特表-13161494IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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再表2013-161494磁性金属含有樹脂組成物、ならびにそれを用いたコイル部品および電子部品
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  • 再表WO2013161494-磁性金属含有樹脂組成物、ならびにそれを用いたコイル部品および電子部品 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2013年10月31日
【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】磁性金属含有樹脂組成物、ならびにそれを用いたコイル部品および電子部品
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20151201BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08K3/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
【出願番号】特願2013-530461(P2013-530461)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2013年3月27日
(11)【特許番号】特許第5804067号(P5804067)
(45)【特許公報発行日】2015年11月4日
(31)【優先権主張番号】特願2012-101708(P2012-101708)
(32)【優先日】2012年4月26日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079577
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 全啓
(72)【発明者】
【氏名】丸澤 博
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002BD121
4J002BQ001
4J002CD051
4J002CD061
4J002CD201
4J002CF001
4J002CF161
4J002CF181
4J002CK021
4J002CK051
4J002CM041
4J002CN011
4J002CP031
4J002DC006
4J002DJ017
4J002FD017
4J002FD206
4J002GQ00
(57)【要約】
磁気飽和を低減することができ、且つ、直流バイアスの印加による加熱や環境温度に耐え得る耐熱衝撃性を有する磁性金属含有樹脂、およびそれを用いたコイル部品および電子部品を提供する。
この発明にかかる磁性金属含有樹脂は、磁性金属粉を70〜88質量%、酸化物を5.0質量%以上含み、酸化物の平均粒径が2.8μm以上であることを特徴とする磁性金属含有樹脂である。磁性金属含有樹脂には、好ましくは、酸化物が10質量%以上含まれ、あるいは、酸化物の平均粒径は5.5μmが含まれる。また、本発明にかかる磁性金属含有樹脂を用いることにより、磁気飽和を低減することができ、且つ、耐熱衝撃性を有するコイル部品および電子部品を得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性金属粉を70〜88質量%、酸化物を5.0質量%以上含み、前記酸化物の平均粒径が2.8μm以上であること、を特徴とする磁性金属含有樹脂。
【請求項2】
前記酸化物を10質量%以上含むことを特徴とする請求項1に記載の磁性金属含有樹脂。
【請求項3】
前記酸化物の平均粒径が5.5μm以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁性金属含有樹脂。
【請求項4】
前記酸化物が球状シリカ粉末であることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の磁性金属含有樹脂。
【請求項5】
前記磁性金属粉と前記酸化物の含有量の合計が94.7質量%以上97.0質量%未満であることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の磁性金属含有樹脂。
【請求項6】
線膨張係数が20ppm/℃以下であることを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の磁性金属含有樹脂。
【請求項7】
上鍔と下鍔とを有するドラム型コアと、
前記ドラム型コアに巻回された巻線と、
前記上鍔と前記下鍔との間に形成される磁性金属含有樹脂層と、
を備えるコイル部品であって、
前記磁性金属含有樹脂層は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の磁性金属含有樹脂を塗布して形成される、コイル部品。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の磁性金属含有樹脂が含まれることを特徴とする、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁性金属粉末と樹脂との混合物からなる磁性金属含有樹脂、ならびにそれを用いたコイル部品および電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に使用されるコイル部品として、ドラム型コアと、ドラム型コアに巻回された巻線と、ドラム型コアの上鍔と下鍔との間に形成される外装樹脂層とを備えるコイル部品が知られている。たとえば、特許文献1に記載のコイル部品には、巻芯直径と上鍔外寸比を制限している巻線型インダクタが開示されている。このコイル部品は、外装樹脂層を形成する樹脂に対する無機フィラーの割合が70〜90質量%であることを特徴としている。また、このコイル部品は、無機フィラーが球状フィラーであり、外装樹脂層を形成する樹脂に対する球状フィラーの割合が20質量%以上であることを特徴とするコーティング材が開示されている。球状フィラーが上記割合で無機フィラーに含まれることにより、充填時における外装樹脂の流動性が保持されるため、コイル部品の生産性を良くしている。