特表-13146909IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 再表WO2013146909-膜モジュール及びその製造方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2013年10月3日
【発行日】2015年12月14日
(54)【発明の名称】膜モジュール及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/00 20060101AFI20151117BHJP
   B01D 69/08 20060101ALI20151117BHJP
   B01D 63/02 20060101ALI20151117BHJP
【FI】
   B01D63/00 500
   B01D69/08
   B01D63/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
【出願番号】特願2014-507968(P2014-507968)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2013年3月27日
(31)【優先権主張番号】特願2012-81600(P2012-81600)
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】303046314
【氏名又は名称】旭化成ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(72)【発明者】
【氏名】志岐 智
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 賢三
(72)【発明者】
【氏名】山田 輝久
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006GA07
4D006HA02
4D006HA19
4D006JA13A
4D006JA13C
4D006JA14A
4D006JA18A
4D006JA23A
4D006JA25A
4D006JB06
4D006LA06
4D006MA01
4D006MB15
4D006MC22
4D006MC23
4D006MC29
4D006MC30
4D006MC62
4D006MC63
4D006PA01
4D006PB02
4D006PC02
(57)【要約】
本発明に係る膜モジュールは、筒状ケースと、筒状ケース内において、樹脂によって固定され且つ筒状ケースの少なくとも一方の端部からろ過水を取り出し可能な状態で収納されている膜とを備え、上記樹脂は熱水を用いた溶出試験において単位表面積、単位時間当たりの塩化物イオンの溶出速度が10μg/(m・hr)未満である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状ケースと、
前記筒状ケース内において、樹脂によって固定され且つ前記筒状ケースの少なくとも一方の端部からろ過水を取り出し可能な状態で収納されている膜と、
を備え、
前記樹脂は、熱水を用いた溶出試験において単位表面積、単位時間当たりの塩化物イオンの溶出速度が10μg/(m・hr)未満である、膜モジュール。
【請求項2】
前記樹脂は、90℃における引張り弾性率が10MPa以上600MPa未満である、請求項1に記載の膜モジュール。
【請求項3】
前記樹脂は、熱水を用いた溶出試験において単位表面積、単位時間当たりのTOC成分の溶出速度が200μg/(m・hr)未満である、請求項1又は2に記載の膜モジュール。
【請求項4】
前記膜は中空糸膜である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の膜モジュール。
【請求項5】
前記樹脂は、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型及びフェノールノボラック型のいずれかのエポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の膜モジュール。
【請求項6】
前記樹脂は、水溶性成分の低減処理が施されたエポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の膜モジュール。
【請求項7】
80℃の熱純水を単位膜面積、単位時間当たりのろ過速度が294L/(m・hr)でろ過した際にろ過水中に含まれる塩化物イオン濃度の増分が1ng/L以下である膜モジュール。
【請求項8】
筒状ケースと、前記筒状ケース内において樹脂によって固定され且つ前記筒状ケースの少なくとも一方の端部からろ過水が取り出し可能な状態で収納されている膜とを備えた膜モジュールの製造方法であって、
