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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2013年10月3日
【発行日】2015年12月14日
(54)【発明の名称】ストロークシミュレータ
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/17 20060101AFI20151117BHJP
【FI】
   B60T8/17 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
【出願番号】特願2014-508219(P2014-508219)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2013年3月29日
(31)【優先権主張番号】特願2012-83319(P2012-83319)
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000226677
【氏名又は名称】日信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 能章
(72)【発明者】
【氏名】村山 一昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 治朗
(72)【発明者】
【氏名】中村 元泰
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246AA08
3D246AA09
3D246BA02
3D246CA02
3D246GA04
3D246GA13
3D246GB01
3D246GB02
3D246GB04
3D246GB37
3D246GC14
3D246HA43A
3D246JB53
3D246LA02Z
3D246LA04Z
3D246LA12Z
3D246LA16Z
3D246LA33Z
3D246LA57A
3D246LA59B
3D246LA73Z
3D246LA75A
3D246LA79A
3D246LA79B
3D246LA80Z
(57)【要約】
弾性部材が収納された空間を閉塞するようにピストンが変位して弾性部材を弾性変形する構成であっても、閉塞された空間に発生する負圧でピストンの変位が阻害されずにピストンが滑らかに動作するストロークシミュレータを提供することを課題とする。
運転者によるブレーキ操作子の操作でシリンダ部(200)内を変位するシミュレータピストン(2a)が、有底の円筒部(224d)に収納される第一リターンスプリング(2b)を円筒部(224d)の開口部(224d2)の側から押圧して弾性変形させてブレーキ反力を発生するストロークシミュレータとする。そして、シミュレータピストン(2a)で開口部(224d2)が閉塞されたときには、第二のシリンダ(202)から円筒部(224d)の内側に通ずる流通路(224d1)を介して、シリンダ部(200)内に充満するブレーキ液が円筒部(224d)の内側に取り込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者によるブレーキ操作子の操作によって液圧発生手段が発生する液圧で、ブレーキ液が充満するシリンダ内を変位するシミュレータピストンと、
前記シリンダ内に収納されて前記シミュレータピストンの変位に応じた反力を当該シミュレータピストンに付与する反力発生手段と、を備え、
前記シミュレータピストンに付与された反力を前記ブレーキ操作子に対するブレーキ反力として発生するストロークシミュレータであって、
前記反力発生手段は、
前記シミュレータピストンの変位による押圧で弾性変形する第一の弾性部材と、
前記シリンダ内に収納されて前記第一の弾性部材の弾性変形をガイドするガイド部材と、
前記ガイド部材を介して前記第一の弾性部材と直列に配置され、前記シミュレータピストンの変位による押圧で弾性変形する第二の弾性部材と、を含んでなり、
前記ガイド部材は、前記シミュレータピストンの側に開口する有底の筒部と、前記筒部の外側と内側が通じる流通路を有することを特徴とするストロークシミュレータ。
【請求項2】
前記流通路は、前記筒部の側壁部を貫通するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のストロークシミュレータ。
【請求項3】
前記流通路は、前記ガイド部材に形成される前記筒部の頂壁部を貫通するように形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のストロークシミュレータ。
【請求項4】
前記流通路は、前記シミュレータピストンに形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のストロークシミュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ装置のブレーキペダルに付与するためのブレーキ反力を発生するストロークシミュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキペダルが踏み込まれたときの踏力を倍力する倍力装置の駆動源を電動モータとするブレーキ装置(電動ブレーキ装置)は広く知られている。このような電動ブレーキ装置には、運転者によって踏み込まれたブレーキペダルにブレーキ反力を擬似的に発生させるストロークシミュレータが備わっている(特許文献1参照)。
ストロークシミュレータには、ブレーキフルード(ブレーキ液)で作動する従来型のブレーキペダルと同様の操作感(操作フィーリング)を運転者に付与することが要求される。そこで、弾性係数の異なる2つの弾性部材が弾性変形して発生する弾性力(反力)をブレーキ反力としてブレーキペダルに付与する構成とし、ブレーキペダルの踏み込み操作量に応じて、2つの弾性部材のそれぞれから反力がブレーキペダルに付与されるストロークシミュレータが開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−210372号公報
【特許文献2】特開2009−227172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献2に開示されるストロークシミュレータは、第1ばね(第一リターンスプリング)がカップ状に形成されるリテーナ(第二のばね座部材)に収納され、第1ばねは、リテーナの開口部から内側に進入するように変位するピストン(シミュレータピストン)によって圧縮される。また、ピストンは、先端部に取り付けられるクッション材(ゴムブッシュ)の先端がリテーナの対向壁に当接するまで第1ばねを圧縮する。
しかしながら、弾性部材であるクッション材はリテーナの対向壁に当接したときに変形するため、ピストンのリテーナへの進入量(変位)を正確に規制することはできない。
