特表-13161615IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2013年10月31日
【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】熱電変換素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/82 20060101AFI20151201BHJP
   H01L 37/00 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
   H01L29/82 Z
   H01L37/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
【出願番号】特願2014-512478(P2014-512478)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2013年4月15日
(31)【優先権主張番号】特願2012-98540(P2012-98540)
(32)【優先日】2012年4月24日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102864
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 実
(72)【発明者】
【氏名】河本 滋
(72)【発明者】
【氏名】石田 真彦
(72)【発明者】
【氏名】桐原 明宏
【テーマコード(参考)】
5F092
【Fターム(参考)】
5F092AB10
5F092AC26
5F092AD06
5F092BD03
5F092BD04
5F092BD06
5F092BD13
5F092BD19
5F092BD24
(57)【要約】
本発明に係る熱電変換素子は、磁性体層と、磁性体層上に接触するように形成されスピン軌道相互作用を発現する材料で形成された複数の変換電極と、を備える。複数の変換電極同士は、物理的に離間している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体層と、
前記磁性体層上に接触するように形成され、スピン軌道相互作用を発現する材料で形成された複数の変換電極と
を備え、
前記複数の変換電極同士は、物理的に離間している
熱電変換素子。
【請求項2】
請求項1に記載の熱電変換素子であって、
更に、導電性の電力取り出し構造を備え、
前記複数の変換電極の少なくとも一部が、前記電力取り出し構造と接触している
熱電変換素子。
【請求項3】
請求項2に記載の熱電変換素子であって、
前記電力取り出し構造は、前記少なくとも一部の変換電極と接触するように形成された接続電極である
熱電変換素子。
【請求項4】
請求項2に記載の熱電変換素子であって、
前記複数の変換電極は、複数の変換電極ペアを含んでおり、
前記複数の変換電極ペアの各々を構成する2個の変換電極同士は、可変抵抗を介して電気的に接続されており、
前記可変抵抗の抵抗状態としては、低抵抗状態と、前記可変抵抗の抵抗値が前記低抵抗状態のときよりも高い高抵抗状態とがあり、
前記電力取り出し構造は、前記低抵抗状態の前記可変抵抗を含み、
前記少なくとも一部の変換電極同士は、前記低抵抗状態の前記可変抵抗を介して接続されている
熱電変換素子。
【請求項5】
請求項4に記載の熱電変換素子であって、
更に、出力制御回路を備え、
前記出力制御回路は、前記複数の変換電極ペア毎に前記可変抵抗の前記抵抗状態を前記低抵抗状態あるいは前記高抵抗状態に設定し、それによって前記電力取り出し構造の構成を決定する
熱電変換素子。
【請求項6】
請求項5に記載の熱電変換素子であって、
前記可変抵抗の前記抵抗状態は、前記低抵抗状態と前記高抵抗状態との間で切り替え可能であり、
前記出力制御回路は、前記複数の変換電極ペア毎に前記可変抵抗の前記抵抗状態を切り替えることによって、前記電力取り出し構造の構成を動的に変更する
熱電変換素子。
【請求項7】
請求項1に記載の熱電変換素子であって、
前記複数の変換電極のうち少なくとも1つが、前記磁性体層とは異なる導電部材を介して、一対の外部接続端子に電気的に接続された
