(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
駆動コイルの熱を基体に吸収することができ、放熱性に優れるブレーキ液圧装置を提供する。ブレーキ液の流路を内包する基体(10)を有するブレーキ液圧装置であって、基体(10)の一面に配置された電磁弁と、電磁弁の軸周りに装着された駆動コイルと、を備え、基体(10)の一面には、駆動コイルの外周面に対向する壁面が設けられている構成とした。基体(10)の一面には、駆動コイルの下面(269)が当接し、駆動コイルの外周面と壁面との間にはクリアランスが形成されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すマスタシリンダ装置A1(ブレーキ液圧装置)を備えた車両用ブレーキシステムAは、原動機(エンジンやモータ等)の起動時に作動するバイ・ワイヤ(By Wire)式のブレーキシステムと、非常時や原動機の停止時などに作動する油圧式のブレーキシステムの双方を備えるものであり、電動モータ(図示略)を利用してブレーキ液圧を発生させるモータシリンダ装置A2と、車両挙動の安定化を支援するビークルスタビリティアシスト装置A3(以下「液圧制御装置A3」という。)と、を備えている。マスタシリンダ装置A1は、ブレーキペダル(ブレーキ操作子)Pの踏力によってブレーキ液圧を発生させる。マスタシリンダ装置A1、モータシリンダ装置A2および液圧制御装置A3は、別ユニットとして構成されており、外部配管を介して連通している。
【0020】
車両用ブレーキシステムAは、エンジン(内燃機関)のみを動力源とする自動車のほか、モータを併用するハイブリッド自動車やモータのみを動力源とする電気自動車・燃料電池自動車などにも搭載することができる。
【0021】
マスタシリンダ装置A1は、タンデム式のマスタシリンダ1と、ストロークシミュレータ2と、リザーバ3と、常開型遮断弁(電磁弁)4,5と、常閉型遮断弁(電磁弁)6と、圧力センサ7,8と、メイン液圧路(流路)9a,9bと、連絡液圧路(流路)9c,9dと、分岐液圧路9eとを備えている。
【0022】
マスタシリンダ1は、ブレーキペダルPの踏力をブレーキ液圧に変換するものであり、第一シリンダ穴11aの底壁側に配置された第一ピストン1aと、プッシュロッドRに接続された第二ピストン1bと、第一ピストン1aと第一シリンダ穴11aの底壁との間に配置された第一リターンスプリング1cと両ピストン1a,1bの間に配置された第二リターンスプリング1dとを備えている。第二ピストン1bは、プッシュロッドRを介してブレーキペダルPに連結されている。両ピストン1a,1bは、ブレーキペダルPの踏力を受けて摺動し、圧力室1e,1f内のブレーキ液を加圧する。圧力室1e,1fは、メイン液圧路9a,9bに通じている。圧力室1e,1fのブレーキ液圧は同圧である。
【0023】
ストロークシミュレータ2は、擬似的な操作反力を発生させるものであり、第二シリンダ穴11b内を摺動するピストン2aと、ピストン2aを付勢する大小二つのリターンスプリング2b,2cとを備えている。ストロークシミュレータ2は、メイン液圧路9aおよび分岐液圧路9eを介して圧力室1eに通じており、圧力室1eで発生したブレーキ液圧によって作動する。
【0024】
リザーバ3は、ブレーキ液を貯溜する容器であり、マスタシリンダ1に接続される給油口3a,3bと、メインリザーバ(図示略)から延びるホースが接続される管接続口3cと、を備えている。
【0025】
常開型遮断弁4,5は、メイン液圧路9a,9bを開閉するものであり、いずれもノーマルオープンタイプの電磁弁からなる。一方の常開型遮断弁4は、メイン液圧路9aと分岐液圧路9eとの交差点からメイン液圧路9aと連絡液圧路9cとの交差点に至る区間においてメイン液圧路9aを開閉する。他方の常開型遮断弁5は、メイン液圧路9bと連絡液圧路9dとの交差点よりも上流側においてメイン液圧路9bを開閉する。
また、常閉型遮断弁6は、分岐液圧路9eを開閉するものであり、ノーマルクローズタイプの電磁弁からなる。
【0026】
図3に示すように、常開型遮断弁4は、電磁弁4aと、この電磁弁4aを駆動するコイル26(駆動コイル)とからなり、常開型遮断弁5は、電磁弁5aと、この電磁弁5aを駆動するコイル26とからなる。また、常閉型遮断弁6は、電磁弁6aと、この電磁弁6aを駆動するコイル26とからなる。本実施形態では、各弁に共通するコイル26を用いている。
【0027】
コイル26は、略円筒状を呈しており、
図9に示すように、電磁弁4a,5a,6a(電磁弁4a,5aのみ図示)が挿入される中心孔260を有している。コイル26は、巻線Mが巻回された樹脂製のボビン261と、ボビン261を囲繞し磁路を形成するヨーク262と、を備える。
【0028】
ボビン261は、ターミナル保持部263と、位置決め用突起264とを備える。ターミナル保持部263には、接続端子26aが設けられている。位置決め用突起264は、ボビン261の底部からハウジング20と反対側(基体10側)に向けて突設されている。ヨーク262には、位置決め用突起264が係合する筒状の係合部266が形成されている。また、ヨーク262の下端部には、電磁弁4a,5a,6a(電磁弁4a,5aのみ図示)に沿うスカート部268が設けられている。
【0029】
圧力センサ7,8は、ブレーキ液圧の大きさを検知するものであり、
図1に示すように、メイン液圧路9a,9bに通じるセンサ用開口部44,45(
