特表-13154076IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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再表2013-154076有機電界発光素子用組成物及び有機電界発光素子
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  • 再表WO2013154076-有機電界発光素子用組成物及び有機電界発光素子 図000071
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2013年10月17日
【発行日】2015年12月17日
(54)【発明の名称】有機電界発光素子用組成物及び有機電界発光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20151120BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20151120BHJP
   C08G 65/40 20060101ALI20151120BHJP
   C08L 71/10 20060101ALI20151120BHJP
【FI】
   H05B33/22 C
   H05B33/14 A
   H05B33/04
   C08G65/40
   C08L71/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】105
【出願番号】特願2013-549458(P2013-549458)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2013年4月8日
(11)【特許番号】特許第5494899号(P5494899)
(45)【特許公報発行日】2014年5月21日
(31)【優先権主張番号】特願2012-88476(P2012-88476)
(32)【優先日】2012年4月9日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-88477(P2012-88477)
(32)【優先日】2012年4月9日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-49291(P2013-49291)
(32)【優先日】2013年3月12日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000005968
【氏名又は名称】三菱化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090343
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 百合子
(74)【代理人】
【識別番号】100129160
【弁理士】
【氏名又は名称】古館 久丹子
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】水上 潤二
(72)【発明者】
【氏名】清水 渡
(72)【発明者】
【氏名】竹本 洋己
【テーマコード(参考)】
3K107
4J002
4J005
【Fターム(参考)】
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4J002GQ00
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4J005BC00
(57)【要約】
本発明は有機電界発光素子用組成物であって、異物の含有量が少ない組成物を提供することを目的とする。本発明は有機電界発光素子の発光層、正孔注入層及び正孔輸送層からなる群より選ばれる少なくとも1層を形成するための有機電界発光素子用組成物であって、重量平均分子量3,000〜1,000,000の芳香族アミン系ポリマーと有機溶剤とを含み、前記組成物中のZn濃度が0.5ppm未満である、有機電界発光素子用組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機電界発光素子の発光層、正孔注入層及び正孔輸送層からなる群より選ばれる少なくとも1層を形成するための有機電界発光素子用組成物であって、
重量平均分子量3,000〜1,000,000の芳香族アミン系ポリマーと有機溶剤とを含み、
前記組成物中のZn濃度が0.5ppm未満である、有機電界発光素子用組成物。
【請求項2】
前記有機電界発光素子用組成物が、有機電界発光素子の正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも1層を形成するための組成物である、請求項1に記載の有機電界発光素子用組成物。
【請求項3】
前記Zn濃度が0.1ppm未満である、請求項1又は2に記載の有機電界発光素子用組成物。
【請求項4】
前記組成物1ml中に含まれる長径0.1μm以上のZn含有異物の数が50,000個以下である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物。
【請求項5】
前記組成物中のS濃度が20ppm未満である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物。
【請求項6】
前記組成物中のS濃度が5ppm未満である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物。
【請求項7】
前記組成物中に存在するSが有機化合物由来のものである、請求項5又は6に記載の有機電界発光素子用組成物。
【請求項8】
前記芳香族アミン系ポリマーが、下記式(2)で表される繰り返し単位を有するものである、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物。
【化1】
(式中、mは0〜3の整数を表し、
Ar31及びAr32は、各々独立して、直接結合、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素環基又は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表し、
Ar33〜Ar35は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
なお、Ar33及びAr35は1価の基を示し、Ar34は2価の基を示す。但し、Ar31及びAr32が共に、直接結合であることはない。)
【請求項9】
前記芳香族アミン系ポリマーが、下記式(3)で表される繰り返し単位を有するものである、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物。
【化2】
(式中、Ar51〜Ar53は、各々独立して、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を示し、
Ar54及びAr55は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族基を示し、
Ar56及びAr57は、各々独立して、直接結合、又は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を示し、
11及びR12は、各々独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していてもよい芳香族基を示し、
m’は0〜5の整数を表し、
11及びR12は互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【請求項10】
前記芳香族アミン系ポリマーが、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物。
【化3】
(式中、Ar及びArは各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Ar〜Arは、各々独立して、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素環基、又は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表す。Ar〜Arのうち、同一のN原子に結合する二つの基は互いに結合して環を形成してもよい。Xは、下記の連結基群X’の中から選ばれる1の連結基を表す。)
<連結基群X’>
【化4】
(式中、Ar11〜Ar28は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。R41及びR42は、各々独立して、水素原子又は任意の置換基を表す。)
【請求項11】
前記式(1)が下記式(1−1)で表される繰返し単位である、請求項10に記載の有機電界発光素子用組成物。
【化5】
(式中、R〜Rは、各々独立して、任意の置換基を表す。p及びqは、各々独立して0〜5の整数を表す。r、s及びtは各々独立して0〜4の整数を表す。Xは式(1)におけるXと同義である。)
【請求項12】
前記芳香族アミン系ポリマーが、不溶化基を有するものである、請求項8乃至11のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物。
【請求項13】
更に、電子受容性化合物を含有する、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物。
【請求項14】
前記有機電界発光素子用組成物が下記特徴を有するガラス容器に封入されてなる、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物。
(特徴)ガラス容器であって、前記容器内面の前記有機電界発光素子用組成物との接液面において、投影面積から求めた、基準面から0.8nm以上突出した凸部領域と、基準面から0.8nm以上窪んだ凹部領域とを合計した表面凹凸部分の面積率が、0.2%以上である。
【請求項15】
前記有機電界発光素子用組成物が下記特徴を有するガラス容器に封入されてなる、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物。
(特徴)ガラス容器であって、前記容器内面の前記有機電界発光素子用組成物との接液面において、投影面積から求めた、基準面から0.8nm以上窪んだ凹部領域である表面凹部分の面積率が、0.1%以上である。
【請求項16】
前記有機電界発光素子用組成物が下記特徴を有するガラス容器に封入されてなる、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物。
(特徴)ガラス容器であって、前記容器内面の前記有機電界発光素子用組成物との接液面において、任意に選択した10μm×10μmの領域における、基準面から0.8nm以上突出した凸部領域の数と、基準面から0.8nm以上窪んだ凹部領域の数との合計が、5以上である。
【請求項17】
基板上に、少なくとも陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層及び陰極を積層してなる有機電界発光素子であって、前記発光層、正孔注入層及び正孔輸送層からなる群より選ばれる少なくとも1層が、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物を用いて湿式成膜法により形成された、有機電界発光素子。
【請求項18】
請求項17に記載の有機電界発光素子を含む、有機電界発光照明。
【請求項19】
請求項17に記載の有機電界発光素子を含む、有機電界発光表示装置。
【請求項20】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物をガラス容器に封入してなる封入体であって、
前記ガラス容器が、前記容器内面の前記有機電界発光素子用組成物との接液面において、投影面積から求めた、基準面から0.8nm以上突出した凸部領域と、基準面から0.8nm以上窪んだ凹部領域とを合計した表面凹凸部分の面積率が、0.2%以上である封入体。
【請求項21】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物をガラス容器に封入してなる封入体であって、
前記ガラス容器が、前記容器内面の前記有機電界発光素子用組成物との接液面において、投影面積から求めた、基準面から0.8nm以上窪んだ凹部領域である表面凹部分の面積率が、0.1%以上である封入体。
【請求項22】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物をガラス容器に封入してなる封入体であって、
前記ガラス容器が、前記容器内面の前記有機電界発光素子用組成物との接液面において、任意に選択した10μm×10μmの領域における、基準面から0.8nm以上突出した凸部領域の数と、基準面から0.8nm以上窪んだ凹部領域の数との合計が、5以上である封入体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子の正孔注入層及び/又は正孔輸送層を形成するために用いられる有機電界発光素子用組成物に関する。
本発明はまた、前記有機電界発光素子用組成物を用いて湿式成膜法により形成された正孔注入層及び/又は正孔輸送層を有する有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機薄膜を用いた電界発光素子(以下、「有機電界発光素子」と称する。)の開発が行われている。有機電界発光素子における有機薄膜の形成方法としては、真空蒸着法と湿式成膜法が挙げられる。
このうち、真空蒸着法は積層化が可能であるため、陽極及び/又は陰極からの電荷注入の改善、励起子の発光層封じ込めが容易であるという利点を有する。
【0003】
一方、湿式成膜法は真空プロセスが要らず、大面積化が容易で、1つの層(塗布液)に様々な機能をもった複数の材料を混合して入れることが容易である等の利点がある。
湿式成膜法で有機層を形成した例として、特許文献1には、電荷輸送用組成物に用いられる各種の溶媒や、安息香酸エチルを溶媒として用いた正孔注入層用組成物が開示されている。
【0004】
しかし、湿式成膜法においては、異物の混入などが起きた場合、塗布欠陥が起こることがあり、特に有機薄膜を用いた有機電界発光素子においては非常に薄い膜を形成することが要求されるため、異物の混入や組成物中での異物の生成を抑制することが求められていた。
特に有機溶剤を塗布溶媒として用いる場合は、イオン結合によって形成される塩が有機溶剤に対して不溶であることから、水系の溶媒では析出しない微量の不純物によって塩が異物として析出し、成膜時のトラブルや、有機電界発光素子の不良の原因となることがある。
【0005】
湿式成膜法で正孔注入層を形成する例として、特許文献2〜4には水を塗布溶媒として用いた、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)−PSS(ポリスチレンスルホン酸)樹脂系正孔注入材料に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本国特開2010−98306号公報
【特許文献2】日本国特開2005−276749号公報
【特許文献3】日本国特開2006−5144号公報
【特許文献4】日本国特表2008−515194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記技術は水系という溶媒系の異なるものである。また、水系であるがゆえに、金属成分の混入量が多く、金属の混入量が溶液中濃度として数十ppm以上という非常に汚染レベルが高いものとなっている。
そこで本発明では、上記実情に鑑み、有機電界発光素子の正孔注入層及び/又は正孔輸送層を形成するために用いられる、正孔注入・輸送性材料と有機溶剤とを含有する有機電界発光素子用組成物であって、異物の含有量が少なく成膜時のトラブルの少ない組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、組成物中のZnの含有量(Zn濃度)を0.5ppm未満とすることにより、Znに起因する異物の生成を抑制し、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の要旨は、以下の<1>〜<22>に存する。
<1>有機電界発光素子の発光層、正孔注入層及び正孔輸送層からなる群より選ばれる少なくとも1層を形成するための有機電界発光素子用組成物であって、重量平均分子量3,000〜1,000,000の芳香族アミン系ポリマーと有機溶剤とを含み、前記組成物中のZn濃度が0.5ppm未満である、有機電界発光素子用組成物。
<2>前記有機電界発光素子用組成物が、有機電界発光素子の正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも1層を形成するための組成物である、前記<1>に記載の有機電界発光素子用組成物。
<3>前記Zn濃度が0.1ppm未満である、前記<1>又は<2>に記載の有機電界発光素子用組成物。
<4>前記組成物1ml中に含まれる長径0.1μm以上のZn含有異物の数が50,000個以下である、前記<1>乃至<3>のいずれか1に記載の有機電界発光素子用組成物。
<5>前記組成物中のS濃度が20ppm未満である、前記<1>乃至<4>のいずれか1に記載の有機電界発光素子用組成物。
<6>前記組成物中のS濃度が5ppm未満である、前記<1>乃至<4>のいずれか1に記載の有機電界発光素子用組成物。
<7>前記組成物中に存在するSが有機化合物由来のものである、前記<5>又は<6>に記載の有機電界発光素子用組成物。
<8>前記芳香族アミン系ポリマーが、下記式(2)で表される繰り返し単位を有するものである、前記<1>乃至<7>のいずれか1に記載の有機電界発光素子用組成物。
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、mは0〜3の整数を表し、Ar31及びAr32は、各々独立して、直接結合、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素環基又は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表し、Ar33〜Ar35は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
なお、Ar33及びAr35は1価の基を示し、Ar34は2価の基を示す。但し、Ar31及びAr32が共に、直接結合であることはない。)
<9>前記芳香族アミン系ポリマーが、下記式(3)で表される繰り返し単位を有するものである、前記<1>乃至<7>のいずれか1に記載の有機電界発光素子用組成物。
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、Ar51〜Ar53は、各々独立して、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を示し、Ar54及びAr55は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族基を示し、Ar56及びAr57は、各々独立して、直接結合、又は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を示し、R11及びR12は、各々独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していてもよい芳香族基を示し、m’は0〜5の整数を表し、R11及びR12は互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
<10>前記芳香族アミン系ポリマーが、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する、前記<1>乃至<9>のいずれか1に記載の有機電界発光素子用組成物。
【0014】
【化3】
【0015】
(式中、Ar及びArは各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Ar〜Arは、各々独立して、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素環基、又は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表す。Ar〜Arのうち、同一のN原子に結合する二つの基は互いに結合して環を形成してもよい。Xは、下記の連結基群X’の中から選ばれる1の連結基を表す。)
<連結基群X’>
【0016】
【化4】
【0017】
(式中、Ar11〜Ar28は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。R41及びR42は、各々独立して、水素原子又は任意の置換基を表す。)
<11>前記式(1)が下記式(1−1)で表される繰返し単位である、前記<10>に記載の有機電界発光素子用組成物。
【0018】
【化5】
【0019】
(式中、R〜Rは、各々独立して、任意の置換基を表す。p及びqは、各々独立して0〜5の整数を表す。r、s及びtは各々独立して0〜4の整数を表す。Xは式(1)におけるXと同義である。)
<12>前記芳香族アミン系ポリマーが、不溶化基を有するものである、前記<8>乃至<11>のいずれか1に記載の有機電界発光素子用組成物。
<13>更に、電子受容性化合物を含有する、前記<1>乃至<12>のいずれか1に記載の有機電界発光素子用組成物。
<14>前記有機電界発光素子用組成物が下記特徴を有するガラス容器に封入されてなる、前記<1>乃至<13>のいずれか1に記載の有機電界発光素子用組成物。
(特徴)ガラス容器であって、前記容器内面の前記有機電界発光素子用組成物との接液面において、投影面積から求めた、基準面から0.8nm以上突出した凸部領域と、基準面から0.8nm以上窪んだ凹部領域とを合計した表面凹凸部分の面積率が、0.2%以上である。
<15>前記有機電界発光素子用組成物が下記特徴を有するガラス容器に封入されてなる、前記<1>乃至<13>のいずれか1に記載の有機電界発光素子用組成物。
(特徴)ガラス容器であって、前記容器内面の前記有機電界発光素子用組成物との接液面において、投影面積から求めた、基準面から0.8nm以上窪んだ凹部領域である表面凹部分の面積率が、0.1%以上である。
<16>前記有機電界発光素子用組成物が下記特徴を有するガラス容器に封入されてなる、前記<1>乃至<13>のいずれか1に記載の有機電界発光素子用組成物。
(特徴)ガラス容器であって、前記容器内面の前記有機電界発光素子用組成物との接液面において、任意に選択した10μm×10μmの領域における、基準面から0.8nm以上突出した凸部領域の数と、基準面から0.8nm以上窪んだ凹部領域の数との合計が、5以上である。
<17>基板上に、少なくとも陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層及び陰極を積層してなる有機電界発光素子であって、前記発光層、正孔注入層及び正孔輸送層からなる群より選ばれる少なくとも1層が、前記<1>乃至<16>のいずれか1に記載の有機電界発光素子用組成物を用いて湿式成膜法により形成された、有機電界発光素子。
<18>前記<17>に記載の有機電界発光素子を含む、有機電界発光照明。
<19>前記<17>に記載の有機電界発光素子を含む、有機電界発光表示装置。
<20>前記<1>乃至<13>のいずれか1に記載の有機電界発光素子用組成物をガラス容器に封入してなる封入体であって、前記ガラス容器が、前記容器内面の前記有機電界発光素子用組成物との接液面において、投影面積から求めた、基準面から0.8nm以上突出した凸部領域と、基準面から0.8nm以上窪んだ凹部領域とを合計した表面凹凸部分の面積率が、0.2%以上である封入体。
<21>前記<1>乃至<13>のいずれか1に記載の有機電界発光素子用組成物をガラス容器に封入してなる封入体であって、前記ガラス容器が、前記容器内面の前記有機電界発光素子用組成物との接液面において、投影面積から求めた、基準面から0.8nm以上窪んだ凹部領域である表面凹部分の面積率が、0.1%以上である封入体。
<22>前記<1>乃至<13>のいずれか1に記載の有機電界発光素子用組成物をガラス容器に封入してなる封入体であって、前記ガラス容器が、前記容器内面の前記有機電界発光素子用組成物との接液面において、任意に選択した10μm×10μmの領域における、基準面から0.8nm以上突出した凸部領域の数と、基準面から0.8nm以上窪んだ凹部領域の数との合計が、5以上である封入体。
【発明の効果】
【0020】
本発明の有機電界発光(以下、「有機EL」と称することもある。)素子用組成物は、組成物が均一な溶液であり、異物生成の要因となるZn濃度が低減されているため、均一な成膜が可能である。従って、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて製造された有機電界発光素子は、短絡やダークスポットが生じず、駆動寿命が長いものとなる。
【0021】
本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて得られる本発明の有機電界発光素子は、フラットパネル・ディスプレイ(例えばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)や面発光体としての特徴を生かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯への応用が考えられ、その技術的価値は高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明に係る有機電界発光素子の構造の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の有機電界発光素子用組成物及び有機電界発光素子の実施態様を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定されない。
ここで、単に“ppm”と記載した場合は、“重量ppm”のことを示す。
【0024】
[有機電界発光素子用組成物]
本発明の有機電界発光素子用組成物(以下、「本発明の組成物」と称す場合がある。)は、有機電界発光素子の発光層、正孔注入層及び正孔輸送層からなる群より選ばれる少なくとも1層を形成するための有機電界発光素子用組成物であって、重量平均分子量3,000〜1,000,000の芳香族アミン系ポリマーと有機溶剤とを含み、前記組成物中のZn濃度が0.5ppm未満であることを特徴とする。なお、本発明の芳香族アミン系ポリマーとは、主鎖に芳香族アミノ基を有するポリマーである。詳細は後述する。
中でも、本発明の有機電界発光素子用組成物は、有機電界発光素子の正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも1層を形成するための有機電界発光素子用組成物であることが好ましい。
また、本発明の有機電界発光素子用組成物は、更に電子受容性化合物を含有することが有機電界発光素子の低電圧化の点から好ましい。
【0025】
<Znに関する説明>
本発明の組成物は、組成物中のZnの含有量、すなわちZn濃度が0.5ppm未満であることを特徴とする。理由を以下に述べる。
【0026】
本発明に係る組成物中にZn原子が存在すると、このZn原子が組成物中に含まれる陰イオン成分と経時的に徐々に反応して不溶性の析出物(異物)を形成することが考えられる。そのような析出物は、該組成物を含む有機電界発光素子において、短絡やダークスポット等の原因となりうる。
前記陰イオン成分としては、とりわけ硫黄(S)を含む陰イオン成分が挙げられるが、陰イオン成分については後述する。
Znは原子半径が大きく、ファンデルワールス力が大きいため、有機物との相互作用が強い。そのため、正孔注入層及び/又は正孔輸送層を形成するポリマー中に取り込まれやすい。よって、組成物中にZn原子が存在すると、意図しない錯体形成や分極化作用、分子間相互作用の阻害等により有機電界発光素子の機能を妨害するおそれがある。
【0027】
組成物中のZnはさまざまな経路から混入することが考えられる。
その経路の具体例としては、組成物を構成する芳香族アミン系ポリマー等の固形材料や有機溶剤などの材料からの混入;組成物の調製時に使用する、材料を混合する容器からの混入;材料を混合して組成物を調製する際の周囲環境からの混入;組成物を充填して保存する容器からの混入;などが挙げられる。
【0028】
容器からのZnの混入を防ぐためには、使用する容器の洗浄を十分に行う必要がある。例えば、クリーンルームなどのパーティクル(微小粒子)の少ない環境にて、パーティクルの量が少ない超純水を用いて、容器を繰り返しすすぎ洗浄し、クリーンオーブンにて乾燥させることが好ましい。
超純水による上記洗浄の前に、必要に応じて、有機溶剤やアルカリ性、酸性又は中性の洗剤を用いて、容器内壁等に付着した有機物質又は無機物質を洗浄除去しておくことも好ましい。
【0029】
組成物の調製時の周囲環境からのZnの混入を防ぐためには、周囲に混入源となるような汚染物質がないことを十分に確認し、汚染物質がある場合にはこれを排除することが重要である。
例えば、仕切りやフードなどで、外部環境と仕切られた清浄な環境を整え、流入してくる気体についてはヘパフィルターなどの各種のフィルターを用いて清浄化することが好ましい。
