(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-12-25
(54)【発明の名称】バイオマス由来炭化水素供給原料のアクリル酸塩への転化
(51)【国際特許分類】
C07C 51/15 20060101AFI20251218BHJP
C07C 57/04 20060101ALI20251218BHJP
C07C 11/04 20060101ALI20251218BHJP
C07C 1/24 20060101ALI20251218BHJP
C07C 31/08 20060101ALI20251218BHJP
C07C 29/00 20060101ALI20251218BHJP
B01J 3/00 20060101ALI20251218BHJP
B01J 31/24 20060101ALI20251218BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20251218BHJP
C12P 7/10 20060101ALN20251218BHJP
C12N 9/42 20060101ALN20251218BHJP
C12P 19/14 20060101ALN20251218BHJP
C12P 19/22 20060101ALN20251218BHJP
C12N 1/16 20060101ALN20251218BHJP
【FI】
C07C51/15
C07C57/04
C07C11/04
C07C1/24
C07C31/08
C07C29/00
B01J3/00 B
B01J31/24 Z
C07B61/00 300
C12P7/10
C12N9/42
C12P19/14 A
C12P19/22
C12N1/16 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2025535902
(86)(22)【出願日】2023-12-12
(85)【翻訳文提出日】2025-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2023085337
(87)【国際公開番号】W WO2024132696
(87)【国際公開日】2024-06-27
(32)【優先日】2022-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】ラロシュ カトリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】マグナ リオネル
(72)【発明者】
【氏名】シャーエン ルドヴィク
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4B064AC03
4B064AF02
4B064CA06
4B064CA21
4B064CB07
4B064DA16
4B065AA72X
4B065CA06
4B065CA55
4G169AA06
4G169BA27A
4G169BB02A
4G169BC68A
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BE27B
4G169CB21
4G169DA05
4H006AA02
4H006AB46
4H006AC48
4H006BA25
4H006BA48
4H006BB14
4H006BB15
4H006BB20
4H006BB24
4H006BC10
4H006BC11
4H006BS10
4H006FE11
4H039CA65
4H039CF10
(57)【要約】
本発明は、バイオマスをアクリル酸塩に変換する方法およびプラントに関する。この方法は、以下の工程を順次含む:a)バイオマスを処理してエタノールおよびCO2を生成する工程;b)工程a)の終了時に得られたエタノールを脱水してエチレンを得る工程;c)工程b)の終了時に得られたエチレンおよび工程a)の終了時に得られたCO2からアクリル酸塩を合成する工程。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスをアクリル酸塩に転化するための方法であって、以下の工程を連続的に含む、方法:
a) バイオマスを処理してエタノールおよび二酸化炭素を生じさせる工程;
b) 工程a)の終結の際に得られたエタノールを脱水して、エチレンを得る工程;
c) アクリル酸塩を工程b)の終結の際に得られたエチレンおよび工程a)の終結の際に得られた二酸化炭素から触媒前駆体および溶媒の存在中で合成する工程。
【請求項2】
工程a)が以下の下位工程を含む、請求項1に記載の方法:
a1) バイオマスを前処理して、前処理された基材を得る工程;
a2) 工程a1)の終結の際に得られた前処理済み基材を酵素加水分解または化学加水分解して、酵素加水分解または化学加水分解のマストを得る工程;
a3) 工程a2)の終結の際に得られた酵素加水分解または化学加水分解のマストをアルコール発酵させて、エタノールおよび二酸化炭素を得る工程。
【請求項3】
下位工程a1)を、水蒸気爆発によって酸性条件下に150℃~250℃の温度で、5分~30分の期間にわたって実行する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
下位工程a2)を、酵素加水分解によってトリコデルマ・リーゼイセルラーゼの存在中で実行する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
工程a2)が酵素加水分解である場合に、工程a2)およびa3)を同時に実行する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
工程b)は、以下の下位工程を含む、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法:
b1) 工程a)の終結の際に得られたエタノールを含んでいる気化供給原料を、熱交換器において気化させる工程;前記気化供給原料を、0.1MPa~2.5MPaの圧力で前記気化工程に導入する;気化済み供給原料を生じさせる;
b2) 工程b1)の終結の際に得られた前記気化済み供給原料を過熱して、前記気化済み供給原料を脱水反応温度に適合する入口温度にする;
b3) 工程b2)から得られた前記供給原料を、少なくとも1種の脱水触媒を収容し、脱水反応が行われる少なくとも1基の断熱反応器において脱水する工程;350℃~550℃の入口温度および0.3MPa~1.8MPaの入口圧力で操作する。
【請求項7】
工程c)を、105℃~170℃の温度および1MPa~10MPaの圧力で実行する、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
工程c)を、第二級または第三級のアルコールのアルカノラートから選ばれる塩基の存在中で実行する、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
工程c)を、ニッケル(0)およびパラジウム(0)の錯体から選ばれる遷移金属の金属錯体をベースとする触媒前駆体の存在中で実行する、請求項1~8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
