特表-13146484IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2013年10月3日
【発行日】2015年12月10日
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20151113BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20151113BHJP
   B60W 20/00 20060101ALI20151113BHJP
   B60W 10/10 20120101ALI20151113BHJP
   B60K 6/44 20071001ALI20151113BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20151113BHJP
   B60K 6/365 20071001ALI20151113BHJP
   F16H 48/36 20120101ALI20151113BHJP
【FI】
   B60L15/20 S
   B60K6/20 320
   B60K6/20 350
   B60K6/44ZHV
   B60K6/54
   B60K6/365
   F16H48/36
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】31
【出願番号】特願2014-507760(P2014-507760)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2013年3月19日
(11)【特許番号】特許第5629842号(P5629842)
(45)【特許公報発行日】2014年11月26日
(31)【優先権主張番号】特願2012-82933(P2012-82933)
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127801
【弁理士】
【氏名又は名称】本山 慎也
(72)【発明者】
【氏名】安藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】篠原 勢
【テーマコード(参考)】
3D202
3J027
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA01
3D202BB11
3D202BB65
3D202CC11
3D202CC17
3D202DD01
3D202DD24
3D202DD26
3D202EE09
3D202FF02
3D202FF04
3J027FA50
3J027FB01
3J027HA01
3J027HB01
3J027HC02
3J027HC29
3J027HG03
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA06
5H125BE05
5H125CA02
5H125EE08
(57)【要約】
車両の左車輪を駆動する第1電動機(2A)と右車輪を駆動する第2電動機(2B)とに接続される第1変速機(12A)及び第2変速機(12B)のリングギヤ(24A、24B)の回転を制動する油圧ブレーキ(60A、60B)を締結状態から解放状態に制御するときに、第1電動機(2A)と第2電動機(2B)とのトルク差を維持しつつ、第1電動機(2A)と第2電動機(2B)とのトルク和が零に近づくよう、第1電動機(2A)と第2電動機(2B)とを制御する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の左車輪を駆動する第1電動機と、前記第1電動機と前記左車輪との動力伝達経路上に設けられた第1変速機と、を有する左車輪駆動装置と、前記車両の右車輪を駆動する第2電動機と、前記第2電動機と前記右車輪との動力伝達経路上に設けられた第2変速機と、を有する右車輪駆動装置と、前記第1電動機と前記第2電動機とを制御する電動機制御装置と、を備える車両用駆動装置であって、
前記第1及び第2変速機は、それぞれ第1乃至第3回転要素を有し、
前記第1変速機の前記第1回転要素に前記第1電動機が接続され、
前記第2変速機の前記第1回転要素に前記第2電動機が接続され、
前記第1変速機の前記第2回転要素に前記左車輪が接続され、
前記第2変速機の前記第2回転要素に前記右車輪が接続され、
前記第1変速機の前記第3回転要素と前記第2変速機の前記第3回転要素とが互いに連結され、
前記車両用駆動装置は、さらに解放状態又は締結状態に切替可能とされ、締結状態とすることにより前記第3回転要素の回転を規制する回転規制手段と、
前記回転規制手段を制御する回転規制手段制御装置と、をさらに備え、
前記回転規制手段制御装置が前記回転規制手段を締結状態から解放状態に制御するときに、前記電動機制御装置は、前記第1電動機と前記第2電動機とのトルク差を維持しつつ、前記第1電動機と前記第2電動機とのトルク和が零に近づくよう、前記第1電動機と前記第2電動機とを制御することを特徴とする車両用駆動装置。
【請求項2】
前記第1電動機と前記第2電動機との前記トルク和が零になった後に、前記回転規制手段制御装置は前記回転規制手段を解放状態に制御することを特徴とする請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記第1電動機と前記第2電動機との前記トルク和が零に近づくよう前記第1電動機と前記第2電動機とを制御するときに、前記トルク和が零に向かって次第に減少するように制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記回転規制手段制御装置が前記回転規制手段を解放状態に制御するとき、前記電動機制御装置は、前記第1電動機又は前記第2電動機の目標回転状態量を、該電動機の効率と該電動機へ電力を供給する電力供給装置の効率との少なくとも一方に基づいて求めることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記第1及び第2変速機は、前記第2回転要素によって公転可能に支持され、前記第1回転要素及び前記第3回転要素と噛合する第4回転要素を有し、
前記回転規制手段制御装置が前記回転規制手段を解放状態に制御するとき、前記電動機制御装置は、前記第1電動機又は前記第2電動機の目標回転状態量を、前記第4回転要素の目標回転状態量に基づいて求めることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用駆動装置。
【請求項6】
前記第4回転要素の前記目標回転状態量を、一方向又は他方向に回転している前記第4回転要素の回転方向が反転しないよう設定することを特徴とする請求項5に記載の車両用駆動装置。
【請求項7】
前記第1電動機又は前記第2電動機の目標回転状態量を、さらに、前記第2回転要素の実回転状態量、又は前記左車輪若しくは前記右車輪の実回転状態量に基づいて求めることを特徴とする請求項5又は6に記載の車両用駆動装置。
【請求項8】
前記電動機制御装置は、
前記第1電動機の目標回転状態量、前記第1電動機の実回転状態量、前記第2電動機の目標回転状態量、前記第2電動機の実回転状態量を取得し、
前記第1電動機の前記目標回転状態量と前記第1電動機の前記実回転状態量との回転状態量差である第1回転状態量差と、前記第2電動機の前記目標回転状態量と前記第2電動機の前記実回転状態量との回転状態量差である第2回転状態量差と、を求め、
前記第1回転状態量差と前記第2回転状態量差とのうち何れか小さい方の回転状態量差に基づいて、回転状態量制御トルクを求め、
該回転状態量制御トルクに基づいて、前記第1電動機の制御トルク及び前記第2電動機の制御トルクを求めることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左車輪を駆動する左車輪駆動装置と右車輪を駆動する右車輪駆動装置とが設けられた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の左車輪を駆動する第1電動機と、第1電動機と左車輪との動力伝達経路上に設けられた第1遊星歯車式変速機と、を有する左車輪駆動装置と、車両の右車輪を駆動する第2電動機と、第2電動機と右車輪との動力伝達経路上に設けられた第2遊星歯車式変速機と、を有する右車輪駆動装置と、を備える車両用駆動装置が記載されている。第1及び第2遊星歯車式変速機は、サンギヤにそれぞれ第1及び第2電動機が接続され、プラネタリキャリアにそれぞれ左車輪及び右車輪が接続され、リングギヤ同士が互いに連結されている。また、車両用駆動装置には、連結されたリングギヤを解放又は締結することによりリングギヤの回転を制動するブレーキ手段が設けられている。
【0003】
このように構成された車両用駆動装置において、ブレーキ手段を締結することで、発進時に発進アシスト制御を行うことが記載されており、さらに、発進後はブレーキ手段を開放した状態で、第1及び第2電動機の発生トルクが反対方向となるようにトルク制御を行うことで、外乱等により車両にヨーモーメントが加わったときでも、このヨーモーメントに対向するモーメントが発生し、直進安定性や旋回安定性が向上することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特許第3138799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の車両用駆動装置では、ブレーキ手段を締結した状態からブレーキ手段を解放した状態への移行に際し、第1及び第2電動機をどのように制御するかついて具体的に記載されていない。ブレーキ手段を締結した状態からブレーキ手段を解放する際、第1及び第2電動機を的確に制御しなければ走行安定性を悪化させるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、走行安定性に優れた車両用駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、
