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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2013年10月31日
【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】ハードコートフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/04 20060101AFI20151201BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20151201BHJP
   B05D 7/04 20060101ALI20151201BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20151201BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20151201BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20151201BHJP
   G02B 1/10 20150101ALI20151201BHJP
【FI】
   C08J7/04 KCEZ
   B05D5/00 B
   B05D7/04
   C08J5/18CER
   C08L101/00
   C08K3/36
   G02B1/10 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】60
【出願番号】特願2014-512462(P2014-512462)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2013年4月11日
(31)【優先権主張番号】特願2012-98778(P2012-98778)
(32)【優先日】2012年4月24日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北條 裕子
【テーマコード(参考)】
2K009
4D075
4F006
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
2K009AA15
2K009BB28
2K009CC09
2K009CC24
2K009CC26
2K009CC42
2K009DD02
2K009DD05
2K009DD06
4D075BB92Z
4D075CA02
4D075DA04
4D075DB33
4D075DC24
4D075EA21
4D075EB22
4F006AA02
4F006AB43
4F006BA02
4F006CA05
4F006EA03
4F071AA09
4F071AB26
4F071AC10
4F071AE04
4F071AH19
4F071BA02
4F071BB02
4F071BB07
4F071BC01
4J002AB021
4J002DJ016
4J002FD206
4J002GC00
4J002GP00
(57)【要約】
溶液流延法によって製膜され、製膜過程で流延時の支持体側に偏在する特性を有する可塑剤を1〜20重量%含有するとともに、マット剤としてのシリカ微粒子を含有する、膜厚が15μm以上30μm以下の薄膜光学フィルム(例えばセルロースエステルフィルム(41))において、シリカ微粒子の濃度が薄膜光学フィルム全体に対する平均濃度よりも大きい側の面に、ハードコート層(51)を塗布する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液流延法によって製膜され、製膜過程で流延時の支持体側に偏在する特性を有する可塑剤を1〜20重量%含有するとともに、マット剤としてのシリカ微粒子を含有する、膜厚が15μm以上30μm以下の薄膜光学フィルムにおいて、前記シリカ微粒子の濃度が前記薄膜光学フィルム全体に対する平均濃度よりも大きい側の面に、ハードコート層を塗布することを特徴とするハードコートフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記可塑剤は、リン酸系の可塑剤であることを特徴とする請求項1に記載のハードコートフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記ハードコート層の厚さは、0.5μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のハードコートフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記可塑剤を第1の可塑剤とすると、
前記薄膜光学フィルムは、前記第1の可塑剤とは異なる第2の可塑剤を1重量%以上含有しており、
前記薄膜光学フィルムにおける前記第1の可塑剤および前記第2の可塑剤の総量が、20重量%以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のハードコートフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記第2の可塑剤は、フタル酸系または多価アルコールエステル系の可塑剤であることを特徴とする請求項4に記載のハードコートフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜光学フィルムにハードコート層を塗布するハードコートフィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表示装置の表面は、直接手が触れたり、物が接触したりすることによって傷つきやすいため、通常、傷つき防止のためのハードコート層を有するハードコートフィルムが表示装置の表面に貼付されている。特に、液晶表示装置においては、光出射側の偏光板の偏光膜(偏光子)の表面に上記のハードコートフィルムを貼付することで、傷つき防止とともに装置全体の薄型化が図られている。
【0003】
このようなハードコートフィルムの一例は、特許文献1に開示されている。特許文献1の実施例では、膜厚80μmのフィルム基材の片面に、膜厚20μmのハードコート層を形成してハードコートフィルムを作製している。
【0004】
ところで、近年の液晶表示装置のさらなる薄型化の要望に伴い、特許文献1のハードコートフィルムの作製に用いるフィルム基材よりも薄膜化された光学フィルム(例えば膜厚15〜30μmの薄膜光学フィルム)を用い、この表面にハードコート層を塗布して形成したハードコートフィルムを偏光膜に貼り付けて液晶表示装置を作製したところ、表示欠陥が現れることがわかった。
【0005】
調査の結果、上記の表示欠陥は、ハードコートフィルムのハードコート層の下地となる薄膜光学フィルムの傷に起因していることがわかった。つまり、液晶表示装置の偏光板に適用されるハードコートフィルムにおいては、薄膜光学フィルムの一方の面にハードコート層が形成され、他方の面に偏光膜との接着のための接着剤が塗布される。このとき、薄膜光学フィルムにおいてハードコート層の塗布側の面に傷が生じていると、ハードコート層を紫外線照射等によって硬化収縮させる際に、傷が生じている部分と生じていない部分とで硬化収縮ムラが生じる。逆に、薄膜光学フィルムにおいて接着剤の塗布側の面に傷が生じていると、傷が生じている部分と生じていない部分とで接着剤の塗布ムラが生じ、この塗布ムラが接着不良を引き起こす。このように薄膜光学フィルムの傷によってハードコート層の硬化収縮ムラや接着剤の塗布ムラが生じるため、上記の表示欠陥が生じるものと考えられる。
【0006】
ここで、上記した薄膜光学フィルムの傷は、光学フィルムの膜面評価では検出することができないレベルで存在する微細な傷であり、フィルムの巻き内あるいは巻き外のどちらか一方に偏って発生し、また、製膜時の長尺方向に周期的に発生していることから、溶液流延法(溶液製膜法)による製膜プロセスにおいて、支持体(例えばベルト)の傷が転写されて形成されたものであることが推測される。特に、溶液流延法によって膜厚が30μm以下の薄膜光学フィルムを製膜する場合、ベルト上で溶剤が蒸発しやすく、ベルトから剥離する際の溶剤比率(残留溶媒量)が極めて低くなるため、その後の乾燥過程におけるフィルムの乾燥収縮によって、ベルトから転写された傷は緩和されにくいと考えられる。
【0007】
ハードコート層の硬化収縮ムラおよび接着剤の塗布ムラによる上記の表示欠陥を抑えるためには、例えば上記の硬化収縮ムラや接着剤の塗布ムラの原因となる傷が、薄膜光学フィルムの両面に形成されないようにすればよい。しかし、溶液流延法によって膜厚の薄い薄膜光学フィルムを製膜する場合、上記のように薄膜光学フィルムの流延時の支持体側の面に、支持体から転写された傷が残るため、薄膜光学フィルムの両面に傷が形成されないようにすることはできない。
【0008】
したがって、液晶表示装置における表示欠陥を抑えるためには、ハードコートフィルムを構成する薄膜光学フィルムの片側の面に支持体から転写された傷が残っていても、ハードコート層の硬化収縮ムラおよび接着剤の塗布ムラの両方を抑える工夫が必要となる。このとき、ハードコートフィルムの生産効率の低下を抑える観点から、薄膜光学フィルムにおいてハードコート層を塗布すべき面を容易に判断して、ハードコート層を薄膜光学フィルムに塗布することも必要となる。また、薄膜光学フィルムに可塑剤が含まれる場合は、可塑剤のブリードアウト(噴き出し)を抑えることも必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−212549号公報(段落〔0068〕、〔0069〕、図1等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、前記の事情に鑑み、薄膜光学フィルムにおける流延時の支持体側の面に、支持体の傷が転写される場合でも、可塑剤のブリードアウトを抑えながらハードコート層の硬化収縮ムラおよび接着剤の塗布ムラの両方を抑えることができるとともに、薄膜光学フィルムにおけるハードコート層を塗布すべき面を容易に判断して生産効率の低下を抑えることができるハードコートフィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
【0012】
1.溶液流延法によって製膜され、製膜過程で流延時の支持体側に偏在する特性を有する可塑剤を1〜20重量%含有するとともに、マット剤としてのシリカ微粒子を含有する、膜厚が15μm以上30μm以下の薄膜光学フィルムにおいて、前記シリカ微粒子の濃度が前記薄膜光学フィルム全体に対する平均濃度よりも大きい側の面に、ハードコート層を塗布することを特徴とするハードコートフィルムの製造方法。
【0013】
2.前記可塑剤は、リン酸系の可塑剤であることを特徴とする前記1に記載のハードコートフィルムの製造方法。
【0014】
3.前記ハードコート層の厚さは、0.5μm以上10μm以下であることを特徴とする前記1または2に記載のハードコートフィルムの製造方法。
【0015】
4.前記可塑剤を第1の可塑剤とすると、
前記薄膜光学フィルムは、前記第1の可塑剤とは異なる第2の可塑剤を1重量%以上含有しており、
前記薄膜光学フィルムにおける前記第1の可塑剤および前記第2の可塑剤の総量が、20重量%以下であることを特徴とする前記1から3のいずれかに記載のハードコートフィルムの製造方法。
【0016】
5.前記第2の可塑剤は、フタル酸系または多価アルコールエステル系の可塑剤であることを特徴とする前記4に記載のハードコートフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
上記の製造方法によれば、ハードコート層は、膜厚が15μm以上30μm以下の薄膜光学フィルムにおいて、シリカ微粒子の濃度が平均濃度よりも大きい側の面に塗布される。シリカ微粒子の濃度が大きくなるのは、溶液流延法による薄膜光学フィルムの製膜時に、支持体上で溶剤の蒸発が起こるためである。それゆえ、薄膜光学フィルムにおいて、シリカ微粒子の濃度が大きい側の面は、流延時の支持体とは反対側の面になる。この面にハードコート層が塗布されるので、ハードコート層は製膜時の支持体の傷の影響を受けることはない。これにより、ハードコート層の硬化収縮ムラを抑えることができる。しかも、シリカ微粒子は溶剤に溶けているものではないので、薄膜光学フィルムにおいてシリカ微粒子の濃度が大きい側の面(流延時の支持体とは反対側の面)を、光学的に判別することが容易となり、ハードコート層の塗布面の判別に長時間を要しない。その結果、ハードコートフィルムの生産効率が低下するのを抑えることができる。
【0018】
また、ハードコートフィルム(ハードコート層付きの薄膜光学フィルム)を、表面を保護したい部材(例えば液晶表示装置における偏光膜)と接着する場合、接着時に用いる接着剤は、ハードコートフィルムにおけるハードコート層とは反対側の面に塗布される。この面は、薄膜光学フィルム製膜の際の流延時の支持体側の面であり、支持体に傷があると、接着剤の塗布面に支持体の傷が転写されることになる。しかし、薄膜光学フィルムにおける上記の面側に可塑剤が偏在していることにより、可塑剤によって上記の面側に柔軟性が付与される。これにより、塗布面の傷が緩和されやすくなるため、塗布面に接着剤の塗布ムラが生じるのを抑えることができ、接着不良を抑えることができる。
【0019】
このとき、薄膜光学フィルムにおいて、シリカ微粒子の濃度が大きい側の面に接着剤を塗布し、反対側(可塑剤が偏在する側)の面にハードコート層を形成しても、ハードコート層の硬化収縮ムラを抑えることができない。これは、接着剤の塗布ムラよりもハードコート層の硬化収縮ムラのほうが、薄膜光学フィルムの傷による影響が大きいためと思われる。しかし、上記の製法では、シリカ微粒子の濃度が大きい側の面(支持体の傷が転写されていない側の面)にハードコート層を形成するので、ハードコート層の硬化収縮ムラおよび接着剤の塗布ムラを同時に抑えることができる。したがって、上記の製法によって製造されたハードコートフィルムを、例えば液晶表示装置の偏光板に適用したときに(ハードコートフィルムを偏光板の偏光膜に貼り付けたときに)、表示欠陥が生じるのを抑えることができる。
【0020】
