特表-13146383IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2013年10月3日
【発行日】2015年12月10日
(54)【発明の名称】金属酸素電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 12/08 20060101AFI20151113BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20151113BHJP
   H01M 4/42 20060101ALI20151113BHJP
   H01M 4/46 20060101ALI20151113BHJP
   H01M 4/60 20060101ALI20151113BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20151113BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20151113BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20151113BHJP
【FI】
   H01M12/08 K
   H01M4/38 Z
   H01M4/42
   H01M4/46
   H01M4/60
   H01M4/86 B
   H01M4/90 X
   H01M4/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
【出願番号】特願2013-524178(P2013-524178)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2013年3月15日
(11)【特許番号】特許第5383954号(P5383954)
(45)【特許公報発行日】2014年1月8日
(31)【優先権主張番号】特願2012-77981(P2012-77981)
(32)【優先日】2012年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 覚久
(72)【発明者】
【氏名】田名網 潔
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 文一
(72)【発明者】
【氏名】谷内 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】酒井 洋
(72)【発明者】
【氏名】中田 悟史
(72)【発明者】
【氏名】堀 満央
(72)【発明者】
【氏名】木下 智博
【テーマコード(参考)】
5H018
5H032
5H050
【Fターム(参考)】
5H018AA10
5H018AS03
5H018EE13
5H018EE16
5H018EE17
5H018HH06
5H032AA01
5H032AS01
5H032AS02
5H032AS03
5H032AS09
5H032AS11
5H032EE04
5H032HH00
5H032HH08
5H050AA07
5H050BA20
5H050CA12
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB13
(57)【要約】
サイクル性能を向上することができる金属酸素電池を提供する。
酸素貯蔵材料を含み、酸素を活物質とする正極2と、金属を活物質とする負極3と、該正極2及び該負極3に挟持され、電解液を含む電解質層4とを備え、該酸素貯蔵材料の表面で該正極2の電池反応が起こる金属酸素電池1において、該正極2は、酸素の透過を抑制可能であるとともに金属イオンを伝導可能であって、該酸素貯蔵材料の表面の少なくとも一部を被覆する導電性高分子を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素貯蔵材料を含み、酸素を活物質とする正極と、金属を活物質とする負極と、該正極及び該負極に挟持され、電解液を含む電解質層とを備え、該酸素貯蔵材料の表面で該正極の電池反応が起こる金属酸素電池において、
該正極は、酸素の透過を抑制可能であるとともに金属イオンを伝導可能であって、該酸素貯蔵材料の表面の少なくとも一部を被覆する導電性高分子を含むことを特徴とする金属酸素電池。
【請求項2】
請求項1記載の金属酸素電池において、
前記導電性高分子は、10−12〜10−8cm/(cm・s・Pa)の範囲の酸素透過度を有することを特徴とする金属酸素電池。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の金属酸素電池において、
前記導電性高分子は、前記酸素貯蔵材料の表面に存するときに、2×10−7〜10S/cmの範囲の電気伝導率を有することを特徴とする金属酸素電池。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の金属酸素電池において、
前記導電性高分子は、前記酸素貯蔵材料の表面に存するときに、10−7〜1S/cmの範囲の金属イオン伝導率を有することを特徴とする金属酸素電池。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の金属酸素電池において、
前記導電性高分子は、前記酸素貯蔵材料の表面に存するときに、0.1〜1000MPaの範囲のヤング率を有することを特徴とする金属酸素電池。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の金属酸素電池において、
前記導電性高分子は、ドーパントとしてドデシルベンゼンスルホン酸を含むポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)であることを特徴とする金属酸素電池。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の金属酸素電池において、
