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再表2013-146498微構造解析方法、そのプログラム及び微構造解析装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2013年10月3日
【発行日】2015年12月14日
(54)【発明の名称】微構造解析方法、そのプログラム及び微構造解析装置
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/00 20060101AFI20151117BHJP
   G01N 23/04 20060101ALI20151117BHJP
   B01D 53/94 20060101ALN20151117BHJP
【FI】
   C04B38/00 304Z
   G01N23/04
   C04B38/00 302Z
   B01D53/36 104B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】46
【出願番号】特願2013-533035(P2013-533035)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2013年3月21日
(11)【特許番号】特許第5426803号(P5426803)
(45)【特許公報発行日】2014年2月26日
(31)【優先権主張番号】特願2012-82540(P2012-82540)
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂下 俊
(72)【発明者】
【氏名】惣川 真吾
(72)【発明者】
【氏名】長岡 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 雄一郎
【テーマコード(参考)】
2G001
4D048
4G019
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001LA06
2G001MA05
4D048AA14
4D048AB01
4D048BA03X
4D048BA10X
4D048BA19X
4D048BA30X
4D048BA41X
4D048BB02
4D048BB14
4D048BB17
4G019GA04
(57)【要約】
位置情報と種別情報とが対応づけられた多孔質体データ60を参照して、親仮想球体と子仮想球体とからなる曲面体を仮想曲面体とし、仮想曲面体によって占有される曲面体画素で空間画素を埋めるように仮想曲面体を複数配置する(ステップS230〜S320)。これを繰り返して多孔質体の空間内に複数の仮想曲面体を配置することにより、多孔質体の微構造をより精度よく解析する。解析としては、例えば面内均一性指数γx,空間均一性指数γ,圧力損失P,通過流速T,等価直径dの導出や、導出した値に基づく良否判定を行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質体の3次元スキャンにより得られた画素の位置を表す位置情報と、該画素が空間であることを表す空間画素か物体であることを表す物体画素かを表す画素種別情報と、を対応づけた多孔質体データを用いた該多孔質体の微構造解析方法であって、
(a)前記多孔質体データを参照して、親仮想球体と、該親仮想球体と占有する画素が一部重複する1以上の子仮想球体と、を含む曲面体を仮想曲面体とし、該仮想曲面体によって占有される画素である曲面体画素で前記空間画素を埋めるように該仮想曲面体を複数配置するステップと、
(b)前記ステップ(a)で配置された仮想曲面体に関する情報に基づいて前記多孔質体の微構造を解析するステップと、
を含む微構造解析方法。
【請求項2】
前記ステップ(a)では、前記仮想曲面体を構成する子仮想球体の中心が該仮想曲面体を構成する親仮想球体と重なるように該仮想曲面体を配置する、
請求項1に記載の微構造解析方法。
【請求項3】
前記ステップ(a)では、前記仮想曲面体が互いに重なることを許容して、複数の該仮想曲面体を配置する、
請求項1又は2に記載の微構造解析方法。
【請求項4】
前記ステップ(a)では、前記仮想曲面体が互いに重ならないように、複数の該仮想曲面体を配置する、
請求項1又は2に記載の微構造解析方法。
【請求項5】
前記ステップ(a)では、前記曲面体画素が前記物体画素と重ならないように前記仮想曲面体を配置する、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の微構造解析方法。
【請求項6】
前記ステップ(a)では、前記空間画素を埋めるように配置可能な最大の球径を持つ前記親仮想球体を配置し、前記子仮想球体によって占有される画素が該配置された親仮想球体の占有する画素と一部重複し且つ前記空間画素を埋めるように該子仮想球体を1以上配置して、前記仮想曲面体を1つ配置する処理を行い、仮想曲面体が互いに異なる位置に配置されるように該処理を繰り返すことで複数の前記仮想曲面体を配置する、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の微構造解析方法。
【請求項7】
前記ステップ(a)では、前記物体画素と重ならず且つ前記空間画素を埋めるように配置可能な最大の球径を持つ前記親仮想球体を配置し、前記子仮想球体の中心が該配置された親仮想球体と重なり且つ該子仮想球体が占有する画素が前記物体画素と重ならず且つ前記空間画素を埋めるように該子仮想球体を1以上配置して、前記仮想曲面体を1つ配置する処理を行い、仮想曲面体が互いに異なる位置に配置され且つ異なる仮想曲面体によって占有される画素が互いに重複することを許容するように該処理を繰り返すことで複数の前記仮想曲面体を配置する、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の微構造解析方法。
【請求項8】
前記ステップ(a)では、前記物体画素と重ならず且つ前記空間画素を埋めるように配置可能な最大の球径を持つ前記親仮想球体を配置し、前記子仮想球体の中心が該配置された親仮想球体と重なり且つ該子仮想球体が占有する画素が前記物体画素と重ならず且つ前記空間画素を埋めるように該子仮想球体を1以上配置して、前記仮想曲面体を1つ配置する処理を行い、異なる仮想曲面体によって占有される画素が互いに重複しないように該処理を繰り返すことで複数の前記仮想曲面体を配置する、
請求項1又は2に記載の微構造解析方法。
【請求項9】
前記ステップ(b)では、前記ステップ(a)で配置された仮想曲面体に関する情報に基づいて、前記多孔質体の所定の流入面及び所定の流出面のうち一方の面から互いに隣接するか又は重なる仮想曲面体をたどって他方の面に到達するまでの経路長Lfを複数導出し、該複数の経路長Lfの平均値Lfmeanを導出し、前記多孔質体の圧損指数PeをPe=(多孔質体内部の空間の濡れ面積Aw/多孔質体内部の空間の気孔容積Vp)×(1/多孔質体の気孔率ε)×(平均値Lfmean/流入面と流出面との距離L)により導出することで、前記多孔質体の微構造を解析する、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の微構造解析方法。
【請求項10】
前記ステップ(b)では、前記多孔質体の単位厚さあたりの圧力損失Psを、Ps=定数α×Pe2+定数β×Peにより導出することで、前記多孔質体の微構造を解析する、
請求項9に記載の微構造解析方法。
【請求項11】
前記ステップ(a)では、前記複数の仮想曲面体を配置する処理と、前記多孔質体データに基づいて流体解析を行うことにより前記多孔質体内部を流体が通過する際の前記空間画素毎の該流体の流れに関する情報を導出する処理と、を行い、
前記ステップ(b)では、前記配置された前記仮想曲面体に関する情報と前記導出された前記流れに関する情報とに基づいて前記多孔質体の微構造を解析する、
請求項1〜10のいずれか1項に記載の微構造解析方法。
【請求項12】
前記ステップ(a)では、前記多孔質体の所定の流入面から流体が流入した場合の流体解析を行って前記流れに関する情報として少なくとも前記空間画素毎の流速を導出し、
前記ステップ(b)では、次式(1)により前記多孔質体のうち前記流入面に平行な断面における流速の面内均一性指数γxを1以上導出することで、前記多孔質体の微構造を解析する、
請求項11に記載の微構造解析方法。
【数1】
【請求項13】
前記ステップ(b)では、前記多孔質体の複数の前記断面について前記面内均一性指数γxを導出し、該導出した面内均一性指数γxを用いて次式(2)により前記多孔質体の流速の空間均一性指数γを導出することで、前記多孔質体の微構造を解析する、
請求項12に記載の微構造解析方法。
【数2】
【請求項14】
前記ステップ(b)では、前記導出した面内均一性指数γxを用いて次式(3)により前記多孔質体の単位厚さあたりの圧力損失Pを導出することで、前記多孔質体の微構造を解析する、
請求項12に記載の微構造解析方法。
【数3】
【請求項15】
前記ステップ(a)では、前記多孔質体の所定の流入面から流体が流入した場合の流体解析を行って前記流れに関する情報として少なくとも前記空間画素毎の流速を導出し、
前記ステップ(b)では、前記配置された仮想曲面体に関する情報と前記空間画素毎の流速とに基づいて、仮想曲面体についての前記流体の単位時間あたりの通過流量Qを各仮想曲面体について導出し、該導出した通過流量Qと仮想曲面体の等価直径d(=6×仮想曲面体の体積V/仮想曲面体の表面積S)とに基づいて各仮想曲面体の通過流速TをT=Q/(πd2/4)により導出することで、前記多孔質体の微構造を解析する、
請求項11に記載の微構造解析方法。
【請求項16】
前記ステップ(b)では、前記導出した通過流速Tの値の大小に基づいて前記仮想曲面体を低流速曲面体,中流速曲面体,高流速曲面体に分類することで、前記多孔質体の微構造を解析する、
請求項15に記載の微構造解析方法。
【請求項17】
前記ステップ(b)では、前記導出した通過流速Tと、前記流体解析における前記流入面での前記流体の平均流速Tinとの流速比Tf(=T/Tin)を導出し、前記配置された仮想曲面体のうち、Tf<2の仮想曲面体を前記低流速曲面体とし、2≦Tf<8の仮想曲面体を前記中流速曲面体とし、8≦Tfの仮想曲面体を前記高流速曲面体として前記分類を行う、
請求項16に記載の微構造解析方法。
【請求項18】
前記ステップ(b)では、前記配置された各仮想曲面体の等価直径dをd=6×(仮想曲面体の体積V)/(仮想曲面体の表面積S)により導出することで、前記多孔質体の微構造を解析する、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の微構造解析方法。
【請求項19】
前記ステップ(b)では、前記導出した等価直径dの値の大小に基づいて前記仮想曲面体を小径曲面体、中径曲面体、大径曲面体に分類することで、前記多孔質体の微構造を解析する、
請求項18に記載の微構造解析方法。
【請求項20】
前記ステップ(b)では、前記配置された仮想曲面体のうち、d<10μmの仮想曲面体を前記小径曲面体とし、10μm≦d≦25μmの仮想曲面体を前記中径曲面体とし、25μm<dの仮想曲面体を前記大径曲面体として前記分類を行う、
請求項19に記載の微構造解析方法。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の微構造解析方法の各ステップを1又は複数のコンピューターに実現させるプログラム。
【請求項22】
多孔質体の3次元スキャンにより得られた画素の位置を表す位置情報と、該画素が空間であることを表す空間画素か物体であることを表す物体画素かを表す画素種別情報と、を対応づけた多孔質体データを記憶する記憶手段と、
前記多孔質体データを参照して、親仮想球体と、該親仮想球体と占有する画素が一部重複する1以上の子仮想球体と、を含む曲面体を仮想曲面体とし、該仮想曲面体によって占有される画素である曲面体画素で前記空間画素を埋めるように該仮想曲面体を複数配置する仮想曲面体配置手段と、
前記配置された仮想曲面体に関する情報に基づいて前記多孔質体の微構造を解析する微構造解析手段と、
を備えた微構造解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微構造解析方法、そのプログラム及び微構造解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質体の気孔などの微構造を解析する方法の一つとして、CTスキャンを行うことによって多孔質の3次元の画素データを得て、この画素データに基づいて解析を行う方法が提案されている。例えば、特許文献1には、画素データのうち空間を表す画素を埋めるように種々の径を持つ仮想球体を配置し、配置された仮想球体に関する情報に基づいて多孔質体の一方の露出面から他方の露出面への気孔の連続性を導出する気孔連続性解析方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−079732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、多孔質体の複雑な形状の気孔を仮想球体のみを用いて模擬している。そのため、例えば多孔質体をフィルターに用いた場合の圧力損失や捕集性能の評価を行うに際しては、特許文献1に記載の方法で配置した仮想球体を用いて微構造の解析を行うと精度が十分でない場合があった。そのため、より精度の高い微構造解析方法が望まれていた。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、多孔質体の微構造をより精度よく解析することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の微構造解析方法、そのプログラム及び微構造解析装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の微構造解析方法は、
多孔質体の3次元スキャンにより得られた画素の位置を表す位置情報と、該画素が空間であることを表す空間画素か物体であることを表す物体画素かを表す画素種別情報と、を対応づけた多孔質体データを用いた該多孔質体の微構造解析方法であって、
(a)前記多孔質体データを参照して、親仮想球体と、該親仮想球体と占有する画素が一部重複する1以上の子仮想球体と、を含む曲面体を仮想曲面体とし、該仮想曲面体によって占有される画素である曲面体画素で前記空間画素を埋めるように該仮想曲面体を複数配置するステップと、
(b)前記ステップ(a)で配置された仮想曲面体に関する情報に基づいて前記多孔質体の微構造を解析するステップと、
を含むものである。
【0008】
この微構造解析方法では、位置情報と画素種別情報とが対応づけられた多孔質体データを参照して、親仮想球体と子仮想球体とからなる仮想曲面体を、仮想曲面体によって占有される曲面体画素で空間画素を埋めるように複数配置する。こうすることで、多孔質体内の複雑な形状の空間(気孔)を複数の球体が組み合わされた形状の仮想曲面体で置換するため、多孔質体内の空間を複数の仮想曲面体の集合として、より精度よく模擬することができる。そして、この仮想曲面体に関する情報に基づくことで、多孔質体の微構造をより精度よく解析することができる。ここで、「仮想曲面体に関する情報」は、例えば、仮想曲面体毎の親仮想球体や子仮想球体の中心座標や径などの情報としてもよいし、仮想曲面体が占有する曲面体画素の位置情報としてもよい。「微構造を解析する」とは、例えば、気孔率や平均気孔径などの多孔質体の微構造を表す数値を導出することとしてもよいし、多孔質体の圧力損失特性や捕集性能などに関する値を導出することとしてもよいし、圧力損失特性や捕集性能の良否判定などの評価を行うものとしてもよい。また、1つの仮想曲面体において親仮想球体は1つとしてもよいし、複数としてもよい。親仮想球体が複数の場合には、仮想曲面体は、複数の親仮想球体と、該複数の親仮想球体の少なくともいずれかと占有する画素が一部重複する1以上の子仮想球体と、からなるものとしてもよい。なお、ステップ(a)では、1つの前記仮想曲面体を配置するにあたり、複数の前記子仮想球体を配置する場合には、該複数の子仮想球体が互いに重ならないように配置するものとしてもよいし、互いに重なることを許容するものとしてもよい。