ピストンのリテーナへの進入量(変位)を正確に規制するためには、例えば、ともに剛体であるピストンがリテーナに当接する構成が必要となる。
【0005】
この構成は、例えば、ピストンをカップ状のリテーナの開口部に当接させる構成によって容易に実現できる。しかしながら、この構成によると、リテーナの開口部がピストンによって閉塞されてリテーナの内側に閉塞した空間が形成される。そして、閉塞した空間にブレーキ液が充満するとピストンがリテーナから離反するときに閉塞した空間に負圧が生じ、この負圧によってリテーナからのピストンの離反が阻害され、ストロークシミュレータの変位が阻害される。
そこで、本発明は、弾性部材が収納された空間を閉塞するようにピストンが変位して弾性部材を弾性変形する構成であっても、閉塞された空間に発生する負圧でピストンの変位が阻害されずにピストンが滑らかに動作するストロークシミュレータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため本発明は、運転者によるブレーキ操作子の操作によって液圧発生手段が発生する液圧で、ブレーキ液が充満するシリンダ内を変位するシミュレータピストンと、前記シリンダ内に収納されて前記シミュレータピストンの変位に応じた反力を当該シミュレータピストンに付与する反力発生手段と、を備え、前記シミュレータピストンに付与された反力を前記ブレーキ操作子に対するブレーキ反力として発生するストロークシミュレータとする。そして、前記反力発生手段は、前記シミュレータピストンの変位による押圧で弾性変形する第一の弾性部材と、前記シリンダ内に収納されて前記第一の弾性部材の弾性変形をガイドするガイド部材と、前記ガイド部材を介して前記第一の弾性部材と直列に配置され、前記シミュレータピストンの変位による押圧で弾性変形する第二の弾性部材と、を含んでなり、前記ガイド部材は、前記シミュレータピストンの側に開口する有底の筒部と、前記筒部の外側と内側が通じる流通路を有することを特徴とする。
【0007】
この発明によると、シミュレータピストンで開口部が閉塞されたガイド部材の筒部の内側に、シリンダ内に充満するブレーキ液を流通路を介して流入させることができる。したがって、第一の弾性部材による反力でシミュレータピストンがガイド部材の開口部から離反しようとする場合に、筒部の内部に好適にブレーキ液を流入させることによって負圧の発生を抑制でき、速やかにシミュレータピストンを開口部から離反させることができる。
【0008】
また、本発明に係る前記流通路は、前記筒部の側壁部を貫通するように形成されていることを特徴とする。
この発明によると、筒部の側壁部に流通路を形成できる。筒部の側壁部に貫通孔を形成する加工にはパンチ加工などを利用することができるため、流通路を容易に形成できる。
【0009】
また、本発明に係る前記流通路は、前記ガイド部材に形成される前記筒部の頂壁部を貫通するように形成されていることを特徴とする。
この発明によると、筒部の側壁部に限定することなく、筒部の頂壁部に流通路を形成できる。
【0010】
また、本発明に係る前記流通路は、前記シミュレータピストンに形成されていることを特徴とする。
この発明によると、ガイド部材の筒部に限定することなく、シミュレータピストンに流通路を形成できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、弾性部材が収納された空間を閉塞するようにピストンが変位して弾性部材を弾性変形する構成であっても、閉塞された空間に発生する負圧でピストンの変位が阻害されずにピストンが滑らかに動作するストロークシミュレータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るストロークシミュレータを備える車両用ブレーキシステムの概略構成図である。
図2】(a)はマスタシリンダ装置の側面図、(b)は同じく正面図である。
図3】ハウジングの分解斜視図である。
図4】ストロークシミュレータの概略構成を示す断面図である。
図5】(a)は第二のばね座部材の開口部が閉塞された状態を示す断面図、(b)は第二のばね座部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る車両用ブレーキシステムの概略構成図である。
図1に示す車両用ブレーキシステムAは、原動機(エンジンやモータ等)の動作時に作動するバイ・ワイヤ(By Wire)式のブレーキシステムと、非常時や原動機の停止時などに作動する油圧式のブレーキシステムの双方を備えるものであり、ブレーキペダル(ブレーキ操作子)Pが踏み込み操作されるときの踏力によってブレーキ液圧を発生させるマスタシリンダ装置A1と、電動モータ(図示略)を利用してブレーキ液圧を発生させるモータシリンダ装置A2と、車両挙動の安定化を支援するビークルスタビリティアシスト装置A3(以下「液圧制御装置A3」という。)と、を備えている。マスタシリンダ装置A1、モータシリンダ装置A2および液圧制御装置A3は、別ユニットとして構成されており、外部配管を介して連通している。
【0014】
車両用ブレーキシステムAは、エンジン(内燃機関)のみを動力源とする自動車のほか、モータを併用するハイブリッド自動車やモータのみを動力源とする電気自動車・燃料電池自動車などにも搭載することができる。
【0015】
マスタシリンダ装置(入力装置)A1は、タンデム式のマスタシリンダ1と、ストロークシミュレータ2と、リザーバ3と、常開型遮断弁(電磁弁)4,5と、常閉型遮断弁(電磁弁)6と、圧力センサ7,8と、メイン液圧路9a,9bと、連絡液圧路9c,9dと、分岐液圧路9eとを備えている。
【0016】
マスタシリンダ1は、ブレーキペダルPが踏み込み操作されるときの踏力をブレーキ液圧に変換して液圧を発生させる液圧発生手段であり、第一シリンダ穴11aの底壁側に配置された第一ピストン1aと、プッシュロッドRに接続された第二ピストン1bと、第一ピストン1aと第一シリンダ穴11aの底壁との間に配置された第一リターンスプリング1cと両ピストン1a,1bの間に配置された第二リターンスプリング1dとを備えている。第二ピストン1bは、プッシュロッドRを介してブレーキペダルPに連結されている。両ピストン1a,1bは、ブレーキペダルPの踏力を受けて摺動(変位)し、圧力室1e,1f内のブレーキ液を加圧する。圧力室1e,1fは、メイン液圧路9a,9bに通じている。
【0017】
ストロークシミュレータ2は、擬似的な操作反力(ブレーキ反力)を発生してブレーキペダルPに付与する装置であり、第二シリンダ穴11b内を摺動して変位するシミュレータピストン2aと、シミュレータピストン2aを付勢する大小二つのリターンスプリング(第一リターンスプリング2b,第二リターンスプリング2c)を備えている。ストロークシミュレータ2は、メイン液圧路9aおよび分岐液圧路9eを介して圧力室1eに通じており、圧力室1eで発生したブレーキ液圧によって作動する。ストロークシミュレータ2の詳細は後記する。