図6参照)に装着されている。一方の圧力センサ7は、常開型遮断弁4よりも下流側に配置されており、常開型遮断弁4が閉じられた状態(=メイン液圧路9aが遮断された状態)にあるときに、モータシリンダ装置A2で発生したブレーキ液圧を検知する。他方の圧力センサ8は、常開型遮断弁5よりも上流側に配置されており、常開型遮断弁5が閉じられた状態(=メイン液圧路9bが遮断された状態)にあるときに、マスタシリンダ1で発生したブレーキ液圧を検知する。圧力センサ7,8で取得された情報は、図示せぬ電子制御ユニット(ECU)に出力される。
圧力センサ7,8には、
図3に示すように、端子7a,8aが設けられている。
【0030】
図1に示すように、メイン液圧路9a,9bは、マスタシリンダ1を起点とする液圧路である。メイン液圧路9a,9bの終点である出力ポート15a,15bには、液圧制御装置A3に至る管材Ha,Hbが接続されている。
【0031】
連絡液圧路9c,9dは、入力ポート15c,15dからメイン液圧路9a,9bに至る液圧路である。入力ポート15c,15dには、モータシリンダ装置A2に至る管材Hc,Hdが接続されている。つまり、モータシリンダ装置A2で発生したブレーキ液圧がマスタシリンダ装置A1を通過して液圧制御装置A3に出力されるようになっている。
【0032】
分岐液圧路9eは、一方のメイン液圧路9aから分岐し、ストロークシミュレータ2に至る液圧路である。
【0033】
マスタシリンダ装置A1は、管材Ha,Hbを介して液圧制御装置A3に連通しており、常開型遮断弁4,5が開弁状態にあるときにマスタシリンダ1で発生したブレーキ液圧は、メイン液圧路9a,9bおよび管材Ha,Hbを介して液圧制御装置A3に入力される。
【0034】
モータシリンダ装置A2は、図示は省略するが、スレーブシリンダ内を摺動するスレーブピストンと、電動モータおよび駆動力伝達部を有するアクチュエータ機構と、スレーブシリンダ内にブレーキ液を貯溜するリザーバとを備えている。
電動モータは、図示せぬ電子制御ユニットからの信号に基づいて作動する。駆動力伝達部は、電動モータの回転動力を進退運動に変換したうえでスレーブピストンに伝達する。スレーブピストンは、電動モータの駆動力を受けてスレーブシリンダ内を摺動し、スレーブシリンダ内のブレーキ液を加圧する。
モータシリンダ装置A2で発生したブレーキ液圧は、前記したように、管材Hc,Hdを介してマスタシリンダ装置A1に入力され、連絡液圧路9c,9dおよび管材Ha,Hbを介して液圧制御装置A3に入力される。リザーバには、メインリザーバ(図示略)から延びるホースが接続される。
【0035】
液圧制御装置A3は、車輪のスリップを抑制するアンチロックブレーキ制御(ABS制御)、車両の挙動を安定化させる横滑り制御やトラクション制御などを実行し得るような構成を具備しており、管材を介してホイールシリンダW,W,…に接続されている。なお、図示は省略するが、液圧制御装置A3は、電磁弁やポンプ等が設けられた液圧ユニット、ポンプを駆動するためのモータ、電磁弁やモータ等を制御するための電子制御ユニットなどを備えている。
【0036】
次に車両用ブレーキシステムAの動作について概略説明する。
車両用ブレーキシステムAが正常に機能する正常時には、常開型遮断弁4,5が弁閉状態となり、常閉型遮断弁6が弁開状態となる。かかる状態でブレーキペダルPを操作すると、マスタシリンダ1で発生したブレーキ液圧は、ホイールシリンダWに伝達されずにストロークシミュレータ2に伝達され、ピストン2aが変位することにより、ブレーキペダルPのストロークが許容されるとともに、擬似的な操作反力がブレーキペダルPに付与される。
【0037】
また、図示しないストロークセンサ等によってブレーキペダルPの踏み込みが検知されると、モータシリンダ装置A2の電動モータが駆動され、スレーブピストンが変位することによりシリンダ内のブレーキ液が加圧される。
図示せぬ電子制御ユニットは、モータシリンダ装置A2から出力されたブレーキ液圧(圧力センサ7で検知されたブレーキ液圧)とマスタシリンダ1から出力されたブレーキ液圧(圧力センサ8で検知されたブレーキ液圧)とを対比し、その対比結果に基づいて電動モータの回転数等を制御する。
【0038】
モータシリンダ装置A2で発生したブレーキ液圧は、液圧制御装置A3を介してホイールシリンダW,W,…に伝達され、各ホイールシリンダWが作動することにより各車輪に制動力が付与される。
【0039】
なお、モータシリンダ装置A2が作動しない状況(例えば、電力が得られない場合や非常時など)においては、常開型遮断弁4,5がいずれも弁開状態となり、常閉型遮断弁6が弁閉状態となるので、マスタシリンダ1で発生したブレーキ液圧は、ホイールシリンダW,W,…に伝達されるようになる。
【0040】
次に、マスタシリンダ装置A1の具体的な構造を説明する。
本実施形態のマスタシリンダ装置A1は、
図2(a)(b)の基体10の内部あるいは外部に前記の各種部品を組み付けるとともに、電気によって作動する電気部品(常開型遮断弁4,5、常閉型遮断弁6および圧力センサ7,8(
図1参照)をハウジング20で覆うことによって形成されている。なお、ハウジング20内には、機械部品等が収納されてもよい。
【0041】
基体10は、アルミニウム合金製の鋳造品であり、シリンダ部11(
図2(b)参照、以下同じ)と、車体固定部12と、リザーバ取付部13(
図2(b)参照、以下同じ)と、ハウジング取付部14と、配管接続部15とを備えている。また、基体10の内部には、メイン液圧路9a,9bや分岐液圧路9eとなる孔などが形成されている。液圧路(流路)の詳細は、後記する。
【0042】
シリンダ部11には、マスタシリンダ用の第一シリンダ穴11aと、ストロークシミュレータ用の第二シリンダ穴11b(いずれも
