特表-13161296IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2013年10月31日
【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/22 20060101AFI20151201BHJP
   B60C 9/08 20060101ALI20151201BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
   B60C9/22 G
   B60C9/08 N
   B60C9/18 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
【出願番号】特願2014-512367(P2014-512367)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2013年4月24日
(31)【優先権主張番号】特願2012-98928(P2012-98928)
(32)【優先日】2012年4月24日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】上月 謙太郎
(57)【要約】
操縦安定性能および転がり抵抗性能を維持しながら騒音性能を向上させた空気入りタイヤを提供する。
カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に、タイヤ周方向に対して35°以上90°以下の角度で傾斜するコードを有する少なくとも1層の傾斜ベルト層からなる傾斜ベルトと、タイヤ周方向に沿って延びるコードを有する少なくとも1層の周方向ベルト層からなる周方向ベルトと、を具えた空気入りタイヤであって、周方向ベルトは、タイヤ赤道を含む領域である高剛性領域のいずれの部分の単位幅あたりのタイヤ周方向剛性が、他の領域のいずれの部分の単位幅あたりのタイヤ周方向剛性より高く、他の領域の単位幅あたりのタイヤ周方向剛性は、タイヤ幅方向にわたって一定、あるいは、高剛性領域に近いほど高い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対のビード部に設けられたビードコアと、前記1対のビード部間にトロイダル状に跨るカーカスと、前記カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に配置されるとともにタイヤ周方向に対して35°以上90°以下の角度で傾斜するコードを有する少なくとも1層の傾斜ベルト層からなる傾斜ベルトと、前記カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に配置されるとともにタイヤ周方向に沿って延びるコードを有する少なくとも1層の周方向ベルト層からなる周方向ベルトと、前記周方向ベルトのタイヤ径方向外側に配置されるトレッドと、を具えた空気入りタイヤであって、
前記周方向ベルトは、タイヤ赤道を含む領域である高剛性領域のいずれの部分の単位幅あたりのタイヤ周方向剛性が、他の領域のいずれの部分の単位幅あたりのタイヤ周方向剛性より高く、
前記他の領域の単位幅あたりのタイヤ周方向剛性は、タイヤ幅方向にわたって一定、あるいは、前記高剛性領域に近いほど高いことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記高剛性領域の幅は、タイヤ赤道を中心として、前記周方向ベルトの幅の0.2倍以上0.6倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記少なくとも1層の傾斜ベルト層のコードは、タイヤ周方向に対して50°以上90°以下の角度で傾斜することを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記高剛性領域は他の領域と比較して、前記周方向ベルトを構成する前記周方向ベルト層のタイヤ径方向の層数が多いことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記高剛性領域の前記周方向ベルトは、タイヤ幅方向に分割された前記周方向ベルト層がオーバーラップすることにより形成されていることを特徴とする請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記高剛性領域は他の領域と比較して、前記周方向ベルトのコードの剛性が高いことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記空気入りタイヤは、前記タイヤの断面幅SWおよび外形ODが、
