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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2013年10月10日
【発行日】2015年12月17日
(54)【発明の名称】可変容量ポンプの制御装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/02 20060101AFI20151120BHJP
【FI】
   F04B49/02 311
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
【出願番号】特願2013-521699(P2013-521699)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2013年1月21日
(11)【特許番号】特許第5315487号(P5315487)
(45)【特許公報発行日】2013年10月16日
(31)【優先権主張番号】特願2012-84992(P2012-84992)
(32)【優先日】2012年4月3日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105119
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 孝治
(74)【代理人】
【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄
(72)【発明者】
【氏名】宮田 智
(72)【発明者】
【氏名】西村 尚己
(72)【発明者】
【氏名】西山 恵以地
(72)【発明者】
【氏名】松井 亮
(72)【発明者】
【氏名】石川 知朗
【テーマコード(参考)】
3H145
【Fターム(参考)】
3H145AA05
3H145AA24
3H145AA33
3H145AA44
3H145BA03
3H145BA38
3H145CA09
3H145CA20
3H145DA01
3H145DA47
3H145EA13
3H145EA16
3H145EA17
3H145EA43
(57)【要約】
車両を駆動するための駆動源により駆動され、作動油を加圧するポンプであって、吐出流量を最大とする全容量運転と、該全容量運転より小さい吐出流量の部分容量運転とに切り換え可能な可変容量ポンプの制御装置が提供される。駆動源の運転を開始する操作がなされたことが判定されるとともに、駆動源の回転数及び作動油の温度が検出される。駆動源の運転開始操作が行われた直後において駆動源回転数が所定回転数以上で、かつ作動油温が所定温度以下であるとき、可変容量ポンプの部分容量運転が行われる。この制御によって車両の運転を開始する際に、可変容量ポンプの作動に伴う異音の発生が抑制される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を駆動するための駆動源により駆動され、作動油を加圧するポンプであって、吐出流量を最大とする全容量運転と、該全容量運転より小さい吐出流量の部分容量運転とに切り換え可能な可変容量ポンプの制御装置において、
前記駆動源の運転を開始する操作がなされたことを判定する運転開始判定手段と、
前記駆動源の回転数を検出する駆動源回転数検出手段と、
前記作動油の温度を検出する油温検出手段と、
前記駆動源の運転開始操作が行われた直後において前記駆動源回転数が所定回転数以上で、かつ前記作動油温が所定温度以下であるとき、前記可変容量ポンプの前記部分容量運転を行う始動運転制御手段とを備えることを特徴とする可変容量ポンプの制御装置。
【請求項2】
前記車両は自動変速機及び該自動変速機を制御するための油圧制御装置を備え、
該油圧制御装置は、油圧アクチュエータと、前記可変容量ポンプの吐出ポートから前記油圧アクチュエータへ作動油を供給するための供給油路と、前記油圧アクチュエータから前記可変容量ポンプの吸入ポートへ作動油を戻すための戻し油路と、前記供給油路内の作動油圧を検出する油圧検出手段とを備え、
前記始動運転制御手段は、前記部分容量運転の開始後において、検出される作動油圧が所定油圧に達したときに、前記部分容量運転を前記全容量運転へ切り換える請求項1の制御装置。
【請求項3】
