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再表2013-146974圧電/電歪膜型素子及び圧電/電歪膜型素子を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2013年10月3日
【発行日】2015年12月14日
(54)【発明の名称】圧電/電歪膜型素子及び圧電/電歪膜型素子を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/187 20060101AFI20151117BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20151117BHJP
   H01L 41/43 20130101ALI20151117BHJP
   B41J 2/16 20060101ALI20151117BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20151117BHJP
【FI】
   H01L41/187
   H01L41/09
   H01L41/43
   B41J2/16 305
   B41J2/14 613
   B41J2/16 501
   B41J2/14 305
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
【出願番号】特願2014-508000(P2014-508000)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2013年3月28日
(31)【優先権主張番号】特願2012-79467(P2012-79467)
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】小泉 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】日比野 朝彦
(72)【発明者】
【氏名】海老ヶ瀬 隆
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF65
2C057AF67
2C057AF93
2C057AG44
2C057AP14
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
圧電/電歪体膜の膜厚が薄く、圧電/電歪体膜が緻密であり、圧電/電歪体膜の耐久性及び絶縁性が良好である圧電/電歪膜型素子を提供する。圧電/電歪膜型素子は、基板、下部電極膜、圧電/電歪体膜及び上部電極膜を備える。基板及び下部電極膜は、固着される。圧電/電歪体膜の膜厚は、5μm以下である。圧電/電歪体膜は、圧電/電歪セラミックスからなる。圧電/電歪セラミックスは、チタン酸ジルコン酸鉛及びビスマス化合物を含む。粒界に相対的に近い粒内周辺部のビスマス/鉛比が粒界から相対的に遠い粒内中心部のビスマス/鉛比より大きい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆領域を有する基体と、
前記基体に固着され、前記被覆領域を被覆する第1の電極膜と、
第1の主面及び第2の主面を有し、前記第1の主面に前記第1の電極膜が形成され、前記第1の電極膜に固着され、膜厚が5μm以下であり、圧電/電歪セラミックスからなり、前記圧電/電歪セラミックスがチタン酸ジルコン酸鉛及びビスマス化合物を含み、粒界に相対的に近い粒内周辺部のビスマス/鉛比が粒界から相対的に遠い粒内中心部のビスマス/鉛比より大きい圧電/電歪体膜と、
前記第2の主面に形成される第2の電極膜と、
を備える圧電/電歪膜型素子。
【請求項2】
前記圧電/電歪セラミックスの母相がチタン酸ジルコン酸鉛及びニッケルニオブ酸ビスマスの固溶体である請求項1の圧電/電歪膜型素子。
【請求項3】
(a) 被覆領域を有する基体を準備する工程と、
(b) 第1の電極膜で前記被覆領域を被覆する工程と、
(c) チタン酸ジルコン酸鉛及びビスマス化合物を含む仮焼粉末、鉛の酸化物又は鉛の酸化物の前駆体の粉末並びにビスマスの酸化物又はビスマスの酸化物の前駆体の粉末の混合物である圧電/電歪セラミックスの原料粉末の膜状成形体を前記第1の電極膜に重ねて形成する工程と、