また、外装樹脂層を形成する樹脂が無機フィラーを上記割合で含むことにより、この樹脂の線膨張率をドラム型コアのそれに近づけることができ、その結果、コイル部品の耐ヒートサイクル性を高めている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の外装樹脂であるコーティング材は、NiZnフェライト粉の充填量が、真比重4.8g/cm3程度であり、球状フィラーの充填量が多いことから、このような樹脂では十分な透磁率を得る事ができないという問題があった。また、特許文献1の外装樹脂に対して、同一球状シリカ粉末(2.2g/cm3程度)を充填した場合、軟磁性金属粉に許容される充填体積が低下し、高透磁率を得る上で障害になるという問題があった。さらに、特許文献1に記載のフェライト(Fe系酸化物)では比較的飽和磁化が低く、インダクタ直流重畳特性により磁気飽和し易いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−16217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、磁気飽和を低減することができ、且つ、直流バイアスの印加による加熱や環境温度に耐え得る耐熱衝撃性を有する磁性金属含有樹脂、およびそれを用いたコイル部品および電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかる磁性金属含有樹脂は、磁性金属粉を70質量%〜88質量%、酸化物を5.0質量%以上含み、酸化物の平均粒径が2.8μm以上であること、を特徴とする磁性金属含有樹脂である。
また、この発明にかかる磁性金属含有樹脂では、酸化物を10質量%以上含むことが好ましい。
さらに、この発明にかかる磁性金属含有樹脂では、酸化物の平均粒径が5.5μm以上であることが好ましい。
さらにまた、この発明にかかる磁性金属含有樹脂では、酸化物が球状シリカ粉末であることが好ましい。
また、この発明かかる磁性金属含有樹脂では、磁性金属粉と酸化物の含有量の合計が94.7質量%以上97.0質量%未満であることが好ましい。
さらに、この発明にかかる磁性金属含有樹脂では、線膨張係数が20ppm/℃以下であることが好ましい。
この発明にかかるコイル部品は、上鍔と下鍔とを有するドラム型コアと、ドラム型コアに巻回された巻線と、上鍔と下鍔との間に形成される磁性金属含有樹脂層と、を備えるコイル部品であって、磁性金属含有樹脂層は、この発明にかかる磁性金属含有樹脂を塗布して形成される、コイル部品である。
また、この発明にかかる電子部品は、この発明にかかる磁性金属含有樹脂が含まれることを特徴とする、電子部品である。
【0007】
この発明にかかる磁性金属含有樹脂によれば、磁性金属粉を70〜88質量%、酸化物を5.0質量%以上含み、酸化物の平均粒径が2.8μm以上である磁性金属含有樹脂であるので、飽和磁化が高い樹脂であるとともに、酸化物による干渉沈降現象により磁性金属粉の金属粒子が選択的に沈降することを抑制するとともに、耐熱衝撃性が向上した磁性金属含有樹脂を得ることができる。
また、この発明にかかる磁性金属含有樹脂において、酸化物が10質量%以上含まれ、あるいは、酸化物の平均粒径が5.5μmであることから、酸化物による干渉沈降現象により磁性金属粉の金属粒子が選択的に沈降することを、より抑制した磁性金属含有樹脂を得ることができる。
また、この発明にかかる磁性金属含有樹脂において、酸化物がシリカ粉末であるので、線膨張係数を小さくした磁性金属含有樹脂を得ることができ、加えて、酸化物が球状であることから、磁性金属含有樹脂に対して、形状制御されたフィラーとして用いるのに適している。
また、この発明にかかる磁性金属含有樹脂において、磁性金属粉と酸化物の含有量の合計が94.7質量%以上97.0質量%未満であると、磁性金属粉の金属粒子が選択的に沈降することを抑えることができ、加えて、線膨張係数を低下させることができる。さらに、線膨張係数を20ppm/℃以下に抑制させると、磁性金属含有樹脂の熱応力をより低減することができる。
さらに、この発明にかかるコイル部品および電子部品では、この発明にかかる磁性金属含有樹脂を用いているので、磁性金属含有樹脂における磁性金属粉の含有量を巻線チップコイルの直流重畳特性を劣化させない範囲で最適化し、且つ、球状シリカ粉末を所望の含有量とすることで、磁性金属の沈降を抑制するとともに、耐熱衝撃性が向上したコイル部品および電子部品を得ることができる。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、磁気飽和を低減することができ、且つ、直流バイアスの印加による加熱や環境温度に耐え得る耐熱衝撃性を有する磁性金属含有樹脂、およびそれを用いたコイル部品および電子部品を提供することができる。
【0009】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明にかかるコイル部品の一実施の形態の断面模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明にかかる電子部品としてのコイル部品の一実施の形態について説明する。図1は、本発明にかかるコイル部品の一実施の形態の断面模式図である。本発明にかかるコイル部品は、磁性金属含有粉末における磁性金属粉の含有量を巻線チップコイルの直流重畳特性を劣化させない範囲で最適化し、且つ、球状シリカ粉末を所望の含有量とすることで、磁性金属の沈降を抑制するとともに、耐熱衝撃性を高めたものである。
【0012】
図1に示すコイル部品100は、上鍔1aと下鍔1bとを有するドラム型コア1と、コア1に巻回された巻線2と、上鍔1aと下鍔1bとの間に形成され、巻線2を封止する磁性金属含有樹脂層5とを備えている。
【0013】
ドラム型コア1は、たとえば、NiZnCuフェライトを主成分とする磁性体で形成されている。そして、ドラム型コア1は、たとえば、1辺の大きさが3mmの平面視角型に形成される。また、ドラム型コア1の上鍔1aおよび下鍔1bの厚みは、たとえば、それぞれ0.2mmに形成される。ドラム型コア1の材料は、透磁率の高い磁性材料が好ましい。
【0014】
巻線2には、たとえば、線径が0.2mmの絶縁被膜付きの銅線が用いられる。そして、巻線2は、上鍔1aと下鍔1bとの間において、所望の回数に巻回されている。
【0015】