前記膜を固定する前記樹脂として、熱水を用いた溶出試験において単位表面積、単位時間当たりの塩化物イオンの溶出速度が10μg/(m・hr)未満のものを使用する、膜モジュールの製造方法。
【請求項9】
前記膜を固定する前記樹脂として、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型及びフェノールノボラック型のいずれかのエポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を使用し、当該熱硬化性樹脂組成物を硬化させる工程を備える、請求項8に記載の膜モジュールの製造方法。
【請求項10】
前記エポキシ樹脂を使用するに先立って、当該エポキシ樹脂に対して水溶性成分の低減処理を施す工程を更に備える、請求項9に記載の膜モジュールの製造方法。
【請求項11】
前記水溶性成分の低減処理は、
前記エポキシ樹脂を溶媒によって希釈し、エポキシ樹脂希釈液を調製する工程と、
当該エポキシ樹脂希釈液に、金属アルコキシドを含有する溶液を添加した後、水を添加して前記エポキシ樹脂希釈液を有機相及び水相に相分離させる工程と、
前記水相を除去した後、有機相から溶媒を除去する工程と、
を含む、請求項10に記載の膜モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過に使用する際に膜モジュールからの溶出が少ない、特に溶出基準の厳しい用途で用いるのに適した膜モジュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の洗浄などに用いられる超純水の製造工程では、ユースポイント直前の微粒子除去に限外ろ過膜モジュールが用いられている。超純水に対しては、微粒子はもちろん、溶解性の無機物や有機物のレベルも低くすることが求められる。そのため超純水製造工程で用いられる膜モジュールでは、膜モジュールから超純水中への無機物、有機物の溶出を低減する必要がある。
【0003】
膜モジュールからの溶出源としては、接液する面積が最も大きい膜からの溶出が最も問題となるため、これまでは主として膜からの溶出を低減する検討がなされてきた。特許文献1には、超純水用に用いられるフィルターからの溶出を抑えるために、メタロセン触媒で重合した原料を用いることが記載されている。特許文献2には、無機物や有機物を溶出する添加物を含まないポリオレフィンから膜を作製することが記載されている。これらはいずれも膜からの溶出を低減する技術である。また、特許文献3には膜モジュールを使用するにあたり、事前に洗浄することによって溶出を低減する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/84777号
【特許文献2】特開2010−234344号公報
【特許文献3】特許第4296469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年の半導体の集積度向上により、従来は問題とされなかった低濃度の塩化物イオンの溶出による絶縁不良なども問題視されるようになり、1桁ng/Lレベルへの低減が要求されている。本発明者らは、塩化物イオンの溶出低減検討を重ねた結果、膜モジュールからの塩化物イオンの溶出にもっとも影響しているのは膜ではなく、膜モジュールのポッティングに用いられるエポキシ樹脂であることを見出した。膜モジュールのポッティング樹脂層からの初期の溶出については、特許文献3にあるような洗浄によって、ある程度は低減することは可能である。しかし、ポッティング樹脂層は通常、10mm以上の厚みがあるため、ポッティング樹脂層からの溶出成分は簡単には洗い切れず、ある一定量の溶出が長期間継続してしまうことが判明した。このような課題に対し、本発明者らはポッティング樹脂層の塩化物イオンの溶出性に着目し、低塩化物イオン溶出性の樹脂を用いることで、膜モジュールから塩化物イオンの溶出を低減できることを見出し本発明に至った。
【0006】
すなわち、本発明は、従来の膜モジュールでは達成できなかった低い塩化物イオン溶出性を実現し得る膜モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来、膜モジュールからの溶出は流体との接触面積が最も大きい、膜からの溶出が問題であった。本発明者らは、膜以外の構成材料からの溶出についても検討を行い、膜のポッティングに用いられる樹脂からの溶出を低減することで、膜モジュールからの溶出を大幅に低減できることを見出し、以下の発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、筒状ケースと、筒状ケース内において、樹脂によって固定され且つ筒状ケースの少なくとも一方の端部からろ過水を取り出し可能な状態で収納されている膜とを備え、上記樹脂は熱水を用いた溶出試験において単位表面積、単位時間当たりの塩化物イオンの溶出速度が10μg/(m・hr)未満である膜モジュールを提供する。このような樹脂を用いることで非常に塩化物イオンの溶出が少ない膜モジュールが得られる。かかる膜モジュールは超純水用途に好適である。