【0009】
本発明の微構造解析方法において、前記ステップ(a)では、前記仮想曲面体を構成する子仮想球体の中心が該仮想曲面体を構成する親仮想球体と重なるように該仮想曲面体を配置するものとしてもよい。また、前記ステップ(a)では、前記仮想曲面体が互いに重なることを許容して、複数の該仮想曲面体を配置するものとしてもよい。こうすれば、仮想曲面体が他の仮想曲面体と重複しないように配置する場合と比べて、なるべく体積の大きい仮想曲面体を配置することができる。また、前記ステップ(a)では、前記仮想曲面体が互いに重ならないように、複数の該仮想曲面体を配置するものとしてもよい。さらに、前記ステップ(a)では、前記曲面体画素が前記物体画素と重ならないように前記仮想曲面体を配置するものとしてもよい。仮想曲面体同士や曲面体画素と物体画素とが重ならないように仮想曲面体を配置するものとすれば、仮想曲面体の配置可能な位置がより制限されるため、重なりを許す場合と比べて仮想曲面体を配置するのに要する処理時間を短縮できる。
【0010】
本発明の微構造解析方法において、前記ステップ(a)では、前記空間画素を埋めるように配置可能な最大の球径を持つ前記親仮想球体を配置し、前記子仮想球体によって占有される画素が該配置された親仮想球体の占有する画素と一部重複し且つ前記空間画素を埋めるように該子仮想球体を1以上配置して、前記仮想曲面体を1つ配置する処理を行い、仮想曲面体が互いに異なる位置に配置されるように該処理を繰り返すことで複数の前記仮想曲面体を配置するものとしてもよい。こうすれば、空間画素をなるべく体積の大きい仮想曲面体で埋めることができる。
【0011】
本発明の微構造解析方法において、前記ステップ(a)では、前記物体画素と重ならず且つ前記空間画素を埋めるように配置可能な最大の球径を持つ前記親仮想球体を配置し、前記子仮想球体の中心が該配置された親仮想球体と重なり且つ該子仮想球体が占有する画素が前記物体画素と重ならず且つ前記空間画素を埋めるように該子仮想球体を1以上配置して、前記仮想曲面体を1つ配置する処理を行い、仮想曲面体が互いに異なる位置に配置され且つ異なる仮想曲面体によって占有される画素が互いに重複することを許容するように該処理を繰り返すことで複数の前記仮想曲面体を配置するものとしてもよい。こうすれば、仮想曲面体が他の仮想曲面体と重複しないように配置する場合と比べて、なるべく体積の大きい仮想曲面体を配置することができる。また、曲面体画素と物体画素とが重ならないように仮想曲面体を配置するため、重なりを許す場合と比べて仮想曲面体を配置するのに要する処理時間を短縮できる。また、仮想曲面体を配置するにあたり、配置可能な最大の球径を持つ親仮想球体を配置するようにすることで、空間画素をなるべく体積の大きい仮想曲面体で埋めることができる。
【0012】
本発明の微構造解析方法において、前記ステップ(a)では、前記物体画素と重ならず且つ前記空間画素を埋めるように配置可能な最大の球径を持つ前記親仮想球体を配置し、前記子仮想球体の中心が該配置された親仮想球体と重なり且つ該子仮想球体が占有する画素が前記物体画素と重ならず且つ前記空間画素を埋めるように該子仮想球体を1以上配置して、前記仮想曲面体を1つ配置する処理を行い、異なる仮想曲面体によって占有される画素が互いに重複しないように該処理を繰り返すことで複数の前記仮想球体を配置するものとしてもよい。こうすれば、仮想曲面体同士や曲面体画素と物体画素とが重ならないように仮想曲面体を配置するため、重なりを許す場合と比べて仮想曲面体を配置するのに要する処理時間を短縮できる。また、空間画素をなるべく体積の大きい仮想曲面体で埋めることができる。
【0013】
本発明の微構造解析方法において、前記ステップ(b)では、前記ステップ(a)で配置された仮想曲面体に関する情報に基づいて、前記多孔質体の所定の流入面及び所定の流出面のうち一方の面から互いに隣接するか又は重なる仮想曲面体をたどって他方の面に到達するまでの経路長Lfを複数導出し、該複数の経路長Lfの平均値Lfmeanを導出し、前記多孔質体の圧損指数PeをPe=(多孔質体内部の空間の濡れ面積Aw/多孔質体内部の空間の気孔容積Vp)×(1/多孔質体の気孔率ε)×(平均値Lfmean/流入面と流出面との距離L)により導出することで、前記多孔質体の微構造を解析してもよい。本発明者らは、このようにして導出された圧損指数Peが、多孔質体の実際の圧力損失との相関が高いことを見いだした。そのため、微構造の解析としてこの圧損指数Peの導出を行うことで、例えば多孔質体の圧力損失特性をより精度よく予測したり評価したりすることができる。ここで、濡れ面積Aw,気孔容積Vp,気孔率εは、空間画素及び物体画素に関する情報に基づいて導出してもいいし、仮想曲面体に関する情報に基づいて算出してもよい。
【0014】
この場合において、前記ステップ(b)では、前記多孔質体の単位厚さあたりの圧力損失Psを、Ps=定数α×Pe2+定数β×Peにより導出することで、前記多孔質体の微構造を解析してもよい。本発明者らは、このようにして圧損指数Peから導出した多孔質体の単位厚さあたりの圧力損失Psが、多孔質体の実際の圧力損失とほぼ一致する値になることを見いだした。そのため、微構造の解析としてこの圧力損失Psの導出を行うことで、多孔質体の圧力損失特性をより精度良く予測したり評価したりすることができる。なお、定数αは正数であり、定数βは実数である。また、圧損指数Pe>0の範囲において圧力損失Ps>0である。
【0015】
本発明の微構造解析方法において、前記ステップ(a)では、前記複数の仮想曲面体を配置する処理と、前記多孔質体データに基づいて流体解析を行うことにより前記多孔質体内部を流体が通過する際の前記空間画素毎の該流体の流れに関する情報を導出する処理と、を行い、前記ステップ(b)では、前記配置された前記仮想曲面体に関する情報と前記導出された前記流れに関する情報とに基づいて前記多孔質体の微構造を解析するものとしてもよい。ここで、「空間画素毎の流れに関する情報」は、例えば、少なくとも空間画素毎の流速(ベクトル又はスカラー)を含むものとしてもよいし、少なくとも空間画素毎の通過流量を含むものとしてもよい。「流体解析」は、例えば格子ボルツマン法による解析としてもよい。また、流体解析として、前記多孔質体の所定の流入面から流体が流入した場合の流体解析を行うものとしてもよいし、前記多孔質体の所定の流入面から所定の流出面へ流体が流れる場合の流体解析を行うものとしてもよい。
【0016】
上述した流体解析を行う態様の本発明の微構造解析方法において、前記ステップ(a)では、前記多孔質体の所定の流入面から流体が流入した場合の流体解析を行って前記流れに関する情報として少なくとも前記空間画素毎の流速を導出し、前記ステップ(b)では、次式(1)により前記多孔質体のうち前記流入面に平行な断面における流速の面内均一性指数γxを1以上導出することで、前記多孔質体の微構造を解析するものとしてもよい。このようにして導出された面内均一性指数γxは、断面内における流体の流速が均一なほど大きい(値1に近い)値となり、断面内における流体の流速にばらつきが大きいほど小さい値となる。そして、本発明者らは、多孔質体をフィルターに用いた場合の圧力損失特性が、この面内均一性指数γxの値が大きいほど良好な傾向にあることを見いだした。そのため、微構造の解析としてこの面内均一性指数γxの導出を行うことで、例えば多孔質体の圧力損失特性をより精度よく予測したり評価したりすることができる。なお、前記ステップ(b)では、前記導出された面内均一性指数γxが所定の閾値以上のときには、前記多孔質体の圧力損失特性が良好であると判定するものとしてもよい。所定の閾値は、例えば値0.6としてもよい。ここで、空間画素毎の流速は、例えば流体解析により直接導出するものとしてもよいし、流体解析により空間画素毎の単位時間あたりの通過流量を導出し、導出した単位時間あたりの通過流量と空間画素のうち流体が通過する部分の面積(断面積)とから流速を導出するものなどとしてもよい。また、流体解析では空間画素毎の流速ベクトルを導出するものとし、流速ベクトルのうち断面に垂直な方向の成分を空間画素毎の流速としてもよい。
【0017】
【数1】
【0018】
この場合において、前記ステップ(b)では、前記多孔質体の複数の前記断面について前記面内均一性指数γxを導出し、該導出した面内均一性指数γxを用いて次式(2)により前記多孔質体の流速の空間均一性指数γを導出することで、前記多孔質体の微構造を解析するものとしてもよい。このようにして導出された空間均一性指数γは、複数の断面について導出した面内均一性指数γxのばらつきが小さいほど大きい値となり、ばらつきが大きいほど小さい値となる。そして、本発明者らは、多孔質体をフィルターに用いた場合の捕集性能が、この空間均一性指数γの値が大きいほど良好な傾向にあることを見いだした。そのため、微構造の解析としてこの空間均一性指数γの導出を行うことで、例えば多孔質体の捕集性能をより精度よく予測したり評価したりすることができる。なお、前記ステップ(b)では、前記導出された空間均一性指数γが所定の閾値以上のときには、前記多孔質体の捕集性能が良好であると判定するものとしてもよい。所定の閾値は、例えば値0.5としてもよく、値0.6としてもよい。
【0019】
【数2】
【0020】
上述した面内均一性指数γxを導出する態様の本発明の微構造解析方法において、前記ステップ(b)では、前記導出した面内均一性指数γxを用いて次式(3)により前記多孔質体の単位厚さあたりの圧力損失Pを導出することで、前記多孔質体の微構造を解析するものとしてもよい。この式(3)は、流体が多孔質体を通過するときの圧力損失特性を表す周知のErgun式を、面内均一性指数γxを用いて補正したものである。本発明者らは、このようにして導出された単位厚さあたりの圧力損失Pが、Ergun式によって導出した圧力損失と比べて実際の多孔質体の圧力損失との相関が高いことを見いだした。そのため、微構造の解析としてこの単位体積あたりの圧力損失Pの導出を行うことで、例えば多孔質体の圧力損失特性をより精度よく予測したり評価したりすることができる。なお、複数の面内均一性指数γxのそれぞれに応じた圧力損失Pを導出した場合には、複数の圧力損失Pの平均値も導出するものとしてもよい。また、この圧力損失Pの平均値により多孔質体の圧力損失特性の予測や評価を行うものとしてもよい。
【0021】
【数3】
【0022】
上述した流体解析を行う態様の本発明の微構造解析方法において、前記ステップ(a)では、前記多孔質体の所定の流入面から流体が流入した場合の流体解析を行って前記流れに関する情報として少なくとも前記空間画素毎の流速を導出し、前記ステップ(b)では、前記配置された仮想曲面体に関する情報と前記空間画素毎の流速とに基づいて、仮想曲面体についての前記流体の単位時間あたりの通過流量Qを各仮想曲面体について導出し、該導出した通過流量Qと仮想曲面体の等価直径d(=6×仮想曲面体の体積V/仮想曲面体の表面積S)とに基づいて各仮想曲面体の通過流速TをT=Q/(πd2/4)により導出することで、前記多孔質体の微構造を解析するものとしてもよい。この場合において、前記ステップ(b)では、前記仮想曲面体のうち導出された前記通過流速Tが所定の低流速領域に含まれるものを低流速曲面体として分類することで、前記多孔質体の微構造を解析するものとしてもよいし、前記仮想曲面体のうち導出された前記通過流速Tが所定の高流速領域に含まれるものを高流速曲面体として分類することで、前記多孔質体の微構造を解析するものとしてもよい。また、前記ステップ(b)では、前記導出した通過流速Tの値の大小に基づいて前記仮想曲面体を低流速曲面体,中流速曲面体,高流速曲面体に分類することで、前記多孔質体の微構造を解析するものとしてもよい。ここで、通過流速Tが小さい仮想曲面体で模擬された多孔質体の気孔は、流体の透過にあまり寄与せず、圧力損失の増大や材料の熱伝導及び熱容量の低下を招く場合がある。また、通過流速Tが大きい仮想曲面体で模擬された多孔質体の気孔は、流体が通過する際の流動抵抗が大きい場合や、流体が短時間で通過してしまうため捕集性能にあまり寄与しない場合がある。そのため、仮想曲面体の一部をこのような通過流速Tの小さい低流速曲面体や通過流速Tの大きい高流速曲面体として分類することで、多孔質体の微構造を精度よく解析することができる。この場合において、前記ステップ(b)では、前記導出した通過流速Tと、前記流体解析における前記流入面での前記流体の平均流速Tinとの流速比Tf(=T/Tin)を導出し、前記配置された仮想曲面体のうち、Tf<2の仮想曲面体を前記低流速曲面体とし、2≦Tf<8の仮想曲面体を前記中流速曲面体とし、8≦Tfの仮想曲面体を前記高流速曲面体として前記分類を行うものとしてもよい。このように、流速比Tfを用いて分類を行うことで、多孔質体の微構造をより精度よく解析することができる。また、ステップ(b)において、前記複数の仮想曲面体における前記低流速曲面体の体積割合が所定の閾値以下であるときに、多孔質体の性能が良好であると判定してもよい。所定の閾値は、例えば20%としてもよい。また、ステップ(b)において、前記複数の仮想曲面体における前記高流速曲面体の体積割合が所定の閾値以下であるときに、多孔質体の性能が良好であると判定してもよい。所定の閾値は、例えば10%としてもよい。
【0023】
本発明の微構造解析方法において、前記ステップ(b)では、前記配置された各仮想曲面体の等価直径dをd=6×(仮想曲面体の体積V)/(仮想曲面体の表面積S)により導出することで、前記多孔質体の微構造を解析するものとしてもよい。このように、微構造の解析として仮想曲面体の等価直径dを導出することで、例えばこの等価直径dに基いて多孔質体の気孔の特性を解析することができる。この場合において、前記ステップ(b)では、前記導出した等価直径dの平均値を前記多孔質体の平均気孔径として導出するものとしてもよい。また、前記ステップ(b)では、前記仮想曲面体のうち導出された等価直径dが所定の小径領域に含まれるものを小径曲面体として分類することで、前記多孔質体の微構造を解析するものとしてもよいし、前記仮想曲面体のうち導出された等価直径dが所定の大径領域に含まれるものを大径曲面体として分類することで、前記多孔質体の微構造を解析するものとしてもよい。さらに、前記ステップ(b)では、前記導出した等価直径dの値の大小に基づいて前記仮想曲面体を小径曲面体、中径曲面体、大径曲面体に分類することで、前記多孔質体の微構造を解析するものとしてもよい。ここで、等価直径dが小さい仮想曲面体で模擬された多孔質体の気孔は、流体が通過する流速が小さくなり圧力損失の増大を招く場合や、多孔質体をフィルターとして用いるために気孔の壁面に塗布する触媒が適切に塗布されない場合などがある。また、等価直径dが大きい仮想曲面体で模擬された多孔質体の気孔は、流体が通過する流速が大きくなり多孔質体をフィルターに用いた場合の捕集性能にあまり寄与しない場合がある。そのため、仮想曲面体の一部をこのような等価直径dの小さい小径曲面体や等価直径dの大きい大径曲面体として分類することで、多孔質体の微構造を精度よく解析することができる。この場合において、前記ステップ(b)では、前記配置された仮想曲面体のうち、d<10μmの仮想曲面体を前記小径曲面体とし、10μm≦d≦25μmの仮想曲面体を前記中径曲面体とし、25μm<dの仮想曲面体を前記大径曲面体として前記分類を行うものとしてもよい。また、ステップ(b)において、前記複数の仮想曲面体における前記中径曲面体の体積割合が所定の閾値以上であるときに、多孔質体の性能が良好であると判定してもよい。所定の閾値は、例えば60%としてもよいし、70%としてもよい。
