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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2013年9月19日
【発行日】2015年8月3日
(54)【発明の名称】植物栽培装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20060101AFI20150707BHJP
   B05B 7/04 20060101ALI20150707BHJP
【FI】
   A01G31/00 601C
   B05B7/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
【出願番号】特願2014-504549(P2014-504549)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2012年3月14日
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN
(71)【出願人】
【識別番号】390002118
【氏名又は名称】株式会社いけうち
(74)【代理人】
【識別番号】100072660
【弁理士】
【氏名又は名称】大和田 和美
(72)【発明者】
【氏名】池内 博
(72)【発明者】
【氏名】大西 憲男
(72)【発明者】
【氏名】平松 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】片岡 大輔
(72)【発明者】
【氏名】彦坂 陽介
【テーマコード(参考)】
2B314
4F033
【Fターム(参考)】
2B314NA18
2B314NA19
2B314NA33
2B314NC01
2B314NC24
2B314PB22
2B314PB32
2B314PB34
2B314PB37
2B314PB39
2B314PB44
2B314PB49
2B314PB64
4F033QA05
4F033QB02Y
4F033QB03X
4F033QB12Y
4F033QB17
4F033QD02
4F033QD07
4F033QD14
4F033QE01
4F033QE09
4F033QE30
(57)【要約】
植物栽培装置において、供給する養液や水の使用量を低減する。栽培植物の根部が下垂する中空の栽培ボックス内に、養液をレーザー法での測定値で平均粒子径5〜10μmの霧として噴霧すると共に噴霧量が2〜3リッター/時間であるノズルを備え、前記栽培ボックスの内容積がノズル1個当たり最大6mの割合となるように、該栽培ボックスの形状に応じて前記ノズルの個数および配置位置を設定し、かつ、該ノズルから噴霧で前記栽培ボックス内の湿度が95%以上100%以下となるように前記ノズルの制御装置を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培植物の根部が下垂する中空の栽培ボックス内に、養液をレーザー法での測定値で平均粒子径5〜10μmの霧として噴霧すると共に噴霧量が2〜3リッター/時間であるノズルを備え、
前記栽培ボックスの内容積がノズル1個当たり最大6m3の割合となるように、該栽培ボックスの形状に応じて前記ノズルの個数および配置位置を設定し、かつ、該ノズルから噴霧で前記栽培ボックス内の湿度が95%以上100%以下となるように前記ノズルを制御する制御装置を備えていることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項2】
前記ノズルとして二流体ノズルを用い、該二流体ノズルはノズル本体の気体供給路および液体供給路にはいずれも供給路途中に流路断面積を縮小したオリフィスを設けず、噴射噴側に向けて流路断面積を縮小して流体圧を高め、かつ、該気体供給路と液体供給路をノズル本体の先端に開口する混合流体噴射穴に面する気液混合部で合流させ、かつ、