【0030】
組成物中のZn含有量を低減するには、特に該組成物の構成材料を十分に精製することが重要である。
例えば、有機溶剤などの液体に関しては、組成物の調製に先立ち、蒸留やイオンクロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、各種金属除去剤などを活用した精製手法を適用して精製することが有効である。また、固形材料に関しては、その化合物を製造する段階での原料や触媒、有機溶剤等の反応原材料中のZn混入に十分に注意し、極力Znを混入させないようにする必要がある。
【0031】
製造段階において酸性水溶液やアルカリ性水溶液、有機溶剤などを用いた洗浄工程や再沈殿法、再結晶法、蒸留、昇華精製法などを組合せて精製する方法も有効である。また、これらの水溶液や有機溶剤への溶解性が低い固形材料に関しては、ボールミルなどを用いて固形材料を細かく粉砕しながら、酸性水溶液やアルカリ性水溶液、有機溶剤等で洗浄することが好ましい。
調製された組成物に混入してしまったZnを除去する方法としては、カラムクロマトグラフィー法や晶析−濾過法、デカンテーション、水洗法、フィルターで濾過する方法等が挙げられる。
【0032】
本発明においては、上述のように、組成物の構成材料の製造から、組成物の調製中や、その保管中など、各段階において、組成物へのZnの混入を防止し、また、混入したZnを除去することにより、本発明の組成物中のZn濃度を0.5ppm未満とする。
本発明の組成物中のZn濃度は低い程好ましく、より好ましくは0.1ppm未満であるが、後述のZn濃度の分析における検出限界以下であることがより好ましい。
【0033】
組成物中のZn濃度が0.5ppm以上であると、Znに起因する異物の生成で、均一な成膜を行えず、この組成物を用いて製造される有機電界発光素子に、短絡やダークスポット、逆電圧漏れ電流などが生じることから、駆動寿命の長い有機電界発光素子を得ることができない。
本発明においては、組成物中のZn濃度を0.5ppm未満とすることで、Znに起因する異物の生成を抑制し、均一な成膜が行え、この組成物を用いて製造される有機電界発光素子に、短絡やダークスポット、逆電圧漏れ電流などの問題が生じにくく、駆動寿命の長い有機電界発光素子を得ることができる。
なお、本発明の組成物中のZn濃度は後述の実施例の項に記載されるように、ICP(分光分析)法で測定することができる。
【0034】
また、本発明の組成物は、上記のようにZn濃度が低いことから、Znと組成物中の陰イオン成分等との反応で生成する異物が少ないことにも特徴を有する。例えば、本発明の組成物1ml中に含まれる、長径が0.1μm以上のZn含有異物の数は好ましくは50,000個以下、より好ましくは20,000個以下、さらに好ましくは10,000個以下とすることができる。
ここで、組成物中の長径が0.1μm以上のZn含有異物の個数は、少ない程好ましく、組成物中に長径が0.1μm以上のZn含有異物が存在しないことが特に好ましい。
【0035】
組成物中のZn含有異物の個数を測定する方法としては、走査型電子顕微鏡(SEM)で単位面積を観察し計測する方法が挙げられる。その際、EDXあるいはEDS(エネルギー分散形X線分析装置)にて異物に含有される元素を特定することができる。
具体的には、例えば1mlの組成物をAcmの濾過面積のフィルターにて濾過し、フィルターの任意のBcmの範囲を観察して、1個のZn含有異物をSEM−EDXにより検出した場合、1ml中のZn含有異物の個数は1×A/B個と算出できる。
【0036】
<Zn低減方法>
以下に、Zn含有量が0.5ppm未満の本発明の組成物を調製するための精製方法について説明する。
【0037】
Zn含有量が0.5ppm未満の本発明の組成物を調製するために、本発明の組成物の調製に用いられる正孔注入・輸送性材料の芳香族アミン系ポリマー、その他の固形材料や有機溶剤、或いは調製された組成物中に含まれるZn含有量を低減する方法としては、酸処理法、イオン除去剤を用いる方法、その他の方法(例えば、再沈殿法、有機溶剤洗浄法)、及びこれらの組み合わせなどの公知の方法が用いられる。
【0038】
(酸処理法)
酸処理法としては、芳香族アミン系ポリマー等の被精製材料を有機溶剤に溶解するなどして液体の状態にした後に、酸性水溶液と接触させて液々抽出により不純物を水溶液側に抽出して除去する方法が挙げられる。
具体的には、例えば、日本国特開2004−2627号公報や日本国特開2011−42745号公報に記載されるような方法が挙げられる。
【0039】
具体的には、芳香族アミン系ポリマー等の被精製材料を有機溶剤に溶解し、その溶液を酸性水溶液と接触させて液々抽出することで精製を行うことが出来る。ここで、被精製材料を溶解させる有機溶剤については後述する。
被精製材料を有機溶剤に溶解する際の有機溶剤の使用量は被精製材料を溶解することができる量であればよく、特に制限されるものではないが、有機溶剤を過度に多く用いると、全体の液量が多くなって操作性が低下する場合がある。また有機溶剤の量が過度に少ないと、酸性水溶液で処理した後の水層との分離性が悪くなることがある。
このため、好適な有機溶剤使用量は、被精製材料100重量部に対して50〜5000重量部、より好ましくは100〜4000重量部である。
【0040】
有機溶剤に溶解させた被精製材料は、次に酸性水溶液と接触処理することにより液々抽出する。酸性水溶液としては、例えば水に酸を加えてpHを5以下としたものが好ましい。なお、水溶液の酸性度を過度に大きくすると被精製材料の物性や構造にまで影響を及ぼす場合があり、通常はpH0以上程度の酸性水溶液が好ましく、より好適なpH範囲は1〜5である。
【0041】
酸性水溶液とする際に用いる酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、ホウ酸などの無機酸;酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、シキミ酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、リンゴ酸、グルタル酸の加水分解物、無水マレイン酸の加水分解物、無水フタル酸の加水分解物などの有機酸を挙げることができる。
中でもコストや除去性、反応性などの面から無機酸や酢酸などの低級の有機酸が好ましい例として挙げることができる。これらの酸は、1種を用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0042】
酸性水溶液の調製に用いる水は、本発明の目的に沿って金属含有量の少ないもの、例えば電気抵抗10MΩ/cm以上を示すイオン交換水や蒸留水などが望ましい。例えば、イオン交換水や、金属含有量の少ない水に酸を加えて弱酸性としたものも好ましく用いることができる。
【0043】
液々抽出における酸性水溶液の使用量に特別な制限はないが、その量が過度に少ないと、Zn除去のための抽出回数を多くする必要がある。また酸性水溶液の量が過度に多いと、全体の液量が多くなって操作性が低下する場合がある。
酸性水溶液の好適な使用量は、被精製材料100重量部に対して100〜3000重量部、より好ましくは150〜2500重量部である。
【0044】
液々抽出処理は通常被精製材料を溶解した有機溶剤溶液と抽出剤である酸性水溶液とを、5〜60℃の温度、より好ましくは10〜50℃の温度で、攪拌などにより十分に混合させた後、静置することによって行われる。
これにより、被精製材料溶液層と水層が二層に分離し、被精製材料溶液中に含まれていたZnイオンが水層に移行する。この際、遠心分離器などを用いて被精製材料溶液層と水層と分離性を向上させることもできる。
【0045】
このような処理により、被精製材料溶液中のZn含有量を低減することが出来るが、得られる被精製材料溶液層を更に、水又は酸性水溶液に投入し、上記液々抽出処理と同様にして攪拌による混合、静置、分液という操作を数回繰り返して、Zn含有量を一層低減させることが望ましい。また、かかる酸性水溶液による抽出終了後に、更に水を用いて数回抽出処理を行い、酸を除去しておくことが望ましい。この場合に用いる水についても、上記の酸性水溶液の調製に用いる水と同様に、金属含有量の少ないイオン交換水や蒸留水が好ましい。
【0046】
(イオン除去剤を用いる方法)
イオン除去剤を用いてZn含有量を低減する方法として好ましい実施形態としては、被精製材料を後述の有機溶剤に溶解するなどして液体の状態にした後に、イオン除去剤と接触させる方法が挙げられる。
イオン除去剤との接触方法としては、イオン除去剤を被精製材料の溶液に添加混合して十分に攪拌し、その後、濾過によりイオン除去剤を取り除く方法や、イオン除去剤を充填したカラム内に被精製材料溶液を通液させる方法などが挙げられる。
【0047】
イオン除去剤として好適なものにイオン交換樹脂が挙げられる。イオン交換樹脂としては、酸性カチオン交換樹脂又は塩基性アニオン交換樹脂が用いられる。このうち、Znなどの金属イオンを除去するには酸性カチオン交換樹脂が好適に用いられる。
【0048】
酸性カチオン交換樹脂は、例えばスチレン系、アクリル系、メタクリル系等の各種ポリマーを基体とし、その主鎖に、−SOM(−SOH)、−COOM、−N=(CHCOOM)等の各種のイオン交換基(官能基)が導入され、すなわちイオン交換基が修飾されてなるものである。なお、前記イオン交換基(官能基)中のMは金属元素を示している。
【0049】
この酸性カチオン交換樹脂には、強酸性カチオン交換樹脂と弱酸性カチオン交換樹脂とがある。強酸性カチオン交換樹脂は、例えばスチレン系のポリマーを基体とし、イオン交換基(官能基)としてスルホン酸基(−SOH)を有したもので、不純物としてのカチオン(陽イオン)をより良好にイオン交換してこれを捕捉し、被処理液から除去することができる。
ここで、除去対象となる不純物としてのカチオンとしては、Znの他、各種の金属イオンやP、Siからなるものが挙げられる。金属イオンとしては、周期律表Ia族、IIa族、VIa族、VIIa族、及びIIb族に属する金属のイオンが挙げられ、より具体的にはCa、Cr、Fe、Pd、Na、Mg、Ni、Sn、K等が挙げられる。なお、このような強酸性カチオン交換樹脂の具体例としては、三菱化学(株)製の「ダイヤイオン(登録商標)SK110」(商品名)等を挙げることができる。
【0050】
弱酸性カチオン交換樹脂は、アクリル系のポリマーを基体とし、イオン交換基(官能基)としてアクリル酸基を有したものや、メタクリル系のポリマーを基体とし、イオン交換基(官能基)としてメタクリル酸基を有したものが挙げられる。前記の強酸性カチオン交換樹脂と同様、弱酸性カチオン交換樹脂は、金属イオン等のカチオンをより良好にイオン交換してこれを捕捉し、被処理液から除去することができる。
また、この弱酸性カチオン交換樹脂は、特に被処理液中のドナー性高分子に対して過剰に用いられ、接触に供された場合に、前記強酸性カチオン交換樹脂と同様に、ドナー性高分子の低分子側の成分を選択的に吸着(イオン交換)して、被処理液から除去することもできる。なお、このような強酸性カチオン交換樹脂の具体例としては、三菱化学(株)製の「ダイヤイオン(登録商標)WK100」(商品名)、「ダイヤイオン(登録商標)WK11」(商品名)等を挙げることができる。
【0051】
このようなイオン交換樹脂としては、その形態については特に限定されることなく、種々の形態のものが使用可能である。例えば、粒状や繊維状、あるいは該繊維からなる織布や不織布、さらに各種の形状に成形されてなる成形体が使用可能である。
【0052】
また、上記の酸性カチオン交換樹脂を用いてカチオンを除去すると共に、塩基性アニオン交換樹脂を用いてアニオン性不純物を除去することも、本発明の組成物を用いて作製された有機電界発光素子の寿命を向上させる上で好ましい。
【0053】
塩基性アニオン交換樹脂は、例えばスチレン系、アクリル系等の各種ポリマーを基体とし、その主鎖に、第4級アンモニウム塩基(4級アミン)、3級アミン、1又は2級ポリアミン等の各種のイオン交換基(官能基)が導入され、すなわちイオン交換基が修飾されてなるものである。
【0054】
この塩基性アニオン交換樹脂には、強塩基性アニオン交換樹脂と弱塩基性アニオン交換樹脂とがある。
強塩基性アニオン交換樹脂は、例えばスチレン系のポリマーを基体とし、イオン交換基(官能基)として第4級アンモニウム塩基(4級アミン)を有するもので、不純物としてのアニオン(陰イオン)をより良好にイオン交換してこれを捕捉し、被処理液から除去することができる。
除去対象となる不純物としてのアニオンとしては、硫酸イオン(SO2−)、ギ酸イオン(HCO)、シュウ酸イオン(C2−)、酢酸イオン(CHCOO)、Fイオン、Clイオン、Brイオン、NOイオン等の無機イオン及び有機イオンが挙げられる。
なお、このような強塩基アニオン交換樹脂の具体例としては、三菱化学(株)製の「ダイヤイオン(登録商標)NSA100」(商品名)、「ダイヤイオン(登録商標)SAN1」(商品名)等を挙げることができる。
【0055】
弱塩基性アニオン交換樹脂は、スチレン系のポリマーを基体とし、イオン交換基(官能基)として3級アミンを有するものや、アクリル系のポリマーを基体とし、イオン交換基(官能基)として1又は2級ポリアミンを有するもので、前記の強塩基性アニオン交換樹脂と同様、硫酸イオン(スルホン酸イオン)等のアニオンをより良好にイオン交換してこれを捕捉し、被処理液から除去することができる。
なお、このような弱塩基性アニオン交換樹脂の具体例としては、三菱化学(株)製の「ダイヤイオン(登録商標)WA20」(商品名)等を挙げることができる。
【0056】
さらに、イオン除去剤としては、無機イオン交換材料も好適に用いられる。無機イオン交換材料は、金属酸化物などの金属塩からなるもので、カチオンを吸着してイオン交換するタイプ;アニオンを吸着してイオン交換するタイプ;カチオン、アニオンを共に吸着してイオン交換するタイプがある。
【0057】
カチオンをイオン交換するタイプの無機イオン交換材料としては、五酸化アンチモン(Sb)の水和物(例えば、東亜合成株式会社製「IXE(登録商標)−300」(商品名))やリン酸チタン(例えば、東亜合成株式会社製「IXE(登録商標)−400」(商品名))、リン酸ジルコニウム(例えば、東亜合成株式会社製「IXE(登録商標)−100」(商品名))などがある。
また、アニオンをイオン交換するタイプの無機イオン交換材料としては、含水酸化ビスマス(例えば、東亜合成株式会社製「IXE(登録商標)−500」(商品名))や水酸化リン酸鉛(例えば、東亜合成株式会社製「IXE(登録商標)−1000」(商品名))などがある。特に含水酸化ビスマスは、硫酸イオン(SO2−)に対する吸着選択性が高い。
【0058】
イオン除去剤としては、このような上記のイオン交換剤の他に、活性炭や活性白土、シリカ、シリカゲルなども用いることができる。
【0059】
(再沈殿法)
Zn含有量を低減するために用いる再沈殿法は、被精製材料を溶解できる適当な有機溶剤(良溶媒)に溶解し、この溶液に貧溶媒を添加して、被精製材料を固体として析出させることにより精製する方法である。この再沈殿法に使用される良溶媒の使用量は、精製される芳香族アミン系ポリマー等の被精製材料を完全に溶解するために、通常被精製材料に対して5倍重量部以上、好ましくは10倍重量部以上とすることが望ましい。
ここで、用いる有機溶剤としては、後述の精製用有機溶剤のうち、特にメタノール、エタノールなどのアルコール系有機溶剤や、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族系有機溶剤、ベンゼン、トルエンなどの芳香族系有機溶剤等が好ましい。当然のことながら使用する有機溶剤の不純物量が少ないことが好ましい。
【0060】
(有機溶剤洗浄法)
Zn含有量を低減するために用いる有機溶剤洗浄法は、被精製材料を分散することができ、かつ適度な揮発性を有する適当な有機溶剤を選択して、被精製材料を洗浄する方法である。この有機溶剤洗浄法に使用される有機溶剤は、芳香族アミン系ポリマー等の被精製材料をある程度溶解するものであってもよい。
有機溶剤洗浄法に使用される有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系有機溶剤が好ましく用いられる。
【0061】
有機溶剤洗浄法の操作方法としては、被精製材料と有機溶剤との混合物を、ディゾルバー、ホモミキサー、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、3本ロール、2本ロール、ビーズミル等の混合装置を用い、通常1分〜70時間、好ましくは5分〜24時間、さらに好ましくは10分〜6時間混合し、その後、濾過、デカンテーション等により有機溶剤を分離した後、乾燥する分散洗浄操作;被精製材料と有機溶剤との混合物に、超音波分散ホモジナイザー、超音波洗浄機等の超音波混合装置内で、通常1〜300KHz、好ましくは2〜100KHzの周波数の超音波を、通常30秒〜10時間、好ましくは1分〜5時間照射し、その後、濾過、デカンテーション等により有機溶剤を分離した後、乾燥する超音波洗浄操作;被精製材料と有機溶剤との混合物を、翼付攪拌機を用い、通常50〜15,000rpm、好ましくは100〜2,000rpmの回転数で、通常5分〜10時間、好ましくは10分〜5時間攪拌し、その後、濾過、デカンテーション等により有機溶剤を分離した後、乾燥する攪拌洗浄操作等を挙げることができる。
これらの操作は、個別に実施しても何れか2つ以上を組み合わせて実施してもよい。これらの操作を行う際の被精製材料の濃度は、通常0.1〜70重量%、好ましくは1〜50重量%である。
【0062】
(精製用有機溶剤)
以上の精製法において用いる有機溶剤としては、本発明の組成物調製の際に用いられる有機溶剤と同様のものを用いることができるが、Zn除去性などの観点から例えば、以下のような有機溶剤を用いることが好ましい。
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチルなどのエステル系有機溶剤;n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、i−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系有機溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンセン、i−プロピルベンセン、ジエチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−i−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン、トリメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系有機溶剤;シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤などを挙げることができる。
これら有機溶剤は2種以上を同時に使用しても良い。
【0063】
(有機溶剤の精製方法)
本発明の組成物を調製するために用いられる有機溶剤の精製方法としては、上述の被精製材料の精製方法において、被精製材料溶液の代りに被精製有機溶剤を用いて、同様に実施することができる。
【0064】
<組成物の保存>
本発明の組成物は、特定のガラス容器に封入、保管することにより、組成物中の異物生成の要因となる金属が、保管中にガラス容器の壁面に捕捉され、均一な溶液状態を保持することができる。よって、組成物中に異物が生成せず、安定して均一な成膜が可能である。このため、本発明の有機電界発光素子用組成物を特定のガラス容器に封入、保管された有機電界発光素子用組成物を用いて製造することによって本発明の有機電界発光素子は、短絡やダークスポットが生じず、駆動寿命が長いものとなる。
【0065】
すなわち、本発明の有機電界発光素子用組成物は、特定のガラス容器に封入してなる封入体として保管されることが好ましい。
前記ガラス容器は、前記ガラス容器の容器内面の該有機電界発光素子用組成物との接触面(以下「接液面」と称することがある。)において、投影面積から求めた、基準面から0.8nm以上突出した凸部領域と、表面から0.8nm以上窪んだ凹部領域とを合計した表面凹凸部分の面積率が、0.2%以上であるガラス容器である。
【0066】
また、前記ガラス容器は、前記ガラス容器の接液面に対して、投影面積から求めた、基準面に対して0.8nm以上低い凹部領域である表面凹部分の面積率が、0.1%以上であることが好ましい。
【0067】
さらに前記ガラス容器は、前記ガラス容器の接液面に対して、任意に選択した10μm×10μmの領域における、基準面から0.8nm以上突出した凸部領域の数と、基準面から0.8nm以上窪んだ凹部領域の数との合計が、5以上であることがさらに好ましい。
【0068】
容器内面の接液面の投影面積とは、観察サンプルである容器内面の接液面の任意の領域を容器内面の接液面に対して垂直方向から見たときの面積である。具体的には、任意の10μm×10μmの接液面を、接液面に対して垂直方向から見たときの面積とすることができる。
容器内面は巨視的には曲面形状の場合が多いが、前記10μm×10μmという微小領域では近似的に平面と見なすことができ、10μm×10μmの領域の容器内面の接液面に対する垂直方向は一義的に決定される。
【0069】
したがって、容器内面の接液面における、投影面積から求めた基準面から0.8nm以上突出した凸部領域とは、容器内面に対して垂直方向から見たときに、容器内面基準面から0.8nm以上突出した凸部の投影面積であり、容器内面の接液面における、投影面積から求めた基準面から0.8nm以上窪んだ凹部領域とは、容器内面に対して垂直方向から見たときに、容器内面基準面から0.8nm以上窪んだ凹部の投影面積である。
【0070】
ガラス容器の容器内面の該有機電界発光素子用組成物との接触面において、投影面積から求めた、基準面から0.8nm以上突出した凸部領域と、基準面から0.8nm以上窪んだ凹部領域とを合計した表面凹凸部分の面積率が、0.2%以上であることは、具体的には、容器内面の有機電界発光素子用組成物との接液面に対して、下記(i)に示したAFM測定を行い、下記(ii)に示した表面凹凸部分の面積率として求めることが好ましい。
また、ガラス容器の容器内面の該有機電界発光素子用組成物との接液面において、投影面積から求めた、基準面から0.8nm以上窪んだ凹部領域である表面凹部分の面積率が、0.1%以上であることは、具体的には、下記(i)に示したAFM測定を行い、下記(iii)に示した表面凹部分の面積率として求めることが好ましい。
【0071】
また、ガラス容器の容器内面の該有機電界発光素子用組成物との接液面において、任意に選択した10μm×10μmの領域における、基準面から0.8nm以上突出した凸部領域の数と、基準面から0.8nm以上窪んだ凹部領域の数との合計が、5以上であることは、具体的には、好ましくは下記(i)に示したAFM測定を行い、下記(iv)に示した表面凹凸密度として求めることが好ましい。
【0072】
(i) ガラス容器の接液面の任意の2ヶ所について、それぞれ、任意に選択した10μm×10μmのAFM画像を1サンプルとし、1サンプルを256×256の領域に区画して各々の区画毎に高さ情報のデータを測定する。
(ii) 1サンプル当たりに検出された、基準面に対して0.8nm以上高い凸部区画と0.8nm以上低い凹部区画の面積の合計を、1サンプルの面積(10μm×10μm)に対する百分率として算出し、全サンプルの平均値を求めて表面凹凸部分の面積率とする。
(iii) 1サンプル当たりに検出された、基準面に対して0.8nm以上低い凹部区画の面積の合計を、1サンプルの面積(10μm×10μm)に対する百分率として算出し、全サンプルの平均値を求めて表面凹部分の面積率とする。
(iv) 1サンプル(10μm×10μm)当たりに検出された、基準面に対して0.8nm以上高い凸部領域の数と0.8nm以上低い凹部領域の数を合計し、全サンプルの平均値を求めて表面凹凸密度とする。
【0073】
ここで、基準面に対して0.8nm以上高い凸部領域とは、基準面に対して0.8nm以上高い凸部区画が1つまたは複数つながった凸部区画の集合であって、その周囲は0.8nm以上高い凸部区画ではない領域のことを言う。
基準面に対して0.8nm低い凹部領域とは、基準面に対して0.8nm以上低い凹部区画が1つまたは複数つながった凹部区画の集合であって、その周囲は0.8nm以上低い凹部区画ではない領域のことを言う。
基準面とは、平坦領域の面、または、測定領域の凹凸の平均で定義される面を用いることができる。測定領域の凹凸の平均で定義される面が簡便で再現性があり、好ましい。
なお、前記接液面の観察は、再現性が高いため、AFM測定が好ましい。
【0074】
前記接液面に、上記表面凹凸の特徴を有するガラス容器を用いることによる本発明の作用効果は、以下の通りである。
【0075】
本発明の組成物中に金属不純物が存在する場合、これらは長期の保管の間に経時的に凝集して、例えば0.1μm程度以上の大きさの異物を形成することがある。本発明の組成物の用途である有機電界発光素子デバイスにおいては、有機層の膜厚は数nmから数十nmあるいは数百nmのレベルであるため、このようなサイズの異物であったとしても、膜の電気物性に影響を与え、電気的短絡を引き起こし、表示欠陥を形成する恐れがある。
【0076】
本発明に係るガラス容器は、本発明の組成物中に、このような微量混入金属不純物があった場合、保管中にその接液面の表面凹凸で前記不純物を捕捉し、凝集を抑制する金属担持性容器として機能する。
本発明に係るガラス容器が金属捕捉機能を十分に発揮するために、ガラス容器の接液面に最適な凹凸が存在するものが好ましく、また、接液面に極性を有しているものが好ましい。
【0077】
本発明に係るガラス容器の接液面の表面凹凸部分の面積率が0.2%以上であることにより、表面凹凸による組成物中の異物の捕捉効果を十分に得ることができる。異物捕捉効果の面で表面凹凸部分の面積率は大きい程好ましく0.5%以上、特に0.7%以上であることが好ましい。
容器に汚れ等が付着していた場合、洗浄して取り除きやすいこと、容器内の溶液を使用する際に容器壁面に溶液が付着残留しにくいため容器内の溶液の利用効率が高くなること、および、容器成分が溶出しにくいことから、ガラス容器の表面凹凸部分の面積率は通常20%以下である。
【0078】
また、表面凹凸による組成物中の異物の捕捉効果をより確実に得るために、特に異物をその凹部に取り込んで捕捉する凹部の存在量を示す表面凹部分の面積率については、0.1%以上であることが好ましく、0.3%以上であることがより好ましい。
容器に汚れ等が付着していた場合、洗浄して取り除きやすいこと、容器内の溶液を使用する際、容器壁面に溶液が付着残留しにくいため容器内の溶液の利用効率が高くなること、および、容器成分が溶出しにくいことから、ガラス容器の接液面の表面凹部分の面積率は通常30%以下である。
【0079】
また、表面凹凸による組成物中の異物の捕捉効果の面で、単位面積当たりの表面凹凸の数を表す表面凹凸密度についても多い方が好ましく、5以上、特に7以上、とりわけ10以上であることが好ましい。
容器に汚れ等が付着していた場合、洗浄して取り除きやすいこと、容器内の溶液を使用する際、容器壁面に溶液が付着残留しにくいため容器内の溶液の利用効率が高くなること、および、容器成分が溶出しにくいことから、ガラス容器の接液面の表面凹凸密度は通常80以下であり、好ましくは50以下である。
【0080】
凸部の高さの上限、凹部の深さの上限については特に制限はないが、基準面からの凸部の高さの上限は通常7nm以下、基準面からの凹部の深さの上限は通常7nm以下である。
【0081】
ガラス容器の接液面の凸部領域又は凹部領域の1個当たりの大きさとしては、径(凹凸の投影面を2本の平行線で挟んだ際、平行線の距離が最も長くなる部分の長さ)が0.05〜3μmの突起(凸部)あるいは細穴(凹部)であることが好ましい。この凹凸の径は好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.5μm以上である。
【0082】
10μm×10μmのAFM画像を1サンプルとし、1サンプルを256×256の領域に区画して各々の区画毎に高さ情報のデータを測定した場合、径は、区画(1区画は約0.039μm×約0.039μmの正方形)の集合で表される凸部領域または凹部領域の辺または頂点に接する2本の平行線で挟んだ際の、平行線の距離が最も長くなる部分の長さで定義する。
凹凸の径が小さいほど接液面の表面積が小さいため金属捕捉効果が低いので、接液面の表面積を大きくすることで、金属捕捉効果が高まる。
【0083】
細穴の場合は、径が小さすぎると、組成物中の異物が細穴に入り込む確率が小さくなることで、金属捕捉効率が低下する場合がある。組成物中に存在して問題となる異物は、組成物により形成される層の膜厚を考慮すると、0.01μm以上の大きさのものと考えられる。
ガラス容器の表面凹凸は、保管中の組成物にこのような異物が形成されてしまってもこれを効果的に捕捉できる大きさが好ましい。
【0084】
なお、本発明に係るガラス容器は、その接液面の全面が上記表面凹凸部分の面積率を満たし、好ましくは更に上記表面凹部分の面積率及び表面凹凸密度をも満たすことが好ましい。
少なくとも接液面の30%以上、特に50%以上が上記表面凹凸部分の面積率を満たし、好ましくは更に上記表面凹部分の面積率及び表面凹凸密度をも満たすものであれば、本発明による異物捕捉効果を得ることができる。