図2(b)に破線で図示)とが形成されている。両シリンダ穴11a,11bは、いずれも有底円筒状であり、車体固定部12に開口するとともに、配管接続部15に向けて延在している。第一シリンダ穴11aには、マスタシリンダ1(
図1参照)を構成する部品(第一ピストン1a、第二ピストン1b、第一リターンスプリング1cおよび第二リターンスプリング1d)が挿入され、第二シリンダ穴11bには、ストロークシミュレータ2を構成する部品(ピストン2aおよびリターンスプリング2b,2c)が挿入される。
【0043】
車体固定部12は、図示しないトーボードなどの車体側固定部位に固定される。車体固定部12は、基体10の後面部に形成されており、フランジ状を呈している。車体固定部12の周縁部(シリンダ部11から張り出した部分)には、ボルト挿通孔12a(
図3参照)が形成されている。ボルト挿通孔12aには、固定ボルト12b(
図2(a)参照)が固定される。
【0044】
図2(b)、
図5(a)に示すように、リザーバ取付部13は、リザーバ3の取付座となる部位であり、基体10の上面部に2つ(
図2(b)では一方のみ図示)形成されている。リザーバ取付部13には、リザーバユニオンポートが設けられている。なお、リザーバ3は、基体10の上面に突設された連結部13a(
図5(a)参照)を介して基体10に固定されている。
リザーバユニオンポートは、円筒状を呈しており、その底面から第一シリンダ穴11aに向かって延びる孔を介して第一シリンダ穴11aと連通している。リザーバユニオンポートには、リザーバ3の下部に突設された図示しない給液口が接続され、リザーバユニオンポートの上端には、リザーバ3の容器本体が載置される。
【0045】
配管接続部15は、管取付座となる部位であり、
図2(a)に示すように、基体10の前面部に形成されている。配管接続部15には、
図2(b)に示すように、二つの出力ポート15a,15bと、二つの入力ポート15c,15dが形成されている。出力ポート15a,15bには、液圧制御装置A3に至る管材Ha,Hb(
図1参照)が接続され、入力ポート15c,15dには、モータシリンダ装置A2に至る管材Hc,Hd(
図1参照)が接続される。
【0046】
ハウジング取付部14は、ハウジング20の取付座となる部位であり、
図3に示すように、フランジ状を呈している。ハウジング取付部14は、ハウジング20が装着される装着面14a(基体10の軸線(マスタシリンダ1の中心軸O)と略直交する一面)を有している。
【0047】
装着面14aは、
図4(a)に示すように、側面視で略矩形状に形成された平らな面であり(
図5(a)(b)参照)、その四隅角部には、ハウジング20を取り付けるための4つの取付用孔部16が形成されている。
また、装着面14aには、3つの弁装着穴141,142,143と、2つのセンサ装着穴145,146と、2つの流路孔(横孔)147,148、3つの回り止め用凹部151,152,153と、が形成されている。
【0048】
第一の弁装着穴141には、マスタシリンダ1用の第一の常開型遮断弁4が装着され、第二の弁装着穴142には、マスタシリンダ1用の第二の常開型遮断弁5が装着される。また、第3の弁装着穴143には、ストロークシミュレータ2用の常閉型遮断弁6が装着される。
3つの弁装着穴141〜143のうちの弁装着穴141,143の周囲には、装着面14aから基体10の内部側に向かって窪むザグリ状の凹部30,30が設けられており、弁装着穴141,143は、弁装着穴142に比べて基体10の内部側に一段凹んで形成されている。つまり、弁装着穴142は、装着面14aの大部分を占める平坦面に開口しており、弁装着穴141,143は、平坦面よりも一段下がった凹部30の底面31に開口している。
凹部30は、底面31と、内周面(周壁、壁面)32と、を有してなる(
図10(a)参照)。
図9に示すように、底面31には、コイル26のヨーク262の下面269が当接し、また、内周面32には、ヨーク262の下部外周面267(
図10(b)参照)が対向配置される。つまり、コイル26は、凹部30内において基体10の一面(装着面14a)に当接している。
凹部30とコイル26との関係についての詳細は後記する。
【0049】
2つのセンサ装着穴145,146には、圧力センサ7,8が取り付けられる。2つの流路孔147,148は、各凹部30の底面31に開口しており、流路孔147,148には、その開口を封止するための球体が圧入され加締められている。
3つの回り止め用凹部151〜153は、3つの弁装着穴141〜143の周囲に近接して設けられている。回り止め用凹部151〜153は、コイル26の位置決め用突起264(
図9参照)に対応して設けられており、位置決め用突起264が係合されることによりコイル26の回り止め凹部として機能する。
回り止め用凹部151,153は、凹部30,30の底面31,31に開口形成されている。底面31,31において、回り止め用凹部151,153は、前記した流路孔147,148と周方向に間隔を空けて配置されている。本実施形態では、底面31,31において周方向に90度の間隔を空けて配置されている。
【0050】
弁装着穴141〜143およびセンサ装着穴145,146は、ブレーキ液が流れるメイン液圧路9a,9b(
図1参照、以下同じ)と連通している。なお、
図3では、流路孔147,148に加締められた球体の図示を省略している。
【0051】
ここで、弁装着穴141,142は、装着面14aに垂直な方向となる右側方から見て、マスタシリンダ1の中心軸Oを挟んで上下に形成されている(
図4(a)参照)。つまり、