前記酸素貯蔵材料は、電池反応に対する触媒能を備えることを特徴とする金属酸素電池。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項記載の金属酸素電池において、
前記酸素貯蔵材料は、YとMnとを含む複合金属酸化物であることを特徴とする金属酸素電池。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか1項記載の金属酸素電池において、
前記正極は、電子伝導性を有する導電助剤を含むことを特徴とする金属酸素電池。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか1項記載の金属酸素電池において、
前記負極は、Li,Zn,Al,Mg,Fe,Ca,Na,Kからなる群から選択される1種の金属、該金属の合金、該金属を含む有機金属化合物又は該金属の有機錯体のいずれかからなることを特徴とする金属酸素電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸素電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸素を活物質とする正極と、金属を活物質とする負極と、該正極及び該負極に挟持され、電解液を含む電解質層とを備える金属酸素電池が知られている。
【0003】
前記金属酸素電池では、放電時には、負極において、金属が酸化されて金属イオンが生成し、該金属イオンが電解質層を伝導して正極側へ移動する。一方、正極においては、酸素が還元されて酸素イオンが生成し、該酸素イオンが前記金属イオンと結合して金属酸化物が生成する。また、前記金属酸素電池では、充電時には、負極及び正極において、前記反応の逆反応が起こる。
【0004】
前記金属酸素電池では、前記金属として金属リチウムを用いると、金属リチウムは理論電圧が高く電気化学当量が大きいことから、大きな充放電容量を得ることができる。また、酸素として空気中の酸素を用いると、電池内に正極活物質を充填する必要がないことから、電池の質量当たりのエネルギー密度を高くすることができる。
【0005】
ところが、空気中の酸素を正極活物質とするために、正極を大気に開放すると、空気中の水分、二酸化炭素等が電池内に侵入し、電解質層、負極等が劣化するという問題がある。そこで、前記問題を解決するために、受光により酸素を放出する酸素吸蔵材料を含む正極と、金属リチウムからなる負極と、該正極及び該負極に挟持され電解液を含む電解質層とを備え、該酸素吸蔵材料に光を導く光透過部を有する筐体に該正極、該負極及び該電解質層が密封されて収容されている金属酸素電池が知られている。(例えば特許文献1参照)。
【0006】
また、前記金属酸素電池の正極材料として、受光が必要な前記酸素吸蔵材料を用いる代わりに、受光を必要としないで、化学的に酸素を内部に吸蔵し放出するか、又は、物理的に酸素を表面に吸着し脱着することができる酸素貯蔵材料を用いることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−230985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、正極材料として、前記酸素貯蔵材料を用いた金属酸素電池は、十分なサイクル性能を得ることが難しいという不都合がある。
【0009】
本発明は、かかる不都合を解消して、サイクル性能を向上することができる金属酸素電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記金属酸素電池において十分なサイクル性能を得ることができない理由について鋭意検討した結果、電池反応で生じる活性酸素によって電解質層に含まれる電解液が分解されるためであることを知見した。
【0011】
すなわち、前記金属酸素電池では、正極において、放電時に酸素が還元されて酸素イオンが生成する際、或いは、充電時に酸素イオンが酸化されて酸素が生成する際に、中間生成物として活性酸素が生成する。前記活性酸素によって、電解質層に含まれる電解液が分解され、分解により生じた成分が、前記金属イオンと結合して金属化合物が生成する。前記金属化合物は電池反応では分解されないことにより、電池反応に利用される金属イオンが減少する結果、十分なサイクル性能を得ることができないものと考えられる。
【0012】
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであり、前記目的を達成するために、酸素貯蔵材料を含み、酸素を活物質とする正極と、金属を活物質とする負極と、該正極及び該負極に挟持され、電解液を含む電解質層とを備え、該酸素貯蔵材料の表面で該正極の電池反応が起こる金属酸素電池において、該正極は、酸素の透過を抑制可能であるとともに金属イオンを伝導可能であって、該酸素貯蔵材料の表面の少なくとも一部を被覆する導電性高分子を含むことを特徴とする。
【0013】
一般に、金属酸素電池では、放電時には、負極において、金属が酸化されて金属イオンが生成し、該金属イオンが電解質層を伝導して正極側へ移動する。一方、正極においては、放電時に、酸素貯蔵材料から酸素が放出され、該酸素が還元されて酸素イオンが生成する。このとき、中間生成物として活性酸素が生成する。そして、前記酸素イオンが前記金属イオンと結合して金属酸化物が生成する。また、充電時には、負極及び正極において、前記反応の逆反応が起こる。上記の電池反応のうち前記正極で起こる反応は、前記酸素貯蔵材料の表面が反応場となる。
【0014】
本発明の金属酸素電池において、前記酸素貯蔵材料は、その表面の少なくとも一部が、酸素の透過を抑制可能な導電性高分子によって被覆されているので、前記活性酸素を該導電性高分子からなる被覆膜の内側に閉じ込めることができる。これにより、前記活性酸素による前記電解質層に含まれる前記電解液の分解を抑制することができる、すなわち、該活性酸素が該導電性高分子を透過して該電解液と反応することを抑制することができる。この結果、前記電解液の分解により生じた成分が前記金属イオンと結合して金属化合物が生成することを抑制し、電池反応に利用される金属イオンの減少を抑制することができる。