(d) 前記基体、前記第1の電極膜及び前記膜状成形体を共焼成し、前記膜状成形体を膜厚が5μm以下の膜状焼結体に変化させ、前記膜状焼結体により圧電/電歪体膜を形成する工程と、
(e) 前記圧電/電歪体膜に重ねて第2の電極膜を形成する工程と、
を備える圧電/電歪膜型素子を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電/電歪膜型素子及び圧電/電歪膜型素子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、チタン酸ジルコン酸鉛及び複合ペロブスカイト化合物を含む圧電/電歪セラミックス組成物を開示する。複合ペロブスカイト化合物のAサイト構成元素は、ビスマスである。特許文献1の圧電/電歪セラミックス組成物によれば、焼成温度が低下する。
【0003】
特許文献2及び3は、焼結助剤を開示する。特許文献2は、酸化鉛、炭酸ビスマス等を焼結助剤として例示する。特許文献3は、酸化ビスマスを焼結助剤として例示する。特許文献2によれば、粒界の鉛、ビスマス等が粒内の鉛、ビスマス等より多い。特許文献3によれば、酸化ビスマスが粒内に固溶する。特許文献2及び3の焼結助剤によれば、焼成温度が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−221096号公報
【特許文献2】特開平11−170547号公報
【特許文献3】特開2011−29537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクジェットプリンタのヘッドを構成する圧電/電歪膜型素子等においては、下部電極膜、圧電/電歪体膜及び上部電極膜からなる振動体が基板の表面に固着される場合が多い。このため、圧電/電歪体膜は、基板に拘束される。圧電/電歪体膜が基板に拘束される場合は、圧電/電歪体膜の焼成収縮が阻害され、焼成温度を低下させることが困難になる。この問題は、圧電/電歪体膜の膜厚が薄くなるほど顕著になる。焼成温度を低下させることが困難である場合は、圧電/電歪体膜を緻密化することが困難である。
【0006】
一方、焼成温度を低下させるために焼結助剤が添加された場合は、圧電/電歪体膜の耐久性及び絶縁性が低下する。
【0007】
すなわち、従来の技術においては、圧電/電歪体膜の膜厚が薄く、圧電/電歪体膜が緻密であり、圧電/電歪体膜の耐久性及び絶縁性が良好である圧電/電歪膜型素子を実現することが困難である。
【0008】
本発明は、この問題を解決するためになされる。本発明の目的は、圧電/電歪体膜の膜厚が薄く、圧電/電歪体膜が緻密であり、圧電/電歪体膜の耐久性及び絶縁性が良好である圧電/電歪膜型素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、圧電/電歪膜型素子に向けられる。
【0010】
圧電/電歪膜型素子は、基体、第1の電極膜、圧電/電歪体膜及び第2の電極膜を備える。圧電/電歪体膜の第1の主面に第1の電極膜が形成される。圧電/電歪体膜の第2の主面に第2の電極膜が形成される。第1の電極膜及び圧電/電歪体膜は、固着される。第1の電極膜は、基体の被覆領域を被覆する。圧電/電歪体膜の膜厚は、5μm以下である。圧電/電歪体膜は、圧電/電歪セラミックスからなる。圧電/電歪セラミックスは、チタン酸ジルコン酸鉛及びビスマス化合物を含む。粒界に相対的に近い粒内周辺部のビスマス/鉛比が粒界から相対的に遠い粒内中心部のビスマス/鉛比より大きい。
【0011】
本発明は、圧電/電歪膜型素子を製造する方法にも向けられる。
【0012】
基体が準備される。基体の被覆領域が第1の電極膜で被覆される。圧電/電歪セラミックスの原料粉末の膜状成形体が第1の電極膜に重ねて形成される。原料粉末は、チタン酸ジルコン酸鉛及びビスマス化合物を含む仮焼粉末、鉛の酸化物又は鉛の酸化物の前駆体の粉末並びにビスマスの酸化物又はビスマスの酸化物の前駆体の粉末の混合物である。基体、第1の電極膜及び膜状成形体が共焼成される。膜状成形体が膜状焼結体に変化する。膜状焼結体の膜厚は、5μm以下である。膜状焼結体により圧電/電歪体膜が形成される。圧電/電歪体膜に重ねて第2の電極膜が形成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、圧電/電歪体膜の膜厚が薄く、圧電/電歪体膜が緻密であり、圧電/電歪体膜の耐久性及び絶縁性が良好である圧電/電歪膜型素子が提供される。
