特表-13161668IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2013年10月31日
【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】太陽電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0747 20120101AFI20151201BHJP
   H01L 31/18 20060101ALI20151201BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20151201BHJP
   C23C 16/24 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
   H01L31/06 455
   H01L31/04 420
   H01L21/205
   C23C16/24
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
【出願番号】特願2014-512507(P2014-512507)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2013年4月18日
(11)【特許番号】特許第5726377号(P5726377)
(45)【特許公報発行日】2015年5月27日
(31)【優先権主張番号】特願2012-104007(P2012-104007)
(32)【優先日】2012年4月27日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】古畑 武夫
(72)【発明者】
【氏名】山向 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】品川 友宏
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F151
【Fターム(参考)】
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4K030BA29
4K030BA30
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5F151GA15
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(57)【要約】
結晶系シリコン基板上に形成される導電型半導体層における光吸収を低減し、光吸収損失を減らして光電変換効率を向上させることができる太陽電池を得ることを目的とし、結晶系シリコン基板としてのn型の単結晶シリコン基板11の片面に真性シリコン系薄膜層と、導電型結晶系シリコン系薄膜層とが順次積層された太陽電池であって、真性シリコン系薄膜層は、n型の単結晶シリコン基板11側から順に非晶質層としての真性の非晶質シリコン層12と結晶系層としての真性の微結晶シリコン層13の2層を備え、前記導電型結晶系シリコン系薄膜層は、前記結晶系層としての真性の微結晶シリコン層13と接して導電型結晶系シリコン系薄膜層としてのp型の微結晶シリコン層14を有することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一導電型の結晶系シリコン基板の片面に接するように真性シリコン系薄膜層と、導電型結晶系シリコン系薄膜層とが順次積層された太陽電池であって、
前記真性シリコン系薄膜層は前記結晶系シリコン基板側から順に非晶質層と結晶系層の2層を備え、
前記導電型結晶系シリコン系薄膜層は、前記真性シリコン系薄膜層と接する部分において隣接する前記真性シリコン系薄膜層より結晶化率が低いことを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記結晶系シリコン基板の前記片面は凹凸構造を有しており、
前記導電型結晶系シリコン系薄膜層に接するように前記凹凸構造の凸部に選択的に形成され、前記導電型結晶系シリコン系薄膜層の結晶化率より高い導電型結晶系シリコン系薄膜層からなるキャップ層を備えたことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記キャップ層が前記片面において占める面積の割合は1%〜25%であることを特徴とする請求項2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記キャップ層は、前記真性シリコン系薄膜層の前記結晶系層と前記導電型結晶系シリコン系薄膜層とに挟まれて形成されており、
前記導電型結晶系シリコン系薄膜層は、前記キャップ層に接する部分の結晶化率が前記キャップ層に接しない部分の結晶化率より高いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記一導電型の結晶系シリコン基板は、n型単結晶シリコンあるいはp型単結晶シリコンであり、前記真性シリコン系薄膜層の結晶層は真性微結晶シリコンであり、
前記導電型結晶系シリコン系薄膜層及び前記キャップ層は、p型微結晶シリコンあるいはn型微結晶シリコンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項6】
一導電型の結晶系シリコン基板の片面に接するように真性シリコン系薄膜層を形成する工程と、
前記真性シリコン系薄膜層上に導電型結晶系シリコン系薄膜層を形成する工程と、
を含む太陽電池の製造方法であって、
前記真性シリコン系薄膜層を形成する工程は、
前記結晶系のシリコン基板に接して非晶質層を形成する工程と、
前記非晶質層上に結晶系層を形成する工程と、
を含み、
前記導電型結晶系シリコン系薄膜層は、前記真性シリコン系薄膜層と接する部分において隣接する前記真性シリコン系薄膜層より結晶化率を低く形成することを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項7】
前記結晶系シリコン基板の前記片面は凹凸構造を有しており、
前記導電型結晶系シリコン系薄膜層を形成する工程に先立ち、前記凹凸構造の凸部に選択的に、前記導電型結晶系シリコン系薄膜層の結晶化率より高い導電型結晶系シリコン系薄膜層からなるキャップ層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項6に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項8】
前記結晶系シリコン基板の前記片面は凹凸構造を有しており、
前記導電型結晶系シリコン系薄膜層を形成する工程後、前記凹凸構造の凸部に選択的に、前記導電型結晶系シリコン系薄膜層の結晶化率より高い導電型結晶系シリコン系薄膜層からなるキャップ層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項6に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項9】
一導電型の結晶系シリコン基板は、n型単結晶シリコンあるいはp型単結晶シリコンであり、
前記結晶系層は、真性の微結晶シリコン層であり、