【0015】
また、前記酸素貯蔵材料は、酸素の透過を抑制可能な導電性高分子によって被覆されているので、該酸素貯蔵材料から放出された酸素イオンを該導電性高分子からなる被覆膜の内側に閉じ込め、該酸素貯蔵材料の表面近傍に留めておくことができる。この結果、前記酸素貯蔵材料から放出された酸素イオンが該酸素貯蔵材料の表面から離れることはないので、電池反応に利用される酸素の減少を防ぐことができる。
【0016】
また、前記酸素貯蔵材料を被覆する導電性高分子は、金属イオンを十分に伝導可能であるので、前記電池反応を妨げることがない。
【0017】
ところで、金属酸素電池では、正極で起こる反応は、酸素貯蔵材料の表面が反応場となる。したがって、前記酸素貯蔵材料の表面が全く被覆されずに露出していると、放電により生成した金属酸化物が該酸素貯蔵材料の表面から離間した場合に、充電の際に該金属酸化物が酸素イオンと金属イオンに分解されなくなることが考えられる。この場合、充電の際に、負極に戻る金属イオンが減少し、結果として、充放電容量が低下することが考えられる。
【0018】
しかし、本発明の金属酸素電池では、前記酸素貯蔵材料は、前記導電性高分子によってその表面の少なくとも一部が被覆されているので、放電の際に生成した前記金属酸化物を、該酸素貯蔵材料と該導電性高分子からなる被覆膜との間、すなわち、反応場としての該酸素貯蔵材料の表面に留めることができる。
【0019】
したがって、本発明の金属酸素電池によれば、充放電容量の低下を防ぐことができ、サイクル性能を向上することができる。
【0020】
また、本発明の金属酸素電池において、前記導電性高分子は、10−12〜10−8cm/(cm・s・Pa)の範囲の酸素透過度を有することが好ましい。前記酸素透過度が10−12cm/(cm・s・Pa)未満では、分子間の隙間が小さくリチウムイオンが伝導することが困難になることがある。一方、前記酸素透過度が10−8cm/(cm・s・Pa)を超えると、酸素透過量が多くなって、前記活性酸素による前記電解液の分解を抑制できないことがある。
【0021】
また、本発明の金属酸素電池において、前記酸素貯蔵材料の表面が前記導電性高分子によって被覆されていることにより電池反応が阻害されないようにするために、前記導電性高分子は、前記酸素貯蔵材料の表面に存するときに、2×10−7〜10S/cmの範囲の電気伝導率を有することが好ましい。前記電気伝導率が2×10−7S/cm未満では、電子が十分に伝導されず、前記電池反応を妨げることがある。一方、前記電気伝導率が10S/cmを超えるようにすることは、技術的に困難である。
【0022】
また、本発明の金属酸素電池において、前記酸素貯蔵材料の表面が前記導電性高分子によって被覆されていることにより電池反応が阻害されないようにするために、前記導電性高分子は、前記酸素貯蔵材料の表面に存するときに、10−7〜1S/cmの範囲の金属イオン伝導率を有することが好ましい。前記金属イオン伝導率が10−7S/cm未満では、金属イオンが十分に伝導されず、前記電池反応を妨げることがある。一方、前記金属イオン伝導率が1S/cmを超えるようにすることは、技術的に困難である。
【0023】
ところで、本発明の金属酸素電池では、放電時には、前記酸素貯蔵材料の表面で前記金属酸化物が生成するに伴って前記正極が膨張し、充電時には、該金属酸化物が分解するに伴って該正極が収縮する。
【0024】
そこで、本発明の金属酸素電池では、前記導電性高分子は、前記酸素貯蔵材料の表面に存するときに、0.1〜1000MPaの範囲のヤング率を有することが好ましい。前記範囲のヤング率を有する前記導電性高分子を用いた金属酸素電池によれば、該導電性高分子からなる被覆膜は、柔軟性を得ることができ、前記金属酸化物の生成及び分解に伴う膨張収縮に追従して変形し、膜構造を維持することができる。
【0025】
前記ヤング率が0.1MPa未満では、放電の際に生成した前記金属酸化物を、反応場としての前記酸素貯蔵材料の表面に留めることができないことがある。一方、前記ヤング率が1000MPaを超えると、前記導電性高分子からなる被覆膜は十分な柔軟性を得ることができず、前記金属酸化物の生成を阻害することがある。
【0026】
本発明の金属酸素電池において、前記導電性高分子として、例えば、ドーパントとしてドデシルベンゼンスルホン酸を含むポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を用いることができる。
【0027】
また、本発明の金属酸素電池において、前記酸素貯蔵材料は、電池反応に対する触媒能を備えることが好ましく、この場合には、電池反応を促進することができる。また、前記酸素貯蔵材料としては、YとMnとを含む複合金属酸化物を用いることができる。
【0028】
また、本発明の金属酸素電池において、前記正極は、電子伝導性を有する導電助剤を含むことが好ましく、この場合には、該正極における内部抵抗を低減させて過電圧を低減させることにより、充放電効率を向上することができる。
【0029】
また、本発明の金属酸素電池において、前記負極として、Li,Zn,Al,Mg,Fe,Ca,Na,Kからなる群から選択される1種の金属、該金属の合金、該金属を含む有機金属化合物又は該金属の有機錯体のいずれかからなるものを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の金属酸素電池の一構成例を示す説明的断面図。
図2】実施例及び比較例の金属酸素電池におけるLi化合物の割合を示すグラフ。
図3】実施例の金属酸素電池のサイクル性能を示すグラフ。
図4】実施例の金属酸素電池に用いられる導電性高分子の酸素透過度を測定する装置を示す構成図。