前記始動運転制御手段は、前記駆動源回転数が前記所定回転数以上となった後に前記駆動源が一時的に停止した場合において、該停止直後の運転開始時は前記部分容量運転を行わない請求項1または2の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転速度一定の状態で吐出流量を変更可能な可変容量ポンプの制御装置に関し、特に車両を駆動する内燃機関などの駆動源によって駆動される油圧ポンプであって、油圧アクチュエータに供給する作動油を加圧する可変容量ポンプを制御する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転速度一定の状態で吐出流量を変更可能な可変容量ポンプが示されている。この可変容量ポンプは、2つの吸入ポート及び2つの吐出ポートを備え、2つの吐出ポートを2つの吸入ポートから完全に遮断された状態での全容量運転と、1つの吐出ポートを吸入ポートに連通させた状態での半容量運転とに切換可能に構成されている。半容量運転では、回転速度が同一という条件下で吐出流量が全容量運転の約1/2となる。この可変容量ポンプは、車両用自動変速機の油圧制御装置に含まれ、車両を駆動する内燃機関によって駆動されるものであり、油圧制御装置に設けられた油圧アクチュエータに必要な作動油(作動油圧)を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−163258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示された油圧制御装置を搭載した車両を低温状態でしばらく放置した後に運転を開始すると、油圧制御装置から異音が発生するという問題があることが確認されている。この問題の原因はかならずしも明確ではないが、以下のように推定されている。
【0005】
一般に油圧制御用の作動油を貯蔵するリザーバには、混入した異物を除去するためのストレーナが設けられているが、車両をしばらく放置すると油圧アクチュエータから作動油が抜けてしまうため、この状態で内燃機関の始動を開始すると、空となっている油圧アクチュエータに作動油を供給するためにストレーナを通る作動油の流速が早くなると同時にストレーナ下流側の負圧が大きくなる。そのような条件と、ストレーナに異物が捕捉されていてかつ作動油温が低いという条件とが重なると、異音が発生すると推定されている。
【0006】
本発明はこの問題を解決するためになされたものであり、車両の運転を開始する際に、可変容量ポンプの作動に伴う異音の発生を抑制することができる制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明は、車両を駆動するための駆動源(1)により駆動され、作動油を加圧するポンプであって、吐出流量を最大とする全容量運転と、該全容量運転より小さい吐出流量の部分容量運転とに切り換え可能な可変容量ポンプ(62)の制御装置において、前記駆動源(1)の運転を開始する操作がなされたことを判定する運転開始判定手段と、前記駆動源の回転数(NE)を検出する駆動源回転数検出手段と、前記作動油の温度(TOIL)を検出する油温検出手段と、前記駆動源の運転開始操作が行われた直後において前記駆動源回転数(NE)が所定回転数(NESCS)以上で、かつ前記作動油温(TOIL)が所定温度(TLTH)以下であるとき、前記可変容量ポンプ(62)の前記部分容量運転を行う始動運転制御手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、駆動源の運転開始操作が行われた直後において駆動源回転数が所定回転数以上で、かつ作動油温が所定温度以下であるとき、可変容量ポンプの部分容量運転が行われる。駆動源の運転開始直後において、駆動源回転数が所定回転数以上となって可変容量ポンプの回転速度が比較的高くなり、かつ作動油温が所定温度以下であるときに、異音が大きくなる傾向があるので、そのような条件が成立するときに部分容量運転を行うことにより、異音の発生を効果的に抑制することができる。
【0009】