熱電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンゼーベック効果及び逆スピンホール効果を利用した熱電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、「スピントロニクス(spintronics)」と呼ばれる電子技術が脚光を浴びている。従来のエレクトロニクスは、電子の1つの性質である「電荷」だけを利用してきたが、スピントロニクスは、それに加えて、電子の他の性質である「スピン」をも積極的に利用する。特に、電子のスピン角運動量の流れである「スピン流(spin-current)」は重要な概念である。スピン流のエネルギー散逸は少ないため、スピン流を利用することによって高効率な情報伝達を実現できる可能性がある。従って、スピン流の生成、検出、制御は重要なテーマである。
【0003】
例えば、電流が流れるとスピン流が生成される現象が知られている。これは、「スピンホール効果(spin-Hall
effect)」と呼ばれている。また、その逆の現象として、スピン流が流れると起電力が発生することも知られている。これは、「逆スピンホール効果(inverse spin-Hall effect)」と呼ばれている。逆スピンホール効果を利用することによって、スピン流を検出することができる。尚、スピンホール効果も逆スピンホール効果も、「スピン軌道相互作用(spin orbit coupling)」が大きな物質(例:Pt、Au)において有意に発現する。
【0004】
また、最近の研究により、磁性体における「スピンゼーベック効果(spin-Seebeck effect)」の存在も明らかになっている。スピンゼーベック効果とは、磁性体に温度勾配が印加されると、温度勾配と平行方向にスピン流が誘起される現象である(例えば、特許文献1、非特許文献1、非特許文献2を参照)。すなわち、スピンゼーベック効果により、熱がスピン流に変換される(熱スピン流変換)。特許文献1では、強磁性金属であるNiFe膜におけるスピンゼーベック効果が報告されている。非特許文献1、2では、イットリウム鉄ガーネット(YIG、YFe12)といった磁性絶縁体と金属膜との界面におけるスピンゼーベック効果が報告されている。
【0005】
尚、温度勾配によって誘起されたスピン流は、上述の逆スピンホール効果を利用して電界(電流、電圧)に変換することが可能である。つまり、スピンゼーベック効果と逆スピンホール効果を併せて利用することによって、温度勾配を電気に変換する「熱電変換」が可能となる。
【0006】
図1は、特許文献1に開示されている熱電変換素子の構成を示している。サファイア基板101の上に熱スピン流変換部102が形成されている。熱スピン流変換部102は、Ta膜103、PdPtMn膜104及びNiFe膜105の積層構造を有している。NiFe膜105は、面内方向の磁化を有している。更に、NiFe膜105上にはPt電極106が形成されており、そのPt電極106の両端は端子107−1、107−2にそれぞれ接続されている。
【0007】
このように構成された熱電変換素子において、NiFe膜105が、スピンゼーベック効果によって温度勾配からスピン流を生成する役割を果たし、Pt電極106が、逆スピンホール効果によってスピン流から起電力を生成する役割を果たす。具体的には、NiFe膜105の面内方向に温度勾配が印加されると、スピンゼーベック効果により、その温度勾配と平行な方向にスピン流が発生する。すると、NiFe膜105からPt電極106にスピン流が流れ込む、あるいは、Pt電極106からNiFe膜105にスピン流が流れ出す。Pt電極106では、逆スピンホール効果により、スピン流方向とNiFe磁化方向とに直交する方向に起電力が生成される。その起電力は、Pt電極106の両端に設けられた端子107−1、107−2から取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−130070号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Uchida et al., “Spin Seebeck insulator”, Nature Materials, 2010, vol. 9, p.894.
【非特許文献2】Uchida et al., “Observation of longitudinal spin-Seebeck effect in magnetic insulators”, Applied Physics Letters, 2010, vol.97, p172505.
【発明の概要】
【0010】