【0024】
本発明のプログラムは、上述したいずれかの態様の本発明の微構造解析方法の各ステップを1又は複数のコンピューターに実現させるものである。このプログラムは、コンピューターが読み取り可能な記録媒体(例えばハードディスク、ROM、FD、CD、DVDなど)に記録されていてもよいし、伝送媒体(インターネットやLANなどの通信網)を介してあるコンピューターから別のコンピューターへ配信されてもよいし、その他どのような形で授受されてもよい。このプログラムを一つのコンピューターに実行させるか又は複数のコンピューターに各ステップを分担して実行させれば、上述した微構造解析方法の各ステップが実行されるため、該微構造解析方法と同様の作用効果が得られる。
【0025】
本発明の微構造解析装置は、
多孔質体の3次元スキャンにより得られた画素の位置を表す位置情報と、該画素が空間であることを表す空間画素か物体であることを表す物体画素かを表す画素種別情報と、を対応づけた多孔質体データを記憶する記憶手段と、
前記多孔質体データを参照して、親仮想球体と、該親仮想球体と占有する画素が一部重複する1以上の子仮想球体と、を含む曲面体を仮想曲面体とし、該仮想曲面体によって占有される画素である曲面体画素で前記空間画素を埋めるように該仮想曲面体を複数配置する仮想曲面体配置手段と、
前記配置された仮想曲面体に関する情報に基づいて前記多孔質体の微構造を解析する微構造解析手段と、
を備えたものである。
【0026】
この微構造解析装置は、多孔質体データを参照して、親仮想球体と、該親仮想球体と占有する画素が一部重複する1以上の子仮想球体と、からなる仮想曲面体を、該仮想曲面体によって占有される画素である曲面体画素で前記空間画素を埋めるように複数配置し、配置された仮想曲面体に関する情報に基づいて前記多孔質体の微構造を解析する。こうすることで、多孔質体内の複雑な形状の空間(気孔)が複数の球体が組み合わされた形状の仮想曲面体で置換されるため、多孔質体内の空間を複数の仮想曲面体の集合として、より精度よく模擬することができる。そして、この仮想曲面体に関する情報に基づくことで、多孔質体の微構造をより精度よく解析することができる。なお、本発明の微構造解析装置は、上述したいずれかの微構造解析方法の各ステップを実現するように各手段の動作を追加したり他の手段を追加したりしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本実施形態のユーザーパソコン20の構成図である。
図2】多孔質隔壁44を含むハニカムフィルタ30の正面図である。
図3図2のA−A断面図である。
図4】多孔質体データ60の概念図である。
図5】多孔質体データ60の説明図である。
図6】解析処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図7】仮想曲面体配置処理の一例を示すフローチャートである。
図8】仮想曲面体テーブル83の一例を示す説明図である。
図9】親仮想球体の配置の説明図である。
図10】子仮想球体及び仮想曲面体の配置の説明図である。
図11】経路長導出処理の一例を示すフローチャートである。
図12】経路長Lfを導出する様子を示す説明図である。
図13】流入面61から流出面62までの経路に分岐が存在する場合の経路長Lfの導出の説明図である。
図14】多孔質体1の気孔径(等価直径d)の集計結果を示すグラフである。
図15】多孔質体2の触媒塗布前後の気孔径(等価直径d)の集計結果を示すグラフである。
図16】多孔質体3〜8の空間均一性指数γと粒子の漏れ個数との関係を示すグラフである。
図17】式(3)で導出した圧力損失Pの平均値と格子ボルツマン法による圧力損失との関係を示すグラフである。
図18】Ergun式で導出した圧力損失Pの平均値と格子ボルツマン法による圧力損失との関係を示すグラフである。
図19】多孔質体13,14における面内均一性指数γxの平均値と実際の圧力損失とを示すグラフである。
図20】多孔質体15,16における仮想曲面体を流速比Tf(=T/Tin)により分類した様子を示すグラフである。
図21】多孔質体15,16における実際の圧力損失を示すグラフである。
図22】多孔質体15,16における仮想曲面体を等価直径dにより分類した様子を示すグラフである。
図23】多孔質体17〜21の圧損指数Peと実際の圧力損失との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。
【0029】
図1は、本発明の微構造解析装置の一実施形態であるユーザーパソコン(PC)20の構成の概略を示す構成図である。このユーザーPC20は、各種処理を実行するCPU22、各種処理プログラムなどを記憶するROM23、データを一時的に記憶するRAM24などを備えたコントローラー21と、解析処理プログラム25aなどの各種処理プログラムや多孔質体の3次元の画素データである多孔質体データ60などの各種データを記憶する大容量メモリであるHDD25と、を備えている。なお、ユーザーPC20は、各種情報を画面表示するディスプレイ26やユーザーが各種指令を入力するキーボード等の入力装置27を備えている。HDD25に記憶された多孔質体データ60には、詳細は後述するが、多孔質体テーブル71及び流入流出テーブル72が含まれており、このユーザーPC20は、HDD25に記憶された多孔質体データ60に基づいて、多孔質体の微構造の解析を行うことができる。また、この微構造の解析を行う過程でRAM24には多孔質体データ80が記憶される。詳細は後述するが、多孔質体データ80には多孔質体テーブル81,流入流出テーブル82,仮想曲面体テーブル83が含まれている。
【0030】
ここで、ユーザーPC20が解析する多孔質体について説明する。図2は、多孔質体である多孔質隔壁44を含むハニカムフィルタ30の正面図、図3図2のA−A断面図である。
【0031】
ハニカムフィルタ30は、ディーゼルエンジンの排ガス中の粒子状物質(パティキュレート・マター(PM))をろ過する機能を持つディーゼル・パティキュレート・フィルタ(DPF)である。このハニカムフィルタ30は、多孔質隔壁44によって区画された多数のセル34(図3参照)を備えており、その外周に外周保護部32が形成されている。多孔質隔壁44の材料としては、強度、耐熱性の観点から、Si結合SiCやコージェライトなどのセラミックス材料が好ましい。多孔質隔壁44の厚さは、200μm以上600μm未満であることが好ましく、本実施形態では300μmである。多孔質隔壁44は、例えば平均気孔径(水銀圧入法による)が10μm以上60μm未満であり、気孔率(空隙率)が40%以上65%未満である。ハニカムフィルタ30に形成された多数のセル34には、図3に示すように、入口36aが開放され出口36bが出口封止材38により封止された入口開放セル36と、入口40aが入口封止材42により封止され出口40bが開放された出口開放セル40とがある。これらの入口開放セル36と出口開放セル40とは、隣接するように交互に設けられている。セル密度は、例えば15セル/cm2以上65セル/cm2未満である。外周保護部32は、ハニカムフィルタ30の外周を保護する層であり、上述した無機粒子や、アルミノシリケート、アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア及びムライトなどの無機繊維、及びコロイダルシリカや粘土などの結合材などを含むものとしてもよい。
【0032】
このハニカムフィルタ30は、例えば図示しないディーゼルエンジンの下流側に搭載し、PMを含む排ガスを浄化して大気へ放出するために使用される。なお、図3の矢印はこのときの排ガスの流れを示している。ディーゼルエンジンからのPMを含む排ガスは、このハニカムフィルタ30の入口36aから入口開放セル36に流入したあと、多孔質隔壁44を通過して隣接する出口開放セル40に流入し、出口開放セル40の出口40bから大気へ放出される。ここで、PMを含む排ガスは、入口開放セル36から多孔質隔壁44を通過して出口開放セル40に流入するときにPMが捕集されるため、出口開放セル40に流入した排ガスは、PMを含まないクリーンな排ガスになる。また、多孔質隔壁44中の気孔内部には図示しない白金などの酸化触媒がコーティングされており、捕集したPMを酸化することで多孔質隔壁44の気孔率の低下や圧力損失の急上昇を防止している。
【0033】
ハニカムフィルタ30は、例えば基材と造孔材と分散材とを混合して調製した坏土やスラリーを原料として製造することができる。基材としては、上述したセラミックス材料を用いることができる。例えばSiCを基材とするものにおいてはSiC粉末及び金属Si粉末を80:20の質量割合で混合したものを用いることができる。造孔材としては、のちの焼成により燃焼するものが好ましく、例えば澱粉、コークス、発泡樹脂などを用いることができる。分散材としては、エチレングリコールなど界面活性剤を用いることができる。坏土を調製する手段には、特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。この坏土を、例えば、セル34が並んで配設される形状の金型を用いて図2,3に示した形状に押出成形し、出口封止材38及び入口封止材42でセル34を封止した後、乾燥処理・仮焼処理・焼成処理を行うことで多孔質隔壁44を含むハニカムフィルタ30を製造することができる。出口封止材38及び入口封止材42は、多孔質隔壁44を形成する原料を用いるものとしてもよい。また、仮焼処理は、焼成温度よりも低い温度でハニカムフィルタ30に含まれる有機物成分を燃焼除去する処理である。焼成温度は、コージェライト原料では、1400℃〜1450℃とし、Si結合SiCでは、1450℃とすることができる。このような工程を経て、多孔質隔壁44を含むハニカムフィルタ30を得ることができる。
【0034】
ユーザーPC20のHDD25には、このハニカムフィルタ30に対してCTスキャンを行うことによって得た多孔質隔壁44の3次元の画素データが多孔質体データ60として記憶されている。本実施形態では、図3に示すX方向及びY方向で表されるXY平面を撮影断面とし、該撮影断面を図2に示すZ方向に複数撮影することでCTスキャンを行って画素データを得ている。本実施形態では、X,Y,Zの各方向の解像度はそれぞれ1.2μmであり、これにより得られる1辺が1.2μmの立方体が3次元の画素データの最小単位すなわち画素となる。なお、X,Y,Zの各方向の解像度は、例えばCT撮影装置の性能や解析対象の粒子の大きさなどにより適宜設定することができる。また、各方向の解像度が互いに異なる値であってもよい。特に限定するものではないが、X,Y,Zの各方向の解像度は例えば0.5μm〜3.0μmの範囲のいずれかの値として設定してもよい。なお、解像度を高く(画素のX,Y,Zの各方向の長さを小さく)するほど解析の精度が高まる。解析の精度の観点からX,Y,Zの各方向の解像度は例えば3.0μm以下とすることが好ましい。また、解像度が高いほど解析時間(計算時間)は増大するが、X,Y,Zの各方向の解像度は0.5μm未満としてもよい。例えば0.2μm〜0.3μmとしてもよいし、0.2μm未満としてもよい。各画素はX,Y,Z座標(座標の値1が画素の一辺の長さである1.2μmに対応する)により位置が表されるとともに、その画素が空間(気孔)であるか物体(多孔質隔壁44の構成物質)であるかを特定する種別情報が併せて付加されてHDD25に記憶されるようになっている。本実施形態では、空間を表す画素(空間画素)は種別情報として値0,物体を表す画素(物体画素)は種別情報として値9が付加されている。なお、実際にはCTスキャンによって得られるデータは例えばX,Y,Zの座標毎の輝度データである。本実施形態で使用する多孔質体データ60は、この輝度データを所定の閾値で2値化して空間画素か物体画素かを座標毎に求めることにより得ることができる。所定の閾値は、空間画素と物体画素との判別を適切に行うことのできる値として定められた値である。この閾値は、例えば計測により得られる多孔質隔壁44の気孔率と、2値化後の画素データにおける気孔率とが略等しくなるように予め実験により定めておくものとしてもよい。また、このようなCTスキャンは例えば株式会社島津製作所製のSMX−160CT−SV3を用いて行うことができる。
【0035】
多孔質体データ60の概念図を図4に示す。図4(a)は、図3の領域50における多孔質隔壁44をCTスキャンして得られた画素データとしての多孔質体データ60の概念図である。この多孔質体データ60は、本実施形態では、多孔質隔壁44の画素データからX方向が多孔質隔壁44の排ガス通過方向の厚さと同じ値である300μm(=1.2μm×250画素),Y方向が480μm(=1.2μm×400画素),Z方向が480μm(=1.2μm×400画素)の直方体部分の画素データを抜き出したものであり、後述する解析処理はこの多孔質体データ60に対して行われる。なお、多孔質体データ60の大きさは多孔質隔壁44の厚さ,大きさや許容される計算負荷などにより適宜設定することができる。例えば、X方向の長さは300μmに限らず多孔質隔壁44の排ガス通過方向の厚さと同じ値とすれば他の値でもよい。また、多孔質隔壁44の排ガス通過方向の厚さと同じ値であることが好ましいが、同じ値でなくともよい。Y方向,Z方向の長さも480μmに限らず他の値であってもよく、Y方向とZ方向とで長さが異なっていてもよい。多孔質体データ60は、直方体の6面のうち2面(Y−Z平面に平行な面)が多孔質隔壁44と入口開放セル36との境界面である流入面61(図3参照)と、領域50における多孔質隔壁44と出口開放セル40との境界面である流出面62(図3参照)とになっており、残りの4面が多孔質隔壁44の断面となっている。図4(b)は、多孔質体データ60のうちZ座標が値3の位置におけるXY平面(撮影断面)63及びその一部の拡大図64である。拡大図64に示すように、XY平面63は1辺が1.2μmの画素の配列で構成されており、それぞれの画素が空間画素又は物体画素のいずれかで表されている。なお、CTスキャンで得られる撮影断面は、図4(b)に示すようにZ方向の厚みのない平面のデータであるが、各撮影断面は撮影断面のZ方向の間隔分(1.2μm)の厚みがあるものとして、すなわち上述したように各画素は1辺が1.2μmの立方体であるものとして扱われる。なお、多孔質体データ60は、図5に示すように画素毎に位置情報としてのXYZ座標と種別情報とを対応づけた多孔質体テーブル71と、流入面61及び流出面62を表す流入流出テーブル72とを含むデータとしてHDD25に記憶されている。なお、図5の流入流出テーブル72の「X=1」とはXYZ座標系におけるX=1の平面のことであり、図4(a)に示すように流入面61を表している。「X=251」も同様に流出面62を表している。また、HDD25には、多孔質体データ60だけでなく、上述した領域50以外の多孔質隔壁44の画素データを表す別の多孔質体データ60も複数記憶されている。
【0036】
