(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2013年9月12日
【発行日】2015年7月30日
(54)【発明の名称】樹脂金属複合シール容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 2/02 20060101AFI20150703BHJP
B32B 7/08 20060101ALI20150703BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20150703BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20150703BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20150703BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20150703BHJP
H01G 9/08 20060101ALI20150703BHJP
【FI】
H01M2/02 K
B32B7/08 Z
B32B15/08 M
B32B15/08 N
B32B27/00 C
B32B27/00 H
H01G11/84
H01G11/78
H01G9/08 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】30
【出願番号】特願2014-503759(P2014-503759)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2013年2月21日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2012/070386
(32)【優先日】2012年8月9日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-48432(P2012-48432)
(32)【優先日】2012年3月5日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】306032316
【氏名又は名称】新日鉄住金マテリアルズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(72)【発明者】
【氏名】能勢 幸一
(72)【発明者】
【氏名】中塚 淳
(72)【発明者】
【氏名】松澤 豊
(72)【発明者】
【氏名】村井 悠
【テーマコード(参考)】
4F100
5E078
5H011
【Fターム(参考)】
4F100AB01A
4F100AB01B
4F100AB04A
4F100AB04B
4F100AB33A
4F100AB33B
4F100AK01C
4F100AK42
4F100AK48
4F100AK51
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA26A
4F100BA26B
4F100CB00
4F100DB01A
4F100DB01B
4F100DB06A
4F100DB06B
4F100EC03
4F100EC03A
4F100EC03B
4F100EJ20
4F100EJ38
4F100EJ42
4F100GB16
4F100GB41
4F100JA04A
4F100JA04B
4F100JA13A
4F100JA13B
4F100JL14C
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
5E078AA05
5E078AA10
5E078AA12
5E078AA13
5E078AA14
5E078AB02
5E078DA02
5E078EA04
5E078HA02
5E078HA12
5E078HA13
5E078HA25
5E078HA26
5E078HA27
5E078ZA11
5H011AA09
5H011AA10
5H011BB03
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011DD13
5H011KK01
5H011KK02
5H011KK04
(57)【要約】
第1の金属箔の端部と第2の金属箔の端部の間にヒートシール用樹脂を用いたヒートシール部と、第1の金属箔および第2の金属箔のヒートシール部の外側の端面に溶接ビードによる金属封止部を有することを特徴とする樹脂金属複合シール容器。金属箔を構成する金属の融点が、ヒートシール用樹脂の熱分解温度より300℃以上高く、金属箔を構成する金属の比重が5以上であり、溶接ビードがレーザー溶接により形成される、樹脂金属複合シール容器。少なくとも片面にヒートシール用樹脂をラミネートした金属箔の端部をヒートシールにより封止して容器を形成し、前記容器のヒートシール部の外側にさらに金属箔の端面側から加熱溶接して、前記金属箔の端面に溶接ビードによる金属封止部を形成する、樹脂金属複合シール容器の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部を有する第1の金属箔と、
端部を有する第2の金属箔と、
前記第1の金属箔の前記端部と前記第2の金属箔の前記端部の間にヒートシール用樹脂を用いたヒートシール部と、
前記第1の金属箔および前記第2の金属箔の前記ヒートシール部の外側の端面に溶接ビードによる金属封止部を有することを特徴とする樹脂金属複合シール容器。
【請求項2】
前記金属箔を構成する金属の融点が、前記ヒートシール用樹脂の熱分解温度より300℃以上高く、
前記金属箔を構成する金属の比重が5以上であり、
前記溶接ビードがレーザー溶接により形成される、請求項1に記載の樹脂金属複合シール容器。
【請求項3】
前記第1の金属箔および前記第2の金属箔の前記金属封止部が、前記第1の金属箔および前記第2の金属箔の前記端面側からの加熱により形成された溶接ビードである、請求項1又は2に記載の樹脂金属複合シール容器。
【請求項4】
前記溶接ビードが略円形の断面形状の溶接ビードであり、溶接ビードの金属箔の厚さ方向の寸法が、前記第1の金属箔および前記第2の金属箔の前記溶接ビードに接する部分の厚さ方向の寸法の1.1倍以上5.0倍以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂金属複合シール容器。
【請求項5】
前記第1の金属箔と前記第2の金属箔が前記溶接ビードによりブリッジされており、前記第1の金属箔と前記第2の金属箔の前記溶接ビード近傍の厚さ方向の寸法が、前記第1の金属箔と前記第2の金属箔の前記ヒートシール部の厚さ方向の寸法と同等である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂金属複合シール容器。
【請求項6】
前記第1の金属箔の少なくとも内面と前記第2の金属箔の少なくとも内面にヒートシール用樹脂層がラミネートされている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂金属複合シール容器。
【請求項7】
前記金属封止部が、前記第1の金属箔と前記第2の金属箔の端部の全周に、電極タブの部分を除いて形成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂金属複合シール容器。
【請求項8】
