距離であり、cは光速である。幾つかの例において、foAは77GHzに等しく、dは100メートルに等しいため、αを0.1ppm以内(即ち、αres=0.1ppm)で知ることにより、残留位相誤差θerr-resを2°未満にすることができる。従って、基準クロックドリフトαを正確に知ることにより、第2のFMCWトランシーバ704の開始周波数の補正が可能になり、残留位相誤差の低減が可能になる。幾つかの例において、調整されるべきFMCWトランシーバ(即ち、第1又は第2のFMCWトランシーバ702又は704)において利用可能なプログラミング粒度により、開始周波数f0B_programmedの微調整が提供され、開始周波数の精度を、10-3程度又はそれより良好にすることができる。
【0087】
第1のFMCWトランシーバ702の基準クロック720に対するその基準クロック722のドリフトαを補正するために、第2のFMCWトランシーバ704のADC回路318のサンプリングレートが変更され得る。幾つかの例において、αを以下のように補正するためにADCサンプリングレートが改変され得る。レンジdでのレンジ322内のオブジェクトの場合、基準クロックドリフトのない(α=0)デジタルIF周波数ωIFが、式4によって与えられる。ここで、SはFMCWチャープ102周波数の勾配(周波数変化をランプ時間で割ったもの)であり、TsはADCサンプリング期間である。
ωIF=4πSdTs/c 式4
【0088】
ppm基準クロックドリフトがαである場合、対応するデジタルIF周波数が(1+α)×ω
IFとなり、そのため、実際のデジタルIF周波数は、理想的なデジタルIF周波数からαω
IFだけずれる。このIF周波数の偏差αω
IFにより、異なるトランシーバの仮想アンテナにわたり対応するレンジビン間で利得及び位相の不一致が生じる。例えば、IF周波数偏差αω
IFにより、対応するセル間で、Tx1-Rx1及びTx3-Rx3レンジドップラーFFT420(
図5参照)の振幅スパイク422を含む、利得及び位相の不一致が生じる。ここで(この例の場合)、Tx1-Rx1は、第1のFMCWトランシーバ702の仮想アンテナであり、Tx3-Rx3は、第2のFMCWトランシーバ704の仮想アンテナである。IF周波数偏差に関連する位相不一致θ
err-mmは、式5において示されるように判定される。
θ
err-mm=αω
IFN
ADC/2 式5
【0089】
式5において、NADCは、ADC回路318がFMCWチャープ102毎に測定するサンプルの数であり、これは、FMCWチャープ持続時間(ランプ時間104)をTsで割ったものに等しい。一例において、NADCが256に等しく、αが200ppmに等しい場合、θerr-mmは約10°である。
【0090】
位相不一致θerr-mmは、式6に示されるように、第2のFMCWトランシーバ704のサンプリング期間Tsを改変(例えば、プログラム)することにより補正される。ここで、TS-MODは、改変されたサンプリング期間である。
TS-MOD=(1-α)×TS 式6
【0091】
幾つかの例において、毎秒1000サンプル(ΔIF=1Ksps)のサンプリングレートプログラミング粒度が、位相不一致誤差θerr-mmを1°に低減するのに充分である。
【0092】
ADC開始時間とは、チャープの送信開始と、その後の、最初のADCサンプリング時点との間の時間遅延を指す。幾つかの例において、第2のFMCWトランシーバ704のADC開始時間は、第1のFMCWトランシーバ702のADC開始時間に対して、以下のように補正され得る。T
startのADC開始時間は、仮想アンテナ信号に2πf
IFT
startの位相をもたらす。ここで、f
IFはIF周波数である。ここで、仮想アンテナ信号とは、仮想アンテナに対応するレンジドップラーFFT420における信号値を指し、例えば、
図5におけるTx1-Rx1である。
【0093】
この位相寄与(2πfIFTstart)を、第1及び第2のFMCWトランシーバ702及び704の仮想アンテナにわたって同一にする(又は可能な限り近づける)ことにより、正確な角度推定が容易になる。即ち、ADC開始時間における差により、位相差が発生し、角度推定誤差が生じ得る。幾つかの例において、第1及び第2のFMCWトランシーバ702及び704の基準クロック720及び722間のドリフトαは、2πfIFTstartのADCサンプリング関連の位相不一致に対応する。幾つかの例において、この位相不一致は、複数の手法で補正可能である。
【0094】
まず、位相不一致はIF周波数に依存する。IF周波数は、レンジFFT412のレンジビン414に対応する。位相不一致は、第2のFMCWトランシーバ704の仮想アンテナ710上(幾つかの例において、第2のFMCWトランシーバ704の全ての仮想アンテナ710上)のレンジFFT412の対応するレンジビン414における信号値に対して位相回転を実施することにより補正され得る。この位相回転は、レンジビン414における信号値に