【0085】
また、本発明の組成物の保管中に、本発明に係るガラス容器による異物捕捉効果を十分に得るために、本発明の組成物は、本発明に係るガラス容器に封入されて16時間以上、特に1日以上保管されることが好ましい。
この保管期間が短過ぎると、高度に精製した組成物の場合、異物となるほどに金属の凝集が起こる可能性が低い。従って、ガラス容器による異物捕捉効果も得られない。また保管期間が長過ぎると組成物の安定性が低い場合には、組成物の凝集または分解などの劣化が進行する恐れがある。
【0086】
有機電界発光素子用組成物の保管用の一般的な容器の材質としては、ポリ容器(樹脂製容器)、ガラス容器、金属容器が挙げられる。
金属容器は、金属表面から更なる金属溶出を起こす場合があり、ポリ容器は、耐熱性、耐薬品性等が劣る場合がある。このような場合がなく、また、内容物を確認しやすく、堅牢である点などから、本発明においてはガラス容器を用いることが好ましい。
【0087】
ガラス容器のガラスの材質としては、ほう珪酸ガラスが、本発明の組成物への各種イオンの低溶出性の観点より好ましく用いられる。ガラス容器のガラス材質として、ソーダガラスなどを用いることも可能であるが、ソーダガラスは、ガラスからNaなどの溶出量が多いため、ほう珪酸ガラスが好ましい。
【0088】
ガラス容器の表面凹凸は、主にシラノール基により覆われていると考えられる。前記の表面凹凸部分の面積率、更には表面凹部分の面積率や表面凹凸密度を満たすガラス容器は、このシラノール基の表面積が大きくなることにより、金属を捕捉する化学的な効果が高まる。
【0089】
また表面凹凸が3次元的なイオンや異物を捕捉するポケットを形成し、物理的な結合力による相乗効果によって、容器の接液面で金属イオンが捕捉される。それにより組成物内で凝集体を形成して異物となることを防ぐことができる。
また仮に異物が生成しても容器の接液面で捕捉され、異物が組成物内に自由に浮遊することを防ぐことができる。このような組成物を膜形成に使用する際に、形成される膜中に異物が混入することを防ぐことができる。
【0090】
ガラス容器の接液面に、前述のような表面凹凸部分の面積率、更には表面凹部分の面積率や表面凹凸密度を満たす表面凹凸を形成するには、ガラスの生地管の生成段階の加熱又は冷却段階における温度上昇又は冷却速度をそれぞれ調整することにより形成することができる。また、サンドブラスト法などの粒子を用いて、できあがったガラス容器の表面を粗面化する方法も有効である。
【0091】
また、市販のガラス容器に対して、前述のAFM測定を行って、前述のような表面凹凸部分の面積率、更には表面凹部分の面積率や表面凹凸密度を満たす表面凹凸を選択して本発明に係るガラス容器として用いることもできる。
【0092】
<陰イオン成分>
前述の通り、組成物中にZnが存在すると、陰イオン成分と不溶性の析出物を形成する可能性がある。特に、イオン結合によって形成される塩は有機溶剤に対して通常不溶性であり、有機溶剤中で析出する。よって、陰イオン成分、とりわけ硫黄(S)を構成成分として含む陰イオン成分も低減しておくことが好ましい。以下、硫黄(S)の低減に関して説明する。
【0093】
<Sに関する説明>
本発明の組成物は、組成物中のSの含有量(S濃度)が20ppm未満であることが好ましく、より好ましくは5ppm未満、更に好ましくは1ppm未満に低減されたものが好ましい。
本発明の組成物に含まれるSは、通常、有機化合物由来のものであり、一般に、組成物を調製する際に用いる有機溶剤に含まれているS成分が、組成物内に持ち込まれる。
【0094】
本発明において、組成物中のSが有機溶剤に含まれて持ち込まれる理由は以下の通りである。
【0095】
本発明の組成物は、芳香族アミン系ポリマーを用い、これを有機溶剤に溶解してなるものである。このような芳香族アミン系ポリマーを溶解させるために、本願発明の組成物に用いられる有機溶剤としての要求物性として極性を少なからず有することが望まれる。
【0096】
極性基を有する有機溶剤を製造するにあたっては、硫酸若しくは硫酸誘導体などを用いた触媒又は極性基導入のための試薬が用いられる。
例えば、エステル系有機溶剤は、原料のカルボン酸に対して、アルコール及び触媒量の硫酸などの酸を用いて合成される。原料のカルボン酸に、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、ジブチル硫酸などの硫酸エステル類を反応させることにより合成される場合もある。
【0097】
このような反応を行った後に、精製が不十分であると、合成された有機溶剤中に硫酸や硫酸エステルなどが残存する。
このような残存硫酸や残存硫酸エステルを含む有機溶剤を用いて組成物を調製すると、組成物中にSが含まれるものとなり、硫酸の場合は組成物中の金属イオンと直接錯体を形成し、ジエチル硫酸エステルの場合は徐々に分解して硫酸となって金属イオンと錯体を形成する。形成された錯体は組成物中に異物として析出する。
【0098】
硫酸と硫酸エステルを比べた場合、通常は、硫酸は水洗などの工程で容易に除去し得るのに対し、硫酸エステルは、水洗では除去しにくく、また、蒸留による分離精製でも除去し得ない場合がある。
これらは、組成物の調製直後には問題とならなくても、時間の経過と共に問題となる場合もあるため、特に、ジエチル硫酸等の硫酸エステルのような有機化合物由来のSの含有量を低減した有機溶剤を用いることが好ましい。
【0099】
本発明の組成物は、組成物中のS濃度を低減することにより、組成物中に含有される金属が析出して異物を形成することを防止し、異物の含有量が少なく、成膜時のトラブルの少ない組成物とすることができる。
【0100】
本発明の組成物は、Sと組成物中の金属成分とで形成される異物が少ないほど好ましく、孔径0.1μmのフィルターで濾過した際、フィルター上に長径0.5μm以上の粒子が見られないことが好ましい。
なお、異物となる錯体を形成する組成物中の金属成分とは、組成物を構成する芳香族アミン系ポリマー等の固形材料や有機溶剤などの材料から;組成物の調製時におけるこれらを混合する容器から;材料を混合して組成物を調製する際の周囲環境から;更には組成物を充填して保存する容器などから不可避的に組成物中に混入してくるものである。これらのうち、特にZnは、異物を形成し易いことから、本発明の組成物はZn含有量も少ないことが好ましく、Zn含有量は0.5ppm未満であることが好ましい。
【0101】
<Sの低減方法>
以下に、本発明の組成物においてS含有量を20ppm未満とするための有機溶剤の精製方法について説明する。
【0102】
先述したように、本発明に係る組成物中のS含有量は好ましくは20ppm未満、より好ましくは5ppm未満、さらに好ましくは1ppm未満である。本発明の組成物を得るにあたり、組成物の調製に用いる有機溶剤のS含有量を低減する方法としては、水洗法やイオン除去剤を用いる方法が挙げられる。
【0103】
(イオン除去剤を用いる方法)
イオン除去剤を用いてS濃度を低減する方法としては、イオン交換樹脂と接触させる方法が挙げられる。
イオン交換樹脂としては、酸性カチオン交換樹脂又は塩基性アニオン交換樹脂が用いられる。このうち、SO2−などのS成分を除去するには塩基性アニオン交換樹脂が好適に用いられる。
【0104】
塩基性アニオン交換樹脂は、例えばスチレン系、アクリル系等の各種ポリマーを基体とし、その主鎖に、第4級アンモニウム塩基(4級アミン)、3級アミン、1又は2級ポリアミン等の各種のイオン交換基(官能基)が導入され、すなわちイオン交換基が修飾されてなるものである。
【0105】
塩基性アニオン交換樹脂には、強塩基性アニオン交換樹脂と弱塩基性アニオン交換樹脂とがある。
強塩基性アニオン交換樹脂は、例えばスチレン系のポリマーを基体とし、イオン交換基(官能基)として第4級アンモニウム塩基(4級アミン)を有するもので、不純物としてのアニオン(陰イオン)をより良好にイオン交換してこれを捕捉し、被処理液から除去することができる。
ここで、除去対象となる不純物としてのアニオンとしては、硫酸イオン(SO2−)、ギ酸イオン(HCO)、シュウ酸イオン(C2−)、酢酸イオン(CHCOO)、Fイオン、Clイオン、Brイオン、NOイオン等の無機イオン及び有機イオンが挙げられる。
なお、このような強塩基アニオン交換樹脂の具体例としては、三菱化学(株)製の「ダイヤイオン(登録商標)NSA100」(商品名)、「ダイヤイオン(登録商標)SAN1」(商品名)等を挙げることができる。
【0106】
弱塩基性アニオン交換樹脂は、スチレン系のポリマーを基体とし、イオン交換基(官能基)として3級アミンを有するものや、アクリル系のポリマーを基体とし、イオン交換基(官能基)として1又は2級ポリアミンを有するもので、前記の強塩基性アニオン交換樹脂と同様、硫酸イオン(スルホン酸イオン)等のアニオンをより良好にイオン交換してこれを捕捉し、被処理液から除去することができる。
なお、このような弱塩基性アニオン交換樹脂の具体例としては、三菱化学(株)製の「ダイヤイオン(登録商標)WA20」(商品名)等を挙げることができる。
【0107】
また、上記の塩基性アニオン交換樹脂を用いてアニオンを除去すると共に、酸性カチオン交換樹脂を用いてカチオン性不純物を除去することも、本発明の組成物を用いて作製された有機電界発光素子の寿命を向上させる上で好ましい。
【0108】
酸性カチオン交換樹脂は、例えばスチレン系、アクリル系、メタクリル系等の各種ポリマーを基体とし、その主鎖に、−SOM(−SOH)、−COOM、−N=(CHCOOM)等の各種のイオン交換基(官能基)が導入され、すなわちイオン交換基が修飾されてなるものである。なお、前記イオン交換基(官能基)中のMは金属元素を示している。
【0109】
この酸性カチオン交換樹脂には、強酸性カチオン交換樹脂と弱酸性カチオン交換樹脂とがある。強酸性カチオン交換樹脂は、例えばスチレン系のポリマーを基体とし、イオン交換基(官能基)としてスルホン酸基(−SOH)を有したもので、不純物としてのカチオン(陽イオン)をより良好にイオン交換してこれを捕捉し、被処理液から除去することができる。
ここで、除去対象となる不純物としてのカチオンとしては、Znの他、各種の金属イオンやP、Siからなるものが挙げられる。金属イオンとしては、周期律表Ia族、IIa族、VIa族、VIIa族、及びIIb族に属する金属のイオンが挙げられ、より具体的にはCa、Cr、Fe、Pd、Na、Mg、Ni、Sn、K等が挙げられる。なお、このような強酸性カチオン交換樹脂の具体例としては、三菱化学(株)製の「ダイヤイオン(登録商標)SK110」(商品名)、「ダイヤイオン(登録商標)SKN1」(商品名)等を挙げることができる。
【0110】
弱酸性カチオン交換樹脂は、アクリル系のポリマーを基体とし、イオン交換基(官能基)としてアクリル酸基を有したものや、メタクリル系のポリマーを基体とし、イオン交換基(官能基)としてメタクリル酸基を有したものが挙げられる。前記の強酸性カチオン交換樹脂と同様、弱酸性カチオン交換樹脂は、金属イオン等のカチオンをより良好にイオン交換してこれを捕捉し、被処理液から除去することができる。
また、この弱酸性カチオン交換樹脂は、特に被処理液中のドナー性高分子に対して過剰に用いられ、接触に供された場合に、前記強酸性カチオン交換樹脂と同様に、ドナー性高分子の低分子側の成分を選択的に吸着(イオン交換)して、被処理液から除去することもできる。なお、このような弱酸性カチオン交換樹脂の具体例としては、三菱化学(株)製の「ダイヤイオン(登録商標)WK100」(商品名)等を挙げることができる。
【0111】
このようなイオン交換樹脂としては、その形態については特に限定されることなく、種々の形態のものが使用可能である。例えば、粒状や繊維状、あるいは該繊維からなる織布や不織布、さらに各種の形状に成形されてなる成形体が使用可能である。
【0112】
さらに、イオン除去剤としては、無機イオン交換材料も好適に用いられる。無機イオン交換材料は、金属酸化物などの金属塩からなるもので、カチオンを吸着してイオン交換するタイプ;アニオンを吸着してイオン交換するタイプ;カチオン、アニオンを共に吸着してイオン交換するタイプがある。
【0113】
カチオンをイオン交換するタイプの無機イオン交換材料としては、五酸化アンチモン(Sb)の水和物(例えば、東亜合成株式会社製「IXE(登録商標)−300」(商品名))やリン酸チタン(例えば、東亜合成株式会社製「IXE(登録商標)−400(商品名)」)、リン酸ジルコニウム(例えば、東亜合成株式会社製「IXE(登録商標)−100」(商品名))などがある。
また、アニオンをイオン交換するタイプの無機イオン交換材料としては、含水酸化ビスマス(例えば、東亜合成株式会社製「IXE(登録商標)−500」(商品名))や水酸化リン酸鉛(例えば、東亜合成株式会社製「IXE(登録商標)−1000」(商品名))などがある。特に含水酸化ビスマスは、硫酸イオン(SO2−)に対する吸着選択性が高い。
【0114】
このようなイオン除去剤と有機溶剤との接触方法としては、イオン除去剤を被精製有機溶剤に添加混合して十分に攪拌し、その後、濾過によりイオン除去剤を取り除く方法や、イオン除去剤を充填したカラム内に被精製有機溶剤を通液させる方法などが挙げられる。
【0115】
(水洗による方法)
有機溶剤は、水洗を念入りに行うことにより精製することもできる。
【0116】
しかしながら、上記のイオン除去剤を用いる方法や水洗による方法によっても有機系のイオンを取り除くことは難しいので、本発明の組成物の調製においては、用いる有機溶剤、その他の材料について、有機系のS含有化合物を用いる処理は行わないことが好ましい。
【0117】
本発明においては、上述のように、組成物の調製に用いる有機溶剤を精製することにより、組成物へのSの混入を防止し、本発明の組成物中のS濃度を20ppm未満、好ましくは5ppm未満、より好ましくは1ppm未満とすることができる。本発明の組成物中のS濃度は低い程好ましく、後述のS濃度の分析における検出限界以下であることが好ましい。
【0118】
組成物中のS濃度が20ppm以上であると、Sに起因する異物の生成で、均一な成膜を行えず、この組成物を用いて製造される有機電界発光素子に、短絡やダークスポットなどの問題が生じ、駆動寿命の長い有機電界発光素子を得ることができない。
なお、本発明の組成物中のS濃度は後述の実施例の項に記載されるように、ICP(分光分析)法で測定することができる。
【0119】
また、本発明の組成物は、このようなS濃度低減効果を顕著に得る上で、有機溶剤として、Sが混入し易い、安息香酸エチル、安息香酸アミル、安息香酸ブチル等のエステル系有機溶剤を用いる場合において、特に有効である。
【0120】
<芳香族アミン系ポリマー>
以下に、本発明の有機電界発光素子用組成物に用いられる芳香族アミン系ポリマーについて説明する。
本発明の有機電界発光素子用組成物に含まれる芳香族アミン系ポリマーは、繰り返し単位に少なくとも芳香族アミノ基を有する、重量平均分子量3,000〜1,000,000の高分子化合物である。
また、本発明の有機電界発光素子用組成物に含まれる芳香族アミン系ポリマーは、繰り返し単位に少なくともトリアリールアミノ基を有する、重量平均分子量3,000〜1,000,000の高分子化合物であることが好ましい。
【0121】
(分子量について)
本発明における芳香族アミン系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、3,000以上、また、1,000,000以下であり、有機電界発光素子への使用に好適である。
【0122】
芳香族アミン系ポリマーの重量平均分子量が、上記範囲内であると湿式成膜時に、芳香族アミン系ポリマーの有機溶剤に対する溶解性が良好で、また均一な膜が形成しやすくなり、更に、不純物の高分子量化が起き難いため精製が容易で、工業的に不利益が生じ難くなる。
また重量平均分子量がこの下限値を下回ると、ガラス転移温度、融点及び気化温度が低下するため、耐熱性が著しく損なわれるおそれがある。
【0123】
この芳香族アミン系ポリマーを含む層を湿式成膜法により形成する場合には、溶解性、成膜性、耐熱性の点から、その重量平均分子量は100,000以下が好ましく、60,000以下がさらに好ましい。同様に、下限値としては5,000以上が好ましく、10,000以上がさらに好ましい。
【0124】
また、本発明における芳香族アミン系ポリマーの数平均分子量(Mn)は、通常2,500,000以下、好ましくは750,000以下、より好ましくは400,000以下であり、また通常500以上、好ましくは1,500以上、より好ましくは3,000以上である。
【0125】
さらに、本発明における芳香族アミン系ポリマーの分散度(Mw/Mn)は、通常10以下、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下であり、好ましくは1.0以上、さらに好ましくは1.1以上、特に好ましくは1.2以上である。
上記範囲内であると、精製が容易であり、また芳香族アミン系ポリマーの有機溶剤に対する溶解性や電荷輸送能が良好であるため好ましい。
【0126】
本発明における重量平均分子量(及び数平均分子量)はSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)測定により決定される。SEC測定では高分子量成分ほど溶出時間が短く、低分子量成分ほど溶出時間が長くなるが、分子量既知のポリスチレン(標準試料)の溶出時間から算出した校正曲線を用いて、サンプルの溶出時間を分子量に換算することによって、重量平均分子量(及び数平均分子量)が算出される。
【0127】
(好適な繰り返し単位について)
本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される芳香族アミン系ポリマーは、下記式(2)で表される繰り返し単位を含むポリマーであることが好ましい。
【0128】
【化6】
【0129】
(式中、mは0〜3の整数を表し、Ar31及びAr32は、各々独立して、直接結合、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素環基又は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表し、Ar33〜Ar35は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。なお、Ar33及びAr35は1価の基を示し、Ar34は2価の基を示す。但し、Ar31及びAr32が共に、直接結合であることはない。)
【0130】
置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基としては、例えば、1個又は2個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの、1個又は2個の遊離原子価を有する、6員環の単環又は2〜5縮合環が挙げられる。
ここで、本発明において、遊離原子価とは、有機化学・生化学命名法(上)(改定第2版、南江堂、1992年発行)に記載のとおり、他の遊離原子価と結合を形成できるものを言う。
【0131】
置換基を有していてもよい芳香族複素環基としては、例えば、1個又は2個の遊離原子価を有する、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの、1個又は2個の遊離原子価を有する、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環が挙げられる。
【0132】
有機溶剤に対する溶解性、及び耐熱性の点から、Ar31〜Ar35は、各々独立に、置換基を有していてもよい、1個又は2個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環、チオフェン環、ピリジン環、フルオレン環からなる群より選ばれる1の環が好ましい。
また、Ar31〜Ar35としては、前記群から選ばれる1種又は2種以上の環を直接結合、又は−CH=CH−基により連結した基も好ましく、ビフェニル基及びターフェニル基などがさらに好ましい。
また、有機電界発光素子としての安定性から、1個又は2個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、フルオレン環、ビフェニル基、ターフェニル基がさらに好ましい。
【0133】
前記置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基及び置換基を有していてもよい芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、例えば下記(置換基群Z)に記載の基が挙げられる。
【0134】
<置換基群Z>
メチル基、エチル基等の好ましくは炭素数1〜24、更に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基;
ビニル基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のアルケニル基;
エチニル基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のアルキニル基;
メトキシ基、エトキシ基等の好ましくは炭素数1〜24、更に好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基;
フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等の好ましくは炭素数4〜36、更に好ましくは炭素数5〜24のアリールオキシ基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基;
ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のジアルキルアミノ基;
ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N−カルバゾリル基等の好ましくは炭素数10〜36、更に好ましくは炭素数12〜24のジアリールアミノ基;
フェニルメチルアミノ基等の好ましくは炭素数6〜36、更に好ましくは炭素数7〜24のアリールアルキルアミノ基;
アセチル基、ベンゾイル基等の好ましくは炭素数2〜24、好ましくは炭素数2〜12のアシル基;
フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;
トリフルオロメチル基等の好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜6のハロアルキル基;
メチルチオ基、エチルチオ基等の好ましくは炭素数1〜24、更に好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基;
フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等の好ましくは炭素数4〜36、更に好ましくは炭素数5〜24のアリールチオ基;
トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の好ましくは炭素数2〜36、更に好ましくは炭素数3〜24のシリル基;
トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等の好ましくは炭素数2〜36、更に好ましくは炭素数3〜24のシロキシ基;
シアノ基;
フェニル基、ナフチル基等の好ましくは炭素数6〜36、更に好ましくは炭素数6〜24の芳香族炭化水素環基;
チエニル基、ピリジル基等の好ましくは炭素数3〜36、更に好ましくは炭素数4〜24の芳香族複素環基。
【0135】
上記各置換基は、さらに置換基を有していてもよく、有していてもよい置換基の例としては前記置換基群Zに例示した基と同様の基が挙げられる。
Ar31〜Ar35における芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基が有してもよい置換基の分子量としては、さらに置換した基を含めて500以下が好ましく、250以下がさらに好ましい。
【0136】
有機溶剤に対する溶解性の点から、Ar31〜Ar35における芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、各々独立に、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜24の芳香族炭化水素環基、炭素数4〜24の芳香族複素環基が好ましく、さらには、メチル基、エチル基、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基、ナフチル基が有機電界発光素子としての安定性から特に好ましい。
なお、mが2以上である場合、前記式(2)で表される繰り返し単位は、2個以上のAr34及びAr35を有することになる。その場合、複数存在するAr34同士及びAr35同士は、各々、同じでもよく、異なっていてもよい。さらに、Ar34同士、Ar35同士は、各々互いに直接又は連結基を介して結合して環状構造を形成していてもよい。
【0137】
式(2)におけるmは、0以上、3以下の整数を表す。
mは0である場合には、芳香族アミン系ポリマーの、有機溶剤に対する溶解性及び成膜性が高められる点で好ましい。
また、mは1以上、3以下である場合には、芳香族アミン系ポリマーの正孔輸送能が向上する点で好ましい。
用途や状況に応じてmの値を変えた化合物を用いることができる。
【0138】
(共役ポリマー)
本発明における芳香族アミン系ポリマーは、共役系の構造を有する繰り返し単位からなるため、十分な電荷輸送能を有し、また有機溶剤に対する十分な溶解性を有する点から、共役ポリマーであることが好ましい。
より具体的には、前記式(2)で表される繰り返し単位からなるポリマーであることが好ましい。
【0139】
(非共役基)
本発明における芳香族アミン系ポリマーは、下記式(3)で表される繰り返し単位を含むポリマーであることも好ましい。
【0140】
【化7】
【0141】
(式中、Ar51〜Ar53は、各々独立して、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を示し、Ar54及びAr55は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族基を示し、Ar56及びAr57は、各々独立して、直接結合、又は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を示し、R11及びR12は、各々独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していてもよい芳香族基を示し、m’は0〜5の整数を表し、R11及びR12は互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【0142】
具体的には、Ar51、Ar52、Ar53、置換基を有していてもよい2価の芳香族基である場合のAr56、及び置換基を有していてもよい2価の芳香族基である場合のAr57は、前記Ar31及びAr32で記した基と同様の基である。
Ar54、Ar55、芳香族基である場合のR11及び芳香族基である場合のR12は、前記Ar33及びAr35で記した基と同様の基である。
Ar51〜Ar57、R11及びR12が有していてもよい置換基は前記置換基群Zと同様である。
11及びR12が置換基を有していてもよい芳香族基である場合は、R11及びR12は前記Ar33及びAr35で記した基と同様の基である。
11及びR12は、溶解性の点から、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜12のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましい。
【0143】
(不溶化基)
また、本発明における芳香族アミン系ポリマーが共役ポリマーである場合、積層が容易であり、また成膜時の表面平坦性に優れる点で、さらに不溶化基を有することが好ましい。つまり、本発明における芳香族アミン系ポリマーは、不溶化基を有する共役ポリマーであることが好ましい。
【0144】
不溶化基とは、熱及び/又は光などの活性エネルギー線の照射により反応する基であり、反応後は反応前に比べて有機溶剤や水への溶解性を低下させる効果を有する基である。
本発明においては、不溶化基は、解離性基又は架橋性基であることが好ましい。
芳香族アミン系ポリマーは、置換基として不溶化基を含む基を有するが、不溶化基を有する位置は、前記式(2)で表される繰り返し単位中にあってもよく、また式(2)で表される繰り返し単位以外の部分、例えば、末端基に有していてもよい。
【0145】
以下、解離性基を有する芳香族アミン系ポリマーを「解離性ポリマー」、架橋性基を有する芳香族アミン系ポリマーを「架橋性ポリマー」とそれぞれ称する場合がある。
【0146】
<解離性基>
解離性基とは、有機溶剤に対して可溶性を示す基であり、結合している基(例えば、炭化水素環)から70℃以上で熱解離する基を表す。また、解離性基が解離することにより、ポリマーの有機溶剤への溶解度は低下する。
但し、解離後に、他の原子が結合する反応、例えば加水分解で解離する基などは解離性基には含まない。加水分解で解離する基は、解離後、分子内に活性プロトンを有することになる。この活性プロトンが素子中に存在すると、素子特性に影響する場合がある。