また前記車両は自動変速機(4)及び該自動変速機を制御するための油圧制御装置(40)を備え、該油圧制御装置(40)は、油圧アクチュエータ(63,64,25c,27c)と、前記可変容量ポンプの吐出ポートから前記油圧アクチュエータへ作動油を供給するための供給油路(72,72a,72b,73,74)と、前記油圧アクチュエータから前記可変容量ポンプの吸入ポートへ作動油を戻すための戻し油路(75)と、前記供給油路内の作動油圧(PDN)を検出する油圧検出手段とを備え、前記始動運転制御手段は、前記部分容量運転の開始後において、検出される作動油圧(PDN)が所定油圧(PDNTH)に達したときに、前記部分容量運転を前記全容量運転へ切り換えることが望ましい。
【0010】
この構成によれば、部分容量運転の開始後において、検出される作動油圧が所定油圧に達したときに、部分容量運転から全容量運転への切り換えが行われる。供給油路内の油圧が所定油圧に達すると、戻し油路を介して作動油が吸入ポートに還流されるようになり、可変容量ポンプの吸入ポートの負圧が減少するため、全容量運転へ切り換えても大きな異音が発生することはない。したがって、検出される作動油圧が所定油圧に達したときに、部分容量運転から全容量運転へ切り換えを行うことにより、部分容量運転の期間を最小限として運転開始時の作動油圧を迅速に高めることが可能となる。
【0011】
また前記始動運転制御手段は、前記駆動源回転数(NE)が前記所定回転数(NESCS)以上となった後に前記駆動源(1)が一時的に停止した場合において、該停止直後の運転開始時は前記部分容量運転を行わないことが望ましい。
【0012】
この構成によれば、駆動源回転数が所定回転数以上となった後に駆動源が一時的に停止した場合において、該停止直後の運転開始時は、部分容量運転は行われない。駆動源の運転開始後において駆動源が一時的に停止したときは、油圧アクチュエータに作動油が残っているため、運転開始直後であっても油圧アクチュエータから戻し油路を介して可変容量ポンプに作動油が供給され、ストレーナ下流側の負圧(可変容量ポンプの吸入ポートの負圧)が比較的小さい。したがって、このような場合では異音が発生する可能性が低いため、不必要に部分容量運転を実行することを避けることで運転開始時の油圧立ち上がり遅れを防ぎ、発進制御応答性の悪化や潤滑能力の低下を回避する効果が得られる。
【0013】
前記可変容量ポンプは、より具体的には、複数の吸入ポート(136a,136b)及び複数の吐出ポート(137a,137b)を備え、前記複数の吐出ポートを前記複数の吸入ポートから完全に遮断された状態とすることにより前記全容量運転を行い、前記複数の吐出ポートの少なくとも一つを前記複数の吸入ポートの少なくとも一つに連通させることにより前記部分容量運転を行うものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態にかかる自動変速機及び油圧制御装置を含む車両駆動系の構成を示す図である。
図2図1に示す油圧制御装置の構成を示す図である。
図3図2に示す油圧ポンプユニットの構成を示す図である。
図4】可変容量ポンプの制御処理の要部を示すフローチャートである。
図5図4の処理を説明するためのタイムチャートである。
図6】駆動源(内燃機関)の始動時における回転数(NE)及び可変容量ポンプの吸入圧力(PIN)の推移を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる自動変速機及び油圧制御装置を含む車両駆動系の構成を示す図である。図1において、内燃機関(以下「エンジン」という)1の駆動力は、トルクコンバータ2、前後進切換機構3、ベルト式無段変速機(以下「CVT」という)4、減速ギヤ列5、及びディファレンシャルギヤ6を介して駆動輪7に伝達される。
【0016】
トルクコンバータ2は、エンジン1のクランク軸11に接続されたポンプ12と、入力軸13に接続されたタービン14と、ケーシング15に固定されたステータ16と、クランク軸11を入力軸13に直結するロックアップクラッチ17とを備えており、ロックアップクラッチ17の非締結時には、クランク軸11の回転数を減速し、かつクランク軸11のトルクを増幅して入力軸13に伝達する。
【0017】
前後進切換機構3はプラネタリギヤ機構を用いたもので、入力軸13に固定されたサンギヤ18と、プラネタリキャリヤ19に支持されてサンギヤ18に噛合する複数のピニオン20と、ピニオン20に噛合するリングギヤ21とを備え、リングギヤ21はフォワードクラッチ22を介して入力軸13に結合可能に構成され、プラネタリキャリヤ19はリバースブレーキ23を介してケーシング15に結合可能に構成されている。
【0018】