また、薄膜光学フィルムに含有される可塑剤が1重量%よりも少ない場合は、接着剤の塗布面側の柔軟性が低下し、接着剤の塗布ムラを抑えることが困難となる。一方、可塑剤が20重量%よりも多い場合は、ブリードアウトが起こりやすくなる。よって、薄膜光学フィルムが可塑剤を1〜20重量%含有していることにより、ブリードアウトを抑えながら、接着剤の塗布ムラによる上記の表示欠陥を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態の薄膜光学フィルムとしてのセルロースエステルフィルムの製造装置の一例を模式的に示す断面図である
図2】上記セルロースエステルフィルムを用いたハードコートフィルムが適用される液晶表示装置の概略の構成を示す断面図である。
図3】上記セルロースエステルフィルムのA面およびB面を説明するための説明図である。
図4】上記液晶表示装置の偏光板の主要部の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
<ハードコートフィルム>
本実施形態のハードコートフィルムは、膜厚が15μm以上30μm以下の薄膜光学フィルムの一方の面にハードコート層を形成したものである。
【0024】
(ハードコート層)
本実施形態に係るハードコート層は、活性線硬化樹脂を含有することが機械的膜強度(耐擦傷性、鉛筆硬度)に優れる点から好ましい。すなわち、紫外線や電子線のような活性線(活性エネルギー線ともいう)照射により、架橋反応を経て硬化する樹脂を主たる成分とする層である。活性線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させて活性線硬化樹脂層が形成される。活性線硬化樹脂としては、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が特に機械的膜強度(耐擦傷性、鉛筆硬度)に優れる点から好ましい。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリレート系樹脂、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられ、中でも紫外線硬化型アクリレート系樹脂が好ましい。
【0025】
紫外線硬化型アクリレート系樹脂としては、多官能アクリレートが好ましい。該多官能アクリレートとしては、ペンタエリスリトール多官能アクリレート、ジペンタエリスリトール多官能アクリレート、ペンタエリスリトール多官能メタクリレート、及びジペンタエリスリトール多官能メタクリレートよりなる群から選ばれることが好ましい。ここで、多官能アクリレートとは、分子中に2個以上のアクリロイルオキシ基又はメタクロイルオキシ基を有する化合物である。多官能アクリレートのモノマーとしては、例えばエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセリントリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ペンタグリセロールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセリントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体等が好ましく挙げられる。
【0026】
本実施形態に係るハードコート層は、活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体を含有することが、フィルム同士の滑り性を抑制する効果が高められることから好ましい。活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体としては、イソシアヌル酸骨格に1個以上のエチレン性不飽和基が結合した構造を有する化合物であればよく、特に制限はないが、下記一般式(1)で示される同一分子内に3個以上のエチレン性不飽和基及び1個以上のイソシアヌレート環を有する化合物が好ましい。エチレン性不飽和基の種類は、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、ビニルエーテル基であり、より好ましくはメタクリロイル基又はアクリロイル基であり、特に好ましくはアクリロイル基である。
【0027】
【化1】
【0028】
式中Lは、2価の連結基であり、好ましくは、イソシアヌレート環に炭素原子が結合している置換又は無置換の炭素原子数4以下のアルキレンオキシ基又はポリアルキレンオキシ基であり、特に好ましくはアルキレンオキシ基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。Rは、水素原子又はメチル基を表し、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。一般式(1)で示される具体的化合物を以下に示すが、これらに限られない。
【0029】
【化2】
【0030】
【化3】
【0031】
【化4】
【0032】
その他の化合物としては、イソシアヌル酸ジアクリレート化合物が挙げられ、下記一般式(2)で表されるイソシアヌル酸エトキシ変性ジアクリレートが好ましい。
【0033】
【化5】
【0034】
またその他として、ε−カプロラクトン変性の活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体を挙げることもでき、具体的には下記一般式(3)で表される化合物である。
【0035】
【化6】
【0036】
上記化学構造式のR〜Rの一には、下記a、b、cで示される官能基が付くが、R〜Rの少なくとも一つはbの官能基である。
【0037】
a:−H、若しくは−(CH)n−OH(n=1〜10、好ましくはn=2〜6)
b:−(CH)n−O−(COC10)m−COCH=CH(n=1〜10、好ましくはn=2〜6、m=2〜8)
c:−(CH)n−O−R(Rは(メタ)アクリロイル基、n=1〜10、好ましくはn=2〜6)
【0038】
一般式(3)で示される具体的化合物を以下に示すが、これらに限られない。
【0039】
【化7】
【0040】
イソシアヌル酸トリアクリレート化合物の市販品としては、例えば新中村化学工業株式会社製A−9300などが挙げられる。イソシアヌル酸ジアクリレート化合物の市販品としては、例えば東亞合成株式会社製アロニックスM−215などが挙げられる。イソシアヌル酸トリアクリレート化合物及びイソシアヌル酸ジアクリレート化合物の混合物としては、例えば東亞合成株式会社製アロニックスM−315、アロニックスM−313などが挙げられる。ε−カプロラクトン変性の活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体としては、ε−カプロラクトン変性トリス−(アクリロキシエチル)イソシアヌレートである新中村化学工業株式会社製A−9300−1CL、東亞合成株式会社製アロニックスM−327などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0041】
これらの市販品としては、アデカオプトマーNシリーズ、サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060、アロニックスM−215、アロニックスM−315、アロニックスM−313、アロニックスM−327(東亞合成(株)製)、NK−エステルA−TMM−3L、NK−エステルAD−TMP、NK−エステルATM−35E、NKエステルA−DOG、NKエステルA−IBD−2E、A−9300、A−9300−1CL(新中村化学工業(株))、PE−3A(共栄社化学)などが挙げられる。上記活性線硬化樹脂を単独又は2種以上混合しても良い。また、活性線硬化型樹脂の25℃における粘度は、好ましくは20mPa・s以上、2000mPa・s以下である。このような低粘度の樹脂を用いることで、後述する突起形状が得られやすい。具体的には前記樹脂の粘度範囲であれば、乾燥工程において樹脂組成物(活性線硬化型樹脂と溶剤以外の添加剤からなる組成物)の十分な流動性が得られやすく、突起形状が得られやすい。
【0042】
活性線硬化型樹脂の粘度の測定は、樹脂をディスパーにて撹拌混合し25℃の条件にてB型粘度計を用いて行うことができる。また、単官能アクリレートを用いても良い。
【0043】
単官能アクリレートとしては、イソボロニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソオクチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートなどが挙げられる。このような単官能アクリレートは、日本化成工業株式会社、新中村化学工業株式会社、大阪有機化学工業株式会社等から入手できる。
【0044】
単官能アクリレートを用いる場合には、多官能アクリレートと単官能アクリレートの含有質量比で、多官能アクリレート:単官能アクリレート=80:20〜98:2で含有することが好ましい。
【0045】
(光重合開始剤)
また、ハードコート層には活性線硬化樹脂の硬化促進のため、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤量としては、質量比で、光重合開始剤:活性線硬化樹脂=20:100〜0.01:100で含有することが好ましい。光重合開始剤としては、具体的には、具体的には、アルキルフェノン系、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及び、これらの誘導体を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0046】
このような光重合開始剤は市販品を用いてもよく、例えば、例えば、BASFジャパン(株)製のイルガキュア184、イルガキュア907、イルガキュア651などが好ましい例示として挙げられる。
【0047】
(導電剤)
ハードコート層には、帯電防止性を付与するために導電剤が含まれていても良い。好ましい導電剤としては、金属酸化物粒子又はπ共役系導電性ポリマーが挙げられる。また、イオン液体も導電性化合物として好ましく用いられる。
【0048】
(添加剤)
ハードコート層には、アルカリ処理前後の対水接触角の差(θΔ)を所定の範囲(例えば5〜55°)に制御しやすい点から、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アニオン界面活性剤、及びフッ素−シロキサングラフト化合物、フッ素系化合物、アクリル共重合物などの添加剤を含有させても良い。また、HLB値が3〜18の化合物を含有しても良い。これら添加剤の種類や添加量を調整することで、撥水性を制御でき、θΔを前記範囲に制御しやすい。θΔが前記範囲内であれば、ハードコート層が親水性を示し、ロール状に巻き取った際、ハードコートフィルム同士の滑り性が抑制され、巻ズレ防止の効果が得られる。
【0049】
ここで、アルカリ処理前後の対水接触角の差(θΔ)は、ハードコートフィルムのアルカリ処理前のハードコート層の対水接触角(θ)から、少なくとも下記に示す条件で、アルカリ処理された後のハードコート層の対水接触角(θa)を引いて、アルカリ処理前後の対水接触角の差(θΔ)とした値である。アルカリ処理条件としては、温度50℃の2.5mol/Lの水酸化カリウム溶液に、ハードコートフィルムを120秒間浸漬処理した条件である。また、対水接触角については、温度23℃、相対湿度55%の雰囲気下で試料を24時間放置後、温度23℃、相対湿度55%の雰囲気下で、接触角計(協和界面科学株式会社製、商品名DropMaster DM100)を用いて、純水1μlを滴下1分後における純水の接触角を7回測定し、測定値の最大値、最小値を除いた5つの測定値を平均した値とした。
【0050】
上記のHLB値とは、Hydrophile−Lipophile−Balance、親水性−親油性−バランスのことであり、化合物の親水性又は親油性の大きさを示す値である。HLB値が小さいほど親油性が高く、値が大きいほど親水性が高くなる。また、HLB値は以下のような計算式によって求めることができる。
【0051】
HLB=7+11.7Log(Mw/Mo)
式中、Mwは親水基の分子量、Moは親油基の分子量を表し、Mw+Mo=M(化合物の分子量)である。あるいはグリフィン法によれば、HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量(J.Soc.Cosmetic Chem.,5(1954),294)等が挙げられる。HLB値が3〜18の化合物の具体的化合物を下記に挙げるが、本発明はこれに限定されるものでない。( )内はHLB値を示す。
【0052】
花王株式会社製:エマルゲン102KG(6.3)、エマルゲン103(8.1)、エマルゲン104P(9.6)、エマルゲン105(9.7)、エマルゲン106(10.5)、エマルゲン108(12.1)、エマルゲン109P(13.6)、エマルゲン120(15.3)、エマルゲン123P(16.9)、エマルゲン147(16.3)、エマルゲン210P(10.7)、エマルゲン220(14.2)、エマルゲン306P(9.4)、エマルゲン320P(13.9)、エマルゲン404(8.8)、エマルゲン408(10.0)、エマルゲン409PV(12.0)、エマルゲン420(13.6)、エマルゲン430(16.2)、エマルゲン705(10.5)、エマルゲン707(12.1)、エマルゲン709(13.3)、エマルゲン1108(13.5)、エマルゲン1118S−70(16.4)、エマルゲン1135S−70(17.9)、エマルゲン2020G−HA(13.0)、エマルゲン2025G(15.7)、エマルゲンLS−106(12.5)、エマルゲンLS−110(13.4)、エマルゲンLS−114(14.0)、日信化学工業株式会社製:サーフィノール104E(4)、サーフィノール104H(4)、サーフィノール104A(4)、サーフィノール104BC(4)、サーフィノール104DPM(4)、サーフィノール104PA(4)、サーフィノール104PG−50(4)、サーフィノール104S(4)、サーフィノール420(4)、サーフィノール440(8)、サーフィノール465(13)、サーフィノール485(17)、サーフィノールSE(6)、信越化学工業株式会社製:X−22−4272(7)、X−22−6266(8)、KF−351(12)、KF−352(7)、KF−353(10)、KF−354L(16)、KF−355A(12)、KF−615A(10)、KF−945(4)、KF−618(11)、KF−6011(12)、KF−6015(4)、KF−6004(5)。
【0053】
