(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2013年9月12日
【発行日】2015年7月30日
(54)【発明の名称】導電ワイヤー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 5/08 20060101AFI20150703BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20150703BHJP
H01B 13/02 20060101ALI20150703BHJP
【FI】
H01B5/08
H01B13/00 501Z
H01B13/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】13
【出願番号】特願2014-503758(P2014-503758)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2013年2月21日
(31)【優先権主張番号】特願2012-53339(P2012-53339)
(32)【優先日】2012年3月9日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000210986
【氏名又は名称】中央発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】林田 高章
(72)【発明者】
【氏名】石原 和明
(72)【発明者】
【氏名】平田 雄一
【テーマコード(参考)】
5G307
5G325
【Fターム(参考)】
5G307EA01
5G307EF10
5G325BA13
(57)【要約】
本発明の導電ワイヤーは、電気ケーブルに使用される。本発明の導電ワイヤーは、導電性材料で形成された複数本の素線を有し、かつ、該素線が撚られて構成された複数本のストランドを含み、前記複数本のストランドが撚り合わせられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料で形成された複数本の素線を有し、かつ、該素線が撚られて構成された複数本のストランドを含み、
前記複数本のストランドが撚り合わせられていることを特徴とする電気ケーブル用の導電ワイヤー。
【請求項2】
前記複数本の素線は、「ラング撚り」にて撚られていることを特徴とする請求項1に記載の導電ワイヤー。
【請求項3】
前記複数本の素線は、「7×W19」にて撚られていることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電ワイヤー。
【請求項4】
前記導電性材料は、銅であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の導電ワイヤー。
【請求項5】
前記導電性材料は、C1100であることを特徴とする請求項4に記載の導電ワイヤー。
【請求項6】
前記導電性材料は、アルミニウムであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の導電ワイヤー。
【請求項7】
前記導電性材料は、A6063であることを特徴とする請求項6に記載の導電ワイヤー。
【請求項8】
熱処理が施されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の導電ワイヤー。
【請求項9】
請求項8に記載の導電ワイヤーの製造方法であって、
素材線を引き伸ばして前記素線とする伸線工程と、
前記伸線工程の終了後、複数本の前記素線を撚る撚り工程と、を備え、
前記熱処理を、前記伸線工程の終了後、前記撚り工程の前に施すことを特徴とする導電ワイヤーの製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の導電ワイヤーの製造方法であって、
素材線を引き伸ばして前記素線とする伸線工程と、
前記伸線工程の終了後、複数本の前記素線を撚る撚り工程と、を備え、
前記熱処理を、前記撚り工程の終了後に施すことを特徴とする導電ワイヤーの製造方法。
【請求項11】
少なくとも1つの請求項1から8の何れか1項に記載の導電ワイヤーと、
前記少なくとも1つの導電ワイヤーを覆う管状の絶縁体と、
を備えている電線。
【請求項12】
複数の請求項11に記載の電線と、
前記電線を覆う管状の被覆部材と、
を備えている電気ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本国際出願は、2012年3月9日に日本国特許庁に出願された日本国特許出願第2012−53339号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2012−53339号の全内容を参照により本国際出願に援用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、導電性材料で形成された複数本の素線を含んで構成された電気ケーブル用の導電ワイヤーに関するものである。
【背景技術】
【0003】
電気ケーブル用の導電ワイヤーは、通常、特許文献1に示されているように、複数本の素線を単純に束ねて構成されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−253109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示される通常の導電ワイヤーでは、十分な機械的強度を得ることが困難である。特に、導電ワイヤーを曲げる行為と伸ばす行為とが繰り返される使用状況においては、当該導電ワイヤーが早期に損傷してしまうおそれが非常に高い。
【0006】