前記金属箔がステンレス箔であり、前記ヒートシール用樹脂がポリプロピレンを主とする樹脂である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂金属複合シール容器。
【請求項9】
前記金属箔が15〜150μmの厚さであり、前記ヒートシール用樹脂が10〜200μmの厚さである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂金属複合シール容器。
【請求項10】
少なくとも片面にヒートシール用樹脂をラミネートした金属箔の端部をヒートシールにより封止して容器を形成し、
前記容器のヒートシール部の外側にさらに金属箔の端面側から、溶接前に溶接部近傍の樹脂を除去することなく、加熱溶接して、前記金属箔の端面に溶接ビードによる金属封止部を形成する
ことを特徴とする樹脂金属複合シール容器の製造方法。
【請求項11】
前記金属箔を構成する金属の融点が、前記ヒートシール用樹脂の熱分解温度より300℃以上高く、
前記金属箔を構成する金属の比重が5以上であり、
前記溶接ビードがレーザー溶接により形成される、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシール後に、ヒートシールした部分の一部をレーザーで溶接して、ヒートシール部より外側に、溶接ビードにより金属封止したシール部を持つ、樹脂金属複合シール容器及びその製造方法であって、この容器は特に蓄電セル用途として用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
蓄電池やキャパシタ等の蓄電素子のケースは主に、金属板材を使用して、プレス加工や、捲き締め、レーザー溶接等により、円筒型や直方体の缶を形成する形式のものと、金属箔をガスバリア層として有する樹脂フィルムを用いてヒートシールによりケース(この場合は柔らかいので、袋体ともいう)を形成するパウチ形式のものと、2種類に大別される。
【0003】
パウチ形式の電池は、ヒートシール用樹脂をラミネートした金属箔(ラミネート金属箔)で包装し、ヒートシール用樹脂同士をヒートシールすることにより蓄電素子部と外界とを遮断した状態で使用される。これは、電池の電解液が外部に遺漏したり、水蒸気が環境から混入したりすることは電池の寿命に致命的であるからである。
【0004】
しかしながら、従来の、ラミネート金属箔をヒートシールのみで接合した電池セルの場合、ヒートシール部分は電池内部の電解液の漏洩パス、あるいは外環境から内部へ水蒸気などが混入する侵入パスになり、ヒートシール部の経路長さが電池セルの寿命を決める一因となる。そのため、電池セルの寿命を長くするにはヒートシール部の経路長を長くすることが有効となるが、一方、ヒートシール部の経路長を長くすると、無駄な空間が増え、空間あたりのセル容量が小さくなる。したがって、ヒートシールにより接合するラミネートパックの電池セルには、単位空間あたりのセル容量と電池の寿命との間にトレードオフの関係がある。
【0005】
なお、これまで、パウチ型電池ケースに用いられるラミネート金属箔としては、ラミネートアルミニウム箔が使用されてきた。これは、薄い金属箔が得易い、というアルミニウムの特徴と共に、パウチ型ケースが、食品包装用の樹脂パウチ袋体から発展した経緯と関係している。つまり、食品包装パウチ袋では、食品の寿命延長のためにガスバリア性を持たせるべく、アルミニウムがバリア層として蒸着されていた。これを、軽量かつ、ヒートシールにより簡易接合できる電池容器として適用する場合、特に非水電解質を使用するリチウムイオン電池などに於いては、食品よりも格段に厳しいガスバリア性が求められるため、ガスバリア層の信頼性を向上させる必要がある。このため、ガスバリア層のアルミニウムの厚みを厚くした結果、アルミニウム蒸着膜からアルミニウム箔の適用に至ったという経緯による。
【0006】
例えば、特許文献1(特開2010−086744号公報)には、リチウムイオン電池本体、キャパシタ、電気二重層キャパシタ等の電気化学セル本体を密封収納する外装体、電池外装用包装材として、「基材層と、表面に化成処理が施された金属箔層と、酸変性ポリオレフィン層と、熱接着性樹脂層とを、少なくとも順次積層して構成される電気化学セル用包装材料」が開示されている。ここでは、あくまで「基材層」は樹脂フィルムであり、この表現だけでも、金属箔層が付随的な役割にあることが分かる。実際に明細書内部でも、「金属箔層12は、外部からリチウムイオン電池の内部に水蒸気が浸入することを防止するための層」とされている。
【0007】
特許文献2(特開2000−340187号公報)には、ポリマー電池用包装材料として、「最外層/バリア層/中間層/最内層からなるポリマー電池用包装材料・・・」と記載して、さらに明らかに、金属箔層(アルミニウム箔層)がバリア層であることが明示されている。
【0008】
また、特許文献3(特開2000−153577号公報)には、ヒートシール用積層体の金属箔の実施例として開示されているアルミニウム箔の他、ステンレス箔を用いることができると記載している。
しかしながら、ラミネートされた樹脂によりヒートシールした接合部は、ヒートシール部は金属により構成されたものではなく樹脂のみで接合部が構成されており、金属層をバリア層として持つ他の部分や、溶接金属缶などの、金属により構成された接合部程のガスバリア性を有しておらず、特に水分の侵入が寿命に致命的な影響を与えるため、高いガスバリア性が要求される電池においては十分なガスバリア性を発揮できないという問題がある。
これに対し、特許文献4(特開2000−223090号広報)、特許文献5(特開2008−021634号公報)のように、ラミネート金属箔を溶接して、樹脂による封止と金属による封止を適用する方法が開示されている。
特許文献4は、二つ折りにして周囲を封止するラミネートセルにおいて、2辺を溶接して、ガスバリア性を高める方法である。
しかし、ラミネート金属を、金属を溶融して溶接する場合、超音波や通電加熱による溶接では、金属同士が直接接する必要があり、またレーザーや放電アークを用いた熱源による溶接では、樹脂の蒸発により、溶融金属が吹き飛ばされ、健全な溶接ビードが形成され難いという困難がある。
そのため、特許文献4においては、[課題を解決するための手段]の段落[0007]に「外側には熱融着性樹脂フィルム層を除去して金属箔表面を露出させ、金属箔同士を重ね合わせて溶接」とあり、特許文献4の
図4の(c)におけるW部のように、溶接される部分の樹脂を事前に除去する工程が不可避である。また、そのようにして熱融着性樹脂フィルムを除去するため、溶接される部分を抑えつけて重ね合わせるための方法が新たに必要となる。
特許文献5においても、その
図2、
図3のように、端面にテーパーを設けたり、溶接される部分の内側の樹脂を事前に除去する工程が必要となっている。
また、通常の溶接方法は、特許文献4の
図4の(e)のように、接触した金属箔の間に溶接金属が形成されるような溶接方法が一般的であるが、この方法では、溶接欠陥が生じた時の検出が困難であり、バリア性を保証するべく、溶接部の健全性を保証することが困難と言う問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−086744号公報
【特許文献2】特開2000−340187号公報
【特許文献3】特開2000−153577号公報
【特許文献4】特開2000−223090号公報