【0018】
リザーバ3は、ブレーキ液を貯溜する容器であり、マスタシリンダ1に接続される給油口3a,3bと、メインリザーバ(図示略)から延びるホースが接続される管接続口3cとを備えている。
【0019】
常開型遮断弁4,5は、メイン液圧路9a,9bを開閉するものであり、いずれもノーマルオープンタイプの電磁弁からなる。一方の常開型遮断弁4は、メイン液圧路9aと分岐液圧路9eとの交差点からメイン液圧路9aと連絡液圧路9cとの交差点に至る区間においてメイン液圧路9aを開閉する。他方の常開型遮断弁5は、メイン液圧路9bと連絡液圧路9dとの交差点よりも上流側においてメイン液圧路9bを開閉する。
【0020】
常閉型遮断弁6は、分岐液圧路9eを開閉するものであり、ノーマルクローズタイプの電磁弁からなる。
【0021】
圧力センサ7,8は、ブレーキ液圧の大きさを検知するものであり、メイン液圧路9a,9bに通じるセンサ装着穴(図示略)に装着されている。一方の圧力センサ7は、常開型遮断弁4よりも下流側に配置されており、常開型遮断弁4が閉じられた状態(=メイン液圧路9aが遮断された状態)にあるときに、モータシリンダ装置A2で発生したブレーキ液圧を検知する。他方の圧力センサ8は、常開型遮断弁5よりも上流側に配置されており、常開型遮断弁5が閉じられた状態(=メイン液圧路9bが遮断された状態)にあるときに、マスタシリンダ1で発生したブレーキ液圧を検知する。圧力センサ7,8で取得された情報は、図示せぬ電子制御ユニット(ECU)に出力される。
【0022】
メイン液圧路9a,9bは、マスタシリンダ1を起点とする液圧路である。メイン液圧路9a,9bの終点である出力ポート15a,15bには、液圧制御装置A3に至る管材Ha,Hbが接続されている。
【0023】
連絡液圧路9c,9dは、入力ポート15c,15dからメイン液圧路9a,9bに至る液圧路である。入力ポート15c,15dには、モータシリンダ装置A2に至る管材Hc,Hdが接続されている。
【0024】
分岐液圧路9eは、一方のメイン液圧路9aから分岐し、ストロークシミュレータ2に至る液圧路である。
【0025】
マスタシリンダ装置A1は、管材Ha,Hbを介して液圧制御装置A3に連通しており、常開型遮断弁4,5が開弁状態にあるときにマスタシリンダ1で発生したブレーキ液圧は、メイン液圧路9a,9bおよび管材Ha,Hbを介して液圧制御装置A3に入力される。
【0026】
モータシリンダ装置A2は、図示は省略するが、スレーブシリンダ内を摺動するスレーブピストンと、電動モータおよび駆動力伝達部を有するアクチュエータ機構と、スレーブシリンダ内にブレーキ液を貯溜するリザーバとを備えている。
電動モータは、図示せぬ電子制御ユニットからの信号に基づいて作動する。駆動力伝達部は、電動モータの回転動力を進退運動に変換したうえでスレーブピストンに伝達する。スレーブピストンは、電動モータの駆動力を受けてスレーブシリンダ内を摺動し、スレーブシリンダ内のブレーキ液を加圧する。
モータシリンダ装置A2で発生したブレーキ液圧は、管材Hc,Hdを介してマスタシリンダ装置A1に入力され、連絡液圧路9c,9dおよび管材Ha,Hbを介して液圧制御装置A3に入力される。リザーバには、メインリザーバ(図示略)から延びるホースが接続される。
【0027】
液圧制御装置A3は、車輪のスリップを抑制するアンチロックブレーキ制御(ABS制御)、車両の挙動を安定化させる横滑り制御やトラクション制御などを実行し得るような構成を具備しており、管材を介してホイールシリンダW,W,…に接続されている。なお、図示は省略するが、液圧制御装置A3は、電磁弁やポンプ等が設けられた液圧ユニット、ポンプを駆動するためのモータ、電磁弁やモータ等を制御するための電子制御ユニットなどを備えている。
【0028】
次に車両用ブレーキシステムAの動作について概略説明する。
車両用ブレーキシステムAが正常に機能する正常時には、常開型遮断弁4,5が弁閉状態となり、常閉型遮断弁6が弁開状態となる。かかる状態で運転者がブレーキペダルPを踏み込み操作すると、マスタシリンダ1で発生したブレーキ液圧は、ホイールシリンダWに伝達されずにストロークシミュレータ2に伝達される。そして、シミュレータピストン2aが変位することにより、ブレーキペダルPの踏み込み操作が許容されるとともに、シミュレータピストン2aの変位で弾性変形する弾性部材からシミュレータピストン2aに付与される反力が擬似的なブレーキ反力として発生し、ブレーキペダルPに付与される。
【0029】
また、図示しないストロークセンサ等によってブレーキペダルPの踏み込みが検知されると、モータシリンダ装置A2の電動モータが駆動され、スレーブピストンが変位することによりシリンダ内のブレーキ液が加圧される。
図示せぬ電子制御ユニットは、モータシリンダ装置A2から出力されたブレーキ液圧(圧力センサ7で検知されたブレーキ液圧)とマスタシリンダ1から出力されたブレーキ液圧(圧力センサ8で検知されたブレーキ液圧)とを対比し、その対比結果に基づいて電動モータの回転数等を制御する。
【0030】
モータシリンダ装置A2で発生したブレーキ液圧は、液圧制御装置A3を介してホイールシリンダW,W,…に伝達され、各ホイールシリンダWが作動することにより各車輪に制動力が付与される。
【0031】
なお、モータシリンダ装置A2が作動しない状況(例えば、電力が得られない場合や非常時など)においては、常開型遮断弁4,5がいずれも弁開状態となり、常閉型遮断弁6が弁閉状態となるので、マスタシリンダ1で発生したブレーキ液圧は、ホイールシリンダW,W,…に伝達されるようになる。
【0032】
次に、マスタシリンダ装置A1の具体的な構造を説明する。
本実施形態のマスタシリンダ装置A1は、図2の(a)、(b)の基体10の内部あるいは外部に前記の各種部品を組み付けるとともに、電気によって作動する電気部品(常開型遮断弁4,5、常閉型遮断弁6および圧力センサ7,8(図1参照)をハウジング20で覆うことによって形成されている。なお、ハウジング20内には、機械部品等が収納されてもよい。
【0033】
基体10は、アルミニウム合金製の鋳造品であり、シリンダ部11(図2の(b)参照、以下同じ)と、車体固定部12と、リザーバ取付部13(図2の(b)参照、以下同じ)と、ハウジング取付部14と、配管接続部15とを備えている。また、基体10の内部には、メイン液圧路9a,9b(図1参照)や分岐液圧路9e(図1参照)となる孔(図示略)などが形成されている。
【0034】
シリンダ部11には、マスタシリンダ用の第一シリンダ穴11aと、ストロークシミュレータ用の第二シリンダ穴11b(いずれも図2の(b)に破線で図示)とが形成されている。両シリンダ穴11a,11bは、いずれも有底円筒状であり、車体固定部12に開口するとともに、配管接続部15に向けて延在している。第一シリンダ穴11aには、マスタシリンダ1(図1参照)を構成する部品(第一ピストン1a、第二ピストン1b、第一リターンスプリング1cおよび第二リターンスプリング1d)が挿入され、第二シリンダ穴11bには、ストロークシミュレータ2を構成する部品(シミュレータピストン2aおよび第一、第二リターンスプリング2b,2c)が挿入される。