図4(b)に示すように、中心軸Oを含み装着面14aに垂直な基準面Sを境にして弁装着穴141,142が上下に配置されている。これによって、メイン液圧路9a,9bを開閉するマスタシリンダ1用の常開型遮断弁4,5が、マスタシリンダ1の中心軸Oを挟んで上下に配置されるようになっている。
【0052】
また、2つのセンサ装着穴145と弁装着穴143とは、同様に、マスタシリンダ1の中心軸O(基準面S)を挟んで上下に形成されている。つまり、メイン液圧路9aの圧力を検出する圧力センサ7と、分岐液圧路9e(
図1参照)を開閉する常閉型遮断弁6とが、マスタシリンダ1の中心軸Oを挟んで上下に配置されるようになっている。
【0053】
また、3つの弁装着穴141〜143とセンサ装着穴145とが、四角形の頂点を形成するように配置されている。つまり、
図4(a)に示すように、装着面14a上において、3つの弁装着穴141〜143の中心位置とセンサ装着穴145の中心位置とを結んだ線分L1,L2,L3,L4が四角形(台形)をなし、3つの電磁弁4a〜6aと圧力センサ7とが四角形(台形)を構成するように配置される。
【0054】
また、3つの弁装着穴141〜143の中心位置を結んだ線分L1,L2,L5が二等辺三角形を構成するように配置されている。また、この二等辺三角形の頂角P1の二等分線L6上に、2つのセンサ装着穴145,146のうちの一方のセンサ装着穴146が配置されている。
また、一方のセンサ装着穴146は、前記した二等辺三角形の外側の領域に配置されている。そして、一方のセンサ装着穴146は、前記した二等辺三角形の外側の領域おいて前記した四角形の内側に配置されている。さらに、一方のセンサ装着穴146は、凹部30,30の間に配置されている。
また、一方のセンサ装着穴146は、凹部30,30の流路孔147,148の中心位置を結んだ図示しない線分上に配置されている。
【0055】
ハウジング20は、合成樹脂製の箱体であり、
図9に示すように、表側および裏側に開口した周壁部21と、周壁部21の表側の開口部21aを閉塞するカバー22と、周壁部21の裏側の開口部21bの外周縁部から突出したフランジ部23と、周壁部21に突設された2つのコネクタ24,25(
図6参照)と、周壁部21内に設けられた中間壁部40と、中間壁部40に埋設されたコイル用バスバー51およびセンサ用バスバー52(
図3参照、以下、バスバー51,52という)と、を備えている。
【0056】
周壁部21は、ハウジング20に取り付けられた部品(常開型遮断弁4,5、常閉型遮断弁6および圧力センサ7,8、
図1参照、以下同じ)を液密に覆う部位であり、その外周形状は略四角形に形成されている(
図8(a)参照)。
【0057】
カバー22は、
図2(a)(b)に示すように、周壁部21の表側の開口部21aを密閉する蓋体であり、溶着や接着等の手段により周壁部21の表側の端面に固着される。
【0058】
フランジ部23は、ハウジング取付部14に圧着される部位である。フランジ部23の四隅には、ハウジング取付部14の取付用孔部16(
図3参照)に合わせてねじ孔23aが形成されている。このねじ孔23aに挿通させたねじ17(
図2(a)参照)を、ハウジング取付部14の取付用孔部16に螺合させることで、ハウジング取付部14にハウジング20が固定される。
また、フランジ部23の裏側の端面には、
図9に示すように、ハウジング取付部14(装着面14a)に密着する無端状のシール部材23bが装着されている。
【0059】
コネクタ24,25は、
図7に示すように、角筒状を呈しており、上下方向に間隔を空けて周壁部21の前面に突設されている。上側のコネクタ24は、各コイル26に電力を供給するための図示しないケーブルが接続される。下側のコネクタ25は、圧力センサ7,8から出力された検出信号を図示しない電子制御ユニットに送るためのケーブルが接続される。
【0060】
中間壁部40は、
図9に示すように、周壁部21内の空間を表側と裏側とに区画する仕切壁である。中間壁部40は、
図6に示すように、略四角形に形成されており、中間壁部40の後下側の隅部42bは、他の部位よりも表側にオフセットされている(突出している)。これにより中間壁部40の裏面側には、
図8(b)に示すように、オフセットによる凹部49(
図7参照)が形成されている。この凹部49は、コイル26を収容可能な大きさを備えている。これによって、後記するように、隅部42bにおける常開型遮断弁5の電磁弁5aの装着位置を中間壁部40の表側にオフセットすることができる。
【0061】
中間壁部40の裏側には、
図7に示すように、常開型遮断弁4,5、常閉型遮断弁6、および圧力センサ7,8が収容される収容室27が形成されている。
中間壁部40には、
図8(a)に示すように、3つの弁挿入孔41,42,43と、3つのコイル用開口部41a,42a,43a、2つのセンサ用開口部44,45と、が表裏方向に貫通している。
【0062】
第一の弁挿入孔41は、マスタシリンダ1用の常開型遮断弁4に備わる電磁弁4aの上端部が挿入される円筒状の孔であり、中間壁部40の後上側の隅部41bに形成されている。
第二の弁挿入孔42は、マスタシリンダ1用の常開型遮断弁5の電磁弁5aの上端部が挿入される円筒状の孔であり、中間壁部40の後下側の隅部42bに形成されている。
第三の弁挿入孔43は、ストロークシミュレータ2用の常閉型遮断弁6の電磁弁6aの上端部が挿入される円筒状の孔であり、中間壁部40の前下側の隅部43bに形成されている。
【0063】
第一のコイル用開口部41aは、常開型遮断弁4のコイル26の接続端子26a(
図3参照、以下同じ)が挿通される開口であり、弁挿入孔41の下側に配置されている。
第二のコイル用開口部42aは、常開型遮断弁5のコイル26の接続端子26aが挿通される開口であり、弁挿入孔42の上側に配置されている。