【0014】
これらの及びこれら以外の本発明の目的、特徴、局面及び利点は、添付図面とともに考慮されたときに下記の本発明の詳細な説明によってより明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】圧電/電歪膜型素子の断面図である。
図2】圧電/電歪膜型素子を製造する手順を示す断面図である。
図3】圧電/電歪膜型素子を製造する手順を示す断面図である。
図4】圧電/電歪膜型素子を製造する手順を示す断面図である。
図5】圧電/電歪膜型素子を製造する手順を示す断面図である。
図6】圧電/電歪膜型素子を製造する手順を示す断面図である。
図7】実施例1の透過型電子顕微鏡写真像である。
図8】実施例1の三重点のEDXスペクトルを示す図である。
図9】実施例1の二粒子粒界のEDXスペクトルを示す図である。
図10】実施例1の粒内のEDXスペクトルを示す図である。
図11】比較例1の透過型電子顕微鏡写真像である。
図12】比較例1の二粒子粒界のEDXスペクトルを示す図である。
図13】比較例1の粒内のEDXスペクトルを示す図である。
図14】実施例1の粒界からの距離及びビスマス/鉛比の関係を示す図である。
図15】実施例1の粒界からの距離及びビスマス/鉛比の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この実施形態は、圧電/電歪膜型素子、圧電/電歪膜型素子を製造する方法等に関する。
【0017】
(圧電/電歪膜型素子の概略)
図1の模式図は、圧電/電歪膜型素子の断面図である。
【0018】
図1に示すように、圧電/電歪膜型素子1000は、基板1020及び振動体1022を備える。振動体1022は基板1020に固着される。基板1020は、流路形成板1040、キャビティ形成板1042及び振動板1044を備える。振動板1044は、屈曲振動部1060及び接合部1062を備える。振動体1022は、下部電極膜1080、圧電/電歪体膜1082及び上部電極膜1084を備える。これらの構成物以外の構成物が圧電/電歪膜型素子1000に付加されてもよい。圧電/電歪膜型素子1000は、インクジェットプリンタのヘッドを構成する。
【0019】
下部電極膜1080及び上部電極膜1084の間に電圧が印加された場合は、圧電/電歪体膜1082に電界が印加される。圧電/電歪体膜1082に電界が印加された場合は、圧電/電歪体膜1082が伸縮し、圧電/電歪体膜1082及び屈曲振動部1060が一体的に屈曲する。屈曲振動部1060が屈曲した場合は、キャビティ1100に充填されたインクが押圧され、インクが流路1102を経由して吐出される。
【0020】
(基板の構造)
基板1020においては、流路形成板1040、キャビティ形成板1042及び振動板1044が記載された順序で下側から上側へ積層される。流路形成板1040、キャビティ形成板1042及び振動板1044は、焼成により一体化され、明確な界面を有さない場合もある。
【0021】
流路形成板1040には、流路1102が形成される。キャビティ形成板1042には、キャビティ1100が形成される。キャビティ1100は、流路形成板1040及び振動板1044により基板1020の外部から隔てられ、基板1020の内部に形成された中空空間になる。キャビティ1100は、インクが充填されるインク室として機能する。流路1102の一端1120は、基板1020の下面1140に露出する。流路1102の他端1122は、キャビティ1100に接続される。基板1020の上面1142は、被覆領域1160を有する。被覆領域1160は、屈曲振動部1060の上面にある。基板1020が「板」とは呼びがたい形状を有する形状物に置き換えられてもよい。より一般的には、振動体1022は基体に固着される。
【0022】
(振動板の板厚)