図1で示された熱電変換素子では、スピン流から起電力を生成する金属電極の平面形状が一定である。従って、様々な出力電力要求に応えるためには、金属電極の平面形状が異なる複数種類の熱電変換素子を用意しておく必要がある。しかしながら、これは非効率的である。
【0011】
本発明の1つの目的は、様々な出力電力要求に応えることができる熱電変換素子を提供することにある。
【0012】
本発明の1つの観点において、熱電変換素子が提供される。その熱電変換素子は、磁性体層と、磁性体層上に接触するように形成されスピン軌道相互作用を発現する材料で形成された複数の変換電極と、を備える。複数の変換電極同士は、物理的に離間している。
【0013】
本発明に係る熱電変換素子は、様々な出力電力要求に応えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、特許文献1に記載されている熱電変換素子を概略的に示す斜視図である。
図2図2は、本発明の第1の実施の形態に係る熱電変換素子の構成を概略的に示す斜視図である。
図3図3は、本発明の第2の実施の形態に係る熱電変換素子の構成の一例を示す斜視図である。
図4図4は、本発明の第2の実施の形態に係る熱電変換素子の構成の他の例を示す斜視図である。
図5A図5Aは、本発明の第3の実施の形態に係る熱電変換素子の構成の一例を示す断面図である。
図5B図5Bは、本発明の第3の実施の形態に係る熱電変換素子の構成の他の例を示す断面図である。
図6図6は、本発明の第3の実施の形態に係る熱電変換素子の構成の一例を示す平面図である。
図7図7は、本発明の第3の実施の形態に係る熱電変換素子の構成の他の例を示す平面図である。
図8図8は、本発明の第3の実施の形態に係る熱電変換素子の構成の更に他の例を示す平面図である。
図9A図9Aは、本発明の第3の実施の形態に係る熱電変換素子の構成の更に他の例を示す平面図である。
図9B図9Bは、本発明の第3の実施の形態に係る熱電変換素子の構成の更に他の例を示す断面図である。
図9C図9Cは、本発明の第3の実施の形態に係る熱電変換素子の構成の更に他の例を示す断面図である。
図10図10は、本発明の第4の実施の形態に係る熱電変換素子の構成を示す概念図である。
図11A図11Aは、本発明の第4の実施の形態におけるリンク構成の一例を示す概念図である。
図11B図11Bは、図11Aで示されたリンク構造を用いた熱電変換素子の構成の一例を示す概念図である。
図12図12は、本発明の第4の実施の形態に係る熱電変換素子の構成の一例を示す概念図である。
図13図13は、本発明の第4の実施の形態に係る熱電変換素子の構成の他の例を示す概念図である。
図14図14は、本発明の第4の実施の形態に係る熱電変換素子の構成の更に他の例を示す概念図である。
図15図15は、本発明の第4の実施の形態に係る熱電変換素子の構成の更に他の例を示す概念図である。
図16図16は、本発明の第4の実施の形態に係る熱電変換素子の構成の更に他の例を示す概念図である。
図17図17は、本発明の第5の実施の形態に係る熱電変換素子の構成の一例を概略的に示す平面図である。
図18図18は、本発明の第5の実施の形態に係る熱電変換素子の構成の他の例を概略的に示す平面図である。
図19図19は、本発明の第6の実施の形態に係る熱電変換素子の構成を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照して、本発明の実施の形態に係る熱電変換素子を説明する。
【0016】
1.第1の実施の形態
図2は、第1の実施の形態に係る熱電変換素子1の構成を概略的に示す斜視図である。熱電変換素子1は、磁性体層20及び変換電極30を備えている。変換電極30は磁性体層20上に形成されている。つまり、磁性体層20と変換電極30は積層されている。この積層方向は、以下、z方向と参照される。z方向と直交する面内方向は、x方向とy方向である。x方向とy方向は、互いに直交している。
【0017】
磁性体層20は、スピンゼーベック効果を発現する熱−スピン流変換部である。つまり、磁性体層20は、スピンゼーベック効果によって温度勾配∇Tからスピン流Jsを生成(駆動)する。スピン流Jsの方向は、温度勾配∇Tの方向と平行あるいは反平行である。図2で示される例では、+z方向の温度勾配∇Tが印加され、+z方向あるいは−z方向に沿ったスピン流Jsが生成される。
【0018】