第三のコイル用開口部43aは、常閉型遮断弁6のコイル26の接続端子26aが挿通される開口であり、弁挿入孔43の上側に配置されている。
各コイル用開口部41a,42a,43aを通じて、コイル26の接続端子26aはバスバー51に電気的に接続される。
【0064】
センサ用開口部44は、中間壁部40の前上側の隅部44bに開口している。センサ用開口部44内には、圧力センサ7の端子7a(
図3参照)が挿入される。センサ用開口部44を通じて、圧力センサ7の端子7aはバスバー52に電気的に接続される。
センサ用開口部45は、中間壁部40の中央部に開口している。センサ用開口部45内には、圧力センサ8の接続端子8a(
図3参照)が挿入される。センサ用開口部45を通じて、圧力センサ8の接続端子8aはバスバー52に電気的に接続される。
【0065】
本実施形態では、
図7に示すように、中間壁部40の裏面40bと各コイル26との間に付勢手段としての弾性部材46が介設されている。弾性部材46は、
図9に示すように、側面視で略V字状に形成された板ばねであり、各コイル26の振動を吸収するとともに、各コイル26の回動を規制する。なお、付勢手段としてコイル状の弾性部材を用いてもよい。
【0066】
また、弾性部材46は、各コイル26を基体10に向けて付勢する。これにより、
図9に示すように、コイル26のヨーク262の下面269が装着面14aに設けられた凹部30に入り込んで、その底面31に当接する。
また、常開型遮断弁5のコイル26のヨーク262の下面269が装着面14aに当接する。さらに、図示は省略するが、常閉型遮断弁6のコイル26のヨーク262の下面269が凹部30に入り込んで、その底面31に当接する。
コイル26を基体10に当接させると、コイル26で発生した熱をヨーク262の下面269を通じて基体10に伝達することができる。
【0067】
図10(b)に示すように、ヨーク262の下面269が凹部30の底面31に当接した状態で、ヨーク262の下部外周面267と壁面となる凹部30の内周面32との間には、クリアランスCが形成されている。つまり、ヨーク262の下部外周面267は、凹部30の内周面32に当接しておらず、クリアランスCを有して対向配置されている。
【0068】
次に、マスタシリンダ装置A1に設けられる流路を詳細に説明する。なお、説明において、マスタシリンダ装置A1(基体10)の前後方向において配管接続部15が設けられる側を前面、車体固定部12が設けられる側を後面、リザーバ3が装着される側を上面、これとは反対側を下面、ストロークシミュレータ2が配置される側を左側面、装着面14aが形成される側を右側面として説明する。
【0069】
図16に示すように、リザーバ取付部13,13は、有底円筒状穴である。
図12に示すように、リザーバ取付部13,13は、前後方向(マスタシリンダ1の軸方向)に間隔を空けて配置されている。
図15(a)に示すように、前面に近い側のリザーバ取付部13は、第一流路61を介してマスタシリンダ1の第一シリンダ穴11a(第一ピストン1a側、以下、プライマリ側という)と連通している。また、後面に近い側のリザーバ取付部13は、
図15(b)に示すように、第二流路62を介してマスタシリンダ1の第一シリンダ穴11a(第二ピストン1b側、以下、セカンダリ側という)と連通している。第一流路61および第二流路62は、リザーバ取付部13,13の底面からマスタシリンダ1の第一シリンダ穴11aに向かって穿設された縦孔からなる。
【0070】
第一流路61には、
図18に示すように、横孔61aが連通し、横孔61aの途中にはこれと直交するようにして横孔61bが連通している。横孔61aは、第二シリンダ穴11bの前部(面部)の上方に配設されている。横孔61aは、第二シリンダ穴11bの前部を越えるように基体10の左側面から右側面に向かって穿設され、右端が第一流路61に連通している。横孔61bは、第二シリンダ穴11bの段付き部11b1の内面から前面に向かって穿設され、前端が横孔61aに連通している。
【0071】
第一シリンダ穴11aのプライマリ側は、
図17に示すように、第三流路63を介して弁装着穴143に連通している。第三流路63は、シリンダ側横孔63aと、縦孔63bと、弁側横孔63cとからなる。シリンダ側横孔63aは、基体10の右側面から左側面に向かって穿設され、左端が第一シリンダ穴11aのプライマリ側に連通している。縦孔63bは、基体10の下面から上面に向かって穿設され、上端がシリンダ側横孔63aに連通している。弁側横孔63cは、基体10の前面から後面に向かって穿設され、縦孔63bと交差するとともに弁装着穴143の周壁を貫通して、
図11に示すように、後端が弁装着穴142の近傍に達している。
【0072】
弁装着穴143は、有底の段付き円筒状の穴であり、
図13、
図15(a)、
図19に示すように、第四流路64を介してストロークシミュレータ2の第二シリンダ穴11bに連通している。第四流路64は、弁側横孔64aと、縦孔64bと、シリンダ側第一横孔64cと、シリンダ側第二横孔64dとからなる。弁側横孔64aは、弁装着穴143の底面から基体10の左側面に向かって穿設されている。弁側横孔64aは、第一シリンダ穴11aの前部の下方を通って第一シリンダ穴11aと第二シリンダ穴11bとの間の領域に至る。縦孔64bは、基体10の下面から上面に向かって穿設され、弁側横孔64aの左端に交差している。
シリンダ側第一横孔64cは、
図12に示すように、基体10の前面から後面に向かって穿設され、後端が縦孔64bの上端に連通している。シリンダ側第二横孔64dは、基体10の左側面から右側面に向かって穿設され、第二シリンダ穴11bの前側上部の周壁を貫通して右端がシリンダ側第一横孔64cの途中部分に連通している。なお、シリンダ側第二横孔64dには、液導ポート64eが設けられている。