OD≧−0.0187×SW+9.15×SW−380
を満たすことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操縦安定性能および転がり抵抗性能を維持しながら騒音性能を向上させた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、操縦安定性能および転がり抵抗性能を両立するために、傾斜ベルト層のコードをタイヤ周方向に対して大きく傾斜させ、この傾斜ベルト層のタイヤ半径方向外側に周方向ベルト層を設けた空気入りタイヤが提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、このような傾斜ベルト層を設けた空気入りタイヤでは、騒音性能が悪化することが知られている。
【0003】
騒音性能に関しては、周方向ベルト層の両端部領域に高弾性繊維コードを使用し、当該領域の周方向剛性を高めることにより、断面2次の固有振動数を上昇させ、ロードノイズを低減させた空気入りタイヤが提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−207516号公報
【特許文献2】特開2008−1248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者が、操縦安定性能および転がり抵抗性能を維持するために、タイヤ周方向に対して大きく傾斜させたコードを有する傾斜ベルト層と周方向ベルト層を設けた空気入りタイヤにおいて、周方向ベルト層の両端部領域の周方向剛性を高めたところ、ロードノイズをあまり低減できないことがわかった。
そこで、本発明では、操縦安定性能および転がり抵抗性能を維持しながら騒音性能を向上させた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の空気入りタイヤは、1対のビード部に設けられたビードコアと、1対のビード部間にトロイダル状に跨るカーカスと、カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に配置されるとともにタイヤ周方向に対して35°以上90°以下の角度で傾斜するコードを有する少なくとも1層の傾斜ベルト層からなる傾斜ベルトと、カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に配置されるとともにタイヤ周方向に沿って延びるコードを有する少なくとも1層の周方向ベルト層からなる周方向ベルトと、周方向ベルトのタイヤ径方向外側に配置されるトレッドと、を具えた空気入りタイヤであって、周方向ベルトは、タイヤ赤道を含む領域である高剛性領域のいずれの部分の単位幅あたりのタイヤ周方向剛性が、他の領域のいずれの部分の単位幅あたりのタイヤ周方向剛性より高く、他の領域の単位幅あたりのタイヤ周方向剛性は、タイヤ幅方向にわたって一定、あるいは、高剛性領域に近いほど高いことを特徴とするものである。
本発明により、操縦安定性能および転がり抵抗性能を維持しながら騒音性能を向上させた空気入りタイヤを提供することができる。
【0007】
本発明の空気入りタイヤでは、高剛性領域の幅は、タイヤ赤道を中心として、周方向ベルト層の幅の0.2倍以上0.6倍以下であることが好適である。
この構成により、騒音性能をより一層向上させることができる。
【0008】
本発明の空気入りタイヤでは、少なくとも1層の傾斜ベルト層のコードは、タイヤ周方向に対して50°以上90°以下の角度で傾斜することが好適である。
この構成により、操縦安定性能および転がり抵抗性能を高いレベルで維持することができる。
【0009】
高剛性領域のタイヤ周方向剛性を、他の領域のタイヤ周方向剛性より高く設定するために、本発明では以下の手法(1)〜(3)を好適に用いることができる。
(1)高剛性領域の周方向ベルトを構成する周方向ベルト層のタイヤ径方向の層数を、他の領域のそれと比較して多くする。