前記ノズル本体の先端側の外面から1本のJ形状の衝突用ピンを突設し、該衝突用ピンは軸線方向に延在する脚部と、該脚部の先端から前記混合流体噴射穴に向けて折り返す衝突部を備え、該衝突部に前記混合流体噴射穴から噴射する混合流体が衝突して超音波が発生し、該超音波で衝突した液滴が微粒化される超音波二流体ノズルを駆動源とする項1に記載の植物栽培装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記ノズルからの霧の噴霧量および流速と、前記栽培ボックスの容積と、前記栽培ボックス内の湿度との相関関係を予め測定したデータに基づいて、前記栽培ボックス内を前記湿度範囲となるように霧噴霧量を設定して供給するものであり、
かつ、前記栽培ボックスの長手方向の一端側の内面に前記ノズルを設置して他端側に向けて噴射させ、該噴射により栽培植物の根部に揺動を与え、かつ、前記一端側から他端側にかけて上向きに傾斜させた傾斜板を栽培ボックスの内面と隙間をあけて配置している請求項1または請求項2に記載の植物栽培装置。
【請求項4】
前記栽培ボックス内には、前記ノズルを設置側と対向する他端側の内面にファンを設置し、前記ノズルからの噴霧が傾斜板の上面に沿って他端へと流通した後に他端で下向きに向きをかえて前記傾斜板の下面に沿って循環させる構成としている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の植物栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物栽培装置に関し、詳しくは、ノズルより養液を栽培植物の根圏に噴霧する霧栽培において、最適ノズルから最適条件で噴霧するものである。
【背景技術】
【0002】
植物栽培装置は従来より多数提案されており、そのうちで、特開2008−104377号公報等で提案されている霧栽培方法は、栽培植物に養液を含む霧を噴霧している。この種の霧栽培方法は、養液の吸収率を高め、生育を早めることができると共に、自動化、省力化ができる等の利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−104377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1の霧栽培では、加湿器を用いて養液を含む霧を発生させている。この加湿器から発生する微細な霧の量が余りにも少量であるため、趣味の園芸の域にとどまり、実営業には不適である。
【0005】
霧栽培方法ではノズルから養液を噴霧しているが、噴霧した養液の粒径が大きいと液滴として落下しやすく、植物の根圏空間に滞留する時間が短くなり、養液の吸収率が悪くなる。よって、養液の粒径を小さくして、平均粒径が10μm以下のドライフォグとすると、滞留時間が長くなり、植物への養液吸収率を高めることができ、その分、養液コストを下げることができる。
【0006】
しかしながら、噴霧する粒径を10μm以下と微細化すると、ノズル内部に設けるオリフィスを小径化する必要があるため、ノズルは構造的に目詰りが発生しやすくなる。特に、液肥を希釈した養液は粘性が増すため目詰まりが発生しやすい。ノズルに目詰まりが発生して養液の供給が中断または所要量より少なくなると植物の成長に直ちに影響を及ぼすこととなる。かつ、ノズルに目詰まりが発生していないか常時監視してメンテナンスする必要があり、作業手数がかかる問題がある。
【0007】
さらに、一般的に、ノズルから噴射する噴霧の粒径が微細化すればするほど発生する噴霧量は激減する。特に、粒径が5μm未満のドライフォグを噴霧するノズルは、通常、時間当たりの噴霧量が極端に少なくなる。養液の噴霧量は植物の成長に直接的に影響を及ぼし、1個のノズルで栽培できる植物の本数が激減することになる。かつ、植物が必要とする養液量は成長に伴って増加し、植物の本数が増えれば増える程、大量の噴霧が要求される。よって、植物栽培に粒径が5μm未満のドライフォグを噴霧するノズルを用いると多数個のノズルが必要となり、設備及び運営コストが高くなり営農が不可能になる問題がある。
【0008】
前記のように、霧栽培において平均粒径が10μm以下のドライフォグを噴射するノズルを用いると、噴射されて養液を含む微粒子の滞留時間を長くでき、植物への吸収率を高めて肥料コストを低減でき、かつ、落下する液滴が少ないため排水処理も必要でない利点がある。しかしながら、該ドライフォグを噴射するノズルでは目詰まりが発生しやすいためメンテナンスの手間がかかり、ランニングコストが高くなる問題がある。特に、平均粒径を5μm未満とすると噴霧量が極端に少なくなるため、必要とするノズルの個数が増加し、設備コストおよびランニングコストが高くなる問題がある。