シリコーン系界面活性剤としては、ポリエーテル変性シリコーンなどを挙げることができ、上記信越化学工業社製のKFシリーズなどを挙げることができる。アクリル共重合物としては、ビックケミー・ジャパン社製のBYK−350、BYK−352などの市販品化合物を挙げることができる。フッ素系界面活性剤としては、DIC株式会社製のメガファック RSシリーズ、メガファックF−444メガファックF−556などを挙げることができる。フッ素−シロキサングラフト化合物とは、少なくともフッ素系樹脂に、シロキサン及び/又はオルガノシロキサン単体を含むポリシロキサン及び/又はオルガノポリシロキサンをグラフト化させて得られる共重合体の化合物をいう。このようなフッ素−シロキサングラフト化合物は、後述の実施例に記載されているような方法で調製することができる。あるいは、市販品としては、富士化成工業株式会社製のZX−022H、ZX−007C、ZX−049、ZX−047−D等を挙げることができる。またフッ素系化合物としては、ダイキン工業株式会社製のオプツールDSX、オプツールDACなどを挙げることができる。これら成分は、ハードコート組成物中の固形分成分に対し、0.005質量部以上、5質量部以下の範囲で添加することが好ましい。
【0054】
(紫外線吸収剤)
ハードコート層は、後述するセルロースエステルフィルムで説明する紫外線吸収剤をさらに含有しても良い。紫外線吸収剤を含有する場合のフィルムの構成としては、ハードコートフィルムが2層以上で構成される場合には、セルロースエステルフィルムと接するハードコート層に紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
【0055】
紫外線吸収剤の含有量としては質量比で、紫外線吸収剤:ハードコート層構成樹脂=0.01:100〜10:100で含有することが好ましい。2層以上設ける場合、セルロースエステルフィルムと接するハードコート層の膜厚は、0.05〜2μmの範囲であることが好ましい。2層以上の積層は同時重層で形成しても良い。同時重層とは、乾燥工程を経ずに基材上に2層以上のハードコート層をwet on wetで塗布して、ハードコート層を形成することである。第1ハードコート層の上に乾燥工程を経ずに、第2ハードコート層をwet on wetで積層するには、押し出しコーターにより逐次重層するか、若しくは複数のスリットを有するスロットダイにて同時重層を行えばよい。
【0056】
(溶剤)
ハードコート層は、上記したハードコート層を形成する成分を、セルロースエステルフィルムを膨潤又は一部溶解する溶剤で希釈してハードコート層組成物とし、以下の方法でセルロースフィルム上に塗布、乾燥、硬化して設けることが好ましい。
【0057】
溶剤としては、ケトン(メチルエチルケトン、アセトンなど)及び/又は酢酸エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、アルコール(エタノール、メタノール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどが好ましい。ハードコート層の塗布量はウェット膜厚として0.1〜40μmの範囲が適当で、好ましくは0.5〜30μmの範囲である。また、ドライ膜厚としては平均膜厚0.01〜20μmの範囲、好ましくは0.5〜10μmの範囲である。より好ましくは、0.5〜5μmの範囲である。
【0058】
ハードコート層の塗布方法は、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等の公知の方法を用いることができる。
【0059】
(ハードコート層形成方法)
ハードコート層組成物塗布後、乾燥し、硬化(活性線を照射(UV硬化処理ともいう))し、更に必要に応じて、UV硬化後に加熱処理しても良い。UV硬化後の加熱処理温度としては80℃以上が好ましく、更に好ましくは100℃以上であり、特に好ましくは120℃以上である。このような高温でUV硬化後の加熱処理を行うことで、膜強度に優れたハードコート層を得ることができる。
【0060】
乾燥は、減率乾燥区間の温度を90℃以上の高温で行うことが好ましい。更に好ましくは、減率乾燥区間の温度は90℃以上、125℃以下である。減率乾燥区間の温度を高温とすることで、ハードコート層の形成時に塗膜樹脂中で対流が生じ、その結果、ハードコート層表面に不規則な表面粗れが発現しやすく、後述する算術平均粗さRaに制御しやすい。
【0061】
一般に乾燥プロセスは、乾燥が始まると、乾燥速度が一定の状態から徐々に減少する状態へと変化していくことが知られており、乾燥速度が一定の区間を恒率乾燥区間、乾燥速度が減少していく区間を減率乾燥区間と呼ぶ。恒率乾燥区間においては流入する熱量は全て塗膜表面の溶媒蒸発に費やされており、塗膜表面の溶媒が少なくなると蒸発面が表面から内部に移動して減率乾燥区間に入る。これ以降は塗膜表面の温度が上昇し熱風温度に近づいていくため、活性線硬化型樹脂組成物の温度が上昇し、樹脂粘度が低下して流動性が増すと考えられる。
【0062】
UV硬化処理の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。
【0063】
照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常50〜1000mJ/cmの範囲、好ましくは50〜300mJ/cmの範囲である。また、UV硬化処理では酸素による反応阻害を防止するため、酸素除去(例えば、窒素パージなどの不活性ガスによる置換)を行うこともできる。酸素濃度の除去量を調整することで、表面の硬化状態を制御できる。これにより、前述した添加剤のハードコート層面での存在状態をコントロールでき、その結果、θΔを前記範囲に制御しやすい。活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、更に好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックローラ上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、又は2軸方向に張力を付与してもよい。これによって更に平面性の優れたフィルムを得ることができる。
【0064】
(表面形状)
ハードコート層の算術平均粗さRaは、フィルム同士の滑り性を抑制し、巻ズレ防止効果が高められることから、2〜100nmの範囲内が好ましく、特に好ましくは5〜80nmの範囲内である。なお、算術平均粗さRaは、JIS(Japanese Industrial Standards ;日本工業規格) B0601:2001)に準じて測定できる。
【0065】
該算術平均粗さRaとするための突起形状の高さは2nm〜4μmの範囲内が好ましい。また突起形状の幅は50nm〜300μmの範囲内、好ましくは、50nm〜100μmの範囲内である。
【0066】
ハードコート層の10点平均粗さRzは、中心線平均粗さRaの10倍以下、平均山谷距離Smは5〜150μmが好ましく、より好ましくは20〜100μm、凹凸最深部からの凸部高さの標準偏差は0.5μm以下、中心線を基準とした平均山谷距離Smの標準偏差が20μm以下、傾斜角0〜5度の面は10%以上が好ましい。前記した算術平均粗さRa、Sm、Rzは、JIS B0601:2001に準じて光学干渉式表面粗さ計(ZYGO社製、NewView)で測定した値である。
【0067】
(ヘイズ)
ハードコートフィルムのヘイズは、画像表示装置に用いた場合の視認性から0.2〜10%の範囲内であることが好ましい。ヘイズは、JIS−K7105及びJIS K7136に準じて測定できる。
【0068】
(硬度)
本実施形態のハードコートフィルムは、硬度の指標である鉛筆硬度がHB以上、より好ましくはH以上である。HB以上であれば、偏光板化工程で、傷が付きにくい。鉛筆硬度は、作製した光学性フィルムを温度23℃、相対湿度55%の条件で2時間以上調湿した後、加重500g条件でJIS S 6006が規定する試験用鉛筆を用いて、ハードコート層及び又は機能性層をJIS K5400が規定する鉛筆硬度評価方法に従い測定した値である。
【0069】
<セルロースエステルフィルム>
次に、本実施形態の薄膜光学フィルムとしてのセルロースエステルフィルム、及び偏光板の裏面側に貼合されるセルロースエステルフィルムについて説明する。
【0070】
セルロースエステルフィルム(以下、セルロースアセテートフィルムともいう。)は、例えばトリアセチルセルロースフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム等が挙げられる。またセルロースエステルフィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ノルボルネン系樹脂、フッ素樹脂、シクロオレフィンポリマー等を併用してもよい。セルロースエステルフィルムの市販品としては、例えばコニカミノルタタックKC8UX、KC4UX、KC8UY、KC4UY、KC6UA、KC4UA、KC4UE及びKC4UZ(以上、コニカミノルタオプト(株)製)が挙げられる。セルロースエステルフィルムの屈折率は1.45〜1.55であることが好ましい。屈折率は、JIS K7142−2008に準じて測定することができる。
【0071】
(セルロースエステル樹脂)
セルロースエステル樹脂(以下、セルロースエステルともいう)は、セルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えば、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等や、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることができる。
【0072】
上記記載の中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルは、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートである。これらのセルロースエステルは単独あるいは混合して用いることができる。
【0073】
セルロースジアセテートは、平均酢化度(結合酢酸量)51.0%〜56.0%が好ましく用いられる。市販品としては、(株)ダイセル製のL20、L30、L40、L50、イーストマンケミカルジャパン(株)製のCa398−3、Ca398−6、Ca398−10、Ca398−30、Ca394−60Sが挙げられる。
【0074】
セルローストリアセテートは、平均酢化度(結合酢酸量)54.0〜62.5%のものが好ましく用いられ、更に好ましいのは、平均酢化度が58.0〜62.5%のセルローストリアセテートである。
【0075】
セルローストリアセテートとしては、数平均分子量(Mn)が125000以上155000未満、重量平均分子量(Mw)が265000以上310000未満、Mw/Mnが1.9〜2.1であるセルローストリアセテートA、アセチル基置換度が2.75〜2.90であり、数平均分子量(Mn)が155000以上180000未満、重量平均分子量(Mw)が290000以上360000未満、Mw/Mnが1.8〜2.0であるセルローストリアセテートBを含有することが好ましい。
【0076】
セルロースアセテートプロピオネートは、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすものが好ましい。
【0077】
式(I) 2.6≦X+Y≦3.0
式(II) 0≦X≦2.5
中でも1.9≦X≦2.5、0.1≦Y≦0.9であることが好ましい。
【0078】
上記アシル基の置換度は、ASTM(American Society for Testing and Materials;米国試験材料協会)が策定・発行する規格の一つであるASTM−D817−96に準じて測定することができる。
【0079】
セルロースエステルの数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定できる。測定条件は以下の通りである。
【0080】
溶媒:メチレンクロライド
カラム:Shodex K806、K805、K803G
(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
【0081】
(熱可塑性アクリル樹脂)
セルロースエステルフィルムと熱可塑性アクリル樹脂とを併用しても良い。併用する場合には、熱可塑性アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の含有質量比が、熱可塑性アクリル樹脂:セルロースエステル樹脂=95:5〜50:50であることが好ましい。
【0082】
アクリル樹脂には、メタクリル樹脂も含まれる。アクリル樹脂としては、特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位50〜99質量%、及びこれと共重合可能な他の単量体単位1〜50質量%からなるものが好ましい。共重合可能な他の単量体としては、アルキル数の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独あるいは2種以上を併用してよい。
【0083】
これらの中でも、共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が好ましく、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが特に好ましく用いられる。また、重量平均分子量(Mw)は80000〜500000であることが好ましく、更に好ましくは110000〜500000の範囲内である。
【0084】
アクリル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。アクリル樹脂の市販品としては、例えばデルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80、BR83、BR85、BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。アクリル樹脂は2種以上を併用することもできる。
【0085】
(微粒子)
本実施形態のセルロースエステルフィルムには、取扱性を向上させるため、例えばアクリル粒子、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子などのマット剤を含有させることが好ましい。またアクリル粒子は、特に限定されるものではないが、多層構造アクリル系粒状複合体であることが好ましい。これらの中でも、二酸化ケイ素がセルロースエステルフィルムのヘイズを小さくできる点で好ましい。微粒子の1次平均粒子径としては、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5〜16nmの範囲内であり、特に好ましくは、5〜12nmの範囲内である。