前記導電型結晶系シリコン系薄膜層は、ホウ素(B)をドープしたp型の微結晶シリコン層を形成する工程あるいは、リン(P)をドープしたn型の微結晶シリコン層を形成する工程であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池及びその製造方法に係り、特に結晶系半導体基板と非晶質半導体層との接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、結晶系半導体基板と非晶質半導体層との間で接合を形成した構造の太陽電池技術が開示されている。このような太陽電池では、発電層として結晶系半導体基板を用い、基板の両側の真性非晶質半導体層で基板表面でのキャリアの再結合を低減し、さらにその両側の導電型半導体層で高い内蔵電界を形成することで、光電変換効率の向上をはかっている。
【0003】
特許文献1では、真性非晶質半導体層を2層構造とし、基板側から外側に向かって順に光学的バンドギャップを広げた構成をとる。これにより、真性非晶質半導体層で発生する光吸収を減らすとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3490964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術によっても十分な光電変換効率を得ることは困難であり、さらなる光電変換効率の向上が求められている。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、基板上の導電型半導体層における光吸収を低減することで、光吸収損失を低減し、光電変換効率の高い太陽電池を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の太陽電池は、一導電型の結晶系シリコン基板の片面に接するように真性シリコン系薄膜層と、導電型結晶系シリコン系薄膜層とが順次積層された太陽電池であって、前記真性シリコン系薄膜層は、前記単結晶シリコン基板側から順に非晶質層と結晶系層の2層を備え、前記導電型結晶系シリコン系薄膜層は、前記真性シリコン系薄膜層と接する部分において隣接する前記真性シリコン系薄膜層より結晶化率が低いことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、2層構造の真性シリコン系薄膜層のうちの結晶系層と接することによって導電型結晶系シリコン系薄膜層の結晶化が容易となる。また、前記導電型結晶系シリコン系薄膜層は、前記真性シリコン系薄膜層と接する部分において隣接する前記真性シリコン系薄膜層より結晶化率が低くなるようにすることで、バンドギャップ差の増大を抑制でき、界面での欠陥の発生を抑制可能となる。従って、本発明の構造を有する太陽電池によれば、導電型シリコン系薄膜層の結晶性を高めることができ、光吸収の低減が可能となり、光電変換効率を向上することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施の形態1の太陽電池を示す模式的断面図である。
図2図2は、微結晶シリコン層のラマンスペクトルの一例を示す図である。
図3図3は、アモルファスシリコン層のラマンスペクトルの一例を示す図である。
図4-1】図4−1は、本発明の実施の形態1の太陽電池を示す工程断面図である。
図4-2】図4−2は、本発明の実施の形態1の太陽電池を示す工程断面図である。
図4-3】図4−3は、本発明の実施の形態1の太陽電池を示す工程断面図である。
図4-4】図4−4は、本発明の実施の形態1の太陽電池を示す工程断面図である。
図4-5】図4−5は、本発明の実施の形態1の太陽電池を示す工程断面図である。
図4-6】図4−6は、本発明の実施の形態1の太陽電池を示す工程断面図である。
図5図5は、本発明の実施の形態1の太陽電池の製造工程を示すフローチャートである。
図6図6は、本発明にかかる実施の形態1の比較例の太陽電池を示す模式的断面図である。
図7図7は、真性シリコン層とそれに接するp型のシリコン層の結晶化率の関係を示す図である。
図8図8は、本発明にかかる実施の形態1の太陽電池の各層の結晶化率を示す図である。
図9図9は、本発明にかかる実施の形態2の太陽電池を示す模式的断面図を示す図である。
図10図10は、本発明にかかる実施の形態3の太陽電池を示す模式的断面図を示す図である。
図11図11は、本発明にかかる実施の形態4の太陽電池を示す模式的断面図を示す図である。
図12-1】図12−1は、本発明にかかる実施の形態4の太陽電池の製造工程を示す要部拡大断面図である。
図12-2】図12−2は、本発明にかかる実施の形態4の太陽電池の製造工程を示す要部拡大断面図である。
図13図13は、本発明にかかる実施の形態4の太陽電池の凸部に形成された各層の結晶化率の関係を示す図である。
図14図14は、本発明にかかる実施の形態4の太陽電池を上からみた時に、凸部に形成したn型微結晶シリコン層が基板を占める領域を示す図である。
図15図15は、本発明にかかる実施の形態4の太陽電池の特性を示す図である。
図16-1】図16−1は、本発明にかかる実施の形態5の太陽電池を示す模式的断面図を示す図である。
図16-2】図16−2は、本発明にかかる実施の形態5の太陽電池を示す要部拡大断面図である。
図17図17は、本発明にかかる実施の形態5の太陽電池の凸部に形成された各層の結晶化率の関係を示す図である。
図18図18は、本発明にかかる実施の形態5の太陽電池の凸部以外の領域に形成された各層の結晶化率の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる太陽電池及びその製造方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、以下の実施の形態で用いられる太陽電池の断面図は模式的なものであり、層の厚みと幅との関係や各層の厚みの比率などは現実のものとは異なる場合もある。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる太陽電池の実施の形態1の模式的断面図である。以下、図1を参照して本実施の形態1の太陽電池について説明する。この太陽電池10は、一導電型の結晶系シリコン基板として、n型の単結晶シリコン基板11を用いる。本実施の形態1の太陽電池は、n型の単結晶シリコン基板11と接するように、非晶質層としての真性の非晶質シリコン層12と、結晶系層としての真性の微結晶シリコン層13とが順次積層され、この上層に導電型結晶系シリコン系薄膜層として、ホウ素(B)をドープしたp型の微結晶シリコン層14を有することを特徴とする。ここで、ホウ素(B)の代わりにAlをドープしたp型の微結晶シリコン層でもよい。そしてこのp型の微結晶シリコン層14上には透光性電極15が形成され、表面には銀層からなる集電電極16が形成されている。一方、n型の単結晶シリコン基板11の裏面側については、真性の非晶質シリコン層17、n型の非晶質シリコン層18が順次積層されている。そして裏面側についてもこのn型の非晶質シリコン層18上には透光性電極25が形成されている。なお、真性の非晶質シリコン層17とn型の非晶質シリコン層18からBSF(Back Surface Field)領域が形成される。その外側に反射層19を備えており、この反射層19上に裏面側の集電電極26が設けられる。
【0012】