【0009】
本発明では、膜を固定する際に用いる樹脂の90℃における引張り弾性率が10MPa以上600MPa未満であることが好ましい。このような樹脂を用いることで特に塩化物イオンの溶出が問題とされる熱水での使用も可能となる。更に、上記樹脂は、熱水を用いた溶出試験において単位表面積、単位時間当たりのTOC成分(Total Organic Carbon)の溶出速度が200μg/(m・hr)未満であることが好ましい。超純水の膜モジュールでは、塩化物イオンの溶出の低減に加え、有機物の溶出を低減させることも重要である。
【0010】
本発明では、モジュール内に収納されている膜は中空糸膜であることが好ましい。中空糸膜を用いることで、モジュール内の膜面積を大きくすることが可能となり、同じ阻止孔径を持つ膜であっても単位時間当たりの超純水の生産量を大きくすることが可能となる。
【0011】
本発明では、膜の固定に用いる樹脂は、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型及びフェノールノボラック型のいずれかのエポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなることが好ましい。このようなエポキシ樹脂を用いることで、溶出性の低い膜モジュールを製造することができる。同様の観点から、上記樹脂は水溶性成分の低減処理が施されたエポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物であってもよい。
【0012】
本発明に係る膜モジュールによれば、80℃の熱純水を単位膜面積、単位時間当たりのろ過速度が294L/(m・hr)でろ過した際にろ過水中に含まれる塩化物イオン濃度の増分が1ng/L以下とすることができる。当該膜モジュールを使用することにより、半導体製造における超純水の課題を解決できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、膜モジュールからの塩化物イオンの溶出を大幅に低減することができる。また、本発明の膜モジュールを用いることで、水の純度が向上し、特に超純水を使用して生産される半導体の製品収率向上につなげることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る膜モジュールの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態に係る膜モジュールは、半導体製造工程などの超純水が使用される分野において、有機物やイオン成分が除去された一次純水から、更に微粒子成分を除去し、超純水を作製するのに適したものである。本願における超純水とは、水中のイオン分、有機物、微粒子等の不純物が極力取り除かれた水であり、少なくとも25℃における比抵抗(又は電気抵抗率)が18MΩ・cm以上を満たすものを意味する。
【0016】
(膜モジュールの構造)
本実施形態に係る膜モジュールは、モジュールケース(筒状ケース)内に膜が収納されている。収納状態としては、膜を固定している樹脂によって同時にモジュールケースに固定されている構造(一体型)であっても、膜が樹脂やその他の材料と共に固定された膜ユニットを、様々なシール方法を用いてモジュールケースへ固定する構造(カートリッジ型)であってもかまわない。また、収納された膜からのろ過水の取り出し方法については、ケースの一方の端部から取り出しても、両方の端部から取り出してもよいが、一方の端部からの取り出しの場合は、モジュール内部に滞留が発生し易く、使用前のモジュールの洗浄性が悪くなることがあるため、両方の端部から取り出す構造であることが好ましい。
【0017】
(ポッティング樹脂)
本実施形態に係る膜モジュールは、膜の固定に使用する樹脂が、熱水を用いた溶出試験において単位表面積、単位時間当たりの塩化物イオンの溶出速度が10μg/(m・hr)未満であることを特徴とする。塩化物イオンの溶出速度が10μg/(m・hr)以上である場合、超純水への溶出が大きく、最先端の半導体製造に用いることができない。塩化物イオンの溶出速度は小さいほうがよく、0.05μg/(m・hr)以上8μg/(m・hr)未満が好ましく、0.4μg/(m・hr)以上5μg/(m・hr)未満がより好ましい。
【0018】
上記樹脂は、90℃における引張り弾性率が10MPa以上600MPa未満であることが好ましい。このような樹脂を用いることで塩化物イオンの溶出が特に問題とされる熱水での使用も可能となる。引張り弾性率が低すぎる場合はポッティング部が変形してしまい、ケースとの界面で剥離が発生したり、ポッティング部の変形に膜が追随できず破損してしまうことがある。一方、引張り弾性率が高すぎる場合は、ポッティング部と膜の界面で破損が発生しやすい。したがって、欠陥が発生しにくく膜モジュールの長期使用を可能とする観点から、弾性率は50MPa以上550MPa未満が好ましく、100MPa以上500MPa以下がより好ましい。
