(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】
(54)【発明の名称】鉛スラグの処理
(51)【国際特許分類】
【FI】
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】
(86)(22)【出願日】
(85)【翻訳文提出日】
(86)【国際出願番号】
(87)【国際公開番号】
(87)【国際公開日】
(32)【優先日】
(33)【優先権主張国・地域又は機関】
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501094270
【氏名又は名称】ユミコア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】エルケ・ヴァーヘイエン
(72)【発明者】
【氏名】ゼネプ・カグラ・カラ
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク・ヴェルハーゲ
(72)【発明者】
【氏名】ティム・ヴァン・ロンパエイ
【テーマコード(参考)】
【Fターム(参考)】
4K001AA09
4K001AA10
4K001AA19
4K001AA20
4K001AA30
4K001BA12
4K001GA13
4K001GB03
4K001HA09
(57)【要約】
本発明の技術分野は、Pb入り冶金スラグからの金属の回収である。
炭素源の代わりに硫黄及び水素の組合せを使用することにより、スラグから金属、特にPb、Cu及びNiを分離及び回収するための方法が記載されている。炭素を硫黄及び水素で置き換えることにより、本方法のカーボンフットプリントが大幅に減少する。
目的金属は、マット相、合金、鉛地金に選択的に送られるか、又はスラグ相に留まり、このようにしてより効率的な精錬が可能になる。
【特許請求の範囲】
【請求項】
- 製錬炉を用意する工程と、
- 10質量%を超えるPbを含有し、Cu及びFeを更に含有する冶金スラグを用意する工程と、
- 前記スラグ中のPb、Cu、Fe、Ni、及びZnのモル量を決定する工程と、
- 前記スラグを製錬するか、又はすでに溶融形態にある前記スラグを用意し、それによって前記炉内に溶融スラグを得る工程と、
- ある量の硫黄(S)及び水素(H
2)を用意する工程であって、前記スラグ中のPb、Cu、Fe、Ni及びZnの化学量論的モル量で除した(S)、並びに前記スラグ中のPb、Cu及びNiの化学量論的モル量で除した(H
2)の合計が、少なくとも110%かつ最大400%の化学量論的過剰に相当する、工程と、
- 前記溶融スラグに前記量の硫黄及びH
2を供給し、それによって、Pb及びCuが減少したスラグ相、マット相、合金相、鉛地金、SO
2入り排ガス、並びに煙塵を含む溶融浴を得る工程と、
- 前記スラグ相、前記マット相、前記合金、及び前記鉛地金を分離する工程と
を含む、冶金スラグからPb及びCuを除去する方法。
【請求項】
硫黄(S)と水素(H
2)の量が、次の等式に従って計算される、請求項1に記載の方法:
(S)=A*(X
S)、ただし0.05<A<1.0、
(H
2)=B*(X
H2)、ただし0.2<B<3.5、かつ
1.1<(A+B)<4
[式中、(X
S)及び(X
H2)は、以下に従った硫黄及び水素の化学量論的モル量である
(X
S)=1.5*(Pb)+0.75*(Cu)+1.5*(Ni)+0.75*(Zn)+0.875*(Fe)、
(X
H2)=(Pb)+0.5*(Cu)+(Ni)
(式中、(Pb)、(Cu)、(Ni)、(Zn)及び(Fe)は、前記スラグ中のPb、Cu、Ni、Fe及びZnの各金属のモル量である)]。
【請求項】
前記炉が電気炉である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項】
炭素系燃料又は炭素系還元剤が前記炉に添加されない、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項】
前記溶融スラグに供給される硫黄が、硫黄を含む固体ペレットの形態である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項】
前記硫黄を含む固体ペレットが固体スラグを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項】
前記固体スラグが、請求項1に記載の冶金スラグと同じ組成を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項】
硫黄の固体スラグに対する比が4:1~1:2である、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項】
前記Pb及びCuが減少したスラグ相が、6質量%未満、好ましくは3質量%未満のPbを含有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項】
前記Pb及びCuが減少したスラグ相が0.5質量%未満のCuを含有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項】
供給する工程において、前記量の硫黄及びH
2が同時に添加される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項】
硫黄が1本又は複数のランス又は羽口を通じた注入によって供給される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項】
気体状の水素が1本又は複数のランス又は羽口を通じた浸漬注入によって前記溶融浴に供給される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項】
前記SO
2入り排ガスからのSO
2をH
2SO
4に変換する工程を更に含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項】
前記マット相、前記合金及び/又は前記鉛地金から金属を回収する工程を更に含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【】
序論
本発明の技術分野は、Pb入り冶金スラグからの金属の回収である。
【背景技術】
【】
鉱石から、又はCu及びPbを含有する二次材料から金属を抽出する際、第1の工程は、Cuマット及びPb入りスラグを生産する製錬操作であることが多い。有価金属の大部分はCuマットに濃縮されるが、有価金属のかなりの部分がスラグにも濃縮される。そのようなスラグは、Cu、Fe、及びZn等の金属と共に、10質量%以上のPbを含有する場合がある。これらの有価金属、特にCu及びZnを回収するためには、さらなる処理が必要となる。