磁性体層20の材料は、強磁性金属であってもよいし、磁性絶縁体であってもよい。強磁性金属としては、NiFe、CoFe、CoFeBなどが挙げられる。磁性絶縁体としては、イットリウム鉄ガーネット(YIG,YFe12)、ビスマス(Bi)をドープしたYIG(Bi:YIG)、ランタン(La)を添加したYIG(LaYFe12)、イットリウムガリウム鉄ガーネット(YFe5−xGa12)などが挙げられる。尚、電子による熱伝導を抑えるという観点から言えば、磁性絶縁体を用いることが望ましい。
【0019】
変換電極30は、逆スピンホール効果(スピン軌道相互作用)を発現するスピン流−電流変換部である。つまり、変換電極30は、逆スピンホール効果によって上記スピン流Jsから起電力を発生する。ここで、発生する起電力の方向は、磁性体層20の磁化Mの方向と温度勾配∇Tの方向との外積で与えられる(E//M×∇T)。本実施の形態では、効率的な電力生成のため、起電力の方向が面内方向となるように素子が構成されている。例えば、図2に示されるように、磁性体層20の磁化Mの方向は+y方向であり、温度勾配∇Tの方向は+z方向であり、起電力の方向は+x方向である。
【0020】
変換電極30の材料は、「スピン軌道相互作用」の大きな金属材料を含有する。例えば、スピン軌道相互作用の比較的大きなAuやPt、Pd、Ir、その他f軌道を有する金属材料、またはそれらを含有する合金材料を用いる。また、Cuなどの一般的な金属膜材料に、Au、Pt、Pd、Irなどの材料を0.5〜10%程度ドープするだけでも、同様の効果を得ることができる。変換電極30は、ITOなどの酸化物であってもよい。
【0021】
尚、効率の観点から言えば、変換電極30の膜厚を、材料に依存する「スピン拡散長(スピン緩和長)」程度に設定することが望ましい。例えば、変換電極30がPt膜である場合、その膜厚を10〜30nm程度に設定することが好ましい。
【0022】
本実施の形態によれば、上記のような変換電極30が複数個設けられている。つまり、複数の変換電極30が、磁性体層20上に接触するように形成されている。更に、それら複数の変換電極30同士は、物理的に離間している。従って、設計者やユーザは、所望の出力電力が得られるように、複数の変換電極30のうち任意のものだけを“選択的”に利用することができる。すなわち、図2に示された熱電変換素子1は、様々な出力電力要求に応えることができる。1種類の熱電変換素子1で様々な出力電力要求に応えることができるため、図1で示されたものと比較して、利便性が高く、且つ、コストも低減される。
【0023】
尚、複数の変換電極30のうち選択的に使用されるものは、以下、「選択電極30A」と参照される。選択電極30Aは、複数の変換電極30の少なくとも一部である。選択電極30Aが複数の変換電極30の全てである場合もある。一方、複数の変換電極30のうち選択電極30A以外は、以下「非選択電極30B」と参照される。
【0024】
2.第2の実施の形態
図3は、第2の実施の形態に係る熱電変換素子1の構成の一例を概略的に示している。図3に示されるように、選択電極30Aで発生した電力を取り出すために「電力取り出し構造40」が形成されている。より詳細には、電力取り出し構造40は、導電性であり、選択電極30Aと物理的に接続されている(つまり、接触している)。その一方で、電力取り出し構造40は、非選択電極30Bとは物理的に離れている(つまり、接触していない)。
【0025】
更に、導電性の電力取り出し構造40は、一対の外部接続端子50−1、50−2に物理的に接続されている。典型的には、外部接続端子50−1、50−2は、起電力発生方向(x方向)に離間して形成される。それら外部接続端子50−1、50−2は、それぞれ、外部接続配線60−1、60−2を介して外部負荷に接続される。
【0026】
このように、選択電極30Aは、磁性体層20とは異なる導電部材(電力取り出し構造40)を介して、一対の外部接続端子50−1、50−2と電気的に接続される。選択電極30Aに起電力が発生しているとき、外部接続端子50−1、50−2の電位は互いに異なっている。これら電力取り出し構造40及び外部接続端子50を用いることにより、選択電極30Aで発生した電流(電力)を取り出すことができる。一方、非選択電極30Bは電力取り出し構造40と接触していないため、非選択電極30Bで発生した電流(電力)は電力取り出し構造40を介して外部接続端子50には供給されない。
【0027】