車両の左車輪(例えば、後述の実施形態の左後輪LWr)を駆動する第1電動機(例えば、後述の実施形態の第1電動機2A)と、前記第1電動機と前記左車輪との動力伝達経路上に設けられた第1変速機(例えば、後述の実施形態の第1遊星歯車式減速機12A)と、を有する左車輪駆動装置と、前記車両の右車輪(例えば、後述の実施形態の右後輪RWr)を駆動する第2電動機(例えば、後述の実施形態の第2電動機2B)と、前記第2電動機と前記右車輪との動力伝達経路上に設けられた第2変速機(例えば、後述の実施形態の第2遊星歯車式減速機12B)と、を有する右車輪駆動装置と、前記第1電動機と前記第2電動機とを制御する電動機制御装置(例えば、後述の実施形態の制御装置8)と、を備える車両用駆動装置(例えば、後述の実施形態の後輪駆動装置1)であって、
前記第1及び第2変速機は、それぞれ第1乃至第3回転要素を有し、
前記第1変速機の前記第1回転要素(例えば、後述の実施形態のサンギヤ21A)に前記第1電動機が接続され、
前記第2変速機の前記第1回転要素(例えば、後述の実施形態のサンギヤ21B)に前記第2電動機が接続され、
前記第1変速機の前記第2回転要素(例えば、後述の実施形態のプラネタリキャリア23A)に前記左車輪が接続され、
前記第2変速機の前記第2回転要素(例えば、後述の実施形態のプラネタリキャリア23B)に前記右車輪が接続され、
前記第1変速機の前記第3回転要素(例えば、後述の実施形態のリングギヤ24A)と前記第2変速機の前記第3回転要素(例えば、後述の実施形態のリングギヤ24B)とが互いに連結され、
前記車両用駆動装置は、さらに解放状態又は締結状態に切替可能とされ、締結状態とすることにより前記第3回転要素の回転を規制する回転規制手段(例えば、後述の実施形態の油圧ブレーキ60A、60B)と、
前記回転規制手段を制御する回転規制手段制御装置(例えば、後述の実施形態の制御装置8)と、をさらに備え、
前記回転規制手段制御装置が前記回転規制手段を締結状態から解放状態に制御するときに、前記電動機制御装置は、前記第1電動機と前記第2電動機とのトルク差を維持しつつ、前記第1電動機と前記第2電動機とのトルク和が零に近づくよう、前記第1電動機と前記第2電動機とを制御することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加えて、
前記第1電動機と前記第2電動機との前記トルク和が零になった後に、前記回転規制手段制御装置は前記回転規制手段を解放状態に制御することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加えて、
前記第1電動機と前記第2電動機との前記トルク和が零に近づくよう前記第1電動機と前記第2電動機とを制御するときに、前記トルク和が零に向かって次第に減少するように制御することを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の構成に加えて、
前記回転規制手段制御装置が前記回転規制手段を解放状態に制御するとき、前記電動機制御装置は、前記第1電動機又は前記第2電動機の目標回転状態量を、該電動機の効率と該電動機へ電力を供給する電力供給装置の効率との少なくとも一方に基づいて求めることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の構成に加えて、
前記第1及び第2変速機は、前記第2回転要素によって公転可能に支持され、前記第1回転要素及び前記第3回転要素と噛合する第4回転要素(例えば、後述の実施形態のプラネタリギヤ22A、22B)を有し、
前記回転規制手段制御装置が前記回転規制手段を解放状態に制御するとき、前記電動機制御装置は、前記第1電動機又は前記第2電動機の目標回転状態量を、前記第4回転要素の目標回転状態量(例えば、後述の実施形態のプラネタリギヤ目標回転数)に基づいて求めることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の構成に加えて、
前記第4回転要素の前記目標回転状態量を、一方向又は他方向に回転している前記第4回転要素の回転方向が反転しないよう設定することを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の構成に加えて、
前記第1電動機又は前記第2電動機の目標回転状態量を、さらに、前記第2回転要素の実回転状態量、又は前記左車輪若しくは前記右車輪の実回転状態量に基づいて求めることを特徴とする。
【0014】
また、請求項8に記載の発明は、請求項4〜7のいずれか1項に記載の構成に加えて、
前記電動機制御装置は、
前記第1電動機の目標回転状態量(例えば、後述の実施形態のモータ目標回転数MA2)、前記第1電動機の実回転状態量(例えば、後述の実施形態のモータ実回転数MA1)、前記第2電動機の目標回転状態量(例えば、後述の実施形態のモータ目標回転数MB2)、前記第2電動機の実回転状態量(例えば、後述の実施形態のモータ実回転数MB1)を取得し、
前記第1電動機の前記目標回転状態量と前記第1電動機の前記実回転状態量との回転状態量差である第1回転状態量差(例えば、後述の実施形態の回転数差DA)と、前記第2電動機の前記目標回転状態量と前記第2電動機の前記実回転状態量との回転状態量差である第2回転状態量差(例えば、後述の実施形態の回転数差DB)と、を求め、
前記第1回転状態量差と前記第2回転状態量差とのうち何れか小さい方の回転状態量差に基づいて、回転状態量制御トルク(例えば、後述の実施形態の第1回転制御トルクSM1)を求め、
該回転状態量制御トルクに基づいて、前記第1電動機の制御トルク(例えば、後述の実施形態の第1モータトルクM1)及び前記第2電動機の制御トルク(例えば、後述の実施形態の第2モータトルクM2)を求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、回転規制手段を締結状態から解放状態に制御するときに、第1電動機と第2電動機とのトルク差を維持することで、回転規制手段の締結状態から解放状態に亙ってヨーモーメントの発生を一定に維持することができる。また、回転規制手段を締結状態から解放状態に制御するときに、第1電動機と第2電動機とのトルク和が零に近づくように制御することで、回転規制手段の解放時の前後方向の状態変化を低減することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、第1電動機と第2電動機とのトルク和が零になった後に回転規制手段を解放状態に制御することで、より確実に前後方向の状態変化の発生を抑制することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、第1電動機と第2電動機とのトルク和の急変を抑制することで、前後方向の急な状態変化を抑制することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、第1変速機と第2変速機とで第3回転要素同士が互いに連結されているので、第1変速機に連結される第1電動機と第2変速機に連結される第2電動機とは完全には独立制御できず、それぞれの回転数変動は相互に影響を及ぼしあうが、第1電動機と第2電動機に絶対値の等しい同一方向のトルクを付加することで、左右の車輪に不要なトルクを伝達せずに、第1電動機又は第2電動機を所期の回転状態量とすることができる。従って、電動機及び/又は電力供給装置の効率に基づいて目標回転状態量を求めることで電力消費を低減することができる。言い換えると、任意の回転数とすることができる利点をいかし、電動機の回転数を最も電力消費が少ない状態とすることができる。
【0019】
また、請求項5に記載の発明によれば、第1変速機と第2変速機とで第3回転要素同士が互いに連結されているので、第1変速機に連結される第1電動機と第2変速機に連結される第2電動機とは完全には独立制御できず、それぞれの回転数変動は相互に影響を及ぼしあうが、第1電動機と第2電動機に絶対値の等しい同一方向のトルクを付加することで、左右の車輪に不要なトルクを伝達せずに、第1電動機又は第2電動機を所期の回転状態量とすることができる。従って、第1及び第3回転要素と噛合する第4回転要素の回転状態を適切に制御することができる。
【0020】
また、請求項6に記載の発明によれば、第4回転要素の回転方向の反転によるバックラッシュの発生を防止することができ、バックラッシュによって車輪に生じるトルクの乱れを防止することができる。
【0021】
また、請求項7に記載の発明によれば、第4回転要素の目標回転状態量に加えて、第2回転要素の実回転状態量、若しくは車輪の実回転状態量に基づいて電動機の目標回転状態量を求めるので、より精度よく第4回転要素の回転を制御することができる。
【0022】
また、請求項8に記載の発明によれば、第1電動機と第2電動機とで回転状態量差に差異がある場合に回転状態量差の小さい方に基づいて求めた回転状態量制御トルクを第1及び第2電動機に付加することで一方の電動機を所期の回転状態量としつつ他方の電動機の過剰制御を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る車両用駆動装置を搭載可能な車両の一実施形態であるハイブリッド車両の概略構成を示すブロック図である。
図2】後輪駆動装置の一実施形態の縦断面図である。
図3図2に示す後輪駆動装置の部分拡大図である。
図4】停車中の後輪駆動装置の速度共線図である。
図5】前進低車速時の後輪駆動装置の速度共線図である。
図6】前進中車速時の後輪駆動装置の速度共線図である。
図7】減速回生時の後輪駆動装置の速度共線図である。
図8】前進高車速時の後輪駆動装置の速度共線図である。
図9】後進時の後輪駆動装置の速度共線図である。
図10】リングロック制御時の後輪駆動装置の速度共線図であり、(a)は後輪駆動装置で加速している状態、(b)は後輪駆動装置で回生している状態である。