(2)高剛性領域の周方向ベルトを、タイヤ幅方向に分割された周方向ベルト層がオーバーラップすることにより形成する。
(3)高剛性領域の周方向ベルトのコードの剛性を、他の領域のそれと比較して高くする。
【0010】
本発明の空気入りタイヤは、タイヤの断面幅SWおよび外径ODが、
OD≧−0.0187×SW+9.15×SW−380・・・(i)
を満たすことが好適である。
この構成によれば、タイヤの転がり抵抗と空気抵抗の観点から、燃費性能を飛躍的に向上させることができる。
【0011】
なお、本発明でいう「タイヤの断面幅SW」とは、タイヤを適用リムに装着して、空気圧を充填し、無負荷とした状態のタイヤ側面の模様または文字などをすべて含むサイドウォール間の直線距離、つまり、総幅からタイヤの側面の模様、文字などを除いた幅をいうものとする。
また、本発明でいう「タイヤの外径OD」とは、タイヤを適用リムに装着し、空気圧を充填し、無負荷とした状態におけるタイヤ径方向の外径をいう。このときの空気圧は、後述する規格に記載されている適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力に対応する空気圧である。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、周方向ベルトの高剛性領域のタイヤ周方向剛性を、他の領域のタイヤ周方向剛性より高く設定することにより、操縦安定性能および転がり抵抗性能を維持しながら騒音性能を向上させた空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤの幅方向断面を示す。
図2】本発明の作用を説明するための図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る空気入りタイヤの幅方向断面を示す。
図4】本発明の第3実施形態に係る空気入りタイヤの幅方向断面を示す。
図5】本発明の第4実施形態に係る空気入りタイヤの幅方向断面を示す。
図6】本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの幅方向断面を示す。
図7】供試タイヤ、従来タイヤおよび基準タイヤにおけるSWとODとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の空気入りタイヤを、その実施形態を例示して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤの幅方向断面を示す。
第1実施形態に係る空気入りタイヤ10は、1対のビード部に設けられたビードコア1と、ビード部間にトロイダル状に跨るカーカス2と、カーカス2のクラウン部のタイヤ径方向外側に配置された2層の傾斜ベルト層3a、3bからなる傾斜ベルト3と、この傾斜ベルト3のタイヤ径方向外側に配置された2層の周方向ベルト層4a、4bからなる周方向ベルト4と、この周方向ベルト4のタイヤ径方向外側に配置されたトレッド6と、を具える。空気入りタイヤ10は、適用リム7に装着されて使用に供される。
適用リム7とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO STANDARD MANUAL、米国ではTRA YEAR BOOK等に記載されている、適用サイズにおける標準リムをいう。また、後述する周方向ベルト4の幅W4等は、空気入りタイヤ10を適用リム7に装着し、JATMA等に記載されている適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力に対応する空気圧が充填され、無負荷の状態で測定するものとする。
【0015】
傾斜ベルト層3a、3bは、タイヤ周方向に対して35°以上90°以下(好ましくは、50°以上90°以下)の角度で傾斜するコードを有し、傾斜ベルト層3aのコードと傾斜ベルト層3bのコードとはタイヤ赤道CLを挟んで交差している。