【0073】
前記した第三流路63の弁側横孔63cは、
図11、
図17に示すように、第五流路65を介して弁装着穴141に連通している。第五流路65は、縦孔65aと、第一横孔65b(
図17参照)と、第二横孔65c(
図17参照)とからなる。縦孔65aは、弁装着穴141と弁装着穴143との間の領域において、基体10の下面から上面に向かって穿設され、途中部分が第三流路63の弁側横孔63cの後端に交差している。第一横孔65bは、弁装着穴141の前方に配置されており、凹部30の底面31(
図3参照、以下同じ)から基体10の左側面に向かって穿設され、
図17に示すように、途中部分が縦孔65aの上端に交差している。第二横孔65cは、第一シリンダ穴11aの上方に配置されており(
図15(b)参照)、基体10の後面から前面に穿設され、有底の段付き円筒状に形成された弁装着穴141の底部側壁を前後方向に貫通して第一横孔65bの後端に達している。
【0074】
弁装着穴141は、
図12、
図17に示すように、第六流路66を介して、センサ装着穴145および出力ポート15a,入力ポート15cに連通している。第六流路66は、第一横孔66aと、縦孔66bと、第二横孔66cと、第三横孔66dと、第四横孔66eとからなる。第一横孔66aは、基体10の前面から後面に向かって穿設され、センサ装着穴145の上部周壁を貫通して弁装着穴141の上部周壁にまで達している。第一横孔66aと弁装着穴141との交差位置は、第五流路65の第二横孔65cと弁装着穴141との交差位置よりも装着面14a側である。縦孔66bは、基体10の上面から下面に向かって穿設され、下端が第一横孔66aに連通している。第二横孔66cは、
図11に示すように、有底円筒状の入力ポート15cの底面から基体10の後面に向かって穿設され、後端が縦孔66bに連通している。
【0075】
第三横孔66dは、
図12に示すように、センサ装着穴145の底面から基体10の左側面に向かって穿設されている。第四横孔66eは、有底円筒状の出力ポート15aの底面から基体10の後面に向かって穿設され、第三横孔66dの左端に連通している。
つまり、出力ポート15a,入力ポート15cは、第六流路66を介して相互に連通している。なお、入力ポート15cは、出力ポート15aの右斜め上方に位置している。
【0076】
第一シリンダ穴11aのセカンダリ側は、
図15(b)に示すように、第七流路67を介してセンサ装着穴146および弁装着穴142に連通している。第七流路67は、センサ用横孔67aと、縦孔67bと、横孔67cとからなる。センサ用横孔67aは、センサ装着穴146の底面から基体10の左側面に向かって穿設され、後端が第一シリンダ穴11aのセカンダリ側に連通している。縦孔67bは、第一シリンダ穴11aの右側(装着面14a側)において、基体10の下面から上面に向かって穿設され、上端がセンサ装着穴146の底面に連通している。横孔67cは、
図16に示すように、基体10の後面から前面に向かって穿設され、センサ装着穴146の底部側壁を前後方向に貫通して前端が縦孔67bに交差している。
【0077】
弁装着穴142は、有底の段付き円筒状の穴であり、
図17に示すように、第八流路68を介して出力ポート15b,入力ポート15dに連通している。第八流路68は、弁側縦孔68aと、下横孔68bと、ポート側縦孔68cと、第一上横孔68dと、第二上横孔68eとからなる。弁側縦孔68aは、
図14、
図20にも示すように、基体10の下面から上面に向かって穿設され、弁装着穴142の周壁の下部に連通している。下横孔68bは、有底円筒状の入力ポート15dの底面から後面に向かって穿設され、弁装着穴143の下方を通って後端が弁側縦孔68aに連通している。ポート側縦孔68cは、弁装着穴143の前方において基体10の下面から上面に向かって穿設され、途中部分が下横孔68bに交差している。第一上横孔68dは、弁装着穴143の前方において凹部30の底面31から基体10の左側面に向かって穿設されている。第二上横孔68eは、有底円筒状の出力ポート15bの底面から基体10の後面に向かって穿設され、後端が第一上横孔68dの左端に連通している。
つまり、出力ポート15bと入力ポート15dとは、第八流路68を介して互いに連通している。なお、入力ポート15dは、出力ポート15bの右斜め下方に位置している。
【0078】
なお、
図16に示すように、基体10の車体固定部12には、通気孔70が開口形成されている。この通気孔70は、有底円筒状であり、底面から基体10の前面に向かって穿設された連通孔70aを有する。この連通孔70aの前端には、基体10の右側面(装着面14a)から左側面に向けて穿設された孔部71が連通している。通気孔70は、水分の透過を阻止して空気の透過のみを許容する図示しない通気防水部材で閉塞されている。通気防水部材は、例えば、ゴアテックス(登録商標)等で形成されるとよい。これにより、通気孔70を通じて基体10の外部と装着面14aに密着固定されるハウジング20の内部とが連通している。
【0079】
ここで、メイン液圧路9aは、第三流路63から第五流路65に至り、弁装着穴141を介して第六流路66の第一横孔66aからセンサ装着穴145、さらには、第三横孔66d,第四横孔66eを通じて出力ポート15aに至る流路によって構成されている。
また、メイン液圧路9bは、第七流路67(センサ装着穴146)から弁装着穴142を通じて第八流路68から出力ポート15bに至る流路によって構成されている。