【0035】
車体固定部12は、トーボード(図示せず)などの車体側固定部位に固定される。車体固定部12は、基体10の後面部に形成されており、フランジ状を呈している。車体固定部12の周縁部(シリンダ部11から張り出した部分)には、図示しないボルト挿通孔が形成され、ボルト12aが固定されている。
【0036】
図2の(b)に示すように、リザーバ取付部13は、リザーバ3の取付座となる部位であり、基体10の上面部に2つ(一方のみ図示)形成されている。リザーバ取付部13には、リザーバユニオンポートが設けられている。なお、リザーバ3は、基体10の上面に突設された図示しない連結部を介して基体10に固定されている。
リザーバユニオンポートは、円筒状を呈しており、その底面から第一シリンダ穴11aに向かって延びる孔を介して第一シリンダ穴11aと連通している。リザーバユニオンポートには、リザーバ3の下部に突設された図示しない給液口が接続され、リザーバユニオンポートの上端には、リザーバ3の容器本体が載置される。
【0037】
基体10の側面には、ハウジング取付部14が設けられている。ハウジング取付部14は、ハウジング20の取付座となる部位である。ハウジング取付部14は、フランジ状を呈している。ハウジング取付部14の上端部および下端部には、図示しない雌ネジが形成されており、この雌ネジに、図2の(a)に示すように、取付ネジ16を螺合させることで、ハウジング20がハウジング取付部14(基体10の側面)に固定されるようになっている。
【0038】
図示は省略するが、ハウジング取付部14には、三つの弁装着穴と二つのセンサ装着穴とが形成されている。三つの弁装着穴には、常開型遮断弁4,5および常閉型遮断弁6(図1参照)が組み付けられ、二つのセンサ装着穴には、圧力センサ7,8(図1参照)が組み付けられる。
【0039】
配管接続部15は、管取付座となる部位であり、図2の(a)に示すように、基体10の前面部に形成されている。配管接続部15には、図2の(b)に示すように、二つの出力ポート15a,15bと、二つの入力ポート15c,15dが形成されている。出力ポート15a,15bには、液圧制御装置A3(図1参照)に至る管材Ha,Hb(図1参照)が接続され、入力ポート15c,15dには、モータシリンダ装置A2(図1参照)に至る管材Hc,Hd(図1参照)が接続される。
【0040】
ハウジング20は、ハウジング取付部14に組み付けられた部品(常開型遮断弁4,5、常閉型遮断弁6および圧力センサ7,8、図1参照、以下同じ)を液密に覆うハウジング本体21と、ハウジング本体21の開口21a(図3参照)に装着される蓋部材30とを有している。
ハウジング本体21は、図3に示すように、フランジ部22と、フランジ部22に立設された周壁部23と、周壁部23の周壁面から突設されたコネクタ部としての2つのコネクタ24,25と、を有している。
【0041】
ハウジング本体21の周壁部23の内側には、図示は省略するが、常開型遮断弁4,5(図1参照)および常閉型遮断弁6(図1参照)を駆動するための電磁コイルが収容されているほか、電磁コイルや圧力センサ7,8(図1参照)に至るバスバーなどが収容されている。また、フランジ部22は、ハウジング取付部14(図2の(b)参照、以下同じ)に圧着される部位である。フランジ部22は、取付ネジ部としてのボス部22a〜22dに連続するようにして、ハウジング本体21の外側へ張り出すように形成されている。
【0042】
各ボス部22a〜22dは、ハウジング取付部14の雌ネジの位置に合わせてハウジング本体21の四隅に設けられている。各ボス部22a〜22dには、金属製のカラーが埋設されており、その内側に、挿通孔として機能するネジ挿通孔27(ネジ孔)が形成されている。ネジ挿通孔27には、締結部材としての取付ネジ16(図2の(a)参照、以下同じ)がそれぞれ挿通される。基体10(図2の(a)参照)のハウジング取付部14にハウジング20を固着する際には、各取付ネジ16を均等に締め付けることによって行うことができる。
【0043】
図3に示すように、フランジ部22のうち、ボス部22bに連続するフランジ部22b1は、下面が傾斜状とされている。このフランジ部22b1の傾斜は、周壁部23の後記する第1傾斜縁部232の傾斜に対応したものとなっている。これによって、省スペース化が図られている。
【0044】
なお、フランジ部22のハウジング取付部14に対向する面には、図示しない周溝が形成されており、この周溝には、合成ゴム性のシール部材が装着される。このシール部材は、取付ネジ16の締め付けによりハウジング取付部14に密着してハウジング本体21の液密性を保持する役割をなす。
【0045】
周壁部23の外周面には、適所にリブ23aが設けられている。リブ23aは、図3に示すように、周壁部23からフランジ部22に亘って形成されている。
【0046】
周壁部23の内側には、図3に示すように、隔壁26が形成されている。隔壁26には、圧力センサ7,8(図1参照)が接続されるセンサ接続孔261やコイル接続孔263、さらには電磁弁挿通孔(常開型遮断弁4,5や常閉型遮断弁6の挿通孔)265が開口形成されている。センサ接続孔261およびコイル接続孔263には、ターミナル262,264が配置されている。
【0047】
図3に示すように、周壁部23の開口縁234には、蓋部材30が取り付けられる。蓋部材30は、接着剤、超音波溶着等の接着手段によって開口縁234に固着される。
開口縁234は、蓋部材30の外形に対応した形状とされている。
【0048】
蓋部材30は、図3に示すように、外形が八角形状とされており、周壁部23の開口21aの中心に対応する中心に対して、点対称形状に形成されている。
蓋部材30は、2組の対向する2辺で形成される四角形(二点鎖線で図示した長方形)に内接する外形を有している。蓋部材30は、この四角形の2組の対角のうちの一方の対角を同じ大きさで欠損させてなる一対の第1欠損部32,32、および他方の対角を同じ大きさで欠損させてなる一対の第2欠損部33,33を有している。第1欠損部32,32および第2欠損部33,33は、ともに三角形状を呈している。
【0049】
蓋部材30は、前記四角形の辺に沿う直線縁301と、第1欠損部32,32に面している第1傾斜縁302,302と、第2欠損部33,33に面している第2傾斜縁303,303と、を備えている。
【0050】
直線縁301は、前記四角形の4辺に対応して4つ形成されており、長さがともに等しい。直線縁301は、対向する2辺が平行となっている。
第1傾斜縁302,302は、隣接する直線縁301,301同士を繋いでおり、互いに平行である。第2傾斜縁303,303は、隣接する直線縁301,301同士を繋いでおり、互いに平行である。