【】
この目的のために、通常は、スラグを溶鉱炉又は電気アーク炉中で還元条件に置いて、有価金属を含有する金属合金と清浄スラグを生産する。
【】
必要な還元条件は、通常、炭素、炭水化物又は炭化水素を、多くの場合コークスの形態で、或いは液体又は気体の燃料として炉に添加することによって得られる。酸化還元反応は、COの形成をもたらし、最終的にCO2をもたらす。冶金プロセスに関しては、技術がまだ開発段階にあるため、炉の排ガスからCO2を捕集することは特に困難である。したがって、CO2は大気中に放出されることになるが、そのことは、広く認められているCO2の温室効果の観点からは望ましいことではない。
【】
そのようなプロセスは、例えばVanparysらの報告(PbZn 2020: 9th International Symposium on Lead and Zinc Processing. The Minerals, Metals & Materials Series. Springer, Cham.)に記載されている。
【】
炭素系材料の添加に代わり得る方法として、硫黄(S)又は硫黄化合物の使用がある。
【】
CN116024438Aは、Niに富む溶融スラグに石膏、黄鉄鉱、又は硫化ニッケル鉱石の形態の硫黄含有加硫剤を導入して、特に、低品位ニッケルマットを得ることについて記載している。
【】
Tianら(Synergistic recovery of copper, lead and zinc via sulfurization-reduction method from copper smelting slag; Transactions of Nonferrous Metals Society of China 33、3847-3859頁、2023)は、黄鉄鉱とコークスを使用してスラグ、マット及び気相を形成することによる、銅製錬スラグからのCu、Pb及びZnの回収について記載している。コークスは、高原子価のFe3O4を低原子価のFeO酸化物に還元するために使用される。
【】
CN113046550は、黄鉄鉱、原炭及びニッケル/銅精鉱の混合物の使用による、電気炉スラグ中の減少金属の還元について記載している。唯一の還元剤はコークスである。
【】
CN113862489は、還元炉中の多段階プロセスについて記載しており、そのプロセスは、予備還元セクションと深還元セクションの2つのセクションに分かれている。鉛精鉱の予備還元プロセスでは、硫化亜鉛、硫化鉄及び硫化銅等の金属硫化物、又は金属硫化物と硫黄との混合物を使用して、液体の金属鉛、高濃度の二酸化硫黄ガス、及び鉛減少スラグを生産する。予備還元段階の終了時には、液体の鉛と残留スラグが分離される。少量の未還元の鉛を含有する残留スラグは、メタン又は水性ガスを使用した複数の例で実証されているように、深還元段階に入る。
【】
Yuanら(Powder Technology 230、63-66頁、2012)は、PbOへの硫黄の添加について教示している。この混合物を低温で強く共粉砕すると、Pbの一部がPbSに変換される。この硫化物は、浮遊選鉱を使用して分離することができる。このプロセスは、ガラス等の、Pbが酸化物として存在しているPb入り廃棄物に適用することができる。
【】
Hanら(Selective Sulfidation of Lead Smelter Slag with Sulfur; Metal Mater Trans B 47、344-354頁、2016)は、0.5~5%のPb、いくらかのZn及びFeを含有するスラグの硫化焙焼について示している。不純物としてのFeを避けるために、より従来的な黄鉄鉱に代えて、硫黄が使用される。SO2の発生を抑えるために炭素が添加される。これは、COとCO2の形成をもたらす。初期焙焼温度を約400℃に制限して、硫黄の沸点未満に維持している。1200℃までの最終焙焼温度が適用されるが、その間材料バルクは固体のまま維持される。焙焼温度を高くすることによって結晶成長の利点がもたらされ、結果として、引き続くプロセス工程での浮遊選鉱によるZnSの分離がより効率的になる。
【】
炭素、炭水化物又は炭化水素の添加に代わり得る別の方法として、水素(H2)の使用に基づいたものがある。
【】
US2022389538A1は、二次原料からの銅の回収について記載しており、ここでは水素を化学的還元剤としてではなく、熱を発生させるための可燃物として使用している。
【】
Rukiniら(Lead Recovery From PbO Using Hydrogen as a Reducing Agent; Metal Mater Trans B 54、996-1016頁、2023)は、350から800℃の間の温度で純PbOペレットに水素を添加して、PbOの表面上に金属鉛の液滴の形成をもたらすことについて記載している。還元剤として水素のみが使用された。
【】
WO2008014538A1は、還元条件下での上部浸漬ランス注入を利用してスラグ中の鉛を金属鉛に還元するための、硫化物含有物質の注入について記載している。この硫化物含有物質は、精鉱、硫化物含有ドロス、黄鉄鉱又はこれらの組合せの形態を取ることができる。このプロセスで使用される燃料は、それが微粉炭等の固体の場合はキャリアガス中に同伴させてもよく、又は適切な炭化水素の気体若しくは液体でもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【】
【特許文献】中国特許出願公開第116024438号明細書
【特許文献】中国特許出願公開第113046550号明細書
【特許文献】中国特許出願公開第113862489号明細書
【特許文献】米国特許出願公開第2020/22389538号明細書
【特許文献】国際公開第2008/014538号
【非特許文献】
【】
【非特許文献】Vanparysら、PbZn 2020: 9th International Symposium on Lead and Zinc Processing. The Minerals, Metals & Materials Series. Springer, Cham.
【非特許文献】Tianら、Synergistic recovery of copper, lead and zinc via sulfurization-reduction method from copper smelting slag; Transactions of Nonferrous Metals Society of China 33、3847-3859頁、2023
【非特許文献】Yuanら(Powder Technology 230、63-66頁、2012)
【非特許文献】Hanら、Selective Sulfidation of Lead Smelter Slag with Sulfur; Metal Mater Trans B 47、344-354頁、2016