振動板1044の板厚は、望ましくは1μm以上である。振動板1044の板厚がこの範囲を下回る場合は、振動板1044が損傷しやすい。振動板1044の板厚は、望ましくは30μm以下であり、さらに望ましくは15μm以下である。振動板1044の板厚がこれらの範囲を上回る場合は、振動板1044の屈曲変位量が小さくなりやすい。
【0023】
(基板の材質)
基板1020は、絶縁セラミックスからなる。
【0024】
絶縁セラミックスは、望ましくはジルコニア、アルミナ、マグネシア、ムライト、窒化アルミニウム及び窒化ケイ素からなる群より選択される1種類以上を含む。これらを含む絶縁セラミックスは、化学的に安定であり、絶縁性が良好である。絶縁セラミックスがこれらを含まないことも許容される。
【0025】
絶縁セラミックスは、さらに望ましくは安定化剤が添加されたジルコニアからなる。安定化剤が添加されたジルコニアは、機械的強度が高く、靭性が高い。安定化剤が添加されたジルコニアは、安定化剤の添加により結晶の相転移が抑制されたジルコニアである。安定化剤が添加されたジルコニアには、安定化ジルコニア及び部分安定化ジルコニアがある。
【0026】
(振動体の構造)
振動体1022においては、下部電極膜1080、圧電/電歪体膜1082及び上部電極膜1084が記載された順序で下側から上側へ積層される。
【0027】
下部電極膜1080は、圧電/電歪体膜1082の下面1180に形成される。上部電極膜1084は、圧電/電歪体膜1082の上面1182に形成される。これにより、下部電極膜1080及び上部電極膜1084の間に電圧が印加された場合に、圧電/電歪体膜1082に電界が印加される。
【0028】
(構成物の固着)
基板1020及び下部電極膜1080は、固着される。下部電極膜1080及び圧電/電歪体膜1082は、固着される。固着とは、一の構成物及び他の構成物が熱処理時の相互拡散反応により強固に接合されることを意味する。一の構成物及び他の構成物が固着される場合は、無機接着剤、有機接着剤等の接合媒体は用いられない。基板1020及び下部電極膜1080の固着並びに下部電極膜1080及び圧電/電歪体膜1082の固着は、基板1020、下部電極膜1080及び圧電/電歪体膜1082が共焼成されることに起因する。
【0029】
(下部電極膜の被覆率)
下部電極膜1080は、基板1020の被覆領域1160を被覆する。下部電極膜1080の被覆率は、望ましくは90%以上である。下部電極膜1080の被覆率がこの範囲を下回る場合は、下部電極膜1080の電気抵抗が上昇しやすくなる。
【0030】
下部電極膜1080の被覆率とは、基板1020の被覆領域1160の面積に対する、共焼成の後に下部電極膜1080に実際に被覆されている面積の比を意味する。下部電極膜1080の被覆率は、例えば下部電極膜1080の画像を画像処理することにより算出される。
【0031】
下部電極膜1080の被覆率が100%から低下するのは、基板1020、下部電極膜1080及び圧電/電歪体膜1082が共焼成されることに起因する。下部電極膜1080の被覆率が90%以上であることは、共焼成時の下部電極膜1080の被覆率の減少が10%以下であることを意味する。
【0032】
(下部電極膜及び上部電極膜の材質)
下部電極膜1080及び上部電極膜1084は、導電体からなる。導電体は、望ましくは白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、金(Au)、銀(Ag)等の金属又はこれらを主成分とする合金である。これらは、耐熱性が高く、電気抵抗が小さい。導電体は、さらに望ましくは白金又は白金を主成分とする合金である。これらは、耐熱性が特に高い。下部電極膜1080は、基板1020及び圧電/電歪体膜1082とともに共焼成される。このため、下部電極膜1080の材質は、白金又は白金を主成分とする合金であることが特に期待される。
【0033】
(下部電極膜及び上部電極膜の膜厚)
下部電極膜1080及び上部電極膜1084の膜厚は、望ましくは1μm以下である。下部電極膜1080及び上部電極膜1084の膜厚がこの範囲を上回る場合は、屈曲変位量が小さくなりやすい。下部電極膜1080及び上部電極膜1084の膜厚は、望ましくは0.1μm以上である。下部電極膜1080及び上部電極膜1084の膜厚がこの範囲を下回る場合は、下部電極膜1080の電気抵抗が上昇しやすい。