ドラム型コア1の下鍔1bの面上には、外部電極3,4が形成されている。外部電極3,4の材料は、電極として用いられる金属であれば、特に制限されないが、たとえば、銀、ニッケル、銅および錫の合金を用いることができる。この外部電極3,4は、巻線2とはんだ付けあるいは熱圧着等で電気的に接続されている。そして、外部電極3,4を介して、コイル部品100は、実装基板等と電気的に接続される。
【0016】
磁性金属含有樹脂層5は、上述したように、上鍔1aと下鍔1bとの間に形成され、巻線2を封止している。磁性金属含有樹脂層5は、後述する磁性金属含有樹脂により形成される。
【0017】
続いて、本発明にかかる磁性金属含有樹脂について説明する。磁性金属含有樹脂は、樹脂、磁性金属粉および酸化物を含む。
【0018】
まず、樹脂としては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が準備される。樹脂の材料は、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂以外に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、エポキシアクリレート樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、液晶ポリマー樹脂、ポリフェニルサルファイド樹脂等の熱硬化樹脂、熱可塑性樹脂が使用される。ここで、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂は、下記構造式(1)で示される。
【化1】
【0019】
磁性金属粉としては、パーマロイ粉末(鉄−ニッケル系合金)が準備される。準備されるパーマロイ粉末の平均粒径D50値は、たとえば、5.2μmであり、D90値は14.9μmの磁性金属粉である。なお、磁性金属粉は、パーマロイ粉末に限定されず、結晶性Fe−Si−Cr系金属粉末、Fe−Si−Cr系アモルファス粉末、センダスト磁性粉末等のFe基磁性金属粉末であっても良い。
【0020】
酸化物としては、たとえば、球状シリカ粉末(SiO2)が準備される。準備される酸化物の平均粒径D50は、2.8μm以上が好ましく、より好ましくは、平均粒径が5.5μm以上の酸化物である。また、酸化物としては、球状シリカ粉末を用いることが好ましい。シリカ粉末を用いることで、磁性金属含有樹脂の線膨張係数を小さくすることができることから、ドラム型コアの線膨張係数に近づけることができる。加えて、球状の粉末を用いると、磁性金属含有樹脂に対して、形状制御されたフィラーとして用いるのに適している。なお、酸化物としては、球状シリカ粉末に限定されず、球状アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機粉体を用いてもよく、また、これらを併用してもよい。酸化物は、磁性金属含有樹脂における磁性金属の沈降を防止するとともに、耐熱衝撃性を向上させるために添加される。
【0021】
続いて、準備された樹脂、磁性金属粉および酸化物と、硬化剤、有機溶剤、分散剤およびシランカップリングとが添加され、たとえば、プラネタリー型ミキサで撹拌することにより、磁性金属含有樹脂が作製される。ここで、磁性金属粉は、70質量%以上88質量%以下の範囲から選択されて、充填されることが好ましい。70質量%未満では透磁率が低下し、磁性体としての機能(たとえば、インダクタンス値を向上させる機能)を発揮することが困難となるからである。また、88質量%を超えると、酸化物を5.0質量%以上添加する事で樹脂成分が少なくなり、脆い樹脂硬化物になるからである。また、酸化物は、5.0質量%以上含まれることが好ましく、より好ましくは、10質量%以上含まれることが好ましい。
【0022】
磁性金属含有樹脂に対する磁性金属粉および酸化物の添加量の合計は、94.7質量%以上97.0質量%以未満であることが好ましい。磁性金属粉および酸化物の添加量の合計をこの範囲内とすると、磁性金属粉の金属粒子が選択的に沈降することを抑えることで、コイル部品に対するL値の上昇率を安定化することができ、また、線膨張係数を低下させることで熱応力抑制を達成することができる。そうすると、得られるコイル部品の高信頼性を確保することができる。なお、磁性金属含有樹脂の線膨張係数は、20ppm/℃以下であることが好ましい。
【0023】
磁性金属含有樹脂に添加される硬化剤としては、変性アミン、多官能フェノール、イミダゾール、メルカプタン、酸無水物等が使用される。また、有機溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン等が使用される。さらに、分散剤としてはグリセリン脂肪酸系、高級アルコール系、脂肪酸エステル系化合物が使用される。
【0024】
ここで、平均粒径は、レーザー式回折散乱法(堀場製作所製マイクロトラック)により測定した値である。測定方法としては、上述した磁性金属粉あるいは酸化物の粉末をヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液中で超音波分散した後にレーザー式回折散乱法によりそれぞれ測定される。
【0025】
この実施の形態にかかるコイル部品100によれば、磁性金属含有樹脂に平均粒径D50値が2.8μm以上、より好ましくは、5.5μm以上の球状シリカ粉末を併混合することにより、球状シリカ粉末による干渉沈降現象から磁性金属粉の金属粒子が選択的に沈降することを抑制することができるので、高いインダクタンス値を確保することができる。
【0026】
また、この実施の形態にかかるコイル部品100によれば、飽和磁化が高い磁性金属粉を混練した磁性金属含有樹脂が、コイル部品100の上鍔1aと下鍔1bとの間に巻回さされた巻線2に塗布され、硬化されることで、インダクタンス値及び直流重畳特性を満足する構成において、この磁性金属含有樹脂に球状シリカ粉末を5.0質量%以上、好ましくは、10質量%以上の含有量で併混合することで、線膨張係数をフェライトコアの線膨張率(10ppm/℃程度)に近づけることができることから、熱衝撃性のためのヒートサイクル試験(−40℃〜125℃、2000サイクル)によっても維持することができる。すなわち、酸化物の充填率を高くすることにより、ドラム型コア1と磁性金属含有樹脂層5との線膨張率の差に起因したヒートサイクル時のクラック発生を抑制することができる。
【0027】