【特許文献5】特開2008−021634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ラミネートされた樹脂によりヒートシールした接合部は、ヒートシール部は金属により構成されたものではなく樹脂のみで接合部が構成されており、金属層をバリア層として持つ他の部分や、溶接金属缶などの、金属により構成された接合部程のガスバリア性を有しておらず、特に水分の侵入が寿命に致命的な影響を与えるため、高いガスバリア性が要求される電池においては十分なガスバリア性を発揮できないという問題がある。これに対して、金属層の溶接を実施しようとすると、溶接部周辺の樹脂を除去する必要があったり、溶接部が金属層間にあるために、溶接欠陥の評価・検出がしにくい、という問題があった。
【0011】
本発明の目的は、高いガスバリア性を実現する接合部を構成しうる、金属溶接部によるシール部とヒートシール部を併せ持つ、樹脂金属複合シール容器及びその製造方法を安価で効率的かつ、欠陥検出の容易な方法・形態で提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、ラミネートされた樹脂により構成されるヒートシール部に、さらにレーザー接合を併用することで高いガスバリア性を実現しうることを見出した。
しかし一般に、亜鉛めっき鋼板や、樹脂被覆金属板など、被覆物質(亜鉛や樹脂)の沸点や熱分解温度が、基材(鋼板や金属板)の融点より低い物質を被覆した材料は、レーザー溶接時に、そのような被覆物質がガス化して、溶融状態にある溶接金属を吹き飛ばすため、健全な溶接接合部を安定的に形成させることが非常に困難である。
【0013】
さらに、ラミネート金属箔に於いては、金属厚みが薄く、かつ、ヒートシール樹脂の厚みと金属箔の厚みが同程度になることが多いため、溶接時に溶融される金属の割合が少ない上に、溶接で接合されるべき金属間の距離が比較的大きい、という条件となり、さらに溶接が難しい。
【0014】
このような困難な課題に対して、発明者らは鋭意研究開発を行ったところ、金属箔を構成する金属の融点が、ヒートシールに用いられるラミネート樹脂の熱分解温度より十分に高く、かつ、金属箔を構成する金属の比重がヒートシールに用いられるラミネート樹脂の比重より、十分に大きければ、溶接前に溶接部近傍の樹脂を除去することなく、ヒートシールした接合部をレーザー溶接可能であることを見出した。
【0015】
これにより、これまで、現実的でないとして、検討すらされて来なかった、ラミネート箔の溶接接合、さらに、内部にヒートシール部を有しながら、溶接接合部も有するという、全く新しい容器構造を、溶接前に溶接部近傍の樹脂を除去することなく、実現することが出来た。
【0016】
本発明は、以上の様な知見によりなされたもので、その要旨は以下の通りである。
(1)端部を有する第1の金属箔と、
端部を有する第2の金属箔と、
前記第1の金属箔の前記端部と前記第2の金属箔の前記端部の間にヒートシール用樹脂を用いたヒートシール部と、
前記第1の金属箔および前記第2の金属箔の前記ヒートシール部の外側の端面に溶接ビードによる金属封止部を有することを特徴とする樹脂金属複合シール容器。
【0017】
(2)前記金属箔を構成する金属の融点が、前記ヒートシール用樹脂の熱分解温度より300℃以上高く、
前記金属箔を構成する金属の比重が5以上であり、前記溶接ビードがレーザー溶接により形成されることを特徴とする(1)に記載の樹脂金属複合シール容器。
【0018】
(3)前記第1の金属箔および前記第2の金属箔の前記金属封止部が、前記第1の金属箔および前記第2の金属箔の前記端面側からの加熱により形成された溶接ビードである、(1)又は(2)に記載の樹脂金属複合シール容器。
【0019】
(4)前記溶接ビードが略円形の断面形状の溶接ビードであり、溶接ビードの金属箔の厚さ方向の寸法が、前記第1の金属箔および前記第2の金属箔の前記溶接ビードに接する部分の厚さ方向の寸法の1.1倍以上5.0倍以下である、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の樹脂金属複合シール容器。
【0020】
(5)前記第1の金属箔と前記第2の金属箔が前記溶接ビードによりブリッジされており、前記第1の金属箔と前記第2の金属箔の前記溶接ビード近傍の厚さ方向の寸法が、前記第1の金属箔と前記第2の金属箔の前記ヒートシール部の厚さ方向の寸法と同等である、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の樹脂金属複合シール容器。
【0021】
(6)前記第1の金属箔の少なくとも内面と前記第2の金属箔の少なくとも内面にヒートシール用樹脂層がラミネートされている、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の樹脂金属複合シール容器。
【0022】
(7)前記金属封止部が、前記第1の金属箔と前記第2の金属箔の端部の全周に、電極タブの部分を除いて形成されている、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の樹脂金属複合シール容器。
【0023】
(8)前記金属箔がステンレス箔であり、前記ヒートシール用樹脂がポリプロピレンを主とする樹脂であることを特徴とする(1)〜(7)に記載の樹脂金属複合シール容器。
【0024】
(9)前記金属箔が15〜150μmの厚さであり、前記ヒートシール用樹脂が10〜200μmの厚さであることを特徴とする(1)〜(8)に記載の樹脂金属複合シール容器。
【0025】
(10)少なくとも片面にヒートシール用樹脂をラミネートした金属箔の端部をヒートシールにより封止して容器を形成し、
前記容器のヒートシール部の外側にさらに金属箔の端面側から、溶接前に溶接部近傍の樹脂を除去することなく、加熱溶接して、前記金属箔の端面に溶接ビードによる金属封止部を形成する
ことを特徴とする樹脂金属複合シール容器の製造方法。
【0026】
(11)前記金属箔を構成する金属の融点が、前記ヒートシール用樹脂の熱分解温度より300℃以上高く、
前記金属箔を構成する金属の比重が5以上であり、
前記溶接ビードがレーザー溶接により形成される、(11)に記載の方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明の樹脂金属複合シール容器によれば、ラミネートされた樹脂により構成されるヒートシール部と共にレーザー溶接部を併用することができ、電解液や、水蒸気に代表されるガスに対するバリア性が金属により構成されたシール部により飛躍的に高められるという顕著な効果を奏し、ヒートシール部の周長のほとんどを溶接出来れば、大幅な寿命延長が可能となるという顕著な効果を奏する構造を、溶接前に溶接部の樹脂の剥離の必要なく、また溶接後の溶接部欠陥の検出が容易な形態で実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の樹脂金属複合シール容器の構造例を示す断面模式図である。
【
図2】従来のシール溶接部の無い電池セルの構造模式図である。
【
図5】
図3BのA−A‘断面図であり、ヒートシール部とレーザー溶接のレーザー照射方向の関係が示されている。
【
図7】水分侵入バリア性評価試験結果のグラフで、シール容器の外部から内部へ侵入する水分量と評価試験時間との関係を示すグラフである。
【
図8A】通電溶接あるいは超音波溶接を説明する図である。
【
図8B】重ねた層に対して垂直に近い方向から各層を貫通する方向にレーザーを照射して溶接するレーザー溶接方法を説明する図である。
【