を乗算することによって実現し、ここで、jは-1の平方根である。幾つかの例において、αが0.1ppm以内であることがわかっている場合、レンジビン414毎に位相回転を用いることにより、ADCサンプリング関連の位相不一致がゼロ又はほぼゼロに低減される。
【0095】
ADC開始時間に関連する位相不一致を補償する代替の第2の方法には、第2のFMCWトランシーバ704のADC開始時間を改変(例えば、再プログラミング)することが含まれる。幾つかの例において、最大IF周波数が20MHzであると仮定すると、ADC開始時間分解能が0.55nsであれば、位相補正の後、残留IF周波数関連の位相不一致を、約2°又はそれ以下にするのに充分である。
【0096】
幾つかの例において、TIC-Bが、TIC-Aに対して補正され得る。第1及び第2のFMCWチャープ906及び908の意図された(例えば、プログラムされた)開始時間は、n×TIC-A(同じになるように意図されている)であり、ここで、nはゼロから(Nchirps-1)まで反復する整数であり、Nchirpsは、第1のFMCWトランシーバ702によって送信されるFMCWチャープのフレーム内のFMCWチャープの数である。しかしながら、基準クロック周波数ドリフトαにより、第2のFMCWトランシーバ704においてチャープ間タイミング差が発生して、補正前のTIC-Bがn×(1-α)×TIC-Aに等しくなる。チャープ間タイミング差n×α×TIC-Aは、ドップラーFFTの後、第1のFMCWトランシーバ902の仮想アンテナと、第2のFMCWトランシーバ904の仮想アンテナとの間に位相不一致を生じ得る(工程418)。
【0097】
TIC-Bを補正するための第1の例示のアプローチにおいて、チャープ間時間は改変(例えば、プログラム)され得る。チャープ間時間TIC-BはΔ(TIC)の粒度で改変され得、その結果、デバイスがLの整数値でプログラムされると、LΔ(TIC)のチャープ間時間となる。(幾つかの例において、Δ(TIC)は10nsに等しい。)2次デバイス上のチャープ間時間は、以下のようにプログラムされ得る。まず、式7に示されるように整数のシーケンスM(n)が判定される。
M(n)=round(nTIC-A/(1-α)Δ(TIC)),n=0,1,2,...Nchirps-1 式7
【0098】
次に、式8に示されるように、整数L(n)の後続のセットが判定される。
L(n)=M(n)-M(n-1),n=1,2,3,...Nchirps-1 式8
【0099】
式8において、L(n)は、対応するデータフレーム116のn番目のチャープと(n-l)番目のチャープとの間のチャープ間時間TIC-Bを制御するために第2のFMCWトランシーバ704にプログラムされる整数値を表す。従って、L(n)を用いるデジタル制御によって表されるチャープ間時間TIC-Bは、Δ(TIC)×L(n)になる。
【0100】
幾つかの例において、チャープ間時間には、±5nsの間で変化する残留誤差等の残留誤差が存在する。この残留誤差は、ドップラーFFTの後、ノイズフロア(最小ノイズ振幅)をもたらす位相ノイズとみなされ得る。幾つかの例において、このノイズフロアは、搬送波(dBc)に対して約70dBになる。
【0101】
TIC-Bを補正するための第2の例示のアプローチにおいて、第1の例示のアプローチを適用した後に残る残留誤差が、f0Bを調整することによって補正され得る。なお、Δfcの開始周波数における変化がΔfc/SBの時間調整に等しい。一例において、開始周波数は、100Hz又はそれ以下の粒度、SB=10MHz/μsの勾配を用いて、プログラムされ得る。この例において、TIC-Bの等価時間調整の粒度は、100/10el2=10ピコ秒(ps)になる。
【0102】
幾つかの例において、本明細書において説明されるように、基準クロック周波数ドリフトαに対する補償は、
図8のプロセス800の工程804の前に実施される。
【0103】
特許請求の範囲内で、説明した実施例における改変が可能であり、他の実施例が可能である。
【0104】
幾つかの例において、中央処理装置(CPU)等、DSP以外の処理回路が用いられる。
【0105】
幾つかの例において、バーレットビームフォーマー又は最小分散無歪応答(MVDR)ビームフォーマー等のFFT以外のスペクトル推定手法が用いられ、レンジ、レンジドップラー、及び角度スペクトル推定を実施する。
【0106】
幾つかの例において、対応する仮想アンテナ情報を伝達するために、レンジドップラースペクトル情報を提供するだけで充分である。
【0107】
幾つかの例において、第1のFMCWトランシーバ702と第2のFMCWトランシーバ704の両方から仮想アンテナアレイ信号がプロセッサ(共有基準クロック712におけるプロセッサ等)に提供され、角度情報を判定するための処理が行われる。
【0108】