従って、選択電極30A及び非選択電極30Bを適宜設定することによって、所望の出力電力を得ることが可能である。逆に言えば、所望の出力電力に応じて選択電極30A及び非選択電極30Bを適宜設定すればよい。1種類の熱電変換素子1で様々な出力電力要求に応えることができるため、図1で示されたものと比較して、利便性が高く、且つ、コストも低減される。
【0028】
尚、典型的には、図3に示されるように、起電力発生方向(x方向)に分布した変換電極30が選択電極30Aとして使用される。その場合、x方向に分布した選択電極30Aのそれぞれでの起電力が加算されるように、電力取り出し構造40が形成されることが好ましい。但し、使用方法は、それに限られず、自由である。選択電極30Aが一個である場合もあるし、y方向に分布した選択電極30Aだけが並列的に接続されてもよい。また、図4に示されるように、1個の熱電変換素子1に対して、2以上の電力取り出し構造40が別々に設けられてもよい。
【0029】
3.第3の実施の形態
上述の電力取り出し構造40の実現方法としては、様々考えられる。第3の実施の形態では、選択電極30Aと接触するように形成される電極が電力取り出し構造40として用いられる場合を説明する。そのような電力取り出し構造40としての電極は、以下「接続電極41」と参照される。
【0030】
図5A及び図5Bは、接続電極41の形成例を示す断面図である。図示されるように、接続電極41は、選択電極30A同士を接続するように選択電極30Aと接触して形成される。図5Aに示される例では、接続電極41は変換電極30の上層に形成されており、接続電極41と磁性体層20との間には絶縁膜が形成される。図5Bに示される例では、接続電極41は磁性体層20にも接触するように形成されている。また、図5A及び図5Bに示されるように、一対の外部接続端子50−1、50−2は、接続電極41上に形成されている。典型的には、外部接続端子50−1、50−2は、起電力発生方向(x方向)に離間して形成される。
【0031】
接続電極41の材料は、導電材であれば何でもよい。電力取り出しの観点から言えば、接続電極41のシート抵抗は変換電極30のシート抵抗が低いことが好ましい。例えば、変換電極30の材料はPt(抵抗率=104nΩ・m)であり、接続電極41の材料はCu(抵抗率=17nΩ・m)である。
【0032】
図6図8は、接続電極41の様々な形成例を示す平面図である。いずれの例においても、接続電極41は、選択電極30Aとだけ接触するように形成されており、非選択電極30Bとは接触していない。逆に言えば、接続電極41と接触している変換電極30が選択電極30Aであり、接続電極41と接触していない変換電極30が非選択電極30Bである。所望の出力電力に応じて接続電極41を適宜形成することによって、選択電極30A及び非選択電極30Bを設定することができる。
【0033】
また、図9A図9B及び図9Cに示されるように、接続電極41は、隣り合う選択電極30Aの間をつなぐように1つずつ形成されてもよい。この場合も、接続電極41が選択電極30Aに接触し、非選択電極30Bには接触しないことに変わりはない。また、一対の外部接続端子50−1、50−2は、起電力発生方向(x方向)に離間した2個の選択電極30Aにそれぞれ設けられるとよい。
【0034】
4.第4の実施の形態
図10は、第4の実施の形態に係る熱電変換素子1の構成を示す概念図である。図10では、変換電極30のxy面上の配置が示されており、磁性体層20は省略されている。
【0035】
図10に示される例では、隣り合う変換電極30同士が「リンク構造43」を介して接続されている。但し、各変換電極30は、必ずしも隣りの変換電極30と接続されていなくてもよい。一般化すれば、任意の2つの変換電極30によって定義される「変換電極ペア」が複数存在しており、各々の変換電極ペアを構成する2つの変換電極30同士が、リンク構造43を介して接続されていればよい。また、外部接続端子50は、配線あるいはリンク構造43を介して、いずれかの変換電極30に接続されている。
【0036】
リンク構造43は導電性の構造であり、その抵抗状態としては、「低抵抗状態」と「高抵抗状態」の少なくとも2つがあり得る。リンク構造43の抵抗値は、低抵抗状態のときよりも、高抵抗状態のときの方が高い。低抵抗状態のリンク構造43は、以下、「ONリンク構造43A」と参照される。一方、高抵抗状態のリンク構造43は、以下、「OFFリンク構造43B」と参照される。リンク構造43の抵抗状態は、少なくとも1回は切り替え可能である。すなわち、リンク構造43を、ONリンク構造43AあるいはOFFリンク構造43Bのいずれかに、少なくとも1回は自由に設定することができる。