本発明の一側面においては、機械的強度及び耐久性を向上させた導電ワイヤーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる導電ワイヤーは、電気ケーブルに用いられるものである。この導電ワイヤーは、導電性材料で形成された複数本の素線を有し、かつ、該素線が撚られて構成された複数本のストランドを含み、該複数本のストランドが撚り合わせられた構成を有している。
【0008】
これにより、本発明では、ワイヤロープ等と同様に素線に発生する曲げ応力を緩和することができるので、導電ワイヤーの機械的強度及び耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る電気ケーブル1の構造を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る電気ケーブル1の断面図である。
【
図3A-3B】
図3Aは本発明の実施形態に係る導電ワイヤー3Aの断面図であり、
図3Bは本発明の実施形態に係るストランド3Dの断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る導電ワイヤー3Aの製造工程を示す図である。
【
図5】各種の導電ワイヤーの耐久試験結果を示すグラフである。
【
図6】耐久試験を行った各導電ワイヤーの仕様を示す図表である。
【符号の説明】
【0010】
1…電気ケーブル
3…電線
3A…導体(導電ワイヤー)
3B…絶縁体
3C…素線
3D…ストランド
5…シース
7…芯材
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態を以下に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定はされない。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的手段や構造等に限定されるものではない。
【0012】
本実施形態は、電動車両用の電気ケーブルに本発明に係る導電ワイヤーの一構成例を適用したものである。電動車両とは、走行用の電動モータを有する車両をいう。具体的には、電動車両とは、例えば、駆動源として電動モータのみを有する電気自動車や電動モータと内燃機関とを有するプラグ・イン・ハイブリッド自動車等をいう。
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
1.電気ケーブルの構造
本実施形態に係る電気ケーブル1は、
図1に示すように、複数本の電線3、及びこれら電線3を覆うように収納する管状のシース5(被覆部材)等を有して構成されている。
【0014】
電線3は、導電性を有する材質で形成された導体3A、及び導体3Aを覆う管状の絶縁体3Bを有して構成されている。なお、絶縁体3Bは、ゴム又はエラストマー等の電気絶縁性を有する樹脂で形成されている。因みに、当該樹脂とは、具体的には、例えばポリ塩化ビニル(PVC)等である。
【0015】
そして、導体3Aは導電ワイヤーにて構成されている。そこで、以下、導体3Aを導電ワイヤー3Aという。なお、導電ワイヤー3Aの詳細は後述する。
また、複数本(本実施形態では、4本)の電線3は、
図2に示すように、紐状の芯材7を中心に撚られている。つまり、電気ケーブル1は、複数本の電線3を、芯材7を中心としてひねってからみ合わせられて構成されている。因みに、本実施形態に係る複数本の電線3は、S方向(右向き)に撚られているが、Z方向(左向き)に撚ってもよい。
【0016】
芯材7は、ジュート(麻)又はポリプロピレン等を紐状にしたものである。そして、シース5の材料を加硫ゴムとした場合には、芯材7の材料をジュートとすることが望ましく、一方、シース5の材料をエラストマー樹脂等とした場合には、芯材7の材料をポリプロピレンとすることが望ましい。
【0017】
シース5は、絶縁体3Bの硬度より小さい硬度を有する材料にて構成されている。具体的には、シース5はゴム又はエラストマー樹脂(本実施形態では、軟質PVCもしくはPVCエラストマー)製である。絶縁体3Bの硬度は、デュロ硬度Aにて75度である。シース5の硬度は、デュロ硬度Aにて60度以下(本実施形態では、50度)である。なお、デュロ硬度とは、「JIS K 6253」に準拠したデュロメータによって測定した硬度をいう。
【0018】
そして、シース5の内周面側、又は絶縁体3Bの外周面側、つまりシース5と絶縁体3Bとの間には、シース5と各電線3との間に発生する摩擦力を低減するための潤滑材(図示せず)が付与されている。なお、本実施形態に係る潤滑材は、タルク等の固体潤滑材である。
【0019】
以上で説明した電気ケーブル1は、本発明の電気ケーブルの一実施形態であり、また、電線3は、本発明の電線の一実施形態である。但し、本発明の電気ケーブル及び電線は、上述の実施形態に必ずしも限定はされない。
【0020】
2.導電ワイヤーの構造
導電ワイヤー3Aは、
図3A及び
図3Bに示すように、複数本の素線3Cが撚られて構成された複数本のストランド3Dが撚り合わせられたワイヤー状の配索体である。そして、素線3Cは、アルミニウム(例えば、JIS規格によるA6063)、又は銅(例えば、JIS規格によるC1100)等の導電性材料製である。
【0021】
なお、本実施形態に係る素線3Cの直径寸法は、2平方ミリメートル当たりの素線本数が80本以上(本実施形態では、133本)となるように設定されている。
また、ストランド3Dは、複数本の素線3Cが撚られて構成されている。そして、その撚り構成は「7×W19」であり、撚り方式は「ラング撚り」である。
【0022】
なお、本実施形態に係るストランド3Dは、「ラング撚り」のうち平行撚りのウォーリントン形である。本実施形態に係るストランド3Dの撚り方向は、S方向(右向き)であるが、本発明はこれに限定されず、Z方向(左向き)に撚ってもよい。因みに、撚りピッチは、5〜6mm程度である。
【0023】
そして、複数本のストランド3Dは、普通撚り又はラング撚りにて撚られている。なお、この撚りの撚り方向は、S方向(右向き)及びZ方向(左向き)のいずれであってもよい。
【0024】