図5】比較例の金属酸素電池のサイクル性能を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0032】
図1に示すように、本実施形態の金属酸素電池1は、酸素貯蔵材料を含み、酸素を活物質とする正極2と、金属を活物質とする負極3と、正極2及び負極3に挟持され、電解液を含む電解質層4とを備え、充放電に伴って、該酸素貯蔵材料の表面で該正極2の電池反応が起こるものである。
【0033】
正極2、負極3及び電解質層4は、ケース5に密封されて収容されている。ケース5は、カップ状のケース本体6と、ケース本体6を閉蓋する蓋体7とを備え、ケース本体6と蓋体7との間にはリング状の絶縁樹脂8が介装されている。
【0034】
また、正極2は蓋体7の天面との間に正極集電体9を備えており、負極3はケース本体6の底面との間に負極集電体10を備えている。尚、金属酸素電池1において、ケース本体6は負極板として、蓋体7は正極板として作用する。
【0035】
金属酸素電池1において、正極2は、酸素貯蔵材料に加えて、該酸素貯蔵材料の表面の少なくとも一部を被覆する導電性高分子と、電子伝導性を有する導電助剤と、結着剤とを含む。
【0036】
前記酸素貯蔵材料は、充電時に酸素を貯蔵し、放電時に酸素を放出する酸素貯蔵能を備えるとともに、電池反応に対する触媒能を備えている。
【0037】
前記酸素貯蔵材料としては、例えば、六方晶構造、C型希土類構造、アパタイト構造、デラフォサイト構造、ホタル石構造、ペロブスカイト構造等の複合金属酸化物を挙げることができるが、特に、YとMnとを含む複合金属酸化物であることが好ましい。
【0038】
前記導電性高分子は、10−12〜10−8cm/(cm・s・Pa)の範囲の酸素透過度を有しており、酸素の透過を抑制することができる。また、前記導電性高分子は、前記酸素貯蔵材料の表面に存するときに、2×10−7〜10S/cmの範囲の電気伝導率を有するとともに、10−7〜1S/cmの範囲のリチウムイオン伝導率を有しており、電子及びリチウムイオンを良好に伝導することができる。さらに、前記導電性高分子は、前記酸素貯蔵材料の表面に存するときに、0.1〜1000MPaの範囲のヤング率を有しており、優れた柔軟性を備えている。尚、前記導電性高分子が前記酸素貯蔵材料の表面に存するときの電気伝導率、リチウムイオン伝導率及びヤング率は、該導電性高分子により表面の少なくとも一部が被覆された酸素貯蔵材料について電気伝導率、リチウムイオン伝導率及びヤング率を測定することにより把握することができる。
【0039】
前記導電性高分子としては、例えば、ドーパントとしてドデシルベンゼンスルホン酸を含むポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT/DBS重合体)、ドーパントとしてp−トルエンスルホン酸を含むポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT/ToS重合体)等を用いることができる。本実施形態では、PEDOT/DBS重合体を用いる場合を例として説明する。
【0040】
前記導電助剤としては、例えば、グラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、メソポーラスカーボン、カーボンファイバー等の炭素材料を挙げることができる。
【0041】
前記結着剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリイミド(PI)等を挙げることができる。
【0042】
正極2は、次のようにして製造される。まず、酸化剤としての塩化鉄(III)をメタノールに溶解して、塩化鉄溶液を得る。次に、前記塩化鉄溶液に、ドーパントイオンとしてのドデシルベンゼンスルホン酸(DBS)をメタノールに溶解させたDBS溶液を混合した後、前記酸素貯蔵材料をさらに混合して撹拌する。
【0043】
次に、前記DBS溶液及び前記酸素貯蔵材料が混合された前記塩化鉄溶液に、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)をメタノールに溶解させたEDOT溶液を混合し、加熱すると、該酸素貯蔵材料の表面を反応場として、ドーパントとしてドデシルベンゼンスルホン酸を含むポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT/DBS重合体)を形成する。
【0044】
次に、加熱された混合溶液を室温まで冷却した後、固液分離し、得られた固体成分を洗浄し、乾燥する。以上により、前記PEDOT/DBS重合体からなる導電性高分子により、表面の少なくとも一部が被覆された酸素貯蔵材料を得ることができる。
【0045】
次に、前記導電性高分子で表面の少なくとも一部が被覆された前記酸素貯蔵材料と、前記結着剤とを混合した後、さらに前記導電助剤を混合することにより、正極混合物を得る。次に、得られた正極混合物を、正極集電体9の片面に塗布して乾燥させることにより、正極2を得ることができる。
【0046】
負極3としては、Li,Zn,Al,Mg,Fe,Ca,Na,Kからなる群から選択される1種の金属、該金属の合金、該金属を含む有機金属化合物又は該金属の有機錯体のいずれかからなるものを挙げることができる。本実施形態では、金属リチウムを用いる場合を例として説明する。
【0047】
電解質層4は、例えば、非水系電解質溶液をセパレータに含浸させたものを用いることができる。
【0048】
前記非水系電解質溶液としては、例えば、リチウム塩を非水系溶媒に溶解したものを用いることができる。前記リチウム塩としては、例えば、炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩等を挙げることができる。また、前記非水系溶媒としては、例えば、炭酸エステル系溶媒、エーテル系溶媒、イオン液体等を挙げることができる。
【0049】