解析処理プログラム25aは、仮想曲面体配置部25bと、流体解析部25cと、面内均一性指数評価部25dと、空間均一性指数評価部25eと、圧力損失評価部25fと、通過流速評価部25gと、等価直径評価部25hと、解析結果出力部25iと、を備えている。仮想曲面体配置部25bは、多孔質体データ80を参照して、親仮想球体と、親仮想球体と占有する画素が一部重複する1以上の子仮想球体と、を含む曲面体を仮想曲面体とし、仮想曲面体によって占有される画素である曲面体画素で空間画素を埋めるように仮想曲面体を複数配置する機能を有する。流体解析部25cは、多孔質体データ80に基づいて流体解析を行うことにより多孔質体内部を流体が通過する際の空間画素毎の流体の流れに関する情報を導出する機能を有する。面内均一性指数評価部25dは、仮想曲面体配置部25bによって配置された仮想曲面体に関する情報と、流体解析部25cによって導出された流れに関する情報とに基づいて多孔質体データ80の流入面61に平行な断面における流速の面内均一性指数γxを1以上導出したり、面内均一性指数γxに基づいて多孔質体を評価したりする機能を有する。空間均一性指数評価部25eは、面内均一性指数評価部25dによって導出された面内均一性指数γxを用いて多孔質体の流速の空間均一性指数γを導出したり、空間均一性指数γに基づいて多孔質体を評価したりする機能を有する。圧力損失評価部25fは、面内均一性指数評価部25dによって導出された面内均一性指数γxを用いて前記多孔質体の単位厚さあたりの圧力損失Pを導出したり、圧力損失Pに基づいて多孔質体を評価したりする機能を有する。通過流速評価部25gは、仮想曲面体配置部25bによって配置された仮想曲面体の位置に関する情報と流体解析部25cによって導出された流れに関する情報とに基づいて各仮想曲面体の通過流速Tや流速比Tfを導出したり、通過流速Tや流速比Tfに基づいて仮想曲面体を分類したり、分類結果に基づいて多孔質体を評価したりする機能を有する。等価直径評価部25hは、仮想曲面体配置部25bによって配置された仮想曲面体の等価直径dを導出したり、等価直径dに基づいて仮想曲面体を分類したり、分類結果に基づいて多孔質体を評価したりする機能を有する。解析結果出力部25iは、導出された各種の値や評価結果などをまとめて解析結果データとして出力してHDD25に記憶する機能を有する。なお、コントローラー21が解析処理プログラム25aを実行することにより、仮想曲面体配置部25b、流体解析部25c、面内均一性指数評価部25d、空間均一性指数評価部25e、圧力損失評価部25f、通過流速評価部25g、等価直径評価部25h、解析結果出力部25iの上述した機能が実現される。
【0037】
次に、ユーザーPC20がこの多孔質体データ60に対して行う解析処理について説明する。図6は解析処理ルーチンのフローチャートである。この解析処理ルーチンは、ユーザーが入力装置27を介して解析処理を行うよう指示したときにCPU22がROM23に記憶された解析処理プログラム25aを実行することで行われる。なお、以降は多孔質体データ60の解析処理を行う場合について説明するが、他の多孔質体データについても同様に解析処理を行うことができる。いずれの多孔質体データについての解析を行うかは予め定められていてもよいし、ユーザーが指定してもよい。
【0038】
解析処理ルーチンが実行されると、CPU22は、まず、多孔質体データ60の空間画素を埋めるように仮想曲面体を配置する処理である仮想曲面体配置処理を実行する(ステップS100)。
【0039】
ここで、解析処理ルーチンの説明を中断して仮想曲面体配置処理について説明する。図7は仮想曲面体配置処理のフローチャートである。この仮想曲面体配置処理は仮想曲面体配置部25bにより行われる。仮想曲面体配置処理が実行されると、仮想曲面体配置部25bは、まず、HDD25に記憶された多孔質体データ60を読み出してRAM24に記憶する(ステップS200)。これにより、HDD25に記憶された多孔質体テーブル71,流入流出テーブル72を含む多孔質体データ60と同じデータが、多孔質体テーブル81,流入流出テーブル82を含む多孔質体データ80としてRAM24に記憶される。そして、読み出した多孔質体データ80について仮想壁面の設定を行う(ステップS210)。具体的には、300μm×480μm×480μmの直方体である多孔質体データ80からその周囲を覆う仮想壁面までの距離をユーザーが入力装置27を介して指定し、仮想曲面体配置部25bがそれを受け付けてRAM24に記憶する。例えば仮想壁面までの距離を1μmと指定すると、仮想曲面体配置部25bは、多孔質体データ80の各面からX,Y,Z方向にそれぞれ1μm外側に仮想壁面があり、その外側は全て物体画素が配置されているものとみなす。すなわち、多孔質体データ80は300μm×480μm×480μmの直方体であるので、302μm×482μm×482μmの直方体状の仮想壁面に覆われたものとみなされる。この仮想壁面は、後述する仮想曲面体(親仮想球体,子仮想球体)の配置可能な領域を制限するために設定するものである。
【0040】
次に、仮想曲面体配置部25bは、親仮想球体の直径Raを最大値Ramaxに設定し(ステップS220)、ステップS210で設定した仮想壁面の内側の空間画素のうち直径Raの親仮想球体が配置可能か否かを判定する(ステップS230)。直径Raの親仮想球体とは、直径がRa(μm)の大きさを持ち、中心がいずれかの画素の中心にある仮想的な球体のことである。この直径Raの親仮想球体が配置可能か否かの判定は、例えば次のようにして行う。まず、その時点における空間画素(種別情報が値0である画素)のうちいずれかの画素を選択する。そして、選択した画素を中心とする直径Raの親仮想球体を配置すると親仮想球体が物体画素又は既に配置した仮想曲面体と重なる場合には、再度他の空間画素を中心として選択する。そして順次空間画素のいずれかを選択していき、親仮想球体が物体画素と重ならず且つ既に配置した仮想曲面体とも重ならない場合には、その位置に直径Raの親仮想球体を配置可能であると判定する。また、その時点における全ての空間画素のいずれを中心として選択しても親仮想球体が物体画素又は既に配置した仮想曲面体と重なる場合には、直径Raの親仮想球体を配置可能でないと判定する。なお、中心となる画素を選択する順序はランダムであってもよいし流入面61上の画素から流出面62上の画素に向けて順番に行ってもよい。また、最大値Ramaxの値は、多孔質隔壁44に通常存在する気孔径の最大値以上の値であればよく、例えば実験により求めた数値を参考にして値を設定することができる。ステップS230で親仮想球体が配置可能でないと判定すると、直径Rを値1デクリメントして(ステップS240)、ステップS230以降の処理を行う。なお、デクリメントする値は本実施形態では値1としたが、許容される計算負荷などにより適宜設定することができる。
【0041】
ステップS230で親仮想球体が配置可能であると判定されると、その位置に直径Raの親仮想球体を1つ配置する(ステップS250)。具体的には、ステップS200でRAM24に記憶した多孔質体データ80の多孔質体テーブル71のうち、直径Raの親仮想球体を配置したときに親仮想球体に占有される画素に対応する種別情報を、親仮想球体に占有されている画素であることを表す値3に更新する。なお、本実施形態では画素の中心が親仮想球体に含まれるときにその画素の種別情報を値3に更新するものとしたが、画素のうち所定割合(例えば50%)以上の体積が親仮想球体に占有されるときにその画素の種別情報を値3に更新してもよいし、完全に親仮想球体内に含まれる画素の種別情報のみを値3に更新してもよいし、画素の一部でも親仮想球体に占有されたときにその画素の種別情報を値3に更新してもよい。後述する子仮想球体が占有する画素についても同様である。
【0042】
続いて、仮想曲面体配置部25bは、子仮想球体の直径Rbを直径Raと同じ値に設定し(ステップS260)、ステップS210で設定した仮想壁面の内側の空間画素のうち直径Rbの子仮想球体が配置可能か否かを判定する(ステップS270)。直径Rbの子仮想球体とは、直径がRb(μm)の大きさを持ち、中心がいずれかの画素の中心にあり、親仮想球体と占有する画素が一部重複する仮想的な球体のことである。また、子仮想球体の配置は、子仮想球体の中心がステップS250で配置した親仮想球体と重なるように行う。この直径Rbの子仮想球体が配置可能か否かの判定は、例えば次のように行う。まず、その時点における親仮想球体が占有する画素(種別情報が値3である画素)のうちいずれかの画素を選択する。そして、選択した画素を中心とする直径Rbの子仮想球体を配置すると子仮想球体が物体画素又は既に配置した仮想曲面体と重なる場合には、親仮想球体が占有する他の画素を中心として選択する。そして順次画素を選択していき、子仮想球体が物体画素と重ならず且つ既に配置した仮想曲面体とも重ならない場合には、その位置に直径Rbの子仮想球体を配置可能であると判定する。また、その時点における親仮想球体が占有する全ての空間画素のいずれを中心として選択しても子仮想球体が物体画素又は既に配置した仮想曲面体と重なる場合には、直径Rbの親仮想球体を配置可能でないと判定する。
【0043】
ステップS270で子仮想球体が配置可能であると判定すると、その位置に直径Rbの子仮想球体を1つ配置する(ステップS280)。具体的には、ステップS200でRAM24に記憶した多孔質体データ80の多孔質体テーブル81のうち、直径Rbの子仮想球体を配置したときに子仮想球体に占有される画素に対応する種別情報を、子仮想球体に占有されている画素であることを表す値4に更新する。なお、親仮想球体に占有されている画素である種別情報が値3の画素については、種別情報の更新は行わない。すなわち、親仮想球体と子仮想球体とが重複する画素については、親仮想球体の種別情報を対応付けておく。そして、子仮想球体を1つ配置するとステップS270以降の処理を行い、直径Rbの子仮想球体が配置可能でないと判定されるまでステップS280を繰り返し行って直径Rbの子仮想球体を配置する。なお、子仮想球体同士が互いに重なることは許容する。すなわち、子仮想球体の占有する画素と他の子仮想球体の占有する画素とが重複することは許容する。
【0044】
ステップS270で子仮想球体が配置可能でないと判定すると、直径Rbを値1デクリメントして(ステップS290)、直径Rbが最小値Rbmin未満であるか否かを判定し(ステップS300)、直径Rbが最小値Rbmin以上であるときには、ステップS270以降の処理を行う。最小値Rbminは、子仮想球体の直径Rbの下限値であり、例えば解析結果にあまり影響しないような比較的小さな直径の子仮想球体を配置しないようにするために定める閾値である。本実施形態では、Rbminは2μmであるものとした。
【0045】
ステップS300で直径Rbが最小値Rbmin未満であるときには、ステップS250で配置した親仮想球体とステップS280で配置した子仮想球体とからなる仮想曲面体を配置する(ステップS310)。具体的には、ステップS200でRAM24に記憶した多孔質体データ60の多孔質体テーブル81のうち、親仮想球体に占有されている画素(種別情報が値3の画素)及び子仮想球体に占有されている画素(種別情報が値4の画素)の種別情報を、仮想曲面体に占有されている曲面体画素であることを表す値5に更新する。また、今回値5に更新した曲面体画素の位置情報に、仮想曲面体の識別符号を対応付けておく。仮想曲面体の識別符号は、例えば配置された順序に応じて仮想曲面体毎に付される値であり、1つの仮想曲面体を構成する曲面体画素には同じ識別符号が対応付けられる。そして、この仮想曲面体に関する情報をRAM24に記憶し(ステップS320)、空間画素の99%以上が曲面体画素に置換されたか否かを判定する(ステップS330)。この判定は、具体的には、RAM24に記憶された多孔質体テーブル71に含まれる各画素の種別情報を参照して、種別情報が値0である画素の数と値5である画素の数との合計数に対して種別情報が値5である画素の数が99%以上であるか否かによって行う。なお、判定の閾値は99%に限らず、他の値を用いてもよい。そして、ステップS330で空間画素のうち曲面体画素に置換された画素が99%未満であるときには、ステップSS230以降の処理を行って、次の仮想曲面体を配置する。一方、ステップS330で空間画素のうち曲面体画素に置換された画素が99%以上であるときには仮想曲面体配置処理を終了する。
【0046】
なお、ステップS320では、仮想曲面体に関する情報として、仮想曲面体を識別する識別符号と、仮想曲面体を構成する親仮想球体の中心座標(X,Y,Z)及び直径と、仮想曲面体を構成する1以上の子仮想球体の中心座標及び直径とを対応付けた仮想曲面体テーブル83を多孔質体データ80の一部としてRAM24に記憶するものとした。仮想曲面体テーブル83の一例を図8に示す。図示するように、仮想曲面体テーブル83は、ステップS230〜320を繰り返し行うことで配置された複数の仮想曲面体について、識別符号と、親仮想球体の中心座標及び直径と、仮想曲面体を構成する1以上の子仮想球体の中心座標及び直径とが対応付けられている。また、1つの仮想曲面体について子仮想球体は複数存在する場合があるため、例えば配置された順序に応じて第1子仮想球体,第2子仮想球体,・・・のように複数の子仮想球体の情報が識別可能に対応付けられている。なお、子仮想球体が1つも存在しない仮想曲面体、すなわち親仮想球体のみで構成された仮想曲面体があってもよい。
【0047】
この仮想曲面体配置処理により、仮想曲面体テーブル83がRAM24に記憶されるとともに、配置した仮想曲面体により空間画素が曲面体画素に置換される。ここで、仮想曲面体配置処理により親仮想球体及び子仮想球体からなる仮想曲面体を1つ配置する様子について説明する。図9は、親仮想球体の配置の説明図であり、図10は、子仮想球体及び仮想曲面体の配置の説明図である。なお、説明の便宜上、図9,10では多孔質体データ80のうちX方向に平行な断面の様子を示し、仮想曲面体の配置を二次元的に図示している。図9(a)は、ステップS210を行った直後であり仮想曲面体を配置する前の多孔質体データ80の一例を示す説明図であり、図9(b)は、親仮想球体を1つ配置した状態の説明図である。図10(a)は、図9(b)で配置した親仮想球体に対して子仮想球体を複数配置した状態の説明図である。図10(b)は、親仮想球体と子仮想球体とからなる仮想曲面体を配置した状態の説明図である。図9(a)に示するように、多孔質体データ80は、物体画素と空間画素とからなり、流入面61,流出面62と、仮想壁面85とが設定されている。仮想曲面体(親仮想球体,子仮想球体)はこの仮想壁面85より外側に飛び出さない範囲で配置される。この状態でステップS220〜S250の処理を行うと、直径Ramaxが十分大きい値に設定されていれば、直径Raを値1ずつデクリメントしていき、物体画素に重ならず且つ仮想壁面85の外側に飛び出さない範囲で多孔質体データ80に配置可能な最大の直径と直径Raとが等しくなったときに親仮想球体を1つ配置する(図9(b))。続いて、S300で直径Rbが最小値Rbmin未満と判定されるまでステップS270〜S300を繰り返すことで、子仮想球体の中心が親仮想球体と重なり且つ子仮想球体が占有する画素が物体画素と重ならず且つ空間画素を埋めるように、種々の直径の子仮想球体が複数配置される(図10(a))。そして、S300で直径Rbが最小値Rbmin未満と判定されると、それまで配置した親仮想球体と子仮想球体とからなる仮想曲面体を1つ配置する(図10(b))。このようにして仮想曲面体を1つ配置するステップS230〜S320の処理を、空間画素のうち曲面体画素に置換された画素が99%以上であるとステップS330で判定されるまで繰り返すことで、まだ仮想曲面体を配置していない他の空間画素に順次仮想曲面体を配置して、空間画素を曲面体画素で埋めていく。こうすることで、多孔質体内の複雑な形状の空間(気孔)を複数の球体を組み合わせた形状の仮想曲面体で置換するため、多孔質体内の空間を複数の仮想曲面体の集合として、より精度よく模擬することができる。