図8C】重ね部の端面に向かって、重ねた層に対して平行な方向からレーザーを照射する「拝み溶接」を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、少なくとも片面にヒートシール用樹脂をラミネートした金属箔の端部をヒートシールにより封止してなる容器であって、ヒートシール部の外側の金属箔端面にさらに、溶接ビードにより金属封止したシール部を持つことを特徴とする樹脂金属複合シール容器である。
【0030】
図1に本発明の樹脂金属複合シール容器の構造例を示す。金属箔6がその端面側からレーザー溶接された金属封止部7において金属接合され、さらにその内部に、ヒートシール樹脂3を用いてヒートシールされて形成されたヒートシール部6’において、樹脂で接合されている、樹脂金属複合シール構造を持つ。
【0031】
本発明の容器は、前記金属箔を構成する金属の融点が、前記ヒートシール用樹脂の熱分解温度より300℃以上高く、前記金属箔を構成する金属の比重が5以上であることを特徴とするレーザー溶接用ラミネート金属箔を用いて、ヒートシール後に金属箔の端面側からレーザー溶接することで製造可能である。
【0032】
例えば、本発明の容器は金属箔をステンレス箔とし、前記ヒートシール用樹脂がポリプロピレンを主とする樹脂とすることにより実現することができる。
【0033】
(レーザー溶接部)
レーザー溶接を行う上での課題は、ヒートシールにより電池セルを形成した後、ヒートシールにより構成された樹脂による容器構造を破壊せずに、その外部で金属を溶接して電池セルを構成することである。
【0034】
しかしながら、従来から用いられてきたアルミラミネート箔は、特許文献4,5に教示されているように、溶接部の樹脂を除去する前処理なしでは、溶接により健全な溶接ビードを得ることが出来なかった。
【0035】
この原因を解析したところ、レーザー照射によりアルミニウムを溶融させる時に、ラミネート樹脂が同時に蒸発し、この樹脂の蒸発ガスにより、溶融したアルミニウムが吹き飛ばされ(以下、「爆飛」という。)、健全な溶接ビードを形成できないことが判明した。
爆飛の形態としては、激しいブローホールが口を開けた穴だらけのビードを形成したり、ステッチ状の不連続ビードを形成したり、ひどい場合には、溶接するつもりが、溶融金属がほとんど吹き飛ばされ、切断している状態になってしまったりすることさえある。
【0036】
爆飛は、一般に、亜鉛めっき鋼板や、樹脂被覆金属板など、被覆物質(亜鉛や樹脂)の沸点や熱分解温度が、基材(鋼板や金属板)の融点より低い物質を被覆した材料において、溶接時に、ガス化した被覆物質が、溶融状態にある溶接金属を吹き飛ばし、発生する。
亜鉛めっき鋼板のレーザー溶接の場合の最も有効な爆飛回避方法は、合わせ溶接される鋼板の間に、一定の隙間を設けて、ガスの逃げ場を設けてやることである。しかし、この方法は、ヒートシールにより密着したラミネート金属箔の合わせ部には適用できない。
【0037】
また、アルミラミネート箔以外のラミネート箔を用いる場合であっても、特許文献4,5に教示されているように、溶接部の樹脂を除去する前処理は必須であると考えられており、溶接部の樹脂を除去する前処理なしで溶接する方法は教示されていない。
【0038】
発明者らは、ラミネート金属箔のレーザー溶接法を詳細に検討した結果、めっき鋼板とラミネート金属箔で、爆飛させる原因物質の性質が異なることを利用して、ラミネート金属箔の爆飛を回避する方法に思い至り、実験・検討の結果、本発明に至った。
樹脂の熱分解によるガスを起因とする爆飛が発生しない条件を検討したところ、金属箔を構成する金属の融点が、ヒートシール用樹脂の分解温度より300℃以上高いこと、金属箔を構成する金属の比重が5以上であれば、爆飛が生じにくいことを見出した。その原理は、正確にはさらなる解析が必要であるが、金属の融点と樹脂の分解温度が離れている程、樹脂が分解してガスが発生してから、金属が溶融するまでのタイムラグが大きいこと、金属が溶融している時にガスが発生しても、金属の比重が大きければ、ガスの影響を受けにくいことが、定性的には推定される。
【0039】
さらに、溶接方法としても、通常の重ね部の溶接方法である、
図8Aの通電溶接あるいは超音波溶接や、
図8Bのような、重ねた層に対して垂直に近い方向から各層を貫通する方向にレーザーを照射して溶接するレーザー溶接方法ではなく、
図8Cや
図5に示す、重ね部の端面に向かって、重ねた層に対して平行な方向からレーザーを照射する「拝み溶接」を用いることによって、健全な溶接部を形成することが可能になることを確認した。これは、拝み溶接では、溶融金属量を多く出来るため、溶接される重ね部の隙間が若干大きくても、重ね合わせる金属間をブリッジした溶接金属部を形成し易いことに加え、本発明の様な樹脂と金属の選択により、樹脂の蒸発による爆飛を抑制できる材料を選択する効果によるものである。
【0040】
さらに、拝み溶接では、溶接金属を十分に形成させると、溶接後の欠陥の有無が、外観から検知・評価可能であるという、顕著な効果を有する利点もある。通電加熱や貫通レーザー溶接では、
図9Aや
図9Bのような欠陥27があっても、
図9Cのように、外観からは判別できないが、拝み溶接での貫通欠陥は必ず、
図9Dおよび
図9Eのように外観に開口部27があるので、
図9Dおよび
図9Eのように外観から容易に検出・判定できる。
【0041】
溶接欠陥27を検出しやすくするためには、溶融金属部を、
図1、
図4、
図6にあるように、断面が円状になる様に形成させることが有効であり、そのためには、溶接部端部を十分に溶融させ、元の2つの金属層の外面間の距離(
図8Cの25)よりも、溶接金属の該円状部の直径(
図8Cの26)が大きくなることが必要である。この条件は、拝み溶接の配置では、
図4の断面写真のように、容易に得ることが可能である。
【0042】
望ましくは、この、溶接金属の直径は2つの金属層間の距離の110%以上あると、さらに好ましい。スペースに余裕があれば、500%程度まで大きくても、問題は無いが、それ以上大きいと、溶接部近傍の箔への負担が大きくなり、逆に信頼性が落ちる可能性がある。ここで、2つの金属層間の距離は、2つの金属箔の厚みの合計と、ヒートシール用樹脂の厚みの合計、と置き換えても、実質上構わない。
【0043】
本発明において溶接ビームの形成は金属箔の端面側から加熱して溶接する方法であればよい。「拝み溶接」とも言われる。重ねた金属箔に対して平行な方向からレーザーを照射する溶接方法が好ましいが、完全に平行な方向に限定されるものではない。金属箔の端面側から加熱して溶接ビームを形成できる方法であれば、レーザー照射以外の方法で加熱する溶接方法でもよい。
【0044】
特定の金属箔とヒートシール樹脂の組合せを用い、金属箔の端面側から溶接ビームを形成する本発明の方法によれば、
図1,4,6に示すように、溶接ビードが略円形の断面形状の溶接ビードが形成されることが可能である。ここで、略円形の断面形状といっても、端面側は略円形であるが、容器内側は
図4の写真に見られるように、金属箔と一体化する。その結果、溶接された金属箔どうしは、ラミネートされているヒートシール樹脂層の厚さの間隔で略平行でありながら、その間を溶接ビードがブリッジしているような構造を形成することが可能であり、金属箔の溶接ビード近傍の厚さ方向(金属箔に垂直方向)の寸法は、金属箔のヒートシール部の厚さ方向の寸法と同等であることが可能である。ここで同等とは、20%以下、特に10%以下の差をいう。しかし、本発明はこの態様(両寸法が同等の態様)に限定されないことに留意されるべきである。なお、本発明では、金属箔の間のヒートシール樹脂を溶接前に除去する前処理は不要であるが、拝み溶接の際に溶接ビード付近のヒートシール樹脂は気化し、消失していることができる。