図11】(a)は、リングフリー目標トルク制御時の後輪駆動装置の速度共線図であり、(b)は、リングフリー目標回転数制御時の後輪駆動装置の速度共線図であり、(c)リングフリー目標トルク制御とリングフリー目標回転数制御の両方を行っている時の後輪駆動装置の速度共線図である。
図12】第1電動機における回転数差と第2電動機における回転数差とが異なる場合のリングフリー目標回転数制御を説明するための速度共線図である。
図13】リングロック制御からリングフリー目標トルク制御へ移行する場合の後輪駆動装置の速度共線図を時系列に示すものであり、(a)はリングロック制御時の後輪駆動装置の速度共線図であり、(b)は、リングフリー目標トルク制御とリングフリー目標回転数制御の両方を行っている時の後輪駆動装置の速度共線図であり、(c)はリングフリー目標トルク制御時の速度共線図である。
図14】リングロック制御からリングフリー目標トルク制御へ移行する場合の第1及び第2電動機のトルク和とトルク差を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
先ず、本発明に係る車両用駆動装置の一実施形態を図1図3に基づいて説明する。
本発明に係る車両用駆動装置は、電動機を車軸駆動用の駆動源とするものであり、例えば、図1に示すような駆動システムの車両に用いられる。以下の説明では車両用駆動装置を後輪駆動用として用いる場合を例に説明するが、前輪駆動用に用いてもよい。
図1に示す車両3は、内燃機関4と電動機5とが直列に接続された駆動装置6(以下、前輪駆動装置と呼ぶ。)を車両前部に有するハイブリッド車両であり、この前輪駆動装置6の動力がトランスミッション7を介して前輪Wfに伝達される一方で、この前輪駆動装置6と別に車両後部に設けられた駆動装置1(以下、後輪駆動装置と呼ぶ。)の動力が後輪Wr(RWr、LWr)に伝達されるようになっている。前輪駆動装置6の電動機5と後輪Wr側の後輪駆動装置1の第1及び第2電動機2A、2Bとは、バッテリ9に接続され、バッテリ9からの電力供給と、バッテリ9へのエネルギー回生が可能となっている。符号8は、車両全体の各種制御をするための制御装置である。
【0025】
図2は、後輪駆動装置1の全体の縦断面図を示すものであり、同図において、10A、10Bは、車両3の後輪Wr側の左右の車軸であり、車幅方向に同軸上に配置されている。後輪駆動装置1の減速機ケース11は全体が略円筒状に形成され、その内部には、車軸駆動用の第1及び第2電動機2A、2Bと、この第1及び第2電動機2A、2Bの駆動回転を減速する第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bとが、車軸10A、10Bと同軸上に配置されている。この第1電動機2A及び第1遊星歯車式減速機12Aは左後輪LWrを駆動する左車輪駆動装置として機能し、第2電動機2B及び第2遊星歯車式減速機12Bは右後輪RWrを駆動する右車輪駆動装置として機能し、第1電動機2A及び第1遊星歯車式減速機12Aと第2電動機2B及び第2遊星歯車式減速機12Bとは、減速機ケース11内で車幅方向に左右対称に配置されている。
【0026】
減速機ケース11の左右両端側内部には、それぞれ第1及び第2電動機2A、2Bのステータ14A、14Bが固定され、このステータ14A、14Bの内周側に環状のロータ15A、15Bが回転可能に配置されている。ロータ15A、15Bの内周部には車軸10A、10Bの外周を囲繞する円筒軸16A、16Bが結合され、この円筒軸16A、16Bが車軸10A、10Bと同軸で相対回転可能となるように減速機ケース11の端部壁17A、17Bと中間壁18A、18Bとに軸受19A、19Bを介して支持されている。また、円筒軸16A、16Bの一端側の外周であって減速機ケース11の端部壁17A、17Bには、ロータ15A、15Bの回転位置情報を第1及び第2電動機2A、2Bの制御コントローラ(図示せず)にフィードバックするためのレゾルバ20A、20Bが設けられている。
【0027】
また、第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bは、サンギヤ21A、21Bと、このサンギヤ21A、21Bに噛合される複数のプラネタリギヤ22A、22Bと、これらのプラネタリギヤ22A、22Bを支持するプラネタリキャリア23A、23Bと、プラネタリギヤ22A、22Bの外周側に噛合されるリングギヤ24A、24Bと、を備え、サンギヤ21A、21Bから第1及び第2電動機2A、2Bの駆動力が入力され、減速された駆動力がプラネタリキャリア23A、23Bを通して出力されるようになっている。
【0028】
サンギヤ21A、21Bは円筒軸16A、16Bに一体に形成されている。また、プラネタリギヤ22A、22Bは、例えば図3に示すように、サンギヤ21A、21Bに直接噛合される大径の第1ピニオン26A、26Bと、この第1ピニオン26A、26Bよりも小径の第2ピニオン27A、27Bを有する2連ピニオンであり、これらの第1ピニオン26A、26Bと第2ピニオン27A、27Bとが同軸にかつ軸方向にオフセットした状態で一体に形成されている。このプラネタリギヤ22A、22Bはプラネタリキャリア23A、23Bに支持され、プラネタリキャリア23A、23Bは、軸方向内側端部が径方向内側に伸びて車軸10A、10Bにスプライン嵌合され一体回転可能に支持されるとともに、軸受33A、33Bを介して中間壁18A、18Bに支持されている。
【0029】
なお、中間壁18A、18Bは第1及び第2電動機2A、2Bを収容する電動機収容空間と第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bを収容する減速機空間とを隔て、外径側から内径側に互いの軸方向間隔が広がるように屈曲して構成されている。そして、中間壁18A、18Bの内径側、且つ、第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12B側にはプラネタリキャリア23A、23Bを支持する軸受33A、33Bが配置されるとともに中間壁18A、18Bの外径側、且つ、第1及び第2電動機2A、2B側にはステータ14A、14B用のバスリング41A、41Bが配置されている(図2参照)。
【0030】
リングギヤ24A、24Bは、その内周面が小径の第2ピニオン27A、27Bに噛合されるギヤ部28A、28Bと、ギヤ部28A、28Bより小径で減速機ケース11の中間位置で互いに対向配置される小径部29A、29Bと、ギヤ部28A、28Bの軸方向内側端部と小径部29A、29Bの軸方向外側端部を径方向に連結する連結部30A、30Bとを備えて構成されている。この実施形態の場合、リングギヤ24A、24Bの最大半径は、第1ピニオン26A、26Bの車軸10A、10Bの中心からの最大距離よりも小さくなるように設定されている。小径部29A、29Bは、それぞれ後述する一方向クラッチ50のインナーレース51とスプライン嵌合し、リングギヤ24A、24Bは一方向クラッチ50のインナーレース51と一体回転するように構成されている。
【0031】
ところで、減速機ケース11とリングギヤ24A、24Bの間には円筒状の空間部が確保され、その空間部内に、リングギヤ24A、24Bに対する制動手段を構成する油圧ブレーキ60A、60Bが第1ピニオン26A、26Bと径方向でオーバーラップし、第2ピニオン27A、27Bと軸方向でオーバーラップして配置されている。油圧ブレーキ60A、60Bは、減速機ケース11の内径側で軸方向に伸びる筒状の外径側支持部34の内周面にスプライン嵌合された複数の固定プレート35A、35Bと、リングギヤ24A、24Bの外周面にスプライン嵌合された複数の回転プレート36A、36Bが軸方向に交互に配置され、これらのプレート35A、35B,36A、36Bが環状のピストン37A、37Bによって締結及び解放操作されるようになっている。ピストン37A、37Bは、減速機ケース11の中間位置から内径側に延設された左右分割壁39と、左右分割壁39によって連結された外径側支持部34と内径側支持部40間に形成された環状のシリンダ室38A、38Bに進退自在に収容されており、シリンダ室38A、38Bへの高圧オイルの導入によってピストン37A、37Bを前進させ、シリンダ室38A、38Bからオイルを排出することによってピストン37A、37Bを後退させる。なお、油圧ブレーキ60A、60Bは電動オイルポンプ70に接続されている(図1参照)。
【0032】
また、さらに詳細には、ピストン37A、37Bは、軸方向前後に第1ピストン壁63A、63Bと第2ピストン壁64A、64Bを有し、これらのピストン壁63A、63B,64A、64Bが円筒状の内周壁65A、65Bによって連結されている。したがって、第1ピストン壁63A、63Bと第2ピストン壁64A、64Bの間には径方向外側に開口する環状空間が形成されているが、この環状空間は、シリンダ室38A、38Bの外壁内周面に固定された仕切部材66A、66Bによって軸方向左右に仕切られている。減速機ケース11の左右分割壁39と第2ピストン壁64A、64Bの間は高圧オイルが直接導入される第1作動室S1とされ、仕切部材66A、66Bと第1ピストン壁63A、63Bの間は、内周壁65A、65Bに形成された貫通孔を通して第1作動室S1と導通する第2作動室S2とされている。第2ピストン壁64A、64Bと仕切部材66A、66Bの間は大気圧に導通している。
【0033】
この油圧ブレーキ60A、60Bでは、第1作動室S1と第2作動室S2に不図示の油圧回路からオイルが導入され、第1ピストン壁63A、63Bと第2ピストン壁64A、64Bに作用するオイルの圧力によって固定プレート35A、35Bと回転プレート36A、36Bを相互に押し付けが可能である。したがって、軸方向左右の第1,第2ピストン壁63A、63B,64A、64Bによって大きな受圧面積を稼ぐことができるため、ピストン37A、37Bの径方向の面積を抑えたまま固定プレート35A、35Bと回転プレート36A、36Bに対する大きな押し付け力を得ることができる。
【0034】