傾斜ベルト層3a、3bのコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度が35°未満の場合、タイヤ幅方向に対する剛性が低下するため、特にコーナリング時の操縦安定性能が十分に得られないとともに、層間ゴムのせん断変形が増大するため、転がり抵抗性能が悪化する。また、傾斜ベルト層3a、3bのコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度を50°以上とすることにより、操縦安定性能および転がり抵抗性能を高いレベルで維持することができる。
周方向ベルト層4a、4bは、タイヤ周方向に沿って延びるコードを有する。なお、「コードがタイヤ周方向に沿って延びる」とは、コードがタイヤ周方向に平行である場合およびコードをゴム被覆したストリップを螺旋巻回した際にタイヤ周方向に対してわずかに傾斜している場合(タイヤ周方向に対する傾斜角度5°程度)を含むものとする。
周方向ベルト4は、傾斜ベルト3を覆うように配置されている。すなわち、最幅広の周方向ベルト層4aの幅W4は、最幅広の傾斜ベルト層3aの幅より大きい。このように、最幅広の周方向ベルト層4aの幅W4が、最幅広の傾斜ベルト層3aの幅よりも大きく、周方向ベルト層4aの端部と傾斜ベルト層3aの端部とは5mm以上離れていることがベルト端セパレーションを抑制するために好ましい。ただし、周方向ベルト層4aの幅W4が、傾斜ベルト層3aの幅に比べて短い場合でも、操縦安定性能、転がり抵抗性能、及び騒音性能の効果を両立させることが可能である。
【0016】
カーカス2、傾斜ベルト3および周方向ベルト4のコードは、例えば、アラミド、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレート等の有機繊維コードや、スチールコードとすることができる。
【0017】
周方向ベルト層4a、4bは、タイヤ赤道CLを含む領域である高剛性領域Cのいずれの部分の単位幅あたりのタイヤ周方向剛性が、他の領域のいずれの部分の単位幅あたりのタイヤ周方向剛性より高い。第1実施形態では、高剛性領域Cには2層の周方向ベルト層4a、4bが配置され、他の領域には1層の周方向ベルト層4aが配置されているため、高剛性領域Cのタイヤ周方向剛性が高くなっている。また、他の領域の単位幅あたりのタイヤ周方向剛性は、タイヤ幅方向にわたって一定である。
なお、高剛性領域Cに配置されるベルト層の層数が該高剛性領域C以外に配置されるベルト層の層数と異なる場合は、トレッド6におけるタイヤ幅方向の剛性は、該高剛性領域Cから他の領域に向かって剛性が連続して変化するのではなく、両領域間の境界にて変化することになる。
【0018】
ここにおいて、該傾斜ベルト層のコードが、タイヤ周方向に対して本発明の範囲(35°以上90°以下)で傾斜するタイヤの多くは、400Hz〜2kHzの高周波域において、断面方向の1次、2次及び3次等の振動モードにて、トレッド面が一律に大きく振動する形状(図2に、2点鎖線で示した)となるため、大きな放射音が生じる。そこで、トレッドの幅方向中央部の周方向剛性を局所的に増加させると、トレッドの幅方向中央部が周方向に広がり難くなり、トレッド面の周方向への広がりが抑制される(図2に、破線で示した)結果、放射音を減少させることができる。しかし、トレッド幅方向中央部の、剛性が大きい領域の幅が大きくなり過ぎると、トレッドが一律に振動し易くなるため、放射音の低減効果が目減りする。
さらに、タイヤ赤道CLを含む領域の剛性を局所的に増加させると、トップゴム(トレッド表層を形成するゴム)の局所的なせん断ひずみが大きくなるために、振動モードの減衰性も大きくなる。本発明のように、タイヤ周方向の剛性が高くなる方向へ同剛性を変更する改良は、タイヤのリング剛性を上げてタイヤの偏心を抑制する方向の変更に当たるため、転がり抵抗性能を悪化させにくい。
【0019】
上述したように、本発明では、操縦安定性能および転がり抵抗性能を両立するために、傾斜ベルト層3a、3bのコードをタイヤ周方向に対して大きく傾斜させ、周方向ベルト4を設けた場合に問題となっていた騒音性能を向上させることができる。
【0020】
高剛性領域Cの幅Wcは、タイヤ赤道CLを中心として、周方向ベルト層4aの幅W4の0.2倍以上0.6倍以下である、すなわち、0.2×W4≦Wc≦0.6×W4を満足することが好ましい。第1実施形態では、高剛性領域Cの幅Wcは、周方向ベルト層4bの幅に等しい。