【0051】
第1欠損部32,32は、第2欠損部33,33よりも面積(欠損量)が大きくなっており、図2の(a)に示すように、基体10の側方において、一方の第1欠損部32が基体10の前側下部に位置し、他方の第1欠損部32が基体10の後側上部に位置するように配置されている。
ここで、マスタシリンダ装置A1は、エンジンルーム内において基体10の前側を車両の前側へ向けて搭載されるようになっており、これにより、一方の第1傾斜縁302は、基体10の前側下部に形成されるようになっている。つまり、一方の第1傾斜縁302は、エンジンルーム内において、構造物や周辺機器Mが存在し易いスペースに向けて配置されるようになっている。
【0052】
第2欠損部33,33は、第1欠損部32,32よりも面積(欠損量)が小さくなっており、図2の(a)に示すように、基体10の側方において、一方の第2欠損部33が基体10の前側上部に位置し、他方の第2欠損部33が基体10の後側下部に位置するように配置されている。前側上部の第2欠損部33には、側面視でボス部22aのネジ挿通孔27の一部が位置している。つまり、ネジ挿通孔27は、一方の第2欠損部33を利用して第2傾斜縁303(周壁部23)に近付けて形成されている。
なお、前側上部の第2欠損部33にネジ挿通孔27の中心が位置することが望ましく、さらに望ましくは、ネジ挿通孔27の全体が第2欠損部33に位置するとよい。
【0053】
なお、図2の(a)に示すように、前側下部の第1欠損部32には、側面視でボス部22bのネジ挿通孔27の全体が位置している。
【0054】
蓋部材30の表面の周縁には、周方向に間隔を空けて複数の凹部30bが形成されている。
ここで、1つの第1傾斜縁302に形成されている凹部30bの数は2個であり、また、1つの第2傾斜縁303に形成されている凹部30bの数は1個である。つまり、第1欠損部32に面する周縁に設けられる凹部30bの数は、第2欠損部33に面する周縁に設けられる凹部30bの数よりも多くなっている。
なお、4つの直線縁301には、それぞれ4個の凹部30bが設けられている。
【0055】
蓋部材30の周縁の内側には、周溝30cが形成されている。なお、周溝30cと各凹部30bとは溝が連通している。
【0056】
図3に示すように、ハウジング本体21の周壁部23の開口縁234は、前記した蓋部材30の外形に対応した形状とされており、4つの直線縁部231と、隣接する直線縁部231,231同士を繋ぐ第1傾斜縁部232,232および第2傾斜縁部233,233と、を有している。
4つの直線縁部231は、蓋部材30の直線縁301にそれぞれ対応しており、第1傾斜縁部232,232は、蓋部材30の第1傾斜縁302,302に対応しており、また、第2傾斜縁部233,233は、蓋部材30の第2傾斜縁303,303に対応している。
開口縁234は平らな面とされており、蓋部材30の裏面に形成される溶着部が当接して溶着される。なお、開口縁234の外周縁には、周リブ235が形成されている。
【0057】
このような周壁部23は、側面視でフランジ部22よりも内側に立設されている。また、周壁部23は、開口21aに近い側に段部23cを有しており、この段部23cを境にして周壁部23の下部が内側にオフセットされた形状とされている。
これにより、フランジ部22に近い側において、コイル等の比較的大径の部品も周壁部23の内側に好適に収容することが可能となっている。また、開口21aに近い側において、周壁部23の下部が内側にオフセットされているので、周壁部23の下部周りの省スペース化を図ることができる。
【0058】
コネクタ24,25は、図3に示すように、周壁部23の周方向に2つ並設されている。コネクタ24,25は、いずれも筒状であって、周壁部23から一体的に突設されている。コネクタ24,25には、電磁コイルに通じる図示しないケーブルと、圧力センサ7,8(図1参照)に通じる図示しないケーブルとが接続されている。
【0059】
本実施形態では、図3に示すように、2つのコネクタ24,25の中心軸線X1,X2が、周壁部23の直線縁部231に交差するように配置されている。
そして、第1欠損部32に近い側(上下方向下側)に設けられる一方のコネクタ25は、他方のコネクタ24よりも周壁部23からの突出量が小さくなっている。
また、コネクタ25は、ケーブルが接続される側から見た形状においても、コネクタ24より小さくなっている。
【0060】
説明を図2の(a)に戻す。リザーバ3は、給油口3a,3b(図1参照)のほか、管接続口3cと、図示しない連結フランジとを備えている。管接続口3cは、ブレーキ液を貯溜する容器本体3eから突出している。管接続口3cには、メインリザーバ(図示略)から延びるホースが接続される。連結フランジは、容器本体3eの下面に突設され、リザーバ取付部13(図2の(b)参照)に重ねられ、図示しないスプリングピンによって基体10の連結部に固定される。
【0061】
以上のように構成されるマスタシリンダ装置A1(図1参照)に組み込まれるストロークシミュレータ2は、本実施形態において図4に示すように、基体10(図2の(a)参照)に形成される本体部220aに構成要素が組み込まれて構成される。
本実施形態に係るストロークシミュレータ2は、図4に示すように、分岐液圧路9e(図1参照)に常閉型遮断弁6(図1参照)を介して接続される液導ポート220bと、略円筒形状の第二シリンダ穴11bを形成するシリンダ部200と、このシリンダ部200内を進退自在に変位可能なシミュレータピストン2aと、第一弾性係数K1(ばね定数)を有するコイル状の第一リターンスプリング(第一の弾性部材)2bと、第一弾性係数K1よりも大きい第二弾性係数K(ばね定数)を有するコイル状の第二リターンスプリング(第二の弾性部材)2cとを備える。第二シリンダ穴11bは、液導ポート220bを介して分岐液圧路9eに連通している。そして、常時閉弁している常閉型遮断弁6(図1参照)の弁体が開位置に切り替えられた場合に、液導ポート220bを介してブレーキ液が第二シリンダ穴11bに出入りする。
【0062】
シリンダ部200は、シミュレータピストン2aの退避方向(図4中の左方向、以下、この方向を“後”と定義する)の側に配設される第一のシリンダ201と、シミュレータピストン2aの進出方向(図4中の右方向、以下、この方向を“前”と定義する)の側に配設される第二のシリンダ202とを、同軸上に連通させて構成されている。また、シミュレータピストン2aは第一のシリンダ201内を前後方向に変位(摺動)するように構成されている。そして、第一のシリンダ201の円周状の内径は、第二のシリンダ202の円周状の内径よりも小さく形成されている。
なお、シリンダ部200(第一のシリンダ201、第二のシリンダ202)にはブレーキ液が充満している。
【0063】