この油圧ブレーキ60A、60Bの場合、固定プレート35A、35Bが減速機ケース11から伸びる外径側支持部34に支持される一方で、回転プレート36A、36Bがリングギヤ24A、24Bに支持されているため、両プレート35A、35B,36A、36Bがピストン37A、37Bによって押し付けられると、両プレート35A、35B,36A、36B間の摩擦締結によってリングギヤ24A、24Bに制動力が作用し固定(ロック)され、その状態からピストン37A、37Bによる締結が解放されると、リングギヤ24A、24Bの自由な回転が許容される。
【0035】
即ち、油圧ブレーキ60A、60Bは、リングギヤ24A、24Bの回転を規制する回転規制手段として、締結時にリングギヤ24A、24Bをロックして、第1及び第2電動機2A、2Bと後輪Wrとの動力伝達経路を動力伝達可能な接続状態とし、解放時にリングギヤ24A、24Bの回転を許容して、第1及び第2電動機2A、2Bと後輪Wrとの動力伝達経路を動力伝達不能な遮断状態とする。
【0036】
また、軸方向で対向するリングギヤ24A、24Bの連結部30A、30B間にも空間部が確保され、その空間部内に、リングギヤ24A、24Bに対し一方向の動力のみを伝達し他方向の動力を遮断する一方向クラッチ50が配置されている。一方向クラッチ50は、インナーレース51とアウターレース52との間に多数のスプラグ53を介在させたものであって、そのインナーレース51がスプライン嵌合によりリングギヤ24A、24Bの小径部29A、29Bと一体回転するように構成されている。即ち、リングギヤ24Aとリングギヤ24Bとは、インナーレース51によって一体回転可能に互いに連結されている。またアウターレース52は、内径側支持部40により位置決めされるとともに、回り止めされている。
【0037】
一方向クラッチ50は、車両3が第1及び第2電動機2A、2Bの動力で前進する際に係合してリングギヤ24A、24Bの回転をロックするように構成されている。より具体的に説明すると、一方向クラッチ50は、第1及び第2電動機2A、2B側の順方向(車両3を前進させる際の回転方向)のトルクが後輪Wr側に入力されるときに係合状態となるとともに第1及び第2電動機2A、2B側の逆方向のトルクが後輪Wr側に入力されるときに非係合状態となり、後輪Wr側の順方向のトルクが第1及び第2電動機2A、2B側に入力されるときに非係合状態となるとともに後輪Wr側の逆方向のトルクが第1及び第2電動機2A、2B側に入力されるときに係合状態となる。言い換えると、一方向クラッチ50は、非係合時に第1及び第2電動機2A、2Bの逆方向のトルクによるリングギヤ24A、24Bの一方向の回転を許容し、係合時に第1及び第2電動機2A、2Bの順方向のトルクによるリングギヤ24A、24Bの逆方向の回転を規制している。なお、逆方向のトルクとは、逆方向の回転を増加させる方向のトルク、又は、順方向の回転を減少させる方向のトルクをさす。
【0038】
このように本実施形態の後輪駆動装置1では、第1及び第2電動機2A、2Bと後輪Wrとの動力伝達経路上に一方向クラッチ50と油圧ブレーキ60A、60Bとが並列に設けられている。なお、油圧ブレーキ60A、60Bは2つ設ける必要はなく、一方にのみ油圧ブレーキを設け、他方の空間をブリーザ室として用いてもよい。
【0039】
ここで、制御装置8(図1参照)は、車両全体の各種制御をするための制御装置であり、制御装置8には車輪速センサ値、第1及び第2電動機2A、2Bのモータ回転数センサ値、操舵角、アクセルペダル開度AP、シフトポジション、バッテリ9における充電状態SOC、油温などが入力される一方、制御装置8からは、内燃機関4を制御する信号、第1及び第2電動機2A、2Bを制御する信号、電動オイルポンプ70を制御する制御信号などが出力される。
【0040】
即ち、制御装置8は、第1及び第2電動機2A、2Bを制御する電動機制御装置としての機能と、回転規制手段としての油圧ブレーキ60A、60Bを制御する回転規制手段制御装置としての機能とを、少なくとも備えている。
【0041】
図4図13は後輪駆動装置1の各状態における速度共線図を表わし、LMOTは第1電動機2A、RMOTは第2電動機2B、左側のS、C、PG(図12、13のみ)はそれぞれ第1電動機2Aに連結された第1遊星歯車式減速機12Aのサンギヤ21A、第1遊星歯車式減速機12Aのプラネタリキャリア23A、第2遊星歯車式減速機12Bのプラネタリギヤ22B、右側のS、C、PG(図12、13のみ)はそれぞれ第2遊星歯車式減速機12Bのサンギヤ21B、第2遊星歯車式減速機12Bのプラネタリキャリア23B、第1遊星歯車式減速機12Aのプラネタリギヤ22A、Rは第1及び2遊星歯車式減速機12A、12Bのリングギヤ24A、24B、BRKは油圧ブレーキ60A、60B、OWCは一方向クラッチ50を表わす。以下の説明において第1及び第2電動機2A、2Bによる車両前進時のサンギヤ21A、21Bの回転方向を順方向とする。また、図中、停車中の状態から上方が順方向の回転、下方が逆方向の回転であり、矢印は、上向きが順方向のトルクを表し、下向きが逆方向のトルクを表す。
【0042】
停車中は、前輪駆動装置6も後輪駆動装置1も駆動していない。従って、図4に示すように、後輪駆動装置1の第1及び第2電動機2A、2Bは停止しており、車軸10A、10Bも停止しているため、いずれの要素にもトルクは作用していない。このとき、油圧ブレーキ60A、60Bは解放(OFF)している。また、一方向クラッチ50は、第1及び第2電動機2A、2Bが非駆動のため係合していない(OFF)。
【0043】
そして、キーポジションをONにした後、EV発進、EVクルーズなどモータ効率のよい前進低車速時は、後輪駆動装置1による後輪駆動となる。図5に示すように、第1及び第2電動機2A、2Bが順方向に回転するように力行駆動すると、サンギヤ21A、21Bには順方向のトルクが付加される。このとき、前述したように一方向クラッチ50が係合しリングギヤ24A、24Bがロックされる。これによりプラネタリキャリア23A、23Bは順方向に回転し前進走行がなされる。なお、プラネタリキャリア23A、23Bには車軸10A、10Bからの走行抵抗が逆方向に作用している。このように車両3の発進時には、キーポジションをONにして第1及び第2電動機2A、2Bのトルクをあげることで、一方向クラッチ50が機械的に係合してリングギヤ24A、24Bがロックされる。
【0044】
このとき、油圧ブレーキ60A、60Bを弱締結状態に制御する。なお、弱締結とは、動力伝達可能であるが、油圧ブレーキ60A、60Bの締結状態の締結力に対し弱い締結力で締結している状態をいう。第1及び第2電動機2A、2Bの順方向のトルクが後輪Wr側に入力されるときには一方向クラッチ50が係合状態となり、一方向クラッチ50のみで動力伝達可能であるが、一方向クラッチ50と並列に設けられた油圧ブレーキ60A、60Bも弱締結状態とし第1及び第2電動機2A、2B側と後輪Wr側とを接続状態としておくことで、第1及び第2電動機2A、2B側からの順方向のトルクの入力が一時的に低下して一方向クラッチ50が非係合状態となった場合にも、第1及び第2電動機2A、2B側と後輪Wr側とで動力伝達不能になることを抑制できる。
【0045】
前進低車速走行から車速があがりエンジン効率のよい前進中車速走行に至ると、後輪駆動装置1による後輪駆動から前輪駆動装置6による前輪駆動となる。図6に示すように、第1及び第2電動機2A、2Bの力行駆動が停止すると、プラネタリキャリア23A、23Bには車軸10A、10Bから前進走行しようとする順方向のトルクが作用するので、前述したように一方向クラッチ50が非係合状態となる。このときも、油圧ブレーキ60A、60Bを弱締結状態に制御する。
【0046】
図5又は図6の状態から第1及び第2電動機2A、2Bを回生駆動しようすると、図7に示すように、プラネタリキャリア23A、23Bには車軸10A、10Bから前進走行を続けようとする順方向のトルクが作用するので、前述したように一方向クラッチ50が非係合状態となる。このとき、油圧ブレーキ60A、60Bを締結状態(ON)に制御する。従って、リングギヤ24A、24Bがロックされるとともに第1及び第2電動機2A、2Bには逆方向の回生制動トルクが作用し、第1及び第2電動機2A、2Bで減速回生がなされる。このように、後輪Wr側の順方向のトルクが第1及び第2電動機2A、2B側に入力されるときには一方向クラッチ50は非係合状態となり、一方向クラッチ50のみで動力伝達不能であるが、一方向クラッチ50と並列に設けられた油圧ブレーキ60A、60Bを締結させ、第1及び第2電動機2A、2B側と後輪Wr側とを接続状態としておくことで動力伝達可能な状態に保つことができ、この状態で第1及び第2電動機2A、2Bを回生駆動状態に制御することにより、車両3のエネルギーを回生することができる。
【0047】
前進高車速時には、前進中車速走行から引き続いて前輪駆動装置6による前輪駆動となるが、このとき第1及び第2電動機2A、2Bを停止させ油圧ブレーキ60A、60Bを解放状態に制御する。一方向クラッチ50は、後輪Wr側の順方向のトルクが第1及び第2電動機2A、2B側に入力されるので非係合状態となり、油圧ブレーキ60A、60Bを解放状態に制御することでリングギヤ24A、24Bは回転し始める。
【0048】
図8に示すように、第1及び第2電動機2A、2Bが力行駆動を停止すると、プラネタリキャリア23A、23Bには車軸10A、10Bから前進走行しようとする順方向のトルクが作用するので、前述したように一方向クラッチ50が非係合状態となる。このとき、サンギヤ21A、21Bには、サンギヤ21A、21B及び第1及び第2電動機2A、2Bの回転損失が抵抗として入力され、リングギヤ24A、24Bにはリングギヤ24A、24Bの回転損失が発生する。
【0049】
油圧ブレーキ60A、60Bを解放状態に制御することで、リングギヤ24A、24Bの自由な回転が許容され(以下、リングフリー状態と呼ぶ。)、第1及び第2電動機2A、2B側と後輪Wr側とが遮断状態となって動力伝達不能な状態となる。従って、第1及び第2電動機2A、2Bの連れ回りが防止され、前輪駆動装置6による高車速時に第1及び第2電動機2A、2Bが過回転となるのが防止される。以上では、リングフリー状態のときに第1及び第2電動機2A、2Bを停止させたが、リングフリー状態で第1及び第2電動機2A、2Bを駆動してもよい(以下、リングフリー制御と呼ぶ。)。リングフリー制御については後述する。