工程c)を、アニソール、シクロヘキシルピロリドン、N,N-ジブチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドから選ばれる溶媒の存在中で実行する、請求項1~9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
工程c)において用いられる溶媒と混和しない反溶媒の存在中でのアクリル酸塩の液体-液体分離の工程d)も含む、請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記反溶媒は、エタノールの脱水の工程b)から少なくとも部分的に生じる水である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
バイオマスは、リグノセルロース系バイオマスであることを特徴とする請求項1~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
バイオマスをアクリル酸塩に転化するための設備であって、請求項1~13のいずれか1つに記載の方法を実行することができ、前記設備は、以下のものを備えている、設備:
- 第1の反応セクション(2);エタノール(3)および二酸化炭素(4)をバイオマス(1)から生じさせることを可能にする;
- 第2の反応セクション(5);エタノール(3)を脱水してエチレン(6)にする;および
- 第3の反応セクション(7);アクリル酸塩(8)をエチレン(6)および二酸化炭素(4)から生じさせることを可能にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス、好ましくはリグノセルロース系バイオマスを処理する方法に関し、アクリル酸塩を単一のバイオベース炭素源から生じさせる一方で同時に、炭素収率を最大にする方法に関する。
【0002】
リグノセルロース系バイオマス発酵法により、エタノールおよびCO2の生成が可能になり、これは、有利には、従来技術に相対して、アクリル酸塩に転化されることができる。
【背景技術】
【0003】
アクリル酸塩は、アクリル酸誘導体であり、とりわけアクリル酸により超吸着性ポリマーを製造するために用いられる。塩基を添加することによってアクリル酸からアクリル酸塩を合成することが可能であり、これと全く同様に、酸を添加することによってアクリル酸塩からアクリル酸を合成することが可能であることが当業者に知られている。
【0004】
現在、アクリル酸は、不均一系触媒の存在中でプロピレンを酸化することにより、工業的に高温で製造されている。しかしながら、プロピレンの比較的高い価格は、アクリル酸の価格に強い影響を及ぼし、アクリル酸を合成するいくつかの方法が開発されており、とりわけ、一酸化炭素から出発する方法がある。特許文献1は、アセチレンおよび一酸化炭素からアクリル酸を合成することを可能にするReppe法に関する。この方法は工業的に実行されているが、プロピレンの酸化を介したアクリル酸の合成は、より経済的に実行可能なまま取り残されている。
【0005】
探求される別の代替案は、二酸化炭素(CO2)から出発するアクリル酸またはその誘導体の合成である。CO2は、安価であるという利点を有し、高付加価値製品の形態でそれをアップグレードすることは、その環境影響を低減させるための魅力的なアプローチである。特許文献2には、エチレンオキシドおよび一酸化炭素を用いてプロピオラクトンの形成を介してアクリル酸を製造する方法が開示されている。一定の実施形態において、プロピオラクトン形成工程は、エチレンオキシドおよびCO2の存在中で実行される。
【0006】
別のアプローチにおいて、特許文献3には、上述のReppe法のコンテクストにおいて一酸化炭素の前駆体としてCO2を用いることが提案されている。
【0007】
最後に、別の代替案は、一酸化炭素還元方法を経ることなく直接的にCO2を用いることである。CO2およびオレフィン、とりわけエチレンからのカルボン酸またはカルボン酸塩の合成に関する多くの文献がある。例として、言及がなされてよいのは、特許文献4~8である。
【0008】
エチレンは、化石資源から水蒸気分解方法を介して生じさせられてよいが、バイオエタノールの脱水によっても生じさせられる。バイオエタノールは、種々のバイオマスからの糖の発酵によって生じさせられることができることが周知である。しかしながら、エタノールを生じさせる発酵が一般に良好な「炭素」収率を有しないのは、その一部がCO2の形態で失われるためである。さらに、「第1世代」(1G)バイオマスから生じさせられたエタノールは、農業食品部門と競合しており、この資源の大部分を温室効果ガスの形態で失うことは、さらに問題である。
【0009】
最後に、リグノセルロース系バイオマスから、とりわけ、乳酸の合成を介してアクリル酸を合成する他の方法もある。前述のルートとは異なり、これらはCO2またはエチレンを用いない。バイオマスを乳酸に転化する工程は、一般にCO2を生じさせないが、乳酸をアクリル酸に脱水する工程は、些細なことではない。
【0010】
本発明は、それ故に、上述の全ての欠点を克服することの方に向けられる。より正確には、本発明の目的は、バイオマス、好ましくは「第2世代」(2G)リグノセルロース系バイオマスを処理して、発酵から生じさせられたエタノールおよびCO2からアクリル酸塩を生じさせるための方法を開発することにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第3023237号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2016/016876号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2018/057439号明細書
【特許文献4】国際公開第2019/053541号
【特許文献5】国際公開第2019/053540号
【特許文献6】国際公開第2015/173296号
【特許文献7】中国特許出願公開第104418737号明細書
【特許文献8】中国特許出願公開第105622400号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の対象)
前述のコンテクストにおいて、本説明の第1の対象は、従来技術の問題を克服し、炭素、特にCO2の形態にあるバイオベース炭素を高付加価値化合物、特にアクリル酸塩にアップグレードすることにある。具体的には、本発明は、従来のアクリル酸塩合成における一定の工程に加えて、またはその代わりに、以下の工程の1つまたは複数を用いて、バイオマスをエタノールおよびCO2に転化し、次にこれらの生成物をアクリル酸塩に転化することを可能にする工程の配置によりアクリル酸塩を生じさせるための方法に関する。
【0013】
第1の態様によると、本発明は、バイオマスをアクリル酸塩に転化するための方法に関し、当該方法は、以下の工程を連続的に含む:
a) バイオマスを処理してエタノールと、二酸化炭素とを生じさせる工程;
b) 工程a)の終結の際に得られたエタノールを脱水して、エチレンを得る工程;
c) アクリル酸塩を工程b)の終結の際に得られたエチレンおよび工程a)の終結の際に得られた二酸化炭素から触媒前駆体および溶媒の存在中で合成する工程。
【0014】