【非特許文献】Rukiniら、Lead Recovery From PbO Using Hydrogen as a Reducing Agent; Metal Mater Trans B 54、996-1016頁、2023
【非特許文献】Environ. Sci. Technol. 2002、36、13、3020-3024頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【】
既知の乾式冶金プロセスの多くでは、炭素、炭水化物又は炭化水素を利用して、重金属が減少した清浄スラグを生じる還元条件を得ているように思われる。これは、必然的にCO2の形成ももたらす。
【】
本発明の一目的は、炭素源の代わりに硫黄と水素の組合せを使用することにより、スラグから金属、特にPb、Cu及びNiを分離及び回収するための代替スキームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【】
炭素を硫黄源及び水素で置き換えることによって、CO2ではなく、それぞれSO2及びH2Oが形成される。CO2に比べて、H2Oは無害な気体であってそれ自体で放出することができ、SO2は捕集が比較的容易である。標準的な工業プロセスを使用して、SO2をSO3に、次いで硫酸に変換することができる。硫酸は、例えば肥料の製造等に広く使用される反応剤である。排ガス中のSO2濃度が十分に高い場合には、SO2を硫黄に変換することもできる。例えば、CaS-SO2反応(Environ. Sci. Technol. 2002、36、13、3020-3024頁)を使用して、環境に優しいプロセスが開発されている。このように、本スキームの直接的な効果は、工業的回収プロセスの脱炭素化にある。
【】
この新しい方法では、いわゆるマット、すなわち金属硫化物によって形成される硫化物含有相が、いわゆる合金、すなわち少なくとも1種が金属である2種以上の元素の混合物、及び鉛地金、すなわちやはり合金ではあるが質量の大半にPbを含有するものと組み合わさって形成される。それによってCu、Pb及びFeを別々の相により良く分離することが可能になり、従来の炭素系還元の使用及びその結果としてのCO2の形成が排除される。
【】
第1の態様は、
- 製錬炉を用意する工程と、
- 10質量%を超えるPbを含有し、Cu及びFeを更に含有する冶金スラグを用意する工程と、
- スラグ中のPb、Cu、Fe、Ni、及びZnのモル量を決定する工程と、
- スラグを製錬するか、又はすでに溶融形態にあるスラグを用意し、それによって炉内に溶融スラグを得る工程と、
- ある量の硫黄(S)及び水素(H2)を用意する工程であって、スラグ中のPb、Cu、Fe、Ni及びZnの化学量論的モル量で除した(S)、並びにスラグ中のPb、Cu及びNiの化学量論的モル量で除した(H2)の合計が、少なくとも110%かつ最大400%の化学量論的過剰に相当する、工程と、
- 溶融スラグに前記量の硫黄及びH2を供給し、それによって、Pb及びCuが減少したスラグ相、マット相、合金相、鉛地金、SO2入り排ガス、並びに煙塵を含む溶融浴を得る工程と、
- スラグ相、マット相、合金、及び鉛地金を分離する工程と
を含む、冶金スラグからPb及びCuを除去する方法について記載する。
【】
冶金スラグは、通常は工業的な製錬操作及び精錬操作から生じる。そのようなスラグ中で最も顕著な金属はPbである。10から50%の間の量が一般的である。
【】
そのような冶金スラグ中のPbの量が50%を超えることは、上流プロセスの効率を低下させることになるので、あまり一般的ではない。量が10%未満であると、スラグの粘度が過度に高くなり、したがって追加の融剤を必要とすることになる。
【】
別の態様では、冶金スラグは10~50質量%、又は10~40%、又は20~40%のPbを含有する。
【】
本発明による冶金スラグは、通常は他の工業的プロセスから生じるものであり、その中では有価な銅の大部分がすでに除去されている。したがって、別の態様では、冶金スラグは1~15質量%のCuを含有する。銅の除去のための専用のプロセスであっても、通常は幾分かの銅をスラグ中に残すことになる。少なくとも1%のCuを有していれば、銅の単離のための専用の工程が経済的に価値のあるものとなる。
【】
Pb、Cu及びFeに加えて、Ni、As、Bi、Sb、Sn及びZn等の他の金属が冶金スラグ中に存在することがある。したがって、別の態様では、冶金スラグはNi、As、Bi、Sb、Sn及びZnのうちの1種又は複数を更に含有する。これらの各質量パーセンテージは、通常は前述のPbの量よりもはるかに小さい。Ni、Fe及びZn以外の全部は、本方法に対してわずかしか又は全く影響を与えない微量不純物と考えられる。本方法の開始時点で使用される冶金スラグは、「出発スラグ」と呼ぶことができる。
【】
Feは通常、出発スラグ中に少なくとも4質量%かつ最大20質量%の量で存在することになる。より一般的な量は、4~15%、さらには4~10%である。一般には、Feは決定的に重要ではないと見なされており、通常はその任意の酸化物形態でスラグ相に濃縮されても、又は通常はFeSとしてマット相に濃縮されてもよい。鉄の量が20%を超えることは、上流の回収プロセスの効率を低下させることになるので、あまり好ましくない。
【】
Niは、出発スラグ中に少なくとも0.2質量%かつ最大10質量%の量で存在する場合がある。
【】
Znは、出発スラグ中に少なくとも2質量%かつ最大15質量%の量で存在する場合がある。より一般的な量は2~10%、さらには2~7%である。Znは硫化物を形成するだけでなく、スラグから煙となって出て煙塵に濃縮されることもあり、その場合には下流での望ましくない凝縮をもたらし得るため、多量のZnはあまり望ましくない。
【】
したがって、別の態様では、冶金スラグはNiとZnのうち1種又は両方を更に含有する。
【】
本方法の重要な点は、出発スラグ中の金属、特にPbと、硫黄とが反応し、それによって硫化物が形成されることにある。いくつかの選択された金属について、関連する化学量論的硫化反応は以下の通りである。
2PbO+3S → 2PbS+SO2
2Cu2O+3S → 2Cu2S+SO2
2Fe2O3+7S → 4FeS+3SO2
2NiO+3S → 2 NiS+SO2
2ZnO+3S → 2 ZnS+SO2
【】
本発明による硫黄の化学量論量(XS)は、次の等式を使用して計算されることが見出されている。
(XS)=1.5*(Pb)+0.75*(Cu)+1.5*(Ni)+0.75*(Zn)+0.875*(Fe)
ここで(Pb)、(Cu)、(Ni)、(Zn)及び(Fe)は、それぞれ出発スラグ中に存在するPb、Cu、Ni、Zn及びFeのモル量を表す。
【】