ここで、n型の単結晶シリコン基板11としてはインゴットからスライスにより切り出されたものを用いる。切断面は研磨され表面の平坦化がなされている。さらに、切断面には結晶のひずみが残っているため、HF+HNO3やNaOHなどを用いて表面を10〜20μm程度エッチングする。また、ゲッタリングにより基板内の不純物を除去することが好ましい。ゲッタリングには、リンを熱拡散し、形成されたリンガラス層に不純物を偏析させる方法がある。
【0013】
また、n型の単結晶シリコン基板11はp型の単結晶シリコン基板でもよい。また、結晶系シリコン基板としては、n型の多結晶シリコン基板表面に所望の厚さのn型の単結晶シリコン層を形成した基板あるいはn型の多結晶シリコン基板など、少なくとも表面が一導電型の結晶系シリコン層を構成するものであればよい。
【0014】
反射防止あるいは散乱による基板内の光路長の増大のため、基板表面に凹凸(テクスチャー)が形成されていることが好ましい。テクスチャーは、単結晶シリコン基板の(100)面を用いて、(100)面と(111)面のエッチングレートが異なることを利用した異方性エッチングによって形成できる。薬液にはアルカリ溶液及び添加剤を用い、アルカリ溶液には水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等を、添加剤にはイソプロピルアルコール等を用いる。
【0015】
n型の単結晶シリコン基板11の光入射側つまり受光面側に、真性非晶質シリコン系薄膜層として真性の非晶質シリコン層12を備える。真性の非晶質シリコン層12は基板表面の欠陥を修復し光電変換効率を向上することができる。この真性の非晶質シリコン層12が結晶化すると、表面の欠陥の修復効果の低下やこの膜自体の欠陥の増加により、光電変換効率を低下させるため、n型の単結晶シリコン基板11に接する真性のシリコン層には非晶質層を用いる。
【0016】
そして、この真性の非晶質シリコン層12の上に真性の結晶系シリコン系薄膜層として真性の微結晶シリコン層13を備える。ラマン分光法で微結晶シリコン層を測定すると、単結晶シリコン基板と同様に結晶のピーク(520cm-1)が見られる。微結晶シリコンは、膜中に結晶を含み結晶のピークがみられることから結晶系に分類する。
【0017】
微結晶シリコンのラマンスペクトルの一例を図2に示す。微結晶シリコンは、非晶質と結晶が混在しているため、結晶のピーク(520cm-1)以外に非晶質のピーク(480cm-1)も見られる。この他、結晶系シリコン系薄膜層としては、単結晶シリコン、多結晶シリコンなどがある。
【0018】
ピーク強度の求め方を以下に述べる。400cm-1と550cm-1の測定点を結び、これをベースラインとし、ベースラインに対して、480cm-1付近の非晶質のピーク強度及び520cm-1付近の結晶のピーク強度を、それぞれIa、Icとする。結晶化率をこのピーク強度比Ic/Iaで定義する。
【0019】
非晶質シリコンのラマンスペクトルの一例を図3に示す。非結晶シリコンは、非晶質のピークが480cm-1に見られ、ピーク幅が広いために520cm-1に強度として観測される。このため、この場合、結晶化率Ic/Iaは0.2となり、非晶質シリコンでも、結晶化率Ic/Iaは0より高い値を示す場合がある。
【0020】
その上に、導電型の結晶系シリコン薄膜層としてp型の微結晶シリコン層14を備える。p型の微結晶シリコン層14の上には、透光性電極15を備え、この上に集電電極16が設けられている。
【0021】
次に、このような太陽電池10の製造方法について図4−1〜図4−6を参照して説明する。図5は、実施の形態1にかかる太陽電池10の製造工程を示すフローチャートである。
【0022】
まず、主面の面方位が(100)で、リン(P)を含有するn型の単結晶シリコン基板11を用意した(図4−1)。n型の単結晶シリコン基板11の大きさは、10cm×10cm〜20cm×20cm程度で、厚みが130〜200μm程度である。アルカリ溶液中に浸漬してn型の単結晶シリコン基板11の表面をエッチングし、スライス時のワイヤーソーダメージを除去する。断面には結晶のひずみが残っているため、HF+HNO3やNaOHなどを用いて表面を10〜20μm程度エッチングする。
【0023】
また、ゲッタリングにより基板内の不純物を除去した後、光閉じ込め構造により反射損失を低減するため、テクスチャー構造の凹凸が形成される。テクスチャー構造の凹凸を形成する方法としてイソプロピルアルコールを含有したアルカリ溶液を用いる(ステップS1)。
【0024】
また、ここではワイヤーソーダメージにおける金属汚染の影響を減らすためにワイヤーソーダメージ除去工程後にテクスチャーを形成したが、ワイヤーソーにおける金属汚染の影響が少ない場合には、ワイヤーソーダメージの除去とテクスチャーの形成とを兼ねてもよい。この場合は、ワイヤーソーダメージ除去を行うことなくn型の単結晶シリコン基板11を、イソプロピルアルコールを含有したアルカリ溶液でエッチングを行うことにより、ワイヤーソーダメージの除去とテクスチャーの形成とを兼ねることができる。また、テクスチャー構造の形成方法としては、反応性イオンエッチング(RIE)法等のドライエッチングによって形成してもよい。
【0025】
次に、n型の単結晶シリコン基板11をRCA洗浄によりクリーニングし、製膜直前に希フッ酸で表面酸化膜除去を施し、13.56〜60MHzのプラズマCVDチャンバで、プラズマCVD法により、真性の非晶質シリコン層12(ステップS2(図4−2))及び真性の微結晶シリコン層13(ステップS3(図4−3))を受光面側に順次形成した。真性の非晶質シリコン層12は、プラズマCVD法により、SiH4 ガス流量60sccm、H2 ガス60sccmとし、圧力100Pa、基板温度170℃、及びRFパワー30Wの条件で形成される。膜厚は3nmである。なお、膜厚は1nm以上10nm以下が好ましい。真性の微結晶シリコン層13は、プラズマCVD法により、SiH4 ガス流量10sccm、H2 ガス流量1000sccm、圧力200Pa、基板温度170℃、及びRFパワー200Wの条件で形成される。
【0026】
その結晶化率をラマン分光法で評価した。非晶質のピーク(480cm-1付近)Iaに対する結晶のピーク(520cm-1付近)Icの比で結晶化率を表すとIc/Ia=2.0であった。なお、結晶化率の評価はすべて、太陽電池の作製中に基板上に実際に形成した膜を測定した。表面から深さ数nmの範囲に集光して測定を行った。膜厚は4nmである。なお、膜厚は、1nm以上10nm以下が好ましい。
【0027】
こののち、p型の微結晶シリコン層14をプラズマCVD法により、形成する(ステップS4(図4−4))。製膜条件は、SiH4ガス流量10sccm、H2ガス流量1000sccm、B26ガス(1%H2 ベース)流量2sccm、圧力200Pa、基板温度170℃、及びRFパワー200Wの条件とする。膜厚は4nmである。なお、1nm以上10nm以下が好ましい。光吸収を減らすためにp型シリコン層の膜厚は、Voc、フィルファクターFFを低下させずに薄くすることが好ましい。
【0028】