このような解離性基は、炭化水素環に結合し、該炭化水素環は極性基を有さない芳香族炭化水素環に縮合していることが好ましく、逆ディールスアルダー反応により熱解離する基であることがより好ましい。
【0147】
また熱解離する温度は、好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上、また好ましくは300℃以下、さらに好ましくは240℃以下である。
上記範囲内であると、ポリマーの合成が容易であり、また成膜時に化合物が分解するなどが起きにくい。
また特に、分子間のスタッキングを抑制する立体構造を有する基が可溶性に優れるため好ましい。化合物から解離性基が解離する反応の一例を下記に示す。
【0148】
【化8】
【0149】
尚、上記反応式の場合、解離性基とは、以下に示す構造の丸枠で囲った部分である。
【0150】
【化9】
【0151】
このような解離性基の解離の例としては、例えば脱スルフィニルアセトアミド(JACS,V124,No.30,2002,8813参照)、脱オレフィン、脱アルコール、脱アルキル(H.Kwart and K.King,Department of Chemistry,University of Delaware,Nework,Delaware 19771,p415−447(1967),O.Diels and K.Alder,Ber.,62,554(1929)及びM.C.Kloetzel,Org.Reactions,4,6(1948)参照)、脱1,3−ジオキソール(N.D.Field,J.Am.Chem.Soc.,83,3504(1961)参照)、脱ジエン(R.Huisgen,M.Seidel,G.Wallbillich,and H.Knupfer,Tetrahedron,17,3(1962)参照)、脱イソキサゾール(R.Huisgen and M,Christi,Angew.Chem.Intern.Ed.Engl.,5,456(1967)参照)、脱トリアゾール(R.Kreher and J.Seubert,Z.Naturforach.,20B,75(1965)参照)等が挙げられる。
【0152】
上記の中で特に、解離性基が結合する炭化水素環が、エテノ基又はエタノ基を含む環であることが、解離性基がより安定であり、合成がし易い点で好ましい。
このような解離性基は、加熱処理前において、その嵩高い分子構造から、分子間のスタッキングを防止したり、有機溶剤に対して該ポリマーが良好な溶解性を有するものとすることができる。
【0153】
また、加熱処理によって該ポリマーから解離性基が解離するため、加熱後の化合物の有機溶剤への溶解性を著しく抑制することができ、該化合物を含む有機層に耐有機溶剤塗布性を付与することが出来る。
したがって、本発明における解離性ポリマーを用いて形成された有機層上に、さらに湿式成膜法によって有機薄膜を積層して形成することが容易となる。
【0154】
解離性基を含む基の具体例は、以下の通りであるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
解離性基を含む基が2価の基である場合の具体例は、以下の<2価の解離性基を含む基群A>の通りである。
【0155】
<2価の解離性基を含む基群A>
【0156】
【化10】
【0157】
解離性基が1価の基である場合の具体例は、以下の<1価の解離性基群B>の通りである。
【0158】
<1価の解離性基を含む基群B>
【0159】
【化11】
【0160】
<繰り返し単位の配列及び割合等>
解離性基を有する共役ポリマーは、その構造中に解離性基を有するものであれば、その繰り返し単位等の構造は特に制限はないが、繰り返し単位内に芳香族環を有し、この芳香族環に縮合した炭化水素環に上記解離性基が結合していることが好ましい。
【0161】
中でもエテノ基又はエタノ基を含む解離性基が結合している部分構造を有する繰り返し単位を含む解離性基を有する共役ポリマーであることが、成膜性が優れる点から好ましい。
尚、エテノ基又はエタノ基は、炭化水素環に含まれていることが好ましく、該炭化水素環はさらに6員環であることが好ましい。
【0162】
本発明における解離性基を有する共役ポリマーは、解離性基が結合している部分構造を有する繰り返し単位として、下記化学式(U3)又は(U4)で表される部分構造を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。この場合、ポリマー鎖中の繰り返し単位(U3)あるいは(U4)の含有量は、好ましくは10モル%以上、更に好ましくは30モル%以上である。
【0163】
【化12】
【0164】
(式(U3)中、環Aは置換基を有していてもよい芳香族環を表し、前記置換基同士が直接又は2価の連結基を介して環を形成していてもよい。
21、S22及びR21〜R26は、各々独立して、水素原子、水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールアミノ基、置換基を有していてもよいへテロアリールアミノ基又は置換基を有していてもよいアシルアミノ基を表す。
及びXは、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数6以上50以下の2価の芳香族炭化水素環基、又は置換基を有していてもよい炭素数5以上50以下の2価の芳香族複素環基を表す。
及びnは、各々独立して、0〜5の整数を表す。)
【0165】
(式(U4)中、環Bは置換基を有していてもよい芳香族環を表し、前記置換基同士が直接又は2価の連結基を介して環を形成していてもよい。
31〜S34及びR31〜R36は各々独立して、式(U3)におけるS21と同様である。
及びXは、各々独立して、式(U3)におけるXと同様である。
及びnは、各々独立して、0〜5の整数を表す。)
【0166】
化学式(U3)及び(U4)中における環A及び環Bは、それぞれ解離性基が結合する芳香族環を表し、芳香族炭化水素環であっても芳香族複素環であってもよいが、電気化学的安定性に優れ、電荷が局在化しにくいことから、芳香族炭化水素環であることが好ましい。
【0167】
環A及びBが、芳香族炭化水素環である場合、該芳香族炭化水素環の核炭素数は通常6以上である。また通常40以下であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。
また、環A及びBが、芳香族複素環である場合、該芳香族複素環の核炭素数は、通常3以上、好ましくは4以上、より好ましくは5以上である。また通常50以下であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。
【0168】
該芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンゾピレン環、クリセン環、ベンゾクリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環、フルオレン環等が挙げられる。
上記の中でも環A及び環Bが、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環及びテトラセン環からなる群から選ばれることが好ましい。
【0169】
また芳香族複素環としては、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環等が挙げられる。
【0170】
また、上記化学式(U3)及び(U4)中の環A及び環Bは、同種又は異なる2種以上の環構造単位が1以上10以下、直接又は酸素原子、窒素原子、硫黄原子、核炭素数1以上20以下のヘテロ原子を含んでもよい鎖状基、及び炭素数が1以上20以下の脂肪族基から選ばれる1種以上の2価の連結基を介して、連結した構造とすることも可能である。
なお連結される環構造単位としては、上記芳香族炭化水素環や芳香族複素環と同様のものでも、異なる芳香族炭化水素環や芳香族複素環でもよい。またこれらの芳香族炭化水素環及び芳香族複素環は置換基を有していてもよい。
【0171】
環A又は環Bの置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1以上10以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基;ビニル基、アリル基、1−ブテニル基等の炭素数1以上8以下のアルケニル基;エチニル基、プロパルギル基等の炭素数1以上8以下のアルキニル基;ベンジル基等の炭素数2以上8以下のアラルキル基;フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基等のアリールアミノ基;ピリジルアミノ基、チエニルアミノ基、ジチエニルアミノ基等のヘテロアリールアミノ基;アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等のアシルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等の炭素数1以上8以下のアルコキシ基;アクリロイルオキシル基、メチルカルボニルアオキシル基、エチルカルボニルアオキシル基、ヒドロキシカルボニルメチルカルボニルオキシル基、ヒドロキシカルボニルエチルカルボニルオキシル基、ヒドロキシフェニルカルボニルオキシル基等の炭素数1以上15以下のアシルオキシル基;フェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、等の炭素数10以上20以下のアリールオキシル基;等が挙げられる。
【0172】
これらの置換基は互いに直接、あるいは、−O−、−S−、>CO、>SO、−(Cα2α)−、−O−(Cβ2β)−、置換もしくは無置換の炭素数2以上20以下のアルキリデン基、又は置換基を有していてもよい炭素数2以上20以下のアルキレン基等の、2価の連結基を介して結合し、環状構造を形成してもよい。上記α及びβは、それぞれ1以上20以下の整数を表す。
【0173】
これらの置換基は1種のみ、又は2種以上の任意の組み合わせで、1又は2以上の基が環A又は環Bに置換していてもよい。
【0174】
上記化学式(U3)及び化学式(U4)におけるS21、S22、R21〜R26、S31〜S34及びR31〜R36は、各々独立して、水素原子;水酸基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の置換基を有していてもよい炭素数が通常1以上、通常50以下、好ましくは10以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基;置換基を有していてもよい核炭素数が通常5以上50以下の芳香族炭化水素環基;置換基を有していてもよい核炭素数が5以上40以下の芳香族複素環基;ベンジル基等の置換基を有していてもよい核炭素数が通常6以上、好ましくは7以上、通常50以下、好ましくは8以下のアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等の置換基を有していてもよい炭素数が通常1以上、通常50以下、好ましくは8以下のアルコキシ基;フェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基等の置換基を有していてもよい核炭素数が通常5以上、好ましくは6以上、通常50以下、好ましくは15以下のアリールオキシ基;置換基を有していてもよい核炭素数が通常2以上50以下のアシル基;ビニル基、アリル基、1−ブテニル基等の置換基を有していてもよい炭素数が通常1以上8以下のアルケニル基;エチニル基、プロパギル基等の置換基を有していてもよい炭素数が通常1以上8以下のアルキニル基;アクリロイルオキシル基、メチルカルボニルオキシル基、エチルカルボニルオキシル基、ヒドロキシカルボニルメチルカルボニルオキシル基、ヒドロキシカルボニルエチルカルボニルオキシル基、ヒドロキシフェニルカルボニルオキシル基等の置換基を有していてもよい核炭素数が通常2以上、通常50以下、好ましくは15以下のアシルオキシ基;フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基等の置換基を有していてもよい核炭素数が通常6以上50以下のアリールアミノ基;ピリジルアミノ基、チエニルアミノ基、ジチエニルアミノ基等の置換基を有していてもよい核炭素数が通常5以上50以下のへテロアリールアミノ基;又はアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等の置換基を有していてもよい炭素数が通常2以上50以下のアシルアミノ基を表すことがより好ましい。
【0175】
(熱解離性可溶性基の割合)
解離性基は、上記解離性ポリマーの繰り返し単位以外の部分に含まれていてもよい。解離性ポリマー鎖の中に含まれる解離性基は、好ましくは平均5以上、より好ましくは平均10以上、より好ましくは平均50以上である。
上記範囲内であると、解離性ポリマーを用いて形成した有機層の有機溶剤に対する溶解性の低下が十分である点で好ましい。
【0176】
以下、本発明における解離性ポリマーの好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0177】
【化13】
【0178】
(架橋性基)
また、本発明における芳香族アミン系ポリマーは、共役ポリマーである場合、不溶化基として、架橋性基を有していることが、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により起こる反応(架橋反応)の前後で、有機溶剤に対する溶解性に大きな差を生じさせることができる点で好ましい。
【0179】
ここで、架橋性基とは、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により近傍に位置するほかの分子の同一又は異なる基と反応して、新規な化学結合を生成する基のことをいう。
架橋性基としては、架橋がしやすいという点で、例えば、架橋性基群Tに示す基が挙げられる。
【0180】
<架橋性基群T>
【0181】
【化14】
【0182】
(式中、R81〜R85は、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表す。Ar41は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。尚、ベンゾシクロブテン環は、置換基を有していてもよく、また置換基同士が互いに結合して環を形成してもよい。)
【0183】
架橋性基はエポキシ基、オキセタン基などの環状エーテル基、ビニルエーテル基などのカチオン重合によって不溶化反応する基が、反応性が高く不溶化が容易な点で好ましい。中でも、カチオン重合の速度を制御しやすい点でオキセタン基が特に好ましく、カチオン重合の際に素子の劣化をまねくおそれのあるヒドロキシル基が生成しにくい点でビニルエーテル基が好ましい。
【0184】
また、架橋性基はシンナモイル基などアリールビニルカルボニル基、1個の遊離原子価を有するベンゾシクロブテン環などの環化付加反応する基が、電気化学的安定性をさらに向上させる点で好ましい。
また、架橋性基の中でも、不溶化後の構造が特に安定な点で、1個の遊離原子価を有するベンゾシクロブテン環が特に好ましい。
具体的には、下記式(5)で表される基であることが好ましい。
【0185】
【化15】
【0186】
(式(5)中のベンゾシクロブテン環は、置換基を有していてもよい。また、置換基同士が、互いに結合して環を形成してもよい。)
【0187】
架橋性基は分子内の芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基に直接結合してもよいが、2価の基を介して結合してもよい。この2価の基としては、−O−基、−C(=O)−基又は(置換基を有していてもよい)−CH−基から選ばれる基を任意の順番で1〜30個連結してなる2価の基を介して、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基に結合することが好ましい。
これら2価の基を介する架橋性基、すなわち、架橋性基を含む基の具体例は以下の<架橋性基を含む基群T’>に示す通りであるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0188】
<架橋性基を含む基群T’>
【0189】
【化16】
【0190】
【化17】
【0191】
(架橋性基の割合)
本発明における架橋性ポリマーが有する架橋性基の数は、分子量1,000あたりの数で表すことができる。
上記架橋性ポリマーが有する架橋性基の数を、分子量1,000あたりの数で表した場合、分子量1,000あたり、通常3.0個以下、好ましくは2.0個以下、さらに好ましくは1.0以下、また通常0.01以上、好ましくは0.05以上である。
【0192】
上記範囲内であると、より平坦な膜が得られ、また膜を形成した後の未反応架橋性基の数が駆動寿命に影響しにくくなるため、好ましい。
ここで、架橋性ポリマーの分子量1,000あたりの架橋性基の数は、架橋性ポリマーからその末端基を除いて、合成時の仕込みモノマーのモル比と、構造式から算出する。
例えば、下記化合物の場合で説明する。
【0193】
【化18】
【0194】
上記化合物において、末端基を除いた繰り返し単位の分子量は平均362.33であり、また架橋性基は、1繰り返し単位当たり平均0.05個である。これを単純比例により計算すると、分子量1,000あたりの架橋性基の数は、0.138個と算出される。
【0195】
以下に、本発明における架橋性ポリマーの好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[具体例]
【0196】
【化19】
【0197】
(上記式において、例えば、a=0.475、b=0.475、c=0.025、d=0.025のものが挙げられる。)
【0198】
【化20】
【0199】
(上記式において、例えば、a=0.9、b=0.1のものが挙げられる。)
【0200】
【化21】
【0201】
(上記式において、例えば、a=0.94、b=0.06のものが挙げられる。)
【0202】
【化22】
【0203】
(上記式において、例えば、a=0.1、b=0.9のものが挙げられる。)
【0204】
【化23】
【0205】
(上記式において、例えば、a=0.9、b=0.1のものが挙げられる。)
【0206】
【化24】
【0207】
(上記式において、例えば、a=0.1、b=0.9のものが挙げられる。)
【0208】
【化25】
【0209】
(上記式において、例えば、a=0.8、b=0.1、c=0.1のものが挙げられる。)
【0210】
【化26】
【0211】
(上記式において、例えば、a=0.8、b=0.2のものが挙げられる。)
【0212】
【化27】
【0213】
(上記式において、例えば、a=0.2、b=0.5、c=0.3のものが挙げられる。)
【0214】
【化28】
【0215】
(上記式において、例えば、a=0.9442、b=0.0558のものが挙げられる。)
【0216】
【化29】
【0217】
(上記式において、例えば、a=0.1、b=0.9のものが挙げられる。)
【0218】
【化30】
【0219】
(上記式において、例えば、a=0.9、b=0.1のものが挙げられる。)
【0220】
【化31】
【0221】
(上記式において、例えば、a=0.94、b=0.06のものが挙げられる。)
【0222】
【化32】
【0223】
(上記式において、例えば、a=0.9、b=0.1のものが挙げられる。)
【0224】
【化33】
【0225】
(上記式において、例えば、a=0.9、b=0.1のものが挙げられる。)
【0226】
(特に好ましい架橋性基を有する共役ポリマー)
本発明における架橋性ポリマーは、下記の繰り返し単位群Cからなる群より選ばれる少なくとも一つの繰り返し単位、及び下記の繰り返し単位群Dからなる群より選ばれる少なくとも一つの繰り返し単位を有する共役ポリマーであることが、電荷輸送能が高く、酸化還元安定性に優れる点で特に好ましい。
【0227】
<繰り返し単位群C>
【0228】
【化34】
【0229】
<繰り返し単位群D>
【0230】
【化35】
【0231】
(ガラス転移温度、その他の物性)
本発明における架橋性ポリマーのガラス転移温度は、通常50℃以上、有機電界発光素子の耐熱性を含めた駆動安定性の点で好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、また、通常300℃以下である。
また、上記共役ポリマーのイオン化ポテンシャルは、電荷輸送能が優れる点で、通常4.5eV以上、好ましくは4.8eV以上、また、通常6.0eV以下、好ましくは5.7eV以下である。
【0232】
(架橋性基を有する共役ポリマーである利点)
溶液状態の電荷輸送膜用組成物の場合、溶液であるために架橋性基の分子運動が固体状態よりも大きくなる。このとき、架橋性ポリマーの凝集状態において、架橋性基同士が常に近くに存在し続けた場合、適度な分子運動のために、後述の不溶化のための加熱温度以下であっても凝集状態で架橋してしまう確率が高くなると推測される。
凝集状態でない均一な溶液の場合は、架橋性ポリマー分子そのものの分子運動が大きいために架橋性基同士が常に近くに存在し続けることはないため、後述の不溶化のための加熱温度以下の溶液状態では架橋する可能性はほとんどない。
【0233】
(非共役ポリマーについて)
本発明における芳香族アミン系ポリマーは、非共役ポリマーも好ましく用いられる。この理由としては、電子受容性化合物により、アミン部位がカチオンラジカルになった場合、主鎖が共役していないことから、電圧の印加がない状態ではカチオンラジカルが移動し難い。つまり、カチオンラジカルが、ポリマー鎖中に均一に分布しており、カチオンラジカルがポリマー鎖中を伝播して、ポリマーが局在化してしまうことによる凝集が置きにくいため好ましい。
【0234】
非共役ポリマーの中でも、前記式(2)で表される繰り返し単位および/または前記式(3)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。また、非共役ポリマーは、正孔注入・輸送性が高いという理由から、下記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーであることがさらに好ましい。
【0235】
【化36】
【0236】
(式(1)中、Ar及びArは、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Ar〜Arは、各々独立して、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素環基、又は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表す。Ar〜Arのうち、同一のN原子に結合する二つの基は互いに結合して環を形成してもよい。Xは、2価の連結基を表す。)
【0237】
Ar及びArとしては、芳香族アミン系ポリマーの溶解性、耐熱性、正孔注入・輸送性の点から、各々独立に、置換基を有していてもよく、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、チオフェン環、ピリジン環が好ましく、フェニル基、ナフチル基も好ましい。
また、Ar〜Arとしては、耐熱性、酸化還元電位を含めた正孔注入・輸送性の点から、各々独立に、2個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、トリフェニレン環、フェナントレン環が好ましく、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基も好ましい。
【0238】
Ar〜Arにおける芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、前記の(置換基群Z)と同義である。また、これらのうち好ましい基についても同様である。
置換基の分子量としては、通常400以下、中でも250以下程度が好ましい。
【0239】
(連結基X)
さらに、前記式(1)で表される繰り返し単位において、連結基Xが、連結基群X’から選ばれた2価の連結基であることが好ましい。
【0240】
<連結基群X’>
【0241】
【化37】
【0242】
(式中、Ar11〜Ar28は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。R41及びR42は、各々独立して、水素原子又は任意の置換基を表す。)
【0243】
ここでAr16、Ar21及びAr26は、各々独立して、前記の式(1)におけるArと同様の基が挙げられる。また、Ar11〜Ar15、Ar17〜Ar20、Ar22〜Ar25、Ar27及びAr28は、各々独立して、前記の式(1)におけるArと同様の基が挙げられる。
【0244】
41及びR42は、各々独立して、水素原子又は置換基である。該置換基を例示すると、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、シリル基、シロキシ基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基などが挙げられ、これらの具体例及び好ましい例としては、前記の(置換基群Z)に例示したものが挙げられる。
【0245】
Ar11〜Ar28における芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、前記の(置換基群Z)の項に例示したものが挙げられる。
【0246】
また、本発明で用いる芳香族アミン系ポリマーは、正孔注入・輸送性が非常に高いという理由から、上記式(1)が下記式(1−1)で表される繰返し単位であることが好ましく、下記式(1−2)で表され理繰返し単位であることがさらに好ましい。
【0247】
【化38】
【0248】
(式中、R〜Rは、各々独立して、任意の置換基を表す。p及びqは、各々独立して0〜5の整数を表す。r、s及びtは各々独立して0〜4の整数を表す。Xは式(1)におけるXと同義である。)
【0249】
なお、上記式(1−1)において、R〜Rの具体例は、前述のAr〜Arが有していてもよい置換基の例、すなわち上記(置換基群Z)に例示されたものが該当する。
【0250】
【化39】
【0251】
(式中、Yは、下記の連結基群X’’の中から選ばれる連結基を表す。)
【0252】
<連結基群X’’>
【0253】
【化40】
【0254】
(式中、Ar11〜Ar17は、上記<連結基群X’>におけるAr11〜Ar17とそれぞれ同義である。また、好ましい例も同様である。)
【0255】
(芳香族アミン系ポリマーの繰り返し単位の具体例)
以下、本発明における芳香族アミン系ポリマーを構成する繰り返し単位の好ましい例について例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0256】
【化41】
【0257】
【化42】
【0258】
上記具体例のうち、耐熱性、電荷輸送能の点で、好ましくは(P−1)〜(P−11)、(P−13)〜(P−18)、(P−20)、(P−21)、(P−23)、(P−25)又は(P−26)で表される繰り返し単位であり、更に好ましくは、(P−1)、(P−3)、(P−4)、(P−6)、(P−9)又は(P−10)で表される繰り返し単位であり、最も好ましくは(P−1)又は(P−4)で表される繰り返し単位である。
【0259】
本発明における芳香族アミン系ポリマーは、異なる2種以上の繰り返し単位を含むポリマーであってもよい。
また、式(1)で表される繰り返し単位中のAr〜Ar又は連結基Xが異なることで、異なる繰り返し単位になっていてもよい。
(不溶化基)
また、式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーは、積層が容易であり、また成膜時の表面平坦性に優れる点で、さらに不溶化基を有してもよい。不溶化基は、前記と同様である。
【0260】
本発明の有機電界発光素子用組成物における前記の芳香族アミン系ポリマーの含有量は、通常1重量%以上、好ましくは2重量%以上、また、通常6重量%以下、好ましくは5重量%以下である。
芳香族アミン系ポリマーの含有量が少なすぎると電荷輸送能が不足する場合がある。また、多すぎると芳香族アミン系ポリマーの有機溶剤に対する溶解性が低下する場合がある。異なる二種以上の芳香族アミン系ポリマーを併用する場合は、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
【0261】
<電子受容性化合物>
電子受容性化合物とは、酸化力を有し、上述の正孔輸送性化合物から一電子を受容する能力を有する化合物が好ましく、具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上の化合物である化合物がさらに好ましい。
このような電子受容性化合物としては、例えば、トリアリールホウ素化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、オニウム塩、アリールアミンとハロゲン化金属との塩及びアリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物等が挙げられる。
【0262】