【0009】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、霧栽培において、栽培植物にとって適切な条件でノズルから養液を供給できるようにして、植物栽培装置を用いて営農を可能とすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、栽培植物の根部が下垂する中空の栽培ボックス内に、養液をレーザー法での測定値で平均粒子径5〜10μmの霧として噴霧すると共に噴霧量が2〜3リッター/時間であるノズルを備え、
前記栽培ボックスの内容積がノズル1個当たり最大6m3の割合となるように、該栽培ボックスの形状に応じて前記ノズルの個数および配置位置を設定し、かつ、該ノズルから噴霧で前記栽培ボックス内の湿度が95%以上100%以下となるように前記ノズルを制御する制御装置を備えていることを特徴とする植物栽培装置を提供している。
【0011】
前記のように、本発明で用いるノズルは養液を平均粒子径5〜10μmのドライフォグとして噴霧できるノズルを用いている。
前記平均粒子径はレーザー回折法を用い、ノズルの噴口から30cmの位置で測定している。
平均粒径を10μm以下としているのは、ドライフォグの養液の霧の滞留時間を増加させて栽培ボックス内を近飽和状態にできることによる。平均粒径が10μmを越えると、容易に落下し、かつ粒子同士の付着凝塊作用もあって粒子径が肥大化して落下が促進され、霧粒として空中浮遊が困難となる。これに対して、粒子径が小さくなればなる程、即ち、10μm以下のドライフォグとすれば、湿度を湿度95%以上に維持できる空間を広げることができる。
一方、平均粒径の下限を5μm以上としているのは、5μm未満のノズルは目詰まりが発生しやすくなり、かつ、1個のノズルからの噴霧量が極端に少なくなるため栽培ボックス内におけるノズル1個当たりの容積が小さくなる。よって、栽培ボックスに設置する必要なノズルの個数が増加し、設備コストおよびランニングコストが増加する。
【0012】
また、前記ドライフォグを噴霧するノズルは、平均粒子径5〜10μmのドライフォグを2〜3リッター/時間の噴霧量で噴射できるノズルとしている。該噴霧量でドライフォグを噴霧することにより、ノズル1個当たりの容積を最大6m3まで広げることができる。言い換えれば、6m3の空間あたり1個のノズルを設置すると、該ノズルからのドライフォグにより該空間内を湿度95〜100%とすることができ、前記設定空間に植え付けた栽培植物の根に十分に養液を供給することができる。前記湿度は97%以上として良く、また、栽培植物の成長に応じて設定湿度を97%以上に変化させてもよい。
前記ノズル1個あたりの容積が最大6m3であることは、ノズルから噴霧する霧の流速は0.2m/s以上が必要で、該流速未満であると植物が大きく成長しないことが知見したことによる。6m3を越えると、ノズルから噴射される霧の流速は0.2m/sを下回ることから、前記ノズル1個当たりの容積を最大6m3としている。
【0013】
前記制御装置は、ノズルからの霧の噴霧量および流速と、栽培ボックスの容積と、前記栽培ボックス内の湿度との相関関係を予め測定したデータに基づいて、栽培ボックス内の湿度が95%以上100%以下となるようにノズルからの噴霧量を設定してノズルを制御している。
【0014】
ノズルから噴霧する養液でボックス内部を95%以上とすると、該ボックス内部に垂下する栽培植物の根に常時養液を供給して栽培植物の成長を促進できる。その結果、栽培植物の収穫回数が増加し、営農用の植物栽培装置として有効となる。
【0015】
本発明の植物栽培装置は営農用を対象としているため、最も経済的と判断できる栽培ボックスとして例えば長さ6m、巾1m、高さ0.4mの大型栽培ボックスが好適に用いられる。この大型の栽培ボックスの中空内に平均粒子径が5〜10μmのドライフォグを均等に充満させて湿度95%以上とし、かつ、該95%以上を保持できるように、前記噴霧量が2〜3リッター/時間のノズルを用いており、該ノズルを用いることでノズルの設置個数を低減できる。
【0016】
前記ノズルとして二流体ノズルを用い、ノズル本体の気体供給路および液体供給路にはいずれも供給路の途中に流路断面積を縮小したオリフィスを設けず、噴口側に向けて流路断面積を縮小して流体圧を高め、かつ、該気体供給路と液体供給路をノズル本体先端に開口する混合流体噴射穴(噴口)に面した気液混合部で合流させ、かつ、