このとき、膜の結晶化率は、Ic/Ia=1.5であった。従来、p型シリコン層の製膜初期は特に非晶質になりやすく、薄膜のp型シリコン層の結晶化率を増加させるのが難しいという問題があった。しかし、比較的容易に作製可能な膜である、真性の微結晶シリコン層13を下地に形成することで、薄膜のp型の微結晶シリコン層14を得ることができた。これは、下地の結晶成分が結晶核となって、その上に堆積する膜の結晶化を促進することができるからである。これにより、p型の非晶質シリコンより光吸収の少ないp型の微結晶シリコン膜を形成することができ、その結果、光電変換効率を向上できる。
【0029】
次に、裏面側の真性の非晶質シリコン層17(ステップS5)、n型の非晶質シリコン層18を順次積層する(ステップS6(図4−5))。ここで真性の非晶質シリコン層17は、プラズマCVD法により、SiH4ガス流量60sccm、H2 ガス流量60sccm、圧力100Pa、基板温度170℃、及びRFパワー30Wの条件で形成している。膜厚は4nmである。なお、1nm〜10nmの範囲が好ましい。
【0030】
n型の非晶質シリコン膜18は、プラズマCVD法により、SiH4ガス流量40sccm、PH3ガス(2%H2ベース)流量20sccm、圧力100Pa、基板温度170℃、RFパワー30Wの条件で形成している。膜厚は20nmである。1nm〜40nmの範囲が好ましい。
【0031】
次に、受光面側に透光性電極15を形成する(ステップS7)。透光性電極15としては、透光性の導電性酸化膜が用いられる。スパッタリング法により、酸化インジウム錫(ITO)が形成される。形成条件は、基板温度180℃、Arガス流量70sccm、O2 ガス流量(5%Arベース)5sccm、圧力0.7Pa、RFパワー800Wの条件で形成され、その膜厚は100nmである。なお、透光性電極15の膜厚としては、光閉じ込めの観点から60nm〜120nmの膜厚とするのが好ましい。
【0032】
このほか、透光性電極15としては、SnO2、In23、ZnO、CdO、CdIn24、CdSnO3、MgIn24、CdGa24、GaInO3、InGaZnO4、Cd2Sb27、Cd2GeO4、CuAlO2、CuGaO2、SrCu22、TiO2、Al23などを使用することができ、またこれらを積層して形成した透光性導電膜を使用することもできる。また、ドーパントとしては、Al、Ga、In、B、Y、Si、Zr、Ti、F、Ceから選択した1種類以上の元素を用いてもよい。形成方法として、これ以外に、蒸着、イオンプレーティングなどがある。
【0033】
続いて、裏面側に透光性電極25を形成する(ステップS8(図4−6))。透光性電極25は、透光性導電性酸化膜が用いられ、スパッタリング法により、酸化インジウム錫(ITO)が形成される。透光性電極25は、光に対し基板の裏面側に位置するため透光性電極15より短波長側の光の透過性は低くてもよく、より長波長側の光の吸収を減らすような膜を選択することが好ましい。形成方法、形成材料は透光性電極15で記載した内容と同様のものが考えられる。
【0034】
こののち、裏面側の透光性電極25上に反射層19を形成する(ステップS9)。反射層19は、入射した光をより有効活用するために形成することが好ましい。スパッタリングにより形成したAg層を用いる。このほか、反射層19としては、蒸着などで形成してもよいし、材料としてAlを用いてもよい。
【0035】
このほか、金属酸化物の微粒子からなる白色高反射材料を用いてもよい。例えば、MgO、Al23、白色亜鉛などがある。この場合、当該材料が絶縁体であるため、透光性電極25の上に集電電極26を形成した後に反射層19が形成される。
【0036】
そして受光面側の集電電極16、裏面側の集電電極26が順次受光面側及び裏面側に形成される(ステップS10,ステップS11)。集電電極16、26は、インクジェット、スクリーン印刷、銅線接着、スプレーなどによって形成される。生産性の観点からスクリーン印刷が好ましい。スクリーン印刷は、Agなどの金属粒子と樹脂バインダーからなる導電ペーストを用いて形成される。
【0037】
以上のようにして図1に示した太陽電池10が得られる。この太陽電池を実施例1とする。
【0038】
ここで、比較例として、図6に示すような構造の太陽電池を作製した。本実施の形態では、n型の単結晶シリコン基板11上に形成した、膜厚7nmの真性の非晶質シリコン層12の上にp型のシリコン層を前記実施の形態1の太陽電池10と同じ条件で製膜した。この時、p型のシリコン層は、結晶化せずにp型の非晶質シリコン層24が形成された。
【0039】
表1に、実施例1の太陽電池と比較例の太陽電池について、太陽電池のJV特性である、開放電圧Voc及び短絡電流Jsc、フィルファクターFFを測定した結果を示す。
【0040】
さらに、実施例2として、真性の微結晶シリコン層13の製膜条件において、H2流量を2000sccmに変えて形成した。この時の結晶化率がIc/Ia=3.0であった。
【0041】
次に、この上に、p型の微結晶シリコン層を実施例1と同じ製膜条件で形成した。この結晶化率がIc/Ia=2.5であった。
【0042】
さらに、実施例3として、H2流量を3000sccmに変えて形成した。この時の結晶化率がIc/Ia=4.0であった。次に、この上に、p型の微結晶シリコン層を実施例1と同じ製膜条件で形成した。この結晶化率がIc/Ia=3.0であった。
【0043】
ここで、真性シリコン層の結晶化率とこの上に形成されたp型シリコン層の結晶化率の関係を図7に示す。図7において、真性非晶質シリコン層の結晶化率Ic/Iaが0.2であった。それに接してp型シリコン層を実施例1と同じ条件で形成すると、この結晶化率Ic/Iaも0.2で、これも非晶質であった。また、真性シリコン層の結晶化率の増加に伴い、p型シリコン層の結晶化率が増加し結晶化が促進されている。なお、非晶質の結晶化率Ic/Iaが0.2と、0より高い値を示すのは、既に記載し図3に示した通り、非晶質の480cm-1のピークが520cm-1のところまで及んでいるためである。
【0044】
実施例2,3の太陽電池について、JV特性を測定した結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1から明らかなように、比較例に比べ、実施例1の太陽電池は、短絡電流(Jsc)が向上し、光電変換効率が高められている。また、実施例1〜3の結果から明らかなように、p型シリコン層の結晶化率の増加に伴い、Jscが向上し、光電変換効率が向上している。
【0047】
すなわち、真性の非晶質シリコン層上に真性の微結晶シリコン層を形成することで、その上のp型シリコン層を結晶化させることができ、その結果、p型シリコン層の光吸収が低減でき光電変換効率の向上をはかることができた。
【0048】
また、真性シリコン層の結晶化率Ic/Iaを2.0から4.0の範囲で制御し、p型シリコン層の結晶化率Ic/Iaを1.5から3.0の範囲で制御することで、Jsc及び光電変換効率を向上できるため、この範囲に結晶化率を制御することが好ましい。なお、p型シリコン層の結晶化率を制御するには、p型シリコン層の製膜条件において、SiH4ガス流量、H2ガス流量、B26ガス流量、圧力、基板温度、及びRFパワーを調整することで可能である。例えば、SiH4ガス流量を減らす、H2ガス流量を増やす、B26ガス流量を減らす、圧力を上げる、基板温度を上げる、及びRFパワーを上げる方向で結晶化率を上げることができる。なお、p型シリコン層の膜厚は、1nm以上10nm以下が好ましい。
【0049】