以上より、磁気飽和を低減することができ、且つ、直流バイアスの印加による加熱や環境温度に耐え得る耐熱衝撃性を有するインダクタ部品である電子部品を提供することができる。
【0028】
次に、本発明にかかる電子部品としてのコイル部品の製造方法の一実施の形態について説明する。
【0029】
まず、ドラム型コア1を準備する。具体的には、まず、NiZnCuフェライトなどのフェライト仮焼粉に、バインダなどを混合し、フェライトスラリーを作製する。次に、このフェライトスラリーを、スプレードライヤーなどを用いて造粒し、フェライト造粒粉を作製する。次に、この造粒粉をプレス成形し、成形体を作製する。最後に、この成形体を、脱バインダ後、所定のプロファイルで焼成して、ドラム型コア1が得られる。
【0030】
次に、得られたドラム型コア1の下鍔1bの下面に、2ヵ所の外部電極3,4を形成する。これらの外部電極3,4は、Agペーストを所定のパターンに塗布し、所定の温度で焼付けることで形成する。次に、ドラム型コア1の上鍔1aと下鍔1bとの間に、巻線2を施す。そして、巻線2の両端を、外部電極3,4に、それぞれはんだ付けする。次に、巻線2上に、上述した本発明にかかる磁性金属含有樹脂をドラム型コア1に塗布する。具体的には、これら磁性金属含有樹脂を塗布するドラム型コア1の形状に合わせて、有機溶剤を追添加して適切な粘度範囲に設定し、巻線2を覆うように塗布する。そして最後に、磁性金属含有樹脂を所定の温度まで加熱し、硬化させて、磁性金属含有樹脂層5を形成することにより、所望のコイル部品100を作製することができる。
【0031】
(実験例)
次に、この発明にかかる磁性金属含有樹脂が充填されたコイル部品におけるインダクタンス値を測定した実験例1、実験例2および実験例3について説明する。それぞれの実験例において使用される磁性金属含有樹脂の試料を作製し、その試料を充填したコイル部品を作製した。
【0032】
(実験例1)
実験例1では、コイル部品に使用される磁性金属含有樹脂として、試料1ないし試料6を次のようにして作製した。実験例1では、球状シリカ粉末の平均粒径の大きさを変化させた試料を準備した。
【0033】
まず、試料1ないし試料6に共通に使用される樹脂として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を準備した。磁性金属粉として、パーマロイ粉末(Fe−45Ni)を準備して、酸化物として、球状シリカ粉末(SiO2)を準備した。表1は、実験例1において準備された各試料に含まれる球状シリカ粉末とパーマロイ粉末の各含有量およびコイル部品のインダクタンス値等を示す。
【0034】
【表1】
【0035】
表1に示すように、準備されたパーマロイ粉末において、試料1ないし試料6のパーマロイ粉末は、平均粒径D50値が5.2μmであり、D90値は14.9μmであった。また、試料1ないし試料6において、パーマロイ粉末の含有量は、85質量%とした。なお、このパーマロイ粉末の飽和磁化は、160Am2/kgであった。
【0036】
また、準備した試料1の球状シリカ粉末は、平均粒径D50値が測定不能であったが、D90値は1.1μmであった。したがって、試料1の球状シリカ粉末とパーマロイ粉末との各平均粒径D50値における粒径比は算出していない。試料2の球状シリカ粉末の平均粒径D50値は2.8μmであり、D90値は4.4μmであった。したがって、試料2の球状シリカ粉末とパーマロイ粉末との各平均粒径D50値における粒径比は0.5であった。試料3の平均粒径D50値は5.5μmであり、D90値は15.2μmであった。したがって、試料3の球状シリカ粉末とパーマロイ粉末との各平均粒径D50値における粒径比は1.1であった。試料4の球状シリカ粉末の平均粒径D50値は8.0μmであり、D90値は26.1μmであった。したがって、試料4の球状シリカ粉末とパーマロイ粉末との各平均粒径D50値における粒径比は1.5であった。試料5の球状シリカ粉末の平均粒径D50値は15.0μmであり、D90値は40.3μmであった。したがって、試料5の球状シリカ粉末とパーマロイ粉末との各平均粒径D50値における粒径比は2.9であった。試料6の球状シリカ粉末の平均粒径D50値は20.0μmであり、D90値は48.2μmであった。したがって、試料6の球状シリカ粉末とパーマロイ粉末との各平均粒径D50値における粒径比は3.8であった。また、試料1ないし試料6において、球状シリカ粉末の含有量は、いずれも10質量%とした。
【0037】
なお、実験例1において、パーマロイ粉末および球状シリカ粉末のそれぞれの平均粒径は、レーザー式回折散乱法(堀場製作所製マイクロトラック)により測定した値である。それぞれの平均粒径は、パーマロイ粉末あるいは球状シリカ粉末をヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液中で超音波分散した後にレーザー式回折散乱法により測定した。
【0038】
そして、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂は10質量%、パーマロイ粉末は85質量%および球状シリカ粉末は10質量%に対して、硬化剤は4質量%、有機溶剤は10質量%、分散剤は0.2質量%およびシランカップリング剤は0.5質量%を添加し、プラネタリー型ミキサで5〜8時間で撹拌し、各試料における磁性金属含有樹脂を作製した。
【0039】
続いて、本実験例1において用いられるコイル部品は、たとえば、次の方法で製造した。
【0040】
まず、1辺の大きさが3mmとし、上鍔および下鍔の厚みが0.2mmの平面視角型に形成されたドラム型コアを準備した。具体的には、まず、NiZnCuフェライトなどのフェライト仮焼粉に、バインダなどを混合し、フェライトスラリーを作製した。次に、このフェライトスラリーを、スプレードライヤーなどを用いて造粒し、フェライト造粒粉を作製した。次に、この造粒粉をプレス成形し、成形体を作製した。最後に、この成形体を、脱バインダ後、所定のプロファイルで焼成して、ドラム型コアを得た。
【0041】