本発明は、バイオマスを発酵させてエタノールにする工程中に形成される副生成物であるCO2のアップグレードをベースとし、場合によっては、本発明による方法の他の工程における脱水工程中に生じさせられた水の再利用をベースとする。本発明は、それ故に、バイオマス、好ましくはリグノセルロース系バイオマス、さらにより優先的には「第2世代」(2G)リグノセルロース系バイオマスからのアクリル酸塩の合成の炭素収率を最大にするのに役立つ一連のユニット操作を提示する。
【0015】
1つまたは複数の実施形態によると、工程a)は、以下の下位工程を含む:
a1) バイオマスを前処理する工程;前処理済み基材を得る;
a2) 工程a1)の終結の際に得られた前処理済み基材の酵素加水分解または化学加水分解の工程;酵素加水分解または化学加水分解のマストを得る;
a3) 工程a2)の終結の際に得られた酵素加水分解または化学加水分解のマストのアルコール発酵の工程;エタノールおよび二酸化炭素を得る。
【0016】
1つまたは複数の実施形態によると、下位工程a1)は、酸性条件下、150℃~250℃の温度および5分~30分の期間の水蒸気爆発によって実行される。
【0017】
1つまたは複数の実施形態によると、下位工程a2)は、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)セルラーゼの存在中での酵素加水分解によって実行される。
【0018】
1つまたは複数の実施形態によると、工程a2)が酵素加水分解である場合に、工程a2)およびa3)は同時に実行される。
【0019】
1つまたは複数の実施形態によると、工程b)は、以下の下位工程を含む:
b1) 工程a)の終結の際に得られたエタノールを含んでいる気化供給原料を熱交換器において気化させる工程;前記気化供給原料は、0.1MPa~2.5MPaの圧力で前記気化工程に導入される;気化した供給原料を生じさせる;
b2) 工程b1)の終結の際に得られた前記気化済み供給原料を過熱する工程;前記気化済み供給原料を脱水反応温度に適合する入口温度にする;
b3) 工程b2)から得られた前記供給原料を、少なくとも1種の脱水触媒を収容しており、脱水反応を行う少なくとも1基の断熱反応器において脱水する工程;350℃~550℃の入口温度および0.3MPa~1.8MPaの入口圧力で操作する。
【0020】
1つまたは複数の実施形態によると、工程c)が実行される際の温度は、105℃~170℃であり、その際の圧力は、1MPa~10MPaである。
【0021】
1つまたは複数の実施形態によると、工程c)は、第二級または第三級のアルコールのアルカノラートから選ばれる塩基の存在中で実行される。
【0022】
1つまたは複数の実施形態によると、工程c)は、ニッケル(0)およびパラジウム(0)の錯体から選ばれる遷移金属の金属錯体をベースとする触媒前駆体の存在中で実行される。
【0023】
1つまたは複数の実施形態によると、工程c)は、アニソール、シクロヘキシルピロリドン、N,N-ジブチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドから選ばれる溶媒の存在中で実行される。
【0024】
1つまたは複数の実施形態によると、前記方法は、工程c)において用いられる溶媒と混和しない反溶媒(counter-solvent)の存在中でのアクリル酸塩の液体-液体分離の工程d)も含む。
【0025】
1つまたは複数の実施形態によると、前記反溶媒は、エタノールの脱水の工程b)から少なくとも部分的に生じた水である。
【0026】
1つまたは複数の実施形態によると、バイオマスは、リグノセルロース系バイオマスである。
【0027】
第2の態様によると、本発明は、バイオマスをアクリル酸塩に転化するための設備に関し、当該設備は、本発明による方法を実行することができ、前記設備は、以下のものを備えている:
- 第1の反応セクション;エタノールおよび二酸化炭素をバイオマスから生じさせることを可能にする;
- 第2の反応セクション;エタノールを脱水してエチレンにする;および
- 第3の反応セクション;アクリル酸塩をエチレンおよび二酸化炭素から生じさせることを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(図面のリスト)
図1は、本発明による方法および設備の1つの実施形態の概略図を示し、アクリル酸塩をバイオマス、好ましくはリグノセルロース系バイオマスから生じさせることを可能にする。
【0029】
(実施形態の説明)
本発明の第1の態様による方法および本発明の第2の態様による設備の実施形態をここで詳細に説明する。以下の詳細な説明において、方法および設備のより深い理解を提供するために、多数の具体的な詳細が開示される。しかしながら、本方法および設備は、これらの具体的な詳細なしで利用されることができることは当業者に明らかであろう。他のケースにおいて、説明が不必要に複雑になるのを避けるために、周知の特徴は詳細には説明されていない。
【0030】
(定義)
本特許出願において、用語「含む(to comprise)」は、「含む(to include)」および「含有する(to contain)」と同義であり(同じことを意味する)、包括的またはオープンエンドであり、記載されていない他の要素を排除しない。用語「含む(to comprise)」は、排他的かつクローズドエンドな用語「からなる(to consist of)」を含むことが理解される。さらに、本説明において、本質的にまたは単独で化合物Aを含んでいる流出物は、最低90重量%、好ましくは最低95重量%、大いに好ましくは最低99重量%の化合物Aを含んでいる流出物に対応する。
【0031】
本特許出願において、化学元素の族は、デフォルトで、CAS分類(CRC Handbook of Chemistry and Physics出版元CRC Press、編集長D. R. Lide、第81版、2000-2001)に従って与えられる。例えば、CAS分類による第VIII族(または第VIIIB族)は、新IUPAC分類による列8、9および10からの金属に対応し、CAS分類による第VIB族は、新IUPAC分類による列6からの金属に対応する。
【0032】
本特許出願において、「バイオマス」は、任意の生物学的に生じさせられた供給原料を指し、好ましくは、サトウキビなどの砂糖産出植物作物から例えば誘導された糖(サッカロース、グルコース、フルクトースおよびスクロース)、ビートの根から誘導された糖、またはデンプン植物から誘導された糖(デンプン)、またはリグノセルロース系バイオマスから誘導された糖、または加水分解セルロースから誘導された糖(グルコース(主に)およびキシロース、ガラクトース)の発酵によって生じさせられ、可変量の水を含有している。好ましくは、バイオマスは、リグノセルロース系バイオマスであり、さらにより優先的には「第2世代」(2G)リグノセルロース系バイオマスである。
【0033】
(詳細な説明)
本発明は、アクリル酸塩を、バイオマス、好ましくはリグノセルロース系バイオマス、さらにより優先的には「第2世代」リグノセルロース系バイオマス(2G)から生じさせることを可能にする一連の反応工程を含んでいる方法として定義されてよい。より特別には、本発明は、バイオマスをアクリル酸塩に転化するための方法であって、以下の工程を連続的に含む、方法に関する:
a) バイオマス、好ましくはリグノセルロース系バイオマスを処理して、エタノールおよび二酸化炭素(CO2)を生じさせる工程;