また、連絡液圧路9cは、入力ポート15cに接続された第六流路66(第二横孔66c,縦孔66b,第一横孔66a)によって構成されている。
さらに、連絡液圧路9dは、入力ポート15dに接続された第八流路68(下横孔68b)によって構成されている。
また、分岐液圧路9eは、弁装着穴143から第四流路64を通じてストロークシミュレータ2の第二シリンダ穴11bに至る流路によって構成されている。
【0080】
次にマスタシリンダ装置A1(基体10)におけるブレーキ液の流れについて説明する。
車両用ブレーキシステムA(
図1参照)が正常に機能する正常時、つまり、常開型遮断弁4,5が弁閉しており、常閉型遮断弁6が弁開している状態で、ブレーキペダルP(
図1参照)を操作すると、マスタシリンダ1で発生したブレーキ液圧は、
図17に矢印で示すように、第三流路63から弁装着穴143を介して第四流路64に流れ、その後、
図15(a)に矢印で示すように、第四流路64を通じてストロークシミュレータ2の第二シリンダ穴11bに流入する。
なお、ストロークシミュレータ2の作動による容積の変化で、第二シリンダ穴11bからブレーキ液が押し出され、この押し出されたブレーキ液は、横孔61b,横孔61aを通じて第一流路61に流れ、マスタシリンダ1(リザーバ3)に戻される(
図18参照)。
【0081】
これにより、マスタシリンダ1で発生したブレーキ液圧は、ホイールシリンダWに伝達されずにストロークシミュレータ2に伝達され、ピストン2aが変位することにより、ブレーキペダルPのストロークが許容されるとともに、擬似的な操作反力がブレーキペダルPに付与される。
【0082】
また、図示しないストロークセンサ等によってブレーキペダルPの踏み込みが検知されると、モータシリンダ装置A2の電動モータが駆動され、スレーブピストンが変位することによりシリンダ内のブレーキ液が加圧される。
加圧されたブレーキ液は、管材Hc(
図1参照)を通じて入力ポート15cに入力され、
図18に矢印で示すように、入力ポート15cから第六流路66(センサ装着穴145)を通じて出力ポート15aに流れる。
【0083】
そして、加圧されたブレーキ液は、出力ポート15aから液圧制御装置A3を介してホイールシリンダW,Wに流れる。これにより、各ホイールシリンダWが作動することにより各車輪に制動力が付与される。
【0084】
また、モータシリンダ装置A2で加圧されたブレーキ液は、管材Hd(
図1参照)を通じて入力ポート15dに入力され、
図19に矢印で示すように、入力ポート15dから第八流路68を通じて出力ポート15bに流れる。
【0085】
一方、モータシリンダ装置A2が作動しない状況(例えば、電力が得られない場合や非常時など)においては、常開型遮断弁4,5がいずれも弁開状態となり、常閉型遮断弁6が弁閉状態となるので、マスタシリンダ1で発生したブレーキ液圧は、メイン液圧路9a,9bを通じてホイールシリンダW,W,…に直接伝達される。
【0086】
つまり、マスタシリンダ1のプライマリ側においては、マスタシリンダ1で発生したブレーキ液圧が、メイン液圧路9aを構成している第三流路63、第五流路65、弁装着穴141、第六流路66(センサ装着穴145)に流れ、出力ポート15aを通じて出力される。
また、マスタシリンダ1のセカンダリ側においては、マスタシリンダ1で発生したブレーキ液圧が、
図15(b)に矢印で示すように、メイン液圧路9bを構成する第七流路67(センサ装着穴146)から弁装着穴142に流れ、その後、
図14に矢印で示すように、第八流路68を通じて出力ポート15bから出力される。
【0087】
以上説明した本実施形態によれば、流路を開閉する2つの常開型遮断弁4,5が、基体10の一面に垂直な方向から見て、マスタシリンダ1の中心軸Oを挟んで配置されているので、マスタシリンダ1と2つの常開型遮断弁4,5とを繋ぐ流路を短く形成することができる。これにより、流路の構成を簡略化して基体10(マスタシリンダ装置A1)の小型化を図ることができる。
【0088】
また、マスタシリンダ1に繋がる2つのメイン液圧路9a,9bを開閉する常開型遮断弁4,5がマスタシリンダ1の中心軸Oを挟んで配置されるので、マスタシリンダ1がタンデム式の場合であってもマスタシリンダ1に繋がる2つのメイン液圧路9a,9bを短く形成することができるので、流路の構成を簡略化して基体10(マスタシリンダ装置A1)の小型化を図ることができる。
【0089】
また、弁装着穴141,143に凹部30,30が設けられているので、凹部30,30の深さ分、常開型遮断弁4,常閉型遮断弁6の装着位置を変更することができる。これにより、常開型遮断弁4,常閉型遮断弁6に繋がる流路の形成位置を変更することができ流路形成の自由度が高まる。これにより流路の構成を簡略化することも可能になり、基体10(マスタシリンダ装置A1)の小型化を図ることができる。
【0090】
また、凹部30,30は、同系統の流路(メイン流路9a)に備わる常開型遮断弁4,常閉型遮断弁6に対して設けられており、他系統の流路(メイン流路9b)には設けられていないので、系統ごとに流路形成位置を異ならせることができ、流路形成の自由度が高まる。これにより流路の構成を簡略化することも可能になり、基体10(マスタシリンダ装置A1)の小型化を図ることができる。
なお、他系統の流路(メイン流路9b)の常開型電磁弁5に対してのみ凹部30を設け、メイン流路9aの系統に対して流路形成位置を異ならせてもよい。
【0091】
例えば、本実施形態では、