次に、得られたドラム型コアの底面に、2ヵ所の外部電極を形成した。これらの外部電極は、Agペーストを所定のパターンに塗布し、所定の温度で焼付けることで形成した。次に、ドラム型コアに、線径が0.2mmの銅線を13ターン巻回により巻線を施した。そして、巻線の両端を、外部電極に、それぞれはんだ付けした。次に、巻線上に、上述の方法により作製した試料1ないし試料6の各試料に対する磁性金属含有樹脂をドラム型コアに塗布した。具体的には、これら磁性金属含有樹脂を塗布するドラム型コアの形状に合わせて、有機溶剤を追添加して適切な粘度範囲に設定し、巻線上に塗布した。そして最後に、磁性金属含有樹脂を所定の温度まで加熱し、硬化させて、磁性金属含有樹脂層を形成して、コイル部品を作製した。なお、試料6は、磁性金属含有樹脂に含まれる球状シリカ粉末の平均粒径D90値が48.2μmであったため、45μm以上であることから、磁性金属含有樹脂を充填するためのノズルが詰まった。したがって、ドラム型コアに磁性金属含有樹脂を塗布することができなかった。
【0042】
なお、試料1ないし試料6との比較のために、基準試料となるコイル部品を作製した。この基準試料となるコイル部品は、巻線上に磁性金属含有樹脂が塗布されていないコイル部品である。
【0043】
続いて、基準試料とともに、実験例1における試料1ないし試料6の各コイル部品のインダクタンス値を測定した。表1に、各コイル部品に対して測定したインダクタンス値(L値)の測定結果、および各試料のインダクタンス値の基準試料のインダクタンス値に対する上昇率を示す。また、判定基準として、上昇率が50%未満を「×」とし、50%以上を「○」とした。なお、各試料であるコイル部品のインダクタンス値は、ヒューレット・パッカード製HP4291Aで計測した。
【0044】
実験例1において、基準試料となるコイル部品のインダクタンス値を測定した結果、1.2μHであった。また、各試料の測定結果は以下のとおりであった。すなわち、試料1のコイル部品のインダクタンス値は1.7μHであり、基準試料となるコイル部品のインダクタンス値に対する上昇率は41.7%であった。試料2のコイル部品のインダクタンス値は2.0μHであり、基準試料となるコイル部品のインダクタンス値に対する上昇率は66.7%であった。試料3ないし試料5のコイル部品のインダクタンス値はいずれも2.2μHであり、したがって、基準試料となるコイル部品のインダクタンス値に対する上昇率はいずれも83.3%であった。なお、試料6のコイル部品については、上述した理由により磁性金属含有樹脂が塗布できなかったため、インダクタンス値は測定していない。
【0045】
試料1のコイル部品では、基準試料のコイル部品と比較したとき、磁性金属粉であるパーマロイ粉末が含まれているためインダクタンス値は向上したものの、磁性金属が選択的に沈降し、開磁路が大きくなったため、インダクタンス値の上昇率が50%未満であった。また、試料6は、上述したように、磁性金属含有樹脂に含まれる球状シリカ粉末の平均粒径D90値が48.2μmであったことから充填するためのノズルが詰まったため、良好な結果は得られなかった。
【0046】
一方、試料2のコイル部品では、磁性金属含有樹脂に添加された球状シリカ粉末における平均粒径D50値が2.8μmであり、球状シリカ粉末の添加による干渉沈降現象により磁性金属粉であるパーマロイ粉末の高い分散性が確保されていることから、インダクタンス値の上昇率が50%以上の高い値が得られた。また、試料3ないし試料5のコイル部品では、球状シリカ粉末における平均粒径D50値が5.5μm以上であり、磁性金属含有樹脂に含まれるパーマロイ粉末における平均粒径D50値との粒径比が1.1以上であることから、球状シリカ粉末による干渉沈降現象により磁性金属粉であるパーマロイ粉末のより高い分散性が確保されているものと考えられ、磁性金属の選択的な沈降が防止される。加えて、実験例1においては、磁性金属粉であるパーマロイ粉末が85質量%含まれているので、透磁率の向上したコイル部品が得られた。
【0047】
(実験例2)
実験例2について、コイル部品に使用される磁性金属含有樹脂として、以下に示す試料が準備された。実験例2では、磁性金属含有樹脂は、パーマロイ粉末の含有量を変化させた試料が準備された。
【0048】
まず、試料7ないし試料12に共通に使用される樹脂として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を準備した。磁性金属粉として、パーマロイ粉末(Fe−45Ni)を準備した。表2は、実験例2において準備された各試料に含まれる球状シリカ粉末とパーマロイ粉末の各含有量およびコイル部品のインダクタンス値等を示す。
【0049】
【表2】
【0050】
表2に示すように、準備されたパーマロイ粉末において、試料7ないし試料12のいずれのパーマロイ粉末は、平均粒径D50値が5.2μmであり、D90値は14.9μmであった。試料7、試料8、試料9、試料10、試料11および試料12におけるパーマロイ粉末の含有量は、それぞれ65質量%、70質量%、80質量%、85質量%、88質量%および92質量%であった。なお、このパーマロイ粉末の飽和磁化は、160Am2/kgであった。
【0051】
また、準備された球状シリカ粉末において、試料7ないし試料12のいずれの球状シリカ粉末も、平均粒径D50値が5.5μmであり、D90値は15.2μmであった。また、球状シリカ粉末の含有量は、5.0質量%とした。したがって、試料7ないし試料12の球状シリカ粉末とパーマロイ粉末との各平均粒径D50値における粒径比は1.1であった。
【0052】
なお、実験例2において、パーマロイ粉末および球状シリカ粉末の平均粒径についても、各粉末をヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液中で超音波分散した後にレーザー式回折散乱法によりそれぞれ測定された。
【0053】
そして、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂は10質量%、パーマロイ粉末は試料7ないし試料12の上述した各含有量、および球状シリカ粉末は10質量%に対して、硬化剤は4質量%、有機溶剤は10質量%、分散剤は0.2質量%、シランカップリング剤は0.5質量%を添加し、プラネタリー型ミキサで5〜8時間で撹拌し、各試料における磁性金属含有樹脂を作製した。
【0054】
続いて、実験例1と同様の方法でコイル部品を作製した。なお、実験例2において作製したコイル部品の磁性金属含有樹脂は、試料7、試料8、試料9、試料10、試料11および試料12の樹脂を用い、巻線上に塗布し、磁性金属含有樹脂層を形成した。
【0055】