【0050】
後進時には、図9に示すように、第1及び第2電動機2A、2Bを逆力行駆動すると、サンギヤ21A、21Bには逆方向のトルクが付加される。このとき、前述したように一方向クラッチ50が非係合状態となる。
【0051】
このとき油圧ブレーキ60A、60Bを締結状態(ON)に制御する。従って、リングギヤ24A、24Bがロックされて、プラネタリキャリア23A、23Bは逆方向に回転し後進走行がなされる。なお、プラネタリキャリア23A、23Bには車軸10A、10Bからの走行抵抗が順方向に作用している。このように、第1及び第2電動機2A、2B側の逆方向のトルクが後輪Wr側に入力されるときには一方向クラッチ50は非係合状態となり、一方向クラッチ50のみで動力伝達不能であるが、一方向クラッチ50と並列に設けられた油圧ブレーキ60A、60Bを締結させ、第1及び第2電動機2A、2B側と後輪Wr側とを接続状態としておくことで動力伝達可能に保つことができ、第1及び第2電動機2A、2Bのトルクによって車両3を後進させることができる。
【0052】
図5図9の説明では、左後輪LWrと右後輪RWrとの回転数差、言い換えるとプラネタリキャリア23Aとプラネタリキャリア23Bとの回転数差のない直進時について説明したが、図10は左後輪LWrと右後輪RWrとの回転数差、言い換えるとプラネタリキャリア23Aとプラネタリキャリア23Bとの回転数差がある旋回時を示している。
【0053】
図10(a)及び図10(b)は、左後輪LWr(プラネタリキャリア23A)に対し右後輪RWr(プラネタリキャリア23B)の回転数が高い左旋回時を示している。以下の説明では、左旋回を例に旋回時の制御について説明するが、右旋回時についても同様の制御を行うことができる。また、図10図13では、これまでの図5図9では記載しなかった第1及び第2電動機2A、2Bのトルクにより左右後輪LWr、RWr(プラネタリキャリア23A、23B)に作用する左右後輪トルクも図示している。
【0054】
さらに、以下の説明では、上記した一方向クラッチ50の非係合状態及び油圧ブレーキ60A、60Bの解放状態によりリングギヤ24A、24Bが解放された状態の制御であるリングフリー制御に対し、一方向クラッチ50の係合状態及び/又は油圧ブレーキ60A、60Bの締結状態若しくは弱締結状態によりリングギヤ24A、24Bの自由な回転が規制され(以下、リングロック状態と呼ぶ。)、第1及び第2電動機2A、2B側と後輪Wr側とが接続状態となって動力伝達可能な状態における第1及び第2電動機2A、2Bの駆動制御をリングロック制御とも呼ぶ。
【0055】
<<リングロック制御>>
リングロック制御は、リングロック状態における第1及び第2電動機2A、2Bの駆動制御であり、前後方向におけるトルク要求(以下、目標加減速トルクとも呼ぶ。)及び旋回方向におけるトルク要求(以下、目標ヨーモーメントとも呼ぶ。)を満たすために第1及び第2電動機2A、2Bに目標トルクを発生させることができる。
【0056】
左旋回時の制御を例にリングロック制御について具体的に説明すると、図10(a)に示すように、第1電動機2Aに順方向の第1モータベーストルクTM1pが発生するようにトルク制御を行うことで、サンギヤ21Aには順方向の第1モータベーストルクTM1pが作用する。このとき、リングギヤ24A、24Bの自由な回転が規制されているので、第1遊星歯車式減速機12Aにおいては、リングギヤ24A、24Bが支点となり、力点であるサンギヤ21Aに順方向の第1モータベーストルクTM1pが作用したことで、作用点であるプラネタリキャリア23Aには、第1モータベーストルクTM1pに第1遊星歯車式減速機12Aの減速比を掛け合わせた順方向の左後輪トルクTT1pが、第1モータベーストルク分配力として作用する。
【0057】
一方、第2電動機2Bにも、第1モータベーストルクTM1pより大きい順方向の第2モータベーストルクTM2pが発生するようにトルク制御を行うことで、サンギヤ21Bには順方向の第2モータベーストルクTM2pが作用する。このとき、リングギヤ24A、24Bの自由な回転が規制されているので、第2遊星歯車式減速機12Bにおいては、力点であるサンギヤ21Bに順方向の第2モータベーストルクTM2pが作用したことで、作用点であるプラネタリキャリア23Bには、第2モータベーストルクTM2pに第2遊星歯車式減速機12Bの減速比を掛け合わせた順方向の右後輪トルクTT2pが、第2モータベーストルク分配力として作用する。
【0058】
このリングロック制御における第1及び第2モータベーストルクTM1p、TM2pの算出方法について数式を用いて説明する。左後輪LWrの目標トルクをWTT1、右後輪RWrの目標トルクをWTT2、左右後輪LWr、RWrの合計目標トルク(左後輪トルクと右後輪トルクとの和)をTRT、左右後輪LWr、RWrの目標トルク差(左後輪トルクと右後輪トルクとの差)をΔTTとしたとき、左右後輪LWr、RWrの合計目標トルクの関係から下記(1)式、左右後輪LWr、RWrの目標トルク差の関係から下記(2)式が成立する。
【0059】
WTT1+WTT2=TRT (1)
WTT1−WTT2=ΔTT (2)
【0060】
なお、ΔTTは、目標ヨーモーメント(時計回りを正)をYMT、車輪半径をr、トレッド幅(左右後輪LWr、RWr間距離)とすると、以下の(3)式で表される。
ΔTT=2・r・YMT/Tr (3)
【0061】
従って、左右後輪LWr、RWrの目標トルクWTT1、WTT2が上記(1)、(2)式から一義的に決まる。
【0062】
そして、左後輪LWrに連結される第1電動機2Aの目標トルクをTTM1、右後輪RWrに連結される第2電動機2Bの目標トルクをTTM2としたとき、左右の第1及び第2電動機2A、2Bの目標トルクTTM1、TTM2は以下の(4)、(5)式から導かれる。
【0063】
TTM1=(1/Ratio)・WTT1 (4)
TTM2=(1/Ratio)・WTT2 (5)
なお、Ratioは第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bの減速比である。
【0064】
このようにして求められた第1及び第2電動機2A、2Bの目標トルクTTM1、TTM2から第1及び第2モータベーストルクTM1p、TM2pが得られる。
【0065】
第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bの減速比は等しいものの、第1モータベーストルクTM1pよりも第2モータベーストルクTM2pの方が大きいので、左後輪トルクTT1pよりも右後輪トルクTT2pの方が大きくなり、これにより車両3には左右後輪トルクTT1p、TT2pのトルク差(TT1p−TT2p)に応じた反時計回りのヨーモーメントMが安定的に発生することになる。さらに、車両3には、左右後輪トルクTT1p、TT2pのトルク和(TT1p+TT2p)に応じた加速トルクが発生することになる。
【0066】
このように、リングロック制御では、左右後輪LWr、RWrの合計目標トルクと左右後輪LWr、RWrの目標トルク差の関係から目標加減速トルクと目標ヨーモーメントを満たすことができる。
【0067】
図10(a)では、左右後輪トルクTT1p、TT2pのトルク和(TT1p+TT2p)が正である場合を説明したが、図10(a)と同じ大きさの反時計回りのヨーモーメントMを発生させるために、図10(b)に示すように、第1電動機2Aに逆方向の第1モータベーストルクTM1pが発生するようにトルク制御を行い、第2電動機2Bにも、第1モータベーストルクTM1pより小さい逆方向の第2モータベーストルクTM2pが発生するようにトルク制御を行ってもよい。これにより、車両3には左右後輪トルクTT1p、TT2pのトルク差(TT1p−TT2p)に応じた反時計回りのヨーモーメントMを安定的に発生させることができる。この場合には、左右後輪トルクTT1p、TT2pのトルク和(TT1p+TT2p)が負なので、車両3には、左右後輪トルクTT1p、TT2pのトルク和(TT1p+TT2p)に応じた減速(回生)トルクが発生している。図10(b)では、第1及び第2電動機2A、2B側の逆方向のトルクが後輪Wr側に入力されるので、一方向クラッチ50が非係合状態となり、油圧ブレーキ60A、60Bを締結状態としている。
【0068】
旋回中に車速がある閾値を超えて前進高車速状態に至ると、第1及び第2電動機2A、2Bの過回転を防止するため油圧ブレーキ60A、60Bは解放される。このとき、リングロック制御からリングフリー制御に移行する。
【0069】
<<リングフリー制御>>
リングフリー制御は、リングフリー状態における第1及び第2電動機2A、2Bの駆動制御であり、目標ヨーモーメントを発生させるために第1及び第2電動機2A、2Bに目標トルクを発生させたり(リングフリー目標トルク制御)、第1及び/又は第2電動機2A、2Bを目標回転数に制御(リングフリー目標回転数制御)したりすることができる。
【0070】
<リングフリー目標トルク制御>
リングフリー状態では、上記したように第1及び第2電動機2A、2B側と後輪Wr側とが遮断状態となって動力伝達不能な状態になるが、第1電動機2Aに順方向又は逆方向のトルクが発生するように且つ第2電動機2Bに第1電動機2Aと絶対値が等しく反対方向(逆方向又は順方向)のトルクが発生するように制御することによって、第1及び第2電動機2A、2Bに回転数変動を生じさせずに左後輪LWrと右後輪RWrとに左右差トルクを発生させて所期のヨーモーメントを発生させることは可能である。
【0071】