フォワードクラッチ22を締結すると、入力軸13がリングギヤ21と一体のプーリ駆動軸24に直結され、プーリ駆動軸24は入力軸13と同速度で同方向に回転する。リバースブレーキ23を締結すると、プラネタリキャリヤ19がケーシング19に拘束され、プーリ駆動軸24は入力軸13の回転数に対して減速されて逆方向に回転する。
【0019】
CVT4は、プーリ駆動軸24に支持されたドライブプーリ25と、出力軸26に支持されたドリブンプーリ27と、ドライブプーリ25及びドリブンプーリ27に巻き掛けられた金属製のベルト28とを備えている。ドライブプーリ25は、プーリ駆動軸24に固定された固定側プーリ半体25aと、プーリ駆動軸24に軸方向摺動可能かつ相対回転不能に支持された可動側プーリ半体25bと、2つのシリンダ室25cとを備えている。可動側プーリ半体25bは、シリンダ室25cに供給される油圧によって固定側プーリ半体25aに向けて付勢される。ドリブンプーリ27は、出力軸26に固定された固定側プーリ半体27aと、出力軸26に軸方向摺動可能かつ相対回転不能に支持された可動側プーリ半体27bと、1つのシリンダ室27cとを備えている。可動側プーリ半体27bは、シリンダ室27cに供給される油圧で固定側プーリ半体27aに向けて付勢される。
【0020】
ドライブプーリ25のシリンダ室25cに第1制御油圧PDRを作用させるとともに、ドリブンプーリ27のシリンダ室27cに第2制御油圧PDNを作用させ、第1制御油圧PDRを減少させることにより、ドライブプーリ25の可動側プーリ半体25bが固定側プーリ半体25aから離れてプーリの有効直径が減少する一方、第2制御油圧PDNを増加させることにより、ドリブンプーリ27の可動側プーリ半体27bが固定側プーリ半体31aに近づいてプーリの有効直径が増加する。その結果、CVT4の変速比RATIOが増加(低速走行用変速比方向に変化)する。なお、第1制御油圧PDRの増加及び第2制御油圧PDNの減少の何れか一方のみを行っても変速比RATIOは同様に変化する。
【0021】
逆に第1制御油圧PDRを増加させるとともに第2制御油圧PDNを減少させると、ドライブプーリ25の可動側プーリ半体25bが固定側プーリ半体25aに近づいてプーリの有効直径が増加し、かつドリブンプーリ27の可動側プーリ半体27bが固定側プーリ半体27aから離れてプーリの有効直径が減少する。その結果、変速比RATIOが減少(高速走行用変速比方向に変化)する。なお、第1制御油圧PDRの減少及び第2制御油圧PDNの増加の何れか一方のみを行っても変速比RATIOは同様に変化する。
【0022】
出力軸26に設けた第1減速ギヤ29が減速軸30に設けた第2減速ギヤ31に噛合し、減速軸30に設けたファイナルドライブギヤ32がディファレンシャルギヤ6のファイナルドリブンギヤ33に噛合する。ディファレンシャルギヤ6から延びる左右の車軸34に駆動輪7が接続されている。
【0023】
CVT4のシリンダ室25c及び27cに供給する第1及び第2制御油圧PDR,PDNは、油圧制御装置40を介して電子制御ユニット(以下「ECU」という)50により制御される。ECU50には、エンジン1の回転数NEを検出するエンジン回転数センサ54から検出信号が供給され、さらに図示しない各種センサの検出信号が供給される。ECU50は、検出される車両走行速度VP、アクセルペダルの操作量AP、エンジン回転数NEなどに応じて第1及び第2制御油圧PDR,PDNの制御を行う。
【0024】
油圧制御装置40は、図2に示すように、ストレーナ61aを有し、作動油を貯蔵するリザーバ61と、リザーバ61内の作動油をくみ上げて加圧する油圧ポンプユニット62と、ドライブプーリ25のシリンダ室25cに供給する第1制御油圧PDRを調圧する第1調圧弁ユニット63と、ドリブンプーリ27のシリンダ室27cに供給する第2制御油圧PDNを調圧する第2調圧弁ユニット64と、リザーバ61と油圧ポンプユニット62と接続する油路71と、油圧ポンプユニット62と、第1及び第2調圧弁ユニット63,64とを接続する油路72と、第1調圧弁ユニット63とシリンダ室25cとを接続する油路73と、第2調圧弁ユニット64とシリンダ室27cとを接続する油路74と、第1及び第2調圧ユニット63,64における余剰作動油をリザーバ61に戻す油路75と、バッテリ(図示せず)からの電力により駆動される電動油圧ポンプ65と、電動油圧ポンプ65の吸入口と油路71とを接続する油路76と、電動油圧ポンプ65の吐出口と第1及び第2調圧弁ユニット63,64とを接続する油路77とを備えている。