本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される電子受容性化合物は、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)の第15〜17族に属する元素に、少なくとも一つの有機基が炭素原子で結合した構造を有するイオン化合物であることが好ましく、さらに下記式(I−1)〜(I−3)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【0263】
【化43】
【0264】
式(I−1)〜(I−3)中、R51、R61及びR71は、各々独立に、D〜Dと炭素原子で結合する有機基を表し、R52、R62、R63及びR72〜R74は、各々独立に、置換基を表す。R51〜R74のうち隣接する2以上の基が、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0265】
51、R61及びR71としては、D〜Dとの結合部分に炭素原子を有する有機基であれば、本発明の効果を損なわない限り、その種類は特に制限されない。本発明における有機基とは、少なくとも一つの炭素原子を含む基である。
【0266】
51、R61及びR71の分子量は、各々、その置換基を含めた値で、通常1,000以下、好ましくは500以下の範囲である。
51、R61及びR71の好ましい例としては、正電荷を非局在化させる点から、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基が挙げられる。中でも、正電荷を非局在化させるとともに熱的に安定であることから、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基が好ましい。
【0267】
芳香族炭化水素環基としては、1個の遊離原子価を有する、5又は6員環の単環又は2〜5縮合環であり、正電荷を当該基上により非局在化させられる基が挙げられる。
具体例としては、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオレン環等が挙げられる。
【0268】
芳香族複素環基としては、1個の遊離原子価を有する、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環であり、正電荷を当該基上により非局在化させられる基が挙げられる。
具体例としては、1個の遊離原子価を有する、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等が挙げられる。
【0269】
アルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基であって、その炭素数が通常1以上、また、通常12以下、好ましくは6以下のものが挙げられる。
具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0270】
アルケニル基としては、炭素数が通常2以上、通常12以下、好ましくは6以下のものが挙げられる。具体例としては、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、炭素数が通常2以上、通常12以下、好ましくは6以下のものが挙げられる。具体例としては、エチニル基、プロパルギル基等が挙げられる。
【0271】
52、R62、R63及びR72〜R74の種類は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されない。
52、R62、R63及びR72〜R74の分子量は、各々、その置換基を含めた値で、通常1,000以下、好ましくは500以下の範囲である。
【0272】
52、R62、R63及びR72〜R74の例としては、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、シアノ基、水酸基、チオール基、シリル基等が挙げられる。
中でも、R51、R61及びR71と同様、電子受容性が大きい点から、D〜Dとの結合部分に炭素原子を有する有機基が好ましく、例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基が好ましく用いられる。特に、電子受容性が大きいとともに熱的に安定であることから、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基が好ましい。
【0273】
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基としては、R51、R61及びR71について先に説明したものと同様のものが挙げられる。アミノ基としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシルアミノ基等が挙げられる。
アルキルアミノ基としては、炭素数が通常1以上、また、通常12以下、好ましくは6以下のアルキル基を1つ以上有するアルキルアミノ基が挙げられる。具体例としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基等が挙げられる。
【0274】
アリールアミノ基としては、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、また、通常25以下、好ましくは15以下の芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を1つ以上有するアリールアミノ基が挙げられる。具体例としては、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、トリルアミノ基、ピリジルアミノ基、チエニルアミノ基等が挙げられる。
アシルアミノ基としては、炭素数が通常2以上、また、通常25以下、好ましくは15以下のアシル基を1つ以上有するアシルアミノ基が挙げられる。具体例としては、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等が挙げられる。
【0275】
アルコキシ基としては、炭素数が通常1以上、また、通常12以下、好ましくは6以下のアルコキシ基が挙げられる。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
アリールオキシ基としては、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、また、通常25以下、好ましくは15以下の芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を有するアリールオキシ基が挙げられる。具体例としては、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、ピリジルオキシ基、チエニルオキシ基等が挙げられる。
【0276】
アシル基としては、炭素数が通常1以上、また、通常25以下、好ましくは15以下のアシル基が挙げられる。具体例としては、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、炭素数が通常2以上、また、通常10以下、好ましくは7以下のアルコキシカルボニル基が挙げられる。具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0277】
アリールオキシカルボニル基としては、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、また、通常25以下、好ましくは15以下の芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を有するものが挙げられる。具体例としては、フェノキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
アルキルカルボニルオキシ基としては、炭素数が通常2以上、また、通常10以下、好ましくは7以下のアルキルカルボニルオキシ基が挙げられる。具体例としては、アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基等が挙げられる。
【0278】
アルキルチオ基としては、炭素数が通常1以上、また、通常12以下、好ましくは6以下のアルキルチオ基が挙げられる。具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基等が挙げられる。
アリールチオ基としては、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、また、通常25以下、好ましくは14以下のアリールチオ基が挙げられる。具体例としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等が挙げられる。
【0279】
アルキルスルホニル基及びアリールスルホニル基の具体例としては、メシル基、トシル基等が挙げられる。
スルホニルオキシ基の具体例としては、メシルオキシ基、トシルオキシ基等が挙げられる。
シリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基など挙げられる。
【0280】
以上、R51、R61及びR71並びにR52、R62、R63及びR72〜R74として例示した基は、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、更に他の置換基によって置換されていてもよい。
置換基の種類は特に制限されないが、例としては、上記R51、R61及びR71並びにR52、R62、R63及びR72〜R74として各々例示した基の他、ハロゲン原子、シアノ基、チオシアノ基、ニトロ基等が挙げられる。中でも、イオン化合物(電子受容性化合物)の耐熱性及び電子受容性の妨げにならない観点から、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基が好ましい。
【0281】
式(I−1)〜(I−3)中、D及びDは、周期表第3周期以降(第3〜第6周期)の元素、Dは周期表第2周期以降(第2〜第6周期)の元素であって、Dは、長周期型周期表の第17族に属する元素を表し、Dは、第16族に属する元素を表し、Dは、第15族に属する元素を表す。
中でも、電子受容性及び入手容易性の観点から、D〜Dはいずれも周期表の第5周期以前の元素が好ましい。
【0282】
即ち、Dとしてはヨウ素原子、臭素原子又は塩素原子が好ましく、Dとしてはテルル原子、セレン原子又は硫黄原子が好ましく、Dとしてはアンチモン原子、ヒ素原子、リン原子又は窒素原子が好ましい。
特に、電子受容性、化合物の安定性の面から、式(I−1)におけるDが臭素原子又はヨウ素原子である電子受容性化合物、式(I−2)におけるDがセレン原子又は硫黄原子である電子受容性化合物、式(I−3)におけるDが窒素原子である電子受容性化合物が好ましく、中でも、式(I−1)におけるDがヨウ素原子である電子受容性化合物、式(I−3)におけるDが窒素原子である電子受容性化合物が最も好ましい。
【0283】
式(I−1)〜(I−3)中、Zn1−〜Zn3−は、各々独立に、対アニオンを表す。
対アニオンの種類は特に制限されず、単原子イオンであっても錯イオンであってもよい。但し、対アニオンのサイズが大きいほど負電荷が非局在化し、それに伴い正電荷も非局在化して電子受容能が大きくなるため、単原子イオンよりも錯イオンの方が好ましい。
【0284】
〜nは、各々独立に、対アニオンZn1−〜Zn3−のイオン価に相当する任意の正の整数である。n〜nの値は特に制限されないが、何れも1又は2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。
【0285】
n1−〜Zn3−の具体例としては、水酸化物イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、過塩素酸イオン、過臭素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオン、ホウ酸イオン、イソシアン酸イオン、水硫化物イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサクロロアンチモン酸イオン;酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、安息香酸イオン等のカルボン酸イオン;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン;メトキシイオン、t−ブトキシイオン等のアルコキシイオンなどが挙げられ、テトラフルオロホウ素酸イオン又はヘキサフルオロホウ素酸イオンが好ましい。
【0286】
また、対アニオンZn1−〜Zn3−としては、化合物の安定性、有機溶剤への溶解性の点で、下記式(I−4)〜(I−6)のいずれかで表される錯イオンが好ましく、サイズが大きいという点で、負電荷が非局在化し、それに伴い正電荷も非局在化して電子受容能が大きくなるため、式(I−6)で表される錯イオンが更に好ましい。
【0287】
【化44】
【0288】
式(I−4)及び(I−6)中、E及びEは、各々独立して、長周期型周期表の第13族に属する元素を表す。中でもホウ素原子、アルミニウム原子又はガリウム原子が好ましく、化合物の安定性、合成及び精製のし易さの点から、ホウ素原子が好ましい。
式(I−5)中、Eは、長周期型周期表の第15族に属する元素を表す。中でもリン原子、ヒ素原子又はアンチモン原子が好ましく、化合物の安定性、合成及び精製が容易である点及び毒性の点から、リン原子が好ましい。
【0289】
式(I−4)及び(I−5)中、Q及びQは、各々独立して、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子を表し、化合物の安定性、合成及び精製が容易である点から、フッ素原子又は塩素原子であることが好ましく、フッ素原子であることが最も好ましい。
【0290】
式(I−6)中、Ar61〜Ar64は、各々独立に、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基の例示としては、R51について先に例示したものと同様の、1個の遊離原子価を有する、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環が挙げられる。
中でも、化合物の安定性、耐熱性の点から、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環が好ましい。
【0291】
Ar61〜Ar64として例示した芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基は、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、更に別の置換基によって置換されていてもよい。置換基の種類は特に制限されず、任意の置換基が適用可能であるが、電子吸引性の基であることが好ましい。
【0292】
Ar61〜Ar64が有してもよい置換基として好ましい電子吸引性の基を例示すると、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;シアノ基;チオシアノ基;ニトロ基;メシル基等のアルキルスルホニル基;トシル基等のアリールスルホニル基;ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等の、炭素数が通常1以上、通常12以下、好ましくは6以下のアシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数が通常2以上、通常10以下、好ましくは7以下のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基等の、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、通常25以下、好ましくは15以下の芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を有するアリールオキシカルボニル基;アミノカルボニル基;アミノスルホニル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等の、炭素数が通常1以上、通常10以下、好ましくは6以下の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基にフッ素原子、塩素原子などのハロゲン原子が置換したハロアルキル基、などが挙げられる。
【0293】
中でも、Ar61〜Ar64のうち少なくとも1つの基が、フッ素原子又は塩素原子を置換基として1つ又は2つ以上有することがより好ましい。
特に、負電荷を効率よく非局在化する点、及び、適度な昇華性を有する点から、Ar61〜Ar64の水素原子がすべてフッ素原子で置換されたパーフルオロアリール基であることが最も好ましい。パーフルオロアリール基の具体例としては、ペンタフルオロフェニル基、ヘプタフルオロ−2−ナフチル基、テトラフルオロ−4−ピリジル基等が挙げられる。
【0294】
本発明における電子受容性化合物の分子量は、通常100以上、好ましくは300以上、更に好ましくは400以上、また、通常5,000以下、好ましくは3,000以下、更に好ましくは2,000以下の範囲である。
電子受容性化合物の分子量が小さすぎると、正電荷及び負電荷の非局在化が不十分なため、電子受容能が低下するおそれがあり、電子受容性化合物の分子量が大きすぎると、電子受容性化合物自体が電荷輸送の妨げとなるおそれがある。
【0295】
以下に本発明における電子受容性化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0296】
【表1】
【0297】
【表2】
【0298】
【表3】
【0299】
【表4】
【0300】
【表5】
【0301】
【表6】
【0302】
【表7】
【0303】
【表8】
【0304】
【表9】
【0305】
【表10】
【0306】
【表11】
【0307】
【表12】
【0308】
【表13】
【0309】
上記具体例のうち、電子受容性、耐熱性、有機溶剤に対する溶解性の点で、好ましくは、A−1〜A−48、A−54、A−55、A−60〜A−62、A−64〜A−75、A−79〜A−83、B−1〜B−20、B−24、B−25、B−27、B−30〜B−37、B−39〜B−43、C−1〜C−10、C−19〜C−21、C−25〜C−27、C−30、C−31、D−15〜D−28の化合物であり、より好ましくは、A−1〜A−9、A−12〜A−15、A−17、A−19、A−24、A―29、A−31〜A−33、A−36、A−37、A−65、A−66、A−69、A−80〜A−82、B−1〜B−3、B−5、B−7〜B−10、B−16、B−30、B−33、B−39、C−1〜C−3、C−5、C−10、C−21、C−25、C−31、D−17〜D−28の化合物であり、最も好ましくは、A−1〜A−7、A−80、D−21〜D−24の化合物である。
【0310】
以上説明した電子受容性化合物を製造する方法は特に制限されず、各種の方法を用いて製造することが可能である。例としては、Chem.Rev.、66巻、243頁、1966年、及び、J.Org.Chem.、53巻、5571頁、1988年に記載の方法等が挙げられる。
【0311】
本発明の有機電界発光素子用組成物は、上述の電子受容性化合物のうち何れか一種を単独で含有していてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で含有していてもよい。また、式(I−1)〜(I−3)のうち何れか一つの式に該当する電子受容性化合物を二種以上組み合わせてもよく、各々異なる式に該当する二種以上の電子受容性化合物を組み合わせてもよい。
【0312】
本発明の有機電界発光素子用組成物における上述の電子受容性化合物の含有量は、先述の芳香族アミン系ポリマーに対する値で、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、また、通常100重量%以下、好ましくは40重量%以下である。
電子受容性化合物の含有率が少な過ぎると駆動電圧が上昇するおそれがあり、また電子受容性化合物の含有率が多過ぎると成膜性が低下するおそれがある。二種以上の電子受容性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
【0313】
<有機溶剤>
本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される有機溶剤としては、本発明における芳香族アミン系ポリマーを、通常0.05重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上溶解する有機溶剤であることが好ましい。
また、電子受容性化合物を0.005重量%以上溶解することが好ましく、0.05重量%以上溶解することがより好ましく、0.5重量%以上溶解することがさらに好ましい。
【0314】
有機溶剤としては、具体的には、芳香族系有機溶剤、含ハロゲン有機溶剤、エーテル系有機溶剤、及びエステル系有機溶剤が挙げられる。
【0315】
芳香族系有機溶剤の具体例としては、トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン、ペンタフルオロメトキシベンゼン、エチル(ペンタフルオロベンゾエート)等、
含ハロゲン有機溶剤の具体例としては、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等、
エーテル系有機溶剤の具体例としては、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン,1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン,4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール,2,4−ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル等の芳香族エーテル等、
エステル系有機溶剤の具体例としては、酢酸エチル、酢酸n―ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル等が挙げられる。
【0316】
芳香族アミン系ポリマーを溶解させる必要があること及び、これら芳香族アミン系ポリマー等の正孔輸送材料と電子受容性化合物の混合から生じる正孔注入・輸送性材料のカチオンラジカルを溶解する能力が高いことから、好ましくは、エーテル系有機溶剤、及びエステル系有機溶剤である。
これらは1種で用いてもよく、2種以上の混合有機溶剤としてもよい。
【0317】
本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される有機溶剤として、25℃における蒸気圧が10mmHg以下、好ましくは5mmHg以下で、通常0.1mmHg以上の有機溶剤が挙げられる。
【0318】
本発明の有機電界発光素子用組成物に含有されるこれらの有機溶剤の組成物中の濃度は、通常10重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
【0319】
なお、有機溶剤として、前述した有機溶剤以外にも、必要に応じて、各種の他の有機溶剤を含んでいてもよい。このような他の有機溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系有機溶剤、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。また、レベリング剤や消泡剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0320】
なお、水分は有機電界発光素子の性能劣化、中でも特に連続駆動時の輝度低下を促進する可能性があることが広く知られており、塗膜中に残留する水分をできる限り低減するために、これらの有機溶剤の中でも、25℃における水の溶解度が1重量%以下であるものが好ましく、0.1重量%以下である有機溶剤がより好ましい。
また、有機溶剤として、20℃における表面張力が、通常40dyn/cm未満、好ましくは36dyn/cm以下、より好ましくは33dyn/cm以下である有機溶剤が挙げられる。
【0321】
有機溶剤としては混合溶剤であってもよく、25℃における蒸気圧が2mmHg以上、好ましくは3mmHg以上、より好ましくは4mmHg以上(但し、上限値は好ましくは10mmHg以下である。)である有機溶剤と、25℃における蒸気圧が2mmHg未満、好ましくは1mmHg以下、より好ましくは0.5mmHg以下である有機溶剤との混合有機溶剤が挙げられる。このような有機溶剤を使用することにより、有機電界発光素子を湿式成膜法により製造するプロセスに好適な、また、芳香族アミン系ポリマーの性質に適した組成物を調製することができる。
【0322】
<有機電界発光素子用組成物の物性について>
本発明の有機電界発光素子用組成物の粘度は、固形分の濃度に依存するが、通常15mPas以下、好ましくは10mPas以下、さらに好ましくは8mPas以下、また通常2mPas以上、好ましくは3mPas以上、さらに好ましくは5mPas以上である。
この上限値を超えると、湿式成膜法にて膜形成時、均一な成膜ができないおそれがある。また、この下限値を下回ると成膜できないおそれがある。
【0323】
尚、粘度の測定方法は、回転式粘度測定装置を用いて測定する。通常、粘度は、温度及び測定回転数に依存するが、上記値は、測定温度23℃、測定回転数20回転の一定条件で測定した際の測定値である。
【0324】
<添加剤>
本発明の有機電界発光素子用組成物は、必要に応じ、レベリング剤や消泡剤等の塗布性改良剤などの各種添加剤等を含んでいてもよい。この場合は、有機溶剤としては、芳香族アミン系ポリマーと添加剤の双方を0.05重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上溶解する有機溶剤を使用することが好ましい。
【0325】
<用途>
本発明の有機電界発光素子用組成物は、異物生成の問題がなく、湿式成膜法で正孔注入層及び/又は正孔輸送層を形成する場合において、均一に成膜可能であることから好ましい。
また、本発明における湿式成膜法とは、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、組成物ジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷等の有機溶剤を含有する組成物を用いて成膜する方法をいう。
パターニングのし易さという点で、ダイコート法、ロールコート法、スプレーコート法、組成物ジェット法、フレキソ印刷法が好ましい。
【0326】
<有機電界発光素子用組成物の製造方法>
本発明の有機電界発光素子用組成物の製造方法の一例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
特に、本発明の有機電界発光素子用組成物は、以下に記載する方法や特に好ましい方法を組み合わせるなどして製造することができる。
【0327】
[1]添加形態・方法
本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される、芳香族アミン系ポリマー、電子受容性化合物及び有機溶剤を混合する場合、混合する芳香族アミン系ポリマー及び電子受容性化合物は、各々独立に、固体であってもよく、また溶液であってもよい。
芳香族アミン系ポリマー及び電子受容性化合物を共に溶液状態で混合することが好ましい。或いは、芳香族アミン系ポリマー及び電子受容性化合物の何れか一方が固体状態で、何れか一方が溶液状態で混合することが好ましい。この場合、固体の溶解を確認しながら添加できる点で溶液に、固体を入れることが好ましい。
【0328】
さらに芳香族アミン系ポリマー及び電子受容性化合物が共に固体で、これらを粉砕混合した後に、有機溶剤で溶解することが好ましい。
上記の通り固体で混合する場合、粒径は、通常5cm以下、好ましくは1cm以下、より好ましくは5mm以下、また通常0.5mm以上である。
【0329】
[2]溶解工程
本発明の有機電界発光素子用組成物の好ましい製造方法においては、通常溶解工程を有する。
溶解工程は、固体を有機溶剤に攪拌し、固体が浮遊していることが目視で確認できなくなるようにする工程をいう。
【0330】
溶解工程における温度は、通常20℃以上、好ましくは40℃以上、また通常有機溶剤の沸点以下、好ましくは有機溶剤の沸点より10℃以上低い温度である。
この上限値を上回ると、有機溶剤が一部蒸発し濃度が変化するおそれがあり、またこの下限値を下回ると使用する有機溶剤が固化、あるいは溶解度が低下するために所望の濃度が得られないおそれがある。
【0331】
溶解工程における雰囲気は、本発明の効果を損なわない限りは特に制限はないが、不活性ガスが挙げられる。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどが挙げられ、取り扱い容易な点で、窒素ガスが好ましい。
【0332】
[3]超音波処理・光照射処理・加熱処理
本発明の有機電界発光素子用組成物を得るための製造方法としては、特に、超音波処理、光照射処理、加熱処理の少なくとも一つの処理を含むことが好ましい。