【0086】
本実施形態のセルロースアセテートフィルムは、環境変化での寸法安定性から、下記一般式(X)で表されるエステル化合物又は糖エステルを含有することが好ましい。先ずは、一般式(X)で表されるエステル化合物について説明する。
【0087】
一般式(X)B−(G−A)n−G−B
(式中、Bはヒドロキシ基又はカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基又は炭素数6〜12のアリールグリコール残基又は炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基又は炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表す。nは1以上の整数を表す。)
【0088】
一般式(X)において、炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種又は2種以上の混合物として使用される。特に炭素数2〜12のアルキレングリコールがセルロースアセテートとの相溶性に優れているため、特に好ましい。炭素数6〜12のアリールグリコール成分としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノール等があり、これらのグリコールは、1種又は2種以上の混合物として使用できる。
【0089】
また、炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、1種又は2種以上の混合物として使用できる。炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ1種又は2種以上の混合物として使用される。炭素数6〜12のアリーレンジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸等がある。以下に、一般式(X)で表される化合物の具体例(化合物X−1〜化合物X−17)を示すが、これに限定されない。
【0090】
【化8】
【0091】
【化9】
【0092】
【化10】
【0093】
次に、糖エステル化合物について説明する。糖エステル化合物としては、セルロースエステル以外のエステルであって、下記単糖、二糖、三糖又はオリゴ糖などの糖のOH基の全て若しくは一部をエステル化した化合物である。糖としては例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、アラビノース、ラクトース、スクロース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノース及びケストースを挙げることができる。このほか、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなども挙げられる。これらの化合物の中で、特にフラノース構造及び/又はピラノース構造を有する化合物が好ましい。これらの中でも、スクロース、ケストース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオースなどが好ましく、さらに好ましくは、スクロースである。また、オリゴ糖として、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖も好ましく使用することができる。
【0094】
糖をエステル化するのに用いられるモノカルボン酸は、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。使用するカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、安息香酸のベンゼン環にアルキル基、アルコキシ基を導入した芳香族モノカルボン酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができ、より具体的には、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、γ−イソジュリル酸、ジュリル酸、メシト酸、α−イソジュリル酸、クミン酸、α−トルイル酸、ヒドロアトロパ酸、アトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、サリチル酸、o−、m、p−アニス酸、クレオソート酸、o−、m、p−ホモサリチル酸、o−ピロカテク酸、β−レソルシル酸、バニリン酸、イソバニリン酸、ベラトルム酸、o−ベラトルム酸、没食子酸、アサロン酸、マンデル酸、ホモアニス酸、ホモバニリン酸、ホモベラトルム酸、o−ホモベラトルム酸、フタロン酸、p−クマル酸を挙げることができるが、特に安息香酸が好ましい。エステル化したエステル化合物の中では、エステル化によりアセチル基が導入されたアセチル化合物が好ましい。以下に本実施形態に用いられ得る糖エステル化合物の具体例を示すが、これらに限定されない。
【0095】
【化11】
【0096】
【化12】
【0097】
【化13】
【0098】
【化14】
【0099】
【化15】
【0100】
糖エステル化合物は、一般式(Y)で示される化合物が好ましい。以下に、一般式(Y)で示される化合物について説明する。
【0101】
【化16】

(式中、R〜Rは、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数2〜22のアルキルカルボニル基、あるいは、置換又は無置換の炭素数2〜22のアリールカルボニル基を表し、R〜Rは、同じであっても、異なっていてもよい。)
【0102】
以下に一般式(Y)で示される化合物をより具体的(化合物Y−1〜化合物Y−23)に示すが、これらに限定はされない。なお、下表において平均置換度が8.0未満の場合、R〜Rのうちのいずれかは水素原子を表す。
【0103】
【化17】
【0104】
【化18】
【0105】
【化19】
【0106】
置換度分布については、エステル化反応時間の調節、又は置換度違いの化合物を混合することにより、目的の置換度に調整できる。
【0107】
一般式(X)で表されるエステル化合物又は糖エステル化合物は、セルロースアセテートフィルムに、1〜30質量%含有させることが好ましく、5〜25質量%含有させることがより好ましく、5〜20質量%含有させることが特に好ましい。
【0108】
(その他の添加剤)
〔可塑剤〕
本実施形態のセルロースアセテートフィルムは、必要に応じて可塑剤を含有しても良い。可塑剤としては、特に限定されないが、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、及び多価アルコールエステル系可塑剤、アクリル系可塑剤等が挙げられる。これらの中では、後述するリターデーション値にセルロースエステルフィルムを制御しやすい点から、アクリル系可塑剤が好ましい。
【0109】
多価アルコールエステル系可塑剤は、2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環又はシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。以下に、多価アルコールエステル系可塑剤の具体的例を示すがこれらに限定されるものではない。
【0110】
【化20】
【0111】
【化21】
【0112】
グリコレート系可塑剤としては、特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
【0113】
フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
【0114】
リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、ブチルフェニルジフェニルホスフェート(BDP)等が挙げられる。
【0115】
多価カルボン酸エステル系可塑剤は2価以上、好ましくは2価〜20価の多価カルボン酸とアルコールのエステルよりなる化合物である。具体例としては、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート(ATEC)、アセチルトリブチルシトレート(ATBC)、ベンゾイルトリブチルシトレート、アセチルトリフェニルシトレート、アセチルトリベンジルシトレート、酒石酸ジブチル、酒石酸ジアセチルジブチル、トリメリット酸トリブチル、ピロメリット酸テトラブチル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
アクリル系可塑剤としてはアクリル系ポリマーが好ましく、アクリル系ポリマーはアクリル酸又はメタクリル酸アルキルエステルのホモポリマー又はコポリマーが好ましい。アクリル酸エステルのモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−メトキシエチル)、アクリル酸(2−エトキシエチル)等、又は上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることができる。アクリル系ポリマーは上記モノマーのホモポリマー又はコポリマーであるが、アクリル酸メチルエステルモノマー単位が30質量%以上を有していることが好ましく、またメタクリル酸メチルエステルモノマー単位が40質量%以上有することが好ましい。特にアクリル酸メチル又はメタクリル酸メチルのホモポリマーが好ましい。
【0117】
(紫外線吸収剤)
本実施形態のセルロースアセテートフィルムは、紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することため、耐久性を向上させるができる。紫外線吸収剤は、特に波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。紫外線吸収剤の具体例としては特に限定されないが、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
【0118】
より具体的には、例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等を用いることができる。これらは、市販品を用いてもよく、例えば、BASFジャパン社製のチヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328等のチヌビン類を好ましく使用できる。
【0119】
好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などである。
【0120】
この他、1,3,5トリアジン環を有する化合物等の円盤状化合物も紫外線吸収剤として好ましく用いられる。また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特にポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
【0121】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、市販品であるBASFジャパン社製のTINUVIN 109(オクチル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートの混合物)、TINUVIN 928(2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール)などを用いることができる。トリアジン系紫外線吸収剤としては、市販品であるBASFジャパン社製のTINUVIN 400(2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルとオキシランとの反応生成物)、TINUVIN 460(2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3−5−トリアジン)、TINUVIN 405(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと(2−エチルヘキシル)−グリシド酸エステルの反応生成物)などを用いることができる。
【0122】
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してから、フィルム基材となる樹脂溶液(ドープ)に添加するか、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースアセテート中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
【0123】
紫外線吸収剤の使用量は、セルロースアセテートフィルムに対して0.5〜10質量%が好ましく、0.6〜4質量%が更に好ましい。
【0124】
(酸化防止剤)
本実施形態のセルロースアセテートフィルムは、さらに酸化防止剤(劣化防止剤)を含有していてもよい。酸化防止剤は、セルロースアセテートフィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等によりセルロースアセテートフィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有する。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート等を挙げることができる。これら化合物の添加量は、セルロースアセテートフィルムに対して、質量割合で1ppm〜10000ppmが好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
【0125】
(欠点)
セルロースエステルフィルムは、直径5μm以上の欠点が1個/10cm四方以下であることが好ましい。更に好ましくは0.5個/10cm四方以下、一層好ましくは0.1個/10cm四方以下である。ここで、欠点とは、溶液製膜の乾燥工程において溶媒の急激な蒸発に起因して発生するフィルム中の空洞(発泡欠点)、製膜原液中の異物や製膜中に混入する異物に起因するフィルム中の異物(異物欠点)、ローラ傷の転写や擦り傷などを言う。また、欠点の直径とは、欠点が円形の場合はその直径を示し、円形でない場合は欠点の範囲を下記方法により顕微鏡で観察して決定し、その最大径(外接円の直径)とする。