b) 工程a)の終結の際に得られたエタノールを脱水して、エチレンを得る工程;
c) アクリル酸塩を工程b)の終結の際に得られたエチレンおよび工程a)の終結の際に得られたCO2から合成する工程。
【0034】
さらに、本発明は、
図1に示されるように、本発明による方法を実行するのに適している設備として定義されることもでき、前記設備は、とりわけ、以下のものを備えている:
- 第1の反応セクション(2);エタノール(3)およびCO
2(4)をバイオマス(1)から生じさせることを可能にする;
- 第2の反応セクション(5);エタノール(3)を脱水してエチレン(6)にする;
- 第3の反応セクション(7);アクリル酸塩(8)をエチレン(6)およびCO
2(4)から生じさせることを可能にする。
【0035】
(第1の反応セクション(本発明による方法の工程a)))
第1の反応セクション(2)により、エタノール(3)およびCO2(4)をバイオマス(1)から生じさせることが可能になる。
【0036】
本発明による1つの実施形態において、本方法において用いられるバイオマスは、リグノセルロース系バイオマス、好ましくは「第2世代」リグノセルロース系バイオマスである。広葉樹および穀類わらが最も一般的に用いられる基材である。それらの大部分は、約40%~50%のセルロース、20%~25%のヘミセルロースおよび15%~25%のリグニンからなる。他の資源である、専用の林業作物、アルコール産生植物、砂糖産生植物および穀物産生植物からの残渣、製紙産業からの残渣、ならびにセルロースベースの材料およびリグノセルロースベースの材料の加工からの生成物を用いることができる。
【0037】
本発明による1つの実施形態において、バイオマスをエタノールに転化するための方法は、より特別には以下の下位工程を含む:
a1) バイオマス、好ましくはリグノセルロース系バイオマスを前処理する工程;前処理された基材を得る;
a2) 工程a1)の終結の際に得られた前処理済み基材の酵素加水分解または化学加水分解の工程;酵素加水分解または化学加水分解のマストを得る;
a3) 工程a2)の終結の際に得られた酵素加水分解または化学加水分解のマストのアルコール発酵の工程;エタノールおよびCO2を得る。
【0038】
(物理化学的前処理(工程a1)))
前処理工程a1)により、ヘミセルロース中にモノマーの形態で含有される糖、本質的にペントース、例えばキシロースおよびアラビノース、ならびにヘキソース、例えばガラクトース、マンノースおよびグルコースを含んでいる前処理済み基材の生成が可能になり、リグニンおよびヘミセルロースのマトリクス中に埋め込まれたセルロースのアクセス性が改善される。広範囲の技術が利用可能であり、酸クッキング、アルカリクッキング、蒸気爆発およびオルガノソルブパルピング処理が含まれる。前処理の有効性は、ヘミセルロース回収含有率によって、および加水分解に対するセルロース残渣の感受性によって測定される。マイルドな条件下、水蒸気爆発による酸前処理が最も適しているのは、それらにより、ペントースの完全な回収およびセルロースの加水分解に対する良好なアクセス性が可能になるからである。
【0039】
好ましくは、前処理工程a1)は、水蒸気爆発によって、酸性条件下に、有利には150℃~250℃の温度で、有利には5~30分の期間にわたって実行される。この実施形態において、工程a1)により、ヘミセルロースをモノマーに転化する一方で同時に、ロス、特にフルフラール、主要な糖であるキシロースのロスを最小限に抑えることが可能になる。放出された糖は、次いで、水相中で洗浄することによって抽出される。抽出の終結の際に得られた固体残渣(すなわち、ここではセルロース系残渣とも呼ばれる前処理済み基材)は、セルロースおよびリグニンのみを含有する。
【0040】
(酵素加水分解または化学加水分解(工程a2)))
工程a1)の終結の際に得られた前処理済み基材は、次いで、酸により(すなわち、化学的に)またはセルロース分解酵素および/またはヘミセルロース分解酵素を用いて酵素的にかのいずれかで加水分解される。微生物、例えば、トリコデルマ(Trichoderma)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ペニシリウム(Penicillium)属、もしくはスエヒロタケ(Schizophyllum)属に属する菌類、または例えばクロストリジウム(Clostridium)属に属する嫌気性細菌は、植物を構成するポリマーの全加水分解に適した、特にセルラーゼおよびキシラナーゼを含有しているこれらの酵素を生じさせる。
【0041】
強酸、より特別には硫酸により実行される酸性ルートは、効果的であるが、大量の化学生成物(酸、次いで中和のための塩基)を必要とする。酵素加水分解は、この欠点を有しない;さらに、それは、マイルドな条件下に実行され、効果的である。
【0042】
優先的には、加水分解されたヘミセルロース画分から遊離されたまたは遊離されていない前処理済み基材、および適切な場合にはリグニンは、特殊化された株によって産生されるセルロース分解酵素および/またはヘミセルロース分解酵素により加水分解され、炭素系基材がセルロース系またはリグノセルロース系バイオマスから誘導される場合には、トリコデルマリーゼイセルラーゼが最も効果的であり、最も適切である。加水分解されるべき前処理済み基材は、好ましくは6%~25%、好ましくは10%~20%の乾燥物質の割合で水相中に好適に懸濁され、pHは、4~5.5、好ましくは4.8~5.2に調節され、温度は、40~60℃、好ましくは45~50℃に調節される。加水分解反応は、セルラーゼを添加することによって開始される;通常用いられる量は、前処理済み基材の重量(グラム)当たり分泌タンパク質10mg~30mgである。反応は、一般に、前処理の有効性、セルラーゼ混合物の組成および添加される酵素の量に応じて、15時間~48時間続く。反応は、放出された糖、とりわけグルコースをアッセイすることによってモニターされる。糖溶液(マスト)は、次いで、リグニンから本質的になる非加水分解固体画分からろ過または遠心分離によって分離される;このマストは、エタノール発酵に用いられる。処理工程において加水分解済みヘミセルロースからセルロース画分が遊離された場合、グルコースは、マスト中に含有される主要な糖である。
【0043】
(発酵(工程a3)))
アルコール発酵は、生化学的方法であり、当該方法において、マスト中に含有される糖(炭水化物、主にグルコース)が、空気を含まない液体培地(嫌気性)中で、アルコール、優先的にはエタノールに変換される。糖を発酵させてエタノールを得る工程は、当業者に周知である。
【0044】
アルコール発酵は、優先的には、25℃~32℃の温度で実行される。従来の発酵方法のより完全な説明について、参照がなされてよいのは、Technipによって2006年に出版された教科書“Les Biocarburants, Etat des lieux, perspectives et enjeux du developpement [バイオ燃料の現状、展望、開発課題]” , Daniel Balleriniである。
【0045】
一般に、エタノールは、蒸留によって発酵マストから分離され、残渣は、蒸留廃液から構成される。エタノールの定期的または連続的な蒸留が必要であるのは、エタノールが14%を超えると特定の酵母が「毒」され、生産性が低下する可能性があるためである。蒸留は、後述する脱水方法に適したエタノール供給原料の生成を可能にするように実行される。