【0048】
図6の解析処理ルーチンの説明に戻る。ステップS100の仮想曲面体配置処理が終了すると、流体解析部25cは、RAM24に記憶された多孔質体データ80に基づいて流体解析を行うことにより多孔質体内部を流体が通過する際の空間画素毎の流体の流れに関する情報を導出する流体解析処理を行う(ステップS110)。この流体解析処理は、周知の格子ボルツマン法により行うものとした。具体的には、多孔質体データ80の各画素の中心点を各格子点とし、流入面61から流体が流入した場合の各格子点とそれに隣接する格子点との間での流体の流れに関する所定の関係式を用いた格子ボルツマン法による流体解析を行う。そして、空間画素毎の流体の流れに関する情報として、多孔質体データ80の各空間画素毎に流速と流れ方向とからなる流速ベクトルを導出し、RAM24の多孔質体データ80の多孔質体テーブル81に各空間画素の流速ベクトルを対応付けて記憶する。なお、この流体解析は、流入面61での流体の平均流速Tin,流体の粘性μ,流体の密度ρなどの解析に必要な数値が例えば解析処理プログラム25aに予め定められており、これらの数値を用いて行う。これらの数値はユーザーが入力装置27を介して値を設定するものとしてもよい。ここで、平均流速Tinは、多孔質体内に流体が入る直前の流速の平均値であり、流体解析における流速の初期値に相当する。本実施形態では、平均流速Tinは0.01m/sとした。また、流体は0℃,1atmの空気を想定し、粘性μは1.73×10-5[Pa・s]、密度ρは1.25[kg/m3]とした。なお、ステップS110の流体解析処理は、ステップS100で配置した仮想曲面体は考慮せず、曲面体画素も空間画素であるものとして行う。また、本実施形態ではステップS110の流体解析処理はRAM24に記憶された多孔質体データ80に基づいて行うものとしたが、HDD25に記憶された多孔質体データ60に基づいて行ってもよい。
【0049】
次に、面内均一性指数評価部25dは、面内均一性指数γxを導出し、導出した値に基づく良否判定を行って多孔質体を評価する面内均一性指数評価処理を行う(ステップS120)。面内均一性指数γxは、流入面61に平行な断面を1つ定めて、その断面における値として次式(1)により導出する。なお、下記の断面におけるn個の平均流速uiや断面内の各仮想曲面体の断面積Aiは、例えば次のように導出する。まず、面内均一性指数γxの導出対象となる断面に含まれる曲面体画素を、断面−流入面61間の距離xとRAM24に記憶された多孔質体テーブル81の位置情報及び種別情報とに基づいて特定する。次に、特定した各曲面体画素に対応付けられた仮想曲面体の識別符号が何種類あるかを数え、その数を断面内の仮想曲面体の個数nとする。続いて、断面内の仮想曲面体の識別符号のうち1つを選択する。そして、選択した識別符号に対応付けられた曲面体画素すなわち1つの仮想曲面体を構成する曲面体画素について、流体解析処理で各曲面体画素に対応付けられた流速ベクトルを調べ、各曲面体画素の断面に垂直な方向の流速の成分の平均値を導出し、これを平均流速u1とする。また、選択した識別符号に対応付けられた曲面体画素の画素数を数え、画素数と断面に沿った曲面体画素の面積(本実施形態では1.44μm2)との積を断面積A1とする。同様にして、選択する識別符号を順次変更していき、断面内のn個の仮想曲面体についてそれぞれ平均流速u2,u3,・・・,un、断面積A2,A3,・・・,Anを導出することができる。そして、面内均一性指数評価部25dは、複数の断面、例えば距離xを1.2μmずつ変化させた250個(=300μm/1.2μm)の断面について面内均一性指数γxを導出し、この面内均一性指数γxの平均値が値0.6以上であるときに多孔質体の圧力損失特性が良好と判定し、値0.6未満のときに不良と判定する。なお、面内均一性指数γxを導出する際には、本実施形態のように距離xを画素のX方向長さ(本実施形態では1.2μm)と同じ値だけ変化させて、すなわち導出対象の断面をX方向に1画素ずつずらしていき、複数の面内均一性指数γxを導出することが好ましい。ただし、これに限らず距離xを変化させて複数の面内均一性指数γxを導出するものとしてもよい。また、面内均一性指数γxを1つだけ導出してその値が0.6以上か否かで良否判定を行ってもよい。
【0050】
【数1】
【0051】
次に、空間均一性指数評価部25eは、空間均一性指数γを導出し、導出した値に基づく良否判定を行って多孔質体を評価する空間均一性指数評価処理を行う(ステップS130)。空間均一性指数γは、面内均一性指数評価処理で導出した複数の面内均一性指数γxを用いて次式(2)により導出する。また、導出した空間均一性指数γが値0.6以上であるときに多孔質体の捕集性能が良好と判定し、値0.6未満のときに不良と判定する。なお、値0.5以上か否かにより良否を判定してもよい。
【0052】
【数2】
【0053】
次に、圧力損失評価部25fは、単位厚さあたりの圧力損失Pを導出し、導出した値に基づく良否判定を行って多孔質体を評価する圧力損失評価処理を行う(ステップS140)。圧力損失Pは、面内均一性指数評価処理で導出した複数の面内均一性指数γxを用いて次式(3)により導出する。この式(3)は、流体が多孔質体を通過するときの圧力損失特性を表す周知のErgun式を、面内均一性指数γxを用いて補正したものである。なお、距離xの断面における空間(気孔)の代表水力直径Dhxは、本実施形態では次のように求めるものとした。まず、距離xの断面における空間部分の面積の合計をAxとして、合計面積Axを導出する。これは、距離xの断面における空間画素(曲面体画素を含む)の画素数と1画素の断面積(本実施形態では1.44μm2)との積により導出する。次に、距離xの断面における濡れ縁長さの合計をLxとして、合計濡れ縁長さLxを導出する。これは、空間画素(曲面体画素を含む)と物体画素との境界線の長さの合計として算出する。そして、代表水力直径Dhx=4×合計面積Ax/合計濡れ縁長さLxにより、代表水力直径Dhxを導出する。なお、代表水力直径Dhxは、距離xの断面における空間(気孔)の直径を代表する値であればよく、他の方法により導出してもよい。例えば、距離xの断面における仮想曲面体の断面等価直径Reiを断面内の各仮想曲面体について求め、この断面等価直径Reiの平均値を代表水力直径Dhxとして導出してもよい。仮想曲面体の断面等価直径Reiは、例えばRei=4×断面積Ai/周長Liにより求めることができる。この式において断面積Aiは上述した方法により求めることができる。周長Liは、例えば仮想曲面体テーブル73に含まれる情報に基づいて、距離xの断面に投影される仮想曲面体の断面の輪郭の長さとして求めることができる。また、下記の距離xの断面における空間画素毎の流速の平均値Uxは、例えば、距離xの断面内の空間画素(曲面体画素を含む)について、流体解析処理で各空間画素に対応付けられた流速ベクトルを調べ、各空間画素の断面に垂直な方向の流速の成分を導出して、この平均値として導出することができる。なお、定数kは、圧力損失Pと実際の多孔質体の圧力損失との相関がより高くなるよう、例えば実験により予め求めることができる。本実施形態では、定数kは値「−2」とした。また、圧力損失Pに基づく良否判定は、例えば以下のように行う。まず、複数の面内均一性指数γxのそれぞれに応じた圧力損失Pを導出し、その複数の圧力損失Pの平均値を導出する。そして、この圧力損失Pの平均値が所定の閾値(例えば許容できる圧力損失の上限値)以下であるときには多孔質体の圧力損失が良好であると判定し、所定の閾値を超えるときには多孔質体の圧力損失が不良であると判定する。複数の圧力損失Pを導出する際には、本実施形態では、距離xを画素のX方向長さ(本実施形態では1.2μm)と同じ値だけ変化させて、すなわち導出対象の断面をX方向に1画素ずつずらしていき、X方向の画素数と同じ数の面内均一性指数γxにそれぞれ対応する圧力損失Pを導出するものとした。ただし、圧力損失Pの平均値の導出方法はこれに限らず、距離xを変化させて複数の面内均一性指数γxに対応する圧力損失Pを導出し、その平均を導出するものであればよい。
【0054】
【数3】
【0055】
次に、通過流速評価部25gは、各仮想曲面体の通過流速Tを導出し、導出した値に基づいて仮想曲面体を分類し、分類結果に基づいて多孔質体を評価する通過流速評価処理を行う(ステップS150)。各仮想曲面体の通過流速Tは、例えば次のように導出する。まず、仮想曲面体についての流体の単位時間あたりの通過流量Qを各仮想曲面体について導出する。そして、導出した通過流量Qと仮想曲面体の等価直径d(=6×仮想曲面体の体積V/仮想曲面体の表面積S)とに基づいて各仮想曲面体の通過流速TをT=Q/(πd2/4)により導出する。各仮想球体の通過流量Q,体積V,表面積Sは、例えば次のように導出する。まず、仮想曲面体を1つ選択し、選択した仮想曲面体の識別符号に対応する曲面体画素をRAM24の多孔質体テーブル81により調べる。そして選択した仮想曲面体を構成する曲面体画素の画素数を導出し、画素数と1つの曲面体画素の体積(本実施形態では1.728μm3)との積を体積Vとする。また、仮想曲面体テーブル83に含まれる情報(親仮想球体,子仮想球体の中心座標及び直径)に基づいて、選択した仮想曲面体の表面積Sを導出する。次に、選択した仮想曲面体を構成する曲面体画素のうち、仮想曲面体の表面を構成する曲面体画素を仮想曲面体テーブル83に含まれる情報に基づいて特定する。そして、表面を構成する曲面体画素に対応付けられた流体ベクトルをRAM24の多孔質体テーブル81を用いて調べ、流速ベクトルが仮想曲面体の内部に向かう方向である曲面体画素を特定し、特定した曲面体画素の流速ベクトルの大きさを曲面体画素毎に求め、単位時間あたりの通過流量Q=(流速ベクトルの大きさの和)×(特定した曲面体画素の個数)×(曲面体画素の1つの面の面積(=1.44μm2))として導出する。これにより、選択した仮想曲面体の通過流速Tを導出することができる。同様にして、複数の各仮想曲面体それぞれについて通過流速Tを導出する。
【0056】
通過流速評価処理における各仮想曲面体の分類は、次のように行う。まず、1つの仮想曲面体を選択し、選択した仮想曲面体の通過流速Tと流体解析における平均流速Tinとにより流速比Tf(=T/Tin)を導出する。そして、Tf<2であればその仮想曲面体を低流速曲面体とし、2≦Tf<8であればその仮想曲面体を中流速曲面体とし、8≦Tfであればその仮想曲面体を高流速曲面体として分類する。各仮想曲面体についても同様にして分類を行う。そして、複数の仮想曲面体の体積Vの合計値に対して、低流速曲面体の体積Vの合計値の占める割合が20%以下であり、且つ、高流速曲面体の体積Vの合計値の占める割合が10%以下であるときに、多孔質体の性能が良好であると判定する。一方、低流速曲面体の体積Vの合計値の占める割合が20%超過である場合や、高流速曲面体の体積Vの合計値の占める割合が10%超過である場合には不良であると判定する。
【0057】
続いて、等価直径評価部25hは、各仮想球体の等価直径dを導出し、等価直径dに基づいて仮想曲面体を分類し、分類結果に基づいて多孔質体を評価する等価直径評価処理を行う(ステップS160)。等価直径dに基づく仮想曲面体の分類は、d<10μmの仮想曲面体を小径曲面体とし、10μm≦d≦25μmの仮想曲面体を中径曲面体とし、25μm<dの仮想曲面体を大径曲面体として分類することにより行う。そして、複数の仮想曲面体の体積Vの合計値に対して、中径曲面体の体積Vの合計値の占める割合が70%以上である場合には多孔質体の性能が良好であると判定し、70%未満である場合には多孔質体の性能が不良であると判定する。等価直径dや体積Vは、上述した通過流速評価処理と同様にして導出してもよいし、通過流速評価処理で導出された値をそのまま用いてもよい。
【0058】
ステップS120〜S160の各評価処理を行うと、解析結果出力部25iは、上述した処理でRAM24に記憶した情報などを解析結果データとして出力してHDD25に記憶する解析結果出力処理を行い(ステップS170)、本ルーチンを終了する。解析結果データには、例えばRAM24に記憶された多孔質体テーブル81,流入流出テーブル82,仮想曲面体テーブル83を含む多孔質体データ80や、面内均一性指数評価処理における面内均一性指数γxの値及び良否判定の結果、空間均一性指数評価処理における空間均一性指数γの値及び良否判定の結果、圧力損失評価処理における圧力損失Pの値及び良否判定の結果、通過流速評価処理における通過流速T,流速比Tfの値,低流速曲面体の体積Vの合計値の占める割合,高流速曲面体の体積Vの合計値の占める割合及び良否判定の結果、等価直径評価処理における等価直径dの値,中径曲面体の体積Vの合計値の占める割合及び良否判定の結果、などが含まれる。また、平均流速Tin,流体の粘性μ,流体の密度ρなどの流体解析処理に用いた値を含めてもよい。
【0059】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の微構造解析装置との対応関係を明らかにする。本実施形態のRAM24及びHDD25が本発明の記憶手段に相当し、仮想曲面体配置部25bが仮想曲面体配置手段に相当し、面内均一性指数評価部25d,空間均一性指数評価部25e,圧力損失評価部25f,通過流速評価部25g,等価直径評価部25hが微構造解析手段に相当する。なお、本実施形態では、ユーザーPC20の動作を説明することにより本発明の微構造解析方法の一例も明らかにしている。
【0060】
以上詳述した本実施形態によれば、位置情報と種別情報とが対応づけられた多孔質体データ80を参照して、親仮想球体と子仮想球体とからなる曲面体を仮想曲面体とし、仮想曲面体によって占有される曲面体画素で空間画素を埋めるように仮想曲面体を複数配置するため、多孔質体内の空間を複数の仮想曲面体の集合として、より精度よく模擬することができる。そして、この仮想曲面体に関する情報に基づくことで、多孔質体の微構造をより精度よく解析することができる。また、仮想曲面体同士や曲面体画素と物体画素とが重ならないように仮想曲面体を配置するため、重なりを許す場合と比べて仮想曲面体を配置するのに要する処理時間を短縮できる。さらに、最初に直径Raを最大値Rmaxに設定し、順次Raをデクリメントしながら親仮想球体が配置可能か否かを判定するため、空間画素をなるべく体積の大きい仮想曲面体で埋めることができる。
【0061】
また、面内均一性指数γxを導出して、これに基づく良否判定を行っている。ここで、面内均一性指数γxは、断面内における流体の流速が均一なほど大きい(値1に近い)値となり、断面内における流体の流速にばらつきが大きいほど小さい値となる。そして、多孔質体をフィルターに用いた場合の圧力損失特性は、この面内均一性指数γxの値が大きいほど良好な傾向にある。そのため、微構造の解析としてこの面内均一性指数γxを導出しそれに基づく評価を行うことで、多孔質体の圧力損失特性をより精度よく評価することができる。
【0062】
さらに、空間均一性指数γを導出して、これに基づく良否判定を行っている。ここで、空間均一性指数γは、複数の断面について導出した面内均一性指数γxのばらつきが小さいほど大きい値となり、ばらつきが大きいほど小さい値となる。そして、多孔質体をフィルターに用いた場合の捕集性能は、この空間均一性指数γの値が大きいほど良好な傾向にある。そのため、微構造の解析としてこの空間均一性指数γを導出してそれに基づく評価を行うことで、多孔質体の捕集性能をより精度よく評価することができる。