前記ノズル本体の先端側の外面から1本のJ形状の衝突用ピンを突設し、該衝突用ピンは軸線方向に延在する脚部と、該脚部の先端から前記混合流体噴射穴に向けて折り返す衝突部を備え、該衝突部に前記混合流体噴射穴から噴射する混合流体が衝突して超音波が発生し、該超音波で衝突した液滴が微粒化される超音波二流体ノズルを駆動源としている。
【0017】
本発明の植物栽培装置で用いる前記二流体ノズルは養液と空気と混合した霧の平均粒子径を5〜10μmに小さくできるとともに噴霧量を2〜3リッター/時間と多くできる。また、該二流体ノズルを前記のようにオリフィスを設けていない構造とすることで、目詰まりが発生しにくい構造となり、かつ、ノズル本体から噴射した霧を衝突用ピンで衝突させることで平均粒径を5〜10μmのドライフォグとすることができる。
【0018】
即ち、本発明の前記二流体ノズルでは、気体供給路および液体供給路の途中に流路断面積を小さくしたオリフィスを設ける代わりに、ノズルの噴口に面する気液混合部に向けて流路断面積を縮小しているため、流体圧を次第に高めることができる。このように、流路に横断的なオリフィスを設けていないため、オリフィスを挟む流路が拡大せず、乱流が発生する部分がない。その結果、気体供給路および液体供給路の内周面に流体中の異物が付着し、それが堆積して目詰まりが発生するのを低減、防止できる。
【0019】
さらに、前記二流体ノズルは衝突用ピンをノズルから突設しているため、ノズルの噴口から噴射する混合流体を衝突用ピンの衝突面に衝突させて、超音波振動を発生させ、噴射された液滴を微細化することができる。このように、ノズルから噴射した液滴をさらに微細化することにより、噴霧中の粗大粒子の微細化能力を高めることができる。
前記衝突用ピンの脚部の軸直角断面形状は、前記ノズルの中心軸線方向に向けて収斂する流線形状または三角形とし、該衝突用ピンの折り返した先端に向けて拡径した形状としていることが好ましい。前記構成とすると、衝突用ピンの脚部および衝突部に液滴が付着するのを低減、防止できる。
【0020】
本発明の植物栽培装置で用いる前記制御装置は、前記ノズルからの霧の噴霧量および流速と、前記栽培ボックスの容積と、前記栽培ボックス内の湿度との相関関係を予め測定したデータに基づいて、前記栽培ボックス内を前記湿度範囲となるように霧噴霧量を設定して供給するものであり、
かつ、前記栽培ボックスの長手方向の一端側の内面に前記ノズルを設置して他端側に向けて噴射させ、該噴射により栽培植物の根部に揺動を与え、かつ、前記一端側から他端側にかけて上向きに傾斜させた傾斜板を栽培ボックスの内面と隙間をあけて配置していることが好ましい。
【0021】
また、栽培ボックスには、前記ノズル設置側と対向する他端側の内面にファンを設置し、前記ノズルからの噴霧が傾斜板の上面に沿って他端へと流通した後に他端で下向きに向きをかえて前記傾斜板の下面に沿って循環させる構成としていることが好ましい。
即ち、栽培ボックスが大型ボックスであると、ボックス内部で霧を均等に充満させるには噴霧する霧に所要の流速を付与する必要がある。よって、栽培ボックスが大型であると、ファンを設置して霧に所要の流速を付与して測定している。なお、栽培ボックスが比較的小型で供給する霧の流速で栽培ボックス内に霧を均等に充満されることができれば、ファンは必須ではない。また、栽培ボックスが大型であっても、ノズルの設置個数を増やすとファンは必須ではない。
【0022】
前記栽培ボックスの上面開口を、栽培植物の根部と地上部との境界をフロート支持する支持材で閉鎖して前記中空部を形成している。
前記ノズルからの噴霧は間欠的または連続的に自動または手動のオン・オフの切り替え操作で行う構成としていることが好ましい。
さらに、前記栽培ボックスの底部に滞留した養液の残留を養液槽に回収し、新しい養液と混合して再噴霧養液としていることが好ましい。
【0023】