【0045】
上記のごとく、溶接ビードの金属箔の厚さ方向の寸法は、金属箔の溶接ビードに接する部分の厚さ方向の寸法より1.1倍以上5.0倍以下大きいことが好ましい。1.2倍以上、さらには1.3倍以上、3倍以下がそれぞれより好ましい。
【0046】
また、そうした金属箔として、金属箔がステンレス箔であり、ヒートシール用樹脂がポリプロピレンを主とする樹脂である場合にはこの条件を満足することを見出し、工業的に活用性の高いことを見出した。蓄電セル用途に用いられる内面樹脂を兼ねるヒートシール用樹脂は、通常、ポリオレフィン系樹脂が好適であり、ポリオレフィン系樹脂とは、下記(式1)の繰り返し単位を有する樹脂を主成分にする樹脂である。主成分とは、(式1)の繰り返し単位を有する樹脂が、50質量%以上を構成することである。
−CR
1H−CR
2R
3− (式1)
(式1中、R
1、R
2は各々独立に炭素数1〜12のアルキル基または水素を示し、R
3は炭素数1〜12のアルキル基、アリール基又は水素を示す)
ポリオレフィン系樹脂は、前述のこれらの構成単位の単独重合体でも、2種類以上の共重合体であってもよい。繰り返し単位は,5個以上化学的に結合していることが好ましい。5個未満では高分子効果(例えば,柔軟性,伸張性など)が発揮し難い。
【0047】
上記繰り返し単位を例示すると、プロペン,1−ブテン,1−ペンテン,4−メチル−1−ペンテン,1−ヘキセン,1−オクテン,1−デセン,1−ドデセン等の末端オレフィンを付加重合した時に現われる繰り返し単位,イソブテンを付加したときの繰り返し単位等の脂肪族オレフィンや,スチレンモノマーの他に,o−メチルスチレン,m−メチルスチレン,p−メチルスチレン,o−エチルスチレン,m−エチルスチレン,o−エチルスチレン,o−t−ブチルスチレン,m−t−ブチルスチレン,p−t−ブチルスチレン等のアルキル化スチレン,モノクロロスチレン等のハロゲン化スチレン,末端メチルスチレン等のスチレン系モノマー付加重合体単位等の芳香族オレフィン等が挙げられる。
【0048】
このような繰り返し単位の単独重合体を例示すると,末端オレフィンの単独重合体である低密度ポリエチレン,中密度ポリエチレン,高密度ポリエチレン,直鎖状低密度ポリエチレン,架橋型ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリブテン,ポリペンテン,ポリへキセン,ポリオクテニレン,ポリイソプレン,ポリブタジエン等が挙げられる。また,上記繰り返し単位の共重合体を例示すると,エチレン−プロピレン共重合体,エチレン−ブテン共重合体,エチレン−プロピレン−ヘキサジエン共重合体,エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボーネン共重合体等の脂肪族ポリオレフィンや,スチレン系共重合体等の芳香族ポリオレフィン等が挙げられるが,これらに限定されるものではなく,上記の繰り返し単位を満足していればよい。また,ブロック共重合体でもランダム共重合体でもよい。また,これらの樹脂は単独もしくは2種類以上混合して使用してもよい。
【0049】
また,本発明に使用するポリオレフィンは,上記のオレフィン単位が主成分であればよく,上記の単位の置換体であるビニルモノマー,極性ビニルモノマー,ジエンモノマーがモノマー単位もしくは樹脂単位で共重合されていてもよい。共重合組成としては,上記オレフィン単位に対して50質量%以下,好ましくは30質量%以下である。50質量%超では腐食原因物質に対するバリア性等のオレフィン系樹脂としての特性が低下する。
【0050】
上記極性ビニルモノマーの例としては,アクリル酸,アクリル酸メチル,アクリル酸エチル等のアクリル酸誘導体,メタクリル酸,メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル等のメタクリル酸誘導体,アクリロニトリル,無水マレイン酸,無水マレイン酸のイミド誘導体,塩化ビニル等が挙げられる。
【0051】
取扱性,腐食原因物質のバリア性から最も好ましいのは,低密度ポリエチレン,中密度ポリエチレン,高密度ポリエチレン,直鎖状低密度ポリエチレン,架橋型ポリエチレン,ポリプロピレン又はこれらの2種類以上の混合物である。
【0052】
本発明で使用するヒートシール樹脂として、これらポリオレフィン系樹脂は一般的に好適であるが、工業的にはポリプロピレンを主とするものが、コスト、流通、熱ラミネートの容易性等の観点で、さらに好適である。
【0053】
ここでポリプロピレンを主とする樹脂とは、ポリプロピレンを50質量%以上含有する樹脂をいい、ポリプロピレン純粋樹脂の他に、合計が50質量%未満の割合で低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンなど各種ポリエチレン、ポリブテン、ポリペンテン等のポリオレフィンを重合した樹脂などを挙げることができる。また、金属箔との密着性を向上させるために酸変性ポリオレフィンとしたものでも良い。ブロック共重合体でも、ランダム共重合体でも、また、重合するポリプロピレン以外のオレフィンが1種類でも2種類以上でも、主となるポリプロピレンが50質量%以上となっていれば良い。より好ましくはポリプロピレンが70質量%以上、90質量%以上のものから、ポリプロピレンそのものまでである。好ましくは、重合されるものは、ポリプロピレン単独の時よりも分解温度を低下させるものの方が好ましく、ポリエチレン系の樹脂が特に好適である。
一方、アルミニウムラミネート箔の場合には、アルミニウムの比重が2.7程度、融点は660℃と、汎用金属の中では比較的軽量、低融点であることを確認した。つまり、ラミネート金属箔がアルミラミネート箔の場合、溶接前に溶接部近傍のヒートシール樹脂を除去しないと、アルミラミネート箔はレーザー溶接により健全な溶接部を形成することが出来なかったが、そもそも、ラミネートアルミ箔は、溶接などに依らず、ヒートシールにより簡便に接合できることが利点であり、また、元々が樹脂フィルムに金属をガスバリア層として蒸着していたものが出発点であったため、金属材料のように、溶接を適用する、ニーズも、方法も検討されなかったことが考えられる。
本発明の溶接用金属箔に適した金属の例としては、ステンレス鋼のほか、純鉄、炭素鋼、低合金鋼、銅、ニッケル、ジルコニウム、バナジウム、アルミ鉄合金、亜鉛銅合金、などがある。高融点金属を被覆しためっき被覆金属も本発明の範疇であり、具体的には、めっき鋼として、酸化クロム層と金属クロム層を有するティンフリースティールや、ニッケル層、あるいはニッケル層とニッケル−鉄合金層を有する様なニッケルめっき鋼が含まれる。
【0054】
(ヒートシール用樹脂の熱分解温度)
金属箔を構成する金属の融点をヒートシール用樹脂の熱分解温度より300℃以上高くする必要がある理由は、ヒートシール用樹脂の熱分解温度と、金属箔を構成する金属の融点との差が300℃未満であると、爆飛の頻度が高くなるという問題が生じるからである。その原理は、正確にはさらなる解析が必要であるが、金属の融点と樹脂の分解温度が離れている程、溶接の過程で溶接部近傍で温度が上昇する時に、樹脂が分解してガスが発生してから、金属が溶融するまでのタイムラグが大きいことにより、爆飛の原因となる樹脂の分解ガスを金属が溶融する前に十分に放散できるからではないかと、発明者らは推定している。そのため、金属の融点と樹脂の分解温度の差は、ある程度までは離れている方が望ましく、より望ましくは、ヒートシール用樹脂の熱分解温度より、金属箔を構成する金属の融点の方が400℃以上、さらに望ましくは、ヒートシール用樹脂の熱分解温度よりも金属箔を構成する金属の融点の方が500℃以上高い方が、健全な溶接部の形成に好適である。