なお、さらに真性シリコン層の結晶化率をあげようとすると、製膜時の水素流量をさらに増やす必要があり、この場合、製膜時のダメージにより光電変換効率が低下する懸念がある。
【0050】
次に、結晶化率Ic/Ia=2.0の真性の微結晶シリコン層を実施例1と同様の製膜条件で形成し、この上に、p型の微結晶シリコン層を、より結晶化率の高いp型の微結晶シリコン層を形成するため、製膜条件のH2流量を4000sccmに変えて形成した。この時、p型の微結晶シリコン層の結晶化率Ic/Ia=3.0が得られた。これを用いて、太陽電池を作製した。これを実施例4とし、その結果を表1に示す。
【0051】
実施例4の太陽電池の場合、比較例の太陽電池に比べ、Jsc、変換効率は増加するが、Vocの低下が見られるため、実施例3の太陽電池に比べて変換効率は低下する。これは、真性の微結晶シリコン層より高い結晶化率のp型の微結晶シリコン層を用いたためである。
【0052】
原因として、p型シリコン層の結晶化率の増加に伴い、p型シリコン層のバンドギャップは狭くなり、この結果、p型の微結晶シリコン膜と、これに接する真性の微結晶シリコン層とのバンドギャップ差が拡大し、両者の界面での欠陥が増加したと考えられる。言い換えれば、真性の微結晶シリコン層より低い結晶化率のp型の微結晶シリコン層を形成することで両者のバンドギャップを等しくすることができ、両者の界面での欠陥を低減できる。
【0053】
従って、p型の微結晶シリコン層は、真性の微結晶シリコン層より低い結晶化率を有することで、光電変換効率の高い太陽電池を得ることができる。真性の非晶質シリコン層からp型シリコン層までの結晶化率の関係を図8に示す。図8に示すように、結晶化率CR=Ic/Iaは、真性の非晶質シリコン層12の結晶化率をCRia、真性の微結晶シリコン層13の結晶化率をCRic、p型の微結晶シリコン層14の結晶化率をCRpcとしたとき、CRia<CRic>CRpcとなっている。このように、真性の非晶質シリコン層12から真性の微結晶シリコン層13で結晶性が高くなり、この真性の微結晶シリコン層13よりもやや結晶性が低下したp型の微結晶シリコン層14を形成することで、光電変換効率の高い太陽電池を得ることができる。
【0054】
以上のように、本実施の形態の太陽電池によれば、真性シリコン系薄膜層を、単結晶シリコン基板側から順に非晶質層と結晶系層の2層構造とし、導電型シリコン系薄膜層の下地となる真性シリコン系薄膜層を微結晶化した結晶系層としている。これは真性シリコン系薄膜層の方が結晶化しやすいため、まず真性シリコン系薄膜層を結晶化し、この結晶化した真性層上に導電型の結晶系層を形成している。特にp型の導電型シリコン系薄膜層としてホウ素(B)をドープしたシリコン層は、低温で微結晶化することが困難であるが、本実施の形態のように、下地となる真性シリコン系薄膜層を微結晶化し結晶系層としたため、ホウ素(B)をドープしたシリコン層(導電型シリコン系薄膜層)の結晶化が促進され、その結果、光吸収が低減し光電変換効率が向上する。
【0055】
また、本実施の形態1の太陽電池の製造方法によれば、前述したように、n型の単結晶シリコン基板11上に、真性の非晶質シリコン層12を形成する工程、その上に、真性の微結晶シリコン層13を形成する工程、その上に、p型の微結晶シリコン層14を形成する工程を備える。そして次に、n型の単結晶シリコン基板11の反対側つまり裏面側に、真性の非晶質シリコン層17を形成する工程、この上にn型の非晶質シリコン層18を形成する工程、を備える。
【0056】
これにより、p型の微結晶シリコン層14をより効率よく結晶化させることができ、その結果、光吸収の低減をはかることができ、光電変換効率を向上することができる。
【0057】
実施の形態2.
次に、実施の形態2の太陽電池について説明する。図9は、実施の形態2の太陽電池を示す模式的断面図である。本実施の形態においては、実施の形態1に示した太陽電池10において、p型の微結晶シリコン層14と透光性電極15の間に、p型の非晶質シリコン層34を追加したものである。ここでp型の微結晶シリコン層14の膜厚を3nm、p型の非晶質シリコン層34の膜厚を1nmとし、p型導電性層全体の膜厚は実施例1と同様4nmとした。他の構成については前記実施の形態1の太陽電池と同様であるため、ここでは説明を省略する。同一部位には同一符号を付した。また、JV特性の結果を実施例5として表1に示す。表1に示すように、実施例5は、比較例や実施例1に比べて、太陽電池特性のフィルファクターFFが増加し光電変換効率が向上している。
【0058】
実施例1の太陽電池に比べて、実施例5の太陽電池のフィルファクターFFが増加したのは抵抗を低減した効果によるもので、抵抗が低減する理由は、p型シリコン層と透光性電極の間のコンタクト抵抗が、p型の非晶質シリコン層34を介在させることによって低減できるからである。これは、p型の非晶質シリコン層34はp型の微結晶シリコン層14より酸化されにくく、透光性電極形成時に製膜室に存在する酸素元素による酸化、あるいは透光性電極を構成する酸素の拡散による酸化を、p型の非晶質シリコン層34で低減できるからである。
【0059】
また、比較例の太陽電池よりも実施例5の太陽電池のフィルファクターFFが増加している理由は、p型の微結晶シリコン層14の方がp型の非晶質シリコン層24より膜自身の導電率が高いため、これを反映して太陽電池における抵抗が低減したためである。
【0060】
実際、ガラス上にp型の微結晶シリコン層とp型の非晶質シリコン層とをそれぞれ10nm製膜して、膜の導電率を比較すると、それぞれ、1E−4S/cm、1E−5S/cmが得られ、p型の微結晶シリコン層の導電率の方が高いことが分かる。
【0061】
また、本実施の形態2の太陽電池の製造方法によれば、前記実施の形態1の製造方法に加え、p型の微結晶シリコン層14の形成の後、p型の非晶質シリコン層34を形成する工程を追加することで容易に形成可能である。つまり、n型の単結晶シリコン基板11上に、真性の非晶質シリコン層12を形成する工程、その上に、真性の微結晶シリコン層13を形成する工程、その上に、p型の微結晶シリコン層14を形成する工程、p型の非晶質シリコン層34を形成する工程を備える。そして次に、n型の単結晶シリコン基板11の反対側つまり裏面側に、真性の非晶質シリコン層17を形成する工程、この上にn型非晶質シリコン層18を形成する工程、を備えることを特徴とする。
【0062】
これにより、p型微結晶シリコン層をより結晶化させることができ、その結果、光吸収の低減をはかることができ、光電変換効率を向上することができる。更に、透光性電極15の形成に先立ち、p型の非晶質シリコン層34を形成することで、透光性電極に接触するp型シリコン層の酸化を抑えることができ、その結果、両者の界面のコンタクト抵抗を低減でき、フィルファクターFFが向上し光電変換効率の向上をはかることができる。フィルファクターFFは、理論出力に対する最大出力の割合を表す数値であって、太陽電池モジュールの品質の目安の一つとされている。理論出力は、開放電圧及び短絡電流の積に相当する。FFは、最大出力が理論出力と同一である場合を最大値1とし、数値が1に近いほど発電効率が高いことを表す。
【0063】
上記では両面に真性シリコン系薄膜層と導電型シリコン系薄膜層とが形成された構造について説明したが、真性シリコン系薄膜層と導電型シリコン系薄膜層とが片面のみにある構成としても有効である。
【0064】
実施の形態3.