第一のシリンダ201の内壁には環状溝201aが形成されている。この環状溝201aには、例えばシリコーンゴム製のカップシール201bが嵌装され、第一のシリンダ201の内壁とシミュレータピストン2aとの間に形成される間隙を封じている。これにより、カップシール201bが発揮する液密性によって、第二シリンダ穴11bが液導ポート220b側と第二のシリンダ202とに区画され、液導ポート220bを介して第二シリンダ穴11bに流入するブレーキ液がカップシール201bよりも前側(第二のシリンダ202側)に漏出しないようになっている。そして、この構成によって液導ポート220bから流入するブレーキ液の液圧をシミュレータピストン2aの押圧に効果的に作用させることができる。
【0064】
シミュレータピストン2aには、その後方向(退避方向)に向けて開口した略円筒形状の肉抜き部2a1が形成されている。この肉抜き部2a1は、シミュレータピストン2aの軽量化に寄与するとともに、第二シリンダ穴11bの体積を増やして、ブレーキ液の蓄液量を増やす機能を有する。シミュレータピストン2aの前端壁2a2には突出部が形成されている。この突出部には、第一のばね座部材222が外嵌され、溶接や圧入等の接合手段によって固着されている。
また、肉抜き部2a1には複数の貫通孔2a3が形成されている。液導ポート220bから第一のシリンダ201に取り込まれたブレーキ液が貫通孔2a3を流通して肉抜き部2a1に流れ込むように構成されている。
【0065】
第一のばね座部材222は前側が閉塞した有底の筒部(円筒部222d)を有して形成され、略カップ状を呈している。第一のばね座部材222は円筒部222dの開口が前端壁2a2で閉塞された状態でシミュレータピストン2aに固着される。この第一のばね座部材222は、中央部分が肉抜きされたドーナツ円板形状のフランジ部222aと、このフランジ部222aの内周部分から前側に立ち上がる側壁部222bと、この側壁部222bの頂部を覆う頂壁部222cとを備える。そして、フランジ部222aの前端側は第一リターンスプリング2bの後端側を受け止める。
なお、符号222d1は、円筒部222dを貫通する貫通孔である。貫通孔222d1は、円筒部222dの内側に溜まる不要な空気やブレーキ液を排出するために形成される。
【0066】
第一のばね座部材222に対向する前側には有底の筒部(円筒部224d)を有する第二のばね座部材224が配設されている。第二のばね座部材224は、第一リターンスプリング2bと第二リターンスプリング2cを直列に配置するとともに内部に収容される第一リターンスプリング2bの弾性変形をガイドするガイド部材であり、中央部分が肉抜きされたドーナツ円板形状のフランジ部224aと、このフランジ部224aの内周部分から前側に立ち上がる側壁部224bと、この側壁部224bの頂部を覆う頂壁部224cとを備える。フランジ部224aの前端側は第二リターンスプリング2cの後端側を受け止める。また、第二のばね座部材224の側壁部224bおよび頂壁部224cによって有底の円筒部224dが形成され、第一リターンスプリング2bが円筒部224dの内側に収納される。つまり、頂壁部224cは円筒部224dの閉塞した一端を形成する。
【0067】
このように本実施形態では、第一リターンスプリング2bと第二リターンスプリング2cがガイド部材である第二のばね座部材224を介して直列に配置される。そして、第一リターンスプリング2b、第二リターンスプリング2cおよび第二のばね座部材224を含んで反力発生手段を構成する。
【0068】
第二のばね座部材224のサイズは、第一のばね座部材222のサイズと比べて全体的に大きく形成されている。具体的に第一のばね座部材222の円筒部222dの外径は、第二のばね座部材224の円筒部224dの内径より小さく形成され、第一のばね座部材222の円筒部222dが第一リターンスプリング2bの内側に入り込むように形成されている。そして、第二のばね座部材224の頂壁部224cの後端側は、第一リターンスプリング2bの前端側を受け止める。
【0069】
第一のばね座部材222のうち頂壁部222cの前端側には、第三の弾性部材として機能するゴムブッシュ226が設けられている。ゴムブッシュ226は、第一リターンスプリング2bの内側に収納されている。これにより、限りあるスペースを有効に活用するとともに、第一リターンスプリング2bに対してゴムブッシュ226を並列に配設することができる。
【0070】
また、第一のばね座部材222のフランジ部222aの前端側と、第二のばね座部材224のフランジ部224aの後端側との間には、第一の区間lが設定されている。一方、第二のばね座部材224の頂壁部224cの側に移動して前側の端部(第二端部226c2)が頂壁部224cに当接した状態のゴムブッシュ226の後側の端部(第一端部226c1)と、第一のばね座部材222の頂壁部222cの間には、第三の区間lが設定されている。第一の区間lは、第三の区間lと比べて大きく設定されている。これにより、第一の区間lから第三の区間lを差し引いた第二の区間lにおいて、第一リターンスプリング2bの弾性圧縮に加えて、ゴムブッシュ226が潰れて弾性圧縮するように構成される。このように第一〜第三の区間が設定されることによって、ゴムブッシュ226は、シミュレータピストン2aに付与される反力が第一リターンスプリング2bで発生する反力(第一反力F1)から第二リターンスプリング2cで発生する反力(第二反力F2)に切り替わる切替点で滑らかに切り替わるように好適な反力(第三反力F3)を発生する。
【0071】
この構成によると、運転者によるブレーキペダルP(図1参照)の踏み込み操作によって、第一のばね座部材222は、第二のばね座部材224に対して第一の区間lに相当する長さだけ進出方向に移動(変位)し、第一リターンスプリング2bは、第一の区間lに相当する長さだけ弾性変形(弾性圧縮)する。つまり、第一リターンスプリング2bは、第一の区間lに相当する長さを所定の規定量として弾性変形するように構成される。
この第一の区間l、第二の区間l、および第三の区間lは、例えば、車両用ブレーキシステムA(図1参照)に要求される操作フィーリング等に基づいてストロークシミュレータ2の設計値として適宜決定される値とすればよい。
【0072】
また、ブレーキペダルP(図1参照)が踏み込み操作されない状態のとき、第二リターンスプリング2cが自然長よりΔSt2だけ弾性圧縮された状態であると、このときの第二リターンスプリング2cには、「第二弾性係数K×ΔSt2」に相当する第二反力F2が発生している。さらに、運転者によるブレーキペダルPの踏み込み操作によって、第一のばね座部材222のフランジ部222aの前端側が第二のばね座部材224のフランジ部224aの後端側に当接するまで第一のばね座部材222が進出方向に変位したとき、つまり、所定の規定量だけ第一リターンスプリング2bが弾性変形(弾性圧縮)したときに第一リターンスプリング2bが自然長よりΔSt1だけ弾性圧縮された状態であると、第一リターンスプリング2bには、「第一弾性係数K×ΔSt1」に相当する第一反力F1が発生する。