【0126】
欠点の範囲は、欠点が気泡や異物の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の透過光で観察したときの影の大きさである。欠点が、ローラ傷の転写や擦り傷など、表面形状の変化の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の反射光で観察してその大きさを確認できる。
【0127】
欠点の個数が1個/10cm四方より多いと、例えば後工程での加工時などでフィルムに張力がかかると、欠点を基点としてフィルムが破断して生産性が低下する場合がある。また、欠点の直径が5μm以上になると、偏光板観察などにより欠点を目視で確認でき、該フィルムを光学部材として用いたときに輝点が生じる場合がある。また、欠点を目視で確認できない場合でも、ハードコート層を形成したときに、塗膜が均一に形成できず、塗布抜けとなる場合がある。
【0128】
基材フィルムは、JIS−K7127−1999に準拠した測定において、少なくとも一方向の破断伸度が、10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上である。破断伸度の上限は特に限定されるものではないが、現実的には250%程度である。破断伸度を大きくするには、異物や発泡に起因するフィルム中の欠点を抑制することが有効である。
【0129】
(光学特性)
セルロースエステルフィルムは、その全光線透過率が90%以上であることが好ましく、より好ましくは93%以上である。また、現実的な上限としては、99%程度である。ヘイズ値は2%以下が好ましく、より好ましくは1.5%以下である。全光線透過率、ヘイズ値はJIS K7361及びJIS K7136に準じて測定することができる。
【0130】
また、セルロースエステルフィルムの面内リターデーション値Roが0〜5nm、厚さ方向のリターデーション値Rthが−10〜10nmの範囲が好ましい。更にRthは、−5〜5nmの範囲であることがより好ましい。
【0131】
Ro及びRthは下記式(i)及び(ii)で定義された値である。
【0132】
式(i) Ro=(nx−ny)×d
式(ii) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
(式中、nxはセルロースエステルフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyは基材フィルム面内で遅相軸に直交する方向の屈折率、nzはセルロースエステルフィルムの厚さ方向の屈折率、dはセルロースエステルフィルムの厚さ(nm)をそれぞれ表す。)
【0133】
上記リターデーションは、例えばKOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用い、23℃、55%RH(相対湿度)の環境下で、測定波長590nmで求めることができる。上記リターデーション値に制御したセルロースエステルフィルムを用いることで、タッチパネルや液晶表示装置などの画像表示装置に用いた際の視認性に優れる点から好ましい。リターデーションは、前述した可塑剤の種類や添加量及びセルロースエステルフィルムの膜厚や延伸条件等で調整できる。
【0134】
(セルロースエステルフィルムの製膜)
(有機溶媒)
本実施形態のセルロースエステルフィルムは、溶液流延法(溶液製膜法)によって製膜される。セルロースエステルフィルムを溶液流延法で製膜する場合の樹脂溶液(ドープ組成物)を形成するのに有用な有機溶媒は、セルロースエステル樹脂、その他の添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることができる。例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等を挙げることができ、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用し得る。前記溶媒はセルロースエステル樹脂、その他添加剤を計15〜45質量%溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
【0135】
(溶液流延法)
溶液流延法では、樹脂及び添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープをベルト状若しくはドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体からウェブを剥離する工程、剥離したウェブを延伸又は幅保持する工程、更にウェブを乾燥する工程、仕上がったセルロースエステルフィルムを巻き取る工程により行われる。以下、より具体的に説明する。
【0136】
図1は、本実施形態の薄膜光学フィルムとしてのセルロースエステルフィルムの製造装置の一例を模式的に示す断面図である。図1において、まず溶解釜1で、例えばセルロースエステル等の樹脂を、良溶媒及び貧溶媒の混合溶媒に溶解し、これに可塑剤や紫外線吸収剤等の添加剤を添加してドープを調製する。
【0137】
ついで、溶解釜1で調整されたドープを、加圧型定量ギヤポンプ2を通して、導管によって流延ダイ3に送液し、無限に移送する回転駆動ステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる金属支持体6上の流延位置に、流延ダイ3からドープを流延し、これにより形成されたウェブ9(流延膜)を、金属支持体6上に接触させる。金属支持体6としてのエンドレスベルトは、前後一対のドラム5・5及び中間の複数のロール(不図示)により保持されている。エンドレスベルトの両端巻回部のドラム5・5の一方又は両方に、エンドレスベルトに張力を付与する駆動装置(不図示)が設けられており、これによってエンドレスベルトは張力が掛けられて張った状態で使用される。
【0138】
なお、上記のエンドレスベルトの代わりに、表面にハードクロムメッキ処理を施したステンレス鋼製の回転駆動ドラムを金属支持体6として用い、この回転駆動ドラム上に流延ダイ3からドープを流延してウェブを形成してもよい。
【0139】
流延ダイ3によるドープの流延には、流延されたウェブをブレードで膜厚調節するドクターブレード法、流延されたウェブを逆回転するロールで膜厚調節するリバースロールコーターによる方法、加圧ダイを用いる方法等がある。その中でも、口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にしやすい等の理由から加圧ダイを用いる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガーダイやTダイ等があり、何れも好ましく用いることができる。
【0140】
溶液流延法において、流延ダイ3から金属支持体6上に流延するセルロースエステル等のドープの固形分濃度は、15〜30重量%であるのが好ましい。ドープの固形分濃度が15重量%未満であれば、金属支持体6上で十分な乾燥ができず、剥離時にウェブの一部が金属支持体6上に残り、汚染(例えばベルト汚染)につながる。また、ドープの固形分濃度が30%を超えると、ドープ粘度が高くなり、ドープ調整工程でフィルター詰まりが早くなったり、金属支持体6上へのドープの流延時に圧力が高くなり、ドープを押し出せなくなる可能性がある。
【0141】
このようにして金属支持体6の表面に流延されたドープは、剥ぎ取りまでの間で乾燥が促進されることによってもゲル膜の強度(フィルム強度)が増加する。
【0142】
金属支持体6から剥離ロール8によって剥離可能な膜強度となるまでウェブ9を乾燥固化させるため、金属支持体6上では、ウェブ9中の残留溶媒量が150重量%以下まで乾燥させるのが好ましく、80〜120重量%がより好ましい。また、金属支持体6からウェブ9を剥離するときのウェブ温度は、0〜30℃が好ましい。また、ウェブ9は、金属支持体6からの剥離直後に、金属支持体6との密着面側からの溶媒蒸発で温度が一旦急速に下がり、雰囲気中の水蒸気や溶媒蒸気など揮発性成分がコンデンスしやすいため、剥離時のウェブ温度は5〜30℃がさらに好ましい。
【0143】
ここで、残留溶媒量は、下記の式で表わせる。
残留溶媒量(重量%)={(M−N)/N}×100
なお、式中、Mはウェブの任意時点での重量、Nは重量Mのものを温度110℃で、3時間乾燥させたときの重量である。
【0144】
金属支持体6上に流延されたドープにより形成されたウェブ9を、金属支持体6上で加熱し、金属支持体6から剥離ロール8によってウェブ9が剥離可能になるまで溶媒を蒸発させる。溶媒を蒸発させるには、ウェブ9側から風を吹かせる方法や、金属支持体6の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があり、適宜、単独であるいは組み合わせて用いればよい。
【0145】
金属支持体6からウェブ9を剥離ロール8によって剥離する際の剥離張力は、JIS Z 0237のような剥離力測定で得られる剥離力より大きな張力であることが好ましい。これは、高速製膜時に、剥離張力をJIS測定法で得られた剥離力同等にすると、剥離位置が下流側に持っていかれたりする場合があるため、安定化のため高めで行なっている。但し、工程で同じ剥離張力で製膜していても、JIS測定方法による剥離力が下がると、フィルムのクロスニコル透過率(CNT)のバラツキが大きく低減することも確かめられている。
【0146】
工程での剥離張力値としては、通常、50〜250N/mで剥離が行なわれる。
【0147】
金属支持体6上で剥離可能な膜強度となるまでウェブ9を乾燥固化させた後に、ウェブ9を剥離ロール8によって剥離し、ついで、延伸工程のテンター10においてウェブ9を延伸する。
【0148】
延伸工程では、液晶表示装置用フィルムとしては、ウェブ9の両側縁部をクリップ等で固定して延伸するテンター方式が、フィルムの平面性や寸法安定性を向上させるために好ましい。
【0149】
延伸工程のテンター10に入る直前のウェブ9の残留溶媒量は、1〜10重量%であることが好ましい。また、延伸工程のテンター10におけるウェブの延伸率が1〜100%であり、3〜80%であることが好ましく、さらに3〜60%であることが望ましい。
【0150】
また、テンター10における温風吹出しスリット口から吹き出す温風の温度が100〜200℃であり、110〜190℃であることが好ましく、さらに115〜185℃であることが望ましい。
【0151】
延伸工程のテンター10の後には、乾燥装置11が設けられている。乾燥装置11内では、側面から見て千鳥状に配置された複数の搬送ロールによってウェブ9が蛇行させられ、その間にウェブ9が乾燥される。乾燥装置11でのフィルム搬送張力は、ドープの物性、剥離時及びフィルム搬送工程での残留溶媒量、乾燥温度等に影響を受けるが、乾燥時のフィルム搬送張力は、10〜300N/m幅であり、20〜270N/m幅が、より好ましい。
【0152】
なお、ウェブ(フィルム)9を乾燥させる手段は、特に制限はなく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行なう。簡便さの点から熱風で乾燥するのが好ましく、例えば乾燥装置11の温風入口から吹込まれる乾燥風12によって乾燥され、乾燥装置11の出口から排気風が排出されることによって乾燥される。乾燥風12の温度は40〜160℃が好ましく、50〜160℃が平面性、寸法安定性を良くするためさらに好ましい。
【0153】
これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。この場合、乾燥雰囲気を溶媒の爆発限界濃度を考慮して実施することは勿論のことである。
【0154】
乾燥装置11での乾燥工程を終えて搬送される光学フィルムFを、巻取装置13によって巻き取り、光学フィルムの元巻(原反)を得る。乾燥が終了したフィルムの残留溶媒量は、0.5重量%以下、好ましくは0.1重量%以下とすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。
【0155】
フィルムの巻き取り方法は、一般に使用されているワインダーを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の張力をコントロールする方法があり、それらを使い分ければよい。巻取りコア(巻芯)へのフィルムの接合は、両面接着テープでも、片面接着テープでもどちらでもよい。
【0156】
セルロースエステル等の光学フィルムFの乾燥後の膜厚は、液晶表示装置の薄型化の観点から、15μm以上30μm以下であることが好ましい。ここで、乾燥後の膜厚とは、光学フィルムF中の残留溶媒量が0.5重量%以下の状態での膜厚を指すものとする。
【0157】
巻取り後の光学フィルムFの膜厚が薄過ぎると、例えば偏光板用保護フィルムとしての必要な強度が得られない場合がある。一方、光学フィルムFの膜厚が厚過ぎると、従来のセルロースエステル等の樹脂フィルムに対して薄膜化の優位性がなくなる。膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、流延ダイ3の口金のスリット間隙、流延ダイ3の押し出し圧力、金属支持体6の速度等をコントロールするのがよい。また、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが好ましい。
【0158】
(セルロースエステルフィルムの物性)
本実施形態におけるセルロースエステルフィルムの膜厚は、上述したように、15μm以上30μm以下であることが望ましい。また、セルロースエステルフィルムの幅は、1〜4mのものが好ましく用いられる。4mを超えると搬送が困難となる。
【0159】
また、セルロースエステルフィルムの長さは、500〜10000mが好ましく、より好ましくは1000〜8000mである。前記長さの範囲とすることで、ハードコート層等の塗布における加工適正やセルロースエステルフィルム自体のハンドリング性に優れる。
【0160】
また、セルロースエステルフィルムの算術平均粗さRaは、好ましくは2〜10nm、より好ましくは2〜5nmである。算術平均粗さRaは、JIS B0601:1994に準じて測定できる。
【0161】
また、セルロースエステルフィルムのアルカリ処理前の対水接触角は、40°〜80°の範囲が一般的であり、好ましくは50°〜70°である。また、アルカリ処理後の対水接触角は、アルカリの処理条件にもよるが、10°〜60°が一般的であり、好ましくは20°〜60°である。なお、対水接触角は、前記ハードコート層の対水接触角の測定方法で記載した方法に準じて、測定した値である。