【0046】
CO2は、発酵槽出口のところでガスの形態で回収される。本発明の本質的な態様によると、発酵工程の終結の際に得られたCO2は、少なくとも部分的に、本発明による方法のアクリル酸塩合成工程(工程c))に送られる。CO2は、貯蔵前または使用前にコンプレッサによって圧縮されてよい。
【0047】
エタノール発酵残渣は、エタノールからの分離の後に、誘導炭素源として、または酵素生産のための主炭素源として用いられてよい。この残渣の濃度は、好ましくは、セルロース分解および/またはヘミセルロース分解の酵素の生成方法に最良に適した炭素源濃度を得るように調節される。
【0048】
酵素加水分解および発酵の工程は、同時に実行されてよく(同時糖化発酵(SSF)法)、その場合、有利には、得られたアルコールの蒸留および分離の工程が続いて行われる。
【0049】
(第2の反応セクション(本発明による方法の工程b)))
第2の反応セクション(5)により、エチレン(6)を第1の反応セクション(2)から得られたエタノール(3)から生じさせることが可能になる(
図1参照)。
【0050】
第2の反応セクションにより、本発明による方法の工程a)の終結の際に得られたエタノールを脱水してエチレンを形成することが可能にまる。エタノール脱水は、当業者に知られている方法であるが、特許出願US 2013/190 547に記載されているように、本方法のエネルギーコストを削減するために最適化が可能である。
【0051】
有利には、本発明による方法の工程b)において用いられるエタノール供給原料は、濃縮水和エタノール供給原料である。用語「濃縮水和エタノール供給原料」は、エタノールを35重量%以上の質量百分率で含んでいるエタノール供給原料を意味する。好ましくは、前記濃縮エタノール供給原料は、エタノールを供給原料の全重量に相対して35重量%~99.9重量%の質量百分率で含む。好ましくは、前記濃縮エタノール供給原料は、エタノールを供給原料の全重量に相対して35重量%~96重量%の質量百分率で含む。前記濃縮エタノール供給原料は、有利には、水に加えて、エタノール以外のアルコール、例えばメタノール、ブタノールおよび/またはイソペンタノールを10重量%未満、好ましくは5重量%未満の含有率で含み、アルコール以外の酸素ベースの化合物、例えばエーテル、酸、ケトン、アルデヒドおよび/またはエステルを有利には1重量%未満の含有率で含み、有機および無機の窒素および硫黄を有利には0.5重量%未満の含有率で含み、重量百分率は、供給原料の全質量に相対して表される。
【0052】
本発明による1つの実施形態において、工程b)は、以下の下位工程を含む:
b1) 工程a)の終結の際に得られたエタノールを含んでいる気化供給原料を熱交換器において気化させる工程;前記気化供給原料は、前記気化工程に0.1MPa~2.5MPaの圧力で導入される;気化した供給原料を生じさせる;
b2) 工程b1)の終結の際に得られた前記気化した供給原料を過熱する工程;それを脱水反応温度に適合する入口温度にする;
b3) 工程b2)から得られた前記供給原料を、少なくとも1基の断熱反応器において脱水する工程;当該断熱反応器は、少なくとも1種の脱水触媒を収容し、脱水反応が行われ、操作する際の入口温度は、350℃~550℃であり、入口圧力は、0.3MPa~1.8MPaである。
【0053】
本発明の方法の工程b)のコンテクストにおいて用いられるエタノール供給原料は、有利には、前記供給原料の気化の工程b1)の前に前処理工程を経る。前記前処理工程により、供給原料中に含有される不純物を除去して、下流に配置された脱水触媒、特に、窒素を含有している化合物および硫黄を含有している化合物の失活を制限することが可能になる。前記供給原料中に存在する酸素ベースの化合物は、実質的に除去されない。
【0054】
エタノール供給原料の前処理の前記工程は、有利には、当業者に知られている手段、例えば少なくとも1つの樹脂の使用、固体上への好ましくは20℃~60℃の温度での不純物の吸着によって実行される;配列は、20℃~80℃の温度で操作する水素化分解の第1の工程、続いて20℃~80℃の温度で酸性固体に取り込む工程、および/または蒸留の工程を含む。少なくとも1つの樹脂のお使用のケースにおいて、前記樹脂は、好ましくは酸性であり、70℃~200℃の高温で用いられる。前記樹脂の前に、場合によっては、塩基性樹脂があってよい。
【0055】
前処理工程が不純物の固体上への吸着によって実行されるケースにおいて、前記固体は、有利には、モレキュラーシーブ、活性炭、アルミナおよびゼオライトから選ばれる。
【0056】
エタノール供給原料の前処理の前記工程により、有機不純物が除去された精製済みエタノール留分を生じさせ、脱水触媒に適合する不純物のレベルを満たす精製済み供給原料を得ることが可能になる。
【0057】
(供給原料の気化(工程b1)))
本発明による方法の工程a)の終結の際に得られた任意選択に前処理されたエタノールを少なくとも部分的に含んでいる供給原料は、気化供給原料と呼ばれる。前記気化供給原料は、有利には、リサイクル工程b5)に従ってリサイクルされた水の流れまたは本方法に対して外部の水の流れも含む。このケースにおいて、水流の質量比は、リサイクルされたものであろうと本方法に対して外部のものであろうと、前処理済みエタノール流に対して、有利には、1基または複数基の脱水反応器内のエタノール分圧を低下させ、本方法をエチレンに関してより選択的にする目的をもって、1~4である。
【0058】
本発明の1つの実施形態によると、本方法は、前記気化供給原料を気化させて、気化した供給原料を生じさせる工程b1)を含む。前記気化は、本方法に対して内部または外部の流れであってよい熱源との熱交換器における熱交換によって、または直接的な加熱(例えば炉における加熱)または当業者に知られている任意の他の技術によって実行される。
【0059】
前記気化供給原料は、0.1MPa~2.5MPaの圧力および350℃~500℃の入口温度で前記気化工程b1)に導入される。
【0060】
(任意選択の圧縮工程)
好適な実施形態において、前記気化済み供給原料は、圧縮工程における圧縮を経て、圧縮された供給原料を生じさせる。前記圧縮工程は、有利には、当業者に知られている任意のタイプのコンプレッサにおいて実行される。特に、圧縮工程は、有利には、一体型ギヤボックス付きのラジアルコンプレッサタイプのコンプレッサまたは中間冷却なしで直列に接続されたラジアルインペラを有する1基または複数基の送風機を備えるコンプレッサまたは潤滑の有無にかかわらない容積式のコンプレッサにおいて実行される。
【0061】
任意選択の圧縮工程により、前記方法に組み込まれるヒートポンプを形成することが可能になり、本方法からの流れを用いて、工程b1)からの気化供給原料を脱水工程b3)からの流出物との熱交換によって気化させることが可能になる。
【0062】
任意選択の圧縮工程が実行されるケースにおいて、前記気化供給原料は、0.1MPa~1.4MPa、優先的には0.2MPa~0.6MPaの圧力で前記気化工程b1)に導入される。
【0063】