【0025】
油圧ポンプユニット62は、エンジン1により駆動され、吐出流量を最大とする全容量運転と、該全容量運転の半分の吐出流量となる半容量運転(部分容量運転)とに切り換え可能な可変容量ポンプを構成する。油路72は、油路72a及び72bに分岐してそれぞれ第1及び第2調圧弁ユニット63,64に接続されている。第1調圧弁ユニット63は、リニアソレノイド弁及び調圧弁を有し、ECU50からの制御信号に応じて第1制御油圧PDRが第1指示油圧PDRCMDとなるように調圧を行う。第2調圧弁ユニット64は、第1調圧弁ユニット63と同様に構成され、ECU50からの制御信号に応じて第2制御油圧PDNが第2指示油圧PDNCMDとなるように調圧を行う。
【0026】
油路73及び74には、第1制御油圧PDRを検出する第1油圧センサ51及び第2制御油圧PDNを検出する第2油圧センサ52が設けられている。またリザーバ61には作動油温TOILを検出する油温センサ53が設けられている。これらのセンサ51〜53の検出信号は、ECU50に供給される。
【0027】
電動油圧ポンプ65の作動は、ECU50により制御され、例えば車両が交差点などで停止したときにエンジン1を一時的に停止させるアイドルストップ制御の実行時などに駆動され、制御油圧PDR,PDNの低下が防止される。
【0028】
なお、油圧制御装置40のより具体的な構成は、例えば特開2011−196390号公報に示されており、図2では図示を省略しているが、油圧ポンプユニット62の吐出口はトルクコンバータ2及び前後進切換機構3に設けられた複数の油圧アクチュエータ80(図3参照)に接続されており、それらの油圧アクチュエータ80に必要な油圧を供給する。また、油圧アクチュエータ80における余剰作動油は、図示しない戻し油路を介して、油圧ポンプユニット62の吸入口に戻される。
【0029】
図3は、油圧ポンプユニット62の構成を具体的に示す図である。油圧ポンプユニット62は、ポンプシフトバルブ101と、ベーンポンプ102と、レギュレータバルブ103と、電磁開閉弁104とを備えている。ベーンポンプ102は、エンジン1の駆動力により駆動されるものであり、楕円状のカムリング131と、カムリング131の内部に配置されたロータ132と、ロータ132を回転自在に支持するポンプ軸133と、ロータ132の周囲に径方向に出没自在に支持されてカムリング131の内面に摺接する複数のベーン134と、カムリング131、ロータ132およびベーン134により画成された複数の作動室135と、容積が拡大する作動室135に連通可能な第1及び第2吸入ポート136a,136bと、容積が縮小する作動室135に連通可能な第1及び第2吐出ポート137a,137bとを備えている。
【0030】
エンジン1の駆動力でロータ132が矢印方向に回転すると、第1吸入ポート136aから容積の拡大する作動室135に作動油が吸入され、ロータ132の回転に伴って容積の縮小する作動室135から作動油が第1吐出ポート137aに吐出される。同様に、第2吸入ポート136bから容積の拡大する作動室135に作動油が吸入され、ロータ132の回転に伴って容積の縮小する作動室135から作動油が第2吐出ポート137bに吐出される。
【0031】
図2に示す油路71に接続された油路141が油路142及び143に分岐し、一方の油路142が第1吸入ポート136aに接続され、他方の油路143が第2吸入ポート136bに接続されている。第1吐出ポート137aから延びる油路144及び145が、図2に示す油路72及び他の油圧アクチュエータ80に接続されており、油路144と145の間に、ベーンポンプ102の吐出圧をライン圧に調圧するレギュレータバルブ103が介装されている。
【0032】
ポンプシフトバルブ101はスプリング121で付勢されたスプール122と、電磁開閉弁104を介してモジュレータ圧PMODが供給される油路146に連通するポート112と、油路147を介して油路141に連通するポート113と、油路148を介して第2吐出ポート137bに連通するポート114と、油路149を介して油路144に連通するポート115と、モジュレータ圧PMODが供給される油路150に連通するポート116とを備えている。なお、モジュレータ圧PMODは、図示しないエンジンオイルポンプから供給される油圧を適宜の圧力に調圧することにより生成される。