【0055】
一方、現実的な側面から、ヒートシール用樹脂の熱分解温度に対して、金属箔を構成する金属の融点が2000℃以上高温であると、金属を溶融するための熱量が膨大になり、その熱量で、ヒートシール樹脂が過大に熱分解して、樹脂による電池ケースの構成が損なわれる場合があるので、ヒートシール用樹脂の熱分解温度と金属箔を構成する金属の融点の差は、2000℃以下であることが望ましい。過大な熱履歴は、例え樹脂が残存したとしても、樹脂にダメージを与えるので、残存した樹脂に与えるダメージの観点からも、より望ましくは、ヒートシール用樹脂の熱分解温度と金属箔を構成する金属の融点の差は、1200℃以下であることが望ましい。
【0056】
このように金属の融点をヒートシール用樹脂の熱分解温度より300℃以上高くするヒートシール樹脂として好適に用いることができる樹脂の例としては、従来からヒートシール用に用いられている樹脂から金属箔の融点との関係で熱分解温度を考慮して選択すればよいが、たとえば、ポリプロピレン、ポリエチレン、これらの共重合体などの樹脂、及びこれらを主とする樹脂を挙げることができる。ポリプロピレンの熱分解温度は、430℃、ポリエチレンの熱分解温度は450℃で、これらの共重合体では、これらの中間程度の値を示す。なお、ここで分解温度は、10%の質量変化が生じた温度を言う。
【0057】
(金属の比重)
金属箔を構成する金属の比重を5以上とする必要がある理由は、金属箔を構成する金属の比重が5未満であると爆飛の頻度が高くなるという問題が生じるからである。その原理は、正確にはさらなる解析が必要であるが、金属が溶融している時に爆飛の原因となるガスが発生しても、金属の比重が大きければ、ガスの圧力に負けずに吹き飛ばないでとどまる確率が高くなり、ガスの影響を受けにくいことが、定性的には推定される。望ましくは、金属箔を構成する金属の比重が6以上、さらに望ましくは金属箔を構成する金属の比重が7以上であることが好適である。金属の比重は、実用される金属という意味から、20以下が好ましく、軽量化を重視する場合、さらに10以下がより好ましい。
【0058】
(金属箔とラミネート樹脂の厚さ)
金属箔の厚さは15〜150μmが好ましく、さらに40〜120μmがより好ましい。金属箔が薄いと溶接金属を形成するための金属量が不足し、溶接欠陥が発生しやすくなり、また金属の変形も生じやすく、溶接の制御が困難になる。一方、厚すぎると、そもそも容器としての重量が増すため、ラミネート金属箔を用いる利点が少なくなる。また、ヒートシール用のラミネート樹脂の厚さは10〜200μmが好ましく、15〜100μmがより好ましい。ラミネート樹脂が薄いとヒートシール時に溶融する樹脂が少なくなり過ぎ、金属箔間に樹脂の存在しないシールの欠陥が発生し始める。一方、厚すぎると、溶接時に溶融金属を吹き飛ばして溶接欠陥を生じさせる原因となる分解ガスを多く発生するようになり、良好な溶接部を形成するための溶接条件範囲が極端に狭くなる上に、溶接されるべき金属箔と金属箔の間の距離が広くなり過ぎて、溶融金属が分離し、溶接が成り立たなくなる。
【0059】
上述のように、金属箔が厚い程、ヒートシール用樹脂の分解ガスに対する抵抗は増し、またヒートシール樹脂が薄い程、分解ガスの発生は少ない傾向となるので、金属箔の厚みとヒートシール樹脂の厚みの比、つまり、(金属箔の厚み)/(ヒートシール樹脂の厚み)が大きい程、溶接性は良好となる。その比は0.7以上が好適であり、1.2以上あればさらに好適である。
【0060】
(ヒートシール部と溶接部)
ヒートシール部の幅(経路幅)は、構造や目的により一概ではないが、一般的に1〜50mm、好ましくは2〜20mm、より好ましくは3〜7mmである。本発明では溶接ビードを形成するので、従来のヒートシールだけの場合よりも狭くすることが可能であるが、ヒートシール部の幅をあまり狭くすると、ヒートシール部のシール性が不十分になる。
【0061】
本発明では、ヒートシールを損なうことなく溶接ビードを形成するために、ヒートシール部に対して間隔をおいて外側に金属箔の端面側から溶接ビードを形成することが好ましい。しかし、可能なら、ヒートシール部の一部に連続して金属箔の端面側からあるいは金属箔の上下方面側から溶接ビードを形成してもよく、溶接ビードの内側のほか外側にヒートシール部が存在してもよい。
【0062】
なお、ヒートシール部を貫通して蓄電ケース外部に電極タブを取り付ける構造の蓄電セルケースの場合は、その電極タブのある部分は溶接できないため、溶接による封止は、電極タブの近傍ぎりぎりのところまでの外周、が最大の溶接封止周長となる。ヒートシールは、電極タブを含む部分もヒートシール出来るので、全周が最大のヒートシール封止周長となる。
【0063】
蓄電ケースとして、ラミネート金属箔を二つ折りにして、1辺は折り曲げ構造、3辺をヒートシールと溶接による封止構造としてもよい。しかし、本発明においては、比較的高融点の金属箔を使用するので、比較的高強度の金属箔を使用する傾向にあり、折り曲げ部において、溶接に十分耐えられるような小さい曲率半径を得ることが難しい場合がある。強度が高い箔でも、裸の金属箔なら強い荷重で抑えれば曲率半径を小さく出来るが、ラミネート金属箔では、ラミネート樹脂を損なわないような範囲の荷重での加工となるため、金属箔の強度が高いと、曲率半径を小さくすることが難しくなる虞がある。また、折り曲げ部は、その他の重ね部と、単位溶接線長さに対する金属量、及び熱伝導を担う金属量が大きく異なる特異点となるため、溶接欠陥を生じ易く、ガスバリア性を損なう原因となる虞がある。したがって、限定されるわけではないが、本発明では、2枚のラミネート金属箔を使用して重ね合わせた構造の方がより好ましい。
【0064】
(寿命延長効果)
背景技術で述べたように、ラミネート金属箔をヒートシールのみで接合した電池セルの場合、ヒートシール部分は電池内部の電解液の漏洩パス、あるいは外環境から内部へ水蒸気などが混入する侵入パスになり、ヒートシール部の経路長さが電池セルの寿命を決める一因となる。特に外環境から内部への水蒸気=水分の侵入は、電池セルの寿命を短縮する非常に大きな要因である。周囲をヒートシールした構造では周長に比例して水分侵入経路の断面積が増えるため、ヒートシールの周長が長い程侵入水分の流量が増え、寿命が短くなる。水分の侵入の影響は、ヒートシール部の経路長さが短い程、ヒートシールした周長の長い程、大きくなる。
【0065】
これに対して、レーザー溶接した部分は、金属によりガスのバリアが形成されるため、溶接部分では樹脂と比較して、無視できる量の水分しか侵入しない。つまり、溶接によりシールした周辺長さの割合だけ、電池セルの寿命への水分の影響を抑制できることになる。概略、侵入する水分の流量と寿命短縮効果が比例し、侵入する水分流量は、溶接していない周辺長さに比例するため、周辺長さの半分を溶接出来れば、溶接を全くしていないヒートシールのみの場合に対して、侵入水分は半減し、水分起因による寿命は倍となる。周辺長さの90%以上を溶接出来れば、侵入水分量は10分の1以下となり、水分起因の寿命は10倍以上となる。電池セルの全周辺を溶接すれば水分侵入は完全に防げる筈であるが、電極タブの部分は溶接できないので、その部分は樹脂シール(ヒートシール)になる。
【0066】