前記セパレータとしては、例えば、ガラス繊維、ガラス製ペーパー、ポリプロピレン製不織布、ポリイミド製不織布、ポリフェニレンスルフィド製不織布、ポリエチレン製多孔フィルム等を挙げることができ、40〜1000μmの厚さを備えるものを用いることができる。
【0050】
正極集電体9としては、電子を集電する作用を有する、Al、Ti、ステンレス、Ni、Cu等の金属からなるメッシュ、発泡体、多孔体、金属箔等を用いることができる。
【0051】
負極集電体10としては、ステンレス板等を挙げることができる。
【0052】
本実施形態の金属酸素電池1では、放電時には、次式に示すように、負極3において、リチウムが酸化されてリチウムイオンが生成し、該リチウムイオンが電解質層4を伝導して正極2側へ移動する。一方、正極2においては、酸素が還元されて酸素イオンが生成し、該酸素イオンが前記リチウムイオンと結合して反応生成物としてのリチウム酸化物(酸化リチウム又は過酸化リチウム)が析出する。そして、負極3と正極2とを導線で接続することにより、電気エネルギーを取り出すことができる。酸素が還元されて酸素イオンが生成する際には、中間生成物として活性酸素が生成する。
【0053】
(負極) 4Li → 4Li +4e
(正極) O + 4e → 2O2−
4Li + 2O2− + → 2Li
2Li + 2O2− → Li
また、充電時には、正極2において、前記放電により析出したリチウム酸化物が分解し、リチウムイオンと酸素イオンとが生成する。生成したリチウムイオンは電解質層4を伝導して負極3側へ移動する。一方、負極3では、該負極3側へ移動したリチウムイオンが還元されて、該負極3上にリチウムが析出する。
【0054】
(正極) 2Li → 4Li + 2O2−
Li → 2Li + 2O2−
(負極) 4Li + 4e → 4Li
本実施形態の金属酸素電池1では、前記酸素貯蔵材料の表面の少なくとも一部が、前記範囲の酸素透過度を有し、酸素の透過を抑制可能な前記導電性高分子によって被覆されているので、前記活性酸素を該導電性高分子からなる被覆膜の内側に閉じ込めることができる。これにより、前記活性酸素による電解質層4に含まれる前記電解液の分解を抑制することができるので、該電解液の分解により生じた成分がリチウムイオンと結合してリチウム化合物が生成することを抑制し、電池反応に利用されるリチウムイオンの減少を抑制することができる。
【0055】
また、前記酸素貯蔵材料は、酸素の透過を抑制可能な導電性高分子によって被覆されているので、該酸素貯蔵材料から放出された酸素イオンを該導電性高分子からなる被覆膜の内側に閉じ込め、該酸素貯蔵材料の表面近傍に留めておくことができる。この結果、前記酸素貯蔵材料から放出された酸素イオンが該酸素貯蔵材料の表面から離れることはないので、電池反応に利用される酸素の減少を防ぐことができる。
【0056】
また、前記酸素貯蔵材料を被覆する導電性高分子は、前記範囲の電気伝導率及び前記範囲のリチウムイオン伝導率を有し、電子及びリチウムイオンを良好に伝導可能であるので、前記電池反応を妨げることがない。
【0057】
さらに、前記酸素貯蔵材料は、前記導電性高分子によってその表面の少なくとも一部が被覆されているので、放電の際に生成した前記金属酸化物を、該酸素貯蔵材料と該記導電性高分子からなる被覆膜との間、すなわち、反応場としての該酸素貯蔵材料の表面に留めることができる。
【0058】
したがって、本実施形態の金属酸素電池1によれば、充放電容量の低下を防ぐことができ、サイクル性能を向上することができる。
【0059】
また、本実施形態の金属酸素電池1では、前記酸素貯蔵材料の表面を被覆する前記導電性高分子が前記範囲のヤング率を有するので、該導電性高分子からなる被覆膜は柔軟性を得ることができる。この結果、リチウム酸化物の生成及び分解に伴う正極2の膨張収縮に追従して変形し、膜構造を維持することができる。
【0060】
また、本実施形態の金属酸素電池1では、前記酸素貯蔵材料は電池反応に対する触媒能を備えるので、電池反応を促進することができる。
【0061】
また、本実施形態の金属酸素電池1では、正極2は、電子伝導性を有する導電助剤を含むので、該正極2における内部抵抗を低減させて過電圧を低減させることにより、充放電効率を向上することができる。
【0062】
次に、本発明の実施例及び比較例を示す。
【実施例】
【0063】
〔実施例〕
本実施例では、まず、硝酸イットリウム5水和物と、硝酸マンガン6水和物と、リンゴ酸とを、1:1:6のモル比となるようにして、粉砕混合し、混合物を得た。次に、得られた混合物を250℃の温度で30分間反応させた後、さらに、300℃の温度で30分間、350℃の温度で1時間反応させた。次に、得られた反応生成物を粉砕混合した後、1000℃の温度で1時間焼成して、化学式YMnOで表される複合金属酸化物からなる酸素貯蔵材料を得た。前記酸素貯蔵材料は、充電時に酸素を貯蔵し、放電時に酸素を放出する酸素貯蔵能を備えるとともに、電池反応に対する触媒能を備えている。
【0064】
次に、酸化剤としての塩化鉄(III)1.3mmol(0.211g)をメタノール10mLに溶解し、不溶物を濾紙(ポアサイズ1μm)で除去して、塩化鉄溶液を得た。
【0065】
ドーパントイオンとしてのドデシルベンゼンスルホン酸(DBS)4mmol(1.31g)をメタノール10mLに溶解して、DBS溶液を得た。
【0066】
次に、得られた塩化鉄溶液とドデシルベンゼンスルホン酸溶液とを混合した後、得られた酸素貯蔵材料2gを添加し、撹拌した。
【0067】
次に、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)1mmol(0.142g)をメタノール10mLに溶解して、EDOT溶液を得た。
【0068】
次に、前記DBS溶液及び前記酸素貯蔵材料が混合された前記塩化鉄溶液に、得られたEDOT溶液を混合し、10分間撹拌した後、撹拌しながら85℃の温度で2時間加熱した。
【0069】