Wc<0.2×W4の場合、高剛性領域Cの幅Wcが狭すぎて、騒音性能向上の効果が十分に得られないおそれがある。一方、0.6×W4<Wcの場合、高剛性領域Cの幅Wcが広すぎて、トレッド全体が振動するモードを誘発しやすくなるため、放射音の低減効果が十分に得られないとともに、タイヤ重量が増したことによる転がり抵抗の悪化も懸念される。
なお、複数の周方向ベルト層が配置されている場合、最も幅の広い周方向ベルト層の幅をW4とし、これを基準とする。
【0021】
以下、本発明のその他の実施形態を説明する。
図3は、本発明の第2実施形態に係る空気入りタイヤの幅方向断面を示す。第2実施形態において、第1実施形態と同一の構成要素には同一の参照符号を付してその説明を省略する。
第2実施形態に係る空気入りタイヤ20では、周方向ベルト層4a、4bは、タイヤ幅方向に分割されている。高剛性領域Cにおいて、タイヤ径方向内側に周方向ベルト層4aが配置され、タイヤ径方向外側に周方向ベルト層4bが配置されることにより、周方向ベルト層4a、4bがオーバーラップしている。
【0022】
図4は、本発明の第3実施形態に係る空気入りタイヤの幅方向断面を示す。第3実施形態において、上述した実施形態と同一の構成要素には同一の参照符号を付してその説明を省略する。
第3実施形態に係る空気入りタイヤ30では、周方向ベルト4は、1層の周方向ベルト層4aからなる。高剛性領域Cの周方向ベルト層4aを構成するコードの剛性は、他の領域のコードの剛性より高い。
【0023】
ここで、高剛性領域Cの周方向ベルト層4aを構成するコードとは、例えば、アラミド、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレート等の有機繊維や、スチールコード等であり、これらの部材の打ち込み本数や撚り数を局所的に増加させることで、該高剛性領域Cにおける剛性を高めている。
また、該高剛性領域Cと他の領域との境界においては、例えば、コードとコードの5mm程度の重複や、コード間の5mm程の隙間等を許容することで、剛性の異なる両領域にわたって連続したベルト層を設けることができる。
【0024】
図5は、本発明の第4実施形態に係る空気入りタイヤの幅方向断面を示す。第4実施形態において、上述した実施形態と同一の構成要素には同一の参照符号を付してその説明を省略する。
第4実施形態に係る空気入りタイヤ40では、傾斜ベルト3は1層のみの傾斜ベルト層3aからなる。上述した実施形態と比較して、ベルト層数を減らすことにより、タイヤ重量を低下させるため、転がり抵抗性能の悪化を抑制することができる。
また、幅が狭い周方向ベルト層4aがタイヤ径方向内側に配置され、幅が広い周方向ベルト層4bがタイヤ径方向外側に配置されている。
【0025】
なお、図示を省略するが、その他の実施形態として、周方向ベルト4を、傾斜ベルト3のタイヤ径方向内側に配置することもできる。このように、傾斜ベルト層および周方向ベルト層の層数およびタイヤ径方向における配置位置は、図示例に限定されるものではない。
また、その他の実施形態として、他の領域の単位幅あたりのタイヤ周方向剛性が高剛性領域Cに近いほど高く、例えば、タイヤ幅方向内側から外側に向かって漸減する、あるいは、階段状に減少する構成とすることもできる。
【0026】
高剛性領域Cにおいて、傾斜ベルト層3a、3bのコードを、タイヤ周方向に対して10°以上30°以下の比較的低い角度で傾斜させ、その他の領域において、傾斜ベルト層3a、3bのコードを、タイヤ周方向に対して50°以上90°以下の比較的高い角度で傾斜させることもできる。
高剛性領域Cのゴム(傾斜ベルト層3a、3bや周方向ベルト層4a、4bのコーティングゴムおよび層間ゴム)の剛性を、他の領域のゴムの剛性より高くすることもできる。
このような構成にすることにより、高剛性領域Cの周方向剛性をさらに高めることができる。
【0027】
先に説明した傾斜ベルト3については、図6を参照して、傾斜ベルト3をなす傾斜ベルト層のうち、最幅広の傾斜ベルト層(図6では、傾斜ベルト層3a)が、カーカス2の最大幅W2の60%以上であることが、タイヤの耐久性を向上させる観点から好ましい。さらには、最幅広の傾斜ベルト層3aが、トレッドの接地幅TWよりも幅広であることが、タイヤの耐久性をより一層向上させる観点から好ましい。
【0028】
また、本発明のベルト構造は、タイヤの断面幅SWと外径ODとが、