本発明容器に用いるラミネート金属箔は、ヒートシール樹脂を被覆していない側の面、つまり、通常は容器の外面となる側の面については、金属箔の表面そのままでも、酸化物形成やめっき被覆、あるいは種々の樹脂ラミネートを施していても良い。特に、ヒートシール樹脂よりも薄い被覆が施されている場合は、溶接に影響は無く、絶縁性や、放熱性などの機能を持たせるために外面側を被覆したラミネート金属箔も本発明の範疇である。特に20μm以下の厚みのPETフィルムを外面に被覆して絶縁性を与えることは、経済的にも、エンボス加工時の加工性の観点からも好適である。
【0067】
また、内面側のヒートシール樹脂は、単層である必要はなく、金属との密着性を向上させるために酸変性させたポリプロピレン層を金属層に接する側にラミネートし、ヒートシール性を向上させたポリプロピレン層をその外層にラミネートするなど、複層の樹脂ラミネートを施すことも可能である。
【0068】
さらに、内面側は、蓄電ケースなどに使用する場合、耐電解液性を向上させるために、金属面に表面処理を施すことが可能であり、電解クロメート、樹脂クロメート等各種クロメート処理や、その他のクロメートフリー化成処理を施しても良い。なお製品として既にクロム含有表面処理の施されているティンフリースティールは、各種クロメート処理を施した金属面と同等に耐電解液性が良好である。
【0069】
(電池ケースの構造とその製造方法)
図2に、従来の外装された蓄電素子の構造を示すが、電池やキャパシタなどの蓄電素子4をラミネート金属箔1をエンボス加工して覆い、蓄電素子4の周囲6はヒートシール6’されている。ラミネート金属箔1は、金属箔2とヒートシール樹脂3がラミネートされて成っている。
図2の従来の外装の場合、ヒートシール部の経路長さは22で表わされ、シール部の総経路長さと等しい。
【0070】
図3Aは本発明により外装された蓄電素子の斜視図であるが、従来の外装された蓄電素子の外観もほぼ同様であり、エンボス加工部5とヒートシール部6を有し、一端から蓄電素子に接続された電極タブ10が引き出されている。
【0071】
図3Bは、
図3Aの外装された蓄電素子の上面図であり、エンボス加工部5と、ヒートシール部6と、電極タブ10が見られる。この図に示した電極タブ10を通らないA−A’の断面線に沿った断面図が
図1である。ただし、
図1は、構造を模式的に示すために、ラミネート金属箔の厚みや溶接部7の大きさを、蓄電素子4に対して、実際よりも拡大して示してある。
図1は
図2と同様にラミネート金属箔1をエンボス加工して蓄電素子4を覆い、蓄電素子4の周囲6はヒートシール6’されている。本発明の外装された蓄電素子は、さらに、蓄電素子4の周囲の外装用のラミネート金属箔1の側面端部が端面側からレーザー溶接(拝み溶接)されており、レーザー溶接部7が形成されている点で従来の外装された蓄電素子と異なる。
図1においてヒートシール部の経路長さは23で表わされる。シール部の総経路長さは溶接部の端までの22で表される長さとなる。
【0072】
図4に実際にヒートシール及びレーザー溶接した外装蓄電素子のヒートシール部6及びレーザー溶接部7の断面写真を示す。上下2枚の金属箔(光反射するので白く見える)2が側面端部で溶接7されている。レーザー溶接部7の内部にヒートシールされた樹脂6’が見える。金属箔2の外側の樹脂9は外面樹脂フィルムである。24は、写真撮影用の埋め込み樹脂である。
【0073】
このレーザー溶接部7を形成するには、好適には、
図5に示すように、ヒートシール6’をした後に、ラミネート金属箔2の側面の端面に外側からレーザー光8を照射すればよい。ただし、本発明においては、溶接ビードの形成方法はレーザー溶接に限定されないし、レーザー溶接の場合にもレーザーの照射方法は
図5の態様に限定されるものではない。
【0074】
レーザー溶接の方法は公知の方法でよい。たとえば、炭酸ガスレーザーや、半導体レーザー等を線源として使用することができ、またファイバーを通したレーザー光でも、レンズで収束したレーザー光でも、反射鏡を使用して反射させたレーザー光を使用しても良い。
【0075】
図6に、
図3Bの電極タブを通るB−B’断面線に沿った断面を示す。電極タブ10の表面には電極タブシール材11が形成されており、この電極タブシール材11に対してラミネート金属箔のヒートシール用樹脂6”がヒートシールされている。この電極タブ10のある箇所では、金属箔をレーザー溶接することができないので、レーザー溶接部7は存在せず、ヒートシール6”のみの構造である。本発明では、電極タブ以外の部分はすべて溶接(レーザー溶接)することが好ましい。
【0076】
図3A〜
図6に示した態様では、電極タブは両方とも一端側から引き出すように形成されているが、電極タブを反対側の端より別々に引き出すなど、異なる端部から引き出してもよい。
【実施例】
【0077】
実施例1
金属箔の比重と融点の、ヒートシール後レーザー溶接性に与える影響を調べるために、表1に示す種々の金属箔を準備し、片面あるいは両面にラミネートを施し、レーザー溶接による溶接ビード形成を調査した。
【0078】
用いたヒートシール樹脂は、下記のものである。
PET12、PET25は、それぞれ厚み12μm、25μmの2軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムで、ユニチカ株式会社製エンブレットPETを用いた。
【0079】
Ny15は、厚み15μmの延伸ナイロンフィルムで、ユニチカ株式会社製エンブレムONを用いた。
【0080】
上記外面樹脂は、金属箔表面にウレタン系接着剤(東亜合成株式会社製アロンマイティPU7000D)を塗布し、外面側樹脂を重ねて、0.1MPa、25℃、90分の硬化条件で圧着した。
【0081】
ヒートシール用樹脂である内面側の樹脂は、原料樹脂を、Tダイスを装着した押出成形機にて250℃の押し出し温度でフィルム形状(幅300mm)に無延伸成形して作製したフィルムを使用した。
【0082】
原料樹脂の日本ポリプロ株式会社製ノバテックPP EA7Aを25μm厚みのフィルムにしたものを内面用フィルム(1)、原料樹脂の三井化学東セロ株式会社製アドマーQE060を25μm厚みのフィルムにしたものを内面用フィルム(2)、同三井化学東セロ株式会社製アドマーQE060を50μm厚みのフィルムにしたものを内面用フィルム(3)とし、内面用フィルム(1)と(2)を重ねて、内面用フィルム(2)を金属箔側になるように貼ったものを内面樹脂A、内面用フィルム(3)を単独で貼ったものを内面樹脂Bとした。内面樹脂Aも、内面樹脂Bも、熱分解温度は430℃である。
【0083】
金属箔は、主に圧延箔を用いたが、一部、圧延による箔製造が難しい金属種は、所定組成合金の真空溶解後、単ロール法により箔リボンとして箔形状に製造し、熱処理により結晶化させて用いた。圧延箔は100×100mmサイズを使用し、単ロール箔は100×30mmサイズを使用した。厚みは100μmに統一した。
【0084】
ティンフリースティール箔は、新日本製鐵株式会社製キャンスーパーの、調質度T4CR、鋼種MR、表面仕上げ:普通仕上げ、板厚:0.18mmの製品鋼板を、片面を研削して総厚みを所定の厚みまで減厚し、使用した。めっきの残存する面を内面とした。金属種としてはTFSという略号で示した。
ニッケルめっき箔は、新日本製鐵株式会社製スーパーニッケルの、調質度T2、めっき層厚み3μmミニマム保証、表面仕上げ:B、板厚:0.25mmの製品鋼板を、片面を研削して総厚みを所定の厚みまで減厚し、使用した。めっきの残存する面を内面とした。金属種としてはSNという略号で示した。
【0085】
各金属箔に、表1に示す所定の内面用樹脂フィルムを重ねて、200℃、1MPa、1分の条件でホットプレスし、ラミネート金属箔を製造した。