【0063】
さらにまた、単位厚さあたりの圧力損失Pを導出して、これに基づく良否判定を行っている。ここで、圧力損失Pは、Ergun式によって導出した圧力損失と比べて実際の多孔質体の圧力損失との相関が高い。そのため、微構造の解析としてこの単位体積あたりの圧力損失Pの導出してそれに基づく評価を行うことで、例えば多孔質体の圧力損失特性をより精度よく評価することができる。
【0064】
そしてまた、通過流速Tを導出し、これに基づいて仮想曲面体を分類して、分類結果に基づく良否判定を行っている。ここで、通過流速Tが小さい仮想曲面体で模擬された多孔質体の気孔は、流体の透過にあまり寄与せず、圧力損失の増大や材料の熱伝導及び熱容量の低下を招く場合がある。また、通過流速Tが大きい仮想曲面体で模擬された多孔質体の気孔は、流体が通過する際の流動抵抗が大きい場合や、流体が短時間で通過してしまうため捕集性能にあまり寄与しない場合がある。そのため、仮想曲面体の一部をこのような通過流速Tの小さい低流速曲面体や通過流速Tの大きい高流速曲面体として分類し、それに基づく評価を行うことで、多孔質体の微構造を精度よく評価することができる。
【0065】
そしてまた、等価直径dを導出し、これに基づいて仮想曲面体を分類して、分類結果に基づく良否判定を行っている。ここで、等価直径dが小さい仮想曲面体で模擬された多孔質体の気孔は、流体が通過する流速が小さくなり圧力損失の増大を招く場合や、多孔質体をフィルターとして用いるために気孔の壁面に塗布する触媒が適切に塗布されない場合などがある。また、等価直径dが大きい仮想曲面体で模擬された多孔質体の気孔は、流体が通過する流速が大きくなり多孔質体をフィルターに用いた場合の捕集性能にあまり寄与しない場合がある。そのため、仮想曲面体の一部をこのような等価直径dの小さい小径曲面体や等価直径dの大きい大径曲面体として分類し、それに基づく評価を行うことで、多孔質体の微構造を精度よく評価することができる。
【0066】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実現し得ることはいうまでもない。
【0067】
例えば、上述した実施形態では、仮想曲面体配置処理において、1つの仮想曲面体において親仮想球体は1つ配置するものとしたが、複数としてもよい。親仮想球体が複数の場合には、仮想曲面体は、複数の親仮想球体と、複数の親仮想球体の少なくともいずれかと占有する画素が一部重複する1以上の子仮想球体と、からなるものとしてもよい。また、1つの仮想曲面体を配置するにあたり、複数の子仮想球体を配置する場合に、複数の子仮想球体が互いに重なることを許容するものとしたが、許容しないものとしてもよい。
【0068】
上述した実施形態では、仮想曲面体配置処理において、子仮想球体の中心が親仮想球体と重なるように子仮想球体を配置するものとしたが、これに限らず、子仮想球体の占有する画素と親仮想球体の占有する画素とが一部重複していればよい。
【0069】
上述した実施形態では、仮想曲面体配置処理において、仮想曲面体が他の仮想曲面体と占有する画素が互いに重複しないように仮想曲面体を配置するものとしたが、一部重複を許容するものとしてもよい。また、仮想曲面体は曲面体画素が物体画素と重ならないように配置するものとしたが、一部重複を許容するものとしてもよい。
【0070】
上述した実施形態では、流体解析は格子ボルツマン法により行うものとしたが、他の流体解析方法を用いてもよい。
【0071】
上述した実施形態では、通過流速評価処理において、仮想曲面体の体積Vの合計値に対して低流速曲面体の体積Vの合計値の占める割合が20%以下であり、且つ、高流速曲面体の体積Vの合計値の占める割合が10%以下であるときに、多孔質体の性能が良好であると判定したが、仮想曲面体における低流速曲面体の体積割合が所定の閾値以下であり、且つ、仮想曲面体における高流速曲面体の体積割合が所定の閾値以下であるときに、多孔質体の性能が良好であると判定してもよい。この場合の低流速曲面体の閾値や高流速曲面体の閾値は上述した20%,10%に限らず、例えば実験などにより求めた値としてもよい。また、仮想曲面体における低流速曲面体の体積割合が所定の閾値以下であれば多孔質体の性能が良好と判定してもよいし、仮想曲面体における高流速曲面体の体積割合が所定の閾値以下であれば多孔質体の性能が良好と判定してもよい。
【0072】
上述した実施形態では、通過流速評価処理において、Tf<2の仮想曲面体を低流速曲面体とし、2≦Tf<8の仮想曲面体を中流速曲面体とし、8≦Tfの仮想曲面体を高流速曲面体として分類を行うものとしたが、他の閾値により分類を行うものとしてもよい。また、流速比Tfで仮想曲面体を分類するものに限らず、通過流速Tと閾値とを比較することにより分類を行ってもよい。
【0073】
上述した実施形態では、等価直径評価処理において、10μm≦d≦25μmの仮想曲面体を中径曲面体とし、仮想曲面体の体積Vの合計値における中径曲面体の体積Vの合計値の占める割合が70%以上である場合に多孔質体の性能が良好であると判定するものとしたが、70%に限らず例えば実験により求めたほかの閾値で良好か否かを判定してもよい。例えば、60%以上である場合に良好と判定してもよい。また、他の方法により曲面体の分類や評価を行ってもよい。例えば、d<10μmの仮想曲面体を小径曲面体とし、この小径曲面体の体積Vの合計値の占める割合が25%以下であるときに良好と判定してもよい。また、30μm≦dの仮想曲面体を大径曲面体とし、この大径曲面体の体積Vの合計値の占める割合が10%以下であるときに良好と判定したり、5%以下であるときに良好と判定したりしてもよい。さらに、また、40μm≦dの仮想曲面体を大径曲面体とし、この大径曲面体が存在しないときに良好と判定してもよい。
【0074】
上述した実施形態では、解析処理ルーチンにおいて、面内均一性指数γx,空間均一性指数γ,圧力損失Pの導出及び良否の判定を行うものとしたが、値の導出までを行い良否の判定は行わないものとしてもよい。また、解析処理ルーチンにおいて、通過流速T,等価直径dの導出,分類,良否の判定を行うものとしたが、良否の判定を行わないものとしてもよいし、分類及び良否の判定を行わないものとしてもよい。
【0075】
上述した実施形態では、ステップS120〜140の各処理を行うものとしたが、ステップS130,S140のいずれか一方または両方の処理を省略してもよいし、ステップS120〜140を全て省略してもよい。同様に、ステップS150〜S170の各処理についても、いずれか1以上の処理を省略してもよい。また、ステップSS120〜S160の処理を全て省略する場合には、ステップS110の処理を省略してもよい。
【0076】
上述した実施形態において、n個の平均流速uiのうち平均流速uiが値0である仮想曲面体については、多孔質隔壁44の構成物質に囲まれた閉じた空間であり流体の流れに影響しない空間であるとみなして、n個の仮想曲面体から除外するものとしてもよい。例えば、断面内に5個の仮想曲面体がある場合に、そのうちの1個の仮想曲面体の平均流速uiが値0であったときには、その仮想曲面体は無視し(物体画素とみなし)、断面内に4個の仮想曲面体があり個数n=4として、以降の処理を行うものとしてもよい。この流体解析の結果を用いる他の処理についても、同様としてもよい。
【0077】
上述した実施形態では、等価直径d(=6×仮想曲面体の体積V/仮想曲面体の表面積S)を導出するにあたり、仮想曲面体を構成する曲面体画素の画素数と1つの曲面体画素の体積(実施形態では1.728μm3)との積を体積Vとしたが、これに限られない。例えば、仮想曲面体テーブル83に含まれる情報(親仮想球体,子仮想球体の中心座標及び直径)に基づいて、仮想曲面体の体積Vを導出してもよい。すなわち、仮想曲面体を空間画素の集合体として考えた場合(仮想曲面体の端部が空間画素の端部すなわち直線や平面で表される)の体積ではなく、中心座標及び直径で表される親仮想球体及び子仮想球体の集合として仮想曲面体を考えた場合(仮想曲面体の端部が曲線や曲面で表される)の体積を体積Vとしてもよい。
【0078】
上述した実施形態では、断面積Ai(A1,A2,A3,・・・,An)は、断面に沿った曲面体画素の画素数と曲面体画素の面積(実施形態では1.44μm2)との積により導出するものとしたが、これに限られない。例えば、仮想曲面体テーブル83に含まれる親仮想球体や子仮想球体の中心座標及び直径と、断面の位置(断面−流入面61間の距離x)とに基づいて、仮想曲面体の断面積Aiを導出してもよい。すなわち、仮想曲面体を空間画素の集合体として考えた場合の断面(断面の端部が空間画素の端部すなわち直線で表される)の面積ではなく、中心座標及び直径で表される親仮想球体及び子仮想球体の集合として仮想曲面体を考えた場合の断面(断面の端部が曲線で表される)の面積を断面積Aiとしてもよい。
【0079】
上述した実施形態では、通過流速TをT=Q/(πd2/4)により導出するものとしたが、これに限られない。例えば、仮想曲面体のX,Y,Z方向の通過流速成分Tx,Ty,Tzを導出し、通過流速T=√(Tx2+Ty2+Tz2)として通過流速Tを導出してもよい。この場合の通過流速成分Txは、以下のように導出する。まず、通過流速Tの導出の対象となる仮想曲面体について、その仮想曲面体の親仮想球体の中心を通り、且つX方向に垂直な断面を特定し、その断面を構成する曲面体画素を特定する。次に、特定した曲面体画素の各々に対応付けられた流速ベクトルのX方向成分(流速ベクトルのX方向の大きさ)を多孔質体テーブル81を用いて調べ、その平均値を通過流速成分Txとする。同様に、仮想曲面体の親仮想球体の中心を通り、且つY方向に垂直な断面を構成する曲面体画素を特定する。そして、その曲面体画素の流速ベクトルのY方向成分の平均値を通過流速成分Tyとする。また、仮想曲面体の親仮想球体の中心を通り、且つZ方向に垂直な断面を構成する曲面体画素を特定する。そして、その曲面体画素の流速ベクトルのZ方向成分の平均値を通過流速成分Tzとする。
【0080】
上述した実施形態では、仮想曲面体配置処理において、仮想曲面体が他の仮想曲面体と占有する画素が互いに重複しないように仮想曲面体を配置するものとしたが、占有する画素が互いに重複する(仮想曲面体が互いに重なる)ことを許容してもよい。こうすることで、仮想曲面体が他の仮想曲面体と重複しないように配置する場合と比べて、なるべく体積の大きい仮想曲面体を配置することができる。また、なるべく体積の大きい仮想曲面体を配置することで、多孔質体内の空間を仮想曲面体でより精度良く模擬することができる。また、仮想曲面体が他の仮想曲面体と占有する画素が互いに重複しないように仮想曲面体を配置する場合に、体積の小さい仮想曲面体の配置を避けようとすると、仮想曲面体が配置されない空間画素が増えてしまう場合がある。すなわち、多孔質体内の空間のうち、仮想曲面体で模擬できない空間が増えてしまう場合がある。しかし、仮想曲面体が互いに重なることを許容することで、そのような仮想曲面体で模擬できない空間を減らすことができる。仮想曲面体の重複を許容する場合は、上述した図7の仮想曲面体配置処理のステップS230において、直径Raの親仮想球体を配置すると親仮想球体が既に配置した仮想曲面体と重なる場合でも、親仮想球体の配置を許容すればよい。例えば、ステップS230において、直径Raの親仮想球体が物体画素と重ならない場合には、その親仮想球体が既に配置した仮想曲面体と重なるか否かに関わらず、その位置に直径Raの親仮想球体を配置可能であると判定してもよい。同様に、ステップS270において、直径Rbの子仮想球体を配置すると子仮想球体が既に配置した仮想曲面体と重なる場合でも、子仮想球体の配置を許容すればよい。例えば、ステップS270において、直径Rbの子仮想球体が物体画素と重ならない場合には、その子仮想球体が既に配置した仮想曲面体と重なるか否かに関わらず、その位置に直径Rbの子仮想球体を配置可能であると判定してもよい。なお、仮想曲面体の重複を許容する場合、親仮想球体や子仮想球体の中心が既に配置した仮想曲面体と重なってもよい。また、仮想曲面体の重複を許容する場合、複数の仮想曲面体の体積の和や断面積の和など、複数の仮想曲面体に関する情報を合わせた数値を導出する際には、複数の仮想曲面体が重複する部分はいずれか1つの仮想曲面体のみに属するものとして、計算を行うことが好ましい。一方、仮想曲面体の断面積,表面積の導出や、等価直径dを導出する際など、仮想曲面体1つ1つについての値を導出する際には、複数の仮想曲面体が重複する部分はいずれの仮想曲面体にも属するものとして計算を行うことが好ましい。なお、複数の仮想曲面体が重複する部分をいずれか1つの仮想曲面体のみに属するものとする場合には、例えば親仮想球体の直径が最も大きい仮想曲面体に属するものとしてもよいし、等価球径dが最も大きい仮想曲面体に属するものとしてもよい。
【0081】
上述した実施形態では、親仮想球体や子仮想球体の中心は画素の中心にあるものとしたが、これに限られない。親仮想球体や子仮想球体の中心が画素の中にあればよい。例えば、親仮想球体や子仮想球体の中心が、画素のうちX,Y,Z座標の原点に最も近い端部にあるものとしてもよい。
【0082】
上述した実施形態では、圧力損失評価部25fは、単位厚さあたりの圧力損失Pを導出するものとしたが、これに加えてまたは代えて、多孔質体の圧損指数Peを導出してもよい。以下、圧損指数Peについて説明する。圧損指数Peは、Pe=(多孔質体内部の空間の濡れ面積Aw/多孔質体内部の空間の気孔容積Vp)×(1/多孔質体の気孔率ε)×(平均値Lfmean/流入面と流出面との距離L)により導出する。多孔質体内部の空間の濡れ面積Aw[μm2]は、多孔質体データ80における空間画素(曲面体画素含む)と物体画素との境界面の個数と、1つの境界面の面積(上述した実施形態では1.44μm2)との積により導出する。多孔質体内部の空間の気孔容積Vp[μm3]は、多孔質体データ80における空間画素(曲面体画素含む)の個数と、1つの画素の体積(上述した実施形態では1.728μm3)との積により導出する。気孔率εは、多孔質体データ80における空間画素(曲面体画素含む)の個数と物体画素の個数とを導出し、気孔率ε=空間画素数/(空間画素数+物体画素数)により導出する。流入面と流出面との距離L[μm]は、流入流出テーブル82に基づいて導出する。例えば、上述した実施形態では、流入面61がX=1の平面であり、流出面62がX=251の平面であるため、距離L=(251−1)×1.2μm=300μmとなる。平均値Lfmeanは、以下のように求める。まず、多孔質体の所定の流入面及び所定の流出面のうち一方の面から互いに隣接するか又は重なる仮想曲面体をたどって他方の面に到達するまでの経路長Lfを複数導出する。そして、複数の経路長Lfの平均を平均値Lfmeanとして導出する。
【0083】