続いて、基準試料とともに、実験例2における試料7ないし試料12の各コイル部品のインダクタンス値を測定した。表2に、各試料であるコイル部品に対して測定したインダクタンス値(L値)の測定結果、および各試料のインダクタンス値の基準試料のインダクタンス値に対する上昇率を示す。また、判定基準として、上昇率が50%未満を「×」とし、50%以上を「○」とした。なお、各試料であるコイル部品のインダクタンス値は、ヒューレット・パッカード製HP4291Aで計測した。
【0056】
実験例2においても、実験例1と同一のインダクタンス値が1.2μHの基準試料であるコイル部品を基準試料とした。また、各試料の測定結果は以下のとおりであった。すなわち、試料7のコイル部品のインダクタンス値は1.6μHであり、基準試料となるコイル部品のインダクタンス値に対する上昇率は33.3%であった。試料8のコイル部品のインダクタンス値は1.9μHであり、基準試料となるコイル部品のインダクタンス値に対する上昇率は58.3%であった。試料9のコイル部品のインダクタンス値は2.0μHであり、基準試料となるコイル部品のインダクタンス値に対する上昇率は66.7%であった。試料10のコイル部品のインダクタンス値は2.1μHであり、基準試料となるコイル部品のインダクタンス値に対する上昇率は75.0%であった。試料11のコイル部品のインダクタンス値は2.4μHであり、基準試料となるコイル部品のインダクタンス値に対する上昇率は100%であった。試料12のコイル部品のインダクタンス値は1.3μHであり、基準試料となるコイル部品のインダクタンス値に対する上昇率は8.3%であった。
【0057】
試料7のコイル部品では、基準試料のコイル部品と比較したとき、磁性金属粉であるパーマロイ粉末が含まれているためインダクタンス値は向上したものの、磁性金属粉であるパーマロイ粉末の含有量が少ないうえに、開磁路が大きくなったため、インダクタンス値の上昇率が50%未満であった。また、試料12のコイル部品では、磁性金属含有樹脂に含まれる磁性金属粉であるパーマロイ粉末の含有量が比較的多いうえに、磁性金属含有樹脂には球状シリカ粉末が含まれているため、内部に気泡が発生したことから、インダクタンス値は、基準試料であるコイル部品のインダクタンス値と大きな差は見られなかった。
【0058】
一方、試料8、試料9、試料10および試料11のコイル部品では、各試料の磁性金属含有樹脂に含まれる磁性金属粉であるパーマロイ粉末の含有量を70質量%から88質量%まで増加させていることから、パーマロイ粉末の増加に伴って、いずれの試料についてもインダクタンス値の上昇率が50%以上のインダクタンス値の向上したコイル部品が得られた。
【0059】
(実験例3)
実験例3について、コイル部品に使用される磁性金属含有樹脂として、以下に示す試料が準備された。実験例3では、パーマロイ粉末および球状シリカ粉末の含有量をそれぞれ変化させた試料が準備された。
【0060】
まず、試料13ないし試料18に共通に使用される樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を準備した。磁性金属粉として、パーマロイ粉末(Fe−45Ni)を準備した。表3は、実験例3において準備された各試料に含まれる球状シリカ粉末とパーマロイ粉末の各含有量、磁性金属含有樹脂の特性およびコイル部品のインダクタンス値等を示す。
【0061】
【表3】
【0062】
表3に示すように、準備されたパーマロイ粉末において、試料13ないし試料18のいずれのパーマロイ粉末は、平均粒径D50値が5.2μmであり、D90値は14.9μmであった。試料13、試料14、試料15、試料16、試料17および試料18におけるパーマロイ粉末の含有量は、それぞれ82.0質量%、79.8質量%、78.7質量%、78.2質量%、77.7質量%および76.5質量%であった。なお、このパーマロイ粉末の飽和磁化は、160Am2/kgであった。
【0063】
また、準備された球状シリカ粉末において、試料13ないし試料18のいずれの球状シリカ粉末も、平均粒径D50値が5.5μmであり、D90値は15.2μmであった。また、試料13、試料14、試料15、試料16、試料17および試料18における球状シリカ粉末の含有量は、それぞれ10.5質量%、14.9質量%、17.1質量%、18.1質量%、19.3質量%および21.4質量%であった。試料13ないし試料18の球状シリカ粉末とパーマロイ粉末との各平均粒径D50値における粒径比は1.1であった。
【0064】
なお、実験例3において、パーマロイ粉末および球状シリカ粉末の平均粒径についても、各粉末をヘキサメタリンサンナトリウム水溶液中で超音波分散した後にレーザー式回折散乱法によりそれぞれ測定された。
【0065】
そして、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は1.7質量%ないし6.4質量%、パーマロイ粉末は試料13ないし試料18の上述した各含有量、および球状シリカ粉末は試料13ないし試料18の上述した各含有量に対して、硬化剤は0.4質量%ないし1.4質量%、さらに、有機溶剤および分散剤等を添加し、プラネタリー型ミキサで5〜8時間で攪拌し、各試料における磁性金属含有樹脂を作製した。なお、実験例3においては、磁性金属含有樹脂中の全無機フィラー量(球状シリカ粉末およびパーマロイ粉末の合計した含有量)を、92.5質量%ないし98.0質量%とした。
【0066】
続いて、実験例1と同様の方法でコイル部品を作製した。なお、実験例3において作製したコイル部品の磁性金属含有樹脂は、試料13、試料14、試料15、試料16、試料17および試料18の樹脂を用い、巻線上に塗布し、磁性金属含有樹脂層を形成した。
【0067】
続いて、基準試料とともに、実験例3における試料13ないし試料18の各コイル部品のインダクタンス値を測定した。表3に、各試料であるコイル部品に対して測定したインダクタンス値(L値)の測定結果、および各試料のインダクタンス値の基準試料のインダクタンス値に対する上昇率を示す。なお、各試料であるコイル部品のインダクタンス値は、ヒューレット・パッカード製HP4291Aで計測した。
【0068】
また、実験例3では、磁性金属含有樹脂の特性について信頼性試験を行った。信頼性試験のために、各試料に対する線膨張係数および曲げ強度を計測した。線膨張係数は、各試料に対する磁性金属含有樹脂だけで、3mm×3mm×10mmの柱状硬化物の試験片を各々作製し、熱機械分析装置(TMA:Thermal Mechanical Analysis)を用いて、5℃/minで加熱しながら長さ方向の伸び率を測定した。また、曲げ強度は、各試料に対する磁性金属含有樹脂だけで、10mm×50mm×1mm厚の硬化物の試験片を各々作製し、厚さ方向に加圧しながら、破断するまでの強度を測定した。