図10(a)と同一のヨーモーメントMを発生させる場合を例に図11(a)に基づいてリングフリー目標トルク制御について説明すると、先ず、リングロック制御時と同様に左右後輪トルクTT1p、TT2pのトルク差(TT1p−TT2p)に基づいて、第1電動機2Aの第1モータベーストルクTM1qと第2電動機2Bの第2モータベーストルクTM2qを求める。
【0072】
リングロック制御時と同様に、左後輪LWrの左後輪目標トルクをWTT1、右後輪RWrの右後輪目標トルクをWTT2、左右後輪LWr、RWrの合計目標トルク(左後輪トルクと右後輪トルクとの和)をTRT、左右後輪LWr、RWrの目標トルク差(左後輪トルクと右後輪トルクとの差)をΔTTとしたとき、上記(1)〜(3)式が成立する。
【0073】
ここで、リングフリー状態では第1及び第2電動機2A、2Bによる同一方向のトルクは、後輪Wrに伝達されないため、左右後輪LWr、RWrの合計目標トルクTRTは零である。従って、左右後輪LWr、RWrの目標トルクWTT1、WTT2が上記(1)、(2)式から一義的に決まる。
即ち、WWT1=−WTT2=ΔTT/2 (6)
【0074】
また、左後輪LWrに連結される第1電動機2Aの目標トルクをTTM1、右後輪RWrに連結される第2電動機2Bの目標トルクをTTM2としたとき、左右の第1及び第2電動機2A、2Bの目標トルクTTM1、TTM2は、上記(4)、(5)式から導かれる。
【0075】
上記(4)〜(6)式から左右の第1及び第2電動機2A、2Bの目標トルクTTM1、TTM2は、以下の(7)、(8)式で表される。
TTM1=(1/Ratio)・ΔTT/2 (7)
TTM2=−(1/Ratio)・ΔTT/2 (8)
【0076】
そして、図10(a)の状態のヨーモーメントMと同一にするためには、左右後輪LWr、RWrの目標トルク差ΔTTをリングロック制御時の左右後輪トルクTT1p、TT2pのトルク差(TT1p−TT2p)と同一にすることで、第1及び第2電動機2A、2Bの目標トルクTTM1、TTM2が求められる。このようにして求められた第1及び第2電動機2A、2Bの目標トルクTTM1、TTM2から第1及び第2モータベーストルクTM1q、TM2qが得られる。(7)、(8)式から明らかなように、第1及び第2モータベーストルクTM1q、TM2qは、絶対値が等しく反対方向のトルクとなり、ここでは反時計回りのヨーモーメントMを発生させるので、第1モータベーストルクTM1qが逆方向のトルクとなり、第2モータベーストルクTM2qが順方向のトルクとなる。
【0077】
図11(a)に示すように、第1電動機2Aに逆方向の第1モータベーストルクTM1qが発生するようにトルク制御を行うことで、サンギヤ21Aには逆方向の第1モータベーストルクTM1qが作用する。このとき、図8と同様に、プラネタリキャリア23Aには車軸10Aから前進走行しようとする順方向のトルク(図示せず)が作用している。従って、第1遊星歯車式減速機12Aにおいては、プラネタリキャリア23Aが支点となり、力点であるサンギヤ21Aに順方向の第1モータベーストルクTM1qが作用したことで、作用点であるリングギヤ24A、24Bに順方向の第1モータベーストルク分配力TM1q′が作用する。
【0078】
一方、第2電動機2Bに順方向の第2モータベーストルクTM2qが発生するようにトルク制御を行うことで、サンギヤ21Bには順方向の第2モータベーストルクTM2qが作用する。このとき、図8と同様に、プラネタリキャリア23Bには車軸10Bから前進走行しようとする順方向のトルク(図示せず)が作用している。従って、第2遊星歯車式減速機12Bにおいては、プラネタリキャリア23Bが支点となり、力点であるサンギヤ21Bに順方向の第2モータベーストルクTM2qが作用したことで、作用点であるリングギヤ24A、24Bに逆方向の第2モータベーストルク分配力TM2q′が作用する。
【0079】
ここで、第1モータベーストルクTM1qと第2モータベーストルクTM2qは、絶対値の等しい反対方向のトルクなので、リングギヤ24A、24Bに作用する逆方向の第1モータベーストルク分配力TM1q′と順方向の第2モータベーストルク分配力TM2q′は互いに打ち消しあう(相殺)。従って、第1モータベーストルクTM1qと第2モータベーストルクTM2qは回転変動に寄与せず、サンギヤ21A、21Bとリングギヤ24A、24Bはそれぞれの回転状態が維持される。プラネタリキャリア23Aには、第1モータベーストルクTM1qに第1遊星歯車式減速機12Aの減速比を掛け合わせた逆方向の左後輪トルクTT1qが作用するとともに、プラネタリキャリア23Bには、第2モータベーストルクTM2qに第2遊星歯車式減速機12Bの減速比を掛け合わせた順方向の右後輪トルクTT2qが作用する。
【0080】
第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bの減速比は等しいので、左右後輪トルクTT1q、TT2qは絶対値の等しい反対方向のトルクとなり、これにより車両3にはリングロック制御時の左右後輪トルクTT1p、TT2pのトルク差(TT1p−TT2p)に等しい、左右後輪トルクTT1q、TT2qのトルク差(TT1q−TT2q)が発生し、反時計回りのヨーモーメントMが維持されることとなる。
【0081】
<リングフリー目標回転数制御>
リングフリー状態、すなわち一方向クラッチ50が非係合状態で且つ油圧ブレーキ60A、60Bが解放状態においては、第1及び第2電動機2A、2Bから同一方向のトルクを発生させても連結されたリングギヤ24A、24Bがロックされておらず、また前述のモータトルク分配力の相殺も生じないため、後輪Wrにトルクは伝達されず、サンギヤ21A、21B(第1及び第2電動機2A、2B)とリングギヤ24A、24Bの回転数変動が生じるのみである。
【0082】
この場合、第1及び第2電動機2A、2Bに絶対値の等しい同一方向の回転制御トルクを発生させることで、回転制御トルクを後輪Wrに伝達せずに第1及び/又は第2電動機2A、2Bを所期の回転数に制御することができる。
【0083】
例えば図11(a)の状態から第1及び第2電動機2A、2Bの回転数を下げる場合、具体的には第1電動機2Aの回転数MA1(以下、モータ実回転数と呼ぶ。)を目標回転数MA2(以下、モータ目標回転数と呼ぶ。)に下げる場合を例に図11(b)に基づいて説明する。第1電動機2Aに逆方向の第1回転制御トルクSM1が発生するようにトルク制御を行うことで、サンギヤ21Aには逆方向の第1回転制御トルクSM1が作用する。このとき、図8と同様に、プラネタリキャリア23Aには車軸10Aから前進走行しようとする順方向のトルク(図示せず)が作用している。従って、第1遊星歯車式減速機12Aにおいては、プラネタリキャリア23Aが支点となり、力点であるサンギヤ21Aに逆方向の第1回転制御トルクSM1が作用したことで、作用点であるリングギヤ24A、24Bに順方向の第1回転制御トルク分配力SM1′が作用する。
【0084】
同様に、第2電動機2Bに逆方向の第2回転制御トルクSM2が発生するようにトルク制御を行うことで、サンギヤ21Bには逆方向の第2回転制御トルクSM2が作用する。このとき、図8と同様に、プラネタリキャリア23Bには車軸10Bから前進走行しようとする順方向のトルク(図示せず)が作用している。従って、第2遊星歯車式減速機12Bにおいては、プラネタリキャリア23Bが支点となり、力点であるサンギヤ21Bに逆方向の第2回転制御トルクSM2が作用したことで、作用点であるリングギヤ24A、24Bに順方向の第2回転制御トルク分配力SM2′が作用する。
【0085】
ここで、第1及び第2回転制御トルクSM1、SM2は絶対値の等しい同一方向のトルクなので、リングギヤ24A、24Bに作用する第1及び第2回転制御トルク分配力SM1′、SM2′も、絶対値の等しい同一方向のトルクとなり、第1及び第2回転制御トルク分配力SM1′、SM2′は、リングギヤ24A、24Bの回転数を上げる方向に作用する。このとき、第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bには、第1及び第2回転制御トルクSM1、SM2に釣り合うトルクが存在しないため、プラネタリキャリア23A、23Bには、第1及び第2回転制御トルクSM1、SM2による左右後輪トルクが発生しない。従って、第1及び第2回転制御トルクSM1、SM2は、回転変動にのみ寄与し、第1及び第2電動機2A、2Bの回転数並びにサンギヤ21A、21Bの回転数を下げるとともに、第1及び第2回転制御トルク分配力SM1′、SM2′は、リングギヤ24A、24Bの回転数を上げる。このように第1及び第2回転制御トルクSM1、SM2を適宜発生させることによって、第1電動機2Aを任意の目標回転数に制御することができ、やがて第1電動機2Aがモータ目標回転数MA2になる。第1及び第2回転制御トルクSM1、SM2は、モータ実回転数MA1とモータ目標回転数MA2との差分から算出される。
【0086】
なお、後輪駆動装置1は、リングギヤ24A、24Bが連結されているため、第1電動機2Aのモータ目標回転数と第2電動機2Bのモータ目標回転数を同時に満足するように制御することはできない場合があり、その場合には、いずれか一方の電動機のモータ目標回転数を満足するように一方の電動機を目標回転数制御することとなる。図11(b)は、第1電動機2Aを目標回転数制御する場合について例示したものである。
【0087】
<リングフリー目標トルク制御+リングフリー目標回転数制御>
図11(a)及び(b)は、リングフリー状態において、目標ヨーモーメントを発生させるために第1及び第2電動機2A、2Bに目標トルクを発生させるリングフリー目標トルク制御と、第1及び/又は第2電動機2A、2Bを目標回転数に制御するリングフリー目標回転数制御とを別々に説明したものであるが、これを同時に行うことで、所期のヨーモーメントを発生させつつ第1及び/又は第2電動機2A、2Bを所期の回転数に制御することができる。
【0088】
図11(c)は、図11(a)に記載の第1及び第2モータベーストルクTM1q、TM2qとその分配力である第1及び第2モータベーストルク分配力TM1q′、TM2q′、図11(b)に記載の第1及び第2回転制御トルクSM1、SM2とその分配力である第1及び第2回転制御トルク分配力SM1′、SM2′をあわせて記載したものである。