【0034】
(圧電/電歪体膜の膜厚)
圧電/電歪体膜1082の膜厚は、望ましくは5μm以下である。圧電/電歪体膜1082の膜厚がこの範囲を上回る場合は、焼成収縮により屈曲振動部1060に加わる応力が大きくなりやすい。圧電/電歪体膜1082の膜厚は、望ましくは1μm以上である。圧電/電歪体膜1082の膜厚がこの範囲を下回る場合は、圧電/電歪体膜1082が緻密化しにくい。
【0035】
(圧電/電歪体膜の材質)
圧電/電歪体膜1082は、圧電/電歪セラミックスからなる。
【0036】
圧電/電歪セラミックスは、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT;PbZrTi1−x)及びビスマス化合物を含む。ビスマス化合物は、望ましくはニッケルニオブ酸ビスマス(BNN;Bi(Ni2/3Nb1/3)O)である。BNNは、圧電/電歪セラミックスの低温焼成及び圧電定数の向上に寄与する。
【0037】
圧電/電歪セラミックスがPZT及びビスマス化合物以外の成分を含んでもよい。PZT及びビスマス化合物以外の成分には、単純酸化物、複合酸化物等がある。複合酸化物は、複合ペロブスカイト酸化物であってもよい。PZT以外の成分は、PZTに固溶する場合もあるし、PZTに固溶しない場合もある。PZTに固溶しない偏析物は、粒界に存在してもよいし、ひとつの粒子に囲まれて存在してもよい。PZT以外の成分は、焼結助剤の痕跡物である場合もある。
【0038】
圧電/電歪セラミックスの母相は、さらに望ましくはPZT及びBNNの固溶体である。圧電/電歪セラミックスは、焼結助剤であるPbO及びBiの痕跡物を含む。母相とは、圧電/電歪セラミックスの主要部を占めるグレインを構成する相を意味する。
【0039】
(圧電/電歪セラミックスの微構造)
圧電/電歪セラミックスにおいては、粒界に相対的に近い粒内周辺部のビスマス/鉛比が粒界から相対的に遠い粒内中心部のビスマス/鉛比より大きい。圧電/電歪セラミックスがこの微構造を有するように製造される場合は、焼成温度が低下するが、圧電/電歪体膜1082の耐久性及び絶縁性が良好に維持される。焼成温度の低下は、圧電/電歪体膜1082の膜厚を薄くすることを容易にし、下部電極膜1080の膜厚を薄くすることを容易にし、下部電極膜1080の被覆率を90%以上に維持することを容易にする。
【0040】
(圧電/電歪膜型素子を製造する方法)
図2から図6までの模式図は、圧電/電歪膜型素子を製造する方法を示す断面図である。
【0041】
(基板の作製)
図2に示すように、基板1020が作製される。基板1020が作製される場合は、最終的に流路形成板1040、キャビティ形成板1042及び振動板1044となる成形体が積層され焼成される。他の方法により基板1020が作製されてもよい。例えば、素材基板にエッチング、切削加工等がなされ、基板1020が作製されてもよい。
【0042】
(下部電極膜の形成)
基板1020が準備された後に、図3に示すように、下部電極膜1080が形成される。
【0043】
下部電極膜1080が形成される場合は、蒸着、スパッタ、めっき、スクリーン印刷等により下部導電体膜が基板1020の上面1142に形成される。下部導電体膜がパターニングされ、下部電極膜1080が形成される。下部導電体膜が被覆領域1160からはみ出さない場合は、下部導電体膜のパターニングが省略されてもよい。この場合は、形成された下部導電体膜がそのまま下部電極膜1080になる。マスクを用いて蒸着、スパッタ等が行われる場合、スクリーン版を用いてスクリーン印刷が行われる場合等においては下部導電体膜が被覆領域1160からはみ出さない場合がある。下部導電体膜の膜厚は、下部電極膜1080の膜厚が1μm以下となるように選択される。
【0044】