Pb、Cu、Ni、Zn及びFeは、硫黄と反応して硫化物を形成することが知られており、硫化物は通常はマット相に濃縮される。Fe及びZnは、相当な量で存在する場合には、出発スラグに添加すべき硫黄の量を見積もる際には考慮に入れるべきである。通常は、選択された条件下では、完全に変換されることはなく、これらの金属は一部が酸化物相としてスラグ中に存在したままである。これらの2つの金属に対する化学量論量の約50%に相当する硫黄を添加すれば、本方法では十分であることが観察されている。
【】
As、Bi、Sb及び/又はSnも硫黄と反応し得るが、これらの金属は、本方法の全体的な化学量論量に対して非常に限定的にしか、又は全く影響しないようなこの種のスラグ中では、微量不純物と考えられる。
【】
水素は通常、出発スラグ由来の金属酸化物を合金相又は鉛地金相等の金属相に還元する。いくつかの選択された金属について、関連する化学量論的還元反応は以下の通りである。
PbO+H2 → Pb+H2O
Cu2O+H2 → 2Cu+H2O
NiO+H2 → Ni+H2O
【】
本発明による水素の化学量論量(XH2)は、次の等式を使用して計算できることが見出されている。
(XH2)=(Pb)+0.5*(Cu)+(Ni)
ここで、(Pb)、(Cu)及び(Ni)は、それぞれ出発スラグ中に存在するPb、Cu、及びNiのモル量を表す。
【】
Pbの酸化物、Cuの酸化物及びNiの酸化物は、水素と反応して、通常は合金又は鉛地金相に濃縮される金属を形成することが知られている。
【】
Fe(通常はスラグ中に酸化物の形態で存在する)と水素との反応は低く、本方法の全体的な化学量論量に対して非常に限定的にしか、又は全く影響しない。
【】
本方法の重要な点は、出発スラグ中の金属酸化物が硫黄及び水素の両方と反応し、それによりそれぞれ金属硫化物と金属を形成することにある。これにより、異なる金属を別々のはっきりと異なる相により良く分離することができるようになる。通常、選択された条件下では、CuはCu2Sとして優先的にマット相に移行する一方、Pbは金属Pbとして合金又は鉛地金相を好む。
【】
別の態様では、硫黄(S)と水素(H2)の量は、次の等式に従って計算される:
(S)=A*(XS)、ただし0.05<A<1.0、
(H2)=B*(XH2)、ただし0.2<B<3.5、かつ
1.1<(A+B)<4
[式中、(XS)及び(XH2)は、以下に従った硫黄及び水素の化学量論的モル量である
(XS)=1.5*(Pb)+0.75*(Cu)+1.5*(Ni)+0.75*(Zn)+0.875*(Fe)、
(XH2)=(Pb)+0.5*(Cu)+(Ni)
(式中、(Pb)、(Cu)、(Ni)、(Zn)及び(Fe)は、スラグ中のPb、Cu、Ni、Fe及びZnの各金属のモル量である)]。
【】
前述の各金属以外に、冶金スラグはスラグ形成剤も含有する。典型的なスラグ形成剤は、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、酸化カルシウム(CaO)又は酸化マグネシウム(MgO)である。本発明の冶金スラグ中では、そのようなスラグ形成剤は、通常は以下の範囲で存在し得る。すなわち、
シリカが10~50質量%、
アルミナが0~20質量%、
酸化カルシウムが5~60質量%、及び
酸化マグネシウムが0~10質量%である。
【】
本発明による冶金スラグは、スラグ形成剤の組合せを合計で25~60質量%、好ましくは25~40質量%含有し得る。25~40%のスラグ形成剤を含有するスラグでは、硫黄又は水素との反応が適切に進行し、またスラグ、合金、鉛地金及びマット相間の相分離が容易になる。スラグ形成剤の量が25%未満に低下すると、金属濃度が過剰になることになり、反対にスラグ形成剤の量が60%を超えるか、さらには70%を超えるまでに増加すると、全体的な組成が希釈されることになって、金属回収が不経済なものとなる。
【】
冶金スラグは一般に、スラグ形成剤と、通常は酸化物の形態の金属との、かなり複雑な混合物を含有している。更に、スラグを生産するために使用された供給材料の相違、及び/又は適用されたプロセス条件に大きく依存して、P2O5、Na2O又はBaO等の他の不純物が存在する場合がある。
【】
別の態様では、第1の態様による冶金スラグと共に、他のPb、Cu及び/又はNi含有材料を炉に添加することができる。その場合、これらの各量は、本方法のための硫黄及び水素の量を決定する際に、同様に考慮に入れなければならない。
【】
硫黄とは、元素状硫黄、及び硫黄それ自体以外の任意の化学元素と化合した硫黄を意味する。前者としては、八硫黄(S8)が挙げられる。これは元素状硫黄の主要な工業的形態である。後者としては、硫化鉄、硫化亜鉛、硫化銅、硫化ニッケル、硫化鉛、黄鉄鉱、及び黄銅鉱等の金属硫化物が挙げられる。
【】
Pb入りスラグ中の様々な金属の量は、前もって既知の分析方法によって決定される。これに基づいて、硫黄及び水素の化学量論量を、それぞれの硫化反応及び還元反応から容易に導出することができる。
【】
硫黄と溶融出発スラグ中の金属酸化物との反応速度は、限定的である。この反応速度は、とりわけ温度、及び導入された硫黄と溶融スラグ中の金属酸化物との混合の緊密さに依存する。一部の硫黄は未反応のまま溶融スラグから逸出し、溶融浴上部、又はガス清浄系統内の遠く下流に存在する空気と共にSO2を形成する可能性がある。
【】
水素と溶融出発スラグ中の金属酸化物との反応速度は、限定的である。溶融スラグ浴中での水素ガスの浮力が大きいため、反応時間の短さ、又はガスと溶融スラグとの混合不足が原因で、一部の水素が未反応のまま逸出することになる。
【】
A+Bの合計は、110%以上、120%以上、130%以上、又は140%以上等の化学量論的過剰を表すべきものである。「A」又は「B」は、硫黄の量及び水素の量を決定するための前述の式を指す。
【】
A+Bの合計を最大400%に、好ましくは最大380%に、より好ましくは最大360%に、最も好ましくは最大340%に制限することが好ましい。工業的な慣行では、硫黄と水素のコスト自体のために、またより大きな排ガス流を回避するために、スラグに供給される硫黄と水素の過剰を制限することが推奨される。
【】
本実施例は実験室規模のものだけであり、工業的な条件下のものではない。硫黄及び/又は水素を節約するための、並びに結果的にコストも下げるための好ましい工業的条件の最適化が進行中である。
【】
したがって、AとBの合計の好ましい範囲は、120~200%である。
【】
別の態様では、Aは5%から100%の間、好ましくは10%から90%の間、より好ましくは10%から80%の間である。
【】
別の態様では、Bは20%から350%の間、好ましくは40%から300%の間、より好ましくは50%から300%の間である。
【】