【0033】
図3は、全容量運転を行うときの状態を示している。電磁開閉弁104は、ECU50からの制御信号により開弁され、ポンプシフトバルブ101の右端のポート112にモジュレータ圧PMODが供給される。このとき、ポンプシフトバルブ21の左端のポート116にもモジュレータ圧PMODが供給されているが、ポンプシフトバルブ101のスプール122はスプリング121の付勢力によって左方向(図示位置)へ移動する。
【0034】
したがって、ポート114及び115が相互に連通し、ベーンポンプ102の第2吐出ポート137bが油路148、ポート114、ポート115、油路149の経路で油路144に連通する。その結果、第1及び第2吐出ポート17a,17bが吐出した作動油が油路144で合流し、レギュレータバルブ103及び油路145を介して吐出される。
【0035】
一方、半容量運転を行うときは、電磁開閉弁104は、ECU50からの制御信号により閉弁され、ポンプシフトバルブ101のポート112へのモジュレータ圧PMODの供給が遮断されるため、ポンプシフトバルブ21の左端のポート116に伝達されるモジュレータ圧PMODがスプリング121の付勢力に勝ってスプール122が図の右方向に移動する。したがって、ポート113及びポート114が相互に連通し、ベーンポンプ102の第2吐出ポート137bが油路148、ポート114、ポート113、油路147の経路で油路141に連通する。その結果、第2吐出ポート137bが吐出したオイルは第1及び第2吸入ポート136a,136bに戻されてしまい、第1吐出ポート137aが吐出した作動油だけが油路144に供給される。
【0036】
図4は、エンジン1の始動時において、油圧ポンプユニット62の半容量運転を実行する条件を判定する処理のフローチャートである。この処理は、ECU50において所定時間毎に実行されるものであり、イグニッションスイッチがオンされ、エンジン1の始動が開始されると処理が開始される。本実施形態では、スタータモータの作動開始時点、またはエンジン回転数NEが始動判定回転数(100rpm)を超えた時点で始動開始と判定される。また以下に説明する半容量運転フラグFHDFが「0」であるときは、油圧ポンプユニット62の全容量運転が行われる。
【0037】
ステップS11では、半容量運転フラグFHDFが「1」であるか否かを判別する。最初はこの答が否定(NO)であり、ステップS12に進んで、アイドルストップ制御フラグFISTPが「1」であるか否かを判別する。アイドルストップ制御フラグFISTPは、所定の条件が満たされたときに(例えば、アクセルペダル操作量APが「0」でかつ車速VPがほぼ「0」であって、ブレーキペダルが踏み込まれているとき)、すなわちエンジン1を一時的に停止させるアイドルストップ制御を実行するとき「1」に設定される。ステップS12の答が否定(NO)であるときは、エンジンストールフラグFESTが「1」であるか否かを判別する(ステップS13)。エンジンストールフラグFESTは、エンジンストール(イグニッションスイッチがオンである状態でのエンジン停止であり、例えば何らかの故障でエンジン1のトルクが増加する前に前後進クラッチが締結されたような場合及びロックアップクラッチと前後進クラッチが共に締結されたような場合に発生する)が発生したとき「1」に設定される。
【0038】
ステップS12またはS13の答が肯定(YES)であるときは、ステップS16に進み、半容量運転フラグFHDFを「0」に維持する。したがって、全容量運転が行われる。エンジン1の一時的な停止直後においては、ストレーナ61aで異音が発生する可能性は低いからである。
【0039】
ステップS13の答が否定(NO)であるときは、完爆フラグFSCSが「1」であるか否かを判別する(ステップS14)。完爆フラグFSCSは、エンジン1の完爆判定(自立運転開始判定)が行われたとき、すなわちエンジン回転数NEが完爆判定回転数NESCSに達したとき「1」に設定される。
【0040】
最初はステップS14の答が否定(NO)となり、ステップS16に進んで、半容量運転フラグFHDFを「0」に維持する。したがって、全容量運転が行われる。完爆判定が行われると、ステップS14の答が肯定(YES)となり、作動油温TOILが低温判定閾値TLTH(例えば−15℃)以下であるか否かを判別する(ステップS15)。この答が否定(NO)であるときは、前記ステップS16に進む。