そして、第一弾性係数Kが第二弾性係数Kより小さく設定されれば、先に第一リターンスプリング2bが所定の規定量だけ弾性変形(弾性圧縮)し、その後で第二リターンスプリング2cが弾性変形(弾性圧縮)を開始する構成とすることができる。
【0073】
ゴムブッシュ226は、運転者によるブレーキペダルP(図1参照)の踏み込み操作に応じて第一リターンスプリング2bが弾性圧縮されて第一のばね座部材222の頂壁部222cと第二のばね座部材224の頂壁部224cの間隔がゴムブッシュ226の軸方向の自然長より短くなるのにともなって軸方向に弾性圧縮する。そして、弾性係数(第三弾性係数K)に応じて第三反力F3を発生する。
【0074】
第二のばね座部材224に対向する前側には、第二リターンスプリング2cの内側に進入するように取り付けられる係止部材228が配設されている。係止部材228は前側が径方向に広がってフランジ部228aが形成され、フランジ部228aが第二のシリンダ202に嵌入されて固定される。また、フランジ部228aの周囲には係合溝228bが形成され、係合溝228bに取り付けられる環状のシール部材228cがフランジ部228aと第二のシリンダ202の間を液密に封じる。この構成によって、シリンダ部200(第二のシリンダ202)に充満するブレーキ液がフランジ部228aと第二のシリンダ202の間から漏出することが防止される。
また、フランジ部228aは後端側で第二リターンスプリング2cの前端側を受止める。
【0075】
第二のシリンダ202の前端側には、係止環225が嵌装される環状溝225aが第二のシリンダ202の内側を周回するように形成される。そして、係止部材228はフランジ部228aの前端側が環状溝225aよりも後端側になるように配置され、環状溝225aに嵌装される係止環225によって前方向(進出方向)への移動が規制される。この構成によって、係止部材228が第二のシリンダ202から抜け落ちることが防止される。さらに、係止部材228は、フランジ部228aの後端側から第二リターンスプリング2cによって前方向に付勢されてフランジ部228aの前端側が係止環225に押し付けられて固定される。
【0076】
第一、第二のばね座部材222,224の頂壁部222c,224cのそれぞれには、その中央部分に通孔222e,224eが開設されている。また、ゴムブッシュ226は、円柱形状の中空部226bを有する筒状の本体部226cにより実質的に形成されている。通孔222e,224eおよび、ゴムブッシュ226の中空部226bのそれぞれを貫通するようにロッド部材221が設けられている。
本実施形態において通孔224eの径は通孔222eの径より小さい。また、ロッド部材221は、後端側が通孔222eおよびゴムブッシュ226の中空部226bを挿通する程度に外径が大きく、前端側は通孔224eを挿通する程度に外径が小さくなって段付形状を呈する。そして、ロッド部材221の後端側は、第一のばね座部材222の頂壁部222cの後端側において通孔222eより拡径して抜け止めを構成している。一方、ロッド部材221の前端側の端部は通孔224eより前側で拡径して抜け止めを構成している。
ロッド部材221の前端側の抜け止めは、例えば、通孔224eを後側から挿通したロッド部材221の前端側をカシメ等で拡径して容易に形成できる。
【0077】
また、係止部材228の頂部228dは第二のばね座部材224の頂壁部224cと対向しており、シミュレータピストン2aの進出方向への変位を規定するストッパとなる。シミュレータピストン2aの進出方向(前方向)への変位にともなって進出方向に移動する第二のばね座部材224は、頂壁部224cが係止部材228の頂部228dに当接するまで移動する。
つまり、第二のばね座部材224の頂壁部224cが係止部材228の頂部228dに当接するまでシミュレータピストン2aが変位可能に構成される。
したがって、頂壁部224cが頂部228dに当接したときのシミュレータピストン2aの変位が、シミュレータピストン2aの進出方向の最大変位となる。
なお、頂部228dには、第二のばね座部材224の頂壁部224cから突出するロッド部材221の端部を収容する凹部が形成される。
また、係止部材228の前側が軽量化のために適宜肉抜きされる構成としてもよい。
【0078】
このように、第二リターンスプリング2cの前端側は係止部材228を介してストロークシミュレータ2の本体部220aで当接支持され、その後端側は第二のばね座部材224のフランジ部224aで当接支持される。また、第一リターンスプリング2bの前端側は第二のばね座部材224の円筒部224dの内側で頂壁部224cで当接支持され、その後端側は第一のばね座部材222のフランジ部222aで当接支持される。そして、第一のばね座部材222がシミュレータピストン2aの前端壁2a2に固着される。その結果、シミュレータピストン2aは、第一及び第二リターンスプリング2b、2cによって後方向(退避方向)に付勢される。
【0079】
第一および第二リターンスプリング2b、2cは力学的に直列に配置されている。第一および第二弾性係数K1,Kは、ブレーキペダルP(図1参照)の踏み込み初期時にシミュレータピストン2aに付与される反力(ブレーキ反力)の増加勾配を小さくし、踏み込み後期時にシミュレータピストン2aに付与される反力の増加勾配を大きくするように設定される。これは、ブレーキペダルPの踏み込み操作量に対するブレーキ反力を、ブレーキ液で作動する従来型のブレーキシステムにおけるブレーキ反力と同等とすることにより、従来型のブレーキシステムが搭載されているのか、または、バイ・ワイヤ式のブレーキシステムが搭載されているのかを運転者に意識させないという設計思想に基づく。
【0080】
このように、本実施形態に係るストロークシミュレータ2は、コイル状に形成される第二リターンスプリング2cの内側に、ガイド部材である第二のばね座部材224の円筒部224dが進入し、さらに、円筒部224dの内側に第一リターンスプリング2bが収納されるように構成される。
この構成によって、直列に配置される第一リターンスプリング2bと第二リターンスプリング2cを備えるストロークシミュレータ2の長さ(前側から後側に向かう長さ)を短くできる。
また、ゴムブッシュ226が第一リターンスプリング2bの内側に収納され、第一のばね座部材222の前端側でゴムブッシュ226を押圧するように構成される。第一のばね座部材222は、フランジ部222aの前端側で第一リターンスプリング2bを押圧するとともに頂壁部222cでゴムブッシュ226を押圧する。
この構成によって、第一リターンスプリング2bを配置するスペースに、第一リターンスプリング2bと並列にゴムブッシュ226を備えることができる。
したがって、第一リターンスプリング2bと直列に第二リターンスプリング2cを配置し、さらに、第一リターンスプリング2bと並列にゴムブッシュ226を備える構成としてもストロークシミュレータ2におけるシリンダ部200の空間資源を有効に利用でき、基体10(図2の(a)参照)の肥大化を抑制できる。