【0019】
更に、上記樹脂は、80℃の熱水を用いた溶出試験において単位表面積、単位時間当たりのTOC成分の溶出速度が200μg/(m・hr)未満であることが好ましい。超純水の膜モジュールでは、塩化物イオンの溶出の低減に加え、有機物の溶出を低減させることも重要である。ポッティング樹脂の上記試験によるTOC成分の溶出速度は、好ましくは100μg/(m・hr)未満であり、より好ましくは50μg/(m・hr)未満であり、下限値はコストの観点から10μg/(m・hr)程度である。
【0020】
ポッティング樹脂は、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型及びフェノールノボラック型のいずれかのエポキシ樹脂を主成分とする熱硬化性樹脂組成物の硬化物であることが好ましい。このようなフェノール基を骨格に含むエポキシ樹脂を用いることで、溶出性の低い膜モジュールを製造することができる。特に耐熱性が要求される場合には、硬化時に架橋構造をとり易いフェノールノボラック型のエポキシ樹脂を用いればよい。塩化物イオンの溶出を抑制する観点から、使用するエポキシ樹脂の全塩素量は、好ましくは500質量ppm以下であり、より好ましくは300質量ppm以下であり、更に好ましくは150質量ppm以下である。エポキシ樹脂の全塩素量の下限値は、コストの観点から30質量ppm程度である。また、エポキシ樹脂の硬化に硬化剤を用いる場合、その種類は特に限定されないが、超純水用途においては、溶出性が低いことが要求されるため、ポリアミドアミン型の硬化剤を用いることが好ましい。また、ポッティング樹脂として、ウレタン樹脂を用いることもできる。
【0021】
使用するエポキシ樹脂の水溶性成分(塩化物イオン)の含有率が高い場合、その使用に先立って、当該樹脂に対して水溶性成分の低減処理を施し、その後、使用してもよい。例えば、エポキシ樹脂に含まれる塩化物イオンを低減するには、カリウムtert−ブトキシ(t−BuOK)などの金属アルコキシドを使用してエポキシ樹脂を精製する方法を採用できる。
【0022】
(膜)
本実施形態においてはモジュール内に収納されている膜は中空糸膜であることが好ましい。中空糸膜を用いることで、モジュール内の膜面積を大きくすることが可能となり、同じ阻止孔径を持つ膜であっても単位時間当たりの超純水の生産量を大きくすることが可能となる。また、中空糸膜を外圧濾過方式で用いることで、濾過水が流れる膜の二次側をほとんど開放することなく膜モジュールの製造が可能となるため、微粒子や微生物の混入という点からも中空糸膜であることが好ましい。
【0023】
膜の素材としては、耐熱性があり、素材そのものからの有機物、無機物の溶出が少ないものであれば特に限定されない。高温での低溶出性に優れる素材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニルスルホンなどのポリスルホン系樹脂などが挙げられる。特に超純水用途で微粒子の除去性能に優れた膜とするためには、膜への加工が容易なポリスルホン系樹脂を用いることが好ましい。
【0024】
(膜モジュールの製造方法)
本実施形態に係る膜モジュールは、以下のようにして作製することができる。まず、膜を固定する樹脂として、熱水を用いた溶出試験において単位表面積、単位時間当たりの塩化物イオンの溶出速度が10μg/(m・hr)未満のものを使用する。
【0025】
本実施形態に係る膜モジュールの製造方法において、膜を固定する樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を使用する場合、当該熱硬化性樹脂組成物を硬化させる工程を備える。
【0026】
また、エポキシ樹脂を使用するに先立って、当該エポキシ樹脂に対して水溶性成分の低減処理を施す工程を更に備えることができる。水溶性成分の低減処理は、エポキシ樹脂を溶媒によって希釈し、エポキシ樹脂希釈液を調製する工程と、当該エポキシ樹脂希釈液に、金属アルコキシドを含有する溶液を添加した後、水を添加してエポキシ樹脂希釈液を有機相及び水相に相分離させる工程と、水相を除去した後、有機相から溶媒を除去する工程と、を含むことが好ましい。これにより、塩化物イオン等の水溶性成分が水相に溶解するため、有機相に溶解するエポキシ樹脂中の全塩素量及び水溶性成分の量を低減することができる。
【0027】
(膜モジュールからの溶出性)