下部導電体膜は、レジスト法によりパターニングされる。例えば、下部導電体膜が形成される前に被覆領域1160以外がレジストパターンで保護され、下部導電体膜が形成された後にレジストパターン及び下部導電体膜のうちレジストパターンに重ねられた部分が除去される。又は、下部導電体膜が形成された後に被覆領域1160がレジストパターンで保護され、下部導電体膜のうちレジストパターンで保護されない部分が除去され、レジストパターンが除去される。下部導電体膜がレジスト法以外によりパターニングされてもよい。
【0045】
(膜状成形体の形成)
下部電極膜1080が形成された後に、図4に示すように、圧電/電歪セラミックスの原料粉末の膜状成形体1200が基板1020の上面1142に形成される。膜状成形体1200は、下部電極膜1080に重ねて形成される。原料粉末は、仮焼粉末及び焼結助剤の混合物である。仮焼粉末は、チタン酸ジルコン酸鉛及びビスマス化合物を含む。仮焼粉末においては、チタン酸ジルコン酸鉛及びビスマス化合物の固溶体のペロブスカイト型酸化物が主成分になるまで素原料が反応させられている。焼結助剤は、PbOの粉末及びBiの粉末である。膜状成形体1200の膜厚は、後記の膜状焼結体1220の膜厚が5μm以下になるように選択される。PbOがPbO以外の鉛の酸化物に置き換えられてもよい。例えば、PbOがPbO、Pb等に置き換えられてもよい。PbOが焼成後に鉛の酸化物になる鉛の酸化物の前駆体に置きかえられてもよい。鉛の酸化物の前駆体には、水酸化物、塩化物、炭酸塩、シュウ酸塩等がある。BiがBi以外のビスマスの酸化物に置き換えられてもよい。例えば、BiがBi等に置き換えられてもよい。Biが焼成後にビスマスの酸化物になるビスマスの酸化物の前駆体に置きかえられてもよい。ビスマスの酸化物の前駆体には、水酸化物、塩化物、炭酸塩、シュウ酸塩等がある。
【0046】
膜状成形体1200が形成される場合は、スラリーが調製される。スラリーにおいては、原料粉末が分散媒に分散させられている。スピンコート、ディッピング、吹き付け、スクリーン印刷等によりスラリーが基板1020の上面1142に塗布され、塗布膜が形成される。塗布膜が乾燥させられ、膜状成形体1200が形成される。
【0047】
(共焼成)
膜状成形体1200が形成された後に、基板1020、下部電極膜1080及び膜状成形体1200が共焼成される。共焼成により、図5に示すように、膜状成形体1200は、膜状焼結体1220に変化する。共焼成により、基板1020及び下部電極膜1080が固着し、下部電極膜1080及び膜状焼結体1220が固着する。膜状成形体1200は基板1020に拘束される。このため、膜状成形体1200の面内の収縮は阻害される。しかし、原料粉末は焼結助剤を含むので、面内の収縮が阻害される場合でも、膜状焼結体1220は十分に緻密化する。
【0048】
焼成条件は、下部電極膜1080の被覆率が90%以上に維持されるように選択される。原料粉末は焼結助剤を含むので、下部電極膜1080の被覆率を高く維持するために焼成温度が低下させられる場合でも、膜状焼結体1220は十分に緻密化する。
【0049】
共焼成中に焼結助剤のPbOが蒸発し、粒内周辺部のビスマス/鉛比が粒内中心部のビスマス/鉛比より大きい膜状焼結体1220が得られる。このため、焼結助剤の添加にもかかわらず膜状焼結体1220の耐久性及び絶縁性は高い。共焼成は、PbOが蒸発し、残留するBiが粒内に拡散するが粒内に完全に均一に分布するほどには拡散しない焼成条件で行われる。これにより、粒内周辺部のビスマス/鉛比が粒内中心部のビスマス/鉛比より大きい微構造が膜状焼結体1220に形成される。
【0050】
(膜状焼結体のパターニング)
共焼成の後に、図6に示すように、膜状焼結体1220がパターニングされ、圧電/電歪体膜1082が形成される。膜状成形体1200が被覆領域1160から大きくはみ出さない場合は、膜状焼結体1220のパターニングが省略されてもよい。この場合は、形成された膜状焼結体1220がそのまま圧電/電歪体膜1082になる。スクリーン版を用いてスクリーン印刷が行われる場合等においては膜状成形体1200が被覆領域1160から大きくはみ出さない場合がある。
【0051】
膜状焼結体1220は、レジスト法によりパターニングされる。例えば、膜状焼結体1220が形成された後に被覆領域1160がレジストパターンで保護され、膜状焼結体1220のうちレジストパターンで保護されない部分が除去され、レジストパターンが除去される。膜状焼結体1220がレジスト法以外によりパターニングされてもよい。