因みに、本明細書における「撚り方向」や「ラング撚り」等の撚り方式等の用語、並びに「7×W19」等の撚り構成は、「JIS G 3525 3.定義」に従う。なお、これらの用語は、ワイヤロープの構成を表す用語として通常用いられるものである。撚り構成についても、ワイヤロープの構成を表すものとして通常用いられるものである。
【0025】
3.導電ワイヤー及び電線の製造方法
図4は、導電ワイヤー3Aの製造方法の概略を示す工程表である。なお、以下に記載された「S1」等の符号は、
図4中に示された工程を示すものである。
【0026】
先ず、素材線が常温(冷間)にて引き伸ばされて素線3Cが形成された後(伸線工程:S1)、素線3Cに焼鈍等の熱処理が施される(熱処理工程:S3)。
そして、熱処理が終了した複数本の素線3Cが撚られてストランド3Dが形成された後(第1撚り工程:S5)、複数本のストランド3Dが撚られて導電ワイヤー3Aが形成される(第2撚り工程:S7)。
【0027】
次に、導電ワイヤー3Aの外周を覆う絶縁体3Bが形成され(被覆工程:S9)、電線3が完成する。
なお、
図4では、熱処理工程(S3)を、伸線工程(S1)の終了後、第1撚り工程(S5)の前に実行したが、熱処理工程(S3)を、第1撚り工程(S5)又は第2撚り工程(S7)の終了後に実行してもよい。
【0028】
4.本発明に係る導電ワイヤーの性質
<機械的強度及び耐久性の向上>
本発明に係る導電ワイヤー3Aは、複数本の素線3Cが撚られて構成された複数本のストランド3Dが撚り合わせられていることを特徴としている。したがって、ワイヤロープ等と同様に素線3Cに発生する曲げ応力を緩和することができるので、導電ワイヤー3Aの機械的強度及び耐久性を向上させることができる。
【0029】
ところで、本発明は、複数本の素線3Cが撚られて構成された複数本のストランド3Dが撚り合わせられていることを特徴とする導電ワイヤー3Aである。したがって、素線3Cの撚り方式及び素線3Cの撚り構成は不問である。また、素線3Cは、導電性材料であれば十分であり、例えば銅であってもよい。また、熱処理の有無も不問である。
【0030】
つまり、素線3Cの撚り方式は、撚りの方向(S撚り又はZ撚り)を問わず、「普通撚り」及び「ラング撚り」のいずれであってもよく、その際、「交差撚り」及び「平行撚り」のいずれであってもよい。また、「平行撚り」にあっては、「シール形」、「ウォーリントン形」、「フィラー形」及び「ウォーリントンシール形」等のいずれの形式であってもよい。
【0031】
また、撚り構成は、例えば「1×91」、「1×127」、「1×169」、「7×19」、「7×7×7」及び「19×19」等であってもよい。
<導電ワイヤーの耐久性試験>
図5は、導電ワイヤー3Aの耐久試験結果を示すグラフである。すなわち、このグラフは、導電ワイヤー3Aを無負荷の状態で、当該導電ワイヤー3Aの曲げ伸ばしを繰り返した場合において、導電ワイヤー3Aが破断したときの繰り返し回数(耐久回数)と曲げの曲率との関係を示している。なお、「無負荷」とは、導電ワイヤー3Aの曲げ伸ばしを繰り返す際に当該導電ワイヤー3Aが弛まない程度の負荷をいう。
【0032】
また、
図5では、それぞれ異なる構成を有する複数種類の導電ワイヤーA〜Iについて上述の耐久試験を行った結果を示す。
図5のグラフ中、A〜Gは本発明の技術的範囲に属する導電ワイヤー3Aについての試験結果であり、H及びIは、現時点において市場で入手可能な一般市販品についての試験結果である。なお、
図6は、各導電ワイヤーA〜Iの仕様を示す図表である。
【0033】
そして、
図5から明らかなように、本発明にかかる導電ワイヤー3Aは、同一の曲率であれば一般市販品に比べて耐久回数が向上する。また、同一の耐久回数であれば、本発明にかかる導電ワイヤー3Aは、一般市販品に比べて大きな曲率で使用することができる。したがって、本発明にかかる導電ワイヤー3Aでは、一般市販品の導電ワイヤーと比較して機械的強度及び耐久性を向上させることができる。
【0034】
なお、A〜D、つまりアルミニウム製の導電ワイヤー3Aは、銅製の導電ワイヤー3A、つまりE、F及びIと電気抵抗値(Ω/km)が同一値となっている。Gに係る導電ワイヤー3Aは、E及びFに係る導電ワイヤー3Aより、断面積が小さい。Hに係る導電ワイヤー3Aは、Iに係る導電ワイヤー3Aより、断面積が小さい。そして、一般的に、同一の曲率において、断面積が相違すると、断面積が大きくなるほど、耐久回数が低下する傾向がある。
【0035】
5.その他の実施形態
上述の実施形態では、電動車両用の電気ケーブルに本発明を適用した、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、その他の電気ケーブルにも適用することができる。
【0036】
また、上述の実施形態では、素線3Cを構成している導電性材料をA6063又はC1100としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、その他の導電性材料であってもよい。
【0037】
また、上述の実施形態に係る素線3Cの直径寸法は、2平方ミリメートル当たりの素線本数が80本以上となるように設定されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
また、上述の実施形態では、熱処理を施した導電ワイヤー3Aであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、熱処理を施していない導電ワイヤー3Aであってよい。
なお、熱処理を施した導電ワイヤー3Aは、熱処理を施していない導電ワイヤー3Aに比べて、靱性が高いという利点がある。さらに、熱処理を施した導電ワイヤー3Aは、降伏後、即座に破断することなく塑性変形した後に破断に至るという応力ひずみ関係を有する。
【0039】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【国際調査報告】