本発明の植物栽培装置では、サラダナ、リーフレタス、ベビーリーフ、ミズナ、大葉、ケーキキャベツ、ハーブ、バジルなどの葉菜、トマト、イチゴ、メロン、マンゴーなどの果菜、ジャガイモ、ラディッシュなどの根菜、豆、粟、麦、稲等の穀物等の栽培が可能であり、花卉類を栽培することもできる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の植物栽培装置では、栽培植物の根部を垂れ下げる栽培ボックスの中空部内に、平均粒径が5〜10μmのドライフォグを2〜3リッター/時間の噴霧量で噴霧できるノズルを用いて霧栽培を行うため、栽培ボックス内でのノズル1個当たりの容積を最大6m3まで大きくしながら、湿度95%の状態に保持できる。よって、密植や連作が可能なため、栽培植物を大量かつ迅速に生育でき、営農用の栽培装置として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】(A)は本発明の実施形態の植物栽培装置の栽培ボックスの一例を示す断面図、(B)は(A)のB−B線の拡大断面図である。
図2】植物栽培装置の全体の斜視図である。
図3】前記栽培ボックスの表面に配置して栽培植物を支持する支持材を示す平面図である。
図4】栽培ボックスと霧供給装置の関係を示す図面である。
図5】前記栽培ボックス内に設置するノズルを示し、(A)は正面図、(B)は断面図である。
図6】(A)は図5(B)のA−A線断面図、(B)は図5(B)のB−B線断面図である。
図7】(A)〜(C)は測定条件を変えて測定した結果を示す表である。
図8】前記測定試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の植物栽培装置の実施形態を図面を参照して説明する。
植物栽培装置は図1(A)(B)に示すように、上面開口の直方体状の栽培ボックス1を備えている。各栽培ボックス1の大きさは多数の栽培植物Pを長さ方向Lおよび幅方向Wに一定間隔をあけて栽培できる大きさとしている。本実施形態の栽培ボックス1は、長さLが6m、幅Wが1m、高さHが0.4mであり、よって、栽培ボックス1の中空部の容積は2.4m3である。
【0027】
複数の栽培ボックス1は図2に示すように、搭載用フレーム10に上下複数段に搭載して1つのユニットUとし、植物工場内、ビニールハウス、あるいは屋外に複数ユニットを設置している。なお、家庭で庭やベランダに設置してもよい。
【0028】
栽培ボックス1の上面開口1hを支持材2で閉鎖し、栽培ボックス1の内部に略密閉された中空部3を形成している。支持材2は発泡スチロールからなる基板20と、該基板20の上面に固着する遮熱板21からなる。図3に示すように、前記支持材2に植付穴22を所要間隔をあけて千鳥配置状に設け、該植付穴22に図1(B)に示すように、栽培植物Pを植え付けたスポンジ材4を押し込んで支持材2で支持し、中空部3内に支持材2でフロート支持された栽培植物Pの根部Prを垂れ下げている。本実施形態では1台の栽培ボックス1の支持材2に植付穴22を168個設け、168株植えるようにしている。
支持材2に予め設ける植付穴22は、植物の種類、同一種類でも成長時の大きさに応じて、長さ方向Lと幅方向Wの配列を変えて、植付穴22の間隔を相違させている。
【0029】
前記栽培ボックス1の容積が2.4m3の中空部3を囲む図1中で左側壁1bの内面の幅方向Wの略中央位置に、1個の噴霧用のノズル5を取り付けている。該ノズル5は図5および図6に示す二流体ノズルとし、肥料を水により所要倍率で希釈した養液を空気と混合して平均粒径5〜10μmのドライフォグの霧Mを噴霧できるスプレーノズルである。
【0030】
前記ノズル5は圧力空気供給管7bとサクションチューブからなる養液供給管7aを接続している。圧力空気供給管7bから導入する空気により養液供給管7aから養液を吸引し、ノズル本体5aの内部で混合し、ノズル本体5aの先端に設けた噴口5bから噴射している。該噴口5bと対向位置の外部に噴口からの噴霧が衝突して超音波振動を発生させる衝突用ピン51からなる外部衝突部材を有する構成とし、超音波振動で粒子をより微細化している。該二流体ノズル5は2〜3リッター/時間で平均粒子径5〜10μmの超微細な霧の噴霧が行えるノズルである。
【0031】
本発明で用いる前記ノズル5の構造を図5(B)および図6(A)(B)に基づいて詳述する。
ノズル5は中心軸線Oを軸線とする内筒52と外筒53を備え、内筒52の中空部を気体供給路54とし、内筒52と外筒53の間に液体供給路55を設けている。