任意選択の圧縮工程の終結の際に圧縮された前記供給原料の圧力は、有利には0.3MPa~1.8MPa、優先的には0.5MPa~1.3MPaである。前記供給原料の出口圧力は、最後の反応器からの流出物の凝縮温度が工程b1)に入る供給原料の気化温度よりも高くなるように十分に高く、これは、工程b1)の実現可能性のための必要条件である。
【0064】
(過熱工程b2))
前記気化済み供給原料は、場合によっては圧縮されて、単相ガスタイプの交換器において、本方法に対して内部または外部の任意の流れとの熱交換のおかげで、好ましくは工程b3)の最後の断熱反応器からの流出物との熱交換によって、加熱されることができる。前記単相ガスタイプ交換器において、前記供給原料は、場合によっては圧縮されて、過熱される。工程b3)の最後の断熱反応器から気体状態で来る流出物と熱交換が実行されるケースにおいて、当該流出物は、凝縮されることなく「脱過熱(desuperheat)」される。
【0065】
任意選択の圧縮工程が実行されるケースにおいて、前記単相ガス交換器は、当業者に知られている技術の交換器であり、圧力降下を最小限にする一方で同時に大きな交換表面積を有することを可能にする。低圧でのこの気体/気体の交換は、交換器の壁を通る熱の流れの密度を低くし(低い伝達係数)、大きな交換表面積を有することを必要とする。さらに、圧力のロスは、任意選択の圧縮工程のコンプレッサの充填を制限するように最小にされなければならない。例えば、この交換器は、Alphalaval(登録商標)によって供給されるPackinox(登録商標)タイプのカレンダ内の加圧プレート交換器であってよい。
【0066】
前記気化済み供給原料は、場合によっては圧縮され、場合によっては単相ガスタイプの前記交換器において加熱されて、次いで、過熱設備、好ましくは炉に導入されて、それを脱水反応の温度に適合する少なくとも1基の断熱反応器における入口温度にする。
【0067】
(脱水工程b3))
本発明の1つの実施形態によると、工程b2)から得られた前記供給原料は、脱水触媒の少なくとも1個の固定床を収容しかつ脱水反応が行われる少なくとも1基の断熱反応器において脱水工程b3)を受ける。
【0068】
脱水工程b3)は、有利には、1基または2基の反応器において実行される。
【0069】
工程b3)が単一の断熱反応器において実行されるケースにおいて、前記圧縮済みかつ任意選択に加熱済みの供給原料は、有利には、350℃~550℃、好ましくは400℃~500℃の入口温度、および0.3MPa~1.8MPa、好ましくは0.4MPa~0.8MPaの入口圧力で前記反応器に導入される。
【0070】
工程b3)における前記断熱反応器からの流出物が有利に有する温度は、270℃~450℃、好ましくは340℃~430℃であり、出口圧力は、0.2MPa~1.6MPa、好ましくは0.3MPa~0.8MPaである。
【0071】
工程b3)が2基の断熱反応器において実行されるケースにおいて、前記圧縮済みかつ任意選択に加熱済みの供給原料は、有利には、350℃~550℃の入口温度、好ましくは370℃~500℃の温度、および0.3MPa~1.8MPa、好ましくは0.4MPa~1.1MPaの入口圧力で第1の反応器に導入される。
【0072】
第1の断熱反応器からの流出物は、有利には、270℃~450℃、好ましくは290℃~390℃の温度、および0.3MPa~1.7MPa、好ましくは0.3MPa~1.0MPaの圧力で前記第1の反応器を出る。
【0073】
前記流出物は、その場合、有利には、第2の断熱反応器への前記流出物の入口温度が350℃~550℃、好ましくは400℃~500℃になるように炉内に配置される。前記流出物は、前記第2の反応器に入る際に、有利には、0.3MPa~1.7MPa、好ましくは0.3MPa~0.9MPaの圧力を有する。
【0074】
第2の断熱反応器からの流出物は、有利には270℃~450℃、好ましくは340℃~430℃の温度で前記第2の断熱反応器を出る。第2の断熱反応器からの前記流出物の出口圧力は、有利には0.2MPa~1.6MPa、好ましくは0.3MPa~0.8MPaである。
【0075】
1基または複数基の反応器の入口温度は、有利には、脱水触媒の失活を回避するために徐々に上昇してよい。
【0076】
本方法の工程b3)の少なくとも1つの断熱反応器において行われる脱水反応は、有利には、0.1~20h-1、好ましくは0.5~15h-1の重量時空間速度(WHSV)で操作する。重量時空間速度は、純粋なエタノール供給原料の質量流量対触媒の質量の比として定義される。
【0077】
工程b3)において用いられる脱水触媒は、当業者に知られている触媒である。
【0078】
前記触媒は、無定形酸触媒、ゼオライト酸触媒、シリカ-アルミナベース触媒、アルミナベース触媒またはシリカ-アルミナベース触媒であってよい。
【0079】
前記触媒は、好ましくは、無定形酸触媒またはゼオライト酸触媒である。
【0080】
工程b3)において用いられる脱水触媒がゼオライト触媒であるケースにおいて、前記触媒が含む少なくとも1種のゼオライトは、8、10または12個の酸素原子を含んでいる細孔開口(8MR、10MRまたは12MR)を少なくとも有するゼオライトから選ばれる。具体的には、ゼオライトの細孔のサイズを、「員環(member ring)」またはMRと呼ばれるゼオライトのチャネルの環部分を形成する酸素原子の数によって規定することが知られている。好ましくは、前記ゼオライト脱水触媒は、MFI、FAU、MOR、FER、SAPO、TON、CHA、EUO、MELおよびBEA構造型から選ばれる構造型を有する少なくとも1種のゼオライトを含む。好ましくは、前記ゼオライト脱水触媒は、MFI構造型のゼオライト、好ましくはZSM-5ゼオライトを含む。
【0081】
本発明による方法の工程b3)において用いられる脱水触媒に用いられるゼオライトは、有利には、当業者に知られている任意の脱アルミニウムまたは脱ケイ素の方法に従って脱アルミニウムまたは脱ケイ素によって改変されてよい。
【0082】
本方法の工程b3)において用いられる脱水触媒または最終触媒に用いられるゼオライトは、有利には、その全体的な酸性度を弱め、その水熱抵抗特性を改善する特性を有する薬剤により改変されてよい。好ましくは、前記ゼオライトまたは前記触媒は、有利にはリンを含み、好ましくはH3PO4の形態で添加され、続いて塩基性前駆体、例えばカルシウムで過剰の酸を中和した後に蒸気処理される。好ましくは、前記ゼオライトは、リンを触媒の全質量に相対して1~4.5重量%、好ましくは1.5~3.1重量%の含有率で含む。
【0083】
好ましくは、工程b3)において用いられる脱水触媒は、特許出願WO 2009/098 262、WO 2009/098 267、WO 2009/098 268またはWO 2009/098 269に記載されている触媒である。
【0084】
工程b3)において用いられる脱水触媒が無定形酸触媒であるケースにおいて、前記触媒は、アルミナ、鉱酸析出によって活性化されたアルミナ、およびシリカアルミナから選ばれる少なくとも1つの多孔質耐火性酸化物を含む。
【0085】