図10は、本発明にかかる太陽電池の実施の形態3の模式的断面図である。以下、図10を参照して本実施の形態3の太陽電池について説明する。実施の形態3では、光の入射面側にn型層を配置した場合について説明する。この太陽電池は、一導電型の結晶系シリコン基板として、n型の単結晶シリコン基板11を用いる。なお、p型の単結晶シリコン基板でもよい。n型の単結晶シリコン基板11と接するように、非晶質層としての真性の非晶質シリコン層17と、結晶系層としての真性の微結晶シリコン層13とが順次積層され、この上層に導電型結晶系シリコン系薄膜層として、リン(P)をドープしたn型の微結晶シリコン層28を有する。そしてこのn型の微結晶シリコン層28上には透光性電極15が形成され、表面には銀層からなる集電電極16が形成されている。
【0065】
一方、n型の単結晶シリコン基板11の裏面側については、真性の非晶質シリコン層12、p型の非晶質シリコン層24が順次積層されている。その外側には透光性電極25が形成され、その外側に反射層19を備えており、この反射層19上に裏面側の集電電極26が設けられる。
【0066】
n型の微結晶シリコン層28は、プラズマCVD法により形成する。製膜条件は、SiH4 ガス流量10sccm、Hガス流量1000sccm、PH3ガス(2%H2 ベース)流量1sccm、圧力200Pa、基板温度170℃、RFパワー200Wの条件で形成した。Hガス流量、RFパワー、圧力を変えることで結晶化率を調整できる。膜厚は4nmである。なお、1nm以上15nm以下が好ましい。光吸収を減らすためにn型微結晶シリコン層28の膜厚は、Voc、フィルファクターFFを低下させない程度に薄くすることが好ましい。
【0067】
このとき、n型の微結晶シリコン層28の結晶化率は、Ic/Ia=1.5であった。従来、n型シリコン層の製膜初期は特に非晶質になりやすく、薄膜のn型シリコン層の結晶化率を増加させるのが難しいという問題があった。しかし、比較的容易に作製可能な膜である、真性の微結晶シリコン層13を下地に形成することで、薄膜のn型の微結晶シリコン層28を得ることができた。これは、下地の結晶成分が結晶核となって、その上に堆積する膜の結晶化を促進することができるからである。これにより、n型の非晶質シリコンより光吸収の少ないn型の微結晶シリコン膜を形成することができ、その結果、光電変換効率を向上することができる。
【0068】
また、結晶系層としての真性の微結晶シリコン層13の結晶化率は2.0で、n型の微結晶シリコン膜の結晶化率の方が真性の微結晶シリコン層の結晶化率に比べ低い。これによって、両者のバンドギャップを等しくすることができ、両者の界面での欠陥を低減できる。
【0069】
このようにして作製した太陽電池を実施例6とし、表2にそのJV特性の結果を示す。表2から明らかなように、比較例に比べ、実施例6の太陽電池は、短絡電流(Jsc)が向上し、光電変換効率が高められている。
【0070】
なお、裏面のp層側にも、実施の形態1の受光面側のp層に用いたような、真性の結晶系シリコン層及びp型の結晶系シリコン層を用いてもよい。
【0071】
【表2】
【0072】
実施の形態4.