内筒52の一端開口を気体供給路54の流入口とし、他端に気体噴射穴54bを設けている。図5(B)に示すように、気体供給路54では、流入口から気体噴射穴54bにむけて流路断面積を減少し、所要圧力で流入する空気Aの圧力を高めているが、気体噴射穴54bに達するまでの気体供給路54にオリフィスを設けていない。
【0032】
前記内筒52と外筒53との間に設ける液体供給路55に外筒53の外周面に開口した流入口55cから、肥料を水により希釈した養液からなる液体Qを導入している。該環状の液体流路55の軸直角方向の流路断面積は、先端側の気液混合部58に向けて漸次縮小させ、該液体供給路55の流路途中にもオリフィスを設けていない。なお、液体の流入口を外筒外周面に設けず、外筒の軸線方向の先端に設けてもよい。
【0033】
前記外筒53の先端中央に混合流体噴射穴からなる噴口5bを設けている。該噴口5bの中心線と前記気体噴射穴54bとを中心軸線O上に位置させている。この噴口5bと気体噴射穴54bとの間に軸線方向に所要の寸法をあけ、この空間部分を前記気液混合部58としている。
【0034】
前記気液混合部58の中心に、気体噴射穴54bより空気Aが噴射されると共に、該噴射される空気Aにより、外周の液体流路55より液体Qを効率よく吸引させるようにしている。このように、空気Aと液体Qを気液混合部58内で衝突混合し、混合流体を噴口5bより外部に噴射している。
【0035】
さらに、前記 外筒53の先端側の外面から1本のJ形状の衝突用ピン51を突設し、該衝突用ピン51に噴口5bから噴射する混合流体を反発させた混合流体と噴射混合流体を衝突させて超音波振動を発生させ、該超音波振動により噴射する混合流体の液滴を更に微細化している。
【0036】
前記衝突用ピン51は、外筒53の先端中央に設ける噴口5bを囲む外周位置から突設している。
衝突用ピン51は軸線方向に延在する脚部51aと、脚部51aの先端から湾曲して噴口5bに向けて折り返す衝突部51bを備え、図6(B)に示すように、衝突部51bの先端はフラットな衝突面51cとしている。該衝突部51bの中心はノズル中心軸線O上に位置し、噴口5bと同一軸上に配置すると共に該噴口5bとの間に所要寸法をあけている。この寸法は、 噴口5bから噴射する混合流体が衝突部51bの衝突面51cに衝突して超音波を発生させ、該超音波で衝突した液滴が微粒化できる寸法としている。
【0037】
また、衝突用ピンの脚部51aの軸直角断面形状は、図6(A)に示すように、ノズル中心軸線Oの方向に向けて収斂するように傾斜させた三角形状としている。該傾斜角度は35度以下とすることが好ましい。このように、液滴が飛散してくる側を収斂した形状とすることで脚部51aに液滴が付着しにくいようにし、また、液滴が付着しても背面側へとスムーズに流れていくようにしている。
【0038】
さらに、衝突用ピンの脚部51aから折り返し状に設ける衝突部51bは図6(B)に示すように、衝突面51cに向けて拡径した形状とし、該先端衝突面51cを平坦なフラット面としている。
前記のように、衝突部51bは先端の衝突面51cに向けて拡径することで、衝突面51cに衝突した液滴が衝突部51bの外周面に付着しにくくしている。また、衝突面51cを大きくすることで、噴口5bから噴射する混合流体中の粗大な液滴をできるだけ衝突させて微細化している。
【0039】
図4に示すように、栽培ボックス1の側壁1bに取り付ける前記ノズル5から対向する側壁1cに向けてドライフォグを噴霧し、これにより栽培ボックス1の左右両側壁1bと1cとの間に配列した栽培植物Pの根部Prにドライフォグを直接に吹き付け、根部Prを揺らせると共に養液の液滴を根部Prに接触させて養液を吸収させている。
【0040】
また、栽培ボックス1の中空部3内の下部に、図1および図4に示すように、ノズル5の設置側の側壁1b側のノズル5の下部から側壁1c側に向けて上向きに傾斜する傾斜板8を配置している。傾斜板8の長さは栽培ボックス1の長さLより若干短くし、傾斜板8の長さ方向の両端と栽培ボックス1の側壁1b、1cの内面との間にそれぞれ循環流発生用の隙間9A、9Bを設けている。これにより、ノズル5から噴射するドライフォグの霧Mが傾斜板8の上面に沿って流れた後に循環流発生用の隙間9Aを通って傾斜板8の下面側へと流れ、循環流発生用の隙間9Bから傾斜板8の上面側へと流れ、傾斜板8を挟んで循環できるようにしている。
【0041】