【0052】
(上部電極膜の形成)
圧電/電歪体膜1082が形成された後に、上部電極膜1084が圧電/電歪体膜1082の上面1182に形成され、図1に示す圧電/電歪膜型素子1000が完成する。上部電極膜1084が形成される場合は、蒸着、スパッタ、めっき、スクリーン印刷等により上部導電体膜が基板1020の上面1142に形成される。上部導電体膜は、下部電極膜1080及び圧電/電歪体膜1082に重ねて形成される。上部導電体膜がパターニングされ、上部電極膜1084が形成される。上部導電体膜が圧電/電歪体膜1082の上面1182からはみ出さないで形成される場合は、上部導電体膜のパターニングが省略されてもよい。この場合は、形成された上部導電体膜がそのまま上部電極膜1084になる。マスクを用いて蒸着、スパッタ等が行われる場合、スクリーン版を用いてスクリーン印刷が行われる場合等においては上部導電体膜が圧電/電歪体膜1082の上面1182からはみ出さない場合がある。
【0053】
上部導電体膜は、レジスト法によりパターニングされる。例えば、上部導電体膜が形成される前に圧電/電歪体膜1082の上面1182以外がレジストパターンで保護され、上部導電体膜が形成された後にレジストパターン及び上部導電体膜のうちレジストパターンに重ねられた部分が除去される。又は、上部導電体膜が形成された後に圧電/電歪体膜1082の上面1182がレジストパターンで保護され、上部導電体膜のうちレジストパターンで保護されない部分が除去され、レジストパターンが除去される。上部導電体膜がレジスト法以外によりパターニングされてもよい。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
圧電/電歪膜型素子を試作した。
【0055】
部分安定化ジルコニアの原料粉末をテープ成形し、グリーンシートを作製した。グリーンシートに対して打ち抜きを行った。グリーンシートを積層し、グリーンシート積層体を作製した。グリーンシート積層体を焼成し、基板を作製した。
【0056】
基板の上面に導電体膜を形成した。導電体膜の材質は、白金とした。導電体膜の膜厚は、0.5μmとした。導電体膜をレジスト法でパターニングし、下部電極膜を形成した。
【0057】
0.2BNN−0.8PZTという組成を有する仮焼粉末を固相法で合成した。仮焼粉末の粒子径は、0.15μmであった。仮焼粉末、PbOの粉末、Biの粉末、分散剤、バインダー及び分散媒を湿式混合し、スラリーを調製した。湿式混合においては、100重量部の仮焼粉末に対して3重量部のPbO及び1重量部のBiが含まれるように仮焼粉末、PbOの粉末及びBiの粉末を秤量した。
【0058】
スラリーを基板の上面にスピンコートし、塗布膜を形成した。塗布膜を乾燥し、膜状成形体を形成した。膜状成形体の膜厚は、膜状焼結体の膜厚が3μmになるように選択した。
【0059】
脱脂の後に、基板、下部電極膜及び膜状成形体を共焼成した。共焼成は、最高温度1000℃を2時間維持する焼成プロファイルを用いて行った。
【0060】
ポジ型のレジストでレジストパターンを形成した。膜状焼結体のうちレジストパターンで保護されない部分をPZTエッチング液で除去し、圧電/電歪体膜を形成した。
【0061】
圧電/電歪体膜の上面に上部電極膜を形成した。上部電極膜の膜厚は、0.1μmとした。上部電極膜の材質は、金とした。上部電極膜は、金レジネートを用いてレジスト法により形成した。
【0062】
(実施例2)
100重量部の仮焼粉末に対して3重量部のPbO及び0.5重量部のBiが含まれるように仮焼粉末、PbOの粉末及びBiの粉末を秤量したこと以外は実施例1と同じように圧電/電歪膜型素子を試作した。
【0063】
(実施例3)
100重量部の仮焼粉末に対して2重量部のPbO及び0.3重量部のBiが含まれるように仮焼粉末、PbOの粉末及びBiの粉末を秤量し焼成プロファイルの最高温度を1050℃へ変更したこと以外は実施例1と同じように圧電/電歪膜型素子を試作した。
【0064】
(比較例1)
焼結助剤をLiFとした以外は実施例1と同じように圧電/電歪膜型素子を試作した。
【0065】