【0081】
また、前記したようにブレーキペダルP(図1参照)が踏み込み操作された場合、第一リターンスプリング2bが第二リターンスプリング2cより先に弾性変形(弾性圧縮)して、図5の(a)に示すように、第一のばね座部材222の円筒部222dは、フランジ部222aの前端側が第二のばね座部材224のフランジ部224aの後端側に当接するまで、第二のばね座部材224の円筒部224d内に進入する。このとき円筒部224dの開口部224d2はシミュレータピストン2a(より詳細には、第一のばね座部材222)で閉塞され、第一のばね座部材222の円筒部222dと第二のばね座部材224の円筒部224dの間に閉塞空間Area1が形成される。
【0082】
ストロークシミュレータ2のシリンダ部200(図4参照)にはブレーキ液が充満していることから、閉塞空間Area1にもブレーキ液が充満する。
この閉塞空間Area1が密閉された空間であると、シリンダ部200に充満するブレーキ液が好適に閉塞空間Area1へ流入せず、第一のばね座部材222が第二のばね座部材224から離反しにくくなる。例えばブレーキペダルP(図1参照)が解放されてシミュレータピストン2aに作用するブレーキ液圧が低下すると、第一リターンスプリング2bの反力によって第一のばね座部材222は退避方向に押される。このときに閉塞空間Area1にシリンダ部200からブレーキ液が供給されないと閉塞空間Area1に負圧が発生して第一のばね座部材222の退避方向への変位が阻害され、ひいては、シミュレータピストン2aの退避方向への変位が阻害されることになり、ストロークシミュレータ2の滑らかな動作が阻害される。
【0083】
そこで、図5の(a)、(b)に示すように、円筒部224dの外側(第二のシリンダ202)から内側に通じる流通路224d1が、例えば、第二のばね座部材224の円筒部224dに形成される構成とする。そして、この流通路224d1をブレーキ液が流通する構成とする。この構成によると、例えばブレーキペダルP(図1参照)が解放された場合に、第一リターンスプリング2bの反力によって第一のばね座部材222が退避方向に押されたとき、シリンダ部200(第二のシリンダ202)から流通路224d1を介して閉塞空間Area1にブレーキ液が流入する。したがって閉塞空間Area1に負圧は発生せず、第一のばね座部材222は第一リターンスプリング2bに生じる反力によって速やかに退避方向に変位する。そして、ストロークシミュレータ2は滑らかに動作する。
【0084】
流通路224d1が形成される位置は特に限定されない。しかしながら、例えば、フランジ部224aは前端側で第二リターンスプリング2cの後端側を受け止める構成であり、フランジ部224aの近傍には第二リターンスプリング2cの後端側が係止されている。したがって、フランジ部224aの近傍を避けて流通路224d1が形成される構成が好ましい。このような構成によって、第二リターンスプリング2cの後端側で閉鎖空間Area1へのブレーキ液の流入が阻害されることなく、効果的に閉鎖空間Area1にブレーキ液を流入させることができる。
【0085】
また、第二のばね座部材224の円筒部224dの内側には第一リターンスプリング2bが収納され、円筒部224dの内側で頂壁部224cの後端側は、第一リターンスプリング2bの前端側を受け止める。したがって、頂壁部224cの近傍を避けて流通路224d1が形成される構成が好ましい。このような構成によって、第一リターンスプリング2bの前端側で閉鎖空間Area1へのブレーキ液の流入が阻害されることなく、効果的に閉鎖空間Area1にブレーキ液を流入させることができる。
【0086】
以上のことから流通路224d1は、第二リターンスプリング2cの後端側を受け止めるためのフランジ部224aの近傍およびロッド部材221が貫通している通孔224e(図4参照)を設けた頂壁部224c近傍のようにある程度の剛性が必要な箇所を避けた円筒部224dに形成されることが好ましい。例えば、フランジ部224aの近傍および頂壁部224c近傍を避けた側壁部224bに流通路224d1が形成される構成が好ましい。
このような流通路224d1は、円筒部224dの内側または外側からのパンチ加工によって容易に形成できる。
【0087】
また、側壁部224bに限定されず、頂壁部224cに流通路224d1が形成される構成であってもよい。この場合も、第一リターンスプリング2bの前端側が係止される位置およびゴムブッシュ226で閉塞される位置を避けて流通路224d1が形成される構成が好ましい。
【0088】
また、流通路224d1の数も限定されない。1つの流通路224d1が形成される構成であってもよいし、2つ以上の流通路224d1が形成される構成であってもよい。また、円筒部224dと頂壁部224cのそれぞれに1つ以上の流通路224d1が形成される構成であってもよい。
また、流通路224d1の形状も限定されない。例えば、円形や楕円形の流通路224d1であってもよいし、正方形や長方形の流通路224d1であってもよい。
流通路224d1の数を貫通孔222d1の数よりも少なくすることで弾性力の大きな第二リターンスプリング2cを受止める第二のばね座部材224の剛性の低下を防止できる。
また、1つ形成される流通路224d1の開口面積または複数の流通路224d1の開口面積の合計を、1つ形成される貫通孔222d1の開口面積または複数の貫通孔222d1の開口面積の合計よりも大きくすることで、シミュレータピストン2aの変位が阻害されることを防止できる。
【0089】
また、本実施形態に係るシミュレータピストン2a(図4参照)は、第一のばね座部材222が取り付けられた一体構造となっているが、第一のばね座部材222が取り付けられない構成のシミュレータピストン2aであってもよい。この場合はシミュレータピストン2aの前壁部2a2(図4参照)が第一リターンスプリング2b(図4参照)およびゴムブッシュ226(図4参照)を押圧する。また、シミュレータピストン2aの前壁部2a2第二のばね座部材224の開口部224d2(図5の(a)参照)を閉塞するように構成される。
【符号の説明】
【0090】
1 マスタシリンダ(液圧発生手段)
2 ストロークシミュレータ
2a シミュレータピストン
2b 第一リターンスプリング(第一の弾性部材、反力発生手段)
2c 第二リターンスプリング(第二の弾性部材、反力発生手段)
200 シリンダ部
201 第一のシリンダ
202 第二のシリンダ
222d1 貫通孔(流通路)
224 第二のばね座部材(ガイド部材、反力発生手段)
224b 側壁部
224c 頂壁部
224d 円筒部(筒部)
224d1 流通路
224d2 開口部
226 ゴムブッシュ(第三の弾性部材)
P ブレーキペダル(ブレーキ操作子)
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】