【0069】
判定基準として、上昇率が50%未満、線膨張係数が20ppm/℃より大きく、かつ、曲げ強度が30MPa未満を「×」とし、上昇率が50%以上、線膨張係数が20ppm/℃以下、かつ曲げ強度が30MPa以上を「○」とした。
【0070】
まず、実験例3においても、実験例1と同一のインダクタンス値が1.2μHの基準試料であるコイル部品を基準試料とした。また、各試料の測定結果は以下のとおりであった。すなわち、試料13ないし試料17のコイル部品のインダクタンス値は、いずれも2.4μHであり、基準試料となるコイル部品のインダクタンス値に対する上昇率は100.0%であった。一方、試料18のコイル部品のインダクタンス値は1.5μHであり、基準試料となるコイル部品のインダクタンス値に対する上昇率は25.0%であった。
【0071】
次に、実験例3における信頼性試験によると、試料13から試料17において、全無機フィラーの増加に伴い、線膨張係数の低減と曲げ強度の低下が起こっている。信頼性試験によると、試料14ないし試料17の各試験片では、線膨張係数が20.0ppm/℃以下で低く、40MPa以上の曲げ強度が確保されている。
【0072】
一方、試料13の試験片では、線膨張係数が、39.6ppm/℃と高く、高温下での熱応力が高くなることから、フィライトコアを押し広げ、フィライトコアに対して破断不良を起こす可能性があることが示唆された。また、試料18による試験片では、曲げ強度が低く、磁性金属含有樹脂自体の強度が弱い上、L値の上昇率が25.0%と低く、50.0%以上を確保することができなかった。
【0073】
なお、本発明の実施の形態にかかる磁性金属含有樹脂、および磁性金属含有樹脂がコーティングされたコイル部品について説明した。しかしながら、本発明は上述の内容に限定されることはなく、発明の主旨に沿って、種々の変更をなすことができる。
【0074】
すなわち、磁性金属含有樹脂がコーティングされる電子部品は、コイル部品には限られず、たとえば、ノイズフィルタであっても良い。また、電子部品の構造は、コアに巻線が施されたものではなく、コアの外周面に螺旋状の導体パターンが形成されたものであっても良い。また、コアに代えて基板が用いられ、基板上に導体パターンが形成され、その上に磁性金属含有樹脂がコーティングされたものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は電子機器や通信機器等に使用されるコイル部品あるいは電子部品に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 ドラム型コア
1a 上鍔
1b 下鍔
2 巻線
3、4 外部電極
5 磁性金属含有樹脂層
100 コイル部品
図1

【手続補正書】
【提出日】2014年9月30日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性金属粉を70〜88質量%、酸化物を5.0質量%以上含み、前記酸化物の平均粒径が2.8μm以上であ
前記酸化物が球状シリカ粉末であり、
前記磁性金属粉と前記酸化物の含有量の合計が94.7質量%以上97.0質量%未満であること、
を特徴とする磁性金属含有樹脂組成物
【請求項2】
前記酸化物を10質量%以上含むことを特徴とする請求項1に記載の磁性金属含有樹脂組成物
【請求項3】
前記酸化物の平均粒径が5.5μm以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁性金属含有樹脂組成物
【請求項4】
線膨張係数が20ppm/℃以下であることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の磁性金属含有樹脂組成物
【請求項5】
上鍔と下鍔とを有するドラム型コアと、
前記ドラム型コアに巻回された巻線と、
前記上鍔と前記下鍔との間に形成される磁性金属含有樹脂層と、
を備えるコイル部品であって、
前記磁性金属含有樹脂層は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の磁性金属含有樹脂組成物を塗布して形成される、コイル部品
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の磁性金属含有樹脂組成物が含まれることを特徴とする、電子部品
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
この発明にかかる磁性金属含有樹脂組成物は、磁性金属粉を70質量%〜88質量%、酸化物を5.0質量%以上含み、酸化物の平均粒径が2.8μm以上であり、酸化物が球状シリカ粉末であり、磁性金属粉と酸化物の含有量の合計が94.7質量%以上97.0質量%未満であること、を特徴とする磁性金属含有樹脂組成物である。
また、この発明にかかる磁性金属含有樹脂組成物では、酸化物を10質量%以上含むことが好ましい。
さらに、この発明にかかる磁性金属含有樹脂組成物では、酸化物の平均粒径が5.5μm以上であることが好ましい。
また、この発明にかかる磁性金属含有樹脂組成物では、線膨張係数が20ppm/℃以下であることが好ましい。
この発明にかかるコイル部品は、上鍔と下鍔とを有するドラム型コアと、ドラム型コアに巻回された巻線と、上鍔と下鍔との間に形成される磁性金属含有樹脂層と、を備えるコイル部品であって、磁性金属含有樹脂層は、この発明にかかる磁性金属含有樹脂組成物を塗布して形成される、コイル部品である。
また、この発明にかかる電子部品は、この発明にかかる磁性金属含有樹脂組成物が含まれることを特徴とする、電子部品である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