また、処理を行う時期は、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、溶解工程で行ってもよく、また溶解工程の後に行ってもよい。
尚、これらの処理は、いずれか一種の処理を単独で行ってもよく、また併用して処理を行ってもよい。
【0333】
(超音波処理)
超音波処理を行う場合、振動子28kHzを用いることが好ましい。
超音波処理における超音波時間は、通常5分以上、好ましくは10分以上、また通常2時間以下、好ましくは1時間以下である。
この上限値を上回ると、ポリマーが分解するおそれがあり、またこの下限値を下回ると溶解が不十分となるおそれがある。
【0334】
(光照射処理)
光照射処理を行う場合、高圧水銀灯を用いることが好ましい。高圧水銀灯は404.7nm、435.8nm、546.1nm、577.0nm、及び579.1nmの輝線スペクトルからなる緑がかった青白色(5,700K)の光源で、253.7nm、365.0nmの紫外線照射を伴う。
【0335】
紫外線の照射方法としては、特に限定されるものではないが、上記調製した組成物に直接照射してもよいし、適当な容器に入れて紫外線を照射してもよい。
容器が紫外線を透過する場合は容器を密閉した状態で紫外線を照射してもよいし、容器が紫外線を遮蔽する場合は、例えば蓋を開封し、開口部から紫外線を照射してもよい。
【0336】
紫外線照射に使用する装置としては、特に限定はされないが、キセノンランプ、水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、紫外線蛍光灯、D2ランプ、カーボンアーク灯、LEDなどが用いられる。
【0337】
また、組成物が有機溶剤を含む場合の組成物の液温度は、特に限定されるものではないが、通常常温であるが、さらに冷却したり、加熱したりしてもよい。
【0338】
紫外線の照射量は、通常10mJ/cm以上、好ましくは100mJ/cm以上、より好ましくは600mJ/cm以上であり、通常50,000mJ/cm以下、好ましくは10,000mJ/cm以下、より好ましくは5,000mJ/cm以下である。
上記範囲内であると、芳香族アミン系ポリマーから電子受容性化合物への電子移動度が十分であり、また芳香族アミン系ポリマーが劣化しにくくなるため好ましい。
【0339】
通常紫外線は組成物表面で吸収されるため、紫外線照射後に組成物を撹拌して均一にしたり、攪拌しながら紫外線を照射することが好ましい。
紫外線の照射面積としては、組成物の入った容器全体に紫外線が照射されることが好ましいが、組成物の一部を照射してもよい。その場合は、紫外線照射後に組成物を攪拌することが好ましく、組成物を撹拌しながら照射することも好ましい。
【0340】
(加熱処理)
加熱処理における加熱手段は、本発明の効果を損なわない限り、公知の技術を用いることができる。
具体的には、芳香族アミン系ポリマー、電子受容性化合物及び有機溶剤を加熱可能な容器に入れ、攪拌しながら、加熱バスにより温度を調節し、加熱攪拌する方法が挙げられる。
加熱バスとしては、水バス、オイルバス等が用いられる。
【0341】
また、芳香族アミン系ポリマー、電子受容性化合物及び有機溶剤を加熱容器に入れ攪拌した後、一定の温度制御可能な恒温槽内に置くことにより加熱処理できる。
安全を考慮した観点から、加熱バスを用いた加熱攪拌による方法が好ましい。
【0342】
加熱処理における加熱温度は、通常40℃以上、好ましくは80℃以上、また、通常有機溶剤の沸点以下、好ましくは有機溶剤の沸点より10℃以上低い温度である。
ここで上限値である沸点は、2種以上の有機溶剤のうちの最も低い沸点の有機溶剤における沸点が基準となる。
この上限値を上回ると、有機溶剤が突沸するおそれがありかつ有機溶剤の蒸発により仕込み時の濃度変化をきたす。またこの下限値を下回ると加熱処理の効果がなく、溶解不十分になるおそれがある。
【0343】
加熱処理における加熱時間は、通常1時間以上、好ましくは5時間以上、また通常36時間以下、好ましくは24時間以下である。この上限値を上回ると、有機溶剤が蒸発するおそれがあり、またこの下限値を下回ると溶解が不十分となるおそれがある。
【0344】
超音波処理、光照射処理又は加熱処理のうち少なくとも何れか一種の処理を行うことで、本発明の有機電界発光素子用組成物を製造できる理由は以下の様に推測される。
【0345】
超音波処理、光照射処理又は加熱処理の何れか一種の処理を行うことで、芳香族アミン系ポリマーの凝集状態が緩和され、芳香族アミン系ポリマーと電子受容性化合物が近接し易くなる。
この近接により、芳香族アミン系ポリマーは分子内でカチオンラジカル状態となり、アニオンラジカルである電子受容性化合物とイオン対状態となり、ポリマーの凝集や、電子受容性化合物の凝集が生じにくくなることから、粒径がミクロンオーダである大きな凝集体を含む割合が小さい電荷輸送膜用組成物が製造できる。
【0346】
[4]濾過工程
本発明の有機電界発光素子用組成物の製造方法においては、濾過工程を含むことが好ましい。また、本発明における濾過工程は、溶解工程の後に行うことが好ましい。
濾過工程に用いるフィルターの孔は、通常5μm以下、好ましくは0.5μm以下、また通常0.02μm以上、好ましくは0.1μm以上である。
この上限値を上回ると、不溶物が混入するおそれがあり、また、この下限値を下回ると濾過ができず目詰まりするおそれがある。
【0347】
<成膜方法>
前述の如く、有機電界発光素子は、多数の有機化合物からなる層を積層して形成するため、膜質が均一であることが非常に重要である。湿式成膜法で層形成する場合、その材料や、下地の性質によって、スピンコート法、スプレー法などの塗布法や、インクジェット法、スクリーン法などの印刷法等、公知の成膜方法が採用できる。
【0348】
湿式成膜法を用いる場合、本発明の有機電界発光素子用組成物を、スピンコート法やディップコート法等の手法により、形成する層の下層に該当する層上に塗布し、乾燥して層を形成する。
本発明における芳香族アミン系ポリマーが、不溶化基を有さない場合は、塗布後、通常加熱等により有機電界発光素子用組成物の膜を乾燥させる。乾燥させる方法としては、通常加熱工程が行なわれる。
【0349】
加熱工程において使用する加熱手段の例を挙げると、クリーンオーブン、ホットプレート、赤外線、ハロゲンヒーター、マイクロ波照射などが挙げられる。中でも、膜全体に均等に熱を与えるためには、クリーンオーブン及びホットプレートが好ましい。
【0350】
加熱工程における加熱温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り、有機電界発光素子用組成物に用いた有機溶剤の沸点以上の温度で加熱することが好ましい。また、層中に前述した解離性ポリマーが含有される場合、解離性基が解離する温度以上の温度で加熱することが好ましい。
また、有機電界発光素子用組成物には有機溶剤が2種類以上含まれている場合、少なくとも1種類がその有機溶剤の沸点以上の温度で加熱されるのが好ましい。
有機溶剤の沸点上昇を考慮すると、加熱工程においては、好ましくは120℃以上、好ましくは410℃以下で加熱することが好ましい。
【0351】
また、加熱の他に、光などの活性エネルギー照射による場合には、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、赤外ランプ等の紫外・可視・赤外光源を直接用いて照射する方法、あるいは前述の光源を内蔵するマスクアライナ、コンベア型光照射装置を用いて照射する方法などが挙げられる。
光以外の活性エネルギー照射では、例えばマグネトロンにより発生させたマイクロ波を照射する装置、いわゆる電子レンジを用いて照射する方法が挙げられる。
【0352】
照射時間としては、不溶化反応が充分に起こるために必要な条件を設定することが好ましいが、通常0.1秒以上、好ましくは10時間以下照射される。
加熱及び光などの活性エネルギー照射は、それぞれ単独、あるいは組み合わせて行ってもよい。組み合わせる場合、実施する順序は特に限定されない。
【0353】
加熱及び光などの活性エネルギー照射は、実施後に層に含有する水分及び/又は表面に吸着する水分の量を低減するために、窒素ガス雰囲気等の水分を含まない雰囲気で行うことが好ましい。同様の目的で、加熱及び/又は光などの活性エネルギー照射を組み合わせて行う場合には、少なくとも発光層の形成直前の工程を窒素ガス雰囲気等の水分を含まない雰囲気で行うことが特に好ましい。
【0354】
[有機電界発光素子]
本発明の有機電界発光素子は、基板上に、少なくとも陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層及び陰極を積層した有機電界発光素子において、前記正孔注入層及び正孔輸送層のうちの少なくとも1層が、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて湿式成膜法により形成されたことを特徴とする。
【0355】
本発明の有機電界発光素子用組成物により形成される層が陽極に隣接された層である有機電界発光素子は、短絡やダークスポットが生じないという効果がある。その為、通常本発明の有機電界発光素子用組成物により形成された層は、正孔注入層であることが好ましい。
また、正孔注入層、正孔輸送層、及び発光層の全てが湿式成膜法で形成されることが好ましい。また、本発明の有機電界発光素子は、無機層を有していてもよい。
【0356】
以下に、本発明の有機電界発光素子の層構成の一例及びその一般的形成方法等について、図1を参照して説明する。
図1は本発明の有機電界発光素子の構造例を示す断面の模式図であり、図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、7は電子輸送層、8は電子注入層、9は陰極を各々表す。
【0357】
なお、このような有機電界発光素子において、陽極と陰極との間の有機層を湿式成膜法で形成する場合は、以下に記載の各層の材料を有機溶剤へ分散又は溶解させて湿式成膜用組成物を作製し、該湿式成膜用組成物を用いて形成すればよい。
【0358】
{基板}
基板は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。
合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
【0359】
{陽極}
陽極は発光層側の層への正孔注入の役割を果たすものである。
この陽極は、通常アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物等の金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。
【0360】
陽極の形成は通常スパッタリング法、真空蒸着法等により行われることが多い。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて陽極を形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板上に塗布することにより陽極を形成することもできる。
さらに、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板上に薄膜を形成したり、基板上に導電性高分子を塗布して陽極を形成したりすることもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
【0361】
陽極は通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすることも可能である。
陽極の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが好ましい。この場合、陽極の厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。
不透明でよい場合は陽極の厚みは任意であり、陽極は基板と同一でもよい。
また、さらには、上記の陽極の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
【0362】
陽極に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調製して正孔注入性を向上させることを目的として、陽極表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理したりすることが好ましい。
【0363】
{正孔注入層}
正孔注入層は、陽極から発光層へ正孔を輸送する機能を有する層であり、通常陽極上に形成される。
この機能を発現するため、正孔注入層は、本発明の有機電界発光素子用組成物により形成された層であることが好ましい。
【0364】
(成膜方法)
本発明の有機電界発光素子用組成物を調製後、この組成物を湿式成膜により、正孔注入層の下層に該当する層(通常は、陽極)上に湿式成膜し、乾燥することにより正孔注入層を形成する。
【0365】
湿式成膜における温度は、組成物中に結晶が生じることによる膜の欠損を防ぐため、10℃以上が好ましく、50℃以下が好ましい。
湿式成膜における相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.01ppm以上、また通常80%以下である。
【0366】
成膜後、通常加熱等により本発明の有機電界発光素子用組成物の膜を乾燥させる。乾燥する方法が加熱である場合、加熱手段は特に制限されないが、例えば、クリーンオーブン、ホットプレート、赤外線、ハロゲンヒーター、マイクロ波照射などが挙げられる。中でも、膜全体に均等に熱を与えるためには、クリーンオーブン及びホットプレートが好ましい。
【0367】
また、加熱温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り、本発明の有機電界発光素子用組成物に用いた有機溶剤のうちの、少なくとも1種類がその有機溶剤の沸点以上又は沸点に近い温度で加熱されるのが好ましい。
有機溶剤の沸点上昇を考慮すると、加熱工程においては、好ましくは200℃以上、より好ましくは220℃以上、好ましくは410℃以下で加熱することが好ましい。
【0368】
加熱温度が本発明の有機電界発光素子用組成物の有機溶剤の沸点以上であり、かつ湿式成膜により形成された膜が十分に不溶化されれば、加熱時間は特に制限されないが、好ましくは10秒以上、また通常180分以下である。上記範囲内であると、均一な膜が形成される傾向があり好ましい。加熱は2回に分けて行ってもよい。
上記の方法で形成した膜厚は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常1,000nm以下、好ましくは500nm以下である。
【0369】
{正孔輸送層}
本発明の有機電界発光素子は通常正孔輸送層を有する。
本発明に係る正孔輸送層の形成方法は特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から正孔輸送層を湿式成膜により形成することが好ましい。
正孔輸送層は、図1に示す構成の有機電界発光素子の場合は正孔注入層の上に形成することができる。
【0370】
正孔輸送層に利用できる材料としては、正孔輸送性が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが好ましい。そのために、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが好ましい。
また、多くの場合発光層に接するため、発光層からの発光を消光したり、発光層との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させたりしないことが好ましい。
【0371】
このような正孔輸送層の材料としては、従来正孔輸送層の材料として用いられている材料であればよい。例えば、本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される正孔輸送性化合物として例示したものが挙げられる。
また、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルで代表される2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(日本国特開平5−234681号公報)、4,4’,4’’−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(J.Lumin.,72−74巻、985頁、1997年)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chem.Commun.,2175頁、1996年)、2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synth.Metals,91巻、209頁、1997年)、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニルなどのカルバゾール誘導体などが挙げられる。
また、例えばポリビニルカルバゾール、ポリビニルトリフェニルアミン(日本国特開平7−53953号公報)、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン(Polym.Adv.Tech.,7巻、33頁、1996年)等が挙げられる。
【0372】
湿式成膜法で正孔輸送層を形成する場合は、正孔輸送層形成用組成物を調製した後、成膜、加熱乾燥させる。
正孔輸送層形成用組成物には、正孔輸送性化合物の他、有機溶剤を含有する。有機溶剤は本発明の有機電界発光素子用組成物に用いたものと同様であり、成膜条件、加熱乾燥条件等も正孔注入層形成時と同様である。
【0373】
真空蒸着法により正孔輸送層を形成する場合の成膜条件等は下記の通りである。
真空蒸着により正孔輸送層を形成する場合には、正孔輸送層の構成材料(前述の正孔輸送性化合物、電子受容性化合物等)の1種又は2種以上を真空容器内に設置されたるつぼに入れ(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼに入れ)、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度まで排気した後、るつぼを加熱して(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼを加熱して)、蒸発量を制御して蒸発させ(2種以上の材料を用いる場合は各々独立に蒸発量を制御して蒸発させ)、るつぼと向き合って置かれた基板の陽極上に正孔輸送層を形成させる。
なお、2種以上の材料を用いる場合は、それらの混合物をるつぼに入れ、加熱、蒸発させて正孔輸送層を形成することもできる。
【0374】
蒸着時の真空度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1×10−6Torr(0.13×10−4Pa)以上、通常9.0×10−6Torr(12.0×10−4Pa)以下である。
蒸着速度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1Å/秒以上、通常5.0Å/秒以下である。
蒸着時の成膜温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは10℃以上で、好ましくは50℃以下で行われる。
【0375】
正孔輸送層は、上記正孔輸送性化合物の他、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などを含有していてもよい。
正孔輸送層は架橋性化合物を架橋して形成される層であってもよい。
【0376】
架橋性化合物は、後述する架橋性基を有する化合物であって、架橋することにより網目状芳香族アミン系ポリマーを形成する。架橋性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよく、中でも芳香族アミン系ポリマーが好ましい。
架橋性化合物は1種のみを有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で有していてもよい。
【0377】
また、架橋性基とは近傍に位置するほかの分子の同一又は異なる基と反応して、新規な化学結合を生成する基のことをいう。
例えば、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により、近傍に位置する他の分子の同一又は異なる基と反応して、新規な化学結合を生成する基が挙げられる。
【0378】
架橋性基の例を挙げると、オキセタン基、エポキシ基などの環状エーテル;ビニル基、トリフルオロビニル基、スチリル基、アクリル基、メタクリロイル基、シンナモイル基等の不飽和二重結合;ベンゾシクロブタン基などが挙げられる。
【0379】
架橋性基を有するモノマー、オリゴマー又はポリマーが有する架橋性基の数に特に制限はないが、電荷輸送ユニットあたり通常2.0未満、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.5以下となる数が好ましい。これは架橋性化合物の比誘電率を好適な範囲に納めるためである。
また、架橋性基の数が多すぎると、反応活性種が発生し、他の材料に悪影響を与える可能性がある。
【0380】
ここで、電荷輸送ユニットとは、網目状芳香族アミン系ポリマーを形成する材料がモノマーの場合、モノマーそのものであり、架橋性基をのぞいた骨格(主骨格)のことを示す。他種類のモノマーを混合する場合においても、各々のモノマーの主骨格のことを示す。
網目状ポリマーを形成する材料が芳香族アミン系ポリマーの場合、有機化学的に共役がとぎれる構造の場合は、その繰り返しの構造を電荷輸送ユニットとする。また、広く共役が連なっている構造の場合には、電荷輸送性を示す最小繰り返し構造は、モノマーの構造である。
例えば、ナフタレン、トリフェニレン、フェナントレン、テトラセン、クリセン、ピレン、ペリレンなどの多環系芳香族、フルオレン、トリフェニレン、カルバゾール、トリアリールアミン、テトラアリールベンジジン、1,4−ビス(ジアリールアミノ)ベンゼンなどが挙げられる。
【0381】
さらに、架橋性化合物としては、架橋性基を有する正孔輸送性化合物を用いることが好ましい。
正孔輸送性化合物の例を挙げると、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体等の含窒素芳香族化合物誘導体;トリフェニルアミン誘導体;シロール誘導体;オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。
【0382】
その中でも、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体等の含窒素芳香族誘導体;トリフェニルアミン誘導体、シロール誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが好ましく、特に、トリフェニルアミン誘導体がより好ましい。
架橋性化合物の分子量は、通常5,000以下、好ましくは2,500以下であり、また好ましくは300以上、さらに好ましくは500以上である。
【0383】
架橋性化合物を架橋して正孔輸送層を形成するには、通常架橋性化合物を有機溶剤に溶解又は分散した塗布液(正孔輸送層形成用組成物)を調製して、湿式成膜により成膜して架橋させる。
塗布液には、架橋性化合物の他、架橋反応を促進する添加物を含んでいてもよい。
【0384】
架橋反応を促進する添加物の例を挙げると、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシムエステル化合物、アゾ化合物、オニウム塩等の架橋開始剤及び架橋促進剤;縮合多環炭化水素、ポルフィリン化合物、ジアリールケトン化合物等の光増感剤;などが挙げられる。
また、さらに、レベリング剤、消泡剤等の塗布性改良剤;電子受容性化合物:バインダー樹脂、などを含有していてもよい。
【0385】
塗布液に用いられる有機溶剤は、正孔注入層を形成するために本発明の有機電界発光素子用組成物が用いられる場合は、前記特許文献1の正孔輸送層を形成するための組成物有機溶剤として例示したものと同様である。
塗布液は、架橋性化合物を通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下含有する。
正孔注入層を形成するために本発明の有機電界発光素子用組成物が用いられない場合は、正孔輸送層には本発明の有機溶剤が好適に用いられる。
【0386】
塗布液を下層上に成膜後、加熱及び/又は活性エネルギー線照射により、架橋性化合物を架橋させて網目状高分子化する。成膜後の加熱の手法は特に限定されないが、例としては加熱乾燥、減圧乾燥等が挙げられる。
【0387】
加熱乾燥の場合の条件としては、通常120℃以上、好ましくは400℃以下に成膜された層を加熱する。加熱時間としては、通常1分以上、好ましくは24時間以下である。
加熱手段としては特に限定されないが、成膜された層を有する積層体をホットプレート上に載せたり、オーブン内で加熱するなどの手段が用いられる。例えば、ホットプレート上で120℃以上、1分間以上加熱する等の条件を用いることができる。
【0388】
活性エネルギー線照射による場合には、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、赤外ランプ等の紫外・可視・赤外光源を直接用いて照射する方法、あるいは前述の光源を内蔵するマスクアライナ、コンベア型光照射装置を用いて照射する方法などが挙げられる。
光以外の活性エネルギー線照射では、例えばマグネトロンにより発生させたマイクロ波を照射する装置、いわゆる電子レンジを用いて照射する方法が挙げられる。
照射時間としては、膜の溶解性を低下させるために必要な条件を設定することが好ましいが、通常0.1秒以上、好ましくは10時間以下照射される。
【0389】
加熱及び活性エネルギー線照射は、各々単独、あるいは組み合わせて行ってもよい。組み合わせる場合、実施する順序は特に限定されない。
加熱及び活性エネルギー線照射は、実施後に層に含有する水分及び/又は表面に吸着する水分の量を低減するために、窒素ガス雰囲気等の水分を含まない雰囲気で行うことが好ましい。同様の目的で、加熱及び/又は活性エネルギー線照射を組み合わせて行う場合には、少なくとも発光層の形成直前の工程を窒素ガス雰囲気等の水分を含まない雰囲気で行うことが特に好ましい。
【0390】
正孔輸送層の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
【0391】
{発光層}
正孔注入層の上、又は正孔輸送層を設けた場合には正孔輸送層の上には発光層が設けられる。発光層は、電界を与えられた電極間において、陽極から注入された正孔と、陰極から注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。
【0392】
<発光層の材料>
発光層は、その構成材料として、少なくとも、発光の性質を有する材料(発光材料)を含有するとともに、好ましくは、正孔移動の性質を有する化合物(正孔輸送材料)、あるいは、電子移動の性質を有する化合物(電子輸送材料)を含有する。
【0393】
発光材料については特に限定はなく、所望の発光波長で発光し、発光効率が良好である物質を用いればよい。また、電荷輸送材料を2成分以上含有していることが好ましい。更に、発光層は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、その他の成分を含有していてもよい。
なお、湿式成膜法で発光層を形成する場合は、何れもモノマー量の材料を使用することが好ましい。
【0394】
(発光材料)
発光材料としては、任意の公知の材料を適用可能である。例えば、蛍光発光材料であってもよく、燐光発光材料であってもよいが、内部量子効率の観点から、好ましくは燐光発光材料である。
なお、有機溶剤への溶解性を向上させる目的で、発光材料の分子の対称性や剛性を低下させたり、或いはアルキル基などの親油性置換基を導入したりすることが好ましい。
【0395】
以下、発光材料のうち蛍光色素の例を挙げるが、蛍光色素は以下の例示物に限定されるものではない。
青色発光を与える蛍光色素(青色蛍光色素)としては、例えば、ナフタレン、ペリレン、ピレン、アントラセン、クマリン、クリセン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼン及びそれらの誘導体等が挙げられる。
【0396】
緑色発光を与える蛍光色素(緑色蛍光色素)としては、例えば、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、Al(CNO)などのアルミニウム錯体等が挙げられる。
黄色発光を与える蛍光色素(黄色蛍光色素)としては、例えば、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。
赤色発光を与える蛍光色素(赤色蛍光色素)としては、例えば、DCM(4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6−(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran)(4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
【0397】