OD≧−0.0187×SW+9.15×SW−380・・・(i)
を満たす空気入りタイヤに適用することが好ましい。
すなわち、上記の関係式(i)を満たすタイヤでは、タイヤ断面幅SWに対する外径ODを従前に比べて大きくする(大径化および狭幅化)ことによって、路面の粗さの影響を受けにくくなるので、同じ空気圧の場合に、車両の転がり抵抗値(RR値)の低減と、空気抵抗値(Cd値)の低減とを両立することができる。また、大径化することで、タイヤの負荷能力も向上する。
このように、上記の関係式(i)を満たすことにより、タイヤの転がり抵抗と空気抵抗の観点から、燃費性能を向上させることができる。
さらに、上記の関係式(i)を満たすタイヤでは、タイヤの大径化によって車輪軸が高くなり、床下のスペースが拡大されるため、車両のトランク等のスペースや、駆動部品の設置スペースを確保することができる。
【0029】
なお、上記の関係式(i)は、タイヤ断面幅SWとタイヤの外径ODとの関係に着目し、規格外のものを含む様々なタイヤサイズのタイヤを車両に装着させて、空気抵抗値(Cd値)、転がり抵抗値(RR値)、居住性、および実燃費性を計測する試験を行い、これらの特性が従来のタイヤより上回るタイヤのSWとODとが満たす条件を導出して求めたものである。
以下、SWとODとの最適な関係を導出するに至った試験結果について詳しく説明する。
【0030】
まず、評価基準となるタイヤとして、最も汎用的な車両で使用され、タイヤ性能の比較に適している、タイヤサイズ195/65R15のタイヤを基準タイヤ1として用意した。この基準タイヤ1のインチアップとなるタイヤサイズ225/45R17のタイヤを基準タイヤ2として用意した。また、様々なタイヤサイズのタイヤ(供試タイヤ1〜43)を用意した。そして、これらのタイヤをリムに組み込み、以下の試験を行った。
【0031】
表Aおよび図7に各タイヤの諸元を示す。タイヤの内部構造については、一般的なタイヤと同様であり、各タイヤは、一対のビード部間でトロイダル状に跨るラジアル配列コードのプライからなるカーカスと、トレッドとを備える。
なお、タイヤサイズに関しては、JATMA(日本のタイヤ規格)、TRA(アメリカのタイヤ規格)、ETRTO(欧州のタイヤ規格)等の従来の規格に捉われずに、これらの規格外のタイヤサイズも含めて、幅広く検討した。
【0032】
【表A-1】
【0033】
【表A-2】
【0034】
<空気抵抗値>
実験室にて、適用リムに組み付けた各供試タイヤを表Aに記載する内圧として、排気量1500ccの車両に装着し、100km/hに相当する速度で送風したときの空気力を車輪下にある床置き天秤を用いて測定した。
<転がり抵抗値>
適用リムに組み付けた各供試タイヤを表Aに記載する内圧として、タイヤを装着する車両毎に規定される最大荷重を負荷し、ドラム回転速度100km/hの条件にて転がり抵抗を測定した。
ここで、「タイヤを装着する車両毎に規定される最大負荷」とは、最大乗員数を想定した時に、4輪の中で最も荷重のかかるタイヤへの負荷荷重を意味する。
【0035】
次に、特に、供試タイヤ1〜14ついて、車両の実燃費性や居住性を評価するため、以下の試験を行った。
【0036】
<実燃費性>
JOC8モード走行による試験を行った。評価結果は、基準タイヤ1の評価結果を100とした指数で表し、指数が大きい方が、燃費が良いことを表している。
<居住性>
1.7m幅車両にタイヤを装着した際のリアトランク幅を計測した。評価結果は、基準タイヤの評価結果を100とした指数で表し、指数が大きい方が、居住性が良いことを表している。
【0037】
なお、図7では、ひし形の印が基準タイヤ1を、正方形の印が基準タイヤ2を示している。また、転がり抵抗値・空気抵抗値・居住性・実燃費性が基準タイヤよりも優れているタイヤを白色の印で、いずれかの性能が十分でないタイヤを黒色の印で示す。
また、詳細な試験結果を以下の表Bに示す。
【0038】
【表B-1】
【0039】
【表B-2】
【0040】
さらに、上記の関係式(i)を満たす空気入りタイヤでは、傾斜ベルト層のコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度を大きくする、例えば、傾斜角度を70°以上とすれば、コーナリングパワーを増大させて、旋回時の操縦安定性を向上させることができる。また、本発明のベルト構造を、かかる関係式(i)を満たす空気入りタイヤに適用することにより、かような幅狭および大径化したタイヤにおいても、タイヤのロードノイズを効果的に低減して騒音性能も併せて向上させることができる。