工程b3)において用いられる前記無定形またはゼオライトの脱水触媒は、有利には、バインダとしても知られる少なくとも1つの酸化物型マトリクスを含んでもよい。本発明によると、用語「マトリクス」は、無定形のもしくは結晶化されたマトリクス、または無定形部分および結晶化部分を含んでいるものを意味する。前記マトリクスは、有利には、粘土(例えば、カオリンまたはベントナイトなどの天然粘土からのもの)、マグネシア、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、アルミネート、酸化チタン、酸化ホウ素、ジルコニア、リン酸アルミニウム、リン酸チタン、リン酸ジルコニウムおよび木炭によって形成される群の要素から選ばれ、単独でまたは混合物として用いられる。好ましくは、前記マトリクスは、アルミナ、シリカおよび粘土によって形成される群の要素から選ばれる。
【0086】
工程b3)において用いられる前記脱水触媒は、有利には、種々の形状およびサイズの粒体の形態に成形される。直線状またはねじれ形態の円筒形押出物または多葉形押出物、例えば二つ葉形、三つ葉形または多葉形押出物の形態で有利に用いられるが、場合によっては、粉砕粉末、錠剤、リング、ビーズ、ホイールまたは球体の形態で製造されかつ用いられてよい。好ましくは、前記触媒は、押出物の形態にある。
【0087】
工程b3)において用いられる前記脱水触媒は、有利には、少なくとも1基の反応器において固定床または移動床で用いられる。
【0088】
本発明による方法の工程b3)において、用いられる触媒および操作条件は、エチレン生成を最大にするように選ばれる。本発明による方法の工程b3)において実行される全体的な脱水反応は以下の通りである。
【0089】
【0090】
本発明による方法の工程b)におけるエタノール供給原料の転化率は、90%超、好ましくは95%超、より好ましくは99%超である。
【0091】
90%未満の転化率は、本方法の全体的な収率を低下させる影響を有し、エチレンに転化されていない多量のジエチルエーテルが下流の分離工程において失われる。
【0092】
エタノール供給原料の転化率は、以下の数式によって百分率として定義される。
【0093】
[1-(出るエタノールの毎時の質量/入るエタノールの毎時の質量)]×100
エタノールが出入りする毎時の質量は、従来の様式で、例えばクロマトグラフィーによって測定される。
【0094】
脱水反応が行われる工程b3)は、有利には、1基または2基の反応器において実行される。好適な反応器は、上昇モードまたは下降モードで操作するラジアル反応器である。本発明による方法の工程b3)の間、供給原料の変換は、コーキングおよび/または阻害物質化合物の吸着による脱水触媒の失活が伴われる。脱水触媒は、それ故に、定期的に再生工程を経なければならない。好ましくは、反応器は、スイング反応器とも呼ばれる交互再生モードで用いられ、脱水触媒の反応および再生の段階を交互に行う。この再生処理の目的は、表面および脱水触媒内に存在する有機堆積物ならびに窒素および硫黄を含有する種を燃焼させることにある。任意選択の前処理工程により、塩基性の有機不純物の量、ならびに触媒のサイクル時間を変化させることになるカチオン種の量を減少させることが可能になる。これらの種の除去により、それ故に、触媒の再生回数を制限することが可能になる。
【0095】
場合によっては、例えば、気化供給原料が任意のリサイクル用の水の流れまたは本方法に対して外部の水の任意の流れを含まないケースにおいて、反応器の数は、エタノール脱水反応の進行における中間炉の存在によって反応の吸熱性を補償するために増加させられることができる。
【0096】
工程b3)の最後の断熱反応器からの流出物は、場合によっては、単相ガス型交換器に送られ、当該交換器において、それは、「脱過熱」され、任意選択の圧縮工程からの圧縮された供給原料との熱交換によって凝縮されることはなく、その一部について、過熱される。
【0097】
「脱過熱」済み流出物は、次いで、有利には第2の気体/液体タイプの交換器に送られ、当該交換器において、それは、気化供給原料を気化させる働きをする熱交換によって部分的に凝縮される。
【0098】
(分離工程b4)(任意選択))
本発明による1つの実施形態において、工程b3)からの流出物は、エチレンを含んでいる流出物と、水を含んでいる流出物とに1MPa未満の圧力で分離する工程b4)を経る。
【0099】
工程b3)から生じた前記脱水流出物の分離の工程b4)は、有利には、当業者に知られている任意の方法、例えば気体/液体分離ゾーン、好ましくは気体/液体分離カラムによって実行されてよい。
【0100】
1MPa未満の圧力でエチレンを含んでいる流出物は、有利には圧縮を受ける。前記圧縮により、前記流出物の圧力を、その最終精製に必要な有利には2MPa~4MPaの圧力まで上昇させることが可能になる。
【0101】
好ましくは、工程b4)の終結の際に分離されたエチレンを含んでいる流出物は、工程b3)の少なくとも1基の断熱反応器にリサイクルされない。工程b4)の終結の際に分離されたエチレンを工程b3)の少なくとも1基の断熱反応器内にリサイクルしないことにより、本方法のエチレン選択性は、損なわれない。
【0102】
工程b4)から生じた水を含んでいる流出物の少なくとも一部は、場合により分離工程b4)にリサイクルされる。水を含んでいる流出物の少なくとも一部がリサイクルされるケースにおいて、水を含んでいる流出物の前記一部は、有利には、本方法から生じた冷温流体または流体の助けを借りて冷却され、好ましくは以下に記載される既知の精製方法に従って精製される。
【0103】
(精製工程b5)(任意選択))
本発明による1つの実施形態において、分離工程b4)から生じた水を含んでいる流出物の少なくとも一部は、精製工程b5)を経る。精製工程b5)は、有利には、当業者に知られている任意の精製方法によって実行されてよい。例として、精製工程b5)は、有利には、イオン交換樹脂、モレキュラーシーブ、膜を用いることによって、pHを調整するための化学剤、例えば水酸化ナトリウムまたはアミンを添加することによって、および生成物を安定化するための化学剤、例えば亜硫酸水素塩および界面活性剤から選ばれる重合防止剤を添加することによって実行されてよい。
【0104】
少なくとも1つの精製水の流れおよび少なくとも1つの未転化エタノールの流れが次いで分離される。分離は、有利には、当業者に知られている任意の分離方法によって実施されてよい。例として、分離は、有利には、蒸留、モレキュラーシーブ、膜、蒸気もしくはヒートストリッピングの使用によって、または溶媒、例えばグリコール溶媒中での吸収によって実行されてよい。
【0105】
軽質ガス、好ましくはアセトアルデヒドおよびメタノールを含有している流れが、有利には、分離されてもよい。
【0106】
工程b5)からの精製水流の使用により、エチレンがリサイクルされる前にエチレンの大部分を水から分離することが可能になる。エチレンは、それ故に、本発明による方法において希釈剤から分離され、不活性熱反応希釈剤を方法に用いることを可能にする。そうすることにより、最終的なエチレン収率および選択性を低下させることなく、改善されたエネルギー回収も可能になる。
【0107】
(第3の反応セクション(本発明による方法の工程c)))