【0089】
この場合、実際には、第1電動機2Aからは逆方向の第1モータトルクM1(第1モータベーストルクTM1q+第1回転制御トルクSM1)が発生しており、第2電動機2Bからは順方向の第2モータトルクM2(第2モータベーストルクTM2q+第2回転制御トルクSM2)が発生していることになり、これにより、プラネタリキャリア23Aには逆方向の左後輪トルクTT1qが作用するとともに、プラネタリキャリア23Bには順方向の右後輪トルクTT2qが作用し、反時計回りのヨーモーメントMが発生する。また、同時に、第1電動機2Aのモータ実回転数MA1並びにサンギヤ21Aの回転数が下がり、リングギヤ24A、24Bの回転数は上がることとなり、やがて、第1電動機2Aの実回転数MA1がモータ目標回転数MA2になる。
【0090】
上述した、リングフリー目標回転数制御を行う場合の目標回転数の決め方として、以下の2つの態様(I)、(II)を例示する。
【0091】
(I)1つ目は、前述の目標回転数制御を電動機の目標回転数に基づいて行う態様、詳しくは電動機の効率に基づいた電動機の目標回転数に基づいて行う態様である。即ち、モータ目標回転数を、第1及び第2電動機2A、2Bの効率と該電動機へ電力を供給する電力供給装置の効率との少なくとも一方に基づいて、第1及び第2電動機2A、2Bのモータ目標回転数を設定する態様である。油圧ブレーキ60A、60B及び/又は一方向クラッチ50によりリングギヤ24A、24Bがロックされた状態では、第1及び第2電動機2A、2Bの回転数並びにサンギヤ21A、21Bの回転数はプラネタリキャリア23A、23Bの回転に連動し、第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bの減速比に応じた所定の回転数となるが、リングギヤ24A、24Bがロックされていない状態、即ちリングフリー状態であれば、第1及び第2電動機2A、2Bの回転数並びにサンギヤ21A、21Bの回転数はプラネタリキャリア23A、23Bの回転に連動せず、任意の回転数とすることができる。なお、電力供給装置は、不図示のインバータを含むPDU、3相線であり、主としてPDUである。このように電力供給系の効率に占める割合が大きい、電動機の効率とPDUの効率に基づいてモータ目標回転数を求めることで、電力消費をより低減することができる。また、電動機の効率のみに基づいてモータ目標回転数を求めてもよい。この場合には、効率を試験的に求める場合には、効率マップの作成が容易となり、逐次検出・推定して求める場合には、制御量を低減することができる。
【0092】
(II)2つ目は、前述の目標回転数制御をプラネタリギヤ22A、22Bの目標回転数に基づいて行う態様、詳しくはリングフリー状態でプラネタリギヤ22A、22Bの回転方向が反転しないように制御する態様である。
【0093】
図12は、図11と同様に車両3の左旋回中を示しており、図中、第1遊星歯車式減速機12Aのサンギヤ21A(S)、プラネタリキャリア23A(C)、リングギヤ24A(R)を結んだ線分をさらに延長した線上の点(A1)はプラネタリギヤ22Aの回転数(自転)を表し、第2遊星歯車式減速機12Bのサンギヤ21B(S)、プラネタリキャリア23B(C)、リングギヤ24B(R)を結んだ線分をさらに延長した線上の点(B1)はプラネタリギヤ22Bの回転数(自転)を表わしている。
【0094】
リングフリー状態では、左後輪LWrと右後輪RWrとに接続されるプラネタリキャリア23A、23B(C)以外の、サンギヤ21A、21B(S)及びプラネタリギヤ22A、22B(PG)及びリングギヤ24A、24B(R)は任意の回転数とすることが可能となる。ここでは、図10(a)のようなリングロック制御から油圧ブレーキ60A、60Bの解放指令が入力された場合を想定しており、図12に示すように、第1遊星歯車式減速機12Aにおいて回転数A1で逆回転しているプラネタリギヤ22Aの回転方向が反転しないように且つ回転数(絶対値)が小さくなるように零回転近傍でプラネタリギヤ目標回転数A2を設定し、第1電動機2Aのモータ実回転数MA1と、プラネタリギヤ目標回転数A2とプラネタリキャリア23Aの回転数若しくは左後輪LWrの回転数とに基づいて求められる第1電動機2Aのモータ目標回転数MA2との回転数差DAを算出する。
【0095】
同様に、第2遊星歯車式減速機12Bにおいて回転数B1で逆回転しているプラネタリギヤ22Bの回転方向が反転しないように且つ回転数(絶対値)が小さくなるように零回転近傍でプラネタリギヤ目標回転数B2を設定し、第2電動機2Bのモータ実回転数MB1と、プラネタリギヤ目標回転数B2とプラネタリキャリア23Bの回転数若しくは右後輪RWrの回転数とに基づいて求められる第2電動機2Bのモータ目標回転数MB2との回転数差DBを算出する。
【0096】
そして、第1電動機2Aにおける回転数差DAと第2電動機2Bにおける回転数差DBを比較して、回転数差の小さい第1電動機2Aを目標回転数制御する電動機として選択する。このように、回転数差の小さい方の電動機を目標回転数制御する電動機として選択することにより、回転数差の大きい、すなわちモータ目標回転数に制御しない方の電動機の過剰制御を抑制することができる。仮に、回転数差の大きい方の電動機である第2電動機2Bを目標回転数制御する電動機として選択すると、回転数差の小さい第1電動機2Aは過剰制御となって、第1遊星歯車式減速機12Aのプラネタリギヤ22Aは目標回転数を超えて回転方向が反転し、正回転してしまうこととなる。このようにプラネタリギヤ22A、22Bの回転方向が反転しないように目標回転数制御を行うことで、バックラッシュの発生を防止することができる。
【0097】
また、(II)のモータ目標回転数の算出と、(I)のモータ目標回転数の算出とを並行して行ってもよい。即ち、プラネタリギヤ目標回転数に基づいたモータ目標回転数の算出と、電動機と該電動機へ電力を供給する電力供給装置の効率に基づいたモータ目標回転数の算出とを並行して行ってもよい。これにより、バックラッシュの発生を防止しながら電力消費を低減することができる。ただし、プラネタリギヤ目標回転数に基づいて求めたモータ目標回転数と、電動機と該電動機へ電力を供給する電力供給装置の効率に基づいて求めたモータ目標回転数とを同時に満たすモータ回転数が存在しない場合には、プラネタリギヤ目標回転数に基づいて求めたモータ目標回転数を優先することが好ましい。これにより、電動機等の効率よりもバックラッシュの発生の防止を優先することで、車両の快適性を向上させることができる。
【0098】
続いて、本発明の特徴であるリングロック制御からリングフリー目標トルク制御への移行について図13に基づいて時系列に説明する。
図13(a)は、上記図10(a)で説明したリングロック制御中と同じ図である。この状態で車速がある閾値を超えて前進高車状態に至ると、第1及び第2電動機2A、2Bの過回転を防止するためリングロック状態からリングフリー状態への移行指令が入力される。
【0099】
図14に示すように、時刻T1において移行指令が入力されると、リングロック制御時の反時計回りのヨーモーメントMを維持するために左右後輪トルクTT1p、TT2pのトルク差(TT1p−TT2p)を維持しつつ左右後輪トルクTT1p、TT2pのトルク和(TT1p+TT2p)が零となるように、第1及び第2モータベーストルクTM1q、TM2qを求める。
【0100】
そして、リングロック制御時の第1及び第2モータベーストルクTM1p、TM2pから第1及び第2モータベーストルクTM1q、TM2qへと、第1及び第2モータベーストルクTM1p、TM2pのトルク差(TM1p−TM2p)を維持しながら発生トルクを変更する。このとき、第1及び第2モータベーストルクTM1p、TM2pのトルク和が次第に減少するように第1及び第2電動機2A、2Bを制御する。なお、第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bの減速比は等しいので、第1及び第2モータベーストルクTM1p、TM2pのトルク差(TM1p−TM2p)を維持することで左右後輪トルクTT1p、TT2pのトルク差(TT1p−TT2p)も維持することができ、ヨーモーメントMを安定的に発生させ続けることができる。また、第1及び第2モータベーストルクTM1p、TM2pのトルク和を時刻T1でのトルク和(TM1p+TM2p)から零へ次第に減少させることで、左右後輪トルクTT1p、TT2pのトルク和(TT1p+TT2p)も次第に減少し、加速力が次第に減少することとなる。
【0101】
時刻T1から時刻T2において第1及び第2モータベーストルクTM1p、TM2pのトルク和は次第に減少し、時刻T2で零となる。第1及び第2モータベーストルクTM1p、TM2pのトルク和が零になると、一方向クラッチ50は、第1及び第2電動機2A、2B側の順方向のトルクが後輪Wr側に入力されなくなるので係合状態から非係合状態となる。また、時刻T2で、油圧ブレーキ60A、60Bは弱締結状態から解放状態に制御される。これにより、図13(b)に示すように、後輪駆動装置1はリングフリー状態となる。
【0102】
リングフリー状態では、ヨーモーメントMを維持するリングフリー目標トルク制御に加えて、第1及び第2電動機2A、2Bの回転数を所期の回転数に制御するためリングフリー目標回転数制御(ここでは、上記(II)の態様について説明する。)が行われる。上記したように、第1遊星歯車式減速機12Aにおいて回転数A1で逆回転しているプラネタリギヤ22Aの回転方向が反転しないように且つ回転数(絶対値)が小さくなるように零回転近傍でプラネタリギヤ目標回転数A2を設定し、第1電動機2Aのモータ実回転数MA1と、プラネタリギヤ目標回転数A2とプラネタリキャリア23Aの回転数若しくは左後輪LWrの回転数とに基づいて求められる第1電動機2Aのモータ目標回転数MA2との回転数差DAを算出する。同様に、第2遊星歯車式減速機12Bにおいて回転数B1で逆回転しているプラネタリギヤ22Bの回転方向が反転しないように且つ回転数(絶対値)が小さくなるように零回転近傍でプラネタリギヤ目標回転数B2を設定し、第2電動機2Bのモータ実回転数MB1と、プラネタリギヤ目標回転数B2とプラネタリキャリア23Bの回転数若しくは右後輪RWrの回転数とに基づいて求められる第2電動機2Bのモータ目標回転数MB2との回転数差DBを算出する。そして、第1電動機2Aにおける回転数差DAと第2電動機2Bにおける回転数差DBを比較して、回転数差の小さい第1電動機2Aを目標回転数制御する電動機として選択する。