本実施形態によれば、80℃の熱純水を単位膜面積、単位時間当たりのろ過速度が294L/(m・hr)でろ過した際にろ過水中に含まれる塩化物イオン濃度の増分を1ng/L以下(1ppt以下)とすることができ、従来と比較して超純水の水質を改善できる。このような膜モジュールとするには、モジュールを構成する部材として、耐熱性に優れ、溶出の少ない樹脂をハウジングや膜の材質とすればよく、ポリスルホン系樹脂やフッ素系樹脂を用いればよい。膜の固定に用いる樹脂としては、熱水を用いた溶出試験において単位表面積、単位時間当たりの塩化物イオンの溶出速度が10μg/(m・hr)未満である樹脂を用いればよい。
【0028】
(中空糸膜モジュール)
以下、図1を参照しながら、本発明に係る超純水用膜モジュールの一例(中空糸膜モジュール)を説明する。図1に示す中空糸膜モジュール10は、多数本の中空糸膜1aからなる糸束1と、糸束1を収容する筒状ケース2と、糸束1の両端部に設けられたエポキシ樹脂の硬化体からなる一対のポッティング部3a,3bとを備える。モジュール10は、筒状ケース2の両端に配管接続キャップ6a,6bをナット7a,7bによってそれぞれ装着できるようになっている。ナット7a,7bを締めることで、キャップ6a,6bの溝に配置されたOリング8a,8bによって当該箇所がシールされる。
【0029】
糸束1は、多数本の中空糸膜1aによって形成される。中空糸膜1aの種類は、モジュール10の用途に応じて適宜選択することができる。中空糸膜1aの具体例として、限外ろ過膜及び精密ろ過膜を例示できる。例えば、モジュール10を超純水用ファイナルフィルターの用途に用いるのであれば、中空糸膜1aは平均孔径0.05μm以下(より好ましくは0.02μm以下)の限外ろ過膜であることが好ましい。
【0030】
筒状ケース2は、両端に開口を有する円筒状の部材からなり、ポッティング部3a,3bの界面付近に設けられたノズル2a、2bを有する。筒状ケース2の大きさは、外径が140〜200mmであり、かつ、長さが700〜1400mmであることが好ましく、外径160〜180mmであり、かつ、長さが800〜1100mmであることが特に好ましい。この範囲の大きさの筒状ケース2を使用したときに高いモジュール透水量及び最も高いモジュール透水性能を実現することができる。これに加え、この大きさならモジュール10を1人で持つことも可能であるのでハンドリング性が格段に良いという利点がある。なお、ここでいう筒状ケース2の「外径」とは、モジュール中央のろ過領域における円筒の外径を意味する。筒状ケース2の「長さ」とは、中空糸膜1aの両端面間の距離を意味する。
【0031】
ポッティング部3a,3bは、筒状ケース2内の糸束1の両端部において、中空糸膜1aの外面同士及び当該外面と筒状ケース2の内面との隙間を封止する樹脂からなるものである。ポッティング部3a,3bは熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなることが好ましい。ポッティング部3a,3bで糸束1の両端部を固定及び封止することにより、糸束1の両端面に中空糸膜1aの中空部が開口する。
【0032】
中空糸膜モジュール10を外圧濾過方式に用いる場合、被処理水はノズル2bに供給され、ろ過水は中空糸膜モジュール10の両端(配管接続キャップ6a,6bの開口)から取り出される。一方、中空糸膜1aを通過しなかった水はノズル2aから排出される。ここでは、一体型の中空糸膜モジュールを例示したが、上述のとおり、カートリッジ型であってもよい。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
(エポキシ樹脂中の全塩素量測定方法)
JIS K7246に従い、対象となるエポキシ樹脂をジエチレングリコールモノブチルエーテルに溶解し、1規定の水酸化カリウム−プロピレングリコール溶液を加え、20分間煮沸した後に、硝酸銀で電位差滴定を行い全塩素量を求めた。
【0035】
(塩化物イオン溶出速度)
硬化したエポキシ樹脂又はウレタン樹脂を厚さ4mmの板状に切り出し、切り出したエポキシ樹脂又はウレタン樹脂の表面積1cmに対して、1.5mlの超純水を用いて80℃の熱水中に浸漬し、プレ洗浄を実施した。浸漬スタートから24時間の洗浄液を廃棄し、その後新たに同じ量の超純水を入れ80℃での溶出試験を開始した。スタートから5日間浸漬を行い、浸漬液中の塩化物イオン濃度をイオンクロマトグラフィー法で測定した。ここで得られた塩化物イオン濃度をエポキシ樹脂の表面積、浸漬時間で割り返すことで、単位表面積、単位時間当たりのエポキシ樹脂又はウレタン樹脂からの溶出速度を求めた。
【0036】
(TOC成分溶出速度)
上記と同様にしてエポキシ樹脂又はウレタン樹脂からのTOC成分抽出を行い、浸漬液中のTOC濃度をTOC計(島津製作所製、TOC−5000A)での溶出速度を求めた。
【0037】
(引張り弾性率測定)