【0041】
一方、ステップS15でTOIL≦TLTHであるときは、半容量運転の実行条件が成立していると判定して、ダウンカウントタイマTMBUPを所定時間THDF(例えば4.5秒)に設定し(ステップS17)、半容量運転フラグFHDFを「1」に設定する(ステップS18)。したがって、全容量運転から半容量運転への切換が行われる。
【0042】
ステップS18が実行された後は、ステップS11の答が肯定(YES)となり、充填完了フラグFPDNUPが「0」であるか否かを判別する。充填完了フラグFPDNUPは、CVT4のドリブンプーリ27のシリンダ室27cへの作動油の充填が完了したと判定されたとき「1」に設定される。具体的には、第2油圧センサ52により検出される第2制御油圧PDNが所定閾値PDNTHに達したときに充填完了判定が行われる。
【0043】
最初はステップS19の答は肯定(YES)であり、ステップS20に進んで、タイマTMBUPの値が「0」より大きいか否かを判別する。最初はこの答も肯定(YES)となり、ステップS18に進んで半容量運転を継続する。
【0044】
その後ステップS19またはS20の答が否定(NO)となると、半容量運転フラグFHDFを「0」に戻す(ステップS21)。したがって、半容量運転から全容量運転への切換が行われる。
【0045】
図5は、図4の処理による制御を説明するためのタイムチャートであり、図5(a)〜図5(f)はそれぞれエンジン回転数NE、充填完了フラグFPDNUP、第2制御油圧PDN、半容量運転フラグFHDF、タイマTMBUP、及びアクセルペダル操作量APの推移を示す。図5(c)には、第2制御油圧PDNの指示値である第2指示油圧PDNCMDが破線で示されている。なお、図5では、作動油温TOILは低温判定閾値TLTH以下である状態の動作例が示されている。
【0046】
時刻t0にエンジン1の始動が開始され、第2指示油圧PDNCMDがシリンダ室27cへの作動油の充填を促進する値に設定される。このとき半容量運転フラグFHDFは「0」であり、油圧ポンプユニット62の全容量運転が行われる。時刻t1において完爆判定が行われ、半容量運転フラグFHDFが「1」に設定され、全容量運転が半容量運転へ切り換えられる。このとき、タイマTMBUPに所定時間THDFが設定されてダウンカウントが開始される。
【0047】
時刻t2において、第2制御油圧PDNが所定閾値PDNTHに達して充填完了フラグFPDNUPが「1」に設定されるとともに、半容量運転フラグFHDFが「0」に戻される。したがって、半容量運転から全容量運転に切り換えられる。なお、何らかの原因で時刻t1から所定時間THDFの期間内に第2制御油圧PDNが所定閾値PDNTHに達しないときは、図5(d)に破線で示すように、時刻t3において半容量運転フラグFHDFが「0」に戻される。
【0048】
図4の処理と直接関係はないが、図5(c)には第2指示油圧PDNCMDを時刻t4において減少させる点が示され、図5(f)には時刻t5からアクセルペダル操作量APが増加し始める(車両発進操作が開始される)点が示されている。
【0049】
図6は、エンジン1の始動時におけるエンジン回転数NE及び油圧ポンプユニット62の吸入圧力PINの推移を示し、図6(a)は全容量運転のみを行った例に対応し、図6(b)は図4に示す処理を行って一時的に半容量運転を行った例に対応する。
【0050】
吸入圧力PINの低下量(負圧)が大きいと、リザーバ61(ストレーナ61a)において発生する異音が大きくなることが確認されており、半容量運転を実行することによって吸入圧力PINの低下量が抑制され、異音の大きさが低レベルに抑制されることが確認できる。
【0051】
以上のように本実施形態では、エンジン1の始動開始直後においてエンジン回転数NEが完爆判定回転数NESCSに達し、かつ作動油温TOILが低温判定閾値TLTH以下であるとき、油圧ポンプユニット62の半容量運転(部分容量運転)が行われる。エンジン1の始動開始直後において、エンジン回転数NEが完爆判定回転数NESCS以上となってベーンポンプ102の回転速度が比較的高くなり、かつ作動油温TOILが低温判定閾値TLTH以下であるときに、異音が大きくなる傾向があることが判明しており、そのような条件が成立するときに半容量運転を行うことにより、異音の発生を効果的に抑制することができる。