さらに、前記側壁1c側で且つ前記傾斜板8の下部にファン11を設置し、傾斜板8の上方を流れる霧Mを下方側へ還流させ、霧Mが傾斜板8を囲んで栽培ボックス内を循環するようにしている。かつ、この栽培ボックス1内を循環する霧Mに所要の流速、本実施形態では0.7m/s以上の流速を付与している。
【0042】
前記ノズル5からの噴霧の開始および停止は、栽培ボックス1の外部に配置した制御装置で自動的に行い、前記圧力空気供給管7bへの空気の供給と停止を図3に示すように、電磁開閉弁43を開閉して行っている。
詳細には、コンプレッサー42にエアータンク46を介在させて接続した配管45と前記圧力空気供給管7bとを電磁開閉弁43を介して接続し、該電磁開閉弁43を制御装置81からの信号で間欠的に開閉している。
養液供給側では、液肥タンク47にポンプ48を介在させて接続した配管49を供給液タンク30の内に配置したフロート弁31と接続している。供給液タンク30内のフロート弁31は供給液タンク30内に貯溜する養液に浮上させ、設定量以下となるとポンプ48を駆動して配管49から養液を供給液タンク30に供給するようにしている。
【0043】
さらに、栽培ボックス1に設けた排液口34から栽培ボックス1内で結露した養液を排出し、該排出した養液を供給液タンク30で受け止めて回収している。該供給液タンク30に前記養液供給管7aとなるサクションチューブを垂下し、その下端にストレーナ32を取り付け、ノズル5内を流れる空気で養液をストレーナ32を通して吸い上げている。
【0044】
前記のように、電磁開閉弁43をオン・オフ制御し、または、コンプレッサー42をオン・オフにして、ノズル5からの噴霧を開始および所要時間後に停止して、栽培ボックス1内の湿度を95%以上100%以下の範囲で設定した湿度となるように保持している。
【0045】
前記ノズル5からの噴霧量は、栽培ボックスの容積、噴霧量、噴霧速度および栽培ボックス内の湿度の相関関係を予め測定しておき、該測定したデータに基づいて、栽培ボックス1内の湿度を95%以上100%以下となるに必要な前記ノズル5からの1日の噴霧量を求めている。この求めた噴霧量に応じて、前記制御装置81から電磁開閉弁43に開閉信号を送付して、間欠噴霧または連続噴霧を行っている。
【0046】
「栽培ボックスの長さ、ファン台数、温度、湿度、流速の相関関係の測定試験」
栽培ボックス1として、長さLを9mとし、幅Wを1m、高さHを0.4mで容積が3.6m3の試験用栽培ボックスを用いた。該栽培ボックス1内の長さ方向の一端内面にノズル5を設置し、他端側にファン11を設置した。ノズル5は、平均粒子径5〜10μmの霧を2.4リッター/時間とし噴霧できる能力を有するものである。
【0047】
測定条件は、図7の表(A)〜(C)に示す条件1〜3に変えて行った。各条件1〜3はファンの設置台数を変えた。ノズル5から噴霧量2.4リットル/時間で連続噴霧した。
【0048】
前記測定実験による栽培ボックス1内の湿度変化を図8に示す。噴霧を連続噴霧して、噴霧量を2.4リッター/時間としたため、ノズル位置から5.4m位置での湿度を99%および98%に出来ると共に、9mの位置での湿度を97%以上にできた。
かつ、ファンの設置台数を増加するとボックス内の湿度を高めることができることがわかった。
よって、栽培ボックス1の長さを9mで、容積が3.6m3の中空部に、1個のノズルからの噴霧量を2.4リッター/時間とすると、栽培ボックス1内の湿度を確実に97%以上とすることができることが確認できた。
【0049】
前記構成とした植物栽培装置では、栽培ボックス1の上面開口を支持材2で閉鎖して、中空部3を略密閉し、該中空部3の上方に配置する支持材2に長さ方向Lおよび幅方向Wに一定間隔をあけて設けた植付穴22に栽培植物Pを植え付けたスポンジを嵌合し、該栽培植物Pの根部Prを中空部3内に上方から垂れ下がった状態としている。
2.4m3の容積の中空部3内に、ノズル5から2〜3リッター/時間で養液を供給することで中空部3内を湿度95%以上100%以下に保持している。
詳細には、ノズル5から噴射する霧Mの噴射圧およびファン11から供給する風により0.7m/s以上の速度で霧Mを、傾斜板8の上面側に沿ってノズル5の設置側の側壁1bから対向する側壁1c側へと流し、ついで、ファン11で吸引されて、傾斜板8の下面側で側壁1c側から側壁1b側へと流している。このように、中空部3内で霧Mを滞留させずに循環流として、栽培植物Pの根部Prを揺らせながら霧Mを接触させて、養液を根部Prに吸収させている。