【0086】
各樹脂は金属箔より大きなサイズで金属箔より樹脂がはみ出す形で貼り、貼り付けた後に金属箔形状にカッターで切断してサンプルの形状を整えた。
【0087】
2枚の同じラミネート金属箔の端面を5mm幅でヒートシールし、端面ヒートシールサンプルを製造した。ヒートシールは、アルミのヒートシールバーを持つヒートシールテスターを用いて、設定温度190℃、圧力0.5MPaで5秒保持後に空冷した。
【0088】
【表1】
【0089】
溶接部健全性の評価には100mm長の辺を端面としてヒートシール・溶接し、溶接後の樹脂健全性の評価のためには、15mm×50mmのラミネート金属箔サンプルを別途製造し、15mm長の辺を端面としてヒートシール・溶接した。
ヒートシールした端面に対して、対向する方向からレーザーを照射して端面を拝み溶接した。レーザーは、光源として日鉄テクノリサーチ社のISL−1000Fを使用し、純Arガスをシールガスに用い、180Wの出力で走査速度2m/分で照射した。レーザー光は溶接部で0.5mm径となるように集光した。
【0090】
溶接端面の外観より、健全溶接長さを測定し、溶接性の評点として、溶接実施長に対する健全溶接長さの割合が、20%未満を評点1、20%以上50%未満を評点2、50%以上90%未満を評点3、90%以上99%未満を評点4、99%以上を評点5とした。評点3以上を合格とした。
【0091】
また、溶接後樹脂健全性評価サンプルは、15mm幅端面ヒートシール・溶接サンプルを、溶接部と逆側で開いてTピール試験を実施し、溶接部手前のヒートシール樹脂の密着性を調べ、溶接を実施しないサンプルと比較して90%以上のヒートシール強度を維持していたものを樹脂健全性A、70%以上90%未満のものをB、70%未満のものをCとして評価した。
【0092】
表1に示すように比重5以上、融点がヒートシール樹脂の分解温度より300℃以上高い金属箔を用いた本発明ラミネート金属箔は、溶接性が良好で、樹脂も健全であった。
【0093】
実施例2
本発明による構造のセルケースにおいて、従来型のセルケースよりも、外環境から侵入する水蒸気量が抑制できることを確認する試験を実施した。2枚のラミネート金属箔の間に、液保持用の空間確保のためのポリプロピレン製小ブロックと共にリチウム電池用電解液を入れて、4辺をヒートシールした比較試験体となる模擬セルを作製した。さらに同じ構造の模擬セルを、ヒートシールの外部端で4辺をレーザー溶接により金属シールした、本発明構造の試験体となる模擬セルを作製した。これらを高温高湿度の環境で保持する恒温恒湿試験を実施し、一定期間後に内部水分量を測定して、水分(水蒸気)侵入挙動を調査した。
【0094】
試験体は、金属箔としてニラコ社の純アルミニウム箔(型番:AL−013265、厚み50μmt)及び、新日鐵マテリアルズ社のSUS304ステンレス箔100μmtを使用した。
【0095】
外面フィルムとしてユニチカ株式会社製エンブレットPET#12(厚み12μmの2軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム)を用い、金属箔表面にウレタン系接着剤(東亜合成株式会社製アロンマイティPU7000D)を塗布し、外面フィルムを重ねて、0.1MPa、25℃、90分の硬化条件で圧着した。
ヒートシール用樹脂である内面側の樹脂は、実施例1で用いた内面樹脂Aを使用し、同じ方法で金属箔に密着させてラミネート金属箔を作製した。
【0096】
試験体は、150mm×150mmの四角形にラミネート金属箔を切断したもの同種2枚を一組とし、まず、その3辺を5mmあるいは10mm幅でヒートシールして袋状とした。30mm×30mm大で1mm厚のポリプロピレン片を、袋状の試験体の未シールの1辺より、2枚のラミネート金属箔の間に挿入した。このポリプロピレン片は、150mm×150mmの面内中央近傍に保持し、その周辺の箔と箔の間に空隙を確保して電解液を入れるためのものである。
露点−80℃以下の乾燥アルゴンガスで置換したグローブボックス内で、各試験体それぞれに3.5gの電解液を空隙に注入し、残りの1辺を他の三辺と同じ幅でヒートシールして、全周の連続したヒートシールにより、密封した模擬セル試験体とした。
【0097】
本発明の構造を模擬した試験体としてはさらに、上記の模擬セルを4辺レーザー溶接して作製した。アルミニウム箔を金属箔に使用した試験体は溶接できなかったので、本発明構造の試験体はステンレス箔を金属箔に使用したものである。試験体の水準を表2に示す。
【0098】
電解液は模擬試験のため、リチウム塩は含まず、炭酸エチレンと炭酸エチルメチルを等容量混合した溶媒を使用した。
【0099】
溶接は、ヒートシールした端面に対して、対向する方向からレーザーを照射して端面を拝み溶接した。レーザーは、光源として日鉄テクノリサーチ社のISL−1000Fを使用し、純Arガスをシールガスに用い、180Wの出力で走査速度2m/分で照射した。レーザー光は溶接部で0.5mm径となるように集光した。
【0100】
【表2】
【0101】
恒温恒湿試験は楠本化成株式会社恒温恒湿槽HIFLEX FX724Pに、全試験体を同時に入れ、35℃で90%RHの条件で保持した。所定時間の恒温恒湿試験後、露点−80℃以下の乾燥アルゴンガスで置換したグローブボックス内で、ラミネート金属箔を切断して内部の電解液を取り出し、電解液中の水分含有量を三菱化学アナリテック社の水分気化装置CA−100を用いて測定した。
【0102】
図7に試験結果を、恒温恒湿試験経過時間を横軸に、電解液中の水分量を縦軸にしてグラフで示す。
【0103】
図7で明らかなように、溶接していない水準B、C、Dが経過時間と共に水分量が増加しているのに対して、溶接を施した本発明構造である水準Aでは、時間が経過してもほとんど水分量が増大せず、顕著な水分侵入バリア性を示した。
【0104】
実施例3
金属箔の厚みの影響を調査するために、種々の厚みの金属箔を使用し、表3に示す水準で、実施例1と同じ溶接性の試験、及び実施例2と同じ水分侵入バリア性の試験を実施した。ただし、水分侵入バリア性の試験においては、恒温恒湿試験経過時間1400時間後の侵入水分量で、30ppm以下のものを評点6、30ppmを超えて50ppm以下のものを評点5、50ppmを超えて100ppm以下のものを評点4、100ppmを超えて150ppm以下のものを評点3、150ppmを超えて200ppm以下のものを評点2、200ppmを超えるものを評点1とし、評点3以上を合格とした。
金属箔の厚みによって、若干の溶接性や樹脂健全性のばらつきは生じたが、いずれも良好に溶接出来た。溶接性や樹脂健全性のばらつきに応じて、侵入水分量は若干ばらついたが、いずれも設定した評点以上の水分侵入バリア性を示した。
【0105】
【表3】
【符号の説明】
【0106】
A−A’ 電極タブの無い電池セル断面のための切断線位置を示す線(破線)
B−B’ 電極タブのある電池セル断面のための切断線位置を示す線(破線)
1 レーザー溶接用ラミネート金属箔
2 金属箔
3 ヒートシール樹脂
4 蓄電セル部分(蓄電素子)
5 電池セルを収納するエンボス加工部
6’ 電池セルを外界と遮蔽するためのヒートシール部
6” 電極タブシール材
7 レーザー溶接部(金属封止部)
7‘ 溶接部
8 溶接用レーザー光
9 外面樹脂フィルム
10 金属箔(電極タブ)
22 シール部の総経路長さ
23 ヒートシール部の経路長さ
24 埋込みレジン
27 溶接欠陥
27‘ 溶接欠陥の位置(外部からは見えない)
28 溶接治具
【国際調査報告】