スラグ相からの合金及びマット相の分離は、通常は両方の相がまだ液体であるときに、選択的タッピングによって行われる。合金からの鉛地金の分離は、引き続き、鉛地金がまだ液体でありながら合金がすでに固化した状態にまで下がった温度で行うことができる。この段階的な固化は、800℃付近で生じる。
【】
別の態様では、炉は電気炉である。電気を熱源に用いることにより、炭素系燃料の必要性を軽減するか又は無くすことができる。グリーン電力を利用できると仮定すれば、カーボンフットプリントを、そのように顕著に低く維持することができる。
【】
別の態様では、炉はバス製錬炉又は水平転炉である。バス製錬炉は上吹き浸漬ランス(TSL:Top Submerged Lance)炉であってもよい。これらの型の炉は、硫黄及び水素の注入に、場合によりキャリアガスを使用しての注入に、特に適している。
【】
別の態様では、炭素系燃料又は炭素系還元剤が炉に添加されない。
【】
炭素系燃料又は炭素系還元剤の炉への添加を避けることが好ましい。添加によってCO2の形成がもたらされることになるが、これは工業的回収プロセスの脱炭素化を目指す場合に望ましくない。更に、CO2はSO2よりも捕集がより困難であるだけでなく、SO2を希釈することによってSO2の回収と再利用をより困難にすることにもなる。
【】
したがって、炭素系燃料又は炭素系還元剤を避けることは、特に工業的設備の中でプロセスの全体的なカーボンフットプリントを削減するという明確な利点を有する。
【】
燃料とは、プロセス自体の反応に参加するのではなく、高温プロセスに必要な熱を供給するために燃焼される任意の物質を指す。
【】
一般に、乾式冶金システムにおいては、酸素分圧pO2は、金属、スラグ及び気相の酸化状態と熱力学的安定性に影響を及ぼす。本方法では、pO2は、10-14~10-8の範囲内であることが好ましく、10-12~10-9の範囲内であることがより好ましい。
【】
空気等の大量の酸素入り気体を溶融浴中に注入することは、硫黄及び水素がスラグ中の金属酸化物とではなく酸素と直接反応することになるため、避けることが好ましい。更に、そのような注入は、対処すべき排ガスを大量に作り出すことになる。
【】
スラグ中の金属(金属酸化物)との反応に必要のない、過剰の硫黄又は水素は、本方法における熱源として役立てることができる。
【】
窒素等の非反応性の気体をスラグ中に注入してもよい。その効果は、PbS及びZnS等のより揮発性の化学種を、マット又は合金相の代わりに煙塵に濃縮できることにある。この効果は、これらの元素を煙塵から回収するために利用できる下流の精錬プロセスに応じて、望ましい場合も望ましくない場合もある。煙塵中にPbをより多く集めるためには、例えば窒素ガスの場合は、1キログラムのPbあたり0.1~5Nm3の気流が適用される。
【】
したがって、別の態様では、溶融スラグに硫黄及び水素を供給する工程中又はその後に、溶融浴中に非反応性の気体を注入する。これによって、煙塵中のPbの量が増加する。流速に応じて、煙塵中にPbの大部分を集めることさえも可能である。
【】
煙塵に濃縮されるPbの量があればその分、マット、合金又は鉛地金相に濃縮され得るPbの量が減少する。
【】
スラグの融点付近の低い操作温度が、できるだけ炉内の耐火物の劣化を抑えるためには好ましい。好ましくは、操作温度は、スラグをその融点よりも過度に高温に加熱することを避けるように選択する。通常は、炉の操作温度は1150~1450℃であり、好ましくは1180~1230℃である。
【】
別の態様では、当該量の硫黄(S)は、液体状の元素状硫黄として供給される。液体の硫黄を使用することの利点は、工業的環境におけるその取扱いと輸送の技術が確立されていることにある。液体硫黄は溶融スラグ中に直接注入することができ、プロセスの速度論に好ましい影響を有する。
【】
別の態様では、硫黄は1本又は複数のランス又は羽口を通じた注入によって供給される。
【】
ランスとは、溶融浴中に上方から浸漬される管状体と理解される。羽口とは、炉の壁又は底部を貫通する管状体で、溶融浴の液面の下方又は上方にあり、溶融浴中に気体、液体又は固体を注入するための手段を備えたものと理解される。これには多孔質プラグ又は類似の構造物も含まれる。
【】
固体の硫黄を、元素状硫黄又は硫黄化合物として、例えば顆粒の形態で添加することの不利益な点は、取扱い時に硫黄粉塵が発生することである。硫黄粉塵は潜在的な爆発の危険を有する。更に、硫黄粉塵は、輸送系統の詰まり等の操作上の困難をもたらすことになる。
【】
これらの問題に対する、可能性のある解決策として、硫黄を含む固体ペレット又はブリケットの使用がある。これは、例えばオーバーヘッドベルトコンベアを通じて、場合により他の供給材料又は融剤と共に前述の粉塵の発生を避けながら、ペレット化した硫黄を炉の中に上部から供給できるという利点を有する。
【】
したがって、別の態様では、溶融スラグに供給される硫黄は、硫黄を含む固体ペレット又はブリケットの形態である。
【】
好ましい一実施形態では、硫黄を、第1の態様と同じ又は同様の組成の固体の冶金スラグと混合し、次いで加圧成形する。加圧成形によってペレットの相対密度が上昇し、炉の溶融浴内での硫黄と金属との混合が改善される。これにより、硫黄とこれらの金属との全体的な反応性が高まり、本方法がより効率的になる。
【】
したがって、別の態様では、硫黄を含む固体ペレットは、固体スラグを更に含む。
【】
別の態様では、ペレットを作製するために使用される固体スラグは、第1の態様による冶金スラグと同じ組成を有する。
【】
この混合物中の硫黄のスラグに対する比を、4:1、3:1、2:1、1:1、及び1:2と種々変えて試験した。2:1の比が好ましい。
【】
別の態様では、前記ペレット中の硫黄のスラグに対する比は4:1~1:2であり、好ましくは3:1~1:1であり、より好ましくは2.5:1~1.5:1である。
【】
別の態様では、気体状の水素を、1本又は複数のランス又は羽口を通じた浸漬注入によって溶融浴に供給する。
【】
本方法において、固体又は液体ではなく、例えば水素等の気体を使用するか、又はキャリアガスの量を増やすと、煙塵の量の増加をもたらす可能性がある。
【】
別の態様では、供給する工程で、当該量の硫黄及びH2が同時に添加される方法を記載している。これにより、マット、合金及び鉛地金の所望の液相の直接の形成が引き起こされる。
【】
別の態様では、先に水素を添加し、その後硫黄を添加する。
【】
別の態様では、先に硫黄を添加し、その後水素を添加する。
【】
水素と硫黄を添加する順序は、例えば(相当な)量のPb若しくはZn(PbS若しくはZnSとして)が煙塵に移行するか、又は1種若しくは複数の出力相を例えばタッピングなどにより(完全に若しくは部分的に)取り除くことによって、溶融浴から材料を非可逆的に取り除かない限り、出力相に対してはあまり重要ではない。
【】