(比較例2)
焼結助剤をPbOとした以外は実施例1と同じように圧電/電歪膜型素子を試作した。
【0066】
(耐久性)
実施例1、2及び3並びに比較例1及び2の圧電/電歪膜型素子を40℃、85%RHの環境下におき、上部電極膜及び下部電極膜の間に直流50Vを80時間印加する耐久試験を行った。絶縁破壊しなかった圧電/電歪膜型素子を合格とした。
【0067】
実施例1、2及び3では、300個の圧電/電歪膜型素子の全数が合格であった。比較例1及び2では、300個の圧電/電歪膜型素子の全数が不合格であった。
【0068】
(絶縁性)
上部電極及び下部電極膜の間に直流100Vを印加した場合に流れるリーク電流を測定した。
【0069】
実施例1、2及び3では、リーク電流が10−7Aであった。比較例1及び2では、リーク電流が10−5Aであった。
【0070】
(微構造)
図7は、実施例1の圧電/電歪セラミックスの透過型電子顕微鏡写真(TEM)像である。図8は、実施例1の圧電/電歪セラミックスの三重点のエネルギー分散型X線分析(EDX)スペクトルを示す図である。図9は、実施例1の圧電/電歪セラミックスの二粒子粒界のEDXスペクトルを示す図である。図10は、実施例1の圧電/電歪セラミックスの粒内のEDXスペクトルを示す図である。図11は、比較例1の圧電/電歪セラミックスのTEM像である。図12は、比較例1の圧電/電歪セラミックスの二粒子粒界のEDXスペクトルを示す図である。図13は、比較例1の圧電/電歪セラミックスの粒内のEDXスペクトルを示す図である。
【0071】
図7から図13までに示すように、実施例1の圧電/電歪セラミックスにおいては、粒内周辺部のビスマス/鉛比が粒内中心部のビスマス/鉛比より大きい。これに対して、比較例1の圧電/電歪セラミックスにおいては、粒内周辺部にビスマスはほとんど存在しない。比較例2の圧電/電歪セラミックスにおいては、焼結助剤がBiを含まないため、粒内周辺部のビスマス/鉛比が粒内中心部のビスマス/鉛比より小さいと推定される。
【0072】
実施例1、2及び3の圧電/電歪セラミックスにおいて、粒界から測定点までの距離を5nmずつ変化させながら当該測定点におけるビスマス/鉛比をEDXで測定した。図14及び図15は、実施例1の粒界からの距離及びビスマス/鉛比の関係を示す。図14では、ビスマス/鉛比が重量比で表されている。図15では、ビスマス/鉛比が原子数比で表されている。図14及び図15に示すように、実施例1において粒内周辺部のビスマス/鉛比が粒内中心部のビスマス/鉛比より大きくなるのは、粒界からの距離が5nmから10nmまでの領域であった。実施例2において粒内周辺部のビスマス/鉛比が粒内中心部のビスマス/鉛比より大きくなるのは、粒界からの距離が0nmから5nmまでの領域であった。実施例3において粒内周辺部のビスマス/鉛比が粒内中心部のビスマス/鉛比より大きくなるのは、粒界からの距離が5nmから10nmまでの領域であった。粒界からの距離が0nmから10nmまでの粒内周辺部のビスマス/鉛比が粒界からの距離が10nm以上離れた粒内中心部のビスマス/鉛比より大きくなることが望ましいと考えられる。
【0073】
TEM像の観察結果からはビスマス/鉛比が大きい領域においても格子像は乱れていないことがわかった。この事実及びBサイト成分は粒内周辺部及び粒内中心部において同等であることから、粒内周辺部はアモルファス相ではなくペロブスカイト相を構成すると思われる。
【0074】
本発明は詳細に示され記述されたが、上記の記述は全ての局面において例示であって限定的ではない。したがって、本発明の範囲からはずれることなく無数の修正及び変形が案出されうると解される。インクジェットプリンタのヘッドを構成する圧電/電歪膜型素子以外の圧電/電歪素子にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1000 圧電/電歪膜型素子
1020 基板
1080 下部電極膜
1082 圧電/電歪体膜
1084 上部電極膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図8
図9
図10
図12
図13
図14
図15
図7
図11
【国際調査報告】