この発明にかかる磁性金属含有樹脂組成物によれば、磁性金属粉を70〜88質量%、酸化物を5.0質量%以上含み、酸化物の平均粒径が2.8μm以上である磁性金属含有樹脂であるので、飽和磁化が高い樹脂であるとともに、酸化物による干渉沈降現象により磁性金属粉の金属粒子が選択的に沈降することを抑制するとともに、耐熱衝撃性が向上した磁性金属含有樹脂組成物を得ることができる。また、酸化物がシリカ粉末であるので、線膨張係数を小さくした磁性金属含有樹脂組成物を得ることができ、加えて、酸化物が球状であることから、磁性金属含有樹脂組成物に対して、形状制御されたフィラーとして用いるのに適している。さらに、磁性金属粉と酸化物の含有量の合計が94.7質量%以上97.0質量%未満である、磁性金属粉の金属粒子が選択的に沈降することを抑えることができ、加えて、線膨張係数を低下させることができる。
また、この発明にかかる磁性金属含有樹脂組成物において、酸化物が10質量%以上含まれ、あるいは、酸化物の平均粒径が5.5μmであることから、酸化物による干渉沈降現象により磁性金属粉の金属粒子が選択的に沈降することを、より抑制した磁性金属含有樹脂組成物を得ることができる。
また線膨張係数を20ppm/℃以下に抑制させると、磁性金属含有樹脂組成物の熱応力をより低減することができる。
さらに、この発明にかかるコイル部品および電子部品では、この発明にかかる磁性金属含有樹脂組成物を用いているので、磁性金属含有樹脂組成物における磁性金属粉の含有量を巻線チップコイルの直流重畳特性を劣化させない範囲で最適化し、且つ、球状シリカ粉末を所望の含有量とすることで、磁性金属の沈降を抑制するとともに、耐熱衝撃性が向上したコイル部品および電子部品を得ることができる。

【手続補正書】
【提出日】2015年4月21日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性金属粉を70〜88質量%、酸化物を5.0質量%以上含み、前記酸化物の平均粒径D50値が2.8μm以上であり、
前記磁性金属粉の平均粒径D50値に対する前記酸化物の平均粒径D50値の粒径比が、0.5以上2.9以下であり、
前記酸化物が球状シリカ粉末であり、
前記磁性金属粉と前記酸化物の含有量の合計が94.7質量%以上97.0質量%未満であること、
を特徴とする磁性金属含有樹脂組成物。
【請求項2】
前記酸化物を10質量%以上含むことを特徴とする請求項1に記載の磁性金属含有樹脂組成物。
【請求項3】
前記酸化物の平均粒径D50値が5.5μm以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁性金属含有樹脂組成物。
【請求項4】
線膨張係数が20ppm/℃以下であることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の磁性金属含有樹脂組成物。
【請求項5】
上鍔と下鍔とを有するドラム型コアと、
前記ドラム型コアに巻回された巻線と、
前記上鍔と前記下鍔との間に形成される磁性金属含有樹脂層と、
を備えるコイル部品であって、
前記磁性金属含有樹脂層は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の磁性金属含有樹脂組成物を塗布して形成される、コイル部品。
【請求項6】
請求項1ないし請求項のいずれかに記載の磁性金属含有樹脂組成物が含まれることを特徴とする、電子部品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
この発明にかかる磁性金属含有樹脂組成物は、磁性金属粉を70質量%〜88質量%、酸化物を5.0質量%以上含み、酸化物の平均粒径D50値が2.8μm以上であり、磁性金属粉の平均粒径D50値に対する酸化物の平均粒径D50値の粒径比が、0.5以上2.9以下であり、酸化物が球状シリカ粉末であり、磁性金属粉と酸化物の含有量の合計が94.7質量%以上97.0質量%未満であること、を特徴とする磁性金属含有樹脂組成物である。
また、この発明にかかる磁性金属含有樹脂組成物では、酸化物を10質量%以上含むことが好ましい。
さらに、この発明にかかる磁性金属含有樹脂組成物では、酸化物の平均粒径D50値が5.5μm以上であることが好ましい。
また、この発明にかかる磁性金属含有樹脂組成物では、線膨張係数が20ppm/℃以下であることが好ましい。
この発明にかかるコイル部品は、上鍔と下鍔とを有するドラム型コアと、ドラム型コアに巻回された巻線と、上鍔と下鍔との間に形成される磁性金属含有樹脂層と、を備えるコイル部品であって、磁性金属含有樹脂層は、この発明にかかる磁性金属含有樹脂組成物を塗布して形成される、コイル部品である。
また、この発明にかかる電子部品は、この発明にかかる磁性金属含有樹脂組成物が含まれることを特徴とする、電子部品である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
この発明にかかる磁性金属含有樹脂組成物によれば、磁性金属粉を70〜88質量%、酸化物を5.0質量%以上含み、酸化物の平均粒径D50値が2.8μm以上であり、磁性金属粉の平均粒径D50値に対する前記酸化物の平均粒径D50値の粒径比が、0.5以上2.9以下である磁性金属含有樹脂であるので、飽和磁化が高い樹脂であるとともに、酸化物による干渉沈降現象により磁性金属粉の金属粒子が選択的に沈降することを抑制するとともに、耐熱衝撃性が向上した磁性金属含有樹脂組成物を得ることができる。また、酸化物がシリカ粉末であるので、線膨張係数を小さくした磁性金属含有樹脂組成物を得ることができ、加えて、酸化物が球状であることから、磁性金属含有樹脂組成物に対して、形状制御されたフィラーとして用いるのに適している。さらに、磁性金属粉と酸化物の含有量の合計が94.7質量%以上97.0質量%未満である、磁性金属粉の金属粒子が選択的に沈降することを抑えることができ、加えて、線膨張係数を低下させることができる。
また、この発明にかかる磁性金属含有樹脂組成物において、酸化物が10質量%以上含まれ、あるいは、酸化物の平均粒径D50値が5.5μmであることから、酸化物による干渉沈降現象により磁性金属粉の金属粒子が選択的に沈降することを、より抑制した磁性金属含有樹脂組成物を得ることができる。
また、線膨張係数を20ppm/℃以下に抑制させると、磁性金属含有樹脂組成物の熱応力をより低減することができる。
さらに、この発明にかかるコイル部品および電子部品では、この発明にかかる磁性金属含有樹脂組成物を用いているので、磁性金属含有樹脂組成物における磁性金属粉の含有量を巻線チップコイルの直流重畳特性を劣化させない範囲で最適化し、且つ、球状シリカ粉末を所望の含有量とすることで、磁性金属の沈降を抑制するとともに、耐熱衝撃性が向上したコイル部品および電子部品を得ることができる。
【国際調査報告】