【0037】
図11Aは、リンク構造43の一例を示している。図11Bは、図11Aで示されたリンク構造43を用いた熱電変換素子1の構成一例を示している。図11A及び図11Bに示される例では、変換電極ペアを構成する2つの変換電極30間が配線44で接続されている。更に、その配線44上には可変抵抗45が形成されている。可変抵抗45の抵抗状態としては、低抵抗状態と高抵抗状態の少なくとも2つがある。また、可変抵抗45の抵抗状態は、切り替え信号SWによって、少なくとも1回は切り替え可能である。可変抵抗45が低抵抗状態に設定されている場合が、ONリンク構造43Aに相当する。一方、可変抵抗45が高抵抗状態に設定されている場合が、OFFリンク構造43Bに相当する。
【0038】
可変抵抗45は、例えば、抵抗変化素子である。抵抗変換素子としては、磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)のメモリセルに使用される磁気抵抗効果素子や、抵抗変化型メモリ(ReRAM)のメモリセルに使用される抵抗変化素子が挙げられる。そのような抵抗変化素子の抵抗値は、切り替え信号SWによって、自由に切り替え可能である。
【0039】
あるいは、可変抵抗45は、スイッチであってもよい。スイッチがONしている状態が、低抵抗状態のONリンク構造43Aに相当する。一方が、スイッチがOFFしている状態が、高抵抗状態のOFFリンク構造43Bに相当する。そのようなスイッチのON/OFF制御は、切り替え信号SWにより可能である。
【0040】
あるいは、可変抵抗45は、ヒューズやアンチヒューズであってもよい。ヒューズの場合、書き込み前の状態が、低抵抗状態のONリンク構造43Aに相当し、書き込み後の状態が、高抵抗状態のOFFリンク構造43Bに相当する。アンチヒューズの場合、書き込み前の状態が、高抵抗状態のOFFリンク構造43Bに相当し、書き込み後の状態が、低抵抗状態のONリンク構造43Aに相当する。これらの場合、状態切り替えは、切り替え信号SWにより、1回だけ可能である。
【0041】
図12図14は、本実施の形態に係る熱電変換素子1の様々な使用例を示している。いずれの例においても、選択電極30A同士をONリンク構造43Aで接続し、それにより電力取り出し構造40を形成している。つまり、本実施の形態の電力取り出し構造40は、高抵抗のOFFリンク構造43Bを含まず、且つ、低抵抗のONリンク構造43Aを含む構造として定義される。選択電極30Aは、ONリンク構造43Aを介して、他の選択電極30Aと接続されている。一方、非選択電極30Bにつながるリンク構造43は、OFFリンク構造43Bに設定されている。更に、使用する外部接続端子50は、配線あるいはONリンク構造43Aを介して、いずれかの選択電極30Aに接続されている。このようにして、選択電極30Aで発生した電流(電力)を外部接続端子50から取り出すことができる。
【0042】
既出の実施の形態と同様に、選択電極30Aと非選択電極30Bの配置は、所望の出力電力に応じて決定される。本実施の形態では、所望の出力電力に応じた選択電極30Aと非選択電極30Bの配置が得られるように、各リンク構造43の抵抗状態を設定すればよい。各リンク構造43の抵抗状態は、切り替え信号SWを用いることによって設定可能である。
【0043】
所望の出力電力に応じて選択電極30A及び非選択電極30Bの配置設定を行う回路が、図15に示される出力制御回路70である。出力制御回路70には、所望の出力電力や動作モードなどを示す制御信号CONが外部から入力される。その制御信号CONに応答して、出力制御回路70は、所望の出力電力に応じた選択電極30A及び非選択電極30Bの配置設定を行う。これは、電力取り出し構造40の構成を決定することと等価である。具体的には、出力制御回路70は、適切な選択電極30A及び非選択電極30Bの配置が得られるように、変換電極ペア毎に、リンク構造43をONリンク構造43AあるいはOFFリンク構造43Bに設定する。その設定を行うためには、変換電極ペア毎に、リンク構造43に切り替え信号SWを供給すればよい。
【0044】