燐光発光材料としては、例えば、長周期型周期表第7〜11族から選ばれる金属を含む有機金属錯体が挙げられる。
周期表第7〜11族から選ばれる金属として、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。
【0398】
錯体の配位子としては、(ヘテロ)アリールピリジン配位子、(ヘテロ)アリールピラゾール配位子などの(ヘテロ)アリール基とピリジン、ピラゾール、フェナントロリンなどが連結した配位子が好ましく、特にフェニルピリジン配位子、フェニルピラゾール配位子が好ましい。
ここで、(ヘテロ)アリールとは、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
【0399】
燐光発光材料として、具体的には、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、トリス(2−フェニルピリジン)ルテニウム、トリス(2−フェニルピリジン)パラジウム、ビス(2−フェニルピリジン)白金、トリス(2−フェニルピリジン)オスミウム、トリス(2−フェニルピリジン)レニウム、オクタエチル白金ポルフィリン、オクタフェニル白金ポルフィリン、オクタエチルパラジウムポルフィリン、オクタフェニルパラジウムポルフィリン等が挙げられる。
【0400】
発光材料として用いる化合物の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10,000以下、好ましくは5,000以下、より好ましくは4,000以下、更に好ましくは3,000以下、また、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上の範囲である。
発光材料の分子量が小さ過ぎると、耐熱性が著しく低下したり、ガス発生の原因となったり、膜を形成した際の膜質の低下を招いたり、或いはマイグレーションなどによる有機電界発光素子のモルフォロジー変化を来したりする場合がある。一方、発光材料の分子量が大き過ぎると、発光材料の精製が困難となってしまったり、有機溶剤に溶解させる際に時間を要したりする傾向がある。
なお、上述した発光材料は、いずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0401】
発光層における発光材料の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.05重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、また、通常35重量%以下、好ましくは25重量%以下、更に好ましくは20重量%以下である。
発光材料が少なすぎると発光ムラを生じる可能性があり、多すぎると発光効率が低下する可能性がある。
なお、2種以上の発光材料を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
【0402】
(正孔輸送材料)
発光層には、その構成材料として、正孔輸送材料を含有させてもよい。ここで、正孔輸送材料のうち、モノマー量の正孔輸送材料の例としては、前述の正孔注入層における(モノマー量の正孔輸送材料)として例示した各種の化合物のほか、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルに代表される、2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(日本国特開平5−234681号公報)、4,4’,4’’−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(Journal of Luminescence,1997年,Vol.72−74, pp.985)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chemical Communications,1996年,pp.2175)、2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synthetic Metals,1997年,Vol.91,pp.209)等が挙げられる。
【0403】
なお、発光層において、正孔輸送材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
発光層における正孔輸送材料の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、また、通常65重量%以下、好ましくは50重量%以下、更に好ましくは40重量%以下である。
正孔輸送材料が少なすぎると短絡の影響を受けやすくなる可能性があり、多すぎると膜厚ムラを生じる可能性がある。
なお、2種以上の正孔輸送材料を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
【0404】
(電子輸送材料)
発光層には、その構成材料として、電子輸送材料を含有させてもよい。ここで、電子輸送材料のうち、モノマー量の電子輸送材料の例としては、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)や、2,5−ビス(6’−(2’,2’’−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)や、バソフェナントロリン(BPhen)や、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP、バソクプロイン)、2−(4−ビフェニリル)−5−(p−ターシャルブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(tBu−PBD)や、4,4’−ビス(9−カルバゾール)−ビフェニル(CBP)等が挙げられる。
なお、発光層において、電子輸送材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0405】
発光層における電子輸送材料の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、また、通常65重量%以下、好ましくは50重量%以下、更に好ましくは40重量%以下である。
電子輸送材料が少なすぎると短絡の影響を受けやすくなる可能性があり、多すぎると膜厚ムラを生じる可能性がある。なお、2種以上の電子輸送材料を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
【0406】
<発光層の形成>
本発明に係る湿式成膜法により発光層を形成する場合は、上述の材料を適切な有機溶剤に溶解させて湿式成膜用組成物を調製し、それを用いて成膜工程、好ましくは乾燥工程を介して形成する。
これらの工程の詳細は、先に説明した内容と同様である。なお、他の有機層を本発明に係る湿式成膜法で形成する場合は、発光層の形成に蒸着法、又はその他の方法を用いてもよい。
【0407】
発光層用有機溶剤の好適な例は、前記特許文献1の発光層用有機溶剤と同一である。
発光層を形成するための湿式成膜用組成物に対する発光層用有機溶剤の比率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、また、通常70重量%以下、好ましくは60重量%以下、更に好ましくは50重量%以下の範囲である。
なお、発光層用有機溶剤として2種以上の有機溶剤を混合して用いる場合には、これらの有機溶剤の合計がこの範囲を満たすようにする。
【0408】
発光層を形成するための湿式成膜用組成物の湿式成膜後、得られた塗膜を乾燥し、発光層用有機溶剤を除去することにより、発光層が形成される。
湿式成膜法の方式は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されず、前述のいかなる方式も用いることができる。
【0409】
発光層の膜厚は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常3nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常200nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
発光層の膜厚が、薄すぎると膜に欠陥が生じる可能性があり、厚すぎると駆動電圧が上昇する可能性がある。
【0410】
{正孔阻止層}
発光層と後述の電子注入層との間に、正孔阻止層を設けてもよい。正孔阻止層は、発光層の上に、発光層の陰極側の界面に接するように積層される層である。
この正孔阻止層は、陽極から移動してくる正孔を陰極に到達するのを阻止する役割と、陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送する役割とを有する。
【0411】
正孔阻止層を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。
このような条件を満たす正孔阻止層の材料としては、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(日本国特開平11−242996号公報)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(日本国特開平7−41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(日本国特開平10−79297号公報)などが挙げられる。
更に、国際公開第2005/022962号に記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層の材料として好ましい。
【0412】
なお、正孔阻止層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
正孔阻止層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成できる。
正孔阻止層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
【0413】
{電子輸送層}
発光層と後述の陰極の間には、通常電子輸送層を設ける。
電子輸送層は、素子の発光効率を更に向上させることを目的として設けられるもので、電界を与えられた電極間において陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送することができる化合物より形成される。
【0414】
電子輸送層に用いられる電子輸送性化合物としては、通常陰極又は電子注入層からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物を用いる。
このような条件を満たす化合物としては、例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(日本国特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−ヒドロキシフラボン金属錯体、5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5645948号公報)、キノキサリン化合物(日本国特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(日本国特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
なお、電子輸送層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0415】
電子輸送層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
電子輸送層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
【0416】
発光層と電子輸送層は、1つの層としてもよい。その場合には、1つの層の中に、前述の発光材料と電子輸送材料を含有させる。
発光材料、電子輸送材料としては、別々の化合物を使用することもできるが、発光機能と電子輸送機能を併せ持つ化合物(例えば、後述の式(C3)で表される8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体)を1種使用することもできる。
【0417】
{電子注入層}
電子輸送層と陰極の間に、電子注入層を設けることが好ましい。
電子注入層は、陰極から注入された電子を効率よく発光層へ注入する役割を果たす。電子注入を効率よく行なうには、電子注入層を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。
例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属等が用いられ、その膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下が好ましい。
【0418】
更に、バソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送化合物に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(日本国特開平10−270171号公報、日本国特開2002−100478号公報、日本国特開2002−100482号公報などに記載)ことにより、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。
この場合の膜厚は、通常5nm以上、中でも10nm以上が好ましく、また、通常200nm以下、中でも100nm以下が好ましい。
【0419】
なお、電子注入層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電子注入層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
【0420】
{陰極}
陰極は、発光層側の層(電子注入層又は発光層など)に電子を注入する役割を果たすものである。
陰極の材料としては、前記の陽極に使用される材料を用いることが可能であるが、効率よく電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、例えば、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金が用いられる。
具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
なお、陰極の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0421】
陰極の膜厚は、通常陽極と同様である。
さらに、低仕事関数金属から成る陰極を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、素子の安定性が増すので好ましい。この目的のために、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。
なお、これらの材料は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0422】
{その他の層}
本発明に係る有機電界発光素子は、その趣旨を逸脱しない範囲において、別の構成を有していてもよい。例えば、その性能を損なわない限り、陽極と陰極との間に、上記説明にある層の他に任意の層を有していてもよく、また、任意の層が省略されていてもよい。
【0423】
<電子阻止層>
有していてもよいその他の層としては、電子阻止層が挙げられる。
電子阻止層は、正孔注入層又は正孔輸送層と発光層との間に設けられ、発光層から移動してくる電子が正孔注入層に到達するのを阻止することで、発光層内での正孔と電子との再結合確率を増やし、生成した励起子を発光層内に閉じこめる役割と、正孔注入層から注入された正孔を効率よく発光層の方向に輸送する役割とを担う。特に、発光材料として燐光材料を用いたり、青色発光材料を用いたりする場合は電子阻止層を設けることが効果的である。
【0424】
電子阻止層に求められる特性としては、正孔輸送性が高く、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いこと等が挙げられる。
更に、本発明においては、発光層を湿式成膜法で作製する場合には、電子阻止層にも湿式成膜の適合性が求められる。このような電子阻止層に用いられる材料としては、F8−TFBに代表されるジオクチルフルオレンとトリフェニルアミンの共重合体(国際公開第2004/084260号)等が挙げられる。
なお、電子阻止層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電子阻止層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
【0425】
さらに陰極と発光層又は電子輸送層との界面に、例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF)、酸化リチウム(LiO)、炭酸セシウム(II)(CsCO)等で形成された極薄絶縁膜(0.1〜5nm)を挿入することも、素子の効率を向上させる有効な方法である(Applied Physics Letters,1997年,Vol.70,pp.152;日本国特開平10−74586号公報;IEEETransactions on Electron Devices,1997年,Vol.44,pp.1245;SID 04 Digest,pp.154等参照)。
【0426】
また、以上説明した層構成において、基板以外の構成要素を逆の順に積層することも可能である。
例えば、図1の層構成であれば、基板上に他の構成要素を陰極、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に設けてもよい。更には、少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板の間に、基板以外の構成要素を積層することにより、本発明に係る有機電界発光素子を構成することも可能である。
【0427】
また、基板以外の構成要素(発光ユニット)を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。その場合には、各段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合は、それら2層)の代わりに、例えば五酸化バナジウム(V)等からなる電荷発生層(Carrier Generation Layer:CGL)を設けると、段間の障壁が少なくなり、発光効率・駆動電圧の観点からより好ましい。
【0428】
更には、本発明に係る有機電界発光素子は、単一の有機電界発光素子として構成してもよく、複数の有機電界発光素子がアレイ状に配置された構成に適用してもよく、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構成に適用してもよい。
また、上述した各層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、材料として説明した以外の成分が含まれていてもよい。
【0429】
[有機電界発光(有機EL)表示装置]
本発明の有機EL表示装置は、上述の本発明の有機電界発光素子を用いたものである。本発明の有機EL表示装置の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、有機ELディスプレイを形成することができる。
【0430】
[有機電界発光(有機EL)照明]
本発明の有機EL照明は、上述の本発明の有機電界発光素子を用いたものである。本発明の有機電界発光素子が適用される本発明の有機EL照明の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
【実施例】
【0431】
次に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0432】
〔芳香族アミン系ポリマーの合成及び精製〕
[合成例1:芳香族アミン系ポリマー(P1−1)の合成]
下記反応式に従って反応を行って、芳香族アミン系ポリマー(P1−1)を合成した。
【0433】
【化45】
【0434】
窒素気流下でN,N’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(1.00重量部)、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(0.49重量部)、炭酸カリウム(1.87重量部)、及び1−メチル−2−ピロリドン(23.13重量部)を131℃で9時間攪拌した。
得られた反応混合物を冷却後、中間濾過により不溶物を除いた濾液を、メタノールに添加して沈殿を得た。これを濾取し、60℃で6時間減圧乾燥することによって粗組成物1−1を得た。
【0435】
粗組成物1−1をテトラヒドロフランに溶解させ、この溶液にノルマルヘプタンを添加し、20±5℃で30分間撹拌して沈殿を得た。上澄み液をデカンテーションで除去し、沈殿物を得た。さらに同様の再沈殿操作を繰り返し、粗組成物1−2を得た。
【0436】
粗組成物1−2をトルエンに溶解させ、このトルエン溶液に2−プロパノールと脱塩水を添加し、50±5℃で30分間撹拌した。静置後分液して得られた有機層を同様の操作で更に2度洗浄し、無機分を除去した。
得られた有機層を減圧濃縮し、残渣をテトラヒドロフランで抽出し、この溶液をメタノールに添加して沈殿させた後に濾取し、60℃で8時間減圧乾燥することによって、目的とする芳香族アミン系ポリマー(P1−1)(0.81重量部、収率59%)を得た。
【0437】
(芳香族アミン系ポリマー(P1−1)のSEC測定)
得られた芳香族アミン系ポリマー(P1−1)のSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)測定を下記の条件で行い、分子量を測定した。
<SEC測定条件>
装置:東ソー社製HLC8020
カラム:東ソー社製TSKgel GMHxL(カラムサイズ30cm×2本)
カラム温度:40℃
移動層:テトラヒドロフラン
流量:1.0ml/分
インジェクション濃度:0.1重量%
インジェクション量:0.10ml
検出器:RI
換算法:ポリスチレン換算
近似式:3次式
【0438】
得られた芳香族アミン系ポリマー(P1−1)の重量平均分子量(Mw)は24,000であった。
【0439】
[合成例2:芳香族アミン系ポリマー(P1−2)の合成]
合成例1において、原料であるN,N’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、4,4’−ジフルオロベンゾフェノンの原料ロットを変更した以外は同様にして、芳香族アミン系ポリマー(P1−1)と同一の芳香族アミン系ポリマー(P1−2)(重量平均分子量(Mw)=24,000)を製造した。
【0440】
[合成例3:芳香族アミン系ポリマー(P1−2)の精製]
合成例2で製造した芳香族アミン系ポリマー(P1−2)50重量部に、テトラヒドロフラン105重量部とトルエン345重量部を加え、均一な溶液を得た。この溶液に、更に1N塩酸500重量部を加え、攪拌の後、分液した。
得られた有機相を500重量部の水で3度洗浄した。分離した有機層にトルエン630重量部を加え、強酸性カチオン交換樹脂(三菱化学(株)製商品名「ダイヤイオン(登録商標)WK11」(商品名))167重量部と、強塩基性アニオン交換樹脂(三菱化学(株)製商品名「ダイヤイオン(登録商標)SAN1」(商品名))83重量部を混合して作製した混床イオン交換樹脂層に、上記の有機層のトルエン溶液を通液した。
【0441】
溶出液を孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレンフィルター(以下「0.1μmPTFEフィルター」という。)で濾過した後、3,500重量部のメタノールに放出してポリマーのスラリーを作製後、濾過し、固形分を350重量部のメタノールで洗浄し、60℃で8時間乾燥して精製芳香族アミン系ポリマー(P1−3)を得た。
【0442】
[合成例4:芳香族アミン系ポリマー(P1−2)の精製]
合成例3と同様に、合成例2で製造した芳香族アミン系ポリマー(P1−2)を精製した。
合成例2で製造した芳香族アミン系ポリマー(P1−2)40重量部に、テトラヒドロフラン84重量部とトルエン276重量部を加え、均一な溶液を得た。この溶液に、更に1N塩酸400重量部を加え、攪拌の後、分液した。
得られた有機相を400重量部の水で3度洗浄した。分離した有機層にトルエン630重量部を加え、強酸性カチオン交換樹脂(三菱化学(株)製商品名「ダイヤイオン(登録商標)WK11」(商品名))134重量部と、強塩基性アニオン交換樹脂(三菱化学(株)製商品名「ダイヤイオン(登録商標)SAN1」(商品名))66重量部を混合して作製した混床イオン交換樹脂層に、上記の有機層のトルエン溶液を通液した。
【0443】
溶出液を0.1μmPTFEフィルターで濾過した後、2800重量部のメタノールに放出してポリマーのスラリーを作製後、濾過し、固形分を280重量部のメタノールで洗浄し、60℃で8時間乾燥して精製芳香族アミン系ポリマー(P1−4)を得た。
【0444】
〔有機電界発光素子用組成物の調製と評価〕
[実施例1]
<有機電界発光素子用組成物1の調製>
合成例3で得られた、芳香族アミン系ポリマー(P1−3)、下記構造式で表される電子受容性化合物(A1)、及び有機溶剤を含有する有機電界発光素子用組成物1を下記の配合で調製した。
溶質成分 化合物(P1−3) 3.0重量部
化合物(A1) 0.3重量部
有機溶剤 安息香酸エチル 96.7重量部
【0445】
【化46】
【0446】
化合物(P1−3)と化合物(A1)と有機溶剤を混合して、140℃で3時間、加熱攪拌を行った。放冷後、溶解残渣が沈殿していないことを目視確認した後、0.1μmPTFEフィルターにて濾過処理を行い、有機電界発光素子用組成物1を得た。
ICP法にて、この有機電界発光素子用組成物1のZn濃度を定量したところ、0.03ppmであった。
【0447】
<有機電界発光素子の作製>
得られた有機電界発光素子用組成物1を用いて、以下の方法で有機電界発光素子を作製した。
【0448】
(正孔注入層の形成)
洗浄処理したITO基板上に、上記有機電界発光素子用組成物1を、スピンコート法にて塗布、乾燥、焼成して正孔注入層を形成した。スピンコートは気温23℃、相対湿度50%の大気中で行ない、スピナ回転数は2750rpm、スピナ時間は30秒とした。
塗布後、ホットプレート上で80℃にて1分間加熱乾燥した後、オーブン大気中で230℃で15分間ベークし、膜厚35nmの正孔注入層を形成した。
【0449】
(正孔輸送層の形成)
この正孔注入層を形成したITO基板を真空蒸着装置のチャンバー内に設置した。チャンバーはロータリーポンプで粗引きした後、クライオポンプにて減圧した。真空度は2.0×10−4Paであった。基板には、所定の領域に、蒸着用マスクを配置し、チャンバーには予め必要な蒸着材料をそれぞれ別の磁器製坩堝に入れて配置しておいた。
【0450】
下記構造式で表される4,4’−ビス[N−(9−フェナントリル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(PPD)を入れた磁器製坩堝を通電加熱し、正孔注入層上に蒸着した。蒸着時の真空度は1.8×10−4Pa、蒸着速度は0.8Å/s〜1.3Å/sとし、正孔輸送層を膜厚45nmで形成した。
【0451】
【化47】
【0452】
(発光・電子輸送層の形成)
次に、下記式(C3)で表される8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体(Alq3)を入れた磁器製坩堝を通電加熱し、正孔輸送層の上に蒸着した。蒸着時の真空度は1.8×10−4Pa、蒸着速度は1.0Å/s〜1.4Å/sとし、発光層を兼ねた電子輸送層を膜厚60nmで形成した。
【0453】
【化48】
【0454】
(陰極形成)
次に、発光・電子輸送層までを形成した基板を一旦大気中に取り出し、陰極蒸着用のマスクとして7mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極のITOストライプと直交するように配置し、速やかに蒸着装置に設置した。チャンバーはロータリーポンプで粗引きした後、クライオポンプにて減圧した。真空度は3.4×10−6Torrであった。
【0455】
陰極として、先ず、フッ化リチウム(LiF)を入れたモリブデン製ボートを通電加熱し、電子輸送層の上に蒸着した。蒸着条件は、蒸着時の真空度は3.6×10−6Torr、蒸着速度は0.16Å/s〜0.20Å/sとし、膜厚0.5nmで成膜した。
最後に、アルミニウムを入れたモリブデン製ボートを通電加熱して陰極を蒸着した。蒸着条件は、蒸着時の真空度6.0×10−6Torr〜12.0×10−6Torr、蒸着速度2.6Å/s〜5.6Å/sとし、膜厚80nmに成膜した。
【0456】
(封止)
次に、陰極を形成した基板を一旦大気中に取り出し、速やかに窒素置換されたグローブボックスに移した。窒素置換されたグローブボックス中では封止ガラス板の凹部に吸湿剤シートを貼り付け、封止ガラス板の凹部の周囲にUV硬化性樹脂をディスペンサーにて塗布し、蒸着を行なった基板の蒸着領域を封止ガラス板で密封するように密着させ、UVランプにてUV光を照射してUV硬化性樹脂を硬化させた。