【0162】
アルカリ処理によってハードコート層の対水接触角が低下して、セルロースエステルフィルムの対水接触角に近づくことで、親水性層同士の積層状態となり、巻ずれ防止効果が得られると推定している。アルカリ処理の方法としては、セルロースエステルフィルムをアルカリ溶液に浸潰した後、水洗して乾燥する。また、アルカリ処理後、酸性水工程で中和してから、水洗、及び乾燥を行ってもよい。
【0163】
アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液があげられ、水酸化イオンの濃度は,0.1〜5mol/Lの範囲であることが好ましく、0.5mol/L〜3mol/Lの範囲であることが更に好ましい。更には、アルカリ溶液の温度は25〜90℃の範囲が好ましく、40〜70℃の範囲が更に好ましい。アルカリ処理時間は5秒〜5分の範囲、好ましくは30秒〜3分の範囲である。
【0164】
<その他の層>
本実施形態のハードコートフィルムには、反射防止層や導電性層等、その他の層を設けることができる。
【0165】
〈反射防止層〉
本実施形態のハードコートフィルムは、ハードコート層上に反射防止層を塗設して、外光反射防止機能を有する反射防止フィルムとして用いることができる。
【0166】
反射防止層は、光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層数、層順等を考慮して形成されていることが好ましい。反射防止層は、支持体である保護フィルムよりも屈折率の低い低屈折率層、若しくは支持体である保護フィルムよりも屈折率の高い高屈折率層と低屈折率層とを組み合わせて構成されていることが好ましい。特に好ましくは、3層以上の屈折率層から構成される反射防止層であり、支持体側から屈折率の異なる3層を、中屈折率層(支持体よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているものが好ましく用いられる。又は、2層以上の高屈折率層と2層以上の低屈折率層とを交互に積層した4層以上の層構成の反射防止層も好ましく用いられる。層構成としては下記のような構成が考えられるが、これに限定されるものではない。
【0167】
セルロースエステルフィルム/ハードコート層/低屈折率層
セルロースエステルフィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
セルロースエステルフィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
ハードコート層/セルロースエステルフィルム/ハードコート層/低屈折率層
ハードコート層/セルロースエステルフィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
ハードコート層/セルロースエステルフィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
低屈折率層/ハードコート層/セルロースエステルフィルム/ハードコート層/低屈折率層
【0168】
(低屈折率層)
低屈折率層は、シリカ系微粒子を含有することが好ましく、その屈折率は、23℃、波長550nm測定で、1.30〜1.45の範囲であることが好ましい。
【0169】
低屈折率層の膜厚は、5nm〜0.5μmの範囲内であることが好ましく、10nm〜0.3μmの範囲内であることが更に好ましく、30nm〜0.2μmの範囲内であることが最も好ましい。
【0170】
低屈折率層形成用組成物については、シリカ系微粒子として、特に外殻層を有し内部が多孔質又は空洞の粒子を少なくとも1種類以上含むことが好ましい。特に該外殻層を有し内部が多孔質又は空洞である粒子が、中空シリカ系微粒子であることが好ましい。
【0171】
なお、低屈折率層形成用組成物には、下記一般式(OSi−1)で表される有機珪素化合物若しくはその加水分解物、あるいは、その重縮合物を併せて含有させても良い。
【0172】
一般式(OSi−1):Si(OR)
式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。一般式で表される有機珪素化合物としては、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等が好ましく用いられる。
【0173】
他に溶剤、必要に応じて、シランカップリング剤、硬化剤、界面活性剤等を低屈折率層形成用組成物に添加してもよい。また、低屈折率層形成用組成物は、フッ素原子を35〜80質量%の範囲で含み、且つ架橋性若しくは重合性の官能基を含む含フッ素化合物を主としてなる熱硬化性及び/又は光硬化性を有する化合物を含有しても良い。具体的には含フッ素ポリマー、あるいは含フッ素ゾルゲル化合物などである。含フッ素ポリマーとしては、例えばパーフルオロアルキル基含有シラン化合物〔例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン〕の加水分解物や脱水縮合物の他、含フッ素モノマー単位と架橋反応性単位とを構成単位とする含フッ素共重合体が挙げられる。
【0174】
(高屈折率層)
高屈折率層の屈折率については、23℃、波長550nm測定で、1.4〜2.2の範囲に調整することが好ましい。また、高屈折率層の厚さは5nm〜1μmが好ましく、10nm〜0.2μmであることが更に好ましく、30nm〜0.1μmであることが最も好ましい。
【0175】
高屈折率層の屈折率の調整は、金属酸化物微粒子等を添加することで実現できる。用いる金属酸化物微粒子の屈折率は1.80〜2.60であるものが好ましく、1.85〜2.50であるものが更に好ましい。金属酸化物微粒子の種類は特に限定されるものではなく、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSから選択される少なくとも一種の元素を有する金属酸化物を用いることができる。
【0176】
(導電性層)
ハードコートフィルムは、ハードコート層上に導電性層を形成して構成されても良い。設けられる導電性層としては、一般的に広く知られた導電性材料を用いることができる。例えば、酸化インジウム、酸化錫、酸化インジウム錫、金、銀、パラジウム等の金属酸化物を用いることができる。これらは、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、溶液塗布法等により、ハードコートフィルム上に薄膜として形成することができる。また、前記したπ共役系導電性ポリマーである有機導電性材料を用いて、導電性層を形成することも可能である。
【0177】
特に、透明性、導電性に優れ、比較的低コストに得られる酸化インジウム、酸化錫又は酸化インジウム錫のいずれかを主成分とした導電性材料を好適に使用することができる。導電性層の厚さは、適用する材料によっても異なるため一概には言えないが、表面抵抗率で1000Ω以下、好ましくは500Ω以下になるような厚さであって、経済性をも考慮すると、10nm以上、好ましくは20nm以上、80nm以下、好ましくは70nm以下の範囲が好適である。このような薄膜においては導電性層の厚さムラに起因する可視光の干渉縞は発生しにくい。
【0178】
<偏光板>
次に、本実施形態のハードコートフィルムを用いた偏光板について述べる。偏光板は一般的な方法で作製することができる。
【0179】
例えば、本実施形態のハードコートフィルムをアルカリ鹸化処理し、処理したハードコートフィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。
【0180】
偏光膜の他方の面は、該ハードコートフィルムを用いてもよいし、前記したセルロースエステルフィルムを用いてもよい。もう一方の面に用いるセルロースエステルフィルムの膜厚は、平滑性やカールバランスを整え、巻きズレ防止効果をより高める観点から、5〜34μmの範囲であることが好ましい。
【0181】
偏光板の主たる構成要素である偏光膜(偏光子)とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これにはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものとがあるが、これらに限定されるわけではない。
【0182】
偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられる。偏光膜の膜厚は5〜30μm、好ましくは8〜15μmである。
【0183】
該偏光膜の面上に、本実施形態のハードコートフィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは、完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
【0184】
(粘着層)
液晶セルの基板と貼り合わせるためにフィルム片面に用いられる粘着剤層は、光学的に透明であることはもとより、適度な粘弾性や粘着特性を示すものが好ましい。
【0185】
具体的な粘着層としては、例えばアクリル系共重合体やエポキシ系樹脂、ポリウレタン、シリコーン系ポリマー、ポリエーテル、ブチラール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、合成ゴムなどの接着剤若しくは粘着剤等のポリマーを用いて、乾燥法、化学硬化法、熱硬化法、熱熔融法、光硬化法等により膜形成させ、硬化させることができる。なかでも、アクリル系共重合体は、最も粘着物性を制御しやすく、かつ透明性や耐候性、耐久性などに優れていて好ましく用いることができる。
【0186】
<巻き取り>
本実施形態のハードコートフィルム、セルロースエステルフィルムまたは偏光板がロール状に巻かれた際の層間に保持される空気層厚みは、0.5μm〜10μmが好ましく、より好ましくは1〜5μmである。空気層厚み(t’)は、t’=[{π(D−d)/4L}−t]の式から求められる値である。前記式において、Dは巻き取り直径、dは巻き芯直径、Lは巻き長さ、tはフィルム厚みをそれぞれ表しており、単位は全てμmである。
【0187】
また、ハードコートフィルム等の巻き取り方法は、巻き取り軸の前にフィルムがタッチするロールを設け、フィルムを巻き取っていく方法や、巻き取り軸にフィルムを巻き取っていく際に、フィルムがタッチするロールが一定距離間隔で徐々に離れながらフィルムを巻き取る方法(ギャップ巻き)や、巻芯を回転させて巻芯にフィルムを巻き取るフィルム巻取部と、フィルムが巻芯上でフィルムの幅方向に一定範囲内で周期的にずれながら巻き取るオシレート巻き方法などを用いることができる。上記の空気層厚みは、巻き取り条件の調整(例えば巻き取り時の張力の調整)によって制御できる。
【0188】
<画像表示装置>
本実施形態のハードコートフィルムは、画像表示装置に使用することで、視認性(クリア性)に優れた性能が発揮される点で好ましい。画像表示装置としては、反射型、透過型、半透過型液晶表示装置又は、TN型、STN型、OCB型、VA型、IPS型、ECB型等の各種駆動方式の液晶表示装置、タッチパネル表示装置、有機EL表示装置やプラズマディスプレイ等が挙げられる。これら画像表示装置の中でも、液晶表示装置やタッチパネル表示装置に本実施形態のハードコートフィルムを用いた場合、高い視認性に優れる点で好ましい。
【0189】
図2は、本実施形態のハードコートフィルムが適用される画像表示装置の一例である液晶表示装置20の概略の構成を示す断面図である。液晶表示装置20は、液晶層を2枚の基板で挟持した液晶セル21の一方の面に偏光板22を貼り合わせ、他方の面に偏光板23を貼り合わせて構成されている。ここで、液晶セル21に対して偏光板22が設けられている側を光出射側(視認側)とする。
【0190】
偏光板22の偏光膜31(偏光子)の両面には、セルロースエステルフィルム41・42がそれぞれ貼り付けられており、偏光板23の偏光膜32(偏光子)の両面には、セルロースエステルフィルム43・44がそれぞれ貼り付けられている。また、一方の偏光板22のセルロースエステルフィルム41・42のうち、液晶セル21とは反対側に位置するセルロースエステルフィルム41の表面には、ハードコート層51が形成されている。上記のセルロースエステルフィルム41とハードコート層51とは、本実施形態のハードコートフィルム60を構成している。偏光膜31・32、セルロースエステルフィルム41〜44、ハードコート層51については、前述のものを使用できる。なお、ハードコートフィルム60のハードコート層51の表面には、上述した反射防止層等の他の層が形成されていてもよい。
【0191】
<ハードコートフィルムの製造方法>
本実施形態では、上記したハードコートフィルム60におけるハードコート層51の硬化収縮ムラ、および偏光膜31と接着するための接着剤をセルロースエステルフィルム41に塗布する際の塗布ムラを抑える観点から、以下の方法によって、ハードコートフィルム60を製造している。
【0192】
本実施形態では、溶液流延法によって、膜厚が15μm以上30μm以下の薄膜光学フィルムとしてのセルロースエステルフィルム41を製膜するとともに、そのセルロースエステルフィルム41に、可塑剤A(第1の可塑剤)と、マット剤としてのシリカ微粒子とを含有させている。
【0193】
可塑剤Aは、溶液流延法によるセルロースエステルフィルム41の製膜過程で流延時の金属支持体6側に偏在する特性を有するものであり、例えば上述したリン酸系の可塑剤(例えばTPPやBDP)で構成されている。可塑剤Aが金属支持体6側に偏在するのは、流延時の金属支持体6上では、フィルム(ウェブ)の金属支持体6と反対側が空気と接しているため、金属支持体6側よりも金属支持体6側と反対側で溶剤が蒸発しやすくなり、これによって、溶剤に溶けている可塑剤Aが金属支持体6側に寄るためと考えられる。本実施形態では、フィルム全体に対して、可塑剤Aは1〜20重量%含有されている。以後、剥離後のフィルムの金属支持体6側であった面をB面、金属支持体6と反対側であった面をA面と表現することにする。また、セルロースエステルフィルム41のA面およびB面を図面上で区別するときは、図3に示すように、それぞれ面41a(A面)および面41b(B面)とする。
【0194】
シリカ微粒子は、可塑剤Aとは異なり、溶剤に溶けているものではないので、金属支持体6上での溶剤の蒸発に伴ってB面側に寄ることはなく、溶剤の蒸発に伴い、A面側でのシリカ微粒子の濃度が、フィルム全体におけるシリカ微粒子の平均濃度(例えば0.1〜1%)よりも大きくなる。つまり、製膜されたセルロースエステルフィルム41においては、A面側でのシリカ微粒子の濃度がフィルム全体での平均濃度よりも大きい。