幾つかの例において、第1のFMCWトランシーバ702から第2のFMCWトランシーバ704に仮想アンテナアレイ信号が提供される。
【0109】
幾つかの例において、第1の基準クロック720は、第2のFMCWトランシーバ704とは独立して生成される。幾つかの例において、第2の基準クロックは、第1のFMCWトランシーバ702とは独立して生成される。幾つかの例において、共有基準クロック712は、第1及び第2のFMCWトランシーバ702及び704とは独立して生成される。
【0110】
幾つかの例において、周波数変調連続波(FMCW)レーダが、基準クロック信号を生成するように構成される基準クロックと、FMCWチャープを生成するように構成されるFMCW信号生成器と、FMCW信号を受信し基準クロック信号に応答してFMCW信号をサンプリングしてFMCW信号サンプルを生成するように構成されるアナログデジタル変換器(ADC)と、プロセッサとを含み、プロセッサは、基準クロック信号、開始時間、及び終了時間に応答して周波数ドリフトを判定し、周波数ドリフトに応答して、ADC開始時間、FMCWチャープのそれぞれのものの開始周波数、FMCWチャープのそれぞれのもののチャープ勾配、又はFMCWチャープのそれぞれのものの間のそれぞれのチャープ間時間、のうちの少なくとも1つを判定し、FMCW信号サンプルを受信し、FMCW信号サンプルに応答して仮想アンテナ信号のセットを判定するように構成される。
【0111】
本記載において、「及び/又は」(A、B、及び/又はC等の形式で用いられる場合)という用語は、(a)Aのみ、(b)Bのみ、(c)Cのみ、(d)AとB、(e)AとC、(f)BとC、及び(g)AとBとC等、A、B、Cの任意の組み合わせ又はサブセットを指す。また、本明細書で用いられるように、「A又はBの少なくとも1つ」(又は「A及びBの少なくとも1つ」)という語句は、(a)少なくとも1つのA、(b)少なくとも1つのB、及び(c)少なくとも1つのAと少なくとも1つのBの任意のものを含む実装を指す。
【0112】
或るタスク又は機能を実施するように「構成される」デバイスは、製造時に製造業者によってその機能を実施するように構成され得(例えば、プログラム及び/又は配線接続され)、或いは、製造後にユーザによりそういった機能及び/又は他の付加的な又は代替的な機能を実施するように構成可能(又は再構成可能)であり得る。こういった構成は、デバイスのファームウェア及び/又はソフトウェアプログラミングを介してもよく、又は、ハードウェア構成要素の構成及び/又はレイアウト、デバイスの相互接続、又はそれらの組み合わせを介してもよい。
【0113】
或る構成要素を含むと説明される回路又はデバイスが、代わりに、それらの構成要素に結合されるように適合されて、説明された回路要素又はデバイスを形成してもよい。例えば、複数の機能ブロックを含むとして説明される構造が、代わりに、単一の物理デバイス(例えば、半導体ダイ及び/又は集積回路(IC)パッケージ)内の機能ブロックのみを含んでもよく、機能ブロックの少なくとも幾つかに結合されるように適合されて、製造時又は製造時以降の時点のいずれかで、例えば、エンドユーザ及び/又は第三者によって、説明された構造を形成してもよい。
【0114】
本明細書に記載される回路は、構成要素交換の前に利用可能であった機能性に少なくとも部分的に類似した機能を提供するために、交換された構成要素を含むように再構成可能である。
【0115】
用語「結合する」は、本明細書を通して用いられている。この用語は、本記載の説明と一貫する機能的関係を可能にする、接続、通信、又は信号経路を網羅し得る。例えば、デバイスAが、或るアクションを実施するためにデバイスBを制御するための信号を提供する場合、第1の例において、デバイスAはデバイスBに結合され、或いは第2の例において、介在構成要素CがデバイスAとデバイスBとの間の機能的関係を実質的に変更しない場合に、デバイスAは、介在する構成要素Cを介してデバイスBに結合され、デバイスAによって生成された制御信号を介してデバイスBがデバイスAによって制御されるようにする。
【0116】
説明された例の或る要素が或るICに含まれ得、他の要素がそのICの外部にある一方、他の例において、付加的な又はより少ない特徴がそのICに組み込まれてもよい。また、そのICの外部にあるように示される特徴の幾つか又は全てがそのICに含まれてもよく、及び/又は、ICの内部にあるように示されている幾つかの特徴が、ICの外側で組み込まれてもよい。本明細書で用いられるように、「IC」という用語は、(1)半導体基板内/上に組み込まれる、(2)単一の半導体パッケージに組み込まれる、(3)同じモジュールに組み込まれる、及び/又は、(4)同一のPCB内/上に組み込まれる、一つ又は複数の回路を意味する。
【0117】
別途記載のない限り、或る値の前にある「約」、「およそ」、又は「実質的に」は、記載された値の+/-10パーセントを意味し、その値がゼロの場合はゼロ付近の妥当な値の範囲を意味する。
【国際調査報告】