本発明の状況においては、硫黄と水素の同時添加が好ましい。硫黄を先に添加する設定では、特に比較的多量の硫黄を用いて作業する場合、より多くのPb及び/又はZnがこれらの揮発性の硫化物の形態で溶融浴から逸出する可能性がある。これは水素を先に添加する設定では通常起こらないことになり、したがって水素を先に添加することもやはり好ましい。
【】
すべての液相は、好ましくは、硫黄と水素の両方との反応が許容されてしまうまで、共に保持するべきである。
【】
硫黄と水素の添加後にスラグ中にPbが残存するのは、硫黄と水素の添加が不十分であること、溶融スラグ中のPbと硫黄及び水素との間の反応挙動が効果的でないこと、反応速度が好ましくないこと、並びに/又はスラグを任意の他の得られた相から分離する工程でのデカンテーションが不十分なことに起因する可能性がある。後者の場合、PbS又はPbへの変換が成功したにもかかわらず、最終的/金属減耗スラグの中にPb含有マット又は合金液滴が残り、そのため、全体的にスラグ中のPb含有量が予想よりも高まると思われる。
【】
別の態様では、Pb及びCuが減少したスラグ相は、6質量%未満、好ましくは3質量%未満のPbを含有する。
【】
技術的には、更にスラグを清浄化してスラグ中のPbの限界値を大きく低下させることが可能である。しかし、そのためには付加的な精錬操作が必要になり、現時点では経済的ではない。
【】
別の態様では、Pb及びCuが減少したスラグ相は0.5質量%未満のCuを含有する。
【】
銅の値がこのように低いことは、この有価金属がマット相等の他の液相の1つにほぼ定量的に移行していることを示しており、そこから銅をより容易に精錬し、回収することができる。
【】
別の態様では、本方法は、SO2入り排ガスからのSO2をH2SO4に変換する工程を更に含む。現代の工業プラントは、硫酸を生産するための変換ユニットを備えていることが多い。H2SO4は、例えば、有価化するか、又は酸浸出操作で使用することができる。
【】
別の態様では、本方法は、マット相、合金及び/又は鉛地金から金属を回収する工程を更に含む。3種類の液相の形成は、Pbを鉛地金中に、Cuをマット相中に及びNiを合金中に濃縮するための手段として非常に有益である。
【】
目的金属は、したがってマット相、合金、鉛地金に選択的に送られるか、又はスラグ相に留まり、このようにして、より効率的な精錬が可能になる。
【】
マット相、合金及び鉛地金の、下流での精錬プロセスは既知であり、本スキームと組み合わせることができる。
【】
マット相を精錬するための1つの可能性は、マット相を転炉プロセス等の酸化プロセスに供することである。別の方法は、特に低品位マットの場合、マット相を銅製錬に供することである。これらのプロセスによって、その後で従来法での処理が可能な高品位マット又は金属相と、上述のように捕集及び/又は処理可能なSO2が生産される。
【】
例えば、浸出又は浮遊選鉱を使用する等の、他の精錬スキームも可能である。得られたPbS及びCu2S含有マット相のさらなる精錬過程で発生するSO2も、回収してH2SO4に変換することができる。
【】
鉛地金に対する下流での精錬は、従来の鉛精錬プロセスであり、不純物元素の順次除去及び/又は有価化を含む。これらは乾式冶金プロセスと湿式冶金プロセスの組合せであってもよい。鉛地金中に高パーセンテージのPbを有する場合、鉛地金の精錬が簡略化される。これは、上流での製錬プロセスにおいて、合金相形成を通じてNiを前もって除去し、またマット相形成を通じてCuを除去することの利点を例示している。
【】
下流での合金相の精錬は、湿式冶金精錬工程及び/又は乾式冶金精錬工程を経由して行うことができる。
【】
煙塵も湿式冶金処理ユニットを経由して処理するか、又は供給物として再循環することができる。このようにして溶融浴から又は供給中にもれ出した金属を回収することができる。
【】
非鉄乾式冶金に関連するいくつかの用語を更に定義する。
【】
スラグ:スラグは製錬プロセス中に形成される副生成物である。スラグは通常、金属酸化物と二酸化ケイ素の混合物を含むが、金属硫化物及び元素状金属を含有することもある。スラグは通常、抽出される金属よりも低密度で、そのため例えばタッピングによって溶融金属から分離し除去することができる。
【】
マット:マットは製錬中に生産される金属硫化物の溶融混合物である。マットは通常、金属、例えば銅の抽出における中間生成物である。マットは所望の金属(又は複数の金属)を硫化物の形態で含有し、その金属はさらなる処理を通じて純粋な形態にその後変換される。
【】
合金:合金とは、少なくとも1種が金属である、2種以上の元素の混合物である。乾式冶金では、合金は、異なる金属を組み合わせた製錬プロセス中に形成されることが多い。
【】
地金:地金とは棒又はインゴットに鋳造された、バルク形態の貴金属、通常は金又は銀、を指す。乾式冶金では、地金は、金属から不純物を除去する精錬プロセスの後で得られる製品である。鉛地金は地金の特定の例である。
【】
元素の「大部分」とは、プロセスに入るその元素の量の少なくとも50質量%、好ましくは80%を意味する。
【発明を実施するための形態】
【】
以下の実施例で本発明を説明する。
【実施例】
【】
実施例において「(XS)」、「(XH2)」、「A」又は「B」に言及した場合、これは硫黄の量及び水素の量を決定するための前述の式を指す。
【】
(実施例1)
Table 1(表1)に示されている組成の出発スラグ2000gを用意した。この出発スラグの化学量論的モル量(XS)及び(XH2)は、それぞれ9.6mol S(硫黄308g)及び3.8mol H2(水素7.6g)である。1.9mol S (A=0.2)及び7mol H2 (B=1.84)を出発スラグに添加し、A+Bの合計は2.04となった。出発スラグと元素状硫黄の両方を含有するペレットを調製した。この混合物中の硫黄のスラグに対する比は2:1であった。この目的のために、出発スラグ30gを粉砕し、平均粒径2mm未満に篩分けした。出発スラグを元素状硫黄と混合し、ブリケット混合物を調製した。この混合物からペレットを加圧成形した。
【】
出発スラグ1970gを入れた1.5Lのアルミナ坩堝を誘導炉内に設置し、窒素雰囲気下、650℃/hで温度1250℃まで加熱した。次いで、硫黄ペレットを添加した。スラグ中にH2を60L/hの流速で吹き込んだ。試料を定期的に採取してスラグ中のPb含有率%を測定した。プロセス終了時には、最終スラグ1191g、マット108g、合金88g及び鉛地金265gが存在した。定期試料を採取してスラグ組成の変化を測定した。これはプロセスの終点を決定するために必要である。実験中に6回分の中間試料を採取し、これは合計で試料150.9g分であった。実験室規模のプロセスで、わずか2000gの出発スラグを用いての作業では、この試料量は相当の金属の損失となる。工業的規模では、これほどの損失にはならない。この実施例では煙塵は捕集されない。煙塵は主にPb、Zn及びSを含有することになる。各相の組成をTable 1(表1)に示す。Table 1(表1)には、選択された金属のみが列挙されている。合金は通常様々な量のAs、Sb及びSnを更に含有する。他のすべての金属は、本方法にわずかしか又は全く影響しない微量不純物と考えられる。金属はそれらの酸化物の形態で存在しており、酸素含有量は計算に含まれていないため、スラグの組成は、通常は合計して100%にはならない。