【実施例1】
【0041】
以下、本発明の実施例1について説明するが、本発明はこれだけに限定されるものではない。
発明例タイヤ1−1〜1−14および比較例タイヤ1−1〜1−4、従来例タイヤ1(ともに、タイヤサイズは225/45R17)を表1に示す仕様のもと試作し、操縦安定性能、転がり抵抗性能および騒音性能を評価した。
発明例タイヤ1は、図1に示すベルト構造を有し、周方向ベルト層4aの幅W4に対する高剛性領域Cの幅Wcの比Wc/W4は0.28であり、傾斜ベルト層3a、3bのコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は60°である。
従来例タイヤ1は、発明例タイヤ1−1から、周方向ベルト層4bを除き、傾斜ベルト層3a、3bのコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度を25°にした点以外は、発明例タイヤ1−1と同様である。
比較例タイヤ1−1は、発明例タイヤ1−1から、周方向ベルト層4bを除いた点以外、発明例タイヤ1−1と同様である。
比較例タイヤ1−2は、発明例タイヤ1−1から、周方向ベルト層4bの幅を周方向ベルト層4aの幅と同一にした点以外、発明例タイヤ1−1と同様である。
発明例タイヤ1−2〜1−7は、比Wc/W4を変更した点以外は、発明例タイヤ1−1と同様である。
発明例タイヤ1−8、1−9、1−13、1−14および比較例タイヤ1−3、1−4は、傾斜ベルト層3a、3bのコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度を変更した点以外は、発明例タイヤ1−1と同様である。
発明例タイヤ1−10は、図3に示すベルト構造を有する。
発明例タイヤ1−11は、図4に示すベルト構造を有する。
発明例タイヤ1−12は、図5に示すベルト構造を有する。
【0042】
(操縦安定性能の評価)
各供試タイヤを適用リム7に組み付け、最大負荷能力に対応する空気圧を充填した後、基礎性能試験である微小舵角コーナリングパワー試験を以下に示す手順で行い、コーナリングパワーを評価した。
まず、供試タイヤを、踏面が平坦になる回転ベルト(フラットベルト)に押し付けた状態で、速度30km/hにて30分間予備走行させた。その後、再度、上記の空気圧に調整した上で同一速度にて走行させ、タイヤの転動方向とドラムの円周方向との間に、正負最大1°の角度(スリップアングル)を連続してつけることにより、正負両角度に対応するコーナリングパワー(CP)の値を0.1°間隔で測定した。そのCPの値について、舵角に対する線形フィッティングを行い、その傾きをコーナリング剛性として操縦安定性を評価した。その結果を、従来例タイヤのコーナリング剛性を100として指数化した。該指数が大きくなるほど操縦安定性が良好であることを示す。
【0043】
(転がり抵抗性能の評価)
各供試タイヤを適用リム7に組み付け、内圧180kPaを付与した後、直径1.7mの鉄板表面を持つドラム試験機(速度:80km/h)を用いて、車軸の転がり抵抗力を求めた。この転がり抵抗の測定はISO18164に準拠し、スムースドラム、フォース式にて実施したものである。結果は、比較例タイヤ1からの転がり抵抗性能の悪化を%で表示している。6%以内の悪化は、有意差がないものとみなす。
【0044】
(騒音性能の評価)
各供試タイヤを適用リム7に組み付け、内圧180kPaを付与した後、走行試験用ドラム上で荷重4.52Nを与えて、時速40km、60km、80km、100kmで回転させてマイク移動式でノイズ(騒音)レベルを測定し、これら測定値の平均を算出した。結果は、指数が小さいほど、性能に優れていることを示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1より、発明例タイヤは、比較例タイヤ対比で、操縦安定性能および転がり抵抗性能を維持しながら騒音性能を向上させたことが分かる。