【0195】
本実施形態では、製膜されたセルロースエステルフィルム41において、A面側、つまり、シリカ微粒子の濃度が平均濃度よりも大きい側に、ハードコート層51を塗布している。その理由は、以下の通りである。
【0196】
製膜されたセルロースエステルフィルム41のB面側は、製膜時の金属支持体6と接触する側の面であり、金属支持体6の表面に傷があると、その傷がB面に転写される。そして、このB面にハードコート層51を塗布すると、B面において傷が生じた箇所と生じていない箇所とで、ハードコート層51の硬化収縮にムラが生じる。これに対して、セルロースエステルフィルム41のA面側は、製膜時に金属支持体6と接触しない側の面であり、金属支持体6の表面の傷の影響を受けることはない。本実施形態では、ハードコート層51を、セルロースエステルフィルム41のA面側に塗布するので、金属支持体6の表面の傷に起因して、塗布されたハードコート層51の硬化収縮にムラが生じるのを抑えることができる。
【0197】
このとき、セルロースエステルフィルム41のA面側およびB面側を見分けるにあたって、フィルムの断面の微小範囲の成分分析を度々実施して断面の材料組成を調べ、これによってフィルムのA面、B面を判断するのでは、その判断に長時間を要するため、ハードコートフィルム60の生産効率が低下する。また、可塑剤Aの効果により、後述するように、B面の微小な傷は緩和されるため、目視でB面かどうかを判断することも困難である。
【0198】
この点、シリカ微粒子は溶剤に溶けているものではないので、セルロースエステルフィルム41においてシリカ微粒子の濃度が大きい側のA面は、光学的に判別することが容易である。したがって、本実施形態のように、セルロースエステルフィルム41において、シリカ微粒子の濃度が平均濃度よりも大きい面側にハードコート層51を塗布することにより、A面にハードコート層51を確実に形成することができる(ハードコート層51を反対側の面に間違えて形成するのを防止できる)。これにより、ハードコートフィルム60の生産効率の低下を抑えることができる。なお、フィルム中におけるシリカ微粒子の分散状態については、例えば、塗布前の光学フィルムから上層のわずかな切片を採取し、倍率5000倍の透過型電子顕微鏡で光学フィルムの断層写真を撮影後、その断層写真から粒子の投影面積を求めることで簡易に確認できる。
【0199】
また、図4は、上述した偏光板22の主要部の構成を模式的に示す断面図である。同図に示すように、偏光板22を作製すべく、ハードコートフィルム60を、偏光膜31と接着剤71(例えば完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤)によって接着する場合、接着剤71は、ハードコートフィルム60におけるハードコート層51とは反対側の面(セルロースエステルフィルム41の面41b)に塗布される。この面41bは、セルロースエステルフィルム41の製膜の際の流延時に金属支持体6と接触する側の面であり、金属支持体6に傷があると、その傷が面41bに転写される。
【0200】
しかし、セルロースエステルフィルム41におけるB面側(面41b側)に可塑剤Aが偏在していることにより、可塑剤Aによって面41b側に柔軟性が付与される。これにより、面41bの傷が緩和されやすくなるため、面41bに接着剤71の塗布ムラが生じるのを抑えることができ、ハードコートフィルム60と偏光膜31との接着不良を抑えることができる。
【0201】
なお、可塑剤AがB面側に偏在することによって面41bの傷が緩和されることから、一見、セルロースエステルフィルム41において、B面側にハードコート層51を形成しても、ハードコート層51の硬化収縮ムラが抑えられるようにも思われるが、硬化収縮ムラは抑えることができないことがわかっている。これは、接着剤71の塗布ムラよりもハードコート層51の硬化収縮ムラのほうが、セルロースエステルフィルム41の傷による影響を大きく受けるためと思われる。
【0202】
本実施形態では、上記のように、セルロースエステルフィルム41のA面側にハードコート層51を形成し、これによってB面側に接着剤71を塗布することになるので、ハードコート層51の硬化収縮ムラおよび接着剤71の塗布ムラを同時に抑えることができる。したがって、上記の製法によって製造されたハードコートフィルム60を、液晶表示装置20の偏光板22に適用したときに(ハードコートフィルム60を偏光板22の偏光膜31に貼り付けたときに)、表示欠陥が生じるのを抑えることができる。
【0203】
また、セルロースエステルフィルム41に含有される可塑剤Aが1重量%よりも少ない場合、接着剤71の塗布面側(B面側)の柔軟性が低下し、接着剤71の塗布ムラを抑えることが困難となる。一方、可塑剤Aが20重量%よりも多い場合は、可塑剤のブリードアウトが起こりやすくなる。よって、セルロースエステルフィルム41が可塑剤Aを1〜20重量%含有していることにより、ブリードアウトを抑えながら、接着剤71の塗布ムラによる上記の表示欠陥を抑えることができる。
【0204】
特に、上記した可塑剤Aとして、リン酸系の可塑剤(例えばTPP、BDP)を用いることにより、セルロースエステルフィルム41の製膜過程で流延時の金属支持体6側に可塑剤Aを確実に偏在させることができ、接着剤71が塗布される金属支持体6側の面41bに柔軟性を確実に付与することができる。
【0205】
ところで、セルロースエステルフィルム41のA面側に塗布されるハードコート層51の厚さは、0.5μm以上10μm以下であることが望ましい。ハードコート層51が0.5μmよりも薄い場合は、ハードコート層51に必要な硬さを付与することが困難となる。一方、ハードコート層51が10μmよりも厚い場合は、ハードコートフィルム60の巻き芯への巻き付け時に、ハードコート層51にクラックが生じやすくなる。したがって、ハードコート層51の厚さが0.5μm以上10μm以下であることにより、ハードコート層51に必要な硬さを付与しながら、巻き付け時のクラックの発生を抑えることができる。また、ハードコート層の厚さが0.7μm以上9μm以下であれば、ハードコート層51に十分な硬度を付与しながら、クラックの発生を確実に抑えることができる点で、更に好ましい。
【0206】
また、セルロースエステルフィルム41は、上記した可塑剤Aとは異なる可塑剤B(第2の可塑剤)を1重量%以上含有していてもよい。この場合、セルロースエステルフィルム41における可塑剤Aおよび可塑剤Bの総量が、20重量%以下であることが望ましい。
【0207】
セルロースエステルフィルム41が、可塑剤Bを1重量%以上含有していることにより、セルロースエステルフィルム41の全体に柔軟性を与えて、フィルム全体にしなやかさを与えることができる。また、セルロースエステルフィルム41における可塑剤Aおよび可塑剤Bの総量が、20重量%以下であることにより、可塑剤Aおよび可塑剤Bの少なくとも一方のブリードアウトを抑えることができる。
【0208】
このとき、可塑剤Bは、上述したフタル酸エステル系または多価アルコールエステル系の可塑剤であることが望ましい。このような可塑剤であれば、フィルム全体にしなやかさを与える上記の効果を確実に得ることができる。
【0209】
<実施例>
以下、本実施形態の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り、「質量部」あるいは「質量%」を表すものとする。
【0210】
<実施例1>
(セルロースエステルフィルムの作製)
・二酸化珪素分散液の調整
アエロジルR812(日本アエロジル(株)製) 10質量部
(一次粒子の平均径7nm)
エタノール 90質量部
以上をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。二酸化珪素分散液に88質量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合し、二酸化珪素分散希釈液を作製した。微粒子分散希釈液濾過器(アドバンテック東洋(株):ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1N)で濾過した。
【0211】
〈ドープ組成物の調製〉
(セルロースエステル樹脂)
セルローストリアセテートA(リンター綿から合成されたセルローストリアセテート、アセチル基置換度2.88、Mn=140000)90質量部
(添加剤)
X−1 5質量部
X−12 4質量部
(紫外線吸収剤)
TINUVIN 928(BASFジャパン(株)製) 3質量部
(微粒子)
二酸化珪素分散希釈液 4質量部
(溶媒)
メチレンクロライド 432質量部
エタノール 38質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープ(ドープ組成物1)を調製した。
【0212】
次に、ベルト流延装置(図1の製造装置)を用い、金属支持体6としてのステンレスバンド支持体上に上記のドープを均一に流延した。そして、ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100%になるまで溶剤を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上からウェブを剥離した。セルロースエステルフィルムのウェブを35℃で溶剤を蒸発させ、1.15m幅にスリットし、テンターでTD方向(フィルムの幅手方向)に1.15倍に延伸しながら、140℃の乾燥温度で乾燥させた。その後、120℃の乾燥装置11内を多数のローラで搬送させながら15分間乾燥させた後、1.3m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm、高さ5μmのナーリング加工を施し、巻芯に巻き取り、セルロースエステルフィルムを得た。セルロースエステルフィルムの膜厚は25μm、巻長は5000mであった。また、セルロースエステルフィルムにおけるシリカ微粒子(可塑剤A)の含有量は、9重量%であり、フタル酸エステル系可塑剤(可塑剤B)の含有量は、2重量%であった。なお、フタル酸エステル系可塑剤は、上記化合物X−1およびX−12である。
【0213】
なお、ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出されるMD方向の延伸倍率は1.01倍であった。
【0214】
[ハードコートフィルムの作製]
上記作製したセルロースエステルフィルムのA面上に、下記のハードコート層組成物を孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過したものを、押し出しコーターを用いて塗布し、恒率乾燥区間温度50℃、減率乾燥区間温度50℃で乾燥の後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、紫外線ランプを用い照射部の照度が100mW/cmで、照射量を0.2J/cmとして塗布層を硬化させ、ドライ膜厚7μmのハードコート層を形成して、空気層厚みが4μmとなるように巻き取り、ロール状のハードコートフィルムを作製した。
【0215】
この際のセルロースエステルフィルムのA面、B面の判定としては、セルロースエステルフィルムの切片を採取し、倍率5000倍の透過型電子顕微鏡でセルロースエステルフィルムの断層写真を撮影後、その断層写真から粒子の投影面積を観察することで、粒子存在量が多い方をA面として簡易的に判定した。
【0216】
《ハードコート層組成物》
〈フッ素−シロキサングラフトポリマーの調製〉
フッ素−シロキサングラフトポリマーの調製に用いた素材の市販品名を示す。
【0217】
ラジカル重合性フッ素樹脂(A):セフラルコートCF−803(水酸基価60、数平均分子量15,000;セントラル硝子(株)製)
片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B):サイラプレーンFM−0721(数平均分子量5,000;チッソ(株)製)
ラジカル重合開始剤:パーブチルO(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート;日本油脂(株)製)
硬化剤:スミジュールN3200(ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット型プレポリマー;住化バイエルウレタン(株)製)
【0218】
(ラジカル重合性フッ素樹脂の合成)
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、セフラルコートCF−803(1554質量部)、キシレン(233質量部)、及び2−イソシアナトエチルメタクリレート(6.3質量部)を入れ、乾燥窒素雰囲気下で80℃に加熱した。80℃で2時間反応し、サンプリング物の赤外吸収スペクトルによりイソシアネートの吸収が消失したことを確認した後、反応混合物を取り出し、ウレタン結合を介して50質量%のラジカル重合性フッ素樹脂を得た。
【0219】
(フッ素−シロキサングラフト化合物の調製)
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、上記合成したラジカル重合性フッ素樹脂(26.1質量部)、キシレン(19.5質量部)、酢酸n−ブチル(16.3質量部)、メチルメタクリレート(2.4質量部)、n−ブチルメタクリレート(1.8質量部)、ラウリルメタクリレート(1.8質量部)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(1.8質量部)、FM−0721(5.2質量部)、及びパーブチルO(0.1質量部)を入れ、窒素雰囲気中で90℃まで加熱した後、90℃で2時間保持した。パーブチルO(0.1部)を追加し、さらに90℃で5時間保持することによって、重量平均分子量が171,000である35質量%フッ素−シロキサングラフト化合物の溶液を得た。重量平均分子量はGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により求めた。また、フッ素−シロキサングラフト化合物の質量%は、HPLC(液体クロマトグラフィー)により求めた。
【0220】
(活性線硬化樹脂)
ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート
(NKエステルA−TMM−3L、新中村化学工業(株)製)