対象となる樹脂を用いて、JIS K6251に準拠した3号ダンベル(幅5mm、厚み1mm)を作製した。作製したダンベルを、引張り試験機(島津製作所製、AGS−5D)にセットし、サンプル雰囲気温度を温度調整チャンバー(島津製作所製、TCH−220)を用いて90℃に設定後、10分保持しサンプル温度を90℃とした。引張り試験を実施し、90℃における引張り弾性率を求めた。
【0038】
(試験例1)
精製前のエポキシ樹脂として含有全塩素量が2500質量ppmのフェノールノボラック型エポキシ樹脂(DEN431、The Dow Chemical Company製)100重量部とトルエン200重量部をフラスコに入れエポキシ樹脂を希釈した。エポキシ樹脂中の塩素に対して7.5当量のt−BuOKをNMP(N−メチル−2−ピロリドン)で10倍に希釈したものをここに添加し、40℃に保った状態で30分間反応を行った後、水100重量部を加えて反応を停止させた。ここにトルエン200重量部をさらに加え有機相を希釈した状態で、反応によって生成した塩化カリウム、t−BuOH等の水溶性成分を水相中に抽出後、水相を除去した。更に水での抽出を3回実施し、水溶性成分を除去した後に、残った有機相から蒸留によってトルエンを除去し、精製されたエポキシ樹脂を得た。エポキシ樹脂中の含有全素量は134ppmに低下していることが確認された。
【0039】
この樹脂をポリアミドアミン型硬化剤(Sunmide328、エアープロダクツジャパン製)と反応させて硬化、90℃でのキュアリング後、エポキシ樹脂板を作製し溶出試験を行った。その結果、塩化物イオンの溶出速度は1.9μg/(m・hr)、TOC溶出速度は35.5μg/(m・hr)であった。また、同様にして硬化させた樹脂を用いて90℃での引張り弾性率の測定を実施したところ、497MPaであった。これらの結果を表1にまとめた(以降の試験例及び比較試験例についても同様)。
【0040】
(試験例2)
精製前のエポキシ樹脂として含有全塩素量が2453ppmのDEN431を用い、エポキシ樹脂中の塩素に対して10当量のt−BuOKを用いたこと以外は試験例1と同様にしてエポキシ樹脂を精製した。この精製した樹脂を用い試験例1と同様にエポキシ樹脂板での溶出試験を行った。
【0041】
(試験例3)
精製前のエポキシ樹脂として含有全塩素量が1996ppmのフェノールノボラック型エポキシ樹脂(DEN438、The Dow Chemical Company製)を用いたこと以外は試験例1と同様にしてエポキシ樹脂を精製した。この精製した樹脂を用い試験例1と同様にエポキシ樹脂板での溶出試験を行った。
【0042】
(試験例4)
エポキシ樹脂として含有全塩素量が300ppmのビスフェノールF型エポキシ樹脂YL980(三菱化学株式会社製)を用い、試験例1と同様にエポキシ樹脂板での溶出試験を行った。
【0043】
(試験例5)
エポキシ樹脂として含有全塩素量が30ppmのビスフェノールA型エポキシ樹脂LX−01(ダイソー株式会社製)を用い、試験例1と同様にエポキシ樹脂板での溶出試験を行った。
【0044】
(試験例6)
樹脂としてエポキシ樹脂ではなく、ウレタン樹脂KC462及びN4273(共に日本ポリウレタン工業株式会社製)を混合し、反応硬化させてウレタン樹脂板を作製し、試験例1と同様に溶出試験を行った。
【0045】
(比較試験例1)
試験例1に用いたエポキシ樹脂DEN431を精製すること無しに用いた以外は試験例1と同様に溶出試験を行った。
【0046】
【表1】
【0047】
(実施例1)
試験例1で用いたエポキシ樹脂を用いて膜モジュールを作製した。この膜モジュールの有効ろ過面積は34m、25℃の純水を圧力100kPaでろ過した場合のろ加速度は16m/hrであった。この膜モジュールを用いて80℃の熱純水を単位膜面積、単位時間当たりのろ過速度が294L/(m・hr)、モジュール当たりでは10m/hrのろ過速度でろ過を行った。100時間経過後、膜モジュール前後でのサンプリングを行い、膜モジュールからの溶出による塩化物イオン濃度の増分を測定すると0.6ng/Lであった。
【0048】
(比較例1)
比較試験例1で用いたエポキシ樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして膜モジュールを作製し、膜モジュールからの溶出試験を行ったところ、膜モジュールからの溶出による塩化物イオン濃度の増分は8ng/Lであった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、従来の超純水用モジュールで課題であった膜モジュールからの溶出、特に塩化物イオンの溶出量を大幅に低減でき、高純度の超純水を得られる。このため、最先端の半導体製造においても溶出物の影響による絶縁不良などの製品不良の発生を抑制できる。
【符号の説明】
【0050】
1…糸束、1a…中空糸膜、2…筒状ケース、2a、2b…ノズル、3a,3b…ポッティング部(樹脂)、6a,6b…配管接続キャップ、7a,7b…ナット、8a,8b…Oリング、10…膜モジュール。
図1
【国際調査報告】