【0052】
また半容量運転の開始後において、検出される第2制御油圧PDNが所定閾値PDNTHに達したときに、半容量運転から全容量運転へ切り換えが行われる。第2制御油圧PDNが所定閾値PDNTHに達すると、油路75を介して作動油が油圧ポンプユニット62の吸入口を介してベーンポンプ102の吸入ポート136a,136bに還流されるようになり、油圧ポンプユニット62の吸入圧力PINの低下量(負圧)が減少するため、全容量運転へ切り換えても大きな異音が発生することはない。したがって、検出される第2制御油圧PDNが所定閾値PDNTHに達したときに、半容量運転から全容量運転へ切り換えを行うことにより、半容量運転の期間を最小限としてエンジン始動時の作動油圧を迅速に高めることが可能となる。
【0053】
またエンジン回転数NEが完爆判定回転数NESCS以上となり、エンジン1が自立運転を開始した後に一時的に停止した場合、すなわち上記アイドルストップ制御を実行した場合、あるいはエンジンストールが発生した場合において、エンジン運転を再開するときは、半容量運転は行われない。エンジン1の運転開始後において一時的に停止したときは、シリンダ室25c,27cなどの油圧アクチュエータに作動油が残っているため、運転開始直後であっても戻し油路75を介して油圧ポンプユニット62に作動油が還流され、吸入圧力PINの低下量(ストレーナ下流側の負圧)が比較的小さい。したがって、このような場合では異音が発生する可能性が低いため、不必要に半容量運転を実行することを避けることでエンジン始動時の油圧立ち上がり遅れを防ぎ、発進制御応答性の悪化や潤滑能力の低下を回避する効果が得られる。
【0054】
本実施形態では、油圧ポンプユニット62が可変容量ポンプを構成し、エンジン回転数NEセンサ54、油温センサ53、及び第2油圧センサ52がそれぞれ駆動源回転数検出手段、油温検出手段、及び油圧検出手段に相当し、第1及び第2調圧弁ユニット63,64及びシリンダ室25c,27cが油圧アクチュエータに相当し、油路72(72a,72b),73,74が供給油路に相当し、油路75が戻し油路に相当し、ECU50が、運転開始判定手段及び始動運転制御手段を構成する。
【0055】
なお本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上述した実施形態では可変容量ポンプとして油圧ポンプユニット62を使用したが、これに限るものではなく、例えば特開平7−4362号公報に示されるようなタイプの可変容量ポンプを使用してもよい。
【0056】
また上述した実施形態では、部分容量運転の一例として半容量運転を行うものを示したが、これに限るものではなく、全容量運転より低容量の部分容量運転への切換を行うようにしてもよい。
【0057】
また上述した実施形態では、自動変速機としてCVT4を備える車両を示したが、複数の変速段のうちの一つをECU50の制御によって選択可能な通常の自動変速機に必要な油圧を供給する可変容量ポンプであってもよい。
【0058】
また上述した実施形態では、油圧検出手段として第2油圧センサ52を用いる例を示したが、第1油圧センサ51、あるいは他の油圧アクチュエータ80に設けられる油圧センサを用いてもよい。その場合には、検出油圧と、可変容量ポンプの吸入口への余剰作動油の還流が開始される還流開始時期との関係を予め求めておき、還流開始時期に対応する油圧を「所定油圧」とすることが望ましい。
【0059】
また車両の駆動源は、内燃機関に限るものではなく、電動機、あるいは電動機及び内燃機関の組み合わせであってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 内燃機関(駆動源)
4 無段変速機(自動変速機)
25c,27c シリンダ室(油圧アクチュエータ)
50 電子制御ユニット(運転開始判定手段、始動運転制御手段)
52 第2油圧センサ(油圧検出手段)
53 油温センサ(油温検出手段)
54 エンジン回転数センサ(駆動源回転数検出手段)
62 油圧ポンプユニット(可変容量ポンプ)
63,64 調圧弁ユニット(油圧アクチュエータ)
72(72a,72b) 油路(供給油路)
75 油路(戻し油路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】