以上の様にして、有機電界発光素子を得た。
【0457】
<逆電圧漏れ電流試験>
(評価方法)
得られた素子について、直流2端子法を用いて電流電圧特性を測定した。測定にはKEYTHLEY社製2400型汎用ソースメーターを使用した。電圧2.0V/secで0.0V〜−16.0Vまで掃引し、0.2V毎に電流値を取得した。
評価は有機電界発光素子用組成物1を用いて形成した4個のピクセルに対し上記の掃引を2度行い、8個のデータシリーズの形式で得た。
【0458】
−15.0V〜―16.0Vの領域で1×10−7A以上の電流が流れた場合をNGと判断し、8個のデータシリーズに締めるNGの割合を「NG度数」として百分率にて表した。
すなわち、NG度数0%は、逆方向電圧を印加しても逆方向漏れ電流が流れないという極めて好適な状態を示し、NG度数100%は逆方向電圧の印加に対し100%の確率で逆方向漏れ電流が流れるという極めて不適切な状態を示す。
【0459】
(評価結果)
芳香族アミン系ポリマー(P1−3)を用いて調製した有機電界発光素子用組成物1を用いた素子については、NG度数25%の好適な結果を得た。
【0460】
[比較例1]
実施例1において、芳香族アミン系ポリマー(P1−3)の代わりに、合成例1で製造した芳香族アミン系ポリマー(P1−1)を用いた以外は、実施例1と同様にして有機電界発光素子用組成物xを調製した。
ICP法にて、当該組成物xのZn濃度を定量したところ、0.7ppmであり、実施例1で用いた有機電界発光素子用組成物1に比べ、Zn濃度が高かった。
【0461】
有機電界発光素子用組成物1の代わりに、上記の有機電界発光素子用組成物xを用いて実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製し、同様に逆電圧漏れ電流試験を行ったところ、NG度数88%という、好ましくない結果を得た。
【0462】
[実施例2]
実施例1において、芳香族アミン系ポリマー(P1−3)の代わりに、合成例2で製造した芳香族アミン系ポリマー(P1−2)を0.5重量部と芳香族アミン系ポリマー(P1−3)2.5重量部とを混合して用いた以外は、実施例1と同様に有機電界発光素子用組成物2を調製した。
ICP法にて、当該組成物2のZn濃度を定量したところ、0.2ppmであり、比較例1における有機電界発光素子用組成物xに比べ、Zn濃度が低かった。
【0463】
有機電界発光素子用組成物1の代わりに、上記の有機電界発光素子用組成物2を用いて実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製し、同様に逆電圧漏れ電流試験を行ったところ、NG度数は50%で、比較例1よりも良好な結果を得た。
【0464】
[実施例3]
<有機電界発光素子用組成物3の調製>
実施例1において、芳香族アミン系ポリマー(P1−3)の代わりに、芳香族アミン系ポリマー(P1−4)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、有機電界発光素子用組成物3を調製した。
ICP法にて、このもののZn濃度を定量したところ、0.01ppmであった。
【0465】
<保存安定性試験方法>
この有機電界発光素子用組成物3の保存安定性について、以下の方法で、Zn含有異物の生成の有無を確認した。
即ち、室温にて3週間保存した有機電界発光素子用組成物3を1ml採取し、直径1.3cmの0.1μmPTFEフィルターに通液させ、通液後のフィルターを室温で3時間乾燥させ、このフィルターを走査型電子顕微鏡(倍率:1000倍)で観察した。
即ち、有機電界発光素子用組成物の1mlを、孔径0.1μmのフィルターで濾過するため、この濾過により、フィルター上に異物が残留していれば、この異物が、有機電界発光素子用組成物の1ml中に含まれる長径0.1μm以上の異物であり、その数を数えることにより、組成物1ml中の長径0.1μm以上の異物の数を求めることができる。
【0466】
<保存安定性試験結果>
フィルターを観察して異物を探したが、異物は確認されなかった。
【0467】
[比較例2]
実施例3において、有機電界発光素子用組成物3の代わりに、比較例1で調製した有機電界発光素子用組成物xを用いて、同様に保存安定性を確認したところ、1視野あたり10〜20個の異物が確認されフィルターの全面で合計約56,000〜112,000個の異物があると推定された。
EDX分析の結果、その異物はZnを含有していることが判明した。即ち、有機電界発光素子用組成物x 1ml中の長径0.1μm以上のZn含有異物は約56,000〜112,000個である。
【0468】
[実施例4]
実施例3において、有機電界発光素子用組成物3の代わりに、実施例2で調製した有機電界発光素子用組成物2を用いて、同様に保存安定性を確認したところ、1視野あたり0〜1個の異物が確認され、フィルターの全面で合計約5,600個以下の異物があると推定された。
EDX分析の結果、その異物はZnを含有していることが判明した。この有機電界発光素子用組成物2では、組成物1ml中に長径0.1μm以上のZn含有異物が5,600個以下存在することになるが、Zn異物析出挙動は、比較例の有機電界発光素子用組成物xに比べて、大幅に改善されていた。
【0469】
〔芳香族アミン系ポリマーのZn除去操作〕
本発明で用いられる芳香族アミン系ポリマーのZn濃度を低減する方法としては、上記の実施例に例示した酸処理法、イオン交換法、その組み合わせ以外にも公知の方法が用いられる。
即ち、芳香族アミン系ポリマーの有機溶剤溶液に、例えば、イオン除去剤として活性炭や、シリカを接触させる方法などがある。以下に、活性炭とシリカを用いたZnの除去効果を示す。
【0470】
[参考例1]
合成例1で得られた芳香族アミン系ポリマー(P1−1)2重量部を、テトラヒドロフラン18重量部に溶解させた。この溶液のZn濃度は3ppmであった。
【0471】
[参考例2]
参考例1で得られた芳香族アミン系ポリマー溶液20重量部に、富士シリシア化学(株)製ジアミンシリカ2重量部を加え、3時間室温で攪拌した後にシリカを濾別し、液相部のZn濃度を定量したところ、Zn濃度は1ppmであり、Zn濃度が低減された。
【0472】
[参考例3]
参考例1で得られた芳香族アミン系ポリマー溶液20重量部に、関東化学(株)製活性炭(粉末)2重量部を加え、3時間室温で攪拌した後に活性炭を濾別し、液相部のZn濃度を定量したところ、Zn濃度は0.1ppmであり、Zn濃度が低減された。
【0473】
[合成例5:芳香族アミン系ポリマー(P1−5)の合成]
合成例1と同じ方法で芳香族アミン系ポリマー(P1−5)(重量平均分子量(Mw)=24,000)を再度合成した。
【0474】
[合成例6:芳香族アミン系ポリマー(P1−6)の合成]
合成例5で製造した芳香族アミン系ポリマー(P1−5)50重量部に、テトラヒドロフラン105重量部とトルエン345重量部を加え、均一な溶液を得た。この溶液に、更に1N塩酸500重量部を加え、攪拌の後、分液した。
得られた有機相を500重量部の水で3度洗浄した。分離した有機層にトルエン630重量部を加え、強酸性カチオン交換樹脂(三菱化学(株)製商品名「ダイヤイオン(登録商標)WK11」(商品名))167重量部と、強塩基性アニオン交換樹脂(三菱化学(株)製商品名「ダイヤイオン(登録商標)SAN1」(商品名))83重量部を混合して作製した混床イオン交換樹脂層に、上記の有機層のトルエン溶液を通液した。
【0475】
溶出液を孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレンフィルター(以下「0.1μmPTFEフィルター」という。)で濾過した後、3,500重量部のメタノールに放出してポリマーのスラリーを作製後、濾過し、固形分を350重量部のメタノールで洗浄し、60℃で8時間乾燥して精製芳香族アミン系ポリマー(P1−6)(重量平均分子量(Mw)=24,000)を得た。
【0476】
〔有機溶剤の精製〕
[精製例1:安息香酸エチルの精製]
三菱化学(株)製強塩基性アニオン交換樹脂(ダイヤイオン(登録商標)SAN1(商品名))30mLと三菱化学(株)製強酸性カチオン交換樹脂(ダイヤイオン(登録商標)SKN1(商品名))30mLを、それぞれメタノール500mLと混合攪拌し、濾過で固液分離した。得られた「SAN1」24mLと「SKN1」12mLを混合し、100mLの滴下ロートに充填して、混床イオン交換樹脂層を形成した。
【0477】
この混床イオン交換樹脂層に、400mLの安息香酸エチル(キシダ化学製、以下「EB−1」とする。)を通液して溶剤置換した後、EB−1をさらに通液した。混床イオン交換樹脂層を通過したEB−1を孔径0.2μmのPTFE製フィルターで濾過した。この精製安息香酸エチルを「EB−2」とした。
EB−1及びEB−2について、ICP法にてS濃度を分析したところ、EB−1のS濃度は33ppmであったのに対して、EB−2のS濃度は4ppmであった。
【0478】
〔有機電界発光素子用組成物の調製と評価〕
[実施例5]
<有機電界発光素子用組成物4の調製>
合成例5で得られた、芳香族アミン系ポリマー(P1−5)、電子受容性化合物(A1)、及び有機溶剤として精製例1で精製した安息香酸エチルEB−2を含有する有機電界発光素子用組成物4を下記の配合で調製した。
溶質成分 化合物(P1−5) 3.0重量部
化合物(A1) 0.3重量部
有機溶剤 安息香酸エチル(EB−2) 96.7重量部
【0479】
化合物(P1−5)と化合物(A1)と有機溶剤(EB−2)を混合して、140℃で3時間、加熱攪拌を行った。放冷後、溶解残渣が沈殿していないことを目視確認した後、孔径0.1μmのPTFE製フィルターにて濾過処理を行い、有機電界発光素子用組成物4を得た。
ICP法にて、この有機電界発光素子用組成物4のS濃度を定量したところ、2ppmであった。また、Zn濃度は0.2ppmであった。
【0480】
<保存安定性試験方法>
この有機電界発光素子用組成物4の保存安定性について、実施例3に記載の方法に従い、異物の生成の有無を確認して評価した。
【0481】
<保存安定性試験結果>
フィルターを観察して異物を探したが、長径0.5μm以上の異物は確認されなかった。このように冷却条件下での保管試験においても異物を形成することがないことから、実用上の問題も少なく、有機電界発光素子用組成物4を用いて品質の安定した素子を得ることができることが分かる。
【0482】
[実施例6]
<有機電界発光素子用組成物5の調製>
実施例5におけるポリマー(P1−5)の代わりに、合成例6で製造したポリマー(P1−6)を3重量部用いた以外は実施例5と同様に有機電界発光素子用組成物5を調製した。
ICP法にて分析したところ、有機電界発光素子用組成物5のZn濃度は0.1ppm未満で、S濃度は2ppmであった。
【0483】
<保存安定性試験結果>
有機電界発光素子用組成物5について、実施例3と同様に保存安定性試験を行い、フィルター上の異物を探したが、長径0.5μm以上の異物は確認されなかった。
このように冷却条件下での保管試験においても異物を形成することがないことから、実用上も問題も少なく、有機電界発光素子用組成物5を用いて品質の安定した素子を得ることができることが分かる。
【0484】
<有機電界発光素子の作製>
保管後の有機電界発光素子用組成物5を用いて、以下の方法で有機電界発光素子を作製した。
(正孔注入層の形成)
洗浄処理したITO基板上に、上記有機電界発光素子用組成物5を、スピンコート法にて塗布、乾燥、焼成して正孔注入層を形成した。スピンコートは気温23℃、相対湿度50%の大気中で行ない、スピナ回転数は2750rpm、スピナ時間は30秒とした。塗布後、ホットプレート上で80℃にて1分間加熱乾燥した後、オーブン大気中で230℃で15分間ベークし、膜厚35nmの正孔注入層を形成した。
【0485】
(正孔輸送層の形成)
この正孔注入層を形成したITO基板を真空蒸着装置のチャンバー内に設置した。チャンバーはロータリーポンプで粗引きした後、クライオポンプにて減圧した。真空度は0.8×10−6Torrであった。基板には、所定の領域に、蒸着用マスクを配置し、チャンバーには予め必要な蒸着材料をそれぞれ別の磁器製坩堝に入れて配置しておいた。
【0486】
4,4’−ビス[N−(9−フェナントリル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(PPD)を入れた磁器製坩堝を通電加熱し、正孔注入層上に蒸着した。蒸着時の真空度は0.8×10−6Torr、蒸着速度は0.9〜1.1Å/sとし、正孔輸送層を膜厚45nmで形成した。
【0487】
(発光・電子輸送層の形成)
次に、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体(Alq3)を入れた磁器製坩堝を通電加熱し、正孔輸送層の上に蒸着した。蒸着時の真空度は0.7×10−6〜0.8×10−6Torr、蒸着速度は1.1〜1.4Å/sとし、発光層を兼ねた電子輸送層を膜厚60nmで形成した。
【0488】
(陰極形成)
次に、基板を一旦大気中に取り出し、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極のITOストライプと直交するように配置し、速やかに蒸着装置に設置した。チャンバーはロータリーポンプで粗引きした後、クライオポンプにて減圧した。真空度は1.5×10−4Paであった。
【0489】
陰極として、先ず、フッ化リチウム(LiF)を入れたモリブデン製ボートを通電加熱し、電子輸送層の上に蒸着した。蒸着条件は、蒸着時の真空度は1.7×10−4〜1.9×10−4Pa、蒸着速度は0.12〜0.13Å/sとし、膜厚0.5nmで成膜した。
最後に、アルミニウムを入れたモリブデン製ボートを通電加熱して蒸着した。蒸着条件は、蒸着時の真空度は2.2×10−4〜2.5×10−4Pa、蒸着速度は1.2〜5.5Å/sとし、膜厚80nmで成膜した。
【0490】
(封止)
次に、基板を一旦大気中に取り出し、速やかに窒素置換されたグローブボックスに移した。窒素置換されたグローブボックス中では封止ガラス板の凹部に吸湿剤シートを貼り付け、封止ガラス板の凹部の周囲にUV硬化性樹脂をディスペンサーにて塗布し、蒸着を行なった基板の蒸着領域を封止ガラス板で密封するように密着させ、UVランプにてUV光を照射してUV硬化性樹脂を硬化させた。
以上の様にして、有機電界発光素子を得た。
【0491】
<発光性能確認>
この素子に通電したところ、発光欠陥の無い均一な発光面の緑色発光が得られた。
【0492】
[参考例4]
〔ガラス容器の接液面のAFM測定〕
ガラス容器として、以下の3種類のほう珪酸ガラス製容器を準備した。
ガラス容器1:スクリュー管瓶褐色(販売元;マルエム社)
ガラス容器2:スクリュー管瓶褐色100ml(販売元;株式会社アルファパーチェス)
ガラス容器3:ねじ口瓶丸型茶褐色(ShottDuran社製「デュラン(登録商標)」)
上記3種類のガラス容器について、容器の内側の接液する部分の表面の凹凸を以下の方法でAFM測定を行った。
【0493】
測定面は、ガラス容器の接液面のうち、底面の箇所を無作為に抽出した2箇所とした。なお、上記のガラス容器はいずれも接液面は均一面となっており、測定箇所による表面凹凸の差異は殆どないものである。
装置:Asylum Reserch社 MFP−3D
プローブ:Olympus社製AC240TS−C3 バネ定数 〜2N/m
測定環境:実験室雰囲気 室温
1サンプルの測定領域:10μm角(=10μm×10μm)
データサンプリング数:256×256
【0494】
(解析方法)
得られたAFM画像10μm角について、AFMで観察した高さ画像を画像処理プログラムで操作するため、−6.4nmから6.4nmを0〜255階調に変換し(0.05nm/濃度)、画像処理プログラム(Media Cybernetics社製ImageProPlus)を使用し、メディアンフィルタ(フィルタ領域5×5、回数1)を用い画像のノイズ処理を行なった。
画像処理プログラムを使用し、面積10画素以下をノイズとしてカットし、個数、面積の計測を行って、0.8nm以上の凸部の個数及び面積率と、0.8nm以上の凹部の個数と面積率を求めた。
なお、0.8nm以上の凸部、凹部の個数は、表面凹凸密度と同様に算出した、基準面に対して0.8nm以上高い凸部の1サンプル当りの数、基準面に対して0.8nm以上低い凹部の1サンプル当りの数である。
また、0.8nm以上の凹部の面積率は表面凹部分の面積率に該当し、0.8nm以上の凸部の面積率は表面凹部分の面積率と同様に求めた。
結果を下記表14に示す。
【0495】
【表14】
【0496】
表14より、ガラス容器3は接液面の表面凹凸が殆どないのに対して、ガラス容器1及び2は接液面に表面凹凸があることが分かる。
【0497】
〔芳香族アミン系ポリマーの合成及び精製〕
[合成例7:芳香族アミン系ポリマー(P1−7)の合成]
合成例1と同様に再度反応を行って、芳香族アミン系ポリマー(P1−7)を合成した。
【0498】
得られた芳香族アミン系ポリマー(P1−7)の重量平均分子量(Mw)は29,000であった。
芳香族アミン系ポリマー(P1−7)について、ICP法により無機分の測定を行ったところ、Zn含有量は6,600ppb、Cu含有量は1,000ppb未満であった。
【0499】
[合成例8:芳香族アミン系ポリマー(P1−8)の合成]
原料のN,N’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミンとして、異なる原料ロットのものを用いた以外は合成例7と同様にして芳香族アミン系ポリマー(P1−8)を合成し、同様に分析を行った。
得られた芳香族アミン系ポリマー(P1−8)の重量平均分子量(Mw)は24,000で、Zn含有量は270ppb、Cu含有量は2,000ppbであった。
【0500】
[合成例9:芳香族アミン系ポリマー(P1−9)の合成]
原料のN,N’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミンとして、異なる原料ロットのものを用いた以外は合成例7と同様にして芳香族アミン系ポリマー(P1−9)を合成し、同様に分析を行った。
得られた芳香族アミン系ポリマー(P1−9)の重量平均分子量(Mw)は29,000で、Zn含有量は220ppb、Cu含有量は1,400ppbであった。
【0501】
〔有機電界発光素子用組成物の調製と評価〕
[実施例7]
<有機電界発光素子用組成物6の調製>
合成例7で得られた、芳香族アミン系ポリマー(P1−7)、電子受容性化合物(A1)、及び有機溶剤として安息香酸エチルを含有する有機電界発光素子用組成物6を下記の配合で調製した。
溶質成分 化合物(P1−7) 3.0重量部
化合物(A1) 0.3重量部
有機溶剤 安息香酸エチル 96.7重量部
【0502】
化合物(P1−7)と化合物(A1)と有機溶剤を混合して、140℃で3時間、加熱攪拌を行った。放冷後、溶解残渣が沈殿していないことを目視確認した後、孔径0.1μmのPTFE製フィルターにて濾過処理を行い、有機電界発光素子用組成物6を得た。
得られた有機電界発光素子用組成物6をガラス容器1に封入して保管し、以下の評価を行った。
【0503】
<保存安定性試験−1>
ガラス容器1内に封入して5℃にて1週間保存した有機電界発光素子用組成物6を2ml採取し、直径1.3cm、孔径0.1μmのPTFE製フィルターに通液させ、通液後のフィルターを室温で3時間乾燥させ、このフィルターを走査型電子顕微鏡(倍率:1000倍)で観察した。
フィルターを9視野以上観察して異物を探したが、異物は確認されなかった。
【0504】
<Zn濃度の測定>
ガラス容器1内に封入して、室温で3日間保管した後の有機電界発光素子用組成物6について、ICP法により組成物中のZn濃度を測定した。結果を表15に示す。
【0505】
<ToF−SIMSの測定>
Zn濃度の測定において、ガラス容器1より組成物を除去した後、安息香酸エチルにて容器内壁を洗浄し、2日間風乾した後、接液面を以下の測定条件でToF−SIMSにてZnカウント数(質量63.93)を測定した。結果を表15に示す。
分析手法;飛行時間型二次イオン質量分析計(略称ToF−SIMS)
機種名:ION−TOF社製TOF−SIMS IV
一次イオン:Bi++、加速電圧25kV、照射電流0.1pA、200μm走査
二次イオン:正イオン収集、30scan積算
【0506】
[参考例5]
有機電界発光素子用組成物6をガラス容器3に封入して保管したこと以外は実施例7と同様にして保存安定性試験−1を行い、フィルターを観察して異物を探したところ、球状の異物が1視野あたり5個以上確認されフィルターの全面で合計28,000個以上の異物があると推定された。この異物は主成分がZnであることが、走査型電子顕微鏡(Kvex製S−4100)を用いた観察、および付属のX線解析装置、EDXによる解析により確認された。
また、実施例7と同様にZn濃度の測定とToF−SIMSの測定を行って、結果を表15に示した。
【0507】
[参考例6]
有機電界発光素子用組成物6を、テフロン(登録商標)容器(ビッグボーイSCC(テフロン(登録商標))PFA製、販売元;株式会社アルファパーチェス)に封入したこと以外は実施例7と同様にしてZn濃度の測定を行って、結果を表15に示した。尚、テフロン(登録商標)は非極性であり、容器接液面で異物や金属イオンを補足することができない。したがって、組成物中に多数の異物を生成しやすい。
【0508】
【表15】
【0509】
表15より次のことが分かる。
実施例7では、ガラス容器1により組成物中のZnが捕捉され、容器表面においてはZnのカウント数が増加している。
これに対して、ガラス容器3やテフロン(登録商標)容器で保管した場合、Znカウント数の増加も小さい。
このことより、本発明に係るガラス容器は、接液面に凹凸が多く存在することにより、その凹凸により表面積が大きくなり、機械的・化学的に金属イオンとの結合が形成されやすく、組成物中のこれらの金属イオンを表面で捕捉しやすくなっていることが分かる。
【0510】
[実施例8]
<有機電界発光素子用組成物7の調製>
芳香族アミン系ポリマー(P1−7)の代わりに芳香族アミン系ポリマー(P1−8)を用い、混合時の加熱温度を140℃から110℃に変更したこと以外は実施例7の有機電界発光素子用組成物6の調製と同様にして有機電界発光素子用組成物7を得た。
得られた有機電界発光素子用組成物7をガラス容器1に封入して保管し、以下の評価を行った。
【0511】
<保存安定性試験−2>
ガラス容器1内に封入して23℃にて1週間保存した有機電界発光素子用組成物7を2ml採取し、直径1.3cm、孔径0.1μmのPTFE製フィルターに通液させ、通液後のフィルターを室温で3時間乾燥させ、このフィルターを走査型電子顕微鏡(倍率:1000倍)で観察した。
フィルターを9視野以上観察して異物を探したが、異物は確認されなかった。
【0512】
[比較例3]
有機電界発光素子用組成物7をガラス容器3に封入して保管したこと以外は、実施例7と同様にして保管安定性試験−2を行い、フィルターを観察して異物を探したところ、球状の異物が1視野あたり5個以上確認されフィルターの全面で合計約28,000個以上の異物があると推定された。この異物は主成分がCuであることが走査型電子顕微鏡(Kvex製S−4100)を用いた観察、および付属のX線解析装置、EDXによる解析により確認された。
【0513】
[実施例9]
<有機電界発光素子用組成物8の調製>
芳香族アミン系ポリマー(P1−7)の代りに芳香族アミン系ポリマー(P1−9)を用いたこと以外は実施例7の有機電界発光素子用組成物6の調製と同様にして有機電界発光素子用組成物8を得た。
得られた有機電界発光素子用組成物8をガラス容器2に封入して保管し、以下の評価を行った。
【0514】
<保存安定性試験−3>
ガラス容器2内に封入して室温で3ヶ月保存した有機電界発光素子用組成物8を2ml採取し、直径1.3cm、孔径0.1μmのPTFE製フィルターに通液させ、通液後のフィルターを室温で3時間乾燥させ、このフィルターを走査型電子顕微鏡(倍率:1000倍)で観察した。
フィルターを9視野以上観察して異物を探したが、異物は確認されなかった。
【0515】
〔有機電界発光素子の作製〕
[実施例10]
実施例8において、ガラス容器1に封入して23℃で1週間保管した後の有機電界発光素子用組成物7を用いて、以下の方法で有機電界発光素子を作製した。
【0516】
(正孔注入層の形成)
洗浄処理したITO基板上に、上記保管後の有機電界発光素子用組成物2を、スピンコート法にて塗布、乾燥、焼成して正孔注入層を形成した。スピンコートは気温23℃、相対湿度50%の大気中で行ない、スピナ回転数は2750rpm、スピナ時間は30秒とした。
塗布後、ホットプレート上で80℃にて1分間加熱乾燥した後、オーブン大気中で230℃で15分間ベークし、膜厚35nmの正孔注入層を形成した。
【0517】
(正孔輸送層の形成)
この正孔注入層を形成したITO基板を真空蒸着装置のチャンバー内に設置した。チャンバーはロータリーポンプで粗引きした後、クライオポンプにて減圧した。真空度は2.0×10−4Paであった。基板には、所定の領域に、蒸着用マスクを配置し、チャンバーには予め必要な蒸着材料をそれぞれ別の磁器製坩堝に入れて配置しておいた。
【0518】
4,4’−ビス[N−(9−フェナントリル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(PPD)を入れた磁器製坩堝を通電加熱し、正孔注入層上に蒸着した。蒸着時の真空度は1.8×10−4Pa、蒸着速度は0.8〜1.3Å/sとし、正孔輸送層を膜厚45nmで形成した。
【0519】
(発光・電子輸送層の形成)
次に、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体(Alq3)を入れた磁器製坩堝を通電加熱し、正孔輸送層の上に蒸着した。蒸着時の真空度は1.8×10−4Pa、蒸着速度は1.0〜1.4Å/sとし、発光層を兼ねた電子輸送層を膜厚60nmで形成した。
【0520】
(陰極形成)
次に、基板を一旦大気中に取り出し、陰極蒸着用のマスクとして7mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極のITOストライプと直交するように配置し、速やかに蒸着装置に設置した。チャンバーはロータリーポンプで粗引きした後、クライオポンプにて減圧した。真空度は4.5×10−4Paであった。
【0521】
陰極として、先ず、フッ化リチウム(LiF)を入れたモリブデン製ボートを通電加熱し、電子輸送層の上に蒸着した。蒸着条件は、蒸着時の真空度は4.8×10−4Pa、蒸着速度は0.16〜0.20Å/sとし、膜厚0.5nmで成膜した。
最後に、アルミニウムを入れたモリブデン製ボートを通電加熱して蒸着した。蒸着条件は、蒸着時の真空度は8.0×10−4〜16.0×10−4Pa、蒸着速度は2.6〜5.6Å/sとし、膜厚80nmで成膜した。
【0522】
(封止)
次に、陰極を形成した基板を一旦大気中に取り出し、速やかに窒素置換されたグローブボックスに移した。窒素置換されたグローブボックス中では封止ガラス板の凹部に吸湿剤シートを貼り付け、封止ガラス板の凹部の周囲にUV硬化性樹脂をディスペンサーにて塗布し、蒸着を行なった基板の蒸着領域を封止ガラス板で密封するように密着させ、UVランプにてUV光を照射してUV硬化性樹脂を硬化させた。
以上の様にして、有機電界発光素子を得た。
【0523】
<発光性能確認>
この素子に通電したところ、発光欠陥の無い均一な発光面の緑色発光が得られた。
【0524】
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は2012年4月9日出願の日本特許出願(特願2012−088476)、2012年4月9日出願の日本特許出願(特願2012−088477)、および、2013年3月12日出願の日本特許出願(特願2013−049291)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0525】
本発明の有機電界発光素子用組成物は、異物生成の問題がなく、湿式成膜法で正孔注入層及び/又は正孔輸送層を形成する場合において、均一に成膜可能であり、また工業的観点から不利益を生じさせない。
また、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて、湿式成膜法により形成された正孔注入層及び/又は正孔輸送層を有する有機電界発光素子は、短絡やダークスポットを生じさせず、また駆動寿命が長い。
これより、本発明は、有機電界発光素子が使用される各種の分野、例えば、フラットパネル・ディスプレイ(例えばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)や面発光体としての特徴を生かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源、例えば、シーリングライトやスタンドライトなどの一般照明装置の照明光源、展示棚などの演出照明装置の照明光源)、表示板、標識灯等の分野において、好適に使用することが出来る。
【符号の説明】
【0526】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極
図1
【国際調査報告】