【】
【】
結論:本実施例は、1.9mol S及び7mol H2の添加後では、最終スラグのPb含有量が2.6%であったことを示している。スラグ及びマットの次に、還元剤であるH2の存在によって合金及び鉛地金も形成された。出発スラグ中に存在したPbの5.6%がスラグ相に留まり、5.1%がマット相に移行し、2.7%が合金相に移行し、43.5%が鉛地金相に移行した。出発スラグ中に存在したCuの69%がマットに移行し、出発スラグ中に存在したNiの56%が合金に移行した。Pb、Cu及びNiの残りは、定期試料中及び煙塵中に見出され得る。
【】
(実施例2)
Table 2(表2)に示されている組成の出発スラグ2000gを用意した。この出発スラグの化学量論的モル量(XS)及び(XH2)は、それぞれ9.6mol S(硫黄308g)及び3.6mol H2(水素7.2g)である。7.5mol S (A=0.78)及び9.5mol H2 (B=2.62)を出発スラグに添加し、A+Bの合計は3.4となった。
【】
出発スラグと元素状硫黄の両方を含有するペレットを調製した。この混合物中の硫黄のスラグに対する比は2:1であった。この目的のために、出発スラグ120gを粉砕し、平均粒径2mm未満に篩分けした。出発スラグを元素状硫黄と混合し、ブリケット混合物を調製した。この混合物からペレットを加圧成形した。
【】
出発スラグ1880gを入れた1.5Lのアルミナ坩堝を誘導炉内に設置し、窒素雰囲気下、650℃/hで温度1250℃まで加熱した。次いで、硫黄ペレットを添加した。スラグ中にH2を60L/hの流速で吹き込んだ。試料を定期的に採取してスラグ中のPb含有率%を測定した。プロセス終了時には、最終スラグ1077g、マット60g、合金81g及び鉛地金425gが存在した。定期試料を採取してスラグ組成の変化を測定した。これはプロセスの終点を決定するために必要である。実験中に7回分の中間試料を採取し、これは合計で試料152.8g分であった。実験室規模のプロセスで、わずか2000gの出発スラグを用いての作業では、この試料量は相当の金属の損失となる。工業的規模では、これほどの損失にはならない。この実施例では煙塵は捕集されない。煙塵は主にPb、Zn及びSを含有することになる。各相の組成をTable 2(表2)に示す。Table 2(表2)には、選択された金属のみが列挙されている。合金は通常様々な量のAs、Sb及びSnを更に含有する。金属はそれらの酸化物の形態で存在しており、酸素含有量は計算に含まれていないため、スラグの組成は、通常は合計して100%にはならない。他のすべての金属は、本方法にわずかしか又は全く影響しない微量不純物と考えられる。
【】
【】
結論:本実施例は、7.5mol S及び9.5mol H2の添加後では、最終スラグのPb含有量が1.9%であったことを示している。スラグ及びマットの次に、還元剤であるH2の存在によって合金及び鉛地金も形成された。出発スラグ中に存在したPbの3.7%がスラグ相に留まり、2%がマット相に移行し、2.8%が合金相に移行し、68%が鉛地金相に移行した。出発スラグ中に存在したNiの35%が合金に移行し、わずか3.6%が最終スラグ中に、また1.6%がマット中に見出された。出発スラグ中に存在したCuは、マット、合金及び鉛地金にほぼ同量ずつ移行した。H2の添加量を増すと、Cuを合金及び鉛地金相にシフトさせるように思われる。Pb、Cu及びNiの残りは、定期試料中及び煙塵中に見出され得る。
【】
(実施例3)
Table 3(表3)に示されている組成の出発スラグ2000gを用意した。この出発スラグの化学量論的モル量(XS)及び(XH2)は、それぞれ9.6mol S(硫黄308g)及び4.3mol H2(水素8.6g)である。3.7mol S (A=0.39)を黄鉄鉱として出発スラグに添加し、それと9.5mol H2 (B=2.21)で、A+Bの合計は2.6となった。
【】
出発スラグと黄鉄鉱の両方を含有するペレットを調製した。この混合物中の黄鉄鉱のスラグに対する比は2:1であった。この目的のために、出発スラグ120gを粉砕し、平均粒径2mm未満に篩分けした。出発スラグを黄鉄鉱と混合し、ブリケット混合物を調製した。この混合物からペレットを加圧成形した。出発スラグ1880gを入れた1.5Lのアルミナ坩堝を誘導炉内に設置し、窒素雰囲気下、650℃/hで温度1250℃まで加熱した。次いで、黄鉄鉱ペレットを添加した。スラグ中にH2を60L/hの流速で吹き込んだ。試料を定期的に採取してスラグ中のPb含有率%を測定した。
【】
【】
結論:以下の金属がスラグ中で顕著に還元されたことが実証されたように思われる。すなわち、Pbが29.3%から2.1%に、Cuが5.6%から0.7%に、Niが1.6%から0.1%になった。同様に、マット相、合金及び鉛地金が形成されたが、より詳細には分析しなかった。これは、工業的設備内では、黄鉄鉱で元素状硫黄を置き換えられる可能性があることを実証している。工業的規模でのそのようなプロセスのための好ましい条件を画定するための、さらなる実験作業が進行中である。
【】
(実施例4(比較例))
Table 4(表4)に示されている組成の出発スラグ2000gを用意した。この出発スラグの化学量論的モル量(XS)は、9.6mol S(硫黄308g)である。24.4mol S (A=2.55)を出発スラグに添加する。
【】
出発スラグと元素状硫黄の両方を含有するペレットを調製した。この混合物中の硫黄のスラグに対する比は2:1であった。この目的のために、出発スラグ390gを粉砕し、2mm未満に篩分けした。出発スラグを元素状硫黄と混合し、ブリケット混合物を調製した。この混合物からペレットを加圧成形した。
【】
出発スラグ1610gを入れた1.5Lのアルミナ坩堝を誘導炉内に設置し、アルゴン雰囲気下、650℃/hで温度1250℃まで加熱した。次いで、硫黄-スラグペレットを、3時間かけて一定の間隔で添加した。試料を定期的に採取してスラグ中のPb%を測定した。プロセス終了時には、最終スラグ1000g及びマット519gが存在した。両相の組成をTable 4(表4)に示す。定期試料を採取してスラグ組成の変化を測定した。これはプロセスの終点を決定するために必要である。実験中に10回分の中間試料を採取し、これは合計で試料251.2g分であった。実験室規模のプロセスで、わずか2000gの出発スラグを用いての作業では、この試料量は相当の金属の損失となる。工業的規模では、これほどの損失にはならない。この実施例では煙塵は捕集されない。煙塵は主にPb、Zn及びSを含有することになる。