次に、加熱された混合溶液を室温まで冷却後、固液分離し、得られた固体成分を濾紙(ポアサイズ1μm)で分離した。次に、分離された固体成分を、メタノール、水、エタノール、炭酸ジエチル、エタノールの順で洗浄することにより、該固体成分に含まれる未反応物を除去した。
【0070】
次に、未反応物が分離された固体成分を、120℃の温度で真空乾燥させた。以上により、導電性高分子により表面の少なくとも一部が被覆されている酸素貯蔵材料1.9gを得た。前記導電性高分子はPEDOT/DBS重合体を形成している。
【0071】
次に、前記導電性高分子により表面の少なくとも一部が被覆されている酸素貯蔵材料400mgと、結着剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC、商品名:MAC350HC、日本製紙ケミカル株式会社製)を1質量%含有するCMC水溶液10gとを、乳鉢で混合した。次に、前記酸素貯蔵材料と前記CMC水溶液との混合物に、導電助剤としてのケッチェンブラック(商品名:EC600JD、ライオン株式会社製、平均粒子径34nm(1次粒子))400mgと、水2mLと、エタノール1mLとを混合し、ホモジナイザーを用い、回転数5000rpmで2時間撹拌してスラリー状の正極混合物を得た。
【0072】
次に、得られた正極混合物を、正極集電体9としてのアルミニウムメッシュ(厚さ2mm、空孔率75%)に塗布し、真空乾燥器にて100Pa以下の圧力下、12時間乾燥させた後、直径15mmのパンチで打ち抜くことにより、正極2を形成した。
【0073】
次に、内径15mmの有底円筒状のSUS製ケース本体6の内部に、直径15mmの銅メッシュからなる負極集電体10を配置し、該負極集電体10上に、直径15mm、厚さ0.1mmの金属リチウムからなる負極3を重ね合わせた。
【0074】
次に、負極3上に、直径15mmの不織布(タピルス株式会社製、平均繊維径15μm、厚さ200μm)からなるセパレータを2枚重ね合わせた。次に、前記セパレータ上に、前記のようにして得られた正極2及び正極集電体9を、該正極2が該セパレータに接するように重ね合わせた。次に、前記セパレータに非水系電解質溶液を注入し、電解質層4を形成した。
【0075】
前記非水系電解質溶液としては、エチレンカーボネートと、ジエチルカーボネートとを30:70の質量比で混合した混合溶液に、支持塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1モル/リットルの濃度で溶解した溶液(キシダ化学株式会社製)30μLを用いた。
【0076】
次に、ケース本体6に収容された負極集電体10、負極3、電解質層4、正極2及び正極集電体9からなる積層体を、内径15mmの有底円筒状のSUS製蓋体7で閉蓋した。このとき、ケース本体6と蓋体7との間に、外径32mm、内径30mm、厚さ5mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなるリング状の絶縁樹脂8を配設することにより、図1に示す金属酸素電池1を作製した。金属酸素電池1において、正極2、負極3及び電解質層4は、ケース5内に密封されて収容されている。
【0077】
次に、本実施例で得られた金属酸素電池1を電気化学測定装置(東方技研株式会社製)に装着して、負極3と正極2との間に、44μAの電流を印加し、セル電圧がLi/Li電極反応の電位を基準として2.3Vになるまで放電させた。
【0078】
次に、放電が行われた金属酸素電池1から正極2を取出し、エチレンカーボネートと、ジエチルカーボネートとを30:70の質量比で混合した混合溶液を用いて洗浄した。
【0079】
次に、洗浄された正極2を、エチレンカーボネートと、ジエチルカーボネートとを30:70の質量比で混合した混合溶液20mLが収容されたサンプル瓶に収容した後、該サンプル瓶を超音波洗浄機により洗浄して、正極2の表面に付着された付着物を含む上澄み液を回収した。
【0080】
得られた上澄み液について、ポリテトラフルオロエチレン製メンブレンフィルター(細孔径1μm)を用いて固液分離し、得られた固形分を乾燥させることにより、試料を得た。
【0081】
次に、得られた試料を、試料管(直径3mm)に充填し、固体Li核磁気共鳴(固体Li−NMR)解析を行った。前記NMR解析の測定条件は、磁場強度400MHz及び試料回転数12kHzとし、スペクトル外部標準として1mol/LのLiCl水溶液を用いた。
【0082】
そして、得られたNMRスペクトルについて、波形分離処理を行うことにより、前記試料に含まれるLi化合物のLiOと、LIと、LiCOと有機Li塩との割合を算出した。結果を図2に示す。
【0083】
次に、本実施例で得られた金属酸素電池1を前記電気化学測定装置に装着して、負極3と正極2との間に、44μAの電流を印加し、セル電圧がLi/Li電極反応の電位を基準として2.3Vになるまで放電した後、2分間の開回路とした後に、22μAの電流を印加し、セル電圧がLi/Li電極反応の電位を基準として4.3Vになるまで充電することによりエイジングを行った。
【0084】
前記エイジングの後、負極3と正極2との間に、44μAの電流を印加し、セル電圧が2.3Vになるまで放電した後、22μAの電流を印加し、セル電圧が4.3Vになるまで充電することを20サイクル繰り返した。このとき、放電と充電との間、及び、充電と放電との間において、2分間、開回路にした。得られた1サイクル目の充放電曲線と、20サイクル目の充放電曲線を図3に示す。
【0085】
次に、本実施例の金属酸素電池1に用いられるPEDOT/DBS重合体からなる導電性高分子について、図4に示す測定装置11を用いて酸素透過度を求めた。
【0086】
まず、PEDOT/DBS重合体からなる粉末状の導電性高分子を直径20mmのSUS316製金網(メッシュ数500)の片面に圧着した後に、電解重合することにより試料片12を作成した。前記試料片は、前記電解重合により前記導電性高分子からなる被膜がその両面に形成されていて、粉末間の空隙が埋められた状態となっている。