図21(a)に示すように、凹部30によって弁装着穴141が基体10の内部側にオフセットされているので、基体10の前後方向において弁装着穴141とセンサ装着穴145との流路形成位置が一致し、これらを一本の第一横孔66aで繋ぐことができる。なお、弁装着穴141とセンサ装着穴145とにおける流路形成位置は、圧力センサ7、常開型遮断弁4の構造によって自ずと限定されている。
ここで、
図21(b)に示すように、仮に弁装着穴141が凹部30を有していないとすると、基体10の左右方向に弁装着穴141とセンサ装着穴145とにそれぞれ大きさが異なる弁やセンサを配置したときに、流路形成位置にずれが生じてしまい、これらを連通するために2つの横孔81,82を基体10に追加形成する必要がある。このため、横孔81,82の加工に手間がかかり、また、流路が増えることとなるため、流路のレイアウトの自由度も制限されてしまう。
これに対して、本実施形態では、一本の第一横孔66aで弁装着穴141とセンサ装着穴145とを繋ぐことができるので、必要最小限の流路を加工すればよく、流路のレイアウトの自由度も向上するという利点が得られる。
【0092】
また、本実施形態によれば、凹部30,30を形成することにより、コイル26の下部外周面267に対向する内周面32(壁面)を簡単に設けることができるので、生産性に優れる。
【0093】
また、基体10の一面に垂直な方向から見て、マスタシリンダ1の中心軸Oを挟んで、一方の側(下側)に常開型遮断弁5,常閉型遮断弁6が配置され、他方の側(上側)に常開型遮断弁4と圧力センサ7とが配置され、これらが四角形の頂点を形成するように配置されているので、これらを例えば1列に整列させた場合に比べて流路を短く、かつ、密に配置することが可能となり、その結果、基体10(マスタシリンダ装置A1)の小型化を実現することが可能となる。
【0094】
また、ストロークシミュレータ2と、ストロークシミュレータ2への流路を開閉する常閉型遮断弁6を備えた構成において、流路の構成を簡略化して基体10(マスタシリンダ装置A1)の小型化を図ることができる。
【0095】
さらに、コイル26の下部外周面267に凹部30の内周面32が対向しているので、高温になったコイル26の熱を下部外周面267から内周面32を通じて基体10に伝達することができる。これにより、コイル26の熱を基体10に吸収することができ、基体10を通じて放熱することができる。
【0096】
また、凹部30の底面31には、コイル26の下面269が当接しているので、高温になったコイル26の熱をコイル26の下面269を通じて基体10に直接伝達することができる。これにより、コイル26の熱を基体10により一層吸収することができ、基体10を通じて効果的に放熱することができる。
【0097】
また、ハウジング20の中間壁部40とコイル26との間には、コイル26を基体10の装着面14aに向けて付勢する弾性部材46が設けられているので、コイル26の下面269が装着面14aに確実に当接し、下面369を通じて基体10に熱が確実に伝達されることとなる。これにより基体10を通じて効果的に放熱することができる。
【0098】
また、コイル26の下部外周面267と凹部30の内周面32との間にはクリアランスCが形成されているので、ハウジング20を装着面14aに組み付ける際に、ハウジング20に収容されているコイル26の組付位置に多少のずれが生じていても、クリアランスCによりこれを好適に吸収することができる。従って組付性に優れる。
【0099】
また、クリアランスCを埋めるために放熱効果を有する放熱ジェルを配置してもよい。また、クリアランスCをなくすように凹部30,30を設けても放熱効果が得られるとともに、コイル26の保持や組み付けの時の位置決めも可能である。
【0100】
前記実施形態では、弁装着穴141,143に対して、凹部30,30を設けたが、弁装着穴141〜143の少なくとも1つに凹部30が設けられていてもよい。
【0101】
また、連絡液圧路(流路)9c,9dが、常開型電磁弁4,5や常閉型電磁弁6、圧力センサ7,8よりも前方に配置されているので、常開型電磁弁4,5や常閉型電磁弁6、圧力センサ7,8の流路と干渉することがなく、流路の最適化や装置の小型化を図ることができる。
【0102】
また、ストロークシミュレータ2への流路を、基体10の前方から見た場合にマスタシリンダ1の幅方向中心部から左側に寄せて配置し、他の流路を前方から見た場合に右側に寄せて配置したので、流路の最適化や装置の小型化を図ることができる。
【0103】
また、
図22に示すように、弁装着穴141,143の周囲に、装着面14aの上端、下端から連続するようにして凹部30A,30Aを設けてもよい。このような凹部30A,30Aとすることにより、装着面14aの肉抜きを図ることができ、コストを低減することができる。
【0104】
また、前記実施形態では、凹部30,30Aを設けることにより、コイル26の下部外周面267に対向する内周面32(壁面)を形成したが、これに限られることはなく、装着面14aから突出するリブ状の壁面を、コイル26の下部外周面267に対向するように設けてもよい。このように構成することによっても、リブ状の壁面を通じて基体10にコイル26の熱を好適に伝達することができる。
【0105】
前記実施形態では、マスタシリンダ装置A1についてコイル26の下部外周面267に対向する内周面32を設けたものについて説明したが、これに限られることはなく、ブレーキ液圧装置として液圧制御装置A3に対しても好適に適用することができる。
【0106】
また、常開型電磁弁4,5、常閉型電磁弁6、圧力センサ7,8の配置箇所、およびマスタシリンダ1、ストロークシミュレータ2の配置箇所は、2つのメイン流路9a,9bとの関係や、ストロークシミュレータ2を設ける位置などに応じて適宜変更可能である。