図11は、本発明にかかる太陽電池の実施の形態4の模式的断面図である。図12−1及び図12−2は、本発明にかかる実施の形態4の太陽電池の製造工程を示す要部拡大断面図である。図12−1及び図12−2では、説明を容易にするために、受光面側の基板表面の凹凸構造(テクスチャー)も拡大して模式的に示した。なお、基板の裏面側は、実施の形態3と同様である。基板の受光面側については、n型の単結晶シリコン基板11、非晶質層としての真性の非晶質シリコン層17と、結晶系層としての真性の微結晶シリコン層13とが順次積層され、実施の形態3の太陽電池の構成と同様、この上に導電型結晶系シリコン系薄膜層として、リン(P)をドープしたn型の微結晶シリコン層28を有する。
【0073】
そして、図12−2に示すように、その上に、凸部にのみ、導電型結晶系シリコン系薄膜層として、リン(P)をドープしたn型の微結晶シリコン層38を有する。n型の微結晶シリコン層38は、n型の微結晶シリコン層28より結晶化率が高いという特徴を有する。そしてさらにこの上には、透光性電極15が形成され、表面には銀層からなる集電電極16が形成されている。
【0074】
次に、この太陽電池の製造方法について説明する。他の層については通例の方法で形成されるが、n型の微結晶シリコン層28の凸部にのみ選択的に、リン(P)をドープしたn型の微結晶シリコン層38を形成する点が特徴である。ここではこのn型の微結晶シリコン層38の形成方法について説明する。実施の形態3の太陽電池の構成と同様、図12−1に示すように、n型の単結晶シリコン基板11に、非晶質層としての真性の非晶質シリコン層17と、結晶系層としての真性の微結晶シリコン層13とを順次積層する。そして、この上層に導電型結晶系シリコン系薄膜層として、リン(P)をドープしたn型の微結晶シリコン層28を形成する。
【0075】
そして、図12−2に示すように、n型の微結晶シリコン層28の凸部にのみ選択的に、リン(P)をドープしたn型の微結晶シリコン層38を形成する。製膜条件は、SiH4ガス流量6sccm、Hガス流量1000sccm、PH3ガス(2%H2 ベース)流量1sccm、圧力200Pa、基板温度170℃、RFパワー200Wの条件で形成している。膜厚は最大で4nm、これにより凸部にのみ形成される。ここで、SiH4ガス流量を6sccmと小さくすることで、凸部にのみ選択的に製膜することができた。このほか、H2ガス流量を増やす、RFパワーを上げることで凸部にのみ選択的に製膜することができる。また、H2ガス流量、PH3ガス流量、圧力、RFパワーなどの製膜条件を調整することでn型の微結晶シリコン層38の結晶化率や凸部を占める割合を制御することができる。
【0076】
そして、裏面側の各層に加え、受光面側及び裏面側の各電極を形成し、図12に示した太陽電池が形成される。
【0077】
図13は、この太陽電池の凸部に積層された各層の結晶化率の関係を示す図である。n型微結晶シリコン層28の上に、n型微結晶シリコン層28に比べて結晶化率の高いn型微結晶シリコン層38が形成されている。図14は、実施の形態4の太陽電池を上からみた時に、n型の微結晶シリコン層38が基板を占める領域を示す図である。この時の基板に対してのn型の微結晶シリコン層38の面積割合は11%である。図15に、面積割合と太陽電池のJV特性の関係を示す。すなわち、効率が向上するのは、面積割合は1%から25%の間で、この範囲にすることが好ましい。
【0078】
このようにして作製した太陽電池を実施例7とし、表2にそのJV特性を測定した結果を示す。表2から明らかなように、比較例に比べ、実施例7の太陽電池は、FFが向上し、光電変換効率が高められている。
【0079】
すなわち、n型の微結晶シリコン層38と透光性電極15との界面抵抗を抑えることができ、太陽電池のJV特性におけるFFが向上する。これは、n型の微結晶シリコン層の結晶化率をあげることで、この層自身の抵抗が低くなり、この層と接触する層との接触抵抗も低減できるためである。一方、凸部にのみn型の微結晶シリコン層38を形成しているために、n型層での太陽光の吸収損失を抑えることができ、その結果、太陽電池特性のJscの低下を抑えることができる。
【0080】
なお、ここではn層側を受光面としたが、p層側を受光面とした場合には、p型の結晶系シリコン層として、ボロン(B)をドープした微結晶シリコン層を用い、その上に、結晶化率がそれより高く、凸部にのみ形成されたボロン(B)をドープしたp型の微結晶シリコン層を用いることで、FFが向上し、光電変換効率の高い太陽電池を得ることができる。
【0081】
実施の形態5.
図16−1及び図16−2は、本発明にかかる太陽電池の実施の形態5の模式的断面図および要部拡大断面図である。なお、基板の裏面側は、実施の形態3と同様である。受光面側では、n型の単結晶シリコン基板11、非晶質層としての真性の非晶質シリコン層17と、結晶系層としての真性の微結晶シリコン層13とが順次積層される。実施の形態5では、実施の形態4に対してn型の微結晶シリコン層28とn型の微結晶シリコン層38の順番を入れ替えて形成した。すなわち、結晶系層としての真性の微結晶シリコン層13の上に、凸部にのみ、導電型結晶系シリコン系薄膜層としてリン(P)をドープしたn型の微結晶シリコン層38を有する。真性の微結晶シリコン層13及びn型の微結晶シリコン層38上に、導電型結晶系シリコン系薄膜層として、リン(P)をドープしたn型の微結晶シリコン層28を有する。n型の微結晶シリコン層38の製膜条件としては前記実施の形態4と同様とした。
【0082】
図17に凸部での各層の結晶化率の関係を示す。結晶化率3.5のn型微結晶シリコン層38上に、結晶化率3.0のn型微結晶シリコン層28が形成されている。一方、凸部以外の領域では、図18に示すように、結晶化率2.0の真性微結晶シリコン層13上に結晶化率1.5のn型微結晶シリコン層28が形成されている。凸部でn型微結晶シリコン層28の結晶化率が凸部以外の領域のn型微結晶シリコン層28に比べ増加したのは、下にこれと接するように結晶化率3.5と高いn型微結晶シリコン層38があり、これにより結晶化が促進されたためである。
【0083】
さらに、n型微結晶シリコン層28上に、透光性電極15が形成され、表面には銀層からなる集電電極16が形成されている。
【0084】
これにより、光吸収の少ないn型の微結晶シリコン膜が形成できるとともに、n層自身の抵抗の低減及び透光性電極との接触抵抗の低減を図ることができるためFFが向上する。一方、真性の微結晶シリコン層13とこれよりも結晶化率の高いn型微結晶シリコン層38が凸部で接することになるが、接している領域は基板表面の全面積に対して11%程度と少ないため、太陽電池特性のVocへの低下を招くことはほとんどない。
【0085】
このようにして作製した太陽電池を実施例8とし、表2にそのJV特性の結果を示す。表2から明らかなように比較例に比べ、実施例8の太陽電池は、FFが向上し、光電変換効率が高められていることがわかる。
【0086】
なお、本発明において、結晶系シリコン基板とは、単結晶又は多結晶シリコン基板をいうものとする。また真性シリコン系薄膜層とは、真性シリコン薄膜又は真性シリコン化合物半導体薄膜をいうものとする。また導電型結晶系シリコン系薄膜層は、不純物を含み、p型又はn型の微結晶又は多結晶シリコン薄膜層あるいは、微結晶又は多結晶シリコン化合物半導体薄膜層をいうものとする。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上のように、本発明にかかる太陽電池及びその製造方法は、結晶系基板上に導電型薄膜を形成した太陽電池に有用であり、特に、低温で微結晶化することが困難であるボロンドープのシリコン系薄膜を用いた太陽電池に適している。