【0087】
次に、図4の測定装置11のガス透過セル13の2つのチャンバ14,15間に設けられたガラスフィルタ16上に試料片12を設置し、2のチャンバ14,15の隙間を、大気ガスの割り込みがないようにテフロンシールテープでシールした。次に、ガス透過セル13と真空ポンプ18の間に設けられた真空計19における真空度が50Paに達するまで予備排気を行った。次に、酸素ガスを酸素バッグ17からガス透過セル13の上流側に供給しながら真空ポンプ18によってガス透過セル13の下流側から排気することを24時間行うことにより、酸素バッグ17を減圧した。このときの酸素バッグ17の体積変化量から、式F=δV/(A×δP×T)によって酸素透過度を算出したところ、4×10−9cm/(cm・s・Pa)であった。前記式において、Fは酸素透過度(cm/(cm・s・Pa))、δVは酸素バッグ17の体積変化量(cm)、Aは試料片12の断面積(cm)、δPは大気圧から真空計19により計測した真空度を引いた減圧値(Pa)、Tは酸素バッグ17からガス透過セル13に酸素を供給しながら前記真空度を保った時間(s)である。
【0088】
次に、本実施例の金属酸素電池1に用いられる前記酸素貯蔵材料について、電気伝導率を測定した。前記酸素貯蔵材料は、化学式YMnOで表される複合金属酸化物からなり、その表面の少なくとも一部がPEDOT/DBS重合体からなる導電性高分子によって被覆されている。
【0089】
まず、本実施例で得られた前記酸素貯蔵材料300mgを、上下両側から直径15mmのSUS316製金属板で挟んだ状態でポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂からなる粉末ホルダに収容することにより、はさみ電極を形成した。
【0090】
次に、得られたはさみ電極を用いて二端子測定法により電気伝導率を測定したところ、2.8×10−7S/cmであった。前記電気伝導率を、前記導電性高分子が前記酸素貯蔵材料の表面に存するときの電気伝導率とする。
【0091】
次に、本実施例の金属酸素電池1に用いられる前記酸素貯蔵材料について、インピーダンス測定装置(ソーラトロン社、1260型)を用いて、リチウムイオン伝導率を測定したところ、3×10−6S/cmであった。前記リチウムイオン伝導率を、前記導電性高分子が前記酸素貯蔵材料の表面に存するときのリチウムイオン伝導率とする。
【0092】
次に、本実施例の金属酸素電池1に用いられる前記酸素貯蔵材料について、ナノインデンテーション法により、ヤング率を測定したところ、約800Paであった。前記ヤング率を、前記導電性高分子が前記酸素貯蔵材料の表面に存するときのヤング率とする。
【0093】
〔比較例〕
本比較例では、酸素貯蔵材料を導電性高分子で被覆しないこと以外は、実施例と全く同一にして、酸素貯蔵材料と、CMC水溶液とを混合して混合物を得た。
【0094】
次に、得られた混合物を用いた以外は、実施例と全く同一にして、正極2及び金属酸素電池1を作製した。
【0095】
次に、本比較例で得られた金属酸素電池1を用いた以外は、実施例と全く同一にして、放電を行った後、正極2を取出した。
【0096】
次に、得られた正極2を用いた以外は、実施例と全く同一にして、固体Li−NMR解析を行い、該正極2から抽出された試料に含まれるLi化合物の割合を算出した。結果を図2に示す。
【0097】
次に、本比較例で得られた金属酸素電池1を用いた以外は、実施例と全く同一にして、エイジングを行った後、サイクル回数を17回とした以外は、実施例と全く同一にして、充放電を繰り返した。得られた1サイクル目の充放電曲線と、17サイクル目の充放電曲線を図5に示す。
【0098】
図2に示すLi化合物のうち、LiO及びLIは、電池反応により生成された物質、すなわち、放電の際、酸素貯蔵材料から放出された酸素とリチウムイオンとの反応により生成された物質であり、充電により分解される。よって、LiO及びLIは、充放電により分解される可逆成分に相当する。
【0099】
一方、LiCOは、前記電解液の分解により生成したCOとリチウムイオンとの反応により生成された物質であり、充放電によって分解されることはない。また、有機Li塩は、電解液の分解により生じた有機成分とリチウムイオンとの反応により生成された物質であり、充放電によって分解されることはない。よって、LiCO及び有機Li塩は、充放電によって分解されない不可逆成分に相当する。
【0100】
図2から、実施例の金属酸素電池1によれば、放電により正極2の表面に付着された付着物に含まれるLi化合物は、32atom%のLiOと、20atom%のLIと、20atom%のLiCOと、28atom%の有機Li塩とを含むことが明らかである。したがって、前記Li化合物のうち、前記可逆成分が合計52%であり、前記不可逆成分が合計48%であることが明らかである。
【0101】
一方、比較例の金属酸素電池1によれば、放電により正極2の表面に付着された付着物に含まれるLi化合物は、22atom%のLiOと、13atom%のLIと、19atom%のLiCOと、46atom%の有機Li塩とを含むことが明らかである。したがって、前記Li化合物のうち、前記可逆成分が合計35%であり、前記不可逆成分が合計65%であることが明らかである。
【0102】
以上から、実施例の金属酸素電池1によれば、比較例の金属酸素電池1と比較して、前記不可逆成分が少ないことから、電解質層4に含まれる電解液の分解を抑制することができることが明らかである。
【0103】
図3から、実施例の金属酸素電池1によれば、20サイクル目の放電容量は、1サイクル目の放電容量の77%を維持していて、20サイクル目の充電容量は、1サイクル目の充電容量の76%を維持していることが明らかである。また、実施例の金属酸素電池1によれば、20サイクル目の放電電圧は、1サイクル目の放電電圧と同程度であることが明らかである。
【0104】