また、リンク構造43の抵抗状態を自由に切り替え可能な場合、図16に示されるようなフィードバック制御も可能である。具体的には、出力制御回路70は、熱電変換素子1の出力電力に応じた出力信号OUTを受け取る。そして、出力制御回路70は、当該出力電力が所望の値となるように、変換電極ペア毎にリンク構造43の抵抗状態を切り替えることによって、選択電極30Aと非選択電極30Bの配置を“動的”に変更する。これは、電力取り出し構造40の構成を“動的”に変更することと等価である。このようなフィードバック制御によって、例えば、温度が変動するような環境下においても、出力電力を一定に保つことが可能となる。
【0045】
5.第5の実施の形態
磁性体層20上の変換電極30の配置は、アレイ状に限られない。様々な出力電力要求に対応できるように複数の変換電極30が配置されていればよい。例えば、図17に示されるように、長手方向がx方向である複数の変換電極30が、互いに平行に配置されていてもよい。図18に示されるように、それぞれの変換電極30のy方向の幅は、小さいものから大きいものまで様々であってもよい。いずれの場合であっても、複数の変換電極30の中から選択電極30Aを適宜選択することによって、所望の出力電力を得ることが可能である。
【0046】
6.第6の実施の形態
図19は、第6の実施の形態に係る熱電変換素子1の構成を概略的に示す斜視図である。第6の実施の形態では、温度勾配∇Tは、積層方向(z方向)ではなく、面内方向(y方向)に与えられる。より詳細には、磁性体層20がy方向に延在するように形成されており、複数の変換電極30はその磁性体層20の一部領域上に形成されている。y方向の温度勾配∇Tが印加されたとき、磁性体層20の中ではy方向に沿ったスピン流Jsが生成されるが、磁性体層20と変換電極30との界面においてそのスピン流Jsの方向はz方向に変わる。従って、上記の実施の形態の場合と同じく、x方向に起電力が発生する。尚、本実施の形態に係る構成は、既出の実施の形態のいずれにも適用可能である。
【0047】
以上、本発明の実施の形態が添付の図面を参照することにより説明された。但し、本発明は、上述の実施の形態に限定されず、要旨を逸脱しない範囲で当業者により適宜変更され得る。
【0048】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0049】
(付記1)
磁性体層と、
前記磁性体層上に接触するように形成され、スピン軌道相互作用を発現する材料で形成された複数の変換電極と
を備え、
前記複数の変換電極同士は、物理的に離間している
熱電変換素子。
【0050】
(付記2)
付記1に記載の熱電変換素子であって、
更に、導電性の電力取り出し構造を備え、
前記複数の変換電極の少なくとも一部が、前記電力取り出し構造と接触している
熱電変換素子。
【0051】
(付記3)
付記2に記載の熱電変換素子であって、
前記電力取り出し構造は、前記少なくとも一部の変換電極と接触するように形成された接続電極である
熱電変換素子。
【0052】
(付記4)
付記2に記載の熱電変換素子であって、
前記複数の変換電極は、複数の変換電極ペアを含んでおり、
前記複数の変換電極ペアの各々を構成する2個の変換電極同士は、可変抵抗を介して電気的に接続されており、
前記可変抵抗の抵抗状態としては、低抵抗状態と、前記可変抵抗の抵抗値が前記低抵抗状態のときよりも高い高抵抗状態とがあり、
前記電力取り出し構造は、前記低抵抗状態の前記可変抵抗を含み、
前記少なくとも一部の変換電極同士は、前記低抵抗状態の前記可変抵抗を介して接続されている
熱電変換素子。
【0053】
(付記5)
付記4に記載の熱電変換素子であって、
更に、出力制御回路を備え、
前記出力制御回路は、前記複数の変換電極ペア毎に前記可変抵抗の前記抵抗状態を前記低抵抗状態あるいは前記高抵抗状態に設定し、それによって前記電力取り出し構造の構成を決定する
熱電変換素子。
【0054】
(付記6)
付記5に記載の熱電変換素子であって、
前記可変抵抗の前記抵抗状態は、前記低抵抗状態と前記高抵抗状態との間で切り替え可能であり、
前記出力制御回路は、前記複数の変換電極ペア毎に前記可変抵抗の前記抵抗状態を切り替えることによって、前記電力取り出し構造の構成を動的に変更する
熱電変換素子。
【0055】
(付記7)
付記1に記載の熱電変換素子であって、
前記複数の変換電極のうち少なくとも1つが、前記磁性体層とは異なる導電部材を介して、一対の外部接続端子に電気的に接続された
熱電変換素子。
【0056】
本出願は、2012年4月24日に出願された日本国特許出願2012−098540を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【国際調査報告】