第3の反応セクション(7)は、少なくとも1基の反応器を備えており、当該反応器において、工程b)の終結の際に得られたエチレン(6)および工程a)の終結の際に得られたCO2(4)からアクリル酸塩の合成が実行される。前記反応器において、第2の反応セクション(5)からのエチレン(6)、第1の反応セクション(2)からのCO2(4)、触媒前駆体および反応溶媒が接触しているように置かれ、活性種を形成する。用語「活性種」は、触媒前駆体、CO2およびエチレンが接触している置かれたときに形成される種を意味する。アクリル酸塩の合成は、活性種が塩基と接触しているように置かれるときにと完了する。この塩基は、反応溶媒に可溶性であっても不溶性であってもよい。塩基は、固体担体上に担持されてもよい。塩基は、反応器内の反応物と接触するように置いている間に反応器内に既に存在していてよく、または、それは、活性種の形成後の工程において導入されてよい。優先的には、塩基は、溶媒と混和性である。より優先的には、塩基は、他の反応物と同時に反応器に導入される。
【0108】
(塩基)
塩基は、一般に、アルコキシド塩、例えば、フェノキシド塩またはアルカノラート塩である。より優先的には、塩基は、第二級または第三級のアルコール(tert-ブタノール、イソプロパノールなど)のアルカノラートから選ばれる。塩は、一般に、無機カウンターイオン、例えば、Li、Na、CaおよびCsを含有する。塩基カウンターイオンは、イオン交換工程が想定されないならば、最終アクリル酸塩と会合することになるものである。優先的には、塩基は、ナトリウム塩であり、最終アクリラートは、アクリル酸ナトリウムである。
【0109】
(触媒前駆体)
原則として、触媒は遷移金属錯体である。優先的には、ニッケル(0)およびパラジウム(0)の錯体が実施例において用いられる。ニッケル(2)またはパラジウム(2)の塩から出発し、それを還元剤、例えば、H2、Mg、NaまたはZnの存在中で還元して、ニッケル(0)またはパラジウム(0)の錯体を形成することも可能である。優先的には、Pd(0)は、好適な金属であり、優先的には[Pd(PPh3)4]の形態にある。
【0110】
一般に、最も活性なリガンドは、金属中心に配位した少なくとも1つのホスフィンを含んでいる多座リガンドであると思われる。より優先的には、これらは、本質的に(P,P);(P,N);(P,O);(P,カルベン)型の二座リガンドである。さらにより優先的には、(P,P)リガンド、優先的には1,2-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパンおよび1,4-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)ブタンにより最良の結果が得られる。
【0111】
触媒前駆体は、一般に、金属前駆体と1つまたは複数のリガンドとの混合物である。優先的には、触媒前駆体は、二座リガンドの金属前駆体との化学量論的混合物である。金属前駆体は、反応前(ex situ)または反応溶媒中もしくは別の溶媒中での反応中(in situ)に形成されてよい。
【0112】
(溶媒)
溶媒は、芳香族化合物、ハロゲン化芳香族化合物、エーテル、アルコール、アミドおよび尿素から選択されてよい。溶媒は、優先的には、アニソール、シクロヘキシルピロリドン、N,N-ジブチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドから選ばれる。
【0113】
反応は、一般に、1MPa~10MPaの全圧で実行される。CO2/エチレン分圧比は、好ましくは1/10~10/1である。より好ましくは、前記比は、2/8~8/2、さらにより好ましくは2/1~1/2である。反応温度は、好ましくは105℃~170℃、より好ましくは125℃~165℃、より優先的には135℃~155℃である。
【0114】
(分離工程d)(任意選択))
反応の終わりに、アクリル酸塩を分け出す工程を介して進めることが有利である。優先的には、反応溶媒と混和しない反溶媒が反応媒体に添加され、全体が液体-液体分離工程に送られる。さらにより優先的には、反溶媒は、水であり、工程b)におけるエタノールの脱水から部分的に生じたものであってよい。液体-液体分離の出口のところで、2つの流れが回収される。すなわち、以下のものである:
- 第1の流れ;反応溶媒および触媒前駆体を含有している;および
- 第2の流れ;アクリル酸塩および反応に用いられる塩基に対応するアルコールが富化された反溶媒を含有していると言われる。
【0115】
第1の流れは、有利には、反応器に再注入され、痕跡量の水を除去するための任意の乾燥後に、触媒をリサイクルし、アクリル酸塩を生じさせ続ける。
【0116】
第2の流れは、有利には、別の分離工程、優先的には蒸留工程に送られて、反溶媒、アルコールおよびアクリル酸塩が分離される。
【0117】
有利には、反溶媒が富化された流れは、それ故に、液体-液体抽出工程にリサイクルされてよい。
【0118】
有利には、アルコール富化流は、塩基再生工程に送られる。この工程において、アルコールは、強塩基と接触しているように置かれ、塩基を再形成し、その後、反応器に導入される。優先的には、強塩基は、水酸化ナトリウムであり、再生中に生じさせられた水は、場合によっては、反溶媒として用いられてよい。
【0119】
そのなされる用途に応じて、アクリル酸塩は、反溶媒中に濃縮された溶液の形態で回収されるか、または当業者に知られている蒸留、乾燥もしくは結晶化の方法によって単離および精製されるかのいずれかがなされてよい。
【0120】
アクリル酸塩は、その後、酸を添加することによってアクリル酸に転化されてもよい。
【0121】
(実施例)
(1/発酵工程のCO2をアップグレードすることなくグルコースからのアクリル酸ナトリウムの合成の事例(非準拠))
グルコース発酵反応のための式は、C6H12O6→2C2H5OH+2CO2である。その結果、グルコース分子中の炭素の66.7%がエタノールに、33.3%がCO2に転化される。
【0122】
供給原料が170Ktaのグルコースである場合、発酵により、理論的に86.8Ktaのエタノールおよび83KtaのCO2の生成が可能になる。
【0123】
エチレンへのエタノール脱水の収率が97%であると仮定すると、51.2Ktaのエチレン、すなわち最高で172.1Ktaのアクリル酸ナトリウムを生じさせることが可能である。CO2をアクリル酸ナトリウムにアップグレードしない場合、グルコース中の炭素の最高64.7%がアクリル酸ナトリウムにアップグレードされてよい(以下の表1参照)。
【0124】
(2/発酵工程からのCO2のアップグレードを伴うグルコースからのアクリル酸ナトリウムの合成の事例(準拠))
供給原料が170Ktaのグルコースである場合、発酵により、理論的に、86.8Ktaのエタノールおよび83KtaのCO2の生成が可能になる。
【0125】
エチレンへのエタノール脱水の収率が97%であると仮定すると、51.2Ktaのエチレン、すなわち最高で172.1Ktaのアクリル酸ナトリウムを生じさせることが可能である。51.2Ktaのエチレンにより172.1Ktaのアクリル酸ナトリウムを生じさせるために、少なくとも80.5KtaのCO2が必要である。発酵は、それ故に、配列がCO2において自己充足するのに十分なCO2を生じさせる。
【0126】
本発明に記載される配列によってCO2がアクリル酸ナトリウムにアップグレードされると、グルコース中の炭素の最大97%がアクリル酸ナトリウムにアップグレードされてよい(以下の表1参照)。
【0127】
【0128】
【図面の簡単な説明】
【0129】
【
図1】本発明による方法および設備の1つの実施形態の概略図を示し、アクリル酸塩をバイオマス、好ましくはリグノセルロース系バイオマスから生じさせることを可能にする。
【国際調査報告】