【0050】
特に、ノズル5から噴霧の平均粒子径を5〜10μmの超微細な霧であるドライフォグとしているため、水滴として凝集して落下するのを防止でき、大型の栽培ボックス1内を湿度95%以上100%以下の近飽和状態に保持することができる。このように微細化した養液の霧とすることで、栽培植物が養液を吸着しやすくし、同時に空中の酸素、窒素の触取も容易に行えるようにしている。かつ、近飽和状態を維持することができるため、栽培植物が常時養液を吸着することで、栽培植物の成長を促進させて経済的な営農を可能にしている。
かつ、中空部内に養液を含む霧を充満させることで、養液を無駄なく植物に吸収させることができるため、肥料および水の供給量を低減でき、密植栽培や連作を忌避する植物の栽培も可能にでき、コストの低減を図ることができる。かつ、養液や水の貯留設備、配管設備を簡素化でき、設備コストも低減できる。
【0051】
特に、前記二流体用のノズル5は、気体供給路54は流入口から気体噴射穴54bに達するまでオリフィスを設けていないため、目詰まりの発生を防止できるとともに、乱流が発生せず、かつ、気体供給路54に面した角部もないため、圧力空気Aに含まれる異物が気体供給路54の内周面や角部に付着するのを防止できる。よって、気体供給路54に目詰まりが発生するのを低減、防止できる。
液体供給路55側も同様で流入口55cから気液混合部58に達するまで、オリフィスを設けていないため、液体Qは気液混合部58に達するまで乱流は発生しない。よって、液体Qに含まれる異物が液体供給路55を囲む内周面に付着して目詰まりが発生するのを低減、防止できる。
【0052】
また、気液混合部58へ向けて液体流路55および気体供給路54ともに流路断面積を漸次縮小しているため、液圧を漸次高めることができる。すなわち、流路に横断的に設けるオリフィスを設けていないが、オリフィスと同様に圧力を高める機能を備える。かつ、気液混合部58の中央に噴射する空気Aによる吸引力が液体Qに作用し、液体Qを気液混合部8に高速で流入させて空気Aと衝突混合させ、これにより液滴の微粒化を図ることができる。
【0053】
さらにまた、ノズル5では、衝突用ピン51を突設して噴射する気液混合流体を衝突させて超音波振動を発生させ、この超音波振動で液滴を微細化している。かつ、衝突用ピン51自体に液滴が付着しないようにしているため、衝突用ピン51に付着した液滴が、そのまま吹き飛ばされて粗大粒子が噴霧される不具合の発生を防止できる。
このように、超音波振動で噴射する液滴を微細化しているため、粗大粒子が噴霧されず、粗大粒子の噴霧による効率悪化を防止できる。
【0054】
本発明は前記実施形態に限定されず、栽培ボックス1の容積を増大する場合、ノズル5の設置個数、ファン11の設置個数を増加させ、栽培ボックス1内の湿度が95%以上に保持できるようにしている。
栽培ボックス1の長さが大となると、長さ方向の中間位置の両側壁または上面に下流側に向けて噴霧するノズル5を配置している。いずれの場合も、栽培ボックス1内の中空部に、容積6m3当たり1個のノズル5を設置している。
【0055】
また、栽培ボックス1の上面開口を塞ぐように被せる支持材2に設ける植付穴22は植物の種類や成長時の大きさに応じて配置を変えたり、 間隔を変えることが好ましい。
さらに、栽培植物を植え付ける栽培ボックスの上面の形状を三角形状、両側に階段を設けた形状としてもよい。このように、高低差を設けると栽培植物に均等な光量(屋外栽培やビニルハウス内では太陽光、植物工場内では照明光)を付与することができる。
【0056】
さらに、本発明で用いる二流体ノズルは、前記図5および図6に示すノズルに限定されず、目詰まりが発生しやすいオリフィスをノズル本体内の流路に設ける代わりに流路を噴射側に向けて次第に縮小して流体圧を高め、かつ、噴口から噴射した噴霧を衝突用ピンに衝突させて微細化する構成であれば好適に用いられる。
【符号の説明】
【0057】
1 栽培ボックス
2 支持材
5 ノズル
8 傾斜板
22 植付穴
81 制御装置
P 栽培植物
Pr 根部
M 養液を含む霧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】