これに対し、図5から、比較例の金属酸素電池1によれば、17サイクル目の放電容量は、1サイクル目の放電容量の55%に低下していて、17サイクル目の充電容量は、1サイクル目の充電容量の47%に低下していることが明らかである。また、比較例の金属酸素電池1によれば、17サイクル目の放電電圧は、1サイクル目の放電電圧よりも低いことが明らかである。
【0105】
以上から、実施例の金属酸素電池1によれば、比較例の金属酸素電池1と比較して、優れたサイクル性能を備えることが明らかである。
【符号の説明】
【0106】
1…金属酸素電池、 2…正極、 3…負極、 4…電解質層。
図1
図2
図3
図4
図5

【手続補正書】
【提出日】2013年8月19日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素貯蔵材料を含み、酸素を活物質とする正極と、金属を活物質とする負極と、該正極及び該負極に挟持され、電解液を含む電解質層とを備え、該酸素貯蔵材料の表面で該正極の電池反応が起こる金属酸素電池において、
該正極、該負極及び該電解質層は、ケースに密封されて収容され、
該正極は、酸素の透過を抑制可能であるとともに金属イオンを伝導可能であって、該酸素貯蔵材料の表面の少なくとも一部を被覆する導電性高分子を含み、
該導電性高分子は、10−12〜10−8cm/(cm・s・Pa)の範囲の酸素透過度を有するとともに、該酸素貯蔵材料の表面に存するときに、10−7〜1S/cmの範囲の金属イオン伝導率を有することを特徴とする金属酸素電池。
【請求項2】
請求項1記載の金属酸素電池において、
前記導電性高分子は、前記酸素貯蔵材料の表面に存するときに、2×10−7〜10S/cmの範囲の電気伝導率を有することを特徴とする金属酸素電池。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の金属酸素電池において、
前記導電性高分子は、前記酸素貯蔵材料の表面に存するときに、0.1〜1000MPaの範囲のヤング率を有することを特徴とする金属酸素電池。
【請求項4】
請求項1〜請求項のいずれか1項記載の金属酸素電池において、
前記導電性高分子は、ドーパントとしてドデシルベンゼンスルホン酸を含むポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)であることを特徴とする金属酸素電池。
【請求項5】
請求項1〜請求項のいずれか1項記載の金属酸素電池において、
前記酸素貯蔵材料は、電池反応に対する触媒能を備えることを特徴とする金属酸素電池。
【請求項6】
請求項1〜請求項のいずれか1項記載の金属酸素電池において、
前記酸素貯蔵材料は、YとMnとを含む複合金属酸化物であることを特徴とする金属酸素電池。
【請求項7】
請求項1〜請求項のいずれか1項記載の金属酸素電池において、
前記正極は、電子伝導性を有する導電助剤を含むことを特徴とする金属酸素電池。
【請求項8】
請求項1〜請求項のいずれか1項記載の金属酸素電池において、
前記負極は、Li,Zn,Al,Mg,Fe,Ca,Na,Kからなる群から選択される1種の金属、該金属の合金、該金属を含む有機金属化合物又は該金属の有機錯体のいずれかからなることを特徴とする金属酸素電池。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであり、前記目的を達成するために、酸素貯蔵材料を含み、酸素を活物質とする正極と、金属を活物質とする負極と、該正極及び該負極に挟持され、電解液を含む電解質層とを備え、該酸素貯蔵材料の表面で該正極の電池反応が起こる金属酸素電池において、該正極、該負極及び該電解質層は、ケースに密封されて収容され、該正極は、酸素の透過を抑制可能であるとともに金属イオンを伝導可能であって、該酸素貯蔵材料の表面の少なくとも一部を被覆する導電性高分子を含み、該導電性高分子は、10−12〜10−8cm/(cm・s・Pa)の範囲の酸素透過度を有するとともに、該酸素貯蔵材料の表面に存するときに、10−7〜1S/cmの範囲の金属イオン伝導率を有することを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
本発明の金属酸素電池において、前記酸素貯蔵材料は、その表面の少なくとも一部が、10−12〜10−8cm/(cm・s・Pa)の範囲の酸素透過度を有し酸素の透過を抑制可能な導電性高分子によって被覆されているので、前記活性酸素を該導電性高分子からなる被覆膜の内側に閉じ込めることができる。これにより、前記活性酸素による前記電解質層に含まれる前記電解液の分解を抑制することができる、すなわち、該活性酸素が該導電性高分子を透過して該電解液と反応することを抑制することができる。この結果、前記電解液の分解により生じた成分が前記金属イオンと結合して金属化合物が生成することを抑制し、電池反応に利用される金属イオンの減少を抑制することができる。
前記導電性高分子は、前記酸素透過度が10−12cm/(cm・s・Pa)未満では、分子間の隙間が小さくリチウムイオンが伝導することが困難になることがあり、該酸素透過度が10−8cm/(cm・s・Pa)を超えると、酸素透過量が多くなって、前記活性酸素による前記電解液の分解を抑制できないことがある。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
また、前記酸素貯蔵材料を被覆する導電性高分子は、該酸素貯蔵材料の表面に存するときに10−7〜1S/cmの範囲の金属イオン伝導率を有し金属イオンを十分に伝導可能であるので、前記電池反応を妨げることがない。
前記導電性高分子は、前記酸素貯蔵材料の表面に存するときの金属イオン伝導率が10−7S/cm未満では、金属イオンが十分に伝導されず、前記電池反応を妨げることがあり、該金属イオン伝導率が1S/cmを超えるようにすることは、技術的に困難である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】削除
【補正の内容】
【国際調査報告】