【符号の説明】
【0088】
11 n型の単結晶シリコン基板、12 真性の非晶質シリコン層、13 真性の微結晶シリコン層、14 p型の微結晶シリコン層、15,25 透光性電極、16,26 集電電極、17 真性の非晶質シリコン層、18 n型の非晶質シリコン層、19 反射層、24,34 p型の非晶質シリコン層、28,38 n型の微結晶シリコン層。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図4-5】
図4-6】
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12-1】
図12-2】
図13
図14
図15
図16-1】
図16-2】
図17
図18

【手続補正書】
【提出日】2014年5月1日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面に凹凸構造を有する一導電型の結晶系シリコン基板上に、
前記凹凸構造を有する前記片面に接するように真性シリコン系薄膜層と、導電型結晶系シリコン系薄膜層とが順次積層された太陽電池であって、
前記真性シリコン系薄膜層は前記結晶系シリコン基板側から順に非晶質層と結晶系層の2層を備え、
前記導電型結晶系シリコン系薄膜層に接するように前記凹凸構造の凸部に選択的に形成され、前記導電型結晶系シリコン系薄膜層の結晶化率より高い導電型結晶系シリコン系薄膜層からなるキャップ層を備え、
前記導電型結晶系シリコン系薄膜層は、前記真性シリコン系薄膜層と接する部分において隣接する前記真性シリコン系薄膜層より結晶化率が低いことを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記キャップ層が前記片面において占める面積の割合は1%から25%であることを特徴とする請求項に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記キャップ層は、前記真性シリコン系薄膜層の前記結晶系層と前記導電型結晶系シリコン系薄膜層とに挟まれて形成されており、
前記導電型結晶系シリコン系薄膜層は、前記キャップ層に接する部分の結晶化率が前記キャップ層に接しない部分の結晶化率より高いことを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記一導電型の結晶系シリコン基板は、n型単結晶シリコンあるいはp型単結晶シリコンであり、前記真性シリコン系薄膜層の結晶層は真性微結晶シリコンであり、
前記導電型結晶系シリコン系薄膜層及び前記キャップ層は、p型微結晶シリコンあるいはn型微結晶シリコンであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項5】
片面に凹凸構造を有する一導電型の結晶系シリコン基板の片面に接するように真性シリコン系薄膜層を形成する工程と、
前記真性シリコン系薄膜層上に導電型結晶系シリコン系薄膜層を形成する工程と、
を含む太陽電池の製造方法であって、
前記真性シリコン系薄膜層を形成する工程は、
前記結晶系シリコン基板に接して非晶質層を形成する工程と、
前記非晶質層上に結晶系層を形成する工程と、
を含み、
前記導電型結晶系シリコン系薄膜層を形成する工程に先立ち、前記凹凸構造の凸部に選択的に、前記導電型結晶系シリコン系薄膜層の結晶化率より高い導電型結晶系シリコン系薄膜層からなるキャップ層を形成する工程を含み、
前記導電型結晶系シリコン系薄膜層は、前記真性シリコン系薄膜層と接する部分において隣接する前記真性シリコン系薄膜層より結晶化率を低く形成することを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項6】
一導電型の結晶系シリコン基板は、n型単結晶シリコンあるいはp型単結晶シリコンであり、
前記結晶系層は、真性の微結晶シリコン層であり、
前記導電型結晶系シリコン系薄膜層は、ホウ素(B)をドープしたp型の微結晶シリコン層を形成する工程あるいは、リン(P)をドープしたn型の微結晶シリコン層を形成する工程であることを特徴とする請求項に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項7】
片面に凹凸構造を有する一導電型の結晶系シリコン基板の片面に接するように真性シリコン系薄膜層を形成する工程と、
前記真性シリコン系薄膜層上に導電型結晶系シリコン系薄膜層を形成する工程と、
を含む太陽電池の製造方法であって、
前記真性シリコン系薄膜層を形成する工程は、
前記結晶系シリコン基板に接して非晶質層を形成する工程と、
前記非晶質層上に結晶系層を形成する工程と、
を含み、
前記導電型結晶系シリコン系薄膜層を形成する工程後、前記凹凸構造の凸部に選択的に、前記導電型結晶系シリコン系薄膜層の結晶化率より高い導電型結晶系シリコン系薄膜層からなるキャップ層を形成する工程を含み、
前記導電型結晶系シリコン系薄膜層は、前記真性シリコン系薄膜層と接する部分において隣接する前記真性シリコン系薄膜層より結晶化率を低く形成することを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項8】
一導電型の結晶系シリコン基板は、n型単結晶シリコンあるいはp型単結晶シリコンであり、
前記結晶系層は、真性の微結晶シリコン層であり、
前記導電型結晶系シリコン系薄膜層は、ホウ素(B)をドープしたp型の微結晶シリコン層を形成する工程あるいは、リン(P)をドープしたn型の微結晶シリコン層を形成する工程であることを特徴とする請求項に記載の太陽電池の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の太陽電池は、片面に凹凸構造を有する一導電型の結晶系シリコン基板上に、凹凸構造を有する片面に接するように真性シリコン系薄膜層と、導電型結晶系シリコン系薄膜層とが順次積層された太陽電池であって、真性シリコン系薄膜層は、結晶系シリコン基板側から順に非晶質層と結晶系層の2層を備え、導電型結晶系シリコン系薄膜層に接するように凹凸構造の凸部に選択的に形成され、導電型結晶系シリコン系薄膜層の結晶化率より高い導電型結晶系シリコン系薄膜層からなるキャップ層を備えている。そして、導電型結晶系シリコン系薄膜層は、真性シリコン系薄膜層と接する部分において隣接する真性シリコン系薄膜層より結晶化率が低いことを特徴としている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0073
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0073】
そして、図12−2に示すように、その上に、凸部にのみ、導電型結晶系シリコン系薄膜層として、リン(P)をドープしたn型の微結晶シリコン層38からなるキャップ層を有する。n型の微結晶シリコン層38は、n型の微結晶シリコン層28より結晶化率が高いという特徴を有する。そしてさらにこの上には、透光性電極15が形成され、表面には銀層からなる集電電極16が形成されている。
【国際調査報告】