4段から成る表1のうち、1段目及び2段目は、高剛性領域Cの幅を増減させた場合の比較結果を示している。該高剛性領域C幅が、本発明に定める範囲(周方向ベルト幅の0.2倍以上0.6倍以下)の下限よりも小さい場合は、振動モード形状の変化を促すことが出来ず、騒音性能の効果が期待できない。また、高剛性領域C幅が本発明に定める範囲の上限を超える場合においては、高剛性のベルト層がショルダー部の振幅を拘束することになり、その結果、トレッド全体が振動するモード形状に変化するため、騒音性能の効果が目減りする。
また、表1の3段目及び4段目は、ベルト角度を変化させた場合の結果を示している。タイヤ周方向に対するベルト角が、本発明に定める範囲(35°以上90°以下)の下限よりも小さい場合は、操縦安定性能や転がり抵抗性能が一律に低下したことが確認できる。
【実施例2】
【0047】
以下、本発明の実施例2について説明するが、本発明はこれだけに限定されるものではない。
発明例タイヤ2、比較例タイヤ2−1、2−2、および従来例タイヤ2を、表2に示す仕様のもと試作し、操縦安定性能、転がり抵抗性能、耐偏摩耗性能および騒音性能を評価した。
発明例タイヤ2は、図1に示すベルト構造を有し、タイヤの断面幅SWが155mm、タイヤの外径ODが704.5mmであり、周方向ベルト層4aの幅W4に対する高剛性領域Cの幅Wcの比Wc/W4が0.28であり、傾斜ベルト層3aおよび3bのコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度が70°である。
比較例タイヤ2−2は、発明例タイヤから周方向ベルト層4bを除いた点以外、発明例タイヤ2と同様である。
比較例タイヤ2−1は、発明例タイヤから周方向ベルト層4bを除くとともに、傾斜ベルト層3aおよび3bのコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度を30°とした点以外、発明例タイヤ2と同様である。
従来例タイヤ2は、タイヤの断面幅SWが195mm、タイヤの外径ODが634.5mmであり、発明例タイヤから周方向ベルト層4bを除くとともに、傾斜ベルト層3aおよび3bのコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度を30°とした点以外、発明例タイヤ2と同様である。すなわち、従来例タイヤ2は、発明例タイヤ2および比較例タイヤ2−1、2−2に比べて、幅広かつ小径のタイヤである。
【0048】
(操縦安定性能の評価)
実施例1と同様の方法にて、各供試タイヤの操縦安定性能を評価した。表2に示す結果は、従来例タイヤ2の操縦安定性能を100として指数化した。該指数が大きいほど、性能に優れていることを意味する。
【0049】
(転がり抵抗性能の評価)
実施例1と同様の方法にて、各供試タイヤの転がり抵抗性能を評価した。表2に示す結果は、従来例タイヤ2の転がり抵抗値を100として指数化した。該指数が小さいほど、性能に優れていること意味する。
【0050】
(耐偏摩耗性能の評価)
各供試タイヤを、JIS D4230に規定のドラム試験機に装着し、荷重4kNの負荷の下、一定速度で1万km走行させ、走行後のタイヤのトレッド部ショルダー域における摩耗量を測定、比較することにより評価を行った。表2に示す結果は、従来例タイヤ2のトレッド部ショルダー域における摩耗量を100として指数化した。該指数が小さいほど、性能に優れていることを意味する。
【0051】
(騒音性能の評価)
実施例1と同様の方法にて、各供試タイヤの騒音性能を評価した。表2に示す結果は、従来例タイヤ2の音低減効果を100として指数化した。該指数が小さい方が騒音性能に優れていることを意味する。
【0052】
【表2】
【0053】
表2より、発明例タイヤは、比較例タイヤおよび従来例タイヤ対比で、耐摩耗性や音低減効果、操縦安定性能を良好に維持しながら、転がり抵抗性能をさらに低減させたことが分かる。
【符号の説明】
【0054】
1 ビードコア
2 カーカス
3a、3b 傾斜ベルト層
3 傾斜ベルト
4a、4b 周方向ベルト層
4 周方向ベルト
6 トレッド
7 適用リム
10、20、30、40 空気入りタイヤ
CL タイヤ赤道
C 高剛性領域
TW トレッドの接地幅
SW タイヤの断面幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】