【】
Table 4(表4)には選択された金属のみが列挙されている。他のすべての金属は、本方法にわずかしか又は全く影響しない微量不純物と考えられる。金属はそれらの酸化物の形態で存在しており、酸素含有量は計算に含まれていないため、スラグの組成は、通常は合計して100%にはならない。
【】
【】
結論:本実施例は、24.4mol Sの添加後では、最終スラグのPb含有量が5.6%であったことを示している。スラグの次に、Sを唯一の還元剤として使用して、マットだけが形成された。出発スラグ中に存在したPbの10%がスラグ相に留まり、48.2%がマット相に移行した。残りのPbは定期試料中に27.4~5.6wt.%の組成範囲で、また煙塵中に見出され得る。出発スラグ中に存在したCuの97%がマット相に移行した。出発スラグ中に存在したNiの90%がマット相に移行した。Pb、Cu及びNiの残りは、定期試料中及び煙塵中に見出され得る。
【】
(実施例5(比較例))
Table 5(表5)に示されている組成の出発スラグ2000gを用意した。この出発スラグの化学量論的モル量(XH2)は、3.7mol H2(水素7.4g)である。11mol H2 (B=2.99)を出発スラグに添加する。
【】
出発スラグ2000gを入れた1.5Lのアルミナ坩堝を誘導炉内に設置し、窒素雰囲気下、650℃/hで温度1250℃まで加熱した。次いで、スラグ中にH2を60L/hの流速で吹き込んだ。試料を定期的に採取してスラグ中のPb含有率%を測定した。プロセス終了時には、最終スラグ1216g、合金101g及び鉛地金285gが存在した。定期試料を採取してスラグ組成の変化を測定した。これはプロセスの終点を決定するために必要である。実験中に7回分の中間試料を採取し、これは合計で試料159.2g分であった。実験室規模のプロセスで、わずか2000gの出発スラグを用いての作業では、この試料量は相当の金属の損失となる。工業的規模では、これほどの損失にはならない。この実施例では煙塵は捕集されない。煙塵は主にPb、Zn及びSを含有することになる。各相の組成をTable 5(表5)に示す。Table 5(表5)には、選択された金属のみが列挙されている。合金は通常様々な量のAs、Sb及びSnを更に含有する。他のすべての金属は、本方法にわずかしか又は全く影響しない微量不純物と考えられる。金属はそれらの酸化物の形態で存在しており、酸素含有量は計算に含まれていないため、スラグの組成は、通常は合計して100%にはならない。
【】
【】
結論:本実施例は、11mol H2の添加後では、最終スラグのPb含有量が2.3%であったことを示している。スラグの次に、H2を唯一の還元剤として使用して、合金及び鉛地金だけが形成された。Pbは合金及び鉛地金相に移行する。出発スラグ中に存在したPbの5.2%がスラグ相に留まり、4.2%が合金相に移行し、47%が鉛地金相に移行した。出発スラグ中に存在したCuの51%が合金相に移行する。出発スラグ中に存在したNiの54%が合金相に移行する。Pb、Cu及びNiの残りは、定期試料中及び煙塵中に見出され得る。
【手続補正書】
【提出日】
【手続補正】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項】
- 製錬炉を用意する工程と、
- 10質量%を超えるPbを含有し、Cu及びFeを更に含有する冶金スラグを用意する工程と、
- 前記スラグ中のPb、Cu、Fe、Ni、及びZnのモル量を決定する工程と、
- 前記スラグを製錬するか、又はすでに溶融形態にある前記スラグを用意し、それによって前記炉内に溶融スラグを得る工程と、
- ある量の硫黄(S)及び水素(H
2)を用意する工程であって、前記スラグ中のPb、Cu、Fe、Ni及びZnの化学量論的モル量で除した(S)、並びに前記スラグ中のPb、Cu及びNiの化学量論的モル量で除した(H
2)の合計が、少なくとも110%かつ最大400%の化学量論的過剰に相当する、工程と、
- 前記溶融スラグに前記量の硫黄及びH
2を供給し、それによって、Pb及びCuが減少したスラグ相、マット相、合金相、鉛地金、SO
2入り排ガス、並びに煙塵を含む溶融浴を得る工程と、
- 前記スラグ相、前記マット相、前記合金、及び前記鉛地金を分離する工程と
を含む、冶金スラグからPb及びCuを除去する方法。
【請求項】
硫黄(S)と水素(H
2)の量が、次の等式に従って計算される、請求項1に記載の方法:
(S)=A*(X
S)、ただし0.05<A<1.0、
(H
2)=B*(X
H2)、ただし0.2<B<3.5、かつ
1.1<(A+B)<4
[式中、(X
S)及び(X
H2)は、以下に従った硫黄及び水素の化学量論的モル量である
(X
S)=1.5*(Pb)+0.75*(Cu)+1.5*(Ni)+0.75*(Zn)+0.875*(Fe)、
(X
H2)=(Pb)+0.5*(Cu)+(Ni)
(式中、(Pb)、(Cu)、(Ni)、(Zn)及び(Fe)は、前記スラグ中のPb、Cu、Ni、Fe及びZnの各金属のモル量である)]。
【請求項】
前記炉が電気炉である、請求項
1に記載の方法。
【請求項】
炭素系燃料又は炭素系還元剤が前記炉に添加されない、請求項
1に記載の方法。
【請求項】
前記溶融スラグに供給される硫黄が、硫黄を含む固体ペレットの形態である、請求項
1に記載の方法。
【請求項】
前記硫黄を含む固体ペレットが固体スラグを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項】
前記固体スラグが、請求項1に記載の冶金スラグと同じ組成を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項】
硫黄の固体スラグに対する比が4:1~1:2である、請求項
6に記載の方法。
【請求項】
前記Pb及びCuが減少したスラグ相が、6質量%未
満のPbを含有する、請求項
1に記載の方法。
【請求項】
前記Pb及びCuが減少したスラグ相が0.5質量%未満のCuを含有する、請求項
1に記載の方法。
【請求項】
供給する工程において、前記量の硫黄及びH
2が同時に添加される、請求項
1に記載の方法。
【請求項】
硫黄が1本又は複数のランス又は羽口を通じた注入によって供給される、請求項
1に記載の方法。
【請求項】
気体状の水素が1本又は複数のランス又は羽口を通じた浸漬注入によって前記溶融浴に供給される、請求項
1に記載の方法。
【請求項】
前記SO
2入り排ガスからのSO
2をH
2SO
4に変換する工程を更に含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項】
前記マット相、前記合金及び/又は前記鉛地金から金属を回収する工程を更に含む、請求項
1に記載の方法。
【国際調査報告】