70質量部
トリメチロールプロパントリアクリレート(A−TMPT、新中村化学工業(株)製) 30質量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 6質量部
(添加剤)
フッ素−シロキサングラフト化合物(35質量%) 2質量部
(溶剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20質量部
酢酸メチル 30質量部
メチルエチルケトン 70質量部
【0221】
[偏光板の作製]
上記で作製したハードコートフィルムおよびセルロースエステルフィルムを用い、以下のようにして偏光板を作製した。
【0222】
(a)偏光膜の作製
鹸化度99.95モル%、重合度2400のポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する)100質量部に、グリセリン10質量部、及び水170質量部を含浸させたものを溶融混練し、脱泡後、Tダイから金属ローラ上に溶融押出し、製膜した。その後、乾燥・熱処理して、PVAフィルムを得た。
【0223】
得られたPVAフィルムは、平均厚さが25μm、水分率が4.4%、フィルム幅が3mであった。次に、得られたPVAフィルムを、予備膨潤、染色、湿式法による一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順番で、連続的に処理して、偏光膜を作製した。すなわち、PVAフィルムを温度30℃の水中に30秒間浸して予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの温度35℃の水溶液中に3分間浸した。続いて、ホウ酸濃度4%の50℃の水溶液中でフィルムにかかる張力が700N/mの条件下で、6倍に一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの温度30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。その後、PVAフィルムを取り出し、温度40℃で熱風乾燥し、更に温度100℃で5分間熱処理を行った。得られた偏光膜は、平均厚さが13μm、偏光性能については透過率が43.0%、偏光度が99.5%、2色性比が40.1であった。
【0224】
(b)偏光板の作製
下記工程1〜4に従って、偏光膜、セルロースエステルフィルムおよびハードコートフィルムを貼り合わせて偏光板を作製した。
【0225】
工程1:前述の偏光膜を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤溶液の貯留槽中に1〜2秒間浸漬した。
【0226】
工程2:セルロースエステルフィルムとハードコートフィルムを下記条件で、アルカリ処理を実施した。次いで、工程1でポリビニルアルコール接着剤溶液に偏光膜を浸漬した。浸漬した偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、この偏光膜をセルロースエステルフィルムフィルムとハードコートフィルムとで挟み込んで積層配置し、空気層厚みが5μmとなるように巻き取り、ロール状の偏光板を作製した。
【0227】
(アルカリ処理)
鹸化工程 2.5mol/L−KOH 50℃ 120秒
水洗工程 水 30℃ 60秒
中和工程 10質量部HCl 30℃ 45秒
水洗工程 水 30℃ 60秒
鹸化処理後、水洗、中和、水洗の順に行い、次いで100℃で乾燥する。
【0228】
工程3:積層物を、2つの回転するローラにて20〜30N/cmの圧力で約2m/minの速度で貼り合わせた。このとき、気泡が入らないように注意した。
【0229】
工程4:工程3で作製した試料を、温度100℃の乾燥機中にて5分間乾燥処理し、ロール状の偏光板を作製した。
【0230】
<液晶表示装置の作製>
(耐久試験評価)
上記作製したロール状偏光板を、アルミ防湿シートに包み、長期輸送を想定して50℃相対湿度80%の恒温槽で25日保存した。25日間保存後、以下のようにして粘着層を設けたのち、液晶表示装置に組み込み、液晶表示装置を作製した。
【0231】
(粘着層)
偏光板のセルロースエステルフィルムに市販のアクリル系粘着剤を乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布し、110℃のオーブンで5分間乾燥して粘着層を形成後、粘着層に剥離性の保護フィルムを張り付けた。
【0232】
(液晶表示装置)
21.5インチの液晶表示装置(IPS226V−PN、LGエレクトロニクスジャパン(株)製)に液晶層を挟んで設置されている2対の偏光板のうち、観察者側の片面の偏光板を剥がし、上記作製した偏光板をハードコート層が視認側となるようにして、粘着剤層と液晶セルガラスとを貼合した。観察者側の偏光板の透過軸とバックライト側の偏光板の透過軸とが直交するように配置して、液晶表示装置を作製した。
【0233】
<実施例2>
ハードコートフィルムのセルロースエステルフィルムにおける可塑剤Aの含有量を1重量%とした以外は、実施例1と同様である。
【0234】
<実施例3>
ハードコートフィルムのセルロースエステルフィルムにおける可塑剤Aの含有量を20重量%とした以外は、実施例1と同様である。
【0235】
<実施例4>
ハードコートフィルムのセルロースエステルフィルムの膜厚を15μmとした以外は、実施例1と同様である。
【0236】
<実施例5>
ハードコートフィルムのセルロースエステルフィルムの膜厚を30μmとした以外は、実施例1と同様である。
【0237】
<実施例6>
ハードコートフィルムのセルロースエステルフィルムにおける可塑剤Bの含有量を1重量%とした以外は、実施例1と同様である。
【0238】
<実施例7>
ハードコートフィルムのセルロースエステルフィルムにおける可塑剤Bの含有量を3重量%とした以外は、実施例1と同様である。
【0239】
<比較例1>
ハードコートフィルムのハードコート層を、セルロースエステルフィルムのB面側に塗布した以外は、実施例1と同様である。
【0240】
<比較例2>
ハードコートフィルムのセルロースエステルフィルムに可塑剤Aを含有させなかった以外は、実施例1と同様である。
【0241】
<比較例3>
ハードコートフィルムのセルロースエステルフィルムにおける可塑剤Aの含有量を21重量%とした以外は、実施例1と同様である。
【0242】
<比較例4>
ハードコートフィルムのセルロースエステルフィルムの膜厚を14μmとした以外は、実施例1と同様である。
【0243】
《評価》
上記作製した液晶表示装置の表示欠陥、ハードコートフィルムの強度、可塑剤のブリードアウトについて評価した。その結果を表1に示す。
【0244】
【表1】
【0245】
ここで、液晶表示装置の表示欠陥については、以下の基準に基づいて目視で確認して評価した。
◎:表示欠陥が全く検出されない。
○:表示欠陥がほとんど検出されない。
△:表示欠陥がごく稀に検出されるが、実使用上問題なし。
×:表示欠陥が頻繁に検出され、使用に耐えない。
【0246】
また、ハードコートフィルムの強度については、引張試験機を用い、以下の基準に基づいて評価した。
◎:目標よりもはるかに引っ張りに対して強い。
○:引っ張りに対して目標を十分に達成する強さである。
△:引っ張りに対して目標を達成する強さである。
×:目標よりも引っ張りに対して弱く、使用に耐えない。
【0247】
また、可塑剤のブリードアウトについては、製膜されたセルロースエステルフィルムと同じものを、高温高湿化の耐久条件に曝した後、以下の基準に基づいて目視で評価した。
◎:全く発生なし。
○:ほとんど発生なし。
△:ごく稀に発生するが、実使用上問題なし。
×:頻繁に発生し、使用に耐えない。
【0248】
表1より、比較例1では、ハードコート層がセルロースエステルフィルムのB面側に塗布されているために、表示欠陥が頻繁に発生している。比較例2では、ハードコート層がセルロースエステルフィルムのA面側に塗布されているが、可塑剤Aが含有されていないため、表示欠陥が頻繁に発生している。比較例3では、可塑剤Aの含有量が20重量%を超えているため、可塑剤Aのブリードアウトが頻繁に発生している。比較例4では、セルロースエステルフィルムの膜厚が14μmと薄いため、フィルム強度が確保されていない。
【0249】
これに対して、実施例1〜7では、セルロースエステルフィルムにおける可塑剤Aの含有量が1〜20重量%であり、セルロースエステルフィルムの膜厚が15〜30μmであり、ハードコート層がセルロースエステルフィルムのA面側に塗布されていることから、液晶表示装置での表示欠陥、フィルム強度、ブリードアウトの全ての評価項目において良好な結果が得られていることがわかる。
【0250】
次に、実施例1のハードコートフィルムにおいて、セルロースエステルフィルム上に塗布されるハードコート層の厚さを変化させた。より具体的には、実施例1−1〜1−5では、ハードコート層の厚さを、それぞれ、7μm、0.3μm、11μm、0.7μm、9μmとしてハードコートフィルムを作製した。その他の条件については、上述した実施例1と同様である。このようにして作製したハードコートフィルムにおいて、ハードコート層の硬さとクラックの発生について評価を行った。その結果を表2に示す。
【0251】
【表2】
【0252】
ここで、ハードコート層の硬さについては、鉛筆硬度試験によって評価した。具体的には、JIS−S6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS−K5400が規定する鉛筆硬度評価法に従い、500gのおもりを用いて各硬度の鉛筆でハードコートフィルムのハードコート層面を5回繰り返し引っ掻き、傷が1本までの硬度を測定した。そして、以下の基準に基づいてハードコート層の硬さを評価した。なお、鉛筆硬度Hを目標硬度とした。
○:目標硬度を十分に達成できる。
△:目標硬度を達成できる。
【0253】
また、ハードコート層のクラックについては、ハードコートフィルムの試料を、直径5mmおよび直径10mmの丸棒にそれぞれ巻き付けてクラックの発生状況を観察した。ハードコートフィルムを直径10mmの丸棒に巻き付けた場合、いずれの実施例1−1〜1−5についても、ハードコート層にクラックは発生しなかった。一方、ハードコートフィルムを直径5mmの丸棒に巻き付けた場合、一部のハードコートフィルムにおいて、ハードコート層にクラックが発生した。このときのクラックの発生状況を、以下の基準に基づいて表2に示す。
○:ハードコートフィルムを直径5mmの丸棒に巻き付けたときに巻き付け跡がつく(ハードコート層にクラックは発生していない)。
△:ハードコートフィルムを直径5mmの丸棒に巻き付けたときに、ハードコート層にクラックが発生する。
【0254】
表2より、ハードコート層の厚さが0.3μmの場合(実施例1−2参照)、目標硬度を達成でき、ハードコート層の厚さが0.7μm以上であれば(実施例1−1、1−3〜1−5参照)の場合、目標硬度を十分に達成できることが明らかである。また、ハードコート層の厚さが0.5μm(0.3μmと0.7μmとの間)以上であれば、目標硬度を十分に達成できる可能性が高いと言える。
【0255】
一方、ハードコート層の厚さが11μmの場合(実施例1−3参照)、ハードコートフィルムを直径5mmの丸棒に巻き付けたときに、ハードコート層にクラックが発生しているため、クラックの発生を抑えるためには、ハードコート層の厚さが11μmよりも小さいことが必要であると言える。また、ハードコート層の厚さが9μm以下であれば、確実に、ハードコート層のクラックの発生を抑えることができ、ハードコート層の厚さが10μm(9μmと11μmとの間)以下であれば、ハードコート層のクラックの発生を抑えることができる可能性が高いと言える。
【0256】
以上より、ハードコート層の目標硬度を十分に達成し、かつ、厳しい巻き付け条件(直径5mmの丸棒への巻き付け)でのハードコート層のクラックの発生を抑えるためには、ハードコート層の厚さは、0.3μmよりも大きく、11μmよりも小さいことが必要であり、0.5μm以上10μm以下であることが望ましく、0.7μm以上9μm以下であることがより望ましいと言える。
【0257】
次に、実施例1のハードコートフィルムのセルロースエステルフィルムに添加される可塑剤Bの含有量および可塑剤の総量(可塑剤A+可塑剤B)を変化させて、セルロースエステルフィルムのしなやかさ、および可塑剤のブリードアウトについて評価を行った。その結果を表3に示す。
【0258】
【表3】
【0259】
ここで、フィルムのしなやかさについては、フィルムの手触りにより、以下の基準に基づいて評価した。
○:十分な破断強度がある。
△:目標を達成する破断強度がある。
【0260】
また、可塑剤のブリードアウトについては、セルロースエステルフィルムを高温高湿化の耐久条件に曝した後、以下の基準に基づいて目視で評価した。
◎:全く発生なし。
○:ほとんど発生なし。
△:ごく稀に発生するが、実使用上問題なし。
×:頻繁に発生し、使用に耐えない。
【0261】
表3より、可塑剤Bの含有を含有していない場合(実施例1−9参照)、フィルムのしなやかさとして、目標の破断強度を達成できるが、破断強度を十分に達成するためには、可塑剤Bの含有量が1重量%以上であることが必要と言える。また、可塑剤の総量が21重量%であると(実施例1−13参照)、可塑剤のブリードアウトがごく稀に発生することから、ブリードアウトの発生を確実に抑えるためには、可塑剤の総量が20重量%以下であることが必要と言える。
【0262】
なお、以上では、ハードコートフィルムを液晶表示装置の偏光板に適用した例について説明したが、本実施形態の製法で製造されるハードコートフィルムは、このほかにも、タッチパネルの表面を保護するフィルムや、画像表示装置表面のガラス飛散防止フィルムとしても用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0263】
本発明は、例えば液晶表示装置の偏光板の偏光膜に貼り付けられるハードコートフィルムや、タッチパネルまたは画像表示装置の基板表面に貼り付けられるハードコートフィルムの製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0264】
6 金属支持体(支持体)
41 セルロースエステルフィルム(薄膜光学フィルム)
41a 面
51 ハードコート層
60 ハードコートフィルム
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】