ここで、経路長Lf及び平均値Lfmeanの導出方法について説明する。図11は、経路長導出処理の一例を示すフローチャートである。図11に示すように、経路長導出処理では、まず、流入面61を含む仮想曲面体を1つ選択する(ステップS600)。なお、仮想曲面体が流入面61を含むか否かは、仮想曲面体配置処理で作成した仮想曲面体テーブル83で記憶されている各仮想曲面体の親仮想球体の中心座標及び直径と子仮想球体の中心座標及び直径と、流入流出テーブル82として記憶されている流入面61を表す数式(X=1)とにより判定することができる。また、ステップS600では、後述するステップS630やステップS655で選択不可とされた仮想曲面体は選択しない。続いて、選択した仮想曲面体と接するか又は重複している仮想曲面体を順次たどりその全てを選択する(ステップS610)。選択した仮想曲面体と接している又は重複している仮想曲面体の導出は、例えば以下のように行う。まず、選択した仮想曲面体が占有する曲面体画素のうち、仮想曲面体の表面に位置する曲面体画素を1つ選択する。そして、その曲面体画素に隣接する曲面体画素を占有する他の仮想曲面体があるか否かを調べ、ある場合には、その仮想曲面体を、接している仮想曲面体として導出する。同様に、選択した仮想曲面体の表面に位置する曲面体画素を占有する他の仮想曲面体がある場合には、その仮想曲面体を重複している仮想曲面体として導出する。なお、このように曲面体画素を用いる方法に限らず、例えば、仮想曲面体テーブル83で記憶されている各仮想曲面体の親仮想球体の中心座標及び直径と子仮想球体の中心座標及び直径とに基づいて、選択した仮想曲面体と接するか又は重複している仮想曲面体を導出してもよい。また、仮想曲面体配置処理において仮想曲面体の重複を許容しない場合には、選択した仮想曲面体と接する仮想曲面体を順次たどればよい。そして、ステップS610の処理を行うと、流出面62を含む仮想曲面体まで到達したか否かを判定する(ステップS620)。この処理は、選択した仮想曲面体の中に流出面62を含む仮想曲面体があるか否かを判定することにより行う。なお、仮想曲面体が流出面62を含むか否かの判定方法は、上述した流入面61を含むか否かの判定と同様である。そして、流出面62を含む仮想曲面体まで到達しなかったときには、選択中の仮想曲面体を全て選択不可にして(ステップS630)、ステップS600以降の処理を行う。一方、ステップS620で流出面62を含む仮想曲面体まで到達したときには、流入面61から流出面62までの経路にある仮想曲面体の中心点を結んだ線の長さに基づいて、経路長Lfを導出する(S650)。なお、仮想曲面体の中心点とは、親仮想球体の中心を意味する。また、経路長Lfには、流入面61から流入面61を含む仮想曲面体の中心までの距離と、流出面62から流出面62を含む仮想曲面体の中心までの距離と、を含める。このようにしてステップS650で経路長Lfを導出すると、選択中の仮想曲面体を全て選択不可にする(ステップS655)。そして、所定数の経路長Lfを導出したか否かを判定し(ステップS660)、導出した経路長Lfの数が所定数未満であれば、ステップS600以降の処理を行う。また、ステップS660で導出した経路長Lfの数が所定数に達していれば、導出した複数の経路長Lfの平均値を平均値Lfmeanとして導出して(ステップS670)、経路長導出処理を終了する。なお、ステップS660における所定数(導出する経路長Lfの個数)は、600個以上とすることが好ましい。ただし、これに限らず、導出する経路長Lfの個数は、計算負荷と精度とに応じて適宜設定することができる。また、図11の経路長導出処理は、多孔質体の流入面から流出面に向かって互いに隣接するか又は重なる仮想曲面体をたどって経路長Lfを導出する処理として説明したが、多孔質体の流出面から流入面に向かって仮想曲面体をたどって経路長Lfを導出してもよい。
【0084】
図12は、経路長Lfを導出する様子を示す説明図である。図12のように仮想曲面体a〜fが配置されている場合、経路長導出処理のステップS600では、流入面61を含む仮想曲面体aがまず選択される。そして、ステップS610では、この仮想曲面体aに隣接又は重複している仮想曲面体を順次たどっていき、仮想曲面体b〜fが選択される。そして、選択された仮想曲面体a〜fのうち、仮想曲面体cが流出面62を含んでいるため、ステップS620では流出面62を含む仮想曲面体まで到達したと判定する。そして、ステップS650では、流入面61から流出面62までの経路にある仮想曲面体の中心点を結んだ線の長さに基づいて、経路長Lfを導出する。具体的には、以下のように導出する。まず、流入面61から流出面62までの経路にあるのは仮想曲面体a〜cであるため、仮想曲面体a,bの中心点間の距離L1、仮想曲面体b,cの中心点間の距離L2を導出する。次に、流入面61から仮想曲面体aの中心までの距離L0と、流出面62から仮想曲面体cの中心までの距離L3を導出する。そして、距離L0〜距離L3の合計値を経路長Lfとして導出する。なお、仮想曲面体d〜fは、流入面61から流出面62までの経路には存在しないため、経路長Lfの導出には関係しない。
【0085】
なお、経路長Lfを導出するにあたり、ステップS600,S610で選択された複数の仮想曲面体からなる流入面61から流出面62までの経路に分岐が存在する場合には、分岐の始点から終点(合流点)までの複数の経路の平均値を、分岐部分の経路長とする。経路に分岐が存在する場合とは、例えば、途中で分岐し再び合流する経路が存在する場合や、流入面61を含む複数の仮想曲面体から合流する経路が存在する場合、途中で分岐して複数の分岐先が流出面62まで到達する(流出面62に到達する仮想曲面体が複数ある)ような経路が存在する場合などである。図13は、流入面61から流出面62までの経路に分岐が存在する場合の経路長Lfの導出の説明図である。図13(a)は、流入面61から流出面62までの経路に分岐が存在する場合の仮想曲面体の配置の一例である。図13(b)は、図13(a)で示した経路の模式図及び経路長Lfの導出の説明図である。なお、図13(a)では、説明の便宜上、仮想曲面体を円で表している。図13(a)のように仮想曲面体A1〜A2,B1〜B4,C1〜C7,D1〜D7,E1〜E4が配置されており、経路長導出処理のステップS600では流入面61を含む仮想曲面体A1が選択されたとする。この場合、続くステップS610では仮想曲面体A1に隣接又は重複している仮想曲面体を順次たどっていき、仮想曲面体A2,B1〜B4,C1〜C7,D1〜D7,E1〜E4が選択される。そして、選択された仮想曲面体のうち仮想曲面体C7,D7が流出面62を含んでいるため、ステップS620では流出面62を含む仮想曲面体まで到達したと判定する。ここで、選択された仮想曲面体からなる流入面61から流出面62までの経路には、分岐が存在している。具体的には、流入面61から仮想曲面体A1,A2をこの順にたどる経路と、流入面61から仮想曲面体B1〜B4,A2をこの順にたどる経路とが存在し、仮想曲面体A2でこれらの経路が合流している。また、仮想曲面体A2,C1をこの順にたどったあと、仮想曲面体C1から仮想曲面体C2,D1のそれぞれに経路が分岐している。仮想曲面体C1から仮想曲面体C2に分岐した経路は、仮想曲面体C2〜C7をこの順にたどり、仮想曲面体C7で流出面62に到達する。仮想曲面体C1から仮想曲面体D1に分岐した経路は、仮想曲面体D1からさらに仮想曲面体D2,E1のそれぞれに経路が分岐している。仮想曲面体D1から仮想曲面体D2に分岐した経路は仮想曲面体D2〜D6をこの順にたどり、仮想曲面体D1から仮想曲面体E1に分岐した経路は仮想曲面体E1〜E4,D6をこの順にたどり、仮想曲面体D6で合流する。そして、仮想曲面体D6から仮想曲面体D7をたどって流出面62に到達する。このように流入面61から流出面62までの経路に分岐が存在する場合における、ステップS650での経路長Lfの導出について図13(b)を用いて説明する。ステップS650では、まず、分岐点や合流点で経路を複数の区間に区切り、各区間の経路長を導出する。ここで、図13(b)では図13(a)の経路を簡略化して示しており、図13(b)に示した長さa〜hは、各区間の経路長を示している。長さaは、流入面61から仮想曲面体A1を経由し、合流点である仮想曲面体A2までの区間の経路長である。長さbは、流入面61から仮想曲面体B1〜B4を経由し、合流点である仮想曲面体A2までの区間の経路長である。長さcは、合流点である仮想曲面体A2から、分岐点である仮想曲面体C1までの区間の経路長である。長さdは、分岐点である仮想曲面体C1から仮想曲面体C2〜C7を経由し、流出面62に到達するまでの区間の経路長である。長さeは、分岐点である仮想曲面体C1から、次の分岐点である仮想曲面体D1までの区間の経路長である。長さfは、分岐点である仮想曲面体D1から仮想曲面体D2〜D5を経由し、合流点である仮想曲面体D6までの区間の経路長である。長さgは、分岐点である仮想曲面体D1から仮想曲面体E1〜E4を経由し、合流点である仮想曲面体D6までの区間の経路長である。長さhは、合流点である仮想曲面体D6から仮想曲面体D7を経由し、流出面62に到達するまでの区間の経路長である。なお、各区間の経路長(長さa〜h)は、図12を用いて説明したように、仮想曲面体の中心点を結んだ線の長さや、流入面61から流入面61を含む仮想曲面体の中心までの距離、流出面62から流出面62を含む仮想曲面体の中心までの距離、に基づいて導出する。このように各区間の経路長を導出すると、各区間の経路長に基づいて経路長Lfを導出する。具体的には、複数の区間が並列に存在する部分の経路長は、並列に存在する各区間の経路長の平均値とする。また、複数の区間が直列に存在する部分の経路長は、直列に存在する各区間の経路長の和とする。このようにして、並列に存在する区間や直列に存在する区間の経路長を合成していき、最終的に流入面61から流出面62までの経路長Lfを導出する。例えば、図13(b)では、流入面61から合流点である仮想曲面体A2までの区間が2つ並列に存在し、各区間の長さが長さa,長さbであるため、これらの平均値である長さ(a+b)/2を流入面61から仮想曲面体A2までの経路長とする。分岐点である仮想曲面体D1から合流点である仮想曲面体D6までの区間が2つ並列に存在し、各区間の長さが長さf,長さgであるため、これらの平均値である長さ(f+g)/2を仮想曲面体D1から仮想曲面体D6までの経路長とする。分岐点である仮想曲面体C1から次の分岐点である仮想曲面体D1までの区間と、仮想曲面体D1から合流点である仮想曲面体D6までの区間と、仮想曲面体D6から流出面62までの区間と、は直列に存在し、それぞれの区間の長さは長さe,長さ(f+g)/2,長さhであるため、これらの和である長さe+(f+g)/2+hを仮想曲面体C1から仮想曲面体D7を経由して流出面62に到達するまでの区間の長さとする。仮想曲面体C1から流出面62に到達するまでの区間は並列に2つ存在し、各区間の長さが長さd,長さe+(f+g)/2+hであるため、これらの平均値である長さ[d+{e+(f+g)/2+h}]/2を仮想曲面体C1から流出面62までの区間の経路長とする。流入面61から仮想曲面体A2までの区間と、仮想曲面体A2から仮想曲面体C1までの区間と、仮想曲面体C1から流出面62までの区間は直列に存在し、それぞれの区間の長さは長さ(a+b)/2,長さc,長さ[d+{e+(f+g)/2+h}]/2であるため、これらの和である長さ(a+b)/2+c+[d+{e+(f+g)/2+h}]/2を流入面61から流出面62までの経路長すなわち経路長Lfとする。このようにして経路長Lfを導出することで、流入面61から流出面62までの経路に分岐が存在する場合でも、分岐を考慮した経路長Lfを導出することができる。なお、これに限らず他の手法で経路長Lfを導出してもよい。
【0086】
このようにして導出した経路長Lfは、流入面61から流出面62までの流体の経路が単純である(直線に近い)ほど、流入面61と流出面62との距離Lに近い値となる。また、経路長Lfは、流入面61から流出面62までの流体の経路が複雑であるほど、流入面61と流出面62との距離Lより大きい値となる。したがって、複数の経路長Lfの平均値Lfmeanは、多孔質体の内部の空間を流体が流れる際の、多孔質体全体としての流体の経路の複雑さ(流体の流れにくさ)に関する数値となる。
【0087】
このようにして圧損指数Peを導出すると、この圧損指数Peは、多孔質体の実際の圧力損失との相関が高い値となる。そこで、この圧損指数Peの導出を行うことで、例えば多孔質体の圧力損失特性をより精度よく予測したり評価したりすることができる。また、圧力損失評価部25fは、圧損指数Peの値が所定の閾値以下であるか否かを判定することなどにより多孔質体の圧力損失特性の評価を行って、評価結果も導出するものとしてもよい。さらに、圧力損失評価部25fは、多孔質体の単位厚さあたりの圧力損失Psを、Ps=定数α×Pe2+定数β×Peにより導出することで、前記多孔質体の微構造を解析してもよい。このようにして圧損指数Peから導出した多孔質体の単位厚さあたりの圧力損失Psは、多孔質体の実際の圧力損失とほぼ一致する値になる。そのため、微構造の解析としてこの圧力損失Psの導出を行うことで、多孔質体の圧力損失特性をより精度良く予測したり評価したりすることができる。また、圧力損失評価部25fは、圧力損失Psの値が所定の閾値以下であるか否かを判定することなどにより多孔質体の圧力損失特性の評価を行って、評価結果も導出するものとしてもよい。なお、定数αは正数であり、定数βは実数である。また、圧損指数Pe>0の範囲において圧力損失Ps>0である。また、定数α,定数βは、圧力損失Psと実際の多孔質体の圧力損失とがより精度良く一致するよう、例えば実験により予め求めることができる。
【実施例】
【0088】
以下には、解析処理プログラム及び微構造解析装置を実際に作成した例を実施例として説明する。
【0089】
[実施例1]
実施例1として、上述した実施形態の機能を有する解析処理プログラムを作成した。そして、CPU,ROM,RAMを備えたコントローラーとHDDとを有するコンピューターのHDDにこのプログラムを記憶して、実施例1の微構造解析装置とした。
【0090】
[気孔径の集計結果の出力]
まず、SiC粉末及び金属Si粉末を80:20の質量割合で混合し、これに造孔剤として澱粉、発泡樹脂を加え、さらにメチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、界面活性剤及び水を添加して、可塑性の坏土を作製した。この坏土を図2,3に示した形状に押出成形し、マイクロ波及び熱風で乾燥して成形体を得た。この成形体を、大気雰囲気中約400℃で脱脂し、その後、Ar不活性雰囲気で約1450℃で焼成して、多孔質隔壁44としての多孔質体1を得た。また、多孔質体1をCTスキャンして得られた画素データのうちX方向が排ガス通過方向の厚さと同じ値である300μm(=1.2μm×250画素),Y方向が480μm(=1.2μm×400画素),Z方向が480μm(=1.2μm×400画素)のデータを1つ抜き出して上述した多孔質体データ60としてHDDに記憶し、この多孔質体データ60について上述した解析処理ルーチンを実行した。そして、解析結果データとして、上述した多孔質体テーブル、仮想曲面体テーブル,各仮想曲面体の等価直径d,体積Vの値を含む解析結果データを得た。図14は、この解析結果データに基づく多孔質体1の気孔径(等価直径d)の集計結果を示すグラフである。図14は、横軸を等価直径dとし、縦軸を空間画素の体積に占める体積割合[cc/cc](=(各等価直径dに対応する仮想曲面体の体積Vの和)/(全ての空間画素の体積の和))として示したlog微分細孔容積分布である。微構造解析装置では配置した仮想曲面体の等価直径dを導出しており、この値を用いることで、図示するように多孔質体における等価直径dの分布として、多孔質体中の気孔径の分布を解析できることがわかる。
【0091】
[等価直径dによる評価]