【0103】
時刻T2から時刻T3において、第1及び第2電動機2A、2Bからは、第1及び第2モータベーストルクTM1q、TM2qに加えて、目標回転数制御に寄与するトルクとして、絶対値が等しく同一方向(ともに逆方向)の第1及び第2回転制御トルクSM1、SM2を発生させる。実際には、第1電動機2Aからは第1モータトルクM1(第1モータベーストルクTM1q+第1回転制御トルクSM1)が発生し、第2電動機2Bからは第2モータトルクM2(第2モータベーストルクTM2+第2回転制御トルクSM2)が発生することになる。この状態においても、第1及び第2回転制御トルクSM1、SM2は絶対値の等しい同一方向(逆方向)のトルクなので、リングロック制御時の第1及び第2モータベーストルクTM1p、TM2pのトルク差(TM1p−TM2p)に等しい第1及び第2モータベーストルクTM1q、TM2qのトルク差(TM1q−TM2q)が維持される。従って、プラネタリキャリア23Aには逆方向の左後輪トルクTT1qが作用するとともに、プラネタリキャリア23Bには順方向の右後輪トルクTT2qが作用し、リングロック制御時の左右後輪トルクTT1p、TT2pのトルク差(TT1p−TT2p)に等しい左右後輪トルクTTq、TT2qのトルク差(TT1q−TT2q)が維持され、反時計回りのヨーモーメントMが発生し続ける。
【0104】
時刻T3において、第1電動機2Aのモータ実回転数MA1が、モータ目標回転数MA2になった時点で、図13(c)に示すように、第1及び第2回転制御トルクSM1、SM2を消滅させる。このときの第2電動機2Bの回転数並びにサンギヤ21Bの回転数は、右後輪RWrに連結されるプラネタリキャリア23Bの回転数とリングギヤ24A、24Bの回転数により一義的に決まることとなる。
【0105】
時刻T3以後は、第1及び第2電動機2A、2Bから、リングフリー目標トルク制御を続けるために、絶対値が等しく反対方向の第1及び第2モータベーストルクTM1q、TM2qを発生させることで、リングロック制御時の第1及び第2モータベーストルクTM1p、TM2pのトルク差(TM1p−TM2p)に等しい第1及び第2モータベーストルクTM1q、TM2qのトルク差(TM1q−TM2q)が維持され、リングロック制御時の左右後輪トルクTT1p、TT2pのトルク差(TT1p−TT2p)に等しい左右後輪トルクTTq、TT2qのトルク差(TT1q−TT2q)が維持される。これにより、反時計回りのヨーモーメントMが発生し続ける。
【0106】
以上説明したように、リングロック制御からリングフリー制御に移行する際に、第1及び第2電動機2A、2Bの第1及び第2モータベーストルクTM1p、TM2pのトルク差(TM1p−TM2p)を維持しつつ、第1及び第2電動機2A、2Bの第1及び第2モータベーストルクTM1p、TM2pのトルク和(TM1p+TM2p)が零に近づくよう、第1及び第2電動機2A、2Bを制御することにより、リングロック状態からリングフリー状態に亙ってヨーモーメントMの発生を一定に維持することができ、さらに車両3の前後方向の状態変化を低減することができる。このとき、図14の点線で示すように、第1及び第2電動機2A、2Bの第1及び第2モータベーストルクTM1p、TM2pのトルク和(TM1p+TM2p)が零に向かって次第に減少するように急変を抑制することで、車両3の前後方向の状態変化をより確実に抑制することができる。
【0107】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
例えば、リングギヤ24A、24Bにそれぞれ油圧ブレーキ60A、60Bを設ける必要はなく、連結されたリングギヤ24A、24Bに少なくとも1つの油圧ブレーキが設けられていればよく、さらに必ずしも一方向クラッチを備えている必要はない。この場合、油圧ブレーキを解放状態から締結状態に制御することで、リングロック状態からリングフリー状態へと変更することができる。
また、回転規制手段として油圧ブレーキを例示したが、これに限らず機械式、電磁式等任意に選択できる。
また、サンギヤ21A、21Bに第1及び第2電動機2A、2Bを接続し、リングギヤ同士を互いに連結したが、これに限らずサンギヤ同士を互いに連結し、リングギヤに第1及び第2電動機を接続してもよい。
また、前輪駆動装置は、内燃機関を用いずに電動機を唯一の駆動源とするものでもよい。
【0108】
なお、本出願は、2012年3月30日出願の日本特許出願(特願2012−082933)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0109】
1 後輪駆動装置
2A 第1電動機
2B 第2電動機
8 制御装置(電動機制御装置、回転規制手段制御装置)
12A 第1遊星歯車式減速機(第1変速機)
12B 第2遊星歯車式減速機(第2変速機)
21A、21B サンギヤ(第1回転要素)
22A、22B プラネタリギヤ(第4回転要素)
23A、23B プラネタリキャリア(第2回転要素)
24A、24B リングギヤ(第3回転要素)
60A、60B 油圧ブレーキ(回転規制手段)
LWr 左後輪(左車輪)
RWr 右後輪(右車輪)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14

【手続補正書】
【提出日】2014年6月9日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
車両の左車輪を駆動する第1電動機と、前記第1電動機と前記左車輪との動力伝達経路上に設けられた第1変速機と、を有する左車輪駆動装置と、前記車両の右車輪を駆動する第2電動機と、前記第2電動機と前記右車輪との動力伝達経路上に設けられた第2変速機と、を有する右車輪駆動装置と、前記第1電動機と前記第2電動機とを制御する電動機制御装置と、を備える車両用駆動装置であって、
前記第1及び第2変速機は、それぞれ第1乃至第3回転要素を有し、
前記第1変速機の前記第1回転要素に前記第1電動機が接続され、
前記第2変速機の前記第1回転要素に前記第2電動機が接続され、
前記第1変速機の前記第2回転要素に前記左車輪が接続され、
前記第2変速機の前記第2回転要素に前記右車輪が接続され、
前記第1変速機の前記第3回転要素と前記第2変速機の前記第3回転要素とが互いに連結され、
前記車両用駆動装置は、さらに解放状態又は締結状態に切替可能とされ、締結状態とすることにより前記第3回転要素の回転を規制する回転規制手段と、
前記回転規制手段を制御する回転規制手段制御装置と、をさらに備え、
前記電動機制御装置が前記第1電動機と前記第2電動機とにトルク差を生じさせた状態で、前記回転規制手段制御装置が前記回転規制手段を締結状態から解放状態に制御するときに、前記電動機制御装置は、前記第1電動機と前記第2電動機とのトルク差を維持しつつ、前記第1電動機と前記第2電動機とのトルク和が零に近づくよう、前記第1電動機と前記第2電動機とを制御することを特徴とする車両用駆動装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、
車両の左車輪(例えば、後述の実施形態の左後輪LWr)を駆動する第1電動機(例えば、後述の実施形態の第1電動機2A)と、前記第1電動機と前記左車輪との動力伝達経路上に設けられた第1変速機(例えば、後述の実施形態の第1遊星歯車式減速機12A)と、を有する左車輪駆動装置と、前記車両の右車輪(例えば、後述の実施形態の右後輪RWr)を駆動する第2電動機(例えば、後述の実施形態の第2電動機2B)と、前記第2電動機と前記右車輪との動力伝達経路上に設けられた第2変速機(例えば、後述の実施形態の第2遊星歯車式減速機12B)と、を有する右車輪駆動装置と、前記第1電動機と前記第2電動機とを制御する電動機制御装置(例えば、後述の実施形態の制御装置8)と、を備える車両用駆動装置(例えば、後述の実施形態の後輪駆動装置1)であって、
前記第1及び第2変速機は、それぞれ第1乃至第3回転要素を有し、
前記第1変速機の前記第1回転要素(例えば、後述の実施形態のサンギヤ21A)に前記第1電動機が接続され、
前記第2変速機の前記第1回転要素(例えば、後述の実施形態のサンギヤ21B)に前記第2電動機が接続され、
前記第1変速機の前記第2回転要素(例えば、後述の実施形態のプラネタリキャリア23A)に前記左車輪が接続され、
前記第2変速機の前記第2回転要素(例えば、後述の実施形態のプラネタリキャリア23B)に前記右車輪が接続され、
前記第1変速機の前記第3回転要素(例えば、後述の実施形態のリングギヤ24A)と前記第2変速機の前記第3回転要素(例えば、後述の実施形態のリングギヤ24B)とが互いに連結され、
前記車両用駆動装置は、さらに解放状態又は締結状態に切替可能とされ、締結状態とすることにより前記第3回転要素の回転を規制する回転規制手段(例えば、後述の実施形態の油圧ブレーキ60A、60B)と、
前記回転規制手段を制御する回転規制手段制御装置(例えば、後述の実施形態の制御装置8)と、をさらに備え、
前記電動機制御装置が前記第1電動機と前記第2電動機とにトルク差を生じさせた状態で、前記回転規制手段制御装置が前記回転規制手段を締結状態から解放状態に制御するときに、前記電動機制御装置は、前記第1電動機と前記第2電動機とのトルク差を維持しつつ、前記第1電動機と前記第2電動機とのトルク和が零に近づくよう、前記第1電動機と前記第2電動機とを制御することを特徴とする。
【国際調査報告】