上述した多孔質体1と同様の材質・製法により多孔質体1と比べて気孔径が大きい傾向にある多孔質体2を作成した。そして、多孔質体2をCTスキャンして得られた画素データのうち多孔質体1と同様にX方向が300μm,Y方向が480μm,Z方向が480μmのデータを1つ抜き出して上述した多孔質体データ60としてHDDに記憶し、この多孔質体2の多孔質体データ60について上述した解析処理ルーチンを実行した。そして、解析結果データとして、上述した多孔質体テーブル、仮想曲面体テーブル,各仮想曲面体の等価直径d,体積Vの値を含む解析結果データを得た。また、多孔質体2について、触媒の塗布を行い、塗布後の多孔質体2について同様に多孔質体データ60を作成して上述した解析処理ルーチンを行った。図15は、触媒塗布前後の解析結果データに基づく多孔質体2の気孔径(仮想曲面体の等価直径d)の集計結果を示すグラフである。図15の縦軸及び横軸は、図14と同様である。図15では、等価直径dが10μmを超える仮想曲面体が空間画素の体積に占める体積割合は、触媒塗布前後で減少している。一方、等価直径dが10μm以下の仮想曲面体が空間画素の体積に占める体積割合は、触媒塗布前後で変化がほとんど見られない。これは、等価直径dが10μm以下の仮想曲面体が配置されている部分では触媒が塗布されず、触媒塗布前後で体積があまり変化しなかったことが原因と考えられる。このことから、等価直径dが10μm以下の仮想曲面体の体積割合が小さいことが好ましいと考えられる。例えば、等価直径が10μm以下の仮想曲面体の体積割合が25%以下であることが好ましい。
【0092】
なお、触媒の塗布は以下のように行った。まず、所定の質量比でアルミナ:白金:セリア系材料を混合し、溶媒を水とした触媒のスラリーを調製した。次に、ハニカムフィルタの出口端面(排ガスが流出する側)を所定の高さまで浸漬させ、入口端面(排ガスが流入する側)より、所定の吸引圧力と吸引流量に調整しながら所定時間にわたって吸引し、隔壁に触媒を担持し、120℃,2時間で乾燥させた後、550℃,1時間で焼付けを行った。ハニカムフィルタの単位体積当たりの触媒量は、30g/Lとなるようにした。
【0093】
[空間均一性指数γによる捕集性能の評価]
上述した多孔質体1と同様の材質・製法により種々の多孔質体3〜8を作成し、多孔質体3〜8のそれぞれについて、CTスキャンして得られた画素データのうち多孔質体1と同様にX方向が300μm,Y方向が480μm,Z方向が480μmのデータを1つ抜き出して上述した多孔質体データ60としてHDDに記憶し、この多孔質体3〜8の多孔質体データ60についてそれぞれ上述した解析処理ルーチンを実行した。そして、解析結果データとして、空間均一性指数γを含む解析結果データを得た。また、多孔質体3〜8について実際に粒子状物質を含む流体を通過させ、通過後の流体における粒子状物質の残数を粒子の漏れ個数として測定し、通過距離1kmあたりの漏れ個数に換算した漏れ個数[個/km]を、捕集性能を示す値として得た。図16は、多孔質体3〜8について、微構造解析装置により得られた空間均一性指数γと実際に測定した粒子の漏れ個数との関係を示すグラフである。図示するように、空間均一性指数γが大きいほど粒子の漏れ個数が小さい(捕集性能が高い)傾向にあることがわかる。また、図にプロットした点に基づく近似曲線を用いることで、空間均一性指数γから粒子の漏れ個数を予測することができると考えられる。例えば、近似曲線から、空間均一性指数γが0.6以上であれば、自動車における排ガスの制限値(Euro6)である粒子の漏れ個数が6.0×1011以下という条件を満たすことがわかるため、空間均一性指数γが0.6以上か否かにより、捕集性能の良否を判定可能と考えられる。なお、触媒塗布により空間均一性指数γが変化する場合があるが、触媒塗布後の空間均一性指数γは値0.5以上であることが好ましい。
【0094】
[圧力損失Pによる評価]
上述した多孔質体1と同様の材質・製法により種々の多孔質体9〜12を作成し、多孔質体9〜12のそれぞれについて、CTスキャンして得られた画素データのうち多孔質体1と同様にX方向が300μm,Y方向が480μm,Z方向が480μmのデータを1つ抜き出して上述した多孔質体データ60としてHDDに記憶し、この多孔質体9〜12の多孔質体データ60についてそれぞれ上述した解析処理ルーチンを実行した。そして、解析結果データとして、圧力損失Pの平均値を含むデータを得た。また、多孔質体9〜12のそれぞれについて、比較のために上述した式(3)の代わりにErgun式を用いた点以外は実施例1の微構造解析装置と同様の方法により圧力損失Pの平均値を導出した。また、多孔質体9〜12の圧力損失を格子ボルツマン法による流体解析結果に基づく周知の方法により導出した(以下、この圧力損失を「格子ボルツマン法による圧力損失」と表記する)。図17は、式(3)で導出した圧力損失Pの平均値と格子ボルツマン法による圧力損失との関係を示すグラフ、図18は、Ergun式で導出した圧力損失Pの平均値と格子ボルツマン法による圧力損失との関係を示すグラフである。図17図18から、式(3)で導出した圧力損失Pの平均値の方が、Ergun式で導出した圧力損失Pの平均値と比べて、格子ボルツマン法による圧力損失との相関が高いことがわかる。また、圧力損失Pの平均値が高いほど、Ergun式で導出した圧力損失Pの平均値と格子ボルツマン法による圧力損失との乖離は大きくなる傾向が見られるが、式(3)で導出した圧力損失Pの平均値についてはそのような傾向は見られず、圧力損失Pの平均値の大小によらず格子ボルツマン法による圧力損失に近い値を示している。このことから、式(3)で導出した圧力損失Pの平均値に基づいて、実際の圧力損失をより精度良く予測したり、圧力損失をより精度良く評価することができると考えられる。また、周知の方法で求めた格子ボルツマン法による圧力損失では、圧力損失を導出することはできるものの、多孔質体のどのような微構造の特徴が圧力損失の増減に影響しているかまでは解析できなかった。これに対し、今回の結果では、式(3)による圧力損失が格子ボルツマン法による圧力損失との相関が高かったことから、格子ボルツマン法による圧力損失の増減が式(3)のパラメータに影響されることがわかり、ひいてはどのパラメータをどのように調整すれば圧力損失を小さくできるかも式(3)から理解できる。これにより、所望の圧力損失の多孔質体を製造するための指標として、式(3)のパラメータを活用できることがわかった。
【0095】
[面内均一性指数γxによる圧力損失の評価]
上述した多孔質体1と同様の材質・製法により種々の多孔質体13,14を作成し、多孔質体13,14のそれぞれについて、CTスキャンして得られた画素データのうち多孔質体1と同様にX方向が300μm,Y方向が480μm,Z方向が480μmのデータを1つ抜き出して上述した多孔質体データ60としてHDDに記憶し、この多孔質体13,14の多孔質体データ60についてそれぞれ上述した解析処理ルーチンを実行した。そして、解析結果データとして、面内均一性指数γxの平均値を含むデータを得た。また、多孔質体13,14のそれぞれについて、上記と同じ多孔質体データを用いて、比較のために上述した式(3)の代わりにErgun式を用いた点以外は実施例1の微構造解析装置と同様の方法により圧力損失Pの平均値を導出した。その結果、Ergun式を用いた場合の圧力損失Pの平均値は多孔質体13,14においてほぼ同じ値であった。また、多孔質体13,14の実際の圧力損失を特開2005−114612の実施例に記載の方法により測定した。図19は、多孔質体13,14における面内均一性指数γxの平均値と実際の圧力損失とを示すグラフである。図示するように、Ergun式を用いた圧力損失Pの平均値が同じ値であったにも関わらず、実際の圧力損失には多孔質体13,14で差が生じていることがわかる。また、面内均一性指数γxが大きい多孔質体14の方が実際の圧力損失は小さい値となっており、面内均一性指数γxの値が大きいほど圧力損失特性が良好な傾向にあることがわかる。また、多孔質体13,14の実際の圧力損失の値から、面内均一性指数γxが0.6以上であると多孔質体の圧力損失特性が良好となると考えられる。
【0096】
[通過流速Tによる評価]
上述した多孔質体1と同様の材質・製法により種々の多孔質体15,16を作成し、多孔質体15,16のそれぞれについて、CTスキャンして得られた画素データのうち多孔質体1と同様にX方向が300μm,Y方向が480μm,Z方向が480μmのデータを1つ抜き出して上述した多孔質体データ60としてHDDに記憶し、この多孔質体15,16の多孔質体データ60についてそれぞれ上述した解析処理ルーチンを実行した。そして、解析結果データとして、各仮想曲面体の体積Vと流速比Tf(=T/Tin)とを含むデータを得た。また、多孔質体15,16の実際の圧力損失を上述した特開2005−114612の実施例に記載の方法により測定した。図20は、多孔質体15,16における仮想曲面体を流速比Tf(=T/Tin)により分類した様子を示すグラフである。図21は、多孔質体15,16における実際の圧力損失を示すグラフである。なお、図20は流速比Tfにより各仮想曲面体を分類し、同じ分類の仮想曲面体について体積Vの合計値を導出して、全仮想曲面体の体積Vの合計値に対する分類毎の仮想曲面体の体積Vの合計値の割合を求め、この割合を縦軸として示している。図20図21から、高流速曲面体の体積割合が小さい多孔質体16の方が、実際の圧力損失が小さくなっており、圧力損失特性が良好な傾向にあることがわかる。また、多孔質体16では、低流速曲面体の体積割合が20%以下且つ高流速曲面体の体積割合が10%以下となっているのに対し、多孔質体15では、低流速曲面体の体積割合は20%以下であるものの高流速曲面体の体積割合が10%超過となっている。このことから、高流速曲面体の体積割合が10%以下であると多孔質体の性能が好ましくなると考えられる。また、低流速曲面体の体積割合が20%以下且つ高流速曲面体の体積割合が10%以下であることがより好ましいと考えられる。
【0097】
[等価直径dによる分類結果]
上述した多孔質体15,16に対して解析処理ルーチンを実行して得られた解析結果データにより、多孔質体15,16の各仮想曲面体の等価直径d,体積Vの値やそれによる仮想曲面体の分類結果のデータを得た。図22は、多孔質体15,16の解析データの各仮想曲面体を、仮想曲面体の等価直径dにより分類した様子を示すグラフである。なお、図22は等価直径dにより各仮想曲面体を分類し、同じ分類の仮想曲面体について体積Vの合計値を導出して、全仮想曲面体の体積Vの合計値に対する分類毎の仮想曲面体の体積Vの合計値の割合を求め、この割合を縦軸として示している。図示するように、多孔質体15,16は、中径曲面体(10μm≦等価直径d≦25μmの仮想曲面体)の体積割合がいずれも60%以上となっていた。また、中径曲面体の体積割合が大きい多孔質体16の方が、圧力損失が小さくなっており(図21参照)、多孔質体の性能が好ましい傾向にあった。小径曲面体(等価直径d<10μmの仮想曲面体)の体積割合は、多孔質体15,16のいずれも25%以下となっていた。なお、他の分類方法として、30μm≦等価直径dの仮想曲面体を大径曲面体と分類した場合、図22からわかるように大径曲面体の体積割合は多孔質体15では10%を超えており、多孔質体16では10%を下回っていた。このことと図21の実際の圧力損失の値とから、30μm≦等価直径dの仮想曲面体の体積割合が10%以下であることにより多孔質体の特性がより良好となっているとも考えられる。
【0098】
[実施例2]
仮想曲面体が互いに重なることを許容する点、圧力損失Pに代えて圧損指数Peを導出する点、以外は、実施例1と同様の機能を有する解析処理プログラムを作成した。そして、CPU,ROM,RAMを備えたコントローラーとHDDとを有するコンピューターのHDDにこのプログラムを記憶して、実施例2の微構造解析装置とした。
【0099】
[圧損指数Peによる評価]
上述した多孔質体1から材質を適宜変更し、多孔質体1と同様の製法により多孔質体17〜21を作製した。そして、多孔質体17〜21をCTスキャンして得られた画素データのうち多孔質体1と同様にX方向が300μm,Y方向が480μm,Z方向が480μmのデータを1つ抜き出して上述した多孔質体データ60としてHDDに記憶し、この多孔質体17〜21の多孔質体データ60について解析処理ルーチンを実行した。そして、解析結果データとして、圧損指数Peを含む解析結果データを得た。なお、圧損指数Peを導出するにあたり、図11の経路長導出処理のステップS660における所定数(導出する経路長Lfの個数)は、値1000とした。また、多孔質体17〜21の実際の圧力損失(単位厚さあたりの圧力損失[Pa/mm])を特開2005−114612の実施例に記載の方法により測定した。図23は、多孔質体17〜21の圧損指数Peと実際の圧力損失との関係を示すグラフである。なお、図中の曲線は、多孔質体17〜21の圧損指数Peと実際の圧力損失との関係を示す点をプロットし、この5つの点から導出した近似曲線である。プロットした点及び近似曲線から、多孔質体の実際の圧力損失は、原点を通る圧損指数Peの二次関数として表すことができることがわかった。すなわち、多孔質体17〜21の圧損指数Peを用いて圧力損失Ps=定数α×Pe2+定数β×Peとすると、圧力損失Psと実際の圧力損失とがほぼ一致することがわかった。なお、図23の近似曲線(実際の圧力損失=定数α×Pe2+定数β×Pe)とプロットした5つの点とから求めた決定係数R2は値0.999であった。以上のことから、圧損指数Peの導出を行うことで、多孔質体の実際の圧力損失を精度よく予測したり評価したりすることができることがわかった。また、圧力損失Psを、Ps=定数α×Pe2+定数β×Peにより導出することで、実際の圧力損失とほぼ同じ値を圧力損失Psとして導出できることがわかった。さらに、多孔質体17〜21は互いに材質が異なることから、多孔質体の材質に関わらず圧損指数Peを用いた圧力損失の予測や評価が可能であることがわかった。
【0100】
本出願は、2012年3月30日に出願された日本国特許出願第2012−082540号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、自動車用、建設機械用及び産業用の定置エンジン並びに燃焼機器等から排出される排ガスを浄化するためのフィルターとして利用される多孔質体の製造産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0102】
20 ユーザーパソコン(PC)、21 コントローラー、22 CPU、23 ROM、24 RAM、25 HDD、25a 解析処理プログラム、25b 仮想曲面体配置部、25c 流体解析部、25d 面内均一性指数評価部、25e 空間均一性指数、25f 圧力損失評価部、25g 通過流速評価部、25h 等価直径評価部、25i 解析結果出力部、26 ディスプレイ、27 入力装置、30 ハニカムフィルタ、32 外周保護部、34 セル、36 入口開放セル、36a 入口、36b 出口、38 出口封止材、40 出口開放セル、40a 入口、40b 出口、42 入口封止材、44 多孔質隔壁、50 領域、60 多孔質体データ、61 流入面、62 流出面、63 XY平面図、64 拡大図、71 多孔質体テーブル、72 流入流出テーブル、80 多孔質体データ、81 多孔質体テーブル、82 流入流出テーブル、83 仮想曲面体テーブル、85 仮想壁面。
図2
図3
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図6
図7
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図20
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【国際調査報告】